競馬を引退した後はどうなる?競走馬の余生とセカンドキャリア

近年、性別や年齢問わず幅広い層から人気を集める競馬。G1と呼ばれる大きなレースで活躍する競走馬に脚光が当たる一方で、怪我をしてしまったり、結果を出せなかったりして、引退する競走馬もいます。そうした引退競走馬たちのセカンドキャリアを支えるためには、費用面や活用機会の創出などの課題も存在しています。そこで、引退競走馬の保護・支援事業を幅広く展開する、株式会社TCC Japan 代表取締役の山本 高之さんに、引退競走馬を取り巻く状況や、私たちにできる支援の形についてお話を伺いました。

 

 

毎年約5000頭の競走馬が引退する現実

 

日本各地の競馬場で年間を通して競馬が行われていることもあり、毎年多くの競走馬が誕生しています。日本中央競馬会によると、2023年度の生産頭数実績は7796頭と公表されています。その中でも、レースで活躍できる競走馬はごくわずかで、その多くは結果を残せずに引退してしまうと言います。実際、毎年どれくらいの競走馬が引退していくのでしょうか?

 

「毎年変動はあるものの、引退する競走馬の頭数としては、日本中央競馬会に在籍する競走馬だけでも約5000頭にもなると言われています
引退の理由は競走馬によってさまざまです。大きなレースで優勝するような牡馬(ぼば、オスの競走馬のこと)は、価値のある血統を後世に残すべく、父親として繁殖入りするために引退するケースがあります。そして、牝馬(ひんば、メスの競走馬のこと)も母親として繁殖入りするために引退する場合があります。しかし、繁殖入りが引退理由となる馬はほんの一握りです。
多くの馬は、レースでなかなか勝利できない、加齢によって能力が衰える、怪我や病気で次のレースに出走するのが困難であるといった理由で引退する場合が多いのです」(株式会社TCC Japan 代表取締役 山本 高之さん、以下同)

 

毎年多くの競走馬が引退していく中で、気になるのは引退した競走馬たちのセカンドキャリアです。引退した競走馬たちはどのような形でセカンドキャリアを送ることになるのでしょうか?

 

「上記でお話したとおり、優秀な成績を持つ牡馬は父親として、牝馬は母親として繁殖入りするといった進路があげられます。
繁殖入りしなかった引退競走馬の進路としては、乗馬になることが考えられます。一般の方を安全に乗せられるようになるまで、乗馬用のリトレーニングを受けてから乗馬として再出発することになります」

 

引退後にホースシェルターへ入厩(にゅうきゅう)し、基礎的なリトレーニングを重ねていく引退競走馬たち。※写真提供=株式会社TCC Japan

 

繁殖や乗馬といったセカンドキャリアが用意された引退競走馬がいる一方で、そうした進路を迎えられない引退競走馬も現実に存在しています。

 

「競走馬時代の馬主が引退後も馬を所有し続けるケースはあまりありません。そのため、引退後に新たな引き取り手が見つかれば、繁殖や乗馬としてセカンドキャリアを歩むことができるでしょう。
その一方で、引き取り手がなかった引退競走馬は、屠畜(とちく)されてペットフードなどになる場合があります。また、引退した理由が怪我や病気だった場合、手の施しようがないほど重篤な症状で、馬が非常に苦しがっているようであれば、獣医の判断により安楽死の措置が取られることもあります」

 

ペットの殺処分を失くすために。日本と世界の「動物愛護」の現状と私たちができること

 

生涯飼育に掛かる費用は数千万円…
引退競走馬支援で向き合う課題

繁殖や乗馬といった形でセカンドキャリアを歩める馬もいる中で、すべての馬がそのようにすごせるわけではないことは、現実として受け止めなければなりません。とはいえ、できるかぎり多くの引退競走馬たちに、よりよいセカンドキャリアを用意してあげたいもの。そのためには、向き合わなければならない課題も存在しています。

 

「引退競走馬のセカンドキャリアを考えるうえで課題となるのは、まずは費用面です。馬を牧場や乗馬クラブに預けるとなると、飼育する場所代や餌代、世話をするスタッフの人件費などとして預託料というものが発生します。預託料は受け入れ場所により価格は異なりますが、毎月大体10万円~15万円が相場になります。寿命が30年くらいになる馬もいますので、寿命が来るまで預託料を払い続けると数千万円という費用が掛かります

 

それぞれの健康状態に合わせて株式会社TCC Japanが運営するホースシェルターで療養し、次の活躍の場が決まるまでの時間を過ごす引退競走馬たち。※写真提供=株式会社TCC Japan

 

「次に馬が活躍できる場所が少ないことです。繁殖や乗馬以外にも、セラピーホースとして福祉に役立てる、放牧されている馬を鑑賞・撮影するといった観光資源として活用する方法も考えられます。しかし、なかなか活用の幅が広がらず、そういった活用自体も進まない現状です。引退競走馬たちの活躍の場を多く用意してあげるためにも、活用機会について、認知拡大を図ることが大切です

 

※写真提供=株式会社TCC Japan

 

上記に挙げた要点以外にも、「馬を十分に飼育できるだけの場所や、馬を世話するための人材確保にも課題はある」と山本さん。引退競走馬たちのより良い支援の形を探るためには、現実的な問題にも目を向ける必要があります。

 

私たちでもできる引退競走馬の支援方法

馬と直接触れ合うきっかけが増えれば、馬を支援したいと思う気持ちも高まりそう。※写真提供=株式会社TCC Japan

 

引退競走馬を生涯にわたって飼育するための諸課題を解決しようとしても、個人の力でできることには限りがあります。それでも、私たちが支援するとしたらどのようなことができるのか、山本さんにお尋ねしました。

 

「費用面での支援であれば、引退競走馬の支援団体を通して寄付をするといった方法があります。毎月定額で寄付ができるタイプと、その都度寄付ができるものがあり、寄付金は馬の預託料や支援団体の運営費用などに充てられます。
団体によって寄付額の設定はさまざまですが、その都度寄付の場合は一口あたり1000円程度を目安に、毎月寄付の場合は1500~2000円程度を目安に寄付ができます。支援したい引退競走馬がいたら、まずは寄付という形で支援するのはいかがでしょうか」

 

費用としてではなく、牧草や馬が喜ぶおやつなどの差し入れで寄付をする形もあるようです。また、競馬場によっては飲料を買うことで寄付ができる自動販売機が設置されているところも。自分が無理なくできる寄付の形を選んで支援するのもよいですね。

 

「寄付という形でなくても、引退競走馬の現状や社会課題、支援の在り方を知ってもらうことも、支援の一つになると考えています。
その方法としては、引退競走馬と触れ合うイベントや、引退競走馬の支援者同士の交流会などに参加といった方法があります。このような形で、支援者同士が交流できる機会を作り、情報共有することで、支援の輪を広げていくことも大切だと考えています。
引退競走馬について学びを深めたい方向けの勉強会が開催されていることもあります。興味があれば、そうした機会を活用して、知見を広げてみることもおすすめしています」

 

支援団体によっては、ボランティア活動という形で引退競走馬を直接お世話する方法もあるのだとか。寄付、学び、支援者同士の交流、直接的な支援など、引退競走馬たちを支援する方法は、私たちにできる範囲でも数多く存在しています。

 

 

「引退競走馬たちのセカンドキャリアについて語ることを、センシティブな問題として捉える方もいると思います。だからといって、『馬がかわいそうだから』という思いで支援するのは少し違うと感じています。
引退競走馬を支援するのなら、乗馬や触れ合いイベントなどで引退競走馬と関わることで、馬自体を好きになってほしいのです。『好きだから応援したい』という思いで支援したほうが、自分自身も楽しみながら、継続して引退競走馬たちのセカンドキャリアを応援できるのではないでしょうか」

 

好きという気持ちがあってこそ、引退競走馬たちの幸せな余生やセカンドキャリアについてポジティブに向き合えるのかもしれません。まずは馬の魅力を知るところから始めて、「馬が好き」という前向きな思いで引退競走馬たちを支援してみませんか。

 

 

Profile


株式会社TCC Japan 代表取締役 / 山本 高之

2006年1月にITベンチャーを起業。東日本大震災をきっかけに地域の重要性を感じ、生まれ育った滋賀県栗東市へと戻ることを決意。馬のまちならではの地域資源として馬を活用し、「引退競走馬の支援活動」と「馬をパートナーとした社会活動」を通じて、人馬のソーシャルイノベーションに取り組む。「TCC Therapy Park(滋賀県栗東市)」を活動拠点に、引退競走馬の支援活動を行う「TCC 引退競走馬ファンクラブ」の運営や、ホースセラピーなどの社会福祉事業を行う。そのほか、馬糞を堆肥にして育てた野菜を活用した「BafunYasai TCC CAFE(東京都渋谷区)」や、引退競走馬を観光資源として活用する養老牧場「TCC メタセコイアと馬の森(2024年11月正式オープン予定)」を運営する。
TCC Japan
TCC 引退競走馬ファンクラブ

※「ホースシェルター」は株式会社TCC Japanの登録商標です。

平和主義な肉食獣“パンダ”が愛される理由に歴史と生態ウンチクから迫る!

日本人にとってすっかり身近な存在となったパンダ。現在日本には、東京の上野動物園に4頭、和歌山のアドベンチャーワールドに4頭の合計8頭が暮らしています。昨年、上野動物園で生まれ育ったシャンシャンが中国へと渡りましたが、現在でも上野動物園にはパンダに会うため、国内外からたくさんの人が訪れています。私たちはなぜこうもパンダに惹きつけられるのでしょう?

 

パンダの知られざる生態や日本における歴史、現在の“愛で方”まで、教えてくれるのはアドベンチャーワールドの「明浜(メイヒン)」「優浜(ユウヒン)」の名付け親で、パンダライター・イラストレーターとして活躍する二木繁美さんです。

 

もともとは贈り物だった!
パンダが日本にいる理由

まずは、知られざる日本におけるパンダの歴史を辿ってみましょう。

 

日本に初めてパンダがやってきたのは、今から50年以上前の1972年。日中国交正常化による中国人民からの“贈り物”としてカンカンとランランが上野動物園にやってきました。公開初日には、日本初のパンダを一目見ようと2キロ以上の列ができたとも! なぜ初日からここまでの人気が集まったのでしょうか?

 

「実は日本にパンダがやってくる前年、昭和天皇がイギリスのロンドン動物園でチチというパンダをご覧になったと報道されていました。もちろん日本にはまだいない動物でしたし、陛下がご覧になったパンダが上野でも見られる! 新聞で見たパンダをこの目で見てみたい! と、国民の関心が高まったタイミングだったのも影響しているのかもしれませんね」(パンダライター・二木繁美さん、以下同)

 

昭和天皇がパンダブームに一役買っていたとは驚きです。当初は“動物大使”として親しまれていましたが、1981年に中国がワシントン条約に加盟したことでパンダは保護対象となりました。それ以降“贈り物”としての譲渡ができなくなり、今も続く繁殖や研究を目的とした取り組みに変わっていったのです。

 

カンカンとランランに続け!
日本国民に愛されたパンダたち

カンカンとランランに続き、日本でのパンダブームはたびたび訪れます。

 

「その後、ランラン亡き後、上野動物園にはカンカンのお嫁さんとしてホァンホァンが来園。やがてカンカンも亡くなるとオスのフェイフェイが来園し、1986年にメスのトントンが生まれました。トントンの前にチュチュというオスの子どもが生まれていたのですが、わずか43時間で命を終えてしまったため、トントンは待望の子パンダとなり、愛らしい赤ちゃんパンダを一目見ようと、第二次パンダブームが訪れました。

 

その後もトントンの弟・ユウユウが誕生したり、トントンのお婿さんにとユウユウと交換で中国・北京動物園からリンリンがやって来たり、トントン亡き後にはメキシコからシュアンシュアンがやってきたりと、しばらく途絶えることなく上野にはパンダがいました。しかし2008年にリンリンが亡くなると、約3年間上野にパンダ不在の時期が……。

 

しかし、子どもたちが当時の石原都知事に手紙を書くなど地元の人々の熱烈な要望があり、政治上の問題などの課題を乗り越えて、2011年に待望のパンダがやってきます。これが現在も上野動物園で会うことができるリーリーとシンシン。

 

そして2017年に、この2頭の間に生まれたのがシャンシャンです。シャンシャンの誕生により、これまでの歴史の中でもトップと言っていいほどのパンダブームが訪れました。その後、21年には上野で初のふたご、シャオシャオとレイレイが誕生しています」

 

左がシャオシャオ、右がレイレイ。撮影=二木繁美

 

大きなパンダブームを巻き起こしたシャンシャンは、2023年に中国へと渡りました。ちなみに、国内では上野動物園と合わせて、現在2つの施設でパンダが飼育されています。もうひとつの施設、和歌山県のアドベンチャーワールドには、1988年に一度、短期貸出でパンダがやってきていましたが、その後1994年から日中共同繁殖研究がスタート。現在、4頭のパンダが飼育されています。

 

実は、神戸市立王子動物園にもタンタンというパンダがいたのですが、2024年3月末に国内最高齢の28歳でこの世を去りました。ニュースでも取り上げられ、多くのファンがSNSで思い出を語っているのを目にした人も多かったでしょう。阪神淡路大震災の復興のシンボルとして2000年に日本へやってきたタンタン。約24年間、たくさんの人を癒してくれたのは間違いありません。

 

面白い生態に驚く!
パンダトリビア5選

ここからは意外なパンダの生態について、教えていただきましょう。

 

1.最高齢のパンダは、38歳!

「野生パンダの寿命は、だいたい20年。飼育されているパンダは、30歳を超える個体もちらほらいます。これまでの最高齢は38歳4ヶ月。香港のオーシャンパークで2016年に安楽死で亡くなったジアジアと、シャンシャンの曽祖母でもあるシンシンです。パンダの年齢を人間に例える場合、約3倍くらいになるので、人間でいうなら114歳くらいですね。2024年3月31日に亡くなった神戸市立王子動物園のタンタンは、その時点で国内最高齢の28歳でした。

 

その後のファンの悲しみは深く、全国から3000以上もの献花が届いたと聞いています。あまりの多さに、園も受付しきれなくなり、途中で郵送での受付をストップしたほどです。私も何度か献花台を訪れましたが、あふれかえる花束やファンからの絵やメッセージを見て、“タンタンお嬢様”の存在の大きさをあらためて実感しました。」

 

2021.03月撮影のタンタン。撮影=二木繁美

 

2.パンダはもともと肉食だった

「パンダは主に笹を食べていますが、実は先祖は肉食動物。パンダって実は800万年以上前から生存していて、スペインでも化石が見つかっているんです。一見のんびりしていそうなのに、これだけ生存しているってすごいですよね。パンダは争いが苦手で、他の動物との争いを避けるために、あえて他の動物が食べない竹を食べて生き延びてきたと言われています。

 

一般的な草食動物は、草を消化・吸収するために腸が長かったり、胃が複数あったりしますが、パンダの腸は肉食動物と同じ構造。そのため、竹がほとんど消化・吸収されないまま排出されてしまうんです。なので、起きている間はずっと竹を食べ続けなければ生きていけない……。また竹は、100年に一度ほどの周期で花を咲かせて突然枯れる植物で、この原因も解明されていません。そのため、パンダもたびたび絶滅の危機にあっているんです。さまざまなリスクを負いながらも竹を食べているのを見ていると、とてもかわいらしく感じてしまいますよね」

 

3.ウンチは草原のようないい香り

「竹がほとんど消化されずに出てくるウンチは、雨あがりの草原のようないい香りがするんです(笑)。私も飼育員さんにお願いして、ウンチのにおいを嗅がせてもらったことがありますが、クサいとは感じなかったですね。イベントなどで、パンダのウンチが展示されていることもあるので、ぜひニオイを嗅いでみてくださいね」

 

パンダのお尻の下にあるのがウンチ。たしかに、ほとんど竹や笹が残っている……。撮影=二木繁美

 

4.赤ちゃんパンダがピンクになるのは、親パンダの唾液

「パンダの赤ちゃんを見ると、毛の白い部分がほんのりピンク色。これって実はお母さんパンダの唾液によるものなんです。赤ちゃんの頃のシャンシャンは『どれだけ舐めたんだろう?』と思うくらいピンク色でした。母の愛がピンク色になってあらわれているんですね」

 

5.茶色のパンダがいる!

「パンダといえば黒と白ですが、黒の部分が茶色になっている野生のパンダが中国で発見されています。茶色いパンダは1985年以降5頭が確認されています。そのうちの1頭チーザイは、親から離れてしまい保護された個体。現在飼育されている茶色いパンダは、このチーザイ1頭のみです。一般公開されると大変珍しいパンダということで、中国内でも話題になりました。

 

実は、パンダには『四川(しせん)ジャイアントパンダ』と『秦嶺(しんれい)ジャイアントパンダ』の2種類がいることがわかっています。日本の動物園で見られる個体は四川パンダで、秦嶺パンダはその亜種。先ほどのチーザイも秦嶺パンダで、よく見ると顔が違うんです。四川パンダは顔が長くて熊に似ています。秦嶺パンダは口が短く、熊と言うよりは猫に似ているそうですよ」

 

日本だけじゃない!
世界に広がるパンダ人気

昨年中国へと渡ったシャンシャンですが、シャンシャンを追いかけて中国・雅安碧峰峡基地まで行く日本人がたくさんいるそうです。二木さんもその一人。私たちをそこまでさせるシャンシャンの魅力は、どこにあるのでしょうか?

 

「シャンシャンは、ユウユウ以来29年ぶりに日本で生まれ育ったパンダ。シャンシャンがここまで人気になった理由としては、リーリーとシンシンの自然交配で授かったということや、SNSの存在も大きかったと思います。

 

シャンシャンが生まれた2017年の流行語は『インスタ映え』で、SNSも全盛期。ファンはもちろん、上野動物園も積極的に情報を発信していたんです。当時は、ライブ配信もしていましたから。たくさんの人たちが自分の子供を見るような感覚で、シャンシャンの誕生から成長を一緒に見守ってきた背景もあるのかもしれません。だからこそ、中国でどんな暮らしをしているのか、気になって会いに行く。楽しく過ごしている姿を見て安心したい気持ちもあるかもしれませんね」

 

中国でのシャンシャン。撮影=二木繁美

 

もはやアイドルのような存在になっているシャンシャン。熱心なファンが多いのは、日本だけなのでしょうか?

 

「日本人とアメリカ人には、パンダ好きが多いらしいですね。アメリカでは1936年に赤ちゃんパンダのスーリンが公開されて、パンダブームが起きており、今でもパンダは人気です。最近では本家である中国や、韓国でもパンダブームが起きています。外国人観光客が、パンダを目当てに日本の動物園を訪れるケースも増えているんですよ。

 

ちなみに韓国では2020年に初の自然繁殖でフーバオというパンダが生まれたのですが、今年中国に渡ったんですよね。現地では、お別れ前に会いたいと観覧が6時間待ちになるほどに。ちょうどコロナ禍に生まれたこともあって、韓国のみなさんに癒しを届けた存在だったのでしょうね」

 

午前中が狙い目!?
パンダを愛でるコツ

今や全世界で愛されているパンダ。これから初めて見に行く人はどんな準備をしていったら良いのでしょうか? 二木さんにパンダに会いに行く際のコツを伺いました。

 

「昼間は寝ていることも多いので、できればご飯を食べている時間帯に会いにいってほしいですね。上野動物園であれば、開園してすぐの午前中はご飯を食べていることが多いので、早めの時間に行くのがおすすめです。

 

ふたごの子パンダの観覧列は大行列で、平日でも1時間以上の待ちになっていることもあるので、時間に余裕を持っていくのが良いでしょう。親パンダは比較的スムーズに会えるので、とにかくパンダを見てみたいという方は、まずは親パンダに会ってみてはいかがでしょう」

 

食事中のシンシン(上野動物園)。撮影=二木繁美

 

ぜひ自分の目で、その愛らしさを確かめてみてください。

 

パンダを通して
環境保護にも目を向けて

最後に、二木さんがパンダを愛でるなかで感じたこと、これからパンダのために取り組んでいきたいことを伺いました。

 

「私自身、仕事で疲れきっていた時にパンダと出会い、そのかわいさにたくさん癒してもらいました。パンダは人間たちが保護をしてきたことで少しずつ個体数が増え、絶滅危惧種ではなくなったものの、まだまだ地球環境問題の影響を大きく受けている動物です。私もパンダに会いにいくうちに『パンダが暮らしやすい環境を実現したい』と考えるようになりました。よりよい地球環境を意識すれば、パンダも人間も快適に過ごせる地球になるはず。ちょっとでも地球にいいこと、パンダにいいことをしていきたいですね」

 

まるでぬいぐるみ!? 愛らしい座り方のタンタン(神戸市立王子動物園)。撮影=二木繁美

 

「動物園で売上の一部がパンダの保護に使われる『パンダドネーション』のグッズを買ったり、寄付をしたりすることで、パンダを保護する。それは、地球環境を守ることにもつながると思うんです。『地球のために』って言われると、そんな大それた活動はできないよ、と腰が引けてしまいますが、動物園で見たパンダたちが過ごしやすくなるために良いことをしようと思えば、私たちの生き方もちょっと変わってくるかもしれませんね」

 

Profile

パンダライター / 二木繁美(にき・しげみ)

パンダがいない愛媛県出身で日本パンダ保護協会会員。パンダ好きのフリーライター&イラストレーター。アドベンチャーワールドのパンダ「明浜」と「優浜」の名付け親。グラフィックデザイナーからKADOKAWAの地域メディア編集長を経て、現在に至る。一眼レフを使用し、多いときには1度に1700枚ほどのパンダの写真を撮影。マニアックな写真と観点からパンダの魅力を紹介する著書『このパンダ、だぁ~れだ?』(講談社ビーシー)が発売中。
HP
Twitter(X)

可愛すぎて息ができない! 『砂漠の天使 スナネコ』に身も心も癒やされまくり!!

最近SNSを騒がした「スナネコ」をご存知でしょうか? 猫よりもちょっと横広なお顔がとってもキュートな「世界最小の野生ネコ」が、これでもか! というほど載っている写真集を見つけてしまいました!!

 

 

今回は2020年3月に那須どうぶつ王国と神戸どうぶつ王国にやってきたスナネコと、そこから繁殖した子スナネコたちがこれでもか! と掲載された『砂漠の天使 スナネコ』(那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国・協力/学研プラス・刊)をご紹介していきます。

 

とりあえず、このかわいさを見てください!

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

わーーー!!!!! 天使!!!!

 

「砂漠の天使」と呼ばれているのも納得なのですが、こんなモフモフが砂漠にいるんですか? と思ってしまいますよね。主な生息地はアフリカ北部、西アジア、中央アジアの砂漠地帯。かわいい見た目をしていますが、ネズミ・昆虫・ヘビ・トカゲあたりが主食なので、動物園で飼育されている子たちも毎日生肉を食べているそうですよ。

 

『砂漠の天使 スナネコ』には写真だけでなく、スナネコを飼育している那須どうぶつ王国と神戸どうぶつ王国の飼育員さんの対談も掲載されているのですが、最初のころは警戒心が強く近づくだけでも「シャーー」と言われていたそうです(笑)。また生肉を食べる様子は「いかにも肉食獣だな」と思うような食べっぷりなんだとか。ただただ可愛いだけの子かと思ってしまいますが、性格や生態を知ると面白いですね。

 

どうして飼っちゃダメなの?

可愛くて、見ているだけでも癒されてしまうスナネコですが、ペットには向きません。そもそも、単独で生活する野生動物のため、人間との共同生活に慣れる性格ではないというのはもちろん、ペットに向かない理由はそれだけではありません。

 

その可愛い外見から、ペットにしようとする人が増えると、密猟などにより絶滅してしまう日がくるかもしれません。

(『砂漠の天使 スナネコ』より引用)

 

野生に暮らしているスナネコたちの視点で考えてみれば、人間の「かわいい〜」という感情だけで勝手に注目されてしまって、自分たちの暮らしが一変してしまう危険がはらんでいるんですよね。

 

動物園なら会えるよ!

写真集は穴があくほど見まくった! どうしても動くスナネコを愛でたいのだ! という方は、動物園に行くのはどうでしょうか。関東近辺なら栃木県にある「那須どうぶつ王国」、関西近辺なら兵庫県にある「神戸どうぶつ王国」でスナネコたちと会うことができます。2つの動物園合わせると10匹のスナネコがいるので、自分の推しを作って成長を見守るのも楽しいかもしれませんね。

 

私は、那須どうぶつ王国にいるオスの「シャリフ」推しです(笑)。那須どうぶつ王国のYouTubeでも見ることができますよ。

 

車寅次郎を彷彿させるような四角い顔がたまりません。『砂漠の天使 スナネコ』には10匹の名前と性格が写真と合わせて掲載されているので、写真集でたっぷりと予習をした上で、アイドルに会いに行くかのような感覚で楽しむことができると思います。

↑那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国で暮らすスナネコたちの家系図

 

写真集で癒されながら、「かわいい」だけで終わらせず人間と共にこの地球で生きる動物たちの未来についても考えてみるきっかけにしてみてくださいね!

 

スナネコは野生動物です。 とても可愛らしい動物ですが、 牙も鋭く気性も荒く、 ペットには向きません。

 

【特別公開! 本誌未公開カット(画像をタップすると閲覧できます)

 

 

【書籍紹介】

砂漠の天使 スナネコ

協力:那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国
発行:学研プラス

“砂漠の天使”として話題の世界最小級の野生ネコ、スナネコの写真集が登場!那須どうぶつ王国・神戸どうぶつ王国で生まれた赤ちゃんの成長記録を中心に、スナネコの魅力が詰まったベストショットを収録。野生の生態や動物園の裏側がわかるコラムも!

楽天koboで詳しく見る
楽天ブックスで詳しく見る
Amazonで詳しく見る

 

メスの蚊が卵のために人間の血を吸っているとき、オスの蚊たちは何をしているんだろう?

夏場に多くの人を悩ませる「蚊」。夜中寝ているときに耳元でブンブンと音を立てて飛んだり、いつの間にか人間の身体から血を吸って、その証としてかゆみを残していく。指と指の間なんて刺されると意外と厄介だ。

血を吸うのはメスの蚊だけ

そんな迷惑な蚊だが、血を吸うのはメスだけというのは結構知られていること。蚊は、普段は花の蜜や植物の汁を吸って生きているが、産卵の時期になると栄養補給(おもにタンパク質)を行うために、人間や動物の血液を吸うのだ。ただ血を吸っているのではなく、彼らにもそれなりの理由がある。

 

産卵のため、ということなので、血を吸うのはメスの蚊だけ。次世代の子どもたちのために、手で叩かれて潰されてしまったり、蚊取り線香などにやられてしまう危険性を顧みず、人家に侵入して血を吸うメスの蚊。そう思うと、ちょっとくらい血を吸われてもいいかな、なんて思ってしまう。

 

■じゃあオスの蚊は何をやっているの?

生き物の死にざま』(稲垣栄洋・著/草思社・刊)は、地球上の生きものたちが、どのように生き、どうやって死んでいくのかについて書かれた書だ。そのなかに「アカイエカ」の話が出てくる。アカイエカは、いわゆる人家に侵入してくる蚊だ。オスの蚊は、いったい何をしているのか。それについての記述がある。

 

 卵を産まないオスの蚊は危険を冒して、人間や動物の血を吸う必要はない。
 家の外では、無数のオスの蚊が集まって飛びながら、蚊柱を作っている。オスの蚊は集団で羽音を立ててメスの蚊を呼び寄せ、蚊柱にやってきたメスの蚊はその中からパートナーを選び、交尾をするのである。そして交尾を終えたメスの蚊は決死の覚悟で家の中へと向かっていくのである。

(『生き物の死にざま』より引用)

 

オスたちは、メスに気に入られるために集団で飛び、お目当てのメスの蚊に気に入られようと頑張っているようだ。

 

オスの蚊が蚊柱を作っているということは、公園などで見かけるあの蚊柱の中に突っ込んでいっても、刺される心配はないと言うことなのだろうか。まあ、蚊柱に突っ込んだところで何のメリットもないのでやらないとは思うが、見かけても「蚊に刺されちゃう!」と思う必要はないのだろう。

 

固い絆で結ばれる(?)運命のチョウチンアンコウ

深海でひっそりと生活しているチョウチンアンコウ。頭の先からぶらさがっている発光器官が提灯のようなのでそう呼ばれているが、オスのチョウチンアンコウの死にざまというのはなかなか印象的だ。

 

チョウチンアンコウはメスの体長が40cmほどなのに対し、オスの体長は4cmほど。とても小さい。そして、オスは受精のためにメスの身体に噛み付き、そのままで一緒を終える。栄養分はメスの血液から吸収して生きる。究極のヒモ生活だ。

 

    それにしても、チョウチンアンコウのオスのヒモ生活は徹底している。
 メスの体についたオスは、メスに連れられていくだけで、自分で泳ぐ必要はない。そのため、泳ぐためのひれは消失し、餌を見つけるための眼さえも失ってしまう。それだけではない。メスの体からオスの体に血液が流れるようになれば、餌を獲る必要もないので内臓も退化する。そして、メスの体と同化しながら、子孫を残すための精巣だけを異様に発達させていく。価値あるものは精巣だけというありさまなのだ。

(『生き物の死にざま』より引用)

 

よく男性は、ヒモ生活に憧れるなんて話もあるが、チョウチンアンコウを見ていると、あんまりうらやましい感じはしない。しかし、パートナーを見つけることが困難な深海で確実に子孫を残すため、チョウチンアンコウのオスはこのような生き方を選択したのだろう。ある意味、自分たちの子孫のためだけに生きるという男らしい生きざまとも言えなくもない。

 

変わった生き方もそれなりに理由がある

本書にはそのほかにもさまざまな生き物の死にざまが登場する。人間から見れば、ただの虫だったり魚だったりの一生の話だが、彼らにとってみれば、そういう死にざまになったのにはそれなりに理由があることがわかる。

 

道ばたでひっくり返っている蝉、大量に卵を産むマンボウ、道路を横切って車にひかれている姿をよく見かけるヒキガエルなどなど、なぜそんなことになったのかが、本書を読むとわかるだろう。理由のない「死にざま」はないのだ。

 

【書籍紹介】

生き物の死にざま

著者:稲垣栄洋
発行:草思社

すべては「命のバトン」をつなぐためにーゾウ、サケ、セミ、ミツバチ…生命の“最後の輝き”を描く哀切と感動の物語。

楽天koboで詳しく見る
楽天ブックスで詳しく見る
Amazonで詳しく見る

 

どんな専門書よりも犬と生きることが理解できる――馳星周『ソウルメイト』は犬を飼いたいと思う人の必読書だ

“犬の十戒”をご存じだろうか? インターネット上で広く世界に伝わっている有名な詩で、原文は英語で作者は不明、犬を愛する人々が何度も何度も読み返しては、飼い主のあるべき姿を模索しているのだ。

 

馳星周氏といえばノワール小説の旗手だが、犬のために東京から軽井沢へ引っ越してしまうほどの愛犬家としても知られている。『ソウルメイト』(馳星周・著/集英社・刊)は、犬と生きる意味を私たちに教えてくれる家族小説だ。7つの犬種と7つの家族の心温まる物語が収められているが、そのイントロに出てくるのが“犬の十戒”だ。

 

 

馳星周・訳“犬の十戒”

1 ぼくは10年から15年ぐらいしか生きられないんだよ。だから、ちょっとでも家族と離れているのは辛くてしょうがないんだ。ぼくを飼う前に、そのこと、考えてみてよね。

2 父ちゃんがなにをして欲しがってるのか、ぼくがわかるようになるまでは忍耐が必要だよ。

3 ぼくのこと信頼してよ。ぼくが幸せでいるためには、みんなの信頼が必要なんだから。

4 長い時間怒られたり、罰だっていって閉じ込められたりするのはごめんだよ。みんなには仕事だとか遊びだとか友達がいるでしょ? でも、ぼくには家族しかいないんだよ。

5 いっぱい話しかけてよ。人間の言葉はわからないけど、話しかけられてるんだってことはわかるんだ。

6 ぼくにどんなことをしたか、ぼくはずっと覚えてるからね。

7 ぼくをぶつ前に思い出してよ。ぼくはみんなの骨を簡単に噛み砕けるんだよ。でも、ぼく、絶対にそんなことしないでしょ?

8 言うことを聞かないとか、頑固になったとか、最近怠けてばかりだとか言って叱る前に、ちょっと考えてよ。食事が合ってなかったのかも。暑い中ずっと外にいて体調が悪くなったのかも。年をとって心臓が弱くなってるのかも。ぼくの変化にはなにかしら意味があるんだから。

9 ぼくが年をとってもちゃんと面倒見てね。みんなもいつか年をとるんだからさ。

10 ぼくの嫌なところに行くときは、お願いだから一緒にいてよ。見てるのが辛いとか、見えないところでやってとか、そういうことは言わないでよ。そばにいてくれるだけでいろんなこと、頑張れるようになるんだ。愛してるよ。それを忘れないでね。

(『ソウルメイト』から引用)

 

犬を飼いたいと思ったら、まず、この犬の十戒を守れるのか、家族でよく話し合う必要があるだろう。

 

 

最高のソウルメイトと出会うために

犬の十戒を守ると誓ったら、次は犬種選びだ。本書には、チワワ、ボルゾイ、柴、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ジャック・ラッセル・テリア、バーニーズ・マウンテン・ドッグという7種の犬が登場する。

 

犬を扱った小説を私はこれまで何冊も読んだが、犬種の特徴、性格がそれぞれのストーリーの中で、さりげなく、しかし的確に描かれていると感じたのは、この本がはじめてだった。七種の犬と、彼らと暮らす人間たちが織り成す物語を読んでいると、この犬種を飼ったらこんな生活になるかもと疑似体験ができてしまうのだ。

 

犬種選びはとても重要だと思う。住んでいる環境、家族構成などによってベストな犬は違ってくるからだ。

 

 

ダルメシアンか、ラブラドールか?

わが家の場合はラブラドール・レトリバーを選んだ。が、そもそもは『101匹わんちゃん』が大好きだった当時6歳の娘は、ダルメシアンを飼いたいと言い張っていた。しかし犬にとても詳しい知人が「ダルメシアンは猟犬だから全速力で走るのが好きな犬。映画の中でも走るシーンが多かったでしょ? 都会で飼うのは犬のストレスがたまるし、しかも子どもにひとりで散歩させるのは難しいと思う。妹として犬を飼うならラブラドールの雌にしなさい、きっといい相棒になれるから」とアドバイスしてくれたのだ。

 

それで娘を説得してラブラドールを家族の一員として迎えたが、これは大正解だった。社交的で温厚で、ぼんやりとした妹犬はどんなときも、一人っ子の娘を姉として慕い、寄り添い、支え続けて十数年を共に過ごし、共に成長してこられたのだ。

 

いっぽう、もしも私たち家族が大自然の中で暮らしていて、ノーリードで自由に散歩ができる環境だったならば、ダルメシアンは最高の家族の一員になっていたに違いないとも思うのだ。

 

 

人間を癒してくれる愛すべき犬たち

本書を読んでいると、言葉を発しない犬が、家族の心情をとてもよく理解し、必要なときにそっと寄り添ってくれることがわかる。

 

「チワワ」は不治の病に冒された妻が、ワンマンな夫に遺していく唯一の家族。大型犬しか犬と思っていなかった夫が、小さなチワワのつぶらな瞳に救われていく。

 

「ボルゾイ」は継父の犬で、息子の言うことはまったく聞かずにときには牙をむいていた。が、ある日、大切な家族を犬が自らの意思で勇敢に救い出すことになる。

 

「柴」は震災で命を落とした母の犬。警戒区域で野犬となったことを知った息子がボランティアに参加して大切な家族の一員を捜しに行く。

 

「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」は前飼い主に虐待を受け、捨てられた犬で人間を恐れていた。新しい家族に迎えられてもなかなかケージから出てくることはできずにいた。

 

「ジャーマン・シェパード・ドッグ」は引退した警察犬。その飼い主が、ある日、登山で犬が怖くてたまらない女性と出会い、恋がはじまる。

 

「ジャック・ラッセル・テリア」のしつけが出来ず、困り果てた都会暮らしの母子が、軽井沢に住む別れた夫に助けを求める。

 

「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」は病に冒され余命がわずかだと宣告された夫婦の愛犬。友人の別荘を借り、残された日々を大自然の中で過ごすことになる。

 

どの物語も、心にじんわりと響き、「ああ、犬と一緒に生きるってなんて素敵なんだろう」と思わせてくれる。愛犬家はもちろん、犬を飼ったことのない人にも、ぜひ読んでほしい一冊だ。

 

【書籍紹介】

ソウルメイト

著者:馳星周
発行:集英社

人間は犬と言葉を交わせない。けれど、人は犬をよく理解し、犬も人をよく理解する。本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ。余命わずかだと知らされ、その最期の時間を大切に過ごす「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」、母の遺した犬を被災地福島まで捜しに行く「柴」など。じんわりと心に響く、犬と人間を巡る7つの物語。愛犬と生きる喜びも、失う哀しさも包み込む著者渾身の家族小説。

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る

【可愛すぎる動物動画】手を差し伸べるだけが教育じゃない!? 子猫を助ける親猫の姿に学ぶ人間たち

世界中の面白動画が集まるYouTube。ネットサーフィンならぬ“動画サーフィン”をしていたら、いつの間にか何時間も経ってしまったという人も多いだろう。この記事では、記者が“動画サーフィン”をして見つけ出したとっておきの“可愛い動物動画”を紹介。この動画ならば1つ見るだけで満足してしまうかも!?

出典画像:YouTubeより

 

・Mama Kitty’s Rescue

投稿者:TheLilyot

 

「Mama Kitty’s Rescue」という動画には、木に登ったはいいものの降りられなくなってしまった子猫が登場。わが子を懸命に助けようとする親猫の姿を、世界中の視聴者が見守った。

 

動画の冒頭には、木の間で前足と後ろ足を必死に突っ張り「ニャー」と鳴き続ける子猫が登場。今にも落ちそうな体勢で、助けを呼んでいるようにも見える。すると地面から見上げていた親猫が、するすると木を登って子猫のもとへ。首根っこをくわえて、子どもの体勢を立て直した。

出典画像:YouTubeより

 

その後子猫は、地力で木を降りて地面に着地。親猫が救助を完遂したわけではなかったが、視聴者からは「きっと子猫に“木の降り方”を教えたんだよ!」「人間の親も、この親子から学ぶことは多いはずだ」「どっちも助かってよかった… 子猫も木の降り方を覚えたみたいだし次は安心だね」「助けるだけが教育じゃないんだな」と称賛の声が。同動画は世界中で600万回以上再生され注目を集めている。

 

そのほか、「猫ってこんなに木登りが得意なんだな」といった驚きの声が。ひょっとしたら親猫も、このような失敗を経て木登りを覚えたのかもしれない。

表情、行動、鳴き声そして寝姿からねこの気持ちを理解してみる――『ねこ語辞典』

しおちゃんというにゃんこをご存知だろうか。飼い主と完全に会話を成立させる様子を撮影したさまざまな動画が多数上がっている。その会話力は「ご飯」とか「おはよう」に始まり、「お帰り」はもちろん、「お買い物」とか「二人の時間」、そして「むかつく」といった言葉をシチュエーションごとに絶妙のタイミングで、ものすごくかわいらしい声に乗せて繰り出す。

 

筆者もわんことの会話を成立させながら日々を送っているが、しおちゃんの会話力とボキャブラリー、そして「こう言うと相手が喜ぶだろうな」というような読みの能力に驚くばかりだ。

 

 

人語を操るペットさんたち

ほかのにゃんこたちについても調べてみた。すると、ひたすら“Oh, long Johnson”って言い続ける子、飼い主の質問に“Right”や“Yes”とか“No”で返す子、お風呂にいれようとすると人間と同じ形の口で「ノォーッッッ!」と叫ぶ子など、心和む動画がいくつも見つかった。

 

一方、わんこの発言力もなかなかだ。お風呂に入れようとすると(にゃんこもわんこも、お風呂嫌いタイプは必ずいる)「なんでやねん!」とツッコミを入れたり、飼い主に向かって“I love you!”と叫んで見せたりと、にゃんこたちに劣らない。

 

 

愛情ホルモンで身も心も健やかになろう

にゃんこであってもわんこであっても、一緒に暮らしているとオキシトシンというホルモンが分泌されることがわかっている。“愛情ホルモン”という別名がある物質だ。

 

オキシトシンは脳内ホルモンの一種で、ペットに愛情を感じたり、触れ合ったりすることで分泌が促される。免疫力を上げ、血管や皮膚を修復する作用があると言われている。さらにはナチュラルキラー細胞を増やす働きもあり、これがガン細胞の減少につながるらしい。

 

今回紹介したい本は、飼っている人にも飼っていない人にも役立つ超実用系辞典だ。言葉=鳴き声や鳴き方だけではなく、多角的なアプローチによって円滑なコミュニケーションを実現するための強力なツールになってくれるにちがいない。

 

 

お互いについてよりよく知るための一冊

ねこ語辞典』(今泉忠明・監修/学研プラス・刊)は、ねこ好きが情熱や思い込みを推進力に書き切ったタイプの本ではない。監修者の今泉先生はお父様とお兄様も動物学者という家系で、専門は哺乳類を主とする分類学と生態学だ。

 

まえがきに記してある文章を紹介する。

 

人は言葉を持ち、言葉で気持ちを伝えます。猫の伝え方は、当然それとは異なります。しぐさ、表情、鳴き声、ときには寝姿など、いろいろな方法で気持ちを表しているのです。それらのすべてが、猫が発する「ねこ語」になります。

『ねこ語辞典』より引用

 

にゃんことの関係においても、ボディーランゲージとか空気を読む姿勢は大切なのだ。

 

 

言葉だけじゃ、もの足りない

章立ては以下の通り。

 

・はじめの予備知識7か条

・表情を読み取ろう

・姿勢から読み取ろう

・しぐさから読み取ろう

・寝姿からわかる猫の気持ち

・鳴き声からわかる猫の気持ち

・行動をチェックしよう

・飼い主さんへの接し方を観察!

・猫どうしのコミュニケーションを見てみよう

 

筆者が一番気になるのは、「鳴き声からわかる猫の気持ち」だ。この章を読むだけでもかなりの情報を得ることができる。

 

【ニャー/ニャオ】NYA/NYAO

「ニャー」「ニャオ」と、音の長さや高音、低音など、バリエーションの違いはありますが、一番耳にする鳴き声です。これは、もともとは子猫が母親を呼ぶときの鳴き方。「ここに来て」「おなかが減ったよ」など、子猫は母猫の注意を引くために鳴きます。

『ねこ語辞典』より引用

 

野性の猫は、大人になるとそれほど鳴かなくなるという。対して飼い猫はいつまでも子猫気分が抜けず、飼い主を母親のように思うので、要求があると鳴いて合図を送るらしい。「ご飯」とか「おはよう」といった人語に聞こえる鳴き声は、このジャンルに属するもののようだ。

 

行動から読み解く気持ち

本能による行動も、気持ちを読み取るヒントになる。

 

人の目から見ると不思議に思える猫の行動も、猫なりの理由があります。その理由を考えることで、ねこ語を理解することができます。猫の行動から気持ちを理解するためには、まず、その行動が「本能」によるものなのか、「学習」によるものなのかを判断します。

『ねこ語辞典』より引用

 

においを嗅ぐ。毛づくろいをする。飼い主の指や手を舐めたりチュパチュパしたりする。そして、スリスリする。にゃんこたちの行動ひとつひとつにもきちんとした理由がある。8項目にわたって解説されるよくある行動についても、知識を整理し、深めることができる。併せて紹介されているQ&Aにも、「なぜ高いところに乗りたがるのか」「夜中に突然走り出すのはなぜか」「テレビを夢中で見るのはなぜか」など、知っているようで知らないにゃんこの行動を理解していく過程で役立つ情報を楽しく読める。

 

 

にゃんこ同居の可能性

「なでなでしてたらいきなり嚙みつかれた」「夫婦喧嘩を仲裁する」「飼い主の邪魔をする」といったありがちな行動の理由もわかりやすい言葉で明らかにされる。どの章のどの項目も、にゃんこと人をつなぐノウハウが満載されている。わんこしか飼ったことがない筆者も、すごく前向きに、にゃんこ同居の可能性を考え始めている。にゃんこが加われば、一緒に暮らすみんなのオキシトシン分泌量がさらに増えていくだろう。

 

筆者は日本語と英語、そしてイヌ語のヒアリングができる。この本でネコ語も勉強した。というわけで、ビギナークラスとはいえ、マルチリンガルということでよろしいでしょうか。

 

【書籍紹介】

ねこ語辞典

著者:今泉忠明
発行:学研プラス

しぐさから猫のきもち=「猫語」を読みとって、猫ともっと仲良く、幸せに暮らすための本。飼い主さんも、これから飼いたい人も楽しめる1冊です。写真を多用したビジュアルページでは、SNSで人気の猫も登場します。

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
Bookbeyondで詳しく見る

 

ああ勘違い。ハリネズミは○○○だった!?――『ウソナンデス ~ぼくたち、かんちがいされています!~』

僕は、飲み会などでみんなでワイワイするときに、動物雑学を話すことが多い。元々動物に関する雑学が好きということもあるが、話題としておもしろく誰も嫌な思いをしないので、かなり重宝する。

 

そんな動物小ネタだが、間違ったものが流布していることが多い。『ウソナンデス ~ぼくたち、かんちがいされています!~』(今泉忠明・著/学研プラス・刊)には、「勘違い」されている動物について解説された書籍だ。

 

 

「マンボウはひ弱」はデマ?

たとえば、すぐ死ぬことで一時期話題になった、変な魚「マンボウ」。まっすぐにしか泳げないため水族館では壁にぶつかって死ぬ、寄生虫を除去するために水面をジャンプしたら死ぬ、目に水の泡が入って死ぬなどなど。かなりひ弱なイメージだ。しかし実際は違うようだ。ほとんどがインターネット上のデマらしい。

 

実際に強い魚ではなく、水族館での飼育下ではストレスにより死んでしまうこともあるようだが、自然の環境ではそれほど死なないそう。ただし、一度に3億個の卵を産み、大人になるのはそのうちの数%なので、生き残るための力は弱いのだろう。

 

 

ハリネズミとハリモグラの微妙な関係

本書を読んでおもしろかったのが、「ハリネズミ」だ。硬い針のような毛を持つ、かわいらしい動物。ペットとしても人気が高い。だが、このハリネズミ、ネズミの仲間ではなくモグラの仲間なんだそう。

 

まあ、それはよくあることだ。ただ、ひとつ問題が。実は「ハリモグラ」という動物もいるのだ。こちらも硬い針のような毛を持っている。ハリネズミはモグラの仲間だったら、ハリモグラはなんなのか。

 

実はハリモグラはカモノハシの仲間。ハリモグラはカモノハシ同様、哺乳類だが卵を産むという、ちょっと変わった生き物なのだ。

 

ハリネズミがモグラで、ハリモグラはカモノハシ。なんともややこしい。

 

 

オシドリ夫婦は褒め言葉?

オシドリも勘違いされている鳥だ。よく仲のよい夫婦を「オシドリ夫婦」なんて言ったりするが、実はオシドリ自体はそんなに仲がいいわけではない。オスがメスと仲がいいのは卵を産むまで。

 

いっしょにいるのは、メスが卵を産むまでの話さ。卵を温めたり、子育てしたりはしないからね。しかも、すぐにほかのメスにプロポーズしちゃうのさ

(『ウソナンデス ~ぼくたち、かんちがいされています!~』)より引用)

 

オシドリの実態を知ってしまうと、オシドリ夫婦と呼ばれているご夫婦がいたら、ちょっと疑ってしまうかもしれない。

 

もしかしたら、今頭の中にある動物の知識は、勘違いから生まれているものかも。本書を読んで一度確認したほうがいいだろう。

 

【書籍紹介】

ウソナンデス ~ぼくたち、かんちがいされています!~

著者:今泉忠明
発行:学研プラス

「ピラニアは凶暴」「ハイエナは横取りばかり」など、世間で生き物がされている「勘違い」を通して、彼らの生態などを紹介。勘違いを正したい動物たちとインタビュアーの対談形式。手軽に読めて、生き物の知識が身につく。

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
Bookbeyondで詳しく見る

 

バイクファンは一生に一度行って欲しい! オーストラリアのフィリップ島で繰り広げられるGPと同島の魅力

オーストラリアのビクトリア州にあるフィリップ島。メルボルンから、東へ車で2時間ほど行ったところにあり、本土とは大橋でつながっています。この島はコビトペンギンの生息地として知られると同時にモーターサイクルファンにとっては見逃せないグランプリ会場にもなっています。10月に開催が決まっている2018年のグランプリ。フィリップ島の魅力と併せて、グランプリの詳細をお伝えします。

 

コビトペンギンの生息地

(出典:Visit Victoria / Phillip Island Nature Park)

 

フィリップ島はコビトペンギンの生育地として、観光スポットの一つになっています。コビトペンギンは昼間餌を探して海に出かけるのですが、日が暮れると海から上がり海岸の砂丘に作られた巣に戻ります。群れをなして、よちよち歩く姿――「ペンギンパレード」――を見るために、たくさんの観光客がやって来るのです。

(出典:Visit Victoria / Underground viewing at the penguin parade, Phillip Island)

 

コビトペンギンが見られるのは日没後。冬場は寒いながらも日暮れが早いので、待ち時間も短いですが、夏は夜の10時近くにならないと日が暮れません。そのため、ペンギンも海から上がってこないので、見学の際は時間調整が必要。見学には一般席以外に、地下にあるコビトペンギンと同じ目線で見学できるガラス張りの特別エリアもあります。席のタイプにより、料金は$26.20~$67.50となっています。

 

モーターサイクルファンの聖地

(出典:Visit Victoria / Australian Motorcycle Grand Prix)

 

そんなフィリップ島のもう一つの魅力、それは島内に作られたモーターサイクルのサーキットで行われるレースです。ここでは国内外の大会やイベントが開かれるので、フィリップ島サーキットはモーターサイクルファンの聖地とも言われています。

 

1956年にオープンしたフィリップ島サーキットはバス海峡に面したエリアに位置しており、美しい海を背景に繰り広げられるレースは、フィリップ島ならではのエキサイティングなイベントになっています。

(出典:Visit Victoria / Australian Motorcycle Grand Prix)

 

モーターサイクルファンにとって見逃せないのが、毎年開かれるモーターサイクルのグランプリ。今年の開催日程は10/26~28日となっており、すでにチケット販売も始まっていてます(オンラインで購入可能)。チケットには1日券と3日券の2種類があり、価格は$60~$1695。日数と見学席タイプにより価格が異なります。

 

この大会ではバイクのサイズによって異なる3種類のレースが展開されます。そのなかでも、グランプリは1000cc4ストロークのマシンで競うメインのレースで、出場ライダーは24人。スペインから9人、イタリアから5人、その他イギリスやドイツなどから参加します。日本からは中上貴晶がホンダに乗って出場予定。

 

レースでは、まず練習が4回行われてから予選、そしてさらにウォームアップ後、本レースになります。グランプリの賞金は残念ながら公表されていません。ただ、グランプリより下位レベルのレース「Moto2」の賞金をみると3000ユーロ(約38万円)になっているので、グランプリの賞金はこれを超える額になっていることは確かでしょう。

その他の見どころ

コアラ保護センター

(出典:Visit Victoria / Koala Conservation Centre)

 

コアラ保護センターはフィリップ島の中央付近にあります。センター内には「ボードウォーク(木と木を結ぶ高架歩行帯)」が設置されているので、コアラの生息を高みから観察することができます。

 

エコボートツアー

(出典:Visit Victoria / Seal Rock – Phillip Island)

 

エコボートツアーはボートに乗って、フィリップ島に生息する野生のアザラシを見る90分のツアーです。

 

チャーチヒル島ヘリテッジファーム

(出典:Visit Victoria / Churchhill Island)

 

チャーチヒル島はフィリップ島と陸続きの島ですが、ここには歴史の長い農場があり、羊の毛刈り見学や馬車など、オーストラリアの農場体験を楽しむことができます。

 

このように、たくさんの見どころがあるフィリップ島。モーターサイクルファンのみならず、動物好きの人や家族連れなど、だれにでも楽しめるこの島は、一度は行ってみる価値があると思います。旅行計画のなかに、このフィリップ島も入れてみるのはいかがでしょうか。

【今日の1冊】ニホンジカの「おじさん」がモテる秘密とは?――『いきもの人生相談室』

野生動物の生態は、まさに「生ける哲学」です。

 

いきもの人生相談室 動物たちに学ぶ47の生き方哲学』(小林百合子・著、小幡彩貴・イラスト、今泉忠明・監修/山と溪谷社・刊)では、醜かったり弱かったりしても、生まれもった特長を活かして、たくましく生きるためのコツを学ぶことができます。

 

社会人になってから親友は作れる?


【Q】会社に親友と呼べる友達がいません。社会人ってみんなそんなもの?

【A】大人になってからの交友は友情だけでは続きません。

(『いきもの人生相談室』から引用)

 

回答者は、カクレクマノミです。「ファインディング・ニモ」に似ているオレンジ色の熱帯魚。

 

カクレクマノミは、イソギンチャクと共生関係にあります。ふたりは助けあって生きています。南の海では、よく知られた親友同士です。

 

外敵に襲われそうになったカクレクマノミは、決まってイソギンチャクの触手のあいだに逃げ込みます。イソギンチャクは身を守るための刺胞(毒針)を持っているので、それが抑止力になります。カクレクマノミには耐性があるので、毒の影響を受けません。

 

イソギンチャクは岩肌に定着しています。外敵から素早く逃げることができません。カクレクマノミの出番です。イソギンチャク毒にひるまない外敵が近づいてきたら、決死の覚悟によって追い払ってくれます。

 

損得抜きで助け合えるのは、ぜいぜい学生時代の友人まで。就職したあとは、たとえ同期入社であっても、助けてもらうためには「メリット(利得)」を求められます。相手に貢献できる「強み」を準備しておきましょう。

 

 

目立ったとき、叩かれるのがつらい


【Q】クラスで目立つことをすると悪口を言われそうで怖いです。

【A】将来、自分の個性を開花させたいなら勇気を出してやりたいことをやろう。

(『いきもの人生相談室』から引用)

 

回答者は、インドクジャクです。漢字では「孔雀」と書きます。

 

孔雀の羽は、オスのほうがゴージャスです。ご存じでしたか? 理由は、メスにアピールするため。自分の子孫を残すためです。

 

その反面、目立つので外敵に襲われやすいデメリットがあります。しかし、インドクジャクの遺伝子は、サイケデリックな羽模様によって目立ち続けることを選びました。差し引きでは「目立ったほうが種の存続につながる」という生存戦略が成功しています。「打たれても出る杭」になったもの勝ちです。

 

競争を勝ち抜くためにはメンタルケアが欠かせません。万人向けのストレス解消法を紹介します。

仕事のストレスを溜め込みたくない


【Q】生まれてこのかた無趣味です。仕事のストレスが発散できません。

【A】仕事とかけ離れたことをやればだいたいストレス発散になります。

(『いきもの人生相談室』から引用)

回答者は、イエネコです。日本には、約1千万匹の飼い猫がいます。

 

イエネコ(飼い猫)は、食事や寝床を与えられているので気楽です。しかし、猫の立場になってみると、「外に出られない」「不意にナデられる」というストレスを負っています。飼い主が遊んでくれないとき、猫はどうやってストレスを発散しているのでしょうか?

 

思いついたように突然、爪をといだり、体毛をペロペロなめたり、あくびをしたり。猫は「転位行動」によって、不安やストレスを忘れようとします。あえて「脈絡のない」「無関係」なことをおこなって、脳(こころ)への負担を減らすと考えられています。

 

ヒトの場合。ストレスを発散したいけれど得意なスポーツや趣味がない……かえって好都合です。いままでに経験が無ければ、慣れるために必死になります。没頭しているあいだはイヤなことを忘れるはずです。ニャンコの転位行動は、理にかなっています。

 

 

ニホンジカ(オス)のモテる秘密


【Q】20歳年上の男性に恋をしました。これってヘンでしょうか?

【A】経験豊富な男性に惹かれるのはいたってまっとうなことです。

(『いきもの人生相談室』から引用)

 

回答者は、ニホンジカです。その名のとおり、北海道から九州まで、日本列島のほとんどに生息しています。

 

ニホンジカは、オスだけに角(ツノ)が生えます。年齢を重ねるごとに、ツノは大きくなっていきます。ニホンジカのオスは、1才で立派なツノが生えたあと、3才までは枝が増えます。4才以降には太くなって、ますます「男らしい」容貌へと成長します。立派なツノを持っているほど、若いメスにモテるそうです。

 

長寿のニホンジカ(オス)は「10才〜12才」なので、人間になぞらえることができます。アラサー(20代後半〜30代)からが「モテ期」の始まりです。アラフォー(30代後半〜40代)、アラフィフ(40代後半〜50代)になっても、女性にモテることをあきらめないでください。

 

本書『いきもの人生相談室』では、オスよりも大きい「チョウチンアンコウのメス」、流されるままに生涯を終える「ラッコ」など、ハンディキャップに負けない生き方も学べます。お試しください。

 

【書籍紹介】

 

いきもの人生相談室 動物たちに学ぶ47の生き方哲学

著者: 小林 百合子 (著), 今泉 忠明 (監修)
発行:山と渓谷社

あなたの人生の悩みに動物が答えるおもしろまじめ本。動物好きだけではなく、どなたにもお愉しみ頂けるだけでなく、読むと心がすーっと軽くなります! 「老後が不安」「家に帰っても妻が口をきいてくれない」「個性がないと言われてしまう」「クラスで目立つといじめられそうで怖いです」「子どもが勉強しない」など、あなたの人生の悩みにいきものたちが答えます!

 

kindlleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る

 

ストレスで胃を壊す、ケンカの和解に子どもを連れてくる……進化したけどなんだかなー……な動物ベスト5

生物は、長い年月をかけて環境に適応して進化をしてきた。きりんの長い首、ぞうの長い鼻。人間が今のようになっているのも、この地球上で生き残るためだ。

44196630 - vector illustration, ferocious gorilla hit the wall with his fist

 

しかし、この地球には「なんでそんな風になったの?」と思ってしまう進化をした動物も多数いる。そんな動物を集めた書籍が『ざんねんないきもの事典』(今泉忠明・監修、下間文恵、徳永明子、かわむらふゆみ・絵/高橋書店・刊)だ。

 

そのなかから、僕が「これは残念だ!」と思った生き物ベスト5をピックアップしてみた。

 

 

第5位 チンパンジー

人間と同じ祖先を持つと言われているチンパンジー。その知能は高く、手話などで人間と会話ができるほどだ。

 

しかし、しゃべることができない。なぜなら口呼吸ができないから。口呼吸ができるのは人間のみ。なので、人間だけがしゃべることができるのだ。

 

声は出るものの、口から出る息を調節できないため、言葉を話すことができないという。うーん、残念!

 

 

第4位 チーター

時速100km以上で走ることができる、韋駄天チーター。いかにも速そうな体型で、動物界でもかっこよさはトップクラス。

 

しかし、速さに特化したためか、攻撃力や防御力が低く、肉食動物最弱なんだとか。そのため、せっかく狩りをしてもほかの動物に横取りされることも多いんだそう。

 

かっこよさや速さだけじゃだめなんだな。強くなければ生きていけない、強さだけでも生きていけない。

 

 

第3位 チンアナゴ

砂から体を出してゆらゆらしている姿がユーモラスなチンアナゴ。その状態でプランクトンを食べているそうだが、口の位置が高いほどプランクトンを食べられる確率が上がる。

 

そのため、顔出しの位置をめぐってケンカになることがあるようだ。

 

ただし、けんか相手は隣の穴のチンアナゴのみ。そして、ただ口を開けて威嚇するだけ。お互いに穴から出る気はないので、たいしたケンカにならない。

 

見た目同様、平和な生き物のようだ。

 

 

第2位 チベットモンキー

気性の荒いチベットモンキーは、オス同士でよくケンカをする。負けたほうは勝ったほうに謝るが、なかなか許してくれないこともある。

 

そこで、負けたほうは群れの中からかわいい小ザルを連れてくるそう。チベットモンキーは大の子ども好きなので、それで気持ちが和らぐんだとか。

 

そしてお互いの気分がよくなったら、2匹で小ザルを高く掲げる「ブリッジング」(橋渡し)という行為を行って、ケンカは終了。

 

ケンカのたびに呼ばれる小ザルはどんな気持ちなんだろう。
 

第1位 ゴリラ

見た目はゴツいが、実は繊細なゴリラ。知能が高く、無用な争いを避けたりすることも多いということ。

 

しかしストレスもためやすく、ストレスが原因でわきがや下痢になることも。なんかその気持ち、わかります。

 

しかも、下痢をすると自分でその便を食べることもあるそう。普段はそのような行いはしないので、ストレスによる行動のようだ。

 

ときどき、よくわからない行動をしている人間を見かけるが、やはりストレスが原因のことも多い。ゴリラも人間も、たいへんなんだな……。

 

 

正月明けは動物博士になってるかも?

『ざんねんないきもの事典』には、このほかにも残念な生き物が多数掲載されている。ダチョウやカバ、ミジンコ、コアラなど知っている動物や、あまり聞いたことがない動物まで、残念な生き物が目白押しだ。

お正月、おせちにもテレビにも飽きたら、この本を読んでみてはどうだろうか。暇つぶしになるだけでなく、ちょっとした動物トリビアも仕入れられる。正月休みが終わったら、動物博士になっているかも?

 
【著書紹介】

515MK30uwWL._SX336_BO1,204,203,200_

 

ざんねんないきもの事典

著者:今泉忠明(監修)下間文恵、徳永明子、かわむらふゆみ(絵)
出版社:高橋書店

地球には、すごい能力をもつ生き物がたくさんいます。でも一方で、思わず 「どうしてそうなった! ?」 とつっこみたくなる「ざんねん」 な生き物も存在するのです。この本では、進化の結果、なぜかちょっとざんねんな感じになってしまった122種の生き物たちをご紹介します。

Amazonストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る

運動神経抜群のテナガザル、実は骨折しまくっている!

私は動物園に行くのが好きです。上野動物園から旭山動物園、あちこち出かけています。そして、愛らしく、たくましい動物たちの姿に感動しています。

63987741 - gibbon monkey species sitting in tree seen in singapore

ところが、動物たちが自然界で生きていくのは大変です。

 

泣けるいきもの図鑑』(今泉忠明・著/学研プラス・刊)を読むと、動物たちの辛く、涙するエピソードが満載です。さっそくページをめくってみましょう。

 

 

サルも木から落ちる!?

テナガザルといえば、腕の長さが胴の2倍以上もあるサルの仲間です。主に木の上で暮らし、移動するときは腕を巧みにつかって、すごいスピードで木から木へと移動するイメージです。

 

これをうでわたりといい、特に、東南アジアを中心に生息するシロテテナガザルは名人として知られます。

 

ところが、筆者が衝撃的な事実を紹介しています。

 

めすの28%、おすの37%が、うでわたりに失敗して骨折し、自然に治っていたことがわかりました。

(『泣けるいきもの図鑑』より引用)

 

なんとも気の毒です。原因は、熱帯の森では木の枝が枯れていることがよくあるそうで、掴んだ瞬間に折れてしまうためなのだそうです。

 

 

ヤマネの冬眠は命がけ

日本の本州、四国、九州などに生息するニホンヤマネは、体長6.1~8.4cmほどの愛らしい姿が特徴です。主に野山で生活していますが、秋から春にかけて冬眠します。

 

ところが、冬眠中は体温が0℃近くまで低下。しかも、30分に1回程度しか息ができません。これはなるべく、エネルギーを使わないで眠るための工夫なのだそうです。しかし、冬眠中にはこんなアクシデントも…!

 

木のうろの中やえだの上などに作った丸い巣で冬眠するものがいるのですが、みきやえだがおれて雪の上に落ちてしまうこともあります。目を覚ませば移動しますが、ねむったままのことも! その場合、もちろん死んでしまいます。

(『泣けるいきもの図鑑』より引用)

 

キツネなどの天敵に襲われることもあり、冬眠もなかなか命がけなのです。

 

 

ニシキヘビの後悔

巨大で強いヘビといえばニシキヘビ。自分の体よりも大きな動物をそのままのみこんでしまいます。ところが、丸のみは意外に危険なようです。

 

丸のみが原因で死んでしまったヘビもいます。たとえば、ヤマアラシをのみこんだニシキヘビは、そのはりのせいで死んだそうです。

(『泣けるいきもの図鑑』より引用)

 

ヤマアラシのトゲトゲの針が体内に刺さったら… 痛そう! これはニシキヘビ、気の毒です。のまれたヤマアラシの最後の抵抗、といえるかもしれませんね。

 

また、ある動物園ではニシキヘビにヤギ(!)を与えたところ、角で腹が裂けて死んでしまったのだとか。これは間違いなく、動物園の人が悪いのですね(汗)。

 

 

動物たちは生きるのに必死だ!

いかがでしたでしょうか。間抜けな動物から、気の毒な動物まで、動物たちの奥深い世界を垣間見れたと思います。

 

他にも、モグラはなんと3~4時間なにも食べないだけで、飢え死にしてしまうのだそうです。理由は、土の中にトンネルを掘るのに、すごくエネルギーを使うからだとか。1日に自分の体重と同じくらいの量のミミズなどを食べなければいけません。めちゃくちゃ燃費が悪いんですね…(汗)

 

厳しい自然界のなかで必死に生きている動物たち。愛らしい姿の陰には、数々の大変なドラマがあるのです。

 

【著書紹介】

GKNB_BKB0000405916548_75_COVERl

泣けるいきもの図鑑

著者:今泉忠明(監修)
出版社:学研プラス

「脂肪のせいで上手くもぐることができない」アザラシや「毎日10分しか眠ることができない」キリンなど、生き物77種のかわいそうでいじらしい生態を紹介!さらに、「忠犬ハチ公」など感動の実話も11話収録。感動泣きから笑い泣きまで、この一冊!

Kindleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
iBooksで詳しく見る
BookBeyondで詳しく見る
BookLive!で詳しく見る
hontoで詳しく見る
紀伊國屋書店ウェブストアで詳しく見る