これがマイチェンってウソだろ…?「BEVらしい走りを目指した」三菱の新型アウトランダー極上の乗り味を試乗レポート

PHEV(後述)の先駆けともいえる三菱のSUV「アウトランダー」が昨年10月、駆動用バッテリーを刷新するなどのビッグマイナーチェンジを実施しました。外観からはほとんど従来モデルとの違いがわからないほどですが、走りを含めたクルマとしての進化はそれを超える大きなものとなっていました。

◾今回紹介するクルマ

三菱/アウトランダーPHEV

※試乗グレード:P Executive Package(7人乗り)

価格:526万3500円〜659万4500円(税込)

 

PHEVとは何か?

PHEVとは「プラグインハイブリッド車」のことです。日本で主流となっているハイブリッド車との違いは、この“プラグイン”によりコンセントから充電ができる機能を備えたことにあります。つまりPHEVは、任意に追加充電できるハイブリッド車ということになります。

 

また、ハイブリッド車(HEV)はエンジンによってのみ充電しますが、搭載するバッテリーの容量が小さいこともあって、モーターはエンジンのアシストが中心。ストロングハイブリッド車であってもモーターで走れる時間はあまり長くありません。PHEVではバッテリーを大容量化したことで、モーターで走る時間が長く、バッテリー残量がある時はBEV(電気自動車)と同等の走りを体験できるのもメリットとなります。

 

これにより、自宅でも充電が可能となり、この場合はガソリンよりもエネルギーコストを安くすることができるのです。さらにモーターで走ることでBEVと同等の静かさで走れることもPHEVならではの大きな魅力といえるでしょう。

 

バッテリーを刷新してEV走行距離を大幅に延長。内装も質感アップ

アウトランダーは2012年に登場した2代目でこのPHEVにいち早く参入し、以来、PHEVの先駆者として地位を固めてきました。今回のビッグマイナーチェンジでは、PHEVとしての魅力に磨きをかけ、着実な進化を遂げたモデルとなりました。

↑外観はほとんど変わらないが、アルミホイールを新デザインに変更し、ターンシグナルランプをLED化した

 

メインとなる進化のポイントは駆動用バッテリーの刷新です。電池パックの作り直しを行うほど大がかりなもので、その容量は従来の20.0kWhから22.7kWhへと1割以上もアップ。これにより、EVモードでの航続距離は100kmオーバーとなり、これはおそらく国産PHEVの中では最長となるのではないかと思います。

 

そして、この容量アップに伴い床下構造の変更も実施されました。もちろん、一般的に言えば、マイナーチェンジでここまで行うことはありません。しかし、よりモーターで走行する領域を増やし、よりBEVらしい走りに近づけるという開発者の思いが、あえてここまで手を入れさせたというわけです。さらに、三菱自動車によれば「より多くの駆動トルクがタイヤへ伝わるようになり、その対応として駆動系の制御やサスペンションの味付けはすべてやり直した」と言います。まさにフルモデルチェンジ並みの刷新が実施されたのです。

↑ラゲッジスペースは5人乗車時でもゴルフバッグが4個、スーツケースが3個収納できる大容量。荷室長(セカンドシート折り畳み時)2040mm、荷室幅(最小)1070mm、荷室幅(最大)1300mm

 

一方で、従来モデルとの差をほとんど感じないのが外観です。高速走行中のフードのバタ付きを抑えるために、ボンネットフードをアルミからスチールに変更し、ターンシグナルランプとバックランプをLED化したということで、これは見た目ではわかりづらいところ。とはいえ、よく見ればグリルやバンパーのデザインも変更したことで前から見るとシャープさを増した印象を受けますし、アルミホイールも新デザインに変更されています。また、全高は5mm高くなったことでSUVらしさがより強調されたのは確かです。

↑リアビューでも大きな違いはないが、バックランプはLED化された。リアフォグは装備されていない

 

内装でも進化を遂げています。ダッシュボード中央にあるディスプレイは、12.3インチに大型化され、ここではApple CarPlayやAndroid Autoへの対応も可能。ルームミラーはフレームレスのデジタルミラーとなって先進性をアピールしています。快適性については前席にシートヒーターに加えてベンチレーション機能を装備しています。また、アルミペダルの採用もあり、全体として一段と質感が向上した印象を受けます。

 

モーターが活躍する領域が増えて、トルクフルでスムーズな加速を実現

さて、実際に走ってみましょう。スイッチをONにしてアクセルを踏むと、車体はほとんど音もなく前へと進み出しました。スタート地点から西湘バイパスまでの一般道でエンジンがかかることは一切なく、西湘バイパスの本線へ流入する際、アクセルを少し強めに踏んだところで初めてエンジンが動き出したのです。この加速は極めて力強く、アッという間に本線の流れに乗ることができました。

↑回頭性が素晴らしく良く、大柄なボディにもかかわらず取り回しの良さは特筆に値する

 

モーターは特性上、ゼロスタートからトルクをフルに出すことができます。つまり、このモーターでの領域が増えたことでその特性をフルに活かせるようになり、それがトルクフルでスムーズな本線への流入につながったのは間違いありません。

↑エンジンは直列4気筒2.4Lで、これに前85kW/後100kWのモーターを組み合わせている

 

西湘バイパスに入ってからも車内は極めて静か。時折、海側から吹いてくる強い風がボディを襲いましたが、それでもアウトランダーはびくともせずに快適に車体を走らせます。低速域で若干大きめに聞こえたジェネレータの音もほぼ聞こえなくなり、足腰のしっかりとしたサスペンションは、西湘バイパスの準高速域でも快適な乗り心地を提供してくれました。

 

市街地に入ってからは、この大柄で2t近い重量級のボディとは思えないフットワークの良さが光ります。車線変更はもちろんのこと、交差点での操舵フィールも良好で、ステアリングを操作する度に運転する楽しさを実感させてくれるのです。さらに狭い路地に入っても、ボディの見切りの良さがサイズ感を感じさせないスムーズな走行を可能にしてくれました。このあたりは、「パジェロ」などの大型SUVで培った、三菱ならではの経験が活かされているに違いありません。

 

ぜひ一度は聴いて欲しい、YAMAHAが作った渾身のサウンドシステム

そして、ビッグマイナーチェンジを受けたアウトランダーPHEVで見逃せないのが、YAMAHAサウンドシステムの搭載です。グレードによって、12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」(※「P Executive Package」に標準装備、「G」「P」はオプション)と、8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」(※「M」「G」「P」は標準装備)の違いはあるものの、それぞれが純正オーディオとしてはハイレベルなサウンドを聴かせてくれたのです。

↑12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」

 

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」に組み合わされるサブウーファーはラゲッジスペース左側にある

 

もちろん、両者を聴き比べればUltimateに軍配が上がります。特に中低域の再現性が高く、女性ボーカルを再生した時はその声質に思わずウットリしてしまったほど。また、背後のベースの量感も豊かで、これはUltimateだけのサブウーファーの搭載が効果を発揮しているのだと思います。とはいえ、どちらもダッシュボード上にステージが展開される様子を見事なまでに再現しており、音楽を楽しむにはいずれも十分に満足がいくレベルでした。

↑8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」

 

ただ、Ultimateには大きなアドバンテージがあります。それは、周囲の騒音を把握して、周波数帯に応じた補正機能を備えていること。ノイズキャンセルではないものの、その補正を加えていくと確かに細部の音が浮かび上がり、より聴きやすくなるのです。これをON/OFFすればその差は歴然。この操作がややわかりにくいのが残念でしたが、この効果は多くの人にぜひ体験してほしいと思いました。

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」を試聴中の筆者

 

SPEC【P Executive Package(7人乗り)】●全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm●車両重量:2180kg●パワーユニット:2359cc直列4気筒DOHC 16バルブ●エンジン最高出力:98kW/5000rpm[モーター最高出力:前85kW/後100kW]●エンジン最大トルク:195Nm/4300rpm[モーター最大トルク:前255Nm/後195Nm]●WLTCモード燃費:ハイブリッド燃料消費率17.2km/L・交流電力量消費率227Wh/km●一充電消費電力量:23.22kWh/回

 

撮影/松川 忍

 

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「こんなに万能なファミリーカーはない」プロが絶賛したクルマって? 2024年ファミリー層にオススメの国産車5選

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さん。その岡本さんが2024年に登場したクルマのなかから、比較的手ごろな価格帯を中心に、ファミリー層におすすめしたい国産車を5台紹介します。

 

【その1】こんなに万能なファミリーカーはない

ホンダ

フリード

250万8000円(税込)〜

まずは、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことでも知られるフリードだ。初代からずっと「ちょうどいい」とアピールしているとおり、狭い場所でも取り回しに苦労しない手頃なサイズでありながら、車内は3列目までしっかり使えるほど広々としている。スライドドアの開口部が幅広く高さも十分に確保されていて、ステップの段差もなく乗り降りしやすい。ファミリーカーとして、たしかにこれほど日本で「ちょうどいい」クルマはない。

 

さらにフリードは走りもいい。新たに搭載したホンダ独自のe:HEVと呼ぶハイブリッドシステムにより、スムーズで力強い走りを実現していて、大人数を乗せてもストレスを感じることもない。しかも燃費が抜群にいい。4WD性能も望外に高くて、降雪地の人も不安に感じる必要はないだろう。

 

一方のガソリン車は軽快な走りが持ち味だ。アクセルを踏み込むと、いかにもホンダらしい元気のいいサウンドを楽しめる。乗り心地が快適で、ハンドリングも素直で意のままに操れて、直進安定性も高く、ボディが小さいながらもロングドライブでも疲れ知らずだ。こんなに万能なファミリーカーはない。デザインは万人向けの「エアー」と、SUVテイストの「クロスター」が選べる。

 

【その2】この雰囲気を乗員全員が味わえると思えば割安にすら思える

マツダ

CX-80

394万3500円(税込)〜

SUVでファミリーカーなら、「CX-80」が最強だろう。ひと足先に登場したCX-60の3列シート版であり、後輪駆動ベースで、直列6気筒のディーゼルエンジンや本格的なPHEVの設定など特徴的な部分を共有しつつ、全長とホイールベースを延長。3列目の十分な居住空間の広さを実現しているのが他のクロスオーバーSUVにはないポイントだ。

 

内外装デザインもなかなか見応えがある。インテリアでこれほど高いクオリティ感を達成するには、ヨーロッパのメーカーだったら軽く1000万円を超えるに違いない。その意味では、CX-80も決して安くはないが、この雰囲気を乗員全員が味わえると思えば割安にすら思えてくる。

 

大柄なサイズで後輪駆動ベースのクルマらしく、ドライブフィールは重厚でありながらスポーティだ。特にいまや貴重な直列6気筒ディーゼルエンジンは、直列6気筒ならではの奥ゆかしい響きを味わわせてくれる。

 

【その3】懐かしいけれど新しいイメージの仕上がり

トヨタ

ランドクルーザー250

520万円(税込)〜

より本格的なクロスカントリー車が好みの人には、「ランドクルーザー250」がある。原点回帰を図り、あえて高級路線ではなく質実剛健を追求したところがポイントだ。中身は最新のSUVそのもので、装備も非常に充実していながらも、見た目や走りは新しいけれど懐かしく、懐かしいけれど新しいイメージに仕上がっている。

 

車内や荷室の広さも十分で、並のSUVに比べると座る位置が高い。着座姿勢も立ち気味で、高い目線から周囲を見下ろす形になるのも特徴だ。

 

悪路走破性はとてつもなく高くて、このクルマで走れない道は日本にはないと思っていいだろう。おそらく本領を発揮させる機会は、普通に過ごしている分には訪れないだろうが、それだけの実力を持ったクルマに乗れるのると思えるのは頼もしいことこの上ない。

 

【その4】アクティブなファミリーにもってこい

スズキ

スペーシア

153万100円(税込)〜

小さなファミリーカーには、各メーカーがそれぞれ腕によりをかけた力作が勢ぞろい。なかでも、2024年末の時点でのイチオシは、「スペーシア」だ。軽ハイトワゴンはどれも概ね同じような方向性でまとめられているなかでも、スペーシアはもっとも軽く、マイルドハイブリッドを搭載していて、軽快な走りとクラストップの低燃費を実現。先進運転支援機能が充実しているという強みもある。

 

車内には収納スペースが豊富に設けられていて、ひとつひとつがより使いやすいよう工夫されている。リアシートにリラックスして座れる「オットマンモード」、座面上の荷物の落下を防ぐ「荷物ストッパーモード」、安定した姿勢を支える「レッグサポートモード」という3通りのモードを選べる「マルチユースフラップ」というユニークな機能を採用したのもポイントだ。

 

SUVテイストのギアは遊び心のある内外装デザインのほか、撥水加工シートや防汚タイプのラゲッジフロアを採用しており、ステアリングヒーターが全車に標準装備されている。アクティブなファミリーにもってこいだ。

 

【その5】EV航続距離が100kmを超えた!

三菱

アウトランダーPHEV

526万3500円(税込)〜

電動化モデルに興味のある人には、マイナーチェンジした「アウトランダーPHEV」をすすめたい。大容量化と高出力化した新開発のバッテリーにより、EV航続距離が100kmを超えたのがうれしいかぎり。ふだんはBEVと同じように乗れて、ガソリンを使うのは遠出するときだけという付き合い方ができる。走りにも磨きがかかって、より静かでなめらかで力強くなり、乗り心地がよくなってハンドリングの一体感も増している。

 

新設定された最上級グレードなら、海外のプレミアムブランドにも負けない高級感あるインテリアや、ヤマハと共同開発したという高性能オーディオシステムの卓越したサウンドが楽しめるのもポイントだ。広くはないが、いざとなれば3列目シートもある。

 

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーを活用し、家庭の電力供給源として機能させる先進技術V2HやV2Lにも対応。「走る蓄電池」のような使い方も可能だ。

 

 

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気になる新車を一気乗り! 電動化の波に乗るポルシェ、三菱のプレミアムモデルをレポート

今回は、ポルシェのタイカン・クロスツーリスモと三菱・新型アウトランダーPHEVをピックアップ。前者はピュアEV、後者はプラグイン・ハイブリッドで、どちらも加速するクルマの電動化を象徴するプレミアムなモデルだ。両車とも独自性は高い。

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】高速域でも静粛なのはさすがポルシェ!

EV

ポルシェ

タイカン・クロスツーリスモ

SPEC【タイカン4 クロスツーリスモ】●全長×全幅×全高:4974×1967×1409mm●車両重量:2245kg●パワーユニット:電気モーター×2●最高出力:380[476]PS●最大トルク:51.0kg-m●一充電走行距離:360km

●[ ]内はオーバーブースト時

 

ポルシェでありながらSUV的な快適性も実感!

クロスツーリスモは、セダンのタイカンに続くポルシェのピュアEVの第二弾。タイカンをワゴン化したボディにはSUV風の装備がプラスされ、唯一無二の個性的な外観が最大の特徴となる。日本仕様のパワーユニットは、グレードを問わず電気モーターを前後に搭載。駆動方式が4WDのみとなるほか、バッテリーも93.4kWhの総電力量を持つ仕様に統一される点が、セダンのタイカンとは異なるポイントだ。

 

今回はスペック的に最も控えめなタイカン4に試乗したが、動力性能はそれでもスポーティと呼べる水準。静粛にして滑らかなEVらしさはもちろん、それが高速域でも衰えない点はポルシェらしい。一方、足回りはセダンのタイカンとは異なり、スポーツ性が若干ながらマイルドな味付けになっている。これはダート路面なども守備範囲となる使用環境を想定した結果だが、それだけにSUV資質も上々。贅沢な日常の足としても、自信を持ってオススメできる。

 

[Point 1]  ワゴンボディでもスタイリッシュ!

ワゴン化と言っても外観はスタイリッシュ路線。近年の欧州勢で流行しているシューティングブレーク仕立てとなる。そこにSUV的な装備を追加したことで独自性は十分だ。

 

[Point 2] SUVらしい用途にもしっかり対応

荷室容量はタイカン4の場合でフロント側が84L。リア側は446〜1212Lで、セダンモデルを大幅に上回る。

 

[Point 3] 後席は頭上回りの空間が拡大

前席回りの作りは、基本的にセダンのタイカンと同じ。助手席側にもタッチパネル式のディスプレイが追加できる。後席はワゴン化することで頭上スペースが拡大された。

 

[ラインナップ]

タイカン4:電気モーター×2/4WD/1341万円(税込)
タイカン4S:電気モーター×2/4WD/1534万円(税込)
タイカン・ターボ:電気モーター×2/4WD/2056万円(税込)

 

【その2】これぞ電気駆動モデル最強のオールラウンダー!

SUV

三菱

アウトランダーPHEV

SPEC【P】●全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm●車両重量:2110kg●パワーユニット:2359cc直列気筒DOHC+ツインモーター●最高出力:133[116/136]PS/5000rpm●最大トルク:19.9[26.0/19.9]kg-m/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L●EV走行換算距離:83km

●[ ]内は電気モーター(前/後)の数値

 

自慢の車両制御技術で走りも十分楽しめる!

SUVのプラグイン・ハイブリッド車としては、世界的ヒット作となったアウトランダーPHEV。2021年12月に正式発売となった2代目では、その万能選手ぶりに一層の磨きがかかっている。

 

まず、2.4Lガソリンエンジン+前後電気モーターという駆動システムの基本構成こそ先代と変わらないが、電気モーターは前後とも大幅に出力が向上。エンジンも高効率化されたほか、駆動用バッテリーは総電力量が13.8kWhから20kWhへと大容量化。EV走行時の最大航続距離は60km台だった先代を大幅に凌ぐ最大87kmを実現し、走行性能も底上げされた。また、電力の供給能力も最大では一般家庭の約12日ぶんに相当するという(先代は約10日ぶん)。

 

しかし、実際に試乗して何よりも新鮮だったのは電動化や4WD技術に長けた三菱の最新作らしい走りだ。実に7つもの選択肢を用意する走行モード切り替えは、走りのキャラクターを鮮やかに変化させてドライバーを楽しませる。今回は舗装路のみでの試乗だったが、例えばターマックモード選択時の身のこなしなどはSUVとは思えないほどスポーティ。その一方、通常時は走行性能も快適で質感も上々。このクラスのSUVとして、いかに魅力的な存在であるかは言うまでもないだろう。

 

[Point 1] 室内は上質感もアピール

シンプルなデザインだが、細部に至る作り込みで先代より質感が格段に向上。もちろん、最新モデルらしく運転支援システムなども充実している。走行モード切り替えはダイヤルを採用しワンタッチだ。

 

[Point 2] モード切り替えの恩恵を実感できる走り

今回はサーキットでの試乗のみだったが、舗装路用のモード切り替えだけでも走りのキャラクターは鮮やかに変化。SUVとは思えない楽しさを実感できた。

 

[Point 3] グレードによって7人乗りも用意

先代のPHEVモデルは5人乗りのみだったが、新型では3列シートの7人乗りも選択可能に。もちろん3列目は小柄な人向けだが、SUVとしては見逃せないメリットとなりそうだ。

 

[Point 4] 使い勝手も期待通り

荷室は、このクラスのSUVとしては十分に実用的。容量は3列目使用時こそ258〜284Lだが、3列目収納時では634〜646L、後席をすべて畳めば1373〜1390Lまで拡大する。

 

[Point 5] 三菱車の旗艦に相応しい仕立てに

駆動システムだけでなく骨格や足回りも着実に進化。外観も格段に存在感が高められた新型は、三菱のフラッグシップモデルという役割も担う。

 

[ラインナップ]

M:2.4L+前後電気モーター/4WD/462万1100円(税込)
G:2.4L+前後電気モーター/4WD/490万4900円(税込)(※)
P:2.4L+前後電気モーター/4WD/532万700円(税込)
※:7人乗りの価格は499万6200円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/篠原晃一、小林俊樹

 

 

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安全なクルマは好みで選べる!「カテゴリ別」安全+αの最適モデル指南

衝突被害軽減ブレーキをはじめとして安全性能についてはお墨付きのモデルのなかから、より便利に、楽しく使えるモデルをプロがチョイス。スタイルや走り、使いやすさなど自分の好みに合ったモデルを選んで、ワンランク上の快適ドライブを満喫しよう!

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が選びました

モータージャーナリスト

岡本幸一郎

高級輸入車から軽自動車まで幅広く網羅。各社の予防安全技術の多くを体験済み。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。

【タイプ1】SUV

多くの新モデルが登場し、安全運転支援技術も最新のモノが搭載されることが多いSUV。走破性能や使いやすさで優れたモデルもあるが、総合性能で選ぶならトヨタ・RAV4だ。

 

【独創性で選ぶなら】クーペ的なシルエットとインテリアの心地良さが秀逸

マツダ

MX-30

242万円〜305万2500円

SUVでありながらクーペ的シルエットとフリースタイルドアが印象的なモデル。インテリアにはコルクやペットボトルなどサステナブルな素材を用いて心地良さを演出する。

 

↑同社のRX-8以来となる観音開きを採用したフリースタイルドア。ピラーがないぶん後席の乗降もしやすい

 

[岡本’sジャッジ]

 

【先進機能で選ぶなら】e-POWERとプロパイロットの先進性を1台で味わえる

日産

キックス e-POWER

275万9900円〜286万9900円

日産独自のハイブリッド方式であるe-POWERと、安心・快適なドライブを実現するプロパイロットという、2つの先進機能が1台で楽しめる。EV走行時の静粛性も特筆モノだ。

 

↑アクセルペダルひとつで加減速が行えるe-POWER Drive。アクセルとブレーキの踏み替え回数も減ってラク

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】3列シートを備えたモデルは人も荷物も余裕で乗せられる

メルセデス・ベンツ

GLB

512万円〜696万円

コンパクトなサイズながら、身長168cmまでの人が座れる3列目シートが便利なモデル。3列目シート使用時でも130L、シート格納時では500Lの荷室を活用して積載できる。

 

↑大人数で乗車するときに便利な3列目シート。身長168cmの人までに限られるが、あるとやはり便利だ

 

[岡本’sジャッジ]

 

【走破性能で選ぶなら】ジープ最強モデルが誇る世界最高の悪路走破性能

ジープ

ラングラー

499万円〜621万円

高い最低地上高、大径タイヤなどの見た目から想起するとおりのオフロード性能を誇るモデル。なかでも悪路走破性能を強化したアンリミテッド ルビコンは世界最強と言われる。

 

↑マニュアルで切り替えるパートタイム4×4を搭載。自動で前後輪に駆動力を分配するフルタイム4×4も採用する

 

[岡本’sジャッジ]

 

【デザインで選ぶなら】デザインは軽快ながら操縦安定性の良さが光る

 

フォルクスワーゲン

T-Cross

303万9000円〜339万9000円

若々しいデザインとカラーバリエーションが魅力のコンパクトSUV。一見軽快なモデルだが、ドイツ車ならではの高い操縦安定性もポイント。2WDのみなのが少々残念ではある。

 

↑リアシートは140mmスライドが可能。後席の広さを自在に変え、同時にカーゴスペースの拡大にも役立つ

 

[岡本’sジャッジ]

 

【総合性能で選ぶなら】悪路も難なくこなすオールラウンダーSUV

トヨタ

RAV4

274万3000円〜402万9000円

前後左右のタイヤへのトルク配分を変更する独自のダイナミックトルクベクタリングAWDを採用し、悪路走破性が高い。もちろんオンロードでの快適さもトップクラスを誇る。

 

↑路面の状況に応じて最適なトルク配分を行うダイナミックトルクベクタリングAWD。高い走破性を実現する

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ2】コンパクトカー

コンパクトカーでトップを争うトヨタ・ヤリスとホンダ・フィットがモデルチェンジし、走りや使い勝手が一層向上。走りを楽しみたいならスズキ・スイフトスポーツも選択肢のひとつだ。

 

【使いやすさで選ぶなら】広々とした室内空間は使い勝手も良好!

ホンダ

フィット

155万7600円〜253万6600円

広々とした室内空間と快適な乗り味でコンパクトカーらしからぬ心地良さを提供してくれる。後席の座面をはね上げて背の高いモノを積載できるなど、使い勝手も抜群に良い。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【走りの良さで選ぶなら】強力ターボと軽量ボディが刺激的な走りを実現

スズキ

スイフトスポーツ

187万4000円〜214万1700円

1.4Lの強力直噴ターボエンジンと970kgの軽量ボディで刺激的な走りが楽しめ、コスパも抜群に良いモデル。クルマを操るのが好きな人にはうれしい6速MTも選べるのは◎。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【燃費の良さで選ぶなら】操縦安定性に優れた驚異的低燃費モデル

トヨタ

ヤリス

139万5000円〜249万3000円

新形プラットフォームの採用で高い操縦安定性を実現。36.0km/Lというハイブリッド車の驚異的な燃費に目が行きがちだが、ガソリン車でも最高21.6km/Lと優秀な数値だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ3】ミニバン

使い勝手の良い日産・セレナや、走りの良さを楽しめるホンダ・ステップワゴンに注目。独創的な三菱・デリカD:5のクロカン走破性能は他のミニバンにはない優位点だ。

 

【走りの良さで選ぶなら】低床設計が生み出すしっかりとした走りが魅力

ホンダ

ステップワゴン

271万4800円〜409万4200円

ホンダ独自のセンタータンクレイアウトが可能にした低床設計が、低重心のしっかりとしたフットワークを生む。ハイブリッド車の強力な加速と低燃費も大きな魅力だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】シートアレンジが多彩で広い室内を自在に使える

日産

セレナ

257万6200円〜419万2100円

広い室内と、乗り方や使い方によって自由にアレンジできる3列シートが特徴。通常の約半分のスペースがあれば開閉できるハーフバックドアを設定するなど、芸が細かいのも◎。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【独創性で選ぶなら】個性的なフロントマスクと走破性能は唯一無二の存在

三菱

デリカD:5

391万3800円〜447万2600円

SUVとの融合を図った独創的なミニバン。話題となったコワモテのフロントマスクも印象的だ。走行シーンに応じてドライブモードを選択できるなど、ミニバン唯一無二の存在。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ4】軽自動車

販売台数No.1を誇るホンダ・N-BOXの牙城は揺るがないが、遊び心満点のスズキ・ハスラーとダイハツ・タフトが華々しくデビュー。安全で楽しく使える軽が充実した。

 

【快適性で選ぶなら】独特な愛らしさに快適な乗り心地がプラス

スズキ

ハスラー

128万400円〜179万800円

愛らしい独特のデザインはもちろんだが、軽自動車らしからぬ快適な乗り心地にも驚かされる。丸目のヘッドライトと大きな3連フレームを備えたインパネデザインは個性的だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【楽しさで選ぶなら】乗員スペースと荷室を分け多彩な使い方が可能

ダイハツ

タフト

135万3000円〜173万2500円

フロントシートをクルースペースとし、リアシートと荷室を荷物の積載スペースと位置付けることで、快適な室内空間を実現。開放的な天井のスカイフィールトップが魅力的だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】驚異の室内高が生む自由自在の室内空間

ホンダ

N-BOX

141万1300円〜212万9600円

センタータンクレイアウトによる低床設計で、子どもなら立ったままでも余裕で着替えられる室内高に驚き。両側スライドドアとスライドシートで、小さな子どもも乗せやすい。

 

[岡本’sジャッジ]

三菱「デリカD:5」がPHEV搭載モデルを加えて、11年目の初フルモデルチェンジ!?

2007年に三菱「デリカ スペースギア」の後継モデルとしてデビューして以来、10年以上に渡りロングセラーとして愛され続けている「デリカD:5」。2017年10月の新型投入の正式なアナウンスもあって期待が高まる中、「デリカD:5」次期型プロトタイプが身も凍るスウェーデン北部でキャッチされた。

 

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次期型「デリカD:5」と見られる開発車両は車体前後にカモフラージュが施されているが、現行モデルとは大きく異なる鋭く切れ上がったヘッドライトや大型フォグランプなど、実にアグレッシブなフロントマスクは三菱の次世代「ダイナミックシールド」が見て取れる。またコンパクトなコの字型テールライトも確認出来る。

 

プラットフォームは三菱がオリジナルで開発し、ボディサイズは現行モデルとほぼ同じになるといわれている。また、駆動方式はFFから後輪に駆動力を配分する「電子制御4WD」を ベースにした「S-AWC」を採用し、オン/オフロードともに高い走破性を実現するという。

 

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注目は「アウトランダー」から流用されるPHEVシステム搭載モデルの登場で、2.0リッターのガソリン仕様と2.2リッター・クリーンディーゼルエンジン搭載モデルと共にラインナップされる可能性が高い。なお、2018年内のワールドプレミアが期待されている。

 

 

三菱エクリプス クロスがユーロNCAPで5つ星を獲得!

三菱自動車は11月9日、新型コンパクトSUV「エクリプス クロス」が、欧州の新車を対象に安全性能を厳しい試験条件で総合評価する「ユーロNCAP(European New Car Assessment Program)」において、最高評価となる5つ★を獲得したことを発表した。

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 ユーロNCAPの安全性試験で5つ★を獲得するには、「成人乗員保護性能」で80%以上、「子供乗員保護性能」で75%以上、「歩行者保護性能」で60%以上、「安全補助装置」で50%以上という4項目のパーセンテージをすべてクリアしなければならない。

 

新型エクリプス クロスのテストモデルは1.5リッターエンジンを搭載する2WD仕様だったのだが、「成人乗員保護性能」で97%、「子供乗員保護性能」で78%、「歩行者保護性能」で80%、「安全補助装置」で71%という評価を得て、4項目すべての条件をクリア。見事5つ★獲得となった。

 

エクリプス クロスは、衝突時のエネルギー吸収とキャビンの変形抑制を両立させた衝突安全強化ボディ「RISE」に加え、小柄な乗員に対しても高い乗員保護性能を実現するよう設計したシートベルトと7つのSRSエアバッグの採用により、成人乗員保護の項目においてスモールオフロードクラスでトップレベルとなる97%を獲得。さらに、子供の乗員保護の項目においても高い評価を獲得した。

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また、デザインを重視したクーペSUVながら、ヘッドライトやバンパー等の車両先端部分の衝撃吸収性を高め、エンジンフード下に十分なスペースを設けることで高い歩行者保護性能を確保。歩行者保護の項目においても同クラストップレベルとなる80%を獲得している。

 

さらに、衝突被害軽減ブレーキシステム「FCM(Forward Collision Mitigation System)」により、市街地での一般的な走行速度を考慮したユーロNCAP試験条件ですべて衝突を回避した。

 

エクリプス クロスは、2017年10月3日より欧州に向け量産車の出荷を開始。今後、豪州、北米、日本など約80カ国で展開される計画で、今年度の出荷は約5万台が予定されている。

 

 

【東京モータショー2017】EVとSUVという強みを活かした「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」

1917年に日本初となる量産乗用車の「三菱A型」を製作した三菱重工業時代を含めてではあるが、今年で100周年を迎えた三菱自動車。益子修CEOは、先に発表された2019年度までの中期計画「DRIVE FOR GROWTH」について触れ、ルノー・日産アライアンスのスケールメリットを最大限活かし、EVや自動運転などに積極投資すると改めて表明。中期計画の第1歩となるのが今年度中に日本での発売がアナウンスされている新型SUVのエクリプスクロスで、今回は初めて右ハンドルの日本仕様が出展されている。

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次の100年に向けて「三菱自動車をリニューアルする」と表現したのは、引き続き登壇した山下光彦副社長。SUVやEV、PHEVといった同社の強みに磨きを掛けるとしている。市販間近のエクリプスクロスとともに披露されたコンセプトEVの「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」は、フロントに1、リアに2つのモーターを配置し、得意とする4WD制御により、EVでも三菱らしい旋回性の高さを実現するという。新たな時代の「EVエボ」には、AIも搭載され、今後のクルマ作りが提示されている。

 

MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT

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フロントマスクの特徴である「ダイナミックシールド」をよりスポーティに仕立て、高めの地上高やロア部を内側に絞り込むことによりSUVらしさを強調。内装は宙に浮いたようなフローティング式のインパネと小型のメータークラスターが特徴。ディスプレイには、ボンネットに隠れて見えない地面や前輪の動きまで表示される。フロントに1つ、リアに2モーターの新開発「デュアルモーターAYC」を採用し、高い旋回性能を実現。

 

エクリプスクロス

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エクリプスクロスの日本仕様は今回が初公開。サイズは全長4405×全幅1805×全高1685㎜で、RVRとアウトランダーの中間をカバーする。パワートレーンは新開発の1.5リットル直噴ガソリンターボと8ATの組み合わせで、2.4リットルのNAエンジン並のトルクと高い燃費性能を両立するという。プラットフォームはアウトランダーと共通なので将来のPHEVの設定も期待される。操作系では新たにタッチパネルコントローラーが採用される。