日本より日本っぽい?アメリカで日本車が愛され過ぎる理由

年に一度、仕事と三世代家族旅行を兼ねてアメリカに3週間ほど行っている。滞在先は主にロサンゼルスやラスベガス、サンフランシスコを中心とする西海岸だ。アメリカに取材旅行へ出かけるようになって二十数年経っているが、当時から日本車の多さに驚いていた。近年はさらに日本車率が高くなっているように思う。

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■ロサンゼルス郊外のとあるTARGETの駐車場でびっくり

TARGETとは大きなスーパーマーケットで生鮮食料品以外、家電から飲料、衣類、バッグ、小物、化粧品、ドラッグストアなどが中心のお店だ。いつも泊まるホテルの近くにあるので、滞在中はたびたび訪れるのだが、こちらの駐車場に停まっている車の車種を改めて確認してみてびっくり…ほとんどが日本車である。日本車以外を探す方が難しい。

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写真をご覧いただければわかる通り、日本車以外は10台中1-2台あるかないか?である。街を走っていても、視界に入る車がすべて日本車ということも珍しくない。やはり、ホンダ、トヨタ、日産が多いが、近年アメリカで爆発的な人気となっているスバルやマツダ、三菱も良く見かける。

 

そこで車好きの息子がひとこと

「日本より日本車が多いじゃん」

 

う…、ほ、ほんとだ。確かにそうだ!今までなぜこの事実に気づかなかったんだろう。とくに、港区、世田谷区、目黒区、横浜市青葉区など輸入車率が高い地域の紀伊国屋やナショナル麻布マーケット、自由が丘ガーデンなどの高級スーパーの駐車場と比べたら、圧倒的にカリフォルニアのスーパーの駐車場の方が日本車率高し!コストコの駐車場でもきっとそうだ。トランプ大統領はこの事実を知っているんだろうか?以前、トランプ氏は「日本はもっとアメリカ車を買え!」と言っていたけど、アメリカ人でさえ自国の車より日本の車を選んでいるのだ。

 

■2016年の乗用車販売台数ランキング1-5位はすべて日本車!

では、実際、アメリカではどれくらいの日本車が販売されているのだろうか?2016年の車名別販売台数ランキングを見てみよう。

 

★2016年 米国乗用車車名別販売台数ランキング

1位 トヨタ カムリ (388,618台)

2位 ホンダ シビック (366,927台)

3位 トヨタ カローラ (360,483台)

4位 ホンダ アコード (345,225台)

5位 日産 アルティマ (307,380台)

 

1~5位まで見事に日本車が並んでいる。ちなみにカムリは、15年間連続で乗用車販売台数ナンバーワンを記録している。乗用車だけではない。SUVにおいても1位はホンダCR-V、2位トヨタRAV4、3位日産ローグ、4位フォードエスケープ、5位フォード エクスプローラーと5位までのランキング中、上位3車種は日本車なのである。

 

■日本車はなぜこんなにも愛されるのか?

かつて、日本車が売れている理由といえば、「燃費がよい」「安い」「壊れない」というやや消極的なものだった。しかし、近年は少しその様相が変わってきている。積極的に日本車を選ぶユーザーが増えているのだ。

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例えば新型カムリは、米国では2017年1月に発表され、同年6月頃から生産・販売が開始された。カムリの革新的なデザインの変更は日本でも大きな衝撃を持って伝えられた。

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おじさんセダンから一気に、カッコいいスポーツセダンに変貌を遂げたカムリだが、この変貌ぶりは、米国のユーザーにとっても同様の衝撃だったようだ。

 

ロサンゼルス近郊ガーデナ市にあるトヨタディーラー「SOUTH BAY TOYOTA」でインターネット販売の責任者ジェイ・ソリアーノ氏に話を聞いてみた…。

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「今回のカムリは非常にアグレッシブなスタイルになった。エクステリアにもインテリアにもスポーティな要素がたくさんある。新顔カムリの広告が流れ始めると、多くのユーザーがデポジット(予約金)を入れ始めた。その斬新なスタイルを見て『新しいカムリを買わなくては!』という思いが沸き上がってきたという。カムリはとても人気のある車だが、これまで、そのデザインにスポーティなイメージをアピールする要素は皆無だったが、今回は違う。とくに好評なのはリアクオーター、リヤコンビランプ周りのデザインで、レクサスのような印象を与えるというのがその理由の一つだ」

 

カムリだけではない、2位のシビックもアメリカの道路でたびたび見かけたが、文句なしのカッコよさである。日本車がデザインで選ばれることはもはや特別なことではない模様。もちろんアフターサービスの良さ、パーツ供給の速さも「愛される理由」の一つだ。

 

■アメリカ人にとって日本車とはどんな存在か?

私たち日本人は、国産車と輸入車を明確に区別する。たとえ国産車と価格やサイズの面で競合するような輸入車であっても、「外車=特別な車、金持ち車」というイメージはなかなか覆られない。故障をしても、車検の費用が高くても「外車だから仕方ない」と思うだろう。「外車」は手洗い洗車代を高く設定しているガソリンスタンドも少なくない。数が少ないので(約9%)それもしょうがないのだろうけれど。

 

ではアメリカにおける日本車はどうか?日本車に乗るアメリカ人は、日本車をどう思っているのだろうか?

 

「もちろん日本車ユーザーはそれが日本由来のブランドだということは知っている。しかし、トヨタもホンダも30年以上、米国で多くの車を販売している。乗る側にも『外国車』という感覚はもはやほとんどないはず。アメリカ人の生活や自動車文化にしっかり定着し、根付いている。アメリカの一部になっている」(サウスベイ・トヨタ ジェイ・ソリアーノ氏)

 

なるほど…そこまで定着しているならば、もはや「外国車」「輸入車」という感覚はないだろう。実際、カムリなど、米国で生産されている車も多い。

 

日本車はこれからもアメリカで愛され続けるだろう。いや、アメリカならずとも、世界の多くの国々で新車はもちろん日本から輸出された中古車も30万キロ、50万キロという走行距離をモノともせず異国の地で人々の生活に欠かせないアシとなって頼られている。日本車ってやっぱり凄い。そして愛され上手だ。

 

【著者プロフィール】

自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子

 

山口県生まれ 学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。愛車は新車から19年&24万キロ超乗っているアルファスパイダー。