『オトナの短篇シリーズ01「女」』―芥川、太宰、夢野久作…文豪たちが描く美しくも恐ろしい女たち

「青空文庫」は、誰にでもアクセスできる電子本をインターネット上に集め、図書館のように利用できるものだ。取り上げられるのは、著作権の消滅した作品と「自由に読んでかまわない」という許可があるものに限られる。

 

オトナの短編シリーズ』(オトナの短篇編集部・著/学研プラス・刊)は、膨大な作品がおさめられた「青空文庫」から、本当に面白いと思える作品を編集部員が独自の視点で選び、まとめたものだ。いわばCDにおけるベスト盤のようなもので、多分に編集部員の趣味が反映される。

 

 

第1回のテーマは女

『オトナの短編シリーズ01』はその名の示すとおり、シリーズ化されているが、記念すべき第1回のテーマとして選ばれたのは、「女」。なかなかに憎いセレクションだ。「女」は書くテーマとしても、読むテーマとしても、興味をそそられる。

 

短編編集部員たちが選んだ「女」は、「お母さん」であり、「騙す女」であり、「怖い女」や「可愛い女」や「かっこいい女」や「おしゃべりな女」など様々で、ドロップの缶から色とりどりのドロップがこぼれ出すような楽しさと驚きがある。

 

 

女を描く作家達

『オトナの短編シリーズ01』で取り上げられる作家は8人。著名で興味深い存在ばかりだが、簡単に紹介すると…。

 

小川未明(1882年~1961年)
自然主義の影響を受け、詩情あふれる小説を制作したあと、童話に専念し、『赤い蝋燭と人魚』などの作品を残す。

岡本かの子(1889年~1939年)
強烈なナルシズムを描いた作品が多く、『生々流転』などの作品がある。さらには、芸術家である岡本太郎の母親としても知られる。

与謝野晶子(1878年~1942年)
大胆奔放な作品『みだれ髪』などで知られる歌人。

大倉燁子(1886年~1960年)
国学者である物集高見の3女として育ち、後に、『踊る影絵』で女流としては初めての探偵小説家となる。

芥川龍之介(1892年~1927年)
夏目漱石門下として、菊池寛らと「新思潮」を刊行。『鼻』『芋』『粥』などで注目された。

葉山嘉樹(1894年~1945年)
プロレタリア文学の作家として活躍。『淫売婦』『海に生くる人々』が代表作。

夢野久作(1889年~1936年)
怪奇幻想の手法で意識化の世界を探求した作家として名高く『ドグラ・マグラ』は熱狂的なファンを持つ。

太宰治(1909年~1948年)
屈折した罪悪意識を笑いでつつんだ秀作が多い。後に虚無的で退廃的な作品を数多く発表。

 

8人が描くそれぞれの「女」

8人が描く作品群は、さすがとうなるものが多い。作者を選んだ編集員の才能を感じる。8人がだいたい同じ時代を生きているのも面白い。それでいながら、それぞれの作家が描く女たちの多様さときたら。まったくもって、驚きの小説が連なっている。

 

日本の文学は思っていた以上に深く、豊かで、それでいながら死の影をまとったものだったと感じた。8人の中で、大倉燁子という作家を私は知らなかった。もちろん、作品を読んだこともなかった。『オトナの短編シリーズ』の編集者が選ばなかったら、この先、読むことはなかったと思う。

 

大倉燁子という作家

大倉燁子の『魔性の女』は実におそろしい作品だ。何でもお見通しの霊感を持つ妻から逃げ出そうとする夫の話なのだが、真綿でじわじわクビをしめられるような息苦しさがある。と、同時に夫に対してこれほどの執着を持つことができることをうらやましいと思った。執着は愛でもあるからだ。

 

逃げても逃げても、追ってくる妻。浮気をしていても、黙って許しながらも、息の根をとめるようなことをする。今の言葉で言うならストーカーと呼ぶべき女性で、夫が「黙ってただじいっと眺めていられるのは辛い」と嘆くのも当然だと思う。

 

 

太宰治が描く3通りの女

他の作品も夢中で読んだが、太宰治の3文字「女」シリーズにはたまげた。『美少女』、『千代女』、『女生徒』と3つの作品が収録されているが、太宰治とはこれほどまでに女を舐め尽くすように描く作家だったろうかと驚かずにはいられない。

 

それも作品ごとに視点が異なっているのが驚く。太宰治は心中という形で命を絶ったが、苦しみも喜びも作品のエネルギーも、もしかしたら、すべてを女性に求めていたのかもしれない。そうでなければ、作品によっておじさんになったり、狂気をおそれる女の子になったり、小説の才能を持った少女となったりできないはずだ。

 

3人3様とも言えるし、3人の中に太宰本人がいるともいえる。実に不思議な味わいの太宰がそこにいる。

 

『オトナの短編シリーズ』はオトナのための作品集であると同時に、オトナになるための小説集だという気がする。19世紀から20世紀にかけて、日本にはこんなに自由闊達な小説があったのかと、これほどまでに暴れてしまう作家達がいたのかと、改めて驚いた。

 

やっぱり小説は面白い。オトナもこれからオトナになるヒトも読んでみて欲しい。

 

 

【書籍紹介】

オトナの短篇シリーズ01 「女」

著者:オトナの短篇編集部
発行:学研プラス

与謝野晶子や太宰治、芥川龍之介に加え、岡本太郎の母・岡本かの子や夢野久作など一度は名前を聞いた事のある作品を中心に厳選。魅力的な「女」の作品と共に、編集部員の選考理由も掲載。電子書籍をまだ読んだ事がない!という方にもオススメの一冊です。

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女性こそ利用したい進化系カプセルホテル

これから3月にかけての年度末は、年始の挨拶回りから決算&予算業務まで何かと忙しい時期。バタバタしていて、うっかり終電を逃してしまうこともあるのでは? タクシーで帰るのはお金もかかるし、何より少しでも睡眠時間をとりたい! そんなときに利用したいのが、いま急速に進化を遂げている「カプセルホテル」です。

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女性でも安心して、快適に利用できるようになった進化系カプセルホテルの魅力を探るべく、その先駆けとも言える「ファーストキャビン」の執行役員であり経営戦略本部長の和久田朝子さんにお話を聞きました。

2017年4月にオープンした「ファーストキャビン京橋」のフロント2017年4月にオープンした「ファーストキャビン京橋」のフロント

 

 

実用性とホスピタリティを兼備

「以前は、低価格帯の宿泊施設というと、ビジネスホテルに代表されるバジェットホテルか、従来型のカプセルホテルやネットカフェしかありませんでした。そこで、ちょうどその間の位置付けとなる、低価格でいて実用性もホスピタリティも兼ね備えた唯一無二のカプセルホテルをつくろうと、2008年にスタートしたんです」(ファーストキャビン・和久田朝子さん 以下同)

 

そして、2009年に第1号店となる「ファーストキャビン御堂筋難波」がオープン。その後、2016年までは1年に1~2施設程度のペースで増え続けていたところ、2017年では一気に拡大し、なんと1年間で9施設がオープンしたとか。その大ヒットの理由のひとつとして、今までカプセルホテルを敬遠しがちだった女性客の利用が増加したことが挙げられるといいます。

セミダブルサイズのベッドが備えられた「ファーストクラスキャビン」(1泊5400円~)。 トップの写真は標準的な客室「ビジネスクラスキャビン」(1泊4400円~)セミダブルサイズのベッドが備えられた「ファーストクラスキャビン」(1泊5400円~)。 トップの写真は標準的な客室「ビジネスクラスキャビン」(1泊4400円~)

 

 

「『ファーストキャビン』は、飛行機のファーストクラスをイメージした“コンパクト&ラグジュアリー”がコンセプト。高級感やホスピタリティに加えて、男女でエリアが分かれている安心感もあり、女性のお客様にも多数ご利用いただいております」

 

客室は主に「ファーストクラス」(4.4㎡)と「ビジネスクラス」(2.5㎡)の2タイプがあり、いずれもベッドのほかにテレビや鍵付き収納、ヘッドフォン、館内着、歯ブラシ、タオルなどがセットになっています。もちろんコンセントやWi-Fiも完備。ファーストクラスにはサイドテーブルもあります。

 

さらに、友達やカップルで利用可能な「プレミアムクラス」(約20㎡)や、天井高を抑えてより一層リーズナブルな価格設定がなされた「プレミアムエコノミークラス」(2.5㎡)を用意した施設もあるとのこと。シーンや予算に合わせて選べるのも、うれしいポイントです。

プレミアムクラスキャビンにはトイレや洗面台、冷蔵庫なども完備(1泊1室7800円~/定員2名)プレミアムクラスキャビンにはトイレや洗面台、冷蔵庫なども完備(1泊1室7800円~/定員2名)

 

また、手足を伸ばしてゆったりとくつろげる大浴場も人気の理由。シャワー室もあるので、体調により大浴場が入りにくいときや、手早く入浴を済ませたいときにも便利です。パウダールームには、メイク落としや洗顔料、化粧水のほか、綿棒からコットン、ドライヤー、アイロンまでが揃っているので、手ぶらで宿泊してもまったく問題なし。

「ファーストキャビン京橋」の大浴場と、脱衣場付きのシャワーブース「ファーストキャビン京橋」の大浴場と、脱衣場付きのシャワーブース

 

 

質の高いアメニティが充実。香り高いシャンプー類も人気です質の高いアメニティが充実。香り高いシャンプー類も人気です

 

「特に週末は、女性のお客様のご利用が増えます。グループでのご旅行も目立ちますね。女性同士とはいえ、同室だと電気を点けたりトイレを使ったりするのに気を遣うこともあるので、プライバシーが守られた個室を求められるお客様が多いのだと思います。

 

また、宿泊以外には、2時間からのショートステイでも多数ご利用いただいております。営業のアポイントの合間にご利用になって、汗を流してから仮眠をとられたり、お仕事のあとに大浴場でリフレッシュされてから、化粧直しをして、お食事に出かけられたり。ご利用の目的はさまざまですね。

 

これからもカプセルホテルは進化していくはずですし、進化していかなければならないと思っています。そのターゲットとして、女性のお客様はとても大切です。ただ安いだけでなく、女性に喜んでいただけるホスピタリティがなくては」

「ファーストキャビン」の和久田朝子さん。本社エントランスに展示された客室の前で「ファーストキャビン」の和久田朝子さん。本社エントランスに展示された客室の前で

 

リーズナブルに宿泊場所を確保できるだけではなく、スキマ時間の有効活用にも最適なカプセルホテル。「ファーストキャビン」では、2018年春に女性客メインの新施設が京都嵐山にオープンするほか、海外展開も予定しているとのことです。

 

ファーストキャビン京橋

住所:東京都中央区京橋2-7-8
電話:03-5159-4126
一泊4400円~、デイユース1600円~
https://first-cabin.jp

 

 

続いて、そのほかにも注目したい、進化系カプセルホテルをご紹介しましょう。

 

 

個性際立つ進化系カプセルホテルいろいろ

まずは、女性オンリーのカプセルホテル「秋葉原ベイホテル」。ピンクと白を基調とした内装がかわいらしくて、館内に入った途端にテンションが上がります。客室は、2ユニットが上下に配置されたコンパクトで清潔なユニットルーム。幅1m×高さ1m×奥行き2mのスペースはほどよい“囲まれ感”があり、リラックスして過ごせます。

 

食事やパソコンを使うときにはラウンジで。ゆったりしたソファに座って、くつろいで作業できます。もちろん、シャワールームやパウダールームも申し分なし。基礎化粧品やドライヤーなどが揃うほか、スタッフ厳選のアイテムから3種選べるアメニティーバイキングプランや美容マスクがセットになったプランがあるのも、女性だけのホテルならでは。

左:明るくクリーンなユニットルーム。右:シャワールームのエリアもピンクと白左:明るくクリーンなユニットルーム。右:シャワールームのエリアもピンクと白

 

左:アメニティが選べるプランも。右:内装だけでなく、外観もかわいらしい左:アメニティが選べるプランも。右:内装だけでなく、外観もかわいらしい

 

秋葉原ベイホテル

住所:東京都千代田区神田練塀町44-4
電話:03-5256-0015
一泊3800円~
https://www.bay-hotel.jp/akihabara/

 

 

次にご紹介するのは、全室にデスク付きのプライベートスペースを備えた「グローバルキャビン水道橋」。男女でフロアが分かれており、女性専用フロアには、リストバンドキーでしか行き来できない仕組みとなっているので安心です。

 

ナノケアのドライヤーや一流コスメブランドのシャンプー、基礎化粧品などのアメニティもさることながら、もっとも注目したいのは、インターネット予約の女性限定朝食無料プラン。館内2階にあるレストランでは、“野菜で元気に”をコンセプトに「チョップドサラダ」をメインとした、健康と美を意識した料理をいただけます。

 

左:キャビンは上段にある場合も。右:彩りも栄養バランスも満点なチョップドサラダ左:キャビンは上段にある場合も。右:彩りも栄養バランスも満点なチョップドサラダ

 

左:日々の疲れを癒せる大浴場。右:コインランドリー付きのパウダールーム左:日々の疲れを癒せる大浴場。右:コインランドリー付きのパウダールーム

 

グローバルキャビン水道橋

住所:東京都文京区後楽1-2-2
電話:03-3816-5489
一泊4980円~
https://www.hotespa.net/hotels/gc_suidobashi/

 

 

そして最後は、サウナと睡眠に特化した「ドシー恵比寿」。既存のカプセルホテルをリノベーションし、2017年12月にオープンした施設ですが、都心にあって、宿泊だけでなく仮眠やサウナのみの利用もOKな点で、注目度が高まっています。サウナでは本場フィンランドにならった独自のサウナ体験が可能。熱したサウナストーンにミント水をかけてじんわりと蒸気浴を楽しむロウリュは、爽快なリフレッシュ感が得られます。

 

サウナ+カプセルホテルというと男性向けのイメージが強いですが、男女でフロアが分かれているので、女性も心置きなくサウナを堪能できます。さらには、柔らかく吸水性の高いロングパイルタオルや、ここだけで復刻しているTAMANOHADAのシャンプー類など、アメニティにもこだわりが。2018年春には五反田に2号店のオープンを予定しています。

左:既存ユニットをリフォームした客室。右:シャンプー類はTAMANOHADA006(MINT)を使用左:既存ユニットをリフォームした客室。右:シャンプー類はTAMANOHADA006(MINT)を使用

 

左:ミントの香りが漂うサウナ。右:TOTOのウォームピラー(冷水)でクールダウン左:ミントの香りが漂うサウナ。右:TOTOのウォームピラー(冷水)でクールダウン

 

ドシー恵比寿

住所:渋谷区恵比寿1-8-1
電話:03-3449-5255
一泊4900円~、仮眠1500円~、サウナ1000円~
https://do-c.jp

 

 

ホスピタリティ最高の客室でリラックスしたい、女性オンリーの空間で気兼ねなく過ごしたい、健康と美を意識した朝食で体の中からきれいになりたい、サウナですっきりとリフレッシュしたい。それでいて、リーズナブルじゃなきゃだめ。

 

そんな欲張りな女性のニーズに応えるべく、カプセルホテルは今後もさらなる進化を遂げそうです。

 

取材・文=吉田 桂

 

 

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