なぜ日本は“スマートホーム化”に出遅れたのか? 家電王が語る世界との違い、普及へのカギ

家電や設備をネットワークに接続して操作できるようにすることで、暮らしがより豊かになり、ホームセキュリティの向上にもつながるのがスマートホームの魅力です。スマートホームは海外や日本でどのように普及し、今後はどのように進化していくのでしょうか? 今回は、“家電王”として知られ、国内外の最新スマートホーム事情にも詳しい中村 剛氏に話を聞きました。

【お話をうかがったのはこの方!】
家電王 中村 剛さん

東京電力エナジーパートナー株式会社 勤務。2002年に『TVチャンピオン』スーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営に従事。現在は“家電王”として動画マガジン『くらしのラボ』をYouTubeとFacebookで毎週配信している他、テレビや雑誌、新聞などの様々なメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類のネコ好き!

 

日本はまだ遅れているものの、スマートホームの普及は右肩上がり

スマートホームの普及状況について中村氏は、「世界で右肩上がりに伸びています」と語ります。

 

「ロボット掃除機などのスマート家電や、セキュリティ、制御などの分野の比率が高く、近年はカーボンニュートラルに向けた取り組みが進むなかでエネルギー管理も重要なセグメントになっています。日本ではまだスマートホームをスマートデバイス単体で語られることが多いと思うのですが、世界ではトータルでエネルギー管理をする方向に向かっています」(中村氏)

資料提供:Statista

 

資料提供:Statista

 

世界ではスマートホーム化が進むなかで、中村氏は「日本は少し出遅れている印象がある」とのこと。

 

「Statista(※)の調査によると、日本のロボット掃除機などのスマート家電の保有率は10%と、中国、韓国、米国に比べて低いです。エンターテインメント関連(Bluetoothスピーカー、スマートTV、ストリーミング関連など)でも先述の3か国は70%以上なのに日本は26%。また、『スマートホームデバイスは保有していない』との設問に対しても65%とずば抜けて高いため、そもそもスマートホームデバイスとは何なのかを理解していないのかもしれません。遠隔操作ができるエアコン等は製品としてはかなり増えているのですが、その機能をちゃんと使えていない場合も多々ありますね」(中村氏)

資料提供:Statista

※Statistaは100万点以上のデータを扱うビジネスインテリジェンスのポータルとして、170以上の業界、150の国と地域を対象とした、統計、業界レポート、市場予測、消費者サーベイなどを提供しています。(statista.com)各調査会社や公的機関含む22,500以上のデータソースから収集したデータに直接アクセスができ、ビジネスにおけるファクトに基づいた意思決定を支援しています。2007年にドイツで設立され、現在、世界14カ所に約1,400人の従業員を擁しています。調査に関するご相談やお問い合わせはsales.japan@statista.comまで

 

日本でスマートホームが普及しないのは「安全性や規制が強いことも理由にあるのではないか」と中村氏は語ります。

 

「たとえば2012年、パナソニックが遠隔でオンオフ制御できるエアコンを発表した後、遠隔ではオフ制御だけになったことがありました。電気用品安全法の観点から、外出先から、オンにすると火事等の原因になるのではないかと“物言い”が付いたんですね。電気用品安全法では今もこたつなどヒーターを搭載する機器の遠隔操作はダメなのですが、そういう制約が日本は諸外国よりも多いのだと思います。そういった点が、スマートホーム普及のハードルの一つかもしれないですね」(中村氏)

 

さらに、日本の文化的な背景も理由にあるのではないか、と中村氏は語ります。

 

「私は2017年に初めてラスベガスで開催されている『CES』(世界的最大級のテクノロジー見本市)に行き、そこでスマートスピーカーを体験しました。しかし、自分も含めて、日本人は音声で命令するのが恥ずかしいんですよね。欧米ではベビーシッターやお手伝いさんが家にいることも多く、音声での指示に抵抗がないのですが、そういった文化的背景が日本にはない、という違いもあると思います」(中村氏)

そこで、今後スマートホームの普及のカギを握るのはデジタルネイティブな若い世代だといいます。

 

「古くはご飯を炊く炊飯器も『主婦にラクをさせるな』なんて話もあったそうですし、私もかつて東京電力のショールーム『くらしのラボ』にいた際には、『食洗機を買いたいから夫を説得してほしい』なんて言われたことも頻繁にありました。でも時代が変わって、女性が働くのは当たり前になりましたし、みんなが結婚しなければいけない時代でもない。デジタルネイティブの若者も当たり前に増えてきました。パリ五輪で日本の若者が活躍しているように、新しい世代が『便利なものはどんどん使おうよ』という形で盛り上げてくれるのがブレイクスルーにつながる気がします」(中村氏)

 

「プロダクトアウト」ではなく、便利な「ユースケース」が重要

さらに、スマートホームが普及していくためには、「メーカーの都合で生み出された『プロダクトアウト』ではなく、便利な『ユースケース』が普及のためには重要」と中村氏は語ります。

 

「たとえば、ペットを飼っている家庭で、ペットを大事に思うなら、不在時に遠隔で見守れるカメラや自動給餌機、体重管理、エアコンのコントロールをするニーズが生まれてきます。そうすると、必要に迫られてそれらの機器を導入して活用し始めるでしょう。さらに、『高齢者を見守りたい』『手ぶらで解錠したい』など、ユーザー視点でのユースケースを提示していくことがブレイクスルーにつながると考えます」(中村氏)

↑手ぶらで開錠できるスマートロックの例。SwitchBotの「SwitchBot ロック Pro」(左)と「SwitchBot 指紋認証パッド」(右)

 

スマートホーム機器を簡単に使えるようにするためには、AIの活用も重要になります。

 

「見守りカメラで24時間撮影し続けても、すべてをチェックしきれないですよね。ですから、『AIでの画像認識』もセットで絶対に必要になります。必要な映像だけをAIで切り取ることで、初めて人間の見守りにも使えるようになるわけです。また、『カメラはプライバシーの侵害がイヤ』という人には、ミリ波レーダーやWi-Fiの揺らぎなどで見守るサービスなどもあります。先にニーズがあり、それに対してユーザー視点でのサービスが提供されていけば、スマートホーム機器はさらに普及するはず。ですが、ただ単にガジェットを提供して『後はDIYで何とかしてね』では、一部のアーリーアダプターの人しか反応してくれないでしょう。スマートホームが提供出来る価値をユーザーのベネフィット(便益)として伝えなくてはならないのです!」(中村氏)

↑MS LifeConnect「AIスマートカメラ 屋外用カメラ/屋内用カメラ」は、高度なAI検知能力により人間や動物、車などを識別。指定した対象物が写り込んだときだけを「クリップ動画」として切り出し、スマホに通知を送ることが可能です

 

↑Aqaraの「人感センサー FP2」はミリ波レーダーセンサーによって最大5人までの多人数検知に加えて転倒検知も可能

 

「スマートホームのメリットは、利便性の先にある暮らしの豊かさ。便利さだけを追求していくのでは窮屈だし疲れてしまいます。カメラで見ることも含めて、全てをデジタルで制御するといった話だと、良いことばかりではないのだと考えます。結果的にその先にある暮らしが豊かになる、楽しくなるのが重要。今で言うと『ウェルビーイング』につながる『スマートなホーム』というのが本来のあるべき姿だと思います」(中村氏)

 

本当の意味で家がスマートホームになるためには、スマートデバイスを導入するだけでなく、AIで意味付けしてサービス化していくことも重要。

 

「日本は超高齢化に突き進んでおり、見守る側の人も足りなくなるので、データにAIで意味付けすることがまさしく必須です。『こんなアラームが出たら、誰かが自宅に訪問します』といったサービスとの連携が必要になるでしょう。最終的には、家自体が人格のようなものを持ち、住人の最適で豊かな暮らしを提供していく。さらに、クルマの自動運転が普及すると、おそらく『家』のカテゴリ中にクルマも入ってくるでしょう。移動している間に勝手に進んでくれるとなると、家の部屋にいるのと変わらない状態になりますから。そういったことも含めて、その人の周りにあるものすべてを含め、スマートホームのメリットを享受するが私のイメージです」(中村氏)

 

スマートホームプラットフォームの“一元化”が進む

当初、グーグルは「Google Home」、アマゾンは「Amazon Alexa」、アップルは「HomeKit」という独自のスマートホームプラットフォームを展開してきました。各メーカーの製品がそれぞれに対応するには、手間もコストもかかるため、2022年、それらを統合する規格として、無線通信規格の標準化機関であるCSA(Connectivity Standards Alliance)が「Matter」(マター)を立ち上げました。これにより、スマートホーム規格の標準化が進められていますが、まだまだ課題があるといいますす。

 

「日本の家電メーカーと話をすると、共通規格である『Matter(マター)』に対してあまり積極ではないと感じます。統一するといっても、電源のオン・オフやエアコンの温度を1℃上げるといった基本機能を統一するのは簡単ですが、メーカーだけのオプション機能まではなかなか統一できません。そこで、エアコンはこうしましょう、ロボット掃除機はこういう風にしましょうと、カテゴリごとに取りまとめが進んでいるわけですが、先述のCSAでの議論に積極的に入っていかないと、蚊帳の外でプロトコルが決まってしまいます」(中村氏)

 

続いて住宅設備に目を向けてみましょう。日本では住宅設備やエアコンなどの家電を接続してエネルギー管理を行うための共通規格である「ECHONET Lite(エコーネットライト)」が普及し、「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」によって空調や給湯、エネルギー管理などが行われています。

 

「住宅設備系はECHONET Liteで接続しつつ、スマート家電はMatterで連携し、それらを統合するシステムを組んでいく。今後は、このような流れで進んでいくと思います。例えば三菱地所の『HOMETACT(ホームタクト)』の場合、ECHONET Lite系はLIXILの仕組みをベースに、スマートデバイスと組み合わせてサービスを展開中です。また、マンションのエントランスの顔認証などの仕組みは自社だけではできないので、DXYZ(ディクシーズ)と連携してスマートホーム化の実績をたくさん積み上げているところです」(中村氏)

↑HOMETACTで制御できる機器の例

 

↑HOMETACTとDXYZの顔認証プラットフォーム「FreeiD」が連携した例

 

社会課題の解決に向けて住宅設備メーカーと不動産会社などが取り組んでいる事例もあると中村氏は紹介しました。

 

「社会問題化している宅配便の人手不足対策として、インターホンと玄関錠を含めてスマート化し、フリマアプリの『メルカリ』の荷物を自宅の宅配ボックスから発送できるサービスなども始まりました。オートロックがあっても、認証された宅配業者であれば各戸の宅配ボックスのある場所まで入れるようになりました」(中村氏)

↑自宅からEC商品・レンタル商品などが発送できる「Smari(スマリ)サービス」に対応した宅配ボックスも登場

 

「さらに、家のカギがスマート化していれば、次は顔認証で入れるとか、近づいたらカギが開くというのが当たり前になっていくと思います。たとえば、スマホのGPSで自宅近くに入ったことが分かってから数分間以内にBluetooth圏内に入ると、解錠するスマートロックもある。極めて便利ですから、『便利なら使おう』という形で導入が進みます。このスマートロックのハンズフリー解錠にしても、CSAの中でMatterとは別のAliroの規格として検討が進んでいるところです。そうやってどんどん外堀が埋まっているので、日本でも、ぜひ便利な現実を存分に享受してほしいと思います」(中村氏)

↑ハンズフリーでの解錠やオートロックが可能なQrio Lock

 

まずはスマートリモコンから始めてみては

では最後に、スマートホームに興味がある人に対して、どこから始めればいいのかアドバイスをいただきました。

 

「エアコンが一番分かりやすいですね。既存のエアコンを含めると、赤外線対応の『スマートリモコン』を使うのが汎用的なスマートホームの第一歩ではないでしょうか。近年は夏の暑さがひどいので、エアコンで冷房しがなければ熱中症の危険性があります。ペットがいたり、小さい子どもや老人がいたりする家庭では室内の温度管理が特に重要ですが、スマートリモコンの機能を使えば、外出先でもエアコンのオンオフや設定温度調整が可能になりますし、一定の室温になったら冷房をオンにする設定も容易にできます。自宅にいるときでもスマートスピーカーと連携して『エアコンを消して』『エアコンの温度を1℃下げて」といった音声操作は意外と便利です。カーテンを自動で開け閉めできるデバイスもあって、快適な目覚めにつながります。まずは興味を持ったそのあたりから使ってみてください」(中村氏)

↑+Styleのスマートリモコン「マルチリモコン PS-IRC-W02」。500種類以上の赤外線リモコンデータがプリセットされているため、セットアップも簡単です

 

↑アプリ操作や音声操作、リモートボタン、照度センサーなどで自動操作ができる「SwitchBotカーテン3」

 

Smariで「メルカリ商品の自宅発送」が可能に! 留守でもオートロックを開錠する方法とは?

三菱商事が展開する、EC・レンタル商品の発送・返却・返品サービスのSmari。このサービスを使えば、コンビニ・駅に設置されたボックスのほか、自宅の宅配ボックスからでも荷物の発送ができます。一般的な宅配ボックスが荷物の受け取りにだけ対応しているのに対し、そのボックスを発送にも使えるというのが、Smariの特徴です。

 

Smariを使えるレンタルサービスやフリマアプリは徐々に増えています。そしてこの9月から、大手フリマアプリのメルカリでもSmariを使って、匿名配送サービスである「らくらくメルカリ便」などを利用できるようになりました。本記事では、このSmariの魅力についてお知らせします。

 

宅配ボックスから荷物を発送できるのが大きい

コンビニや運送業者の営業所に行かずとも、家に設置した宅配ボックスからモノを発送できるのが、Smariの大きな魅力です。2023年にリリースしたSmariは、対応サービスを増やしており、Yahoo!オークション、メルカリなどのフリマアプリでの商品発送のほか、ファッションレンタルサービスのairCloset(エアークローゼット)などで借りた商品の返却時にも使えます。

 

Smariのシステムのキモになるのが、対応宅配ボックスに貼られたQRコードです。たとえば、らくらくメルカリ便をSmariで発送する場合は、ユーザーは宅配ボックスに荷物を入れてから、メルカリのアプリで発送方法にSmariを指定。アプリから宅配ボックスのQRコードを読み込むと、画面に暗証番号が表示されるので、その番号でボックスをロックします。すると、宅配ボックスの位置と暗証番号が運送業者に通知され、配送スタッフが荷物をピックアップできるという仕組みです。

↑Smari対応宅配ボックスに貼り付けられたQRコード

 

↑メルカリのアプリでQRコードを読み込むと、暗証番号が表示されます

 

2023年にスタートしたSmariは、もともとコンビニのローソンや駅に設置されたボックスのみに限られたサービスでしたが、首都圏の住宅にも対応範囲を拡大。そして、2024年9月以降は、メルカリへの対応と同時に、全国の住宅からの発送が可能になります。

 

マンションのオートロックは、インターホンとの連携で突破!

上記は戸建てのケースですが、マンションの場合はオートロックというハードルがあります。このロックを解除しなければ配送スタッフがマンションに入れないので、荷物をピックアップできません。

 

通常、マンションを訪れた人は、共用玄関のロビーインターホンから各住戸を呼び出し、その住人がロックを解除するという流れになります。しかし、住人が不在のときでも宅配ボックスにアクセスできるようにしなければ、Smariのサービスは成立しません。

 

そこで、Smariを運営する三菱商事は、マンション向けインターホン大手のパナソニックと協力。アプリとインターホンのAPI連携により、宅配ボックス用の暗証番号をロビーインターホンに入力することで、オートロックを解除できる仕組みを開発しました。

↑ロビーインターホンに表示された、暗証番号入力画面。パナソニックのマンション向けインターホン「Clouge(クラウジュ)」「Clouge SQUARE(クラウジュスクエア)」が、Smariに対応します(写真はクラウジュ)

 

Smari対応宅配ボックスには2つのサイズを用意

戸建て住宅向けのSmari対応宅配ボックスも、パナソニックが販売しています。それが、宅配コミュニケーションボックス「e-COMBO LIGHT」で、みかん箱サイズのミドルタイプと、12Lのウォーターサーバーを2つ収納できるラージタイプの2サイズを用意。素材には、ヘルメットにも使われる、丈夫な樹脂を使用しています。カラーリングは7種類で、ブラック2種、シルバーのほか、木目調のものもラインナップします。

↑Smari対応宅配ボックス・e-COMBO LIGHT。写真のカラーはステンシルバー

 

鍵は電子式で、単三電池6本で動作。据え置きのほか、2つ重ねての設置や、壁への埋め込みなどの置き方に対応します。

 

いつでも荷物を受け取りできる…という点で便利な宅配ボックスでしたが、Smariによってついに発送まで可能になりました。通常の宅配便の発送にはいまのところは対応していないものの、一部のオークションやフリマアプリを頻繁に利用するという方にとっては、便利なサービスになることは間違いありません。

Z世代の約半分が持ち物を「資産」と想定。「売る前提で買う」Z世代の心理

メルカリは8月7日、「世代別の消費行動と資産認識」に関する調査結果を発表した。同調査では、18歳~69歳の男女、1030名を対象とし、特にZ世代(18歳~24歳)に焦点を当てている。その結果、約2人に1人が、自分の持ち物を売ることを前提に買い物を行っていることが明らかとなった。

 

“売る事を前提に買う”のはZ世代が最多の59.1%

メルカリ総合研究所(運営:メルカリ)は、2023年7月11日~12日、全国18歳~69歳の男女1030名を対象に「世代別の消費行動と資産認識」に関する調査を行った。本調査では、各世代の年齢構成をZ世代(18歳~24歳)、ミレニアル世代(28歳~43歳)、バブル世代(54歳~58歳)と定義している。

 

調査の結果、フリマアプリ利用率は全体で56.6%。世代別には、Z世代が64.1%、ミレニアル世代が60.2%、バブル世代が51.6%となった。また、フリマアプリ利用者のうち、54.2%が「新品購入時にリセールバリューを考える」と回答。最も高いのはZ世代で、59.1%だった。

 

フリマアプリの出品理由では、「使わなくなったので、欲しいと思う人に使ってもらいたいから」が最も多く64.3%。Z世代は「売ったお金で欲しいモノを購入するため」という理由が最多で62.9%であった。これはバブル世代と比較すると約2倍で、このことからも特にZ世代が自分の所有しているものを資産としてみているといえる。

↑フリマアプリの利用率は、Z世代が最も高く64.1%だった。「世代別の消費行動と資産認識」調査より(以下グラフの引用全て)

 

↑新品購入時にリセールバリューを考える世代もZ世代が最多の59.1%だった

 

↑フリマアプリ出品理由では、「使わなくなったモノを欲しいと思う人に使ってもらいたい」が64.3%で最も高い。一方、Z世代で最も多い理由は「売ったお金で欲しいモノを購入するため」であった

 

Z世代の約2人に1人が自分の持ち物を「資産」と認識

こうした所有意識や消費行動における世代間での違いは、次の調査結果からもわかる。「保有しているものを売れば欲しいモノが買えるという想定で、売る前に欲しいモノを購入することがあるか?」という質問では、全体で25.9%が「ある」と回答したが、Z世代では約1.6倍の42.7%にのぼった。

↑「保有しているモノを売ってから欲しいモノを購入する経験がある」と回答した世代は、Z世代が最も高い42.7%。家にある持ち物の資産価値を裏付けにして購入する傾向が見て取れた

 

これは “家にある持ち物の資産価値を裏付けにして買う消費行動” のあらわれで、Z世代の約2人に1人が「自らの持ち物は現金化しやすい」と回答していることからも、Z世代を中心に、所有するものを資産と捉えて購買を行うことが広く普及するようになったといえよう。

↑バブル世代の約2.8倍のZ世代が、「自らの持ち物は現金化しやすい」と考えていることがあきらかとなった

 

調査を監修した慶應義塾大学 商学部 山本晶教授は、「売る事を前提に買う、所有するモノを資産と捉えて購買を行うという新しい消費者行動は、デジタルネイティブかつフリマアプリネイティブともいえるZ世代を中心に顕著にあらわれている」と分析。消費者の購買行動の予算は、これまで「現金」が前提だったが、今や消費者の頭の中の財布には、現金、預貯金、株などの金融資産だけでなく「所有物」が含まれるようになったという。

↑慶應義塾大学 商学部 山本晶教授

 

資産認識については、他の世代と比べてZ世代が「資産」としてみる傾向が強いもののトップに「暗号資産」、次いで「アクセサリー」、「靴・スニーカー」が並ぶ。山本教授は「スニーカーやアクセサリなど、身の回りの日用品の売却益を前提にモノを購入する行動は消費者行動として新しい」とし、フリマアプリやオンライン買取などの登場と普及が、所有物を売却することを簡便化し、結果として「資産」としての流動性を高めていると考えられると語った。

 

越境ECも強化していく方針

メルカリでは、「持ち物を売ることを想定して買う」循環型消費をより広げる取り組みとして、UXのアップデートを行ってきた。希望価格の登録機能や、絵文字でのリアクション、取引画面でのテンプレート機能などを提供していき、ユーザーに楽しく簡単にサービスを利用してもらえるよう今後もさらなるUXのアップデートを予定しているという。

 

また、Web版の機能強化も予定しており、国外からの越境ECを拡大。メルカリ 執行役員 CXO Marketplaceの前川美穂氏は「海外での日本商品の購入ニーズをとらえることで、国内のユーザーが出品した商品がより売れる体験を広げていきたい」と、メルカリ体験のチャネル拡大について語った。

↑メルカリ 執行役員 CXO Marketplaceの前川美穂氏

 

また、前川氏は「より幅広い世代で2次流通利用が当たり前になるための取り組みを促進するために1次流通と連携していき、その先に無駄がない世界を目指していきたい」と循環型消費促進への展望を語った。

 

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2018年のSNSは何が流行する? 2017年の流行ワードから紐解く2018年ITトレンド

ハッピーニューイヤー! ついに終わってしまいましたね、2017年。皆さんの2017年はどんな年でしたか?あっという間に過ぎた一年ですが、IT業界には様々なサービスが立ち上がり、アーリーアダプターたちの心を躍らせました。2017年の締めくくりとして、私が今年気になったIT界の流行を2018年の展望を踏まえてお話ししたいと思います。

1.「インスタ映え」

インスタ映え−−今年はこのワードを外すことはできないでしょう。写真共有サービスInstagramで「いいね」を多く集めそうな写真を撮影するために、人々は街へ出かけ、ショップは見栄えの良い商品や撮影スポットを用意しました。2017年初頭時点の国内ではまだそれほど普及していなかったInstagramが、ユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞を受賞するほどメジャー化するとは思いも寄りませんでした。

 

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そもそも、Instagramは最近始まったサービスではありません。2010年にアメリカのベンチャー企業がアプリをリリースしたのがスタートで、当初は写真愛好家が好んで利用するサービスでした。大ブームが起きる前から使っていた国内のユーザーも、このブームにはさぞ戸惑ったことと思います。当初は正方形のみの写真を一枚投稿するスタイルでしたが、現在では長方形の画像を複数枚投稿することができ、フィルターの数も増えるなど、ユーザーのニーズに合わせて変化しています。

 

Instagramを運営するフェイスブックジャパンによると、「2017年日本で人気のあったハッシュタグ」は、1位「#猫/#ねこ」、2位「#写真好きの人と繋がりたい」、3位「#可愛い/#かわいい」、4位「ファインダー越しの私の世界」、5位「#ハンドメイド」です。ハッシュタグに単語ではなく文章を入れるのは、日本国内ならではのカルチャーだそう。ハッシュタグのフォローができる新機能も発表されたので、来年はさらにハッシュタグの使い方が重要になりそうです。

 

また、Instagramに「ストーリーズ」というショートムービーの投稿機能が登場したのも2017年です。「スターバックスに行ったらInstagramだけど、マクドナルドならTwitter」と言っていた女子高生たちも、24時間で自動的に消えるストーリーズには”盛れていない”風景を投稿しています。「2017年日本で人気のあったロケーション」には、例年とほぼ変わらず、1位「#東京ディズニーリゾート」、2位「#ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」といった観光スポットが並ぶのですが、その投稿内容はより日常的で楽しいものに変わってきているとのこと。2018年は「インスタ映え」を意識しない自然な投稿がInstagramを埋め尽くすのかもしれません。

2.「スマートスピーカー」

2017年は日本の”スマートスピーカー元年”と言っても過言ではないほど、スマートスピーカーが次々と発売されました。前述のユーキャン新語・流行語大賞には、「AIスピーカー」がノミネート。「スマートスピーカーなのか、AIスピーカーなのか」という声も聞こえてきますが、IT界では「スマートスピーカー」と呼ぶべきという意見が主流のようです。

 

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国内市場でスマートスピーカーの先陣を切ったのは、LINE。「Clova WAVE」は独自の音声アシスタント「Clova」を用いたスマートスピーカーで、LINEを送信できることが大きな特徴です。続いて、グーグルの「Google Home」が発売されました。こちらの音声アシスタントは「Googleアシスタント」で、誰の声かを認識する機能を持っています。そして、スマートスピーカー市場で圧倒的なシェアを持つAmazonの「Amazon Echo」が発売されました。こちらに搭載されている音声アシスタントは「Alexa」。「スキル」と呼ばれるアプリのような仕組みを使うと、機能を拡張していくことができます。これ以外にも、ソニーやオンキヨーパイオニアなどがGoogleアシスタントやAlexaを採用したスマートスピーカーを発売しています。

 

”「OK,Google」と呼びかけるのが気恥ずかしい”などの声も挙がったスマートスピーカーですが、キーボードや文字パネルを使った入力ではなく、音声で入力可能な点が子どもやシニアに受け入れられているようです。とはいえ、指示をしても「わからない」と返されたり、聴きたい曲名を指定しても同名の別の曲がかかったりと、画面で選んで指示をした方が早いときも多くあります。

 

2018年には、音声アシスタントにSiriを搭載した「HomePod」がアップルより発売予定です。若年層を中心にiPhone人気が高い日本では注目の高い製品ですが、国内発売の予定はまだ未定です。家電や自動車、スマートホームとの連携が進んでいくことで、実用性のあるデバイスへの進化が期待できます。

3.「マストドン」

今年の春に旋風を巻き起こしたSNS、「マストドン(Mastodon)」をご存じでしょうか。マストドンは昨年ドイツで始まったサービスで、国内では2017年4月に爆発的な人気を呼びました。マストドンは各インスタンス(サーバー)に登録する分散型のSNSです。TwitterやFacebookとは異なり、ひとつのアカウントを登録すればマストドンのほとんどの投稿を見られるわけではなく、基本的には自分が登録したインスタンスの投稿を見ることになります。

 

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マストドンは各インスタンス(サーバー)に登録する分散型のSNSです。TwitterやFacebookとは異なり、ひとつのアカウントを登録すればそのサービスのほとんどの投稿を見られるわけではなく、基本的には自分が登録したインスタンスの投稿のみを見ることになります。

 

インスタンスは自宅サーバーでも立ち上げることができるため、ニッチな話題を語り合うために専用インスタンスを作ることもできます。国内向けとして立ち上がった「mstdn.jp」やpixivが運営する「pawoo.net」、ドワンゴによる「friends.nico」が有名ですが、特定のゲーム専用インスタンスや地域限定インスタンスなども数多く存在します。

 

ただ、春頃の盛り上がりとは裏腹に、12月現在では活用しているユーザーは少なくなっているようです。消滅したインスタンスもたくさんあります。SNS疲れから新たなSNSを求めてアカウントを取ったものの、中央サーバー型でないマストドンをうまく使いこなせなかったユーザーもいるでしょう。

 

マストドンが急速に盛り上がっていく様子は、個人的には「Google+」というGoogleが運営するSNSが開始された頃と重なりました。現在も位置情報ゲーム「Ingress」のユーザーが交流する場として活用されているGoogle+ですが、開始当初はアーリーアダプターがこぞってアカウントを取得し、乗り遅れては大変とばかりにフォロワー増やしに躍起になったものです。かくいう私もGoogle+の書籍を出しましたので、完全にブームに乗っかろうとしたわけです。2018年のSNSはInstagramが王者の位置を獲得するのか、新たなSNSがまた旋風を巻き起こすのか、とても楽しみですね。

4.「メルカリ」

クリスマスの翌日からクリスマスプレゼントとおぼしきアクセサリーががんがん出品されている「メルカリ」ですが、2017年も注目を集めたサービスです。

 

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「メルカリ」とは、インターネットでフリーマーケットのようにモノを売買できるサービスです。スマホのカメラで撮影してすぐ出品、購入も簡単ということで、若い女性を中心に人気があります。サービス開始は2013年で、12月に世界累計ダウンロード数が1億を突破したそうです。12月には「売れた商品の約半数が出品から24時間以内に売れている」と発表されました。

 

メルカリはその手軽さと売買のスピード感が特徴です。使いかけの化粧品や試供品、壊れた製品など、通常のネットショッピングでは価値がないと判断される品もあっという間に売れていきます。

 

今年の春には、現金が実際の金額より高値で売られていることで話題になりました。どうやらクレジットカードで決済して目先の現金を手に入れたい人を狙ったようですが、これをうけメルカリは現金紙幣の出品を禁止しました。その後、交通系ICカードやパチンコの景品などの出品もありましたが、24時間体制で監視して削除する対策が取られています。また、不正利用を防ぐために、利用者が初回出品する際に個人情報登録を義務化する方針を固めています。

 

そしてメルカリは、11月より「メルカリNOW」という即時現金化のサービスを開始しました。売りたいものをスマホで撮影するだけで査定金額が表示され、すぐ入金されるというサービスです。6月にサービスを開始した「CASH」と並んで、即時買い取りサービスは2018年も目の離せないカテゴリーです。

2018年注目の「Tik Tok」

さて、2017年に話題になったITワードを振り返ってきましたが、ここで2018年に注目したいサービスをもうひとつご紹介します。それは動画ソーシャルアプリ「Tik Tok」。

 

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ダンスや口パクのショートムービーを投稿するWebサービスで、若い女性を中心に流行り始めています。来年の今頃は、「Tik Toker」が世を席巻しているかもしれませんよ。

「あまりの値段に絶句…」 2017年の「高騰・オブ・ザ・イヤー」は誰もが納得のあの商品!

フリマアプリ「メルカリ」が、「メルカリトレンドワード2017」を発表。上位にランクインした商品は「ヤフオク!」などでも価格が高騰しており、ネット上では「こんなに高くなってたのか!」「手に入りにくいとは聞いてたけどここまでだったとは…」と驚きの声が続出した。

出典画像:「メルカリ」公式サイトより出典画像:「メルカリ」公式サイトより

 

「難民」まで続出したスイッチ

いよいよラストスパートを迎える2017年。今年も様々なヒット商品が誕生し、品薄状態となったものが相次いだ。そんな中発表されたのが「メルカリトレンドワード2017」。2017年に「メルカリ」内で検索されたワードのうち、前年と比較して検索数が急上昇したワードをランキング方式で発表したもので、結果を見た人からは「あー! 今年めっちゃ話題になったやつばっかじゃん」「そういえばかなり流行ってたなぁ」といった声が上がっている。

 

さっそくランキングトップ10を見ていこう。
10位「モアナ」(モアナと伝説の海)
9位「スカイピース」
8位「プレイステーションVR」(PlayStation VR)
7位「カール」
6位「switch」「スイッチ」(Nintendo Switch)

 

まず注目したいのが、第6位にランクインした「Nintendo Switch」。2017年3月3日に発売するや否や爆発的なヒットとなり、入手困難な状況が続いた際には「スイッチ難民」という言葉まで誕生した。定価2万9980円(税抜)の同商品だが、一時期は「メルカリ」や「ヤフオク!」での販売価格が5万円を超えるなどかなり高騰。最近では値段も落ちつきつつあるものの、中には「クリスマスに向けてまた入手困難になるのでは?」と予測する人も少なくない。

出典画像:「Nintendo」公式サイトより出典画像:「Nintendo」公式サイトより

 

1位は社会現象にもなったあの商品!

続いては第3位までを発表。
5位「ハーバリウム」
4位「xmagic」
3位「SECOND UNIQUE NAME」

 

そして第2位にランクインしたのは「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」。1990年に発売されたスーパーファミコンを、本体はコンパクトサイズに、コントローラーは昔のままに再現した同商品。事前予約がすぐに規定量に達したとあって、販売前にはかなりの高騰が予想されていた。しかしいざ発売されるとスイッチほどの品薄状態にはつながらず、高騰度合いもまずまずの様子。定価7980円(税抜)のところ、ネットオークションなどでは1万円前後で取引されることが多かったようだ。

出典画像:「Nintendo」公式サイトより出典画像:「Nintendo」公式サイトより

 

堂々の1位に輝いたのは「ピザポテト」。台風被害による原料不足を理由に、4月から発売を休止していた同商品。休止が決まってからは買い占めなどが相次ぎ、1袋定価140円前後のものが5000円で取引されるなど、まさに“ピザポテトバブル”状態が巻き起こった。ネット上でも「コンビニ10軒回ってもピザポテトなかった…」「どうしても食べたくてオークションで検索したらあまりの値段に絶句」との声が続出。6月には発売が再開され価格も落ち着いたものの、「高騰・オブ・ザ・イヤーは間違いなくピザポテトだろ」「スイッチもだけどやっぱり1番衝撃だったのはこっちかな」と多くの人に強烈な印象を刻む結果となった。

出典画像:「カルビー」公式サイトより出典画像:「カルビー」公式サイトより

 

凄まじい高騰ぶりを繰り広げた今年の話題商品。2018年も、どのような商品が注目されるのか見守っていきたい。