100年先の子どもたちにもこの歴史を伝えていきたい…日本が誇るべき「能登の酒造り」デザイナー・山崎晴太郎×メーカー対談連載 第3回

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山崎晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます! 第3回のテーマは「能登の酒を止めるな! 被災日本酒蔵共同醸造支援プロジェクト【第四弾・2025春】」です。

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS 「能登の酒を止めるな!プロジェクト」

能登の酒を止めるな!
被災日本酒蔵共同
醸造支援プロジェクト
【第四弾・2025春】
https://www.makuake.com/project/noto_sake4/

Makuake応援購入実施中(〜6月10日(火))

今回は鶴野酒造店(能登町)×天領盃酒造(新潟県)、松波酒造(能登町)×浪乃音酒造 (滋賀県)、日吉酒造店(輪島市)×倉本酒造(奈良県)の3組が共同醸造に挑戦。売上げは酒造りと復興支援のための経費に使われる。

 

日本が抱える深刻な課題を解決する光明となり得るプロジェクトだと思う!

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

能登の酒を止めるな! プロジェクト

2024年1月1日に発生した能登半島地震で被災し、向こう数年は醸造継続が困難になった酒蔵を対象として、全国の酒蔵との共同醸造を支援するプロジェクト。毎回異なる県外の酒蔵とコラボし、斬新な酒が楽しめる。これまでに第三弾まで開催され、応援購入総額が約6000万円、サポーター数は3285人を獲得。

 

能登の酒を止めるな!
プロジェクト事務局
プロデューサー

カワナ アキさん

 

酒造りを継承していくために銘柄の流通は止めてはダメ

山崎さん(以下敬称略)被災から1年以上が経過しましたが、現地の状況はどんな感じですか?

 

カワナさん(以下敬称略)瓦礫などの解体作業が進んでいるかと思いきや、まだまだな地域が多いですね。全壊した酒蔵もあり、いまだに経営再建の目処が立たないところも。その反面、残念ながら人々の関心は薄れている印象です。

 

山崎 報道される機会も減り、注目を集め続けるのは難しいですよね。TVや新聞などの大きなメディアで取り上げられる機会が減ったあとを見据えて、民間で産業レベルまで盛り上げていこうという試みはすごく良いと思います。

 

カワナ 酒造組合や自治体がこういう支援を行うと、公平性の観点から義援金は均等配分になることが多いですが、民間であればある程度のウエイトをつけて実施できると思い、このプロジェクトを立ち上げました。いま進行中のプロジェクトは第五弾まで。その後の構想もあり、中長期的な視点で復興計画を考えています。

 

山崎 共同醸造で酒蔵の復興支援するのも斬新ですよね。どういった経緯で思いついたんですか?

 

カワナ 僕が全国の酒蔵を撮影して回っていたことがきっかけで、もともと全国の約200蔵とお付き合いがあるんですね。若手醸造家のイベントも蔵元から引き継いで主宰していて、能登の酒蔵も参加してくれていたんです。昨年の元日。能登の悲惨な映像を見て、彼らのためにできることはないかと、被災経験のある東北の酒蔵にヒアリングを始めて、計画を考えていきました。最も重要なのは、能登の銘柄の流通を止めないこと。全国の蔵を間借りして醸造すればそれが実現できますし、ある程度のキャッシュフローも担保できるということで、能登と全国の蔵で共同醸造するというプロジェクトに至りました。ありがたいことに、24の蔵が賛同してくれています。酒蔵って“先義後利(道義が優先で利益は後から付いてくるという考え方)”の思想が身に染みている方が多いように思います。今回もそろばんを弾く前に、“自然災害は明日は我が身だから協力したい”と手を挙げてくれました。

 

山崎 “この場所でしか作れない”“代々受け継いできた麹を使う”とか、酒蔵って皆さんこだわりを強く持っているイメージがあります。そういった部分で、酒蔵同士がぶつかることはないんですか?

 

カワナ いまは醸造の科学的な知見が発達したことによって、ある程度の醸造に関する資源は調達が可能です。それは麹菌も酵母菌も同じです。蔵付き酵母(蔵に自生する酵母)のみで発酵させる場合を除き、多くの酒造りは再現性を取ることができるようになってきています。

 

山崎 なるほど! 各蔵が受け継いできた酒造りのプライドみたいなものは、その背景にある“物語”へと帰結する感じなんですかね?

 

カワナ そうですね。いまの創り手は地域の農業と文化、そして息づく精神性の表現を大切にしています。百年、二百年先を見据えて、自分たちが後世に何を遺したいのかを無意識的に意識している蔵元が多いです。能登でいうと、昔から発酵文化が発達していて能登杜氏(酒を造る職人の長の集団)は「四大杜氏」のひとつでもあります。そういった、これまで紡いできた伝統を守るためにも、銘柄の流通を止めないことは本当に重要なんです。

 

山崎 このプロジェクトって、この国が抱えている問題の芯を食っていますよね。いまの日本は斜陽産業が多くて国もいろいろ働きかけてはいますが、盛り上げるのは難しい状況。そんななかでこの事例はひとつの光明になり得ると思うので、応援してます! プロデュースするうえで一番重要なことってなんですか?

 

カワナ 信頼関係です。それがベースにないと、いくら正しそうなことを言っても協力してもらえませんから。信頼関係があるからこそ始められて、続けられているプロジェクトだと思います。

 

↑共同醸造の酒のラベルには「能登」のロゴと、コラボした酒蔵の家紋が。裏面の酒造りストーリーも必読

 

↑山崎さん絶賛の「能登」のロゴがあしらわれた前掛けなど、リターンは酒だけでなくオリジナルグッズも

 

↑地震発生後に撮影された1枚。能登にある全11蔵が壊滅的な被害を受け、いまだに再建の目処が立たない蔵もある

 

↑第三弾では、米だけでなく副原料に能登のエッセンスを取り入れた「クラフトサケ」の共同醸造に挑戦した

 

※こちらは「GetNavi」2025年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/中村 功(山崎さん)

“着せ替え”の楽しみが増えて デザイン性もアップ! 食の時間がワクワクする 「給食缶ミニ」デザイナー・山崎晴太郎×メーカー対談連載 第2回

まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山崎晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます! 第2回のテーマは仔犬印「給食缶ミニ (JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)」です。

 

【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS 仔犬印 給食缶ミニ(JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)

仔犬印
給食缶ミニ
(JOURNAL STANDARD FURNITUREコラボ特別デザインモデル)

1万4800円

Makuake応援購入実施中(〜6月3日22時00分)

調理・保存・温め・持ち運び、すべてがこれひとつで叶う料理道具。給食缶をデフォルメしたもので、機能性や密閉性を完全再現している。コラボモデルはハンドルと蓋にウッドをあしらい、より手に馴染みやすくあたたかみのあるデザインに仕上げられている。

SPEC●サイズ/容量:φ約140㎜×H約120㎜/2.25ℓ(質量は1015g)

 

“作る”から“運んで、開く”まで、ウキウキ感が続くプロダクト!

デザイナー・山崎晴太郎さん

企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。

※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。

 

仔犬印

創業74年目の調理器具メーカー、本間製作所。「仔犬印」というブランド名でレストランや給食調理場、食品工場向けの業務用調理器具を手掛ける。2020年より、一般向け製品の開発販売も積極的に展開。Makuake第1弾「ボウルシリーズ」も好評で、約1174万円の購入額を達成した。

 

株式会社本間製作所

小片 昇さん

 

じつはいままでなかった火で温め直しできる密閉容器

山崎さん(以下敬称略)“給食缶”って、日本で幼少期を過ごした人にとっては特別で、ノスタルジックな気分を味わえるアイテムですよね。あのときのゴハンの味や温かさとともに、当時の懐かしい記憶を湧き立ててくれて、ただのランチタイムとは別の価値を提供してくれるプロダクトだと思います。

 

小片さん(以下敬称略)“給食”というカルチャーが背景にあるからこそ購入してくださるお客様が多いのも事実ですね。

 

山崎 家庭用サイズにデフォルメしようとしたきっかけは何だったのですか?

 

小片 “お裾分け容器の新しい提案”として、開発に至りました。知り合いの社長さんが、汁物などの料理を社員に振る舞いたい時に、持ち運べるちょうど良い容器がないと困っていらっしゃったんです。それを聞いて、汁物を安心・安全に詰めて持ち運べて、火で温め直しができる容器ってじつは世の中にあまりないなぁ……と。弊社が得意とする給食缶ならパッキングが完璧で落としても倒しても中身がこぼれませんから、ミニチュア化してみようとなりました。

 

山崎 そういう意味でいうと“エアポケット”にある商品ですね!

 

小片 「入院中の母に汁物を届けるときにも重宝します」など、料理の運搬目的でご購入される方が圧倒的に多いです。個人的にはアウトドアで使ってくださる方が多そうだなと予想していたのですが。

 

山崎 焚き火でも使えるし、アウトドアに向いてますよね。キャンプで使ったらワクワクしそう(笑)。

 

小片 そうなんですよ。本格的なお料理をおうちで作ってキャンプ先で温めて食べられる……というのは、特長のひとつ。あと、残った料理をそのまま中に入れて持ち帰りできる点も意外と便利です。

 

山崎 キャンプ場だと汁物の捨て方ってすごく困るんですよ! 余りものをそのまま持ち帰りできるのはイイなぁ。このプロダクトって、“運ぶ”“開く”“調理し直す”行為が、気持ちとして切れないですよね。「作りました。では、タッパーに入れて持って行きましょう」というのとは体験の価値が違う。料理を「給食缶」に入れて持って行くとなると、作ったときのウキウキのテンションのままで現地で蓋を開けられる。場所が変わって時間が経っても、気持ち自体は切れない。それがすごく良いですね。

 

小片 「持ち運びたくなるデザイン」というのをかなり意識しています。少しおもちゃ感があって、この容器自体をお披露目したくなるようなフォルムを目指しました。

 

山崎 アツアツの料理を入れて蓋が開かなくなった時に、蓋のつまみを押すと空気が入って開けやすくなる仕組みもスゴいですよね。これは最初から付けようと思っていた機能なんですか?

 

小片 業務用にはデフォルトで付いている機能です。なので、家庭用サイズに落とし込むときにもそこは外せないなと(笑)。

 

山崎 BtoBでやってきた会社さんだからこその便利機能なのですね。デザインから細部の機工に至るまですごくこだわっていらっしゃるけど、プロダクトとしてはプリミティブ(原始的)な形に落ち着いていますよね。“長く使ってもらいたい”という、時間に対する責任をものすごく強く持たれているのかなという印象を受けました。

 

小片 その気持ちは強いです。「JOURNAL STANDARD FURNITURE」さんとコラボしたモデルは、蓋とハンドルの単品販売も行います。ウッドをあしらったデザインなのですが、すでに「給食缶ミニ」をご愛用されてる方々にも着せ替え感覚でファッション的にも楽しんでいただけたらいいなという思いを込めています。

 

山崎 個人的にはオプションで、中を仕切る板が欲しいなぁ。火鍋みたいに左右で汁物の味を変えられると、大人味と子ども味の2種類が必要な家庭のキャンプで大活躍すると思うんですよ!

 

小片 確かに、そういうオプションがあると便利そうですね! 今後もいろんなご意見を聞かせていただいて、開発の参考にしたいです。

 

↑中身が真空状態になり開かなくなってしまったときでも、蓋のつまみを押すと空気が中に入り、簡単に開けられる

 

↑ガス・IH両方のコンロに対応。そのまま火にかけられて調理が簡単なうえ、温め直しもラク。キャンプでも活躍

 

↑余った料理は粗熱を取り、そのまま密閉OK。冷蔵庫にそのまま入る高さに設計されているのも便利だ

 

↑保温性に優れた「マルチ巾着バッグ」。“保温には向かない”というステンレスの弱点をカバーできる

 

※こちらは「GetNavi」2025年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/中村 功(山崎さん)