カルチャーの街・秋葉原…呑み足りない夜の超穴場って知ってた?「ほろ酔い道草学概論」第六話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

↑初旅行で地味にはぐれた後輩の秋川千穂(右)と酒好きの先輩・正宗さん。ホンモノの温泉卵を味わいました

 

長野県の諏訪へ旅行に行った2人はいつも通りの日常へ。年の上半期も終わりを迎え、職場の飲み会でほど良く酔っ払っている千穂は、何やら怪しげな正宗さんが気になり…。

 

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【今月の一献】

だいだいエール

 

 

日本のクラフトビールでも有数の「常陸野ネストビール」は、茨城県那珂市の蔵元・木内酒造が日本酒づくりの英知を活かしてつくられています。クラフトビールの本場である欧米に並ぶ味は、今や世界35か国以上で愛されているものになりました。

 

そんな常陸野ネストビールは、東京では丸の内、エキュート品川、そしてマーチエキュート神田万世橋店で楽しめます。正宗が味わった「だいだいエール」は、筑波山の麓、八郷産の福来みかんと、その香りを引き立たせる柑橘系のホップを使用。フルーティーで爽やかな香りと旨味を特徴としています。

 

ホワイトエール

 

 

常陸野は木と緑に恵まれていて、昭和初期にはビール麦の生産量が日本一であったビールづくりに適した環境です。

 

常陸野ネストビールは、イギリスやドイツ、アメリカなどから厳選したの欧米から厳選した原料を選び、また地元産のビール麦や、梅の実、古代米、柚子といった日本を感じる味わいと、その土地の文化を背景にしたストーリー性のあるものづくりで、世界に認められています。

 

爽やかな香りとやわらかい味わいが人気の「ホワイトエール」は、世界で知られるフクロウラベルを印象づけた銘柄。

 

「常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店」について

赤レンガ造りの旧万世橋駅をリノベーションして誕生した商業施設、「マーチエキュート神田万世橋」にある店舗。かつて文化人から大衆までが集い、交流がさかんに興ったその地は、現在も常陸野ブルーイング・ラボを通じてビールを中心に人々が語らい、文化を作り上げています。店舗では誰では誰でも麦汁造りを体験できるプランも随時予約受付中。

 

常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店

■営業時間(月~土/日祝):11時~23時/11時~21時(ラストオーダー:22時30分/20時30分)

■電話番号:03-3254-3434

 

 

さてさて、毎度のことながら若干緊張感が足りないまま、女ふたりで終電を見送ってしまいましたが。秋葉原の今まで見たことない夜の顔、はたしてどんな素顔なのでしょうか? もちろん次回に続きます!

 

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(参考文献)

江戸・東京文庫② 江戸の名残と情緒の探訪 江戸・東京 歴史の散歩道2 千代田区・新宿区・文京区/発行:街と暮らし社

神田万世橋まち図鑑/発行:フリックスタジオ

千代田まち事典―江戸・東京の歴史をたずねて/発行:千代田区区民生活部

呑んで歩いてみつけた。超インドア女子が告げる「ゆるくも大きな決意」とは…!「ほろ酔い道草学概論」第五話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

↑好奇心旺盛な秋川千穂(前)と、何かとパワフルで酒呑みな会社の先輩・正宗さん(奥)。「上諏訪街道 呑みあるき」では諏訪五蔵の美酒を堪能しつつ、酔いで開放的になった人々の様子に幸せを感じました

 

思い切って正宗を遠出に誘った千穂ですが、大勢の人で賑わう飲み歩きイベントで彼女とはぐれてしまうアクシデントに! 酔いも覚める緊急事態の最中、千穂の心にはある思いが…。

 

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【今回の一献】

信州舞姫 純米吟醸生酒/舞姫(舞姫酒造)

 

 

他の諏訪五蔵と同じく、霧ヶ峰の伏流水を使用した生酒。お米は、長野県で酒造りに広く使われる酒造好適米のひとつ「美山錦」を使用しています。スッキリと軽快な味わいを追求し、華やかな香りとフルーティーな味わいも兼ね備えた生酒です。実売価格は637円。

 

 

純米吟醸 麗人/麗人(麗人酒造)

 

 

長野県産の酒造好適米だけで醸した、麗人自慢の純米吟醸酒。生酒特有の香りや味わいを色濃く残しており、フルーティーな香りと爽やかながらお米由来の旨みと甘みが同時に楽しめます。常温、もしくは冷やでの飲み方がおすすめ。実売価格は572円/1728円/3240円(300ml/720ml/1800ml)。

 

舞姫、麗人ともに前回ご紹介した「呑みあるき」で楽しめる諏訪五蔵に名を連ねる蔵元。リニューアルされる「秋の呑みあるき」で、是非その味を試してみて頂きたいです!

 

諏訪湖間欠泉センターについて

前回の「上諏訪街道 呑みあるき」が行われている諏訪街道からは駅の反対側になりますが、諏訪湖もぜひ訪れてほしいスポットです。のどかな住宅街を抜けて広がる湖の眺望はもちろん、間欠泉センターなど地域ならではの楽しみがあります。

 

残念ながら2人は間欠泉を見れませんでしたが、諏訪湖の間欠泉は、昭和58年に噴出した当時は高さ50メートルという世界2位までの高さも誇った立派な間欠泉なのです(現在の噴出高は5メートルほど)!

 

時は経ち、次第に間欠泉の自噴間隔が長引くようになり、やがて自噴が止まってしまいましたが、現在はコンプレッサーで圧縮空気を送り、上部の冷えた温泉を取り除くことで、人工的に間欠泉を噴出させています規定の時間内であれば、噴出される間欠泉を観れますのでお越しの際はぜひ!

 

諏訪湖間欠泉センター

■営業日:年中無休

■営業時間:9時~18時/9時~17時(4月~9月/10月~3月)

■入館料:無料(団体での利用時は、要事前連絡)

■交通:JR中央線上諏訪駅より徒歩13分、中央道諏訪ICより車で18分

■間欠泉噴出時間:9時30分、11時、12時30分、14時、15時30分、17時(17時の噴出は4月~9月のみ)

■電話番号:0266-52-8282

 

 

あと忘れてはいけないのが、諏訪湖間欠泉センター名物の温泉卵づくり! 千穂が手製のものを「偽者」と言うほどの味…気になりますよね? 温泉卵づくりは、9月30日までは17時の間欠泉噴出後、17時30分まで体験可能。10月1日からはセンターが17時閉館となるため、16時30分まで体験できます。

 

初めてのお泊り旅を経験した千穂と正宗。ちょっとだけ心境の変化があったのかなかったのかはわかりませんが、次回からさらに二人の道草学は発展していきそうです!

 

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(参考文献)

●日本の湖沼と渓谷 6(長野:諏訪湖・上高地とアルプス渓谷)/発行:ぎょうせい

●諏訪市の文化財/著:諏訪市文化財専門審議会 発行:諏訪市教育委員会

●信州地名の由来を歩く/著:谷川彰英 発行:ベストセラーズ

 

(取材協力)

諏訪市経済部観光課

飲み歩きの概念が変わる!? 諏訪の日本酒イベントでOLが楽しみすぎた結果…「ほろ酔い道草学概論」第四話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがある。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが日本各地で道草を食いながら、その土地ならではの美酒に酔うショートストーリーです。

 

↑好奇心旺盛な秋川千穂(左)と、何かとパワフルで酒呑みな会社の先輩・正宗さん

 

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「引きこもりだけど好奇心旺盛」という、なんともややこしい気質の主人公・千穂ですが、今回は冒頭から思いがけない行動に出ていますよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気になる続きは、8月3日(金)公開予定!!

 

【今回の一献】

 

銀撰真澄/真澄(宮坂醸造)

 

 

1600年代から続く伝統ある蔵元「真澄」。その名声を築き上げたロングセラーな一本です。杜氏が「ザ・真澄」と言い切るほどに信州では定番の日常酒となっています。香り穏やかでのどごしはスッキリとしているため、日本酒に慣れていない方でもおいしく飲めるはず。イベントでは樽酒として出され、特別な風味と香りが加えられた一献が楽しめます。

 

「上諏訪街道呑みあるき」イベントについて

 

↑「上諏訪街道 呑みあるき」イベントの様子

 

千穂と正宗さんが参加したのは、この春に行われた「春の呑みあるき」。作中でも描かれているように、長野県周辺だけでなく都内近郊からも多くの人が集まり、飲み歩きを自由に楽しむ光景が広がります。

 

宮坂醸造までの甲州街道沿いで「呑みあるき」は行われています。

 

同イベントは「秋の呑みあるき」と題し、10月6日・7日の2日間にわたって開催を予定! 次回は今までとは仕組みを変更されるとのこと。主な変更点はからご確認ください。

 

「秋の呑みあるき」イベント仕組み変更についてのお知らせ

 

秋の空気や味わいを楽しみながら、五蔵の魅力たっぷりなお酒で酔い歩く…。本編でも描かれていた、そんな特別な多幸感にあふれる時にぜひ触れてみてください。

 

(イベント主催/問い合わせ)

企画:上諏訪街道21

主催:呑みあるき実行委員会

共催:長野日報社

問い合わせ先:kikaku@masumi.co.jp

 

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「世界一の日本酒」が決まったので、覚えて帰って! 「SAKE COMPETITION 2018」結果速報

「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 」は、市販酒を対象とした世界最大規模の日本酒コンペ。2012年からスタートし、今年で7回目。日本酒の総出品数は約455蔵から1772点を数え、 前回の記録1730点を更新。事実上の「世界一の日本酒」を決める大会となっています。審査される部門は、純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(※)、発泡清酒部門、ラベルデザイン部門に、新設された「海外出品酒部門」を加えた合計8部門。

※720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上のもの

出品酒は、ラベルを隠した完全なブラインドで審査されるのが特徴。技術指導者、有識者、蔵元のなかから選抜された審査員(予審の審査員は37名、決審の審査員は41名、発泡清酒部門の審査員は15名)の採点を集計したものが結果となります。つまり、結果を見れば「プロ中のプロ、数十名が選んだ『絶対に外れのないお酒』がわかる」というわけです。6月11日(月)、その結果がザ・ペニンシュラ東京で行われた表彰式で発表されました。以下で一気に見ていきましょう。

↑審査の様子。出品酒はすべて銀色のフィルムが張られ、銘柄がわからないようになっています

 

福島・寫楽の地元銘柄がサプライズでトップに!

【純米酒部門】

GOLD 10点/SILVER 36点/予審通過 166点/部門出品数 456点

↑1位を受賞した宮泉銘醸の社長、宮森義弘さん

 

1位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
會津宮泉(アイヅミヤイズミ) 純米酒

2位 宮城県大崎市 株式会社新澤醸造店
あたごのまつ 特別純米 冷卸(ヒヤオロシ)

3位 宮城県白石市 蔵王酒造株式会社
蔵王 K(ザオウ ケー) 純米酒

4位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
クラシック仙禽 無垢(センキン ムク)

5位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
寫楽(シャラク) 純米酒

6位 京都府京都市 松本酒造株式会社
澤屋(サワヤ)まつもと 守破離 山田錦(シュハリ  ヤマダニシキ)

7位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人 特別純米(トウヨウビジン)

8位 滋賀県甲賀市 笑四季酒造株式会社
笑四季(エミシキ) センセーション 白ラベル

9位 福島県河沼郡 合資会社廣木酒造本店

飛露喜(ヒロキ) 純米

10位 広島県呉市 宝剣酒造株式会社
宝剣(ホウケン) 純米酒

 

三重・作の強さが目立ち、山口・東洋美人の健闘も光る

【純米吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 44点/予審通過 178点/部門出品数 534点

1位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 恵乃智(ザク メグミノトモ)

2位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 一歩(イッポ) 山田錦

3位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 50

4位 福島県会津若松市 名倉山酒造株式会社
善き哉(ヨキカナ)

5位 栃木県宇都宮市 株式会社虎屋本店
七水 55(シチスイ ゴーゴー)

6位 高知県香美郡 株式会社アリサワ
文佳人 吟の夢(ブンカジン ギンノユメ) 純米吟醸

7位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 愛山(アイヤマ)

8位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 雄町(ザク ミヤビノトモ オマチ)

9位 山形県鶴岡市 冨士酒造株式会社
栄光冨士(エイコウフジ) 純米吟醸 朝顔ラベル 生貯(ナマチョ)

10位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 雄町(オマチ)

 

岩手を代表する地酒が貫禄を見せ、ここでも作の2本がランクイン

【純米大吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 35点/予審通過 156点/部門出品数 445点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人(ナンブビジン) 純米大吟醸

2位 茨城県石岡市 合資会社廣瀬商店
SEN(セン)
3位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 中取り(ザク ミヤビノトモ ナカドリ)

4位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 朝日米(ザク アサヒマイ)

5位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米大吟醸 極上ノ斬(ゴクジョウノキレ)

6位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 プレミアム 純米大吟醸

7位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
渡舟(ワタリブネ) 純米大吟醸 斗壜取り(トビンドリ)

8位 栃木県小山市 小林酒造株式会社
鳳凰美田 赤判(ホウオウビデン アカバン)

9位 茨城県結城市 結城酒造株式会社
結ゆい(ムスビユイ) 純米大吟醸 雫酒(シズクザケ)

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚(イシヅチ) 純米大吟醸

 

昨年より出品を始めた岡山の新星、極聖が1位に
【吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 10点/予審通過 69点/部門出品数 198点

1位 岡山県岡山市 宮下酒造株式会社
極聖(キワミヒジリ) 大吟醸

2位 兵庫県神戸市 株式会社神戸酒心館
福寿 超特撰(フクジュ チョウトクセン) 大吟醸

3位 栃木県芳賀郡 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸 雫酒(シズクザケ)

4位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 大吟醸 山田錦 中取り

5位 京都府京都市 月桂冠株式会社
伝匠月桂冠 大吟醸(デンショ ゲッケイカン)

6位 福島県岩瀬郡 松崎酒造店
廣戸川(ヒロトガワ) 大吟醸

7位 栃木県芳賀市 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸

8位 宮城県加美郡 株式会社山和酒造店
わしが國(クニ) 大吟醸 雫搾り斗瓶取り(シズクシボリ トビンドリ)

9位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 MAX(マックス) 大吟醸

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚 真精(シンセイ)大吟醸 袋吊り雫酒(フクロツリ シズクサケ)

 

栃木の「変わった蔵」が高級酒部門で栄冠を掴む

【SUPER PREMIUM部門】

GOLD 3点/SILVER 2点/部門出品数 48点

1位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
醸(カモス)

2位 兵庫県神戸市 白鶴酒造株式会社
白鶴 超特撰 天空(ハクツル チョウトクセン テンクウ) 純米大吟醸 白鶴錦(ハクツルニシキ)

3位 秋田県潟上市 小玉醸造株式会社
太平山(タイヘイザン) 純米大吟醸 天巧(テンコウ) 20

 

南部美人が昨年に続いて2年連続で受賞

【スパークリング部門】

GOLD 3点/SILVER 5点/部門出品数 74点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人 (ナンブビジン)あわさけスパークリング

2位 広島県廿日市市 中国醸造株式会社
一代 弥山(イチダイ ミセン) スパークリング

3位 大分県玖珠郡 八鹿酒造株式会社
八鹿(ヤツシカ) スパークリング Niji

 

【総評】

実力のある蔵元の地元銘柄に注目

2014年大会では、「寫樂(しゃらく)」で純米酒部門、純米吟醸部門の1位を獲得し、一躍スターとなった宮泉銘醸。2016年、2017年と10位入賞を逃していましたが、今年は純米部門で1位に返り咲き。しかも、「寫樂」ではなく、やや辛口に仕上げたという地元銘柄「會津宮泉(あいづみやいずみ)」での受賞となり、会場の大きなどよめきを呼びました。なお、吟醸部門3位、7位に入賞した外池酒造店も、首都圏向けの銘柄「望bo:」ではなく、地元銘柄の「燦爛(さんらん)」での入賞です。つまり、実力のある蔵元であれば、どれを飲んでも旨いことを示しており、これをきっかけに実力蔵の地元銘柄に光が当たることになるかもしれません。

 

安定感を見せたのが三重県の作と岩手の南部美人

安定感を見せたのは、三重の「作(ざく)」と岩手の「南部美人」。作は昨年、純米の1位、2位の獲得をはじめ、純米吟醸で4位と8位を受賞し、大きな話題となりました。今年も純米吟醸の1位と8位、純米大吟醸の3位と4位に入るなど、抜群の安定感。すでに入手困難になりつつある銘柄ですが、今回の受賞でその流れに拍車がかかりそうです。

↑「作」の蔵元の清水慎一郎さん(左)と内山智広杜氏(右) ※写真は昨年のもの

 

極聖とAKABUが知名度を上げていく予感

注目の銘柄は、吟醸部門1位の極聖(きわみひじり)。2017年から本コンペに出品を始めたという新参ながら、2017年はSUPER PREMIUM 部門で2位、吟醸部門で8位に入っており、今回は2年目にして吟醸部門のトップに輝くことになりました。受賞した3作は大吟醸あるいは純米大吟醸で、今後も高級酒の名手として注目されていくことでしょう。

 

さらに、蔵の実力が問われる純米吟醸部門で、複数受賞した銘柄も注目です。ひとつは、純米部門7位、純米吟醸2位、3位、吟醸部門で4位に輝いた東洋美人。もうひとつは、純米吟醸で7位、10位、純米大吟醸で5位に入ったAKABU(アカブ)です。東洋美人は、地酒ファンの間では押しも押されぬ人気銘柄である一方、AKABUは、20代半ばの杜氏、古舘龍之介さんを筆頭に、若手が中心となって醸す蔵。都内飲食店でも見かけることが多くなっていましたが、今回の複数入賞により、今後、さらに知名度が上がるのは間違いありません。

↑AKABUの純米吟醸

 

SUPER PREMIUM部門の株式会社せんきんは、他のお酒とはひと味違う、甘酸っぱい濃厚な酸味が特徴の「仙禽(せんきん)」の銘柄で、地酒ファンにはよく知られた蔵元。今回受賞した「醸」は、山田錦、亀ノ尾、雄町という3種類の酒米を贅沢に磨いて使用したといい、どんな味かまったく想像できないのが興味深いところ。

 

品質競走が激化し、有名銘柄がしのぎを削る時代に

今回の「SAKE COMPETITION 2018」を総じてみると、実力のある蔵元がしっかり受賞したといった印象。「十四代」「磯自慢」「獺祭」「開運」といった有名銘柄のGOLD入賞はありませんでしたが、次点にあたるSILVER部門にはこれらの銘柄がひしめいていて、いかに近年の日本酒レベルが向上したのかがよくわかる結果となっています。さらに、SUPER PREMIUM部門2位の「白鶴」、吟醸部門5位の「月桂冠」が入賞するなど、資本を生かした灘・伏見の銘柄も加わり、さらに品質競走が激化してきた印象。ユーザーとしては選択肢が増えてうれしい限りです。なにはともあれ、プロがお墨付きを与えた銘柄の数々、みなさんもいち早く楽しんでみてください!

その他の部門

【海外出品酒部門】

GOLD 1点/SILVER 2点/部門出品数 17点
1位 アメリカ Arizona Sake LLC
Junmai Ginjo Nama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Namanama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Shiboritate

 

【ラベルデザイン部門】

GOLD 10点/SILVER 6点/部門出品数 152点

1位 兵庫県加西市 富久錦株式会社
新緑の播磨路(シンリョクノハリマジ)

2位 山口県阿武町阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
純米吟醸酒 名聲希四海(メイセイキシカイ)

3位 佐賀県伊万里市 古伊万里酒造有限会社
monochrome+(モノクローム プラス)

4位 福岡県三井郡 株式会社みいの寿
三井の寿(ミイノコトブキ) 純米大吟醸 三井神力(ミイシンリキ)

5位 愛知県常滑市 澤田酒造株式会社
白老 自然栽培米 純米酒(ハクロウ シゼンサイバイマイ ジュンマイシュ)

6位 新潟県長岡市 越銘醸株式会社
山城屋(ヤマシロヤ)

7位 山口県阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
阿武の鶴(アブノツル) 点と線(テントセン)

8位 茨城県石岡市  府中誉株式会社
太平海 純米吟醸 雄町 1314(タイヘイカイ ジュンマイギンジョウ オマチ イチサンイチヨン)

9位 福島県東白川郡 株式会社矢澤酒造
純米大吟醸 白孔雀(ジュンマイダイギンジョウ シロクジャク)

10位 新潟県新潟市 峰乃白梅酒造株式会社
峰乃白梅 KING OF MODERN LIGHT純米吟醸 無濾過生原酒(ミネノハクバイ キング オブ モダン ライトジュンマイギンジョウ ムロカナマゲンシュ)

 

「日本酒の流れ」が変わった!? 世界一を決める「SAKE COMPETITION 2018」で審査員に見えてきたこと

今年も、事実上の世界一の日本酒を決めるコンペティション「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 2018」が開催されます。本コンペは一般の消費者がお店で手に取れる「市販酒」のトップを決めるために、2012年からスタート。審査は全国の日本酒の技術指導にあたる方や、推薦された蔵元など、プロ中のプロがブラインドできき酒を行って決めるため、銘柄の知名度は一切関係なし。ひたすら味わいのみが審査対象という、このうえなくフェアなコンペです。

↑昨年の「SAKE COMPETITION 2017」表彰式

 

同コンペは年々参加する蔵も増えてきたうえ、受賞によりスターダムに駆け上がった銘柄が誕生し、部門で1位に輝いた銘柄はいち早く品切れとなるなど、市場に与える影響も大きくなってきました。今回は、そんな「SAKE COMPETITION 2018」の審査の第一段階となる予審会が5月16日に行われましたので、その様子をレポートしていきます。

 

「真剣勝負」の緊張感が漂う審査会場

↑予審会の様子

 

今回の出品数は、455蔵総出品数1772点で、過去最多の出品数を記録しました。審査される部門は、これまでの純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上)、ラベルデザイン部門の7部門に加え、新設された「海外出品酒部門」を合わせた合計8部門。5月16日の予審で決審へ進むお酒を絞り込み、5月18日の決審で最終的な順位を決めます。なお、予審の審査員は37名、決審の審査員は41名(発泡清酒部門の審査員は15名)。各審査員がそれぞれのお酒に1(最高点)~5(最低点)点の間で点数をつけ、それを集計したものが結果となります。

 

今回取材した予審会の会場は、体育館ほどの広さ。中には長テーブルが等間隔で置かれ、その上には4合瓶サイズの酒瓶がズラリ。酒瓶はすべて銀色のフィルムで覆われており、酒銘は一切確認できないので、必然的にブラインドの審査となります。全国から集められた審査員は、チェックシートを片手に一定のリズムで粛々と出品酒をきき(※)、テーブルからテーブルへと移動しながら、点数をつけていきます。審査員同士の私語は一切なく、声を立てることすらはばかられるような緊張感が漂っていました。

※酒をきく(唎く)……お酒の品質を判定すること

↑すべての酒瓶は銀色のフィルムで覆われ、酒銘が隠されています

 

会場には「海外出品酒部門」に参加したカナダの蔵元も

さて、そんななかでキャッチしたのが、「海外出品酒部門」に出品する蔵元の一人。カナダ・トロントで「泉(IZUMI)」という銘柄を手がける、「Ontario Spring Water Sake Company」の蔵元、Ken Valvur さんです。

↑Ken Valvur さん

 

Kenさんの「Ontario Spring Water Sake Company」は北米東部の最初の醸造所。オンタリオ州のおいしい湧き水を仕込み水に使用し、「真澄」で知られる宮坂醸造(長野県)などのアドバイスを受けながら、2011年に醸造をスタート。現在は、トロントの高級レストランで提供されています。ご本人にお話を聞いてみると、目指している味わいは、「甘味と酸味のバランスのよさ」とのこと。「私たちのお酒は、カナダ人にとって親しみやすい白ワインのような、フルーティで甘みを感じる酒質を狙っています。かなり受け入れられるようになってきたので、現在少しずつドライなタイプも増やしているところです」と、カナダならではのアプローチを話してくれました。果たして海外で醸されたお酒は日本の審査員の目にどう映るのか、Kenさんの蔵の成績とともに「海外出品酒部門」の結果に注目していきたいところです。

審査員が評価される大会でもある

↑廣木健司さん(写真は昨年のもの)。今年の「飛露喜 特別純米」にはドライでシャープな印象をプラスしたいと話してくれました

 

先に述べたように、確かなきき酒の力を持つ日本酒業界の精鋭たちが審査員を務める本コンペ。予審会では、スター銘柄「飛露喜(ひろき)」を醸す、廣木健司(ひろき・けんじ)さんに少しだけお話を聞くことができました。廣木さんは本コンペについて「今後の日本酒の潮流を作る、日本酒の未来が見える、それだけ大きな大会。審査員の質もしっかり担保されており、その意味では、審査員も評価されているコンペともいえます」と話してくれました。

 

第1回から審査員を努める広島「宝剣」の土井鉄也氏にインタビュー

↑土井鉄也さん

 

そんなプロ中のプロのみが参加を許される審査員のなかで、第1回大会から名を連ねているのが、「呉(くれ)のドイテツ」こと宝剣酒造の蔵元、土井鉄也(どい・てつや)さんです。広島は呉市の銘酒「宝剣」(ほうけん)といえば、広島産の酒米、八反錦(はったんにしき)を使った、やわらかくキレのあるお酒で有名。土井さん自身は、かつて伝説の不良として知られ、家業を継いだのちに20代の若さで「全国きき酒選手権大会」で全国優勝を果たすという濃い目のキャラクター。そんな土井さんにとって、「SAKE COMPETITION」とはどのようなものなのか、お話をうかがいました。

 

「きき酒は舌だけで行うと思われがちですが、実は頭もものすごく使います。1(最高点)~5(最低点)点の間で点数つけていきますが、ひとつひとつのジャッジをきちんと記憶して、自分の中の審査の基準がブレないように心がけています。何百種類もきいていると、例え0.1ずつずれていったとしても、終わる頃には大幅に基準がずれてしまう。ですから、即座に判断することも大事ですが、引っかかったら、面倒くさがらずもう一度きくのも重要。そうやって、細かく修正しながらきいています。ひょっとしたら、私のジャッジで造り手の人生が変わるかもしれないですから。そこを意識して、『自分の酒以上に真剣にきかねば』という気持ちで取り組んでいます」(土井さん)

 

「エレガントで派手さのあるお酒」から「キレイな甘さを感じるお酒」へ

↑Super Premium部門に出品されていた「宝剣」の純米大吟醸。つまり、土井さんは審査する側であり、審査される側でもあるわけです

 

――審査員としても参加している土井さんにとって、このコンペはどのような意義があるのでしょう?

 

「審査員として参加すると、世の中のお酒の流れというのが手に取るようにわかる。2、3年までは、甘さが引き立ち、エレガントで派手さのあるお酒が多かった印象。でも、いまは香りも控えめになり、甘みも抑え気味で、キレイな甘さを感じるようになりました。一方、蔵元という立場から見たら、いかに世の中の流れに流されず、自分のお酒を貫くことができるか、ここ数年、すごく考えさせられました。もちろん、酒造りの筋は決めていますが、時代の流れも気にしないとダメ。そのうえで、いまは自分が好きな食中酒を貫いている自負がありますね。このコンペに参加することで、自分自身の酒造りを振り返る、いい機会をもらっている気がします」(土井さん)

 

「酒本来の香り」か「あってはならない香り」かを見極めるのが重要

――では、審査の際に心がけていることはありますか?

 

「審査員も人間なので、好みというものがあります。僕の場合、基準を3点に決めて、少しクセのある酒を4点にしています。重要なのは、そのクセが、『酒が持つ本来の香り』なのか、それとも酒造りの道具によってついた、『あってはならない香り』なのかを見極めます。例えば、粕の香りだったら、4点でよしとする。明らかに道具由来の香りは5点。味わい全体の話でいえば、バランスを重視していますね」(土井さん)

――さきほど、お酒の「甘味」についてのお話が出ましたが、最近のお酒の傾向として、「酸」もキーワードのひとつになっているように思います。土井さんは、日本酒の酸についてはどのように評価されていますか?

 

「そこも全体のバランスだと思います。酸が浮く…つまり、芯が細く、酸のみが際立ったらダメですが、甘味がきちんとあって、調和が取れていればOKだと思っています。一方、自分自身の酒(宝剣)は辛口で、ほどよい甘さを感じる味。自分は食べるのも飲むのも好きなので、長く飲める酒がいい。家では自分の酒だけを飲んで、常にどういう状態か確認しています。その代わり、外ではよそのお酒を飲んで勉強させてもらっていますね」(土井さん)

 

「もう一杯」と飲みたくなる酒をブレずに造っていく

――いま、酒造りがひと段落したところで、少し気が早いかもしれませんが、次のお酒造りに向けて考えていることはありますか?

「この5年、継続的に設備投資をしてきて、昨年は甑(こしき・米の蒸し器のこと)を新調しました。皆さんの家でも炊飯器を変えたら、ごはんの味って変わりますよね。酒造りにとっても、甑を変えると酒米の蒸し上がりが変わるため、非常に重要です。昨シーズンは新しくしてから7か月使用しましたが、微妙な操作で蒸気の出し方も変わりますし、その期間だけでは甑の特徴を見極めるのは無理。仕込みが終わったいま、やっと状態が見極められるようになりました。だからこそ、来年はいっそういい酒が造れると思います。特に、お客様がお代わりをしてくださるようなお酒が造れたらいいですね。『もう一杯』と飲みたくなるような酒を、これからもブレずに造っていきます」(土井さん)

 

「僕のお酒はあまり派手な酒じゃないから」と、控えめに語る土井さん。いえいえ、その実直な味わいは、「呉のドイテツここにあり」と確かな存在感で、飲み手を魅了しています。さて、そんな土井さんが「造り手の人生を変えるかもしれない」「真剣勝負で取り組んだ」と語る「SAKE COMPETITION 2018」。審査の結果やいかに? 運命の結果発表は6月11日(月)。果たして、栄冠はどの蔵に輝き、どのような日本酒のトレンドが生まれるのか。固唾を飲んで見守りましょう!

若き蔵人を改心させた日本酒作りの歴史に、酒好きOLじんわり感動。「ほろ酔い道草学概論」第三話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

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自然あふれる東北から上京してきた千穂は、東京に住みながらもその土地に興味を抱いてきたようです。しかし、なかなか彼女の好奇心は満たされないようで…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【今回の一献】

屋守(おくのかみ)

 

 

豊島屋酒造を守り続けていく強い気持ちと、日本酒を通じて関わる人たちの役に立ち繁栄を守るような作品を醸し続ける思いから銘名。限りなく手作業重視の小仕込を行い、「香りよく優しい味わい」をコンセプトに醸し、全量無調整(無濾過・無加水)、全量ビン貯蔵を行っており、その深い味わいは手間隙をかけてこそのものと言えるでしょう。

 

こぼれ話ですが、屋守(おくのかみ)がヤモリと呼ばれるようになった発端について、豊島屋酒造さんから伺いました。もともと屋守をストレ-トに読まれる事が多かったそう。その後、少しではあるもののどちらからの読みでも東京の日本酒だと認識されていったことから、ヤモリ絵をご友人に描いてもらい立派なアイコンとしたそうです。

 

このお話、豊島屋酒造の酒蔵見学に行けば実際の土蔵を見ながら聞けちゃうかも。お酒作りに精魂を込めて励んでいる職人さんたちの想いや、また酒蔵に集う人々の熱気を体感するのにも見学は大変おすすめです!

 

(取り扱い酒蔵)

豊島屋酒造

●住所:東京都東村山市久米川町3-14-10

●電話番号:042-391-0601

 

 

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新橋で地酒を無限呑み!? 酔いどれは大都会の夜景に何を想う「ほろ酔い道草学概論」第二話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力の一つ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら土地に根付く、不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

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前回、会社の先輩・正宗(まさむね)さんに誘われ、初めて酒蔵に行き日本酒の味を知ったOL・秋川千穂。普段は引きこもりがちな彼女は、いつも通り花金もスルーして直帰するようですが…?

 

 

 

 

 

 

【今回の一献】

「辛口ばっか飲んでんじゃねーよ」シリーズ「酒くらい甘くたっていいじゃない 世知辛い世の中だもの」

 

 

KURANDでは一般的に流通していない、全国各地の小さな(だけども、こだわりと情熱をもった)酒蔵で作られた銘柄が取り扱われています。なかには、KURANDと蔵元がともにコンセプトの設計や企画を行い生まれた銘柄もあります。そんな一本である本品は、1840年から続く埼玉県の石井酒造が贈る「辛口ばっか飲んでんじゃねぇよ」シリーズのひとつ。蔵元の「辛口ばかりが日本酒じゃない! 甘口でもうまい酒があるんだ!」という思いが込められたその味は、口当たりはとってもフルーティーだけど、しっかりとしたお米の旨味を含んだ余韻が味わえます。

 

店舗内では初めての方でも呑みやすいものから、なかなかお目にかかれない通な一品まで約100種類の日本酒が、時間無制限で飲み放題! 千穂と正宗さんが訪れた新橋店をはじめ、関東を中心に全国で8店舗が展開されていますので、ぜひみなさんも道草がてら行ってみてください。

 

(取り扱い店舗)

●KURAND SAKE MARKET 新橋店

●住所:東京都港区新橋2-3-7 菊豊ビル3F

●電話番号:03-6268-8858

●営業時間:平日17:00-23:00(22:45ラストオーダー)、土日祝12:00-16:00/17:00-23:00(15:30/22:45ラストオーダー)、年中無休

 

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【新連載】おんな2人が初めて知る、日本酒と寄り道の魔力「ほろ酔い道草学概論」第1話

日々の楽しみはお酒――! この想いは万国共通ではないでしょうか? ビールに焼酎、サワー、カクテル…さまざまなお酒がありますが、日本人ならやっぱり日本酒! 全国で約2万種もの銘柄が存在すると言われている日本酒の魅力は、作られている土地そのものの魅力と言えるかも。

 

本連載は、そんな日本のお酒と土地について、おんな二人練り歩き知っていく、ほんわかストーリーをお楽しみください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今回の一献】

吟醸 新しぼり

↑吟醸 新しぼり。実売価格は1800mlが2700円、720mlが1350円

 

1月下旬に出荷する、低温でゆっくり発酵させる「吟醸造り」で醸した新酒。香り立つ清楚な香りと凝縮された米の旨みのバランスが魅力の生酒です。千穂もそのフレッシュさに驚いていましたが、特に搾りたてはのどごしも爽やかで飲みやすさが特徴です。

 

澤乃井のお酒について補足すると、実は千穂と正宗さんは春の少し手前、2月3日の節分に澤乃井を訪れています。澤乃井では節分に「節分祭」というイベントを開催していて、作中に出てくる「銀印」と「大辛口」の熱燗は、節分祭の特別メニューになります。千穂の日本酒初体験はずいぶんスペシャルなものになったはず。

 

↑通常、澤乃井園では熱燗は「オカンビン」という瓶で出しています

 

(取り扱い酒蔵)

澤乃井(小澤酒造)

●住所:東京都青梅市沢井2-770

●電話番号:0428-78-8215

 

取材協力/青梅市郷土博物館

日本酒ブームの影で増加する酒蔵の廃業――「買収」という「ポジティブな手法」が蔵元を救う

多数のメディアで日本酒が特集される昨今、業界全体が盛り上がっているようにも見えますが、残念なことに廃業を余儀なくされた酒蔵は年々増えています。累積赤字、跡継ぎ不在、その理由はさまざま。現在も存続の危機にある酒蔵は少なくありません。南アルプスの麓の自然環境と良質な水に恵まれた土地で、地元の酒米を使った「今錦」を醸してきた米澤酒造も、そんな蔵のひとつでした。

 

トヨタ社長も注目する年商約200億円の企業が地方酒蔵を子会社化

「造り酒屋は村の大切な伝統であり、文化です」。そんな想いを持った企業が、米澤酒造の再生に名乗りを上げます。2014年、地元企業の伊那食品工業が米澤酒造を子会社化。伊那食品工業は、寒天の家庭用ブランド「かんてんぱぱ」などを展開する食品メーカーです。国内市場のシェアは約80%で年商約200億、1958年の創業以来48年間増収増益を達成してきた、長野県が誇る超優良企業です。

↑記者会見で熱い想いを話す、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さん。塚越さんが説く「年輪経営」は、日本を代表する企業「トヨタ」の豊田章男社長が注目し、各グループ会社のトップにその理念を学ぶように指示したことでも有名です↑記者会見で熱い想いを話す、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さん。塚越さんが説く「年輪経営」は、日本を代表する企業「トヨタ」の豊田章男社長が注目し、各グループ会社のトップにその理念を学ぶように指示したことでも有名です

 

存続の危機にある酒蔵を再生しようとする動きは、いまや珍しくありません。複数の酒蔵を子会社化してグループ経営するケース、大手酒蔵が地酒蔵を買い取るケース、異業種から酒蔵経営に乗り出すケースなど、経緯や目的はさまざまです。酒蔵経営をしたいからといって新たに酒造免許を取得するのは困難なこともあり、この先「酒蔵買収」は日本酒業界のひとつの流れになるでしょう。その現状を知るために、「米澤酒造酒蔵全面リニューアル」に向けた記者見学会に参加してきました。

 

素晴らしい景観と文化を残すために造り酒屋を守る

明治40年に創業した米澤酒造が蔵を構えるのは、長野県上伊那郡にある中川村。「日本で最も美しい村」連合に加盟する、南信州・伊那谷のほぼ真ん中にある小さな村です。村の真ん中を天竜川が蛇行するように流れ、この蛇行と山脈の隆起によって形成された「河岸段丘」という特異な地形が中川村の風景。キノコ、野菜、ジビエ、そしてお米など、豊富な特産物に恵まれています。伊那食品工業が米澤酒造を子会社化した最大の目的は、この中川村の観光資源を守るため。「造り酒屋は観光資源」と、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さんは言います。

↑中川村の風景↑中川村の風景

 

米澤酒造のラインナップには、定番の「今錦」ブランドのほかに、数量限定酒「おたまじゃくし」があります。このお酒は、中川村の飯沼地区の棚田だけで生産された酒造好適米「美山錦」を100%使用。地域を巻き込みながら、村民と酒蔵が一体となり、田植えから稲刈りまでを行なっています。減少しつつある日本の原風景、棚田。この素晴らしい景観と文化を残すために醸されてきたお酒が「おたまじゃくし」です。地域を守る、地域の雇用を守る。それは、かつて造り酒屋が担っていた使命でした。この「おたまじゃくし」の取り組みが、会長の塚越 寛さんが言った「造り酒屋は観光資源」という言葉の真意です。

↑↑米澤酒造のラインナップ

 

↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です

 

子会社化により、最新設備が整ったまったく新しい酒蔵に変貌

米澤酒造が伊那食品工業の子会社になったことで、蔵や酒はどう変わるのか。蔵見学で目の当たりにした現実は、想像をはるかに超えていました。「いい酒にはいい設備が必要」という考えのもと、伊那食品の寒天作りで培った氷温設備、最新の瓶詰機械などを導入。食品会社が指導する徹底した衛生管理のもと、米澤酒造はまったく新しい酒蔵として生まれ変わりました。製麹室も新設され、リニューアルというよりも「新蔵が建った」という表現のほうが的確かもしれません。蔵内の空調管理も徹底され、仕込み蔵、槽場、瓶詰場すべてにおいて低温環境を実現。火入れのラインには超高額機械「パストライザー」を導入するなど、お酒に負担をかけずに高い品質をキープするための設備が整っています。今後、従来の「今錦」よりもフレッシュ感を残した酒質に変化していくことは明確。長野県を代表する「真澄」から新杜氏を迎え、完全新設備のもと29BY(平成29年酒造年度)から新生「今錦」がスタートします。

↑近代設備を備えた↑近代設備を備えた蔵の内部

 

↑↑火入れの工程

 

ただし、大半の設備が一新されましたが、槽搾り(ふなしぼり)製法だけは踏襲。ゆっくりと上から圧力をかけて搾るので、お酒に負担がかからず、きれいな酒質に仕上がります。米澤酒造では、全量をこの槽搾りで造っています。棚田米を使った「おたまじゃくし」の取り組みを含め、中川村の酒蔵として守り続けてきた本質は変えず、新たに変化を重ねていく「不易流行」というスタンスを、生まれ変わった米澤酒造から強烈に感じました。

↑槽搾りの光景。発酵した醪を布袋に入れ、ひとつひとつ槽の中に並べ、ゆっくりと上から圧力をかけて搾る方法。手間がかかるため、この方法で搾る蔵は全国的に減っています↑槽搾りの光景。発酵した醪を布袋に入れ、ひとつひとつ槽の中に並べ、ゆっくりと上から圧力をかけて搾る方法。手間がかかるため、この方法で搾る蔵は全国的に減っています

 

単なる酒蔵から中川村の観光拠点へ

「酒蔵買収」と聞くと、何やらネガティブに感じる人も多いと思います。かくいう筆者もそうでした。でも、「中川村の観光資源を守るため」という伊那食品の大義を理解して物事を見つめると、非常にポジティブなことばかりです。今後、大手食品会社の研究機関を利用することで、発酵食品としての日本酒の魅力を科学的に実証していくことも可能でしょう。そういったデータをもとにした酒造りも、新生「今錦」に期待したいアプローチのひとつです。また、2017年11月下旬には日本酒造りの様子を見学(事前予約制・無料)できる観光蔵としてオープン予定。江戸から明治期に作られた徳利250本をディスプレイした店舗で、お酒の購入も可能に。単なる酒蔵ではなく、地元アーティストの作品や特産品も販売し、中川村の観光拠点として訴求していくそう。飯沼地区の棚田がある「日本で最も美しい村」の景観や文化を、未来のために維持・発展させていくことが、米澤酒造の夢。キャンプ場も温泉もある中川村に足を運び、その風景を前に、地元の食材と共に「今錦」や「おたまじゃくし」をいただく。それが極上においしい、地酒の味わい方です。

↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です