【街中華の名店】築地「中華 ふぢの」はとことん自家製にこだわる味の開拓者だ

 

日本最大級の市場である築地。場内外には鮮魚のうまい店を筆頭に実力派の飲食店が軒を連ね、労働者や観光客の胃袋を満たしている。そのジャンルには街中華もあり、有名なのが「ふぢの」だ。ここは場内にある老舗だが、市場前の「新大橋通り」を本願寺方面に進むと「新富町駅」の手前には「中華 ふぢの」がある。今回は同店の魅力を中心に、一風変わった店名の秘密なども紐解いていきたい。

 

 

自家製調味料を駆使する素材を生かした絶品中華

「中華 ふぢの」の大きなこだわりのひとつが、自家製のうまみ調味料である。街中華では一般的に既製品を使うケースもあるが、同店の場合は野菜や酒などを駆使していちから作っているのだ。そのため、どの料理にも素材のよさを生かした自然な味わいが楽しめる。

↑「酢豚」ハーフサイズ830円。16時以降はライスやスープなどが付くセットにでき、その場合は1000円。ランチタイムのセットは950円とよりお得だ

 

たとえば人気メニューの「酢豚」。街中華をはじめとする大衆店ではケチャップを使う酢豚が少なくない。しかし「中華 ふぢの」ではケチャップは使わず、自家製のうまみ調味料としょうゆ、砂糖、酢などで独自のおいしさに仕上げている。

↑仕事は丁寧だが、スピーディ。これぞ熟練の技

 

調理工程にも職人技が満載。豚肉はやわらかく、脂身が少ないヒレを使い、しょうゆなどで下味を付けてから片栗粉をまぶして揚げる。野菜は、にんじんとたけのこはあらかじめスープで30分程度煮込んでおいたものを使い、油通ししたピーマンやパプリカなどと合わせる。そして玉ねぎは料理によって使う部分を分けており、酢豚には甘みの豊かな中間のみを採用している。素材ごとに最適な時間と調理法で仕上げられているので、ワンランク上のおいしさが楽しめるのだ。

 

↑「チャーハン」800円。ランチタイムに麺類を注文した場合は、半チャーハンを250円で付けられる

 

チャーハンのような定番料理にも、自家製のうまみ調味料は欠かせない。また、チャーハンには乾かしたご飯を使い、卵は水分を飛ばしきるまで炒めてから混ぜることで絶妙なパラパラ感を生み出している。

 

なかには完全なオリジナル料理もあり、そのひとつが「冷やしぶっかけ」だ。これは、店主が素揚げのなすを使った蕎麦にヒントを得て生み出したオリジナルの冷涼麺。同店には「冷やし中華」も同価格で存在するが、それよりも酢を控えてかつおのダシに醤油を効かせた和風のタレで、キリっとした味に仕上げている。

↑「冷やしぶっかけ」1000円。なす、れんこん、かぼちゃ、パプリカ、アスパラガスと色とりどりの野菜がたっぷり。そしてみょうがが爽やかなアクセントに

 

 

創業者の孫が独自の味を目指して“築”いた新境“地”

独創性の高い料理が「中華 ふぢの」の真骨頂だが、それ以外にも珍しい特徴がある。たとえば、たばこ屋というもうひとつの顔。これは約20年前に販売の免許を得て取り扱うようにしたという。その理由は、それまでたばこを販売していた隣のコンビニが閉店することになったから。

↑アイドルタイムでもたばこだけは売っており、直接買いに来るお客も後を絶たない。事実上、近隣の愛煙家のオアシスとなっている。なお、隣のコンビニは「サンチェーン」から「am/pm」へと看板が変わり、やがて閉店したのだとか

 

店名の由来を聞くと、そこには場内市場の「ふぢの」にも関係する深い歴史があった。「ふぢの」は築地市場の誕生と同じ、1935年にいまの地で産声を上げた。創業者は「中華 ふぢの」の森 則次店主の祖母にあたり、姓が伊藤だっため「藤」を「ふぢ」と記して、そこに「の」をつけて店名にしたという。

↑「中華 ふぢの」店主の森 則次さん。御年63歳であるが、若々しい!

 

一方で森さんは、独自の道を切り開くべく若くして都内の中華料理店で修業。やがて1979年に「中華 ふぢの」の前身となる和風のラーメン店をいまの場所に創業させるが、店名は祖母へのオマージュで「ふぢの」を採用することに。当時は出前もやっていたというが、オープン10年後の1989年に業態を街中華へ変更し、いまに至るのだ。

↑手前がカウンターで、奥がテーブル席となっている。ちなみに同店が入っているビルは森さんが建てたもので、しかも業態転換とともに立て替えたものだ

 

なお、場内の「ふぢの」は祖母の後継者が創業家にいなかったところを知人が受け継ぎ、現在の形になっているとか。いまでも両店には親交があり、製麺所は同じところだというが、森さんが独自でレシピを磨いていることもあり、味わいは異なる。

↑つまみで人気の「シューマイ(3個)」390円。もちろん自家製で、しっかりとせいろで蒸している。酒で人気なのは、限られた店でないと飲めない「キリン ブラウマイスター」の生(小グラス370円~)

 

市場近辺には名店が多いが、朝が早いという特性のため早じまいするところも多い。そこでいうと、「中華 ふぢの」は夜も営業していてメニューも酒も豊富。前記のビールは毎月20~25日限定で中グラス320円~になると、サービスもうれしい。築地は場内や場外市場以外にも、素晴らしい街中華があるのだ。

 

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

中華 ふぢの

住所:東京都中央区築地3-3-9

アクセス:東京メトロ日比谷線「築地駅」3番出口徒歩1分、東京メトロ有楽町線「新富町駅」4番出口徒歩1分

営業時間:11:30~14:00(L.O.14:00)/16:00~23:00(L.O.22:00)

定休日:土曜、日曜、祝日

【街中華の名店】納豆とねぎ好きならマスト! 渋谷に2店舗構える「山之内」には魔性の激ウマメニューあり

街中華のなかには、ときに個性的な料理が名物となっている店がある。今回紹介する、キラー通りの「中華風家庭料理 山之内 神宮前店」もそんな一軒だ。たとえば、冷やし麺タイプの「ねぎそば」。夏季限定ではなく、冬でもオーダーが絶えない同店の大定番である。ほかにもトガったメニューが異彩を放つ、同店の魅力をお伝えしよう。

 

 

シンプルなねぎそばと納豆チャーハンはクセになるウマさ

この「ねぎそば」は見た目こそ非常にシンプルであり、使われている食材も必要最低限。麺のうえに白髪ねぎと刻みチャーシューがのり、茶褐色のタレがかかった潔さ満点の一品だ。

↑「ねぎそば」700円(夜は750円)。ゆるやかにウェーブのかかった中細麺は115gで、のど越しがよくなめらかな食感だ

 

ところが、ひと口食べると箸はもう止まらない。特製のしょうゆダレは程よい濃さで、シャキっとしたねぎとも相性抜群。シンプルゆえに単調になるかと思いきや、それぞれのキャラクターが際立っているのでまったく飽きることがない。しかも、さらに味のマンネリ化防止に一役買っているのがチャーシューだ。

↑豚の肩ロースを約2時間半煮込んだチャーシュー。隠し味に使われた八角が、妖艶な風味を醸し出している

 

ただ、肉の存在感をプラスするだけではない。八角という、本格中華でおなじみの甘味を帯びた香辛料が隠し味に使われており、これが好アクセントを演出する。なお、「納豆ねぎそば」(850円で、こちらは昼も夜も同価格)というさらに個性的なメニューもあるのだが、この納豆自体も「山之内」の魅力だ。

↑「納豆チャーハン」850円。パックで売られている一般的な納豆を使っているが、熟練の技でひとつになっておりとにかく味のバランスがいい

 

いくつかの納豆メニューがあり、なかでも多くのファンを持つのが「納豆チャーハン」。納豆だけでなく、細かく刻んだにんじんが入っているのも特徴で、ほんのりと甘みを加えている。そして一般的なチャーハンよりしょうゆの味が強めになっており、これは納豆との相性をよくするためのテクニックだ。

 

 

中華風家庭料理の超名店のルーツだった!

一品料理で絶大な人気を誇るのは「ネギワンタン」だ。これは仕込みが大変なため、夜限定となっているが、それはビジュアルを見れば一目瞭然。ワンタンが隠れるほど、大量の白髪ねぎがのっている。ねぎは「ねぎそば」などにも使われる同店必須の食材であり、聞けば1日に仕入れる数は約30本。5kgもの量を極細にカットし、みずみずしい白髪ねぎに仕上げるのだ。

↑「ネギワンタン」750円。この大量のねぎの下に、ぷるっぷるの手作りワンタンが7ピース眠っている

 

皮は麺と同じ製麺所に特注したものだが、あんは自家製。使う具材はあえて極少にしており、しょうがやにんにくなどは入れず豚の挽肉とねぎだけ。これを薄口しょうゆで味付けし、素材本来のうまみを凝縮させる。

↑あとがけのしょうゆダレはワンタン専用のもの。みずみずしい生地に、白髪ねぎと青ねぎ。ふたつの爽やかな辛味がこのうえない味のメリハリを生んでいる

 

オリジナリティの高い「山之内」の料理だが、にんじんや納豆を使うチャーハンなど、どこか家庭的なレシピを彷彿とさせるものも。この秘密を聞くと、そこには同店のルーツとなる名店の存在があった。

↑歴史を感じさせるたたずまい。「中華風家庭料理」の文字は、古巣へのオマージュだろう

 

キラー通り沿いにあるここは、青山の骨董通りで絶大な人気を誇る「中華風家庭料理 ふーみん」がもともとあった場所。ふーみんは1971年に開業し、1986年に現在の地へ移転したという。それまでふーみんで働いていたのが、「山之内」のオーナーである山之内敏昭さん。つまりは移転を機に独立し、古巣の跡地を受け継いで「山之内」を開業したのである。

↑現在、山之内オーナーは2号店で陣頭指揮をとっており、神宮前店ではその技術を学んだ料理長兼店長が切り盛りしている

 

やがて「山之内」も繁盛店となり、渋谷の宮益坂エリアに2号店となる「中華風家庭料理 Yamaのuchi 渋谷店」をオープン。山之内オーナーはこちらに拠点を移し、いまも渋谷店で腕を振るっている。これら3つの店にはすべて「ネギワンタン」「ねぎそば」「納豆チャーハン」、そして「たらこ豆腐」という個性派メニューなども共通して存在するが、最も街中華な雰囲気なのが原点の地である「中華風家庭料理 山之内 神宮前店」なのだ。

↑神宮前店。テーブル席もあって、ゆっくりと晩酌を楽しむことができる

 

こぢんまりとしているぶんアットホームで、ひとりで気軽に食事やお酒を楽しめる。お客の9割は常連だというが、そのなかにはプロ野球選手や芸能人も少なくない。また、場所柄アパレルやクリエイティブ系の企業で働く業界人も多く、彼らの想像力をかきたてるのに欠かせない存在でもあるのだ。最寄り駅から少々歩くが、だからこそ穴場といえる立地。ぜひ訪れておきたい名店である。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

中華風家庭料理 山之内 神宮前店

住所:東京都渋谷区神宮前3-38-11

アクセス:東京メトロ銀座線「外苑前駅」徒歩8分
営業時間:平日12:00~14:30/18:00~21:30(L.O.)、土曜12:00~14:30

定休日:日曜、祝日

【街中華の名店】ラーメン400円! 学生の青春に寄り添う「メルシー」は早稲田遺産だ

東京屈指の学生街である早稲田~高田馬場。早稲田大学をはじめ様々な学舎があると同時に若者好みの高コスパな店が多く、ラーメン激戦区ともいわれるエリアである。そのため栄枯盛衰も激しいが、最古参のひとつでありレジェンド的な存在でもあるのが「メルシー」だ。ラーメンが名物であるが、洋食や酒なども提供するスタイルは街中華そのもの。改めて、そんな超名店の魅力を紹介していきたい。

 

キレのあるしょうゆに煮干しが香る高コスパラーメン

看板メニューのラーメンは、まず価格に驚かされる。確かに街中華のラーメンは専門店より比較的安く、500円を切ることも少なくない。だが「メルシー」は400円。同店で最も高価な「五目そば」でも660円となっており、とにかく圧倒的にリーズナブルなのだ。

↑ここには書いていないが、追加料金で1.5倍増量の大盛りにすることも可能だ。麺類なら+90円、ご飯類なら+100円。「チャーシュー」530円、「メンマ」110円といったつまみもある

 

味も、言わずもがなで絶品。同店のスープは豚骨と鶏ガラに、煮干しのダシとキャベツなどの野菜の甘みを加えたものがベースとなる。なかでも特徴的なのは煮干しだ。これには「平子煮干し」といわれる、まいわしを採用。サイズが大きいこの素材を使い、滋味深い魚介のうまみをブレンドする。

↑煮干しの産地は仕入れにもよるが、九州が多いという。量は1日4~5kg。多い日には7~8kgを使用

 

スープの仕込みは毎朝6時前から10時くらいまで。長年変わらない秘伝のしょうゆダレと合わせ、1玉150gの中細ストレート麺を投入。そして同店ならではのコーンなどのトッピングが施され、伝家の宝刀といえる珠玉のラーメンが完成する。

↑「ラーメン」400円。チャーシューは豚のお尻やモモの部位を使い、約1時間煮込んだものをのせる

 

あっさり系ながら、しょうゆのキレをしっかり感じさせるインパクト大のテイスト。したたかながら、あくまで主張しすぎずスープ全体に寄り添う煮干しの風味がたまらない。なお同店は味のカスタマイズができ、濃いめで麺硬めというのが特に多いオーダーだそう。

 

 

早稲田ならではの味。早稲田ならではのストーリー。

ご飯類で人気が高いのはチャーハンだ。この一品に関して同店ならではといえるのが、卵の使い方。普通は、卵を炒めて白米を加えるレシピであろう。ところが同店の場合は混ぜ合わせず、錦糸卵をきぬさや、かまぼこと一緒に後のせする手法を採用しているのだ。

↑「チャーハン 大」590円はステンレスの皿で提供。奥が通常の「チャーハン」490円

 

こうすることで華やかなビジュアルになるのだが、その効果は決して見た目の印象だけではない。あえて卵のマイルドな味わいをご飯と相いれなくすることで、チャーハン全体がエッジの立った味わいになっている。そして、このおいしさを洋風に表現したものが「ポークライス」(490円)や「オムライス」(590円)だ。

↑「オムライス」590円。千切りキャベツが添えられることも特徴のひとつである

 

これらのご飯類には鶏ではなく豚を使うことが特徴。とはいえ「チャーハン」の具材はチャーシューとねぎ、「ポークライス」と「オムライス」はこま切れ肉とたまねぎという違いがある。ケチャップとたまねぎで洋風テイストにしつつ、豚肉のストレートなうまみでパワフルな味にしたいという狙いがあるそうだ。わんぱくな学生が訪れる土地柄を考えれば、その思いには納得できる。

↑カウンターはなく、混んだ場合は相席となる。家族を連れて訪れる卒業生も多い

 

そんな「メルシー」は60周年。1958年に早稲田大学の南門付近で創業し、1970年に現在の駅寄りの場所に移転したとか。店主は現在2代目で、小林一浩さんが腕を振るっている。昔は丼ものや定食、コーヒーなどラーメン以外のメニューがいまより多く、より街中華や甘味中華(甘味喫茶のスタイルでラーメンなどを提供する業態のことを、勝手にそう呼ばせていただきたい)の色が強かったそうだ。その面影は看板に「軽食&ラーメン メルシー」として残されている。

↑2代目店主の小林一浩さん

 

社会が変わればメニューも変わるということだが、同店の代表的なメニューは味すらも60年間不変だ。ただ早稲田の街全体を見れば、跡継ぎがいなかったために閉店を余儀なくされた老舗も存在。そのひとつに“しょうゆのメルシー、塩のほづみ”として人気を二分した街中華「ほづみ」があるのだが、実はそこのおかみさん・鈴木恵美子さんが現在「メルシー」で働いている。

↑もともと早稲田が地元の鈴木さん(手前)。初代のころから「メルシー」と親交が深かったという

 

つまりは、店主や通学生のほか、卒業生や地域住民によっても支えられている“チーム早稲田”な店が「メルシー」なのだ。店名はフランス語で「ありがとう」の意味だが、薄利でおいしい料理を提供し続ける良心的な心意気に、むしろこちらから感謝を申し上げたい。「merci」と。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

メルシー

住所:東京都新宿区馬場下町63

アクセス:東京メトロ東西線「早稲田」駅3a出口徒歩1分

営業時間:11:00~19:00

定休日:日曜、祝日

【街中華の名店】東京屈指の酸辣湯麺は代々木駅前の「山水楼」にあり! ってマジで駅前じゃん

代々木は穴場のグルメ街であり、駅から足を延ばすと宝物のような名店があるとかつて述べたことがある。では駅周辺はつまらないかというと、実はそんなことはない。代々木駅を利用する人なら、だれもが目にしているはずの街中華が存在する。「中国風レストラン 山水楼」だ。

 

元祖と肩を並べるヤミツキのウマさ

とにもかくにもここはまず、場所がすごい。改札を出た目の前なのだ。駅前と呼べるエリアのなかにスターティンググリッドというものがあるならば、同店はまさにポールポジション。周りはチェーン店だが、そのなかで唯一といえる存在感を放つ。

 

↑駅からの横断歩道が店の入口まで延びている。そして周辺の店よりも専有面積が広いうえに2階建て。好立地すぎる条件だが、街中華なのでもちろん個人経営だ

 

 

↑あまりにも駅前なので、2階の窓側の席はステーションビュー

 

とはいえ、立地がいいだけでは繁盛しないのが飲食の厳しい世界だ。当然としてここには、多くのファンの心をつかんで離さない美食がある。代表的な一皿が「酸辣湯麺」。これはスーラータンメンという、酸っぱくて辛いラーメンだ。

↑「酸辣湯麺」900円。様々な具材を使ったあんが、麺を覆い隠すほどにたっぷりのっている

 

豚ロース、鶏のモモとムネ、たけのこ、しいたけ、えのきだけ、絹ごし豆腐。これらをすべて細かく刻み、鶏ガラ、ゲンコツ、香味野菜からなるスープでサっと煮る。そこにしょうゆダレや溶き卵を投入し、ラストにとろみ、酸味、辛味を調整して完成だ。

↑ストレートの細麺は150g。シャキシャキのえのきだけやふわふわの卵が、とろとろのあんや豆腐とともによく絡み、至福のおいしさだ

 

中国の四川や湖南地方の「酸辣湯」がルーツといわれるこの料理。酢、ラー油、胡椒などが効いたパンチのある味わいだが、決して強烈すぎる刺激ではなく、食べ始めると箸が止まらない。その大きな理由は特製のしょうゆダレにある。タレのなかに昆布と煮干しでうまみをプラスしているため、どこかふくよかでやさしい。また、ごま油の香ばしさが酸味をほどよく抑えるとともに食欲をかきたてる。

↑そのおいしさゆえ、有名雑誌からの信頼も厚い。「酸辣湯麺」の元祖といわれる超名店と肩を並べる形で、大きく紹介されている

 

 

代々木駅前で飲みたいときにも使える!

山水楼は中休みがなく、24時まで営業していることも魅力。昼飲み、早飲み、ちょい飲み、晩酌、2次会と、多様なシーンに応えてくれるのだ。そのため、つまみにも看板メニューが存在。「揚げギョウザ」だ。これもまた、普通の揚げ餃子とは一線を画す特徴がある。

↑「揚げギョウザ」700円。甘酢あんが最大のポイントで、一般的な「焼ギョウザ」600円も人気だが「揚げギョウザ」は熱烈なファンが多い

 

粗挽きと通常の挽肉両方を使って背脂とともに捏ね、キャベツ、にら、白菜、にんにく、しょうがをミックス。これを厚めの皮で包んで揚げ、甘酢あんをかける。表面はサクサクとしていながら、ふっくらもっちりとした生地は食べごたえが抜群。あんには隠し味にレモンが使われており、さっぱりとした余韻で絶妙なおいしさだ。

 

また、「春巻」も人気の逸品である。こちらは豚ロースとハムのほかにたけのこ、しいたけ、キャベツが中華スープのあんでまとめられており、パリパリとした生地とのメリハリがたまらない。

↑「春巻」680円。生地は春巻きの皮のトップメーカーである「富強食品」製で、安定感のあるおいしさ

 

様々な個性を持った名店・山水楼だが、その成り立ちやおいしさの秘密をたずねたところ、興味深いストーリーがあった。現在の店主は2代目とのことだが、取材時は不在のため料理長の中浜 修さんから話を聞くことに。

↑中浜 修料理長。40年以上の職人歴を持つベテランだ

 

「創業は戦後まもなくだと聞いています。私がここに入ったのが1976年。当時から『揚げギョウザ』と『春巻』はありましたが、『酸辣湯麺』は約20年前に私が開発しました。というのも、一度退社して別の店で働いていた時期があるんです。そのお店に酸辣湯があり、まかないで麺を入れて食べていたんですね。そして20年ぐらい前に私が料理長として山水楼に復帰した際に、まかないのレシピを元に『酸辣湯麺』を作ったんです」(中浜さん)

↑昭和の面影が息づく、街中華ならではの温かみにあふれた空間。ここは1階で、2階には入口脇の階段から行ける

 

利便性が高いこともあって、お客のなかには舌の肥えた業界人が少なくない。そしてメディアなどを通じて噂が広まり、同店には麺だけで30以上のメニュー数だが酸辣湯麺は1日に30杯以上出るという。代々木駅は通過するだけという人は、途中下車してでもぜひ賞味いただきたい!

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

中国風レストラン 山水楼(さんすいろう)

住所:東京都渋谷区代々木1-33-4

アクセス:JRほか「代々木駅」西口徒歩数秒

営業時間:11:00~24:00

定休日:日曜

【街中華の名店】池尻大橋「鶏舎」の名物中の名物「冷し葱そば」の季節に。それつまり、禁断症状からの解放だ!

街中華の夏の風物詩といえば“冷やし中華はじめました”だろう。筆者の調べによるとゴールデンウィーク明けから秋口まで、というのが多くの店の常套パターンだが、この季節料理が名物となっている街中華がある。池尻大橋の「鶏舎」(チイシャ)だ。

 

 

ねぎを主役にしたエッジのある味がウマすぎる!

ただ同店の場合は冷やし中華ではなく「冷し葱そば」。もともとはおなじみの冷やし中華もあり、こちらも人気が高かったという。だが、独創的かつスピーディに提供できるものを。そんな想いで生まれたのが「冷し葱そば」なのだ。

↑「冷し葱そば」950円。麺が隠れるほど具が満載だが、それでも麺の量は通常の1.5倍で225gある

 

錦糸卵などがのる冷やし中華より色味の華やかさには欠けるが、ねぎを主役にしたエッジのある味わいはインパクト大。いつしか「冷し葱そば」のほうが人気となり、冷涼麺は一本化することに。ただ提供スピードは上がったものの、人気のために仕込む量が増えた。たとえば1日に使う長ねぎの量は90本にもおよぶ。

↑シャキシャキを超えた、ジャキジャキとした食感が絶妙なねぎ。細かく刻み、冷水にさらして辛味を抜くという

 

↑チャーシューは豚の肩ロースを3~4時間煮込んで使用。「冷し葱そば」には約3枚分を短冊切りにしてのせる

 

「鶏舎」はランチから長蛇の列になるほど出数が多いため、もともと仕込み開始は早い。だが「冷し葱そば」の時季は早朝4時半から。真夏の繁忙期ともなれば、さらに1~2時間早くから準備をはじめることもあるという。

↑緑茶のように見えるが、実はこれが味の骨幹となる特製のタレ

 

↑製麺所に特注した細いちぢれ麺を、すべての麺料理に使用。「冷し葱そば」はプリっと、ツルっとした食感に仕上げられる

 

全体のおいしさをまとめ上げるのがタレだ。同店のトップシークレットということで詳しくは明かせないが、決め手となるのは自家製のねぎ油。しょうゆ、塩、豆板醤などを絶妙なバランスで配合することで、香り高くヤミツキになる味わいが生み出されるのだ。

 

 

夏以外でも楽しめる絶品中華が満載だ

シーズンが終わると、確かにファンは“冷し葱そばロス”に苛まれ、また次の夏に恋い焦がれる。だが、真の常連は知っているのだ。ほかにも絶品中華があることを! そのひとつが「五目ウマニかけ飯」。いわゆる中華丼だが、同店の開業当時から人気のメニューである。

↑「五目ウマニかけ飯」950円。「冷し葱そば」同様にご飯が隠れるほどたっぷりと具材がのる

 

名称は五目だが、実際の具は5種以上。豚バラ肉、白菜、にんじん、うずらの卵、ほうれん草、きくらげ、たけのこなどがたっぷり入っている。絶妙な火加減による、野菜のシャキシャキとした食感もたまらない。また、隠し味のオイスターソースが上品さを演出。

↑「ギョウザ」500円。豚肉、にら、ねぎ、キャベツにニンニクとしょうがをブレンドした定番の具材だが、まさにお手本といえる味わいで箸が止まらないおいしさだ

 

また、サイドメニューとしてもつまみの主役にもなるのが「ギョウザ」。オーソドックスな料理ではあるものの、あんの一体感と皮の焼き加減は職人技だからこそなせる技。普遍的なおいしさで、注文率が極めて高い一品である。

 

↑長谷川 淳店主。7歳年下の弟・孝さんとその奥様・和美さん夫妻と一緒に切り盛りをしている

 

そんな「鶏舎」は店主の長谷川 淳さんが1991年にオープンさせた街中華だが、経緯には少し変わった裏話がある。さかのぼること数年前、将来の進路を考えていた長谷川さん。手に職を付けたいと思い、一度は服飾の道を志す。だが80年代中頃は世に「ユニクロ」の1号店が誕生するなど、徐々に安価なファッションが登場していた時代。注文服の難しさを見据えた長谷川さんは料理の道へ方向転換する。そして高校時代のアルバイト経験から、中華料理店の門を叩くことに。

↑長谷川 孝さんは兄の背中を見て「鶏舎」をとともに立ち上げた。オリジナルのTシャツは常連にファッション関係者が多いため、作ってくれるのだという

 

やがて修業開始から6年ほどが経ち、ついに独立して開業したのが「鶏舎」なのだ。このころは、まさにバブル崩壊の足跡が聞こえはじめていた時代。以後、ファストファッションは一層台頭することに。長谷川さんの読みは、少なからず当たっていた。

↑よく見ると「アルバイト募集」の張り紙が。もし「冷し葱そば」の秘密を知りたければ、応募してみてはいかがだろう

 

兄弟のコンビネーションも見事な「鶏舎」だが、店名を考えたのはお父さん。鶏を使った代表的な料理に親子丼があるが、親と子の絆を連想させる「鶏」のイメージが、息子を応援したい気持ちとつながったのかもしれない。そんな同店には「トリソバ」(850円)など鶏を使ったメニューも多く、もちろんどれも絶品だ。ぜひ行ってみていただきたい。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

鶏舎(チイシャ)

住所:東京都目黒区青葉台3-9-9

アクセス:東急田園都市線「池尻大橋駅」徒歩8分

営業時間:月~金曜11:30~14:30/17:00~20:30(L.O.)、土曜11:30~14:30

定休日:日曜、祝日

【街中華の名店】ツウ絶賛の「かた焼きそば」は五反田に! 途中下車してでも行きたい「亜細亜」

しばしば、グルメの街と称される五反田。確かにジャンク系から上品・洗練系まで、低価格な業態から高級レストランまで多彩な飲食店が点在している。そしてもちろん、五反田にも街中華の名店は存在。今回紹介するのは東口を出た目の前、戦後すぐから長年この場所にあり続ける老舗「亜細亜」だ。

 

戦後すぐから五反田駅前を見守り続ける生き字引

店が入っている建物をよく見ると、両隣とつながっている。これは大昔から長屋だったことの証であり、そのなかでも数十年以上残っているのは同店のみ。事実として歴史は古く、五反田の生き字引といえる存在なのだ。

↑3階建ての物件で、もともとは店舗付き住宅。現在は客席となっているが、3階は住居だった。また、両隣はそれぞれメガネ店、文房具店だったという

 

ルーツは、初代の劉 家祥(りゅう かしょう)さんが戦時中に中国・広東から日本へ移住したのがはじまり。いまはないが、1901年に創業したという銀座の「中華第一楼」を経て、終戦直後に飲食店をはじめた。当初は大井町で営業していたが、なかなか軌道にのらず一時閉店。だがちょうど同郷出身の知人から、五反田で営んでいる喫茶店「亜細亜」を閉めたいという話を聞き、譲渡する形で店名ごと受け継いだという。それが1947年のこと。

↑1階。奥が厨房となっている

 

現在は、二代目の顯明(けんめい)さんと奥様の瑶姫(ようき)さんが店を盛り立てており、後継者である三代目の裕光さん、眞喜子さん夫妻がこれをサポート。家族で70年以上営業していることもあり、三代にわたって通う常連もいるとか。

↑3階は5人以上からの予約限定となっており、最大8名の宴会が可能。円卓のテーブルが印象的だ

 

1階と2階は温かみを感じさせるダイニング。3階は打って変わって、会食にも使えそうな落ち着いた空間となっている。幅広い食シーンで使える同店だが、訪れるのはビジネスパーソンや近隣の住民が中心。五反田エリアの日常使いで重宝する、まさに街中華なのだ。

 

受け継がれる本場広東仕込みの味に舌鼓

往年の常連をはじめ、多くのファンにそれぞれの好みがあるため、メニュー数は豊富。そのなかでも人気の高い一皿が「五目硬やきそば」だ。こちらは全国各地のかた焼きそばを1000皿以上食べたという達人が絶賛したことで知られており、見逃せない逸品である。

↑「五目硬やきそば」1300円。豚肉、海老、いか、きくらげ、白菜、青菜、にんじん、たけのこなど、麺が隠れるほど具だくさんだ

 

野菜はシャキっと、コリっとした食感を絶妙に残すべく、サっと油通し。そこに肉や魚介を加え、動物系の素材と野菜を使って毎朝炊き上げる秘伝のスープであんに。味付けは素材のうまみを生かすよう、塩を中心とした調味料で輪郭を整えていく。

↑使用される麺は、ゆるやかに縮れた特注の中太タイプ。これを、研ぎ澄まされた感覚で色を見ながら最適な硬さに揚げる

 

アラカルトも充実。つまみながらしっぽりと飲み、最後は食事で閉めるという客は多く、特にスピーディに飲みたい人に好評なのが「チャーシューメンマ」だ。全体的なボリュームもさることながら、メンマ自体もかなり大きく食べごたえがある。

↑「チャーシューメンマ」880円。乾燥メンマから水で3日間かけて戻し、それから茹でる。味付けは、しょうゆや酒などと一緒に1時間以上炊き上げる肩ロースチャーシューの煮汁が決め手だ

 

丁寧に仕込みがされているため、歯ごたえはコリっとしていながら、中身はしっとり。酒のラインナップも豊富で、とりあえずのビールと一緒にオーダーされることが多いという。

↑「キリンクラシックラガー(中びん)」580円。紹興酒は様々なタイプがあるが、これは「陳年紹興貴酒 5年」でボトル3500円

 

惣菜的な料理で特に人気なのは「酢豚」だ。こちらも具材がゴロっとしてボリューミーだが、ハーフサイズが用意されていることで、おひとり様にも重宝されているという。味は「五目硬やきそば」の野菜と同じく、新鮮さを生かした食感が印象的。そして、香ばしさすら感じるパワフルな肩ロース肉とのコントラストもたまらない。

↑「スブタ」2000円。透き通る上品なあんは、甘味と酸味のバランスが秀逸。青い野菜はピーマンではなくキュウリなのもポイントだ。ハーフサイズは1000円

 

時代ごとに一部の盛り付けが変わることはあったものの、基本的な味付けは創業時から同じだという。広東仕込みのハイレベルな技と、それを長年受け継いできた一族の絆が人気を支えているのだ。これからも五反田の街になくてはならない存在であり続けるだろう。アクセスも至便なので、途中下車してでもぜひ訪れていただきたい。

 

【SHOP DATA】

亜細亜

住所:東京都品川区東五反田1-13-9

アクセス:JRほか「五反田駅」東口徒歩1分

営業時間:11:30~14:00 17:30~22:30(L.O.21:45)

定休日:木曜

【街中華の名店】街中華タウン堀切の最古参「三河屋」は時代の流れにのるニューウェーブだ!

東京都内を見渡すと、やたらと街中華の多い街がある。そのひとつが京成本線「堀切菖蒲園駅」周辺エリア。決してアクセスがよいとはいえない場所だが、「ラーメン街道」と称される、いくつもの街中華とラーメン店が並ぶ「堀切中央通り」を中心に、約10軒もの街中華が密集しているのだ。今回はその最古参である「三河屋」を紹介しよう。

 

勉強熱心な三代目がラーメン居酒屋から中華料理店へと改革

同店はもともと、墨田区の両国で酒販店として創業したのがはじまり。創業者が、現在の愛知県である三河地方出身であることがその由来だ。「サザエさん」に登場する酒屋も同名だが、三河出身の酒販店は多かったのかもしれない。話を戻すと、同店はいまの「東京都江戸東京博物館」付近の一角で営んでいたが、1923年の関東大震災で被災してしまう。その後あまたの苦難を経て、いまの堀切で1928年に新装オープン。ラーメンを提供する居酒屋として、新たなスタートを切った。

 

↑現在の形になったのは、オープンから半世紀を経た1978年の改築時。実はこれを境にメニューもガラリと変貌を遂げ、中華料理店へとなったのだ

 

当初は、現在三代目店主として腕を振るう原田和桂さんの祖父が切り盛りをし、1949年に父である二代目へバトンタッチ。1950年に生まれた原田さんも後継者として1970年から厨房に入るが、同時に「東京栄養食糧専門学校」で学ぶ。あえて料理ではなく栄養士の勉強をしたのだ。これは、店で自然と身に付く技術以外の知識を得たかったという、勉強熱心な原田さんの思いがあったから。

↑原田和桂さん。ラー油やテンメンジャンなど、多くの調味料は自家製で作っている

 

卒業後も原田さんの向上心は衰えない。それどころか「ラーメン以外のメニューも増やしたい」という思いを募らせ、1978年の店舗改築時に行動へ移す。かつて渋谷にあった中華レストラン「一番別館」で一時的に修業しながら、日本における四川料理の重鎮・陳 建民氏が設立した料理学校で学び、「三河屋」をラーメン居酒屋から中華料理店へと生まれ変わらせたのだ。

↑右上のノートは学校から支給されたもので、約40年前のものだが、原田さんはいまでも大切に保管して目を通す。しかもこれはほんの一部である

 

原田さんが働きながら週一回通った学び舎は、いまや伝説となっている「恵比寿中国料理学院」。7か月で卒業し、覚えた料理は300以上にのぼる。そのため「三河屋」では一般的な中華メニューに加え、約60種類の本格中華も提供されている。

 

本格レシピや新たなアイデアがメニューを盛り立てる

ただここは街中華。定番となるのは、おトクな定食スタイルの「ワンプレート中華」だ。まずはこちらから紹介したい。チンジャオロース、海老チリ、唐揚げがおかずとして盛り付けられ、シュウマイ、小鉢、デザートまで付くボリューム満点の内容になっている。

↑「ワンプレート中華」1000円。メインのおかずは人気トップ3から選ばれているため、固定となっている。プラス200円でコーヒーを付けることも可能

 

3品のなかで、特に原田さんがこだわるのは海老チリ。このメニューに関しては日本人向けと本格的の2種類があり、「ワンプレート中華」には前者が採用される。特徴は、食べやすい味付けだ。ベースのケチャップのほか、隠し味にオレンジジュースと紹興酒を加えてフルーティな甘酸っぱさを演出する。またチンジャオロースにはオイスターソース、唐揚げには特製スパイスによる調味料と、一切の抜かりはない。

↑海老チリの脇に添えられるシューマイも隠れた名作。こちらは例年開催される「かつしかフードフェスタ」で、2日間で計4200個も売れる人気メニューだ

 

そして海老チリは、原田さんが学んだ本格的なタイプも。こちらはひと周り大きいサイズの海老を使用し、注文ごとに卵白などをまぶして揚げ、スピーディにソースと絡める。豆板醤でコク深い辛味を、刻んだねぎや生姜で風味を演出するのもポイントだ。

↑「海老のチリソース炒め」1450円。瓶ビールはアサヒスーパードライが550円であり、生ビールは400円から

 

 

多彩な一品料理のなかには、裏メニューも存在する。今回とっておきをお願いしたところ、宴会コースや弁当で好評だという一皿を作ってくれることに。それは肉団子と野菜が満載の、色鮮やかなものだった。

↑「タンツーワンズ」1200円。肉団子の甘酢あんかけのことだ

 

この「タンツーワンズ」は、鶏ムネと豚のミートボールに片栗粉をまぶして揚げ、パプリカ、たけのこ、にんじん、ブロッコリー、玉ねぎとともに炒めて甘酢餡を絡めたもの。エッジが強くなりすぎないようにあえて黒酢ではなく米酢を使っているが、それでも十分に芳しい香りが漂ってくる。

↑登山が趣味で、若いころは名峰にも行ったという原田さん。お気に入りの一枚とともに

 

最後に、この地になぜ街中華が多いのかをたずねてみた。だが、詳しい理由はわからないとのこと。しかも、原田さんが学生のころまでは数える程度しかなかったそうだ。ただかつての「三河屋」がそうだったように、家賃が安価だったため店を構えるケースが多かったのではないかとのこと。その一方で入れ替わりも激しかったというから、周辺の老舗はやはり名店ということだろう。

 

↑店内にはテーブル席のほか座敷も。瓶ビールは往年の赤いコーラの冷蔵庫で冷やされており、古きよき時代を感じさせる

 

取材後、「もうすぐ夜の営業になればせがれが来るよ」と原田さん。そう、ここは四代目がしっかりと後を継いでいるのだ。しかも彼は「ヒルトン東京ベイ」や麻生十番の名店「桂亭」を経た名手。実は「ワンプレート中華」も「桂亭」のアイデアを取り入れたもので、2016年にスタートするや否や大ヒットに。古いけど新しい、そんな魅力がたくさん詰まった「三河屋」。これからも堀切菖蒲園を代表する街中華として、地域をリードしていくに違いない!

 

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

三河屋

住所:東京都葛飾区堀切4-57-15

アクセス:京成本線「堀切菖蒲園駅」徒歩1分

営業時間:11:30~14:00(L.O.)、17:00~21: 00(L.O.)

定休日:木曜

 

 

【街中華の名店】銀座の老舗「萬福」。大正時代から不変の中華そばは必食だ!

銀座といえば、高級店が軒を連ねるイメージだろう。だが、その一方で庶民に愛され続ける街中華も存在する。そして今回紹介する「萬福」(まんぷく)は、そのなかでも奥深い歴史を持つレジェンド的な老舗だ。創業年は記録として残っていないものの、創業したのは大正時代。屋台から立ち上げた初代店主が、昭和4年に現在の地へ居を構えたという。

 

 

大正時代の歴史的遺産が彩るハイカラな空間

最寄りは東銀座駅で「木挽町仲通り」の一角にある。歌舞伎座からも近いこの界隈は、かつて「木挽町」という地名だった。店舗に足を踏み入れると、そこはまるで連続テレビ小説の舞台のよう。随所に目を配ると貴重なオブジェの数々を拝見できる。

↑凛々しい看板とのれんは、ただならぬ説得力がある。その一方で、丸みを帯びた窓や、そこにかかる小さな白いカーテンがハイカラ感を演出

 

↑店内には当時の営業許可証や、街区表示板などが。許可証には「軽飲食 西洋」とあり、中華の文字は見当たらない。その理由はのちほど説明しよう

 

たたずまい自体もだが、それはまさに歴史的遺産。戦災で焼け残った店舗を15年ほど前に建て替えた経緯があるため、当時そのままというわけではない。しかし、これまでの歩みを物語る骨董に彩られた空間が、古きよき時代をここに再現しているのだ。

↑カウンターとテーブル席からなる、全27席の店内。ひとりでも数人でも、様々なシーンに重宝する

 

いまは珍しい西支料理がベースとなっている

「萬福」で感じられる郷愁は、料理に関しても言わずもがな。なんといっても、基本的なレシピは創業時から不変というから驚きだ。つまり、大正時代と同じ味を楽しめるのである。そんな同店を代表する一皿が「中華そば」。玉子のトッピングが個性的な一杯だ。

↑「中華そば」700円。あっさりとしたしょうゆスープに細麺、チャーシュー、ほうれん草、メンマ、ナルトと王道であるが、玉子がこのタイプなのは珍しい

 

秘伝のスープは詳細こそ明かせないものの、動物系のダシに香味野菜を加えたもので魚介は入らない。そこにしょうゆダレを合わせ、特注のストレート細麺をしずめる。大きな特徴は、薄焼き卵を二等辺三角形にカットしてのせるトッピングだ。ほかではあまり見かけない特徴だが、その理由は創業者である初代の経歴にあった。

↑レシピを考案したのは、初代店主の笠原福次郎さん。額縁入りの写真が店内に飾られている

 

料理人だった初代は洋食出身。そして創業時の「萬福」は西洋と支那(中国)のメニューを提供する西支(せいし)料理というハイカラなジャンルだった。時代の流れとともに中華の割合が増え、街中華へとなっていった同店。だが、メニューの随所に西洋料理のエスプリといえる盛り付けへの美学などが込められている。そのひとつが、三角形の黄色い玉子なのだ。また、「ポークライス」にもその片鱗を見ることができる。

↑「ポークライス」880円。同店には同料金で「焼飯」もあるが、どちらにも普通のねぎではなく玉ねぎを使う。これも西支料理店からスタートしたという矜持であろう

 

チャーハン(焼飯)がしょうゆ味なら、「ポークライス」はケチャップ味。豚肉を使って強火の中華鍋で炒めるからか、洋食のチキンライスよりもパラっとしていて、パワフルなうまみがある。だが、玉ねぎの甘みによってまろやかさもある。いまとなっては珍しいかもしれないが、レシピを長年守り続けた老舗ならではの逸品だ。

↑「焼餃子(6個)」690円。大ぶりの手作り餃子も同店人気メニューのひとつ。甘酸っぱいタレと野菜で味わう「水餃子」は5個で690円。「サッポロラガービール 中瓶」は550円

 

ほかにも傑作は数知れず。たとえば餃子は豚肉と白菜を具材に用い、ニンニクは入れない。これは昼に訪れるビジネスマンのお客に配慮したものだ。シンプルであるが絶品で、厚くもっちりとした餃子を一度ボイルし、その後たっぷりの油で焼くのも特徴。そのため、まるで揚げパンのようにふっくらジューシーとした味に仕上がっている。

↑「レバーにら炒め」900円。15時までのランチタイムならライスとスープ付きで890円となる

 

一品料理で人気の「レバーにら炒め」も素晴らしい。「中華そば」などに用いる秘伝のしょうゆダレを味付けの軸にしており、酒などの調味料はあえて使わずシンプルに仕上げる。しいていえば豆板醤を辛さのアクセントにしているが、これが絶妙なエッセンスとなってご飯や酒が進むおいしさを醸し出すのだ。

↑現在の店主は三代目の久保英恭(ひでひさ)さん。偉大な祖父の味とともに「萬福」を守り続けている

 

奇しくも2018年の秋から放送されるNHKの朝ドラは「まんぷく」というタイトル。インスタントラーメンを生み出した偉人をモデルとした内容だが、この「萬福」にも奥深い歴史と秘められた人間ドラマが隠されている。ぜひ今度銀座に繰り出す際は、同店の味と雰囲気でモボ&モガ(モダンボーイ、モダンガール)な気分に浸ってみては。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

萬福

住所:東京都中央区銀座2-13-13

アクセス:東京メトロ日比谷線ほか「東銀座駅」A7口徒歩3分

営業時間:11:00~15:30、17:00~23:00(L.O.22:30)月~木、(L.O.23:00)金、(L.O.22:00)土

定休日:日曜、月曜の祝日

「江戸中華」ってなんだ!? 豪華食材の邂逅に魅せられる「銀座 やまの辺 江戸中華」

ここ数年“カウンター席で楽しむモダンチャイニーズ”のお店が増えてきていますね。今回紹介する「銀座 やまの辺 江戸中華」もそのスタイルが真骨頂のお店ですが、こちらでいただけるのは、普通の中華ではありません。それは「江戸中華」です!

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繊細な旬の味覚を表現するのが“江戸中華”だ

江戸中華は、日本の食材を使った現代中華料理を指します。シェフ自らが国内外の生産者を訪ねるなかで気付いた日本や日本食材のすばらしさを料理に込めた、日本の四季を感じる中華料理なんです。訪問時のコース内容から、いくつかご紹介していきましょう。

 

original1↑春雨 からすみ いくら老酒漬け

 

original6↑岩中豚 炭焼叉焼

 

 

豪華食材の組み合わせに感動レベルのインパクト!

この日は3度目の訪問で、毎度ながら安定感のあるおいしい料理を堪能。そのなかでもオスの上海蟹にキャビアをのせた「上海蟹オス キャビア」や、蝦夷アワビに雲丹をのせ上湯(シャンタン)ソースをかけた「蝦夷アワビ 雲丹 上湯ソース」には、感動レベルのインパクトが!

 

original2↑上海蟹オス キャビア

 

original3↑蝦夷アワビ 雲丹 上湯ソース

 

上海蟹のオスとメス、からすみ、キャビア、雲丹、アワビ、フグの白子といった高級食材を使用しつつも、しつこくなく気品高いモダンチャイニーズ・江戸中華の世界にすっかり魅せられてしまいました!

 

original4↑ふぐ白子 麻婆豆腐

 

original7↑春巻 ホタテ 車海老

 

original10↑きな粉アイス

 

実はこの日、同行者の大遅刻というトラブルもありましたが、スタッフの方には丁寧に対応してもらい、幸せなひとときを過ごすことができました。常に新しいことに挑戦し続け、心揺さぶられる料理に出会える「銀座 やまの辺 江戸中華」。みなさんも、ぜひ足を運んでみてください。

 

 

SHOP DATA

銀座 やまの辺 江戸中華

住所:東京都中央区銀座8-4-21 保坂ビルB1
営業時間:12:00~15:00(L.O.14:00)、18:00~23:00(L.O.22:00) ※土曜日は予約営業のみ

定休日: 日祝 ※不定休あり

アクセス:JRほか「新橋駅」銀座口徒歩5分

 

森田昌典 プロフィール

日本を代表するダンスミュージックプロデューサー。ダンスミュージックユニット「STUDIO APARTMENT」として、これまでに9枚のオリジナルアルバム、そして300以上のオリジナル曲を世界各国のレーベルからリリースしている。
http://www.studioapartment.jp/

 

=Next Party=

2018.02.09.FRI  “GENTLEMAN & LADIES“ at XEX日本橋 (NIHONBASHI)

2018.02.10.SAT  “IN MY HOUSE“ at At B (NARITA)

2018.02.17.SAT  “TBA“ at At BPM MUSIC BAR (SHIBUYA)

2018.02.23.FRI  “GENTLEMAN & LADIES“ at XEX日本橋 (NIHONBASHI)

2018.02.24.SAT  “BLACK ON IT -1st Anniversary

「コスパ最強」と話題の「大阪王将」がフカヒレ料理を驚きの価格でリリース!

餃子専門店「大阪王将」が1月23日から2月20日までの期間限定で、フカヒレ料理3品を販売。驚きのコストパフォーマンスが注目を集めた。

出典画像:プレスリリースより出典画像:プレスリリースより

 

高級食材を驚きのコスパで提供!

今回販売されるのは、「極上フカヒレらーめん」「極上フカヒレあんかけ炒飯」「極上フカヒレ天津飯」の3種類。気仙沼産のフカヒレ丸々一枚をオイスターソースで姿煮に仕上げ、それぞれのメニューに乗せられている。

 

この中で「極上フカヒレらーめん」は以前にも販売されており、高級食材・フカヒレを気軽に食べられるメニューとして話題に。「フカヒレが思ったよりもでかい! あとコリコリしてて美味しい!」「大阪王将で人生初のフカヒレを食べた」「餡が麺に絡んでめっちゃうまい! 上品な味」「フカヒレに目が行きがちだけど、実はシイタケもうまい」といった声が上がっていた。

 

そんな「極上フカヒレらーめん」と共に、今年も「大阪王将」にフカヒレの季節が到来。いずれの料理も1080円という驚きの低価格で販売される。

 

「大阪王将」コスパ最強説

1969年に大阪で創業した「大阪王将」。低価格で味わえる本格的な中華料理が人気を博しており、「3000円あればめちゃめちゃ豪勢な飲みが出来る大阪王将ほんとすき」「大阪王将ってコスパ最強じゃない?」「店舗によって当たりはずれの差がでかいけど、上手なスタッフのいる『大阪王将』のメニューは本当に美味しい」といった声が上がっていた。

 

そんな同店で特に“コスパ最強”と囁かれているメニューが「ふわとろ天津飯/450円」で、「スープもついてるし400円ちょいでかなり満足できる」と評判。2017年に放送された「さしめし 特別編」(LINE LIVE)では、「L’arc~en~ciel」のhydeがこの天津飯に対する熱い思いを告白。彼が高校時代に大好きだったメニューなのだが、東京の「大阪王将」で「天津飯」を頼んでみたところ卵が固くて驚いたという。そこで彼はしばらく「半熟で」と注文していたのだが、ある時「大阪王将」の「天津飯」が「ふわとろ天津飯」に名前を変え、どこで食べてもhyde好みの天津飯になったそうだ。

 

最近は女性にも受け入れられる店舗づくりに励んでおり、糖質オフメニューなども販売している「大阪王将」。庶民の味方として、今後もどんどんニーズを広げていきそうだ。

旬の食材で四季を表現!ジビエも美味な西麻布の新星中国割烹「龍眉虎ノ尾」

今回紹介するのは、西麻布で新しい中華がオープンしたという噂を聞きつけ訪問したお店「龍眉虎ノ尾」(リュウビトラノオ)です。大手飲食チェーンが仕掛けているお店ということもあり、当初は期待半分不安半分。でも結果は非常に大満足でした! さっそくお届けしていきましょう。

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広東料理の匠がシェフズテーブルで魅せる「中華たかせ」ーーダシの旨味だけで味わうフカヒレに感動!
 

日本の歳時記を表現する中華とは?

中国本来の料理を、全国の選りすぐりの食材を使い日本の歳時記を表現するというのが同店のコンセプト。旬の食材を生かす、日本料理的なアプローチが随所に見られます。

L1307080↑自家製干し肉と押し豆腐五香煮

 

L1307086↑鴨肉蓮根つくね薬膳蒸しスープ

 

メニューはその季節に合わせたコースでの提供となります。一番記憶に残っている料理は「上海蟹の麻辣紹興酒漬け」。お酒のつまみではありますが、濃厚な味わいと上海蟹のみそが格別においしかったです。

L1307092↑上海蟹の麻辣紹興酒漬け

 

L1307098↑秋刀魚の春巻き

 

L1307103↑アンキモの赤酒蒸し

 

L1307107↑鹿肉の老酒味噌漬け卵黄ソース

 

L1307110↑腐乳に漬けた鯛のお刺身

 

あとは「大地の松茸揚げ」と「干し北京鴨味噌醤油漬け」のクオリティが高く、驚きでした。

L1307113↑大地の松茸揚げ

 

L1307120↑北京の羊肉水餃子

 

L1307123↑干し北京鴨味噌醤油漬け

 

 

 

ジビエな中華を味わいたい時にもオススメ

日本の歳時記を表現する「中国割烹」ということですが、ジビエな中華を食べたい時にも同店はオススメ。鴨肉のほかに羊肉、鹿肉、熊肉、兎肉などを食材に取り入れた料理が多いため好き嫌いが分かれるかもしれません。でもすべて嫌な臭みはなく、ジビエ初心者でも楽しめるお店です。

L1307134↑甘鯛煎り焼き翡翠ソース

 

L1307144↑龍眉虎ノ尾的火鍋 サフォーク羊肉 ヒグマの熊肉

 

L1307164↑自家製手打ち麺

 

 

L1307167↑林檎のシャーベット

 

 

大量の唐辛子と山椒を使った火鍋は、僕には辛過ぎて少しハードル高めでしたが、それだけに本場のおいしさというものを体験できると思います。店内はゆったりと座れて、とても落ち着ける雰囲気。テーブル席、カウンター席と用意されているので、シーンに応じて使い分けるといいでしょう。

 

 

【SHOP DATA】

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龍眉虎ノ尾

住所:東京都港区西麻布4丁目2-10

アクセス:東京メトロ日比谷線「広尾駅」徒歩9分

営業時間:11:30 ~ 15:00 / 18:00 ~ 23:00
定休日:日祝 ※年末年始

 

【著者プロフィール】

森田 昌典(MORITA MASANORI)

日本を代表するダンスミュージックプロデューサー。ダンスミュージックユニット”STUDIO APARTMENT”として、これまでに9枚のオリジナルアルバム、そして300曲以上のオリジナル曲を世界各国のレーベルからリリース。

http://www.studioapartment.jp/

 

【森田 昌典 イベント情報】
2018.01.18.THU  “BLACK ON IT” at BPM MUSIC BAR (SHIBUYA)
2018.01.26.FRI  “GENTLEMAN & LADIES -大新年会-“ at XEX日本橋 (NIHONBASHI)
2018.02.01.THU  “BLACK ON IT” at BPM MUSIC BAR (SHIBUYA)
2018.02.09.FRI  “GENTLEMAN & LADIES“ at XEX日本橋 (NIHONBASHI)
2018.02.10.SAT  “IN MY HOUSE“ at At B (NARITA)
2018.02.23.FRI  “GENTLEMAN & LADIES“ at XEX日本橋 (NIHONBASHI)
2018.02.24.SAT  “BLACK ON IT -1st Anniversary Party-” at WOMB (SHIBUYA)

2018年の「外食グルメ」を読み解く8つのキーワードーー筆頭は「ネオ中華」

2018年、食の世界ではなにが流行るのでしょうか? 編集部およびフードアナリストの中山さん注目のグルメ・トレンドを紹介いたします。とくに“ネオ中華”と呼ばれる中華料理の再評価の動きは要チェックです!

 

【解説してくれた人】

フードアナリスト

中山秀明さん

内食・外食のトレンドに精通する食の専門家。取材、執筆、コメンテーターなど幅広く活躍しています。

 

【その1】キャッシュレスレストラン

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店も利用者も、現金不要で手間レス実現!

店舗での現金の取り扱いを止め、決済やオーダーなどにITを活用。業務の効率化と労働人口減少に対応した飲食業界の新たなビジネスモデルに注目が集まっています。

 

【キャッシュレスレストランの例】

ギャザリングテーブル パントリー 馬喰町店

 東京都中央区日本橋馬喰町1-5-4 中庄ビル1F

営平日15:00〜22:30/土日祝13:00〜21:30/不定休

完全キャッシュレスを導入し、支払いはカードのほか楽天Edyなどの電子マネーが利用できます。割り勘や商品ごとなど様々な支払い方法にも対応。セルフオーダー、キッチンオペレーション改革により、店側の負担も軽減しました。

20171229_bln02_2↑「楽天ペイ(実店舗決済)」の決済システムを使用し、支払いはクレジットカードや電子マネーに限定

 

20171229_bln02_3↑SuicaやPASMOなどの交通系ICカードも使用可能。かざすだけでピッとスマートに会計できます

 

 

【その2】グローサラント

フードコートと一線を画すハイレベルなメニューを提供!

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食品スーパーを意味するグローサリーとレストランを合わせた造語・グローサラント。欧米で話題の新業態が日本に上陸。中食の新たなスタイルとして定着しそう。

 

【グローサラントの例】

成城石井 トリエ京王調布店

東京都調布市布田4-4-22トリエ京王調布A館1F

営業時間:9:00〜23:00(※1:SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFEの営業は11:00〜23:00(9:00〜11:00はイートインとして利用可)

成城石井が誇る高品質の旬な食材・商品を、オリジナルレシピで調理。店舗内の飲食スペース・SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFEで、できたてを提供します。メニューの一部は、レシピカードを作成し、店内で配布も行っています。

 

20171229_bln02_5↑売り場のプライスカードにもレシピでの使用を明記。気に入った食材や調味料は、売り場で購入できます

 

SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFEメニュー(2017年12月1日時点)

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九州産黒毛和牛のウチモモ赤身ステーキ150g(1620円)

 

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黒毛和牛100%使用手ごねパティ2枚フレッシュアボカドチーズバーガー(1070円)

 

【その3】ネオ中華

やっぱりウマい!  奥深い!  いまこそ中華を再評価

ネオ中華には大きく分けて2つの定義があり、ひとつは“これまで注目されていなかった中華の魅力”の浸透です。いわゆる町中華の大衆酒場的な使いやすさが再発見されつつあります。そしてもうひとつは“これまでにない中華料理店の誕生”。

 

「『鉄板中華』を生み出した青山シャンウェイなど、革新的でコンセプチュアルな店がイマドキですね。2017年8月には、中国政府から中華老舗ブランドの認定を受けた、牛肉ラーメンの名店・馬子禄が初上陸しました。伝統料理でありながら日本人にとっては新しい味で、中華ファンを魅了しています」(中山さん)

 

【ネオ中華の例01/神保町・馬子禄】

牛の旨みがたっぷり中国で一番有名なラーメン

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 蘭州 牛肉面(880円)

牛肉ラーメン発祥の地・蘭州の老舗が、2017年日本に上陸しました。牛骨や牛肉をスパイスと一緒に長時間煮込んで作られたスープは、旨みがギュッと凝縮。並んでも食べたい逸品です。●東京都千代田区神田神保町1-3-18 ●営業時間:11:00〜14:30、17:00〜20:30/水定休

 

【ネオ中華の例02/神楽坂・鉄板中華 青山シャンウェイ 神楽坂店】

裏メニューがいまや店の代名詞に! スパイシーなBIGスペアリブ

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毛沢東スペアリブ 1人前980円(写真は3人前)

元々は裏メニューのはずが、いまや誰もが注文する名物のスペアリブ。オリジナルスパイスがたっぷりかかった骨付き肉は、1人前でもボリュームがあり満腹になる。残ったスパイスは持ち帰りOKです。●東京都新宿区神楽坂2-6-1 ポルタ神楽坂2F●営業時間:月〜金11:30〜14:00、17:30〜23:00/土11:30〜14:30、17:30〜23:00/日・祝12:00〜14:30、17:30〜22:00(日曜はしばらくの間休業)

 

【その4】フュージョングルメ

ジャンルのクロスオーバーが新たな一皿を生み出す!

「普通」に飽きたグルマンを唸らせる、ジャンルを超えた新メニューが続々と誕生中。カレー×台湾料理など、異ジャンルの融合料理店が増えています。ありがちな創作料理ではなく、明確なコンセプトが立っているのが印象的。トガッたテーマの店も、今後さらに人気を集めそうです。

 

 

【フュージョングルメの例01/大久保・SPICY CURRY 魯珈】

《カレー×魯肉飯》元気になる薬膳カレーと豚バラのハイブリッドごはん

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ろかプレート 950円

ディープタウン大久保の新名物。手作り薬膳カレーと、台湾屋台で人気の豚バラ肉かけごはん「魯肉飯」を合いがけしたハイブリッドな一皿。スパイスの香り立つカレーがやみつきになる味わいです。●東京都新宿区百人町1-24-7 シュミネビル1F●営業時間:月・水・金11:00〜16:00/火・木11:00〜15:00、17:00〜20:00/土・日・祝休

 

【フュージョングルメの例02/鎌ヶ谷・カフェロンコ】

《イタリアン×タイ》 エスニックなスープにからむ自家製モロヘイヤパスタ

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 イタリア風トムヤムクン 海の幸スープパスタ1380円

ゆったりした雰囲気のイタリアンカフェで提供されるのは、トムヤムクン風スープやグリーンカレーでいただく、自家製モロヘイヤパスタ。ヘルシーで斬新なエスニックコラボです。●千葉県鎌ヶ谷市道野辺本町1-15-12●営業時間:12:00〜16:00、18:00〜21:30/月〜木定休

 

【その5】定額制グルメ

定額で食べ&飲み放題、月極めフードサービス!

定額制でリピート客を増やすねらいは、客側にも「もとをとった」感をもたらします。WIN-WINなビジネスモデルとして注目です。ITサービスではおなじみ、利用期間に対価を払うサブスクリプション型サービス。スマホの進化も後押ししてアメリカで広まりましたが、日本でも今後ブームとなるでしょう。

 

【定額制グルメの例01/西新宿・coffee mafia】

毎日コーヒーが欠かせないマニアのための定額コーヒー

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 月額コーヒー会員 2000円/月

スマホ画面で月額会員権を見せるだけでコーヒーがいつでも無料で飲める、話題のコーヒースタンド。10杯飲めばもとがとれるため、出勤前やランチ、仕事帰りなど、1日に何度も来店するリピーターも多いです。●東京都新宿区西新宿6-12-16 天空MURA2F●営業時間:8:00〜18:00/土・日・祝定休

 

【定額制グルメの例02/野郎ラーメン】

ラーメン好きにはたまらない定額コース

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1日一杯野郎ラーメン生活 8600円+税/月

人気メニュー3種から好きなラーメンを毎日1杯食べられる定額サービスを開始。スマホのアプリで決済も簡単に行えます。

 

【その6】ムービージェニック鍋

五感を刺激する、シズル感たっぷり鍋がアツイ!

2017年の流行語は「インスタ映え」。しかしイマドキはテーブルで1アクション仕掛けのある「動画映え(ムービージェニック)」が主流に! インスタ映えを気にする人にとっては、料理もムービージェニックさが重要。そんな彼らがこの冬飛びついたのが「めり乃」の名物鍋。シズル感抜群で、いい動画が撮れて盛り上がれますよ!

 

【ムービージェニック鍋の例01/新宿 めり乃 新宿店】

肉×わた飴のミスマッチ感も「かわいい♡」と女子ウケ◎

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 ラムしゃぶ食べ放題+2時間飲み放題付きコース 4320円

出汁に加える砂糖をわた飴の状態で提供する、ラム肉のしゃぶしゃぶ。わた飴が溶け出す様子はまさにムービージェニックで、インスタ女子の心をがっちりつかんでいる。●東京都新宿区歌舞伎町1-6-3 石塚ビル 3F●営業時間:月〜金・祝前日 15:00〜23:30、土・日・祝 11:00〜23:30

 

20171229_bln02_17↑羊のようなふわふわもこもこのわた飴を、出汁の入った鍋に投入。一瞬で溶けてしまうためスマホの準備は万全に

 

【その7】24時間飲み放題

阿佐ヶ谷発! おバカな試みで東京の夜を盛り上げる!

飲み歩き文化が根付く阿佐ヶ谷エリアで、24時間営業を行う「博多屋台よかたい」。破格のサービスで、地域活性化にも一役買っています。今後もこうしたサービスを提供する店が増えれば、「24時間飲み放題」の定着も期待できます。

 

【24時間飲み放題の例/博多屋台よかたい 阿佐ヶ谷店】

博多名物をつまみに夜通し飲んでも240円

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博多屋台よかたい 阿佐ヶ谷店 24時間飲み放題 240円(毎月24日限定)

焼き鳥やラーメンなど博多の屋台料理をメインで提供。通常は24時間2400円飲み放題ですが、毎月24日はその1/10という衝撃プライスに。リストバンドで管理し、24時間内なら出入りが可能です。●東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-34-14●営業時間:24時間/無休

 

 

【その8】シメパフェ

一日の終わりを〆る、ごほうびパフェ

飲んだ後は甘いものが欲しくなる。からの、シメパフェ。そんなニーズで生まれた札幌発祥の食トレンドが、SNSなどを通じて全国に拡散中です。

 

【シメパフェの例/札幌シメパフェ】

札幌発の食トレンドが東京をはじめ全国的に拡散!

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札幌シメパフェ

新鮮な牛乳や旬の果物が手に入りやすい札幌で生まれた「パフェで一日を締めくくる」という新たな食トレンド。ファミレスのデニーズでも「〆(シメ)パフェ」というワードが登場し、注目を集めています。

 

【東京にも“シメパフェ”が続々拡大中!!】

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夜パフェ専門店 パフェテリア ベル

飲んだ後が一番おいしく感じられるように、甘さを控えめにし、食材を厳選。そんなこだわりパフェを提供する専門店が、東京にも姉妹店をオープンしました。●東京都渋谷区道玄坂1-7-10 新大宗ソシアルビル3F●営業時間:17:00〜24:00/金・土・祝前日17:00〜26:00

「餃子荘」なのに担々麺の完成度が最高峰ーーハイクオリティのクリーミー系を喰らいたいなら桜新町「紅蜥蜴」一択!

本稿でみなさんに紹介するのは、僕がおいしい担々麺を探していたときに出会ったお店です。東急田園都市線の桜新町駅を少し歩くと見えてくる「餃子荘 紅蜥蜴(ベニトカゲ)」。お店の扉には、なんともかわいらしいトカゲがはりついていて、お客を出迎えてくれます。

 

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香辛料が絶妙のバランスで主張し合う濃厚な担々麺

そんな同店、餃子荘という店名でありながらも担々麺のクオリティがビックリするほど高いのです! ということでその担々麺をはじめ、餃子なども含めた4品を紹介します。

 

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担々麺 1058円

クリーミーな担々麺のくくりでいうと、この「担々麺」は群を抜いています! また、程よい辛味と山椒などのスパイス具合も見事。欲をいえば、麺にもう少しコシがあるとさらに僕の好みですが、この濃厚な担々スープだけでも大満足できるレベルです。

 

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焼餃子 388円

店名にもなっている餃子は、「焼餃子」と「水餃子」をオーダーしました。「焼餃子」は、棒状の形でインパクトがあります。

 

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水餃子 540円

対する「水餃子」は、小籠包のようなフォルムで肉汁系。個人的に、同店に限っては焼きよりも水餃子のほうがオススメです。

 

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蟹炒飯 1490円

ソフトシェルクラブの素揚げを使ったチャーハン。この発想がすばらしい!

 

4品を食べましたが、とにかく担々麺がイチオシですね! ここ数年で食べた汁あり担々麺の中では、一番好きかもしれません。あまりにおいしかったのでお腹はいっぱいでしたが、ついついおかわりしてしまいました(笑)。

 

なお、店内は縦長の造りでこぢんまりとした空間。ゆったり食事を楽しむのは難しいかもしれませんが、本当においしい担々麺が食べたいときは、ここに行けば間違いありません! ぜひ一度通ってみてくださいね。

 

【SHOP DATA】

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餃子荘 紅蜥蜴(ベニトカゲ)

住所:東京都世田谷区新町2-4-15

アクセス:東急田園都市線「桜新町駅」北口徒歩7分

営業時間:11:00~14:30、17:00~22:00(L.O.21:30)

定休日: 月曜

 

【著者プロフィール】


森田 昌典(MORITA MASANORI)

日本を代表するダンスミュージックプロデューサー。ダンスミュージックユニット「STUDIO APARTMENT」として、これまでに9枚のオリジナルアルバム、そして300曲以上のオリジナル曲を世界各国のレーベルからリリース。
世界各国を巡る音楽活動の中で、世界の美味しいレストラン巡りも行い、音楽界の食通との呼び声も高い。

 

【森田 昌典 イベント情報】

12/15(金) “MASANORI MORITA” at STUDIO 9(香港)

12/21(木) “BLACK ON IT” at XEX日本橋

12/22(金) “PACHA IBIZA on TOUR 2017 -Cherry X’mas-” at 品川プリンスホテル

12/22(金) “GENTLEMAN & LADIES -X’mas Special-” at XEX日本橋

12/29(金) “FACT” at WOMB(渋谷)

12/31(日) “NEW YEAR COUNTDOWN 2018” at ZATTA at Hilton Tokyo(新宿)