バングラデシュ、2071年までに「耐震基準」を抜本的改革。不可欠な日本の支援

東日本大震災を上回る犠牲者を出しているトルコ・シリア地震。これだけ多くの被害をもたらした一因として建物の耐震性能が挙げられていますが、この問題はトルコやシリアに限りません。最近では、地震活動が活発な地域にあるバングラデシュが建物の耐震基準を抜本的に改革することを発表。この計画はこれから約50年間にわたって行われ、日本が支援していくことも明らかにされました。

ダッカでは建物が危険なほど密集している(ドローンで撮影)

 

バングラデシュの震災への取り組みについては、以前から国際協力機関などの間で議論されていましたが、トルコ・シリア地震を受け再び注目が集まっています。特に、首都ダッカは建物が無秩序に連立し、高密度化しているうえ、建物の設計や建設技術が劣ることから、災害リスクの高い都市の一つとなっているのです。

 

そこで先日、バングラデシュのエナミュール・ラーマン災害管理大臣は建築基準法の改正が必要だと述べ、2071年までに同国を地震に強い国にすると発表しました。同国では政府の建物も含め、耐震性が劣るものが多く、ダッカ市内のおよそ7万2000以上の建物が脆弱で、大地震が発生した場合、数百万人が死亡する恐れがあるとされています。

 

最近、同大臣が出席したDebate for Democracy主催のイベントでも、参加者たちは地震のリスクに対処するためには、脆弱な建物を特定して耐震性を高めることが必要であると議論していました。道路、地下鉄、高速道路などの交通網やガス、電気などのインフラについても同様の認識がされています。

 

防災への取り組みを強化するために、バングラデシュが支援を求めたのは日本。エナミュール・ラーマン災害管理大臣は、「日本は地震に強い国。マグニチュード10の地震があった場合、80階建てのビルは揺れることはあっても倒壊はしない」と日本の耐震技術について説明。その一方で、バングラデシュは耐震性の高い建物を建てる際に必要となるエンジニアが足りていないことから、同国は財政面だけでなく技術面でも日本に支援を求めています。

 

バングラデシュのように、都市部の急速な人口増加に伴い、建築基準法などの法整備が追い付かないまま、建物が次々に建設されている途上国は他にもあるでしょう。限られた時間の中で無数の建物の耐震性を高めていくのは、当然ながら時間も資金もかかります。しかし、日本はこれまでに多くの大地震に見舞われながら、建物の建設や都市計画、防災体制などについて知見を蓄えてきました。途上国の震災対策に貢献できることがたくさんあるはずです。

 

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5年連続で世界1位!「日本のパスポート」が世界最強であることの意味

7月、イギリスのコンサルティング企業であるヘンリー・アンド・パートナーズ(H&P)が、世界パスポートランキングの最新版(正式名は「The Henley Passport Index: Q3 2022 Global Ranking」)を発表。日本は史上最高の193点を獲得し、5年連続で1位になりました。日本のパスポートが“世界最強”であることは何を意味するのでしょうか?

もはやパスポートは単なる身分証明ではない

 

2006年から四半期ごとに発表されている同パスポートランキングは、IATA(国際航空運送協会)のデータをもとに、ビザなしで渡航できる国の数を調査しています。2022年第3四半期のランキングの結果は以下の通りでした。

 

1位: 日本(193)

2位: シンガポール、韓国(192)

3位: ドイツ、スペイン(190)

4位: フィンランド、イタリア、ルクセンブルグ(189)

5位: オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン(188)

6位: フランス、アイルランド、ポルトガル、イギリス(187)

7位: ベルギー、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、アメリカ(186)

8位: オーストラリア、カナダ、チェコ、ギリシャ、マルタ(185)

9位: ハンガリー(183)

10位: リトアニア、ポーランド、スロバキア(182)

※( )はスコア。出典:The Henley Passport Index: Q3 2022 Global Ranking

 

評価方法は、ある国・地域に入国するとき、ビザが必要なら0点、ビザの取得は必要はなく、パスポートのみで入国できる場合(到着した空港で取得できるアライバルビザを含む)は1点とカウントし、総合スコアで順位を付けています。例として日本のスコア(193)を見てみると、日本のパスポートを持っている人は、ビザなしで入国できる国と地域が世界に193あるということ。このパスポートランキングで日本が1位になったのは5年連続で、シンガポールや韓国もトップ3の常連です。

 

では、このランキングで上位に入ることは何を意味するのでしょうか? ここで注目したいのは、世界の平和や安全保障などに関するデータを提供するVision of Humanityがまとめた「グローバル・ピース・インデックス(世界平和指数)」との関係。この指数は、殺人率や政治テロ、内戦などの死者数などをもとに、世界各国の平和レベルを評価するものです。H&Pが、パスポートランキングの結果と世界平和指数を比較したところ、前者の上位10か国は後者でも上位10位にランキングしていることが判明。例えば、日本は世界平和指数で10位である一方、ヨーロッパ諸国はパスポートランキングと世界平和指数で上位を占めています。それに対して、パスポートランキングで順位が低い国は、世界平和指数でも下位。この2つのデータの間に相関関係があることがわかります。

 

最新版のパスポートランキングについて、オックスフォード大学サイードビジネススクールのフェローであるスティーブン・クリムチュック・マシオン氏は、「新型コロナウイルスのパンデミックやインフレーション、政治不安、戦争など、私たちは激動の時代を生きています。そんな中でパスポートは、これまで以上に『名刺』の役割を果たすようになってきており、渡航先での待遇や安全に影響を与えます」と述べています。

 

最近、日本はコロナ禍の「鎖国」政策を徐々に緩和し始めました。訪日外国人観光客の受け入れが再開した一方、海外直接投資も回復傾向にあります。これから日本企業が海外に進出したり、ビジネスパーソンが外国でリモートワークをしたりする際、日本のパスポートは平和と安全の象徴として重宝するかもしれません。もちろん、パスポートだけで身の安全が保証されるわけではありませんが、日本のパスポートは少しの安心感と自信を与えてくれることでしょう。世界が歓迎してくれるはずです。

 

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