金属製で重さ2.9㎏を実現! マグネシウム合金で作られた 唯一無二のスーツケース

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山㟢晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます!

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS「旅行ジャパン『Magne Suitacase』」

旅行ジャパン
Magne Suitacase

一般販売予定価格9万9800円

Makuake応援購入実施期間7月1日〜8月15日

ボディ全面に世界で初めて(※2)マグネシウム合金を採用し、金属系素材でありながら重量2.9kgを実現したスーツケース。金属系のスーツケースでは最軽量(※1)ながら、高い強度も両立。片開き構造で、荷物を片面ですべて完結できる設計だ。機内持ち込みも可能なコンパクト仕様で、余計な装飾を排除したミニマルなデザインも魅力。

 

マグネシウムってBtoB向けの高価な素材。それを一般商材に採用するのは挑戦的!

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

旅行ジャパン株式会社

モバイルバッテリーやUSB充電器、ロボット掃除機などで有名なアンカー・ジャパンの代表取締役CEO・猿渡 歩氏が手掛ける「旅と人生の、質を高める」をミッションに掲げた新会社。マグネシウム合金素材を採用したブランド「Magne」のファーストプロダクトが、スーツケースとなる。

 

旅行ジャパン株式会社
代表取締役CEO

猿渡 歩さん

現アンカー・ジャパン代表取締役CEOを務めるほか、他EC関連企業の社外取締役や顧問も務める。旅行という誰もが触れ合うカテゴリにおいて、「本質的な価値に向き合ったブランドを作りたい」という想いから、旅行ジャパン株式会社を創業。

 

 

軽さと頑丈さはスーツケースの本質的価値

山崎さん(以下敬称略)僕、製造の会社の取締役もやっていて、アルミ鋳造なのですが、たまに特殊合金でマグネシウム(以下、Mg)も扱っています。Mgって、とにかく軽い!  そのときの感じを思い出しました。見た目は金属だからアルミ製の質量感を無意識に想定して持つと、軽すぎて驚きます。なぜMg合金でスーツケースを作ろうと思ったんですか?

 

猿渡さん(以下敬称略) スーツケースのマーケットは非常に大きいのですが、例えば“スマホといえばApple”“イヤホンといえばソニー”というように、純粋想起するブランドって意外と少ないと思ったんです。品質と利便性が良く、かつ所有欲をそそるものを適正な価格でご提供することで、移動そのものを楽しみ、旅をもっと自由にしてくれる存在を目指したいと考えました。ユーザーはどんな点に着目してスーツケースを選んでいるのか調査をしたところ、1位は軽さで2位は頑丈さでした。この2点を両立しているスーツケースは、じつはあまりないんです。アルミ製は丈夫ですが、どうしても重たくなるので。金属製で軽量を実現できるのが、Mg合金だったんです。Mgはアルミの約3分の2の重さで、元素の結合的にも頑丈な素材。ただし、高額で加工が困難なんですよね。探してみたら、Mg製は国内外で作られたことがありません(※2)でした。

 

山崎 Mgって高いですもんね。うちはおもに車部品の鋳造を手掛けているのですが、量産車にMgは使えないです。レース用など、特殊なケースで使われる高価な素材というイメージがあります。BtoBメインではなく一般商材に採用したというのは、けっこうチャレンジング。製造のラインを作るのが大変だったんじゃないかなぁ……と。

 

猿渡 製造コストがかかることも、これまで作られてこなかった理由のひとつだと思います。実際この商品もけっこうコストがかかっていますから(笑)。仰る通り、製造工場を見つけるのも大変でしたね。というのも、Mgを取り扱えてスーツケースも作れるという工場がほとんどないんです。Mgは加工時に取り扱いを間違えると爆発してしまうなど、管理をしっかりする必要があり、Mgを扱える会社もあまり多くありません。

 

山崎 なるほど。軽いだけでなく、キャスターの動きが本当にスムーズでかなり取り回しがいいですよね。シンプルながら機能面にはかなりこだわって作られていると純粋に思いました。僕の場合、スーツケースを選ぶときに最も重視するのはエモさ。もちろん軽くて丈夫であってほしいんだけど、使っていくうちにキズが付いたり歪んできたりして、“こいつと一緒に生きてきたなあ”という相棒感が欲しいんです。これはいままでになかった領域のスーツケースですけど、使い続けていくうちにどう人間の旅と寄り添っていくか気になります。

 

猿渡 全面フラットで縦リブが入っていないのも特長で、良くも悪くもキズが反映されやすい部分はあるかもしれません。ただそれも旅の“味”が残り、スーツケースならではのエモさは出てくるものかなと。余計なものはすべて削ぎ落としたシンプルな外観なので、自分好みにデザインしていく楽しみもあると思います。今回は機内持ち込みサイズですが、今後はユーザーのフィードバックを反映しつつ、大きいタイプや色違いも展開していけたらいいなと考えています。

 

山崎 個人的には新幹線持ち込みに最適な仕様のスーツケースがほしいです! 持ち込み用って飛行機ベースで作られているものがほとんどだから、新幹線に乗るときいつも置き場所に迷うんですよね。荷棚に上げるほどでもないときは特に。脚元に置いてるときも、なんか大きすぎて窮屈だし(笑)。

 

 

 

※1…TFCO社調べ(2025年5月時点、金属製スーツケースにおける比較) ※2…TFCO社調べ(2025年5月時点、ボディ全面にマグネシウム合金を採用したスーツケースとして)

 

↑マグネシウム合金は軽いだけでなく、振動吸収性にも優れている。移動中の衝撃を和らげて、中の荷物を守ってくれる

 

↑ホイールには柔軟性と耐久性を兼ね備えたエラストマー素材を採用。ほとんど音を立てずに、移動が可能

 

↑TSAロック(米国運輸保安局に認可・容認されたロック)を標準搭載。施錠したまま預け荷物にできるので安心だ

 

↑キャリーバーの伸縮もスムーズ。スーツケースの上に完璧にフィットするキャリーオンバッグのアクセサリなども展開

 

 

※こちらは「GetNavi」2025年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい

“レザーって昔は牛だったんだぜ?”と言われる時代がやってくるかも! デザイナー・山崎晴太郎×メーカー対談連載 第4回

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山㟢晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます!

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS「MYCL JAPAN『KINOLI製 Apple Watchベルト』」

MYCL JAPAN
KINOLI製
Apple Watchベルト

2万5000円

Makuake応援購入実施中(6月25日10時〜8月29日22時)https://www.makuake.com/project/kinoli_watch/

キノコの菌糸100%の新素材「KINOLI」を表地に使用したApple Watchベルト。KINO LIは温度や湿度などを調整した環境下でキノコの菌糸を培養し、独自技術でシート状に加工した新素材だ。耐久性を担保するため、裏地には国産の「姫路レザー」(牛革)を組み合わせている。

SPEC●素材:表地/KINOLI(菌糸素材)、裏地/姫路レザー(牛革)、金具/ステンレススチール●対応するApple Watchのサイズ:38/40/41㎜、42/44/45㎜●ベルトサイズ:S/約145〜180㎜、L/165〜200㎜●カラー:オレンジ、ブラウン ※写真は開発中のものです

 

“自然に還る”サイクルが垣間見えるのも魅力! 100%キノコからできた新感覚レザー素材

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

MYCL Japan 株式会社

X @MYCLJapan
Instagram @mycljapan

キノコの栽培や種菌開発などに携わる専門業者4社によって長野県小諸市で設立された、グローバルベンチャー。“食”以外でのキノコの可能性を模索し、キノコの菌糸を用いた新素材「KINOLI」を開発。長野が世界に誇るキノコ栽培技術を“衣”、“住”にも転用し、キノコ農業の活性化を目指す。

 

MYCL Japan株式会社
ブランディング・マーケティング
デザイナー

志賀英人さん

菌糸の神秘とキノコの可愛さに魅せられ、生態や生産技術について独学で習得し、同社に合流。推しキノコはヤマドリタケ(食用)、カゴタケ(観賞用)、ベニテングダケ(観賞用)。

 

 

これまでの“皮の”概念を 大きく覆すかもしれない!

山崎さん(以下敬称略)キノコって面白いから好きなんですよ!「あ、これはヤバいな……。でもこっちはイケるかもしれないから食べてみよう」みたいな積み重ねの歴史でしょう? それでこれだけ可食キノコがわかってるって、すごいですよね。見た目が美味しそうなわけでもないのに(笑)。人間の業の集大成って感じで、本当に面白い!

 

志賀さん(以下敬称略) まさにトライアンドエラーの賜物です。

 

山崎 時を超えて今度は皮素材にもなって。KINOLIを手に取ったとき、「キノコのニオイじゃん!」と感動しました。見た目や質感は皮なのに。なぜキノコを皮素材にしようと思ったのですか?

 

志賀 日本はキノコ生産の技術がとても高く、その設備のある企業や農家が長野に集結しています。2020年代に入り、菌糸(キノコの体を形作る糸状の細胞列)を素材化した「マッシュルームレザー」が海外から出て注目を集めたんです。それを見て、“日本の技術であればもっと高品質な、100%菌糸の皮素材を作れるのでは?”ということで、開発を始めました。そんな反骨精神もありつつ、単純に“作ってみたら面白そう”というマインドに突き動かされたほうが強いですね。

 

山崎 キノコオンリーでできているんですか!?

 

志賀 一般的なマッシュルームレザーは植物の繊維や石油樹脂が混ぜられていますが、KINOLIは菌糸だけでできています。

 

山崎 ならば、被災したときとか、最悪食べても問題ない?

 

志賀 可食できるキノコ製なので、食べても害はないと思います。オススメはしませんが……。

 

山崎 ごめんなさい、どうしても“キノコ=食べるもの”という概念が抜けなくて、頭の中がバグってます(笑)。動物皮が比較対象なのかと思いますが、KINOLIならではの特徴はありますか?

 

志賀 一番は、製造プロセスの違いです。牛革なら、牛を育てて皮に加工して……となると年単位の時間と広大な土地、エネルギーがかかりますよね。でも菌糸なら、少ない土地と水で、40日程度で皮素材を作れちゃうんです。しかも、生産にエネルギーがほぼかかりません。どのようにエイジングしていくかはまだ未知の部分がありますが、耐久性は牛革と変わりません。

 

山崎 変な話、腐る場合はある?

 

志賀 日常的な手入れをしなければ腐る可能性はありますね。とはいえ、素材としてちゃんと長く使えるように、菌の不活化はしています。

 

山崎 敢えて腐らせても面白そう。先日知り合いが、引っ越しの際に黒歴史の日記を発掘して、捨てたって言ってたんですよ。KINOLIなら、腐って自然に還っていく日記帳が作れそうですよね。

 

志賀 作れます!“腐る美学”ってありますよね。いかに美しく終わりを迎えるか……みたいな。それでいうと、KINOLIは生分解性も備えているので、土に埋めれば自然に還ります。キノコは本来、木を分解して土に還すために生まれてきた菌ですから。

 

山崎 どれぐらいで還りますか?

 

志賀 遅くてもだいたい半年です。

 

山崎 え、そんなに速いの!? 年単位はかかるのかと思った(笑)。本当に面白い素材ですね! 循環させることが前提にあるなら、学童系のプロダクトに置換してみるのはどうでしょう? たとえば小学生が夏休みに持ち帰る朝顔の鉢。栽培学習が終わった後は正直、邪魔なんです……。ああいうものこそプラスチックから菌糸素材に変えて、自然のサイクルを子どもたちに学ばせたら、メチャクチャわかりやすくないですか?

 

志賀 鉢の型を作り水をかければ、中で菌糸が勝手に育って鉢形になるので、すごく良いアイデアだと思います! 鉢から自分たちで作って、朝顔が朽ちたら最終的に鉢ごと土に還して……。僕たちが目指す、“キノコを「衣」と「住」の文化にも定着させる”という未来にもつながっていきそう。

 

山崎 短いスパンで循環していくのが本当に面白い! いままでそんな素材見たことありません。デザインする立場から言うと、“素材”って世の中に出尽くしていて、新素材に出会って好奇心がそそられることってほぼありません。KINOLIほどフレッシュで可能性を秘めていると、すごくワクワクします。革製品の概念を覆す素材になるかもしれませんね!

 

 

↑現在は皮小物が中心だが、バリエーションが増えていく予定。“再生と循環”が実現する新素材が、生活に新たな価値を提供してくれそうだ

 

↑キノコの菌糸由来のKINOLIは、ひとつひとつ異なる美しい模様を持つ“一点もの”。しっとりとした手触りも特徴だ

 

 

※こちらは「GetNavi」2025年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/鈴木謙介

100年先の子どもたちにもこの歴史を伝えていきたい…日本が誇るべき「能登の酒造り」デザイナー・山崎晴太郎×メーカー対談連載 第3回

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山崎晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます! 第3回のテーマは「能登の酒を止めるな! 被災日本酒蔵共同醸造支援プロジェクト【第四弾・2025春】」です。

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS 「能登の酒を止めるな!プロジェクト」

能登の酒を止めるな!
被災日本酒蔵共同
醸造支援プロジェクト
【第四弾・2025春】
https://www.makuake.com/project/noto_sake4/

Makuake応援購入実施中(〜6月10日(火))

今回は鶴野酒造店(能登町)×天領盃酒造(新潟県)、松波酒造(能登町)×浪乃音酒造 (滋賀県)、日吉酒造店(輪島市)×倉本酒造(奈良県)の3組が共同醸造に挑戦。売上げは酒造りと復興支援のための経費に使われる。

 

日本が抱える深刻な課題を解決する光明となり得るプロジェクトだと思う!

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

能登の酒を止めるな! プロジェクト

2024年1月1日に発生した能登半島地震で被災し、向こう数年は醸造継続が困難になった酒蔵を対象として、全国の酒蔵との共同醸造を支援するプロジェクト。毎回異なる県外の酒蔵とコラボし、斬新な酒が楽しめる。これまでに第三弾まで開催され、応援購入総額が約6000万円、サポーター数は3285人を獲得。

 

能登の酒を止めるな!
プロジェクト事務局
プロデューサー

カワナ アキさん

 

酒造りを継承していくために銘柄の流通は止めてはダメ

山崎さん(以下敬称略)被災から1年以上が経過しましたが、現地の状況はどんな感じですか?

 

カワナさん(以下敬称略)瓦礫などの解体作業が進んでいるかと思いきや、まだまだな地域が多いですね。全壊した酒蔵もあり、いまだに経営再建の目処が立たないところも。その反面、残念ながら人々の関心は薄れている印象です。

 

山崎 報道される機会も減り、注目を集め続けるのは難しいですよね。TVや新聞などの大きなメディアで取り上げられる機会が減ったあとを見据えて、民間で産業レベルまで盛り上げていこうという試みはすごく良いと思います。

 

カワナ 酒造組合や自治体がこういう支援を行うと、公平性の観点から義援金は均等配分になることが多いですが、民間であればある程度のウエイトをつけて実施できると思い、このプロジェクトを立ち上げました。いま進行中のプロジェクトは第五弾まで。その後の構想もあり、中長期的な視点で復興計画を考えています。

 

山崎 共同醸造で酒蔵の復興支援するのも斬新ですよね。どういった経緯で思いついたんですか?

 

カワナ 僕が全国の酒蔵を撮影して回っていたことがきっかけで、もともと全国の約200蔵とお付き合いがあるんですね。若手醸造家のイベントも蔵元から引き継いで主宰していて、能登の酒蔵も参加してくれていたんです。昨年の元日。能登の悲惨な映像を見て、彼らのためにできることはないかと、被災経験のある東北の酒蔵にヒアリングを始めて、計画を考えていきました。最も重要なのは、能登の銘柄の流通を止めないこと。全国の蔵を間借りして醸造すればそれが実現できますし、ある程度のキャッシュフローも担保できるということで、能登と全国の蔵で共同醸造するというプロジェクトに至りました。ありがたいことに、24の蔵が賛同してくれています。酒蔵って“先義後利(道義が優先で利益は後から付いてくるという考え方)”の思想が身に染みている方が多いように思います。今回もそろばんを弾く前に、“自然災害は明日は我が身だから協力したい”と手を挙げてくれました。

 

山崎 “この場所でしか作れない”“代々受け継いできた麹を使う”とか、酒蔵って皆さんこだわりを強く持っているイメージがあります。そういった部分で、酒蔵同士がぶつかることはないんですか?

 

カワナ いまは醸造の科学的な知見が発達したことによって、ある程度の醸造に関する資源は調達が可能です。それは麹菌も酵母菌も同じです。蔵付き酵母(蔵に自生する酵母)のみで発酵させる場合を除き、多くの酒造りは再現性を取ることができるようになってきています。

 

山崎 なるほど! 各蔵が受け継いできた酒造りのプライドみたいなものは、その背景にある“物語”へと帰結する感じなんですかね?

 

カワナ そうですね。いまの創り手は地域の農業と文化、そして息づく精神性の表現を大切にしています。百年、二百年先を見据えて、自分たちが後世に何を遺したいのかを無意識的に意識している蔵元が多いです。能登でいうと、昔から発酵文化が発達していて能登杜氏(酒を造る職人の長の集団)は「四大杜氏」のひとつでもあります。そういった、これまで紡いできた伝統を守るためにも、銘柄の流通を止めないことは本当に重要なんです。

 

山崎 このプロジェクトって、この国が抱えている問題の芯を食っていますよね。いまの日本は斜陽産業が多くて国もいろいろ働きかけてはいますが、盛り上げるのは難しい状況。そんななかでこの事例はひとつの光明になり得ると思うので、応援してます! プロデュースするうえで一番重要なことってなんですか?

 

カワナ 信頼関係です。それがベースにないと、いくら正しそうなことを言っても協力してもらえませんから。信頼関係があるからこそ始められて、続けられているプロジェクトだと思います。

 

↑共同醸造の酒のラベルには「能登」のロゴと、コラボした酒蔵の家紋が。裏面の酒造りストーリーも必読

 

↑山崎さん絶賛の「能登」のロゴがあしらわれた前掛けなど、リターンは酒だけでなくオリジナルグッズも

 

↑地震発生後に撮影された1枚。能登にある全11蔵が壊滅的な被害を受け、いまだに再建の目処が立たない蔵もある

 

↑第三弾では、米だけでなく副原料に能登のエッセンスを取り入れた「クラフトサケ」の共同醸造に挑戦した

 

※こちらは「GetNavi」2025年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/中村 功(山崎さん)

“着せ替え”の楽しみが増えて デザイン性もアップ! 食の時間がワクワクする 「給食缶ミニ」デザイナー・山崎晴太郎×メーカー対談連載 第2回

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山崎晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます! 第2回のテーマは仔犬印「給食缶ミニ (JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)」です。

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS 仔犬印 給食缶ミニ(JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)

仔犬印
給食缶ミニ
(JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)

1万4800円

Makuake応援購入実施中(〜6月3日22時00分)

調理・保存・温め・持ち運び、すべてがこれひとつで叶う料理道具。給食缶をデフォルメしたもので、機能性や密閉性を完全再現している。コラボモデルはハンドルと蓋にウッドをあしらい、より手に馴染みやすくあたたかみのあるデザインに仕上げられている。

SPEC●サイズ/容量:φ約140㎜×H約120㎜/2.25ℓ(質量は1015g)

 

“作る”から“運んで、開く”まで、ウキウキ感が続くプロダクト!

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

仔犬印

創業74年目の調理器具メーカー、本間製作所。「仔犬印」というブランド名でレストランや給食調理場、食品工場向けの業務用調理器具を手掛ける。2020年より、一般向け製品の開発販売も積極的に展開。Makuake第1弾「ボウルシリーズ」も好評で、約1174万円の購入額を達成した。

 

株式会社本間製作所

小片 昇さん

 

じつはいままでなかった火で温め直しできる密閉容器

山崎さん(以下敬称略)“給食缶”って、日本で幼少期を過ごした人にとっては特別で、ノスタルジックな気分を味わえるアイテムですよね。あのときのゴハンの味や温かさとともに、当時の懐かしい記憶を湧き立ててくれて、ただのランチタイムとは別の価値を提供してくれるプロダクトだと思います。

 

小片さん(以下敬称略)“給食”というカルチャーが背景にあるからこそ購入してくださるお客様が多いのも事実ですね。

 

山崎 家庭用サイズにデフォルメしようとしたきっかけは何だったのですか?

 

小片 “お裾分け容器の新しい提案”として、開発に至りました。知り合いの社長さんが、汁物などの料理を社員に振る舞いたい時に、持ち運べるちょうど良い容器がないと困っていらっしゃったんです。それを聞いて、汁物を安心・安全に詰めて持ち運べて、火で温め直しができる容器ってじつは世の中にあまりないなぁ……と。弊社が得意とする給食缶ならパッキングが完璧で落としても倒しても中身がこぼれませんから、ミニチュア化してみようとなりました。

 

山崎 そういう意味でいうと“エアポケット”にある商品ですね!

 

小片 「入院中の母に汁物を届けるときにも重宝します」など、料理の運搬目的でご購入される方が圧倒的に多いです。個人的にはアウトドアで使ってくださる方が多そうだなと予想していたのですが。

 

山崎 焚き火でも使えるし、アウトドアに向いてますよね。キャンプで使ったらワクワクしそう(笑)。

 

小片 そうなんですよ。本格的なお料理をおうちで作ってキャンプ先で温めて食べられる……というのは、特長のひとつ。あと、残った料理をそのまま中に入れて持ち帰りできる点も意外と便利です。

 

山崎 キャンプ場だと汁物の捨て方ってすごく困るんですよ! 余りものをそのまま持ち帰りできるのはイイなぁ。このプロダクトって、“運ぶ”“開く”“調理し直す”行為が、気持ちとして切れないですよね。「作りました。では、タッパーに入れて持って行きましょう」というのとは体験の価値が違う。料理を「給食缶」に入れて持って行くとなると、作ったときのウキウキのテンションのままで現地で蓋を開けられる。場所が変わって時間が経っても、気持ち自体は切れない。それがすごく良いですね。

 

小片 「持ち運びたくなるデザイン」というのをかなり意識しています。少しおもちゃ感があって、この容器自体をお披露目したくなるようなフォルムを目指しました。

 

山崎 アツアツの料理を入れて蓋が開かなくなった時に、蓋のつまみを押すと空気が入って開けやすくなる仕組みもスゴいですよね。これは最初から付けようと思っていた機能なんですか?

 

小片 業務用にはデフォルトで付いている機能です。なので、家庭用サイズに落とし込むときにもそこは外せないなと(笑)。

 

山崎 BtoBでやってきた会社さんだからこその便利機能なのですね。デザインから細部の機工に至るまですごくこだわっていらっしゃるけど、プロダクトとしてはプリミティブ(原始的)な形に落ち着いていますよね。“長く使ってもらいたい”という、時間に対する責任をものすごく強く持たれているのかなという印象を受けました。

 

小片 その気持ちは強いです。「JOURNAL STANDARD FURNITURE」さんとコラボしたモデルは、蓋とハンドルの単品販売も行います。ウッドをあしらったデザインなのですが、すでに「給食缶ミニ」をご愛用されてる方々にも着せ替え感覚でファッション的にも楽しんでいただけたらいいなという思いを込めています。

 

山崎 個人的にはオプションで、中を仕切る板が欲しいなぁ。火鍋みたいに左右で汁物の味を変えられると、大人味と子ども味の2種類が必要な家庭のキャンプで大活躍すると思うんですよ!

 

小片 確かに、そういうオプションがあると便利そうですね! 今後もいろんなご意見を聞かせていただいて、開発の参考にしたいです。

 

↑中身が真空状態になり開かなくなってしまったときでも、蓋のつまみを押すと空気が中に入り、簡単に開けられる

 

↑ガス・IH両方のコンロに対応。そのまま火にかけられて調理が簡単なうえ、温め直しもラク。キャンプでも活躍

 

↑余った料理は粗熱を取り、そのまま密閉OK。冷蔵庫にそのまま入る高さに設計されているのも便利だ

 

↑保温性に優れた「マルチ巾着バッグ」。“保温には向かない”というステンレスの弱点をカバーできる

 

※こちらは「GetNavi」2025年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/中村 功(山崎さん)