ごちそう”海苔弁”をフライパン一つで作るには?海苔の敷き方からアレンジレシピまで日本料理人が徹底解説

海苔は、水温が下がる11月下旬から4月初旬までが旬。初摘みは少々高値ですが、縁起物でもあります。この一年でもっともおいしい時期の海苔を使って作りたいのが、海苔弁。かつては日の丸弁当と並ぶ“手抜き弁当”の代表格でしたが、最近は海の幸や山の幸をふんだんに盛り込んだ、豪華な海苔弁が人気。専門店も続々とオープンしています。

 

このトレンドの“ごちそう海苔弁”を、自宅で手作りしてみましょう。フライパン1つで調理するワンパンレシピと、作り置き食材で時短しながら、自分好みに作るには? 日本料理店で修行を積み、数々のお弁当に腕を振るってきた日本料理人のジョージさんに、初心者でも簡単に取り組めるごちそう海苔弁の作り方を教えていただきました。

 

 

なぜ定番人気?
海苔弁の歴史と魅力

 

お財布にやさしいコンビニの300円台からデパ地下の2000円近いものまで、多様化する海苔弁。根強い人気の海苔弁は、そもそもいつ頃から登場したのでしょうか?

 

「ごはんの上に敷いた海苔の上に、白身魚のフライや、ちくわの磯部揚げ、きんぴらごぼう……という王道スタイルは、1970年代に大手お弁当チェーン店が販売したのが始まりです。一方、海苔とおかかの関係はもっと古く、江戸時代には板海苔が発明され、ごはんに鰹節をのせた“ねこまんま”が、庶民の間に広まっていきました。また漁師町では、おかか醤油を具にしてごはんと海苔で巻いた細巻きのような携帯食(お弁当)が食べられており、おかかと海苔は手に入りやすかったこともあって、日本人にとってお馴染みの味となっていったのです。
そんな親しみのあるおいしさだからこそ、手軽で庶民的な海苔弁から贅をつくした高級海苔弁まで、時代とともにバラエティに富み、ブームになっていったのだと思います」(日本料理人・ジョージさん、以下同)

 

徳川家康の好物だから発展した!? 日本の伝統食材「海苔(のり)」の意外に知らない話

 

風味豊かに!
海苔の旨み成分を引き出すあぶり方

「初摘み」と言われる11〜12月に採取された海苔は、通常出回っている海苔よりも柔らかく、味も良いとされています。おいしい海苔弁に欠かせない、海苔の扱い方とは?

 

「私が住んでいた宮城県は海苔の養殖が盛んで、旬の時期になると母が、海苔を3枚も挟んだ豪華な海苔弁を作ってくれたものです。お弁当を開けた瞬間、海苔の香りがふんわり広がって食欲がそそられたことは懐かしい思い出ですね。
この香りやおいしさを引き出すには、海苔を火であぶることが大切。熱を加えるとタンパク質が熱変性し、組織全体が収縮、旨みもより感じやすくなるのです」

 

【海苔のあぶり方】

「直火に直接海苔が当たるよう、海苔を五徳(ごとく)に滑らせながら右から左に三往復ほどあぶります。持ち手を逆にして、反対側も同様に3往復することを忘れずに。このあぶった海苔を、粗熱がとれたごはんにのせると、ごはんに残った水分が海苔の旨み成分を引き出します。
ごはんが温まったまま蓋をしてしまうと腐敗の原因になるので、蓋をするときは、おかずもごはんもしっかりと冷ましましょう」

 

醤油や塩は不要!
風味豊かな「基本の海苔弁」の作り方

「鰹節の旨みと塩みを利用してやさしく味付けした、風味豊かな海苔弁です。海苔には、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸と、異なる3つもの旨み成分が含まれているため、強い旨みを持っています。そのため、醤油をつける必要はありません。その分、鰹節はたっぷりとのせましょう」

 

【材料(1人分)】

・ごはん……1人前
・鰹節……1g
・海苔……適量

 

【作り方】

1.ごはんを、お弁当の7割ほど敷き詰める。

「ごはんの水分を海苔と鰹節に吸わせたいので、ごはんを完全に冷ます必要はありません。ごはんはギュウギュウに詰めず、ふんわりとよそいましょう」

 

2.鰹節をのせる。

「ごはんに味付けはしないので、鰹節はごはんが隠れるぐらいたっぷりとのせましょう」

 

3.おかずをのせるスペースを確保し、さらにごはんを盛る。海苔をお弁当に合わせて切ってのせる。

「海苔を切るときははさみを利用しましょう。お弁当におかずを納めるため、おかずをのせるスペースには、海苔を敷きません」

 

そぼろに、混ぜごはん、ごはんの味付けも工夫次第な「ごちそう海苔弁」

海苔弁の基本ルールを学んだところで、続いていよいよごちそう海苔弁のレシピを教えていただきましょう。海苔の下のごはんに、そぼろや混ぜごはんを忍ばせるなど、うれしい組み合わせを考えます。ごはんを薄く敷き海苔を重ねて、海苔ごはんを2段や3段にするのもいいですね。楽しんで盛り付けましょう。

 

メインの鮭をダイナミックに盛り付ける「鮭海苔弁」

「塩漬けの鮭は、焼くだけでお弁当のメインに。サーモンピンクの色合いもきれいで、海苔との相性も抜群です。海苔弁の上にのせたのは、どれもフライパン1つでできるおかず。より時短するなら、保存の効くにんじんの金平や菜の花など葉物の塩ゆでは、前もって作り置きしておくといいでしょう」

 

【材料(1人分)】

・基本海苔弁
(ごはん……1人分、鰹節……1g、海苔……適量)

 

〈お弁当のおかず〉
・焼き鮭
(鮭……1/2切れ)
・にんじんのきんぴら
(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、醤油……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本、茹でるための塩……適量)
・海老真丈(しんじょう)
(海老……5本、玉ねぎ……1/4個、卵黄……1/2個、マヨネーズ……2g、片栗粉……2g)
・卵焼き
(卵……1個、みりん……小さじ1、濃口醤油……小さじ1)

 

【おかずの作り方】

1.菜の花は、フライパンで塩茹でし、3cm幅に切る。にんじんを千切りにする。卵にみりん、濃口醤油を入れ、混ぜる。

2.海老真丈の玉ねぎをみじん切りし、フライパンで炒め、粗熱をとる。むき海老の水気を押さえ、ぶつ切りにする。玉ねぎ、卵黄、マヨネーズを加え、3cmの丸型に成型し、両面に片栗粉をまぶす。

3.フライパンを中火で熱し、温まったら、鮭、海老真丈を入れて焼く。空いたスペースにごま油を引き、にんじんを入れ炒める。みりん、濃口醤油を入れ炒め、仕上げにマヨネーズを入れ和える。すべてのおかずをバットに取り出し、冷ましておく。

 

・ワンパン調理のポイント

「フライパンであらかじめ菜の花を茹で、鮭、海老真丈、にんじんのきんぴらを同時に調理します。鮭と海老真丈は焼くだけなので、調理は簡単。2つの具材を焼いている間に、にんじんを炒め、みりんと醤油で炒めます。きんぴらの隠し味にマヨネーズを入れることで、冷めてもおいしいお弁当に合うマイルドな味わいのおかずになります」

 

4.フライパンは洗わず、中火で温める。(1)の卵を、傾けたフライパンのくぼみに縦長になるように流しこみ、小さな卵焼きを作る。

「卵1個でも、卵焼きは作れます。フライパンのくぼみを利用すると、お弁当にちょうどいい薄さとサイズの卵焼きが焼けます」

 

【盛り付け方】

1.海苔が敷かれていないスペースの鰹節を隠すように、にんじんのきんぴら、卵焼きを置く。卵焼きを縦に重ねて置いたら、海老真丈はあえて横に重ねて置き、間に菜の花を立てて置く。

 

2.真ん中に鮭を置く。

「お弁当に入れるおかずを考えるときに、まず大切なのは色合いです。赤・黄・緑の色を意識すると、苔の黒地に色が映え、華やかで食欲をそそるお弁当を作ることができます。また、彩りを豊かにすることで、自然と栄養バランスも整います。
海苔が敷いてあるため、副菜はきんぴらやごま和えなど、汁気の少ないおかずがおすすめです」

 

【豆知識】お弁当のおかずは3cm
「お弁当のおかずのサイズは、3cmをひとつの目安にすると、盛り付けしやすく、食べやすいお弁当になります。日本には1寸=3cmというサイズがあります。日本料理ではその1寸を、おちょぼ口の人でも一口で食べられるサイズとして利用してきました。お弁当の盛り付けの際も、バランスよくきれいに盛れるサイズでもあります」

 

肉がメインで食べ応えたっぷりな「そぼろとチキンソテーの海苔弁」

「しっかり食べたいときにおすすめの、鶏そぼろを海苔の下に敷いたお弁当です。ごま油とみりん、醤油で炒めた甘じょっぱい鶏そぼろが、海苔とよく合います。鶏のソテーは、塩とこしょうを強めに振り、しっかりと味付けをしましょう」

 

【材料(1人分)】

そぼろ海苔弁
・ごはん……1人分
・鶏そぼろ
(鶏ひき肉……50g、ごま油……小さじ1、酒……大さじ1、みりん……大さじ2、濃口醤油……2)
・海苔……適量

 

〈お弁当のおかず〉
・鶏モモ肉のソテー
(鶏モモ肉……1/3枚=約100g、塩・こしょう……適量)
・エリンギのソテー
(エリンギ……1/2本)
・にんじんのきんぴら(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、しょうゆ……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本)
・卵焼き

 

【おかずの作り方】

・鶏そぼろ……熱したフライパンにごま油を引き、鶏ひき肉を入れ炒める。全体に火が入ったら、酒、みりん、濃口醤油を入れ煮詰める。

 

・鶏モモ肉のソテー……両面に塩こしょうをして、熱したフライパンに皮目を下にして焼く。おいしそうな焼き色が付いたら、ひっくり返し蓋をして1分焼き、火を消してガス台の上に10~15分置いておく。時間が経ったら一口サイズに切る。

 

・エリンギのソテー……エリンギを1口サイズ(3cm)に切ったら、鶏肉の肉汁で焼く。

 

【盛り付け方】

1.粗熱が取れたごはんを、お弁当箱に7割程度敷きつめる。

 

2.鶏そぼろを敷き詰める。

 

3.おかずのスペースを確保し、海苔をお弁当に合わせて切ってのせ、おかずスペースに、にんじんの金平をのせる。

「にんじんを広げてのせることで、おかずの合間からオレンジ色が見え、華やかに」

 

4.卵焼きは横に、エリンギは縦に、鶏モモ肉のソテーは斜めに、菜の花は立てて盛り付ける。

「メインの鶏肉を手前においしそうに盛り付けるため、その他のおかずを奥から詰めていきます。おかずをのせる方向を、横や縦、斜めと変化を付けると立体的になりおいしく見えます。エリンギに味付けは必要ありません。鶏肉を焼いて残った肉汁で焼くことで、旨みを吸ったつややかなソテーになります」

 

豆腐と野菜のヘルシーおかず「大葉とごまの海苔弁」

「海苔の下に隠れたごはんを、緑の映える大葉とごまの混ぜごはんにしました。箸でごはんをすくった時に見える大葉の緑色が、海苔弁を鮮やかに彩ります。冷めてもおいしい混ぜごはんです 」

 

【材料(1人分)】

・大葉とごまの混ぜごはん
(ごはん……1人前、大葉……3枚、ごま……2g)
・海苔……適量

 

〈お弁当のおかず〉
・豆腐と刻み野菜の真丈
(豆腐……100g、にんじん……10g、大葉……2枚、卵白……10g、片栗粉……5g、みりん……大さじ1、濃口醤油……大さじ1)
※刻み野菜は、あるもの何でもOK。今回は、お弁当の残りの野菜を使用
・なすの照り焼きナス
(なす……1/2本、万能ねぎ……少々、みりん……大さじ1、濃口醤油……小さじ2)
・ミニトマト出汁漬け
(ミニトマト……2個、八方だし(みりんや白だしで代用可能)……少々)
・にんじんのきんぴら
(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、醤油……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本)

 

【おかずの作り方】

・豆腐と刻み野菜の真丈……木綿豆腐を電子レンジで温めて、水抜きをする。刻んだにんじん、大葉と卵白、片栗粉をしっかり混ぜ合わせ、3cmの丸型に成型する。熱したフライパンにごま油を引いて焼き、焼き色が付いたらひっくり返す。両面に焼き色が付いたら、みりん、濃口醤油を入れて、絡ませる。

 

・なすの照り焼きナス……ナスを厚さ2cmの輪切りにする。あく抜きの為に、水に30秒ほど浸ける。熱したフライパンに油を引き、ナスを焼く。しんなりしてきたらひっくり返す。両面がしんなりしたら、みりん、濃口醤油を入れて絡ませる。仕上げに、小口切りの小ねぎを和える。

 

・ミニトマト出汁漬け……ミニトマトを湯むきして、八方出汁(めんつゆや白だしも可)に漬ける。

 

【盛り付け方】

1. 刻んだ大葉とごまのごはんの3割ほどをお弁当箱の1/2の高さまで、残りを9割ほどの高さまで盛り付け、ごはんに段をつける。上の段のごはんが隠れるように海苔をのせる。

「おかずを立てたり、敷いたり高低差をつけるとおかずが立体的に見えおいしく見えます。お弁当箱が小さい場合には、高低差をだすためにも、ごはんにくぼみを作るとよいでしょう。大葉は、ごはんの熱で緑がより鮮やかに、爽やかな混ぜごはんになります 」

 

2.すべてのおかずが見えるよう、にんじんをクッションにし、なすの照り焼き、豆腐と刻み野菜の真丈、トマトの出汁漬けを斜めに立てながら、同じ方向に盛り付ける。

「真丈とは、日本料理で、白身魚や豆腐、海老などの具材に卵やみりんなどを加えて丸型にし、蒸したり焼いたりしたもののことです。ひき肉、豆腐、海老などさまざまな食材から作れますし、サイズも自由自在。お弁当にぴったりなおかずです」

 

5.全体の彩りを考えながら、菜の花を立てて盛り付ける。

「それぞれのおかずが見えるよう、右から順に左へ少しづつずらして重ねてました。おかずを同じ方向で盛り付けた場合、最後に添える菜の花は、差し込む方向を変えるとバランスよく仕上がります」

 

 

「盛り付けは悩まず、インスピレーションも大切です。正解はありません」とジョージさん。蓋を開けた瞬間に広がる海苔の香りと、海苔弁と相性抜群のおかずは、ごほうびランチそのものです。箸をすすめるごとに楽しみが広がる海苔弁に、ぜひチャレンジしてみてください。

 

 

Profile

日本料理人 / ジョージ

日本最大級の出張シェフサービス「シェアダイン」で、日本料理を提供する日本料理のシェフ。お客様から約1000もの高評価をいただく人気シェフでもある。懐石料理、割烹、ミシュラン星付き店にて、技術を研鑽。日本料理を継承し、おいしさを広める活動を行っている。得意料理は、日本料理、あんこ料理。
シェアダイン HP

 

料理人・笠原将弘が教える“焼き飯”の失敗しない炒め方

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

最終回は、サッと炒めるだけの一品豪華主義、旨みと酸味のバランスがクセになる「たこしば漬け焼きめし」を解説いただきます。

 

料理人・笠原将弘が教える「豚汁」の作り方…最小限の食材で豚肉の旨みを引き出す極意とは?

 

たこの旨みと漬物の酸味が絶妙
「たこしば漬け焼きめし」のつくり方

 

しば漬けのチャーハンやたこめしからインスピレーションを得て考案されたレシピ。

 

「いままでの料理人としての経験や勘から、この組み合わせはおいしいだろうな」と、つくる前からピンときていたそう。

 

かむほどに口に広がるたこの旨みと、しば漬けのさっぱりとした酸味で、いくらでも箸が進みます。たこは炊き込むと固くなりがちなので、チャーハンのようにサッと炒めるのがおいしくできるコツだとか。

 

【材料(2人分)】
・あたたかいごはん……500g
・卵……2個
・ゆでだこの足……1本
・しば漬け……50g
・ねぎのみじん切り……1/4本分
・サラダ油……大さじ2
・塩、こしょう……各少々
・青じそのせん切り……5枚分

 

【作り方】
1.たこは薄切りにして一口大に切り、しば漬けはみじん切りにする。卵はときほぐす。

 

2.フライパンにサラダ油を中火で熱し、とき卵を流し入れて広げる。半熟のうちにごはんをのせ、へらで卵をからめながら細かく切るようにしてほぐして焼く。

 

3.たこ、しば漬けを加えて炒め合わせ、塩、こしょうを加えてさっとまぜる。ねぎを加えてさっといため合わせ、器に盛って青じそを散らす。

 

 

以上の「たこしば漬け焼きめし」レシピのベースとなるのが、卵とねぎと温かいごはんでつくる焼きめしです。笠原将弘さん著『汁とめし』には、ベースの焼きめしのつくり方や具をプラスしてアレンジを加えた焼きめしレシピがたくさん。そのほか、汁物レシピはもちろん、出汁の取り方やお米のおいしい炊き方も分かりやすく載っているので、ぜひチェックしてみてください。

 

笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

 

Profile

料理人 / 笠原将弘

1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
「賛否両論」HP
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料理人・笠原将弘が教える「豚汁」の作り方…最小限の食材で豚肉の旨みを引き出す極意とは?

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

第2回は、笠原さんもお気に入りだという汁物「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」のレシピを解説いただきました。

 

料理人・笠原将弘が解説する出汁(だし)の取り方とは?…日常の和食“汁とめし”レシピ

 

3種の具材だけで旨みたっぷり!
「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」のつくり方

「豚肉の旨みたっぷりの豚汁と白米があれば、それだけで立派な食事になると思いませんか?」

 

汁物のなかでも豚汁が大好物だという笠原さん。以前、新潟で食べた豚汁有名店の味を笠原さん流に再現したのがこのレシピだそう。にんじんやごぼうなどの根菜は一切入っていない代わりに、玉ねぎがたっぷりで、優しい甘さに心もほぐれるよう。使う材料が少ない分、買い出しや調理が楽なのもうれしいですね。

 

【材料(2人分)】
・豚バラ薄切り肉……150g
・玉ねぎ……2個
・木綿どうふ……1丁
・出汁……300ml

 

A
・みそ……大さじ2
・白みそ……大さじ1

 

【作り方】
1.玉ねぎは縦薄切りにする。とうふは半分に切って1cm厚さに切る。豚肉は5cm長さに切る。

 

2.鍋に出汁、豚肉を入れて中火にかけ、肉をほぐしながら煮る。煮立ったらアクをしっかり除き、弱火にしてAをとき入れる。玉ねぎを広げて加え、とうふをあまり重ならないように並べ、ふたをして弱火のまま30分ほど煮る。

 

「玉ねぎのうまみと水分を引き出すためにも弱火で長めに煮るのがポイントです」

 

3、とうふをくずさないようにしながら全体をまぜ合わせる。

 

「豚肉や煮汁が隠れるほど玉ねぎがたっぷりのレシピです。煮汁が蒸発しないようにふたはぴったりと閉めましょう」

 

 

以上の豚汁のつくり方をはじめ、お米のおいしい炊き方や、見たら必ずつくりたくなるおいしい一汁一飯レシピは、笠原将弘さん著『汁とめし』にまとめられています。豚汁レシピはほかにも2種類あるのでぜひ、チェックしてみてください。

 

笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

次回は、笠原さんがレシピを考案する時点で「これは絶対旨い」と確信したという「たこしば漬け焼きめし」を紹介します。

 

 

Profile

料理人 / 笠原将弘
1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
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料理人・笠原将弘が解説する出汁(だし)の取り方とは?…日常の和食“汁とめし”レシピ

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

第1回は、汁物の基本中の基本である、出汁の取り方を解説いただきます。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

正しい和食の味をもっと身近なものに

食事になくてはならないのが、ごはんの味を引き出したり、ときにはおかずのような役割で主役を張ったりもする汁物です。笠原さんは、「ちょっと工夫するだけで“汁”は驚くほどおいしくなる」と語ります。

 

「料理というのは、手間をかけた分だけおいしくなるものだと思っています。でも、忙しい日々を送る方々に、一方的に毎日これやれあれやれとは言いたくありません。一昔前ならいざ知らず、いまは顆粒出汁が便利な時代ですし。ただ、日本人として正しい順序でとった出汁の味っていうのを知っておくのは大事だと思うんです。手間をかけずにおいしくつくる方法はたくさんありますよ」(料理人・笠原将弘さん)

 

笠原さん流の、家庭でも気軽に取り組める出汁の取り方とは?

 

ほうっておくだけでできる!
おいしい出汁の取り方

「お吸い物はこぶと削りがつおでとった一番出汁を使うのをおすすめしていますが、みそ汁に代表される日々の汁物の出汁は、もっと気軽に考えてもらいたいと思っています」

 

そういう笠原さんが考える“家庭の汁物の出汁は、「なべに水600ml、こぶ10g、煮干し10gを入れて30分ほどおうっておくだけ」だそう。この30分間とは?

 

「こぶや煮干しからうまみを引き出すための時間です。これが長ければうまみをもっと抽出できるので、一晩おいてもいいくらいです。その場合は冷蔵室に入れておけば、暑い季節でも安心です」

 

作るとなったら、火にかけるだけ。これなら、毎日続けられそうです。

 

【材料(2〜3人分)】

・水……600cc程度(直径約20cmのなべでちょうどいい水量)
・こぶ(出汁用)……10g
・煮干し……10g

 

【作り方】
1.鍋に水、こぶ、煮干しを入れ、30分ほどおく。(冷蔵庫に一晩おくとなおよい)

 

2.中火にかけて、ふつふつとしてきたら弱火にし、煮立てないようにして10分ほど煮て、火を止める。その後、時間があれば20分ほどおくと、こぶのうまみがより抽出される。こぶと煮干しをとり出す。

とり出したこぶは細長く切って、そのまま汁の具として食べても。そのほかうまみを足すイメージで煮物やいため物の具にするとよい。佃煮にしてもおいしい。

 

時間がないときは市販の出汁でもいい

「ほうっておく時間がとれないときは、すぐに使える粉末の出汁のもとや出汁パックを使っても大丈夫。その場合は貝類や野菜などの旨味が出やすい具と組み合わせるのがオススメです」

 

以上の出汁の取り方をはじめ、お米のおいしい炊き方や、見たら必ずつくりたくなるおいしい一汁一飯レシピは、笠原将弘さん著『汁とめし』にまとめられています。これも和食!? とときに驚くようなレシピも。和食をもっと身近に感じられるアイデアレシピを、チェックしてみてください。

 


笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

次回は、数ある汁物レシピの中でも笠原さんが気に入っている「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」を紹介します。

 

Profile

料理人 / 笠原将弘
1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
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GetNavi web 2024-03-02 20:00:50

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

第1回は、汁物の基本中の基本である、出汁の取り方を解説いただきます。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

正しい和食の味をもっと身近なものに

食事になくてはならないのが、ごはんの味を引き出したり、ときにはおかずのような役割で主役を張ったりもする汁物です。笠原さんは、「ちょっと工夫するだけで“汁”は驚くほどおいしくなる」と語ります。

 

「料理というのは、手間をかけた分だけおいしくなるものだと思っています。でも、忙しい日々を送る方々に、一方的に毎日これやれあれやれとは言いたくありません。一昔前ならいざ知らず、いまは顆粒出汁が便利な時代ですし。ただ、日本人として正しい順序でとった出汁の味っていうのを知っておくのは大事だと思うんです。手間をかけずにおいしくつくる方法はたくさんありますよ」(料理人・笠原将弘さん)

 

笠原さん流の、家庭でも気軽に取り組める出汁の取り方とは?

 

ほうっておくだけでできる!
おいしい出汁の取り方

「お吸い物はこぶと削りがつおでとった一番出汁を使うのをおすすめしていますが、みそ汁に代表される日々の汁物の出汁は、もっと気軽に考えてもらいたいと思っています」

 

そういう笠原さんが考える“家庭の汁物の出汁は、「なべに水600ml、こぶ10g、煮干し10gを入れて30分ほどおうっておくだけ」だそう。この30分間とは?

 

「こぶや煮干しからうまみを引き出すための時間です。これが長ければうまみをもっと抽出できるので、一晩おいてもいいくらいです。その場合は冷蔵室に入れておけば、暑い季節でも安心です」

 

作るとなったら、火にかけるだけ。これなら、毎日続けられそうです。

 

【材料(2〜3人分)】
・水……600cc程度(直径約20cmのなべでちょうどいい水量)
・こぶ(出汁用)……10g
・煮干し……10g

 

【作り方】
1.鍋に水、こぶ、煮干しを入れ、30分ほどおく。(冷蔵庫に一晩おくとなおよい)

 

2.中火にかけて、ふつふつとしてきたら弱火にし、煮立てないようにして10分ほど煮て、火を止める。その後、時間があれば20分ほどおくと、こぶのうまみがより抽出される。こぶと煮干しをとり出す。

とり出したこぶは細長く切って、そのまま汁の具として食べても。そのほかうまみを足すイメージで煮物やいため物の具にするとよい。佃煮にしてもおいしい。

 

時間がないときは市販の出汁でもいい

「ほうっておく時間がとれないときは、すぐに使える粉末の出汁のもとや出汁パックを使っても大丈夫。その場合は貝類や野菜などの旨味が出やすい具と組み合わせるのがオススメです」

 

 

以上の出汁の取り方をはじめ、お米のおいしい炊き方や、見たら必ずつくりたくなるおいしい一汁一飯レシピは、笠原将弘さん著『汁とめし』にまとめられています。これも和食!? とときに驚くようなレシピも。和食をもっと身近に感じられるアイデアレシピを、チェックしてみてください。

 


笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

 

次回は、数ある汁物レシピの中でも笠原さんが気に入っている「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」を紹介します。

 

 

Profile

料理人 / 笠原将弘
1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
「賛否両論」HP
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料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

和食の基本要素である「ごはん」と「汁物」の組み合わせを表現する、一汁一飯(いちじゅういっぱん)。忙しい日々でも、ほかほかのごはんと汁物があるだけで、ほっと一息つけるもの。ところが、和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうな上、味つけも繊細でむずかしそう……。そう敷居の高さを感じる人は、少なくないのではないでしょうか。

 

「そもそも和食は、私たち日本人にとって一番身近な料理です。もっと肩の力を抜いて、おおらかな気持ちでつくればそれだけでおいしくなりますよ」

 

そう話すのは、恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、ご存じ、料理人の笠原将弘さん。2023年10月に上梓したレシピ本『汁とめし』では、“和食屋”として“旨すぎる一汁一飯”を惜しげもなく披露し、すでに4版を重ねるヒットとなっています。

 

お気に入りのレシピから、料理を誰もがおいしく楽しんでつくれる極意まで、笠原さんがこの本に込めたものとは? 聞き手はブックセラピストの元木忍さんです。

 

笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)

冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

シンプルなのに栄養満点な
“汁とめし”の魅力

元木忍さん(以下、元木):日本料理店の店主であり料理人でもある笠原さんですが、汁とめし、つまりミニマムな一汁一飯の食事について、いつ頃から良さを感じるようになったのですか?

 

笠原将弘さん(以下、笠原):若い頃は、ちょっと凝った料理やいろいろなものが並ぶ食卓がいいなぁ、なんて思うこともありました。ところがだんだん歳を重ねるにつれて、くつろぐ場所である自宅でつくる料理なんだから、使う食材も調理方法もシンプルな方がいい。そう思うようになってきたんです。

 

恵比寿にある日本料理店「賛否両論」店内にて。店主であり料理人の笠原将弘さん。

 

元木:やはり、シンプルで毎日の食卓に取り入れやすいところが一番の魅力でしょうか?

 

笠原:そうですね。汁物なんて普段料理をしない人がつくったとしても、なんとなくあるものを煮て味噌を溶けば、それなりの味になるものです。具がたくさん入っている汁物なら、茶碗一杯分飲むだけでたくさんの栄養もとれます。おかず代わりにも、晩酌をする人ならつまみにもなる。ごはんにしても白飯に好きな具材をのせたら、それだけでちょっとしたごちそうですよ!

 

元木:食材や調理の仕方はシンプルなのに、おいしくて栄養たっぷりな食事。それが汁とめしなんですね。

 

笠原:そうです。忙しい人でも毎日の食事に取り入れやすいと思いますね。

 

ブックセラピストの元木忍さん。

 

あるものですぐにつくれる、
懐かしくておいしいレシピの数々

元木:私も実際に、この本に載っているレシピをいろいろとつくってみたんです。本当に簡単につくれておいしいものばかりですよね。「トマト、にら、しょうが」の味噌汁は冷蔵庫にある食材ですぐできちゃうし、食べてみたら、これがまたとてもおいしかった! 意外と、トマトと味噌って合うんですね。

 

「トマト、にら、しょうが」のレシピでは、だしと辛口の赤味噌がトマトに不思議とマッチします。ニラで緑と栄養をプラス。しょうがのすりおろしを添えて。

 

笠原:そう言ってもらえてよかったです。誰でも気軽につくれるように、冷蔵庫にあるものか近所のスーパーで手に入る食材でちゃちゃっとできるレシピを選んでいるんですよ。

 

元木:レシピを見た瞬間、これならできる! って思えるから、無性につくりたくなって。「たこしば漬け焼きめし」もおいしかった。スーパーで売っていたタコに、たまたま冷蔵庫にあったしば漬けを取り出してつくりました。さっぱりしていて、いくらでも食べられちゃう。

 

「たこしば漬け焼きめし」のレシピは、タコとしば漬けを炒めて塩コショウで味付けするだけ。うま味と酸味のハーモニーが絶妙。

 

笠原:タコとしば漬けをただあえて、おつまみのようにしただけですけど、レシピができたときには「これは絶対おいしい!」という自信はありましたね。タコって炊き込むとけっこう固くなっちゃうので、チャーハンみたいに炒めたほうが失敗もなくて簡単。ちょっとしたことですが、料理人としての経験や勘どころを、レシピに反映しています。

 

元木:笠原さんご自身は、どのレシピがお気に入りですか?

 

笠原:そうですね、タマネギと豆腐と豚肉でつくる「くたくた玉ねぎと豆腐の豚汁」でしょうか。食材としてはシンプルだけど、味のバランスが絶妙で好きです。

 

元木:たしかに豚汁と白飯があったら、それだけで満足ですよね。どのレシピも見慣れた食材でつくれるから安心感もあるし、こどもの頃に家族につくってもらったあの味、みたいにどこか懐かしさも感じました。

 

「くたくた玉ねぎと豆腐の豚汁」。白みそ仕立てにたっぷりの玉ねぎ、豚肉、豆腐入り。30分じっくり煮てうま味を十分に引き出します。

 

小難しく考えないこと。
おおらかな感覚でつくれば、必ずおいしくなる

元木:レシピのほかにも、お米の炊き方やお吸い物のだしの取り方など、丁寧に説明されたページがあって、とても勉強になりました。

 

笠原:ありがとうございます。顆粒だしのような便利なアイテムがある現代に、なぜあえて手間も時間もかかる方法を選ぶの? と思うかもしれませんが、日本人として一度は正しい手順で取っただしの味というものを知っておくのは大事だと思うんです。

 

元木:毎日は無理でも時間があるときにはぜひ、やりたいですね。やっぱりひと手間かけた料理っておいしいから。

 

笠原:そんなに気負わなくてもおいしい料理はできると思いますよ。テレビや雑誌、ネットなどで、見た目は華やかだけど一般家庭でつくるにはちょっと大変そうな料理がたくさん出回ったことで、最近では「料理をすること自体、難しいものだ」と思いこんでしまう傾向があります。でも家庭料理といえば、昔はおじいちゃんもおばあちゃんもみんながやる、なにげないことでしたよね。

 

元木:それこそ、日常の料理ですね。

 

「たとえば4人前をつくりたかったら、うちのおばあちゃんは味噌汁のお椀に水を4杯すくって鍋に入れてましたよ。理にかなっているでしょう?」と笠原さん。

 

笠原:計量スプーンやカップなんて昔はなかっただろうし。何かつくる時も、しょうゆは愛用のおたまに一杯くらい、みたいな感覚でよかったんです。それがいまでは、砂糖は小さじ1杯半で、みりんは何ccまで、しょうゆは薄口だの濃口だのって細かくレシピに書いてあるから、みんな料理が嫌になっちゃったんじゃないですか?(笑)

 

元木:料理は正確に計らなくても、これぐらいかなーって感じでちょうどいいのかもしれませんね(笑)。

 

笠原:そう思います。小難しく考えず、おおらかな気持ちでやれば、おいしくつくれますよ。

 

一般的な金銭感覚を持った人にこそ
おいしい日本食を食べてほしい

元木:きょうは笠原さんが店主を務める「賛否両論」の店内でお話をうかがいましたが、次はプライベートで訪れたいです。それにしても、きちんとした日本料理にもかかわらず、コース料金が思いのほかお手頃な価格で驚きました。

 

笠原:日本料理というと、“高い”イメージがありますよね。でも、そもそも自国の料理なのに、高くて食べに行けないなんておかしな話だと思いませんか? せめて自分の店くらいは一般的な金銭感覚をもった普通の人や若い子でも、おいしい日本食を食べられるような店にしたい。そう思って価格設定しています。

 

元木:その考えは、日本の食文化の発展へつながることだと感じます。日本食を気軽に食べられるってことは、日本食を大事にする人たちの幅を広げることになりますね。今後、チャレンジしていきたいことはありますか?

 

笠原:いつか、昔ながらの定食屋や味噌汁屋、立ち飲み屋なんてやってみたいですね。気軽に一品2〜300円で食べたり呑んだりできる店、最高じゃないですか。

 

元木:気取らないけど味はたしか、というお店ですね。笠原さんのお話で、日本食や和食がぐっと身近な存在になりました。ありがとうございました。

 

Profile

料理人 / 笠原将弘

1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は50万人に迫る(※2024年1月5日時点)。
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ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。

和菓子が韓国で人気上昇中! 伝統的&モダンな和洋折衷「和菓子」のおすすめ6選

6月16日は和菓子の日。西暦848年、ご神託を受けた仁明天皇が、6月16日に16の数にちなんだお菓子やお餅を神前に供え、厄除けや健康招福を祈って「嘉祥(かじょう)」に改元したことが由来とされています。

 

日本の伝統的スイーツである和菓子ですが、最近ではモダンなデザインのものが登場したり、コーヒーやお酒とのペアリングが楽しめたりと、大きく進化。さらに、動物性由来の原料が使われていないものが多いところも、今の時代に再注目されるべきポイントです。そこで今回は、今あらためて知りたい和菓子の魅力やおすすめの和菓子について、和菓子コーディネーターのせせなおこさんに教えていただきました。

 

和菓子のトレンドを知るキーワード「和洋折衷」

ひとことで「和菓子」と言っても、その種類はさまざま。そのなかで今、トレンドとなっているのはどのような和菓子なのでしょうか? せせさんにうかがいました。

 

「昨今の和菓子のトレンドについて、キーワードを一つ挙げるとするなら『和洋折衷』です。これまでにも、和菓子屋さんがチョコレートやキャラメルといった洋の食材を取り入れた和菓子を作ることはありました。しかし、今トレンドとなっているのは、洋菓子屋さんなど和菓子業界以外の方たちが和菓子の製法を取り入れて作る、新しい和洋折衷のスイーツです。

 

そもそも和菓子に使われている原料はとてもシンプル。そのため和菓子屋さんのなかには、油分が含まれているナッツなど、洋の食材を扱うことに慣れていないお店も多くあります。その一方で、洋菓子屋さんは幅広い食材を扱うため、洋の食材を和菓子に取り入れることが得意なお店が多い印象があります。さらに、コロナ禍で新商品を開発したお店も多く、ここ最近で続々と新しいスイーツが生まれています。

 

例えば、ピスタチオやベリーなど洋菓子で人気の食材を取り入れたものや、洋酒や紅茶、チーズやスパイスといった、今まで和菓子にあまり使われなかった素材を活用したものなど。和と洋が調和した新しい和洋折衷のスイーツは、これまで以上に幅が広がってきていると感じます」(和菓子コーディネーター・せせなおこさん、以下同)

 

実は最先端!? 今こそ再注目したい、伝統的な和菓子

和と洋がマッチした新しいスイーツがトレンドになっている一方で、「伝統的な和菓子を今ほど推せる時代はない!」と、せせさん。その背景には、地球や体にやさしい食への関心が高まっていることがあります。

 

「私は今の時代にこそ、昔ながらの製法で作られる伝統的な和菓子にも注目すべきではないかと考えています。現在『ヴィーガンスイーツ』が注目されていますが、そもそも和菓子の定義の一つが、動物性由来の食材を使わずに作ることなんですよね。和菓子にはたくさんの種類がありますが、原料の多くは、米・あんこ・水などのシンプルなもので、それらが多様な製法で作られています。日本に昔からある原料ばかりなので、自然に近いものが多く、体にもやさしい。これが伝統的な和菓子の大きな魅力の一つだと思います」

 

さらに、そもそも “エコ” な考え方から生まれた和菓子も多いのだとか。

 

「例えば、飛鳥時代に中国から伝わったと言われているあんこ。もともとは饅頭の中の肉や野菜のことを指していましたが、当時の日本では肉食を避ける文化があり、代わりに小豆を使用したことが今のあんこの始まりだといわれています。これは代替肉の考え方と似ていますよね。江戸時代に生まれた桜餅も、もともとはたくさん落ちていた桜の葉を何かに活用できないかと考え、塩漬けにしてお餅を挟んで売り出したのが始まりだと言われています」

 

このように、昔ながらの和菓子のなかには、今の時代の最先端とも言える考え方から生まれたものも。

 

「新しい和菓子も魅力的ですが、昔ながらのシンプルな和菓子の良さも、もっと多くの人に知ってもらいたいです」

 

今こそ食べてほしい! せせさんおすすめの和菓子4選

ここからは、せせさんおすすめの和菓子を紹介。和菓子の魅力を再発見できるような、とっておきの和菓子を4つ挙げていただきました。

 

■ 伝統的なみそせんべいをキャラメリゼ

田中屋せんべい総本家「まつほ」
648円(税込・2枚入り)

 

「岐阜県にある『田中屋せんべい総本家』は、創業160年を誇る老舗のおせんべい屋さん。名物は、小麦粉・砂糖・味噌・ゴマ・水だけを原料に使った『みそ入大垣せんべい』です」

「私がおすすめしたい『まつほ』は、このみそせんべいにキャラメルペーストを塗り、オーブンでキャラメリゼしたもの。一口目はキャラメルの味をわりと強く感じるのですが、噛み応えのあるおせんべいなので噛めば噛むほどみその旨味も感じられて、甘じょっぱい味がくせになります。伝統を活かしながら今の時代に合わせた商品を作られているところが本当に素晴しくて、味も絶品なので、おすすめを聞かれたら必ず紹介しています!」

 

■ バターカステラを使い、洋菓子のケーキのような感覚

村岡総本舗「丸シベリア」
3240円(税込)

 

「羊羹やあんこをカステラに挟んだお菓子『シベリア』。羊羹とカステラは九州でなじみ深い銘菓ですが、これまで九州でシベリアを見かけることはほとんどありませんでした。そこに注目したのが、羊羹やカステラを長年つくり続けてきた佐賀県の和菓子店『村岡総本舗』。“令和のシベリア” として、2種類のシベリアが生まれました」

「私のおすすめは『ポルトガル風バターカステラ』を使用した『丸シベリア』。バターカステラの間には、自家製の粒あんと羊羹がサンドされていて、しっとりとした食感とやさしい甘さを感じられます。洋菓子のケーキのような感覚で食べられるので、和菓子をあまり食べ慣れていない方にもおすすめ。おしゃれでかわいらしいパッケージも魅力です」

 

■ 小豆の煮汁を再利用し卵白の代わりに

亀屋良長「吉村和菓子店 鳳瑞〈あづき茶〉」
袋入/桐箱入 1210円/1372円(税込・各9個)

 

「そもそも鳳瑞(ほうずい)とは、泡立てた卵白に砂糖を加えて、寒天で固めたお菓子のこと。しかし亀屋良長の『焼き鳳瑞〈あづき茶〉』は、卵白の代わりにあずき茶(小豆の煮汁)を、砂糖の代わりにココナッツシュガーを使用し、乾燥焼きして作られています。

 

小豆の煮汁は、ポリフェノールやカリウムなどの成分が含まれていますが、本来は捨てられてしまうことがほとんど。それをお菓子の原料として再利用しています。さらに、白砂糖の代わりに使われているココナッツシュガーは、血糖値が上がりにくいので、体にやさしいところもうれしいポイントです。いくつかフレーバーがある中で、私は特に抹茶といちごがお気に入り。メレンゲのようなサクッとした食感で口溶けがよく、コーヒーにもよく合います」

 

■ 素材の味を感じられる自然でやさしい甘み

甘納豆かわむら
「とら豆」390円(税込)
「能登大納言」440円 (税込)

 

「2001年に石川県の金沢西茶屋街で開業した、甘納豆かわむら。甘納豆と言えば、砂糖がたくさんまぶしてあるイメージですが、こちらのお店の甘納豆にはあまりかかっておらず、甘さは控えめです。しかし、しっかりと蜜漬けされているので、自然でやさしい甘みを感じることができます」

「どの甘納豆も本当においしいのですが、私が特に好きなのは『とら豆』と『能登大納言』。『とら豆』は虎のような模様をした豆で、ねっとりとした食感が特徴です。『能登大納言』は石川県産の高品質な大納言小豆です。さらに豆だけでなく、さつまいも、ブラッドオレンジ、栗、フランスオリーブなど、さまざまな種類の商品があります。パッケージもとてもおしゃれなので、ちょっとしたギフトにもぴったりです!」

 

食べるだけじゃない! 和菓子ならではの魅力と楽しみ方

スイーツを探そうとデパ地下やコンビニに行くと、和菓子以外にもたくさんの商品が並んでいます。その中で、和菓子ならではの魅力や楽しみ方はどのようなところにあるのでしょうか?

 

「私が考える和菓子ならではの魅力は、和菓子一つ一つにその地域の歴史や文化を感じられるところです。例えば和菓子のなかには、戦の時に食料として持って行ったり、お殿様に献上したり、権力の象徴になったりした歴史をもつものがあります。一嗜好品にとどまらない、歴史や文化を感じられる和菓子のような存在は、他の国にはなかなかないものではないでしょうか。

 

だからこそ和菓子は、ただのスイーツではなく、地域の歴史や文化を知ったり、人と触れ合うきっかけをつくったりするツールにもなり得ると思います。例えば旅行をしたときに、その地域ならではの和菓子を探したり、和菓子をきっかけにお店の人や地元の人と話してみたりすることも楽しみ方の一つだと思います」

 

このように和菓子を通して『体験』を楽しめるお店は、都内にもたくさん。そのなかから、せせさんがお気に入りのお店を紹介していただきました。

 

「たいやき わかば」(東京・四谷)

「東京三大たい焼き店の一つとも呼ばれる名店。行列が絶えないお店ですが、その場で食べられる店内の小さなスペースは意外と空いていることもあり、穴場のスポットです。また、たい焼きが描かれた湯呑みでお茶を飲めるサービスも魅力。お昼休みにビジネスマンがおやつとして買いに来る姿を見かけることもあり、オフィス街の中でもどこか生活感が漂っている素敵なお店です」

 

「銀座若松」(東京・銀座)

「明治27年に創業した、あんみつ発祥のお店。私はもともと寒天と黒蜜があまり得意ではなかったのですが、ここのあんみつを食べて “本物のおいしさ” に出会えました。お店は銀座のど真ん中にありますが、ゆったりとした時間が流れているところも魅力。ここに来ると日々の忙しさを忘れられます。近くに行ったときには必ず立ち寄り、人にもよくおすすめしています」

 

まだまだ広がる、和菓子の可能性

最後に、せせさんが考えるこれからの和菓子の可能性についてうかがいました。

 

「最近、韓国で日本の和菓子が流行っていることを知り、とても驚きました。今いろいろとリサーチしているところなのですが、日本の上生菓子の作り方を教えたり、お店をやったりしている先生もいるようです。まだ実際に食べてはいないのですが、見た目はすごくおしゃれでセンスが良く、日本も負けていられないなと思っています(笑)。日本の和菓子に興味を持ってくれている方たちが韓国にもたくさんいると思うと、とてもうれしいです。韓国以外のアジアの地域でもお餅やあんこなどの食材に馴染みがあるところは多いので、これから日本の和菓子をもっと広めていくことができるのではと感じています」

 

また、もちろん国内でも、和菓子の魅力をもっと伝えていきたい、と話すせせさん。

 

「とくに若い世代の中には、和菓子に対してなんとなく敷居が高いと思っている方もいると思います。しかし和菓子は、コンビニやスーパーなど、食べたいと思ったときに買える場所で手に入れたらいいし、お茶ではなくコーヒーや紅茶と一緒に楽しんでもいいんです。日常的に食べる習慣がない方は、桜が咲いている時期には桜餅、子どもの日には柏餅など、季節や行事をきっかけに食べてみるのも良いと思います。そうやって少しずつ和菓子に触れる機会を増やし、『もっと食べてみたい』と思ったら、百貨店のデパ地下などを巡って、自分の好みの味を探してみるのもおすすめです。ぜひ、和菓子をもっと気軽で自由なものとして捉え、楽しみながら食べてもらえたらと思います」

 

プロフィール

和菓子コーディネーター / せせなおこ

あんこが大好きな和菓子女子。和菓子を好きになったきっかけはおばあちゃんとつくったおはぎ。日本の地域文化や歴史がつまっている和菓子に魅力を感じ、和菓子の研究を行う。その他、和菓子メディア「せせ日和」の運営、和菓子の商品開発や和菓子専用のコーヒーのプロデュースなど。
Instagram

 


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炊飯器の同時調理で何品作れる? 和定食が同時に完成する時短レシピ

今やごはんを炊くだけにとどまらず、さまざまに使いこなされている炊飯器。ごはんを炊くときに、おかずも仕込んでおけば、それだけで理想の一食が作れてしまうのです。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、「こんなごはんが出てきたらうれしい!」と思える充実の和定食を、一度の炊飯で作っていただきました。

 

炊飯器で同時調理するときのポイント

炊飯器の同時調理は、普通炊き機能があれば、どんな炊飯器でも可能です。好みのレシピに合わせて作るときは、この2点に気をつけましょう。

 

・食材は内釜いっぱいに入れず、隙間を開けて蒸気の通り道を確保すること。
・お米の上に、根菜など重い食材を入れすぎないこと。(お米がうまく炊けなくなります)

 

また、炊飯器の取り扱い説明書も確認してから行ってください。

 

同時調理用に考えられた炊飯器も!

炊飯器によっては、内釜の中にセットできる同時調理用のトレイなどが付属しているものもあります。付属品がある場合はそちらを使い、ない場合は、おかずをシリコンカップやオーブンペーパーで分別して炊きましょう。

 

同時調理用の付属品があれば、おかず4品+汁物まで!

同時調理用に考えられた炊飯器なら、一度の炊飯で、炊き込みご飯に4品のおかずと汁物が作れてしまいます。たった一度のポチッで定食ができたら、ストレスなく料理できそうですよね。

 

今回は、一般的な炊飯器でもできるレシピを紹介しましょう。

 

普通の炊飯器でもごはん+2品できる!「タコの炊き込みご飯とサバ味噌定食」

炊き込みご飯を作りながら、サバの味噌煮となすのおひたしができあがるレシピです。手間のかかる魚料理も、炊飯しながら作れれば、食卓にのぼる回数も増えそうですよね。これから旬を迎えるなすも、柔らかでジューシーに仕上がっています。

 

「ポイントは、炊き込みご飯の上にのせた昆布。ごはんのおだしにするのであれば、通常は下に敷くか水に浸すのですが、おかずとごはんの間に置くことで、昆布の香りがおかずにうつり、上品に仕上がります。また、炊飯器調理は焼いたり煮たりという水分を飛ばす方法ではなく、蒸して仕上げるので、水分が多くなりがち。いつもよりも少し味つけを濃いめにするよう調味料を入れると、おいしくできますよ」

 

■ タコ飯

タコとごぼうのうま味いっぱいの、炊き込みごはん。調味料を入れて炊くと、おこげができやすく、香ばしく仕上がります。

 

「同時調理でおすすめしたいレシピは、炊き込みご飯。他の食材と一緒に調理するので、白米だと香りがうつってしまう場合もあります。炊き込みご飯なら気にならず、それだけで一品になる満足感もあるので、おすすめです」

 

【材料(2人分)】

・米……2合
・油揚げ……1枚
・生姜……10g
・タコ(茹でたもの)……150g
・ごぼう……50g
・酒・うすくちしょうゆ・みりん……各大さじ2
・水……150ml
・昆布……1枚

 

【作り方】

下準備
・お米はといで、30分ほど水に浸す。
・油揚げは短冊切りに、生姜は千切りにする。

 

1. タコは一口大に切る。

「それぞれ足を切り分けてから、乱切りにしていきます」

 

2. ごぼうは千切りにして、3cmほどの長さに切る。

「どんな切り方でもいいのですが、ささがきにするのが手間な場合は、千切りにしてから長さを切り揃えるといいですよ」

 

3. 内釜に米と調味料、水を入れて、生姜をのせる。

 

4. ごぼう、タコ、油揚げをのせる。

 

5. 昆布をのせる。

「ここまでで炊き込みご飯の工程は終わりです。この上におかずをのせて炊飯しましょう」

 

■ サバの味噌煮

手間がかかると思われているサバの味噌煮も、炊飯器に一緒に入れるだけでふんわりとおいしく仕上がります。合わせたのは、やさしい甘さのあるこっくりとした味噌だれです。つけあわせに長ねぎを添えてどうぞ。

 

「サバの味噌煮とは言っていますが、実際は煮るのではなく蒸している感じに近いので、魚がふっくらと柔らかくなります。普段お魚を食べ慣れていない方にも、身がふわふわなので食べやすいと思いますよ」

 

【材料(2人分)】

・サバ……半身
・味噌……大さじ2
・砂糖、みりん……各大さじ1
・⻑ねぎ……100g

 

【作り方】

下準備
・サバは骨をピンセットで抜き、2等分する。
・長ねぎはひと口大に切る。
・砂糖、みりんは合わせてとく。

 

1. オーブンペーパーにサバをのせ、ペーパーでキャンディ包みにする。

「端から水分が漏れないよう、左右をしっかりとねじります」

 

2. 中央を開き、砂糖とみりんを入れる。

「ペーパーをひらいて器のような形にしておきます」

 

3. みそをサバに塗るように、のせて包みを閉じる。

「包みを戻したら、さきほどセットしたタコ飯の上にこのままのせて炊きます。長ねぎは空いた隙間に入れておきましょう」

 

■ なすのお浸し

くたくたに柔らかくなったなすに、塩麹やおだしが染みる、ホッとする味わいのお浸しです。これから旬を迎え、手に入りやすくなるので、たっぷり作って冷蔵しておいてもおいしいですよね。

 

「こういう小鉢があったら嬉しい、という一品です。なすだけでなく、葉物を取り合わせてもおいしいですし、唐辛子などでピリ辛な味にするなど、味変のアレンジも楽しいですよ」

 

【材料】

・なす……1本
・ごま油……大さじ2
・だし汁……大さじ2
・塩麹……大さじ1
・ポン酢……お好み
・小ねぎ(小口切り)
・鰹節……お好み

 

【作り方】

1. なすは縦半分に切って、鹿の子に切り込みを入れ、乱切りにする。

「切り込みを入れておくと、なすが中までしっかり柔らかくなります」

 

2. オーブンペーパーでなすをキャンディ包みし、中央を開く。

「サバと同じ要領でペーパーを器状にして、調味料を入れましょう」

 

3. ごま油、だし汁、塩麹を順番に入れる。

「ごま油ははじめに入れて、なす全体に絡まるように一度ざっと混ぜます。そのあとで調味料を入れていきましょう」

 

4. 包みを閉じる。

「できあがったら、このまま炊飯器に入れていきます。ポン酢、ねぎ、かつおぶしはできあがりにかけましょう」

 

同時調理メニューの炊き方

炊飯器の内釜にタコ飯の材料をすべて入れたら、上からキャンディ包みにしたサバ味噌となすのお浸しを入れます。

 

隙間に付け合わせの長ネギを入れれば完成! これで普通炊飯をしましょう。

 

炊き上がりはこのようになりました。ペーパーが破けないようおかずを取り出し、それぞれ盛り付けたら完成です。

シンプルでヘルシーな和定食は、栄養満点で体も心も健康になりそう。火を使うのが億劫になる暑い日にも役立つ炊飯器の同時調理、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

和食は「トガったコンセプト」で選ぶ時代。“多彩な出汁”で勝負する自由が丘の「ちそう」が新しい!

たまにはちょっと贅沢な食事をしたい。ってとき、ありますよね? そんなときにふさわしいお店を探しているなら、明確にこだわりを打ち出した“コンセプト和食”はいかがでしょう。今回紹介するのは、本格的でありながらも大胆な発想で新たな和食の可能性を楽しませてくれる一軒。2017年10月5日にオープンした、自由が丘の「和食や ちそう」です。どんなコンセプトなのか、料理と一緒に解説していきましょう!

 

出汁を生む食材の選び方と活用法に流儀あり

「和食や ちそう」が最も大切にしているのは“お出汁”。ただ、和食であれば出汁にこだわるのは当たり前といえるでしょう。ほかと大きく何が違うのか、それは元となる食材と活用法にありました。たとえば、料理によって出汁に使う素材を変えることで味付けに広がりを持たせています。また、西洋の食材を用いて和食で表現するのも同店の特徴ですが、その際に和食としてうまく味わいが調和するように出汁を使い分けている点も秀逸。メニューで見ていきましょう。

 

405A981C-1FB7-4FC0-8F0B-26C214289270↑本日の椀もの ~真鯛の白玉包み 焼き葱 柚子~ 1000円

 

和食の献立の顔となるのがお椀です。同店では旬に合わせ2~3週間で内容が変わり、この日は焼き葱と鱈の白子が具の中心に。そして合わせる出汁は、メジマグロの削り節を使用。これによって口当たりをまろやかにして、全体的によりふんわりとした優しい味わいに仕上げています。

 

DSC_8966↑完熟トマトととろけるチーズの温かいおでん〜炙りチーズの香り〜 500円

 

こちらの出汁は、カツオと昆布をベースにイワシとサバ節を加えて調合。ここまではオーソドックスな出汁ですが、トマトのなかに鶏と豚の合い挽き肉を詰め込んでいるのがポイント。さらにトッピングのおぼろ昆布やとろけるチーズと合わさることで、日本酒にもワインにも合う和洋が調和した味わいになるのです。

 

DSC_8971↑日本酒はもちろん、和食の店でありながらワインが豊富なのも魅力。いま注目の国産ワインを中心にそろえています。写真は「鳥居平今村 勝沼ルージュ」グラス680円

 

 

才能あふれる若き料理人の自己の集大成が出汁の店だった

でも、なぜ出汁をコンセプトにしたのでしょうか。その背景には、同店誕生のストーリーが関係していました。「和食や ちそう」のオーナー・関 斉寛(なりひろ)さんは1984年生まれと若いながらも、28歳の時に独立して「創業5年で5店舗出店する」という目標を掲げて切磋琢磨してきた料理人。その5年目の2017年にオープンした記念すべき5店舗目が「和食や ちそう」なのですが、それ以前の4店舗も、それぞれにコンセプトがあったのです。

↑ホールマネージャーの田崎龍一さん(左)と同店料理長の中村圭一郎さん(右)が話をしてくれました

 

1店舗目は各地の鮮魚と地酒をカジュアルに楽しめる「等々力 うおいちばん」。2店舗目は旬の食材と魚料理が豊富な「自由が丘 魚斉」。3店目は本格的な”すし”と”天ぷら”をリーズナブルに堪能できる隠れ家的 懐石料理屋「二子玉川 せき亭」。4店目は鰹の藁焼きや炭火焼きにこだわった「上野毛 魚光」。それらの集大成となったのが、和食の基本である出汁を主軸にした「和食や ちそう」なのです。なお、お出汁料理以外でも独自性を感じることができます。

 

DSC_8947↑季節の豆皿八寸 〜和食の技法を存分に取り入れた一皿〜 1人前1200円。東京しゃもの出汁を使った卵地蒸しや、クリームチーズを忍ばせた干し柿の天ぷらなど、旬の食材を使った肴がズラリ

 

DSC_8959↑御造里 ~旬の魚をお任せで五種~ 二名様盛り 1900円〜(三名様盛りもあり/2850円~)。この日は左から、能登産 天然寒鰤、青森産 天然平目、高知産 天然生本まぐろ、明石産 天然真鯛、長崎産 鰹。隠し包丁を入れたり、炙ったり、藻塩を添えたりとネタに合わせた手法で食べさせてくれます

 

????????????????????????????????????↑特選和牛ステーキ 100g 朴葉味噌焼き 3680円。この日の部位はザブトン。甘めに調合された味噌と朴葉(ほおば)の爽やかな香りが、脂ののったお肉と絶妙にマッチします。なお味付けには「藻塩と本山椒 3480円」もあり

 

????????????????????????????????????↑海鮮4種の土鍋炊き込みご飯 一合 1900円~。牡蠣、イクラ、雲丹、カニがのった、鮮やかな色合いも楽しめる逸品です

 

伝統的な和食の調理法と出汁の風味を大切にしながら、時に洋風のエッセンスなどを加えて現代的に落とし込んでいく。そんな一皿は、きっと前衛的な日本酒やワインとも美味なるマリアージュを楽しませてくれるでしょう。

????????????????????????????????????↑少人数で行くなら、白木のカウンターが特等席といえる絶好のシート

 

明かりが落とされた空間は、凛とした雰囲気で非日常感も満点。職人の動きや会話を楽しめるフルオープンキッチンカウンターのほか、まったりくつろげる個室やテーブル席もあります。接待やデートなど、特別な会食にもオススメなのでぜひこの冬に訪れてみてはいかがでしょうか!

 

【SHOP DATA】

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和食や ちそう

住所:東京都目黒区自由が丘1-26-14 オクズミビル 地下1階 北側

アクセス:東急線「自由が丘駅」正面口徒歩3分
営業時間:月~土17:00~23:30(L.O.22:30)、日祝16:00~23:00(L.O.22:00)

定休日:なし