超初心者が自炊する前に知っておくべき火加減・食材の切り方・分量の計り方など基本を一人暮らしアドバイザーが解説

一人暮らしは、自分らしい生活を楽しむ第一歩。新生活への期待に心が躍る一方で、初めての環境には不安や疑問がつきものです。この連載では、「一人暮らしの○○の基本」をテーマに、一人暮らしの衣食住にまつわるさまざまなヒントをジャンル別にまとめ、紹介していきます。

 

最初のテーマは「料理の基本」。自炊を始める前に準備すべき道具や調味料、食材の買い出しのコツを紹介した前編につづき、後編となる今回は、一人暮らしアドバイザーで料理家の河野真希さんに、いよいよ料理をするにあたって知っておきたい基礎知識について解説していただきます。

 

 

一人暮らしの自炊にまず必要なものは?絶対用意すべき調理器具・調味料と買い出しのコツ

 

料理をする際に
衛生面・安全面で気を付けたいこと

料理には食中毒や事故といった、さまざまなリスクが潜んでいます。安心・安全に自炊を楽しむためには、衛生面・安全面の管理を徹底することが重要です。料理を始める前に、事前に注意事項を確認しましょう。

 

1.清潔を心がけ、こまめに手洗い・消毒を

「食中毒予防の基本となるのが手洗いです。食材や道具類に触れる前に必ず手を洗い、雑菌をしっかり落としてから調理を始めましょう。調理中も生ものやスマホなどの雑菌の多いものに触れたときはその都度手を洗ってください。
使用した道具類は洗剤などを使って丁寧に洗浄し、よく乾かします。アルコール除菌スプレーを持っておくと、道具類や作業台なども手軽に殺菌消毒ができるのでおすすめです」(一人暮らしアドバイザー・料理家、河野真希さん、以下同)

 

2.食材の管理を徹底する

「冷蔵や冷凍が必要な食材を購入した際は、できるだけ早く帰宅してすぐに冷蔵室や冷凍室に入れましょう。とくに湿度や気温の高い時期は雑菌が増殖しやすいため、常温での放置は非常に危険です。
また、常温で保存できるものであっても、高温多湿を避け、日が当たらない通気性の良い場所に保管しましょう。開封・開栓した食材を開けっ放しのまま放置すると、虫が湧く原因になります。チャックや蓋をしっかり閉めて保存します」

 

3.刃物の扱いに気を付ける

「調理中は包丁やピーラーなど、刃物を使う工程も多くあります。刃物を使う際は、細心の注意を払ってください。包丁を適当な場所に放置すると、刃に触れてしまったり、落下してしまったりと大きな怪我に繋がります。包丁を置く際は安定した場所に、刃先を自分と反対の方向に向けて置くようにしてください」

 

4.調理中の火災に注意

「調理中、鍋やフライパンを火にかけているときに、インターホンが鳴るなど急ぎの対応に追われることも。その際、火を点けたままその場を離れてしまうと、火災の発生につながる恐れがあります。調理中は火のそばから離れないこと、コンロから離れるときはいったん火を止めることを徹底しましょう」

 

「また、コンロの周りには、燃えやすいものは置かないようにしてください。DIYでコンロ周りの壁紙を変える方もいると思いますが、なかには燃えやすい素材のものもあるため、耐火性のある壁紙を選びましょう。また、調理中に衣類の袖などから引火してしまう『着衣着火」にも注意が必要です。もこもこしたニット素材やフリース素材はとくに引火しやすいので、調理中はそのような素材を使用した衣類の着用は避けた方が良いでしょう」

 

まずはこれだけ!
食材の基本の切り方

食材の切り方は、素材の性質や調理法によってさまざまです。同じ食材でも、切り方次第で味や食感が大きく変化します。レシピによく登場する野菜の基本の切り方を、引き続き河野さんに教えていただきましょう。

 

・千切り

 

野菜を1mm程度の幅で細かくカットします。とくに千切りキャベツはサラダにしたり、市販の惣菜の付け合わせとして添えたりするだけで、手軽に野菜を摂取できます。

 

「キャベツの場合は外側から葉を2~3枚はがし、繊維が横向きになるように重ねて巻いて、端から細かく切っていきます。繊維を断ち切るように切ることで、ふわふわとした柔らかい口当たりになります」

 

・乱切り

 

にんじんやごぼうなど、細長い棒状の野菜をくるくると回しながら不規則な形にカットします。カレーやシチュー、肉じゃがなど、煮込み料理に適しています。

 

「切り口が増えることで火が通りやすく、味が染み込みやすくなります。形は一つひとつ異なりますが、大きさはなるべく揃えましょう」

 

・いちょう切り

 

大根やにんじん、れんこんなど、円柱状や球状の野菜を、いちょうの葉のような形にカットします。豚汁などの汁物や、炊き込みご飯などにも使われる万能な切り方です。

 

「皮をむいたら縦半分に割り、かまぼこのような半月型にしたら、切り口を下にして置きます。それをさらに縦半分に割り、端から一定の厚さでカットしていきます。厚さは作る料理に合わせて調整してください」

 

・くし形切り

 

トマトや玉ねぎ、じゃがいもなど球状の野菜を、櫛(くし)のような形にカットします。中央から放射線状になるように切っていくイメージです。サラダに添えるトマトや、フライドポテトなどにも適しています。

 

「まず縦半分にカットしたら、切り口を上にして半分に切り、さらに半分に切ります。トマトの場合、縦半分にカットしたらV字に切れ込みを入れてヘタを取り、同じように切っていきます」

 

大さじ、小さじ、カップ……
分量の計り方いろいろ

料理初心者であれば、最初はレシピ通りに作ることを心がけましょう。とくに調味料の分量は、料理の味を大きく左右する大事なポイント。レシピに書かれた手順や分量を守って調理することで、失敗も少なくなります。

 

調味料を計る際は、計量スプーンや計量カップを使ってきちんと計るようにしましょう。慣れてくると、目分量でも料理が作れるようになります。

 

計量スプーンを使った計量方法

計量スプーンには大さじと小さじの2種類があります。大さじは15ml(cc)、小さじは5ml(cc)なので、大さじ1杯=小さじ3杯分と覚えておくと、どちらかしか手元にない場合でも計量が可能です。

 

・液体の場合

「醤油やみりんなどの液体を計る際は、計量スプーンを水平に持ち、表面張力で盛り上がるくらいまで液体を入れます。半量(1/2杯)を計る場合は、スプーンの7分目程度の深さまでが目安です」

 

・粉末の場合

「砂糖や塩などの粉末を計る際は、粉末を山盛りにすくい上げ、箸や他のスプーンの柄などを使ってフチに沿うように粉末を落とし、表面を平らにします。このような状態を『すりきり』といいます。半量(1/2杯)を計る場合は、すりきりの状態から半分に区切り、印をつけたところまで半量をかき出します」

 

計量カップを使った計量方法

「レシピには『1カップ』と書かれていることがあるので、1カップ=200ml(cc)と覚えておきましょう。平らな場所に計量カップを置き、目盛りを見て量を調節します。粉末の場合は、トントンと打ちつけながら平らにならして目盛りに合わせます」

 

なお、米を計量する場合は、1カップの容量が異なるため注意が必要です。

 

「米は1カップ(1合)=180ml(cc)です。通常の1カップの量と混同してしまうと、炊飯時に水量が合わず、炊き方にムラができてしまうので、計量カップを使用する際は注意が必要です。米を計る際は炊飯器付属のものなど、なるべく米専用の計量カップを使うようにしましょう」

 

料理によって使い分けよう
火加減の違いをチェック

分量と同様に、料理の出来栄えのカギを握るのが火加減。火加減の調節をおろそかにしてしまうと、食材が焦げてしまったり、反対に生焼けになってしまったりと、失敗の原因につながるため、こまめに調節する必要があります。

 

基本的には、レシピに書いてある通りに調節しましょう。ガスコンロの場合、火力はコンロの火の先端で見分けることができます。

 

・強火

「火が鍋底の全体をなめるように広がっている状態です。火の先端が鍋底からはみ出ないよう、サイズに応じて調節しましょう。サッと焼き目をつけたいときや、お湯を沸かすときなどに使います」

 

・中火

「火の先端が鍋底に少し触れる程度の状態で、煮る・焼く・茹でる・揚げるなど幅広い調理に適しています。レシピで火加減が指定されていないときは、中火に設定しておくと良いでしょう」

 

・弱火

「鍋底に火の先端が当たらない程度の火力で、中心部分のみを熱している状態です。火力が弱いので、中身が吹きこぼれることがありません。長時間じっくりと煮込みたいときなどに適しています」

 

無理なく自炊を続けていくには?

料理の土台となる基本知識を理解したら、気に入ったレシピなどを参考にしながら料理に挑戦してみましょう。初めは簡単な料理から始めて、少しずつレパートリーを増やしていきます。

 

前編でもお伝えしたように、河野さんのおすすめは「ご飯と汁物、おかず一品の一汁一菜スタイル」。よりバランスの良い食生活を送るために、汁物やおかずには、一人暮らしで不足しがちな野菜を意識的に取り入れると良いでしょう。

 

とはいえ、日々の忙しさや献立を考える煩わしさで、時には”自炊疲れ“に陥ってしまうことも。節約や健康を意識して自炊に取り組むのは良いことですが、初めからフルスロットルで頑張りすぎた結果、早々に挫折してしまっては元も子もありません。河野さんによると、自炊を続ける上でもっとも大切なのはやはり「無理をしないこと」だそう。

 

「最初は、毎日ご飯を炊くだけでも十分です。料理を始めたばかりのときや、作る気力がないときは、レトルト食品や冷凍食品、お惣菜に頼っても大丈夫。週末など余裕のある日だけ料理をしてみるのも良いと思います。継続していくことが大事なので、ハードルを高く設定せず、できることから一歩ずつ始めてみてください」

 

自炊継続のコツは、頑張りすぎず、自分のペースで楽しみながら料理をすること。程よく手を抜きながら少しずつ習慣化して、楽しく健康的な自炊ライフを送りましょう。

 

一人暮らしの自炊にまず必要なものは?絶対用意すべき調理器具・調味料と買い出しのコツ

 

 

Profile

一人暮らしアドバイザー・料理家 / 河野真希

自らの一人暮らし体験を元に取材や研究を重ね、2001年からWebを中心に各種メディアで暮らしに関する情報を発信。料理や家事、インテリアなど、気持ちのいい暮らしを作る、始めるためのライフスタイル提案を行う。『ひとり暮らしで知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)、『きほんから新発想まで 家事ずかん750』(朝日新聞出版)ほか、執筆や監修本多数。流行や思い込みにとらわれずに、無理なく持続可能で快適な、自分らしい暮らしづくりを応援している。2016年4月からは『料理教室つづくらす食堂』も主宰。
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料理人・笠原将弘が教える“焼き飯”の失敗しない炒め方

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

最終回は、サッと炒めるだけの一品豪華主義、旨みと酸味のバランスがクセになる「たこしば漬け焼きめし」を解説いただきます。

 

料理人・笠原将弘が教える「豚汁」の作り方…最小限の食材で豚肉の旨みを引き出す極意とは?

 

たこの旨みと漬物の酸味が絶妙
「たこしば漬け焼きめし」のつくり方

 

しば漬けのチャーハンやたこめしからインスピレーションを得て考案されたレシピ。

 

「いままでの料理人としての経験や勘から、この組み合わせはおいしいだろうな」と、つくる前からピンときていたそう。

 

かむほどに口に広がるたこの旨みと、しば漬けのさっぱりとした酸味で、いくらでも箸が進みます。たこは炊き込むと固くなりがちなので、チャーハンのようにサッと炒めるのがおいしくできるコツだとか。

 

【材料(2人分)】
・あたたかいごはん……500g
・卵……2個
・ゆでだこの足……1本
・しば漬け……50g
・ねぎのみじん切り……1/4本分
・サラダ油……大さじ2
・塩、こしょう……各少々
・青じそのせん切り……5枚分

 

【作り方】
1.たこは薄切りにして一口大に切り、しば漬けはみじん切りにする。卵はときほぐす。

 

2.フライパンにサラダ油を中火で熱し、とき卵を流し入れて広げる。半熟のうちにごはんをのせ、へらで卵をからめながら細かく切るようにしてほぐして焼く。

 

3.たこ、しば漬けを加えて炒め合わせ、塩、こしょうを加えてさっとまぜる。ねぎを加えてさっといため合わせ、器に盛って青じそを散らす。

 

 

以上の「たこしば漬け焼きめし」レシピのベースとなるのが、卵とねぎと温かいごはんでつくる焼きめしです。笠原将弘さん著『汁とめし』には、ベースの焼きめしのつくり方や具をプラスしてアレンジを加えた焼きめしレシピがたくさん。そのほか、汁物レシピはもちろん、出汁の取り方やお米のおいしい炊き方も分かりやすく載っているので、ぜひチェックしてみてください。

 

笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

 

Profile

料理人 / 笠原将弘

1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
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料理人・笠原将弘が教える「豚汁」の作り方…最小限の食材で豚肉の旨みを引き出す極意とは?

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

第2回は、笠原さんもお気に入りだという汁物「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」のレシピを解説いただきました。

 

料理人・笠原将弘が解説する出汁(だし)の取り方とは?…日常の和食“汁とめし”レシピ

 

3種の具材だけで旨みたっぷり!
「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」のつくり方

「豚肉の旨みたっぷりの豚汁と白米があれば、それだけで立派な食事になると思いませんか?」

 

汁物のなかでも豚汁が大好物だという笠原さん。以前、新潟で食べた豚汁有名店の味を笠原さん流に再現したのがこのレシピだそう。にんじんやごぼうなどの根菜は一切入っていない代わりに、玉ねぎがたっぷりで、優しい甘さに心もほぐれるよう。使う材料が少ない分、買い出しや調理が楽なのもうれしいですね。

 

【材料(2人分)】
・豚バラ薄切り肉……150g
・玉ねぎ……2個
・木綿どうふ……1丁
・出汁……300ml

 

A
・みそ……大さじ2
・白みそ……大さじ1

 

【作り方】
1.玉ねぎは縦薄切りにする。とうふは半分に切って1cm厚さに切る。豚肉は5cm長さに切る。

 

2.鍋に出汁、豚肉を入れて中火にかけ、肉をほぐしながら煮る。煮立ったらアクをしっかり除き、弱火にしてAをとき入れる。玉ねぎを広げて加え、とうふをあまり重ならないように並べ、ふたをして弱火のまま30分ほど煮る。

 

「玉ねぎのうまみと水分を引き出すためにも弱火で長めに煮るのがポイントです」

 

3、とうふをくずさないようにしながら全体をまぜ合わせる。

 

「豚肉や煮汁が隠れるほど玉ねぎがたっぷりのレシピです。煮汁が蒸発しないようにふたはぴったりと閉めましょう」

 

 

以上の豚汁のつくり方をはじめ、お米のおいしい炊き方や、見たら必ずつくりたくなるおいしい一汁一飯レシピは、笠原将弘さん著『汁とめし』にまとめられています。豚汁レシピはほかにも2種類あるのでぜひ、チェックしてみてください。

 

笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

次回は、笠原さんがレシピを考案する時点で「これは絶対旨い」と確信したという「たこしば漬け焼きめし」を紹介します。

 

 

Profile

料理人 / 笠原将弘
1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
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焼き魚はフライパンで10分!干物・切り身・一尾の間違いない焼き方を料理人が解説

魚は良質なたんぱく質源であるうえに、魚の油には体内では作ることができないDHAやEPAが含まれ、生活習慣病の予防効果も期待できます。そのためたんぱく質源は肉に偏るのではなく、積極的に魚の割合を増やすことが良いとされています。ところが調理するとなると、「煙や臭いが気になる」「後片付けが大変」などの理由で、敬遠されがち。魚を自宅でもっと気軽に、おいしく食べるにはどうしたらいいでしょうか?

 

長年日本料理店で日本料理を学び、現在はシェアダインで、プロの日本料理人として、多くの家庭に日本料理をふるまう、日本料理人・ジョージさんに、手軽に魚をおいしく食べる方法について教えていただきました。

 

手軽に焼き魚にチャレンジするにはフライパン一択!

日本人の肉の消費量は、2010年を境に魚介類の消費量を上回っています。このことからも、料理のメインが肉に偏りがちであることが窺えます。魚を上手に摂取するにはどうしたらいいでしょうか?

 

「旬の魚を、“焼き魚”で食べる方法がおすすめです。つまり、塩で焼いて食べるシンプルな料理です。魚を焼く方法は、魚焼きグリル、オーブン、フライパンなど、さまざまありますが、まずは手軽なフライパン調理がおすすめです。フライパンは魚焼きグリルなどの他の調理方法と違って、“目で見ながらの料理”ができるので、失敗しづらいのもポイントです」(日本料理人・ジョージさん、以下同)

 

魚焼きグリル、オーブン、フライパン…
調理方法はどれが正解?

「魚を加熱する方法は、全部で3つあります。魚焼きグリルなどの直火を使って焼く輻射熱、フライパンなどに熱を伝えて焼く伝導熱、煮たり、蒸したり、オーブンのように空気や水分を温めて熱を伝える対流熱です。魚焼きグリルを使えば、高温で短時間で調理ができるため、中はふっくら、皮はパリッと仕上げることができます。しかし、臭いや煙がしたり、網を洗ったりと掃除に手間がかかり、ハードルの高い調理方法でもあります。オーブンは、魚焼きグリルの高温調理に比べ、200度台と低いため、焼き上げるまでに時間がかかり、旨みや水分が抜け出やすいという心配があります。じっくりと火を通して行くため、大きな魚や、野菜などと一緒に焼く料理に適しています。フッ素加工のフライパンなら、魚焼きグリルで付ける立体的な焼き目には少々劣りますが、油を使用せずに、塩だけで、ふっくらジューシーな焼き魚を焼くことができます」

 

フライパン(伝導熱)
メリット……焦げにくい。魚の状態を見ながら、調理できるため失敗が少ない。片付けが楽。火が脂に直接当たらないため、煙が出にくい。
デメリット……両面を焼くために途中で返さなくてはならないため、返す際に皮や身が崩れる心配がある。魚焼きグリルの立体的な焼き目に比べると、鉄の板で押さえつけられたような平面的な焼き目になりやすい。

 

魚焼きグリル(輻射熱)
メリット……直火のため、高温調理が可能。短時間で表面に焼き目を付け、旨みを閉じ込める。皮がパリッと仕上がる。
デメリット……魚の脂に火がかかると煙が出るため、臭いや煙が発生しやすい。調理が見えないため、焦げやすい。

 

オーブン(輻射熱、伝導熱、対流熱の三種)
メリット……庫内の温度を高くし、じっくり火を通して行くので、大きい1尾の魚料理や、野菜などと一緒に火を通す料理に適している。
デメリット……時間をかけて調理するため、旨みや水分が抜けやすい。適度な焼き色が付きにくい。調理が見えないため、調整しにくい。

 

料理道具研究家が愛用する料理の厳選7つ道具と便利グッズ

 

焼き魚におすすめの魚や選び方のポイントは?

続いて、焼き魚にはそもそもどのような魚が適しているのでしょうか?

 

「これまでで一番感動したのは、“かます”の焼き魚です。私は宮城県出身で、さんまを昔からよく食べて来ました。もちろん、さんまもおいしいのですが、初めて関西で食べた旬のかますの焼き魚のおいしさは忘れられません。上品な味わいをとても鮮明に覚えています。また、ブリカマの焼き魚もおすすめです。焼くことで余分な脂が落ちたときのおいしさは格別。塩焼きは、魚をもっともシンプルにいただく方法なので、魚の味をしっかりと味わえます。ぜひ、鮮魚店に行って、そのときどきの旬のおいしさを試してもらいたいです」

 

 

続いて、魚の選び方について教えてください。

 

「焼き魚には、切り身より1尾を丸ごと焼くのがおすすめです。切ることで酸化しますし、加熱される表面積が増えるので水分を失う機会が増えてしまうためです。
しかし、ブリや鮭のように丸のまま焼くには大きすぎる魚は切り身を選ぶ方が多いでしょう。基本的には頭に近い部分が脂が乗っておいしいと言われています。例えばブリならば、黒い皮の背側の背身、白い皮の腹側の腹身と、部位別に売られています。背身は肉質が引き締まりさっぱりとした印象、腹身は脂が乗っていています。一方で、鰆(さわら)はしっぽ側がおいしいと言われています。魚の種類や、好みによって味は異なるので、ぜひさまざまな部位を食べてみて欲しいですね」

 

臭みの原因を取り除く!
おいしさを逃さず臭いを抑えるコツ

 

魚の臭いをおさえるコツはあるのでしょうか?

 

「魚の臭みの原因のひとつは、魚に含まれるトリメチルアミンという成分です。水溶性のため、あて塩をすることで、水分とともに臭みを引き出し取り除くことができます。また、血も臭みの原因になります。魚をさばいた後は、えらや内臓、血をよく取り除きましょう。切り身の魚は、洗うと旨みが落ちるので、洗わず血などがついている場合は、軽くふきとるなど、事前の処理が肝心です。熱湯をかけて余分な臭みや脂を流すことを“霜降り”と言いますが、気になる方は焼く前にこれをするだけで、グッと臭いを軽減できます」

 

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「鯛(タイ)」のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

フッ素加工タイプなら油も不要!
フライパンで焼き魚をおいしく焼くコツ

魚をフライパンで焼くなら、フッ素加工などのくっつきにくいフライパンがおすすめです。フッ素加工のフライパンを使えば、油も酒も一切不要。塩のみで焼き魚を調理できます。1尾なら約10分ほどで、切り身なら10分かからずに焼くことができます。

 

・余熱調理でふっくら「干物」の焼き方

「干物は、水分が抜け旨みが凝縮されているとともに、臭いが気になりやすい魚でもあります。焦げ付きは臭いの原因となるので、焼きあげる最後は、蓋をして水分を逃がさないように、余熱調理するとよいでしょう」

 

【材料(1人分)】

・干物……1枚

 

【焼き方】
1.フライパンを中火で熱し、盛り付ける側を下に、4~5分焼く。

「初めに、フライパンに焼かれる側の方がきれいに焼き目がつくので、盛り付ける表側を下にして焼きます」

 

2.腹側の身の薄い部分が、半分ほど白くなってきたら、裏返し3~4分焼く。

「皮の下から段々と白くなるのが見えます。身の薄い部分、全体の5割程度が白くなったら、裏返してOKのサインです」

 

3.9割ほど火が通ったら、アルミホイルや蓋で蓋をして、火を消し1分ほどおく。

「干物は、既に水分が抜けているので、火を入れすぎてしまうと固くなってしまいます。最後の火入れで、水分が抜きすぎてしまわないよう蓋をし、余熱調理で仕上げます」

 

4.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「皮側を初めに焼いているので、皮もパリッとおいしく召し上がれます。そのまま、皮も食べると良いでしょう。花のような形をしたふきのとうの天ぷらは、黄緑色がとても鮮やか。独特な香りと苦みが特徴で、春の訪れを感じさせてくれます」

 

・触らず、ほうっておくだけ「切り身」の焼き方

「切り身は、切り口の面積が多いため、そこから水分や旨みが抜けでてしまいやすいです。しっかりと焼けているか気になって、動かしたり裏返したり、触ってしまいがちですが、裏返すタイミングが来るまで、触らずにほうっておくのがベストです」

 

【材料(1人分)】

・鯖……1枚
・塩……1g

 

【下ごしらえ】
半身を買って来た場合は、骨の近くに包丁を入れ、背骨と中骨を取り除き、魚の切り口が見えるよう斜めに包丁を入れ、切り分ける。

 

「魚を半身のまま購入した場合、切り分ける時のコツは、盛り付けたときに切り口が綺麗に見えるよう、皮に対して斜めに切りましょう。料理は目でも味わうため、盛り付けたときの見栄えも意識することが大切です」

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分置く。

「あて塩をすることで、余分な水分とともに魚の臭みを表面に浮き出させます。塩は、精製塩よりも自然塩がおすすめ。塩以外のにがり成分にも、臭みを吸着する効果があるためです」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる。

「滲み出た水分をしっかりふき取ることで、臭みの原因を除去します」

 

3.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、3~4分焼く。

「切り身は、骨が無いものが多く崩れやすいので、触らないことが鉄則です。フライパンは、中火であれば焦げ付くことはほとんどないため、火が通るのを慌てず待ちましょう」

 

4.フライパンに当たっている身の部分の約半分ほどが白くなったらうら返す。

「火が通ってくると赤い身の部分にも脂が浮き、テカテカしてきます」

 

5.2~3分ほど焼いたら、アルミホイルや蓋でふたをし、火を止めて1分ほど余熱調理をする。

「最後は干物と同じく、熱の入れすぎで余計に水分を奪ってしまわないよう、余熱調理でじんわり火を通します」

 

6.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「大根おろしと、細かくきざんだ金環を和えたおろし和えを山高に盛り付け、切り身をのせることで立体的に盛り付けました。おろし和えに味付けはしていません。みょうがは、そのままでは苦いので、軽く茹でてだし酢に漬けています」

 

丸のままも、約10分で焼ける!「一尾」の焼き方

「鯵の旬は夏ですが、一年中出回る魚です。丸のまま焼くのに適したサイズのため、ぜひ一尾で焼いてみましょう。フッ素加工が施されたフライパンを使えば、油も必要ありません。調味料も塩のみで手軽に焼くことができます。魚屋には、旬の魚が一尾のまま売られています。ぜひ旬の魚の丸焼きにも挑戦してみましょう」

 

【材料・1人分】

・鯵……1尾
・塩……3g

 

【下ごしらえ】
内臓とぜいごを取り除きます。血が臭みの原因となるため、よく洗い流します。

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分おく。

「鯖と同様に、魚の臭みをとるため、しっかりとあて塩をします」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる

 

3.魚の内臓にも、塩をします。

「味付けのための塩をします」

 

4.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、5~6分焼く。

「表面にあるたんぱく質を焼いて固めることで、旨みや水分を守ります。フライパンがしっかり温まったかを確認してから、魚を入れましょう。フライパンの上に、手をあて温かさを感じればOKです」

 

5.魚を立てて、フライパン側の魚の目が白くなっていたら裏返し、さらに3~4分焼く。

「一尾は身が見えないため、魚の目を見ることで火が通っているかを判断するとよいでしょう。その他、焼き始めは、水分が多いためジュ―ッと水分が蒸発した音が聞こえるのですが、焼きを進めていくと、そういった音も静かになります。音に注目するのもひとつの手です」

 

6.アルミホイルやふたなどで蓋をし、火を止めて、1分ほど余熱調理をする

「中火のまま焼き上げてしまうと、水分が抜けすぎて、固くなってしまう場合があります。そのため、9割ぐらい火が通ったら、残りの1割は余熱調理に切り替えます。じんわり火を通すことで、しっとり仕上げられます」

 

7.皿に盛り付け、好みであしらいを添える

「魚は、頭を左に向くように盛り付けるのが一般的です。その他のあしらいは、どのように添えれば、メインである魚が引き立つかを考えて盛り付けるとよいでしょう。おろし合えは山高に盛り付けると、高低差が出て品よく見えます」

 

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見た目にも華やか、消化を助け栄養価もアップする
“あしらい”とは?

「焼き魚を焼いたら、ぜひ添えて欲しいのが“あしらい”です。焼き魚だけだと、全体が茶色っぽく、地味に見えてしまいますが、旬の野菜を使った“あしらい”一つで、料理の味や香り、見た目がグッと引き立ちます。特におすすめなのが、酸味のあるトマトや柑橘に、大根おろしを和えたもの。味付けの必要はありません。大根には消化酵素が含まれており、魚の消化を助けてくれる役割があります。また、臭みは酸によって中和されるため、魚の臭みを消す効果も。焼いて凝縮された魚の旨みに、大根おろしのさっぱり感と柑橘の酸味が加われば、より箸が進むことでしょう」

 

調理中の煙や臭いを除去!
煙や臭いを抑える「マルチロースター」

象印マホービン
『マルチロースター』(EF-WA30)

 

煙や臭いを抑える「高性能触媒フィルター」を搭載した象印の「マルチロースター」は、魚はもちろんのこと、肉や野菜など、多彩なグリル料理を楽しめる商品です。
ワイドな庫内では、35cmのサンマを3尾丸ごと焼くことができ、上下に設置されたヒーターで熱を加えることができるため、裏返す手間も不要。誰でも簡単に、皮はパリッと、中はふんわりとした焼き魚に焼き上げます。蓋や網などの取り外しも簡単で、部品の丸洗いも可能。臭いや煙を気にせず調理したい人におすすめの家電です。

 

 

旬の魚は脂が乗り、シンプルに塩焼きにするだけで絶品だというジョージさん。さらに、あしらいを添えれば、焼いただけとは思えないほど、華やかな食卓を演出してくれるとお話ししてくれました。魚屋さんに足を運んで、旬の魚を選ぶのも楽しいものです。手軽なフライパン調理で、ぜひ焼き魚のシンプルなおいしさを味わってみてください。

 

 

Profile

日本料理人 / ジョージ
日本最大級の出張シェフサービス「シェアダイン」で、日本料理を提供する日本料理のシェフ。お客様から約1000もの高評価をいただく人気シェフでもある。懐石料理、割烹、ミシュラン星付き店にて、技術を研鑽。日本料理を継承し、おいしさを広める活動を行っている。得意料理は、日本料理、あんこ料理。
シェアダイン HP

料理人・笠原将弘が解説する出汁(だし)の取り方とは?…日常の和食“汁とめし”レシピ

和食は出汁(だし)をとったりと準備が大変そうだし、味つけも繊細でむずかしそう……と感じるでしょうか? そもそも和食は、日本古来の日常食。気負わず、「ごはん」と「汁物」のシンプルな組み合わせで楽しむ、一汁一飯(いちじゅういっぱん)の魅力を見直してみましょう。

 

恵比寿で日本料理店「賛否両論」を営む、料理人の笠原将弘さんが提案する一汁一飯のレシピ『汁とめし』は、冷蔵庫の残り物など身近な食材で簡単につくれて、しかもおいしいと話題。今回は、笠原さん直伝の『汁とめし』レシピ3種を短期集中連載でお届けします。

 

第1回は、汁物の基本中の基本である、出汁の取り方を解説いただきます。

 

料理人・笠原将弘が“一汁一飯”を説く!おいしく負担なく、調理を楽しくする日常的な和食の真髄とは

 

正しい和食の味をもっと身近なものに

食事になくてはならないのが、ごはんの味を引き出したり、ときにはおかずのような役割で主役を張ったりもする汁物です。笠原さんは、「ちょっと工夫するだけで“汁”は驚くほどおいしくなる」と語ります。

 

「料理というのは、手間をかけた分だけおいしくなるものだと思っています。でも、忙しい日々を送る方々に、一方的に毎日これやれあれやれとは言いたくありません。一昔前ならいざ知らず、いまは顆粒出汁が便利な時代ですし。ただ、日本人として正しい順序でとった出汁の味っていうのを知っておくのは大事だと思うんです。手間をかけずにおいしくつくる方法はたくさんありますよ」(料理人・笠原将弘さん)

 

笠原さん流の、家庭でも気軽に取り組める出汁の取り方とは?

 

ほうっておくだけでできる!
おいしい出汁の取り方

「お吸い物はこぶと削りがつおでとった一番出汁を使うのをおすすめしていますが、みそ汁に代表される日々の汁物の出汁は、もっと気軽に考えてもらいたいと思っています」

 

そういう笠原さんが考える“家庭の汁物の出汁は、「なべに水600ml、こぶ10g、煮干し10gを入れて30分ほどおうっておくだけ」だそう。この30分間とは?

 

「こぶや煮干しからうまみを引き出すための時間です。これが長ければうまみをもっと抽出できるので、一晩おいてもいいくらいです。その場合は冷蔵室に入れておけば、暑い季節でも安心です」

 

作るとなったら、火にかけるだけ。これなら、毎日続けられそうです。

 

【材料(2〜3人分)】

・水……600cc程度(直径約20cmのなべでちょうどいい水量)
・こぶ(出汁用)……10g
・煮干し……10g

 

【作り方】
1.鍋に水、こぶ、煮干しを入れ、30分ほどおく。(冷蔵庫に一晩おくとなおよい)

 

2.中火にかけて、ふつふつとしてきたら弱火にし、煮立てないようにして10分ほど煮て、火を止める。その後、時間があれば20分ほどおくと、こぶのうまみがより抽出される。こぶと煮干しをとり出す。

とり出したこぶは細長く切って、そのまま汁の具として食べても。そのほかうまみを足すイメージで煮物やいため物の具にするとよい。佃煮にしてもおいしい。

 

時間がないときは市販の出汁でもいい

「ほうっておく時間がとれないときは、すぐに使える粉末の出汁のもとや出汁パックを使っても大丈夫。その場合は貝類や野菜などの旨味が出やすい具と組み合わせるのがオススメです」

 

以上の出汁の取り方をはじめ、お米のおいしい炊き方や、見たら必ずつくりたくなるおいしい一汁一飯レシピは、笠原将弘さん著『汁とめし』にまとめられています。これも和食!? とときに驚くようなレシピも。和食をもっと身近に感じられるアイデアレシピを、チェックしてみてください。

 


笠原将弘『和食屋が教える、旨すぎる一汁一飯 汁とめし』(主婦の友社)
冷蔵庫の残り物で作れ、シンプルなのに満足できる___頑張らないでもしみじみとおいしい、笠原流・究極2品献立という提案の書。予約の取れない日本料理店「賛否両論」店主が、いま提案する献立こそ「汁とめし」なのです。食材の組み合わせや作りやすさを極めた、汁物とごはん物の厳選レシピ、計84品を収録。

 

次回は、数ある汁物レシピの中でも笠原さんが気に入っている「くたくた玉ねぎととうふの豚汁」を紹介します。

 

Profile

料理人 / 笠原将弘
1972年、東京都生まれ。高校卒業後「正月屋吉兆」で9年間修業したのち、父の死をきっかけに武蔵小山にある実家の焼き鳥店「とり将」を継ぐ。2004年、東京・恵比寿に「賛否両論」をオープンし、予約のとれない人気店として話題になる。2013年には名古屋に直営店をオープン。テレビ番組のレギュラー出演をはじめ、雑誌連載、料理教室など幅広く活躍する。2023年6月にはYouTubeチャンネル『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を開設。流暢な語り口で調理のコツを惜しみなく解説し、チャンネル登録者数は56万人超。
「賛否両論」HP
YouTube

 

トングやレードルから絞り器まで、鍋料理を快適にする進化した“鍋”グッズ12選

寒さが増し、おでんや寄せ鍋など“鍋”がおいしい季節になりました。友人や親族を家に招いて楽しむ予定もあるでしょう。そんなときは、スマートにサーブしたり楽しく鍋を囲めるようにおもてなししたいもの。

 

そんなニーズを汲むように、保温性の高い鍋や使い勝手のいいトングなど、工夫を凝らした調理グッズの進化は止まりません。鍋料理を快適にしてくれる、便利で見た目も美しいキッチン用品を、生活雑貨に詳しいフリーライターの納富廉邦さんに紹介していただきました。

楽しみ方さまざま!
鍋料理のトレンドは?

「最近は鍋料理の種類が豊富になり、より自由度が増してきたことを実感します。SNSではさまざまな鍋料理が紹介され、和風、洋風、エスニック風、また創作に富んだオリジナルレシピなど多種多様な鍋料理を、みなさん楽しんでいますね。
ひと昔前のように『キムチ鍋』や『豆乳鍋』といった分かりやすいものではなく、自己流にアレンジした多彩な鍋料理が多く存在しています」(ライター・納富廉邦さん、以下同)

 

と、まずは鍋料理のトレンドを教えていただきました。

 

・薬味や調味料にこだわる
「大根おろしや柑橘類など、薬味を入れて楽しむ鍋料理や、こだわりの柚子胡椒や七味唐辛子などの調味料を効かせた鍋料理が多く見られるようになりました」

 

・市販の鍋の素が豊富になった
「手軽においしい鍋が楽しめる市販の鍋つゆのバリエーションが増えました。これによって圧倒的に鍋料理がしやすくなったのは言うまでもありません。定番のスープから変わり種の味まで、さまざまな味が揃っているので頻繁に鍋料理をしても飽きることなく食べることができます」

 

・アンテナショップでご当地鍋を楽しむ
「都心部では全国の食材が揃うアンテナショップが多く存在し、ご当地の絶品鍋料理を自宅でも楽しめるようになりました。また、その土地ならではの食材を活かした調味料も手に入るので、新しい発見があるのも魅力的です」

 

・具材は数種類とシンプルにする
「スープや薬味、スパイスが充実してきたこともあり、さまざまな種類の野菜をたくさん入れるスタイルから、お肉と野菜を2〜3種類に厳選したシンプルな鍋料理が主流になっています」

 

・鍋料理は家庭で楽しむ料理に
「新型コロナウイルスの流行で、複数人で鍋を囲むことは随分と減ってきました。さらに外食費の高騰もあり、今後、鍋料理は外食ではなく、家庭で楽しむ料理となっていくと思います」

 

進化するおでん…料理家おすすめのタネ10選と基本のだしからカレーチーズおでん、串おでんまでレシピ3種

 

鍋から箸まで!
鍋料理を快適にするキッチン用品12選

鍋料理のトレンドに合わせて、キッチン用品にも変化が見られるそう。

 

「使う前に米を入れて煮込む『目止め』をする必要のない土鍋など、手入れしやすい鍋が出てきています。また、おたまやトングなども使いやすい形状にデザインされていたりと、一見、マイナーチェンジに見えますが、実際に使ってみるとその効果を実感することが多くあります。
とくに私が実感しているのは、『鍋にはトングが便利』ということです。菜箸でも事足りますが、トングを使ってみると、その使い勝手の良さを手放すことはできません。最近のトングは先端が食材を掴みやすくなっており、力を入れなくても自在に挟むことができます。ぜひ一度試してもらいたいですね」

 

ここからは、納富さんが実際に使って効果を実感したキッチン用品を紹介していただきましょう。

1.遠赤外線で食材にしっかりと熱を伝える「鍋」

旭工業「Sumi Nabe」
6万6,000円(税込)

 

カーボングラファイトでできており、遠赤外線による調理が可能な鍋です。食材に均一に、かつ速やかに熱を伝えることにより、食材の旨みをぎゅっと凝縮します。鍋料理として「煮る」ほか、ステーキなどの「焼く」料理にも効果を発揮します。

 

「すべてが炭でできているので、土鍋よりもはるかに遠赤外線効果が高い名品です。この鍋で煮込めば高価なお肉でなくとも、なかがほろっとして柔らかく美味しい仕上がりになります。鍋以外の調理でも活躍するので、我が家では週に3回くらいは使用しています。半永久的に使えるので、我が家でも一生モノのアイテムとして重宝しています」

 

2.手にしっくりと馴染むトング

conte「おてがる薬味トング」
13cm 1,430円/15cm 1,650円(ともに税込)

 

薬味の入っているクチの細い瓶に使うことを想定して作られたこちらのトングは、先端が細くなっていて薬味を掴みやすいのが特徴です。力を入れなくても食材を挟むことができるので、まるで自分の手の代わりのように扱うことができます。

 

「私は13cmと15cmの両方のサイズを使っています。どちらのサイズもあった方が便利ですが、どちらか一つであれば、15cmのものをおすすめします。先端が細くなっているので、薬味のような細い瓶にも入れやすいトングです。鍋料理以外でも、サラダを取り分けるシーンなど、食卓に置いてあるだけで何かと活躍してくれます。サッと手に取れて、テーブルに置いてあっても邪魔にならない小ぶりのサイズ感は使い勝手が抜群です」

 

3.スープをすくいやすいレードル

ichibishi「すくいやすく注ぎやすいレードル」
2,090円(税込)

 

すくう部分がカーブを描く三角形になっているので、鍋底のカーブに添いやすく、食材のすくいやすさが抜群です。また、お椀にスープを入れたいときは、注ぎぐちが狭まっているため、液だれしにくい点もポイントです。左右対象なので、利き手を選びません。

 

「鍋のなかの具材をすくうためには先端は平たいことがとても大切なんですよね。持ち手の長さも通常のレードルより短く設計されていて、とても使いやすいです。円形のおたまが使いにくいと感じたことのある方にぜひ試してもらいたいです」

 

4.多様な働きをしてくれるスプーン

Three Snow「新越ワークス/クックスプーン」
1,210円(税込)

 

おたまとヘラのいいとこ取りのような万能スプーン。これ一つで、炒める、煮る、すくうができるので、洗い物を少なくすることができます。また、先端がナイロン樹脂になっているので、鍋の表面を傷つける心配が入りません。

 

「持ち手が23.5cmと通常のおたまより短く、カトラリーのスプーンと同じように手軽に扱うことができます。おでんの卵をすくいたいときにも、汁をよそわずに、卵だけをお椀に移すことができます。使ってみると、使い勝手の良さを心から実感できると思います」

 

5.グッドデザインなステンレスのレンゲ

ヨシタ手工業デザイン室「racco レンゲスプーン」
1,100円(税込)

 

レンゲスプーンの先端は普通のスプーンよりも広いですが、ボウル部が浅いため口を大きく開けることなく、食材をたっぷりのせて口に運ぶことができます。また、大皿料理の取り分け用に使用する、ポテトサラダを作るときに潰しながら和える、など工夫次第で使い方が広がります。

 

「従来のレンゲって本当に使いにくいと思いませんか。こちらのレンゲは、柄の長さや口に運ぶときの形状など本当によく考えられています。スープを飲むときにも、具材を食べるときにも、どちらでも使い勝手が良く便利です。水餃子などもとても食べやすいですよ」

 

6.箸置き要らずのシンプル箸

アッシュコンセプト「+d 木の浮き箸」
3,300円(税込)

 

箸の先端が浮き上がっているため、テーブルに接地することがなく衛生的です。もともとは樹脂素材でできた「+d ウキハシ」がありましたが、このデザインを踏襲しながら、天然素材を使用した商品にするために、形状を保つよう素材や技術など改良を重ね作られました。

 

「やはり木製の箸は雰囲気があって良いですね。浮き箸は箸置き要らずでさっとテーブルにおくことができるのが気に入っています。鍋料理の際にはさまざまなキッチン用品がテーブルに並ぶので、少しでもアイテムを絞りたいと思ったときにこちらの箸を選びました」

 

料理道具研究家が愛用する料理の厳選7つ道具と便利グッズ

 

7.おろす角度に技ありのおろし金

シゲル工業「おろし金17°(ジュウナナド)」
9,900円(税込)

 

メーカーが試行錯誤して導き出した、極力、力を加えずにおろすことができるおろし金です。その秘密は、おろす角度にあります。傾斜がついているので、少しの力でスムーズにおろせるのです。オールステンレス製で、衛生面でも安心。使用後におろし金に残った食材も水でさっと流して洗い落とすことができます。

 

「大根おろしが水っぽくなく、ふわふわでおいしく仕上がります。しかもマイルドな味になるので、大根おろしが辛くて苦手な方にも使っていただきたいですね。滑り止めもしっかりとしているのでラクにおろすことができます。みぞれ鍋のような、大根おろしをたっぷりと作りたいお鍋のときにもおすすめ。ギフトとしても大変よろこばれます」

 

8.刃当たりが心地よいカッティングボード

RUBBER Rubber「カッティングボード」
Sサイズ 5,720円/Mサイズ 6,820円(ともに税込)

 

木製のまな板のような心地のよい刃あたりと、プラスチック製まな板の優れた衛生面を両立したまな板です。業務用合成ゴムまな板を作り続けてきた実績のある老舗日本メーカーが、家庭になじむ色と大きさを考え作りました。

 

「鍋料理を楽しむときは、テーブルに小さなまな板があると便利です。大きめのお肉を小分けにしたり、もう少し野菜を食べたいときに少しだけ野菜を切ったりすることができるなど、さまざまなシチュエーションで役立ちます」

 

9.手にしっくりと収まるサイズのすり鉢

EAトCO「Sulu mortar and pestle」
3,850円(税込)

 

卵形のデザインが目を引くすり鉢です。シリコーン製のフタはすりおろすときには滑り止めマットに早変わり。しまうときはすり玉が転がらないようにフタをして一緒に保管することができます。コンパクトな大きさなので、すり鉢とすり棒のように場所をとりません。すり玉には国産檜を使用しています。

 

「その場ですりおろしたゴマはとても風味がいいですよね。こちらは見た目もとてもかわいらしく、鍋料理の食卓を華やかにしてくれます。卵のような楕円形がとても手になじみやすく、そして力を入れずにすりおろせるところもポイントです。ゴマを使いたい分だけ少量をすり下ろしたいのであれば、こちらがおすすめです」

 

10.細い瓶にも使えるスリムなサジ

EAトCO「サジ」
1,430円(税込)

 

細身のスプーンで瓶の調味料や、袋入りの粉物を取り出すときにも引っかかりが少なく、簡単に取り出すことができるサジです。持ち手が長いので、深さのあるグラスを混ぜるときにマドラーのようにして使うこともできます。さまざまな用途に細やかに対応する一品です。

 

「わが家では、柚子胡椒やマスタードを使いたいときに使っています。普通のスプーンで薬味をお椀に乗せるときに、スプーン側に薬味が残ってしまうことは少なくありません。このサジなら、薬味のほとんどをお椀にしっかりと移すことができます。鍋だけでなく、ジャムをパンに塗るときなどにも使っています」

 

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11.柑橘類を絞るなら持っておきたい絞り器

家事問屋「レモン絞り」
1,320円(税込)

 

小鳥のようなフォルムに癒されるレモン絞りです。手を汚さずに柑橘類を絞ることができて便利。口ばしの部分が注ぎ口になっていて種が出にくい仕組みになっているのもポイントです。テーブルに置くとゆらゆらと揺れる姿もまたかわいらしいです。

 

「鍋にレモン、かぼす、すだちなど柑橘系を使うならこちらの商品がお勧めです。オールステンで食材がひっかかることなく絞れます。唐揚げやチューハイなどを作る時にも使えるので柑橘系を絞る習慣がある方にはぜひ持っていてもらいたいものです」

 

12.シャープでスタイリッシュな鰹ぶし削り器

貝印「Kai House SELECT 鰹ぶし削り器(カバー付)」
4,620円(税込)

 

大きくてしまうところにも悩む鰹ぶし削り器をスタイリッシュかつコンパクトに仕上げた逸品。サッと取り出していつでも使え、フタがあるため収納に困りません。削った鰹ぶしはカンナを取り外さなくても取り出すことができます。

 

「おだしからしっかりと取ろうと思う本格派の人、または、鰹ぶし削りはハードルが高いけれどやってみたいと思う人におすすめの品です。従来の鰹節削り器だと力の入れ具合が難しいですが、こちらはむしろ力を入れない方が上手に削ることができます。本格的な鰹ぶしの風味を手軽に味わうことができますよ」

 

使うツールを見直すだけで、今までの鍋料理がグンと快適になり、楽しくなるはずです。鍋をする機会も増えることでしょう。これからの季節に、温かなお鍋と便利なキッチン用品で鍋時間を楽しんでください。

「発酵鍋」は旨味と乳酸菌たっぷり!肌荒れや胃疲れにも優しいレシピ

 

Profile

フリーライター / 納富廉邦

主に文具、生活雑貨、装身具、バッグや革小物といったグッズのほか、日本茶、中国茶、紅茶、コーヒーを中心に飲み物全般と茶器や食器、伝統芸能全般などに関するレビューや評論、書評、音楽評論、美術評論などを書籍や雑誌、Webなどで執筆。著書として2023年後半に『二十一世紀の名品小物101』『逆光写真集』(ともにKindle ダイレクト・パブリッシング)、共著に『ローリング・ストーンズ完全版』『ボブ・ディラン完全版』(ともに河出書房新社)などがある。
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冬至(2022年12月22日)の「ゆず湯」の意味と「かぼちゃ」のおいしい調理法

すっかり日が短くなり、まだ早い時間なのに外を見ると真っ暗で驚くことも。もう少しで昼の時間が一年でもっとも短くなる「冬至(とうじ)」がやってきます。

 

冬至といえば「ゆず湯(柚子湯)に浸かって、かぼちゃを食べる日」。でもそもそもなぜゆず湯に浸かり、かぼちゃを食べるのでしょうか? さらにかぼちゃをおいしく調理するコツとは? 和ごはん研究家の麻生怜菜さんに教えていただきました。

 

冬至とはどんな日?

冬至とは、一年のうちで太陽が出ている時間がもっとも短く、夜が長い日のこと。立春や夏至、秋分などと同様に、太陽の動きをもとに1年を24等分してつくられた二十四節気のひとつです。

 

「もともとは古代中国で『太陽が生まれ変わる日』とされてきた文化が遣唐使とともに日本にやってきて根付いたもの。昔は真っ暗な時間は黄泉の世界とつながっているという感覚があったので、一番夜が長いというのは一番悪い日。そしてこの日を境にどんどん良くなっていくということから、別名『一陽来復(いちようらいふく)』とも呼ばれています。その境である日に邪気払いをしたり、良い方向に向かうことをしたりしようというのが、冬至の風習です」(和ごはん研究家 麻生怜菜さん、以下同)

 

ちなみに、冬至とは昼がもっとも短い日であり、日の出がもっとも遅いのは1月上旬(2022年度は東京で1月2日から13日の6時51分、)、日の入りがもっとも早いのは(同 11月29日から12月13日の16時28分)で、地域によって異なります。

 

冬至の日は毎年変わる! 2022年は12月22日

「冬至は必ずしも毎年同じ日ではなく、地球と太陽の位置関係から決定されます。12月20日から23日の間であるとされていますが、2022年の冬至は12月22日。この日から春分(3月21日)までが冬とされています」

 

また、クリスマスと冬至には、意外にも深いつながりがあるのだそう。

 

「北欧ではキリスト教が伝わる前の時代から、『ユール』と呼ばれる冬至のお祭りを行っていました。もっとも夜が長く、太陽が再び力を取り戻す日として、神々へお供えなどをして祝ったそう。北欧の国々にはその頃の風習の名残があって、クリスマスツリーやブッシュドノエルなどはユールの祝祭に由来します」

 

冬至に行うべき風習とは?

1.「ゆず湯」で無病息災を願う

冬至といえばゆず湯。古くから「この日にゆず湯に浸かると一年間風邪をひかない」という言い伝えがあります。この風習はなぜ始まったのでしょうか?

 

「ゆずは寿命が長い木。それにあやかって、ゆず湯で長寿や無病息災を願ったといわれています。また昔の人は、水で自分のけがれを払うという儀式を事あるごとに行っていました。運を呼び込む前に邪気払いをするという意味で湯につかる。その湯にゆずを入れることで、邪気払いと無病息災という二つの願いが込められているのでしょう」

 

丸ごとか、輪切りか。ゆず湯の楽しみ方

ゆず湯といって思い浮かべるのは、丸ごとのゆずが湯船にいくつもプカプカと浮かんでいるさま。色も鮮やかで風情を感じます。自宅でお風呂に入れるときは、どのようにするといいのでしょうか?

 

「後処理がもっとも楽なのは、丸ごと入れる方法。ただし、そのままだとあまり香りが出ないので、爪楊枝で何か所も穴を開けたり、包丁で切り込みを入れるのがおすすめ。ゆずを選ぶときは、ハリがあって押したときに実が締まっているものにすると香りも良いですよ。一人暮らしなどで、いくつもゆずを買うのはちょっと……という方は、ゆず1個を輪切りにして使いましょう。ただ、湯の中で果肉や種が出てきてボロボロになってしまうので、ネットやお茶パックなどに入れるとお掃除が楽です」

 

冷凍でストックすれば簡単。余ったゆずを普段の料理に取り入れるには

せっかく購入したゆずは、風呂に入れるだけでなく料理でも使いたいもの。

 

「我が家ではゆずを買ったらまずは搾って、お醤油や少しの出汁を入れて自家製ポン酢をつくります。皮は全部むいてわたの部分をそいだら、それを小分けにして、ラップに包んで冷凍庫へ。ゆず皮の冷凍ストックがあると、使う時に刻んでサラダの上にかけたり、炊き込みご飯の上に散らしたりと重宝します」

 

2.「かぼちゃ」を食べる

冬至が近づくとスーパーの目立つ位置にかぼちゃが置かれます。かぼちゃを食べる日というイメージは定着していますが、ではなぜかぼちゃを食べるのでしょうか?

 

「昔の人の知恵でしょうね。夏に収穫して冬まで備蓄できる食べ物は少なかった。その中でかぼちゃは長期保存できて栄養価も高い。冬を乗り切るための食べ物として重宝されていたんだと思います」

 

βカロテンが多く含まれていて、カリウムも豊富なかぼちゃ。鉄分や食物繊維も多いので、とくに女性にとっては今の時期に食べるのにもぴったりの野菜だそう。

 

かぼちゃのほかにも「ん」がつく食べ物で運気アップ!

「名前に『ん』がつくものを食べて運気を盛る『運盛り』という考え方があります。かぼちゃはもともと南京(なんきん)と呼ばれていたので、『ん』がつきます。『ん』が二つついてたくさんの運気を呼び込むことができるとされているのが、南京、れんこん、にんじん、銀杏(ぎんなん)、金柑(きんかん)、寒天(かんてん)、うどん。これらは『冬至の七種(とうじのななくさ)』と呼ばれています。このあたりの食材をかぼちゃに追加で食べるのもおすすめですよ」

 

冬至に作りたい、かぼちゃの「いとこ煮」

冬至にかぼちゃを食べるなら、邪気払いによく使われる小豆と一緒に煮る「いとこ煮」がおすすめ。小豆で邪気を払い、かぼちゃで運を上げる、冬至に作りたい料理の筆頭です。かぼちゃと小豆でなぜ「いとこ煮」というのかというと、これには諸説あるそう。

 

「小豆は煮るのに1時間ほどかかります。小豆が煮えたところに追ってかぼちゃを入れるとおいしくなるため、 “追々” 煮るからそれを “甥と甥” にかけたという説。それから、小豆とかぼちゃを同時ではなく、めいめいに煮るから “姪々” とかけたという節もあります」

 

かぼちゃの煮物をおいしく仕上げるひと手間とは?

「かぼちゃは一口大に切りますが、このとき包丁で角を浅く削る『面取り(めんとり)』をするのがおすすめ。これをすることで角がなくなり、まんべんなく火が通ります。また、かぼちゃ同士がぶつかった際に煮崩れするのを防ぐので、きれいに仕上がるという効果も」

 

いとこ煮は、かぼちゃが煮えたら別でゆでておいた小豆と醤油を加えて煮るというシンプルな料理。美味しく仕上げるには煮あがったあとが重要だそう。

 

「煮汁がほとんどなくなったときに火を止めてすぐに食べるのではなく、少し時間を置くことを『鍋止め(なべどめ)』といいます。これをすると味がしみて、ぐっと深まりますよ。それから、火をとめる直前にみりんとお醤油を入れると照りが出て、香りも残ります。下味とは別に、最後に追加でパッと入れて火を止めるのがポイントです」

 

慌ただしい時期だからこそ、ちょっと立ち止まって

年の瀬も押し迫り、何かとせわしない時期。だからこそ、冬至の日くらいはちょっと立ち止まり、ゆず湯にゆっくり浸かったり、かぼちゃを食べたりして季節に目を向けたいですね。

 

「今はスーパーがあるので、年中いろいろな食材が手に入ります。でも、その時期ならではの旬のものを食べて四季の移り変わりを感じるというのは、大切なこと。季節の行事とそれに関連した旬の食材は何かという知識は、身につけておいて損はありません」

 

あまり難しく考えず、できる範囲で気軽に取り入れてほしい、と麻生さん。

 

「今日は冬至だからゆずの香りの入浴剤を入れてみよう、かぼちゃのサラダを買ってみよう、くらいでもいいんです。ふと思い出して、そのとき自分のできることをちょっとやってみるだけで、暮らしが豊かになります。慌ただしく過ぎていく毎日だからこそ、少し立ち止まって季節のめぐりを感じてみてください」

 

プロフィール

和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。日本食文化史に精通し、日本の伝統食、特に精進料理の考え方や調理法、食材を若い世代や子どもたちに継承していくことを決意。伝統的な調理法や食材を現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。著書に『寺嫁ごはん 心と体がホッとする“ゆる精進料理”』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。
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提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

料理道具研究家が愛用する料理の厳選7つ道具と便利グッズ

料理には道具が欠かせません。良質で使い勝手がいい道具が、料理上手にしてくれます。今キッチンに、なんとなく “間に合わせ” で買ってしまったものや、壊れないから買い換えていないだけのものなどで溢れているなら、見直してみませんか? 料理道具研究家・荒井康成さんのキッチンにお邪魔して、料理道具を見せていただきました。

 

長く愛用したい7つの料理道具

はじめに紹介するのは、毎日自炊しなくても必要になる包丁やまな板のほか、 “これが揃っていれば料理に困らない” という視点で選んでいただいた7つ道具。

 

「いずれも高価なものを選ぶ必要はありません。長持ちするものやメンテナンスして使い続けられるものを選ぶと、買い換えなくてすむのでお財布にも優しいですし、廃棄など無駄にしなくていいメリットがあります。一方で、メンテナンスに時間がかかったり毎回やらなくてはならなくなってしまったりすれば、なかなか手が出ません。メンテナンスを気負わずにできて、ずっと使い続けられる、そんな道具を選ぶのがポイントです」(料理道具研究家・荒井康成さん、以下同)

 

1.木製の「まな板」

まな板には、さまざまな素材でできたものがあります。サクラやヒノキ、オリーブなどの木製をはじめ、樹脂製やゴム製のもの、さらに大きさやデザインもさまざまですが、荒井さんがもっともおすすめするまな板とは、やはり木製のものだそう。

 

木のまな板は、劣化しても削ればきれいになるのが最大のメリットです。本来は食材それぞれに適したまな板がありますが、家庭に何枚も置けないですし、 “この一枚” と決めるなら、サクラヒノキで作られたものがおすすめです。サクラは油なじみがいいので肉料理向き、ヒノキは湿気に強くて匂いを吸収してくれるので魚調理に向いています。どちらも安価とは言えませんが長く使えるものなので、よく食べる食材から選んでみてください。また、イチョウのまな板は木が柔らかく、包丁の刃を傷つけないので、野菜料理に向いていますオリーブは硬いので、パンやチーズなどを切るといいでしょう」

 

2.研ぎやすいステンレス製の「包丁」

包丁は、「三徳包丁」といって刃先が尖っていないタイプのものが一本あれば、なんでも切ることができます。安いものから高いものまでありますが、こちらもやはりメンテナンスして長く使えるかがポイント。安価なものは刃が薄く、研いでも切れ味が長持ちしません

 

「我が家で使っているのは、平野レミさんのブランド『remy』のもの。『クロの包丁』という名前で刃が黒いので、食材が見えやすくて切りやすいのが特徴です。フッ素コーティングしてあり、切れ味のよさが長続きします。手入れもしやすいので、メンテナンスにも時間がかかりません」

 

ちなみに、もう一本なにか包丁を買うなら、パン切り包丁がいいでしょう。

 

「こちらのパン切り包丁は、岐阜県にある志津刃物製作所のものです。ステンレス製で柄と刃が一体型なので洗いやすくて劣化も少なく、シフォンケーキのような柔らかいものもきれいに切れる形をしています。パン切り包丁には刃渡り21cmくらいのものが多いのですが、こちらは16cmとかなり小ぶり。でも、実はこのくらいのサイズの方が収納に困りませんし、パンをカットするのにも充分なんですよ」

 

3.上から数字が見える「計量カップ」

料理に欠かせない計量カップは、oxo(オクソー)のアングルドメジャーカップです。

 

身を屈めるなどして横から見なくても計量でき、ml表記とtbsp(大さじ)表記があります。使いやすいのはもちろん、計量間違いも少ないので、料理に慣れていない人にはとくにおすすめです。ミニ・小・中・大の4サイズ展開で、大は1000mlまで測ることができます」

 

4.肉も魚も香ばしく焼ける鋳鉄製の「グリルパン」

メイン料理がおいしく作れるSKEPPCHULT(スケップシュルト)のグリルパンは、鋳鉄製のもの。重さはありますが、中華鍋のように振ることがないので気になりません。

 

「スウェーデンの老舗メーカー、SKEPPCHULTは、ヨーロッパでも人気のあるアイアンブランドです。鋳鉄は熱伝導率と蓄熱性が高いので、魚や肉がカリッと香ばしく焼けます。魚焼きグリルは洗うのが面倒で使いたがらない方もいらっしゃいますが、これなら熱いうちにざっと水洗いしてタワシでこするだけで、メンテナンスは終わりです。秋刀魚を焼いてもステーキを焼いても、おいしく仕上がります」

 

5.ひとつは持っておきたい「卵焼き鍋」

卵焼きの鍋には関西風と関東風の2種類あり、正方形のタイプは関東風。甘い厚焼き卵を焼くのに適している形です。フライパンよりもコンパクトなので、ちょっとした朝食のおかずもこれひとつで焼くことができます

 

「テフロン加工のものもありますが、銅製のものの方が短時間で加熱できて時短になり、ふっくらと焼き上がります。また、卵が滑らないのでひっくり返しやすいんです。価格もそんなに高くないので、ひとつあると便利ですよ」

 

6.シリコン製の「キッチンツール」

こちらは、鍋で有名なSTAUB(ストウブ)のしゃもじとペストリーブラシ。持ち手はアカシアの木でできていて、先端はシリコン製です。

 

「食品がくっつきにくく、見た目にもテンションを上げてくれるキッチンツールです。シリコン部分が柔らかいので盛りつけやすいですよ。ペストリーブラシの方は、先ほどのグリルパンにオイルを塗るときに使ったり、食材にソースやオイルを塗るときに使います」

 

7.グラスを拭きやすい「キッチンタオル」

7つ目に紹介するのは、Birdy(バーディ)のキッチンタオル。超極細マイクロファイバーにポリエステルを配合した布で、吸水性と耐久性に優れています

 

「一度これを使ったら他のものは使えないというくらい、優秀なタオルです。バーテンダーやソムリエの意見を聞いて開発したもので、グラスに毛羽や水垢が付着させることなく、ぴかぴかに拭けます。乾きも速く、お皿を拭いているうちにタオルがびしょびしょになる……ということもありません。長方形の大きなサイズは1枚2000円を超えるので、タオルとしては割高ですが、長く使えるのでぜひ持っておいていただきたいです」

 

できれば持っておきたい便利グッズ3種

続いて見せていただいたのは、荒井さんが使っていて便利だと感じている3つの道具です。なくても事足りるけれどあれば便利、という道具は、料理の時間を楽しませてくれるはず。

 

1.食材を集めやすい木製の「スクレーパー」

デザイナーの小泉誠さんがプロデュースするブランド、ambai(アンバイ)のスクレーパーは、国産のサクラでできています。

 

「パンの生地をまとめるときに使うこともありますが、細かく切った食材を集めるときにとても便利です。適度な厚みがあるので持ちやすく、食材をこぼさず鍋やボウルに運べます。残念ながら売り切れていて在庫が残っていないのですが、スクレーパーはひとつ持っておくといいと思います」

 

2.フライ返しの代わりに使う「パレットナイフ」

こちらは、本来はケーキにクリームをナッペするときに使うパレットナイフ。製菓でよく使われるものですが、荒井さんはフライ返しの代わりにしているのだそう。

 

「たまたま餃子店に入ったときに、パレットナイフで餃子をひっくり返しているのを見て、すごく使いやすそうだなと思って真似したのがはじまりです。刃がしなるので食材の底に入れやすく、餃子のほかにも切り身の魚などにも使えます。刃が薄いのできれいに食材をはがせますよ」

 

3.チンしたごはんが “炊きたて” になる「陶製の器」

最後に紹介するのは、陶器。ごはん用に作られたものではありませんが、荒井さんは残りもののごはんを電子レンジで加熱するときに使っているそう。

 

「陶器は電子レンジに強いので、レンジOKのもので蓋つきのものならなんでもいいと思います。プラスチック容器やラップのままチンするよりも蒸気がしっかりこもり、ふっくらと加熱することができます。何より、見た目にもおいしそうですよね。このまま食卓に出して、おひつのように使うことができます」

 

週に一度は行いたい、使用頻度が高い「包丁」と「まな板」のメンテナンス方法

料理をする上でもっともよく使う包丁とまな板は、いい状態で使い続けるためにも、こまめなお手入れが必要です。といっても、研ぎ石で研ぐのはなかなか大変。

 

「砥石を使わなくても、シャープナーを何度か通せば充分切れ味が復活します。毎日料理する方は週末に研ぐ、くらいの感覚でよいでしょう。それでも切れ味が悪くなってきたら、研ぎ屋さんにメンテナンスしてもらいますが、こちらは一年に一度も行えば問題ありません」

 

まな板は、オリーブオイルをキッチンペーパーに染み込ませて、全体を拭いてお手入れします。サラダ油を使うと乾かず、べたついてしまうので、オリーブオイルで行いましょう。

 

「とくにサクラやヒノキなどの硬い木は、食材の油が入りやすいのでしっかりメンテナンスが必要。こちらも週に一度くらいのお手入れでいいでしょう。全体をオイルで拭いたら乾燥させておきます。普段のお手入れはこれで大丈夫ですが、黒ずんできたり汚れが気になってきたりしたら、サンドペーパーで軽くこすると、カビや汚れを削ることができます」

 

キッチンツールは見せる収納で乾燥させる

キッチンアイテムの中でも、木でできたまな板や鉄のフライパンなどは、湿気を嫌うものです。引き出しやシンク下に入れてしまうと湿気がこもるので、見せる収納がおすすめ。

 

「いつも乾燥させておくとカビも生えにくく、いい状態を長くキープすることができますよ」

 

「鉄のフライパンも湿度があると錆びてしまうので、なるべく出しておきましょう。もししまう場合も、洗ったあとに加熱してしっかり乾燥させてからしまいます」

 

「包丁はマグネットにくっつけて収納するパターンもありますが、刃が出ているとうっかり手を切ってしまいそうで不安なので、包丁立てを使っています。お好みですが、危なくない収納の仕方を選んでみてください」

 

いつもきちんとメンテナンスされている、手に合った道具があるだけで、料理は格段に上手になり、それが時短にもつながります。忙しい毎日だからこそ、良質な道具で手軽においしいごはんを。道具を少しずつ見直して、揃えてみてください。

 

プロフィール

料理道具研究家 / 荒井康成

洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、映像制作、専門学校講師など多岐に渡り活動中。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)。


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皮をむいてから飾るまで。桃・アボカド…皮をむきづらい果物・野菜5種の攻略法

薄くて繊細な桃の皮は、どう剥いたらいい? SNSで話題になったように、果物の上手な剥き方は意外と知られていないのではないでしょうか。

 

そこで、初心者向けの料理教室「彩りクッキング」で講師を務める小林ゆうさんに、桃に加えてアボカド、オレンジ、パイナップルといった皮が剥きにくい果物と野菜について、きれいに剥くコツと切り方、飾り方までを教えていただきました。おまけとして、「どこまで皮を剥いたらいいかわからない……」という声が多いゴボウの扱い方も解説していただきます。

 

「桃」…切ってから剥くとキレイにできる

桃を剥くとき、どうしても柔らかい身に指が当たってしまい、そこから崩れてしまったり、黒ずんでしまったり。きれいに剥くためには、先に切ってから皮を剥く方法がおすすめです。

 

「身が崩れてしまうのは、果実自体が熟し過ぎている可能性もあります。弾力があってやや硬めの状態がちょうどいいので、選ぶときは硬さにも気をつけてみてください」(料理教室「彩りクッキング」講師・小林ゆうさん、以下同)

 

1. 水で洗って産毛を取る

桃の表面にはびっしりと産毛がついています。皮は食べませんが、剥いているときに産毛が身に付着してしまうので、水の中でそっと撫でて産毛を落としておきましょう。

 

2. 種の周りをぐるりと回るように切り込みを入れる。

ちょうど桃の割れ目のところから包丁を入れていき、ぐるりと一周します。

 

3. 身をひねるようにして半分にする

上下の身をゆっくりずらしながら回転させていくと、きれいに半分に切ることができます。

 

4. 種を取る

包丁の刃先を持ち、種の周りに包丁を差し入れて細かく動かしながら種を取ります。親指を添えて短く持つことで、包丁が必要以上に入らず、皮の方まで突き刺してしまうことがありません。

 

5. くし切りにする。

りんごのようにくし切りにしていきます。このとき、皮の方から包丁を入れると身が崩れにくいですよ。

 

6. 皮を剥く。

包丁をまな板に押し付けるようにしながら動かし、桃の皮を剥いていきます。

 

「桃は剥いた後、急速に変色してしまうので、すぐに食べないときや時間が経ってしまいそうなときは、レモン汁を少しかけておきましょう」

「アボカド」…サラダや付け合わせが豪華な見栄えに

桃と同様に身が柔らかく、きれいに剥くのが難しいのがアボカド。また、切ってみると中が黒ずんでいたり柔らかすぎたりと、選ぶ見極め方にも悩む食材です。

 

「アボカドは艶があってみずみずしく光っているものを選びましょう。触ったときに弾力があり、わずかに硬さを感じるものが食べ頃です。ある程度の硬さがあると、皮を剥くときに身を傷つけてしまうこともありません」

 

1. 中心で切ってひねる。

桃のときと同じように種を中心にしてぐるりと一周に包丁を入れ、上下の身をスライドさせて二つに割ります。

 

2. 種を取る。

包丁の刃で叩くように種を刺したら、引き抜くようにして種を取ります。

 

3. 手で皮を剥く。

身を傷つけないように気をつけながら、皮を剥いていきます。

 

4. お花型に盛り付ける。

半分のアボカドを薄くスライスし、少しずつずらしていって、丸く成形していきます。

 

ちなみに角切りにするときは、皮を剥く前に格子に包丁を入れてから、手で皮を剥いていきましょう。

 

「オレンジ」…並べるだけでごちそうのような華やかさ

皮を剥いただけのオレンジですが、きれいにカットして盛り付けるだけでも、デザートとなる一皿。ホテルなどでよく見かける“クレープシュゼット”のデクパージュ(お客さまの前で調理実演すること)でも、オレンジの切り方を見ることができるので、プロの技を見にいくのもおすすめです。

 

「オレンジは艶があり、香りがほどよくしているものを選ぶのがポイントです。あまりに強い香りがあるものは熟し過ぎている可能性があるので、よく見てみましょう。防カビ剤がついている場合があるので、はじめに中性洗剤をつけて、皮をよく洗います」

 

1. 天地の皮を落とす。

まず、オレンジの上と下の皮を切ります。身が見えるくらいしっかり切るのですが、ロスがないよう切り過ぎにも注意しましょう。

 

2. 側面の皮を剥く。

上から包丁を入れ、白い繊維が残らないように切っていきます。

 

3. 薄皮に沿って身をくし切りにする

薄皮に沿って包丁を入れたら、身をくし切りにします。身を取ったら薄皮を削ぐように包丁を入れて、次の身を取り出します。

 

4. 残った薄皮を絞り、ミントを飾る。

最後に、残った薄皮をまとめて絞ることで、身がさらにジューシーにいただけます。お好みでラム酒やコアントローなどをかけると、これだけでデザートになりますよ。

「パイナップル」…おもてなしにぴったりの「パイナップルボート」

パイナップルは皮が硬くてトゲがあり、剥きにくい果物のひとつですよね。でも、方法さえ覚えてしまえば、こんなにかわいらしくスタイリングすることができます。

 

「パイナップルは、皮を一気に剥いてしまう方法もあります。その場合は少し深めに皮を剥くと、トゲも全部取れるのでおすすめです。薄く剥いてしまうと、トゲの根元が残ってしまうので、気をつけましょう」

 

1. パイナップルを8等分に切る。

トゲで手を怪我しないように気をつけながら、葉を押さえて8等分にする。

 

2. 芯に包丁で切り込みを入れる。

葉の根元の方から包丁を入れていきますが、切り落としてしまわないよう、皮の手前で止めます。

 

3. 皮に沿って切り込みを入れる。

身だけを取るように切り込みを入れていきます。このとき、皮にあまり近い位置で切ってしまうと、トゲの根元が身の方についてしまうので、厚みを持たせて切ります。

 

4. 身を外してスライスする。

身をそっと押して外し、食べやすい大きさにスライスしたら、皮のボートに身を戻します。

 

5. 身を交互にずらす。

食べやすく、見た目にもかわいく仕上がりました。皮を剥いてしまうだけでなく、お皿のように利用できると楽しいデザートになりますね。

 

【番外編】香りが違う!「ごぼう」をおいしくする皮の剥き方

最後に、料理初心者の方がよく迷うという「ごぼうの剥き方」を教えていただきました。

 

「ごぼうは、どこまで剥いたらいいのかわからない、という質問をよく受けます。このような洗いごぼうなら、実は皮はそんなに剥かなくてもいいんです。ごぼうは皮と身の間に栄養と香りがあるので、半分だけ剥きましょう」

包丁の裏を使い、ごぼうの表皮をこそげ取ります。「皮はぜんぶ取らず、上下左右の4ヶ所だけこそげ取りましょう。残った皮には栄養と香りがたっぷり含まれますので、4ヶ所だけ剥いてあれば十分です。ただし、泥つきのごぼうの場合は、たわしなどでしっかり洗うことを忘れないでください」

 

料理の基本は、包丁の使い方。包丁の扱いが上手になると時短にもなり、盛り付けも自然と美しくなっていきます。ただ剥いて切るだけで見栄えのする一皿が作れたら、自分のためでもちょっとうれしくなりますよね。包丁の切れ味が悪いと、なかなかうまくできないので、まずは包丁を研いではじめてみてください。

 

【プロフィール】

料理教室「彩りクッキング」講師 / 小林ゆう

調理師、食育インストラクター、野菜ソムリエ。服部栄養専門学校卒業、日本一予約が取れない日本料理店にて修行を積む。現在は渋谷区にある、初心者さんの料理教室「彩りクッキング」にて講師を務め、日本料理・西洋料理・中国料理・製菓の全ジャンルを教えている。料理の基礎をしっかり学べ、最初から最後まで一人で作れる数少ない料理教室として、入会制限も行うこともあるほど定評がある。

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「鯛(タイ)」のおろし方と「鯛めし」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、比較的安価な「鯛」を取り上げます。

1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

特別な日は自分の手でおろした「鯛」でおもてなし

鯛は、おめでたい席でよくいただく魚です。丸ごと塩釜焼きにしたりアクパッツァに入れたり、レシピのバリエーションも豊富で、一尾あればごちそうを作れます。身はクセもなくさっぱりした味なのに対し、骨からもだしが出て、捨てるところがありません。

「三徳包丁でおろせるのは、だいたい700gくらいまで。それ以上のサイズになると包丁が痛んでしまうので、出刃包丁でおろしてくださいね」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

鯛は頭を使えるようにおろす

鯛もアジ同様、頭を落として3枚にしていくのですが、大名おろしと違い、骨に身がつかないよう丁寧に包丁を入れていきます。また、頭も使うので、頭の中の血合いもしっかり洗い、生臭くならないようにしましょう。

 

【おろし方】

1.うろこを取る。

鯛はうろこがしっかりとついている魚。うろこ取りがあればそれを使ってうろこを取っていきますが、ない場合はペットボトルのキャップでこすると取ることができます。「うろこを取るときに手を傷つけてしまいがちなので、背びれはキッチンバサミなどであらかじめカットしておきましょう」

 

2.頭を落とす。

頭に胸びれをつけて、三角に落とします。はじめは頭を左に置いて中骨の上まで切り、ひっくり返して反対側からも切り、頭を落としましょう。「鯛は厚みがあり、骨も硬いので、アジのように一度で切ることはできませんが、関節に包丁を入れると、力をかけなくても切り落とせます」

 

3.腹を切って内臓を出す。

アジやイワシと同じ要領で、内臓を取り出します。「このときも、内臓を包丁で傷つけないようにすると、汚れずに取り除くことができます」

 

4.上身を切る。

尾の手前に切り込みを入れたら、背側から包丁を入れて中骨の上まで身を切っていきます。「大名おろしのように一度で切らず、何度か包丁を入れながら切り進んでいきます」

 

背側が切れたら、今度は腹側の身を切り、中骨を中心にして両側から身を剥がしていきます。

 

5.上身を外す。

両側から身が切れたら、今度は中骨の上に沿って身を外していきましょう。「このときもあまり包丁を上下させず、大きく刃を使って切っていきます」

 

6.下身を切る。

下身も同様に、背側から切り、その後で腹側から切って身を外していきます。

 

7.腹骨を削ぐ。

上身と下身が切れたら、いずれも腹骨を削いで(そいで)いきます。身がたくさんつかないよう、薄くそぎましょう。

 

8.頭を割る。

鯛の頭はあごから包丁を入れて、先にあごを割り、そのあと額の方に向かって包丁を入れて、半分に切り

 

9.腹身と背身を分け、骨を削ぐ。

切り身にした方は半分に切り、中央にある骨を削いで取り除いておきます。これで三枚おろしの完成です。

 

以上の工程で鯛をおろせたら、実際にその鯛を使って調理してみましょう。今回は「鯛めし」を教えていただきました。

おろした鯛の頭と身を使って作る「鯛めし」

鯛の頭と骨から出ただしと旨みをたっぷりごはんに吸わせた鯛めしは、特別な日の料理としても作りたい一品です。おろしたての鯛は身がふっくらしていて、炊きたての香りは格別です。

 

「今回はすべて鯛めしに入れましたが、頭と骨だけを鯛めしにして、身はカルパッチョにしたりムニエルにしたりするのもおすすめです。頭は一度取り出し、頬や目の周りについた身を取ってから、ごはんに混ぜましょう」

 

【材料(2合分)】

・鯛……1尾(700gくらいのもの)
・米……2合(研いで30分ほど浸水させる)
・水……360ml(※土鍋で炊く場合は水を大さじ1増やしてください)
・酒……大さじ2
・うすくち醤油……大さじ2
・昆布……1枚
・生姜(千切り)……1片
・三つ葉……お好みで

 

【作り方】

1.鯛は、血合いや汚れを流水で洗い、湯にくぐらせてから氷水に漬ける。

熱湯でさっと霜降り(湯通し)することで、臭みがなくなります。また、ここで残っているうろこがあれば、とっておきます。

 

2.炊飯器または鍋に米、水、酒、うすくち醤油を入れてひと混ぜし、昆布と生姜をちらして普通炊飯する。沸騰したら鯛を入れる。

鯛は入れずに、お米だけを炊きはじめて、沸騰してから鯛を入れます。その方が鯛に日が入りすぎず、身がふっくらと炊き上がります。炊けたら10分ほど蒸らしてから、蓋を開けましょう。

 

アジ編では、アジの大名おろしと「ムニエル」レシピを、イワシ編ではイワシの手開きと「蒲焼」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「イワシ」のおろし方と「イワシの蒲焼」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、比較的安価な「イワシ」を取り上げます。


1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

「イワシ」は手でおろすことができて手軽

イワシは安価なことが多く、たくさん買って保存食にしておくなどの使い道にもぴったりの魚です。今回紹介していただいた蒲焼(かばやき)以外にも、圧力鍋などを使って骨まで丸ごと煮たり、焼き魚にしたり、つみれにしたりすることもできます。

 

「イワシは鮮度が落ちやすいので、皮にハリがあって色がきれいに見えるものを買いましょう」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

イワシを“手開き”でおろす方法

イワシは、頭だけ取ってしまえば、あとは手で開いて骨を取るだけで調理ができる魚です。

 

「専用の包丁がなくてもできるので手軽ですが、イワシは“足”が早く、身が柔らかい魚なので、慣れるまでは少し扱いが難しく感じるかもしれません。鮮度が高いイワシを購入することはもちろん、買ったらすぐに内臓だけは取り出してしまうのが、鮮度を保つ秘訣です。どうしても内臓まで取っている時間がない!というときは、買ったときの魚のトレイから出し、魚をキッチンペーパーに包んでからラップをして、冷蔵庫に保存しておきます」

 

【おろし方】

1.イワシの頭を落として腹を切る。

イワシもアジと同じように頭を落とし、お腹に包丁を入れて切ります。「内臓も同じようにとっておきます」

 

2.骨に沿って親指を入れ、中骨から身をはがしていく。

中骨に沿うように親指を入れていき、身と骨を分けていきます。「身が柔らかいので、あまり力をかけすぎてしまうと、身がぐちゃぐちゃになってしまいます。丁寧に骨を外していきましょう」

 

3.中骨を取る。

骨が身から離れたら、骨を取ります。「尾のところまで来たら、最後は折ってしまいましょう。これで調理に進みます。案外簡単にできるので、挑戦してみてくださいね」

 

以上の工程でイワシをおろせたら、実際にそのイワシを使って調理してみましょう。今回は「イワシの蒲焼」を教えていただきました。

イワシの手びらきを使って作る「イワシの蒲焼」

イワシにたっぷりの濃いめのタレを煮からめる蒲焼は、ごはんもお酒も進む味。フライパンでできるのも手軽で、小骨も気にならずパクパク食べられます。

 

「こちらもアジと一緒で、身の方から焼きます。身の表面が油でコーティングされて、中の水分やうまみをとじこめてくれるので、ふんわり仕上がります。イワシの独特なくさみがないので、イワシが苦手な人にもおいしく食べられる味ですよ」

 

【材料(2人分)】

・イワシ……2尾
・片栗粉……大さじ1
・ごま油……小さじ2
・みりん……大さじ1
・醤油……大さじ1
・砂糖……小さじ1
・粉山椒・白胡麻……お好みで

 

【作り方】

1.イワシの水気を取り、片栗粉を薄くまぶす。

べたつかないようにしっかり水気を取ってから、片栗粉をふります。身につかなかった片栗粉は、ふるい落としてから焼きましょう。

 

2.フライパンに油を熱し、イワシを身側から2分焼く。裏返して同様に2分焼く。

身が崩れないよう慎重にひっくり返して、2分ずつ焼きましょう。

 

3.いったん火を止め、みりんと醤油、砂糖を混ぜたものをまわしかけてから、もう一度火にかけ、1分ほど中弱火で煮からめる。

タレを入れるときに跳ねるので、いったん火を止めて少しフライパンを落ち着かせてから、タレを入れましょう。

 

アジ編では、アジの大名おろしと「ムニエル」レシピを、タイ編ではタイのおろし方と「鯛めし」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「アジ」のおろし方と「アジのムニエル」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、一番扱いやすいとされる「アジ」を取り上げます。


1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

もっとも調理しやすいのは「アジ」

魚の中でもっとも調理がしやすく、魚を下ろすときに基本となるのが「アジ」。アジは身がそれほど柔らかくないので崩れにくく、大きさもほどよいので、初心者が扱うのにもっとも適しています。また、アジを下ろしながら魚の構造を理解してしまえば、他の魚も下ろせるようになります。

 

「アジはどのスーパーでも手に入りやすく、いろいろな食べ方ができる魚です。3枚下ろしにせず、内臓だけ取って塩焼きにすることもできますし、3枚に下ろせば、アジフライやムニエルなど洋風にいただくこともできますよ」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

アジを3枚におろす方法“大名おろし”

アジは、“大名おろし”というおろし方で、上身・下身・中骨の3枚にします。大名おろしとは「大名がおろしたみたいに大胆なおろし方」という意味で、一般的なおろし方よりもざっくりとした切り方をするのが特徴です。

 

「このおろし方は、骨に身がたくさん残ってしまうのですが、スプーンで骨のまわりの身をこそげて別の料理にしたり、骨ごと素揚げにして食べることもできます」

 

【おろし方】

1.アジをよく洗ってぜいごを取る。

魚の表面には腸炎ビブリオ菌が付着している可能性があるので、まずはよく洗ってから水気を取り、まな板にのせましょう。「頭を左側に置き、両側にあるぜいごを尾の方から削ぎ取ります」

 

2.頭を落とす。

胸ビレを頭の方につけて三角になるように包丁を入れ、下まで一気に頭を落とします。「中骨が切りにくいのですが、包丁を動かして切るよりも上から押して叩くイメージで切ってみましょう。関節の間にうまく入ると、すぐに落とすことができますよ」

 

3.お腹を開いて内臓を出す。

お腹の部分に包丁を入れたら、内臓を出しましょう。「このときあまり内臓を傷つけずに一度に出すと、まな板が汚れずきれいに取り出すことができます」

 

4.上身をおろす。

尾の方から中骨に沿って包丁を入れ、一気に上身をおろします。「骨にしっかり包丁を沿わせていくと、骨に残る身も少なくなり、きれいにおろせます。また、包丁はギリギリと細かく動かさず、一度入れたら一気に引き切りするといいですよ」

 

5.下身も同じようにおろす。

下身も尾の方から包丁を入れて、中骨に沿って切っていきます。

 

6.腹骨を削ぐ。

上身と下身についた腹骨は、包丁を斜めにして削ぎ(そぎ)ます。

 

7.小骨を抜く。

中心に残っている骨は、骨抜き用のピンセットで抜いていきます。ここまでできたら、あとは調理するだけです。「どこに骨があるか、指でなぞりながら探していくと、抜きやすいですよ」

 

以上の工程でアジを3枚におろせたら、実際にそのアジを使って調理してみましょう。今回は「アジのムニエル」を教えていただきました。

アジの三枚おろしを使った「アジのムニエル」

身がふっくらとしたおろしたてのアジに薄力粉をまぶし、シンプルに焼いただけのムニエル。最後にバターを加えることで、コクがあって香りのよい料理に仕上がります。

 

「魚は皮目から焼くとよく言われるのですが、身の方を先に焼いた方がふっくらと高く焼き上げられます。また、あまり焼きすぎず、片面2分ほどずつにしておくと、みずみずしいままの魚が食べられ、パサつきもありません」

 

【材料(2人分)】

・アジ……2尾
・塩……小さじ1/3
・黒胡椒……少々
・薄力粉……大さじ1
・米油……小さじ2
・バター……大さじ1

 

【作り方】

1.アジは塩胡椒をふって、5分ほど置いておき、出てきた水気をペーパーでよく拭き取ってから表面に薄力粉をふる。

 

2.フライパンに油を熱し、アジをいれて身側から焼き、2分たったらひっくり返して、裏面2分焼く。

 

3.最後にバターを入れて香りをつける。

 

イワシ編では、イワシの手開きと「蒲焼」レシピを、タイ編ではタイのおろし方と「鯛めし」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

メレンゲのようなふわふわ感を自宅で! 卵2つだけで作る「究極のふわふわオムレツ」の作り方

人気YouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』のゆかりさんに卵料理の基本を教えていただく連載の4回目。今回はYouTubeでも話題の「究極のふわふわオムレツ」です。

 

お店で出てくるような、見た目も食感もふわふわなオムレツを、家でも作れたらいいですよね。それを叶えてくれる今回のレシピの材料は、卵2つと塩・砂糖だけ! 少ない材料でも、3つのポイントさえ押さえれば、誰でも究極のふわふわなオムレツが簡単に作れるのだとか。ゆかりさんにポイントを紹介していただきましょう。

 

料理研究家でたまごソムリエのゆかりさん。

 

第1回 半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?
第2回「卵焼き」の正解 ~基本の「卵焼き」から「だし巻き卵」までフワフワ食感に作るには?~
第3回 オムライスはラップで巻く! 初心者も失敗しない、ふんわり卵できれいに包む「オムライス」の作り方

 

じっくり弱火の蒸し焼きで、ふわふわなオムレツに!

今回の「究極のふわふわオムレツ」は、卵黄と卵白を個別に泡立てたものを合わせて焼き上げます。卵黄と卵白を分ける際には、空のペットボトルを使うのが便利だとか。

 

炭酸飲料などが入っていたような弾力性のあるペットボトルがおすすめ。ペットボトルの口の部分に水分が残らないよう、キッチンペーパーなどでしっかりと拭き取ってから使いましょう。

 

賞味期限が近い卵だと卵黄の膜が弱まっているため、吸い上げた際に卵黄が潰れてしまうことも。「究極のふわふわオムレツ」にはなるべく新鮮な卵を使うのがおすすめです。では、ふわふわに仕上げるコツをゆかりさんに教えていただきましょう。

 

ふわふわにするコツ1.
ツノが立つまで卵白を泡立てる

「ふわふわなオムレツにするためにまず大切なのが、ツノが立つまで卵白を泡立てること。ボウルを逆さにしても落ちてこないくらい、しっかり泡立てるのが第1のポイントです。今回はハンドミキサーを使っていますが、泡立て器しかないという方は、卵白だけを冷凍庫で1時間ほど冷やしておくと泡立ちやすくなります。また泡立てるボウルに水分や油分が付着しているときめ細かい泡にならないので、乾いたボウルを使うようにしましょう」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

ツノが立つまでしっかりと泡立てるとボウルを逆さにしても落ちない!

 

ふわふわにするコツ2.
弱火でじっくり蒸し焼きに!

焼く時の火加減は、必ず弱火にしてください。じっくりと焼き色をつけながら、フタをして3分程度蒸し焼きにします。この時、フタをせず強い火加減で焼いてしまうと、せっかくふわふわに泡立てた卵がしぼんでしまうので注意です!」

弱火で、じっくりと焼き色をつけるのがポイント。

 

ふわふわにするコツ3.
できたてを食べる!

最後はできあがってから心がけること。「このオムレツは、できたてが一番ふわふわです。時間とともにしぼんでしまうので、なるべくできたてを食べるようにしましょう。冷めてしまっても溶けるような独特な食感は残りますが、見た目も食感も楽しみたいのなら、できたてがおすすめです」

 

人気の「究極のふわふわオムレツ」

コツを押さえたところで、ここからは「究極のふわふわオムレツ」のレシピを解説していただきます。今回の味付けは、塩と砂糖のみ。卵の味わいを存分に楽しめるレシピですが、甘めが好みなら、砂糖を多めに入れるなど分量を調整してください。またフライパンは、20cm前後を使用しています。

 

【材料】(1人前)

卵:2個
塩:1つまみ
砂糖:1つまみ
バター:10g

 

【作り方】

1.卵を卵黄と卵白に分ける。

 

卵黄をわける際、炭酸飲料が入っていたような弾力性の高い空ペットボトルを使うと簡単。ペットボトルをへこませた状態で卵黄に近づけ、へこみを緩めると空気圧で卵黄だけが吸い取れます。また、もう一度へこますことで、ペットボトル内に吸い取られた卵黄を潰さずに押し出すことができます。

 

2.卵白にひとつまみの塩を加え、メレンゲ状に泡立てる。

 

3.ツノが立つくらいしっかりと泡立てる。(ハンドミキサーを使う場合は高速で1分泡立てた後、低速で1分ほど泡立てるとなめらかな食感に)

 

4.卵黄に砂糖を加えて、混ぜる。

 

5.3のメレンゲ状になった卵白の泡を潰さないように、4の卵黄を加える。

 

6.空気を入れるように、ふんわりと全体を混ぜ合わせる。

 

7.20cm前後のフライパンにバターを入れ、火にかける

 

8.バターが溶け始めたら弱火にし、6を全量入れる。

 

9.蓋をして3分ほど蒸し焼きにする。

 

10.下の面にほどよい焼き色が付いたら、お皿へスライドさせるように移し入れる。

 

11. 半分に折り込むように盛り付けて完成。

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『究極のふわふわオムレツの作り方☆卵2つで簡単レシピ♪そして、ご報告があります!』をチェックしてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=H5EAwJ4UzDg

 

少ない材料でも、作り方のポイントさえ押さえれば、お店のようなふわふわオムレツが出来上がります。おすすめはハンドミキサーですが、卵白だけ冷凍庫に1時間ほど冷やしておくことで泡立て器だけでもメレンゲ状に泡立てることが可能に。お好みの味に調整しながら、ゆかりさんの「究極のふわふわオムレツ」にチャレンジしてみましょう。

 

第1回 半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?
第2回「卵焼き」の正解 ~基本の「卵焼き」から「だし巻き卵」までフワフワ食感に作るには?~
第3回 オムライスはラップで巻く! 初心者も失敗しない、ふんわり卵できれいに包む「オムライス」の作り方

 

【プロフィール】

料理研究家 / ゆかり

調理師免許の資格を活かし、『おうちで簡単に作れるレシピ』をモットーに、YouTube・テレビ・ラジオ・雑誌・料理イベントなどを中心に活動。チャンネル登録者数45万人(10/9現在)のYouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』では、簡単スイーツをはじめ、和食、洋食、中華など幅広くレシピ公開。調理師免許やたまごソムリエの資格も持ち、2016年に卵料理レシピ本『たまご大好き』(アールズ出版)を出版。

料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen
https://www.youtube.com/channel/UC7LT6gRahCIBd5AO5MUl8dQ

オムライスはラップで巻く! 初心者でも失敗しない、ふんわり卵できれいに包む「オムライス」の作り方

人気YouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』のゆかりさんに卵料理の基本を教えていただく連載の3回目。今回のテーマは「オムライス」です。

 

オムライスは、ケチャップライスを上手に卵で包むことに悪戦苦闘する料理のひとつ。せっかくケチャップライスがおいしくできても、肝心の卵で失敗してしまい、見た目も残念な出来になってしまうことは多いのではないでしょうか。今回は基本的なケチャップライスの作り方と合わせて、初心者でも失敗なしで作れるオムライスのポイントを解説していただきます。

料理研究家でたまごソムリエのゆかりさん。

第1回 半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?
第2回「卵焼き」の正解 〜基本の「卵焼き」から「だし巻き卵」までフワフワ食感に作るには?〜

 

オムライスは、ラップで包めば失敗なし!

定番のオムライスの形をフライパンの上で作ろうとすると、卵が破れてケチャップライスが中から飛び出してしまったり、卵に火が入りすぎて焦げ目が目立ったり、何度も練習しないと上手にできない、ハードルの高い料理になっています。オムライスの手順をまとめると、

1.ケチャップライスを作る
2.卵に火を通す
3.ケチャップライスを卵で巻く
4.盛り付ける

の4つに分けられますが、「3.ケチャップライスを卵で巻く」の工程が難しいと考えている人は多いはず。でも、ポイントさえ押さえれば、料理初心者でも簡単にオムライスを成功させられます。ゆかりさんからオムライスを成功させるコツを教えていただきましょう。

 

オムライス調理のコツ1.卵液に水を加えること

「オムライスをつくる際のポイントは、2つあります。1つ目は、卵液に水を加えること。これは前回の卵焼き回でもお伝えしましたが、卵1個あたり大さじ1の水を加えることで口当たりもよくふわっと仕上げることができます」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

 

水の量は、卵1個に対して、大さじ1が目安。

 

オムライス調理のコツ2.卵とケチャップライスをラップで包むこと

「もう1つのポイントは、卵とケチャップライスをラップで包むこと。オムライスはフライパンの上で巻くのが正解! と考えている人が多いのですが、誰でも同じクオリティできれいなオムライスを作りたいのなら、ラップで包む方法がおすすめです。半熟の卵の上にケチャップライスを乗せることで、中もふわトロなオムライスに仕上げることができます。またラップの上からオムライスの形を整えることができるので、失敗も少なく見た目にもきれいなオムライスができますよ」

台所の広く空いているスペースに使用するフライパンよりも大きめにラップを広げておく。大きなお皿の上でもOK。

 

基本の「オムライス」の作り方

では、オムライスの基本レシピを解説していただきましょう。

 

【材料】

ハム:2枚
ご飯:150g
バター:15g(ケチャップライス用5g /卵用10g)
ケチャップ:大さじ2
黒胡椒:適量
塩:適量
卵:2個
水:大さじ2

 

【作り方】

1. ハム2枚を半分に切り、重ねて1cm幅程度に切っていく

 

2. フライパンにバター5gを入れ、火にかける

 

3. バターが半分くらい溶けてきたら、1のハムを入れる

 

4. バターがすべて溶け、バターのいい香りがしてきたところにご飯と塩・胡椒を入れて中火で炒める

 

5. しっかりご飯を炒めたら、片側に寄せ、空いたスペースにケチャップを入れる

 

6. 30秒ほどケチャップを煮つめ、酸味を飛ばした後しっかり混ぜ合わせ、完成したケチャップライスは別皿に移しておく

 

7. 卵2つに大さじ2の水を加え、白身を切るようによく混ぜ合わせる

 

8. 卵を焼く前に空いたスペース(大きなお皿の上でもOK)にラップを広げておく

(ここでは同じ大きさのラップを2枚、中心部が重なるように敷いています)

 

9. フライパンにバター10gを入れ、ゴムベラで全体に溶かし広げる

 

10. バターが溶けフツフツとしてきたら、すべての卵液を入れる

 

11. 卵液が固まってきたら、フライパンを上下に揺らしながらゴムベラで混ぜ、全体に火を通す

 

12. 半熟状態になったら、いったん火を止める

 

次にいよいよ、卵にケチャップライスを乗せて巻いていく難関が待っています。引き続きコツを教えていただきます。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

13. ふち1cmを空け、卵の上全体に広がるようにごはんを乗せていく

 

14. 再び火をつけ、上下に揺らした時に卵がフライパンから離れるようになったら、火を止める。「8」で敷いておいたラップの上にスライドさせるように乗せる

 

15. ラップ上下の端を持ち、真ん中に引き寄せる

 

16. 次に、左右をリボン状になるようにクルクルと巻きつける

 

17. 最後に、包み込むようにオムライスの形を整える

 

18. ラップで包んだままお皿の上に乗せ、丁寧にラップをはがす

 

19. ケチャップをかけたら、完成

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『オムライスの作り方!失敗しないオムライスの包み方をご紹介します☆』をチェックしてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=3iIHOCoevDU

 

ラップで巻くという新常識できれいに仕上げられる定番の「オムライス」。シンプルなケチャップライスと半熟卵が絡み合い、お料理初心者でも絶品オムライスが作れるはず。ぜひゆかりさんのレシピでチャレンジしてみてください。

 

第1回 半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?
第2回「卵焼き」の正解 〜基本の「卵焼き」から「だし巻き卵」までフワフワ食感に作るには?〜

 

【プロフィール】

料理研究家 / ゆかり

調理師免許の資格を活かし、『おうちで簡単に作れるレシピ』をモットーに、YouTube・テレビ・ラジオ・雑誌・料理イベントなどを中心に活動。チャンネル登録者数45万人(10/9現在)のYouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』では、簡単スイーツをはじめ、和食、洋食、中華など幅広くレシピ公開。調理師免許やたまごソムリエの資格も持ち、2016年に卵料理レシピ本『たまご大好き』(アールズ出版)を出版。

料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen
https://www.youtube.com/channel/UC7LT6gRahCIBd5AO5MUl8dQ

 

フワフワ食感に作るには?基本の「卵焼き」から「だし巻き卵」まで卵ソムリエが教える卵焼きの基本とアレンジレシピ

人気YouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』のゆかりさんに、卵料理の基本を教えていただく連載の2回目。今回のテーマは「卵焼き」です。

 

「卵焼き」は、朝食やお弁当にはもちろんのこと、家飲みのおともにも欠かせない一品ですよね。卵をきれいに巻く焼き方のポイントや、作り置きやお弁当にもぴったりの冷めてもおいしい卵焼きまで、わかりやすく解説いただきました。

[目次]
・基本の「卵焼き」
・長いもを加えた「ふわふわ卵焼き」
刻んだ大葉を加えた「大葉の卵焼き」
出汁を漬け込む「だし巻き卵」

 

料理研究家でたまごソムリエのゆかりさん。

 

【関連記事】半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?

 

カギは「漉し」と「ゴムベラ」にあり! ちょっとした工夫でお店のような卵焼きに

「卵を溶いて、調味料を入れて、焼くだけ」でもおいしい卵焼きですが、ちょっとした工夫でお店の味にぐっと近づけることができます。主な道具として、長方形型の卵焼き用フライパンと卵を返すゴムベラ、そしてザルや茶漉しなど家庭にある網目のキッチン用具のご用意を。早速、基本的な卵焼きの作り方のポイントを教えていただきましょう。

「ご家庭でもおいしい卵焼きを作るポイントは3つあります。1つは、卵1個あたり大さじ1の水を加えること。水を加えることで卵のタンパク質が崩れやすくなり、ふわっとやわらかな卵焼きができます。2つ目が、ザルや茶漉しで卵液を漉すこと。きめ細やかな卵液にすることで、口当たりもよくなり、焼き上げる際にも返しやすくなるメリットがあります」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

 

↑漉す網目の大きさは、ザルや茶漉し程度で大丈夫。この工夫だけできめが細かい、なめらかな卵液に!

 

「3つ目のポイントが、卵を返す際にゴムベラを使用すること。ゴムベラなら卵との接地面を広く取ることができるので、苦手な方でも上手に返すことができます。菜箸を使う方はなるべく大きく開いたハの字にすると上手に仕上げられるでしょう」

 

↑慣れている方は菜箸でもOK。返す際にはなるべく「ハの字」で使うようにすると扱いやすいそう

 

また、卵焼きにおいて重要なポイントがもうひとつ。火にかける前に“あるもの”を準備しておくとスムーズに卵焼きが作れるそう。

 

「卵焼きを上手に仕上げるポイントがもうひとつ。油が減ってきたな〜と思ったら、都度フライパンに油を引くことで、見た目もおいしい卵焼きを作ることができます。キッチンペーパーと小皿があれば簡単にできるので、作る前に準備しておきましょう」

 

「適当なサイズにちぎったキッチンペーパーを使いやすいサイズに小さく畳み、小皿に取り分けた油に浸すだけ。これだけで立派な油引きを作ることができます。菜箸でつまめば、薄くまんべんなく適量の油を引けるのでとっても便利。また、作っている最中にフライパンが熱くなりすぎていると感じたら少し火から離し、温度を下げることもお忘れなく」

 

基本の「卵焼き」

では、卵焼きの基本レシピを解説していただきましょう。

 

【材料】

卵:3個
水:大さじ3(※卵1個に対して、大さじ1が目安)
白醤油:小さじ1
砂糖:小さじ2分の1
サラダ油:適量(※ほかに、小さく畳んだキッチンペーパーに油を染み込ませて準備しておく)

 

【作り方】

1. ボウルに卵3つを割り入れ、水、白醤油、砂糖を加え、白身を切るようにしっかりとときほぐす。

 

2. 混ぜ合わせた卵液をザルや茶漉しを使い、少しずつ漉していく。

 

3. フライパンに油を引き、弱中火の加減で温める。(30秒目安)

 

4. フライパンが温まってきたら、全体に卵液が行き渡るくらいの量(卵焼き用フライパンならお玉で約1杯分)を流し入れ、全体に広げる。

 

5. 持ち手側を持ち上げ、手前から奥へ卵を返し、卵焼きの「芯」を作る。(多少崩れてもOK)

 

6. 手前の空いたスペースに油を塗りたし、「4」と同じ量の卵液を加える。この時、芯の下にも卵液が行き渡るように少し浮かせるのがポイント。

 

7. 加えた卵液が固まったら、奥から手前に返し形を整え、奥へと移動させる。

 

8. 卵液がなくなるまで「6」と「7」を繰り返し、フライパンの端で形を整えたら、完成。

 

長いもを加えた「ふわふわ卵焼き」

上のレシピでも「水」を入れたのでふわふわな食感を楽しめますが、「長いも」を入れることで、よりふわっと仕上げることができるのだとか。長いもを加えたレシピも教えていただきました。

 

【材料】

卵:3個
長いも:100g
水:大さじ3
昆布茶(粉末):小さじ2分の1
砂糖:小さじ1
サラダ油:適量

 

作り方は、上記とほとんど変わりません。水・昆布茶・砂糖と卵を混ぜ、ザルでこした卵液に、擦った長いもを加えてしっかりと混ぜ合わせます。あとは、基本の焼き方と同じ。基本を抑えていれば、アレンジもしやすいですね。

 

ちなみに、長いもを加えただけですが、見た目にもはっきりと違いが!

↑左:長いも入りの卵焼き/右:長いもナシ&こしていない卵焼き

 

冷めてもふわっとした食感を楽しめる卵焼きなので、お弁当のおかずや作り置きにおすすめです。

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『簡単なコツでキレイな卵焼きの作り方♪ふわふわの卵焼きの技をご紹介します☆』『ふわふわ卵焼きの作り方!冷めてもおいしい卵焼きのコツをご紹介します♪』の2本をチェックしてみてください。
1.https://www.youtube.com/watch?v=wp0-ue59_Bg
2.https://www.youtube.com/watch?v=9yIJly5mnHo

 

続いて、卵焼きのアレンジレシピも教えていただきました。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

おうちでも手軽にお店の味が楽しめる? 「大葉の卵焼き」と「だし巻き卵」の作り方

卵焼きの基本がわかったところで、アレンジレシピも教えていただきましょう。今回教えてもらうのは、卵焼きの中に刻んだ大葉を加えた「大葉の卵焼き」と、出汁を後から漬け込む「だし巻き卵」です。簡単なコツを覚えるだけで、お家でも本格的な味を楽しめますよ。

 

きれいなグリーンが色褪せない「大葉の卵焼き」

基本の焼き方をマスターできれば、中に具材を混ぜ込んだ卵焼きも簡単に作れます。ネギや明太子、青のりやコーンなどを入れることで、卵焼きのバリエーションも増やせますよね。大人な風味がふわっと香る大葉も人気ですが、茶色に変色してしまい、残念な見た目になってしまいがち。今回は見た目も美しい「大葉の卵焼き」を作るコツを伺いました。

「大葉の卵焼きは口に入れた時の風味が豊かで、私も大好きな卵焼きです。しかし時間が経つと大葉の緑色がくすんでしまうことも……。綺麗な緑を維持するコツは、刻んだ後に10分ほど塩揉みし、水洗いすること。ちょっと手間ですが、塩もみしておくだけでお弁当に入れても鮮やかな彩りを感じさせてくれますよ。

また、 マヨネーズを水で溶かした“マヨスイ”を使うことで、ふわっとした卵焼きにすることができます。卵焼きにマヨネーズを入れるのは、メジャーになってきましたが、そのまま入れるとダマになってしまうので、少しずつ水を加えながらマヨネーズを溶かしたマヨスイにするのがおすすめです」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

 

【材料】

卵:3個
大葉:6枚
水:大さじ3(※卵1個に対して、大さじ1が目安)
マヨネーズ:大さじ1
醤油:小さじ1/2
みりん:小さじ1/2
調理酒:小さじ1
顆粒こんぶだし:小さじ1
サラダ油:適量(※ほかに、小さく畳んだキッチンペーパーに油を染み込ませて準備しておく)

 

【作り方】

1. 耐熱容器に顆粒のこんぶだしに、醤油、みりん、調理酒を加え混ぜ合わせ、600Wの電子レンジで20秒加熱する。レンジから取り出し、顆粒が残っているようであればしっかり混ぜて溶かしきり、粗熱をとる。

 

2. 大葉の茎を切り取り、千切りにする。

 

3. ボウルに「2」を入れ、塩小さじ1/2(分量外)と共に20秒ほど塩もみ。10分ほど置いたあと、水洗いし、塩気を取る。

 

4. ボウルにマヨネーズを入れ、少量ずつ水を加え、ダマがなくなるまで混ぜ合わせる。(マヨスイは、使う卵の数に合わせて調整する)

 

5. 卵(事前に漉したもの)を混ぜ、粗熱が取れた「1」、水気を切った「3」の大葉、液体状態の「4」を加え混ぜ合わせる。

 

6. フライパンに油を引き、弱中火にかける。(30秒目安)

 

7. フライパンが温まってきたら、全体に卵液が行き渡るくらいの量(卵焼き用フライパンならお玉で約1杯分)を流し入れ、全体に広げる。

 

8. 持ち手側を持ち上げ、手前から奥へ卵を返し、卵焼きの「芯」を作る。(多少崩れてもOK)

 

9. 手前の空いたスペースに油を塗りたし、「7」と同じ量の卵液を加える。この時、芯の下にも卵液が行き渡るように少し浮かせるのがポイント。

 

10. 加えた卵液が固まったら、奥から手前に返し形を整え、奥へと移動させる。

 

11. 卵液がなくなるまで「9」と「10」を繰り返し、フライパンの端で形を整えたら、完成。

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『大葉の卵焼きの作り方☆卵焼きを綺麗に巻くコツやフワッと仕上げる方法をご紹介♪』をチェックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=MxpPOv8TM6k

 

最後は、ふわっとジューシーな「だし巻き卵」のコツを教えていただきます。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

漬け込んで簡単! 出汁は後入れの「だし巻き卵」

たっぷりと出汁が染み込んだだし巻き卵、おいしいですよね。でもなかなかお家で作るのは大変! 水分を多く含んだ卵はなかなか固まらず返すのに苦労したり、思っていたより味が濃い卵焼きになってしまったり……。卵焼きさえできれば、誰でもおいしいだし巻き卵が作れる方法を教えていただきました。

「お店で出されるだし巻き卵は、溶いた卵にだし汁を加えて焼き上げますが、なかなかお家で作るにはハードルの高い料理です。今回ご紹介するのは、卵焼きにだし汁に漬け込むだし巻き卵。卵焼き自体には味付けをしていないので、味のバランスもちょうどよく、出汁を漬け込むので焼きの失敗を心配する必要もありません。卵本来の味わいに出汁の深いコクが染み込んだ、おいしいだし巻き卵になりますよ」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

 

【材料】

卵:3個
水:(卵焼き用 ※水の量は、卵1個に対して、大さじ1が目安))大さじ3
(出汁用)100ml
顆粒かつおだし:小さじ1
薄口醤油:小さじ1
みりん:小さじ1
サラダ油:適量(※ほかに油は小さく畳んだキッチンペーパーに染み込ませておく)

 

【作り方】

1.耐熱容器に水100mlと顆粒かつおだし、薄口醤油、みりんを加え軽く混ぜる。

 

2. 「1」を600Wの電子レンジに入れ、1分加熱。顆粒が溶けていなければ、しっかりと混ぜ合わせておく。(卵焼きが出来上がるまで冷ます)

 

3. ボウルに卵3個と水大さじ3を加え、よくときほぐす。

 

4. しっかり混ぜ合わせたら、ザルや茶漉しを使い、少しずつ漉す。

 

5. フライパンに油を敷き、弱中火の加減で温める。

 

6. フライパンが温まったら、全体に卵液が行き渡るくらいの量(卵焼き用のフライパンならお玉1杯分ほど)を流し入れ、全体に広げていく。

 

7. 持ち手側を持ち上げ、手前から奥へ卵を返し、卵焼きの「芯」を作る。(多少崩れてもOK!)

 

8. 手前の空いたスペースに油を塗りたし、「6」と同量の卵液を加える。この時、芯の下にも卵液が行き渡るように少し浮かせるのがポイント。

 

9. 加えた卵液が固まったら、奥から手前に返し形を整え、奥へと移動させる。

 

10. 「8」と「9」を繰り返し、卵焼きが出来上がり。

 

11. ジッパー袋に「10」の卵焼きと「2」の出汁を入れ、空気を抜きながら封をする。

 

12. 粗熱を取ってから、冷蔵庫で半日冷やすと、出汁が染み込んだ「だし巻き卵」の完成。

 

漉した卵液に刻みネギ15gを入れ、今回使用していた「顆粒のかつおだし」を「顆粒のこんぶだし」に変更するとおいしい『ネギ入りのだし巻き卵』も作れます。

↑出汁は「白だし」「めんつゆ」などにアレンジしてもOK。お好みの出汁で楽しんでみてくださいね。

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『だし巻き卵の作り方☆漬け込んで作るおいしいだし巻き卵の裏ワザです♪』をチェック。
https://www.youtube.com/watch?v=aLkEltF6N_M

 

ちょっとのコツでおいしさがアップする「卵焼き」。簡単にできるからこそ見落としがちなコツを知ることで、いつもの味がグッとレベルアップするはず。基本を知っているだけで、アレンジの幅が広がり、他の料理にもチャレンジしたくなりますよね。

 

【関連記事】第1回 「ゆで卵」調理の正解 〜半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?〜

 

【プロフィール】

料理研究家 / ゆかり

調理師免許の資格を活かし、『おうちで簡単に作れるレシピ』をモットーに、YouTube・テレビ・ラジオ・雑誌・料理イベントなどを中心に活動。チャンネル登録者数45万人(10/9現在)のYouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』では、簡単スイーツをはじめ、和食、洋食、中華など幅広くレシピ公開。調理師免許やたまごソムリエの資格も持ち、2016年に卵料理レシピ本『たまご大好き』(アールズ出版)を出版。

料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen
https://www.youtube.com/channel/UC7LT6gRahCIBd5AO5MUl8dQ

 

 

半熟から固茹でまで「ゆで卵」を好みの固さに仕上げるには?卵ソムリエが教えるゆで卵の基本とアレンジレシピ

冷蔵庫に常備している食材といえば、卵。生のままTKG(卵かけご飯)で、茹でてサラダに、溶いてスープに、焼いて包んでオムレツやオムライスにと、卵を使ったレシピは本当にたくさんあります。ところが、何にでも使える便利な食材なだけに、ついつい基本をおざなりにしてしまいがち。本当は半熟卵を食べたかったのに、作ってみたら「固茹でになってしまった」など、失敗した経験を持つ人も多いはず。

 

そこで、YouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』が人気で、「たまごソムリエ」の資格も持つ料理研究家、ゆかりさんに、卵料理の基本を教えていただきます。第1回は、簡単そうに見えて実は奥深い「ゆで卵」。さらにアレンジレシピとして、「半熟味玉」と「半熟卵のスコッチエッグ」も教えていただきました。

 

↑料理研究家でたまごソムリエのゆかりさん

 

いつも同じゆで卵が作れない原因は?

毎回同じように作っているはずなのに、ゆで具合にばらつきが出てしまうこと、よくありますよね。このばらつきは何によってできてしまうものなのでしょうか?

「ゆで卵は水から、お湯からのどちらからでも作れますし、卵の大きさ、また卵そのものが常温か冷えているかでも、出来上がりにばらつきが生じやすいものです。いつも同じゆで卵を作れずに悩んでいる方は、知らず知らずのうちに条件が異なるレシピで作っているのかもしれません。

今回は、比較的時間による失敗の少ない『冷蔵庫で冷えているMサイズの卵を、沸騰したお湯に入れるレシピ』でご紹介します。一度に茹でる卵はMサイズ2個を想定していますが、5個以上を一度に茹でる場合、Lサイズの大きな卵を使う場合は、プラス30秒~1分多く茹でるのがおすすめです」(料理研究家・ゆかりさん、以下同)

 

おいしいゆで卵にするポイントは「ゆで時間」。
好みに合わせて変えてみよう

毎回同じゆで卵を作るために、もうひとつ大切なのが「ゆで時間」。半熟から固茹でまで、最適な時間を教えてもらいました。

 

↑茹で時間は、左上から6分・7分・8分・9分。左下から10分・11分・12分

 

「6分から12分まで、7つのゆで卵を比べてみました。すべて同条件で茹で時間だけを変えた、Mサイズの卵です。6分はトロトロとした黄身を楽しめる超半熟ですが、倍の12分茹でると、黄身は濃いオレンジ色から鮮やかな黄色になり、食べ応えのあるゆで卵になります。13分以上茹でると、黄身の周りに黒ずみができてしまうので、固茹でが好きな方は12~3分ほどで止めておくのがおすすめです

 

では、さっそくゆで方を解説していただきましょう。

 

【材料】

Mサイズの卵:2個
塩:小さじ1

 

【作り方】

1. 卵がかぶるくらいの水を鍋に入れ、沸騰させる

2. 沸騰したら、塩小さじ1を加える(塩を入れることで、急激な温度変化によって殻から白身が出てしまっても、すぐに白身が固まりやすくなる)

 

3. 冷蔵庫から取り出してすぐの卵を2個入れる(茹で始めの2~3分、卵を転がすと黄身が真ん中におさまりやすい)

 

4. 好みの茹で時間だけ、卵を茹でる(あまり強火にしすぎるとひび割れの原因になるため、ぷくぷくと小さな泡が出ているくらいの火加減にする)

 

5. 準備しておいた氷水(保冷剤でもOK)に、卵を取り出し10~15分置く(水がぬるくなったら、冷水に変えるのがおすすめ。しっかり冷やすことで、身が締まり殻もむきやすくなる)

 

6. 卵の丸いお尻部分にヒビを入れ、流水を使いながら殻をむく(半熟卵は柔らかいので、流水に優しくあてながら殻をむくのがポイント)

 

7. 半分に切る(糸を使うときれいに切れる)

 

8.器に盛り付けて、完成

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『ゆで卵の作り方☆お湯から茹でるゆで卵!ゆで時間の徹底比較です♪』をチェックしてみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=z_d_lM4PUpY

 

おいしいゆで卵の作り方がわかったところで、次のページでは少しアレンジを加え、「半熟味玉」と「スコッチエッグ」のレシピを教えていただきましょう。基本が理解できていれば、2つとも簡単に本格的な味わいを楽しめます。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

ゆで卵をひと味ちがったおいしさで楽しむには?
「半熟味玉」と「スコッチエッグ」の作り方

おいしいゆで卵の作り方がわかったところで、少しアレンジを加え、「半熟味玉」と「スコッチエッグ」のレシピを教えていただきましょう。基本が理解できていると、2つとも簡単に本格的な味わいを楽しめます。

 

3時間でできる!「半熟味玉」の作り方

“味玉”と聞くと、1~2日ほど冷蔵庫に入れておかなければいけないというイメージがありますが、今回のレシピはたったの3時間で出来上がり! 夕飯前にささっと仕込めば、家飲みのおつまみとしても楽しめます。

 

まず、なぜ3時間で仕上げられるのでしょうか?

 

「今回はたった3時間でも美味しくできる『半熟味玉』のレシピをご紹介します。3時間でOKな理由は、濃いめの漬けダレを使用しているから。もし中まで味を染み込ませたいという方は、実際に漬けダレをなめてみて『これくらいの味わいにしたい』という加減まで薄め、1日半前後漬けてみてくださいね

 

【材料(作りやすい量)】

卵(Mサイズ):4個
醤油:50ml
みりん:50ml
調理酒:25ml
乾燥昆布:5g(濡らしたキッチンペーパーで表面の汚れを拭き取る)
酢:大さじ1

 

【作り方】

1.鍋に、醤油、みりん、調理酒を入れ火にかける(中火)

 

2.沸騰したら、お酢を加え混ぜひと煮立ちしたところで火を止め、粗熱を取っておく

 

3.沸騰したお湯に塩(小さじ1)と卵を4個入れ、6分半茹でる

 

4.氷水に卵を入れ、10分ほどしっかりと冷やす

 

5.卵の丸いお尻部分にヒビを入れ、薄皮とともに殻をむく

 

6.ジッパー袋の中に、殻をむいた卵と「2」のタレ、乾燥昆布を一緒に入れる

 

7.冷蔵庫で3時間冷やす

 

8.お皿に盛り付け、お好みでブラックペッパーをかけたら完成

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『半熟味玉の作り方☆3時間漬け込むだけの簡単味付け半熟卵レシピです♪』をチェック!
https://www.youtube.com/watch?v=1KYGnzRZlWs

 

次のページでは、揚げても黄身がトロトロな「半熟卵のスコッチエッグ」のレシピを解説していただきます。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

揚げてもトロトロ! 半熟卵の『スコッチエッグ』の作り方

ゆで卵にハンバーグ生地のような肉だねを巻き付け、油で揚げるイギリス料理のスコッチエッグ。家でもお店で出てくるような半熟卵のスコッチエッグが食べたい! そう考えている人も多いはず。あるポイントを押さえておくと、揚げてもトロトロの半熟卵のままにできるそう。どんなレシピなのか教えていただきましょう。

 

「半熟のままスコッチエッグにするためには、中に入れる半熟ゆで卵をどれだけ冷やしておいたかがポイントになります。半熟のゆで卵の殻を剥く前に、冷蔵庫で30分冷やすことで、油で上げても熱が伝わりにくくなり、半熟のままの美味しいスコッチエッグが出来上がります。肉だねにもしっかり味付けをしているので、ゆで卵の茹で時間を変更した固茹でのスコッチエッグでももちろんおいしく召し上がれます。固茹でなら、お弁当のおかずとしても喜ばれる一品になりますよ」

 

【材料(2個分)】

卵(Mサイズ):3個
合い挽き肉:120g(使うまで冷蔵庫で冷やしておくのがポイント)
玉ねぎ:1/2個
パン粉:大さじ1
牛乳:大さじ1
オイスターソース:小さじ1
おろしニンニク:小さじ1/4
サラダ油:適量
塩こしょう:適量
薄力粉:適量
パン粉(衣用):適量

 

【作り方】

1.沸騰したお湯に塩(小さじ1)を入れ、卵2個を6分半茹でる

 

2.卵を取り出し、冷水に入れたまま冷蔵庫で30分しっかり冷やす

 

3.サラダ油をひいたフライパンにみじん切りにした玉ねぎと塩こしょうを入れ、しんなりするまで炒める

 

4.パン粉に牛乳を入れ、ふやかしておく

 

5.卵1個をときほぐし、肉だね用と衣用の半分に分けておく

 

6.ゴムベラで軽くねった合い挽き肉に、「4」のパン粉、オイスターソース、にんにく、溶き卵を加え混ぜ合わせる

 

7.「6」にあら熱をとった「3」の玉ねぎを入れしっかり混ぜ合わせる

 

8.冷蔵庫から取り出した卵の殻をむき、薄力粉をまぶしておく

 

9.ラップの上に肉だねを広げ、卵を包み込む

 

10.ある程度包めたら手で形を整え、ラップを巻きなおし、冷蔵庫で30分寝かせる(寝かせることで、卵と肉だねが密着し、崩れにくくなる)

 

11.「10」を取り出し、薄力粉、卵液、パン粉の順でまぶす

 

12.170度の油で、7分転がしながら揚げる

 

13.いい焼き色になってきたら火を止め、取り出し、完成

 

この作り方をさらにくわしく、動画で確認したい場合は、ゆかりさんのYouTube『半熟卵スコッチエッグの作り方☆クリスマス料理やお弁当にもピッタリ♪』をチェック!
https://www.youtube.com/watch?v=I0-zyZlwZwo

 

茹で時間を変更するだけでさまざまな料理の幅が広がる「ゆで卵」。おつまみに最高な半熟の味玉、ホームパーティでも喜ばれるスコッチエッグと、基本を知っているとチャレンジしたくなるレシピも増えますね。基本をしっかりと身につけて、おいしい卵料理を楽しみましょう。

 

次回は「卵焼き」について、ゆかりさんに教えていただきます。

 

【プロフィール】

料理研究家 / ゆかり

調理師免許の資格を活かし、『おうちで簡単に作れるレシピ』をモットーに、YouTube・テレビ・ラジオ・雑誌・料理イベントなどを中心に活動。チャンネル登録者数45万人(10/9現在)のYouTubeチャンネル『料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen』では、簡単スイーツをはじめ、和食、洋食、中華など幅広くレシピ公開。調理師免許やたまごソムリエの資格も持ち、2016年に卵料理レシピ本『たまご大好き』(アールズ出版)を出版。

料理研究家ゆかりのおうちで簡単レシピ / Yukari’s Kitchen
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鉄分やDHA、タウリンなどたっぷり!「カツオ」の栄養を余すところなく取るレシピ

5月になると、「初鰹」(はつがつお)のシーズンが始まります。江戸時代には一尾が下級武士の年棒に相当したという貴重な初鰹は、栄養価の高い魚のひとつでもあります。今回は家庭料理研究家で管理栄養士でもある前田量子さんに、カツオの栄養について解説いただくとともに、カツオのおいしさを堪能できるレシピを教えていただきました。

 

カツオの旬は二度やってくる

カツオの特徴といえば、高速で泳ぎ続けるという習性から、体の一部にしか鱗(うろこ)がないことが挙げられます。砲弾型の体にはブレーキの役割をする背ビレがついており、速く泳ぐときには体の中に畳めるような形をしています。世界的にもよく食べられている魚で、「ツナ」と呼ばれマグロの代用としても知られています。

 

そんなカツオには、初夏にやってくる“はしり”の時期の「初鰹」と、回遊した鰹がふたたび獲れる秋の「戻り鰹」の、二度の旬があります。初鰹はさっぱりとした脂のりで、戻り鰹はコクのある味わいと、それぞれにおいしさが異なります。日本では昔から“初物”には高い値段がつき、その時期に食べることが貴重であるとされてきたので、5~6月の初鰹をぜひ味わってみましょう。

 

「日本でもっとも有名なのは土佐(高知県)のカツオ。当地ではタタキにするときに藁焼きといって、火をつけた藁でカツオの表面を炙って食べます。燻製のような藁の香りがあり、おいしいですよ」(家庭料理研究家・前田量子さん、以下同)

 

鉄分、タウリン、EPA・DHA……カツオは栄養の宝庫!

カツオは魚介類の中でも栄養価が高く、低脂肪低カロリーなのに高タンパク質という、ダイエット中にもうれしい魚です。

 

「なんと25%がたんぱく質で、動脈硬化の予防に役立つEPAとDHAが含まれています。鉄分もトップクラスの含有量で、ナイアシンやビタミンB群も豊富に含まれており、エネルギーの代謝を促してくれます。貧血予防には、鉄分とビタミンCを合わせて摂ると、鉄の吸収力がよくなりますから、カツオと一緒にレモンや小松菜、モロヘイヤ、ピーマンなどと食べるといいでしょう。

他に、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、肝臓の解毒能力を強くするタウリンも豊富です。タウリンは体内でも作り出せますが、量が足りないので、食品から取り入れるのがおすすめです。また、トリプトファンという物質も豊富に含まれています。トリプトファンは脳内でセロトニンという物質に変わるのですが、これは“しあわせホルモン”と呼ばれていて、自律神経を整えたり安眠をもたらしたりします」

 

ただし鮮度には要注意!

ただし、注意点も。

「とても酸化しやすい魚なので、栄養価が下がらないよう、切り身ではなくサクで買い、できるだけ食べる直前に切りましょう。また、カツオには寄生虫がいるので取り扱いには注意が必要です。食べると食中毒になり、腹痛の原因になるアニサキスは内臓にいることが多いのですが、鮮度が落ちたものは身の部分にいることもあります。他にも、テンタクラリアという小さなお米粒のような虫がいることがあります。こちらは食べても害はありませんが、切ったときに白い粒があったら取り除きましょう。寄生虫は加熱するか48時間冷凍することで死滅しますから、心配な場合はお刺身も冷凍してからいただきます」

 

カツオの保存方法と切り方

レシピを紹介する前に、カツオの保存の仕方と、上手な刺身の切り方を教えていただきましょう。

 

・保存方法

カツオは足の早い(傷むのが早い)魚なので、刺身を買ってきたら、そのまま冷蔵庫に入れないでください。「ドリップしてしまわないよう、カツオをキッチンペーパーに包み、その上からラップを巻いて冷蔵庫に入れましょう」

 

・刺身の切り方

刺身を切るときは、柳刃包丁という魚専用の包丁があると便利です。刃が長いので何度も刺身に刃を入れる必要がなく、魚の繊維を壊さずカットできます。「洋包丁しかない場合でも、包丁の柄の方から刃を入れて、なるべく一気に切っていくと、きれいな断面で切ることができます」

 

次のページから、カツオがもつ栄養を余すことなく取れる、おすすめレシピを3つ紹介します。

栄養価を余すことなく食べられる!カツオのおすすめレシピ3

それでは、カツオを使ったレシピを3種類紹介していただきます。

 

1. 黄身とアボカドのまろやかさがカツオに合う
「カツオとアボカドのわさび醤油丼」

カツオのもつDHAとEPAに、アボカドの良質な不飽和脂肪酸とビタミンEをプラスし、動脈硬化を防ぐ効果を期待できる丼です。「ご飯はそのままでもいいですし、余裕があれば酢飯にしてもおいしくいただけます。カツオを漬け(づけ)にすることで、甘くてねっとりした感じが引き出されます」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき(または刺身)……300g

<A>
醤油……大さじ1
味醂……大さじ1

アボカド……1個
卵黄……1個

<B>
醤油……小さじ2
わさび……少々

胡麻……適量
刻みのり……適量
青ねぎ……適量

 

【作り方】

1.カツオの刺身をスライスし、調味料<A>に10分漬ける。

「バットにカツオを並べたら調味料をまわしかけ、ぴったりとラップをしておきます。こうすることで味なじみがよくなります」

 

「このまま冷蔵庫に10分入れておきます。短時間でも漬けられるよう調味料を多くしているので、漬け込み時間が一時間ほど取れる場合には、調味料を2/3くらいにしましょう」

 

2. ごはんに刻みのりをのせてから、アボカドと水気を切ったカツオをのせる。

「漬けにしたカツオとアボカドを交互にのせていきます。アボカドは、カツオの幅に合わせて縦にスライスするか横にスライスするか考えて切ると、盛り付けのときにうまくいきますよ」

 

「カツオを漬けた調味料には臭みも入っていますから、一度キッチンペーパーで軽く押さえてからのせます。味は中にしっかり染み込んでいますから、表面を拭っても問題ありません」

 

3. 真ん中に青ねぎの小口切と卵黄をのせる。仕上げに胡麻をふり、合わせたBをかける。

「青ねぎを枕のようにふかふかにのせたら、そこに窪みをつくり、卵黄を落とします。こうすると卵黄が流れず、きちんとのせることができます」

 

カツオのたたきならではの独特の風味と香ばしさに、卵黄とアボカドの甘みがプラスされた丼は、陽気のいい日にもさっぱりいただける味。お酒のあとの締めにもおすすめです。

 

2. 梅の香りのモロヘイヤソースがとろり
「カツオの刺身 梅肉風味のモロヘイヤ添え」

カツオに含まれる造血成分である鉄やたんぱく質を有効に取り入れるため、葉酸たっぷりのモロヘイヤを一緒に合わせました。「葉酸はDNAを作る水溶性ビタミンB群のひとつで、赤血球の生産を助けてくれます。葉酸が不足すると疲れやすくなり、貧血になる可能性もありますから積極的に取り入れましょう」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき……200g
モロヘイヤ……1/2袋
醤油……大さじ1
梅肉……適量
生姜(すりおろし)……適量
大葉……1~2枚

 

【作り方】

1. カツオは1cm幅に切る。モロヘイヤは葉をつみ、たっぷりのお湯で20~30秒茹で、ざるにあげる。

「モロヘイヤは熱が入りやすく、すぐにとろとろになってしまいます。ぐらぐらと沸かしたお湯でさっと茹でたら、すぐにざるにあげ、流水を流して冷やします」

 

2. モロヘイヤを細かくたたく。

「茹で上げたモロヘイヤは冷水でしっかりと冷やしましょう。冷えたら水気をぎゅっと絞り、水に栄養が流れでないようにします。モロヘイヤの緑色であるクロロフィルは、60℃くらいの温度が続いたり、調味料のような酸性のものと合わせると色が悪くなるんです。なるべくきれいな緑色に仕上げるため、茹でたら急いで冷やし、調味料を和えるのは食べる直前にします。絞れたら、包丁で細かく刻んでいきましょう」

 

3.カツオのたたきに、醤油と梅肉を混ぜあわせた①を添える。好みで生姜も添える。

「モロヘイヤの他に、ピーマンや小松菜でも食べ合わせはいいのですが、気を付けなくてはならないのは、ほうれん草。ほうれん草にはシュウ酸という成分が含まれていて、これが鉄分の吸収を妨げてしまうので、貧血にはよくないのです。モロヘイヤは茎から葉を外さないとならないので手間ですが、ぜひモロヘイヤと一緒に食べてみてください」

 

梅の酸味と香りがふわっとするモロヘイヤのソースを、カツオにのせていただきます。いつものお刺身も、ポン酢や醤油で食べるのと一味違った味わいです。

 

以上のように、カツオというとたたきや刺身の漬けでいただくイメージがありますが、生食に飽きたらこんな食べ方も!

 

3. 生食に飽きたらサクサクに揚げて
「カツオの半生カツ」

カツオをさっと揚げて半生にしたカツを、すりごまをたっぷり入れたソースでいただきます。「付け合わせには、たっぷりのキャベツの千切りを添えましょう。キャベツに含まれるビタミンCは鉄の吸収力を上げてくれるだけでなく、カツオと食べ合わせると美肌効果が期待できます。ソースにした胡麻にはセサミンという成分が含まれ、肝臓の機能を高めたり、保護する働きがあります。また、ごまの抗酸化力は活性酸素を除去したり生活習慣病を予防する働きもあり、アルコール代謝促進による肝機能保護に役立ちます。肝機能を助けるタウリンの働きをサポートしてくれますよ」

 

【材料(2人分)】

カツオの刺身……300g
バッター液(卵……1/2個・水……大さじ1・小麦粉……大さじ2・塩……少々)
パン粉……適量
揚げ油……適量
すりごま……大さじ2
ソース……適量

 

【作り方】

1. バッター液の材料をすべてビニール袋に加えて、よく揉む。

「ビニール袋の中で作ると、洗い物も少なくて済みますし、使い終わったらこのまま捨てればいいだけで楽ですよ」

 

2. カツオを1に入れて、バッター液を馴染ませる。

「カツオがぬるくなってしまうと、揚げたときに中まで火が通ってしまうので、冷蔵庫から出したてのカツオで行い、手早くバッター液をつけましょう」

 

3. パン粉をつけ、190℃で1分揚げる。

「レアな状態でいただきたいので、衣が色づいたらすぐに引き上げます。油がしっかりと190℃になってから、さっと揚げます。低い温度で入れてしまうと、いつまでも揚げ色がつかず、待っているうちに火が通ってしまいます」

 

4. カツオを1cmの厚さに切り、すりごま入りソースを添える。

「衣が剥がれないよう、包丁の柄の方から刃を入れて引き切りし、底の部分は包丁を上からトンと叩いて切り離します」

 

サクサクなのにお刺身を食べているようなジューシーさがある半生のカツ。ゴマのソースをカツオと千切りキャベツにかけていただきます。

 

 

カツオはおいしいだけでなく、栄養を摂るためにもぜひ食べてほしい魚です。この旬の時期に試してみてください。

 

【プロフィール】

家庭料理研究家 / 前田量子

一般社団法人日本ロジカル調理協会代表理事。管理栄養士、調理科学を得意とした家庭料理研究家。東京理科大学卒業後、織田栄養士専門学校にて栄養学を、東京會舘、辻留料理塾、柳原料理教室、ル・コルドンブルーにて料理を学ぶ。保育園や病院での勤務、カフェ経営を経て、調理科学に基づいた料理を教える教室を開催。都内栄養士専門学校(栄養士養成施設)にて調理学実習講師もしている。著書に『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』(主婦の友社)のほか、『いいことずくめ 考えないお弁当』『苦手な揚げ物も煮物も魚料理も得意料理に変わる ロジカル和食』(ともに主婦の友社)などがある。

 

『おうちで一流レストランの味になる ロジカル洋食』(主婦の友社)
計量とロジックでおいしい料理が作れるヒントが満載です。

 

筍(たけのこ)の味わいは部位によって違う! 収穫から調理まで、春の味覚を楽しむコツ

毎年、春に旬を迎える「筍(たけのこ)」。国内の産地は、九州や京都が有名ですが、首都圏ナンバーワンの生産量を誇るのが千葉県。とくに、大多喜町(おおたきちょう)のたけのこは、身の白さが際立つ“白たけのこ”としても有名で、道の駅「たけゆらの里」には首都圏を中心に県外からも、毎年多くの人がとれたてのたけのこを買い求めに訪れます。今回は、この“たけのこの里”へと足を運び、おいしく食べる秘訣を探ってきました。

【関連記事】基本的なたけのこの下処理の方法とごちそうレシピ

 

筍(たけのこ)の旬はいつ?

私たちが食べているたけのこには、採れたてを味わえる生のたけのこと、通年購入できる水煮のたけのこの2種類があります。

 

水煮のたけのこは、季節問わず好きなときに味わうことができますが、生のたけのこの旬は「春」。一般的な孟宗竹のたけのこの旬は、九州では3月中旬から始まります。千葉県大多喜町では、毎年3月末~4月中旬あたりをピークに収穫。収穫時期は気温やその年の天候条件によって多少前後するそうですが、2021年は「収穫時期は例年より早め」とのこと。

 

生のたけのこは、トマトやキュウリのようにタネや苗を植えて収穫する野菜ではないため、この1か月足らずの短い収穫時期を逃すと、もう生の状態でたけのこを食べることができません。その名の通り、収穫しなかったたけのこは「竹」となり成長してしまうので、生のたけのこを味わえるのはこの時期だけ!

 

続いて5月になると、細くて長い「姫たけのこ」のシーズンがやってきます。千葉県大多喜町でも、ゴールデンウィーク前後に収穫時期を迎えるそうなので、生のたけのこを味わいたいなら、春の時期を逃さないようにしたいですね。

 

生産者を訪問! たけのこはどうやって収穫している?

そもそも、たけのこはどのように生えているか、どのように収穫されているか、知っていますか?

 

千葉県大多喜町で長年、たけのこを掘り続けている生産者のひとり、君塚さんの竹林を訪ねました。シーズン中は毎日、まだ日がのぼる直前の朝5時頃から収穫作業を開始。一説によると、たけのこは夜の間に成長するとされているため、朝早くから収穫を始めているそう。また、地中の温度によってたけのこの成長スピードが変わってくるため、毎日収穫作業を行わないと地中から次々とたけのこが出てきてしまうのだとか。君塚さんの農園では、1日で200キロ以上のたけのこを収穫・出荷することもあるそうです。

 

たけのこを掘り当てるのは、クワ一本と足の裏の感覚のみ! タネから育てる農産物とは異なり、どこにたけのこが生えてくるのかは、その年の春にならないとわかりません。まるで宝探しのようですが、豊作の年もあれば、まったくたけのこが収穫できない年もあるため収穫量を予測できず、生産者としては苦労する部分も多いのだとか。

 

竹林の中に入り、ほんの少しの土の盛り上がりを探しながら掘り当てていきます。

 

たけのこが生えているところを見つけたら、すぐにクワを振り落とすのではなく、まずは丁寧に周りの土を退けていきます。

 

ある程度土を掘り、根元が見えてきたら、たけのこと繋がっている根を切ってしまわないよう、ピンポイントでクワを入れなければなりません。今回取材させていただいた君塚さんはなんと、御年80歳! このクワ入れ部分に熟年の技が光るのだとか。クワを入れられる場所を見つけたら、一気にクワを下します。

 

クワに引っかかったたけのこをそのまま引き出すと、美しく真っ白なたけのこの断面が顔を出します。掘り出したら、新しい根からまた美味しいたけのこが生えてくるようにお礼の気持ちを込めて「お礼肥い(おれいごい)」(収穫後に肥料をあげること)を行います。

 

↑大多喜町のたけのこは、身の白さが特徴。切り口もこのように真っ白です

 

ところで、たけのこはどうやって生えているのでしょうか? 実は、土の中にタネを植えて出てくるのではなく、大きく成長した竹の根から生えています。

 

↑根の途中に生えている小さくかわいいたけのこ(写真右)。根のどこにたけのこができるのか、どういうタイミングで生えてくるかなど、たけのこの研究者はほかの作物に比べてほとんど存在しないため、まだまだわからないところが多いのだとか

 

↑成長すると、見慣れたたけのこの姿に。周囲にはぎっしりと根が張っています

 

この地中に埋まる小さなたけのこは、2~3日で収穫できる状態へと成長しますが、収穫されないまま地中から顔を出してしまうと、えぐみが強くなり出荷もできない状態になってしまいます。しかし、この収穫されなかったたけのこも、地中では太く頑丈な根を猛スピードで広げていき、空に向かう竹へと成長していきます。この頑丈な根があることで10~20メートルの高さに成長しても、強い風に倒されることなく生きていけるのだとか。

 

ちなみに、管理せず放置されている竹林にはたけのこは生えてこないそうです。この君塚さんの竹林でも、5年ほど成長してしまった竹は伐採し、毎年若い竹の根から美味しいたけのこが出てくるように管理されています。

 

アク抜きしなくてもいい!? 秘密は土質にあり!

とれたてのたけのこがおいしいことはわかっていても……ハードルは下処理。“アク抜き”が大変、というイメージがありますよね。

【関連記事】基本的なたけのこのアク抜きの方法 https://at-living.press/food/17136/

 

ところが、この千葉県大多喜町周辺、とくに“平沢地区”で採れるたけのこは、アク抜きが不要なほど、えぐみが少ないとされています。この身の白さとえぐみの少なさは、土に秘密があるのだとか。

 

「たけのこはあくまで山菜なので、えぐみがまったくないとは言えません。しかし、この地域は砂が少なく、粘土質の良質な土にたけのこが生えてくるため、えぐみが少なく、念入りにアク抜きをしなくても、おいしく食べられるたけのこが多いんです。その代わり、他の地域よりはキロ単価で200~300円ほどは高くなりますが、それだけの価値はありますよ」(道の駅「たけゆらの里」店長・森さん)

 

また、この房総半島大多喜町周辺は近くに海があるため、土に含まれるミネラル分もえぐみを抑える要因になっていると言われているそうです。

 

↑道の駅「たけゆらの里」でも、この時期の朝採れのたけのこは、出せば午前中に売り切れてしまうほどの大人気商品

 

一方、水煮のたけのこは一年を通じて購入が可能。水煮の加工方法は非常にシンプルで、大釜で40~45分茹でたたけのこを一晩水に浸し、少量のクエン酸とともに真空パックに入れて、煮沸しただけ。余計なものは一切入らず、旬の時期のうちに加工しているので、1年中美味しいたけのこを楽しめます。

 

旬の味わいを余すことなく楽しめる「生」のたけのこを選ぶのもよし、好きな時にいつでも旬の味わいを楽しめる「水煮」を選ぶのもよし、用途や時期に合わせて楽しんでみてください。

 

採れたてのたけのこを保存するには? 買ってきたその日のうちに下茹でを!

ここからは君塚さんの農園からも仕入れを行っている食品メーカー、石井食品の広報で栄養管理士の市川菜緒子さんに、たけのこをおいしくいただく調理方法について教えていただきます。

 

大きく立派なたけのこを買ってきたのはいいものの、その日のうちに食べ切るのは大変です。どのように保存したら良いのでしょうか?

 

「その日のうちに大きな生のたけのこを食べ切れれば良いですが、1~2キロのたけのこをその日のうちに食べ切るのも大変ですよね。可能な限りその日のうちに下茹でし、保存容器に移しておきましょう」(市川さん)

 

市川さんによると、大多喜町のたけのこはえぐみが少ないため、以下の手順に沿って下茹でするだけで大丈夫なんだとか。アク抜きの糠や唐辛子を使う必要はありません。

 

【えぐみの少ないたけのこの下茹で方法】

1. できるだけ大きく、高さのあるお鍋を用意する
2. 流水で土を洗い流す
3. 外側の皮を3~5枚はがす
4. 先端から5cm程度を斜めに切り落とし、2~3cmほど縦に切り込みを入れる
5. 上から2つ目のイボまでを残し、根本を切り落とす
6. たけのこにかぶる程度の水を入れ、火にかける
7. 沸騰したら弱火にし、蓋をして約1時間茹でる(根本に端がスッと通る程度)
8. 柔らかくなったら火を止め、一晩(8時間以上)置き、しっかりと冷ます

 

すぐに食べるのであれば、タッパーや保存袋の中に、適量の水とともに入れて冷蔵庫で1週間ほど保管が可能です。その際は、毎日の水の取り替えをお忘れなく!  長期保存するのであれば、下茹でし、食べやすい大きさに切ったものをそのままラップし冷凍保存しても大丈夫とのことなので、用途に合わせて保存方法を変えてみるのがいいでしょう。

 

「買ってきたその日のうちに下茹でができないと、大多喜町のたけのこでも徐々にえぐみが出てきてしまいます。購入してすぐに下茹でできない場合や、アク抜きを推奨されている産地のたけのこは下記のどれかを、たけのこ一本あたりに対して入れて、下茹でするようにしてください。

 

・鍋いっぱいの量のこめのとぎ汁
・4分の1合分の米
・米糠1カップ

 

保存していると、たけのこの隙間に白いポツポツと結晶化したものが出てきますが、これは記憶力や集中力を高めると言われているチロシン(アミノ酸の一種)という栄養素です。ボーッとしてしまいがちな春にはぴったりな栄養素なので、洗い流さず一緒に食べるようにしましょう」(市川さん)

 

たけのこがどのように収穫されているか、また下処理について確認したところで、さっそく、部位ごとの味わいの違いと、各部位のおいしさにぴったりのレシピを紹介していただきましょう。

“部位”ごとに楽しみ方が違う! たけのこを1本丸ごと味わうレシピ

ひとくちに「たけのこ」といっても、いくつかの部位があります。カットしてみると、香りや柔らかさ(食感)などに、部位によって差があることがわかるはず。

↑たけのこは大きく、4つの部位に分けられます

 

それぞれの味わいをいかした調理法を市川さんに教えていただきました。

 

1.姫皮(ひめかわ)

「生のたけのこを購入した人しか味わえない「姫皮」は、まさに旬の味。下茹でしたものをそのままサラダやぬた和えに使っても美味しいですし、菜の花やワラビなど旬の山菜と一緒にお味噌汁に散らしても春らしさを感じられる一品になります」(市川さん)

 

●「木の芽和え」

【材料(2人前)】
たけのこ(姫皮)…100g
木の芽…10枚程度
白味噌…30g
酢…大さじ1

 

【作り方】
1.姫皮を千切りにする。
2.木の芽をすりつぶす。
3.白味噌と酢を和える。
4.3に、1と2を加えて和えたらできあがり。

 

2. 穂先(ほさき)

「穂先はたけのこの中でも香りが強く柔らかい部分なので、お吸いものなど薄めの味付けでそのままの味を楽しみたいところです。また大量に生のたけのこを購入した方は、姫皮と一緒に自家製穂先メンマを作ってみるのも良いかも。ある程度保存も効くので、旬を過ぎてもたけのこを味わい尽くせます」(市川さん)

 

●「若竹汁」

【材料(2人前)】
たけのこ(穂先)…40g
わかめ(下処理済み)…20g
だし汁…350ml
酒…大さじ1
みりん…大さじ1
しょうゆ…小さじ1
木の芽…お好みで少々

 

【作り方】
1.穂先とわかめを、食べやすい大きさに薄く切る。
2.鍋にだし汁を入れて火にかけ、酒、みりん、しょうゆを加え、お好みの味を調える。
3.煮立ったら、筍とわかめを加えて、もうひと煮立ちさせる。
4.お椀に盛り付け、お好みで木の芽をのせて完成。

 

3. 中程(なかほど)

「中程は是非、たけのこごはんで食べていただきたい部分。シンプルな土佐煮にもぴったりな部位として水煮などでも使いやすい部分でしょう」(市川さん)

 

●「土佐煮」

【材料(2人前)】
たけのこ(中程)…250g
かつおの削り節…15g
しょうゆ…大さじ2
みりん…大さじ2
砂糖…大さじ2
水300ml

 

【作り方】
1.中程を食べやすい大きさに切る。
2.鍋に水、しょうゆ、みりん、砂糖をいれ火にかける。
3.煮立ってきたら1を入れて、弱火で5分煮る。
4.かつおの削り節を加え、さらに5分ほど煮詰めてできあがり。

 

4. 根元

「根元は、食物繊維が豊富でゴリッゴリッとした食感が魅力。中華料理の炒め物や唐揚げなどがおすすめです」(市川さん)

 

●「きんぴら」

【材料(2人前)】
たけのこ(根元)…200g
ごま油…大さじ1
しょうゆ…大さじ1
砂糖…大さじ1/2
みりん…大さじ1/2
塩…ひとつまみ
いりごま…大さじ2

 

【作り方】
1.根元を千切りにする。
2.プライパンにごま油を熱し、1を1~2分程度柔らかくなるまで炒める。
3.しょうゆ、砂糖、みりん、塩で味を調え、強火で汁気がなくなるまで炒める。
4.いりごまを加え、全体になじませたらできあがり。

 

5. 一本丸ごと

「もし小ぶりなたけのこを購入された場合、下茹でした後、皮のまま縦に包丁を入れ(4等分もしくは2等分)アルミホイルで二重に包む『ホイル焼き』も絶品です。オーブンなら200℃で30分、グリルなら強火で20分焼き上げれば、ほっくりとしたたけのこのホイル焼きが出来上がります」(市川さん)

 

↑そのままでも十分に美味しいですが、岩塩をつけても、バター醤油をかけても抜群なのだとか。4つの部位の味・香り・食感の違いを丸ごと味わえる『ホイル焼き』は、春限定の味わい。生のたけのこを見つけた方は、ぜひチャレンジしてみましょう!

 

最後に、このたけのこを炊き込みご飯としていつでも手軽に楽しめる“素“を紹介します。

 

混ぜごはんの素を使えば、下処理なしでおいしさを堪能できる!

炊き上がったご飯に混ぜるだけでいい、石井食品の「筍まぜごはんの素」。契約農家がひとつひとつ丁寧に収穫した、朝採れの新鮮なたけのこを工場ですぐに調理し、産地の美味しさをそのまま詰め込んだものです。

↑千葉県の大多喜産の筍まぜごはんの素(税込1080円)。姫皮からも出汁をとっているので、ごはん一粒一粒にもたけのこの風味がしっかりと染み込む贅沢な味わい

 

「筍まぜごはんの素」は、大多喜産のほかに、表面に焦げ目がついた焼きたけのこが入った京都府の京丹波産(税込1188円)、鶏肉を合わせて旨味がさらにアップした佐賀県の唐津産(税込1026円)、今回生産者を訪れた千葉県市原産(税込1080円)が展開されています。調理工程において食品添加物は一切使わず、素材のおいしさを活かす無添加調理にこだわって製造されており、地元のお酒や醤油と組み合わせ、たけのこの風味を最大限に活かした「筍まぜごはんの素」に仕上げられています。

 

石井食品の筍ごはん https://cp.directishii.net/takenoko

 

 

春の訪れを告げてくれるたけのこ。水煮や加工食品が増え、いつでも旬の味をそのまま味わうことができるようになりましたが、生のたけのこの味わいはこの時期だけのおいしさです。用途に合わせて、生のたけのこと水煮や加工食品を選んで、春の味を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 市川 菜緒子

石井食品で広報や親子向けのオンライン講座を行いながら、自身でも個人の料理教室を主宰している。管理栄養士、野菜ソムリエの資格を有し、小さいお子様から大人まで楽しみながら料理する時間を提案している。

石井食品 https://www.instagram.com/ishii_official/

 

選び方や保存方法、かゆくならないコツも!「長芋・山芋」の下処理と絶品レシピ

貯蔵技術の発達とともに、年間を通して食べられる野菜が多い今、旬を感じることが少なくなっています。通年で見かける長芋や山芋も、実は秋に旬を迎えて収穫されるため、この時期だけは“新物”が並んでいることを知っていましたか?

 

今回は、管理栄養士で簡単レシピが得意な柴田真希さんに、長芋と山芋、2種の使い分けの仕方と、手軽に作れておいしいレシピを教えていただきました。定番の「とろろごはん」以外のおいしい食べ方をマスターして、いつもの献立のレパートリーに加えてみてください。

 

長芋と山芋は何が違う?

“とろろ”のように、すり下ろすと粘りがある芋には、山芋(やまいも・写真上)と長芋(ながいも・写真下)があります。ところが実は、“山芋”という種類の芋は存在しないのです。

 

山芋として知られているものは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマイモに分類される、「自然薯(じねんじょ)」「大和芋(やまといも)」「いちょう芋」などの総称にすぎません。長芋も、このヤマノイモ科ヤマノイモ属の作物ですが、ナガイモという個別の品種名。スーパーでも、「長芋」の名称で販売されています。この記事では、この分類にしたがって長芋と区別し、自然薯や大和芋などを「山芋」と呼ぶことにします。

 

「自然薯や大和芋の間で違いはそれほど大きくありませんが、山芋と長芋の違いはすり下ろしてみると、すぐにわかります。山芋は、もったりとしていて粘りが強く、だしで溶いて麦ごはんにかけていただくのがおすすめ。一方、長芋は水分が多くてみずみずしく、サラサラとした粘り気です。もちろんこちらでとろろごはんにしてもいいのですが、シャキシャキした食感を活かし、サラダにするのもおいしいですよ」(管理栄養士・柴田真希さん、以下同)

 

旬の時期は? 長芋の旬は2度ある!?

自然薯は日本原産、そのほかの山芋や長芋は、中国原産の作物。現在市場に出回っているものは国産がほとんどで、いずれも11月下旬〜12月に“新物”として収穫されます。長芋はこれを“秋掘り”と呼び、掘り出さずに低温で越冬させ、粘りや甘みが強くなった4月〜5月に行う収穫を“春掘り”として呼び分けています。つまり長芋の旬は、年間に2度あるのです。

 

ちなみに長芋は、栄養価が高く消化もいいため、古来“滋養強壮”の食物として親しまれてきました。炭水化物のほか、カリウム、ビタミンB1、食物繊維などが豊富な上、デンプンを分解するアミラーゼなどの消化酵素も多く含まれています。

 

おいしい個体の選び方は?

長芋・山芋は、さまざまな形や太さのものが売られていますが、太くてずっしりとしていて、まっすぐに伸びたものがとくにおいしいのだそうです。

 

ヒゲが残っていて、表面に黒っぽいシミや傷がないものを選びましょう。カットされて売っていることも多いので、その場合は切り口を見てみてください。切り口が変色しておらず、白くてみずみずしい色のものが、鮮度がいい証拠。細いものや首の部分に近いものは、アクが強いものも多いので気をつけて選んでみてください」

 

食べきれないときはどうする?

「すぐに使わない場合は、1本丸ごとのときは新聞紙に包んで冷暗所か野菜室へカットしてあるものはラップで空気が入らないよう包んで野菜室へ入れて保存しますが、こちらは早めに使い切りましょう。また、皮を剥いて保存バッグに入れ、上から叩いて潰せばとろろ状に。これを冷凍しておくと、いつでも使えて便利ですよ」

 

冷凍したものは、冷蔵庫に入れてゆっくり解凍し使いましょう。

 

触るとかゆくなる場合の対処法は?

カリウムや食物繊維が豊富で消化にもいい長芋・山芋ですが、触るとかゆくなってしまう、という人には扱いづらい食材ですよね。

 

「かゆくなってしまうのは、長芋・山芋に含まれるシュウ酸カルシウムという成分が原因です。この成分は針状に尖った形をしているので、そのトゲが肌への刺激になってしまうんですね。シュウ酸カルシウムはアルカリ性なので、手に酸性であるお酢を塗布してから長芋・山芋に触ると、緩和されるかもしれませんが、個人差がありますシュウ酸カルシウムは熱に弱いので、お湯で洗うのも効果的です。口元がかゆくなる方は、生食ではなく加熱調理していただくのがいいでしょう。

 

あくまで個人的な見解ですが、かゆくなるのは手のひらではなく甲の方なので、なるべく手の甲に付着しないように作業するのも効果的だと思います。また、見た目や食感が気にならないのであれば、皮は剥かなくてもかまいません。タワシでこすり洗いすればヒゲも取れますし、味にも影響しませんよ」

 

「すり下ろすときは、このようにフォークに刺すと、手につきにくくなります。フードプロセッサーやポリ袋に入れて潰すなど、なるべく手につかないように調理してみましょう」

 

この長芋・山芋をどうやって楽しんだらいいでしょう。最初に思い浮かぶのはもちろん“とろろごはん”ですが、次のページでは、アイデアいっぱいのおすすめレシピを紹介します。

この長芋・山芋をどうやって楽しんだらいいでしょうか。最初に思い浮かぶのはもちろん“とろろごはん”ですが、ここでは、アイデアいっぱいのおすすめレシピを紹介します。長芋・山芋のどちらでも作れますが、それぞれ食感が異なるので、まずはおすすめしている芋の方で作ってみてください。

 

1. ふわとろ食感で食べ応えがあるのにヘルシー!「海老とブロッコリーの山芋味噌グラタン」

もったりとした山芋をたっぷり入れたグラタンは、それだけで満足。とろろ状にした山芋を焼くと、スフレのようなふわふわの軽い食感になります。さらに味噌を隠し味に入れることで、コクと深みのある香りを感じられるグラタンに仕上がります。

 

【材料(2人分)】

・味噌…大さじ1
・卵…1個
・山芋(すりおろし)…200g
・牛乳…大さじ2~3
・バター…10g
・むきえび…150g
・ブロッコリー…120g
・ピザ用チーズ…40g

 

【作り方】

1. 味噌とたまごを混ぜ合わせる

ボウルに味噌、卵を入れてよく混ぜます。「味噌がダマにならないよう、すり混ぜるようにヘラで合わせていきましょう」

 

2. すり下ろした山芋を2~3回に分けて加える

卵液にしっかり山芋が馴染むよう、少しずつ山芋を入れていきます。「山芋に弾力があるので、卵と絡むようにその都度泡立て器でよく混ぜます」

 

3. 牛乳を加える

卵と山芋がよく混ざったら、牛乳を加えます。「牛乳を加えたあともしっかり混ぜ、ふわふわのとろろ状にしていきましょう。ここでよく混ぜておくと、ふっくらしたグラタンになりますよ」

 

4. フライパンにバターをひき、海老とブロッコリーを蒸し焼きにする

温めたフライパンにバターを入れたら、海老とブロッコリーを加えましょう。ブロッコリーの芯に火が通ったら次に進みます。「茹でてから炒めてもいいのですが、茹でるとブロッコリーに火が通り過ぎてしまったり、面倒だったりするので、蓋をして蒸し焼きにするのがオススメです。時間も短縮でき、ブロッコリーがちょうどよい硬さに仕上がります」

 

5. 耐熱皿に海老とブロッコリー、(3)を交互に入れてピザ用チーズをかける

耐熱皿にはサラダ油(分量外)を薄く塗り、具材が偏らないよう、山芋を流し入れながら海老とブロッコリーを置いていきましょう。「上からかけるチーズはお好みの量で構いません。海老とブロッコリーが隠れてしまうと、なんのお料理かわからなくなってしまうので、姿が見えるようにチーズをかけてあげると、仕上がりがきれいになりますよ」

 

6. オーブントースターで10~15分ほど焼く

オーブントースターに耐熱皿を入れて加熱します。「トースターの他に、オーブンや魚焼きグリルでも同じように焼けます」

 

完成

チーズが溶けて、焼き色がおいしそうにつけば完成です。熱々のグラタンと一緒にバゲットを用意してランチにするほか、小腹が空いた夜はワインとともに夜食にしても、山芋なら罪悪感が少なくてすみそうですね。

 

2. モチモチとシャキシャキを同時に味わう「お餅と長芋のバター醤油おやき」

お餅のもちもち感と長芋のシャキっとした食感が交互に楽しめるおやきは、お餅が余りがちな季節にぴったりです。ホットプレートで焼いて家族でいただくのもいいですね。冷凍した長芋でもおいしく作れます。

 

【材料(2人分・4枚分)】

・長芋…200g
・切り餅…2個
・しらす…40g
・片栗粉…大さじ2
・塩・こしょう…少々
・サラダ油…大さじ1/2
・砂糖…大さじ1/2
・醤油…大さじ1
・かつお節・青のり…適量

 

【作り方】

1. 長芋を保存袋の上から叩いて潰す

長芋を保存袋に入れたら、上からすりこぎなどでまんべんなく叩きます。「形が残る部分がある方が、食べたときのアクセントになるので、8割くらいを潰すようにしてみてください。このままの状態で保存袋ごと冷凍しておけるので便利ですよ。冷凍したものを使う場合は、自然解凍してから(2)に進んでください」

 

2. 餅をサイコロ型に切る

硬い餅を切るときは、包丁の刃を上から両手で押すようにして切ります。「大きさは好みで構いませんが、早く火が通るように小さめにカットしましょう」

 

3. 保存袋やポリ袋に(1)、(2)としらす、片栗粉、塩こしょうを入れてよく揉み込む

しらすや長芋が塊にならないよう、よく揉んで混ぜ合わせておきましょう。「ボウルなどで和えてもかまいませんが、ポリ袋の中で混ぜてしまえば、手が汚れず、洗い物が少なくてすみます」

 

4. フライパンにサラダ油をひき、四等分して生地を丸く流し込む

それぞれの生地がくっつかないよう、離して丸く整えていきます。「火加減は中火にして、片面ずつ焼いていきましょう」

 

5. 片面3分ずつ焼く

生地がくっつかなくなり、焼き色がついてきたらひっくり返します。「蓋をしないで焼くことで、山芋のシャキシャキとした歯応えを残して焼き上げることができます。蓋をするともちもちになるので、そちらがお好きな方は蓋をして焼きましょう」

 

6. 砂糖と醤油を入れる

おやきが焼けたら、生地につかないように砂糖と醤油を入れます。「生地に調味料を直接かけてしまうと、その部分だけが濃い味つけになってしまいます。フライパンに流し込んでから、砂糖を溶かして絡めるようにしていきます」

 

完成

調味料がしっかり絡んだら完成です。あまじょっぱい味が、ごはんにもよく合いますよ。

 

3. 生食のシャキシャキをサラダ仕立てに。「味噌マスタードドレッシングの長芋サラダ」

新鮮な長芋を買ったその日に作りたい、さっぱりとした味のサラダです。醤油やワサビなどをかけていただくことが多い長芋ですが、マスタードや酢と合わせることで、洋風の味に仕上がります。

 

【材料(2人分)】

・長芋…200g
・かいわれ大根…適量

<A>
・はちみつ…小さじ1
・粒マスタード…小さじ1
・味噌…小さじ2
・酢…小さじ2
・オリーブオイル…小さじ1

 

【作り方】

1. 長芋を角切りにする

ぬめりがあるので、しっかりと手で押さえて切りましょう。「形はお好みでかまいませんが、千切りにするよりもシャキシャキとした歯応えが楽しめますよ」

 

2. (A)を混ぜ合わせる

調味料をひとつずつ混ぜ合わせていきます。「このとき、テクスチャーが硬いものの方から混ぜていくと、ダマにならずに混ざります。また、最後に入れるものはオリーブオイルにし、オイルを入れる前に一度味見をしてみましょう。酸味や甘味のバランスが好みの状態になってから、オイルを入れます」

 

3.(1)とかいわれ大根を皿に盛り、(2)をかける

かいわれ大根が入ると、彩りがよく華やかな印象になりますよね。「サラダに入れるものは何でも構いません。レタスやハムなども入れてたっぷり作り、大皿で出すのもオススメです」

 

完成

はちみつの甘味とマスタードの酸味が、長芋を華やかな味にしてくれる一品。家にある調味料で思い立ったらすぐ作れるのもうれしいところです。

 

長芋も山芋も、身近な食材なのにいつも同じ使い方しかしていなかった! という人は、ぜひ新しいレシピで長芋・山芋のおいしさを味わってみてください。

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 柴田真希

女子栄養大学短期大学部卒業後、給食管理、栄養カウンセリング、食品の企画・開発・営業などの業務に携わり、独立。27年間悩み続けた便秘を3日で治した「雑穀」や「米食の素晴らしさ」を広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メーカーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。手掛けたレシピ本も多数あり、近著に『切るだけ&漬けるだけ! おうちで簡単ミールキット』(学研プラス)がある。
https://www.e-mish.com/

 


『切るだけ&漬けるだけ! おうちで簡単ミールキット』(学研プラス)



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