ケニアで建設ラッシュ! 低価格住宅の需要は年間25万戸、日本企業に商機も

いまケニアの不動産業界が熱いことをご存知でしょうか? 同国の大統領が低価格の住宅建設を公約に掲げて就任したことからもわかるとおり、住宅不足が大きな課題となっているのです。ケニアで進行中の数多くの住宅プロジェクトについて紹介しましょう。

ケニアで住宅建設ラッシュ

 

人口が増え続けているアフリカでは、特に都市部での人口増加が顕著で、それにより住宅不足の問題が持ち上がっています。これはケニアでも同様で、世界銀行の報告書によると、ケニアの低価格住宅の需要は年間25万戸であるのに、実際の供給数はわずか20%の5万戸にとどまっています。

 

そんな背景があり、ウィリアム・サモエイ・ルト氏は低価格住宅の建設を公約に掲げ、2022年9月に大統領に就任しました。ルト大統領はすぐに「レガシープロジェクト」と名付けられた計画を進め、首都ナイロビにおける6000戸の住宅計画を発表するなどしています。

 

すでに建設が進められている計画としては、例えば、ケニアのルアカに450戸の住宅が完成する「ミラン・レジデンス」があります。このプロジェクトを手掛けるSafaricom Investment Co-operative社は、過去数年間にケニア各地で同様の住宅プロジェクトを進めてきました。第1期として2040年に完成予定の200戸は、スタジオ(ワンルーム)、ロフト付きスタジオ、1ベッドルーム(1LDK)、2ベッドルーム(2LDK)の間取り。すでに50%が契約済みと販売状況は好調で、ショールームが完成したことによって、今後さらに良い売れ行きが期待できると言われています。

 

また、Stima Investments Sacco社は、ナイロビ市内で12億ケニア・シリング(約12億円※)の住宅プロジェクトを進行中です。2022年11月から販売を開始し、20階建て全449戸のうち、すでにおよそ半数が契約済み。同社はこのプロジェクトで3億8000万ケニア・シリング(約3.8億円)の利益を得る見込みと報じられています。

※1ケニア・シリング=約1円で換算(2023年5月2日現在)

 

その一方で住宅建設と共に求められるのが、ケニアの人々が住宅ローンをより利用しやすくするための制度やサービスの整備。いくら低価格住宅とはいえ、全額を現金で購入できる人は一部に限られ、大半が住宅ローンを利用することになるでしょう。

 

例えば、上述のStima Investments Sacco社は、物件を人に貸して住宅を所有できるプランを設定。所有者は物件購入価格の25%だけを支払い、残りの75%はテナントからの賃料で支払うという内容です。そのほかにも、高額所得者ではなく低所得者に焦点をあわせた住宅ローンのプランが求められています。

 

日本を含めた海外のハウスメーカーに商機がありますが、日本の住宅と同じような価格での参入は難しく、大幅にコストダウンするための工法などに工夫が必要です。そのようにして途上国向けに低価格住宅を開発できれば、ケニア以外にも展開できるため、市場としては大きくなると見られます。

 

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バングラデシュ、2071年までに「耐震基準」を抜本的改革。不可欠な日本の支援

東日本大震災を上回る犠牲者を出しているトルコ・シリア地震。これだけ多くの被害をもたらした一因として建物の耐震性能が挙げられていますが、この問題はトルコやシリアに限りません。最近では、地震活動が活発な地域にあるバングラデシュが建物の耐震基準を抜本的に改革することを発表。この計画はこれから約50年間にわたって行われ、日本が支援していくことも明らかにされました。

ダッカでは建物が危険なほど密集している(ドローンで撮影)

 

バングラデシュの震災への取り組みについては、以前から国際協力機関などの間で議論されていましたが、トルコ・シリア地震を受け再び注目が集まっています。特に、首都ダッカは建物が無秩序に連立し、高密度化しているうえ、建物の設計や建設技術が劣ることから、災害リスクの高い都市の一つとなっているのです。

 

そこで先日、バングラデシュのエナミュール・ラーマン災害管理大臣は建築基準法の改正が必要だと述べ、2071年までに同国を地震に強い国にすると発表しました。同国では政府の建物も含め、耐震性が劣るものが多く、ダッカ市内のおよそ7万2000以上の建物が脆弱で、大地震が発生した場合、数百万人が死亡する恐れがあるとされています。

 

最近、同大臣が出席したDebate for Democracy主催のイベントでも、参加者たちは地震のリスクに対処するためには、脆弱な建物を特定して耐震性を高めることが必要であると議論していました。道路、地下鉄、高速道路などの交通網やガス、電気などのインフラについても同様の認識がされています。

 

防災への取り組みを強化するために、バングラデシュが支援を求めたのは日本。エナミュール・ラーマン災害管理大臣は、「日本は地震に強い国。マグニチュード10の地震があった場合、80階建てのビルは揺れることはあっても倒壊はしない」と日本の耐震技術について説明。その一方で、バングラデシュは耐震性の高い建物を建てる際に必要となるエンジニアが足りていないことから、同国は財政面だけでなく技術面でも日本に支援を求めています。

 

バングラデシュのように、都市部の急速な人口増加に伴い、建築基準法などの法整備が追い付かないまま、建物が次々に建設されている途上国は他にもあるでしょう。限られた時間の中で無数の建物の耐震性を高めていくのは、当然ながら時間も資金もかかります。しかし、日本はこれまでに多くの大地震に見舞われながら、建物の建設や都市計画、防災体制などについて知見を蓄えてきました。途上国の震災対策に貢献できることがたくさんあるはずです。

 

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早い成長、低いコスト、高いCO2吸収量。「竹」の可能性に世界が注目

2021年に起きたウッドショック。コロナ禍で伐採労働者が減少した影響もあり、住宅建設に必要な木材が不足し、木材の価格が高騰しました。このような現象が起きた後で、建築材料として俄然注目を集めているのが竹です。現在、世界中で約44億人が都市部に住んでおり、その数は2050年に2倍になると見られていますが、それに伴い増えることが予想される住宅需要を満たすためには、竹の活用が不可欠と言われています。日本人が昔から馴染んできた竹には、一体どのような可能性が秘められているのでしょうか?

世界を救う可能性を持つ竹

 

まず、竹の特徴として成長がとても早いことが挙げられます。一般的な木材の場合、苗木を植えてから木材として使用できるまでに40~50年かかるのに対して、竹は多くの品種で根本を切っても再び芽が伸び、わずか3年で収穫できるほど早く成長するのです。

 

また、竹は成長するときに大気中の二酸化炭素を吸収することも特徴。1ヘクタールの竹林は1年間で約17トンの炭素を吸収するうえ、竹は建物や家具などになった後でも大気中の炭素を吸収して蓄えることが可能。そのため、竹は深刻化する地球温暖化の対策にもなり得るのです。

 

さらに、竹は耐久性があって安価、しかも軽量なので運搬しやすいと言われているほか、水分を多く含んでいるため耐火性があり、加工すれば400℃の高温にも耐えられるようになるそうです。このような理由で、竹はとても魅力的な建築資材であり、気候変動に対応した住宅の建築に役立つ可能性を秘めているのです。

 

世界経済フォーラムや世界資源研究所などの共同イニシアチブによる「気候スマート・フォレスト・エコノミー・プログラム(CSFEP)」は、持続可能な建築資材として竹を活用した住宅建築の取り組みを進めています。その一例が、グアテマラの竹製住宅。2022年10月に熱帯低気圧ジュリアに襲われた際、この住宅は強い風に耐え、しかも高床式の住居だったため浸水も防ぎ、被害を受けずに済んだ建物が多かったのです。

 

他国もこのような竹のポテンシャルに注目し、竹の産業化を推進しています。中国は2012年に竹産業を国家的な優先課題と決定した一方、ケニアは竹の商業化を促進するべく、2020年には竹を植物ではなく「作物」に分類しています。また、エチオピアでは、2030年までにアフリカで主要な竹生産国になることを目指し、竹の植林を進めていると同時に、人工竹材に関する実験も行っている模様。さらに、インドの建築業界でも竹を活用することで建築資材を多角化する動きが見られるなど、竹を利用した試みは世界各国に広がっているのです。

 

日本も負けられない

日本人にとって竹は昔から身近にある植物で、縄文時代から建築素材として使われてきたとされています。しかし、家具やインテリアなどには竹が使われているものの、より安価な資材が生まれたことなどから、日本では竹の消費量自体が減り、管理されないまま放置された竹林が増えているのが現状。

 

それでも、国産の竹100%を原料とした「竹紙」を製造したり、竹から「セルロースナノファイバー」と呼ばれる極小繊維を作る技術を開発したり、日本でも竹を資源として活用する研究が進められています。これらは建築資材ではありませんが、他国と同様に日本でも竹を再評価する機運が高まっているのかもしれません。世界各国がサステナブルな竹を巡り競い合っている中、日本の奮起が期待されます。

 

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世界初の「3Dプリンター学校」、アフリカの教育を変える驚きの手法

【掲載日】2022年6月13日

アフリカの南東部に位置するマラウイでは現在、学校と教員が不足しています。ユニセフ(国際連合児童基金)によれば、同国では約3万6000の教室が必要であるうえ、教員1人当たりの生徒数は99人であるとのこと。この状況は生徒の習熟度に大きく影響します。そこで、マラウイは学校不足を解消するために、意外な手法を用いました。

マラウイで開校した世界初の3Dプリンター学校(画像提供/14Trees)

 

2021年6月、3Dプリンターを使って建設した学校が世界で初めてマラウイで開校しました。この学校を建設したのは、スイスの建築資材企業ホルシムと英国政府系の開発金融機関ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメントの共同事業である14Trees。建設に要した時間はわずか18時間で、この学校は70人の生徒を収容することができます。マラウイの多くの児童は、自宅から数キロ以上離れた、かなり遠い学校に通学することを余儀なくされており、この学校はアクセスの改善においても強く期待されています。

 

また、従来の工法では約3万6000の学校を建設するために約70年を要するとユニセフは試算していますが、14Treesは3Dプリンター工法を活用することで、それを約10年に短縮することができると推計しています。

 

3Dプリンター工法は建設時間に加えて、コストと環境負荷の軽減にも有効。従来工法と比較すると建設コストは約25%減、二酸化炭素排出に関しては約86%も軽減することが判明しています。その反面、課題も存在しており、現在の建設用大型3Dプリンターのコストは約10万ドル(約1330万円※)以上と高価なもので初期の資金調達をクリアすることが必要です。投資家や寄付者を募る国々も多いとは思いますが、将来性の観点からすると非常に高い興味を持たれる事業であると想定できます。

※1ドル=約133円で換算(2022年6月8日現在)

 

3Dプリンターを使った学校建設プロジェクトは、マラウイ以外にもケニアや南アフリカ、マダガスカルなどで進行中。アフリカは爆発的な人口増加の渦中におり、子どもの数は増える一方ですが、多くのアフリカ諸国がマラウイと同様の問題を抱えています。また、今後アフリカ全土に広まる可能性を持つ本事業は、ほかの大陸の新興国にも注目されています。教員不足は別の問題ですが、学校が増えることはアフリカの教育にとって重要な進展となるでしょう。

 

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世界を襲う「砂クライシス」。危機の回避に向けて国連環境計画が解決策を提言

【掲載日】2022年6月1日

世界各地で発生している急激な都市化と人口の増加は、砂の消費量を激増させており、その価格は年々上昇しています。主にさまざまな建築物で活用される砂は、価格高騰による不正採取が跋扈しており、日本もその例外ではありません。環境保全や気候変動への適応という観点からも砂は重要であり、適切な管理方法の確立が今まで以上に求められています。

途上国の都市化により、ますます需要が高まっている砂

 

2022年4月、国際連合環境計画(UNEP)は「Sand and Sustainability: 10 Strategic Recommendations to Avert a Crisis」というレポートを発表し、砂資源の危機を回避するための戦略を提言しました。現在、世界で必要とされている砂は年間約500億トン程度で、その量は地球全体を高さ27メートルの砂壁で覆うことができる量に匹敵すると言われています。2019年に経済協力開発機構(OECD)が行った調査では、2060年までに世界人口が100億人を超えた場合、建築における砂や砂利、砕石の使用量が調査時と比較して2倍以上になるだろうと予測されています。「砂漠の砂を代用すればいいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、残念ながら風食による細かい粒子の砂は建築資材には活用することができません。

 

新興国では近年、急激な都市化が進行しており、需要が増加したために砂の価格が過去数十年で高騰。例えば、1991年における米国の砂1トンあたりの平均価格は3.96ドル(約503円※)でしたが、2021年には9.9ドル(1257円)を記録しています。

※1ドル=約127円で換算(2022年5月25日現在)

 

砂はコンクリートの製造や住宅、道路、インフラ整備などのさまざまな用途で必要とされており、経済発展には不可欠な資源の1つ。その反面、海岸や河川などから砂を掘り出すことは、海岸などの浸食や塩害、高潮対策の喪失を引き起こす可能性があるほか、生物多様性への影響も危惧されています。さらに、海岸に砂があれば、高潮や海水面の上昇から人類を守ることができるため、UNEPは、砂の保護は「気候変動に適応するうえで最も費用対効果が高い戦略である」と述べています。

 

そこで、同レポートは、循環型経済の枠組みの中で砂を管理するべきだと主張。砂を建設資材だけの問題として片付けるのではなく、環境への影響やロジスティクス、国際公開入札に向けた新しい基準の必要性など、幅広い視点からこの問題を捉えると同時に、政府や産業界、消費者を含めた、すべての利害関係者に考慮しながら適正価格をつけるべきだと論じています。また、循環型経済の構築に向けて、公共調達案件における砂の再利用の奨励や、代替品としての砕石、解体資材のリサイクル、鉱砂など、さまざまなアプローチが提唱されています。

 

砂を適切に管理するために、UNEPは砂資源のマッピングや監視、報告体制の構築などについても言及していますが、これらに向けて、世界各国で官民挙げての取り組みが今後増えていくでしょう。各国ともに最善の対策を模索しているのが現状ですが、「戦略資源としての砂」という認識はどこも揺るぎません。砂は水に次いで世界で2番目に活用されている資源なのですから——。

 

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