物価高は今後どうなる?「利上げ」が暮らしに与える影響と資産運用のコツ

1990年代から30年以上ものあいだ、超低金利時代が続いてきた日本。しかし2024年、その沈黙を破るかのように金利がじわりと上がり、“金利がある世界”への扉が開き始めました。金利が上がると、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか?

 

今回は、金利の基礎知識や金利上昇の背景、利上げによって起こる暮らしの変化、そして今後備えるべきことについて、生活情報メディア「All About」で企業取材・株主優待レポートガイドを務める、経済キャスターの鈴木ともみさんに解説いただきました。

 

そもそも金利って何?

 

「預金金利が上がる」「住宅ローン金利が上がる」など、金融商品の話をする際によく耳にする「金利」。なんとなく理解してはいるつもりでも、仕組みを正確に説明できる人は多くないのではないでしょうか?

 

「金利とは、お金の貸し借りをする際に発生する手数料のことです。金利は一定したものではなく、景気が良いときは高くなり、景気の悪いときは低くなります」(経済キャスター・鈴木ともみさん、以下同)

 

さらに鈴木さんは、金利は大きく2種類に分けられると言います。ひとつは、株式や経済ニュースに登場する「金利」、そしてもうひとつは預金金利や住宅ローン金利といった、私たちの日々の暮らしにかかわる「金利」です。

 

「株式や経済ニュースなどで耳にする金利は、『政策金利』のことで、日本の中央銀行である日本銀行(日銀)が金融政策として定めた金利のことを指します」

 

政策金利は、日銀が年に8回ほど開く金融政策決定会合で決まります。金融政策の一環として、政策金利を引き上げるのか(利上げ)、それとも据え置くのか、はたまた引き下げるのか(利下げ)。会合のときにその結論が出されます。

 

「政策金利は、金融政策決定会合で決定されない限り、変更されません。2024年にあった政策金利の動きとしては、3月にマイナス金利(金融機関が日銀に資金を預けておくと、金利を支払う必要がある状況)が解除になり、7月に利上げされました」

 

 

「預金金利や住宅ローン金利といった暮らしにかかわる『金利』は、基本的にこの『政策金利』をもとに決まってくるということを、大前提として知っておきましょう」

 

この前提を知らないと、日銀の利上げのニュースを聞くと、“もしかして住宅ローンが利上げされたのかな?”と思ってしまいます。ですが、実際はそうではありません。

 

「住宅ローンや預金金利といった暮らしにかかわる『金利』の利上げは、日銀の利上げが決まったあと、各金融機関が世の中の動きを見ながら決めるのでタイムラグがあります。事実、マイナス金利の解除は2024年3月に行われましたが、実際に預金金利が上がったのは約半年後の8月、9月でした」

 

この流れを知っておけば、「日銀が、また追加利上げをしました」というニュースが流れたときに、「住宅ローンや預金金利が利上げされた」と勘違いせずに済みます。そしてそれと同時に、いずれ暮らしにかかわる「金利」にも影響がおよぶのだろうと、心づもりができるようにもなります。

 

政策金利を引き上げるのは
物価上昇を抑制し安定させるため

 

日本では1990年代から30年以上超低金利時代が続き、日銀はマイナス金利を貫いてきました。なぜ、今年に入って政策金利を引き上げたのでしょうか?

 

「日銀は、毎月出される消費者物価指数(CPI)や景気に関する経済指標をもとに、今後、景気がどのように推移するのか、物価が上がりそうか、それとも抑えられそうかを見据え、政策金利の引き上げ・据え置き・引き下げを決定しています。現在は物価高と判断されており、日銀はさらなる物価の上昇を抑え、物価を安定させるために政策金利を引き上げました」

 

ニュースで物価高の話題が頻出していますが、実際にスーパーなどで商品価格の高騰を感じている人も多いでしょう。そのような状態で利上げとなると、物価がさらに上昇してしまう気もします。

 

「むしろその逆で、金利が上がると一般的に物価は下がるんです。というのも、金利が上がると金融機関による企業向け融資などの利率も引き上がり、お金を借りる企業が減少するからです。そうなると世の中のお金の流通量が減るため、モノが売れにくくなり、物価上昇が抑えられるという現象が起きます。
国内企業の業績が決して悪くないなか、現在の物価高を抑えないと国民の生活が苦しくなるのではないかという判断のもと、今回利上げとなったのです」

 

この仕組みを知っておくと、ニュースで突然、「金利が上がった」と言われても慌てなくて済みます。

 

「ちなみに日銀と同じ位置付けにある各国の中央銀行は、どの国でも物価を抑制したいときには政策金利を引き上げます。まさに教科書通りの基本的な金融政策になります」

 

日銀が政策金利を引き上げた一番の理由は、物価を抑制して安定させるため。日銀による利上げ政策のもとでは、今後、物価が急騰することは考えにくく、抑制される方向に向かうと考えてよさそうです。

 

利上げによって、どんなことが起きる?

 

それでは、政策金利の利上げによって、今後、私たちの暮らしがどのように変化するのでしょうか? 鈴木さんに教えていただいたことを、項目ごとにまとめてご紹介します。

 

1.物価の上昇が抑制され、安定する

「先ほどお伝えしたように、政策金利を引き上げると、例えば住宅ローンや企業向け融資などの利率も引き上がるので、ローンを借りる人や企業が減ります。その結果、世の中のお金の流通量が減るので、モノが売れにくくなり、物価上昇が抑えられます」

 

ただ現時点では、為替レートが円安であることも気になります。円安というのは円の価値が低くなることで、例えば1ドルのものが140円で買えていたところ、150円払わなければならなくなってしまう状況を指します。

 

「金利の話をする際に覚えておきたいのが、『お金は、金利の低いほうから高いほうへ流れる』という法則です。現在の日本の政策金利は0.25%、アメリカの政策金利は4.50~4.75%(2024年11月時点)。
2024年に入って日本の政策金利が引き上げられ、反対にアメリカの政策金利は引き下げられたので金利差は狭まりましたが、それでもまだまだ差は開いたまま。そのため、円からドルにお金が流れやすい状況にあります」

 

 

「円安になると輸入している資源や原材料価格が上がるため、それらを使って作られた製品の価格も値上がりします。つまり、輸入物価が上がってしまうのです。今後、さらに円安が進むようであれば、輸入物価や光熱費が高騰してしまうことも考えられます。
ただ、日銀がこのまま利上げを続け、アメリカも利下げを続けていったら、いずれはドルから円にお金が流れる可能性が出てきます。アメリカのトランプ大統領がドル安を望んでいるという見方もあるため、徐々に円高・ドル安に流れが変わる可能性もゼロではありません

 

ちなみに日銀は、「1. 経済・物価情勢の現状と先行きの見通し」「2. 見通しの上振れ要因と下振れ要因」「3. そのもとでの金融政策運営の考え方」について整理した展望レポート「経済・物価情勢の展望」を公表しており、そのなかで今後の物価の見通しについても見解を示しています。

 

「展望レポートでは、『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%台半ばとなったあと、2025 年度および2026 年度は、概ね2%程度で推移すると予想される』(2024年10月)と報告されています。
この2%という数字は、多くの国が目指している“ちょうどよい物価上昇率”でもあり、企業の賃上げ(給与アップ)がなされる前提であれば理想的です。『物価が上がる=私たちの給与も上がる』がセットで実現すると、今後の暮らしをやみくもに不安に感じる必要はなくなります」

 

2.賃上げムードが生まれる

 

賃上げとは、従業員の給与を上げることをいいます。現在の総理大臣である石破首相も2024年11月に開催された政労使会議で、経済界の要人に対して大幅な賃上げの協力をお願いしています。

 

政策金利が利上げされると、『利上げされるほど景気が良いので、企業は利益を内部留保に回すのではなく、従業員の給与に回しましょう』という方針を示しやすくなります。とくに大企業にはそういったメッセージが伝わりやすく、賃上げにつながりやすくなります。
ただし、事業に必要な資金を借入れる際の金利も上がるため、中小企業の場合は事業拡大へと踏みきれず、従業員への賃上げまでたどり着けない可能性も出てきます」

 

3.身の回りの金利が上がる

 

政策金利が上がると、やがて暮らしに関わる金利も上がっていきます。いくつかその具体例をご紹介します。

 

・預金金利
「政策金利が利上げされたことを受けて、現在、各金融機関も預金金利を上げています。普通預金金利はもとより定期預金金利の利率も上がっているため、あらめて各金融機関の利率を確認し、どこにどのような形で預けたほうがお得なのか比較するとよいでしょう」

 

・住宅ローン
「政策金利が利上げされたことで、住宅ローンの金利推移をよりいっそう気にかける必要が出てきました。住宅ローンの金利には『変動金利型』『全期間固定金利型』『固定金利期間選択型』の3タイプがあり、一般的には借り入れ時にいずれかを選びます。
『変動金利型』は、ほかのタイプにくらべて金利が低く設定されています。しかし利上げされた政策金利に近い金利が適用されるため、利上げモードのいま選ぶと返済する利息の金額が徐々に増える可能性があります。
『固定金利期間選択型』は、たとえば金利の固定期間を2年間にしている場合、最初の2年間は金利が固定されます。そして固定期間の終了後はそのときの金利が適用されます。適用される金利次第では月々の返済額が変わる可能性もあります。
その点、『全期間固定金利型』は、借り入れ時の金利が適用されるため利率は完済まで変わりません。この先どれほど金利が変動するかを気にする必要がないのは利点です」

 

・学資保険
「貯蓄型の保険といわれる学資保険は、返戻率(保険料受取率)が高く、子どもの学資を着実に貯められるという考えのもと多くの方が利用しています。固定金利の商品の場合、利上げの影響は特にありませんが、『配当付き』の保険商品の場合は、受け取る配当金が増える可能性があります」

 

金利が上がる局面に、資産運用で備える

 

2024年11月現在、日本の政策金利は0.25%です。内閣府が公表した「月例経済報告」の基調判断によると「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」(11月26日)という見解が示されており、企業業績も悪くないことから、2025年以降も利上げされる可能性はあります。

 

そのため、私たちは利上げにおけるメリットを享受したり、デメリットを受け入れたりすることになりそうです。

 

「金利が上がる局面に備えるなら、『安全性』『流動性』『収益性』という3つのポイントを押さえながら金融商品を選び、資産形成することをおすすめします」

 

1. 安全性
「運用した結果、元本が減らない金融商品を指し、債券などがこれにあてはまります」

 

2. 流動性
「必要なときにすぐに換金できる金融商品のこと。もっとも分かりやすい商品が普通預金です」

 

3. 収益性
「運用することで利益が出やすい一方、損失を出す可能性も高い金融商品を指し、株式や投資信託などがあてはまります」

 

3つすべてを備えた金融商品があれば簡単に資産運用できそうですが、残念ながらそんな完璧な商品はないとのこと。そこで大切なのが「バランスよく組み合わせること」だと鈴木さんは言います。

 

「株式の世界には、『卵はひとつのカゴに盛るな』という格言があります。 卵をひとつのカゴに盛ると、カゴが落ちたときに卵が全部割れてしまうけれど、複数のカゴに分けて盛っておけば、カゴをいくつか落としたとしても大丈夫という意味で、これが資産運用の鉄則になります」

 

 

そもそも鈴木さんが資産運用をすすめるのには理由があります。それは今、世の中がインフレの時代に入っているからです。

 

「現在は、商品やサービスの価格が上がっていく状況(物価高)にあります。
そうすると1台200万円で購入できていた自動車が、たとえば250万円とか300万円出さないと購入できなくなってしまいます。つまり、商品の価値が上がりお金の価値が下がっているということ。
日本人は保有する金融資産の約5割を預貯金のままにしていますが、お金を銀行に預けたままにしておくと、お金の価値が減り続けて損をしてしまいます」

 

そして資産運用を始めるときは、「自分の性格をきちんと見極め、合うものを選ぶこと」が大切なんだそう。

 

「たとえば、2024年から新NISAを始めた人も多いと思うのですが、基礎的なことを勉強せずに『みんながやっているから、私もやる』という考えでは始めないほうがいいでしょう。なぜなら、株式市場は突然下がることもあるからです。
そうなったときに、知識がない人の場合、焦って金融商品を解約してしまったり、心配で眠れなくなったりといったことがよく起こるんです。その点、知識がある人は落ち着いた行動が取れます。
実際に2024年の8月初旬に日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録したときも、1週間後には元に戻り、以前の水準を上回りましたから」

 

 

「そうはいっても、性格的に株価の急な値下がりに振り回されてしまうという方の気持ちもわかります。その場合は、元本割れのリスクを伴うNISAを始めるのではなく、普通預金と定期預金に加えて、安全性が高く預貯金よりも利回りが高い国債を購入するといいでしょう」

 

金利は変動するもの。いずれは政策金利が利下げされる可能性もあります。そのような状況でも資産運用は大切だと鈴木さんは言います。

 

「利下げが行われている状況というのは、景気の悪化が続き企業の業績も悪く、その結果、個人の所得が上がらない状態が続いているということです。そのようなときこそ、普段からコツコツ続けた資産形成が自分の身を守ってくれるはずです」

 

 

Profile


経済キャスター / 鈴木ともみ

地上波初の株式市況中継TV番組「東京マーケットワイド」「WORLD MARKETZ」や「Tokyo Financial Street」(ストックボイスTV)のキャスターを務める他、TOKYO-FM、ラジオNIKKEI等のラジオ番組に出演。国士舘大学政経学部兼任講師。All Aboutで企業取材・株主優待レポートガイドも務める。著書に「資産寿命を延ばす逆算力」「デフレ脳からインフレ脳へ」がある。
https://allabout.co.jp/gm/gp/1743/

決済アプリの“支払いと管理のストレス”を解消!2025年最注目が「みずほWallet」だと断言したい理由

提供:株式会社みずほ銀行

みずほ銀行の決済アプリ「みずほWallet」は、2024年に行われた大型リニューアルにより、さらに暮らしに寄り添うサービスへと進化。ひとつのアプリ上でSuica、J-Coin Pay、QUICPay+の3つの決済方法から選択できるようになった。銀行口座の残高や入出金明細、決済サービスごとの利用明細もまとめて管理可能だ。

2025年最注目の同決済アプリの魅力を深掘りするべく、GetNavi編集長の小林が、みずほ銀行「みずほWallet」の開発責任者・日隈望さんと、施策担当・青木江里子さんを直撃!

↑左から、雑誌『GetNavi』の小林利行編集長、みずほ銀行「みずほWallet」の施策担当・青木江里子さん、開発責任者・日隈望さん

 

数多の決済サービスから選択する煩わしさを解消

小林 昨今、店頭での決済手段は、クレジットカードやQRコードなど多様化が進んでいます。そのようななかで、「みずほWallet」のリニューアルには、どのような狙いがあったのでしょうか?

日隈 おっしゃる通り、いまは多くの決済サービスが乱立し、人によって決済手段は千差万別。利用シーンに応じて複数の決済サービスを使い分ける方も多くいらっしゃいます。しかしながら、決済サービスの使い分けは煩わしく、それぞれの利用状況を把握するのが大変という声も。そのような“支払い”と“お金の管理”のストレスを解消するべく、ひとつのアプリで幅広い決済シーンに対応できるよう、サービスを拡充しました。

青木 元々はデビット機能と、iOS版のみSuica機能が付いたアプリでした。今回のリニューアルでは、Android版にもSuica機能が実装されたほか、iOS版にはクレジットカード機能が実装されました。さらに送金や請求書払いも可能なJ-Coin Payが新たに利用できるようになりました。銀行口座残高確認までできるのも銀行ならではの強みだと考えています。現金やカードを持たずに身軽にお出かけしたい方や、使い過ぎを防ぎたい方にぜひ活用していただきたいです!

 

「みずほWallet」のある快適な一日。9時、Suicaでスイスイ乗車!Mizuho Suicaは、口座のお金を直接チャージできる。駅の改札では、アプリを立ち上げなくてもスマホのタッチのみでスムーズに入出場が可能。ICマークのある全国のコンビニやスーパーなどでも利用でき、JRE POINTも貯まる

 

↑13時、「J-Coin Pay」で友人にサクッと送金。J-Coin Payは、全国の加盟店での支払いに加え、請求書払いやユーザー間での送金もできる。飲食会計の割り勘など個人間で集金を行う際、現金を用意したり、口座情報を伝えたりする必要がない。お金を口座に戻すのも無料だ

 

 

店頭での支払い方法で分けたシンプルなUI設計を採用

小林 複数の決済機能や口座情報などをまとめるにあたり、苦労した点はありましたか?

日隈 サービスの拡充により、ユーザーインターフェース(UI)が複雑になる懸念がありました。トップ画面は横スワイプでサービスを切り替えられる設計にしようと考えてはいたものの、どのような切り口で画面を分けるかは悩みどころでしたね。結果的には、店頭での支払い方法にフォーカスし、Suica、J-Coin Pay、QUICPay+の3画面構成を採用しています。

青木 アプリのレイアウトやデザインについては、ユーザーインタビューなども実施し、スマホ決済を使い慣れた若年層にも親しみやすいスタイルに刷新しました。

小林 決済時はもちろん、チャージや送金がしたいときにも直感的に操作ができますね!デザインもより洗練された印象です。

日隈 今後も随時機能を追加していく予定です。アプリ一つでできる金融取引の幅を広げたり、連携できるクレジットカードの種類拡大も目指していきます。

 

↑19時、「QUICPay+」でラクラク支払い。全国267万か所以上のQUICPay+加盟店で利用可能。デビット(みずほJCBデビット/Smart Debit)決済ではキャッシュバック、クレジット(みずほマイレージクラブカード/THE POINT)決済ではオリコポイントが貯まる(※クレジットカード決済はiOSのみ利用可能)

 

↑22時、明細をまとめてチェック。複数の決済サービスを使い分けると、お金の管理が煩雑になりがち。「みずほWallet」では、口座残高のほか、Suica、J-Coin Pay、デビットカードの利用明細をまとめて確認可能。お金の流れを見える化し、ひとつの“サイフ”として活用できる

 

小林 決済からお金の管理までシームレス化を追求する「みずほWallet」。さらなる進化に期待しています!

↑GetNaviはこの「みずほWallet」をNEXTトレンドに認定!

 

みずほ銀行
みずほWallet

みずほ銀行口座との連携で利用できる決済アプリ。2024年5月にリニューアルを行い、ひとつのアプリ上でSuica、J-Coin Pay、QUICPay+の3つの決済方法から選択できるようになった。銀行口座の残高や入出金明細、決済サービスごとの利用明細もまとめて管理可能。
対象OS iOS:16.0以降/Android:11.0以降

“給料への不満”に潜む意外な落とし穴とは?『組織のネコという働き方』著者が説く組織人のお金との向き合い方

「組織のイヌ」であることに疲れた人、違和感がある人へ。「組織のネコ」という存在を知っていますか? これは令和時代のサラリーマンに贈る、もっと自分に忠実に、ゴキゲンに働くためのヒント集。楽天創業期からのメンバーにして、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員となった仲山進也氏に学ぶ「組織のネコ」トレーニング、略して「ネコトレ」!

 

ネコトレVol.18「ネコとお金」

 

給料が上がらないのは、会社のせい?

吾輩はイヌである。

 

名はポチ川アキ男、31歳。趣味は推し活。犬山電機10年目の中堅にして、未だ営業チームの副主任どまり。会社の指示には忠実に従っているので、もっと正当に評価されたいと思ってはいるものの、出世のレールは先輩社員の行列で大渋滞中……。

↑「我が輩はイヌである」(ポチ川アキ男)

 

このところの物価高に加えて、残業禁止による月給ダウン、さらに出世も足踏み状態で、お金の三重苦に悩まされているポチ川。漠然とした将来の不安を抱えながら今日も出社すると……

 

「ミケ野さん、おめでとう!」

 

朝から盛り上がっている営業チーム。なんとなく噂では聞いていたが、こんなにも早くこの日が訪れるなんて……。そう、ミケ野が副主任に昇格したのだ。しかも同期でトップのスピード出世だとか……。

 

ハチ村課長「お、ポチ川くん! ミケ野くんにお祝いの一言を!」

ポチ川「お、おめでとう……」

 

精一杯の笑顔をつくったつもりだけれど、ひきつっているのが自分でもわかった。ただの後輩だったミケ野が同じ役職になったなんて……。

 

さらに先日課長に昇格した、同期のタマ川ミャア子はどんどん評判を上げている。この前もネットのビジネスニュース番組に出演し、SNSで大きな注目を浴びていた。また大学の同級生であるネコ山のスタートアップ企業は、毎年ビジネス雑誌で特集されている「年収が高い企業ランキング」にランクイン。給料の上昇率が高いだけでなく、ストックオプションとかいうのもあるらしい。大手企業よりスタートアップの方が年収が高いなんて……。

 

会社の指示に忠実なオレよりも、自分勝手なことばかりするミケ野が評価されたり、女性だからって昇格して注目されたり、伝統のない会社のほうが給料が高いなんて、なにかがおかしくなっているのでは?! 自分ももっと給料が上がってよいはずなのに、なぜ?! モヤモヤがマックスになったオレは、またもニャンザップへ向かっていた。

↑ポチ川はモヤモヤする気持ちを抱えながら、今夜もニャンザップを訪れた

 

どうしてお金がほしいの?

ポチ川「こんばんは。もっとお金がほしいのですが!」

 

ニャカ山トレーナー(以下、ニャカ山T)「おや、ポチ川さん。なにがあったのですか?」

 

ポチ川「ミケ野が副主任にスピード昇格したんです。僕が面倒を見てきてやったのに、僕と同じ給料になるなんておかしいと思いませんか!? 僕ももっと給料が上がってよいはずですよね!?」

 

ニャカ山T「なるほど。それで、どうしてお金がほしいのでしょうか?」

 

ポチ川「どうしてって、そりゃあった方がいいに決まっているからです! 」

 

ニャカ山T「なにに使うんですか? あ、推し活のグッズとかライブとかですかね?」

 

ポチ川「いえ、推しのグッズは毎回コンプリートしていますし、ライブはチケットさえ取れれば、すべて参戦できてます!」

 

ニャカ山T「では、なにに使うためですか?」

 

ポチ川「いや、別にとりたててお金に困っているわけではないというか。副業を始めたこともありますし。あれですよ、やっぱりお金がある方が勝ち組じゃないですか」

 

ニャカ山T「……ああ、そういえばネコ山さんの会社が『年収が高い企業ランキング』に入っていましたね。あと、犬山電機の女性管理職の方が出ている番組も拝見しましたよ。もしかして前に言われていた同期の方ですか?」

 

ポチ川「そ、そうです……。ズルくないですか、みんなどんどん給料が上がっていって! だから僕も給料を上げてほしいんです!」

 

ニャカ山T「ああ、なかなか凝っていますね。今回のネコトレのテーマは『お金から自由になる』にしましょうか」

 

給料が上がれば自由になれる?

ポチ川「お金から自由になるには、たくさんあったほうがよいですよね」

 

ニャカ山T「では、もしポチ川さんの給料がたった今、3倍になったとしましょうか」

 

ポチ川「え、そんなにもらえるんですか? うれしい」

 

ニャカ山T「あるとき、会社がイヤすぎて辞めたくなって、転職を考えたとします。しかし、同じような営業職を探しても給料が大幅に減るところしか見つかりません。どうしますか?」

 

ポチ川「ううう……。ありありと目に浮かんでしまいました……。それだと転職はむずかしいですね。現在の給料が高すぎることで不自由になるパターンもあるってことか」

 

ニャカ山T「だから、『ちょっと損する』のがオススメです。具体的には、実力よりちょっと少なめに給料をもらう。そうすると、会社を辞めたくなったとしても選択肢が増えます。つまり自由度が増す。そうやって既得権益にしばられない身軽さを保つためには、収入源を複数持っておくことも有効です

 

ポチ川「副業をやったほうがいいということですか?」

 

ニャカ山T「給料以外の収入源があると、会社にしがみつかなくてよくなりますよね」

 

ポチ川「たしかに、副業するようになってからは、『給料を3万円上げてもらう努力より、副業で稼ぐほうが早いな』と思えるようにはなりましたけど……。でも、給料で単に損をしている状態はおもしろくないと思うのですが!」

 

ニャカ山T「ですよね。そこで今回のネコトレを始めましょう。『精神的報酬でモトを取る』です」

 

プライスレスな喜びで“心の財布”を満たそう

ポチ川「精神的報酬? 報酬って、お金のことじゃないんですか?」

 

ニャカ山T「報酬には5種類あります。

・お金が増える(経済的報酬)
・自由時間が増える(時間的報酬)
・手間・労力が減る、体が強くなる(肉体的報酬)
・考えなくて済む、賢くなる(頭脳的報酬)
・気を遣わなくて済む、楽しい(精神的報酬)

の5つです。このうち精神的報酬とは、喜びや感動など心が満たされたと感じられることです」

 

ポチ川「はぁ。それでモトを取るっていうのがよくわからないのですが?」

 

ニャカ山T「ポチ川さんが推し活をするときに使っているコストを、さっきの5つの視点で考えてみてください。経済的コスト、時間的コスト、肉体的コスト、頭脳的コスト、精神的コストとして、どのようなものがありますか?」

 

ポチ川「えーと、お金も時間も労力もいっぱい使ってますし、限られた資金で地方ライブに行くための交通手段を考えたり、推しと距離を近づけるためのアイデアは脳に汗をかくほど考え抜きますよね。精神的コストとしては、推しが失敗しないか、ちゃんと活躍できるか、今後成長していけそうかなど、常に気を配っていると言っても過言ではありませんね」

 

ニャカ山T「そんなに膨大なコストを使っていながら、ポチ川さんが推し活を続けるメリット、すなわち報酬ってなんですか?」

 

ポチ川「そんなの決まっているじゃないですか! わが推しによって心が満たされる瞬間がたくさんあるからですよ。例えば、推しの笑顔が見えた時、推しの新番組レギュラーが決まった時、推しのライブが満席だった時、それから……」

 

ニャカ山T「ポチ川さんは精神的報酬でモトを取ることを熟知されているので、それを仕事に置き換えてみてください。今日はこのくらいにしておきましょう。またいつでもいらしてくださいね」

 

今日のネコトレ

Vol.18
【精神的報酬でモトを取る】

・実力よりちょっと少なめに給料をもらう
・ただし損をしている状態に甘んじない
・お金以外の報酬でモトを取ることができるようになろう

Vol.00から読む
Vol.17「ネコと越境」<< Vol.18 >> Vol.19「ネコとメンター」

 

仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長。
北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。


『組織のネコという働き方 〜「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント〜』
1760円(翔泳社)
仲山進也氏による、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、ネコと、その進化形としてのトラとして、幸せに働きながら成果を上げる方法を説く。

 

取材・構成/つるたちかこ イラスト/PAPAO

投資初心者が選ぶべきは“積立投信”!FPが教える「投資信託」の基礎知識

新NISA制度が始まってはや4ヶ月目。なかでも投資ビギナーの間で話題のトピックスといえば、「S&P500」「オルカン」などのキーワードでおなじみの「投資信託」です。毎月定額を積み立てて無理なく運用することもできる投資信託は、老後の資産づくりとして、若い世代からも絶大な人気を集めているのだとか。

 

「投資」をテーマにお届けする連載の第2回は、「投資信託」について。前述の「S&P500」「オルカン」などのキーワードを知らない人にこそ読んで理解してほしい、まずは何を知りどんなことから始めればいいか? を、今回も「MORITAKA先生」こと、ファイナンシャルプランナーの森本貴子さんから学びます。

 

NISAにiDeCo…ファイナンシャルプランナーが教える、投資初心者が最初に着手すべきこと

 

世界中の大企業に投資できる
「投資信託」の面白さ

投資というと、一般的には個々の企業の株(個別銘柄)や金(ゴールド)、ビットコインなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。その価値は、ある日大きく上がることもあれば、一夜にして大幅下落することもあります。

 

一方で、今回取り上げる「投資信託(ファンド)」という金融商品は、個別株やビットコインほどダイナミックな値動きはしません。その代わり元本割れ、つまり損をするリスクも低くなる“分散投資”という特徴が強みです。

 

「投資信託とは、さまざまな企業の株や債券などを詰め合わせた金融商品です。中身は大きく分けて、国内株式と外国株式、国内債券と外国債券の4通り。ほかに『REIT(不動産信託投資)』などもありますが、まずは先の4通りを覚えておけば良いでしょう。

 

たとえばいま人気の『米国株式(S&P500)』という商品は、米国でもっとも時価総額が大きい主要500社の銘柄が、ひとつのパッケージにセットされているようなものです。つまり『米国株式(S&P500)』を買えば、その500社に対して手軽に“分散投資”ができるということ。そのうち1社の株価がどんなに下落しても影響度は小さくなるので、リスクも分散できるわけです」(MORITAKA先生、以下同)

 

そもそも株や債券に関する知識がまったくない、高価な株式はとても買えない…と思う人もいるかもしれません。でもご安心を。

 

「投資信託は、多くの投資家から集めた資金を『ファンドマネージャー』と呼ばれる投資のプロが運用してくれる商品です。つまり一度買ったら、あとの運用はプロにお任せ。難しい専門用語を覚えたり、1日中株価チャートを見ている必要もありません。それに、現在は100円から気軽に購入できるファンドもありますし、各社のポイントを使ってゲーム感覚で投資ができるような仕組みも増えてきました。まずは体験してみるという意味でも、投資信託はビギナーにぴったりな商品といえます」

 

投資信託の概念図。

 

長期・積立・分散で利益を出し、
老後の資金づくりに役立てる

投資信託は、一朝一夕で大きな利益を出せるタイプの商品ではありません。当然ながら毎日価格は変動し、運用期間によっては元本割れのリスクもあります。ならばどんな魅力があるのかというと、“時間を味方にできる”という強みがあります。

 

「長期・積立・分散。これが投資信託の運用の基本です。以下の図は、いくつかの投資信託を5年保有した場合と、20年保有した場合の運用成績を比較したもの。5年の方は、年率10 %以上の高い利回りを記録した商品もありましたが、元本割れした商品も少なくありませんでした。一方で20年間運用した場合はというと、前者ほど高い利回りを出した商品はなかったものの、なんと元本割れの商品はひとつもなかったのです」

 

投資信託は、年率4~6%くらいの利回りを想定しながら、長期にわたって運用するのが正解!? 出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

新NISA口座を利用して、毎月5万円の積立投資を30年に渡って年率3%で運用した例。新NISA口座では運用益が非課税となるので、利子に利子がつく「複利」効果で大きく増やすことも可能に。 出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

「投資信託は老後の資金づくりのような、“長期のお金”として運用するのに向いています。もちろん過去のコロナショックやリーマンショックのような出来事で、株価が大暴落するリスクがないとはいえません。しかし上昇と下落を繰り返しながらも、長い目で見れば世界経済はずっと成長し続け、株価も上がり続けています。つまり長期で持てば持つほど、利回りは安定する傾向にあると考えられるのです」

 

20代、30代といった若いうちから少しずつでも投資信託を買い続けていれば、20年後に“老後資金2000万円”といった課題をクリアすることも、不可能ではないのかも?

 

「その通り。だから投資信託は早く始めるのがベストなのです。そしてビギナーにおすすめなのは、10年以上の長期運用を前提とした積立投資です」

 

一括よりもまずは積立!
『ドルコスト平均法』の恩恵にあずかる

前回の記事でMORITAKA先生が提案していた、収入の20%を投資に回すという考え方を覚えているでしょうか?

 

「投資信託を始めるならば、まずはこの20%から一定額を自動的に積立投資すると続けやすいでしょう。積立額は年齢やライフステージによっても変わってきますが、どんな場合でも途中で下落することは必ず計算に入れて設定すること。長期運用にあたっては、価格が下落しているときでも毎月積立を続けられる精神力が必要だからです。毎日の値動きに一喜一憂しないこと。毎月無理のない金額で自動積立を設定したら、あとは忘れてほったらかしておけるくらいの“余力”で積み立てるのが理想といえます」

 

もちろん、まとまったお金を一括投資することも可能。しかし「初心者の方にはあまりおすすめしません」とMORITAKA先生。

 

「なぜなら一括投資をしてマイナスに転じた時、多くの初心者はそれだけで目減りしたと、パニックになってしまう人が多いからです。投資ビギナーなら、『ドルコスト平均法』のメリットが活かせる長期分散積立が安心してはじめやすいでしょう」

 

ここで『ドルコスト平均法』という専門用語が出てきましたが、そのからくりはぜひ覚えておきたいもの。たとえば1口1万円の投資信託を120口、120万円の一括払いで買ったとします。このとき、10年運用してその価格が1口5000円まで下落したとすると、当然ながら資産は元本割れして60万円に減ってしまいます。

 

10年後の運用結果は、元本割れの60万円。一括買いだと、価格が下落したときその影響をダイレクトに受けてしまうので、できるだけ安いタイミングを狙って買い付けなければならない。出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

しかし同じ120万円でも、毎月1万円ずつ10年間に渡って積立投資をしたらどうでしょう。この場合は毎月1万円という一定額で買うので、価格が安いときには購入数量(口数)が増え、高いときには購入数量が減ります。すると1口あたりの平均取得価額が平準化されるため、たとえ10年後に価格が下落したとしても、利益をしっかり出せるのです。これを自動的にやってくれるのが『ドルコスト平均法』。長期にわたって分散・積立するからこそ得られるメリットなのです。

 

積立投資なら、ドルコスト平均法の原理がはたらき、購入口数が多くなる。この場合の10年後の運用結果は、なんと約139万円。投資対象の価格が下がったにも関わらず、19万円もの利益が出たことになる。 出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

証券会社と投資信託はどう選ぶ?

長期運用で結果を出しやすい積立投資は、たとえ少額でも早く始めるに越したことはありません。まずは任意の証券会社で、運用益が非課税になる新NISA口座を開設し、投資信託の積立を設定することから始めましょう。どこでどんな商品を買うかはあまり難しく考えず、いま人気を集めている証券会社、投資信託を選べばいいとMORITAKA先生。

 

「もろもろの手数料などが安く、ポイント面でもお得に利用できるのは、やはり『SBI証券』や『楽天証券』といったネット証券。YouTubeで探すと、お得な口座の開設方法を紹介している動画もたくさんあります。ただし個人的には、“絶対の答え”はないと思っています。オンラインがどうしても苦手とか、老後を見据えて窓口を利用できるようにしておきたいと思うなら、いつも利用しているメガバンクの証券会社を使うのもひとつの答えだと思いますよ」

 

気になる商品選びは、各証券会社が出しているランキングを参考にしましょう。

 

「いま圧倒的に人気のファンドといえば、『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』と『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』の2強でしょう。簡単に説明すると、米国株式はアメリカの主要500社の銘柄、全世界株式の方は、先進国・新興国を問わず全世界の約3000社の銘柄に分散投資ができるというもので、いずれも今後安定した成長が見込めると人気を集めています。まずはこういった人気商品から始めてみて、慣れてきたら自分が好きなものを選ぶのがいいと思います」

 

最終的には「好み」でいい。
自分なりの投資を楽しむ

リスクに対する許容範囲は人によって違うのが当たり前。だから、投資を始めるなら自分なりの考えを持つことが大切だとMORITAKA先生。

 

「たとえば『iDeCo』という確定拠出年金も、定期預金、保険商品、投資信託のいずれかを選んで運用ができます。この場合、年金という大事な資産を守るために定期預金で運用する手もあると思いますが、私自身は守りよりも投資する方が面白いので(笑)、迷わず外国株の投資信託で運用していますね。とくに50代とか、老後が迫っているから手堅く投資したいというなら、株よりも元本割れリスクが低い債券型の投資信託を購入するという考え方もあります。このあたりはもう、その人の性格とか好みの問題。絶対の正解はないんです。

 

でもやはり、年齢が若いなら多少のリスクを取ってもいいとは思いますね。とくに投資信託なら、長期運用で利回りが安定するという特徴がありますから」

 

何はともあれ、投資は「始めてみる」「体験する」ことが第一だとMORITAKA先生。

 

「投資って不思議なもので、ちょっと勉強して実際に値動きを体験してみると、世界の経済にどんどん興味が湧いてきたり、もっと自分の好きな分野に投資をしてみたくなったりすることがあります。これは個別銘柄の話ですが、私のクライアントの女性であるキャラクターが大好きな方がいらっしゃって、会社を応援したくてついに株まで購入したそうです。『大好きな会社だから、たとえ株価が下がっても後悔はない!』とおっしゃっていたのがとても印象的でした。結局は自分が好きなもの、欲しいと思うものを買うのが正解なんです」

 

 

次回のテーマは、MORITAKA先生もイチオシの税制優遇制度「iDeCo」。今回の投資信託に関する知識は「iDeCo」の運用にも役立つので、この機会にぜひ積立投資をスタートして、資産形成への第一歩を踏み出してみましょう。

 

 

Profile


ファイナンシャルプランナー / 森本貴子(MORITAKA先生)

大阪府豊中市出身。23歳で渡米、NYで20代を過ごし、役員秘書、弁護士秘書などを経て、仏ル・マン24時間優勝チームのマネジメントに従事。帰国後は外資系保険会社に入社、2014年より独立系FP会社「Gift Your Life」に勤務する。600回を超える企業向けセミナーに登壇、個別相談実績は3000世帯以上。脳科学にもとづくプロコーチでもある。

 


森本貴子『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』(ワン・パブリッシング)
MORITAKA先生が登場人物たちの将来のライフイベントに合わせたマネープランを提案。わかりやすいマンガ&会話形式で、「投資についていまさら聞けない事」「NISAのはじめ方」「iDeCoって何?」「ふるさと納税はどこがお得なの??」が理解できる。

NISAにiDeCo…ファイナンシャルプランナーが教える、投資初心者が最初に着手すべきこと

社会保険料や税金の負担増、物価上昇など。2024年現在、私たちのお金をとりまく現実はとてもシビア。そこでいま注目を集めるのが「投資」の話題です。

 

将来に備えるために、いまなぜ「投資」が必要なのか? 初心者は最初に何から始めればいいのか? 「MORITAKA先生」ことファイナンシャルプランナーの森本貴子さんに、投資をはじめる際に知っておくべき“基本のき”をレクチャーいただきました。

 

今のままだと、30年後には45%減!?
「貯金の価値」が下がる未来

先進国の中で唯一、平均年収が下がり続けている日本。子育てや老後に備え、日々の節約や貯金を頑張っている家庭は少なくないはずです。しかしこれからの時代、その貯金の“価値”が、少しずつ目減りしていくと言われているのです。

 

「その主たる原因が、止まらない円安と物価上昇(インフレ)です。仮に物価上昇が年2%のペースで今後も進んだ場合、預金に置いたままの100万円の価値は、30年後いくらになると思いますか? なんと、55万円相当にまで下がってしまうんです」(MORITAKA先生、以下同)

経済成長が滞り、賃金が上がらないまま現在のようなインフレが30年続いた場合、お金の価値はこんなに減ってしまう。出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

つまり、コツコツ貯めたお金を低金利の銀行に預けているだけでは、資産価値がどんどん低くなって、せっかくの貯金が目減りしてしまう……。そんな時代が、すでに始まっているのです。

 

「私のマネーセミナーでこの話をすると、大概の受講生の方は驚かれます。少し前に“老後2000万円問題”が話題になりましたが、今後も今のペースで物価上昇が続いた場合、年金プラスその2000万円で老後の生活を維持できるかというと……もはやそれすら難しい時代が来るかもしれません」

 

なぜなら家計を逼迫するのは、物価上昇だけではないから。これからますます本格化する少子高齢化にともなう、社会保障や税金の負担増も計算に入れなければなりません。

 

「漫然と年金や定期預金を積み立てて、老後安泰だった時代はとうに終わりました。そんな現状に対抗するために、誰でも今すぐできる対策があります。それが、お金を貯めるだけではなく、“殖やす(ふやす)”ための投資なんです」

投資を始める前に、
「現在地」と「目的」を明らかにする

さまざまな投資法が話題となっている今、自分も早く始めなければ損をする……と焦りを感じている人は少なくないはず。しかしMORITAKA先生は、焦りや不安からやみくもに知識を詰めこむ前に、やっておくべきことがあるといいます。

 

「私は40歳のときこの業界に入って、はや17年。今では個別株を買ったり積極的に投資を楽しんでいますが、実をいうと30代の終わりまで、今が楽しければOK! という世間知らずの浪費家で、お金の失敗も人一倍してきました(笑)。そんな私に比べたら、早いうちから投資に目を向けている今の若者は断然有利。ですから焦らずに、まずは自分の“現在地”を確認して、目指す“目的地”を明らかにしておきましょう。これがわかれば、自分がどんな投資法を選ぶべきかも必然的にわかってくるはずです」

1.月々の収支を把握する
毎月いくら貯金できる? お金の使い方を見直す

当然ながら、投資は元手となるお金がなければ始められません。まずは月々の収支のなかで、投資に充てられるだけの余力があるかをチェックしましょう。

【毎月の費用】
・住宅費 [     ]円
・食費 [     ]円
・外食費 [     ]円
・水道光熱費 [     ]円
・通信費 [     ]円
・保険 [     ]円
・衣服・美容 [     ]円
・日用品 [     ]円
・交際費 [     ]円
・車(交通費)[     ]円
・そのほか [     ]円

 

「毎月の手取りから支出を引いた額を求めます。投資初心者の方なら、まずは毎月の収入の20%を投資に充てることを目標にするといいでしょう」

 

毎月全額使ってしまう……という人は、収支の見直しからスタートを。

 

「たとえばコスメや洋服に2万円かけているなら、その半分を投資に回す。そのくらいのことでもOK。月々たった1万円でも、長期的な視点で見れば大きな差になりますから」

 

また、収入が高いからといって余力があるとは限らないとMORITAKA先生。

 

「夫婦それぞれが年収1千万、タワマン住まい……といったようないわゆる“パワーカップル”で、お金の相談にいらっしゃる方も意外と多いです。あればあるだけ使ってしまう生活を続けて、いつか家計が破綻してしまうんですね。つまり投資をするために、収入額はあまり関係がないということです」

 

自分の収支の『現在地』を把握して、少しでも貯金や投資に回す余力を作っておく。目標は収入の20%程度。これなら、どんな人にも今から取り組むことができそうです。

2.100歳までのライフプランを立てる
どんな生き方をするかで必要なお金の額は変わる

次にやるべきは、投資でお金を増やす目的。つまり将来のライフプランを描くことです。

 

「人生のどのタイミングで、どのくらいお金が必要になるか。私の元へ相談にいらっしゃるお客様には、生涯いくらのお金が必要になるかがわかるシミュレーションを必ずやっていただきます。ネット上には無料で試せるライフプランのシミュレーターがいろいろありますから、まずはそういったものを使って、おおまかな金額を見てみるといいでしょう」

人生の三大支出といわれるのは「教育資金」「住宅資金」「老後資金」の3つ。また車の購入や趣味・旅行といったライフイベントも考慮しなければならない。出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

会社員かフリーか、持ち家か賃貸か……など、人生の選択肢も多様化する時代。どう生きるか迷っているなら、先にお金のことを考えるのも手なのだとか。

 

「お金の悩みって、結局は人生相談です。実際にシミュレーションしてみたらもうひとり子どもを産めそうだと思ったとか、生計が維持できそうだから転職してみようかなとか、何かを決めるための安心材料になることもよくあるんですよ」

 

ひとつ気を付けるべきは、日本人の寿命について。

 

「医療は日々進歩していますから、これからも寿命は確実に伸びるでしょうね。いま20〜30代の若年層であれば、もはや100歳まで生きると仮定した上でのお金のシミュレーションが必要だと思います」

3.お金を「短期」「中期」「長期」に分類する
「中期のお金」は安全に貯めて、「長期のお金」は手堅く増やす!

大まかなライフプランがわかったら、次はさまざまなライフイベントに必要なお金を「短期」「中期」「長期」の目的に分けて考えてみましょう。具体的には、以下の表のような分け方です。

短期のお金は、主に日々の生活費。投資に充てたいのは、中長期のお金です。出典=『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』

 

「投資を考えるときに注目すべきは、中長期のお金です。たとえば近い将来必ず必要になる中期のお金は、確実に貯めたいので定期預金などで自動的に積み立てるのが安全。逆にしばらく手をつけない老後資金のような長期のお金は、『投資』で積極的に増やすのが有効です」

1〜3をまとめると、投資を始めるには、収入の20%を長期、あるいは中長期のお金に充てて、ライフイベントに備える。そんなイメージを持っておくといいでしょう。

基本は「ほったらかし」。
積立投資で気長に増やす!

投資を始める前準備が整ったなら、次はいよいよ最初の一歩です。

 

「投資はもちろんリスクもあるので、保守的なところから始めることをおすすめしています。とくに着実な資産形成のために守るべき投資の基本は、『長期』にわたって『分散』して『積立』すること。たとえば、初心者なら100〜1000円単位の少額からできる『投資信託』の積立がもっとも始めやすいでしょう」

 

資産運用で誰もが恐れるのは『元本割れ』のリスク。たとえば企業の個別株は、不祥事などが起これば大幅に下落して損することも珍しくありません。

 

「一方の投資信託は、イメージでいうとお中元の詰め合わせのようなもの。ひとつの商品の中にさまざまな株式や債券が入っていて分散投資ができ、しかも運用はプロに任せられるので、株の値動きに一喜一憂せずに済むんです。もちろん価格は毎日変動するので、運用期間が短いと損をすることもありますが、10年、20年単位の長期の『積立投資』なら、保有期間が長くなるほど運用効果が上がるという性質があるのです」

 

2024年からスタートした新NISAや、自分で運用する年金「iDeCo」などは、まさに「長期」「分散」「積立」の投資手法を活かせます。

 

「これらは税制優遇制度としても非常にお得なので、ビギナーにはうってつけです。ちなみにこういった長期の積立投資で増やす唯一のコツは、できるだけほったらかしておくこと。日本人は投資に慣れていないので日々の値動きに一喜一憂しやすく、“下がっている”とすぐに売却してしまう人が多いのですが、投資信託は長く保有することで利益を出す商品です。たとえば毎月いくらか自動的に定期預金で貯蓄しているお金があるなら、それは今後、積立投資に回して運用した方がお得かもしれませんよ」

 

ちなみにビギナーにおすすめの金融商品は?

 

「投資信託の世界ではいま『米国株式(S&P500)』『全世界株式(オールカントリー)』といった商品がトレンドです。ビギナーなら、そういった人気の商品から始めるのもいいと思います。とはいえ、慣れてくるともっとリスクを負いたくなったり、特定の銘柄に興味が出てきたりするのも投資の面白いところです。結局は自分が買いたいと思うものを買うのが、後悔がないでしょうね」

3ヶ月のお試し投資からトライしてみよう

投資を始めるための最初の心構えができたなら、まずは収入の20%を投資に充てることからスタートを。

 

「そもそも20%捻出することが難しい人は、先取り貯蓄もおすすめ。毎月振り込まれる給与から、20%を自動的に積み立てられるようにしておくのです。3ヶ月だけとか期間を決めてトライしてもいいですし、もちろん投資することで生活がものすごく苦しくなるようなら辞めたっていい。でも私が今までにアドバイスして3ヶ月お試し投資をしてもらったなかで、『苦しいから辞めたい』といった方は誰もいません!」

「失敗してもいいからまずやってみること。日本人に多いのは、勉強ばかりして何年も行動できずに、限りある時間を無駄にしてしまうタイプなんです」とMORITAKA先生。自分の現在地がわかったなら、少額からでもまず始めてみる。それが、投資を学ぶ最も手っ取り早い方法なのかもしれません。次回は、今回も話題になった「投資信託」のはじめ方をお届けする予定です。

 

Profile

ファイナンシャルプランナー / 森本貴子(MORITAKA先生)

大阪府豊中市出身。23歳で渡米、NYで20代を過ごし、役員秘書、弁護士秘書などを経て、仏ル・マン24時間優勝チームのマネジメントに従事。帰国後は外資系保険会社に入社、2014年より独立系FP会社「Gift Your Life」に勤務する。600回を超える企業向けセミナーに登壇、個別相談実績は3000世帯以上。脳科学にもとづくプロコーチでもある。

 

 

森本貴子『新NISA +iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』(ワン・パブリッシング)
MORITAKA先生が登場人物たちの将来のライフイベントに合わせたマネープランを提案。わかりやすいマンガ&会話形式で、「投資についていまさら聞けない事」「NISAのはじめ方」[iDeCoって何?」「ふるさと納税はどこがお得なの??」が理解できる。

 

「ゼロで死ね」お金の“出口戦略”を教える本が大ヒット! 2023年「マネー部門」ヒットセレクション

2023年は、政府主体で推し進める「貯蓄から投資へ」の流れが加速するなか、個人レベルでも投資や運用戦略への関心の高まりが見られた。スマホで資産運用を一元化できるサービスや、コツコツとおトクを積み重ねるポイ活も盛況だ。本記事では、“お金を使い切る” ことで得る人生の豊かさを説く話題の一冊「DIE WITH ZERO」や、お得なポイ活におすすめの「ウエルシアメンバー WAON POINT カード」「メルカード」をプロがじっくりと解説する。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私たちが解説します

クレジットカードDB・編集長 大澤日出男さん
アイティーナビ代表取締役。国内最大級のカード掲載数を誇るウェブメディア「クレジットカードDB」で、最新キャッシュレス情報を発信中。

 

経済ジャーナリスト 頼藤太希さん
Money&You代表取締役、中央大学客員講師。「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)など著書累計120万部超。YouTube「Money&You TV」でもお金の情報を発信中。

 

【DIE WITH ZERO】発売から3年目にして発行部数は右肩上がり

口コミなどでじわじわ話題になり、3月に13万部だったのが9月には23万部を突破。9月放送の日テレ系「カズレーザーと学ぶ。」で頼藤さんが本書を解説した翌日、Amazonの総合ランキング1位を達成した。

認知度:8/影響:7/革新性:7

 

“ゼロで死ね” のメッセージに共感が集まり重版出来!

ダイヤモンド社
DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
2020年9月発売

「貯める」方法を教えるマネー系書籍とは異なり、「使い切る」ことで豊かに生きる大切さを説明。ヘッジファンドマネージャーでもある著者ビル・パーキンス氏が紹介する9つのルールが、資産形成戦略や人生設計の道標となる。

↑死ぬまでにやりたいことは、期間で振り分けたバケツに入れていく。残りの人生でいつ、何をしたいのかを明確化することが豊かになるカギ

 

経験にお金を使いながら老後資金を考える

「老後の備えについて考えている人は多くとも、 “出口戦略” まで考えている人は少ないはず。経験にお金を使っていまを楽しみつつ、将来にも備えられるバランスが重要です」(頼藤さん)

 

【ウエルシア×WAON POINT】社会的なウエル活ブームのさらなる発展

「ウエルシアメンバーWAON POINTカード」の総会員数が500万人を突破(カードとアプリの合算)。電子マネーWAONの累計発行枚数9113万枚(2022年4月現在)と比較しても、着実な成功を示している。

認知度:10/影響:9/革新性:5

 

Tポイントと2重取りできザクザク貯まる

ウエルシア
ウエルシアメンバー WAON POINT カード/ウエルシアカード
2023年3月導入(カードの発行は4月から)

「ウエルシアメンバーWAON POINT カード」は、ウエルシアグループ店舗でTポイントとの2重取りが可能(WAON/Tポイントともに100円につき1ポイント還元)。「ウエルシアカード」のクレジット払いは、200円につき3ポイント貯まる。

↑ウエルシアメンバーは、Tカードも提示することでTポイントと2重取り。毎週月曜日のポイント2倍デーなどを狙って賢く貯めよう

 

ドラッグストア首位のウエルシアでポイ活!

「ウエルシアといえば“ウエル活”というほど、ポイ活で人気のドラッグストアです。Tポイントだけでなく、WAON POINTでもウエル活が可能になったことは大きな進歩です」(大澤さん)

 

【メルカード】メルカリアプリとのシナジーが利用者に好評

発行枚数は、提供開始から約11か月で200万枚に到達。利用者の3人に1人がメルカリの売上金を支払いに利用しており、半年前の倍以上に伸長したという調査結果が出ている(同社が11月に実施)。

認知度:7/影響:5/革新性:5

 

申し込みから清算管理までメルカリアプリで完結する

メルペイ
メルカード
2022年12月発行

メルカリのアプリで利用と管理が完結。利用限度額は、年齢や職業等の属性情報によらず、メルカリやメルペイの利用実績で決まる。メルカリで利用した際の還元率も利用実績によって最大4%までアップ。年会費無料、国際ブランドはJCB。

↑メルカリの利用実績で還元率が変化。毎月8日はさらに+8%で、メルカリ内の買い物が最大12%還元に(上限300ポイント)

 

メルカリ利用者にとって魅力が満載で手軽

「永年無料でメルカリアプリから簡単に申し込みができる手軽さが発行を促進。メルカリで最大4%のポイント還元や、売上金を支払いに充てられる利点が人気の秘訣です」(大澤さん)

三井住友「Olive」なら身近な店舗で最大7%還元! 2023年ヒットのお得満載な金融サービスをプロが解説!

政府主体で推し進める「貯蓄から投資へ」の流れが加速するなか、2023年は個人レベルでも投資や運用戦略への関心の高まりが見られた。本記事では、SMBCグループが提供するモバイル総合金融サービス「Olive」と、新NISA制度についてプロが解説する。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私たちが解説します

クレジットカードDB・編集長 大澤日出男さん
アイティーナビ代表取締役。国内最大級のカード掲載数を誇るウェブメディア「クレジットカードDB」で、最新キャッシュレス情報を発信中。https://card-db.com/

 

経済ジャーナリスト 頼藤太希さん
Money&You代表取締役、中央大学客員講師。「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)など著書累計120万部超。YouTube「Money&You TV」でもお金の情報を発信中。

 

【三井住友カードポイント攻勢】スマホを用いる資産運用やポイ活がより便利&おトクになって浸透中

Oliveアカウントは開設から半年足らずで約120万件。三井住友銀行の個人預金口座数は約2800万件(2023年3月末現在)なので、伸びしろもある。VポイントはTポイントとの統合を控え、さらなる躍進に期待。

認知度:9/影響:5/革新性:10

 

キャッシュレスライフがひとつのアプリで完結

三井住友カード Olive
2023年3月リリース

三井住友銀行と共同で提供。三井住友銀行の口座、カード決済、保険・証券など1つのアカウントで一括管理できる。キャッシュカード、クレカ、デビットカード、ポイント払いの4機能を集約したマルチナンバーレスカードを提供。

↑7月より、対象のコンビニ・飲食店でスマホのタッチ決済を利用した際の還元率を、最大7%に引き上げ。10月1日からは「ミニストップ」「モスバーガー」も対象店舗に追加された

 

↑10月2日よりVポイントからTポイントへの交換率を改善。従来はVポイント1→Tポイント0.8だったが、1→1.0にアップ。1→1.2に交換できるキャンペーンも話題になった(現在は終了)

 

目玉は革新的な機能と恩恵を感じやすいポイ活

「1枚のカードで4機能を切り替えられるフレキシブルペイは、Visaでは世界初。身近な店舗で最大7%の高還元を享受できる機会も増えました。VポイントとTポイントとの統合も注目」(大澤さん)

 

【新NISA準備】証券会社のサービス・事業などで大きな動き

日本証券業協会によれば6月30日現在、証券会社のNISA口座総数は1290万で、昨年末から9.4%増。 内つみたてNISA口座数は576万で、昨年末から16.2%増。特につみたてNISAへの関心が高まった。

認知度:10/影響:8/革新性:6

 

新しいNISA制度
2024年1月スタート

 

【ポイント1】株式分割の活発化

成長投資枠に選びやすい優良銘柄が多数

東証は2022年10月、投資単位が50万円を超える上場企業に対し、株式分割の実施検討を呼び掛けた。新NI
SAの成長投資枠を見越した需要も大きく後押しし、2023年はNTTやファーストリテイリングなど優良大手企業の株式分割が活発化。

 

【ポイント2】1株投資が活況

投資戦略に合わせて細かく積立設定が可能

株式分割も相関し、1株投資が隆盛。楽天証券は大手証券では後発となったが、4月に単元未満株を1株から投資できる「かぶミニ」を開始。さらに、6月には単元株と単元未満株の組み合わせで積立設定できる業界初のサービス「かぶツミ」を開始。

 

【ポイント3】マネックス証券協業体制

新NISAを見越した事業の強化で資産運用ニーズに応える

NTTドコモとマネックスグループ、マネックス証券が資本提携を発表。dポイント・dカード・dアカウントなどと資産形成サービスの連携に期待だ。また、同証券は来年からイオン銀行との業務提携も開始予定で、包括的に事業の強化を図っている。

 

新NISAを見据え顧客を取り込む戦略

「上場企業や銀行、証券など金融業界では、個人投資家向けのサービス・事業内容を強化。大手ネット証券では国内株式売買手数料のゼロ化など、投資へのハードルを下げる改革も」(頼藤さん)

制度改正直前の今が好機!「NISA・つみたてNISA」を始める前に解決すべき13の疑問

2024年から制度改正となる「NISA(ニーサ)」。人生100年時代における資産形成の一助として再び注目されていますが、そもそもNISAをよく知らない……という人もまだ少なくないはず。始めるベストタイミングはいつ? 旧制度と新制度の違いは? テレビ・ラジオでもおなじみのファイナンシャルプランナー・井戸美枝さんに、今さら人には聞けないNISAに関する疑問をぶつけてみました。

 

Q.「NISA」とはどういった仕組みですか?

A.2014年から始まった「少額投資非課税制度」のこと。通常、株式や投資信託などの金融商品を購入すると、その売却益や配当金に対して約20%の税金がかかります。しかしNISA口座(非課税口座)で金融商品を購入した場合、その利益が非課税になるのです。

 

たとえば証券会社の一般口座で100万円の金融商品を購入し、年間で10万円の利益が出た場合は、得た利益のうちの20%、つまり2万円を税金として納めなくてはなりません。でもNISA口座ならこの税金がゼロになり、利益が丸ごと収入になります。

 

そういったメリットがあるぶん、NISA口座で購入できる株や投資信託の金額には年間で上限があり、非課税で運用できる期間にも限りがあります

 

Q.「NISA」を利用している人は、どのくらいいる?

A.金融庁が2022年末に発表したデータによると、「一般NISA」と「つみたてNISA」を合わせたNISA口座数は1804万4165口座でした。しかしこのすべてが運用されているわけではありません。普段利用しているメインバンクで言われるがままにNISA口座を作ったものの、どうしたらいいかわからず放置されている口座も多いといわれています。そういう意味では、本格的に制度を利用している人はまだまだ少ないといっていいでしょう。

 

Q.そもそも「NISA」が作られた背景とは?

A.日本では、個人が保有している金融資産の半分以上が銀行の預貯金、あるいは「タンス預金」のような現金として眠っているといわれています。NISAはこのお金を株式市場に流し、企業や経済の成長を促すことを目的に生まれた制度。これは国が20年以上前から推し進めている、「貯蓄から投資へ」という政策の一環でもあります。

Q.現行の「NISA」にはどんな種類がありますか?

A.2023年時点の現行「NISA」には、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があります。下記の表の通り、年間で購入できる上限額(非課税投資枠)や、それを保有できる期間、投資可能商品などはそれぞれ違います。

 

大前提として、「一般NISA」と「つみたてNISA」は併用できません。どちらも日本国内に居住する18歳以上の方なら誰でも利用できますが、ご自身の投資目的や運用できる資金などに応じて、どちらかの口座を選ぶ必要があります。

 

一方、「ジュニアNISA」は日本国内に居住する18歳未満であれば利用でき、主に子どもの教育資金を作ったり、生前贈与などに活用されたりしています。ただし「ジュニアNISA」は、5年間の運用期間が終わっても本人が18歳になるまでは売却できない、つまり運用期間の満了までお金を引き出せません。この点が不評だったのか、2023年末で制度自体が終了することになりました。

 

2024年以降には、保有している株式、投資信託などは、年齢に関わらず、非課税での引き出しが可能です。また、廃止に伴い2024年以降は、ジュニアNISAでは、新規購入はできませんが、2024年以降は、5年の非課税期間を超えても、18歳になるまで引き続き非課税で保有できます。

 

Q.「一般NISA」と「つみたてNISA」の違いと、選ぶコツを教えてください。

A.「一般NISA」は、年間の非課税投資枠が120万円。値動きが大きい上場株式から投資信託まで選べる金融商品も幅広いですが、非課税保有期間は5年間と短いのが特徴です。120万円×5年間なので、最大600万円の投資から得た利益が非課税となります。

 

一方の「つみたてNISA」は、毎月一定の額で金融商品を買い付ける積立型で、年間の非課税投資枠は40万円です。金融機関によっては、100円からでも投資できる気軽さが売りですが、選べる商品は限定的で、金融庁が定める一定の条件をクリアした投資信託やETFのみになります。非課税保有期間は20年間と長め。40万円×20年間で、最大800万円の非課税投資が可能になります。

 

選び方としては、少額をコツコツと長期運用して確実な資産形成をしていきたいなら「つみたてNISA」。投資や金融商品についてある程度の知識があり、狙った金融商品で大きく増やしてみたい、年間40万円以上を投資したいといった明確な目的があるなら「一般NISA」です。ただし、一般NISAは、5年で終了し、ロールオーバーも不可能。運用するには期間が短すぎるのでこれから始める人には、おすすめはできません。

 

Q. 「NISA」を利用するメリットとは?

A.「NISA」は口座さえ開設できれば、投資経験の有無や使える資金の大小に関わらず、気軽に始めやすい投資方法です。特に「つみたてNISA」で買えるような投資信託なら、自分で直接株を選ぶための知識は必要ないですし、金融庁が積み立てに向く一定の条件を満たした商品ですから長期で運用を続ければ、リスクもコントロールできるといえます。15年、20年と時間をかけて着実に資産形成するなら、お金は超低金利で銀行に預けておくよりも、NISA口座」の仕組みを使って運用した方がお得になる可能性があるでしょう

 

また、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、老後の資金づくりを目的としているので、60歳以降でないとお金を引き出せませんが、NISA」は運用期間中にいつでも売却でき、お金の引き出しが可能です。急遽まとまったお金が必要になった時に使えるのが、「NISA」の魅力といえるでしょう。

 

ちなみに現行「NISA」の場合、運用途中で売却した分の非課税枠は使えなくなるので、お金を引き出してしまうと長期的な運用額は減ってしまいます。しかし2024年からスタートする「新NISAにおいては、運用途中で売却しても引き出した非課税枠は翌年復活します。この改正で新NISA」はますます使い勝手が良くなることから、投資に興味を持つ人々の間でいま再び注目を集めているのです。この点についてはのちほど詳しく説明します。

 

Q. 「NISA」を利用する上で注意すべきことは?

A.当然ながら、元本割れのリスクはあります。「NISA」は長期で保有し続ければ結果的に得する可能性が高い投資ですが、短期だと損をする場合も多いのが事実。だからこそ、焦って短期で儲けようとしないことです。たとえば子どもの学費や住宅の購入費など、使途が明確な資金を投入するべきものではありません

 

Q.投資初心者が「つみたてNISA」で投資信託を選ぶときのポイントは?

A.投資信託(ファンド)というのは、解約が増えたりしてお金が集まらなければ運用を続けられなくなり、信託期間の満了前に繰上償還されてしまう危険性を持っています。つまり長期投資で利益を出す「つみたてNISA」の場合は、長期保有できるファンドをいかに見極めるかが大事です。具体的には、全世界に投資しているインデックスファンドで、「信託報酬(運用管理費用)」という手数料がなるべく少なく、「純資産残高」が潤沢にある銘柄を選ぶことがポイント。純資産残高は、少なくとも50億円くらいはあると安心でしょう。

 

とはいえ、上記のような条件を満たすファンドは限られているので、あまり難しく考える必要はありません。取り扱っている金融商品は金融機関によって異なります。金融機関で口座を開くときは何となくで選ぶのではなく、自分の運用したい銘柄と信託報酬などを比べた上でチョイスしましょう。

 

Q.2024年度から始まる「新NISA」は、何がどう変わる? どこがスゴい?

A.2024年から始まる「新NISA」は、2023年度までの旧NISAとは全くの別もので、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をひとつのNISA口座で運用できる新制度です。わかりやすく言い換えると、旧NISAでいう「つみたてNISA」が「つみたて投資枠」となり、「一般NISA」が「成長投資枠」に変わって、これらが一本化され併用可能になるようなイメージです。

上の表の通り、年間の非課税投資枠は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を合わせて360万円と大幅に増額します。それに生涯非課税保有限度額の1800万円以内であれば、非課税で保有できる期間も無期限になりました。

 

もうひとつ大きなポイントは、売却をして資産を引き出したとしても、使った非課税枠が翌年に復活することです。

 

たとえばNISA口座で、1800万円分の金融商品を運用していたとしましょう。途中で住居購入のために1000万円分を売却して資産を引き出した場合、運用額は800万円に減ります。この場合、2023年度までの旧NISA(現行NISA)のルールだと、非課税枠で再度金融商品を買うことはできませんでした。しかし「新NISA」では非課税枠が復活するので、翌年から再投資を始めれば、運用額を限度額の1800万円まで充填することができます。

 

つまり資産を自由に出し入れしながら、生涯にわたっての運用も可能になりました。「新NISA」は、値動きはあるものの、必要なときに使うといった預金のような感覚で利用できるのです。

 

Q.「新NISA」における「成長投資枠」は、どう使うのがおすすめ?

A.値動きの大きな株を含め、幅広い金融商品から選べるのが「成長投資枠」。年間の非課税投資枠が240万円と大きいので注目されていますが、これも堅実にいくなら現行「NISA」と同じで、「短期で儲けようとしないこと」が鉄則でしょう。そもそも「つみたて投資枠」と合わせて年間360万円を投資に充てられる人は少数派だとは思いますが、「成長投資枠」まで使って資産形成したいなら、ある程度の知識や経験がない限りは、「つみたて投資枠」と同じ長期保有できそうな投資信託を買っておくのが無難だと思います。

 

Q.2023年中に始めるのと、2024年の新制度からスタートするのと、どちらがお得?

A.先ほども説明したように、2023年度までの現行「NISA」と、2024年からスタートする「新NISA」は全く違う制度です。現行の「NISA」は2023年中ならまだ購入できますが、2024年以降はもう買えません。「一般NISA」は今年から5年、「つみたてNISA」なら20年の運用ができますから、より多くの資産を作りたいなら今年中に現行「NISA」を買って保有しておいた方がお得ですよね。

 

ただし、運用できる5年という短い期間の「一般NISA」は元本割れする可能性もあるのであまりおすすめしません。今から始めるなら、「つみたてNISA」を選択して20年間コツコツ投資し、限度額の800万円を目指すのがよいと思います。

 

ちなみに「ジュニアNISA」は、資金によほど余裕がある人でない限り、今から購入するメリットはあまりないでしょう。その分の資金を、年間投資枠360万円の「新NISA」に充てた方が、長くじっくり運用ができていいと思います。

 

Q.投資初心者がNISAや投資について詳しく知りたい場合、まずはどんな情報を参考にすればいい?

A.巷には投資成功術を説くセミナーや情報商材などが溢れていますが、あまりに偏った知識を得たばかりに、投資で失敗する人は少なくありません。まずは信頼できる情報源から、正しい基礎知識をつけることが大切だと思います。

 

NISAについて基本的なことを勉強するなら、金融庁が作っているNISAのウェブサイト。さらに投資信託について詳しく学びたいなら、投資信託協会のウェブサイトもわかりやすいのでおすすめです。

 

Q.将来に備えるためにも、NISAでの資産形成はすべき?

A.「NISA」を含め、投資は無理してまですべきものではないです。確かに「NISA」の仕組みは利用した方が得だといえますが、投資によって日々の生活に支障が出てしまうなら本末転倒。たとえば年収400万円くらいの子育て世帯で年間40万円の投資信託を気軽に買えるかといったら、あまり現実的とはいえないですよね。

 

それに、お金は使わなければ意味がありません。いま本当に必要なものや人付き合い、人生の楽しみをガマンしてまで「NISA」にお金を投じることが、果たして未来の幸せにつながるのかを考えてみた方がいいでしょう。単純に目先のお金を作るなら、1日パートタイムで働いて5000円を稼いだ方がずっと早いです。老後資金が不安なら、投資で増やす以前に、長く働けるスキルを習得したり、人との信頼関係を築いたりしておく方が効率的かもしれません。

 

働くことと投資で資産を増やすこと、この両輪で考えるのがベストです。いま「NISA」をやらないと損する、満額まで枠を使わないともったいないといった情報に踊らされて、焦らないこと。直近で使う予定がはっきりしているお金は預金としてしっかり確保しつつ、余裕があるときに1万円、2万円からでも「NISA」に入れてコツコツ育てておく。そんな感覚で利用できればいいのではないでしょうか。

 

プロフィール

ファイナンシャルプランナー / 井戸美枝

レック株式会社研究開発部で「バルサン」などの製品開発を担当している、通称「虫博士」。学生時代には農業害虫の生態を研究。以来30年以上、害虫の生態や駆除剤の研究に携わる。学会で研究成果を報告するほか、大学での講演や一般向けの害虫対策講座なども行っている。
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提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

「NISA」で資産形成はじめよう! プロが教える「コア・サテライト戦略」とオススメ銘柄

NISA制度は2024年に大幅なアップデートが予定されている。新しいNISAは、ほったらかし投資にも適した良い制度だと言われるが、現段階で何を学び実践しておくべきかを、資産運用に精通する経済ジャーナリスト・頼藤太希さんに教えてもらった。

こちらは「GetNavi」2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【私が教えます】

経済ジャーナリスト 頼藤太希さん

Money&You代表取締役、中央大学客員講師。19万部超のベストセラー「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)など、投資関連の著書多数。YouTube「Money&You TV」でもお金の情報を発信中。

 

統合NISAを見越して運用の戦略を立てよう

現行のNISAは、2024年に改正を控えています。つみたてNISAと一般NISAを統合したような、使い勝手の良い制度が誕生。ほったらかし投資を始めるには、いまがチャンスと言えます。

 

まだ利用していない人は、23年内からつみたてNISAを利用するのがベスト。統合NISAへのロールオーバー(※1)はできないものの、別枠として20年間非課税で保有できる「長期」運用で、元本割れのリスクを抑えられます。

 

統合NISAはほぼすべての人が有利に始めやすいオススメの制度ですが、実力以上の投資はNG。例えば、半年〜1年ぶんの生活費を賄えるだけの貯蓄がないなら、切り崩して投資に踏み出すべきではありません。また、リスク許容度を大きく超えたハイリスクな商品に安易に手を出すことも控えましょう。そこで提唱したいのが、以下のフローを踏むこと。①リスク許容度を見極めて、②金融資産の特徴を知り、③コア・サテライト戦略に当てはめ、④銘柄を選んだら運用スタートです。③のコア・サテライト戦略は、資産をなるべく減らさず、かつ堅実に増やしていくのに適した投資戦略です。統合NISAとの相性も良好なので、本稿で自分に合った運用方法を学び、資産形成を始めましょう。

 

What is NISA ?

少額投資非課税制度。個人投資家のための税制優遇制度。通常金融商品への投資では、売却益や配当に約20%の税金がかかるが、範囲内で運用した場合は非課税となる。現行では、一般NISA・つみたてNISAのほか、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類がある。

 

【現行】

■つみたてNISA
一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できる制度。長期・積立・分散投資に適した投資信託が厳選されている。投資初心者でも比較的安心して商品を選びやすく、金額も決めたらあとは自動で積立購入してくれる。

 

■一般NISA
株式・投資信託などを年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できる制度。つみたてNISAよりも大きい毎年120万円の非課税投資枠が設定され、株式や投資信託の配当・譲渡益などが非課税対象となる。つみたてNISAとの選択制。

 

【統合・改良! 2024年施行】

■統合NISA
24年以降、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が図られ、新しいNISAが導入。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の区分があるが、併用も可能だ。現行のNISA制度で保有している金融商品については売却する必要はなく、期間満了までは非課税で保有されるが、統合NISAへのロールオーバーはできない。

 

●目玉1:恒久化・無期限化
制度が恒久化され、非課税保有期間が無制限に。非課税保有期間が終わって課税口座に移す作業もなく、より“ほったらかし”で運用できる。

●目玉2:枠の拡大
年間投資枠が大きく増加。つみたて投資枠で年120万円、成長投資枠で年240万円、併用すれば合計で毎年360万円まで非課税で運用できる。

●目玉3:併用が可能に
つみたてNISAと一般NISAのような選択制ではなく、つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能。明快で、投資枠いっぱい大きく運用しやすい。

●目玉4:売却枠の再利用
金融商品を売却して生涯投資枠に空きが出た場合、売却枠を再利用して新しく非課税の投資を始められる。リバランス(※2)もしやすい。

 

※1:一般NISAやジュニアNISAで非課税期間が終了した際に、保有している金融商品を、翌年の新たな非課税投資枠に移管すること
※2:資産配分の変化による偏りを正すこと。配分の変更や、保有する資産を入れ替えるスイッチングを行う

 

【頼藤流運用術1】許容できるリスクを見極める

自分が受け入れられる損失がどのくらいか

リスク許容度とは、“自分が損にどのくらい耐えられるか”の度合い。一般的には「収入・資産が多い」「年齢が低い」「投資経験が豊富」なら高くなる。しかし同様の人でも、リスクに対する考え方が慎重なら、総じるとリスク許容度は低くなる。客観的事実を踏まえたうえで、自分を分析しよう。

 

【頼藤流運用術2】金融資産のリスクとリターンの関係を知る

 

【Tips】ETFは投資信託とは違うもの?

ETFとは証券取引所に上場している投資信託のこと。株式と同様にリアルタイムで価格が変化し、タイミングを見計らった売買ができる。一般的には信託報酬は低い設定だ。

【頼藤流運用術3】コア・サテライト戦略を適用する

 

【Pick up!】銀行預金よりも安全で有利!コア資産には「個人向け国債」もオススメ

個人向け国債は、1万円から購入可能で、最低でも年0.05%の金利を保証。発行元が国なので、民間の銀行預金よりも安全で、金利も多少高い。「変動金利型10年満期 変動10」「固定金利型5年満期 固定5」「固定金利型3年満期 固定3」の3タイプのなかで「変動10年」は、長期金利次第で金利がアップする可能性がある。

 

↑マイナス金利を経て、近年の金利は微増傾向。「変動10 年」の適用利率は基準金利×0.66なので、現在0.33%だ/出典:モーニングスターホームページ「日本国債 10年」(3月7日現在)。なお、3月30日よりウェルスアドバイザー株式会社となり、ホームページも変更

 

【頼藤流運用術4】投資信託を選ぶ

●ポイント1:信託報酬が0.1〜0.3%の商品を選ぶ

投資信託は購入したら、長期間保有することとなる。信託報酬がなるべく安いものを選び、効率良くお金を増やそう。インデックス型・バランス型の信託報酬の目安としては0.1%〜0.3%程度。これ以上高い投資信託を選ぶ必要はない。

 

●ポイント2:リスク許容度に合わせて投資先を決める

リスク許容度が低いならバランス型(4資産均等型)。高いなら、全世界株式や米国株式に投資する投資信託を選び、世界経済の成長の恩恵を享受しよう。広く市場全体の動きを捉える指標に連動する投資信託に、長期・分散投資すること。

 

●ポイント3:純資産総額50億円以上の投資信託がベター

純資産総額とは、投資信託が組み入れている株式や債券など、全資産の時価総額。純資産総額が少ないと、分散投資が実践しにくいため実績に影響が出る、信託報酬が高くなる、途中で運用を停止する繰上償還に陥る、などの懸念がある。

 

【頼藤さんオススメ!! インデックスファンド】

 

【頼藤さんオススメ!! ETF】

 

いざ実践! 統合NISAの活用戦略

総括として、統合NISAの投資枠をコア・サテライト戦略に当てはめよう。実際にどんな戦略が立てられるのか、頼藤さんが3パターンを紹介する。

 

パターン1:つみたて投資枠のみを利用してコア資産に充てる

「コアの投資先は全世界株式インデックスファンドが◎。低コストで世界中の株式への分散投資が実現します。どれか1本に絞って積み立てても、全世界株式インデックス3万円+バランス2万円のように組み合わせてもOK」

 

パターン2:つみたて投資枠と成長投資枠を併用してコア資産に充てる

「成長投資枠を利用してETFを購入すれば、ETFで得られる利益も非課税に。ETFの投資候補は、世界株式『VT』、全米株式『VTI』、高配当株式『VYM』、増配株式『VIG』などです。暴落相場に強い『VIG』がイチオシ!」

 

パターン3:つみたて投資枠をコア資産に、成長投資枠をサテライト資産に充てる

「生涯投資金額をあらかじめ『つみたて投資枠1200万円/成長投資枠600万円』などと分けて、投資信託と株式を購入。年240万円までの成長投資枠は、タイミングを見て国内株式や米国株式に一括投資するのも良いでしょう」

 

※掲載している情報は、2023年3月13日までに編集部が入手したデータや、監修者および編集部の主観に基づきます。投資行為や資産運用による利益を、監修者および編集部が保証するものではありません。
すべての最終判断は個人の責任で、よく考えて行ってください。

初心者でも意外とカンタン! お金を守って増やす「ほったらかし投資」をプロが伝授

大きな話題を呼んだ“老後2000万円問題”に加え、出口の見えない物価高に辟易する昨今。そんないまこそ本気で考えたいのが、資産形成だ。2024年施行の新しいNISAを活用した“ほったらかし投資”なら、大切なお金を守りながらコツコツと増やせる。資産運用に精通する経済ジャーナリスト・頼藤太希さんとともに、投資へ一歩踏み出そう!

こちらは「GetNavi」2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【私が教えます】

経済ジャーナリスト 頼藤太希さん

Money&You代表取締役、中央大学客員講師。19万部超のベストセラー「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)など、投資関連の著書多数。YouTube「Money&You TV」でもお金の情報を発信中。

 

時間を味方にすれば少額からでもラクに資産形成

投資は「難しそう」「損をしそう」と思われがちですが、ルールや戦略を学び実践すれば、お金を守りながら増やすことができます。今回は時間を味方につける“ほったらかし投資”を中心に伝授。無理なく少額から始めても、複利効果が手伝って数十年後には大きな資産となる可能性があります。

 

ほったらかし投資では、投資信託などを積立購入。堅実に増やす王道的な手法である「長期・分散・積立」投資ができるのです。しかも一度資産の分配や購入銘柄を決めてしまえば、あとはほとんど手がかかりません。NISAやiDeCoでも投資信託は対象になっていて、長期間ほったらかす資産の置き場所として最適。これらのおトクな制度も活用しましょう。

 

長期的に見れば、世界経済が成長する限り、投資には必ずリターンが生じます。早めに始めて、長期間の投資を実践しましょう!

↑ほったらかし投資では、短期的な値動きに一喜一憂しないこと。目標額の設定などで売り時もあらかじめ決めおけば、あとは文字通り“ほったらかし”でOKだ

 

投資の種類は

ひと口に投資と言っても、その種類は様々。それぞれリスクの大きさが異なるので、投資する資産にどんな特徴があるのかについても理解を深めよう。ほったらかし投資で初心者が運用しやすいのは、投資信託だ。

 

投資信託の種類は

各投資信託がどんな金融資産に投資するかは、銘柄によって異なる。外国のなかでも、先進国・新興国・全世界などと投資先は多岐にわたっている。複数の資産や複数の地域にまたがって投資するタイプもある。

 

知っておくべき〈複利のチカラ〉

利息を元本に含めて、これを新しい元本として投資に回して計算する方法。利息は雪だるま式に膨れ上がる。統合NISAを例にした下図では、元本を入れなくなると勾配が緩やかになるものの、指数関数的な増大が期待できる。

 

知っておくべき〈72の法則〉

複利の効果があるとはいえ、下記の例①のように、銀行預金並みの利息では元本を2倍にするのに途方もない年月が必要。しかし仮に②の年利3%で運用できれば、現実的な24年で2倍に。目標額や運用計画を決める際は参考にしよう。

 

 

投資の王道[長期]

景気は好況と不況が交互に訪れる。世界全体で見ると、その波を繰り返しながら経済活動は拡大し、株や不動産などの資産価値は上昇していく。長期にわたって投資を続けることで、利益を得られる期待は高くなるのだ。

 

<景気循環>

 

投資の王道[分散]

投資には「すべての卵をひとつのカゴに盛るな」という格言がある。投資資産の価値下落リスクを減らすため、資産を分散させるべきという意味だ。全世界株式などの投資信託を購入すれば、初心者でも簡単に分散投資できる。

 

<主な投資分散の種類>

 

投資の王道[積立]

投資で資産を減らさないコツのひとつは、一気に資金を投入するのではなく、同じ商品を定期的に同額で積立購入すること。価格下落時には同じ投資額で多くの口数を買え、資産価値の上昇時に大きなリターンを期待できる。

 

〈投資信託を購入した場合の例〉

 

※掲載している情報は、2023年3月13日までに編集部が入手したデータや、監修者および編集部の主観に基づきます。投資行為や資産運用による利益を、監修者および編集部が保証するものではありません。
すべての最終判断は個人の責任で、よく考えて行ってください。

1年で4万マイル貯めるには? マイラー上級者が説く、今すぐ実践できる「マイル貯蓄」の極意

今月より日本から海外人気地域への渡航規制が緩和され、航空会社の海外線、国内線ともに旅行客は戻りつつある。ところが、国内はまだしも、海外旅行は記録的な円安や燃油サーチャージ高騰のダブルパンチ。コロナ前よりも旅行費用は大幅にアップしている現状がある。そんななか、「よりお得に海外旅行へ行きたい」と考える人たちから、がぜん注目を集めているのが、“実質0円”で空の旅を楽しめる“マイル旅”だ。

 

果たして、どうしたら効率的にマイルを貯め、その恩恵にあずかれるのか? 航空機搭乗以外の“陸マイラー”活動だけでも年間に大量のANAマイルを獲得しているという筋金入りのマイラー、堀川知之さんに、ビギナーでも短期間で達成できるマイル貯蓄の極意を聞いた。

↑目指せ、実質0円旅

 

カード決済を見直すだけで年間1万2000マイル貯まる

マイラーのほとんどが旅行好き、もしくは飛行機好きだ。堀川さんも旅行が趣味で、コロナ前は年2回海外旅行に出かけていたという。しかし、マイラー歴は約5年と、意外なほど浅い。

 

「旅行は好きでもマイルへの関心は低く、マイルを意識する以前は、貯まったマイル数を見ても『なんとなく貯まっているな』程度の認識しかありませんでした。ところが、この無頓着がたたり、ある日、マイルの一部が失効するという痛恨のミスをしでかしました。ANAやJALのマイルに3年の有効期限があることを知らなかったのです。この失敗に学び、あらためてマイルの正しい価値や使い方を把握しようと調べ直したことが、マイルを貯める直接のきっかけになりました」(堀川さん)

↑話を聞いたマイラーは、ソニー銀行に勤務する堀川知之さん。“ANA派”としてマイル貯蓄に励む日々

 

貯めたマイルは、王道である国内線・国際線の特典航空券への交換に加え、国際線ではエコノミーからビジネスクラスへの座席のアップグレードに利用することもできる。特に堀川さんの興味をそそったのは、1マイルの価値が変動することだった。

 

マイルのお得な使い方はやはり特典航空券への交換です。シーズンや出発時間帯にもよりますが、国内線特典航空券で利用する場合、1マイル当たり数円程度の価値になります。さらに、国際線特典航空券ではビジネスクラスで1マイル当たり5円程度、ファーストクラスでは10円以上の価値になるケースもあります。工夫次第ではより高価値でマイルが使えることがわかると、一気にマイルを貯める意欲が高まりました」(堀川さん)

 

目標を決めることでマイルを貯めるモチベーションが上がる

それでは、これからマイルを始める人に向け、具体的に、堀川さんが実践してきたマイルの貯め方を教えてもらおう。

 

「目標となるマイル数があったほうが貯めやすいので、まずはどこに行きたいかをベンチマークしました。私はハワイ往復分相当の4万マイルが第一目標でした。ハードルを下げて早く目標に到達したいという人は国内線で場所を設定するのがいいですね。リゾート派なら、羽田―沖縄は往復約1万4000マイル(ローシーズン)と、比較的貯めやすいと思います」(堀川さん)

 

最も気になる陸マイラーが効率よくマイルを貯めるコツとしては、取りこぼしを少しでも抑える方法を挙げる。

 

ショッピングや公共料金など日常の決済を、すべてANAカードに集約。ふるさと納税もマイルが付与される『ANAのふるさと納税』を活用しています。またANAカードは、セブン-イレブン、スターバックス、マツモトキヨシといった身近にあるANAカードマイルプラス加盟店でANAカードで支払うと利用金額に応じてマイルが加算されるので、マイルのために、店まで多少距離があってもANAカードマイルプラス加盟店で買い物をする努力をしています(笑)。インターネットショッピングも、Yahoo!ショッピングやAmazonなどの加盟店に、ANAマイレージモール経由でアクセスをして買い物をすれば、マイルが貯まるのでお得です」(堀川さん)

 

カードの刷新やネットアンケートでもチリツモでマイル数がアップ!

さらなるマイル獲得のため、堀川さんは、クレカを一般的なANAカードから、マイラーにはおなじみの『ANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード』に変更した。このカードは利用額に応じ、1ポイントにつき1マイルに交換できるポイントで付与される。優秀なのは、有効期限がポイントをマイルに交換してからカウントされること。マイルに換えなければ実質無期限になるので、使う時だけマイルに交換すれば、有効期間切れの心配が解消されるというわけだ。

 

獲得マイルの増えるキャンペーンや、カードの継続時に付与されるボーナスマイルなど機能が充実しています。ショッピングでも通常のANAカードの0.5%に対し1%付与されるので毎月約10万円の決済で年間1万2000マイルの獲得が可能になりました。年会費は3万4100円しますが、このカードにしてからより取りこぼしが減り、マイルが右肩上がりで増えていきました。さらに1枚で2名まで空港のANA専用ラウンジを利用が可能で、手荷物1個を無料で自宅まで届けてくれるなど、旅行時に便利な実用的な機能も気に入っています! 」(堀川さん)

 

カード決済以外でも効率よくたまるマイル修行がある。

 

ネットアンケートですね。ちりも積もればで1年間続けていけば数万ポイントが貯まるので、それをマイルに交換します。私が行っているネットアンケートでは、通常ポイント数の50%がマイルになりますが、複数のポイントプログラムを経由することで約70%まで交換率を高めています。」(堀川さん)

 

ダメ押しはコレ。
「ANAマイレージクラブ / Sony Bank WALLET」の外貨預金で年4万マイルを突破!

↑ソニー銀行の「ANAマイレージクラブ / Sony Bank WALLET」は、Visa 加盟店で使える Visa デビット付きキャッシュカード。国内の提携ATMで入出金や残高照会が利用できるほか、世界200以上の国と地域でのショッピングに使え、「Visa」および「PLUS」のマークのついた海外のATMでは現地通貨をスマートに引き出せる

 

しかし、ここで満足しないのがマイラースピリッツ! 堀川さんが大いなるマイル増量計画の切り札として導入したのが、年会費無料のVisa デビット付きキャッシュカード「ANAマイレージクラブ / Sony Bank WALLET」だ。同カードの保有者は毎月末の外貨預金残高と投資信託残高に応じてマイルが貯まるほか、預金利息のほかにマイルを受け取ることのできる「ANAマイル付き外貨定期預金」が利用できる。

 

外貨預金は為替レートによって元本割れが生じるリスクがありますが、日本円に比べて高金利のため資産分散・通貨分散の観点からもおすすめできます。さらに、外貨預金と投資信託の月末の残高に応じてマイルを積算するので、資産運用をしながらマイルを貯められることもポイント。私は南アフリカランドと米ドルでANAマイル付き外貨定期預金を利用していますが、これだけで年間に約3万マイル。公共料金やショッピングのカード決済分を加えると、1年で4万マイル以上を貯めることに成功しました。それまで目標到達に少なくとも3~4年かかると思っていたので大幅な期間短縮ですね」(堀川さん)

 

『ANAマイレージクラブ / Sony Bank WALLET』とANAのカードを2枚持ちして、それぞれをうまく使い分けすることが、大量マイル獲得の早道だと結論付ける。

 

やはり劇的に貯まるようになったのは『ANAマイレージクラブ / Sony Bank WALLET』でANAマイル付き外貨定期預金をスタートしてからです。年1万2000マイルから4万マイル台になりましたから。獲得した総マイル数も5年で優に20万マイルを超えました。これまでに貯めたマイルで出かけたのは羽田―那覇、羽田―石垣島、そして来年の1月には、コロナで先延ばしになっていたハワイにも行ってきます。今のペースで貯まっていけば毎年ハワイ旅行ができるかもしれません!」(堀川さん)

 

年間で10万マイルを貯める“ガチマイラー”には及ばないが、初心者にはむしろ、堀川さんの極意は真似しやすいはずだ。マイル貯蓄アップと、お得旅を楽しんでみてはいかがだろう。

 

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取材・文/安藤政弘 撮影/鈴木謙介

おすすめのポイントサイトは? マイナポイントはどうする? カードの達人が教える「ポイ活」の極意

「ポイ活」とは、さまざまな方法で効率よくポイントを貯めたり、お得に使ったりすること。20年くらい前から、主婦層を中心に広がってきました。最近は、カードよりもアプリで管理するのが主流になっています。今回は、ポイントプログラムのポータルサイト「ポイ探」を運営している菊地崇仁さんに、初心者がポイ活を成功させるためのコツやノウハウを教えていただきました。

 

同じカード決済に集約すべし!
ポイ活を成功させるための基本ルール

ポイ活を楽しみながら続けるコツはあるのでしょうか?

 

「『駅から自宅への帰り道にあるドラッグストアよりも駅の反対側にあるお店の方がポイント還元率はいいから、そっちへ行こう』というような、ポイ活のために生活に負担をかける行動を増やす発想は避けた方がいいでしょう。ポイントを貯めるために時間や労力をかけることは、疲弊して長続きしません。

もっとも手軽で簡単なのは、楽天ポイントやTポイントなどの、多くの店舗で使用できる『共通ポイント』を活用すること。共通ポイントが貯まるクレジットカードを使い、たとえ数百円の支払いでも、クレジットカード決済が可能であればカード払いにすると、効率的にポイントが貯まります。クレジットカードが使えない場合のみ電子マネーでの支払いしにし、なるべく現金での支払いは避ける。これが、ポイ活を成功させるもっとも簡単な方法です」(株式会社ポイ探 代表取締役・菊池崇仁さん、以下同)

 

ポイ活の基本ルール

・共通ポイントを活用する
・なるべくクレジットカード決済を使う
・カードが使えない場合は電子マネーを使う

 

メリットいろいろ!
押さえておきたい主要なポイントサービス

ポイントを貯めるとひと口にいっても、その種類は膨大です。どのようなポイントサービスが狙い目なのでしょうか?

 

「楽天ポイント、Tポイント、dポイント、Pontaポイント、あたりが貯めやすいと思います。ほかには、WAON POINT、nanacoポイント。これらの中で、ネットや日常の買い物エリアで使いやすいものを選びましょう。
ほかには、日用品や家電系の買い物でよく利用するビックカメラやヤマダデンキのような家電量販店、最寄り駅やショッピングエリアにあるLUMINEや高島屋などの専門店系、出張や遠方への帰省で飛行機に乗る機会の多い方であれば、ANAやJALなどのマイレージカードもポイントが貯めやすいかもしれません」

 

主な共通ポイント

・楽天ポイント
クレジットポイントの還元率は1%、SPU(スーパーポイントアッププログラム)という独自のポイント倍増サービスがある。100〜200円ごとに1ポイントが貯まる。

・Tポイント
もとは「TSUTAYAレンタル会員証」として発行され、現在ではファミリーマートやガスト、ウエルシアやマルエツなど、多くの大手チェーン店が加盟。200円ごとに1ポイントが貯まる。

・dポイント
NTTドコモが発行。ドコモユーザー以外でもポイントが貯められ、ファミリーマートやローソン、マツモトキヨシなどの大手チェーン店が加盟中。100〜200円ごとに1ポイントが貯まる。

・Pontaポイント
Pontaカードで貯められるポイント。ローソン、KFC、シェル(ガゾリンスタンド)、すき家など、大手チェーン店が加盟。ポイントの付与率は提携先により異なる。100〜200円ごとに1ポイントが貯まる。

・WAON POINT
イオンが発行。イオンモール、VIVRE、ダイエー、マックスバリュなどのスーパーや、まいばすけっと、ミニストップなどが加盟。200円ごとに1ポイントが貯まる。

・nanacoポイント
セブン&アイ・ホールディングスが発行。セブンーイレブン、イトーヨーカドー、デニーズ、ロフトなど、使用頻度の高い大手チェーン店が加盟。100〜200円ごとに1ポイントが貯まる。

 

申請もれには注意!
マイナポイント第2弾がスタート

マイナンバーカードを申し込むと、希望するキャッシュレス決済サービスを指定して受け取れる「マイナポイント」。健康保険証としての利用申し込みと公金受取口座の登録も合わせて申請すれば、1人につき最大20,000ポイントが付与されます。

 

「これは家族全員が対象で、お子さんのマイナンバーカード分は親名義のキャッシュレス決済サービスで受け取れるので、家族分となると高額です。ちなみに、第1弾のときは5,000ポイントの付与でしたが、第1弾で申し込みをした方も差額の15,000円分のポイントは受け取れるので、申請をしていない方は追加手続きを忘れずに。対象となるキャッシュレスサービス決済は、楽天ポイント、PayPayポイント、dポイント、au PAY、WAONほか、いろいろな種類があります。

ポイントサービスというと、企業主体のものが主流だと捉えがちですが、最近はマイナポイントのように、政府主導のものも見逃せません。衣類のリユースや賞味期限の迫った食材を買うなどによって、通常のポイントに上乗せされる形での導入が広がっている『グリーンライフ・ポイント』は、環境省によるサービスですが、今後のポイ活をする上でチェックしておきたいところです」

 

ポイントは寝かさない!
使うから得すると肝に銘じるべし

「最近は、電子マネーもポイントサービスもスマホのアプリで管理できますが、複数のカードを持つよりもアプリをダウンロードした方がかさばらないし、残高がすぐに確認できて便利です」という菊地さん。ただしポイントは貯め込むのではなく、どんどん使うべきだと力を込めます。

 

「ポイントとお金や電子マネーは別物。ポイントは、紛失・失効しても補償されません。そのため、なるべく早めに使ってしまった方が安心です。『毎月20日はウエルシア薬局でTポイントが1.5倍で使える』など、ポイントの還元率が上がるキャンペーンはあります。そのようなキャンペーンスケジュールが暮らしの中で取り込めるのであれば、毎月20日はウエルシア薬局で日用品を買い物するなどのマイルールを作っておくのはいいですね。ただし、5,000円分や10,000円分など、まとまった金額のポイントが貯まってから使おうとすると、ハッキングなどで狙われやすくなりますし、ポイントの有効期限で失効することもあるので、数ポイントでも貯まったら使ってしまうのがおすすめです」

 

オンライン決済は
ポイントサイトを通すべし!

ポイントをより多く手に入れるために、オンラインで決済する場合は、なるべくポイントサイトを有効に活用したいところ。

 

ポイントサイトとは、成功報酬型広告を中心に広告代理業を行うウェブサイトのことで、『おこづかいサイト』とも呼ばれています。無料の登録をすることで利用でき、そのサイト経由でクレジットカードの契約をしたり、自動車保険見積もりをしたり、ネットショッピングやアンケート回答などを通じて、ポイントが加算されるものです。モッピー、ハピタス、ECナビなどが有名ですね。いくつかサイトを見に行って、使いやすそうなところのアプリをスマホに入れておくと、すきま時間にアンケートに答えたり、ここを経由してショッピングしたりすることでポイント稼ぎができます」

 

おさえておきたいポイントサイト

・モッピー

資料請求や会員登録、スマホアプリのダンロードなど、ちょっとした活動でコツコツとポイントが稼げます。無料ゲームで遊ぶだけでもポイントが貯まるのも魅力的。モッピーで貯めたポイントは、Tポイントへ加算できます。
https://pc.moppy.jp

・ハピタス

楽天、Yahoo、イオン、ビックカメラなどのネットショッピングの際にハピタスを経由するだけで、各ショップのポイント以外にもハピタスポイントが貯められます。ほかにも、アンケート回答や、ブログなどのSNSでクチコミをすることでボーナスポイントがもらえることも!
https://hapitas.jp/register

・Miles

すべての移動に“マイル”が付与されるスマホアプリ。このアプリを登録し、GPSを常時使用に設定しておけば、移動方法はAIが自動で判断してくれます。貯まったポ“マイル”は、ドリンクや飲食店の割引チケット、寄付などができます。
https://www.getmiles.com/jp

・ANA Pocket

日常の移動によって、ANAのマイルが貯められるスマホアプリ。「30日で200kmを歩いてみよう!」とか、「自転車と徒歩で合計100km移動しよう!」などの「移動チャレンジ」がいくつか設定されています。登録して目標を達成すると、報酬ポイントが加算されます。マイルを貯めるには、550円の有料アカウント登録が必要になります。
https://www.ana.co.jp/ja/jp/share/ana-pocket/

 

ポイントを貯めたり使ったりするのが面倒なら
「キャッシュバック型クレジットカード」がおすすめ

ポイントを貯める以外にも、お得感を味わえるのがキャッシュバック型クレジットカード。

 

キャッシュバック型クレジットカードとは、カードの利用合計金額から1%以上を自動で還元してくれるもの。『P-oneカード』や『Likeme by saison card』などが人気です。これは、ポイントを貯めたり使ったりするのがわずらわしくても、使いこなせるはずです。ポイントサービスとの併用もできるので、買い物ポイントに加えて、さらにここで利用額の割引を得るという使い方も可能です」

 

危険サイトと浪費には気をつけて!
ポイ活のデメリットと注意点

何ごとにもデメリットは潜んでいるもの。ポイ活をする上で注意するべきことも抑えておきましょう。

 

「ポイントを貯めるのも使うのもアプリを使うのが便利ですが、アプリやウェブサイトの中には、危険なものも存在します。まず、運営会社の名前が明記されているかどうかは必ずチェックしましょう。運営会社無記名で高還元率のポイント付与を謳っている場合、個人情報を抜き取られただけで、ポイントを交換する前に、サイトが閉鎖してしまうこともあります。あとは、『あと数百円でポイントが上乗せになる』というときの衝動買いにも注意。ポイ活に飲まれて時間とお金を浪費し、疲弊してしまいます」

ポイントが使える場面ではどんどん使い、より高還元率になるような方法を追求するのではなく、共通ポイントが貯まるクレジットカード決済での買い物をすればOKとする。これが、ポイ活を成功させるコツだと菊池さんは言います。コツコツと気軽に、ポイ活ライフを続けていけるといいですね!

 

【プロフィール】

クレジットカード専門家 / 菊地崇仁

株式会社ポイ探 代表取締役。2002年に友人と起業し、ポイント交換案内サービス「ポイ探」の開発に携わったうえで、2011年3月に同社代表取締役に就任。 90枚超のクレジットカードを保有し、約150万円の年会費を支払っている。実際に利用することで、信用できる情報提供をめざしているクレジットカードの達人。

HP=http://www.poitan.net/

不動産投資の専門家に聞く、新しい投資方法「不動産クラウドファンディング」って何?

人生100年時代といわれますが、先行きが不透明なこの時代。「万が一に備え、可能な限り資産は増やしておきたい」そう考える人は増えています。とはいえ、一般的に投資は原資がかかり、手を出しづらいというのが現実。そこで開発された投資商品が、2017年に始まった「不動産クラウドファンディング」です。

 

メリット、そしてデメリットは? 始めるコツは? 不動産を選ぶ基準は? など、疑問はさまざま。事業を通して社会課題解決を行う株式会社LIFULL(ライフル)が運営するLIFULL不動産クラウドファンディングの事業責任者を務める、松坂維大(つなひろ)さんに回答いただきました。

 

「不動産クラウドファンディング」とは?

“不動産投資”とはよく耳にしますが、「不動産クラウドファンディング」とはどういうものでしょうか?

 

「通常の不動産投資であれば、ひとつの不動産に対して投資家はひとりですよね。一方、不動産クラウドファンディングは、ひとつの不動産に対して複数人で投資をするというもの。1000万円の物件があれば、複数人でお金を出し合ってその物件を買うというわけです。出し合ったお金で運営会社が不動産を購入し運用、いずれ売却しお金は出資者に戻すのですが、運用期間中に家賃などから得た収益を出資者に分配する、という仕組みです」(LIFULL・松坂維大さん、以下同)

 

現在、不動産小口化商品やREIT(不動産投資信託)など、少額不動産商品もさまざまあります。不動産クラウドファンディングとはどういった違いがあるのでしょうか?

 

「従来の不動産小口化商品は基本、対面での募集でしたが、不動産クラウドファンディングは、すべてがインターネットで完結するというのが大きな違いです。また、REITは証券会社で買えるもので、不動産投資というより、イメージとしては投資信託に近いもの。投資対象として複数の不動産が組み合わされているので、“この物件に投資している”という実感は得られづらいかもしれません」

 

もちろんそれぞれにメリット・デメリットはあるため、自分の資産や環境、投資経験に合わせて選ぶ必要があるでしょう。ではそのメリット・デメリットとは?

 

「不動産クラウドファンディング」3つのメリット

世の中には数々の投資がある中で、ひとつの選択肢となった不動産クラウドファンディング。一体どんなメリットがあるのでしょうか?

 

1.投資へのハードルの低さ

「通常、不動産を買う場合には多額のお金が必要となり、場合によってはローンを組むため、『ちょっとチャレンジしてみよう』という気持ちでは手が出しづらいのが現状。しかし不動産クラウドファンディングなら、インターネットで投資先を選び、1万円~という少額から投資が可能なので、投資に対してのハードルがぐんと下がります」

 

2.細かな管理はしなくてOK

「基本的には運営会社が運営するので、投資家が、その部屋に入居者がずっと入居してくれるよう努める必要もなければ、クレーム対応をする必要もありません。もちろん固定資産税の支払いや、リフォームや補修代金の心配もないので、お金さえ出せばあとは放っておいていいという部分でも、投資へのハードルは低くなります」

 

3.少額分散投資が可能。リスクも最小限

「少額からの投資が可能ということで、リスクヘッジのための分散投資ができるのもメリットです。不動産投資には天災など予測不能なリスクなどもつきもの。分散して不動産を持つことで、リスクを最小限におさえることを実現するのが不動産クラウドファンディングです」

 

デメリットは?

投資初心者にはチャレンジしやすそうではありますが、一方でデメリットはあるのでしょうか?

 

「不動産クラウドファンディングの場合利回りは4%~、運用期間は長くても3年程度なので、大きな利益は望みづらいという部分はデメリットかもしれません。ここ10年ほど不動産の価格は上昇傾向。通常の不動産投資で持っている不動産の場合は、購入時の金額より売却時の金額のほうが高くなり、大きなキャピタルゲイン(保有している株式などの資産を売却することで得られる売買差益)が望めることもあります。

しかし不動産クラウドファンディングは、基本的にはインカムゲイン(資産保有中に得られる利益)。投資した不動産の価値が1.5倍になったからといって、分配金が1.5倍になるということがないのはデメリットともいえますね」

 

また投資商品なので、元本保証がないこともリスクとして押さえておかなければなりません(後述)。

 

いざ挑戦! 投資の手順とは

実際に、物件を決めるところから投資までの流れもおさえておきたいところ。どんな流れになるのか、確認してみましょう。

 

1.気になるファンドを見つける

不動産クラウドファンディングポータルサイトなどをチェック。複数のファンド・運用サービスが一覧で掲載されているため、ぴったりのファンドを見つけられます。

 

2.ファンドの契約詳細を見る

気になるファンドがあれば、各ファンドのページを見て契約の詳細をしっかり確認。

 

3.サービスの会員登録をする

各サービスのサイトで会員登録をします。

 

4.投資家登録をする

実際に投資を行うための、投資家登録をします。本人確認資料などを用意し、各サービスサイトの案内に従って登録を。募集開始後がすぐに締め切られるファンドもあるので、ギリギリに投資家登録するのではなく余裕を持って準備しておくと安心です。

 

5.ファンドに申し込む

投資家登録完了後、好きなファンドに申し込みを。申し込みのタイプは、先着順や抽選などさまざまあるので、希望のファンドがどのタイプかはしっかり確認して申し込みしてください。募集開始時間をうっかり忘れてしまわないよう、不動産クラウドファンディングポータルサイトのカレンダー機能やリマインド機能も活用できます。

 

6.入金

申し込みが完了したら、専用の振込口座に入金。この口座から、投資したいファンドに投資を行うことになります。分配配当金はそれぞれのファンドで決めている頻度、タイミングでもらえ、運用が終了すれば、預け入れたお金が償還されます。

 

「不動産クラウドファンディングは、申し込みから運用まですべてがインターネット上で完結します。この手軽さを魅力に感じたインターネットリテラシーに精通している20~40代の方々からの投資が増えています」

 

投資するファンドは何を基準に選べばいい?

気に入ったファンドがあって申し込む前に、知っておきたい元本保証のことなどを松坂さんにうかがいました。

 

「不動産クラウドファンディングには、元本保証(不動産価値が毀損した場合でも出資額が100%戻ること)はありません。投資なので、残念ながらリスクがまったくないとは申し上げることができません。

ただ、できる限り投資家が損をしないように『優先劣後方式』が取り入れられているファンドもあります。優先劣後方式とは、投資家の出資分を優先出資、事業者の出資分を劣後出資と呼び、万が一元本毀損が起こった場合にその元本毀損は劣後出資から先に負担されるというもの。劣後出資があるかどうかはもちろん、劣後出資の割合はクラウドファンディングによって違うので、投資する前にチェックしておいたほうがいいでしょう」

 

さらに初心者の場合、「優先劣後方式」以外にも注目すべき点があるのだそう。それはどこでしょうか?

 

松坂さんは、
・会社の信頼性
・不動産の将来性
・運用実績

の3点を確認するのがベストと話します。

 

「不動産投資初心者の場合、不動産自体の現在の価格、さらに将来的な価格などが適正かどうか判断することは難しいですよね。でも最低限確認しておきたいのは、まずは不動産クラウドファンディングを運営する会社の信頼性、そして不動産の将来性、最後は運用実績です。リスクとして、会社自体が倒産する可能性はゼロではありませんので、企業サイトに出ているIR情報やPLなどで確認をしてください。また、過去のファンドの運用実績も公開されていますので分配・償還の状況を見ておきましょう。

投資対象不動産についてはエリアの価格推移などがポータルサイトで公開されていますので継続的な価値向上が見込めるかどうかの判断材料になります。インターネットで集められる情報は可能な限り集めてから判断していただくのがベストです」

 

では、どの不動産に投資するか……と悩んだ場合は?

 

「『自分ならこの不動産を買うか?』という観点でいいと思います。不動産そのものはもちろん、建つ場所が人口流入しているエリアなのか流出エリアなのか、再開発されているエリアなのか、駅が近くて利便性が高いエリアなのか。自分が不動産を買うときにここを選ぶかという観点を大切に、選んでみてください。そういった気軽な観点で選んで、まずは運用しながら勉強していくのがおすすめです」

 

インフレ時代は“持っている資産”で稼いでいく

投資初心者のスモールスタートとしては挑戦しやすい不動産クラウドファンディング。最後に、松坂さんに挑戦する前の心構えを聞いてみました。

 

「現在日本ではインフレが起こっており、物価は上昇傾向にあります。株式投資などに比べれば値動きの幅は小さいのが不動産クラウドファンディングですが、給料もなかなか上がらないこの時代に、自分の資産の中から安定収益を上げていくにはいい投資です。少しずつでも、持っている資産自体が自分の代わりに稼いでくれる“不労所得”というイメージで、このインフレ時代を生き抜くために挑戦してみてはいかがでしょうか」

 

【プロフィール】

株式会社LIFULL / 松坂 維大(まつざか・つなひろ)

不動産ファンド推進事業部 ブロックチェーン推進グループ「LIFULL不動産クラウドファンディング」事業責任者として、「ブロックチェーン×不動産」をテーマに活動。グローバル不動産投資プラットフォーム構築の一環として、2020年に国内初の一般投資家向け不動産STOを実現。

 

持ち家でも賃貸物件でも必須!「家財保険(火災保険)」の基礎知識

家を購入する際に加入する「火災保険」。持ち家ならば、自分に資産を守るために当然ですが、では賃貸物件では? 賃貸の場合、契約の条件として「家財保険」への加入が求められるケースが多いはず。「引っ越しにかかる費用を減らしたいんだけど、家財保険ってそもそも必要?」「どんなプランを選ぶべき?」「なるべく安く抑えるコツは?」など、家財保険の基本的な知識と賢い選び方について、保険相談サロンFLPのファイナンシャルプランナー・實政貴史さんに教えていただきました。

 

「家財保険」とは?「火災保険」とどう違う?

住まいの損害に備える「火災保険」。文字通り、火災に遭った際の損害はもちろんですが、台風や水害などの被害、さらに盗難など、さまざまなリスクに対応しています。

 

「家財保険」とは、その一部。持ち家ならば「建物」と「家財」の両方を補償の対象とした火災保険に加入しますが、賃貸物件では、所有者が建物を補償対象とした火災保険に加入しているので、借り手は自身の家財の損害に備え、「家財保険」に単独で加入することになります。では、その“家財”とは?

 

「家財保険の対象となる“家財”は、ベッドやソファなどの家具、テレビや冷蔵庫などの家電だけではなく、衣類や台所用品、化粧品なども含みます。引っ越しのときにトラックに積み込む荷物の、ほぼすべてだと捉えてもらえるとわかりやすいでしょう。

『自宅には高額なものはない』『ふたり暮らしで物は少ないから』などと感じる方もいると思いますが、家財一式となるとけっこうな金額になります。家財保険に加入していれば、自然災害や事故などで発生した損害に対して保険金を受け取ることができ、家財を修理・買い替えすることができます」(ファイナンシャルプランナー・實政貴史さん、以下同)

 

自分のためだけじゃない!「家財保険」に加入する意味は?

保険とは、万が一のときに備えて加入するもの。しかも「家財保険とは、自分のためだけに加入するものではない」と、實政さんは言います。

 

家財保険の補償は、主に次の3つ。

1.基本補償
自然災害や事故などによる家財に対する補償

2.基本的に必ず付けるオプション補償
賃貸中の住居の破損時などに生じる“大家さんに対する損害賠償責任”をカバーする「借家人賠償責任補償」

3.主なオプション補償
他人にケガをさせたり、他人の住居に被害を与えたりした場合に生じる“第三者への損害賠償責任”をカバーする「個人賠償責任補償」

 

「賃貸物件の契約の際に家財保険への加入が必須になるのは、2つ目の借家人賠償責任補償が必要だからです。これは、入居者が賃貸借契約上の『原状回復義務』を果たす必要があるため。原状回復義務とは、借りた賃貸住宅を返すときに、借りてから生じた傷や汚れ(経年劣化は除く)を回復させる義務のことをいいます。火災が発生した、水漏れを起こして床の張り替えが必要になったなど、賃貸住宅に損害が発生した場合、入居者には大家さんに対して法律上の損害賠償責任が発生し、高額な賠償金を求められる場合があります。家財保険に借家人賠償責任補償を付けることで、それに対し、保険金でカバーすることができるのです」

 

家財保険で家財の補償がされる“自然災害”は意外と広範囲。例を挙げていただきました。

・火災、落雷、破裂・爆発
例=ガス漏れによる爆発で食器類が割れた。

・風災、雹災、雪災
例=台風で窓ガラスが壊れ、パソコンが損害を受けた。

・水災
例=台風による洪水や土砂崩れで床上浸水をし、ソファが水浸しになった。

・建物外部からの物体の落下、飛来・衝突など
例=自動車が飛び込んできて、ソファが壊れた。

・漏水などによる水濡れ
例=給排水管からの水漏れで、ベッドが水浸しになった。

・騒擾(そうじょう)、集団行動等に伴う暴力行為

例=近所で暴動があり、投げられた鉄の棒が窓ガラスを割ってリビングのサイドボードを破損した。

・盗難による盗取、損傷、汚損
例=泥棒が侵入し、テレビやオーディオ機器を盗まれた。

 

火災が起きたらどうなる? 家財保険未加入の場合の費用負担

賃貸物件では、トラブル回避のために基本的に家財保険の加入が必須条件となります。では、家財保険に加入しなかった場合、どのような損害が起きる可能性があるのでしょうか?

 

「もし家財保険への加入をせずに、火災で賃貸物件がすべて消失してしまったら……まずは、家財を購入し直す際、すべて自費になります。ソファやテーブルなどの家具・家電、衣類や身の回り品のほか、ゲーム機やステレオなど、すべての金額を足していくといくらになるでしょうか? 大人2人・子ども1人の家庭でもおよそ1000万円くらいの家財があると考えられます。さらに、賃貸物件そのものについては、大家さんに対して法律上の損害賠償責任を負い、賠償金を支払うことになります。家財の新調と住居の復旧工事の負担額は、数千万円にのぼる可能性もあります。これをすべて自己資金で負担するというのは、現実的ではありません」

 

家財保険の具体的な補償内容は? オプションは付けるべき?

上で説明した家財保険の主な3つの補償対象のうち、家財の損害に対する補償が基本補償で、大家さんに対する損害賠償責任である「借家人賠償責任補償」や、第三者への損害賠償責任である「個人賠償責任補償」は特約(オプション補償)です。とはいえ、借家人賠償責任補償は賃貸住宅の場合、基本的に付ける必要があります。一方、第三者への補償は?

 

「個人賠償責任補償を付けるかどうかは任意です。例えば、火元となった火災が隣の部屋にも延焼してしまった、水漏れで階下の住人に被害を与えてしまった、などの場合に補償されますが、ほかにも、買い物中に展示されている商品を壊してしまった、お子さんが自転車運転中に他人にケガをさせてしまったなど、日常生活において、自分自身だけでなく、家族が偶然の事故によって法律上の損害賠償責任を負担する場合の損害も補償するというもの。加入している自動車保険に個人賠償責任補償が付いていたり、すでに自転車保険(個人賠償責任補償とけがや死亡の補償がセット)に加入していたりする場合、家財保険にも付けると重複して加入することになります。この保険は実損額しか補償されないため、保険料の無駄になってしまいます。

 

補償額が高額になり、補償範囲が広いほど保険料は上がるので、賃貸契約時に不動産屋さんから勧められるプランを参考にし、ウェブの試算や保険相談の窓口も活用しながら、内容を検討していくようにしましょう」

【参考】簡単1分で! 保険料クイック試算

 

注意! 地震や津波の被害は補償対象外

地震や噴火、津波などの自然災害は、家財保険だけの加入では補償対象外ということは知っておかなければなりません。

 

「『地震保険』に加入していないと、地震・噴火またはこれらによる津波、地震による火災により生じた損害については補償の対象となりません。地震保険は単独での加入はできないので、家財保険にセットして地震保険に加入するようにしましょう。ただし、地震保険をプラスすれば当然、保険料が上がります。補償内容と保険料の上乗せ金額を計算しながら、自分に合うプランを検討しましょう。

ちなみに、家財保険と地震保険の両方に加入しても補償対象外となるものもあります。自然劣化や経年劣化による損害、寝タバコや天ぷら油からの出火、ストーブをつけっぱなしによる引火などによる重大な過失、故意の損害、戦争や内乱による損害などは補償の対象外です」

 

自己負担とのバランスで考える、自分に適した家財保険の選び方

賃貸住宅入居時の家財保険は、賃貸条件に合う借家人賠償責任補償を満たせば、それ以外は自分でプランを選んだり調整したりすることができます。

 

「まず、家財保険金額については、年齢や家族構成に合わせて同等のものを新たに購入するために必要な金額の目安が設定されています。それを参考に、ご自身に必要な補償額を算出していきましょう。家具や食器、絵画や本など、なにか特別にこだわってコレクションしている方や、衣類やアクセサリーなどにお金をかけている場合は、補償額を少し多めに設定した方がいいかもしれません。

細かい話ですが、『免責金額』を設定することで保険料を安くすることもできます。免責とは、ご自身で設定した金額までの損害については保険金を受け取れず、自己負担をするというもの。免責金額が大きいほど、保険料は安くなります。

次に、補償内容が広いほど保険料が高くなります。特に水災の補償は保険料が高いので、付けるかどうかを慎重に検討しましょう。川や海から離れた場所に住んでいたり、マンションの高層階に住んでいたりする場合は、水災の補償を外すことを検討してもいいでしょう。また、地震保険を付けると保険料は約2倍になると考えておいてください。

保険期間については、長期契約であれば割引が適用されますが、1年もしくは賃貸契約期間に合わせて2年にするのが一般的です」

 

オプションについてはどうでしょうか?

 

「借家人賠償責任補償は2000万円というのが相場で、1000万や3000万というプランに調整することもできます。個人賠償責任補償の補償額は1億、3億、無制限などのプランがあり、保険料は月々100〜300円程度なので、加入しておいたほうがいいでしょう。さらに、その他特約の有無を決めていきます。同様の補償内容でも保険会社によって保険料が異なることは多いので、複数の保険会社から家財保険の見積もりを取ることをおすすめします」

 

保険料を振込ではなくクレジットカード払いにすれば、「Tポイント」や「楽天ポイント」など、ポイント加算を受けられるといったお得も。不動産会社や大家さんの提案するプランのほか、自身でもプランを検討してみて、安心で無駄のない備えをしましょう。

 

【プロフィール】

保険相談サロンFLP ファイナンシャルプランナー / 實政貴史(じつまさたかし)

15年以上の保険業界経験で得た知識を活かし、保険相談サロンFLPサイトの記事を執筆。保険相談サロンFLPのYouTubeチャンネルでは、さまざまな保険情報の解説、毎日新聞ライフコンシェルジュ生活の窓口などでセミナーも行う。保険相談サロンFLP公式サイトのプロダクトマネージャー(運営責任者)を務める。
・HP=https://www.f-l-p.co.jp
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提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

成功の秘訣は? コロナ以降の新しい働き方「副業」の安全な始め方と注意点

コロナ禍に突入して以来、暮らし方はもちろん、働き方も大きく変化しました。収入が減ったり、職場のあり方が変わったりしたことで不安を感じている人や、自由に出歩けなくなり時間を持て余している人もいるかもしれません。そんななか、副業を始めることで将来への不安に備えたり、充実した時間を手に入れたり、以前とは違った暮らし方をしている人が増えてきています。

 

とはいえ、何から始めたらいい? 確定申告は必要? 本業とどうバランスをとればいい? と不安や疑問はたくさん。そこで、副業アカデミーの学長を務める小林昌裕さんに、副業の安全な始め方と注意点などを教えていただきました。

 

コロナ禍で変わった、副業の仕方

「副業」とは、本業とは別に、空いた時間で異なる仕事を行うことを言います。コロナ禍以前にも副業をもっている人はいましたが、コロナ禍になってからはとくに増え、また、副業のあり方にも変化が生まれているそうです。

 

「もともとコロナ禍になる前から、将来のための貯蓄や年金問題、医療費の負担が上がることなどへの心配を、多くの方が抱えていましたよね。老後までに自助努力で2000万円の貯蓄が必要という、いわゆる“老後2000万円問題”も世間を賑わせました。そんななかでコロナショックが起き、今やローンを払うことさえできず、2000万円の貯蓄どころではなくなった方もいるでしょう。給付金はもらえても一時的なものに過ぎませんし、リストラや会社の倒産、店舗経営の難しさなどから、経済的な不安はどんどん大きくなってきています。国としても、借金を重ねて給付金をばら撒いている状態なので円安が進み、今後お金の価値が大きく変わっていく可能性があります。そうなると、老後に2000万円あっても、それだけでは全然足りなくなってしまうんです」(副業アカデミー学長・小林昌裕さん、以下同)

 

そんなお金の不安を解消するためにも、今こそ副業をはじめることをおすすめしたい、と小林さんは話します。

 

「コロナ禍になってからは、在宅で働くことも多くなりましたよね。通勤時間や会食、飲み会なども減ったぶん、その余った時間を副業に充てることができるようになりました。また、Zoomなどリモート環境が整ったことから、オンラインでのレッスンやイベントも急速に普及しました。これまでのように外出して副業するのではなく、家にいながら働くことができる可能性が高くなったため、誰もが隙間時間で副業をはじめやすくなったと言えます。お金のためだけでなく、スキルを磨いたり暮らしを見直したりするために副業を始めている人もいるんですよ」

 

自分の好きなことで稼げる!? 注目の副業とは

副業というと、もっともイメージしやすいのは「Uber Eats」などのフードデリバリー。空いた時間にパッとでき、初期投資もさほどかからないので、誰もが始めやすい仕事です。

 

「デリバリーはかなり需要がありますし、体を動かしたい人にはおすすめです。平日は本業で、休日は気分転換も兼ねてデリバリーするというのもいいですよね。同じようなジャンルでは、ペットのお散歩代行や家事代行などがあります。続いて多いのは、webライターや動画編集などの在宅ワークです。パソコンや専用のソフトが必要ですが、未経験の方でも少し勉強すればできるようになります。また、自分が得意なことをオンラインで人に教える“レッスン副業”は、楽しみながら収入が得られますよね。Zoomを使ったヨガ教室や英会話、占い、ウェビナーの司会代行などの仕事もかなり増えています」

 

【関連記事】Uber Eats、Wolt……従来の“出前”から変わるフードデリバリーの最新事情と活用法

 

なにが得? 副業のメリット

副業を始めるメリットは、なんといっても収入が増えること。本業だけで生活が賄えている場合、副業での収入はすべて貯蓄や娯楽に回すことができるので、将来への不安を軽減したり、好きなことにお金を使えたりするでしょう。収入が増えることも含め、副業にはどのようなメリットがあるのか、小林さんに聞きました。

 

1.収入が増える

「毎月副業だけで40~50万円稼ぐ人もいますが、多くの方は副業でだいたい3~5万円くらいが手に入ればいいかな、と考えていらっしゃるようです。ちょっとしたお小遣い程度の額でも、気持ちにゆとりが出ますよね。5万円くらいなら、どんな人でも時間を有効活用すればすぐに稼げるようになります」

 

2.別の業界・分野に触れられる

「のちに詳しく説明しますが、本業と同じ業界や分野で副業をすることは危険が伴うので、副業では、本業とは違う分野の仕事に関わることになるんです。すると、そこで人脈や視野が広がったり、これまで知らなかった情報や新しい価値観に触れたりすることができるチャンスが生まれます。自分を高めるきっかけにもなります」

 

3.低リスクで始められる

「本業で生計が成り立っている人は、副業を辞めても元の生活に戻るだけなので、困らないですよね。たとえ失敗しても、起業するよりリスクは低いといえます。何かやってみたいな、と思ったら、まず副業で始めることをおすすめしたいです。フリーランスになるための足掛かりにしている人もいますよ」

 

4.在宅でできる

「こんなご時世ですから家を出たくない方もいるでしょうし、本業で疲れているのにそこからまた外で働くのは大変、という方もいるでしょう。在宅での副業は、リラックスした環境でできるのがよいところです。また、空いた時間を使ってできることもあるので、日々の予定が変動する人にもできます」

 

始める前にチェックは必須! 副業のデメリット

副業の最大のデメリットは、やはり時間を使うこと。楽をしてお金を得たい、片手間にちょっとやるだけで収入を増やしたい、と思っていると、続かなかったり希望額に達しなかったりすることが多いと、小林さんは指摘します。せっかく始めた副業をきちんと続けていくにはどうしたらいいのか、注意点とともに教えていただきました。

 

1.時間を使う

「希望の収入額にもよりますが、どんなに少なくても一日に30分は副業のために時間を使います。疲れて帰ってきているのだからゆっくりしたいとか、テレビが見たい、という欲求を抑えて副業に時間を使うのは大変だと思いますが、片手間ではなくきちんと取り組んだ人ほど成果が出ているのが事実です。副業といえど、しっかり向き合って仕事に臨むことで成功できますよ」

 

2.やりすぎると過剰労働に

「特別なスキルなく誰でもできる単純作業の副業は、単価が低く、時間と収入が比例している仕事が多いので、働き過ぎてしまう可能性があるんです。始めるリスクが低いぶん収入も低いので、たくさん働かないと希望額に達しない、ということもあります。睡眠時間を削るなど、体を壊すことにつながるようでは元も子もありませんから、注意しましょう」

 

3.批判されることもある

「副業には、あまりいいイメージを持っていない人もいます。怪しいとか本業に差し障るのではと言ってくる人も。周りに打ち明けたときに批判されたり、嫌な言葉を投げかけられたりすることもあるでしょう。何か言われたとき、人間関係に摩擦が起こることもありますよね。そういう言葉がやる気を損なってしまうことがあるので、誰にも言わずに黙々とできる人の方が成功していますね」

 

副業はいったいどこまで許される?

さて、いざ副業したい! と思っても、気になるのが本業との兼ね合いです。そもそも副業は、会社に許してもらえるものなのでしょうか?

 

「実は、副業を禁止する法律というのはありません。インサイダーなど本業への支障がなければ、法律的には禁止できないんです。ただし、社内規定に副業禁止と書くことは認められていますので、その場合は働き方を考えてみましょう。まず、副業OKの会社であれば何も問題はありませんよね。次に、できそうにない場合は、副業ではく資産運用をしてみてはいかがでしょうか。実は株式投資や不動産、FXなどは副業には当たらないんです。ほかで働くことはできなくても収入を増やすという意味では同じことなので、その方向で考えてみてください」

 

副業収入が月額20万円を超えたら確定申告が必要

副業を始めると、気になるのは確定申告しなくてはならないことですよね。どのようにすればいいのでしょうか。

 

「確定申告は、月に20万円以上収入がある場合に行う必要があります。その際、“普通徴収”で申告します“特別徴収”で申告すると本業の会社で合算されてしまうので、副業の収入を本業の会社に知られてしまうことになります。パートやアルバイトなど企業に属すタイプの副業は特別徴収で申告されてしまうので、個人事業主として副業できる仕事をするといいでしょう」

 

【関連記事】税理士が解説。実はサラリーマンもすべき「確定申告」とその手続き

 

副業を始めるときに心がけること

副業を始めるときに気をつけたいポイントを伺いました。リスクを回避して、楽しく副業を始めましょう。

 

1.本業に迷惑をかけない

もっとも気をつけなくてはならないのは、本業に迷惑がかからないようにすることです。インサイダー取引はもちろん、本業の情報漏洩にも注意が必要です。

 

「当然のことですが、本業で知り得たことを副業で活かすことは絶対にしてはいけません。副業OKの会社であっても、それは裏切り行為になり、解雇されても仕方のないことです。同じ業界内で働くと、本業での知り合いに出会ってしまう可能性もあります。同じ業界や分野で働くことは絶対にやめましょう」

 

2.低リスクの副業からはじめる

初期投資にお金がかかるようなものではなく、まずはリスクの低い副業をスタートさせてみましょう。

 

「本業以外の時間に働くとどういう生活になるのかな? ということを体験してみる、というくらいのつもりで、まずはリスクの低いものからスタートしてみてください。損したり失敗して何かを失ったりする仕事ではなく、いつ辞めても問題がなく、その時間働けば確実に収入になるものがいいでしょう。まずはやった分だけ稼ぐ、という基本的なことを体験してから、そこを元手に投資を始めたり、クリエイティブの勉強に時間を使ったりするとうまく続きますよ」

 

副業成功のコツは?「目標設定」「モチベーション維持」「時間の棚卸し」

最後に、せっかく始めた副業を成功させるためのコツを教えていただきました。

 

1.目標を設定する

「まずは目標設定することです。毎月いくら収入を得たいとか、そのお金で何がしたい、という具体的なことを書いて壁や冷蔵庫など、いつも目にできるところに貼っておきます。本業の他に副業もするというのは大変だし面倒なことなので、気持ちがブレないように目標をしっかり日々確認できると、がんばれるんですよね。失敗する多くの人は、疲れてしまったり目標を見失ったり、飽きてしまったりして、続けられずに辞めてしまうんです。ですから、こうなりたいという思いをきちんと持って臨んでほしいです。

 

また、最初から高い目標設定にするのではなく、ちょっとがんばればできそうな目標を掲げておくのも大切です。高すぎる目標だと、先が遠くて疲れてしまうんですね。最初は、月に5万円の収入を得たところで、何も変わらないと思うかもしれません。でも、それが年間で60万円の貯金になったとき、その60万円を元手に別のことを始めて貯蓄を増やしてみようとか、そのお金でスキルアップできる習い事を始めてみようとか、新しいことを考えられるようになるんですよ」

 

2.時間を棚卸ししてみること

「副業に充てられる空いた時間、というのがいったいいつどのくらいあるのか考えてみます。無駄にしている時間って一日の中で意外と多いんですよ。通勤電車の中でゲームをしていた時間を副業のための勉強に使ったり、家に帰ってきていつもはお酒を飲んでいる時間を副業に充てたり、うまい時間の使い方を考えてみてください。時間を有効に使うことができれば、その時間がすべて収入につながっていきますよ」

 

3.モチベーションを維持する

「本来ならば趣味や余暇に使える時間で副業するので、『面倒くさいなあ』とか『疲れたから今日はやりたくないな』という自分に勝っていかないと、副業は続きません。自分の中で副業への優先順位を上げて、危機感を持ってやれるようなモチベーションづくりをしてください。目標設定をしたら、それを叶えたらどういう未来が待っているのか想像してみるのもいいでしょう。漠然とした老後への不安や、なんとなく貯金しておきたいという気持ちでは続かないので、いくら貯まったら何に使う、いつまでにいくら貯めるたらこういう将来が待っている、という具体的なものを掲げてモチベーションを上げていきます」

 

副業を始めたことで、だらだらと過ごすことがなくなり、生活にメリハリがつく人もいるのだそう。そこでの出会いや、新しい自分の可能性を見つけることができたら、人生にハリも出るはず。まずは自分の生活の中でどのくらいの時間を副業に充てられるか、考えることから始めてみましょう。

 

【プロフィール】

副業アカデミー 学長 / 小林昌裕

明治大学リバティアカデミー「金融マネジメント入門」講師。2009 年にサラリーマンをし ながら不動産賃貸経営をはじめ、区分マンション・都内シェアハウス・地方一棟マンションなどを保有し年間の家賃収入が 3000万円を突破。不動産賃貸経営以外にも 20余りの副業を実践し、年間収益が1億円を超え、2014 年にサラリーマンを卒業。現在は副業を教える学校「副業アカデミー」の運営をしながら、さまざまな大学・企業・団体での講演などを通じて、あらゆる人の収入の柱を増やすために幅広い活動をしている。副業アカデミーは開校から 34年で受講生数 はのべ 2500名を突破した。

 

『お金のなる木を育てなさい』(朝日新聞出版)
副業だけでなく、投資や不動産運用など、労働時間が短くても収入を得られるようになる仕事の仕方について、詳しく説明しています。

マイナンバーカードは証明写真機からも申請可!「マイナンバー」制度の知っておくべき基礎知識

マイナンバーカードの交付開始から、早くも5年が経過しました。総務省の調査によると、全国のマイナンバーカードの交付率は、2021年8月時点で36%。1年前の18.2%と比べ徐々に増えてはいるものの、まだまだ全国的に普及していないのが現状です。

 

政府はこうした状況を打開すべく、特別定額給付金のオンライン申請を可能にしたり、最大5000円相当が還元される「マイナポイント」を導入したりと、2023年までにすべての国民への普及を目指し、さまざまな取り組みを行っています。しかし、セキュリティ面での不安が大きく、いまだ制度自体に疑問を抱いている人も少なくないはず。

 

そこで今回は、マイナンバー制度に詳しい社会保険労務士の松本祐徳さんに、制度に関する基礎知識から、マイナンバーカード保有に関するメリット・デメリットなどを解説していただきました。

 

あらためて学ぶ、「マイナンバー」って何のための制度?

ニュースで度々話題に上がっているマイナンバー。名前は知っていても、導入のきっかけや目的まではわからないという人も多いのではないでしょうか。まずは、その基礎知識からおさらいします。

 

「マイナンバーとは、日本に住民票を持っているすべての人に割り当てられた12桁の番号のことを指します。導入のきっかけとなったのは、2007年に発覚した年金記録問題です。年金の記録・管理不備により本人証明ができず、納付記録が行方不明になるという事件が起こりました。こうした経緯からマイナンバーについての議論が巻き起こり、本人であることを特定する番号として導入されたのです」(社会保険労務士・松本祐徳さん、以下同)

 

では実際に、政府はマイナンバー制度によってどのような社会を目指しているのでしょうか? 運用の目的についても押さえておきましょう。

 

1. 税と社会保障の公平で公正な負担と給付を実現する

「マイナンバーによって個人の所得や、どのような社会保障を受けているか把握しやすくなります。これにより、本来納めるべき税の負担を免れたり、不当に給付を受けたりすることを防止できるのです。本当に給付や補償を必要とする人が、しっかりと支援を受けることができるような、公平で公正な社会の実現を目指しています」

 

2. 行政事務の効率的な処理を可能にする

「行政機関や地方公共団体をネットワークで結んで情報共有することで、いままで大幅に時間と労力がかかっていた個人情報の照会・入力といった業務を効率的に行うことができるようになります」 

 

3. 手続きの簡素化・添付書類の省略を可能にする

「行政手続きを簡素化したり、手続きの際に必要だった提出書類を省略できたりと、私たちの負担を軽くすることも、マイナンバーの目的の一つです」

 

「一元管理をしている」は間違い! マイナンバーの厳しい利用範囲

利用目的はわかっても、「所得や個人情報をまとめて管理されているのはちょっと怖い……」と思ってはいませんか? しかし、よく言われている「マイナンバーで個人情報を一元管理している」という認識は誤っていると、松本さんは言います。

 

マイナンバーによって個人情報が一元管理され、自分の貯蓄や自分の医療情報を常に監視されていると不安に感じている人もいると思いますが、それは間違いです。一つのプラットフォームにすべての情報を集約するのではなく、各機関が持つ情報は、あくまでも各機関によって分散管理されています。手続きなどで情報が必要な場合に、はじめて各機関が持っている情報にアクセスすることができる仕組みとなっています。

さらに覚えていてほしいのは、マイナンバーの利用範囲が、税、社会保障、災害対策という3つの分野に限られているということです。つまり、法律で定められた利用範囲外で情報にアクセスすることはできません。マイナンバーはそれほど厳しく管理されている制度なのです」

 

「マイナンバーカード」には何が記載されているの?

普及率が未だ低迷しているマイナンバーカードについても、理解を深めていきましょう。

 

「マイナンバーカードは、これ一枚でマイナンバーの確認と本人であることが証明できる唯一の身分証明書です。マイナンバーカードには、12桁のマイナンバーはもちろん、氏名、住所、生年月日、性別といった“基本4情報”が記載されています。さらに顔写真とICチップが付いているのが特徴です。ICチップには、電子的に個人を認証できる『電子証明書』の機能が搭載されているため、これを読み込むことで、オンライン上でさまざまな手続きが可能となります。

ここで一つ勘違いしないでほしいのが、ICチップにあらゆる個人情報が入っているわけではないということです。あくまでもICチップに記録されているのは、12桁のマイナンバーや基本4情報、公的個人認証の電子証明書などのデータで、税や社会保障に関する情報など、プライバシー性の高いデータは入っていません。先ほどの説明の通り、税や社会保障に関する情報は各機関で分散管理をしています。必要なときにマイナンバーカードをスマートフォンやパソコンなどにかざすことで、初めて情報にアクセスできるものなのです」

 

いざとなった時に便利! マイナンバーカードのメリット

では実際に、マイナンバーカードを持っているとどんなことができるのでしょうか? まずは、所有することで得られるメリットについて教えてもらいました。

 

1. 身分証明書になる

「前述の通り、マイナンバーカードは公的な身分証明書として使用できます。パスポートや運転免許証と同じように、1枚で本人確認ができる証明書の一つです」 

 

2. 公的手続きが簡略化できる

「マイナンバーカードによって、これまで必要だった提出書類を省略できるだけでなく、各種行政手続きがオンラインでできるようになりました。例えば、確定申告。私もいままで税務署に出頭して申請手続きをしていたのですが、オンラインでできるようになってからは時間の短縮にもつながりました」

 

3. コンビニエンスストアで各種証明書が発行できる

「自治体によってサービスの内容は異なりますが、住民票の写しや印鑑登録証明書、戸籍謄本といった証明書をコンビニエンスストアで発行することができます。役所が空いていないときにこうした書類を取得できるのは、大きなメリットだと思います」

 

4. 国からのさまざまなサービスが受けられる

「マイナンバーカードを持っていることで、税や社会保障、災害対策に関するさまざまなサービスを受けることができます。実際に私は、10万円の特別定額給付金をオンライン申請したのですが、それができたのもマイナンバーカードを所持しているからこそ。手続きがオンライン上で簡単にできるだけでなく、迅速に給付金を受け取ることができました。

また、健康保険証としての利用が可能となったり、一部の自治体で図書館の貸出カードの代わりとして利用できたりと、サービスの幅は広がっています」

 

5. マイナポータルを開設できる

「マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスです。これに登録することで、子育てや介護に関わるさまざまな行政手続きができたり、税や世帯の情報など、行政機関等が保有する自分の情報を確認できたりします。さらに、健康保険証としての利用においては、2021年の10月からマイナポータルで、薬の情報や医療費の情報を閲覧することもできるようにもなります。

ただし、利用するにはパソコンとマイナンバー読み取り対応のカードリーダー、もしくはマイナンバーカードの情報を読み取れるスマートフォンが必要となるので注意が必要です」

 

やっぱりリスクも? マイナンバーカードのデメリット

次に、マイナンバーカードのデメリットについても教えてもらいました。

 

1. 発行申請に手間がかかる

「交付までに1か月ほど時間がかかる上に、マイナンバーカードを役所に直接受け取りに行かなくてはいけないなど、申請に手間がかかるというデメリットがあります。

そしてなによりネックになっているのが、暗証番号です。カードを役所で受け取る際にいくつか暗証番号を設定するのですが、それぞれの暗証番号がどのサービスに使うものなのかしっかり覚えておく必要があります。そうした管理の手間もありますね」

 

2. 取り扱いに注意が必要

「暗証番号が他人に知られてしまい、勝手にマイナポータルにアクセスされてしまうと、個人情報が漏洩したり、勝手に何かしらの手続きが行われてしまったりするリスクも考えられます。つまりマイナンバーカードは、暗証番号とともに所有している人が厳密に管理しなければならないものなのです。

また、自分自身でマイナンバーカードの取り扱いについて理解しておくことも必要です。例えば、ビデオレンタル店やネットカフェなど、身分証明書の提出を求められた際に見せるのは、表面だけ。本人確認に用いる際は、裏面のマイナンバーまで見せる必要はないのです。あくまでもマイナンバーを利用できるのは、法律で定められた利用範囲でのみ。そうしたルールを覚えておくことも、大切です」

 

3. 紛失・盗難のリスクがある

「12桁のマイナンバーが流出しただけでは影響はありませんが、カードを紛失し、氏名と住所などが流出した場合は注意が必要です。マイナンバーカードは、特定個人情報が含まれたカードですので、紛失した場合は個人情報が不当に売買され、DM・電話・メールなどで悪用される可能性がないとは言えません。

もしカードをなくしてしまったら、マイナンバーカードの機能停止し、再発行する必要があります。情報が漏洩し不当使用が疑われる場合は、12桁のマイナンバー自体が変更となる可能性もあります」

 

通知カードを紛失しても申請可能!
マイナンバーカードの申請方法と、マイナンバーを簡単に知る方法

メリット・デメリットを理解したところで、「申請したいけど『通知カード』を紛失してしまって、申請できない!」という人もいるのでは? そもそも申請に必要な「通知カード」と、それに付随した「マイナンバーカード交付申請書」が送付されたのは、2015年。約6年前に配られた書類をなくしてしまった今からでも、申請はできるのでしょうか?

 

「通知カードが再発行されることはありませんが、マイナンバーカードの申請は可能です。『通知カード・マイナンバーカード交付申請書をともに紛失してしまった場合』は、お住まいの市区町村に問い合わせれば新しく交付申請書を発行してくれます。その後は窓口の担当者に従い、手続きを行ってください。『マイナンバーカード交付申請書だけは持っている』という人は、通常の方法で申請が可能です」

 

マイナンバーカードの申請にあたっては、郵送以外にも、スマートフォンやパソコン、街中にある証明写真機などから申請が可能です。「マイナンバーカード交付申請書」を持っている人は、自分に最適な申請方法を見つけてチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

また、マイナンバーがわからないのに「転職先で急にマイナンバーの提出を求められた!」という人も少なくないようです。通知カードやマイナンバーカードを持っていない場合でも、12桁のマイナンバーを知る方法を松本さんに教えてもらいました。

 

「マイナンバーカードを交付申請することが、マイナンバーを知る1つの方法ではありますが、交付には時間がかかります。すぐに知りたいという人は、マイナンバー記載の住民票を取ると記載されていますので、そこで知ることもできますよ」

 

メリット・デメリットを理解し、マイナンバーカード取得の検討を

「マイナンバーカードはメリットも多いのですが、現在受けられるサービスは、みなさんが日常的に使うものではないというのも事実。それが、交付率が上がらない理由の一つでもあると感じています。ですが、急に住民票や印鑑証明書が必要になった時や、国からの給付金を迅速に受け取ることができるなど、いざとなったときに『持っていてよかった』と感じることも多いはずです」

 

マイナンバーカードの必要性は、個人のライフスタイルによっても変わります。メリット・デメリットなどをしっかり理解したうえで、一度マイナンバーカード所有について、検討してみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

社会保険労務士 / 松本祐徳

1971年大阪府生まれ。社会保険労務士松本力事務所代表。物流関係のコンサルタントを経て2012年に社労士事務所を開業、現在にいたる。著書にマイナンバー関連法規を逐条解説した『マイナンバー制度法令・解説集』や、トーハン週間ベストセラーランキングで単行本ビジネス書第6位に輝いた『図解とQ&Aですっきりわかるマイナンバーのしくみ』(宝島社)などがある。

 

「確定申告」すべきサラリーマンとは? 税理士が解説する手続きの手順と税制改正ポイント

前年の所得を申告し、2月16日~3月15日(※2021年は4月15日まで)に税務署へ納税する「確定申告」。個人事業主だけの手続きだと思っている人は少なくないかもしれませんが、実はサラリーマンでも、申告することで還付を受けられるケースがあります。

 

とくに最近は、多様な働き方により、以前より確定申告をする人が増えてきていると、税理士の吉村知子さんは語ります。そこで吉村さんに、サラリーマンに必要となる確定申告をはじめ、押さえておくべきポイントや確定申告をスムーズに終わらせるためのコツなどを解説していただきました。

 

税理士が解説!「確定申告」って何?

まず、確定申告はどのような制度であり、どのような人に必要な手続きなのでしょうか。

 

「確定申告とは、前年1月1日から12月31日までの所得(売上から経費を差し引いた利益)をとりまとめて、所得にかかる税金を計算して税務署に申告を行うことです。これにより、税金が戻ったり、支払う税金が少なくなったりする場合があります。申告期間は、2020年分の確定申告の場合、2021年2月16日から4月15日までに、申告と納付をするように決められています。

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響による特例で期限が延長されていますが、通常は、3月15日が締め切りです。対象は、事業収入があるフリーランスや自営業などの個人事業主や、不動産収入や株取引での所得がある人、法人からもらった金品や懸賞で当たった賞金品といった一時所得がある人などで、確定申告が必要となる収入は広範囲に渡ります。サラリーマンにも必要な確定申告もあわせて、チェックしていきましょう」(税理士・吉村知子さん、以下同)

 

確定申告が必要なのはどういう人?

【個人事業主の場合】

「個人事業主は、『事業所得』という区分で申告をすることになります。個人事業主の【所得(利益)】は、1年間の売上から【必要経費】と【各種控除】を差し引いた金額がプラスの場合は、確定申告が必要になります。なお、【所得】という言葉は、【利益】とほぼ同じ意味と考えてください。所得を計算する式は簡単にいうと、こうなります。

【所得税の算定基礎となる所得金額】=【売上】-【必要経費】-【各種控除】

 

具体例をみてみましょう。

年間の売上が100万円、経費合計が50万円だったとします。この中から、『基礎控除の48万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)』と『社会保険料控除』や『生命保険料控除』などが控除されます。この金額が0かマイナスの場合になった場合は、確定申告をする必要はありません」

 

【サラリーマンの場合】

「サラリーマンの場合、会社が行う年末調整が確定申告の代わりを担っています。よって、基本的には自分で確定申告をすることは必要ありません。ただし、サラリーマンでも確定申告をしなければならない代表的な3つのケースがあります。他にもありますが、この3つが多くの人が該当する可能性が高いものとなります」

 

1. 給与の年間収入金額が2000万円を超えている人

「給与が2000万円を超える場合には、会社に属していても年末調整を個人で行わねばならず、確定申告の手続きをする必要があります」

 

2. 1か所から給与の支払いを受けている人で、副業や株式売買をしている人

「サラリーマンでも、副業や株式売買で利益が出た場合など、本業以外で給与所得および退職所得以外の金額の合計金額が20万円を超える所得金額がある場合には、確定申告が必要となります。20万円というのは、売上ではなく、副業などの所得(利益)のことです」

 

3. 2か所以上から給与の支払いを受けていて、その収入が20万円を超える人

「2か所以上の会社に所属していて、本業となる会社以外からの年末調整が行われていない収入と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える場合は、確定申告の対象となります。ただし、国税庁によると以下の2つの条件に該当する場合には、申告の必要はありません」

・給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下の人

・上記に加えて、給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円以下の人

このほかのケースについては、下記の国税庁HPに記載されていますので、気になる方はご覧ください。

 

「国税庁タックスアンサーNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm

 

サラリーマンでも申告することで還付を受けられるケースは?

サラリーマンが確定申告をすることで還付を受けられ、結果的に得するケースがあります。「義務ではないけれど、確定申告をすることで控除が多くなったり、払いすぎた税金が戻ってきたりするケースには、以下の5つがあります」

 

1. 住宅ローン控除を初めて受ける人

「個人がマイホームを一定の条件のローンを組んで購入した場合で、所得が3000万円以下であることや返済期間が10年以上の住宅ローンであることなどの要件を満たした場合、年末のローンの残高に応じて税金が還ってきます。これが、住宅ローン控除といわれるものですね。住宅ローンを組んで1年目の方は、確定申告をすることで控除できます。尚、住宅ローンを組んで2年目からは年末調整で控除することができます」

 

2. 年末調整で生命保険料控除などの控除書類を提出できなかった人

「サラリーマンの所得の過不足を調整するのが年末調整ですが、期限までに必要な書類の提出が漏れてしまった場合でも、確定申告をすれば控除することができるので、諦めないでください。例えば生命保険の場合には生命保険料控除証明書と会社から発行される源泉徴収票があれば、サラリーマンでも税務署で確定申告の手続きを行うことができます」

 

3. 医療費控除を受ける人

「医療費(通院・入退院時の交通費も含む)が年間10万円(所得年額が200万円未満の場合は所得の5%)を超えた場合、『医療費控除』を受けることができます。尚、医療費控除はご自身だけでなく、生計をともにする家族であれば、配偶者、子ども、両親などの医療費も控除対象となります。この場合、家族の中で最も所得の高い人が一世帯分まとめて医療費控除の申告を行うとよいでしょう。妊婦定期健診や入院・分娩費なども医療費控除の対象となります」

 

4. ふるさと納税や寄付をした人

「『寄附金控除』を受けることができます。最近行う人が増えているふるさと納税では、控除上限額内で寄付を行った場合、合計寄付額から2000円を引いた額について所得税の還付と住民税の控除を受けることが可能です。応援したい自治体に好きなタイミングで寄付できることもふるさと納税のメリットですが、控除される金額は年収や家族構成によって異なり、控除上限額があるので、ご注意ください。尚、控除上限額は、ふるさと納税サイトでご自身の給与や事業所得の金額を入れると自動で計算できますので、利用してみてくださいね」

 

5. 震災など自然災害、火災、害虫、盗難、横領といった被害で損害を受けた人

「一定の金額の所得控除である『雑損控除』の適用を受けることができます。生計をともにする家族であれば、配偶者、子ども、両親などの損害を受けた資産も対象となります」

 

さて、2020年度分から税制改正により、いくつかの変更が発生しています。何が変わったのか、それによって具体的に控除額などに違いは出るのか? などを次のページで解説していただきます。

2020年度分の確定申告の変更点は?

税制改正により、2020年から確定申告にいくつかの変更点がありました。

 

「まず、2019年分は10万円、65万円の2段階だった青色申告特別控除額が2020年分から10万円・55万円・65万円の3段階に変更されます。しかし、65万円の特別控除を受けるには、e-Taxによる電子申告もしくは電子帳簿保存のいずれかを行うことが条件となっていますので、注意が必要です。

また、基礎控除が10万円引き上げとなりました。これまでは所得に関わらず一律38万円だったのに対し、所得制限が加わり、最大48万円に。合計所得が2400万円超の方は控除額が減りますが、それ以外の方は、基礎控除の金額が増えることになります。

基礎控除の引き上げに伴い、すべてのサラリーマンが受けられる給与所得控除も改正されました。給与所得控除は、2020年分から一律10万円分引き下げになりましたが、基礎控除が引き上げられるため、多くの場合、納める所得税の金額は同じになります。

さらに配偶者控除の所得要件が緩和されました。配偶者控除を受けるには、以前は配偶者の年間合計所得が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)でしたが、2020年分以降は48万円以下になります」

 

扶養内、つまり配偶者控除内で働くことにより、手取り収入を増やすことができる「103万の壁」についても変更になるということでしょうか?

 

「下の式をご覧になるとわかりやすいですが、基礎控除が38万円から48万円にプラスになった分、給与所得控除が10万円引き下げられているため、±0となり、配偶者本人に所得税がかからないボーダーラインが年103万円以下ということに変わりはありません」

 

改正前:「給与所得控除65万」+「基礎控除38万」=103万
新:「給与所得控除55万」+「基礎控除48万」=103万

 

確定申告をスムーズに行うには?

毎年2月・3月は確定申告に追われ、憂鬱な時期だと感じている個人事業主は少なくないようです。そこで、多くの個人事業主をクライアントに持つ吉村さんに、慌てずラクに確定申告を進めるためのアドバイスをお聞きしました。

 

「そもそも何から手をつければいいか、わからないと混乱してしまうお気持ちはわかります。でも、毎年決まった手続きではあるので、一度しっかりと流れをおさえて、そのとおりやっていけば、意外とすんなり終わることも多いです。以下の手順で進めていただくのがスムーズです。あわせて、確定申告のポイントもチェックしてくださいね」

 

確定申告の手順

1. 確定申告書類を用意する(税務署からの手引きなど)

2.【決算書作成】

3. 経費になる領収書やレシートを集める

4. 請求書や明細書を用意して、帳簿を作成(会計ソフト入力→決算書確定)

5 .【確定申告書作成】

6. 給与がある方は、源泉徴収票を用意

7. 控除証明書等を集める(生命保険/住宅ローン 寄附金 医療費の領収書)

8. 決算書をもとに、確定申告書を作成

9. 申告内容に間違いがないか確認

10. 確定申告を期限までに提出

11. 所得税を納税(または還付)

 

確定申告をスムーズに行うポイント

①『マネーフォーワード クラウド会計』などのクラウド会計ソフトを使う。

②経費の支払いにははなるべく現金をつかわず、事業用の通帳かクレジットカードから支払う。「①でご説明した『マネーフォワードクラウド会計』は、通帳もクレジットカードに連携するとデータを自動的に会計ソフトに取り込んでくれるので、経理の時短にもなり非常におすすめです」

 

サラリーマンで年末調整していても、確定申告をする必要がある人や、確定申告した方が良い人がいることがわかりました。自分には無関係だと思っていた方でも、還付を受けられるケースがあるので、今一度チェックしてみましょう。

 

【プロフィール】

税理士 / 吉村知子

ビジネス拡大のため、開業してから法人化を目指す個人事業主や法人のための税理士として、ともにビジネスの飛躍を目指す経営のサポートを行う。また、法人や個人事業主の顧問契約だけでなく、個人事業主向けの講座を開講。確定申告をゴールとしながら、経営者として必要となるお金の知識を学ぶオンラインプログラムが大好評。
https://zei777.com/blog/

 

お金持ちになるために切り捨てるべき人間関係を見分ける4つのテクニック ──『人生を変える、お金の使い方。』

人生を変える、お金の使い方。』(千田琢哉・著/学研プラス・刊)は、3千人以上の成功者たちによる「お金の使い方」を分析して、51項目にまとめたものです。そのうち4項目を厳選して、金銭トラブルから学べること、時間をムダにしない方法、最高の投資とは何か、ブーメラン理論を紹介します。

 

 

金銭トラブルから学べること

金銭トラブルを起こしたから絶縁するのではない。もともと絶縁すべき相手だから、必然的にその相手と金銭トラブルになったのだ。
(中略)
金銭トラブルを起こした相手とダラダラ付き合っている人たちは、例外なく悲惨な人生を歩んでいる。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

金銭トラブルが発生したら、回収するよりも「トラブル相手と縁を切る」ことを優先しましょう。貸し倒れコストよりも回収コストのほうが高くつくからです。たとえば、失踪したトラブル相手に貸した10万円を取り戻すためには、興信所に依頼したり回収できるか不安になったりして物心両面で10万円以上のコストを負担することになる、という感覚です。

 

金銭トラブルにおいては因果が逆転します。不誠実な借り手は、利子の支払いを重ねていくうちに、お金を貸してくれた人のことを憎むようになります。やがて返済不能に陥ると、貸してくれた恩人のことを守銭奴呼ばわりします。絶縁するのにふさわしい相手です。

 

 

時間をムダにしない方法

「このラインを超えたら断る」と決めておくと、無駄な時間が削減できる。
(中略)「時間は命の断片であり、その時間を一緒に共有したくない相手とは関わりたくない」

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

「不快」や「気に入らない」という感情を見逃してはいけません。好き嫌いこそが、あなたの人生を左右します。嫌いな相手には、こちらの情報をなるべく与えたくありません。悪用されたくないからです。情報を隠しながらやりとりするのでコミュニケーションに膨大な時間を要します。つまり、嫌いな相手との関係を続けることは、多くの「機会損失」を生み出します。

 

損害をもたらす相手を見分けるために、独自の基準を定めておきましょう。遅刻するときに連絡をしてこない人。ノー・サンキュー。初対面なのにタメぐちの人。グッドバイ。「キライだな」と感じるのは、あなたと価値観が離れているからです。ビジネスでも結婚でも「価値観のすり合わせ」は手間がかかります。価値観が近い人(スキな人)と付き合ったほうが時間はムダになりません。

 

生きていればトラブルや損失はつきもの。ふて腐らずに「勉強代を支払った」と納得するためには、ちょっとした考え方のコツがあります。

最高の投資とは何か

一度も損しなくて済む人生なんて、この世に存在しない。
(中略)
人生には、実際に痛い目に遭って初めて、「なるほど、こういうことだったのか!」と気づかされることも多い。それも含めてすべてが「勉強」だと思うからだ。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

小さいリスクで大きなリターンを得るための投資方法があります。それは「勉強」です。投資には失敗がつきもの。株や債券の投資信託、仮想通貨、マンション購入などで失敗すれば数百万〜数千万円の損失です。しかし、大量の本を買って読んだり学校に通ったりセミナーに参加したりすることによる失敗なんて、たかが知れています。「恐れるべき失敗」と「恐れるほどではない失敗」。うまく見分けて、上手な失敗ができるようになりましょう。

 

 

ブーメラン理論

お金に限らず「損をした」と悔しい気持ちになった経験は誰でもあるだろう。しかし、「損をした」と何かを恨んでいるだけでは、いつまで経ってもあなたの人生は好転しない。
(中略)
結局、すべての原因は、ブーメランを投げたあなた自身にあるのだ。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

本書『人生を変える、お金の使い方。』の著者は、お金を使うことはブーメランを投げるのと同じであると述べています。ブーメランを放り投げると、空中で旋回したあと、投げた人間のもとに戻ってきます。つまりブーメラン理論とは、お金を使えばその結果があなたに必ず影響を与えるというものです。

 

あなたは1日のあいだに何度もブーメランを投げている。その自覚はありますか? 感謝を込めてブーメランを投げれば、当然のように感謝が戻ってきます。見返りを求めずにブーメランをたくさん投げていれば、忘れたころに嬉しいブーメランとして戻ってきます。不幸を呼び寄せるようなブーメランを投げるべきではありません。

 

お金の使い方、発言、行動、すべてがブーメランであることを心がければ、きっと人生はうまくいきます。お試しください。

 

【書籍紹介】

人生を変える、お金の使い方。

著者:千田琢哉
発行:学研プラス

貯蓄よりも投資。これは現代ビジネスパーソンにとっていまや常識である。20代がやっておくべき”投資”について著者・千田琢哉は断言する。「お金は勉強と環境に投資せよ!」使えば使うほど人生が最大化する、本当のお金の使い方を大胆かつ実践的にコーチ!

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ATMでは8000円以上おろしてはいけない。――『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』

財布にお金をかける人は多い。一流ブランドの財布、あるいは、金運を招く財布を持っていれば、なんとなくお金が貯まっていくような気がするからだ。

 

しかし! 『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』(山崎俊輔・著/日経BP社・刊)を読むと、それは間違いらしい。むしろビニール製などの安い財布に少ないカードを入れておくだけのほうがお金が貯まるというのだ。

 

 

お金が貯まる人の財布は軽い!

ファイナンシャルプランナーであり、消費生活アドバイザーでもある著者の山崎俊輔さんによると、「お金が貯まらない人は、高い財布でも金運アイテムを入れてもお金の向きを揃えても、やっぱり貯まらない」とズバリ! お金を貯めたいなら、無駄遣いをしない仕組みや貯まる仕掛けをつくることが大切だそうだ。

 

「無駄遣いをあまりしない財布」を探すとしたら、それは「安い財布」だと思います。なぜなら、財布の値段は、あなたがその財布を開いて買うモノの値段に無意識に影響を与えてしまうからです。(中略)あなたがもし背伸びをして高い財布を買うと、背伸びをして高いスーツが欲しくなり、背伸びをして高級な食べ物を食べたくなります。それに伴って仕事意欲も高まり年収も上がると主張する人もいますが、財布を高いものに買い替えたら自動的に年収が上がる、という相関関係はありません。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

お金を貯めたいなら、むしろ安い財布に少ないカードを入れて、常に”軽く”しておくのがいいそうだ。基本的にはキャッシュカード2枚、クレジットカード2枚で十分とのこと。

 

 

ATMで下ろす現金は8000円がベスト!

財布に入れておく現金も1万円以下のほうがお金が残るという。現金を多く持つと、人は無意識にそれが使っていいお金の範囲と規定してしまうからだそうだ。

 

毎回1万円を下ろして買い物をする生活をやめ、8000円下ろして買い物をしたと仮定します。おそらくATMを利用する回数は増えても、使うお金の総額は少し減ることになるはずです。1万円×5回に対して、8000円×6回(4万8000円)のように、同じ期間で少し節約が実現することになります。もし、お金を下ろす回数が同じなら最大で20%もの節約になります。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

こんな小さな差こそが、お金を貯める原動力になる、と山崎さんは言う。

 

この本を読んでから、私も財布に万札を入れるのをやめ、ATMでは8000円しか出さないことに決めた。どうか少しでもお金が貯まっていきますようにと願いながら。

 

 

口座が1つだとお金が逃げていく?

銀行口座が1つだと、少額の引き落とし履歴がたくさん残る。現金もずるずると下ろし、いつの間にかお金が消えていったいう状況に陥りやすいそうだ。

 

給料などが振り込まれる口座がメインバンクなら、それとは別にサブバンクを開設し、日常生活で使うお金、貯めるお金を分けて管理することを山崎さんはすすめている。

 

1カ月の食費や日用品にかかる費用が見えてきたら、メインバンクから月に1度、1カ月分の日常生活費をサブバンクに移します。そこから1カ月かけて生活費を引き出していくことにします。サブバンクは給料振込み日までにぴったり使い切っていい口座ということになります。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

こうして無駄遣いを防ぐわけだ。ちなみにサブバンクはATM手数料無料のネット専業銀行を選択するのが好ましいとのことだ。

 

 

証券口座でお金を増やす

証券口座はお金を増やすための選択肢としてこれからの時代には欠かせない存在になるという。証券口座は入れたお金は下ろさないと決め、定期的に資金を入金し、運用益を加えて残高を増やしていく口座として利用するのだ。

 

証券口座は銀行口座とリンクさせます。証券会社は特定の銀行口座番号を指定し、そこに入金されると個人の証券口座の残高に反映されます。複数の銀行口座を指示してくることがあるので、メインバンクと同じ銀行口座に入金すれば、同一行内振込ということになり、振り込み手数料が安くなりますし、同一行内手数料無料になる優遇が利用できるなら、無料で振り込みができます。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

証券会社については実店舗もある証券会社を用いるか、ネット専業証券を選ぶか悩むところだが、証券口座はいくつ開設してもいいので、複数を作って、後でどこで取引するか考えてもいいそうだ。

 

 

「100円」で投資家になろう!

最低でも100万円くらいの資金がなければ投資などできない、と思い込んではいないだろうか? が、これは誤りで、現在の投資の最低購入金額はなんと「100円」にまで下がっているそうだ。

 

ネット証券会社であるSBI証券や楽天証券は、投資信託の積み立て投資について最低購入金額が100円でスタートできる選択肢を用意しています。ちょっと前までは毎月数千円くらいを必要としたのですが、さらに一ケタ下げてきたのです。毎日カフェラテ1杯分(400円。毎月1万2000円)を40年間積み立てて運用し続けたとすると、複利効果により、年利3%なら1126万円までお金は増えるのです。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

ちなみに普通の人が普通の投資をしている限り、投資に失敗して借金を抱え込むことはないので安心していいそうだ。

 

投資をはじめると毎日のように株価をチェックしたり、夢中になりがちだが、山崎さんによると仕事やプライベートに悪影響を及ぼす投資はダメとのこと。株価を毎日見る必要もなく、むしろ10年間ほったらかしでOKだそうだ。

 

本書にはビジネスマンが投資デビューするための詳しい解説があるので、お金を増やしたい人は必見! さらに、この本には、上手な節約法、効率のいい稼ぎ方、老後マネーとなる退職金や年金の話まであり、これを読まなければ損をしそうだ。

 

【書籍紹介】

 

読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方

著者:山崎 俊輔
発行:日経BP社

知らないと生涯で2億円損する!? 口座は1つだとお金が逃げる! お金が貯まる人の財布は軽い? 「ほったらかし」投資で1000万!・・・ 何歳からでも間に合う! 日々のちょっとした心がけから将来設計まで知れば絶対得する&人生が豊かになるお金の新常識をやさしく解説。

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あなたと私の「1時間」は価値が違う!?「時間主義経済」という新たな潮流――『新しい時代のお金の教科書』

来週、私はとある20代の男性と食事に行くことになった。彼が食事に行くお金がないというから、食事代は私が払う。私は彼に「お金はいらない。あなたの時間がもらえればそれでいいから」と言ったのだけど、実はこれ、これからの時代の価値の概念らしい。

 

 

「時間主義経済」という流れ

新しい時代のお金の教科書』(山口揚平・著/筑摩書房・刊)によると、今後、お金ではなく時間が価値をなす社会に変化していくという。人々は今までモノを求めてきたけれど、今後はモノ(物品)よりもコト(経験)を求めるようになるという。これは多くの人にとって戸惑う現象のようだ。今までは大きくて立派な家、高級外車など、ステイタスは目で見てわかったし、それらはお金があれば手に入っていた。なのに、今後はその人が何をしてきたのか、何ができるのかというコトのほうに価値があると言われても、混乱してしまうだろう。

 

けれど私にはよくわかる。というか、私はどうやら一歩先に本にある「時間主義経済」なるものに足を踏み入れていたようなのだ。もともと私たちは時給で収入を計算することがある。たとえば、東京労働局が定める東京都の最低時給は958円だ。けれど、この本が説く「時間主義経済」とはそういう均質なものではない。「その人でなければできないこと」「その人によるオリジナルな価値」を時間単位で考えるというものなのだ。

 

 

時給より高額な専門時給

最低賃金を上回る職種というものは前からいくつもある。例えば弁護士に相談する場合は30分で5000円というのが相場だった(最近は初回無料で相談できるところも増えているけれど)。時給にしたら1万円とかなりの高時給だ。カウンセリングも人気がある先生だと1時間1万円以上の料金がかかることも多い。専門知識がある人の時給は跳ね上がる。今後はマッチングサイトの普及で、高時給を得る個人は増えると私は予測している。

 

たとえば私は取材も兼ねてレンタル彼氏を利用することがあるけれど、新人だと時給は2000円程度で、人気があると5000円以上にもなる。また、マッチングサイトで家事代行の依頼を検討しているけれど、そこは新人は1500円程度で、人気の人は1時間3000円近くかかる。調理師などの資格を持っている人や、経験を積んでいる人は料金が高いようだ。1時間に高いお金を払うほど、より満足できる結果が期待できるのだろう。

 

 

さまざまな形の時間の価値

これからはお金よりも時間が重視されるということは、私は理解できる。すでに私は食事をするときに、食事代よりも誰と食事するかのほうを重視しているからだ。貨幣経済的に考えれば「おごってもらえる誰かと食事をして食事代を浮かせる」ほうがオトクだけれど、時間主義経済的に考えれば「ぜひお話してみたい人と食事ができ、時間を共有できるのなら、食事代は自分が出しても構わない」のである。

 

今まで少なくない女性から「男に貢いでまで食事したいなんてミジメだとは思わないの? 女はおごってもらってナンボでしょ? おごってもらえる女になりなさいよ」などと叱られてきたけれど、そろそろ彼女たちの考え方こそが前時代的なのだと言われる日が来るのかもしれない。

 

 

時間の積み重ねの大切さ

本では、積み重ねた時間が価値を高めるということも書かれていた。たとえば裕福な家庭の子どもを正しく育てるためには、お金ではなく時間がかかる、といったように。確かに富裕層のお子さんが行儀の良さを身につけるためにはかなりの時間が必要だ。そうして得た身のこなしは一生の財産となる。

 

このように、一朝一夕では得られないこと、お金では買えない「時間の積み重ねによる成果」に価値が見出される時代になっていくのだろう。だとすると、私がもう何年もさまざまな若い男性と食事を続けていることも、ひとつの時間の積み重ねだ。私は物書きなので、この経験がいつか素敵な物語に熟されれば、それで大満足である。

 

 

【書籍紹介】

新しい時代のお金の教科書

著者:山口揚平
発行:筑摩書房

お金はこれからどうなるのか? お金の歴史とその仕組み、そして変化、未来まで、スッキリ解説します! ▲お金の起源は、物々交換ではなく動かせない石だった?/▲通貨の価値は信用×汎用というシンプルな方程式で測れる/▲国家、技術、経済、社会の変化が、お金を変化させる/▲新しい時代、お金についての10の習慣を意識する。

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アメックスカードが4月からサイン廃止!?セキュリティ面は大丈夫なのか

クレジットカード会社のAmerican Express(アメリカン・エキスプレス)は2017年11月11日、クレジットカード決済時のサイン記入を18年4月に全世界で廃止すると発表しました。発表をうけ、他のカードブランドが追随する姿勢を見せています。ここで改めて、クレジットカードサインの歴史を学び直してみましょう。

 

フランスはどのようにカード不正をなくしたか

American Expressによると、サイン廃止の主な理由は、不正防止技術の向上でサインの必要性が低くなったこと。海外だと、表面に四角い金属チップを埋め込んだ「接触ICカード」がクレジットカードの主流になりつつあります。これなら、決済時に入力するのは本人のみ知りうるPIN(暗証番号)だけなので、不正使用が少なくなります。

 

たとえば、1990年代初頭のフランスではカード不正が多発していましたが、接触ICカードの普及で実店舗での不正は少なくなりました。接触ICカード決済がスタンダードとなり、なおかつPINで本人認証が行われれば、不正はさらに減るでしょう。また、フランスやイギリス、カナダ、オーストラリアといった国々ではSuicaやnanaco、WAON、楽天Edyのような、端末にかざすだけで決済できる「非接触ICカード」も広がっています。取引額は少ないものの、端末にカードをかざすだけ(PINレス)でスピーディーに支払い可能です。

 

翻って日本を見ると、会計時にサインが求められる「磁気カード」がまだまだ使われています。磁気カードの場合、本人認証をするには利用者のサインとカード裏面の署名を目視で見比べるしかありません。店員がそれを判断するのはなかなか難しいという課題もあります。

 

そんな日本でも、2020年に向けて磁気カードから接触ICカードへのシフトが進んでいます。“クレジットカードの100%ICカード化”も、遠くない未来に実現しそうです。

 

American Expressとサインの歴史

次に、サインの歴史を振り返ってみましょう。1891年、American Expressがトラベラーズチェック(旅行小切手) を旅行者に発行し、サインによる本人認証を開始。これがサインの嚆矢となりました。トラベラーズチェック発行時、旅行者は2か所あるサイン欄のうち1か所にサインし、振り出す際、もう1か所にサインします。小切手を受け取るお店等は2つのサインを照合して本人認証。これが1960年代になり、サインパネルに記入されたサインと、売上票に記入されたサインを照合するクレジットカードのシステムに受け継がれました。

 

1970年代に磁気ストライプのないカードから磁気ストライプのあるカードに移行し、2000年代から本格的にICカード決済が浸透していきました。日本はオーストラリアやカナダ、欧州よりICカードの浸透が遅れていますが、今後は日本でも間違いなくICカード決済が主流となるでしょう。

 

それでもサインは残る?

今回のリリースについてAmerican Expressに聞いたところ、サイン廃止は「あくまでもオプション」とのこと。犯罪者は換金しやすい商品を狙うため、高級ブランド品や家電といった高額商品を取引する際は加盟店のニーズに応じて(磁気カードの利用者についても)利用者にサインを求めるそうです。

 

日本でも、スピーディーにレジ処理しなければならない加盟店はサインレスを喜び、不正取引に悩まされている加盟店は引き続きサインを重視するかもしれません。

 

国内だと、スーパーマーケットやファストファッションチェーン、コンビニエンスストア、カフェの一部店舗はすでにサインレスを採用しています。今回の発表を受け、そのような業態はサインレスをさらに進めるでしょう。一方、家電量販店や高級ブランドショップ、百貨店はセキュリティ対策で当面サイン記入を残すと思われます。

 

【著者プロフィール】

クレジットカード評論家 池谷貴

コピーライター、編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元に入社。ディレクターとして雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わっている。雑誌編集については、電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括した。
2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト運営などのサービスを手掛ける株式会社TIプランニングを設立。現在は、ポータルサイトとして「payment navi(ペイメントナビ)」を運営している。 また、書籍として、「NFCビジネス完全ガイド」や「O2Oビジネスガイド」、「パーフェクト・カードセキュリティガイド」「ポイントカードマーケティング市場要覧」などを発行するとともに、執筆や講演も幅広く行っている。