ワイン初心者におすすめ! メルシャンの甘口でフルーティな「ジョイ」シリーズ3種

メルシャンは、コンチャ・イ・トロ社の「ジョイ」シリーズより、「ジョイ ジューシー レッド」「ジョイ ブライト ホワイト」を2月20日より、「ジョイ フルーティ ロゼ」を3月4日に発売します。

↑「ジョイ ジューシー レッド」、「ジョイ ブライト ホワイト」、「ジョイ フルーティ ロゼ」

 

記事のポイント

近年ワイン市場では、日常的にワインを飲む層だけでなく、ワイン初心者や若年層にも飲みやすい、甘口でフルーティな味わいのワインの需要が高まっているといいます。今回発売するワインはいずれも酸味が程よく、甘みが楽しめるとのこと。ワインデビューにぴったりでは。

 

「ジョイ」は、「誰もが楽しめるワイン」をコンセプトに生み出された、Z世代などの若年層やワイン初心者にも飲みやすいシリーズ。「もぎたてのフルーツを思わせるような程よい甘み」が特徴だといいます。

 

今回発売するのは、以下の3種類です。

 

・ジョイ ジューシー レッド

チェリーやストロベリー、フランボワーズのような、赤い果実の華やかでフルーティな香りで酸味は穏やか。バランスのとれた上品な味わい。

 

・ジョイ ブライト ホワイト

洋ナシやメロン、熟したリンゴやピーチなどフルーツの香り。程よい酸味とフレッシュで甘みのある味わい。

 

・ジョイ フルーティ ロゼ

熟したリンゴやピーチ、ラズベリーのような赤い果実の香り。穏やかな酸味と程よい甘みのある、やわらかい味わい。

 

パッケージは品種や産地を訴求せず、ワインの楽しさが伝わるカラフルなデザイン。「ワインは難しい」というイメージを払拭する狙いがあります。

 

メルシャン
「ジョイ ジューシー レッド」、「ジョイ ブライト ホワイト」、「ジョイ フルーティ ロゼ」
アルコール度数:ジョイ ジューシー レッド 10.5%/ジョイ ブライト ホワイト 12%/ジョイ フルーティ ロゼ 11%
容量:750ml(瓶)
価格:オープン

ウイスキーもワインも欲張る“ハシゴ酒旅”! サントリーのワイナリー&ウイスキー蒸溜所めぐり

「食欲の秋」は過ぎ去ったが、冬から春にかけて旬を迎える食材は多い。美味に加え、美景も求めて旅をするなら山梨はいかがだろう。先ごろ施設の充実度をアップさせた、サントリーのワイナリーとウイスキー蒸溜所の各見どころをお届けする。

 

日本ウイスキーのパイオニアが新たに挑むものづくりを体感

2023年はジャパニーズウイスキー100周年。「サントリー白州蒸溜所」も50周年を迎えたが、次の時代をつくる第一歩として、パイオニアの新たな挑戦は始まっている。その現場を体感できるツアーが、今秋からスタートした。

↑1923年に建築着工した山崎蒸溜所に続く拠点として、半世紀を経た1973年に竣工。この建物は1979年に完成した「ウイスキー博物館」で、シンボリックな屋根はかつて山崎蒸溜所にあった麦芽乾燥塔「キルン」を模したデザインだ

 

アクセスは、小淵沢駅から無料の送迎バスで行くのがオススメ。ここは「サントリー天然水 南アルプス白州工場」を併設し、両方見学できるのも特徴だ。なお、ともに内部へ入場するには事前予約が必要となるので覚えておこう。

 

目玉となる有料ツアーは抽選制で、ふたつのプランがある。ひとつは、仕込、発酵、蒸溜、貯蔵といった一連の工程を学んだ後にテイスティングを楽しめる「白州蒸溜所ものづくりツアー」(3000円)。もうひとつが、旧蒸溜棟や古典的な製造工程を見学しながらつくり手と交流ができ、その後は希少なウイスキーや地元食材とのペアリングも味わえる、この9月に開始した「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」(1万円/曜日限定)となっている。

↑施設内には大小様々な樽貯蔵庫があり、合計でその数は18棟にもおよぶ。ここはそのひとつで、180Lのバーボンバレルを230Lに組みなおしたホッグスヘッド樽が最も多い

 

なお、ツアー以外にも魅力は満載。新生のレストラン、世界のウイスキー文化や白州の歴史を知れる博物館、蒸溜所限定の希少な商品を買えるギフトショップなど充実している。ぜひいますぐ予約し、至福の酒旅に酔いしれよう。

↑ギフトショップでは、ロゴ入りのグラスやアパレルといったグッズのほか、ウイスキーなどのお酒も販売。運がよければ限定銘柄や、「シングルモルトウイスキー白州」も購入できる

 

ココが最新

↑現代の精麦は機械式が主流だが、ここでは非効率ながら狙った酒質を得られる古典的な「フロアモルティング」を一部導入。プレステージ版のツアーで見学できる。

 

↑9月に開業した「白州テラス」。地元食材を使った料理を、「白州 森香るハイボール」(700円)ほか様々なドリンクと楽しめる。名物は「白州フォレストピザ」(2200円)。

 

サントリー
白州蒸溜所

 

海抜約700mの高さにあり、東京ドームの約17倍という広さを誇る、世界でも稀な“森の蒸溜所”。南アルプスの麓で暮らす野鳥や草木と共生しながら育まれるウイスキーは、大自然のたくましさとやさしさを両立した味わいとなり、国際品評会で何度もアワードを受賞している。

住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
時間:9:30~16:30(最終入場16:00)
休み:年末年始、工場休業日、その他臨時休業あり ※2024年の最終営業日は12月24日。2025年1月8日より営業
交通:JR小淵沢駅より無料シャトルバス運行 ※ビジターセンターより先の建物への入場は要予約

たわわに実ったぶどうも見られる、サントリーのワイナリーツアー

日本屈指の名水の里であり、ぶどうの名産地でもあるのが山梨だ。サントリーは同県に美酒の生産拠点をふたつも構え、それぞれ見学ツアーも実施している。アクセスは東京からなら、新宿駅などから特急「あずさ」が最速。JR中央本線で山に向かえば、甲斐市ではワイナリー、北杜市ではウイスキー蒸溜所が待っている。

↑1909年に登美農園として開園。以降、南に富士山を仰ぎ、眼下には甲府盆地を望むこの地で100年以上ぶどうとワインがつくられてきた。ショップ2階の「富士見テラス」では絶景を自由に堪能できる

 

県庁所在地でもある甲府の駅前から、週末や休日は無料送迎バスが運行しているのが「サントリー登美の丘ワイナリー」だ。日本ワインに100年以上携わってきた同社は2022年、その魅力をより広めるべく“ぶどう畑を起点としたお客様接点の強化”を掲げ、新ブランド「SUNTORY FROM FARM」を発足。ワイナリーの設備やコンテンツをリニューアルし、ツアーも刷新(要予約/1000円~)した。それぞれ、ぶどう畑、熟成庫、その両方を見学できる行程で、すべてテイスティング付きなのもうれしい。

↑ワインショップにはテイスティングカウンターを併設。ぶどうの産地は山梨をはじめ長野や東北など、常時20種前後の多彩なラインナップから選んで有料試飲ができる

 

敷地は東京ドームの約32倍という広さで、多くはぶどう畑。それを約50の区画に分け、各環境に適した品種を育成しているが、なかでも注力しているのが日本固有の「甲州」だ。公式サイトをチェックしよう!

↑要予約の有料ツアーで見学できる熟成庫。夏でも16℃前後、湿度60%程度という涼やかな石造りの空間に、200以上の樽が並ぶ。別室には瓶熟成の巨大な棚も

 

ココが最新

↑ショップの目玉ワインといえば、このワイナリーなどでしか買えない限定銘柄だ。なかには9月10日に発売されたばかりの新作もあり、「登美の丘 甲州 2022」(ボトル5940円)は期間限定で有料テイスティングも可能。お土産や、旅の思い出としてもぜひ購入したい

 

サントリー
登美の丘ワイナリー

甲府駅からバスで約30分。雄大なぶどう畑の先には、甲府盆地や富士山の絶景が広がる。予約不要で自由に散策できる畑があったり、テイスティングができるショップや、軽食とワインとのマリアージュを楽しめる見晴らし抜群のテラスがあったり、エントリー層でも気軽に楽しめる充実ぶりだ。

住所:山梨県甲斐市大垈2786
時間:10:00~17:00(最終入場16:30)
休み:水曜、年末年始、その他臨時休業あり ※2024年の最終営業日は12月22日。営業再開日は公式サイトを参照のこと
交通:JR甲府駅南口より無料シャトルバス運行 ※シャトルバスは週末と祝日の運行

低アルでやさしい発泡感が心地いい!「甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング 缶」を8/27より新発売

メルシャンは、ぶどう本来の甘さが楽しめるアルコール度数3%のボトル缶スパークリングワイン「甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング 缶(赤/白)」を8月27日より全国で新発売。

「甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング 缶」は、ぶどう本来の甘さで多くのワインノンユーザーやワインライトユーザーからも好評な「甘熟ぶどうのおいしいワイン」ブランドから新たに発売する、低アルコールのボトル缶タイプのスパークリングワインです。

 

当商品は、ブランドのコンセプトである“ぶどう本来の甘さ”に、すっきり飲める“心地よい発泡感”を加え、飲みやすい味わいに仕上げています。

 

①中味について

・赤:ぶどう本来のジューシーな甘さが楽しめる、やさしい発泡感が心地よいスパークリングワイン。
・白:ぶどう本来のさわやかでフルーティな甘さが楽しめる、やさしい発泡感が心地よいスパークリングワイン。

 

②パッケージについて

・ぶどうの果実感を大きく表現することで、「おいしそう」と直感的に感じられるようなデザイン。
・品質感とスタイリッシュさが感じられる、ボトル缶を採用。

 

メーカー:キリンビール
商品名 :「甘熟ぶどうのおいしいワイン スパークリング(赤/白)」
アルコール度数: 3%
容量・容器: 290ml・ボトル缶
価格(税別): オープン価格

飲酒中・飲酒後のNG行為は?悪酔いせずお酒を楽しむ“適正飲酒”の基礎知識

心身ともに健康への注目が年々高まるなか、2024年2月には厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表。飲酒に伴う社会的責任にも関心が集まっています。飲む人も飲まない人も、ともに理解を深めるための基礎知識をお届けしましょう。

 

『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』(主婦と生活社)や『名医が教える飲酒の科学』(日経BP・日経新聞社)などの著書をもつ酒ジャーナリストの葉石かおりさんに、酔いに関する豆知識や、悪酔いしない飲み方のコツなどを教えていただきました。

 

 

おさらい。
「酔う」ってどういう状態?

まずあらためて押さえておきたいのが、お酒に“酔う”とはいったいどういう状態なのか、ということ。

 

飲んだお酒に含まれるアルコールの多くは肝臓で処理され、分解されるなかで悪酔いや頭痛、動悸の原因にもなる成分アセトアルデヒドに。そして、分解される成分のひとつである酢酸は血液を介して全身を巡り、水と炭酸ガスに分解。やがて汗や尿、呼気中に含まれて外へ排出されます。
参考=アサヒビール「人とお酒のイイ関係」

 

アルコールは血液に溶け込んで脳へも運ばれ、神経細胞に作用することで麻痺が起こります。これが“酔い”の正体。その程度は、脳内のアルコール血中濃度によって6段階に分けられます。

 

「血中濃度が0.02~0.04の『爽快期』から、0.41~0.50の『昏睡期』までの6段階ですね。なお、一般的には肝臓でアルコール代謝されるのですが『イッキ』などでガブ飲みすると、代謝が追いつかずに血中アルコール濃度が急激に上昇します。

すると『ほろ酔い期』や『酩酊期』を飛び越して、一気に『泥酔期』『昏睡期』の状態にまで進み、場合によっては意識不明や呼吸困難など危険な状態に。これが急性アルコール中毒と呼ばれる症状です」(酒ジャーナリスト・葉石かおりさん、以下同)

 

資料提供=キリンホールディングス

 

なお、人種の遺伝的な性質により、日本人を含むモンゴロイド系の人々は、ヨーロッパ系やアフリカ系に比べてお酒に弱いといわれています。日本人にフォーカスすれば、約4割はお酒に弱いとも。
参考=キリンホールディングス「適正飲酒のススメ」

 

さらに、アルコールを分解する酵素が十分働かない若年層はもちろん、代謝能力が低下する高齢者も酔いやすい体質。さらに体格やホルモンの影響により、女性は男性よりも血中アルコール濃度が高くなりやすい傾向があります。成人でも、それぞれが体質に応じた飲み方を守っていくことが大切だといえるでしょう。

 

最近よく聞く「適正飲酒」の定義とは?

今回のテーマ「適正飲酒」とは読んで字のごとく、適量で節度ある飲酒のこと。日本は冒頭で述べたガイドラインによって、生活習慣病のリスクを高める1日あたりの「純アルコール量」を男性で40グラム以上、女性で20グラム以上の摂取、と定義しました。

純アルコール量は、大手酒類メーカーを中心に2021年ごろから記載されるようになっている。写真はオリオンビールの缶体表記。

 

参考=キリンホールディングス「適正飲酒のススメ」

 

「適正飲酒」が声高に推奨されるようになった背景には、急性アルコール中毒を防止しようという意識の高まりに加え、アルコールの過度な摂取が生活習慣病のリスクを高めるという社会課題も関係しています。

 

事実、各省庁によると国内のアルコール消費量は減少しているものの、アルコール摂取を要因とする死亡率は悪化。2022年にアルコール性肝疾患で亡くなった人は6296人で、20年前の2002年の3327人と比べ2倍近くに増えたとか。

 

その背景には、一部の多量飲酒者が極端にアルコールを消費している状況があるとされ、そこで作成されたのがガイドラインです。2022年に行われた第1回から全5回の検討会を経て、2024年2月19日に公表されました。

こうした取り組みには、日本と諸外国を比べた際の、お酒を取り巻く環境や文化の違いもあると葉石さん。「実は、日本は飲酒の取り締まりがやさしい国なんです」と指摘します。

 

「例えば飲食店における『飲み放題』というメニューは、私の知る限り欧米では提供されていません。また、日本は公園やビーチなどの公共の場における飲酒に寛容ですが、アメリカなど法律で取り締まっている国もありますし、時間帯によってお酒を販売しない国も多いです」

 

そのうえで葉石さんは、各国が指標とする適正飲酒量についても言及。

 

「日本がガイドラインで定義した、男性40グラム、女性20グラムという純アルコール量ですが、これは世界的にみるとまだ多いほうです。純アルコールの量はあくまで目安ですが、海外事例も踏まえたうえで、各人がお酒の摂取量を意識するべきでしょう」

 

例えばアメリカは男性28グラム、女性14グラム。スウェーデン、シンガポール、台湾は男性20グラム、女性10グラム 。なお、爽快期から昏睡期までの目安を知る、血中アルコール濃度は、=[飲酒量(ml)×アルコール度数(%)]÷[833×体重(kg)]という計算式で導き出せるので、ぜひ自身でもご確認を。

 

お酒を飲むなら実践したい!
悪酔いしないコツ

葉石さん『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』は、最新医学を踏まえた健康的な嗜み方が満載の一書。あらためて、悪酔いしないコツを教えていただきました。

 

・飲む前に食べておく

「空腹状態で飲酒すると、胃で多少とどまるはずのアルコールが一気に小腸へ。すると、血中アルコール濃度も早く上がってしまうため、悪酔いしやすくなります。オススメは、消化が遅くて胃のなかに長くとどまってくれる、油分が多い食べ物。例えばチーズや、ドレッシングで味わうサラダ、カルパッチョなどがいいでしょう」

 

・油分以外にオススメな食べ物

「油のほかに胃を守ってくれる成分のひとつがビタミンU(キャベジン)。キャベツやブロッコリーに多く含まれていますが、水溶性で熱に弱いため、生で食べましょう。肝臓の解毒作用やアルコール代謝を促進するアミノ酸に分解されるのが、たんぱく質。特にオススメなのは、ヘルシーかつ粘りが胃を保護してくれる納豆です。また、消化されずに大腸まで届く、きんぴらや切り干し大根といった食物繊維が豊富な料理。悪酔い防止には、肝臓での代謝を助けるタウリンや、ゴマなどに含まれるセサミンが効果的です」

 

・水を挟みながら飲酒する

「水には、胃腸内のアルコール濃度を薄める効果があります。また、アルコールには利尿作用があり、尿量が増えて脱水症状になりやすいため、それを防ぐためにも水を飲むことがオススメ。日本酒造組合中央会によれば、摂取する水は酒と同量程度を推奨しています」

 

・二日酔い対策にはオレンジジュース

「二日酔いは、酒を飲んだ翌日にも体内にアルコールが残っていたり、アルコール代謝が原因で体調不良を起こしたりする症状。飲み過ぎないことが前提ですが、もしつらいときはオレンジジュースがオススメです。それは、糖のなかでも特に吸収の早い果糖が豊富で、同時に水分も取れるから。また、アセトアルデヒドの分解を促進するビタミンCや、利尿効果を持つカリウムも豊富なのがオレンジです」

 

飲酒中・飲酒後のNG行為と間違った“常識”

悪酔いしないコツを実践したい一方で、NG行為もあります。飲酒運転や飲酒の強要はもってのほか、不安や不眠解消のための飲酒や療養中や投薬後の飲酒もNG。また妊娠中・授乳中の飲酒も避けたほうがいいでしょう。ただ、ほかに良かれと思って実践していた行為がNGだった、ということもあるようです。

 

・汗をかくとアルコールが抜ける?

→間違い。

「脱水症状となるため逆効果。汗をかいてもアルコールは抜けません。酔った状態で行う運動は、心臓に過度な負担がかかるとともに、発汗作用によって脱水症状になる危険性もあります。また、酔ったままの入浴も危険です。血圧が上昇して納所中や心臓発作の危険性があるほか、湯船のなかで寝てしまい溺死するリスクもあります」

 

・“ちゃんぽん”(さまざまな種類のお酒を飲む)は悪酔いする?

→避けるべきだが、理由が異なる。

「お酒の種類は関係なく、あくまでも酔いは摂取したアルコールの総量で決まるもの。ちゃんぽんが悪いのは、種類が変わることで純アルコール量(自分がどれだけ飲んだか)があいまいになるからです」

 

・牛乳を飲むと胃に膜ができて酔いにくくなる?

→もっと適切な対策を。

「完全なる間違いではない(乳脂肪やたんぱく質が含まれるため)ですが、であれば固形のチーズを食べるほうが効果的でしょう」

 

誤解に惑わされず、正しい知識で楽しく飲みたいものです。

 

新たな価値観「ソバーキュアリアス」って?

最近は、「ソバーキュリアス」ということばをしばしば聞くようになってきました。こちらは「sober(しらふ)」と「curious(好奇心)」を組み合わせた造語で、お酒をあえて飲まない日を楽しむライフスタイル。欧米の1980年〜1990年代半ば頃に生まれたミレニアル世代から、こうしたトレンドが生まれたといわれています。

 

日本でもその価値観が広まり、大手メーカーを中心にノンアルコール、低・微アル飲料が増加。コンビニでも買えるようなメジャーな商品を中心に、特徴や味わいを紹介しましょう。

 

 

アサヒビール「アサヒ ゼロ」
オープン価格
一度ビールを醸造した後にアルコール分を取り除く「脱アルコール製法」により、アルコール度数0.00%でありながら本格的なビールらしい味と飲みごたえを実現。2023年に近畿エリアで先行発売していたが、好評につき今春より全国展開へ。
アルコール度数=0.00%

 

サッポロビール「サッポロ ザ・ドラフティ」
オープン価格
2021年の秋にデビューしたアルコール度数0.7%の微アル飲料で、2023年1月製造分からリニューアル。ホップを3分割添加し、さらに氷点下熟成させた麦芽100%生ビール原料を新たに採用したことで、よりビールに近いおいしさに。
アルコール度数=0.7%

 

ヤッホーブルーイング「正気のサタン」
235.44円(税込)
国内クラフトビール界のトップランナーが、2022年の夏に新発売。クラフトビールで特に人気のあるインディアペールエール(IPA)の味を追求し、柑橘系のアロマホップが芳しい香りに仕上げた。
アルコール度数=0.7%

 

宝酒造「タカラ 辛口ゼロボール」
141円(税込)
2022年10月にデビュー。ノンアルコールながら、下町の大衆酒場で愛される味わいを、タカラ「焼酎ハイボール」のおいしさを濃縮したエキスで実現。糖質、カロリー、プリン体、甘味料がゼロなのもうれしい。
アルコール度数=0.00%

 

月桂冠「月桂冠 スペシャルフリー」
オープン価格
日本酒のなかでも人気の高い大吟醸の香味をイメージして開発された、ノンアルコール飲料。ブランドは2014年9月に発売された「月桂冠フリー」が前身で、コクのある「スペシャルフリー」と淡麗な「スペシャルフリー辛口」がある。
アルコール度数=0.00%

 

アサヒビール「koyoi ブリリアントベリー」
1650円(税込)
2021年9月に誕生した、低アルコールのクラフトカクテル「koyoi」の人気フレーバー。ラズベリーと炭酸をベースに、バニラが上品に香る。全商品が保存料、着色料、人工甘味料不使用で、素材本来のおいしさを最大限に引き出しながら飲みやすく仕上げられている。
アルコール度数=3%

 

メーカーも自ら立ち上がった!
適正飲酒にどう取り組んでいる?

「適正飲酒」に関してはメーカーも以前から啓発活動を行ってきました。ここではとくに積極的な3社の取り組みを紹介します。

 

・アサヒビール

2020年12月より、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる「スマドリ(スマートドリンキング)」を提唱。2022年1月にはアサヒビールと電通デジタルでスマドリ株式会社を設立し、「SUMADORI-BAR SHIBUYA」もオープン。5月23日には、スマドリに共感する人が集うファンコミュニティ「SUMADORI-LAB .」も開設されました。

アサヒビール「人とお酒のイイ関係」

 

2022年にオープン、2024年にリニューアルされた「SUMADORI-BAR SHIBUYA」。

 

・オリオンビール

肝疾患による死亡率が男女ともに全国ワースト1で、アルコール性肝疾患の死亡率は全国平均の約2倍となっている沖縄県。このような背景も受け、地元のオリオンビールは2019年末にストロング系と呼ばれる高アルコール商品を廃止しました。また、純アルコール量の缶体表記は2021年7月より開始(公式サイトでの表示は同年4月より)。適正飲酒の取り組みに関して、実に先駆的なメーカーといえるでしょう。 オリオンビール

 

・キリンビール

お酒を飲むときに、その雰囲気や流れる時を楽しんでもらうという新しい飲み方「スロードリンク」を2019年から提唱し、適正飲酒の啓蒙活動もより積極的に実施。2024年5月からは、団体向けに正しいお酒との付き合い方を学ぶ「適正飲酒セミナー」の展開もスタートしています。

キリンビール「適正飲酒のススメ」

 

最後に……お酒はやっぱり楽しい!

アルコールの過剰摂取は心身ともにリスクが伴います。ただし、適正に飲むなら「お酒はコミュニケーションツールであり、日常のストレスから解放してくれるメリットも大きいものです」と、葉石さんはお酒の“効能”も力説します。

 

これからの「スマートなお酒の楽しみ方」は、自身の適正飲酒量を知り、無茶せず楽しむ程度に嗜むこと。より詳しく知りたい人は、葉石さんの各著書も参考に、いつまでもおいしくお酒を楽しみましょう。

 

Profile

酒ジャーナリスト / 葉石かおり

エッセイストでもあり、「酒と心身の健康」「酒と食のペアリング」を主軸に各メディアにコラム、コメントを寄せる。各企業にて酒の健康的な飲み方、アルコールハラスメントについての社内研修も行っている。代表作に、シリーズ累計18万5000部を超える『名医が教える飲酒の科学』『酒好き医師が教える最高の飲み方』(ともに日経BP)があり、新著は『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』(主婦と生活社)
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アジア最高位に選ばれたメルシャン「椀子ワイナリー」がワイン醸造同様に力を入れていること

近年、国内外で注目を集めており、人気が高まっている日本ワイン。長野県上田市にある「シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー」は、その年の世界最高のワイナリーを選出するアワード「ワールド ベスト ヴィンヤード」で、2023年のアジアNo.1に選ばれました。

 

名実ともに日本のワイン文化をけん引する存在となったメルシャンと椀子ワイナリーでは、より革新的なワイン造りを実践・発信するべく、サステナブルに焦点をおいたワイナリーツアーの開催を発表。現地に赴き、その取り組みを取材しました。

↑「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」。2003年に開園した椀子ヴィンヤード内に2019年開業し、2023年7月「ワールド ベスト ヴィンヤード2023」に日本のワイナリーで唯一、2020年から4年連続選出。同時にザ・ベスト・ヴィンヤード・イン・アジアにも選ばれました。ちなみにヴィンヤードとはぶどう畑のこと

 

一部の国のワインばかりが消費される日本を変えたい

なぜ、メルシャンがサステナブルなワイン造りに注力するのか。それはSDGsが世界的な目標であることはもちろん、ワイン造りが農業と密接な関係があり、地域社会や自然との共生が欠かせないと確信しているから。

↑地域や先人、自然への感謝を話す、メルシャンの長林道生社長

 

しかし、日本のワイン業界の現状は、海外と比較すると後れをとっているのだとか。この実情については、日本で唯一の「Master of Wine」(マスター・オブ・ワイン。ワイン業界において最も名声が高いとされる資格)で、名前の後に「MW」を付記することが許されている大橋健一さんが教えてくれました。

 

今夏、世界中のマスター・オブ・ワインが集うシンポジウムがドイツで開催されました。そこで大橋さんが驚いたのは、すべての講演でサステナビリティについて触れられていたこと。つまり、海外のワイン業界ではサステナビリティがきわめて重要視されているのです。

↑大橋健一MW。自らの立場も踏まえたうえで、国内メーカーと一丸になってワイン業界の意識を変えていかないといけない、世界からリスペクトされるための課題はたくさんあると力説します

 

大橋MWの考える、日本人の意識改革のひとつがワインの立ち位置。日本人1人あたりのワイン消費量は1年間で4本にすぎないそうで、ほかのお酒と比べると“日常酒”となっておらず、価格も高め。極端にいえば“ハレの日に飲む高級品”となっており、「ワインはたまにしか飲まない贅沢品だからサステナブルでなくてもいいんじゃないか、サステナブルな見地からは外れてもいいんじゃないかとか。日本ではそういう傾向が見受けられます」と警鐘を鳴らします。

 

つまり、国内におけるワインはラグジュアリーグッズとしての側面ももっており、サステナブルな観点としてはけっして歓迎できるものではないということ。

 

「ラグジュアリーグッズであるがゆえに、日本では圧倒的に偏った国のワインばかり消費される傾向が否めません。加えて公共性の面においては、まったくサステナブルではないのです」と大橋MW。こうした現状を、椀子ワイナリーを中心にシャトー・メルシャンが変えていこうと試みていることを教えてくれました。

 

見学や試飲で楽しむ新設のSDGsツアーを体験

椀子ヴィンヤードの開園は2003年。かつて桑畑であったものの生糸業の衰退とともに放棄され、荒廃農地となっていた土地をぶどう畑に転換して誕生しました。高品質なワインを造るために下草を刈るなどの丁寧な農作業を行い、雄大な草原環境を生み出し、現在では希少種を含む様々な生きものが生息する豊かな自然環境に回復させています。つまり、椀子ヴィンヤードはもともとサステナブルに意欲的なヴィンヤードなのです。

↑椀子ヴィンヤードの広さは約30ヘクタールと、東京ドーム約6個分。標高約600~650mに位置し、メルローやシャルドネ、シラーやソーヴィニヨン・ブランなど、白黒約8種類のブドウを垣根式で栽培しています

 

そんな同ワイナリーによる新たな取り組みが、見学体験や試飲を交えて楽しみながらヴィンヤードの価値を伝えていく「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー SDGsツアー」。2023年は9月2日と11月11日(ともに土曜)の2回開催し、今後も季節ごとに年間5回程度実施予定とのことで、その一部をいち早く体験させてもらいました。

↑この日案内してくれたのは、シャトー・メルシャンの小林弘憲ゼネラルマネジャー。SDGsツアーのスタート地点である一本木公園にて

 

椀子ヴィンヤードは10年以上前から地元・塩川小学校の学びの場にもなっているそう。3年生になるとじゃがいもを栽培・収穫。4年生になるとぶどう収穫、そして5年生はその植樹を体験する特別授業が盛り込まれるのだとか。これは郷土愛を育む体験として、また食育の観点からも素敵な取り組みだと感じました。

↑ヴィンヤード内の畑。毎年7月下旬が収穫期で、そのじゃがいもは児童の学校給食に使われるとか。その後は地元の委員会が蕎麦を植え、秋冬にかけて収穫するサイクルです

 

SDGsツアーではもちろん、ぶどうの木や果実も見学できます。取材時は夏だったため果実は青々としていましたが、秋には熟して収穫となり、9月のSDGsツアーはやや酸味が強いものの試食できるとのこと(11月は収穫後の時季ですが、残っていれば試食可)。

↑椀子ヴィンヤードの代表品種のひとつ、メルロー。お盆ごろに黒くなり、あえて食べごろがあるとすれば(生食用品種ではなく加工用品種であるため)収穫時期の9月下旬とのこと

 

SDGsの取り組みは、収穫後のぶどうにも。例えば、醸造時にぶどうの実を搾ったあとの皮や種、茎などを活用するための堆肥場が圃場の端にあり、ここで約2年間微生物にゆっくりと発酵させて肥料にします。ぶどうのカスは焼却炉で燃やすようなことはせず、また外部から持ち込む肥料を少なくすることで、運搬時に発生するCO2の排出を最小限に抑えているのです。

↑堆肥場で発酵させた、ぶどうの皮や種など。年間15~18トン出るカスが、約2年でサラサラの状態に。土地が広く、近隣に民家がないからできることと、小林マネジャーは言います

 

良好な草原環境へと整備された椀子ヴィンヤードには在来種や希少種などの多様な植物が生育しており、2014年から実施している生態系調査では、絶命危惧種を含む昆虫168種、植物289種が確認されているそう。その一例が、絶命危惧種の蝶「オオルリシジミ」の幼虫唯一の食草である「クララ」です。

↑オオルリシジミの幼虫が唯一食べる草、クララ。根を食べるとクラクラするほど苦いことが名称の由来とか。オオルリシジミが飛んでくることを願って、クララを増やす活動をしています

 

施設にもサステナブルな取り組みがあまた

また、椀子ワイナリーは施設自体がSDGsに配慮した設計になっています。それは「グラヴィティ・フロー」という、高低差を利用した設備や、動線により自然にかかる重力で果実や果汁を移すシステム。余計な動力が不要であるとともに、ぶどうの繊細な個性が損なわれず、エレガントで特色のあるワインが造れるというメリットがあります

↑ワイナリーは斜面を利用した設計。なお、圃場が近いため収穫後にすぐ運べるというメリットもあります

 

椀子ワイナリーは山の高台にあるため、冷涼であることも特徴。これはワイン樽熟成庫の空調面で大きな効果があり、冷房が必要なのは初夏〜盛夏ぐらいだそう。SDGsツアーでは、そんな熟成庫への入室もできます。木を通して呼吸をするワイン樽はかすかに優美な香りを放ち、心地いい気分に浸れることでしょう。

↑熟成庫では年間を通じて15℃以下、湿度70%以上をキープ。なお樽はフランスの10数社から購入し、材質はほぼフレンチオークです

 

ラストはお待ちかねのテイスティング。椀子の気候風土を表現する定番ワインのほか、オススメの限定品を含む計6種が味わえます。そのなかには高級銘柄の「シャトー・メルシャン 椀子オムニス」も。SDGsツアーの参加費はひとり税込1万円ですが、決して高くないといえるでしょう。

↑写真は一例で、右端が椀子オムニス。発売当初は海外の高級ワインで採用されるような重厚な輸入ボトルでしたが、いまやその価値観は一変。現在は環境に配慮し、国産の軽量なボトルを採用しています

 

残暑はまだまだ続きますが、今年もあっという間に実りと収穫の秋が訪れるでしょう。つまり、ぶどう狩りやワインの季節でもあります。椀子ワイナリーでは今回紹介したSDGsツアー以外にも様々なイベントが開催されているので、行楽シーズンでもある秋に、旅行も兼ねて訪ねてみませんか。

 

【SHOP DATA】

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー

住所:長野県上田市長瀬146-2
営業時間:10:00~16:30(テイスティングカウンター ※L.O.16:00)

※営業日は公式サイトのカレンダーを要確認

■アクセス

<電車の場合>
しなの鉄道「大屋駅」からタクシーにて約10分、JR北陸新幹線「上田駅」からタクシーで約25分

<車の場合>
上信越自動車道「東部湯の丸」ICより約10分

https://www.chateaumercian.com/winery/mariko/

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

アジア最高位に選ばれたメルシャン「椀子ワイナリー」がワイン醸造同様に力を入れていること

近年、国内外で注目を集めており、人気が高まっている日本ワイン。長野県上田市にある「シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー」は、その年の世界最高のワイナリーを選出するアワード「ワールド ベスト ヴィンヤード」で、2023年のアジアNo.1に選ばれました。

 

名実ともに日本のワイン文化をけん引する存在となったメルシャンと椀子ワイナリーでは、より革新的なワイン造りを実践・発信するべく、サステナブルに焦点をおいたワイナリーツアーの開催を発表。現地に赴き、その取り組みを取材しました。

↑「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」。2003年に開園した椀子ヴィンヤード内に2019年開業し、2023年7月「ワールド ベスト ヴィンヤード2023」に日本のワイナリーで唯一、2020年から4年連続選出。同時にザ・ベスト・ヴィンヤード・イン・アジアにも選ばれました。ちなみにヴィンヤードとはぶどう畑のこと

 

一部の国のワインばかりが消費される日本を変えたい

なぜ、メルシャンがサステナブルなワイン造りに注力するのか。それはSDGsが世界的な目標であることはもちろん、ワイン造りが農業と密接な関係があり、地域社会や自然との共生が欠かせないと確信しているから。

↑地域や先人、自然への感謝を話す、メルシャンの長林道生社長

 

しかし、日本のワイン業界の現状は、海外と比較すると後れをとっているのだとか。この実情については、日本で唯一の「Master of Wine」(マスター・オブ・ワイン。ワイン業界において最も名声が高いとされる資格)で、名前の後に「MW」を付記することが許されている大橋健一さんが教えてくれました。

 

今夏、世界中のマスター・オブ・ワインが集うシンポジウムがドイツで開催されました。そこで大橋さんが驚いたのは、すべての講演でサステナビリティについて触れられていたこと。つまり、海外のワイン業界ではサステナビリティがきわめて重要視されているのです。

↑大橋健一MW。自らの立場も踏まえたうえで、国内メーカーと一丸になってワイン業界の意識を変えていかないといけない、世界からリスペクトされるための課題はたくさんあると力説します

 

大橋MWの考える、日本人の意識改革のひとつがワインの立ち位置。日本人1人あたりのワイン消費量は1年間で4本にすぎないそうで、ほかのお酒と比べると“日常酒”となっておらず、価格も高め。極端にいえば“ハレの日に飲む高級品”となっており、「ワインはたまにしか飲まない贅沢品だからサステナブルでなくてもいいんじゃないか、サステナブルな見地からは外れてもいいんじゃないかとか。日本ではそういう傾向が見受けられます」と警鐘を鳴らします。

 

つまり、国内におけるワインはラグジュアリーグッズとしての側面ももっており、サステナブルな観点としてはけっして歓迎できるものではないということ。

 

「ラグジュアリーグッズであるがゆえに、日本では圧倒的に偏った国のワインばかり消費される傾向が否めません。加えて公共性の面においては、まったくサステナブルではないのです」と大橋MW。こうした現状を、椀子ワイナリーを中心にシャトー・メルシャンが変えていこうと試みていることを教えてくれました。

 

見学や試飲で楽しむ新設のSDGsツアーを体験

椀子ヴィンヤードの開園は2003年。かつて桑畑であったものの生糸業の衰退とともに放棄され、荒廃農地となっていた土地をぶどう畑に転換して誕生しました。高品質なワインを造るために下草を刈るなどの丁寧な農作業を行い、雄大な草原環境を生み出し、現在では希少種を含む様々な生きものが生息する豊かな自然環境に回復させています。つまり、椀子ヴィンヤードはもともとサステナブルに意欲的なヴィンヤードなのです。

↑椀子ヴィンヤードの広さは約30ヘクタールと、東京ドーム約6個分。標高約600~650mに位置し、メルローやシャルドネ、シラーやソーヴィニヨン・ブランなど、白黒約8種類のブドウを垣根式で栽培しています

 

そんな同ワイナリーによる新たな取り組みが、見学体験や試飲を交えて楽しみながらヴィンヤードの価値を伝えていく「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー SDGsツアー」。2023年は9月2日と11月11日(ともに土曜)の2回開催し、今後も季節ごとに年間5回程度実施予定とのことで、その一部をいち早く体験させてもらいました。

↑この日案内してくれたのは、シャトー・メルシャンの小林弘憲ゼネラルマネジャー。SDGsツアーのスタート地点である一本木公園にて

 

椀子ヴィンヤードは10年以上前から地元・塩川小学校の学びの場にもなっているそう。3年生になるとじゃがいもを栽培・収穫。4年生になるとぶどう収穫、そして5年生はその植樹を体験する特別授業が盛り込まれるのだとか。これは郷土愛を育む体験として、また食育の観点からも素敵な取り組みだと感じました。

↑ヴィンヤード内の畑。毎年7月下旬が収穫期で、そのじゃがいもは児童の学校給食に使われるとか。その後は地元の委員会が蕎麦を植え、秋冬にかけて収穫するサイクルです

 

SDGsツアーではもちろん、ぶどうの木や果実も見学できます。取材時は夏だったため果実は青々としていましたが、秋には熟して収穫となり、9月のSDGsツアーはやや酸味が強いものの試食できるとのこと(11月は収穫後の時季ですが、残っていれば試食可)。

↑椀子ヴィンヤードの代表品種のひとつ、メルロー。お盆ごろに黒くなり、あえて食べごろがあるとすれば(生食用品種ではなく加工用品種であるため)収穫時期の9月下旬とのこと

 

SDGsの取り組みは、収穫後のぶどうにも。例えば、醸造時にぶどうの実を搾ったあとの皮や種、茎などを活用するための堆肥場が圃場の端にあり、ここで約2年間微生物にゆっくりと発酵させて肥料にします。ぶどうのカスは焼却炉で燃やすようなことはせず、また外部から持ち込む肥料を少なくすることで、運搬時に発生するCO2の排出を最小限に抑えているのです。

↑堆肥場で発酵させた、ぶどうの皮や種など。年間15~18トン出るカスが、約2年でサラサラの状態に。土地が広く、近隣に民家がないからできることと、小林マネジャーは言います

 

良好な草原環境へと整備された椀子ヴィンヤードには在来種や希少種などの多様な植物が生育しており、2014年から実施している生態系調査では、絶命危惧種を含む昆虫168種、植物289種が確認されているそう。その一例が、絶命危惧種の蝶「オオルリシジミ」の幼虫唯一の食草である「クララ」です。

↑オオルリシジミの幼虫が唯一食べる草、クララ。根を食べるとクラクラするほど苦いことが名称の由来とか。オオルリシジミが飛んでくることを願って、クララを増やす活動をしています

 

施設にもサステナブルな取り組みがあまた

また、椀子ワイナリーは施設自体がSDGsに配慮した設計になっています。それは「グラヴィティ・フロー」という、高低差を利用した設備や、動線により自然にかかる重力で果実や果汁を移すシステム。余計な動力が不要であるとともに、ぶどうの繊細な個性が損なわれず、エレガントで特色のあるワインが造れるというメリットがあります

↑ワイナリーは斜面を利用した設計。なお、圃場が近いため収穫後にすぐ運べるというメリットもあります

 

椀子ワイナリーは山の高台にあるため、冷涼であることも特徴。これはワイン樽熟成庫の空調面で大きな効果があり、冷房が必要なのは初夏〜盛夏ぐらいだそう。SDGsツアーでは、そんな熟成庫への入室もできます。木を通して呼吸をするワイン樽はかすかに優美な香りを放ち、心地いい気分に浸れることでしょう。

↑熟成庫では年間を通じて15℃以下、湿度70%以上をキープ。なお樽はフランスの10数社から購入し、材質はほぼフレンチオークです

 

ラストはお待ちかねのテイスティング。椀子の気候風土を表現する定番ワインのほか、オススメの限定品を含む計6種が味わえます。そのなかには高級銘柄の「シャトー・メルシャン 椀子オムニス」も。SDGsツアーの参加費はひとり税込1万円ですが、決して高くないといえるでしょう。

↑写真は一例で、右端が椀子オムニス。発売当初は海外の高級ワインで採用されるような重厚な輸入ボトルでしたが、いまやその価値観は一変。現在は環境に配慮し、国産の軽量なボトルを採用しています

 

残暑はまだまだ続きますが、今年もあっという間に実りと収穫の秋が訪れるでしょう。つまり、ぶどう狩りやワインの季節でもあります。椀子ワイナリーでは今回紹介したSDGsツアー以外にも様々なイベントが開催されているので、行楽シーズンでもある秋に、旅行も兼ねて訪ねてみませんか。

 

【SHOP DATA】

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー

住所:長野県上田市長瀬146-2
営業時間:10:00~16:30(テイスティングカウンター ※L.O.16:00)

※営業日は公式サイトのカレンダーを要確認

■アクセス

<電車の場合>
しなの鉄道「大屋駅」からタクシーにて約10分、JR北陸新幹線「上田駅」からタクシーで約25分

<車の場合>
上信越自動車道「東部湯の丸」ICより約10分

https://www.chateaumercian.com/winery/mariko/

 

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パーティに最適! 高田秋が華やかなピンク系ロゼワインとスイーツをペアリング

飲み歩き大好きモデル・高田 秋が「家飲み」を追求! 今月は花見のシーズンに合わせて、華やかなピンク系ロゼワインと、桜の風味が楽しめるスイーツといっしょに。ペアリングの感想は!?

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【7杯目】春のパーティを彩るロゼとスイーツをペアリング!

エスタンドン
アンソランス
3740円

フランス語で“生意気”という意味を持つ「アンソランス」は、南仏のプロヴァンスロゼワイン。ぶどう品種はグルナッシュとシラーを使い、ハーブやシトラスを感じさせる香りとジューシーな酸味、すっきりした辛口の味わいが特徴だ。

 

“生意気”といったネーミングもデザインもお気に入り♪

桜のスイーツとロゼワイン、春到来♡ といった季節感があって、気分がアガりますね。ロゼはパーティとか特別なイメージがあって、この一本はまさにハレの日にピッタリ。もちろん、お花見とも相性抜群ですよ。

まず、ボトルがオシャレでかわいい! 名称もインパクトがあります。“生意気”って子どもに使うような言葉だと思うんですが、味わいは大人な女性を想起させる上品で繊細な辛口。そのうえ爽やかかつフルーティで、スーといけちゃう。この優秀さが、ワイン通からすると生意気なのかも。

普段、私は食事といっしょにお酒を飲むことが多いのですが、今回、「桜餅」「桜もなか」「桜ムース」と合わせてみたらスイーツもアリだなと思いました。どれも桜の素朴な甘さにワインの果実味がよく合い、特にアンソランスはフローラルな辛口なので、追い桜みたいなニュアンスを演出してくれます。

スタイリッシュなボトルや、あえてごはん系ではなくスイーツをペアリングする外しテクが、ハイセンスですね。ちょっと生意気かもしれませんけど(笑)。また、アンソランスとスイーツでパーティをやりたいと思います♪

 

茂助だんご「桜餅」(上)は、桜の葉の塩味と甘い餡が相まって美味。銀座あけぼの「桜もなか」(右)は、やさしい桜の香りが噛むたびにふんわりと。宗家 源吉兆庵「桜ムース 春薫」(左)は、すっきりとした甘さで食べやすい

 

 

高田 秋●たかだ・しゅう…1991年9月23日生まれ、北海道出身。立ち飲み屋巡りが趣味で、唎酒師などの資格を持つ。「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS)をはじめ、飲み歩き番組への出演も多数している。公式HPInstagramYouTube

 

文/中山秀明 撮影/篠田麦也 ヘアメイク/榊ひかる(Lila) スタイリスト/江原優里
●Apaiser lameのブラウス2万7500円、PARIS KIDSのイヤリング550円、そのほかスタイリスト私物

「ボジョレー・ヌーボー」に沸くのは日米だけ? ワイン好きの間で新たに注目される「ボジョレー」とは

「ボジョレー」と聞いてまず「ボジョレー・ヌーボー」を思い出す人は多いのではないでしょうか? 毎年“解禁日”が設定され、当日はボジョレー・ヌーボーを楽しむ人でにぎわう風景が一般的となっています。ところがこれが風物詩となっているのは、日本やアメリカ、カナダなど世界でも一部の地域にすぎないのだそう。実はワイン好きの間でいま注目を浴びているのは、「ヌーボー」ではない「ボジョレー」なのだとか。では、この「ボジョレー」とはいったい何?

 

バーとワインショップを経営しており、ワインの最新事情に詳しい橋本一彦さんに、最新の「ボジョレー」事情をうかがいました。

 

おさらいしておきたい、
「ボジョレー・ヌーボー」とは?

「ボジョレー」とは、フランス・ブルゴーニュ地方の南にある地区の名称。そこで作られた「ガメイ」というブドウ品種を使ってその地区で作られたワインが、「ボジョレー」と呼ばれます。一方、「ヌーボー」とはフランス語で“新しい”を意味する単語。つまり、「ボジョレー・ヌーボー」とは、ボジョレー地区で作られたその年の新しいワインということになるのです。

 

毎年、11月第3木曜日が“解禁日”に設定されており、それ以前は輸送などはできても、飲んだり販売したりはできません。2022年は11月17日がボジョレー・ヌーボー解禁日

2021年のヌーボー。「Rémi Dufaitre Beaujolais Villages Nouveau2021(レミ・デュフェイトル ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー)」(左)、「“SELENE” Sylvere Trichard Beaujolais 2021(シルヴェール・トリシャール・セレネ)」

 

【関連記事】今年もいよいよ解禁! マナーとして知っておきたい「ボジョレー・ヌーヴォー」のこと

 

「ボジョレー」とは
「ボジョレー・ヌーボー」のことではなかった

ボジョレー・ヌーボーを略したつもりで「ボジョレー」と言っていた人もいるかもしれません。橋本さんに聞いてみると、「ボジョレーとボジョレー・ヌーボーは別物です」とのこと。

 

「日本では、ボジョレー・ヌーボーのイメージが強いため、ボジョレーはイコールボジョレー・ヌーボーとなってしまっています。ヌーボーじゃない時のボジョレーはあまり好きじゃない、あるいはそもそも知らない、という人が多いですね。

でも、実はボジョレーにはとても味わい深いワインもあるんです。生産者側からも、ボジョレーは畑や場所が良くて参入しやすいという利点もあります。最近では味わいも含めて、ボジョレーの価値が見直されてきているんですよ」(橋本一彦さん、以下同)

東京・赤坂のバー「sansa」オーナーの橋本一彦さん。

 

収穫と新酒を祝う形のひとつとしてヌーボーを作る生産者はいますが、やはり『ワインは適切な時間をかけて作るもの』という考えもあります」

 

ご当地では実際、ヌーボーを作っていない生産者の方も少なくないのだとか。というのも、本来ワインとは収穫されたブドウを熟成させて作るもの。そのため、ヌーボーを作る生産者が比較的多いであろうボジョレー地区であっても、ほかの地域と同じワインの作り方のみをしていることもあるようです。

 

注目を集める“熟成ボジョレー”とは?

ワインは適切な時間をかけて作るものであり、またボジョレーのワインが魅力的だということを教えていただいたわけですが、では実際に、「ボジョレー」のワインとはどのような味わいなのでしょう? ボジョレーの味についても、橋本さんに教えていただきました。

 

「ガメイ種のぶどうを使ったボジョレーは美味しいですね。僕はどちらかといえば『ボジョレー・ヌーボーは苦手だ』と思っていたんです。でも、ガメイはそもそもおいしい、魅力的なブドウです。いい意味で洗練されきっていない、荒々しさや複雑さがある味わいに、魅力があると思っています。銘柄によっては、さらに熟成させることで本当に魅力的なお酒になることもあります。それが知られたことで、昨今、ヌーボーではないボジョレーが注目されてきているのだと思います」

こちらはヌーボーではなく、熟成されたボジョレーワイン。「Laurence & Rémi Dufaitre(ローレンス・エ・レミ・デュフェイトル ボージョレ・ヴィラージュ)」(左)と「Les Chemins de Traverse(レ・シュマン・ド・トラヴェルス)」

 

常温はNG!
ワインの保存で注意すべき3つのポイント

熟成させれば、より魅力的な味わいになるというボジョレー。ではまず、初心者でも失敗しない保存方法とはどのようなものなのでしょうか? この機会に、注意すべきポイントについて教えていただきました。

 

「気を付けなければいけないのは、温度、湿度、光の3つ。低温・低湿度の暗い場所が保存に適しています。冷蔵庫は14℃程度に設定するのが最適です。直射日光が当たらないからといって、納戸などで保存することは避けるべき。というのも、冬はともかく夏は納戸の中もかなりの高温になるためです。

冷蔵庫内では横に倒して入れてください。振動はワインの品質を劣化させてしまうので、冷蔵庫の扉部分にあるフリーポケットやボトルポケットに入れるのはNGです。手ごろな価格のものでかまわないので、ワインクーラーがあれば一番いいですね」

 

振動はワインの粒子間の安定性をなくしてしまうため、本来の味わいを損ねてしまうんだそう。また、ボトルを横向きにするのも、振動を防ぐためだけでなく、コルクを湿らせておくためという理由も。これは、コルクが乾燥することで空気を通しやすくなり、ワインが酸化していってしまうのを防ぐためでもあります。おいしい熟成ワインを楽しむには、これらのポイントを押さえることが必要です。

 

ちなみに、自身でもワインを熟成させたいという場合には適した銘柄があるので、ワインショップで購入する際などには、確認をしてから選ぶようにしましょう。

Sansaでは料理に合わせたワインの提案も。画像(上右・下)は「サトイモと鮭のブランダード」。ブランダードとは、魚を牛乳やじゃがいもと一緒に煮込み、混ぜてペースト状にした料理のこと。

 

やっぱり気になる
“ヌーボー”の特徴と魅力とは?

それでも、やはり解禁日が近づくにつれボジョレー・ヌーボーの存在は気になるでしょう。ボジョレーの魅力について知ったところで、あらためてヌーボーの魅力についてもうかがいました。

 

「ヌーボーにも、おいしいものはもちろんあります。ヌーボーの最大の特徴は、製造時にガスを充填していること。ガスを入れることで色素がしっかりと抽出され、銘柄にもよりますが、味わいもパワフルで厚みが出るものになります。
とはいえ、やはり“収穫と新酒を祝う”といった気持ちで楽しめることが、何よりもの魅力だと思います。実際にボジョレーヌーボーを作らない、ボジョレーの生産者も人のヌーボーを飲んでお祝いしたりしていますよ」

 

また、“早出し”のワインだからこそ、その年の出来栄えを一番に確認することが出来るというのも、ヌーボーならではの楽しみだそう。

 

「ヌーボーを飲んで、その年のワインの質を先取りしておくこともできます。ただ、これは仕事柄ワインに携わっている人の楽しみ方かもしれないので、一般的に楽しむ場合は難しいことを考えずに、収穫祭のように一年に一度の祝賀イベントヌーボーを楽しむことが一番だと思います」

ボジョレーもボジョレー・ヌーボーも、それぞれの特徴や魅力を知った上で味わえば、より深い楽しみ方ができそうです。今年は、ヌーボーに加えて熟成ボジョレーも用意して、味を比べてみる……というのも楽しいかもしれません。

 

【プロフィール】

sansaオーナー / 橋本一彦

学生時代からアルバイトなどでワインをはじめとしたさまざまなアルコールに触れる。フランス東部のジュラ地方で生産されるヴァン・ジョーヌ(黄色いワイン)を初めて飲んだ時に衝撃を受け、ワインの世界にのめり込むように。現在は、東京・赤坂でバー「sansa」、六本木でワインショップ「awai」を経営。

 

【店舗情報】

sansa

生産者の元を訪ねセレクトしたワインを、食事とともに楽しめるワインバー。ワイン以外にもクラフトビールを多種揃えており、料理のマリアージュ・マッチングを提案してくれるのが特徴。ランチの営業も行っており、敷居を感じさせないフレンドリーさも魅力。
所在地=東京都港区赤坂2-20-19 赤坂菅井ビル1F
営業時間=ランチ 11:30~14:00(水曜~金曜)、ディナー 18:00~25:00(月~金曜)・17:00~24:00(土曜)・17:00~22:00(日曜)
定休日=火曜、不定休
HP
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awai

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意外と簡単? ワインをオーダーする方法

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

フレンチやイタリアンレストランに行くなら、欠かせないのがワイン。

でも、ワインは種類も多く、マナーなども奥が深いもの。特に高級レストランでワインを飲もうとすると、ワインの頼み方だけでも不安になるという方は多いのではないでしょうか。

レストランに行って恥ずかしい思いをする前に、ワインのオーダー方法について確認してみましょう!

レストランをはじめ、様々なシーンでワインを頼んだり選んだりする際のポイントもご紹介します。

 

 

 

自分の好みのワインはどう伝える?

普段飲んでいるワインがお店に置いてあればいいですが、同じ銘柄があるとは限りません。
そんな時には自分の好みを伝えて、ワインをおすすめしてもらうと良いですよ。

そこで頼りになるのが味覚の表現です。

しかし、ワインの味覚はどのように表現するのが正しいのでしょう。
甘め、辛め、それとも酸味でしょうか?

お店で恥ずかしい思いをしないために、知っておきたいワインの表現のしかたを赤ワインと白ワインとに分けて解説します。

 

白ワインを頼むときの表現のしかた

ブドウの果汁だけを使ったワインで、スッキリとした味わいが特長です。

完熟度によって甘みが変わり、注文のときは甘さで表現するのが一般的。
「甘い」、「辛い」または「甘口」、「辛口」のように表現します。

 

赤ワインを頼むときの表現のしかた

赤ワインはあまり甘みがないため、濃厚さで表現するのが一般的です。

「重い」「軽い」という表現を使います。

注文するときは「重い」「軽い」でもいいですが、関連して知っておきたいのが「ボディ」。

ボディも赤ワインの濃厚さを表現するもので、軽めのものを「ライトボディ」、中間を「ミディアムボディ」、重めのものを「フルボディ」といいます。

メニュー表にボディが記載されていることもあるので、表現方法を知っていると頼む前にどんな赤ワインかイメージすることができますよ!

 

わからないときはワインソムリエを頼ろう

普段同じようなワインばかり飲んでいる場合は、比較対象が少ないのでなかなかワインの濃さや甘さはわかりにくいものです。

どんなワインを頼んでいいかわからないときは積極的にワインソムリエに聞いてみましょう!

注文したい料理、または普段飲んでいる銘柄を伝えれば、専門家であるワインソムリエが個人個人にあったワインを提案してくれます。

 

高級レストランでのワインの頼み方

次に、高級レストランでスマートにワインを頼むための、ワインのマナーを確認してみましょう。

 

どんなワインを頼むべき?

肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインを合わせるのが一般的です。

ただ、このワインにしなければならない決まりはないので、種類が多くなにを選んでいいかわからない場合は、コース料理にあったワインをソムリエに聞いてみましょう。

 

注文するワインの値段の目安

注文するワインの値段は、コース料理の半分が目安です。

理由は、料理の半分くらいの価格のワインがちょうどバランスがとれていて、料理にあっているため。

あまりにチープなワインを選ぶと恥ずかしい思いをしてしまうこともあるので意識しておくとよいです。

 

ボトルよりもグラスで頼むのがおすすめ

高級レストランでワインを頼む場合はボトルで頼むのが主流でしたが、最近ではグラス単位で注文できるお店も増えてきました。

マナーとしてボトルで出てきたら飲み切るのが一般的なので、量が多い場合はグラス注文をしましょう。

グラスで注文すると料理ごとに違う種類のワインを楽しめるので、料理に合わせたワインを頼みたい人にもグラスがおすすめです。

食前酒はどうする?

食前酒は、ワインではなくシャンパンやシェリーなどのすっきりと飲めて食欲を刺激するようなお酒を頼むのが一般的です。

 

高級レストランに行くならワインの値段も考えておこう

高級レストランのコース料理10,000円の場合、2人で2万円を予算と単純に考えるのは間違いです。

高級フレンチではワインや食前酒を頼むことが一般的なので、お酒、そしてサービス料まで加えると2人で2万円の料理も結局3万円くらいになってしまいます!

高級フレンチに出かける場合は、ワインや食前酒などの値段も考えた金額を予算として考えておくと安心ですね。

 

カジュアルレストランでのワインの頼み方

ワイン初心者は、カジュアルレストランからはじめてみるのがおすすめ。

高級レストランとの違いとカジュアルフレンチでのワインの頼み方をご紹介します。

 

高級レストランとの頼み方の違いは?

高級レストランよりもリーズナブルなカジュアルレストランのフレンチでも、積極的にワインを頼むことをおすすめします。

ただし、高級レストランとは違ってそこまで値段にこだわる必要はないので、気軽にワインを頼むことができますよ。

また、値段もボトルで2,000~5,000円程度と頼みやすい価格設定がされているのが特長です。

 

カジュアルレストランでもグラスがおすすめ

カジュアルレストランでワインを頼む場合も、グラスで頼むのがおすすめ。

理由はコース料理の内容に合わせてワインの種類を変えたり、さまざまな種類を試したりできるからです。

高級レストランよりも気軽な雰囲気なので、同席している家族や恋人とワインを交換して飲み比べることもできますよ。

 

バルでワインを頼むなら産地にこだわるべき

バルとは、ヨーロッパ風酒場のこと。

バルでは、高級フレンチやレストランなどと比べて、比較的お手頃なワインが提供されることが多いです。

高級レストランで提供されることが多いワインの産地は、総じてワインの価格が高いことが多いので、バルでは赤ワインなら新世界ワインといわれるオーストラリアやアルゼンチン産を中心に、甘口白ワインならドイツ産、辛口白ワインならニュージーランドやチリ産が無難でおすすめです。

 

自分でワインを買う場合はどう頼む?

買うワインが決まっているなら別ですが、デイリーワインを購入したり、贈り物のワインを選ぶのなら、直接店舗で手に取ってみるのがおすすめです。

お店のタイプ別にワインの選び方を確認してみましょう。

 

スーパーで買う場合

日常的に飲むワインを選びたいならスーパーで買うのがおすすめ。

スーパーの場合はワイン専門のスタッフがいないことも多いので、コンテスト受賞やスタッフのコメントのポップ、ワインのラベルが参考になります。

国別、ブドウの品種別など、工夫した陳列の仕方なども選ぶ際の助けになりますね。

 

コンビニで買う場合

いつでも利用できるコンビニは、すぐにワインを飲みたいときに便利。

ミニサイズのボトルなど、少人数でワインを飲みたいときにも役立ちます。

ワイン専門のスタッフはいないので、基本的にはラベルやポップを参考に買ってください。

 

デパートやワインショップで頼む場合

ワイン専門のスタッフがいるのが、デパートやワインショップでワインを選ぶメリットといえるでしょう。

高品質なワインも多く取り揃えているので、贈り物のワインを頼みたいときにぴったり!

ワイングラスやソムリエナイフなど、ワインに関するグッズも揃いますね。

 

【番外編】スパークリングワインやシャンパンの頼み方

フレンチレストランの食前酒にぴったりなのが、シャンパンやスパークリングワインです。
「泡」と表現することもあります。

赤ワインや白ワインのように決まった頼み方はなく、基本的にはおすすめを持ってきてもらうのが一般的です。

ただ、食前酒を頼む場合は「シャンパン」と頼むと種類が絞られてしまうので「スパークリングワイン」で頼みましょう。

なお、食前酒は必ず頼まなければならないものではないので、断ることも可能です。

 

まとめ

ワインの頼み方は、高級レストランか、カジュアルレストランか、また赤ワインか白ワインかでも変わってきます。

レストランに出かける前にサラッとおさらいしておきましょう!

レストランでできるとかっこいい! ワインのホストテイスティングを徹底解説

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

本格的なレストランでワインをボトルで注文すると、ソムリエからホストテイスティングを求められます。初めてなら緊張しますし、ソムリエの問いかけになんとなく返事をしている人もいるのではないでしょうか?

今回はスマートなホストテイスティングのやり方をご紹介します。ぜひお試しください!

 

 

 

なぜレストランでホストテイスティングをするの?

レストランでホストテイスティングをする理由は、注文したワインが健全な状態か、異常がないか確認するためです。

ホストテイスティングは、もともとは毒味として浸透していました。中世のヨーロッパで、自分の城に敵対する国の客人を招待する際に、毒がないことを示すために行われてきたからです。そこから派生し現代では、注文したワインの状態に異常がないかチェックするための動作となっています。

大切なゲストに振る舞うワインに問題ないかを事前に確認するために、ホストテイスティングは欠かせません。

 

ワインのテイスティングを行うときの手順

ホストテイスティングをスマートに行うために、手順を把握しておきましょう!テイスティングの手順は覚えてしまうと難しいものではありません。ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。

 

1.注文したワインを確認する

注文したボトルワインが届いたら、ソムリエと一緒にワインの銘柄と年代を確認しましょう。ワインは、タイプやヴィンテージ、そして熟度によって色や風味が異なります。そのため、注文どおりのワインか確認することが大切です。

 

2.色を見る

ワインの銘柄と年号に間違えがなければ、テイスティング用のワインがグラスに少量注がれます。ワインににごりや異物がないか確認しましょう。

■ポイント

色を見るときは、ワインの種類によって見方を変えると、色が判別しやすくなります。

赤ワインの場合は、グラスを45度傾けたときのグラスとの境目を、白ワインの場合はグラスを傾けずに真横から見るようにしましょう。

また、白いテーブルクロスなどを背景にすると、にごりや異物を確認しやすいです。

 

3.香りを試す

見た目に問題がなければ、香りの確認に移りましょう。スワリングして香りを試します。スワリングとは、グラスを回して空気を含ませることです。ワインに酸素を含ませることで、味や香りの変化を早める目的があります。スワリングは、2~3回程度で十分です。

■ポイント

香りを試すときのポイントは回し方です。利き手によって回す方向を変えましょう。右利きなら反時計回り、左利きなら時計回りに回してください。

グラスが回しにくかったら、テーブルにグラスを置いたまま持ち上げずに、足部分を持って回すと安定します。もし、ワインがグラスからこぼれそうになってもゲストの服を汚さずに済むでしょう。

香りを試して異臭を感じなければ、味わいのチェックに進みましょう。

 

4.味わいを確認する

いよいよ味の確認です。ワインをひと口含んで味や風味に異常がないかを確認します。

ホストテイスティングをしていて不快な味を感じたらソムリエに相談してください。味に問題がなければそのまま飲み込んでからソムリエに「大丈夫です」と伝えましょう。

 

ホストテイスティングでこんな場合はどうする?

ホストテイスティングでは、困ったシーンに出くわすこともあるでしょう。テイスティングをしていて慌てないために、シーン別の対処法について紹介します。

 

好みの味ではなかった場合

テイスティングでは好みのワインを選ぶわけではありません。基本的に、香りや味が好みではなくても交換できないことが一般的です。

このようなことを避けるため、あらかじめソムリエにゲストや自分好みのワインの味を伝えておくと良いでしょう。ワインが体質に合わず飲めない場合は、食事を楽しむためにも事前に相談することをおすすめします。

 

香りや味に異常を感じた場合

もし、テイスティングをしていて香りや味に異常を感じたらソムリエに伝えましょう。そのままにせず、その場で確認してもらうことが大切です。不快な臭い(ブショネ)だと思われたら、交換できます。

実際にテイスティングをしていて、「カビ臭いかも」と気になるようでしたら、控えめに伝えると角が立ちません。カビ臭いとは伝えず「このワインは、もともとこういう香りでしょうか?」と聞いてみてください。

とはいえ、テイスティング前にソムリエが異変に気付いた場合は、ボトルを交換するなど配慮してくれるでしょう。

ワインのブショネについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

「ワインのブショネとは?原因と見分け方を知るには」

 

ホストテイスティングを断りたい場合

ホストテイスティングをしなければならないと思っていませんか?ホストテイスティングは、自信がなければ断れます。

また、かしこまらず気軽にワインを楽しみたいときもありますよね。そんなときは、ソムリエに「お任せします」と伝え、ソムリエにチェックをお任せしてしまいましょう。

最初はテイスティングをしたいけれど、2本目からはテイスティングが不要なときもあるかもしれません。2本目からはソムリエにお任せする方法もあるので気負わずワインを楽しんでください。

 

まとめ

レストランにおけるホストテイスティングは、異常の有無を確認してゲストに不快な思いをさせないためのもの。

好みの確認ではなく、きちんと注文どおりのワインか、見た目・香り・味に問題がないかチェックしましょう!

その点だけ注意すれば難しく考えなくても失敗しないはずです。

白ワインに使われるブドウで有名な品種は何?

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

白ワインで多く使用されるブドウの品種はご存知でしょうか。多くの方があげるのはシャルドネかもしれませんね。

今回は、シャルドネの他、白ワイン用のブドウの品種について解説します。

 

 

 

白ワインの女王シャルドネ

フランス、ブルゴーニュ地方原産のシャルドネは、白ワイン用のブドウの中で誰もが真っ先に思い浮かべる代表的な品種です。

シャンパンの原料として使われているのも、実はこのシャルドネ。世界中で栽培されています。

ピノ・ブラン、ピノ・ブラン・シャルドネ、ピノ・シャルドネ、ムロン・ブランなどの別名で用いられることもあります。

シャルドネから造られるワインの特長は、こくがあって辛口のものが多く、りんごやメロン、イチジクや柑橘系の香りが感じられということ。

オーク材の樽で熟成したものはハチミツのような甘い香りがあり、乳酸による発酵を経たものはバターのようなクリーミィさが出たりと、実に多様です。

熟成方法などで大きく香りが変わるように、造り手の個性が出やすいのがシャルドネです。

地域の特長も出やすく、涼しい地域よりも温暖な地域のほうが甘く豊潤な香りを感じられるものができます。

同じシャルドネでも産地やワイナリーごとに楽しめるとは、挑戦しがいがありますね! 地域の気候やワイナリーの傾向を参考に、お気に入りを見つけてください。

 

若々しい辛口、ソーヴィニヨン・ブラン

フランスのボルドーやロワールが原産の品種、ソーヴィニヨン・ブラン。シャルドネとともに国際品種にあげられ、こちらも世界各地で栽培されています。

単一品種で醸造される辛口ワインが多いのが特長で、季節の料理に合わせやすいのが魅力です。

和食にもよく合うため、家庭料理と一緒に楽しむならおすすめの品種です!

香りはフルーツやハーブの中に青々とした草の気配も感じられ、スモーキーな香りがするものもあります。

注意点は、熟成しすぎないこと! 長く熟成するほど特長的な香りが薄れ、果実の甘い香りだけ、もしくは野菜の香りが強いだけのシンプルなものに変わってしまうので、早めに味わうのがおすすめです。

より特長的な香りで楽しみたいなら、カリフォルニア産のオーク材の樽で造ったものを試してみてはいかがでしょうか。

オークの香りが加わって個性的な香りのワインを楽しめますよ。ちなみにオーク樽で熟成されたものとして、カリフォルニア産のソーヴィニヨン・ブランがありますが、こちらは別名フュメ・ブラン。フュメとはフランス語で煙を意味します。

 

日本ワインを代表するブドウ品種、甲州

日本の三大ワイン産地のひとつ、甲州(山梨県)。そこで造られる「甲州」というブドウ品種は、他の白ワイン用ブドウとは違った特長を持っています。

多くの白ワイン用ブドウは、緑がかった色の実をつけますが、甲州はなんと淡いピンク色! 甘味と酸味の中に渋みがあるその味は、ここ十数年のあいだにさらに磨きがかかりました。

昔は、この渋みが甲州ワインの欠点と評されていたそうです。今は個性として愛されており、日本ワインらしい繊細さの象徴となっています。

甲州はヨーロッパからシルクロードを通って中国へ、そして中国から日本へ渡ってきたブドウが起源と言われています。

その歴史は日本で栽培が始まってから1300年以上の長さを誇ります。ワインの醸造は明治時代に始まりました。

当初は売上げが芳しくなかった甲州ワインですが、現代まで多くの人が品質や地位向上に努め、今や世界で認められるブドウ品種にまで成長しました。国際的審査機関「O.I.V」にも、2010年に登録されています。

発酵後に澱(おり)をあえて除かずにそのまま貯蔵するシュール・リー製法が甲州ワインの個性をより強く残します。

小樽仕込みで造られた甲州ワインも美味しいですが、「甲州ならではのワインが飲みたい!」というときは、シュール・リー製法のワインも試してみてくださいね。

 

まとめ

白ワイン用のブドウで代表的なものといえば、シャルドネです。産地ごとの特長が出やすいので、それぞれの個性を飲み比べたいなら、シャルドネがおすすめ。

同じく国際品種として有名なソーヴィニヨン・ブランも、カリフォルニアで造られたものはとくに個性を楽しめますよ!

日本にも甲州のような特長的な白ワイン用のブドウがあります。シャルドネやソーヴィニヨン・ブランとともに、ぜひ日本生まれの白ワインも味わってみてくださいね。

ワインのブドウ品種をご紹介

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

重めか軽めか、甘口か辛口かによっても変わりますが、ワインの味を大きく左右するのが、ワインの原料となるブドウの品種です。

有名どころは、赤ワインならカベルネ・ソーヴィニョン、白ワインならシャルドネあたりですが、他にもさまざまな品種が使われています。どんな品種があるのか、チェックしてみましょう!

 

 

 

赤ワインのブドウ品種

赤ワインに使われているのは、黒ブドウといって皮が紫色の品種です。ただひとくちに黒ブドウと言っても品種によって味わいや香りが変わってきます。赤ワインに使用される代表的な品種をみていきましょう。

・カベルネ・ソーヴィニヨン
赤ワインの代表的な品種といったらカベルネ・ソーヴィニヨン。
フランスのボルドー地方の他、世界の至るところで使われている品種です。
特長は深みのある味を表現する強いタンニン。熟成させることによってさらに優美な味わいになります。

 

・メルロー
こちらも世界的に人気のある品種で、日本でも長野県を中心に赤ワインの原料として栽培されています。
冷たい気候にも耐えられるのが特長。カベルネとは違いタンニンが少なく、まろやかな味わいが楽しめる品種です。

 

・ピノ・ノワール
代表的な産地はフランスのブルゴーニュ地方。
新鮮なうちはチェリーのような甘い香りがしますが、熟成されるとキノコのような独特な香りへ変化していきます。
そんな変化があるところも魅力。タンニンは少な目で、比較的軽やかな酸味のある味わいです。

・マスカット・べーリーA
新潟県高田のぶどう園で生まれた日本原産の品種で、ベーリーAと呼ばれることもあります。
甘いキャンディのような香りが特長的。タンニンは少な目で、フルーティーな味わいが楽しめます。

 

・シラー
シラーズともいわれる品種です。
小粒で皮がしっかりしているため、他の品種と比べて皮に由来するタンニンがしっかり感じられます。スパイシーな力強さのある味を求めるならこちらがおすすめ。

 

・ガメイ
ボージョレ・ヌーボーにも使われる品種です。
ジャムのような甘い香りで、タンニンが少なくフレッシュな味わいが特長。
熟成させるよりも新鮮なうちにいただく方がよりガメイ種の良さを感じられます。

 

・グルナッシュ
ロゼにも使われる品種で、ガルナッチャといわれることもあります。
甘さとフルーティーさが特長で、単体よりはブレンドで使われることも多い品種です。

 

白ワインのブドウ品種

赤ワイン同様に白ワインでも、さまざまなブドウ品種が使われています。
代表的な白ブドウの品種をみていきましょう。

・シャルドネ
主な生産地は、フランスのブルゴーニュ地方。
クセもなく、甘口から辛口などさまざまな表現ができる品種です。
白ワインといえばシャルドネというように、世界的にも知名度の高い種類。

 

・ソーヴィニヨン・ブラン
ハーブのような爽やかでキレのある香りが特長。
酸味もあり、シャープな味わいが楽しめます。フランスのボルドー地方の他、ニュージーランドやチリでも多く栽培されています。

 

・甲州
甲州という名前から想像がつくように、原産地は日本で、主な産地は山梨県。
1300年もの歴史ある品種で、グレープフルーツのような爽やかな香りと酸味があります。
世界的な賞を受賞するなど、近年世界的なワインとしても躍進をとげています。

 

・リースリング
ドイツで主に生産されている品種です。
上品で繊細な味わいが特長。辛口から甘口まで幅広く楽しめます。

・ピノ・グリ
ピノ・グリの他、ピノ・ブーロ、ルーレンダーなど場所によってさまざまな呼ばれ方をしています。
酸味はあまりなく、まろやかです。辛口の白ワインにぴったりの品種。

 

・ヴィオニエ
フランスのローヌ地方が原産地。糖度があり、酸味の少ない品種です。
華やかで独特な香りが、エキゾチックな料理にもよく合います。

 

・セミヨン
強い品種で、気候にあまり左右されません。
しっかりした甘味のある貴腐ワインによく使われる品種で、どちらかというと長期熟成向けです。

 

まとめ

赤ワイン、白ワインそれぞれ使われているブドウ品種は違いますし、それぞれ味わいや香りも異なります。

ワインが造られている土地に注目するのも良いですが、ワイン本来の味わいにこだわるなら、ブドウ品種にも注目してみると良いですね。

華やかでパーティーにもぴったり! スパークリングワインの選び方

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

人気急上昇のスパークリングワイン。見た目だけでいえば、発泡性があるのでシャンパーニュと同じに見えますね。違いはどこにあるのでしょうか。スパークリングワインをより一層楽しめるように、シャンパーニュとの違いやその魅力についてご紹介していきます。

 

 

 

スパークリングワインの特長とは

スパークリングワインは、国によって名称が異なります。

生産国 スパークリングワインの呼び方
ドイツ シャウム・ヴァイン(Schaumwein)、ゼクト(Sekt)
イタリア スプマンテ(Spumante)
フランス ヴァン・ムスー(Vin mousseux)、クレマン(Cremant)
スペイン エスプモーソ(Espumoso)

※様々なスパークリングワインの特長や製造法などの情報は、下記の記事よりご覧ください。

 

・プロセッコ
「乾杯にぴったりな「プロセッコ」!おすすめのマリアージュや特長をご紹介」

 

・ランブルスコ
「赤いスパークリングワイン・ランブルスコを楽しく飲むコツ」

 

・カバ
「スペイン産のリーズナブルなスパークリングワイン「カバ」を楽しむ」

 

スパークリングワインとシャンパーニュの違いは製造方法

スパークリングワインとシャンパ―ニュは、どちらも炭酸のシュワッとした刺激が魅力的なワインです。それぞれを分けるポイントは、製造方法の違いにあります。

 

スパークリングワインの製造法

スパークリングワインには、大きく4つの製造方法があります。

 

・トラディショナル方式
ベースとなるワインをワインボトルに入れ、糖分と酵母を加えて密閉し、瓶内で再度発酵を起こさせる製法です。ベースとなるワインを造る時の発酵を一次発酵、スパークリングワインを造る際の瓶内での発酵を二次発酵と呼びます。

フランスのシャンパーニュ地方で伝統的に行われている製造方法なので、「シャンパーニュ方式」と呼ばれることもあります。

 

・シャルマ方式
瓶内ではなく、密閉耐圧タンク内で二次発酵を行う製造方法です。短期間で多量に製造できるためコストを抑えられ、空気に触れないのでブドウのフレッシュな香りを残すことができます。

 

・トランスファー方式
トラディショナル方式と同様に、瓶内で二次発酵を行ないます。トラディショナル方式が瓶1本ずつ澱の除去を行うのに対して、トランスファー方式では大型タンクに一度移して、まとめて澱の除去を行うという違いがあります。

 

・ガス注入方式
ベースとなるワインに二酸化炭素を吹き込むことで、発泡性のあるスパークリングワインを造ります。ほかの製造方法と比べると、手間がかからない分、安価にできるというメリットがあります。

 

シャンパ―ニュの製造法

シャンパ―ニュの製造法は様々な取り決めがあり、使用するブドウの産地や品種も限られています。主に使用される品種は、以下の3つです。

・ピノ・ノワール種(黒ブドウ)
・ピノ・ムニエ種(黒ブドウ)
・シャルドネ種(白ブドウ)

ちなみに現地では、白ブドウのみで造られたシャンパ―ニュは「ブラン・ド・ブラン」、黒ブドウのみで造られた場合は「ブラン・ド・ノワール」と呼ばれているんですよ!

 

■収穫・圧搾を経て樽発酵へ

ブドウの収穫は全て手摘みで丁寧に行われます。圧搾された後は樽やタンクに詰められ、アルコール発酵の段階へ進みます。

この段階では、まだ通常のワイン(スティルワイン)と同じような状態です。シャンパ―ニュは伝統的な「シャンパーニュ製法」によって造られ、一つひとつの段階を経てようやく完成します。

 

■アッサンブラージュする

アルコール発酵が終了した原酒は、瓶詰めの前にアッサンブラージュで味が調えられます。アッサンブラージュとはブレンドを意味し、異なる品種やストックされている原酒を混ぜることで味や香りを調節することです。

複数の原酒をブレンドした後、いよいよ瓶詰めされます。酵母と糖分(ワインが原料のリキュール)を加えます。

 

■さらに発酵させて発泡させる

瓶詰めされたワインが、即座に出荷されることはありません。シャンパ―ニュの特長であるキメの細かな泡と複雑さをもたせるために、澱とともにノン・ヴィンテージで15か月以上、ヴィンテージは36か月以上瓶熟成が行われます。

「瓶内二次発酵」と呼ばれるこの方法は、ワインとともに瓶詰めされた酵母のはたらきによる現象です。二次発酵が進むと炭酸ガスが発生し、澱も溜まるため、出荷前に澱を除くために瓶を揺らし瓶口に澱を集めるルミュアージュと呼ばれる作業が行われます。

澱が瓶口に集まったら澱を取り除くデコルジュマンという工程を経て、減った分と同量のリキュール入りワインをつぎ足し、最後の熟成期間を経てシャンパ―ニュの完成です。

 

自分に合ったスパークリングワインの選び方

スパークリングワインと一口にいっても、味わいの特長は多岐にわたります。また、甘口や辛口の幅も広いため、初めて購入する方にとっては「どれを選べば良いの?」と難しく感じるかもしれません。

そこでここでは、自分に合ったスパークリングワインを選ぶ時のポイントを紹介します。

 

飲みやすさが合うスパークリングワインを選ぶ

スパークリングワインには、甘口から辛口までの7種類があります。それぞれのラベルの表記方法や残糖度の目安は、以下のとおりです。

味わい ラベルの表記 残糖度(1リットルあたり)
超辛口 Brut Nature/Non Dose 3g以下
極辛口 Extra Brut 0~6g
辛口 Brut 6~12g
やや辛口 Extra Dry 12~17g
やや甘口 Sec 17~32g
甘口 Demi-Sec 32~50g
極甘口 Doux 50g以上

近年はより残糖度の少ない超辛口や極辛口のスパークリングワインが生産量を伸ばしつつありますが、最も生産量が多いのは辛口(Brut)です。

辛口が好みの方は辛口~超辛口の表記を目安に、辛口が苦手な方はやや辛口がおすすめです。やや甘口~極甘口の表記のものはデザートの甘さに合わせて選択すると良いでしょう。

料理に合うスパークリングワインを選ぶ

スパークリングワインは食前酒として飲む他に、料理と合わせて飲んだりデザートと一緒に楽しんだりすることもできます。食事中のワインとして選びたい場合は、料理との相性を重視してスパークリングワインを選びましょう。

スパークリングワインは白ワインベースで造られていることが多く、特にシャンパーニュはミネラル感のある魚介類の料理と最も相性が良いのが特長です。魚介のうま味を引き立ててくれます。

天ぷら、唐揚げなど揚げ物もおすすめの料理です。スパークリングワインのシュワッとした炭酸のさわやかさが、揚げ物を食べた後の口内をさっぱりとリフレッシュしてくれます。濃厚な味わいの肉料理にも、ロゼのスパークリングワインがよく合います。

 

生産国ごとのスパークリングワイン

スパークリングワインは、世界各国で生産されています。代表的な生産国といえば、フランス・イタリア・スペイン・ドイツの4か国です。

生産地ごとに味わいはもちろん、呼び方や規定も異なっていることはご存知でしょうか。現地の呼び方を知っていると、旅行先でも迷わずにお好みのスパークリングワインを楽しめますね。

ここでは、生産国ごとのスパークリングワインの名称について紹介します。

 

フランス

フランスはシャンパーニュが世界的に有名ですが、他にも魅力的なスパークリングワインが生産されています。元々、シャンパーニュ地方で生産されたワインの中から厳しい規定をクリアしているもののみがシャンパーニュと名乗ることができます。

フランスで押さえておきたいスパークリングワインは、シャンパーニュを含めた以下の3種類です。

・シャンパーニュ
・クレマン
・ペティアン

シャンパーニュと同じく瓶内二次発酵を行っている高級スパークリングワインが、クレマンです。3つ目のペティアンは瓶内の気圧で分類されており、微発泡にあたる1気圧~2.5気圧のものがペティアンと呼ばれています。

 

イタリア

イタリアも生産方式の違いなどで、様々な種類のスパークリングワインがあります。イタリアのスパークリングワインを選ぶうえで知っておきたいのが、以下の3つです。

・フランチャコルタ
・プロセッコ
・スプマンテ

フランチャコルタとはフランスのシャンパーニュと同じトラディショナル方式で造られた、瓶内二次発酵を行うスパークリングワインです。フランチャコルタはロンバルディア州で生産されており、ヴェネト州でも同じ方式で生産されたプロセッコが存在します。

また、イタリアではスパークリングワインをスプマンテと呼ぶため、旅行先で注文する時は注意しましょう。ちなみに微発泡のものはフリッツァンテと呼びます。

 

スペイン

スペインでは、スパークリングワインのことをエスプモーソと呼んでいます。シャンパーニュと同じトラディショナル方式で生産されている高級スパークリングワインといえば、カバが有名です。

特長は熟成期間に応じて表記が変化することで、レゼルバと表記して良いのは15か月熟成したもののみに限ります。30か月熟成したものが、グラン・レゼルバです。

シャンパーニュと同じ製法ですが、リーズナブルな価格で楽しめます。

 

ドイツ

ドイツのスパークリングワインはシャウムヴァインと呼び、微発泡のものをパールヴァイン・ゼクトと呼びます。注目すべきはゼクトですが、よく目にするゼクトは一般的なスパークリングワインにあたるため、高級な一本を飲みたいのであればヴィンツァーゼクトを探しましょう。

9か月以上の熟成と、トラディショナル方式での生産が特長です。

 

スパークリングワインの開け方

スパークリングワインの魅力はその発泡性!でも、開封時にはちょっと不便さを感じる方も多いのではないでしょうか。

お祝いの席でポンッ!と景気良く開けるのは一興ですが、粛々と進めたいセレモニーでは、ちょっと場違い感のある音ですよね。

あまり音をたてずにスマートに開けられるようになったら、スパークリングワインをどんな場面でも楽しめるようになります。

では、スパークリングワインをスマートに開けるには、どうすれば良いのでしょう?

開け方の手順はとっても簡単。次のポイントを押さえてチャレンジしてみてください。

・あらかじめボトルを冷やしておく
・ボトルは斜めに持つ
・コルクは最後までしっかりと押さえておく
・コルクではなくボトルを内側へゆっくり回す

スパークリングワインは炭酸ガスがたっぷりです。コルクが飛んでいかないように、しっかりと冷やしておきましょう。

ストッパーのワイヤーを外す時も、コルクが飛びやすい瞬間です。コルクが飛ばないように押さえながらストッパーを外し、ボトルのほうを回して開けます。

コルクが抜けてきたら、少しコルクを傾けて、ガス抜きできる隙間をつくりガスを逃がしてください。「プシュっ」というガスが抜ける音がします。

ガスがコルクを圧迫しなくなるくらい抜けたら、そのまま完全にコルクを抜いて開封します。

これさえできれば、コルクが音を立てて飛び出すこともなく、静かにスパークリングワインを開けられますよ!ワイン通をアピールできるのでスムーズに開けられるように練習してみてください。

ワインの保存方法については「ワインは保存方法で変わる!未開封・開封後の保存のポイントとは?」の記事をぜひチェックしてみてください。

 

スパークリングワインのおいしい飲み方

スパークリングワインをおいしく飲むには、冷やしてそのまま飲む方法もありますが、ちょっと一工夫を加える方法もおすすめです。よりスパークリングワインの可能性を体験したい方へ、おいしい飲み方を紹介します。

 

スパークリングワインでカクテルを作ろう

そのままでも充分においしいスパークリングワインですが、アレンジを加えると、さらに楽しみ方が広がります。スパークリングワインを使ってカクテルを作ってみましょう!

 

・ミモザ

オレンジジュースがあれば簡単にできるカクテルです。オレンジジュースとスパークリングワインの割合は1対1なので、とても簡単。夏にふさわしいさわやかなカクテルですよ。

 

・キール・ロワイヤル
カシスリキュールとスパークリングワインを混ぜれば、キール・ロワイヤルができます。正式なレシピにこだわるなら、シャンパンを使用しましょう。カシスの色合いが大人の雰囲気に。甘味が抑えられたさっぱりとした味わいです。

 

・ベリーニ
女性好みのおしゃれなカクテルです。ピーチジュース、グレナデンシロップを冷やしたグラスに入れてかき混ぜ、そこにスパークリングワインを加えて軽くステアします。スパークリングワインのさわやかさに、ピーチジュースの甘味が加わった、飲みやすいカクテルです。

 

・好みのフルーツを入れてサングリアに!

イチゴや桃、パインなどの好みのフルーツを入れて、サングリアを作るのもおすすめ。ホームパーティにもピッタリです。

 

もっと詳しく知りたい方は「スパークリングワインで作るカクテルがおいしい!ひと手間簡単アレンジ♪」をぜひチェックしてみてください!

 

グラスにもこだわる

スパークリングワイン用のグラスとして多く利用されるのが、フルートグラスのように細身のタイプです。空気に触れる面積が小さくなるため炭酸や香りが抜けにくく、また泡立ちがきれいなため、フルートグラスが利用されています。

香りをしっかりと楽しみたいのであれば白ワイン用のグラスを使用する方法もありますが、基本的にはフルートグラスを利用するほうが無難です。

 

適切に保存する

一度開けたスパークリングワインは、適切に保存する必要があります。炭酸が抜けてしまうため、可能な限り当日中に飲みましょう。

当日中に飲み切ることが難しい場合は、シャンパンストッパーやワイン瓶内の空気を抜く道具(バキュバン)を利用して、少しでも保存に適した状態にします。専用の道具を利用したとしても長期間の保存に耐えられるわけではないため、開けたスパークリングワインは早めに飲み切ることをおすすめします。

その他、スパークリングワインの適切な保存方法については、以下のページでも解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

「スパークリングワインの保存方法。開栓した場合と未開栓の場合をご紹介」

 

まとめ

シャンパ―ニュはスパークリングワインの中でも、厳しい条件を守って造られたシャンパーニュ地方産のもののみが名乗ることのできる名前です。

ただし、シャンパーニュ地方以外で造られるスパークリングワインにも高品質なものはあり、おいしく楽しめるものがたくさんあります。

こちらで紹介したボトルの上手な開け方、おいしく飲むポイントを参考に、あなたもスパークリングワインを日常の楽しみに取り入れてみてくださいね。

ワイングラスの正しい持ち方って? ワイングラスの基礎知識とマナーを身につけよう!

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

カジュアルな場ではあまり気にする必要はありませんが、おしゃれなレストランでの食事やビジネス関係の会食では、食事のマナーに気を付けたいものです。カトラリー一つ一つに使い方の決まりがあるように、ワイングラスの持ち方にもマナーがあります。

正しい持ち方は一緒に食事をする人を不快にしないだけではなく、ワインをおいしく飲むためにも重要なポイントです。

今回は、そんなワイングラスの正しい持ち方を紹介します!

 

 

 

【正しく! きれいに!】ワイングラスの持ち方

レストランやパーティーなどで、ワインを飲む機会に会った方はいるのではないでしょうか。そんなときに、ワイングラスの基本的な持ち方を知っておけば、よりワインのおいしさを味わうことができますよ。

 

ワイングラスの構造

ワイングラスの正しい持ち方を解説する前に、独特の形状から成るワイングラスの構造や部位ごとの名称を紹介します。

ワイングラスは以下のとおり、4か所の名称を覚えておくと良いでしょう。

・ワイングラスの淵「リム」
・ワイングラスの真ん中部分「ボウル」
・ワイングラスの脚「ステム」
・ワイングラスの底「フット」

ワイングラスが独特な形状をしているのは、ワインの豊かな香りを最大限に引き出し、グラスを傾けた時に口内へ流れ込んでくる味の感じ方も計算しているからです。

また、ワイングラスには様々な種類があり、ワインをよりおいしく飲むためには、最適な形状をしたワイングラスを選ぶことも重要です。

ワイングラスの種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。

「ワイングラスの種類を知っておこう!選び方のポイントも紹介」

 

基本は「ステム」を持つ

ワイングラスを持つ時は、脚部分つまり「ステム」を持つスタイルが基本です。親指、人差し指、中指の3本でステムを支えます。

ステムを持つ理由としては、手の温度がワインに伝わらないようにするためです。

ワインの試飲温度として最適なのは、上限18℃までです。一方、人間の体温は36℃前後あり、ボウル部分に触れているとグラスに注いだワインへ徐々に体温が移ってしまいます。体温の影響でワインの温度が変わってしまえば、本来の風味を楽しめません。

また、ステムを持てばボウルに注いだワインの色をしっかりと確認できるのも理由の1つです。飲み方がエレガントに見える持ち方でもあるため、ワインを飲む時はぜひ意識してみてください。

 

ワイングラスはステムで持たないといけない?その真相は?

ワイングラスの持ち方について、「海外と日本では違う」という話を耳にしたことのある方も少なくないでしょう。確かに海外のカジュアルな場面ではボウルを持つスタイルがメジャーですが、実際はTPOに応じて使い分けることが多いため、どちらの持ち方が正解とは言い切れません。

そのため、海外と日本で区別するよりも、国内外問わずTPOに合わせて使い分けるのがおすすめです。周囲に迷惑が及ばなければ、ワイングラスは自由に持っても良いでしょう。

 

知っておきたいワイングラスのマナー

ワイングラスに関するマナーとして、持ち方よりも重視したいことがいくつかあります。ワイングラスの持ち方は上記のとおり比較的自由の効く部分ですが、「ワインを注がれる時」と「グラスを回す時」のマナーは覚えておきたいところです。

最後にどのような場面でもスマートにワインを楽しめるよう、覚えておきたい2つのマナーを紹介します。

 

注がれる時はグラスを持たない

ソムリエのいるレストランなどでは、ワインはお店のスタッフに注いでもらうスタイルが一般的です。ワインを注いでもらう時、少しでも注ぎやすいようにとグラスを持ち上げたり傾けたりしたくなる方もいますが、グラスには触れないようにしてください。

ワイングラスは持ち上げず、テーブルに置いたままの状態でワインを注いでもらうのがマナーです。持ち上げることは国際的なマナーとしてはふさわしくないため、注意しましょう。

とはいえ、立食スタイルのパーティーなどワイングラスを手に持ったまま談笑する場では、近くにワイングラスを置く場所がないこともあります。ワイングラスを置く場所がない場合は、手に持ったままで問題ありません。利き手とは逆の手をフットに添えて、スマートにワインを注いでもらいましょう。

 

回す時はステム下部を持つ

ワインの香りを楽しむためにワイングラスを回しますが、この時もグラスを持ち上げずにテーブルの上で行います。ステムのみを指でつまむと不安定になるため、台座部分(フット)を手のひらで固定するようにステム下部を持ってください。回す方向はワイングラスを持つ手によって、以下のとおり異なります。

・右手で持つ場合…左回し
・左手で持つ場合…右回し

このように回すことで、万が一こぼしてしまってもかかるのは自分だけで済む場合が多く、他の人にかけてしまうリスクが少ないです。

また、ワインを楽しむためのマナーについては、以下のページでも詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください!

「レストランで役に立つ!ワインの基本的なマナーを押さえよう」

「ワインを回すスワリングの意味とやり方を解説」

 

まとめ

ワイングラスの持ち方など基本的な部分を意識すると、公的な場でも周囲にスマートな印象を与えることができます。せっかくのパーティーを楽しむのであれば、参加者がお互いのマナーで眉を寄せることなく、料理やワインも心から味わいたいですね!

よく海外と日本ではワイングラスのマナーが違うといいますが、実際は厳密な違いはありません。海外においても日本国内でも、ワイングラスはTPOに合わせた持ち方を選びます。場面に合わせた使い分けで、ワインを楽しんでくださいね。

女子受け間違いナシ! ロゼワインの楽しみ方

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

ワインには白と赤のほかに「ロゼ」があります。名前のとおりバラ色のワインで、ピンク色の透き通った色合いには思わず目を奪われてしまいそうです。
そんなロゼワインの特長や美味しい飲み方を紹介します!

 

 

 

ロゼワインの特長とは

ロゼワインは赤ワインと白ワインの製法をミックスして造られたもの。白ワインのフレッシュさと赤ワインの飲み応えを楽しめます。両方の良さを併せ持ったロゼワインはジャンルを問わず、どんな料理にも合わせられるのが特長です。ロゼワインは、白ワインと同様に辛口・甘口で味わいを表記します。

ロゼワインには主に3つの製法があります。

 

・セニエ法
赤ワインを造る際にも用いられる製法です。
原料は黒ブドウ。

まずは皮もついたままのブドウを軽くプレスしてつぶしてタンクに入れます。そして種や果皮を漬け込むところまでは赤ワインと同じ。

ただし赤ワインよりは早めに色がついたところで、タンク下から果汁だけを引き抜いて、発酵させるという製法。

ブドウの皮と接している時間が他の製法と比べると長いため、濃い目のロゼワインが完成します。

 

・直接圧搾法
こちらも原料は黒ブドウですが、製法は白ワインと同じです。

黒ブドウを皮がついたまま軽くプレスしてつぶしてから、果汁だけを絞り出し、発酵させます。黒ブドウをつぶす時に色が付きますが、ブドウの皮と接している時間は短いので、セニエ法よりは薄い色付きのロゼワインになります。

 

混醸法
黒ブドウと白ブドウをはじめから混ぜて、発酵させます。製法は白ワインと同じ。ドイツのロートリングが有名ですね!

基本的に赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインにすることはありません。

EUの規定でも禁じられていますが、唯一の例外がシャンパーニュ地方のロゼ。醸造過程で、白ワインに赤ワインを混ぜてから発酵させる製法が認められています。

 

ロゼワインの産地

ヨーロッパなど北半球のロゼワインの新ヴィンテージの出荷はいつかご存知ですか。実は春なんです。前年の秋に収穫したブドウを醸造して瓶詰されたできたてのフレッシュなロゼは春に楽しめるようになります。とにかくフレッシュなロゼを楽しみたい!というヨーロッパの方は春に新ヴィンテージをチェックするそうですよ。

ヨーロッパでロゼワインが一番楽しまれるのは、初夏。毎年、夏至にあたる6月には、第4金曜日が「ロゼワインの日」として親しまれています。近年はヨーロッパに限らず、香港やマイアミなど世界各地でロゼワインの日にちなんだイベントが開催されるほど、身近なものになってきました。

そんなロゼワインの有名な産地は、南フランスのプロヴァンス地方。フランスで生産されているロゼワインのうち、実に4割もの生産量を占めています。毎年夏至が訪れると、特産品のロゼワインを、地域をあげてみんなで楽しむのが古くからの慣習です。

プロヴァンスはヨーロッパの人たちにとっての憧れの避暑地の一つ。プロヴァンスのロゼワインといえば、夏のバカンスを象徴するイメージも持っているそうですよ。

プロヴァンス産のロゼワインの多くが、キリリとした辛口の味わいをしています。ロゼワインは甘口で初心者向きの飲みやすいワイン、というイメージを持っている日本人にとっては、意外性があるのではないでしょうか。

 

ロゼワインの消費量

ロゼワインが世界でどれだけ親しまれているのか、詳しく解説します。

 

世界のロゼワイン消費量

1位 フランス
2位 アメリカ
3位 ドイツ

消費量のシェアはフランスが36%と圧倒的に多く、次いでアメリカが15%、ドイツが7%を占めています。

出典:Observatoire internatiounal du Rose CIVP/FranceAgriMer-Dowel strategie ,2018

2017年のロゼワインの消費量は2340万ヘクトリットル(hl)で、同年の生産量2020万hlを大きく上回りました。これだけ見ても、ロゼワインが世界的にはブームになっていることが分かるでしょう。

2002年から2017年の15年間で、世界のロゼワインの消費量は30%も伸びてきていますので、このブームは一過性のものというわけではありません。

フランスでは、1990年以降ロゼワインの消費量は年々増加を続け、今ではワイン全体の30%を占めるまでになっています。白ワインの消費量は17%なので、ロゼワインが白ワインよりもかなり売れているということです。

アメリカでもロゼワインの売上は年々伸びてきていて、2017年には前年比で53%もの増加を記録しています。

大幅な伸びをしてはいるものの、テーブルワイン市場でロゼワインが占める割合はアメリカではまだ低いので、これからさらに伸びることが予想されます。

フランス、アメリカに限らず、カナダ・イギリス・香港・スウェーデンといった国でも、ロゼワインの消費量は大幅に伸びてきています。

 

世界ではロゼワインがブーム!

ロゼワインのブームは、1980年~2005年にかけて生まれたミレニアル世代が火付け役になったといわれています。

ミレニアル世代は、10代のころからインスタグラムやツイッター、フェイスブックといったSNSを使いこなしてきた世代。

ロゼワインの色合いがインスタ映えしやすいという要素もあり、ミレニアル世代の女性たちがロゼワインの写真を拡散したことで、一気に人気が広がりました。

また、赤ワインや白ワインとは違い、気軽に楽しめる雰囲気がロゼワインにあったのも、ブームになった要因のひとつです。

ニューヨークでブームとなった「フロゼ」(フローズンとロゼを組み合わせた飲み物)はその象徴といえます。

フランスでは、夏場は昼からよく冷えたロゼワインを飲むことがちょっとした流行になっていて、気軽に飲める雰囲気が形成されてきているようです。こうした変化も、消費量が増えている理由なのかもしれません。

赤ワインや白ワインよりも、ワインの知識がなくても自由に楽しめるというイメージがあるのがロゼワイン。人生を楽しもうとする最近のトレンドとロゼワインの気軽さがしっくりはまったのが、ブームを巻き起こしたといえるかもしれませんね。

 

ロゼワインの美味しい飲み方

ロゼワインを美味しく飲むには温度とグラスがポイント。ロゼワインの適温の目安は6~10℃。辛口の白ワインと同じくらいです。

ワインクーラーに氷水を入れて15分くらい、冷蔵庫では3~4時間冷やしましょう。

甘口ほど冷やした方がすっきりし飲みやすくなります。グラスは気温の影響を受けにくいボウルが小さいタイプを。ステム(持ち手)が長ければ手の熱が伝わりにくくなりますよ。

ロゼワインはそのままでも美味しいですが、飲み方によって違った味わいを楽しめます。

例えばオン・ザ・ロック。氷が解けるにつれて微妙に口当たりや香りが変化します。光を反射したロゼ色の氷は宝石のようです。

カクテルにするならサングリアみたいにフルーツを加えてみましょう。赤いイチゴやラズベリーがぴったり!

グラスの中で潰したら柑橘系のジュースを30mlほど注ぎ、ロゼワインでグラスを満たします。

甘味が欲しければガムシロップを。ジュースの代わりにピンクグレープフルーツを絞ると、ピンク色が強調されてほんのりビターな味わいになります。

ロゼワインと色合いが近い梅酒と同量ずつ割っても彩りがきれいでほのかに甘いカクテルができます。

 

ロゼワインに合う料理とは

赤ワインなら肉料理、白ワインなら魚料理が定番ですが、ロゼワインは肉料理にも魚料理にも合わせられるのが特長です。さらに日本食や洋食、中華など幅広い料理に向いています。逆に合わない料理を探すのが難しいくらいです。

特に相性がいいのは味噌や醤油、トマト、チーズなど旨み成分が豊富な調味料や食材。発酵食品との相性も抜群です!

お刺身や味噌田楽、酢豚、ピザ、漬物(ピクルス)などのお供にすれば両方の味わいが引き立ちます。同じロゼワインでも脂っこい料理なら辛口、スパイシーな料理には甘口がオススメです。

初心者さんは、ロゼワインの色合いに合わせて料理を選ぶのが、料理にピッタリのロゼワインを選ぶコツ。

色の淡いロゼワインは、白ワインのように爽やかな口当たりをしています。なので、魚料理やサラダ、スイーツなどと合わせると間違いないでしょう。

逆に、色の濃いロゼワインは、渋みや香りが強く感じられるので、肉料理や中華料理など、味つけの濃い料理と合わせていただくのがベストです。

また、ロゼワインの発祥地、プロヴァンスの南仏料理に合わせてみるのもいいでしょう。

トマトやツナ、アンチョビなどを使ったニースサラダや、魚介類のエキスたっぷりのブイヤベースは、ロゼワインとの相性が抜群です。トマトベースのスープに野菜がたっぷりと入ったラタトゥイユと、ロゼワインとの組み合わせもなかなかいけます。

さすがにステーキやビーフシチューのようながっつりした牛肉料理は赤ワイン、カルパッチョや昆布締めのようなさっぱり薄味に仕上げた魚料理は白ワインに軍配が上がります。その中間ならロゼワイン1本で満足できるでしょう。

料理に合わせるワインに困ったときの強い味方になりそうです。

 

ロゼワインに合う料理のレシピを紹介

・牛肉とピーマンのしょうがオイスター炒め

材料(4人分)

牛切り落とし肉 400g
しょうが 100g
パプリカ 1個
ピーマン 4個
サラダ油 大さじ4
粗挽き黒こしょう 適量

●A
酒 大さじ2
塩 小さじ1
片栗粉 大さじ2

●B
オイスターソース 大さじ2
酒 大さじ2
砂糖 小さじ1

 

作り方

1.幅1センチの細切りにした切り落とし肉をボウルに入れて、Aを加えて混ぜます。皮をむいたしょうがは、幅2、3ミリの細切りにして塩をまぶしておきます。しんなりしてきたら水で洗い水気を切ってください。パプリカ、ピーマンは種を取ってから、幅5、6ミリになるように縦に切ります。

 

2.フライパンにサラダ油大さじ2入れて、しょうがを中火で炒め、香りが出てきたらパプリカとピーマンを入れて炒めます。

 

3.野菜を端に寄せて、空いたところにサラダ油大さじ2を入れて、牛肉をほぐしながら炒めていきます。肉に火が通ってきたら、Bを加えて全体的になじませましょう。お皿に盛ってから、仕上げに粗挽き黒こしょうを適量かけてできあがり。

 

・はまぐりのクリームソース

材料(4~5人分)

はまぐり(砂抜きしたもの) 600g
玉ねぎ 1個
にんじん 2/3本
白ワイン 200ml
バター 40g
生クリーム 400ml
塩 適量
こしょう 適量
パセリ 大さじ4

 

作り方

1.殻と殻をこすり合わせるようにしてはまぐりを洗います。洗い終わったあとは、水気を切っておきましょう。玉ねぎ、にんじんはみじん切り(5ミリ角くらい)にします。

 

2.はまぐりを鍋に並べ、玉ねぎとにんじんを上にのせます。白ワインを回し入れて、バターを加えます。フタをして、はまぐりの口が開くまで中火にかけて蒸し煮にします。

 

3.生クリームを加え、塩・こしょうで味のバランスを整えます。お皿に盛ってから、仕上げにパセリを振りかけましょう。

 

まとめ

ロゼワインは赤ワインと白ワインの良さを併せ持っているので、ワイン好きならすぐに馴染めるはず。

赤ワインより軽く、白ワインよりしっかりした味わいはどんな料理にでも合わせられます。そのまま飲んでも、カクテルにしても見た目の美しさも際立ちますね。いろんな飲み方や料理との組み合わせを楽しんでみましょう。

透き通るような色にくぎづけ。白ワインの洗練された魅力に迫る!

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

白ワインをおいしく飲むためには、何に気を付ければ良いでしょうか。「冷やして飲む」「魚料理に合わせる」などは、どこかで聞いたことがあるかもしれません。

しかし、白ワインをおいしく飲むためのヒントは、まだまだたくさんあります! 今回は、白ワインをどうしたらおいしく飲めるかご紹介します。

 

白ワインの特長

白ワインは、白ブドウの果汁のみを使用し、発酵させたワインです。一部、黒ブドウを使用する場合もありますが、同じく果皮を取り除くため、赤ワインのような色にはなりません。

生産方法の違いは、タンニンの含有量にも影響します。ワインの渋味の元となっているタンニンは主に果実の皮や種に多く含まれており、皮や種ごと果汁を絞る赤ワインのほうが多い傾向です。一方、果実のみ使用する白ワインはタンニンも少なくなります。

そのため、赤ワイン特有の渋味が苦手な方は、白ワインを好まれる傾向にあります。

 

白ワインは甘口・辛口の2種類がある

生産地によって生産量の違いはありますが、白ワインは甘口、辛口の2種類が造られています。食前酒や食後酒として楽しめる甘口から、ドライで料理をしっかり引き立ててくれる辛口まで、幅広く合わせられるのが白ワインの魅力です。

甘口、辛口のどちらに仕上がるのかは、ワインの発酵具合によります。長く発酵するほど糖分がアルコールに変化して辛口に、短めに発酵すると糖分が多く残るため甘口になる仕組みです。

 

甘口白ワインの特長

甘口に仕上げられた白ワインは、フルーティーな甘さが目立つものが主流です。まろやかな口当たりで、エレガントな味わいを楽しめます。

また、前述のとおりワインの発酵期間が辛口に比べると短いため、アルコール度数は低いものが多いことも特長です。「お酒をたくさん飲めるほど強くはないけれど、少しは楽しみたい!」という方は、アルコール度数が低めで甘くて飲みやすい白ワインを中心に選んではいかがでしょうか。

甘口白ワインの詳しい情報については、以下のページでも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

「知らなかった”甘口白ワインの世界”特長と選び方のポイントをご紹介!」

 

辛口白ワインの特長

じっくりと発酵させ、辛口に仕上げられた白ワインは、フレッシュな酸味が魅力的です。爽快感のある味わいで、様々な料理によく合わせられます。

発酵期間が長く、糖分の多くがアルコールに変化しているため、アルコール度数の高いものが多くなります。さっぱりとした口当たりのワインを楽しみたい方は、辛口白ワインがおすすめです。

辛口白ワインの魅力について、以下のページでさらに詳しく解説しています。こちらもあわせてご覧ください。

「スッキリした辛口白ワインが飲みたい!選び方のポイントは?」

 

白ワインはブドウ品種で味わいが変化する

白ワインの原料となるブドウは、多くの品種があります。どのブドウ品種を使用しているかによって味わいが変化するため、白ワインを楽しむ時は産地やワイナリーの他にブドウ品種にも注目してみてくださいね!

 

シャルドネ種

白ワインのブドウ品種として代表的な存在が、シャルドネ種です。「白ワインの女王」という呼び名でも知られており、原産地のフランス以外にもイタリア、スペイン、アメリカ、オーストラリアなど世界各地で栽培されています。

シャルドネ種の最大の魅力は、産地や気候によって味わいがガラリと変わることです。冷涼な気候ではスッキリとした味わいに、温暖な気候では濃厚な味わいになるため、産地ごとに飲み比べる楽しみがあります。

シャルドネ種の魅力については、以下のページもぜひチェックしてみてください。

「シャルドネを使ったワインの魅力を徹底解説」

 

ソーヴィニヨン・ブラン種

ソーヴィニヨン・ブラン種もシャルドネ種と同じく、白ワインを代表するブドウ品種の1つです。特に辛口白ワインの代表品種として親しまれており、口に含むと青草やハーブを思わせる香りが広がります。シャープな酸味があり、フレッシュでさわやかな味わいに仕上がるため、和食など繊細な魚料理を好む方にもおすすめです。

原産地はフランスの冷涼な地域ですが、チリやオーストラリアなど温暖な地域でも栽培されています。

ソーヴィニヨン・ブラン種の魅力をさらに知りたい方は、以下のページもぜひご覧ください。

「白ワイン通には欠かせない!ソーヴィニヨン・ブランの魅力をご紹介」

 

リースリング種

リースリング種というと、ドイツワインを思い浮かべる方も多いでしょう。ドイツのラインガウ地方が主な原産地ですが、フランスやアメリカ、オーストラリアなどでも栽培されています。

フランスのシャルドネ種と対抗する高貴な品種としても知られ、アロマティックな香りが特長です。酸味が穏やかで繊細な味わいに仕上がるため、洋食だけではなく中華料理や和食とも合わせられます。

リースリング種のより詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

「ドイツワインでおなじみのリースリング種の産地や特長」

 

甲州種

甲州種は、ヨーロッパを起源とする日本固有の白ブドウ品種です。その名のとおり甲州の勝沼が産地で、1870年代には本格的なワイン造りが始まりました。

甲州種を使用したワインは、和柑橘の香りに優しい口当たりが特長です。果実は種の周辺に強い酸味がありますが、ワインに仕上がると穏やかで上品な酸味に変わります。ブドウそのものは淡い紫色をしており、生食用としても親しまれています。

甲州種の特長や歴史について知りたい方は、以下のページもおすすめです。

「日本のワインといえば甲州ワイン!その魅力とは」

 

白ワインに合うおすすめの料理

白ワインは魚介料理と相性が良いため、和食や地中海料理など、様々な料理に合わせられます。もちろん、肉料理も選び方しだいで白ワインとのマリアージュを楽しめますよ!肉料理を合わせたい時は、豚肉や鶏肉などがおすすめです。

ここでは、先に紹介した白ワイン用ブドウ品種それぞれに合う、おすすめの料理を紹介します。

 

シャルドネ種に合う料理

白ワインの代表的な品種であるシャルドネ種に合わせるなら、素材の味をしっかりと楽しめる料理はいかがでしょうか。

■サーモンのハーブ焼き

ハーブで香りづけしたサーモンと、付け合わせの野菜をホイルで包んで焼くだけの簡単レシピです。お手軽ですがハーブの香りとシャルドネの上品な味わいがよく合います。

サーモンのハーブ焼きを上手に作るコツは、下ごしらえ時に2時間じっくりと置いて、臭みを取ることです。

詳しいレシピはこちら

 

ソーヴィニヨン・ブラン種に合う料理

ソーヴィニヨン・ブラン種は、ワインそのものが青草やハーブのようなニュアンスをもっているため、料理に余計な香りづけをする必要がありません。むしろシンプルな料理ほど、お互いの魅力を引き立ててくれます。

■エメラルドサラダ

栄養満点のそら豆を使ったエメラルドサラダなら、白ワインの風味を味わいたい時におすすめのレシピです。

さわやかでどこか青々しささえ感じるソーヴィニヨン・ブラン種。そのさわやかな味わいと香りは、シーフードサラダや素材の味と香りを大事にするお料理にぴったり。

詳しいレシピはこちら

 

リースリング種に合う料理

リースリング種はなんといっても酸味を楽しみたいですね。さわやかな口当たりのワインに合わせるなら、料理もあっさりとした味わいのものがおすすめです。

■初がつおとグレープフルーツのサラダ

初がつおを使ったサラダは、グレープフルーツの酸味も相まってワインとの相性抜群です。キリリとした酸味が楽しめるリースリング種は、天ぷらや魚料理をすっきりと味わうのにおすすめです。

やや甘口タイプの他、辛口も醸造されており、辛さ控え目の中華料理・タイ料理を食べたい時にもおすすめです。

詳しいレシピはこちら

 

甲州種に合う料理

ワインと料理のマリアージュの基本は、産地を合わせることです。日本固有の甲州種に合わせるなら、和食の定番を合わせてはいかがでしょうか。

■旬野菜のてんぷら

魚介類などのてんぷらも魅力的ですが、甲州種を味わうなら、新鮮な旬野菜のてんぷらがおすすめ。カラッと揚げた旬野菜の天ぷらを塩レモンでいただくと、繊細な甲州種のワインがさらにおいしくなります。

さっぱり食べたいヘルシー志向の方におすすめです。

詳しいレシピはこちら

 

自分好みの白ワインを見つける方法

白ワインは甘口、辛口の違いだけではなく、産地や品種によって酸味や香りの印象も大きく異なります。そのため「自分好みの白ワインが分からない!」と悩む方も多いのではないでしょうか。

ここでは白ワイン選びに悩んでいる方へ、自分好みの一本を見つける方法を紹介します!

 

色々な料理に合わせる

白ワインは魚介料理との相性が良いイメージがありますが、新鮮な野菜ともよく合います。魚介料理と試すのはもちろん、新鮮な野菜を使った料理など、さっぱりとした味わいのものと合わせてみてはいかがでしょうか。

野菜がメインの料理は和食や中華、ヨーロッパのグリル料理など、世界各地に存在します。色んな味付けや素材との相性を試してみてくださいね。

 

色々な白ワインに挑戦する

ブドウ品種の欄でも触れたとおり、白ワインと一口にいっても味わいは様々です。まずは、本コラム前半で紹介した4つのブドウ品種と料理を合わせてみて、自分好みの白ワインを見つけるのも良いでしょう。

特にシャルドネ種は産地ごとの味わいを楽しめるので、同じ料理と合わせてみて、飲み比べるのもおすすめですよ!

 

白ワインをさらにおいしく飲む!おすすめの方法

白ワインのエレガントな味わいをしっかり楽しむためには、準備も大切です。香りや味わいをより深く楽しみたい方は、ぜひここで紹介する方法を参考にしてみてください。

 

薄いグラスで飲む

白ワインの繊細かつフレッシュな味わいには、薄いグラスがおすすめです。また、小ぶりのグラスを選ぶと良いでしょう。

さらにこまかなことをいうと、ワイングラスには品種ごとに適している形状もあります。「もっとブドウ品種それぞれの魅力を引き出したい!」と思ったら、リースリング種用、シャルドネ種用とグラスも品種に合わせて揃えてはいかがでしょうか。

 

温度を適温にする

白ワインは温度によっても印象が大きく変化します。甘口、辛口でそれぞれ適温が異なるため、飲みたいワインに合った温度に冷やしておきましょう。

目安としては、以下の温度がおすすめです。

・甘口:4~6℃
・辛口:6~10℃

適温でない白ワインは必要以上に甘味を強く感じたり、酸味のさわやかさを楽しめなかったりします。必ずそれぞれの味わいに合わせた温度で白ワインを楽しんでくださいね!

 

まとめ

白ワインは原料となるブドウ品種と、甘口辛口の仕上げ方で異なるテイストのものが造られています。

自分の好みの白ワインを見つけて友達と語り合ったり、自分だけのおいしい飲み方を見つけたりするのもまた、素敵なワインの楽しみ方ですね。

赤ワインのおいしい飲み方は? 基本から学ぶ

人と暮らしをワインで結ぶライフスタイルメディア「WINE OPENER」から、ワインが楽しくなる基礎知識をお届けします。

深いルビー色の赤ワインがグラスに注がれる様子はとても美しく、うっとりしてしまうほど。この魅力的な赤ワインについて、みなさんはどのくらいご存知でしょうか? この記事では、赤ワインについての基礎知識をご紹介します。

 

 

赤ワインの特長

赤ワインとは、黒ブドウを発酵させて造るワインのこと。独特の鮮やかな赤い色味が特長です。

製造過程でブドウの果汁をしぼるとき、果実だけでなく果皮や種なども丸ごと使用しています。黒ブドウの果皮には赤い色素が含まれているため、仕上がったワインは赤い色味に仕上がるのです。

赤ワインは、渋味が感じられるのも特長。この渋味のもとは、種に含まれているポリフェノールの一種、タンニンです。赤ワインの渋味の度合いは、含まれているタンニンの量に左右されます。 そして熟成させてもおいしくいただけるのが、赤ワインのよさでもあります。長期熟成に向いているものが多いため、製造されてすぐの味わいだけでなく、経年変化による味わいの違いを楽しむことが可能です。

 

赤ワインの種類は3つある!

赤ワインを選ぶ時、「ボディ」という言葉を聞いたことはありませんか? 「ボディ」とは、ワインの味わいや飲み口の度合いのこと。赤ワインは「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」の3種類に分けられます。 それぞれどのような特長があるのか、解説していきましょう。

 

フルボディ

フルボディは、コクがあって濃厚な味わいが特長の赤ワイン。タンニンが豊富に含まれていて渋味があり、果実味が強く感じられます。色が濃く重厚で、「どっしり」とした重厚感のあるワインです。コクのある、濃い味付けの料理とよく合います。

アルコール度数も13%を超えているものが多く、ワイン初心者の方や飲み慣れていない方には、少し飲みにくく感じられるかもしれません。しかし長期熟成に向いているので、変化を楽しみたい方にはおすすめです。

 

ミディアムボディ

ミディアムボディとは、フルボディとライトボディのちょうど中間にあたるワイン酸味や渋味、果実味のバランスが程良く香りも強すぎないため、多くの方に好まれます。脂やコクが程良い料理と合わせやすい味わいです。

 

ライトボディ

ライトボディはフルボディと反対で、軽やかな味わいの赤ワイン。タンニンが穏やかで、果実味も強すぎずフルーティーさを感じられます。アルコール度数も10%程度のものが多く、ワイン初心者の方でも飲みやすいでしょう。 色合いも淡く、「ライト」という表現がまさにぴったり。料理も脂が少なめで、あっさりとしたものと合わせるのがおすすめです。サングリアを作ったり、氷を入れてみたりと、アレンジして楽しむこともできます。

 

赤ワイン選びに知っておきたい! 赤ワインの豆知識

好みの赤ワインを選ぶなら、知っておきたいのが品種や産地ごとの特長です。赤ワインにはたくさんの種類があって、品種や産地によって味わいが異なります。 ここでは、最初に知っておくとぐっと赤ワインが楽しみやすくなる、代表的な品種や産地を紹介します。

 

赤ワインの品種

赤ワインの原料となる黒ブドウは、主要品種だけでも12種類あります。その中でも特に有名な品種が、「カベルネ・ソーヴィニヨン種」「メルロー種」「ピノ・ノワール種」の3品種。 赤ワインを知るために、まずはこの3つのブドウ品種の特長を押さえておきましょう。

 

カベルネ・ソーヴィニヨン種

フランス・ボルドー地方原産で、現在は世界各地で広く栽培されているブドウ品種。「黒ブドウの王様」とも呼ばれており、渋味と酸味がしっかりとした赤ワインらしい重厚な味わいに仕上がります。ブルーベリーやカシスのような香りで、深い色合いをしています。 赤ワインとしてはもっともポピュラーで、気軽に楽しめるリーズナブルなワインから、数万円もする高級ワインまで様々です。

 

メルロー種

こちらもフランス・ボルドー地方原産のブドウ品種で、ふくよかで滑らかな口当たりが特長です。きめ細やかなタンニンで渋味や酸味も穏やかなので、飲みやすいワインです。ブラックチェリーやプラムのような、豊潤な香りが楽しめます。

 

ピノ・ノワール種

フランス・ブルゴーニュ地方原産のブドウ品種で、渋味の少ない果実味豊かな赤ワインに仕上がります。エレガントな味わいと繊細な飲み口から、「赤ワインの女王」と呼ばれることがあるほどです。いちごやチェリー、ラズベリーのような香りがします。

 

赤ワインの産地

赤ワインの産地は大きく「旧世界(オールドワールド)ワイン」と「新世界(ニューワールド)ワイン」の2つに分けられます。それぞれの特長を紹介しましょう。

 

旧世界(オールドワールド)ワイン

もともとワインは、古代からヨーロッパで生産されていました。「旧世界(オールドワールド)ワイン」とは、当時からの生産地であるフランスやイタリア、スペインなど、ヨーロッパ原産のワインのことを指します。

旧世界ワインの代名詞ともされているのがフランスワインで、ボルドーやブルゴーニュなどの産地が有名です。その他、産地によって品種や味わいが異なります。

旧世界のワインについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

歴史ある旧世界ワイン。旧世界ワインについて徹底解説!

 

新世界(ニューワールド)ワイン

「新世界(ニューワールド)ワイン」は、コロンブスがアメリカ大陸を発見した大航海時代以降からワイン造りを始めた国のことです。アメリカやチリ、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカなどがここに分類されます。近年人気のある日本ワインも、新世界ワインの1つです。

まだ歴史は浅いものの、その土地の特長を活かして栽培されたブドウから造られたワインは、高く評価されているものが多いです。比較的リーズナブルなワインが多く、しっかりとした味わいで、アルコール度数も高めに造られています。

新世界のワインについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

新世界ワインとは?ワイン初心者向けに新世界ワインを徹底解説

 

赤ワインのおいしい飲み方

赤ワインの全てが分かる!基本からおすすめ赤ワイン5選を解説!

せっかく赤ワインを飲むなら、おいしい飲み方もぜひ知っておきましょう。ポイントは「スワリング」「グラス」「温度」の3つ。それぞれ詳しく解説していきます。

 

スワリングして香りや味わいの変化を楽しむ

スワリングとは、ワイングラスをくるくると回す動作のこと。グラスを回すことでワインが空気に触れ、香りが引き出されたり味がまろやかに変化したりするため、よりおいしく飲むことができます。

ただ、スワリングをした方がおいしいからといって、たくさん回せばいいというわけではありません。2~3回程度で十分で、あまり多く回すとかえってワイン本来の風味が飛んでしまい、おいしさが失われてしまいます。

スワリングについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

ワインを回すスワリングの意味とやり方を解説

 

赤ワイン用のグラスで飲む

赤ワインを楽しむなら、グラスにもぜひこだわってみましょう。ワインはグラスによって味が変わり、飲みやすくなったりワインの風味がより感じられたりするようになります。

ブドウの品種によって適したグラスの形が異なるので、飲みたいワインに合わせて選んでみてくださいね。

ワイングラスについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

ワイングラスの種類を知っておこう!選び方のポイントも紹介

 

温度を調節して適温で飲む

赤ワインは重さ(ボディ)によって適した温度が異なります。それぞれに合わせた温度で飲むと、よりおいしく感じられますよ。

フルボディは16~18℃が適温です。冷やしすぎると渋味が強くなって飲みにくくなってしまいます。

ライトボディは10~12℃に冷やすと引き締まった味わいになります。ミディアムボディはその中間、13~16℃くらいを目安にすると良いでしょう。

 

まとめ

数多くの種類がある赤ワイン。まずは今回ご紹介した5本を味わってみて、好みに合うブドウ品種やボディの種類を探してみてはいかがでしょうか。

世界のお酒とつまみで至高のおうち飲み! カルディのビール&ワインセレクション

「カルディコーヒーファーム」と「コストコ」は、国内外のウマいものが集まる人気店の代表格だ。グループ内で洋酒や輸入食品などを直輸入しているカルディは、お酒やつまみもハイレベル。ここではビールとワインのオススメ銘柄と、それぞれのベストなフードペアリングを提案しよう。

※こちらは「GetNavi」 2022年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【Tips】カルディコーヒーファーム

全国に480店舗(2022年5月現在)を展開。コーヒー豆の焙煎・卸売業を行うキャメル珈琲が、1986年に下高井戸で1号店をオープンした。世界中から集めた珍しい食材やリーズナブルなオリジナル品が所狭しと並び、店内で宝探しをするようなワクワク感を楽しめる。

 

ビール部門 3選

 

【その1】フルーティに香りボディは柔らかく高貴な味が魅力的

イネディット 330mL

429円

“世界一予約が取れない”と称された、スペインにある名レストランのシェフとソムリエがバルセロナ随一のブリュワリーと共同開発。フルーティで華やかな香りと柔らかいボディが魅力で、シャンパン代わりになる高貴な味だ。

 

BESTマリアージュはコレ!

オリジナル

ハモンセラーノスライス 55g

399円

豚もも肉をスペイン伝統の製法で塩漬けし、乾燥と熟成を経て仕上げた生ハム。脂の甘やかな風味と力強いコクが特徴で、香り豊かなビールとよく合う。

 

【その2】南国の陽気な味わいが特徴のジューシーな一本

ムーチョアロハ

ハワイアンスタイル・ペールエール 355mL

303円

旅先で飲んだベルギービールにハートを奪われ、ハワイ育ちのサーファーが立ち上げたブリュワリーの代表作。ホップの要素は苦み以上にトロピカルなシトラス感が豊かで、ジューシー感と爽快な飲みやすさが調和している。

 

BESTマリアージュはコレ!

オリジナル

スモークジャイアントコーン 45g

178円

歯応えの良いジャイアントコーンにビーフやしょうゆなどで味付けし、燻製風味に。香ばしさにワイルドなフレーバーが加わり、爽快なビールにマッチする。

 

【その3】白桃の果実味にホップの苦みがやさしく調和

台灣龍泉啤酒

ロンチュエン ピーチ 330mL

もぎたての白桃を思わせるみずみずしい香りに加えて、りんごと麦芽のアロマが繊細に広がる。クリーミーな泡に、際立つ桃の果実味とホップの苦味がほど良く調和した、フルーティな味わいの台湾産ビールテイスト飲料だ。

 

BESTマリアージュはコレ!

オリジナル

いぶりがっこオカキ 40g

140円

秋田の伝統漬物「いぶりがっこ」の味をおかきで表現。カリッとした粒は濃厚な味付けで、燻した香ばしさもたまらない。ジューシーなビールがよく進む。

 

 

ワイン部門 3選

 

【その1】フローラルかつスパイシーさが心地良く華やぐ

ファレスコ

ウンブリア・メルロー 750mL

798円

プラムやブルーベリー、ラズベリー的な香りに、すみれ、ブラックペッパー、バニラのニュアンス。豊かな果実味にほど良い酸味が調和し、余韻に続くスパイスとなめらかな渋味が心地良い、ミディアムボディのイタリア産赤ワインだ。

 

BESTマリアージュはコレ!

オリジナル

黒酢香る 上海風スペアリブ 140g

383円

豚の骨付き肉を、黒酢と紹興酒を使用した特製ダレで柔らかくなるまでじっくり煮込んで缶詰めにした一品。甘やかで熟した酸味に、中重口のワインがよく合う。

 

【その2】柑橘とハーブが絶妙に交わるフレッシュな味

ヴィッラ・デ・クロ

ソーヴィニヨン・ブラン 750mL

877円

柑橘系フルーツの香りにハーブやミネラルのニュアンスが加わる、やや辛口のフランス産白ワイン。フルーティなテイストにはソフトな酸も感じられ、フィニッシュには心地良い苦みのあるフレッシュさが絶妙だ。

 

BESTマリアージュはコレ!

オリジナル

ループスナック ジェノベーゼパスタ味 50g

306円

にんにくチップや乾燥チーズ、松の実などが入ったバジル風味のパスタスナック。ほど良い塩気と香草のニュアンスが、爽やかな白ワインとベストマッチだ。

 

【その3】繊細な香りに果実の甘みが効いた辛口の泡

ジョセフ・ドラーテン

リースリング・スパークリング エクストラ・ドライ 750mL

1078円

シトラス系のフルーツやアプリコットなどの繊細な香りに、心地良い果実の甘みを感じる口当たり。リースリング種ならではのエレガントで柔らかみのある、やや辛口のスパークリングワインとなっている。ドイツ産。

 

BESTマリアージュはコレ!

ブッラータ 125g

656円

モッツァレラチーズの袋に、生クリームと細かく裂いたモッツァレラが入っている。中からあふれる濃厚な乳の生地が、爽快なスパークリングワインと好相性だ。冷凍品。

フードアナリスト

中山秀明さん

食のトレンドに詳しいライター兼フードアナリスト。最近はインパクト大な自家製惣菜を販売するご当地スーパーの躍進に注目している。

 

●各商品は価格変動の可能性と在庫に限りがあります

すき焼きや鍋と合わせたい! 年始のおうちご飯をちょいリッチにする「シャトー・メルシャン 山梨マスカット・ベーリーA」

新年あけましておめでとうございます!  今年の年末年始はみなさんゆっくり出来ましたか?

 

年末年始は、一年間の中でもお酒が最も飲まれるハイシーズンでもあります。そこで本企画ではこの年末年始におすすめの日本酒やクラフトビールなどさまざまなお酒を、国際唎酒師の髙橋理人さんが解説。

 

さらに2021年12月27日に発売したお酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』の、お酒紹介話もお披露目します。おすすめのお酒と、それにちなんだマンガをゆったりとお楽しみください。

●解説

髙橋理人さん

全国の酒蔵のサポートおよび情報発信を行っている、酒蔵支援スタートアップ「株式会社蔵楽(クラク)」代表取締役。SSIインターナショナル認定「国際唎酒師」であり、一般社団法人日本ソムリエ協会認定「SakeDiploma」、「ワインエキスパート」とお酒関連の資格を幅広く持つ。大手化学メーカーに就職した最初の赴任地、新潟県糸魚川市にて感動的な日本酒に出会い、その魅力の虜に。日本酒普及に向けた活動を行い、オンラインセミナー「日本史と日本酒」、「日本酒都道府県旅」など日本酒と人を繋げる新たなアプローチを数多く試みている。

 

●年末年始におすすめの一本

シャトー・メルシャン 山梨マスカット・ベーリーA

 

赤い果実を連想させる香りと程よい樽のニュアンスのバランスが良い一本。マスカット・ベーリーAは、昭和の初期に交配された日本固有のブドウ品種で、山梨県で広く栽培されているもの。山梨県甲州で生まれた良質なぶどうの香り、程よい酸味が食欲を誘います。

 

ワインは年始のどんな場面に合うのか? 髙橋さんによると…

 

日本の品種であるマスカット・ベーリーAは、あっさりとしたライトな味わいと共に、出汁のような旨味がじわじわ膨らむのが特徴です。醤油やみりんなどの甘くて旨味のある調味料と相性が良く、すき焼きや寄せ鍋との相性が抜群です。家族みんなでお鍋を囲みながら「シャトー・メルシャン 山梨マスカット・ベーリーA」で、年始の食事時間を楽しんでください。

 

とのこと! 鍋にワイン、聞いているだけで生唾を飲み込んでしまいます…。

 

今回紹介したお酒は、お酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』でも紹介しています。ぜひマンガと合わせて、その魅力を知ってください。マンガは全て12月27日に発売したばかりの単行本に収録されている特別版です!

※マンガ部分が読めるのは、2022年1月7日21時までとなります

 

【作品情報】

●ほろ酔い道草学概論 インドアな私が酒と街歩きにハマるまで

漫画:zinbei

刊行:ワン・パブリッシング

うまい酒とエモい散歩は学問だ――。日本全国の足を運ばないとわからない魅力を持った「土地」、その土地でこそ楽しめる「お酒」の楽しみを描いた、今までありそうでなかった「酒×街歩き」コミックがついに単行本に。作中で登場する日本酒やワイン、クラフトビール、健康センターのサワーなど、全て実在のもの。お酒と共に、土地々々の隠れた顔に迫る「エモい街巡り」が描かれます。コロナ禍以降、お出かけの解放感とお酒の楽しみから遠ざかった人、また少しずつでも足を伸ばしてみようと思っている人に寄り添う酒マンガの新境地!

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ヨーロッパ主導で始まり新世代によって変貌を遂げる「南アフリカワイン」の歴史と注目ワイナリー

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく当連載は、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。最終回となる今回は、南アフリカのワイン。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

 

【関連記事】
第1回 :フランス 第2回:イタリア 第3回:ドイツ 第4回:オーストラリア 第5回:アメリカ
 第6回:ニュージーランド 第7回:日本 第8回:チリ 第9回:スイス 第10回:スペイン&ポルトガル

 

南アフリカワインを旅する

アフリカ大陸の南端に位置する南アフリカ共和国。主要産地であるケープタウン近郊は、雄大な自然に囲まれ、“世界中でもっとも美しいワイン産地”のひとつとして数えられます。

 

この国におけるワイン造りの歴史は、オランダの東インド会社の入植とともに始まりました。初代総督ヤン・ファン・リーベックの1659年2月の日誌には、こう記録されています。「今日、神を賛美します。ケープのブドウから最初のワインが造られました」。

 

19世紀前半、イギリスがケープタウン周辺を支配下に治めてから、酒精強化ワインやブランデーはイギリスに輸出されるようになりました。そして害虫フィロキセラがヨーロッパに蔓延した19世紀半ばに、南アフリカワインはヨーロッパ中で消費され、大きな市場をつかむことになります。現在のヨーロッパ・スタイルの味わいの基礎を形作ったのも、この頃だと考えられます。

 

ところが、フィロキセラ禍から立ち直ったヨーロッパは輸入ワインに頼る必要がなくなり、20世紀に入ると、南アフリカではブドウの余剰問題が深刻化することになります。そして20世紀を通じて南アフリカのワインを統制する役割を担った“KWV”=南アフリカブドウ栽培者協同組合が設立されました。KWVは、現在に通じる豊かな自然環境の保護やワイン法の制定、ブドウ畑の登録制度など、現代南アフリカワインの礎を築いた側面と、厳しい統制によって生産者の創意を長く委縮させたという、功罪を併せ持つ存在でした。

 

大きなターニング・ポイントは、1991年にアパルトヘイト政策が廃止され、1994年にネルソン・マンデラ政権が誕生したことです。国際的な孤立から解放された南アフリカワインは輸出拡大へと舵を切り、ヨーロッパのワインを知った若手世代は、次々に新しい個性的なワインを産み出すようになりました。アパルトヘイト時代に比べると輸出量は20倍以上にもなり、ワイン生産量で世界第8位のワイン大国に変貌を遂げました。つまり、南アフリカのワインの新しい歴史は、ほんの四半世紀前に始まったばかりなのです。

 

これから期待される南アフリカの社会の進化、有色人種の権利拡大は、より一層の変化を南アフリカワインにもたらしてくれるのではないでしょうか。

1. コンスタンシア
2. ケープタウン
3. ステレンボッシュ
4. ケープ地方スワートランド
5. ケープ・サウス・コースト、ウォーカー・ベイ

 

1. ケープタウン郊外 コンスタンシア
− “南アフリカワイン”をヨーロッパに知らしめた伝説の甘口ワイン −

ケープタウンは、南アフリカに3つある首都のひとつ。ポルトガルの航海者、バルトロメウ・ディアスが発見した喜望峰を抱える都市です。東インド会社の入植後、初めてワインが植えられたのもケープタウンでした。そして18世紀後半にケープタウン南郊のコンスタンシアで小粒のマスカット「ミュスカ・ド・フロンティニャン」が主体となった遅摘みの甘口ワイン「ヴァン・ド・コンスタンス」が生まれます。当時、まだ砂糖が上流階級向けの嗜好品だった時代に、「ソーテルヌ」や「トカイ」といった甘口ワインと並んで、ヴァン・ド・コンスタンスはヨーロッパに南アフリカワインを知らしめ、王侯貴族に愛されました。顧客リストにはヨーロッパだけではなく、ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンといった名前が並び、かのナポレオンもセント・ヘレナに幽閉されてなお、ヴァン・ド・コンスタンスを愛飲したと伝えられています。

 

ところが、この伝説の甘口ワインはフィロキセラの被害に遭い、一度は生産が途絶え、ワイナリーは幾度となく所有者が変わります。そして20世紀後半、クライン・コンスタンシアの所有者となったダッジー・ジョースト氏がワイナリーを復活させ、1985年に新しいヴァン・ド・コンスタンスのファースト・ヴィンテージをリリースしました。18世紀から19世紀にかけて、南アフリカワインを代表する名声を獲得したこのワインの再生は、国内外で大きな話題を呼び、現在に至ります。

 

乾燥させた小粒のマスカットから造られ、創出当時のゆがんだボトルを模した500mlのボトルに詰められたワインは、蜂蜜や桃のような豊かな甘みと、複雑さを演出するスパイスのニュアンスに加え、南アフリカワインの長い歴史を含んだ素晴らしい味わいを楽しませてくれます。

 

Klein Constantia(クライン・コンスタンシア)
「Vin de Constance2016(ヴァン・ド・コンスタンス2016)」
1万2000円
輸入元=ラフィネ

2. ケープタウン
− 南アフリカの都市型ワイナリー −

「優れたワインはテーブルマウンテンの見える畑から」という格言があるほどに、南アフリカのワインのほとんどはウエスタン・ケープ州のブドウから造られます。ケープタウンの中心にそびえ立つテーブルマウンテンの広大な敷地は、世界一花の種類が豊富な南アフリカの大自然の象徴であり、自然保護区として豊かな植物多様性を残していることから、世界遺産に登録されています。ケープタウンは南アフリカの初期から発展した都市で、前述の通り、現在は3つある首都のひとつ。規模としては南アフリカ第2の都市ですが、そういった豊かな自然環境に囲まれたワイン産業の中心としても位置付けることができるのです。

 

そんなケープタウンのワインに関する近年のトピックに、“アーバン・ワイナリー”の増加が挙げられます。アーバン・ワイナリーとは、畑と隣接せず都市部に醸造所を構え、持ち込んだブドウからワインを造る都市型ワイナリーのこと。21世紀に入りアメリカで生まれたといわれるこのスタイルは世界中に広がり、日本でも東京や大阪に近年続々と設立されて、話題を集めています。アーバン・ワイナリーは、都市部は交通の便がいいので輸送がしやすい、情報発信が容易である、人が集まりやすいなどのメリットのほか、何より多額の建設費を抑え小規模での開業が可能であるということが挙げられ、意欲ある若手が参入しやすい形態なのです。

 

ダンカン・サヴェージ氏は、ケープ・ポイント・ヴィンヤーズの醸造責任者として評価を高めたのち、ケープタウンの街中の倉庫街に醸造所を設け、自身のワイナリーを立ち上げました。この四半世紀に起きた南アフリカワインの変化の大きな要因は、1994年にアパルトヘイトと孤立主義政策が撤廃された後、若いワイン生産者が世界中のワインを知り、各地の技術を吸収し、自由なワイン造りを始めたことが第一に挙げられます。アーバン・ワイナリーは、そういった意欲ある新進の造り手が自身の思いを表現する手段として、これからも世界中で広まっていくことでしょう。

 

Savege(サヴェージ)
「Savage Red Syrah2017(サヴェージ・レッド・シラー2017)」
4800円
輸入元=ラフィネ

3. ケープ地方ステレンボッシュ
− 南アフリカワインの中心地 −

ケープタウンから東へ50kmの距離に位置するステレンボッシュ。オランダの統治時代の名残もあり、ヨーロッパのような白を基調とした建造物が立ち並ぶステレンボッシュの街には、南アフリカで唯一、ブドウ栽培と醸造学を学べるステレンボッシュ大学があります。ケープの有名ワイナリーがこの地域に集まり、最高級クラスのワインの多くを生み出すだけでなく、教育と研究の中心的役割を担い、国内外で活躍するワインパーソンもこの地域から輩出されているのです。

 

南はフォルス湾、東にはホッテントット・ホランド山脈、北には隣接する産地パールとの境界にシモンズバーグ・マウンテンと、海と山に囲まれた産地ステレンボッシュは、山々の織り成す丘陵地帯と西側の平地にブドウ畑が広がり、ブドウ栽培に適した気候、砂質や花崗岩といったさまざまな土壌に多くの国際品種が植えられています。以前は南アフリカの代表的な白ワイン用ブドウ品種「シュナン・ブラン」が主流でしたが、今ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローといった、ボルドー品種やシラーが主流となりつつあります。ナパ・ヴァレーやバロッサ・ヴァレーのように気候や土壌は細かく分析され、ステレンボッシュはシモンズバーグ=ステレンボッシュ、ヨンカースフック・ヴァレー、パパハイバーグ、デヴォン・ヴァレー、ボテレライ、バンフック、ポルカダーイ・ヒルズの7つの小区画に分類されるようになりましたが、今のところエチケットにはほとんど表記されることはありません。それはナパ・ヴァレーに似て、単に「ステレンボッシュ」と表記する方が、完熟したブドウから堅牢な味わいのイメージを消費者に伝えやすいことが理由に挙げられます。

 

南アフリカのワインの特徴として多くの人が挙げるのは、ヨーロッパがワイン造りを主導したため、カリフォルニアほどのパワフルさはなく、ヨーロッパとアメリカの中間に位置するようなエレガントさと力強さの両立です。ステレンボッシュのカベルネ・ソーヴィニヨンもまた、ボルドーとナパ・ヴァレーの優れた側面を併せ持ったワインがこれからより生み出されることが期待されています。もちろん価格は、そのどちらよりもリーズナブルなところも、南アフリカワインの大きな魅力です。

 

Le Riche Wines(ル・リッシュ・ワインズ)
「Cabernet Sauvignon2017(カベルネ・ソーヴィニョン2017)」
3900
輸入元=ラフィネ

4. ケープ地方スワートランド
− 南アフリカの大きな変化を体現する新しい産地 −

ケープタウン北部の一帯は元々、共同組合向けの原料ブドウの供給地でしたが、スパイスルートエステートが1990年代後半に設立されたことは、大きな変化の始まりでした。その初代醸造責任者だったイーベン・サディは自身のワイナリーからシラー主体のブレンド「コルメラ」、シュナン・ブラン主体の「パラディウス」をリリースし、その高い評価からスワートランドを一躍南アフリカワインの有望産地に押し上げました。

 

畑を管理はするが所有せず、古くから植えられている古樹のブドウを低収量で仕上げるスタイルは、それまでの協同組合の造るワインとはまったく別物の大きなスケール感を感じさせるもので、多くの若手生産者のロールモデルを造り出したのです。元々この地域は、1960年代から植えられた古樹が多く残っており、暑く乾燥した夏にも関わらず、水分を保つ深層の保湿性のある土壌のため、灌漑の必要がありませんでした。寒暖差も大きく雨も冬に集中するため、良質なブドウの収穫が可能な地域なのに、21世紀になるまで見向きもされなかったのです。イーベン・サディ氏に続くスワートランドの新進生産者の多くは、ナチュラルなワイン造りを志向し、“SIP”=スワートランド・インディペンデンド・プロデューサーズを結成し、独自の認証を定め始めました。

 

今回紹介するのは、日本人生産者として初めて南アフリカでワイン造りを行った佐藤圭史さんのワイン。学生時代に過ごしたオレゴンでワインの奥深さに魅了され、たどり着いたのは大自然に囲まれた南アフリカ。とくに意欲ある造り手にとって大きな可能性のあるスワートランドでした。

 

南アフリカワインのここ25年の大きな変化のなかで、もっとも劇的な変化を遂げたのはスワートランドです。これからインディペンデント・プロデューサーズの手によってどんな魅力的なワインが産まれるのか、期待の尽きない産地でもあります。

 

Keiji Sato佐藤圭史)
「Cage Chenin Blanc2019(ケイジ・シュナン・ブラン2019)」
3600
輸入元=ラフィネ

5. ケープ・サウス・コースト、ウォーカー・ベイ
− 南アフリカのピノ・ノワールの源流は1970年代に生まれた −

1975年、広告業界を引退したティム・ハミルトン・ラッセルは、ウォーカー・ベイ地区の海辺の街、ヘルマナスの高台ヘメル・アン・アード・ヴァレーで、高品質なピノ・ノワールとシャルドネのワインへの挑戦を始めました。当時、国際的に孤立状況にあった南アフリカでは、満足のいく苗木のクローンさえ手に入らなかったという話を聞いたことがありますが、現在南アフリカ屈指のピノ・ノワールの銘醸地であるウォーカー・ベイでブルゴーニュ品種の栽培に成功したワイナリーは、そんな時代にスタートを切っていました。

 

南アフリカというと温暖なイメージがあるかもしれませんが、アフリカ大陸の最南端であり海に近いブドウ畑は、海風の影響で、涼しい気候に向いた品種の栽培に向いています。1990年代後半になり、さまざまな南アフリカのワインが輸出されるようになると、ブルゴーニュとカリフォルニアの中間的な味わいというスタイルのピノ・ノワールやシャルドネはすぐに日本でも注目され、ハミルトン・ラッセルのワインはブルゴーニュ愛好家の間でもよく知られる存在になりました。それから約20年の時間が経ち、追随する多くの若手生産者が優れたブルゴーニュ・スタイルのワインを世に送り出すようになりました。黎明期を経て、着実に第2世代に引き継がれているのが、現在の南アフリカワインなのです。

 

今回紹介する「テッセラールスダル」は、南アフリカではまだまだ珍しい黒人の血を引く女性醸造家ベリーヌ・サウルスさんが2015年に初リリースを迎えた、新しいワイナリーです。ハミルトン・ラッセルで事務職として働き始めた彼女は、自然とワイン造りの奥深さに魅せられていきました。やがて醸造にも携わるようになり、醸造拠点をハミルトン・ラッセルに置きながら、自身のワインをリリースするに至ったのです。長らく少数の白人が独占してきた南アフリカのワインは世代交代のまっただ中にあり、期待される社会の変化に向けて少しずつ歩みを進めているところなのです。

 

Tesselaarsdal(テッセラールスダル)
「Pinot Noir2020(ピノ・ノワール2020)」
6500
輸入元=ラフィネ

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

歴史ある2国のワインの最新事情とは? 日本に初上陸したワイン「ポルトガルワイン」と世界一のブドウ栽培国「スペインワイン」

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく当連載は、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。今回は「スペインワイン」「ポルトガルワイン」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
第1回 :フランス 第2回:イタリア 第3回:ドイツ 第4回:オーストラリア 第5回:アメリカ
 第6回:ニュージーランド 第7回:日本 第8回:チリ 第9回:スイス

 

スペイン&ポルトガルワインを旅する

「スペインワイン」や「ポルトガルワイン」というと、日本人にとって馴染みがあるのは、スペイン産では瓶内二次発酵のスパークリングワイン「カヴァ」や、安くて果実味豊かな赤ワイン、ポルトガル産では酒精強化ワイン「ポート」や、輸入ワインが初めてブームを巻き起こした際に注目されたヴィーニョ・ヴェルデの「マテウス・ロゼ」あたりでしょうか。

 

“スペインバル”が流行したこともあり、以前よりもスペインワインに親しむ機会は増えたのかもしれませんが、スペインやポルトガルのワインが好きという人は、まだまだ少数派のように思えます。

 

地理的に言えば、ユーラシア大陸の最東端に位置する日本にとって、イベリア半島は最西と遠いですが、日本に初めてワインが持ち込まれたのは室町時代。珍陀(チンタ)と呼ばれたそれは、ポルトガルワインでした。日本ワイン黎明期に大流行した「赤玉ポートワイン」もまた、ポートのイミテーションとして造り出されたワイン。イベリア半島は距離的には遠いのですが、文化的には日本が大きな影響を受けた地域であり、タバコや金平糖、天ぷらなどポルトガル由来で日本語化したものも多く、特にポルトガルは“遠くて近い国”と言えるでしょう。

 

日本ではほとんど見かけないポルトガルワインと、世界第1位のブドウ栽培国であるスペインワイン(日本の国別輸入では第4位)をひとくくりにして紹介するのも、いささか乱暴な気もするのですが、この二国はどちらも紀元前から続く長いワイン生産の歴史がありながら、20世紀中は1980年代のEU加盟まで、さまざまな社会情勢も相まってヨーロッパワインの主流からは追いやられたという共通点があります。どちらの国も今までにない大きな変化のただ中で、革新的ともいえる進歩を遂げているにもかかわらず、日本のマーケットではなかなか主役になりえていない現状もまた共通しています。また広大なイベリア半島のなかで、この二つの国は伝統的な品種から近代的なワインを産み出し始めているという点も、他の国にない魅力的なポイントです。

1. リベラ・デル・デュエロ(スペイン)
2. アンダルシア(スペイン)
3. ミーニョ地方(ポルトガル)
4. ドウロ地方(ポルトガル)
5. ダン地方(ポルトガル)

 

1. リベラ・デル・デュエロ(スペイン)
− イベリア半島でもっとも重要な河川デュエロ河の河岸 −

かつてカスティーリャ王国の宮廷が置かれていた歴史ある街、バリャドリードの東に位置し、東西に流れるドゥエロ河の両端に120kmに渡って広がるワイン産地が、リベラ・デル・デュエロです。

 

スペインはワイン生産量ではフランス、イタリアに首位を譲るもののブドウの栽培面積では世界1位、ヨーロッパのなかでも屈指のワイン大国に数えられるはずですが、大戦後国際的に孤立する社会情勢から長らくワイン産業は停滞してしまっていました。ワインは生産されていたものの輸出は大幅に落ち込み、他のヨーロッパ諸国がワインの近代化を推し進めるのに遅れをとりましたが、1985年に晴れてEUへの加盟を果たしたことから、スペインワインは新たな歩みを始めました。

 

そんなスペインワインの進化をもっとも体現している産地がリベラ・デル・デュエロです。元々スペインを代表するワイナリーであるベガ・シシリアがこの産地で優れたワインが産まれることを証明したのは1929年のことでした。バルセロナで開催された万国博覧会で金賞を受賞したことにより名声を獲得します。

 

ところが、リベラ・デル・デュエロにDO(スペインの原産地呼称法)が施行された1982年の時点で、ワイナリーはわずか24軒。1990年代にアレハンドロ・フェルナンデスの造るティント・フィノ(リベラ・デル・デュエロで改良されたテンプラニーリョ)、「ペスケラ」が世界中で高評価を獲得したため、国内外からの投資が増え、現代では300軒を超えるほどに急拡大を果たしました。スペインワインの新時代という意味ではリオハやプリオラートといった銘醸地よりもリベラ・デル・デュエロはこれからの可能性豊かな産地といえるのではないでしょうか。

 

Torres(トーレス)
「DO Ribera Del Duero Celeste Crianza2017(DO リベラ・デル・デュエロ セレステ・クリアンサ2017)」
3000
輸入元=エノテカ

2. アンダルシア(スペイン)
− シェリー、ヨーロッパの最南端に見るシャンパーニュとの共通点 −

シェリーは、スペイン南部アンダルシア地方の3つの街、ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サンルカール・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタマリアを結ぶ三角地帯で、アルバリサと呼ばれる石灰質土壌から造られる酒精強化ワインです。

 

シェリーのベースワインは、フロールと呼ばれる産膜酵母下で酸素と遮断されて熟成した薄い色調の「フィノ」と、酸化熟成に由来する琥珀色のコクのあるタイプの「オロロソ」の2種に大別されます。酒精強化されたワインは通常のワインに比べ、劣化しにくく輸送が容易だったため、古くからヨーロッパ諸国に輸出されてきました。特にイギリスでは食前酒としてシャンパーニュと並んで人気が高く、大英帝国の世界制覇時代に世界中に広めた文化のひとつでもあります。現在でも愛好家の間では“スペインの特に高品質な白ワイン”という認識に変わりはありませんが、1970年代から80年代に大量生産が行われ、シェリーの地位は大きく損なわれてしまいました。日本でもあまり知られていないのはこの当時のことが影響していると考えられ、アンダルシア地方におけるシェリー用のブドウ栽培面積は1990年頃に比べ1/4近くまで減少していることも事実です。

 

私はもともと、日本人には多様な食生活やアルコール度数などからもワインが向いていると考えているのですが、シェリーもより楽しまれればいいと思っています。その理由をいくつか挙げると、前述したように通常のワインに比べ、劣化しにくいため少しずつ飲んでも問題がなく、レモンなどの柑橘やソーダやトニックとの相性もよく通常15%程度のアルコール度数を薄めて楽しむこともできるからです。

 

シャンパーニュとシェリーはどちらも通常のワイン生産の道を歩まず、国内でも無類の個性を表現した白ワインであること、どちらも白亜の土壌で育まれ、イギリスが世界に広めたという多くの共通点がありますが、日本での楽しみ方という点では、シェリーは大きな余地があるように思えるのです。

 

下の「マンサニーリャ」は、海沿いのサンルカール・デ・バラメダでは冷たい海風の影響で厚いフロールが一年中保持されるため、フィノのなかでも特に薄い色調でフレッシュな味わいが特徴です。

 

Emilio Lustau(エミリオ・ルスタウ)
「DO Sanlúcal de Barrameda Manzanilla Papirusa(DO サンルカール・デ・バラメダ マンサニーリャ・パピルーサ)」
実勢価格2600円前後
輸入元=ミリオン商事

3. ミーニョ地方(ポルトガル)
− 緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデ −

ポルトガルワインもまた、スペイン同様にEU加盟後に飛躍的にワインの品質が向上しました。また、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった国際品種が隆盛を極めるなか、国内の在来品種を守り続けているという点でも似通っています。国際品種の流行は同時にワインの地域性を薄めるといった指摘がされ、流行の見直しがされているなか、こうしたポルトガルの従来のブドウ品種で現代のワイン造りを行っていることはユニークであり、ひとつのワイン世界の最先端でもあるといえます。ミーニョ地方はポルトガル北西部ミーニョ河流域に広がるワイン産地で、日本でもよく知られる「マテウス・ロゼ」は、この地域のヴィーニョ・ヴェルデのロゼです。

 

直訳すると“緑のワイン”となりますが、ここでいうヴェルデは「若い」という意味でフレッシュな早飲みタイプ、元々はブドウが完熟する前に収穫される酸味の強い、痩せた没個性的なワインが大半を占めていました。ところが新世代の生産者たちはブドウを完熟させ、ワインの果実味や香りをより優れたものにするさまざまな工夫と努力の結果、現代的でみずみずしく、以前よりもアルコール分も高めの高品質なワインが造られるようになってきました。ブドウ品種はロウレイロといった地場品種をブレンドすることが主流でしたが、地続きのスペイン、リアス・バイシャスでも植えられるアルバリーニョが高品質ワインには採用され、大西洋沿岸の銘醸ワインとしての評価を固めつつあります。

 

下のワインは、まだ珍しいアルバリーニョを樽熟成させたレゼルバ・タイプ。オークのニュアンスに負けない柑橘系のリッチな果実感とアロマは地場のブドウを国際的なワインに昇華させた好例のひとつです。よく日本食に合うワインというテーマは、さまざまな議論を呼びますが、実はポルトガルの良質なヴィーニョ・ヴェルデはもっとも合わせやすいワインのひとつではないか、と個人的には考えています。そういった意味では初めて日本に来たワインがポルトガルワインならば、今でも古くて新しい、遠いようで近い存在なのもポルトガルワインなのかもしれません。

 

Soalheiro(ソアリェイロ)
「DOP Vinho Verde Reserva(DOPヴィーニョ・ヴェルデ レゼルバ2018)」
5000
輸入元=木下インターナショナル

4. ドウロ地方(ポルトガル)
− ポートワインの産地ではスティルワインが新しい 

スペインから流れ込むドウロ河は、シェリーと並び、世界最高の酒精強化ワインであるポートワインの生まれ故郷です。シェリー同様にイギリス人によって世界中に広まったポートワインは、日本では早くから普及していた国産の甘味果実酒の影響か、一部の好事家に親しまれるにとどまり、一般には受け入れられなかったように思えます。

 

ですが、20年以上の壜熟成を経て真価を発揮するヴィンテージ・ポートは、ワインの熟成の美しさをもっともよく表現するワインのひとつで、私も贈り物用にバースデー・ヴィンテージを探している方には目的の生産年のヴィンテージ・ポートを見つければ迷わずおすすめする逸品です。通常のワインよりも状態の不安も少なく、その深みのある甘みはもちろん、数十年という変化を想像しながら楽しむという点では最高のワインなのです。

 

ただし、近年のポルトガルワインの飛躍で注目したいのは、ドウロ産の酒精強化をしないスティルワインの品質向上が目ざましいことです。赤ワイン用のブドウ品種は、主にスペインのテンプラニーリョに当たるティンタ・ロリスやトゥーリガ・フランカですが、スペインの凝縮感のある果実が印象的なのに比べ、酸を感じエレガントな赤ワインなどが目立ちます。

 

下のニーポートは、1842年創業の老舗ポートワインメーカーですが、5代目に当たるディルク・ニーポートは、そういったドウロ産スティルワインのパイオニア的な存在。ブルゴーニュに感銘を受けて試行錯誤されたスティルワインは、ポルトガルワイン新世代の代表格といっていいほどの造り手です。ワイン名のヴェルテンテは“新たな視点”というネーミング。新時代のポルトガルワインはまだ一部の好事家のためのワインにとどまっていますが、より広く知られることを願っています。

 

Niepoort(ニーポート)
「DOP Douro2016(DOPドウロ ヴェルテンテ2016)」
3300
輸入元=木下インターナショナル

5. ダン地方(ポルトガル)
− 壇 一雄の愛したポルトガルの銘醸地 

ドウロ地方の南、スペイン国境と大西洋の中間に位置する内陸のワイン産地、ダンは、古くからポルトガルのスティルワインの銘醸地でした。16世紀、マヌエル一世からジョアン三世のポルトガル王国の黄金期にこの地域の保護を命じたといわれることからも、日本に初めて上陸したワインは、ダン産のものだったのかもしれないと想像できます。ですが、20世紀中ごろには栽培農家間での競争意識の低下から、手間のかかる高品質種であるトゥーリガ・ナショナルの栽培が減り、量産種の栽培が主流となる時期があり、ワインの品質は著しく低下しました。

 

そういった傾向に危機感を抱いた優良なワイン生産者は、ブドウ畑を購入し高品質種を独自で栽培したり、契約栽培農家に指示して造らせた良質のブドウに市場よりも高い価格で買い取ったりするようになりました。こうした動向に中小のワイン生産者も追随し、畑の改善や醸造設備の革新が起こったのが、やはりEUに加盟した時期と重なってきます。

 

以前は複数品種のブレンドが主流でしたが、下の「キンタ・ドス・ロケス」は単一品種でのワインを試行錯誤し「トゥーリガ・ナショナル1996年」が2000年版ワイン&スピリッツでポルトガルワインの最高得点を獲得するに至ります。ポルトガルで大作「火宅の人」を書きあげた作家、壇一雄氏は、自分と同じ名前のダン・ワインにほれ込み、愛飲したといわれていますが、その頃のダン・ワインよりも現在のダン・ワインの方が間違いなく美味しいのです。

 

Quinta dos Roques(キンタ・ドス・ロケス)
「DOP Dàn Touriga Nacional2016(DOP ダン トゥリガ・ナショナル2016)」
4000
輸入元=木下インターナショナル

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

輸出量2%の希少ワインが日本へ!「スイスワイン」の知る人ぞ知る魅力と幻の銘柄とは?

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく当連載は、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。今回は、希少でわたしたちにはちょっと馴染みの薄い「スイスワイン」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

 

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第1回 :フランス 第2回:イタリア 第3回:ドイツ 第4回:オーストラリア 第5回:アメリカ
 第6回:ニュージーランド 第7回:日本 第8回:チリ

 

スイスワインを旅する

人口850万人ほどの小国スイス。他のヨーロッパの国々と同様に、長いワイン生産の歴史がありますが、今でも国外ではほとんど知られていません。なぜなら、その生産量のうち輸出されるのはわずか2%ほど、国内でそのほとんどが消費されてしまうからです。そんな希少なスイスワインの主な輸出先はドイツ、アメリカ、そして日本。世界中のワインを輸入しているわが国は、スイスワインを楽しむことができる数少ない国のひとつなのです。

 

実際に親しんだことのある人はまだまだ少数派かと思いますが、フランス、イタリア、ドイツといったワイン大国に囲まれたスイスは、それぞれの地方ごとに隣接する国の言語、文化に影響を受けており、西側のフランス語圏ではどこかフランス的なスマートな装いのワイン、イタリア語圏のティチーノでは品種こそメルローが主流ですが、イタリアのひとつの州のような趣を感じさせ、東部のドイツ語圏では品種的にもドイツ、オーストリアとの共通点を多く見出すことができます。そうしたさまざまな側面を持った産地に加え、200種以上といわれるワイン用ブドウ品種が、他の国にはない多彩なワインを生み出すことに成功しているのです。

 

そして、スイス人は大のワイン好きでもあり、一人当たりの年間消費量は30リットル以上。これはフランスやイタリアに次ぐ消費量で日本人のおおよそ10倍に当たります。そして国内で生産されたワインだけでは足りず、全消費量の60%をボルドー、ブルゴーニュやバローロといった近隣の銘醸ワインを中心とする輸入ワインにも頼っているのです。ワイン好きのスイス人がなかなか国外に輸出しない希少なスイスワイン、せっかく日本には届いているのですから、楽しまない手はありませんよね。

1. ヴァレー州
2. ヴォー州
3. ジュネーブ州
4. ティチーノ
5. スイス東部

 

1. ヴァレー州 − スイス最大のワイン産地 −

ヴァレー州は、国内生産の1/3を占めるスイス最大のワイン産地であり、ブドウ栽培農家は2万軒を超えるといわれていますが、小規模生産者主流スイスの中では珍しく協同組合を含む大手生産者が多く、ワイナリーそのものは500軒ほどです。

 

ブドウ畑はローヌ河最上流のブリーク近郊から、西はレマン湖の東端に注ぎ込むまでの100km以上に渡って両岸に広がっています。元々は河の北岸、南向き斜面が日照のよい優良な畑だとみなされてきましたが、地球温暖化はこのヴァレー州も例外ではなく、南岸北側斜面も見直され始めています。ローヌ河といえば、フランスの銘醸地を南北に貫くワインとの関わりの深い河川ですが、その最上流ではスイス最大のワイン産地を東西に流れ、スイスのフランス語圏のワイン産地にとっても重要な役割を果たしています。

 

歴史ある品種の宝庫で、黒ブドウではコルナラン、ユマーヌ・ルージュ、白ブドウではプティ・アルヴァンやハイダなど、聞きなれない名前のブドウから洗練された魅力的なワインが造られ、スイスを代表するシャスラはこの地では「ファンダン」と呼ばれ、柔らかなものから凝縮感のある骨太なタイプまで生み出されています。そしてピノ・ノワールとガメイをブレンドする「ドール」と呼ばれる軽やかな赤ワインはヴァレーの名産品、ローヌ河をさかのぼってきたシラーは近年、この地域でも定着するなど、新興品種もその多彩さに拍車をかけています。

 

そして、ヴァレー州のみならずスイスワインの代表的な生産者として、写真のマリー・テレーズ・シャパを紹介しましょう。スイスにおけるビオディナミ生産者の先駆けといえるマリー・テレーズは、ブルゴーニュの著名生産者との親交も深く、もっとも尊敬を集める造り手です。グラン・ナチュールは酸化防止剤を使わず、ヴァレー州のドールという名産ワインをこれ以上なくみずみずしく仕上げた名作ワイン。普段、フランスワインに親しんでいる人に味わっていただきたい、スイスワインのひとつです。

 

Marie Therese Chappaz(マリー・テレーズ・シャパ)
「Grain Nature2018(グラン・ナチュール2018)」
7000円

2. ヴォー州 − 歴史あるスイスワインの中心地 −

ヴォー州は、古くからスイスワインの中心地であり続けてきました。規模と量の面ではヴァレー州には及びませんが、シトー派の修道士がブルゴーニュのブドウ栽培を持ち込んだ歴史は、現代まで残る石垣に囲まれたブドウ畑からも知ることができます。

 

ヴォー州のワイン産地は大きく4つの地域に分けられ、ローザンヌの西、モルジュとニヨンまでのレマン湖北岸のラ・コート地域、ローザンヌの東にはユネスコ世界遺産にも登録されたブドウ畑が広がるラヴォー地域、ローヌ河がレマン湖に注ぎ込むエリアの右岸シャブレー地域、そして州北部のヌーシャテル湖周辺地域が挙げられます。

 

スイスの代表的な白ブドウ「シャスラ」はなんともつかみどころのないブドウです。フランスでは食用とされるこのブドウは、これといった特徴を見出しにくく、安易に造られたワインは軽やかに過ぎて個性に乏しく、おとなしいキャラクターになってしまいがちです。けれども州都であるローザンヌ周辺、レマン湖の北岸に広がるラ・コート地域とラヴォー地域の美しい段々畑に植えられたシャスラは湖面に反射する太陽光を受けてゆっくりと成熟し、芯があり、心地よいテクスチャーとみずみずしく広がりのある芳香豊かなワインになるのです。スイスを代表するブドウ品種シャスラに興味があるなら、まずこのヴォー州産のワインをおすすめしたいと思います。

 

Domaine Henri Cruchon(ドメーヌ・アンリ・クルション)
「Mont de Vaux 2018(モン・ド・ヴォー2018)」
4000円

3. ジュネーブ州 − もっともフランスに近いスイス −

レマン湖の南西端に位置する国際都市ジュネーブは、人口19万人、スイスではチューリッヒに次ぐ第2の都市です。周辺はスイスのフランス語圏ワイン産地の一角としてヴァレー、ヴォーに次いでスイスワインを語るうえで重要な地域です。

 

ジュネーブのワイン産地は、スイスの他のどの産地よりも今、大きく変わろうとしています。元々ヴァレーやヴォーと同じようにシャスラがもっとも重要で多く栽培されるブドウ品種でしたが、ガメイが追い抜き、ピノ・ノワールやシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランといったフランス品種が主流となりつつあって、フランス語圏のワイン産地のなかでも、よりフランス的な色合いの濃い新たなスイスワインらしさを表現しようとしているのです。そういった流れはナポレオンの時代、短いながらもフランスに併合されていた時期もあり、フランスとスイスの文化の融合するジュネーブのワインとしては、自然なことのようにも思えます。

 

今回紹介するジュネーブのワインは、フランス国境沿いに接するダルダニー村のソーヴィニヨン・ブラン。1980年代にフランス、ロワールのサンセールから持ち込まれたブドウで造られたソーヴィニヨン・ブランは、優しい酸がエレガントで品のある果実感を支える、本家と比較するとより柔らかな白ワイン。スイス、ジュネーブの名物料理といえばチーズフォンデュ・ラクレットですが、シャスラ以上に好相性の上質なワインです。そういう意味では、“スイスの白ワイン”というのはチーズとの相性という点で、他のどの産地のワインよりイメージしやすいワインなのかもしれません。

 

Domaine les Hutins(ドメーヌ・レ・ユタン)
「Sauvignon Blanc 2019(ソーヴィニヨン・ブラン2019)」
4500円

4. ティチーノ − スイスのなかのイタリアはメルローが主流 

スイスワインの魅力は、なんといってもその多様性にあります。スイス南部、イタリア国境に接するティチーノ州は、中世にはミラノ公国によって支配されていたこともあり、地理的にも歴史的にもイタリアに近い文化圏の地域です。いうなれば、イタリアの“もうひとつの州”がスイスにあるようなもの。スイス国内では唯一イタリア語を公用語としている州でもあり、ピザやパスタ、ポレンタやオッソブーコなど、ミラノとよく似た料理が現地では親しまれています。

 

ワインは、というと周囲のロンバルディアやピエモンテと比較してもなんとも個性的な州で、栽培されるブドウ品種の80%以上がメルローというのは、ボルドー以外では世界中でこの地域くらいのものでしょう。

 

元々は土着品種(今でも赤ワイン用品種ボンドーラなどがわずかに残る)が栽培されていたということですが、フィロキセラ禍によってブドウ畑が壊滅的な打撃を受けたのちの1906年、ボルドーから持ち込まれたメルローが主流となり、秀逸な造り手の物はポムロールとも比べられるエレガントで奥行きのあるワインが造られています。そして珍しいのは、黒ブドウであるメルローから造られる白ワイン「メルロー・ビアンコ」。白ブドウ品種がほとんど栽培されていないことから、1980年代に造られるようになったこの黒ブドウの白ワインは、今ではティチーノのメルロー種の1/4が白ワインになるほどで、この地域独自の新しい個性として定着しました。

 

ティチーノの穏やかな地中海性気候に育まれるフランス原産、イタリア文化圏のメルロー種は柔らかな酸に黒ブドウらしい豊かな果実味を持った唯一無二のワイン。北イタリアの料理と合わせて楽しむ、なんていうのも、スイスワインの多様な魅力のひとつではないでしょうか?

 

Castello di Morcote(カステロ・ディ・モルコーテ)
「Bianco 2019(ビアンコ2019)」
6800円

5. スイス東部 − 世界でもっとも豊かな街で楽しまれるワイン 

チューリッヒは、「世界でもっとも暮らしやすい都市」として名前のあがる街、世界でもっとも富める国スイス最大の都市であり、経済の中心地でもあります。そんな街で楽しまれているのは、周辺のドイツ語文化圏アールガウやトゥルガウ、シャフハウゼンといった地元のワイン。日本人にとってスイスワインというと、西部フランス語圏のワインのイメージが強く、ドイツ、オーストリア寄りの産地で造られるワインはより目にする機会の少ないものなのかもしれません。

 

主なブドウ品種はシュペート・ブルグンダー=ピノ・ノワールをはじめピノ・グリやピノ・ブラン、シャルドネ、ミュラートゥルガウなど、ドイツやオーストリアでも広く栽培されている品種との共通性を多く見出すことができます。ちなみにドイツやアルトアディジェ、日本でも栽培されるミュラートゥルガウは19世紀にトゥルガウでリースリングとマドレーヌ・ロワイヤルの交配によって産まれました。

 

日照時間に恵まれた畑が多く、17世紀にフランスから伝えられたといわれるピノ・ノワールは、フランスやドイツに比べより完熟感に富んだワインになります。写真の「ニュメロ・トロワ(No3)」も、トゥルガウで造られるピノ・ノワールの赤ワインなのですが、スイスのフランス語圏とはまた違ったキャラクターで、日本に輸入されている数少ない銘柄のひとつ。幻のスイスワインのなかでも特に希少な東部のワイン、ピノ・ノワール好きな方は、ぜひ探してみてください。

 

Schlossgut Bachtobel(シュロスグット・バシュトベル)
「No3, 2016(ニュメロ・トロワ2016)」
7400円

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

世界一のブドウ栽培の最適地! 日本人がまだ知らない「チリワイン」の魅力と覚えておくべき5産地

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズは、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。今回はコストパフォーマンスの高さで人気の「チリワイン」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

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第1回 :フランス
第2回:イタリア
第3回:ドイツ
第4回:オーストラリア
第5回:アメリカ
第6回:ニュージーランド
第7回:日本

 

チリワインを旅する

2015年に、日本における国別の輸入量で長らく不動だったフランスを抜いて、チリワインが第一位になりました。ワイン業界にとって、ワインの家庭内消費が伸び悩んでいることが問題視されてきましたが、その解決の先鞭となったのは、安価で高品質なチリワイン。今ではスーパーマーケットやコンビニの棚にチリワインがないことは考えられず、多くの家庭で気軽にワインが楽しまれていることは、そのことからもうかがえます。

 

チリワインはそのコストパフォーマンスを武器に、いつのまにか日本人にとってもっとも身近なワインになったのかもしれません。けれども、チリワインとは安くておいしいだけが魅力なのでしょうか?

 

歴史的にはアメリカよりも古く16世紀にはペルーからブドウが持ち込まれ、瞬く間に一大産地となったチリは、19世紀にはフランスから穂木が多く持ち込まれ、高品質ワイン造りの取り組みが始まりました。ヨーロッパのブドウ畑を襲ったフィロキセラ禍も独特の地理的条件(東にアンデス山脈、北にアタカマ砂漠、西と南は太平洋と南極海に囲まれている)によって侵入を許さなかったことからフランス、イタリア、スペインから多くの栽培・醸造家が移住し、19世紀末にはヨーロッパ各地の品評会で入賞するようなワインを産み出していたのです。その後は、保護貿易政策や政治的混乱から長い低迷期を過ごしますが、1990年に軍事独裁政権から民主主義へ移行するとともに海外からの投資が盛んになり、現在のワインの高品質化、輸出志向に至ります。

 

チリワインの魅力は安さだけではありません。南北1400kmに渡り多様な気候風土を兼ね備えていること、その多くの産地で豊かな日照条件に恵まれ、フィロキセラの侵入を許さなかったことにより接ぎ木をしていない、世界的にみると希少なブドウ樹が多く栽培されていることなど、その特性は数え上げたらキリがないほどです。チリほどブドウ栽培に適した産地は世界のなかでも珍しいという専門家も多くなってきました。

 

日本人にとってもっとも身近なワイン産地になりつつあるチリですが、その多様な魅力は、まだあまり知られていないように思えます。今回はそんな一端を紹介していきます。

 

1. セントラル・ヴァレー地域マウレ・ヴァレー
2. セントラル・ヴァレー地域マイポ・ヴァレー
3. アコンカグア地域アコンカグア・ヴァレー
4. エルキ・ヴァレー
5. ビオビオ・ヴァレー

 

1. セントラル・ヴァレー地域マウレ・ヴァレー
− チリ最古かつ最大のワイン産地 −

雨の降らないチリのなかでは比較的降雨量があり、古くからワイン生産が行われてきたのが、チリの中央部に位置するマウレ・ヴァレーです。1990年代後半までもっとも広く植えられていたのはチリの地場品種ともいえるパイス種(アルゼンチンのクリオジャ・チカ、カリフォルニアのミッション)でした。16世紀にスペイン人によって持ち込まれ、長らく大衆酒の原料になっていたパイスは、現在でも国内消費向けの箱入りワイン用に広く栽培されています。ただ国際品種の人気の高まり、ワインの高品質化のなかで徐々に栽培面積は減ってきているのが現状です。

 

写真のワインは、19世紀のフランス移民をルーツに持つブション・ファミリー・ワインズがチリの伝統品種であるパイスを復興させようと造り出したワイン。「Salvaje(サルヴァへ)」はスペイン語で“野生”という意味なのですが、文字通りマウレ・ヴァレーの海岸地域に自生しているパイス種のブドウから造られます。ブドウが野生であることを尊重し、天然酵母、ノンフィルターで仕上げられ、チェリーやベリー系のチャーミングな果実、ローズヒップを思わせる複雑さと軽やかさを兼ね備えた魅力的なワインです。

 

チリは世界的に見てもブドウ栽培の最適地のひとつだと考えられますが、伝統品種から高品質ワインを造る試みにより、本当の意味でのチリワインに触れることのできる貴重なワインです。機会があれば、一度試してみてください。チリワインのイメージがガラリと変わることを保証します。

 

Bouchon(ブション)
「Pais Salvaje2018(パイス・サルヴァへ2018)」
2500円

2. セントラル・ヴァレー地域マイポ・ヴァレー
− チリワインの“約束の地”プエンテ・アルト −

マイポ・ヴァレーは首都サンティアゴの南に広がるワイン産地で、首都に近いことから、古くからブルジョワ階級が広大なブドウ畑を所有していたワイン産地です。チリ最大級のワイナリーであるコンチャ・イ・トロもそうした大規模な自作農がルーツであり、所有する9000ヘクタールという広大なブドウ畑から自然と優れた畑が、時間をかけて選別されるようになりました。そしてカベルネ・ソーヴィニヨンにもっとも適した土地として認められたのが、サンティアゴからほど近いプエンテ・アルトです。1987年に初ヴィンテージがリリースされたコンチャ・イ・トロのプレミアムワインである「ドン・メルチョー」をはじめとしてチリを代表するカベルネ・ソーヴィニヨンはすべて、プエンテ・アルトから生まれているのです。

 

「安くて美味しい」というイメージが日本では先行しているチリワインですが、それはなによりチリが、世界を見渡してもブドウ栽培に最適の国であることの証でもあります。安定した地中海性気候のなか、日々豊かな陽光に恵まれ、唯一の欠点は夏に雨が降らないことくらい。アンデス山脈の雪解け水は、古くから農業に利用されてきました。

 

そんなチリの恵まれた環境に、ヨーロッパの歴史と経験が持ち込まれたワインが、写真の「アルマヴィーヴァ」です。ナパ・ヴァレーのオーパス・ワンが、モンダヴィとシャトー・ムートンのジョイント・ベンチャーとして生まれ、カリフォルニアを代表する銘醸ワインに育ちましたが、チリでは1998年にコンチャ・イ・トロとシャトー・ムートンの協力のもと、このワインが生まれました。そしてやはり、ブドウの供給地として選ばれたのは前述のプエンテ・アルト。世界でブドウ栽培に最も適した産地として注目されているチリのなかでも、選び抜かれた“約束の地”の味わいを想像してみてください。ムートンやオーパス・ワンに劣らない、素晴らしいワインを産み出すポテンシャルがチリにはあることを、多くの人に知ってもらいたいと思います。

 

Concha Y Toro&Baron Philippe de Rothschild(コンチャ・イ・トロ&バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド)
「Almaviva2017(アルマヴィーヴァ2017)」
実勢価格2万5000円前後

3. アコンカグア地域アコンカグア・ヴァレー
− 冷涼な沿岸部で生まれるチリ最高のピノ・ノワール −

南北に長いチリのワイン産地の多くは、東西を流れる河川を軸に“〇〇ヴァレー”といった呼び方をされてきました。そこに東西を区切る概念がラベル表記されるようになったのは、2011年のこと。東のアンデス山脈側(Andes)、アンデスと海の間中央部(Entre Cordilleras)、海側(Costa)と分けて考えられるようになったのです。

 

アコンカグア・ヴァレーは首都サンティアゴの北西、アンデス最高峰のアコンカグア山を背景に、海へ流れ込むアコンカグア河流域に広がるワイン産地。19世紀後半に、多くのワイナリーがサンティアゴ周辺に畑を開拓するなか、チリの大手ワイナリーのひとつであるエラスリスは、ここでブドウ栽培を始めました。当時は交通の便も悪く、荒れた土地だったアコンカグアはブドウ栽培に適した土地とは見なされていませんでしたが、エラスリスの創業者ドン・マキシミアーノは、山から海岸に吹き降ろす風と海の空気を河口から吹き上げてアンデスの斜面を冷やす風に目を付け、この地を選びます。

 

現在、海から10数kmまで広がる畑“アコンカグア・コスタ”は、ニュージーランドのマールボロと比較されるほどの冷涼さを持ったワイン産地として知られるようになりました。写真の「ラス・ピサラ」は、アコンカグア・コスタのなかでもとくにピノ・ノワールやシャルドネに向く区画を選び抜き、2014年に初めてリリースされたプレミアムワインです。世界中のさまざまな産地で、ブルゴーニュに匹敵するピノ・ノワールを生み出そうとする機運は高まるばかりで、チリもその例外ではありません。ブルゴーニュ好きの方にも試してみてもらいたいワインのひとつです。

 

Errazuriz(エラスリス)
「Las Pizarras Pinot Noir2015(ラス・ピサラ・ピノ・ノワール2015)」
実勢価格1万3000前後

4. エルキ・ヴァレー
− 北の高地のワイン産地 

歴史のあるチリでも、近年新たに多くのワイン産地が生まれています。エルキ・ヴァレーはセントラル・ヴァレーのはるか北、海抜1000mから2000mという高地でもブドウ栽培がされている、チリでは新しいワイン産地です。もともとは「ピスコ」という蒸留酒用のブドウが栽培されており、ワイン用ブドウには不向きだと考えられていた地域でした。そういった固定観念を覆したのは、イタリア系チリ人とその従兄弟のイタリア人の、情熱と不退転の決意でした。

 

1995年にエルキ・ヴァレーでピスコ用ブドウ栽培を営んでいたアルド・オリヴィエ・グラモラの従兄弟ジョルジオ・フレサティが、観光でエルキ・ヴァレーを訪れたことがすべての始まり。トレンティーノでワインメーカーとして働いていたジョルジオは、ピスコ用のブドウを食べて感動し、滞在初日にワイン造りを決意したといいます。

 

ふたりの行動は迅速でした。1998年にはビーニャ・ファレルニアを設立、ピスコの蒸留所に発酵用タンクを設置することからワイン造りを開始し、2004年にはワインのみの生産に切り替えます。その間、ジョルジオはトレンティーノでの仕事を続け、イタリアとチリで年2回のワイン造りをしていましたが、2009年に完全にチリに移住し、ビーニャ・ファレルニアの仕事に専念するようになります。現在エルキ・ヴァレーは、追随するワイナリーも現れるなかでも、トップ生産者の地位を確固たるものにしています。さまざまな品種を栽培していますが、とくに興味深いのはフランス北ローヌを思わせる深み、奥行きを感じるシラーではないでしょうか。まだまだ発展途上の産地ですが、フランスワインファンの方にも試していただきたい注目産地です。

 

Vina Falernia(ビーニャ・ファレルニア)
「Syrah Gran Reserva2016(シラー・グラン・レゼルヴァ2016)」
2100円

5. ビオビオ・ヴァレー
− チリの南部は大手も進出する新しい産地 

南半球に位置し、南北に長いチリは北にアタカマ砂漠、南にはパタゴニア氷原と、多様な気候風土を持った国であることはすでにお伝えしたとおりです。首都サンティアゴを中心にワイン生産が始まったことから、南北両端はワイン生産にそれほど積極的な地域ではありませんでした。南のイタタ・ヴァレーは歴史こそ長い地域ですが、主に国内消費向けのパイスやモスカテルが植えられてきました。けれどもチリワインの需要が国際的に高まるなかで、大手生産者を中心に、これまで傍流でしかなかった南の産地でも秀逸なワインが続々と生み出されています。

 

写真の「コノスル」は、日本でもスーパーマーケットに行けば必ずと言っていいほど棚に並んでいるブランド。コンセプトがとてもユニークで、「no family tree, no dusty bottle, just quality wine」を掲げている1993年設立の若いワイナリーですが、チリワインの輸出量ではトップ3に入るビッグブランドでもあります。伝統や歴史はなく、あるのは品質の高いワインのみというコンセプトの通り、コノスルの存在は今まで家庭消費が極端に少なかった日本の消費動向すら変えてしまいました。つまり、チリワインのリーズナブルで美味しいというイメージを日本人に植え付けたのは、コノスルの影響によるところが大きかったと考えられます。

 

とはいえ、コノスルも1000円以下のワインだけを造っているわけではなく、チリのグランクリュ、プエンテ・アルトのカベルネ・ソーヴィニヨンから”シレンシオ“というプレミアムワインまで造っています。そして魅力的なのがチリのさまざまな地域でブドウ栽培を進めるコノスルのシングルヴィンヤード・シリーズ。適地適品種を探る中で、冷涼なビオビオ・ヴァレーでリースリングまで成功させているのです。そしてもちろんリーズナブル。ほんの少しの贅沢というときに、コノスルの安定感はどこまでも安心させられます。

 

Conosur(コノスル)
「Single Vineyard Riesling2019(シングル・ヴィンヤード・リースリング2019)」
実勢価格2000円前後

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
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ワインもついに「糖質オフ」の時代へ! 「おいしいワイン。糖質オフ」を試飲したGetNavi web編集長も大絶賛

Sponsored by Suntory Wine International

サントリーから今年大注目の新商品ワインが出た。「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。糖質30%オフ(※1)」(以下、おいしいワイン。糖質オフ)だ。

 

コロナ禍の健康意識の高まりで注目も集まる糖質オフ商品だが、これがいよいよワインのジャンルにまで波及。しかも、「国内ワイン市場売上容量No.1(※2)」の「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」シリーズから出るのだから、今後、市場が激変する可能性は極めて高い。

 

本記事では、GetNavi web編集長の山田佑樹が糖質オフ系商品のトレンドを紹介したうえで、本商品にガッチリハマる人を分析。自身も緩いロカボ生活を続けており、糖質制限生活者の目線も踏まえながら解説していく。

 

↑8月24日に新発売の「おいしいワイン。糖質オフ」。糖質を30%オフにしたワインで、赤・白をそろえ、アルコール度数は10%となっている。ラインアップは、写真の720mlのほか、1.8Lの紙パックもある

 

サントリー
「酸化防⽌剤無添加のおいしいワイン。糖質30%オフ」の詳細はこちら

 

※1 「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。(赤)」「同(白)」の平均値との比較 ※2 インテージSRI+調べ 国内ワイン市場2020年8月~2021年7月販売容量(全国SM/CVS/酒DS/ホームセンター/ドラッグストア/一般酒店/業務用酒店計)

 

“身体を気遣えるワイン”という新たな選択肢

本論に入る前に、機能性アルコール飲料全体をめぐる状況を簡単に説明したい。

 

↑もともと糖質がゼロであるウイスキー/焼酎商品は除いた、機能性を打ち出したサントリーの商品群

 

上の図はサントリーのビール/新ジャンル/チューハイ商品のうち、糖質ゼロや糖質オフ、糖類ゼロのラインナップを一覧にしたものである。ユーザー側は、飲みたいお酒をシーンや身体の状況と相談して、選んで飲める環境が構築されている。

 

ただしワインだけは事情が異なり、他社も含めて糖質オフまで踏み込んだ商品はほとんどない。それだけに、「おいしいワイン。糖質オフ」が今回加わることで、消費者は“身体を気遣えるワイン”という選択肢を手に入れることができるのだ。

 

ワインという新たな選択肢が食の選択肢も増やす

もう少し選択肢の話に触れたい。

 

 

上の表は大まかに、一般的な1杯目と2杯目の選択肢を並べたものである。この表を見て、2杯目の選択肢がマンネリになっていると思った人もいるのではないだろうか。

 

私の場合で言えば、昨年から糖質を適度に制限するロカボ生活を続けていることもあって、糖質の少ないお酒を選ぶようになった。ワインにはある程度の糖質が含まれるので、ビール類やハイボールを1杯目に選択することが多くなったし、食べるものも夕食は豆腐料理が極端に増えた。そうすると、お酒の選択肢もワインというよりは機能性ビールやハイボールに寄りがちになり、2杯目以降も同じものを、という惰性の選択が増えてしまう。

 

ここで、「おいしいワイン。糖質オフ」という選択肢があると、状況はかなり変わる。糖質を気にせず飲めるからワインという選択肢が生まれ、合わせる食事のバラエティも一気に豊富になる。

 

1杯目は機能性ビールやハイボールを飲み、2杯目は「おいしいワイン。糖質オフ」というパターンがオススメだ。いつもは惰性の2杯目が、積極的に選んだ2杯目になる。要は、「おいしいワイン。糖質オフ」という選択肢があることで、糖質制限生活において、食事の選択肢も変わり、食卓に広がりが出るのだ。

 

↑健康意識が高まっているこのご時世、アルコールの選択肢が増える「おいしいワイン。糖質オフ」は非常にうれしい! 糖質を気にしてためらっていたワイン購入が、この商品のおかげで前向きになれる

 

編集長とフードアナリストによるクロスレビュー

ここまで「おいしいワイン。糖質オフ」が持つ独自のポジショニングから話を進めてきたが、最も肝心なのは味である。多くの人は「糖質オフ=味が犠牲になる」という印象があるはずだ。

 

では、「おいしいワイン。糖質オフ」はどうか?

 

端的に言うと、しっかり飲みごたえを感じられるおいしいワインである。というか、私のように一般的な味覚レベルであれば、糖質がオフになっていることには気づかないはずだ。糖質制限をしている人なら、これが最適解。少なくとも、私にとってのデイリーワインはこれで決まりだ。

 

↑糖質制限生活を続けている編集長の山田。試飲してみると「これはすごい! 物足りなさ、チープさは皆無でしっかりおいしい」とコメント

 

これはオフしている糖質を「30%」に留めている点が大きい。サントリーの担当者によると、それ以上糖質をオフにすると果実感が弱まり、味わいのバランスが悪くなるという。糖質オフだけを目的とするなら、30%以上にすれば良いが、そこはワインに対して並々ならぬこだわりとノウハウがあるサントリー。絶対譲れないポイントとして、30%オフで総合力を高めているという形だ。

 

味に驚いたところで、ここからはいくつかペアリングした感想を述べていこう。いつもGetNavi webでお酒がテーマの記事を執筆するフードアナリスト・中山秀明さんとのダブルインプレッションで、一般人目線とプロ目線での評価をお届けする。

 

↑GetNavi webでお酒から料理、調理家電まで食にまつわるさまざまな記事を執筆するフードアナリストの中山さん。「おいしいワイン。糖質オフ」を試飲したところ、「特に香りの豊かさがしっかりしたコクにつながっている」と言及

 

スッキリとした味わいの白は、料理をおいしくしてくれる一本

・ペアリング1:「白」×前菜

↑前菜には野菜スティックを用意

 

・ペアリング2:「白」×魚

↑メイン料理はサーモンのムニエルをペアリング

 

「おいしいワイン。糖質オフ」の白で私が感じたのは、味わいがスッキリとした辛口であるため料理にすこぶる合うという点だ。スティック野菜では野菜の繊細な甘みを邪魔することなく、おいしさを引き立てる。魚も同様で、サーモンのうまみや香ばしさを感じさせながら、ほどよくリセットし、また次のひと口が食べたくなる。

 

「糖質オフというのも関係しているのか、確かに甘さが少ないドライなおいしさがありますね。しかしながら、香りは十分。また洋梨のようなフルーティさがあって、心地いい余韻です。ペアリングしてみると、野菜スティックは野菜の青々とした苦味までもしっかり引き立て、ムニエルはサーモンの甘みやバターのコクが、ワインの爽快さでより鮮明になる印象です。料理をおいしくしてくれる一本だと思います!」(中山さん)

 

しっかりとした味わいの料理と相性のいい、ミディアムボディの赤

・ペアリング3:「赤」×前菜

↑赤に合わせた前菜は、砂肝をメインにしたアヒージョ

 

・ペアリング4:「赤」×肉

↑メインには、ローストビーフをオージュソース(肉と野菜でだしをとったソース)とともに

 

「おいしいワイン。糖質オフ」の赤も非常によくできている! 甘さが控えめで、ほどよい渋味の効いたミディアムボディに仕上がっているため、料理との相性の幅が広い。アヒージョのようにオイルを効果的に使った、しっかりした味わいの料理や、今回の砂肝をはじめ鶏肉のなかでも食感やうまみが豊かな部位にはドンピシャだ。

 

「果実味がボリューミーで、香りからしていいですね。赤いベリー系や、桃のようなブライトでやわらかなニュアンスを感じます。飲み口はほどよくまろやかでいて、しつこさはなくスムース。今回のような肉料理はもちろん、和食ならソースを使う粉ものや、照りのある煮込みにタレ系の焼き物に合わせるのもいいでしょう。料理全般でおいしさを味わえるはずです」(中山さん)

 

なお、赤白の共通点としては、「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」のシリーズだけあり、酸化防止剤が無添加のナチュラルなおいしさが挙げられる。さらに、スクリューキャップタイプで保管が容易。1.8Lもラインナップしているので、ストックにも重宝するなどと、糖質オフ以外の機能面にも優れた商品なのだ。

 

料理の選択肢拡大⇒食事が楽しい⇒生活に彩りが出る

最後は少し抽象的な内容で締めたい。

 

コロナ禍以降の生活は、外出・外食を控えるなど、制限の時代だ。個人的なことで言えば、コロナ禍で激太りしたこともあって糖質制限をしたので、平日は食べるものや飲むものにも制限がかかった。

 

それを取り戻すために、週末は少し豪勢な食事にしたり、たまにはお取り寄せをしてみたりする。ただ、そうすると平日との落差が大きすぎて、平日の味が余計似たものに感じる状態に陥ることもある。

 

まあ実際は、おうち家電を充実したり、お風呂アイテムを採り入れたり、それなりに工夫はしていたが、この1年半を振り返ると彩りに欠けていたのは変わらないと思う。

 

そんな中で、「おいしいワイン。糖質オフ」は糖質こそ制限(=オフ)しながらも、選択肢は増やしてくれる点が素晴らしい。これまで食卓に並ぶことが少なかったような食材やおつまみが並び、食事の時間が待ち遠しくなる。食事の時間が楽しくなれば、家族との時間も有意義になる。といった形で、単に飲んでおいしいだけでなく、派生効果が大きい。単なるワインというジャンルを超えた価値があると考えている。

 

なので、「おいしいワイン。糖質オフ」は健康に気を遣って糖質をオフにしようとしている人はもちろん、毎日の生活に彩りを求めている人にもぜひ飲んでほしい。

 

↑食事を楽しくさせたい、変化させたいと思っている人にオススメしたい

 

もう少しだけ語らせて欲しい。個人的には、1杯目は機能性ビールを飲んで、2杯目以降に機能性ビールやチューハイを飲む人や家庭には「おいしいワイン。糖質オフ」がピッタリだと考えている。それは、糖質オフといった機能面はもちろんだが、2杯目にワインを持ってくることで、飲むスピードに緩急が生まれるからだ。

 

1杯目が機能性ビールで、2杯目以降も機能性ビールやチューハイだと、そのままの勢いで飲んでしまうことが多い。そこで日常の速度にメリハリを、という意味でも効果的。惰性で毎日のお酒を選んでしまっている人は、本商品に切り替えることで、ちょっと前向きな変化がきっと訪れるはずだ。

 

「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。糖質30%オフ」の詳細はこちら

◆お客様センター

ストップ! 20歳未満飲酒・飲酒運転

 

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執筆:山田佑樹・中山秀明、写真:湯浅立志(Y2)

北海道から九州まで上質で個性的なワインが続々!「日本ワイン」の歴史と産地別の注目ワイン

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズは、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。今回はいよいよ、日本。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
第1回 :フランス
第2回:イタリア
第3回:ドイツ
第4回:オーストラリア
第5回:アメリカ
第6回:ニュージーランド

 

日本ワインを旅する

「日本ワインの歴史は浅い」という話をよく聞きますが、他国に比べて、本当に浅いものなのでしょうか? こと歴史という点では、5世代続く家族経営のワイナリーもありますし、サントリーやメルシャンといった大手メーカーの歴史は100年以上続いています。

 

日本人のワインとの初めての出会いは、16世紀にさかのぼります。ポルトガルの宣教師が日本に持ち込んだものだったようです。珍重され流通した時代もありましたが、“国内で生産する”という流れにはならず、江戸時代の鎖国政策でそれも一度途絶えました。

 

そして明治維新が起こり、ヨーロッパを視察した岩倉使節団はワインが産業として重視されていることを知り、新政府の産業振興の一環としてワイン造りを奨励したことが、“日本ワイン”の始まりとなります。日本人として初めてフランスに留学した山梨県の青年2人は、1877年(明治10年)に日本初のワイン会社である大日本山梨葡萄酒会社を設立し、これが現在のメルシャンの起源ともいえる事業に。時を同じくして全国各地にワイン醸造家が生まれ、サントリーも1899年に創業し、ワインの製造販売を始めます。

 

ですが、ワイン産業が奨励された後も、通常のワインは食卓になかなか受け入れられず、神谷伝兵衛の「蜂ブドー」やサントリーの「赤玉ポートワイン」といった人工甘味果実酒だけが成功を収めました。多くのワイン醸造家は苦しい時代を過ごしたことは想像にかたくありません。

 

そして明治維新から約100年。1970年の大阪万博をきっかけに幕を開けた高度経済成長の時代に、第一次ワインブームが起こり、1975年に初めて、ワインの消費量は甘味果実酒を上回ります。

 

ヨーロッパでの現代ワインのスタイルを体系化した原産地呼称制度は1920年代、アメリカやオセアニアが現在のワインのスタイルを確立していったのも戦後の20世紀後半になってからのこと、と考えると、歴史そのものはけっして見劣りするものではないように思えるのです。

 

それよりも生育期の高温多湿、梅雨や夏から秋にかけての台風といった気候条件と、現在世界中で脚光を浴びる「日本酒」という米文化、ヨーロッパの食文化が根付くのに時間が必要だったことが、ワイン文化を育み、ワイン用ブドウを栽培することに積極的になれなかった、大きな要因だったように思えます。

 

現在、日本のワイン消費は第7次ワインブームの真っただ中。チリワインなどの低価格帯ワインの家庭消費やバル、レストランの多様化など複合的な要因がありますが、そのひとつに「日本ワインブーム」もあるとされています。今では北は北海道、南は九州まで、幅広い地域でさまざまなスタイルの日本ワインが造られるようになり、目を見張るような素晴らしい品質のワインにも出会えるようになってきました。

 

100年以上の時間が必要だったとはいえ、日本ほど世界中の多様なワインが消費されている国はなく、また美食という観点からも、日本ほどレストランが高いレベルでしのぎを削る国はありません。そのなかで日本ワインが、国内のみならず海外でも広く知られる日は、もうすぐそこに迫っているように思えます。日本ワインの個性やスタイルといったものが確立されるのは、近い将来のことなのです。

1. 山梨県
2. 長野県
3. 栃木県足利と北海道
4. 山形県
5. 新潟県

 

1. 山梨県
− 日本ワインらしさを期待される甲州種の可能性 −

山梨県は、日本のワイン生産の発祥の地であり、山梨大学と県の産業技術センターに属する“ワインセンター”という研究機関をそなえる、歴史的にも技術的にも日本ワインの中心的な生産地です。メルシャンやサントリー、マンズ、サッポロなど大手メーカーの拠点もありますが、写真の「中央葡萄酒」のような家族経営のワイナリーにも注目が集まっています。

 

日本ワインのオリジナリティという話で、必ず名前が挙がるブドウ品種が「甲州」種です。山梨県勝沼で古くから栽培されてきた甲州種は、DNA研究によって3/4がヴィティス・ヴィニフェラ系であることがわかり、甲州種ワインの成功はすなわち日本固有のワインの成功につながると、これまでさまざまな工夫が重ねられてきた品種なのですが、元来生食用に栽培されてきた甲州種は糖度が上がりづらく、ワイン用のブドウには不適な面もあったのです。ワイン用ブドウは少なくとも20度、ボリュームのある味わいを得るには24度ほどの糖度が必要と言われていますが、甲州は通常だと16~18度ほどの糖度にしか上がりません。そこで中央葡萄酒の三澤茂計氏は、従来の棚仕立てから、海外で主流である枝を縦に這わせる垣根仕立てを採用し、ワイン用ブドウに必要な糖度を持った凝縮した果実を栽培しようと試みます。ところが1992年に初めて採用した際には、樹勢の強い性質から結実すらしなかったといい、挑戦は失敗に終わります。そして現在の醸造長である三澤彩奈氏は垣根仕立てに加え、高畝式というブドウ樹になるべく水分を吸わせない方式を採用、2012年に初めて糖度20度を超え、2013年には25度の果実が生まれるようになりました。

 

この年醸造した「キュベ三澤明野甲州2013」は世界最大のワインコンクールであるデキャンタ・ワールド・ワイン・アワードで、日本ワイン初の金賞を獲得します。当時、日本経済新聞に掲載された金賞獲得の記事を読んだ際、日本ワインの夜明けを感じるような感慨、わがことのようにうれしく思ったことを、昨日のことのように思い起こせます。三澤茂計氏にとっては20年以上、代々続く中央葡萄酒、山梨のワイン、日本ワインにとっては100年に及ぶ挑戦のひとつの結実だったと思えるのです。

 

こと甲州種によるワインは、日本ワインのひとつの方向性を示しました。そしてそれは現在進行形のもので、より深くより明確に日本ワインのオリジナリティを表現していく期待が、甲州種には集まっているのです。

 

中央葡萄酒「グレイス甲州 2019」
オープン価格

2. 長野県
− ワイン特区、信州ワインバレー構想が生んだ新しい日本ワイン −

長野県の日本ワインにおける歴史は古く、塩尻市桔梗が原は明治末期から、甘味果実酒の原料ブドウの大供給地として運営されてきました。五一わいんの創業者である林五一氏が戦後メルローの栽培を始めたことにより、現在に至るまで、海外品種の栽培では山梨県に先んじている産地となっています。

 

元々長野県は、ワイン用ブドウの栽培比率が全国の中でも高く、輸入ブドウに頼らないワイン生産が行われてきました。そして長野県では小規模ワイナリーが開業しやすいよう、従来の1/3の醸造量でも酒造免許が取得できるワイン特区(構造改革特別区)を制定。意欲ある生産者が続々とワイナリーを開業しています。また「信州ワインバレー構想」と銘打って、日本アルプス、桔梗が原、千曲川、天竜川と県内の産地に色付けを行い、長野ワインの個性をより明瞭に打ち出し始めました。

 

サントリーやメルシャンといった大手も拠点を構えていますが、小布施ワイナリーやヴィラデスト、ファンキーシャトーといった小規模なワイナリーは、どこもヨーロッパ品種で成功を収めています。代表的なものには桔梗が原のメルロー、千曲川のシャルドネが産地全体で高品質なワインを産みだし、同時に小規模で植えられているさまざまな品種、そしてコンコードやナイアガラといった生食用ブドウで造られたワインも、長野ワインの多様性を表現しています。

 

写真のワイン、微発砲の“辛口ペティヤン”というスタイルは、ヨーロッパの地ワイン的で価格的にも親しみやすいのではないでしょうか。生産量では山梨には及びませんが、今の日本ワインのさまざまな個性を楽しめる、また将来が楽しみなのが、長野ワインの素晴らしいところです。

 

ドメーヌ・ナカジマ「ペティアン・ナチュール・ロゼ 2020」
1980円(税込)

3. 栃木県足利と北海道
− とあるアメリカ人の、日本ワインへの功績 −

栃木県足利市にあるココ・ファームは、障害者支援施設の一面を持った国内でも珍しいワイナリーで、1958年足利市田島町に、特殊学級の教員だった川田昇氏が3ヘクタールのブドウ畑を開墾したことから始まります。

 

醸造免許を取得し、初めてワインを生産したのは1984年のこと。その5年後に、アメリカでワイナリーのコンサルタントをしていたブルース・ガットラブ氏が来日し、ココ・ファームの醸造指導を行うことになりました。その当時のココ・ファームのワインを飲んだことはないのですが、その他の多くの日本ワインと同様に甘口が主体だったものを、ガットラブ氏が加わり辛口に仕上げられるようになったということです。その頃の日本のワイン消費が食中酒ではなかったことを裏付けるエピソードですが、当初は辛口のワインは顧客に受け入れられず、クレームすらあったといわれています。それをガットラブ氏は変革の手を緩めず、野生酵母の使用や無濾過、亜硫酸に頼らないワイン醸造という、現在では当たり前ともいえる手法を次々に導入し、ココ・ファームのワインを国内でも先進的なものに変えていきました。そして2000年に開催された九州・沖縄サミットの晩餐会では“日本を代表するワイン”として供されるに至ります。

 

現在ガットラブ氏は、ココ・ファームの醸造指導を続けながら北海道岩見沢に10R(とある)ワイナリーを運営し、北海道の栽培農家に醸造の場を提供して、多くの生産者にワイン造りの示唆を与えています。足利という日本ワインの小さな一角から北海道、ひいては日本ワイン全体に変化を与えたブルース・ガットラブ氏は、日本ワインの近代化に大きな影響をもたらしたのです。

 

ココ・ファームでは、毎年秋に“収穫祭”と銘打って収穫を終えたブドウ畑の斜面でつくりたてのワインと料理を楽しむイベントを行っています。1984年のファーストヴィンテージから開催され、県外からも多くの観光客が集まる日本版ワインツーリズムのひとつの成功例となっていますが、残念ながらコロナ禍のなかでは、オンラインイベントに切り替えるなど限定的なものになっています。日本で開催されるワインイベントとしてはワインと自然が結びついていることを感じられる貴重な機会なので、また多くの人が集まれるようになったら再開が心待ちにされているイベントです。

 

ココ・ファーム「こことあるシリーズ・ツヴァイゲルト 2017」
3500円(税込)

4. 山形県
− “果物王国”山形はワインもおいしい 

岩手もドイツ系品種の栽培に成功していますが、東北のワイン生産の中心は、洋ナシやさくらんぼで有名な山形県ではないでしょうか。老舗のタケダワイナリーは大正時代からブドウ栽培を始めていて、東北ワインの歴史と歩みをともにしています。同じく山形の高畠ワイナリーは1990年創業とタケダワイナリーに比較すると歴史は浅いですが、2009年から10年間醸造責任者を勤めた川邉久之氏の活躍は、山形ワインの可能性を引き出すことに成功しました。

 

川邉氏は、カリフォルニアのナパ・ヴァレーで15年にわたりワイン醸造に携わっていたことから、日本人醸造家としては豊富な経験と知識を日本ワインにもたらした方です。以前、ナパ・ヴァレーの恵まれた気象条件と日本のそれとは大きな開きがあるという話を伺ったことがありました。ですがその際に印象的だったのは、世界のワイン産地のなかにも厳しい条件下で優れたワインを産み出す産地もある、という言葉でした。高畠ワイナリーでは、さくらんぼを原料としたフルーツワインやガス注入の廉価なスパークリングワインなど、幅広い層に受け入れられるワインも造りながら、深夜に収穫するナイトハーベストを導入するなど、本格的なヨーロッパワインの消費者層にも受け入れられるワインづくりも模索されていたように私の目には映りました。写真のゾディアックは、土壌造りから始めたという意欲作で、日本では成功例の少ないピノ・ノワールを見事な完成度で仕上げた1本です。

 

現在の日本の市場は、世界の銘醸ワインの消費者層と日本ワインの消費者層があまり重なっていないところが課題だと思うのですが、海外のワインをよく知る川邉氏のようなワイン・パーソンが今後増えていけば、いつか日本ワインはより多くの日本人に親しまれ、世界にも広がっていくように思えます。高畠ワイナリーのピノ・ノワールは、そんな想像をさせてくれる日本ワインでした。

 

高畠ワイナリー「ピノ・ノワール・ゾディアック 2017」
オープン価格

5. 新潟県
− 海と砂のテロワールと訪問客を楽しませるワイン産地 

新潟のワイン生産の歴史は古く、現在日本の赤ワイン用品種の中心を担うマスカット・ベリーAも上越市で産まれました。マスカット・ベリーAをはじめブラック・クイーン、レッド・ミルレンニュームなど数々の優良品種を産み出し、“日本ワインの父”ともいわれる川上善兵衛の創設した岩の原葡萄園は、サントリーの傘下として現在にまで残っています。

 

けれども今、日本ワインの未来を考えた際に注目すべきは、新潟市街地の角田浜、越前浜にある5軒の生産者たちが形成する「新潟ワインコースト」ではないでしょうか。1992年にカーブドッチを創業した掛川史人氏は新潟産ブドウとヨーロッパ品種でのワインづくりにこだわり、2005年に砂質土壌に適した品種としてスペイン、ポルトガル品種のアルバリーニョの可能性を見出して、この地域のオリジナリティを模索し続けています。

 

また掛川氏の主催するワイナリー経営塾の卒業生たちがフェルミエ、ドッメーヌ・ショオ、カンティーナ・ジオセット、ルサンクワイナリーと立て続けにワイナリーを開業し、新潟ワインの新しい一面を表現しています。そして特筆したいのは、レストランやオーベルジュを併設してゲストを楽しませるという、日本では初めてのコンセプトを打ち出したのも、掛川氏だということ。現在では、迎賓館赤坂離宮の正門前にカフェをオープンするなど、多角的に日本ワインを盛り上げています。新潟もまた、日本ワインの新しい潮流を産み出す新しい産地として、変化を続けているのです。

 

カーブドッチ「うみがめ(ソーヴィニヨン・ブラン)2019」
3520円(税込)

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

ソーヴィニョン・ブランで一躍世界から注目!「ニュージーランドワイン」の銘醸地をソムリエが解説

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズは、フランスをはじめとする古くから“ワイン大国”として名を馳せる国から、アメリカなどの“ワイン新興国”まで、さまざまな国と産地を取り上げてきました。今回は、ワイン新興生産国であるニュージーランド。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
第1回 :フランスと5つの産地
第2回:イタリアと5つの産地
第3回:ドイツと5つの産地
第4回:オーストラリアと5つの産地
第5回:アメリカと5つの産地

 

ニュージーランドワインを旅する

ニュージーランドのワインというと、どのようなイメージを持っているでしょうか? ひと時脚光を浴びたのは、フレッシュで活き活きとしたソーヴィニヨン・ブラン。その他の産地では真似のできないような明快な味わいは、世界中のワインファンを驚かせ、現在ではオーストラリアと並んで、オセアニアをワイン地図の重要な一角に位置づけました。

 

それならさぞかし歴史のあるワイン大国だろう、と思えばそうでもなく、ワイン用ブドウのひとつ「ヴィティス・ヴィニフェラ」種がこの地に広く植えられるようになったのも、1970年代になってからとつい最近のこと。国土は日本の70%ほど、人口500万人という規模のニュージーランドは、世界のワイン生産量のシェアで見れば1%にも満たない小さな国なのです。

 

そんな小さな島国が、世界中のワインパーソンに注目されるきっかけとなったのは、何よりその独自の個性を表現したソーヴィニヨン・ブランの存在でした。1980年前後に発表された初期のマールボロ産のソーヴィニヨン・ブランは、すぐに注目と投資を集め、今日に至るまで重要な品種であり続けています。2018年にはブドウ畑の6割、輸出ワインの9割近くを占めるほどにまで成長し、“ニュージーランドワインの歩みはこの国のソーヴィニヨン・ブランの歩みとセミイコール”と言っていいほど、主役であり続けているのです。

 

たったひとつのブドウ品種が、一国のワインの歴史を運命付けたと思うと、とても興味深く思えませんか? もちろん「ニュージーランドワイン」はソーヴィニヨン・ブランだけではありません。脇を固めるワイン産地も、それぞれ独自の魅力を持っていますから、ひとつずつ順に紹介していきたいと思います。

【目次】
1. マールボロ
2. ワイララパ地方マーティンボロー
3. ホークス・ベイ
4. セントラル・オタゴ
5. ノース・カンタベリー

 

1. マールボロ
− 小さな町ブレナムはワインにおいての中心都市 −

南島の北東端に位置するマールボロ地方の中心都市ブレナムは、人口3万人ほどの小さな街。日本でいえば、山梨県甲州市と同程度の人口と考えると、その規模がイメージしやすいかもしれません。今ではニュージーランドのワイン生産の中心となったマールボロに、ソーヴィニヨン・ブランが植えられたのは1975年のこと。それから4年後の1979年に初めて、マールボロ・ソーヴィニヨン・ブランが瓶詰めされました。

 

マールボロで造られたソーヴィニヨン・ブランには、当初から原産地であるフランス・ロワール地方のワインにはない、グレープフルーツやトロピカルフルーツのようなボリュームのある果実味に加え、その特徴であるキレのあるヴィヴィッドな酸も保たれた、特別な風味がありました。その特異性、優位性にいち早く気づいたのが、西オーストラリアの生産地、ケープ・メンテルのデヴィッド・ホーネン。ワイナリー「クラウディー・ベイ」を設立し、マールボロ・ソーヴィニヨン・ブランを代表するブランドとして、世界中で大流行を巻き起こします。

 

現在では、ニュージーランドのブドウ畑の約70%がこの地域に集中しており、そのうちの85%をソーヴィニヨン・ブランが占めています。つまり“ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン”として、日本をはじめ世界中に輸出されるワインのほとんどは、この地域から産出されているのです。ワイン生産が今ほど活発になる前には、牧羊を中心とした畜産や織物が主な産業でしたが、小さな街ブレナムはそれからわずか30年ほどの間に、ニュージーランドのワイン生産とともにワインツーリズムの中心地としての役割を担うようになりました。

 

2018年には、ブレナムの鉄道駅舎だった建物が「ザ・ワインステーション」というテイスティング施設に生まれ変わり、有名ワイナリーからセラードアを持たない小さなワイナリーまで、地元のワインを幅広く紹介するようになりました。

 

マールボロほどその国のワインの入り口にふさわしい産地は世界を見渡しても珍しく、そのフルーティーさとフレッシュな酸、清々しい青さを併せ持った魅力的なニュージーランドワインを、ぜひ一度お楽しみいただければと思います。

 

Totara(トタラ)
「Marlborough Sauvignon Blanc2019(マールボロ・ソーヴィニヨン・ブラン2019)」
2450円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

2. ワイララパ地方マーティンボロー
− ロマネ・コンティのクローンがマーティンボローの主流 −

マールボロで初めてソーヴィニヨン・ブランを植えたモンタナ社による、1973年の政府研究機関に依頼した地質調査では、マーティンボローがもっともブドウ栽培に適した土地だという結果が出ました。けれども、その最適と判断された土地面積は狭く小さいものだったため、モンタナ社が本格的なワイン生産を行うために選んだのは、マールボロの広大な土地でした。

 

マーティンボローは北島の南端、首都ウェリントンから車で1時間ほどの距離にあります。はじめてブドウが植えられたのは1883年という記録がありますが、20世紀初頭の禁酒運動で生産は途絶え、近代ワイン生産の歴史はマールボロより少し遅れて、1980年前後に始まります。先の地質調査では、フランス・ブルゴーニュと似た自然環境によってもっともブドウ栽培に適しているとみなされたマーティンボローでは、現代に至るまでピノ・ノワールが中心に栽培されており、ブルゴーニュ由来の穂木「エイベル・クローン」が主に植えられています。

 

1970年代、ニュージーランドの税関職員だったマルコム・エイベルは、ロマネ・コンティの畑から違法に持ち帰られた穂木を没収します。これを検疫所で検査した後に自身の所有するオークランド近郊のブドウ畑に植えたことで、「エイベル・クローン」は産まれました。このクローンをマーティンボローの主要ワイナリーのひとつである「アタ・ランギ」のオーナー、クライヴ・ペイトンが譲り受けたことで、ロマネ・コンティを起源とするブドウ樹が広がり、マーティンボローのピノ・ノワールの歴史において重要な要素のひとつとなるに至りました。

 

まるで、よくあるワインのネットショップの売り文句のようですが、ニュージーランドのピノ・ノワールは歴史が浅いながら、ソーヴィニヨン・ブラン以上に高品質ワインを生産する可能性を秘めているのも事実です。そして後述するセントラル・オタゴやカンタベリーといった、同国内のピノ・ノワールの成功しているライバル産地との競合も、この国のピノ・ノワールの今後を楽しみにさせてくれる醍醐味でもあるのです。

 

Ata Rangi(アタ・ランギ)
「Crimson Pinot Noir2018(クリムゾン・ピノ・ノワール2018)」
4200円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

3. ホークス・ベイ
− 北島の東海岸ホークス・ベイは歴史あるブドウ産地 −

1851年に、フランス人宣教師がブドウを植えたホークス・ベイは、ニュージーランド国内では歴史のあるワイン産地です。南半球に位置するニュージーランドは、北島の方が温暖で、東海岸ホークス・ベイはボルドー品種やシラーといった赤ワイン品種を完熟させられる産地。とくにヘイスティングズの北西ギムレット街道周辺のやせた砂利、小石の土壌は、ニュージーランドでもっともカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに向いている地域とされています。その地域は「ギムレット・グラヴェルズ」と呼ばれ、1990年代以降に栽培農家による奪い合いが起こるほどの人気を集めました。「グラヴェル」とは石ころという意味。つまり“ギムレットの砂利土壌”という畑名になっているのです。現在ではニュージーランドの10~12%ほどの生産量があり、マールボロに次いで第2位の規模のワイン産地になっています。

 

ただ、ボルドー品種の赤ワインはあまりにも世界中にライバルが多く、ニュージーランドの長い生育期間と寒暖差を反映した個性的なワインということでは、個人的にシラーに注目しています。オーストラリアのシラーズとはまた違う、酸の強調されたシラーはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールに次いで代表的なブドウ品種になる可能性があるように思えるのです。

 

また、ホークス・ベイの二大都市ネイピアとヘイスティングズは、アールデコ様式の建築で統一された都市として知られています。私自身もニュージーランドには訪れたことがないのですが、各地のワインの新鮮な可能性に触れるたびに、また海外旅行ができる状況になったらもっとも訪れたいワイン産地として、思いを巡らせています。

 

Trinity Hill(トリニティ・ヒル)
「Hawkes Bay Syrah2018(ホークスベイ・シラー2018)」
3000円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

4. セントラル・オタゴ
− 世界最南端のワイン産地で完熟するピノ・ノワール 

ニュージーランドの中心都市・クイーンズタウンには、南半球でも最高といわれるスキー場があり、四季折々の雄大な自然は、ニュージーランドを代表するリゾートタウンとして知られています。そして、この地域がワイン生産に向いていることは、19世紀末から知られていました。

 

1881年には、オーストラリア・シドニーで開催されたワイン品評会で、セントラル・オタゴ産の「バーガンディ」が金賞を受賞した記録が残っているほどですが、やはりニュージーランドの他の産地同様、一度ブドウ栽培は途絶え、本格的に再開されるのは1970年代に入ってからのことでした。このように「ブルゴーニュ」の英語読みであるバーガンディというワインが造られていたことからもわかるように、主流はピノ・ノワールですが、再びこの産地に注目が集まるまでには、そこから100年以上の時間がかかりました。

 

1997年に初めてリリースされた「フェルトン・ロード」は、評価誌から高評価を獲得、瞬く間にピノ・ノワールの未来を担う産地としてセントラル・オタゴが注目されるようになりました。短い夏の寒暖差、収穫期の乾燥は、素晴らしいピノ・ノワールに必要な長い生育期間をもたらし、驚くほどピュアな果実味と複雑さ、エレガントさを兼ね備えたワインを産みだします。それでは“マーティンボローとどちらが優れたピノ・ノワール産地なのか?”という議論が起こりますが、全体的にブドウの樹齢はセントラル・オタゴの方が若く、その答えは現在進行形で簡単には決着しそうにありません。

 

ただ、日本の多くのワイン愛好家がブルゴーニュを偏愛している様子を見るにつけ、マーティンボローとセントラル・オタゴのピノ・ノワールに、もっと目を向けてもいいように思えます。それはヴォーヌ・ロマネとジュブレ・シャンベルタンの相違と同じように、魅惑的なテーマでもあるのです。

 

Felton Road(フェルトン・ロード)
「Pinot Noir BannockBurn2015(ピノ・ノワール・バノック・バーン2015)」
7200円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

5. ノース・カンタベリー
− プレミアムワインの冷涼産地カンタベリー 

南島の主要都市であるクライストチャーチを包むように広がるカンタベリーは、ニュージーランド随一のプレミアムワイン産地となりつつあります。素晴らしく優しい口当たりのリースリングや、ブルゴーニュを思わせるピノ・ノワールとシャルドネは、短い歴史を感じさせないほどで、世界の最高峰のワインに肉薄するほどの味わいです。

 

元々、ボルドー品種には涼しすぎることから、ブドウ栽培には不向きとみなされていた地域だったカンタベリーが、わずかな期間で注目される産地になったのには、それを覆したパイオニア的な存在がいます。多くのワインパーソンを送り出しているクライストチャーチのリンカーン大学で、ブドウ栽培を教えていたダニエル・シェスターは、この地域でのピノ・ノワールやリースリングといった冷涼品種の可能性を見出し、1970~80年代に醸造用ブドウ栽培の礎をつくりあげます。そして、今からわずか30年前の1991年に初リリースされた「ペガサス・ベイ」のリースリングが、カンタベリーのプレミアムワインに歴史の一歩を踏み出させました。

 

そう思うと、1997年に設立された「ベルヒル」は、世界的に見れば新しいワイナリーかもしれませんが、この産地のなかで考えれば老舗の部類に入るのかもしれません。リリースからほどなくニュージーランドでも最高峰、ブルゴーニュのムルソーに匹敵するという高い評価を勝ち得たベルヒルは、その生産本数の少なさ(シャルドネの初期は1樽300本ほど)から日本では知る人も少ないワインでした。ブルゴーニュでも最高の土壌とみなされる石灰岩がむき出しになった産地を選び抜き、カンタベリーのテロワールを信じた末の品質と思うと、感慨深さすらあります。

 

ピノ・ノワールももちろん素晴らしく、各産地にこういったプレミアムワインが産まれ愛好家にも広く知られれば、現在のブルゴーニュ偏重の価値観にも変化をもたらすのではないかと期待しています。

 

Bell Hilll(ベルヒル)
「Chardonnay2016(シャルドネ2016)」
1万8000円
輸入元=ワイン・ダイヤモンズ

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

気軽にワインを楽しみたい! コスパ抜群な1000円台の白ワイン5選

最近は手頃な価格のワインが増えてきたことから、家飲みでワインを選択する人も増えているのだとか。なかでも、飲みやすく食事にも合わせやすい「白ワイン」は、初心者にもおすすめです。渋みが少なく、スッキリとした味わいのものが多いので、デザートと合わせるのもおすすめ。そこで今回は、毎日の晩酌など、日常のシーンで楽しめる2000円未満(※価格はAmazon調べ)の白ワインをご紹介します。

 

目次

 


国内外のコンクールでの評価が高い国産白ワイン


サントリー ジャパンプレミアム 甲州

ジャパンプレミアム「甲州」は、2015年日本ワインコンクール「甲州辛口タイプ」部門で銀賞を獲得するなど、国内外のコンクールで入賞している評価の高い白ワインです。ブドウは、1000年以上の栽培の歴史を持つとされる日本固有のワイン用品種を使用。そのやさしく繊細な味わいが“日本的な美しさ”のあるワインとして、日本だけでなく世界の市場でも高く評価されています。和柑橘を感じる上品な香りと、旨みを感じるしっとりした味わいが特徴。購入者からは「とてもフルーティーで香りもよく飲みやすかった」「和食や和風味と合わせるとより楽しめそう」との声も。

【詳細情報】
内容量:750ml
発送重量:1.31kg

 


100年の歴史を持つフルーティーなドイツワイン


リープフラウミルヒ マドンナ

ドイツでも由緒ある歴史を持つファルケンベルク社によるフルーティな味わいの「マドンナ」は、「聖母の乳」の名を持つ、ドイツを代表するワインのひとつです。新鮮な果物の酸味、軽やかな甘さ、みずみずしく爽やかな味わいが特徴。和食との相性はもちろんのこと、スパイシーなエスニック料理や中華とも相性抜群です。キリッと冷やしてキャンプやバーベキューなどのアウトドアで楽しむのもおすすめ。絶妙な酸味と甘味のバランスが、料理の味を一層際立たせます。おすすめは、ドライフルーツのクリームチーズ和えをのせたカナッペなど。「やさしくまろやかで飲みやすくワイン初心者に最適」との声も聞かれます。

【詳細情報】
内容量:750ml
発送重量:1.17kg

 


フルーティな香りと爽やかな味わいが特徴のチリワイン


ロス ヴァスコス シャルドネ

ロス ヴァスコスはチリに移住したスペイン人により、1750年に創業。ぶどう畑の所有面積は3600ha、その内作付け面積は580haとコルチャグア・ヴァレー中部で最大。広大な土地ですが、殺虫剤や除草剤などの化学物質に頼らないキャノピーマネジメントなどの手法を採用し、グリーンハーヴェストによる収量制限、樹齢による区画の管理を行い、収穫は手摘みと手間暇をかけて作られています。柑橘やバナナなどを思わせるフルーティな香りとフレッシュで爽やかな味わいが特徴。購入者からは「キリッとした辛口というよりは、芳醇さの中に辛さが潜む感じ」「後味や香りの余韻は強く残らずクールでサッパリした印象」との声も。

【詳細情報】
内容量:750ml
発送重量:1.2kg

 


洗練されたエレガンスを感じさせるチリワイン


ロス ヴァスコス ソーヴィニヨン・ブラン

ロス ヴァスコス ソーヴィニヨン・ブランは、フランスの名門バロン・ド・ロートシルト家が手掛けるエレガントなチリ産の白ワインです。柑橘やトロピカルフルーツのようなボリュームある華やかなアロマと、ほどよいコクとすっきりした酸味が特徴。よく熟したソーヴィニヨン・ブラン種の特徴を存分に引き出しました。愛飲者からは「甘さは全くなく、すっきりとした味。だからこそ何にでも合うと思います」「白ワインとしては香りが強く、良い香りが楽しめるのも良い」「同じ味わいでイタリアやスペイン産のワインなら3千円以上はすると思います」と高評価。他にも「スクリューキャップなので気軽にアウトドアにも持って行けるのがうれしい」という声も。

【詳細情報】
内容量:750ml
発送重量:1.1kg

 


世界的評価の高い南仏生まれのフルーティーな辛口ワイン


レゾルム ド カンブラス シャルドネ

レゾルム ド カンブラス シャルドネは、フランスNo.1の販売数量を誇るカステル社が手がける、南仏生まれのフルーティな白ワイン。辛口仕立てでほどよいコクがあり、日本の食卓を意識して特別に作られています。りんごや黄桃を思わせる香りと、やわらかな印象の果実味、酸味のバランスの心地良さが特徴。ぶどう本来の果実味を活かした瑞々しさは、日本人の味覚に合うバランスの良い味わいで、ゴマだれ味のしゃぶしゃぶなど、旨味を感じるメニューにピッタリ。また、世界的評価も高く、シャルドネ・デュ・モンド2017にて金賞を受賞した実力派です。ユーザーからは「白ワイン独特の酸味が苦手な人に最適」「スッキリ飲みやすく日常使いにぴったり」との声がある一方で「白ワインの個性を求める人には、物足りなく感じるかも」との声も。

【詳細情報】
内容量:750ml
発送重量:1.04kg

 

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若者=酒離れの定説を覆す! 20代に大人気の「SDGsなワイン」があった

2015年の国連サミットで採択されたSDGs(「Sustainable Development Goals」=持続可能な開発目標)の、認知や共感は年々広がっています。今回ではそのSDGsに関連した、ワインの興味深いトピックをレポートします。

 

↑メルシャンと「産直tabeloop(たべるーぷ)」による、オーガニックワインセミナーに参加しました

 

いずれ国内ワイン市場はオーガニックが中心に?

SDGsには17の目標が掲げられていて、中でもワイン醸造と深く関係しているのが12番目の「つくる責任 つかう責任」。具体的には「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」というもので、ワイン業界ではぶどうの栽培から醸造に至るまで、自然の恵みや営みを生かしたものづくりにいっそう注目が集まっています。

 

この、自然との共生を目指して造られているのがオーガニックワイン。オーガニックカテゴリーの中でもぶどうの農法によって2つに分けられ、化学的な添加物を一切禁止し自然由来の肥料だけで栽培したぶどうを使う「オーガニック」。もう一つは、オーガニックワインの特徴に加え、月の満ち欠けで収穫日を決めるなど、土壌の生命力を活用したぶどうで造る「ビオディナミ」があります。

 

↑メルシャンが輸入・販売している人気の銘柄が、南仏を代表するオーガニック&ビオディナミワインの名手「ドメーヌ・カズ」。この「カノン・デュ・マレシャル ロゼ」は税込1815円(参考価格)で販売されています

 

また、オーガニックワインとまでは言わないものの、無農薬・減農薬のワイン「リュット・レゾネ」というカテゴリーもあります。

 

↑メルシャンの資料より

 

そして、日本のオーガニックワインを取り巻くシーンのなかで興味深いポイントが、特に20代で人気が高まっていること。一般的には“若者の酒離れ”が叫ばれていますが、オーガニックワインに関しては、この定説は当てはまっていません。このことは調査でも明らかになっています。

 

↑オーガニックワインの購入率は、どの年代においても前年より増加。ワイン全体と比較しても成長が確認でき、中でも顕著な層が20代です

 

オーガニックワインの購入層を金額ベースで見れば、50代以上が年代別構成比の7割以上を占めています。とはいえ、このまま若年層の間でオーガニックワインを積極購入する動きが広がり続ければ、やがて日本のワイン市場はオーガニックが中心になると考えられます。

 

↑国内外でオーガニックワインの人気が拡大しています

 

一般的に、オーガニックワインはそうでないワインに比べて高価格な傾向があります。一方、20~50代の収入を年代別で見れば、高年齢層の方がお金持ちというのも周知の事実でしょう。つまり、ある意味20代は上の世代より、無理をしてでもオーガニックワインを選んでいるということです。それはなぜでしょうか?

 

 

エシカルな食は味の満足度も高いことを実感

20代が上の世代よりもオーガニックワインを好む、大きな理由の一つと言われているのが教育。教育をきっかけにSDGsが若年層に浸透し、サステナブルでエシカルなライフスタイルが好まれる傾向にあると言われているのです。

 

エシカルという言葉は、よく「エシカル消費」として用いられ、これは地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動のこと。冒頭で述べたSDGsの「つくる責任 つかう責任」にも関係しています。

 

↑「カノン・デュ・マレシャル ロゼ」の裏ラベル。オーガニックワインは「ユーロリーフ」など有機認証機関のマークも目印です

 

オーガニックワインは味わいも魅力的。むしろオーガニックワインが支持される最大の理由は、おいしいからだと個人的には思います。味の基準は主観的な要素を含みますが、筆者の聞く限りでは「オーガニックはウマい」「オーガニックはハズレがない」という声ばかり。ということで、「カノン・デュ・マレシャル ロゼ」も飲んでみました。

 

↑ロゼならではの爽やかで華やかな果実味と、キレのある辛口が絶妙!  すっきり軽快な飲み口でも薄っぺらい感じはなく、優雅な気分に浸れます

 

セミナーでは、魚介を使った料理やマリネなどが好マリアージュということだったので、オススメレシピで一品作って合わせてみました。メインに使った食材は「産直tabeloop」で届いた脇口水産の商品「海の生ハム」です。

 

↑脇口水産の「海の生ハム」は、「産直tabeloop」で50g×3パック税込2710円。国内ファーストクラス機内食で採用されているほか、「ミシュランガイド」三ツ星のピエール・ガニェールシェフも大絶賛しているとか

 

「産直tabeloop」は、フードシェアリングプラットフォーム「tabeloop」が2020年にローンチ。おいしくて安全な国産の一次生産品を、家庭の食卓に産地から直送してくれる新サービスです。2030年までに食品ロスを半減し、貧困層における飢餓を撲滅するという「tabeloop」の理念にメルシャンが共感。本稿のセミナーや消費者向けキャンペーン(5月9日に終了)が実施されました。

 

↑クラッカーにクリームチーズを乗せ、その上に「海の生ハム」やディル、ドライフルーツ、ナッツをトッピング。仕上げはオリーブオイルで一体感をアップ

 

「海の生ハム」は、マグロ水揚げ量日本一の和歌山・那智勝浦(なちかつうら)漁港で揚がった天然・活締め・高鮮度・高品質のカジキマグロを選別。完全無添加で塩と昆布のみを使用し、自然の旨味を凝縮させた生ハムです。食べてみるとスモークサーモンより上品な旨味と、引き締まったスモーク香があり、繊細なロゼワインとドンピシャでした。

 

↑「海の生ハム」ではなくてもスモークサーモンや普通の生ハム、ツナ缶なども相性抜群。ぜひお試しを

 

世界的にSDGsへの共感が高まる中、エコやリサイクル、地産地消や生産者応援などに、積極的に取り組むようになった人は多いはず。次にワインや食材を選ぶ際には、オーガニックや「産直tabeloop」のことを思い出して、手に取ってみてはいかがでしょうか。

味に自信あり!ブドウの味をしっかり堪能できるノンアルコールワイン5選

ノンアルコール飲料というと、味にちょっと不安が……と思っている人も多いはず。ですが、最近のノンアルコール飲料はおいしいものが多く、特にノンアルコールワインはメーカーが自信を持って作っている一本や、高級ホテルで認められた一本なども存在します。そこで、本格的なブドウの味わいを堪能できるノンアルコールワインをご紹介。お酒を控えている人や明日のことを考えてお酒を飲めない人はぜひ参考にしてみてください。

 

目次

 


独自製法で本物のスパークリングに近づいた一本


スタッセン デュック・ド・モンターニュ ノンアルコール スパークリング 白

スタッセン社は、1895年設立のベルギーの老舗飲料メーカー。ワロン地域、リエージェ近郊の小都市オーベルの果樹園に囲まれた緑豊かな田園地帯の真ん中に、4万m2の敷地を持ち、工場と自社農園を構えています。「本物のスパークリングワイン?」と間違えてしまうほどの味わいの秘密は、いったんブドウから白ワインを醸造し、そこからアルコール分を取り除く独自の製法にあります。発酵時に生まれるワインとしての豊かな香りや味わいを壊さないよう、低温低圧状態でじっくりと蒸留してアルコール分を除去しているのです。甘口ワインが好きな方にぜひおすすめしたいこだわりの一本です。

【詳細情報】
内容量:750ml

 


香り高くエレガントな味わいがクセになる


シャトー勝沼 カツヌマグレープ 赤 ノンアルコール

カツヌマグレープは、アルコールを生成しない特許製法で「アルコール0.00%」を実現したワインテイストの飲料。長年に渡り培ってきたワイン製造技術と緑茶をベースに、飲みごたえのある味わいに仕上がっています。口に含むと、ブドウ本来の香りや味わいを楽しめ、熟成したワインとは一味違ったおいしさを堪能できます。香り高くエレガントな味わいなので、和食、中華はもちろんのことアジアや中南米の料理とも相性抜群です。パーティーやお祝いの席にもぴったり。

【詳細情報】
内容量:720ml

 


フランス産の厳選されたメルロー種でできた本格ノンアルワイン


交洋 カールユング メルロー『ノンアルコールワイン アルコール分0.5%未満』

フランス産の厳選されたメルロー種だけを使って作られた本格的な脱アルコールワインです。紫色のパッケージからも高級感が漂います。ワイン独自の風味が生きてますが、アルコール分は0.5%未満のため、アルコールが苦手な女性やご年配の方にもぴったりです。また、通常のワインよりポリフェノールが豊富に含まれているほか、カロリーは控えめ。愛飲者からは「ノンアルワインの中ではジュース的な甘さが一番ない感じがして気に入っています」という声があがっています。スクリューキャップなので、コルク抜きがなくても手軽に開けることができるのもポイントです。

【詳細情報】
内容量:750ml

 


高級ホテルやレストランにも認められた高級感のある味わい


カプリース ノンアルコールスパークリングワイン

100年の伝統ある名門ワイナリーで造られた2種類の高級ケープワイン(シャルドネ)から、最先端の脱アルコール技術でアルコールだけを除去。 独自に開発したレシピでブレンドされたアルコールフリースパークリングワインの逸品です。高級ホテルやレストランでも選ばれて飲まれているほど本格的な味わいを堪能できます。泡立ちや透明感、香り、泡質、風味、糖度と酸味のバランス……どれをとっても高級シャンパンそのもの。飲みやすいのでアルコールが苦手な方にもおすすめですよ。パッケージにも高級感が溢れており、贈り物としても喜ばれそうな一本です。

【詳細情報】
内容量:750ml

 


丸絞りシャルドネ果汁で爽やかな飲み口


ゼロカクシャルドネスパークリングテイスト

禁酒をしている方に「かけがえのないドリンク」「スパークリングワインを飲んでいる感じになる」などと多くの支持を得ているのがこちらの商品。アルコール0.00%はもちろんのこと、カロリーも糖類もゼロ。それでいて本格的なシャルドネスパークリングの風味を味わうことができます。飲んでみると、シャルドネの華やかな香りと、口あたりの良いさっぱりとした酸味で爽やかな飲み口。また、丸搾りシャルドネ果汁を使用しているので程良い果汁感を楽しめます。缶タイプなので、ちょっと息抜きしたいときなどに気軽に飲むのもおすすめです。

【詳細情報】
内容量:350ml

 

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“ナパ・ヴァレー”だけじゃない! ソムリエが解説するアメリカのワイン銘醸地

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズは、フランスから始まりイタリア、ドイツ、そしてオーストラリアと取り上げてきました。今回は、オーストラリアに続くワイン新興生産国であるアメリカ合衆国。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
ワインの世界を旅する 第1回 ―フランスと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第2回―イタリアと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第3回―ドイツと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第4回―オーストラリアと5つの産地―

 

アメリカワインを旅する

アメリカのワインをはじめとして、いわゆる“新世界”と呼ばれる新興生産国のワインが世界中で楽しまれるようになったのは、ここ40~50年ほどのことです。日本でもワインに親しむ人が増えていった時期をふり返っても、それほど時間の差はないように思え、世界中の人とモノがそれまで以上に行き来をするようになっていった時代の流れと合わせて、ワインはそれぞれの生産国の文化として息づいてきたのではないでしょうか。

 

ワインの世界で「アメリカワイン」に注目が集まることになったひとつのきっかけとして、1976年に開催されたパリ・テイスティング(パリスの審判)を無視することはできません。

 

これは、パリでワインショップとワインスクールを営んでいたスティーブン・スパリエの呼びかけで、9人のフランス人テイスターがパリのインターコンチネンタルホテルに集まり、カリフォルニアの白赤6銘柄ずつとブルゴーニュ特級と1級の白4本、ボルドー1級2級の赤4本をブラインドで採点するというアメリカ建国200年を記念して企画されたイベントでした。有名三ツ星レストランのオーナーやシェフ、ソムリエ、格付け委員会や原産地呼称の審査官、グルメやワインメディアの重鎮といったワインのプロフェッショナルが審査するなか、白ワイン赤ワインともにカリフォルニアワインが一位になったのは有名な出来事です。

 

現在でもフランスといえばワイン、ワインといえばフランスというイメージは大きいですが、当時の世界のワイン事情を鑑みるに今以上にそのイメージは強かったと考えられます。なによりフランスで催され、フランス人の審査による結果と思うと、アジアのワインがフランスのトップワインに勝利を収めるようなインパクトだったのではないかと想像しています。

 

そして興味深いのは、タイム誌の記者ジョージ・テイバーがワインスクールの受講者であった縁で、このパリ・テイスティングの取材のために現場に居合わせたことです。彼はこの試飲会の様子を記事にしてタイム誌に掲載し、また連載コラムを持っていたニューヨーク・タイムズでも取り上げました。

 

この際にギリシャ神話をモチーフにして付けたタイトルは「パリスの審判」。その優れたネーミングセンスによって以後、世界中でこの出来事はそう呼ばれるようになったのです。そう思うと、こういった情報が海を越えて瞬時に伝わる時代の始まりでもあったのかもしれません。

 

最高のフランスワインに負けない品質のワインが造り出せる、という自信を手にしたカリフォルニアのワイン産業は、これを機に質、量ともに急速な発展を遂げ、1970年時点では全米で440軒のワイナリーしかなかったのが、2018年時点では約1万3500軒まで増えることになります。このパリスの審判の際に赤ワインで2位だったシャトー・ムートン・ロートシルトと、モンダヴィの合弁としてオーパス・ワンが1979年に造り出されたことも、因果がなかったとは考えられません。

 

現在のアメリカワインを取り巻く環境は世界で最も華やかで不足がありません。ロバート・パーカーの創設した『ワインアドヴォケイト』、世界最多の発行部数を誇る専門誌『ワインスペクテイター』といったメディア、ワインに関する学術研究で世界をリードするUCデイヴィス校、そして何より資本と意欲ある人々の流入。スペイン、フランス、イタリアに次いで世界第4位のワイン生産国となったアメリカのワインが、これからどういった立ち位置を示していくのかは、ワインに関わる人にとっても、一般消費者にとってもとても興味深いトピックスなのです。

[目次]
1. カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
2. カリフォルニア州ソノマ・カウンティ
3. カリフォルニア州サンタ・バーバラ
4. オレゴン州ウィラメット・ヴァレー
5. ワシントン州

 

1. カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
− ディズニーランドに次ぐカリフォルニア第2の観光地 −

ナパの街から北へ向かってセント・ヘレナを経由し、カリストガへ向かう国道29号線は、南北50kmに渡り、両側に有名ワイナリーが軒を連ねるワイン街道です。年間500万人もの観光客は、この国道29号線とワイントレインでナパ・ヴァレーを往来し、“世界最高”といわれるこの産地のワインツーリズムを満喫します。

 

現在ナパ・ヴァレーには、400余りのワイナリーが運営されていますが、ヨーロッパの銘醸地を除くと抜きんでた地価の高さ、ブランディングされた少量生産のワインには高額な値がつくこの産地にワイナリーを所有することは、特別なステイタスでもあるため、異業種で財を成した実業家の新規参入は後を絶たず、ワイナリーは増え続けています。

 

シャンパーニュやブルゴーニュ、ボルドーと比較しても、これほどハイブランドが数多くある産地は珍しく、ナパ・ヴァレーはアメリカのみならず世界のワイン産地のなかでも特別な存在になっています。主役であるカベルネ・ソーヴィニヨンは収穫期に雨が降らないこともあり、生産者の思う完熟度を反映して、色濃く滑らかで芳醇なワインに仕上がり、その安定感とキャラクターは“ナパ・ワイン”としての唯一無二といってよいほどの個性を獲得してます。

 

アメリカの原産地呼称にあたる“AVA”(American Viticultural Areas=政府認定栽培地域)では、ほぼ全体を包括するナパ・ヴァレーAVAの他に、その多様な土壌構成(世界の土壌目の半数を占める)と気候によって16の“サブA.V.A”が区分けされており、「AVAロス・カーネロス」や「AVAワイルド・ホース・ヴァレー」のようにブルゴーニュ品種が中心の地域もありますが、基本的にすべての産地で、カベルネ・ソーヴィニヨンは植えられています。1976年のパリスの審判で白ワインの一位「シャトー・モンテレーナ」はAVAカリストガ、赤ワインの一位「スタッグス・リープ」はAVAスタッグス・リープ・ディストリクトに拠点を構えています。ロバート・モンダヴィのAVAオークヴィルには多くのハイブランドが軒を構えるなど、ナパ・ヴァレー全てのAVAに有名ブランドが散らばるさまは、満点の星空を思わせるほどです。

 

ナパ・ヴァレーを特別にしているのは、その多様な土壌とブドウ栽培に適した気候、高地でのカベルネの成功、ブランディングと枚挙にいとまがありませんが、もっとも核となっているのは、そのひとつひとつのきら星のようなワイナリーなのではないかと思います。恵まれた栽培環境と生産者の意欲と志の集合体が、ナパ・ヴァレーという、フランスワインにも比肩しようという一大産地を造り上げている様に思えるのです。

 

Hendry(ヘンドリー)
「Cabernet Sauvignon2015(カベルネ・ソーヴィニヨン2015)」
1万500円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

2. カリフォルニア州ソノマ・カウンティ
− カリフォルニアの高級ワインはソノマから始まった −

1848年に始まったカリフォルニアのゴールドラッシュは、当時人口200人ほどの開拓地だったサンフランシスコに、数万人の人々を集めたといいます。そのなかの一人だったハンガリーからの移民、アゴストン・ハラジィが、約300品種ものヨーロッパ系ブドウを持ち込んだことから、カリフォルニアワインの歴史が始まりました。彼が1857年に設立したカリフォルニア初めての商業ワイナリー「ブエナビスタ」は、所有者こそ変わりましたが、今もソノマの街東部の渓谷に残っています。

 

マヤカサス山脈を挟んで東に隣り合わせるナパ・ヴァレーと並んで、カリフォルニアを代表する銘醸地であるソノマには、素晴らしいブルゴーニュ品種を産み出すトップワイナリーがひしめき合っています。「マーカッシン」やAVAロシアン・リヴァー・ヴァレーの「Jロキオリ」「キスラー」といった北部のピノ・ノワールは、愛好家にとってブルゴーニュの銘醸ワインと同じか、時としてそれ以上に心を揺り動かされるワインであり、AVAロス・カーネロスのシャルドネは、生産者の個性を表現した芳醇で欠点のない味わいを醸し出しています。そういったソノマの珠玉のワインのそれぞれは、ハイブランドというよりも希少なローカルワインといった雰囲気で、メーリングリストに登録した顧客を中心に流通しています。

 

ただ、そういった高級ピノ・ノワールとシャルドネだけが、ソノマのワインではありません。土壌型はソノマだけで30を超え、フランス全土を上回る土壌多様性を持っているため、ブドウ品種のバラエティ豊かな産地でもあるのです。

 

カリフォルニア独自のブドウとして栽培されている「ジンファンデル」は、イタリアの「プリミティーヴォ」、クロアチアの古代品種「ツールイェナック・カステランスキー」と遺伝子的には同一であり、クロアチア由来でアメリカに渡ったといわれています。この品種がカリフォルニアにもたらされたのも、やはりゴールドラッシュの時代でした。そして独自の名前、歴史、スタイルを持ったアメリカの伝統的なブドウ品種として、現在でも盛んに栽培されています。

 

写真のオールド・ヒル・ランチは、ソノマでももっとも古い畑のひとつで、ジンファンデルを中心にさまざまな品種のフィールド・ブレンド(畑に複数品種の混植)のワインです。カリフォルニアワインのルーツ、オリジナルはソノマ・カウンティに今も残っており、中心都市のひとつ美食の街として知られるヒールスバーグに軒を連ねるレストランのワインリストには、多様なソノマワインがオンリストされています。

 

Bucklin(バックリン)
「Old Hill Ranch Field Blend2018(オールド・ヒル・ランチ・フィールド・ブレンド2018)」
オープン価格
輸入元=布袋ワインズ

 

3. カリフォルニア州サンタ・バーバラ
− カリフォルニアで最も冷涼なワイン産地 −

ロサンゼルスから車で2時間ほどの距離にあるサンタ・バーバラは、スペイン風の街並みと美しい海岸風景が人気のリゾート地です。ワイン産地としてはナパ・ヴァレーやソノマほど一般的に知られていなかったかもしれませんが、日本で2005年に公開されたワインを題材にしたロード・ムービー『サイドウェイ』は、サンタ・バーバラを舞台にしていました。

 

ピノ・ノワール好きの主人公が、親友の結婚前に独身最後の旅としてサンタ・バーバラのワイナリーやレストランを巡る物語の中では、地域のピノ・ノワールの数々がスクリーンに登場し、『ミリオンダラー・ベイビー』を抑えてアカデミー脚色賞を獲得したことからも大ヒット、サンタ・バーバラがピノ・ノワールの銘醸地として広く知られるようになることにひと役買った作品です。ちなみに、日本でも小日向文代さん、生瀬勝久さん主演でリメイクされましたが、こちらはナパ・ヴァレーを舞台にしています。

 

ピノ・ノワールは早熟品種なため、温暖な気候だと早く熟してしまい、本来持っている魅惑的な風味を育むことができませんが、カリフォルニアでもっとも涼しいサンタ・バーバラでは、ピノ・ノワールの生育に適した気候的な優位性をふたつ挙げることができます。

 

ひとつは沿岸部に山がないため海からの冷たい風を直接受け、夜間には霧が畑を覆うことで生育期にはブルゴーニュと変わらない平均気温であることから、ブドウの成熟をゆっくりと進めることができます。もうひとつは、ブルゴーニュやソノマに比較して収穫期の降水量が少なく、急いでブドウを摘む必要性がありません。結果として、非常に長い生育期間のなかで、サンタ・バーバラのピノ・ノワールはブルゴーニュのような酸味、ソノマのような果実味を併せ持った一種独特な芳香のあるワインを産み出します。

 

この記事を読んでいるワイン好きの方で、映画『サイドウェイ』をまだご覧になっていないようでしたら、ぜひ一度鑑賞していただきたいと思います。その際には、ワインショップでサンタ・バーバラのピノ・ノワールをご用意することも忘れずに。

 

Domaine de la Cote(ドメーヌ・ド・ラ・コート)
「Pinot Noir Bloom’s Field2018(ピノ・ノワール・ブルームス・フィールド2018)」
1万2000円
輸入元=中川ワイン

 

4. オレゴン州ウィラメット・ヴァレー
− 一人の情熱がオレゴンを銘醸地に 

映画『スタンド・バイ・ミー』の舞台はオレゴン、架空の町キャッスル・ロックはウィラメット・ヴァレーの南ブラウンズビルで撮影されました。作品で描かれている1950年代は、オレゴンのワイン生産は微々たるもので、おそらくワイナリーそのものは数軒ほど、ヴィティス・ヴィニフェラを栽培している農家は2軒しかなかったということです。海岸山脈と東側に位置するカスケード山脈に囲まれたウィラメット・ヴァレーは、カリフォルニアに比べずっと涼しく雲の多い産地で、ブドウ栽培には不向きだと考えられていました。

 

そんなオレゴンが銘醸地としての歴史を始めるのは、1960年代のこと。ピノ・ノワールを手掛けたいという夢を抱いたデイヴィット・レットは「冷涼な気候で、日当たりのよい丘陵地」というブルゴーニュに似た環境をウィラメット・ヴァレー、ダンディー・ヒルズの南向き斜面に見出しました。1966年に始まったデイヴィット・レットの挑戦では、1979年に仏ゴ・エ・ミヨ誌の主催するブラインド・テイスティング・コンテスト「ワインオリンピック」でジ・アイリー・ヴィンヤーズのサウスブロック・リザーブ・ピノノワール1975が入賞することで、早くもオレゴンのピノ・ノワールの存在が知れ渡ることになりました。ウィラメット・ヴァレーにピノ・ノワールが植えられてからわずか13年で、ブルゴーニュと肩を並べるワインを造り上げてしまったのです。現在では800近くまでワイナリーは増え、栽培面積の60%にピノ・ノワールが植えられています。

 

オレゴンのピノ・ノワールもぜひお試しいただきたいのですが、今回ご紹介するのはオレゴンの代表的白ワインのピノ・グリです。オレゴンでは当初、カリフォルニアで主流であったクローンが多く植えられていましたが、晩熟で生育期間が長いという特徴が適さず、ピノ・ノワールの亜種であるピノ・グリが主役の座を射止めました。芳醇なアルザスなどのピノ・グリに比べ、香りとボディのある辛口に仕上げられるオレゴンの白ワインは、日本でももっと親しまれていいワインだと考えています。

 

The Eyrie Vineyards(ジ・アイリー・ヴィンヤーズ)
「Pinot Gris2018(ピノ・グリ2018)」
4000円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

5. ワシントン州
− コストパフォーマンス抜群、ワシントンワインの未来は明るい 

アメリカ西海岸の最北に位置するワシントン州は、カリフォルニアに次いでアメリカで2番目にワイン生産量の多い州です。それでも、カリフォルニアに比較すると10分の1ほどの生産量でもあり、知名度も日本人にとって広く知られているとはいえず、いかにカリフォルニアワインが質、量ともにアメリカワインの中心地であるかがうかがえます。ワシントンの中心都市であるシアトルは、野球チームやスターバックスと日本でも馴染みのある街なのに、ワインが知られていないのは残念でなりません。

 

ただ、ワシントンのワイン産業のめざましい発展ぶりは近年のことで、ここ20年ほどでワイナリーは10倍ほども増え、1000軒を超えるほどだといいます。大きくはカリフォルニアに比べ地価が安いこと、ブドウ栽培農家からのブドウの購入がオレゴンに比べ盛んなため、畑を持たず醸造設備だけのワイナリー開業もできると、新規参入のハードルが低いのです。

 

主だったブドウ畑はオレゴンとの州境から内陸に広がっており、シアトルからはだいぶ距離がありますが、シアトル都市部から車で30分ほどの距離にあるワイン村ウッディンヒルには、小規模ワイナリーが200軒ほども集まっていることからもわかるように、栽培と醸造の分業が他の産地よりも一般的になされ、造られるワインも複数の農家の生産するブドウを混合することも多く、ワイナリーの立地とブドウ畑は直接結びついていません。

 

ラベル表示も広範囲を網羅するAVAコロンビア・ヴァレーやより柔軟な「ワシントン」といった表記も多い一方、徐々に自家栽培や単一畑表示のワインも増えてきています。

 

赤ワインではボルドー品種に加え、広く栽培されてきているのがシラー。フルーティーでみずみずしい完熟感を楽しめるワインが、リーズナブルな価格帯から高級レンジまで幅広く造られ、ローヌともオーストラリアともまた違った個性を持っています。個人的にもっとも期待しているのは、リースリングをはじめとしたゲヴュルツトラミネールやピノ・グリといった芳香のあるアルザス品種です。

 

今現在でも、驚くほどのお値打ちワインに出会えますが、今後ブドウ樹が古くなり、新しい生産者もヴィンテージを重ねることでより素晴らしいワインを産み出すであろう未来がたやすく想像できるワイン産地が、ワシントンです。アメリカワインに馴染みのない方でも機会がありましたら、ワシントンのリースリングをお試しください。

 

Dunham Cellars(ダンハム・セラーズ)
「Riesling Lewis Estate Vinyard2015(リースリング・ルイス・エステート・ヴィンヤード2015)」
3150円
輸入元=オルカ・インターナショナル

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

知っておきたいワインの蘊蓄。ソムリエが解説する「オーストラリアワイン」の5産地にまつわる話

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズのフランス、イタリア、ドイツに続く今回は、ワインの“新世界”オーストラリア。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
ワインの世界を旅する 第1回 ―フランスと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第2回―イタリアと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第3回―ドイツと5つの産地―

 

オーストラリアワインを旅する

オーストラリアにおけるワインの歴史を紐解くと、入植初期の二人のイギリス人の名前が挙がります。

 

一人目は、イギリスから8か月の航海の末、1788年初頭にシドニー湾にたどり着いたアーサー・フィリップ。ニューサウスウェールズ最初の統治者となる彼が、湾内のファーム・コーブに記念碑的に植えたブドウが、オーストラリア最初のブドウ樹でした。それまで、オーストラリアにはブドウは自生しておらず、一説には南アフリカのケープタウンで積み込んだ挿し木を植樹したと伝えられているため、ボルドー系品種だったのではないかと、私は想像しています。

 

ただ、シドニーは降水量が多くワイン生産に不向きだったため、徐々にブドウ畑は内陸に移り、フィリップ総督の帰国後、1795年にオーストラリアで初めてワインが生産されました。それから、ワイン生産が本格化するまでには、1820年代にイギリスからオーストラリアに渡った“オーストラリアワインの父”ジェームズ・バズビーの登場を待たなければなりません。ハンター・ヴァレーを初めてのワイン産地として確立し、1830年代には650品種をオーストラリア行きの船に積み込み、そのうちの362品種が長旅に耐え現地に持ち込まれたといわれています。

 

その後、ヨーロッパから栽培、醸造の経験のある入植者によって、広大なオーストラリア大陸のブドウ栽培に適した南側沿岸部に、ワイン産地が広がっていきます。東のシドニーから西のパースまでの距離は、モスクワからロンドンまでの距離よりも長いと聞けば、その広大さを理解いただけるかもしれませんね。

 

オーストラリアワインの200年ほどに及ぶ歴史のなかで、20世紀半ばまでは、輸出用の酒精強化ワイン(ポートワインなど)が主流でした。国内の一般消費者にとっても、ワインはそれほど身近ではなかったと聞くと意外に思えますが、日本でもほんの50年ほど前まで“ワインを飲む”という人が少数派だったことを考えると、腑に落ちる気がします。

 

現在では、その広大な土地の多様な気候風土から幅広い高品質ワインが造られ、ワインツーリズムやワインイベントも盛んな環境も、洗練され近代化されたのは、ほんのつい最近のことなのです。

 

[目次]
1. 南オーストラリア州バロッサ・ヴァレー
2. 南オーストラリア州クナワラ
3. 南オーストラリア州クレア・ヴァレー
4. ヴィクトリア州ヤラ・ヴァレー
5. 西オーストラリア州マーガレット・リヴァー

 

1. 南オーストラリア州バロッサ・ヴァレー 〜オーストラリアのナパ・ヴァレー〜

 

アデレードを州都とする南オーストラリア州は、オーストラリア全体のワイン生産の48%を占め、アメリカにとってのカリフォルニアのような“ワイン州”。そのなかでも、バロッサ・ヴァレーは、まるでカリフォルニアにおけるナパ・ヴァレーのような中心的な存在です。

 

それぞれの国で、早くから産地としての評価を高めたこともあり、セラードアでのテイスティングや、現地のワインを楽しめる数々のレストランと併せて、観光客はワインツーリズムを楽しめるという点でも、このふたつの産地には似たところがあります。ただ、カリフォルニアワインと比べた時に、バロッサ・ヴァレーの銘醸ワインとしてのイメージは、日本人にとって見劣りするように私は思っています。

 

実際は、素晴らしい品質のワインを産み出し、大きな可能性をもった産地なのですが、オーストラリアワインの魅力を伝えるレストランやワインショップは日本ではまだまだ数少なく、もったいないと個人的には感じています。2019年の輸入量では、アメリカに次いで6位3.5%ですが、アメリカワインの方が金額ベースでは高価格が多い傾向にあります。

 

ノース・パラ川沿い30kmに渡って広がるブドウ産地、バロッサ・ヴァレーと、東隣のイーデン・ヴァレー(やや標高が高く、バロッサ・ヴァレーが拡張した産地)は兄弟のような産地で、「バロッサ・ゾーン」というふたつの地域を包括する呼称として「バロッサ」が用いられており、エチケットに「バロッサ・シラーズ」と表記されているワインはおおむね、この2地域のブドウをブレンドして造られています。

 

これまで、バロッサ・ヴァレーのシラーズは凝縮度の高いチョコレートのような濃密さとスパイシーさ、アルコール感も含め、主張の多い個性的なスタイルで知られてきましたが、「バロッサ・グラウンズ・プロジェクト」(バロッサ区域の土壌の差異を分析する試み)により、小区画ごとの個性が徐々に明らかになってきており、また意欲ある小規模生産者の手によって、よりエレガントなスタイルでのテロワール表現に挑戦したワインが、続々と産み出されています。

 

これから、そういった区画ごとのラベル表記がされ、それぞれの区画の味わいのスタイルが知られていったなら、シラーズを中心としたバロッサのワインは、より広がりのある世界観を感じさせてくれるのではないでしょうか?

 

元々、ジェームズ・バズビーがエルミタージュから持ち込んだブドウ樹が、オーストラリアのシラーズの始祖にあたるといわれているのですが、19世紀当時、シラー(Syrah)はシラース(Scyras)とも呼ばれていたそうで、シラーの名称の起源のひとつであるペルシアの都市シラーズ(Shiraz)に由来。19世紀に持ち込まれたシラーは、当初からイギリス人入植者の間でシラーズと呼ばれ、200年に渡って、ローヌ地方よりも温暖で乾燥したバロッサに適応したブドウ品種になっていきました。

 

エレガントなテロワール表現は、世界中で同時進行するトレンドでもあり、シラーズ(=シラー)の魅力をより広げる可能性がバロッサにはあると思うのです。写真はイーデン・ヴァレーのシラーズも使用した広域バロッサのワイン、入門編的なワインとして紹介させていただきます。

 

Elderton(エルダトン)
「Barossa Shiraz2017(バロッサ・シラーズ2017)」
3500円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

次のページでは、オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンを象徴する産地、南オーストラリア州クナワラについて。

2. 南オーストラリア州クナワラ 〜オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンを象徴〜

 

カベルネ・ソーヴィニヨンは、赤ワインの代名詞的なブドウ品種で、現在世界中で栽培されています。色調が濃く、カシスやベリーといった果実の味わい豊かで、渋みのあるフルボディ・スタイルのワインを産みますが、本当の意味で適した産地というのは、実はそれほど多くはありません。

 

アデレードの南400km、ヴィクトリア州との境に位置するペノーラ村の北に広がるクナワラは、ワインに興味のない人にとっては、足を踏み入れる可能性の低い辺境の土地なのかもしれませんが、この土地を特別なものにしているのは、ほかならぬカベルネ・ソーヴィニヨンでしょう。「テラ・ロッサ」と呼ばれる赤土の表土の下には石灰岩、その下には良質な地下水を湛える土壌で、晩熟で水はけのよい土地を好むカベルネ・ソーヴィニヨンにとって、世界でも数少ない好適地として、素晴らしいワインを産み出しています。

 

元は主にシラーズが植えられており、20世紀前半には「ヴァイン・プル・スキーム」(政府主導のブドウの抜根政策)の対象にもなりかけましたが、1960年代以降、カベルネ・ソーヴィニヨンにスポットライトが当たり、一躍銘醸地となりました。

 

現在では、9割以上赤ワインが造られ、栽培品種の6割以上はカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。ブドウ畑は、リドック・ハイウェイ(1890年頃初めてブドウを植えたスコットランド人、ジョン・リドックの名前を残しています)沿いの20kmほどに、約90のブドウ栽培農家、ワイナリーやセラードアは20数軒と、それほど大きな産地ではありません。また、温暖なイメージがありますが、生育期の平均気温ではボルドーよりも1℃ほど冷涼でもあります。

 

クナワラというと、ワインに親しんでいないとなかなか耳にする機会は少ないかもしれませんが、ことカベルネ・ソーヴィニヨンという品種のワインが好きであれば、ぜひ一度手に取って味わっていただきたい産地です。

 

Bowen Estate(ボーエン・エステート)
「Coonawarra Cabernet Sauvignon2018(クナワラ・カベルネ・ソーヴィニヨン2018)」
4000円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

次のページで取り上げる3つめの産地は、南オーストラリア州クレア・ヴァレーです。

3. 南オーストラリア州クレア・ヴァレー 〜オーストラリア最高のリースリング〜

 

バロッサの北に位置するクレア・ヴァレーは、アイルランド人エドワード・グリーンソンによって、1846年に名付けられました。オーストラリアは多くの地域で、開拓者としてイギリス系の人物の名前が残りますが、アデレード近郊はドイツ、ポーランド系の移民が多かった地域でもあり、バロッサのイーデン・ヴァレーとクレア・ヴァレーでは、ドイツ系品種とされるリースリングが、主要品種のひとつとして当時から今に至るまで栽培されています。

 

また、バロッサ・ヴァレーをはじめとして、オーストラリアの各産地では大手資本のワイナリーが土地土地の主要生産者としてワイン産業を牽引していますが、クレア・ヴァレーでは小規模な生産者が多く、品質の追求という点でも、信頼のできる産地です。今ではニュージーランドを中心に世界的に普及したスクリューキャップを、2000年頃から本格的に採用したのもこの産地であり、そういった意味でも先駆者的な存在です。

 

イーデン・ヴァレーに比べ、クレア・ヴァレーのリースリングは“ライムのよう”と形容される、鮮烈な酸と、にじむような奥行きのある味わいが特徴的で、その硬質で繊細ともいえる個性をコルク・ダメージから守るためにいち早く決断したことは、その後のワインの世界に大きな影響を与えました。

 

一度、2000年ヴィンテージの「ポーリッシュヒル・リースリング」を、コルクとスクリューキャップで7年ほど熟成したものを比較試飲する機会があったのですが、そのフレッシュさが失われることなく、ほのかに果実味が熟成している味わいからは、クロージャーを通じて生産者の思いを感じるようで、特別なワイン体験でした。

 

リースリングが好みなら、ドイツ、アルザスだけではなくクレア・ヴァレーのリースリングも一度お試しいただきたいと思います。

 

Grosset(グロセット)
「Polish Hill Riesling2016(ポーリッシュヒル・リースリング2016)」
6500円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

4つめの産地は、ヴィクトリア州ヤラ・ヴァレー。

4. ヴィクトリア州ヤラ・ヴァレー 〜ゴールドラッシュとフィロキセラとブルゴーニュ品種〜

 

19世紀、オーストラリアのワイン生産の中心は、メルボルンを州都とするヴィクトリア州でした。写真の「イエリング・ステーション」は、メルボルンの北東(車で1時間ほどの距離)に位置するヤラ・ヴァレー最古のワイナリーで、その歴史は1838年にまでさかのぼることができます。

 

現在ヤラ・ヴァレーは、ピノ・ノワールとシャルドネで成功を収める産地となっていますが、その道のりは平坦なものではありませんでした。1850年代にイエリング・ステーションを引き継いだスイス人、ポール・ド・カステーラは、シャトー・ラフィットの穂木(ほぎ)を2万本ほど植え、1889年のパリ万国博覧会では“南半球のワイン”として唯一のグランプリを獲得。現在でも、素晴らしいボルドー・スタイルはあるのですが、19世紀の主流はカベルネ・ソーヴィニヨンだったのですね。

 

19世紀半ばのゴールドラッシュでは多くの移民を受け入れた結果、人口の激増と現在につながる多様な文化の礎を形成し、質量ともに、ヴィクトリア州はワイン産業の隆盛の時代を過ごした時期の出来事でした。ところが1870年代に、メルボルンの対岸ジーロングを始まりとしたフィロキセラ(害虫)禍によって壊滅的な被害を受け、生産者の帰国やブドウ畑の牧場への転用といったワイン産業の逆風のなかで、ヤラ・ヴァレーのブドウ畑は1920年代までに多くが失われてしまいました。

 

この地域のワイン生産が復活を遂げるのは1960年代以降のこと。当初は、以前と同じように高品質なボルドー・ブレンドが主流でしたが、1980年代には挑戦的な造り手によって、それまでにはない高品質なピノ・ノワールが、オーストラリアワインの地図に描き出されます。イエリング・ステーションは、この産地の盛衰を表すかのように幾度となくオーナーが変わり、現在のオーナーが購入したのは1996年のことです。

 

現在、世界で一番住みやすい都市のひとつとして名前の挙がるメルボルンは、多様な価値観を許容し、さまざまな困難を乗り越えてきた歴史があります。それは、オーストラリアワインの長くはない歴史のなかでの幾多の困難とも重なり合うように思えるのです。メルボルンからのワインツーリズムといえば、ヤラ・ヴァレーが真っ先に候補に挙がる銘醸地ですが、そう思って手に取ると、ヤラ・ヴァレーのワインにはこれからも変化し続けるという気骨やバイタリティを感じるのは、私だけでしょうか?

 

21世紀になってからも、再度のフィロキセラ禍、地球温暖化と、この地域の試練は枚挙にいとまがありませんが、より冷涼な畑での新しいスタイルのワインなど、これからの可能性にも満ちた魅力的なワイン産地です。

 

Yering Station(イエリング・ステーション)
「Village Pinot Noir2015(ヴィラージュ・ピノ・ノワール2015)」
3200円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

最後に紹介する産地は、プレミアムワインを産む美しいワイン観光地、西オーストラリア州マーガレット・リヴァーです。

5. 西オーストラリア州マーガレット・リヴァー 〜プレミアムワインを産む美しいワイン観光地〜

 

広すぎるオーストラリアの大部分は、ブドウにとっては暑すぎるか乾燥しすぎていて、主要なワイン産地はシドニー(ニューサウスウェールズ州)、メルボルン(ヴィクトリア州)、アデレード(南オーストラリア州)の周囲、南東の海岸沿いとタスマニアに限定されています。

 

西オーストラリア州は、そういった中心的な産地から1000km以上離れ、“陸の孤島”といった趣の産地。生産量はオーストラリア全体の5%ほどと、わずかですが、今回紹介するマーガレット・リヴァーを中心に、ことプレミアムワインに限ると、オーストラリアワインを楽しむうえで外せない重要な産地です。

 

州都パースからも300kmほど離れており、自然の恵みをふんだんに受けるオーストラリアのなかでも、マーガレット・リヴァーほど緑にあふれ、森林に囲まれた美しい景観はそう多くはないと、誰もが口を揃えます。そして、その素晴らしい自然環境のなかで産まれるワインも、オーストラリアのなかでも特に、エレガントでオリジナリティを表現した秀逸なものばかりです。

 

そして特筆すべきは、このワイン産地の歴史は50年そこそこと、日が浅いことではないでしょうか。1970年頃に初めてヴァス・フェリックスがワインを造り、モス・ウッド、カレン、そして写真のルーウィン・エステートといった、今も残る有力生産者が後に続きます。写真のルーウィン・エステートは、そのアートシリーズ・シャルドネが、リリースからほどなくイギリスの評価誌で最高賞を受賞し、ワインの品質を牽引するとともに、エチケットに採用された国内新鋭画家の作品を展示したアート・ギャラリーや、野外ステージで開催されるルーウィン・コンサートなど、文化芸術とワインを融合した企画で、このワイン産地を盛り立てています。オーストラリアの長くないワインの歴史のなかでも特に日が浅いマーガレット・リヴァーは、その雄大な自然と共に高品質のワインと独自のワインツーリズムを提供し、成功を収めています。

 

Leeuwin Estate(ルーウィン・エステート)
「Art Series Chardonnay2015(アートシリーズ・シャルドネ2015)」
1万500円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

ワインを楽しむということは、味わうだけではなく体験するということ、ともに時間を過ごすことだと、マーガレット・リヴァーのワインは伝えていますが、オーストラリアワインの魅力とはそもそも、そういったところにあるように思えるのです。

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

知っておきたいワインの蘊蓄。ソムリエが解説する「ドイツワイン」の5産地にまつわる話

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地についてキーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていく、このシリーズの「フランス」「イタリア」に続く今回は、「ドイツ」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】
ワインの世界を旅する 第1回 ―フランスと5つの産地―
ワインの世界を旅する 第2回―イタリアと5つの産地―

 

ドイツワインを旅する

ドイツワインには、とかく“甘い”というイメージがつきまとっているようです。それは長い歴史のなかでは、20世紀後半のほんの短い時期に多く出回った「リープフラウミルヒ」などの量産ワインによる影響が大きいように思います。“ヨーロッパのワイン大国”といった印象もありますが、生産量でいえばフランス、イタリアの5分の1ほど。そして、そのただ甘いだけのワインのためか、日本のワインショップでは取り扱いも少なく、見かける機会も限られるワイン産地なのかもしれません。

 

ですが、現代、つまり21世紀のドイツワインは明らかに変化し、より良質なワインを多く産出しています。ただ甘いだけのワインが減少傾向なのはもちろん、辛口の比率は増え、他国のワインには見られない個性も見られるようになっています。そして赤ワインは、世界中の産地と比較しても引けを取らない出来栄えです。これを一部の好事家(こうずか)だけのものにしていていいのでしょうか? 愛好家にもワイン初心者にも、間口を広く、奥行きを持って親しめるワイン産地が、21世紀以降の現代ドイツワインなのです。

 

ドイツにおけるワインの歴史は、紀元前、古代ローマ時代にさかのぼると言われ、古代ローマ人が入植した際には、ライン川やモーゼル川にはリースリングの祖先である「ヴィティス・ヴィニフェラ」の野生種「ヴィティス・シルヴェストリス」が自生していたと言われています。リースリングは、ドイツにおける重要なブドウ品種で、現在でも全体の4分の1を占めており、世界中のリースリングはドイツをひとつの規範としています。リースリングに限らずドイツワインの7割ほどは辛口(トロッケン、ハルプトロッケン、ファインヘルプ)(※)に造り上げられていますが、最高級品に位置する極甘口の「トロッケンベーレンアウスレーゼ」もまた、前述のただ甘いワインとは一線を画す、ドイツワインの真骨頂といえる偉大なワインです。

※ドイツでの辛口の呼称
・Trocken(トロッケン)=辛口
・Feinherb(ファインヘルプ)=中辛口より辛口
・Halbtrocken(ハルプトロッケン)=中辛口

 

[目次]
・ラインガウ
モーゼル
フランケン
バーデン
ファルツ

 

ラインガウ 〜父なるラインが東西に流れる銘醸地〜

フランクフルト空港から、電車で約1時間の距離にあるリューデスハイムを中心としたラインガウは、ワインの街。リースリングが生まれた土地であり、ブルゴーニュの「クロ・ド・ヴージョ」のようにシトー派修道僧が植樹したといわれる歴史ある数々の銘醸畑が集まっています。街の南側を流れるライン川は、ヨーロッパの南北を縦断する大動脈であり、急勾配のブドウ畑や自然に囲まれた古城を眺めるクルーズ船が運航されています。その距離、リューデスハイムの対岸マインツからケルンまでおよそ180kmに及び、さまざまなコースが用意され、観光に訪れた際には外せない楽しみのひとつです。

 

ライン川は、基本的には南北を縦断する河川ですが、リューデスハイムからヴィースバーデンまでの約20kmに渡って東西を流れるかっこうになり、そのため、南側斜面の畑への照り返しが、晩熟のリースリングを完熟させるのに大きな役割を担っています。また、もっとも希少なワイン「トロッケンベーレンアウスレーゼ」は、天候に恵まれた年に川から立ち上る霧によってもたらされる貴腐菌によって生み出されます。ラインガウもまた、21世紀になってからより多くの生産者がその恵まれた栽培環境を活かして、今まで以上の高品質なワインが造られるようになった産地です。とくに生産量の大半を占める辛口のリースリングは、フレッシュで冷涼感のある果実、鮮烈と表現される酸、細く強いストラクチャーを持った良質なワインばかりになりました。

 

下写真の「ソヴァージュ=野生」と名付けられたリースリングは、言ってみれば広域ラインガウのワインですが、その味わいの水準の高さは他の銘醸地と比較しても目を見張るほどで、この地域の優れたテロワールを証明しています。ライン川に自生していたといわれる野生ブドウの末裔と思うと、ワインにいっそう奥行きを感じ、楽しめるかもしれません。

 

Georg Breuer(ゲオルグ・ブロイヤー)
「“Sauvage”Riesling2018(ソヴァージュ・リースリング2018)」
2900
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

次のページで取り上げるのは、川の両岸にブドウ畑が広がる、景観の美しいモーゼルです。

モーゼル 〜ベルンカステル・クースから望む雄大な景観〜

フランスのヴォージュ山脈を源にするモーゼル川。古都コブレンツでライン川につながるまでの長い距離(蛇行しながら240kmにも及びます)の両岸急斜面に、ブドウが植えられています。モーゼルでは、素晴らしいワインのほぼすべてがリースリングから造られており、ふたつの支流、ルーヴァー川流域はドイツ最古といわれ、もう一方のザール川流域では、ドイツ最高のワインと誉れ高い「シャルツホフベルガー」が生み出されます。また、モーゼル川の中流域にある街、ベルンカステル・クースは川を挟んだふたつの街並みが一体となって、モーゼルのワイン醸造の中心としての役割を担っています。

 

モーゼル川流域ではおおむね南向き、南西向きの斜面にブドウ畑が広がっているのですが、大きく蛇行する河川は街から8kmに渡って北西に延び、夏に訪れると、川面に南西向きの壮大なブドウ樹の緑が映し出される素晴らしい景観が、見渡す限り続きます。モーゼル川は、その長い流域の多様な個性から“ブルゴーニュのコート・ドール”と比較されることもありますが、訪れるタイミングに恵まれた人にとって、景観の美しさという点では、モーゼルに軍配が上がるのではないでしょうか。

 

モーゼルワインをひと口に表現するのは難しいのですが、下写真のような辛口トロッケン(残糖9g)のほか、爽やかと表現していいフルーティーな「カビネット」や「シュペトレーゼ」といった中辛口、中甘口のワインの質の高さにあると思います。これらのワインは、かつての量産ワインとは一線を画す味わいで、多様なテロワールから繊細な甘みと柑橘のような酸味の奥には火打石のようなニュアンスやスパイスやハーブのニュアンスと、なにしろ一本筋の通った地域ごとの個性を感じ取ることができるのです。モーゼルのワインは、ちょっと玄人向けのイメージもあるのですが、比較的アルコール度数の低いワインも多く、むしろワイン初心者のほうが、素直にその良さを感じ取ることのできるワインだと思うのは私だけでしょうか。

 

Dr. Loosen(ドクター・ローゼン)
「Riesling Trcoken2018(リースリング・トロッケン2018)」
2600
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

次のページで取り上げるのは、瓶の形でも個性を表現したワインの産地、フランケンです。

フランケン 〜ボックスボイテルは高品質の証?〜

下写真のワインのような、ずんぐりと丸いボトルをご覧になったことがあるでしょうか? フランケンの「QbA」(指定栽培地域上質ワイン)という格付けのワインだけが詰めることのできる瓶で、「ボックスボイテル」(山羊のふぐり袋)と呼ばれています。

 

元々は、18世紀に品質の劣悪なワインと区別するため、フランケンワインの品質証明として瓶詰めされるようになって以降現代に至るまで残る、伝統的なボトルデザインです。ドイツワインと言うと、細長いボトルに瓶詰めされることが多いのですが、フランケンワインは味わいにおいても、ほかのドイツのワイン産地とは少し毛色が違っています。主役のブドウ品種はリースリングではなく「ジルヴァーナー」、かねてから産地全体として極辛口に仕上げるワインが主流という点で、ほかの多くのドイツワインとは、見た目だけではなく味わいでも、異なったキャラクターを表現しています。

 

ドイツの文豪・ゲーテは、妻への手紙の中で、「何本かのヴュルツブルガーを送ってくれ。此処のワインは私にとっては美味しくなく、困っている」と綴ったと伝えられています。ここでいう“ヴュルツブルガー”とは、フランケンのワイン生産の中心都市、ヴュルツブルグ産のワインという意味で、このことからも18世紀初頭からフランケンワインは、ドイツワインの中でも独自の個性を持っていたことがうかがえます。

 

一部の希少な甘口も造られており、伝え聞くところでは驚くほど長命なワイン(300年を超える熟成に耐える)のエピソードもあるのですが、現在では極辛口が主流です。リースリングに比べ酸が穏やかである点、柑橘から南国フルーツのような繊細ながら豊かな果実の柔らかさ、そして芯のあるミネラリティがフランケンのジルヴァーナーの特徴となり、好む人にとってはハズレのない、信頼できるワイン産地なのです。残念ながら日本では、ドイツの白ワインは一部の愛好家のためのような雰囲気もあるため、ワインショップでボックスボイテルに巡り会うことは少ないかもしれません。でももし出会えたなら、フランケン産であることを確認してレジに持って行くことをすすめます。他国のワインで似たボトル形状の量産ワインがあることだけご注意ください。

 

Störrlein Krenig(シュテアライン・クレニッヒ)
「Randersacker Sonnenstuhl Silvaner2018(ランダースアッカー・ゾンネンシュトゥール・ジルヴァーナー2018)」
3300
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

次のページで取り上げるのは、ドイツの赤ワイン産地として先駆者的な役割を担う、バーデンです。

バーデン 〜地球温暖化とドイツの赤ワイン〜

地球温暖化と技術革新によって、ブドウの栽培地域は年々広がっています。北半球ではイギリス、そしてロシアが加わり、中央アジアの栽培もこれからより本格的なものになっていくでしょう。従来“北限の産地”として白ワインのイメージの強いドイツでも「シュペートブルグンダー」(≒ピノ・ノワール)の栽培面積は、この20年で倍増したと言われています。

 

そして、ドイツの南端に位置しフランス、スイスと国境を接する、元々比較的温暖な気候であったバーデンにとって、温暖化の影響は晩熟であるシュペートブルグンダーの栽培にいち早く成功する、ひとつの要因になりました。現在では、ドイツのシュペートブルグンダーのおよそ半分を占め、ドイツの赤ワイン産地としては先駆者的な役割を担う産地です。

 

そうはいっても、かつて協同組合の廉価ワインの割合が高かったこの産地が、意欲的な生産者によって素晴らしい赤ワインを産み出すようになったのは、やはりつい最近のことなのです。下写真のベルンハルト・フーバーの設立は1987年、「18世紀から続く~」といったよく耳にするワイナリー紹介と比較すれば、ほんの最近のことのようにも思えますが、7世紀頃にはピノ・ノワールの存在が文献に残されていたことを考えると、この地域の赤ワインの歴史は“古き伝統を踏襲しながら新たな一歩を刻んだところ”と言ってもいいのかもしれません。

 

ブルゴーニュのピノ・ノワールは、世界中の愛好家をその官能性で魅了していますが、ようやくブルゴーニュ以外の産地のピノ・ノワールに、徐々にスポットライトが当たるようになってきました。バーデンには、ドイツのリーディング的なシュペートブルグンダー産地として、期待せずにはいられません。

 

そして、温暖化はもうここまでにしないといけないという思いは、ワインに関わるすべての人が気持ちを同じくしているテーマでもあるのです。

 

Benhard Huber(ベルンハルト・フーバー)
「Malterdinger Spätburgunder2016(マルターディンガー・シュペートブルグンダー2016)」
5000
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

最後に取り上げるのは、ドイツにおける新進の“ワイン産業の街”、ファルツです。

ファルツ 〜ドイツを代表するワイン街道を抱く産地〜

フランスのアルザス地方の北と国境を接するファルツには、南のシュワイゲンから北のボッケンハイムまでの85kmに渡って、ドイツ最大のワイン街道が縦断しています。ファルツでは年間で大小200ほどのワイン関連のイベントが催されており、8月の終わりには、ワイン街道を通行止めにし、街や村では地元の料理やワイン、民芸品に至るまで思い思いのお店が立ち並んで、地元の人や観光客を楽しませます。こうした取り組みは産地全体を盛り上げることに成功し、ファルツはドイツ第2位のワイン産地、ワインショップやレストランも充実した“ワイン産業の街”と言われるようになりました。

 

この地域でも、主役はリースリング。辛口であってもみずみずしい蜜のような味わいをワインにもたらし、比較的温暖なファルツらしさを表現しています。ですが、今回紹介するのはバーデンに続いて赤ワインです。下写真の「フリードリッヒ・ベッカー」は、フランス国境沿いに拠点を置く彼の地のシュペートブルグンダーの先駆者的存在で、“ピノ・ノワール”の名前を冠したクリュ・ワインは、ドイツでも最高の評価を得ています。産地全体としては、バーデンほどシュペートブルグンダーが主流ではないものの、最近のワインガイド誌での上位に、新たな生産者のシュペートブルグンダーが数多く食い込む現象が起きています。

 

ブルゴーニュ同様にピノ・ノワールに向く石灰質を含んだ土壌が多く、これからのドイツの赤ワイン産地として、バーデンに続く銘醸地のポジションが期待されます。ドイツワインは甘い、ドイツは白ワインの産地、というのは過ぎ去った20世紀の過去の話。ドイツのピノ・ノワールはブルゴーニュ、オレゴンやニュージーランドに続いて、世界でも最高の品質水準にあります。よりピノ・ノワールの官能性や滋味深さを表現するワインに出会える機会は、これからどんどん増えていくことでしょう。ドイツの赤ワインのこれからを楽しんでいただけたら何よりです。

 

Friedrich Becker(フリードリッヒ・ベッカー)
「Doppelstück Spätburgunder2016(ドッペルシュトゥック・シュペートブルグンダー2016)」
3300
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

知っておきたいワインの蘊蓄|ソムリエが解説する「イタリアワイン」の5産地にまつわる話

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地について、キーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていくこのシリーズ、「フランス」に続く今回は、「イタリア」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】ワインの世界を旅する 第1回 ―フランスと5つの産地―

 

イタリアワインを旅する

紀元前にイタリアに入植したギリシャ人は、イタリアの地を“ワインの大地=エノトリーア”と呼んだといわれています。現代でも、イタリアのように国中の全土と言っていいほど、さかんにブドウ栽培が行われている国は珍しく、フランスと肩を並べるほどのワイン生産国。20州それぞれの多様な個性を表現したワインは、その文化と郷土料理と相まって、多くの人を魅了しています。

 

ですが裏を返せば、その多様性はイタリアワインを“難解で選びにくいワイン”にしていることも事実です。その原因のひとつには、現在進行形で議論されていますが、ラベル表示のわかりにくさが挙げられるでしょう。州ごとの個性とはいっても州の名前自体は記載されておらず、「DOCG」や「DOC」、そして「IGT」といった原産地呼称と合わせて消費者目線に立ったラベル表示は、これからイタリアワインがより個性を発露するためにも、課題としてとらえ解決に取り組む必要があるのではないでしょうか。

 

今回は、初心者に向けたイタリアワインの入り口として、代表的な5つの州と5つのワインをご紹介しながら、私が考えるよりわかりやすいイタリアワインの表示と、イタリアワインの選び方をお伝えすることができればと思います。

・ピエモンテ州
トスカーナ
シチリア
ヴェネト
トレンティーノ=アルト・アディジェ

 

ピエモンテ州 ~尾根に連なる美しいブドウ畑と「バローロ」~

ピエモンテの州都トリノは、2006年に冬季五輪が開催されたことでも知られるほか、サッカーチーム「ユヴェントス」のホームタウンといえば、ワインに馴染みのない方でもピンとくるかもしれませんね。

 

19世紀、イタリア王国時代には首都だったということもあり、歴史のあるバロック建築の街並みは荘厳で、往時を想像させる魅力的な都市です。当時からそのままに残る数々の老舗カフェで、原産地呼称指定されているチョコレートドリンク“ビチェリン”を楽しむのも、トリノでの素敵な時間の過ごし方です。

ホットチョコレート、エスプレッソ、生クリームの3層からなる、トリノ伝統の飲料。カフェ・アル・ビチェリンが発祥とされます

 

このピエモンテは、イタリア屈指のワインの銘醸地でもあります。トリノの南東に位置するランゲ&ロエーロ地方では尾根が複雑に絡まりあい、東西南北の斜面にはブドウ樹、平地にはヘーゼルナッツが整然と並び、世界でも類を見ないほどに美しい田園風景が望めます。そんなランゲ&ロエーロのみならず、イタリアを代表するワインのひとつが「バローロ」。バローロ村を中心にカスティリオーネ・ファレット、セッラルンガ・ダルバ、モンフォルテ・ダルバ、そしてラ・モッラの五つの村周辺の畑、バローロの丘に植えられた晩熟のネッビオーロから造られるバローロは、長い熟成を必要とする骨太で重厚な果実とタンニンを持つものから、鮮やかにも感じる芳香を早いうちから楽しめるタイプまで幅広く、ブルゴーニュと比較されるほど、バローロの丘の地質や環境は多様なワインを産み出します。「王のワインにして、ワインの王」ともいわれ、高級イタリアワインの重厚なイメージがあるかもしれませんが、下で紹介する「レヴェルディート」などラ・モッラ村周辺で造られるものは比較的軽やかでリーズナブルなものもあり、初めてバローロに親しまれる方にはおすすめです。

 

バローロの中だけでも、前述したいくつかのエリアでワインのキャラクターは違います。もちろん生産者によって畑を飛び地で所有していることもありますし、ブルゴーニュのように、より地域表示を明確にすることで“テロワール表現”というワインの最大の魅力を表現していくことができるように思います。

 

バローロを飲む機会があったならば、そのワインがどの地域で造られたものなのかを意識してみると、“王のワイン”もより身近なものになるのかもしれません。

 


Reverdito(レヴェルディート)
「Barolo2016(バローロ2016)」
5000
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

次のページで取り上げるのは、キャンティ・クラシコで知られる産地、トスカーナです。

トスカーナ ~歴史ある「キャンティ・クラシコ」は、今も進化し続ける~

フィレンツェの南、シエナの北に、「キャンティ・クラシコ」の畑は広がっています。イタリアワインにおいて“クラシコ”とは元来、銘醸畑として認められていたエリアを指しますが、とくに“キャンティ”はラッダ、ガイオーレ、カステッリーナに加えグレーヴェが、18世紀に線引きされた歴史のあるクラシコといえます。これは現在の原産地呼称のオリジナルともいえる、画期的な出来事でもありました。

 

けれどもキャンティ・クラシコとキャンティの“サブ・ゾーン”(キャンティ〇〇とエチケットに記載)、キャンティとだけ表示された広域ワインのエチケットには、どれも「Chianti」の表示が。ワイン初心者にとっては、その品質の差の割に、店頭では区別のつきにくいワインとして長く流通してきたのです。“キャンティ”という響きが銘醸ワインの響きも併せ持っていること、一時期の大量生産の広域ワインが多く流通したことも、日本の消費者にとってはハズレの多いワインのような印象を与えてしまったように思うのです。

 

2014年に、「グラン・セレツィオーネ」という単一畑のキャンティ・クラシコの最上位にあたる新しい呼称が設けられ、キャンティ・クラシコはその品質に見合った高級ワインのイメージを取り戻そうとしています。キャンティ・クラシコの地域ごとの個性、そしてその単一畑の個性が評価されていくのも、これからのことです。例えばボルドーのように、生産者の格付けのようなものが制定されたなら、格付けシャトーとAOCボルドーとの差以上に、優れた生産者と単一畑とキャンティのサブゾーン、広域キャンティがより消費者にとってわかりやすく、また素晴らしいワインを産み出すことにつながらないかと日々夢想しています。

 

長い時間が必要だとは思いますが、イタリアワインを代表する銘醸ワインとして、キャンティ・クラシコがこれからワインを親しむ方にとっても、とっておきの選択肢になることを願っています。

 

そう、フィレンツェの名物料理といえば、赤身のキアーナ牛の「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」。ステーキに合わせるワインとしてキャンティ・クラシコを選べるようになったなら、相当なワイン愛好家といえることでしょう。

 


Rocca di Montegrossi(ロッカ・ディ・モンテグロッシ)
「Chianti Classico2017(キャンティ・クラシコ2017)」
3800
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

3つ目に紹介していただくのは、シチリアです。

シチリア ~地中海最大の島にしてイタリア最大の州~

地中海に浮かぶシチリアは、さまざまな文化の影響を受けてきた土地でもあります。ことワインに関しても、アグリジェント市のギリシャ神殿、ピアッツァ・アメリーナのローマ時代のモザイク、パレルモのムーア人の寺院などなど、地中海における宗教の歴史的な遺産を今も多く残しています。

 

ただ、イタリアワインの世界では、ほんの四半世紀前まで輸出用ワインを大量に、それこそイタリア最大規模の生産量を産出する個性のない地域でもありました。それからの10年で、シチリアワインは量から質へ、大きな転換を果たし、ブドウ畑の面積はほとんど変わらないものの、生産量は3割以上減らしました。パレルモ周辺の協同組合も土着品種への関心を高め、さまざまなルーツを持つマスカット品種もまた、成功を収めつつあります。

 

そして、安定して高品質なワインを産み出すようになった産地として、シチリア島の東にあるエトナ山が挙げられると思います。エトナ山は、オリーブやピスタチオ、さまざまな果樹が育つ豊饒な火山灰土壌が特徴で、黒ブドウは「ネレッロ・マスカレーゼ」、白ブドウは「カリカンテ」が、約800mの標高に植えられています。高品質ワインが造られるようになったのはここ最近のはずなのに、品質の安定感はイタリアワイン随一といっても大げさではないほど。徐々に価格も上がってきている銘柄もありますが、ワインショップで見かけたら、ぜひ一度お試しいただきたいとおすすめできる銘柄です。

 

写真の「エトナ・ロッソ」は、スパイスの効いた鮮やかなベリー系の果実に芯のあるストラクチャー、軽やかで、魚介にも肉料理にも幅広く合わせられるワインです。あまりにも幅の広いシチリアのワインも、西と東や南などのイメージがワイン初心者にも伝わるようになったなら、ワイン選びももっと楽になるのかもしれません。

 


Valenti(ヴァレンティ)
「Etna Rosso“Norma”2014(エトナ・ロッソ“ノルマ”2014)」
3200
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

4つ目は、中世の街並みを残すヴェローナを擁す、ヴェネトにまつわる話。

ヴェネト ~北イタリア、ヴェローナはロミオとジュリエットの舞台~

中世の街並みを残すヴェローナは、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台であり、あのジュリエットのバルコニーがある家は観光名所のひとつとして、旧市街の一角に現在も残っています。また、毎年4月にイタリア最大の見本市「ヴィニタリー」が開催されるのも、ヴェローナ郊外。期間中は、街の商店のウインドウには贔屓(ひいき)の「ヴァルポリチェッラ」や「ソアヴェ」のボトルがディスプレイされ、ワイン好きにとってはウインドウ・ショッピングをも楽しめる街でもあります。2020年は残念ながら開催されませんでしたが、イタリア中のワインが一堂に会するビッグイベントですから、春にイタリアに行く機会があれば、ぜひスケジュールに組み込むことを検討してみてください。

 

ヴェネト州の代表的なワイン畑は、ヴェローナの北側、東のソアヴェから西のガルダ湖へ40kmほどに伸びるヴェローナ丘陵に広がっています。白ワインの代表的な産地に「ソアヴェ」、赤ワインの代表的な産地に「ヴァルポリチェッラ」があり、それぞれ辛口の軽やかなものから干しブドウから造る甘口の「レチョート」と、幅広いワインが造られています。

 

ヴェネトは、イタリアのなかでもとくに生産量の多い地域であるため、比較的安価なワインが多いエリアでもあり、やはりこの地域でも“クラシコ”表示を基準に選んだほうが良質なワインに巡り会う可能性は高まります。「ヴァルポリチェッラ・クラシコ」は、チェリーのようなチャーミングな風味にほのかなアーモンドの皮の苦みが特徴で、コストパフォーマンスに優れたワインが多くあります。また、ヴァルポリチェッラの高級レンジには、乾燥させて糖度を高めたブドウから造る甘口の「レチョート」と、辛口で苦みと甘みを併せ持った「アマローネ」があり、アマローネを圧搾した後の果皮の上でワインを発酵させる「ヴァルポリチェッラ・リパッソ」(またはスペリオーレ)も、ヴァルポリチェッラ寄りの価格帯ですので気に入った生産者のワインに出会ったら、それぞれのワインをお試しいただくのもおすすめです。

 


Begali Lorenzo(ベガーリ・ロレンツォ)
「Valpolicella Classico2016(ヴァルポリチェッラ・クラシコ2016)」
2500
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

最後は、この産地をすでに知っていたら通な「トレンティーノ=アルト・アディジェ」を紹介していただきます。

トレンティーノ=アルト・アディジェ ~イタリア最北のワイン産地ではドイツ語が話される~

トレンティーノ=アルト・アディジェ州は、南のトレンティーノと北のアルト・アディジェに大別され、イタリア20州の中でも特徴的なのは、フランス品種やドイツ品種が多く栽培されていることでしょう。南のトレンティーノでは、シャルドネの高品質なスパークリングワインやイタリアでも最高のボルドー・ブレンド、地場品種では「テロルデゴ」など、魅力的なワインが造られています。

 

そして今回は北側、イタリア最北のワイン産地、アルト・アディジェのワインを紹介しようと思うのですが、その魅力はなんといってもイタリアでもっともワインが選びやすい点。大半のワインがDOCアルト・アディジェに区分され、表示は基本的に品種名と生産者、加わってもせいぜい畑の名前と、イタリアワインらしからぬわかりやすいエチケットになっています。

 

赤ワイン用品種はカベルネやメルロー、ピノ・ノワールのほか、固有品種である「ラグレイン」や「ヴェルナッチュ」、白ワイン用品種はシャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった国際品種に加え、リースリングやシルヴァーナー、ゲヴュルツトラミネール、この地域では主役になりつつあるピノ・グリージョやピノ・ビアンコと多士済々(たしせいせい)といった趣です。

 

とくに色調が濃く、力強さもあるピノ・グリージョと、華やかでフローラル、みずみずしさとキリリとしたミネラル感を併せ持ったピノ・ビアンコは、どちらも本家ブルゴーニュやアルザスのワインと比べてもまったく見劣りせず、同時にアルト・アディジェらしさともいえるオリジナリティある魅力的なワインが数多く産み出されています。イタリア語よりもドイツ語が主流で、街の看板にはドイツ語とイタリア語が併記されており、チロル文化の色濃く残る街並みはワイン同様、イタリアらしからぬ魅力的な地方アルト・アディジェ、イタリアワインに馴染みのない方でも手に取りやすいイタリアワインです。いえ、南チロルワインと呼んだほうがいいのかもしれません。

 


Nals Margreid(ナルス・マルグライド)
「Pinot Bianco”Silmian”2017(ピノ・ビアンコ“シルミアン”2017)」
4000
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

ブルゴーニュ、ボルドーからラングドックまで「フランスワイン」の5産地にまつわる話

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などを取り上げ解説していただいていますが、ここからは「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地について、キーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていきます。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

 

フランスワインを旅する

ワインのないフランスを考えるのは、フランスのないワインを考えるのと同じくらい難しい────

 

ワイン評論家、ヒュー・ジョンソンの言葉ですが、これほど現代のワインの世界において、フランスワインの占める立ち位置を端的に表現している言葉はないように思えます。

 

そんな世界の“ワイン地図”をいまだ象徴するワイン大国・フランスの、代表的な5つの産地とそこで繰り広げられるストーリーをご紹介しましょう。

 

1. ブルゴーニュ
2. ボルドー
3. ロワール
4. ローヌ
5. ラングドック

 

ブルゴーニュ 〜グランクリュ街道を北から南へ〜

フランス東部の街、ディジョン市を出発点としてグランクリュ街道を南へ下ると、右手に広がるのは小さな村々と丘一面のブドウ畑。“コート・ドール(黄金の丘)”と呼ばれる、世界中のワイン醸造家や愛好家が憧れる、奇跡の銘醸地です。“Route des Grands Cru”と白抜きされたブドウがデザインされた標識に沿って、ジュブレ・シャンベルタンやヴォーヌ・ロマネといった村々を通り抜け、ニュイ・サンジョルジュの街に至るまでに、ブルゴーニュの特級畑の大半、ピノ・ノワールの特急畑のほぼすべてを眺めることができます。

 

それは、ブルゴーニュワインを愛する人にとっては、小さな村のそれぞれ、南東向きの斜面にびっしりと区画分けされた畑の数々は、住所表示そのままのようにワインのエチケットに印字された原産地呼称と合わせて、各々の味覚体験と重なる特別な風景として映ることでしょう。

 

コート・ド・ニュイを抜けて、ブルゴーニュにおける中心市街、ボーヌ市に至るまでの見どころはコルトンの丘。孤立した大きな丘には、頂上付近までブドウが植えられ、コート・ド・ボーヌ唯一の赤の特級畑コルトンと、シャルドネから造られる白の特級コルトン・シャルルマーニュが産み出されます。

 

シャルドネの特級畑はこのコルトン・シャルルマーニュのほか、ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェにまたがる丘の中腹、ル・モンラッシェ(標高の少し下がったバタール・モンラッシェ、標高の少し高いシュバリエ・モンラッシェを含む)の2か所しか認められていないことと、実際のところシャルドネが主流なのはムルソー、ピュリニー、シャサーニュ(さらに加えるならばシャブリとリュリー、モンタニィ、マコネ)だと考えると、ブルゴーニュの格付けは元来、ピノ・ノワールを中心に考えられてきたように思えます。事実、ル・シャルルマーニュにシャルドネが植えられたのは、19世紀と、比較的近代のことなのです。

 

一般的にブルゴーニュというと、北はシャブリ、南はボジョレとリヨン近郊までを指します。個人的にはクリュ・ボジョレをはじめ、興味深いワインがボジョレにはあるのですが、ブルゴーニュというくくりで見た時に同一視する必要があるかというと、疑問です。コート・ドールのワインが軒並み高価なものになってきているなか、これからワインに親しまれる方に、ボジョレをブルゴーニュとして勧める気にはどうしてもなれないのです。では、「ブルゴーニュの入り口になるのはどこか?」と聞かれたら、私は「コート・シャロネーズではないか」と答えます。

 

コート・シャロネーズはコート・ド・ボーヌと地続きの産地ですが、それまでの均一な稜線の風景から、不連続な丘陵にブドウ畑が広がります。主要な5つの村は、北からアリゴテの銘醸地として知られるブーズロン、シャルドネの多いリュリー、メルキュレ、ジヴリ、白専門のモンタニィ、という個性豊かな小産地で構成されています。メルキュレやジヴリは生産の大半が赤ワインであり、コート・ドールに比べ1級格付けが多いのも特徴です。また以前はコート・ドールに比較すると大味なピノ・ノワールが多い印象でしたが、近年では意欲的な生産者も増え、よりブルゴーニュに期待する魅惑的な優美さを備えたワインが増えてきています。

 


Camille Giroud(カミーユ・ジルー)
「Mercurey 1erCru Clos Voyens 2017(メルキュレ・1級・クロ・ヴォワイアン2017)」
5500
輸入元=ベリー・ブラザーズ&ラッド

 

次のページでは、「ボルドー」について解説します。

 

 

ボルドー 〜石造りの美しい街並み、サンテミリオン〜

ブルゴーニュが、神秘的で宗教的な側面を持ったワインだとすると、ボルドーワインはとても人知的、人が造り上げたワインのように感じます。日本に輸入されるフランスワインの多くはボルドー産のもので、高級ワインのイメージとともに、量の面でも日本人にとって長く親しまれてきたワインであり、その広大な産地それぞれの地域ごとの格付けやセパージュ(ラベルにブドウの品種名を記載したワインのこと)の比率などは、ワイン愛好家の知的好奇心を満たすことに向き、ワインガイドによる100点満点の採点も、ブルゴーニュの官能性を測るよりも適性があるように思えるのです。

 

メドックの格付けを覚えるのは、長くワインを学ぶ行為としての入り口だったように思うのですが、現在では残念ながら、メドック1級シャトーは10万円を超えるような価格でワインショップに並んでいるので、おいそれとは巡り会うことができなくなってしまいました。これはブルゴーニュに関しても同じことが言えるかもしれません。

 

ただ、最近のボルドーは、低価格帯から品質の向上が見られることが特徴だと感じています。2000円前後のワインを(仮に)ブルゴーニュと比較したとすると、好みを別にすれば、おおむねボルドーに軍配があがるのではないでしょうか。そしてトピックとしては、中堅どころの生産者のビオディナミ(自然派ワインを造る際の農法のひとつ)導入が着々と増えてきていることです。これは、メドック5級格付けシャトーであるポンテ・カネの成功の影響が大きいと考えられますが、長くなるのでここでは割愛させていただきます。

 

写真のクロ・フルテも、2011年よりビオディナミを導入、それ以前からサンテミリオンの有名シャトーのひとつであり、格付けも上から2つ目のプルミエ・グランクリュ・クラッセBながら、ヴィンテージによっては値ごろ感のあるワインのひとつです。

 

サンテミリオンのワインは、メドックほどタンニンが強くなく、素直で芳醇な果実味を楽しめるワインが多く、〇〇サンテミリオンといった周囲に広がる衛星産地のワインなら、2000円前後から探すことができます。もしもサンテミリオンのワインが気に入ったなら、ボルドー観光の際には街を訪れてみてください。石を切り出した教会、美しい街並みを一望できる“Tour du Roy”、小さな街ですがちょっと中世にタイムスリップしたような感覚になれる、素敵なところです。

 


Clos Fourtet(クロ・フルテ)
「Clos Fourtet 2011(クロ・フルテ2011)」
1万5800円
輸入元=ベリー・ブラザーズ&ラッド

 

次のページでは、「ロワール」について解説します。

 

ロワール 〜東から西へ、河沿いに広がるブドウ畑〜

ワイン産地としてのロワールを、ひとくくりにすることは難しいかもしれません。東から西へ500kmを超えて流れるロワール河流域にはいくつかのワイン産地があり、総じて白ワインが親しみやすく、赤ワインはやや玄人好みといってもいいように思えます。

 

白ワイン品種の主要な品種はソーヴィニヨン・ブランとシュナン・ブラン。前者は、地域によって硬質で洗練されたものから、柔らかで親しみやすいタイプの幅広い辛口白ワインを、後者は、芳醇な辛口から魅惑的な甘口まで、こちらも幅広い味わいのものが造られています。そのほか、ロワール河下流の街、ナント周辺では、ムロン・ド・ブルゴーニュから造られるミュスカデがあります。ミュスカデは価格もリーズナブル、微かな塩味を感じる辛口は、海老やムール貝など魚介を使った料理には定番の組み合わせです。

 

ロワールのワインのエチケット(ラベル)には、“Loire”と記載されているわけではないので、いくつかの主要な産地、シュナン・ブランならアンジューやサヴニエール、ヴーヴレイ、ソーヴィニヨン・ブランなら今回ご紹介するサンセールと対岸のプイィ・フュメなどの産地を覚える必要があるかもしれません。

 

ソーヴィニヨン・ブランは、今や世界中で栽培されていますが、プイィ・シュル・ロワール周辺(サンセールとプイィ・フュメ)ほど繊細で華やか、シャープに感じるのに長命というソーヴィニヨン・ブランを見つけるのは、簡単ではありません。ワインショップの棚でサンセールを見かけて、もしも手に取ったならば、ぜひともチーズのことを思い出していただきたい。そのお店にチーズは売っていますか? であれば、一緒に買い物かごに入れることをおすすめします。サンセールと白カビや山羊のチーズとの抜群の相性は、一度お試しいただきたい組み合わせなのです。

 

そしてロワールといえば、15世紀には首都だった古都トゥール、中世の赴きを残す美しい街並み、歴史的な建造物と見どころ満載の街です。現地で飲まれているのは、同じソーヴィニヨン・ブランでもトゥーレーヌと表記された、サンセールやプイィ・フュメとはまた違う柔らかでフローラルな白ワイン、価格的にもリーズナブルなものが多いので、こちらもぜひ。もちろん、チーズとも抜群の相性です。


Claude Riffaultクロード・リフォー)
「Sancerre, Monoparcelle 469 2018(サンセール モノ・パーセル469 2018)」
5500
輸入元=ベリー・ブラザーズ&ラッド

 

次のページでは、「ローヌ」について解説します。

 

ローヌ 〜地中海へとつながるローヌ河流域のワイン産地〜

ヨーロッパでは、古くからのブドウ畑の多くは、川沿いに位置してきました。ボルドーにおけるジロンド河、ドイツのライン河、そしてヨーロッパを横断するドナウ。これは流通のほか、水面の照り返しや水はけといったさまざまな面で人々の営み、ブドウの生育をサポートする役割を担ってきたことに起因します。

 

ロワール河とローヌ河というフランスの二大河川は、それぞれ銘醸ワインを育んできましたが、前者の多くは白ワイン、後者のほとんどは赤ワインと、性格のまったく違う兄弟のような存在です。一般的には、ローヌ河流域はエルミタージュを中心とした北ローヌと、シャトーヌフ・デュ・パプを中心とした南ローヌに分けられます。

 

ここでは、生産量の大半を占める南ローヌのワインをご紹介しようと思います。おそらく日本においても、ワインショップやスーパーマーケットに並ぶローヌワインの大半が、“Cote du Rhone”と印字されたボトルではないかと思うのです。これは、南ローヌの幅広いエリアで栽培されるブドウから造られるワインに与えられる原産地呼称ですが、ボルドー全域に匹敵する量が生産されており、高いアルコール度数、渋みよりも濃密な果実感のあるグルナッシュに、シラーやムールヴェードルなどがブレンドされます。著名な生産者のもので群を抜いた高品質なものもありますし、好みによってはしまうのですが個人的には広域アペラシオンということで、低価格帯ワインが多い割にハズレの少ないワインのように感じています。

 

南ローヌの街アヴィニヨンには、教皇庁があった歴史があり、14世紀に建てられた宮殿はユネスコの世界遺産に登録され、その美しいゴシック様式の圧倒的なスケール感を現在に至るまで残しています。そしてアヴィニヨンから北に10数km、ローヌ河の東に位置するのが、この地域のワインの中心部であり、教皇の夏の宮殿のあった丘、シャトーヌフ・デュ・パプです。南ローヌではこのシャトー・ヌフ・デュ・パプを中心に、周囲に衛星的に村の名前を原産地呼称として許された、ジゴンダスやヴァケイラス、コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュがあり、前述のコート・デュ・ローヌと上位階層の位置づけでワインが表現されています。ほかの産地よりも、コート・デュ・ローヌ、特にコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュといった比較的手に取りやすいワインにも魅力的なワインがあるのがこの産地の特徴です。

 


Domaine Marie & François Giraudドメーヌ・マリー&フランソワ・ジロー
「Chateauneuf du Pape Tradition 2014(シャトーヌフ・デュ・パプ・トラディション 2014)」
7500
輸入元=ヴァンクロス

 

最後に、「ラングドック」について解説します。

 

ラングドック 〜21世紀が楽しみなワイン産地〜

南フランス、ラングドック(ルーションまでを含む)は、世界最大といえる広大なワインの一大産地であり、長らく安価なテーブルワインの産地でもありました。イギリスとパリとの物理的な距離が、この南の産地の可能性を埋没させていた要因のひとつとして考えられますが、世界中でフランスワインの人気が高まるにつれ、生産者の意欲向上、醸造技術の高まり、資本の流入による近代化を迎えるのは、20世紀の後半のことでした。近年では、グランクリュ的な原産地呼称がナルボンヌの周辺で産まれ、モンペリエ周辺ではさまざまな個性的なラングドックワインが産まれています。

 

もっとも多く栽培されている品種はカリニャンですが、グルナッシュやシラー、ムールヴェードルといった、ローヌと似た品種構成の赤ワインも、またボルドー品種とのブレンド、在来種によって、スパークリング、白、ロゼ、甘口まで幅広く変化に富んだワインが楽しめる産地として注目を集めています。

 

おすすめしたいのは、その幅広いラングドックワインのなかでも、エチケットにAC(原産地呼称)表記のあるワイン。原産地呼称が、品質保証であると同時にワインを難しくしている一因ではありますが、この遅れてきた銘醸地ラングドックでは、今現在もっともACが活きています(その他はIGP=地理的な表記です)。

 

上級ワインとして、グランクリュ的位置づけは、「コルビエール・ブートナック」「ミネルヴォワ・ラ・ヴィニエール」「フォジェール」「サンシニアン・ベルロー」「サンシニアン・ロックブリュンヌ」の6つ。そして、いくつかの地域名ワインとACラングドックと原産地呼称ワインだけで、全生産量の2割に満たないと考えると、裏を返せばハズレの少ない原産地呼称でもあるのです。

 

大半は赤ワインですが、モンペリエ南の沿岸部のACピクプール・ド・ピネは、柑橘の爽やかなすっきり系、魚介料理に合わせやすい地中海白ワインです。そして、もう少し内陸で造られる写真の「クレレット・デュ・ラングドック」も数少ない白ワインのACワイン、フレッシュで優しい甘みをわずかに残す白ワインです。生産者のジェラール・ベルトランによる他のラングドックワインは、日本でも見つけやすいと思いますが(“居酒屋”で見つけたこともあります)、どのワインも価格以上の味わいを提供してくれる優良生産者です。

 

今後、ラングドックのワインは、年を追うごとに良さを増してくると確信していますので、これからワインを楽しもうという方にはうってつけです。いつか、コルビエール・ブートナックやミネルヴォワ・ラ・ヴィニエールも手に取って、味わってみてください。


Gerard Bertrand(ジェラール・ベルトラン)
「Clairette du Languedoc Adissan 2018(クレレット・デュ・ラングドック2018)」
3900
輸入元=ピーロート・ジャパン

 

議論を呼ぶことも、フランスワインの魅力のひとつ

世界中に広まったこれまでのワイン地図の規範、オリジナルを、フランスのワインは現代においても体現しています。もちろん、これからのワイン世界は、それぞれのオリジナルを獲得していく時代に突入していく、過渡期にいると考えられます。それでは、一体何が、フランスワインを特別なものにしているのでしょうか? イギリスという一大消費国との地理的関係、宗教的価値観、地層年代の複雑さ、それらを考えても、これという答えに行きつくことはなかなか困難ですが、そういった難解な思索や議論を呼び起こすことにこそフランスワインの魅力があり、そういった人との、ワインとのコミュニケーションそのものが、ワインの最大の魅力のひとつなのだと思います。

 

今回は、フランスの代表的な産地をいくつかご紹介させていただきました。もちろんワインにこれから興味を持っていただく方向けにご説明していますが、言葉の足りないところや、範囲を限定しているところがあるのは否定できません。ただワインを職業にしている人間にとっても、ワインはやはり世界中で造られ、日進月歩変化している世界でもあります。こうしたささやかなワイン紹介が、どこかの誰かの広いワインの世界へ旅立つきっかけの一助になりましたら幸いです。

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

Profile

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

撮影=真名子 [ワイン、人物]

 

 

日本グルメ紀行 「山梨県」は美食の宝箱!

山梨県はGetNaviがオススメしたいエリア。富士山や富士五湖など絶景スポットが有名だが、実は美食の宝箱でもあるのだ。山梨県主催のプレスツアーに参加したGetNaviグルメ担当・鈴木翔子が、山梨グルメをナビゲート!

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が味わってきました!

GetNavi編集部 フード担当

鈴木翔子

 

【美食Keyword 1】富士の介

上質な脂がとろける山梨県発のサーモン

富士山や南アルプスなど、山に囲まれた山梨県は水資源が豊かで養殖が盛ん。注目は、2019年に出荷が開始された「富士の介」だ。全国で唯一、キングサーモンの血を引く。

 

 

↑最高級とされるキングサーモンと、山梨県で生産量No.1のニジマスを交配した同県オリジナルの魚。うまみ成分はニジマスの約1.6倍!

 

★ここで堪能しました!

木創りの宿 きこり

山梨県笛吹市石和町川中島325

「木創りの宿 きこり」など県内の31施設で、富士の介を使った食事を楽しめる「富士の介フェア」を開催中。すべて「グリーン・ゾーン認証」施設のため、安心して利用できる。2021年3月末まで開催予定。

 

後味が上品な脂がのってしょうゆなしでも美味!

「脂がしっかりのっていて口に入れた瞬間とろけるのに、クドさがなく後味が上品。しょうゆを付けるのをもったいなく感じる繊細な味わいです。きめ細かく、舌触りも滑らか。サーモン特有の臭みもなく食べやすい!」(鈴木)

 

【美食Keyword 2】ワイン県

 

日本ワイン発祥の地で生産量日本一!

山梨県は生産量もワイナリーの数も日本一を誇り、世界的にもワインの名醸地として知られている。ワインは富士の介との相性も抜群だ。赤身の刺身やタレを使った料理には「マスカット・ベイリーA」、塩を使った料理には「甲州」がよく合う。

 

★ここで堪能しました!

ルミエールワイナリー

山梨県笛吹市一宮町南野呂624

「ルミエール」は、登録有形文化財に指定されている「石蔵発酵槽」を備えるワイナリー。見学ツアーも行っている。上で紹介した「木創りの宿 きこり」では、ルミエールのワインと富士の介のマリアージュを楽しめる。

 

世界的に珍しい石蔵で発酵させたワインに注目

「今回うかがった『ルミエール』の注目ワインは、世界的にも珍しい石蔵発酵槽で仕込んだ『石蔵和飲』。甘い果実のような香りとミネラル感のあるやさしい味が魅力です。発酵調味料を使った料理に合いますよ」(鈴木)

ゲミシュターサッツやアマローネって何? 知る人ぞ知る世界のワインのうんちく

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるのは、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

 

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただいています。今回は、歴史と個性のある「産地」がテーマ。

 

個性は産地に宿る! 知る人ぞ知るワイン産地の魅力

旧約聖書『創世記』に登場する“ノアの箱舟”が漂着したとされるのが、コーカサス山脈付近。そこで紀元前8000年頃に、地球で初めてのワインが誕生しました。

 

一説によれば、はじまりのワインは人の手が加わらず、自然に発酵したものだったのではないかと推測されています。そういったワインを当時の人々は口にし、その後、ワイン生産のためのブドウ栽培が始まって、ギリシャやエジプトといった地中海沿岸の国々に伝わり、長い時間をかけて、ワイン造りの中心はヨーロッパに移っていきます。

 

現在では南米、オセアニアや南アフリカ、もちろん日本や東アジアと、世界中のいたるところでワインが造られるようになりました。そして私たちが世界中を旅するのと同じように、さまざまな国でワインが輸出入され、生産国とは別のさまざまな国々で楽しまれています。

 

ワインは産地、ブドウ品種、生産者の3つの要素によって“性格”がかたちづくられる、というのが一般的に言われていることですが、最大の要素は“産地”にあるのではないかと、僕は考えています。品種がその土地に根差したことにも気候風土や歴史があり、人の日々の営みも、その土地なくしては考えられません。ワインにエチケット(ラベル)が貼られるようになった近代も、元々は原産地の表示しかないのが通常で、ワインの個性はつまり、産地によってのみ語られていたことになります。

 

幸いにも、日本ほど世界中のワインが輸入されている国はほかにありません。もし気に入ったワインに出会うことがあったら、そのワインがどのような土地で造られたのかを想像してみたり、ちょっと調べてみたりするのも楽しいものですよ。ワインの魅力は味わいだけではありません。その土地の魅力と合わせて受けとめてみるのも、ワインライフをより一層豊かなものにする、ひとつのポイントなのです。

 

●音楽の国の協奏曲ワイン「ウィーナー・ゲミシュターサッツ」

オーストリアの首都ウィーン、芸術と音楽の街というイメージが色濃く浮かびますが、実はワインの銘醸地としても知られています。

 

いずれ現地に行く機会があれば、ぜひ立ち寄っていただきたいのが、“ホイリゲ”と呼ばれるワイン酒場(2019年にユネスコ無形文化遺産に登録)。ブドウ畑に囲まれたホイリゲで味わうワインは、澄み切っていて心洗われるような味覚体験で、それだけでもウィーンに行く価値があると思えるほどです。

 

オーストリアを代表する白ワイン「グリューナー・フェルトリーナー」はもちろん美味しいのですが、今回紹介するのは「Gemischter Satz(ゲミシュターサッツ)」。少なくとも3品種以上の“混植混醸”、つまり畑に植えられたさまざまなブドウ品種を、いっせいに収穫しいっせいに醸造するというワインです。ヴィンテージ(生産された年)や生産者によって品種のミックス具合は異なり、写真の「ヴィーニンガー」の2018年は11品種のミックスとなります。

 

ゲミシュターサッツは本来のワインの造り方のひとつと考えられており、ふくよかでありキレがあり、果実感もあって青さもあるという、相反する要素を兼ね備えた生命力のある味わいとなります。“畑にさまざまな品種が育っていることが調和をもたらす”というダイバーシティ的なワインがゲミシュターサッツであり、その土地の味わいを表現するのに適した生産手法であると注目されています。

 

そして世界的に健康志向が高まっているなかでも、農産物(ワインも農産物)のオーガニック比率を見れば、オーストリアは世界を見渡しても最先進国といえるオーガニック大国。ぜひ一度「Gemischter Satz」と表記されたウィーン・ワインを味わっていただきたいところです。

 

そしてもうひとつ、オーストリアの魅力を付け加えましょう。ボジョレーに代表されるように、世界中のさまざまな産地でその年のブドウから造られる新酒が造られているのですが、オーストリアのホイリゲ(前出の“ワイン酒場”も指すが、本来は“今年の新種”を表す)は、一度お試しいただきたいワインです。解禁日は11月11日。2020年は例年よりも収穫が遅めで、ゆっくりと成熟した優良ヴィンテージだそうなので、インターネットやワインショップで探してみてはいかがでしょうか?

Wiennger(ヴィーニンガー)
Wiener Gemischter Satz 2018(ウィーナー・ゲミシュターサッツ2018)
希望小売価格=3000円(税別)

【Info】
・生産国=オーストリア
・生産地=ウィーン
・ブドウ品種=11品種の混植混醸
・輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

●ジョージアとオーストラリアのオレンジワイン

ジョージアでは紀元前6000年頃にワイン造りが始まったとされ、もっとも古いワイン産地のひとつと考えられています。それほどの歴史があるにも関わらず、これまで日本ではあまり見かけることはありませんでした。というのも、元々は生産量のほぼ全量が国内とロシアで消費されていたのが、ロシアの禁輸措置に伴い、最近になって日本にも輸入されるようになったのです。

 

ジョージアのワイン造りは特徴的で、“クヴェヴリ”と呼ばれる素焼きの甕(かめ)を土に埋めて発酵、熟成の過程を行います。そのため白ブドウ(生産量の大半は白ブドウ)の醸し発酵、つまり黒ブドウで赤ワインを造るように果皮の色がワインの色調を色濃くします。これが“オレンジワイン”、あるいは“アンバーワイン”と呼ばれ、赤・白・ロゼに続く4つ目のカテゴリーとして、ムーヴメントを巻き起こしているのです。

 

もうひとつジョージアワインの面白さをお教えしましょう。現代ワインの生産において、酸化防止剤の多寡が語られがちなことから、高級ワイン生産者のなかには発酵槽に塗るなど、タイミングや質や量など、さまざまな工夫が試みられています。一方、ジョージアでは逆さにしたクヴェヴリに硫黄を炊き、天然の二酸化硫黄を素焼きの表面に吸着させるという手法をかなり古くから行ってきたと言われています。まだタンクのない時代の発酵槽としての甕、保存料としての二酸化硫黄の使い方と、人間の知恵には舌を巻くばかりです。

 

こうした古くからのワイン生産手法は現代の醸造家にも影響を与えており、もうひとつ紹介するオーストラリア・バロッサヴァレーのスモールフライ・ワインズは、4~5品種の混植混醸の白ブドウから、オレンジワイン特有のナッツやアプリコットといった濃密な味わいをより洗練させた、現代的オレンジワインを造り上げています。

 

今後クヴェヴリやアンフォラ(同じく陶器の器)を使った白ワインや赤ワイン、地域によってさまざまなオレンジワインが産まれていくことでしょう。多くのオレンジワインは抜栓してもおよそ1週間以上は楽しめる上、中華料理やスパイスを使った料理などとも相性が良いので、これから家庭でも気軽に楽しめるワインになるかもしれません。

Shumi Winery(シュミ・ワイナリー)
Iberiuli Rkatsiteli Qvevri 2015(イベリウリ・ルカツィテリ・クヴェヴリ 2015)
希望小売価格=2900円(税別)

【Info】
・生産国=ジョージア
・生産地=カヘティ
・ブドウ品種=ルカツィテリ(白ブドウ)
・輸入元=ヴァンクロス

 

Tangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)
Smallfry Wines 2018(スモールフライ・ワインズ 2018)
希望小売価格=3800円(税別)

【Info】
・生産国=オーストラリア
・生産地=バロッサ・ヴァレー
・ブドウ品種=ペドロヒメネス、セミヨンを中心とした5品種の混植混醸
・輸入元=kpオーチャード

 

●ギリシャワインの末裔? イタリア・ヴェネトの「アマローネ」

南北に長いイタリアでは20州すべてがワイン産地であり、1880年には国民の約8割もがワイン生産に携わっていたという記録もあるほど。古くから現在に至るまで、長きにわたってワイン大国の一角を成しています。全土では2000を超えるブドウ品種が栽培されているといわれ、州や地域によってさまざまな個性のワインが造られています。そう考えると、品種でワインを選ぶのがもっとも難しいワイン生産国が、イタリアなのかもしれません。

 

では、何がイタリアワインをこれほど魅力的にしているかといえば、地方それぞれの歴史的背景、気候風土、それに伴う郷土料理と、ひとつの国のなかに多様な個性を内包しているからなのではないでしょうか。個性的な地方≒個性的なワインという図式が、イタリアワインの魅力を奥深いものにしているように思えます。

 

ヴェネト州の「アマローネ」という赤ワインを聞いたことはあるでしょうか? 地場品種の「コルヴィーナ」を中心に、陰干しして糖度を凝縮させたブドウから造られる濃密な赤ワインは、アルコール度数は16%ほど。世界中を見渡してもこれほど力強いワインは珍しく、ヴェネト州を代表する銘醸ワインとなっています。アマローネ自体の歴史は浅く、1930年代に知られるようになったといわれていますが、その原型となった陰干しブドウから造る甘口のワイン「レチョート」は、成立を中世にまでさかのぼることができ、港湾都市・ヴェネツィアを通じて運ばれたギリシャの甘口ワインがルーツと考えられます。

 

このように、イタリア各州のワインにはそれぞれの物語があり、そういった物語もワインを楽しむ魅力のひとつでしょう。しばらく海外に行くことが難しいご時世ですが、好きなイタリアワインと出会ったら、いつかその産地を旅してみることをおすすめします。

Amarone Della Valpolicella Classico(アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ)
Monte Ca’Bianca 2012(モンテ・カ・ビアンカ 2012)
希望小売価格=1万2000円(税別)

【Info】
・生産国=イタリア
・生産地=ヴェネト
・ブドウ品種=ヴァルポリチェッラ・ブレンド
・輸入元=ミレニアムマーケティング

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

ガメイって何? ピノ・ノワールとの違いって?「赤ワイン」に使われるブドウ品種の基礎知識

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるのは、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

 

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただいています。スパークリングワイン、白ワインと続いて、今回は「赤ワイン」がテーマ。

家でワインを楽しむための基礎講座
https://at-living.press/tag/wine-basic/

 

第5回 赤ワインの代表品種とその特徴

赤ワインに使われる代表的なブドウ品種、ピノ・ノワール、ガメイ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローの4種類について、産地や味わいの個性などを解説していただきます。

 

●「ピノ・ノワール」
千円から数百万円まで、誰もがとりこになる黒ブドウ

「ロマネ・コンティ」という言葉は、ワインを嗜まない方でも耳にしたことがある響きなのではないでしょうか。サッカーでいうところのマラドーナ、芸術分野でいえばピカソやベートヴェンのような、一般名詞のようになっている存在のように思います。このロマネ・コンティはブルゴーニュ、コート・ドール地方の最上とされる一枚畑ロマネ・コンティに植えられたピノ・ノワールから造られる最高級赤ワインです。

 

ピノ・ノワールの果実は小粒で密着型の房を付けることから、黒い松かさ(PinotNoir)が語源と言われています。皮の薄さが特徴的。それはそのままワインの色に反映し、より鮮やかで透明に近いルビー色のワインになるのですが、暑い地域では早く成熟してしまい、その魅力的な風味成分が表れてこないことから、現在でも栽培地域が限られています。フランスのブルゴーニュ地方をオリジナルとして、アメリカ・オレゴンやカリフォルニアの冷涼地域、ニュージーランドでは成功を収めていますが、他の産地では意欲的な生産者による限定的な栽培に留まっています。

 

基本的にピノ・ノワール単一のワインとしてリリースされることが多く、ブルゴーニュを除いて他の産地では、ラベルに「Pinot Noir」の表記があるのでワインショップでも見つけやすく、皮が薄いことから比較的タンニンの渋みも少なく、初心者の方でも親しみやすいのではないでしょうか。リーズナブルで自分好みのピノ・ノワールを見つけるのは、愛好家にとってもワインの楽しみ方のひとつでもあります。

 

「Pinot Noir L’insolite2012 / Sato Wines(ピノ・ノワール ランソリット2012 / サトウ・ワインズ)」
希望小売価格=9800

 

【Info】
・生産国=ニュージーランド
・生産地=セントラル・オタゴ
・ブドウ品種=ピノ・ノワール
・輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

●「ガメイ」
ヌーヴォー人気はひと段落も、ガメイは徐々に人気ワインに

世代によっては、ひと時のボジョレー・ヌーヴォー・ブームを知らない方も多いかもしれません。1980年代に始まり、とくに’90年代には、毎年11月第3木曜日と定められたボジョレー・ヌーヴォー解禁日には日本中の繁華街を沸かせ、メディアもその饗宴ぶりを伝えるほどでした。

 

その年の収穫を祝う意味合いがあるヌーヴォーの解禁日は、日本が時差の関係でいち早く迎えることから異例の盛り上がりを見せ、ワインを飲まない多くの日本人にとって“赤ワイン=ボジョレー・ヌーヴォー”だったといっても過言ではありません。

 

ただ、ヌーヴォーは短期間で造られるゆえ、フレッシュさが前面に出たチャーミングなワインもあるのですが、中には未熟果由来の青さの目立つワインも多く、苦手意識を抱いた方がいることも否定できず、そのためか現在ではピーク時の半分ほどの輸入量となりました。

 

長くヌーヴォーの話になりましたが、ガメイはそのくらいボジョレー特有の品種であり、日本人に親しまれてきたワインなのです。残念ながらヌーヴォーのブームを経て、愛好家のなかにも「ガメイは苦手」という方もいます。けれども近年、潮目が変わったと感じさせるふたつの流行があります。それは、ボジョレーという産地でより良質なワインを造ろうという機運、もうひとつはガメイ本来の軽やかでフレッシュ、フルーティーで飲み飽きずフードフレンドリーという個性を、アメリカやオセアニアといった国々のワイン生産者も注目し、高品質なワインを造りだし始めたという点です。アルコール度数もやや低めで健康志向の食事にも合わせやすく、これからワインに親しむ方にはおすすめできます。

 

ラベルに「Beaujolais」とある赤ワインは全てガメイ、そのほかの国では「Gamay」の表記がされています。ワインショップに行かれたら、是非ガメイを探してみてください。

 

「Morgon2013 / Bret Brothers(モルゴン2013 / ブレット・ブラザーズ)」
希望小売価格=4900

 

【Info】
・生産国=フランス
・生産地=ボージョレー
・ブドウ品種=ガメイ
・輸入元=ヴァンクロス

【関連記事】
今年もいよいよ解禁! マナーとして知っておきたい「ボジョレー・ヌーヴォー」のこと
https://at-living.press/food/1027/

 

●「カベルネ・ソーヴィニヨン」
世界に広まった赤ワインのイメージの代表格

赤ワイン用品種としては、もっとも有名な品種かもしれません。フランス・ボルドー原産として知られ、第二の故郷ともいえるアメリカやチリでも、高品質のワインの主品種となっています。いわゆる「フルボディ」というような濃い色調に、カシスなどの黒系果実、重厚なタンニンが特徴として挙げられます。

 

温暖な地域を中心に世界中で栽培されているため、だいたいのワインショップの棚には並んでいますが、“自然派”というフレーズのお店には少ないかもしれません。健康志向とワインの品質とはまた別の話なのですが、軽やかで素材の味わいを、と料理を考えた時には敬遠されてしまうブドウ品種なのかもしれません。

 

ただ、近年のボルドーは、1000円~2000円台のワインの品質向上には目を見張るものがありますし、1000円以下でスーパーマーケットに並ぶチリワインの高品質には驚きを隠せません。料理の相性としてよく牛肉が挙げられますが、意外に幅広い料理が考えられるワインでもあります。ラベルに、ボルドー、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンと書かれたワインは、世界中に広まっただけあって安定感抜群なのです。もちろん銘醸ワインは素晴らしいことも付け加えておきます。

 

「Cabernet Sauvignon2014 / McKenzie Mueller(カベルネ・ソーヴィニヨン2014/マッケンジー・ミューラー)」
希望小売価格=8700

 

【Info】
・生産国=アメリカ
・生産地=カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
・ブドウ品種=カベルネ・ソーヴィニヨン・その他
・輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

●「メルロー」
カベルネ・ソーヴィニヨンの弟分? こちらも世界中に広まった品種

フランス・ボルドー原産で、父は「カベルネ・フラン」という「カベルネ・ソーヴィニヨン」の弟分的な立ち位置で、ボルドーのほぼすべてのワインは、カベルネとメルローのブレンドを主軸にしています。違いはというと、味わいはタンニンがより柔らかくなめらかと言われますが、何より生育のしやすさが挙げられます。日本ではカベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローが選ばれる傾向があるのは、雨の多さと、カベルネに比べ収穫が早いためと考えられます。

 

カベルネ・ソーヴィニヨンのタンニンがあまり得意ではないという方は、フランスであれば「サンテミリオン(Saint Emilion)」という表記、それ以外の産地であればメルローの表記のあるエチケット(ラベル)を選んでみてください。よりスマートな味わいで、リーズナブルな価格からワインショップに並んでいます。

 

“弟分”という表現をしてしまいましたが、高級なイメージのあるボルドーでもっとも高価格帯ワインのひしめくポムロール(ボルドーの一地域)は、メルロー主体でワインが造られているので、もしかしたら“賢弟”の表現のほうが正しいかもしれませんね。

 

「Chateau du Breuil(シャトー・ド・ブルイユ2011)」
希望小売価格=3300

 

【Info】
・生産国=フランス
・生産地=ボルドー オー・メドック
・ブドウ品種=メルロー・その他
・輸入元=ヴァンクロス

 

僕が初めて赤ワインを口にしたのは、子どものころ、近所の喫茶店でのことでした。その喫茶店のくるみの入ったチョコレートケーキは絶品で、ちょっとしたご褒美というような機会にねだって連れて行ってもらったりしていました。たとえばテストで良い点をとったとか、習い事で思っていたよりうまくいったとか、そんなような時のことでした。

 

ショーケースには色とりどりのケーキのほか、脚付きのカクテルグラスに入れられた紫色のワインゼリーが、ずいぶん大人びた装いで並んでいました。そんなワインゼリーに興味をそそられていたのですが、「あれは大人向けだから」と、注文してもらえることは長い間なかったように記憶しています。けれどいつのことだったか、ある時懲りずにワインゼリーをねだると、仕方のなさそうな顔をして注文してくれたことがありました。もしかしたら両親にも、なにかいいことがあったのかもしれません。

 

これが僕の初めての赤ワイン体験、目の前に運ばれてきたカクテルグラスは少し大人になったような錯覚さえ感じたように覚えています。けれども味わいは最悪。渋くて、とても食べられたものではありませんでした。おまけに、たった数口、口にしただけなのに頭痛はするわ、気持ちは悪くなるわで、帰宅後寝込んでしまうという顛末。

 

「赤ワインが苦手」という話を伺うことがあると、きまって僕は、その時の出来事を思い返します。きっと多くの方は子どものころに限らず、そういったトラウマ的な体験をされているのかなと思うと、苦手というのもわからなくもないのです。

 

そうはいっても、今ではワインを仕事にしていて毎日のように赤ワインを口にして、心を躍らせたりしています。ワインは産地と造り手、ブドウ品種の掛け算でもあります。もちろん、造り手もブドウ品種も産地に根差したものですが、シンプルにお伝えしようと思うとまず品種の話にならざるを得ません。自分の好みの赤ワインがわかるようになるとワイン選び、ワイン体験をより一層楽しめるようになると思います。例えるなら、新しい読書体験をしたときのような、観たことのある映画を観て新鮮に意図が伝わってきたときの感動に似ているかもしれません。ワインは難しいと思われるかもしれませんが、このコラムが苦手意識をやわらげる一助になれば幸いです。

 

【プロフィール】

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ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/

 

種類豊富でコスパ最高。メルシャン「国産デイリーワイン」のおすすめ3選

メルシャンはプレミアムなラインからお値打ち価格のものまで、実に様々なワインを販売しています。特にデイリーワインは約100種類のラインナップがあり、日々のワインライフを支えてくれる存在。

 

その定番が「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」、「ボン・ルージュ」、「ビストロ」です。今回はこの3ブランドの特徴を紹介するとともに、取材でわかったメルシャンのモノづくりの技術力をお伝えします。

 

↑メルシャンの豊富なラインナップから、定番のデイリーワインを紹介

 

【その1】14年連続No.1の「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」

メルシャンのデイリーワインといえば、外せないのが「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズ。2003年に発売した同シリーズは、「スタンダード」「シードル」「ソーダ」「オフ日和」「厳選素材 プレミアム」など豊富なバリエーションを展開。多様化するニーズに応え続けた結果、無添加カテゴリーの国内ワイン売上シェアにおいて、14年連続でNo.1という金字塔を打ち立てています。

 

「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」はブドウ本来の味わいを楽しむのがテーマで、素材や製法にさまざまなこだわりがあります。原料となるブドウは、味わいごとに最適な品種を世界中からセレクト。収穫したてのブドウを現地ですばやく濃縮果汁にして、凍結させた状態で日本に輸送します。そして国内の製造工場で、ブドウ品種や味わいに合わせた酵母と、ワインを酸化させない独自の「フレッシュ製法」によって、みずみずしいワインが造られるのです。

 

今回は、同シリーズの中でも特に素材や製造技術にこだわった「厳選素材 プレミアム」を試飲してみます。今年の9月にリニューアルされました。

 

↑「おいしい酸化防止剤無添加ワイン 厳選素材 プレミアム」(参考価格630円/720ml)

 

赤はチリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンを、白はオーストラリア産のシャルドネを使用。高級品種として知られるこれらのブドウを使い、濃厚でコクのある味わいを実現しています。

 

果実由来の香味、複雑味、味の厚みは格別。酸化防止剤無添加で丁寧に造った、ブドウ本来の自然なおいしさが楽しめます。甘味も特徴で、この甘味は欧風のおつまみだけでなく、ご飯やおにぎりにも合います。

 

↑厳選素材が生み出すコク深い味わいを楽しめます

 

【その2】長寿商品「ボン・ルージュ」

メルシャンには、他にも注目すべきブランドが多数あります。続いて紹介するのは、1996年発売のロングセラーブランド「ボン・ルージュ」。ポリフェノールを通常のワインよりも多く含んだ、健康志向の方にもオススメのデイリーワインです。

 

↑「ボン・ルージュ 赤」(参考価格:720ml 600円)

 

ポリフェノール含有量の多いワインは、一般的には長期間発酵によってタンニン抽出量が増えて、渋味・苦味が強い傾向にありますが、本商品は独自の技術でタンニン抽出を抑制。重厚ながらもフルーティーな味わいを実現しました。今回は定番の赤を試飲。ポリフェノールがたっぷりで、まろやかな渋味と果実本来のコクを感じます。

 

【その3】海外に負けないを目指した「ビストロ」

デイリーワインからもう1品、「ビストロ」シリーズをご紹介。こちらも1995年発売と、かなりのロングセラー。「いつもの時間をちょっと幸せに」をコンセプトに、海外のワインに負けない味わいを目指して造られたワインです。

 

↑「ビストロ すっきり白」(参考価格:720ml 410円)

 

独自のフードマッチ製法によって、魚介類と合わさることで生臭さを引き起こす物質を軽減。食事との相性は抜群です。140種もの中から厳選した酵母を使用して、国内工場で製造されています。今回は白を試飲。柑橘系のさわやかな香りが特徴のすっきりした味わいで、普段の食事に合わせやすそうです。

 

原料と技術力でワイン好きのニーズに応える藤沢工場

今回紹介した3ブランドをはじめ、数々のワインを造っているのがメルシャン藤沢工場。先日開催された同社のオンライン発表会で、その一部を見学しました。

 

工場の設立は大正9(1920)年。今年で100周年を迎えた歴史ある工場で、日本のワインブームや市場をけん引してきたメルシャンの屋台骨を、長きにわたって支え続けています。実は果実酒生産量の日本一は神奈川県なのですが、その生産量の95%を占めるのがメルシャン藤沢工場。630品目もの商品を生産しており、その規模の大きさがうかがえます。

 

↑メルシャン藤沢工場

 

ワインはブドウの収穫時期に醗酵するのが一般的で、季節やその年ごとに、造られるワインの味わいは変化。ですが、メルシャン藤沢工場では、いつでも変わらぬ味を生み出すことができます。それを可能にしたのが、世界中から選りすぐった原料と、オリジナルのブレンド技術です。

 

メルシャンではワインの原料となる濃縮ブドウ果汁やバルクワイン(海外で発酵させたワイン)を、世界5大陸から調達しています。北半球と南半球でブドウの収穫時期が異なることを利用して、年間を通じて安定した品質を維持。そうして仕入れた原料を絶妙にブレンドさせることで、商品の“いつもの味わい”を再現しているのです。

 

↑安定した味わいと、値ごろな価格の両立を可能にするのはブレンド技術にあります

 

ブドウ果汁やバルクワインは、それぞれ個性が異なります。この多様性を活かして、メルシャン藤沢工場ではおよそ100種類ものデイリーワインを製造。品質の追求と技術力で、あらゆるワイン好きのニーズに応えているのです。

 

↑メルシャン藤沢工場では、年間を通じて品質の安定したワインを製造できます

 

メルシャンは、藤沢工場の創業100周年と藤沢市制80周年を記念した「メルシャン藤沢工場 オンライン開放祭」を今年11月に開催したり、藤沢市と連携したイベントをおこなったりするなど、ワインのコミュニティを活性化させる活動も積極的に行っています。

 

こうした活動に触れつつ、メルシャンのデイリーワインを味わえば、今まで以上に国内製造ワインの楽しさを実感できるはず。皆さんも豊富なラインナップからお気に入りの1本を見つけて、毎日の食卓に彩りを添えてみてはいかがでしょうか。

 

 

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ワインの聖地・勝沼。新酒を祝う「ド定番イベント」の事前キット内容が豪華すぎる!

日本ワイン発祥の地であり、生産量でも日本一の山梨県。なかでも甲州市・勝沼町はその中心地として知られ、多数のぶどう畑やワイナリーがあります。特に有名なのは、日本初の民間ワイン醸造所「大日本山梨葡萄酒会社」をルーツとする「メルシャン」でしょう。

 

↑「シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー」。ぶどう畑、醸造所、ワイン資料館、テイスティングカウンターなどが充実した施設です

 

同社では毎年秋に収穫や新酒を祝うイベントとして1974年から「シャトー・メルシャン ハーベスト・フェスティバル」を開催してきましたが、ニューノーマル時代と言われる今年は内容を再設計。オンラインでも参加できる「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル2020」として開催されます。豊富なコンテンツのなかから、本稿ではその一部をご紹介。おうちでの楽しみ方をお伝えします。

 

 

無料でワインを学べるコンテンツが盛りだくさん

「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル2020」が開催されるのは、11月7日(土)、8日(日)の2日間。両日11:00~16:00に、冒頭の勝沼ワイナリーからYouTubeやZoomでライブ配信されます。

 

↑YouTubeからの閲覧は参加無料!

 

フェスのプログラムは多岐にわたります。たとえば、近隣のワイナリー醸造家とのトークショー、ワインセミナー、オンラインワイナリーツアー、ぶどうアートコンテスト、希少なワインが当たる「謎解き!シャトー・メルシャン」などなど。参加者とワイナリーが直接つながり、双方向で楽しめる企画が豊富に用意されています。

 

↑事前に行われたオンライン体験会にて。近隣ワイナリーのほか、自社の公認のクラブ活動のひとつにワインクラブがある、人気セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」も参加します

 

そして、このフェスを最大限に楽しむために用意されているのが、事前販売される「おうちで勝フェスキット」です。勝沼で醸造されたばかりの「シャトー・メルシャン 日本の新酒」(赤・白・ロゼから1本選択)や、「ユナイテッドアローズ×シャトー・メルシャン コラボ限定Tシャツ(フリーサイズ)」「おうちで勝フェスガイドブック」など、こちらも充実の内容。

 

↑キットは税込5500円。10月25日(日)までの注文でフェス前日の11月6日(金)までに届き、10月26日(月)以降の注文は、フェス開催日以降に届けられます

 

なお、「おうちで勝フェスガイドブック」は、家での楽しみ方や、勝沼の見どころ情報などが満載。さらに、「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」で使える500円クーポンと、キリンオンラインショップ「DRINX」で使える500円クーポンが付いているのもポイント。

 

↑クーポン付きでお得。また、フェス当日に正解発表される「謎解き!シャトー・メルシャン」の質問やヒントも載っています

 

 

ワインを傾けながら視聴すると楽しさも倍増

ひと足先に、キットのワインを付属のグラスで味わってみました。筆者のものはサンプルですが、実際には2020年仕込みの、ワイナリーでもすぐ売り切れる人気の新酒が届きます。選べるのは、マスカット・ベーリーA、甲州、ロゼの3種類。筆者は昨年醸造の「山梨甲州 2019」をテイスティングしました。

 

↑「山梨甲州 2019」。和柑橘や青リンゴといったさわやかな果実の香りが感じられ、心地よい酸としっかりとした厚みのある辛口ワインです

 

付属のグラスはシャトー・メルシャンのロゴが入ったもので、食洗器対応で割れにくいトライタン樹脂を採用。アウトドアやベランダ飲みなどでも活躍してくれる優れものです。

 

↑香りをしっかり受け止める万能タイプのデザイン。脚がないタイプで、収納や持ち運びにも便利です

 

事前体験会では、トークショーやオンラインワイナリーツアーも体験。Tシャツを着て、ワインを傾けながら視聴すると、五感で楽しめるぶん入ってくる情報も、よりダイレクトに感じられます。

 

↑ワイナリーツアーでは、通常公開していない地下セラー等を含め、造り手の視点で内部を紹介したあと、ライブで答えるQ&Aコーナーも

 

↑おつまみも用意してみました。こちらは発売40周年を迎えた「小岩井 オードブルチーズ」。熟成チーズと発酵バターによる濃厚なコクと素材のうまみが、果実味あふれるワインにマッチ

 

豊富なコンテンツのなかから一部を紹介しましたが、「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル2020」には事前の申し込みで参加可能な有料コンテンツや、人気のレストラン、現地で試飲しながら楽しめるイベントなど目白押し。公式サイトにはスケジュールを含めた全貌が載っているので、ワイン好きの人はぜひチェックを!

 

【URL】

https://www.fes.chateaumercian.com/

 

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シャルドネからピノ・グリまで。ブドウ品種と産地で選ぶ「白ワイン」

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。

 

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただいています。前回はスパークリングワインをテーマにしましたが、今回は「白ワイン」。

【関連記事】
シャンパンからゼクトまで網羅。製法やブドウ品種も様々な「スパークリングワイン」の基礎知識

 

第4回 白ワインの代表品種と選び方

週末の献立はなんですか? 美味しい白ワインを1本冷やしておくだけで、献立を考えるのもなんだか楽しくなるような気がしますよね。白ワイン、とひと口に言っても、辛口から甘口まで、爽やかなタイプから芳醇なものまでさまざまな味わいがあり、食事を通して気軽に楽しめるという点も、白ワインの魅力のひとつかと思います。今回は、品種ごとにいくつか白ワインをご紹介しますので、好みのタイプに出会う一助になりましたらうれしく思います。

 

「シャルドネ」
世界中で栽培される、もっとも有名な白ブドウ

シャルドネは、世界でもっとも知られた白ワイン用の品種です。産地はフランス・ブルゴーニュが有名ですが、米・カリフォルニアでももっとも多く栽培されている白ブドウで、ブドウ栽培地の辺境を除けば世界中で、もちろん日本でも生育されています。ワインラベルには、フランスのシャブリ、ブルゴーニュ、マコネ(最近では「Bourgogne Chardonnay」表記もありますが)以外では、おおむね「Chardonnay」と品種表記がされています。

 

シャルドネの特徴をひと言で伝えるのは難しいのですが、「リースリング」や「ゲヴュルツトラミネール」などの品種に比べ、独自の強い芳香をもたないことから、醸造家にとって思うような白ワインになりやすい品種とも言えます。つまりシャルドネは、強い個性を持たないことが個性になっているのです。

 

スパークリングワインに適していることは、さまざまな産地で証明されていますし、フレッシュで爽やかなシャルドネもあれば、重厚で芳醇なシャルドネ、一部では甘口も造られています。ただ、個人的な見解では、多くの人がシャルドネに期待しているのは“辛口”であること。価格が上がれば上がるほど、オーク樽で熟成させたリッチなタイプになるのは、世界共通の傾向かと思いますが、温暖な産地では果実味豊かに、冷涼な産地ではより爽やかさのある白ワインになります。シャルドネのニュートラルな性格と合わせて、さまざまな産地の風土を反映することも、世界中に広まった要因のひとつかもしれません。

 

ワイン選びに迷ったら、さまざまなワイン産地のシャルドネを楽しんでみるのも、ひとつのワインの入り口かもしれません。ワインショップの棚にシャルドネが並んでいないことは、まずありえません。それだけ身近で、多くの方に広く愛される品種がシャルドネです。


「Chablis Terroir de Fye2018 / Patrick Piuze(シャブリ テロワール・ド・フィエ2018 / パトリック・ピウズ)」
希望小売価格=4200円

【Info】
・生産国=フランス
・ブドウ品種=シャルドネ
・輸入元=ヴァンクロス

 

「ソーヴィニヨン・ブラン」
草原やグレープフルーツのような爽やかな香り

フレッシュで爽やかな白ワインを求めているなら、ソーヴィニヨン・ブランを手に取ってください。シャルドネに次ぐ有名国際品種ですが、フランス・ロワールのサンセールや、プイィ・フュメなどの産地を除いて、樽熟成させることは珍しく、また比較的若いうちに楽しむワインが多く造られています。

 

フランスでは(下写真の「トゥーレーヌ」を含め)ロワール川流域が主要栽培地域ですが、ニュージーランドでも成功を収めています。日本で、というより世界中でと言っていいでしょう、いくつかの豊かな果実味のニュージーランド産ソーヴィニヨン・ブランが親しみやすく、ちょっとしたブームになった時期もありました。ニュージーランドが新しいワイン産地として世界的に認知されるきっかけにもなった白ワイン品種が、ソーヴィニヨン・ブランと言っても過言ではありません。機会があれば、品質も安定したワインも多いので一度試してみてください。

 

フランスや北イタリアでは、青々とした爽やかな白ワインに、カリフォルニアやオーストラリアなどの温暖な地域では、ボリュームのあるグレープフルーツやパッションフルーツのような味わいの白ワインになります。ワインを選ぶ際に、その産地が温暖な地域なのか、涼しいイメージなのか思い浮かべてみると、ワイン選びの精度が高まるかもしれません。


「Touraine Chenonceaux2016 / Courtault Tardieux(トゥーレーヌシュノンソー2016 / クルトー・タルデュー)
希望小売価格=3300円

【Info】
・生産国=フランス
・ブドウ品種=ソーヴィニヨン・ブラン
・輸入元=ヴァンクロス

 

「リースリング」
その“響き”は白ワインのなかでも格別に香り高い

繊細で香り高く、シャープな辛口から蜂蜜のような甘口まで、さまざまな表情を見せてくれるのが、リースリングというブドウ品種です。特徴としては、すがすがしくさえ感じられる香りと、鮮烈な酸味が挙げられます。そのため、辛口に仕上げれば、フレッシュでのびやかでシャープな印象の白ワインに、甘口に仕上げれば、酸が下支えする品のある白ワインになります。

 

ドイツを中心に、フランスではアルザス、オーストリアなどのヨーロッパの産地に加え、オーストラリアなどでも栽培されています。

 

リースリングという品種には、白ワインの魅力がこれでもかと詰まっています。時に可憐な白い花の香り、時に芳香豊かなバラ、奥ゆかしい桃のような繊細な果実感。ワインに好奇心を持って楽しめる方は、初心者でもリースリングに挑戦してはいかがでしょうか? リースリングという品種ひとつとっても、ワインは幅広く、奥深いものだと思います。きっとさまざまなリースリングを楽しめるようになった頃には、ワインの魅力にどっぷりとはまっているのではないでしょうか。

 

もしもあなたがリースリングから造られた白ワインが好きになったとしたら、「リースリングが好き」というフレーズはあなたのことを知ってもらえる使いやすい言葉かもしれません。嫌みなく聞こえ、ちょっとセンスのある台詞のように感じるのは私だけでしょうか?


「Estate Rauenthal Resling2018 / Georg Breuer(エステート ラウエンタール リースリング2018 / ゲオルグ・ブロイヤー)」
希望小売価格=4000円

【Info】
・生産国=ドイツ
・ブドウ品種=リースリング
・輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

「ピノ・グリ」
ピンク色のブドウから造られる白ワイン

“グリ”とはグレーの意味で、黒ブドウ「ピノ・ノワール」の変異種として、ピノ・グリがあります。実際にはピンク色、バラ色、藤色のように表現される色の果皮をもつブドウです。ピノ・グリは糖度が上がりやすく、早飲みの爽やかなタイプもありますが、アルコール度数が高め(13.5〜14%程度)の辛口が、個人的にはおすすめ。よく“食事を通して楽しめる白ワイン”と話題になることがありますが、ピノ・グリの完熟した辛口はうってつけではないでしょうか。

 

フランス・アルザスやドイツ、イタリアといったヨーロッパ産地に加え、アメリカのオレゴンで、白ワインの代表的な品種になっています。アルザスでは、甘口ワインとしても素晴らしいワインを産み出しています。イタリアでは「ピノ・グリジオ」と呼ばれ、北東部フリウリの爽やかなスタイルのイメージがあるため、アルザス以外の産地ではピノ・グリ、ピノ・グリジオの表記に迷う生産者もいます。

 

樽のニュアンスではなく、果実そのもののボリュームがピノ・グリの特徴であり、魚介だけではなく、鶏肉を使った料理など、フードフレンドリーなところが魅力的な白ワインです。


「Pinot Grigio2017 / Nals Margreid(ピノ・グリジオ2017 / ナルス・マルグライド)
希望小売価格=3000円

【Info】
・生産国=イタリア
・ブドウ品種=ピノ・グリジオ
・輸入元=ミレニアムマーケティング

 

白ワインの選び方

「ワイン選びって難しい」そう思っている方は多いでしょう。普段、お客さまと接していても、よくそういったお声を伺います。ワインはお酒の中でも、味わいの幅がとくに広いものです。それだけに、自分を含め、ワインに普段から親しんでいる人でも、ワインショップの棚から、その日の気分にあったベストな一本を選ぶのは、難しいことだと思っています。同じ銘柄でさえ、何本もテイスティングしていれば一本一本に差があるのです。

 

ですが、私自身がワインを難しいものだと思っていると、なかなかワインに親しむ方も増えないのではと、心配になります。そこで、ご提案です。シンプルに「X軸を産地、Y軸をブドウ品種」と分類して、選んでみてはいかがでしょうか? 産地・生産国は、例えば温かい、もしくは寒い国地域であるとか、内陸にあるだとか、海に近いであるとか。

 

ちなみに、ワインのラベルに品種の表記がされるようになったのは、ここ半世紀ほどのことです。それ以前は基本、エチケットには原産地の表記しかされていませんでした。その土地ごとに適したブドウ品種が植えられていて、ブルゴーニュであるとか、キャンティであるとかそれぞれの産地の味わいがありました。そしてそれは、今も大きくは変わっていません。

 

今回は、代表的な品種だけを挙げました。どれも世界中で栽培されているため、できあがる白ワインにはその土地特有の味わいを内包していてひと口には言えませんが、やはり品種自体の個性はあるものです。そのなかで、お好みのX軸とY軸を見つけられれば、ワインがより身近なものになるかもしれません。機会があれば、はじめにお伝えしたように週末の献立から、ワインを1本選んでみてはいかがでしょうか?

 

ヨーロッパに比べ、日本やアメリカは一日のなかで食事に割く時間が短いと言われています。ワインの魅力とは、シンプルにいえばワインのある暮らしの豊かさです。一杯のグラスに新鮮な感動を見つけたり、ひと皿の料理を素直においしいと喜んだり、そのささやかな感動をおしゃべりしながら伝え合ったり。ゆっくりとした食事の時間にワインがある。そんな週末はいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/

 

「オーガニックワイン」がグッと身近に。メルシャン新商品は味も価格も「やさしい」

新型コロナウイルスは消費者の行動や心理にも影響を与えています。そのひとつが、エシカル消費の隆盛。グルメにおけるエシカル(道徳的・倫理的)な選択のひとつは、オーガニックな食品を摂取することです。

 

そんな時流を受けて、メルシャンから画期的なオーガニックワイン「ビストロ オーガニック」と「オーガニック スパークリング N…」が9月1日に登場しました。自分はもちろん地球にもやさしいワインについて、開発の背景と実飲レポートをお届けします。

 

↑「ビストロ オーガニック」(写真右)と「オーガニック スパークリング N…」(写真左)。身近にオーガニックワインを楽しめる新商品です

 

日本でもシェア拡大なるか?

近年、様々な食品ジャンルで“オーガニック”への関心が高まっていますが、これは何も日本に限った話ではありません。オーガニック食品は世界的にブームになっています。

 

「健康」や「環境」への意識が強まるなか、ワイン市場においてもオーガニックのシェアは伸長中。たとえばワインで有名なフランスでは、2023年に消費されるワインのうち、5本に1本がオーガニックワインになると予想されています。

 

そのほか、ドイツやイギリスもオーガニックワインへの需要が高いのですが、特にスウェーデンやフィンランドなどの北欧は世界でも屈指。とあるビオワイン(有機栽培のぶどうで造られたワイン)の団体の調査によると、スウェーデンで飲まれているワインの半分がオーガニックなのだとか。

 

↑オーガニックワインはヨーロッパを中心に世界的に人気です(メルシャンの新商品発表会の資料より)

 

そしてオーガニックワインが支持される最大の理由は、おいしいから。味の基準は主観的な要素を含みますが、実際に筆者の周囲でも「オーガニックワインはおいしい」という声は多いです。

 

オーガニックワインへの注目度が世界的に高まっているなか、まだまだ日本では、特に20~30代のワイン消費は伸び悩んでいます。メルシャンの調べによると、その一番の理由は、味でも価格でもなく「何を選んでいいか分からない」からのよう。

 

↑「コロナ禍の経験で、人や社会・環境に配慮した商品への興味関心の度合いは変化したか」に対する調査では、20~30代のほうが全世代平均より強いという結果が出ています

 

その一方で若者たちのエシカル消費への関心は高く、従来のオーガニックワインの「価格が高い」「購入できる店が近くにない」という課題を解消できれば、ヒットする可能性は大いにあります。

 

そこに目を付けたメルシャンがリリースしたのが、今回紹介する「ビストロ オーガニック」と「オーガニック スパークリング N…」です。「おいしく気軽に楽しめるデイリーなオーガニックワイン」という従来にないコンセプトを打ち出して、シェア拡大を図ります。

 

和の料理にも合う

それでは、実際にメルシャンの新商品を飲んでみましょう。まずは「ビストロ オーガニック」から。「メルシャン ビストロ」シリーズは、1995年に発売されたロングセラーブランド。今回はそのオーガニック版として、白と赤がリリースされました。

 

↑こちらが「ビストロ オーガニック」。どちらも内容量は720mlで、参考価格は税抜600円前後。アルコール度数は11%です

 

まず特徴的なのはペットボトル入りであること。これはコルク栓を開けたり、ビンを捨てたりするのが面倒だという同社のアンケートの声を反映したものかもしれません。原料はもちろん、無農薬の有機栽培ぶどう。メルシャンの藤沢工場で丁寧に製造された国内製造品です。

 

↑日本人の好みに合わせた、果実味豊かなオーガニックワインです

 

生臭さを引き起こす物質を軽減するメルシャン独自の製法「フードマッチ製法」が採用されていて、ふだんの食事に合わせやすいのも特徴。家庭的な和風の料理にもマッチします。

 

↑和の料理にも合わせやすく、毎日の食卓を彩ってくれます

 

↑白は味わいも香りもフルーティで、スッキリとやわらかい口当たりを感じます

 

↑赤はスパイシーさと甘い香りが同居しながらも、心地よい飲み味になっています

 

続いては「オーガニック スパークリング N…」です。スペイン産の有機栽培ぶどうを100%使用して、こちらも藤沢工場で製造されたスパークリングワインです。

 

↑「オーガニック スパークリング N…」はビン入りです。内容量500mlで、アルコール度数12%。参考価格はこちらも税抜600円前後です

 

商品名の「N…」には、「Neo(新しい)」、「Natural(自然な)」、「Non chemical fertilizers(化学肥料未使用)」の、3つの意味が込められているのだそう。

 

↑白とロゼの2種類がリリースされました

 

「オーガニック スパークリング N…」には、欧風のおつまみを合わせてみました。スッキリとした泡のタッチと、ワイン自体の爽やかな果実味が相まって、料理もお酒も進みます。

 

↑しっかり味の付いた欧風おつまみをチョイスしました

 

↑白は全体的にドライな味わいながら、柑橘系のフレッシュな香りが楽しめます

 

↑ロゼは中辛口。凝縮されたベリー系の香りと酸味がいいバランスです

 

どのワインも、ふだん使いとして楽しむことを想定して造られているだけあって、料理との相性は抜群。甘すぎず・辛すぎずで飲みやすく、多くの人の味覚に合うでしょう。

 

↑味わいも価格もデイリーワインにぴったり。好きな料理と合わせてみてください!

 

いくらエシカル消費が世界的に増えているといわれても、自分のライフスタイルを大きく変えるのは難しいところ。オーガニックワインなどをきっかけに、気軽にその価値観に触れてみるのは、導入としてはアリでしょう。

 

もし自分にも地球にもやさしい暮らしを実現したいなら、いつものワインをメルシャンのオーガニックに変えてみるところから、スタートしてみてはいかがでしょうか。

 

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シャンパンからゼクトまで網羅。「スパークリングワイン」の基礎知識

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。

 

第1回は「ワインボトルの開け方」、第2回は「ワインの注ぎ方」を、宮地さんに指南していただきました。第3回となる今回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただきます。

【第1回】シールの切り方やコルクの抜き方は?今さら聞けない「ワインボトルの開け方」

【第2回】注ぐ量は? ボトルは片手で持たないとダメ? 今さら聞けない「ワインの注ぎ方」

 

第3回 スパークリングワインの製法と種類

ワインには、泡のない「スティルワイン」と発泡性の「スパークリングワイン」があります。泡があるということは想像以上に香りや味わいに大きく影響を与えるもの。気が抜けて泡の立たないビールやコーラを飲んだことがあれば、キンキンに冷えてガスがふんだんに含まれた状態とのおいしさの違いは、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。

 

さらに、スパークリングワインには産地や製法に多くのバリエーションがあります。今回は5つの製法と、5種類のワインを紹介しましょう。ただしもちろん、世界中にはこれだけではなくさまざまな個性のスパークリングワインが存在します。

 

また、「シャンパーニュ」(シャンパン)というと高級なイメージがあるかもしれませんが、産地のひとつに過ぎず、またハイブランドだけがスパークリングワインの魅力ではないのです。例えば1000円以下のスパークリングワインでも、お決まりのビールの代わりにこれで乾杯すれば、食卓にいつもと違った彩りを添えられるかもしれません。2000円~3000円前後の価格帯になれば、多種多様なスパークリングワインがありますから、ささやかなお祝いの席にぴったりでしょうし、ホームパーティーやBBQにお土産として持っていけば喜ばれるでしょう。

 

ワインショップの棚にはいろいろなスパークリングワインが並んでいて、もっともハズレが少ないのも、スパークリングワインの特徴です。そう考えると“ワインの入り口”にうってつけなのは、スパークリングワインなのかもしれません。

 

スパークリングワインの製法

  1. トラディショナル方式(瓶内二次発酵)

ワインは醸造酒で、アルコール発酵をさせて作ります。最初の発酵である“一次発酵”を終えたワインを瓶に入れ、糖分と酵母を加えて栓をします。すると瓶のなかで二度目の発酵“瓶内二次発酵”が始まり、炭酸ガスが発生します。瓶のなかに閉じ込められた炭酸ガスがワインに溶け込むことにより、きめの細かな泡を持ったワインが造り出されます。
産地によって期間の長さに違いはあるものの、瓶内でワインを澱(おり)とともに熟成させ、いわゆる“ブリオッシュのような”と表現される香ばしい風味をワインにもたせるのも、この製法の特徴です。

 

  1. シャルマ方式(タンク内二次発酵)

一次発酵を終えたワインを密閉式タンクに移し、糖分と酵母を加えて二次発酵を行う製法です。瓶内二次発酵に比べ、一度に一定量を生産することができるため、手間とコストの面で優れています。
ちなみにシャルマ方式とは、1910年にフランス人のユージン・シャルマが考案し命名されたものですが、1896年にイタリア人のフェデリコ・マルティノッティが実用化に成功していたという説もあります。こういった事柄からも、ワイン生産において今よりもフランスがリーディングカントリーだったことが伺えます。

 

  1. トランスファー方式

瓶内二次発酵で炭酸ガスを発生させたのち、一度密閉タンクにワインを移し、まとめて澱引き(澱を取り除くこと)を行う製法です。トラディショナル方式では瓶口に澱を集め、1本づつ澱引きを行いますが、トランスファー方式ではその工程をまとめて行うため、コストと手間を省略することができます。

 

  1. リュラル方式(アンセストラル方式)

一次発酵が完全に終わる前に瓶詰めし、発酵を継続したまま瓶内で炭酸ガスを発生させワインに溶け込ませます。フランスの「ペティヤン」(微発泡性ワイン)を始め、現在では小規模な生産者を中心にこの製法でスパークリングワインを造る生産者も増え、見直されている製法とも言えます。

 

  1. 炭酸ガス注入方式

スティルワインに炭酸ガスを注入して、人為的にスパークリングワインを造ります。コスト面で安価に仕上がるため、大量消費用スパークリングワインに用いられる製法です。

 

次のページでは、産地とそれぞれの呼び名や特徴、使用するブドウ品種などを、具体的におすすめの銘柄を挙げながら解説していただきます。

 

スパークリングワインの種類と特徴

産地については、具体的な銘柄を挙げながら説明していきましょう。スパークリングワインをより日常で楽しんでいただくために、比較的リーズナブルなワインを選びました。

スパークリングにはいろいろな呼び名があることは、是非とも覚えておいてください。また、生産国・地方やブドウ品種からでもイメージを膨らませることができると思いますが、わからない時には購入時に定員さんに相談するのもいいでしょう。

 

「シャンパーニュ」

シャンパーニュ地方で造られなければシャンパーニュにあらず

フランス北東部シャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインを、シャンパーニュと呼びます。日本ではシャンパンとも呼びますが、これはイギリスの英語読みがシャンペンであることに由来するようです。

 

シャンパーニュは、現在では世界最高のスパークリングワインの産地でもあり、ブドウの価格の下限が世界でももっとも高価な産地でもあります(ワインの価格はブドウの価格とセミイコールと言っていいと思います)。もともとはブドウ産地としては最北(ドイツとイギリスなどは例外)に当たり、スティルワインの生産に不向きだったことが、この地域のスパークリングワインを特別なものにしました。

 

一般的には黒ブドウである、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、白ブドウであるシャルドネの3品種の果汁を使い、ワインを醸します。そして、瓶のなかで糖分と酵母を加え再び発酵させて産まれた炭酸ガスがワインと溶け込むことによって、あのグラスを立ち上る泡が造られます。つまりシャンパーニュの泡は、ブドウ果汁がワインになる過程で産まれるガスがそのまま一緒に瓶に内包され、ワインに溶け込んでいるということになります。この3品種のブレンドと瓶内二次発酵は、世界中のスパークリングワインのフォーミュラ(基本形)となっています。

 

また、シャンパーニュの立ち上る泡を「ペルル(真珠)」、液面で丸く輪状に広がる泡を「コリエ(首飾り)」とフランス語で呼びます。こういったシャンパーニュの華やかなイメージは、お祝いごとなど特別な日を楽しむのにうってつけ。気分を高揚させてくれるワインとして人気を集めています。

「Brut Tradition NV/Janisson&Fils(ブリュット・トラディションNV/ジャニソン&フィス)」
希望小売価格=6000円

【Info】
・ワイン名=ブリュット・トラディションNV
・生産者=ジャニソン&フィス
・生産国 / 地域=フランス / シャンパーニュ地方ヴェルズネイ
・ブドウ品種=ピノ・ノワール70%シャルドネ30%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=ヴァンクロス

 

「プロセッコ」

実は世界一売れている、イタリアのスパークリングワイン

イタリアで造られるスパークリングワインは「スプマンテ」(後述)と呼ばれますが、中でも水の都ヴェネツィアで愛されるのがプロセッコ。2013年にシャンパーニュを抜いて世界でもっとも売れているスパークリングワインになりました。プロセッコに85%以上使われるグレーラは、フローラルで柔らかなワインになります。

 

プロセッコは、前述のシャルマ方式と呼ばれるタンク内二次発酵で造られます。シャンパーニュが瓶ごとに再度の発酵で炭酸ガスをワインに溶け込ませていたのと同様の工程を、大容量の密閉タンクの中で行うため、シャンパーニュに比べリーズナブルな価格でワインショップの棚に並びます。またワインの甘さの指針である残糖も大半のシャンパーニュが12g /L以下であるのに対し12g/L以上のものが多く、アルコール度数も12.5%前後のシャンパーニュに対し11%前後、熟成期間の違いから酵母由来のブリオッシュのような香りも産まれません。

 

こうして甘やか、優しい飲み口で軽やかというスタイルのプロセッコは、気軽にワインに親しむ文化を持つヨーロッパを中心に大流行しています。酔うためというより、少し気分を上げたい、理屈抜きで気軽にワインを楽しめるという点で、プロセッコはとても現代的なワインと言えます。例えば「ワインに氷を入れる」なんていうと抵抗がある人もいるかもしれませんが、プロセッコはそんな堅苦しいことも考えなくていいほど包容力のあるワインなのです。

 

若い世代のお酒離れが言われて久しいですが、プロセッコスタイルのワインがより広まり、さまざまな楽しみ方がなされれば、「ワインは難しい」というイメージを覆すことができるのでは、と個人的には期待しています。

「Prosecco Extra Dry NV/SanGiovanni(プロセッコ エクストラ・ドライNV/サン・ジョバンニ)」
希望小売価格=2600円

【Info】
・ワイン名=プロセッコ・エクストラ・ドライNV
・生産者=サンジョバンニ
・生産国 / 地域=イタリア / ヴェネト州コネリアーノ
・ブドウ品種=グレラ100%
・製法=シャルマ方式(タンク内二次発酵)
・輸入元=MONACA

 

「スプマンテ」

地方ごとの多様性こそがスプマンテの魅力

イタリアを代表する高品質スプマンテとして、ロンバルディア州東部で造られる「フランチャコルタ」(北イタリアのロンバルディア州で造られるスプマンテ全般を指す)があります。シャンパーニュと同様の品種製法により、高品質スパークリングの評価を勝ち取っているワインです。

 

よく「イタリアワインは品種が多すぎてわかりにくい」といった声を聞きますが、裏を返せばイタリアほど州によって栽培品種が異なり、地方ごとに料理と結びついたさまざまなワインが造られている国は、他にありません。なんと、イタリア全土で2000以上のブドウ品種が栽培されているのです。

 

つまり、イタリアのスパークリングワイン=スプマンテを特別にしているのは、その多様性にあるのではないかと個人的には感じています。下の写真は、トスカーナ州モンタルチーノで栽培される品種、サンジョベーゼを使ったロゼスプマンテ。サンジョベーゼはトスカーナの銘醸ワイン、キャンティやブルネッロの主要品種です。

 

同じようにさまざまな州で有名無名に関わらず、土地土地のブドウ品種でスプマンテが造られているのです。そう思うとイタリア語のスプマンテという語感には、包容力や多様性といった魅力的なイメージを感じずにはいられません。

「Spumante Rosato Brut NV/Ridolfi(スプマンテ ロザート・ブリュットNV/リドルフィ)」
希望小売価格=2500円

【Info】
・ワイン名=ロザート・ブリュットNV
・生産者=リドルフィ
・生産国 / 地域=イタリア / トスカーナ州モンタルチーノ
・ブドウ品種=サンジョベーゼ100%
・製法=シャルマ方式(タンク内二次発酵)
・輸入元=ミレニアムマーケティング

 

「カヴァ」

スペイン代表のカヴァは世界3大スパークリングワインのひとつ

カヴァとは、スペインで瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインのこと。もともとカヴァの規定がブドウの原産地ではなく製法を定めたものだったこともあり、9割以上がカタルーニャ産ですが、その他内陸や沿岸部などそれ以外のさまざまな地域でも造られています。

 

シャンパーニュ、プロセッコに次いで消費されている世界3大スパークリングワインの一角、という言い方もできます。カヴァとシャンパーニュ(及びその他のピノ、シャルドネ系のスパークリング)との大きな違いは、最北のワイン産地シャンパーニュに比べ、スペインはより南の温暖な地域であり、栽培に適した品種が異なっていることではないでしょうか。

 

主要3品種はすべて白ブドウで、強いフレーバーがカヴァらしさを演出するチャレッロ、ニュートラルでバランスを取るマカベオ、デリケートな酸味をワインに加えるバレリャーダ。それぞれ南品種らしい果実感とアロマティックなニュアンスが特徴です。そのほかにシャルドネ、スビラ・パレンの白ブドウ、ガルナッチャ、モナストレル、トレパ、ピノ・ノワールの黒ブドウが、原産地呼称の認可品種となっています。

 

現地でも最大手となる「フレシネ」はサントリー、「コドルニュー」はメルシャンといった大手で取り扱われ、日本でもコンビニエンスストアやスーパーマーケットにも並ぶ親しみやすいワインです。なにより品質の割に価格がリーズナブル。ワインに親しむ入り口のひとつになる可能性は充分です。

「Cava Tempus Brut ReservaNV/Torre Oria(カヴァ テンプス・トレス・ブリュット・レゼルバNV/トレ・オリア)」
希望小売価格=1500円

【Info】
・ワイン名=テンプス・トレス・ブリュット・レゼルバNV
・生産者=トレ・オリア
・生産国 / 地域=スペイン / カタルーニャ州
・ブドウ品種=マカベオ90%パレリャーダ10%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=東亜商事

 

「ゼクト」

ビール好きのドイツ人はスパークリングワインの消費量も世界一

ドイツといえばビール大国というイメージがありますが、お祝いの席にはスパークリングワインが欠かせません。意外にもスパークリングワインの消費量は世界一、一人当たり年間4本以上というのは日本人の年間ワイン消費量と同程度です。

 

ゼクトとはドイツにおけるスパークリングワインの総称ですが、オーストリアやハンガリー、チェコといった近隣のエリアでも同様に呼びます。

 

近年、ドイツやオーストリアでは、シャンパーニュに倣って瓶内で酵母の澱と長期間に渡って熟成させる高級レンジのゼクトが注目されていますが、やはり消費量が多い要因は何といっても、低価格帯ながら高品質な点にあります。シャンパーニュと同様の品種を使用することもありますが、スプマンテのように地域ごとの固有品種が使われていることも魅力のひとつです。

 

日本のワインショップに並んでいるゼクトにはまだまだ限りがあると思いますが、コストパフォーマンスもよく、個性的なものも多いため、品ぞろえの良いお店では思い切ってゼクトを探してみるのもおすすめです。カヴァは日本ではリーズナブルで美味しいというイメージを獲得しましたが、個人的にはゼクトももっと認知が広がって、幅広いワインが輸入されることを願っています。

「Bacharacher Riesling Sekt Brut2014/Ratzenberger(バッハラッハー・リースリング・ゼクト・ブリュット2014/ラッツェンベルガー)」
希望小売価格=3700円

【Info】
・ワイン名=バッハラッハー・リースリング・ゼクト・ブリュット2014
・生産者=ラッツェンベルガー
・生産国 / 地域=ドイツ / ミッテルライン
・ブドウ品種=リースリング100%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

スパークリングワインを楽しむ際には、よく冷やしてください。温度が高いとガス圧でワインが吹きこぼれやすくなるのと、ぬるいビールや炭酸ジュース同様、温度が味わいに大きく影響を与えるのがスパークリングワインです。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/

 

999円で高級シャンパンに匹敵する「奇跡の1本」を発見! カルディで見つけた「1000円以下のスパークリングワイン」飲み比べ

暑い日が続きますね。そんなときは、キリリと冷やした泡系のワインはいかがでしょう。というわけで今回は、カルディコーヒーファームで1000円以下のスパークリングワインを厳選。実際に試飲して、美味しかった順のランキング形式でご紹介します。さあ、1位に輝いたワインはどれでしょうか?

【第3位】

炭酸の刺激は控えめでガブガブ飲める!

リースリング・スパークリング

エクストラ・ドライ(白・発泡) 750ml

877円(税込)

ぶどう品種「リースニング」を使用したドイツ産のスパークリングワイン。発泡といっても炭酸の刺激は控えめで、お腹が膨れてしまうのがイヤな人には飲みやすいはず。エチケット(ラベル)には「エクストラ・ドライ」とありますが、実際はしっかりと果実の甘みがあり、奥の方からかすかにスパイシーな風味も感じられます。味わいは軽めで余韻も短く、ガブガブ飲めるのがいいところ。よく冷やして週末の昼間などに楽しみたいですね。

 

【第2位】

スペイン・バレンシアを感じさせるポップな甘さが魅力!

ピキートス

モスカート(白・微発泡) 750ml

922円(税込)

スペイン・バレンシア産のモスカート種を使用した微発泡ワイン。なんでも樹齢40年以上のぶどうだけを手摘みで収穫し、使用しているのだとか。トロピカルフルーツを感じさせるようなポップな甘さが印象的で、バレンシアの太陽を感じさせるような陽気な味わい。軽い苦味が余韻として残るので、極めてバランスが良く感じられます。泡立ちは実に繊細で酸味も爽やか。飲みやすいので、特に女性にオススメの1本です。最初の乾杯にもぴったりですが、食後のスイーツと合わせてもいいかも。

 

【第1位】

甘さ、酸味、香り…全てが高レベル! この価格では奇跡といえる1本

タタチラ

ハウス ブリュット(白・発泡) 750ml

999円(税込)

シャルドネ90%、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランを使用したオーストラリア産の辛口スパークリングワイン。上品な甘さに洗練された酸味、そして優雅な香り。全てが高いレベルでバランスが取れた素晴らしい1本です。特にジューシーでフレッシュな果実感が際立っており、この価格では奇跡ともいえるほどのデキ。「高級シャンパンにも引けを取らない味」と言っても過言ではありません。筆者なら、アペリティフ(食前酒)として生牡蠣などのシーフードと楽しみたいですね。

今回は、キリッとした辛口タイプの「タタチラ」を1位としましたが、他の2本も個性豊かで、それぞれ違った魅力がありました。ぜひ試してみて、好みの1本を見つけてくださいね!

注ぐ量は? ボトルは片手で持たないとダメ? 今さら聞けない「ワインの注ぎ方」

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて各テーマ手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。

 

第1回は「ワインボトルの開け方」を、コルクタイプ、スクリュータイプ、またスパークリングワインのそれぞれについて、宮地さんに解説していただきました。第2回のテーマは、こちらです。

【関連記事】
シールの切り方やコルクの抜き方は?今さら聞けない「ワインボトルの開け方」
https://at-living.press/food/17760/

 

第2回 スマートな「ワインの注ぎ方」

今回はワインを注ぐコツ。ということで、私からはじめにお伝えしておきたいのは、生きたワインは感情を投影するということです。思いやりをもって注げば、優しく、ふくよかな味わいになり、ワインを試すような気持ちで注げば、味わいは閉じこもります。ワインと、そしてなによりグラスをご一緒に酌み交わす方への思いやりを意識して、より素敵なワインライフをお楽しみいただければと思います。

 

・スマートなボトルの持ち方

栓を開けたら、あとはワインを楽しむ時間。ワインは繊細な液体なので、優しく丁寧にボトルを手に取ってください。

 

Step1. ボトルを持ち上げる

無理をして、レストランサービスのように片手で瓶底を持って、という必要はありません。不安定に感じるようでしたら、片手をネック部分に添え両手でボトルを扱ってみてはどうでしょうか? ボトルによっては厚みも重みもあるタイプもありますし、両手で扱うことがマナーに反するということもありません。

 

Step2. ラベルを上にして、自分が持ちやすいように持つ

注ぐ際にボトルを持ち上げるときには、ラベル(エチケット)を上に向けます。ワインの銘柄がグラスの持ち主によく見えるように、また液だれによってラベルを汚したりしないための気遣いです。

 

ボトルの中のワインを意識して手に取れば、自然とスマートなボトルの扱いになります。安定した持ち方をした方が、ワインをこぼしたり、グラスのふちにボトルを当ててしまったりといったことのないように気配りをしてみましょう。

 

Step3. 白いナプキンを用意する

清潔なナプキンを用意しておきましょう。冷たく冷やしたワインボトルの結露を拭き取ったり、ワインを注いだ後、ボトルの口を拭き取ったりするのに便利です。

 

・スマートなワインの注ぎ方

続いて、グラスにワインを注ぎ入れます。

 

Step1. グラスがもっとも膨らんだラインのやや下を目安に注ぐ

通常サイズのワインボトルには750ccのワインが詰められています。一般的にレストランでは、おおむね6杯から8杯に分けて提供するので、グラスワインはおおよそ90ccから120ccの分量ということになります。

 

サイズ、容量にもよりますが、グラスのボウル部分の最も膨らんでいるラインのやや下あたりが100cc前後という風にデザインされたグラスが多いです。自宅のグラスで試してみると、感覚をつかみやすいかもしれません。

 

Step2. ボトルをグラスのふちに当てないよう注ぎ入れる

さぁ、ボトルからワインをグラスに注ぎます。注意するポイントは、ボトルをグラスのふちに当てないこと。ワイングラスは薄手に造られているものも多いので、ワイン同様繊細に扱いたいものです。

 

グラスを置いて、数センチ上からゆっくりと注ぐ、もしくはグラスを手に取って、斜めにした状態で丁寧に注ぐ方がこぼれることもありません。ここでも液体に意識を集中してボトルからワインをストレスなく移しかえるイメージを持ってみてください。

 

白ワインの酒石や赤ワインのオリ(澱)が瓶底にたまっていることもありますので、最後に注ぐ際はより丁寧に注ぐことを意識してみてください。ただグラスに入ってしまったからといっても、ワインの成分が結晶化、堆積したものですので害はありません。オリもワインの一部なのです。

 

ちなみに、注いでもらう側になった際に注意したいのは、グラスを手に取ったり、持ち上げたりしないこと。グラスを動かすとこぼれたり、ボトルがグラスのふちに当たったりします。注ぐ側としては、グラスは動かない方が注ぎやすいですから、何もしないのも気遣いというものです。

 

Step3. 注がれたワインをよく見る

グラスにワインを注いだら、液体を眺めてみましょう。白ワインならグリーンがかった淡い色合いや、濃密な金色かもしれません。赤ワインならフレッシュで鮮やかな透明感のあるものから、引き込まれるような深みのある濃い赤、古酒ならガーネットがかった経年を感じさせる色合いかもしれません。

 

ワインの味わいは他のどんなお酒よりも幅の広いものであるのと同時に、色彩もさまざまです。ひとつひとつグラスに注がれたワインを眺め、味わいと合わせて感想を伝え合うのは、ワインの楽しみ方の醍醐味といえます。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

途中下車してでも寄りたい、大森に「再誕」したコスパ優秀イタリアン

都内屈指の高級住宅地・山王があるかと思えば、フラッと寄りたくなる大衆酒場が立ち並ぶ。大森駅の周辺は、さまざまな文化が共存する独特の雰囲気が魅力的。今回はそんな大森らしい、カジュアルなのに本格派なお店「ピッツェリアグリル バッコ 大森」を紹介しましょう。

 

飲みにもゴハンにも。2フロアの“二面性”が新しい!

同店のオープンは1997年。地元住民に長年愛されてきたトラットリアが、今年7月にイタリアン酒場としてリニューアルオープンしました。お店は大森駅の北口から徒歩30秒の好アクセス。テラス席を備えたガラス張りの外観は開放感たっぷり。本場を思わせるライトイエローの色使いが印象的です。

↑店舗外観

 

お店は1FとB1Fの2フロア構成。1Fはカウンター席が中心で、おつまみや小皿料理とお酒を楽しめるバールスタイルです。その一方、広々とした地下は白を基調とした明るい空間。どちらかといえばお酒よりも料理を楽しむスペースです。

↑1Fカウンター席。写っているのはイタリアオタクな店長兼ソムリエの小島正博さん

 

1Fがバールなのに、地下に降りると子ども連れのファミリー層が多いのも面白いところ。今回は大森という街の特性やニーズからするとコチラでしょう、ということで(?)1Fに寄せた形で紹介していきます。

↑本場から取り寄せたピザ窯もかなりの存在感

 

 

フード・ドリンクどちらも優秀コスパの本格派!

フードメニューはピッツァとパスタ、そして小皿料理が中心。こだわりが随所に感じられるハイレベルな料理を「本当にいいの?」というくらいの値段で味わえます。まずは前菜、おつまみ系から何品かチョイス。

↑サンダニエーレ生ハム 518円

 

高級品として知られるイタリア産生ハムが、この低価格! 店内に原木があり、そこからカットして提供されます。切り方によって生ハムは味がかなり変わるとのことで、素材にも工程にも妥協がありません。

↑カウンター席の目の前にある、大きな原木

 

↑シチリア風ナスのカポナータ 410円

ナスのトマト煮込み。ドライトマトの甘酸っぱさの中に、ほのかに香るスパイスがアクセント。

 

↑山盛りフライドポテト 626円

本格派のイタリアンながら、こういう定番つまみもあるのが、酒好きにはありがたいですね。

 

↑写真左は「ゼッポリーネ(海藻入り揚げパン)」、ワイングラスの奥は「白身魚のカルピオーネ(南蛮漬けのイタリア版)」ともに410円

 

人気のピッツァ、パスタからもイチオシをピックアップします。手作りの本格ナポリピッツァは、生地からしてこだわりが満載。これは国内で初めて国産(北海道)の小麦だけで作られたピッツァ専用の粉「江別製粉 100%HOKKAIDOピッツァ用粉」を使用。

↑ビスマルク Mサイズ1058円/Lサイズ1490円

 

これはイタリアのピッツァナポレターナSTG認定を受けた由緒正しい逸品でもあり、本場に負けないおいしさです。豊かな小麦の香りとモチモチの食感、香ばしい焼き目がたまりません。

↑カサレッチェ タコとアンチョビのトマトソース 1058円

 

他店ではなかなか味わえない、数字の「8」のような断面をしたショートパスタ「カサレッチェ」。独特の形状で、ソースによく絡みます。

 

 

ドリンクも豊富なラインナップ。「リモンチェッロサワー」や「かちわりワイン」など、イタリアン酒場らしい陣容です。

↑グラスワインは赤・白・泡それぞれ529円~。写真右は「リモンチェッロソーダ」529円

 

↑ジョッキにワインと氷を入れた「かちわりワイン」。こちらも赤・白・泡が各529円

 

ほかにも幻の黒毛和牛「尾崎牛」や、ハーブで育ったブランド鶏「華味鶏」がリーズナブルに味わえたりと、全体的なお値ごろ感はかなりのもの。アクセス、雰囲気、コスパ、どれも最高。地元の方はもちろん、沿線を利用する人なら、途中下車してでも寄ってほしいレベルのお店です!

 

 

【SHOP DATA】

ピッツェリアグリル バッコ 大森

住所:東京都大田区山王2-1-6 キャビックビル1F・B1F

アクセス:JR京浜東北線「大森」駅北口から徒歩1分

営業時間:11:30~15:00(L.O.14:30)/17:30~23:00(料理L.O.22:00 ドリンクL.O.22:30) ※金曜のみディナーは17:00~

定休日:火

格安スーパー&激安専門店で見つけた、真の「高コスパフード&ドリンク」がコチラです。

コストコ、ドンキ、業スー、OKストアといった総合格安店から、シャトレーゼ、茂蔵といった激安専門店まで駆け巡り、ベストバイな逸品が集結。どれも安いからとはあなどれない、真の高コスパフードです!

 

【その1】バランスが良く飲みやすいベルギー産の新ジャンル

コストコ
ベルジャンゴールド(24缶)
実売価格:1998円、1缶あたり83.25

高コスパの黒船といえばコストコ。数ある名作のなかで注目したいのは、ベルギー産の新ジャンルビール。麦のうまみと爽快な苦み、強めの炭酸感などが相まって飲みやすいです。

 

 

 

【その2】ラムレーズンが上品に香る大人のデザート

シャトレーゼ
ラムレーズンバー
実売価格:348円(1本)、68円(6本)

シャトレーゼは果物の宝庫・山梨が誇る高コスパパティスリー。お菓子のほかアイスも名作ぞろいで、特にラムレーズンバーの他社が追随できないレベルのクオリティと安さに驚かされます。

 

↑ラム酒が香る上品な風味のラムレーズンがたっぷり。口どけの良いバニラアイスとホワイトチョコのコーティングが絶妙なおいしさです

 

 

【その3】味付け不要で食べられる料亭レベルの濃厚な味わい

 

三代目茂蔵豆富
茂たま 枝豆(180g×2個)
実売価格:108

三代目茂蔵は、専門店が作るハイクオリティな豆腐を、仰天価格で提供する庶民の味方。本商品にはほのかに枝豆の味が付いており、濃厚かつクリーミー。何もかけずに食べてもおいしいです。

 

↑プルンとしたゼリーのような食感と、滑らかな舌触りで超絶品。2パックで1個というボリュームもうれしいです。プレーン味もあります

 

 

【その4】人気過ぎて品切れ店続出!約100円の個性派フレーバー

カルディコーヒーファーム
ナレッジ ライム塩胡椒/トムヤム塩(50g
実売価格:108

知られざる国内外の食材を中心に取り扱うカルディには、爆安の傑作が多数存在します。そのひとつが「ナレッジ塩シリーズ」。これまでの調味塩にはない個性と安さでネットでも話題です。

 

↑ライム塩胡椒はフルーティな香味、トムヤム塩はエスニックな味と鮮烈な辛さが特徴。ピリ辛エビ塩味もありますが、人気過ぎて品薄中

【その5】本格ナポリ風のモチモチなボリューム満点のピッツァ

業務スーパー
ピザマルゲリータ(25cm)
実売価格:321円

料理のプロはもちろん、家庭用でも使える大容量の格安フードが揃う業務スーパー。食べ応え満点の大きなピッツァは、イタリアメイドの本格派。パーティなどで活躍必至です。

 

↑ナポリピッツァを彷彿とさせる、もっちりとした生地。1枚300gで食べごたえ満点です。別途でバジルをのせると、さらにおいしくなります

 

 

【その6】ワンコインで味わえる一流ホテル同等のワイン

OKストア
デリ・ブティックワイン  赤(750ml
実売価格:409

OKストアは、信頼できる商品が他店を圧倒する価格で揃うスーパー。本商品は国内屈指のワインメーカー・メルシャンに「都内一流ホテルのハウスワインと同じものを」と依頼して作ったオリジナルです。

 

↑低価格帯のワインはスクリューキャップの商品が多いなか、コルク栓を採用。味も当然高品質で、果実味が凝縮。ほかに白とロゼもあります

 

 

【その7】プルプルなゼリータイプのソフトなエナジードリンク

ドン・キホーテ
エクストリーム ブラックアウトゼリー(180g
実売価格:125

“驚安の殿堂”を掲げるドン・キホーテ。PBにも力を入れており、このエナジードリンクはゼリーなのがポイント。あえて炭酸が入っていないので、疲れていても飲みやすいです。

 

↑プルプルのテクスチャー。炭酸すらキツく感じるときでもやさしく体内に吸収され、“もうひとがんばり”をサポートしてくれます

 

【その8】大きいサバがたっぷり入った辛くないカレー缶詰

ローソンストア100
サバカレー
実売価格:108

コンビニと100円ショップのいいとこどりといえるのがローソンストア100。目の付け所が秀逸な商品が多く、サバカレーの缶詰はつまみにもおかずにもなる万能アイテムです。

 

↑大サイズの切り身がしっかり入っており、単体でも満足感が高いです。ご飯にかければサバカレーになります。辛さはほぼなく、子どもでも食べられます

 

 

文/中山秀明

世界中から客が来る店「JULIA」に聞く、白ワインと食事が生む「ペアリング」の妙味

ここ数年、食のトレンドとしてよく耳にするようになったのが、「ペアリング」というキーワード。レストランで、料理のメニューとワインを客自身が選ぶのではなく、あらかじめシェフやソムリエがその相性を見極めた食事とワインが、1組ずつ提供されるスタイルのこと。5皿ならワインが5杯、8皿なら8杯、それぞれおすすめの組み合わせを楽しむというものです。

 

「マリアージュ」という言葉は聞き慣れていますが、これはフランス語で「結婚」という意味。それゆえ「マリアージュを探る」というと、なんだか少しかしこまった印象になります。“運命の出会い”のような、“その相手以外考えられない”というような。実際、マリアージュとペアリングのニュアンスの違いを、前者は合わさることで第三の新たな味わいを生み出すような組み合わせのこと、後者は単に相性という気軽な意味だ、という専門家もいるのです。

 

 

グラスに注がれる白ワイン。涼やかで、夏にもよく似合う

そういった、運命的に出会った一生の伴侶と新たな家庭を築くようなOnly oneの愛がマリアージュだとすれば、ペアリングはOne of themを楽しむ自由恋愛でしょうか。この相手もあの相手も、どちらも素敵。さらにワインに限定する必要もなく、ビールでも日本酒でも、シードルでも! 家庭で楽しむなら、やはり堅苦しいことは抜きに、後者のようなスタイルを楽しみたいものですね。

 

そこで、恵比寿にある今話題のペアリングレストランJULIAを訪ね、オーナーソムリエの本橋健一郎さんとシェフのnaoさんに、代表的な白ワインと、それぞれにおすすめのペアリング料理を提案してもらいました。

 

まず知っておきたい! 3大白ワイン用ブドウ品種

夏にキリリと冷やして飲みたい白ワイン。原料であるブドウ品種、産地、造り手によって異なる味わいになりますが、今回は分かりやすく“品種”で分類し、ペアリングのポイントを聞きました。

 

白ワイン用のブドウ品種といえば、「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」「リースリング」の3種が一般的。シャルドネは、フランス・ブルゴーニュ地方産が有名ですが、世界中のあらゆる国と地域で栽培されており、それぞれに特徴的な味わいが表現されるなかでも、共通のイメージはコクとまろやかさ。また、ソーヴィニヨン・ブランはフランス産のほか、ニュージーランドの代表品種としても知られ、共通したイメージはスッキリ感とはつらつさ。そしてリースリングは、ドイツなど冷涼産地に多く、フルーティーで飲みやすい甘口寄りのものから厳格で骨太な、ミネラルと酸を表現した辛口まで揃います。

↑左:「トレフェッセン エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング 2016」(アメリカ)、中:「ティンポット・ハット・マールボロ・ソーヴニヨン・ブラン 2017」(ニュージーランド)、右:「カーブドッチワイナリー・セパージュシリーズ・シャルドネ 2016」(日本)

 

早速、ホテルやレストランなどでソムリエとしての経歴20年以上という本橋オーナーに、自身が感じるこの3品種の特徴を聞きました。

 

「ソーヴィニヨン・ブランのイメージは昼、そしてシャルドネは夜のイメージでしょうか。ソーヴィニヨン・ブランは晴れた昼間の公園の芝生がよく似合う。屋外で飲みたいと思ったらシャルドネよりソーヴィニヨン・ブラン。これからの季節はBBQなどにもぴったりですね。シャルドネは、こっくりしっかり味付けしたお料理に。クリーム系やバター系など。赤ワインが苦手な方は、お肉料理にも合わせられる厚みのある白、シャルドネがおすすめですね」(本橋さん)

↑JULIAのオーナーソムリエ・本橋健一郎さん。個人的にはリースリングを好んでよく選ぶという

 

では、辛口から甘口まであるリースリングは、どう使い分けたらいいでしょう?

 

「リースリングは、僕にとっては一番使い勝手が良いブドウですね。自宅で良く作る餃子とか、中華系のお料理に合わせます。オイスターソースを使った野菜炒めや、麻婆豆腐にも。主にアジアンフードですね。生春巻きやパクチーにもいいです。日常の食卓には辛口のものが便利ですし、辛口だったらイメージはソーヴィニヨン・ブランに近いニュアンス。ラー油や豆板醤などで辛味をより強くした料理には、ちょっと甘口寄りのものを選んだら良いと思いますよ」(本橋さん)

 

JULIAでは、合計9皿ものペアリングコースが楽しめます。そのどれもがハッ!とするような驚きと楽しさに溢れていますが、それを演出する本橋オーナーの軽快なトークも欠かせない魅力。そんな本橋さん、さすがの表現でこの3品種を特徴付けてくれました。

 

「合わせるお料理をラーメンに例えると……、ソーヴィニヨン・ブランは塩ラーメン、シャルドネは味噌ラーメン、リースリングは坦々麺、ですかね!(笑)」(本橋さん)

 

実際に作ってみよう! JULIA考案のペアリング料理

JULIAの人気を支えるのは、女性シェフならではの感性を生かしたnaoさんの料理。そんな凄腕シェフの料理なんてマネできない……と思いきや、彼女自身も料理はすべて独学なのだとか! というわけで、家庭でも簡単に作れる2皿を、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランそれぞれの特徴に合わせて作っていただきました。

 

まずソーヴィニヨン・ブランに合わせたのは、「アボカドと生ハムのオープンサンド」。本橋さんが「昼間の公園の芝生がよく似合う」と教えてくれたように、naoさんもソーヴィニヨン・ブランのイメージはサンドイッチだそう。

↑アボカドとレモン果汁がアクセントとなることで、生ハム(肉類)にもソーヴィニヨン・ブランが合う

 

作り方はいたってシンプル。アボカドを潰して、レモン果汁と少しの塩を混ぜるだけのピューレをパンに塗り、サラダには市販のミックスリーフを使います。でもここからが、やはりプロのひと手間。ミックスリーフにはミントとディルをプラスし、さらに生ハムをのせて出来上がったら、全体にササっとレモンの皮をすりおろす。このミント、ディル、レモンがソーヴィニヨン・ブランとの距離をぐっと縮めるそう。これぞペアリングの極意!

↑最後にすりおろすレモンの皮は、色合い的にも美しく鮮やかなアクセントに

 

「ソーヴィニヨン・ブランと合わせるのは、やはり青い野菜ですね。これからの季節だったら枝豆にビールじゃなくて、ソーヴィニヨン・ブランでもいいかも。あとキュウリも使いやすいです。水切りしたヨーグルトと細かく切ったキュウリを合わせるだけで、何でもソーヴィニヨン・ブランに合う万能ソースになります。焼いたサーモンでも、粗挽きハンバーグでも。重ためのお料理でも、ぐっとソーヴィニヨン・ブラン寄りの味わいになりますよ」(naoさん)

 

続いて、シャルドネに合わせた料理は「サーモンチャウダー」です。

↑今回合わせたのは、日本・新潟のシャルドネ。チャウダーの旨味によく馴染む優しさがある

 

サーモンを皮目からちょっと多めの油で揚げ焼き、その後低温のオーブンでゆっくりと中まで火を入れると、身がホロホロと柔らかく焼けるのだそう。チャウダーソースは、玉ねぎとジャガイモを炒めてアサリ(手間をかけず水煮缶でOK)を投入。旨味のある汁もそのまま使い、あとは少しの生クリームとバター、塩で味を整えるだけ。ゆでたスナップエンドウの上に盛りつければ、完成です。

↑スナップエンドウを一番下に忍ばせることで、食感のコントラストを楽しめるという趣向

 

サーモンのパリッとした皮の焼き目がシャルドネの樽感に、そして生クリームとバターの乳製品のコクがシャルドネ本来の個性にベストマッチ。「青い野菜はソーヴィニヨン・ブラン」ではあるものの、豆類はシャルドネがおすすめとのこと。

 

「シャルドネと合わせるポイントは乳っぽさ。和風のポン酢にも生クリームを加えると、シャルドネとの距離がぐっと縮まります。通称“ポンクリ”と呼んで、JULIAの通常のペアリングコースでも提供していました(笑)」(naoさん)

↑女性らしいセンス溢れる食器選びや細やかな盛り付けも、シェフnaoさんならではの魅力

 

日常への目線もありながら、プロの技でファンを魅了するnaoさんの料理。そして、そこに合わせる本橋さんのワインペアリング。座ったら最後まで素敵な時間を約束してくれる“JULIA劇場”には、ぜひ足を運びたいですね。

日本ワイン、土着品種、オレンジワイン、そしてシードル。今注目のカテゴリーとのペアリングは?

昨今話題の日本ワインを、ペアリングにも積極的に採用しているJULIAの本橋さん。続いて、日本ワインの代表的なブドウ品種「甲州」に合う料理のニュアンスを聞いてみました。

↑「葡蔵人(Book Road)甲州無濾過 2017」(日本)

 

「僕の中では、甲州はソーヴィニヨン・ブラン寄りの位置づけです。でも甲州の方がちょっとした苦味があって、酸味が強い料理に合いやすいかな。レモンやライムを使った一皿とか、山菜にもいいですね。あとポイントは旨味。貝類やキノコ類の旨味系の料理に、甲州を合わせることが多いです」(本橋さん)

 

さらに、シャルドネのようによく知られた国際品種ではなく、その地域特有の土着ブドウ品種も今、注目の的。例えばギリシャ・サントリーニ島の白ブドウ品種「アシリティコ」に合わせるなら?

 

「飲んだことのない品種に合わせる料理を考えるとき、ポイントはそのブドウの育った環境をイメージすることですね。ギリシャだったら青い海、青い空、真っ白い建物……などなど。そうしたらやっぱり魚介類? レモンをたっぷり絞って? そんな風景を想像ながら料理を作ると、楽しいですね」(本橋さん)

↑「ドメーヌ・シガラス・サントリーニ・アシルティコ 2017」(ギリシャ)

 

一方、ブドウ品種ではなく「オレンジワイン」という製法にこだわった話題のワインは、どう合わせたらいいでしょう? 白ワインのようでいて白ワインとは違う複雑な味わいに、合わせる料理を迷ってしまう人も多いので、ズバリ、オレンジワインに合わせたら楽しそうな家庭料理を一品、教えていただきました。

 

「オレンジワインは、白ワインと赤ワインのニュアンスを両方もつ万能選手です。JULIAのペアリングでも、よく採用しますよ。家庭料理で一品だったら……、すき焼きですね! 肉の旨味、お醤油の甘み、卵のコクに合いそうです」(本橋さん)

↑「ポデーレ・プラダローロ・ヴェイ・ビアンコ・アンティコ 2015」(イタリア)

 

最後に、毎月変わるJULIAのペアリングコースの中で常に変わらないスペシャルメニュー「スライダー」には必ず、りんごのお酒「シードル」を合わせるというので、その魅力も語っていただきました。

↑「ラ・シードルリー・デュ・ゴルフ・プティ・キュヴェ NV」(フランス)

 

「『スライダー』は、小さなハンバーガーです。スモークしてほぐしたポークと、パインジュースやトマト、醤油などからつくった特製BBQソース、さらに食感と酸味の演出のためにリンゴがサンドしてあります。それを手づかみでかぶりつく! そしてよく冷えたシードルを喉に流し込む! 最高ですよ」(本橋さん)

↑JULIAの前身「本橋ワイン食堂」時代から続く、人気のメニュー

 

「シードルは甘いお酒というイメージがありますが、辛口のシードルは料理にも合わせやすく、低アルコールなのも良いところ。夏、キンキンに冷やしてグビグビ気軽に飲んで欲しいですね」(本橋さん)

 

“軽めから重めへ”なんて気にしない!抑揚を楽しむ白ワイン選び

今夏、JULIAでもペアリングワイン7種のうち6種が白ワインだそう。でもその提供する順番は、決して“軽めから重めへ”という教科書どおりではありません。「わざと抑揚を出して、ジェットコースターのようにペアリングを楽しむと良いと思います」(本橋さん)

 

冒頭のペアリングの定義でも触れたとおり、家庭ではこの相手もその相手もどちらも素敵、とあれこれ自由に楽しむことがポイント。気軽な家庭料理とさまざまな個性の白ワインを、自分なりの感性で選びたいものです。

素敵な時間をおまかせ。“JULIA劇場”へようこそ

最後に。東京・恵比寿にある、今話題のペアリングレストランJULIAでは、メニューやワインは完全におまかせ……公私ともにパートナーであるオーナーソムリエの本橋さんと、シェフのnaoさんが創り出す、至福の時間とは?

 

食事の時間を僕たちに委ねてほしい

「例えば映画や演劇を観に行って、そのストーリーを自分の好きな内容に変えることはできないですよね? レストランは本来、お客様が食べたい料理や飲みたいワインを決めることができますが、そういうレストランはたくさんある。JULIAに来ていただいたら、ストーリーは決まっています。その時間を僕たちに任せて欲しいのです」(本橋さん)

 

レストランやホテルでの20年以上のソムリエ経験を経て、現在のパートナー、シェフのnaoさんと茨城県つくば市で「本橋ワイン食堂」をオープン。5年間地元で愛されたワイン食堂は昨年、東京進出のチャンスをつかみました。

 

「恵比寿出店を機にnaoと入籍したこともあり『JULIA』に改名したんです。“ジュリア”は僕の母のニックネームでした。近所の人に料理を振る舞うほど料理好きな母で、将来は父と小料理屋をすることが夢でした。父が早くに他界したのでその夢は叶いませんでしたが、僕たちがその夢を引き継ぐことになりました」(本橋さん)

 

 

naoさんは、先述の通り、料理はすべて独学だそう! 調理師専門学校に通ったこともなければ、有名店での修行経験もありません。ふたりが好きなニューヨークへ何度も一緒に足を運び、ありとあらゆるレストランで食事をしながら研究を重ね、感性を磨きました。だからJULIAの料理は独創的でありながら、どことなくプロの緻密さよりも母の手料理にも似た温かさがあるのです。

 

 

また注目すべきは、JULIAへ海外からも足を運ぶ客の多いこと。さまざまな経験を積んだシェフ、誰々の元で修行をしたシェフ……私たち日本人がつい、レストラン選びの指標にしてしまいがちなそんな情報は、海外からの客にはまるで関係なく、naoさんの料理自体に感銘を受けて、度々足を運ぶと言います。

 

実は海外のウェブサイトが選ぶ「注目すべきアジアの女性シェフ10人」に選出されていることからも、日本より海外で知られていることがわかります。いつも笑顔で謙虚なnaoさん、本人が思っているよりもずっと、今後ますます注目されるべきシェフであることは間違いなさそうです。

 

JULIAのおまかせペアリングコースは、毎月変わります。デザートまで8?9皿の料理と本橋オーナーがそれぞれに合わせて選んだワイン、時にはシードルが1杯ずつ組み合わせられて楽しむことも。また面白いのが、このコースはなんと前半の4皿まで、フォークとナイフを使わず、すべて手で食べるスタイルだということ! フォーク・ナイフとワイングラス、それらを交互に持ち換えながら食事を進めるというのは、意外と気を遣う作法であり、手づかみで食材を口に運びながらもう一方の空いた手でワイングラスを口に運ぶというのは、いたって自然な動き。一度体験するとクセになります。食事をするという行為が、会話を遮ることがまるでなくなるのです。

 

「お客様がお家に帰って、お風呂に入りながら『あれ? 今日何食べたっけ? でもすっごく楽しかったなあ』って思ってくださったら、僕たちの勝ちですね(笑)」(本橋さん)

 

 

客には選ばせない“ジュリア劇場”は、けれど決して押し付けがましいレストランではなく、目に見えない時間と空間、記憶や知識を超えた、本能に響く満足度を提供しています。

 

「さっき、映画や演劇のストーリーは変えられないって言いましたけど、誰かのお家に招かれて食卓を囲む時も、内容って変えられないですよね。ここでは、お客様を僕たちの家に遊びに来てくれた大切な友人のように、誠心誠意おもてなしします」(本橋さん)

 

店内には大きなテーブルがひとつ。両側に6席ずつの計12席のみ。知らない客同士が、同じテーブルを囲んで食事をします。劇場でもあり、まるで友人の家に招かれたようでもあるJULIAへ、大切な人とぜひ訪れてみて。

 

【レストラン情報】


JULIA

所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-18-9 タイムゾーンヒルトップビル1Fハーベスト内
Tel:03-6412-7490(完全予約制)
営業時間:18:00~22:00
定休日:火曜
https://juliaebisu.wixsite.com/julia

 

取材・文=山田マミ 撮影=泉山 美代子

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完全無農薬栽培のブドウが醸す味は? 元金融マンが挑む非常識なワイン作り

埼玉県比企郡小川町。有機農業を志す人なら、その名を知らない人はいないと言われる稀代の農業家、金子美登(かねこよしのり)さんが、40年近くその農法を守り続ける場所として有名な町です。

 

東京都心から電車で2時間ほどのところに位置し、有機農業のほかに和紙と酒造りも盛んなこの町は、そういった水を多く必要とする産業を支える清流にも恵まれて、とてものどかな環境が広がります。この町に2018年、新たな有機農業の名所となりそうなワイナリーが誕生します。その「武蔵ワイナリー」をいち早く訪ねました。

 

「あるとき、たまたま眠れずにテレビをつけていたら、金子美登さんの活動がテレビ番組で特集されていて、その番組を見たんです。その偶然が、ここでワイナリー設立を目指すきっかけになりました」と語るのは、武蔵ワイナリー代表の福島有造さん。穏やかな笑顔で私たちを迎えてくれました。

 

「何も引いたり足したりしない。そのまま作る」という信念

まず案内されたのは、2013年に植樹した、「小公子」という山ブドウを掛け合わせて作られた交配品種の畑です。現在、福島さんが管理している畑は全部で6区画あり、合計で2.2ヘクタール。うち小公子の畑が85%、同じく山ブドウ系の品種「ヤマ・ソーヴィニヨン」の畑が15%弱、あとほんの少しのメルローを栽培しています。

 

そのすべての畑で、化学肥料や除草剤はもちろん、JAS有機でも使用が認められているボルドー液(硫酸銅と消石灰を混合した溶剤で殺菌剤として採用される)すら使わない、“完全無農薬”でのブドウ栽培に成功しているのです。

 

「福島さんのチームは何人で畑を管理しているんですか?」と尋ねると、「ほぼ僕ひとりです」という驚きの答え。「やっと最近、ひとりお手伝いの方が来てくれるようになったんですが。イベントなども続いて畑作業が予定より遅れていて。だから今はちょっと……草ボーボーですみません(笑)見栄えの良い写真が撮れますか?」と、はにかんだ笑顔で返してくれました。

 

↑武蔵ワイナリー代表の福島有造さん。金融業の第一線で活躍したのち、会社経営の時代を経てこの道へ、という異色の経歴をもつ。2018年、まもなく自社ワイナリーの建設が着工予定だ

 

“化学的なものに頼らない”ということは、すべてを人の目で見て、人の手で対処するということ。完全無農薬の農法は、多くの手間と時間を必要とします。ブドウの病気の、最大の原因となる雨に備えて、福島さんが独自で編み出した“傘”が畑全体に張り巡らされているのですが、その設置も手作業によるもの。

 

実はこの取材の前日、傘を取り付ける作業中に脚立が福島さんの顔面を直撃する、というハプニングがあったそう。雨が降ろうと雪が降ろうと、そして生傷が絶えずとも、惜しみない愛情をブドウに注ぐ造り手としての姿勢には、本当に心打たれるものがあります。

 

↑ブドウが罹る病気の最大の原因が雨。その雨に備えて、オリジナルの“傘”が畑全体に張り巡らされている。設置はすべて福島さんの手作業によるものだ

 

醸造段階でも培養酵母の添加をせずに天然酵母で醸し、酸化防止剤と呼ばれる亜硫酸塩は極力使用しません。補糖も補酸もなし。澱引き剤も使用せず、瓶詰めの際に軽く濾す程度、だといいます。「人間が手を加えれば加えるほど、あまり意味のないものになっていく気がするんです。できることは発酵を手助けするだけだと思います。うん、本当に、ただそれだけです」

 

↑今まさに、ブドウの花の開花時期。ここから約100日後に収穫期を迎える

 

福島さんは、群馬県伊勢崎市の出身。北海道大学工学部を卒業後、長らく銀行業に従事したのち、コンドミニアム事業を営む会社を設立。金融業の第一線で活躍したのちに会社経営という時代を経て、農業への転職を果たした現在、「今の生活の方が楽しい」と思えるのだそう。

 

「今は休みなんて全くないですけどね。休みと仕事の境目がないけど、特に辛いと思うことはないです」。穏やかな人柄は、厳しいビジネスの世界で生きてきた経験があるからこそ。完全無農薬栽培にこだわる姿勢も、静かながら強く熱い信念だと感じます。

 

「ここがワイナリーの建設予定地なんです」。最後に案内された、もうまもなく着工予定という場所は、まだ更地でしたが、福島さんの夢がいっぱい詰まった場所。ここから新たなワイナリーの歴史がスタートすると思うとこちらも期待が高まります。

 

↑ワイナリー建築予定地の隣の丘陵地には、「ヤマ・ソーヴィニヨン」を栽培する畑が広がる

 

↑「中国の纏足(てんそく)を思い出して、かわいそうで切れないんです(笑)」(福島さん)長く伸びた枝先は、なるべく自然のままに伸ばし続けるなど、仕立て方も枝の様子を見ながらオリジナルを貫く

 

「小公子」というブドウにこだわる理由とは?

「ボルドー液すら使わない完全無農薬でのブドウ栽培に成功したのは、“小公子”という偉大な品種に巡り合えたことが、大きな要因のひとつです」と語る福島さん。「日本一暑い町」の異名をとる熊谷市からほど近い小川町もまた、夏は猛暑が続きます。そんな気候条件の下、どれだけ糖度が上がっても酸度も同時に確保できる品種が、小公子なのだと言います。また耐病性が強いのも魅力のひとつです。

 

2011年に最初の小公子を植えて以来、ブドウの樹の仕立て方など、世界の常識とされるものに従うことなく、独自の試行錯誤を重ねて現在、完全無農薬で十分な収穫量を確保できるまでになりつつあるとのこと。今後も、契約農家などからブドウを購入して原料調達することなく、ブドウはすべて自社畑で栽培し供給できる道筋が見えているそうです。

 

「僕がここでできたことで、誰もがどこでもできると証明されたと思っています。だから、いろんなところでブドウを作る人が増えたらいい。農家さんになって、農地に家を建て家族を養う。これを生業に食べて行ける人が増えればいいですね」そんな福島さん流の社会貢献の精神も、垣間見ることができました。

 

↑それぞれの品種、畑にマッチしたオリジナルの選定方法を試行錯誤する日々

 

「たぶん僕のワイン、日本でいちばん最高品質のものができちゃうだろうなと思っています」

柔和で穏やかそうな雰囲気からは少しギャップのある、さりげなくも挑戦的な言葉を最後にもらいました。そんな決意のこもった言葉にますます期待を高めながら、畑の真ん中で、福島さんの造ったワインをいただきました。委託醸造で作られた、2016年産と2017年産の小公子です。

↑武蔵ワイナリーのワイン「小川 小公子」。2016年と2017年ヴィンテージは委託醸造によるもので、それぞれ2848本、1314本と生産量は極少量だ

 

グラスに注がれた小公子は、グラスの底や向こう側がまったく透けないほどの濃厚な色調。うす濁りで深いガーネット色です。でも味わいは、重たさが微塵もなく、余韻に軽やかささえ感じられるのは、高い酸のおかげでしょうか。ゴボウやにんじんなど、土の下の野菜のニュアンスもあり深遠な旨味。濃厚さがありつつ、和食などにも合わせやすい味わいでした。

 

↑小川の町で栽培された小公子のワイン。武蔵ワイナリーのフラッグシップは「小川 小公子」と名付けられている

 

↑ガラス栓は、極力何も添加しないワイン造りにとって劣化につながる危険性が少なく、より機能的

 

その味わいに感動する取材クルーを見て、とてもうれしそうな表情の福島さん。まるで我が子の発表会を見守る親御さんのようでした。「日本でいちばん最高品質なものができちゃう」の真意はきっと、「僕の子育ては日本でいちばん」ではなく、「僕の子どもたちは日本でいちばん」と、この地で育つブドウ本来の力をなんの疑いもなく信じているからこそ、いたって自然体で口を突いて出た言葉なのかもしれません。

 

↑「小川 小公子」を手にうれしそうな福島さん

 

ワイナリーの数だけ、信念がある

有機栽培、無農薬栽培、自然派ワイン、ヴァン・ナチュール。日本ワインに限らず、これらの言葉が注目され氾濫する世界のワイン市場。化学的なものを使用せずに済むなら、添加せずに済むなら、それに越したことはない? きっと誰もがそう思うでしょう。ですが産業である以上、別の立場に信念を持ちながらワイン製造に取り組むメーカーがいることも、否定はできません。私たち消費者が知るべきなのは、それぞれのワイナリーの信念と、そこに共感できるかどうか。それもまたワインの楽しみ方のひとつではないでしょうか。

 

現在、福島さんのワインはほとんど自社のネットショップでしか販売を行っておらず、ボトルを手に取ることも難しい希少なワインですが、そのボトルの裏ラベルに記載されている“武蔵ワイナリーの信念”を、最後にご紹介しましょう。

 

『数十年先も数百年先も必要とされる存在になることを目指して、そして”発酵“という微生物の無限の可能性を信じて、武蔵ワイナリーは邁進します』

 

武蔵ワイナリー http://musashiwinery.com/

 

取材・文=山田マミ 撮影=我妻慶一

 

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シャンパンにフルートグラスはもう古い!? ワインのおいしさはグラス次第だったなんて!

「やっぱり、ワイングラスによってワインの味わいって違うんじゃない……?」うすうす気づいていながら、これまでどのワインもなんとなく、自宅にあるグラスひとつで飲んでしまっていた人も多いのではないでしょうか。

 

著名な老舗ワイングラスカンパニー、リーデル社が、2018年4月に「リーデル銀座店」をオープンしました。銀座初出店となる新店では、実際にワインを飲みながら、まさに「グラスが変わればワインの味わいも変わる」という事実を体験できる「グラステイスティング・セミナー」が。さらに、同じフードとワインでもグラスによって味わいが変わることを体感できる銀座店オリジナルの企画「フードペアリング・エクスペリエンス」も実施しています。

ワイン選びにも負けないほど奥深い、“グラス選び”の世界へ! さっそく飛び込んでみましょう。

 

ブドウ品種別にグラスをラインナップしている!

リーデルは、オーストリアに本社を構えるワイングラスカンパニーで、今年で創業262年を迎える老舗。創業当時は、バカラなど他のクリスタルガラスメーカーのように香水の瓶やシャンデリアなども製造していましたが、現在では「ザ・ワイングラスカンパニー」とロゴに冠するように、ワイングラス及びワイン関連商品に特化した専門メーカーとなっています。ではなぜ、ワイングラス専門のメーカーになったのか?

 

JSA認定ワインエキスパートであり、リーデル社のワイングラス・エデュケイターを務める竹中信幸さんは、そのきっかけとなった出来事から、話してくれました。

 

「あるグラスで、フランス・ブルゴーニュ地方の造り手さんに自身のワインを飲んでもらったところ、絶賛されたのですが、同じグラスでボルドー地方の造り手さんとボルドーワインを飲んだら『私のワインには合わない』と言われてしまったそうなんです。その出来事をきっかけに、当時まだ誰も考えもしなかった”グラスとワインの相性”というものがあるのでは? という疑問を持ち始めました」

 

その後研究を重ね、1958年に世界で初めて“ワインのタイプ別”にグラスを作るメーカーとなり、新しいリーデル社の歴史がスタートしたのです。

 

「当時のワイングラスというものは、デザインやカットを楽しむものでした。そんな時代に大ぶりなボウル形状と曲線的なデザインで、香り、味わいを楽しむための“機能的な”ワイングラスを作り始めた、というのは画期的なことでした。それからリーデル社のワイングラスはすべて、原料としてワインを造る“ブドウ品種別”というのが、基本コンセプトとなっています」(竹中さん)

↑JSA認定ワインエキスパートであり、ワイングラス・エデュケイターの竹中信幸さん。「ワイングラス・エデュケイター」とは、リーデル社認定で、グラステイスティングによるワインとグラスの関わりを伝える役割を担う

 

グラス作りは常に、造り手とともにある

ブドウ品種別、と言っても、その原料ブドウの個性がそのままワインへダイレクトに反映されるわけではありません。産地、気候、造り手などによってそれぞれに個性があるもの。それをロジカルにこのブドウだからこの形状のグラス、とメーカーだけの意見で決定するのは難しそうですが……?

 

「はい、おっしゃる通りです。ですから私どもは当初から、ワイングラスは常に造り手とともに作り上げてきたんです」(竹中さん)

 

形の異なるたくさんのグラスの中から、ワインの個性を最大限引き出せるボウル形状を、テイスティングを繰り返すことで探し出しているそう。そのプロセスをリーデル社では「ワークショップ」と呼んでいて、世界中のワインの造り手、ワイン専門家とこのワークショップを繰り返すことで、その品種に合った最終的なグラスのシェイプを決定していくのです。

昨今のワイン事情といえば、めまぐるしく変わる世界の気候条件、それによる産地特性の変化、またオレンジワインブームや日本ワインの注目度の高さなど、ワインのトレンドは日々変化しています。そんな時代ごとの傾向にも敏感に対応できるよう、グラスメーカーとしては常に造り手に寄り添い、生の声と意見を大切にしているのだと言います。

 

一例として、世界中に広がっている日本酒人気に答えるべく、8年の歳月とのべ170人の蔵元や専門家の意見を集約したグラス「純米」が、今年完成しました。さらに現在は、日本ワインの造り手ともワークショップの機会を重ねているそうで、日本ワインならではの味わいを楽しむグラス、日本固有のブドウ品種用のグラスに出会えるかもしれません。

↑8年の月日をかけて純米酒に特化したグラス形状を開発した。「<エクストリーム シリーズ>純米」3240円

 

これさえ揃えればOK! そんな基本のワイングラスとは?

それでは具体的に、どういう品種個性を持つワインを、どのグラスで楽しんだらいいのか? 世界中のあらゆるワインを楽しむために、リーデル社は4脚の基本グラスをおすすめしています。

 

まずは白ワイン用のグラス2種。1.爽快ですっきりしたタイプの白ワインを楽しむグラスと、2.こってりまろやかなタイプの白ワインを楽しむグラスです。

 

1は、ブドウ品種では「リースリング」や「ソーヴィニヨン・ブラン」といった、酸味をキリッと感じるタイプのブドウ品種用。その特徴である酸味を、あまり過度に舌の上に広げることなくスーッと喉へと流すことで、心地よく爽快感を感じる形状だそう。また白ワインの中でも比較的低めの温度で楽しむタイプのワインに用いるため、口の中に長く留めて温度が上がってしまうことなく、冷たいままスピーディに、喉元へ流れ落ちる効果があるのだとか。

 

2は、見た目も対照的にぽってりとした形状で、やはり味わい的にも対照的な、しっかりと樽熟成した「シャルドネ」のような白ワインに。このグラスは口径が広いので、口の中へ入る際の液体の横幅が広くなり、舌の上全体にゆっくりじんわりと広がります。それによって、柔らかい酸やクリーミーな質感をしっかり感じることができるのだと言います。

 

グラスの形状にこだわる理由、それは液体が口内へ入る際の舌への広がり方、液量、スピード感などのバランスを調整するという役割によるものだったようです。

 

1.すっきりしたタイプの白ワインに

↑リースリングやソーヴィニヨン・ブランといった、キリッとした酸味を感じるタイプのブドウ品種におすすめ

グラス=「<リーデル・ヴェリタス シリーズ>リースリング/ジンファンデル」4860円
ワイン=「ドメーヌ ツィント ウンブレヒト ピノ・グリ ロッシュカルケール 2015」4536円

 

2.しっかり樽熟成したタイプの白ワインに

↑樽熟成をしっかりした、シャルドネのような白ワインに用いたい

グラス=「<リーデル・ヴェリタス シリーズ>オークド・シャルドネ」4860円
ワイン=「ジャン マリー ブーズロウ ムルソー 2015」7020円

 

続いて、赤ワイン用グラス2種について。こちらは竹中さんが実際にワインをグラスに注ぎ、デモストレーションを交えて解説してくれました。

 

赤ワイン用グラス2種はどちらも大きなボウル形状。2種の違いはなにかといえば、口径のすぼまり具合です。一方は、3.すぼまりが小さく金魚鉢のような曲線と丸みが特徴で、一般的に“ブルゴーニュ型”と呼ばれる形状。もう一方は4.口径が大きく、底から口元までの曲線が比較的緩やかな一般的にボルドー型と呼ばれる形状をしています。

 

どちらも注ぐワインの適量は、グラスの一番膨らんでいる位置より1cmほど下くらいまで。この量に留めると、グラスを横に倒した時、つまり口元へ運んだ時に理想的な舌への広がり方、液量、スピード感が得られるのだと言います。

↑注ぐワインの適量は、グラスの一番膨らんだ位置より1cmほど下程度まで。これだけでも充分な量がある

 

口径のすぼまりが小さい前者3のグラスは、「ピノ・ノワール」という酸味が豊かなブドウ品種用としておすすめで、グラスを口元へ運んだ時に、口元に対してグラスが水平状態では液体がまだ口内へ流れて来ず、さらにもう少し頭を後傾する必要があります。そうすることで、液体の幅は細く、舌先から滑らかに喉元へ落ちるため、酸味の刺激を過度に感じにくくなるのだそうです。

 

もう一方の口径の大きなグラス4は、果実味やタンニンのしっかりした「カベルネ・ソーヴィニヨン」などのブドウ品種用としておすすめで、グラスが水平状態でも広い幅で液体が口内に広がるため、タンニンの豊かさや複雑味を舌全体で感じることができるのだと言います。

↑適量で注ぐと、グラスを横に倒した程度の角度になった際、つまり口元へ運んだ時に、理想的な舌への広がり方、液量、スピード感が得られるのだそう

 

↑グラスの形状によって、ワインが口内へ入る角度が変わることで、味わいの印象も変わるのです

 

3.酸味が豊かな赤ワインに

↑「ピノ・ノワール」といった酸味が豊かなブドウ品種に向いている

グラス=「<リーデル・ヴェリタス シリーズ>オールドワールド・ピノ・ノワール」4860円
ワイン=「デュジャック F&P モレサンドニ 2015」8640円

 

4.果実味やタンニンが豊かな赤ワインに

↑果実味やタンニンのしっかりした「カベルネ・ソーヴィニヨン」などのブドウ品種におすすめ。

グラス=「<リーデル・ヴェリタス シリーズ>カベルネ/メルロ」4860円
ワイン=「スタッグスリープ ハンズ・オブ・タイム レッド 2014」5400円

 

「これらのロジックは、科学的にというより、やはり多くの造り手さんたちとワークショップを重ねた結果によるものが大きいですね。経験的な事実として、このグラスで飲んだ時のこの感覚で自分たちのワインを楽しんで欲しいという、いわば”造り手のメッセージを伝える道具”でありたいと、私たちは考えています」(竹中さん)

 

今イチオシ、第三世代のシャンパーニュグラス

この4つの基本グラス以外に、今リーデル社がおすすめするシャンパーニュグラスがあると、竹中さんが教えてくれました。シャンパンやスパークリングワインを飲むシャンパーニュグラスといえば、“フルート”と呼ばれる細長い形状のものを想像する方も多いはず。しかしおすすめされたのは、 5.卵型のややふくらみのあるタイプのシャンパーニュグラスでした。

 

シャンパーニュグラスの形状のトレンド変遷を見てみると、リーデル社ではこの卵型のものを“第三世代”と位置付けているとのこと。第一世代は、社交界に集う貴婦人が片手に持っているようなイメージの“クープ”と呼ばれるお椀型のグラス。そして細長いフルートグラスが第二世代。ここまでは、グラス自体の見た目や雰囲気、泡の立ち方などに重点をおかれる傾向がありましたが、第三世代は味わい、香りをより引き出すという観点で、造り手と考えた結果なのだそうです。

↑シャンパーニュグラスもトレンドが変遷してきた。左から第一世代のクープ型、第二世代のフルート型。そして今おすすめの第三世代は、卵型のややふくらみのあるタイプだ

 

↑第二世代に位置付けられたお馴染みのフルート型の場合、頭はやや下向きで液体をすすってしまうので、過度な泡立ちが口内に広がる。それがおすすめの第三世代グラスなら、頭を後傾することで、シャンパーニュがしっかりと舌先から滑るように喉元まで流れていく

 

5.シャンパンやスパークリングワインに

↑第三世代は味わい、香りをより引き出すという観点で、造り手とワークショップを重ねたどり着いた卵型の形状だ

グラス=「<リーデル・ヴェリタス シリーズ>シャンパーニュ・ワイン・グラス」4860円
ワイン=「モエ・エ・シャンドン ブリュットアンペリアル NV」6480円

 

そこに存在感がないこと。それがいい道具の証

最後に、ハンドメイドグラスの魅力について竹中さんは語ってくれました。

 

「ハンドメイドグラスの最大の魅力はやはり軽さ、そして薄さです。手に持った時、口元に触れた時、なんのストレスもなくワインを口内へ運ぶことができる。良い道具とは、まるで存在を感じないことだと思うんです。まるでワインと直に触れているような感覚になれるグラスが理想ですね」。

 

 

“この品種だから、このグラスを選ばなければいけない”ではなく、むしろときにはその存在感すら消し去りながら、ブドウ本来の味わい、造り手の届けたい味わいに、より近しい状態を再現してくれる役割を担うのが、理想のワイングラス。

 

加えて、味わいの感じ方や好みは人それぞれです。畑からのメッセージとあなたの好みというスパイスを加えた“あなただけの理想の1脚”を、探してみてはいかがでしょうか?

 

【店舗情報】

リーデル銀座店

所在地=東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル1F
電話番号=03-6264-6128
営業時間=火曜〜金曜12:00〜21:00、土・日曜・祝日11:00〜20:00
定休日=月曜

 

※価格はすべて税込です

 

撮影/@Living編集部

 

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暑い日はシュワっとしたスパークリングワインで乾杯! 1杯目に飲みたい「日本ワイン」は?

宴席や家で飲むときの1杯目といえば、やっぱりビール。とくに、仕事終わりや休日の昼下がりにゴクゴクと飲むビールは格別です。

 

とはいえ、「今日はなんだかワインが飲みたい」という気分の日もあるはず。キリッと冷えたワインも1杯目には最適ですし、ホームパーティーのときにワインが出てくると、少し華やかな感じもしますよね。

 

ワインといえばフランスやイタリア、チリなど海外で作られているものが多いイメージですが、最近は日本ワインも頭角を現し始めているんです。そこで、今回は「1杯目に飲みたい日本ワイン」をご紹介したいと思います。

 

 

①「日本のあわ」は優しい甘みが決め手

最初にご紹介するシャトー・メルシャンは、日本の本格ワインとして1949年に誕生した山梨の老舗ワイナリーです。「メルシャン」と聞くと、スーパーなどで低価格で売られているワインのイメージが強いかもしれませんが、シャトー・メルシャンはワイン通も満足できる海外にも通用するレベルのワインを作っているんです。

 

かくいう筆者もシャトー・メルシャンの大ファンで、山梨旅行でワイナリー見学に訪れた経験があるほど。「城の平ヴィンヤード」や「椀子(マリコ)ヴィンヤード」をはじめとする自社管理農園でブドウを栽培しており、海外で数々のワインの賞を受賞しています。

 

そんなシャトー・メルシャンで一度飲んでほしいのが、「日本のあわ 穂坂マスカット・ベーリーA」です。辛口のロゼスパークリングワインで、日本固有のベーリーAという黒ブドウを使用しています。

口に含むと、イチゴやチェリーのような果実味に加え、キャンディのようなフレーバーが。これだけだと「甘すぎるのでは?」と思うかもしれませんが、爽やかな酸味も感じられるので、後味はスッキリしています。

 

このワインは野菜のマリネなどに合わせるのがおすすめだそう。ピンク色が見た目にも華やかですし、最初の1杯として文句なしなワインです。

 

 

②小樽生まれのOSA WINERYの微発泡ワインにも注目

OSA WINERYは、2015年に小樽に誕生したばかりの、新興ワイナリー。白ワインに特化したOSA WINERYは、ワインに向くぶどうの一大生産地・余市に近い、新たなスタイルのワイナリーとして注目されています。

 

そんなワイナリーの「tabi sparkring(タビ スパークリング)」は、小樽発祥のブドウ「旅路」を使った辛口の微発泡ワインです。ステンレスタンクで熟成したあと、瓶内二次発酵で自然な泡を溶け込ませているだけあって、泡の口当たりはゆるやか。「スパークリングワイン」と聞くと、シュワシュワ、ぱちぱちとしたものを思い浮かべますが、そういったワインよりももっと穏やかな印象です。

 

最初にふわっ柑橘系の香りと甘さを感じるのですが、魚介料理との相性は良さそう。食中酒として飲むのもいいでしょう。

 

ただし、こちらは小規模ワイナリーのため製造本数がかなり限られています。2017年10月20日に発売された「tabi sparkling」は1000本の製造となっているんです。見つけたらぜひゲットしてみてください。

 

 

③りんごの甘みがぎゅっと詰まった高畠ワインの「高畠シードル」

ワインがあまり得意じゃない人に飲んでいてほしいのが、山形県・高畠ワインの「高畠シードル」です。高畠ワインは東北で最大規模のワイナリーで、地元のぶどうにこだわって醸造しています。

シードルとは、りんごから作ったスパークリングワインのことで、山形といえば、ぶどうだけでなくりんごの産地でもあります。実は筆者も初めてこちらのワイナリーのシードルをいただいたのですが、これがめちゃくちゃフルーティーでみずみずしさに溢れているんです!

 

使用しているりんごの銘柄は「ふじ」で、泡がパチパチとはじけます。甘口に仕上がっており、本当にりんごそのものの果汁が感じられます。ついついお酒であることを忘れて、飲みすぎてしまいそうです。

 

今回紹介したワインは、日本生まれのワイナリーが集合した「日本ワインMATSURI祭」で知ったものばかり。残念ながら4月13〜15日の開催だったのですでにイベントは終了していますが、最近は年間を通してさまざまな日本ワインのイベントが開催されています。

 

なかなか普段接する機会のない日本ワインはですが、こういったイベントに足を運んで、いろんなワインを楽しんでみませんか?

高級ワイングラスだと味が変わる? カジュアルワイン「アルパカ」で試してみた

みなさん、ワインはお好きですか? ワインと聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、最近はスーパーでも1000円以下でおいしいワインがたくさん売られています。

 

そんな日本で1番売れているのは、アサヒビールが販売する輸入ワイン「サンタ・ヘレナ・アルパカ」です。金色のアルパカが描かれたボトルを見たことがある人も多いはず。手ごろな価格で本格的な味が楽しめるので、“デイリーワイン”として人気を集めています。

 

そんなアルパカがアパレルメーカーの「アーバン・リサーチ・ドアーズ」と、ワイングラスメーカーの「リーデル」とコラボし、プレス向けワークショップを開催しました。ワイナリー見学に趣味で行くくらいワイン大好きな筆者ですが、今回のイベントで大発見があったんです。これは知らなきゃソンですよ!

 

 

アルパカワインは「ソムリエいらず」ってほんと?

会場には、アルパカのワインがずらりと並んでいます。アルパカは「ソムリエいらずのワイン」とも言われるほどの万能なチリワイン。栓抜きを使ってコルク栓を開けるのではなく、スクリューキャップ仕様なことがその理由のひとつです。

 

さらに、ソムリエは料理とのマリアージュを考えてワインを提供するという仕事がありますが、アルパカならどんな料理にも合うので、いちいちマリアージュを考えなくてもいいのだとか。これらの理由から“ソムリエいらず”と言われているそうです。

 

今回テイスティングしたのは、ロゼワインの「サンタ・ヘレナ・アルパカ・ロゼ・サクララベル」、白ワインの「サンタ・ヘレナ・アルパカ・プレミアム・シャルドネ」、赤ワインの「サンタ・ヘレナ・アルパカ・シラー」の3種類。

↑左から順に、サンタ・ヘレナ・アルパカ・ロゼ・サクララベル、サンタ・ヘレナ・アルパカ・プレミアム・シャルドネ、サンタ・ヘレナ・アルパカ・プレミアム・シャルドネが入っている

 

プレミアムシリーズは4月3日に発売されたばかりです。通常のアルパカが700円しないのに対し、プレミアムシリーズはいずれも1080円程度で販売されています。これでも十分お手ごろ価格なので、デイリーユースできそうですね。

 

 

伝統あるリーデル社のワイングラスとプラカップで飲み比べ

リーデルは、世界唯一のワイングラスカンパニー。260年以上の伝統を誇り、ワインをおいしく楽しむために“ぶどうの品種別“にグラスの形を変えるというこだわりのブランドです。

 

そんな同社のワイングラス・エデュケイターである白水 健氏によると、ワインをおいしく飲むには「ワインの温度」と「グラス選び」に気をつけるといいそうです。ワインは赤なのか、白なのか、さらにその味わいによっても適切な温度が異なります。そして、ブドウの品種により香りや味わいが異なるので、それを活かすためのグラスが必要なのです。

↑リーデル社のワイングラス・エデュケイター 白水 健氏が解説してくれた。今回のイベントで使用したのは、ステム(脚)や台座のない「オー シリーズ」。小型で軽量なので、持ち運びにも最適

 

とはいえ、グラス選びって難しそうですし、花見やアウトドアではプラカップでワインを飲みますよね。同じワインを飲むのにそこまでこだわらなくても……と思った人もいると思います。でもそれは大きな間違いなんです!

 

今回のワークショップでは、サンタ・ヘレナ・アルパカ・ロゼ・サクララベルをプラカップとリーデルのワイングラスで飲み比べてみました。すると、プラカップとワイングラスでは、明らかに香りも味わいも異なっていたのです。

 

ワイングラスは飲み口がすぼまっているのに対し、プラカップは上に広がっています。この形状が香りや味の感じ方に違いをもたらしています。

↑ワイングラスの側面に沿わせるようにワインを「スワリング」することで、空気に触れて香りや味が広がる

 

ワイングラスならさくらんぼなどの甘い香りがするのに対し、プラカップでは香りがまったくしないんです。さらに不思議なのがワイングラスにワインがなくてもリーデルのグラスには「サクララベル」の香りがしっかり残っていること。

↑プラカップに移した途端、先ほどの華やかな香りが一気に消え、味わいも酸味や苦みが出てきた

 

↑プラカップのものを再度ワイングラスに戻すと、同じワインのはずなのにまた香りや味わいがもとに戻った

 

味に関していえば、ワイングラスは「上を向いて飲む→舌先をすぼめる→ワインが冷たいまま口に入る」のに対し、プラカップは「下を向いたまま飲む→口の中に広がる→ワインが温かくなって酸味や苦味が出る」そうです。

 

 

カジュアルワインもデキャンタすればワンランク上の味に

ロゼのテイスティングのあとは、サンタ・ヘレナ・アルパカ・プレミアム・シャルドネを、リーデルのワイングラスでいただきます。グラスに鼻を近づけると、ふわっとパッションフルーツのような香りがします。

↑シャルドネのテイスティングに使用したのは、シャルドネ種専用のワイングラス。リーデルのワイングラスはワインの造り手やスペシャリストによるテイスティングを行い、消去法で最適な形のものを決めているそうだ

 

最後は、デキャンタージュしたサンタ・ヘレナ・アルパカ・シラーをテイスティング。デキャンタージュは香りを開くときや、冷えすぎたワインの温度を上げるときに用いる手法ですが、熟成期間の長い高級ワインで用いる機会が多い印象です。

↑ボトルに詰められた状態のワインは香りや味が閉じたままなので、デキャンタージュして空気に触れさせることで、本来の香りや味わいを引き出す

 

しかし、デイリーワインであるアルパカをデキャンタージュすると、本来は少し渋みのあるシラー特有の味わいが、一気に甘みや果実味が感じされるものに大変身! 自宅でワインを飲む際にも積極的に取り入れると良さそうです。

 

 

アルパカ・キャラバンを全国各地で体験しよう

今回、筆者が体験したワークショップは、日本全国のアーバン・リサーチ・ドアーズを巡回して開催されています。また、期間中に対象となる「アルパカ」を購入すると、抽選でオリジナルのリーデルグラスが当たるキャンペーンも開催。「絶対にもらえる!」コースに応募すると、アルパカモチーフが入りのアーバンリサーチ ドアーズオリジナルのバッグが当たるそうです。

 

バリエーション豊かなアルパカワインは、デイリーユースにぴったり。こだわりのグラスを見つけて、ワインを気軽に楽しみましょう。

 

 

 

 

 

色も味わいも百花繚乱! ロゼワインのイチオシ銘柄と基礎知識

前編「フランス流 ロゼワインの楽しみ方」では、ミシュランシェフ・松嶋啓介さんに、ロゼワインの本質とその楽しみ方について教えてもらいました。今回は、そんなロゼワインの種類や味の特徴を見てみるとともに、今押さえておきたい人気の銘柄を、いくつか紹介しましょう。

 

「ロゼ=甘い」は大間違い!

ロゼワインとひとくちに言っても、薄めのオレンジ色から濃いピンク色までさまざま。それは原料となる黒ブドウの皮の色素の濃淡にもよりますが、製法の違いによる場合もあります。ただ、色の濃淡と味わいの印象は必ずしもリンクせず、淡い色でも旨みが強くスパイシーで余韻の長いもの、色が濃くても果実味がチャーミングでスイスイと飲めるものもあります。

 

また、その色の可愛らしさから、ロゼワインの大半は甘口だと思っている人も多いかもしれませんが、それは大きな間違い。実はしっかりとした酸がありつつシャープな辛口のものが大半で、幅広く食事に合わせることができます。もちろん、やや甘口のものや本場フランスでも人気のフルーツフレーバーロゼワインなどもあり、それらは本格的な食事の前の食前酒として、また昼下がりのテラスでキンキンに冷やしてなど、味わいの違いによってさまざまなシチュエーションで使い分けられるところが、ロゼワインの魅力です。

 

さらなる魅力は、その手頃な価格帯。1000円台で充分本格的な辛口のロゼワインを、4000円前後ともなれば高級ロゼワインと呼べるものまで楽しめます。赤ワインや白ワインならこの価格では買えない、という有名な造り手のものでも、ロゼワインなら手頃な価格で楽しめる掘り出し物も存在するのです。

 

さまざまな楽しみ方の可能性を秘めたロゼワイン、どれを選ぶかはまさに十人十色。シチュエーションごとに、その日の気分ごとに、使い分けて楽しんでみてください。

 

三大ロゼから日本産まで、おすすめのロゼワイン

フランスの三大産地のロゼワイン

フランスでは白ワインより多く飲まれるロゼワイン(詳細なデータは前編へ)。もちろん生産量も世界一。そんなフランスが誇る三大ロゼワイン産地は、ロワール地方、プロヴァンス地方、ローヌ地方です。

左:ラシュトー・ロゼ・ダンジュ(ロワール地方)
中:ラフラン・ヴェロル・バンドール・ロゼ(プロヴァンス地方)
右:ドメーヌ・ド・ラ・モルドレ・タヴェル・ロゼ・ラ・ダム・ルス・レ・ヴェスティード(ローヌ地方)

 

別名で称したロゼワイン

ロゼワインを指す別名で、原料であるブドウ、製法の特徴や生産地によって「ヴァン・グリ」や「キアレット」と特定の呼び名がラベルに表記されていることもあります。

左:ドメーヌ・アラン・ヴィニョ・ブルゴーニュ・コート・サンジャック・ピノグリ
右:モンテ・ディ・ロアリ・バルドリーノ・DOC・キアレット

 

より気軽に飲めるフルーツフレーバーロゼワイン

ロゼワイン消費大国フランスで気軽に飲めるロゼワインとして人気なのがフルーツフレーバーロゼワイン。なかでもグレープフルーツ(パンプルムース)風味が主流。

マス・ド・ジャニーニ・ル・タン・デ・フリュイ・ロゼ・パンプルムース

 

メイドインジャパンのロゼワイン

いま注目の日本ワインのなかにも、魅力的なロゼワインがいっぱい。それぞれの土地の食材や郷土料理と、同産地のロゼワインを合わせて楽しめるのは、日本ワインならではの魅力ですね。

セイズ・ファーム・ロゼ(富山県)

 

 

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ミシュランシェフが説く! フランス流 ロゼワインを美味しく飲む方法

日本各地で記録的な寒波に見舞われたこの冬。長い冬を抜け、ようやく太陽の暖かさを感じ始める季節になると、人は本能的に屋外での時間を過ごしたくなるもの。桜が咲いたらお花見、汗ばむ季節のBBQ、そんな季節にぴったりなワインといえば、最近人気が高まってきた「ロゼワイン」です。

 

ロゼワインは今、欧米を中心に大人気。全世界における消費量はワイン(スパークリングを除く)の合計消費量の10%を超え、ワイン全体の消費量が伸び悩む中でも、ロゼワインの消費は拡大しています。なかでもフランスは、全世界のロゼワインの1/3以上を消費する“ロゼワイン大国”。2003年から2013年までの10年間における消費量は50%増となり、フランスの全ワイン消費量の30%以上。赤ワインの次に飲まれているのはロゼワインで、実は白ワインの消費を上回っているのです。(*1)

 

日本のロゼワイン事情は?

一方、日本でもワインショップやレストランで見かける機会は多くなりましたが、それでもワイン全体の消費量のわずか約3.7%(*2)。世界的な消費の加速に比べれば、まだまだ気軽にロゼワインを日常に取り入れている人は少ないのが現状です。

 

ではなぜ、フランスではロゼワインがこれほどまでに人気なのか? 日本ではなぜまだまだ少ないのか? その疑問をフランス、日本双方のロゼワイン事情に詳しいこの方に聞いてみました。

↑レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」を経営する松嶋啓介シェフ

 

ロゼワイン生産地の本場フランス・プロヴァンス地方に4軒、東京・神宮前に1軒のレストランを経営する松嶋啓介シェフ。外国人としては最年少でフランス・ミシュランの星を獲得して以来10年間星を維持、フランスの芸術文化勲章も受賞しています。そんなフランス在住歴20年の松嶋さんが感じる「フランス流ロゼワインの楽しみ方」とは?

※1 Sopexa Japon
http://www.franceshoku.com/mailmagazine/2015/mm0427.html
※2 Sopexa Japon
http://www.franceshoku.com/pdf/2_TRADE_IWSR-Japon_jp.pdf

 

実は「フランス流」なんてどこにもない?

「赤か白か、選ぶのが面倒くさいからロゼワインを飲むんですよ」。

 

昼下がりの東京・神宮前、レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」。大きな窓から見える木々の青さと差し込む太陽の光に囲まれて、ここは都会の真ん中だと一瞬忘れさせられる空間。とはいえ、このシンプルで開放的すぎる松嶋さんのひと言に、インタビュー冒頭からとたんに緊張が緩んでしまいました。

 

「フランスでロゼワインが一番楽しまれるのは、夏のバカンスの時期。家族や友人たちがたくさん集まる機会が多くなる時です。そうするとテーブルに10人くらいついた時に、ひとりひとり赤が好み? 白が好み? と選んでいると面倒くさいんですよ(笑)。じゃあ、冷えたロゼワイン1本でいい? となるわけです」

 

また、松嶋さんはこう続けます。「フランスは年度の始まりが9月。だから6月頃に学校も終わって家族でバカンスだー! っていう時に、ロゼワインが美味しい陽気になる。そんな暑くて開放的な時期に、手の込んだ料理なんて家庭では作らないですよね。そうすると、例えば外でBBQしながらいろんな食材を焼いて食べる時、料理との相性とかあれこれ考えずに開けられるのがロゼワインなんです」

 

“フランス流”と言いながら、実は流儀と呼べるものは何もなく、ただただ気軽だから、気楽だからという理由で、ロゼワインは選ばれているのだと松嶋さんは言います。

 

フランスでのロゼワインのキーワードは「開放感」。日本ではそのピンク色の可愛らしいイメージから、バレンタイン需要などのプロモーション展開も見られますが、冬の寒い時期にロゼワインは似合わないとのこと。長い冬を抜けて桜が咲き、やっと暖かくなった! という開放感、夏休み突入でいざビーチへ! という時の高揚感、そんな時期にロゼワインは楽しむべき飲み物のようです。

 

「人生はバラ色」の本当の意味

伝説のフランス人歌手エディット・ピアフの名曲「La vie en rose=バラ色の人生」という歌があります。ピアフが感情表現たっぷりに歌うその歌詞の最後が「私は幸せ」と締めくくられるように、人が「人生はバラ色」と言う時、それは華やかなピンク色だけに彩られた、幸せいっぱいの人生のことを表しています。でも、「バラ色」って一体何色でしょうか?

 

「バラと言っても1種類の色じゃなくて、白もあれば黄色や地味な薄い茶色もあって、ピンクや赤がありますよね。ロゼワインも全く同じで、薄めのオレンジから濃いピンクまで色々あります。フランス人は“La vie en rose!(人生バラ色だからね)”って言いながらロゼワインを飲む人も多いけど、その本当の意味は“いろんな人生があっていいよね”ということ。だから、いろんな色があってこそロゼワインなんです」(松嶋さん)

 

フランスにおけるロゼワインの、もうひとつのキーワードは「多様性」。これだけたくさんの色のグラデーションがはっきり見られるのは、白ワインにも赤ワインにもないロゼワインだけの特徴。ゆえに、どんなお料理に合わせるのがいいの? 白ワイン寄りの食材? 赤ワイン寄りの味付け? と、あれこれ悩んでしまう結果、ロゼワインは使いづらい、選ばないと購入を諦めてしまうことはありませんか? でも、「多様性があるならそれを楽しめばいいだけ」と松嶋さんは言います。

 

「バラ色=幸せなピンク色」だけでは決してない、つまり、“このロゼワインにはこのお料理を”というひとつの正解なんてないのです。だからこそ、自分の感性で楽しめばよく、自分の人生を自分らしく生き多様性を許容するというフランス人の人生観にも似ていることが、ロゼワインがフランスで愛される理由なのかもしれませんね。

↑いろんな人生があるからこそ、「人生はバラ色」なのだそうです

 

そしてもう1つ、人生観にも通じるフランス人らしいロゼワインの楽しみ方を、松嶋さんは教えてくれました。

 

「フランス人がロゼワインを飲むとき、それは夏のバカンスで飲んだ楽しい思い出とリンクするんです。ロゼワインを飲むと、いつでもどこでもあの楽しい思い出が心によみがえる。家族との会話、友人たちとの時間、楽しかったなーって。だからロゼワインが好きなんです。お酒の用語のスピリッツ(Spirits)はつまり精霊、精神ですね。精神世界や過去の記憶とつながるのがお酒だとすれば、フランス人はロゼだけでなく、ワインをそうやって楽しんでいる人が多いんです」

 

ロゼワインに限らず、知識でワインを楽しむことが多いのは真面目な私たち日本人の特徴ですが、多くのフランス人にとってのワインは、頭でなく心で感じるもの。ワインというものの日常の位置付けを見直すことで、もっと人生は心豊かなものになるのかもしれません。

 

では、私たち消費者がロゼワインを日常にもっと取り入れるために、お料理とのペアリングはどのように楽しんだらいいのか、レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」の料理をご用意いただきながら、ポイントを教えていただきました。

 

ロゼワインに合わせたい食材とは?

「気軽に」「なんでもいい」とはいえ、せっかくミシュランシェフの松嶋さんにお話を伺うことが叶った今回のインタビュー。私たち消費者がロゼワインを日常にもっと取り入れるため、お料理とのペアリングポイントを伺いました。でもその回答も、やはりシンプル!

 

「ニンニクを使うこと」。

 

レストラン「KEISUKE MATAUSHIMA」で、今回ロゼワインと合わせるお料理としてご用意いただいたのは2皿。「ちょっとお洒落なニース風サラダ」と、「タラのローストピストゥースープ添え」。そのどちらのお料理にも、ニンニクが非常に良い味わいのアクセントとなっていました。

↑「ちょっとお洒落なニース風サラダ」(左)と、「タラのローストピストゥースープ添え」(右)

 

一緒にいただいたのはもちろん、プロヴァンスのロゼワイン。プロヴァンスロゼの特徴は淡いオレンジ色ですが、色の淡さとは対照的に、南フランスの太陽をたっぷり浴びた完熟ブドウのスパイシーさと果実味の余韻があります。その余韻がニンニクと合わさるとさらに長く広がり、他の食材の旨味とバランスよく調和する役割を見事にロゼワインが担っていました。

 

「あとは、コンディマン」。

 

コンディマンとは、フランス語で自家製調味料、薬味という意味。自家製ですから決まったレシピはなく、数種類のスパイスやハーブをお好みで合わせた調味料のこと。じんわりと身体に染み入るお出汁系の料理より、コンディマンを味わいのアクセントにちょっと使った料理の方が、ロゼワインには合わせやすいとのこと。

 

「人生はバラ色だし、少しのコンディマンも必要でしょ?(笑)」と、松嶋さんは楽しそうにアドバイスしてくださいました。

↑スパイシーなコンディマンはロゼワインと相性抜群

 

↑ニンニクの風味がロゼワインの余韻を引き出す

 

ロゼワインを許容するという暮らし方

フランスから学ぶロゼワインのキーワードは、「開放感」と「多様性」。日本でもロゼワインをもっと楽しむためには、暮らし方の意識改革が必要なのかもしれません。ロゼワインが好きな人は自分らしく人生を楽しんでいる人。人生の振れ幅を許容し、開放的で自分なりの暮らしのスタイルを持っている人。すでにロゼワインが好きな皆さんは、胸に手を当てると思い当たる節があるのではないでしょうか?

 

これからの季節、あんな色やこんな色があっても「とりあえずロゼ!」と手を伸ばしてみたら、もっと日常が開放的で彩り豊かなものになるかもしれません。

 

【レストラン情報】

KEISUKE MATSUSHIMA à Tokyo

東京都渋谷区神宮前1-4-20 パークコート神宮前1F
TEL:03-5772-2091

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

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おそろいのストーリーで選ぶべし! 誰かに贈るワイン選びの正解

ワインをプレゼントするなら、あなたは何をポイントに選びますか?

 

まず思いつくのは、贈る相手の「味の好み」から。赤ワインか白ワインか、スパークリングワインか? 辛口派か甘口派か? でもそれだけでは、どの銘柄を選んだらいいか、迷ってしまいます。となると、有名銘柄が無難かな? なんてブランド名に頼ってしまいたくなるものですが、それでは少々オリジナリティに欠けてしまいます。

 

また、誕生日や記念日だとしたら、その年に造られたヴィンテージワインを選ぶのも素敵ですが、毎年必ずしも良作ヴィンテージとは限らず、年数を重ねるほどに値段が上がってしまうことも。

 

ワインは農作物からつくられるもの。同じ畑のワインでも毎年の出来は気候条件に左右され、それが人の手によって醸され瓶に詰められるまでのストーリーは、多種多様です。では、そんなそれぞれに込められたストーリーに、贈るあなたの思いが重なるワインをプレゼントする、という選び方はどうでしょうか?

 

テーマに合わせたストーリーとともに、いくつかのワインをご紹介しましょう。

 

ワイナリーの歴史に思いを重ねる

贈り物ワインの定番といえばシャンパン。でも定番だからこそ、選ぶとなるとよく知られた銘柄に偏ってしまい、パーティーへ持ち込んだらほかの出席者とカブってしまった、というような経験はありませんか? ひと口に「シャンパン」と言っても、よく知られた大手有名銘柄がある一方で、ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまでを自社が一貫して行う、いわゆる造り手の顔が見える“RMシャンパン”(RM=レコルタン・マニピュラン)というカテゴリーが存在します。このRMシャンパンワイナリーは代々同族で継承しているところも多く、その長い歴史の背景には、プレゼントしたい相手のシチュエーションに合うストーリーがあるかもしれません。

 

結婚のお祝いに……

Henry de Vaugency Champagne Cuvée des Amoureux Blanc de Blancs Grand Cru (アンリ・ド・ヴォージャンシー・シャンパーニュ・キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Henry de Vaugency Champagne Cuvée des Amoureux Blanc de Blancs Grand Cru (アンリ・ド・ヴォージャンシー・シャンパーニュ・キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

アンリ・ド・ヴォージャンシーは創業1732年、現在8代目のパスカルさんが運営しています。この長い歴史を持つワイナリーには、1820年から1920年当時の結婚をテーマとした博物館が併設されており、記念のジュエリー、家具、調度品、衣装、風習や儀式にまつわる資料が多数展示されています。世にテーマ・パークやテーマ・レストランは数あれど、”テーマ・シャンパンワイナリー”は世界でここだけ。

 

看板商品である「キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」は、その名にあるキュヴェ・デ・ザムルー=“愛し合うカップル”のためのシャンパン。ラベルもハート型で、2羽の鳩が仲睦まじく寄り添う絵柄がデザインされています。フランス国内でも、結婚式の引き出物として人気だといいます。

 

成人を迎えた息子や娘へ……

Françoise Bedel Champagne Entre Ciel et Terre(フランソワーズ・ベデル・シャンパーニュ・アントル・シエル・エ・テール) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Françoise Bedel Champagne Entre Ciel et Terre(フランソワーズ・ベデル・シャンパーニュ・アントル・シエル・エ・テール)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

月の満ち欠けや天体の動きを、ブドウの栽培やワインの醸造過程に取り入れる“ビオディナミ農法”を実践するフランソワーズ・ベデル。シャンパーニュ地方ではそのパイオニア的存在です。

 

もともとビオディナミを取り入れたきっかけは、息子ヴァンサンの病気でした。現代的な薬はまったく効かず悩み続けた末、最後に出会ったホメオパシー(同毒療法)によって完治。「世界の見方が変わりました。それで、ブドウにも同じことがいえるのではないかと考えるようになり、やがてビオディナミに出会いました」と語ります。今では健康を取り戻したヴァンサンが中心となって、ワイナリーを運営しています。我が子への愛情によって生まれた味わいを、立派に成長した息子へ。

 

 

Dauby Champagne Brut Rosé(ドビ・シャンパーニュ・ブリュット・ロゼ) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Dauby Champagne Brut Rosé(ドビ・シャンパーニュ・ブリュット・ロゼ)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

シャンパーニュ地方の中でもひときわ景観が美しく、2015年には世界遺産に登録されたアイ村に3代続くワイナリー、ドビ。現当主のフロール・ドビーさんは、2007年に母フランシーヌさんからワイナリーを引き継ぎ、銘醸産地であるアイ村では珍しい女性当主となりました。

 

家族経営で次の世代が後を継ぐフランスのワイナリーの名前には、ほとんどがワイナリー名の後に「〇〇 Père et Fils=父と息子」と記載されますが、このドビは「Dauby Mère et Filles=母と娘のワイナリー、ドビ」とラベルにも記載が。女性醸造家らしく柔らかで上品でありながら、どこか情熱的な味わいを連想させるかのように、ラベルにあしらわれているのは真っ赤なコクリコの花。コクリコのように凛とした生き方を母から娘へ、このシャンパーニュに願いを込めて。

 

ラベルストーリーに想いを重ねる

ワインの誕生にまつわるストーリーが、ラベルデザインにそのまま反映されることも少なくありません。単にデザイン性が高いだけでなく、そのデザインがあなたの思いも表現してくれるものであったなら、よりオリジナリティに溢れる贈り物になることは間違いないでしょう。

 

感謝・信頼・友情の証に……

Domaine De La Garance Cuvee Kaze Rouge(ドメーヌ・ド・ラ・ガランス キュヴェ・風・ルージュ) /輸入元:ディオニー↑Domaine De La Garance Cuvee Kaze Rouge(ドメーヌ・ド・ラ・ガランス キュヴェ・風・ルージュ)
/輸入元:ディオニー

 

南フランス・ラングドック地方産にも関わらず、ラベルは日本語の「風」という文字。2008年初夏、南フランスでは極端に風が少なく、造り手であるキノネロさんは、ブドウが病気にかかるのではと頭を痛めていました。そんな彼のもとを訪れた日本のインポーターが手土産に持参していたのが偶然にも、「風」と書道家によって書かれた掛け軸。するとなんと、待ち望んだ「風」が吹きはじめたのだそう!

 

この書の造形の美しさに感動した上、日本から「風」がやってきたことで、次の年から日本向けの限定ワインを造ることを決意します。ラベルのデザインはその書をそのまま使用し、その名も「KAZE」と名付けました。「日本への敬意を表したいという気持ちが、このワインを誕生させました」というこのワインは、造り手とインポーターの信頼関係から誕生した友好の証なのです。

 

造り手の情熱に思いを重ねる

ワインの出来は、ブドウ自体の出来に大きく影響されるもの。ところが、そのブドウを醸す造り手の性格や情熱が滲み出る、と言われているのもまた事実です。造り手の情熱を深く知るには、輸入ワインより身近な存在である日本のワイナリーのワインがおすすめ。実際に訪れて、自分の目と耳で見聞きすることで一層、プレゼントするシチュエーションに近いワインに出会う可能性も高くなるはずです。

 

結婚記念日を迎えるご夫妻へ……

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奥野田ワイナリー(山梨県)

奥野田ワイナリーは、山梨県甲州市塩山で1998年に創業。中村雅量さん、亜貴子さんご夫妻が二人三脚で営むワイナリーです。大人気の「La Floretteシリーズ」のラベルに描かれた、赤ワインのスミレ、白ワインのハナミズキ、ロゼワインのバラは、もともと趣味で絵を描くことが好きだったという亜貴子さんご本人による作品です。

 

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「ラベルを見てワインを手にとって下さる方々が、ワインを飲んだときに広がる味わいと香りと、ラベルに感じた印象とが重なるようイメージしています」とのこと。ふたりでこんなワインができたらいいね、と話し合って出来上がったのはまずバラのラベルのロゼで、2008年のことだそう。旦那様がワインを醸し、そのイメージを奥様がラベルに描く。そんな仲睦まじい夫婦の共作ワインを、大切な結婚記念日に。

 

第二の人生を歩み始める門出の祝いに……

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ルサンクワイナリー(新潟県)

角田山を望む日本海に面した場所に、5つのワイナリーが広がる新潟ワインコースト。その5番目のワイナリーとして2015年10月に誕生したのが、ルサンクワイナリーです。オーナーは、それまでは都内でITサービスの会社に勤めていたという阿部隆史さん。「ワインが好きだったということもありますが、たくさん働いた分これからは自分の好きなことをやろう、そう思ったことがきっかけでした」と阿部さん。2013年から産地を巡りながらワイナリー経営について勉強し、縁あって2014年から、新潟でワイン造りの研修に入りました。

 

現時点でのワイン造りは、すべて契約農家からの買い付けブドウでの生産ですが、自社畑の苗木も成長中。それが無事収穫できてワインとしてリリースされるのは少なくともあと1〜2年後とのこと。たくさんの期待と少しの不安を胸に第二の人生を歩む阿部さんのワインは、きっと同じように新たな一歩を踏み出す人に、勇気を与えるはずです。

 

起業・独立を目指す人へエールを込めて……

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東京ワイナリー(東京都)

2014年9月、東京初のワイナリーとして練馬区大泉学園にオープンした東京ワイナリー。オーナーは越後屋美和さん。現在日本各地に次々とワイナリーが誕生していますが、その多くが母体の会社を持ちながら、あるいは地域や自治体との連携を持ちながらの開業が主流。そんななかで、越後屋さんは女性ながらたったひとりで起業しました。もともとは東京産の美味しい野菜や果物、農家の存在をもっと知ってもらいたい、という思いからスタートした越後屋さんの情熱は、農産物の加工品である“ワイン造り”として表現されることになったのです。

 

醸造タンクや除梗破砕機などがコンパクトに配置された醸造所には、常に越後屋さんのSNSを使った呼びかけで駆けつけたお客様たちが、お手伝いをするボランティアとして集っています。創業はたったひとりでも、今ではその情熱に魅せられたたくさんファンや仲間の支えによって、さまざまな人々の思いのこもったワインがリリースされています。そんなワインを、女性起業家さんへのエールを込めて。

 

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ドメーヌ・テッタ(岡山県)

岡山県新見市哲多町に2016年に誕生したワイナリーで、代表は高橋竜太さん。もともと果樹王国として知られる岡山ですが、家業である建設業を営む傍ら、耕作放棄地となっていくブドウ畑を目の当たりにするなかで、日本では希少な石灰岩土壌の広がるこの地域の特性をワイン用のブドウ造りに活かせるのではと、ワイナリー起業を一念発起したといいます。

 

地域内外から有志を集め、ワイナリーの設計には世界的に活躍する地元出身のデザイナーが協力してくれるなど、地域産業の活性化に大きく貢献。創業間もない2016年秋に、岡山県内の経済・文化など各業界で活躍する若手を表彰する「オカヤマアワード2016」の大賞も受賞しました。故郷を思うたったひとりの情熱が、新たな地域産業を生む力にもなる。志高く起業する方へのお祝いワインとして。

 

さて、あなたの思いにぴったりなストーリーは見つかりましたか?

 

他にもワインやワイナリーのストーリーについて知りたい時は、ワインインポーターの商品ページや、ワイナリーの公式HPなどをチェックして。まだまだ知られていないけれど、あなたの感性に響く珠玉のストーリーに出会えるかもしれません。

 

・有限会社 ヌーヴェル・セレクション http://www.nouvellesselections.com/
・ディオニー株式会社 http://www.diony.com/
・奥野田ワイナリー(奥野田葡萄酒醸造株式会社) http://web.okunota.com/
・ルサンクワイナリー http://www.docci.com/winecoast/winemaker/05_Abe_takashi.html
・東京ワイナリー http://www.wine.tokyo.jp/
・ドメーヌ・テッタ(domaine tetta) http://tetta.jp/

 

取材・文=山田マミ

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

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安定のサンコー・クオリティ! ネーミングも心に響く「宝箱のような」ワインセラー

サンコーといえば、多彩なアイデア商品を発売することで知られていますが、「シワを伸ばす乾燥機 アイロンいら~ず」「楽でごめん寝 うつぶせエアピロー」「かがまないお風呂用電動ブラシ『フロキレー』」など、「そのままだな!」と思わせつつ、クスっとくるネーミングでも有名です。そして、今回の新商品のネーミングもまた秀逸。その名は「場所を選ばない横置きワインセラー 俺のワイン WINECL02」です。価格は1万4800円(税込)。

 

趣味の品を詰め込みたいコンパクトなワインセラー「俺のワイン」

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本機は、ワインボトルが8本収納できる横置き型のコンパクトなワインセラーです。W410×H270×D495mmと、電子レンジ並みの大きさしかないので、冷蔵庫の上などのデッドスペースやラック、テーブルなどにも置けるので置き場所に困りません。

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使い方は、タッチパネルを操作して、庫内温度を設定するだけとカンタン。温度は8~18℃まで設定できるので様々なワインに対応できます。ライト付きなので、暗い場所だった場合も、ドアを開けずにラベルが視認できるのが便利(ライトは10分で自動消灯)。フレームレスでフルフラットなガラス扉を採用したシンプルなデザインで、インテリアとしても優秀です。なお、扉ガラスには、紫外線カットコーティングを施し、光によるワインの劣化を防いでくれます。

↑↑ボタンを押せばライトが点灯

 

↑操作パネル。温度表示は摂氏と華氏で切り替えが可能です↑操作パネル。温度表示は摂氏と華氏で切り替えが可能です

 

冷却システムはペルチェ方式を採用。冷蔵庫などのコンプレッサー式に比べて騒音が少なく低振動のため、リビングや寝室などにも設置できます。

↑ワインだけでなく、4号瓶の日本酒も収納できます↑ワインだけでなく、4号瓶の日本酒も収納できます

 

↑チョコレートやチーズを入れておけば、ちょうどいい硬さに↑チョコレートやチーズを入れておけば、ちょうどいい硬さに

 

それにしても、どこかのレストランにありそうですが、製品名の「俺のワイン」とは言いえて妙。それほど多くの容量は必要ない、コンパクトで、個人的に楽しむぶんが入ればいいんだ……というニーズをうまく捉えています。さらに、日本酒の4号瓶も入りますし、内部の棚を取り外して様々な瓶を収納することも可能。おつまみ用のチョコやチーズも入るとあって、まさに金庫のような、宝箱のような、「俺だけのワインセラー」として使えますね。みなさんも、趣味の品をたっぷりと詰めこんで、毎晩、コレをのぞく楽しみを味わってみては?

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サンコー

場所を選ばない横置きワインセラー 俺のワイン WINECL02

●サイズ/質量:W410×H270×D495mm/約8.3kg●内部寸法:W330×H190×D320mm●温度設定:8~18℃●消費電力:65W(電気代24時間使用で約30円)●コード長:1.9m

 

 

ワイン選びでもう失敗したくないならコレ!! 本場フランスがすべてのワイン好きのために作ったスマートスキャナー「MyŒno(マイオーノー)」

ワインが好きなので、もう少し詳しくなりたい。高いワインをコレクションしたいわけでもなく、ウンチクを語って格好つけたいわけでもない。ただ自分が好きなワインがどんなもので、どんなブランドのワインが自分に一番合っているのかを見つけたい。そこで役に立つのがテクノロジーです。

 

ワインブランドやソフトウェア企業はテクノロジーを使って色々なサポートをしています。メルシャンはサイト「ワインすき!」上にAIを使ったチャットボットを設置。ボットの質問に応えることで自分のワインの好みをAIが理解してお勧めのワインを提案してくれるとのことです。同様に「感性を学習するパーソナル人工知能SENSY」を開発するSENSY株式会社は、そのAIを使ってユーザーのワインのレビューを学習するAIシステム「SENSYソムリエ」を提供しています。

 

ワインを分析してデータ化してくれる「MyŒno」

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しかし「SENSYソムリエ」はワインの「甘味・酸味・苦味・渋味・余韻」をユーザーがそれぞれ5段階評価をするというもので、そもそも「味覚に自信がない」「毎回評価の基準がズレそう」という初心者には若干壁が感じられます。

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そこでワイン初心者にも期待できそうなのが、Kickstarterで資金獲得に成功したプロダクトの「MyŒno」です。ワイン王国フランスから産まれたこのプロダクトは、グラスに入れたワインに細長いデバイスを直接入れることでワインの特性を分析し、アプリ上でわかりやすくグラフで表示してくれます。

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特性は大きく酸味、タンニン、強さの3つになっています。SENSYソムリエの5つの特性とはかなり違っているのが興味深いですね。この3つの要素以外については、「ミネラル感」「果実味」「樽香」「余韻」と準備されたタグのうち当てはまるものを選択して評価していくことになります。3つの数値で表されるデータと、味の特性タグを組み合わせて複雑なワインのデータを決めていくわけですね。

後はワインを飲んで自分で気に入ったかどうかを5つ星で評価するだけ。このデータが蓄積されて、ユーザーの好みをMyŒnoが理解してくれるわけです。

 

味の評価はデバイスが客観的に測ってくれて、後は自分の好みを決めていくだけ。これなら初心者にも優しい設計で、「自分は酸味が弱いのが好きなんだ」と自分の好みが少しずつ分かりそうですよね。

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しかもMyŒnoのユーザーが世界のどこかでMyŒnoを使うたびに、その銘柄と味の分析がデータベースに追加されるので、店頭に並んでいるボトルをスキャンすれば、あなたが飲んだことがないワインでもMyŒnoが味を教えてくれるかもしれません。

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店頭でワインをスキャンすると、MyŒnoがユーザーの好きな味の組み合わせと比較して、どれくらいユーザーが気にいるかを予測。これは面白いし、有り難いですよね。いつまでたってもラベル買いから卒業できない私も、これがあれば少しずつ知識が溜まっていきそうな気がします。

 

スキャンをして表示される情報は味だけではありません。ワインの成熟度、ピーク年数、受賞歴といった情報も見れるのです。ワインの年数を見て購入するなんてことが、まさか自分でもできるようになるなんて、ちょっと感動ですよね。

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レストランでも使えます。ボトルが目の前になくてもワインの名前やスタイル、キーワードなどでデータベースを検索できるようになっています。Kickstarterでは目標金額の3倍以上の400万円近くを獲得しています。公式サイトでは1つ約1万2000円で販売されています。

 

種類と味に幅があり過ぎてついつい敬遠しがちだったワインですが、これがあれば私も自分が大好きなワインを見つけることができそうです。コメント欄にも「これはまさに私が欲しかったプロダクトだ」と期待の声が集まっています。実際に使用したユーザーの感想が待ち遠しいですね。

「ワインを知りたい!でも聞けない」というワイン知ら恥の人はAIボット「みのりさん」に聞くべし

ボジョレーヌーヴォーのシーズンは過ぎましたが、とはいえこの時季は最もワインが盛り上がるシーズン。なんといってもクリスマス、そして忘新年会に年末年始のホームパーティと様々な集いが続くからです。でも、ワインについて実はあまり知らないという人は多いのではないでしょうか。勉強したいけど難しそう、恥ずかしくて他人には聞けない、という声も聞こえてきそうです。今回は、そんなワイン知ら恥(知らなきゃ恥ずかしい)の人に、マストなサービスをご紹介。

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AIと会話ができるワインのサービスは世界初!

それが国内のワインのトップメーカー「メルシャン」が展開しているワインコミュニケーションサイト「ワインすき!」内ではじまった、AIボットサービス「オフィシャルアシスタント おしえて!みのりさん」です。聞けば、ワインにまつわるAIボットは世界初とのこと!

TOP↑みのりさんのトップページ

 

ちなみに、「ワインすき!」自体がかなり充実した内容になっているのをご存知でしょうか。これは2009年からスタートしたサイトで、読み物コンテンツは300を超え、ワインとのマリアージュを提案する料理レシピも300以上。また商品として調べられるワインは400本以上もあり、Amazonを介して購入することもできます。

OPEN↑サイト内で一番人気の記事は「ワインのスマートな開け方」。クリスマス時季に一番PVが伸びるそうです。裏を返せば、クリスマスに最もワインが開けられていると考えられますね

 

ただ、「もっとワインを身近に感じてもらい、楽しさを知ってもらいたい!」「もっとビギナーの課題解決に役立つ身近なコンテンツを!」という開発者の想いがふくらみ、みのりさんのサービスがはじまりました。

 

 

「彼氏は?」→「ナイショです!」というおちゃめな一面も!

より詳しい話を担当者に聞いてみました。答えてくれたのは、メルシャンのグループ企業であるキリンのデジタルマーケティング部の寺田智伸さんと伊藤佳奈子さんです。

MINORIsan↑寺田智伸さんと伊藤佳奈子さん。日々「ワインすき!」と「みのりさん」を盛り上げるために尽力しています

 

「近年、AIを活用したチャットボットが、様々な商品のカスタマーサポートや接客サービスなどで活用されはじめています。この兆しを受け、種類が多くなかなか自分で選ぶことが難しいワインは、チャットボットが向いているのではないかと思ったのがきっかけです。2017年の初めから実現に向けて動きだし、約半年で実用化にこぎつけました」(寺田さん)

 

ローンチは2017年9月14日。サービス利用には簡単な会員登録が必要となりますが、データとしては1か月で約6000人が利用するなどかなり好調な滑り出し。また対象としては30~40代の女性が中心で、全体の比率に対しては男女問わず20代の利用者が多いそうです。筆者は30代男性ですが、使ってみました。

01↑右端の欄に注目。みのりさんの案内に従って、右下の【入力してください】のフォームにタイピングする、または提示されたコマンドから選ぶ(ここでは「おすすめモード」「こだわりモード」「料理合わせモード」)とみのりさんが答えてくれます。この後筆者は飲用シーンの選択式質問に対し、「プチ贅沢・ホームパーティ」→予算の選択式選択式質問に対し、「1,000円~1,999円」とチョイス

 

02↑次にワインのタイプを聞かれ「スパークリングワイン」を選択。すると、5本のワインが提案されました(横にスクロールするとほかのワインが見れます)

 

提案されたワインは詳細を見ることができ、またAmazonに直接飛ぶこともできます。実際に使ってみると、想像以上に簡単でレスポンスもスピーディです。また、【入力してください】のフォームには自由に質問ができるのも特徴。どんな質問が多いのかを聞いてみました。

 

「一番多かったのは、『一度開けたワイン、まだ飲めますか?どう保存したらいい?』といったものでした。そのほかには、『ワインの賞味期限は?』『ワインって腐るんですか?』『甘いワイン・飲みやすいワインを教えて』『ワインのコルクが途中で折れた!どうしよう?』『二日酔いしないワインってあるの?』などなど。なかには『雨の日におすすめのワインは?』といった希少な意見も。ユーザーの方々の潜在的ニーズや、どのような課題を持っているかを具体的に知れるので、マーケティングとしてはかなり参考になりますね」(伊藤さん)

DSC_7459↑「プチ贅沢・ホームパーティ」「1,000円~1,999円」「スパークリングワイン」に導かれた銘柄は「バルセロナ 1872」。この日はAmazonで1660円でした

 

質問は自由で、たとえば「彼氏は?」と質問すると「・・・・ナイショです!」と返してくれるなど、なかなかおちゃめな一面があるみのりさん。キャラ設定が気になるところですが、モデルなどはいるのでしょうか?

 

「特定のモデルはいないのですが、話しかけやすさや親しみやすさに重点を置くように設定しました。そのため、性格は元気で活発な感じです。ただコスチュームはワイン感をイメージした藤色ですので、やや古風であったりおとなしいイメージがあってギャップを感じるかもしれませんね」(寺田さん)

 

ローンチから数か月。一部AIが追い付いていなく、たまに読み違えてしまったり応えられなかったりするそうですが、少しずつ改善させながらよりよいサービスを目指していくとのことです。なお今回は触れませんでしたが、おすすめレシピにも力を入れており、毎週追加されているとか。ワインに合うレシピとしてはどのサイトよりも充実しているそうなので、まずはこの年末年始にでもチェックしてみてはいかがでしょうか!

 

これは「ワインに着せるタイムマシン」だ! わずか数分で長期熟成の効果を生む「超音波デキャンタ」販売スタート

海外製品の日本展開の支援などを行うハンズエイドは、超音波技術によってワインやウィスキー、日本酒を数分で熟成させる「Sonic Decanter」(ソニック デキャンタ)を、12月18日、イノベ部公式ストアにて一般販売を開始しました。色はブラックとホワイトの2種。価格は3万4800円(税込)。小売店店頭では来春から順次発売します。

 

超音波の力でワインやウィスキー、日本酒を柔らかな味わいに!

20171218-s2 (4)↑ホワイト(左)、ブラック(右)。サイズは幅16.5×奥行17×高さ38cm

 

本機を使うと、ワインは長い年月をかけた熟成したワインのように、ウィスキーは長期熟成したようなまろやかさになるとのこと。2016年、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」にて600%もの支援を達成しましたが、海外での需要に生産が追いつかず、1年越しに日本発売が実現しました。

 

本機が採用するのは、空気と触れさせ酸化を促す、従来のデキャンティング(デキャンタージュ)とは全く逆のアプローチ。超音波の振動により、細かい気泡でワインを攪拌(かくはん)することによって、酸素を抜く効果を実現しました。その結果、ワインを劣化させることなく、わずか20分でワインそのものの味や、舌触り、香りを格段に良くするといいます。具体的には、防腐剤として使用される二酸化硫黄(SO2)の減少、ph値の減少、アントシアニンの減少、揮発酸(VA)の減少の4つが科学的に証明したとのこと。このほか、同社はタンニンを和らげ、アントシアニン、エステル、ポリフェノールの化学構造を改良すると説明しています。

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Sonic Decanterは、ワイン以外のお酒にも使用できます。例えば、ウィスキーであれば角が立っていた味も長期熟成したようなまろやかさに。日本酒であれば口当たりが滑らかになり、いままで燗(かん)をしないと飲みづらかった固い日本酒も、冷酒のまま柔らかな口当たりに変えることができます。

 

使い方は、本体に冷水を入れてワインを本体に差し込み、赤ワインか白ワインのボタンを選ぶだけ。赤ワインは20分、白ワインは15分で熟成効果が出るとのこと。日本酒やウィスキーは、5~20分程度、好みの時間で調整すればOKだといいます。

↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK

 

それにしても、長期熟成の効果をわずか数分~数十分で得られるというのは驚きですね。「時を縮める」という意味では、小さなタイムマシンのような存在といえるかもしれません。とはいえ、3万4800円と価格が安くはないゆえに、「試してみないと購入に踏み切れない」という人は多いはず。そんな方は、「Bar 霞町 嵐」(西麻布)、「Bar Eterna」(銀座)の2つの協力店舗でその効果が試せるというので、まずはそちらを訪れてみてはいかがでしょう。

↑ウィスキーにも利用可能↑ウィスキーにも利用可能

 

 

 

これは「ワインに着せるタイムマシン」だ! わずか数分で長期熟成の効果を生む「超音波デキャンタ」販売スタート

海外製品の日本展開の支援などを行うハンズエイドは、超音波技術によってワインやウィスキー、日本酒を数分で熟成させる「Sonic Decanter」(ソニック デキャンタ)を、12月18日、イノベ部公式ストアにて一般販売を開始しました。色はブラックとホワイトの2種。価格は3万4800円(税込)。小売店店頭では来春から順次発売します。

 

超音波の力でワインやウィスキー、日本酒を柔らかな味わいに!

20171218-s2 (4)↑ホワイト(左)、ブラック(右)。サイズは幅16.5×奥行17×高さ38cm

 

本機を使うと、ワインは長い年月をかけた熟成したワインのように、ウィスキーは長期熟成したようなまろやかさになるとのこと。2016年、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」にて600%もの支援を達成しましたが、海外での需要に生産が追いつかず、1年越しに日本発売が実現しました。

 

本機が採用するのは、空気と触れさせ酸化を促す、従来のデキャンティング(デキャンタージュ)とは全く逆のアプローチ。超音波の振動により、細かい気泡でワインを攪拌(かくはん)することによって、酸素を抜く効果を実現しました。その結果、ワインを劣化させることなく、わずか20分でワインそのものの味や、舌触り、香りを格段に良くするといいます。具体的には、防腐剤として使用される二酸化硫黄(SO2)の減少、ph値の減少、アントシアニンの減少、揮発酸(VA)の減少の4つが科学的に証明したとのこと。このほか、同社はタンニンを和らげ、アントシアニン、エステル、ポリフェノールの化学構造を改良すると説明しています。

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Sonic Decanterは、ワイン以外のお酒にも使用できます。例えば、ウィスキーであれば角が立っていた味も長期熟成したようなまろやかさに。日本酒であれば口当たりが滑らかになり、いままで燗(かん)をしないと飲みづらかった固い日本酒も、冷酒のまま柔らかな口当たりに変えることができます。

 

使い方は、本体に冷水を入れてワインを本体に差し込み、赤ワインか白ワインのボタンを選ぶだけ。赤ワインは20分、白ワインは15分で熟成効果が出るとのこと。日本酒やウィスキーは、5~20分程度、好みの時間で調整すればOKだといいます。

↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK

 

それにしても、長期熟成の効果をわずか数分~数十分で得られるというのは驚きですね。「時を縮める」という意味では、小さなタイムマシンのような存在といえるかもしれません。とはいえ、3万4800円と価格が安くはないゆえに、「試してみないと購入に踏み切れない」という人は多いはず。そんな方は、「Bar 霞町 嵐」(西麻布)、「Bar Eterna」(銀座)の2つの協力店舗でその効果が試せるというので、まずはそちらを訪れてみてはいかがでしょう。

↑ウィスキーにも利用可能↑ウィスキーにも利用可能

 

 

 

次は「酒屋さん」が食われる…? Amazonが切り拓くネット酒販の地平

Amazonは、2017年10月20日(金)~29日(日)の10日間、期間限定の『Amazon Bar』を銀座にオープンしました。ずらりと並んだ約5000本のお酒から、来店客の気分に応じて専用端末がお酒をすすめる『メニューのないBar』です。これが連日大行列の盛況ぶりで大きな話題になりました。酒類の取扱数日本最大級を自負するAmazonは、お酒の小売業界をどう変えるのでしょうか。

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■酒販とECは相性抜群

Amazonはよく使うけどお酒は買わない。そんな人も多いのではないでしょうか。Amazonは今、急速に酒類のラインナップを充実させています。2014年4月に『お酒ストア』をオープン。17年6月には、ボタンを押すだけで注文できる『アマゾン ダッシュボタン』に酒類を追加し、同7月に『定期オトク便』でもお酒を買えるようにしました。お酒ストアの16年度売り上げはオープン当初から約2.7倍に増え、着実に売り上げを伸ばしています。

 

酒類の取扱数日本最大級を自負するお酒ストアは、定番のビール、日本酒、ワイン、焼酎、梅酒、チューハイ、洋酒・リキュールだけでなく、Amazonが各国のワイナリーから直輸入したワインも取り揃えています。専属の『Amazonソムリエ』が電話やメールを通じて無料でワインの相談に乗ってくれるサービスや、毎月違うワインが定期的に届く頒布会などのサービスも整えています。このようにAmazonは、消費財の中でも成長著しいカテゴリーのひとつとして、酒類の販売に力を入れているのです。

 

日本酒やワインなど瓶入りのお酒やケース入りの缶ビールなど、持ち歩くには重い酒類は、ネット通販に適しています。また、実店舗より多く、さまざまな種類を揃えられるところもネット通販に適していると言えます。世界中の珍しいお酒を自宅まで届けてくれるのは、消費者としてはとてもありがたいこと。

 

筆者も、店頭での取り扱いがほとんどないオレゴンワインをネットで買ったり、晩酌のお酒が無いことに気付いて『Amazon Prime Now(プライム ナウ)』の1時間便で購入したりと、お酒を買うときもネットの恩恵を最大限に受けています。ちなみに、プライム ナウでは11月16日0時に解禁されるボジョレー・ヌーヴォーを前日22時から注文受付開始し、早ければ解禁と同時の0時に届けてくれるというから驚きです。

 

■「地域の酒屋さん」がAmazonと勝負するには…

消費者にとって便利なお酒のネット通販。それでも、手がける業者は多くありません。『なんでも酒屋 カクヤス』『やまや』などの大型酒販店は、それぞれ独自の強みを打ち出してネットでも気を吐いていますが、Amazonのライバルと言える企業はまだまだ限られていると言ってもいいでしょう。このままAmazonが酒販に力を入れると、酒の小売業界も家電小売業界のようにAmazonの「独り勝ち状態」になってしまうのではないか、と危惧する人も多いのではないでしょうか。すでに数が減っている地域の酒屋さんはもちろん、大型スーパーやディスカウントストア、コンビニなど酒類を取り扱う店舗は、危機感を覚えているでしょう。

 

酒の小売業界がAmazonの独り勝ちを食い止め生き残るには、Amazonにない「きめ細やかな」サービス、独自性が求められます。たとえば、セブン&アイ・ホールディングスは、アスクルと提携して生鮮食品宅配サービス『IYフレッシュ』を始めると発表しています。これは4月に始まった同様のサービス「Amazonフレッシュ」への対抗策でしょう。『IYフレッシュ』はセブン&アイ・ホールディングスが全国に張り巡らせた流通・販売網を活かすとされており、筆者としては酒類のネット販売でもこうした持ち味が活かされることを期待します。

 

消費者として選択肢が増えるのは大歓迎。小売業界もAmazonに対抗すべくさらなる切磋琢磨を続け、より良いサービスが増えるといいですね。

 

【著者プロフィール】

ECアナリスト/ネット通販コンシェルジュ・遠藤奈美子

ネットショップの運営に携わり、自身でも日常生活のほぼ全ての買い物をオンラインで行っていることから、ユーザー目線かつ運営者としての厳しい視点で情報を発信。EC事業者と消費者の橋渡し役を目指す。

「最後にカシスの香りが際立つ」ボジョレーのスペシャリストが絶賛した2017年のボジョレー・ヌーヴォーを飲み比べ!

11月16日、ついに解禁された2017年のボジョレー・ヌーヴォー。解禁を心待ちにしていたワイン好きの人もいたでしょうし、日頃ワインを飲まない人でもボジョレー・ヌーヴォーに解禁日があることはなんとなく知っているはず。

 

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ボジョレーワイン委員会によると、「2017年のボジョレーは放漫で朗らか、絹のようにしなやか、しかもフレッシュで輝かしいワインに仕上がった」のだそう。そんな解禁されたばかりのボジョレー・ヌーヴォーを楽しむべく、アサヒビールによる解禁イベント「アンリ・フェッシ・ヌーヴォで2017年の収穫を祝おう」に参加してきました。

 

まずはボジョレー・ヌーヴォーの基本をおさらい

そもそも、「ボジョレー・ヌーヴォー」の解禁日がここまで大きなイベントとして取り上げられるるのはなぜなのでしょうか? ボジョレー・ヌーヴォーは、フランスのブルゴーニュ地方の南端にあるボジョレー地区で作られています。この地区で作られるワインの大半は赤ワインで、ガメイ種というブドウが使われているんです。

↑花崗岩質、石灰粘土層の土壌なので黒ブドウ「ガメイ種」が育ちやすい↑花崗岩質、石灰粘土層の土壌なので黒ブドウ「ガメイ種」が育ちやすいのだとか

 

このワインは醸造期間が短く、フランスで最初にでき上がる新種です。もともとはボジョレー地区の収穫祭を祝うための新酒でしたが、各ワイナリーがいかに早く出荷するかを競うようになってしまったのだそうです。そんな「早出し競争」による品質低下を防ぐため、1967年、フランス政府によって11月15日を解禁日として発売することが認められました。そして、パリのレストランを中心に大ブームになり、やがて「11月の第3木曜日」を解禁日に制定。いまに続くとされています。

↑皮から色素が溶け出し、タンニンの少ないきれいなルビー色のワインに↑皮から色素が溶け出し、タンニンの少ないきれいなルビー色のワインに

 

通常のワインはぶどうを粉砕してから発酵させますが、ボジョレー・ヌーヴォーはぶどうを房のままタンクに入れ、自身の重さで実が潰れて果汁が溢れ出た状態で発酵させます。このとき、炭酸ガスがタンク内に充満し、果皮の色素が出やすくなることで美しいルビー色の仕上がりに。この製法は「マセラシオン・カルボニック」と呼ばれ、寝かせることなく飲めるのが特徴です。

 

悪天候だったからこそ良質なぶどうに成長

アサヒビールが取り扱うのは、アンリ・フェッシ社のヌーヴォー14アイテム。アンリ・フェッシ社は1888年の創業以来、120年以上ボジョレー地方に根差したワイナリーで、2015年・2016年にはボジョレー・ヌーヴォーのコンクール「トロフィー・リオン」で最高金賞・金賞を受賞しています。

↑「ボージョレ・ヌーヴォー ロゼ2017」(750ml/2180円)、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2017」(750ml/3080円)、「シャトー・デ・レイシエール・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ2017」(750ml/3680円)が「トロフィーリヨン2017」で3年連続金賞を受賞↑「ボージョレ・ヌーヴォー ロゼ2017」(750ml/2180円)、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2017」(750ml/3080円)、「シャトー・デ・レイシエール・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ2017」(750ml/3680円)が「トロフィーリヨン2017」で3年連続金賞を受賞

 

同社はヌーヴォーのスペシャリストと称される作り手がいること、長期保存ができるヌーヴォーもつくっていることが強みです。この「ヌーヴォーのスペシャリスト」とは、アンリ・フェッシ社の醸造責任者であるローラン・シュヴァリエ氏のことで、イベントでは今年のボジョレー・ヌーヴォーのできについて話してくれました。

↑アンリ・フェッシ社の醸造責任者のローラン・シュヴァリエ氏も登壇↑アンリ・フェッシ社の醸造責任者のローラン・シュヴァリエ氏も登壇

 

今年は春には霜が降り、夏には雹(ひょう)の嵐が訪れたことで、多くのぶどうの実が落ちたそう。しかし、生産量はかなり落ちたものの、残された果実に栄養が行き渡ったことで良質な果実に。さらには、収穫直前直前の8月に気温が高くなったため、収穫時期が通常よりも早い9月頭になったことで、味も香りもベストな状態での出荷が可能になったといいます。

 

日本だけの数量限定ワインも登場!

今回のイベントで試飲したのは、アンリ・フェッシ社の4つのワイン。このうちの1つだけは、ヌーヴォー(新種)ではなく、2013年のヴィンテージになります。

↑左から「ボジョレー・ヌーヴォー 2017」(750ml/2180円)、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・アンフォゲッタブル2017」(750ml/2500円)、「オマージュ・ア・アンリ・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ2017」(750ml/6000円)、「フルーリー・シャトー・デ・ラブロン2013」(750ml/3170円)↑左から「ボジョレー・ヌーヴォー 2017」(750ml/2180円)、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・アンフォゲッタブル2017」(750ml/2500円)、「オマージュ・ア・アンリ・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ2017」(750ml/6000円)、「フルーリー・シャトー・デ・ラブロン2013」(750ml/3170円)

 

「ボジョレー・ヌーヴォー 2017」は、紫色を帯びたルビーレッドの色合いで、アロマはストロベリーのような感じの甘さが漂います。ローラン氏によれば、「最後にカシスの香りが際立つ」とのこと。丸みのあるなめらかな口当たりで、「これぞボジョレー・ヌーヴォー」という感じです!

 

つづいては、ワインショップ・エノテカで扱われる「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・アンフォゲッタブル2017」。こちらも熟したぶどうならではの心地良さがあり、フレッシュさとまろやかさを兼ね備えています。ボジョレー・ヌーヴォー 2017に比べると、少し複雑さが感じされます。

 

そして、今年新たに作られたのが「オマージュ・ア・アンリ・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ2017」。こちらは平均樹齢80年の古木からできるぶどうを使っています。樹齢が長い木からなるぶどうは濃厚で複雑な味わいになり、たしかに新種なのにヴィンテージのような深みのある味わい。しかも、日本市場のために作られた限定2000本というプレミアムワインなんです。価格は1本6000円程度とのことで、特別なときに飲みたいですね。

 

最後に、ヌーヴォーとの比較のために飲んだのが「フルーリー・シャトー・デ・ラブロン2013」。2013年はブドウの収穫の時期が遅く、ようやく香りが開いた今年が飲みごろなのだそう。スパイスの香りがしっかり感じられ、ミディアムボディのワインとしては上品な味わいです。

 

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なんといってもボジョレー・ヌーヴォーは、軽い味わいとフルーティーなニュアンスが魅力。実は肉じゃがや生姜焼きなど、しょうゆとみりんを使った和食にも合うんです。ついに解禁された2017年のボジョレー・ヌーヴォー。宅飲みやホームパーティーの際は、ボジョレー・ヌーヴォーで乾杯してみましょう!

 

【URL】

アンリ・フェッシ ヌーヴォ http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/wine/beaujolais/

「スタッフは何故に擬人化しようと思ったのか」 NHK「あさイチ」が“ブドウの品種”を擬人化して話題に!

11月15日の「あさイチ」(NHK)で「1000円ワイン特集」が放送され、「ブドウの品種をキャラ化とかwww」「恋愛ゲームみたいだな… 声は声優さんなの?」と話題になっている。

出典画像:「あさイチ」公式インスタグラムより出典画像:「あさイチ」公式インスタグラムより

 

ブドウの品種を擬人化して選びやすく!

同放送では、16日のボージョレ・ヌーボーの解禁日に合わせてワインを特集することに。日本はいまワイン黄金期らしく、消費量は過去最高を記録している。そんなワインブームをけん引しているのが“1000円ワイン”の存在。スーパーやコンビニには1000円前後で買えるワインが並び、人気を博しているそうだ。

 

しかし、ワインには種類が多く、自分の好きな味の選び方がわからないといった悩みを抱える人も…。そこで「あさイチ」は“ブドウの品種を擬人化”。ワインの香りや味わい、特徴をイメージしやすくして、自分と相性の良いワインの選び方を紹介することに。

 

まず“赤ワイン編”では3人のイケメンが登場。渋みと酸味が強くて骨格がしっかりしている「カベルネ・ソーヴィニヨン」は、マッチョで渋イケメンのキャラに。さらに、渋みと酸味がほどよく優し目で、しっかりとした果実味で口の中を包み込んでくれる「メルロー」は、包容力のある優しいイケメンとして登場。ほかに、酸味がしっかりしていて渋みは少なく、上品ですっきりとした味わいで、バラの残り香も特徴的な「ピノ・ノワール」は、インテリ系の貴公子イケメンに。

 

さらに“白ワイン編”にもイケメンが3人登場。酸味がしっかりしていて果実味がほど良い「シャルドネ」は、さわやか優等生に。ハーブとグレープフルーツの香りがして、酸味と果実味がしっかりしている「ソーヴィニヨン・ブラン」は爽快系イケメン。果実味が強く、甘い口当たりの「リースリング」は弟キャラクターの癒やし系イケメンとなって登場した。

 

まさかのブドウの擬人化に、視聴者からは「さすがあさイチ、攻め攻めですなー!」「スタッフは何故に擬人化しようと思ったのかがいちばん知りたい」「高貴ロン毛眼鏡のピノ・ノワールが好み!」「ブドウ品種の擬人化とかww でもわかりやすいわぁ」「カベルネさんがいいです」「まさかの2次元で思わず見入ってしまった」「シャルドネくんとソーヴィニヨンくんがツートップです!」といった好評の声が上がっている。

 

擬人化ブドウの声優はダレ?

好評を博したワイン擬人化だったが、視聴者からは「擬人化覚えやすくていいね! 声優さん情報下さい」「ブドウ擬人化の声優特定まだなの?」「聞き覚えある声なのにわかんない! 早く特定してください、声優探偵たち!」といった声も。

 

ブドウたちのCVは「あさイチ」のインスタグラムで発表され、「カベルネ・ソーヴィニヨン」と「シャルドネ」は阿座上洋平、「メルロー」と「ソーヴィニヨン・ブラン」は私市淳、「ピノ・ノワール」と「リースリング」は金本涼輔であることが判明している。

酸味と甘みのバランスが絶妙な「山ぶどう」! 濃~い原液や赤ワインでアンチエイジング

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おいしい上に美容にも効果的な食べ物があれば、積極的に食卓に取り入れていきたいですよね。今の時期に収穫の最盛期を迎える「山ぶどう」は、美容や健康に役立つと話題になっているフルーツ。どのようなとり方をすればいいのかチェックしてみましょう。

 

濃厚な味わいの山ぶどう

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10月10日の「あさイチ」(NHK)では、俳優の藤原薫さんが山ぶどうを紹介しました。
山形県鶴岡市の朝日地区は、昔から山ぶどうが多く生産されている土地。
月山を中心に1,000mを超える山々に囲まれているため、強い風を防ぐことができます。

 

さらに、太陽の光を遮るものがないことや寒暖差が大きいことなども手伝い、豊かな味わいを持つ山ぶどうの栽培が可能に。
藤原さんは獲りたての山ぶどうをさっそく1粒食べ、「少し酸味があるけど濃厚な味がします!」とリポートしていました。

 

朝日地区で山ぶどうを育てる農家の方は、山ぶどうをぎゅっと絞って原液をつくり、お酒に入れて飲むこともあるんだそう。
SNSには、「ジャムにするとめっちゃおいしい」「炭酸入れた山ぶどうスカッシュがたまらん」「お菓子やゼリーづくりにも使える」といった声が上がっていて、アレンジ方法はさまざま。
オンラインショップでは1年を通して購入することができるので、気になった人はぜひチェックしてみて。

 

ポリフェノールが豊富な月山ワイン

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山ぶどうは、食用ぶどうよりも多くの「ポリフェノール」を含んでいるぶどう。
「ポリフェノール」には抗酸化作用があり、以前「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京)や「健康カプセル! ゲンキの時間」(TBS系)でも取り上げられたように、若さのキープやアンチエイジングに役立つとされる栄養素です。
種と皮に多く含まれていることから、ぶどうを丸ごと使う赤ワインは「ポリフェノール」を効果的にとれるお酒。
寒いシーズンには電子レンジで温めるホットワインにして飲むのもおすすめです。

 

そして、山ぶどうを原料につくられた赤ワインは、香りがとても良く飲みやすいワイン。
今年の4月にフランスのワインコンクールで金賞を受賞し、世界的にも注目されています。
赤ワインを肉料理やチーズに合わせるのは定番ですが、蕎麦や天ぷらといった和食に組み合わせるのが山形流。
試食した藤原さんも「かなりマイルドに感じます! ホントに合いますね」と感激したよう。

 

また、地元の人が化粧水代わりに使うこともあるのは、山ぶどうの木からとれる「樹液」。
残念ながらまだ商品化はされていないのですが、現地で試した藤原さんからは「サラサラしていてすぐに乾燥が収まります。本当にいいものでした!」との感想が。
ゲストの八嶋智人さんは「樹液にもきっと、抗酸化作用もあるってことですよね」とうなずいていました。

 

酸味と甘みのバランスが絶妙な山ぶどう。
サビない体づくりをするために役立ててみては?

 

 

文/プリマ・ドンナ