色も味わいも百花繚乱! ロゼワインのイチオシ銘柄と基礎知識

前編「フランス流 ロゼワインの楽しみ方」では、ミシュランシェフ・松嶋啓介さんに、ロゼワインの本質とその楽しみ方について教えてもらいました。今回は、そんなロゼワインの種類や味の特徴を見てみるとともに、今押さえておきたい人気の銘柄を、いくつか紹介しましょう。

 

「ロゼ=甘い」は大間違い!

ロゼワインとひとくちに言っても、薄めのオレンジ色から濃いピンク色までさまざま。それは原料となる黒ブドウの皮の色素の濃淡にもよりますが、製法の違いによる場合もあります。ただ、色の濃淡と味わいの印象は必ずしもリンクせず、淡い色でも旨みが強くスパイシーで余韻の長いもの、色が濃くても果実味がチャーミングでスイスイと飲めるものもあります。

 

また、その色の可愛らしさから、ロゼワインの大半は甘口だと思っている人も多いかもしれませんが、それは大きな間違い。実はしっかりとした酸がありつつシャープな辛口のものが大半で、幅広く食事に合わせることができます。もちろん、やや甘口のものや本場フランスでも人気のフルーツフレーバーロゼワインなどもあり、それらは本格的な食事の前の食前酒として、また昼下がりのテラスでキンキンに冷やしてなど、味わいの違いによってさまざまなシチュエーションで使い分けられるところが、ロゼワインの魅力です。

 

さらなる魅力は、その手頃な価格帯。1000円台で充分本格的な辛口のロゼワインを、4000円前後ともなれば高級ロゼワインと呼べるものまで楽しめます。赤ワインや白ワインならこの価格では買えない、という有名な造り手のものでも、ロゼワインなら手頃な価格で楽しめる掘り出し物も存在するのです。

 

さまざまな楽しみ方の可能性を秘めたロゼワイン、どれを選ぶかはまさに十人十色。シチュエーションごとに、その日の気分ごとに、使い分けて楽しんでみてください。

 

三大ロゼから日本産まで、おすすめのロゼワイン

フランスの三大産地のロゼワイン

フランスでは白ワインより多く飲まれるロゼワイン(詳細なデータは前編へ)。もちろん生産量も世界一。そんなフランスが誇る三大ロゼワイン産地は、ロワール地方、プロヴァンス地方、ローヌ地方です。

左:ラシュトー・ロゼ・ダンジュ(ロワール地方)
中:ラフラン・ヴェロル・バンドール・ロゼ(プロヴァンス地方)
右:ドメーヌ・ド・ラ・モルドレ・タヴェル・ロゼ・ラ・ダム・ルス・レ・ヴェスティード(ローヌ地方)

 

別名で称したロゼワイン

ロゼワインを指す別名で、原料であるブドウ、製法の特徴や生産地によって「ヴァン・グリ」や「キアレット」と特定の呼び名がラベルに表記されていることもあります。

左:ドメーヌ・アラン・ヴィニョ・ブルゴーニュ・コート・サンジャック・ピノグリ
右:モンテ・ディ・ロアリ・バルドリーノ・DOC・キアレット

 

より気軽に飲めるフルーツフレーバーロゼワイン

ロゼワイン消費大国フランスで気軽に飲めるロゼワインとして人気なのがフルーツフレーバーロゼワイン。なかでもグレープフルーツ(パンプルムース)風味が主流。

マス・ド・ジャニーニ・ル・タン・デ・フリュイ・ロゼ・パンプルムース

 

メイドインジャパンのロゼワイン

いま注目の日本ワインのなかにも、魅力的なロゼワインがいっぱい。それぞれの土地の食材や郷土料理と、同産地のロゼワインを合わせて楽しめるのは、日本ワインならではの魅力ですね。

セイズ・ファーム・ロゼ(富山県)

 

 

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ミシュランシェフが説く! フランス流 ロゼワインを美味しく飲む方法

日本各地で記録的な寒波に見舞われたこの冬。長い冬を抜け、ようやく太陽の暖かさを感じ始める季節になると、人は本能的に屋外での時間を過ごしたくなるもの。桜が咲いたらお花見、汗ばむ季節のBBQ、そんな季節にぴったりなワインといえば、最近人気が高まってきた「ロゼワイン」です。

 

ロゼワインは今、欧米を中心に大人気。全世界における消費量はワイン(スパークリングを除く)の合計消費量の10%を超え、ワイン全体の消費量が伸び悩む中でも、ロゼワインの消費は拡大しています。なかでもフランスは、全世界のロゼワインの1/3以上を消費する“ロゼワイン大国”。2003年から2013年までの10年間における消費量は50%増となり、フランスの全ワイン消費量の30%以上。赤ワインの次に飲まれているのはロゼワインで、実は白ワインの消費を上回っているのです。(*1)

 

日本のロゼワイン事情は?

一方、日本でもワインショップやレストランで見かける機会は多くなりましたが、それでもワイン全体の消費量のわずか約3.7%(*2)。世界的な消費の加速に比べれば、まだまだ気軽にロゼワインを日常に取り入れている人は少ないのが現状です。

 

ではなぜ、フランスではロゼワインがこれほどまでに人気なのか? 日本ではなぜまだまだ少ないのか? その疑問をフランス、日本双方のロゼワイン事情に詳しいこの方に聞いてみました。

↑レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」を経営する松嶋啓介シェフ

 

ロゼワイン生産地の本場フランス・プロヴァンス地方に4軒、東京・神宮前に1軒のレストランを経営する松嶋啓介シェフ。外国人としては最年少でフランス・ミシュランの星を獲得して以来10年間星を維持、フランスの芸術文化勲章も受賞しています。そんなフランス在住歴20年の松嶋さんが感じる「フランス流ロゼワインの楽しみ方」とは?

※1 Sopexa Japon
http://www.franceshoku.com/mailmagazine/2015/mm0427.html
※2 Sopexa Japon
http://www.franceshoku.com/pdf/2_TRADE_IWSR-Japon_jp.pdf

 

実は「フランス流」なんてどこにもない?

「赤か白か、選ぶのが面倒くさいからロゼワインを飲むんですよ」。

 

昼下がりの東京・神宮前、レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」。大きな窓から見える木々の青さと差し込む太陽の光に囲まれて、ここは都会の真ん中だと一瞬忘れさせられる空間。とはいえ、このシンプルで開放的すぎる松嶋さんのひと言に、インタビュー冒頭からとたんに緊張が緩んでしまいました。

 

「フランスでロゼワインが一番楽しまれるのは、夏のバカンスの時期。家族や友人たちがたくさん集まる機会が多くなる時です。そうするとテーブルに10人くらいついた時に、ひとりひとり赤が好み? 白が好み? と選んでいると面倒くさいんですよ(笑)。じゃあ、冷えたロゼワイン1本でいい? となるわけです」

 

また、松嶋さんはこう続けます。「フランスは年度の始まりが9月。だから6月頃に学校も終わって家族でバカンスだー! っていう時に、ロゼワインが美味しい陽気になる。そんな暑くて開放的な時期に、手の込んだ料理なんて家庭では作らないですよね。そうすると、例えば外でBBQしながらいろんな食材を焼いて食べる時、料理との相性とかあれこれ考えずに開けられるのがロゼワインなんです」

 

“フランス流”と言いながら、実は流儀と呼べるものは何もなく、ただただ気軽だから、気楽だからという理由で、ロゼワインは選ばれているのだと松嶋さんは言います。

 

フランスでのロゼワインのキーワードは「開放感」。日本ではそのピンク色の可愛らしいイメージから、バレンタイン需要などのプロモーション展開も見られますが、冬の寒い時期にロゼワインは似合わないとのこと。長い冬を抜けて桜が咲き、やっと暖かくなった! という開放感、夏休み突入でいざビーチへ! という時の高揚感、そんな時期にロゼワインは楽しむべき飲み物のようです。

 

「人生はバラ色」の本当の意味

伝説のフランス人歌手エディット・ピアフの名曲「La vie en rose=バラ色の人生」という歌があります。ピアフが感情表現たっぷりに歌うその歌詞の最後が「私は幸せ」と締めくくられるように、人が「人生はバラ色」と言う時、それは華やかなピンク色だけに彩られた、幸せいっぱいの人生のことを表しています。でも、「バラ色」って一体何色でしょうか?

 

「バラと言っても1種類の色じゃなくて、白もあれば黄色や地味な薄い茶色もあって、ピンクや赤がありますよね。ロゼワインも全く同じで、薄めのオレンジから濃いピンクまで色々あります。フランス人は“La vie en rose!(人生バラ色だからね)”って言いながらロゼワインを飲む人も多いけど、その本当の意味は“いろんな人生があっていいよね”ということ。だから、いろんな色があってこそロゼワインなんです」(松嶋さん)

 

フランスにおけるロゼワインの、もうひとつのキーワードは「多様性」。これだけたくさんの色のグラデーションがはっきり見られるのは、白ワインにも赤ワインにもないロゼワインだけの特徴。ゆえに、どんなお料理に合わせるのがいいの? 白ワイン寄りの食材? 赤ワイン寄りの味付け? と、あれこれ悩んでしまう結果、ロゼワインは使いづらい、選ばないと購入を諦めてしまうことはありませんか? でも、「多様性があるならそれを楽しめばいいだけ」と松嶋さんは言います。

 

「バラ色=幸せなピンク色」だけでは決してない、つまり、“このロゼワインにはこのお料理を”というひとつの正解なんてないのです。だからこそ、自分の感性で楽しめばよく、自分の人生を自分らしく生き多様性を許容するというフランス人の人生観にも似ていることが、ロゼワインがフランスで愛される理由なのかもしれませんね。

↑いろんな人生があるからこそ、「人生はバラ色」なのだそうです

 

そしてもう1つ、人生観にも通じるフランス人らしいロゼワインの楽しみ方を、松嶋さんは教えてくれました。

 

「フランス人がロゼワインを飲むとき、それは夏のバカンスで飲んだ楽しい思い出とリンクするんです。ロゼワインを飲むと、いつでもどこでもあの楽しい思い出が心によみがえる。家族との会話、友人たちとの時間、楽しかったなーって。だからロゼワインが好きなんです。お酒の用語のスピリッツ(Spirits)はつまり精霊、精神ですね。精神世界や過去の記憶とつながるのがお酒だとすれば、フランス人はロゼだけでなく、ワインをそうやって楽しんでいる人が多いんです」

 

ロゼワインに限らず、知識でワインを楽しむことが多いのは真面目な私たち日本人の特徴ですが、多くのフランス人にとってのワインは、頭でなく心で感じるもの。ワインというものの日常の位置付けを見直すことで、もっと人生は心豊かなものになるのかもしれません。

 

では、私たち消費者がロゼワインを日常にもっと取り入れるために、お料理とのペアリングはどのように楽しんだらいいのか、レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」の料理をご用意いただきながら、ポイントを教えていただきました。

 

ロゼワインに合わせたい食材とは?

「気軽に」「なんでもいい」とはいえ、せっかくミシュランシェフの松嶋さんにお話を伺うことが叶った今回のインタビュー。私たち消費者がロゼワインを日常にもっと取り入れるため、お料理とのペアリングポイントを伺いました。でもその回答も、やはりシンプル!

 

「ニンニクを使うこと」。

 

レストラン「KEISUKE MATAUSHIMA」で、今回ロゼワインと合わせるお料理としてご用意いただいたのは2皿。「ちょっとお洒落なニース風サラダ」と、「タラのローストピストゥースープ添え」。そのどちらのお料理にも、ニンニクが非常に良い味わいのアクセントとなっていました。

↑「ちょっとお洒落なニース風サラダ」(左)と、「タラのローストピストゥースープ添え」(右)

 

一緒にいただいたのはもちろん、プロヴァンスのロゼワイン。プロヴァンスロゼの特徴は淡いオレンジ色ですが、色の淡さとは対照的に、南フランスの太陽をたっぷり浴びた完熟ブドウのスパイシーさと果実味の余韻があります。その余韻がニンニクと合わさるとさらに長く広がり、他の食材の旨味とバランスよく調和する役割を見事にロゼワインが担っていました。

 

「あとは、コンディマン」。

 

コンディマンとは、フランス語で自家製調味料、薬味という意味。自家製ですから決まったレシピはなく、数種類のスパイスやハーブをお好みで合わせた調味料のこと。じんわりと身体に染み入るお出汁系の料理より、コンディマンを味わいのアクセントにちょっと使った料理の方が、ロゼワインには合わせやすいとのこと。

 

「人生はバラ色だし、少しのコンディマンも必要でしょ?(笑)」と、松嶋さんは楽しそうにアドバイスしてくださいました。

↑スパイシーなコンディマンはロゼワインと相性抜群

 

↑ニンニクの風味がロゼワインの余韻を引き出す

 

ロゼワインを許容するという暮らし方

フランスから学ぶロゼワインのキーワードは、「開放感」と「多様性」。日本でもロゼワインをもっと楽しむためには、暮らし方の意識改革が必要なのかもしれません。ロゼワインが好きな人は自分らしく人生を楽しんでいる人。人生の振れ幅を許容し、開放的で自分なりの暮らしのスタイルを持っている人。すでにロゼワインが好きな皆さんは、胸に手を当てると思い当たる節があるのではないでしょうか?

 

これからの季節、あんな色やこんな色があっても「とりあえずロゼ!」と手を伸ばしてみたら、もっと日常が開放的で彩り豊かなものになるかもしれません。

 

【レストラン情報】

KEISUKE MATSUSHIMA à Tokyo

東京都渋谷区神宮前1-4-20 パークコート神宮前1F
TEL:03-5772-2091

 

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