グリーンカーテンは節電にもメンタルヘルスにも効果的!初心者向けの“苗”から始める植え方・育て方

今年の夏も厳しい熱さが予想されています。しかし電気代の高騰から、エアコンの使いすぎには注意したいところ。そこで今年は暑さ対策の一環として、“グリーンカーテン”を始めてみるのはいかがでしょうか?

 

グリーンカーテンとは、ゴーヤなどのつる性植物を窓の外でカーテン状に育てたもの。夏の強い日差しを遮り、暑さを和らげてくれます。今回は千葉県印西市で「はる農園」を営む傍ら、市民団体「みんなのいっぽ」にてグリーンカーテンの普及にも取り組む齊藤はるかさん(はるさん)にグリーンカーテンづくりのコツを教えていただきました。

 

グリーンカーテンのイメージ。

 

メリットは節約効果だけではない!

電気代の節約に効果があるとされているグリーンカーテン。環境省によると日射の熱エネルギーの遮断率は、すだれで約50~60%、高性能の遮断ガラスでも約55%なのに対し、グリーンカーテンはなんと約80%にまで上るそう。この遮断効果の高さが、室内の温度の上昇を防いでくれます。しかしはるさんは節電効果以上に、気持ちの面でよい効果があると話します。

 

「自分以外に手間を掛けるものがあるというのは、大変な一方で、ふとしたときの救いにもなると感じています。例えば夏は暑くて気が滅入りがちですが、疲れて帰ってきたときにグリーンカーテンが青々と育っているとなんだか気持ちが明るくなるんです。雨で憂鬱な日も、雨が大好きな植物たちが喜び、元気になっているとうれしくなります。どこか子育てと似ているかもしれないですね」(はる農園 齊藤はるかさん、以下同)

 

取材は、はるさん(右)とともに普及活動に取り組んでいる伊藤かおりさん(左)のご自宅で実施。「プロジェクトを通じてグリーンカーテンを始めた市民の方からは『子供と水やりをすることで、節電効果だけではなく幸せ効果もあった』といった声も届きました」と伊藤さん。

 

グリーンカーテンづくりに必要なもの


グリーンカーテンは種から始めるパターンと苗から始めるパターンの二通りありますが、今回はより初心者におすすめの「苗から始めるパターン」を紹介しましょう。まずははるさんに、苗や道具選びのポイントについて教えていただきました。

 

・苗

ゴーヤ、朝顔、へちま、ホップ、パッションフルーツなど

 


「グリーンカーテンに適しているのはつる性植物。中でも初心者におすすめなのがゴーヤと朝顔です。枯れにくいので、小学校でもよく植えられています。
また、混植(つる性以外の植物を一緒に植える)することで、水分をより効率的に吸い上げられるようになります。スペアミント、モヒートミント、クリーピングタイム、オレガノなど、暑さに強くてあまり栄養を必要としないものを一緒に植えてみてください。逆に、実をつける植物はその分多くの栄養が必要になるので混植向きではありません」

 

・土

プランター土とマルチング資材2種類(腐葉土とココチップマルチ)


「最近、軽さを売りにしたプランター土が出ているのですが、持ち運び反面、乾燥しやすいという特徴があります。失敗を防ぐためにも、できれば避けたほうがよいと思います。
また、プランター土だけを買う方が多いのですが、水分をちょうどよいバランスにコントロールしてくれるマルチング資材もぜひ一緒に準備してみてください。農家でよくみる黒いビニールシートも乾燥対策なのですが、その代わりと言えます。今回は腐葉土とココチップマルチを用意しましたが、ココチップマルチは主に雨が直接当たるのを防ぐ役割のため、藁マルチや敷き藁マルチ、落ち葉などでも代用可能です」

 

・プランター

苗の大きさに対して10倍の容量を持つ、底面給水のプランター


「身長の高い人は足のサイズが大きいのと同じように、つる性植物も根のサイズによってどれだけ上に伸びるか決まります。そのためW60×D15×H20cmのプランターであれば、植えられる苗は大体2つくらいと考えてください。
初心者の場合、プランターは底面給水のものがおすすめです。表面の土が乾いても、毛管現象(根が水を吸い上げる力)によって鉢底の貯水スペースに貯まった水が土を潤してくれるので、多少水やりを忘れてしまってもカバーできます」

 

・ネット

プランターの横幅に対し、倍くらいの幅のネット


「一軒家であれば2階のベランダから垂らせばOKですが、アパートやマンションの方は難しいと思います。その場合はサッシや壁につけられるフックが売っているので、ネットとあわせて用意してみてください」

 

グリーンカーテンのベースを作る苗の植え方


はるさんによれば、グリーンカーテンづくり最大のポイントは“始めるタイミング”だそう。苗から始める場合、身長よりもうんと高くまで成長させたいなら5月上旬、100cmほどでよい場合も5月中には植えたいと言います。とはいえ時期を過ぎてしまっても早く始めるに越したことはありません。早速、手順を確認していきましょう!

 

1.プランターに土を入れる

大抵、プランターに目安線が入っているため、その線までプランター土を入れます。土の量が不十分だと枯れやすくなってしまうので要注意! その上に腐葉土、さらにその上にココチップマルチをそれぞれ1~2cm重ねましょう。

 

「この3層にすることで森の環境が再現され、ちょうどよい水分のバランスが保たれます。腐葉土よりも先にココチップマルチを入れてしまうと窒素飢餓という病気になることもあるので、順番は必ず守ってください」

 

2.苗を植える

プランターの中心につる性植物の苗を、そのまわりに混植の苗を配置してください。植える位置が決まったら、苗が入ったポットと同じくらいの深さの穴を掘ります。ポットから苗を取り出して土の色を確認し、プランター土に似た薄い色であればそのまま植えてOK。腐葉土に似た濃い色であればプランター土に少し腐葉土を混ぜてから植えましょう。土を戻すときも、プランター土⇒腐葉土⇒ココチップマルチという順番が混ざらないよう気を付けてください。

 

プランター土に近い薄い土のゴーヤ(左)と、腐葉土に近い濃い土のホップ(右)

 

「つる系をはじめとする直根系の植物は、根が空気に触れるのを嫌います。機嫌を損ねてうまく育たなかった…という事態を防ぐために、なるべく根を触らないようにしてください。反対に混植で植えるハーブ系は根性のある子が多く、根を触ってほぐしたほうが強くなることもあります! 植物ごとの性格のちがいも園芸や農業の面白いところですね」

 

3.プランターを設置する


南向きの、西日(夕日)が当たらない場所に設置するのがおすすめです。混植の植物ではなくつる性の植物が優先的に陽に当たる向きで置きましょう。ネットはできれば2m以上の高さから、プランターの外側を覆うように掛けます。たゆまないように下におもりなどを置いて、ピンと張ってください。

 

「朝日と夕日では光の成分が異なり、グリーンカーテンの植物は朝日を食べて成長します。夕日はグリーンカーテンにとってただの光=熱エネルギーのため、人間が熱波を浴びて暑くなるのと同じように葉焼けしてしまうんです」

 

グリーンカーテンづくりを成功に導く管理のポイント

立派なグリーンカーテンをつくるには、毎日のお手入れも欠かせません。実は管理不足などが原因で、はるさんの印象では20~30代の7~8割が途中で枯らしてしまうとか……。

 

水やりは毎日2回、早朝(6時~7時)と夕方(18時以降)に行うのが理想的。一つの苗に約30秒ずつあげてください。打ち水の要領でプランターのまわりにも水を掛けると、地面の熱気が冷めて乾燥しづらくなりますよ。忙しくてなかなかできない方は、夕方以降に一度、2.5倍くらいの時間をかけて水やりをしてください。最近はペットボトルに取り付ける自動給水キャップや、タイマー付の自動潅水システムなども売られていますので、そういったものを使うのも一つの手です」

 

肥料も大切です。

 

「花が咲き始めたら追肥をしてあげてください。固形肥料や液体肥料などさまざまあるので、お好きなものを選んでください。たまにオーガニックの肥料を選ぶ方もいるのですが、オーガニックのものは微生物がいてこそ効果があります。土づくり(後述)をしていない場合は、微生物が十分にいるとは考えにくいのであまりおすすめできません。どうしてもオーガニックがよいという方は鶏糞や豚糞を選んでみてください」

 

枯れたら終わりじゃない! 来年に向けて土づくりを

夏が終わり、グリーンカーテンが枯れてしまったら、残った葉っぱや土はどのように処理していますか? 捨ててしまう方も少なくないと思うのですが、はるさんは「こんなにもったいないことはない!」と話します。

 

「太陽の光や肥料をたっぷり食べた葉・つる・土は、微生物の大好物です。ですからけっして捨てずに、残った葉・つるはすべて回収し土の上にまいてください。そこへ堆肥(生ごみでもOK)を追加し、黒いビニールシートを被せたら、石などのおもりを乗せます。すると土の中で微生物が暮らすようになり、よい土に育っていきます。
よい土は微生物の呼吸で排出されたCO2によって、手ざわりがやわらかくなったり、雑草が育ったりします。雑草はココチップマルチの代わりとして雨が直接当たるのを防ぐ役割を担ってくれるうえ、混植をしていることにもなるので一石二鳥! より自然に近い環境でグリーンカーテンをつくることができ、オーガニック派の方はうれしいのではないでしょうか」

 

伊藤さんのご自宅では、使い終わった土と堆肥を黒いビニール袋に入れて保管している

 

植物を育てるうえで大切なのは、その植物の様子を見てあげることだと、はるさん。

 

「『朝晩2回水やり』『花が咲いたら追肥』などとお伝えしましたが、決められたルールに縛られるのではなく植物の様子にあわせて調整してあげてください。なかなか難しいとは思いますが、楽しんで、植物が育つ喜びを感じてもらえるとうれしいです」

 

家庭菜園を楽しみながら、節電も! 今夏に向け、ぜひ取り組んでみてください。

 

Profile

はる農園代表・みんなのいっぽ理事 / 齊藤はるか

茨城の農業法人に勤務後、2012年に千葉県印西市ではる農園を始める。農園の傍ら、みそやしょうゆを作り、冬は木こり、猟師として活動している。市民活動団体「みんなのいっぽ」の一員でもあり、令和5年4月1日より千葉県印西市との協業で「グリーンカーテンでゼロカーボン事業」も実施。印西市内の公共施設でグリーンカーテンの種子を無料配布するなど、普及活動に尽力している。
印西市協働事業 グリーンカーテンプロジェクト HP
はる農園 HP
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みんなのいっぽ Instagram

手軽なバッグ型・段ボール型が登場!「コンポスト」で生ごみを資源に変えるサステナブルな暮らし

昨今、注目されている「コンポスト」。生ごみや落ち葉を活用して堆肥をつくることをいい、もともと家庭菜園を楽しんでいる人にはお馴染みでしたが、マンションのベランダでもできるバッグ型など手軽なタイプの登場によって、身近になってきています。

 

生ごみや落ち葉を、ゴミとして廃棄せずに活用する……そんなサステナブルな仕組みと、メリット・デメリット、活用法などについて、バッグ型のコンポストを手がけている、LFCコンポスト代表のたいら由以子さんに教えていただきました。

 

忙しい日々に癒しをもたらす!? 都会のベランダにも取り入れたい「コンポスト」

たいらさんが都会のベランダで始められるコンポストの開発と普及に力を注ぐきっかけとなったのは、約28年前の、お父様のガン宣告だったそう。

 

「食養生のための無農薬野菜が必要になり、いざ探してみると、近くのスーパーではほぼ手に入らない。おまけに高価で、家計への負担も大きい。安全な野菜を手に入れるのが困難な社会に憤りを感じつつも、この状態に反対運動をするよりも改善策を考え、行動することが大切だと感じました。

現代人の多くは、日々の忙しさに追われ、コンビニやスーパーで安易に手に入る無農薬とはほど遠い食材に頼り、食べ残しや調理くずは可燃ごみとして処分しています。これは自然界の循環を止めてしまっている行為なのです。わたしたちは自然の中の一部。食べ物で栄養をいただいたら、生きている間は排泄物でお返しし、死ぬときは自分自身が栄養素として土に戻っていくようにできています。人間も例外ではありません。

実際に、コンポストを始めたお客さまの中には、イライラや不安の解消効果が得られたという声も少なくありません。これは、自然循環を取り戻すアクションが、人間の心にも好循環の働きをもたらしてくれたと言えます。土や自然に触れる生活からかけ離れている方にこそ、コンポストを体験してもらいたいです」(LFCコンポスト代表・たいら由以子さん、以下同)

たいら由以子さん。

 

生ごみが分解されるまでは臭う? 土にどんな影響がある?

家庭から出る生ごみを資源として有効に活用する「コンポスト」。でもコンポストを使うことで、生ごみ臭や虫がわくトラブルはないのでしょうか?

「水気を含んだ生ごみをビニール袋に入れて保管すると、嫌な臭いが発生しますが、コンポストは微生物が分解していく上に、水分を含んだ生ごみが腐敗していくわけではないので、悪臭に悩まされることはありません。また、密封しておけば、ハエが飛び回るような状況も起こりません」

 

ちなみに、生ごみの臭いを防ぐものでは「乾燥式」の生ごみ処理機があります。温風で生ゴミの水分を蒸発させて乾燥させることで、腐敗の進行を防ぎ、臭いにくくするもの。ただしこれは、燃えるゴミとして廃棄する前提。生ごみをごみとせず、土壌に循環させて有効活用できるのが、「バイオ式」の生ごみ処理機で、これを「コンポスト」と呼びます

【関連記事】夏は虫がわいたり臭ったり……生ゴミをエコに処理する「生ゴミ処理機」を取り入れるには?

 

では、コンポストで作られた堆肥は、土にどのようなメリットをもたらすでしょうか?

「コンポストで作られた堆肥は、土壌の肥沃度を保つ働きをします。化学肥料を使う必要がなくなるので、結果的に、安心安全の野菜が育てられる上に、味が濃く、栄養価の高い収穫物が実ります。

家庭から出る燃えるゴミの約4割は、生ごみが占めています。これを家庭で堆肥に変えることができれば、ゴミの量が減らせる上に、自給率が上がり、化学肥料の使用量も減らすことができるのです」

 

コンポストを使う手順とは?

1.生ごみを集める

調理などで出た生ごみ。一口大よりも大きいものは、細かく切っておきましょう。ちなみに、コンポストに入れない方がいいものもあります。

・余分な水分
・分解しにくいもの…とうもろこしの芯、カニの殻、貝がら

 

2.コンポストの中に生ごみを入れ、よく混ぜ合わせる

コンポストの中に生ごみを入れて、よく混ぜます。生ごみは1日300g~500g程度に。これを1.5〜2か月間続けます。投入する生ごみの量は規定内にしましょう。生ごみの量が多すぎると分解や発酵が進みづらく、悪臭や虫がわく原因にもつながります。

 

3.約3週間、熟成させれば完成

週に1~2回、500mlほどの水を入れ、週に2~3回全体をよく混ぜれば完成。熟成しきらずに残った卵の殻も、そのまま堆肥として使用可能です。

 

初心者にはバッグ型がおすすめ! 取り入れやすい主なコンポスト

コンポストにはさまざまな種類があります。

 

「初心者におすすめなのは、ベランダで手軽に始められるLFCコンポストかダンボール型コンポストですね。お子さんのいるご家庭なら、ミミズコンポストも楽しめそうですね。ただ、ミミズコンポストは、ミミズが嫌いな柑橘系を入れるのはNGなのと、虫の出入りもあるので、初心者にはややハードルが高いかもしれません。電気式の生ごみ処理機は、床に直接置けて室内に設置できるのが便利です。ただし、本体が高額で継続的に電気代がかかります。電気式の生ごみ処理機に関しては、助成金のある自治体もあるので確認するといいでしょう」

 

コンポストの設置には、どのような点に注意したらいいでしょうか?

 

「どんなコンポストにも共通していますが、雨が当たらず、風通しのよい場所に置きます。コンポストの底面や床が湿らないように、床に直接置かず、網カゴの上などに置いてください」

 

・バッグ型コンポスト

LFCコンポスト「LFCコンポストセット」
定期便初回=3278円、2回目以降1848円(税込)

https://lfc-compost.jp/product

「専用バッグに基材(生ごみと混ぜ合わせる材料)を入れ、1日300g~500gの生ごみを1.5~2か月の間、毎日投入してよくかき混ぜるだけ。微生物が生ごみを分解し続けてくれるので、バッグからあふれるようなことはありません。虫が入りにくいファスナー仕様。たんぱく質類はたまにアンモニア臭が発生することもありますが、酸素がよく行き渡るようにしっかり混ぜていれば、臭いは自然と収まっていきます。生ごみ臭や虫の発生で近所に迷惑をかけることなく、都会のベランダでも手軽に始められます」※再利用可能

 

・ダンボール型コンポスト

たのしい循環生活「ダンボールコンポストセットプラス」
3940円(税込)/ NPO法人循環生活研究所提供

https://jun-namaken.shop-pro.jp/?pid=72901230

「ダンボール箱に専用基材を入れ、生ごみを投入してよくかき混ぜればOK。ダンボールコンポストの使い方をわかりやすく解説した冊子『堆肥づくりのススメ』や温度計、ファスナータイプの虫よけカバーも付いているので、初心者でも使いやすいタイプです。毎日500gの生ごみを約3ヵ月間投入でき、仕上げに3週間ほど熟成させると堆肥ができあがります」

 

暮らしも気持ちも満たされる!? コンポストがもたらす多大な恩恵

ベランダの一角で始められるコンポストが、暮らしの中に与える好循環は計り知れないというたいらさん。

 

「まず、ご飯や麺などの残飯、肉や魚の骨、野菜の皮やクズ、コーヒーのがらや茶がらなど、今までは家庭ごみとして捨てていた生ごみが堆肥となり、貴重な資源に生まれ変わります。作業は1日1回混ぜるだけ。コンポストを覗けば、微生物が野菜クズを分解し、土へと変えてくれている様子が見られます。毎日、コンポストのお世話をしているような気分や、地球にやさしい活動をしている感覚が得られてうれしいというお声もよく聞きます。

 

出典=ローカルフードサイクリング公式HPより

 

コンポストを始めて約3か月で堆肥ができますが、家庭菜園や観葉植物などで使いきれないときは、お友達やご実家にプレゼントをするのはいかがでしょうか? LFCコンポストでは、農家さんに堆肥を提供し、野菜と交換する機会も設けています。また、学校や施設、自治体で堆肥を回収しているところもあります。お近くの自治体に問い合わせてみるといいでしょう。堆肥と野菜の物々交換が当たり前にできる循環型の血の通ったやりとりが増えるといいですね」

 

不名誉な現状を変えられるか?
日本は、ごみ焼却量で世界No.1という現実

コンポストを都会で普及させ、家庭ごみを減らしたい。たいらさんの思いは、日本の不名誉な現状を打破することと、日本人本来の暮らしを取り戻したいという切なる願いも込められています。

 

「国際機関OECD(経済協力開発機構)の2013年発表のデータによると、日本は世界のごみ焼却率No.1。1位の日本が77%に対し、2位のノルウェーは57%、3位のデンマークは54%という数値から見ても、ダントツトップという結果に。

日本がごみ大国になってしまったのは、戦後の高度経済成長以降です。昭和初期までの日本は、80%以上の人が農業に携わり、生ごみは畑の土に埋め、肥沃な土を作り出すための大切な資源でした。戦後、一気に都市化や欧米化する暮らしの中で、いつしか生ごみを焼却するライフスタイルが定着していき、自然と暮らしが分断されてしまいました。そして、元々清潔好きだった国民性に、このごみを焼却するシステムが合ったこともあるでしょう。国内にはごみ焼却炉がどんどん増えていき、現在に至ります。

ベランダでできるコンポストが都会の暮らしにも普及すれば、生ごみの焼却量を大幅にカットし、環境にも体にもやさしい脱炭素社会に大きく貢献できるのです」

 

コンポストに挑戦した方からは、「もっと早く始めればよかった!」という感想が多く届くというたいらさん。まずは、コンポストを始めることで家庭ゴミを減らして、サステナブルなアクションに参加しませんか。

 

【プロフィール】

LFCコンポスト代表 / たいら由以子

大学で栄養学を学び、証券会社に勤務。大好きな父とのお別れをきっかけに、土の改善と暮らしをつなげるための、半径2kmでの資源循環を目指し活動開始。青年団の仲間と循生研を立ち上げ、子どもから高齢者、外国人までコンポストでつながる美味しい食の輪をつくるのが生きがい。メンバーとのお茶の時間を一番大切にしている。行動を最良の学習手段とし、活動をスパイラルアップさせるが信条。趣味はイラストコミュニケーション、レコード・映画鑑賞、愛犬と遊ぶこと。

 

ベランダ菜園がNGの賃貸マンションでも! コップ1つの「再生栽培」で家の中で野菜を収穫する方法

在宅時間が増えたことで、あらためて注目されている家庭菜園。貸し農園を利用したり、庭の一角に野菜を植えたり、さまざまな方法で楽しむ人が増えています。なかでも人気なのが、自宅のベランダやテラスでの“プランター菜園”。ところが賃貸マンションの場合、ベランダは共用スペースなので、ルール上はプランターを置いて菜園化するのはNGとされています。ならば家の中を活用して、野菜を育ててみませんか?

 

そこで今回は、初心者でもトライしやすい“再生栽培”を解説。農業コンサルタントとして活躍する宮崎大輔さんに、おすすめの野菜や育て方のポイントを教えていただきました。

 

家庭菜園の魅力は
“育てる楽しみ”だけでなく“食べる楽しみ”も味わえること!

家庭菜園は、「家で過ごす時間が増えた今、趣味として楽しむのにもぴったりです」と宮崎さん。コロナ禍で、農園を借りて本格的にチャレンジする人も、ベランダやキッチンなどの室内で気軽に楽しむ人も、両方増えていると言います。そもそも自分の手で野菜を育てる家庭菜園には、どのような魅力があるのでしょうか?

 

「どんな植物にも“育てる楽しみ”があると思うのですが、家庭菜園はそこに“食べる楽しみ”もプラスされるところが、魅力のひとつだと思います。収穫してすぐに食べられるので新鮮さや安心感がありますし、何より自分の手で育てた野菜には愛着がわきますよね。

家庭菜園の中でもトライしやすく、初心者におすすめなのが“再生栽培”です。野菜のヘタや切れ端などを使って育てる再生栽培は、『リボべジ(リボーンベジタブル)』とも呼ばれ、エコや節約にもつながります。ホームセンターに行って種や苗をわざわざ購入する必要はなく、土やプランターなしで育てられる野菜もあるので、コップ1つあれば始められます」(宮崎大輔さん、以下同)

 

家にあるものでチャレンジ!
再生栽培におすすめの野菜は?

「家庭菜園をやってみたいけれど難しそう」とハードルを感じている人にもおすすめしたい再生栽培。再生栽培の中でもチャレンジしやすい、土を使わず室内で育てられる野菜を教えていただきました。

 

1. 捨ててしまいがちなヘタを活用!「ニンジンの葉」

「ニンジンのヘタは普段捨ててしまう人も多いと思いますが、このヘタからニンジンの葉を育てることができます。葉は育ちすぎると固くなってしまいますが、再生栽培では固すぎずほどよい柔らかさに育つので、おいしく食べられますよ。スープに入れたり炒飯に入れたりして食べるのがおすすめです」

 

「栽培の方法はとても簡単。浅めのトレーやお皿にヘタを置いて水に浸しておくだけで葉が伸びていきます」

「水は、葉が出てくる部分に浸からない程度まで入れましょう。2週間ほどで育つので、食べる際にハサミでカットして収穫します。収穫できるのはだいたい1回です。ニンジンの葉は成長がとても早く、にょきにょきと伸びていく様子が目に見えてわかるのでとても面白いですよ!」

水は、とくに気温が高くなるこれからの時期は毎日替えるようにしてください。また水を替えるときには、トレーも一緒に洗うことを忘れずに! トレーに雑菌がついているとせっかく水を替えてもヘタが腐ってしまうことがあります。

置いておく場所は、そこまで日当たりが良い場所でなくても大丈夫です。しかし気温が高い時期は、直射日光が当たる場所は避けるようにしましょう。逆に冬はエアコンが効いている暖かい部屋など、寒すぎない場所に置くのが良いと思います。ちなみに、ダイコンの葉もまったく同じ手順で育てることができますよ」

 

2. 使いたい分だけ収穫できて、再生栽培にぴったり!「小ネギ」

「普段は捨ててしまう根の部分から育てられる小ネギ。最初から根が付いているので失敗しづらく、害虫もつきにくいので、初心者にもぴったりです。また、小ネギは料理のトッピングとして使うことが多いと思いますが、使いたいときに使いたい分だけ収穫できるので、再生栽培に適した野菜と言えると思います」

 

「栽培方法は、切り落とした根の部分を、水の入ったコップやプラスチックのカップに入れるだけ」

根の部分がしっかりと浸かっていれば、水の量はそこまで気にする必要はありません。約1週間で育つので、使いたい分だけハサミでカットして収穫しましょう。2~3回は収穫することができますよ」

置き場所は、日当たりの良さをそこまで考える必要はありません。リビングのテーブルや出窓などのちょっとしたスペースに置いても良いと思います。

また小ネギは、水に浸けずに土に植えて育てることも可能です。土で育てる場合は、まず小さめのプランターを用意して鉢底石を敷き、その上に野菜用の培養土を入れます。根が埋まるくらいまで穴を掘って植えたら、最初は水をたっぷりと与えましょう。その後は土の表面が乾いたら水やりをするようにしてください。土に植えれば、何か月、何年ももつので、長期間育てたいときや元気に大きく育てたいときには、ぜひ挑戦してみてください!」

 

3. 丈夫で育てやすいのが魅力!「ミント」

「残った茎から育てることができるミント。生命力が強くて丈夫なので、初心者でも育てやすいと思います。自分で育てれば、いつでも摘みたてのミントを使ったミントティーなどをつくることができます」

 

「栽培方法は、ミントの茎の部分を水が入ったコップやプラスチックのカップに浸けておくだけ」

葉を食べた後の茎を使うか、下の方の葉はあらかじめ取っておき、葉が水に浸からないようにしましょう。収穫するときは、ハサミでカットしても手で摘んでもどちらでもOKです」

「ミントは日当たりが良い場所に置いておくと、早く元気に育ちます。たまに水を替えてあげるだけで肥料などを与えなくても半年~1年間くらい育てることができますよ。

また、ミントも土で育てることが可能です。土に植える前に、根が5cmくらい伸びるまで茎を水に浸けておくようにしてください。植えるときにはまず、プランターに鉢底石を敷き、その上に野菜用の培養土を入れます。土に根が埋まるくらいまで穴を掘って植え、最初はたっぷりと水を与えましょう。その後は土の表面が乾いたら水を与えるようにしてください。約1か月で収穫できるくらいまで育ちますが、ミントは土に植えると育ちすぎてしまうため注意が必要です。植え替える場合は小さめサイズのプランターを使うことをおすすめします」

 

4. 今注目されている野菜の一つ!「ニンニクスプラウト」

「ニンニクスプラウトとは、発芽直後の新芽があるニンニクのこと。品揃えが良いスーパーなどでは販売されていることもありますが、まだ値段が高く、比較的珍しい野菜です。においがきつくなく、まるごと食べられて栄養価も高いので、最近少しずつ人気が高まっています。そのままソテーにしたり、素揚げや天ぷらにしたりして食べるのがおすすめです」

 

「再生栽培では、皮をむいたニンニクのかけらをそのまま使います。少し時間が経って芽が出てしまったものがあれば、ぜひそれを活用しましょう」

「卵のパックや製氷皿などにひとかけずつ入れて立たせ、根が浸かるくらいまで水を入れます。少し面倒ですがニンニクを全て取り出して、毎日水を取り換えるようにしてください。収穫までは約2週間。5cmほど根が伸びたら収穫できます」

「置き場所は、出窓などできるだけ日当たりの良い場所がおすすめです。3~4個だけ育てたいときには、小さなカップに入れても良いと思います。また僕自身、実験的にいくつかのニンニクを使って育ててみたのですが、品種によってはまったく芽が出ないものもありました。もっとも良く育ったのは、スーパーで手に入る普通サイズのニンニク。まずはこれで試してみるのがいいかもしれません」

 

再生栽培をもっと楽しむためには?

特別な道具がなくてもすぐに始められる再生栽培。最後に宮崎さんから、「他の野菜も育ててみたい」「もう少しレベルアップしたい」という人へ、再生栽培をさらに楽しむためのヒントを教えていただきました。

 

「今回紹介した野菜以外にも、肉料理の付け合わせにぴったりなクレソンや、暑い時期でも育てやすいクウシンサイなど、初心者の方もトライしやすい野菜はまだまだあります。

さらに難易度を上げて再生栽培をやってみたいという方には、プランターを使って土で育てたり、水耕栽培を本格的にやってみたりするのがいいと思います。例えば水耕栽培では、水に溶かすタイプの液体肥料や、水槽用のエアーポンプ、太陽光代わりのLEDライトなどを使って育てれば、ゴーヤやキュウリなどの野菜も育てることができますよ。個人的には、イチゴの再生栽培もおすすめ! 難易度は高めですが、ぜひチャレンジしてほしいです。

そのほか、一つの野菜をいくつかの方法で育ててみるのも楽しいと思います。例えば『豆苗』は根を水に浸しておけば、また豆苗が育てられますが、土に植えるとエンドウマメを育てることもできるんです。実験的にいくつかの品種を育ててみたり、育て方を変えてみたりすると発見があって面白いかもしれません」

 

さまざまな楽しみ方ができる再生栽培。ぜひ自分の好きな野菜でチャレンジしてみてください。

 

【プロフィール】

農業コンサルタント / 宮崎大輔

1988年生まれ、長野県出身。実家は果樹園を経営。信州大学大学院農学研究科修士課程修了。青年海外協力隊として中米パナマ共和国で農業支援に従事。2019年に農業コンサルティング企業「イチゴテック」を創業し、日本、アジア、中南米、アフリカで農業ビジネスの支援を行う。2021年10月には「キッチンからはじめる!日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり」(KADOKAWA)を出版。自身のYouTubeチャンネルで「趣味の園芸からガチ農業まで」をテーマに、幅広い分野の植物に関する情報も発信している。
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『キッチンからはじめる!日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり』(KADOKAWA)

 

キッチンが家庭菜園に! 秋冬でもベビーリーフやスプラウトで楽しむ「ハーブ」栽培

自分で育てたハーブを摘んで、その日の料理に使う。そんな暮らしに憧れたことはありませんか? 家にいる時間が長くなるこれからの季節はなおさら、料理にもこだわりたいところ。でも、室内での植物栽培は光や水の加減が難しく、なかなかうまくいかないことも多いのです。

 

今回は、そんなキッチンハーブの上手な育て方と、冬に向かうこれからの季節でも種を撒けるハーブの種について、グリーンフィールドプロジェクトの代表・松崎英さんに教えていただきました。

 

秋冬に撒くハーブはベビーリーフとして活用する!

一般的に植物は、春夏に芽を増やしてぐんぐんと生育していくもの。気温が下がる秋冬は、どんな植物でも成長スピードが遅く、ハーブ栽培にもコツが必要です。

 

「春夏に芽を出すものであれば、数個の種を撒いて元気に伸びた一株を大事に大きく育てていきます。一株だけ育てても、成長にスピードがあるので、収穫して食べたらすぐにまた次の葉が生えてくる……というサイクルがうまくいくんですよね。

 

一方、秋冬はどうしても温度(気温)と光(日光)が足りなくなるので、成長が緩やかになり、うまく育てられなかったりします。ただ、9月から10月の初旬にかけての、まだ20度ほどの暖かい日が続く時期であれば、寒くなっても耐えられるくらいの大きさに成長させることができるでしょう。10月中旬以降で寒さが感じられるようになってからは、発芽しても成長が遅いために耐寒性が弱い品種の場合は育たずに終わってしまう可能性がありますが、そのような環境の中でもハーブをベビーリーフとして収穫する方法であれば育てやすく、食べる楽しみも味わえます」(グリーンフィールドプロジクト代表・松崎英さん、以下同)

 

・ベビーリーフとは……
芽が出てから10〜30日ほどの、まさに“葉っぱの赤ちゃん”のこと。やわらかく栄養価も高いとされ、葉物野菜ではルッコラ、ホウレンソウ、ミズナなどが多く出回り、サラダにもよく使われます。

 

↑ベビーリーフとして楽しめるハーブはさまざま。松崎さんが販売しているオーガニックシードを見せていただきました

 

「いろいろありますが、イタリアンパセリ、レモンバーム、コリアンダー(パクチー)、バジルなどが、ベビーリーフとして収穫し楽しめるハーブです。まだ若くて柔らかい葉を収穫し、サラダに入れたりスープに散らしたり、レモンバームはハーブティーとして楽しむこともできます。ほかに、ビオラやカレンジュラは食用花として活用できるので、サラダにのせたり、ゼリーやケーキなどの飾りにしたりしても華やかです。芽が出るまでは日陰で育て、芽が出たら、窓際など光が入ってくる暖房の風があまり当たらないところで育ててください

 

※写真は、春に種を撒いて育てたウィンターサボリー

 

「ウィンターサボリーやタイムなどは、ローズマリーのようにしっかり育つと茎が細枝のようになっていき、とても丈夫で育てやすいハーブです。ウィンターサボリーは聞き馴染みがない植物かもしれませんが、煮込み料理ととても相性がよく、使い勝手のいい植物です。酢やオイルに漬け込んでおき、ドレッシングにするのもおすすめ。この2種類なら、秋に撒いても比較的元気に育ちやすいと思います」

 

小型のポットにハーブの種を撒く方法

実際に、ポットにハーブの種を植えるところを見せていただきましょう。キッチンなど家の中のちょっとしたスペースに置けるものというと、小型のポットになります。

 

「準備するのは、3.5号のポットとハーブ用の土です。ポットは、大きいほど植物がのびのびと育つことができるので、本来は置き場の許す限り大きなポットやプランターに撒いてほしいのですが、キッチンに置けるサイズとなると、現実的にはこのくらいの大きさでしょうか。土は、安価なものも売っていますが、やはり生育状態には違いが出る可能性があるので、園芸センターなどで『ハーブ用』と書かれた土を買いましょう。粘土質でないフワフワした土なので、水はけがよく、根腐れする心配がありません」

 

今回使った種は、コリアンダー(パクチー)です。一般的にコリアンダーの種は、芽が出るまでに1週間から10日ほどかかり、けっして発芽が早い品種ではありません。しかし、グリーンフィールドプロジェクトのベビーリーフ用のコリアンダーの種は、56日で芽が出るように種の一部を半分に割って(スプリット)販売しています。

↑コリアンダー(パクチー)の種は小さな球状をしていますが、グリーンフィールドプロジェクトのものは半球に割れています

 

「種を買ってみて丸いままのものだったら、ちょっと割ってみてから植えたり、ひと晩水に漬けておいて、殻を柔らかくしてから植えるという方法もあります」

 

【植え方】

1. ポットに土を入れる

まずはポットの8割くらいを目安に、土を入れていきます。「このとき、土をぎゅうぎゅう押して詰めてしまうと、せっかくフワフワだった土が硬くなり、水や風の通りを悪くしてしまうんです。でも、あまりにスカスカになってしまうのもよくないので、手で軽く押さえていきます」

 

2. 表面を平らにならす

土が入ったら、表面を軽く撫でて土を平らにならしていきます。「このときも押しつけてしまわないように行いましょう。土に根がするすると伸びていきやすいように、適度な密度にしていきます」

 

3. 水を入れる

ここで一度水を入れて土全体を湿らせます。「ポットの下から水が滴るので、水を入れたらいったん鉢を持ち上げてしっかり水を切ります。土が乾燥していると水を弾いてしまい、少し水をあげたくらいでは全体に行き渡らないこともあります。下から水が抜けるのをきちんと確認できるまで、水をあげましょう。また、このまま受け皿に置いてしまうと、お皿の中に水が溜まってしまうので、きちんと水切りしてから置きます」

 

4. 種を撒く

土の上に、種を撒いていきましょう。指の腹にいくつか持って、指をひねるようにして種を置いていきます。「このポットのサイズなら20〜30粒くらいは撒くことができます。密集しないよう、広げて撒いていきます」

 

5. 種に土をかぶせる

種の上から土をかぶせていきます。深さはあまりなく、種が見えなくなればOK。「土に指で穴を開けて種を入れていく方法もあるのですが、種の数が多いときにはこちらの方法の方が、上手に撒くことができます。土をかぶせたらまたそっと平らにならし、もう一度表土を湿らせる程度に水をかけておきます」

 

発芽するまでは日陰に、発芽したら日光が当たる窓際などの場所に置き、日々観察してみましょう。「芽が出るまで、スプリットされたものなら5日ほどかかります。植物を育てはじめたときは、うれしくてつい水をたくさんあげてしまうのですが、表面を触ってみて湿っていたら水は控えます。完全に表土が乾いていると感じたら、最初にあげたときのようにたっぷり水を入れ、下から滴り落ちる水をしっかり切って、受け皿に戻します」

 

「ベビーリーフでも、このくらい大きなプランターで育てると、植物はより快適に根をのばすことができるので、場所があるならぜひ、大きい土地で育ててあげてください。このくらいの大きさだと、サラダとしてしっかり満足できる量を育てることができます。ハーブを一株しっかり育てたいなら、直径30cmほどで深さ20cmくらいのプランターで栽培するのがいいでしょう」

 

一方、葉物を育てるのはなんだか難しそう、土を家の中に持ち込みたくない……という人におすすめなのが、スプラウトです。

もっと手軽にキッチン栽培を楽しむなら「スプラウト」がおすすめ

一方、葉物を育てるのはなんだか難しそう、土を家の中に持ち込みたくない……という人におすすめなのは、スプラウトの種を撒くこと。

 

・スプラウトとは……
種や豆種を食用に発芽させた新芽。撒いて2日ほどで芽が出はじめ、1週間〜10日で食べられるくらいのサイズに成長します。

 

「スプラウトは水耕栽培でも育てられ、とても簡単な上、栄養価の高い野菜としても知られています。土に触りたくない方や、家に土を持ち込みたくない方にもおすすめです。季節を問わずに育てられますが、夏場の高温多湿期は腐りやすいので、秋冬には特におすすめです。こちらは赤ラディッシュの種ですが、スプラウトにもいろんな種類があって、お料理の香りや味づけにもってこいのものもあるんですよ」


【有機種子・固定種】赤ラディッシュ(スプラウト)
314円+税(15g

 

もうひとつ見せていただいたのは、ガーリックチャイブのスプラウト。一般には、「ロックチャイブ」という名前で売られています。ヒョロヒョロとした容姿なのですが、1本食べただけでガーリックの強い香りが口中に広がるくらい、しっかりとした味と香りがあります。


【有機種子・固定種】ガーリックチャイブ(スプラウト)
314円+税(3.5g)

 

水耕栽培の専用ポットも販売されています。これさえあれば、あとは種を変えていくだけでさまざまな種類・味のスプラウトを楽しめます。


おうちでベジ~スプラウト栽培専用容器~
361円+税
※写真右の種は付属しない

「バジルやディル、コリアンダー(パクチー)などもスプラウトで育てられるので、料理の仕上げに飾ると本当においしいですよ。なかでもいちばんよく売れているのは、ブロッコリースプラウトです。栄養価が高いという認知もされていて、サラダに混ぜたり料理に和えたりして使っていただいています。ほかにも、胡椒草やルッコラ、ケール、チアシードなどもスプラウトで育てられます。秋冬なら、一日一度か二度水を変えればいいだけなので、本当に手軽です」

 

料理のアクセントに、豆のスプラウトにもチャレンジ!

こちらはハーブではありませんが、“栽培”というほどの日数もかからず、2〜3日ですぐ収穫し食べられる豆の栽培キットも。青えんどう豆やレンズ豆に水をあげて栽培し、発芽した豆をいただきます。

 

「何か育てて食べるという経験をしてみたい方や、小さいお子さんにも楽しんでいただけます。発芽させることでギャバが格段に増え栄養が豊富なので、日々の食生活に栄養不足を感じている方にもおすすめですよ。こちらは初日に豆を浸水させるだけで、あとは毎日豆を水で洗って置いておくだけ。発芽したら食べられます」


左:発芽豆栽培キット~選べる5タイプ(緑豆、フェヌグリーク、レンズ豆、ひよこ豆、青えんどう豆)
1226円+税(専用ジャーと豆1種がセット)
右:クリムゾンレッドレンズ豆(スプラウト)【有機種子】
663円+税(120g)

 

種から選び、自分で育てていただく楽しさを、ぜひ体験してみてください。

 

【プロフィール】

グリーンフィールドプロジェクト 代表 / 松崎 英

アメリカの大学で経済学を学び、卒業後は外資系金融機関に勤務。メキシコ駐在時代にフェアトレードや有機農産物などに関心を持ち、2009年には農業分野への転身を決意。友人が経営する熊本県天草市の種苗店で働きはじめる。ヨーロッパの有機種子の情報を入手したことが大きな転機となり、2012年に有機種子販売会社を設立。日本初で唯一のヨーロッパ有機認証を取得した有機種子の輸入・販売会社となる。持続可能な農業の実現のために有機種子の販売に注力しているほか、日本の在来種を継承することを目的とした「SAVE THE SEEDプロジェクト」を立ち上げた。

 

週末農園やレジャー農園が人気。露地栽培から始める家庭菜園のススメ

現代の集合住宅では、庭がないケースがほとんど。そのため、庭先で野菜を育てたくてもできない、そんな人が多いのではないでしょうか。

 

とはいえ、ベランダで手軽にできるプランター菜園では、栄養たっぷりで大ぶりの野菜は育ちにくいもの。せっかく野菜づくりに取り組むなら、太陽の恵みがたっぷり注がれる露地栽培にチャレンジしてみませんか?

 

そこで注目したいのが、レンタル農園や区民農園、あるいは週末農園、レジャー農園などと呼ばれている菜園です。また、“クラインガルテン”と呼ばれる小さな別荘付きの農園も、根強い人気があります。自分で野菜を育てることで、無農薬や減農薬野菜を作れるのはもちろん、自然と触れ合うことが、心と体の癒しやリフレッシュにもつながるとされており、人気を後押ししているのです。

↑編集部スタッフがレンタルしている区民農園。例えばこちらは1区画が15㎡で年額4800円(2年契約)と破格。他方、都内には手厚いサービス込みで3㎡・月額1万円程度、という超高級ファームも!

 

↑首都圏と関西地区の貸し農園情報をまとめてチェック、申し込みまでできる「シェア畑」。こういった情報サイトを活用してみると便利です

 

では早速、そういった菜園で野菜作りをする際のポイントを紹介しましょう。

 

おいしい野菜作りは土作りから

「初めてのテラスガーデニング」編でもお伝えしましたが、第一に大切なのは、土作り。野菜の露地栽培ならなおさらです。

 

野菜苗を購入し、そのまま植えれば野菜がたっぷり収穫できる! そんな風に思っている人も少なくないようですが、ただ野菜苗を購入して植えるだけでは、おいしい野菜は作ることはできません。畑の土の状態にも左右されますが、「有機質肥料」(Organic fertilizer)と呼ばれる植物や動物由来の肥料を土に混ぜ込むことで、微生物の活性が促され、良い土になるとされています。ここで言う“良い土”とは、ほどよく空気が含まれ水はけがよく、さらに養分がある土のこと。とはいえ、この有機質肥料は微生物の力で分解されてはじめて、土にパワーを与えるものなので、植え付け寸前に施すのではなく、多くの場合は植え付けの1カ月から2カ月前に土に混ぜ込み、畑の準備をすることに使われます。

 

ちなみに、畑の準備では石灰をまくと良いと聞いたことがある人もいるかと思いますが、これは土の消毒と畑の酸度調整のため。ただまけばいいわけではなく、土の酸度を測定(測定液やpH計を使って測る)してから、その分量を決めることをおすすめします。

↑美味しい野菜を育てるポイントは土作りが一番。腐葉土などをたっぷり土に混ぜ込みましょう

 

時間に余裕があるなら肥料のことは考えず、まずは雑草を抜き、しっかり土を耕すことからスタートしましょう。

 

土を耕す場合には、表面だけではなく最低でも深さ30㎝ぐらいまではしっかりと。できれば、上のほうにあった土を、下の土と入れ替えるようにする気持ちで耕し、土を1-2日天日に干してから、元肥(もとごえ)を混ぜてから畝(うね)にするといいでしょう。

↑しっかりと耕し、水はけしやすいよう高く畝を作る

 

畑の管理は除草がキホン

土作りの上で大事なのが除草。ようは、草むしりです。とくに、タネから育てている場合や、植え付けてすぐのポット苗の場合は要注意。雑草のほうが成長が早いため、土の養分をとられてしまうだけでなく、日当たりも悪くなってしまい成長が阻害されてしまうのです。そのため、見つけたら雑草は早めに抜くようにしてください。

 

これは、区民農園やレンタル農園の場合は、雑草が大きく成長し花を咲かせ、タネをつけてしまうと、ご自身の畑だけでなく他の人たちの畑にも影響を及ぼすので、こまめにケアを。だからと言って、売られている除草剤を使ってしまうと、せっかく植えた野菜などの苗まで枯らしてしまうので注意が必要です。除草はあまりしたくない……そんな人は、畝に黒ビニールをかける“マルチング”を行ってから植えるといいでしょう。

↑メンテナンスを怠り、雑草が生えてしまった家庭菜園。見た目も美しくなくなるので雑草は引き抜くようにしましょう

 

↑マルチングされた畝。こうすることで、雑草の防除になります。地温を高めることもできるので、作物はすくすくと育ちます

 

効果的な肥料の使い方とは?

野菜に限らず、植物を育てるには肥料がたっぷり必要だと思い込んでいる人が少なくないようです。しかし、肥料の与えすぎは禁物です。

 

とくに、植物がダメージを受けているから肥料で回復させようと濃度の濃いものをたっぷり与えてしまうと、逆効果になってしまいます。これは人間でも、体力が弱っているときに栄養があるからと濃い栄養ドリンクを飲むと、かえって具合が悪くなるのと同じ。植物の場合は濃い肥料を与えると根の状況を悪くし、最悪の場合は根を枯らしてしまうこともあるからです。そのため、野菜に限らずどんな植物であっても、肥料はやや少なめに与えるのが上手に育てるコツなのです。肥料は植えた植物の栄養と考えるよりも、植えている土に含まれる養分が植物の成長に伴って不足した分を補うもの、と考えるほうがいいかもしれません。

 

肥料を与えるタイミングには、3段階があることを知っておくといいでしょう。

・「元肥」:植え付けの時
・「花肥(はなごえ)」:花が咲いた時
・「お礼肥」:実を収穫した時

 

また、植物を育てる時に、大切な三大肥料を覚えておいてください。

・チッソ(N):葉にはたらきかける
・リン酸(P):花と実にはたらきかける
・カリ(K):根にはたらきかける

 

そのため元肥にはカリとチッソ、花肥え、お礼肥えにはリン酸系肥料を与えることをおすすめします。

 

肥料選びは、ホームセンターやガーデンショップで。超初心者の場合は薄めずにそのまま与えることができる液肥、またはばらまくタイプのものを選ぶとよいでしょう。最近は、育てる植物別の肥料が販売されているので、どれがいいのかわからない場合は、とりあえず植えている野菜に合わせて購入するのが一番です。肥料の与え方は、肥料のパッケージに分量やタイミングが書いてありますので自己判断ではなく、正しい使い方で与えることで上手に育てることができます。

 

使いたくない……でも知っておきたい農薬のこと

せっかく自分で育てるのだから「農薬は絶対に使いたくない!」と考える人も少なくないでしょう。ただ、農薬とは虫を殺すだけではなく、“農業で使われるクスリ”のことを言います。また、家庭用農薬と農家などのプロが使う農薬とは区別されています。最近では、農薬の中には自然由来のものもあるため、すべての農薬を毛嫌いするのではなく、必要に応じて使うことをおすすめします。

 

とくに、春に植え夏から秋にかけて収穫する野菜の多くは、葉を食べる害虫、液を吸う害虫などの被害も受けやすいので、害虫が発生したら、手で採るか、それとも農薬を散布するかのいずれかの方法が必要になります。害虫は植えられている植物に被害を与えるだけでなく、病気の媒介もする可能性があるので、自宅の菜園やベランダ菜園などなら放置しても許されますが、共同で楽しんでいる農園スペースでは防除はもちろんですが、他の人に迷惑をかけないためにも駆除も大切です。農薬にも色々な種類がありますが、超初心者の場合にはホームセンター等で売られている家庭用農薬の中で“そのまま使える“タイプを選ぶと良いでしょう。害虫や病気の種類がわからない場合などは、殺菌・殺虫剤タイプを。使用方法や保管方法は農薬によって異なるため、かならず使用説明書に目を通してから使うようにしましょう。

↑植木市などでズラリと売られている農薬。さまざまな種類があるので、お店の人にまずは相談を

 

どんな野菜を育てる?

どんなものを育てたらいいの? とよく聞かれますが、育てたいものを育てるのが一番です。ただし、植物によっては同じ場所で何度も続けて育てると、土のダメージが回復しないため、上手に育たない“連作障害”を起こすことがあります。そのため、区民農園などでは前にどんなものを植えていたのかをリサーチしてから、違う種類のものを植えることをおすすめします。

 

また、農薬をあまり使いたくない人は、育て野菜の“コンパニオンプランツ”を探して植えるといいでしょう。コンパニオンプランツの多くは、ネギやニラ、ハーブ類など匂いの強いものになります。その他、畑を管理する人の性格などに合わせ、水やりの回数が多い、少ないなどで植えるものを決めたりしてもいいでしょう。

 

ただ、どんなものを植えるにしても、植え付け間隔がありますので、植えたい!育てたい!植物について調べてから植え付けるようにしましょう。ツルを伸ばして成長するものは、支柱たてネットを貼る作業があったり、あまりに大きく広がるものなどは区民農園やレンタル農園では場所によっては育てられないものもあるので注意を。

↑ホームセンターなどには植え付け適期の野菜苗がズラリと並ぶ。植えて見たいもの、育てみたいものを探してみましょう。(撮影協力/農産物直売所 なのはな)

 

ここまでは、おもに露地栽培について説明してきましたが、おいしい野菜は育てたいけれどやっぱりスペースが確保できない! という場合のために、省スペースでできる栽培方法についても説明しておきましょう。

 

菜園スペースなしでOK! 超ズボラな袋植えコンテナ栽培

ベランダなどで栽培するとなると、コンテナ栽培が思いつきますが、プランターや鉢の種類によって植物が上手に育てられなかった、という話はよくあります。そこで、おすすめしたいのが“袋植え”です。培養土の袋に直接野菜を植えて、育てることができるのです。袋を見せたくない人は、麻袋をかぶせることでカバーできます。

 

もちろん、袋は縦、横、あるいは平置きなど育てる植物の形状に合わせて置いて使うことができます。植物を植え込む時には、袋に直接穴を開けて植えるので、袋がマルチングの役割にもなるので植物の成長を早めることができます。ちなみに、縦置きの袋ではイチゴ、ジャガイモ、ダイコン、サツマイモ、ミニトマトなどの野菜はもちろん、グラジオラス、ユリなど通常のプランターではやや背が高くなりすぎ、転倒しやすい植物も育てることもできます。

↑麻袋の中に、培養土の袋を入れ、上部を切ります。穴を開けたい人は底部分に開けてもOK

 

胴の部分を麻紐などで結んでもよい。上部に野菜苗を植え付けます。植え付け後はたっぷり水を与えます。培養土をそのまま使うので、肥料の必要もありません

 

以上の知識を踏まえて、さっそく夏野菜から、栽培を楽しんでみてください。

 

【プロフィール】
園芸研究家・グリーンアドバイザー / ふじえりこ

監修&執筆に『ベランダ菜園 おいしい野菜づくりのポイント70 (メイツ出版)』、『とびきりおいしい野菜の作り方』他多数。エバーグリーン(http://evergreeninc.site/evergreenpost/)にて、ご神木やお家レシピを紹介。東京都北区の植木市にて緑の相談員歴20年以上。現在はハリネズミと一緒にハーブを中心に、多肉植物を栽培中。

 

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庭がなくても問題なし! コンテナだけでできる初めてのテラスガーデニング

ガーデニングは、庭がなくちゃ楽しめない。そんな風に思っていませんか? 集合住宅に暮らす人が増えているほか、一軒家であっても庭がなく、スペースを駐車場に割いてしまっている家は少なくありません。実はそういった環境でも、ガーデニングは楽しめるんです。

 

そこで、今回は庭がなくてもコンテナ(鉢やプランター)を使えば楽しめる、ガーデングのコツを紹介しましょう。

コンテナを使うなら、まずは土にこだわること

プランターをはじめとするコンテナ栽培で大切なのは、実はなにはなくとも“土選び”。そこで、まず知っておきたいのが、植物と土の関係です。

 

草花、野菜、果樹をはじめとする植物は、当たり前のことですが、生き物です。そのため、太陽の光で光合成を行うことによって、体内のエネルギーに変え成長していきます。その成長を助けるのが、土に含まれるさまざまな栄養素や微生物の力なのです。自然環境の中では、植物は根を伸ばして栄養を得られますが、コンテナ栽培では土を選ぶことが重要になるのです。

 

培養土を使ってすくすくと育てる

とはいえ、初心者はどんな土を使えばいいのか頭を悩ませることに。そこでおすすめしたいのが“培養土”です。

 

培養土とは、いろいろな土を作っている会社が、育てる植物に合わせて「赤玉土」「黒土」といった土に、植えた植物がスクスクと育つよう工夫して肥料を混ぜ込み作った土のこと。小麦粉にベーキングパウダーなどを混ぜて作られ、そのまま水や牛乳などを加えるだけで手軽にホットケーキを焼ける、ホットケーキミックスのようなものと考えればわかりやすいですね。

 

そのため、培養土には育てる植物に合わせてさまざまな種類が販売されています。コンテナで、自分がどんな植物を育てたいのかを考えて購入を。ガーデニングショップやガーデンセンターでは、「培養土」と書かれたものもありますが、草花の土、観葉植物の土、多肉植物の土、ハーブの土、野菜の土、バラの土、イチゴの土、ブルーベリーの土……と育てる植物名別に細分化され、販売されています。

 

これらの土の大きな違いは、水はけはもちろんですが、実や花を楽しむ土はリン酸系肥料、葉を楽しむものはチッソ系肥料、地下部に実がなるジャガイモなどの肥料にはカリ肥料が多めに配合されていること。そのため、培養土を使って育てる場合は、肥料を通常よりやや少なめを意識して与えるといいのです。

↑培養土は、赤玉や黒土などを中心に各種の土を混ぜ合わせて作られて土のこと。育てる植物に合わせて配合されているものも多く、手軽に取り入れられます。(撮影協力/滝野川種苗)

 

コンテナ選びが空間演出のポイント

なにを植えよう? と考える前に、まずはベランダや玄関先をどのように演出したいのかをイメージし、それに合わせてコンテナを探してみましょう。園芸の世界では、プランターをはじめ、植物を植え込む容器のことをその総称して「コンテナ」と呼びます。人が入ることができるほど大型のものから、小指の先よりももっと小さなものまで、サイズや形状、素材もさまざま。また、床に置くだけでなく、壁にかけたり、上から吊り下げたりすることができるものなどもラインナップしています。

 

集合住宅などの玄関先に置く場合は、自宅以外の周囲の住まいへの配慮も大切です。あまり大きなものを置いて通行の邪魔にならないようにしましょう。また、ベランダや屋上などにコンテナを置く場合には、どのくらいの荷重にまでその場所が耐えられるのかを考えることも大切です。植物のことばかりに気を取られてしまうあまりにベランダの床が落ちてしまったという事例も少なからずありますのでご注意を! また、吊り下げ(ハンギング)型のものは、風などによる落下にも注意したいものです。

↑コンテナとは、プランターを含む鉢の総称として使われる言葉で、多種多様

 

シンプルに飾りたいなら同系色を選ぼう

玄関先をシンプルにまとめたい! ならば、同じコンテナに植えて並べることです。形状だけでなく、カラーも揃えることで統一感を出せます。また、植える植物も同種に揃えるといいでしょう。ついついガーデニングにハマってしまうと、いろいろな種類の植物をひとつのコンテナにたくさん植えこんでしまいたくなりますが、初心者ならそこはグッと我慢して。

 

どうしてもいろいろ植えてみたいなら、花の種類を変えるなら同系色を、または同じ花の品種をいろいろと植え込んで、色を変えるといった植え方をおすすめします。

↑ホームセンターなどに行けば、季節を彩る美しい草花に出会えます。(撮影協力/農産物直売所 なのはな)

 

ナチュラルに楽しみたいなら素材はプラスチック以外を

ナチュラルな印象になるのは、テラコッタや木製タイプの、プラスチック以外の素材。プラ鉢などに木をイメージしたプリントのものでもかまいません。もちろん、自分で木材を購入し手作りしてもOK。その場合は、ニスやペンキでコーティングを。

 

草花を上手に寄せ植えするには?

植物の中でも、“宿根草(しゅっこんそう)”や“多年草(たねんそう)”と呼ばれるものを上手に配することで、植え替え回数を少なくすることもできます。植え方は置き場によって異なりますが、端に寄せて置くなら、後ろに背の高い植物を、手前に背の低い植物を配するボーダーがいいでしょう。ただし、大型のものはそれなりに土の量も使うのでベランダに置く場合は、必ずベランダの荷重を確認してから。

 

また寄せ植えをすることで、さらに草花を美しく飾ることができます。そこで、実際に草花の寄せ植えを作ってみましょう。用意するものは、好みのコンテナと草花、培養土、鉢底の網になります。

 

今回は、青と白の花を使った夏向きのコンテナを紹介しましょう。

 

Step1
鉢を平らで、床などが汚れても良い場所に置きます。これは、作業をする上で大切なことです。床を汚したくない場合は新聞紙を敷きましょう。

 

Step2
鉢底の網を使って、鉢の穴をふさぎます。これは、鉢から土がこぼれないようにするだけでなく、鉢底から害虫などの侵入を防ぐ役割もあります。

 

Step3
土を入れる前に、植物を仮置きしてバランスを見るようにします。今回使用の植物は、デルフィニュウム(ミントブルー)、ローダンセダム、ワスレナグサの3種類。

 

Step4
土を少し入れ、植物を植えます。植物を鉢から抜く時は、優しくそっと抜きます。

 

Step5
中央に背の高いデルフィニュウムを植えます。次にワスレナグサを周囲に植えます。

 

Step6
ワスレナグサを植えたら、最後にローゼンセダムを植えれば完成です。土は押し込まないようにしましょう。最後に、鉢底から水が出るまでたっぷり水を与えます。

 

次編では、「初めての家庭菜園」をテーマに初心者のための野菜づくりのコツを紹介します。

 

【プロフィール】
園芸研究家・グリーンアドバイザー / ふじえりこ
監修&執筆に『ベランダ菜園 おいしい野菜づくりのポイント70 (メイツ出版)』、『とびきりおいしい野菜の作り方』他多数。エバーグリーン(http://evergreeninc.site/evergreenpost/)にて、ご神木やお家レシピを紹介。東京都北区の植木市にて緑の相談員歴20年以上。現在はハリネズミと一緒にハーブを中心に、多肉植物を栽培中。

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」でくわしく読む