1月7日の「七草粥」から始める、胃腸が整うおいしいおかゆの作り方

1月7日の朝に食べる七草粥(ななくさがゆ)は、一年の願いを込めていただく食事。そもそもおかゆとは、胃腸がまだ発達していない子どもの離乳食にもなるほど消化によく、胃腸に負担がかかりにくいので、行事食以外でも積極的に作りたいところです。

 

管理栄養士の鈴木あすなさんに、七草粥の正しい作り方やゆえんに加え、おかゆのおいしい作り方を教えていただきました。おかゆ作りは、生米から炊くおかゆから、炊き上がったごはんから作る簡単な方法までを紹介していきます。

 

七草粥とは“無病息災”を祈る食べ物

セリやナズナなど、7種類の野菜“春の七草”を入れて炊く「七草粥」は、“人日の節句”(じんじつのせっく=)に無病息災を祈っていただくもの。

 

「古くは中国から伝わった願掛けであるとも言われています。節句に節目としていただくのはもちろん、そもそも現代人は常に食べすぎていると指摘されているので、胃腸を休めるため、疲れたときにおかゆを作っていただくのもいいでしょう。七草粥には、脂質やタンパク質が豊富に入っているわけではないので、これだけで栄養バランスが整うわけではありませんが、ミネラルやビタミン、食物繊維は七草から摂れ、デトックスにもいいんですよ」(管理栄養士・鈴木あすなさん、以下同)

※じんじつのせっく。五節句のひとつに数えられる。五節句とは、1月7日の人日にはじまり、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)をいう。

 

“春の七草”とは?

・セリ……奈良時代から食用とされていたことが古事記や万葉集にも残っているセリ科の植物。香りがよく、料理では三つ葉のようにも使われる。

・ナズナ……アブラナ科の植物。ペンペン草とも呼ばれ、河原や草原でも自生している。

・ゴギョウ……キク科の植物。ハハコグサとも呼ばれ、昔はよもぎではなくゴギョウで草餅を作ったそう。

・ハコベラ……ハコベともいう。野原でよく見かけるナデシコ科の植物。白くて小さいきれいな花が咲く。

・ホトケノザ……コオニタビラコのことで、キク科のもの。図鑑などで見るホトケノザとは別の植物。

・スズナ……アブラナ科の植物。蕪(かぶ)は別名スズナといい、春の七草でもその呼び名が使われる。

・スズシロ……アブラナ科の植物。大根の葉の部分のこと。

 

七草粥の炊き方

七草粥は、その見た目から苦味やえぐみが強いのでは? と敬遠されがちですが、実はどの葉にも味に強いクセはなく、あっさりとしていてとても食べやすいものです。

 

「七草粥の作り方は、通常おかゆを炊く場合とさほど変わりません。おかゆの炊き方はこのあと解説しますね。

 

ただし、葉をはじめから入れてお米と一緒に炊いてしまうと、葉に火が入りすぎてしまい、見た目も食感も悪くなってしまうので、お粥を炊き上げてから、別でさっと茹で、刻んでおいた七草を入れていただきます。葉の歯応えや香りが残り、おいしくいただけますよ」

 

ここからは、おかゆの基本と、作り方を教えていただきましょう。

 

全粥、五分粥……おかゆの種類には何がある?

“おかゆ”とひと口に言っても実は、いくつかの種類があります。それぞれどのようなものか、鈴木あすなさんに解説していただきました。

 

「まず間違えがちなのは、“おかゆ”と“おじや”です。どちらも炊いたごはんから作れるのですが、おかゆの場合は炊いたごはんを一度洗ってから煮ていきます。洗うことでデンプンの粘りをなくし、ごはんがさらさらした状態になるんですね。一方、おじやは、炊いたごはんを洗わずにおかゆ状にしたもの。汁が白く濁り、粘り気のある仕上がりになります」

 

・お粥(おかゆ)・全粥……お米1に対して水5で炊く5倍粥のこと。一般的に、おかゆというと、この炊き方のことを指す。

・五分粥……10倍粥ともいい、お米1に対して水を10倍にして炊く。全粥よりとろみがあり、糖質も少ないのでダイエット食にも用いられる。

・重湯(おもゆ)……炊いたおかゆをざるで漉し、お米を取り除いた汁だけのもの。離乳食はここからはじまるので、ファスティング後の回復食にもよい。

・おじや……ごはん(炊いたお米)を洗わずにおかゆとして炊いたもの。お鍋の後にごはんを入れるものを示すこともある。

 

土鍋で生米から炊くおかゆの作り方

はじめに、生米から土鍋でおかゆを炊く方法を確認しましょう。今回使うのは、ごはん炊き用の土鍋ですが、片手鍋や鋳物の鍋などでも同じように炊けます。

「土鍋で炊いたおかゆは、とろみがありながら粘りは少なく、さらりとした食感です。そのままでももちろんおいしくいただけますが、ねぎや梅干し、海苔などをトッピングしても楽しめます」

 

【材料(2人分)】

・生米…100g
・水…500ml

 

【作り方】

1. 生米は洗ってざるにあげ水気を切る

「ざるにあげたら、最低でも10分はこのまま水切りしておきましょう。急いでいないときは30分ほどあげておき、次に進みます。洗ったあとにこうして水をきちんと切らないと、分量よりも水分量が多くなってしまい、仕上がりが変わってきてしまうんです」

 

2. 土鍋に米と水を入れて強火にかける

「沸騰するまでは強火にかけましょう。蓋を少しずらしておき、中が見えるようにして火をつけると、吹きこぼれの心配がありません」

 

3. 沸騰したら、弱火で20〜30分炊く

「弱火にしてからも、吹きこぼれないよう蓋は少しだけ開けておきます。ただし、たくさん開けてしまうと水分が飛びすぎてしまうので、あくまでも吹きこぼれないように少しだけにしてください。20〜30分炊いたら固さを見て、好みの固さになるまで炊きましょう」

 

4. 炊き上がったら、全体を混ぜて盛りつける

「炊き上がったばかりのおかゆは、水分とお米とにちょうどよく分かれています。ここから時間が経つごとにお米が水分を吸ってしまい、水気のないおかゆになっていってしまうので、炊いたら早めにいただきましょう」

 

炊いたごはんから簡単におかゆを作る方法

続いて、炊いたごはんからおかゆを作ってみましょう。

 

「お米から炊くよりも時間が短縮でき、手軽なので、急いでいるときやすぐに食べたいときには便利です。ただ、炊いたお米から作ると、お米が潰れたり溶けたりしやすく、水の色が白色に濁り、粒が感じにくいおかゆができます。おかゆ用に炊くことを考えるなら、少し硬めに炊いておくのもいいでしょう。離乳食やファスティング後の回復食として食べるなら、あえて粒感がないよう、ごはんから作ると手軽でいいかもしれませんね」

 

【材料(2人分)】

・炊いたごはん…200g
・水…500ml

 

【作り方】

1. 炊いたごはんを洗う

「炊いたごはんをざるに入れたら、上から水をかけて手でさっと洗います。ここであまり時間をかけてしまうと、ごはんが水を吸ってしまうので、あくまでもさっと表面を流す程度にしましょう」

 

「ごはんの周りにあった粘り気が取れ、パラパラとした感触になったら炊きはじめましょう」

 

2. 分量の水を入れて火にかけて炊く

「はじめは強火にかけ、沸騰したら弱火にして10分ほど煮ていきましょう。このときも蓋を少しだけずらした状態で上に乗せておきます」

 

「炊けたおかゆに溶き卵を流し入れ、うすくち醤油で味をつけました。たまごの甘みが加わるとさらにおいしく、タンパク質も取れますよ」

 

消化にいいものを摂って胃腸を休めることが、翌日からのパフォーマンスにもつながります。とくに、いつも以上にご馳走を食べる機会が多いハレの日が続く年末年始の後には、体を軽くするためにも、おかゆを食事に取り入れたいもの。七草粥に限らず、おかゆでデトックスする生活をしてみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

管理栄養士・料理研究家 / 鈴木あすな

愛知県名古屋市出身。大学卒業と同時に「管理栄養士」を取得し、世界中にたくさんの素敵な食卓=TABLEを作りたいという想いから、株式会社Table forを立ち上げる。現在はテレビ・ラジオ・雑誌のレギュラーを持ち、メディアを通じた情報発信を行う他、料理教室「Table for」の運営や企業とのレシピ開発、商品プロデュース、地域貢献など、より豊かな食卓が増えるよう幅広い活動をしている。著書に『美人をつくる! まいにちの簡単スムージー123』(学研プラス)などがある。

Table for https://table-for.co.jp/



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“年取り魚”とは?境目はどこ?正月に知りたい鮭(シャケ)と鰤(ブリ)の話

その昔、魚はとても貴重な食べ物でした。物流や保存の技術が進んだことで、今日のように魚が毎日でも食卓に出せるようになりましたが、かつて海から遠い地域では、お正月くらいにしか魚が食べられなかったとか。

 

その正月には、鮭や鰤といった魚が、縁起物として親しまれてきました。なぜ縁起物とされてきたのか、そのいわれを、江戸懐石近茶流を受け継ぎ、料理研究家としても活躍する柳原尚之先生に教えていただきました。

 

江戸懐石近茶流嗣家の柳原尚之さんに、「鮭」と「鰤」のうんちくを教えていただきます。

 

年取り魚は「鮭」か「鰤」か?

日本では、大晦日にご馳走を用意して、正月の“年神”さまを迎える準備をする風習があります。普段は食べられないような贅沢な食材も、この日に限っては「年取り膳」として食卓に上ったとか。その年取り膳に上った魚が、「年取り魚」と呼ばれる鮭(サケ・シャケ)や鰤(ブリ)。魚は傷みが早いため、昔は発酵させたり塩漬けにしたりするなど工夫して、遠くまで運ばれていました。

 

「獲れた魚を保存するため、各地方でさまざまな工夫がなされてきました。とくに、米と魚と塩を発酵させて作る“熟れ鮓(なれずし)”は、今でも残っている伝統的な魚のいただき方のひとつです。作り方はほとんど同じなのですが、熟れ鮓の中でも日本海側でよく食べられていたのは“飯ずし(いずし)”で、主に鮭が使われています。石川県や富山県ではこれを鰤とカブで作り、“かぶらずし”と呼んでいます」(江戸懐石近茶流嗣家・柳原尚之さん、以下同)

写真は鮭の飯ずし。(調理・撮影/柳原尚之)

 

「年取り魚は、フォッサマグナ(※日本の主な地溝帯のひとつで、東日本と西日本の境目となる地帯のこと)で有名な新潟県の糸魚川を境にして、鮭なのか鰤なのかが分かれていたようです」

 

まずは、「鮭」について教えていただきましょう。

 

鮭には5つの種類がある

子どもから大人にまで人気があり、身近な魚である鮭。実は、ひと口に“シャケ”と言っても、5種類にも分かれているのです。

 

「わたしたちがよく目にする鮭は、3種類あります。1つ目は、日本海側で獲れる白鮭(シロザケ)。内臓を抜き、塩漬けにしたあと干して作る“荒巻鮭(新巻鮭)”にも使われます。2つ目は銀鮭(ギンザケ)で、鮭の中では小ぶりです。3つ目が紅鮭(ベニザケ)で、北海道や太平洋で漁が行われます。

残りの2種類は、“ピンクサーモン”と呼ばれるカラフトマスと、“キングサーモン”と呼ばれるマスノスケ。どちらも鱒(マス)と言うので鮭とは別物のように感じてしまいますが、サケマス科に入り、同じ種類なんです。

鮭はサーモンとして生でお刺身やお寿司としても食べますが、それはここ20年くらいのこと。生食するものは、寄生虫が入らない養殖ものです。昔は寄生虫の心配がありましたから、生食するときは冷凍してから薄切りにしていただく“ルイベ”が一般的でした」

 

鮭のおいしい季節は“夏前”と“秋”の二度

11月頃になると、スーパーの鮮魚売り場に鮭がずらりと並びます。その印象から、秋だけが旬だと思っている人も多いかもしれません。でも実は、夏の前にも旬があるのです。

 

「新潟県村上市にある三面川(みおもてがわ)では、2月になると鮭の稚魚を放流します。私は小学生のころ生物クラブに所属していたので、イクラを孵化させたことがあるのですが、本当にあの小さな赤い粒から魚の赤ちゃんが出てくるんですよ。そこから稚魚まで育てた鮭は放流されると北米を周り、4年かけてまた元の川に戻ってきます。これを獲ったものが秋に出回る鮭なのです。

一方、夏前の鮭は“時知らず”と言って、回遊の途中で捕獲されたものを指します。産卵する前の状態の鮭なので脂がのっていて、秋とは違ったまた味わいを楽しめます」

 

鮭が“縁起物”とされる理由は“戻ってくること”にあった

成長すると同じ川に戻ってくる鮭は、大きくなって“出世”した姿で田舎に戻ってくることから、縁起が良いとされてきました。

 

「“尾頭つき”は特に縁起がいいので、荒巻鮭一匹をお歳暮や新年のご挨拶に送る風習もありました。一尾をおろしていただきますが、高橋由一(たかはしゆいち)の絵画のように、一切れずつ切り分けながら食べる方もいらっしゃいます。

また、イクラは、南天に見立てられることから縁起が良いと言われ、大根おろしと混ぜ合わせた“雪中南天”としてお節(おせち)に入れます。日本海側のお雑煮には、上にイクラをのせることもありますよね。

ただ、わたしたちがよく目にするイクラは、海で獲った鮭の子(筋子)なので、皮が柔らかく、割れてしまいやすいのです。お雑煮にのせるものは川に戻ってきた鮭の子(バラ子)で、皮が強く、食べるとプチプチとした食感が楽しめます。バラ子は残念ながらスーパーでは見ることが少ないのですが、ここにも地域性が現れていますよね」

 

おせちに入れたい、鮭のさまざまな料理法

それでは少し鮭を使った料理法についても教えていただきましょう。一般的に馴染みがあるのは焼き鮭。普段の食卓でもおなじみですが、このままおせちに入れることもできます。

 

「以前、父(柳原一成さん)が皇室のおせちを再現したことがありました。そのなかに、鮭に塩と酒を振って焼く“酒塩焼き”というお料理があります。普通の焼き鮭にするときも、酒に漬けておいて、酒を塗りながら焼くと身がふっくらして香りがよく、おいしいですよ。

近茶流ではたまごの黄身を塗って焼く“黄金焼き”にしてお節に入れたり、塩麹に漬けて焼いたりすることもあります。お正月にはこういう料理でなくてはならないという決まりはありませんから、スモークサーモンを薄切りにした大根と巻いて甘酢漬けにすることもあります」

柳原尚之さんの著書『はじめての和食えほん』。北海道の郷土料理で、たっぷりのもやしやキャベツと一緒にいただく“ちゃんちゃん焼き”が紹介されています。鮭の旨みを吸った野菜がたくさんとれて、ごはんが進みます

 

続いては、鰤についてです。

 

同じ魚なのに名前が変わる“出世魚”

鰤は“出世魚”といい、成長とともに呼び名が変わる魚です。また、地方によって呼び名が異なります。

 

関東では小さいサイズから順に、「ワカシ」「イナダ」「ハマチ」「ブリ」となりますが、関西では「ワカナ」「ツバス」「ハマチ」「ブリ」となります。その他地方にも、さまざまな呼び名があります。

 

「昔は12キロ前後のものを鰤と呼びましたが、今はそう大きいものが少なくなり、8キロ前後のものからブリと言います。ちなみに関東でハマチと言うと、鰤の小さいサイズのものだったのですが、今は養殖で育てられた鰤のことを指します。

名前が変わっていくのは、それだけ味や見た目に変化があるからなのですが、豊臣秀吉や明智光秀なども、成長や出世によって名前をいただいて変わっていきましたよね。鰤は成長や出世をする縁起のよい魚として、古くから親しまれてきました。同じ食べ物なのにさまざまな呼び方がある食材というのは、親しまれていた証でもあります。漁は大変ですし、庶民が普通に食べられるものではなかったと思いますが、さまざまな地域で水揚げされ、愛されていた魚です」

 

“鰤おこし”から漁が始まる!

鰤は日本海側で漁が盛んで、富山の氷見や金沢、新潟などで獲れていましたが、最近では水温が高くなった影響で北海道のものが多くなっているといいます。もっとも脂がのっておいしいのは冬、11月ごろから2月ごろまでです。石川県では11月ごろに来る雷雨のことを、“鰤おこし”と呼ぶのだそうです。

 

「鰤おこしの後は、鰤が獲れるという言い伝えがあります。冬型の気候になると、気圧が変化し嵐になるのでしょうね。昔は鮭と同じように発酵させたものや、塩鰤といって荒巻鮭のように内臓を取って漬(づけ)にしたものがよく使われていました。日本海で獲れた鰤は塩鰤にして、信州まで運ばれたといいます」

 

正月には願いをかけて。旨みが強い鰤の料理法

鰤をお正月料理としていただくときにも、特別これと決まった料理法はありません。ただし、おせちに入れるときは日持ちするよう、焼き物にするといいでしょう。

 

「鰤は焼き物にも煮物にも、蒸したり揚げたり、どのような料理にもできる万能な魚です。焼き方も、照り焼きにしたり西京味噌で漬け焼きにしたりと、いろいろな味わいが楽しめます。鰤のいいところは旨みが強くだしが出ることなので、鰤大根のように野菜と一緒に煮物にするのもいいですし、昆布と塩鰤でだしをひいて潮汁にしていただくのもおすすめですよ」

『はじめての和食えほん』の中には、ぶりの照り焼きのレシピがありました。醤油とみりん、砂糖で作る照り焼きは、あまじょっぱくておいしく、蒸し焼きにすることで身がふっくらと仕上がります

 

現代でこそ、大晦日や三箇日であっても買い物ができ、お節や保存食は意味を成さなくなってきていますが、あらためて正月料理を見直してみてはいかがでしょうか? 歴史的な背景やいわれ、食材が、日本全土にどのように運ばれたかなど、ルーツを知ることで料理が一層楽しくなるはずです。

 

【プロフィール】

江戸懐石近茶流嗣家 / 柳原尚之

東京農業大学で発酵食品学を学ぶ。小豆島の醤油会社やオランダの帆船でのキッチンクルーとして勤務後、現在は、近茶流宗家の柳原一成氏とともに、東京・赤坂にある料理教室で、日本料理、茶懐石研究指導にあたる。NHK「きょうの料理」に出演するほか、NHKドラマ「みをつくし料理帖」、大河ドラマ「龍馬伝」などの料理監修、時代考証も数々手がけている。TBS「渡る世間は鬼ばかり」でも、料理所作指導を長く務めた。2015年には文化庁文化交流使に任命され、約3か月諸外国をまわり、日本料理を広める活動を行った。日本食普及の親善大使にも任命されている。子どもへの食育や、江戸時代の食文化の研究、継承もライフワークとして行っている。
https://www.yanagihara.co.jp/


『はじめての和食えほん 冬のごちそうつくろう』(文溪堂刊)
柳原尚之さんが季節ごとに日本の伝統的な料理をまとめた、絵本で読めるレシピ本『はじめての和食えほん』。春から冬まで4冊のラインナップが揃っています。



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月見団子は球形だけじゃない!? 地域で違う「ご当地月見団子」とその成り立ち

10月1日は「中秋の名月」。「十五夜」とも呼ばれるこの日に、誰しも一度は月を見ながらお団子を食べた経験があるはずです。素朴な味わいが、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれますよね。

 

ところで「月見団子」と言えば、どんな形を思い浮かべますか? 白くて丸いお団子が、ピラミッド型に積まれているものを想像した人が多いのではないでしょうか。実はその月見団子、全国共通ではないんです。

 

地方の郷土料理に詳しい料理家の梶山葉月さんに、ご当地月見団子の特徴やレシピについて教えていただきました。

 

月見団子を供える風習はいつ始まった?

十五夜の風習は、平安時代が始まりとされています。もともとは一年でもっとも月が美しいとされるこの日に、秋が収穫時期となる里芋やサツマイモを供え、五穀豊穣を祈る行事でした。現在も使われる「芋名月」という別名は、ここから呼ばれるようになったものです。

 

その後、江戸時代に入ってから庶民の習慣としてお月見の文化が定着。同じく秋に収穫となる米の豊作を祈るため、月見団子を供える風習が生まれたのです。当時の人は月を神様と捉えていたので、月に見立てた真ん丸のお団子を準備することで、収穫への感謝を表しました。一緒に飾るススキも、稲穂に似ていたことから同様の意味が込められていたんですよ。

 

全国にはどんな月見団子がある?

江戸時代にお団子をお供えする文化が始まった後、各地でも独自の月見団子が生み出されていきました。

 

例えば名古屋では、茶・白・ピンクのしずく型がスタンダード。茶は皮つきの里芋、白は皮をむいた里芋をイメージしているのだとか。残るピンクは、子どもが親しみやすい色として作られるようになりました。また、中国・四国地方では串だんごがスタンダードとされています。

 

中でもひときわインパクトがあるのが、沖縄県の「フチャギ」です。塩茹でされた小豆が、そのままお餅の周りに付いています。

 

「昔、悪魔に憑りつかれて、お墓に閉じ込められた人がいたとか。亡くなったと思った親族がお葬式の準備を進めていたところ、通りすがりの人に助けられてなんとか生還。お葬式用に用意していたお餅に小豆を付け、お祝い用に変えたのが始まりと言われています。そのため、魔除けの意味がある小豆は潰さずに、そのまま付けるんです」(料理家・梶山葉月さん、以下同)

↑沖縄の「フチャギ」

 

地域によって意味も形も全く異なる月見団子。今回はその中から厳選し、関東、関西、静岡の月見団子レシピを紹介します。まずは関東風のレシピで、基本的な月見団子の作り方を確認していきましょう。

 

誰もが知っているオーソドックスな形。関東地方の月見団子

「関東の月見団子は、まん丸のように見えますが、実は少しだけ潰れています。というのも、まん丸だと、枕団子(死者の枕元に供える団子)に似ていて縁起が悪いと言われているんです。また、昔は十五夜にちなんで直径が1寸5分、約4.5cmもの大きさだったそう。ただ、あまり大きすぎると火の通りも悪くなってしまうので、自分好みの食べやすい大きさで作ってみてください」

 

【材料(15個分)】


・上新粉…240g
・砂糖…大さじ2
・お湯…240ml

「関東のお団子に限らず、材料は近所のスーパーで揃うような、ごく普通のものでかまいません。砂糖についても、今回は上白糖を使っていますが、お好きなもので大丈夫です」

 

【作り方】

1. 材料をすべてボウルに入れ、お湯を足しながら混ぜていく


お湯は最初に全て入れるのではなく、50ml程度残して後から足していきましょう。混ぜていくうちにだんだんとダマができてくるので、ひとつにまとまるまで、少しずつお湯を加えていきます。「上新粉はお米でできているので、あまり粘り気がありません。そのため水で作ってしまうと、固くぼそぼそとした仕上がりになってしまうんです。お湯を使ってお米の成分をふやかし、粘り気を出すことによって弾力が出て美味しくなります」

 

2. 耳たぶくらいの固さになるまで練る


「まとまってきたら手で練り始めましょう。最初は少しべたつくかもしれないですが、徐々に固まってきます。指で押した時に耳たぶ程度の固さになるまで練るのがポイントです」

 

3. 適度な大きさに丸めて、湿らせた布を敷いたバットへ


15等分した生地を丸め、湿らせた布かオーブンペーパーを敷いたバットの中へ置いていきましょう。こうすることで、お団子がバットにくっ付いてしまうのを防ぎます。

 

4. 沸騰したお湯で茹でる


沸騰したお湯に入れ、7~8分茹でていきましょう。火が通ると浮いてくるので、それを合図に取り出します。

 

5. 冷水で冷やす


取り出したお団子は、冷水につけてあら熱を取りましょう。ずっと浸しておくと、ふやけて食感が悪くなってしまうので、サッと洗えたらすぐにバットへ移していきます。その後、ピラミッド型に15個重ねたら完成です。

 

「作った日に食べきれず、冷蔵庫で保管していたら固くなってしまった……なんて経験はありませんか? そんな時には、おしるこに入れたり焼いたりして食べるのがおすすめです。甘さを控えめにしてあるので、けんちん汁に入れて、すいとんのようにして食べてもおいしいですよ」

 

関東のオーソドックスな月見団子の作り方をマスターしたら、続いて関西、そして静岡の月見団子に挑戦してみましょう。

 

ボリュームと可愛さは日本一⁉ 関西の月見団子

「関西の月見団子は、しずく型のお団子にあんこが巻いてあるのが特徴です。平安時代のお供えの主流であった里芋をイメージしているという説や、雲がかかった月をイメージしているという説があります」(料理家・梶山葉月さん、以下同)

 

【材料(10個分)】


・上新粉…200g
・片栗粉…大さじ2
・砂糖…大さじ1と1/2
・お湯…200ml
・こしあん…270g

 

【作り方】

1-2.関東のレシピと同じく、まずは材料を混ぜて生地を作っていきましょう。

 

3. しずく型にして茹でる


「いったん丸めてから、手の平で挟むようにしてしずく型にしていきます。少し大きいので、茹でる時間は7~8分。浮いてきたら取り出し、水であら熱をとってください」

 

4. 団子にこしあんを巻きつける


バターナイフなどを使って、ラップにあんこをのばします。その上に茹で上がったお団子を乗せ、ラップごと包むように巻いたら完成です。巻きつけた後に少し押さえると、ラップからはがれやすくなります。

 

県民ならではの通な食べ方も紹介! 静岡の月見団子

静岡の月見団子は「へそもち」とも呼ばれ、上が少しへこんでいるところが特徴です。このお団子のはじまりには、幼少時代の徳川家康が関係していると言われています。諸説ありますが、徳川家康が人質として静岡の駿府城で暮らしていた際、「元気に育って欲しい」という願いを込めて家来が作ったものなんだとか。

 

「おへそを模した形は、子どもが胎内で母親から栄養をもらっていたイメージから考えられたのだと思います。 また、昔はこのお団子を新米で作るルールがあったそうです。新米が採れる時期がちょうど中秋の名月の頃に当たるので、月見団子として食べられるようになったと言われています」

 

【材料(15個分)】


・上新粉…200g
・白玉粉…30g
・砂糖…大さじ2
・お湯…180ml
・粒あん…適量

 

【作り方】

1-2.関東のレシピと同じく、まずは材料を混ぜて生地を作っていきましょう。

 

3. へそ形にして茹でる


15等分にした生地を平たく丸め、真ん中に指でくぼみを入れましょう。「お団子の上半分をへこませるくらい押して大丈夫です。くぼみが入っている分、火の通りも早いので、3~4分茹でたら浮いてきます」

 

4. あら熱が取れたらバットに移し、ピラミッド型に重ねる


取り出したら冷水であら熱をとり、バットに入れておきましょう。お供えする時には、関東と同じようにピラミッド型に重ねていきます。

 

「お供えが終わったら、くぼみの部分に粒あんを入れて食べるのが静岡流です」
↑「お供えが終わったら、くぼみの部分に粒あんを入れて食べるのが静岡流です」

 

つまみ食いもOK!伝統行事を気軽に楽しもう

「十五夜ならではのイベントとして、お供えされたお団子を子どもが盗み食いする『月見泥棒』という風習もあります。お団子がなくなっていれば、神様の使いがお団子を食べてくれたと捉え、縁起の良いものとされているんです。つまり十五夜とは、つまみ食い大歓迎な行事なんですよ! そんなお月見に関する豆知識を語りながら、お子さんと一緒に作ってみるのも良いかもしれませんね。伝統行事だからと気負わず、好きなように楽しんでもらえるとうれしいです」

 

シンプルなようで意外と奥が深い月見団子。意味や歴史を知ると、食べるのがより楽しくなりますね。今年は様々な地方のお団子を作って、食べ比べてみてはいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

料理家 / 梶山葉月

テレビ・CMの料理監修、器のスタイリング、企業向けレシピ考案、ケータリングなど「食」のトータルコーディネートを行っている。13年以上 『秘密のケンミンSHOW 極』(日本テレビ系列)でフードコーディネーターを務めており、地域の特産物や生産物を活かしたレシピ開発や郷土料理が得意。最近は、家庭でつくれる和食や、地方の郷土料理を次世代に伝えるべく、活動の幅を広げている。
HP=http://hazu-kitchen.com/
Instagram=@hazu_kitchen

 

東京五輪は是非このバンドに!? 地上波露出増加の「和楽器バンド」に注目の声続出

日々新しいスターが生まれて大活躍を繰り広げているが、次は一体誰がメディアを騒がすことになるのだろうか。この記事では、次にキそうなブレイク間近の有名人を紹介! 今回紹介するのは、8人組ロックバンド・和楽器バンド。

出典画像:和楽器バンド Official Siteより出典画像:和楽器バンド Official Siteより

 

世界中で人気を誇る日本の伝統芸能を広めるバンド

出典画像:和楽器バンド Official Siteより出典画像:和楽器バンド Official Siteより

 

詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントを生み出す和楽器バンド。2013年3月に、ボーカルの鈴華ゆう子が伝統芸能をポップに世界に広げたいという思いを掲げてメンバーを集め、2014年4月にアルバム「ボカロ三昧」でデビュー。「ボカロ三昧」は初週に1.5万枚を売り上げてオリコン週間ランキング初登場5位に。

 

デビューからわずか3か月で海外進出も果たした和楽器バンドは、2015年に発売した2ndアルバム「八奏絵巻」が、初週3.6万枚の売り上げでオリコン週間ランキング初登場1位を獲得した。その後も第57回「輝く! 日本レコード大賞 企画賞」を受賞したり、2016年1月に日本武道館ライブを成功させるなど順調にファンを増やし、ネット動画の影響で世界中に多数のファンを持つまでに成長。


そして2017年、ネットを中心に絶大な人気を誇っていた和楽器バンドが地上波に出演する機会が増え、一般層からの注目度が急上昇している。

 

2017年1月に「スッキリ」(日本テレビ系)に生出演して演奏すると、MCの加藤浩次が「凄い独特の世界観ですね」「三味線の方がブーツで、ギターの方が裸足で…」と感想を口に。アメリカ出身の日本文学研究者であるロバート・キャンベルも「凄くグローバルで、みんながグッと食いつくのがわかる」と称賛していた。

 

11月に「とくダネ!」(フジテレビ系)で生演奏を披露した際には、MCの小倉智昭が「僕は和楽器バンドをスタジオに呼ぶのに足掛け4年かかりました」と、結成当初からのファンだったことを告白。「大好きでね。初めて見た時にとんでもない連中がでてきたと思った」と大絶賛すると、ネット上でも「外国人受け良さそう」「これ見て和楽器を習いたくなる外国人が出るくらいカッコ良さが出てる」「ボーカル美人過ぎるでしょ」と反響が続出することに。

 

そして12月6日放送の「2017FNS歌謡祭」(フジテレビ系)では、倉木麻衣と和楽器バンドの4人がコラボして「渡月橋 ~君想ふ~」を演奏。元々が和テイストだった楽曲をさらに和の雰囲気にアレンジし、「すごく幻想的で素敵だった」「このコラボは神過ぎる!」「鳥肌立ったわ」といった絶賛の声が殺到。


2020年の東京オリンピック開会式に推す声も増え始めている和楽器バンド。さらなる飛躍に注目していきたい!

 

 

【プロフィール】
名称:和楽器バンド(わがっきバンド)

Vocal:鈴華ゆう子(すずはなゆうこ)

箏:いぶくろ聖志(いぶくろきよし)

尺八:神永大輔(かみながだいすけ)

津軽三味線:蜷川べに(にながわべに)

和太鼓:黒流(くろな)

Guitar:町屋(まちや)

Bass:亜沙(あさ)

Drums:山葵(わさび)