「CP+2021」総括レポート後編:オンライン時代に奮起するカメラ周辺機器メーカーのトレンド

2021年2月25日から28日にかけて“カメラと写真映像のワールドプレミアショー”「CP+2021」が、コロナ禍の影響から初のオンラインで開催されました。オンラインではカメラやレンズの実機に触れることができないなど、大きな制約がある中での開催となり、メーカーがどのような工夫をしてくるかにも注目が集まったイベントです。本稿では、4日間に渡ったオンラインイベントの様子を前後半、2回に分けてレポート。後半となる今回は、交換レンズメーカーを含む、主だった周辺機器メーカーについて取り上げます。

 

カメラの周辺機器というと、交換レンズや三脚、フィルター、ストラップやカメラバッグ、照明機器といった撮影時に必要なものもありますが、デジタル化以降はパソコンや画像処理ソフト、プリンターなど、撮影後に必要な機器や用品の重要度が増しています。今回のCP+2021は、オンライン開催との親和性が高いこともあってか、パソコンなどの周辺機器メーカーによる出展が大きな割合を占めていました。

 

今回の出展社のなかでも動画配信などに力を入れていたメーカーに絞って、それぞれをチェックしていきます。

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。

 

【周辺機器メーカー1】ケンコー・トキナー

ケンコー・トキナーは、フィルターやフィールドスコープなどを扱う「ケンコー」、三脚などを扱う「スリック」、交換レンズなどを扱う「トキナー」といった自社ブランドのほか、関連会社によるものも含め、無数の商材を扱っています。なかでも最近は、「レンズベビー」や「SAMYANG」など、交換レンズ系商品の注目度が上昇。今回の新製品ではフィルターやフィールドスコープなども登場していますが、トキナーから昨年末に発売された、2本のFUJIFILM Xマウント用レンズなどの交換レンズが最も注目を集めていたように思います。オンラインセミナーは4日間で19本と多数実施され、多くの人気写真家らが登場。周辺機器メーカーのなかでも、ユーザーが最も目を見張った出展社の1つでしょう。

↑ケンコー・トキナーの特設ページ。ケンコー・トキナーのほか、グループ会社のスリック、ケンコープロフェショナルイメージングの製品も含め、数多くの写真関連製品が紹介されていた

 

↑オンラインセミナーは、合計16名の講師による全19コマを実施。会期中の午後、ほぼ2時間おきに実施される豪華なものだった。画像は、小河俊哉さん、萩原和幸さん、桃井一至さんによる「トキナーレンズを語る」より

 

↑FUJIFILM Xマウント用単焦点交換レンズ「トキナー atx-m 33mm F1.4X」(実売価格/5万3800円)。F1.4の明るい標準レンズで、美しいボケ描写が魅力だ。このほか、FUJIFILM Xマウント用広角レンズ「atx-m 23mm F1.4 X」(実売価格/6万500円)もラインナップされている

 

【周辺機器メーカー2】サイトロンジャパン

サイトロンジャパンは、米国サイトロン社の双眼・単眼鏡などの光学機器を扱っているメーカーです。最近は、中国LAOWA(ラオワ)社の低廉でユニークな交換レンズを扱っていて、カメラファンの注目を集めています。CP+2021では、試作品を含むLAOWAの製品紹介のほか、サイトロンの双眼鏡、スカイウォッチャーやシャープスターの天体望遠鏡などを紹介。天文関連を含めて計16コマのセミナーも実施しました。

↑サイトロンジャパンの主力商品は、特設ページを見てもわかる通り双眼鏡や天体望遠鏡、ライフルスコープといった光学製品。LAOWAの交換レンズの扱いを始め、ここ数年はCP+の常連となっている

 

↑セミナーは、写真家によるLAOWA製品紹介や活用法のほか、アマチュア天文家による、天体望遠鏡の使いこなし紹介などユニークな切り口で展開された。画像は、齋藤千歳さんの「実写チャートでみるLAOWA広角レンズの特徴を紹介」より

 

【周辺機器メーカー3】シグマ

個性的かつ高性能な交換レンズを数多く登場させ、人気を集めているシグマは、ミラーレスカメラ用の小型単焦点交換レンズ「Iシリーズ」や、同社製で世界最小のフルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」などを紹介。動画コンテンツでは、会期直前にシグマ代表取締役社長・山木和人さんによる新製品プレゼンテーションが行われたほか、写真家による新製品セミナーやレンズ開発者によるトークなどを実施していたのも印象に残っています。ライブ配信でのコンテンツが多く、マニアックなものから気軽に楽しめるものまで幅広いコンテンツが揃えられていました。

↑シグマの特設ページは、シンプルでスマートな構成のページだが、動画コンテンツなどは、レンズ好きに刺さるものも用意。一方で商品企画担当者のトークなどは、レンズにこだわりを持ったシグマファンから、購入を検討中のユーザーまで楽しめる内容になっていた。

 

↑いわゆるシグマファン向けのコンテンツも少なくなかったが、「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」などの新製品を写真家が実際に使って、その魅力や使いこなしを語る「プロダクトセミナー」は、比較的エントリーユーザーに理解しやすい内容だった。作例写真も多く、製品の魅力がダイレクトに伝わってくる。画像は、鹿野貴司さんの「プロダクトセミナー 新製品SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary編」より

 

↑フルサイズミラーレスカメラ対応で小型・軽量な大口径標準ズーム「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」(実売価格/9万9000円)。画面全体に高解像で歪みや収差、ゴーストなども少ない高性能レンズだ。最短撮影距離が19cm(広角端)と短く、被写体を大きく撮れるのも魅力。ソニーEマウント用、ライカLマウント用がラインナップされている

 

【周辺機器メーカー4】タムロン

タムロンは、1本で幅広い焦点距離に対応できる高倍率ズームレンズや、低廉で高性能な交換レンズのラインナップに定評のあるレンズメーカーです。CP+2021では、1月14日に発売された新製品「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」と昨年6月発売の「28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)」を中心に、同社のソニーEマウントミラーレスカメラ用レンズを紹介。2月27日と28日には、写真家の別所隆弘さん、澤村洋兵さんによるセミナーも実施されました。

↑あえてソニーEマウントのミラーレスカメラ用レンズである、「Di III」シリーズ9本に焦点を当てたタムロンの特設サイト。なかでも、最新の17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)は注目を集めていたようだ

 

↑セミナーは2名の写真家による新製品のインプレッションであったが、単純なスペック紹介ではなく、レンズの特徴を上手くとらえた作例が用意され、各レンズの魅力はもちろん、適した撮影シーンも伝わる内容になっていた。画像は、別所隆弘さんによる28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)のインプレッションより

 

↑APS-Cサイズ用に設計することで、小型ながらF2.8の大口径で高画質を成功させた「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」。最短撮影距離が広角側で0.19m、望遠側で0.39mと近接撮影に強い設計になっているのも魅力だ。実売価格/9万3500円

 

【周辺機器メーカー5】エプソン

プリンターやスキャナーのメーカーとしておなじみのエプソンでは、「PHOTOS at Home」をテーマに自宅での写真の楽しみ方を提案。スペシャルプログラムとして4本の動画を公開したほか、同社製品を紹介するだけでなく使用目的に合わせたプリンターやスキャナー選びができるように工夫されていました。

↑エプソンの特設ページ。作品プリントに最適な画質で、A3ノビやA2ノビの大きさでプリントできる「プロセレクション」シリーズだけでなく、インクをタンクに補充して使うことで、プリントのコスト低減を実現した、「エコタンク」搭載モデルなども紹介

 

↑セミナーは、鉄道写真家・中井精也さんの「伝えるためのプリントテクニック」、塙真一さんの「フィルムで楽しむデジタル暗室術!」、上田晃司さんの「プリントでもっと広がる写真の世界を体験しよう!」、『IMA』エディトリアルディレクター太田睦子さんらによる「インテリアに写真を取り入れる楽しさとコツ」の4本を配信。プリントのテクニックや楽しみ方が、わかりやすく解説されていた。画像は中井精也さんのセミナーより

 

【周辺機器メーカー6】raytrek(サードウェーブ)

サードウェーブは、BTOによるパソコン販売の大手メーカー&販売店。CP+2021では、同社のクリエイター向けBTOパソコンのシリーズである「raytrek」ブランドで出展していました。写真作品や映像作品の制作におけるraytrekのメリットについての紹介のほか、同社と写真投稿SNS「東京カメラ部」とのコラボフォトコンテストの受賞者発表を本ページで行うなど、写真関連にも力を入れている様子が伝わってくる内容でした。

↑raytrekの特設ページでは、写真家の井上浩輝さん、別所隆弘さん特別監修モデルのパソコンを紹介。2月28日には、この2名の写真家と東京カメラ部メンバーらによるライブ配信も実施された

 

↑ライブ配信では、同社製PCの魅力を紹介するだけでなく、画像処理ソフトや動画編集ソフトを使っての実演も実施。作家ならではのテクニックの解説も行われ、すぐに役立つ内容の配信であった

 

【周辺機器メーカー7】ATOMOS

ATOMOSは、ミラーレスカメラのHDMI端子などに接続して使う、外部接続の動画レコーダーを製造しているメーカーです。同社製品を使うことで動画のRAW記録などが行え、撮影後に調整しやすく高品位な映像が制作できます。映像作家には定番のレコーダーということもあってか、動画配信に力が入ったコンテンツが用意されていました。多くのカメラユーザーにはあまり馴染みのないメーカーかもしれませんが、今回のコンテンツを見て、動画撮影やレコーダーに興味を持った方も少なくないのではないかと思います。

↑ATOMOSの製品は、画像にあるような小型モニター付きのレコーダーで、記録映像の確認も行える。撮影後はパソコンなどにデータを取り込んで編集するのが基本となる。今回のコンテンツは配信が中心で、写真家や映像作家によるトークや、各カメラメーカーのエンジニア対談などが組まれ、合計10本が配信された

 

↑配信の内容は動画撮影のテクニック、レコーダーやカメラの機能などについてのトークが多く、動画撮影や編集に興味のある人には、非常に有益なコンテンツだったのではないかと思う

 

まとめ

レポートの後半はカメラ周辺機器メーカーのうち、動画配信などに力を入れていたメーカーを中心に取り上げました。特徴的な傾向としては、ミラーレスカメラ用のレンズが増えたことで、レンズ設計の自由度が高まり最短撮影距離が短く、被写体に近寄って撮れる製品の増加が挙げられます。同じくミラーレスカメラの普及によって、動画関連の製品、あるいは出展社が増えたのも大きなトレンドと言えるでしょう。

 

CP+2021は、レポート全体で今回取り上げたメーカー以外を合わせると、全部で20社/ブランドによるイベントとなりました。従来のリアルイベントに比べると参加企業は少なかったものの、参加者は5万人以上であったという速報(2021年3月4日時点)が発表されており、各社の工夫によってオンラインであってもユーザーが十分楽しめるイベントになったのだと実感しています。とはいえ、やはり新製品のカメラやレンズに触れないのは寂しく、来年こそはリアルイベントを期待したいところ。もし可能であれば、今年の経験を生かして、リアルとオンラインの両立ができれば、参加者はより楽しめるものになるのではないかと思います。

 

なお、動画配信などのコンテンツの多くは、2021年3月31日までアーカイブとしてオンラインで見ることが可能です。興味のあるコンテンツがありましたら、ぜひチェックしてみてください。

 

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持ち歩きやすさ主義の方に朗報! タムロンが世界最小・最軽量のフルサイズ対応望遠ズームレンズ「70-300mm」を開発発表!

総合光学機器メーカーのタムロンは8月4日、35mmフルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用望遠ズームレンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」の開発を発表。長さ148mm、最大径φ77mm、質量545gで、300mmクラスのフルサイズミラーレス用望遠ズームレンズとしては世界最小・最軽量となっています ( 2020年7月時点。タムロン調べ)。

↑70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)。2020年秋頃発売予定で、価格は未定

 

コンセプトが明確なタムロンのソニーEマウント用レンズシリーズ

タムロンはこれまでにもフルサイズ対応のソニーEマウント用レンズとして、大口径標準ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD」や大口径超広角ズームレンズ「17-28mm F/2.8 Di III RXD」、大口径望遠ズームレンズ「70-180mm F/2.8 Di III VXD」、大口径単焦点レンズシリーズ「20mm/24mm/35mm F/2.8 Di III OSD M1:2」など多彩な製品を発表してきました。

 

これらのラインナップを見ると、コンセプトが非常に明確なことがわかります。1つは、「小型・軽量」を追求している点。フルサイズ用レンズでは画質重視のために大柄な製品が多いなか、タムロンのこのシリーズでは妥協できる点は潔く割り切り、高画質と携行性の両立を図っています。代表的な例でいえば、28-75mm F/2.8 Di III RXDは従来は、24mmスタートが多かった大口径標準ズームレンズの広角端を28mmスタートとするなどして、550gという驚きの軽さを実現しています(参考:ソニー純正の大口径標準ズームレンズ「FE 24-70mm F2.8 GM」の重さは886g)。

↑2018年5月に発売された「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(Model A036)。大口径レンズでありながら実売価格で10万円を切るコスパの高さと小型・軽量サイズで人気

 

そのほか、フィルター系もφ67mmで統一されており、PLフィルターなどの各種フィルターを共有することができるのも魅力。レンズごとにフィルターを用意せずに済むので余計な出費を抑えることができ、機材の管理もシンプルです。

 

ソニーの純正レンズやその他のメーカーのEマウント用レンズにもそれぞれの良さがありますが、タムロンのソニーEマウント用レンズは総じて持ち歩きやすさやコスパのよさを重視するユーザーにおすすめです。

 

今回開発発表された70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDも、同じ焦点距離をカバーする純正レンズとして「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」が存在しますが、望遠側のF値が暗くなるものの重さは約300g軽くなっています。スポーツや鉄道、あるいは運動会など、望遠域の撮影を手軽に楽しみたいユーザーに魅力的な一本といえそうです。

 

キヤノンの“第二世代”フルサイズミラーレスカメラに抱いた期待感

キヤノンは2020年7月9日に開催したオンライン発表会にて、フルサイズミラーレス一眼カメラや交換レンズなど複数の新製品を一挙に発表。その内容は、販売台数の落ち込みや新型コロナウイルス感染症によるイベント中止など昨今なにかと暗い話題の多かったカメラ業界において、久々に大きな期待感と高揚感を感じさせるものでした。本稿では、ついに全貌が明らかになったハイスペックフルサイズミラーレス機や、“隠し玉”的に発表された注目モデルなどを中心に、新製品の概要について紹介します。

 

キヤノンの最高峰、ここにあり! ハイエンドモデル「EOS R5」

今回の新製品の目玉は、なんといっても新型フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でしょう。2月に開発発表されたあと、少しずつスペックや外観などが明らかにされ、正式発表をいまかいまかと心待ちにしていたカメラファンも多いはず。

 

ここで少し、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラの歩みについて振り返っておきたいと思います。キヤノンがそれまでソニーの独壇場だったフルサイズミラーレスカメラ市場に参戦したのは、2018年秋のこと。同時期にニコンも新規参入し、さらに翌年にはパナソニックやシグマも加わるなど、カメラ業界でいま最も盛り上がっているカテゴリだといえます。

 

キヤノンは2018年10月に初号機となる「EOS R」を発売。翌2019年春には廉価版「EOS RP」を投入し、フルサイズ機とは思えない低価格で一気に普及を狙うなど戦略的に製品を展開していました。そこから約1年後に開発発表されたのが、同社ミラーレスシステムにおけるハイエンドモデル「EOS R5」です。

 

今回正式に発表されたそのスペックを見てみると、EOSシリーズ史上最高の解像性能を謳う有効約4500万画素の撮像素子と新映像エンジン「DIGIC X」、最高8.0段分の手ブレ補正、8K30p動画撮影機能(4Kでは120pにも対応)、電子シャッターによる最高約20コマ/秒の高速連写(メカシャッター時は12コマ/秒)などなど、ハイエンド機にふさわしい驚きの数字が並んでいます。当然、防塵・防滴にも対応。既存のユーザーにとっては特にEOS初となるボディ内手ブレ補正がうれしいニュースかもしれません。

 

AF性能も大幅に強化されており、独自のデュアルピクセルCMOS AFは「デュアルピクセル CMOS AF II」に進化。瞳検出・人物検出では精度の向上に加え人物の瞳・顔・頭部、動物 (犬・猫・鳥) の瞳・顔・全身検出にも対応します。

 

背面モニターはバリアングル式、電子ビューファインダーは約576万ドットの有機ELパネルを採用。気になるカードスロットは、CFexpressカード (Type B) とSDメモリーカード (UHS-II 対応) のデュアルスロット。

 

操作性もブラッシュアップされており、EOS Rで導入されたマルチファンクションバーは廃止されて、代わりに直感的なAFフレーム選択操作が可能なマルチコントローラーが搭載されています。

 

キヤノンがいまもてる技術をすべて詰め込んだという印象で、製品名に一眼レフ機の中核を担う「EOS 5D」シリーズなどで使われている「5」という数字を使っている点などからも、同社が本機に懸ける期待の高さがうかがえます。

 

発売は2020年7月下旬予定で、キヤノンオンラインショップの価格は46万円 (税別) となっています。

 

一般ユーザーはこちらに注目! 新・スタンダードモデル「EOS R6」

EOS R5の正式発表に関しては多くの人が予想していたと思いますが、想定外だったのが新たなスタンダードモデル「EOS R6」の発表です。こちらはEOS R5より約1か月あとになる8月下旬の発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格はEOS R5より15万5000円安い30万5000円 (税別)となっています。

 

気になるEOS R5との違いですが、これだけ価格差があるとかなりスペックも抑えられているのかと思いきや、ボディ内5軸手ブレ補正や連写性能など多くの部分でEOS R5と同等の性能を備えています。

 

目立って異なる部分としては、センサーが有効約2010万画素であること、動画が8K対応でないこと(4K 60pに対応)などが挙げられます。その他、メディアスロットがSDカードのデュアルスロットであること、上面の表示パネルが省かれていること、EVFが約369万ドットであること、外装の素材などなど、細かな部分で違いはいくつかあります。

 

とはいえ、センサーは同社一眼レフのフラッグシップ機「EOS-1D X Mark III」のセンサーをカスタマイズしたものということで、信頼性は十分。むしろ画素数を抑えたことで低輝度合焦限界や常用最高ISO感度など暗所での撮影に関わるスペックではEOS R5を上回っている部分もあります。

 

8K動画や4500万画素の解像感、という点にこだわらないのであれば、価格差を考えてもEOS R6はかなりお買い得に思えます。キヤノンはEOS R6をR5の廉価版ではなく、フルサイズミラーレスにおける“新標準”モデルと位置づけていますが、この仕様を見れば納得です。

 

待望の超望遠ズームなど新レンズも続々登場!

今回の発表では交換レンズの新製品4本も発表されました。

 

1本目は、超望遠ズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。一眼レフ用EFレンズのなかでもプロ・ハイアマ層から特に人気の高い「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」のミラーレス版ともいうべき存在ですが、あちらよりも焦点距離を100mm延長し、より幅広い撮影領域に対応しています。鏡筒に刻まれた赤いラインが目印の、キヤノンのレンズラインナップのなかでも特に高品質な「Lレンズ」の1本です。

↑RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM。2020年9月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は33万5000円 (税別)

 

続いて紹介するのは、小型軽量を新コンセプトにした超望遠単焦点レンズ「RF600mm F11 IS STM」と「RF800mm F11 IS STM」です。絞り値をF11固定とすることで、RF600mmは930g、RF800mmは1260gとおよそ超望遠レンズとは思えない軽量化を実現。小型なミラーレスボディとも相性がよく、手持ちで手軽に超望遠撮影を楽しみたいというユーザーにぴったりなレンズです。

↑RF600mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は8万8000円(税別)

 

↑RF800mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は11万3000円(税別)

 

これら3本のレンズに対応したエクステンダーとして、焦点距離を1.4倍に伸ばす「エクステンダー RF1.4×」と、2倍に伸ばす「エクステンダー RF2×」もあわせて発表されました。

↑エクステンダー RF1.4×(左)とエクステンダー RF2×。どちらも2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は「RF1.4×」が6万3000円、「RF2×」が7万5000円

 

最後の1本は、中望遠単焦点レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」です。最大撮影倍率0.5倍、最短撮影距離0.35mに対応したハーフマクロレンズ。F2.0の明るさを生かしたポートレート撮影などにもおすすめです。

↑RF85mm F2 MACRO IS STM。2020年10月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は7万6000円

 

“第二世代”の登場でますます注目度が高まるフルサイズミラーレス

2018~2019年にかけてカメラメーカー各社が相次いで市場に参入したことで、一気に「フルサイズミラーレス」というカテゴリの注目度が高まりました。しかし、実力が未知数だったこと、専用レンズが少なかったことなどから、一眼レフからの買い替えは少し様子見しようというカメラファンも少なくなかったはず。結果、各社健闘してはいるものの、先駆者でありレンズラインナップも充実しているソニーの優位は変わらずといった印象でした。

 

ところが、ここにきてキヤノンが早くも第二世代を投入。その飛び抜けたスペックと完成度は、大きな衝撃を与えました。レンズラインナップが参入当初に比べて充実してきたこともあり、次のカメラはフルサイズミラーレスに……と検討するユーザーは一気に増えそうな予感がしています。

 

もちろん、キヤノン以外のカメラメーカーがこのまま黙っているはずはないので、今後ますます業界が盛り上がることにも期待したいですね。

 

キヤノンの“第二世代”フルサイズミラーレスカメラに抱いた期待感

キヤノンは2020年7月9日に開催したオンライン発表会にて、フルサイズミラーレス一眼カメラや交換レンズなど複数の新製品を一挙に発表。その内容は、販売台数の落ち込みや新型コロナウイルス感染症によるイベント中止など昨今なにかと暗い話題の多かったカメラ業界において、久々に大きな期待感と高揚感を感じさせるものでした。本稿では、ついに全貌が明らかになったハイスペックフルサイズミラーレス機や、“隠し玉”的に発表された注目モデルなどを中心に、新製品の概要について紹介します。

 

キヤノンの最高峰、ここにあり! ハイエンドモデル「EOS R5」

今回の新製品の目玉は、なんといっても新型フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でしょう。2月に開発発表されたあと、少しずつスペックや外観などが明らかにされ、正式発表をいまかいまかと心待ちにしていたカメラファンも多いはず。

 

ここで少し、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラの歩みについて振り返っておきたいと思います。キヤノンがそれまでソニーの独壇場だったフルサイズミラーレスカメラ市場に参戦したのは、2018年秋のこと。同時期にニコンも新規参入し、さらに翌年にはパナソニックやシグマも加わるなど、カメラ業界でいま最も盛り上がっているカテゴリだといえます。

 

キヤノンは2018年10月に初号機となる「EOS R」を発売。翌2019年春には廉価版「EOS RP」を投入し、フルサイズ機とは思えない低価格で一気に普及を狙うなど戦略的に製品を展開していました。そこから約1年後に開発発表されたのが、同社ミラーレスシステムにおけるハイエンドモデル「EOS R5」です。

 

今回正式に発表されたそのスペックを見てみると、EOSシリーズ史上最高の解像性能を謳う有効約4500万画素の撮像素子と新映像エンジン「DIGIC X」、最高8.0段分の手ブレ補正、8K30p動画撮影機能(4Kでは120pにも対応)、電子シャッターによる最高約20コマ/秒の高速連写(メカシャッター時は12コマ/秒)などなど、ハイエンド機にふさわしい驚きの数字が並んでいます。当然、防塵・防滴にも対応。既存のユーザーにとっては特にEOS初となるボディ内手ブレ補正がうれしいニュースかもしれません。

 

AF性能も大幅に強化されており、独自のデュアルピクセルCMOS AFは「デュアルピクセル CMOS AF II」に進化。瞳検出・人物検出では精度の向上に加え人物の瞳・顔・頭部、動物 (犬・猫・鳥) の瞳・顔・全身検出にも対応します。

 

背面モニターはバリアングル式、電子ビューファインダーは約576万ドットの有機ELパネルを採用。気になるカードスロットは、CFexpressカード (Type B) とSDメモリーカード (UHS-II 対応) のデュアルスロット。

 

操作性もブラッシュアップされており、EOS Rで導入されたマルチファンクションバーは廃止されて、代わりに直感的なAFフレーム選択操作が可能なマルチコントローラーが搭載されています。

 

キヤノンがいまもてる技術をすべて詰め込んだという印象で、製品名に一眼レフ機の中核を担う「EOS 5D」シリーズなどで使われている「5」という数字を使っている点などからも、同社が本機に懸ける期待の高さがうかがえます。

 

発売は2020年7月下旬予定で、キヤノンオンラインショップの価格は46万円 (税別) となっています。

 

一般ユーザーはこちらに注目! 新・スタンダードモデル「EOS R6」

EOS R5の正式発表に関しては多くの人が予想していたと思いますが、想定外だったのが新たなスタンダードモデル「EOS R6」の発表です。こちらはEOS R5より約1か月あとになる8月下旬の発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格はEOS R5より15万5000円安い30万5000円 (税別)となっています。

 

気になるEOS R5との違いですが、これだけ価格差があるとかなりスペックも抑えられているのかと思いきや、ボディ内5軸手ブレ補正や連写性能など多くの部分でEOS R5と同等の性能を備えています。

 

目立って異なる部分としては、センサーが有効約2010万画素であること、動画が8K対応でないこと(4K 60pに対応)などが挙げられます。その他、メディアスロットがSDカードのデュアルスロットであること、上面の表示パネルが省かれていること、EVFが約369万ドットであること、外装の素材などなど、細かな部分で違いはいくつかあります。

 

とはいえ、センサーは同社一眼レフのフラッグシップ機「EOS-1D X Mark III」のセンサーをカスタマイズしたものということで、信頼性は十分。むしろ画素数を抑えたことで低輝度合焦限界や常用最高ISO感度など暗所での撮影に関わるスペックではEOS R5を上回っている部分もあります。

 

8K動画や4500万画素の解像感、という点にこだわらないのであれば、価格差を考えてもEOS R6はかなりお買い得に思えます。キヤノンはEOS R6をR5の廉価版ではなく、フルサイズミラーレスにおける“新標準”モデルと位置づけていますが、この仕様を見れば納得です。

 

待望の超望遠ズームなど新レンズも続々登場!

今回の発表では交換レンズの新製品4本も発表されました。

 

1本目は、超望遠ズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。一眼レフ用EFレンズのなかでもプロ・ハイアマ層から特に人気の高い「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」のミラーレス版ともいうべき存在ですが、あちらよりも焦点距離を100mm延長し、より幅広い撮影領域に対応しています。鏡筒に刻まれた赤いラインが目印の、キヤノンのレンズラインナップのなかでも特に高品質な「Lレンズ」の1本です。

↑RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM。2020年9月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は33万5000円 (税別)

 

続いて紹介するのは、小型軽量を新コンセプトにした超望遠単焦点レンズ「RF600mm F11 IS STM」と「RF800mm F11 IS STM」です。絞り値をF11固定とすることで、RF600mmは930g、RF800mmは1260gとおよそ超望遠レンズとは思えない軽量化を実現。小型なミラーレスボディとも相性がよく、手持ちで手軽に超望遠撮影を楽しみたいというユーザーにぴったりなレンズです。

↑RF600mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は8万8000円(税別)

 

↑RF800mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は11万3000円(税別)

 

これら3本のレンズに対応したエクステンダーとして、焦点距離を1.4倍に伸ばす「エクステンダー RF1.4×」と、2倍に伸ばす「エクステンダー RF2×」もあわせて発表されました。

↑エクステンダー RF1.4×(左)とエクステンダー RF2×。どちらも2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は「RF1.4×」が6万3000円、「RF2×」が7万5000円

 

最後の1本は、中望遠単焦点レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」です。最大撮影倍率0.5倍、最短撮影距離0.35mに対応したハーフマクロレンズ。F2.0の明るさを生かしたポートレート撮影などにもおすすめです。

↑RF85mm F2 MACRO IS STM。2020年10月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は7万6000円

 

“第二世代”の登場でますます注目度が高まるフルサイズミラーレス

2018~2019年にかけてカメラメーカー各社が相次いで市場に参入したことで、一気に「フルサイズミラーレス」というカテゴリの注目度が高まりました。しかし、実力が未知数だったこと、専用レンズが少なかったことなどから、一眼レフからの買い替えは少し様子見しようというカメラファンも少なくなかったはず。結果、各社健闘してはいるものの、先駆者でありレンズラインナップも充実しているソニーの優位は変わらずといった印象でした。

 

ところが、ここにきてキヤノンが早くも第二世代を投入。その飛び抜けたスペックと完成度は、大きな衝撃を与えました。レンズラインナップが参入当初に比べて充実してきたこともあり、次のカメラはフルサイズミラーレスに……と検討するユーザーは一気に増えそうな予感がしています。

 

もちろん、キヤノン以外のカメラメーカーがこのまま黙っているはずはないので、今後ますます業界が盛り上がることにも期待したいですね。

 

キヤノンの“第二世代”フルサイズミラーレスカメラに抱いた期待感

キヤノンは2020年7月9日に開催したオンライン発表会にて、フルサイズミラーレス一眼カメラや交換レンズなど複数の新製品を一挙に発表。その内容は、販売台数の落ち込みや新型コロナウイルス感染症によるイベント中止など昨今なにかと暗い話題の多かったカメラ業界において、久々に大きな期待感と高揚感を感じさせるものでした。本稿では、ついに全貌が明らかになったハイスペックフルサイズミラーレス機や、“隠し玉”的に発表された注目モデルなどを中心に、新製品の概要について紹介します。

 

キヤノンの最高峰、ここにあり! ハイエンドモデル「EOS R5」

今回の新製品の目玉は、なんといっても新型フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でしょう。2月に開発発表されたあと、少しずつスペックや外観などが明らかにされ、正式発表をいまかいまかと心待ちにしていたカメラファンも多いはず。

 

ここで少し、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラの歩みについて振り返っておきたいと思います。キヤノンがそれまでソニーの独壇場だったフルサイズミラーレスカメラ市場に参戦したのは、2018年秋のこと。同時期にニコンも新規参入し、さらに翌年にはパナソニックやシグマも加わるなど、カメラ業界でいま最も盛り上がっているカテゴリだといえます。

 

キヤノンは2018年10月に初号機となる「EOS R」を発売。翌2019年春には廉価版「EOS RP」を投入し、フルサイズ機とは思えない低価格で一気に普及を狙うなど戦略的に製品を展開していました。そこから約1年後に開発発表されたのが、同社ミラーレスシステムにおけるハイエンドモデル「EOS R5」です。

 

今回正式に発表されたそのスペックを見てみると、EOSシリーズ史上最高の解像性能を謳う有効約4500万画素の撮像素子と新映像エンジン「DIGIC X」、最高8.0段分の手ブレ補正、8K30p動画撮影機能(4Kでは120pにも対応)、電子シャッターによる最高約20コマ/秒の高速連写(メカシャッター時は12コマ/秒)などなど、ハイエンド機にふさわしい驚きの数字が並んでいます。当然、防塵・防滴にも対応。既存のユーザーにとっては特にEOS初となるボディ内手ブレ補正がうれしいニュースかもしれません。

 

AF性能も大幅に強化されており、独自のデュアルピクセルCMOS AFは「デュアルピクセル CMOS AF II」に進化。瞳検出・人物検出では精度の向上に加え人物の瞳・顔・頭部、動物 (犬・猫・鳥) の瞳・顔・全身検出にも対応します。

 

背面モニターはバリアングル式、電子ビューファインダーは約576万ドットの有機ELパネルを採用。気になるカードスロットは、CFexpressカード (Type B) とSDメモリーカード (UHS-II 対応) のデュアルスロット。

 

操作性もブラッシュアップされており、EOS Rで導入されたマルチファンクションバーは廃止されて、代わりに直感的なAFフレーム選択操作が可能なマルチコントローラーが搭載されています。

 

キヤノンがいまもてる技術をすべて詰め込んだという印象で、製品名に一眼レフ機の中核を担う「EOS 5D」シリーズなどで使われている「5」という数字を使っている点などからも、同社が本機に懸ける期待の高さがうかがえます。

 

発売は2020年7月下旬予定で、キヤノンオンラインショップの価格は46万円 (税別) となっています。

 

一般ユーザーはこちらに注目! 新・スタンダードモデル「EOS R6」

EOS R5の正式発表に関しては多くの人が予想していたと思いますが、想定外だったのが新たなスタンダードモデル「EOS R6」の発表です。こちらはEOS R5より約1か月あとになる8月下旬の発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格はEOS R5より15万5000円安い30万5000円 (税別)となっています。

 

気になるEOS R5との違いですが、これだけ価格差があるとかなりスペックも抑えられているのかと思いきや、ボディ内5軸手ブレ補正や連写性能など多くの部分でEOS R5と同等の性能を備えています。

 

目立って異なる部分としては、センサーが有効約2010万画素であること、動画が8K対応でないこと(4K 60pに対応)などが挙げられます。その他、メディアスロットがSDカードのデュアルスロットであること、上面の表示パネルが省かれていること、EVFが約369万ドットであること、外装の素材などなど、細かな部分で違いはいくつかあります。

 

とはいえ、センサーは同社一眼レフのフラッグシップ機「EOS-1D X Mark III」のセンサーをカスタマイズしたものということで、信頼性は十分。むしろ画素数を抑えたことで低輝度合焦限界や常用最高ISO感度など暗所での撮影に関わるスペックではEOS R5を上回っている部分もあります。

 

8K動画や4500万画素の解像感、という点にこだわらないのであれば、価格差を考えてもEOS R6はかなりお買い得に思えます。キヤノンはEOS R6をR5の廉価版ではなく、フルサイズミラーレスにおける“新標準”モデルと位置づけていますが、この仕様を見れば納得です。

 

待望の超望遠ズームなど新レンズも続々登場!

今回の発表では交換レンズの新製品4本も発表されました。

 

1本目は、超望遠ズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。一眼レフ用EFレンズのなかでもプロ・ハイアマ層から特に人気の高い「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」のミラーレス版ともいうべき存在ですが、あちらよりも焦点距離を100mm延長し、より幅広い撮影領域に対応しています。鏡筒に刻まれた赤いラインが目印の、キヤノンのレンズラインナップのなかでも特に高品質な「Lレンズ」の1本です。

↑RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM。2020年9月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は33万5000円 (税別)

 

続いて紹介するのは、小型軽量を新コンセプトにした超望遠単焦点レンズ「RF600mm F11 IS STM」と「RF800mm F11 IS STM」です。絞り値をF11固定とすることで、RF600mmは930g、RF800mmは1260gとおよそ超望遠レンズとは思えない軽量化を実現。小型なミラーレスボディとも相性がよく、手持ちで手軽に超望遠撮影を楽しみたいというユーザーにぴったりなレンズです。

↑RF600mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は8万8000円(税別)

 

↑RF800mm F11 IS STM。2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は11万3000円(税別)

 

これら3本のレンズに対応したエクステンダーとして、焦点距離を1.4倍に伸ばす「エクステンダー RF1.4×」と、2倍に伸ばす「エクステンダー RF2×」もあわせて発表されました。

↑エクステンダー RF1.4×(左)とエクステンダー RF2×。どちらも2020年7月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は「RF1.4×」が6万3000円、「RF2×」が7万5000円

 

最後の1本は、中望遠単焦点レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」です。最大撮影倍率0.5倍、最短撮影距離0.35mに対応したハーフマクロレンズ。F2.0の明るさを生かしたポートレート撮影などにもおすすめです。

↑RF85mm F2 MACRO IS STM。2020年10月下旬発売予定で、キヤノンオンラインショップの価格は7万6000円

 

“第二世代”の登場でますます注目度が高まるフルサイズミラーレス

2018~2019年にかけてカメラメーカー各社が相次いで市場に参入したことで、一気に「フルサイズミラーレス」というカテゴリの注目度が高まりました。しかし、実力が未知数だったこと、専用レンズが少なかったことなどから、一眼レフからの買い替えは少し様子見しようというカメラファンも少なくなかったはず。結果、各社健闘してはいるものの、先駆者でありレンズラインナップも充実しているソニーの優位は変わらずといった印象でした。

 

ところが、ここにきてキヤノンが早くも第二世代を投入。その飛び抜けたスペックと完成度は、大きな衝撃を与えました。レンズラインナップが参入当初に比べて充実してきたこともあり、次のカメラはフルサイズミラーレスに……と検討するユーザーは一気に増えそうな予感がしています。

 

もちろん、キヤノン以外のカメラメーカーがこのまま黙っているはずはないので、今後ますます業界が盛り上がることにも期待したいですね。

 

寄れる“大口径広角レンズ”はやはり良い!! 富士フイルム「XF 16mm F1.4 R WR」で実感

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第7回「富士フイルム 広角で寄れる大口径単焦点レンズ」

 

高画質設計のズームレンズは、どうしてもレンズの構成枚数が多くなる。だが、現在の製品では、光学特性に優れる特殊硝材やガラスの採用や、ナノレベル(1ナノメートルは、100万分の1ミリメートル)の最新コーティングの採用などにより、サイズの肥大化を抑えながら逆光特性なども向上させているものも少なくない。

 

そんなズームレンズの高性能化が進む一方で、それでもなお、単焦点レンズの魅力は捨てがたい。開放F値が明るくてもズームレンズより小型軽量設計が可能だし、ズームレンズでは難しい抜群に明るい開放F値も可能になる。そして、現在の大口径単焦点レンズにも、先ほど述べた先進技術が採用されている。だから、満足度の高い優れた描写性能を得ることができるのだ。

 

【今回紹介するレンズはコレ!】

15cmまで寄れる開放F1.4の広角24mm


富士フイルム
XF 16mm F1.4 R WR
実売価格11万3660円

35ミリ判換算「24mm相当」の広角になる大口径単焦点レンズ。開放F値1.4の明るさを持ちながら、世界で初めて(※)15cmまでの接写を可能にした。また、最速0.1秒の高速AFも実現し、過酷な環境下でも活躍する防塵・防滴・-10℃の耐低温構造も備える。約375gの軽量さと、コンパクトサイズも魅力。2015年5月発売。

●焦点距離:16mm(35mm判換算:24mm相当) ●レンズ構成:11群13枚 ●最短撮影距離:0.15m ●最大撮影倍率:0.21倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F16 ●フィルター径:67mm ●最大径×全長:73.4mm×73mm ●質量:約375g

※APS-Cサイズ以上のカメラ用で、開放F値1.4の24mm相当のレンズとして(発表時点)

 

高性能ズームレンズとは違う軽快さが魅力

現在のXシリーズの交換レンズ群で、広角24mm相当(実焦点距離16mm)をカバーするズームレンズは、広角ズームの「XF 8-16mm F2.8 R LM WR」(2018年11月下旬発予定)と「XF 10-24mm F4 R OIS」、標準ズームの「XF 16-55mm F2.8 R LM WR」の3本である。このうち、明るさと高画質の両方にこだわるとなると、XF 8-16mm F2.8 R LM WRと、XF 16-55mm F2.8 R LM WRの2本が選択肢となるだろう。

↑XF 16-55mm F2.8 R LM WR。実売価格は12万1180円

 

↑XF 8-16mm F2.8 R LM WR。2018年11月下旬発売予定で、希望小売価格は27万7500円(税別)

 

この2本、高画質かつズームレンズならではの利便性が魅力ではあるが、XF 8-16mm F2.8 R LM WRは全長121.5mm・重さ約805g、XF 16-55mm F2.8 R LM WRは、全長106mm・重さ約655gと、どちらもそれなりのサイズと重さになる。一方、単焦点の「XF 16mm F1.4 R WR」は全長73mm・重さ約375g。両ズームレンズと比べると、かなり小振りで軽量である。しかも、開放F値が“2絞り”も明るいのだ。

↑F1.4という抜群の明るさを誇るXF 16mm F1.4 R WRだが、APS-Cサイズ用ということもあり、そのサイズや重さは思ったほど“ヘビー級”ではない(フルサイズ対応の同クラスの製品は、大体重さは大体600g台になる。だが、本製品は300g台と各段に軽量だ)

 

「XF 16mm F1.4 R WR」の操作性や質感をチェック!

XF 16mm F1.4 R WRは重さ約375gの軽量設計が特徴のレンズだが、鏡筒は金属製でその材質感や仕上げはとても上質である。フォーカスリングも金属製で質感が高く、前後にスライドさせることでAFとMFが切り換えられる(AFはフロント側、MFはマウント側)。このスライド操作も快適で、AFの位置ではフォーカスリングは誤って回転しないようロックされる仕様となっている。

↑プラスチック製の花形フードが付属。このフードとは別に、剛性や質感に優れるアルミ製の角型フード「LH-XF16」が別売で用意されている

 

AFの挙動は、少しスムーズさに欠ける印象だが(クックッと動く感じ)、速度は広角レンズとしては不満のないレベル。また、AF作動音も割と静かで気にならない。

 

また、富士フイルムの交換レンズは、多くの製品が指標入りの絞りリングを装備している。このXF 16mm F1.4 R WRも絞りリングを備え、1/3段刻みでクリックが設けてあり、快適に絞りの微調節が行える。

↑マウント部近くに、指標入りの絞りリングを装備。昔のカメラに慣れ親しんだ人なら、違和感なくスムーズに扱えるだろう

 

やや惜しいと感じるのは、「円形絞り」が採用されているものの、ほかの円形絞り採用レンズと比較すると、少し角が見られる点(1、2段絞った状態でチェック)。とはいえ、その角はさほど目立たないし、極端に絞り込んでも径の形は整っている。

 

広角レンズゆえに開放F1.4でもボケ効果は感じにくい?

続いて描写性能をチェック。まずは本製品の開放値「F1.4」と、一般的な大口径ズームレンズの開放値を想定した「F2.8」で、背後のボケ具合を比較してみた。

 

【F1.4とF2.8のボケ具合を比較】

実焦点距離が「16mm」と短いため、被写体との距離が極端に近くない限り、F1.4でも“背景が大きくボケる”という印象はあまりない(ボケの大きさは実焦点距離の長さに比例する)。それでも、背景手前の木造家屋あたり(丸型ポストの右側)を見比べると、F1.4の方はF2.8よりもボケの大きさが実感できる。

↑F1.4(上写真)とF2.8(下写真)の比較/共通データ:富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート WB:オート ISO400

 

“最短撮影距離10cmの差”が大きく描写を変える

被写体との距離を詰めて“相手の懐に踏み込む”撮り方は、広角特有のダイナミックな描写につながる。この撮り方で重要になるのが「最短撮影距離」である。特に、画角が広くて遠近感が誇張される広角域では、近接時のわずかな距離の違いによって、画面に写る範囲や被写体の大きさがかなり変わってくる。

 

XF 16mm F1.4 R WRの最短撮影距離は「15cm」と、このクラスの広角単焦点レンズとしては非常に短い。一方、広角ズームのXF 8-16mm F2.8 R LM WRは「25cm」で、標準ズームレンズのXF 16-55mm F2.8 R LM WRは広角マクロ時に「30cm」である。広角24mm相当で撮影する場合、この10/15cm距離の差が、大きな影響を与えるのである。

↑フォーカスリングをMFに切り替えて、最短撮影距離「0.15m(15cm)」に設定した状態(上の数字と線は、被写界深度の表示)。撮影距離が15cmの場合、レンズ先端から被写体(ピント位置)までの距離はわずか5cmくらいである。

 

【撮影距離での描写の違い(15cm/25cm)】

花壇に咲いていた、色鮮やかなマリーゴールドの花。そのなかの一輪に注目し、最短撮影距離「15cm」と、ほかの広角レンズの最短撮影距離に多い「25cm」を撮り比べてみた。両者の差はわずか10cmだが、画面に写り込む範囲や花の大きさは、思った以上に違ってくる。

↑撮影距離15cmで撮影した写真(上)と25cmで撮影した写真(下)/共通データ:富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F2.8 WB:オート ISO200

作例で見る「明るい広角レンズ」の魅力

ここからは、作例とともに本レンズの魅力を語っていこう。

 

【その1】

屋内の様子をしっかり写し込める

移築され復元された茅葺の農家。その内部の囲炉裏端を、自然光を生かしながら撮影した。24mm相当の広角画角により、内部の様子(背景)もしっかり写し込める。また、開放F1.4のボケ効果により、自在鉤(じざいかぎ)の背後も適度にぼかすことができた。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F1.4 1/20秒 -0.3補正 WB:オート ISO500

 

【その2】

自然な描写も誇張した描写も可能

24mm相当の画角や遠近描写は、超広角レンズ(20mm相当より短いレンズ)ほど強烈ではない。だが、建物を斜めから狙って奥行きをつけると、肉眼とは異なる“遠近感の誇張”を表現することができる。使いようによって、自然な描写にも誇張した描写もできるのだ。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO200

 

【その3】

寄りながら背後の様子や雰囲気を写し込める

古刹の山門前にあったモミジに、最短撮影距離の短さを生かして“一葉”に近づいて撮影。標準や望遠での近接撮影とは違い、背後の様子や雰囲気も写し込めるのが広角レンズの特徴だ。そして、接近しながらF1.4で撮影したことで、通常の広角撮影とは違う大きなボケ効果も得られた。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F1.4 1/250秒 +0.3補正 WB:オート ISO200

 

【その4】

画面周辺の歪みも目立たない光学設計

本レンズは非球面レンズ2枚やEDガラスレンズ2枚を使用し、歪曲収差や色収差など諸収差を効果的に補正した光学設計だ。広角レンズで目立ちがちな“画面周辺近くの直線の歪み”も、しっかり抑え込まれるのである(電気的な補正ナシで)。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F2.8 1/15秒 -0.3補正 WB:オート ISO1600

 

【その5】

先進のコーティング技術でクリアな描写を実現

レンズ全面に、透過率の高いHT-EBCコートを施し、独自開発のナノGI(Gradient Index)コーティング技術も採用。これにより、斜めの入射光に対しても効果的にフレアやゴーストを低減。今回、画面内に強烈な太陽を入れて撮影したが、予想以上のクリアさに感心した。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F8 1/1700秒 +0.7補正 WB:オート ISO400

 

【その6】

被写体の懐に大胆に踏み込める

ピンク色のペチュニアの花の間から、クローバーに似たカタバミの葉が顔をだす。その“ピンクと緑のコントラスト”に惹かれて、15cmの最短撮影距離近くまで接近して撮影した。被写体の懐に大胆に踏み込める本製品ならではのアプローチである。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F2.8 1/420秒 WB:オート ISO200

 

【その7】

適度なボケで背景がスッキリ

色が薄くなった焼き物のタヌキ。ちょっと強面だが、首をかしげるポーズが可愛らしい。F1.4の開放で撮影したことで、雑然とした背景が適度にボケた。また、よく見ると、鼻先の部分もボケている。

富士フイルム X-H1 XF 16mm F1.4 R WR 絞り優先オート F1.4 1/320秒 -0.3補正 WB:オート ISO400

 

“ここ一番”の重要な場面で、大口径広角の魅力を実感

今回取り上げたのは、開放F値「1.4」の大口径広角レンズだが、一般的に「広角」は、ボケの大きさや手ブレの心配をすることが少ない画角である。だから、標準や中望遠と比べると“大口径単焦点レンズの恩恵”を実感しにくいかもしれない。

 

だが、実際に大口径の広角レンズを使い込むと、軽快な単焦点レンズのフットワークの良さや、被写体の懐に踏み込める最短撮影距離の短さに感心する。

 

そして、光量に恵まれない場所や、被写体に接近した際に背景処理を行いたいときなど、“ここ一番”の場面で広角レンズの抜群に明るい開放F値のありがたさが実感できるだろう。

コスパで選ぶならコレ!! プロがオススメする「格安カメラ&レンズ」まとめ

価格が安い、安すぎてちょっと心配になってしまうくらいの格安アイテムを、プロ・専門家が徹底的にチェック! 独自機能やおすすめポイントなど、良いところも悪いところも含めて惜しみなくレビューをお伝えしていきます。今回のテーマはミラーレスカメラや一眼レフカメラ、交換レンズ、ストロボ、三脚といった格安カメラ用品です。

 

まだまだ発展途上のスマホカメラとは異なり、最近の一眼カメラはもはや安定期にあります。一世代前の旧製品でも、十分に納得できる画質と性能なのです。そんなおトクな格安モデルのなかから特にオススメの機種を紹介します。

 

【○×判定した人】

カメラマン・永山昌克さん

写真スタジオを経てフリーに。写真や動画撮影のほか、カメラ誌やWEB媒体での執筆も多数。

 

一世代前のモデルでも画質や操作性に不都合はない

エントリークラスのカメラは各社1〜2年ごとに新製品が登場しますが、モデルチェンジ後しばらくの間は旧製品も併売されます。この、いわゆる型落ち品が格安で、コストパフォーマンスが非常に高いです。

 

最近のモデルチェンジは、画質や操作性が大きく変わるわけではなく、新機能の追加がメインであることが多いです。その新機能が自分にとって重要でなければ、あえてひとつ前の製品を選ぶのも十分アリなのです。余った予算で交換レンズを1本追加したほうが、写真撮影の楽しみはいっそう広がります。

 

交換レンズに関しても、高価な新モデルだけが優れているわけではありません。発売が古い安価なレンズでも、描写性能に優れた製品はたくさんあります。ここで取り上げるのは、そんな掘り出し物の数々です。

 

【カメラ編】

その1

タッチ操作や4K動画に対応した薄型軽量モデル

パナソニック

LUMIX GF9

実売価格6万9800円(ダブルレンズキット)

【ミラーレス(EVF非搭載)】【1600万画素】【秒約5.8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約269g

薄型軽量ボディの入門機ながら、4Kフォトによる30コマ/秒の高速連写など、便利で実用的な機能が満載。液晶は自分撮りがしやすいチルト可動式で、タッチ操作にも対応。ボディに巻き付けられた合皮素材は、低価格を感じさせない高品位な雰囲気を生み出しています。

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式(上方向のみ)、タッチ対応 ●EVF:非搭載 ●サイズ:約W106.5×H64.6×D33.3㎜

 

【check】

画質:〇

中級機に匹敵する描写力

ローパスレスの16M Live MOSセンサーを搭載し、中級機に匹敵する描写力。フォトスタイル機能によって細かく色をカスタマイズできる点も◎。

 

操作性:○

初心者でも安心して使いこなせる

操作部はシンプルにまとまっていて使いやすいです。薄型のキットレンズ装着時のボディバランスは良好で、切れ味の鋭いシャッター音も好印象。

 

機能:○

「4Kプリ連写」が動体撮影に好適

独自の「4Kプリ連写」では、シャッターボタンを押した前後の60コマを自動的に記録できます。撮るのが難しい動物や野鳥、子どもなどの撮影に好適。

 

 

その2

ワンランク上の撮影も楽しめる高機能モデル

パナソニック

LUMIX GX7 Mark 

実売価格6万9800円(標準ズームレンズキット)

ミドルクラスの高機能ミラーレス。高さを抑えた横長ボディに、視認性に優れた電子ビューファインダーと、アングルの自由度を高めるチルト可動液晶を搭載。撮影モードはオートからマニュアルまで完備。

【ミラーレス(EVF搭載)】【1600万画素】【秒約8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約426g】

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式、タッチ対応 ●EVF:約276万ドット ●サイズ:約W122×H70.6×D43.9㎜

 

【check】

画質:〇

ハイアマも満足できる解像感

撮像素子は特に高画素ではありませんが、ローパスフィルターレス仕様であり、解像感は優秀なレベル。キットレンズの写りも悪くありません。

 

操作性:×

2ダイヤルは便利だがチルト液晶が惜しい

電子ダイヤルはグリップの前後に2つあって多機能をスムーズに設定可能。ただし、チルト液晶は自分撮りや縦位置撮影に非対応なのがイマイチ。

 

機能:〇

一段上の機能が薄型ボディに凝縮

強力なボディ内手ブレ補正や4Kフォトによる高速連写、本格モノクロモードなど、一段上の機能が満載。各ボタンの機能を柔軟にカスタムできるのも便利です。

 

 

その3

シンプルな操作性が魅力の小型軽量機

ニコン

D5300

実売価格6万4900円(AF-P 18-55 VRキット)

小型軽量ボディとシンプル操作が魅力の一眼レフ。使用頻度の高い項目にダイレクトアクセスが可能なiボタンを搭載。凝った効果を素早く適用できるスペシャルエフェクトなどのビギナー向け機能も充実しています。

【一眼レフ】【2416万画素】【秒約5コマ連写】【常用最高ISO12800】【約530g】

SPEC●レンズマウント:ニコンFマウント ●モニター:3.2型約104万ドット、バリアングル式、タッチ対応 ●OVF:約95%、約0.82倍 ●サイズ:約W125×H98×D76㎜

 

【check】

画質:〇

高精細な2416万画素

低価格の旧モデルながら、最新の中級機に匹敵する2416万画素の高精細を実現。遠景の細かい部分までシャープに描写できます。

 

操作性:×

ライブビュー時のAFの遅さが残念

一眼レフとしては小型軽量なボディであり、携帯性とホールド性を両立。しかし、ライブビュー使用時のAFの遅さとタイムラグが残念です。

 

機能:〇

39点位相差検出AFが使えるのが良い

AFには、最大39点の測距点を自動/手動で選べる位相差AFを採用。ペットや子どもといった動体にも、ストレスなく軽快に合焦します。

 

【交換レンズ編】

その1

高倍率ズームレンズ】低価格と高倍率、小型軽量を兼ね備える

タムロン

18-200mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC (Model B018)

実売価格2万5650

高倍率ズームのパイオニアであるタムロンが、2015年に発売したAPS-C一眼レフ用レンズ。より倍率の高い製品と比べても、持ち運びに優れた小型軽量である点がうれしい。低価格ながら、適度な剛性感も備えています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用】【ソニーAマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:28〜310㎜ ●最短撮影距離:35㎜時0.77m、180㎜時0.49m ●フィルター径:62㎜ ●長さ:キヤノン用96.6㎜、ニコン用94.1㎜ ●質量:約400g

↑幅広い焦点距離をカバー。そのため、自由に動けない場所でも狙いに応じた厳密なフレーミングが可能です

 

【ここが〇】

手ブレ補正の効きが良好

ズームすると前玉部分が長くせり出しますが、鏡胴にガタつきはなく、安っぽさは感じません。手ブレ補正の効果も十分にあります。

 

【ここが×】

AFスピードが遅めでもたつく

AFの作動音はあまりうるさくありませんが、AFスピードは遅め。マウント部がプラスチック製である点も不満。

 

その2

【マクロレンズ】銘玉といわれる「タムキュー」の2008年モデル

タムロン

SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model272E)

実売価格2万9140円

タムロンの90㎜マクロといえば、高画質と美しいボケに定評があり、1979年発売の初代モデル以来、モデルチェンジを繰り返しながら多くのユーザーに親しまれています。これは2008年発売モデル。AFはうるさいが画質は一級品です。

【キヤノンEFマウント用】【キヤノン用】【ニコン用(AFモーター内蔵:272EN Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:90㎜ ●最短撮影距離:0.29m ●フィルター径:55㎜ ●長さ:97㎜ ●質量:約400g

↑PC上で等倍表示すると、花粉の粒がはっきりわかるくらいシャープに解像。リアルで立体感のある描写が得られました

 

【ここが〇】

切れ味の鋭い描写力が魅力

フルサイズ対応ながら四隅まで高解像を実現。一方で、絞り開放値ではピントを合わせた前後に美しいボケが生じます。

 

【ここが×】

AF駆動音が少々大きめ

超音波モーター非搭載なのでAF駆動音は少々大きめ。AFからMFに切り替える際、ピント位置が動きやすい点も×。

 

 

その3

【望遠ズームレンズ】1万円台前半で超望遠域を味わう

タムロン

AF70-300㎜ F/4-5.6 Di LD MACRO 1:2 (Model A17)

実売価格1万2240円

フルサイズに対応した小型軽量の望遠ズーム。通常の最短撮影距離は1.5mですが、マクロモードを選ぶと0.95mまでの接写もできます。手ブレ補正は非搭載。ゴースト対策として前玉にはマルチコートが施されています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用(AFモーター内蔵:A17N Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:70〜300㎜ ●最短撮影距離:通常1.5m、マクロモード時0.95m(180-300㎜域) ●フィルター径:62㎜ ●長さ:116.5㎜ ●質量:約458g

↑描写性能は色収差がやや目立ち、最上とはいえませんが、十分に実用的。小動物をアップで撮れるのは便利です

 

【ここが〇】

軽量で携帯性に優れている

フルサイズ対応ながら、質量458gという軽さが最大のメリット。300㎜側でF5.6というスペックやマクロ機能も◎。

 

【ここが×】

手ブレ補正が非搭載

300㎜の超望遠撮影ができるが手持ちではブレやすいので、手ブレ補正非搭載は残念。AFが遅めといった弱点もあります。

 

 

その4

【単焦点レンズ】単焦点レンズの入門用に打って付け

シグマ

30mm F2.8 DN

実売価格1万6360

わずか140gの軽さを実現したミラーレス用単焦点レンズ。両面非球面レンズの採用で諸収差を補正したほか、スーパーマルチレイヤーコートによってフレアやゴーストの発生も低減しました。AFは駆動音の静かなリニアAFモーター式です。

【マイクロフォーサーズ用】【ソニーEマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:マイクロフォーサーズ60㎜、APS-C45㎜ ●最短撮影距離:0.3m ●フィルター径:46㎜ ●長さ:40.5㎜ ●質量:約140

↑スムーズなボケは単焦点ならでは。この写真では、絞り値F2.8に設定し、被写体に近寄ることで背景をぼかします

 

【ここが〇】

小型軽量で画質も優秀

キット付属の標準ズームに比べて小型軽量で、携帯性が高いです。画質もキットレンズより上で、美しいボケが得られます。

 

【ここが×】

外装に指紋がつきやすく目立つ

開放値F2.8は、キットレンズよりは明るいものの、F1.8クラスよりは暗く、中途半端な印象。外装も指紋がつきやすいです。

 

【撮影アイテム編】

その1

薄型軽量のクリップオンストロボ

GODOX

TT350デジタルカメラフラッシュ

実売価格1万4310

各社のTTLオート撮影に対応したクリップオンストロボ。単3形乾電池2本で駆動し、200gと軽量です。マルチ発光や高速シンクロ撮影に対応するほか、発光部を上下左右に動かすことで天井や壁を使ったバウンス撮影も行えます。

【ストロボ】【キヤノン用】【ニコン用】【ソニー用】【富士フイルム用】

SPEC●ガイドナンバー:36(105㎜、ISO100) ●フラッシュ範囲:24〜105㎜(14㎜ワイドパネル付) ●電源:単3形乾電池2本 ●サイズ/質量:W62×H140×D38㎜/200g

↑背面には、各種機能の設定状態がひと目でわかる液晶パネルを装備。その下のホイールを回して発光量を調整します

 

【ここが〇】

各社のTTL発光に対応

4つのメーカー用の製品が用意され、押すだけのフルオート撮影で使用できます。高速シンクロなどの機能も充実。

 

【ここが×】

チャージに時間がかかる

単3形乾電池2本で駆動するのは携帯性では有利ですが、4本使用の他社製品に比べてチャージに時間がかかります。光量もやや弱め。

 

 

その2

憧れのカーボン三脚がわずか1万円で購入可能

アマゾンベーシック

トラベル三脚 130cm  5小型

実売価格9980

軽量で剛性感の高いカーボン素材を採用したトラベル用三脚。脚を伸ばし、中央のエレベーター部分を動かすことで、高さは30.5〜135.5cmの範囲で調整可。ボールヘッドの自由雲台やクイックプレート、キャリングケースも付属します。

SPEC●耐荷重:3.6㎏ ●全高:135.5㎝(EVあり) ●最低高:30.5㎝ ●縮長:31㎝ ●質量:1.11㎏

 

↑持ち運ぶ際は、脚の部分を反転させることで小さくまとめることが可能。出っ張りが少ないナット式ロックも便利

 

【ここが〇】

カメラバッグに収納可能

縮長が31㎝と短いので、通常のカメラバッグに入れて持ち運ぶことも可能です。また、ローアングル撮影にも対応します。

 

【ここが×】

一眼レフ用には安定感が不足

全長135.5cmはやや物足りず、脚も5段でセッティングに時間がかかります。ミラーレス用で大きな一眼レフには不向き。

 

 

 

“遠くを撮りたい”なら買って損ナシ!! キヤノンの超望遠レンズ「100-400mm」をプロが賞賛する理由

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第6回「キヤノン 超望遠ズームレンズ(100-400mm)」

 

ここ数年の間に、多くのカメラ・レンズメーカーから、焦点距離400mmまでカバーする、いわゆる「超望遠レンズ」が発売されるようになった。だが、キヤノンはかなり前から、このカテゴリに該当する一眼カメラ用交換レンズ「100-400mm」を発売している。しかも、現在ラインナップされているのは“二代目の100-400mm”であり、画質面でも操作面でも大きく進化させた製品なのだ。

↑高画質設計で操作性にも優れる、高い機動力が自慢の超望遠ズームレンズ「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」

 

現在、各社から発売されている400mmまでの超望遠ズームレンズには、コストパフォーマンスを重視した製品と、光学性能やAF性能を追求した製品がある(厳密に分類するのは難しいが)。

 

今回紹介する、キヤノン「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は後者に該当する製品であり、プロやハイアマチュアのシビアな要求に応える「L(Luxury)レンズ」の1本。その進化した超望遠ズームレンズの特徴や魅力を、実際に撮影した作例写真とともに探ってみたい。

 

【今回紹介するレンズはコレ!】

光学性能も手ブレ補正も大幅に向上した二代目モデル


キヤノン
EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM
実売価格23万9620円

先代のロングセラー製品「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」の後継モデルで、最新の光学設計により画質が大幅に向上。蛍石レンズ1枚とスーパーUDレンズ1枚を含む新しい光学設計により、ズーム全域において、画面周辺部まで高画質を実現。さらに、独自の新開発コーティング技術「ASC(Air Sphere Coating)」の採用で、フレアやゴーストも大幅に抑制。IS(手ブレ補正機構)の効果も、従来モデルのシャッター速度1.5~2段分から「4段分」に大幅に向上している。不規則な動きの動体撮影に最適な「ISモード3」も新搭載。2014年12月発売。

●焦点距離:100-400mm ●レンズ構成:16群21枚 ●最短撮影距離:0.98m ●最大撮影倍率:0.31倍 ●絞り羽根:9枚 ●最小絞り:F32-40 ●フィルター径:77mm ●最大径×全長:94mm×193mm ●質量:約1570g ●その他:手ブレ補正効果4.0段分(CIPAガイドライン準拠)

 

約20年前に発売された初代「100-400mm」を振り返る

二代目モデルを語るうえで、まずはデジタル一眼レフが普及する前の“2000年以前”に発売された、超望遠400mmまでカバーする初代モデルについても触れておきたい。

↑最大径92mm×全長189mmと、二代目モデルよりもわずかに小さい。そして、質量は200g近く軽い1380g。ズーム方式は、速写性に優れる直進式を採用(二代目は回転式)

 

1998年12月に発売された本レンズは、報道写真の分野や動きの激しいスポーツ、近づけない動物など、プロフェッショナルや特殊な撮影現場で高いパフォーマンスを実現。L(Luxury)レンズに相応しい描写性能や、手ブレ補正機構「IS」の搭載により、望遠や超望遠撮影を重視するカメラマンに支持されてきた。

今回紹介する二代目「100-400mm」レンズは、そんな初代レンズから画質面でも操作面でも大きく進化しているのだ。

 

超望遠ズームのメリットを具体的なシーンで語る

望遠ズームレンズの最大の特徴は、近づけない被写体でもズーム操作によって“大きく写せる”という点である。そして、望遠側の焦点距離が長くなるほど、より離れた被写体も大きく写せるし、同じ距離なら画面上により大きく写すことができる。

 

それでは、筆者が実際に撮影していて感じたメリットを、この超望遠画角を生かした具体的な撮影シーンを挙げながら紹介しよう。

 

【その1】近づけない被写体を、超望遠画角で大きく写す

駅前に設置された木製の案内板に、削り出しのネコのキャラクターを見つけた。その可愛らしい表情を400mmの画角で切り取る。目線よりも高い位置になり、しかも周囲に柵が設置されている――。超望遠の画角を利用すれば、そんな“近づけない被写体”も大きく写すことができる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/400秒 -0.3補正 WB:オート ISO100

 

【その2】引き寄せ効果+前ボケ効果で幻想的な雰囲気に

離れた被写体が、あたかも近くにあるように写せる。これは「引き寄せ効果」と呼ばれるもので、望遠になるほど高まる効果である。この花もけっこう離れた位置に咲いているが、400mmの画角によって、手が届く位置にある花のような感覚で捉えられた。そして、手前にある草を「前ボケ」として画面内に取り入れることで、幻想的な雰囲気に仕上げることができた。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/80秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO100

 

【その3】一輪の花も大きく写せる、短めの最短撮影距離

花壇に咲く花のなかから、比較的近い位置にある一輪を主役に抜擢。そして、望遠端400mmの画角で、最短撮影距離近くの間合いで撮影。当然、マクロレンズには敵わないが、超望遠ズームレンズとしてはけっこう“寄れるレンズ”と言えるだろう。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/320秒 WB:オート ISO500

 

↑近年、望遠ズームレンズがモデルチェンジする際には、よく“最短撮影距離の短縮”が実施されている。本製品の場合も、従来モデルの1.8mから「0.98m」へと大幅に短縮された

 

【その4】離れたフラミンゴも大きくシャープに!

多くのフラミンゴが活発に活動する、動物園内の浅い池。その池の対岸近くに、これから羽ばたこうとする一羽を見つけた。そして、素早くズームリングを望遠端に設定し、羽ばたく瞬間を大きく捉えた。“望遠端で絞り開放”という条件になったが、レンズの光学性能とAF精度のおかげで、シャープな描写を得ることができた。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 WB:オート ISO1000

 

【その6】進化した手ブレ補正機構ISでファインダー像も安定

超望遠の手持ち撮影では、わずかなカメラの動きで、ファインダー(または液晶モニター)の像が大きく揺らいでしまう。高速シャッターで撮影画像のブレは抑えられるが、それでは安定した構図を得るのが難しくなる。だが本レンズでは、手ブレ補正効果がシャッター速度「4段分」に進化した手ブレ補正機構ISにより、そのあたりの不安もかなり解消される。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO1250

 

【その7】贅沢な光学設計で画面周辺部まで画質が安定

中央付近はシャープだが、画面周辺部をチェックすると、像のアマさや乱れが見られる……。そのあたりが、コスパや大きさ・重さを重視して設計される“安価な望遠や超望遠ズーム”の泣き所。だが、本レンズは、色収差を抑える蛍石レンズ1枚やスーパーUDレンズ1枚などを含む贅沢な光学設計によって、ズーム全域で画面周辺部まで高画質を実現する。だから、画質が最重要視される風景撮影にも安心して使用できる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(182mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/125秒 -0.3補正 WB:オート ISO800

 

【その8】超望遠で離れた列車をじっくり撮る

こちらに向かってくる列車は、距離が近くなるほど体感速度が増してくる。そして、わずかなシャッターのタイミングのズレによって、写り具合(列車の位置など)も大きく変化する。もちろん、そういう状況の醍醐味もあるが、思い通りに写せない確率も高くなる。だが、超望遠域で距離を置いた撮影なら、列車位置の変化も激しくないので、シャッタータイミングによる失敗も少なくできる。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/1000秒 WB:オート ISO500

 

快適さを左右する「操作性」も要チェック!

「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は、従来モデルよりも手ブレ補正機構「IS」の補正能力を高めたことで、手持ちでの超望遠撮影の活用範囲が広がっている。また、ズームリングの調節機能の搭載によって、撮影スタイルや好みに応じて“ズームリングの重さ”が変えられるのも、本製品の魅力的な部分と言える。

 

こうした「操作性」は画質や大きさ・重さに比べるとパッと見ただけでは気づきにくい地味なポイントではあるが、長く使うことを考えると快適さを左右する重要なポイントだ。本製品に関してもいくつか取り上げておこう。

 

【その1】操作しやすい幅広のズームリング

三脚座を使用して三脚に固定し、望遠端の400mmまで伸ばした状態(フードも装着)。前方に配置される幅広のズームリングは、三脚使用時でも手持ちでも操作しやすい。

 

【その2】“ズームリングの重さ”を調整できる

ズームリングとフォーカスリングの間に「調整リング」が設置されている。このリングを「SMOOTH」方向に回転させるとズームリングの動きは軽くなり、反対の「TIGHT」方向に回転させると重くなる。

 

【その3】ワンタッチで切り替え可能な手ブレ補正機能ほか

マウント部近くの左手(カメラを構えた状態)側に、フォーカスと手ブレ補正機構「IS」関連の設定スイッチが並ぶ。上から、撮影距離範囲切り換えスイッチ、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチ、手ブレ補正モード選択スイッチ。

 

【その4】フードにはPLフィルターの操作窓を装備

レンズ前面を雨や雪などから守り、写りに影響を与える有害な光線をカットする、付属のフード「ET-83D」。そのレンズ取り付け部の近くには、C-PL(円偏光)フィルターを操作するための、スライド方式の操作窓が設けられている。風景派カメラマンにはありがたい機能である。

 

 

一般的な望遠ズーム「70-200mm」「70-300mm」と比較すると?

望遠側の焦点距離が長くなると、レンズ本体の大きさ(主に長さ)が大きくなり、また、画質劣化や開放F値の暗さなどの不安要素も増えてくる。そのあたりが、少し望遠側を抑えた70-200mmや70-300mmなどの望遠ズームと比較検討する際のポイントになってくるだろう。

 

特に、高画質設計で開放F値も明るい「70-200mm F2.8」や「70-200mm F4」は魅力的だ。あるいは、もう少し望遠域までカバーしたいという思いで、「70-300mm F4-5.6」などの望遠ズームレンズを選ぶ人も多いだろう(価格や大きさ重さの問題もあるが)。

 

そこで、300mmの画角と、本製品がカバーする400mmの画角を比較してみた。

<300mmと400mmの画角を比較>

300mm(上写真)と400mm(下写真)の比較。400mm/共通データ:キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM 絞り優先オート F5.6 1/320秒 WB:オート

 

100-400mmを使う場合、あまり焦点距離を意識せず、普通に400mmで撮影することが多い。だが、こうやって同条件(同じ被写体を同じ位置から撮影)で300mmと比べてみると、思った以上に400mmの“アップ度の高さ”を実感する。70-300mmクラスでも十分な望遠効果は得られるが、より被写体を大きく撮ることを重要視するのであれば、100-400mmクラスを選びたい。

 

しかも、本製品「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」は、L(Luxury)レンズに相応しい優れた光学設計を採用しつつ、大きさや重さは70-200mm F2.8クラスに近い値に収めている。その点でも、超望遠ズームのデメリットを1つ解消していると言えるだろう。

 

 

【まとめ】多くの人に推奨できる、バランスの良い超望遠ズームレンズ

超望遠撮影で描写性能やAF性能にこだわると、必然的にキヤノンのL(Luxury)シリーズのような製品を推奨することになる。もちろん、報道やスポーツイベントの現場などで使われているような超弩級の超望遠レンズ(極端な大きさ重さで、価格も100万円前後になる)もあるにはあるが、購入して使いこなせる人は限られるだろう。

 

だが、今回取り上げた「EF 100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM」なら、70-200mm F2.8望遠ズーム並みの大きさ・重さで価格帯も近い。だから、高画質な超望遠撮影を堪能したい多くの人にオススメできる製品なのである。

キヤノン最高峰の中望遠単焦点!! 「EF 85mm F1.4L IS USM」実写レビュー

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第5回「キヤノン 手ブレ補正機構搭載の中望遠単焦点レンズ」

 

中望遠単焦点の85mmは、ポートレート撮影などに多用されるレンズである。本格望遠の200mmや300mmのように、遠くの風景の一部分を切り取ったり、野生や動物園の生き物をアップで捉えたり……といった、望遠らしい作画効果は期待できない。だが、被写体との距離を適度に保ちつつ、明るい開放F値を生かして被写体の前後を大きくぼかすことができる。そんな“玄人好み”の描写や表現が、85mm前後の中望遠単焦点レンズの持ち味である。

 

今回取り上げる「キヤノン EF 85mm F1.4L IS USM」は、Lレンズとしての優れた描写性能を実現しつつ、手ブレ補正機構「IS」も搭載している。これによって、手持ち撮影時の快適さやブレ防止効果が増す。ちなみに、キヤノンのLレンズの「L」は、贅沢や高級を指す「Luxury」の頭文字で、最高水準の描写性能や操作性・堅牢性を追求したレンズの称号になっている。

 

【今回紹介するレンズはコレ!】

Lシリーズの大口径中望遠に手ブレ補正機構「IS」を搭載


キヤノン
EF 85mm F1.4L IS USM
実売価格17万7200円

F1.4の明るい開放F値によって、夜間や屋内などの暗い場面でもフラッシュ光に頼らず撮影でき、大きなボケ効果を生かした高品位な撮影が可能な中望遠単焦点レンズ。高精度ガラスモールド非球面レンズ1枚を採用し、画面中心から周辺部までシャープな画質を実現している。また、特殊コーティング技術のASC(Air Sphere Coating)の採用により、逆光時のフレアやゴーストの発生も抑制。そして、シャッター速度換算「4段分」のブレ補正効果が得られる手ブレ補正機構「IS」も搭載している。2017年11月発売。

●焦点距離:85mm ●レンズ構成:10群14枚 ●最短撮影距離:0.85m ●最大撮影倍率:0.12倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F22 ●フィルター径:77mm ●最大径×全長:88.6mm×105.4mm ●質量:約950g ●その他:手ブレ補正効果4.0段分(CIPAガイドライン準拠)

 

85mmだけでF1.2、F1.4、F1.8の3本体制に

従来からのEFレンズ群には、2本の85mm単焦点レンズがラインナップされている。明るさをF1.8に抑えてコンパクトさを追求した「EF 85mm F1.8 USM」と、開放F値が抜群に明るい「EF85mm F1.2L Ⅱ USM」である。後者のF1.2の製品は、最高水準の描写性能や操作性・堅牢性を追求したLレンズであり、1989年発売の前モデル「EF 85mm F1.2L USM」と同様、ポートレート撮影などの定番レンズとして、長年にわたってプロやハイアマチュアの高い評価を得てきた。

↑独特な外観フォルムが印象的な「EF85mm F1.2L Ⅱ USM」。質量は“1kgオーバー”の1025gである。2006年発売で実売価格は21万5200円

 

このF1.2の製品は「EF 85mm F1.4L IS USM」の発売後も併売されている。つまり、現在キヤノンの85mmは、F1.2、F1.4、F1.8の3本体制に。それぞれに描写や大きさ・重さ、価格などが異なるので、自身の狙いに合ったものを選ぶといいだろう。

↑今回紹介するF1.4の製品は、従来の大口径タイプの85mm(F1.2)と比べると、鏡筒の太さが均一になったので、結構スマートな印象を受ける

 

“均一な太さ”でバランスの良い外観

一見してわかる通り、従来からの「EF85mm F1.2L Ⅱ USM」と、新しい「EF 85mm F1.4L IS USM」は、外観フォルムが大きく異なる。鏡筒の最大径はあまり変わらない(F1.2は91.5mm、F1.4は88.6mm)。しかし、F1.2の製品はマウント部付近が極端に細くなっていて、それが太い部分の印象を強めている。一方、F1.4の製品はマウント部から前方にかけて徐々に太くなっていて“均一な太さ”という印象がある。ただし、全長はF1.4のほうが20mm以上も長いので、全体的にはF1.4の製品のほうが大柄だ。

↑全体的に太さが均一で、スマートな印象の「EF 85mm F1.4L IS USM」。付属のレンズフード「ET-83E」は、丸型タイプで全長が短め

 

しかし、質量に関しては、F1.2のほうが75g重い(F1.2は1025g、F1.4は950g)。だから、F1.2の“重量感”を体感している人なら、今回のF1.4は「思ったよりも軽いな」と感じるのではないだろうか。

 

全長は長めだが均一な太さの鏡筒で、MF撮影で使用するフォーカスリングもF1.2よりも幅広になっている。そんな「EF 85mm F1.4L IS USM」は、全体的に“バランスの良さ”が印象的な製品である。

F値の調整でさまざまなシーンに対応

ここからは、実写チェックを見ていこう。

 

まずは、F1.4の開放から1段刻みでF2.8まで撮影し、その背景ボケの違いをチェックしてみた。当然、最も明るいF1.4がいちばん大きくボケるので、被写体(手前のバラ)の近くにある花や葉もボケが大きくて被写体が目立つ。だが、開放付近だと「口径食(※)」の影響によって、画面周辺近くの遠方の木漏れ日が、円形ではなくレモン型に変形している。1段絞ったF2だと、変形の度合いはいくぶん弱まる。2段絞ったF2.8だと、画面周辺の木漏れ日も、かなり円形に近づいている。

※口径食:レンズに対して斜めに入射した光の一部が鏡筒やレンズの縁で遮られて、周辺部の光量が減少する現象

F1.4

 

F2

 

F2.8/共通データ:キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート WB:晴天 ISO100

 

F値の違いによる描写がわかったところで、次はそれぞれのF値をどんな場面で使うのか、具体的に紹介しよう。

 

≪F1.4(開放)≫最大のボケ効果を得る

木陰の手前に咲いていたアジサイ。背景が薄暗いぶん、花の形や色彩が際立って見えた。木漏れ日や点光源がない背景なので、口径食による不自然な描写は気にしなくてよさそう。そこで、F1.4の開放に設定して、最大のボケ効果を得ることにした。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F1.4 1/1250秒 -0.7補正 WB:オート ISO100

 

≪F2≫背後の点光源を自然な形にぼかす

温室内に吊り下げられたベゴニアの花を、背景を大きくぼかして存在感を高めたい。だが、背景にはいくつかの光源(照明)が入るので、絞り開放(F1.4)だと口径食による“光源ボケの変形”が懸念される。だから、ボケ効果の大きさと変形の緩和のバランスを取って、1段だけ絞ったF2で撮影した。絞り羽根(重ね合わせ)の角が目立たない円形絞りを採用しているので、光源ボケの形(輪郭)も自然である。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F2 1/320秒 WB:晴天 ISO100

 

≪F2.8≫近距離での不自然なボケを避ける 

ミントの群生を撮影中、1匹のアブの姿が目に留まった。そこで、そのアブにポイントを置いて、最短撮影距離付近で狙うことにした。近距離の撮影では、被写界深度(ピントが合っているように見える、ピント位置前後の範囲)が浅くなるので、わずかなピント位置のズレでピンボケになったり、奥行きのある物の一部分しかシャープに描写されなかったりすることがある。そこで、F2.8まで絞って不自然なピンボケを防ぎつつ、適度なボケ効果を得た。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F2.8 1/2500秒 WB:晴天 ISO100

 

↑「EF 85mm F1.4L IS USM」の最短撮影距離は0.85m。85mmの中望遠レンズとしては一般的な値だが、F1.4の開放で撮影する際には、被写界深度の浅さによるピンボケや不自然なボケ具合に注意したい

 

≪F8≫奥行きのある風景をハッキリと描写

開放F1.4の大口径単焦点レンズだと、開放やその付近の絞り値で撮影することが多くなるだろう。しかし、遠方を狙った風景撮影などでは、適度に絞り込んで撮影したい(ここではF8に設定)。それによって、少し手前から遠方までシャープな“肉眼の印象に近い描写”を得ることができる。もちろん、Lレンズなので画質的にもハイレベルである。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F8 1/160秒 -0.3補正 WB:晴天 ISO100

手ブレ補正機構「IS」の能力をチェック

本製品では“F1.4と手ブレ補正機構”の両立を実現させている。通常、大口径レンズに手ブレ補正機構を搭載(内蔵)すると、どうしても大きくて重い製品になりがちである。だが、本製品はレンズ全体のメカ構造の工夫によって小型軽量化を実現している。その手ブレ補正機構「IS」の補正効果は、シャッター速度換算で「4段分」。単純に計算すると「1/8秒」くらいでの手持ち撮影が十分可能、ということになる。

 

では実際の効果のほどはどうなのか。以下の日陰になったお堂の撮影シーンで検証してみた。

↑感度ISO100・絞りはF4で、得られたシャッター速度は「1/50秒」。手ブレ補正機構が非搭載だと、ちょっと微妙な速度である/共通データ:キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F4 1/50秒 -0.7補正 WB:晴天 ISO100

 

軒先部分の木製彫刻を拡大し、手ブレ補正オン/オフで比較してみよう。

「IS」(手ブレ補正)オン

 

「IS」(手ブレ補正)オフ

 

極端な低速シャッターではないので、手ブレ補正機構「IS」がオフの状態でも、一見して「ブレて失敗!」というカットはなかった。しかし、PC画面上で100%(原寸表示)の大きさでチェックすると、ISオフで撮影したほうは、木製彫刻の細部や輪郭部に微妙なカメラブレが発生したカットが多くあった。今回の使用ボディは有効画素数「約3040万画素」のEOS 5D MarkⅣ。カメラが高画素になればなるほど、わずかなカメラブレも見逃せなくなってくるのだ。

 

手ブレ補正の効果がわかっところで、手持ちで低速シャッターを生かした撮影にチャレンジしてみた。緑に囲まれた回る水車を、手持ちのまま「1/8秒」低速シャッターで撮影。これによって、勢いよく回る水車部分が大きくブレて、ダイナミックな動感が表現できた。もちろん、動きのない部分までブレてしまうと、ただの“手ブレ写真”になってしまう。手ブレ補正機構の搭載によって可能になる、撮影スタイル&写真表現なのである。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM シャッター優先オート F11 1/8秒 -0.7補正 WB:晴天 ISO100

 

明るさと手ブレ補正の融合が、写真撮影の幅を広げる

ズームレンズの場合、大口径タイプの製品でも開放F値は「全域F2.8」になる(ごく一部の製品を除けば)。だが、広角から中望遠の単焦点レンズなら、それより2絞り明るい“開放F1.4”の製品も多くある。しかし、それらには手ブレ補正機構が搭載されていない(ボディ内手ブレ補正を採用してないカメラで)。

 

まあ、明るさと光学性能の両立を考えると、それも止む無し。「手ブレ補正非搭載でも、抜群の明るさでカバーできる」。そういう考えで大口径単焦点レンズを選択・使用している人は多いだろう。だが、この「EF 85mm F1.4L IS USM」は、F1.4の明るさと手ブレ補正機構搭載の両方を実現した。それは例えば、次のような薄暗いシーンで活躍する。

 

夜の神社。そこの門の一部分を、85mmの画角で切り取る。近くに設置された灯りに照らされてはいるが、周囲はかなり暗くて、頼みの灯りも光量は乏しい。正直、F1.4の明るさを以てしても厳しい状況である(ある程度の画質劣化を覚悟して、極端な高感度撮影をおこなえば別だが)。しかし、感度をISO1600まで上げたら「1/4秒」の値は確保できた。この程度のISO感度なら、新しめの35mm判フルサイズ機なら十分高画質が得られるし、シャッター速度もISオンなら何とかなる値だ(安全速度よりもわずかに低速だが)。

キヤノン EOS 5D MarkⅣ EF 85mm F1.4L IS USM 絞り優先オート F1.4 1/4秒 -1補正 WB:オート ISO1600

 

F1.4の明るさと手ブレ補正機構搭載の両方を実現した本レンズを使えば、撮影領域や表現の幅はこれまで以上に広がるだろう。ワンランク上の撮影を楽しみたいなら、ぜひ手にしておきたい1本だ。

「ズーム全域F1.8」が与えた衝撃――シグマの革命的レンズ「18-35mm F1.8 DC HSM」再評価レビュー

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第4回「シグマ ズーム全域F1.8の大口径ズーム」

 

現在、多くのカメラのレンズキット(カメラボディとレンズを組み合わせた商品)に選ばれているのはズームレンズである。ズーム操作によって写す範囲を即座に変えられる、その利便性やメリットは、あえて説明するまでもないだろう。

 

ただし、利便性の高いズームレンズにも、いくつかの泣き所はある。そのなかでも特に写りに影響を及ぼしてくるのが、同じ焦点距離(ズーム域に含まれる焦点距離)の単焦点レンズよりも“開放F値が暗い”という点である。たとえば、50mm相当(相当=35mm判フルサイズ換算。以降同様)の標準域は、単焦点レンズだとF1.4やF1.8と非常に明るい製品が一般的。一方、標準ズームだと明るい製品でも「ズーム全域F2.8」である。

 

だが、今回紹介するシグマの標準ズームは「ズーム全域F1.8」という驚きの開放F値を実現した製品である。単焦点レンズ並の明るさを持つズームレンズ。それによって、どんな表現やパフォーマンスが可能になるだろうか?

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

蓄積したノウハウと最新技術で“全域F1.8ズーム”を実現

シグマ
18-35mm F1.8 DC HSM
実売価格7万8650円

デジタル一眼レフ用の交換レンズで、世界で初めて(※)「ズーム全域F1.8」の開放F値を実現した、APS-C用の大口径標準ズームレンズ。開放F値を明るくすると、通常は球面収差をはじめとする各収差(軸上色収差、非点収差、像面湾曲など)の収差補正が極めて困難になる。だが、これまで製品化してきた「12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM」や「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」などの超広角ズームで培った収差補正や機構的なノウハウなどをもとに、各収差を抑制しながら大口径化を実現。そして、長年シグマで蓄積されてきた設計ノウハウと最新の加工技術により、絞り開放から優れた描写性能を発揮する、驚異の“全域F1.8ズーム”を完成させた。2013年6月発売。

※デジタル一眼レフカメラ用交換レンズにおいて

●焦点距離:18-35mm ●レンズ構成:12群17枚 ●最短撮影距離:0.28m ●最大撮影倍率:約0.23倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F16 ●フィルター径:72mm ●最大径×全長:78mm×121mm ●質量:810g ●その他:※数値はシグマ用。対応マウント:シグママウント/ソニーAマウント/ニコンマウント/ペンタックスマウント/キヤノンマウント(数値はいずれもシグマ用)

 

衝撃的な明るさの大口径ズームたち

近年のズームレンズを見返してみると、高性能で高価な製品は“高画質設計+大口径(※)”であることが多い。……とはいえ、大口径に関しては、ほとんどの製品が「ズーム全域F2.8」である(前述のとおり、標準域の単焦点レンズだと、F1.4やF1.8とさらに明るい製品が多く存在する)。

※大口径:開放F値の数値が小さくて明るいレンズのこと。明るいレンズのほうがより大きなボケを生かした写真が撮れるほか、光量の乏しい室内や夜間といったシーンでも、シャッター速度を速くできるというメリットがある。デメリットとしては、一般的に大きく重く、そして高価になりがちな点が挙げられる

 

だが、2008年に発売されたオリンパスの「ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD」は、標準ズームレンズとして極めて画期的な「ズーム全域F2.0」を実現。この大口径標準ズームの登場は、多くのカメラユーザー&ファンに強烈なインパクトを与えた。ちなみに望遠ズームとしては、同社から2005年に「ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0」という、ズーム全域F2.0の大口径望遠ズームが登場している。

↑28-70mm相当をカバーする、フォーサーズ規格の大口径標準ズーム「ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD」。2008年発売

 

2013年には、今回紹介する「シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM」が世界初の「ズーム全域F1.8」として登場し、大きな驚きを与えた。2016年には、同じ明るさの大口径望遠ズーム「シグマ 50-100mm F1.8 DC HSM」も発売されている。

↑75-150mm相当をカバーする、APS-C用の大口径望遠ズームレンズ「シグマ 50-100mm F1.8 DC HSM」。2016年発売。実売価格は10万8070円

 

シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMの「操作性」をチェック!

シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMは、鏡筒の材質感(外観、触感)の上質さや、質量810gの重みによって、重厚で存在感のある大口径標準ズームに仕上がっている。もちろん、その“重厚さ”がデメリットになる場合もある。だが、キヤノン「EOS 7D Mark Ⅱ」やニコン「D500」といったAPS-Cサイズ機の上位モデルと組み合わせた際の“外観や重量のバランス”は良好。それゆえに、自然と気合いを入れて撮影したくなる(個人的な感想だが)。

↑質量800g以上の重めの標準ズームだが、前枠も含めて全体的にフラットな形状なので、個人的には外観的にさほど威圧感は感じない

 

↑付属の花形フード「LH780-06」を装着した状態。その堂々としたスタイルは、少し大柄なAPS-Cサイズの上位モデルにジャストフィットする

 

サイズや重量のほかに操作性のチェックポイントに挙げられるのが、ズームリングやフォーカスリングの動きだろう。そういった部分の良し悪しに、レンズのグレードや高級感が反映されてくる。本レンズはハイグレードな製品らしく、どちらのリングも動きが滑らかだ。特に、ズームリングの動きの滑らかさは素晴らしい。適度なトルクがありながら、動きのムラや擦れる感じは皆無! また、AF駆動には超音波モーター(HSM)を採用しているので、AF時の作動音もほとんどなく、快適なAF撮影を行うことができる。

↑前方がフォーカスリングで(その前には付属のフードを装着)、マウント部に近いのがズームリング。どちらのリングもゴム素材で指掛かりがいい。フォーカスモード切換えスイッチも、操作しやすい大きさ&形状だ

【実写チェック①】開放F1.8の大きなボケ効果を堪能

多くの標準ズームは、70mm~105mmくらいの中望遠域までカバーするが、本製品がカバーしているのは52.5mm相当の標準域まで。この点をどう捉えるかは人によって異なるだろうが、28mm相当や35mm相当あたりの広角域の使用頻度の高い人(広角派)ならば、望遠端が標準域でもさほど気にならないだろう。ちなみに、筆者も広角派。以前はフルサイズ対応の広角ズーム(16-35mm F2.8など)を、APS-Cサイズ機で標準ズーム代わりに常用していた。

 

35mm相当前後の広角域は、自然な広さや遠近感が得られる使いやすい画角。次の写真では、幹線道路沿いの公園の端から、公園のツツジの花を画面に入れながら、横切る自転車を意識してシャッターを切った。その先にある歩道橋の見え方(大きさや遠近感)も自然である。

↑自然な広さや遠近感が得られる広角域でスナップ/ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(23mmで撮影) 絞り優先オート F4 1/60秒 -0.7補正 WB:晴天 ISO160

 

続いて、52.5mm相当のズーム望遠端(標準域)で、開放F1.8と一般的な大口径ズームの開放F2.8を撮り比べてみた。F2.8でも適度にボケるが、1・1/3段明るいF1.8だと、さらに大きなボケ効果を得ることができる。上の写真がF1.8、下の写真がF2.8で撮ったものだが、背景の上半分(シルエット調の木の輪郭)などを見比べると、そのことががよくわかるだろう。

F1.8で撮影

 

F2.8で撮影。共通データ:ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(35mmで撮影) 絞り優先オート WB:晴天 ISO100

 

最短撮影距離はズーム全域0.28mで、最大撮影倍率は約0.23倍(35mm判換算だと約0.35倍)。この値は、多くの単焦点の標準レンズよりも高倍率である。その高めの撮影倍率と開放F1.8設定によって、ボケ効果を極めた印象的なクローズアップ撮影が堪能できる。ただし、ピント合わせには細心の注意が必要だ。

ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(35mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/500秒 +0.7補正 WB:晴天 ISO100

 

【実写チェック②】“ボケ”と“シャープさ”、どちらも魅力

シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMの最大の特徴が、ズーム全域F1.8による“大きなボケ効果”や“シャッターの高速化”なのは間違いない。だが、本レンズの特徴はそれだけではない。画面全域で高い解像性能や安定した描写が得られるのも、本製品の大きな魅力だ。

 

小型軽量設計の安価なズームレンズだと、画面の中央付近は絞り開放からシャープだが周辺部をチェックすると像の乱れ(流れやボケなど)が見られる……という弱点が露呈する製品も少なくない。しかし、高画質設計で高品位なズームレンズだと、そんな画質に対する不安が少ないのである。当然、シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMも後者に属するレンズ。広角域で広い範囲を写し込んだり、ボケ効果とは無縁の遠景の撮影で画面全体をシャープに描写したりできる。つまり、F1.8による大きなボケ効果を生かした描写と、画面の隅々までシャープな描写、その両方が楽しめるのである。

↑広角域で絞って全体をシャープに/ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(20mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/30秒 -0.3補正 WB:オート ISO500

 

↑同じシーンで、望遠端で絞りを開けて(F値を小さくして)ポイントの前後をぼかしてみた/ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(35mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/60秒 WB:オート ISO100

 

作例をいくつか見ていこう。

 

菅原道真公を祀った天満宮でお馴染みの「撫牛」。その牛の像に広角域で接近し、広い画角で周囲の様子も写し込む。だが、主役はあくまでも撫牛なので、開放F1.8のボケ効果によって周囲を大きくぼかした。

ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(18mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/125秒 WB:晴天 ISO100

 

神社の本殿前の「鈴緒」が、夕日を浴びてとても美しく見えた。ここでも広角域で接近し、背後に見える本殿の建物部分を大きくぼかしている。

ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(18mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/80秒 -1補正 WB:晴天 ISO100

 

撮影時の留意点としては、本レンズには手ブレ補正機構がないこと(ボディ内に手ブレ補正機構を搭載するカメラは別として)。そのため、あまり明るくない場所で絞りを絞って撮影(手持ち撮影)する際には、シャッターの低速化によるカメラブレに注意が必要だ。ISO感度を上げるなどして“1/焦点距離(35mm判換算)秒”以上のシャッター速度をキープしたい。

ニコン D500 シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM(18mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/60秒 -0.7補正 WB:晴天 ISO200

 

【まとめ】単焦点レンズ複数本分、と考えればむしろ軽快

ズーム域は、27mm相当の広角から52.5mm相当の標準までとあまり広くなく、大きさや重さも気になってくるかもしれない。それでも、広角から標準まで複数(2、3本)の単焦点レンズを持参することを考えると、この「シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM」なら1本で軽快かつ快適に大口径レンズの撮影が楽しめる。ズームレンズの場合、明るい製品でも“全域F2.8止まり”。その従来製品の壁を打ち破った本製品なら、ワンランク上の描写や表現が期待できるだろう。

↑この「USB DOCK」(実売価格4220円)を介してレンズをパソコンと接続すると、パソコン画面上の操作によって、レンズ・ファームウェアのアップデートや、合焦位置などのカスタマイズが可能になる

 

↑本レンズは、最高の光学性能を目指して開発され、高水準の芸術的表現に応えうる圧倒的な描写性能を実現する、シグマの新しいプロダクト・ライン「Artライン」の製品。鏡筒横「A」のエンブレムは、その証である

 

タムロンの新型標準ズーム「28-75mm F/2.8」はソニーユーザーにとって買いか?【実写レビュー】

話題のタムロンのフルサイズEマウント用レンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)」がついに発売されましたね。このレンズは28mmから75mmの焦点距離をカバーするF2.8通しの大口径標準ズームでありながら、実売価格で10万円を切る価格帯が大きな特徴となっています。何を隠そう実は筆者もEマウントユーザーでして、このレンズには注目していました。ということで、早速レビューしてみたいと思います。

↑タムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」。実売価格は9万4500円

 

Gマスターと同等のF値と焦点距離をカバー

ソニーのフルサイズEマウントの標準ズームレンズと言えば、Gマスターの名を冠した「FE 24-70mm F2.8 GM(以下、SEL2470GM)」というレンズがフラグシップに君臨しています。筆者も愛用し、その画質には大いに満足しているのですが、実売価格が25万円前後と高額なため、いくら標準ズームと言っても最初の1本としてはなかなか手を出しづらいもの。

 

そこで、SEL2470GMと同じF値とほぼ同等の焦点距離をカバーしつつ、価格は半分以下という本レンズに注目しているEマウントユーザーも多いはず。まずは製品概要を見てみましょう。

 

α7シリーズのボディと相性ヨシ!

今回は筆者が普段から愛用している「α7II」に本レンズを装着。鏡胴は樹脂性素材を採用しているため、重量は550gで大口径ズームレンズとしては軽量な部類に入ります。SEL2470GMが1kg弱であることを考えると、機動力の高さを感じます。

↑ソニー α7IIに28-75mm F/2.8 Di III RXDを装着

 

↑レンズ先端側がズームリング、ボディ側がピントリング。SEL2470GMとは前後が逆となります。ロックスイッチなどは非搭載

 

↑花形のレンズフードが標準で付属

 

↑広角端である焦点距離28mmの状態

 

 

↑望遠端である焦点距離75mmの状態

 

サイズ感ですが、SEL2470GMと比較するとそのコンパクトさは一目瞭然。鏡胴だけでなくレンズ口径も大きく違うので、当然サイズ感も違ってくるのですが、普段からヘビー級とも言えるSEL2470GMを使用している筆者としては、その軽量さとコンパクトさがとても印象的です。

↑28-75mm F/2.8 Di III RXD(左)とSEL2470GM(右)。太さがまるで違います

 

↑28-75mm F/2.8 Di III RXD(左)とSEL2470GM(右)。レンズ口径も大きく異なります

 

重量が約600gのα7IIに約1kgもあるSEL2470GMを装着すると、明らかにフロントヘビーとなり、携行時や撮影時などバランスがやや悪く感じることがあります。その点、本レンズであれば重量バランスは良好。特に撮影時にカメラを構えた際のホールド感は違和感がなく、フットワークの軽い撮影ができる印象です。

↑バランス・ホールド感ヨシ!

 

一方、軽量コンパクトとはいえ、そこはF2.8通しの標準ズーム。それなりに迫力はあります。フィールドワークや三脚固定時などは、SEL2470GMにも勝るとも劣らない大口径レンズらしい存在感があり、撮影者をその気にさせる雰囲気を漂わせています。

 

広角側で4mm、望遠側で5mmの焦点距離の差はいかに?

本レンズのスペックを見たときに、SEL2470GMと比べて微妙にずれてるな? という印象でした。というのも、SEL2470GMは、24-70mmで、ニコンやキヤノンにも同じF2.8通しのレンズがラインナップされているほど、一般的な焦点距離です。ところが、本レンズは28-75mmと広角がわずかに狭く、望遠がわずかに長いという仕様。そこで、両者の画角の違いを比べてみました。

 

まずは広角側。両レンズの広角端で、同じ位置から撮影しています。

↑28-75mm F/2.8 Di III RXDの広角端28mm(上写真)とSEL2470GMの広角端24mm(下写真)

 

一見、大差ないように見えますが、注目していただきたいのは、24mmは左右にポールのようなものが画角に入っていること。28mmだと両サイドとも画角から外れてしまっています。広角4mmの差は数値以上に大きいと感じました。

 

一方の望遠側は、5mmの差があるのでもちろん画角に違いは出るのですが、広角側ほど大きな違いは感じられません。撮影スタイルにもよるとは思うのですが、70mmを使用していて「あと5mm足りない……」と枕を涙で濡らすシチュエーションはあまりないと筆者は感じました。

 

まとめると、筆者の感想としては、望遠の恩恵はあまり感じられず、逆にシーンによっては広角側が物足りなく感じることはありそうです。

彩度・ボケ感ともに合格点

やはりF2.8通しの大口径レンズといえばボケ感を試したくなりますよね。そこで、彩度やボケ感を試してみます。撮影当日は曇り気味の空模様でしたが、そのぶんしっとりとした写真が撮れました。

 

まず彩度ですが、少し明るくするために露出補正+1で撮影したところ、ビビッドな色合いに。カラフルさを強調したい被写体の場合は、これぐらい鮮明な彩度のほうが良作が生まれやすいでしょう。

↑75mm f2.8 1/1250秒 ISO400 EV+1.0

 

次にボケ感ですが、さすがF2.8と言ったところでしょうか、強調したい被写体以外を簡単にボケさせることができます。ただし、ボケが気持ちいいからといって、これみよがしに開放しまくっていると肝心なところまでボケてしまうという「大口径レンズ初心者あるある」に陥ってしまうので、ある程度の加減と慣れは必要です。

↑75mm f2.8 1/1250秒 ISO400 EV+0.33

 

暗い場所でもしっかり解像する

続いて、暗所の性能について試すべく、知人のライブにて作例を撮影させてもらいました。ライブ写真というものは「暗い」「派手なアクション」「ストロボ発光禁止」という三重苦。非常に悪条件のなかでの撮影になるので、レンズの明るさはもちろん、カメラの設定もシビアに。

 

今回は、ド派手なアクションにも追従できるシャッタースピードを軸に、ISO感度と絞りに負荷をかけて連写するというスタイルで撮影。ミスショットもありましたが、成功したショットではライブハウスの雰囲気を表現することができました。

↑59mm f2.8 1/200秒 ISO3200 EV+2.7

 

↑75mm f2.8 1/200秒 ISO3200 EV+2

 

毛1本まで解像する動物写真

最後に動物写真だけは外せません。作例をご覧いただければ一目瞭然ですが、SNSなどにアップされているスマホで撮影された写真とは一線を画す仕上がり。背景のボケもさることながら、毛や瞳の解像感が大満足の域に達しています。このあたりは、フルサイズセンサーの実力を遺憾なく引き出した絵づくりと言えるでしょう。

↑75mm f2.8 1/400秒 ISO400 EV+0.70

 

↑75mm f2.8 1/320秒 ISO400 EV+0.70

 

↑75mm f2.8 1/200秒 ISO400 EV±0

 

【まとめ】タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXDは買い?

さて、今回レビューした28-75mm F/2.8 Di III RXDですが、率直な感想として絵作りはSEL2470GMには及ばないものの、価格以上の性能は十分に有していると感じました。もし、話題のα7IIIを新調するなどして、フルサイズEマウントユーザーとしてデビューするのであれば、コスパや扱いやすさの面から最初の1本として特におすすめできます。

 

競合するレンズとして、カールツァイス銘の「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」(実売価格11万3000円)やソニーGレンズの「FE 24-105mm F4 G OSS」(実売価格16万1600円)なども候補に挙げられますが、どちらも明るさが開放F4。焦点距離に違いがあるとはいえ、コストパフォーマンスやそれらに勝るとも劣らない画質性能を考えると、本レンズを筆頭候補に挙げてもよいかもしれません。どれを選ぶにせよ、ユーザーの選択肢が広がるのは喜ばしい限りです。

 

低価格や軽量コンパクトなだけでなく、絵作りなどの扱いやすさも本レンズの優れている点。初心者から中級者まで幅広く支持されるレンズと言えるでしょう。

カメラ開発者はかく語りき――「カメラグランプリ2018」受賞カメラの誕生秘話

第35回を迎えた「カメラグランプリ2018」(カメラ記者クラブ主催)の贈呈式が、2018年6月1日に都内で開催された。ノミネート56機種のカメラと、72本のレンズのなかから、大賞を「ソニー α9」、レンズ賞を「オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」、WEB投票によるあなたが選ぶベストカメラ賞とカメラ記者クラブ賞を「ニコン D850」、同じくカメラ記者クラブ賞を「パナソニック LUMIX G9 PRO」が受賞。もちろんその一つひとつに誕生ストーリーがあるわけで、贈呈式では各社開発者の皆さんがそれぞれの開発秘話を語ってくれた。

 

カメラグランプリ2018 大賞

「ソニー α9」

ブラックアウトフリーが受け入れられるか心配だった

「開発は3年以上前から始まっていた」とソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社 デジタルイメージング本部第1ビジネスユニット シニアゼネラルマネジャーの田中健二さんは言う。ミラーレスにポテンシャルを感じ、動体に対する弱点、撮影枚数の少なさなど、いくつもの課題をクリアしてきた。その一つの形がα9だ。

 

また、「高速で大きなデータを処理するため、世界初のイメージセンサーが必須だった」と同本部商品設計第1部門設計1部3課統括課長の町谷康文さんは話す。センサーの開発と、カメラに組み込んでからのパフォーマンスの検証に多くの時間を費やした。常に被写体を見ながら撮影できるブラックアウトフリー技術は「新しい体験なので、開発側としてはユーザーに受け入れられるかが心配だった」と明かす。

↑ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社・田中健二さん(右)と、カメラグランプリ2018実行委員長・猪狩友則さん(アサヒカメラ編集部)

 

カメラグランプリ2018 レンズ賞

「オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」

ボケにくい構造は小ボケの範囲が広いことにつながる

今年もオリンパスがレンズ賞をさらい、史上初の3年連続受賞となった。

 

マイクロフォーサーズは焦点距離が短く、構造的にボケ味は出しにくい。「なぜ不利な中で戦わなければならないのか。当初、開発陣の中にはそんな声があった」とオリンパス株式会社 光学システム開発本部光学システム開発3部1グループ グループリーダーの宮田正人さんは明かす。研究部門からボケには大きなボケと、小ボケの二つがあり、小ボケの領域は光学的な設計で作り出せると指摘があった。「ボケにくい構造は、小ボケの範囲が広いことにつながり、開発の目的が見えた」と言う。

↑オリンパス株式会社・宮田正人さん

 

カメラグランプリ2018 あなたが選ぶベストカメラ賞・カメラ記者クラブ賞

「ニコン D850」

シャッター音に最後までこだわった

あなたが選ぶベストカメラ賞とカメラ記者クラブ賞をダブル受賞したD850。WEB投票によるあなたが選ぶベストカメラ賞では、投票初日から1位をキープしていた。

 

高画素化、高速化が特徴のD850だが、開発陣が最後までこだわったのはシャッター音だそうだ。「製造の直前まで部品の修正を続けた」と株式会社ニコン 開発統括部 総括部長の池上博敬さんは話す。電子シャッターによるサイレント撮影を新機能に加えつつ、音やシャッターの感触を重視した。「そこも撮影者の楽しみの一つであり、使う人の琴線に触れる製品開発をこれからもしていきたい」と言う。

↑株式会社ニコン・池上博敬さん

 

カメラグランプリ2018 カメラ記者クラブ賞

「パナソニック LUMIX G9 PRO」

歴史のあるカメラメーカーに近づきたいとチャンレンジしてきた

パナソニックは今年創業100周年を迎えたが、カメラ事業は18年目。「歴史のあるカメラメーカーに近づきたいとチャンレンジしてきた」とパナソニック株式会社 アプライアンス社イメージングネットワーク事業部 事業部長の山根洋介さんは話す。

 

「10年前にミラーレスを手がけ、一発で終わったコミュニケーションカメラCM10、動画機能を尖らせたGHシリーズと、亜流、ニッチなところを攻めてきた」と放ち、笑いを誘った。対して「LUMIX G9 PRO」は徹底的に画質、絵づくりを追求した。そのアイデンティティを表現したのが肩部のダイヤルに入れられたレッドラインだ。「今回受賞されたメーカーさんに比べ非常に控えめで小さいものだが、熱い想いは負けず劣りません」。

↑パナソニック株式会社・山根洋介事さん(右)と、カメラ記者クラブ代表幹事・福田祐一郎(CAPA編集部)

 

文:市井康延

写真:カメラ記者クラブ、市井康延

 

 

万能レンズの代名詞!! タムロン「高倍率ズーム」の系譜と魅力【レビューあり】

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第3回「タムロン 高倍率ズーム」

 

広角域から本格望遠域までの広い画角をカバーする“高倍率ズームレンズ”は、それ1本でいろいろな被写体や撮影状況に対応できる、最も汎用性の高い交換レンズと言えるだろう。この高倍率ズーム、いまでこそポピュラーな存在だが、出始めのころは画角変化の大きさに驚かされたものだ。「なんと、このレンズ1本で、標準ズームと望遠ズームの画角がカバーできるのか!」と。

 

そんな高倍率ズームを得意とするのが、レンズメーカーのタムロンである。それまでの高倍率系ズームといえば、多かったのが35-135mmで、あとは一部メーカーが35-200mmを発売していたくらい。ところが、1992年にタムロンが発売した高倍率ズームの焦点距離は「28-200mm」。それまでの高倍率系ズームで不満だった広角域を35mmから28mmにワイド化しつつ、望遠域も本格望遠と呼べる200mmまでカバーしたのである。

 

この「28-200mm」の登場以降、高倍率ズームは前回に紹介した90mmマクロに並ぶタムロンの“看板商品”になった。今回はフルサイズ対応モデルを中心に、タムロン高倍率ズームの進化や変遷を、現行製品のレビューを交えながらお伝えしよう。

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

小型化&高画質化を追求したフルサイズ対応の高倍率ズーム

タムロン
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)
実売価格5万530円

ズーム倍率10.7倍の、35mm判フルサイズデジタル一眼レフ対応の高倍率ズームレンズ。高速で静かなAFを可能にする超音波モーター「PZD(Piezo Drive)」と、高い効果で定評のある手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」を搭載。長年蓄積してきた技術を結集し、高画質化・小型軽量化を実現。従来モデル(AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO (Model A20)から外観デザインも一新。ズームリングとフォーカスリングのグリップパターンは直線を基調としたシャープなものになり、タングステンシルバーの化粧リングの採用などで、端正で高級感のある外観に仕上げられている。

●焦点距離:28-300mm ●レンズ構成:15群19枚(LDレンズ4枚、ガラスモールド非球面レンズ3枚、複合非球面レンズ1枚、XRガラス1枚、UXRガラス1枚) ●最短撮影距離:0.49m(ズーム全域) ●最大撮影倍率:約0.29倍(300mm時) ●絞り羽根:7枚(円形絞り) ●最小絞り:F22-40 ●フィルター径:67mm ●最大径×全長:74.4mm×96mm ●質量:540g ●その他:※全長と質量はニコン用の値

↑フルサイズ対応の高倍率ズームながら、コンパクトな設計。レンズ単体を手にすると、その小ささを実感する

 

作例を撮ろうと歩いていると、川沿いの植え込みに咲く、真っ赤なシャクナゲの花を見つけた。その花と周囲の様子を広角端28mmで写し込んだ状況写真(上)と、状況を撮影した場所から数歩だけ近づいて望遠端300mmの画角で一房の花を大きく切り取った写真(下)を見比べてもらいたい。本レンズなら、こうした倍率10.7倍の高倍率ズームらしい“画角と視点の切り替え”が行える。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F6.3 1/320秒 WB:太陽光 ISO400

 

高倍率ズームのパイオニア――タムロン「高倍率ズーム」の系譜

タムロンの高倍率ズームの歴史は、1992年に発売された「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical(Model 71D)」から始まる。前述のとおり、それまでのズームレンズは高倍率な製品でも35-135mmや35-200mmだったので、広角側の画角に不満が感じられた。そう、28mmと35mmでは、広角効果(画角の広さ、遠近感の強調、など)が結構違うのである。

 

この「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical(Model 71D)」は、2枚の非球面レンズを使用した最新の光学設計と、トリプルカムズームシステムの採用などで、画質を維持しながらコンパクト化を実現した。発売されたこの高倍率ズームは、最初は欧米から人気に火がついた。そして、日本でも人気が広がって、高倍率ズーム人気が一気に高まったのである。これ以降、タムロンは“高倍率ズームのパイオニア”と称されるようになる。

AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical (Model 71D) 発売:1992年

↑ズーム倍率「7.1倍」の、コンパクトな高倍率ズーム誕生

 

ただ、画期的だった初代モデルにも弱点があった。それは“最短撮影距離2.1m”という仕様である。これは200mmの望遠レンズとしてはそう不満のない値だが、標準や広角レンズとしては不満の残る値である。そのため、この高倍率ズームの専用アクセサリー(クローズアップレンズと同等の働きをする)も用意されていた。

 

ということで、その後のモデルでは“最短撮影距離の短縮”が重要な改良点になる。

 

まず、1996年発売の「AF28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical IF Super(Model 171D)」では、200mm時80cm、135mm時52cm、という最短撮影距離を実現。そして、2000年発売の「AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD ASPHERICAL[IF] SuperⅡ-Macro(Model 371D)」では、ズーム全域49cmという最短撮影距離を実現したのである。

AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super(Model 171D) 発売:1996年

↑新開発のインテグレイテッド・フォーカス・カムにより、最短撮影距離の短縮と画質の向上を図る

 

AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super Ⅱ MACRO (Model 371D) 発売:2000年

↑ズーム全域で最短撮影距離49cmを実現。鏡筒がもっとも短くなる28mmの位置でズームリングを固定する「ズームロック機構」も採用された

 

1992年に初代の28-200mmが発売されたわけだが、それ以降は前述の“最短撮影距離の短縮”や、光学設計や機構の見直しなどが施され、高倍率ズーム28-200mmは完成度を高めていった。

 

その流れとは別に、1999年には望遠側を伸ばした「AF 28-300mm F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO(Model 185D)」も発売された。そのズーム倍率は、7.1倍から二桁に届く10.7倍になった。これ以降、タムロンの高倍率ズームは、28-200mmと28-300mmの2本立てとなる。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO (Model 185D) 発売:1999年

↑特殊低分散(Low Dispersion)ガラスに複合非球面加工を施した「LD-非球面ハイブリッドレンズ」を採用。高倍率ズームレンズの設計で問題になる様々な収差を補正

 

2005年には、普及してきたAPS-Cサイズデジタル一眼レフ用の18-200mm(画角はフルサイズの28-300mmに相当)が発売され、以降は高倍率ズームの主流はそちらに移っていく。しかし、フルサイズ対応の28-300mmも地道に進化を続けていた。2004年発売の「AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO(Model A061)」では、コーティングの見直しや、解像性能規格の底上げなどにより、デジタル一眼レフに相応しい高倍率ズームにリニューアルされた。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A061) 発売:2004年

↑この製品が発売されたのは、まだフルサイズのデジタル一眼レフが普及していないころ。だから、35mmフィルム一眼レフ用や、APS-Cデジタル一眼レフの“標準~超望遠撮影用”として使用されることが多かった

 

そして、2007年発売の「AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO(Model A20)」では、独自開発の手ブレ補正機構VC(Vibration Compensation)が搭載された。その補正効果の高さは当時、“ファインダー画面が張り付く”と表されたほど。また、小型化への取り組みも見逃せない。各鏡筒部品の役割分担を見直すことで、VC機構を搭載しながら、従来製品(A061)と比較しても、全長で約17.8mm・最大径で約5mmのサイズアップに抑えている。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO (Model A20) 発売:2007年

↑デジタル一眼レフカメラでは、撮像センサーの影響による内面反射が心配される。それに対処するため、レンズ面の反射を徹底的に抑えるマルチコートや、インターナル・サーフェイス・コーティング(レンズ貼り合わせ面へのコーティング)を積極的に採用

 

※一部、ここで紹介していない製品もあります

現行モデルを使い倒し! 基本性能や操作性は?

フルサイズ対応の高倍率ズームの現行モデルは、冒頭でも紹介した2014年6月発売の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」だ。光学系に採用される特殊硝材は、LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズ4枚、ガラスモールド非球面レンズ3枚、複合非球面レンズ1枚、XR(Extra Refractive Index:高屈折率)ガラス1枚。さらに、XRガラスよりも屈折率が高いUXR(Ultra-Extra Refractive Index:超高屈折率)ガラスを1枚。これらの特殊硝材を贅沢に使用することで、従来製品(Model A20)以上の小型化を実現しながら、画質劣化につながる諸収差を徹底的に補正して、高い描写性能を実現している。

↑望遠端300mmの設定で、鏡筒を伸ばし切った状態。かつての高倍率ズームはズームリングの動きにムラがあった(途中に重くなるポイントがあった)。だが、本製品も含め、最近の高倍率ズームのズームリングの動きは結構スムーズだ

 

↑ズームリングには、広角端で固定させる「ズームロックスイッチ」が装備されている。これにより、移動時の自重落下(重力や振動でレンズ鏡筒が伸びる)を防ぐことができる

 

対応マウントは、キヤノン用、ニコン用、ソニー用(Aマウント用)の3タイプ。ちなみに執筆時点で、ニコンには28-300mmの製品があるが、ソニーにはない。キヤノンの28-300mmは、画質重視の設計のためサイズが大きく高価である。それゆえに、このタムロン28-300mmの存在価値は大きいと言えるだろう。

↑シックで上品な外観デザインに一新された「タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。その外観やサイズは、各メーカー(対応マウント)の、いろいろなフルサイズ一眼レフボディにマッチする

 

↑鏡筒側面に設置された、AF/MF切替スイッチ(上)と、VCスイッチ(下)。SPシリーズのスイッチほど大きくはないが、視認性や操作性に問題はない

 

スナップ~本格望遠まで幅広い撮影がコレ1本で楽しめる!

ここからは、本レンズを使って撮った作例をもとに、その描写について語っていこう。

 

目の前にそびえる、新緑に覆われた山。その山の端にあった1本の針葉樹が目を引いたので、300mmの画角で切り取った。こういった“近づけない被写体”では、高倍率ズームの本格望遠画角が威力を発揮する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/250秒 -0.7補正 WB:太陽光 ISO200

 

蕎麦屋の店先に置かれた、味わいのある大黒様。その石像に接近して、28mmの広角域でスナップ感覚で撮影した。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/80秒 WB:オート ISO100

 

寺院の門の脇にあった小さめの銅像。高い台座の上に設置されているので、近づいての撮影はできない。そこで200mm弱の望遠画角で、銅像の上半身を切り取った。また、手前の植え込みと背後の樹木の“新緑”を大きくぼかし、画面全体を華やかに演出する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F6.3 1/200秒 +1補正 WB:太陽光 ISO320

 

山頂に向かうケーブルカーの駅。そのホーム端の棒に、駅員の帽子が掛けてあった。その様子を、駅の入口近くから300mmの望遠端で切り取った。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F8 1/60秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO1600

 

山頂に向って遠ざかるケーブルカー。300mmの望遠端近くで撮影すれば、標準ズームの望遠端(70mmや100mm前後)では得られない、遠くの被写体を大きく拡大する“引き寄せ効果”が堪能できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO1250

 

22.2倍のAPS-Cサイズ用ズームレンズも登場。それでも褪せない「28-300mm」の魅力

革新的な高倍率ズーム「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical Model 71D」が発売されてから20余年。タムロンの高倍率ズームは、2017年発売のAPS-Cサイズデジタル一眼レフ専用「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD Model B028」において「22.2倍」という驚異的なズーム倍率を実現した。

↑昨年登場し、「22.2倍」という驚異的なズーム倍率で大きな話題となったAPS-Cサイズ用の「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD(Model B028)」。実売価格7万3880円

 

そんな超高倍率な製品と比べると、フルサイズ対応の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」は、地味な存在に思えるかもしれない。だが、以前よりもフルサイズデジタル一眼レフが普及してきた現在では、このポピュラーな28-300mmは、これまで以上に存在感を増しているように思う。高感度性能やボケ効果に優れるフルサイズデジタル一眼レフの特徴を生かしながら、レンズ交換なしで広角から本格望遠の撮影が楽しめるのだから。

 

前述の、特殊硝材を贅沢に使用した光学設計。高速で静かなAFを実現する超音波モーター「PZD」や、定評のある手ブレ補正機構「VC」の搭載。絞り開放から2段絞り込んだ状態まで、ほぼ円形の絞り形状が保たれる「円形絞り」の採用。マウント部分やレンズ各所に施された「簡易防滴構造」。これらの機能や仕様も魅力的だ。

 

“高倍率ズームのパイオニア”が、これまで蓄積してきた技術やノウハウを結集させて作り上げた、この「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。カメラボディに装着して操作、あるいは実際に撮影してみると、その完成度の高さに感心させられる。

 

カメラ界の生ける伝説!! プロが愛してやまないタムロン「90mmマクロ」の魅力とは?

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第2回「タムロン 90mmマクロ」

 

マクロレンズは、一般のズームレンズや単焦点レンズでは不可能な高倍率撮影が可能なレンズである。そのなかでも、焦点距離が100mm前後(35mm判フルサイズ換算)の中望遠マクロレンズは、高倍率時でも被写体との距離が適度に保て、大きなボケ効果を得ることもできる。そのため、いろんな撮影ジャンルに活用できる“定番マクロ”とされているのだ。そんな中望遠マクロレンズにおいて、フィルムカメラの時代から“伝説のマクロ”と呼ばれ、多くのカメラマンに愛用されてきた製品がある。それがタムロンの「90mmマクロ」シリーズである。

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

手ブレ補正やAF性能などが向上した、シリーズ最強モデル


タムロン
SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)
実売価格6万8980円

マクロレンズに求められる高解像力と同時に、滑らかで美しいボケ描写も得られる。それこそがタムロンの90mmが“伝説のマクロ”と呼ばれ続けてきた所以である。そして、その現行モデル(Model F017)では、手ブレ補正機構「VC」にシフトブレ補正機能が追加され、マクロ域での手ブレ補正性能が向上している(一般のレンズ内手ブレ補正はマクロ域ほど補正効果が低下してしまうのだ)。また、超音波モーター「USD」の制御ソフトの改善により、AF時の合焦速度や精度も向上。さらに、従来よりも高レベルの防塵防滴構造が採用され、屋外撮影時の信頼性も高まっている。

SPEC●焦点距離:90mm ●レンズ構成:11群14枚(LDレンズ1枚、XLDレンズ2枚) ●最短撮影距離:0.3m ●最大撮影倍率:1倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F32 ●フィルター径:62mm ●最大径×全長:79mm×117.1mm ●質量:610g ●その他:防塵防滴構造 ※全長と質量はキヤノン用の値

↑優れた光学性能や手ブレ補正機構「VC」だけでなく、金属製外装を採用した高品位なデザインも魅力の「タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」

 

次の写真は、赤いチューリップのシベ部分を大きくクローズアップ。肉眼では確認しにくい雌シベの細部やそこに付着した花粉までハッキリ確認できる。こういった本格的なマクロ撮影では、シフトブレ補正対応になった手ブレ補正機構「VC」が心強い。このほかの作例については、記事後半でたっぷりお届けしよう。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO800

 

伝説はこうして始まった――タムロン「90mmマクロ」の系譜

90mmマクロの初代モデルが発売されたのは、いまから40年近く前の1979年である。それまでのマクロレンズは、文献の複写などを想定した“近接撮影時の解像力を重視した光学設計”になっていた。そのため、人物撮影などに使用すると硬調な描写になりやすく、ピント位置前後のボケ描写も滑らかさに欠けていた。

 

だが、タムロンは、普通の中望遠レンズの光学系を拡張して近距離補正を行い“マクロ域でも使えるレンズにする”という独自の設計方針を採用する。これによって、中望遠としてもマクロとしても活用できる、“ボケ描写が滑らか、かつシャープで立体感のある描写”が得られる「90mmマクロ」が誕生した。そして、この革新的な中望遠マクロレンズは、人物撮影や自然撮影など幅広いジャンルのカメラマンに支持されることになる。

 

これが“伝説”の始まりである。

SP 90mm F/2.5 (Model 52B) 発売:1979年

↑記念すべき初代モデル。無限遠から39cmのマクロ域(0.5倍)まで、高コントラストで鮮鋭な画質が得られる。また、SP2倍テレコンバーターの使用で、等倍(1倍)のマクロ撮影も可能

 

その後、外観デザインや内部構造、またレンズ表面のコーディングなど、微妙な部分の改良を重ながら、この「最大撮影倍率0.5倍のMF中望遠マクロレンズ」は、多くのカメラマンに支持され続けてきた。なお、MFタイプの90mmマクロレンズは、いずれもマウント部が交換できる「アダプトール2」マウントが採用されていた。

SP 90mm F/2.5 (Model 52BB) 発売:1988年

↑ロングセラーレンズとなった初代モデル(Model 52B)の外観デザインを一新したモデル

 

しかし、カメラ市場がMFからAFに移行すると、単にフォーカス機構をAF化するだけでなく、“最大撮影倍率を等倍に引き上げる”ことも求められるようになってきた。そこで、1990年に発売された最初のAFモデル「SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E)」から6年後、最大撮影倍率を等倍(1倍)に高めた「SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E)」が発売された。この際、マクロ撮影領域の拡大と小型軽量設計を両立するため、開放F値は長年守り続けた2.5からF2.8に変更されている。

SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E) 発売:1990年

↑AF化された最初のモデル。通常撮影側と近距離側の距離範囲が設定できるフォーカスリミッター機構を採用

 

SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E) 発売:1996年

↑最大撮影倍率1倍を実現したモデル。また、マクロ撮影で多用するMFの操作性を向上させるため、新開発の「フォーカスリング・クラッチ機構」を採用。幅広フォーカスリングの滑らかな作動で、快適なフォーカシングを実現

 

そして、2000年ごろからのデジタル化の流れに対応すべく、2004年に発売された「SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E)」では、デジタル対応のコーティングを採用。デジタルカメラで問題になる「面間反射」を最小限に抑えるための策である。乱反射するフィルム面の内面反射とは違い、CCDやCMOSの表面が鏡のようになっているデジタルカメラでは、レンズ側の反射防止対策が不可欠なのだ。

SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E) 発売:2004年

↑フィルムでもデジタルでも、変わらぬ高画質を得るため、レンズコーティングを改善した光学設計“Di”を採用。さらに、フォーカスリングのラバーパターンも、指掛かりのよい形状に変更

 

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004) 発売:2016年

↑タムロン独自開発の手ブレ補正機構「VC」を搭載。また、超音波モーター「USD」の採用により、AFによるスピーディーなピント合わせが可能。光学系も、XLDレンズ2枚やLDレンズ1枚を採用してリニューアル

 

※一部、ここで紹介していない製品もあります

最新モデルを使い倒し! まずは新デザイン採用の外観をチェック

ここからは、現行モデルである「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」をより詳細に見ていこう。

 

まず、製品名の頭に付いている「SP」とは、MFタイプの時代からタムロンの高性能レンズに与えられてきた称号である。2015年にそのSPシリーズが刷新された。光学性能の優秀さはもちろん、高品位な金属外装を採用し、マウント部の周囲にはルミナスゴールドの「ブランドリング」があしらわれた。このリングの存在は、ユーザーとタムロンの繋がりを“記念の指輪”に見立ててイメージした、新しい「SP」の象徴となる。そして、新しいデザインのスイッチ類や、見やすい文字表記などを採用し、操作性や視認性も向上させたのである。

↑現行モデル、SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)に専用の丸型フード(HF017)を装着したところ。金属外装のレンズ鏡筒とは違い、このフードはプラスチック製。だが、レンズとの外観バランスは良好だ

 

↑金属鏡筒に埋め込まれた「SP」のエンブレム。高品位な操作感や描写性能を約束する証である

 

↑従来よりも大型化された表示窓(距離表示)を採用し、視認性を向上させている

 

↑使用される条件を考慮して形状やトルクが改善されたという、各種の切替スイッチ。被写体までの距離に応じて、フォーカス(AF)の移動量を制限できるフォーカスリミッター(上のスイッチ)を活用したい

 

光学系に関しては特殊硝材XLD(eXtra Low Dispersion)レンズ2枚と、LD(Low Dispersion : 異常低分散)レンズを1枚を使用して色収差を補正するなど、先進の光学設計で諸収差を徹底的に補正し、解像性能が高くてシャープな画質を実現。そして、円形絞りの採用によって、タムロン90mmマクロの伝説を引き継ぐ良質なボケ描写を可能にしている。これらの仕様は、基本的に前モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004)」を踏襲したものである。

 

さらに、ほぼ可視光全域で秀逸な反射防止性能を誇る「eBANDコーティング」に従来からのコーディングを用いたBBARコーティングを組み合わせ、フレア(画面全体が白っぽくかすんで写る現象)やゴースト(本来は見えないはずの光が写ったもの)を大幅に抑制してクリアでヌケのよい画像を実現している。また、最前面レンズには、撥水性・撥油性に優れ耐久性にも優れる「防汚コート」も採用。これによって、レンズ表面に付着した汚れを簡単にふき取ることができる。

 

美しいボケ味に感動!! 最新モデルを実写チェック

ここからは実際の作例を見ていきたい。

 

まずは鮮やかな柄のチューリップの花弁をクローズアップ。風で花弁が微妙に揺れていたので、カメラのAFモードを「AIサーボ」(シャッターボタンを半押ししている間、被写体にピントを合わせ続けるAFモード)に設定。超音波モーター「USD」は作動音が気にならないので、小刻みなピント調節が繰り返されても快適に撮影できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

続いて、20mくらい離れた位置から、1本のサトザクラを狙う。木の前後をぼかすため、絞りは開放F2.8に設定。マクロレンズは接写で使用するレンズというイメージがあるが、本レンズであればこのように中望遠レンズとしても優秀な描写を得ることができる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/800秒 WB:太陽光 ISO100

 

こちらは赤いストライプ模様が印象的だった黄色のチューリップ。開放絞りによって、その花の前後を大きくぼかした。とろけるようなボケ描写が美しい。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/400秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

花の時季にはまだ早いバラだが、逆光に映える若葉がみずみずしい。その背後に光の輝き(光沢のある葉の反射)があったので、その点光源を美しい形にぼかしたい。このレンズには、円形絞りが採用されている。だから、絞り開放時に画面周辺の点光源ボケが楕円に歪む口径食を避けるために1、2段絞り込んでも、絞り羽根の角が目立たない美しいボケが得られるのである(通常は絞る=F値を大きくすると、ボケの形が角張ってくる。そうならないよう、構造を工夫したのが円形絞りである)。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F4 1/100秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO125

 

赤みを帯びた夕方の光を背景に、白いリンゴの花が可憐な姿を見せてくれる。ピントを合わせた部分のシャープな描写と、自然にボケていく前後の描写が見事だ。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/640秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

受け継がれていく“伝説のマクロ”

筆者は、MF一眼レフの時代から、タムロンの90mmマクロを使い続けてきた。最初に使ったのは、2代目の「SP 90mm F/2.5 (Model 52BB)」である。そのころから、フォーカスリングのスムーズな動きや、自然なボケ描写に感心し、マクロレンズというよりも“優秀な中望遠単焦点レンズ”として信頼を寄せていた。

 

そして時代の流れに合わせてタムロンの90mmマクロはMFレンズからAFレンズに移行し、最大撮影倍率も0.5倍から1倍に拡大。MF/AF切り換え機構もより迅速で快適なタイプに進化していった。また、近年のモデルでは、最新のレンズ硝材や優れたコーティング技術によって、シリーズ共通の特徴である“美しいボケ”を継承しながら、よりシャープでクリアな描写が得られるようになっている。

 

さらに、現行モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」では、金属鏡筒や新デザインの採用で各段に高品位な製品に生まれ変わり、手ブレ補正機構「VC」もマクロ撮影域にも強くなるなど、これまで以上に魅力的な中望遠マクロレンズに仕上がっている。ちなみに、この現行モデルも所有し、常用している。

 

長年愛されるレンズには理由がある。このように、“伝説”は進化し、受け継がれてゆくのだ。

 

写真が変わる7つの「プロ視点」を伝授!! 都会のオアシス「新宿御苑」でちょっと遅めの桜撮影旅

桜(ソメイヨシノ)の開花の便りが届くと、それまで寒々しかった風景が一気に“春模様”に変わり、気持ちも高揚してくる。そして、開花、三分咲き、五分咲き、満開……と開花が進むにつれて、カメラマンの写欲も高まってくるのだ。ソメイヨシノが散ると、今度は、八重咲きのサトザクラが見ごろを迎える。そんな華やかな春の姿を求めて、都会のオアシス「新宿御苑」を訪れてみた。今回はこの桜撮影を例に、写真表現の幅を広げるコツをお伝えしたい。

 

【今回の旅の相棒】

キヤノン
EOS 6D MarkⅡと交換レンズ3本(EF16-35mm F4L IS USM/EF24-70mm F4L IS USM/EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM)

今回の撮影機材には、小型軽量で機動性に優れるフルサイズ一眼レフ「キヤノン EOS 6D MarkⅡ」を選択。そしてレンズには、広角、標準、望遠(超望遠域もカバー)という、3本の高性能な“L仕様”ズームレンズを用意した。

 

【撮影スポット】

新宿御苑(東京都・新宿区)

明治39年、皇室の庭園として造られた「新宿御苑」。第二次世界大戦後は国民公園として一般に公開され、多くの人に親しまれている。約58ヘクタールの広大な敷地には、イギリス風景式庭園、フランス式整形庭園、日本庭園などが巧みに組み合わせられている。そして、春の花見の名所としても有名で、ソメイヨシノの開花時期には大勢の来園者でにぎわう。また、ソメイヨシノが散ったあとも、4月下旬くらいまで、多くのサトザクラの花を楽しむことができる。

※酒類持込禁止、遊具類使用禁止

■新宿御苑ホームページ
https://www.env.go.jp/garden/shinjukugyoen/

 

【その①相反する要素を組み合わせる】

数々の桜と高層ビル群の取り合わせの「妙」を楽しむ

新宿御苑内の桜を“風景の一部”として見た場合、木立ちの向こうに見える高層ビルとの組み合わせが、1つの狙いどころになるだろう。桜の木を含めた樹林と、高層ビル群……。この相反する要素を組み合わせることによって、この場所の“都会のオアシス”ぶりが、表現できるのである。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(135mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/40秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO100 三脚

 

ただし、写真の主役はあくまでも桜なので(多くの場合は)、まずは絵になる桜の木や枝を見つけること。そして、その主役が映える構図を心がけながら、印象的なビルを画面内に取り入れるようにする。

 

次の作例では、満開を過ぎたソメイヨシノと周囲の新緑を絡めて、広角ズームの超広角域でダイナミックに写し込んだ。そして、樹林の向こうに見える独特な形状のドコモタワー(通称)も取り入れ、都会らしさを演出している。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF16-35mm F4L IS USM(16mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/125秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

【その②ドラマチックな瞬間を切り取る】

望遠ズーム+三脚で花びらが舞う“一瞬の絶景”を狙う

新宿御苑を訪れた4月上旬、ほかの桜スポット(都内)と同様、苑内のソメイヨシノは、かなり花弁が散っているようだった。しかし、まだ花が多く残っている木もあって、それらは風が吹くたびに花吹雪を散らしていた。そんなドラマチックな瞬間を、望遠ズームを使って切り取りたいと考えた。

 

だが、1枚の写真のなかに“ドラマチックな桜吹雪”を捉えるのは結構難しい。「いまだ!」と思ってシャッターを切っても、僅かにタイミングがずれて、思ったよりも桜吹雪が目立たない……という結果も多くなる。だから、可能ならばカメラを三脚に固定して構図を一定に保ち、桜吹雪が舞う瞬間を辛抱強く待つようにしたい。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(188mmで撮影) シャッター優先オート F5 1/2000秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO200 三脚

 

↑桜吹雪が舞った瞬間にとっさにシャッターを切ろうとすると、カットごとの構図の乱れも顕著になり、ピンボケやカメラブレの危険性も高まってくる。だから、こういった“瞬間待ちの撮影”では、三脚の使用をオススメしたい

 

【その③視点を変えてみる】

ポジションとアングルの変化で花の存在感を高める

新宿御苑内のサトザクラなどを観察していると、手が届く位置に咲く花が多いことに気づかされる。だから、焦点距離の長い望遠や超望遠レンズを使わず、標準系のレンズで近づいて大きく写すことができるのだ。

 

こういった“手が届く被写体”は、撮影ポジションやアングルを変えることで、写真の写り方が大きく変わってくる。それを意識しながら視点を変え、被写体と周囲(主に背景)がバランス良く見えるポイントを見つけて撮影したい。例えば、背後に絵になる建造物や木立ちなどがあったり、上空に爽やかな青空が広がっていたら、下から見上げるようなアングルで、それらの背景要素を積極的に取り入れよう。

↑大温室近くの芝生広場の端で、淡黄色の花のサトザクラを見つけた

 

↑淡黄色のサトザクラの名前は、ウコン(鬱金)。こういった品種名のプレートをチェックして、被写体に対する知識も深めたい

 

ウコンの背後には、背丈の高いユリノキがある。その木の高さと鮮やかな新緑も印象的である。ということで、近くのウコンの花(枝)を広角ズームで見上げて、背後のユリノキの高さも表現した。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF16-35mm F4L IS USM(35mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/200秒 WB:太陽光 ISO100

 

【その④思い切って寄って撮る】

手が届く位置ならマクロの視点で花の表情を捉える

手が届く位置(距離)の桜の花なら、当然“一輪だけ”を大きく写すことも可能である。そんな撮影に最適なレンズと言えば、やはりマクロレンズになる。今回の撮影では、広角、標準、望遠の、3本の高性能ズームレンズを持参しているが、ここではそのなかの標準ズーム「EF24-70mm F4L IS USM」に注目。「最短撮影距離0.2m・最大撮影倍率0.7倍」という、マクロレンズ並のスペックを備えているのである。ということで、この標準ズームのマクロ機能を利用して、淡紅色のサトザクラの花を大きく捉えることにした。

↑淡紅色の花が高密度に集まり、木全体もボリュームが感じられる「長州緋桜」という名のサトザクラ。その木の下では、多くの来園者が“花見の宴”を楽しんでいた。この桜の花も、手が届く高さ(低さ)まで咲いている

 

↑マクロ切り換えレバー(ズームリングロックレバー)をMACROの方向にスライドさせ、ズームリングをテレ端の先の“黄色線ゾーン”まで回す。これで「最大撮影倍率0.7倍」のマクロ撮影が可能になる

 

こちらが実際の作例。すでに満開は過ぎた「長州緋桜」だったが、花弁の整った花もまだ多く残っていた。そのなかから、花弁が逆光に映える花を見つけて、周囲の葉やがくを絡めてアップで捉えた。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF24-70mm F4L IS USM(70mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/100秒 WB:太陽光 ISO100

 

こちらは、別の個体を順光で捉えたもの。花の様子(形状や質感)はよくわかるが、逆光時のような透明感は出ない。このように、同じ寄りの撮影であっても、選んだ個体や構図によって印象は異なってくる。

【その⑤低速シャッターで躍動感を出す】

風に揺れる桜をあえてぶらして動感を表現

今回の撮影には三脚も持参しているので、望遠ズームを使用する際に、構図を一定に保ったり、カメラブレを防ぐことができる。そして、三脚を使用すれば、手持ち撮影では困難な“低速シャッター撮影”も可能になる。この手法で撮影すれば、風に揺れる桜の枝を大きくぶれさせて、動感のある写真に仕上げることが可能になるのだ。

 

しかし、明るい日中の撮影で低速シャッター(1/4秒以下とか)に設定すると、露出オーバーで明る過ぎる写真になってしまう。また、レンズを絞り込み過ぎると、解像感が低下する回折現象によってアマい印象の仕上がりになる。EOS 6D MarkⅡには、この現象を補正する「回折補正」という機能が搭載されているが、それでも最良の画質を得るなら極端な絞り込み(最も絞った状態)は避けたいところ。

 

そういう場合には、色や階調に影響を与えずに光量を減らせる「NDフィルター」が便利。これをレンズ前面に装着すれば、明るい日中でも低速シャッターで適正な明るさに写せるようになるのだ。

↑まず、NDフィルターを使用する前に、ISO感度を最低値まで下げておこう。キヤノン EOS 6D MarkⅡの場合、メニュー操作で「ISO感度の範囲」の下限値を「L(50)」に設定する事で、ISO100より1段低い「ISO50」が使えるようになる

 

↑今回持参したNDフィルターは、光量が4絞り分ほど減らせる「ND16」というタイプ。つまり、そのままでは1/60秒までしかシャッター速度を下げられないケースなら、これを使うことで1/4秒まで下げられるようになる

 

実際の作例がこちら。解像感の高い描写を得るため、設定絞りはF16くらいに止め(使用レンズの場合)、ND16フィルターを装着して、1/2以下のシャッター速度を得た。このくらいの速度なら、風による枝も大きくぶらせて、迫力のある仕上がりになる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(148mmで撮影) 絞り優先オート F16 0.4秒 WB:太陽光 ISO50 三脚

 

こちらはNDフィルターなしで、ほかは同条件で撮影したもの。得られたシャッター速度は1/40秒。細部をよく見れば、風によってぶれている部分もある。だが、その範囲やブレ具合は中途半端で、イメージするブレ効果とは程遠い。

 

【その⑥可動式モニターを活用する】

可動式モニターの活用で斬新なアングルを!

「撮影ポジションやアングルを変えることで、写真の写り方が大きく変わってくる」と、前のほうで述べた。しかし、その被写体が自分の目線より高かったり極端に低かったりすると、液晶モニターを見ながらのライブビュー撮影でも、構図やピントの確認が難しくなる。そんな極端なポジションやアングルでは、液晶モニターを見やすい角度に調節できる、可動式モニターを搭載するカメラが有利である。

↑液晶モニターが上下に可動する「チルト式モニター」を搭載する一眼レフも増えてきた。だが、EOS 6D MarkⅡには上下左右に可動する「バリアングル式モニター」が搭載されている。だから、カメラを縦位置に構えた状態でも、画面の確認が快適に行えるのだ

 

こちらが、上の状況で撮影した実際の作例。これを可動式モニターなしで撮ろうと思うと大変だ。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF16-35mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/30秒 -1.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

【その⑦アスペクト比を変更してみる】

「16:9」のアスペクト比で空間の広がりを表現

写真のアスペクト比(長辺と短辺の比率)は、メーカーやカメラのタイプによって異なるが、現在のデジタルカメラでは「3:2」と「4:3」の2種類に大別される。キヤノンの一眼レフEOSには「3:2」が採用されているが、今回使用したEOS 6D MarkⅡは、3:2、4:3、16:9、1:1、と、4種類のアスペクト比が選択できる。

↑カメラの設定画面から、アスペクト比の変更が可能

 

これを利用し、被写体の形状やスケール感に応じて、通常の3:2とは異なるアスペクト比を選択するのもおもしろい。それによって、通常のアスペクト比とは異なる空間表現(広がりや集約)を得ることができる。

 

例えば、「16:9」のアスペクト比は、現在のハイビジョンテレビやビデオカメラのフォーマットとして馴染みがある。通常のスチルカメラよりも横長の画面なので、広い場所や連なる被写体を雄大に見せることができる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM(400mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/400秒 -0.3補正 WB:オート ISO200 三脚

 

桜のように特定の被写体を撮影しに出かけると、ともすれば似たような写真になってしまいがち。今回紹介したようなことを頭に置きつつ、写真表現の幅を広げてみよう。そうすれば撮影旅がもっと楽しくなるはずだ。

 

【体験レポ】予算がなくても大丈夫!! 「レンズレンタル」使ってみたらめちゃ便利だった!

高級レンズを使ってみたいが予算があまりないといった場合や、たまにしか使わない交換レンズなので購入するほどではないといった場合は、レンズをレンタルするという方法があります。本稿では、実際にレンタルショップを利用してわかったメリットや注意点などをご紹介!

↑高価な一眼用交換レンズは、常用するのでなければ購入のほかレンタルするのもコスト面でのメリットは多い
↑特に高価な一眼用交換レンズは、常用するのでなければ必要なときだけレンタルで利用するのもあり!

 

【体験レポート】短時間で手続きでき、低予算でレンズを使える!

交換レンズや撮影機材のレンタルは、システムは理解できていても実際に使ってみないとわからない点が少なくありません。そこで都内の大手レンタルショップで実店舗を持ち、ネット経由での貸し出しも行っている「マップレンタル」を取材。実際に機材を借りてみました。結果、いくつか注意点はあるものの、入会手続きや貸し出し、返却手続きなどは短時間で行うことができ、機材も十分に整備されていて大満足! 1~2日間の使用であれば多くのレンズを1万円以下で借りることができ、低予算で撮影が楽しめると実感できました。

 

今回取材したマップレンタルは、東京は新宿駅南口から徒歩数分の距離。首都圏なら実店舗で借りたほうが、金額的にもお得で便利。今回は店頭で貸し出し、返却を行いました。

↑マップレンタルのビル入り口。JR新宿駅南口から歩いて数分という利便性の高い立地が魅力実店舗での貸し出しのほか、ネット経由で全国配送も行っている大手レンタル店。交換レンズだけでなく、カメラボディやビデオカメラ、アクセサリー関連まで取り扱い品揃えも豊富。(http://www.maprental.com/)
↑マップレンタルのビル入り口。JR新宿駅南口から歩いて数分という利便性の高い立地が魅力です。実店舗での貸し出しのほか、ネット経由で全国配送も行っています。交換レンズだけでなく、カメラボディやビデオカメラ、アクセサリー関連まで取り扱い品揃えも豊富(※写真では3Fとなっていますが、現在は同じビルの2Fに移転しています)

 

↑JR新宿駅南口から甲州街道を初台方向に進み、西新宿1丁目交差点を左折。マクドナルドの手前を右折して直進、左手側にある
↑JR新宿駅南口から甲州街道を初台方向に進み、西新宿1丁目交差点を左折。マクドナルドの手前を右折して直進、左手側にあります

 

【Step.1 申し込み】

まずは会員登録を行おう

レンタル店では、実店舗、ネット経由とも、基本的に会員登録が必須。その際、ほとんどのケースで運転免許証などの本人確認書類が必要です。マップレンタルでは、2種類の本人確認書類を用いて本人確認を行っています。

↑申し込みの際に用意される書類。申し込み書のほか、個人情報、会員約款、補償制度の案内など。店頭ではそれらの説明も受けられます

 

↑マップレンタルでは、店頭での会員登録のほか、Webでの登録も可能。ただし、Webの場合は数日の時間を要する。本人確認用に顔写真の付いた免許証、パスポートなどに加え、保険証などの2点が必要
↑マップレンタルでは、店頭での会員登録のほか、Webでの登録も可能。ただし、Webの場合は数日の時間を要します。本人確認用に顔写真の付いた免許証、パスポートなどに加え、保険証などの2点が必要

 

【Step.2 リクエストと受け取り】

Webで事前予約を行えばスムーズ&安心

会員番号が決定した段階で機材の貸し出しが可能になりますが、使用したい機材の在庫が必ずあるとは限りません。そのため、事前にWebから予約するのがおすすめ。特に運動会シーズンなどは、望遠レンズが出払ってしまうことも多いそうです。予約自体は会員登録前でも可能。

↑マップレンタルのWebページ。画面の「カートに入れる」をクリックし、予約する。予約は1か月前から可能で、直前でも貸し出しがスムーズに行える。ただし、Webから行えるのはあくまでリクエストのみで、その後メール通知で予約が確定する方式となっている
↑マップレンタルのWebページ。画面の「カートに入れる」をクリックし、予約します。予約は1か月前から可能で、直前でも貸し出しがスムーズに行えます。ただし、Webから行えるのはあくまでリクエストのみで、その後、メール通知で予約が確定する方式となっています

 

↑Web予約は店頭で借りる場合も有効だが、どの機材がいいか迷うこともある。店頭なら現物が見られるうえ、店員に相談も可能。予約がなければ、当日その場で借りられる
↑Web予約は店頭で借りる場合も有効ですが、どの機材がいいか迷うこともあるでしょう。そんなときは、店頭で現物を見ながら店員さんに相談も可能。予約がなければ、当日その場で借りられます

 

【Step.3 受け取り】

配達と店頭受け取りの違いを知ろう!

配達の場合は、基本的に機材の元箱に入った状態で送られてきます。内容の詳細が書かれた貸し出し票が同梱されるので、到着したら機材と合わせて、付属品の有無などを確認しましょう。

 

店頭受け取りには、会員証が必要。店頭貸し出しは、貸し出し書類に記入して、機材が正常に動作するかを確認。貸し出し時は、保護フィルターを付けた状態でカメラバッグやポーチに入れて貸し出してくれます(なしも可)。貸し出しまでの時間は10~20分程度。

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↑店頭貸し出し時は、貸し出し票が付属品の確認票を兼ねています

 

↑店頭貸し出し時は、貸し出し票が付属品の確認票を兼ねる(上)。借りる前に機材の動作を確認できる。店舗所有の機材のほか、自分のカメラで動作確認することも可能だ(下)
↑店頭貸し出しでは借りる前に機材の動作を確認できます。店舗所有の機材のほか、自分のカメラで動作確認することも可能

 

↑マップレンタルでは、店頭貸し出しの場合は1日レンタルが可能で実質2泊3日で借りられてお得。配送では、到着日が1日とカウントされ、2日からの貸し出しとなる点が異なる
↑マップレンタルでは、店頭貸し出しの場合は1日レンタルが可能で実質2泊3日で借りられてお得。配送では、到着日が1日とカウントされ、2日からの貸し出しとなる点が異なります

 

↑今回借りたM.ZUIKO DIGITAL ED 25ミリF1.2 PRO。実売で13万円を超えるレンズだが、1日3300円で借りられた
↑今回借りたM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO。実売価格で13万円を超えるレンズですが、1日3300円で借りることができました

 

↑今回借りたオリンパスの25ミリF1.2レンズを使用して撮影してみた。十分に整備されていて、機材の状態もベスト。1日思う存分撮影を楽しめた
↑今回借りたオリンパスの25mmF1.2レンズを使用して撮影。十分に整備されていて、機材の状態もベスト。1日思う存分撮影を楽しめました

 

【Step.4 返却】

返却時は付属品の漏れに注意しよう

返却時は、付属品の漏れがないように注意。紛失した場合は、実費を支払う必要があります。送付の場合は、送付されてきた箱に戻してショップに送ればOK。申し込み時に送料も支払った場合は、同梱の返却用の着払い伝票を使います。

レンズレンタル5つの疑問

レンズや機材を借りる際は、故障や期限など気になることも多いですよね。そこで、今回取材したマップレンタルの清水さんに、機材を借りるときに気になる5つの疑問を聞いてみました。

お話を聞いた人/清水由香子さん

↑「プロの方だけでなく、写真やカメラのファンの皆さまに、広くご利用いただいています。店頭では、貸し出し機材の相談も可能です」(清水さん)
↑「プロの方だけでなく、写真やカメラのファンの皆さまに、広くご利用いただいています。店頭では、貸し出し機材の相談も可能です」(清水さん)

 

Q1. 万が一レンズを壊してしまったら?

機材が壊れたり、水没したりといった場合のために、レンタル代金の10%を必ず支払っていただく補償制度を設けています。ただし、5000円は免責となり、お支払いいただく必要があります。紛失など実機がない場合は補償できなくなりますので、壊れていても機材をお持ちいただくようにお願いいたします。

 

Q2. 海外旅行に持っていってもOK?

海外への持ち出し自体は禁止していませんが、当店の補償制度は国内のみ有効となります。そのため、海外でトラブルがあった場合、すべて実費となりますので、ご自身で別途、保険にご加入いただくことをおすすめします。

 

Q3. 返却期限に間に合わなかったら?

期間終了日時までにご連絡いただければ、ほかのご予約が入っていない場合は、貸し出しの延長が可能です。ご連絡いただけなかった場合は、レンタル料金の150%をご請求させていただきます。また、延長をお断りした機材の場合も、同額をご請求させていただきますのでご注意ください。

 

Q4 貸し出しているレンズのマウントは?

ニコン、キヤノン、ソニーのEマウントとマイクロフォーサーズのレンズをご用意しています。ただ、レンズの種類は、現時点ではニコンとキヤノンが多くなっています。ソニーとマイクロフォーサーズもご要望が多くなってきていますので、今後拡充していけたらと考えております。

 

Q5. 交換レンズを借りやすいタイミングは?

機材はできるだけ数多く用意するようにしておりますが、主に運動会シーズンは望遠レンズを中心に在庫がなくなってしまう場合が多くなっています。5月から9 月にかけては、オンシーズンとなりますので、早めのご予約をおすすめします。また、ご来店いただいて機材を選ぶといった場合は、金曜日や10時、12時、19時といった混雑時を避けていただいたほうが、スムーズにご対応できるかと思います。

 

【まとめ】カメラ専門店はレンズが豊富、かつレンズ以外もお得!

レンタルショップのなかでも、今回取材したマップレンタルのようにカメラ機材専門のショップは、交換レンズの種類や数が豊富。また、店頭で相談できるメリットもあり、多少割高でも安心して借りられます。長期間借りる場合は割引制度がある場合も多いでうが、1日ごとに加算されるので使う日にちを決めて、1~3日程度でのレンタルがおすすめです。

 

レンズのレンタルサービスは、メーカーが行っている場合もあります。現在のところ、オリンパス(オーナーズケアプラス)やパナソニック(LUMIXコンシェルジュサービス)などがレンズレンタルサービスを行っており、多くは有料サービスとなりますが、レンタルショップよりもさらに低価格で提供しているケースも多くあります。ただ、これらは、基本的にレンズを試してもらうためのサービスなので、自分の都合に合わせて機材を借りられるとは限りません。あくまで購入する前に試したいという場合に有効なサービスといえます。

 

今回は対象をレンズに絞りましたが、レンタルショップではカメラ本体やビデオカメラ、周辺機器なども借りることができます。とりあえず会員になっておいて、気になる機材があったら借りて使ってみて、必要な機材は別途購入するといった使い方もよさそう。ただし、マップレンタルも含めて、発売直後のカメラや高級機材は取引実績がないと貸してもらえない場合もあります。そのため、日ごろからレンタルショップと仲良くしておくと、より便利に使えるでしょう。

 

解説/吉森信哉 写真/河野弘道

 

協力/マップレンタル

 

迷ったら「買う」より「借りる」が正解? 「レンズレンタル」ってなんぞや!?

高級レンズを使ってみたいが予算があまりないといった場合や、たまにしか使わない交換レンズなので購入するほどではないといった場合は、レンズをレンタルするという方法があります。従来、機材レンタルを行っているのは「プロショップ」と呼ばれる業務向けのショップが多く、少しハードルが高い印象がありました。ところが、インターネットの普及などによりショップの数が増え、広く一般向けにも機材を貸し出すレンタルショップが増加。本稿では、そうした一般向けレンタルショップやレンズの借り方などを基礎から紹介します!

↑一眼の交換レンズは、ボディ以上に高価な製品も多く、特にF2.8の大口径ズームといった高級レンズは、使ってみたくてもなかなか買えない。また、そうしたレンズは買う前に一度試してみたいというケースや年に数回しか使わないため、購入するほどでもないといったケースも多いだろう。そうしたときにレンズのレンタルサービスが活躍する
↑一眼の交換レンズは、ボディ以上に高価な製品も多く、特にF2.8の大口径ズームといった高級レンズは、使ってみたくてもなかなか買えません。また、そうしたレンズは買う前に一度試してみたいというケースや、年に数回しか使わないため購入するほどでもない、といったケースも多いでしょう。そうしたときにレンズのレンタルサービスが活躍します

 

レンズレンタルの種類――ショップの形態や料金体系に注目!

レンズをレンタルできるレンタルショップには、カメラ機材専門のレンタルショップやレジャー用品などを取り扱うレンタルショップなどいくつかあり、それぞれ実店舗を持っているショップと、実店舗がなくネット経由でレンタル事業を行っているレンタルショップ、実店舗とネット経由の両方で取り扱っているショップがあります。最近は実店舗とネット経由の両方で取り扱っているショップが多いようです。

 

ネット経由の場合は手軽に注文できるというメリットがあり、この普及がプロ以外でも利用しやすくなった大きな要因でしょう。一方、実店舗では実物を見ながらレンタルする製品を選んだり、ショップによっては店員さんからのアドバイスをもらったりできるなどの利点があります。

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↑大手の撮影機材レンタルショップ「マップレンタル」のWebページ(上)と実店舗の様子(下)。ネットでの製品探しや注文は便利だが、実店舗での“現物チェック”は安心感がある。最近は、ネット店舗のみのレンタル店も増えているが、実店舗があるショップなら店員からのアドバイスなども期待できる
↑大手の撮影機材レンタルショップ「マップレンタル」のウェブページ(上)と実店舗の様子(下)。ネットでの製品探しや注文は便利ですが、実店舗での“現物チェック”は安心感があります。最近は、ネット店舗のみのレンタル店も増えていますが、実店舗があるショップなら店員さんからのアドバイスなども期待できます(実店舗は2017年撮影)

 

主なレンタルショップとレンタル時の注意点

全国には大小さまざまなレンタルショップがありますが、カメラ専門のレンタルショップとしては「マップレンタル」「ビデオエイペックス」などが挙げられます。そのほか、カメラ専門以外にもさまざまなショップがあり、カメラやレンズのレンタルを行っています。ただし、機材の種類や数に関しては、当然ながらカメラ専門ショップのほうが多いでしょう。

 

【主なレンタルショップとその特徴】

■アットサービス

デジタル一眼やビデオカメラ、交換レンズを中心としたレンタルショップ(一部生活家電などもあり)。東京・浅草橋に実店舗を持ち、店頭での受取りや返却が可能(ただし、日曜日は定休)。店頭返却の場合、返却日が日曜日になったときは「サービスday」扱いとなり、月曜の19時までに返却すればOKなのでお得です。交換レンズはキヤノンマウントとニコンマウントの製品が中心ですが、量販店で23万8660円のキヤノン EF70-200mm F2.8L IS Ⅱ USMが2泊で5800円など、良心的な価格設定なのが魅力。

 

■ビデオエイペックスレンタル館

ビデオ編集、製作などを行っている「ビデオエイペックス」のレンタル部門。映像関連機器専門のレンタルショップで一眼カメラや交換レンズ、ビデオカメラなどのほか、プロジェクターやテレビなども扱っています。注文や予約はウェブのみでの受け付けとなりますが、受取りや返却は配送のほか実店舗でも可能。レンタル料金の合計金額の10%を支払うことで、国内・国外に対応した「安心補償」をつけることができるので、海外旅行先で使用したい場合も安心です。

 

■マップレンタル

映像機器全般を扱うレンタルショップで、カメラやレンズだけでなく、大型ストロボなどのプロ用機材を含む、撮影用アクセサリーも豊富に用意。ウェブでの申し込みはもちろん、実店舗がJR新宿駅南口から歩いて数分という利便性の高い立地も魅力で、カメラ初級者でも店頭でじっくり相談しながら製品をレンタルすることができるので安心です。

 

【ショップによるシステムの違いに注意しよう】

レンズを借りる際に気になるのは、やはり価格ですよね。当然、借りる日数によって価格は変わりますが、同じ「2泊3日」でもショップによって日数の算出方法が異なります。特に、配送を利用して借りる際には、価格表の日数だけでなく、実際の日数計算の方法も正しく把握しておきましょう。

 

配送された日を1日目と数えるケース

最も多いのが、このカウント方法。到着日が「レンタル1日目」になるので、撮影日や出発する日に合わせて、その日の出発前に受け取るとお得です(夜明け前などは難しいですが)。

↑最も多いのが、このカウント方法。到着日が「レンタル1日目」になるので、撮影日や出発する日に合わせて、その日の出発前に受け取る(夜明け前などは難しいが)とお得

 

 

到着した日の翌日を1日目と数えるケース

到着日の翌日を「レンタル1日目」にカウントする店もあります。この計算方法だと、上の例と同時間に受け取るとしたら半日ぶんお得になるため、価格表上は多少高価でも納得できます。

↑到着日の翌日を「レンタル1日目」にカウントする店もある。この計算方法だと、上の例と同時間に受け取るとしたら半日ぶんお得になる。価格表上は多少高価でも納得できる

 

【補償制度の有無や適用範囲を確認しよう】

レンタル品を破損させたり、紛失や盗難が発生したり……。そういうトラブルへの対応はショップによって異なります。レンタル代とは別に補償料金が必要か、海外でのトラブルにも適応されるかなどを事前にチェックしましょう。今回挙げたショップでは、ビデオエイペックスなどが国外でのトラブルに対応しています。

 

これから本格化する行楽シーズン、レンズレンタルをうまく利用して思い出をとびっきりの写真で残しましょう!

 

解説/吉森信哉  写真/河野弘道

 

協力/マップレンタル

 

プロが溺愛するオリンパス「M.ZUIKO PROレンズ」珠玉の3本ーースペックだけでない美しさを語り尽くす

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第1回「オリンパス M.ZUIKO PROレンズ」

 

一眼レフやミラーレス一眼の醍醐味は、“交換レンズを駆使できる”ことである。カメラボディは同じでも、違うレンズを装着することで、まったく異なる視覚効果(画面の広さ、遠近感、ボケの度合い)が得られるのである。だから、そのカメラでどんなレンズが使用できるかは、極めて重要なポイントだ。

 

そして、名作といわれる製品は、ただハイスペックなだけでなく、語りたくなるポイントがある。本連載ではそんな“語りどころ”にフォーカスし、おすすめの交換レンズを紹介していく。

 

第1回で取り上げるのは、オリンパスのM.ZUIKOレンズ群のなかでも、高い光学性能と防塵防滴や堅牢性を兼ね備え、過酷な状況下でも高画質が得られる「M.ZUIKO PROレンズ」(現在9本)。本稿では、同シリーズでも特に魅力的な描写やパフォーマンスが得られる3本をピックアップして紹介したい。

 

【その1】

驚きの明るさと近接能力を誇るハイスペック魚眼レンズ

オリンパス
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
実売価格10万7710円

交換レンズとしては世界初「F1.8」の明るさを実現した、画期的な魚眼レンズ。対角線画角が180°と極端に広いが、高い光学性能により画面中心から周辺まで優れた描写を得ることができる。

●焦点距離:8mm(35mm判換算:16mm相当) ●レンズ構成:15群17枚(非球面レンズ1枚、スーパーEDレンズ3枚、EDレンズ2枚、スーパーHRレンズ1枚、HRレンズ2枚) ●最短撮影距離:0.12m ●最大撮影倍率:0.2倍(35mm判換算:0.4倍相当) ●絞り羽根:7枚(円形絞り) ●最小絞り:F22 ●フィルター径:- ●最大径×全長:62mm×80mm ●質量:315g ●その他:防塵・防滴・耐低温性能

 

コツさえつかめばダイナミックな空間表現が思いのまま!

画角が極端に広くて、画面周辺部に向かうほど像が大きく湾曲する。その魚眼(フィッシュアイ)レンズの独特な描写は、肉眼とは異なるダイナミックな空間表現を可能にする。だが、その独特な描写ゆえに“特殊なレンズ”という印象を持つ人は多いだろう。

↑魚眼の独特な描写が楽しいM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO。さらに、ボディがOM-D E-M1 MarkⅡ(2月28日公開のファームウェアVer.2.0以降を適用)なら、新規機能の「Fisheye補正」によって、歪みのない3種類の画角の超広角レンズとしても使用できる

 

事実、魚眼レンズを思い通りに使いこなすには、ある程度は経験を積んでコツをつかむ必要がある。例えば、画面内に“目を引くポイント”を取り入れたり、画面の四隅に目障りなモノを入れない、といったことである。そういった点に注意しながら、F1.8の明るさを生かした夜間の手持ち撮影を楽しんだり、レンズ先端から2.5cmまでピントが合う近接能力を生かしたダイナミックなマクロ撮影などを堪能したい。

 

次の作例では、逆光の光と影が印象的な竹林を、すぐ近くから見上げるように撮影。対角線画角180°の広大な画面と、竹や周囲の木が大きく歪む描写が、実際よりも開放的な雰囲気に演出してくれる。

オリンパス OM-D E-M1 Mark Ⅱ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO 絞り優先オート F11 1/60秒 WB:オート ISO250

 

このレンズの最短撮影距離は12cm。だが、それはセンサー面からの距離で、レンズ先端からの距離は前述の通り「2.5cm」である。次の作例をご覧いただいてわかるように、その抜群の近接能力によって、極端に画角が広い魚眼レンズでも一輪の桜をここまで大きく写せるのだ。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO 絞り優先オート F5.6 1/160秒 +1補正 WB:オート ISO200

 

また、レンズの被写界深度(ピント位置の前後のシャープに見える範囲)は、焦点距離が短いほど深くなる。だから、焦点距離わずか8mmの本レンズは、必然的に被写界深度は深くなる。一方、F値が明るいほど被写界深度は浅くなる。だから、F1.8の開放で撮影すれば、割と近い被写体なら、狙った被写体の前後をぼかすことも可能になる。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO 絞り優先オート F1.8 1/5000秒 WB:オート ISO200

 

ボケ表現だけでなく、開放F値が明るいということは、それだけ“ISO感度を上げなくても速いシャッターが使える”ということである。次の作例は夜間、外灯に照らされる植え込みの木を、手持ちで撮影したもの。こうした場面でも、極端な高感度が避けられ(ボディ内手ブレ補正の効果も手伝って)、画質劣化を最小限に抑えることができた。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO 絞り優先オート F1.8 1/5秒 -0.3補正 WB:オート ISO800

 

【その2】

ボケを極めし「F1.2大口径単焦点シリーズ」の中望遠レンズ

オリンパス
M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
実売価格13万7490円

人物撮影に最適な画角を持つ、大口径中望遠レンズ。特殊レンズを贅沢に使用し、高い解像力が得られるレンズである。と同時に、ボケを極める「F1.2大口径単焦点シリーズ」の1本でもある。その開放F1.2での“美しくにじむボケ”は、一般のレンズとはひと味違う。

●焦点距離:45mm(35mm判換算:90mm相当) ●レンズ構成:10群14枚(EDレンズ1枚、HRレンズ4枚、非球面レンズ1枚) ●最短撮影距離:0.5m ●最大撮影倍率:0.1倍(35mm判換算:0.2倍相当) ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F16 ●フィルター径:62mm ●最大径×全長:70mm×84.9mm ●質量:410g ●その他:防塵・防滴・耐低温性能

 

ズームレンズにはない上質なボケで被写体の存在感を高める

単焦点レンズの魅力のひとつに“開放F値の明るさ”が挙げられる。もちろん、ズームレンズと同等の明るさ(もしくは暗い)の製品もあるが、広角から中望遠の焦点距離なら、F1.2やF1.4といったズームレンズにはない明るさの製品も多い。この45mmもそんな中望遠レンズで、F1.2の明るさでピント位置の前後を大きくぼかした“被写体を浮かび上がらせる”描写を堪能することができる。

↑本レンズと同じ焦点距離のレンズとしては、「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」というコンパクトな製品もあるが、F1.2大口径単焦点シリーズの“より大きくて上質なボケ描写”や、PRO仕様の堅牢で重厚感のある作りは魅力的

 

また、広角17mmと標準25mmと中望遠45mm(本レンズ)の3本は、ボケを極める「F1.2大口径単焦点シリーズ」にもカテゴライズされている。最先端の超精密機器「収差測定器」を使用して、歴史的な名レンズの“レンズの味”を検証。そして、ボケ描写に影響を及ぼす球面収差の調整を最適にコントロールして、開放F1.2の“美しくにじむボケ”を実現するレンズなのだ。

 

百聞は一見にしかず、ということで、同じ被写体を開放のF1.2とF2.8で撮り比べてみた。「F2.8」は大口径ズームの開放F値でお馴染みの数値で、これでも十分に明るい印象がある。だが、F1.2はそれより「2段と2/3段」も明るい。そのぶん、背景描写などでボケ効果の違いを実感する。

↑F1.2で撮影

 

↑F2.8で撮影/オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO 絞り優先オート WB:晴天 ISO200

 

では、この美しいボケ味を生かした作例を見ていこう。まずは、あまり明るくない古民家の雛飾り。そのなかの一体の人形を、前後の飾りや人形を絡めながら撮影。90mm相当の中望遠の画角は、こういった撮影に最適で、距離的にあまり大きくボケない飾りや人形も“美しくにじむボケ”によって、上質な写真に仕上げられた。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO 絞り優先オート F1.2 1/30秒 WB:電球 ISO800

 

続いて、閑散とした冬枯れの花壇に咲く、可憐なスイセンの一群。そのなかの一輪にピントを合わせ、開放F1.2で撮影することで、周囲の花や背景を大きくぼかした。背後に広がる冬枯れ花壇の“まろやかなボケ”も美しい。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO 絞り優先オート F1.2 1/640秒 WB:オート ISO200

【その3】

超強力手ブレ補正で手持ち撮影が可能な600mm相当の超望遠レンズ

オリンパス
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
実売価格31万6760円

非常に高い光学性能と、防塵防滴性能や堅牢性を持った、600mm相当の単焦点超望遠レンズ。オリンパスの交換レンズでは、初めてレンズ内に手ブレ補正機構を搭載(ボディ内手ブレ補正方式を採用しているため)。OM-D E-M1 MarkⅡやPEN-Fなどのボディとの組み合わせで、ボディ内手ブレ補正機構とレンズ内手ブレ補正機構をシンクロさせて補正効果を高める「5軸シンクロ手ブレ補正」を実現した。

●焦点距離:300mm(35mm判換算:600mm相当) ●レンズ構成:10群17枚(スーパーEDレンズ3枚、HRレンズ3枚、E-HRレンズ1枚) ●最短撮影距離:1.4m ●最大撮影倍率:0.24倍(35mm判換算:0.48倍相当) ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F22 ●フィルター径:77mm ●最大径×全長:92.5mm×227mm ●質量:1,270g(三脚座除く)、1,475g(三脚座含む) ●その他:防塵・防滴・耐低温性能

 

一般的な望遠ズームとはひと味違う圧倒的な引き寄せ効果

超望遠レンズといえば“特殊なレンズ”という印象があるが、現在は、比較的リーズナブルな150-600mmなどの超望遠ズームが発売されている。しかし、その光学性能(解像力や開放F値など)は、単焦点の500mmや600mmのレンズには及ばない。

 

とはいえ、35mm判フルサイズ対応の500mmや600mmのレンズは、大きさや重さの面で簡単に扱えるシロモノではない。たとえば、フルサイズ対応の600mmF4だと、全長400mm台・質量4000g弱。このくらいになる。だが、本製品は、600mm相当F4ながら「全長227mm・本体質量1270g」という小型軽量な設計だ。

↑4本レンズで、ボディ内手ブレ補正機構とレンズ内手ブレ補正機構をシンクロさせる「5軸シンクロ手ブレ補正」が可能になるボディは、前述のとおりM-D E-M1 Mark ⅡとPEN-F。あとは、ファームウェアVer.4.0を適用したOM-D E-M1と、ファームウェアVer.2.0を適用したE-M5 Mark Ⅱも可能

 

そして、特殊レンズを贅沢に使用した光学設計・製造技術の結集によって“オリンパス史上最高の解像力”を実現している。また、シャッター速度換算6段分の補正効果が得られる「5軸シンクロ手ブレ補正」の実現によって、通常の超望遠レンズでは考えられないような、手持ちでの低速シャッター撮影(1/15秒とか)も可能になる。

 

次の作例は、同じ場所から600mm相当(本レンズ)と200mm相当(一般的な望遠ズームの望遠端)で撮影したもの。手前に障害物があったり、時間的に難しかったりなどの理由で、撮りたい被写体に近づけないケースは多い。そんなときには、望遠レンズの引き寄せ効果(遠くの被写体が拡大できる)が必要になる。動物園などの撮影では、特にその効果の重要さを実感する。このケースでも、200mm相当までの一般的な望遠ズームだと不満な大きさだが、600mm相当の超望遠なら十分な大きさに写せた。

↑600mm相当で撮影

 

↑200mm相当で撮影/オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ 絞り優先オート WB:オート ISO200

 

離れた動物が大きく写せる……だけでなく、600mm相当の極端に狭い画角なら、その動物の一部分だけを切り取ることも可能になる。次の作例では、夕方の光を浴びるゾウの表情を、穏やかな目を中心に切り取ってみた。

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート F5 1/1000秒 WB:オート ISO200

 

さらに、本レンズでは、焦点距離を1.4倍に変えるテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」が使用できる。それによって、焦点距離を300mm相当からさらに「840mm相当」に伸ばすことができるのだ。野鳥などの撮影で、その効果のありがたさを実感!

オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14 シャッター優先オート F7.1 1/1000秒 WB:オート ISO200

 

↑全長14.7mm・質量105gと、非常にコンパクトで軽量なテレコンバーター。3群6枚(HRレンズ1枚)のレンズ構成で、画質の劣化がほとんどなく望遠効果を高めることができる。PROシリーズのレンズと同様に、防塵・防滴・耐低温性能も備えている

 

今回はオリンパスのM.ZUIKO PROレンズから3本を紹介した。今後も注目すべき名作レンズについて語っていきたい。

【CP+2018/ソニー】最新α7 III タッチ&トライには長蛇の列! 待望のヨンニッパも開発発表

CP+2018開幕直前の2018年2月27日に、フルサイズミラーレスの最新機種「α7 III」を発表したばかりのソニーブース。もちろん、同機種をはじめ、プロユースの「α9」や「α7R III」など、主力のαシリーズがフルラインナップで展示され、タッチ&トライコーナーは長蛇の人だかりと盛況だった。

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今回、隠し球の開発発表として姿を現したのが「FE 400mm F2.8 GM OSS」。αユーザー待望の「ヨンニッパ」がいよいよ登場との報に来場者の関心も高く、ケース内展示ながら思い思い撮影する姿が散見された。展示品は操作部表示などがない試作モデルのようで、アナウンスパネルも「開発発表」のプレートのみ。詳細スペックや発売時期などはまだ謎のままだ。

 

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やはり来場者のお目当ては、発表されたばかりの「α7 III」だ。有効約2420万画素、35mm判フルサイズセンサー搭載のα7シリーズにおけるベーシックモデルだが、AF/AE追随で最高約10コマ/秒という高速連写性能は、もはやプロユースにも対応する高スペック。いち早く操作してみたいという人で行列ができていた。写真は「α7 III」と大光量&連続発光のワイヤレスフラッシュ「HVL-F60RM」。

 

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「α7 III」とともに発表された電波式ワイヤレスフラッシュの「HVL-F60RM」も展示と体験コーナーを設置。コマンダー機能を搭載して最大15台まで連動制御が可能。

 

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もちろんソニーαシリーズのフラッグシップ「α9」も出品。試写スペースは、スポーツパフォーマーの動きを望遠レンズで狙う人でごった返していた。

 

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超小型コンパクトデジカメの「RX0」は、そのさまざまな使い方を提案。面白かったのは、αシリーズのホットシューに「RX0」を取り付け、サブカメラとしてレリーズケーブルで接続することによって異なる2つのコンテンツを同時撮影できる「デュアルカメラ撮影」を提案した。望遠と広角、動画と静止画など、さまざまなコンビネーション撮影への可能性が想像できる。

 

〈写真・文〉水澤 敬

【CP+2018/パナソニック】新レンズ「LEICA DG 50-200mm F2.8-4.0」に注目! LUMIX Gシリーズのラインナップが充実

パナソニックブースでは、2月27日に発表されたばかりのLUMIX Gシリーズ新レンズ「LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.」を展示。マイクロフォーサーズ規格では35mm判換算100-400mmとなる望遠ズームに、来場者の関心が集まっていた。もちろん、同社のミラーレス一眼 LUMIX Gシリーズもフラッグシップ機の「G9 PRO」をはじめ、新製品の「GX7 Mark III」など6機種をラインナップ。ハイエンドからエントリーまで、棲み分けが充実した多様なモデルを展示していた。

 

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今年のパナソニックブースいちばんの目玉は、ズーム全域で美しいボケと高画質を実現した「LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.」。2018年5月24日発売で、メーカー希望小売価格は255,000円(税別)を予定している。特徴は、何といっても手ブレ補正を制御するDual I.S.2に対応した、35mm判換算で400mmという超望遠撮影が可能という点。これ1本でスナップから動物、スポーツ撮影など、あらゆるシーンに対応できるのは大きな強みとなる。

 

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プロユースを想定した「LUMIX G9 PRO」。注目の機能は、やはり空間認識(DFD)AFと人体認識技術(Human Detection)。多くのシーンで高度なAF撮影を可能にしてくれる。

 

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空間認識AFのデモでは、前後に動き続ける人形にピントが追従する実演を展示。パナソニックのAFキーテクノロジーをアピールしていた。

 

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人体認識技術のデモでは、不規則に移動する人形の顔に、常にピントが合っていることを実演。モニター展示に映し出されるAF追従シーンに来場者も驚きの声をあげるシーンも見られた。

 

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主力であるLUMIX Gシリーズの最新機種「LUMIX GX7 Mark III」も展示。同モデルにはボディ5軸とレンズ2軸の「Dual I.S.」が搭載され、ストリートフォト撮影に無類の強さを発揮する。

 

20180302_y-koba8 (6)

エントリーモデル「GF10/GF90」の展示は、若い女性を意識した華やかなスペースで行われていた。

 

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新色として登場したホワイト×ローズゴールドのボディは、実際に見ると高級感のあるエレガントなカラーリングとなっている。

 

20180302_y-koba8 (8)

パナソニックブースの写真家セミナーには、『CAPA』でもおなじみの写真家・森脇章彦さんが登壇。「LUMIX G9 PRO」やLEICAレンズの魅力とカスタムセッティングについての解説を行っていた。このほか、新美敬子さんやコムロミホさんなども登壇予定なので、興味のある人はぜひパナソニックのCP+専用サイトをチェックしてほしい。

 

〈写真・文〉水澤 敬

【撮影旅×OM-D E-M1 Mark Ⅱ】実際に役立った機能はコレだった! “早春の花景色”をいざ撮影

“早春の花景色”をテーマとした撮影旅のなかで、実際に役立った機能や撮影ポイントなどを紹介する本企画。前編ではソニーのレンズ一体型カメラ「Cyber-shot RX10 IV」をご紹介したが、後編ではオリンパス「OM-D E-M1 Mark Ⅱ」(以下、E-M1 Mark Ⅱ)と交換レンズ2本を取り上げたい。

■Cyber-shot RX10 IV編はコチラ↓
https://getnavi.jp/camera/233559/

 

【今回の旅の相棒】

オリンパス「OM-D」シリーズフラッグシップ機と広角ズーム&マクロレンズ

20180227_y-koba6 (15)オリンパス
OM-D E-M1 Mark Ⅱ
実売価格20万7900円

マイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラで、オリンパス「OM-D」シリーズのフラッグシップモデル。有効画素数2037万画素Live MOSセンサー、新開発高速画像処理エンジン「TruePic Ⅷ」を搭載し、AF/AE追従で「最高18コマ/秒」の高速連写を実現している。従来モデルOM-D E-M1と同様、防塵・防滴・耐低温(-10℃)設計の高信頼ボディなので、厳しい撮影環境下でも安心して使える。そして、OM-D E-M1ではファームアップ(バージョンアップ)で可能になった「深度合成」や「フォーカスブラケット」などの撮影機能も、最初から搭載されている。

 

また、交換レンズとして、今回の撮影では次の2本を使用した。

20180227_y-koba6 (16)M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
実売価格13万6620円

ズーム全域でF2.8の明るさ(開放F値)を誇る、小型・軽量な大口径の広角ズームレンズ。風景や建築写真をはじめ、夜景や天体写真などでも活躍する。今回の撮影では、RX10 IVではカバーできない超広角(14mm相当まで)でのダイナミックな空間描写に期待。

 

20180227_y-koba6 (17)M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
実売価格2万8660円

重さわずか128gの非常に軽快な標準マクロレンズだが、その最大撮影倍率は2.5倍相当(35mm判フルサイズ換算での倍率。以下同)と、多くのマクロレンズよりも高倍率で撮影できる。RX10 IVの最大撮影倍率も0.49倍と立派な値だが、この30mmマクロレンズで得られる倍率は、その遥か上を行っている。

 

【使って実感! 役立ちポイント①深度合成】

深度合成モードで奥行きのある被写体をシャープに描写!

通常、ピント位置の前後をシャープに描写させるには、レンズの絞りを十分絞り込む必要がある(F16やF22など)。だが、被写体までの距離が近いと、目一杯絞ってもシャープに描写される範囲(奥行き)が不十分と感じることも多い。そんな場合でも、E-M1 Mark Ⅱに搭載される「深度合成モード」で撮影すれば、極端に絞らなくても深い範囲をシャープに描写できるのだ。

20180227_y-koba6 (18)↑深度合成モードは「撮影メニュー2→ブラケット撮影→Focus BKT→On→深度合成→On」という階層をたどって設定する

 

深度合成モードでは、1回のシャッターで8枚の写真が高速で撮影されて、それをカメラが自動で合成して、手前から奥までピントが合った写真が完成する。メモリーカードに保存される画像は、8枚の撮影画像(RAWとJPEGどちらも可能)と合成画像1枚(JPEG)。なお、合成された画像は、撮影画像よりも少し画角が狭くなる(上下左右に7%カットされる)。

20180227_y-koba6 (19)↑深度合成モードで撮影(絞りF5.6)

 

20180227_y-koba6 (20)↑通常モードで撮影(絞りF5.6)

 

20180227_y-koba6 (21)↑通常モードで撮影(絞りF22)/共通データ:OM-D E-M1 Mark Ⅱ M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro 絞り優先オート WB:オート ISO200

 

梅林内に咲くスイセンの一群を撮影。F5.6とあまり絞らない設定で深度合成モード(機能)を使用すると、ピントを合わせた画面中央後方の花だけでなく、その後ろ(画面左側)や手前にある花までシャープに描写することができた。ちなみに、通常モードでF5.6で撮影すると、ピントを合わせた花と隣の花以外は大きくボケてしまう。かといって、最も絞ったF22で撮影すると、背景は目立ち過ぎるようになり、ピントを合わせた部分は光学的な要因(回折現象)で解像感が落ちてくる。

 

【使って実感! 役立ちポイント②ハイレゾショット】

50Mハイレゾショットで、より高解像な描写を実現!

E-M1 Mark Ⅱは有効画素数2037万画素Live MOSセンサーを採用する20M(メガ)のデジタルカメラ。だが、0.5ピクセル単位でセンサーを動かしながら(ボディ内手ブレ補正機構を利用して)8回撮影する「ハイレゾショット」機能を使用すれば、50Mセンサー相当の高解像な画像を生成することが可能になる(画質モード設定で、とファイル容量を抑える25Mにも設定可能)。ちなみに、OM-D E-M5 Mark ⅡやPEN-Fにも本機能は搭載されている(画素数は異なるが)。

20180227_y-koba6 (22)↑ハイレゾショットは「撮影メニュー2」内から設定する。そこでOffとOnを切り換えるのだが、実際には「On」という項目はない。Offから、シャッターボタンを全押ししてからシャッターが切れるまでの時間(0~30秒)を設定するのである

 

この撮影に際しては、三脚使用が不可欠。また、ハイレゾショット撮影では、解像力の高いM.ZUIKO PROレンズやM.ZUIKO PREMIUMレンズを使うことで、より高い効果を得ることができる。今回使用した2本のレンズも、このカテゴリーに含まれる製品だ。

 

次の作例では、早咲きの白梅の木を、広角ズームで下から見上げるように撮影。抜けるような青空に浮かびあがる白い花が印象的だ。その繊細な小さな白い花を、50Mのハイレゾショットが描き出す。なお、ハイレゾショットでは基本的に“動く被写体はNG”だが、E-M1 Mark Ⅱでは新画像処理エンジン「TruePic Ⅷ」の働きにより、風景撮影時の風の影響や水のわずかな動きならば、画像の乱れを効果的に抑制(不自然なブレにならないよう)できるようになった。

20180227_y-koba6 (23)OM-D E-M1 Mark Ⅱ M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO(8mmで撮影) 絞り優先オート(50Mハイレゾショット) F8 1/500秒 -0.3補正 WB:オート ISO200 三脚

 

実際のところ、ハイレゾショットを使うとどのくらい高解像になるのか、通常撮影と比較してみよう。

20180227_y-koba6 (24)↑50Mハイレゾショットの画像(8160×6120)と、20M通常撮影の画像(5184×3888)の両方から、枠で囲んだ範囲を切り出してみる

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑50Mハイレゾショットからの切り出し(左)と通常撮影(20M)からの切り出し(右)

 

当然、画素数の多い50Mハイレゾショットのほうが切り出し画素数も多くなる。それを、20M通常撮影の切り出し画素数(240×240)と同じ画素数に変更して、両者の細部描写をチェックする。極端に違うわけではないが、木の幹の表面や白梅の一輪一輪を見ると、50Mハイレゾショットのほうが緻密さが感じられるだろう。

 

【使って実感! 役立ちポイント③交換レンズ】

交換レンズを利用して写真にバリエーションを!

特定の被写体を目的とした撮影旅の場合、ともすれば似通った写真になりがちなので、交換レンズをうまく使って写真にバリエーションをもたせたい。また、今回訪れた三溪園には、歴史的価値の高い建造物や、雰囲気の良い飲食処などが園内各地に点在する。“早春の花景色”を撮る際にも、こういった建造物や飲食処もうまく絡めて撮影すれば、花の写真のなかに“歴史的な要素”や“日本庭園の風情”を盛り込むことができるだろう。

 

次の作例ではマクロレンズを使用。昼食をとった食事処「待春軒」にあった吊り下げ旗の“赤色”をアクセントにして、白梅の枝をアップで狙う。

20180227_y-koba6 (27)OM-D E-M1 Mark Ⅱ M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro 絞り優先オート F4 1/200秒 -0.7補正 WB:オート ISO200

 

こちらは重要文化財に指定される「旧矢箆原家住宅」内を見学した際の1枚。そこの棚に飾られていた季節の花(ツバキ、アセビ、白梅)を、広角ズームを使って建物内の様子も写し込んだ。ちなみに、フラッシュ撮影はNGなのでご注意を。

20180227_y-koba6 (28)OM-D E-M1 Mark Ⅱ M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO(8mmで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/3秒 WB:オート ISO800

 

今回の撮影旅では2種類のカメラ(と2種類のレンズ)を試したわけだが、1台で超望遠域を含む広い撮影領域をカバーできる「Cyber-shot RX10 IV」、独自機能と交換レンズによる多彩な撮影が楽しめる「OM-D E-M1 Mark Ⅱ」、それぞれの良さを実感できた。ここから春本番に向け、いろいろな花が見ごろを迎えるので、読者のみなさんも、ぜひお気に入りのカメラをもって撮影旅に出かけてみてはいかがだろうか。

 

【撮影スポット紹介】 

20180227_y-koba6 (2)

今回のメイン撮影スポット「三溪園(さんけいえん)」は、明治から大正時代にかけて、生糸貿易で財の成した原 富太郎(雅号、三溪)によって造られた、総面積約17万5000平方mに及ぶ日本庭園。園内には、京都や鎌倉などから移築された歴史的価値の高い建造物が配置され、梅や桜、藤、花菖蒲など、季節の花々が園内を彩る。特に園内には約600本の紅梅や白梅があり、梅の名所としても知られている。竜が地を這うような枝振りの臥竜梅(がりょうばい)や、花弁の根元にある萼が緑色の緑萼梅(りょくがくばい)など、興味深い品種もある。2月中旬から3月上旬にかけて開かれる「観梅会」(2018年は2月10日~3月4日)をはじめ、1年を通してさまざまな催しが行われている。

■三溪園ホームページ
http://www.sankeien.or.jp/index.html

超望遠レンズがこの軽さ&価格!? とにかく撮影が楽しくなる「タムロン 100-400mm」濃厚レビュー

風景や鳥、乗り物などの撮影で被写体を大きく撮りたい場合は、400mm以上の“超望遠レンズ”が必要になるケースが少なくない。従来、そうした超望遠レンズは、大きく重く、そして高価な大口径の(開放F値が小さな)高性能レンズが中心だった。そのため、撮影自体をあきらめてしまうユーザーも少なくなかった。

 

ところがここ数年、開放F値を欲張らずに、比較的軽量で描写性能も高めの超望遠ズームが増えてきて、気軽に超望遠撮影が楽しめるようになってきた。2017年11月に発売された、タムロンの「100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)/以下、タムロン100-400mm)」もそうした製品の1つだ。

 

このレンズはフルサイズ一眼に対応し、約4段という強力な手ブレ補正「VC」を搭載。独自の「eBANDコーティング」によりゴーストやフレアといった余計な光の像が効果的に抑えられ、レンズ表面の汚れに強い防汚コートや簡易防滴構造も採用している。軽量化などのため同社の高品質レンズ「SP」シリーズからは外れているものの、3枚のLD(異常低分散)レンズを用いるなど、画質面にも優れた1本だ。また、焦点距離を伸ばせる専用テレコンバーター(※)など、別売のアクセサリーも豊富で様々な撮影に対応できるのも魅力。今回は、このタムロン100-400mmの魅力を豊富な作例とともに紹介する。

※テレコンバーターとは、使用レンズに装着して焦点距離を伸ばすアクセサリーのこと。テレコンバーターには、レンズ先端に装着するフロントコンバーターとレンズとボディの間に装着するリアコンバーターがあるが、ここでは後者。“テレコン”と略して呼ばれることも多い

20171228_y-koba3_ic2_R↑上の写真では付属のフードと別売の三脚座を装着しているので大きく見えるが、本体は長さ199mm、最大径86.2mm(キヤノン用)で、ドリンクの500ml缶を半回りほど大きくした程度の大きさ。質量も1135g(キヤノン用)で他社の同様のレンズに比べて軽量でハンドリングしやすいのが魅力。ニコン用、キヤノン用が用意されており、参考価格は7万3010円(別売の三脚座は1万3500円)

 

※本記事の作例は、キヤノン用レンズで撮影しています。APS-Cサイズ機使用時における35mm判換算の焦点距離もキヤノン用で表記

 

ライバル製品との違いは? 基本スペックをおさらい

タムロン100-400mmを手にして最初に驚くのが、1135g(キヤノン用)という軽さだ。このレンズと同等の焦点距離をもつ製品は、下記の表にあるようにキヤノン、ソニー、シグマなどから発売されているが、キヤノンとソニーの製品は1400~1600g程度で、シグマの製品が1160g。シグマ製とは僅差だが、それでもタムロン100-400mmが25g軽い。

2011228_y-koba3_hyo_R↑スペック比較表。タムロンはキヤノン用の、シグマはシグマ用のレンズの数値となっている

 

開放F値はキヤノンとソニーがF4.5-5.6で望遠側のF値が明るい。とはいえ、わずか1/3段差で200g以上軽いのはタムロン100-400mmのメリットといえるだろう。最短撮影距離が1.5mとやや長め(キヤノンとソニーは0.98m、シグマは1.6m)なのは気になるところだが、最大撮影倍率が400mm時で約0.28倍と十分な大きさで撮れるので、不満を感じることはあまりないはずだ。加えて、実売価格が7万円台前半となっており、キヤノンやソニーの純正レンズに比べると非常にお買い得。ただし、キヤノンとソニーの製品は、キヤノンが「Lレンズ」、ソニーが「Gマスター」という高画質仕様になっており、価格帯を考えるとシグマの「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM (Contemporary)」が、本レンズの直接的なライバル機種といえるだろう。

 

半年ほど先行して発売されたこのシグマ製品も、画質やコスパに定評のあるレンズ。それに対するタムロン100-400mmの優位点はというと、100mm時(広角端)の開放F値がわずかながら明るいほか、別売で三脚座が用意されている点が挙げられる。今回、実際にこの三脚座を使用して撮影してみたが、前後の重量バランスが適度にボディ側(後ろ側)になって操作しやすく、また、横位置と縦位置の変更が素早くできるのが便利であった。このほか、1.4倍と2倍の専用テレコンバーターが用意されている点はシグマも同様だが、2倍テレコン使用時にシグマはAF不可となるのに対し、タムロンは使用機種が限定され、かつ動作が遅めになるというしばりはあるもののライブビュー撮影にすることでAFが機能する。そのため、風景などの動かない被写体を撮る場合にはAFが使用できるぶん便利だ。

20171228_u-koba3_ss_R↑タムロン100-400mm専用の三脚座(別売)。キヤノンやソニーの製品は三脚座がセットになっているが、シグマ製には三脚座が用意されていない。レンズ自体が軽量なので三脚座なしでも問題はないが、これがあると三脚使用時のハンドリングが格段に向上する。三脚へは通常のネジで取り付けられるほか、クランプ式でしっかりと固定できる「アルカスイス互換」の雲台に対応しており、安定したフレーミングが行えるのも魅力

 

20171228_y-koba3 (3)↑1.4倍と2倍の専用テレコンバーター。別売でそれなりに費用もかかるが、さらに望遠で撮りたい場合には有効だ。100-400mm以外にも使用できるレンズがあるので、それらのレンズを持っている(あるいは今後購入する予定がある)ならオススメ。特に1.4倍は撮影上の制約も少なく、「もう少しアップで撮りたい……」というときに役立つ。参考価格はともに4万5460円

 

風景から鉄道まで、幅広いシーンで使いやすい焦点距離

100-400mmのズームレンズなのでズーム倍率は4倍と控えめだが、このくらいの焦点距離は遠くの風景を切り取る場合や鉄道などの乗り物撮影で使いやすい。また、APS-Cサイズの一眼カメラを使用すると160~640mm相当(キヤノン用の場合)となるので、野鳥撮影などでも活躍すする。次の作例は、フルサイズ機とAPS-Cサイズ機それぞれの広角端/望遠端を同じ場所から撮り比べたものだ。

20171228_y-koba3 (4)↑広角端(100mm)

 

20171228_y-koba3 (5)↑APS-Cサイズ機使用時の広角端(160mm相当)

 

20171228_y-koba3 (7)↑望遠端(400mm)

 

20171228_y-koba3 (6)↑APS-Cサイズ機使用時の望遠端(640mm相当)

 

広角端はフルサイズ機では100mmでAPS-Cサイズ機だと160mm相当。解像感が高く、建物の細かい部分までしっかりと描写されている。望遠端の400mmは、APS-Cサイズ機を使うと640mm相当。これだけ違うと、用途に応じてフルサイズ機とAPS-C機を使いわけるのも良さそうだ。400mmでの画質は、100mmに比べると柔らかめの写りだ。

 

強力な手ブレ補正で超望遠域でも手持ち撮影が可能

画質面では、余程の高画素機でなければ解像感は十分。400mmで絞り開放にして使用すると画面の四隅が多少暗く写るものの、そこまで気にはならず、F8~11程度まで絞ればそれも解消する。手ブレ補正も約4段分と強力で、超望遠域でも手持ち撮影が可能なのは大きな魅力だ。

 

実際にAPS-Cサイズ機を用いた640mm相当での撮影でも、1/60秒以上のシャッター速度を確保しつつ、しっかりと構えれば手ブレせずに撮れる印象。ただし、望遠端では画角が狭いため、1/60秒では手ブレよりも被写体ブレが気になるケースが多くなる。静物を撮るのでなければ、1/250秒程度は確保したほうがいいだろう。その意味で、日中の撮影でもISO400~1600程度を常用すれば、手持ちでも失敗なく撮影が楽しめるはずだ。ちなみに、この手ブレ補正は近接撮影時にも有効で、400mmでの最短撮影距離で撮影しても効果が高く、フレーミングも楽に行える。

20171228_y-koba3 (8)↑APS-Cサイズ機を使い、望遠端の640mm相当でシラサギを手持ち撮影。感度をISO800まで上げて、1/500秒としたことで手ブレの心配なく撮影できた。しかも、手ブレ補正のおかげでファインダー内の像が安定し、フレーミングが行いやすいというメリットも

 

20171228_y-koba3 (9)↑航空自衛隊の輸送用ヘリコプターが近づいてきたタイミングを狙って400mmで撮影。思った以上にヘリが近く、アップでの撮影となったが、ISO400、シャッター速度1/320秒でどうにか写し止めることができた。質量が軽く、手持ちでレンズを振りながら撮影しても腕への負担が少ないのは大きな魅力

 

20171228_y-koba3 (10)↑フルサイズ機を使い、400mmの最短撮影距離付近で撮影。最大撮影倍率は約0.28倍で比率にすると1:3.6。本格的なマクロレンズ並みとまではいかないが、このように小さな花も十分大きく撮影できる。絞り開放での撮影だが、背景のボケも自然で美しい

 

本レンズの手ブレ補正は、多くの被写体に適していてファインダー上でも効果を確認できる「モード1」と、流し撮りを行う際に最適な「モード2」の2つのモードが用意されている。そのため、鉄道やクルマなどを流し撮りする際も安心して使用できる。また、この手ブレ補正はテレコンバーター使用時にも有効なので、800mm相当を超える超望遠での手持ち撮影の幅が広がる

20171228_y-koba3 (11)↑APS-Cサイズ機で302mm相当(189mm)で流し撮りを行った。ISO感度を100に下げて、1/60秒の低速シャッターを使って列車の動きに合わせてカメラを振りながら撮影。手ブレ補正を「モード2」にしたことで、上下方向のブレが補正されている。ファインダーでも効果が確認できるので、流し撮りが行いやすい

 

1.4倍&2倍テレコン対応で驚くほど遠くのものを大写しにできる

焦点距離を伸ばせる専用テレコンバーターに対応している点も、本レンズの魅力の1つ。テレコンバーターを使用した場合は、画質的には多少解像感が低下するものの、それでも実用上は問題ないレベル。それ以上に500mmを超える画角が得られる魅力のほうが大きい。1.4倍テレコン使用時は開放絞りがF6.3-9、2倍テレコン使用時はF9-13になるので、できるだけ感度を上げて使用するのがポイントになる。

 

テレコンの使用でどれくらい画角が変わるのか、望遠端を比較した次の作例をご覧いただこう。

20171230_y-koba1_R↑400mm(通常の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (12)↑560mm(1.4倍テレコン使用時の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (13)↑800mm(2倍テレコン使用時の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (14)↑1280mm相当(APS-Cサイズ機+2倍テレコン使用時の望遠端)

 

APS-Cサイズ機で2倍テレコンを使用すると、800mm×1.6倍(キヤノン用の場合)で1280mm相当という驚異的な焦点距離が得られる。これを利用すれば、通常は撮ることが困難な被写体も次の作例のように大きく写すことができる。

20171228_y-koba3 (15)↑APS-Cサイズ機を用いて、1280mm相当でアオサギを撮影。わずか約2度という狭い画角(範囲)を切り取ることができ、遠くの被写体を大きく撮れるが、範囲が狭すぎてどこを撮っているのかわからなくなる場合も少なくない。そのため、カメラに照準器を付けて撮影位置を確認するようにすると、素早くフレーミングが行える

 

20171228_y-koba3 (16)↑今回の撮影ではオリンパスのドットサイト照準器「EE-1」を使用。カメラのアクセサリーシューに取り付けが可能だ。撮影の前に照準の位置を調整しておけば、高精度に被写体をフレーミングできる

 

20171228_y-koba3 (17)↑ドットサイト照準器「EE-1」の視野。ファインダー内で光る照準(ドット)を撮りたい被写体に重ねることでフレーミングできる

 

20171228_y-koba3 (18)↑羽田空港に着陸する直前の飛行機を1280mm相当で撮影。ここではファインダーを使ってMFで撮影したが、かなり離れた位置の被写体なら撮影距離を無限遠(∞)に固定して撮影できる。手前のクレーンや奥に写る船など、望遠レンズならではの強烈な圧縮効果(距離感の喪失)により、独特な写りとなった

 

20171228_y-koba3 (19)↑1280mm相当で月を撮影。月を撮る場合は天体望遠鏡にカメラを付けて撮影するケースが多いが、1000mmを超える望遠なら、このように月を大きく撮ることが可能になる

 

さらに、テレコンを付けても最短撮影距離は変わらないので、近接撮影時の倍率をアップさせたい場合でもテレコンは有効だ。特にAPS-Cサイズ機を使った場合は、本格的なマクロレンズに近い倍率が得られ、35mm判に換算すると、計算上1.4倍テレコン使用で約0.62倍相当、2倍テレコン使用で約0.89倍相当で撮影できる。次の作例も、この組み合わせで花を近接撮影してみた。

20171228_y-koba3 (20)↑640mm相当(APS-Cサイズ機使用)

 

20171228_y-koba3 (21)↑896mm相当(APS-Cサイズ機+1.4倍テレコン使用)

 

20171228_y-koba3 (22)↑1280mm相当(APS-Cサイズ機+2倍テレコン使用)

 

テレコン使用時の注意点としては、開放F値が暗くなるため、1.4倍テレコン使用時はカメラがF8でのAFに対応している必要があり(※)、また、2倍テレコン使用時はファインダー撮影時ではMF専用となり、背面モニターを使用したライブビュー撮影時のみAFが機能する点。この場合も、最近のカメラのほうがピントが合いやすいようだ。とはいえ、2倍テレコン使用時のライブビューでのAFは、かなり動作がゆっくりとしているので、動いている被写体を撮る場合はMFでのピント合わせのほうが快適だろう。

※従来の一眼レフは開放F5.6や6.3よりも暗いレンズではAFが機能しない。キヤノンではEOS 6DマークIIやEOS 80D、ニコンではD750やD7500など、比較的新しい機種では開放F8でもAFが機能するようになってきている。タムロン100-400mmに1.4倍テレコンを装着すると400mmでF9となるが、こうしたカメラならAFが可能という

 

このような撮影上の制約や価格面を考えると、本レンズのためだけに2倍テレコンを購入するのはややもったいない。このテレコンは、同社の「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」や「SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2」にも対応しているので、これらのレンズを持っている場合や今後購入したいと考えている人におすすめだ。

 

【結論】軽量でアクセサリーも多く、様々な楽しみ方ができる

タムロン100-400mmは、フルサイズ機で手軽に超望遠撮影を楽しんでみたい人や、APS-Cサイズ機のダブルズームの望遠端に満足できない人、現時点で標準ズームしか持っておらず、望遠ズームを新たに購入したい人などにおすすめの1本。このクラスのズームとしては非常に軽量でアクセサリーも多く、様々な楽しみ方ができる。画質面での満足度も高いはずだ。

 

今回は2つあるテレコンバーターを両方とも試してみたが、どちらか一方を選ぶなら、1.4倍のものをおすすめしたい。倍率という意味では物足りなく感じるかもしれないが、使用上の制限が少なくAFスピードや画質面でも不満なく使用できる。

 

また、アクセサリーという意味では、三脚座はぜひ購入しておきたいアイテムだ。1kg強の軽めのレンズとはいえ、カメラのマウント部にかかる負荷を軽減できる点で安心感が高く、ハンドリングも格段に行いやすくなる。

 

これはもう手放せない! 唯一無二の“超望遠”高倍率ズーム「タムロン18-400mm」と行く珠玉の撮影旅 in 箱根

一眼レフカメラ用交換レンズは数多くあるが、そのなかでも7倍や10倍といった高いズーム倍率を持ち、1本持っておくとさまざまなシーンに対応できて便利なのが「高倍率ズーム」と呼ばれるカテゴリのレンズだ。こうしたズームレンズは、35mm判換算で28~450mm相当程度の製品が主流となっているが、2017年7月に登場したタムロンの「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028/以下18-400mmと表記)」は、望遠側を大幅に拡張した28~600mm相当(キヤノン用は28.8~640mm相当)を実現。カメラ愛好家の間で瞬く間に大きな話題となった。このようにスペック的には申し分のない同レンズだが、気になるのは実際の描写や使い勝手。そこで今回は、日帰りの旅を想定して神奈川県・箱根町に赴き、その実力をチェックした。

【今回の旅の相棒】

20171129_y-koba5 (5)

タムロン
18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028)
メーカー希望小売価格/9万円(税抜)

3段繰り出し式鏡筒の採用などで、高倍率ズームレンズとしてはほかに類を見ない超望遠400mmを実現。操作感がスムーズで広角から望遠まで一気にズーミングしても引っ掛かりがなく快適だ。マウント基部に「ルミナスゴールド」と呼ばれるリングをあしらった新デザインの採用で、外観もすっきりとした印象。屋外での撮影に配慮し、簡易防滴構造も施されている。2017年12月現在では、キヤノン用・ニコン用が用意されている。

■詳しい製品紹介はコチラ
http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

 

※本記事の作例はキヤノン用レンズを用いて撮影しています

 

広角から超望遠まで、この1本で驚異的な画角をカバー

はじめに、本レンズの概要をおさらいしておこう。焦点距離は冒頭にも記したように18~400mmで、APS-Cサイズセンサー採用の一眼レフカメラ用となっているため、画角は28.8~640mm相当(キヤノン用。以下同じ)。1本で本格的な広角撮影から超望遠撮影まで可能となっている。開放絞りはF3.5-6.3で、高倍率ズームレンズとしては標準的な仕様。大口径レンズではないので極端に大きなボケは期待できないものの、円形絞りの採用で自然なボケ描写が得られる。

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持ち歩きの際に気になる質量は、レンズ単体で約710g(キヤノン用)。エントリークラスの一眼レフカメラボディが500~600g程度なので、その場合はボディと合わせても1.5kgを切る軽さとなる。長さは約123.9mm(キヤノン用)と、ダブルズームキットなどの望遠ズームと同程度。実際にボディに装着して手に持ってみると、レンズ鏡筒をしっかりと持ってホールディングすることができ、安定して撮影できる。日帰り旅に持っていくバッグでも十分に収納できる大きさで、当然のことながら、ダブルズームキットを持っていくよりもかなり少ないスペースで済む。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑今回はミドルクラスのボディと組み合わせて使用したが、それでもボディとレンズを合わせて1.5kgを切る軽さで、片手でも無理なく持てる

 

画角変化に驚愕! レンズ交換なしでこれほど違う写真が撮れる

ここからはいよいよ実写編。高倍率ズームでまず注目したいのが画角変化だ。ズーム倍率22.2倍という驚異的な数値をもつ本レンズなら、なおさら気になるところ。そこで早速、広角端と望遠端で芦ノ湖を前景に富士山を撮影してみた。28.8mm相当となる広角端では、芦ノ湖、富士山に加えて青空を広々と写すことができた一方で、640mm相当となる望遠端では富士山の山肌の様子を大きく写すことができ、改めてその画角変化に驚いた。まさに、“超望遠”高倍率ズームレンズと呼ぶにふさわしい。

20171129_y-koba5 (1)↑広角端の18mm(28.8mm相当)で撮影。手前の木々や芦ノ湖、富士山を入れたうえで空を広々と写し込むことができた

 

20171129_y-koba5 (4)↑望遠端の400mm(640mm相当)で撮影。超望遠域らしく、富士山の山頂付近のみを大きく写し、山肌の質感を克明に再現することができた。18mm(28.8mm相当)の写真と見比べると、そのズーム倍率の凄さがわかる

 

一般的な標準ズームに比べると広角端は同等となるが、標準ズームの望遠端は長いものでも70mm(112mm相当)程度までであり、その差は歴然。ダブルズームキットの望遠端に多い300mm(480mm相当)と比べても、1回りほど被写体を大きく撮れる印象だ。

20171129_y-koba5 (2)↑一般的な標準ズームレンズ(キットレンズ)の望遠端は50mmや70mmのものが多い。この写真は70mm(112mm相当)で撮影したものだが、富士山のアップの写真としてはやや物足りない印象だ

 

20171129_y-koba5 (3)↑ダブルズームキットや一般的な望遠ズームの望遠側は200mmから300mm程度のものが多い。この写真は300mm(480mm相当)で撮影したもの。富士山を十分にアップで写せたが、400mm(640mm相当)のほうが1回りほど画角が狭く、迫力のある写真となっている

 

広角~超望遠を生かした多彩な描写が可能

次に芦ノ湖の湖畔に出て遊覧船を撮影。広角・望遠の両方をうまく生かすことで、同じ場所・被写体でありながら異なる印象の写真に仕上げることができた。

20171129_y-koba6 (1)↑まずは18mm(28.8mm相当)で桟橋に停泊する2艘の遊覧船を撮影。適度に遠近感が強調され、船が堂々と見える。また、青空を広く入れたことでさわやかさの感じられる写真になった

 

続いて、出港後かなり遠くまで行った船を400mm(640mm相当)で撮影。どっしり大きく写すことができ、その引き寄せ効果を改めて実感した。

20171129_y-koba6 (2)↑望遠端である400mm(640mm相当)を使って、遊覧船が画面に収まる距離で撮影。肉眼でははっきり確認することはできなかったが、超望遠で引き寄せることで遊覧船の奥を通過しようとしている小型ボートを発見。画面に収まりのいい位置にボートが来るのを待って撮影した

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑撮影位置から見ると、遊覧船までの距離はかなり離れている。このレンズを使えば、これだけ離れていても船を大きく捉えることができる

 

その後、火山活動を続ける大涌谷に移動し、立ち込める白煙の様子を撮影。50mm(80mm相当)付近で白煙全体を、400mm(640mm相当)で白煙の噴出している部分のアップを狙った。こうした中望遠から超望遠での撮影を行う場合、ダブルズームキットではレンズ交換が必要になるケースが多いが、この18-400mmならレンズ交換なく素早く撮影できる。取材時、大涌谷は火山活動の影響でハイキングコースや自然研究路に立ち入ることができず、白煙に近寄って撮ることはできなかった。それでもこのレンズがあれば、その様子を迫力満点に撮ることができるのだ。

20171129_y-koba6 (3)↑中望遠となる50mm(80mm相当)域を使って、白煙が立ち上る様子を撮影。これだけでもその荒々しさが伝わってくる

 

20171129_y-koba5 (8)↑400mm(640mm相当)で白煙が噴出している部分を拡大。中望遠のものに比べると、その勢いが感じられより迫力のある写真になった。こうした画角の違いによる写りの変化を1本で素早く楽しめるのも、本レンズの魅力だ

 

また、大涌谷にはロープウエイが通っており、このロープウェイ越しに山やさらに遠くの街並みを望むことができる。そこで、400mm(640mm相当)を使ってロープウェイのゴンドラと山、遠くの街並みを1枚に収めてみた。200mmや300mmでも同じような構図で撮ることはできるものの、400mmでの圧縮効果は圧倒的で、F11まで絞り込んで撮影することで街並みの様子を大きく写すことができた。

20171129_y-koba5 (9)↑手前のゴンドラから奥の街並みまでは相当な距離があったが、400mm(640mm相当)の圧縮効果を使うことで遠近感が消失し、ゴンドラの眼下に街が広がっているかのような写りとなった。逆に、広角で撮影すれば遠近感を強調した描写が可能

 

マクロレンズ的な使い方やボケを生かした撮影も楽しい

このレンズは、22.2倍というズーム倍率もさることながら、最短撮影距離が45cmと短く、マクロレンズ並みに被写体に近寄って撮れるという点も魅力。加えて、400mmでは約0.34倍の最大撮影倍率で撮れるほか、広角端の18mmでも被写体に近寄って背景を広く入れた写真を撮ることができる。今回の撮影行では、広角で仙石原のススキを背景を生かしながら撮影したり、紅葉の葉1枚を400mmで大きく写したりすることができた。いずれも絞りをできるだけ開けて背景のボケもチェックしてみたが、広角・望遠ともに十分なボケ描写を得ることができた。開放F値が控えめでも、近接撮影ならボケ量が大きくなって被写体を引き立てることができるのだ。

20171129_y-koba5 (10)↑18mm(28.8mm相当)を使用して最短撮影距離付近でススキを撮影。広角域で被写体に近寄ることで、このように手前の被写体を大きく写しつつ、背景を広く写し込むことが可能。絞りを開放付近に設定すれば、適度に背景をぼかすこともできる

 

20171129_y-koba5 (11)↑400mm(640mm相当)を使用し、最短撮影距離付近で紅葉した葉をアップで撮影。背景が大きくぼけ、葉の形を印象的に表現することができた。紅葉を撮るときは、逆光で葉が光に透ける様子を撮ると色鮮やかな印象に撮れる

 

近接撮影という意味では、旅の楽しみの1つである料理や旅先で見つけた小物などを撮る場合にも、このレンズは実力を発揮する。その場合は、焦点距離を30~50mm程度にして被写体に近寄って撮れば適度な距離から被写体を撮ることができ、写りも自然な写真に仕上がる。今回は昼食のハッシュドビーフを写してみたが、50mm(80mm相当)で被写体に近寄って撮ることで、柔らかく煮込まれた牛肉の様子をアップで切り取ることができた。

20171129_y-koba5 (12)↑手持ちでハッシュドビーフを撮影。ズームを標準から中望遠域(35~50mm程度)に設定すると、遠近感による誇張が少なく、見た目に近い印象で撮影できる。また、そうすることで被写体から適度な距離を保っての撮影が可能。ここでは50mm(80mm相当)で撮影した

 

手ブレ補正機構「VC」がブレのない撮影をサポート

夕方には箱根ガラスの森美術館に立ち寄り、屋内に展示されたヴェネチアン・グラスや屋外のライトアップされた(クリスタル)ガラスのオブジェなどを撮影。屋内展示では、フラッシュの使用が禁止のため室内灯での撮影となったが、カメラの高感度を使い、高い評価を得ているタムロンの手ブレ補正機構「VC」を有効にすることによって、アップでもブレなく撮ることができた。

20171129_y-koba5 (13)↑屋内に展示されたヴェネチアン・グラスのフタに施された模様をアップで撮影。準マクロ域でも手ブレ補正が機能し、手持ちでもブレなく撮れた

 

屋外のライトアップされたガラスのオブジェは、主に広角側で撮影。ここでも手ブレ補正機構「VC」を使うことで、三脚を使うことなく撮影を楽しめた。手ブレ補正は日中での望遠撮影で有効なほか、こうした薄暗くなりがちな屋内撮影や夕景・夜景撮影など多くのシーンで有効で、三脚を携行しにくい旅先での撮影の幅を大きく広げてくれる。

20171129_y-koba6 (5)↑広角端の18mmを使って、手前と奥にある木の遠近感を生かしながら幻想的な輝きを撮影。手ブレ補正は搭載されているが、夕景や夜景を撮る場合は、広角側を使うとぶれにくくて安心だ

 

このほかにも、紅葉を撮影して解像感などをチェックしたり、鉄道を撮影して動きモノを追尾する際のAFの作動をチェックしたりしたが、いずれも高倍率ズームレンズとしては良好な結果が得られ、満足できる写真を撮ることができた。画質面では、3枚のLD(異常低分散)レンズやガラスモールド非球面レンズ、複合非球面レンズの採用で収差を抑えつつ十分な解像感を保っており、AFは、タムロン独自の「HLD (High/Low torque-modulated Drive)」が採用され、高倍率ズームレンズとしては高速かつ静かなAFが可能。被写体の追尾もスムーズで、不用意にピンボケになるようなこともなかった。

20171204_y-koba1_01_R↑箱根湯元に向かう特急列車を撮影。AFをコンティニュアスに設定して高速連写モードを使用したが、モーターに独自の「HLD」が採用されたことでAFのレスポンスも良く、快適に撮影できた。精度も高く、今回連写したすべてのカットでピントが合っていた

 

【結論】汎用性が高く、エントリーユーザーからベテランユーザーまでおすすめできる1本

今回はタムロン18-400mmの旅撮影での実力をチェックしたわけだが、実際に1日撮影してみてわかったのは、このレンズの守備範囲が非常に広いということ。広角や超望遠での撮影はもちろん、近接撮影まで楽しめ、室内や夕景・夜景の撮影にも強いのだ。これだけの汎用性があれば、旅撮影に限らず、ほとんどの撮影場面で不自由することはないだろう。

 

ベテランユーザーのなかには、「高倍率ズームはF値が暗い」と敬遠する人もいるかもしれないが、最近のカメラは高感度性能がアップしており、ISO400や800といった少し高めの感度に設定しておけば失敗なく撮影が楽しめるはずだ。超広角やより大きく質の高いボケ描写、あるいは画面の隅々までの高画質を求めるなら、それぞれ専用のレンズが必要になるとは思う。とはいえ、1本でこれほど幅広い被写体に対応でき、手軽かつ必要十分以上の描写力が得られるレンズは、いまのところこのタムロン18-400mm以外に存在しないのではないだろうか。そういった点を踏まえると、エントリーユーザーが最初に買う1本としてはもちろん、機動性を重視したいベテランユーザーまで幅広い人におすすめできる優秀な1本と言える。何かと荷物が増えがちな年末年始の旅行でも、本レンズの守備範囲の広さと機動力が大活躍するはずだ。

 

■詳しい製品紹介はコチラ
http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

 

【スポット紹介】

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箱根ガラスの森美術館

緑豊かな箱根仙石原にある、日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館。作例に挙げたクリスタル・ガラスのツリーは12月25日まで展示される。

高画質・追従性・機動性を追求した超望遠ズームレンズ「タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD」発売

タムロンのフルサイズデジタル一眼レフカメラに対応する超望遠ズームレンズ「タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)」の発売日が2017年11月16日(木)、価格は90,000円(税別)に決定した。

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高速制御システム「デュアルMPU(マイクロプロセッサ)システム」の採用による優れたAF追従性と、3枚のLD(Low Dispersion=異常低分散)レンズやeBAND(Extended Bandwidth&Angular-Dependency)コーティングがもたらす高画質、手持ちで超望遠撮影が楽しめるクラス最軽量1115g(ニコン用)の機動性を備えている。

 

2017年9月の開発発表時は、2017年内発売予定となっていた。開発発表時に数値が明らかになっていなかった手ブレ補正効果は、4段分*となる。

 

* キヤノン用は「EOS-5D Mark III」使用時、ニコン用は「D810」使用時。

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別売りの三脚座「Model A035TM」も同時発売。価格は15,000円(税別)。

 

■先進の光学設計

LD(Low Dispersion=異常低分散)レンズ3枚を使用し、超望遠で問題となる軸上色収差をはじめ、各種収差を効果的に補正。高い反射防止性能を発揮する独自の「eBAND(Extended Bandwidth&Angular-Dependency)コーティング」により、クリアでヌケの良い画質を実現している。

 

■優れた機動性

高速制御システム「デュアルMPU(マイクロプロセッサ)システム」の採用により、優れたAF追従性能と4段分の手ブレ補正効果を実現。レンズ鏡筒部材の一部にマグネシウムを使用することで、クラス最軽量*の1115gを達成し、機動性を追求している。

 

* 35mm判フルサイズ対応のデジタル一眼レフカメラ用100-400mm F4.5-6.3レンズにおいて。2017年9月15日現在、タムロン調べ。

 

■その他の機能

最短撮影距離1.5m、最大撮影倍率1:3.6のクローズアップ撮影が可能。レンズ内部に水滴が浸入するのを防ぐ簡易防滴構造、汚れを素早く拭き取れる防汚コートを採用し、屋外での撮影をサポートする。更なる望遠効果が得られるテレコンバーター、各種機能をカスタマイズできる「TAP-in Console(タップインコンソール)」にも対応する。

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別売りの三脚座「Model A035TM」は、アルカスイス互換のクイックシューに対応。

 

■主な仕様

●モデル名 Model A035 ●マウント キヤノン用、ニコン用 ●焦点距離 100~400mm ●レンズ構成 11群17枚 ●画角(対角) 24°24’〜6°12’(35mm判フルサイズ一眼レフカメラ使用時)/ 15°54’〜4°01’(APS-Cサイズ相当デジタル一眼レフカメラ使用時) ●絞り羽根枚数 9枚(円形絞り) ●開放絞り F4.5〜6.3 ●最小絞り F32〜45 ●最短撮影距離 1.5m ●最大撮影倍率 1:3.6 ●手ブレ補正効果 4段(CIPA 規格準拠)※キヤノン用「EOS-5D Mark III」使用時、ニコン用「D810」使用時。 ●フィルター径 φ67mm ●サイズ(最大径×長さ) φ86.2×199mm(キヤノン用)/ 86.2×196.5mm(ニコン用) ●質量 1135g(キヤノン用)/ 1115g(ニコン用) ●付属品 丸型フード HA035、フロントキャップ CF67II