【フランス流働き方改革】「水曜休み」「週4日制」がもたらす効能とは?

日本で、今年の「春分の日」は水曜日だったことから、「週5日連続労働はキツイ」、「週休3日にしてほしい」と感じる人が多かったという記事を読み、フランスにおける水曜日について改めて考えました。

 

フランスの幼稚園及び義務教育機関は水曜休み、または水曜午後休みにしており、それに伴って、どちらかの親(大抵は母親)が正社員でも週4日制で水曜休みにしている場合があります。水曜を休みにすることで得られるメリットとは何か? その真相について迫ります。

 

フランスの水曜日は他の平日とちょっと違う

フランスでは、水曜日に公立の幼稚園や小・中学校が半日授業、私立においては1日休校になるため、週4日または4日半制になっています。元々はキリスト教学校修士会(別名ラ・サール会)が木曜を休みに定め、代わりに土曜に授業を行っていたところを(現在は土曜日に授業を行う学校は少数)、1972年に当時の教育大臣が水曜にずらして公立の学校にも適用させたという歴史があります。

 

以降半世紀近くにわたり、学校の水曜休み、または水曜半日休みが定着しました。特に子どもが小さいうちは子どもの休みに合わせ、水曜出勤をしない週4日勤務の社員が一定数いるフランス。全社員が出勤しない水曜には、重要な会議が組み込まれることもなく、社内には若干の余裕が生まれて、個々の仕事に集中できます。

 

このちょっとした余裕がとても重要。ゴールに向けひたすら前進するだけではなく、一歩下がって自分の仕事内容や作業ペースを見直す。そして呼吸を整え、週の後半に向けて新たな気持ちで取り組む。著者は20年間フランスで暮らしてきましたが、このような制度を非常に良いと考えるフランス人をたくさん見てきました。

そして、フルタイム社員にとっての効果は、水曜は早めに帰宅しやすい空気感が生まれることではないでしょうか。水曜の午後に習い事を入れている子どもは多く、普段よりも早く仕事を終えた父親が送迎する姿も珍しくありません。毎週は無理でも、ときに父親が家庭の用事に参加することで、夫婦仲も円満になります。また、普段過ごす子どもの様子を父親が把握できる、家族にとっても大切な時間となります。

「水曜は半日休み」を反映してか、フランスでは映画の公開初日、夏と冬のバーゲンセールの初日なども水曜に設定されています。娯楽やショッピングを楽しむ時間を週末にまとめず、分散させることで消費者が足を運べる選択肢を増やせる、という業者側の狙いがひとつ。また、消費者側にとっても仕事から離れ、気兼ねなく買い物や映画館へ足を運ぶきっかけとなる。そのような社会的風潮がこの国にはすでに存在し、人々の意識にも浸透していると筆者は感じています。

水曜日に休んで生産力をアップ!

週の半ばにワンブレイク挟んだり、社内がフル回転になっていないことで気持ちにメリハリがつき、自分の仕事を見直す、作業ペースを整える、などの余裕が持てる点は大きいと言えるでしょう。そして切り替えができたところで後半に向け、気合を入れ直し、仕事に邁進できるのです。OECD(経済協力開発機構)の最新調査によれば、2015年のフランスの生産性はG7(主要7か国)おいて第2位の高さ(日本は最下位)。水曜日休みと生産性は相関関係があるのかもしれません。

↑G7の生産性ランキング(出典:OECD)

 

また、家族と過ごしたり、娯楽を楽しんだりする時間を週末に集中させず、わずかでも平日に設けることで、仕事からプライベートへの切り替えのタイミングや、バランスが取りやすくなるという考え方もあります。最初はリズムが狂うと感じるかもしれませんが、一度このサイクルに慣れてしまえば、週末は家族サービスで自分の時間が持てないうえにゆっくり休めず、週が明けても疲れが溜まったままで仕事に集中できないなどの悩みからも解放されるかもしれません。筆者は実体験からデメリットはほぼないと感じています。

【北欧からのぞくニッポン】「タダ働きしない」けど休日出勤は好き…? スウェーデン人の自由な“働き方”

店舗の日曜営業が解禁されたフランスで、「社会の後退につながる」と不満の声が上がった――。昨年末、フランスから遠く離れた日本でそんなニュースが話題となりました。フランス人の感覚は、年中無休・24時間営業のコンビニをはじめ休日出勤を当たり前のように受け入れている日本人のそれと正反対に見えます。今回はそんな「働き方」をテーマに、日本人とスウェーデン人を比較してみました。

20180216_suzuki_2 (4)Simon Paulin/imagebank.sweden.se

■スウェーデン人はなぜ「休日出勤」を受け入れたか

フランス同様キリスト教が根付くスウェーデンは、かつて日曜日を休息日、教会に行く日と定めていました。この流れに従って1939年、18時以降の販売を法律で禁止し、土曜日の営業時間を昼までに限りました。ただ、この規制は1950年代に緩和。1972年になって、営業時間の自由化に踏み切りました。

 

お隣フィンランドに比べ、スウェーデンの自由化はかなり早いですね(フィンランドは2015年)。ただ、休日営業がすぐ一般的になったわけではありません。1975年の調査を見ると、日曜日に営業しているスーパーは17%、デパートは22%。社会や時代の流れ、人々のニーズに合わせ、休日営業が徐々に増えていったわけです。

20180216_suzuki_3Simon Paulin/imagebank.sweden.se

 

この流れを後押ししたのが、国際化です。スウェーデンでは経済発展にともない、余暇に海外旅行を楽しむ人が増えました。他国を訪れ、日時を気にすることなく買い物した彼らは「自国でも休日に買い物がしたい……」と考えるようになりました。

 

日本人の心情からすると、「休日に買い物できるのは休日に働いている人がいるからだよね……」とモヤモヤするかもしれません。ただ、スウェーデンは個人主義の国なので、他人の休日出勤に干渉するような意見は出なさそうです。これは、数多くの難民・移民を受け入れて多文化になったことも影響しているでしょう。

 

以上のような経緯で、現在多くの店舗がクリスマスをはじめとした祝日も営業しています。ただ、夜中の12時から朝5時までの深夜営業は特別な理由がない限り、禁止されています。

 

■スウェーデン人が「サビ残」しない理由

スウェーデンのフルタイムは週40時間、年間2080時間です。休日出勤の多い職種はしばしば、シフト制を導入して従業員の総労働時間を短くします。シフト制導入の是非は、夜勤や深夜勤務が健康におよぼす影響などを考慮し、労働組合と雇用主の交渉で決まります。

20180216_suzuki_1 (6)Helena Wahlman/imagebank.sweden.se

 

スウェーデン人は絶対に「ただ働き」(代償のない仕事)をしません。1分たりともムダに働かないのが、スウェーデン人の基本スタンスです。労働時間とそれ以外の時間を分ける考えが浸透しているのです。私もスウェーデンで働き始めたころは、定時になるとさっと帰っていく同僚の姿に“あっぱれ”でした。日本のような「サービス残業」という考えがないのですね。

 

なお、残業には残業手当、休日出勤や夜間労働には「OB(Obekväm arbetstid)手当」と呼ばれる加算手当がつきます。これら労働条件は職種によって違いますが、「手当は必ず付く」「総労働時間は決まっている」の2点は同じ。サービス残業は法律違反となり、労働環境全般を取り締まる国の機関「労働環境局」に厳しく罰せられます。こうした環境のもと、「平日休みで便利がよい」として、休日出勤を好む人もいます。

 

スウェーデン人は、労働者と消費者双方の立場から休日出勤・休日営業のメリット・デメリットを体験し、時代の流れに合わせて働き方を変えてきました。スウェーデン人にとって休日出勤とは、働き方の多様性が根付いた社会における「選択肢の一つ」です。

 

日本でも「働き方改革」という言葉をあちこちで聞くようになりました。自分がどのように働き、どのような社会を望み、どのように生きたいのか真剣に考える時代になったのではないでしょうか。

 

【著者プロフィール】

サリネンれい子

観光・情報ライター。スウェーデンに住んでいるからこそわかる、スウェーデンの旬な情報をお伝えします。デザインやアートから教育、福祉まで幅広いジャンルの情報を伝えるべく、日々精進する毎日。

成功する起業家に必要なふたつの要素

社長という言葉の響き、好きですか?

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起業家とかアントレプレナーはどうですか?

 

次に、ちょっと質問の方向性を変えます。あなたにとって、働くことの目的とは何ですか? そして、今の仕事をしている理由は何ですか?

 

社長まで出世したい:10.8% 楽しい生活をしたい41.7%

公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」、そして一般社団法人日本経済青年協議会が、平成28年度新入社員1,286人を対象に「働くことの意識」に関する調査を行った。

 

この調査には「どのポストまで昇進したいか」という質問も含まれているのだが、社長の椅子を目指しますと答えた人は、10.8%にとどまった。政治家はほぼ誰もが総理大臣を目指すというが、会社に入って本気で社長を目指す人は10人に1人程度の割合だ。

 

もうひとつ目を惹くのは、「働く目的」という質問に対して41.7%の人が「楽しい生活をしたい」からであると答えている。生活の楽しさを感じるための方法論として働くことを思い浮かべる人が10人に4人いるという結果は、とても面白いと思う。

 

実は、社長になるという大きな夢と、楽しく生活するという身近ながらきわめて大切な目的をひとつにまとめる方法がありそうなのだ。

 

キーワードは、“再現性”と“ワクワク感”だ。

 

理科系起業論

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』(山口豪志・著/ポプラ社・刊)はビジネス書だ。でも実際に手に取ってみると、起業というリアルな過程をモチーフにしたRPGの攻略本のように思えて仕方がない。

 

大学時代に昆虫分類学を専攻していた理系の経営コンサルタントである山口氏は、まえがきを「ハチのオスとメスの見分け方」で始める。そして、本書の理系的方向性が次のように記される。

 

この本は、従来のビジネス本とは違う科学的なスタンスを大切にして書かれたものだということを、まず知ってもらいたかったからです。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

では、従来のビジネス本とはどういうものだったか。

 

有名な起業家や経営者の方が書かれた自伝や創業記のサクセスストーリーは、ドラマチックで刺激的で、私も勇気づけられることがたくさんありました。でも、こうも思うのです。

「これって、この人がすごいから成功したんじゃないだろうか」と。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

カリスマ経営者の方法論はインスピレーションを与えるが、誰もがそれを自分という器に落とし込んでまったく同じことができるかと言えば、確かに疑問だ。科学的手法は、再現できてこそ認められる。誰もが再現できる科学的アプローチに基づく起業論。それが本書のテーマなのだ。

 

0 to 100(ゼロ・トゥ・ヒャク)とは

その科学的アプローチについてもう少し触れておきたい。

 

私はこれまで経営コンサルタントとして、あるいは会社で働く一社員として、多くの事業の立ち上げに関わってきました。そこで用いたのは、昆虫研究で培った科学的アプローチです。科学的アプローチとはつまり、仮説を立てて検証し、再現性のある法則を見つけ出すこと。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

“0 to 100”とは、山口氏の方法論における企業の6つの成長段階=フェイズを意味する。本書は、これに従って内容が進み、それぞれのフェイズですべきことが細かく明記されている。目次を見てみよう。

 

・(→0:ゼロマエ)起業前夜

・(0→1:ゼロイチ)顧客の発見

・(1→10:イチジュウ)商品の完成

・(10→30:ジュウサンジュウ)採用と組織づくり

・(30→50サンジュウゴジュウ)新規事業開発

・(50→100ゴジュウヒャク)上場に向けて

 

フェイズは、企業の年齢に置き換えられるかもしれない。幼稚園の年齢の企業と大学生の年齢の企業では、すべきことが違ってくる。

 

科学の再現性とワクワク感をひとつにすると…

前に触れたとおり、本書の大テーマは企業における科学的アプローチだ。でも、その向こう側で脈動しているのは、数字や理論では説明しきれないものかもしれない。

 

事業を始める、事業を大きくするということは、「知らないこと」との出会いの連続です。それは一見すると大変なことに思われますが、とてもワクワクするし、何より「知らないこと」が私たちを新しいチャレンジへと導き、大きく成長させてくれます。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

冒頭の調査結果に戻りたい。

 

「社長になる」という思いは間違いなくワクワクするし、「楽しい生活をしたい」という願望も、小さなワクワクを身近に感じ続けたいということなのだろう。

 

本書を読んで、ものごとの再現性の大切さを確認できた。そして、使われることが多いけれども定義や把握が難しい“ワクワク感”というものの輪郭が少しはっきりした気がしている。いずれも、仕事――日々の勤めであれ、起業というより大きな行いであれ――にとって不可欠な要素であるにちがいない。

 

(文:宇佐和通)

 

【著書紹介】

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0 to 100 会社を育てる戦略地図

著者:山口豪志

出版社:ポプラ社

クックパッド上場、ランサーズ急進を実現した事業戦略家が、会社と事業の成長を6つのフェイズに分類。各フェイズでぶち当たる壁と、乗り越え方を徹底解説します! 創業者ではなく、実務家だからこそわかった超実践的な戦略の数々。 今の課題が明確にし、解決するのに役に立つ、まさにトラブルシューティングのような一冊です。

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