憧れの「マイ・ガレージ」を低価格で。モスクワっ子のDIY欲を満たしまくる「時間制ガレージ」が人気

約2人に1人がクルマを所有しているというモスクワ。クルマを所有するということは当然、車検や定期点検などが必要となってきますが、予約を取って順番待ちするディーラーより、自分で点検や簡単な部品交換をしたいという意見や、「自宅にガレージがないけれど自由にいじってみたい」という声が多くあります。そんなニーズから生まれたのが「時間制ガレージ」。現在、モスクワっ子の間で人気が高まっています。

 

人気の時間制ガレージとは?

ロシアの修理屋についての記事でも述べましたが、ロシアには、もともと物が少なかったソビエト連邦時代から「自分のものは自分で直す」という文化が根付いています。ソ連時代の名残で、自分でクルマをいじったり、いまだに自分で点検や修理をする人々が多いのですが、大都市モスクワではアパート住まいが一般的。クルマをいじる場所がないというのが問題です。

 

そんななかで時間制ガレージが需要を伸ばしています。電話やオンラインで予約をすれば、自分だけのガレージを24時間使用することが可能。価格は、店舗によってある程度の差はあるものの、1時間あたり400ルーブル(約800円)ほどです。広々としたガレージと専用の工具が使いたい放題ということで一躍大人気に。

 

時間制ガレージでは、クルマごとにガレージが独立している場合もあれば、1つの大きなスペースに何台か入れるようになっていることもあります。チェーン展開をしている店舗はまだないものの、一つひとつの店舗が工夫を凝らしたサービスを提供。

人気店の1つ「сбой гаражスボイガラーシュ」には、486個もの工具が揃っており、しかも、それらすべてはプロが使用するレベルのもの。自宅での修理にありがちな「修理を始めたはいいが、必要な工具がない」ということもありません。また高い専門的な工具を購入する費用も節約できます。ドライバーに始まり2トン以上を持ち上げられるクレーンまで、なんでも揃うガレージ内。USB充電ポートを増設するのに必要な端子類セットや電工ペンチ、検電テスター、よく使う端子やコネクターなど、細々したものもしっかり揃っています。クルマにバックカメラを装着することも可能。

 

使用者の口コミには、「自分のお粗末な工具より断然作業しやすかった。また、どこかの駐車場でいじるより快適に作業できた」と前向きなコメントが寄せられています。

 

ガレージの使い方は無限大?

また、修理に限らないユニークな使い方を提案している時間制ガレージもあります。例えば、4台同時に入れる大きなスペースを友だち同士で使って、お互いのクルマをいじるという「改造愛好家の遊び場」として利用することができます。

 

さらに、冬はマイナス40度にもなるモスクワでは、放っておくとクルマのバッテリーが凍ってしまうことも多々あります。そんな寒い日や夜中だけ、愛車をガレージに避難させるという「時間制パーキング」サービスもあります。

日本やアメリカにも広がるガレージサービス

日本にもレンタルピットというサービスがあります。クルマユーザーが、クルマの整備やカスタマイズ、ドレスアップに必要なプロの「作業場所」や「設備」、「工具」などを自動車工場からレンタルできるというもの。このサービスでは既存の工場内に場所を借りるということで「自分のガレージ感」がないものの、同じスペースに専門家がいるというのは心強いかもしれません。

 

また、アメリカでは「U DO IT(ユードゥーイット)」というサービスが広く知られています。こちらはロシアと同じくガレージになっているうえ、専門の修理工が常駐。ただし、常駐の修理工はあくまで手助けが必要な時の「ヘルプ」だそうです。

 

場所とお金を節約できる都会の愛車ライフ

ディーラーでの定期点検の相場は約2万ルーブル。時間制ガレージなら、2時間ほどかかるとしても800ルーブル(約1600円)と価格の差は歴然です。また、自分の家で修理するよりも、専門工具が揃っているうえに、終わった後の片付けや掃除の手間が省けるのもとても便利ですよね。

 

安くすませられて、時間の融通もきく時間制ガレージは、忙しいモスクワの人々のライフスタイルに合わせやすくなっていることも人気の理由の一つかもしれません。

故障した家電、自分で直してみませんか? 修理サイト「iFixit」が自己責任ではあるけど、使える

電子機器は、落下や水没、または部品の劣化など様々な理由で壊れます。そんなとき、私たちユーザーは販売元や修理専門プロへ修理費を払うか、新たに購入するしか選択肢はないのでしょうか? わかりやすい修理マニュアルがあれば、自分で修理できることもあるはず。今回は無料で修理方法を教えてくれる「iFixit(アイフィックスイット)」の活用法をご紹介します。

 

「誰でも書ける、作れる」無料のリペアガイド

カリフォルニア州、サンルイスオビスポを本拠地とする「iFixit(アイフィクスイット)」は、世界の電子機器ユーザーが修理・分解情報を無料で提供するコミュニティを運営し、修理に必要な専用パーツと修理キットを販売するベンチャー企業です。最新のデジタルガジェットも分析しており、写真や動画をふんだんに使って分解レポートを公開すると同時に、修理しやすさを10段階で評価していることでも話題となっています。

 

日本のサイトからひらめいた

創業は2003年。創始者のカイル・ウィーンズ氏とルーク・ソウルズ氏が工科大学の学生時代に、落下し故障させてしまった「iBook」の修理を試み、発売元のメーカーが修理マニュアルを提供していないことに気づいたことがきっかけでした。試行錯誤の末、修理に成功したウィーンズ氏は、同様の問題を抱える人々のために「分解・修理方法の共有」と「マニュアル化」を思いついたのです。

 

また、創業初期の分解画像・修理マニュアル公開については、日本で運営されている「KODAWARISAN」というサイトからひらめきを得たそう。ウィーンズ氏は「KODAWARISAN」の運営者とも交流を続けており、2010年には表敬訪問もしています。日本とのつながりがあったとは意外ですね。

購入したモノを自分で修理できるということは長く使えるだけではなく、製品や販売企業への愛着がより深まり、環境保護にも役立つという信念を元に運営され、現在(2018年6月末時点)12か国語に翻訳されるまでに成長しました。

 

iFixitのサイトでは、修理したい製品名やモデル機種を入力すると、これまで投稿された修理や分解のマニュアルが一覧表示されます。ユーザーによって作られたガイドのなかには、文字や写真、動画による説明はもちろんのこと、難易度や、手順、所要時間も書かれており、分解や修理に慣れていない人でも失敗しにくい工夫がなされています。修理に関する疑問があれば、アンサーフォーラムに相談することも可能。

 

修理工具・パーツも揃うストア

修理ガイドページには、必要な工具と部品が一緒に表示され、オンラインストアで注文ができます。工具や部品をどこに使うかも解説されているうえ、購入した工具はサイト上のマニュアル通りの色・形状なので、作業時の間違い防止にも役立っています。修理工具の多くが生涯保証の対象で、検査・整理整頓ツールも充実しており、世界中の一般ユーザーからプロの修理業者まで、多くの人たちから高い信頼を得ています。

コミュニティメンバーとして世界の仲間と”切磋琢磨”も可能!

アカウント登録を行うと、修理分解マニュアルを投稿できるようになります。修理ガイドの書き方や写真の撮り方についてもガイドラインがあるので、要領よく、読み手にとって分かりやすいマニュアルが作成可能。他のメンバーが作ったマニュアルを修正したり加筆したりすることもできるので、世界中のメンバーたちと切磋琢磨しながら、よりレベルの高い所を目指すというのもよいかもしれません。

 

しかし、気を付けておくこともあります。日本からの修理工具やパーツの注文は、現在カルフォルニア州からの国際便のため、現時点では、商品到着まで10日以上かかること、日本においてはユーザー自らが行う分解修理は「メーカー保証対象外」のため、完全に自己責任であることに注意してください。

 

近年、テクノロジーの進化でモノを自分で修理したり、町の修理屋に頼んだりすることが難しくなっています。使っているモノが故障などを起こしたら、製品メーカーに出すほかない現在の状況。それに対して、欧米では修理屋を中心に反対の声が上がっており、「修理する権利」を求める声が高まっています。そのような背景を考えると、iFixitが画期的な存在であることが分かりますよね。同サイトは世の中を変える1つのきっかけになるかもしれません。

傷・カビ・土埃……満身創痍の革靴を手入れするコツ

いよいよ始まる新年度。気持ち新たに、久しぶりに靴の手入れでもしようと思ったら、靴箱にしまっておいた革靴にカビが!  捨てるのはもったいないし、自分で手入れしてみるか。でも、どうやるのが正解なんだろう……。そうだ、ご近所の山田岳人さんは、革靴や鞄の修理をしているユニオンワークス渋谷店で店長をしているって言っていたな。早速、靴の手入れについて教えてもらおう!

 

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお父さんが、なにやら困っているようです。
参田家の人々
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ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。
https://maita-ke.com/about/

革靴のカビを取って、再発を防止する方法を知りたい!

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お父さん「ここのところ毎日同じ革靴を履いていたら、ほかの革靴にカビが生えちゃったんです……。捨てるのももったいないし、なんとか自分でお手入れしたいけど、間違ったケアをしてしまうのが怖いんですよ。これってもう、元には戻らないんでしょうか?」

 


山田さん「毎日同じ靴を履き続けてそのまま放置したりすると、湿気が溜まってカビが生えやすくなるので注意が必要です。1日履いたら2日間は休ませてあげたいですね。自宅でお手入れをするのであれば、薬局で購入できるエタノールで拭き取るといいですよ。また、カビが生えやすい靴底の部分のカビを防止するために、雨に濡れた日は壁に立てかけて保管するのがおすすめです」

 

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お父さん「お気に入りだから、ついつい同じ靴を履いていたけど、毎日履くだけでもカビが生える原因になっちゃうんですね……。月曜日に履いたら、木曜日まで待ったほうがいいなんて知らなかったです。ちなみに、自宅で靴磨きをする場合、どういった道具を揃えておけばいいでしょうか?」

 


山田さん「まずは、「シューツリー」、「馬毛のブラシ」、「豚毛のブラシ」、「靴用クリーム」、「クロス」は、最低限揃えたほうがいいですね。クリームは、靴と同じ色味のものを選びましょう。もしなければ少し薄めの色でもOKですよ。ちなみに、無色のクリームを使って磨くと、つま先やかかと部分の色が自然に薄れて、ヴィンテージ風になります。なので、そういう雰囲気が好きなのであれば、あえて無色をセレクトするのもいいですね」

 

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お父さん「ブラシは、柔らかい毛の馬毛のブラシと、毛が硬い豚毛のブラシの2種類が必要なんですね。クロスは使い古した靴下やストッキング、Tシャツなどでも代用できそう。それに、クリームの色ひとつで靴の風合いが変わるのはおもしろいですね! シューキーパーは、靴屋さんで靴の中に入っているのはよく見るけど、自宅でも必要なんですか?」

 


山田さん「そうですね。靴磨きをする際にシューキーパーを入れると、シワが伸びてクリームが浸透しやすくなるんですよ。サイズのあったシューキーパーを革靴に入れると、保管時にシワが伸びた状態になって、形の補正にもなります。さらに、木の素材が臭いや湿気を吸ってくれるので、消臭やカビ防止にもおすすめですね!」

 

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お父さん「なるほど! 革靴の寿命を伸ばすために、サイズの合ったシューキーパーを持っておくと良さそう。靴磨きって、クリームをどれだけつければいいかとか、正解がわからないんですけど、プロはどんな工程で行っているんですか?」

 


山田さん「まずは、靴にシューキーパーを入れ、馬毛のブラシでホコリを払います。このとき、靴紐は外すと奥にあるホコリも取れますよ。靴紐を通す部分が固定されている『内羽根』タイプは、一番下の穴に通された靴紐だけを残してあげてください。紐を通す部分が固定されていない『外羽根』タイプは、靴紐をすべて外しましょう」

 

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お父さん「僕が持っている革靴は『外羽根』タイプか。確かにきちんと外したほうが隅々まできれいにできますね! こうして見ると、靴底と靴のつなぎ目の部分にもホコリが溜まっている! ちゃんと取り除いてあげた方が良さそうですね」

 


山田さん「ホコリをはらったら、ブラシの表面に5mmほどクリームを付け、表面にクリームを塗っていきます。クリームが多くすぎるとシミになることがあるので靴の内側、履いた時に土踏まずがあたる部分から塗り始めるといいですよ。このとき、靴底と革のつなぎ目にクリームを塗るのも忘れずに。クリームの油分が水を弾くので、雨の日に浸水するのを防げるんです。クリームを塗ったら5分間放置し、馴染んだらクロスでクリームを拭き取りましょう」

 

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お父さん「クリームはほんの少しでいいんですね。自宅で靴磨きというと面倒なイメージだったけど、10分くらいで終わってびっくり。これからは早く家に帰れた日や、休みの日に自分でメンテナンスしてみます!」

 

10分で完結! 正しい革靴の磨き方

①サイズの合ったシューキーパーを革靴に入れる

②靴紐を外し、馬毛のブラシで入念に埃を払う

③靴の内側から靴全体に広げるようにクリームを塗る

④5分放置したら、クロスでクリームを拭き取る

 

定期的な靴磨きが長持ちの秘訣!

今まで「靴磨き」と聞くと、時間がかかるし大変なイメージだったけど、やってみると意外に簡単。山田さんに教えてもらった道具を一式揃えたら、やる気が出てきたぞ。これからは革靴を定期的に磨いて、もっと大事にしていこう!

 

教えてくれたのは……

ユニオンワークス 渋谷店 店長/山田岳人さん
ヒコ・みづのジュエリーカレッジ シューメーカーコースを卒業後、シューズメーカーに3年間勤務。2013年に、革靴や鞄の修理、販売を行うユニオンワークスへ入社。2017年に渋谷店店長に就任する。

日々の「参った!」というお悩みを5分で解決!「参田家(まいたけ)のおうち手帖」

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