疲労回復やアンチエイジングに!ティーデザイナー考案のハーブティーのブレンドレシピとおいしい淹れ方

気温の変化が激しい季節の変わり目は、自律神経の乱れによって体調不良を起こしがち。疲れがとれない、気分が落ち着かない、肌荒れが治らない……。そんなときは、心と体にやさしく働きかけてくれるハーブティーを取り入れてみませんか? ゆっくりとお茶を淹れる時間は、忙しい日々に余白ももたらしてくれるでしょう。

 

今回は、初心者でも使いやすいハーブやお悩み別のブレンドレシピについて、ティーデザイナーのしばたみかさんにお話をうかがいました。

 

「ハーブ」と呼ばれる植物の特徴は?

そもそもハーブとは、どのような植物を意味するのでしょうか。

 

「ハーブは、『生活に役立つ、香りのある植物』を指します。香りがあるということは、有用な成分を持つということも意味し、ハーブに含まれるポリフェノールやカロテノイドなどの機能性成分『フィトケミカル』が、心身にさまざまなうれしい効果をもたらします。
ハーブは、植物療法(フィトセラピー)の一種であり、副作用の心配をすることなく、調子を整えられるのが魅力です」(ティーデザイナー・しばたみかさん、以下同)

「さらに、植物の成分をお湯で抽出したハーブティーは、体に良いものを効率よく摂取できるだけでなく、色、香り、味、そして淹れるときの音や感触によって、五感を刺激し、リラックスすることもできます

 

飲む前に知っておきたい
ハーブティーの基礎知識

ハーブには人間と同じくらい長い歴史があり、日本でも古くから身近な植物として取り入れられてきました。コーヒーや紅茶とは異なる、ハーブティー独自の魅力とはいったい何なのでしょうか。その歴史とともに解説します。

 

人々を癒し続けるハーブの歴史

元々ハーブは治療目的で使われはじめ、エジプトや中国では紀元前から活用されていました。明確なエビデンスはなかったものの、クレオパトラの時代にはすでに美容目的でも飲まれていたようです。
中世では、キリスト教が一部の修道院を除きすべての『癒し』を禁止していました。しかし、対象外の修道院では薬草園を作り薬草酒を製造するなどして、ハーブによる病気やケガ治療が行われており、ハーブの持つ力が認められていたことがうかがえます。
日本でも、古くからハーブは治療薬として使われていました。緑茶が貴族の嗜好品だった時代、ハーブティーとも言える『ドクダミ茶』などは、庶民を中心に飲まれていたといわれています」

 

コーヒーや紅茶との違い

「植物から作られているコーヒーや紅茶も、広義ではハーブティーの仲間」ではありますが、その成分や製法には明確な違いがあります。

 

「基本的に、ハーブティーはカフェインを含みません。植物ごとに禁忌がある場合もありますが、年齢やシーンを問わず、多くの方に飲んでいただけます。また、使うのはフレッシュハーブまたはドライハーブで、それ以外の加工は施されていません。そのため、植物本来の自然な味わいを楽しみながら、植物が持つ成分をそのまま抽出することができます。
コーヒーや紅茶はかつて、これらを巡って戦争が起きるほど貴重なものでした。そのため、品質を安定させて輸出量を増やすべく、独自の加工技術が発展していきました。元をたどると、カフェインを含む植物はコーヒー、カメリア・シネンシス、マテの3種類しかないんです。このうちのカメリア・シネンシスを原料として、紅茶や緑茶、ウーロン茶など様々なお茶に加工されています」

 

フレッシュハーブとドライハーブのメリット・デメリット

前述の通り、ハーブティーに使われるハーブは、フレッシュとドライの2タイプに分けられます。それぞれのメリットとデメリットを教えてもらいました。

 

・フレッシュハーブ

「フレッシュハーブは、みずみずしい味わいとポットに入れたときの見た目の美しさが魅力。スーパーで、料理にも使われるペパーミントやレモングラス、ローズマリーなどを見かけたことがあるでしょう。
しかし消費期限が数日と短く、使用部位だけカットするなど処理の手間が必要になることも。たとえばペパーミントの場合、ハーブティーには葉しか使いません。これは、茎を入れるとえぐみが出てしまうからです」

 

・ドライハーブ

ドライハーブは保存がきき、旬のあるハーブでも1年中使うことができます。保管する際に遮光したり湿気を避けたりと注意が必要ですが、比較的扱いやすいので、初心者の方はドライハーブから始めるとよいでしょう」

 

ハーブティーを常飲する際の注意点

歴史からもわかるように、薬代わりに使われてきたハーブティー。副作用はないものの、常飲するうえで押さえておきたい注意点があります。

 

「1日の摂取量に決まりはありませんが、一般的なお茶と同じように適量を意識しましょう。一度に何杯も飲むよりも、時間の間隔を空けて1杯ずつ飲むほうが、有用成分を効率的に取り入れることができます。新しいハーブを飲み始めるときは少量から始め、何か異常が起きた際はすぐに使用をやめてください」

 

また、ハーブのなかには一部禁忌事項を持つものもあるそうです。以下のような人は特に注意し、通院中の場合はかかりつけ医に相談のうえ、使用するようにしましょう。

 

●子ども、お年寄り
●妊娠中・授乳中の方
●持病があり、通院している方
●薬を服用している方
●アレルギーがある方(特にキク科アレルギーの方)

 

「自分以外の人にハーブティーを振る舞うときも、上記に該当する可能性を十分に考慮する必要があります。ハーブの特性が気になったときにすぐに調べられるよう、ハーブティーの専門書を1冊持っておくのもおすすめです」

 

プロがセレクト
初心者におすすめのハーブ5選

ハーブにはたくさんの種類があり、何から購入すればよいか迷ってしまうかもしれません。そこで、ハーブティー初心者でも飲みやすく、ブレンドにも使いやすい5種類のハーブを教えてもらいました。

 

1.体と心、両方の不調に役立つ万能ハーブ「ジャーマンカモミール」

使用部位:花
作用:消炎、鎮静、鎮痙、駆風
※キク科植物アレルギーの人は使用を避けましょう

 

「ジャーマンカモミールは、痛みや炎症の緩和など『体の不調』から、興奮や落ち込みなどの『心の不調』にまで、やさしく働きかけてくれる万能ハーブ。青りんごのような香りと甘酸っぱい風味が特徴で、飲みやすくブレンドハーブティーのベースにも使いやすいです」

 

2.元気を取り戻す鮮やかな赤色「ハイビスカス」

使用部位:ガク
作用:代謝促進、消化機能亢進、緩下(かんげ)、利尿、疲労回復、眼精疲労の回復

 

「ハイビスカスは、ルビーのように鮮やかな赤色と、パッと目の覚めるような酸味が特徴。クエン酸を豊富に含み、疲労回復を助ける働きがあります。また、アントシアニンが含まれるので、PCやスマホによる眼精疲労の軽減にも役立ちます」

 

3.アンチエイジングの強い味方「ルイボス」

使用部位:葉
作用:代謝促進、抗酸化、抗アレルギー

 

「抗酸化成分を多く含むルイボスは、古くから『不老長寿のお茶』とされてきました。美容面でのアンチエイジングだけでなく、花粉症対策に役立つ抗アレルギー作用や、様々な病気の原因となる活性酵素を取り除く作用もあります。風味が強いので、量を調整しながら飲むとよいでしょう」

 

4.心を穏やかにするリラックス系ハーブ「レモンバーベナ」

使用部位:葉部
作用:興奮抑制、リラックス、消化促進

 

「レモンバーベナは、口当たりがまろやかで、爽やかな香りとほのかな甘みが特徴。気持ちを落ち着かせ、消化器の働きを助けるので、食後や寝る前の1杯にもぴったりです」

 

5.美肌に導くビタミンCの爆弾「ローズヒップ」

使用部位:偽果
作用:ビタミンC補給、抗酸化、便秘解消、抗炎症

 

「ローズヒップはレモンの約20倍ものビタミンCを含み、『ビタミンCの爆弾』とも言われています。便秘を解消して腸内環境を整える働きもあるので、美肌効果を求める方に最適なハーブです。淹れたあとに残った実を食べると、お湯に溶け出しにくい成分も摂取できますよ」

 

おいしくてヘルシー!
お悩み別ブレンドレシピ4

複数のハーブをブレンドしたハーブティーは、有用成分を効率よく摂取でき、より深みのある味わいが楽しめます。ここでは代表的な4つのお悩みをピックアップ。

 

前出の5種類のハーブを中心に、おいしさにもこだわった、しばたさん流のブレンドレシピを教えてもらいました。

 

ブレンドレシピ1.肉体疲労や眼精疲労を感じたときに……「疲労回復ブレンド」

【材料(2杯分)】
ローズヒップ……ティースプーン1杯
ハイビスカス……ティースプーン1/2杯
レモングラス……ティースプーン1/2杯

 

「ローズヒップのビタミンCにハイビスカスのクエン酸が合わさることで、どちらもより体に吸収されやすくなります。ハイビスカスの酸味を生かし、レモングラスやレモンバーベナのようなレモン風味のハーブと合わせると、リフレッシュ効果がアップします」

 

ブレンドレシピ2.手足の冷えが気になるときに……「代謝促進ブレンド」

【材料(2杯分)】
ルイボス……ティースプーン1杯
ジャーマンカモミール……ティースプーン1杯
ジンジャー……ティースプーン1/4杯

 

「ルイボス単体ではやや味が強いので、ジャーマンカモミールをプラス。ほんのり甘味を感じるマイルドな味わいになります。代謝促進作用をアップさせるなら、ジンジャーやシナモン、カルダモンなどのスパイス系のハーブをブレンドするのがおすすめです」

 

ブレンドレシピ3.イライラや落ち込みが続くときに……「リラックスブレンド」

【材料(2杯分)】
レモンバーベナ……ティースプーン1杯
リンデン……ティースプーン1杯
オレンジピール……少々

 

「興奮を抑制するレモンバーベナに、鎮静作用を持つリンデンとオレンジピールを加えました。リンデン特有の甘い香りと柑橘の爽やかな香りが心地よく、安眠もサポートします。オレンジピールは入れすぎると苦味が強くなるので、少量に抑えるのがポイントです」

 

ブレンドレシピ4.肌荒れや便秘を改善したいときに……「美肌ブレンド」

【材料(2杯分)】
ローズヒップ……ティースプーン1杯
ヒース……ティースプーン1杯
マロウブルー……ティースプーン1杯

 

「美肌に欠かせないビタミンCを豊富に含むローズヒップに、メラニン色素の合成を抑制するヒースと、皮膚や粘膜を保護するマロウブルーをプラス。マロウブルーは水出しにすることで鮮やかな紫やブルーが楽しめますが、成分を抽出する目的であれば熱湯で淹れるのがよいでしょう」

 

少ない道具で始められる
基本のハーブティーの淹れ方

これからハーブティーを始める人に向けて、準備する道具や、ドライハーブを使ったハーブティーの淹れ方を教えてもらいました。

あると便利な道具は以下の4点です。

 

●ティーポット
●ティーカップ
●茶こし(茶こし付きティーポットの場合は不要)
●ティースプーン

 

「ポットやカップは視覚で楽しめるガラス製がおすすめですが、陶器などほかの材質でも問題はありません。ポットがなければ耐熱性のあるメジャーカップや小鍋で代用してもOKです。『専用の道具を揃えなきゃ』と気負わずに、まずは家にある道具で始めてみて、徐々にお気に入りの道具を揃えていくとよいでしょう」

 

ハーブティーを淹れるときは、それぞれのハーブの特性に合わせ、お湯の温度や蒸らし時間を調整します。

 

「ハーブには高い温度で抽出しやすい成分と、低い温度で抽出しやすい成分があります。熱湯を注ぐほうが、時間の経過によってより多くの成分を抽出できるでしょう」

 

ホットティーのおいしい淹れ方

1.ポットとカップを湯通しする

「熱湯を注いだときに温度が下がらないよう、ポットとカップはあらかじめ湯通ししておきましょう。ポットの下にポットマットを敷くと、熱が逃げにくくなります」

 

2.熱湯を注いで蒸らす

「ポットにドライハーブを入れ、沸騰した熱湯を注ぎます。お湯の量は1杯あたり約180ccが目安。使用部位によって蒸らし時間は異なり、目安は花=3分、葉=3~5分、根=5~7分、種子=5~7分となります。ブレンドの場合は、メインとなるハーブの使用部位に合わせて調整してください」

 

アイスティーのおいしい淹れ方

1.ホットで作るときの半量の熱湯を注いで蒸らし、氷の入ったグラスに注ぐ

「途中までの手順はホットと同じですが、お湯は半量(1杯あたり約90cc)だけ注ぎましょう。蒸らし終わったら氷をたくさん入れたグラスに注ぎ、氷が溶けると飲みごろになります」

 

おいしくいただくコツ1甘みが足りないときはハチミツやフルーツを加える

しばたさんによると、「甘さがないとおいしく飲めない」という人は、甘味料をちょい足ししてもOKだそう。

 

「甘みを加えるときは、砂糖よりも糖質が少なく、血糖値の上昇が緩やかなハチミツがおすすめ。どんなハーブとも相性抜群で、お子さま(1歳以上)に与えたいときなどにも役立つはずです。
また、オレンジやイチゴ、リンゴなどフルーツを入れてもおいしく仕上がり、見た目も華やかになります。ハーブのなかにも、リコリスやステビアといった甘味成分を持つものがあるので、これらを試してみるのもいいですね」

 

おいしくいただくコツ2.ドライハーブは早めに使い切る

風味を損なわないために、ドライハーブは新鮮なうちに使い切ることが大切です。

 

「使いかけのドライハーブは、保存瓶などで密閉して湿気を防ぎ、直射日光や紫外線が当たらない暗所で保管しましょう。冷蔵保存もNGではないですが、ほかの食材のニオイ移りや容器の結露が心配なので、常温保存がおすすめです」

「ハーブティーを飲むことがストレスになっては本末転倒。自分好みのブレンドやアレンジを加え、使うハーブに合わせた抽出方法で『おいしく楽しむ』ことが大切」と語るしばたさん。

 

今回はお悩み別に初心者向けのブレンドレシピを紹介しましたが、目的や好みに合わせてアレンジするのもよいでしょう。仕事の合間や寝る前などホッと一息つきたいときは、ぜひハーブティーを取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

Profile

ティーデザイナー / しばたみか

ティーデザイナー、アランコーエン認定ホリスティックライフコーチ。17年間インテリアデザインの仕事に携わったのち、2011年に紅茶とハーブの教室を立ち上げる。数百種類ものオリジナルブレンド・ハーブティーを販売する「るなぼう」の運営も行う。著書に、『お悩み別こころとからだを癒すレシピ ハーブティーブレンド100』(山と溪谷社)、『カップ一杯の魔法』(山と溪谷社)。
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30万人の“足裏”から辿り着いた! 足裏研究家が語る「生きることは、歩くこと」の意味

「いくつになっても自分の足で元気に歩きたい」と、誰もが思っているはず。ところが、それを実現するために日頃から対策をしている人はほとんどいないのではないでしょうか? そもそも、対策といっても具体的に何をすればいいのかわからないという人も多いでしょう。そこで今回は、いつまでも歩き続けられる体作りのコツに加え、健康寿命を延ばし認知機能の向上にも役立つメソッドをお届けします。

 

お話をうかがったのは、自由が丘のサロンで30万人以上の「足」に触れてきたという足裏研究家の鈴木きよみさん。聞き手は、書店で鈴木さんの著書『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』(ワン・パブリッシング)に出会って、思わず読み耽ってしまったというブックセラピストの元木忍さんです。

 


『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』(ワン・パブリッシング)
30万人以上の足裏を診てきた著書のエピソードを元に、なぜ健康のためには「足裏」をケアする必要があるのかを明らかにする一冊。「足裏ゴロゴロ」や「かかとスリスリ」といった、高齢者でも簡単に取り組める足裏健康法も紹介されています。また、88歳の現役医師・帯津良一先生との対談も収録。著者が「こんな足裏見たことない!」と驚いた元気な足裏を持つ帯津先生。その元気の秘訣も必読です。

 

健康のためにはじめた
反射療法からゾーンセラピーへ

元木忍さん(以下、元木):書店で『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』を見つけて、ぜひ鈴木先生のお話しをうかがいたいと思いやって参りました。たくさんの健康本がありますが、足の裏を意識している人ってまだまだ少ないように感じます。鈴木先生はどうして「足の裏」に注目されたのでしょうか?

 

鈴木きよみさん(以下、鈴木):私自身、非常に体が弱くて。体育の授業は見学ばかりしている子どもでした。若い頃から毎日のように薬を服用していたので、ニキビがたくさんできて肌は荒れていたし、お通じもなくて……。「薬がなくても生きていける元気な体がほしい」と考えるなかで見つけたのが、「反射療法」でした。反射療法とは、足の裏や手、顔などにある反射区(ツボ)を刺激し、自然治癒力を高める療法のことです。

 

鈴木きよみさん。東京・自由が丘にあるサロン「アンピール」の代表であり、「鈴木きよみクリニカルサロン」のメインセラピスト。料理に使う“めん棒”を活用したセルフケア、「めん棒ダイエット®️」の考案者でもある。

 

元木:そうだったんですね! 今の先生の姿からはまったく想像ができません。

 

鈴木:今が人生のなかで一番元気ですから(笑)。当時は、このままでは妊娠・出産もできないのでは?と考えていましたが、足の裏を押すだけでいいなら……と自分の身体で人体実験をするつもりで始め、2人の子どもを授かることができました。

 

1991年に自由が丘でサロンを開業したのですが、サロンにいらっしゃるお客様がどんなに痩せてきれいになっても、お店に来なくなると元に戻ってしまう。なぜなら、体質が変わっていないからなんです。そこで世界各地に足を運び、各地域のセラピーやリフレクソロジーを学ぶことにしました。

 

それらの学びを通じ、「体質改善こそが美容の根源だ」と実感。そこで海外で学んだ東洋と西洋のふたつの足裏刺激法を日本人向けに再構築し、「きよみ式ゾーンセラピー」という独自の施術法を開発しました。

 

聞き手を務めるブックセラピストの元木忍さん。

 

元木:ご自身の経験と、サロンでの経験が「ゾーンセラピー」へとつながっていったんですね。

 

鈴木:今年出版した『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』は、私の集大成のような一冊。若い方から高齢の方まですべての方が健康で元気に過ごせるよう、ゾーンセラピーのお話はもちろん私の体験談、そして簡単にできるセルフケア法をご紹介しています。元木さんに見つけていただけて本当にうれしいです。

 

元木:こちらこそです。改めて「ゾーンセラピー」についても教えていただけますか?

 

鈴木:簡単に説明すると、鍼灸やツボ押しは経穴(けいけつ)と呼ばれる「点」を刺激しますが、ゾーンセラピーは「面」で刺激します。

 

足裏のゾーンマップ(足裏にある、様々な臓器や神経とリンクするゾーンを視覚化したもの)を見て「正確な位置を押さなければ意味がない」と感じる方も多いかもしれませんが、ちょっとくらいずれても大丈夫ですよ。気になるところを刺激してみてください。

 

「肝臓」を表すゾーンは右足だけ、「心臓」は左足だけといったように、足の左右でゾーンが異なる場合も。左右の足が揃ってひとつの体になるということを意識することが大切です。

 

元木:実は私、お家でゴロゴロしているときに無意識に足の裏をマッサージしているということがよくあるのですが、これは体が欲していたのかもしれませんね。

 

鈴木:旅行から帰ってきた夜に、無意識に足の裏を揉んでいる方って結構いらっしゃると思うのですが、これも元木さんと同じ。体が求めているんです。足の裏には全身のゾーンが集まっているので、なんとなく揉んでいるだけでも血流が良くなり、元気になっていきます。

 

ふくらはぎが第二の心臓と呼ばれたり、多くの病気は血流に由来するなんて言われたりしますよね。私たちの体にとって血流はとても大切なもの。だから足裏を揉んで血流を良くすると体が変わる。私たちの体を支えてくれている「足の裏」は本当に大切な場所なんです。刺激すれば、どんどん元気になっていきますよ。

 

足の裏だけでなく、すねや甲にもゾーンはあるとのこと。

 

元木:ただ刺激するだけでもいいんですね。「肩こり」や「むくみ」など改善したい症状がある人はどうしたら良いでしょうか?

 

鈴木:対象となるゾーンを刺激しましょう。もし「胃の調子が悪いな」と思ったら胃のゾーンを、「目が疲れたな」と思ったら目のゾーンを刺激してあげると体がラクになるのを実感できるはずです。

 

不調別のゾーンセラピーは、2021年に発売した『すべての不調は足裏を見ればわかる!』(ワン・パブリッシング)でより詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

たとえば、肩こり・首こりなら写真の黄色いゾーンを指で刺激するだけでOK。刺激するときは「左足」からはじめ、痛気持ちいいくらいの強さを目指しましょう。(『すべての不調は足裏を見ればわかる!』より抜粋)

 

足裏を見れば体と心の不調が一目瞭然!押すだけで生理痛からむくみまで改善できる“足相診断”とは

 

1日30秒でもOK!
めん棒をつかった簡単セルフケア

元木:ここからは手軽にできる足の裏のセルフケアをおうかがいしたいのですが、「足裏刺激法」ではお菓子作りなどに使う『めん棒』を活用するんですよね?

 

鈴木:そうです。準備するのは『めん棒』だけ。100円ショップなどでも購入できます。またお家にゴルフボールがある方は、それでもOKです。

 

やり方は、とっても簡単で椅子に座り土踏まずあたりでめん棒をゴロゴロと転がすだけ。立ち上がって体重をかけると刺激がより強く伝わるので、足腰に自信がある方は立って刺激するのがおすすめです。ただし、転ばないように気をつけてくださいね。

 

めん棒を使えば、足の裏にある内臓の反射区を面で一気に刺激できます。歩くときに必要となる足底筋膜のバランスを整える効果も。

 

元木:これはいつ、どのくらいの頻度でやるのが良いのでしょうか?

 

鈴木:体が温まって血行が良くなっているお風呂上がりか、寝る前がおすすめです。私たちの体は、睡眠中に毒素や疲労物質の排出を促すようにできているので、寝る前にしっかり足裏の老廃物を流してあげると、翌朝スッキリするはず。

 

「足裏ゴロゴロ」をやる時間は、1回30秒以上、長くても30分以内に終わらせてください。マッサージはたくさんやればいいというわけではありません。長くやりすぎると反応が強く出て、だるさが残ってしまう場合もありますから。「痛気持ちいい」くらいの刺激で、30分以内がおすすめです。

 

鈴木先生に「足裏ゴロゴロ」のやり方を教わる元木さん。最初は「気持ちいい〜」と言っていましたが、めん棒が指の付け根の位置にくると「イタタタ……」と、眉間にシワ。鈴木先生曰く「目と耳のゾーンですね」とのこと。

 

元木:刺激の強さを調整するにあたり、目安はありますか?

 

鈴木:老廃物を外に流し出すことだけを考えるのであれば、少し痛いくらいがいいのですが、自分で行うと躊躇してしまう人がほとんど。「アイタタタ……」と感じるくらいの強さから始めて、「痛気持ちいい〜」と体が緩むような感覚を目指して、強さを調整してみましょう。

 

あまりにも痛いと感じる場合や疲労感が抜けない、不快感が出てくる場合は、一度専門医の受診をおすすめします。なにか他の病が隠れているかもしれませんから。

 

心と体の元気は「足裏」に出る?

元木:『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』についても詳しくお話をうかがいたいのですが、最初のページがクイズになっているのはとても面白いと思いました。足の裏って人によってそんなに違うものでしょうか?

 

元木さんが面白いと感じた足裏クイズ。答えは実際に書籍をチェックしてみてくださいね。

 

鈴木:びっくりするほど違いますよ。色やハリ、指の形や大きさ、角質の有無やしわ、触感など、一人ひとり顔が違うように、足の裏も同じ人はいません。ゾーンセラピーの講師としても活動しているのですが、オンライン授業で生徒たちの顔を見て足の裏の様子を当てることもできるほどです。

 

元木:すごいですね! また帯津良一先生との対談が面白かったです。そのなかで「生きることは歩くこと」と書かれてあり、今まで「生きることは食べることだ」と思っていた私は衝撃を受けました。その話も詳しく聞かせていただけますか?

 

鈴木:食べることももちろん大切な要素ですよね。私も最近ようやく誰かのためではない自分のための料理をするようになって、食べることが大好きになりました。

 

「生きることは歩くこと」と帯津先生が話していましたが、私も同じように考えています。生きているというのは、“心と体が前に進んでいる状態”。つまり“歩いている”ということなんですよね。

 

鈴木先生は、ちょっと時間ができると新幹線に乗って日帰りで旅行にも行かれるとか。幼少期に体が弱かったとは思えないバイタリティです。これも日々の足裏セルフケアの賜物と言えそうです。

 

元木:本の中では帯津先生の足の裏も掲載されていますが、80代後半とは思えないほどハリのある足ですね。

 

鈴木:そうなんです。「歩くのが好き」とおっしゃっていましたが、驚くほど元気でハリがあってピンク色のイキイキとした足でした。また病気で歩けなくなった方でも、ハリのあるきれいな足の裏の方もいらっしゃるんです。寝たきりだとしても、前を向いているその気持ちが足の裏にも表れてくるんだろうな〜といろんな人の足をみて感じているところです。

 

元木:「心が元気だと、足の裏も元気!」ってことですね。本のなかでは、鈴木先生が入院されていたときの足の裏についても書かれていました。

 

鈴木:1か月近くベッドの上にいて、自力では歩くことができなかった時期がありました。どうして足の裏の写真を撮ったか覚えていないのですが、しわっしわで、青紫色のような足になっていて、形も今とは全然違っていました。

 

入院中に生死をさまよっていたころの鈴木先生の足(左)と、退院後元気になったときの足(右)。

 

元木:よく「顔」が変わるとは聞きますが、足の裏まで変わるんですね。

 

鈴木:これまでの経験を振り返ると、胃が痛い人は土踏まずが黄色くなっていましたし、生理痛や更年期に悩んでいる人はかかとが赤紫色になっていたり、ひび割れが起こっていました。

 

また以前、認知症患者さんが入所されている施設へボランティア訪問した際、みなさんの足の指がちぐはぐな方向を向いていました。足の指の位置に脳のゾーンがあるので、反応が指に出るんだろうな、と。本当に不思議なのですが、病気のサインは足の裏に出ることが多いんですよ。

 

朝起きて鏡で顔を見るように、
足の裏も眺めてほしい

元木:足の裏ってなんでもわかるんですね。

 

鈴木:そうですね。足を見て足を刺激する姿が日常の風景になってほしいです。みなさんが朝起きて洗面台で顔を見るように、足の裏も見てほしい。足の裏を見て「今日は何をしようかな?」と考える時間がある、そんな日常が当たり前になったらうれしいです。

 

鈴木先生からめん棒をプレゼントされ、「今日からやります!」と笑顔の元木さん。「どんな効果が出るのか楽しみ」とワクワクしながらインタビューを終えられました。

 

元木:私も鈴木先生の本を読むまで、足への関心はほとんどありませんでした。でもこの本で紹介されていたように「足の指の間をしっかり拭く」ことを意識的にやるようにしたら、自然と足に意識が向くようになってきたんです。

 

今まで恥ずかしくて履けなかった5本指靴下も、履いてみたら地に足がついたような感覚というか、とにかく気持ちがよくて。小さなことでも、足に意識を向けられたら健康寿命も延ばせるかもって思いました。

 

鈴木:そう言っていただけるとうれしいです。小学生の頃は、体育の授業があって、運動会があって、部活があって、体を動かす習慣がありましたが、大人になるにつれて歩く時間って減っていってしまう。つまり、足裏への刺激が少なくなってしまいます。

 

「ウォーキングしよう!」「 運動しよう!」と気負わずとも、めん棒だけでできますから(笑)。どんどん足に刺激を与えてみてくださいね。

 

Profile

足裏研究家 / 鈴木きよみ

東京・自由が丘を拠点に30万人以上の足を診てきた経験豊富なセラピスト。足を診て全身の不調を探る診断法「足相診断」と、足学に基づき不調を整える「ゾーンセラピー」を確立。インスタグラムやTikTokでも「足」にまつわる情報を発信している。
鈴木きよみオフィシャルサイト

 

ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングスからキャリアをスタート、常に出版流通の分野から本と向き合ってきたが、東日本大震災を契機に一念発起、退社。LIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。

 

※「めん棒ゾーンセラピー」「きよみ式ゾーンセラピー」は鈴木きよみさん(有限会社オフィスキヨミ)の登録商標です。

足裏を見れば体と心の不調が一目瞭然!押すだけで生理痛からむくみまで改善できる“足相診断”とは

疲れが取れにくい、風邪をひきやすい、理由もなくイライラする……。足裏をマッサージするだけで、これらの不調が改善すると言われたら驚きませんか。一見関係なさそうに思われる「足の裏」と「体と心」。そこにはどのような関係があるのでしょうか?

 

セラピストとして30万人以上の足を診断し、いまや足の裏を診るだけでその人の不調がわかるという足裏研究家の鈴木きよみさんに、足で行う健康診断の方法と不調別のケア方法を教えていただきました。

 

 

体と心の状態がわかる?
「足相診断」とは

「その人の体と心の健康状態は、ポジティブなこともネガティブなことも足のシワや色、触感、形などに表れるんです。それを『足相』と言います。手相とは異なり、1日のうちに何度も変わるのが特徴です。
例えば、便秘のときは土踏まずのあたりに縦ジワができ、気持ちが落ち込んでいるときはじめっと湿ります。そういった足に表れた特徴から、その人の今の状態を診断するのが足相診断です」(足裏研究家・鈴木きよみさん、以下同)

 

東京・自由が丘を拠点に、30年以上にわたり様々な人の足を診てきたという鈴木きよみさん。世界中のマッサージを研究し、「きよみ式ゾーンセラピー」を確立させました。

 

「足の裏は、気の通り道である『経絡(けいらく)』と足ツボと呼ばれる『反射区』が張り巡らされているところ。そのため、体の反応が表れやすいのです。加えて、つねに私たちの全体重を支えてくれているので、重力の影響により老廃物がたまりやすい場所でもあるんです。
足はとっても正直なんですよ。『今日はどんな足かな?』 と足を眺める習慣をつけると、日々の体調管理ができるようになるでしょう」

 

まずは足の温度をチェックする習慣をつけよう

足相診断では、足の状態を様々な角度からチェックして総合的に診断するため、ひと目見て「ここが悪い」と診断できるようになるには経験が必要です。そこでここでは、初心者でも簡単にできる簡易のチェックポイントをご紹介します。

 

「まずは、足の裏を触ったときの『温度』を確認しましょう。体が元気なときは、足裏もぽかぽかと温かくピンク色。
それに対し熱がこもり、熱く感じるときはエネルギーがありあまっている状態です。ストレスが上手に発散できていない可能性があるので、やさしくマッサージしてあげましょう。
反対にひんやりと冷たいときは、血液が滞り気力が低くなっている状態。足全体を手のひらで温めて、心地いいと感じる強さでもみほぐしてあげるといいですよ」

 

自分の足の裏をじっくりと観察したい人は、カメラアプリのセルフタイマー機能を使って撮影するのがおすすめです。

 

鈴木さんによると、足の裏の「色」も大切なチェックポイントとのこと。どのように判断したら良いのでしょうか?

 

「足の色は、足相のなかでももっともよく変化する要素です。免疫力が下がり心身のエネルギーが足りていないときは真っ白に、ストレスが強くかかっているときは黄色に、血液の循環が悪いときはあざができたかのような赤紫色に変わります。そして心身ともに元気なときは、ハリのあるピンク色。
朝起きたときや夜寝る前などにぜひチェックしてみてくださいね」

 

親指部分の血色が悪く白っぽくなっている足裏は、気分が落ち込んでいる状態を示しているのだとか。ちなみに親指のあたりは「脳」の状態を表します。

 

働く女性におすすめ!
不調別のゾーンセラピー6選

ここからは、働く女性の悩みをより具体的に解決するべく、不調別の「ゾーンセラピー」をご紹介します。「ゾーンセラピー」とは、鈴木さんが30万人以上の臨床経験から導き出したマッサージ方法で、足裏全体の観察を通じ、体と心の不調を見つけ、反射区を刺激し改善へと導くものです。

 

今回は、6つの不調を改善するためのゾーンセラピーをご紹介します。

 

鈴木さんが開発した足裏のゾーンマップ。押して痛みを感じる場所は、そこに対応する体の部位が疲れていたり、そこに不調が起きていたりする可能性があります。

 

「ゾーンセラピーを行うときは、全身に血液をめぐらせている『心臓』のゾーンがある『左足』から行いましょう。これは東洋医学のエネルギーラインである経路の流れに合わせるため。
最初は痛いと感じるかもしれませんが、それが『痛気持ちいい』感覚に変わるまで刺激していきましょう。クリームやオイルをつけてマッサージしてあげると少ない摩擦でできますよ」

 

ゾーンセラピーは朝昼晩いつやっても構いませんが、おすすめはお風呂上がりや寝る前。気になるゾーンを5〜6秒押してあげると、翌朝の目覚めが変わり効果を実感しやすいそうです。ただし、38度以上の熱が出ている場合は、熱がさらに上がってしまう可能性があるため避けた方がよいとのこと。

 

季節の変わり目に覚えておきたい! 風邪予防のゾーンセラピー

急な気温の変化などが起きる季節の変わり目に気をつけたいのが「風邪」です。それを予防するために日頃からやっておきたいゾーンセラピーをご紹介します。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・足の甲、親指、人差し指の延長線上を押すと痛い
・指が細い
・土踏まずの色が白い

 

【マッサージの方法】


1.「胸部のリンパ腺」と「胸部」に対応するゾーン(写真の1)を3回さする
2.「脳」のゾーンが集まる親指全体(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う

 

「反射区は、足の裏だけでなく甲にもあるんです。胸や喉などの気管を司るゾーンは甲の部分に集中しているので、風邪を予防したいときには特におすすめですよ。さすったときにゴリゴリとした感覚がある方は、その感覚がなくなるまでさすりましょう」

 

疲労を回復し、免疫力をアップさせてくれるゾーンセラピー

休んでも疲れが取れない、なんだかいつも元気が出ない。そんな人は免疫力をアップさせてくれるゾーンを刺激しましょう。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・足裏を触ると弾力がない
・足の幅が細い
・足の厚みが薄い
・足が小さくなった

 

【マッサージの方法】


1.「腎臓」のゾーン(写真の1)を3回押す
2.「腎臓」のゾーンから土踏まずの下側に向かう「輸尿管」のゾーン(写真の2)を3回さする
3.土踏まずの下側にある「膀胱」のゾーン(写真の3)を3回押す
4.足を手で左右から握ったときにできるくぼみの部分にある「腹腔神経叢」のゾーン(写真の4)を3回さする
※ 右足も同様に行う

 

「足が全体的に華奢な方や、なかなか疲れが取れないという方に実践いただきたいマッサージです。4つのステップをすべて行っていただくのが一番ですが、全部やる時間がない・気力がないという方は1つめの『腎臓』のゾーンだけでも押してみてください」

 

生理痛など女性特有の悩みにアプローチするゾーンセラピー

生理痛やPMSなど、ホルモンバランスの崩れによる悩みを抱えている人も多いでしょう。女性特有の不調には、かかとへの刺激が効くそうです。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・足首の色が赤黒い
・かかとの幅が狭く小さい
・かかとに角質が多い
・かかとの色がどす黒い、またはまだらになっている

 

【マッサージの方法】


1.かかとにある「生殖腺」のゾーン(写真の1)を3回さする
2.内くるぶしの下にある「子宮」のゾーン(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う

 

「このゾーンセラピーは、生理痛がつらいがときや妊活中にもおすすめです。足裏のかかと部分が、ぶつけていないのにあざができたかのような色になっているときは、子宮の中に異物があるサイン。
強い痛みを感じたときや、マッサージを続けても足の状態に変化が見られない場合は、病気が隠れているかもしれないので、婦人科を受診しましょう」

 

むくみがスッキリするゾーンセラピー

足は体のなかでも一番むくみやすい場所。靴下の跡がなかなか消えない人や、日頃から着圧ソックスを手放せない人は、このゾーンセラピーを取り入れてみてください。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・足裏を押すと跡が残る
・足首が回りにくい
・触るとぽちゃっとした感じがする
・アキレス腱が埋もれている

 

【マッサージの方法】


1.足の内側面のかかとの少し前側にある「内尾骨」のゾーン(写真の1)を3回さする
2.足の外側面のかかとの少し前側にある「外尾骨」のゾーン(写真の2)を3回さする
※ 右足も同様に行う

 

「むくみを取るためには、尾骨の反射区を刺激しましょう。尾骨は体の中心にあり、体を支える背骨の末端にあたる部分。老廃物をグッと押し流すように強めに刺激してあげましょう」

 

肌の悩みを解決してくれるゾーンセラピー

便秘や下痢など腸の調子が悪い人は、肌トラブルも起こりやすくなります。土踏まずの付近に縦のシワがいくつも入っていたら、それは腸が弱っているサイン。しっかりと刺激してあげましょう。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・土踏まずの色が黄色っぽい
・土踏まずにシワが多い
・土踏まずの周辺に広がる「小腸」のゾーンを押すと痛みがある

 

【マッサージの方法】


1.左足の裏の中央あたりを横に走る「横行結腸」のゾーンからそのままかかと方向に縦に走る「下行結腸」のゾーンまで(写真の1)を3回さする
2.かかとの少し上の位置で横に走る「S状結腸・直腸」(写真の2)のゾーンを3回さする
※左足のみに存在するゾーンのため、左足だけをマッサージします

 

「こう見えて私は、若い頃、便秘がひどく毎日のように薬を飲んでいたんです。うまく老廃物を排出できていなかったので、ニキビもたくさん。
ですが、左足にある『S状結腸』と『直腸』のゾーンを刺激したら1日2回以上排便するようになり、肌トラブルも改善できました。内側からの刺激で、お肌のお悩みも解決していきましょう」

 

ストレスや疲労が過多なときのゾーンセラピー

鈴木さんのサロンを来訪する人には、疲れやストレスを溜め込んでしまっている人が多いそうです。人とのコミュニケーションに悩んでいる、本音を溜め込んでしまっているという人におすすめのゾーンセラピーをご紹介します。

 

【こんな足相のときは要注意!】
・左右の足の形が違う
・足がゴツゴツしている
・足を押すと痛みがある

 

【マッサージの方法】


1.右足の薬指と小指の延長線上にある「肝臓」のゾーン(写真の1)を上から下に3回さする
2.左足の「小腸」「大腸」のゾーンが集まる土踏まず(写真の2)を3回さする
3.2を右足でも行う

 

「ゾーンセラピーは基本、左足から始めていきますが、ストレスやイライラに関係する『肝臓』のゾーンは右足にだけ存在するので右足から始めます。
土踏まずをさすったときにゴリゴリとした感覚がある方は、3回といわず痛気持ちいいと感じるようになるまでさすってあげてください。
また、便秘の方は感情を溜め込みやすい体質ともいえます。しっかり腸を刺激して、足からストレスを発散させていきましょう」

 

時間がないときは“めん棒”を使うのがおすすめ

ここまでお悩み別のゾーンセラピーをご紹介してきましたが、鈴木さんは、めん棒を使って足裏全体を刺激するのもおすすめだと言います。なぜなら、足裏全体を“面”で刺激でき、不調の部分にまとめてアプローチできるから。

 

床に置いためん棒に足を乗せ、転倒しないように気を付けながら、体重をかけてゴロゴロと転がすだけ。

 

「足をよくつる方やなんとなく体調が優れない、元気を出したいという方には特におすすめです。こちらも左足から始め、トータルで30分以上やらないように気を付けていただければ、好きなだけ転がしていただいて構いません。テレビを見ながらなど、“ながら”でもできますよ」

 

足を温め巡りをよくすることが健康への第一歩

足の裏を刺激すると、次第に全身がぽかぽかしてくるのを感じる人もいるでしょう。実際に、ゾーンセラピーは「温活」にも有効なのだそう。

 

「足の裏の小さなシワや冷えに気づいたら、ぜひマッサージで温めてあげましょう。20代後半はまだまだ無理がきく世代ではありますが、頑張りすぎて足の裏が悲鳴をあげていることもしばしば。
続く30代はライフステージが変わる方が多いので、オンオフともに忙しく、自分の体と向き合う時間を取りづらくなる時期です。1日5分で構いませんので、足のマッサージを続けると体がラクになるはずですよ。
また婦人科のトラブルが起こりやすい時期でもあるので、かかとのかさつきや色の変化を見逃さないように。それらは骨盤の中で異変があるサインです。足の裏を刺激して、巡りのよい女性を目指しましょう」

 

Profile


足裏研究家 / 鈴木きよみ

東京・自由が丘を拠点に30万人以上の足を診てきた経験豊富なセラピスト。足を診て全身の不調を探る診断法「足相診断」と、足学に基づき不調を整える「ゾーンセラピー」を確立。インスタグラムやTikTokでも「足」にまつわる情報を発信している。
鈴木きよみオフィシャルサイト

 

Book

『すべての不調は足裏を見ればわかる!』

 

※「足相診断」「めん棒ゾーンセラピー」「きよみ式ゾーンセラピー」は鈴木きよみさん(有限会社オフィスキヨミ)の登録商標です。

[依存度チェックリスト付き]社会問題化するSNS依存と“SNSデトックス”の方法

私たちは日々、オンラインを通じて大量の情報に晒され続けています。近年は「SNS疲れ」という言葉を耳にする機会も増えました。延々と更新されていく情報を追い続けることで精神的負担が積み重なったり、ひっきりなしに届く通知やメッセージにすぐ応じなければいけないストレスを感じたり……。そればかりか、華やかで満ち足りた(ように見える)誰かの暮らしをSNSで目にする機会が増えたことで、劣等感を感じ、悩む人も。

 

そこでSNSに依存してしまう問題と対策について、ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i心理師として活動する森山沙耶さんに話を伺いました。

 

 

大人の女性も依存傾向。
SNS依存の現状

 

子どもから大人まで、身近にSNS使っている人が大半を占める現代。日頃のストレス解消を目的に、SNSに過度に関わってしまうことで、SNS依存に陥ってしまう場合もあると言います。

 

「もともとお子さんのSNS依存とご家族の問題に長く向き合ってきた経験がありますが、最近では大人の女性の相談を受ける機会が増えています。
SNSに夢中になりすぎてSNSから離れられない状況になってしまうと、どんな人でも日常のさまざまな場面で問題が発生します。仕事があると分かっているのに毎日夜遅くまでSNSの閲覧がやめられず、朝起きることができない、そして仕事に遅刻してしまう、など現実的な問題が起きている場合は心配ですね。SNSに依存している状況があると思います」(ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i心理師・森山沙耶さん、以下同)

 

SNS依存は誰にでも起こりうる

「SNS依存の問題と向き合うときには、その背景に何が潜んでいるのかを理解することが大切です。SNS依存になってしまう場合、日常的に何か問題を抱えている人も多いからです。
ストレスや不安感を落ち着かせるために、手に取りやすいスマホについつい頼ってしまう、という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。息抜き程度に始めたオンラインゲームにハマってしまうとか、複数のサブスク、またはSNSに登録して、最新の情報や好きなアーティストの発信を見ないと落ち着かない、とか。ただ楽しくて始めたものでも、いつの間にか夢中になってやめられなくなっていた。それは誰にでも起こりうることです」

 

あなたは大丈夫?
SNS依存度チェック

自分ではSNS依存に陥っているかどうかの判断がつきにくい、と話す森山さん。そこで今回は、自分で簡単にチェックできるセルフアセスメントテストをご用意いただきました。

 

※提供=一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会

 

※提供=一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会

 

チェックテストの結果をみて、「依存傾向があるな」と感じた場合は、できる限り早い段階で対処することが必要だと森山さんは言います。解決のコツをしっかり理解することでSNS依存からは抜け出しやすくなります。

 

SNS依存から抜け出すためにすべきこと

もしSNS依存に陥ってしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?

 

「大前提として、依存の状態であるならば一人でなんとかしようとするのはとても難しいと思います。信頼できる人に……それは家族でも友人でもよいのですが、まずは相談してみてください。病院だけでなく、行政でも相談窓口が設置されている場合もあります。また、私は民間のサポート団体に所属していますが、プロのカウンセリングを受けるのも良いでしょう。周りのサポートを得ることがとても大切です」

 

SNS依存の問題を自分で解決しようとするとさまざまな問題が逆に起きやすい、と森山さんは続けます。

 

「1人でどうにかしようと思っても、本当に難しい。SNSの閲覧を減らそうと思ってなんとか閲覧時間を制限してコントロールしようするのですが、誰かに咎められるわけでもないので、けっきょくまた閲覧してコントロール不能な状態になる……それを繰り返してしまうと自分にガッカリしてしまい、“どうせ私はできないんだ”という諦めモードになりやすいです。
そもそも依存という状態はすでに自分で自分をコントロールできない状態を指します。誰かの助けがある方が早い段階でSNS依存の問題を解決できるでしょう」

 

 

SNS依存から脱却するためには、暮らしを整え、生活スタイルの中にSNS以外の大切な要素を増やすことも効果的なのだとか。

 

「SNSに依存しなくても大丈夫な状態に整えていきましょう。私たちには人間関係を築いたり、食事をして、寝て、というように生きていく上での大切な土台があります。人として生きていく上でもっとも基本になる部分をまず1つずつ取り戻していくことです。食べる時間も惜しんでSNSにのめり込んでいるなら、まずは食事から。寝る間も惜しんでSNSばかり見てしまうのなら、まずは睡眠から、というように。
一気にすべてを改善しようとすると逆に辛くなってしまうことがありますから、慌てずに1つずつ、人しての当たり前の生活を取り戻していけるように取り組むことが大切です」

 

今日からできる!
簡単なSNSデトックスの方法

 

依存とまでいかなくても、SNSを見過ぎてしまっているという人や、ちょっとSNSから距離を置きたい、と思っている人は少なくないでしょう。そんなときにオススメのSNSデトックスのコツを3つ、森山さんにご紹介いただきました。

 

1.SNSアプリやサブアカウントを整理する

「まずSNSに触れる時間を減らすために何ができるかを考えましょう。登録しているアプリの通知を全部ONにしているのだったら、あまり見ないアプリの通知はOFFにしてしてみてください。アプリの登録数を半分以下に減らすのもいいですね。通知が少なくなれば、自然と閲覧時間も減っていきます。
また、インスタグラムなどでサブアカウントを複数持っている人の場合、各アカウントで情報閲覧したりコミュニケーションを取っているととても時間がかかってしまいます。そういうアカウントをまずは減らしていく。それだけでもかなりスッキリすると思います」

 

2.「スクリーンタイム」を活用する

「iPhoneではスクリーンタイムで各アプリの使用時間を制限することが可能です。ハマっているゲームアプリに夢中になりすぎて何時間もやめることができなかったり、インスタグラムやLINEなど、延々と友人とコミュニケーションを取り続けてしまったり……そんな方こそ、スクリーンタイムで各アプリの使用時間を制限しておくことをおすすめします。SNSから切り上げるタイミングを掴みやすくなるので、ぜひ活用してみてください」

 

3.見すぎてしまうアプリを見えにくくする

「スマホを立ち上げたとき、開いたページにお気に入りのアプリがあるとすぐに閲覧してしまうことがありますよね。さらに閲覧し始めると、あっという間に何時間も経過してしまって、仕事や家事に影響が出てしまう場合もあるでしょう。そこで、お気に入りのアプリほど見えにくくしたり、すぐにたどり着けないようにしてしまいましょう。アプリのアイコンをフォルダに入れて見えにくくしたり、スマホのずっと後ろのページに入れたりするのが効果的です」

 

「デトックスを試してみる場合、まずはこれらの方法から、自分にとって無理なくできそうなものを選んでみてください。そして1週間など一定期間続けてみて、効果的であったかを振り返ることで、自分に合う方法を見つけてもらいたいと思います」

 

「connected not addicted / リアルにつながろう」キャンペーン

10月7日より「connected not addicted / リアルにつながろう」 キャンペーンがスタート。現実世界におけるデジタル依存症と対策についてJDWA代表理事森山沙耶さんと、TIKTOKクリエーター景井ひな氏によるトークセッションが開催されます。
「日本デジタルウェルビーイング協会(JDWA)とシュウ ウエムラがパートナーシップを結び、デジタルに関わるさまざまな社会問題の解決をサポートする活動を展開。シュウ ウエムラはメイクアップを通じた自己探究や自己表現を応援することを使命とし、この活動を通じて、どこにいても誰もがデジタルの縛りから解放され、個々人の可能性を存分に開花させ、自分の人生を自信を持って生きるためのサポートをしたいと考えています」
PRイベント後には、特設ウェブサイトや大学キャンパス、企業等で、啓発活動を行われる予定です。

 

Profile

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i心理師 / 森山沙耶

2012年東京学芸大学大学院教育学研究科を修了後、家庭裁判所調査官として勤務。少年事件・家事事件の調査を行う中で、非行少年の更生や離婚調停など家庭紛争の調整に関わる。その後、大学病院や福祉施設にて心理臨床を経験。2019年8月、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにてインターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)を修了後、MIRA-iの設立に携わる。現在はネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行う。二児の母としても奮闘中。

多様性に逆行?外見至上主義「ルッキズム」の影響と付き合い方を社会学者が解説

近年、社会で多様性が叫ばれるようになりましたが、SNSなどでは「ルッキズム」と呼ばれる外見至上主義の価値観がいまだ根強く存在しています。このルッキズムの意味や傾向、どのように付き合っていくべきか、社会での取り組みなどについて、社会学者の高橋幸さんに社会学の観点からうかがいました。

 

 

「ルッキズム」とは何? なぜ陥ってしまう?

 

容姿を重視し、外見によって差別することを指す「ルッキズム(lookism)」。社会学者の高橋幸さんは、とくに自分の外見が人からどう見えるかが不安で仕方がないときに、この問題は深刻になりやすいのだと言います。

 

「例えば、人と会った後に『もっとこうすれば良かった』と外見や振る舞いを振り返ってしまうと、それはルッキズムに悩んでいる状態です。とくに、相手が自分を思うように受け入れてくれないかもしれないという“関係不安”を感じているときに、ルッキズムに陥りやすくなるのです」(社会学者・高橋幸さん、以下同)

 

関係不安を感じやすい場面としては、例えば、相手から評価される場や、自分がどう思われているか分からないとき、うまくコミュニケーションがとれないときなどが挙げられます。

 

「『相手と上手くいかないのは、外見が原因なのではないか』。そんな思考パターンを持つ人ほど、ルッキズムに陥りやすい傾向があります。例えば、自分の外見がもっと美しかったら、あの人はもっと私に良くしてくれたのではないだろうか……などと考えてしまうんですね」

 

そんな思いにとらわれたら、自分がどんな場面で「関係不安」を感じやすいのかを振り返ってみることが大切だと、高橋さんは提案します。例えば、以下のような状況下で不安になりやすいそう。

 

・自分の良さを上手く発揮できていない
「例えば、学校のクラスで自分の良さが評価されていないと感じると、『もっと外見が良ければ、みんなにもっと好かれたかもしれない……』と思ってしまうことがあります」

 

・自分の発言に耳を傾けようとしてくれない
「例えば、職場で意見を言おうとしても『若い人が何を言ってるの?もっと理解してから発言して』といった反応をされるのでは、と考えてしまう場面です。良い提案があっても言い出せなくなりがちで、“心理的安全性が確保されていない”とも言われます」

 

・外見について話題にされることが多い
「例えば、職場で『〇〇さんのその髪型、素敵ですね』といった話があると、自分の外見もチェックされているのでは……と感じてしまい、外見に対する不安が増してしまいます」

 

自分がどう見られるか、気になって仕方がない……。それは自分にとって不快であるというサインなので、できる限り離れた方が良いと高橋さんは言います。

 

「若い人は採用試験など評価される機会が多いため、年齢を重ねた人よりルッキズムにさらされやすい傾向にあります。弱い立場に置かれるとルッキズムが高まるのは、ルッキズムが社会的な権力構造の中で発生しているからだと思います」

 

摂食障害の専門医が解説する痩せすぎの危険性と世界で進む「ノーダイエット」

 

どのような関係でルッキズムが生じやすい?

 

ルッキズムがとくに強く現れやすい関係を知ることで、自分の外見に対する感情を振り返るヒントになります。たとえば、以下のような状況に心当たりはありませんか?

 

・親子関係
「親が子の外見評価をする場合は、評価する親が上、評価される子が下という位置づけになります。たとえば『最近ちょっと太ったんじゃない?』と親から言われると、子どもの自己愛が傷つけられますが、親から逃れることはできないため、状況は深刻です」

 

・学校
「スクールカースト(学内の階層構造)が存在するのは世界共通だと言われます。オランダの研究によれば、スクールカーストは学力、コミュニケーション力、そして外見の総合的な評価で決まるとのことです。それ以外の能力はほとんど評価されず、活躍の場も限られた環境では閉鎖感や苦しさを感じやすくなります。この構造に敏感な人ほど、ルッキズムに陥りやすい傾向があります」

 

・職場
「職場では外見の良し悪しと仕事の能力は基本的に関係ありません。美しく見せようとすること自体は自己実現の一部であり良いことですが、周囲の期待に応えなければならないと“やらされている”状態になるのは、望ましくありません」
とくに職場などで見られる外見に関する評価には、「あなたと親しくなりたい」という意図が含まれることが多く、外見に触れられた人は反論しにくい状況に置かれることがあります。

 

・SNS
「SNSを楽しんだり、美しい姿に共感したりするのは問題ありませんが、劣等感を刺激される場合は“関係不安”が生じていると言えます。また、アイドルの外見に対するコメントもよく見られますが、身体はその人にとっての生存と自己愛の基盤です。それを否定することは、その人を少しずつ追い詰める行為と同じです。ファンが外見を評価してアイドルを窮地に追い込むことは、けっして許されるべきではありません」

 

外見に対する先入観や思い込み

人の外見に対しては、先入観やステレオタイプが存在します。ルッキズムを理解するために、これらの考え方を押さえておきましょう。

 

「ハロー効果」

「ハロー(halo)は英語で“後光”を意味します。ハロー効果とは、目立つ特徴があると、その人全体が優れていると感じてしまう現象を指します。たとえば、外見が良い人を成績が良い、性格が良い、信頼できるなどと無意識に判断してしまうことがあり、こうした先入観は意識して切り離す必要があります」

 

「美人ステレオタイプ」

「アメリカの裁判では、複数の陪審員が評議する陪審制度が採用されていますが、一般的な外見の女性よりも、美しい女性が犯罪を犯した場合、同じ犯罪でも罪が重く感じられるというデータがあります。美人は冷酷だ、性格が歪んでいるなどのステレオタイプが影響しているのです」

 

美の多様化が進む現代

 

“美しさ”は、絶対的なものではないことを理解することが大切です。

 

「美しいと感じるものは瞬時に判断されがちで、自分が美しいと思ったものは他人もそう思うと考えてしまいますが、実際には人それぞれです。異なる美を認め合う姿勢が重要です」

 

かつては画一的な美が賞賛されていましたが、今では美しさの定義が多様化しており、日本でもファッション業界などでその傾向が見られます。

 

「例えば、下着ブランドのピーチ・ジョンは、2020年頃から多様性と伝統的な美の2つの方向性を持つミューズを起用しています。多様性を象徴するミューズには、ボディポジティブの考えを体現するお笑いタレントのバービーさんやゆりやんレトリィバァさんが選ばれています。ありのままの体型や外見を愛するメッセージが含まれているのです。
一方で、画一的な美の象徴としては、女優の田中みな実さんが挙げられます。彼女は、大学時代にミスコンテストで準優勝し、その後アナウンサーから女優へとキャリアを築いた方です。
田中みな実さんのような伝統的な美も素晴らしいですが、バービーさんのようにボディポジティブを表現する美しさも素敵だと認められる社会は、良い方向に進んでいると言えます。画一的な美も、今では多様性の中の一つに過ぎないのです。現在のルッキズムの中でも、美の多様化が進んでいます」

 

“自己肯定感”を高めたい…幸福学研究者が教える幸せになるために心がけたい思考習慣

 

海外で進む規制の動き

 

海外では、極端なルッキズムや美の基準に対して、規制が進んでいます。

 

「2000年代後半から2010年代にかけて、欧米では痩せすぎのモデルを広告やファッションショーに起用することを禁止する法律が相次いで成立しました。この背景には、摂食障害によるモデルの死亡が相次ぎ、社会問題となったことがあります。2006年にはイタリアで、BMIが18.5未満のモデルの出演を禁止する業界の合意があり、それ以降、欧米各国で同様の対策が進んでいます。2015年にはフランスで、痩せすぎのモデルに対する規制法が可決されました。この法律では、モデルのBMIが一定値以下の場合、健康証明書の提出が義務付けられ、違反した所属事務所には罰則が科されるという強制力の強いものとなっています」

 

SNSに投稿される写真にも、規制が生まれています。

 

「2021年にはノルウェーで、SNSに投稿される写真が加工された場合、インフルエンサーや企業が商業目的で使用する際には加工済みであることを明記する義務が生じました」

 

ルッキズムを感じたときの対処法

もし相手との関係においてルッキズムが生じた場合、その場を離れることが最善だと高橋さんは言います。しかし、さまざまな事情で簡単に離れられないこともあるでしょう。では、過度なルッキズムに陥らないためには、どのように対処すれば良いのでしょうか?

 

コミュニケーションを基盤に考える
「まず、相手との関係に不安を感じ、居心地が悪いことを自覚しましょう。その上で『外見さえ良くすれば、この関係もうまくいく』と考えるのは、偏った捉え方です。たとえ相手が外見ばかりを評価し、マウントを取ろうとしてくる場合でも、自分の外見に原因を求めるのではなく、どのようにコミュニケーションを取るべきかを冷静に考えることが必要です」

 

外見に対する評価への違和感を穏やかに伝える
「外見を評価してくる相手に対して、ただ無視するのではなく、『その態度はあまり良くないと思います』とやんわりと伝えることが大切です。外見を評価しながら距離を縮めようとする人は、セクハラの指摘にも反発することが多く、相手を変えるのは難しいかもしれませんが、自分自身がその態度を認識し、伝えることには意味があります」

 

自分にとって大切な関係を育む
「“関係不安”は誰にでも多少あるものです。自分の周りの人間関係を振り返り、『職場では不安を感じるけれど、あの友達との関係は少し安心できる』といったように、自分にとって良好な関係を見つけ、それを少しずつ深めていくことが大切です。そうすることで安心できる場をつくり、メンタルヘルスを良好に保ちましょう」

 

長く付き合うと外見は気にならなくなる
「信頼できる友人や恋人の関係になると、お互いの外見はあまり気にならなくなるものです。“関係不安”がなくなると、外見への過度なこだわりも薄れていくでしょう」

 

 

「誰しもが少なからず“関係不安”を抱えており、外見や印象に傷ついて生きているのです。相手と接するときには、相手が経験してきた傷を想像することが大切です」と高橋さんは語ります。外見にとらわれず、相手の内面に目を向け、「この人はどんな人だろう」「どんなことを伝えたいのだろう」といった視点を持つことが重要。自分が良好と感じる人間関係を大切にし、不安を感じる場からできる限り距離を置くことが、「ルッキズム」に陥るリスクを減らしてくれるはずです。

 

 

Profile

社会学者 / 高橋 幸(たかはし・ゆき)

石巻専修大学人間学部准教授。専攻は社会学、専門は社会学理論、ジェンダー理論。女らしさや男らしさのあり方を検討する必要があると考え、恋愛やルッキズム、ミスコンテストについての社会調査および研究も進めている。著書に『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど——ポストフェミニズムと『女らしさ』のゆくえ』(晃洋書房)がある。

インフルや花粉症対策に!「ビタミンD」生成を妨げる悪習慣と効果的な補給策

冬に風邪やインフルエンザが流行るのは、乾燥や寒さが原因。そう考えられてきましたが、近年では冬期の紫外線照射不足によって、体内でのビタミンDの生成量が減り、免疫力の低下を招いていることが関係していることがわかってきました。ビタミンDは骨の生成に関わるだけではなく、免疫の調整や腸内環境の改善など、健康寿命を伸ばすために欠かせない、とても重要な栄養素だったのです。

 

ビタミンDの重要性を早期から訴え、積極的な摂取を啓発してきた日本機能性医学研究所所長で医師の斎藤糧三先生に、ビタミンDの隠された実力と1日に必要な量、生成に関わる効果的な習慣や摂取方法を解説いただきました。

 

 

過度なUV対策、デスクワーク…
“ビタミンD不足”が世界的に蔓延する理由

 

ビタミンDが世界的に不足していると言われています。日本でも、東京慈恵会医科大学の調査により約 98%の日本人が不足していることが判明しました。ではなぜ、ビタミンDが不足してしまうのでしょうか?

 

「紫外線照射不足が原因です。ビタミンDの主な供給源は、紫外線照射による皮膚での合成。そのため、1日に必要なビタミンDを生成するには、ある程度日光を意識して浴びることが必要です。しかし現代では、紫外線はシミ、しわを作る、皮膚がんになるなどといった害悪のイメージが強く、浴びることを敬遠される方もいらっしゃいます」
とくに若い女性で、極度に紫外線を恐れ、日傘や帽子に加えて、UVカットウェアやアームカバーなどまで駆使して、全身を防御している方も多いですよね。紫外線が照射される範囲がせまくなればなるほど、ビタミンDの生成量は減るのです」(日本機能性医学研究所所長、医師・斎藤糧三さん、以下同)

 

1日に必要なビタミンDを
補給するのは意外と大変だった!

 

日光を浴びる量が足りない分、ビタミンDは食事で補えるのでしょうか?

 

「ビタミンDを多く含む食品は限られているため、毎日の食事だけで充足させるのは至難の業です。また、日光は直接浴びなくてはなりません。ガラス越しの日光は、ビタミンDを作る紫外線(UVB)を遮断してしまうため、部屋の中にいてはビタミンDは作られないのです。
さらに、日光量は季節・時間帯・場所によって変わります。冬の紫外線量は、夏の約10~15分の1まで減ることも。その上、現代では過度なUV対策以外に、デスクワークや在宅ワークなどで屋内にいるライフスタイルが広がっているため、十分な日光浴ができていないのです」

 

【ポイントまとめ】

・毎日の食事だけでビタミンDを充足させるのは難しい。
・ガラス越しに浴びる日光ではビタミンDは生成されない。
・1年のうち紫外線量は5月〜8月がもっとも多く、多い時間帯は日中の9時~12時。
・9月~4月頃までは紫外線量が減り、充分な血中濃度を維持する量を合成できない。

 

いま注目される
ビタミンDの意外と凄いパワー

 

斎藤先生はいち早くビタミンDの機能に着目されたそうですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

 

「2007年のアメリカの機能性医学学会でビタミンDは免疫を正常に働かせる作用があることを知り、『もしかして、花粉症はビタミンD欠乏症のひとつなのでは?』と考えたことがきっかけです。
一方で、以前から『なぜ冬にインフルエンザが流行るんだろう? 花粉はいつでも舞っているのに、なぜスギ花粉の時期に症状が悪化する方が多いのだろう?』ということを疑問に思っていました」

 

その効果は、先生自身が体験し実感したそう。

 

「私自身も花粉症持ちだったため、早速ビタミンDを1日当たり100㎍(4000IU)摂取してみました。すると、症状がすぐに改善したのです。そこから花粉症のひどい関係者にも摂取をお願いしたところ、目のかゆみやくしゃみが軽減、鼻づまりがなくなるなどの花粉症の諸症状がなんと1時間ほどで改善。ビタミンDの有効性を確信し、自身のクリニックで高濃度ビタミンDサプリメントを投与する治療を開始しました。多くの方が長年悩まされてきた花粉症の完治や改善を実感されています」

 

ビタミンDには、ほかにも多様な働きがあるそうです。

 

「ここ10年ほどで、ビタミンDには、さまざまな生理作用があることが明らかになってきました。若年層女性に関わる主な働きを4つ挙げてみましょう」

 

1.骨代謝を正常にする

食品からのカルシウム吸収を助け、骨を作る骨芽細胞や骨を壊す破骨細胞の両方を活性化し、骨の代謝を促進します。閉経後の骨粗しょう症の発症を心配される方も多いと思いますが、骨密度は20代前半でピークに達して40代まで維持し、その後減っていきます。20代、30代では、最大骨量をできるだけ高め、減少量を抑えることが大切です。そのためにビタミンDは欠かせません。

 

2.免疫力・抗菌力がアップする

免疫とは体を有害物質から守る仕組みで、外から入ってきたウイルスや菌と戦う力のことです。ビタミンDにはこの免疫力を調整する働きがあります。コロナ禍では、新型コロナウイルスが重症化する原因の一つにビタミンD欠乏が関連する研究が数多く報告されました。また日本でも、ビタミンDを摂取すると、インフルエンザの発症率が低くなるという調査結果が報告されています。ほかには、歯周病にも効果があります。

 

3.腸内フローラを整える・粘膜を強化する

腸は免疫システムの司令塔ともいわれ、免疫細胞の6~7割が腸に集中していると言われています。花粉などのアレルギーは、免疫システムの過剰反応ともいわれ、花粉を異物とみなし、侵入を防ぐために鼻水やくしゃみなどを引き起こします。ビタミンDはこの過剰反応を抑えます。また、腸のバリア機能が失われると、腸から全身にアレルギー物質が送られ、免疫反応を増強し花粉症をひどくさせてしまことがあります。ビタミンDには、腸内の悪玉菌を減らして、腸内フローラを整える働き、腸粘膜を強化する作用もあり、腸内環境の改善に密接に関わっています。

 

4.セロトニンの代謝を調節する

脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせ、情緒を安定させる効果がある、別名「幸せホルモン」とよばれる『セロトニン』の代謝を調節します。冬季うつという言葉をご存知でしょうか。冬場は一年の中でも紫外線照射量が最も減り、セロトニンの代謝が低下し、イライラする、不安を感じやすい、睡眠の質が低下することで自律神経機能が低し、めまいや頭痛になるなどの症状を引き起こします。このため、冬場はより一層、ビタミンD摂取を心がけていただきたいと思います。

 

「そのほかにも、筋肉量を維持したり、慢性的な痛みを緩和する、美肌の維持に貢献するなど、さまざまな効果があります」

 

近年もっとも注目される
「がん」発症後も死亡率減少の効果が実証

 

近年、ビタミンDでもっとも注目されている健康効果について教えてください。

 

「2023年に東京慈恵会医科大学が発表した国際共同研究によると、ビタミンDサプリを適切に摂取することで、がんの死亡率が12%減少していることが明らかになりました。また、発症前から内服していた場合は13%、発症後でも11%の癌死を予防、発症後のビタミンD摂取でも効果があることがわかったのです。
また国立研究開発法人国立がん研究センターが行った血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連を調べた調査では、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが分かっており、ビタミンDはがんの予防効果も期待できます」

 

手軽な補給策から肌ダメージを抑えながら日光浴する方法まで
ビタミンDを正しく摂取する方法

ビタミンD補給策と一口にいっても、日光を浴びる季節や時間帯によって摂取法も変わります。さらにビタミンD強化食品やサプリメントなど何で補うかも、いくつか方法があります。自身のライフスタイルをイメージしながら、自分に合ったとり方を考えてみましょう。

 

Q.そもそも1日にどれくらいのビタミンD量が必要でしょうか?

A.
「1日の必要量については何を基準にするかによりますが、日本の食事摂取基準の目安量はある程度の日光浴を前提としての目安量を案内しているため、私はアメリカの内分泌学会の臨床実践ガイドラインにある37.5µg〜50µg(1500IU~2000 IU)をおすすめしています。さらに私の臨床の感覚では、花粉症の軽減やさまざまな病気を予防するためには、1日 100µg(4000IU)のビタミンDが必要だと感じています。
下図、国立研究開発法人国立環境研究所が観測している『ビタミンD生成量・紅斑紫外線量』、観測値・つくば局のデータによると、2024年8月15日のビタミンD生成量が多い12時と、2023年12月15日の最も多い12時とを比較したところ、紫外線照射範囲600cm2(顔と両手の甲の面積に相当)では10分間でビタミンが生成できる量は、8月が約13㎍、12月は約1㎍と13倍の差があります」

 

 

 

出典=国立研究開発法人国立環境研究所

 

Q.日々の暮らしのなかで手軽にビタミンDをとるには?

A.
「手軽にできるのが、晴れた日の外出ですね。首都圏に住んでいると仮定します。ランチタイム時に、夏場なら10~20分、冬場なら20~40分を目安に外出できると良いでしょう。
夏場の場合、アメリカの内分泌学会の臨床実践ガイドラインにある37.5µg〜50µg(1500IU~2000 IU)の間をとって40µg(1600 IU)を摂取しようとすると昼間10~20分程度の直射日光を浴び、魚類やきのこ類など、ビタミンDが多く含まれる食品を摂取することで不足分を補うイメージで必要量を目指すと良いでしょう」

 

 

「とはいえ、さきほど解説したように冬場のビタミンD生成量はとても少ない。その上、私の推奨する必要量100µg (4000IU) を充足させるには、日光浴だけでは足りません。さらにビタミンD強化食品やサプリメントで補う必要があります。
実際の紫外線照射量は、場所や時間帯、季節によって大きく変わりますので、国立研究開発法人国立環境研究所のHPを参考にしてください」

 

Q.肌へのダメージを最小限に留めながら、日光を浴びる方法はありますか?

A.
「首都圏の夏の紫外線量の多い時期でも、直接日光を浴びる時間が10~20分程度であれば肌へのダメージに影響はないと考えて良いでしょう。

 

国立研究開発法人国立環境研究所の2024年8月15日のつくば市におけるデータによると、日本人にもっとも多いと言われるスキンタイプの人なら半そでで3分、長そでで7分間の日光浴をすることで、約10μg(400IU)のビタミンDを生成することができます。一方、それ以上浴びると肌ダメージが始まる時間は20分で、20分以内の紫外線照射であれば、日焼け止めを塗らなくても日焼けやシミ・しわを心配する必要はありません」

 

 

「紫外線の皮膚に対する影響は、日光照射した皮膚に対して影響し、露出面積を広げてもその皮膚に対する影響は同じです。そのため、肌のダメージを抑えつつ短時間でビタミンDを作るのならば、なるべく多くの肌を露出させる、もしくは顔には日焼け止めを塗り、腕や足を出す。またビタミンDを生成しがなら日焼けを防止する日焼け止めも販売されているので、そういったものを活用すると良いでしょう」

 

Q.ビタミンDが多く含まれる食材は?

A.
「サケやイワシ、サバなどの魚類や、きくらげや干ししいたけ、まいたけなどのきのこ類、卵、牛乳などです。圧倒的に魚類の含有量が多いですね。魚を食べる習慣があまりない方は、ビタミンDが不足する傾向にあるので、魚類を意識して摂取しましょう」

 

 

Q.サプリメントを摂取するときの注意点は?

A.
「ビタミンは脂溶性ビタミンのため、体内に蓄積されます。過剰摂取をすると、血管や心臓、肺などにカルシウムが貯まり、腎臓にトラブルが起きることもあるので、日本の食事摂取基準の許容上限量100㎍ (4000IU) 以上/1日を摂取しないように気をつけましょう。また、できれば国内製造で、配合量がきちんと保証されているものが安心です。体内で活用できるビタミンDには、植物性のビタミンD2と、動物性のビタミンD3がありますが、体内ではD3が使われています。できれば原材料はビタミンD3を選ぶといいでしょう」

 

 

シミ、しわ、皮膚病などの原因になるため、日光は美容の観点からは敬遠されがちです。一方で日光は、骨や筋肉を強くし、免疫力をアップさせ、炎症を抑える作用もあるビタミンDを生成するという重要な役割を持っています。紫外線を避けるのではなく、適度な日光浴を楽しみながら健康寿命を伸ばしていきましょう。

 

 

Profile

医師・日本機能性医学研究所所長 / 斎藤糧三

東京都港区南青山にある「斎藤クリニック」院長。診療科目は、美容内科、美容皮膚科、婦人科、内科。更年期障害の女性に対してテストステロンを使用し、自律神経調整療法のパイオニアであった斎藤信彦(医学博士)氏の三男。1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立する。2008年「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。2017年、牧草牛の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm 」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)などがある。
斎藤クリニック
日本機能性医学研究所

摂食障害の専門医が解説する痩せすぎの危険性と世界で進む「ノーダイエット」

女性なら誰しも一度は「スリムで魅力的な体型になりたい」と願ったことがあるでしょう。憧れの体型を目指し、厳しい食事制限やオーバートレーニングといった、過酷なダイエットに挑戦したことがあるかもしれません。

 

ところが、長らくはびこってきた「スリムな体型が美しい」という価値観は、過去のものとなりつつあります。いま、世界的には「体型に関しても多様性を大事にしよう」という考え方が広まっているのです。

↑歌手のテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデなど多くのセレブが、自身の経験をもとに、ありのままの体型を受け入れる重要性を語り、他人の体型をジャッジする危険性を訴え始めています

 

それでも、いまだ古い価値観が残っているのはなぜか、また過度なダイエットをするとどうなるのか、なんば・ながたメンタルクリニックの永田利彦院長に聞きました。

 

「BMI」で自分の痩せ度・肥満度を客観視

まず、客観的に自身の肥満度を測定してみましょう。肥満度を判断するときに使われるのがBMI(Body Mass Index)です。身長と体重から、自分が普通体重かどうかをチェックすることができます。

 

【BMIの計算方法】

BMI= [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]

 

【肥満度の判断基準】

18.5未満……低体重(痩せ)
18.5以上25未満……普通体重
25以上……肥満

※計算方法は世界共通ですが、肥満の判断基準は団体によって異なります。上記は日本肥満学会の基準です。

 

「日本には、すぐにダイエットをしなくてはならないような高度な肥満の方は、ごくわずかしかいません。むしろ20代女性の5人に1人が『痩せ』に含まれていて、BMIが18.5を下回る成人女性の割合は先進国の中でトップクラスにあります。にも関わらず『自分は太っている』と感じている方が多く、現代の日本は痩せすぎなのにさらに瘦せたい女性が多い状況なのです」(なんば・ながたメンタルクリニック 永田利彦院長、以下同)

 

痩せすぎが身体に与える悪影響とは

「洋服をきれいに着られる」「顔が小さく見える」……スリムな体型でいることは女性にとってメリットが大きいと感じるかもしれません。しかし医師の立場からすると、瘦せすぎはとても危険なのだとか。どんなデメリットがあるのか永田先生に教えていただきました。

 

1.100%の力を出せない

「瘦せすぎのデメリットとして何よりもまず挙げられるのが、エネルギー不足です。エネルギーが足りないと、充分に活動することができません」

 

2.寿命を縮める可能性がある

「若年層の人間のデータはありませんが、少し太めの体型の方が長寿というデータが数多くあります。例えば、約3割食べる量を制限したサルと制限しなかったサルで成人病になるリスクを調べた実験があります。そこでわかったのが、人間で言う中高年くらいの時期から3割くらい食べる量を制限したほうが多少番長生きだったということ。反対に若い時期から食事量を制限すると寿命が短くなる可能性があるとわかっています」

 

3.低体重の赤ちゃんが生まれやすくなる

「痩せすぎの女性は栄養が不足しています。そんな瘦せすぎの母体にいる赤ちゃんは栄養を十分にもらえず、2500g未満の低体重で生まれてきてしまいます。これは通常、発展途上国で起こる問題にも関わらず、先進国である日本で増えているのです。低体重で生まれた赤ちゃんは将来的に糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病になるリスクが高くなります。そこで、これまで産婦人科では『太らないようにね』という指導が多かったのですが、最近は『痩せすぎはだめですよ』という指導がされはじめています」

 

4.骨粗しょう症のリスクが高まる

「人間の骨は20歳で一番強くなり、そこから徐々にもろくなっていきます。痩せすぎでは20歳までに頑丈な骨がつくれず、将来骨粗しょう症になるリスクが高まってしまうのです。また、これは20歳を超えたら関係ないという話ではありません。20代の方も痩せすぎると骨量が少なくなるため、骨粗しょう症リスクの高い身体になってしまいます」

 

「ほかにもコレステロールが減って肌がぼろぼろになったり、体脂肪率が10%を下回って生理がこなくなったり、痩せすぎにはさまざまなデメリットがあります。場合によっては摂食障害になってしまうこともあります。瘦せすぎが引き起こす悪影響はどれもすぐに実感できるものではないため甘く見てしまいがちですが、確かに自分の身体に負荷をかけていることを理解してください」

 

海外には「ノーダイエット」の流れが到来

瘦せすぎが引き起こす身体的リスクが徐々に広まり、海外では風向きが変わりつつあります。

 

「2006年以降、欧米ではファッションモデルの摂食障害による訃報が相次ぎ、モデルたちの不満がどんどんと溜まっていきました。事態を重く見た国が業界団体・事務所に対して痩せすぎモデルの規制を開始。スペイン政府はBMIが18以下のファッションモデルのファッションショー出場を禁じ、フランスでは痩せすぎモデルを規制する法律ができたのです。
その結果、とある研究によるとアメリカのファッション誌に載っているモデルのBMIは長らく下がる一方だったにも関わらず、最近になって急に上がり始めたそうです。国際的にはノーダイエットの風潮になりつつあるといえるでしょう」

 

また、毎年5月6日の「国際ノーダイエットデー」も、体型の多様性を後押しする要因のひとつと言えます。1992年にメアリー・エバンス・ヤングが定めたこの記念日は、ダイエットがもたらす健康被害の理解を深め、体型による差別をなくす目的があります。

 

なぜ日本には「痩せ=美しい」の考え方が残っている?

国際的にはノーダイエットが広まりつつある一方で、日本にはまだまだ「痩せ=美しい」の考え方が根付いています。アリゾナ州立大学で人類学を教えるシンディ・スターツスリダラン氏も「日本人は体重へのスティグマ(偏見や差別)がとても強いように思います」と指摘。いったいなぜ、瘦せ体型にこだわってしまうのでしょうか?

 

「『女性の憧れの的であるモデルやアイドルの体型』と『メディアやダイエット産業』が、日本人女性の瘦せすぎを加速させていると感じます。
日本で活躍しているモデルやアイドルのほとんどがスリムな体型をしていますよね。真偽は確かめられないですが、事務所から『歌やダンスが苦手なら、せめて体型はスリムにしなさい』と指示されたと訴える人がいます。痩せることがひとつの武器になってしまっているのです。

 

そして彼女たちを美しさの象徴とし、『皆さんも理想の体型になればハッピーな人生を送れます』といったメッセージを送るのが日本のメディアやダイエット産業です。痩せたい人が増えれば増えるほど業界が潤うのはわかりますし、肥満体型の方に体重コントロールを促すのは大事なことです。しかし今のメディアやダイエット産業が促しているのは、モデルやアイドルのようなBMI18.5以下の細さを目指す不健康なダイエットではないでしょうか。
医師としてできるのは危険性を訴えることだけですから、あとはモデルやアイドル、彼女らを見る女性の意識が変わることを願うばかりです」

 

 

最後に、私たちが自分らしい体型を受け入れるために何が必要なのか、医師の観点から教えていただきました。

 

「何よりも皆さんに考えてほしいのは『いま自分がやっていることが幸せな暮らしにつながるか』ということです。食事制限などの無理なダイエットは短期間では効果があるものの、ほとんどの方がすぐにリバウンドしてしまいます。
ダイエットは脂肪細胞が小さくなることで脂肪が減る仕組みなのですが、リバウンドするときは脂肪細胞が大きくなるだけでなく数も増えてしまいます。つまりダイエットとリバウンドを繰り返すとどんどん太りやすくなってしまうということ。リバウンドはとても身体に悪いのです。

 

それに無理なダイエットであればあるほど、頭の中は食べものことしか関心がなくなってしまうので楽しく暮らせるとは思えません。一時的なスリムな見た目のためにするダイエットが、その先の自分を幸せにできるか考えてみてください」

 

プロフィール

なんば・ながたメンタルクリニック 院長 / 永田利彦

大阪府生まれ。大阪市立大学医学部卒。同大学院医学研究科修了。大阪市立大学助手、講師、大学院医学研究科准教授(神経精神医学)を経て、2013年に壱燈会、なんば・ながたメンタルクリニックを開設。医学博士。ピッツバーグ大学メディカルセンターWPIC摂食障害専門病棟で客員准教授として診療、研究に従事。日本摂食障害学会理事長、日本うつ病学会評議員・気分障害の治療ガイドライン作成委員会など、編集に「日本摂食障害学会 監修、摂食障害治療ガイドライン」ほか、著書に『Social Phobia: Etiology, Diagnosis and Treatment』(共著)、『Social Anxiety Disorder』(共著)、『ダイエットしたら太る- 最新医学データが示す不都合な真実』(光文社)ほか。監訳に『うつと不安のマインドフルネス』(明石書店)『思春期うつ病の対人関係療法』((創元社)『過食は治る-過食症の成り立ちの理解と克服プログラム』(金剛出版)『神経性やせ症治療マニュアル(印刷中)』(金剛出版)ほか。摂食障害、不安症の論文多数


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

競争に負けない”メンタル強者”になるための4つの心がけ

メンタルが弱い人は、自分の弱さにうんざりするあまり、成長をあきらめがちです。あなたの味方は、あなただけです。自分のことを嫌いにならないでください。メンタルを鍛えて自信を取り戻しましょう!

 

嫌いな自分は、捨てなくていい。』(中谷彰宏・著/学研プラス・刊)という本があります。メンタルを強くするために役立つ67本のコラムを収録しています。

未来を信用する

メンタルの弱い人は、過去を信用しています。
メンタルの強い人は、未来を信用しています。

(『嫌いな自分は、捨てなくていい。』から引用)

 

自分の可能性を見定めるときには、過去を気にしてはいけません。うしろ向きの考えかたでは成功しないからです。

 

他人に信用してもらうためには「実績」が必要です。しかし、自分で自分のことを信じるのならば「実績」は必要ありません。担保は不要です。うまくいく未来だけを信じて、ひたすら前向きにチェレンジしたほうが成功しやすいです。

 

 

「できない」の中にヒントがある

できない中にも、「できる部分」と「本当にできない部分」とがあります。
(中略)
できる部分を掘り起こすことで、できる部分が広がっていきます。メンタルの弱い人は、全部を束にして「できない」と言っているだけなのです。

(『嫌いな自分は、捨てなくていい。』から引用)

 

人生がうまくいかない人に共通するのは、すぐにやめてしまうことです。たったひとつ「できない」ことがあると、すべて「できない」と決めつけます。学習や仕事に行き詰まったときは、あきらめずに「できない」を分析してみましょう。

 

たとえば、「数学が苦手」だと自称する人は多いです。三角関数や微分積分テストの正答率が低くても、カンタンな四則演算や方程式なら解けるはずです。つまり、論理思考や計算能力はあるわけですから、いつか理解できるかもしれません。数学全体が得意ではないと思い込むのは、もったいないです。

 

メンタルにも同じことが言えます。「メンタルが弱い」と決めつけずに、「弱いのはメンタル全体の一部分だけ。弱いところは補強すればいい」と正しく認識しましょう。

 

 

長距離ランナーのメンタルに学ぶ

マラソンをする人のメンタルの強さは、完走できることではありません。抜かれても平気なことです。
(中略)
メンタルの弱い人は、物事をショートスパンでしか考えられません。抜かれたら必死で抜き返して、自分のペースが乱れます。

(『嫌いな自分は、捨てなくていい。』から引用)

 

メンタルが強い人は、物事に動じないための「裏付け」を備えています。

 

マラソン選手ならば、自分のペースを熟知しており、しかも計画どおりに走るので、逆算することによってゴール時刻もだいたいわかっています。未来を知っているので、他人に追い抜かれることは何らプレッシャーになりません。考えているのは、計画どおりに一定のペースを守って走ることだけです。

 

個人競技のアスリートは、自分のベストタイムを乗り越えることを目標としています。メンタルを強くしたければ、自分と戦うことに慣れましょう。

負荷をかければ工夫がうまれる

たとえば、ジムで、7回しか挙げられなかったバーベルを、頑張って10回挙げます。20キロ挙げられる人が、25キロに挑戦します。これが負荷です。
(中略)
負荷をかけた分だけ、工夫が生まれます。それが結果につながります。

(『嫌いな自分は、捨てなくていい。』から引用)

 

カラダを鍛える方法としては、大きく分けて「トレーニング」と「スポーツ」があります。どちらも、肉体に「負荷」をかけるものです。ジョギングによるトレーニングは、走るだけです。脚力や持久力はアップしますが、それだけにすぎません。

 

スポーツは、筋力や持久力のアップだけでなく、効率の良いカラダの動かしかたを学ぶことができます。それこそが、負荷をかけることによって得られる「工夫」です。球技におけるチームワークを習得することも、スポーツという負荷によって得られる「工夫」のひとつです。筋肉増大やトーナメント成績は、ただの「結果」にすぎません。

 

なにかを学び始めたとしても、すぐに結果は出ません。しかし、かならず「工夫」を体得しているはずです。それこそが、あなたのメンタルを補強するものです。お試しください。

 

 

【著書紹介】

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嫌いな自分は、捨てなくていい。

著者:中谷彰宏
出版社:学研プラス

仕事でも恋愛でも、メンタルが強い人がうまくいく。メンタルを強くする方法。【この本は、3人のために書きました。】(1)メールに書かれたことで、くよくよしてしまう人。(2)嫌われるより、ガマンしてしまう人。(3)軸が定まらないで、ぶれやすい人。

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