夏休みはボードゲームだ! やのまんの人気ボドゲが「プライムデー」で20%オフ

やのまんは、7月12日0時~13日23時59分までAmazonで開催される「プライムデー」にて、ボードゲームを最大20%オフで提供します。

 

セールラインナップは、非対称協力型の推理ゲーム「迷宮推理」(税込4620円→3696円)、ファンタジー世界を舞台にした拡大再生産のリソースマネージメントゲーム「ファーム・ウィズ・ブラウニーズ」(税込2200円→1760円)、「ブラウニーズ」世界を舞台にした開拓タイルゲーム「フロンティア・ウィズ・ブラウニーズ」(税込2420円→1936円)、クトゥルフ神話をテーマとした非対称協力型の探索ボードゲーム「マッドネスアワー」(税込3960円→3168円)の全4種。

↑フロンティア・ウィズ・ブラウニーズ(2022年4月発売)

ボードゲーム芸人が選出した2020年発売の「やらないと人生損するボードゲーム」10選

お笑い芸能プロダクション・人力舎所属で、ピン芸人として活躍するいけだてつやさん。本業以外に、ボードゲームの造詣の深さと偏愛ぶりはテレビ番組でもたびたび紹介されるほどで、今や「ボードゲーム芸人」として呼ばれることもあります。今回は、そのいけださんオススメの2020年に登場したボードゲーム10個を紹介しながら、現在のボードゲーム市場、今後の盛り上がりについても聞いていきます。

↑いけだてつやさん。1982年・熊本県出身。三福星というお笑いトリオ解散後、ピン芸人に。本業のほかに高校野球を年間160試合も観戦する、燻製料理を作るなど、多彩な趣味を持ち、ボードゲームはその際たるもののようです

 

「ボードゲームに合うビール」から「ボードゲーム旅館」まで

ーーまず、ボードゲームのトレンドについて教えてください。

 

いけだてつやさん(以下、いけだ) ボードゲームと一口に言っても、本当に様々なものがあり、カードを主体にするものもあれば、テーブルに広げるボードを使って遊ものなどがあります。なおかつ、その遊び方も様々で、将棋のような「対戦型」もあれば、参加者全員が何かの解決に向けて協力し合いながらゲームを進める「協力型」もあります。最近はプレイヤー同士の攻撃がなく、みんなで達成感を得られる「協力型」が流行っている印象です。

 

ーーボードゲーム市場は広がっているのでしょうか。

 

いけだ 増えていると思いますよ。新型コロナウイルスの影響で閉店しちゃったお店もありますけど、日本国内には「ボードゲームカフェ」というお店が各地にできて、知らない人同士が店内にあるゲームで遊んだりしています。「良かったら一戦させてくれませんか」みたいな感じで。

 

ーー雀荘のような(笑)。

 

いけだ まさにそんな感じです。ボードゲームの中には難しいルールのタイプもありますが、そういうボードゲームカフェでは店員さんがルールを教えてくれたりもします。そういったボードゲームカフェで知り合った方同士で結婚した例もあるそうです。

 

あと、これは数年前の話ですが、サッポロビールからボードゲームビールという「ボードゲームに合う」ビールが発売されたり、ボードゲームを遊べる旅館が出てきたりと、かなり盛り上がっている印象があります。

 

また、海外に目を向けるとドイツの「エッセンシュピール」という年に一度開催されるボードゲームの祭典があります。世界中のボードゲーム好きが集まり、ここで大賞を取ったゲームはかなりのハクがつきます。一説にはビル・ゲイツがボードゲーム好きだとか、海外セレブの誰それがボードゲーム好きだという噂は多くて、この盛り上がりは世界的なものではないかと思っています。

↑いけださんのご自宅。所蔵するボードゲームは400を超えるそうです

 

「面白い」「面白くない」の基準は、リプレイ性があるかどうか

ーーただ、そんなボードゲームの世界も玉石混淆ではないかと思います。いけださんが今回、推薦するゲームにはどんな特徴がありますか?

 

いけだ 様々なタイプのボードゲームを持ってきましたけど、やはりリプレイ性ですね。「何回も遊びたくなるもの」という。これまでに「すごいハズレだった」というゲームに出会ったことはないのですが、「正直、これあまり面白くねぇな。また今度でいっか」みたいになるものはあるんですよ。そういうゲームは外して、本当にリプレイしたくなるものばかりを今回持参しました。

 

ーーありがとうございます。それではさっそくご紹介ください。

 

いけだ わかりました。

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その1】

JUST ONE(2020年・アークライト)

2800円(税別)

3~7名のプレイヤーで楽しむパーティゲーム。プレイヤーの一人が「回答者」となり、伏せた状態のカードを、ランダムに選びます。この時点での回答者は、自分が引いたカードにどんなワードが書かれているかは知らされず、回答者以外のプレイヤーのみ知ることができます。その上で回答者に対し、回答者以外のプレイヤーが様々なヒントを与えて、該当ワードを当ててもらうというもの。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「親に「お題になる答え」を当ててもらえるよう、ヒントを書くんですが他のプレイヤーと「ヒントがカブったら見せれない」というルールが秀逸。攻めすぎたヒントだと当ててもらえないというジレンマが最高! お題目がたくさんあるので何度でも遊びたくなるゲームです。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その2】

(C)2019 Palm Court.

ウェーブレングス(2020年・ホビージャパン)

4500円(税別)

2人以上が、2つのチームに分かれて楽しむボードゲームで、チームの1人がサイキックとなり、スクリーンの後に隠れたターゲットの位置を、チームメイトに当てさせます。現在の波長カードに表示されている、2つの相反するコンセプト(『熱い:冷たい』)について、その位置にふさわしい度合いの言葉(『溶岩』『熱湯』『焼き芋』『体温』『氷』『ドライアイス』)をヒントとしてチームメイトを導きます。その上で、ターゲットがどこにあるかを予想し、的中すれば得点獲得。また、その間に相手チームも推測して、的中すると得点でき、先に10点を獲得したチームが勝利となります。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「親がお題のパーセンテージを喩えて仲間に伝えるチーム戦のゲームです。繰り返し遊ぶと、テレパシーのように相手の伝えたい思いが伝わりだすという不思議な一体感が楽しい。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その3】

ピクチャーズ(2020年・ホビージャパン)

5000円(税別)

2019年にドイツで発売された後、高い評価を受け2020年に日本語版となってリリースされたもの。3~5人で楽しむもので、まず16枚の写真を並べ、各プレイヤーはそのうちの1枚の写真を靴紐、色付きキューブ、積木、石と木の棒などで表現。プレイヤー同士、16枚のどの写真を表現したのかを当てたり、当ててもらい点数を加算させていくゲーム。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「初めて遊んだとき、中に「石」「靴紐」「木」などが入っててマジか!? ってなったゲームです(笑)。お題になる複数の写真を、靴紐や石などで表現してどの絵柄か当ててもらうものですが、表現するには心許ない道具ばかり。ただ、そんな中当ててもらった人とは「気が合うなー」と仲良くなれる良ゲームです!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その4】

クリプティッド(2020年・JELLY JELLY CAFE)

4500円(税別)

2018年イギリスで誕生したボードゲームで、2020年に日本語版がリリースされました。2~5人で楽しむもので、6角形のマス目地盤の中から、未確認生物「クリプティッド」が潜む1マスを探り当て、各自が隠す生息地の秘密条件をもとに推理していくもの。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「次第にわかって来る未確認生物の生息地をロジカルに探す感じは冒険家になったようでワクワクソワソワします! クリプティッドは未確認生物の英語でUMAは和製英語ということもこのゲームで知りました!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その5】

ザ・クルー(2020年・株式会社ジーピー)

2000円(税別)

ドイツ年間ゲーム大賞でエキスパート賞を受賞したカードゲーム。2~5人で楽しむもので、プレイヤーは宇宙船のクルーとなり、他のプレイヤーと一緒に協力しながら「第9惑星の発見」を目指して奮闘する協力型フローです。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「トリックテイキングというジャンルのゲームで、プレイヤー全員が協力し頭を悩ませるのが楽しいです。気がつくと「もう一回やろう!」と誰かが言い出すリピート率の高いゲームです!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その6】

Q.E.(2020年・サニーバード)

4364円(税別)

3~5人で遊ぶ、競りをテーマにしたゲーム。舞台は2008年の景気後退期で、プレイヤーは各国の代表として「量的緩和対策」を実施。企業を救済するためにお金を使っていきますが、そのお金には上限がありません。ゲーム終了時、最もお金を使ったプレイヤーが負けというルールなので、他プレイヤーとの相対的なバランスで金額を決めないとすぐに脱落へ。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「見えない金額の相場を読み合うのが肝になるゲーム。最終発表の総額公開で1人脱落の瞬間が大盛り上がりで何度も遊びたくなります!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その7】

ミリオンヒットメーカー(2020年・アークライト)

3200円(税別)

イラストレーター・326によるゲームデザイン&イラストのカードゲームで1~12人で遊べるもの。プレイヤーの立場は広告代理店のプランナーで、ワードカードを2枚つなげて100万人が欲しがる「ミリオンヒット」商品を作っていきます。12枚の手札から2枚を組み合わせ、ヒット商品の名前を考え、プレイヤーが順番に発表。全員が発表し終えた後、一番ヒットしそうな商品に投票するというゲームフロー。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「カードの組み合わせでできた言葉でプレゼンする大喜利ゲーム。「大喜利」と聞くとハードルが上がる感じがしますが、カードに書かれたワードを組み合わせるだけなので誰でもミリオンヒットを出せます。私は5時間ぐらいプレイしていたこともあります(笑)。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その8】

ザ・キー:岸壁荘の盗難事件(2020年・すごろくや)

3800円(税別)

1~4人で楽しむゲームで、謎のヒントになるカードを早どりしながら、カード毎に表示される4要素〈犯人〉〈犯行時刻〉〈盗まれた物〉〈逃走手段〉に結びつく謎を解いていく流れ。手がかりのカードの組み合わせは最小限になることを目指しつつ、有益な情報を早どりする素早い判断力も求められる話題の推理系ボードゲーム。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「「いつ、どこで、だれが、何を、どうやって持っていった」という全ての条件を満たす犯人は誰なのか? 数あるヒントカードを頼りに誰よりも早く見つけることを目指します、ただヒントカードはできる限り少ない数の方がポイントが高いので想像も大事。ワイワイ捜査できる楽しさは格別です。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その9】

フィニッシングタイム(2020年・バネスト)

5910円(税別)

労働者に癒しを与えリラックスしてもらうことを目指すボードゲーム。1~6人で楽しむもので、プレイヤーは7人の労働者のチームを担当。自分の手番では労働者のうちの1人または複数を空いているアフターワークスペースに配置し、アクションをそれぞれ行います。実行後はすべての労働者を自分のファクトリーボードに、また置きます。これを繰り返し、アクションで得られるリラックスポイントが40ポイント以上になった際、もう一度アフターワークスペースの配置、アクション、ファクトリーボードへの配置をしてゲーム終了。その時点で最もリラックスしているチームが勝者に。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「超がつくブラック企業で働く人達を、「癒やして、リラックスさせてあげる」というトンデモテーマ(笑)。変わった設定ですが、ゲームは悩みどころ満載で、しっかり考え込め、クセになる良作です。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その10】

(C)DEAR SPIELE

クルセイダーズ 多言語版(2020年・Dexker Games/Tasty Minstrel Games/ディアシュピール)

6800円(税別)

オリジナルはアメリカのTMG社が2018年にリリースしたボードゲームで、多言語版として2020年にリリース。2~4人で楽しむもので、十字軍を率いて異教徒を鎮圧し、建物を建て、騎士団の影響力を高めることを目指すもの。プレイヤーは移動、召集、聖戦、建築、影響力という各自のアクションをボードで選択でき、アクションスペースに置かれたコマの数だけアクションができます。実行したアクションスペースのコマは、他のマスに振り分けられる「マンカラ」システム。すべてのアクションを満遍なく行わなければいけないルール。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「初めて遊んだとき夢中になったゲーム。「マンカラ」システムは古代からゲームに採用された独特のもので、ルールがわかると同時に悩ましさが出てきます。」(いけだ)

 

ボードゲームの難解であえて手間がかかるところこそが魅力

ーー解説だけを見ると、すごく複雑そうなゲームフローのものが多い印象です。

 

いけだ そうですよね。特に海外のボードゲームの解説は、ゲームフローの中にちょっとジョークを入れているものもあって、話をややこしくしてるという(笑)。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家の中でボードゲームを楽しむ方が通販などで買うケースも増えたようですが、そこでも皆さん「こんなにルールがあるの?」「ルールの意味がよくわからない」といった声は多かったようです。でも、そんな中でボードゲームのルールをわかりやすく解説するユーチューバーが出てきたりして、結果的にさらに裾野を広げることにもなっているようです。

今回おすすめしたゲームは様々なタイプがあり、たしかに解説するとなると難しそうだし、実際に人を集めて、ボードを広げてするというのもデジタルゲームに比べれば実に手間がかかる。でも、いろんなものが便利になる今の時代だからこそ、手間のかかるゲームっていうのがエモいんじゃないかと思います。

ーー今、静かに人気が拡大しているというボードゲームの世界ですが、2021年以降はどうなっていくと思いますか?

 

いけだ ボードゲームのファンには、大きく分けるとコアゲーマー、ライトゲーマーがいますが、ライトゲーマーが増えてきて、全体の遊戯人口を増やしているようなので、今後はよりシンプルなわかりやすいボードゲームが増えるかもしれませんね。

その一方で、既存のボードゲームをスマホのアプリで楽しめるようなものも結構出てきていて。カードに書いてある日本語以外の言葉を、Google翻訳の発音で聞きながら進めていく「ホッタイモイジンナ」というゲームが有名ですけど、デジタルとアナログ、それぞれの良さを融合させたゲームも増えるかもしれません。

いずれにしても、自分とは違う誰かと楽しめるもので、繰り返しやりたくなるようなゲームが増えると良いなと思います。一緒にやる相手によっても、面白さがまるで変わるところもゲームの楽しさの一つ。今回ご紹介したボードゲーム、ぜひ挑戦してみて欲しいですね。

↑各ボードゲームが持つ難解なルールを、できる限りわかりやすく解説してくださったいけださん

 

事前の情報だけでは、完全な理解ができないボードゲームが多かったですが、「やりながら覚える」「やりながら面白さを見つける」こと自体もまた、ボードゲームの魅力の一つでもあるように思いました。ハードルが高そうに感じながらも、一度ハマると抜け出せなくなるようにも感じるボードゲームの世界。ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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定番から“令和版”まで! 2人から遊べるタカラトミー「人生ゲーム」5選

これからハロウィンにクリスマスと、様々な季節行事がやってきます。例年のような大規模なイベントの開催が難しい状況のため、家族や親しい人と自宅で過ごすことを計画している方もいると思います。そこでおすすめしたいのが、アナログなボードゲーム、そして誰もが知っている定番中の定番、「人生ゲーム」です。ゲームのなかで、生まれてから就職・結婚・家を持つ……などの様々なイベントや転機を通して、楽しみながら生きるのには何が大切なのかと考えさせられること請け合い。いずれも2人から遊べるので、少人数ホムパにもピッタリですよ!

 

目次

 


これぞ定番中の定番!


タカラトミー 人生ゲーム(2016年ver.)

人生ゲームシリーズのスタンダードモデルが2016年にリニューアル。4つの追加エリアを組み合わせることで、いろんなテイストの人生ゲームが楽しめます。組み合わせパターンは全16種で飽きることなく遊べます。ユーザーからは「すごろくが大好きな子どもと遊ぶために購入。幼稚園児には難しいかと思いきや、すごくハマっています。借金をして家を買う、生命保険、火災保険、自動車保険、給料をもらうなど、毎回それはなに? と日常生活に通ずることも学べるのも良い気がします」という声が。

【詳細情報】
サイズ:504×297×75mm
発送重量:1500g

 


どこにでも持っていける手軽さが人気!


タカラトミー ポケット人生ゲーム

人生ゲームのおもしろさがコンパクトサイズに。旅行先や出かけた先などでも人生ゲームを楽しむことができます。2つの追加エリアを組み合わせて、ゲームボードをカスタマイズできます。ユーザーからは「家族とのキャンプや旅行用途に購入。トランプなどのカードゲームと異なり、1ゲームが丁度良い時間を要し、子どもも満足で終わります」「クルマのコマも、人も、ルーレットも、しっかりミニチュア化されていて、すごく可愛いらしいです」という声も。

【詳細情報】
サイズ:105×180×25mm
発送重量:150g

 


スポーツゲームの要素もあって楽しさ広がる!


タカラトミー 人生ゲーム スポーツ

プレイヤーがアスリートとなって、様々なスポーツを経験しながら才能を伸ばし、アスリートとして頂点を目指す人生ゲーム。登場競技は100種以上! 近年話題のビデオ判定ルールもゲームに採用。サブボードには16種類のミニゲームが用意され、その勝敗により金銀銅のトロフィーももらえます。ユーザーからは「4歳、6歳、9歳、11歳の娘達に購入しました。人生ゲームの要素と、ミニスポーツゲームの要素両方ができ、歳の差を超えて楽しんでいます」と高評価。

【詳細情報】
サイズ:504×297×55mm
発送重量:1300g

 


ひみつ道具を手に入れながら夢を叶えよう!


タカラトミー ドラえもん 人生ゲーム

ドラえもんの世界が人生ゲームで登場! のび太の住む町からスタートして、ひみつ道具を手に入れながらDP(ドリームポイント)を集めて、夢をかなえるのがゲームの目的。4人のキャラクターから1人を選んで夢をかなえに出発しましょう! ユーザーからは「通常の人生ゲームだと時間がかかるため、途中で飽きてしまい、進んでは遊ばなくなってしまいました。しかしこちらの商品は短い時間でサクサクと終わるのでまたやりたくなります。ドラえもん好きな子どもたちが楽しそうに遊んでいるので購入して良かった」と絶賛する声が。

【詳細情報】
サイズ:504×297×75mm
発送重量:1200g

 


増やすのはお金じゃなくてフォロワー!


タカラトミー 人生ゲーム プラス 令和版

今までの人生ゲームにちょっとした戦略性をプラスした、人生ゲームの新しいシリーズです。インフルエンサーにとって大切な「フォロワー」を集めるのがゲームの目的。 今の時代になくてはならない存在になったSNSの世界を楽しみつつNo.1インフルエンサーを目指そう! ユーザーからは「フォロワーが増えるとフォロワーコマを増やすのが大変。数を数えて繋げてがめんどくさいなと思いましたが小学生の子どもは楽しんでいました」という声が。

【詳細情報】
サイズ:504×297×55mm
発送重量:980g

 

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ゲームデザイナーが教える知識ゼロからの歴史ボードゲーム入門【その6】

第6回(最終回) 実際にゲームをプレイしてみよう<4>忘れてはいけない「補給」、そして勝敗の判定方法とは?

 

さて、雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング刊)最新号の付録ゲーム「ノルマンディーの戦い」を題材とした、歴史ボードゲームの解説も、いよいよ最終回です。

 

【第1回はコチラ
【第2回はコチラ
【第3回はコチラ
【第4回はコチラ
【第5回はコチラ

 

軍事作戦を支える補給(兵站)

前回までに説明したのは、戦闘部隊を表すユニットの移動や戦闘、戦線の張り方などでしたが、実際の軍事行動においては、それらの行動は「補給」という後方部隊の地味な作業によって支えられています。

 

軍事組織の補給は「兵站(ロジスティクス)」という言葉で呼ばれることもありますが、前線の戦闘部隊がいくら強力でも、軍の司令官が補給または兵站を軽視していれば、弾薬や食糧、燃料の不足により、前線部隊の戦闘力が低下して、作戦が失敗に終わる可能性が高まります。ナポレオンのロシア遠征や、ヒトラーのソ連侵攻が失敗に終わったのも、兵站の軽視が大きな原因の一つでした。

 

ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」では、自軍の「補給源」から前線の各ユニットまで、敵ユニットやその「支配地域(ZOC=ゾック)に邪魔されない形で「補給線」と呼ばれるヘクス列を設定できれば、補給を受けていると見なされます。

 

前回の「戦闘」の解説では、話が複雑になるので触れませんでしたが、この判定は、戦闘を解決する瞬間(攻撃・防御を問わず)には必ず行わなければなりません。また、ターンの手順の最後、フェイズ6の「両軍補給フェイズ」では、すべてのユニットに対してこの判定を行います。

 

《ターンを構成する手順》

1.連合軍上陸フェイズ

2.連合軍移動フェイズ

3.連合軍戦闘フェイズ

4.ドイツ軍移動フェイズ

5.ドイツ軍戦闘フェイズ

6.両軍補給フェイズ

 

フェイズ2、4の「戦闘フェイズ」において何らかの戦闘に参加するユニット(攻撃側・防御側とも)は、戦闘解決の瞬間に補給線を設定できない場合、コマに印刷されている戦闘力の数値が半分になります(端数切り上げ)。十分な銃弾や砲弾の補給がなければ、部隊の戦闘力は半減してしまうということをルール化しているわけです。

 

また、両軍補給フェイズに補給線を設定できないユニットがマップ上に1つあるごとに、それが所属する軍の損害値が1ずつ増加します。これは、マップ上のそれぞれのプレイヤーの手元に近い側にある「損害記録トラック」のマーカーを動かして反映させます。

 

「ノルマンディーの戦い」の場合、補給線の長さの上限は、両軍とも8ヘクスで、連合軍は「上陸海岸ヘクス」、ドイツ軍は陸地の地図端が、自軍の補給源となります。敵ユニットのいるヘクスや、味方ユニットが存在しない敵ゾックのヘクスには、自軍の補給線を通すことができません。

 

この図では、ドイツ軍ユニットの補給線が設定できるかどうかを説明する。ドイツ軍の補給源は、グレーに塗られた地図端(図では画面下。マップ全体では、マップ左端にも同様のドイツ軍補給源エリアが設定されている)。みどり色のヘクスは、連合軍の支配地域(ZOC=ゾック。但し、この図では、説明をわかりやすくするために、ゾックの起点となるユニットがいるヘクスにも色をつけてあります)です。「移動」の場合とは異なり、補給線を引けるかどうかの判定では、自軍ユニットが存在するヘクスは敵のゾックを打ち消せます。なので、へクス番号1413の第352歩兵師団と1913の第21装甲師団、2113の装甲教導(Leh)師団は、補給線を設定できる(つまり、図の下方にあるグレーの補給源エリアとそれぞれのユニットは敵のゾックにさえぎられることなく、8へクス以内に収まる形でつながっている)。しかしへクス番号1712の第716歩兵師団は、周囲のヘクスすべてを敵ゾックに囲まれてしまっているため、補給線を設定できない。もし戦闘解決時(攻撃・防御とも)にこの状況になれば、第716歩兵師団は戦闘力が半分の1になる(補給線が引けない場合、そのユニットの戦闘力は本来の数値の半分になるが、小数点以下の端数は切り捨てとなり、3÷2=1.5で、0.5を切り捨てるため)。もし各ターンの第6フェイズの「両軍補給判定フェイズ」でこの状況になれば、ドイツ軍の損害が1ポイント増加する

 

 

頼もしい助っ人、増援部隊の登場のさせ方

また、ドイツ軍はゲーム途中の定められたターンに、定められた場所から、増援ユニットを登場させることができます。これらのユニットは、ノルマンディー上陸作戦の開始時には、マップエリアの外の「ドイツ軍増援ユニット」に置いていたドイツ軍部隊で、史実においても、連合軍の侵攻を阻止するために、前線へ向かうよう命じられました。

 

ドイツ軍の反撃は、これらの増援部隊が中心となって行われるので、どこの地図端から登場させるかは、後の展開に大きな影響を及ぼします。戦車を装備する装甲師団ユニットは、歩兵師団に比べると移動力が大きい(歩兵3に対して装甲は5)ですが、敵ゾックからの離脱には追加で1移動力が必要となることもあり、いったん前線に投じられたら、そう簡単に他の地区に転進することはできなくなります。

 

↑ドイツ軍の増援ユニット。マップ上には、グレーに塗られた二つの補給源エリア(NW=北西とSE=南東)があり、ドイツ軍プレーヤーは各増援ユニットを、指定されたターンに、指定された補給源エリアに隣接するへクスのうち、任意のヘクスに配置する。ただし、他のユニット(敵・味方問わず)がいるへクスや敵ゾックのヘクスには登場させられない。SEから登場する増援ユニットは、登場場所の自由度は高いが、いったんマップ上に投入すると、移動力の関係で大きな配置転換はできなくなる(特に3移動力しかない歩兵)ので、数ターン先を見越して慎重に場所を選ばなくてはならない

 

連合軍の増援も、ゲームの途中にいくつか登場しますが、こちらは第3回で説明した通り、当該ユニット(部隊コマ)の右上に記載されたターンの「連合軍上陸フェイズ」でイギリス本土から出撃し、次のターンに上陸海岸ヘクスへと上陸することで登場させます。

 

ゲームの勝敗はどうやって判定するか

「ノルマンディーの戦い」は全7ターンのゲームで、史実の6月12日を表す第7ターンの終了と共に、勝敗を判定します。

 

このゲームの勝敗は、連合軍プレイヤーが獲得した「勝利得点(VP)」が何点だったかで決まります。連合軍プレイヤーが勝利得点を得る方法はいくつかありますが、基本的な獲得方法は、マップ上に計10か所ある「勝利得点ヘクス」を占領し、そこにある「VPマーカー」を奪い取ることです。

 

【終了時のマップの状況(例)】あるプレイで第7ターンが終了した時のマップ上の状況。連合軍は、勝利得点(VP)ヘクスを7か所占領し、VPマーカーを7個獲得したが、大都市ヘクス(カーン[右下]、シェルブール[左上])はひとつも取れなかった。獲得したVPマーカーは裏面のまま「連合軍獲得VPボックス」(図中の赤丸部分)に置かれる。

 

連合軍ユニットが勝利得点ヘクスを占領(そのヘクスに進入)すると、ゲーム開始時にそこに置かれていたVPマーカーは、マップ上の「連合軍獲得VPボックス」に置き直されます。この時、両プレイヤーとも、VPマーカーの裏面に印刷された数字を見ることができません。そして、第7ターンが終了した時点で、連合軍プレイヤーは自分が獲得したVPマーカーを裏返し、いくつの勝利得点を獲得したのかを計算します。

 

↑表面には赤地に「VP」の文字が白抜きされたVPマーカーは、ゲーム終了までマップ上の「連合軍獲得VPボックス」に置かれるが、両プレイヤーとも、裏面に記された数字を見ることができない。第7ターンの終了後、それらのマーカーをめくって黄色地に数字が印刷された面を上にする。このプレイでは、7個のVPマーカーで、計14VPだった。ただし、連合軍は損害が上限の13に達しているので、ここからマイナス1VPとなり、最終的な獲得VPは13VP。勝敗判定では、11~14VPの「引き分け」となった

 

なお、プレイ中に連合軍が占領した勝利得点ヘクスを、ドイツ軍ユニットが反撃や前進によって取り返した場合、ドイツ軍プレイヤーは連合軍獲得VPボックスから、VPマーカーを1つ選んで、奪回した勝利得点ヘクスに戻すことができます。

 

これでわかるように、ドイツ軍プレイヤーがゲームに勝つためには、積極的に反撃を行って、連合軍ユニットを退却させ、連合軍にVPマーカーを取らせないようにするか、または、取られたとしても奪い返し、VPマーカーをできるだけ連合軍の手に渡さないようにする必要がありますが、そこで鍵となるのは、第5回で説明しました「損害の蓄積」です。

 

もし、連合軍の損害値が上限に達していれば、ドイツ軍の攻撃で防御側の連合軍に損害が出るたびに、その連合軍ユニットはその損害と同数の退却を強いられます。逆に、損害が上限に達していなければ、ドイツ軍の攻撃で防御側の連合軍に「1」の損害が出ても、「損害記録トラック」上で損害マーカーを1つ進めるだけで終わり、マップ上のユニットの位置には変動がありません。

 

このように、多くの場合、ドイツ軍は、ただ漠然と戦線を守るだけでは、ゲームに勝てないのです。

 

また、連合軍プレイヤーは、マップ上の大都市ヘクスを占領していれば、1ヘクスにつき2VPを得ることができます。その一方で、連合軍の損害数が上限に達していたり、上陸海岸ヘクスをドイツ軍に奪われていたり、第1ターンの上陸阻止射撃の結果があまりに小さければ、連合軍の獲得した勝利得点から一定数差し引かれてしまいます。

 

そして、最終的に残った連合軍の勝利得点の合計が15以上なら連合軍の勝利、10以下ならドイツ軍の勝利、11~14なら引き分けとなります。

 

この勝利判定の条件については、このゲームに付属のルールブック詳しく書かれているので参照してください。

 

2人用のボードゲームを1人で遊ぶ方法

この連載記事でご紹介した「ノルマンディーの戦い」は、本来は2人用ゲームとしてデザインされたものです。しかし、歴史ボードゲームのおもしろさは、「2人用ゲームを1人でプレイすることもできる」というポイントにもあります。

 

それってどういうこと? 前線で対峙する敵と味方を1人でプレイすれば、それは「戦い」にならないんじゃないの? わざと一方を勝たせることもできるのでは?

 

そんな疑問を抱かれる方も多いかと思います。確かに、勝ち負けを競うという「ふつうの遊び方」をしたのでは、2人用ゲームを1人で遊ぶ意味はないように見えます。

 

しかし、プレイヤーの視点を「歴史的な戦いを上空から見下ろす」偵察機やヘリコプター、ドローンのような形に設定してみてはいかがでしょうか。

 

タイムマシンで過去に戻ったような気分で、マップ上の両軍を俯瞰し、それぞれのコマを「その軍の司令官ならこうするだろう」という「自分の考える最善手」で動かし、戦闘を行わせます。

 

連合軍の移動フェイズや戦闘フェイズでは、連合軍の司令官になったつもりで、ドイツ軍の移動フェイズと戦闘フェイズでは、ドイツ軍の司令官になったつもりで、それぞれのユニットに移動や戦闘を行わせます。

 

このようなプレイの方法では、対戦ゲームのような「敵の裏をかく」というテクニックは使えませんが、しかし両軍がそれぞれ最善手を取った場合、戦局がどのように推移していくのかを上空から観察するような形でのプレイは、題材の戦いをより深く理解するためのヒントをプレイヤーに感じさせてくれます。

 

実際、2人用ゲームを1人でプレイするという遊び方(ソロプレイ)は、歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)の本場であるアメリカでも、草創期からよく見られたもので、日本を含め世界中にいる「ゲーマー」は、対戦相手がいないという消極的理由だけでなく、有名な戦いの雰囲気を味わう、あるいは戦いの経過を眺めて愉しむという積極的理由から、2人用ゲームの「ソロプレイ」を愛好しています。

 

例えば、米国SPI社(本連載の第1回で紹介したボードゲーム形式のウォーゲームで先駆的メーカーのひとつ)の創設者で中心的なゲーム・デザイナーでもあったジェームズ・ダニガンは、日本語版が1982年にホビージャパンから刊行された著書『ウォーゲーム・ハンドブック』の中で、次のように述べています。

 

【ひとりでゲームをプレイする、という人はかなり多い。その最も一般的な理由としては、いっしょにゲームする相手がいないという場合もあるが、相手なしでプレイする方が好きだから、ということがあげられる。(中略)ウォーゲームには、歴史的体験を味わう手段としての性格がかなり強い。(中略)また、対戦相手がいることを好むプレイヤーにとっても、特定ゲームについて戦術とテクニックの腕を磨き、勝利の確率を高める上で、ひとりでのプレイは重要な意味を持っている。】(p.81)

 

↑ジェームズ・F・ダニガン著『ウォーゲーム・ハンドブック』(ホビージャパン、1982年)。伝説的なウォーゲーム・デザイナーによる、ボードゲーム形式のウォーゲーム(シミュレーション・ゲーム)全般について網羅的に解説した書物で、1980年代に日本でウォーゲームの「ブーム」が起きた時には、日本のゲーマーの間でバイブル的な存在となった。

 

今回で4回目となった「歴史群像」の付録ゲームですが、「ノルマンディーの戦い」だけでなく、過去の「モスクワ攻防戦(1941年秋~冬のドイツ軍のモスクワ侵攻とソ連軍の反撃、第150号付録)」と「第二段作戦(1942年5月~6月の太平洋戦域における日米両海軍の空母戦、第156号付録)」も、2人用ゲームでありながら、1人でもプレイできるように、ゲームシステムを工夫してデザインされています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、友人と会う機会もなかなか見つけられなくなっている方も多いかと思います。「歴史群像」の最新号(8月号)には、最初から1人用に設計された「米軍空挺部隊の戦い」と、2人用の「ノルマンディーの戦い」の2つの歴史ボードゲームが付録として付いていますが、ぜひ一度、「ノルマンディーの戦い」も、試しに1人でプレイしてみてください。きっと、新しい知的な発見があると思います。

 

ここまで6回にわたって歴史ボードゲームの内容について説明してきました。言葉で説明すると、個々のルールが複雑に思えたかもしれませんが、野球やラグビーのルールも、文字で読めば難しく感じる反面、実際にやったり試合を観戦すれば意外とすんなり理解できるもの。歴史ボードゲームのルールも同じで、なぜそのルールがあるのかという理由を想像しながら読み、試しに少しプレイしてみれば、見た目ほど難しくないことがわかっていただけるはずです。実際、1980年代の「ブーム」の頃には、大人はもちろん、日本中の中学生や高校生が、今回ご紹介した「ノルマンディーの戦い」よりもはるかに難易度が高いゲームに熱中していたのですから。

 

第1回で説明しました通り、歴史ボードゲーム(ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム)は半世紀の歴史を持つホビーで、この間に古今東西のあらゆる戦いがゲーム化されてきました。今では、戦史書で扱われる戦いで、ボードゲームになっていないものを探す方が難しいほどです。実際に起きた戦いを再現する歴史ボードゲームは、その題材の戦いを知る人にはより深く理解するヒントを、知らない人にはその戦いがどのようにして発生し、戦場ではいかなる戦闘が繰り広げられたのかという「流れ」を知る機会を、与えてくれる存在です。そしてもちろん、プレイヤーが知力を競い合い、戦術や作戦、戦略の優劣で勝敗を決するという、勝負の面白さもたっぷり味わえます。

 

欧米では、プロの歴史家や軍人が、ゲームの制作に携わることも珍しいことではなく、最新のリサーチ(歴史調査)の結果が、両軍の部隊編制の内容に反映しているケースも少なくありません。知れば知るほど、奥が深いのが歴史ボードゲームの世界ですが、「歴史群像」の付録に付くゲームはいずれも、それほどマニアックな関心がない人でも短時間でプレイできる、シンプルでダイナミックなゲームに仕上がっています。

 

もし、この連載企画をお読みになって「歴史ボードゲームって、面白そうだな」と感じた方がおられましたら、ぜひ最初の「入り口」として、「歴史群像」8月号を購入され(価格は内容の充実した雑誌と別冊付録のゲームを合わせて税込みで1210円)、付録ゲーム「ノルマンディーの戦い」をプレイしてみてください。最初は、戸惑うことがあるかもしれませんが、そんな時はこの6回の企画を読み直していただければ、疑問は解消されると思います。まずはとにかくやってみてください。何度かプレイすればすぐにコツを覚えて、歴史ボードゲームの魅力を感じ、より良い作戦を自分で考えてみようという気分になるはずです。6日間、お疲れ様でした。それでは、ご武運を!

 

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

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あなたもすぐにプレイできる! ゲームデザイナーが教える知識ゼロからの歴史ボードゲーム入門【その5】

第5回 実際にゲームをプレイしてみよう<3>手に汗握る最大の山場!「戦闘」の方法とコツ

 

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「戦闘」はどうやって行うの?

さて、「ノルマンディーの戦い」の各フェイズのうち、フェイズ2(連合軍)と、フェイズ4(ドイツ軍)という両軍それぞれの「移動フェイズ」の後に、フェイズ3(連合軍)、フェイズ5(ドイツ軍)という、両軍それぞれの「戦闘フェイズ」を迎えます。

 

「連合軍戦闘フェイズ」では、米英連合軍のユニット(部隊コマ)がドイツ軍のユニットを攻撃できます。逆に、「ドイツ軍戦闘フェイズ」ではドイツ軍のユニットが連合軍のユニットを攻撃できます。

 

《ターンを構成する手順》

1.連合軍上陸フェイズ

2.連合軍移動フェイズ

3.連合軍戦闘フェイズ

4.ドイツ軍移動フェイズ

5.ドイツ軍戦闘フェイズ

6.両軍補給フェイズ

 

この「戦闘フェイズ」では、それぞれを実行する側の判断でユニット同士の戦闘を行います。つまり、戦闘を行わせないユニットがあってもいいわけです。ちなみに、決められた手順で戦闘を行って戦闘結果を判定することを「戦闘を解決する」と言います。ボードゲームならではの言いまわしです。

 

戦闘の場合も、将棋のように交互に1つの戦闘だけを行うのでなく、1回の攻撃フェイズで、それを実施する側が攻撃できる場所が複数あれば、それらすべてを攻撃することができます。ただし、1つのユニットが1回の戦闘フェイズに攻撃や防御を行えるのは、1回だけです。

 

今回例として取り上げている「歴史群像」8月号付録ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」では、自軍のユニットに隣り合うヘクスにいる敵ユニットに対してのみ、攻撃を実行できます。

 

ひとつのユニットが小部隊(兵士数十人や戦車数台、大砲数門など)を表す、より戦術色の強いゲームでは、戦車ユニットや大砲ユニットに固有の射程距離が定められ、数ヘクス先の敵ユニットを射撃できる場合もあります。

 

「ノルマンディーの戦い」では、個々の戦闘の結果は、攻撃側のユニット(部隊コマ)に記された戦闘力と、防御側のユニットに記された戦闘力を元に、サイコロを振って判定します。

 

↑両軍のユニット(部隊コマ)には、左下に大きな数字で「戦闘力」が示されています。戦闘力が大きいほど強いということになります。「戦闘」の際には、この数字を用います

 

攻撃側は、複数のユニットが1つの戦闘に参加できますが、防御側は常に、攻撃側に目標とされたヘクスにいるユニットだけが戦闘に参加できます。

 

双方の戦闘力の数値(攻撃側が複数のユニットを1つの攻撃に参加させる場合は、攻撃参加ユニットの戦闘力の値を合計した数値)は、「戦力比」という簡単な比率に変換します。

 

↑ノルマンディー海岸から少し離れた、カーン南東のヴィムティエに展示されている、ドイツ軍のティーガーⅠ型重戦車(2014年4月、著者撮影)。ノルマンディーの戦場に登場したのは、ゲームで扱う時期の後だが、頑強な装甲に護られ、強力な8.8センチ砲を搭載した同戦車は、戦場では無敵の存在だった。戦車を装備する機甲師団や装甲師団のユニットの「戦闘力」は、現実に即して、このゲーム(「ノルマンディーの戦い」)でも高く設定されている

 

例えば、攻撃側ユニットの戦闘力が7で、防御側ユニットの戦闘力が3なら、戦力比は「2対1」となります(6対3として計算され、攻撃側の端数1は切り捨てます)。

 

【戦闘解決の例 第1段階】「連合軍戦闘フェイズ」での戦闘の例。連合軍プレイヤーは、へクス番号1909(図中左上。番号が見えないが1910の上)のイギリス軍第50歩兵師団と、2109のカナダ軍第3歩兵師団(部隊番号の3Cの「C」はカナダの意)で、隣接する2009のドイツ軍第716歩兵師団を攻撃する。さらに航空ユニット1個をこの戦闘に投入した

 

そして、その比率をマップに印刷された「戦闘結果表」に当てはめます。

 

↑戦闘解決時に使用する「戦闘結果表」(マップ上に印刷)と、決められた手順に沿って戦闘を解決するプロセス。まず、両軍の戦闘参加ユニットの戦闘力を確認し、「戦力比」を算出し、攻撃側と防御側のプレイヤーが、それぞれサイコロを1回ずつ振る。攻撃側のサイの目から、防御側のサイの目を引いた値と、先ほど計算した「戦力比」の欄が交差する場所に数字(または数字とR、Aの組み合わせ)が、この戦闘の結果となる。たとえば、戦力比2:1で、攻撃側のサイの目が5、防御側が3の場合、サイの目の差は2なので、「戦力比2:1」と「2」が交差するところにある記号「R」(赤丸のところ)が戦闘結果となる。

 

その際、森や湿地、都市、河の対岸など、防御に有利な地形のヘクスに防御側ユニットがいるなら、「地形効果表」という表(これもマップに印刷されています)を参照して、戦力比を1列または2列、攻撃側が不利になる方向にずらします。

 

使用する「戦力比」の欄が確定したら、まず攻撃側が、次に防御側が、サイコロを1回振ります。

 

もし、その戦闘の攻撃側が連合軍で、連合軍プレイヤーが戦闘支援のために航空ユニットを投入していれば、連合軍のサイの目に2を加算することができます。ノルマンディーの戦いでは、連合軍が制空権(戦闘機の数と性能で戦場の上空を支配する力)を握っていたので、ドイツ軍は航空ユニットを持っていませんが、連合軍も3個しか航空ユニットを持っていないので、それらをどこで使うかをよく考える必要があります。

 

そして、攻撃側のサイの目から防御側のサイの目を引いた数字を、戦闘結果表に当てはめます。つまり、先に確定した戦力比と、サイの目の差の値が交差する場所に記されているのが、この戦闘の結果です。

 

この入門講座の第1回で簡単に説明しましたが、戦闘の解決でサイコロを振るのは、単にゲームをおもしろくするための工夫ではありません。サイコロという不確定要素には、司令官の役割を担うプレイヤーにはコントロールできない、さまざまな要素による状況の変動という意味が込められています。

 

例えば、ある戦闘で攻撃側のサイの目が小さく、防御側のサイの目が大きかった場合、その戦闘では攻撃ユニットの師団長が何らかの判断ミスを犯し、防御側ユニットの兵士が待ち伏せに成功した、というシチュエーションを再現していると解釈できます。

 

このように、歴史ボードゲームの戦闘解決の手順では、想像力を働かせることで、実際の戦闘がどんな風に戦われたのかを、マップ上でイメージすることができるのです。

 

 

損害の蓄積と戦闘結果への影響

さて、先ほどの、戦闘結果の判定の仕方についての話にもどりましょう。「戦闘結果表」で、「戦力比」とサイの目の差の値が交差するところが戦闘結果となるといいましたが、「戦闘結果表」をご覧ください。戦闘結果は、数字または「R」と「A」、およびその組み合わせで示されています。

 

これらには、(1)数字だけのもの、(2)「R」、(3)「数字+R」、(4)「A+数字」の4種類があります。(1)から(3)までは攻撃側が勝ったか優勢で終わったことを示します。詳しくは上掲の「戦闘結果表」中の「結果」の欄を見て頂きたいのですが、上記(1)と(3)の場合の数字は防御側が被った損害の値、Rは防御側ユニットが2ヘクス退却させられることを示しています。

 

一方、上記(4)の「A+数字」は、攻撃側のサイの目よりも、防御側のサイの目の方が大きい場合にだけ生じうる結果で、これは攻撃を行った側が、その数字と同数の損害を被ったことを示しています。

 

一般的な歴史ボードゲームでは、個々のユニットそれぞれに損害が適用される方式を採っている場合も多いのですが、この「ノルマンディーの戦い」では、戦闘結果の損害の数値は個別のユニットではなく、それが所属する軍全体に対して適用されます。

 

つまり、ゲームマップのお互いの手元に近いところにある、連合軍とドイツ軍のそれぞれに用意された「損害記録トラック」というメーターのようなマス目の上で「損害マーカー」を動かして、軍ごとの損害の蓄積を管理します。

 

↑もし戦闘結果が「1」であれば、防御側のドイツ軍は、その損害を「ドイツ軍損害記録トラック」上で1増加させることで処理します(トラック上の「損害マーカー」を1マス動かす)。もし、損害の累計が既にトラック上の上限(連合軍は13、ドイツ軍は8)に達していたならば、それ以後は数字(損害)の値もすべて「退却」で適用しなくてはなりません(戦闘結果が「1」なら1ヘクス退却、「1R」なら3ヘクス退却、「2R」なら4ヘクス退却となる)

 

なぜ、このようなシステムになっているかというと、それによって軍全体の「士気(モラル)」の低下を再現できるからです。

 

歴史上の戦いでは、自軍の損害が一定レベル以上になると、司令官も前線兵士も戦闘継続の意欲を失い、退却しやすくなるという事例が数多く発生していました。このゲームでも、自軍の損害数が「損害記録トラック」の上限に達するまでは、自軍ユニットに対して発生した数字の戦闘結果を吸収(いわゆる「死守」)できますが、いったん上限に達したら、以後はすべての数字の戦闘結果を、退却で適用しないといけなくなります。

 

いわば、コップに少しずつ注がれた液体があふれるような感じで、軍全体の士気が下がり、それまで頑張っていた前線部隊があちこちで退却するようになるわけです。

 

さて、「戦闘結果表」で「R」の結果が出た場合、防御側はユニット(部隊コマ)の退却を行います。具体的には、2ヘクスの退却を行わなくてはなりません。

 

【戦闘解決の例 第2段階】「戦闘解決の一例 第1段階」の図の状況から、両者がサイコロを振って出た目を基に戦闘結果を出したところ、「R」となった場合の例。ドイツ軍第716歩兵師団は、戦闘結果の「R」を受けて2ヘクスの退却を行わなければなりませんので、2009から2011へと退却しました。マップ下がドイツ軍の補給源なので、退却可能なヘクスが複数ある場合には、自軍の補給源に近づく形で退却を行わなければなりません。

 

また、自軍の損害数が上記した自軍の「損害記録トラック」の上限に達してしまった後は、戦闘結果で出た損害の値をこれ以上「損害記録トラック」に反映できなくなるため、戦闘に参加したユニットはその損害の数だけ退却しなくてはなりません。

 

戦闘に勝った側は、相手側のユニットがいたヘクスに「戦闘後前進」という形で前進することができます。これは、敵の守っていた陣地を奪うようなもので、こうして少しずつ、敵陣に食い込んで、戦況が有利になるように前進していきます。

 

【戦闘解決の例 第3段階】戦闘結果適用の続きです。攻撃目標となった2009のヘクスが空になったので、連合軍プレイヤーはカナダ軍第3歩兵師団を、その空いたヘクスに「戦闘後前進」させました。戦闘後前進は、その名の通り「前進」する際には有効ですが、前進すると突出して反撃を受けやすくなる場合もあるので、注意が必要

 

以上が「戦闘」の解決の方法です。なかなか言葉だけでは理解しにくいかもしれませんが、実際にやっていくうちに慣れていきますので、まずはとにかくプレイをしてみてください。

 

さて、次回はいよいよ最終回「実際にゲームをプレイしてみよう <4>忘れてはいけない「補給」、そして勝敗の判定方法とは?」です。ここでは「ノルマンディーの戦い」で勝つために重要な要素となる、補給(兵站)と増援部隊、そして勝敗を判定する方法について解説します。

 

また、最終回では、2人用ゲームとしてデザインされた「ノルマンディーの戦い」を、1人でプレイする方法についても詳しく説明します。歴史ボードゲームの醍醐味は、実は2人用ゲームを1人でプレイすることで、より深く味わえる場合があります。それはどういうことなのか? ぜひご期待ください。

 

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

 

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ゲームデザイナーが教える知識ゼロからの歴史ボードゲーム入門【その4】

第4回 実際にゲームをプレイしてみよう<2>
部隊のコマの「移動」方法と、理解するとプレイの幅が広がる「支配領域(ゾック)」とは?

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前回は、雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング刊)最新号の付録ゲーム「ノルマンディーの戦い」のプレイの仕方について、ゲームの準備と、進め方の基本となるターンとフェイズについて、およびフェイズ1「連合軍上陸フェイズ」の進め方について説明しました。

 

今回は、部隊コマ(「ユニット」と呼びます)の「移動」と、戦いをテーマとしたボードゲームではよく導入され、「ノルマンディーの戦い」でも用いられている、「移動」に大きく影響する「支配地域(zone of control=ZOC<ゾック>)」の概念と、そのルールについて説明しましょう。ゾックをきちんと理解してプレイできるようになると、プレイの幅と面白さがグンと広がります。

 

部隊コマ「ユニット」をマップ上で移動させる

フェイズ1の「連合軍上陸フェイズ」に続くフェイズ2と、フェイズ4が「移動フェイズ」です。フェイズ2「連合軍移動フェイズ」では、すでに陸地に上陸した連合軍のユニットが、移動を行えます。

 

《ターンを構成する手順》

1.連合軍上陸フェイズ

2.連合軍移動フェイズ

3.連合軍戦闘フェイズ

4.ドイツ軍移動フェイズ

5.ドイツ軍戦闘フェイズ

6.両軍補給フェイズ

 

将棋では、1回の手番に駒を1つしか動かせませんが、歴史ボードゲームでは、移動フェイズ中にはルールの制限に違反しない限りいくつでも、自分のユニットをマップ上で移動させることができます。

 

ユニットの移動は、基本的にはヘクス(六角形のマス目)を単位として行い、それぞれのユニットに示された「移動力」という数値を基準に行います。各ユニットは1回の移動フェイズ中にその数値と同数までの移動力を使って、移動を行えます。

 

マップ上のヘクスには、平地や湿地、森、ボカージュ(ノルマンディー地方特有の高い生け垣で区切られた畑で、見通しが悪い)、都市などの地形が描かれており、この地形によって、移動して入る際に必要とされる移動力の数値が異なります。

 

例えば、平地のヘクスに進入するためには1ヘクスにつき1移動力を消費しますが、森や湿地のヘクスに入るには、1ヘクスにつき3移動力を消費しなくてはなりません。これは、自分が歩いて移動する時の「歩きにくさ」や「見通しの悪さ(隠れている敵の見つけにくさ)」を想像すれば、理解しやすいでしょう。

 

↑両軍ユニットの「移動力」(コマの右下に印刷された数字)と、「地形効果表」(マップ上に印刷)に示された、各地形のヘクス(六角マス)に移動して入る際に必要となる移動力の数値。例えば、平地は1ヘクスにつき1移動力、森は1ヘクスにつき3移動力。河のヘクスサイド(六角マスの境界)を越えて移動する際には、追加で1移動力がかかる。また、道路のヘクスサイドを越えて隣のヘクスに移動する際には、他の地形(河も含む)は無視して、1ヘクスにつき1移動力で済む

 

従って、移動力が3のユニットは、平地ならば3ヘクス移動できますが、最初に森のヘクスに移動したら、そこで移動を終了し、次のターンの「自軍移動フェイズ」になるまで、さらなる移動は行えません。地形ごとの移動力は、通過に必要な時間などを表しています。

 

ボカージュの場合、ドイツ軍歩兵以外のユニットは、1ヘクスにつき2移動力が必要ですが、ドイツ軍歩兵ユニットだけは、平地と同様に1移動力で進入できます。これは、地の利を得るドイツ軍部隊が、複雑な地形を熟知しているアドバンテージを表しています。

 

また、ヘクスとヘクスの境界(ヘクスサイド)に「河」が流れている場合、さらに追加で1移動力の消費が必要となります。これも、越える際に必要となる追加の時間を表すルールです。ただし、道路が横切っているヘクスサイドを越えて隣のヘクスに移動する場合には、河や森、湿地など、他の地形を無視して、1ヘクスにつき1移動力だけで移動できます。橋や林道を使って移動すれば、所要時間が短縮できるのは、われわれの普段の生活と同じです。

 

↑ヘクス1710にいるアメリカ軍第1歩兵師団が、1回の「連合軍移動フェイズ」中に5移動力を使って移動できる範囲(ピンク色)を示した図。ボカージュ(ノルマンディー地方独特の高い生け垣で囲まれた畑)は、1ヘクスにつき2移動力が必要とされる(ただしドイツ軍の歩兵は地形を熟知しているので1ヘクスにつき1移動力)が、道路に沿って移動すれば、そうした地形効果は無効になるので、より遠くまで進撃できる

 

「支配地域」=ZOC(ゾック)って何?

続いて、冒頭でも簡単に触れた「支配地域(ゾック)」について説明していきましょう。ゾックとは、各ユニット(部隊コマ)が持っている影響力が及ぶ範囲(地域)のことで、このゲームでは、そのコマを取り巻く6つのヘクスがそれに該当します。つまり、そのコマのあるヘックスの外側全周にある1へクス分にまで、その部隊の影響力が及ぶことをルール化したのがゾックなのです。

↑マップ上のドイツ軍ユニットの「支配地域(ZOC)が及んでいる範囲(ピンク色)を示した図。ドイツ軍ユニットの周囲6ヘクスは、敵ユニットの有無にかかわらず、ドイツ軍のZOCと見なされる(図では、説明をわかりやすくするために、ZOCの起点となるユニットのいるヘクスにも色をつけてあります。以降の2点の図も同じです)

 

↑上のマップと同じ状況で、今度は連合軍ユニットの支配地域が及んでいる範囲(みどり色)を示した図。上の図と比較すればわかる通り、ユニットのZOCは相手のZOCが及んでいるだけでは打ち消されない。両軍のZOCが及んでいるヘクスは、両軍にとって「敵ZOC」と見なされる

 

もう少しわかりやすく説明しましょう。実際の戦場でも、ある部隊が存在した場合、その周囲の一定の範囲まで、その部隊の影響力が及びます。例えば、部隊の司令部は敵情偵察のために、周辺地域に偵察部隊を派遣しますし、そもそも部隊自体が、一か所に固まっているわけではなく、いくつかの小部隊に分かれて割り振られた担当地域に存在することが多いでしょう。周辺に送られた偵察部隊が、敵部隊の存在を確認すれば、すぐに報告が司令部に送られて、部隊全体が素早く戦闘準備に入ることもできます。

 

つまり、部隊の周りのエリアには、一定の距離までその部隊の力が及んでいると言えます。これをゲームにおいて考えた場合、あるへクスに存在する部隊コマの影響力は、きっちりとそのへクスだけに収まるのではなく、その周囲のエリアにも及ぶことになります。これをルール化したのがゾックなのです。

 

説明が少し長くなりましたが、ゾックがなぜ重要かといいますと、ゾックは敵部隊の移動や退却、補給を妨害する力を持つからです。

 

「ノルマンディーの戦い」では、移動中のユニットが敵のゾックに当たるヘクス(つまり敵の部隊コマに隣接するヘクス)に入ったら、そこでいったん停止しなければなりません。このゾックのルールは、たとえば、敵軍を自由に移動させないため、特に自軍の側の部隊の裏側に深く攻め込ませないために、「戦線」を形成するときにも重要になります。

 

戦線とは、近代における軍事作戦の基礎となる要素で、自軍の部隊を線のように連ねて敵と対峙する陣形のことです。横一列に兵士が並んでライフル銃を構える光景をイメージしてみて下さい。戦線に穴が空いていると、その部分だけ敵部隊への圧力が弱まる上、敵兵がそこから味方の陣内に侵入すれば、自軍の補給路を断たれたり、前線に張り付いて戦う自軍部隊が敵に包囲されたりする危険性があります。

 

そこで、ゾックのルールを活用して、部隊コマを下の図の左端の2つのドイツ軍師団(第352と第12)のように、1へクスあけて配置することが意味を持ちます。そうすれば、敵はかならず自軍部隊のゾックで停止しなければならないので、簡単に自軍領域に入るのを防ぐことができるからです。このルールを活用しないで戦線を張るためにユニットを隣り合わせに並べて線を作ったとしますと、より多くのユニットが必要になりますが、効果は上述の1へクスあけて戦線を作った場合と同じなのです。

 

↑ユニットのZOCを利用して「戦線」を張る一例。敵ユニットの突破を許さない戦線を形成するには、ユニットとZOCの効果を意識する必要がある。この図では、左端の第352歩兵師団から中央の第716歩兵師団までは、ZOCが敵軍から見て二層あるいは三層(敵に対して2~3へクス分の厚みをもっている)になっていて、有効な戦線が張れている。しかし、第716歩兵師団から右側の第711歩兵師団までは、ZOCが一層しかない部分がある(2010、2111、2311、2410)ので、敵ユニットの移動をいったん食い止めても、次のターンの連合軍移動フェイズで戦線の背後へ突破されてしまう可能性がある(例えば、いったん2010に入って移動を終了した英連邦軍ユニットが、次のターンの連合軍移動フェイズに2011へ移動したあと、さらにドイツ軍の背後へ移動できる)

 

ゾックをうまく活用できるかどうかは、ゲームをうまく進めるうえでの重要なポイントになってきますので覚えておいてください。

 

今回は「移動」とゾックについて説明しました。明日の第5回「実際にゲームをプレイしてみよう <3>手に汗握る最大の山場! 「戦闘」の方法とコツ」では、いよいよ、歴史ボードゲームの一番スリリングな局面である「戦闘」の仕方について話したいと思います。お楽しみに!

 

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

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ゲームデザイナーが教える知識ゼロからの歴史ボードゲーム入門【その3】

第3回 実際にゲームをプレイしてみよう<1>ゲームの準備と進め方の基本

 

さて、前回は、「ノルマンディーの戦い」がどんな戦いだったのかについて、歴史的事実を説明しました。今回は、そうした背景を知った上で、「歴史群像」8月号付録ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」を実際にプレイしてみましょう。

 

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マップを広げてコマを並べよう

まずは、ゲームの準備から。テーブルの上に、縦50センチ、横66センチの付録マップを広げて「ノルマンディーの戦い」の面を上にして置きます。この時、折り目が山になっていると、その部分に置いたコマが滑り落ちることがあるので、何度か逆方向に折り返したりして、マップ全体を平らにします。

 

次に、付録のコマシートから「ノルマンディーの戦い」で使用する上半分の60個のコマを切り離します。コマの切り離しは、カッターナイフを使うときれいにカットできます。

 

全部切り離したら、ルールブックの説明に従って、両軍の部隊コマ=「ユニット」をマップ上に配置します。

↑ゲーム開始時のコマの配置。

【マップの配置をもう少し詳しく解説】

ドイツ軍のユニット(部隊コマ)が待ち構えるノルマンディー海岸に、マップ上方から米英連合軍のユニットが押し寄せる。このゲームは2人用で、マップの下側にドイツ軍プレイヤーが、上側に連合軍プレイヤーが、マップを挟んで座ってプレイする。「VP」と記された赤いコマは、ゲーム終了時点で行う勝敗判定の基準となる「勝利得点(VP)」を示す「VPマーカー」で、連合軍ユニットがそのヘクスを奪えば、マーカーは連合軍の手に入る。ただし、裏面には0〜3の数字が印刷されていて、個々のVPマーカーが何点なのかは、ゲームが終わるまで、両プレイヤーともわからない

 

各ユニットの右上には、ゲーム開始時の配置場所を示す数字や記号が印刷されています。一部の例外を除き、両軍の各ユニットは、実際の「師団」に相当します。

 

師団とは、軍隊における部隊の単位の一つで、ひとつあたり約一万数千人からなり、歩兵が中心の歩兵師団、戦車を中核とする機甲(装甲)師団、パラシュート兵が中心の空挺師団など、どういった種類の部隊が中心になっているかによって種類がいくつかあり、これは英米軍でもドイツ軍でも共通しています。

 

↑ユニットにはさまざまな情報が示されている。緑色はこのゲームでは米軍を示し、兵科記号の四角のなかの×印は歩兵を、その上の××は師団を示す。部隊名が1なので、この部隊はアメリカ軍の「第1歩兵師団」だとわかる。右上の「OB2」は、ゲームの準備で「OB2と記された上陸準備ボックスに配置」という意味。それ以外は図の通り

 

マップ上には、番号のついた六角形のマス目(ヘクス)が印刷されており、ユニットの位置確認や移動の単位として使用されます。「ノルマンディーの戦い」では、あるヘクスの中心から隣のヘクスの中心までの距離は、実際の5キロメートルに相当します。

 

ゲーム開始時には、ノルマンディー海岸の陸地に展開するのはドイツ軍ユニットがほとんどですが、例外的にアメリカ軍の2個空挺師団とイギリス軍の1個空挺師団を内陸部のへクスに配置しますが、これは、これらの師団が、先陣としてパラシュートやグライダーで敵陣に乗り込んだ史実を踏まえた配置です。

 

ターンとフェイズって何?

将棋の場合、双方のプレイヤーが駒を1つずつ交互に動かしますが、歴史ボードゲームの場合は、ルールブックで定められた手順に従ってプレイします。具体的には、野球の「回」に当たる「ターン」と、各ターンを構成する「フェイズ」から成ります。今回のゲームでは各ターンは実際の1日に相当し、1944年6月6日(Dデイ)から6月12日までの計7ターンからなります。また各ターンは、このゲームでは、6つのフェイズで構成されています。

 

つまり、第1ターンのフェイズ1(連合軍上陸フェイズ。下の《ターンを構成する手順》参照)からゲームが始まり、フェイズ2、3、4と順に6までやり終え、次に第2ターンのフェイズ1から6までを行います。これを繰り返していって第7ターンをやり終えたところでゲームは終了となります。そして、終わった段階で、ルールブックに決められた条件を踏まえてポイントを計算し、勝敗が決まります(勝敗の判定のしかたについては、最終回の第6回で説明します)。

 

《ターンを構成する手順》

1.連合軍上陸フェイズ

2.連合軍移動フェイズ

3.連合軍戦闘フェイズ

4.ドイツ軍移動フェイズ

5.ドイツ軍戦闘フェイズ

6.両軍補給フェイズ

 

連合軍の上陸とドイツ軍の上陸阻止射撃

各ターンの最初に行われるのが、「連合軍上陸フェイズ」です。ここでは、アメリカ軍やイギリス軍、カナダ軍の連合軍ユニットが、ノルマンディー海岸に上陸します。

 

ただし、すべての連合軍ユニットが一度に上陸するわけではありません。歴史的な事実に基づき、第1ターンには、アメリカ軍3個師団とイギリス軍2個師団、カナダ軍1個師団という決められた計6ユニットが、あらかじめ設定されたノルマンディーの上陸海岸ヘクス(連合軍が上陸できるへクスで、下図では0906などオレンジのへクス)に上陸します。

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズ、アメリカ軍ユニットが「ユタ・ビーチ」(図の中央)と「オマハ・ビーチ」(同右端)に上陸したところ。これに先だって、第82と第101の2個空挺師団は「ユタ・ビーチ」の内陸部にパラシュートとグライダーで降下していた(図の左下、2つのミドリのユニット)。一方、「オマハ・ビーチ」はドイツ軍の沿岸防御ユニット(オレンジの上陸海岸へクスに配置された「沿岸」と書かれたユニット)が強力(3戦闘力)で、しかも背後には強力な(5戦闘力)第352歩兵師団が控えるので、上陸する第1と第29の2個歩兵師団は甚大な損害を被りやすい

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズ、英連邦軍ユニットの上陸エリア。左から「ゴールド」「ジュノー」「スウォード」の3つの上陸海岸ヘクスがあるが、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは「オマハ」ほど強くはない(戦闘力が1か2)。また、第6空挺師団のグライダー部隊がオルヌ(Orne)河の対岸にあるランヴィルを確保した。戦線の端にあり、ドイツ軍が反撃をかけやすい位置にあるランヴィルは、激しい争奪戦の舞台となる

 

また、第1ターンの「連合軍上陸フェイズ」のみ、海岸のドイツ軍ユニットは「上陸阻止射撃」を実行できます。これは、スピルバーグ監督の映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンでリアルに描かれたような、海岸の砲台や機関銃陣地による、連合軍の上陸用舟艇に対する猛烈な射撃を再現するものです。

 

↑「オマハ・ビーチ」の現在の様子(2014年4月、筆者撮影)。映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンで有名な、ノルマンディー上陸作戦で最大の激戦地となった海岸で、砂浜の長さは8キロにおよぶ。遠浅なので満潮時には奥行きが狭まる

 

↑「オマハ・ビーチ」の西にあるドイツ軍の砲台跡(2014年4月、筆者撮影)。大口径の大砲が据えられていたが、今は撤去され、見晴らしのいい屋根は展望台に改装されている

 

ドイツ軍プレイヤーは、計6つの上陸海岸ヘクスそれぞれに配置された沿岸防御ユニットを用いて、上陸してくる連合軍の師団を射撃します。個々の射撃は、沿岸防御ユニットに記された戦闘力の数値を、マップ上に印刷された「上陸阻止射撃判定表」に当てはめてサイコロを1個振り、戦闘力値とサイの目の交差する場所にある結果を見て解決します。

 

もし、そこに1以上の数字が記されていたなら、数字と同じ数だけ、連合軍の損害が発生したことになります。マップ上には、連合軍とドイツ軍の双方が被った損害を記録する「損害トラック」が印刷されており、それぞれの「損害マーカー」と呼ばれる表示コマをトラック上のマス目で進めることにより、損害の蓄積を記録します。

 

史実で最も連合軍の損害が大きかった「オマハ・ビーチ」では、さらにドイツ軍の第352歩兵師団も、上陸阻止射撃に加わることができます。これらの射撃が終了したら、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは除去されて、連合軍ユニットが海岸に上陸します。

 

↑映画「プライベート・ライアン」で主人公のミラー大尉が九死に一生を得たのが、ノルマンディーの「オマハ・ビーチ」。このゲームでも「オマハ」は連合軍の上陸部隊がドイツ軍の「上陸阻止射撃」で損害を被ることが多い。まず、3戦闘力のドイツ軍沿岸防御ユニットが、第1と第29の各歩兵師団にそれぞれ射撃。続いて5戦闘力の第352歩兵師団が第1と第29歩兵師団に各1回の射撃を行う。射撃のたびにマップ上の「上陸阻止射撃判定表」を見てサイコロを1個振り、損害を判定する。例えば、5戦闘力でサイの目が「4」なら、連合軍は「2損害」を被る

 

第2ターン以降は、イギリス本土を船で出発した増援ユニットが、連合軍上陸フェイズに、既に味方によって確保された上陸海岸ヘクスに上陸します。

 

↑第1ターンの連合軍上陸フェイズが終わったところ(一例)。フェイズ終了と共に、ドイツ軍の沿岸防御ユニットは連合軍にすべて撃破されたと見なされ、各上陸海岸ヘクスから、マップ上の「全滅ユニットボックス」に移される。上陸段階での激戦が終わると、次は連合軍のノルマンディー海岸内陸部への侵攻段階に入る

 

以上、ゲームの準備の仕方から、ターンとフェイズに基づいたゲームの進め方の基本について、そして、実際にゲームを始めてみて、第1ターンのフェイズ1「連合軍上陸フェイズ」の進め方について説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

 

これらはすべてルールブックに詳しく記載されていますので、わからなくなったらルールブックを確認することを習慣にしていただければ、そのうち少しずつルールを覚えてみなくてもサクサクできるようになるでしょう。

 

明日は第4回「実際にゲームをプレイしてみよう②部隊のコマの「移動」方法と、理解するとプレイの幅が広がる「支配領域(ゾック)」とは?」です。いよいよ部隊コマの「移動」の方法について説明します。お楽しみに!

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

 

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ノルマンディーの戦いをボドゲで愉しむ! 知識ゼロからの「歴史ボードゲーム」入門【その2】

第2回 ゲームのテーマを知ろう~「ノルマンディーの戦い」ってどんな戦い?

 

前回は、歴史ボードゲームの歴史や魅力について説明しました。さていよいよ雑誌「歴史群像」(ワン・パブリッシング刊)最新号の付録ゲーム「ノルマンディーの戦い」を実際にプレイしていきたいと思いますが、その前に、もう少しだけお待ちください。

 

歴史ボードゲームは、そのゲームの主題となった戦いについて知っていると、プレイが何倍もおもしろくなります。ですので、ゲームを始める前に、そもそもノルマンディーの戦いとは、どのような出来事だったのかについてご説明します。

 

【第1回はコチラ

 

ノルマンディーってどこにあるの?

そもそもノルマンディーとはどこにあるのでしょうか。お手元にフランスの地図があったら開いてみてください。首都パリからざっと150~200キロの、イギリス海峡に面した地方名です。牧畜が盛んでリンゴの産地としても有名です。カルヴァドスという強いお酒も、この地方が原産です。

 

このフランス北西部の田舎の海岸で、今から76年前の1944年6月6日、第二次世界大戦最大規模の上陸作戦が実施されました。それが今回のボードゲームのテーマとなっている、アメリカ軍とイギリス連邦軍によるノルマンディー上陸作戦です。

 

↑1944年6月、ノルマンディー上陸作戦ののちに、ノルマンディーの海岸に密集した米英連合軍の上陸用舟艇。次々と物資が下ろされ、内陸部へと運ばれていく

 

↑ノルマンディー海岸にある記念碑のひとつ(2014年4月、筆者撮影)。アメリカ軍、イギリス軍、カナダ軍に加えて、連合軍と行動を共にする「自由フランス軍」が上陸作戦に参加していたことから、これら4国の旗が掲揚されている

 

なぜフランス西部の海岸に米軍と英軍が上陸したのか。もう少し説明を続けましょう。第二次世界大戦は1939年9月にドイツ軍が東側の隣国ポーランドに侵攻して始まりましたが、翌年にはドイツ軍は西ヨーロッパにも侵攻し、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、そしてフランスを降伏させました。

 

↑フランスを降伏させ、パリでパレードを行うドイツ軍将兵。こうして西ヨーロッパはドイツの支配下に置かれ、イギリスだけが取り残された

 

フランスの国土は親ドイツ政権の下で縮小し、フランス北部と西部の沿岸部はすべてドイツ軍の支配下におかれました。つまり、島国であるイギリスと中立国のスイス、スペイン、ポルトガルを除く、西ヨーロッパのほぼ全域が、ヒトラー率いるドイツの支配下に入ったのです。

 

1941年に入るとドイツ軍は、今度はフランスとは反対側、ドイツの東部でソ連とも戦争を始めます。しかし、ソ連軍は粘り強く抵抗し、ドイツとソ連の戦争は決着のつかないまま長期化、泥沼化していきます。

 

そうなると、ソ連の指導者スターリンは、ソ連軍だけが大きな損害を出しながらドイツ軍の精強な部隊と激戦を繰り広げている状況に不満を表明し、ソ連とは反対側、つまり西ヨーロッパでドイツ軍を背後から攻撃するように、同じ連合国としてドイツと戦っているイギリスとアメリカに要求します。つまり、東西での挟み撃ちの要求ですね。

 

“史上最大の作戦”と呼ばれた空前の大作戦

こうした理由もあって、米英連合軍はドイツに対するフランスからの反攻に本気で取り組むことになりましたが、イギリスとフランスの間には海峡があるので、海を渡って上陸するしか方法がありません。つまり、イギリス本土に兵士や戦車、大砲などを集積し、それを専用の船でフランスまで運んで上陸するのです。

 

こうして、上陸を行う場所が検討され、研究と議論の末に選ばれたのが、西のコタンタン半島(その先端にはシェルブールという町があります)と、パリから流れてくるセーヌ川の河口部に挟まれた、ノルマンディーの海岸だったのです。

 

とはいえ、上陸作戦というのはとても大変でリスクの高い行動です。敵が大砲や機関銃を据えて待ち構えている海岸に、海から部隊を積んだ船で上陸するわけですから、事前の緻密な準備が不可欠です。さらに、上陸後にはパリ、さらにはドイツ本土まで進攻する計画なので、食糧や弾薬、燃料などの膨大な物資が必要になります。

 

それゆえ、ノルマンディー上陸作戦は、なんと6000隻もの艦船が投入された空前絶後の大作戦となりました。戦後に撮られたノルマンディー上陸作戦をテーマとした大作映画「The Longest Day(いちばん長い日)」の日本語タイトルが「史上最大の作戦」だったのも、こうした背景を知ればうなずけるでしょう。

 

↑1944年6月6日、ノルマンディー海岸近くまで迫ったところで上陸用舟艇から降り、海岸へと向かう兵士たち。しかし、彼らは海岸を守るドイツ軍から機関銃や火砲によるも激しい反撃を受けることになる。「歴史群像」付録ボードゲームは、まさにこの上陸の日から1週間の戦いを、連合軍あるいはドイツ軍の司令官となって指揮するゲームなのだ

 

こうして、1944年6月6日、イギリス南部に集結した米英連合軍の大部隊が続々と港を出港、同日朝、ノルマンディー海岸の指定された5つの海岸に上陸すべく向かっていきました。

 

「歴史群像」8月号の付録ボードゲーム「ノルマンディーの戦い」は、この6月6日から12日までの7日間の、上陸海岸一帯と内陸部の制圧を目指す米英軍(英軍は連邦軍なので、カナダ軍も含まれています)と、それを阻止して、ノルマンディー地方を守るために反撃を試みるドイツ軍の、両軍のいずれかの司令官となって、勝敗を競う2人用のゲームなのです。

 

以上で、戦いの歴史的背景と舞台について、ご理解いただけたかと思います。

 

次回、明日の第3回の内容は、「実際にゲームをプレイしてみよう ①ゲームの準備と進め方の基本」です。お楽しみに!

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。
また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

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歴史系のボドゲってなんか難しそう? 知識ゼロからの「歴史ボードゲーム」入門【その1】

第1回:歴史ボードゲームってどんなゲーム? どのへんがおもしろいの?

 

古今東西の歴史を、戦いを中心に紹介する「歴史群像」(ワン・パブリッシング刊)は、今年で創刊から28年、通巻162号という歴史ある雑誌ですが、その最新号(2020年8月号)には、第二次世界大戦の有名な戦いであるノルマンディー上陸作戦を題材としたボードゲーム「ノルマンディーの戦い」と「米軍空挺部隊の戦い」が、別冊付録としてついています。

↑発売中の「歴史群像」8月号の付録ボードゲーム一式。サイコロのついた表紙、マップ、切り離して使うコマ・シート、ルールブックの4点セット。マップは表裏で2種類のゲームが楽しめる。今見えているのが、この講座で使用する2人用の「ノルマンディーの戦い」

 

戦史を題材としたボードゲームが付く理由

ボードゲームとは、テーブルの上にマップを広げて、そこに厚紙やプラスチック製のコマを並べ、デジタル機器を使わずに遊ぶゲームのこと。何十年も前からプレイされている「人生ゲーム」や「モノポリー」も、ボードゲームの一種です。

 

この雑誌に付録のボードゲームが付くのは、今回で4回目です。はて、ボードゲームの専門誌でもないのに、どうして何度もボードゲームが付録になっているの? と疑問に思われるかもしれませんが、そこにはちゃんと理由があります。

↑「歴史群像」既刊のボードゲーム付録。左側が2012年8月号の「ミッドウェー海戦」、右側が2018年8月号の「モスクワ攻防戦」。ともに2人用の歴史ボードゲーム

 

歴史上の戦いを題材としたボードゲーム(歴史ボードゲーム)は、ゲームとしておもしろいだけでなく、プレイすることでその戦いの理解がより深まったり、新たな興味が湧いたり、という効能があるのです。

 

歴史ボードゲームは、手軽にプレイできるように、簡略化や抽象化がなされた形でシステムが組み立てられているので、厳密な意味での「シミュレーション(歴史的状況の正確な再現)」ではありません。しかし、歴史的な戦いの行方を左右したポイントを絞り込んでデザインされたボードゲームをプレイすれば、実際の戦いで司令官がどんな選択肢を持ち、何が勝敗を分ける鍵であったのかを、感覚的に知り、理解することができます。

 

もちろん、テーマとなっている戦いについての知識がない方でも、ルールを理解すれば楽しくプレイできます。そして、歴史ボードゲームをプレイすることで、その戦いについての興味が湧くことも少なくありません。

 

意外と古い歴史ボードゲームの歴史

特定の歴史上の戦いを盤上で再現するボードゲームは、一般には「ウォーゲーム」や「シミュレーション・ゲーム」という名前で呼ばれ、商業ベースで製品化されてから、半世紀以上の歴史を持つホビーです。

↑アメリカのウォーゲーム大会(コンベンション)会場の様子(2017年、アリゾナ州テンピ)。全米および世界各地から、ウォーゲームの愛好家が集まり、ゲームをプレイしたりゲーム談義に花を咲かせる

 

このホビーの本場はアメリカで、1954年に最初のウォーゲーム「Tactics(タクティクス:戦術)」が発売されました。このゲームは、架空の二つの近代国家による戦争が題材でしたが、1958年には米国南北戦争の有名な決戦を題材とする「Gettysburg(ゲティズバーグ)」が出版され、現在につながる歴史ボードゲームの時代が幕を開けます。

 

1960年代に入ると、ゲーム化される歴史上の題材も増え、第二次大戦期の重要な戦いであったバルジの戦いやミッドウェー海戦をテーマにしたゲームも出版されます。

↑アメリカのコンベンションでプレイされている独ソ戦の巨大なゲーム(下が北、上が南)。手前右のフィンランド湾と左のラドガ湖の中間に、要塞都市レニングラードがある。最後までプレイするには何日もかかる

 

戦史書を読みながら「俺が司令官ならこうする」と空想を巡らせる、アームチェア・ジェネラル(安楽椅子に座って将軍の気分に浸る人)の夢を、手軽な形で実現できるウォーゲームは、戦史に興味のある人々の心を捉えて、競技人口は増大していきました。1970年代から1980年代にかけて、米国ではアバロン・ヒル社とSPI(Simulations Publications Inc.)社の二大メーカーを中心に、多種多様な歴史的題材を扱ったウォーゲームが出版され、このホビーは商業面での黄金時代を迎えます。

 

両社の製品が翻訳ルール付きで日本に輸入されたのもこの頃で、日本国内でもいくつかのメーカーがオリジナルやライセンス版の製品を販売していました。若者向けの雑誌「ホットドッグ・プレス」でも、ウォーゲームの特集記事が何度か掲載され、中学生や高校生、大学生もプレイに熱中する「ブーム」が起きました。

↑1982年にホビージャパン社から刊行されたウォーゲーム専門誌「タクテクス」。同誌は1980年代の日本におけるウォーゲーム・ブームを牽引する役割を担った。上の2つは、同社が同時期に出版した米国製ウォーゲームの日本語ライセンス版

 

その後、コンピュータ・ゲームの発達やカードゲームの流行で、日本におけるウォーゲームの市場規模は縮小しましたが、現在でも本家のアメリカを中心に、日本や台湾、中国、フランス、スペインなどの国々で、ウォーゲームの愛好家がプレイを楽しみ、多くのメーカーが新しいゲームの制作と出版を行っています。

 

実際の戦場を模したマップ上でプレイする

ウォーゲームあるいは歴史ボードゲームが、将棋や囲碁、チェスなどの抽象的なゲームと異なる点は、いくつかあります。

 

まず、ゲームのマップが実際の戦場を模した形でデザインされていること。大抵の場合、歴史ボードゲームのマップはヘクス(蜂の巣のような六角形のマス目)やエリアで区切られていますが、そこには平地や森、湿地、村や都市、川などが描かれ、コマの移動や戦闘に何らかの影響を及ぼします。

↑1943年7月の米英連合軍によるイタリアのシチリア島への上陸作戦を再現するウォーゲーム。「ノルマンディーの戦い」をより複雑にしたルール構成で、島の支配権をめぐってドイツ。イタリアの枢軸軍と戦う

 

次に、コマは実際の戦いに参加した部隊を表しており、両軍が完全な対称になっていないこと。国によって部隊編制は異なりますし、その戦いに参加した部隊がコマとして登場するので、同じ歩兵部隊でも精鋭部隊と寄せ集め部隊では戦闘力の数値に差がつけられていることも少なくありません。

↑1944年12月の西部戦線におけるアルデンヌの戦い(通称バルジの戦い)を精密に再現するウォーゲーム。歩兵、戦車、対戦車砲、工兵、ロケット砲など、部隊が兵科別にコマ(ユニット)になっている

 

また、プレイヤーの力ではコントロールできない「運・不運」の要素をシステムに組み込んでいることも、歴史ボードゲームの特徴の一つです。これは、現実の戦争やその中で行われる作戦・戦闘の結果が、両軍の指揮官の知力や兵力の多寡だけでなく、偶然の要素によってしばしば左右されたという事実を反映したものです。

 

多くの場合、歴史ボードゲームで戦闘を行う際には、サイコロを使います。そして、両軍の兵力差などを反映した表(ゲームによって「戦闘結果表」や「射撃結果表」などと呼ばれます)に、サイコロの出目を当てはめて、結果(損害や退却)を判定します。

↑「歴史群像」付録「ノルマンディーの戦い」のプレイの一場面。戦闘においてはサイコロを振ることで「運」を加味して結果を判定する

 

中国の故事で「人事を尽くして天命を待つ」という有名な言葉がありますが、歴史ボードゲームで戦闘を行う時のプレイヤーの心境も、これに似たものがあります。攻撃を行う側も守る側も、兵力の集中や地形の利用など、出来る限りの手を尽くして、自軍に有利な「状況」を作ろうと努力しますが、それだけで結果が決まることはありません。

 

圧倒的に有利であるはずの側が、例えば現場指揮官の失態や突然変化した天候、予期せぬ形で反撃を受けた兵士のパニックなど、司令官のコントロールを離れた場所での「不確定要素」によって、予想外の敗北を喫することもあります。

 

もっとも、サイコロの出目が1回や2回良かっただけで、ゲームに勝てるわけではありません。あちこちで発生する戦闘の解決で、何度もサイコロを振っていけば、前回は不利な目を出した側が今回は有利な目を出すことも増え、全体としては出目の偏りが消えていきます。そうなると、やはり勝敗を左右するのは、作戦や戦略を考える思考力や、戦術面で最善の手を考案する実務能力、ここぞという場面で敢えてリスクを取りに行ける決断力など、プレイヤーの総合的な知力ということになります。

 

ボードゲームで歴史のダイナミズムを味わおう

どうでしょう? 歴史雑誌にボードゲームが付いている理由と、その魅力について、関心を持っていただけたでしょうか?

 

明日は第2回「ゲームのテーマを知ろう~『ノルマンディーの戦い』ってそもそもどんな戦い?」です。歴史群像の付録ゲームでゲームのやり方を学んでいただく前に、テーマとなっている「ノルマンディーの戦い」がどんな戦いかを解説します。お楽しみに!

 

解説:山崎雅弘(やまざき・まさひろ)

1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。軍事面だけでなく、政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争に光を当て、俯瞰的に分析・概説する本と記事を「歴史群像」などで執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書多数。

また、1989年からオリジナルの歴史ボードゲーム(ウォーゲーム)をデザインし、日本とアメリカ、フランス、中国のメーカーから出版されて高い評価を得ている。1992年には、第二次世界大戦中のスターリングラード攻防戦を再現したゲーム「スターリングラード・ポケット」で、共同制作者のアメリカ人と共に優れたウォーゲームに与えられる賞「チャールズ・S・ロバーツ賞」を受賞。これまでに制作した歴史ボードゲームは、30点以上にのぼる。

 

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第二次大戦史もミリタリーも全然詳しくないライターが「歴史群像150号」の特別付録のボードゲームをやってみた

暑い日が続いて、クーラーで涼みながらお家でのんびりボードゲームをしたいけど、ひとりでできるものってなかなかないんだよなぁ〜なんて思っていたら、あった!!  しかもミリタリー・戦史マガジン『歴史群像』の特別付録…!

 

その名も「バルジの戦い」。

 

「バルジってどこ?」なんて言ってしまうほど、この戦いを知りませんでした(ごめんなさい)。とりあえず、世界史よりも日本史、ミリタリーよりもお家でヒキコモリーしていたい私が『歴史群像 2018年 08 月号』(歴史群像編集部・編/学研プラス・刊)の特別付録ボードゲームをやってみましたので、その様子をご覧ください(笑)。

 

 

付録の前に…本誌のドイツ軍特集がすごすぎる!

第二次世界大戦におけるドイツ軍と聞いて思い浮かぶのは、なんとなく冷酷で残虐なイメージが強いのですが、その裏側にはとてつもない「戦略」の数々がありました。戦争と聞くと、まず実際に戦いをする兵士たちに注目してしまいますが、戦いを指示し、戦略を考える人たちがいたわけですから、その戦略を知ることは驚きの数々でした。使う武器、敵陣に向かうルート、戦車…今の平和な日本に暮らしていては知らないことばかり。「本当にこんなことやってたの!?」と思ってしまいます。

 

 

ドイツの軍服もすごい

↑特集は「ドイツ陸軍」。作戦術から野戦服まで濃厚な記事が並んでいます!

 

すごいといえば、『歴史群像 2018年 08 月号』で図説されている36年型野戦服の記事も知らないことがたくさんでした。36年型野戦服とは、1936年11月15日付で制式化されたドイツの軍服で、1940年まで仕様が変更されず大量生産されたものです。

 

36年型野戦服は、製造期間と兵士の動員数からして、少なく見積もっても100万着単位で製造されているはずである。

(『歴史群像 2018年 08 月号』より引用)

 

すごい数…! 今のように、一度に何着も作れるような時代でなかったことは容易に想像できますが、『歴史群像 2018年 08 月号』では写真付きで軍服ができるまでを知ることができます。ものすごい人数の人たちが一着一着丁寧に寸法をとり、ミシンで縫い付け、毎日500着が作られていたそうです。36年型ができるまでにも、28年型・33年型・35年型と過去に3デザインの軍服があったそうです。いやぁ、軍服ひとつにも、それぞれ歴史があるものなんですね!

 

その前に「バルジの戦い」って何?

「●●の戦い」と聞くと、ついつい場所と思ってしまいますが、このバルジは地名ではありません。

 

ベルギー北部の要港アントワープを目指して行われたこの作戦では、戦線が西に向かって大きく張り出したため、当時のイギリス首相のチャーチルは「バルジ(張り出し)の戦い」と表現しました。

(『歴史群像 2018年 08 月号』より引用)

 

ちなみに、戦いが行われたのは1944年12月16日から翌年の1月25日までの寒い日で、場所もなんと森の中! 雪が積もった山の中を、戦車や飛行機部隊を使って、連合軍のアメリカ軍と、ヒトラー率いるドイツ軍が戦いました。最初はドイツ軍がどんどん進撃し、バルジを作りましたが、結果としてそのバルジはアメリカ軍によって元の戦線まで戻されてしまい、連合軍の勝利で幕を閉じます。アメリカ軍はこの戦いで8万名もの戦死者を出しており、勝利とは言っても…という気もしちゃいますよね。

 

 

戦場に入り込んで戦っているような感覚に…

↑こちらが「バルジの戦い」のボードとコマと説明書。こ、細かい……

 

ということで、バルジの戦いについて知識がついたところで、いざゲーム開始です! 準備をして、ルールブックを見ながらいざ!  と思ったのですが、なんだかんだで終了まで5時間かかりました(笑)。どんなルールかを簡単にご説明いたします。

 

このゲームは、野球の「回」と同じような「ターン」という手順を計5回繰り返すことで進行します。1回のターンは、実際の3日間を表しています。

(『歴史群像 2018年 08 月号』より引用)

 

と、これだけみると「なーんだ、簡単じゃん」と思うのですが、使うコマが59個あったり、コマそれぞれに意味があったり、ルールブックの説明だけでも15ページ近くあるためまずこれを理解するのに時間がかかる!

 

ただ、基本はサイコロを振ってコマを進め、敵とぶつかったらそこでもサイコロを振って勝敗を判定するというもの。このゲームの場合、どれだけ西に向かって進撃できるかでゲーム自体の勝敗が判定されますが、戦場には川が何本も流れていて、橋がかかっていますが、そこを守る米軍をいかに早くやっつけられるかがカギとなります。ここでもたもた戦いを続けていると、前進することができないからです。

 

後半は「とりあえずバルジ作るか!」と謎の気合いが入り、細かな戦法よりも、とにかくゲームの目的である、いかに西に向かって前進するかの一点に集中することに切り替えて、良い目が出ることを祈って、ひたすらサイコロを振り続けました。

 

まさに自分自身が戦場に入り込み、コマたちと一緒に戦っているような、そんな5時間を過ごしたのでした。(闘志を高めるBGMがあるとさらに良いかもしれません!)

 

このタイプのゲームは、初心者でも、ルールブックを見ながら何回かやると自然にルールを覚えていくそうです。覚えてしまえば、この付録では1~2時間で終わるように設計されているとのこと。

 

 

もうひとつの付録「モスクワ攻防戦」

↑こちらは2人用の「モスクワ攻防戦」のボード

 

時間はかかったものの、とても勉強になったこちらのボードゲーム。なんともうひとつ2人でプレイするボードゲームも付いてます。歴史群像の編集部の人たち凄まじい! 2人用のボードゲームは「モスクワ攻防戦」。

 

モスクワ攻防戦は、1941年の秋から冬にかけて、第二次世界大戦の東部戦線(独ソ戦)の最初の決戦であったモスクワ攻防戦を再現する、2人用ボードゲームです。一方のプレイヤーがドイツ軍を、もう一方のプレイヤーがソ連軍を担当します。

このゲームは、独ソ両軍の地上部隊の行動に焦点を当てており、各プレイヤーは定められたルールに基づいて、自分部隊の移動や行動を決断し、モスクワ攻防戦の勝者となることを目指します。

(『歴史群像 2018年 08 月号』より引用)

 

ちなみにこちらの戦いは、3か月ほど続いた戦いで、結果的にソ連軍が勝利を収めています。このゲームでも終盤に訪れる「冬将軍」とどう戦うかなどしっかり史実も盛り込まれているので、「もしドイツ軍が勝っていたら」と思いを馳せながら楽しんでみると良いかもしれませんね。

 

ミリタリーよりヒキコモリーな生活を送っている私が、5時間のゲームを通じて今まで怖いと思って避けていた戦争映画を見なければと、謎な使命感に駆られるようになりました。当たり前ですが、私は戦争体験をしていません。これからもできればしたくありませんが、「どんなことであれ、これまでの歴史があったから私がいる」ということを深く感じられました。

 

【書籍紹介】

歴史群像 8月号(№150)

著者:歴史群像編集部
発行:学研プラス

太平洋戦争、戦国合戦、西洋戦史、現代紛争。古今東西の「戦い」をテーマに歴史の真相に鋭く切り込むナンバー1戦史マガジン! 読み応え満点の特集記事を4本(通常号では異なる時代、ジャンルから厳選した3本。今月号は記念号のためドイツ陸軍大特集号となっており、構成が異なります)。を始め、独自の切り口で「発見」のある記事満載。オリジナルなビジュアルにこだわったカラー記事も充実!

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みんながハマった熱中アナゲ―が決定!! ボードゲーム専門店「すごろくや」売れ筋Top10

国内最大のボードゲーム専門店・すごろくや。同店の売り上げ上位ゲーム10タイトルを、オーナー・丸田さんの解説とともに紹介します。

※ランキングは2017年「すごろくや」の店舗においての売上本数を集計しています

 

【教えてくれた人】

すごろくや オーナー・丸田康司さん

15年間のテレビゲーム制作を経て2006年にボードゲーム専門店を開業。オリジナルゲーム・すごろくやの制作も手がけています。

 

メディアで紹介された誰でも遊べるゲームが人気

「ボードゲームは種類が豊富すぎて、何を遊んだらいいかわからない」と悩む読者も多いことでしょう。そこで、すごろくやのオーナー・丸田さんに人気のゲームを聞いてみました。

「テレビやYouTubeで紹介された、ルールが簡単で初めてでも楽しめるゲームが人気です」(丸田さん)

 

ランキングには以前「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系)で紹介された「ナンジャモンジャ」や、「そっとおやすみ」を筆頭に、子どもでも楽しめそうなゲームが多く並んでいます。しかし、ボードゲームの魅力に気づいたら、いろんなゲームを楽しんでほしいと丸田さんは話します。

「本当はもう少しルールが複雑なゲームに、もっと面白いものがたくさんあるんです。考えるタイプのゲームが好きな方なら、そちらもぜひ遊んでみてほしいですね」(丸田さん)

 

【第10位】駆け引きのある棒倒しゲーム

ハバ
スティッキー
3024円

【プレイ人数:1〜4人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:3歳以上】

倒したら負けという簡単ルールで小さな子どもでも遊べますが、実際には大人の高度な駆け引きも存在する二重構造が魅力です(丸田さん)。

 

【第9位】読み合いが楽しい2人専用ゲーム

メビウスゲームズ
ガイスター
2800円

【プレイ人数:2人】【プレイ時間:10〜20分】【対象年齢:10歳以上】

シンプルなルールのなかで、「こんなに面白い読み合いが脳内で展開できるんだ!」と思えます。ドイツ様式の魅力溢れるゲームです(丸田さん)。

 

【第8位】素早く判断しコマをつかみ取る

メビウスゲームズ
おばけキャッチ
1800円

【プレイ人数:2〜8人】【プレイ時間:20分】【対象年齢:8歳以上】

カードの絵柄にある形や色を把握して正解のコマをつかみ取るゲーム。ルールは簡単ですが、頭の切り替えの早さが必要なゲームです(丸田さん)。

 

【第7位】遊ぶたびに毎回ドラマが!

メビウスゲームズ
ハゲタカのえじき
1500円

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:20分】【対象年齢:8歳以上】

全員が同じ1〜15までの数字カードを使い、場の点数カードを取り合います。シンプルなのに、どんな人にも喜ばれる外さないゲームですね(丸田さん)。

 

【第6位】幅広い人数に対応しみんなで遊べる!

すごろくや
イチゴリラ
1512円

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:10〜20分】【対象年齢:3歳以上】

2枚ペアだけではなく3枚セットや4枚セットのカードもある神経衰弱の“笑える”進化版です。対応人数が幅広く、みんなで楽しめます(丸田さん)。

 

【第5位】揃ったら伏せるだけ!単純だけどハマる

すごろくや
そっとおやすみ
1400円

【プレイ人数:3〜7人】【プレイ時間:10〜15分】【対象年齢:5歳以上】

手札が揃ったらそっと伏せます。それに気づいた人は自分も伏せます。気づいた人は伏せていき、最後に残った人が負けというシンプルなゲーム。伏せるときのさりげなさがポイントです。

↑同じ帽子のイラストが4枚揃ったらカードを伏せます。ほかのプレイヤーが気づかないよう、タイミングを見計らうのが醍醐味

 

【ココがオススメ】

自信がある人ほど気づかないもの

ルールを説明すると、「そんなの気づかないわけないじゃない!」と、言う人もいますが、実際やるとそういう人こそ気づかない(笑)。シンプルなゲームですが、大人になるほどハマる人が多いゲームですね(丸田さん)。

 

【第4位】紙のカードを柱にして高いビルを建てていこう

すごろくや
キャプテン・リノ
1728円

【プレイ人数:2〜5人】【プレイ時間:10分】【対象年齢:5歳以上】

床カードを土台に、折り曲げたカードを置いてビルを作り、どんどん高く積み上げていくゲーム。ビルが壊れてしまった人が負け。慣れれば1メートル以上の高さまで積み上がります。

 

↑床カードにサイのヒーロー・リノのマークが描かれていたら、リノのコマを下の階から取って、その場所に置きます。緊張で指が震える人も!

 

【ココがオススメ】

高く積み上がるけど紙だから安全です

積み上げるおもちゃは危険もありますが、紙なので安全。それゆえに、プラスチックや木の素材のバランスゲームよりも高く積み上がります。ルールが簡単で扱いやすいのもいいですね。小さな子どもも遊べます(丸田さん)。

【第3位】【第2位】名付けのセンスで個性が浮き彫りに!

【第3位】

すごろくや
ナンジャモンジャ・シロ
1400円

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:4歳以上】

【第2位】

すごろくや
ナンジャモンジャ・ミドリ
1400円

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:4歳以上】

 

テレビやYouTubeで紹介されたことで話題となり大ヒットとなった人気ゲーム。ミドリとシロの違いはキャラクターの種類。それぞれ入っている12種のナンジャモンジャのイラストが異なります。もちろん混ぜて遊ぶことも可能。

↑手番ではカードをめくり初めて出たキャラの場合は名前を付けます。すでに出ていたキャラの場合は名前を言います。早く言えた人がたまったカードを受け取り、カードの多い人が勝利!

 

↑ミドリ(上)は正面を向いた丸い形のキャラクターが多いです。シロ(下)は、逆Jの字だったり三角形だったりと、見ていて楽しいユニークな形状のキャラクターが多数

 

【ココがオススメ】

名前付けの面白さを楽しむ大喜利ゲーム

記憶ゲームと思われがちですが、実は名前付けの面白さを楽しむゲーム。大喜利的な楽しさはもちろんですが、名前を付けるときに自然とその人の個性が出ます。知らなかったパーソナリティも垣間見られるのも魅力です(丸田さん)。

 

【第1位】犯人カードを持っているのは誰?ドキドキの心理戦が展開される

すごろくや
犯人は踊る
1296円

【プレイ人数:3〜8人】【プレイ時間:10分】【対象年齢:8歳以上】

1枚だけある犯人カードを持っている人を当てる推理ゲーム。渡り歩く犯人カードの持ち主を言い当てることができれば勝利。最後まで逃げ切れば犯人が勝利します。

 

手番では手札からカードを1枚出し、そのカードに書かれた指示にプレイヤーは従います。誰かの手札をすべて見ることができる目撃者カードや犯人を言い当てる探偵カードを使って犯人を捕まえましょう。

 

【ココがオススメ】

ゲーム後、犯人カードの移動の検証が楽しい

犯人カードが手札にあるドキドキや、持っておきたかった手札が急になくなったりする予想外のハプニングを笑って楽しめます。終わったあとに犯人カードがどのように渡っていったかを検証するのも面白いですよ(丸田さん)。

丸田さんがチョイスする属性別オススメゲーム

丸田さんが、膨大な量のゲームのなかから選んだ、読者のニーズに合いそうなイチオシゲーム4本を紹介していきましょう。

 

【その1/家族で楽しみたい!】

子どもが夢中になる要素がたくさん!

すごろくや
ファイアドラゴン
5940円

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:20分】【対象年齢:5歳以上】

竜使いとなり火山のまわりを飛び回って、火山の噴火で飛び散るルビーを集めるゲーム。ルビーを多く集めるには、火山の噴火するタイミングでの位置取りが重要です。子どもだけでも遊べるほど簡単なルールですが、慣れると大人が遊んでも考えどころがある戦略性の高さも魅力です。

【丸田’sEYE】

ルールが簡単で派手さもあってコマがドラゴンと、子どもが好きな要素が詰まっています。5歳くらいから楽しめます(丸田さん)。

 

【その2/勝負は短時間で!】

深い読み合いが短時間で楽しめる

ピグフォン
ごいた カード版
2160円

【プレイ人数:4人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:8歳以上】

ごいたは石川県鳳珠郡能登町の伝統ゲーム。現地では竹製のコマを使用しますが、こちらは手軽に遊べるカード版。32枚のカードを使って4人で2対2のチーム戦で遊ぶ短時間ゲームです。何がすでに出ていて、どれを出すのが最善かといった麻雀に近い読み合いを手軽に楽しめます。

【丸田’sEYE

20分ほどで終わる手軽さで、夢中で何度も遊んでしまいます。私が“夜通しゲーム”と呼んでいるラインナップのひとつです(丸田さん)。

 

【その3/RPGが好き!】

仲間と一緒にファンタジーの世界へ

アークライト
アンドールの伝説
6048円

【プレイ人数:1〜4人】【プレイ時間:60分】【対象年齢:10歳以上】

ファンタジーテーマの協力型ゲーム。仲間と連携を取り、みんなで試行錯誤しながら、怪物たちから城と王国を奪還する、全5章構成のシナリオをクリアしましょう。シナリオを進めるごとに段階的に新しい要素とルールが追加されていくので、初心者でも遊びやすく奥が深いです。

【丸田’sEYE】

ゲームデザイナーがグラフィックも兼任。ゲームとグラフィックの融合具合が素晴らしく、ゲームの世界に入り込めます(丸田さん)。

 

【その4/斬新さ重視!】

 1度しか味わえない斬新なゲーム体験

ホビージャパン
パンデミック:レガシー
7560円

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:60分×12〜24回】【対象年齢:13歳以上】

遊ぶたびにゲームが変わる「レガシーシステム」を取り入れた話題の協力ゲーム。ストーリーに合わせてカードやボードにシールを貼ることでゲーム自体が変化します。海外ドラマのような驚きの展開が待ち受けます。クリアには時間がかかるため、一緒に遊べる仲間を探しましょう!

【丸田’sEYE】

協力型ゲームの金字塔・パンデミックをベースに、段階を持った演出と驚きのストーリーを存分に楽しめるゲームです(丸田さん)。

 

 

すごろくや

海外製を中心としたボードゲーム・カードゲームを見て、触って購入できる専門販売店。600種類以上のゲームを扱っており、知識があるスタッフの案内でゲームを選べます。

●住所:東京都杉並区高円寺北2-3-8 高円寺日光ビル2F

●営業時間:11:00〜20:00

●休日:水曜日

娯楽の栄冠はどの国に輝く!? 全12か国で「アナログゲーム」ワールドカップ、キックオフ!

ゲームデザイナーの出身地を元に、それぞれの国の代表ゲームをピックアップし、ゲームマニアのホビーライター・河上 拓さんがゲームの戦力を分析しました。心のゴールに突き刺さるゲームはあるか!? 「アナログゲーム ワールドカップ」いま、キックオフ!

 

【分析した人】

ホビーライター・河上 拓さん

最近のお気に入りボードゲームは「ヘブン&エール」。第1回ディクシット日本選手権王者でもあります。

 

アメリカ大陸代表

アメリカ大陸では米国に注目。数年前まではテーマ重視で、直接攻撃が主流の「アメリトラッシュ」と呼ばれるゲームが主流でしたが、近年はユーロゲームの要素を取り入れたゲームが生まれています。

 

【カナダ】

勝利の数を予言する世界的人気カードゲーム

ジーピー
ウィザード・カードゲーム
1080円

*ゲームデザイナー:Ken Fisher

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:45分】【対象年齢:7歳以上】

トリックテイキングというジャンルに属するカードゲーム。ゲームの始めに手札を見て勝てるトリック数を予言(予想)。予言が的中すると得点、はずれると失点します。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:3/戦略性:4/ワイワイ楽しむ:2

「世界選手権が行われるほどの人気のゲーム。ラウンド数に応じてトリック数が増えるため、初心者も気軽に楽しめます」(河上)

 

【アメリカ】

突如出現した大怪獣がトーキョーの街を破壊!

ホビージャパン
新・キング・オブ・トーキョー
4860円

*ゲームデザイナー: Richard Garfield

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:30分】【対象年齢:8歳以上】

「マジック:ザ・ギャザリング」の作者によるトーキョーを舞台にした怪獣バトルゲーム。サイコロと特殊能力カードで殴り合う、これぞアメリトラッシュな展開が楽しめます。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:3/戦略性:1/ワイワイ楽しむ:4

「特殊能力カードで怪獣映画さながらの効果を発動しながら、サイコロの目に一喜一憂して遊ぶ、いい意味でバカゲーです」(河上)

 

ブラジル】

柄や数字を揃えて高価なマトリョーシカに!

ディアシュピール
マトリョーシカ
1800円

*ゲームデザイナー:Sèrgio Helaban

【プレイ人数:3〜5人/プレイ時間:20分/対象年齢:8歳以上】

カードを交換しながら同じ色や数字を集める収集ゲーム。ラウンドのはじめにプレイヤーは手持ちカードを公開。ライバルと交渉し、目的のカードを入手しましょう。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:4/戦略性:2/ワイワイ楽しむ:1

「お互いの欲しいカードが徐々にわかってくるシステムが秀逸。どのカードを公開するかが悩みどころ。さっくりプレイできてイラストもかわいい。手堅く遊べる佳作です」(河上)

 

 

アジア・オセアニア代表

ユーロ、アメリトラッシュに続く第3勢力、ミニマリストゲーム大国として世界が注目する日本。短時間で遊べる小箱ゲームで独自路線を突っ走ります。ブームが過熱中の台湾の活躍にも期待したいです。

 

日本】

日本発のお手軽ゲームが世界中のゲーマーを虜に

グランディング
街コロ
3600円

*ゲームデザイナー:菅沼 正夫

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:30分】【対象年齢:7歳以上】

ドイツや米国でヒットを記録した人気ゲーム。様々な施設を建て、街を発展させていきます。駅や遊園地、ショッピングモール、電波塔の4つを完成させれば勝利。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:4/戦略性:2/ワイワイ楽しむ:2

「見た目も含めたハードルの低さが最大の魅力。別売りの拡張セットを導入すると戦略の幅が一気に広がるのでぜひ入れてみて!」(河上)

 

【台湾】

高度な駆け引きが必要!ボードゲームの醍醐味を楽しむ

すごろくや
ポンジスキーム
5500円

*ゲームデザイナー: Jesse Li

【プレイ人数:3〜5人】【プレイ時間:60分】【対象年齢:12歳以上】

投資自転車操業詐欺がテーマ。投資家への配当金を、また別の投資家から借り受けて工面します。雪だるま式に増える支払いを乗り切り、破産を免れることができるか!?

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:1/戦略性:4/ワイワイ楽しむ:2

「資金がショートするギリギリの状態で、ハッタリをかまし合う終盤の駆け引きにハラハラ。手に汗握る硬派なゲームです」(河上)

 

【オーストラリア】

パズルのようにテーマパークを作る

ホビージャパン
クマ牧場
4320円

*ゲームデザイナー: Phil Walker-Harding

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:30〜40分】【対象年齢:8歳以上】

パズルのピースのようなタイルをボードに配置しながらクマ牧場を作っていきます。うまく隙間を作らずボードを埋めれば、得点となるクマの銅像を建設できます。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:3/戦略性:3/ワイワイ楽しむ:1

「建物が建ち並ぶ自分のクマ牧場を眺めてるだけでも楽しい。インタラクションは少なめですが、パズル的な部分をじっくりと考え始めると、さらに面白さが増します」(河上)

ヨーロッパ代表

ボードゲーム大国ドイツを筆頭に、強豪がひしめく欧州。ファミリーゲームで台頭するフランス、「コードネーム」でドイツ年間ゲーム賞を獲得したチェコなどの新勢力からも目が離せません。

 

【ロシア】

反体制派とカエサル派が市民の影響力を奪い合う

すごろくや
解放者:共和制ローマの終焉
4500円

*ゲームデザイナー: Yan Yegorov

【プレイ人数:3〜6人】【プレイ時間:40〜60分】【対象年齢:13歳以上】

カエサル暗殺がテーマ。カエサル体制打倒を目指す貧乏な共和主義派と、カエサル派とに秘密裏に分かれ、ほかのプレイヤーの正体を暴きながら、影響力を綱引きします。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:2/戦略性:4/ワイワイ楽しむ:3

「資金を得るためにはカエサルに媚を売らなければならない。ほかのプレイヤーに正体を隠しながらの、目的と行動のギャップにおかしみが生まれる、大人が楽しめるゲームです」(河上)

 

フランス】

機関車を舞台に強盗たちが大立ち回りを繰り広げる

ホビージャパン
コルト・エクスプレス 多言語版
5400円

*ゲームデザイナー:Christophe Raimbault

【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:40分】【対象年齢:10歳以上】

ドイツ年間ゲーム大賞2015受賞ゲーム。プレイヤーは列車強盗となり、列車内でほかのプレイヤーと争います。カードを使って行動を予約するシステムが生むドタバタ劇で盛り上がります。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:3/戦略性:2/ワイワイ楽しむ:4

「組立式の立体機関車は臨場感抜群。相手の行動の先を読んだはずの計画が、あっという間に台無しになるのも本作の面白さ」(河上)

 

イスラエル】

ルールはシンプルだけど大人も熱中する戦略性の高さ

増田屋コーポレーション
ラミィキューブ
3888円

*ゲームデザイナー: Ephraim Hertzano

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:20分】【対象年齢:7歳以上】

イスラエルが発祥のテーブルゲーム。最初の手札は14枚。3枚以上の連番や同数字の札が揃えば場に出し、出せなければ山から札をとります。すべての札を捨てられた人の勝利。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:4/戦略性:4/ワイワイ楽しむ:1

「場に出ている札同士を動かすことも可能です。“あれがこう来て、よしいける!”と複雑な移動の末に札をすべて置ききれたときは感無量。でも失敗することのほうが多いんですよね(笑)」(河上)

 

ドイツ】

肥沃な土地・メソポタミアに豊かな王朝を築こう

ホビージャパン
チグリス・ユーフラテス
6480円

*ゲームデザイナー:Reiner Knizia

【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:60〜120分】【対象年齢:14歳以上】

20年前の作品ながら、いまも色褪せない傑作ゲーマーズゲーム。古代メソポタミアを舞台にプレイヤーは指導者を動かし、政治、商業、農業、宗教を発展させて王国を築く。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:1/戦略性:5/ワイワイ楽しむ:1

「文明の発展を追体験するかのような壮大で骨太なゲームシステム。一手で世界が動くような、ガチガチのプレイ感がたまらない」(河上)

 

【チェコ】

敵の組織よりも先に味方のスパイを発見せよ!

ホビージャパン
コードネーム
3240円

*ゲームデザイナー:Vlaada Chvátil

【プレイ人数:2〜8人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:14歳以上】

スパイマスターのヒントを元に、敵チームより先に味方スパイを探し出しましょう。推察力が試される2016年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した傑作ワードゲーム。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:5/戦略性:3/ワイワイ楽しむ:4

「ひとつのワードで、いくつものコードネームを示すのが勝利の決め手。これならわかる? と思ったワードが大失敗に終わることも」(河上)

 

【ギリシャ】

ホビージャパン
私が夢みるとき
4860円

*ゲームデザイナー: Chris Darsaklis

【プレイ人数:4〜10人】【プレイ時間:30分】【対象年齢:8歳以上】

目隠しをした「夢みるひと」は、正解に導く「妖精」や間違いを誘う「ブギーマン」たちのヒントを手がかりに、夢カードの内容を言い当てます。誰が“味方”か見極めるのが大事。

 

<おもしろさ徹底分析!>

手軽さ:4/戦略性:1/ワイワイ楽しむ:5

「ヒントから正解を探す連想ゲーム的な面白さだけでなく、誰が味方なのかを考えながらプレイするハラハラ感も◎。10人までプレイできるので大人数で遊ぶのがオススメです」(河上)

2018年度ヒット確実の「アナログゲーム」8個を先取り! ドイツ年間ゲーム大賞受賞作が特にオススメ

ボードゲーム界の最も権威ある賞「ドイツ年間ゲーム大賞」の受賞作から、クチコミで人気となった同人ゲームまで、2018年大ヒット確実の注目ゲームをまとめて紹介します!

 

【選んだ人】

本誌ホビー担当 保谷恵那

ホビー担当になったのをきっかけにアナゲーに興味を持ちました。普段は直感系などサクッとできるゲームで遊ぶことが多いです。

 

【その1/ドイツ年間ゲーム大賞2017大賞受賞】

同じ地形をつなげて高得点を目指す!

テンデイズゲームズ

キングドミノ

日本語版

3240円

2つの地形が描かれたタイルを、できるだけ同じ地形がつながるように配置し、5×5マス内に自分の王国を作るタイル配置ゲーム。手軽に遊べて考えどころもある人気作です。【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:15分】【対象年齢:8歳以上】

 

【ココがオススメ】手軽にできるゲームながらタイル選びには頭を使う!

短時間で勝負がつくので、アナログゲーム入門に◎。王冠付きなどの価値の高いタイルを選ぶほど、次のタイル選びの順番が後回しになるのが悩みどころです!(保谷)

 

【その2/ドイツ年間ゲーム大賞2017 上級ゲーム部門受賞】

脱出ゲームが机上で楽しめる!

グループSNE

EXIT 脱出:ザ・ゲーム

荒れはてた小屋

2700円

仲間と協力して謎を解いていく脱出ゲーム。ひとつのパッケージにひとつのシナリオが入っており、ネタバレになるので遊べるのは1回きり。内容は開けてからのお楽しみです。【プレイ人数:1〜6人】【プレイ時間:45〜90分】【対象年齢:12歳以上】

 

【ココがオススメ】1回しか遊べなくてもその達成感は価値あり!

謎解きという性質上、1回しかプレイできないのが残念(笑)。しかしシナリオは秀逸で、脱出したときの快感はたまりません! プレイヤーの一体感も高まります(保谷)。

 

【その3/クラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」で約2億円を調達!】

ユーロゲーム+アメゲーのハイブリッドに世界が震撼

アークライト

サイズ –大鎌戦役- 完全日本語版

1万500円

世界のフリーク向けゲーム賞を総なめにしたハイブリッドマルチゲームに、待望の完全日本語版が登場。「Kickstarter」発のゲームだけあって、力を入れまくったコンポーネントにも注目です。【プレイ人数:1〜5人】【プレイ時間:115分】【対象年齢:14歳以上】

 

↑各軍それぞれ造形の違うフィギュアのようなコマが付属。描き込まれたイラストとともに第一次世界大戦+SFという世界観を演出しています

 

【ココがオススメ】プレイ時間は長めだが美しい世界観に感動!

攻撃し合うゲームと思いきや、戦争はあまり起こらずにらみ合いが続くのが、なんともリアル。絵画のようなアートワークが美しく独特の世界観に没入できました(保谷)。

【その4/「乃木坂46時間TV」「ぷっすま」などのメディアで紹介!】

お題の空欄にハマる単語カードで大喜利対決!

テンデイズゲームズ

私の世界の見方

3780円

親プレイヤーが読んだお題の空欄に合わせ、子プレイヤーは手札のなかから単語を選択。親にベストな回答に選ばれると得点がもらえます。ワード系パーティゲームの傑作。【プレイ人数:2〜9人】【プレイ時間:30分】【対象年齢:10歳以上】

 

↑お題のなかには吹き出しが2つ用意されているものもあります。この場合、手札から単語を2つ選び、先に読むほうを下にして重ねます

 

【ココがオススメ】おもしろ単語が豊富で何度遊んでも飽きない

使い勝手の良い一般名詞から、爆笑必至のキラーワードまで、単語カードは約390枚入。大喜利センスに自信がなくても、必ず面白い回答が生まれます!(保谷)

【その5/ドイツ年間ゲーム大賞2018大賞最有力候補!?

カラフルなタイルで宮殿の壁を装飾!

ホビージャパン

アズール

6048円

宮殿の壁に見立てた自分のボードに、タイルを置いて装飾していくゲーム。タイルの配置によって得点を計算し、誰かがタイル5枚を横1列に配置した時点でゲームは終了する。【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:30〜45分】【対象年齢:8歳以上】

 

【ココがオススメ】美しいだけじゃない! 高度な戦略ゲーム

ゲーム性とデザイン性の高さを兼ね備え、今年の大賞最有力候補と言われているゲーム。タイルを揃える以外に、ほかのプレイヤーの戦略を読んで妨害するのも面白い!

 

【その6/まさかの舞台化も!累計1万部売り上げた同人ゲーム】

EJIN研究所

ハコオンナ

3700円

1人がハコオンナ役となり、複数の訪問者の脱出を妨害する1対多人数の対戦ゲーム。訪問者がのぞき込んだ物陰にハコオンナがいれば訪問者は即死。協力して生還をめざします。【プレイ人数:3〜5人】【プレイ時間:45〜180分】【対象年齢:10歳以上】

 

【ココがオススメ】ホラー映画の世界へ入り込んだ感覚に!

意気揚々と探索を進めているうちに次々と仲間が死んでいき八方ふさがりになっていく恐怖は、まるでホラー映画のよう。いや〜な世界観に引き込まれました(保谷)。

 

 

【その7】トーク中のボケに対しカードでツッコむ!

5GOATS

ツッコミかるた

2500円

トーク中のボケに対し、カードでツッコんでポイントを稼ぐかるた。2チームに分かれ、全員でテーマに沿ったトークを行います。味方にツッコむほど高得点をゲットできます。【プレイ人数:2〜8人】【プレイ時間:10〜20分】【対象年齢:12歳以上】

 

【その8】中高生を中心に大人気。目的は“勝利”のみ!

グループSNE

テストプレイなんてしてないよ

1620円

手札の効果でほかのプレイヤーを脱落させて勝利を目指すゲーム。カードの効果は無茶なものばかり。効果の内容により10秒でゲームが終わることも。【プレイ人数:2〜10人】【プレイ時間:1〜5分】【対象年齢:13歳以上】

世界中で年間1000タイトル以上がリリース! あなたの知らないボードゲームの世界――『GetNavi 2018年6月号』

ボードゲームと聞くと「種類ありすぎてどれから始めたらいいか…」とか「なんかルールややこしそうだし」と思っている人も多いと思いますが、近年ボードゲーム熱がヒートアップしており、都内には30店舗以上のボードゲームカフェができているそうなんです!

 

ここまでくるとブームを通り越して定番化しそうですよね。ということで今回は、懐かしい気持ちになるボードゲームからGWに家族や友達と楽しめる最新のボードゲームを『GetNavi 2018年6月号』(GetNavi編集部・編/学研プラス・刊)からご紹介いたします。小さいころエポック社のドンケツゲームよくやってたな〜ってこれはボードゲームじゃないか(笑)。

 

 

そもそも「ボードゲーム」とは?

ボードゲームと聞いて思いつくのはどんなゲームでしょうか?

 

人生ゲームに、オセロ、将棋に囲碁、すごろくなどたくさんありますよね。最も古いボードゲームと推測されているのはエジプトのセネトという2人で戦うレースゲームだったそうです。王朝誕生以前とエジプト第一王朝の墓でこのゲームが発見されているということなのですが、この内容については歴史学者たちによってあーでもない、こーでもないと議論されている途中だそうなので、詳細はおいておきます。ちなみに今、世界で最もボードゲームが熱い国はドイツなんだとか。

 

「ドイツのボードゲームは出版社から発売されています。ですから、おもちゃではなく、絵本のような知育的なイメージが強いんです」

世間一般に、孫と一緒に遊ぶために祖父母が買い与えるという認識があるという。

(『GetNavi 2018年6月号』より引用)

 

ボードゲーム界で最も権威のある賞「ドイツ年間ゲーム賞」というのがあるのですが、2017年に大賞を受賞したのが『キングドミノ(テンテイズゲームズ)』というタイルをつなげていく配置ゲーム。これは2名以上で楽しめて、プレイ時間は15分と短い時間で勝敗が着くのが魅力なんだとか。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

 

 

ひとりでも行きやすい、ボードゲームカフェとは?

『GetNavi 2018年6月号』では、自他共に認めるボードゲームフリークなイラストエッセイスト・コラムニストの犬山紙子さんが神保町にあるボードゲームカフェ「アソビCafe」にひとりで潜入された様子がレポートされています。

 

え? ひとりで遊びに行って大丈夫なの? と思った、そこのあなた!

 

1人で来た人には、他のグループとの相席を店員さんがセッティングしてくれる。お店で知り合ったお客さん同士が仲良くなるケースも多いのだとか。

(『GetNavi 2018年6月号』より引用)

 

おおおー!

 

これは心強い。ちなみに、お店によってフリーク向けからライトプレイヤー向けまで様々あるそうなので、いきなり上級者の集まるカフェに行ってしまって「なんで負けたの?」とわからぬうちに時間が過ぎていた…なんてことにならないよう、事前にホームページ等で店舗情報はチェックしておくようにしましょう。

 

また「アソビCafe」の場合、初めてのゲームでも店員さんの手が空いていれば、ゲームのルールをわかりやすく教えてくれるとのことなので、これも嬉しいサービスですよね。

 

種類もたくさんで退屈知らず! でも何をやったらいいの?

もうひとつボードゲームカフェの魅力は、3000円から1万円以上するようなボードゲームを選び放題、遊び放題できるところ。自分のお家でこれだけの種類のゲームを揃えるのは大変ですからね(笑)。とは言っても何からスタートしたらいいかわからないという方! ボードゲーム好きな犬山さんオススメを教えてもらいましょう。

 

《初級》

『ディクシット(ホビージャパン)』:場に並べたカードの絵柄から、キーワード頼りに親が出したカードを推理して当てるゲーム。

 

《中級》

『モダンアート(ニューゲームズオーダー)』:絵画を売買し、より多くの稼ぎを目指す競りゲーム。

 

《上級》

『オーディンの祝祭 日本語版(テンデイズゲームズ)』:コマを置いて仕事を取り合うワーカープレイスメントに、タイル配置で高得点を狙うパズル要素を加えた重量級ゲーム。

 

自分のレベルに合わせて、ぜひ気になるゲームを「アソビCafe」で試してみてはいかがでしょうか?

 

国内最大! ボードゲーム専門店・すごろくや

種類がたくさんあるボードゲームですが、「みんなが知っているゲーム」のほうがより楽しめますよね? ということで、日本最大のボードゲーム専門店・すごろくやさんのカリスマオーナー丸田さんに聞いた売上トップ10が『GetNavi 2018年6月号』では紹介されています。

 

今回は第6位にランクインしている、3歳から楽しめる『イチゴリラ(すごろくや)』をご紹介します。

 

2枚ペアだけではなく3枚セットや4枚セットのカードもある神経衰弱の”笑える”進化版です。対応人数が幅広く(2〜6名)、みんなで楽しめます。

(『GetNavi 2018年6月号』より引用)

 

ちなみにこの『イチゴリラ』は、すごろくやのオーナー丸田さんが総指揮&制作し、2010年に販売したボードゲームです。15年ほどテレビゲームの制作をされていたそうなのですが、オリジナルゲームを作っちゃうってスゴすぎる…! 詳しくは、すごろくやさんのブログでも紹介されているので、気になる方はのぞいてみてください。

すごろくや<http://sgrk.blog53.fc2.com/blog-entry-1576.html

 

 

ひとりで楽しむボードゲームもある?

ここまで紹介してきて思うのは、誰を誘えばいいかな…、一緒に楽しんでくれる人がいないんだよな…ということ(寂しい)。そんな時はボードゲームカフェに行けばいいじゃん! と思うかもしれませんが、なかなかその勇気もなく…(笑)。基本複数人で楽しむボードゲームですが、ひとりで楽しむボードゲームもありましたので、ここでひとつご紹介します。

 

それは、棒版ジェンガのような遊びで、ふったサイコロの色の棒を、ひと束になっているところから倒さないように抜く『スティッキー(ハバ)』というゲーム。赤ちゃんからお年寄りまで楽しめるので複数名でやる方が圧倒的に楽しめますが、いざという時はひとりでもできますので、覚えておきましょう。

 

さてここまでたくさんのボードゲームをご紹介してきましたが、ボードゲームは年々市場規模を伸ばしており、AIと連動させたゲームや、復刻版の人生ゲームなど年間1000タイトル以上が世界中でリリースされているそうです。ゴールデンウィークに帰省するときの手土産に、ゴールデンウィークも仕事だという方の息抜きに、ひとり遊びのお供に、ぜひボードゲーム楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

【書籍紹介】

GetNavi 2018年6月号

著者:GetNavi編集部
発行:学研プラス

読者の「賢い買い物」をサポートする新製品情報誌。話題のスマートフォンから薄型テレビ、パソコン、デジタルカメラまでベストバイを断言!

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楽天Koboで詳しく見る
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【50年分すべて見せます】「人生ゲーム」の歴代モデル60種+αを全部並べてみた――話題の新作コラボ情報も!

懐かしいモデルいろいろ……! というか、ハローキティ、よしもと芸人、ビックリマンに、筋肉番付、ミニモニ。ときメモまでコラボしてたとは(ファミコンやプレステ版もあるよ)。

 

すごろく風のボード、運命を決めるルーレット、クルマのコマと人物のピン、人生山あり谷あり。タカラトミーの「人生ゲーム」は2018年で50周年を迎えるという長寿商品です。先日、これを記念した新商品やコラボなどが一挙発表され話題を集めましたが、この発表会場がスゴかった。足を運んだ筆者は、最新商品だけでなく50年分の「人生ゲーム」を取りそろえた物量に、ただただ圧倒されるのでした……。

 

50周年記念商品ぞくぞく! タイムスリップ、少年ジャンプ、B’zコラボも

さまざまな新商品やコラボなどが一挙発表となった人生ゲーム50周年プロジェクト。今年はこんな新商品が発売になります。

 

「人生ゲームタイムスリップ」 希望小売価格:3980円+税 2018年3月31日発売

人生ゲーム50周年記念プロダクトの第1弾が「人生ゲームタイムスリップ」。こちらは人生ゲームが日本に登場した50年前(1968年)にタイムスリップして、これまでの日本の流行やできごとを体感しながら現代を目指すというもの。盤面には1960年代の「団地」から完成前の「新国立競技場」まで、時代を象徴する建物がいろいろ出てきます。

 

「週刊少年ジャンプ人生ゲーム」 希望小売価格:4500円+税 2018年7月発売

さらにその次の新商品として、週刊少年ジャンプ(こちらも今年で創刊50周年)とコラボした「週刊少年ジャンプ人生ゲーム」も発売決定。ジャンプ50周年にちなんで、「こち亀」から「ハイキュー!!」まで50作品のキャラが総登場し、ゲームを盛り上げます。盤面のマス目に描かれた歴代作品の小ネタを探すのが楽しい!

 

「B’z 人生ゲーム」 希望小売価格:未定 2018年4月1日発売(イベント会場限定販売)

そして今回大きなサプライズだったのが、今年デビュー30周年となるB’zとのコラボ商品「B’z 人生ゲーム」! 詳細な内容までは明らかにされていませんが、B’z本人とスタッフが30年の歴史を盛り込んだというネタ満載の人生ゲームが楽しめるという一品です。なお本商品は2018年4月1日より東京・有楽町で開催されるイベント「B’z 30th Year Exhibition “SCENES” 1988-2018」の会場限定販売品となっており、ファンの間で争奪戦が繰り広げられそうな予感。

歴代60モデル全部見せ!「人生ゲーム」ヒストリー

そんな50周年商品の数々とともに、この発表会で来場者の目を引いたのが歴代「人生ゲーム」を総動員した展示コーナー。ほとんどの商品はパッケージのみの展示でしたが、それを並べて眺めるだけでも圧巻の内容でした。

↑1968年に発売された初代「人生ゲーム」

 

というわけで、そのシリーズ60商品のすべてをご覧いただきましょう。有名イラストレーターの参加、90年代後半以降のキャラクターコラボ、社会情勢をリアルタイムに反映した「人生ゲーム平成版」のシリーズ化などなど……こうして振り返ってみると、マニア以外にはほとんど知られていないであろうレアなモデルもいっぱいありますね。

 

【1968年~1985年】

↑(左上から。以下、同じ)人生ゲーム(初代)、人生ゲーム(2代目)、人生ゲーム(3代目)、人生ゲームロイヤル

 

【1989年~1990年】

↑人生ゲーム平成版、人生ゲーム(4代目)、じぱんぐ人生ゲーム、人生ゲーム平成版II

 

【1991年~1993年】

↑人生ゲーム平成版III、人生ゲーム平成版IV、人生ゲーム平成版V、チェッカード ゲーム オブ ライフ

 

【1994年~1996年】

↑人生ゲーム平成版VI、人生ゲームTEENS倶楽部、人生ゲーム平成版VII、人生ゲーム平成版VIII

 

【1996年~1998年】

↑大人生ゲーム、人生ゲーム関西版、人生ゲームEX(5代目)、人生ゲーム初代復刻版

 

【1999年】

↑人生ゲーム平成版X、人生ゲーム平成版1999、人生ゲーム阪神版、ハローキティ人生ゲーム

 

【2000年~2001年】

↑人生ゲーム平成版20世紀、人生ゲームモノ・マガジン編、でじこの人生ゲーム、人生ゲーム平成版ネットラヴァーズ

 

【2001年~2002年】

↑筋肉番付人生ゲーム、ときめきメモリアル2人生ゲーム、ミニモニ。人生ゲームだぴょん、闘魂伝承 人生ゲームアントニオ猪木版

 

【2003年~2005年】

↑人生ゲーム ブラック&ビター、人生ゲーム昭和おもひで劇場、人生ゲーム RD(レインボードリーム)、ドラえもんとのび太の人生ゲーム

 

【2005年~2006年】

↑人生ゲームM&A、人生ゲーム芸人魂、ポケットモンスターAG人生ゲーム、きらりんレボリューション人生ゲーム

 

【2006年~2008年】

↑おしごと発見!人生ゲーム、ミッキーマウス人生ゲーム、人生ゲームゴールドメジャー、人生ゲーム(6代目)

 

【2008年~2010年】

↑人生ゲームICルーレット、人生ゲーム極辛、人生ゲームドリームチェンジ、イナズマイレブン爆・人生ゲーム

 

【2011年~2013年】

↑人生ゲームギャップ天国、人生ゲームGO!GO!、よしもと芸人 人生ゲーム、人生ゲーム アドベンチャー

 

【2013年~2014年】

↑人生ゲーム オブザイヤー、人生ゲームDD(ダイナミックドリーム)、人生ゲーム獄辛(ごくから)、人生ゲーム オブザイヤーII

 

【2015年~2017年】

↑ビックリマン 天使VS悪魔 人生ゲーム、人生ゲーム オブザイヤーIII、人生ゲーム(7代目)、人生ゲームMOVE!

「人生ゲーム」ヒストリー<レア商品・非売品編>

50年分の60モデル。もうおなかいっぱい……と思っていたら、実は展示はまだ終わりません。「人生ゲーム」には企業のプレゼント用に作られた非売品なども存在しており、同じ会場でこれらも見ることができました。個人的には、メグミルク「牧場の朝ヨーグルト」版人生ゲームの内容が気になります。

 

「人生ゲーム」ヒストリー<ビデオゲーム編>

そして最後は“ビデオゲーム”編です。アナログの盤ゲームを飛び出してファミコンなどでも遊べるようになった人生ゲームの変遷をご覧ください。プレイステーションの周辺機器で「ルーレットコントローラ」が発売されていたとは知りませんでした……。

これが“国民的ヒット商品”の器の大きさ…! と、いまさらながら衝撃を受ける展示ボリュームでした。これだけ数があると、ときどき「これスベってるな……」と思うようなものもありますが、そういうものも含めて振り返ることで実に味わい深い。正直、いまは久しぶりに「人生ゲーム」が遊びたくてたまりません。

【大人も楽しめる10選】アナログなボードゲームは、子どもの教育にも使えるのか?(後編)

「頭が良くなる」とメディアに取り上げられる機会が増えた近代アナログゲーム。「ボードゲーム」として親しまれていますが、子どもはどのように楽しむものなのか。そんな疑問に答えるべく、前編では人気のボードゲームを、ボードゲームショップ「すごろくや」の代表・丸田氏と、療育アドバイザー・松本氏による解説付きで紹介しました。

 

前編はこちら

 

対象年齢が小学校中学年まで上がって、ゲームにも戦略性などが求められるものが増えてきました。さらに大人向けのゲームでも、子どもの学びになり得るのか? 両氏によるおすすめゲームを解説と合わせて追っていきましょう。

 

06.サイコロの絵柄を揃えて手に入れたパズル片で遊園地を作る「タイニーパーク」

 

↑「タイニーパーク」(実売価格:2,376円)。対象年齢は小学生中学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は10分↑「タイニーパーク」(実売価格:2,376円)。対象年齢は小学生中学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は10分

 

アトラクションの柄が描かれたサイコロ5個を取捨選択しながら何度か振り、絵柄の組み合わせを作って、対応するアトラクションのパズルピースを獲得。自分のボードに配置していき、いち早く自分の敷地を埋め尽くすゲームです。

 

「タイルに描かれた絵柄の目をサイコロで出せば、そのタイルがもらえます。たとえば、サイコロがピザショップ、ピザショップ、プール、プールという目と同じタイルを取る。振り直しができる。2つはおいといて2つ振り直すということを考える。ルールがシンプルで面白い。見通しを持って遊ぶことが重要なゲームです」(松本氏)

 

「マス目をすべて埋めたら勝ちというルールで、毎回1枚しかタイルは取れない。そうすると、大人は大きい4マスのタイルを狙ってサイコロを振り直すんですが、子供はわからないから1マスのタイルを取りまくる。その結果、『1マスのタイルが足りなくなるんですけどどうしたらいいですか?』って問い合わせが山のように来た。なんでそんなことになるのかなって聞いてみるとうまく遊べてないんですね。海外では5歳からできるってなってるんですが、日本語版を作る際に6歳以上に変更したんです。対象年齢があてにならない実例ですね」(丸田氏)

 

07.迷路の形を変えてお宝をゲット「ラビリンス」

 

↑「ラビリンス」(実売価格:4320円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は30分↑「ラビリンス」(実売価格:4320円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は30分

 

タイルを敷き詰めてできた迷路にあまったタイルを差し込んで、列ごとに迷路の形を変化させてコマを宝物の位置まで導くゲーム。

 

「ドイツでは、みんな知ってるくらいポピュラーなゲーム。ボードの端からタイルを差し込むと列単位で迷路が変わっていく。自分の色のコマを目的の場所にたどり着かせるためには、どこに差し込めばいいのかなってやっていくんですけど、最初は自分のことしか見えてないのが、だんだん俯瞰して見ることができるようになる。そうすると、僕って天才だなって気分を味わえる瞬間がある。ルールが簡単で2人から遊べるのもいいですね」(丸田氏)

 

08.即興セリフを聞いて、絵を探す漫画カルタ「ヒットマンガ」

 

↑「ヒットマンガ」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は3~10人。プレイ時間は20分↑「ヒットマンガ」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校高学年。プレイ人数は3~10人。プレイ時間は20分

 

吹き出しが空欄になった漫画のコマが描かれたカードを見て、読み手がセリフを考える。他の人は、そのセリフを聞いて該当するカードを探す異色カルタ。

 

「コミュニケーションの療育ということにダイレクトにヒットするカルタですね。読み手は漫画のコマの状況を見て、当てはまるセリフを考える。伝われば、読み手にも点数が入るんですけど、うまく伝わらないと、マイナス点のカードを取ることになる。読み手は伝わるセリフを考えるし、取る方もこの人はどのカードを見て言ったんだろうって考えます」(松本氏)

 

09.お題の印象から、正解の絵を推理する「ディクシット」

 

↑「ディクシット」(実売価格:4860円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ時間は3~6人。プレイ時間は30分↑「ディクシット」(実売価格:4860円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ時間は3~6人。プレイ時間は30分

 

場に並べられた、抽象的なイラストが描かれたカードの中から、出題者が出したカードを見つけるゲーム。全員が正解すると出題者は点が入らないので、わかりやす過ぎず、わかりにく過ぎない、ちょうどいい出題をしなければなりません。

 

「お題を聞いて、それぞれプレイヤーがお題に近いカードを1枚ずつ出していく。その中から、出題者が出した曖昧なヒントを元にカードを当てていきます。たとえば出題者が、〝幸せな時間〟って言ったら、〝幸せな時間〟っぽいカードを他の人達も手札から出す。ですから実際に答え合わせしていくと、なんだーってなる。このゲームもぜんぜん面白さがわかんないって問い合わせがあったんです。ルールが間違ってるのかなって思ったら間違っていない。ただ詳しく聞いてみたら、〝はい、正解。次行きます!〟って次々に問題を出して遊ばれていたんです。なんでこうなの? とか、なんでこう思ったの?とか、なしでやると、そりゃあまったく面白くない。だからこのゲームも対象年齢が難しい。女のコだったら7歳ぐらいでもいけるんですけど、男の子は中学生ぐらいからですかね。花がキレイって思う、感性が大事ですよってよく言ってます(笑)」(丸田氏)

 

10.数の書かれたタイルをめくり並べていく「ケルトタイル」

 

↑「ケルトタイル」(実売価格:1500円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は15分↑「ケルトタイル」(実売価格:1500円)。対象年齢は中高生~大人。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は15分

 

裏向きのタイルを取って、色ごとに「昇順」または「降順」に並べていき得点を目指すゲーム。

 

「タイルを取ってしまうことによって不利になるケースがあるので、取らないで置いておくということもできる。ただ、自分にとって有利か不利かだけを考えて、ちょっと不利になるからと取らないでいると、相手の人がめちゃくちゃ有利になっちゃうってシチュエーションがよくある。相手に取らせないために、自分はちょっと損するけどここは取っておこうっていう他の人の動きを想定したうえで、自分が動くという練習としてすぐれている。相手の立場に立って考えるメカニクスというか、仕組みとしての面白さを伝えるのにオススメのゲームですね」(松本氏)

 

以上が、おすすめゲームになります。ボードゲームには、ただゲームを進行するだけでは本当の面白さが掴みきれない部分があるのですね。最後にお2人による「ボードゲーム×教育」をテーマにしたトークのダイジェストをお送りします。

 

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――お二人が考える「ゲームの本質」とはなんでしょうか?

「ゲームの本質は、遊び手に創造性が発揮されることにつきます。創造性って聞くと、いちから何かを作ることと考えがちですが、頭を使って自分の中で新しいことを考えるということは、すべてクリエイティブなんです。選択する要素に関して、創造性を発揮して選んでいく。選択肢の中から自分で考えて選び、解決のためにうまくやれたって体験を味わえるんです」(丸田氏)

 

「近代アナログゲームは非常に簡単なものから難しいものまで種類がたくさんあります。私はよく発達障害の子たちと遊ぶのですが、自分で〝考える選択肢〟が限られることで子どもでも遊びやすいゲームが多くある」(松本氏)

 

――デジタルゲームとの違いはなんだと考えていますか?

「デジタルのゲームは、コンピューターがジャッジをしてくれる。アナログのゲームはルールを守って、全員でゲームを成り立たせてるので、全員がその場を成り立たせることに重きを置いている。ルールのジャッジを自分たちでやらなければいけないんです。だから、例えばiPadでできるボードゲームとなった場合、もうルール、審判をコンピュータに任せてしまうので、それはボードゲームじゃないよねって話ですね」(丸田氏)

 

――ボードゲームでコミュニケーション力は身につきますか?

「ボードゲームがコミュニケーションツールかと聞かれたら違うって言っちゃいます。それはボードゲームの特色にしてはいけない。浅いコミュニケーションは形成されます。深い悩みとかそういったものに踏み込めるとはまったく思いません。うちで売ってるようなゲームは、手続きをやるなかで〝コミュニケーションができてる気になる〟もの。これはバカにしてるわけじゃなくて、それができるものってあまりないのでね。しかも子供と大人が一緒になってできる。その入り口としてはとてもいいんじゃないかと思います」(丸田氏)

 

――ボードゲームをやったことのない人に楽しさや価値を伝えるためのコツは?

「〝大人ならではの知的な能力を発揮しつつ、子供のように楽しめるものだ〟と説明することが多いですね。日本に昔からある囲碁とか将棋は、眉間にしわ寄せて遊ぶゲームです。子供のように楽しめないですよね。一方で人生ゲームみたいにキャッキャと楽しめるものはあるんですけど、大人の知的能力を発揮できてるものがなかなかないんですよ。そういう意味で両立させてるものがあることを伝えています。それと、もう1つよく使うのが、お寿司でいうと人生ゲームはカッパ巻き、ウノはかんぴょう巻きぐらいなんですよねって説明すると『マグロとか、あるんですか?』って聞かれる。そしたらありますよ!っていうね(笑)。全体の中で持っているイメージに対して、あなたは一部しかわかってないよっていうビジョンを与えてあげることで興味を持ってもらうようにしています」(丸田氏)

 

――子ども向けゲームを選ぶ際に大事な点はなんですか?

「迷ったら簡単なほう、簡単なほうを選ぶ。難しいけどできるかな? と思うと失敗します。難しいゲームもやってみると、ルールがあるから子どももわからないなりに、ある程度できてしまう。そうすると大人は子どももやれていると思ってしまいます。だけど本人からすると大人に付き合ってるだけってことになっちゃうんですね」(丸田氏)

 

「その子がどこまで考えているかを注意深く見るのが大事だと思います。いくつか遊んでみたあとで、今日どれが楽しかった?って聞いて、これって言ったのが、その子に合ってるゲームです」(松本氏)

 

「ひとつの指針として、海外ゲームの場合、パッケージに書いている年齢の7割はあてになりません。あくまでクラスの頭がいい子の対象年齢。なので1.5倍で見てほしい。8歳って書いてあったら、12歳以上と思ってもらっていいかも。6歳以下っていうものでいいゲームがいっぱいあるので、そういうものから遊んでみるといいですね」(丸田氏)

 

――子どもとゲームをする時に大人が気を付けるべきことはありますか?

「子供が失敗しそうなときに、○○ちゃんそうじゃないでしょ!って、失敗の手前で止めないでください。間違ってしまっても止めずに、失敗してから教えることが大事です。考えた上での失敗しか糧になりません。それに、ルールはどんどん変えてかまいません。自分たちのために使いこなせればいいし、ルールを改変してもいい。ルールってなんなの? アナログゲームに触れて、ズルってなんなの?っていう考えにいってくれたらいいなって思います」(丸田氏)

 

2人の「ゲームと教育」対談の第2回は2月24日(土)に高円寺「す箱」にて開催予定。くわしくは「すごろくや」のイベント情報をチェック。なお、今回紹介したすべてのゲームはすごろくやで取扱われています(一部、品切れ中のものもあり)。興味を持ったパパ、ママは子どもと一緒に、もちろん大人同士でも楽しんでください。

【大人も楽しめる10選】アナログなボードゲームは、子どもの教育にも使えるのか?(前編)

将棋界の若き天才、藤井聡太四段が幼少期に遊んでいたことが話題になるなど、昨年から「頭が良くなる」とメディアに取り上げられる機会が増えた近代アナログゲーム。その代表としてボードゲームが流行していますが、本当にゲームで子どもが何かを学ぶことができるのか、子を持つ親なら気になるところです。

 

昨年末、「ボードゲームは教育として使えますか?」をテーマに、ボードゲームショップ「すごろくや」の代表・丸田康司氏と、ボードゲームを用いて発達障害のある人のコミュニケーション能力を伸ばす「アナログゲーム療育」を開発、実戦する療育アドバイザー・松本太一氏の2人がトークイベントを開催。興味深い内容となったイベント当日のダイジェストと、2人が思う子どもに人気のオススメゲームを対象年齢別に紹介していきたいと思います。

↑左がボードゲームファンから人気を集める「すごろくや」代表・丸田氏。右が「アナログゲーム療育」を提唱する療育アドバイザー・松本氏↑左がボードゲームファンから人気を集める「すごろくや」代表・丸田氏。右が「アナログゲーム療育」を提唱する療育アドバイザー・松本氏

 

まずは当日、話題にあがった大人も子どもも楽しめるボードゲームを紹介していきたいと思います。

 

01.釣り師と逃げる魚の勝負を見極める「おさかなクン」

 

↑ダイスゲーム「おさかなクン」(実売価格:1500円)。対象年齢は乳幼児(2歳半~)。プレイ人数は2~6人。プレイ時間は10分↑ダイスゲーム「おさかなクン」(実売価格:1500円)。対象年齢は乳幼児(2歳半~)。プレイ人数は2~6人。プレイ時間は10分

 

ゲームを始める前に漁師チームと魚チームのどちらになるかを各自が決めます。サイコロの色によってコマを動かし、最後に逃げ切った魚と、漁師がつかまえた魚の数を数えて多かったチームが勝利するダイスゲーム。

 

「子どもがすごく喜ぶゲームです。ゲームの最初にどっちを応援するかを決めるので、サイコロで自分が応援してるほうの色が出るとやったあ! と盛り上がる。サイコロの目の色通りにコマを進めるか取るという簡単な処理をするだけなので小さい子でも楽しめる。何が勝ちで何が負けかがわかりやすいのもいいですね」(松本氏)

 

02.紙に穴を開けて磁石のついた釣り竿で魚釣り「カヤナック」

 

↑魚釣りゲーム「カヤナック」(実売価格:6264円)。対象年齢は幼児(4~5歳)。プレイ人数は2-4人。プレイ時間は20分↑魚釣りゲーム「カヤナック」(実売価格:6264円)。対象年齢は幼児(4~5歳)。プレイ人数は2-4人。プレイ時間は20分

 

二重構造のボードにはさみ込まれたA4用紙を氷に見立てて、サイコロを使って自分のコマを動かし、狙った場所に穴を開けて磁石のついた釣り竿で、金属の玉の魚を釣りあげる魚釣りゲーム。丸田氏、松本氏によると頭も使えて、感覚的な面白さもある楽しみの幅が広いゲームのようです。

 

「このゲームはものすごく幅が広いんですよ。どこを釣ったか覚えていかなければいけないし、この辺はちょっと少ないから移動しようとか、サイコロの確率とか、いろんな要素が複合的に入っていて戦略的に遊べる。しかも、すごく単純にサイコロを使わずに魚釣りだけでも遊べるんです」(丸田氏)

 

「サイコロなしだと、小さな子どもでも遊べます。それこそ2歳くらいの言葉がない子っていうのは感覚的な刺激や手触りに欲求を持ってますから、棒で紙をブスって破ったり、釣り糸の先の磁石に玉がぴちっとくっつく感覚がすごく新鮮なんです」(松本氏)

03.追われながらチーズ片を集める「ねことねずみの大レース」

 

↑「ねことねずみの大レース」(実売価格:5184円)。対象年齢は小学校低学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は20分↑「ねことねずみの大レース」(実売価格:5184円)。対象年齢は小学校低学年。プレイ人数は2~4人。プレイ時間は20分

 

マス目の書かれた周回コースを、4~5匹のねずみを進めながら追いかけてくるねこに捕まらないように多くのチーズ片を集めるゲーム。キャッチーな絵柄で楽しみやすいすごろくに見えますが、奥深い要素も持っているようです。

 

「一見、すごろくっぽいんですけど、ゴールに行くのが目的ではなく、ねこに捕まらないようにチーズ片を集める。これはリスクマネージメントのゲームなんですよ。ねこに追いかけられてるリスクを考えて、自分のねずみをどう分散させていくかっていう、かなり高度なことを考えて遊ぶことが可能です。数年に1度、たまに取り出して遊べば、年齢に応じて、これ面白いね!って違った魅力を再発見できるゲームだと思います」(丸田氏)

 

04.進むか戻るかが悩ましい探検ゲーム「インカの黄金」

 

↑「インカの黄金」(実売価格は2592円)。プレイ人数は3~8人。プレイ時間は30分↑「インカの黄金」(実売価格は2592円)。プレイ人数は3~8人。プレイ時間は30分

 

インカの神殿に全員で探検に行って、それぞれが自分の判断でさらに進むか、拠点に財宝の宝石を持ち帰るかを選択し、より多くの宝石を集めるゲーム。簡単なアクションの2択で進行できます。

 

「進んでいくうちに、いろんなアクシデントが起きてくるんですが、アクシデントの種類と出順によっては、それまで手に入れた宝石がチャラになってしまう。危ない一歩手前のところで帰らなければいけない。これもリスクマネージメントゲームですが、いきなりは複雑な選択はできない子どもでも、行くか帰るかのどっちかの2択なので、わかりやすい。最初はどこまでも行っちゃう子もいるし、1度目が3回目で帰ってうまくいったから今度も3回目で帰るって子がいたりします(笑)。失敗したら宝石を没収されるので最もかんしゃくを起こしやすいゲームでもありますね」(松本氏)

 

「4歳ぐらいから遊ぶことができます。宝石は残った人全員で分配するので割り算ができるコが1人いれば遊べる。割り算役に任命すると、すごく頑張って計算してくれますよ」(丸田氏)

05.順番にやってくる船が積んだ宝石を競る「ワイルドバイキング」

 

↑「ワイルドバイキング」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校中学年。プレイ人数は2~5人。プレイ時間は15分↑「ワイルドバイキング」(実売価格:1944円)。対象年齢は小学校中学年。プレイ人数は2~5人。プレイ時間は15分

 

宝石を積みながら循環して順番に港にやってくる赤、青、黄色の海賊船。船が港についたときに、その色のカードをより多く出して、宝石を総取りするゲーム。対象年齢が上がるにつれて、ゲームの理解度が求められるようになっていきますね。

 

「最初はわからず、同じ色のカードを5枚持ってたら5枚出しちゃう。でもまた船は循環して港にやってくるので、2コで5枚使ってもいいのか?っていうことを考える。簡単にいうと競りのゲームなんですね。最初はわかんなくて負けるんですけど、相場ができてきたり、かと思うと運によってたくさん取れたりとバランスもよくできています」(丸田氏)

どのゲームもシンプル過ぎるかと思いきや、意外と奥深い設定が盛り込まれていたり、逆に一見理解するのに壁が高いように思えても、一度理解してしまえば、バランス良く楽しめるゲームもあったりと、ボードゲームに対するイメージも少し変わってきたんじゃないでしょうか? だんだんと対象年齢が上がってきましたが、さらにテクニカルに楽しめるボードゲームの数々を後編で紹介したいと思います。「ボードゲーム×教育」の関係について言及した、トークイベントのダイジェストも合わせて公開しますのでお楽しみに!

 

 

会話が盛り上がらない相手とは、まずボードゲームを一戦交えたい所存です。『シブすぎ専門店図鑑』第4回

街の気になるちょっとコアで摩訶不思議な「専門店」を巡る本連載。今回は、ヨシムラさんもかつてハマった経験があるという”ボードゲーム”の専門店、「すごろくや」に行ってきました。じわじわとブームが来ているボードゲームの魅力をたっぷりうかがうはずが、ヨシムラさんと店主がまさかのバトル展開に…!?

 

これまでのお話はこちら

 

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担当編集から一言。妄想するのは自由ですが、そもそもヨシムラさんはボードゲーム弱すぎです!(取材時、ほぼ全敗)

 

【お店情報】

■すごろくや

■住所:東京都杉並区高円寺北2-3-8 日光ビル2F

■電話番号:03-5327-4568

■定休日:水曜日

■営業時間:11時~20時

 

高IQ集団「MENSA」の会員もドハマり!? 「マツコ会議」に登場したボードゲーム「電力会社」が話題

11月18日放送の「マツコ会議」(日本テレビ系)では、全人口の上位2%のIQを持つ人々が集まる国際グループ「MENSA」のオフ会に潜入。彼らが遊んでいた“ボードゲーム”に視聴者の注目が集まった。

出典画像:「マツコ会議」公式サイトより出典画像:「マツコ会議」公式サイトより

 

「電力会社」がテレビに登場してゲーマー歓喜

番組には、IQが高いがために彼女の行動を瞬時にパターン化して浮気を見抜いてしまった人や、“共感覚”の才能を活かして4日の勉強で漢字検定準1級に合格した人など、様々な頭の良い人たちが登場。そんな「MENSA」会員たちが遊んでいたのが、「電力会社」というボードゲームだった。

 

「電力会社」とは2004年に発売され各国で様々な賞に輝いたベストセラーボードゲーム。2~6人の複数人で遊べるゲームで、プレイヤーは電力会社の“社長”になり発電所などを買いながら都市に電力を届けていく。最終的に最も多くの都市に電力を供給したプレイヤーが勝利者となる。

 

マツコ・デラックスは「えっ、楽しい?」と疑問を抱いていたが、全国のゲーマーたちは「電力会社」のテレビ露出に大歓喜。SNSなどでは「最高の神ゲーが『マツコ会議』に出てる!」「IQ高い人の専用ゲームみたいに紹介されてるけどそんなことないから! 間違いなく彼らは強いだろうけど」「久しぶりに『電力会社』がやりたくなってきた」「とにかくお金の使い方が楽しいゲーム。多分マツコさんもハマる」「奥が深いのにルールは単純という典型的な良ゲー」との声が上がっていた。

 

簡単で戦略的な「電力会社」

「電力会社」のルールをもう少し詳し説明すると、まずプレイヤーは“エレクトロ”という単位のお金を持っており、ゲーム開始時には各プレイヤーに50エレクトロが割り振られる。ゲームの流れは「序列の決定」「発電所の競り」「資源の購入」「建設」「決算」の順番で進行。最後の「決算」までが終わると初めの「序列の決定」に戻り、送電網に最も多くの都市を持つプレイヤーが第一プレイヤーになる。

 

「発電所の競り」ではエレクトロを使った競売が行われ、各プレイヤーは最低落札価格以上なら好きな値をつけることが可能。その後、各発電所によって種類が違う“資源”を購入して、送電網を“建設”。最後の「決算」では都市への電力供給に応じた収入を得ることができる。しかしこのゲームは順番が後ろの人ほど有利になるようにできているので、やたらと都市に電力を送ると「序列の決定」で不利な順番が割り当てられることに。

 

さらに誰かが7つ以上の都市に電力を接続させると、1つの都市に2人のプレイヤーが接続できるようになる「ステップ2」に移行する。そして誰かが「ステップ3カード」を引くと、1つの都市に3人接続できる「ステップ3」に突入。試合の進行度に応じてゲームスピードが格段に上がっていく。

 

実際にプレイしている人からは「オークションで値段釣り上げて相手にゴミ発電所をプレゼントした時は思わず笑いがこぼれる」「終盤のダイナミックな展開が好き」「風力発電ばっか買う友人が強すぎる!」との声が上がっており、様々な楽しみ方をしている模様。

 

また「電力会社 拡張 株式上場」などの拡張セットと組み合わせることで違ったゲーム体験ができるのも、「電力会社」というボードゲームの魅力なのかもしれない。