豚も「テレビゲーム」で遊べることが判明!! 一体どうやって??

チンパンジーは高度な頭脳を持ち、テレビゲームで遊ぶことができるのは広く知られています。しかし、それができるのはチンパンジーだけではありませんでした。最近アメリカで発表された研究によると、豚もテレビゲームを楽しむことができるそうです。いったい豚はどんなゲームをどうやってプレーするのか? 明らかにされた豚の可能性を見てみましょう。

↑こんなの朝飯前だぶー

 

パデュー大学の研究チームは、4頭の豚を使ってテレビゲームを覚えさせる実験を行いました。4頭のうち2頭は生後3か月のヨークシャー種、もう2頭は2歳のミニブタ。ヨークシャー種の豚には「ハムレット」と「オムレツ」、ミニブタには「アイボリー」と「エボニー」という名前が付けられています。

 

豚が挑んだテレビゲームは、ジョイスティックを動かして、カーソルを画面上の3つの壁(太くて青い線)まで移動させるというもの。豚が鼻でレバーを前後左右に傾けることができるように、ジョイスティックはコンピューターのモニターの前に設置されました。ゲームの開始時点で壁は3つあり、どれか1つにカーソルを当てれば餌をもらえるという仕組み。壁が3つのときは偶然当たる可能性が高いものの、壁の数が減るにつれて難易度は上がります。なお、実験を行う前に、同大の動物福祉学の研究者たちが、ジョイスティックの模造品やボイスコマンドなどを使って、豚が行動を学習するまで訓練させました。

 

本番の実験では、どんな結果が得られたのでしょうか? まず、ミニブタの2頭は3つの壁があるときに成功率が84%という成績を出しました。しかし壁が1つになったとき、アイボリーは76%の成功率だったのに対してエボニーは34%と低く、2頭の間で大きな差が見られました。一方、ヨークシャー種の2頭は壁が3つのときより、1〜2つのときに良い成績を残したそうです。

 

結果として、4頭すべてがジョイスティックを動かして、画面上のカーソルを移動させるゲームを行えました。これは、ジョイスティックの動きと画面のカーソルが連携していることを豚が理解していたということ。従来の研究では、産業動物にジョイスティックを動かすような運動能力があることは考えられなかったそうです。

 

親指を持っている動物は、物を握ることができるため、武器を持ったり道具を使えたりします。この親指は、人間の進化や動物の知能などを考えるうえで重要なものと見られていますが、豚のように親指を持たない動物がテレビゲームをできたという今回の発見は大変驚くべきものでしょう。

 

この結果を発表した研究者は「豚や産業動物について私たちは過小評価している」と述べ、今後の高度な学習や認知能力の研究に期待を寄せています。

 

【出典】Croney, C. C., & Boysen, S. T. (2021). Acquisition of a Joystick-Operated Video Task by Pigs (Sus scrofa). Frontiers in Psychology. 12:631755. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.631755

タクシーを超えろ! 最大50人も乗れる「空飛ぶバス」をイギリスが構想中

現在ドローンを活用した「空飛ぶタクシー」が、新しい交通手段として世界各国で開発されていますが、そのほとんどの乗車定員数は少数にとどまっています。しかし、そんな前提条件を乗り越えようと国家で挑み、この分野のリーダーになろうとしている国がありました。それがイギリスで、この国では最大50人もの乗客を乗せる「空飛ぶバス」構想が持ち上がっています。

 

イギリス式空飛ぶバス

↑イギリスが国を挙げて構想している空飛ぶバス

 

イギリス政府が助成する戦略的政策研究機関のUKリサーチ・イノベーションは、これからの社会を大きく変えそうな課題に取り組むために「Industrial Strategy Challenge Fund」を立ち上げ、税金や民間からの資金を使って、低炭素社会における経済成長や高齢化、AIなどの研究を行っています。

 

モビリティ革命も課題のひとつであり、同ファンドは4年間で1億2500万ポンド(約186億円)という予算をかけて「The Future Flight Challenge」というプロジェクトを行っています。新しい空の交通手段の開発だけでなく、無人飛行システムやサステナブルな航空ネットワークの構築という3つのプログラムから構成されるこの企画には15社が参加し、コラボレーションしていますが、そのなかでリーダー的な役割を担っているのが、イギリスの大手航空機製造メーカーのGKNエアロスペース。世界14か国に48の工場を展開し、従業員は1万7000人にのぼります。

 

最近、同社は新しい交通手段を発表。「スカイバス(SkyBus)」と名付けられたこの乗り物は、ドローンのように電力で垂直に離着陸が可能な電動垂直離着陸機(eVTOL)です。小型飛行機のように空を飛ぶため、クルマ、電車、バスのように地上を走る交通機関よりも、移動時間を大幅に短縮し、渋滞の心配もありません。

 

また世界の都市で開発が進められている空飛ぶタクシーは、乗客の目的地に合わせてさまざまなルートを飛びますが、このスカイバスは地上を走るバスと同じように、決まったルートを運航する想定で計画されています。つまり、名前の通り「空飛ぶバス」のような存在になるわけです。

 

環境に優しく、しかも現状の交通手段よりも便利になるかもしれないスカイバスは将来の乗り物として理想的かもしれません。しかし、このスカイバスはまだ計画の初期段階。30~50人を乗せる大型機となると、巨大なバッテリーや充電設備が必要になるのは明らか。さらに大型化によって、充電効率の悪化などが課題として持ち上がると考えられます。しかし、Co2排出量の削減は地球全体が抱える大きな問題。このような問題をどのように解決するのかをチームUKは考えなくてはなりません。はたしてGKNエアロスペースは、航空機製造のスキルやリソースを活用することができるのでしょうか?

 

世界で最も影響力のあるデザイナーが語る「仕事の流儀」

フェラーリ、マクラーレン、マセラティ、BMWなど、さまざまな高級自動車メーカーでデザイナーとして活躍してきたフランク・ステファンソン氏。現在、世界で最も影響力のあるデザイナーと言われる同氏は、自動車業界やデザイン業界でレジェンド的存在ですが、30年以上にわたるキャリアのなかで、テクノロジーの進化は彼自身の仕事にもさまざまな影響を及ぼしてきたそうです。そんななかでステファンソン氏は何を大切にしてきたのか? ダッソー・システムズの年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2021」で行った講演から3つのポイントを取り上げます。

↑テクノロジーでデザインの可能性はもっと広がる

 

1: 製造期間の短縮化の加速

ステファンソン氏は「デザインやエンジニアにおける、現在のそして今後の製造期間を短縮するニーズが高まっている」と述べます。デザイン業界では3Dのデザインにシフトし、特にここ数十年の変化はめざましいと言います。「完全にマニュアル作業だった時代は、ハンドスケッチでデザインするところから始まり、エンジニアとプロトタイプの制作を何度も重ね、最終的に商品販売に至るまで4~5年かかっていました。それが現在では半分の期間になっている」(ステファンソン氏)

 

製造にかかる時間が短くなると、質が落ちてしまうのではないかと思いがちですが、不利とも思える条件を逆手に取って「奇抜なアイデアが本当に実現できるかどうか」を早い段階で余計なコストをかけずに見極めることができます。「期間が短縮するほど、我々のデザインの可能性を広げることになる」と、ステファンソン氏は語っています。

 

2: 新しいツールの活用

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、私たちの働き方が変化していますが、ステファンソン氏も例外ではありません。例えば「世界一安全なチャイルドシート」のうたい文句で2020年に発表されたBabyArkのチャイルドシートを、ステファンソン氏がデザインしました。この仕事で、彼は「3Dソフトウェアのソリッドワークスを使い、エンジニアと一度も対面することなく、自宅のスタジオからすべての仕事を行った」と言います。完全にデジタル化されたプロセスで製品を世に出したということは驚くべきことでしょう。

 

また2021年10月には、スペースXが月面でのカーレースを計画しており、その2台のクルマのデザインをステファンソン氏が担当しています。実際に月でテスト走行を行うことはできませんから、このデザインでもデジタル上でのシミュレーションが大切。「起こり得る極限のコンディションを想定し、それにあわせてデザインを行っている」とのことです。このように、制作プロセスをサポートするツールは重要な役割を果たしているわけですね。

 

3: デザイナー・クライアント・製品の温かいつながり

「テクノロジーの発達とともに懸念されるのは、人間的な温かみが失われやすいということ」と、ステファンソン氏は語っています。これまでは人と人とのやりとりのなかで生まれていた様々な製品が、デジタル化の波にのまれることで人間性を欠いたものになっていくことが危惧されます。

 

人と人とが対面で議論を重ねアイデアを出していたプロセスが、今日ではデジタル上のやりとりだけで簡潔するようになってきました。「私たちが考える温かみの定義も変わり、よりパーソナライズされたものになっていくでしょう。そしてデザイナー・エンジニア・製品の間でいかに人間らしさを盛り込むか、デジタル上で製品にいかに愛・感情・情熱を注ぐかが重要になっていきます」とステファンソン氏。温かみのある製品には、デジタルにはない人間の五感が大切になってくると言います。

↑人間性を重要性を説くステファンソン氏(出典:ダッソー・システムズ)

 

ステファンソン氏のモットーは「if everything seems to be under control, you’re not going fast enough(万事が順調に見えるようでは、まだまだ遅い)」。現状に満足せず、自分をより高めたいのなら、ブレーキから足を離し、アクセルを踏み込んで、新しいことに挑戦すべきである。安定ばかりを求めていては時代に置いてかれるだけだ——。

 

時代に順応しながら冒険を止めないステファンソン氏のそんな姿勢は、これからも私たちに多くの刺激をもたらしてくれそうです。

イケアの「組立説明書」に隠された3つの知恵

スウェーデンの家具メーカーIKEA(イケア)の商品組立説明書を初めて見た人は、「えっ?」と驚くかもしれません。従来の説明書のような文章による説明はほとんどなく、シンプルなイラストだけで構成されているからです。これは説明書を数十ヵ国語分作らなければならないイケアだからこそ、編み出された手法と言えるかもしれません。その秘密は何なのか? イケアの社員がダッソー・システムズの年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2021」で明かしてくれました。

 

年間3500の取説を38か国語で

↑言葉は(ほとんど)いらない

 

世界50か国以上で展開するイケア。ベッドやダイニングテーブルなどの家具は組み立てや自宅までの配送に時間とお金がかかりますが、イケアはそのプロセスをすべて省略。代わりにお客さんが自分で自宅まで持ち帰り、自分で組み立てるというスタイルを導入し、「おしゃれな家具が低価格で購入できる」ということで世界的に人気を博しました。

 

しかし、いくら店頭に素敵な商品が飾ってあっても、自宅に持ち帰って実際に顧客自身が組み立てることができなければ意味がありません。そこでポイントとなるのが組立説明書。「イケアでは年間3500の新しい組立説明書を38か国語分作ります」と、パッケージ&ストア コミュニケーションマネージャーのAnne Mansfeldt氏は言います。

 

それだけ膨大な説明書を用意するためには、文章による説明を極力省き、言語や文化が違っても理解できる普遍的なイラストが重要な役割を担います。だからイケアの組立説明書には文章がほとんどなく、組み立てのプロセスがシンプルなイラストで示されているのです。

↑プレゼンしたイケアのコミュニケーションのエキスパートたち(出典:ダッソー・システムズ)

 

グラフィックコミュニケーターとして組立説明書チームに12年間所属しているDavid Andersson氏によると、組立説明書を作る際のポイントとして、イケアでは次のようことを心掛けているそうです。

 

1: 最初の工程は簡単にして、自信を持たせる

家具の組み立てに慣れている人ならいいのですが、イケアで扱うような大型家具を初めて組み立てる場合は「本当に自分でできるかな?」と不安がよぎるもの。なので「最初は簡単な工程にして、顧客に自信を持たせて、組み立てを続けるように励ましています」とAndersson氏は言います。説明書の通りに工程を進められると、「大丈夫、作れそうだ!」という気持ちが生まれるため、これでをやる気にさせるようです。

 

2: 大きなパーツを最初に組み立て、完成品をイメージさせる

小さなパーツを組み立てていても、それが完成品のどの部分に使われるかイメージしにくいもの。でも「初期段階に大きなパーツを組み立てれば、でき上がりがわかりやすくなる」とAndersson氏は言います。完成したときのイメージがわかれば、途中で気持ちが萎えることも少なくなりますよね。

 

3: 1つの工程に1つの作業だけ

文章で説明しない分だけ、1つの工程には1つの作業しか記載しません。人間が物理的にできる作業だけを表示しているそうです。

 

組立説明書を作成するチームでは、実際のサンプルを組み立ててみて、上記のようなポイントに注意しながら、3DのCADソフトウェア「SOLIDWORKS(ソリッドワークス)」を使って組立説明書を作っているとのこと。組立説明書のほかにも、顧客とのコミュニケーションツールとして、ウェブサイトやアプリ、パンフレットなどがあります。これらのツールのために、「年間3万点の商品画像と、70本以上の動画が作られている」と開発およびIT運用マネージャーのTaco Van der Maden氏は言います。

 

今後はオンラインショッピングがますます盛んになり、イケアのコミュニケーションツールもさらに進化していくことが求められるでしょう。しかし、もしイケアが文字中心の取説を作っていたら、同社は現在ほどグローバルに成功していなかったかもしれませんね。

AIは地球外でもコスパよし!? 「宇宙開発」はロボットに任せてしまえ

月や火星で大量のロボットが自律的に活動してインフラを構築する。そんなSF映画のようなビジョンを実際に実現させようとしているスタートアップ企業があります。それがアメリカのOffWorld(オフワールド)。同社の共同創業者でCEOを勤めるJim Keravala氏が、ダッソー・システムズの年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2021」に登壇し、未来の宇宙開発の形について話しました。ワイルドなビジョンの裏には一体どんな考えがあるのでしょうか?

↑宇宙開発もロボットにはもってこい?(出典: オフワールド公式サイト)

 

OffWorldが描く未来の野望は、月や火星などの惑星にAIを搭載したロボットを何百台も大量に送り込み、人間の監視下のもとで採掘などの作業を行い、そこにインフラを構築すること。これによって地球以外の惑星まで文明を拡張し、地球の生態系のバランスをとることにも役立つと考えているのです。

 

ロボットは元来、危険な場所での作業や人間が近づけない場所での作業を行うために開発された一面があります。それと同じように、同社では「人間がまだ訪れたことのない未知の場所にロボットを送り、そこで何百万台ものロボットのプラットフォームを構築し、採掘・飲み水の生成、電気エネルギーの生産などを行うことをビジョンとしている」とKeravala氏は語り、その舞台となるのが月や火星などの惑星なのです。

 

これまでにも月や火星の調査にはロボットが活用されていますが、OffWorldが目指すロボット編隊によるインフラ構築がなぜ必要なのか? 同社ウェブサイトにはその理由が3つ挙げられています。

 

1つ目は人類が拠点とする地球を守るため。昨今、注目が高まっている地球環境問題をはじめ、宇宙で発生し得るさまざまなリスクなど、地球での暮らしが絶対的に安全と言えるわけではありません。なので、地球外でも私たちを守るための準備をする必要があると同社は考えています。

 

2つ目は地球上の環境負荷を軽減すること(同社はこれをサステナブルな発展と言っています)。宇宙でエネルギーインフラを構築できれば、そのエネルギー源を地球に届けることが可能になるかもしれません。そして3つ目は探求心。かつて人類は、山を超え、海を超え、知られざる地を開拓してきました。そして次なる未知の場所(ニューフロンティア)が宇宙になるのです。人類が宇宙に惹かれるのは「未知なる場所や物事を知りたい」という私たちの知的好奇心が背中を押しているからでしょう。

 

同社が開発を進めているロボットは、大きさは30×60×20cmで、重さは53㎏の小型サイズ。地球上はもちろん、月や火星などで自律式で活動できるよう設計され、ソーラーシステムを標準装備し活動します。そんなロボットを活用する最大のメリットは「宇宙に行くことのコストを下げられることだ」とKeravala氏は言います。「ロボットによって、従来なら人を介して行っていた組み立てなどの複雑な作業を宇宙で行えるようになり、インフラ構築に必要な生産コストを大幅に下げることができる」

↑オフワールドのJim Keravala氏(出典:ダッソー・システムズ)

 

そしてAIが搭載されており、ロボット同士の共同作業や現在開発中のマシンインテリジェンスによって、「将来的には人間がほとんど介入しなくてもロボット自身が学習して、次にどんな作業をすべきか判断し活動できるようになる」とKeravala氏は述べています。

 

世界の人口問題の究極の解決策?

映画のワンシーンのようで突飛に思えるKeravala氏の構想は、10代のときに読んだトーマス・ロバート・マルサス著の人口論がきっかけなんだとか。この本は、過剰人口によって食糧不足は避けられなくなり、その結果、飢饉や貧困などが起き、人口の増加は道徳的な観点から抑制すべきであると論じていますが、Keravala氏はそれを自分なりに解釈し、人類を地球外に連れていけば、この問題は解決できるのではないかと考えたのかもしれません。

 

そんなKeravala氏は、あるインタビューによると、近い将来の目標として2024年のNASAのアルテミス計画への参画に期待を寄せているそう。壮大かつ明確なビジョンを持つOffWorldが、どこまで計画を実現できるのか注目です。

ディズニー流「Think Different」が教える創造力のヒント。型破りな発想のために脳の87%を解放せよ!

まるで物語の世界に迷い込んだように、予想もしないような体験や感動があるディズニーランド。1955年に米カリフォルニア州で最初のディズニーランドが開園したことをきっかけに、ディズニーはそれまでのホスピタリティの常識を覆し、新しいホスピタリティの概念を生み出したと言われています。

↑パパ、遊び心が足りてないんじゃない?

 

そんなディズニーで大切にされているのが、「Think Different(ほかと違う考えを持つこと)」。決まりきった枠組みに固執せず、クリエイティブな考えを生み出すことには、どんな意味や可能性があるのでしょうか? ダッソー・システムズの年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD 2021」に登壇した、ディズニーのイノベーションとクリエイティビティの元責任者Duncan Wardle氏の言葉から、その重要性を探ってみましょう。

 

「Think Different」ができると、どんなメリットが生まれるのでしょうか? その一例として、Wardle氏は自身のウェブサイトでデジタルカメラを取り上げています。アメリカを拠点とする写真用品の大手コダックが、1975年にデジタルカメラの開発に挑み、試作機を制作しました。しかし同社は当時主流だったフィルムカメラ市場に競合する懸念から、これを市場に出すことはしませんでした。

 

数十年後にはカメラの世界がフィルムからデジタルに移行するなど、この時点で予測できた人はほとんどいなかったかもしれません。「でも写真を簡単に共有する目的を明確にして、それに何よりも重点を置いていたとしたら……」と、Wardle氏は疑問を投げかけます。もしそうしていたら、コダックは現在のデジタルカメラ市場で優位にシェアを伸ばし、2012年の倒産さえ免れたかもしれません。

 

ディズニー流「Think Different 」の方法

ほかとは違う考えを持つためには、どうしたらいいのでしょうか? Wardle氏が提案する1つ目の方法は、多様性を大切にすること。Wardle氏が香港のディズニーランドに作る商業スペースについて検討していたとき、50歳以上の白人男性ばかりが集まって議論しているなか、Wardle氏はあえて、若い中国人女性シェフをそこに呼んだそう。

 

その理由は「彼女は、その場にいる人と正反対の人物で、違う考えをもたらすだろうと思ったから」とWardle氏は言います。私たちは無意識のうちに、自分たちの経験や知識に基づいて、物事を判断したり想像したりしがちですが、違う考えを持つ人がいれば、その人が予想もしない考えをもたらすかもしれないわけです。

 

また、課題についてシンプルに見つめ直すことも必要で、これはディズニーの創業者であるウォルト・ディズニーが大切にしていたことと通じるとWardle氏は言います。「1955年に最初のディズニーランドがオープンしたとき、ウォルト・ディズニーは『園内にいるのはお客様とキャストだけで、従業員はいない』とキャストに伝え、我々の仕事について改めて考え、ホスピタリティ業について深く見つめ直すよう諭しました」(Wardle氏)。こうして、それまでにはなかったホスピタリティの考えを構築していき、それによってディズニーが唯一無二の存在となり、世界中の人々を魅了していったのです。

 

さらに、Wardle氏は遊び心を持つことも大切だと語ります。偉人や凡人に関係なく、人間は入浴中やウォーキング中、通勤途中、寝る直前などに閃くことがよくあり、職場で最高のアイデアを思いつくことは、あまり多くないかもしれません。

 

一説によると、その理由は私たちが仕事をしているとき、脳は忙しく仕事をこなす「ビジーベータ(Busy Beta)」の状態にあるから。「私たちは脳全体のわずか13%しか使っていません。残りの87%は無意識下の脳で、ストレスを感じたり多忙だったりするとその脳は閉ざされてしまうのです。この閉ざされた脳を開かなければ、素晴らしいアイデアでは生まれません」とWardle氏は述べます。

↑遊び心の大切さを説くWardle氏(出典:ダッソー・システムズ)

 

無意識下の脳を解放した状態は「アメージングアルファ(Amazing Alpha)」と呼ばれています。遊び心は閉ざされた脳をオープンにするときに重要な役割を果たすのですが、遊び心は誰もが産まれたときから持ち合わせているものだとWardle氏は言います。私たちは幼いときには周囲のあらゆることに「なぜ」と疑問を持ちましたよね? そんな既成概念や経験則に捉われることのない素朴な心がクリエイティブな思考につながるのです。会社や業界、社会のルールが思考の邪魔をしていたら、「ルールを無視できたら何が可能になるか?」と考えてみましょう。

 

確かにクリエイティブな思考は考える時間がないとなかなかできませんが、時間を言い訳にしてはいけません。時間がないとき、Wardle氏は子どものように笑う時間を作っているそうです。心から笑えるということは、日々のストレスを忘れ、心身がリラックスしているということ。そうすることで閉ざされていた脳が開放され、クリエイティブな思考になっていくようです。

 

議論の余地はありますが、一般的に日本人は集団主義的であり、周囲の人と同調する傾向があると言われています。しかも性格は真面目。それ自体には良い面も悪い面もありますが、Think Differentは日本人のそのような弱点を補うのに役立つかもしれません。

「焦げ付かないフライパン」なのに焦げ付く謎を科学が解明! 対策も。

テフロン加工やフッ素樹脂加工のフライパンは、少量の油でも食材が焦げ付きにくいのが特徴です。しかし、それなのに調理中の食べ物を焦げ付かせてしまった経験のある方は少なくないでしょう。せっかく焦げ付き防止加工のフライパンを使っているのに、そうなってしまうのは一体なぜなのか? そんな疑問を解決すべく、チェコ科学アカデミーの研究者たちが調査を行いました。

 

加熱で油の表面張力に変化が

↑きちんとした理由で焦げ付きます

 

この研究者たちは、グラナイト加工のフライパンとテフロン加工のフライパンという2種類の焦げ付き防止フライパンを用意。フライパンにひまわり油をひいて加熱し、ひまわり油がどのように変化していくかをビデオカメラで撮影して観察しました。その結果、フライパンを加熱すると、フライパンの表面は平らなのに中央部分に油が薄い「ドライスポット」が形成されることが明らかになりました。

 

ドライスポットが発生する原因は、フライパンは加熱されると油の表面張力が低下することにあります。表面張力とは液体と気体の境界で液体の表面をできるだけ小さくしようと働く力のことで、水をグラスにいっぱい注ぐと水の表面が盛り上がるのが有名な例ですが、この表面張力は温度が上がるほど小さくなります。

 

したがって、特に高温になるフライパン中央部分では油の表面張力が小さくなり、同じフライパン内部でも場所によって差が生まれることに。それによって油がフライパンの外側に移動する「熱キャピラリー対流」と呼ばれる対流が生まれ、結果的にフライパンの中央部分の油が薄くなり、食べ物が焦げ付きやすくなるのです。

 

鍋にお湯を沸かすと、温められた水は鍋の上のほうへ、まだ温められていない水は下のほうへ移動し、鍋のなかで対流が生まれますが、それと同じようにフライパンの油も加熱によって対流が起きていたのです。

↑熱によりフライパンの中で油の対流が起こる(画像出典: Alex Fedorchenko)

 

では、フライパン中央の焦げ付きを防止するためには、どうしたらいいでしょうか? この実験を行った研究者は焦げ付き防止対策として次の方法を挙げています。

 

・フライパンにひく油の量を増やす

・加熱しすぎない

・底が厚いフライパンを使う

・調理中に食材をよくかき混ぜる

 

「調理に使う油の量を減らしてヘルシーに仕上げたい」と思って、焦げ付き防止フライパンを使っている方なら、油の量を増やすのは避けたいかもしれません。その場合は強火より中火程度で、食材をよくかき混ぜながらフライパンを使うといいようです。フライパンはもっと合理的に使えば、もっと長持ちするかもしれませんね。

 

【出典】Fedorchenko, A., & Hruby, J. (2021). On formation of dry spots in heated liquid films. Physics of Fluids, 33(2). https://doi.org/10.1063/5.0035547

人の健康は「幼少期の食事」次第! アメリカの研究で判明

近年、腸内フローラは便通だけでなく肥満やうつ病などにも関係があるとわかってきています。「腸活」という言葉も生まれましたが、この腸内フローラには子どものころの食生活が大きく影響を及ぼしていることが最近の研究で判明しました。大人になってから健康的な食事に変えたとしても意味はないのでしょうか?

↑三つ子の食事百まで?

 

腸内フローラとは、「腸内細菌叢(さいきんそう)」と呼ばれるもの。人の腸のなかには数百種類、数にすると数百兆個もの細菌が生息しており、全部で1~2㎏にもなると言われています。この腸内細菌は身体にとって良い働きをする「善玉菌」と、身体に有害な「悪玉菌」に分類でき、悪玉菌のほうが優勢になり腸内細菌のバランスが崩れると、便秘を引き起こしたり肌の調子が悪くなったりします。

 

また、肥満の人やうつ病患者にはある種類の腸内細菌が少ない傾向があるなど、腸内フローラは人の健康や精神面にまで関連するとわかってきており、その重要性が着目されているのです。

 

そんな腸内フローラの形成に幼少期の食生活や運動が長期的にどのような影響を与えるか調べるため、カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは若いマウスを使って実験を行いました。

 

マウスは4つのグループに分けます。1つ目のグループは通常の健康的な食事を、2つ目のグループには高脂肪・高糖質の洋食を摂取。さらに、両グループのマウスは運動させるものと運動させないものに分け、「健康的な食事+運動」「健康的な食事のみ」「洋食+運動」「洋食のみ」という4つのまとまりを作り、生後6週になるまで3週間観察。その後はすべてのマウスを運動なしの通常の食事に戻し、人間の6歳に該当する生後14週になった段階で、腸内細菌を調べました。

 

その結果、高脂肪・高糖質の洋食を与えられたマウスは、一部の腸内細菌の種類と量が大きく減少していることが判明。しかも、この減少は「洋食+運動」のマウスでも見られ、腸内細菌の減少に運動の有無は関係しないとわかったのです。

 

別の研究者が調査では、この実験で減少が見られた腸内細菌と同じ種類の細菌が5週間の運動で増えていることがわかっています。つまり、このタイプの細菌の増加には運動が関係していると示唆されるわけですが、それにもかかわらず今回の若いマウスを使った実験では運動をしても細菌数は減少したまま。このことから、幼少期に摂取した高脂肪・高糖質の食事が腸内細菌に長期的に影響していると考えられるわけです。

 

この実験はマウスで行われましたが、研究チームでは人間でも同じように腸内フローラに影響が出ると見ており、人間の場合は思春期以降でも最大6年間は影響を受けているのではないかと述べています。毎日の食事は私たちの身体の細胞一つひとつを形成する源ですが、幼少期の場合はそれがさらに重要なのかもしれません。研究チームの一人は「人の健康は食べ物だけでなく、幼少期の食事でも決まる」と述べています。

 

【出典】McNamara, M. P., Singleton, J. F., et al. (2021). Early-life effects of juvenile Western diet and exercise on adult gut microbiome composition in mice. Journal of Experimental Biology. doi: 10.1242/jeb.239699

 

冬の神秘「凍ったシャボン玉」の作り方! 自宅でもできるかも!

冬になると、各国メディアで取り上げられるのが凍ったシャボン玉。この現象はとても神秘的で美しく、たくさんの人たちを魅了しています。本稿ではシャボン玉が凍る仕組みとシャボン玉の凍らせ方を説明しましょう。

↑冬の美しさのひとつの形

 

シャボン玉が凍っていくとき、どこからか氷の結晶が生まれ、丸いシャボン玉の内部をフワフワと漂っていきます。その様子はとても神秘的で、まさに自然が作るスノードーム。やがて結晶はシャボン玉の表面に張り付き、その数はどんどん増えていきます。YouTubeやSNSにはこの様子を捉えた動画が数多く投稿されており、毎年冬になると世界中で話題となっています。

 

なぜ氷の結晶がシャボン玉のなかでフワフワと浮かぶのでしょうか? その理由は「マランゴニ対流」と呼ばれる現象が起きているからです。マランゴニ対流とは、液体の表面張力に差ができたときに生じる流れのこと。

 

私たちは日常生活でそれを目撃することがあり、お味噌汁をお椀によそったとき味噌汁がお椀のなかで自然と動いているのはその一例。これはお味噌汁の表面部分が空気に触れて冷やされるのに対して、お椀の内部は熱いままのため、表面張力に差が生じて対流ができるからです。

 

お味噌汁と同じように、シャボン玉でも表面部分と内部で温度差が生まれることで、その内部にマランゴニ対流が生まれます。すると氷結が始まったところから氷の結晶が剥離し、シャボン玉のなかをふわふわと浮遊していき、シャボン玉の凍結が進むにつれて氷の結晶が成長していきます。

 

シャボン玉の凍結にチャレンジ

凍ったシャボン玉はとても繊細で割れやすいため、一定の条件下でないと、この現象はなかなか観察できないそう。でも、こんなキレイな様子を見られるなら、自分でもシャボン玉を凍らせてみたくありませんか?

 

国立研究開発法人・科学技術振興機構は身近な材料だけで手軽にシャボン玉が凍る様子を観察できないか、さまざまな条件で実験を行いました。その結果からシャボン玉が凍りやすい条件を次のように結論づけています。

 

・液体洗剤と水を1:4の割合で混ぜて作ったシャボン玉液が最も凍りやすい

・ステンレス製トレイの表面温度を2.7℃以下まで冷やしておく

・そのトレイのうえにシャボン玉をのせて作る

・冷凍庫など-11.6℃以下の環境に置いてシャボン玉を凍らせる

 

一般的な家庭用冷凍庫の温度は-18℃のため、これなら自宅でもシャボン玉を凍らせることができるかもしれませんね。なお、ステンレス製のトレイではなく、銅のような熱伝導率が良いトレイなら、さらに凍結するまでの時間を短縮できるかもしれないそうです。

 

2020年12月9日、北海道では最低気温が-15℃を下回った地域があり、凍ったシャボン玉の写真が国内メディアで紹介されました。外気温がここまで下がる地域に住んでいる方なら気温がぐっと下がる日を狙って、自然環境下でシャボン玉の凍結にチャレンジしてみるのもありかもしれません。

 

やっぱり!「街路樹」の知られていなかった効用がドイツの研究で判明

森のなかを歩くだけで心が落ち着いて気分がスッキリしてくるように、緑には癒しの効果があると言われています。その効果は都市部の街路樹であっても、私たちの知らないうちに良い影響をもたらしていることが最近の研究で明らかになりました。

↑木の癒し効果はこんな場所にも

 

これまでの研究では、都市に緑地があると人間のメンタルヘルスに良い効果がもたらされることがわかっていました。しかし、このような研究は本人が申告した健康状態をもとにしていたため、緑による効果を客観的に評価するには難しい面もありました。

 

そこでドイツのヘルムホルツ環境研究センターなどの研究者たちは、処方された抗うつ薬を指標として、自宅近くにある緑の影響がどのようにメンタルヘルスに影響しているかを調査することにしたのです。

 

研究チームは、ドイツの都市ライプツィヒの住民およそ1万人のデータを収集し、抗うつ薬が処方されたケースを調査。さらにライプツィヒ市内全体の街路樹の数や種類も調べ、それらのデータを組み合わせて、抗うつ薬を処方された人の自宅周辺にどのくらい街路樹があるかを分析しました(なお、うつ病との関連性がわかっている雇用や性別、年齢、体重などはパラメーターとして設定されています)。

 

その結果、自宅から100m以内に街路樹が多いと、抗うつ薬の処方が少なくなることが判明。この傾向は特に経済的に恵まれない人に高く見られました。高級住宅街は街路樹が多く植えられ公園などの憩いの場所も多い一方、家賃の低い住宅が建ち並ぶエリアは建物が密集していて木々が少ない傾向にあることも抗うつ薬の処方と関連があるのかもしれません。

 

植えられていた木の種類と抗うつ薬との関連性についてはわからなかったそうですが、ドイツでは経済的に厳しい環境にある人は抗うつ薬を処方されるリスクが高いため、この研究結果が彼らの精神的な健康のサポートに役立つ可能性があるようです。

 

自宅の近くに木があれば、通勤や通学、買い物、散歩などちょっとした外出時にも必ず緑を目にすることになります。それによって私たちは知らないうちにストレスが軽減されたり、心が癒されたりしているのかもしれません。緊急事態宣言中は不要不急の外出を控えるよう呼びかけられていますが、心身の健康を維持するためにも、ときには公園や街路樹のような緑が多い場所で散歩したり運動したりするといいのかもしれません。

 

【出典】Marselle, M.R., Bowler, D.E., Watzema, J. et al. (2020). Urban street tree biodiversity and antidepressant prescriptions. Sci Rep 10, 22445. https://doi.org/10.1038/s41598-020-79924-5

やっぱ無茶だった? 気球でネット回線をつなぐ「ルーン計画」が10年で終了。なぜ頓挫した?

Googleの親会社のAlphabetは、より多くの人たちがインターネットに接続できるように、世界のインターネット網を気球で構築する「ルーン」計画を行ってきました。発展途上国などを中心にインターネットにアクセスできない人は世界の人口のおよそ半分もいると言われています。いわゆる「情報格差(デジタル・デバイド)」を解決するために、同社は壮大なプロジェクトに取り組んできましたが、最近この計画の打ち切りが発表されました。

↑ルーン計画は絵に描いた餅に

 

まずはインターネットの仕組みを簡単に見てみましょう。日本では全国各地に設置されている基地局に電波が送られて、インターネットに接続できます。総務省では2023年度末までに5Gの基地局数を28万局以上にする目標を発表しており、日本全国でインターネットに接続できる環境を整えるためには、それだけの基地局の数が必要です。

 

このようなことをインターネットの環境が整っていない世界中の土地で行うには莫大なコストがかかります。そこで、Alphabetは成層圏に太陽光で動く機器を搭載した気球を飛ばし、それを利用してインターネット網を構築しようとしました。

 

同社は2011年に子会社ルーンを創業し、「プロジェクト・ルーン」を開始しました。地表から高度10㎞までを「対流圏」と呼び、そのうえの高度10㎞~50㎞を「成層圏」と呼びます。ルーンの気球は地上から高さ20㎞の成層圏に飛ばし、空に浮く基地局として稼働する計画でした。飛ばす気球はテニスコートほどの大きさで、マイナス90℃になり時速100㎞以上の強風が吹く成層圏で耐えられるようにポリエチレン製で設計されていました。この気球なら地上の施設の200倍の地域をカバーできるそうです。

 

このルーンの飛行は世界各地で行われ、実際、ペルーの洪水やプエルトリコのハリケーンで被害を受けた地域の人々にインターネットを提供してきました。さらに2020年にはケニアの企業と提携し、初の商用展開を発表。さらなる展開に期待が高まっていました。

 

しかし1月下旬、Alphabetはルーンの閉鎖を発表。長期的に安定した事業として継続するためのコスト引き下げが難しかったことに加えて、多くの地域で基地局建設のコストが下がり、ルーンの需要が低くなったことなどが原因のようです。

 

ルーン計画は実現まで至りませんでしたが、ソフトバンク傘下のHAPSモバイルが成層圏に「HAPS(高高度疑似衛星)」と呼ばれる無人航空機を飛行させてインターネット網の構築を目指すなど、新しい取り組みが世界中で進められています。情報格差を解決するための挑戦は終わりません。

 

イエロー&レッドカードが13.5%も減!「無観客試合」が選手におよぼす意外な影響

現在、国内外の多くのプロスポーツでは無観客で試合が行われています。スタジアムでは試合を盛り上げるために、サポーターの姿をスクリーンに映したり、声援を流したり、さまざまな工夫が行われていますが、その影響は意外なところに出ているようです。

↑こんなシーンを見ることが減っているかも

 

オーストリアのサッカー・ブンデスリーガでは、2020年5月末から無観客試合でリーグを再開しました。観客の不在は選手の行動にどんな影響を及ぼすのでしょうか? オーストリアのザルツブルク大学の研究者たちが調査を行いました。

 

この調査の対象は、ザルツブルクを拠点とするレッドブル・ザルツブルク。研究者たちは試合中に起きる選手たちの口論や審判への抗議、タックル、ファウルなど、感情的になる行動について分析するシステムを開発しており、これを使って2018-19年シーズンの10試合と、コロナ禍で無観客で行われた2019-20年シーズンの10試合について比較しました。

 

すると、無観客試合では口論のような感情的な行動が、観客がいた試合に比べて19.5%も少ないことが判明。審判の行動も見てみると、そのような口論が起きた場合に制止するような行動はコロナ前の試合では39.4%見られたのに対して、無観客試合では25.2%に減少していました。審判も選手たちのケンカや抗議に積極的に関わろうとしないようです。

 

さらに感情的な行動が起きた時間について比較してみると、コロナ前の試合では合計41分42秒だった一方、無観客試合ではわずか27分9秒に減少。観客がいないと、選手やコーチ陣が議論するのが4.7%減り、激しく口論することも5.1%少なくなることがわかりました。

 

サッカーでは「サポーターは12番目の選手」と言われるように、スタジアムが観客で埋め尽くされ、サポーターの声援と熱気が溢れれば、それはピッチの選手に自然と伝わるもの。声援に後押しされて、選手やコーチ陣が興奮しやすくなるのもうなずけますが、今回の研究結果はそのことを客観的に物語っているでしょう。常に冷静でいなければならない審判も、そんな熱気からは完全に免れないみたいですね。

 

意外と選手は集中しやすい?

選手同士が試合中に口論になるのは、それだけ試合が白熱している証。そんなシーンも含めたスポーツの熱狂は無観客試合では薄れてしまうのかもしれませんが、それにはそれで良い面もあるようです。

 

研究チームは、コロナ前とコロナ禍のリーグ戦を合わせた全120試合(各60試合)におけるファウルとイエローカード、レッドカードの数を集計しました。すると、コロナ禍の無観客試合ではファウルは3.8%、イエローカードとレッドカードの数は13.5%減っていたのです。

 

さらに、レッドブル・ザルツブルクはコロナ前のシーズンでは10試合での得点数は28点だったのに、コロナ禍のシーズンでは10試合で36得点を記録。リーグ戦全60試合でもコロナ前は95得点だったのに、コロナ禍では114点と、約20%も得点数が増加しました。

 

これらのデータは、無観客試合では口論や抗議が減ることで選手がプレーにもっと集中できるようになり、その結果としてファウル数は減り、ゴール数は増える可能性があることを示しています。

 

選手同士の熱い闘いを間近で見られるのはスポーツの醍醐味のひとつ。しかし無観客試合であっても、選手が試合に集中して素晴らしいプレーが生まれているのかもしれません。そう言われるとサポーターは困ってしまいますが、無観客試合には無観客試合だからこその楽しみ方があるのでしょうね。

 

ちなみに、オーストリア・ブンデスリーガは2020-21年シーズンの開幕当初は観客数を制限していましたが、その後は新型コロナの感染者数の増加に伴い、無観客試合が続けられています。観客数の制限が選手などの行動にどのような影響を与えるのかは興味深い問題ですが、さらなる研究報告を待つことにしましょう。

 

【出典】Leitner, M.C., Richlan, F. (2021). Analysis System for Emotional Behavior in Football (ASEB-F): matches of FC Red Bull Salzburg without supporters during the COVID-19 pandemic. Humanities Social Sciences Communications, 8, 14. https://doi.org/10.1057/s41599-020-00699-1

アメリカで話題の「ウォルマートプラス」が示す小売業の新しいサービスモデル

現在、アメリカではAmazonが以前にも増して売り上げを伸ばしていますが、そこに一石を投じたのが大手スーパーのウォルマートです。ほかのスーパーに先駆けてアプリやドライブスルーを導入したことに加え、毎回の配達料が無料となるサブスクリプション(定額制)サービスも始めました。

 

競合スーパーやアマゾンへの対抗施策として顧客サービスに力を入れるウォルマートの取り組みをユーザー視点も交えて紹介します。

↑Amazonに立ち向かうウォルマート(画像出典: Walmart+の公式サイト)

 

2020年9月に始まった新たな定額制サービス「ウォルマートプラス(Walmart+)」。サービス内容は「日用食料品の無料配送」「スキャン&ゴー(無接触購入システム)」「ガソリンの値引き」の3点で、コロナ渦でも必要な買い物には行かざるをえないものの、人との接触は避けたいというニーズに対応したサービスです。会費は年間98ドルで、15日間無料で試すことができます。

 

会員になれば配達料がいつでも無料

まずは、3つのサービスのなかで一番のウリである「無料配達」から見ていきましょう。日用品、食料品、衣類、家電製品など幅広く取り扱うウォルマートですが、これまでの配達サービスは注文金額が最低35ドル以上ということに加え、1回あたり7〜10ドルの配達料がかかっていました。ところが、ウォルマートプラスに加入すると配達料は無料で、注文金額にかかわらず配達してもらえます。注文はアプリで行い、配達日時と受け取り方法も選びます。

 

定額制サービスのため、月に2回以上注文すれば十分に元が取れるでしょう。例えば、いままで週に2~3回、約30〜45分程度の時間を1回の買い物に使っていたとすれば、1週間で約2時間、1ヶ月で約8時間、年間で約96時間も自由な時間ができることになります。

 

惣菜も販売しているので、「Uber Eats」のようにテイクアウト宅配としての利用も可能。Uber Eatsではテイクアウト料・配送料が上乗せされるので店舗で食べるよりもかなり割高になってしまいますが、ウォルマートプラスは余計な金額をかけずに食事を宅配してもらうこともできます。

↑こんな注文も届いちゃう(画像出典: Walmart公式インスタグラム)

 

ウォルマートプラスは当日配達可能と謳ってはいますが、筆者が住む地域では注文が集中する土日や夕方以降は選択肢から自動的に外されていることも。また、筆者は何回か注文してみた結果、生鮮食品は自分で選んだ方がよいという感想を持っています。やや傷んだものや鮮度が落ちたものなどが混ざっていることもあったため、商品をピックアップする人によってかなり差があると思いました。

 

見落としがちですが、ウォルマートに限ったことではないものの、アメリカでは対面で何かサービスを受けたらチップを払うのが常識です。地域により金額の差はあると思いますが、ウォルマートプラスでも毎回配達員に5ドル程度のチップを払わなければなりません。配達料は無料でも、この点が日本とは異なります。

 

店舗での非接触会計やガソリン割引サービスも

↑スキャン&ゴーでサクッとお買い物

 

ここからは、店舗内で使う「スキャン&ゴー」と「ガソリンの割引サービス」に話を移しましょう。スキャン&ゴーはお店のなかでアプリを起動し、購入したい商品のバーコードをスキャンすると、即座にアプリに合計金額が表示されます。専用支払機で支払い用のQRコードをスキャンし、登録済みのカードで購入が完了した後、出口で店員にアプリの支払い済み画面を見せれば買い物は終了。共有の買い物カゴを使ったり、レジに並んだりする必要もありません。コロナ渦中でなるべく人との接触を避けたい人にはもってこいのサービスでしょう。

 

しかし、難点はシステムを取り入れている店舗とそうでない店舗があり、利用できる店舗が限られていること。また、割引価格やクーポンの利用には対応しておらず、それらを使いたい場合は通常通りレジに並ぶしかありません。

 

一方、ガソリンの割引サービスでは、会員は1ガロン(約3.8リットル)あたり5セント(約5円)の割引が受けられます。このサービスはウォルマートだけでなく、系列の大型量販店「サムズクラブ」やガソリンスタンドの「マーフィーステイション」も対応。全部合わせると全米の2000を超える場所でこのサービスが受けられます。給油の際には、アプリを起動し割引コードを入力するかQRコードをスキャンするだけなので手間もかかりません。

↑ガソリン代が結構浮きそう

 

旅行先などで給油したい場合でも、アプリを開くとGPSのマップ画面で割引対象となる最寄りのガソリンスタンドが確認できます。まったく土地勘がない場所でも割引を受けられるガソリンスタンドを見つけられるので、とても便利です。

 

Amazon Primeと比べると……

コロナ禍で売り上げがさらに拡大しているAmazonの有料会員サービス「Prime」と比較してみると、その年会費は119ドルとウォルマートに比べてやや高めです。Amazonはパントリーをはじめ、ホールフーズマーケットと提携し食品配達サービスも提供していますが、最低購入金額が35ドル以上のうえ、多くの場合、1個売りではなくケース売りと大量です。

 

また、ホールフーズマーケットはオーガニックやオリジナル商品を多く取り扱っている一方、安さを売りにしているウォルマートに比べると価格帯が高め。店舗の立地も街のなかが多く、人によっては遠くて行きづらいかもしれません。

 

Amazonは実店舗を有さないことから、ガソリン割引については実店舗を持つウォルマートのみのサービスとなります。しかしPrimeでは映画や音楽、ゲームを体験できますが、ウォルマートプラスにはこのようなサービスがありません。

 

まとめ

ウォルマートはオンラインに限定せず、実店舗を持つ強みも生かしたウォルマートプラスを始めました。実際に使ってみるとまだ改善すべき点はあるものの、Amazonとうまく差別化しながら、ユーザーのニーズを先読みしていると言えるでしょう。日本でもいくつかの小売りサービス企業が連携していけば、ウォルマートプラスのような新サービスが生まれるかもしれません。

 

英国の男性に「革命的手芸ブーム」が到来! 編み物は現代の象徴だ!!

最近、イギリスでは手芸が大流行し、編み物や裁縫を習い始める人たちが増えています。特に注目すべきは、男性がこれらを新しい趣味として楽しんでいること。長年の間、女性の趣味というイメージが強かった手芸ですが、このような見方は変化しつつあるようです。

↑英国紳士の新たな嗜み

 

起死回生の手芸ブーム

イギリスでは手芸の人気が急上昇し、第二次世界大戦以降ではみられなかった「革命的手芸ブーム」とメディアが謳うほどの盛り上がりを見せています。

 

インターネットで「craft(手芸)」の検索数や商品販売数を見ると、爆発的な伸びに驚くばかり。例えば、2012年にイギリスで創業したラブクラフト社へのアクセス数はロックダウン前と比べて58%も増え、そのうち71%は新規の顧客で占められていました。また、材料などの販売数は140%も増加し、初心者用のチュートリアル(基本操作などを教えるプログラム)へのアクセス数は8700%も上昇したとのことです。

 

また、手芸スーパーのホビークラフト社はミシンや生地、糸の検索数が前年度比の310%も上昇した一方、大手企業のジョンルイス社では裁縫セットの売り上げが300%も跳ね上がりました。

 

インターネットでは特にマスク作りの検索数が多く、検索件数はロックダウン前の700%増を記録。感染症対策のための一般防護用マスクの不足や、政府によるマスク着用推奨施策が引き金となったのではないかと考えられます。

 

新型コロナウイルスの影響により2020年は世界的に大変な年となりましたが、クラフトブームのカムバックによって倒産寸前だった手芸用品店が生き残りに成功し、驚くべき売り上げを記録しているというニュースも珍しくありません。

 

編み物や裁縫を楽しむ男性が急増 

↑手芸という瞑想

 

編み物や裁縫などの手仕事は女性のものというイメージが強いのは日本だけではありません。多様性や平等が重視される現代ではステレオタイプ的な考え方にも変化がみられるようになり、イギリスでも手芸は女性を象徴するものとして根付いてきましたが、コロナ禍においては編み物や裁縫にいそしむ男性が急増しています。

 

また、「グレーソンのアートクラブ」やアマチュアが裁縫の腕前を競う「グレート・ブリティッシュ・ソーイングビー」などのテレビ番組が人気を獲得したこともあり、男性が手芸の魅力に目覚めたといってもよいでしょう。

 

さらに、多くの魅力的な男性セレブが裁縫や刺繍、編み物の自作品をSNSに投稿していることも、男性をクラフトに引き付けている理由の1つです。例えば、有名なダイビング選手のトム・デーリーは手編みの水着やセーターなどを投稿。また、ハリウッド俳優のマシュー・マコノヒーやウィル・フェレルもTwitterに#dopemensewというハッシュタグを付けて投稿を始めました。イギリスでは刺繍のプロのジェイミー・チャルマも先導者的存在となっています。

 

手芸を始める理由を男性たちに尋ねると、「スーツを買う金銭的余裕がないから自分で作ろうと思った」「捨てるのがもったいないからボタン付けができるようになりたい」「環境保護のために服等の廃棄量を減らしたい」など、さまざまな回答が返ってきます。トム・デーリーの場合、最初は乗り気でなかったようですが、体調回復のためにコーチに勧められて始めたそう。いまでは夕方に編み物をすると気持ちが落ち着くと言っています。

 

ある調査によると、Twitterでは53%の男性が手芸や美術の会話を楽しんでいるとのこと。ほかの調査でも21%の男性が近いうちに手芸をやりたいと回答しており、今後も男性の手芸ファンはますます増えていく模様です。

 

手芸では自分の作品を実際に使えることが最大の魅力の1つですが、このほかにも「精神的に落ちつく」「リラックスできる」「達成感を味わえる」といった多くの利点が挙げられます。

 

特に昨年からの不安定な社会情勢においてテレビやコンピューター、スマートフォンなどのデバイスから離れて、まったく違った作業に集中することは瞑想的な効果があると感じている人たちも多い様子。「コロナを心配するなら、そのエネルギーをクラフト作りに費やした方がポジティブだ」と強調するイギリス人もいるほどです。

 

実際、いくつかの研究で編み物には「ストレスや心配を和らげる効果がある」ことが証明されています。ホビークラフトのクラフト系趣味のトップ5には、編み物がランクインしています。動物など日本の編みぐるみも人気がありますが、なかでも欧米でヒットしているNetflixの「タイガーキング」を演じるジョー・エキゾチックに人気が集中。この人形のかぎ針用の型紙が売り切れになったほどです。

見方にもよりますが、現代は仕事でも趣味でも「男性だから」「女性だから」という固定観念は時代遅れになりつつあります。イギリスの男性を虜にする手芸ブームは、ひょっとしたら日本でも現れるかもしれません。

 

執筆者/ラッド順子

高血圧は「ストレッチ」で改善することが判明! でも運動はやめないで

日本人の生活習慣病による死亡に最も大きな影響を与える要因の1つとされる高血圧症。この症状を改善するための治療法のなかには生活習慣の修正があり、具体的にはウォーキングや軽いジョギング、水中運動、自転車などの運動が奨励されています。しかし最近、ウォーキングよりも簡単に血圧を下げる方法があることが明らかになりました。それがストレッチです。

↑歩く前にストレッチ

 

これまでの研究では、ストレッチをすると血圧が下がる可能性が示唆されていました。では、ウォーキングとストレッチは血圧を改善するうえで、どちらのほうがより効果的なのでしょうか? この問題を調べるために、カナダのサスカチュワン大学の研究チームは比較実験を行いました。

 

実験には平均年齢61歳の高血圧の男女40名が参加。2つのグループに分けられ、1つ目のグループは全身のストレッチ運動を1日30分、週5日行うのに対して、2つ目のグループはウォーキングを1つ目のグループと同じ頻度と時間で行いました。実験中は血圧を24時間モニタリングし、8週間後の経過を観察したところ、両方のグループで血圧の低下が見られました。しかし、ストレッチのグループのほうがウォーキングのグループよりも血圧が顕著に下がっていたのです。

 

この研究を行った運動生理学の教授は、ストレッチは筋肉を伸ばすものですが、同時に動脈など全身の血管も伸ばしていると指摘。動脈にコリがあると血液の流れが悪くなり、血圧が上昇しますが、ストレッチによってそれが軽減する可能性があるようです。

 

ウォーキング+ストレッチ

ただし、ウエストまわりの脂肪については、ストレッチよりウォーキングを行ったグループのほうが減少していることも確認されました。つまり、血圧を下げるだけの目的ならウォーキングよりストレッチのほうが良いけれど、脂肪の燃焼にはウォーキングのほうが向いているということです。

 

すでに多くの人がご存知のように、ウォーキングのような有酸素運動にはコレステロール値や血糖値の低下など、数々のメリットがあります。そのため、この実験を行った教授は「運動をしないでいい」と思うのではなく、「ウォーキングにストレッチを組み合わせる」ことを勧めています。

 

ストレッチは、テレビを見ながら行ったり、お風呂上りのルーティンにしたり、生活習慣として取り入れやすいもの。全身をじっくり伸ばすと気持ちがいいものですし、高血圧ではない人も毎日の習慣として行ってみるといいかもしれません。

 

【出典】Ko, J., Deprez, D., Shaw, K., Alcorn, J., Hadjistavropoulos, T., Tomczak, C., Foulds, H. & Chilibeck, P. D. (2020). Stretching is Superior to Brisk Walking for Reducing Blood Pressure in People With High–Normal Blood Pressure or Stage I Hypertension. Journal of Physical Activity and Health, 18(1), 21-28. https://doi.org/10.1123/jpah.2020-0365

72%の精度で政治的立場を予測する「顔認証技術」の可能性と危険性

スマートフォンやパソコンといったデバイスのロック解除から飛行機の搭乗手続きまで、顔認証技術は活用の場をどんどん広げています。最近では性格や感情までも読み取ることが可能になってきている模様。そんな顔認証技術の可能性と危険性を示唆する研究が最近、発表されました。

↑顔認証技術も2つの顔を持つ

 

アメリカのスタンフォード大学の研究チームは、顔認証技術の危険性について研究を行うため、人物の顔写真からその人の政治的立場を予測する技術について実験を行いました。

 

研究チームはアメリカ、カナダ、イギリスの3か国から合計108万5795人を対象に、デートサイトやFacebookに掲載されたプロフィール用顔写真を集め、さらに本人から政治的な志向、年齢、性別などの情報を収集。プロフィール写真からは人物の顔以外のパーツは排除し、オープンソースの顔認証アルゴリズムを使ってリベラル派か保守派か予測しました。

 

すると、アメリカのデートサイトのユーザー86万2770人の政治的志向は72%という確率で予測が当たりました。そのほかの結果はカナダのデートサイトの精度が68%、イギリスのデートサイトが67%、Facebookのサンプルが71%。その一方で人間の精度はわずか55%だったので、顔認証技術のほうが顔写真からより正確に政治的立場を予測することができると判明したわけです。

 

この結果は顔認証技術の驚異的な能力を示す反面、政治的立場といったプライベートな情報も比較的に高い確率で予測することが可能であり、プライバシーや言論の自由を脅かす危険性を伴っていることを示しています。もちろん顔認証技術にはメリットもあり、例えばアメリカでは指紋で身元を割り出せなかった事件でも顔認証技術によって容疑者の特定につながったケースがあります。遺伝子工学と同じように、顔認証技術も倫理的な側面からもっと慎重に議論されるべきでしょう。

 

【出典】Kosinski, M. (2021). Facial recognition technology can expose political orientation from naturalistic facial images. Scientific Reports 11, 100. https://doi.org/10.1038/s41598-020-79310-1

 

イスラエル発「ドナー不要の人工角膜」は日本の眼科手術にも渡りに船

先日、イスラエルで78歳の男性が、視力を失ってから10年後に再び目が見えるようになったというニュースが流れました。この男性の視力を取り戻したのが人工角膜手術。これ自体は新しいことではありませんが、最新の科学技術により、人工角膜手術の課題の1つである「ドナー不足」が解決するかもしれません。

↑目玉が飛び出るほどの進歩かも

 

黒目の表面を覆う透明な組織を「角膜」と言い、外から目のなかに光を取り込むレンズの役割を担います。この角膜が傷ついたり、病気になってしまったりすると視力が失われてしまい、重症の場合は角膜移植が必要になります。

 

慶應義塾大学病院のサイトによると、角膜の移植はアメリカでは年間4~5万件、日本では年間2000件程度が行われているとのこと。日本での手術件数が少ないのは角膜の提供者(ドナー)が少ないから。そこで期待されているのが、ドナーを必要としない人工角膜。これまでにも人工角膜を使った移植手術は世界各国で行われてきましたが、今後はそれがもっと普及すると言われています。

 

そんな人工角膜を使った移植手術の最新の成功事例が、イスラエルの医療スタートアップ・CorNeat Visionから1月に報告されました。手術を受けたのは、約10年前に両目の視力を失った78歳の男性。イスラエルのラビン・メディカル・センターで、同社が開発した人工角膜「CorNeat KPro」を移植する手術が行われました。この人工角膜は非分解性のナノ組織でできており、これを強膜(眼球の白い部分)の下に入れます。担当医師によると、この手術は比較的シンプルで、1時間以内に終わったそうです。

 

手術後、男性の目から包帯が取り除かれると、一緒にいた家族の顔を見て確認したり、文字を読んだりすることができるようになりました。この男性も家族も感動に包まれたそうです。

↑目頭が熱くなるほど感動

 

同社では、この男性と同じように角膜手術を行う患者10人について承認を受けており、フランス、アメリカ、オランダなどの施設でも同様に申請を進めているそうです。

 

人工角膜手術は決して新しいものではなく、リスクもあるかもしれませんが、科学技術は進歩しており、より多くの人の役に立ちそうです。人工角膜手術を巡る日本の状況にも影響を与えるかもしれませんね。

 

ブームを支える「道ばたの植物」ーー急速に広がるタイの「プラントベースフード」事情

ここ数年、タイのバンコクでは健康志向が一種のブームとなっています。ターミナル駅前には多くのスポーツジムが並び、新型コロナウイルスによる規制でジムが一時的に閉鎖されたときには、大手スポーツ専門店で健康器具が売り切れたという話もあるそう。コロナ禍で健康志向がますます高まるなか、バンコクでトレンドになっているのがプラントベース(植物由来)フードです。

 

タイではもともと馴染み深い

↑バンコクの中華街で開催されるキンジェーの様子

 

国民の95%が仏教徒であるタイでは、昔から続く観音信仰の影響で牛肉を食べない国民が数多くいました。また、もともとタイには「キンジェー」と呼ばれる菜食週間が存在します。華僑の人々から始まったとされるこの菜食週間中は肉・魚・卵などの動物性食品、ニンニクやネギなど匂いの強い野菜、酒などの摂取を控えます。「ジェー(斎)」という漢字には、仏教において「身体と言葉と心の悪行を慎むこと」という意味があり、敬虔な仏教徒にとってキンジェーは大切な期間。菜食はタイ人にとって、もともと馴染み深いものだと言えるでしょう。

 

キンジェー期間に限らず、バンコクでトレンドとなっているのがプラントベースフードです。プラントベースフードとは植物由来の材料を使用した食べ物のことで、動物性のものを生活から排除するヴィーガンと異なり、あくまで植物由来のものをできる限り摂取するというだけで、動物性のものを食べてはいけないわけではありません。

 

日本でも昨年モスバーガーの動物性食品を使わない「グリーンバーガー」が注目を集めましたが、タイでは経済的に余裕がある中間層以上の人が多いバンコクを中心にプラントベースフードを提供する飲食店が増えてきました。プラントベースフードのみを集めた「プラントベースフェスティバル」や、地産地消を目指すファーマーズマーケットなどのイベントが毎週のように開かれ、健康志向な人はもちろん、いままでこの食べ物に関心を持たなかった層も足を運んでいます。

 

街中の飲食店でも大豆ミートを使ったガパオライスやヴィーガンパッタイなど、タイらしいプラントベースフードを数多く見かけるようになりました。ショッピングモール内の150円程度で食べられるフードコードですら、植物由来フードを扱う店舗を構えています。

 

目立つプラントベースミート市場の成長

↑バンコクを中心に広がりを見せるプラントベースフード

 

新型コロナウイルスの影響により、タイでは飲食店の店内飲食が禁止されて、持ち帰りとデリバリーのみのサービスとなった期間がありました。1月半ばとなる現在も続くさまざまな規制で多くの飲食店が不況に喘いでいますが、そんななかでも肉の代替品となるプラントベースミートの人気は特に高まっています。2021年以降のプラントベースミート市場はさらに成長し、特に中国とタイでの需要は今後5年間で200%増加すると予想されています。

 

大豆・米・ココナッツ・ビーツを原材料としたプラントベースミートを販売するタイ企業のレッツプラントミート社は、タイにプラントベースフード協会を設立。地元企業と協力し、プラントベースフード産業の成長に向けた支援促進に携わっています。

 

バイオサイエンス事業などを手がけるデュポン社の調査によると、タイの消費者は「味」「栄養」「利便性」の3つのバランスを満たすプラントベースミートを求める傾向にあるそうですが、実はタイには消費者が求める「味」「栄養」「利便性」の3要素をすべて満たす可能性を秘めている果物があります。

 

それが、東南アジアやアフリカなどの温暖な地域で栽培されるジャックフルーツ。この果物はカレーやカスタードの材料として一般的に使われ、この繊維質の食感はアメリカの南部料理の「プルドポーク」に例えられます。どんな調味料も吸収するため、調理する際に処理や加工の手間が少ない製品を求める消費者に人気のある代替肉の1つです。

↑一躍大注目のジャックフルーツ

 

食物繊維とビタミンB群も豊富なため栄養面でも優れているのですが、農園ではなく道端の植物として栽培されることが多いため、あまり食用として利用されることがありません。ジャックフルーツを活用することは、地産地消を促進させるのに加え食品ロスを減らすという観点からも需要なのです。

 

そのようなジャックフルーツをプラントベースミートとして加工・流通させているのが、タイの食品加工企業のNRインスタントプロデュース PCL社です。同社ではジャックフルーツの流通を拡大させており、現在は収益の約7%を占めるプラントベース製品のシェアが4年以内には30%まで跳ね上がると予想しています。

 

タイ最大の財閥であるCPグループも大豆タンパク質からなるプラントベースミートの開発に取り組んでいます。これら大企業の躍進もあり、国家統計局の調査によれば、2013年には4%にとどまっていた肉を食べない人の割合は2017年には12%まで拡大しました。

 

まとめ

フードコートから高級レストランまで、現在のタイでは幅広い店舗がプラントベースフードをメニューに積極的に取り入れています。世界有数のSNS大国として知られていることもあり、今後は消費者や店舗によるくちコミの後押しを受け、プラントベースフードの人気はますます広がっていきそうです。

 

執筆者/加藤明日香

「懸命に育てた動物が処分されるのは辛い」。離島刑務所を変えた受刑者の切なる思い

イタリア・トスカーナ州にあるゴルゴーナ島。この総面積2.23平方kmの小さな島には、1869年から続く刑務所があります。そこから昨年、受刑者たちによって育てられた動物たちが船に乗って本土へ向かい、この船は「自由の箱舟」と呼ばれて大きな話題を集めました。しかし、その裏では司法省から同州のリヴォルノ市、国立公園までを巻き込んだ壮大なプロジェクトが進行していたのです。

↑トスカーナ州リヴォルノ沖に浮かぶゴルゴーナ島

 

再犯率の高いイタリア

釈放後の再犯率が68%と高いイタリアでは、受刑者が服役後に社会で生きていけるように、さまざまな試みが行われています。受刑者が手に職をつければ、服役後の再犯率が著しく下がることが研究で報告されているからです。

 

例えば、ミラノには受刑者が働くレストランがあり、ナポリには女性の受刑者たちが作るコーヒーブランドが存在します。北イタリアのパドヴァには、著名な料理人や菓子職人が受刑者に技を伝授する菓子メーカーもあるほど。このような「メイド・イン・プリズン商品」はコロナ禍のクリスマスでもプレゼントに利用されました。

 

ゴルゴーナ島でも同様に受刑者たちは畜産業に従事してきましたが、この畜産業が7年前とある理由で終わることになったのです。

 

この刑務所には、ほかの刑務所と一線を画す特徴があります。それは受刑者たちが朝7時から夜8時まで屋外で仕事をしていること。一般刑務所の受刑者たちが屋外に出ることができるのは1日2時間程度ということを考えると、まさに特異な刑務所といえるかもしれません。

 

島内の工事や建設業にも携わる受刑者たちの主な仕事は、食肉となる動物たちの飼育にありました。動物の世話をすることを通して、罪を犯した人たちが倫理観を高めることが期待されており、およそ100人の受刑者が鶏や羊や牛と共存していたのです。しかし、島内には食肉処理場もありました。つまり、受刑者たちは自分で飼育した動物が食肉にされるために処分される情景を目の当たりにしてきたのです。

 

「懸命に飼育した動物が処分されるのは辛い」。そんな受刑者たちの切なる思いによって、この食肉処理場は2014年から2016年まで一時閉鎖されました。その後、経済的な理由から、この処理場は再開されてしまうのですが、受刑者たちの思いはさまざまな人たちに広がり、再開後も動物愛護団体や一般市民、元受刑者、著名人たちが食肉処理場の閉鎖運動を繰り広げたのです。更生のために受刑者たちが愛情をこめて育てた動物を食肉用に目の前で処分するのは倫理的にも間違っているというのが彼らの主張。司法省もイタリアは死刑を廃止しているという理由からこの運動を認めたのです。

↑手段から仲間へ

 

その結果、処分されるはずであった動物たち75頭がまず、余生を送るためにゴルゴーナ島からラツィオ州へと搬送されました。メディアが一斉に「自由の箱舟」と呼んだのは、食肉処理場送りを免れたこの動物たちを乗せた船のことだったのです。結局、450頭いた動物たちのうち受刑者たちが面倒を見ることになった138頭を残し、ほかの動物たちはゴルゴーナ島を後にすることになりました。

 

刑務所の発表によれば、残った138頭は受刑者の更生トレーニングの対象となっています。動物たちの存在は、受刑者たちが生きるための「手段」から、ともに生きる「仲間」へ変わりました。いまでは動物たちと受刑者、そして島の自然が写真となったカレンダーも販売されています。2019年にゴルゴーナ島を訪れ、動物たちの保護を推進した司法省次官ヴィットリオ・フェッラレージは、受刑者たちの心理状態だけではなく島の環境を考慮しても食肉処理場の閉鎖はよい決断だったと語っています。

 

観光やサステナビリティの地として取り組みを推進

↑ゴルゴーナ島にはこんな美しい側面も

 

しかし、新たな課題も生まれました。ゴルゴーナ島の刑務所の特徴である「屋外での活動」を維持するためには、動物の飼育以外の活動を受刑者たちに早急に提供することが必要です。そこで構想されたのが、司法省、リヴォルノ市、ゴルゴーナ島があるアルチペラゴ・トスカーナ国立公園やフィレンツェ大学を巻き込んで、サステナビリティをテーマにした新しい活動を始めること。まずはゴルゴーナ島内の道や森の整備や清掃から始まり、バイオダイナミック農法による農業プロジェクトが進行中です。

 

さらに、刑務所やリヴォルノ市は国立公園内に置かれたゴルゴーナ島の起伏ある地形を利用し、観光業を発展させることも目論んでいます。うまくいけば、受刑者が屋外で活動していても治安に問題がない島としての宣伝活動になることでしょう。

 

ゴルゴーナ島に住んでいるのは、受刑者と刑務所の関係者、そしてこの地で生まれ育った90歳過ぎの女性1人だけ。このような都会離れした状況や、外国人の間でも人気が高いトスカーナ州にあるという地の利を活用して経済面でのテコ入れが進められているのです。

 

もちろん、受刑者たちの願いが動物の保護につながったこともゴルゴーナ島のアピールポイントといえるでしょう。そういったポジティブなイメージやサステナビリティ活動への取り組みが、島全体の経済や生活にも良い影響を与えるのかどうか。この美しい島を舞台にしたストーリーはこれからも続きます。

 

 

「太陽光発電」の鍵を握るのは唐辛子? 身近な食材が熱視線を浴びるワケ

中南米を原産とする唐辛子は、太陽の光がさんさんと降り注ぐ熱帯地域などで育ちますが、そんな唐辛子が太陽光発電に一役買うことが最新の研究でわかりました。今後の太陽光発電の開発に唐辛子が積極的に使われることになるかもしれません。

 

エネルギー変換効率をもっとホットに

↑ソーラーパワー×唐辛子パワー

 

太陽光発電がさらに普及していくうえで課題の1つとなっているのが「エネルギー変換効率」の向上です。エネルギー変換効率とは、太陽の光をどれだけ電気に変換できるかを表した数値。現在、太陽光発電のエネルギー変換効率はおよそ15~20%で、この数値が上がればもっと効率的にエネルギーを得ることができるようになります。

 

それを目指して世界中の研究者やメーカーが電池の材料を変えるなどのさまざまな試みを行っていますが、そのなかで中国とスウェーデンの共同研究チームが注目したのが唐辛子でした。

 

太陽光発電の新しい材料として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」の製造工程で、ペロブスカイト(MAPbI3)の前駆体(※)に唐辛子の辛み成分であるカプサイシンを添加したところ、エネルギー変換効率が19.1%から21.88%に上がったのです。さらにカプサイシンを添加した太陽電池は、800時間経過した後もエネルギー変換効率を90%以上維持しており、安定性があることもわかりました。

※前駆体: 正極材(電池のプラス側の電極に使用する材料)の前段階の物質のこと。

 

この理由として、カプサイシンがペロブスカイトの膜の密度を上げたことで、エネルギーがより変換されやすくなったと考えられています。カプサイシンは安価な材料として利用できるので、大型の太陽光発電にも利用できるかもしれません。

 

唐辛子と同じように、「にがり」も太陽光発電の効率を上げる可能性を持つと言われています。にがりの主成分は塩化マグネシウムで、これがテルル化カドミウム太陽電池に使われる塩化カドミウムの代わりになるそう。塩化カドミウムは高価で、しかも発がん性が疑われ毒性があることから代替物質の研究が行われていました。塩化マグネシウムは豆腐の製造に使われるように食べても安全なうえ、価格が安く魅力的と評価されているのです。

 

太陽光発電が唐辛子やにがりなど身近な食材を生かすことで、さらに発展することに期待したいですね。

 

列車を運休させる「ヤスデ」の大量発生サイクルが判明!

最近、全国各地でヤスデが線路上で大量発生し、列車の車輪が空転することから遅延や運休が起きています。ヤスデの大量発生は過去にも起きており、大量発生した年を追ってみると8年または16年おきになっていることが判明しました。なぜヤスデはこのサイクルで大量発生するのでしょうか?

 

列車を運休させることから「キシャヤスデ」の名前に

↑キシャヤスデのサイクルとは?

 

1976年に八ヶ岳周辺のJR小海線の線路でヤスデが大発生したことがありました。急こう配の区間のため、ヤスデを引いた車輪がスリップしてしまい、一部の列車が運休する事態に。同様の事例は各地で起こり、そこからこのヤスデには「キシャヤスデ」という名前が付けられたそうです。ヤスデの大群によって列車が運休すると、駆除費用のほか代替輸送費など、鉄道会社はさまざまな費用がかかってしまうのだとか。もしキシャヤスデの発生の予測や予防ができたら役に立ちますよね。

 

そんなキシャヤスデについて1972年から研究を行ってきたのが、国立研究開発法人「森林研究・整備機構」。この研究チームではキシャヤスデによる列車への影響が複数回報告されている小海線近くと、秩父多摩甲斐国立公園東側の2か所で2016年までに年に1~5回の調査を続けてきました。土を掘り起こしてポリエチレンのシートの上に広げてキシャヤスデを採取。土を掘り起こす深さを0~5センチ、5~10センチ、10~15センチ、15~20センチと変え、根気よくキシャヤスデの様子を観察しました。

 

すると、キシャヤスデが成長していくプロセスが詳細にわかってきたのです。まずメスが8月までに400~1000個の卵を産みます。夏になると幼虫は毎年脱皮し、少しずつ成長していき、8年目の夏の脱皮でようやく成虫に。成虫になったキシャヤスデは9月から10月ごろに、交尾する相手を探すために地表を動きまわり、冬眠前や春になってから交尾を行い、8月までに卵を産んで死を迎えます。

 

つまりキシャヤスデは卵のまま7年間土のなかで過ごし、8年目に成虫になって、相手を見つけるために地表面に出て活動を始めるのです。このとき線路上に現れたキシャヤスデこそが列車をスリップさせていたのです。

↑キシャヤスデの成長過程

 

キシャヤスデが成虫になって地表を動く距離はおよそ50メートルと決して広範囲ではないため、同じ電車の路線でキシャヤスデの大量発生が起きるのは、8年周期または16年周期と予測がつくそう。実際、これまでの事例を見てみると、キシャヤスデの大量発生は8年または16年間隔で起きているようなのです。

 

昆虫以外の節足動物でこのようなライフサイクルを持つ生物がいることが判明したのは、今回が初めてのことなのだとか。この研究チームでは、同じようにライフサイクルをもつ生物はいるだろうと見ていますが、この発見が大量発生に伴う電車の事故や遅延の予防に活用されることが期待されます。

 

【出典】Niijima, K., Nii, M., & Yoshimura, J. (2021). Eight-year periodical outbreaks of the train millipede. Royal Society Open Science. 8(1). http://doi.org/10.1098/rsos.201399

なんかスゴい時代…自律的に動く「魚の群れロボット」が誕生

イワシのような小さな魚は群れを作り、自分の身を守ります。そんな魚たちの動きを見本に、周囲の魚と共に自然と群れを形成する魚のロボットをハーバード大学の研究チームが開発しました。魚のように自ら群れを作るロボットの開発は、海での遭難者の捜索などに応用できる可能性があるそうです。

 

カメラで周囲の魚のLEDライトを検知

↑かわいくてスマート

 

魚の群れの形成には、リーダーのような存在がいるわけではありません。魚同士が個々にコミュニケーションをとっているわけでもなく、自然と作られると言われています。一匹一匹の魚が周囲の魚の行動をもとに自律的に動くことで群れが生まれており、そんな複雑な集団行動は科学者を長いこと魅了してきました。

 

ハーバード大学の研究チームは生命体が大群を成して自ら動くように、自己組織化されたロボットを開発してきました。例えば、自律的に動いて1000体の群れで星型や文字を作るミニロボットの「Kilobot」があります。しかし、これまでの自律型ロボットは2次元の平面的な空間でしか動かず、魚のような動きをするためには、ロボットが3次元で動く必要がありました。

 

この課題に挑むため、研究チームはロボットに青色のLEDライト3つと2つのカメラを搭載しました。このロボットは周囲のロボットのLEDライトをカメラで検知すると、独自のアルゴリズムで距離や方向などを測ります。こうして、3次元でも自律して動くことができるロボット「ブルーボット」が生まれました。

 

水中ロボットが3次元で自律行動することが実証されたのは、これが初めてとか。多くのロボットは人間が近づけない場所や危険な場所で利用されているかもしれませんが、ブルーボットはGPSやWi-Fiが存在しない場所でも自律的に活動することができる点がポイント。そんなロボットの開発は私たちにとって非常に意味のあることだと、この研究チームは語っています。

 

リーダー的存在を作らず、特別な指示がなくても、周囲のロボットの動きを真似して集団行動が可能な自律式ロボットは、例えば海での遭難者の捜索や救助などにも活用できる可能性があるようです。見方を変えれば、ロボットは少しずつ自由を獲得しつつあるようにも見えますが、進歩しているのは確実でしょう。

 

【出典】Berlinger, F., Gauci, M., & Nagpal, R. (2021). Implicit coordination for 3D underwater collective behaviors in a fish-inspired robot swarm. Science Robotics, 6(50). https://doi.org/10.1126/scirobotics.abd8668

 

発電所は足の裏! 汗を電気に変える「超吸収フィルム」の正体

足の裏には多くの汗腺があるため、足の汗の量は1日でコップ1杯になると言われています。そんな汗を吸収して、ウェアラブル機器の電力に換えるフィルムが最近シンガポールで開発されました。一体どんな仕組みなのでしょうか?

 

従来の15倍の吸収力

↑新開発されたインソール。汗のかき具合が色でわかる

 

私たちが汗をかくのは体温調節のため。汗をかいてその水分が蒸発したときに表面温度が下がるので、涼しさを感じることができます。そして汗腺が多く集まる足の裏はたくさんの汗をかき、1日中靴を履いたままでいると、不快感を感じるものです。

 

足の汗を吸収して快適に過ごすために、さまざまなインソールが市販されていますが、今回シンガポール国立大学の研究チームが開発に取り組んだのは吸収性に加えて、プラスアルファの機能を持ったもの。それが汗を電気に変えるという機能でした。

 

この研究チームが開発したのは、塩化コバルトとエタノールアミンの2つの吸収性物質でできた超吸収性フィルム。吸湿剤にはゼオライトやシリカゲルなどがよく使われていますが、研究チームが開発したフィルムは、それらと比べて15倍の水分量を吸収し、吸水スピードは6倍になるのだとか。おまけに太陽光にあてると水分を蒸発できて、100回以上繰り返し使用できます。しかもフィルムは吸水状況に応じて青から紫、ピンクに色が変化するため、色を見て吸湿度合を判断することが可能。

 

そして、このフィルムは汗から電気を発生させる機能もプラスしました。汗の主成分は水分であり、フィルムに使われた電気化学セルが水分から電力を生じさせます。電気化学セル1個で0.57ボルトの電気が発生し、全体では8個のセルが使われ、発光ダイオードに十分な量の電力になるそう。つまり、この電力を利用すれば将来、ウェアラブル機器など私たちが身に着けているデバイスの電力として利用できる可能性があるのです。

 

汗から発生させた電力をウェアラブル機器に利用する具体的な方法について研究チームはまだ明らかにしていません。研究チームは既にこのフィルムを使ったプロトタイプのインソールを3Dプリントで制作していますが、これを製品化させるために共同研究を行う企業を探しているとのこと。今後の発展が楽しみですね。

 

頭の中で羊を数えられない人は「記憶の仕組み」が特別かも。アメリカの研究が示唆

「羊を数えると眠くなる」とよく言われていますが、世の中には「羊が1匹、羊が2匹……」と頭のなかで数えられない人もいます。このような状態を指す言葉が「アファンタジア」。アファンタジアについてはまだ十分な研究が行われていませんが、その謎は少しずつ明らかにされつつあり、最近ではアメリカで興味深い研究結果が発表されました。著名人にもいると言われるアファンタジアについて見てみましょう。

↑記憶は謎だらけ

 

アファンタジア(aphantasia)とは、医学的には具体的な風景や物のイメージを頭のなかに描くことができない状態のことを指します。もともと1880年に、フランシス・ゴルトンという学者によって報告がありましたが、その後はほとんど研究されることなく、2000年代前半になってようやくイギリスの神経学者アダム・ゼーマンが研究を始めました。

 

最近では、シカゴ大学で神経科学について研究するベインブリッジ助教授が、ベッドや植木鉢など複数の家具が置かれた部屋の写真を100人以上の被験者に見せ、その絵を描いてもらう実験を行っています。この実験は2回行われ、1回目は写真を見た後に自身の記憶をもとに絵を描き、2回目は写真を見ながら絵を描きました。

 

1回目の実験では、アファンタジアではない人はカーペットやベッドなど部屋にあった物の色やデザイン、形のような細部まで絵にすることができましたが、アファンタジアの人は絵を描くことにとても苦労したことがわかりました。おまけにアファンタジアの人は物の細部の特徴を絵に表すことができず、なかには窓の絵を描かず「窓」と文字で説明を入れる人もいたのです。

 

一方、写真を見ながら絵を描くという2回目の実験では、アファンタジアでない人は1回目の実験との差があまり見られませんでしたが、アファンタジアとそうでない人では間違いの数に違いがありました。アファンタジアでない人は14回以上のミスがあり、写真のなかには存在していなかった物を絵に描いた人もいました。対照的にアファンタジアの人は描いた物の数が少なかったものの、そのミスはずっと少なかったのです。

↑シカゴ大学の実験結果。左から2番目と3番目にある2枚がアファンタジアの人が描いた絵

 

このことから、研究者たちはアファンタジアでは空間記憶のプロセスが異なるのではないかと推測。アファンタジアでない人は空間を「視覚的」に記憶し、それをもとに絵を描くのに対して、アファンタジアの人の空間記憶は視覚的なイメージを使わない代わりに、1つひとつの物を「言葉」で記憶しようとしていた可能性があるそうです。このような認知的な働きによって、間違えて覚えることを防いでいるのかもしれません。

 

アファンタジアはごくわずかな人に見られる特徴と考えられていますが、以前ディズニー・アニメーション・スタジオの社長を務めていた、ピクサー・アニメーション・スタジオの共同創業者であるエドウィン・キャットマルや、ウェブブラウザのMozilla Firefoxの共同創業者のブレイク・ロスが、アファンタジアであると言われています。近年では、そんな著名人をきっかけにアファンタジアが注目されるようになってきました。

 

アファンタジアの特徴や理由についてはまだ謎が多いようですが、もし「羊を数えて」と言われたときに、頭の中に羊の姿を思い浮かべられることができなかったら、あなたは数少ないアファンタジアの1人なのかもしれません。

 

【出典】Bainbridge, W. A., Pounder, Z., Eardley, A.F., & Baker, C. I. (2021). Quantifying aphantasia through drawing: Those without visual imagery show deficits in object but not spatial memory. Cortex, 135, 159-172. https://doi.org/10.1016/j.cortex.2020.11.014

脂肪燃焼が358%も違う! 寒い季節こそ「全力運動」で効果アップ

1月20日は大寒。暦のうえでは1年で最も寒い時期となりますが、気温がとても低い時期だからこそおすすめなのが運動。寒い季節の運動は脂肪が燃えやすいというのは以前から知られていましたが、最近の研究では「高強度インターバルトレーニング」と呼ばれる運動が特に効果的であることがわかりました。

↑真冬こそ身体を追い込め!

 

高強度インターバルトレーニング(High-Intensity Interval Training、以下HIIT)とは、強度の高い運動(つまり全力の運動)と短時間の休憩で身体を追い込むトレーニングのこと。HIITは中強度の運動に比べて脂質代謝が良く、脂肪もより燃えやすいことが明らかにされていました。この作用には運動している人をとりまく気温も影響を与えていると考えられていましたが、それが実際どのように血中の脂肪レベルや翌日の新陳代謝に関連するのかは不明でした。

 

そこで、運動中と休憩時における室内温度が脂肪の燃焼にどのような影響を与えるかを調べるため、カナダのローレンティアン大学の研究チームが実験をしました。この実験には、やや太り気味の成人が被験者群として参加。

 

まず被験者たちは夜に90%の強度で自転車を1分間全力でこぎます。スプリントを一回行うごとに、30%の強度で自転車を90秒間こぎながら休憩を挟みます。被験者群はこのセットを10回繰り返し、最後は軽めのサイクリングまたはウォーキングでクールダウンしてトレーニングを終えます。

 

このトレーニングは気温を変えながら2回行われました。1回目は十分に暖かいけど、代謝には影響を与えない室温21℃で行い、1週間後に行った2回目のトレーニングの気温は0℃でした。2回とも被験者群は運動後の就寝前にタンパク質や炭水化物の栄養バーを摂取し、翌朝にはインスリンやグルコースなどの量を測定しました。

 

その結果、0℃で運動したときは、21℃での運動に比べて、運動中に脂質が酸素と結びつく量が358%も上がっていることが判明。脂質が酸素と結びつきエネルギーに変換するというのは脂肪が燃焼するという意味なので、0℃での高強度の運動は21℃での運動に比べて脂肪が3倍以上も燃焼しやすいということになります。

 

しかし、高脂肪の食事を食べた後にHIITを行い、長期的な視点でその効果を見てみると、血糖値や中性脂肪値などを含めた代謝反応は0℃で運動をした後でも大きく変化しませんでした。

 

厳しい寒さのなかで全力で運動するのは精神的にツライかもしれませんが、真冬のHIITは頑張ってやってみる価値があるかもしれません。

 

【出典】Munten, S., Ménard, L., Gagnon, J., Dorman, S. C., Mezouari, A., & Gagnon, D. D. (2020). High-intensity interval exercise in the cold regulates acute and postprandial metabolism. Journal of Applied Physiology. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00384.2020

「DNAディッシュ」に大注目! 自分探しが医食同源になる

自宅で過ごす時間が増えた昨今、フード宅配サービスのニーズが世界的に高まっています。そんななかで大きく発展しているのが、好みのメニューを選ぶと食材や調味料が必要な分だけ送られてくるミールキット。イギリスではユーザーのDNAを分析し、各自の民族ルーツに合わせたミールキットを届けてくれる画期的なサービス「DNAディッシュ」が登場して、大きな注目を集めています。

 

民族ルーツに合ったメニュー

↑DNAも気にしながら食す

 

3度目の全国的なロックダウンが行われているイギリスでは、過去1年間にデリバリー食はもちろん、ホームメードのパンやお菓子の材料セット、チーズとかワインのテイスティングセットなど、さまざまなフードサービスが生まれました。自粛生活がノーマル化した現在、外食に代わり毎日の食事としてミールキットサービスを利用する人が増えています。

 

ミールキットは「毎回自炊するのは面倒だけど、出前ばかりでは費用もかかるし栄養面も気になる」というニーズをピッタリ満たす比較的新しいサービス。スーパーで食材を購入しイチから料理するのに比べ、献立に悩まず、食べたいメニューに必要な材料を人数分だけ届けてくれるメリットがあります。まとめて注文すればディスカウントも。リモートワークを続けている人もまだまだ多く、ミールキットを利用したほうが時短になり、食材の無駄も出ないという理由で人気があります。

 

多様なニーズに応えるために、メニューの選択肢は広く、栄養面もよく考慮されています。なかにはアスリートやダイエッター専用のメニューや、オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーなど最近のトレンドを意識したメニューもあり、このようなミールキットのサービスは特に発展しています。

 

そんななか、ロンドン発ミールキット会社のグーストが、個人の遺伝子タイプに合わせたメニューを選べる新たなミールキットの「DNA ディッシュ」を開発しました。イギリス版「マネーの虎」にも登場したことのある同社と、バイオテック企業のリビングDNAによるコラボ企画であるDNAディッシュは、DNAデータをもとにユーザーのルーツを特定し、それにあうメニューを提供するという仕組み。

 

自宅に届いた遺伝子検査キットを使いサンプルを採取して返送するだけで、自分の遺伝子にあった料理が届きます。試験運用期間中にプロモーション用として準備した無料の遺伝子検査キットが早々に品切れになるなど、サービス開始前に多くの人の心をつかんだ模様。

 

多様なバックグラウンドを持つ人が多いイギリスでは、自分の民族的ルーツをよく知らない人が大半です。遺伝子テストによって「代々イギリスだったけれど、実はフランスとドイツとアイルランドのミックスだった」とか「生粋のナイジェリア系と思っていたけれど、カメルーンやブルキナファソにもルーツがあった」といった驚きの声もあり、自分探しの方法としても魅力があることが話題の一因となっています。

 

ユーザーの民族ルーツに合わせ、グーストのサイトにはイギリス料理をはじめ、イタリア風や地中海風、ドイツ風、北欧風など40か国を超えるバラエティ豊かなメニューが揃っています。リビングDNA社が手がける有料の本格的な遺伝子検査キットを利用すれば、50種類以上から選ばれた最適なおすすめメニューが毎週、各ユーザーのアプリに表示されます。家族の構成人数で申し込むことができる一方、食品廃棄物が出ないように分量が計算されていることも好評。

 

遺伝子傾向を知って医食同源

↑健康は食事から

 

話題となった無料遺伝子分析キットはルーツ探しがウケましたが、リビングDNAが有料で提供する本格的な分析キットを利用すれば、食事や運動などに関してもっと詳しいアドバイスを受けることもできます。これを使えば、糖尿病など生活習慣病の発症リスクや遺伝的傾向を遺伝子レベルで知ることが可能。自分に合った食生活をすることで、体質を改善したり、病気を予防したり、「医食同源」の考え方を実践します。

 

食品アレルギーなど明確なケースを除くと、自分の体質に合った食事をしているかどうかわからないこともありますが、今回の無料版のプロモーションで、これまで縁のなかった遺伝子検査キットに興味を持った人も多かったのではないかと思います。

 

遺伝子分析と食事指導を合わせたサービスは以前にもありましたが、一人ひとりが持つルーツへの興味や各自の最適な食生活への気づきを満たしてくれるDNA ディッシュは、究極のパーソナライズ商品ともいえるでしょう。食事自体の価格も1食3〜7ポンド程度(約420〜990円)とリーズナブル。サブスクリプションサービスの側面も兼ねており、一度検査を受けてしまえば、自分に合った食材を定期的にオーダーすることもできます。

 

「健康は一日にしてならず」といいますが、DNAディッシュで自分のルーツや身体に合う食事を楽しめるのであれば、三日坊主にもなりにくいでしょう。DNA分析やサブスクリプションをミックスしながらパーソナライズされたサービスは、今後ますます増えていきそうです。

 

執筆者/ネモ・ロバーツ

「ワクチンパスポート」が航空業界で進行中だが、一筋縄でいかなそうなワケ

アメリカやイギリスなどで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、日本でも2月下旬からワクチンの接種を開始する目標を掲げています。これに関連して議論されているのが、もしワクチン接種を証明する必要があるとしたら、どうやってすればいいのか? そこで注目されているのが「ワクチンパスポート」という構想です。

↑ワクチンパスポートも持った?

 

新型コロナのワクチンが普及すれば、映画館、イベント会場、レストランなどの公共の場所への入場には、もしかしたらワクチン接種が必要条件になると考えることができます。そうだとしたら、ワクチンの接種を証明したり、接種状況を管理したりするものが役に立つでしょう。それがワクチンパスポートです。

 

新型コロナによって多大な影響を受けた航空業界・旅行業界では、ワクチンパスポート構想に早く着手しました。世界の約290の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、「IATAトラベルパス」のアプリの開発しています。このアプリでは、新型コロナの検査結果や接種状況を管理できるほか、各国の入国規制情報や最寄りの検査施設を検索することも可能。海外渡航を目的とするなら世界共通で使えるグローバルなアプリが必要ですが、国内だけの利用を考えれば、ローカライズされた機能も求められるかもしれません。

 

安全な旅行を謳うIATAは、2021年3月までに同アプリのローンチを目指しているとのこと。すでにオーストラリアのカンタス航空やマレーシアのエアアジアなど、国際線の搭乗客にワクチン接種を義務付ける意向を示している航空会社が出始めており、このような航空会社がこのアプリを利用していく可能性もあります。

 

個人情報管理への懸念

しかしワクチンパスポートでは、ワクチン接種のような健康情報を取り扱うものだけに、個人情報の管理に懸念を抱く人もいるでしょう。ワクチン接種に懐疑的な人も少なくありません。またワクチンパスポートによって、「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考えが人々の間で生まれると、社会の不公平を浮き彫りにする可能性があるという指摘もあります。このような反論があるため、ワクチンパスポート構想は一筋縄ではいかないでしょう。

 

 

体温計も常に携帯しませんか? 「スマホ装着型の検温デバイス」がクラファンで超人気

体温を頻繁に測定するようになった今日、体温計もほかのテクノロジーと同じように、もっと使いやすくなるように進化しようとしています。その兆候のひとつが、スマートフォンに装着して使う小型の体温計。「ThermGo」と名付けられたこの新しい体温計は、現在クラウドファンディングで大きな注目を集めています。

↑いつでも、どこでも体温を測定できるThermGo

 

ThermGoは、iPhoneとアンドロイドのスマホまたはタブレットに付けて体温を測定します。重さはわずか16g、横幅7cmの円筒状の小型体温計となっているThermGoは人の額に向けるだけで、赤外線センサーによってタッチレスで体温を測るのが特徴。わずか数秒で体温を測定するうえ、スマホに装着して使うため電池も不要です。体温測定の精度については2000回を超える試験を行い、誤差は±0.1℃にとどまっているのだとか。

 

また、スマホにつけて測定したら、そのままアプリで体温を管理できる点も魅力です。毎日測定した体温をアプリに記録しておけば、新型コロナウイルス以外でも、インフルエンザや風邪などのわずかな体調の変化にいち早く気づけるかもしれません。子どもの体調管理にも役立ちそうです。

 

さらに、ThermGoはタッチレスで短時間で測定できるため、ほかの用途にも使うことが可能。室温を測ったり、ペットの体温を見たり、赤ちゃん用のミルクや食べ物の温度を測ったり。測定可能温度は体温なら35~43℃、モノなら30~50℃、室温なら15~35℃です。

↑あらゆる状況で活躍

 

新型コロナの感染予防以外にも幅広く利用できるThermGoは、Kickstarterで締切まで1か月近くあるのに、すでに1800%近くの達成率となっています(2021年1月7日時点)。価格はアーリーバードの割引で1個29ドル、2個セットなら57ドル。締切は日本時間の2月1日0時で、配送は2021年2月の予定。10ドルの配送料で日本にも配送が可能です。

 

スマホに付けて、どこでもサッと検温できるThermGo。体温測定を忘れがちな人も重宝するかもしれません。これから体温計も携帯するのが当たり前になる可能性があります。

 

「自己修復するディスプレイ」でスマホはまだまだ進化する

スマートフォンによく起こるアクシデントのひとつが画面のヒビ割れ。楽天モバイルのアンケート調査によると、スマホのディスプレイを割ったことがある人はおよそ3割もいるそうです。画面が割れたまま使い続けると何だか少しだらしないし、かといって修理にかかる手間や費用も惜しい。そこで、そんな問題を解決するための研究が行われており、ついに最近、割れたスクリーンを自己修復させる新しい素材が発表されました。

↑画面が割れても、へっちゃら!

 

折りたたみスマホをはじめ各種電化製品には「透明ポリイミド」と呼ばれる素材が使われています。ガラスのように透明なこの合成樹脂は、折りたたむ動作を何千回と繰り返しても強度を維持できるのが特徴。そんなポリイミドに亀裂や破損が生じにくくするために、これまでに添加剤の注入や保護層のコーティングなどが試みられてきましたが、破損を予防できる素材の開発には至っていませんでした。

 

そんな状況を打破したのが、韓国科学技術研究院(KIST)と延世大学の共同研究チームが開発した「自己修復可能な透明ポリイミド」です。この研究チームは、亜麻という植物の種から抽出した「亜麻仁油」に着目。この油は25度で硬化する性質があり、美術品の塗料などにも使われていますが、彼らはマイクロカプセル状にした亜麻仁油にシリコンを混合し、それを透明ポリアミドでコーティングしました。これによって、素材が損傷を受けると亜麻仁油が損傷部分に流れ出て硬化し、自然と修復できるようになるそうです。

 

紫外線照射なら20分で修復

自己修復機能を持つ素材はこれまでにも開発されてきましたが、従来のものは柔らかい素材にしか利用できなかったうえ、修復のためには高温での処理が必要でした。しかし今回開発された透明ポリイミドはスマホのような硬い材質でも使用でき、室温環境で修復することも可能。さらに、修復の時間を短縮したい場合は紫外線照射と湿度によって、わずか20分以内に95%以上が元に戻るそうです。

 

この素材がスマホに広く使われるようになったら、同じスマホをいままでよりも長く使うことができるかもしれません。同様に、ほかの電子機器や電化製品にもこの素材が使われる可能性も考えられます。スマホの進化は頭打ちとも言われていますが、この開発によって、画面が割れてしまって「だらしない」と思うことはなくなりそうですね。

 

【出典】Youngnam, K., Ki-Ho, N., Yong, C. J., & Haksoo, H.(2020). Interfacial adhesion and self-healing kinetics of multi-stimuli responsive colorless polymer bilayers. Composites Part B: Engineering, 203, https://doi.org/10.1016/j.compositesb.2020.108451

新型コロナで変わった旅のカタチ。イタリアで流行る「安・近・短」な巡礼路ウォーキング

現在、イタリアの旅行業界ではスローツーリズムといわれる巡礼路ウォーキングが注目を集めています。ヨーロッパで最も有名な巡礼路はフランス各地からスペインに向かうサンティアゴ・デ・コンポステーラで、出発地点にもよりますが、その距離は数百キロを超えることも。ところが、最近のヨーロッパでは国境や州を超える長距離巡礼路は人気が低下し、その代わりに地元の短距離コースが人気となっているようです。

 

短距離巡礼デビュー者が増加

↑いまこそ巡礼デビュー

 

イタリアの大手出版社「Terre di Mezzo」の調査によると、2020年1月から9月末までに欧州の14の巡礼路が発行した巡礼証明書は3万通弱でした。前年の同時期と比べると32%減となっていますが、なかでも長距離の巡礼で知られるサンティアゴ・デ・コンポステーラが発行した証明書は、85%の減少を記録しました。

 

しかしその一方で、2020年夏に巡礼路デビューを果したイタリア人は増えています。同社が行ったオンライン調査には巡礼路を歩いた経験を持つ3000人超のイタリア人が参加しましたが、30%は今年の夏に初めて巡礼路を歩いたと答えています。

 

イタリア国内にはまだあまり知られていない巡礼路が多く、大自然や遺跡を見ながら歩ける巡礼はまさにコロナ時代のツーリズムにふさわしいと考えられたようです。調査によれば、イタリアのなかでも居住する州や近隣の州にある巡礼路を歩いたという人が53%にのぼり、国外の巡礼路を歩いたのはわずか5%でした。

 

人気だったのはエミリア・ロマーニャにある「ヴィア・デッリ・デイ(Via degli Dei)」、世界遺産の街マテーラを含む南イタリアの「ヴィア・ペウチェタ(Via Peuceta)」、サルデーニャ島にある「カンミーノ・ミネラーリオ・ディ・サンタ・バルバラ(Cammino minerario di Santa Barbara)」など、夏のバカンス地に近くアクセスも良い巡礼路でした。また、ピエモンテ州にある「カンミーノ・ディ・オロパ(Cammino di Oropa)」などでは昨年より4倍も参加者が増えたところも。イタリア半島では至る所に巡礼路であることを示す標識が見られますが、2020年はクルマで通り過ぎるだけでなく、これら標識に沿って歩いてみた人が多かったのでしょう。

↑1555年に描かれたローマ巡礼の様子

 

日曜日に教会に通う熱心なキリスト教徒の減少が顕著なイタリアで、なぜ巡礼路を歩く人が増えたのでしょうか? Terre di Mezzoの調査で参加理由を聞いたところ、「巡礼路がある土地や町についてより深く知りたかった」という答えが50%超、「大自然のなかで過ごしたかった」が48.6%でした。巡礼路デビュー者でも「新しい経験をしたかった(60.1%)」に次いで「大自然の中で過ごしたかった(58.9%)」が大きな割合を占めています。

 

そのほか「心身の健康のため」「トレッキングをしたかった」「文化的な興味」などの理由が上位を占め、巡礼路の本来の目的である「宗教上の理由から」と答えた人は29.7%にとどまりました。人好きのイタリア人らしい回答としては「巡礼路上でさまざまな人に出会える」が19.8%を占めました。巡礼路を歩くのは単独、あるいは2人までと答えた人が半数以上であることも、未知の人々との出会いを期待しているからかもしれません。

 

宿泊や食事は質素に

↑「オステッロ」と呼ばれる宿泊施設の様子

 

数日かけて巡礼路を歩くには宿泊施設が必要ですが、どのような宿泊施設が利用されるのでしょうか? 巡礼に参加する年齢層は、経済的に余裕がありそうな51~60歳が全体の30%弱と最多です。ところが全体の回答をみると、利用した施設はベッドと朝食付きの「B&B」が最多の42%で、2段ベッドが基本で浴室やトイレも共同とさらに安価な「オステッロ」が21%でした。

 

キリスト教会が運営する施設での宿泊は16%で、道具一式を担いで歩くのはかなりハードだと思いますが、6%はテントで過ごしたそうです。ホテルと名乗れるレベルの施設を利用したのは、わずか7%にすぎませんでした。

 

昼食に関してはコロナの影響もあり、84.6%がパニーノなどのお弁当持参。さすがに長距離を歩いた後の夕食は56%が外食と答えたものの、テイクアウトのピッツァやレストランより格下の「トラットリア」での軽食が大半でした。宿泊や食事については巡礼への忠実さを守り、清貧のスピリットを尊重した人が多かった模様。

 

このように、巡礼に参加した人の平均的な出費は宿泊費も含め1日30~50ユーロ(約3800~6400円)と驚くほど格安です。巡礼参加者のうち20代は9.5%を占めますが、2020年における巡礼路デビュー者のなかでは20代の割合が21.4%にのぼりました。このトレンドの背景には、コロナ禍によるツーリズム志向の変化というだけでなく、安価にスローライフを楽しめることもあるようです。

 

まとめ

長距離の巡礼ともなると数か月をかけて数百キロを歩くことも珍しくないのですが、コロナ時代の巡礼は無理せずに数日間での参加が増えました。お金の使い方も含め、まさにスローツーリズムといえるでしょう。

 

トレッキングの装備についても、現代は量販店で安く手軽にそろえられる時代。お金はあまり使わず豊かな自然のなかで心身を癒し、巡礼という同じ目的を持った未知の人たちと遭遇できる機会もあります。巡礼路がつくられた当時のイメージとはやや異なるスタイルかもしれませんが、人気ツーリズムとしてコロナの時代に定着しつつあるようです。

 

イタリアの「学校給食」が貧弱化。新型コロナの影響が子どもの食事にも。

学校に通う子どもたちには、おいしくて健康的な給食を食べさせてあげたいもの。多くの大人はそう思いますが、イタリアでは昨年から気になる変化が起きています。

 

同国では毎年「Foodinsider」というオブザーバー組織が学校給食の献立や栄養などを調べ、優れた給食を提供する都市をランキング形式で発表しています。同団体はイタリアがロックダウンを経験した2020年も調査を実施しましたが、イタリアの学校給食が新型コロナウイルスから深刻な影響を受けていることが明るみとなりました。

↑給食の中身も空っぽに?

 

ロックダウン前の給食事情

ここ数年、Foodinsiderが発表するランキングでトップを保持している都市は、北イタリアのクレモナです。新型コロナウイルスによる犠牲者が多かったことでも知られるクレモナですが、ここでは給食のために本職のコックを雇用しています。

 

評価が高い理由は料理の美味しさだけではありません。WHOの指標に従って野菜や魚をバランスよくメニューに入れるだけではなく、赤身の肉や加工肉を減らし、ヘルシーな白身の肉をより活用している点などで高いポイントを獲得しました。

 

クレモナ以外でも、トップ10の顔ぶれはこの数年間変わっていません。トップ10の常連は、アドリア海に面するファーノやイエージ、リミニ、北イタリアのトレントやマントヴァなど。ポイントが高くなる特徴として、ユネスコの世界遺産にも登録された「地中海式食事法」の主要食材のひとつである豆類の使用頻度が高いことが挙げられます。

 

また魚料理もシーチキンなどの加工品ではなく、アドリア海や地中海で獲れた新鮮な魚を使って調理。さらに、昨今のイタリアの食事情を反映させて有機野菜の使用頻度も高く、これもポイントに加算されます。

 

一方、首都ローマは16位、北イタリアの大都市ミラノは25位でした。ポイントが低い理由は、ハムやソーセージなどの加工肉や揚げ物が多すぎることや、パスタやコメに加えてじゃがいもなど炭水化物が多すぎることなどが挙げられます。イタリアで子どもの肥満は社会問題となりつつあり、実に5人に1人は該当するといわれているのです。そうした事情も考慮し、カロリーが高すぎたり栄養が偏ったりという給食はポイントが低くなっています。

 

ロックダウン後にメニューが貧弱化

↑おいしくて健康的な給食はどこへ……

 

イタリアは2020年3月5日に学校を閉鎖し、再開したのは9月に入ってからでした。ロックダウンを経て学校給食にはどのような変化があったのでしょうか? Foodinsiderが調査した結果、特に顕著だったのはメニューの貧弱化です。

 

チーズやバター、オリーブオイルでパスタを和えただけの「パスタ・ビアンカ」や、トマトソースをからめただけの「パスタ・ロッサ」が以前よりも頻繁に提供されるようになり、ペーストを絡めただけのパスタやピザが提供されることも多くなりました。旬の食材をパスタに入れるような手の込んだメニューは珍しくなってしまったのです。ミネストラと呼ばれる野菜スープは姿を消し、加工品のミートボールが幅を利かせるようになったことも報告されています。

 

Foodinsiderの報告によれば、以前は給食の内容をチェックしていた保護者の干渉も、ロックダウン解除後は激減したそう。各地の学校でクラスターが発生しているため、親も給食の内容まで目が届かないという事情があるのかもしれません。

 

いつもは環境問題に重きを置いて授業を進めているのに、コロナ感染拡大の影響で使い捨て食器の使用が大幅に増えたことも学校にとっては頭の痛い問題。さらに各市町村によって異なるものの、予想もしなかった使い捨て食器代が給食財政に重くのしかかってきたのです。

 

Foodinsiderのランキングでは23位と振るわなかったヴェネツィアでは、ロックダウン以前から給食のための食器を家から持参するルールが定められていましたが、今後はヴェネツィアのように現状に即したルールを取り入れる自治体も増えていく可能性があります。

 

一方でロックダウン中には国民の食料廃棄削減への意識が高まりました。従来のイタリアンマンマたちの間では「嫌いなものを無理に食べさせるなんて子どもがかわいそうだ!」という意見が大半でしたが、ロックダウンを経て食料ロスに関する教育が必要だという声も高まっています。

 

Foodinsiderの懸念は、イタリア国内の給食事情におけるポリシーの両極化にあります。ある自治体は給食を「食育」の場ととらえ、コストがかかっても質の良い給食を提供しようと努めています。実際、ランキング5位のリミニではロックダウン後に給食従事者を新たに12人も雇用し、栄養面と衛生面に万全を期しています。それに対して、効率化ばかりに注目し、子どもたちを満腹させればよいという自治体も少なくありません。

 

給食の時間が静かに

今回の報告で最も興味深かったのは、給食の時間が静かになったこと。イタリアの子どもたちはよくいえば天真爛漫で、給食の時間は嫌いなおかずが宙を飛んだり食事中に席を立ったりと、おしゃべりが絶えずに喧騒状態というのが常でした。しかし、ロックダウン後は飛沫が飛ぶことを理由におしゃべりが禁止され、コロナの怖さを充分に理解している子どもたちは静かに給食を食べるようになったそうです。この点だけを見ても、2020年はイタリアの給食事情に大きな変化があったといえるかもしれません。

 

「サステナビリティ」は加速する。2021年のトレンド予測

近年、サステナビリティに対する意識が世界各国で高まっており、2021年は一層加速していくでしょう。しかし、具体的にはどんなことが起こるのでしょうか? 本稿では「食品ロス」「オーガニック」「嗜好品・日用品」という視点から、タイ、イタリア、アメリカにおける様々な事例を取り上げることで、世界中のサステナビリティのトレンドを予測してみます。

↑サステナビリティをよく見てみると……

 

「食品ロス」はアプリで減らす

消費者に身近な取り組みとして、まずは「食品ロス」が挙げられます。欧米では賞味期限を活用して、ユーザーに情報を迅速に伝えられるスマホアプリが活躍しており、今後もその需要は高まると考えられます。

 

例えば、ロックダウンを通じてイタリア人が敏感になったのは「食の廃棄」。イタリア農業連盟の調査では4割以上が以前よりも廃棄を減らしたと答えています。それに貢献しているのが、賞味期限間近の食材情報を消費者やボランティア団体に知らせるアプリ。NPOなどがレストランや食料品店の閉店前ぎりぎりに食料を回収し、食べ物を必要とする家庭に届けています。

 

クリスマスや復活祭で余った食料もすぐにアプリにアップされる一方、イタリア独特の派手な結婚式や洗礼式で大量に余るご馳走についても、廃棄せずに必要とする人たちに届ける仕組みが広がっています。最近では、結婚式をあげる若いカップルはNPOに事前連絡し、この取り組みに参加することがトレンドになってきました。

 

アメリカやイギリスでもアプリを活用し、レストランなどで廃棄される食べ物を半額またはそれ以上の割引価格で購入できるようになっています。例えば「Too good to go」というアプリでは、住んでいる地域を登録しておけば、その地域のレストランやホテルから通知が届く仕組みとなっています。

 

また、欧米では形が不揃いといった理由で市場に卸せないオーガニック野菜をまとめ、リーズナブル価格で配達してくれるサブスクリプションサービス「Misfits」も人気。一般店舗の価格よりも最大40%の割引価格なのに加え、家族の人数に合わせて量を選べるため廃棄を減らすことができます。

 

その一方、もともと外食が多いタイでは新型コロナウイルスの影響でデリバリー需要が大幅に増え、ホテルや高級レストランも相次いでこの分野に参入しました。複数の現地大手銀行などもアプリ企業と提携し、新しい食品配達アプリの開発が活発化しています。

 

そのなかで登場したアプリのひとつが「Yindii」。ユーザーは最大50~70%引きで食料を入手することができるのに対し、飲食店はそれによって利益を得られるというもの。参加店舗はヴィーガン向けや添加物不使用のレストランが多く、SDGsに関心のある人や健康意識の高い人に選ばれるアプリとして人気が出そうです。

 

「オーガニック」はますます人気に

サステナビリティへの取り組みは、商品開発にも反映されるようになりました。なかでも女性やミレニアル世代の商品を見る目は厳しくなり、環境に配慮した商品に優位性が生まれているとみられます。例えば、イタリアのワイン業界では「サステナビリティ・ワイン」の認証基準に取り組むプロジェクトが立ち上がりました。この国ではオーガニック食材の市場が大幅に伸びていますが、同プロジェクトでは有機栽培を用いてCO2の排出量を削減しながら、空気、水、土を汚染せずにワインを生産しています。

 

南イタリアにはアーモンドの木との「養子縁組システム」があり、「親」となる出資者は縁組期間中、収穫した実を毎年受け取ることができます。「養子」となった木には親の名前を記したプレートを付けることができるうえ、木の成長具合も確認することができます。このシステムで集まった資金は樹木の手入れやバイオ農法の促進などに充てられているそう。

 

それと関連して、イタリアでは「樹木を植えるキャンペーン」も人気です。フィレンツェでは、購入した木が自治体の樹木遺産の一部となり、それを通して都市の気候緩和とCO2削減に貢献するという取り組みが行われています。購入者は自分で植える場所も選ぶことができ、樹木が成長する様子もメールで確認することが可能。また、この活動はギフトとしても活用されています。

 

アメリカでも、化学物質を一切使用しないオーガニックのスキンケア製品や自然に優しい洗剤などが人気を集めていましたが、最近はコロナ禍の影響で「心のつながり」を求める人が急増。商品のバックグラウンドやストーリーを重視したり、地域に根ざした店舗で消費したりという行動が強まっているようです。

 

タイではオーガニック食品やエコ商品の店舗が増加し、バンコクの中心街には環境配慮型商品のみを扱う専門店もオープンしました。このお店では雑貨や生活用品、食品などを取り扱っていますが、なかでもスキンケア商品が豊富に取り揃えられており、多くのオーガニック系ブランドもそこに含まれています。エコストローやプラスチックを再利用して作ったバッグ、水中の生き物に害を与えない日焼け止めなど、地球に優しい商品に人気が集まり、今後もこのような動きは続くでしょう。

 

さらに、タイでも不織布や紙で作られたエコバッグやマイボトル、マイストローを持ち歩く人が若年層を含めて増加中。ペットボトルの水を通常の3倍の価格で販売するスポーツジムもあるなど、多くの人にマイボトルなどを持ち歩くようにさせるための取り組みが、あちこちで行われています。

 

同国のフードデリバリーでは、プラスチックの代わりに紙やキャッサバ、サトウキビで作られた容器を使用する飲食店が増えており、特にヴィーガンカフェや富裕層向けレストランでは天然素材容器の活用が目立ちます。5つ星のマンダリンホテルでは、バイオプラスチックのペットボトルや固形タイプの歯磨き粉、木の歯ブラシなど、部屋のアメニティをプラスチック不使用の製品に変えており、このような動きはこれからもっと広がるでしょう。

 

サステナブル化する「嗜好品・日用品」

イタリアではラグジュアリーブランドが率先し、プラスチックをリユースした商品開発に力を入れています。プラダは廃棄素材を利用したナイロンでバッグを生産し、グッチは破棄された漁網やカーペット、生産過程で生じた廃棄物を再利用しています。フェラガモは廃棄オレンジの皮で作った素材を活用するなど、自然に優しい素材を使った商品はファッション業界でもトレンドになっています。

 

アメリカではテラサイクル社が、使用済みの商品容器を提携メーカーが回収し、洗浄して再利用するという循環型消費事業の「ループ」を展開中。サブスクリプションサービスとなっているループは、化粧品や日用品、飲料などを専用容器で購入すると、中身を使い切った時点で、同じ品物が別の専用容器に入れられて届くという仕組みになっています。

 

同社は専用容器のデザインなどにも工夫を凝らしており、消費者から高い評価を得ています。すでに多くのメーカーと20か国以上で提携しいるループは、日本でも多数の企業の賛同を受けながら2021年にサービスを開始する予定です。

 

まとめ

↑さあ、どうする?

 

2021年には消費者のサステナブル意識がさらに高まり、それが私たちの購買や行動パターンに影響を与える傾向が強まりそうです。それに対応するために、サステナビリティに本気で取り組む企業も増えていくのではないかと考えられます。その場合、サステナビリティ関連の新しい製品やサービスもどんどん作られていくはずですが、消費者にとって選択肢が増えるのは悪いことではありません。自分のライフスタイルにあった選び方ができるように、見る目を養っておくといいかもしれません。

いつもと違った一年を「AI」はどう過ごした?【2020年AI記事まとめ】

医療から自動車、環境まで、さまざまな分野で発展が目覚ましいAI(人工知能)。2020年は新型コロナウイルスの感染予防にもAIの技術が活用されましたが、この科学技術は今年どんな進歩を遂げたのでしょうか? 本稿では、この1年間に紹介したAIの最新技術を6つのカテゴリーに分けて振り返ってみます。

↑私の進歩について来い!

 

①【医療】”リモートで”病気を予測

どんな病気でも、早期に発見し適切に対処することが大切。そのために定期的な健康診断が奨励されているのですが、医療機関に行かなくても病気を予測することができたら、私たちにとってメリットもあるでしょう。医療界では、スマートフォンで撮影した顔写真から心臓病を予測するAIの技術の開発が進んでいます。薄毛や白髪、耳たぶのしわの増加、まぶた周辺の黄斑など、顔の変化をAIが解析して心臓病疾患を診断するというもので、まだ実際の医療現場で使われるために十分な精度は出ていませんが、多くの患者のデータを蓄積していくことで、今後は顔写真での心臓病解析が当たり前になっていくのかもしれません。

 

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自撮りだけで心臓病を診断できる? 「医療AI」が猛勉強中

 

②【環境】砂漠にいっぱい樹木を見〜つけ

年々深刻化する環境問題にもAIを活用する動きが進んでいます。例えば、AIとNASAの衛星画像を組み合わせた研究で、植物はほとんど生息しないと思われていたサハラ砂漠に、18億本もの樹木が生息していたことが判明しました。サハラ砂漠の大きさは、日本の国土面積の約22倍。いくら衛星画像があったとしても、その写真から樹木の本数を人間が手で数えるなど、途方もない時間と手間がかかる作業になります。それを短時間で計算することができたのはAI技術の賜物。砂漠に存在した樹木の種類を特定することなどによって、地球温暖化や地球保護などの研究にも活かすことができると期待されます。

 

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AIがサハラ砂漠に18億本もの樹木があることを発見! かかった時間が凄かった……!

 

③【コロナ対策】タッチレスなタッチスクリーン

スマホやタブレット、券売機、ATMなど、さまざまな機器に導入されているタッチスクリーン。これを非接触で操作可能にする開発が行われています。そのひとつが、クルマに搭載されたディスプレイのタッチスクリーン。運転中はクルマの揺れがあり、画面上のタッチしたい部分に、指で的確に触れることが難しいもの。そこで英ケンブリッジ大学では、AIを駆使して運転手が画面のどの部分を指そうとしているか自動的に判別する技術を開発したのです。開発されたタッチスクリーンは操作時間を最大50%も削減。これで運転中の操作ミスによる事故などのリスクも軽減されることでしょう。さらにこの技術は、スマホを含む私たちの生活の身近なあらゆる機器にも応用できると期待できます。

 

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「タッチレスなタッチスクリーン」ってどういうこと? AIを使った最新技術が加速中

 

④【自動車】周囲の音を分析して安全性を高める

クルマ業界の技術開発における永遠のテーマともいえるのが安全性でしょう。自動で駐車する「駐車サポートシステム」や、運転者の死角にクルマなどが近づいたときに警告を出す「ブラインドスポットモニター」はよく知られていますが、そのなかでほぼ未着手だったのが「音」に関する技術。そこでドイツの研究チームは、クルマのクラクションの音や、遠くから近づくサイレン音などを聴き分けられるよう、AIなどを活用しながら視覚機能の開発に取り組んでいます。将来的には、タイヤやエンジンの音から異変を感知するなど、自動車の安全性をさらに高める機能が誕生するかもしれません。

 

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AIが周囲の音を分析! 自動運転車用「聴覚機能」の開発が進行中

 

⑤【ビジネス】ダンスにも著作権を

ダンスの振り付けというと著作権があるのかないのか、なんだか曖昧ですよね。写真やイラスト、音楽には著作者を守る著作権が存在するのに、踊りに関してはそれが明確化されていないのが実情です。そこで世界中のダンサーや振付師を守るために、振り付けを登録して著作権を明確化しようとする動きが現れました。日本とアメリカでリリースされたダンス登録管理システムでは、ダンスの動画からAIが3Dモーションを推定、抽出してデータ化。すでに登録されている振り付けか、新しい振り付けか判断できるのです。せっかく自分が考案したダンスは、守られるべき。ダンス界が変わっていく新しい一歩になっていくかもしれません。

 

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曖昧だった「ダンスの著作権」を変えるのにはAIが役に立つ

 

⑥【画像】ボヤけた顔写真がクッキリ!

画像認識や画像作成は、特にAIの技術が活用されることが多い分野のひとつでしょう。2019年には現実の世界には実在しない人物の顔を作り出すAI技術を取り上げましたが、これと同じような画像AI技術としてアメリカの研究チームが発表したのが、ボヤけた元の画像を最大で64倍まで鮮明にするツール。目や鼻などのパーツはおろか、顔の輪郭さえハッキリしない元の画像でも、毛穴やシワまでリアルに再現してしまうのです。ただ、この技術はあくまでも「実在しそうな人の顔」を作るだけ。防犯カメラの画像を鮮明にするような用途では使えないとのことです。

 

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まるで目の前にいるかのようだ! 顔写真を64倍も鮮明にできるAI技術を米研究チームが開発

 

2020年はリモートワークが進み、私たちの働き方やライフスタイルに大きな変化をもたらしました。これは私たち人間とAIの距離をますます縮めているかもしれません。今後もめまぐるしく進化するAI技術に注目です。

若い世代がリードした、2020年に世界で注目されたサステナビリティまとめ

「サステナビリティ」や「SDGs(持続可能な開発目標)」は、現代のキーワードとして日本社会にもかなり浸透しました。2020年もサステナビリティに関するさまざまな記事を取り上げてきましたが、本稿ではアパレル・食品・容器包装・モビリティの4分野から注目すべき動向を振り返ってみます。

↑今年は未来の世代に何を残した?

 

①【アパレル再生可能な天然素材が流行り

化学製品を使わず再生可能な素材を活用することは、アパレル業界でも盛んになっています。ポール・マッカートニーの娘でイギリスのデザイナーであるステラ・マッカートニーは、自身のブランドで生分解可能なデニムを使ったストレッチジーンズを発表しました。ストレッチデニムの伸縮性は天然素材のコットンだけでは不十分で、石油由来の弾性素材が必要です。

 

しかし、イタリアの老舗ジーンズメーカーが天然の弾力素材を織り込んだ伸縮性の高い生地を開発したため、ステラはこの生地を使用。染料についても、オランダ企業が開発した生分解可能な天然由来の染料が用いられました。化学製品などの代用品としてキノコや海藻からの抽出成分を利用した結果、このジーンズは100%生分解が可能となったのです。

 

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サステナビリティを語るなら「生分解可能なデニム」をはくべし!

 

一方、意外な果物を使った繊維も開発されています。高級な繊維として知られるシルクは絹糸生成段階で大量の水が使われ、二酸化炭素が発生することが課題でした。エコな代替品が求められているなか、オレンジの皮から作ったオレンジファイバーが登場したのです。

 

素材の開発と販売を手掛けているのは、オレンジ産地として知られるイタリア・シチリア島の企業です。オレンジジュースの製造過程で年間70万~100万トン出る大量の皮の生ごみは、現地で悩みの種になっていました。オレンジの皮を繊維に加工できないかと考えたシチリア出身の研究者たちが、ミラノの大学と共同で皮からセルロースを抽出する技術を開発。生地の手触りはまさにシルクのようになめらかで、フェラガモ社をはじめアパレル関係者から高く評価されており、大手ファストファッションのH&Mもオレンジファイバー素材を用いたサステナブル商品を以前に発表しています。

 

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「柑橘系シルク」が世界を変える! H&Mも採用したエコ繊維「オレンジファイバー」とは?

 

②【食品食品廃棄物を活用した結婚式

食品廃棄もSDGsの重要課題のひとつ。欧州では若い世代がこの問題の解決に向けて活動しています。イタリアでは若者たちがNPOを立ち上げ、家庭やレストラン、食品店などで余った食料を必要な人にすぐ届ける取り組みを始めました。目を付けたのが、イタリア独特の派手な結婚式で膨大に余るご馳走です。

 

まずは結婚式が決まったカップルから事前連絡をもらい、段取りを決めます。パーティーが終わるとスタッフが安全できれいな食べ物をまとめて、見た目も整え、食料を必要とする近隣家庭に約30分で届けます。最近はこの活動が広く知られるようになり、若いカップルが結婚式を挙げる時には参加することが当たり前になってきました。

 

結婚式だけでなく洗礼式でも同じ活動が行われ、クリスマスや復活祭でも食料やお菓子が提供されて賞味期限とともにNPOの公式サイトやFacebookに掲載されます。さらに、食料品店の閉店15分前に賞味期限ぎりぎりの食材を回収し、必要な家庭に届けています。

 

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イギリスでも食品廃棄に対する国民の意識が年々高まっています。2018年に湖水地方で結婚式を挙げたカップルは、国内初の「食品廃棄物ウェディング」で一躍有名になりました。賞味期限が迫った食べ物や、スーパーに断わられた形の悪い野菜や果物を卸業者などから集めて販売するチェーン店が食料の調達に協力。

 

披露宴のご馳走はとても豪華で、招待客はすべて食品廃棄物から作られていたことにまったく気付かなかったそうです。この結婚式を機にイギリスでは「食品廃棄物ウェディング」を希望するカップルが増え、食の新しい価値観が生まれているようです。

 

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③【容器包装海藻を使えば容器も食べられる時代に

ペットボトルや調味料の容器に使われるプラスチックの量を削減するために、イギリスのNotpla社は「食べられる包装材」を開発しました。「オーホ」と名づけたこの包装材はそのまま食べられ、捨てても4~6週間で自然分解されます。原料はフランス北部で養殖されている海藻で、乾燥させて粉状にしたあとに独自の方法で粘着性の液体に変化させ、さらに乾燥させるとプラスチックに似た物質になります。1日に最大1メートルも成長し養殖には肥料なども不要なため、原料不足になる心配もありません。

 

2019年のロンドン・マラソンではランナーに提供する飲料の容器に使用し、3万個以上を配布しました。同社は2020年にサントリーの子会社と提携し、ドリンクが入ったオーホの自動販売機を開発。スポーツジムに設置して実証実験を行ったほか、さまざまなイベントで活用しています。

 

新型コロナウイルスの影響でテイクアウトが増加し、プラスチック廃棄物も増えています。食べられる容器は、ごみ問題の救世主のひとつになっていくかもしれません。

 

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丸ごと食べてプラ削減! 飲み物や食材の「包装」も食べられる時代に突入

 

④【モビリティ公共交通機関の無償化は成功するか?

欧州の小国ルクセンブルクはドイツやフランスなどからの越境労働者が多く、夕方4時を過ぎると至るところで渋滞が見られます。排ガスによる大気汚染の観点からEUから何度も是正を促され、国としては初となる「公共交通機関の無償化」を導入しました。同国では自動車通勤の人が確定申告をすると、通勤距離に応じた金額が還付される制度があります。これを変更もしくは廃止して、その財源を公共交通機関の無償化に充当し、自動車利用の抑制につなげるという仕組みです。

 

ただ、ルクセンブルクの公共交通機関は本数が少なく移動が不便ということもあり、無償化後も渋滞が大きく緩和された様子は見受けられません。政府も今後はより利便性の高い交通サービスを提供していくことが必要と発言しています。

 

都市単位では欧州を中心に約100都市で同様のモビリティ施策が導入されていて、公共交通機関の全面無償化に踏み切ったフランスの都市ダンケルクやエストニアの首都タリンでは利用者数の増加など一定の効果が表れています。CO2削減策の1つになりうる可能性もあるといえるでしょう。

 

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国として初めて「公共交通機関」を無償化したルクセンブルク。国民が冷めているのはなぜ?

 

このように、限りある資源を未来の世代に残す活動は今年も活発に行われてきました。上記の取り組みはすべて欧米から生まれていますが、生活に密着したサステナビリティは日本でもさらに広がっていく可能性があります。そこで鍵を握るのは、イタリアの事例が示すように若い世代でしょう。新しい価値観をどんどん生み出す若者に2021年も注目です。

外科医のプライベートが「手術」に与える影響

現在、世界中の人々が医療従事者に感謝しています。そんななか興味深い論文が12月上旬、アメリカで発表されました。手術室で仕事をする外科医の集中力について「プライベート」という側面から分析したこの研究は、執刀医の誕生日と手術結果の関係に着目。新たな事実が示されました。

 

手術後30日以内の死亡率が増加

↑仕事とプライベートを切り離すのは簡単ではないのかも……

 

手術室では、執刀医が臨床的な理由だけでなく、個人的な事情のために注意力散漫になることがよくあります。これまでの実験では、気が散った執刀医は手術がうまくできなくなってしまうことが明らかにされていましたが、実際の手術のデータを使った研究では、執刀医の注意力散漫が手術の結果にどんな影響を与えるのか、よくわかっていません。

 

そこで調査に乗り出したのが、慶応義塾大学の加藤弘陸特任助教とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介助教授、ハーバード大学のAnupam B. Jena准教授の3人。この共同チームは、執刀医の誕生日に行われた手術を見てみることで、プライベートな事情による注意力散漫と手術結果にどのような関係があるのかを調べることができるかもしれないと考えました。執刀医の誕生日と患者の死亡率の関係は、これまで研究されていません。

 

彼らは、2011〜2014年の間にアメリカの救急病院などで65~99歳の患者に対して行われた98万876件の緊急手術に関するデータを使用。これらの手術を担当した外科医およそ4万7489人の誕生日とあわせて分析をしたところ、全体の0.2%にあたる2064件が執刀医の誕生日に行われた手術であったことが判明。そして術後30日以内の患者の死亡率について調べると、執刀医の誕生日以外の日に行われた手術では、患者が30日以内に死亡した割合は5.6%だったのに対して、執刀医の誕生日に行われた手術の後の死亡率は6.9%と、1.3ポイント高いことが判明。言い換えると、両者の間で死亡率が23%も異なることが明らかとなったのです。

 

執刀医が誕生日に手術を行うと、患者の死亡率がなぜ高くなるのか? 今回の研究ではその点は明らかにされていません。さらに今回のデータは65歳以上の高齢者を対象としたものなので、もっと若い世代でも同じような傾向が見られるかどうかも調べる必要があります。このような限界を踏まえて、津川氏は「患者は誕生日の執刀医を避ける必要はない」と述べています。目の前の大事な仕事に専念することは、外科医にとっても簡単ではないのかもしれません。

 

【出典】Kato, H., Anupam B, J., & Tsugawa, Y. (2020). Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study. BMJ, 2020;371:m4381. https://doi.org/10.1136/bmj.m4381

 

新幹線の100倍速い「サンタ」をリアルタイム追跡! 子どもが喜ぶこと間違いなし!!

もうすぐクリスマスですが、サンタクロース追跡サイトとアプリがあるのをご存知ですか? 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(通称、NORAD)がサンタクロースの居場所を追跡しており、この取り組みは今年で65周年を迎えています。クリスマス本番を迎える前に、世界中の子どもたちに夢を与えている「NORAD TRACKS SANTA(ノーラッド・トラックス・サンタ)」をチェックしてみましょう。

↑サンタさんをフォローしよう(「NORAD TRACKS SANTA」公式サイトのトップページ)

 

北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、冷戦時代にアメリカとカナダが北米上空の観測や監視を行うために設立した組織です。そんな機関がサンタクロースの追跡を始めたきっかけは、子どもからの間違い電話でした。1955年、アメリカの百貨店が「サンタさん直通電話」を載せた新聞広告を出したのですが、その電話番号には誤りがあり、電話をかけると、NORADの前身の大陸防空司令部(CONAD)にかかってしまったのです。おかげでCONADにはサンタクロースと話をしたい子どもたちから次々と電話がかかってきましたが、CONADは子どもたちにサンタクロースの現在地を伝えることにしました。

 

それ以来、NORADはクリスマスの時期になると毎年サンタクロースの現在位置を追跡しています。同司令部には「サンタクロース・ホットライン」が設けられ、ボランティアの人たちがそこで働き、世界中の子どもたちにサンタクロースの居場所を伝えています。近年では、インターネットの普及に伴い、NORAD TRACKS SANTAというサイトも開設。現在は、英語のほか、日本語や中国語、フランス語、イタリア語など8か国に対応し、スマートフォン向けアプリもリリースされています(Apple StoreやGoogle Playで入手可能)。

 

サンタクロースの追跡は、人工衛星やジェット戦闘機の最新鋭システムなどを使ってリアルタイムで行われるそう。サンタクロースが世界をまわるルートは、南太平洋の日付の早い国から始まります。ニュージーランド、オーストラリアの次に日本へ到着。アジアのほかの国々もまわり、ヨーロッパに行き、その後にカナダとアメリカを経て、南アメリカへ飛びます。

 

新幹線の100倍も速く移動すると言われるサンタは、24時間以内に世界中の子どもたちのもとを回っていくそう。ただしサンタクロースのルートは、その日の天候に影響を受けるため予想するのが難しいとNORADは述べています。しかし、だからこそ役に立つのが追跡アプリ。NORADは、サンタクロースが12月24日の午後9時から深夜0時(各国の現地時間)までの間に子どもたち一人ひとりの家に到着すると発表しています。

 

面白いことに、北米ではサンタクロースをNORADの戦闘機がガイド役になってエスコートするとのこと。さらに、2020年は国際宇宙ステーションに人類が滞在し続けて20年目となることから、サンタクロースがISSから飛び出すパフォーマンスもあるのだとか。アプリならISSの現在地も確認することができるそうです。ちなみに、今年のサンタはマスクもしているそう。

このサンタクロースの追跡は、アメリカ東部標準時間で12月24日の午前4時(日本時間で12月24日の午後6時)からスタート。アプリとサイトで随時サンタクロースの現在地を確認しながら、ワクワクしたクリスマスイブを過ごしてみてはいかがでしょうか?

2021年に海外旅行するとしたら「ハワイ」が最有力候補なワケ

ハワイを訪問する旅行客が初めて年間1000万人を突破した2019年。2020年は状況が一転し、観光の中心地となるワイキキでは多くの店がシャッターを閉じ、日中ですら人影がほとんどないような状況が続いていました。

 

しかし、11月からハワイ州では日本の観光客を受け入れる体制を整え、少しずつですがハワイの街に活気が戻りつつあります。問題は2021年のハワイ旅行はどうなるのか? 最新の現地情報を交えながらホノルル在住の筆者が予想してみます。

↑行っちゃう?

 

2020年3月のロックダウンで、ハワイを訪れるすべての人に14日間の自己隔離が義務付けられてから、ハワイの観光業は停止。ほとんどのホテルが営業を休止し、各種ツアーやアクティビティ関連なども休止に追い込まれる事態が続いていました。この一連の対応は、観光が基幹産業であるハワイに予想以上の影響を与え、ハワイ経済に大きな影を落としました。

 

そこで、ハワイ州が10月15日から導入したのが「事前検査プログラム」。これは新型コロナウイルス感染症の検査を受けて陰性だった場合、14日間の自己隔離が免除されるというもので、陰性であれば、ハワイ到着後にコロナ前のように自由に観光旅行を楽しめるということです。アメリカ国外の国では初めて日本がこの事前検査プログラムの対象に認定され、11月6日のフライトから日本の観光客受け入れが始まりました。

 

では、この事前検査プログラムを利用して、日本からハワイへ旅行に行くときの手順について見てみましょう。

 

① ハワイ州Safe Travel Programにオンラインで登録。出発前24時間以内に健康状態について登録し、発行されるQRコードを保存します。

 

② ハワイ行フライト出発前の72時間以内にCOVID-19の検査を受診。ハワイ州指定医療機関が北海道から九州まで全国に57か所あるので、それらのいずれかで検査を受けます。結果が出たらハワイ州指定指定の陰性証明書を取得します。

 

③ コロナ前の旅行と同じくESTAの申請が必要です。海外旅行保険の加入もしておいたほうがいいでしょう。

 

④ ハワイ到着後、サーモグラフィーで検温が行われます。①で取得したQRコードとハワイ州指定指定の陰性証明書を提示したら、自己隔離が免除となります。

 

ハワイは待っている

↑想いは募る……

 

ハワイの観光客受け入れが開始しましたが、まだ問題があります。それは、ハワイ側の自己隔離が免除となっても、日本に帰国した際に自己隔離が必要となること。そのため、現段階でハワイ旅行を楽しめるのは、時間的にも経済的にも余裕がある方に限られてしまうかもしれません。しかし、ハワイにとって日本はアメリカに次いで2番目にたくさんの観光客が訪れる国。そのためハワイ州政府による日本側への働きかけで、帰国時の自己隔離が緩和されることが期待されています。

 

ハワイの新型コロナウイルス感染者の状況を振り返ってみると、2020年3月にハワイで最初の感染者が確認され、3月下旬から5月末までロックダウンが実施されました。その後経済活動を再開したものの、8月になると感染者が急増したため、感染者が集中しているオアフ島限定で8月下旬から2度目となるロックダウンが行われました。その後は感染者数に応じて4段階でビジネスを規制する細かいルールが設けられ、ハワイ州全体の新規感染者数は1日100人前後の状態が続いています。

 

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、10万人当たりの1日の平均感染者数は、ハワイ州は7人と(12月13日時点)、下から6番目に良い数字。最も悪いロードアイランド州やオハイオ州は100人を超えているので、アメリカ本土と比べてもハワイの感染者数がかなり少ないことがわかるでしょう。ハワイでは冬でも気温がそこまで低くならないため、ウイルスの感染が抑えられているのかもしれません。

 

ハワイでは、ソーシャルディスタンスが確保できない場合は屋外であっても、公共の場所でのマスク着用が義務付けられ、現地の人の多くがそれを守っています。また、レストランや小売店、観光スポットといった場所では入店時に体温チェックが行われるなど、安全対策がきちんと行われている印象があります。

 

11月に日本の観光客受け入れを再開した際、ハワイ州のイゲ知事は、ロックダウンでハワイ旅行をキャンセルせざるを得なかった日本人観光客にお詫びしたことに触れ、「今日は『ぜひハワイへ安全に旅行してください』という新しいメッセージを送ります。日本の方が再び訪れることを心より歓迎します」と語っていました。ハワイは日本人に愛される海外旅行先のひとつで、リピーターも数多く訪れる場所。日本の海外旅行の体制が整えば、ハワイは日本人にとってアフターコロナで最初に訪れやすい海外旅行先になっていくかもしれません。

トカゲほどじゃないけど「ワニの尻尾」も再生することが判明!

トカゲの尻尾は切れても再び生えてきますが、実はワニの尻尾にも同様の再生能力があることが最新の研究で明らかとなりました。しかも、新しく生えた尻尾の長さは最大23センチというから驚き。ワニの再生能力は一体どうなふうになっているのでしょうか?

↑トカゲより長いでしょ? ワニも尻尾を再生できる

 

トカゲが尻尾を切るのは、外敵に襲われたときに身を守るためだと言われています。トカゲの尻尾はもともと同じところから切れるようになっており、身に危険が迫ったときにその部分を切り離して生き延びられるのですが、この能力はトカゲの専売特許ではなく、同じ爬虫類のイモリにもあることがわかっていました。

 

しかし爬虫類であっても、ワニとなると話は別。体長4メートル前後にもなるワニでは、トカゲやイモリと身体の大きさがまったく異なるため、再生能力があるかどうかこれまで明らかなっていませんでした。そこで、アリゾナ州立大学とルイジアナ州の魚類野生生物局の研究者チームが共同で研究を実施し、ワニにもトカゲのような再生能力があるかどうか調べたのです。

 

調査の結果、若いワニには尻尾を再生する能力があることが判明しました。新しく生えた尻尾は最大で23センチとなり、全長の18%にもなったのです。さらに画像解析技術と組織構造学を利用して、再生した尻尾の組織について調べてみたところ、軟骨のまわりが、血管や神経を含んだ結合組織で覆われており、複雑な構造であることもわかりました。トカゲの尻尾でも軟骨や血管、神経が再生されることは明らかにされていましたが、ワニの尻尾でも同じように組織が再生していたんですね。

 

ただし、ワニの再生した尻尾には傷跡に似た結合組織も見つかっており、同じ組織のなかで再生と治癒のような現象が同時に起こっている可能性が示唆されています。また、ワニは脊椎動物ですが、再生された尻尾には軟骨しか存在していないようで、研究者にとっては新たな課題も見つかりました。

 

実はとても疲れるんです……

この研究チームは「新しい筋肉や組織を作りだすにはエネルギーが必要で、これは大変なことなのです」と述べています。それでも尻尾が再生するのは、そこがワニの身体にとって不可欠な部位であるということなのでしょう。

 

トカゲの尻尾は何度も生えるものではなく、再生するのは一度きりなのだそう。しかも、まったく同じ状態に戻るわけではなく、再生にはやはり多くのエネルギーを必要とするみたいです。これがワニにも当てはまるかどうかは不明ですが、尻尾が無限に再生しないという事実は、生命が有限であることを教えてくれます。

 

なお、トカゲなどの再生能力は人間にも応用できるのではないかと考えられており、ワニのような大型生物の再生能力が解明されたら、再生医療技術はさらに発展するかもしれません。

来年の初詣どうする? 賛否両論の「ハイテク参拝」が実利的な選択肢だ

現在、スマホ決済やICカードの普及によってキャッシュレス化が進んでいますが、この波は神社やお寺のお賽銭にも押し寄せています。いつもと違った年末年始が近づきつつあるなか、キャッシュレス参拝やバーチャル参拝できる神社やお寺について見てみましょう。

↑キャッシュレス参拝の最前線

 

京都駅から徒歩圏内にあり、数々の歴史的建造物が点在して見ごたえのある東本願寺は、京都観光では外せない人気スポットのひとつです。そんな東本願寺は2020年10月に電子決済のお賽銭を導入したことを発表しました。「御影堂(みえいどう)」や「阿弥陀堂(あみだどう)」などの境内6か所のほか、「渉成園(しょうせいえん)」と呼ばれる庭園などで、キャッシュレス決済を導入。また、QRコード決済の「J-Coin Pay」と「Union Pay」が印字されたパネルも設置し、参拝者はそれをスマートフォンで読み取り、好きな金額を入力して支払いすることができます。もちろん、これまで通りに現金でお賽銭を納めても構いません。

 

今回のキャッシュレス決済について、東本願寺は新型コロナウイルスに伴う「新たな生活様式」に基づき、安心して参拝できる環境を整え、利便性の向上も図ることを目的としていると述べています。キャッシュレスでの参拝は、既にキャッシュレス化が一般的になっている諸外国からの観光客が利用しやすいという利点もあるでしょう。

 

ただ、神社やお寺でのキャッシュレス決済に対して、賛成する声がある一方で反対する意見もあります。大きな懸念材料になっているのは、電子決済で収集された個人情報の漏洩。どこの神社やお寺に参拝したか、いくらの金額を支払ったかといった個人情報が明るみになると、個人の信仰や信教の自由が侵される可能性があります。また、キャッシュレスで参拝者からお金を集める行為は「収益行為」と指摘する声もあります。さらに、利用者側から考えても「なんとなくご利益がなさそう」「チャリーンという音が鳴るのも含めて参拝になる」など、“なんとなく腑に落ちない”と感じるところはあるかもしれません。

 

キャッシュレス参拝できる全国の神社・お寺

賛否両論の意見はありますが、政府がキャッシュレス推進政策を掲げていることや利便性を考えると、神社やお寺におけるキャッシュレス決済が今後まったく広まらないというのは考えにくいでしょう。実際、キャッシュレス参拝ができる神社やお寺はほかにもあるので、以下に挙げてみます。

 

東本願寺(京都)

先に紹介したように、2020年10月からキャッシュレスでの参拝が導入されています。

 

下鴨神社(京都)

世界文化遺産に登録され、パワースポットとしても人気の高い神社。下鴨神社ではVisa、Mastercardなどのクレジットカード、WAON、Suica、PASMOなどの電子マネーでの決済を2019年から導入しています。

 

日光東照宮(栃木)

日光市にある日光東照宮では2018年9月から、Suicaなどの交通系電子マネーで拝観券を購入できる取り組みを初めています。さらに境内ではWi-Fiが整備され、参拝者にとって便利な環境が整えられています。

 

バーチャル参拝&リモート参拝できる神社・お寺

毎年混雑が起きる初詣を2021年だけは避けておきたいと考える方も少なくないでしょう。そんな方にはバーチャル参拝やリモート参拝という選択肢がありますので、以下にリストアップしてみます。

 

東大寺(奈良)

東大寺は年間の拝観者が300万人を超える一大観光スポット。東大寺では3Dバーチャル参拝をウェブサイトで用意しており、自分の足で境内を進んでいるように大仏様を拝観することができます。

 

平等寺(徳島)

四国八十八ヶ所の第二十二番札所である平等寺。遠方の方や参拝できない方のために、リモート参拝のほか24時間本堂のライブ中継が行われています。

 

築地本願寺(東京)

築地本願寺も新たにオンラインでの法要参拝を始めており、大晦日や2021年正月にはオンラインで常例布教が配信されます。

 

どんなことであれ、新しい試みは賛否両論が起きるもの。お賽銭のキャッシュレス決済やバーチャル参拝にはデメリットもあるでしょうが、新型コロナウイルスへの心配がぬぐい切れないなか、このようなハイテク参拝は感染防止という観点からメリットが大きいかもしれません。

「読唇AI技術」で会話が正確に伝わる! AIで変わるコミュニケーションの形

人間には音や手話を使わなくても他人の発話を推測する力があります。それが読唇術。唇の動きや形から相手の言葉を読み取るこのスキルは習得するのが難しく、この能力があったとしても、話している内容を正確に判断することは決して容易ではないと言われています。しかし、そんな読唇術に近いスキルをAIによって開発しようとする試みが行われています。

↑何を話しているか当てられる?

 

口や顔の筋肉の動きから、話している内容を推測するAI技術を開発しているのが、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の研究チーム。人間は言葉を話すとき、ひとつひとつの単語を発声するために顔や舌、喉の筋肉を細かく動かします。この動きは音節ごとに微妙に異なるため、この違いに注目して発話内容を推測しようというのがこの研究の趣旨。このチームは、声を出さずに口だけを動かす「サイレントスピーチ」を使って技術開発を行っており、先日このAIの開発が順調に進んでいると発表しました。

 

研究チームでは、まず話し手の喉と、頬などの口のまわりに電極を装着。筋細胞が収縮したときに発生する微弱な電位の変化を読み取る「EMG(筋電図)」を利用して、AIにそのデータの読み取りと、話し手の言葉の内容を推測するよう訓練させました。すると、発声しながら文章を読んだ場合と比べて、無発声で単語を推測するときの誤認率は64%から4%まで減少。かなり正確に言葉を推測することができるようになりました。

 

同じような技術には、Googleの傘下であるDeepMindとイギリスのオックスフォード大学が2016年に発表した読唇AIの技術があります。この技術では、AIにBBCなどのテレビ番組5000時間分を学習させ、人の唇の動きだけで何を話しているかを推測させました。

 

そして、読唇技術を持ったプロとこのAIに動画を見せて話の内容を推測させたところ、プロは12.4%を読み取ったのに対して、AIは46.8%とプロに勝る結果を残しました。おまけにAIの間違えた内容は、三人称の動詞や、名詞の複数形の後につく「s」だったそうです。

↑AIはこの違いがわかる

 

このような読唇AI技術は視覚障がいのある方への利用のほか、リアルタイムでの字幕表示にも活用されるかもしれません。しかし、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが発表したAI技術は、読唇AIとは一味違って、言葉をうまく発声できない人はもちろんのこと、それ以外のさまざまなシーンでも活用できる汎用性があると研究チームは期待しています。例えば、電車のなかや図書館など大きな声で話せない場所での電話や、逆に周囲が騒々しい場所での電話。周囲の環境に関わらず、このAIによって自分の言葉が相手により正確に伝わる可能性があります。

 

パソコンやスマートフォン、インターネットは私たちのコミュニケーションを大きく変えてきました。次はAIが読唇術を使って人間の会話や言語活動をさらに変えるかもしれませんね。

「朝型/夜型」の分類はもう古い! 「生活リズム」をより正しく捉える6つのタイプとは?

生活リズムや睡眠スタイルについて話をするとき、たいてい私たちは人間を早寝早起きの人と夜遅い時間まで活動している人の2つに分けます。しかし人間の生活リズムは単純に「朝型」と「夜型」の2種類だけではなく、実は6つのタイプが存在することがロシアの大学の研究で判明しました。

↑朝型でもなければ夜型でもない人もいる

 

私たちの身体は体内時計や生態リズムによって、朝は自然と目が覚め、夜になると眠くなります。このリズムを朝型や夜型などと分けるのが「クロノタイプ」と呼ばれる分類法で、これまでのクロノタイプは朝型と夜型の2つに分けるのが一般的でした。しかし、これをもっと詳細に見てみると、実際には6つのタイプがあるというのです。

 

そう主張するのは、ロシア諸民族友好大学の生理学の研究者。その研究では2283人以上を対象にオンラインで調査を行い、集めたデータを解析。すると、従来の朝型と夜型に加えて、さらに4つのカテゴリーに分けることができるのを発見しました。睡眠時間、日中の眠気度合、朝の目覚めやすさ、入眠までの時間など、新しい基準で分類を行い、新たにわかった6つのタイプが以下の通りです。

1 朝型(Morning Type、朝に最も覚醒レベルが高くなるタイプ)

2 夜型(Evening Type、夜に最も覚醒レベルが高くなるタイプ)

3 覚醒型(Highly Active Type、一日を通して覚醒レベルが高いタイプ)

4 日中眠気型(Daytime Sleepy Type、日中に覚醒レベルが下がるタイプ)

5 日中覚醒型(Daytime Type、日中に覚醒レベルが高くなるタイプ)

6 非覚醒型(Moderately Active、一日を通して覚醒レベルが低いタイプ)

 

グラフの横軸は朝、昼、夜の時間を表し、縦軸は覚醒レベルを表しています。ここでは、特に「覚醒レベル」、つまり意識がハッキリしていて集中力や注意力がある状態について着目。朝型は、朝に覚醒レベルが最も高くなり、夜型は朝から夜にかけて覚醒レベルがどんどん上昇するタイプと分類できます。さらに、一日中ずっと覚醒レベルが高いタイプや、日中だけ高くなるタイプなどと分けられるのです。

 

この研究チームでは調査に参加した人のうち、朝型は13%、夜型は24%、覚醒型は9%、日中眠気型は18%、日中覚醒型は15%、非覚醒型は16%いると分析。つまり、従来の朝型と夜型に当てはまるのは全体の37%に過ぎず、残りの6割近くが新しい4つのタイプに分類できるとわかったのです。従来の朝型と夜型の分類は曖昧な分け方だったんですね。

 

クロノタイプには、その人が持つ遺伝子が関係していると言われ、ライフスタイルによってその影響も異なると考えられます。自分は6つのなかでどのタイプに当てははまるかを考えてみると、仕事のパフォーマンスを高めたり、健康的な生活を送ったりするうえで参考になるかもしれません。

世界の2%の人しか持っていない「超認識力」。自分にもあるか今すぐチェックできる

一度会った人の顔を、時間が経ってもしっかり記憶できる人がいますよね。普通なら覚えられないのに、一度見た人の顔を数多く認識できる特殊な能力は「超認識力」と呼ばれ、その持ち主を英語では「スーパーレコグナイザー(super recognizer)」と言います。

 

この超認識力とはどんなものなのでしょうか? そんな特殊能力が自分にもあるかどうか知ることができる簡単なテストとあわせてご紹介しましょう。

↑一度だけ見て、こんなに覚えられる?

 

超認識力とは何か? まずは、それを示すあるエピソードをご紹介しましょう。1990年代、ある女性がパリの公園で、男性写真家が子どもを撮影している様子を目撃しました。それから10年後、この女性がレストランで偶然このときの男性と遭遇したので、女性は男性に「あなたは写真家で、パリの公園で子供の写真を撮ったことがありますか?」とたずね、男性は驚愕した。そんな出来事が実際にあったそうです。

 

超認識力とは、このように一度顔を覚えれば長い期間が経った後でもその人を認識できる能力のことをさします。その後、研究者たちが行った顔認識テストで突出した結果を出した人物がいたことから、2009年に「超認識力」と「スーパーレコグナイザー」という言葉が作られました。

 

以前は、超認識力は訓練によって身につけられると思われていました。ところが一定のレベルまでは訓練で伸ばすことができても、スーパーレコグナイザーのようにずば抜けた能力は訓練で獲得できるものではないことが明らかとなり、この力はもっぱら遺伝と関係していると考えられています。

 

スーパーレコグナイザーは世界中でわずか1~2%ほどしか存在していないのですが、この特殊能力は警察などの政府機関や出入国管理局、情報機関、警備関連などで求められるケースが増えてきていると言われています。

 

超認識力のテスト

ごく限られた人しか持っていない超認識力ですが、「もしかしたら自分にも超認識力があるのでは……」と気になったりしませんか? 幸いにも超認識力があるかどうかを確認できる方法があります。それがUNSWフェイステストで、これはオーストラリアのニューサウスウェールズ大学の法心理学研究所の心理学者が2017年から使用しており、先日科学誌に発表したました。これまでにこのテストを受けた人は3万1000人。最も多いスコアは50~60%で、70%以上ならスーパーレコグナイザーに分類できるそうです。

 

では、テストのやり方を簡単にご紹介しましょう。テストは英語での表示ですが、10~15分ほどで簡単に進められて、無料でできます。

 

準備

① https://facetest.psy.unsw.edu.au/ にアクセスする

② 青い「Click here to begin the test」をクリック

③ ページ下の「*I have read and understood the Information and Consent details above」にチェックをつけて、「I agree, start test」をクリック

④ 「Launch Experiment」をクリック(テストはフルスクリーンモードで行われます)

⑤ 自分の年齢を入力して「Submit Answers」をクリック

⑥ 年齢と性別、人種を選択して「Submit Answers」をクリック

 

テスト開始

① 20人の顔が自動で次々に表示されるので、これをできるだけ記憶します(Part 1)。

② 今度(Part 2)は人の顔が表示されるので、Part 1で覚えた人物だったら「Y」、違う人なら「N」を押します。Part2の写真はPart1と表情やポーズなどが異なります。

③ 最初にターゲットの顔が表示され、その後別の顔写真4枚が重なった状態で表示されます。最初に見たターゲットと一致するなら右方向に、違うなら左方向にドラッグし、最後に画面下の「Done」をクリックします。(4枚すべてがターゲットと一致する場合も、その逆もあります。最初にイラストを使った練習問題を行います。)

④ これでテストは終了。テスト結果のデータをほしい場合、最後にEメールアドレスを入力、不要ならそのまま「Submit Answers」をクリックすれば、自分のスコアが表示されます。

 

このテストの過去最高スコアは97%。今後100%のスコアを出す人物が現れるかもしれないと研究者たちは期待しているようです。ちなみに筆者もこのテストを受けてみましたが、人を覚えるのがとても苦手なせいか、33%と散々な結果でした。超認識力が自分にあるかどうか知りたい方は試してみてはいかがでしょうか?

 

本格利用に向けて大きな一歩! 「中国製空飛ぶタクシー」がテストフライトに成功

現在、世界各国で「空飛ぶタクシー」の開発が進められていますが、無人航空機分野をリードする企業のひとつが中国のEHangです。同社は2人乗り無人航空機を自社で開発しており、最近、韓国でテストフライトを行いました。2人乗り無人航空機の本格利用はどんどん実現性を高めています。

 

最高時速130キロで無人飛行

↑韓国の空を舞うEHang216

 

EHangはは旅客輸送つまり空飛ぶタクシーのほか、観光、災害時の救急医療など、さまざまな分野で無人航空機の利用を目指しています。

 

韓国でテストフライトを行った無人航空機「EHang216」は、ヘリコプターと似たような外観ですが、高さは1.77mで横幅は5.61mと、一般的なヘリコプターよりも小さいサイズ。機体の周囲を囲むように8本のアームが伸び、そこに全部で16のプロペラがついており、電気の力で飛行します。最高速度は時速130キロで、最大積載量200キロの場合の航続距離は35キロ、21分間の飛行が可能。

 

4Gや5Gを利用してコマンド&コントロールセンターにリアルタイムでフライトデータが送信され、緊急時には警告を出したり遠隔操作して安全な場所へ着陸したりできるそう。おまけに高速充電で、2時間以内にフル充電をすることができます。大人数や大きな荷物を遠くまで輸送することはできないものの、短距離での利用に最適な設計となっています。

 

このテストフライトでは、旅客輸送、観光、救急医療の3つの用途を想定して、それぞれのシナリオに合った3つの場所で行われました。旅客輸送を想定したテストではソウル最大の川、漢江の中にある人工島「汝矣島(ヨイド)」を飛び立ち、人口が密集する都心部の上空を飛行。観光向けでは済州島を舞台に海岸線を飛び、救急医療の利用を想定したテストでは大邱市で救急医療セットとAEDなどの医療機器を輸送しました。これらすべてのテストフライトが成功に終わっています。

 

韓国の国土交通省が2023年〜2025年の商業利用開始を目指して進めているプロジェクトの一環として行われた今回のテストフライト。その成功は本格利用への大きな一歩となったことでしょう。

 

ぽこぽこ現れる「正体不明のモノリス」に世界が騒然中

赤土で覆われた一帯に巨大な岩がそびえたつ、米ユタ州の砂漠地帯。そんな人里離れた場所に、正体不明の金属の柱が埋められていることが偶然発見されました。その様子はまるでSF映画のワンシーンでしたが、この柱が忽然と姿を消したというから、さらに世界中が騒然としています。

↑突然現れて消えた金属の柱

 

グランドキャニオンをはじめ、モニュメントバレーやザイオン国立公園など壮大なスケールの自然に囲まれたユタ州。その砂漠地帯で11月、ユタ州公安局の職員が上空からオオツノヒツジを数えていたときに、異質なものがあることに気づきました。

 

柱は金属製で、高さはおよそ3.6メートル。一部が地中に埋められるように立っており、職員が柱や周囲を調べても、誰がここに置いたのかわからなかったそうです。ただその後の調査で、この柱は5年ほど前から存在していた可能性があると言われています。

↑2015年8月には見られなかったが、翌年10月には地上にあった

 

太陽の光を反射してキラキラ光る金属の柱が砂漠のなかに埋め込まれている風景は、まるで映画の世界のよう。この存在をユタ州が発表するや否や、このニュースは瞬く間に世界中をかけめぐり、「謎のモノリスが出現した!」「地球外生命体が置いた?」など、さまざまな憶測が飛び交うこととなったのです。

※モノリス:SF映画「2001年宇宙の旅」に出てくる石柱状の物体

 

この柱が見つかった地点はあまりにも人里離れたエリアであり、ここを訪れようとする人は道に迷い救助を求める可能性が高いことから、ユタ州当局は詳しい位置を明らかにしませんでした。しかし情報が開示されないことで、かえって余計に刺激を受けたのか、州当局のヘリコプターの飛行経路を分析し、Googleアースを駆使して柱の場所を特定し、ネット上で発表する人が現れたのです。また、その情報をもとに現地まで辿り着く人も登場するようになりました。

 

しかし驚くことに、この柱が突然消えたのです。ユタ州当局がこの柱を発見したと発表したのが11月23日。それからわずか1週間もたたない11月27日には柱が消えたことが確認されたのです。柱があった場所には三角形の金属板だけが残されているだけ。もしかしたら現地を訪れた人が撤去したのかもしれません。匿名のアート集団がこのモノリスを設置したことを認めていると言われていますが、誰が撤去したのかは不明です。

 

その後、この柱は欧州各地で発見されています。ルーマニアではピアトラ・ネアムツにある丘で同じような金属の柱が見つかりました。こちらの柱は黒っぽい金属製で、高さは約3.9メートル。表面にはたくさんの円が描かれていたそうですが、この柱も発見されてから間もなく突然姿を消したとのこと。さらに最近では、イギリスとオランダにも同様の柱が出現したと報じられていますが、いずれも模倣品ではないかという見方もあります。いまだに謎だらけのこのモノリス騒動はもうしばらく続くかもしれません。

 

eバイク先進国で人気の「スマート電気自転車」3選。 日本で買えるものもピック

ここ数年、気候変動への懸念とリチウム電池の小型化といったテクノロジーの進化を背景に、ヨーロッパでは「eバイク(電気自転車)」の人気が高まっています。なかでも大きな注目を集めているのが、「自転車のdisrupt(創造的破壊)」を掲げるスタートアップ企業が作るハイテクな「スマートeバイク」。一体どんな自転車なのでしょうか? 欧州の自転車文化に触れながら、現地で評判になっている3社のスマートeバイクを見てみましょう。

 

クルマよりも自転車

ヨーロッパ、特にオランダやドイツ、フランスでは、もともと自転車で颯爽と通勤するビジネスマンが多く、スポーツとしての自転車カルチャーも盛んです。週末や休暇に郊外へと向かうクルマに長距離用スポーツ自転車が積まれることが多いのはその一例でしょう。

 

それに加え、筆者が住むドイツを中心に欧米の比較的教育レベルが高い40代以下の層は、気候変動への影響が少ない生活スタイルを好む傾向があり、「ガソリン車よりも電気自動車、しかしクルマよりも自転車」というマインドがここ10年ほどでかなり浸透しています。

 

欧州各国政府も排ガス量緩和と市民の健康向上を目指して自転車活用に力を入れており、専用レーンの整備も進んでいます。コロナ禍では多くの人たちが公共交通の使用を避けていますが、eバイクは人との接触を避けながら手軽に移動できるうえ、駐車場の有無を心配する必要もありません。ドイツではeバイク購入に補助金を出している自治体もあるほどです。

 

このような背景のなかでハイテクかつシャープなデザインのeバイクの人気は急上昇してきました。このような自転車を取り扱うスタートアップ企業が2020年に次々と大型の資金調達を発表したこともその人気を裏付けています。

 

【その1】日本にも進出しているオランダの「バンムーフ(VanMoof)」

↑日本でも人気上昇中のバンムーフ(写真提供・VanMoof)

 

ここからは欧州で高い評判を得ている3社のeバイクについて述べていきます。まずはバンムーフ。同社は数ある欧米系eバイクのなかでも唯一日本に進出しているブランドとなります。最大のアピールポイントは、ケーブルやライト、バッテリーまで、すべてがフレームに埋め込まれているというスタイリッシュな外観と、鍵が不要という施錠システム。

 

後輪の小さなボタンを蹴ればロックが完了し、アプリの起動状態でハンドルバーのボタンを押すだけで解除が可能です。盗難防止用の警報や追跡システムが完備されたうえ盗難時の保証が付き、14日間の無償返品期間もあります。専用アプリからはアシストの強弱、自動ギアシフト、スピード上限などさまざまな設定ができるのに加え、走行距離や経路、時間、速度の自動記録も可能です。

 

以前は3500ユーロ(約40万円)だった価格も、生産量を増やしたり、前モデルと同型のフレームを採用したりすることでコストを下げ、最新モデルでは価格が1998ユーロ(約25万円)になりました。

 

難点は車体に埋め込まれたバッテリーを取り外せないことで、自宅の駐輪場にコンセントがなければ自宅の中まで自転車を運ばなくてはなりません。同社に問い合わせたところ「最近は街中に電源付き駐輪場が増加中」との回答でしたが、この点は改善を期待したいですね。

 

とはいえ、クールなeバイクという戦略が功を奏してか、今年の日本での売り上げはすでに去年の倍以上とのこと。日本でバンフームブームが起こるかもしれません。

 

【その2】バッテリーが取り外せるベルギーの「カウボーイ(Cowboy)」

↑実用性が高いカウボーイ(写真提供・Cowboy)

 

次は、マットなブラックボディとケーブル埋め込み型のシンプルな外観が人気のカウボーイ。その最大のポイントは、バッテリーが取り外せることです。外せないeバイクが増えているなか、実用面で優位性が高いことは間違いありません。

 

このカウボーイに試乗を申し込むと、なんと自宅まで来てくれました。普通は店舗に行くのが当たり前なので、秀逸なサービスといえるでしょう。

 

専用アプリでは、走行距離や速度の記録、アシストの設定などができます。持ち主が近くにいない状況で自転車が動かされるとアラームが鳴ったり、事故に遭えば自動検知して持ち主や事前登録した電話番号に連絡が行ったりなどのフォロー態勢が整備されています。

 

価格は2290ユーロ(約28万円)で、購入後30日間という長期の返品に対応しています。欧州企業でカスタマーサービスは軽視されがちですが、高額商品だけに安心して購入してもらえるように試乗や返金などのサービスに力を入れているようです。

 

残念ながら現在の販売は欧州のみですが、問い合わせたところ、詳細な時期は未定ながら日本への進出準備も進行中との回答があったので楽しみです。

 

【その3】クラシックなデザインのエストニア発「Ampler(アンプラー)」

↑見た目はレトロ、中身はモダン(写真提供・Ampler)

 

バンムーフとカウボーイが「メカっぽさ」を重視しているのに対し、3つ目のアンプラーはクラシックな外観が特徴です。色も赤、深いグリーン、鮮やかなブルー、シックなグレーを揃えており、目新しさやおしゃれ感よりも「自転車らしさ」を好む層をターゲットにしている模様。バッテリーは車体に完全に埋め込まれているのでスマートに見えますが、残念ながらバッテリーは取り外しできません。

 

専用アプリではモーターの強度変更やナビ機能の調節、走行距離やスピードの自動記録、バッテリーの残量確認などが可能です。走行モードはノーマルモードとブーストモードで切り替えができ、立体駐車場の急な坂で試乗してみましたが、センサーが自動で反応するので自然にスイスイと上れました。価格は2490ユーロ(約30万円)と上記2つのモデルより少し高めなものの、その性能はドイツの自転車雑誌でもランキング上位に選ばれるほど優秀。返品・返金可能期間は14日間となります。

 

日本には未上陸ですが、欧州ではドイツが最大の市場ということでベルリンとケルンに店舗がオープンしたばかりです。ドイツ西端のケルン店は近隣国からの顧客も見越した場所となっているので、欧州ならではの販売戦略といえるでしょう。

 

【まとめ】

まだ価格は高く、都市部の比較的高収入な世帯がメインターゲットのeバイクですが、需要の伸びに伴い価格低下が見込めることから、コロナ収束後も人気は加速していくと思われます。既存自転車メーカーもベンチャーに負けまいと市場に乗り出しており、欧州はまさにeバイク戦国時代といった様相を呈しています。各社が日本にこぞって進出する日も近いのではないでしょうか。

 

南イタリアの風物詩を守れ! 若手農家が仕掛ける「サステナブルな農業革新」

南イタリアの美しい春を彩る風物詩のひとつにアーモンドの花があります。ユネスコの世界無形文化遺産に登録された「地中海の食事」でもアーモンドの実は重要な食材のひとつですが、その一方で地中海の風景に溶け込むアーモンドの木は絶滅の危機に瀕しているものも少なくありません。そこで、食文化としても重要なアーモンドの木と養子縁組し、将来もアーモンドを残していくというプロジェクトが立ち上がりました。

 

紀元前から南イタリアで愛されてきたアーモンド

↑このアーモンドの養子にならない?

 

アーモンドの起源は西アジアにあるといわれ、紀元前5世紀にギリシアからイタリア半島に伝わりました。高い栄養価が評価され、中世にはカール大帝がイタリア半島内でのアーモンドの栽培を促進したとも伝えられています。

 

2013年にユネスコの世界無形文化遺産となった地中海の食事でもアーモンドはその一翼を担い、イタリアの保健省は1日に5~20gのアーモンド摂取を推奨しています。南イタリアではアーモンドを使用した伝統的なお菓子も多く、アーモンドオイルやアーモンドミルクなどの商品もあちこちで販売されています。

 

また、キリスト教会内にある宗教絵画などにアーモンドが描かれていることもあり、イタリアでは生活に浸透している食材といって過言ではありません。

↑モンツァのドゥオモに残る16世紀のフレスコ画の結婚式シーン。アーモンドの糖衣菓子が描かれている

 

地中海地方に伝わるアーモンドの品種は750種にも及ぶといわれてきました。しかし、気候の変化やアーモンド栽培農家の減少などにより、そのうちの150種はすでに絶滅。残る600種についても絶滅の危機に瀕しているものが少なくなく、農業食料森林省も長年頭を抱えていました。

 

そもそもアーモンドの栽培は南イタリアの農家の副次的な収入源にとどまっていた時代が長く、1950年代からアーモンドの栽培は減少し続けていたのです。ところが近年、健康ブームからアーモンドの栄養価が見直され、アメリカをはじめとする先進国でアーモンドの需要が増加しました。それに伴い、イタリアでもアーモンドの栽培を見直す動きが活発化し、最近ではオーガニック栽培のアーモンドも市場に登場するようになりました。

 

若い農家たちの大胆な戦略

そんななか、近年イタリアでは農業に従事する若い世代が増えています。イタリア専業農家連盟の2020年1月の報告によると、過去5年間に農業ビジネスに従事し始めた35歳以下の若者は5万6000人にも及ぶとのこと。

 

特に古代から肥沃な穀倉地帯として知られるイタリア南部でこの増加が顕著で、シチリア島、プーリア州、カンパーニア州を中心に若手が先導する農業ビジネスが加速しています。製造業やサービス業など他の業種と比べると、農業に従事する35歳以下の割合は10%ほど多く、彼らが率いる農業収入は従来の農家よりも75%も多いことが明らかになりました。

 

若い世代の新しい農業ビジネスの利点は、農産物を生産し販売するという単純な作業だけにとどまらないということ。消費者への直売、有機栽培、ツーリズムとの提携、再生可能エネルギーの導入など、時代に即した戦略を大胆に用いている点に特徴があるといえます。ソーシャルメディアを使用したマーケティング力に長けている点も無視できません。アーモンドに注目したのもそんな若い世代だったのです。

↑南イタリアの春を彩るアーモンドの花

 

若手の農業従事者から生まれたアイデアのひとつが、地中海エリアにおいて歴史的にも文化的にも重要な位置づけであるアーモンドを将来に残すという試み。そのプロジェクトは「アーモンドの木と養子縁組を(Adotta un mandorlo)」と名付けられました。

 

アーモンドの木と養子縁組する方法や金額はさまざま。まず、樹齢の高いアーモンドを1年間養子にするには59ユーロ(約7300円)かかります。3年間ならば159ユーロ(約2万円)、5年間であれば289ユーロ(約3万6000円)となります。出資期間中には毎年、それぞれの木から収穫したアーモンド3キロを受け取ることができます。

 

また、新しく接ぎ木したアーモンドの木を養子にすることも可能。こちらの期間も1年間、3年間、5年間の三択で、費用はそれぞれ39ユーロ(約4900円)、119ユーロ(約1万5000円)、209ユーロ(約2万6000千円)です。樹齢が高いものと比べると、こちらのほう安価なのですが、接ぎ木の場合はすぐに実をつけないため1年間の養子縁組ではアーモンドを受け取ることができません。つまり、その1年間はこの養子縁組プロジェクトに賛同したというボランティア感覚になります。他方、3年間と5年間の養子縁組を選択すると、毎年1キロのアーモンドを受け取ることができます。

 

いずれの養子縁組の場合にも、その樹木には投資をした人の名前を記したプレートが設置され、GPSによって成長具合や開花、実をつける様子などを見ることができます。また、養子縁組のために支払われた資金はその樹木の手入れに使われるほか、バイオダイナミック農法の促進や土壌の質の向上、地質研究などに有益活用されるそうです。

 

この養子縁組プロジェクトには資源の有益活用やサステナブルな農法、木の成長過程を共有できるワクワク感などが盛り込まれています。アーモンドが有する歴史や食文化を存続し、収穫したアーモンドを毎年受け取ることができるなら、養子縁組の費用を出してみようというイタリア人も少なくないでしょう。地中海の食文化に重要な食材のひとつであるアーモンドの木は、これからも大切に守っていきたい南イタリアの財産。その存続と発展は若い世代に託されています。

 

なぜイタリアが? 「コロナ対策サプリ開発」にハイテンションで取り組むワケ

2020年、イタリアでは新型コロナウイルスによって食生活において様々な変化が見られました。自家製のお菓子やパンを作るために小麦粉が品切れになったり、食料廃棄が減ったり。

 

しかし、海外にはあまり知られていないのが、サプリメントの消費動向の変化。実はイタリアはサプリメント大国でもあり、国内の各大学ではワクチンの普及に時間がかかることを見越し、ウイルスに対抗できるサプリメントの研究や開発が広がっています。

↑イタリア人はサプリもこよなく愛する

 

イタリアは欧州でも有数のサプリメント消費国です。イタリア薬剤師協会の調査によると、2019年にサプリメントを日常的に摂取しているイタリア人の数は3200万人に上り、全人口のおよそ65%になるそう。サプリメントの国内市場規模は33億ユーロ(約4200億円)で、欧州全体の23%を占めています。

 

イタリアのサプリメント事情についてもう少し細かく見ると、働き盛りの35歳〜64歳による消費が約63%となっている一方、全体の消費人口の65%近くを女性が占めています。スーパーマーケットでも購入できるという手軽さも、サプリメントの普及に拍車をかけているといえます。

 

なぜイタリア人はこれほどサプリメントを愛好するのか? それについては諸説ありますが、サプリメントの動向を調査する機関「FederSalus」のマッシミリアーノ・カルナッサーレ会長は、そもそも「ティサーナ」と呼ばれるハーブティーを健康や美容のために飲む習慣があったイタリアは、その流れでサプリメントの需要が伸びたのではないかと推測しています。

 

ロックダウンでサプリの消費が拡大

サプリメントについては健康だけでなく美容を意識した商品の需要も高く、従来は乳酸菌やミネラル塩を含む商品が売り上げの上位を占めていました。ところが、新型コロナの感染拡大に伴いロックダウンが実施されて以降、イタリア人が心身ともにストレスにさらされている状況がサプリメントの消費動向を通じて明らかになったのです。

 

イタリアの食産業を調査するイタリアフード協会の調査によると、これまで人気が高かった乳酸菌やミネラル塩のサプリメントを抜き、ビタミンBを含む商品の売り上げが30%、睡眠やリラックス効果に関する商品が21%、喉に関する商品が12%増加したことがわかりました。

 

また、免疫作用を強化するとうたわれているサプリメントの売り上げも30%以上増加するなど、記録的な業績となったのです。普段はサプリメントを摂取していない人でも、マルチビタミンなど手に取りやすい商品を購入するようになり、こちらも5.7%の売り上げ増となっています。

 

新型コロナを意識したサプリメントは売り上げが伸びたものの、薬局や店舗、オンラインなどを合わせたサプリメント全体の消費量はコロナ禍の経済状況を反映するようにマイナスとなりました。薬剤関係のデータを調査するニューライン・リチェルケ・ディ・メルカートによれば、2019年と2020年のある同じ時期を比べて、今年の消費量は1.6%減少しているそうです。ただしオンラインでの購入は30%以上増加しており、こういった消費動向もコロナ禍時代の特徴といえるかもしれません。

↑以前ほど店頭では売れません

 

コロナ感染予防を巡って品切れとなったサプリメントもあります。ローマのトル・ヴェルガータ大学のエレーナ・カンピオーネ教授が率いる研究班は今年6月、学術誌「International Journal of Molecular Sciences」にラクトフェリンに関する研究を発表しました。その論文ではラクトフェリンが新型コロナの感染予防に効果があるとされ、ニュースでも大きく取り上げられたのです。すると、そのニュースを見た人が薬局などに殺到し、ラクトフェリンのサプリメントがあっという間に品切れになってしまいました。

 

ラクトフェリンとは乳汁、涙、唾液、胆汁、膵液といった分泌液などに含まれる、抗菌活性を持つとされる鉄結合性蛋白質です。同大学の研究結果は現在、ラ・サピエンツァ大学の微生物学教授やラクトフェリン研究者たちによる客観的な検証の段階に移っていますが、もちろん、その成果に懐疑的な学者も少なくありません。しかしカンピオーネ教授は、ソーシャルディスタンスとマスク以外の新型コロナへの対抗手段としてラクトフェリンの有効性を証明したいという強い意欲を示しています。

 

また、中世からの伝統を誇るボローニャ大学は、クローブや小麦麦芽を使用して、新型コロナ感染予防のためのサプリメントを開発していることを発表しました。同大学のジョヴァンニ・ディネッリ教授のチームは、クローブに含まれるユージノールと小麦麦芽中に含まれるスペルミジンという成分が新型コロナの感染予防や治療に有効という可能性を提示し、ウィルスに対抗する免疫強化サプリメントの開発を目指しています。

↑目下研究中!

 

果たしてこういった成分が本当に有効な武器となるのかどうかはまだ断定できませんが、同教授はワクチンが開発され、普及するまでの手段としてこのサプリが役に立つことを願うと述べています。とはいえ、このようなサプリに関する研究結果については早急な判断を控えるようにという専門家の忠告もメディアではよく目にします。

 

ラクトフェリンや自然の成分を原料にしたサプリメントが新型コロナの予防や治療にどれだけ効果を発揮するのかについては、専門家の間でもさまざまな意見があります。いずれにしても、サプリ好きのイタリア人の消費動向はコロナの感染拡大によって大きく変化しました。ロックダウンによって食事に関しても健康志向がさらに高まったイタリアでは、「新型コロナにかからないように用心する」という切なる思いがサプリメントの選び方や開発にも表れているようです。

 

BMW製の「電動ウイングスーツ」!? 最高時速300kmで空を舞いヒトは鳥に近づく

長い間、人類は鳥のように大空を自由に飛ぶことを夢見てきましたが、人間が鳥に近づきつつあるようです。最近、BMWが時速300キロ以上で長い航続距離を飛行することができる電動ウイングスーツを発表しました。ムササビのような姿で空を舞うウイングスーツはどんなものなのでしょうか?

 

電気自動車の技術を結集

↑鳥だ! 飛行機だ! いや人間だ!

 

ウイングスーツとは、スカイダイビングのように高い崖から飛び降りて滑空する「ベースジャンプ」のジャンパーたちが着用するスーツのこと。手と足の間に特殊な布が貼られていて、これによってムササビのように上空に滞在することができます。

 

このウイングスーツの電動タイプを世界で初めて発表したのが、ドイツの高級自動車メーカーのBMW。BMWは2013年に電気自動車「BMW i3」を発表して以来、電動機や充電技術などの開発を続けてきています。近年では第5世代のeDriveテクノロジーを使ってクルマを生産していますが、BMWはこれらの技術を結集し、3年をかけてウイングスーツを開発しました。

 

ウイングスーツの開発には、スカイダイバーとベースジャンパーのプロとして活躍するオーストラリアのピーター・ザルツマン氏が協力。スーツにはBMWデザインワークスがコラボレーションし、カーボン製のプロペラ2つが付いた電動ドライブシステムを身体の全面部分に装着します。プロペラは約2万5000rpmの回転速度で、それぞれの出力は7.5kW、2つ合わせて15kWの出力を備えています。

 

従来のスカイダイビングやベースジャンプでは、ジャンパーは崖やヘリコプターから上空に飛び出した後、時速100キロ以上のスピードで地上に向かって下降していきます。しかし、このBMWのウイングスーツの電動ドライブシステムを着用していると、まるで小型飛行機が空を自由に飛ぶように、ときには上昇しながら上空を旋回することが可能。最高時速はおよそ時速300キロにも到達するそうです。

 

オーストラリアで行われたテスト飛行では、上空3000メートルからザルツマン氏が2人のジャンパーとともに上空へ飛び出し、電動ドライブシステムのおかげで正面に迫る崖を見事に高速でよけ、ジャンプを楽しんだのでした。地上から撮影された動画を見ると、ジャンパーが通過した後には飛行機雲ができています。その様子はまるで人間が飛行機になったかのようですが、大事なことは人間が鳥のように空を飛ぶことができるようになりつつあるということでしょう。

 

ベースジャンプはとても危険なスポーツですが、世界中のジャンパーたちが止めないのは、空を飛ぶというロマンに魅了されているからなのでしょう。そんな彼らが、電動自動車の技術力を活用して、これまで以上に自由に大空を舞う日が近づいているのかもしれません。

 

 

「マスク着用」でも運動のパフォーマンスは落ちないことが判明! でも呼吸が……

新型コロナウイルスの感染予防のため、たとえ運動中であってもマスクの着用が求められる時代となりました。でも気になるのは、マスクを着用して運動をすると身体にはどんな影響が出るのか? この問題についてカナダのサスカチュワン大学が研究し、最近その結果を発表しました。

↑マスクをしてもパフォーマンスは下がらない

 

たとえコロナ禍であっても、健康を維持するためには運動が大切。そして感染予防のためには、スポーツジムでのトレーニング中や自宅周辺のランニングの最中でも、マスクの着用が必要です。しかしマスクをつけながら激しい運動をしていると、十分な酸素を吸えないうえ、二酸化炭素を過剰に摂取してしまうなど、不安が生じるかもしれません。そこでサスカチュワン大学の研究者は次のような実験を実施しました。

 

健康な男女各7名が室内でエアロバイクをこぎ、一定のペダルの速さになるまで6~12分間運動を継続します。研究者たちは運動中の血中酸素濃度や筋肉の酸素レベルを測定し、この作業を外科の医療用マスクを着用した場合、3層の布製マスクを着用した場合、何もつけない場合の3パターンで行いました。

 

その結果、医療用マスクと布用マスクを着用していた場合は、マスクを着用しなかった場合に比べて血液中と筋肉中の酸素量は若干少なくなったものの、その影響は最小限に抑えられていることが判明しました。マスクを着用しても、運動中のパフォーマンスに悪い影響を与えるエビデンスは見つからなかったというわけです。

 

パフォーマンスは落ちないが、心肺への負担は上がる

しかし、実際には多くの人たちがマスクをつけながら運動すると息苦しさを覚えて、マスクをつけていないときに比べると疲れやすくなると感じていることでしょう。ある別の実験では、ランナー10人がマスクをした状態とマスクをしない状態でトレッドミルを走ったところ、マスクを着用すると、着用しなかったときに比べて1分間に肺を出入りする空気量が24%減少し、酸素摂取量も13%減少することがわかりました。酸素摂取量では大きな変化が見られませんでしたが、マスクを着用すると呼吸の回数が増加して、酸素の摂取を補っていると考えられます。つまり、マスクを着用して運動する場合、運動強度が上がるほど心肺への負担は増加すると言えるでしょう。

 

これら2つの実験結果は相容れないように見えます。さらなる研究が必要でしょう。しかし運動中にマスクを着用すると、新型コロナウイルスの感染を防ぐことに役立つと考えられる一方で、少なからず呼吸にも影響が出るようです。このような長所と短所をどう捉えるかは人によって異なるかもしれませんが、科学的な知識だけでなく、身体の声を聴くことも大切でしょう。

本棚ではなかった! 「オンライン会議」で最も信頼される背景は何?

リモートワークが普及し、社内外の人とオンライン会議を行うのが一般的になりました。そんなオンライン会議で気になるのが、自分が映ったときに見える背景です。たかが背景と思うなかれ。この背景によって、相手に対する信頼感やプロフェッショナル性などが増すことが、最近ある調査で判明したのです。ビジネスで相手に良い印象を与える背景は何なのでしょうか?

↑背景はどこがいいかな……

 

アメリカのデザイン企業Signs.comは、普段からビデオ会議を利用しているアメリカ人1507名にアンケートを実施しました。女性と男性各1人のモデルが同じポーズをとった写真を用意し、背景だけを次の6パターンに変更します。

 

・窓から自然光がさす背景

・アートを飾った背景

・植木鉢を置いた背景

・キャンドルを置いたやや暗めの背景

・本棚の背景

・模様のない壁の背景

 

そしてABテストを行い、それぞれの背景で「プロフェッショナル性」「信頼感」「親密性」「知性」の項目についてどのように感じたかを5段階で評価してもらいました。

↑実験された6つの背景

 

その結果、これら4つすべての項目でスコアが低めだったのは模様のない壁の背景。一方、「プロフェッショナル性」を感じるスコアが3.75と最も高かったのが、本棚の背景でした。ただ本棚の背景は「親密性」のスコアが3.67と、ほかの5パターンのどれよりも低く、プロ志向を感じさせるけれど近寄りがたい存在と相手に思わせている可能性があります。

 

また「知性」のスコアが4.07と最も高かったのが植物を置いた背景で、この背景は「信頼感」(3.92)や「親密性」(3.89)でもスコアが高く、平均的にどの項目でも高いスコアを獲得することがわかりました。またビジネスとはあまり結びつかない、キャンドルを置いたやや暗めの背景は、「プロフェッショナル性」のスコアは3.58と予想通り低かったのですが、「信頼感」と「親密性」のスコアは高めだったこともわかりました。

 

今回の結果を総合的に見て、背景に植物を置くと知性やプロフェッショナル性など、ビジネスにメリットがある良い印象を相手に与えることができるようです。

 

真っ白な壁には注意

アンケートで、ビデオ会議前に背景について調整などをするか聞いたところ、「時々調整する」「よく調整する」「いつも調整する」を合わせると75%となり、多くの人が会議での自分の背景について気を配っていることがわかりました。さらにその調整で最も重要なことを聞いてみると、自然光や窓や白い壁が上位の回答に上げられました。

 

でも、先ほどのモデルを使った写真アンケート結果から、何も模様のない白い壁はプロフェッショナル性も知性などのスコアが低い結果が出ています。つまり、よかれと思ってやったことなのに、白い背景にするとむしろ逆効果かもしれないのです。

 

人は視覚で得た情報から、相手がどんな人物か無意識のうちに判断しているとも言われます。オンライン会議でも最高の効果を生み出したい人は、背景に植物などの鉢植えをさりげなく見えるように置いてみませんか?

 

「片頭痛」を軽減させる可能性がある「光」

日本で1000万人近くの人が悩まされていると言われる片頭痛。一度痛みに襲われると、薬を飲んだり休みをとったり、さまざまな対処が必要になりますが、そんな片頭痛を軽減させるのに緑色の光が良いという研究結果が今年発表されました。緑色の光にはどんな力があるのでしょうか?

 

片頭痛の頻度や痛みが約60%軽減

↑緑が痛みを和らげる

 

日本と同様にアメリカでも片頭痛を抱える人は多く存在しています。この国では、およそ4人に1人が繰り返し訪れる痛みに見舞われており、音や光に敏感になったり、めまい、嘔吐、しびれが伴ったりすることもあるそう。片頭痛は薬による処方が一般的ですが、副作用の心配があるため、別の方法も研究されています。そこで考えられているのが光による予防治療。

 

アリゾナ大学ヘルスサイエンスセンターの医師らは、緑色の光を使った臨床実験を行いました。この実験には、さまざまな治療を受けても望ましい成果が見られなかった片頭痛患者29名が参加。患者たちは片頭痛が起きたときの痛みレベルを0~10で評価しました。

 

しかし緑色のライトを照射すると、平均で60%の人に片頭痛が起きる頻度が減少。痛みレベルについても、平均で8から3.2までおよそ60%下がったのです。さらに痛みが生じる時間が短くなり、片頭痛が起きても睡眠や家事、仕事を継続できるなどの改善も見られました。

 

臨床実験の最後には、被験者に今後も緑色のライトの照射を受けたいか聞くと、29名のうち28名が「引き続き照射を受けたい」と希望したそうです。ちなみに光を浴びたことによる副作用はなかったとのこと。

 

この実験を行ったイブラヒム医師は以前から、緑色の光を使った治療について研究を行っており、数年前にはラットを使用して緑色の光に痛みを軽減する効果があることを発表していました。同氏は線維筋痛症やHIVの患者に生じる痛みにも緑色の光の照射が効果的な治療法のひとつになる可能性があると考え、別の実験も行っており、今回と同じように痛みを緩和させる結果を出していました。

 

今回の実験で使われた緑色の光は、光の強度や波長を調整させたもので、残念ながら一般の方が同じような効果を得ようと自分で再現するのは難しいとのこと。ただイブラヒム医師は、以前行われたメディアのインタビューで「自分が頭痛になったときは、近くの公園に行って木の下で20〜30分過ごしている。すると、痛みが少しずつ良くなっていくんだ」と答えています。

 

私たちの現代の生活はパソコンやスマホなどの強烈な光に囲まれており、これらの強い刺激によって身体に痛みが起きているとも言われています。緑色の光による頭痛の予備治療が確立されるのはまだ少し先のことになりそうですが、頭痛が起きたときは、木々の緑がある場所で心を休ませてあげることが、いまできる対処法のひとつかもしれません。

 

【出典】The University of Arizona Health Sciences. (2020, September 9). Shining a Green Light on a New Preventive Therapy for Migraine. https://uahs.arizona.edu/tomorrow/shining-green-light-new-preventive-therapy-migraine

 

「マルチビタミンサプリ」はプラセボ効果? 米大学が検証した結果

ビタミンA、ビタミンC、カルシウムなど、毎日の生活で必要な栄養分をまとめて摂取できる「マルチビタミン」や「マルチミネラル」のサプリメント。栄養素別に摂取する必要がないため、専門知識がない一般の方にとっては便利な存在です。しかし最近、サプリメントは飲んでも飲まなくても健康に大差はないとする調査結果が発表されました。サプリメントの本当の効果とは何なのでしょうか?

↑健康なのは本当にサプリメントのおかげ?

 

アメリカは日本よりもサプリメントが広く普及しており、日頃から栄養の補給として利用する人が多くいます。なかでも特に人気が高く、およそ3人に1人のアメリカ人が飲んでいると言われるのが、複数の栄養素やミネラルをミックスした「マルチビタミン」や「マルチミネラル」です。

 

そこでハーバード大学医学大学院らの研究者などが、2万1000人のアメリカ人に行われた2012年の全国栄養調査結果をもとに、マルチビタミンやマルチミネラルのサプリメントの効果を検証することにしました。2万1000人のうち、マルチビタミンやマルチミネラルのサプリメントを日常的に摂取していた人は5000人で、残りの1万6000人は摂取していません。

 

調査では、高血圧や糖尿、喘息などの過去10年間の健康状態、感染症や記憶障害などの病歴、鬱や不安感などの心理状態などについても聞き取りが行われました。その結果、マルチビタミンやマルチミネラルを摂取している人は自分が健康だと判断する傾向が高かったのですが、実際にはサプリメントを摂取している人とそうでない人の間で健康上に大きな差は見られなかったのです。

 

サプリメントでポジティブ思考

健康状態とサプリメント摂取にはあまり関係がないのに、サプリメントを摂取している人は「自分は健康だ」と答えている人が多い。この事実からは、サプリメントをとっている人はサプリメントにそれなりの効果があると信じており、それをポジティブに捉えている人が多いと言えるかもしれません。そうだとしたら、これはプラセボ効果です。

 

ちなみにサプリメントを摂取している人は、高齢で世帯収入が高く、高学歴で健康保険に加入している女性が多かったそう。つまり健康を維持するために経済的な余裕があり、健康への意識が高い人がサプリメントを摂取している傾向にあるようです。

 

今回の結果がマルチビタミンをすべて否定することにはつながりません。しかし「自分はサプリのおかげで健康である」という考え方にはバイアスが働いていることも忘れないようにしながら、心と身体の健康を維持していくことが大切なのでしょう。

 

【出典】Paranjpe MD, Chin AC, Paranjpe I, et al. Self-reported health without clinically measurable benefits among adult users of multivitamin and multimineral supplements: a cross-sectional study. 

 

リアル過ぎて賛否両論! ディズニーが「人間のように目を動かすロボット」を開発

現在、人間とコミュニケーションを取るロボットの開発が進んでいますが、その課題のひとつに見た目の「人間らしさ」があります。私たちの言語活動において顔は重要な機能を担っているので、ロボットの表情を人間らしくすることはとても重要です。この問題に取り組んでいるのがディズニーで、同社は最近、会話の途中で視線が動いたり表情が変わったりするロボットを発表しました。一体どのようなロボットなのでしょうか?

 

目だけならロボット感なし

↑ギクリ

 

ディズニーで使う様々な技術を開発する「ディズニーリサーチ」が先日発表したのが、視線を人間らしく動かすことができるヒト型ロボットです。

 

従来のロボット研究では、ロボットと人間が視線を合わせることにフォーカスしてきました。そのためロボットと人間は目を合わせて会話することができるのですが、人間同士が行う実際の会話では、話の内容や相槌に合わせて私たちは視線を動かしたり逸らしたりするもの。そこでディズニーリサーチでは、ロボットが話し手や聞き手のキャラクターに合わせて視線を動かす技術を開発することにしました。そして先日お披露目されたのが、目の動きがこれまで以上に豊かなロボット。胸元にあるセンサーが、目の前の人物の目や顔の動きを感知して、それに対応して人間らしい動きができるそうです。

 

まだロボットの機械部分が露骨に見えるため、なんとも不気味な見た目ですが、下の動画を視線に注目しながら見てみてください。ロボットの前に人が立つと、頭をやや起こして視線を合わせたり、人の動きと合わせて首を左右に動かしたり、複数の人物がロボットの前にいれば、2人それぞれに視線を送ったり、より人間に近い目の動きをしているのがわかります。また、会話の途中にまばたきをするほか、目をしっかり開くときと、まぶたを半分くらい閉じた状態にするときがあるなど、1点を凝視する従来のロボットの目の動きとは明らかに違うようです。

この動画が公開されると世界中のメディアが取り上げ、SNSでは「さすがディズニー」「人間っぽい」と賞賛する声が上がりました。一方で、見た目の怖さから「不気味すぎる」「ハロウィンの日の投稿と間違えたんじゃないか?」「今夜は眠れそうにない」などのリアクションも。もしもこのロボットに人間のような皮膚をつけたとしたら、本物の人間に近づいて、さらに気味の悪さが増しそうです。

 

開発の現場にいる人からすれば、細部まで人間らしさを追及していくことは自然の流れでしょう。でもロボットには、どこかに「ロボットらしさ」が残っていたほうが、人間としては安心できると感じてしまう部分があるのかもしれません。

 

ハーレーの、ハーレーらしい「電気自転車」

ワイルドさとアメリカの自由を象徴するハーレーダビッドソン。「バイクの王様」と表現するライダーもいるように、ハーレーは世界中にファンがいますが、そんなハーレーダビッドソンが最近、電動自転車のマーケットに参入することがわかりました。どんな自転車が生まれるのでしょうか?

 

ハーレー1号機の愛称にちなんだ「シリアル・ワン」

↑若い世代の愛車になるか?

 

先日ハーレーダビッドソンが発表した電動自転車は「シリアル・ワン(Serial 1)」。これは、同社の元社員たちが幹部をつとめる新会社「シリアル・ワン」が手がけたもので、ハーレーダビッドソンが1900年初頭に初めて開発したバイク「シリアル・ナンバー・ワン」の愛称にちなんで付けられているそう。自転車にも「Powered by Harley-Davidson」と書かれています。

 

「バイクのハーレー」が手がける自転車だけあって、バイクらしい見た目にこだわったとのことで、ハンドルやモーター部分などにどことなくバイクらしさが漂うデザインにしたとのこと。太めの白いタイヤと相まって、スタイリッシュで都会的なデザインに仕上がっています。

 

一般的な電動自転車はハンドル右手のスロットルをひねることで加速しますが、このシリアル・ワンにスロットはついておらず、ペダルを踏み込むことで走行します。また従来のチェーン式ではなく、ベルトドライブの駆動式を採用。走行時速は自転車走行の規則にそって約32〜45kmです。

 

時代に乗ろう

アメリカをはじめ、世界のライダーを魅了し続けているハーレーダビッドソンですが、なぜ自転車事業を始めることになったのか? その主な理由は、本業とするバイクの販売が低迷しているからです。おまけに新型コロナウイルスの感染予防のため外出制限やリモートワークが広まったことで、2020年第2四半期の売上は前年同期比で47%も減少。今年の夏に同社はおよそ700人の従業員を解雇したと報じられました。

 

さらに新型コロナの感染を避けるため、電車やバスなどの公共交通機関を利用せずに自転車を移動手段に選ぶ人が若い世代を中心に拡大しています。このような背景を受けて、人気が高まっている自転車市場に参入して、若年層を取り込もうという目論見があるようです。

 

世界各地で自転車のシェアリングサービスが広まっている一方で、「自分の愛車を持ちたい」とこだわる人もいるはず。乗り心地や性能、デザインにも厳しい目を向ける人々にとって、ハーレーダビッドソンの電動自転車は、新しい選択肢のひとつになっていくのかもしれません。シリアル・ワンは2021年に発売される予定です。

 

約5300万円でもう買える! 「空飛ぶクルマ」の現在

「空飛ぶクルマ」の時代が始まろうとしています。近年、国内外で空飛ぶクルマのロードテストや試験飛行成功のニュースが相次いでおり、クルマに乗ったまま道路を走って上空を飛行することが現実味を帯びてきています。次世代の乗り物になりそうな空飛ぶクルマを3つチェックしておきましょう。

 

カップラーメンができる間に……

↑3分で陸から空へ

 

スロバキアのKlein Vision社が手がける「AirCar」は先日、試験飛行に成功したばかりです。5世代目となるこのクルマは、2人乗りでBMWの1.6リッターのエンジンを搭載。航続距離は1000キロ、離陸時には時速200キロまで到達するそう。見た目はレーシングカーのように車体が低く横幅が広い印象ですが、一般的なオフィスやホテルなどの駐車場に駐車できる大きさのようです。

 

このAirCarの魅力は、走行モードから飛行モードに短時間で変えられることにあるでしょう。後方に収納されていた翼が伸びて、わずか3分以内に飛行の準備が整うのだとか。これなら自宅からAirCarに乗って飛行場に向かい、別の飛行機に乗り換えることなく、そのまま空へ飛び立つことが可能になるかもしれません。

 

官民一体で取り組む日本

日本でも空飛ぶクルマの開発が進んでいます。それを牽引するのが、若手技術者などを中心とした有志団体CARTIVATORのメンバーが2018年に創業したベンチャー企業のSkyDrive。「空飛ぶクルマを作ろう」というミッションを掲げる同社は、2023年度の実用化を目指して、空飛ぶクルマの開発を行っています。今年8月には初めての公開有人飛行を実施し、成功しました。

 

このとき公開された有人試験機「SD-03モデル」は、1人乗りで合計8個の電動モーターで飛行します。自動車というより、1人乗り用の小型飛行機のような見た目。しかし同社の空飛ぶクルマの特徴は、滑走路を必要としない垂直離着陸ができること。そのため、離島や山間部など郊外での移動手段としてだけでなく、災害時の搬送などにも利用できると期待されています。将来的に一般的な駐車場2台分に収まるよう、車体のサイズは高さ2m×幅4m×長さ4mにする計画とのこと。

 

ドローンを活用した物流サービスの試みが始まろうとしている日本では、空飛ぶクルマのプロジェクトも国が支援しています。官民が協力して取り組むべく、国土交通省と経済産業省が2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」を開いており、SkyDrive代表も構成員として参加しています。

 

一歩先を走るオランダの空飛ぶスポーツカー

↑PAL-Vリバティー・パイオニア・エディション

 

再び海外に目を向けると、オランダには2012年にプロトタイプの試験飛行を実施したPAL-V社があります。同社はその後、「PAL-Vリバティー」と名づけられた空飛ぶクルマの開発を開始。イタリアのデザイン企業とコラボしたという高級感あふれる外観はスポーツカーを彷彿させるデザインです。2人乗りで、走行モードでは時速最大160キロ、フライトモードでは最大180キロで飛行可能。この空飛ぶクルマは、厳しいことで知られるヨーロッパの道路許可証を得たので、ナンバープレートを付けて公道を走ることができるそうです。

 

しかも、PAL-Vリバティーは世界で90台限定のパイオニア・エディションを予約販売中。同社のウェブサイトによると、日本ではエグゼクティブエディションが75万ドル(約8000万円)、スポーツエディションは49万9000ドル(約5300万円)で購入できます。今後は耐久テストなどが実施される予定とのことですが、同社は一歩先を進んでいるように見えますね。

 

世界各国で続々と登場しつつある空飛ぶクルマ。現在、自動車などのモビリティー業界は大変革のときを迎えていますが、将来は自家用車のまま空を自由に飛ぶ人もいそうですね。

 

宇宙服はビームス製! 11月15日の宇宙船打ち上げの見所をチェック

日本時間の11月15日午前9時49分、野口聡一さんとNASAの3人の宇宙飛行士を乗せた「クルードラゴン宇宙船(Crew-1)」が打ち上げられます。今回は民間の宇宙船に日本人宇宙飛行士が初めて乗り込みますが、見所はそれだけではありません。国際宇宙ステーションで野口さんが着用する服はビームスがプロデュースするなど、宇宙を身近に感じられるトピックスが盛りだくさんなのです。

 

スペースX社製の民間宇宙船に日本人初搭乗

↑クルードラゴン宇宙船に乗って宇宙へ行く野口飛行士ら

 

2020年5月、イーロン・マスクが率いるスペースX社が、NASAからの委託を受けて開発した宇宙船「クルードラゴン」に2人の宇宙飛行士が搭乗しました。打ち上げは成功し、国際宇宙ステーション(ISS)にもドッキングするなどして地球に帰還。民間企業が宇宙開発に参入するという新時代を象徴する出来事となりました。

 

今回、野口飛行士が搭乗する宇宙船もスペースX社が開発しており、民間企業が作った宇宙船に日本人宇宙飛行士が乗り込むのは初めてのこととなります。

 

これまでの宇宙開発は国家主導のもと、国の威信をかけて多額を投じ、国同士が競い合ってきました。しかし、これからは国家というボーダーではなく、ひとつのビジネスカテゴリーとして宇宙開発を進める時代となっていきそうです。2020年は新しい宇宙開発時代が幕を開けたターニングポイントの年となるでしょう。

 

ISSで着用する宇宙服はビームスがプロデュース

↑ビームスがプロデュースしたポロシャツ

 

今回のミッションで野口宇宙飛行士はおよそ半年間、ISSに滞在し、さまざまな実験を行う予定ですが、野口さんらはその期間、ビームスが製作を担当した宇宙服を船内で着用します。宇宙船内では給水速乾で抗菌消臭機能が求められるなど、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からは機能面でさまざまなリクエストがあったそう。ビームスが糸や生地の選定からデザインまでプロデュースし、ファスナーの向きやポケットの大きさなど細部までディスカッションを重ね、フライトスーツからポロシャツ、フリースパーカー、下着、ソックスなどを開発しました。宇宙飛行士がISSで着用する衣類を民間企業が総合プロデュースするのは初めてのことで、こんなところにも民間企業が宇宙事業に参入していることがうかがえます。日本の人気ファッションブランドも宇宙事業に参加していることを知ると、宇宙がグッと身近な存在になりますよね。

 

今回の宇宙滞在で複数の実験が計画されており、そのなかには一般の人にも興味深い取り組みがあります。そのひとつが宇宙放送局からの放送。JAXAは2019年に国際宇宙ステーション「きぼう」内にスタジオを設置する宇宙メディア事業を発表し、2020年8月には地上と宇宙の双方向ライブ配信に世界で初めて成功しています。今回は第2回目の放送を実施し、技術実証を行う予定。このほかにも、きぼうに設置された船内カメラを一般の人が地上から操作するというアバター体験などが企画されています。遠い存在だった宇宙が私たちにどんどん近づいてきていますね。

 

AIがサハラ砂漠に18億本もの樹木があることを発見! かかった時間が凄かった……!

雨が少ないため植物がほとんど生育しない砂漠地帯。アフリカ大陸にあるサハラ砂漠は世界最大級の砂漠のひとつですが、これまで何も存在しないと思われていたその砂漠に実は18億本もの樹木が生育していることが、AIを使った研究によって明らかとなりました。

 

NASAの衛星画像と深層学習技術でカウント

↑サハラ砂漠に樹木が

 

アルジェリアとリビア、エジプトの3か国の国土のほとんどを覆うように存在するサハラ砂漠。面積は860万平方キロメートルもあり、総国土面積が37.8万平方キロメートルの日本の約22倍にもなります。そんな巨大なサハラ砂漠に樹木はどれくらい存在しているのか? デンマークのコペンハーゲン大学の地理学者がAIを使った新たな研究を行いました。

 

コペンハーゲン大学コンピューターサイエンス学部は、木の形から自動的に画像上の木を識別して、木の本数を数えられる深層学習技術を開発。これにNASAから提供された数千枚の衛星画像を組み合わせて、サハラ砂漠に存在する樹木を数えることに成功しました。そしてこの調査によって、サハラ砂漠の西側130万平方キロメートルの地域に、18億本もの樹木があることが明らかとなったのです。もちろん木が一本も存在しない場所が広範囲に渡り存在していますが、樹木が密集している場所があったようです。

 

仮に18億本の木が130平方キロメートルの土地に均等にあると仮定すると、これは100メートル四方の土地に14本の木が生えている計算になります。私たちが思い込んでいた以上に樹木が生えていたんですね。この研究を行った学者たちですら、「サハラ砂漠にこれだけの樹木が存在していたことに大変驚いた」とコメントしています。

 

サハラ砂漠に木が存在することの意味

今回サハラ砂漠で見つかった樹木のように、降雨量の少ない地域での木々については、どのくらいの量の二酸化炭素を蓄積できるかほとんどわかっていません。そのため、さらなる研究が地球温暖化や地球保護にも活かされる可能性があります。

 

また、サハラ砂漠で生育する樹木の種類を特定することができれば、樹木を植栽しながら家畜の飼育や農産物の栽培を行う「アグロフォレストリー」の研究も進むとも見られています。

 

今回開発された広域の樹木を数える深層学習技術は、人間の力では何年もかかることが、わずか数時間程度で可能になったそう。この研究チームでは、今後さらにアフリカの広範囲の場所で樹木のカウントを明らかにし、将来的には降雨量の少ない地域に存在する樹木のデーターベースを作る計画です。

「色の見方」が変わる! 反射率が95.5%の「白のなかの白」が誕生

もっとも基本的な色ともいえる白と黒。しかし私たちが普段目にしている白と黒は、本当の白色と黒色とは違って見えているのかもしれません。近年、研究が行われている「白色のなかの白色」と「黒色のなかの黒色」の世界をのぞいてみましょう。

 

日光を反射し建物の気温を低く保つ白色塗料

地中海沿岸の街は、外壁を真っ白に塗った白い家が並んでいることで有名です。白色の塗料が使われる理由に、強い日差しから建物を守り涼しく過ごせることがあると言われています。黒のクルマと白のクルマのどちらが熱くなりやすいかは多くの方が経験してわかっていることでしょう。これらと同じように、屋根や外壁を白色にして暑さ対策を行う動きが世界で進んでいます。

 

そんな動きを受けて、アメリカのパデュー大学の研究チームが先日発表したのが、外気より最大で7.8℃も低く保てる白色塗料です。研究チームでは100種類以上の原料の組み合わせから10種類の原料に絞り込み、それらを組み合わせた50種類で検証を実施。その結果、岩や貝殻などによく見られる炭酸カルシウムが、紫外線をほとんど吸収せず光を散乱させることが可能という結論に行きつき、95.5%の反射率の白色塗料を開発したのです。

 

現在マーケットにある、遮熱効果付きの塗料は日光の反射率80~90%で、市販の白色の塗料と比較すると、この研究チームが開発した塗料は直射日光の下でも低温を維持して、紫外線を反射することができました。フィールドテストでは正午の時点で表面の温度を1.7℃低く保つことができたそうです。

↑どっちが本当に白い?

 

おまけに、この塗料で反射した紫外線は、光の速さで地球外の宇宙まで到達するとのこと。つまり反射した光によって地球のなかに熱がこもることはなく、この塗料を建物の屋根や道路、クルマなどに使えば、地球温暖化の防止にも役立つと期待できるそうです。塗料のコストも市販品より安価に抑えられることも魅力的でしょう。

 

黒のなかの黒もある

一方、「史上最も黒い黒」と世界中で話題となったのが、2019年にマサチューセッツ工科大学が発表した黒色の塗料です。この研究チームは黒色塗料の開発を行っていたわけではなく、炭素同士が円筒状に並んだ「カーボンナノチューブ」の実験を行っていました。その際、99.995%の光を吸収する、カーボンナノチューブでできた黒色の塗料を偶然発見。これまであったどの黒色塗料より10倍黒く、まさにブラックホールのような黒色ができあがったのです。

 

それまで世界で最も黒い物質と言われていたのが、同じくカーボンナノチューブでできた「ペンタブラック」。BMWがペンタブラックを塗った「世界一黒い車」を発表するなど、ペンタブラックは一時期、世界で大きな話題を呼んだのですが、ペンタブラックの光の吸収率は99.96%。マサチューセッツ工科大学が発見した黒色は、それよりもさらに黒い塗料なのです。

 

2019年9月には、16.78カラットで時価200万ドル(約2億1000万円)のイエローダイヤモンドに、この黒い塗料を塗ってしまうという大胆な試みが、ニューヨークの「リデンプション・オブ・ヴァニティ展」で披露されました。わずかな光でも反射して煌びやかに輝くダイヤモンドが、この黒色塗料で漆黒の闇に変わる様子は、本当にブラックホールに吸い込まれたようです。

↑どんな輝きも通さない

 

光の反射率と吸収率を考えると、圧倒的な存在感を感じさせる超白色と超黒色。これらを超える白色と黒色は生まれるのでしょうか?

 

 

「ペット可」の物件検索数が140%も増えたけど……。イギリス「ペットブーム」のオモテとウラ

イギリスでは多くの家庭がペットを飼っていて、ペット数も年々増える傾向にあります。ロックダウン期間中はこのペットブームにさらに火がつき、新しいペットを求める人たちが続出。ペットに適した住環境を求め、引っ越しを考える人も急増しました。本稿では、そんなイギリスのペット動向についてレポートします。

 

子犬の価格が急騰

↑聞いて、聞いて! ぼくの価値が急上昇しているんだって

 

イギリス人は動物好きで、約40%の家庭がペットを飼っているといわれています。1番多く飼われているのは犬で、次は猫。イギリスにはペットを家族の一員として考える習慣があり、ペット数は年々増える一方でしたが、ロックダウンによって前代未聞のペットブームが起こりました。ペットケア・ブランドのボブ・マーティン社は、ペットの需要が普段の約10倍も増え、オンラインによる検索数が急増したと述べています。なかでも子犬を求める人が目立ちます。

 

動物レスキューセンターのケンネルクラブによると、犬を購入することができる有名なサイトのひとつである同クラブのホームページへのアクセスが、今年4月時点で昨年度の2倍以上にのぼったとのこと。アドプション(保護譲渡)コーナーへのアクセス数が6倍も増えたという動物慈善団体もあるなど、アドプションが盛んなイギリスならではの現象も見られます。

 

その一方で、ペット業界はこうした需要の高まりに追いつけず、子犬価格が急騰しました。現在、子犬の平均価格は1900ポンド(約26万6000円)で、この数字は、ロックダウン開始前の約2倍です。

 

さらに人気の種類になると、3000ポンド(約42万円)を下りません。最近、BBCが発表した「子犬の価格上昇率トップ10」によれば、たとえばコッカースパニエルが184%増えて2200ポンド(約30万8000円)、コッカプーが168%増えて2800ポンド(約39万2000円)、ボーダーコリーが163%増えて1000ポンド(約14万円)となっています。

 

特に注目したいのは、キャバリアーキングチャールズスパニエルとプードルの雑種であるカバプーの人気です。育てやすい犬種といわれていることもあり、今年になって需要が一気に高まりました。価格は従来の900ポンド(約12万6000円)から2800ポンド(約39万2000円)へと、3倍以上に跳ね上っています。高額ではありますが、購入の順番待ちをする人たちが通常の4倍へと増えており、登録者は約400人もいるそうです。

↑一躍人気者のカバプー

 

ペットを飼える家がほしい!

急激なペットブームの背景には、やはり外出自粛に起因したストレスや寂しさなどがあるようです。

 

ペットはストレスや寂しさを軽減してくれるとして、イギリスでは心理セラピーにも長年使われてきました。特にステイホーム時間が増えた自粛期間中ともなれば、ペットとの触れ合いを望むのは当然といえるかもしれません。そのほか、この期間にペットを飼う理由として、「ペットオーナーになるという夢を実現するチャンスが到来した」「ペットのトレーニングに注力できる」などの声が挙がっています。

 

ペットの世話をしたり、触れ合ったりすることは、動物との絆を強め、飼い主自身も充実感や幸福感を味わうことができます。ペットフードや訓練時に与えるご褒美フードの販売数も伸びていて、なかでもミレニアム世代と呼ばれる20~30代の若者たちはご褒美やペット用アクセサリーの購入に熱心だといわれています。

↑ハイタッチ!

 

地元メディアによれば、ロックダウン中にペットが飼える物件を探したイギリス人は数え切れないほど多くいたそう。ロックダウン開始から5月4日までの約2か月間で、ペット可の物件検索数は140%も増え、賃貸物件に住む人の3分の2以上がペット可の物件を検索したといわれています。特に、犬や猫を飼いつつ、広いワーキングスペースを確保できる物件に人気が集中。このトレンドはロンドンやマンチェスターといった都会で顕著に見られます。また、ペットのスペースを確保できる庭付き1軒家の検索数もロックダウン前と比べて200%上昇。この需要に応じ、イギリスにおけるペット可の物件数は3月以降38%も増えました。

 

動物を飼うということは?

しかしその一方、加熱するペットブームの裏側では不法行為や犯罪が増えています。国内における子犬の供給が追いつかず、外国からの不法輸入や複数回の妊娠を強要する悪質なブリーダーが増加。購入の際には販売主のところを実際に訪問することが推奨されていますが、コロナ禍のため消費者はオンラインを好み、そこで悪質な販売が目立つようになりました。

 

別の問題は、ペットの飼い主がオーナーシップを勝手に放棄してしまうこと。これについて、大手慈善団体のRSPCAはペットの衝動買いなどについてメディアを通じて注意を呼び掛けています。オーナーシップの途中放棄により動物がストレス状態に陥ることを心配し、アドプションを一時的に停止するときもありました。

 

途中放棄の防止策として、ペットを購入する前にペットレンタルを勧める慈善団体もあります。レンタル期間を設けることで、ペットとの相性や飼い主としてのルーティン作業、オーナーとしての意志を確かめることができるという利点が挙がっています。

 

外出自粛が続き、テレワークが増えているなか、動物や自然との触れ合いは私たちに活力を与えてくれ、不安やストレスを和らげてくれます。ペットの購入を検討している人は、イギリスのペットブームがどんな問題をもたらしたのかも真剣に考えるべきかもしれません。

 

執筆者/ラッド順子

 

「現金のプレゼント」で集客アップ!? EC大国タイの「ライブコマース」最新事情

世界有数のEコマース(EC)大国として知られるタイ。ある調査によると、16歳~64歳の85%がオンラインで買い物をした経験があるとのこと。タイでのEC取引はショッピング市場全体の10%を占めており、新型コロナウイルスによるステイホームで、ECへの移行はさらに加速しました。なかでもタイでさらに人気が高まっているのが、リアルタイムでやり取りしながら買い物をすることができるライブコマースです。

タイ人の性格にピッタリ

↑タイでも人気沸騰中のライブコマース

 

タイでは新型コロナの影響により、3月17日から5月22日までの2か月間、スーパーマーケットやドラッグストアなどを除くショッピングモール内の全店舗が閉鎖を強いられました。タイは公共交通機関が日本よりも乏しく、クルマでの移動を前提としたモール型の店舗が多いため、この期間は家電や調理器具でさえ店舗では手に入らない状況が続いたのです。そういった状況が追い風となり、ロックダウン期間におけるECの売上は200%伸びたと言われています。

 

ECの好調が続くタイで、最近、新たな販売手法の1つとして人気を集めているのが「ライブコマース」です。「ライブ動画配信」と「EC」を組み合わせた新しい販売方法で、ライブ配信中に配信者と視聴者が双方向型のコミュニケーションを取りながら商品を販売・購入する仕組みです。

 

従来のECでは、視聴者は販売者側がサイトにアップした写真や情報から商品を確認するもので、コミュニケーションは一方向でした。しかしライブコマースはECでありながら、視聴者と配信者のインタラクティブなコミュニケーションが可能となります。視聴者は商品に関する質問ができて、配信者は視聴者のリアルな声を聞けるという、従来のECに欠けていたタイムリーな会話が実現。この仕組みがタイでも当たっているのです。

 

タイのライブコマース人気はASEAN諸国でもトップで、視聴者1回あたりの購入額も約16ドルと、たとえばベトナムの約6ドルと比較した場合は3倍近くになります。その一因として、会話を好むタイ人の性格とリアルタイムでやり取りできるというライブコマースの手法がマッチしたからではないかと考えられます。

 

タイの会社員は副業が認められているケースが多く、カフェ開業や翻訳などさまざまな副業をしている人がたくさんいます。なかでもやはりオンラインでの販売は、気軽さから人気がある様子。

 

タイでは、有名ブランドは自社ウェブサイトで商品情報の発信から購入までを一貫して行いますが、副業などで販売している小規模事業者はほとんどウェブサイトを持っていません。その代わりFacebookなどSNS上で販売する人が多いと言えるでしょう。タイ人の93%が日常的にFacebookを使用しているといわれるため、コストをかけてウェブサイトを作らなくてもFacebookでの集客が可能というのが理由です。

 

特定のブランドを買いたい人はブランドから、ブランドにこだわらない人は小規模事業者から購入するので、両者はあまり競合にはならないようです。

 

話題作りのためなら……

↑「いいね」こそすべて

 

小規模事業者が最近積極的に利用しているのが、Facebookのライブ配信機能を利用したライブコマースです。ウェブサイトを持たない小規模事業者にとって、ライブ配信ができるFacebookはライブコマースの場として適しています。

 

有名ブランドと比較して柔軟に動ける小規模事業者は、Facebookのコメント欄を活用して商品が当たるゲームやクイズなどを取り入れています。さらに、なんと現金をプレゼントする配信者まで出てきたのです。

 

この施策はプレゼントキャンペーンや宝くじが好きなタイ人に刺さり、一躍有名になったページもあるほど。広告費をかけての集客ではなく、予算のない小規模事業者にとってはプレゼントや現金などに費用をかけてコメント欄を盛り上げ、視聴者を増やすのが一番の広告になるようです。

 

ライブコマースで商品購入した際の決済も、Facebook上で完結します。外部サイトを持たない小規模事業者は、基本的にライブ配信中のコメントやダイレクトメッセージを使って購入者とやり取りします。タイでは政府の方針でキャッシュレスが進んでおり、オンラインバンクを使った振り込みが一般的。ダイレクトメッセージで振込用QRコードを送るだけで簡単に支払いができるので、この点もタイでライブコマースが流行っている一因と考えられます。

 

SNS以外では、タイ最大級のオンライン通販サイトである「Lazada」や「Shopee」上でのライブコマースも活発化。Lazadaは、ライブ配信者のコンテストを通じてライブ配信のスタープレイヤーを見つける「LazTalent」という企画を開始しました。日本ではライブコマース専用のプラットフォームを使い、もともと知名度があるインフルエンサーなどを活用する場合が多く見られますが、タイの事例はその真逆ともいえるでしょう。

 

Facebookでは、今後Instagram内のみで買い物が完結するInstagramショップ(現在のショップ機能では外部サイトに飛ぶ必要があります)をリリースする予定で、ライブ動画内にもショップ掲載商品のタグ付けができるようになると報じられています。新しいInstagramショップが実装されればよりスムーズなショッピングが実現し、タイではこれまで以上にライブコマースの人気も上がるかもしれません。

 

執筆者/加藤明日香

20秒に1台売れてます! 欧州で圧倒的人気の万能調理器「サーモミックス」を使ってみた

長い間、ドイツではある万能調理器が売れ続けています。それが「サーモミックス」。その人気ぶりは国境を超え、筆者が住むスペインでもかなり浸透しており、隣国のポルトガルでは4割の家庭で使用されているとも言われています。しかし欧州とは対照的に、日本ではサーモミックスをあまり見かけません。そこで本稿では、実際にこの調理器を10か月間使ってみた筆者が、その機能や使い方、メリット・デメリットをまとめ、読者のサーモミックスへの関心を少しでも高めてみたいと思います。

 

サーモミックスとは?

↑欧州で大人気のサーモミックスは要チェック

 

まずは、サーモミックスの基礎的な部分を説明します。ドイツのフォアベルク社が1961年から販売しているサーモミックスには、きざむ、混ぜる、こねる、泡立てるなど12の基本的な機能があります。最新モデルでは発酵機能や真空調理機能なども追加されました。操作はシンプルで、「タイマー」「温度」「スピード」の3つをそれぞれ調整しながら使う仕組みとなっており、これらでほぼあらゆる料理を調理することが可能です。

 

サーモミックスには、あらかじめ調理工程をプログラミングしたレシピ集アプリ「Cookidoo」が搭載されています。サーモミックスが普及している国々から計4万2000種類ものレシピが集められており、レシピを選んだら、塩を加えたり、加熱したり、各工程をステップ・バイ・ステップで調理の工程を進めていき、すべてのプロセスが終わると料理ができあがる仕組みです。

 

サーモミックス本体の価格はアプリ込み1325ユーロ(約16万5000円)で、アプリレシピは初めの6か月間は無料ですが、その後は年間36ユーロかかります。高価なものですが、世界で20秒に1台売れていると言われているサーモミックスは、個人だけでなくレストランで業務用としても使われている万能調理器なのです。

 

サーモミックスのメリット

↑できるものなら何でも作るよ

 

ここからは、サーモミックスの長所を述べていきます。一番のメリットは、調理過程をずっと見ている必要がないため時間に余裕ができるということ。次のステップへ行くお知らせ音がなるまで、やりかけの仕事や家事をそのまま続けられ、煮込み料理のように加熱調理時間が長いときは、料理をしているのを忘れるほど、ほかのことに集中できます。

 

料理の知識がなくても簡単に調理できるのも大きなメリットのひとつで、料理初心者でも上手に調理することができます。サーモミックスはタッチパネルで選んだレシピの手順を一歩一歩自動で進めてくれるので、初めてトライするレシピでも指示通りに進めていけば、確実にうまくできるでしょう。筆者の周りでは、料理が不得意だった男性がサーモミックスの購入をきっかけに料理を楽しんでいるケースが増えています。

 

さらに、キッチンが散らからないというのもポイント。サーモミックスが仕事をしてくれている間に出した食材などを片づけることができるので、キッチンを整理しやすくなります。「きざむ」「まぜる」「炒める」などの作業をミキシングボウル1つでできるので、汚れものも少なく、洗浄機能もあるため片付けも簡単で、汚れがひどい場合はそのまま食器洗い機にも入れられます。このような点で、狭いキッチンに困っている方にサーモミックスはオススメと言えるでしょう。

 

サーモミックスのデメリット

優秀なサーモミックスですが、デメリットがないわけではありません。Cookidooアプリ機能については、液晶パネルの対応言語が英語・中国語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語で、これらの言語がわからない日本人にとっては使いにくいでしょう。また、同アプリのなかには、自分で料理したほうが早いと思われるようなレシピも含まれています。凝った料理が多く毎日の食事のためのシンプルなレシピが比較的少ないという印象もぬぐえません。

 

調理器本体のデメリットとしては、すべての工程を全自動でできず、工程ごとに「次へ」のボタン操作が必要となる点。レシピの難易度が高くなればなるほど、このボタンを押す回数も多くなります。パンやピザの生地作りは自動ですが、オーブン機能が付いていないため、最終的にはオーブンに入れる必要があるのも少し不便と言わざるを得ません。

 

欧米では人気があるサーモミックスですが、日本ではあまり普及していないようです。アプリが日本語対応していないことに加え、代理店がなく海外直送でしか入手できないため、最低でも送料込みで26万5000円という高額になってしまうこともその一因でしょう。ただ、楽天市場やアマゾンなどで購入することができます。

 

また、欧風レシピが中心で日本食の種類が少ないことも、日本人にとっては物足りなさがありそう。ヨーロッパでは料理や掃除などの家事は効率やスピードを重視する傾向が強いのですが、日本は丁寧さや質にこだわりがあることも要因の1つかもしれません。ただ、最近は日本も共働き家庭が増加し、調理時間の時短が重視されるようになったため、万能調理器の需要も増えていくのではないでしょうか。

 

まとめ

↑自宅の料理がもっと楽しくなる

 

改善すべき点をいくつか挙げましたが、実際に筆者がこの10か月間サーモミックスを使ってみたうえでの感想は「買って大正解」でした。野菜をきざむだけや混ぜるだけのちょっとした作業も含め、ほぼ毎日使っています。料理をしながら、ほかの仕事も進められるので時間に余裕ができ、ステイホーム状況下で本当に重宝しています。

 

昨年導入されたCookidooアプリはその後も頻繁にアップデートを実施しているため、今後さらに使いやすくなっていくでしょう。日本でもサーモミックスが普及し、世界中の豊富なレシピを手軽に楽しめる人が増えることを期待したいと思います。

 

執筆者/Ayumi Nakai

 

眠れない夜にやってみて! たった2分で眠りにつく米軍式テクニック

最近、Twitterでトレンド入りしたのが、「#あなたは日本人のなかでどれだけ睡眠不足か」のハッシュタグ。名前を入力するだけで、日本人のなかで自分の睡眠不足の順位がいくらか表示する診断メーカーがあり、これを試して投稿する人が急増したようです。しかし実際のところ、私たちのなかには「すぐに眠りたいのに、全然眠れない」という悩みを抱えている方も少なくないでしょう。そこで本稿では「2分で眠れる」米軍のテクニックをご紹介します。

↑わずか120秒でこんな感じに眠れるかも

 

このテクニックの出典はスプリントコーチとして有名なロイド・ウィンターの著書「Relax and Win: Championship Performance」。もともとこの技は陸軍向けに開発されたそうで、軍人は戦闘のような緊迫した状態でもしっかり睡眠をとることが求められるため、このような方法が編み出されたようです。米軍がこの睡眠方法を6週間にわたって訓練したところ、96%の確率で成功したとも言われていますが、その睡眠方法は4つのステップからなります。

 

1 目のまわりや舌、顎など、顔の筋肉を緩める。

2 左右の肩をできるだけ下げ、上腕から下腕の順に力を抜く。

3 ゆっくりを吐いて、上半身から下半身の順にリラックスさせる。

4 次の3つのいずれかをイメージしながら、10秒かけて頭の中を空っぽにする。

・静かな湖のほとりでカヌーに横たわっているイメージ

・黒のベルベッドのハンモックで寝ているイメージ

・「何も考えない、何も考えない……」と自分に言い聞かせ続ける

 

では、このテクニックの効果はどのくらいあるのでしょう? 筆者が試してみましたので、まずは個人的な経験を報告します。私は寝つきが良いほうではなく、眠れずに目が冴えてしまう夜が数多くあり、そんな夜に試してみました。その結果、ひとつひとつの手順を確認する行程が入ってしまったためか、心身ともにリラックスするには至らず、そのまま眠りに落ちることはありませんでした。

 

しかし、同じようにこのテクニックに毎日連続で挑戦したあるアメリカのメディアの記者は、4日目の挑戦で「効果を実感した」と述べています。3日目まではまったく効果がなかったのに、4日目には普段よりも早く眠りにつけたのだそう。2分で眠ることはなくても、普段より30分近く早く眠れることもあったのだとか。

 

日本人は特に試してみる価値があるかも

経済協力開発機構(OECD)が世界33か国を対象に行った調査によると、日本人の平均睡眠時間は442分(7時間22分)。中国の542分(9時間2分)、アメリカの528分(8時間48分)、フランスとイタリアの513分(8時間33分)など、他国に比べてかなり短く、33か国中最下位でした。この調査は対象年齢や調査時期が各国で異なる場合もあるため、単純に比較はできませんが、それでも日本人の睡眠時間が短いことは確かな模様。

 

しかも今年は新型コロナウイルスの影響で、仕事や生活スタイルが変わり、収入や家族のことなど悩みを抱える方も少なくないはず。不安を胸に眠れない夜を過ごすことも増えているかもしれません。睡眠不足の順位を調べる診断メーカーがトレンドになったのも、いつも睡眠不足を感じている人が多いことの表れかもしれません。

 

1回の挑戦だけで簡単に効果が得られるわけではにけれど、毎日続けていくことで、不安感を落ち着かせ、普段よりも早く眠れるようになるのかもしれません。ベッドに入ってから眠るまで1時間近くかかっていたところを30分に短縮できたら、それだけ睡眠時間を長くできます。興味のある方は、この秋に試してみてはいかがでしょうか?

 

世界各地で前進してます! 「無人走行シャトルバス」が2021年春からトロントで運行へ

人口約290万人が暮らすカナダ最大の都市トロントで、2021年春より無人走行のシャトルバスが導入されることが発表されました。8人乗りのコンパクトなシャトルバスは、これから新しい交通手段の1つになるかもしれません。

 

コンパクトなシャトルバス

↑無人運行の「Olli」

 

トロント市は10月、米自動車メーカーのローカル・モーターズと提携したことを発表。同社が手がける自動運転バス「Olli(オリ)」の実証実験をトロント市内で2021年春から開始することを明らかにしました。

 

Olliは無人運行の電気自動車で、航続距離は最大60km、時速は最大40km。大きさは長さ3.9m×横幅2.05m×高さ2.5mと、やや大きめのゴンドラ程度のようです。運転席はなく、8人まで乗車することが可能(車いすで利用することもできます)。車内アナウンスは音声や映像を使って流れます。

 

安全面については、前方と後方、左右両側に合計5つのレーダーと6つのカメラを搭載しており、360度すべての周囲を確認可能。これにより、障害物を自動でよけたり、ルート変更したりできるそうです。さらに遠隔でもモニターされて、万が一の場合に備えているのだとか。

 

トロント市では、このOlliの実証実験を6~12か月実施する予定です。期間中は、カナダでバスの運行サービスを行っているパシフィック・ウエスタン・トランスポーテーション社やトロント交通局(TTC)の職員2人が乗車し、安全な運行をサポートするとのこと。実験はウェスト・ルージュ周辺と鉄道のルージュヒル駅周辺のエリアで行われ、鉄道利用者を駅まで乗せたり、駅から自宅に帰る人が利用したりするケースが見込まれるようです。

↑近未来の通勤手段の1つになりそう

 

世界各地で導入が進む

Olliはトロント以外でも世界各地で導入が進んでいます。例えば、アメリカではワシントンDCやフロリダ、サクラメント。ほかの国ではオーストラリアやベルギーなどで利用されている実績があります。

 

しかも専用アプリを使えば、事前登録や予約、支払いもすべて簡単に行うことができるので、あとは近くの停留所でOlliを待っていればいいだけ。二酸化炭素の排出もなく、スムーズでキャッシュレスな乗り物とあって、導入された都市では好意的に受け止められているようです。

 

東京のような大都市圏では、8人乗りのバスは小型すぎるかもしれませんが、都心からやや離れた地方都市などには、このような無人走行バスのほうが向いているのかもしれません。近年、無人走行シャトルバスは日本を含む世界各地で実験されていますが、競争は激しくなりそうです。

 

 

丸ごと食べてプラ削減! 飲み物や食材の「包装」も食べられる時代に突入

ペットボトルや調味料の容器に使われるプラスチック量を削減するために、イギリスのスタートアップが「食べられる包装材」を開発しました。すでに同国ではいろいろな形で試用されており、プラスチックのごみ問題を解決する有力な手段として期待が高まっています。飲みものや調味料の包装にも使われるこのカプセル状の袋は、どうやってできているのでしょうか?

↑食べてみて!

 

ロンドンのNotpla社が開発したのが「Ooho」と名づけられた包装材。そのまま食べることができる一方、捨てた場合は4~6週間で自然に分解されるのが特徴です。

 

このOohoの原料となっているのは、フランス北部で養殖されている海藻。乾燥させた海藻を粉状にし、同社独自の方法で粘着性の液体に変化させ、これを乾燥させるとプラスチックに似た物質としてできあがるのだとか。そうすることで、なかにソース類などの調味料や飲み物を入れることができるのです。

↑びよ〜んと伸びる原材料

 

同社が使っている海藻は1日で最大1メートルも成長するうえ、養殖には肥料なども必要ないそう。原料が豊富にあることは、プラスチックに代わる材料として今後広まっていくために大きなアドバンテージとなることでしょう。

Notpla社はOohoの開発にイギリス政府から資金援助を受けており、これまでにもイギリス国内でOohoを使用する試みがいろいろ行われてきました。例えば、2019年に開催されたロンドン・マラソンでは、ランナーへ配布する飲料にこのOohoが使用され、3万個以上を配布。ランナーはカプセルごと口に入れれば水分を補給できて、廃棄する容器は一切出ません。普段なら、選手が捨てたペットボトルなどの容器が道に散乱しますが、ランナーに配布していたペットボトルを20万本も少なくすることができたそうです。

↑ロンドンマラソンで配られた飲料

 

さらに2020年には、サントリーの子会社であるルコゼード・ライビーナ・サントリーがNotplaと提携。ドリンクが入ったOohoの自動販売機を開発し、これをスポーツジムに設置して実証実験を行ったほか、さまざまなイベントでもOohoの利用を促進しているそうです。

 

Oohoを通してプラスチック使用量の削減に貢献するNotpla社では、2020年後半に生分解性の食品用容器を発表する予定。通常の段ボールなら3か月はかかるところ、新容器なら3~6週間で分解され、水と油にも強い素材でできているそうです。専門店などで調理された料理を持ち帰る中食産業などに活躍の場が広がりそうです。

 

新型コロナウイルスの影響でレストランのテイクアウトやオンラインショッピングの利用が増えるなか、使い捨て容器や包装材の需要が高まる一方で、プラスチック廃棄物も増えていることが報じられています。食べられる包装は、ごみ問題の救世主のひとつになっていくかもしれません。

 

「水中ロボット」が進歩したきっかけは「イカ」!?

近年、水中で自由に動くさまざまなロボットが開発されています。海の生態系を調査したり、海中のプラスチックを収集したり。そんな水中ロボットが水のなかで前進するためのヒントとしているのが、水のなかの生き物です。このたびアメリカで開発された時速800mの速さで泳げる水中ロボットは、イカの動きに着想を得ています。

 

空も飛べるイカのジェット推進力

↑イカ型水中ロボット

 

イカは胴体のように見える外套膜に水を吸い込み、墨を吐き出すときに使う漏斗と呼ばれる器官からその水を勢いよく吐き出して泳ぎます。この「ジェット推進力」のおかげで、イカは水中で生活する無脊椎動物のなかで最も速く泳ぐことができるのだとか。2013年に北海道大学の研究によって、イカは水面から飛び出た後もこのジェット推進を使いつつ、腕やヒレを広げて揚力を発生させて加速し、短時間、飛行さえすることも明らかになっています。

 

そんなイカの優れたジェット推進力に目を付けたのが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チーム。水中ロボットを作るためにはロボットの材質が重要になります。硬い物質でできていると、ロボットが水中を探索するとき、ほかの魚やサンゴを傷つけてしまう可能性があり、そうであるからと言って、柔らかい材質でできたロボットは動きが遅いのが難点です。そこで研究チームは、弾力のある身体なのに水のなかを速く泳げるイカに着目。イカのようなジェット推進を真似しながら、大部分が柔らかなアクリルポリマーでできたロボットを開発したのです。

 

できあがったロボットの見た目はイカというより、むしろ提灯。円形プレートにつながった複数の骨格部分がスプリングのように伸縮し、水を取り込んで吐き出しながら前に進んでいきます。その速さは秒速18~32cmで、時速にすると約800m。下の動画を見る限り、この新作ロボットはゆっくり泳いでいるように見えますが、従来の柔らかいタイプの水中ロボットより速く進めるほうなのだとか。また、もうひとつの円形プレートには防水カメラや各種センサーを搭載することが可能。電源も搭載しているため、外部のコンセントにつなげる必要もありません。

 

 

見た目と違って、このロボットが水中を泳ぐ様子はイカとそっくり。イカの動きにヒントを得たこの新しいロボットがどれくらい海の生態系保全に貢献するのか? 注目です。

どんどん身近になる宇宙! 「チキンナゲット」も本当に宇宙飛行しちゃいました

宇宙に向けてチキンナゲットを打ち上げる——。一見、冗談かと思ってしまいますが、そんなプロジェクトがウェールズで本当に行われ、宇宙空間をさまようチキンナゲットの映像が世界に公開されました。その一方、現在NASAはSNS上で「#NASAMoonKit」というキャンペーンを実施しており、「あなたが宇宙に行くことになったら何を持って行きたいか?」というテーマで投稿を募集中。世界中で宇宙ネタが盛り上がっています。

 

気象観測用の気球でナゲットが宇宙へ

↑こんなチキンナゲットは見たことがない

 

チキンナゲットを宇宙に飛ばすプロジェクトを企画したのは、イギリスのスーパーマーケット「アイスランド・フーズ」。創業50周年を祝うイベントとして、創業当時から人々に愛されているチキンナゲットを宇宙に打ち上げることにしたそうです。

 

方法はとってもシンプル。気象観測用の気球にチキンナゲットとカメラをくくりつけるだけ。こうして、ウェールズにあるアイスランド・フーズ本社の敷地から気球が飛び立ちました。

 

公開された動画を見ると、チキンナゲットはぐんぐん上昇し、やがて上空33.5キロメートルの成層圏に到達。およそマイナス65度の宇宙空間で1時間の飛行を行い、その後地上までパラシュートで帰還しました。

 

青く輝く地球を背景に、チキンナゲットが宇宙空間をただよう様子はなんともシュール。おかしいプロジェクトですが、話題性はピカイチ。おかげでアイスランド・フーズの名前が世界中に知れ渡ることになりました。

ちなみに、アイスランド・フーズがこのプロジェクトで提携した宇宙関連のマーケティングを行う企業Sent into Spaceは、これまでにディズニー映画「トイ・ストーリー」のキャラクター人形や食べ物のパイを宇宙に打ち上げる企画などを行っており、いずれも大きな話題を呼んだそうです。

 

宇宙飛行士の持ち物は小サイズ、何を持って行きたい?

では、チキンナゲットではなく、いつか自分が宇宙に行くことになったら何を持っていきたいですか? チキンナゲットよりはるかに前から宇宙に行っているNASAは現在、アルテミス計画の一環として予定されるグリーン・ラン試験を前に、宇宙に何を持って行きたいかSNSで呼びかける「#NASAMoonKit」キャンペーンを行っています。

 

NASAによると、宇宙飛行士が私物として持ち込める荷物の大きさは12.7× 20.32×5.08cm。A4のおよそ半分程度で、厚さ5センチメートルのサイズです。持ち込める荷物はかなり限られそうですが、#NASAMoonKitのタグを付けた世界中の投稿を見てみると、チョコレート、本、ヘッドホン、マスク、望遠鏡、お気に入りのぬいぐるみなど、思い思いのアイテムが並んでいました。もしNASAの目にとまったら、NASAのSNSでシェアされる可能性もあるのだそう。

 

これまでに、ローソンの「からあげクン」や「亀田の柿の種」など、数多くの身近な食べ物が宇宙食となっています。 月旅行に気軽に行けるようになれば、宇宙に行った食べ物ももっと増えていきそうですね。

 

【関連記事】

宇宙でも広がる”和食”。宇宙食に認定された身近な日本食とは?

 

猫と仲良くなれる「超シンプルな方法」が研究で明らかに

動物と仲良くなるためには、警戒心を解いて信頼できる相手だと認めてもらうことが大切。相手が猫の場合、たくさん触れ合ったり、匂いを交換しあったり、猫と仲良くなるコツはいろいろあります。そのなかには、まばたきもありますが、これは猫の飼い主が経験的に知っているだけで、科学的に本当かどうかは検証されていませんでした。しかし最近、イギリスの研究グループによって、それが真実であることが判明しました。

↑まばたきしてニャ

 

イギリスのポーツマス大学とサセックス大学の共同研究チームは2つの実験を行いました。1つ目は、14世帯で飼われている21匹の猫(10匹がオス、11匹がメス、猫の年齢は0.45~16歳)を使って実施。猫が落ち着いたときに、飼い主は1メートル離れた場所に座り、ゆっくりまばたきします。研究チームはそのときの猫の様子を観察しました。2つ目の実験では、8世帯の猫24匹(オスとメスは各12匹、年齢は1~17歳)を対象に、飼い主以外の知らない人物に対して猫がどう反応するか確認しました。

 

その結果、1つ目の実験では、飼い主が何もせずに部屋にいるときに比べて、飼っている猫に向かってゆっくりまばたきすると、猫も同じようにまばたきをし返すことが判明。また2つ目の実験では、知らない相手であっても無表情なままでいるより、まばたきをすると、猫もまばたきをし返すことがわかったのです。しかも、猫はまばたきをした人のほうに近寄ることが多かったそう。この2つの実験の結果、まばたきが猫とのコミュニケーション方法として有効であることが明らかになったのです。

猫はまばたきで愛情を表現するなどと言われるのは、よく知られていること。しかしこれは、猫を飼っている人たちの間で経験則でわかってきたことで、今回のように人間と猫の間のまばたきによるコミュニケーションを実験で確認したのは、初めてのことなんだとか。

 

猫と仲良くなれるまばたきの方法

↑どんな猫にも通用する法則?

 

では、猫と信頼関係を築いて仲良くなるためには、具体的にどうまばたきすればいいでしょうか。この実験を指導した教授によると、ゆっくりと微笑むように目を細め、数秒間目を閉じるだけ。すると猫もそれに続いて、同じようにまばたきするはずなのだとか。これは飼い猫でも、道端にいる猫でも、コミュニケーション方法として使えるそうです。

 

ちなみに、猫がこのコミュニケーション方法を身に着けた理由については、さまざまな説があるそう。人間がゆっくりとまばたきした行為をポジティブなことと受け取ったことで、猫も同じようにゆっくりまばたきするように真似した可能性があるほか、凝視を遮断させるための方法として生まれたという説もあるようです。

 

猫との信頼関係をもっと深めたいときは、このまばたきコミュニケーションを取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

【出典/参考】

Humphrey, T., Proops, L., Forman, J. et al. The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication. Sci Rep 10, 16503 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-73426-0 

クレア・ベサント(2014)「ネコ学入門:猫言語・幼猫体験・尿スプレー」築地書館

 

海面温度を下げちゃえばいい! 「台風」の発生を防ぐ「泡のカーテン」が開発中

台風やハリケーンは世界各地に大きな被害をもたらすことがありますが、それらの勢いを人工的に抑えることはできるのでしょうか? この問題に取り組んでいるのが、ノルウェーのあるスタートアップ。伝統的な技術を”アップデート”して、海にカーテンを設置するそうです。どんな技術なのか見てみましょう。

↑噂の「泡のカーテン」(画像出典: OceanTherm公式サイト)

 

熱帯低気圧は、暖かい海の上で冷たい空気と温かい空気がぶつかると台風やハリケーンに変化します。このとき海面温度が26.5℃以上になると、台風やハリケーンはそこからエネルギーを得て、勢力を増していきます。

 

ノルウェーのスタートアップOceanTherm社はこのメカニズムに注目し、海面温度を下げる方法を考案しました。海面温度が高いときに、水深の深い場所から冷たい海水を運び、海面付近の温かい海水と混ぜて、26.5℃以下になるようにコントロールするというもの。海面温度が高くなりすぎないように海をコントロールすることができれば、勢力の強い台風やハリケーンが発生しにくくなるというのがコンセプトです。

 

これを具体的に行うのが、「バブルカーテン」の利用。まず海にパイプを設置し、そこから圧縮した空気を海中に送ります。すると海中に無数の泡が生じ、これが海面まで上昇。やがて下から上に向かって海水の流れができ、深い場所にあった冷たい海水が海面付近の温かい海水と混ざり、海面温度を下げられるのです。長さ1500メートルのパイプを船に付け、必要な場所で泡のカーテンを作れるようにしており、大量の泡が発生する様子から「バブルカーテン」と名づけられたそうです。

 

ノルウェーでは冬に、氷河の浸食で形成されるフィヨルドが凍るのを防ぐため、50年も前から海面温度を高くする技術が使われており、バブルカーテンはそれを応用した技術なのです。

 

OceanTherm社がノルウェー産業科学技術研究所(SINTEF)と共同で行った実験で、バブルカーテンによって水深50メートルの海水を海面まで運び、海面温度を0.5℃下げることができたそう。0.5℃では、まだわずかな変化にすぎないため、今後は水深を150~200メートルまで深くして実験を行う予定とのことです。

 

ビル・ゲイツも注目していたけど……

一説によると、今回の技術は特別新しいものではないのだそう。マイクロソフト社の共同創業者、ビル・ゲイツらは2009年にハリケーンの勢力を弱める技術を開発し、特許を申請していましたが、その後、この技術は進展がなかったとみられています。

 

バブルカーテンは気候工学(または地球工学)の一種とも見れますが、気候工学は地球規模で長期的に影響を与えるため、否定的な考えが多くみられてきたのが事実。バブルカーテンも技術的かつ経済的な面で実現できるか不透明な部分があり、さらに干ばつを引き起こすことや海洋環境へ影響をもたらす可能性があることも指摘されています。

 

しかし、地球温暖化などにより各地にさまざまな被害が起き、環境問題が年々深刻化するなかで、気候工学は「最後の切り札になる可能性もある」とも言われています。バブルカーテンも同じような視点で考えるべきかもしれません。この古くて新しいノルウェーの技術がどこまで発展するか注目です。

嗅覚だけでなく視覚も! 米軍が「軍用犬向けARゴーグル」を開発中

目の前の景色に文字や音声ガイド、CGなどを重ねて表示することができるARゴーグル。ゲーム業界やエンターテイメント業界で活用が進んでいますが、最近ではアメリカの陸軍で軍用犬にARゴーグルを開発しているということが明らかとなりました。犬までARゴーグルを装着する日がやってくるのでしょうか?

↑ARゴーグルをかける軍用犬

 

ARゴーグルはエンターテイメントの分野でよく使われている技術と思われるかもしれませんが、それだけに限りません。例えば、技術者や作業者への指示やサポートをARゴーグル上で行い、作業の効率化を図ったり、人材不足を補ったりする働きもあります。アメリカ陸軍はそれと同じような目的で軍用犬向けのARゴーグルを開発しているのです。

 

米軍では2019年、過激派組織ISISの最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者を殺害しました。この作戦で、バグダディ容疑者が自爆ベストを着用しているとみられたことから、送り込まれたのが複数の軍用犬でした。その後、バグダディ容疑者は3人の子どもたちと一緒に自爆しましたが、軍用犬は負傷するだけで済んだそうです。

↑どんな情報が見えている?

 

このように、軍用犬は地雷や爆弾のような危険物があるエリアでの偵察、救援活動などで活躍します。最近、米軍では軍用犬に直接指示を伝える犬用のイヤホンも開発したとも言われていますが、音声の指示だけで軍用犬を適格に動かすことは難しい場合もあるでしょう。そこで、そのような技術の発展系として現在、ARゴーグルの開発が進んでいるのです。

 

犬の視線をトレーナーが確認して指示

Forbesの報道によると、開発を行っているのはシアトルを拠点とするCommand Sight社。小型の高解像度カメラが内蔵されたARゴーグルは犬の視線をトレーナーに送信し、それによってトレーナーは犬が見ている景色を遠隔で確認することができるようです。また、このゴーグルは左右に動くマークを犬の視界に表示させる機能も持ち、そのポイントを固定させて犬に指示を出すこともできるそう。

↑ARゴーグルはつけ忘れた?

 

このARゴーグルを使った訓練を行うためには、このデバイスに犬だけではなくトレーナーも慣れる必要がありますが、もし効果的に使えるようになれば、実際の特殊作戦が行われる夜間などの環境下での指示出しが容易になると見られています。

 

ただし、現段階では実用化までにはさまざまな課題があるようです。犬のARゴーグルとPCをケーブルで接続させる必要があったり、小型化と無線送信機を装着する必要もあったり。しかし今後さらなる技術開発が進めば、軍用犬のトレーニングでARゴーグルを使うことも当たり前になるかもしれません。

 

「夜更かし投稿」は怒りが原因? トランプ大統領のTwitterを米研究者らが分析

従来のメディアを通さず、Twitterで自ら情報を発信するアメリカのトランプ大統領。1日の投稿回数が多く、過激な内容が含まれているときもあり、大手メディアでも盛んに取り上げられていますが、Twitterの投稿からトランプ大統領について何かわかるのでしょうか? 最近、コロンビア大学の研究者たちがトランプ大統領の投稿について分析を行い、政治活動への影響を検証したので、その結果をご紹介しましょう。

 

就任当初に比べて深夜の投稿が3倍増加

研究者たちは、トランプ大統領が就任した直後の2017年1月24日から2020年4月10日までの期間、大統領が滞在していた場所の現地時間で投稿時間帯について分析しました。その結果、朝の投稿は午前6時台から始まり、午前8時頃には1時間に1ツイートとなり、その後は2~3時間に1度のペースで投稿。これが深夜12時頃まで続きます。これまでの約3年間で、朝の投稿は必ず6時台から始まるのに対して、深夜の投稿については就任当初より現在のほうが大幅に増加していました。午後11時〜午前2時の投稿頻度は2017年が週に1度未満だったのに、2020年は週3日以上と317%にもなっているのです。

↑トランプ大統領のツイート概日周期。上のデータは0:00〜23:30までの平均投稿数(30分毎)、下は22:00~翌7:00。

 

このデータによれば、朝は6時ごろに起床する大統領のスケジュールは変わっていないのに、就寝時間は現在のほうがずっと遅くなっている可能性があるのです。激務のせいか、SNSのせいか、はたまたほかの原因か、就寝時間が遅くなった理由は明らかではありません。

 

怒りに駆られている?

これと似た研究は過去にも行われています。NBA選手のSNS利用と試合でのパフォーマンスの関連性について調べた論文では、深夜にツイートした翌日はシュートの精度や得点などのパフォーマンスが低かったという結果が出ていました。

 

睡眠時間が少なくなると、翌日の行動にさまざまな影響をもたらすことが予想されます。それと同じように、トランプ大統領も深夜までSNSを行っていると仮定した場合、睡眠時間が減ったら、翌日の仕事に影響は出ないのでしょうか?

 

そこで研究チームは、大統領就任以降のおよそ1万1000の投稿内容と大統領が行ったスピーチやインタビューの内容についても収集し、使われた言葉を分析しました。すると、深夜にツイートを行った翌日には、幸福感と比べて怒りの感情が3倍近く大きくなっていることが推測されるようです。しかし、ここからではトランプ大統領の仕事ぶりを判断することはできません。

 

SNSを始めると、夢中になってついつい夜更かしをしがち。でも睡眠時間が削られれば、翌日の体調が悪くなることは、誰もが実体験で学んでいることでしょう。アメリカの大統領選挙まで残り数週間となり、トランプ大統領の投稿頻度がますます上がっていますが、それが選挙戦にどう影響するのかにも注目です。

 

【参考】Almond, D. & Du, X. (2020). Later bedtimes predict President Trump’s performance. Economics Letters, 197. https://doi.org/10.1016/j.econlet.2020.109590.

人類の犠牲にーーワクチン開発で25万匹のサメが危機に

新型コロナウイルスのワクチン開発が進むなか、専門家が警鐘を鳴らしているのがサメへの影響。ワクチンの開発でサメが危機に瀕しているそうなのです。一体どういうことなのでしょうか?

 

ワクチン製造に使われるサメの肝油

↑サメとワクチンの関係とは?

ワクチンの開発には、サメの肝油から抽出される「スクアレン」という原料が「アジュバント」として使われる場合があります。アジュバントとはワクチンの効き目を高める働きのある物質で、これまでに製造されたいろいろなワクチンにも採用。

 

また、アジュバントにはワクチンに含まれる抗原の量を減らして、免疫力の低い乳幼児や高齢者への効果を改善することなども期待できるそう。それに加えてワクチンに必要な抗原量を少なくできるため、一度に大量のワクチンを製造しなければならない場合でもワクチン数を増やすことにもつながるそうです。

 

保護団体Shark Alliesによると、1トンのスクアレンを抽出するためには2500~3000匹のサメが必要とのこと。そして地球上のすべての人に1回ずつ接種できる量のワクチンを製造するためには、約25万匹のサメが必要となるそう。もし2回分のワクチンなら、50万匹のサメが犠牲になる計算です。

↑保護かワクチンか

 

薬事規制専門家協会とWHO発表のデータによると、現在開発が進んでいる176種のワクチンのうち17でアジュバントが使用され、そのうち少なくとも5つのアジュバントにサメ由来のスクアレンが使用されているとのこと。実際、イギリスの製薬会社グラクソ・スミスクラインは、インフルエンザのワクチンにスクアレンを使用しており、新型コロナのワクチン開発に10億回分のアジュバントを製造すると発表しています。

 

今後のワクチン開発の状況と世界の需要次第で、実際にどの程度のスクアレンが必要となるのか不明ですが、人のために特定の種族の魚を必要とするというのは、なんだか矛盾する話に聞こえるかもしれません。

 

ほかの魚に比べてサメは繁殖が遅く、なかには個体数が減っている種類もあります。またこれまでに、フカヒレを目当てにしたサメの乱獲が問題になったこともあり、新型コロナのワクチン開発によって、再び乱獲が起きることも不安視されるでしょう。

 

もちろん新型コロナに対して有効で安全なワクチンができることは待ち望まれることですが、植物由来の原料などスクアレン以外を使ったアジュバントの製造が進むことにも期待したいですね。

 

なんとUAEが「月面探査計画」を発表! しかも壮大な「火星移住計画」まで構想

月や火星などの宇宙開発を行う国といえば、アメリカやロシア、日本、中国などの存在が広く知られていますが、石油産業で有名なUAE(アラブ首長国連邦)も宇宙事業に参入していることをご存知でしょうか? しかもこの国は100年後までに火星に都市を作る火星移住計画も掲げているのです。UAEが取り組む宇宙事業とはどんなものなのでしょうか?

 

2024年までの月面探査計画を発表

先日UAEが発表したのが、月面探査計画に乗り出す計画。月面を無人で走行して月の地表を調べる探査車を2021年までに設計し、その後、製作や試験を経て、2024年までに月に向けて打ち上げる予定とのこと。UAEの首長、シェイク・モハメド殿下は自身のTwitterで、この探査機は100%UEAで開発されたものであり、「ほかの月面探査機が調査しなかった月の表面から写真やデータを地球に送り、グローバルな研究機関などに共有される」と投稿しています。

 

さらにUEAは2020年7月に、同国初の火星探査機「Hope」を鹿児島県にある種子島宇宙センターから打ち上げ、成功しています。この火星探査機は約5億キロにも及ぶ距離を飛行し、UAE建国50周年と重なる2021年2月に火星へ到達する予定です。

 

これらに加え、UAEが掲げているのが「Mars Science City」と呼ばれる壮大な火星移住計画です。同国は2017年に今後100年以内にこの火星移住計画を遂行すると発表。大気が薄くマイナス63度、重力は地球の38%しかないという火星で人が生活するため、17万7000平方メートルのバイオドームを建設し、そこに都市を作るという大胆な構想が描かれていますが、今後は砂漠などでバイオドームを建てシミュレーションなどが行われるものと見られています。

↑火星への移住計画も進行中

 

石油だけに頼らない経済発展モデルへ

UAEは石油や天然ガスなどの資源が豊富な国であり、石油産業を中心に経済発展してきました。しかしUAEを構成する首長国のひとつドバイでは、今後10年ほどで石油が枯渇すると予想されており、太陽光発電開発のような環境関連ビジネスや観光業にシフトした経済発展モデルが進められています。

 

また、新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、2020年は石油の需要が落ち込み、価格が下落しているとのこと。そこでUAEとしても、同じように石油産業だけに頼らない経済モデルの構築が進められ、その中で宇宙開発事業に大きな期待がかかっているようです。

 

2040年代までに1兆ドル(約105兆円)に達すると予測される世界の宇宙ビジネス。2024年までに有人月面着陸を目指すNASAのアルテミス計画を筆頭に、新しいビジネスのフィールドとして宇宙に今後ますます熱い視線が向けられることは間違いないでしょう。

 

天才数学者の理論が解き明かした「フェアリーサークル」の謎

オーストラリアに「フェアリーサークル(妖精の輪)」と呼ばれる謎の自然現象が起きているのをご存知でしょうか? 乾燥した草原に草木が規則正しく円形の模様を作り、それが無数に並んでいるのです。このような不思議な現象がなぜ起きるのか、その謎を解くカギがわかりました。

↑なぜこんな模様が……

 

フェアリーサークルの存在がわかったのは2014年ごろ。直径2~15メートルの穴が規則正しく無数に草原を埋め尽くしており、地上にいると識別しづらいものの、上空から見ると不思議な模様が広がっていることがはっきりとわかるのです。

 

この原因について、これまでにさまざまな説が唱えられてきました。シロアリなどの昆虫が植物の根をかじるとか、土中の一酸化炭素が関係しているとか。しかし先日、ドイツのゲッティンゲン大学の研究者を中心としたオーストラリアとイスラエルとの共同チームが、ある数学者がおよそ70年前に提唱した「チューリング・パターン」が当てはまると明らかにしたのです。

 

チューリング・パターンとは、イギリスの数学者アラン・チューリングが1952年に発表した理論。2つの物質があったとき、濃度の濃い物質と薄い物質が空間に繰り返し模様を作り、これを「反応拡散方程式」と呼ばれる数式で証明したのです。おまけに、この数式はシマウマ、ヒョウ、魚などの模様についても当てはまり、自然界で作られるさまざまな模様をこの理論で説明することができたのです。

 

ひょっとしたらこの理論が使えるのではないかと考えた同研究チームは、ドローンや空間分析、フィールドマッピング、現地の気候データなどをもとにフェアリーサークルの解析を実施。その結果、チューリング・パターンがフェアリーサークルにも当てはまることがわかりました。

 

では、なぜ植物はこのような模様を作ったのでしょうか? 答えは明らかにされていませんが、このフェアリーサークルがある場所は乾燥した地帯で、土中の水分量が限られていると見られます。ここからひとつ考えられるのは、植物がフェアリーサークルを形成することで水分を確保し、生命を維持できているのではないかという仮説。研究者たちは「フェアリーサークルがなければ、この地域は砂漠になっていた可能性がある」と述べており、植物がわずかな水分量の環境下でも成育するために、自然とフェアリーサークルのような形を形成していったと予想できるそうです。

 

今日のコンピューターの理論的な原型とされるチューリング機械を考案したチューリングは1954年に亡くなっており、当然このフェアリーサークルの存在など知ることはありませんでした。それでも、自然界でできる不思議な模様について70年前に数式で証明していたとは、その知性に改めて驚嘆してしまいます。チューリング・パターン説の検証を進めるため、フェアリーサークルの研究は今後も続きます。

 

中小企業に活路! ニュージーランド発「地産地消型マーケットプレイス」は三方よし

ニュージーランド(以下NZ)は新型コロナウイルス対策に徹底的に取り組み、一時期は新規感染者をゼロにするなど国際的に注目を集めました。しかし、その一方で急なロックダウンによる弊害もあり、ビジネス面では多くの中小企業オーナーが苦境に立たされました。本記事では、NZの中小企業を救うとともに消費者ニーズにも応えるため、あるIT会社が生み出した地産地消型の新しいデジタル・マーケットプレイスについてお伝えします。

↑ニュージーランド北島北部に位置するオークランド

 

NZは起業しやすい国として有名で、「この国の経済はスモールビジネスが支えている」といわれています。統計によると、従業員20人以下の中小企業は国内全企業の97%を占め、全雇用の29%を創出しており、GDPの26%を占めています。このような理由で、中小企業が販路を失うということは国の経済全体を揺るがしかねない大きな問題なのです。

 

そういった経済状況でありながらも、3月に行われたロックダウンでは大手スーパーやエッセンシャルサービス(交通機関や大手スーパー、薬局・病院など)以外は営業を完全に禁止されてしまいました。多くの在庫を抱えた中小企業のオーナーたちは国からの助成金のみでは経営が苦しいうえ、営業再開のメドも立たず、先の見えない状況に陥りました。

 

消費者もレストランなどで食事をすることはもちろん、お気に入りのカフェで焙煎されたコーヒー豆や、地域のマーケットで販売されていたようなスキンケアグッズを買うことすらできなくなってしまったのです。

 

このような深刻な状況のなかで苦戦する中小企業をサポートするために立ち上げられたのが、NZ最大の都市オークランドにある「Unleashed」というIT企業が運営するウェブマーケット「The good products Marketplace」(以下、The Marketplace)です。

↑The good products Marketplaceのサイト

 

NZも日本と同様に大手ウェブサイトが存在し、オンライン上で商品を売買する動きも活発です。ただこういった既存サイトでは、名前を知られていない中小事業者の多くは当然ながら大手ブランドに太刀打ちできません。ブランドの認知度が低く、検索してもウェブで上位に表示されないため、多くのオーナーにとって大手サイトでの販売は圧倒的に不利であり、売り上げを見込めないものでした。

 

そのような状況下、ロックダウン直後の2020年春に設立したThe Marketplaceの目的は、「地元産業のオーナーと、地元で作られる優れた商品を探している消費者を繋ぐ」ことにあります。自分のブランドの存在を知ってもらうことが難しいと頭を悩ます中小企業にとっては大変画期的なサイトでした。ウェブ上で地元の優れた製品にたどり着けなかった消費者にとっても利便性が高く、売買側それぞれの悩みを解消することにつながったのです。

 

また注目すべきは、Unleashedが手がけるビジネスサポートの契約会員である中小オーナーたちは、このサービスを追加費用なしで使えるという点です。同社のチーフオフィサーであるLisa Miles-Heal氏は、「大手スーパーと取引するほどの規模ではない、道半ばにいるビジネスオーナーを救うためにこのサイトを開設した」と述べています。実際、The Marketplaceは同サイト上で商品の売買は行わず、ほしいものがあったら販売者のページに飛び、購入手続きを直接オーナーと行う仕組みになっており、仲介料も一切かかりません。

 

ロックダウン中は買い物以外の消費活動を制限されたため、多くの人たちは「生活の質を少し高めるニッチな商品」を求めていました。それと同時に「Be kind」がコロナ対策のスローガンとして掲げられていたNZでは、困っているビジネスオーナーの力になりたいと思う消費者もたくさんいたので、The Marketplaceの誕生は渡りに船でした。ユーザー会員であるMatt Morison氏(Karma cola設立者)はこのサイトについて以下のように賞賛しています。

 

「レストランやカフェなど、私たちの卸先はロックダウンによって店を閉めることを余儀なくされました。Unleashedはこの状況にいち早く気づき、このサイトを作ってくれました。このサイトは消費者が私たちのような小さな地元企業を支えることができる素晴らしい場所です」

 

実際にサイトで扱っている商品を見ると、そのジャンルが実に多岐にわたっていることがわかります。スーパーでは買えないようなこだわりのパンやオリーブオイル、ワイナリー直送のワインなどの食品・飲料だけではなく、オーガニック素材にこだわったスキンケア用品やサプリメント、変わり種ではキャンバス布や倉庫の収納整理棚、梱包品などを販売するサイトまで幅広く紹介されています。消費者は販売者に直接アクセスできるため、そのブランドコンセプトを詳しく知ることができるうえ、地元の経済に貢献することもできます。まさに三方よしでしょう。

 

現在、The Marketplaceは対象地域を積極的に拡大し、現在ではNZだけでなくアフリカから南北アメリカまで世界中へと規模を広げています。多くの中小企業にとって先行きはいまだに不透明ですが、このサイトによって少しでも多くの中小企業が活路を開くことを祈るばかりです。

 

執筆者/加藤 海里

 

英国初「ボートに乗る水上シネマ」で映画が変わる

ロックダウン再発動の懸念はあるものの、新学年がスタートし、職場に復帰する人も増え始めたニューノーマル時代のイギリス。屋内の映画館にはまだ行きたくないけれど、シネマ体験は楽しみたいという人も少なからずいるように思います。そういった人たちの気持ちに応えて、ロンドンの中心地にボートに乗って映画を楽しむドライブインならぬ「フロートイン(float in)」シネマが登場しました。3密を回避したユニークな取り組みを紹介しましょう。

↑「フロートイン」シネマの様子(写真出典:David Parry/PA Wire)

 

ロックダウン規制により、イギリスでは2020年前半まで屋内のエンターテインメント施設が軒並み閉まっていました。その後、夏には公園を会場にしたピクニック風の野外シネマやドライブイン・シネマなど、屋外でリラックスして楽しめるエンターテインメントが人気に。最近では9月にオープンした運河ボートに乗って映画鑑賞を楽しむフロートインシネマが話題になっています。

 

国内初となるフロートインシネマはロンドンのドライブイン・シネマを運営するOpenaireが主催するもので、運河ボートの会社と提携した期間限定の催し。6〜8人程度のグループでボートを貸し切り映画鑑賞できるというユニークなサービスで、ほかの観客とは距離が離れているのでソーシャルディスタンス対策もクリアしています。ボート一艇の価格は200〜250ポンドですが、運河沿いに並べられたデッキチェア席を予約することができ、こちらは一台につき15ポンドとボートに比べてお得な価格になっています。

 

上映されるのは「トイ・ストーリー」や「ライオン・キング」「アナと雪の女王」といったファミリー向けの名作をはじめ、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「アリー/スター誕生」など友人やデートで楽しみたい厳選された話題作です。イギリスのミュージシャン・エルトン・ジョンの半生を描く「ロケットマン」や、ロックバンド・クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーに焦点を当てた「ボヘミアン・ラプソディー」など、観客が映画のヒットナンバーに合わせて一斉に歌うカラオケ・ナイト風のイベントも行われます。

↑映画の新しい楽しみ方(写真出典:David Parry/PA Wire)

 

会場となるのはパディントン地区にある、リージェンツ運河の一角マーチャント・スクエア。この運河は産業革命のころに作られ、鉄道や自動車による交通路が発展していなかった時代に物資輸送の要となっていました。現在は観光ボートが行き交い、カフェやレストランが並ぶロンドン市民の憩いのエリアです。いつもは散歩やジョギング、サイクリングなどを楽しむ人たちで賑わっています。

 

フロートインのゲストはボートが係留されているリトルベニスで乗船し、シネマ会場までの短い距離を自分で操縦することができるという、ちょっと特別な体験が付いています。チェックイン時に消毒済みのワイヤレスヘッドフォンが手渡され、6×3メートルの巨大LEDスクリーンを観ながら高品質のオーディオで映画を鑑賞することができます。

 

メニューのQRコードをスキャンすると、ボートに乗ったままポップコーンやドリンク、アイスクリームなどスナックのオーダーができます。またリトルベニスという地名にちなんで、ラビオリが美味しいと評判のイタリアンレストラン「RaviOllie」 のポップアップ店も登場。こちらもボートやデッキチェア席からオーダーし、できたてのイタリア料理が席までデリバリーされる仕組みになっています。

 

逆境こそ面白い

↑グループで楽しく(写真出典:David Parry/PA Wire)

 

屋外プールを会場にしたシネマイベントは過去にありましたが、ボートに乗って観るシネマはイギリスでは初めてとされています。運河網が発達したオランダのアムステルダムでは、夏になると運河フェスティバルが開催され水上コンサートが行われますが、今回の水上シネマもこれにヒントを得たのかもしれません。

 

空気の流れがよく、ソーシャルディスタンスを確保できるという点で、小型ボートという座席は理想的でしょう。新型コロナの状況にもよりますが、夜間は使われない場所を利用してイベントを催すなど、ソーシャルディスタンスを守ったうえで新たな娯楽を提供する試みは今後増えていく可能性があります。

 

しかし、コロナ第2波への備えを考えると、課題はこれからのシーズンだといえます。屋外に場所を移せた夏とは異なり、気温がぐっと下がる今後の時期に屋内で3密状態を防ぐことはなかなか困難です。第2波への対策として、冠婚葬祭やスポーツチームをのぞき、屋内外で7人以上のグループが集まることを禁止する「ルール・オブ・シックス(Rule of 6)」と呼ばれる規制も新たに導入されましたが、先行きはまだ分らない状態です。

↑ボートの上で新体験(写真出典:David Parry/PA Wire)

 

イギリスではハロウィーンの夜の外出イベントも自粛傾向にあり、子どもがいる家庭だけでなく若い世代も含め、自宅での小さな集まりを楽しむプランに切り替える人が増えています。ただ、劇場や映画館、コンサートなど、大勢の人とともに体験できるエンターテイメントには、自宅では得られない楽しみがあるといえるでしょう。ステイホームばかりでは、やはり飽きがきてしまいます。

 

このまま新型コロナの感染を抑えることができ、雨や防寒対策を工夫することが可能になれば、屋外でも意外な場所を利用したさまざまな試みが可能になるかもしれません。ソーシャルディスタンスを守らなくてはならないからこそ、ユニークなイベントが生まれるチャンスがあるのではないでしょうか?

 

執筆者/ネモ・ロバーツ

 

ハワイ史上最も暑い夏を引き起こした「ブロブ」の最新研究が示す「気候変動」

記録的な夏の高温や世界各地で頻発する山火事など、さまざまな異変が世界レベルで起きていますが、そんな変化は広大な海のなかでも起きているようです。そのひとつが、2013年~2015年頃から北太平洋で観察されるようになった「温かい水の塊」。周辺の水温よりも最大で4度近く高くなるこの現象を科学者たちは「Blob(ブロブ)」と呼び、その原因や今後の発生頻度などについて調査してきました。

 

最高気温更新のウラに……

↑ Blobのイメージ

 

2013年頃から観察されていたブロブは、サンゴの白化やザトウクジラの個体数減少など生態系や漁業にも大きな影響をもたらしていると見られていますが、その影響は常夏の楽園にも及んでいました。2019年の夏にはハワイで最高気温記録を更新する日が29日もあり、史上最も暑い夏となったのです。

 

ハワイは本来、比較的冷たい海水に囲まれた地域にあり、夏であっても過ごしやすい気候なのですが、その年の夏については北太平洋の海域でブロブが発生し、平年より2~4度ほど高い海水に囲まれていたのだそう。そのため、このブロブによって夏の異常な暑さがもたらされたものと見られています。

↑2014年と2019年との比較。海面気温が上昇していることがわかる

 

温暖化でブロブの発生頻度も上昇

周辺よりも高温な気温の塊が、波のように押し寄せてくる現象を「熱波」と言いますが、ブロブは海中で起きる熱波のようなもの。日本語では「海洋熱波」と表現されることもあるこのブロブですが、発生の原因は何なのでしょうか? 最も単純な見方は、やはり地球規模で起きている気候変動の影響でしょう。

 

スイスのベルン大学の研究チームが先日発表した内容によると、1981年~2017年に記録されたブロブを解析したところ、ブロブは平均して150万平方キロメートルの大きさで40日間続き、海水温が最高で5度も例年より高いことがわかりました。さらに近年起きた大型のブロブについて、どのような確率で発生していたか計算すると、人為的な気候変動が原因で20倍も高い確率でブロブが発生すると判明したのです。

 

同チームによると、過去10年間で観測された最強のブロブは、産業革命前の気候では数百年~数千年に一度程度しか発生しなかっただろうと見られるとのこと。しかし、これから世界の平均気温が1.5℃上昇するとしたら、同じ規模のブロブは10〜100年に1度の頻度で発生し、気温が3℃上がるとしたら、10年に1度の頻度で起こると予想されるそう。

 

世界各地で引き起こされる、さまざまな異変。このまま続けば、さらに予想外の大きな影響が出てくる可能性だってあり得るでしょう。夏の厳しい暑さも、山火事も、海のブロブも、地球からの警告なのかもしれません。

 

【出典】

Laufkötter, C., Zscheischler, J., & Frölicher, T. L. (2020). High-impact marine heatwaves attributable to human-induced global warming. Science, 369(6511), 1621-1625. https://10.1126/science.aba0690

 

布団の新たなる効用! 「重い布団」が「睡眠」を劇的に改善する

羽毛布団は、ふかふかして高級感もあり、気持ちよく眠りにつけそうな気がします。でも、睡眠を良くしてくれるのは羽毛布団だけに限りません。最近の研究で、不眠症患者が重い毛布を使うと睡眠が改善したことがわかりました。

 

重さ8kgの毛布で不眠症回復率が20倍

↑重い布団に変えたほうがいいかもしれません

 

スウェーデンのカロリンスカ研究所の精神科医を中心とした研究チームは、布団の重さと不眠症などの関係を調べるために、不眠症と診断され鬱や不安障害などの精神疾患を併発している120名の成人(女性68名、男性32名、平均年齢は約40歳)に対して実験を行いました。研究者たちは被験者たちをランダムに2つのグループに分け、一方には鎖を付けて重さ8kgにした毛布を、もう一方にはプラスチック製の鎖を付けた重さ1.5kgの毛布を支給し、自宅で4週間過ごしてもらいました(重さ8kgの毛布が重過ぎると感じる人は6kgのものを代用)。

 

その結果、軽い毛布のグループでは、被験者のうち5.4%しか不眠重症度を表すISIスコアの改善が見られませんでした。それに対して、重い毛布のグループでは、ISIスコアが50%以上下がった人の割合が60%近くに達し、睡眠状態が改善され、日中の活動レベルや精神疾患の症状の改善が見られました。さらに不眠症の回復まで達した人は、軽い毛布のグループのうちわずか3.6%だったのに対し、重い毛布のグループでは42.2%と、20倍近く良い結果を得られたのです。

 

また、4週間の実験終了後、希望者には好きな毛布を選んでもらい、さらに12か月間の経過観察を行ったところ、ほとんどの患者が重い毛布を選びました。最初の4週間の実験で軽い毛布を使い、その後重い毛布に変えた人も、同じように睡眠が改善。12か月後、重い毛布を使った人の92%に変化が見られ、不眠症が改善した人は78%に達しました。

 

重さ8kgの毛布というと、一般の人にはずっしりと重く感じられるはず。そのような重みがなぜ不眠症改善に効果をもたらしたのでしょうか? この実験を行った研究者によると、毛布の重みによって、体中にある筋肉や関節に刺激が与えられ、指圧やマッサージと同じような効果が得られたと推測できるとのこと。深部へ圧力をかけると、心身の緊張を緩める副交感神経の働きが促進されると同時に、興奮するときに活発化する交感神経が静められると研究者らは示唆しています。

 

確かに不安や心配事を抱えているときは、軽いふわふわとした布団を掛けてもすぐに眠れないですよね。そんなときは、重い布団をかけることで身体から心の状態を変えるほうがいいのかもしれません。不眠症でない人も寝つきが悪いときは、少し重い布団を掛けてみてはどうでしょうか?

 

【出典】

Ekholm B, Spulber S, Adler M. A randomized controlled study of weighted chain blankets for insomnia in psychiatric disorders. J Clin Sleep Med. 2020;16(9):1567–1577. https://doi.org/10.5664/jcsm.8636 

何やら面白そうなものを作っているぞ! LGが「マスク型空気洗浄機」と「発毛促進ヘルメット」を発表

最近、韓国の家電メーカーLGから話題の商品が2つ登場しました。マスク風のウェアラブル空気清浄機と発毛を促すヘルメットです。アメリカのメディアにも取り上げられるなど海外でも注目を集めているようですが、一体どんな製品なのでしょうか?

 

マスクのようなウェアラブル空気洗浄機

↑新種のウェアラブルデバイス

 

一般的なマスクのように見えるこの写真の商品は、口元に装着できる空気洗浄機「PuriCare Wearable Air Purifier」です。同社の家庭用空気清浄機にも使われている「H13 HEPAフィルター」を2つ備え、装着した人に新鮮できれいな空気を届けるという仕組み。また、呼吸センサーを搭載しており、装着した人の呼吸の量やサイクルを検出します。息を吸うとファンのスピードが上がり、吐くときはファンのスピードが落ちるという具合に、3速のファンが自動で設定されます。820mAhバッテリーを搭載し、ローモードなら最大8時間、ハイモードなら2時間使用できるそう。

 

さらに、マスクの形状は人間工学をもとに設計されており、鼻や顎からの空気漏れを最小限にして、長時間の着用でも快適に過ごせるようにデザインされています。また、付属ケースはUV-LEDライト付きで、使用後の空気清浄機をきれいにしてくれるうえ、フィルターの交換時期もアプリで知らせてくれます。

 

「PuriCare Wearable Air Purifier」は、2020年第4四半期から一部市場で発売される予定(価格未定)。このデバイスについて報じたアメリカのあるメディアの記事に対して「まわりの人たちが普通のマスクをしてくれればいいので、俺はこれにお金を使うつもりはない」「いいアイデアだ」と賛否両論が寄せられています。

 

光治療で発毛を促すヘルメット

マスク型ウェアラブル空気洗浄機に続き、新製品としてLGから発表されたのが、発毛を促すヘルメット「LG Pra.L MediHair」です。男性型脱毛症の治療法として、米国食品医薬品局(FDA)から認められた低レベルの光治療(LLLT)を採用。146個のレーザーと104個のLEDライトが毛包幹細胞を刺激して、発毛をサポートし男性型脱毛を遅らせるのだそう。LGによると、盆唐ソウル大学病院で行われた臨床実験で、このヘルメットを1週間に3回装着し16週間続けたところ、髪の密度や太さに改善が見られたのだとか。このヘルメットのリリースは2020年末頃の予定です。

↑これを頭にかぶれば、髪の毛が増えるかも

 

どちらの商品も日本で発売されるかまだ明らかとなっていませんが、LGはなかなか興味深い生活家電を作っているようです。

 

魚はどうやってカエルになった? 進化の鍵を握る「歩ける魚」に新事実

カエルやヘビといった両生類と爬虫類は、魚類から進化したものと言われています。では、海を泳ぐ魚たちはどうやって陸上を歩くようになったのでしょうか? その答えの鍵となるかもしれないのが、陸上を歩く能力を持つ魚が11種類いたという新事実です。アメリカのフロリダ自然史博物館が先日発表した「歩ける魚」についてご紹介しましょう。

↑2016年に初めて発表されたケイブ・エンゼルフィッシュの骨盤の形状。今回、新たに10種が「歩ける魚」に加わった(出典: FLORIDA MUSEUM IMAGES BY ZACHARY RANDALL. CT SCAN OF PELVIS BY FLAMMANG ET AL. IN SCIENTIFIC REPORTS)

 

フロリダ自然史博物館は、ニュージャージー工科大学とルイジアナ州立大学、メージョー大学と共同で、タニノボリ科の魚30種類の骨格を分析しました。タニノボリ科はコイ目に属し、日本で生息するものにはホトケドジョウなどがいますが、この調査の結果、分析した30種類のうち10種がサンショウウオのように地を這ったり歩いたりすることを可能にする珍しい骨盤を持つことが判明したのです。

 

歩ける魚の発見はこれが初めてではなく、これまでにも東南アジアに生息するタニノボリ科の「ケイブ・エンゼルフィッシュ(学名 Cryptotora thamicola)」が陸上を歩ける魚として2016年に発表されています。しかし、その10種類の魚も背骨から骨盤のヒレをつなぐ骨の形状に着目すると、どうやら通常の魚にはない屈強な骨盤を持っており、ケイブ・エンゼルフィッシュと同じ特徴を持っていることがわかりました。

 

一般的な魚は背骨と骨盤のヒレがつながっていないため、 ケイブ・エンゼルフィッシュのような骨格は例外だと考えられていました。しかも、東南アジアで発見されたタニノボリ科の魚は100種類以上いますが、これまでの研究で歩行能力があるとわかったのはケイブ・エンゼルフィッシュだけ。この能力は、激しい水の流れのなかで身体を流されないように岩をしっかりつかみ、酸素が多くて生息しやすい場所を求めて移動するために適応していった結果、獲得され、遺伝されてきたと考えられています。

 

そこで研究チームはタニノボリ科の進化の歴史にも着目し、CTスキャンやDNA分析を用いたところ、単一の魚から進化したわけではなく、タニノボリ科全体でこのような骨盤の出現が複数回あったことも発見しました。この結果から、より詳細なタニノボリ科の進化系統樹作成が可能になると言われています。

 

【出典】

Marchese, H. (2020 September 8). Skeletal study suggests at least 11 fish species are capable of walking. Florida Museum. https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/study-suggests-11-fish-species-capable-of-walking/

 

「月の石」を売ってください! NASAの新ミッションで「宇宙ビジネス」がさらに白熱

近年、宇宙開発はビジネスとして広がりつつあり、NASAは宇宙研究の一部を民間企業に委託するようになりました。このトレンドの新しい事例が、2024年までに月への有人飛行を目指す「アルテミス計画」での民間企業の参入です。このなかでNASAは月の石を買い取ることを発表しました。

↑月の石、NASAが買ってくれるそうです

 

先日NASAが発表したのは、月の表面にある石などの採取を民間企業に依頼するミッション。月の表面は、砂のような細かい粒子や岩の破片などで覆われています。その粒子や岩の破片などを採取し、採取場所のデータと一緒にNASAに提供するという内容です。採取する量はわずか1.8~18オンス(51~510グラム)。さらにミッションは2024年までに行うことが求められ、採取した岩の破片などの所有権はNASAが有することになります。

 

約500gの採取で150~260万円

このミッションを請け負う企業は、全世界から少なくとも2社が選ばれる予定。NASAは報酬として1万5000~2万5000ドル(約157~262万円)を用意しています。契約企業に選ばれると10%、機器の打ち上げ時点で10%、残りの80%は採取データを提供したときに支払われるとのこと。

 

月の粒子などを採取して解析を行えば、先日明らかになった「月が地球の影響でサビているかもしれない」という研究に結びつくなど、さまざまな宇宙の解明につながるものと考えられます。そして宇宙ビジネスを進める民間企業のなかには、月面の粒子や岩を採取し、それをビジネスにつなげようと考えている企業もあるかもしれません。

 

【関連記事】

月がサビてるってどういうこと? しかも地球が原因?

 

今回のNASAのプロジェクトには、そんな宇宙ビジネスを活性化させる狙いがあります。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「企業のなかには、NASAに提供する18オンス以上の量を採取して、NASA以外に売るかもしれない」と述べたそう。人類初の有人月面飛行となった、1969年~1972年のアポロ計画では、およそ382キログラムもの粒子や岩などが採取されたとか。それだけ、月の岩は貴重な研究材料になるものということ。だからこそ、NASA以外に宇宙ビジネスに参入する企業が月の表面を採取し、それを販売するビジネスがこれから盛んになっていくのかもしれません。

 

「米Appleのスタッフ限定マスク」にマニアが悶絶! 「従業員だけなんて超残念!」と言わせたマスクとは?

外出時にはマスクの着用が必要となったwithコロナの現在。従来のマスク製造メーカーに加えて、さまざまな企業やブランドも独自のマスクを作るようになりました。そして最近、巷で話題になっているのが米Appleが作ったマスクです。iPhoneのデザインチームが開発したというから、どんなマスクなのか気になって仕方ありません。

↑マスクの箱からして、いかにもAppleらしい

 

Appleには、iPhoneやiPadなどの設計に携わるエンジニアリング&インダストリアル・デザインチームが手掛けた2種類のマスクがあります。

 

1つ目は「リユーザブル・フェイス・マスク」(下の画像)。3層構造になっており、水洗い可能で、最大5回まで再利用できるそう。写真を見ると、口元と鼻を覆う部分が横に長くデザインされているほかは、一般的なマスクと大差がなさそうです。でも、耳にかける紐は付ける人にあわせて調整可能。そして何よりも魅力的なのが、マスクが入れられたパッケージや箱が、iPhoneの世界観そのものであること。究極にシンプルなデザインにしながら、機能性はしっかり備えている。そんなAppleらしさを感じさせてくれます。

↑AppleのReusable Face Mask

 

2つ目の「クリア・マスク」はFDAの認可を受けた手術用マスク。こちらは透明な素材でできていて、マスクを着用していても耳の不自由な方が口元の動きを目で確認できるようになっています。

 

残念ながらこれらのAppleマスクは、一般販売用に作られたわけではなく、Appleのオフィスや小売店で働く従業員のために製造されたものです。これまで同社では従業員に市販のマスクを配布していたそうですが、9月からこの自社製マスクの配布を始めたとのこと。Appleでは社員に限定グッズを配る習慣があり、今回のマスク配布も一種の伝統のようなものだそうです。

 

しかしAppleマスクを紹介する記事に対して、「ほしい!」「どこで買える?」「従業員だけなんて超残念!」など、マスクをほしがる人のツイートがいっぱい寄せられており、Appleユーザーなら間違いなく使いたくなりそうな“お宝マスク”になりそうです。

↑マスクが入っている袋にもAppleらしさがある

 

医療従事者向けにフェイスシールドも開発

Appleのティム・クックCEOは新型コロナウイルスの感染が広まり始めた春、2000万枚のマスクの調達とあわせて、フェイスシールドを開発し医療機関へ提供すると発表していました。このフェイスシールドもAppleが独自にデザイン・製造しており、2分以内に簡単に組み立てができるそうです。

 

Appleが世に送り出してきた製品を考えると、ウイルスから防護する目的を果たしながら、装着しやすさや使い心地なども考慮したフェイスシールドが作られたのではないでしょうか? たとえ販売しないモノであっても、同社のデザイナーたちはとことんAppleらしさを追求してデザインしていることでしょう。マスクのような小さなアイテム1つひとつにも、作り手の魂が宿るものなのかもしれません。

 

未来に向けてテイクオフ! 「V字型飛行機」がプロトタイプの試験飛行を動画公開

飛行機といえば、円筒形の胴体に翼がついている形が一般的ですが、未来はV字型の飛行機が普通になるかもしれません。

 

KLMオランダ航空が現在、オランダのデルフト工科大学と共に開発を進めているのが「フライングV」。機体がV字型にデザインされた飛行機で、つい先日そのプロトタイプの試験飛行が行われ、V字型飛行機が空を飛ぶ様子が公開されました。

↑将来はこんな形の飛行機が当たり前になる?

 

フライングVが発表されたのは、KLMオランダ航空が創立100周年を迎えた2019年のこと。従来の飛行機なら円筒状に伸びる胴体がV字型では2方向に別れ、そえぞれに客室と貨物室、燃料タンクがあります。

 

フライングVの大きさは長さ55m、高さ17mで、乗客定員は314人であるのに対して、現在の最新型旅客機のエアバスA350-900は定員数がほぼ同じですが、長さは66.8m、高さ17.1m。前者の長さはエアバスA350より短いものの、同じくらいの乗客数が飛行可能です。

 

しかも、まるで空を自由自在に飛び回る鳥のシルエットのようなV字型のデザインは、空気力学を考慮した設計になっているだけでなく、軽量化も進み、エアバスA350より燃料消費量が20%も低くなるそうです。

 

そして先日、このプロトタイプの試験飛行が行われ、その模様が公開されました。プロトタイプは全長約2.5mと実際の1/22のスケール。機体内部にコンピューターを搭載し、各種飛行データを収集したそうです。

 

公開された動画では、リモートコントローラーで操縦されながら、フライングVのプロトタイプが滑走路を走り離陸、やがて空を飛び着陸する様子がわかります。従来の円筒形ではなく、胴体がV字に2方向になっていることで、離着陸や飛行時の安定感などに懸念があったかもしれませんが、プロトタイプの飛行ではそのような障害は見られなかったようです。

 

フライングVの実用化は2040年~2050年などと報じるメディアもあり、実現にはまだ数十年かかるかもしれません。ただ、これまでは円筒形が当たり前だった飛行機が、未来にはV字型が一般的になる可能性もあるようです。

 

 

キノコの皮ではなく「キノコの革」の誕生で勢いを増すファッションの「サステナブル化」

近年、ファッションもどんどんサステナブル化しています。バッグや靴、財布などに使われる本革は、高級感と独特の風合いを楽しめるものですが、牛や羊などの動物の皮を利用しているため、動物愛護の観点から問題視されることもあります。世界的なブランドが脱動物性素材の動きを強めるなか、最近、注目されているのがキノコから作ったレザーです。

↑新種のレザー

 

キノコ由来の代替レザーについて調査したオーストラリアのRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)の発表によると、キノコを活用してレザーに応用する技術は、キノコの「菌糸体」と呼ばれる構造を利用したとのこと。

 

おがくずや農業廃棄物のうえでキノコの根が成長すると、厚いマットのようになりますが、これを酸やアルコール、染料などで処理したあとに圧縮し、乾燥させると、本革と同様に取り扱うことができるようです。このような方法で作られる「キノコの革」は本物の革と同じような見た目で、耐久性もあるそう。

 

キノコから作ったレザーの魅力は、短期間で製造できること。動物は何年もの年月をかけて飼育しなければなりませんが、キノコの場合は数週間程度で単一胞子から大きくなります。

 

環境負荷に関する利点を見てみると、家畜による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量はよく知られていますが、キノコではその量が減ると考えられます。また、キノコのレザーは生分解性なので廃棄ゴミの問題も解決できるでしょう。このようにキノコのレザーを利用することで、地球環境に配慮することも可能になるのです。

 

おまけに動物の皮の加工には環境に有害な化学薬品が使われるそうですが、キノコのレザーならそのような薬品も使わずに済むとされています。

↑名案でしょう?

 

キノコのレザーを処理する工程はシンプルで、必要最低限の機器類があれば大量生産にも応用可能なのだとか。約5年前にアメリカの企業が製造技術の特許を取得しており、2019年にアメリカやイタリア、インドネシアで、腕時計、財布、靴などの試作品が発表されています。ちなみにキノコのレザーを使ったバッグの販売価格はおよそ500ドル(約5万3000円)。大量生産されれば、安価な製品として販売されると期待されます。

 

まさに「紙」技! 新しい印刷技術が「キーボード」に革命を生み出す

ワイヤレスや有線、メンブレンやパンタグラフ、メカニカルなど、キーボードの種類や方式にはさまざまな種類がありますが、現在まったく新しいキーボードが生まれようとしています。それが、ただの紙切れや段ボールを使ったキーボード。将来のキーボードは現在のものより、はるかにもっと薄くて持ち運びやすくなるかもしれません。

↑単にテンキーが書かれた紙っぺらではない

 

どこにでもあるただの紙をキーボード代わりに操作可能にする技術を発表したのが、アメリカのパデュー大学のエンジニアチームです。このチームは特別な印刷技術を開発して、ただの紙や段ボールをキーボードとして使えるようにしました。

 

この技術はフッ素系高分子の働きにより、紙に水や油、ホコリをはじく加工を行います。それにより、印刷したときにインクがにじまず、何層もの回路を紙に印刷することができるうえ、この印刷した回路は摩擦によって生じる静電気で動く構造のため、外部から電源を得る必要などもないそう。文字や数字などのデータはBluetoothを利用したワイヤレス通信でPCへ通信する仕組みです。

 

パデュー大学が公開した動画では、テンキー(数字キー)、音楽の再生や音量調整キーを印刷した紙が紹介されており、従来のキーボードと同じように、紙を指でプッシュしたりなぞったりすると、接続先のPCが反応して動いている様子がわかります。

 

また、段ボールの切れ端など表面が紙ベースのものなら印刷可能ということで、この技術は比較的安価に利用することができそう。紙や段ボールに印刷したキーボードは、折ったり湾曲させたりしても使えるようです。

 

食品パッケージなどに応用可能

この技術は、現在の大量印刷技術とも互換性があり、製品パッケージの印刷などにも簡単に利用できる可能性があるとのこと。このエンジニアチームの助教授は食品のパッケージへ利用できると考えており、例えば、食品が配達された際、受取人がこのキーボードを使って印刷面をドラッグして、届いた商品が自分の注文と合致するか確認するといった具合です。

 

ただの紙がキーボードになって折ることも可能なら、持ち運ぶときに重さを大きさを気にする必要が一切なくなって、かなり便利になることは間違いなさそう。打ちやすさが気になるところですが、これはもう少し先の問題でしょう。普段からPCやタブレットを持ち歩く方にとって、楽しみな将来が待っているかもしれません。

 

 

フランスの「モノ作り」に地殻変動。パリ13区に出現した広大な施設「Station F」とは?

「フランス国内から次世代のGoogleを生み出し、生き残っていくために全力を尽くす」

 

2013年11月、パリで新しいスタートアップ支援策の「フレンチテック(La French Tech)」が発表されました。フランスを“デジタル共和国”にするため、政府が主導するという形で誕生したこの国家プロジェクト。テクノロジー産業の次の巨人を作るというモットーのもと、目覚しいスピードで進行しています。

最初の1年間で国内のテクノロジーエコシステムを整備すると、15年にはギアを一段アップ。ヴァルス内閣で当時の経済・産業・デジタル相だった現エマニュエル・マクロン大統領が、フランスのスタートアップを世界各国の主要テクノロジーハブとつなぐ、新しい「エコシステム」の構築を発表しました。現在もフランスはスタートアップ企業と起業支援団体間のネットワーク形成に向け、精力的に取り組んでいますが、そんななか17年6月に誕生した「Station F」はフランスのスタートアップ支援事情を語るうえで欠かせない存在です。

 

Station Fは、パリ13区にかつて存在した3万4000平方メートルもの広大な旧鉄道車庫を利用してつくられた世界最大級のインキュベーション施設。仏インターネット通信大手グループ「Iliad」の創業者で著名な投資家でもあるグザヴィエ・ニール氏が出資し、厳正な審査を通過した1000社を超えるスタートアップ企業が利用しています。

施設の創業パートナーとして支援を行う企業にはFacebookやAmazonなどアメリカのIT大企業が名を連ね、共同のワークショップスペースには3Dプリンターやレーザーカッターも完備。ここでは開発製品などの試作ができ、施設は365日24時間利用可、シャワーやロッカールームまでもが用意されているという手厚さです。

海外企業や投資家も注目

Station Fの大きな特徴のひとつは、従来のインキュベーション施設の多くが大学の研究機関との提携、共同開発を行うプラットフォームであったことに対し、国内外の起業家に広く門扉を開いているところ

 

そのため、海外起業家からの注目度も高くStation Fでは英語が共通語なので、入居者はフランス語が話せる必要はありません。アメリカやイギリス、中国、インドからの申請者も多いと言われています。

 

JETROのレポートによると、ヨーロッパのスタートアップ支援先進国では、17年1~8月期における各国のベンチャーキャピタルからの資金調達総額がイギリスでは23億ユーロ(同2978億円)、ドイツが11億ユーロ(同1424億円)であるのに対して、フランスは27億ユーロ(約3496億円)に達しています。このことからもStation Fの注目度の高さが伺えるでしょう。

 

「世の中を変えることができるのは、政治家よりも起業家だ」と、地元紙のインタビューで語ったグザヴィエ・ニール氏。このStation Fの誕生により、保守的で歴史的に新興ビジネスが冷遇されていたフランス社会に風穴を開け、国際的なイメージを一新させたいという狙いがあったのです。

 

単なるインフラストラクチャーでは終わらない

Station Fにおける事例のひとつに格安航空券を10秒以内で検索できるサイトを構築したスタートアップ企業「ユリス・トラベル」があります。

 

現在はビジネスフライトや旅行代理店、ホテルの提供など、あらゆるB2Bに対応すべく取り組んでいる同社は、Station F内の「スペースグリーンプログラム」に参加。このプログラムでは、韓国のNaverとその子会社である日本のLineが、一般消費者向け製品を専門とするヨーロッパのスタートアップ企業を対象に80席ものワークステーションを提供しています。

 

このプログラムへの参加を機に「Station Fはインフラストラクチャーの役目を超え、多くのビジネスチャンスを我々に与えてくれます」と、ユリス・トラベルの創業者はさらなるステップアップに意欲を見せています。


クラウドファンディングも盛り上がる

国内でスタートアップ企業への支援が注目されている流れを受けてか、最近はフランスのクラウドファンディングにも勢いがあります。特に若い世代による革新的なプロジェクトには、自然と資金が集まりやすい傾向にあるといってもよいかもしれません。

 

フランス発のクラウドファンディングサイト「KissKiss BankBank」で、40日間で117%の支持を集めた「Rejig」も、若き起業家によるスタートアップ企業のひとつ。充電池付きリュックサックで太陽電池パネルが埋め込まれ、容量5000 mAhのリチウム電池のバッテリーとUSB接続プラグが付き、13インチのノート型PCが入るサイズになっています(販売価格は129ユーロ、約1万7000円)。

 

旅行中にスマホの充電切れで苦労した経験から思いついたという、非常にシンプルかつ共感されやすい発想から生まれたRejigのリュックサック。2人の創業者がこの鞄作りで目指したのは、小型化した電子部品を服やアクセサリーに組み込むというウェアラブルでした。

 

さらに、この2人はリュックサックをただデジタル製品にするだけではなく、クールなデザインにすることにも注力。この点は先述したフレンチテック発展の鍵でもあります。テクノロジーに外観の美しさ、つまりファッション性を融合させることが、フランスのものづくりにおいて欠かせないテーマなのかもしれません(そうだとすれば、どうやってアップルと競争していくのかにも注目ですね)。

 

クラウドファンディングからStation Fへ

Station Fの手厚い支援はパリを拠点にすることが条件になりますが、クラウドファンディングの場合は、世界中のどこにいても支援を受けることが可能です。実際に先のRejig創始者の1人はフランス地方都市(東部ナンシー)のビジネススクールから現在は上海のビジネススクールに留学中とのこと。

 

今後はクラウドファンディングでの支援を機に事業をスタートし、波に乗ったところでサポート体制の整ったインキュベーション施設(Station F)に移行するスタートアップ企業が恐らく増えてくるでしょう。フランスのスタートアップの動向が分かるフレンチテックは東京にもあります。テクノロジーやイノベーションに興味がある方は要注目です。

自然な手触りが新しい! 中国で「木製ドローン」が大人気

日進月歩するテクノロジー。ドローンも変化を続けています。これまでドローンは主にプラスチックを使って作られていました。しかし最近では、木材を使ったドローンが中国で開発されています。木材は軽量なうえ、強度が高いものなら頑丈。環境負荷低減にもつながります。同国のクラウドファンディングで目標金額の526%となる資金を集めた「ウッドクラフトドローン」をご紹介しましょう。

 

720pのハイビジョン撮影ができるクラフトドローン

DIYで組み立てられるこのクラフトドローンの原料は、カナダで創設されたNGOであるFSC(森林管理協議会)公認のトドマツ材。本体は20個のメインパーツと164個の補助パーツから組み立てますが、プラスチック製なのはプロペラおよびコンピューター部分だけ。

初心者でも簡単に操作できるように設計されているので、難しい操作方法の習得は不要。一定の高度を保ちつつ安定した飛行を楽しむことができます。飛行速度と上昇速度は毎秒2m。半径50メートルの可視範囲で操作することが可能です。

 

アプリを使ってWi-Fi経由でハイビジョン撮影もできます。学習能力があるコンピューターが、ドローンの安定した飛行を実現。カメラは1280×720の解像度なので、動画や静止画を十分撮影できます。

コントローラーも木材のパーツでできています(操作レバーだけ手触りの良いプラスティック製)。2.4GHzの無線通信で操作するため、ドローンまでの距離が多少あっても、離着陸や水平移動などはスムーズに行えます。

軸間距離は12センチで重量は79グラム。スマートで軽量なボディは持ち運びにも便利です。本体の木製パーツはレーザー加工により切り出されているため、各パーツのサイズや厚み、凹凸部の形はいずれも正確。本体が歪んだりすることはありません。

自由自在に変形可能なウッドクラフト仕様

本体の形状は自由自在に変更できます。X型、円型、正方形など4種類から選べる一方、自分の好きな形状に切り出すことも可能。完全にオリジナルのクラフトドローンを一から設計することができるんですね。

また、モジュールを交換することによって、ドローンに新しい機能を追加することも可能。GPSモジュールや超音波モジュール、スピーカー・音センサーモジュール・サーチライトモジュールなど、好みの機能を加えることでカスタマイズできるので、楽しみも広がります。

 

組み立てる工程も複雑ではないので、大人から子どもまでDIYを楽しめるうえ、木材に塗装をして個性的なドローンに仕上げることもできます。

 

残念なのは、本製品には防水加工が施されていないこと。なので、雨のときは使えません。

 

希望小売価格は日本円で約1万1300円ですが、クラウドファンディングでの購入なら約半額で入手可能です。手ごろな価格で初心者からドローンマニアまで、どんな人でも楽しめるDIYウッドクラフトドローン。世界に一台だけのオリジナル作品を作ってみてはいかがでしょうか?

 

スーツケースがベビーカーに早変わり!? 子連れ旅行を超ラクにする「バッグライダー」

「子どもが生まれても海外旅行へ行きたい!」

 

そう思うパパママは世の中にたくさんいるかもしれません。しかし子連れ旅行というのは、実際にはとても大変です。国際結婚した筆者には3歳になる子どもがいますが、飛行機移動は毎回苦労の連続。特に抱っこ紐が外れ、自分で歩きたがるようになってからは負担が増すばかり。どうにかならいか、といつも思います。

 

そこで最近見つけたのが「Mountain Buggy bagrider」。斬新なアイデアで子連れ旅行を楽にしてくれるアイテムなのです。旅行好きのパパママは要チェックですよ。

 

Mountain Buggy bagriderとは?

Mountain Buggy bagriderとは、スーツケースとベビーカーが合体した一台二役のアイテムです。通常スーツケースは2輪ですが、本製品はハンドルにクッションシートが取り付けられており、補助輪を出すと4輪のベビーカーに変身。子どもが自分で座れるようになる9か月ごろから、15kgになるまで(3歳ごろ)長く使えます。

 

シートの後ろ側にはメッシュポケットがついており、スマホやチケットなど細々したものを入れられます。メッシュなので見やすいうえ、すぐに取り出せるので便利。スーツケースも35Lと大容量(約 H51×W38×D25 cm)。内部に仕切りもあり、スーツケースとしての機能も十分果たしています。

機内持ち込みも可能なので、子どもを乗せたまま席まで行けます。これは意外と大事なこと。通常のベビーカーの場合、搭乗ギリギリまでは乗って行けますが、機内持ち込みができません。乗り込む前にベビーカーから荷物を下ろしてたたんでいる間に子どもは早く飛行機に乗りたくて走り出す、というヒヤリな状況を筆者は何度か経験しました。荷物と子どもを抱えて席までたどり着くのも一苦労です。

 

しかし、bagriderの場合は、このような苦労もありません。さらに、乳幼児とその保護者は優先搭乗を希望すれば、一般搭乗者よりも早く飛行機に乗ることができるので、焦ることなくゆっくり移動できるのです。

 

簡単な使い方&安心設計

bagriderは、耐久性がありながらも軽量なナイロンプラスチックで作られています。ブラックでシンプルなデザインなので、パパが使うにもいいですよね。

 

使い方も簡単。まずスーツケースのハンドル部分を伸ばしてクッションシートをつけます。次に「バッグライダーモード」と「キャビンバッグモード」を切り替えるためのダイヤルを回して補助輪をセット。この補助輪のおかげでスーツケースが4輪となり、安定したまま動かせるのです。バッグライダーモードでダイヤルがロックされるので、走行中に補助輪が閉じてしまうということもありません。

 

最後に子どもを乗せて、シートベルトを取り付けます。5点ハーネスは長さの調節も可能。しっかりと留められるので、ハーネスがずれることもなく子どもの身体にぴったりとフィットします。他のベビーカーのようなタイヤロックはありませんが、4輪で安定して置けるため、チケットや入国の手続きなどの際は、とても便利だと思います。

 

bagriderを製造販売しているのは、有名セレブからも人気の高いMountain Buggy。高品質で機能性、デザイン性も高いのが人気の秘密です。世界の安全基準を上回る独自テストも行っていますが、この会社の高級ベビーカーは2015年にドイツの国際的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞しています。



買う前に確認してほしいこと

bagriderには注意点もあります。容量が35Lと機内持ち込みにしてはサイズが大きいうえ、補助輪のため、スーツケースだけで重さが約5kgもあります。新幹線など陸路の場合は問題ないかもしれませんが、標準的なエコノミークラスでは持ち込みの手荷物は7kgまでと制限があるので、スーツケースの重さを差し引くと実質2kg分しか荷物を入れられません。

 

着替えやおむつなど軽いものであればいいのですが、重量制限を超えないようにパッキングする必要があるうえ、航空会社によっては機内持ち込みのサイズも異なるので、持ち込めない場合もあります。なので、購入前にいつも利用する航空会社の基準を確認してから購入したほうがいいでしょう。

bagriderは海外旅行だけではなく、帰省などの移動にも活躍しそうですね。アメリカでの価格は135ドル(約1万5000円。日本でもMountain Buggyの正規販売店が税込2万1600円で販売中)。親からすれば、ベビーカーと荷物を一気にまとめられ、その分身軽に移動できます。子どもにとっては目線が高くなり、アトラクションのように楽しいでしょう。なので、試す価値は十分あります。次の長期休暇には、bagriderとともに家族で遠出してみてはいかがでしょうか?

もはや定番になっている国も! 「讃岐うどん」、第2の「ラーメン」への道

日本食の世界的人気と流通のグローバル化のおかげで、カナダの大手スーパーの冷凍食品コーナーでは「讃岐うどん 」(※)がもはや定番になっています。一袋5玉で4~5ドルとお手ごろ価格。太めでこしがあり、のどごしもよく噛みごたえのある讃岐うどんが、なぜ海外で受け入れられているのでしょうか? 現地レポーターが探ってみます。

 

※:「讃岐うどん」というブランド名称について、全国生麺類公正取引協議会と公正取引委員会は、生めん類で名産、特産、本場、名物といった文言を表示しなければ自由に使用可能であるという見解を示しています。海外で流通しているものは韓国・中国系食品メーカーのものを含むため、すべて香川県内で作られたわけではありませんが、本稿では便宜上「讃岐うどん」と呼びます。

 

多様な民族、多様な食文化に対応

2013年12月、ユネスコ無形世界遺産に登録された和食は、世界的な健康食ブームも追い風になり、世界中で人気を博しています。最近では、寿司やテリヤキに続いてラーメンが和食ブームをけん引(過去記事リンク「【海外進出する日本食チェーン店】ニューヨークで成功した秘訣は?」)。しかし、海外のスーパーでは冷凍の讃岐うどんが定番になりつつあります。

 

うどんとラーメンは似て非なるものですが、では一体どんな人が買っていくのでしょうか? カナダの事例で見てみましょう。

 

まずはうどん風の麺を日常的に食べる習慣がある人たち、つまり、中国・モンゴル・韓国などを中心とするアジア系住民があげられます。カナダ政府の人口調査によると、1971年にはアジア系はたったの5%でしたが、2016年度にはなんと48%までに急増。その内訳を見てみると、1位がフィリピンの15.6%、2位はインドで12.1%、3位の中国は10.6%となっており、アジア系住民の増加で需要が拡大し、売り上げも安定してきたことがあげられます。

 

また、食べ方がわからなくてもインターネットでレシピが簡単に見つけられるうえ、Youtubeなどの動画で気軽に調理法が公開されていることも人気の理由のひとつ。日本では焼きそばや焼きうどんはソースや醤油で味わうことが多いですが、海外ではテリヤキ風味、韓国系やインド系ならスパイシーなものと、日本とは違った味付けになっています。

多少ゆですぎても煮くずれしにくく、こしのある食感、また炒め物としても型くずれしにくい讃岐うどんは、料理が苦手な人にも頼もしい存在でしょう。だしつゆで食べるもよし、炒めて焼きうどん風にと、バラエティな楽しみ方が受けているようです。

 

また、豚骨や鶏ガラなどのスープで楽しむラーメンと比べ、うどんは肉類抜きで、だしつゆと食べたり、野菜と一緒に炒めてもおいしいということで、ベジタリアンやビーガンなどの菜食主義者などのライフスタイルにもフィットし、支持を集めています。

調味料のラインナップも充実

一昔前までは、外国で他国の料理を作ろうとすると食材調達、輸入品であるがための価格の高さ、そして味付けに一苦労していました。しかし最近の多様な民族構成を反映してか、大手スーパーでは世界各国の合わせ調味料がお手ごろ価格で店頭に並ぶようになり、食品のボーダーレス化とローカライゼーションがどんどん進んでいます。テリヤキソースも例外でなく、下記写真のように現地の人々の好みに合わせ多種多様な風味が開発され、焼きうどんも簡単に作れるようになってきています。

 

讃岐うどんで「テリヤキ風焼きうどん」

こうして見てみると、日本ではあまりにも当たり前の食べ物なので気づきませんでしたが、讃岐うどんは多くの民族に受け入れられる要素を意外に多く持っていたことが分かります。次回、海外にお出かけの際には、スーパーで冷凍讃岐うどんをゲットして、逆に日本では馴染みのないテリヤキ風焼きうどんを作ってみてはいかがでしょうか?

 

仏版「HEMS」が誕生! スタートアップが盛り上げるフランスの「環境プロダクト」

今年の夏は北半球の多くの国で猛暑を記録しました。この高温は気候変動(温暖化)の影響とされていますが、二酸化炭素の排出量の削減に向けて、フランスではスタートアップが様々なグリーンプロダクツを作っています。そこで本稿では、同国のクラウドファンディングで最近大きな注目を集めたテクノロジーをご紹介。フランス人の環境に対する意識や同国のエネルギー政策などの背景にも迫ります。

 

フランス人の環境意識

2017年にパリのマーケティングリサーチ会社オピニオンウェイが行った調査によると、72%の調査対象者が「大統領候補のエネルギー公約を投票時の考慮にする」と答えました。また「エネルギー問題を考慮しない」と回答したのは27%で、そのうち「まったく考慮しない」と答えたのは全体の6%だったとのことです。

 

エネルギー問題に関心を寄せる傾向は富裕層ほど高い傾向がありますが、フランスでは庶民層でも半数以上69%の回答者が、この問題について意識をしているということもわかっています。

 

また、関連して、毎年7月に開催されるツール・ド・フランスは、フランス人たちの環境に対する意識の高さ(と誇り)が表れていることが分かりました。フランス人は、レースだけでなく、自国の景観の美しさも大いに楽しんでいるのです(詳しくは「【ツール・ド・フランス】フランス人視聴者の半分はレースではなく、違うものも見ていた」)。

 

クラウドファンディングで目標金額の661%を集めたテクノロジー

そこで、いま注目を浴びている製品があります。その名も「エコジョコ」。これはフランス版「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」ともいうべきテクノロジーです。

 

エコジョコは、家庭の電気メーターに専用機器を取り付けるだけで、何にどれだけ電力を消費しているかを分析してくれます。これだけで25%の電力カットができると言われており、今後フランス人の生活に欠かせないアイテムとなるかもしれません。クラウドファンディングでは、10日足らずで600万円を超える支援を集めました(キャンペーンは目標金額の661%を獲得して終了)。

 

エコジョコの操作は非常に簡単。まず、家庭にあるブレーカーにセンサーを設置。この設置には特別な電気工事もいらず、購入者自身で簡単に取り付けられます。

 

そしてリビングなどに機器を置いておくと、消費電力量をワット数とユーロ(電気代)でリアルタイムに表示。このデータはスマホのアプリで細かく視覚化、各家庭における消費電力の改善点など、具体的なヒントもアドバイスしてくれます。このアドバイスをもとに、エネルギー消費の仕組みを理解し、節電への行動も可能になってくるのです。

フランスCNRS(国立科学センター)の研究によると、家庭の電力消費量は25%削減することが可能であるとのこと。 しかし、そのためにはエネルギー支出をリアルタイムで観察し、それに応じた節電行動を行わなくてはなりません。

 

25%削減すると、年間で約500ユーロ相当の電気代節約につながると言われています。この節電は10年や20年という長いスパンで考えると、壁の断熱やサーモスタット、または換気扇の取り付けなど、エネルギー対策工事から得られる結果と同じ。エコジョコなら簡単に始められて、そのうえ25%の節電も可能になります。

環境・エネルギー分野でイノベーションをリード?

エコジョコ誕生の大きな背景の1つは、フランスのエネルギー政策の変化。温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量を削減するために、同国は「Energy Transition(エネルギー供給体制の移行)」に取り組んでいます。かつて同国の電力は原子力に頼っていました。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故で原発を取り巻く環境が変わり、フランスも脱原子力にゆっくりシフト。原子力発電への依存を下げながら、風力や太陽、水力、地熱といった再生可能エネルギーの割合を増やそうと官民一体で取り組んでいます(最近では環境相が突然辞任し、温暖化政策への影響が懸念されますが)。2016年の電力の供給量割合は、原子力が72%、風力が4%と太陽光が2%ですが、フランス政府は2030年までに再生可能エネルギーの割合を30%にまで増やすことを目標に掲げています。

 

それと同時に、エネルギー業界ではデジタル革命も起きています。民間の大企業やスタートアップは、電気をよりスマートに使うことで節電するためのテクノロジーを次々に開発。政府も再生可能エネルギーに関するプロジェクトを積極的に生み出すために、クラウドファンディングを奨励したり、開発者に助成金を与えたり、R&Dに年間10億ユーロを投資したりするなどしています。このような背景のなかで、本製品も誕生したと言えるでしょう。

エコジョコ以外にも、フランスのスタートアップは様々な環境プロダクトを作っています。今年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)では、スタートアップ向けのエリアのEureka Parkでアメリカに次ぎ最も多くの企業が出展して注目を集めましたが(アメリカは280社でフランスは274社)、そのなかの一社である「Lancey Energy Storage」はスマートな電気ヒーターを開発してイノベーションアワードを受賞しています。エコジョコをはじめ、フランス製の環境プロダクトが日本だけでなく、世界に広まるかもしれません。

わずか「45秒」でかゆみが消える! テクノロジーで「虫刺され」の対処法が変わる

山やキャンプなど、まだまだアウトドアの季節。家族や友人と出かける計画を立てている人も多いのではないでしょうか? しかし、野外レジャーでネックになるのが蚊などによる虫刺されですよね。かゆみに負けて、肌をかきむしってしまい血が出たり、跡が残ったりすることもしばしば。かゆみ止めには液体やクリーム状など様々な種類がありますが、今回ご紹介するアイテムは従来なかった発明でしょう。

 

その名も「Bite Helper」。虫刺されの患部に振動と熱を当てるだけでかゆみを和らげてしまうという摩訶不思議なテクノロジーなのです。

本製品は、虫刺されのかゆみを感じる部分に45秒押し当てるだけで、魔法のようにかゆみが消えるという、即効性のある画期的なデバイスです。そもそも蚊に刺された際のかゆみの原因は、蚊が吸血するときに出す唾液へのアレルギー反応。そこで、Bite Helperはボタンを押すと、「Thermo-Pulse-Technology™」という特許技術を使って先端の金属プレート部分から患部に熱と脈を打つような振動を集中的に伝えることで、血管の血流と循環を高めます。その結果、アレルギー反応を中和し、かゆみを和らげるそうです。

 

熱と振動のみで薬品を使わないというのが本製品の最大の特徴。このデバイスは「安心のケミカルフリー」なので、これさえあれば、かゆみ止めや虫除けスプレーですら必要なくなるでしょう。かゆみに耐えられない子どもたちも、あればかゆみをあっという間に和らげてしまうのです(対象年齢は4歳以上)。

 

蚊以外にも、アリ、ノミ、ミツバチ、ハチ、クラゲなど他の虫などに刺されたときも使えます(ただし、毒性の違いでヘビとクモには使えないとのこと)。

単三電池2本で約100回分使えるので、ワンシーズンくらいは使えそう。もちろん、電池を交換すれば半永久的に使えます。サイズも16cm×3cmとコンパクトなので、お出かけや旅行の際に持ち運びのもラク。

 

公式サイトでは、1つ39.95ドルで購入可能ですが、アメリカのAmazonでは約30ドルで販売されています(日本でも並行輸入で購入できるそう)。

かゆみは熱で止める

日本では蚊に刺されると患部を叩いたり、爪でバッテンをつけるなどのかゆみ対処法がありますが、アメリカでは、虫刺されの応急処置として「湯煎で温めたスプーンを患部に押し当てる」という方法があります。筆者も留学時に初めてこれを教えてもらったときはかなり驚きました。日本で言うところの「おばあちゃんの知恵袋」のようなものらしいです。

 

ただ、2011年アメリカの研究でも、かゆみのもととなる「昆虫の毒」は、熱を集中して当てることにより症状が速やかに改善されると結論付けされています。Bite Helperもこの原理を応用したもので、毎年アメリカで行われるCES(世界最大の国際家電見本市)において、2017年にアワードとして選ばれた注目デバイスでもあるのです。

 

誰しも経験するあの不快なかゆみも、Bite Helperさえあればどこにいても、あっという間にかゆみを和らげてくれるでしょう。ケミカルフリーなので、敏感肌の人や子ども(4歳以上)にも安心して使えるうえ、電池式なので使用期限が切れて効き目がなくなる心配もありません。1度買えば繰り返し使えて、毎年かゆみ止めを買うよりもコスパがいいかもしれません。

 

モスクワで躍進する「3つのルール」なるファストフードチェーンはロシア人の健康を救うのか?

近年、目まぐるしく成長しているロシア。そのビジネスの中心地、モスクワは「眠らない街」とも言われていますが、そこで働く人たちを支えるのは、残念ながら町中に溢れるファストフードなのです。しかし、そんななかでも、働き盛りの中年男性を救う「健康志向のファストフード」店がモスクワでいま大人気となっています。

 

3つのルール」を守るファストフード

モスクワで人気のヘルシーファストフード店「Три Правила(トゥリー プラーヴィラ)」。この言葉の意味は「3つのルール」です。

 

店名にもなっている3つのルールはお店の大事なポリシーでもあり、必ず店舗の壁に大きく掲げられています。

 

1:食品添加物、保存料を使わない。ナチュラルな食材のみを、あなたとお子さまに提供します

2:レストランの味を最安値で。ユニークでおいしいレシピを使ったプロの味。ウエイトレスやお皿、高価なインテリアを使用しない分、お客様に還元します

3:その日のものをその日のうちに。売れ残りの食材は1つたりとも次の日に持ち越すことはありません。店頭には毎朝、一番新鮮な手作りご飯が並びます。

 

創業者自身の経験から生まれたファストフード店

創業者であるアレクサンドル・ユーロフ氏は、40歳まで仕事一筋のビジネスマンでした。それまではまったく健康のことなど考える暇がなかったそうですが、40歳になった年に受けた健康診断で引っかかり問題にぶつかりました。

 

ユーロフ氏は、そこで初めて見た自身の異常なコレステロール値や血圧にかなりの衝撃を受けたと言います。医師からは、日々の食事に気をつけるよう注意され、そこで初めて健康的な食事について考えたそう。調べていくと、自身が日々気にせず食べていた物に、いかに多くの不健康な添加物が入っているかが分かってきました。

 

さらに彼は「自分のように日々の忙しさで健康的な食事と縁遠い生活を送っている人が大勢いるのではないか?」と考えました。そこで一念発起し、大都市モスクワにヘルシーで安全なファストフードを広めようと思い立ったのです。

 

おいしくて健康的、そして安全な料理をファストフードにして、大都市で頑張る忙しい人たちに届けようという活動は、こうして始まりました。

オリジナルのお弁当を作る楽しさ

この店の人気メニューは、お惣菜やメイン料理を組み合わせるスタイル。1つひとつがパック包装されており、自分で組み合わせた料理をレジに持ち込むと、レジの後ろにある電子レンジで温めてくれます。日本のコンビニ弁当みたいですが、より便利さを感じるのはすべてが別々になっているということ。例えば、レンジでは好きなものや食べたい分だけ温めることができます。

 

メニューのバリエーションも豊富で、週替わりの新メニューも見逃せません。ロシア料理に始まり、エスニック料理や肉に魚、パンやケーキ、デザートまで、とにかく驚くほどのラインナップで利用者を飽きさせません。平日ではスープとメイン料理、サラダを組み合わせた199ルーブル(約399円)のビジネスランチセットが人気。これだけの選択肢と品質で、この価格はモスクワでもかなりお得と言えるでしょう。

 

幅広い客層を見込んだ立地

モスクワにある全16店舗が、それぞれ駅や地下鉄から徒歩3分以内のショッピングモールのなかにあります。モール内で働く人々はもちろん、近隣のビジネスパーソンや駅とショッピングモールを利用する人や家族、子連れのママたちなど、幅広い層を取り込めるように計算されているんですね。特に平日はビジネスパーソンと子連れママたちで賑わいます。

「早くてお手軽」という既存のファストフードに「安全」と「健康」を加えた3つのルール。メニューの組み合わせも自由であることが、洗練されたモスクワっ子を魅了し、大都市モスクワの企業戦士までも引き付けています。このファストフードチェーンがロシア人の食生活をいかに変えるのか、注目です。

 

海外の赤ちゃんはどんなバギーに乗ってる? 世界のベビーカー事情

赤ちゃんや小さな子どもが乗るベビーカー。ひと昔前まで日本では、歩行がおぼつかない子どもを乗せるための移動手段として主に使われていましたが、最近では4歳まで乗れるように設計されているものもあります。しかし、海外に目を向けると、デザインや大きさ、機能に至るまで、まったく発想が異なっている様子。今回は下記の4点をテーマにイギリス、アメリカ、チリ、中国、ドバイ(UAE)の5か国を取り上げて、各国のベビーカー事情を垣間見てみます。

1:どんなベビーカーが主流? タイヤはシングル、ダブルタイヤ?

2:ベビーカーを取り巻く周辺事情、道路や環境などにまつわる状況

3:国によって異なるベビーカー購入時のポイント

4:日本との共通点相違点

 

[イギリス]

イギリスでは10キロ以上あるトラベルシステム(ベビーカー、チャイルドシート、ベビーキャリーを一台に集約した機能)が定番です。今年、特に人気があるのはイギリス製シルバークロスの「Wayfarer」 やiCandyの「Peach」。日本でもお馴染みのバガブーやストッケなどにも根強いファンがいます。

 

トラベルシステムは、大きめのシングルタイヤ4個のもの(前輪と後輪で大きさが違うタイプも多い)が主流。まずこれを1台目として購入、1歳前後からダブルタイヤ(計8個)の小さめなB型へと移行することが一般的です。

石畳が多いイギリスでは、がっちりしたタイヤがマスト。また電車やバスなどでも、ベビーカー優先や専用置き場があるうえ、イギリス人は赤ちゃん連れに寛容なので大きなベビーカーが主流です。購買層の中心である中流階級のイギリス人はおしゃれなママが多く、デザインやメーカー名を重視。日本との共通点として、人気ブランドのベビーカーを持つことは一種のステータスであること、相違点としては、日本のような利便性や軽量さはさほど求められない点が挙げられます。

 

[アメリカ]

 

アメリカにおけるベビーカーの特徴は、クルマ生活に合わせた仕様であること、そしてライフスタイルに合わせた選択肢が豊富であることの2点です。クルマ社会のアメリカでは、ベビーカーのシートがそのままチャイルドシートになる「3 in 1」タイプが多く、寝ている赤ちゃんを起こすことなく、クルマからベビーカーへの移動が容易になっています。

 

日本に比べ道も家も広く、ベビーカーがコンパクトである必要はありません。そのため、タイヤが大きく操作性の良い重量型が主流。荷物入れのスペースも大きく、ドリンクホルダーも4つあるなど高い機能性を備えています。

さらに、運動好きのママがジョギングをしながらベビーカーを押す「ストローラーラン」も一般的で、「Baby Jogger」社などの3輪タイプが人気(写真上)。そのほか、ベビーカーを好きになるために、クルマの形にデザインされた幼児向けの「Step2」社も人気を集めており(写真下)、公園や図書館では必ず見かけるほど。旅行用に、簡易な傘くらいに折りたためる20ドル程度のベビーカーを2台目として持つ人もいます。

購入するときに重視するポイントは、ベビーカーのシートをクルマへ移動する際の設置しやすさや折りたたみやすさなど、クルマにまつわる機能性です。クルマのトランクサイズに合わせてベビーカーを購入するのはもちろん、ベビーカーが入れやすいクルマを買う人までいるほど。

 

しかし、アメリカのベビーカーを日本で使うとなると、駅の改札を通れない、電車内で身動きが取れない、階段での持ち運びに重いなどかなり不便です。

[チリ]

南米チリではダブルタイヤのシンプルなB型ベビーカー(生後7か月ころから使えるタイプ)が一般的。そのほかにもシングルタイヤ、対面式のベビーカーなどにも人気がありますが、日本でよく見かけるベビーカーが主流です。

 

チリの首都サンティアゴではきちんと舗装されていますが、郊外や地方になると舗装されていないところもあり、ベビーカーで出かけるには辛い場所もあったりします。

チリ人がベビーカーを購入する際に最も重視するのは、「価格が手ごろであるか?」という点です。というのも、チリ人の最低月給は約4万円ほどだから。そのため、一般的には5000~1万円程度のべビーカーを購入する人が多いようです。

 

チリのベビーカーは日本のものとまったく一緒で、他国のブランドにあるようなバギータイプなどはあまり見かけません。日本との相違点をあえて言うなら、使用環境の違いと言えるかもしれません。ベビーカーに関しては寛容で、バスなどで周囲が上げ下ろしを手伝うのはごく当たり前の風景となっています。

 

[中国]

中国の街中でよく見かけるのは日本でいうA型(生後1か月から使用可)で、赤ちゃんとの距離が近くなれるハイシートタイプも人気を集め、タイヤの形態もシングルとダブルのどちらも見かけます。また、石畳の歩道が多いので振動を受けやすくなっています。そのため、タイヤが大きめなもの、重量がそこそこあるものは抗振動性が高いと認識されています。

購入ポイントとしては、まず赤ちゃんが安全で快適に乗れるかどうか。次に操作性へ重点が置かれます。中国にも安全基準はありますが、EU基準での欧州系ベビーカーはより評価が高く、好まれる理由の1つです。中国では共働き世帯が多く、祖父母やお手伝いさんにお世話をお願いすることになるので、その人たちが操作しやすいこともポイント。タイプの異なるものを2台購入し、状況に応じて使い分ける人も少なくありません。

日本との共通点は、中国で販売されているベビーカーは日本とラインナップが同じということ。ただし、中国では、日本人が重視する押しさすさや畳みやすさはそれほど重要視されていません。

[ドバイ]

ドバイは人口の8割以上が外国人。特に西洋人がストローラーを使うため、アメリカやヨーロッパのブランド(Uppa babyやStokkeやCiccoやBagabooなど)が主流で、シングルタイヤのものは多くのベビー用品店でも大きく展示されています。ローカルのアラブ人向けには、ゴールドカラーや高級車とコラボした約50万円もするストローラーも販売されている一方(写真下)、インド人やパキスタン人が多く住む「オールドドバイ」とよばれる地域では、ダブルタイヤや小型で軽量のベビーカーを見ることもあります。

1年間の最低気温が20度、夏は50度まで上がるドバイでは、外でベビーカーを押す姿はあまり見かけません。ベビーカーはショッピングモールやレストラン、カフェで見かけることが多く、特にモールやメトロも広いスペースなので、大型ベビーカーを押す人が多いです。たまに駅の改札を通れる日本製ベビーカーを見かけることもありますが、とても小さく見えます。クルマ社会なので、アメリカのように直接取り付け可能なシートも人気。

身長が高い西洋人はなるべく赤ちゃんと距離が近くなるようハイシートを重視。「Uppa bab」や「Stokke」などの使用率が高いのが特徴です。その一方、現地のアラブ人は一夫多妻制なので、子どもを4~5人連れた大家族もよく見かけ、双子用やステップのついたもの、荷物がたくさん入るものなど、利便性を重視する傾向です。ドバイは物価が高いので、ストローラーやベビー用品などは年に数回ある大きなセールでまとめ買いをします。

日本との共通点は、ポケットの多さやカップホルダーなどオプションの豊富さと利便性です。ドバイでは欧米系ブランドが多いので、サイズと身長の高さが圧倒的に違います。大きくて安定感はあるものの、折りたたんでもかなり幅をとるうえ、重さも10kg以上あるため、小柄な女性には取り扱いが困難。ただし、ドバイの人たちは妊婦や子どもに優しく、男性トイレにもベビールームが完備されるほど徹底されているので、著者は大きくても困ったことはありません。

 

では、日本は?

日本でも、最近では芸能人などのセレブたちがおしゃれな海外製を使うシーンがSNSなどで拡散されており、海外ブランドの人気が上昇中。それと同時に、ベビー用品店のオリジナルブランドも増加の一途をたどっています。

 

また、海外でも見られるように、安全性とともに、カーキャリア、ベビーキャリアなどに使える「~Way」式のベビーカーや、海外デザインを追従したスタイリッシュなものやカラーバリエーションも増えている傾向にあります。

 

狭い国土や道路、駅の改札、階段の上り下り、体型などの背景から、使用時や折りたたみ時のコンパクトさ、小回りのよさに重点が置かれているところは日本独特と言ってもよいでしょう。そして、女性一人が操作することを念頭にいれた軽量さや高い機能性を兼ね備えた設計もこの国の特徴。やはり大きさに関しては日本と海外、特に欧米系との決定的な相違点と言えますが、日本ならではの利便性や安全性などの細かい配慮も文化的な相違点かもしれません。

 

海外では振動抑制にはタイヤの大きさでカバーすることが多いですが、日本では小回りの良さをキープするため、タイヤ以外の機能、サスペンションやエアクッションなどで振動を抑える傾向も特徴的かもしれません。タイヤについてもダブルタイヤが多いですが、近年ではピジョンのRunfee(ランフィ)の登場でシングルタイヤのベビーカーも多く出回るようになりました。

海外と比較すると、残念ながら日本はベビーカーに対して寛容とは言いがたく、コンパクトなベビーカーでも電車やバスのなかでは広げたままかたたむべきかの論争が常々されている状況。背景には、日本は国土が狭いうえ、赤ちゃんが泣いたりぐずったりした際、親がすぐに抱っこして、あやすという行動や「他人に迷惑をかけない」という価値観があります。しかし、混雑時の公共の交通機関では子連れ側が自重するだけでなく、周囲の乗客も、ベビーカーを押している親に手を差し伸べるというチリやドバイの人たちの良いところを見習いたいですね。

1~13歳まで楽しめる、買い替え不要の「乗り物玩具キット」のトランスフォーム力がすごい

子どもが生まれると、カート、手押し車、三輪車、自転車、キックスクーターなど、子どもの成長に合わせていろいろな乗り物を買うことがあります。でも毎回買っていたら、お金も収納場所にも困ってしまいますよね。そこでオススメなのが「INFENTO」。これは1~13歳まで楽しめる機能・強度を兼ね備えた、買い換えの必要もない親子で組み立てられる乗り物キットなんです。

 

クラウドファンディングで目標金額の約17倍を集めた!

INFENTOは、これ1つで4〜16種類の乗り物を組み立てられるキット。Kickstarterでは目標金額(5万ドル)の約17倍となる84万8000ドル以上の資金を集め、同クラウドファンディングにおいて歴代4位の人気を叩き出しました。しかし、ここまで人気が高まったのは一体なぜなのでしょうか。その理由は4つあります。

 

【人気の秘密1】LEGOのように楽しく組み立て、実際に乗れる!

この製品における一番の特徴は、「自分で組み立てる」ということ。組み立てるという行為は、構造を楽しんで学べる教育的要素も含み、子どもだけではなく大人も夢中になってしまうかもしれません。

 

キットにはフレーム、タイヤ、ハンドル、ペダル、ブレーキ、必要パーツ、6角レンチがセットされており、届いたその日からすぐに組み立てられます。付属の説明書に加え、動画配信もしているので組み立てるのは難しくないでしょう。キットのラインナップによって乗り物の種類が変わり、カート、3輪クルマ、自転車、キックスケーターなど、1つのキットでいろいろ楽しむことができるのです。

 

ラインナップは、以下の通りとなっています。

  • Go Kit 139ドル/4台分(対象年齢2~6歳)
  • Junior Kit 299ドル/8台分(対象年齢1~7歳)
  • Inventor Kit 439ドル(現在は399ドル)/8台分(対象年齢2~11歳)
  • Creator Kit 549ドル/13台分(対象年齢1~11歳)
  • Master Creator Kit 649ドル/16台分(対象年齢1~13歳)
  • Skibock Kit(雪用) 199ドル/1台分(対象年齢8歳)
  • Junior Snow Kit (雪用) 229ドル/4台分(対象年齢1~7歳)
  • Big Snow Kit(雪用) 399ドル/10台分(対象年齢1歳)

 

さらにモーターやLEDライト、アドオンパーツを追加すると、もっと多くのカスタマイズができるようになり、可能性も無限大に広がります。

 

【人気の秘密2】10年以上楽しめる耐久性

上述のように対象年齢も1~13歳までと、なんと10年以上も長く遊ぶことができます。耐久性については、素材には高品質アルミニウム、ステンレススチールファスナー、ガラス繊維強化プラスチックジョイントなどが使われており、強度にもかなり力を入れていることが分かります。

 

さらに、新設計のスタビライザーシステムも搭載しており、最新性能がギュッと詰まっています。カラーもシンプルなレッドとグレーで、飽きのこないデザインになっているのがいいですね。

【人気の秘密3】INFENTOを通して学べる、ものづくりへの興味や喜び

道具は付属の6角レンチのみ。モノを組み立てるプロセスは、子どもたちのものづくりへのワクワク感をくすぐります。手先を器用に動かす練習になったり、作ることや仕組みなどへの興味を持つきっかけになったりするかもしれません。また、親子で協力しながら組み立てる時間は楽しい思い出になるでしょう。

 

筆者にも3歳になる息子がいますが、おもちゃの工具でクルマを直したりLEGOブロックで遊んだりするのが大好き。INFENTOは、作って自分が乗れる実物大サイズなので、達成感もひとしおではないでしょうか(今年のクリスマスプレゼントは、このキットを購入しようかと検討中)。

 

人気の秘密4】節約になる

子どもの成長に合わせて買い換えなければいけない、おもちゃの乗り物。INFENTOは1キット139〜649ドルで組み立てられます。1台あたりの金額に置き換えると約$40くらい。毎回買い替えるよりも経済的だと思います。しかも年齢に合わせ、その都度選べる一方、買っても乗らなくなってしまい、捨てたり譲ったりするような時間も節約できるでしょう。さらに、たくさんの収納場所も必要なくなり、自宅のスペースまでも節約できます。

 

いろいろな乗り物へ組み変えられるキットは、これまで意外にありそうでありませんでした。INFENTOという名前の由来は「infinitus(無限)」と「planto(作る)」という意味の2つのラテン語。発音すると、動詞 「Invent(発明)」とも聞こえます。

 

無限の創造と発明――。INFENTOは子どもも大人も夢中にさせる大注目のキットです。

ぶっ飛び度はさすがロシア級ーーでも大切なことを教えてくれる「ヒーローたちのサバイバルレース」なる大会

毎年モスクワをはじめとした10都市で行われ、人気を博している「ヒーローたちのサバイバルレース」。ロシア国内で15万人以上の競技人口を誇り、現在もファンが増加中。「平日はサラリーマン、でも休日はサバイバルレーサー」という意識で余暇を充実させたい男女たちを魅了して止まない、このサバイバルレースに迫ります。

 

ロシア最大のスポーツイベント

現代人はとても多忙なため、日々の生活で感動することは難しくなっています。ヒーローたちのサバイバルレースは、そんな現代人の心を動かすように設計されたイベント。2013年の開始以降多くの人たちを魅了し、いまではロシアのサバイバルレースを代表する1つとなっています。

 

障害物だらけのコースは、プロジェクトチームが国防省と協力し、ロシア特殊部隊の訓練でも使用できるように設計されたというほど本格的。超過激なクロスカントリーと言えるでしょう。しかも、レース中は戦車や装甲兵員輸送車が3分に1度空砲を鳴らすとあり、戦場さながらの雰囲気。2015年のレースでは世界最大のホバークラフトが開会式に登場しました。

2016年には、モスクワやサンクトペテルブルクなど14の都市で70以上のイベントを開催し、15万人もの参加者を記録しました。開催地によって異なる「ユニークなスペシャル障害物」がリピーターを喜ばせる秘訣のひとつとなっています。

 

参加費は2000ルーブル(約4000円)。18歳以上で、レースに支障をきたすような持病がなければ誰でも参加可能。特別な準備が何も必要ないのもうれしいところ。

1チームは8~10人で構成。チーム内で最後にゴールした人のタイムを競います。夏と冬に1回ずつ開催されるこの大会で、参加者たちはエンジンがかかった戦車の下をくぐったり、泥の沼を泳いで渡ったり、数メートルの壁を登ったりしながらゴールを目指します。

誰もが楽しめる冒険

ヒーローたちのレースには、どんなレベルの人でも参加できます。参加者は普段、オフィスで働くビジネスマンからプロスポーツ選手まで様々。スポーツ経験がない人であっても、「諦めなければ絶対にゴールできる」とプロジェクトチームは話しています。各所に配置された「サポート隊員」が必要に応じて参加者をサポートし、いざとなればいつでも救助してくれるので安心です。

 

競技開催中には、参加者たちを応援する家族やパートナーたちのために「ファンゾーン」なるものが用意され、快適な空間のなかでエンターテイメントを満喫できます。

 

そこではコンサートやゲームなどが行われる一方、いろいろな子ども用競技が準備されたキッズのためのプレイゾーンもあります。さらに、レースのWebサイトにはこんなステキな言葉が。

 

「家族全員でヒーローのレースに来てください。配偶者が一緒に出場しないから行けない、なんて言わないで。ご家族はあなたの勝利(ゴール)を見届けることができます。これは家族みんなの勝利。会場には、ご家族全員分の感動が待っています」

 

プロジェクトチームの調査によると、参加者が家族や友人へレースについて伝える確率は100%。その口コミから興味を持った人がレースのWebサイトを見ると、自分も参加したくなるような仕掛けがあります。

 

サイトでは写真中心の構成で難しい説明もなし。あるのは写真と、インパクトのある短くわかりやすいフレーズ。「参加を迷っている? いまサイトを見ている別の人が、あなたの代わりにヒーローとなってしまいますよ」とか「人生を変える冒険はいま。自分を後悔させるな」など、少しドキっとするようなフレーズが盛りだくさん。フレーズを追って読み進むと、最後に簡単な参加フォームが出てきて、ついつい熱い気持ちのままフォームを書きたくなってしまうのです。

 

あなたの人生を変えるかも!?

国家的で超過激な戦闘訓練にも見えますが、それはこのレースの一面に過ぎません。ど派手な演出でも、主役は参加者一人ひとり。仲間や家族、スタッフに見守られながら、身体全体を目一杯使って運動することができます。ゴールした参加者たちから笑顔が見られるのは、レースを楽しんだ何よりの証拠。障害を乗り越え、自身の恐怖や苦手を克服するということは、退屈な日常を打破し、自分を変えるための挑戦とも言えるでしょう。

レースに参加した人たちの全員が周囲に100%知らせるという口コミ効果もあって、このレースはこれからも成長し続けると予想されます。心が凝り固まってしまいがちな毎日を過ごし、飽き飽きとしている方、そして仕事一辺倒の日本人にも、ぜひ一度体験してもらいたいイベントです。

「視察ビジネスマン」が水上バスで観光?? ミャンマー・ヤンゴン港の異様な風景

ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と言われる国。中国やインド、タイなどと隣接するこの国は、現在、日本の産業界から熱いまなざしを受けています。そんななか、同国最大の都市・ヤンゴンでは少し変わった風景が見られるとのこと。現地ライターのレポートで解き明かしていきます。

 

渋滞解消の切り札として登場した「水上バス」が今回の主役

民主化が進むミャンマーでは、自動車輸入の規制を緩和してから乗用車が急増。特に人口が集中するヤンゴンでは、深刻な渋滞が社会問題になっています。その解決のために、政府はバス路線の大幅な見直しや高架道路の建造、イギリス植民地時代に敷設した鉄道「ヤンゴン環状線」のスピードアップなどに努めてきました。そこへ、さらなる一手として導入したのが水上バスです。

 

ヤンゴンは市街中心部の南側と西側にヤンゴン川が流れています。ここに水上バスを運行させ、郊外の住宅街からオフィスが多いダウンタウンへ通勤の足にしてもらおうというのが、その主な目的。水上バスは2017年10月に就航しました。

ダウンタウンの南東端にあるボータタウン埠頭を出発し、市街北西はずれにあるインセイン埠頭まで計6つの埠頭に停まります。所要時間は普通艇なら2時間近くかかりますが、高速艇ならわずか40分。対照的に路線バスなら1時間かかることはざらで、渋滞がひどい通勤時間帯なら2時間以上になることも。しかし、水上バスなら必ず座って移動できます。

船の定員は60~200名で一般層が乗りやすいようにと、運賃は路線バスと同じ200チャット(約16円)に設定。ただしインセイン埠頭からの始発が6時40分発、ダウンタウンからの最終が18時50分発と運行時間が限られているうえ、本数も計15本と少なく利便性はそれほど高くありません。そのせいか、通勤客の利用率はあまり順調とはいえない状況です。

 

観光に加え、なんとビジネスにオススメ!

しかし、この水上バスは意外なところで評判を呼んでいます。それは観光利用。ダウンタウンからインセインまでの川岸には、魚の卸売市場や造船場などが点在。安価な運賃でクルーズ気分を楽しめるのです。朝夕には対岸から通勤客を満載した小舟が往来し、なかなか情緒ある風景を写真に収めることもできます。

 

さらに、密かにこの水上バスに注目しているのが世界のビジネスパーソンたちなのです。というのも航路からはヤンゴン港の全容を見渡せるからです。

 

軍事政権が長く続いたミャンマーでは、基本的には空港や港、橋などは撮影禁止。視察ツアーがヤンゴン港を見学する場合は事前に許可を取る必要があり、これがなかなか面倒なのです。しかし水上バスなら、何キロにもわたって岸辺にドックが点在するヤンゴン港をたっぷり見学することが可能。そのうえ、写真も撮り放題なのです。

乾季ならティラワ港見学も可能

さらに10月頃から3月頃までの乾季の週末には、1日1便のみですが、ボータタウン埠頭から通常航路と反対方向の市街南東郊外に位置する、水上パゴダへのツアーボートを走らせています。こちらのコースなら、ティラワ港をじっくり見学できます。

 

ティラワ港は日本とミャンマーが官民一体で協力して開発した、最も注目を集めるティラワ工業団地に至近の立地。同工業団地への進出を検討する企業ならぜひ視察しておきたい港です。その全容を川側から見ることができるのはかなり大きなメリットといえるでしょう。

 

水上バスは往復sw乗るもよし、行きだけ乗って帰りはタクシーで戻るもよし。ヤンゴン環状線と組み合わせて、陸と海からヤンゴンの町を概観するという方法もおすすめです。また夕方なら、川向こうに沈む真っ赤な夕日も鑑賞可能。ヤンゴンに来ることがあれば、観光やビジネスの移動には、この都市の新しい公共交通機関である水上バスをぜひ利用してみてください。

「350円バッグ」でお馴染みデカトロンの「350円マイクロファイバータオル」が使えるので紹介

吸水性が高くて速乾性のあるマイクロファイバー製のバスタオルは、スポーツシーンで活躍します。スポーツ製品ブランドと350円リュックでお馴染みのデカトロン社もマイクロファイバータオルを製造しており、いずれも手ごろな価格で購入できます。それらの実用性はどうなのか? 実際に購入して調べてみました。

 

薄くて驚きの吸水性、見事なまでの速乾タオル

コスパのよさと消費者ニーズに沿った着眼点で、次々とヒットを飛ばすデカトロン。ということで、このマイクロファイバー製タオルも要注目です。サイズは4種類を展開。80cm×130cmのLサイズ、他にSサイズ(42cm×55cm)、Mサイズ(65cm×90cm)、XLサイズ(110cm×175cm)があります。素材は85%がポリエステル、残りはポリアミド。

 

マイクロファイバーと聞くと、掃除用のふきんなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。そのイメージはフランスでも同様で、洗剤いらずで掃除でき、使う水も少量に抑えられる「環境にやさしいエコロジーな布」としても知られています。

 

しかし、マイクロファイバーが活躍するのは掃除に限りません。一般的に1gで10km分の長さがあり、「髪の毛の1/10」程度の細さと言われる極細マイクロファイバー繊維は、吸水性も抜群。汗、プールや海で身体を拭く際にその威力を発揮してくれます。

通常のタオルと異なり、デカトロン製のタオルは速乾性に優れているので、1回の運動でも、何度も乾いたタオルの快適さが実感できます。またスポーツ後も、湿ったタオルの臭いがバッグのなかで充満する事態を遠ざけられるのです。

 

正しい使い方をすれば肌も痛めない

従来のタオルと比べて肌触りはどうでしょうか ? 正直そこは好みの問題になってきますが、綿などの質感に慣れていると、最初は「これで本当に身体を拭くの?」と戸惑うこともあるかもしれません。

 

しかし、慣れてくるとスウェードのような独特の質感も、心地よい肌触りに感じてくるから不思議。マイクロファイバー製のタオルは吸水性が優れているものの、乾燥したスポンジみたいに硬くはならず柔らかな質感のまま。洗濯時に柔軟剤を入れないよう、ただし書きがありますが、柔軟剤なしでもなめらかな肌触りを保ってくれます。

 

このタオルを使用する際の注意点は、決してゴシゴシとこすらず軽く叩くように水分を吸収させること。髪の毛もタオルで包み込むように、押さえながら水気を取るように推奨されています。強くこすると、肌や髪を痛めてしまう可能性もあるので注意が必要です。

かさばらないので旅行やキャンプにも最適

マイクロファイバーのタオルは他のメーカーからも出ていますが、デカトロン製品の大きなポイントは薄さと軽さです。全身をすっぽりと包める大きさのLサイズ(80cm×130cm)でも、薄くてコンパクトにたためるうえ、畳んだときの大きさは約17x12cmとなるのでバッグに入れてもかさばりません。

 

さらに、他社製品のLサイズでは300g前後の重さが多いのに対し、このLサイズは189g。従来のタオルなら10リットルのリュックサック(写真)の半分以上を陣取っていた大判タオルでも、本製品なら1/4程度。しかも軽いので旅行やキャンプにも最適です。

 

本製品は日本でも取り扱いがあり、価格はSサイズが350円(本国フランスでは2ユーロ)、Mサイズが650円(4ユーロ)、Lサイズが890円(6ユーロ)、XLサイズが1490円(10ユーロ)とマイクロファイバータオルにしてはお手ごろ。さすがと言ったところでしょう。2年の製品保証も付き、その強度もお墨付き。Lサイズは、写真のようなターコイズに黄色がアクセントになった組み合わせやマリンブルーにパステルグリーンで縁取りされたバージョンなど、ほかにもカラフルな色合いのものが揃っています。

誤差はわずか1.5mm以下! 最強の「サイズ測定アプリ」で計測が超ラクになる

DIYや模様変えなどで最も大切なのは、サイズを正しく測ること。でもメジャーを使うと高いところや曲線など、難しい部分もありますよね。そんなときこそ「Arrim ONE」の出番。クラウドファンディング発の多機能測定装置であるこのデバイス付きアプリは、小さな端末をスマホにつけるだけで、長さ、角度、直径、円周など複雑な測定まで可能にしてしまう、とても便利なアイテム。これがあればDIYだけでなく、家具を購入するときや子どもの身長を測るときさえ、スマホをかざすだけで測れてしまいます。

Arrim ONEは長さ5cm×幅3cm×厚さ1.5cmで、重量はわずか35g。アルミのシンプルデザインで、大きめなUSBのような感じでしょうか。iPhone(6S以降)・Android(8.0以降)用があり、スマホのケースをつけたままでも接続できます。

 

本製品は直線だけではなく、円や角度、曲線を計測できます。また、壁を均等に分割計測することも可能。例えば、壁に2枚の画を均等にかけたい場合、1面を3分割し、画面を通して正確に取り付けることができるのです。公式動画では縦の3分割をしていますが、横分割で計測すれば、高さを揃えて画を取り付けたい場合にも使えるのではないでしょうか。

さらに連続測定が可能で、単位もフィート、インチ、ヤード、㎜、cm、mに対応。測定結果をシェアできるので、家具を購入するときなどに活躍します。

 

使い方は超簡単!

操作は簡単。アプリを起動すると画面がカメラのようになるので、計測したいところにかざします。ONとOFFのボタンがひとつずつだけで、長さを測りたい始点でONのボタンを、終点でOFFボタンを押すだけ。

 

しかもデバイス自体は、1回の充電で1000回分の測定ができます。また他のアプリ同様、アップデートすれば新しい機能も追加される仕組み。今後どんな機能が追加されるのか楽しみですね。

 

Kickstarterでは2018年7月下旬まで予約販売を受け付けていました(価格は$67~)。18年9月以降に世界各国に発送される予定。

本当に正確に測定できるの?

既存の測定アプリと異なり、本製品はAR技術に加えて「レーザーシステム」を使い、カメラを通して計測したいものを仮想3D座標系にデータ化し測量。また、カメラの手ブレを防ぐために、「シフトレーザー測定」や「特性点追跡」の機能を搭載することで、手ブレによる誤差が出ないようになっています。

 

また、特許機能であるアルゴリズムを使った円の測定機能は、他のアプリでは従来できなかったこと。ちなみに、そのアルゴリズムは円の中心がわからなくとも、円周の3点から円の半径を計測します。これら一連のテクノロジーを駆使し、20メートルの範囲内での測定であれば、誤差はなんと1.5 mm以下とのこと。これは、あくまで開発者からのコメントですが、本当に誤差が1.5mm以下であれば一般のDIY作業でも使える範囲ではないでしょうか。

 

開発したのは若き天才たち

Arrim ONEの開発者たちは、若きエンジニアやプログラマー、デザイナーたち。設計から技術開発まで、すべて自分たちで行っているそうです。創設者は、テクノロジーとエンジニア分野において世界クラスのImperial College Londonの修士号を持つ人物。しかも、ヨーロッパNo.1のシェアを誇る家電メーカーのBoschにおいて、開発研究チームのマネージャーを2005年から長年勤めていたというから、技術に関してもお墨付きという訳です。

 

かゆいところに手が届く、ならぬ、高いところにも手が届くこの製品。Kickstarterでは、目標価格2万ドルに対して開始2週間で目標額を達成していました。最後は計3101人が27万ドル以上を支援し、目標額の10倍以上の資金を集めることに成功。この状況からも期待の高さがうかがえますよね。近々引っ越しを控えた筆者も本製品を予約注文したので、いまから使うのが楽しみです。

「家に帰りたくない!」 ロシア最大のテクノロジー企業の「職場環境」が超うらやましい

社員が口を揃えていうのは、快適すぎて「家に帰りたくない」――。

アメリカの大手テクノロジー企業から聞こえてきそうな話ですが、なんとそんな職場がロシアにもあるんです。ロシアの検索エンジン・ポータルサイトの「ヤンデックス」(検索件数では世界第4位)は、ソビエト連邦時代をまったく感じさせない、先進的で快適すぎる職場環境で大きな注目を集めています。

IT業界の精鋭たちが働く、モスクワ中心地にある本社ビル。明るく近代的な社内には通常の会社ではあまり見ない、ハンモック、ソファー、巨大クッションなどがあちこちに配置されています。ヤンデックスでは、必ずしも机に座って仕事をしなくてよいのですね。室内に限らず、バルコニーや屋上など、社員は好きな場所で業務にあたることができます。

 

自由な勤務時間体制も話題になっています。12〜18時の間は、必ず全員が会社にいなければなりませんが、それ以外は出社も退社時間も自由。自分や家庭の都合、仕事の進捗状況などによって、勤務時間を決めることができるのも先進的です(ヤンデックスでは残業の問題もないようです)。

 

「こんなに手厚くて大丈夫?」と思ってしまうほどのサポート体制

ヤンデックスは、 ロシア版Amazonともいうべき「ヤンデックスマーケット」を運営していますが、それを社内で活用した「ヘルプ機能」がとても画期的。この機能には内線を使ってアクセスし、電話1本で業務に必要なもの(例:充電ケーブルやメモリーカード)が即日、もしくは翌日には手元へ届くのです。

 

これにより社員たちはいつでもヤンデックスマーケットから最短で必要なものを手に入れられます。「業務に必要なもの」という条件がありますが、いままで頼んで届かなかったものはないと社員たちが言うのですから、驚くほど便利なサポートですね。

 

社員への手厚いサポートにも注目が集まっています。出張の日はヤンデックス傘下である「ヤンデックスタクシー」が終日無料に。出張中のみ使える特別なアプリも提供され、これにより社員は領収書などの手間が省ける一方、会社としても後処理がラクになります。また、管理職の人にとっては、これで出張中の社員の動きも見えるようになるというメリットもあるそう。

 

従業員の食事に対するサポートにも抜かりはありません。食事カードには毎月一定額のお金が振り込まれ、社内レストランのほか、ヤンデックスと提携のモスクワ市内レストラン、カフェの15店舗で使うことができるのです。

また、10時半前に出勤した従業員には、その都度、食事カードに約500円が追加されるボーナス制度もあります。もちろん、それを朝食代に使ってもお昼や晩御飯に使っても自由。しかも、食事カードと連携したアプリでは残高と次月の振込までに、1日いくら使えるかが表示され、非常に便利だということです。

社長までも横並びのスケジュール

社員はいつでもオンラインで、全員のスケジュールを把握できます。ここまでは他の企業でもありがちですが、なんと社長までがそのスケジュールに登録されているというのは珍しいのではないでしょうか。トップの人々も含めた全社員の動きや進捗状況が即座にわかると、社員間のコミュニケーションに役立つのはもちろん、自分の役割も明確に見えるようになるので、とても有用だそうです。

 

社内はまるでミニチュアの街

充実した社内環境も話題を呼んでいます。社内にレストランはもちろん、郵便局や図書館、ジム、ATMを完備。社員たちは出勤するだけで、個人の用事さえも社内で済ませられるようになっています。本社屋上はオープンテラスになっており通常の作業場所として以外にも、社員の誕生日にはパーティー会場として使われることも多いそう。その際は他部署の人たちも招待できるので、いろいろな意見や情報を交換する場所になります。

 

クリエイティブなロシアの先駆者

ヤンデックスは、いまやロシア最大手のインターネット企業です。検索ポータルだけでなく、ナビゲーションシステム「ヤンデックスナビ」や、ロシア版PayPal「Yandex.Money」、ロシア版Amazon「ヤンデックスマーケット」、ヤンデックス・タクシーを展開し、ロシアとともに成長し続けています。

 

この急成長の背景には、社員のクリエイティブな仕事を全面的にバックアップする体制が整っていることがあり、それによって社員をベストパフォーマンスへと導いているように思えてなりません。

「Instant Pot」レビュー! Wish Listナンバーワンになった万能調理家電でお米を炊いたら……

キッチン家電はいろいろありますが、用途ごとに揃えると場所を取りますね。この問題を解決した家電がいまアメリカで人気を博しています。その名前は「Instant Pot」。これ一台で圧力調理器、鍋、フライパン、スロークッカー、炊飯器、蒸し器、ヨーグルトメーカー、低温調理器、オーブンなど何役にも使える、多数の機能を兼ね揃えた全自動調理アイテムなのです。2017年にはアメリカAmazonのWish List(欲しいものリスト)に最も選ばれた製品にもなりました。日本には未上陸なものの、インターネットでは時々話題に上っています(日本で使っている人もいるそうですが)。今回は、アメリカ在住の筆者がInstant Potを実際に使ってみた感想をお伝えします。

 

定番アイテムを超えるスーパーマルチプレイヤー

アメリカでキッチン家電といえば、「スロークッカー」が定番中の定番。その名の通り、低温調理や長時間調理、保温もできるのが特徴です。この調理機器は40年以上も前からアメリカの家庭を支えてきましたが、Instant Potはそのスロークッカーに代わるキッチン家電とも言われています。

 

実際、2017年にInstant PotはアメリカのAmazonプライムデーにおいて一番人気の商品となりました。関連するレシピ本も合わせて売り上げを伸ばしている様子。さらに、本製品は結婚祝いでのWish Listでも最も多く選ばれました(アメリカでは、花嫁があらかじめWish List を作っておき、贈る人はリストのなかから予算に合わせてギフトを選んで送ります。アメリカならではの実用的かつ合理的な習慣ですね)。

 

安心の全自動+安全装置付き

Instant Potは全自動調理器なので、火を一切使いません。圧力モードでも、圧力をかけたい時間をセットして、スイッチを入れれば、あとは何もしなくても大丈夫。その場につきっきりにならずに済むうえ、加圧時間がおわれば、自然に減圧・保温モードに切り替わります。例えば、カレーを作るときは、蓋を開けたままロースト(炒め)モードで調理し、圧力鍋モードで一気に加熱したあと保温モードに。圧倒的に時短できるのが魅力です。

 

しかも、圧力鍋の時間をセットすれば、圧力調理後は自然に圧力調整し保温になるのでとても助かります。11を超える安全装置を備えており、UL規格(電化製品における火災及び感電の危険確認・調査規格)の認定も受けています。

多機能なのでボタンも多く、当初は混乱しましたが、専用アプリ(英語のみ)があり、レシピや使い方が細かく紹介されており、動画もあるので、しばらく使うと慣れます。Instant PotのFacebookコミュニティメンバーは140万人を超え、YouTubeのチャンネル登録数も2万7000を超えています。

時短でおいしいうえに、お手入れも簡単

アメリカでもおいしいお米が食べたい筆者は、購入後、炊飯機能で早速お米を炊いてみました。これまでは日本から持ってきた炊飯器を使っていたのですが、これでは早炊きモードでも30分ぐらいかかっていました。しかし、Instant Potでは加圧4分、蒸らし15分と、驚くほど早くお米が炊けます。 しかも圧倒的においしいんです。調理が終わってからの時間が表示されるので、蒸らし時間がわかるのも便利。

 

旦那が大好きなBBQプルドポーク(豚の塊肉を煮たもの)は、通常スロークッカーで5~6時間かかります。でもInstant Potでは、塊肉とBBQソースを入れてスイッチを押すだけで加圧10分で肉汁じゅわーっと肉がほろほろくずれるほど柔らかくなります。先にジャガイモを加圧調理しておいて、肉を調理する間にマッシュポテトを作ればあっという間にメインとサイドディッシュが完成。

 

小さい子どもがいるとおいしい外食でもゆっくり味わえず、逆にストレスが溜まってしまうことが多々ありました。しかし、わざわざ外食せずとも自宅でレストラン級の味ができ、いつもよりちょっといい食材を買って調理することが増えました。テーブルセットもこだわれば、自宅でゆっくりレストラン気分を味わえるので、夫婦で「ワインの晩酌時間」が取れるようになり嬉しい限りです。さらにおいしい料理で会話も弾みます!

また、「Delate cook」という機能で調理のスタート時間をずらすことも可能。そのため出勤前にセットして、帰宅に合わせて、でき立てアツアツの料理を食べることもできます。

 

柔らかくなるまで煮たり裏ごししたりと、手間のかかる離乳食。けれど、Instant Potは自動で加圧、減圧、保温をしてくれるので、赤ちゃんを世話しつつキッチンに立ちっぱなしにもならず、息子のときにもこれがあればもっと楽に早くできただろうなと思いました。

 

ポット内にあるスチール鍋の部分はまるごと外せて丸洗いでき、もちろん食洗機にも対応。電気部分も拭くだけなので衛生的に使えますが、蓋のシリコン臭が気になるというレビューも見られます。筆者も、電子レンジでシリコンスチーマーを使った時の匂いが苦手ですが、Instant Potを使用しシリコン臭が気になったことはありません。もし匂いが気になる場合は、レモン汁を入れた水でスチーム調理を2分間行うとシリコン臭が消えるようです。

 

ただし、毎回蓋のシリコン部分は洗うようになっています。特にチリやカレーなど、匂いの強い料理を作った時には蓋のパーツも外して洗っています。とは言え、シリコンや加圧パーツを外し食洗機に入れるだけなのでお手入れも簡単。

 

気になるサイズ感と価格

機能によって様々なシリーズが販売されていますが、大きさの規格は3種類。2~3人用の3qt (2.8L) は119.95ドル(約1万3300円)~、4~6人用の6qt (5.6L) は149.95dドル(約1万6600円)~、6~8人用の8qt (7.5L)は179.95ドル(1万9900円)~となっています。

 

筆者が使っている6qtは小さめの太鼓ぐらいでしょうか。2017年にAmazonプライムデーで購入しましたが、80ドルぐらいで買ったと記憶しています。今年のプライムデーでも30%以上の割引になったので、おそらく2018年にも人気商品となることでしょう。

 

アメリカでは夫婦共働きが一般的です。そのため安全で時短、かつおいしい料理が全自動で作れるInstant Potは共働き世帯の強い味方。帰宅後、子どもを待たせつつしていた夕食作りのストレスが減り、気持ちに余裕ができたと感じます。作り置きですらめんどうに感じる筆者ですが、時間がかかるため敬遠していたBBQリブ、野菜を丸ごと使ったスープなど、料理のレパートリーが増えて野菜嫌いな息子も以前に比べ、良く食べるようになりました。おいしい時短料理のおかげで、夫婦でゆっくり話す時間が持てるようになったのもInstant potのおかげかもしれません。この調理家電はすでにアメリカの夫婦にとって、なくてはならないアイテムとなっています。

フレンチBBQはもう遅い! フランスでは「フレンチ鉄板焼」が台頭中

普通のBBQとは差別化し、日本でも「フレンチBBQ」という言葉ができるくらい、フランスではBBQは身近な存在。アメリカ人のように、フランス人も自宅は当然のことながら、公共のスペースでもBBQを行います。しかし、そんなフレンチBBQにも変化の兆しが――。本稿ではフランスBBQの最新事情や人気のBBQアイテム、フランス人のBBQ観をお伝えします 。

 

フレンチBBQの特徴

フランスのBBQは自宅や親・親戚宅の庭などで家族や友人たちと楽しむのが基本です。また、キャンプ場にBBQコーナーが設けられていたり、大規模な公園にBBQスペースがあったりします。

 

ただし公園などの場合は特に、衛生管理が行き届いていない状態で放置されていることも多く、地元の人たちはあまり利用しません。

 

一方で筆者が住むナント市では、毎年夏に”ナントへの旅”と題したアートの祭典が開催され、そのイベントの一環として市内の川辺に屋外BBQ場が約2か月間だけ登場します。

 

中央に複数のBBQ台が並び、周辺一体にテーブルとベンチが設置され、開始時間の夜7時を過ぎると、人々がそれぞれ焼きたい食材や飲み物を持って集まります。食材は各自で焼きますが、BBQ台で使う炭の管理は、係の人が2〜3人付いてお世話をしてくれるのです。さらにナント市による運営ですが、利用に際しての費用は一切かかりません。

 

フランス人にとってBBQというと、先述したように自宅などの庭で行うのが常でした。しかし家族の形も多様化し、集合住宅で庭がなかったり、複数の家族も集まれるほど自宅のスペースが広くなかったりする場合もあります。そのため大人数でやりたいときなどは、このような管理者がいる公共のバーベキュー場はとても便利で、アパルトマン在住時には友人たちと何度か利用しました。

 

筆者は、フランス人のBBQ好きを日頃から実感しています。というのも、春先から秋にかけ天気のよい日の夕方に住宅地を歩けば、必ずと言ってよいほどあちこちからBBQの匂いがするのです。

 

まるで「天気がよい日=BBQ日和」という公式があるかのように、週末になれば昼間から、平日でも夕方〜夜にかけて炭火をおこしています。この時期は、だれかを家に招待する際もBBQでもてなすことが多くなります。

「鉄板焼き」が人気上昇中

近年、炭焼きBBQと並んでフランスで支持を伸ばしつつあるのが、屋外用の鉄板焼きである「プランチャ」です。炭をおこす手間が省け煙も少なくて済むことや、使用後のお手入れが炭を使うBBQより、簡単であることが支持されている理由かもしれません。先日お呼ばれしたお宅でも、ホストがこのプランチャで「アンドゥイエット(フランスの代表的な腸詰料理)」などを焼いて振舞ってくれました。

 

上の写真のような卓上タイプは、80ユーロ(約1万400円)から。高いものになると1000ユーロ(約13万円)台と、様々なタイプの製品が揃っています。

 

プランチャの起源は、19世紀よりスペインにおけるキリスト教の宗教行事で大勢の人たちに料理をふるまうために使われ、その際、巡礼時にこの鉄板もフランスに持ち込まれたと伝えられています。プランチャ自体は古くから存在していたにも関わらず、なぜいま注目されているのでしょうか?

 

その理由の一つとして、プランチャが「食材を選ばず焼けること、適温調節をしながら食材の旨みを逃さず調理できること」が挙げられます。なかでも特に、従来の炭火焼BBQでは扱いにくいとされた魚などのシーフード類・脂身の少ない肉・野菜などの食材が美味しく焼けるため「ヘルシーBBQ」としての需要が高まっていることが注目のポイントでしょう。

 

この「食材の持つ旨みを逃さず」という点は、高熱の鉄板に水分を含んだ食材をのせることで水蒸気が生じるという「ライデンフロスト効果」の働きによるものです。これによって、鉄板の上で食材が水蒸気に包まれるために、旨みや水分が逃げにくくなるんですね。 ソーセージなど脂身の多い肉類が主流だった炭火焼BBQとは楽しみ方が違うものともいえるのかもしれません。

 

家電や調理器具販売店などで扱われているプランチャには電気式とガス式のものがあり、どちらも家庭で簡単に取り付けられる仕様になっています。

 

夏をとことん楽しむヨーロッパの流儀

その一方、従来型BBQのアイテムでもより簡単に楽しめているものが増えています。

 

下の動画で紹介しているような「BBQ用の切って洗える網」は最近よく出ているアイテムの一つ。これはBBQグリルのうえにのせて使う、目の細かい繊維状の網。グリルの大きさに合わせて網を切り、使用後に洗って再利用できるのが特徴です。

 

食材をこびりつかせず、炭の中に落とす心配もないと謳っている商品で確かに重宝しますが、実際に使用してみた感想は、案外もろいということ。使い方にもよるのでしょうが、筆者の場合は3~4回の使用で、中央に穴が開いてしまいました。こちらは10(約1300円)ユーロ前後で買うことができます。

 

フランス人にとってBBQは、家族や友人と、屋外で飲んで食べながらおしゃべりを楽しむこと。食べる内容そのものよりも「BBQをきっかけに皆で集まる」ことのほうが大事なのです。フランスに限らず、長く厳しい冬を過ごすヨーロッパの人たちにとって、屋外で食事ができること、そして、この短く限られた期間をとことん楽しむことが彼らの流儀。開放感のある屋外で太陽の光を浴び、外気に触れながら、気心知れた仲間たちと食事を楽しむことは、フランス人にとってこのうえない喜びでもあるのです。