米国で経済的に最も進んでいる州はどこ? シリコンバレーがあるカリフォルニアは意外にも1位ではなかった

Google、Facebook、Amazonとアメリカの大手テック企業が経済ニュースに登場しない日はないですよね。日本からもスマートニュースやメルカリといったスタートアップ企業がアメリカに進出していますし、アメリカのテック企業で働く日本人エンジニアを見かけることはニューヨークでも珍しくなくなってきました。これは西海岸でも同じようです。

 

日本で働いている人も実はアメリカ進出に興味がある方は多いはず。「あの同僚もLinkedInに英語のプロフィールを作ってる!」と驚いて触発された方もいるでしょう。

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じゃあ「アメリカのどこ?」と聞かれると、カリフォルニア州シリコンバレー以外になかなか評判が聞こえてこないのも事実です。でもアメリカのテクノロジー経済は東西南北に広がっているってご存知でしたか? それを如実に示している「ニュー・エコノミー指標 2017」を今日は紹介したいと思います。

 

世界有数の非営利シンクタンク・ITIF(インフォメーション・テクノロジー・アンド・イノベーティブ・ファンデーション)が約20年間にわたって調査している「ニュー・エコノミー指標」は、ITイノベーションによる経済成長がどの州で起きているのかをランキング形式で発表しています。

 

エリートな州が競うトップ5

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1位:マサチューセッツ(スコア96.6/100)

 

2位:カリフォルニア(84.7)

 

3位:ワシントン州(84.5)

 

4位:ヴァージニア(81.7)

 

5位:デラウェア(80.4)

 

ワースト5は、下から順番にミシシッピ(37.9)、アーカンソー(42.8)、ウェスト・ヴァージニア(44.1)、ワイオミング(47.1)、ルイジアナ(47.6)となっています。

 

西海岸と東海岸に偏っているかと思いきや、コロラド(7位)、ユタ(9位)、ミネソタ(12位)、テキサス(17位)、ジョージア(18位)と中西部や南部にもテクノロジー経済は点在しているようです。ニューヨークは11位となっています。

 

エンジニアだけじゃない、テック業界が欲しがる人材

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ニューヨークに住む私の周りでも、テック企業へ転職を希望している知人が増えています。エンジニアはもちろん、マーケティングや人事部の仕事をしている人でもGoogleやAmazonといった大手テック企業やスタートアップに移ろうと狙っている人は多くなっています。

 

その理由は、経済が大きく成長しているこの分野では人材確保の競争も激しく、企業も給料や勤務体系といった面で高待遇を提示しているところが多いから。この業界での経歴を身につけることでその後のキャリアも広がります。

 

Amazonは第2本社を建設する都市を選別中ということで、全米の都市が「ウチに来てください!」とラブコールを送っています。そんな中のこのニュー・エコノミー指標の発表を受けて、Amazonの本社があるシアトルの新聞シアトル・タイムズは「Amazon第2本社を誘致したい州はこのランキングの上位に入ってないとまずいだろう」と述べています。

 

「州の経済が栄えるかどうかは、究極的にはモノやサービスをグローバル市場へ輸出し、厳しい競争に勝ち残っている企業が存在しているかどうかによる」とITIFのプレジデントでレポートの共著者であるロバート・D・アトキンソン氏は述べています。

 

アメリカでは、テック企業によって地域の経済が成長し、そこから新しい世代のスタートアップも生まれるということが起きています。アメリカで働きたいなら、どこにするか? 選択肢は1つではありません。

 

評価基準

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ニュー・エコノミー指標は、評価項目が大きく5つに分かれています。1つ目は「知識ベースの仕事の割合」。マネージャーや技術者といった職業の割合、知識ベースの職業に就く海外からの労働者の流入などがこの項目では調査されています。各州にどれくらいテクノロジーやイノベーションのための労働力が存在しているかということですね。

 

2つ目はモノやサービスの輸出先がグローバルであるかどうかといった「グローバリゼーション」。3つ目の「経済的なダイナミズム」ではスタートアップがどれくらい生まれているか、急速に成長している企業はいくつ存在しているか、特許はいくつ取得されたかなどが評価されます。

 

面白いのは4つ目の「デジタル経済」。ここではブロードバンドの速度、州政府が情報を伝達するときにITをどれくらい活用できているか、医療分野ではどうか、そして農業においてインターネットとコンピューターがどれくらい活用されているかが評価されています。農業におけるデジタル技術の普及具合も見られるなんて驚きですよね。

 

最後は「イノベーション・キャパシティ」。電子機器製造やテレコミュニケーション、バイオ医療といったハイテク産業の仕事の数や研究開発に注がれる投資金額などが評価されています。

 

ただ単にイノベーション関連の仕事が集まっているだけではなく、デジタル環境が良い地域かどうか、州や国境を越えた労働力を受け入れる土壌があるかなども分かるわけですね。

 

1999年からずっと1位のマサチューセッツの場合、ソフトウェアやハードウェアにおける大企業が集まっているほか、MITやハーバード大学からの支援を受けるバイオテック企業も多く存在していることが理由として挙げられています。

 

逆に投資を集めているという点で飛び抜けているのは、やはりシリコンバレーを持つカリフォルニア。なんとアメリカのベンチャー・インベストメントの55%はカリフォルニアに注がれているとのことです。

 

参照:ITIF, “The 2017 State New Economy Index”

「火星で最初のビールになる!」と意気込むバドワイザー。ビールの“宇宙味”は生まれるか?

アポロ13号の月面着陸――。当時はまだ生まれていなかった人でも、その写真や映像はどこかで見たことがあるはず。歴史的な瞬間を捉えた写真は、世界中の人々の記憶に刻まれるものです。そんな作品を生み出すのは並大抵のことではありませんが、別の方向から宇宙開発の歴史に名を刻もうとしている企業があります。バドワイザーで有名なアメリカ大手ビールメーカーのアンハイザー・ブッシュ社は、「火星に人類が到着した時にバドワイザーを飲んで祝ってもらう」という目標に向かって宇宙空間でのビール醸造法研究に投資しているのです。

 

長い間、人類は火星探査を行っています。NASAは2030年までに有人探査に向けて人間を火星に着陸させる計画を進行中。2030年といったら13年後。13年前の自分が「2017年なんてまだまだ先」と考えたことを想像していただくと、「うーん意外とスグだな」と驚いてしまいませんか。

 

この計画は今年3月に発表されていましたが、ビールの原材料である水やホップなどを火星で確保・管理することは難しいとされています。そこで、バドワイザーは12月4日にSpaceXの宇宙船で国際宇宙ステーションに大麦の種を送り込み、無重力・微重力環境において発芽するのか、どのような速度で成長するのかといった実験を行いました。バドワイザーの公式リリースによると、バドワイザーに使われる大麦は地球上であれば発芽してから2週間ほどで約15センチほどに成長するとのこと。しかし火星は太陽光が地球よりも少ないので、これが種の育成を難しくするかもしれません。

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また、国際宇宙ステーションで30日間保存された種が無重力空間からどういう影響を受けるのかについても観測されるとのこと。美味しいビールを醸造するためには大麦から始まるということですが、こちらの実験結果はビール製造だけでなく、宇宙空間での植物栽培についての基礎研究としても活用されます。

 

風邪のときに何を食べても味がしないのと同じ

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宇宙飛行士が火星でバドワイザーを飲む。確かにこの映像が実現すれば、バドワイザーとしてもかなりのマーケティング効果が期待できそうですよね。しかし気になるのは「宇宙でビールを飲んで美味しいのか?」という点。米ワシントン・ポスト紙(Amazonが数年前に買収)は「重力がないと体液が下にとどまらないので鼻腔も詰まりがちになる。そうするとビールも味がしないだろう。風邪(で鼻がつまっている)のときに何を食べても味がしないのと同じだ」と指摘しています。これはちょっと残念。それにしても体液が下にとどまらないとは、どういう感覚なのでしょうね。

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他にも大気圧が低いため、炭酸の泡もシュワシュワっと上がってはこないだろうとのこと。缶を開けたときの「プシュッ!」という音もないわけですね。そう言われるとビールじゃなくて別の種類のアルコール飲料の方が良さそうな気がしてきます。米テクノロジー雑誌のWiredも「蒸留酒の方が良い」と指摘しています。

 

それでも、この計画にはワクワクしてきます。近年ではAmazonやSpaceXといったアメリカの民間企業が競って宇宙船を開発中。「火星で最初のビールになる!」とバドワイザーが名乗りを上げたことからも同国の精神が伺えますよね。他のビールメーカーが続くのか、そしてビールはどう進化するのか、要注目です。

世界中で賛否両論のコカ・コーラの風物詩「クリスマス・キャラバン」、コカ・コーラの取る対策とは?

12月も中旬に入って街の電飾やウィンドウも一気にクリスマスムードになりましたね。アメリカでは11月末の感謝祭までは七面鳥などをあしらった飾り付けが街を彩るのですが、この日が終わるとすぐにクリスマス一色に変わります。

 

多くの国でクリスマスと聞いて人々が思い浮かべるのは真っ白なヒゲを生やして真っ赤な服を着たサンタクロースではないでしょうか。このサンタのイメージはコカ・コーラが1930年に広告に使ったものが一気に世界中に広まったことはよく知られています。

 

コカ・コーラとクリスマスという組み合わせで多くの人に知られているものは他にもあります。それが「クリスマス・キャラバン」という名前で宣伝されたコカ・コーラ・トラックです。1995年にトラックをフィーチャーしたCMが放送されると同時に、アメリカでは全国65都市を実際にトラックが訪ねてまわり、コカ・コーラを子どもたちに無料で配るというキャンペーンを行いました。ヨーロッパでもいくつかの都市で行われたようです。

 

こちらが1995年のCM。これを見ると一気にノスタルジックな気分にさせられますよね。

コーラ生誕地のアメリカでは、コカ・コーラの看板やコマーシャルがいたる所に存在していますが、全国を回るトラックツアーは現在では行われていません。しかし、面白いことに大西洋を越えたイギリスでは20年が経った今も続いており、年末のホリデーシーズンを告げる伝統としてすっかり定着しているのです。

20171205_kubo17↑ こちらはスイスでのキャラバンの様子(©The Coca-Cola Company)

 

無料配布に待ったの声

そんななか「今年もやるよ!クリスマス・キャラバン!」と全国ツアー日程を発表したところ、国の国民保険サービス長官から「コカ・コーラには砂糖が大量に入った清涼飲料を宣伝するのを辞めてほしい」「地域の子どもたちには水や砂糖の含まれないドリンクを配ってほしい」とコメントを出されます。それだけでなく政府の肥満防止対策にも関わっている団体「パブリック・ヘルス・イングランド」も肥満や虫歯の原因となることを指摘し、地方政府はコカ・コーラのトラックによるコーラの配布を許すべきかどうか検討すべきと声明を出しています。

 

砂糖の摂りすぎによる肥満はイギリスやアメリカで大きな問題になっています。特に子どものときから甘い清涼飲料ばかりを飲む習慣を身につけてしまうと、長期的に大きな健康リスクを抱えてしまいます。この問題は特に貧困地域に住む子どもたちに顕著であり、クリスマス・キャラバンのツアーがこういった貧困地域も訪問することに懸念を示しているのですね。せっかく啓発活動を続けてきているのに、「砂糖が大量に入った炭酸飲料が街のど真ん中で子どもたちに無料で配られるなんて許せない!」というわけです。

 

この問題はTwitterでも大きく話題になっており、一般ユーザーからも「トラック楽しみ! いつウチに来るかな」という声もあれば「国民保険サービスでかした!」という声、「賛成か反対かは微妙だな」と賛否両論が巻き起こっています。

20171205_kubo18↑ ドイツでのキャラバンの様子(©The Coca-Cola Company)

 

コカ・コーラのとった対策とは?

これに対してコカ・コーラはすぐに「配布するコーラ3種のうち2つ(ダイエットコーラとゼロシュガー)は砂糖が含まれません。また12歳未満の子どもにも配っておりません」という声明を発表しています。

 

アメリカで国民的なブランドとして愛されている一方、肥満の原因の代表格としてやり玉に挙げられることが多いコカ・コーラ。ダイエット、ゼロシュガーに加えて来年は植物由来の甘味料ステビアのみを甘味料として使ったコーラを発売することを発表しています。砂糖とステビアを両方使った「緑のコーラ」であるコカ・コーラ ライフはすでに発売されましたが、新製品はステビアのみで、砂糖は使われません。

 

砂糖の大量摂取に対する危機感はアメリカでは年々高まっており、コカ・コーラもそんな世の流れに対応しようと頑張っているわけですね。

 

一方でコーラの種類が増えてしまい、ブランド統一のイメージがやや薄くなってきている印象もあります。店頭で注文する時も「ダイエットコーラください」「ダイエットはありません。クラシックはありますが」「じゃあコカ・コーラ ゼロください」「それもありません。ダイエット・ペプシならありますよ」「うーん、じゃあコカ・コーラ ライフ」「何ですかそれ?」といったやり取りが毎日のように交わされています。

 

そんななか、コカ・コーラは去年から「ワン・ブランド」キャンペーンとして、すべてのバラエティをまとめてプロモーションするというマーケティング戦略を取っています。1つのポスターのなかにゼロもダイエットもクラシックも登場し、「これらは全部同じコカ・コーラ」というメッセージを強く訴えています。

クリスマス・キャラバンは近年その開催地を増やしており、オーストラリアやデンマークでも開始されています。「無料でコカ・コーラがもらえる」と聞くと子どもはワクワクしてしまいますよね。果たして他の国でも論争は起きるのでしょうか。

ARは視覚障がい者をサポートできるか? 弱視者の視力を補強するスマートグラス「OXSIGHT」の実用化が近付く

AR(拡張現実)と聞けばエンターテイメントやビジネスに活用されている印象があります。しかし、ARの活用用途はより広い分野にも広がっています。

 

現在、視力を失った視覚障害者の目が再び見えるようになる「スマートグラス」の開発が急ピッチで進んでいます。

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スマートグラスを使うと、今まで見えにくかった物が見えるようになります。下の写真はスマートグラスを通して見える視界の模様を写しています(見えているのはボウリングの球)。白黒ではありますが、対象物の形状を認識できるようになります。

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このスマートグラスを開発する急先鋒は、オックスフォード大学の神経科学の研究者Stephen Hicks氏が共同設立したスタートアップ「OXSIGHT」。同社のスマートグラスのプロトタイプは既にでき上がっており、現在はユーザーテストの段階。実用化はすぐそこまで来ています。

 

OXSIGHTのスマートグラスはカメラ、コンピュータービジョンソフトウェア、透過ディスプレイで構成されています。原理としては透過ディスプレイを通して見える視界に、カメラとコンピュータービジョンソフトウェアによって生成されたAR画像を重ねるというもの。

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視覚障害者は、残存視力のある弱視者と視覚を持たない人(全盲)に分かれますが、このスマートグラスは残存視力を活用しています。緑内障を患って視界がぼやけてしまっている場合、対象物のコントラストをよりハッキリさせたAR画像を視界に重ねることで再び見えるようになります。脳や眼球との情報のやりとりはありません。

 

また、各ユーザーの視覚障害の程度や状態に合わせて、明るさやコントラストを調節することも可能。

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近年はITの急速な発展で、世界人口の1パーセント(約7000万人)と言われる視覚障がい者をめぐる状況は少しずつ改善されています。ARを使ったテクノロジーはその最新の進歩。OXSIGHTのスマートグラスは将来的に白杖や盲導犬の代わりとなるかもしれません。

日本発売が待ち遠しい! Googleの新型VRヘッドセット「Daydream View」は価格と手軽さが魅力

クリスマスが近づき、ギフトを提案する海外メディアが増えてきました。そのなかでもよく挙げられているのが、Googleが10月に発表したVRヘッドセット「Daydream View」の新モデル。なぜそんなにおススメなのでしょうか。本稿では、この新製品の特徴をざっとご紹介します。

 

新型のDaydream Viewは進化を遂げています。初代のモデルは2016年に発売されていますが、値段は79ドル(約8800円)でした。新モデルは20ドル値上げして99ドル(約11000円)。まだ発売されていませんが、新モデルが旧型と大きく異なる点は3点あり、価格が上がった分だけパワーアップしているようです。

 

・フルネルレンズにより視野角が90度から100度に拡大

・装着感の向上

・スマホの放熱を促すヒートシンク搭載

 

VR領域にはすでにGoogle以外にも有名企業が軒並み参入しています。Facebook傘下のOculus社のOculus Rift、HTCのVive 、SonyのPlayStation VRなど、多くのユーザーから支持を得ているVRヘッドセットが既に存在しており、それぞれのヘッドセットに対応したVRコンテンツを配信する各社独自のVRプラットフォームもあります。そんななかでGoogleは差別化するために「らしい」動きを見せます。

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VRプラットフォームDaydreamは、Googleがアンロイドのために開発したVRプラットフォームです。Android 7.1 NougatのOSそのものに組み込まれており、ソフトウェアとハードウェアの両方で仕様が規定されています。つまりDaydreamとはGoogleが定めたVR対応スマホ、ヘッドセット、開発環境の基準の総称のこと。Daydream対応のVRヘッドセットに対応のスマホをセットすることでVR環境を実現しています。

 

 

ライトユーザーをターゲットにユーザー数を増やす

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Daydreamの強みは2つあります。1つ目は値段。他社の本格的なVRヘッドセットは高価です。Oculus Riftは399ドル(約4万4000円)、HTC Viveは699ドル(約7万8000円)。一方の「Daydream View」新モデルは99ドルと安価です。

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2つ目は敷居の低さ。ユーザーはDaydream対応のスマホを持っていれば、後は安価なVRヘッドセット「Daydream View」を買うだけでVR環境を実現できます。この手軽さはユーザーにとって魅力的でしょう。「そこまで本格的なものでなくてもいいけど、とにかくVRを楽しんでみたい」と思うライトユーザーをターゲットにしていることは明らかです。

 

プラットフォームビジネスでは、ユーザーが増えれば増えるほど、そこから得られる価値が増加する「ネットワーク効果」が働きます。ライトユーザーをターゲットに、競合に先駆けて多くのユーザーの獲得を狙っているGoogle。新型のDaydream Viewのようにハードウェアを改良し、ユーザー体験を向上させるのは当然の流れと言えます。

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DaydreamのVRコンテンツは増加しており250以上のコンテンツがプレイ可能。ユーザー数が増えれば増えるほど、VRコンテンツのクリエイターにとって「Daydream」のプラットフォームとしての価値も増していきます。海外でも識者やユーザーは「近い将来、Daydreamはスマホに標準搭載されるだろう」とDaydreamを高く評価する声が多いです。

 

今年10月、OculusはOculus Riftの価格を当初の半額に近い399ドルにまで下げしました。おそらくDaydream Viewへの対抗策でもあるのでしょう。VRヘッドセットを販売する各社が自社のVRヘッドセットやプラットフォームへユーザーを囲い込もうとうするなか、Googleはまさに「Googleらしい」オープンなやり方でユーザーを獲得していこうとしています。

AIが画像に映っていないものまで“復元”するだと!? 海外で話題の無料サービス「Let’s Enhance」を使ってみた

テクノロジーが発展しても、画質の粗い画像には悩まされ続けます。「SNSのプロフィール画像に良さそう!」と思ってもサイズを拡大するとモザイクのようになってしまったり、昔の画像を使おうと思ったらサイズが小さいものしか見つからなかったり、いろいろな場面で「クオリティを復元するような技術があればいいのに」と思うことってありますよね。

 

ちょっとでも画像ソフトを使ったことのある方なら「映っていないものを”復元”する」ということがいかに難しいかご存知でしょう。街頭の監視カメラの粗い映像を分析して高画質にするというのはSF映画ではよく登場するテクノロジーですが、そう簡単に行かないのが現実です。

 

しかし先日発表されたLet’s Enhanceというオンラインサービスを使うと、そんな技術の実現も近いことが分かりますよ。

20171121_kubo05↑ Let’s Enhanceのホーム画面

 

フォトショップなどの画像ソフトを使えば、画像に写り込んでいる邪魔なものを消したり、存在しないものを作り込んだりということは可能です。また、低解像度の写真から大きなサイズの写真を作る「single image super-resolution(SISR)」と呼ばれるテクノロジーの研究は数十年間行われており、最近ではAIが「機械学習」をしながら画素数を増やして写真の表現力を高める方法もドイツの研究機関から提案されています。しかし、元の画像を全自動で“復元”してくれるテクノロジーがオンラインで使えるというのは新しいことかもしれません。

 

Let’s Enhanceはウェブベースのサービスとなっており、自分の持っている画像をアップロードすると自動で画質を向上させたファイルを生成してくれます。AIはまず画像が人間なのか、風景なのか、動物なのか、といったカテゴリを判断するそうです。そして、そのカテゴリに応じて適切なアルゴリズムを使うとのこと。試しに画質を落とした画像で実験してみました。

20171121_kubo01↑ 修正前

 

画質を落としたハスキー犬の画像(上)はLet’s Enhanceを使うと・・・

20171121_kubo02↑ 修正後

 

こうなりました。確かに粗さがスムーズになっています。ポートレートはどうでしょうか。

20171121_kubo03↑ 修正前

 

20171121_kubo04↑ 修正後

 

確かに肌や目の周りがスッキリとして画質の低さも気にならなくなりました。もちろん画像のサイズは10倍以上に増えてしまっているので、「サイズを小さいまま画質を良くする」というテクノロジーではありません。

 

ファイルのサイズを大きくするのにも便利

Let’s Enhanceが生成してくれるファイルには3種類あります。1つ目はJPEGで生成される圧縮アーティファクトという歪みを修正してくれる画質に「Anti-JPEG」というフィルターを使ったファイル。2つ目は「Boring」フィルターで、オリジナルの特徴を残したまま画質を改善するというもの。そして3つ目の「Magic」フィルターは、画像データベースを利用してアップロードされた画像には存在していないディテールを作り上げてしまうというもの。そんなことができてしまうのですね。上記の犬の画像は「Magic」フィルター、白黒の人物の画像は「Anti-JPEG」フィルターによるものです。

 

Let’s Enhanceはファイル5つまでは無料で利用することが可能。それ以降はオリジナルファイル10個ごとに約5ドルの利用料金がかかりますが、70個だと約20ドルとお得な価格になっています。

 

Let’s Enhanceは一般の方でも昔のデジカメや携帯電話で撮影した画像を保存したいときや、これまでは難しかった画像を作ってみたいときなどに活用できそうです。Twitter上でも「昔の家族写真に使うのにピッタリ」「ファイナルファンタジー9の背景画像、サイズが320×200のものをアップロードして1280×900のpngファイルを作れた! ゲームの“リマスター”ができるなんてスゴい!!」と興奮の声が集まっています。

 

確かに「壁紙に使いたいけど小さ過ぎる」という画像を大きくするのにも向いています。使い方もシンプルなので、AIが作り出す画像に興味のある方はぜひお試しください。

 

Let’s Enhance:  https://letsenhance.io/

 

マイホーム選びの新たな選択肢だ! 米国の一大ムーブメント「タイニーハウス」に新展開

アメリカの家と聞くと大きな一戸建てを想像してしまいますが、80年代からジワジワと人気を集めてきている「タイニーハウス」というムーブメントをご存知でしょうか? 40平米以下の家に必要最低限の家具を揃えてミニマルに生活をするというこのトレンドには、テクノロジーの発展で近年とても面白い変化が訪れているのです。

 

40平米と聞くと日本では1人暮らし、または2人暮らしでも十分に生活できる広さですが、タイニーハウスで人気なのは、それよりもずっと小さい20~30平米のものです。素材の軽量化や組み立てなどの簡易化などとも合わさって、なんと今ではAmazonで注文できてしまう物も登場しているほどです。

 

Amazonで家を注文……なんともすごい世界になりましたよね。その中には作り上げられた家をそのままデリバリーしてくれるものもあります。

 

デザインも機能も多岐にわたり、いわゆるコンテナハウスから本当に小さい家の形をしたものまであります。ミニマリストな生活は良いけどキャンピングカーやコンテナハウスみたいなのはちょっと……という方にも注目して欲しいのは、近年注目を集めている「スマート」なタイニーハウス。テクノロジーの発展で、小さいけれどスマート、快適かつ贅沢なタイニーハウスが出てきているのです。

 

Covo Tiny House

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タイニーハウスメーカーのCovoが提供する「Mio」はスマートホーム照明、空調、そしてスマートセキュリティーを備えています。アレクサと連携して照明や空調をコントロールできるわけですが、ちょっとした宇宙船みたいですよね。

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デスクは、高さを調整してスタンディングデスクとしても使えます。もちろんタイヤがついているので、牽引して動かすことが可能。庭やキャンピング地などに置いて、ちょっとしたオフィスとしても使えますね。ビデオで紹介されているモデルは55インチのモニターが備えられており、いくつもUSB充電ポートが配置されているとのこと。

 

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キッチンは一般的なものより充実しています。冷蔵庫、オーブン、広いカウンター、シンクと、狭い家でも料理スペースを確保し、充実させている点は、生活の重要な要素をちゃんと理解してくれている証拠。ただ単に狭いスペースに機能を詰め込んだだけではなく、快適に生活できるかを考慮して設計されています。洗濯機もついていますよ。

 

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窓は日よけ付の大型のものが側面についているので、面積は狭くとも開放感を演出できます。デッキ部分に椅子などを置けば、テラスのように使うことも可能。

 

自分の家よりも狭いのに、タイニーハウスには不思議と贅沢感が出ていますよね。Covoは注文に合わせて設備やスタイルを変更できます。それによって価格も変わるとのことですが、典型的なモデルはだいたい680万円ほど。オプションでアップグレードすると970万円くらいになるとのことです。

 

Alpha

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Mioより遥かに洗練されたデザインとラグジュアリー感を演出しているのが、New Frontier Tiny Homesによるタイニーハウスモデルの「Alpha」です。

 

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こちらの写真をご覧ください。なんとたったの22平米なのに、この贅沢感! ジャグジー付のバスタブ、洗濯機・乾燥機も備え付けられています。キッチンでも楽しく料理ができそうじゃないですか。

 

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床下のボックスを引き出すと、ダイニングテーブルをセットアップすることも可能。友人を招いてディナーパーティーを開催することも楽しそうです。

 

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テレビでも取り上げられたAlphaのお値段は1400万円~。

 

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スマートデバイスを活用して快適さを生み出したMioに対して、Alphaはスペースを賢く組み立てて「男のロマン」を実現しています。

 

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どちらも「小さい=我慢」ではなく「小さい=大事な要素を最大限楽しむ」という発想になっていることに感心してしまいます。

 

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日本でも「ミニマリスト」という言葉が流行していますが、広大なアメリカでも「必要な物を最小限に絞って、それらを最大限に楽しむ」というコンセプトは共感を呼んでいるようです。特にスマートデバイス付きのタイニーハウスはミレニアル世代に人気があるそう。この新しいライフスタイルの動向に今後も注目です。

プリンター付カメラはARでもう一歩進化する! HPの「Sprocket 2-in-1」で可能になる新しい写真の楽しみ方

チェキやポラロイドといったプリンター付きのインスタントカメラは静かなブームが続いています。結婚式やパーティのときにしか使わない!という人も多いかもしれませんが、使ってみるとノスタルジックな色合いについ惹かれてしまいませんか?

 

さて、PC・プリンター大手のHPからも実は類似の製品が登場しています。ベースになっているのはポータブルプリンター「Sprocket」。これは、自分のスマートフォンに保存されている写真をBluetooth経由で気軽に印刷できるというもの。新製品の「Sprocket 2-in-1」はプリンターにカメラも埋め込まれたデバイスに進化しています。片手で持てる大きさでありながら、同時にプリントアウトまでできるデジタル・インスタントカメラなのです。

 

今やプリンターは一家に一台あり、紙とインクを用意すれば誰でも気軽に写真を印刷できます。それでもプリンターとカメラが一体化して、片手で持てるくらい小型になったデバイスには新たな価値がありそうです。

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この新型ポラロイドカメラはスマートフォンとBluetoothで接続して、テキストを追加したりフレームを飾ったりすることができます。気に入った写真を選んでプリントアウトできるので、台紙の無駄遣いもありません。インクの要らないZinkペーパーに発色させるので、インクの交換も不要。ペーパーはステッカーになっているので、プリントアウトして冷蔵庫や壁にパッと貼り付けることができます。

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今ではアルバムに入った写真を眺めることは少なくなりましたが、「スマホのスクリーンじゃなくて紙の写真を眺めたい」という気持ちが湧き上がってくるときもありますよね。

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パーティや家族の集まりなどのイベントで写真を撮影した瞬間にプリントアウトして、その場で配ったり、壁に飾ったりすることで、日常の中に懐かしい光景を思い出させてくれる写真が増えるかもしれません。

 

さらに今回のバージョンアップによってAR機能も追加されたとのこと。プリントアウトした写真にビデオや画像を対応させて埋め込めるので、後日写真をアプリ経由でスキャンすれば、埋め込んだ写真やビデオを呼び出すことができるのです。

 

つまり、現実世界にプリントアウトされた写真が、あなたをアルバムの中へ連れて行ってくれるような役割を果たすということ。冷蔵庫に貼られた写真を見て、デバイスでそのイベントのビデオや写真をチェックするというリアルとデジタルを行き来する面白いアクションが可能なのです。

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デバイスにはSDカードのスロットもあるので、撮影した画像を保存しておくこともできます。使えるのは最大256GBまでのmicroSDカード。

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大きさもパーティなどに気軽に持っていけるサイズです(約7.7×12×2.9cm〔縦×横×幅〕)。重さは約190g。1つ約1万8000円という値段もスナップ好きには嬉しいですね。

 

AR、音声アシスタント、IoTといったテクノロジーの発展とともに、デバイスはどんどんと物理世界に入り込んできています。それを考えると、その場でプリントアウトできてデジタルのアルバムにもつなげられるプリンター付カメラの誕生は時代の最先端なのかもしれません。

ニルヴァーナではなくNervana! インテルのAI向け新プロセッサーは「2020年までにAIのパワーを100倍にする」

「インテル入ってる」で一般層の知名度を獲得したCPU(中央演算処理装置)メーカーのインテル。コンピューターにあまり詳しくない人でもプロセッサーといえば、その名前が浮かびますよね。

 

そんなインテルは10月中旬に、AI開発やドローン、自動運転車、ゲームなどコンピューターに課せられる演算処理がますます多様化かつ高負荷になりつつあることを受けて、同社初のAI向け「ニューラル・ネットワークチップ」である「Nervana」を年末までに販売開始すると発表しました。

 

ロボットがNervanaを必要としている!

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NervanaのポイントはAI向けであること。単に高性能と言っても、ゲームをするために作られたチップではないのです。

 

テック関連のニュースを追っていれば「マシーンラーニング」「ディープラーニング」といった言葉を聞かない日はないですよね。ひと昔前ならコンピューターに猫を識別させようとしたら、猫とはどんな形か、どんな大きさか、どんな色か……といった定義をユーザー側がいちいち正確に定義付けしなければなりませんでした。

 

それが現在ではラベル付けされた大量の猫と、猫でないものの画像をコンピューターに学習させることで(これがマシーンラーニング)、コンピューター自身が形や色、大きさといった要素に分解して、「猫」の構成要素のパターンを導き出すことができるようになったのです。このモデルは人間の神経細胞が相互に結びつき合って思考することを表現しているので、ニューラルネットワークと呼ばれています。

 

このおかげでAIが一気に発展しているわけですが、大量のデータを扱うため、その開発には高性能のプロセッサーが必要になります。そこで登場したのがNervanaで、まさにニューラルネットワーク分野をターゲットとしたプロセッサーとなっています。

 

これで涅槃の境地が近づくかも

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では、Nervanaは私たちにどのような影響を与えるでしょうか? ヘルスケア分野では「AIがガンやパーキンソン病といった病気の早期発見を正確にしてくれるようになる」、自動車分野では「自動運転車の実現がさらに近づく」、気候分野では「ハリケーンなどの天候の予想を正確にかつ早くできるようになる」と様々な可能性が見込まれています。

 

サーバーにおけるインテルのプロセッサーのシェアは90%を越えています。ソーシャルメディア、アプリ、ゲームとあらゆる場面でAIがどんどん活用されるなか、インテルは「2020年までにAIの性能を現在の100倍以上にする」と大胆に宣言しています。

 

Nervanaが実際にどれほどの性能を見せてくれるのかは来年にならないと聞こえて来なさそうですが、CPUメーカーの巨人が私たちの煩悩を減らして、ニルヴァーナ(涅槃)に達するのを助けてくれるのか注目です。

 

うわっ、マジ!? 米スタバのハロウィーン限定ドリンク「ゾンビ・フラペチーノ」の見た目がクレイジー過ぎ

近年、日本でも盛り上がるようになったハロウィーンですが、本場アメリカでは国をあげての大騒ぎです。全国の大都市で子どもだけでなく大人も本格的なコスチュームを着てパレードに繰り出します。

 

ハロウィーンをピークにもう1つの盛り上がりを見せるのが「秋のグルメ」。パンプキン風味の期間限定メニューやドリンクを色々なレストランやカフェが展開します。その中でも恒例となっているのがスターバックスのハロウィーン限定フラペチーノ。

 

2014年から毎年ハロウィーン限定の特別フラペチーノを展開してきているスタバですが、今年のテーマはなんと「ゾンビ」!!

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カップに収まったドリンクはまるでゾンビの身体のように緑色をしています。そしてトップにはピンク色のホイップクリーム。脳みそをイメージしているとのことですが、確かにちょっと脳のシワっぽいです。そして下へと流れるのが血液に見立てたモカドリップ、と「飲みたい!」と思わせるよりも「面白い!」と思わせる方向へぶっ飛んでいるのがよく分かります。

20171030_kubo05↑米国スタバで展開されるハロウィン限定フラペチーノ

 

日本でも「ハロウィーン ミステリー フラペチーノ」が期間限定で販売されています。公式サイトによると、こちらは「生い茂る木々やクモの巣をイメージして」作られており、「チョコレート感たっぷりな印象とは違う味わいの、“いたずら心”あふれる」飲み物になっているようですが、見た目に関していえば、いたずら心はまだまだアメリカに及ばないですね。

20171030_kubo01↑日本版の限定メニュー

見た目がぶっ飛んでいるからといって、ゾンビ・フラペチーノが身体に悪いわけではまったくありません。素材にはアップルタルトとキャラメル風味のドリンク、ホイップクリーム、モカドリップ、フレーバーだけを使用。見た目と味のギャップに驚くかもしれませんね。

 

でも、そもそも一体なぜゾンビなのか? この質問には公式のニュースリリースで回答しています。ハロウィーン限定ドリンクのモチーフには、これまでフランケンシュタインの怪物、ヴァンパイアが使われてきました。「あとはどんなモンスターが残っているか?」という発想でゾンビが選ばれたそうです。

 

「ザ・ウォーキング・デッド」「フィア・ザ・ウォーキング・デッド」とアメリカではゾンビを使ったドラマや映画の人気が長年にわたり続いています。大人も子どももワクワクしてしまうモチーフなのは間違いなしなのです。

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ハロウィーン限定メニューはこれだけではありません。包帯にまかれたミイラを可愛くデザインしたケーキポップ。メキシコの祝日「死者の日」のガイコツデザインをモチーフにしたクッキーも販売されています。

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奇妙なものから、かわいらしいものまで、様々な見た目をした商品でハロウィーンを盛り上げるアメリカのスターバックス。これらは10月26日から31日の間だけ販売されるとのこと。店舗の在庫がなくなり次第、終わってしまうそうなので、アメリカにいる方はお店に急ぐことをお勧めします。異文化体験またはお土産話にぜひ1つお試しあれ!

 

 

 

職場づくりの参考に! マイクロソフトが導入したツリーハウスが仕事観を変える

どんな企業もオフィスのデザインを工夫して生産性を上げようと努力していますよね。卓球やバランスボールといった遊び心をオフィスに導入するアイデアは日本でも少しずつ広がりつつあるようです。しかしマイクロソフトほどの大企業になると、土地を大胆に使ったオフィススペース改革ができるよう。

 

先日話題になったのはマイクロソフトのワシントン州の本社キャンパスにオープンされたツリーハウス・スペース。その名の通り、オフィスの敷地の一角に社員がミーティングや仕事のために利用できるツリーハウスが作られたのです。

20171026_kubo13Photo: Microsoft

確かにこんな所で働けたらストレスも減り、リラックスできて生産性も上がりそうだなと思ってしまいますよね。

 

頭が冴える! オフィスとしての機能も充実

20171026_kubo14Photo: Microsoft

屋根のついたラウンジスペースもあれば、オープンスペースもあります。もちろん広大なマイクロソフトのキャンパスなので、ツリーハウスの周囲も木に囲まれたリラックスできる環境になっています。これが仕事場だなんてちょっと信じられませんよね。

 

オープンスペースのベンチはちゃんと防水になっており、パソコンのための電源も雨風から守られたデザインになっています。言うまでもなくWi-Fiも完備。太陽の下、木陰で落ち着きながら集中して仕事ができるなんて夢のようです。

 

他のスペースから隔離されたミーティング室もあります。それでも、あくまでもツリーハウスなので、ちょっとした強化合宿のような気分で頭もスッキリして鋭いブレインストーミングができそうじゃないですか。近くにはカフェテリアもあり、バーベキューレストランもあるとのことなので、アウトドアの魅力も堪能できます。

20171026_kubo12Photo: Microsoft

制作はアメリカの人気番組「ツリーハウス・マスターズ」のPete Nelson氏によるもの。20年は利用できるように設計されたこのツリーハウスですが、驚きは木が今後成長するにつれてツリーハウスも拡大していくということ。少しずつ姿を変えていくので、常に新鮮なスペースとして使いたくなるわけですね。

 

「素晴らしい」と社員からも絶賛の声

20171026_kubo15Photo: Microsoft

 

マイクロソフトの公式ブログでは利用している社員たちの感想も紹介しています。「入っていって初めに気付くのは皆が本当に静かなこと。自然と話すのを止めて、その瞬間に集中するんだ。素晴らしいよ。自然を吸収すると、自分の仕事に対する見方が変わるし、やり方も自然と変化しているよ」というコメントにも説得力がありますよね。

20171026_kubo16Photo: Microsoft

 

Twitter上にも「マイクロソフトとの案件ってなかったっけ。仕事したい」といった声が上がっています。社員じゃなくてもちょっと使ってみたくなる気持ちは分かります。

20171026_kubo17Photo: Microsoft

 

生産性を高めるために、多くの方が色々なアプリやスケジュール帳を利用していますが、デスクや椅子、照明の色などが与える物理的または環境的な影響も大きくあります。ツリーハウスはその究極の形かもしれませんね。きっと愛社精神も上がるのではないでしょうか。

 

 

サムスンの新AIアシスタント「Bixby 2.0」はSiriやCortana、Alexaとどこが違うのか?

じわじわと日本にも入りつつある音声アシスタントデバイス。Siriの登場から6年ほど経った今、もはやAIアシスタントは「音声で操れる便利なインターフェース」以上の存在へと進化しつつあります。AmazonのAlexa、GoogleのGoogleホームはスマートホーム関連の様々なIoTデバイスをつなげることで、消費者のインフラストラクチャの座を虎視眈々と狙っています。

 

サムスンもこの市場に食い込もうとしています。10月中旬、同社は、今年3月に発表したAIアシスタント「Bixby」を大幅にアップデートした「Bixby 2.0」を発表しました。当然ながら、狙いはただの音声アシスタントではありません。

20171026_kubo19Photo: Samsung

 

家電メーカーの強みを活かした戦略

サムスンの発表によるとBixby 2.0は家電を含めた多くのIoTデバイスをつなげ、簡単に操作、管理するためのハブとして位置づけられているとのこと。

上記の初期Bixbyのデモ動画でもよく分かるように、Bixbyは写真の送信やアラームの設定、予定の入力とあくまでも「スマートフォン用のインターフェース」という位置づけでした。

 

それが自宅の空調や照明、コーヒーメーカーや音響システム、テレビといった様々なデバイスをコントロールしてくれるスマートホームのAIアシスタントと進化するわけですね。これはまさにAmazonやGoogleがエコーやGoogleホームでやろうとしていることです。

 

2.0になり自然言語の認識も向上され、サムスンが今後発売する家電もどんどんとBixby 2.0に対応していくとのこと。先日の発表でも来年から発売されるテレビはBixby2.0対応のものが登場すると述べられています。サムスンは多くの家電を提供しているので、AmazonやGoogleと比べてこの点が同社の強みですね。

 

そう考えると、家電メーカーでもあるサムスンがスマートホームをまとめるAIアシスタントに取り組むのは理に適っています。現状、最も近いライバルは、SiriやCortanaといったアシスタントというより、巨大なエコシステムを作るべく奮闘しているAmazonのAlexaになりますね。

 

サムスンはディベロッパーのためのアプリ開発キットも公開する予定とのこと。サードパーティによるアプリも取り込んで「Bixbyエコシステム」を拡大させていきたいという狙いが見えます。

20171026_kubo20Photo: Samsung

 

AmazonとGoogleは各アシスタントを独立したスピーカーとして普及させようとしているのに対して、サムソンは既にユーザーが持っているスマートフォンを活用しようとしています。この違いも興味深いのですが、今後Bixby専用のスピーカーが登場するのか注目です。

 

立ちはだかるネットの巨人

狙いは野心的なBixby2.0ですが、海外メディアは割と冷めた目で見ているようです。Bixby誕生の際も、Galaxy S8の発売時点では英語に対応しておらず、わざわざボタンが存在しているのに使えないという状況が生まれてしまっています。

 

また、サムスンのスマートフォンユーザーの多くは既にGoogleアシスタントの利用者であるので、英語に対応したとしても、わざわざBixbyに乗り換えるほどの利便性があるのかどうか疑問が残ります。「データという面ではGoogleの方が有利だ」とBBCは指摘しています。

(出典:”Take two for Samsung’s troubled Bixby assistant”, BBC, October 19 2017, http://www.bbc.com/news/technology-41677366

 

The Vergeも「誰もサムソンに提供して欲しいとは思っていないサービスが、使えない状態で装着された状態である」と酷評。もちろん、ユーザー数が増え、対応デバイスが増え、ディベロッパーたちが参加するにつれて利便性が大幅に改善される可能性はありますが、今すぐユーザーたちの興奮を呼ぶプラットフォームにはなっていないというのが現状のようです。

(出典:“Samsung announces Bixby 2.0 six months after launching Bixby 1.0”, The Verge, October 18 2017, https://www.theverge.com/2017/10/18/16498120/samsung-bixby-digital-voice-assistant-second-generation-release )

 

IoTやショッピングなど、あらゆる場面のエコシステムの中心になっていくと見られている音声アシスタント。Bixby2.0からは、長期的な視野でインフラ側に回りたいというサムスンの野心が見えてきます。強力なライバルを前にして課題は多そうですが、家電メーカーとしての強みを活かせるのか今後に期待です。