静かさが感動レベル! 3万円台の高級扇風機「三菱SEASONS」で「ランクが違う」と感じた部分をしっかりレポート

この数年、2〜5万円前後の高価格帯の扇風機が、当たり前のように売り場に並んでいます。このプレミアム扇風機は、デザイン性や機能、そして風の質など、さまざまな点が従来までの「ただ羽根を回して風を送るだけ」である数千円の扇風機とは一線を画しています。

 

そんななか、「3D立体首振り」という首振りの自由度で人気なのが、三菱電機のサーキュレーション扇風機 SEASONS(シーズンズ)シリーズです。左右180°と上下100°という、圧倒的に可動範囲が広い首振りで、扇風機やサーキュレーターとして使えるのはもちろん、部屋干しのサポートまでしてくれる製品。今回は最新モデル「R30J-DDA」(実売価格3万7400円・税込)を使用し、実際に使ってわかったメリット・デメリットについて、詳細をレビューしていきます!

↑プレミアム扇風機はデザイン性の高さも特徴。R30J-DDAもシンプルながら高級感のあるデザイン。安っぽさがないのでリビングへの設置にピッタリ

 

2段階の高さ調整で扇風機にもサーキュレーターにもなる

まずはR30J-DDAの基本性能からチェックしていきましょう。通常時の本体サイズは幅370×奥行370×高さ1020mmと一般的なサイズ。ただし、本体重量は5.1kgと少々重め。移動には向きませんが、しっかりとした安定感があり、子どもやペットのいる家庭でも安心して使えそうです。また、本体の高さはポールを外すことで580mmまで低くすることもできます。

↑標準時(左)は高さ1020mm、ポールを外すと(右)580mmにすることも。580mmサイズにすると扇風機というよりサーキュレーターのような見た目。冬は短くして暖房のサポートとして利用すれば、一年中便利に使用できます

 

3D立体首振りは部屋干しのサポートに便利

本製品の大きな特徴のひとつが、3D立体首振り機能。左右180°、上下100°の首振り機能を搭載しており、自動首振り機能をONにすれば広い範囲に風を行きわたらせることができます。一般的な扇風機は左右の自動首振り機能はあるものの、上下は手動で角度が変えられるだけ、という製品がほとんど。そんななか、R30J-DDAは左右上下どちらも自動首振りに対応しています。また、一般的な扇風機は左右100°、上下40°程度の可動域が標準的なので、比較するとR30J-DDAの可動域の広さが際立ちます。

 

我が家でこの立体首振りと可動域の広さが特に役立ったのは部屋干しのサポート。左右首振り範囲が広いので、並べた洗濯物の端から端までしっかり送風。さらに、上下左右に首振りをするので、洗濯物の乾燥サポートと部屋の空気の攪拌が同時にできるのもうれしいポイントでした。

↑左右はなんと180°の首振りが可能。一般的な扇風機は左右100°くらいしか可動域がないため、この自由度の高さはうれしいポイントです

 

↑上下は100°の首振り。ちなみに上方向90°(左)、下方向10°(右)の首振りとなります

 

↑我が家では真上に向けて部屋干しのサポートに使用。 乾燥時は衣類の下部分に湿気が溜まるので、本体の高さを縮めて扇風機を衣類の真下にセットできるのは便利でした。しかも真下に置けば邪魔になりません

 

ただし、メリットばかりではなく、気になる点もありました。それが、縦方向の首の角度を調整する方法。左右の角度は10°ずつ調整できる専用の操作ボタンがあるのですが、縦方向の変更にはこういった専用ボタンがありません。とはいえ、普通の扇風機のように手で無理やり角度を変更するのは厳禁。というわけで、首振り機能を作動させて「この角度!」というタイミングで首振りをストップする手間が必要。洗濯乾燥のために真上に向いている首をもとの位置に戻すのに毎回、最適な角度になるまで待つのが少々面倒に感じることもありました。

 

シンプルなデザインに昔ながらの操作性が使いやすい

扇風機をリビングに設置するなら、インテリアを壊さないデザインも重要です。その点、R30J-DDAは羽根前面のアミ部分がらせん状になっており、高級感のある印象。羽根が透明な樹脂で軽やかなイメージがある点も気に入っています。

↑シンプルなようでいて複雑な造形。今回試用した実機のカラーは爽やかなピュアホワイトですが、重厚感のあるチャコールブラックも用意されています

 

R30J-DDAのデザインでもうひとつ気に入っているのが、ベースに操作ボタンを配置していること。最近のデザイン扇風機は、ベース部をスッキリ見せるためにヘッド裏にボタンを配置している製品が増えています。そうなると、足で操作できないのがズボラな筆者には少々悩ましいところ。ベースにボタンが集中したR30J-DDAなら、両手がふさがっていても電源を入れたり、風の強さや首の位置を変更したりすることが可能です。

↑ベース部分に配置された操作ボタン。選択中の操作がLEDで光るのもわかりやすいです

 

反対に、デザイン面で気になったのがコードとリモコン。R30J-DDAのコードは使用していない間は本体裏面に収納できるのですが、そのためかコードを引っ張り出すとクセがついてヨレてしまっていました。また、リモコンは使用していない間は本体ベース部分に収納可能。このリモコン、薄型コンパクトなのは良いのですが、本体のデザイン性の高さと比較すると、もう少し高級感がほしかった……と感じるところです。

↑ベースを裏返すとコードの収納スペースがあります。コードは細い上にグネグネと曲がってしまうので、床を這わせると正直、見た目がいまひとつ。ただ、プラグの端子の根元に絶縁処理を施しているなど、細かな部分での安全設計は「さすがは三菱製!」と感じます

 

↑付属のリモコンはベース側面に収納可能。台から出すのにかがむのは面倒ですが、収納場所が決まっているのでリモコンをなくさないメリットはあります

 

テレビの音を邪魔しない! 優しい風も魅力的

ここまでは本製品の基本性能について言及しましたが、R30J-DDAは使ってみるとその価値を実感できます。R30J-DDAを使用して、まず驚くのは静音性の高さ。風量は1から5までの5段階で変更できるのですが、2までの風量ならば比較的静かな部屋でも、耳をそばだてなければ駆動音にほとんど気がつきません。3以上だと、さすがに扇風機特有の「フワァーン」という音がかすかに聞こえますが、最大風量にしても安い扇風機の「弱」レベルの音しかしません。

 

これは、ちょっと感動するレベルの静音性の高さです。DCモーター搭載のプレミアム扇風機には静音性が高い製品が多いのですが、そのなかでもトップクラスの静音性だと感じます。あまりにも静かなので、風呂上がりに扇風機前で涼みながらテレビを視聴していたところ、風量2で扇風機の前50cmに座っても、扇風機の駆動音がまったくテレビ視聴の邪魔をしませんでした。これはかなりスゴイ静音性です。

↑室内は扇風機を動かしていない状態で38.8dB。我が家で一番よく利用した風量2だと41dBでした。ちなみに、最大風量では58.1dB。写真では羽根から10cmの距離で計測していますが、最大風量でも50cm離れると40dB台後半(静かな事務所レベル)とかなり静か! 狭い部屋でも安心して使えそうです

 

↑静音性の秘密は、航空機の低騒音化対策にも使われるという「エクストラウィングレットファン」の羽根形状。横からみると羽根が一枚一枚複雑な曲線を描いているのがわかります

 

整った優しい風が遠くまで届く

また、驚くのが「風の優しさ」。風量3以上にするとそれなりの風圧があるのですが、肌にあたる風が「整っている」ように感じます。安い扇風機にありがちな乱れた気流を感じないのです。

 

実際に風量をチェックしたところ、羽根から10cmあたりで最大風量だと3.4m3/s。これは、標準的な扇風機と同じくらいの風量です。しかし、風を整えて送り出しているためか、最大風量時なら10m近く離れてもフンワリと優しい風を感じられます。微風モードでも触れると涼しく感じる優しい風のため、長時間風にあたっても疲れない点も気に入りました。

↑10cmほどの位置で風量を計測すると3.2m3/sでした。この数値だけみると普通の扇風機なのですが、面白いのが3m離れても2.0m3/sほどの風量をキープしていたこと。風が整っているためか、普通の扇風機より風の減衰が少ないように感じます

 

リビングや寝室に置くのにオススメ

最近は扇風機とサーキュレーターが一体化した製品が増えているため、扇風機は一年中リビングに出しっぱなし、という家庭も増えてきました。そんななか、デザイン性が高く、さらに3D立体首振りと広い可動域により、広いエリアに風を送れるR30J-DDAはまさにリビング向けの製品だと感じました。

 

そして、R30J-DDAを実際に使って実感したのが、扇風機が静かであることの快適さ。リビングは映画を観たり、家族や来客と話をしたりと音に集中することが多い場所なので、この静音性の高さは本当に魅力的。今回、我が家では部屋干しなどの関係で主にリビングで利用しましたが、駆動音が小さいので、寝室で使用するのにも向いているでしょう。

 

また、騒がしい家電量販店でこの静かさを体感するのは難しいかもしれませんが、もし店舗でR30J-DDAをチェックできるなら、ぜひ「風の優しさ」を確認してもらいたいですね。本製品は可動域の広さ、デザイン性、静音性、風の優しさと、いずれも兼ね揃えたワンランク上の扇風機だと感じました。

↑使用しないときは分解してコンパクトに収納もできます。細かなところまでよく考えられている製品です

 

寝ている子を起こさない! 「赤ちゃんに優しい」家電アイテム7選

赤ちゃんが生まれると、生活が一変! 家の中や衣類、布団の清潔さにこだわったり、寝ている赤ちゃんを起こさないよう工夫したり、赤ちゃんのために気を付けたいことがたくさん出てきます。そこで今回は、赤ちゃんがいるご家庭にオススメしたい家電グッズなどをピックアップしました。ご紹介するのはパナソニックの空気清浄機やドウシシャの扇風機、アイロボットのロボット掃除機、ピジョンのさく乳器など計7点。赤ちゃんにも優しく、静かで、パパママにもうれしい家電製品を選ぶ際の参考にしてみてください。

 

[空気清浄機]

パナソニック

加湿空気清浄機 F-VXP90

実売価格 5万3070円

SPEC ●サイズ/質量:W398×H640×D268㎜/11.8㎏ ●空気清浄適用床面積〜40畳 ●空気清浄時間8畳/約7分 ●最大加湿量870㎖/h ●フィルター交換目安約10年

 

花粉やPM2.5などの粒子から約0.3μmの粒子まで、99.97%以上集じんしつつ、ナノサイズの微粒子イオン「ナノイーX」が花粉などのアレル物質やウイルス、菌などの活動を抑制。床上30cmに溜まりがちな花粉、ハウスダストは、本体下部の開口部に設けた「メガキャッチャー」機能がパワフルに吸引します。加湿機能付きなので、乾燥が気になる季節も大活躍。

 

【おすすめポイント】

空気清浄機能に加え、アレル物質の活動も抑制してくれる高性能モデル。特に床上30cmの空気の汚れを吸引してくれる「メガキャッチャー」は、床で過ごすことが多い赤ちゃんに嬉しい機能です。部屋が暗くなると、風量と表示ランプの明るさをセーブするので、眠っている赤ちゃんを起こさないという配慮も○。

 

[扇風機]

ドウシシャ

カモメファン FKLT-232D/TLKF-1232D

実売価格 1万5410円

SPEC●サイズ/質量:W305×H800~900×D260㎜/約4.4kg●動作音:12.0dB●風量調節:無段階●自動首ふり角度:左右30・60・90度●手動角度調節:上下 上向き90度、下向き90度※真正面起点●タイマー:入 / 切 1・2・4・8時間●消費電力:1.2W(最小時)~10.5W(最大時)

 

カモメの羽をヒントにつくられた羽根を採用し、やわらかく心地よい風を遠くまで届けるDCモーター扇風機。フレキシブルに曲がる5つの関節を備え、真上や真下など、様々な方向に送風できます。徐々に風が弱まる「おやすみ風」や、まぶしさを抑えるLEDの減光・消灯機能など、睡眠中も使いやすい機能も搭載。

 

【おすすめポイント】

カモメファンの風はとてもやわらかく、繊細な赤ちゃんも負担なく、心地よい風が浴びられます。特にこのモデルは、フレキシブルアームを調整すると真上から見下ろすように送風できるので、お布団で寝ている赤ちゃんを優しい風で包み込んでくれますよ。

ロボット掃除機

アイロボット

ブラーバ 380j

実売価格 3万7580円

SPEC●走行システム:iAdapt2.0●掃除モード数:3●稼働面積(ウェットモップモード):約12畳●充電時間:2時間●サイズ/質量:W178×H84×D170㎜/約1.2kg

 

フローリングを自動でお掃除してくれる床拭きロボットは、動作音がとっても静か。スイスイと部屋の隅から隅まで移動しながら、フローリングの汚れを拭き取ります。皮脂汚れや食べこぼしには「ウェットモード」、ホコリや髪の毛には「ドライモード」で日々のフローリング掃除と使い分けが可能。

 

【おすすめポイント】

掃除機のように吸引しないので音が静かなうえ、ホコリを立てないので赤ちゃんが寝ていても安心して使えます。床に溜まりがちな花粉やホコリ、こびりついた菌も取り除いてくれるので、フローリングが中心の家にオススメです。

 

スティッククリーナー

ケルヒャー

スティッククリーナーKB5

実売価格:1万1580円

SPEC●集じん容積:0.37ℓ●充電時間:約3時間●連続運転時間:約30分(フローリング)●清掃幅:210mm●運転音:55dB●サイズ/質量:W215×H1120×D230mm/1.17kg

 

1.2kgと軽くてコンパクトなスティッククリーナー。自立するので部屋の隅に立てておき、使いたいときはスティックを倒せば自動でスイッチが入ります。インテリアを邪魔しないシンプルなデザインも特徴。独自のクリーニングシステム搭載で排気を出さず、ホコリを舞い上げる心配もありません。

 

【おすすめポイント】

出しっぱなしにできるので、ちょっとゴミが気になったときや、隙間時間で掃除したいとき、サッと手に取りスティックを倒すだけで掃除が始められます。一般的な掃除機に比べて動作音も静かなので、寝ている赤ちゃんを驚かせてしまうことはなさそう。

 

洗濯乾燥機

シャープ

プラズマクラスター洗濯乾燥機 ES-PU11B

実売価格:11万7000円

SPEC●洗濯脱水/乾燥:11kg/6kg●定格洗濯乾燥時間:約220分●サイズ/質量:約W600×H1050×D650mm/約48kg●消費電力量:約2200Wh(洗濯乾燥時)

 

洗濯槽に穴がないので、洗濯槽の外側や底裏についた黒カビや汚れが槽内に侵入せず、清潔な水で洗えるのが、シャープのタテ型洗濯機の特徴。洗濯後も独自イオン「プラズマクラスター」で洗濯槽のカビ菌繁殖を抑制します。洗剤なしで予洗いできる「サッと予洗いコース」や、部分洗いに便利と話題の「超音波ウォッシャー」など、予洗いの手間を軽減してくれる機能も多数搭載しています。

 

【おすすめポイント】

食べこぼしやおもらしなど、ほかの洗濯物と一緒に洗いたくない衣類やシーツの予洗いが洗濯機でできるのは便利! 洗濯容量11kgでシーツや毛布などの大物もたっぷり洗えるので、赤ちゃんの寝具もこまめに洗いやすく清潔に保てます。

照明

フィリップス

Philips Hue Go

実売価格:9680円

SPEC●サイズ/重量:W15×H8.0×D15cm/0.5kg●ランプ技術:LED/24V●ワット数:6W●照明カラー:クール ホワイト●ルーメン出力合計:300lm●寿命:2万時間

 

照明の色温度やカラーが変えられるポータブルライト。実用的な温白色光から、涼しげでやる気を引き出す昼光色など、色温度を変えられるほか、カラー照明で空間の雰囲気づくりに一役買います。ブリッジに接続すればスマートデバイスからもコントロールでき、1600万色のカラー演出が可能に。バッテリー内蔵で、屋外でも使えます(3時間)。

 

【おすすめポイント】

赤ちゃんと眠るときに枕元に置いておけば、おむつを替えたり、授乳するときに便利。照明の明るさを暗めに設定すれば、赤ちゃんを完全に目覚めさせることなく、お世話ができます。カラー照明は、誕生日やクリスマスなどイベント時のムードづくりにもオススメ!

 

電動さく乳器

ピジョン

さく乳器 母乳アシスト電動Pro Personal+(プラス)

価格:2万7000円

 

両胸同時にさく乳できる電動さく乳器。赤ちゃんが飲んでいるように自然にさく乳でき、おっぱいの状態に合わせて吸引リズムや強さが選べる「赤ちゃんここちリズム」を搭載しています。専用アプリと連動すれば吸引リズムが追加できるほか、さく乳できた量や赤ちゃんが飲んだ量の記録も可能。片胸ずつさく乳する「電動Pro Personal」(1万6200円)もあります。

 

【おすすめポイント】

外出先や夜中にさく乳する機会が多い人には、手などに負担なく、あてているだけで自動で効率よくさく乳できる電動タイプがオススメ。さく乳時のモーター音が従来品より静かになったので、赤ちゃんが寝ているときや外出先でも気兼ねなく使えます。

 

扇風機が「5つの関節」を持つとどうなる? やさしい風で人気の「カモメファン」に驚きの新モデル

ドウシシャは、扇風機ブランドKamomefan(カモメファン)から、フレキシブルアームを採用した「Fシリーズ(FKLT-232D/TLKF-1232D)」を発売しました。希望小売価格は2万4880円(税抜)。

↑カモメファン Fシリーズ(FKLT-232D/TLKF-1232D)

 

支柱に5つの関節を持つフレキシブルアームを採用し、上下90°に風が送れる

カモメファンは、世界トップクラスのシェアを持つ船舶用プロペラメーカー「ナカシマプロペラ」が羽根の設計を担当。その技術力により、高い静音性とやさしい風を実現しています。

 

今回の新製品の開発では、正面から風を浴びるより、上から降り注ぐように浴びると気持ち良く感じる点に着目。5つの関節を持つフレキシブルアームを採用し、上向き・下向きとも90°に風を送ることができるようになりました。これにより、寝ている人やペットに向ける、空気の流れが悪い場所を狙うなど、ピンポイントに角度をつけた風を送ることが可能に。真上または真下に風を送れば、部屋全体の空気をやさしく攪拌することもできますね。

↑フレキシブルアームによって、様々な場所に向けて送風が可能

 

左右自動首ふり角度調節は、30・60・90°の3段階で設定可能。タイマーはリモコンはマグネット式で、背面にも取り付け可能です。1・2・4・8時間の入/タイマーやリズム/おやすみ風、LEDの消灯/減光モードを用意するなど、就寝時の利用に便利な機能も豊富。このほか、組み立て不要で箱から出してすぐに使え、コンパクトに収納できる点、かがまなくても届く位置にある操作部、リモコン操作時に遠くからでも風量がわかるインジケーターなど、従来モデルのメリットは引き続き踏襲しています。

↑マグネット式リモコン

 

↑遠くからでもわかりやすいインジケーター

 

記録的な暖春となった4月に続き、今後も気温が高い状態が続くようです。暑いけれどエアコンをつけるまでもない……という日も増えるはずですし、エアコンの冷房効率を高める意味でも、性能の良い扇風機を手に入れて上手に活用したいところ。その候補として、より多彩な使い方が可能となった「カモメファン Fシリーズ」、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

Kamomefan Fシリーズ

FKLT-232D/TLKF-1232D

●発売:4月23日●価格:2万4880円(税抜)●サイズ/質量:W305×H800~900×D260㎜/約4.4kg●動作音:12.0dB●風量調節:無段階●自動首ふり角度:左右30・60・90度●手動角度調節:上下 上向き90度、下向き90度※真正面起点●タイマー:入 / 切 1・2・4・8時間●消費電力:1.2W(最小時)~10.5W(最大時)

自己満足から“ユーザーがうれしい”モノ作りへ。バルミューダ流「モノ・こと・時間」の作り方

自然界の風を再現する扇風機「The GreenFan」や、最高の香りと食感を実現するトースター「BALMUDA The Toaster」など、斬新なアイデアでヒット商品を生み出しているバルミューダ。創業者である寺尾 玄氏はなんと、元ミュージシャンという異色のキャリアの持ち主だ。

 

ロックスターの夢を諦めた、家電にはまったくの素人が事業を起こし、度重なる倒産の危機を乗り越え、導き出した経営哲学。現在バルミューダが掲げる「ものより体験」というポリシーは、どのように形成していったのでだろうか? 製品の開発エピソードを振り返りながら、ヒットの裏に隠された「寺尾 玄の理念」に迫る。そこから見えてきたのは、この時代を生き抜くためのヒントだった。

 

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値段が高いから売れないんじゃない。人々に必要とされるものを作らないから売れないんだ

——バルミューダは、パソコンの周辺機器から扇風機、トースターやレンジと、これまでいろいろな商品を発売してきました。それに合わせて、ものづくりのポリシーも変わってきたんでしょうか?

寺尾 玄社長(以下、寺尾):はい、変わってきました。創業時と同じポリシーでやっていたら、現在のバルミューダはなかったと思っています。振り返ってみると、大きく3つの段階がありました。ひとつ目は創業時。自分が欲しいと思う、カッコイイものを作ることしか考えていなかった時代です。そんな考えで商品を作っても、人々に受け入れてもらえるはずがないですよね。でも当時の私は、売れない理由を価格のせいにしたり、お客さんのせいにしていました。リーマンショックの影響が残っていた2009年、私を含めて3人の会社で、年商が4500万円、決算が1400万円の赤字で借金が3000万円。そして、注文は1か月間で1件もこない……。これで終わったと思いました。結局、会社が倒産寸前になるまで、ビジネスで最も重要なことに気が付けなかったんですね。

2003年発売の「X-Base」(実売価格3万7584円〜)。アルミから削り出して作られた、ノートPCの冷却台。温度差によって生じる空気の対流を利用し、平均してマイナス7℃という高い冷却性能を確保した↑2003年発売の「X-Base」(実売価格3万7584円〜)。アルミから削り出して作られた、ノートPCの冷却台。温度差によって生じる空気の対流を利用し、平均してマイナス7℃という高い冷却性能を確保した

 

2008年発売のLEDデスクライト「Airline」(実売価格8万6400円)。スプリングとウエイトを内蔵したハイブリッドバランス機構によって、ユーザーによってちょうどいい位置へ、静かに軽く動きぴたりと止まる。アルミ中空構造によるソリッドなデザイン。鏡面仕上げされたホワイトとブラックの2色↑2008年発売のLEDデスクライト「Airline」(実売価格8万6400円)。スプリングとウエイトを内蔵したハイブリッドバランス機構によって、ユーザーによってちょうどいい位置へ、静かに軽く動きぴたりと止まる。アルミ中空構造によるソリッドなデザイン。鏡面仕上げされたホワイトとブラックの2色

 

——それは、どういう気付きだったんでしょうか?

寺尾:会社から自宅への帰り道にファミリーレストランの前を通るんですが、世の中は未曾有の金融危機で自分の会社は潰れそうになっているのに、店内ではお客さんが楽しそうに食事をしているんです。その姿を見たときに、はっきりとわかったんです。商品が高いから売れないんじゃない、人々に必要とされるものを作ってこなかったから売れないんだ、と。もう少し早く気が付けばよかったんですが、タイムマシーンは持っていませんからね。まだ会社が存続しているうちに、人の役に立つものを作って、結果ダメでも前に倒れようと思いました。そんな想いで無心になって開発に取り掛かったのが、「GreenFan」(現在「The GreenFan」)という扇風機でした。

2010年に登場し、バルミューダのブレイクスルーとなった商品が、扇風機「GreenFan」。羽根の構造をイチから見直し、“扇風機の風に直接当たると不快”というイメージを根底から覆した。DCモーターにより消費電力を極限まで抑えられ、2011年の東日本大震災を契機に高まった節電需要にも応え、さらに注目を浴びることとなった。最新モデルは「The GreenFan」(実売価格3万8860円)↑2010年に登場し、バルミューダのブレイクスルーとなった商品が、扇風機「GreenFan」。羽根の構造をイチから見直し、“扇風機の風に直接当たると不快”というイメージを根底から覆した。DCモーターにより消費電力を極限まで抑えられ、2011年の東日本大震災を契機に高まった節電需要にも応え、さらに注目を浴びることとなった。最新モデルは「The GreenFan」(実売価格3万8860円)

 

最大の特徴は、二重構造の羽根。羽根を内周と外周で分割することで、速度の速い風と遅い風を同時に作り出し、元々の風がもつ渦を打ち消すことに成功。これによって“自然界の風”を再現した↑最大の特徴は、二重構造の羽根。羽根を内周と外周で分割することで、速度の速い風と遅い風を同時に作り出し、元々の風がもつ渦を打ち消すことに成功。これによって“自然界の風”を再現した

 

本当はものが欲しいのではなく、使ったときの経験や体験が欲しいんじゃないか

——2010年に発売された「GreenFan」は、普通の扇風機の10倍もする高価格で驚きました。ところが、自然の風を再現する新しい扇風機として、大ヒットしましたね。

寺尾:人に必要とされるものが作れたんだなと思いました。その後、サーキュレーターや空気清浄機などの空調家電でラインナップを広げていくんですが、実はもう一度危機に陥るんです。

——なぜですか?

寺尾:今度は、多すぎる在庫です(苦笑)。「GreenFan」が評価されたので、作れば売れると思ってしまいました。でも扇風機が売れるのは、夏の3か月間だけなんです。例えば、ひと夏で5万台くらいの販売計画を立てるとします。売れ行きを読み間違えると、1万台くらい在庫になってしまう。これらが売れるのは次の年です。つまり、数億円分が倉庫で1年も眠ることになるんです。夏の商品も冬の商品も、季節家電はすべて同じ。在庫を持つことは、恐ろしいほどの事業インパクトになるんです。実際に倉庫まで足を運んで、自分の目で在庫の山を見たとき、“ものを売ろう”と思っていた根性が間違っていたと気付きました。

 

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——“ものを売る”ことが間違っていた、と? では何を売るんですか?

寺尾:例えば30万円の時計を買ったとします。980円で売ってるキャラクター時計でも機能は同じなのに、なぜ人は高価な時計が欲しくなるのか? それは所有する歓びであったり、他人から見られる自分の品質にお金を出しているわけですよね。人はたくさんものを買いますが、本当はものが欲しいのではなく、使ったときの経験や体験が欲しいんじゃないかと、自分なりの仮説を立てたんです。

「ものより体験」。この仮説をもとに開発した商品が、「BALMUDA The Toaster」でした。このトースターは、デザインも音も焼き具合の制御もすべて、パンを口に入れる瞬間のために作ったんです。つまり、体験のためだけ。お客さんが「BALMUDA The Toaster」を使って食べるトーストの素晴らしさを作っているんだという想いで商品を作ったら、すごく上手くいきました。現在も「ものより体験」というポリシーで商品企画をしていますし、今のところそれが上手くいってるんだと思います。

バルミューダが初のキッチン家電として発売し2度目のブレイクスルーをもたらした「BALMUDA The Toaster」(実売価格2万4732円)。最初に注入する5ccの水が焼き始めにパンを蒸気で包み込み、焼き上がりまで細かく温度制御を行うことで、中はふわふわ外はカリッとおいしさが閉じ込められたトーストを焼ける。同製品の大ヒットは、大手家電メーカーが次々と高級トースターを発売するムーヴメントを作り出した↑バルミューダが初のキッチン家電として発売し2度目のブレイクスルーをもたらした「BALMUDA The Toaster」(実売価格2万4732円)。最初に注入する5ccの水が焼き始めにパンを蒸気で包み込み、焼き上がりまで細かく温度制御を行うことで、中はふわふわ外はカリッとおいしさが閉じ込められたトーストを焼ける。同製品の大ヒットは、大手家電メーカーが次々と高級トースターを発売するムーヴメントを作り出した

 

——その「BALMUDA The Toaster」は2015年に発売されましたが、今までにどれくらい売れているんですか?

寺尾:発売から2年半経っていますが、売れ行きは30万台を超え、2017年11月には過去最高のセールスを更新しました。今月(2017年12月取材時)はそれをさらに上回る勢いです。仮説が当たっていたという感覚を、強く抱かせる結果だと思います。でも私は、少し違和感も感じているんですよ。

——右肩上がりで順調に売れている商品なのに、ですか?

寺尾:個人的にはここまで売れると思っていなかったので、現状とのギャップを感じているんです。でもこの“違和感”こそが重要なポイントです。少しでも違和感を感じたとき、自分の予想と違ったときは、徹底的にその理由を考えるようにしています。それは、不調のときも好調のときも同じ。だから予想を上回る販売なら、なぜだ? と徹底的に考え、それを次に生かしていきます。思ってもないことが起こるのが人生ですし、そのときが考えどき。私は少なくともひとつの仮説を立てて、次に行動するときはその仮説を信じて行動します。これを繰り返してきたので、以前と比べると失敗することが減りましたね。以前と比べると、ですけど(笑)

——失敗を回避するための心掛けですね。

寺尾:そうです。でも、失敗を避けるために挑戦をしないという考え方は間違っています。挑戦して失敗するのは、とても大事なことですから。私も失敗は大嫌いだし、したくないことナンバー1です。でも失敗という経験がないと、よりよい自分になれないんですね。失敗は最良の学びの場ですから。

 

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五感で感じられるものを“うれしさ”まで昇華しないと、お客さんの心には残らないと思うんです

——バルミューダの最新作として、2017年末に「BALMUDA The Range」が発売されました。この商品も、「ものより体験」をコンセプトに開発されたわけですよね?

寺尾:「BALMUDA The Toaster」で「ものより体験」というコンセプトを打ち出してから、おいしさに関係する商品を発売してきました。でも、おいしさイコール素晴らしい体験ではないんです。

——違うんですか?

寺尾:はい。「おいしい」が、本当うれしさに直結して選ばれるものなのでしょうか。例えば、仕事の会食で行った星付きレストランと、子供と山登りした帰りに腹ペコで立ち寄ったチェーン店の牛丼屋。味の上質さでは星付きレストランのほうが上でしょう。でも、どっちを体験したいかと聞かれたら、私は後者を選びます。つまり、ものを食べるときは、おいしさよりも大事なものがあると思うんです。それが“うれしさ”。おいしい、美しい、気持ちいいといった五感で感じられるものを、うれしさまで昇華しないと、お客さんの心には残らないと思うんです。

「BALMUDA The Range」の話に戻りますが、電子レンジって便利の象徴ですよね。火を使わず、お湯も沸かさずに、あんなに短時間で簡単に温かい食べ物が出来上がってくる。そんな魔法のような製品は、マイクロウェーブの発明以前は存在しませんでした。もう、そもそも電子レンジというもの自体が素晴らしいですよね。でも、電子レンジが当たり前の家電になって、そのことを忘れてしまっている。箱の中で何かが起きている、そのワクワク。それをどう表現するかが、「BALMUDA The Range」の企画の始まりでした。

2017年12月に新発売された電子レンジ「BALMUDA The Range」(実売価格4万6980円(ホワイト、ブラック)/5万8860円(ステンレス))。バルミューダが送り出す4作目のキッチン家電。搭載されているのはレンジの「温め」「解凍」、オーブン機能とシンプルで、ユーザーを惑わせない。出来上がりには“チン”の代わりにギターの音がモードごとに音階を変えて流れてくる遊び心も↑2017年12月に新発売された電子レンジ「BALMUDA The Range」(実売価格4万6980円(ホワイト、ブラック)/5万8860円(ステンレス))。バルミューダが送り出す4作目のキッチン家電。搭載されているのはレンジの「温め」「解凍」、オーブン機能とシンプルで、ユーザーを惑わせない。出来上がりには“チン”の代わりにギターの音がモードごとに音階を変えて流れてくる遊び心も

https://www.balmuda.com/jp/range/

 

寺尾:ここでもっとも重要視したのが、“簡単さ”です。レンジはキッチンの行動を簡単にするために生まれたのに、操作が複雑すぎると感じていました。これをあるべき姿にしようとしたのが企画の始まりです。それに加えて“ちょっとうれしい”という感覚を、機械で表現できないかと試行錯誤して作り上げた商品なんです。この商品がお客様のご家庭に入って、ちょっとうれしいなって思わせることができるかは、まだわかりません。これからです。ベストは尽くしました。

——バルミューダはものをつくりながら、その先に人を見ているわけですね?

寺尾:そうです。結局、全人類が欲しがるものは、素晴らしい人生なんだと思います。人生は体験の積み上げなので、そのひとつひとつの体験を少しでも素晴らしいものにすることが、メーカーができる最大の社会貢献だと思うんです。私が「ものよりこと」ではなく「ものより体験」と言っている理由は、“時間”という概念にあります。デザイン家電には美しさという“こと”が含まれていますが、その喜びは一瞬で、使ったときにどれだけうれしいか、驚くか。それには、時間が必要なんです。その時間軸の考え方が、私が「ものより体験」と言っている理由なんです。

 

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人生は短い。だからやりたいことをやれるのが幸せなんだと思います

——では、寺尾さんが想う、素晴らしい人生とは?

寺尾:人それぞれだと思いますけど、自分にとっては持てるエネルギーをすべて使って完全燃焼することですね。やりきるということが、私にとっての素晴らしい人生。とにかく燃え尽きたい。

——ミュージシャンとして活動していた頃は、燃え尽きることができなかったのでしょうか?

寺尾:燃え尽きるために必要なのは、やっぱり夢なんですね。やりたいことしか夢中になれないですし、夢中にならないと燃え尽きることはできないですよね。私は最後のバンドが解散したときに、もう自分にできることが残っていないと思ってしまった。つまり、その時点でやりきっていたんですね。夢が終わったと実感したんです。

——もう音楽への未練はないですか?

寺尾:自分がロックスターになろうとは、もうまったく思いません。今は、この会社こそがバンドであり、ひとつひとつの商品が歌なので。つまり、バルミューダがロックスターになればいいんです。世界中の人が、この会社が提供する商品に驚き、喜んでくださるというのが、私が目指しているバルミューダ像です。それは家電メーカーというよりも、ロックスターのイメージですね。

——創業当時はおもしろい商品を作っていたのに、企業規模が大きくなると身軽ではなくなり、迷走してしまう企業も少なくありません。バルミューダは現在社員90名の会社で、今後もますます成長していくことと思います。常におもしろい商品を開発していける企業であるためには、何が大切だと思いますか?

寺尾:今おっしゃった“迷走してしまった企業”とは、大きくなったからという理由だけではないと思います。創業者がいなくなったということも大きな要因じゃないでしょうか。例えば創業者は、会社がまだなかった時期を知っています。2代目や3代目、はたまた6代目の社長は、先代からバトンを引き継いだ時期から社長業が始まる。このバトンだけは死守しなければ、と思うのではないでしょうか。

それに創業者は、わざわざ創業しているので、何か理由があるわけですよね。他の人を喜ばせようという想いから起業に繋がっていくんだと思います。人の役に立ちたいと思って仕事をしている人と、会社を守っていくために仕事をしている人では、目的が違います。人間は人間のことが好き、それが社会基盤です。だから、人の役に立とうという魂が欠如したら、その会社は活躍することができなくなるかもしれません。

——バルミューダにはどんな未来が待っていると思いますか?

寺尾:100年後にはなくなっているかもしれません。繰り返しになりますが、会社は人の役に立つためにあり、続けるためにあるものではないと思います。すべてのものは有限です。永遠のものなんてないんだから、その事実をはっきりと認めたほうがいいと思います。どうやって終わるかわかりませんけれど、この会社はいつか必ず終わります。我が命もまたそう。それがわかっているから、存分に働けるうちに働き、世の中と驚かせる商品を開発していきます。

——最後に、今日もどこかで働いている読者にメッセージをお願いします。

寺尾:自分はやりたいことをやっているか?と自問自答することが大切だと思います。人生は短いです。もたもたしているうちに、引き返せない場所まで行ってしまうかもしれない。だから、やりたいことをやれるのが幸せなんだと思います。やりたいことじゃないと、夢中になって頑張ることはできませんから。

 

【プロフィール】

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バルミューダ 代表取締役 / 寺尾 玄
1973年生まれ。高校中退後、ヨーロッパを放浪。ブルース・スプリングスティーンに憧れ、帰国後に音楽活動を開始する。2001年のバンド解散後、ものづくりの道へ。下町の工場へ飛び込み、設計や製造に関するノウハウを頭と体に叩き込む。2003年、有限会社バルミューダデザイン設立。2011年4月に社名をバルミューダ株式会社へと変更する。近著「行こう、どこにもなかった方法で」(新潮社)

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『行こう、どこにもなかった方法で』
1728円/新潮社

 

取材・文=馬渕信彦、@Living編集部 撮影=真名子

 

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