関西の酒と食の面白さを、酒場を愛するライターが探る噺

提供:宝酒造株式会社

 

関西で甲類焼酎を使ったチューハイを独自の工夫で美味しく飲ませてくれるお店に伺って、その味わいを堪能するシリーズ関西チューハイ事情。日本酒を主役に、関西独自の食文化を深掘りした関西食文化研究。今回は、東京生まれ、大阪在住のライター・スズキナオさんが、独自の視点で関西のお店を巡った両シリーズを振り返っていきます。

 

 

最高の相性「純ハイ」と「串カツ」

【関西チューハイ事情】シリーズでまず訪れたのは、大阪生まれの「純ハイ」が定番酒となっている「ヨネヤ」の梅田本店です。

スズキナオ/東京出身、大阪在住の酒場ライター。酒噺で「関西食文化研究」や「関西チューハイ事情」連載を担当。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』などがあるが、テクノラップユニット「チミドロ」のリーダーとしても活動する

 

「純ハイ」とは、宝焼酎「純」をベースにした「酎ハイ」のこと。「純」は宝酒造が誇る11種類の樽貯蔵熟成酒を13%ブレンドした、まろやかで口当たりのよいワンランク上の甲類焼酎です。

 

「ヨネヤ 梅田本店」ではアルコール度数35%の「純」を使用することで、飲みごたえがあり、割ってもお酒の風味が薄れないおいしさに仕上がっています。また、ガス圧を強めに設定した専用ディスペンサーから注ぐことで、キレと爽快感も抜群です。

↑「純ハイ」を安定した品質で提供するためだけに作られた専用のディスペンサー(「純スペ」と呼ばれるそう)

 

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どんな料理にも合う「純ハイ」ですが、大阪名物「串カツ」との相性は抜群です。【関西チューハイ事情】も第3回では「串カツ」の人気店「串かつだるま」を紹介。大阪・浪速の繁華街、新世界で1929(昭和4)年に創業された「串かつだるま」は、「串カツ」を大阪名物へと押し上げた立役者。大阪市内と京都に10数店舗を展開し、その魅力を発信してきました。

 

その老舗で、新名物として親しまれているお酒が「だるまハイボール純」。こちらは同社の常務取締役・藪口征平さんが、ミナミの有名焼肉店で「純ハイ」を飲んで感銘を受けて誕生しました。35度の「純」と強炭酸水、レモン風味のオリジナルエキス、そしてカットレモンがおいしさの決め手です。

 

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京都ローカルの「赤い」お酒

「純ハイ」以外に個性を放っている「酎ハイ」があります。それが「あか」や「ばくだん」と呼ばれる甘酸っぱくて赤いお酒。こちらは関西というか京都のローカル酒で、京都市下京区のお好み焼き店「やすい」発祥といわれています。

 

そんな酎ハイを紹介したのが第4回の「お好み焼 吉野」。「あか」も「ばくだん」も、赤ワインを加える「酎ハイ」。作り方には店ごとに細かな違いがあり、ワインの種類も違えば、甲類焼酎を炭酸水ではなくサイダーで割って甘くするスタイルも。「お好み焼 吉野」では35度の宝焼酎「純」に、強炭酸と絶妙な量の赤ワインを注ぎ入れることがおいしさのこだわりです。

↑35度の宝焼酎「純」に、強炭酸と絶妙な量の赤ワインをいれて作る「お好み焼き 吉野」の「あか」

 

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「レモンサワー用焼酎」で、ひと味違う「酎ハイ」を楽しむ

京都では「夢処 漁師めし 雑魚や」も紹介しました。こちらは現地で人気の飲食企業「雑魚やグループ」が展開する一軒。どの業態もとびきり新鮮な海の幸を主体としており、同店では鮮魚に合う「生レモン酎ハイ」が人気。

 

この「生レモン酎ハイ」のベースとなっているのが、アルコール度数35%の宝焼酎「レモンサワー用焼酎」です。レモンの爽やかな成分との相性を追求した、レモン系の香り成分を持つハーブを原材料の一部に使用しており、その香り高さと爽快感が、多くの食通酒好きをトリコにしています。

↑アルコール度数35%の宝焼酎「レモンサワー用焼酎」を使った「生レモン酎ハイ」が料理にマッチ!

 

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第5回で紹介した「焼肉ホルモン おときち 堺駅南口店」も「レモンサワー」には宝焼酎「レモンサワー用焼酎」35度を使用していました。2021年にオープンした同店では、各席に強炭酸の卓上サーバーが設えられていることが特徴。お客さんは飲み放題をオーダーすることで、このサーバーを使って自由に注ぐことが可能になります。

 

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関西でも浸透しつつある関東流の飲み方

【関西チューハイ事情】シリーズでは、東京から関西に進出した「立呑み晩杯屋」にも訪問。同店は2009年に東京・武蔵小山で1号店が開業し、2022年に大阪の十三(じゅうそう)に関西1号店がオープンしました。

 

創業者は、東京・赤羽の老舗立飲み店「いこい」出身で、「立呑み晩杯屋」にもそのおいしくて安いDNAが色濃く継承。甲類焼酎を「バイス」「ホッピー」「ハイサワー」など東京生まれの割り材で割って飲む「酎ハイ」や、「甲類焼酎=ナカ」と「割り材=ソト」で個別に提供し、好みの濃度で楽しむ東京流の飲み方を関西でも貫き、そのカルチャー浸透に一役買っています。

↑東京生まれの「バイス」が関西で飲めるのもうれしい

 

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日本酒を主役に関西の食文化を巡る

日本酒を主役に、関西独自の食文化を深掘りした【関西食文化研究】シリーズ。初回に訪れたのは、京都市東山区のうなぎ料理店「うぞふすい わらじや」です。

 

まずは、「鰻の白焼き」とスパークリング日本酒の先駆けである松竹梅白壁蔵「澪」で一献。そして同店の名物である、やさしい出汁と筒切りにしたうなぎが主体の鍋「うなべ」を松竹梅「豪快」の熱燗でペアリング。料理と酒のうまみ同士が引き立て合ううえ、鍋の隠し味にはタカラ料理清酒のほかに「豪快」も使われているとのこと。温かいもの同士でもあり、ますますお酒が進むご馳走だったことでしょう。

 

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斬新な日本酒の提供方法

第2回では、大阪・京橋を代表する立ち飲み店「酒房まつい」へ。こちらの特徴的な日本酒の提供法が、一升(1.8L)強入るという巨大な錫製の徳利から、同じく錫のコップに注ぐスタイル。これは、大の日本酒通だった創業者が発案したそうです。

↑一升(1.8ℓ)ちょっと入るという大きな錫製の徳利

 

取材では、この店の定番酒である松竹梅「豪快」をお燗に。錫のお猪口や盃などは味わいをまろやかにする特徴があるといわれますが、徳利まで錫製という同店の味はよりふわっとやわらかに。名物の串カツにおでん、どて焼きとも好相性で、日本酒好きにはぜひ訪れていただきたい関西の名店です。

 

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神戸牛と日本酒のマリアージュを楽しむ

第3回では兵庫県の神戸へ。「京都・伏見」と並ぶ酒都の「灘」があるうえ、同県は“酒米の王様”と称される山田錦や、ブランド黒毛和牛のルーツとも呼ばれる但馬牛のふるさとであるなど、優れた食材の宝庫。

 

そんな兵庫で、神戸牛と日本酒とのペアリングを探ったのが「神戸牛 八坐和 阪急三宮店」。コース序盤の肉寿司にはスパークリング日本酒「澪」、赤身ステーキには「松竹梅白壁蔵」<生酛純米>、霜降り肉には「松竹梅白壁蔵」<純米大吟醸>をペアリング。日本酒がお肉それぞれのおいしさをより高めてくれるお酒であることを、スズキナオさんも実感したようです。

↑贅沢に前菜感覚で味わう神戸牛肉寿司とスパークリング日本酒「澪」

 

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京都の焼肉カルチャーを堪能する

兵庫にはステーキの名店がひしめく「神戸」、大阪にはコリアンタウンの「鶴橋」など、関西には各地に個性的な肉食文化圏がありますが、京都にもこの地ならではの特色が。第4回にうかがったのは、2021年に東京へ進出して話題にもなった「焼肉・塩ホルモン アジェ」の松原本店です。

 

京都の焼肉店でよく見られる特徴のひとつが「洗いダレ」。出汁や酸味を感じるあっさりした味わいで、「アジェ」でも欠かせないタレとなっています。同店名物の「ホソ(牛の小腸) 塩」にはスパークリング日本酒「澪」、「上ハラミ 塩」には松竹梅「豪快」を。脂の甘み豊かな部位には甘口、肉汁とうまみがあふれる部位には辛口がよく合います。関東の人は、ぜひ東京・有楽町店へ。

↑ホソ塩専用に作られた“洗いダレ”

 

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いかがでしたか? 東京まれ・大阪在住のスズキナオさんの独自の視点で選ばれたお店の数々。あなたはどのお店に通いたくなりましたか?

 

 

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冬に最適! 自宅でじっくり燗酒を楽しむ噺

提供:宝酒造株式会社

 

古くは奈良時代ごろから、日本酒の伝統的な嗜み方として知られる「お燗」。しかし、なぜ、温めることでおいしくなるのでしょうか? 本稿では、酒蔵に勤めた経験も持つ日本酒アドバイザー・関友美さんとともに、「お燗」に向く日本酒や、お燗の種類と温度など、燗酒について深掘りし、自宅で楽しむ方法を提案します。

関 友美/きき酒師。地元の札幌でOLとして働いたのちに上京。飲食店勤務、酒蔵での勤務などを経験し、現在はライター業のほか、日本酒をはじめとした製品造りのアドバイザー、酒蔵コンサルタントなど、日本酒事業に関わる数々の仕事を手がけている

 

 

なぜ、温度によって日本酒の味が変わるのか?

「この日本酒はお燗に向いている」とか「この日本酒は冷酒のほうがおいしい」など、温度によって日本酒の味わいは変化します。しかし、実は日本酒の味が変わるのではなく、温度の高低に応じて我々の舌の味覚が変わるため「味が変わった」と感じるのです。

 

温度によって変化するのは「アルコール」「酸」「香り」「甘み旨み」の4つ。アルコールは温めることで揮発しやすくなり、舌はやわらかさを感じるようになります。また、酸にはクエン酸や乳酸、コハク酸やリンゴ酸などがありますが、日本酒を温めるとこうした酸の感じ方に影響が出て、甘さや酸味などが変わったように感じます。

 

日本酒が温まると果実のようなエステル香(アルコールや酸とも関係する香気成分)を穏やかに感じる一方、お米本来の香りが際立つようになります。そして、味覚は温度が高くなると甘みや旨みを感じやすくなり、そのため塩味や苦みなどを含めたバランスも変化し、日本酒の味が変わったように感じるのです。

 

燗酒の種類(温度)と特徴

日本酒は精米歩合や醸造アルコールの有無などで分類されます。一般的に各酒質のポテンシャルを発揮しやすい温度帯があるといわれています。また、冷蔵庫の普及により、冷温に適した冷酒が登場。それと同時に飲み方の多様化も進み、飲みごろとされる温度には呼び名が付けられました。

 

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■日本酒の分類

 

↑普通酒の「上撰 松竹梅」。冷やではもちろん、燗につけることでさらに味わいが引き立つ軽快でなめらかな味わい

 

呼び名は、5度の「雪冷え」から55度以上の「飛びきり燗」までの10種類あり、そのうち“燗酒”と呼ばれるのは30度の「日向燗」から「飛びきり燗」。一方、“冷酒”と呼ばれるのは15度の「涼冷え」から「雪冷え」まで。そして、燗酒でも冷酒でもない温度帯は室温、いわゆる“常温”です。ちなみに、冷蔵庫がなかった時代の「冷や」は、常温のお酒のことを指しました。

 

■温度ごとの日本酒の呼び名

 

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ここでは関さんに、おおまかな分類である「本醸造酒」「吟醸酒」「純米酒」に合った「お燗」の温度とその理由を教えてもらいました。

 

「『本醸造酒』は温度帯によって左右されないというか、どの温度で飲んでもおいしいですね。冬は50度以上の熱燗にするなど、季節やその日の温度、気分などによって決めればいいと思います。

『吟醸酒』は華やかでフルーティな吟醸香が魅力ですが、温度が高いとお米の風味が増すぶん果実味がマスクされてしまいがち。ですから、お燗にあまり適さないという考えが一般的です。香りがさらに華やかな『大吟醸酒』は、なおのこと。温めたとしても、45度の上燗ぐらいまでといわれます。でも逆に、吟醸香は冷やすことで豊かになるので、『吟醸酒』や『大吟醸酒』は15度以下の冷酒に適した銘柄が多いともいえるでしょう」(関さん)

 

↑関さんが飲んでいるのは「特撰 松竹梅〈大吟醸〉磨き三割九分」。精米歩合39%まで磨き上げた、きれいな味わいと華やかな吟醸香の大吟醸

 

「『純米酒』には、『純米吟醸酒』や『純米大吟醸酒』も含まれるので、適した温度帯を提示するのは難しい部分もあります。ただ、普通の『純米酒』や『特別純米酒』などで、旨みやコクが豊かなタイプは燗に向いたものが多いといえますね。温度の見極めは、お燗をつけながら嗅いでみて“炊き立てご飯”の香りがしたら、最も美味しい温度です」(関さん)

松竹梅「白壁蔵」<生酛純米>。生酛ならではの、複雑味や凝縮感がありながら口あたりまろやかでやわらかい味わいが特徴

 

これらはあくまで一般論。例えば「純米大吟醸酒」でも、温めてはいけないということはありません。そもそも、感じ方やおいしさは人それぞれ。様々な温度帯で試し、好みの味を見つけることも日本酒の楽しみ方のひとつといえるでしょう。そして関さんは最適解を見つけるヒントとして、日本酒のラベルを確認することもオススメだといいます。

 

「記載がない銘柄もありますが、ラベルの裏に“飲みごろ温度”など、適した温度帯が表記されている日本酒は、それが目安になります。また、お店にもヒントはあります。もし居酒屋などに行った際に燗酒があれば、その銘柄は燗がオススメだということですよね。それを覚えておいて、ぜひご自宅で実践しするがよいかもしれません。日本酒は温度を変えて味わいの変化を楽しむ、世界で唯一のお酒なので、いろいろ楽しんでみてください」(関さん)

↑パッケージの裏には、お酒の「味わい」や「飲みごろ温度」などが表記されているので、飲むときの参考に

 

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自宅でおいしく「燗酒」を飲む方法

燗酒を提供する店の多くは酒燗器などで提供してくれますが、自宅に専用機器を持っている人は少ないはず。では、どんな方法で燗をつけるのがオススメなのでしょうか。

 

「簡単なのは家電タイプの酒燗器ですけど、そうでなければオーソドックスに、鍋にお湯を張って徳利やちろりを温めるやり方ですね。沸騰したら火を消して、ぬる燗なら2分30秒、熱燗なら3分湯煎が目安です」(関さん)

 

それでも鍋でお湯を沸かすのは手間、という人に関さんがオススメするのは電気ケトル。徳利などの容器が入る、口が広いタイプであることがポイントで、こちらも鍋を使った湯煎と同様の手順と時間で温めます。

↑お湯が沸いたところで電気ケトルに徳利を入れる

 

さらに手軽に「燗酒」を楽しむなら、やはり電子レンジ。500Wで1合を温める場合、時間の目安はぬる燗なら50秒、熱燗なら60秒が目安とのことですが、その他のコツや注意点を教えてもらいました。

 

「電子レンジは急に温度が上がるので、容器の上と下とで熱ムラができやすいんですね。そのため、徳利よりも片口のように背が低いタイプがオススメです。さらに、できれば加熱を20秒ごとなどに分け、途中でかき混ぜると馴染みやすくなりますよ。なお、お酒を温めると揮発で香りが飛びやすくなるので、ラップを被せましょう。もし、狙った温度より熱くなってしまったら、冷たい別の容器に移せばすぐに冷めますよ」(関さん)

↑電子レンジでお燗する場合は、徳利よりも片口のほうが、熱むらが出にくい

 

実はこんな飲み方も! 「お燗」以外の嗜み方

日本酒を温めて飲む楽しみ方は、「お燗」以外にも存在します。そのなかから、おでん居酒屋などで提供されることもある「出汁割り」と、氷を入れたグラスに燗酒を入れる「燗ロック」を紹介。関さんにテイスティングしてもらいました。

 

まずは「出汁割り」から。今回は、松竹梅「天」をおでんの出汁で割ってみました。

松竹梅「天」は、二段酵母仕込によって、 「まろやかな旨み」と「すっきりしたあと味」を 絶妙なバランスで実現した日本酒

 

 

「日本酒のやわらかな風味と出汁の旨みが引き立て合って、おいしいです。私自身、鰹や昆布、あごの出汁などを家で作って燗酒のアテにしたり、割ったりして飲むくらい好きなんです。出汁の素材によって日本酒の感じ方も変わるので、飲み比べるのも楽しいですよ。

 

また、これは割って飲む日本酒全般にいえますが、アルコール度数が下がるので、強いお酒が苦手な人にもオススメです。私は基本的に1対1の割合にしていますが、お好みで調整してもいいでしょう」(関さん)

 

次に「燗ロック」を試してもらいました。関さんもこのスタイルで飲むのは初めてとのこと。

 

「一見、普通の日本酒オンザロックと変わらないような気もしますが、熱燗の場合はアルコールが多少なりとも揮発して飛ぶため、より度数が下がって飲みやすくなるということですよね。確かに、軽快な味わいでサラッと飲める印象です」(関さん)

↑氷を入れたグラスに燗酒を注ぐ燗ロック

 

「伝統的な楽しみ方に、一度温めた日本酒を冷ます『燗冷まし』がありますが、これはアルコール度数を下げたり角のある雑味をとったりしてマイルドにする狙いがあるんですね。この『燗冷まし』をよりスピーディに、そしてさらにアルコール度数が下がるのが『燗ロック』なのかなという印象もあります。こちらも、強いお酒が苦手な人にはオススメかもしれません」(関さん)

 

ほかにも、カルダモンやシナモンなどを実のまま燗酒に入れて個性的な香りにする「スパイス燗」や、日本酒のお湯割り、ホットチョコレート割りなど「お燗」以外のユニークな嗜み方もあります。この冬、試してみてはいかがでしょうか。

 

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「燗酒」に合う簡単おつまみ

日本酒の醍醐味のひとつといえば、食中酒としての楽しみ方。「燗酒」にマッチする料理には、どんなものがあるのでしょうか。

 

「温度の観点からいうと、料理とお酒の温度帯を合わせる手法は、フードペアリングにおけるひとつの目安といえますね。また、酸に関しては、コハク酸や乳酸は温まることで旨みが増してまろやかになる特徴があるので、料理も出汁が効いた旨み豊かな料理や、まろやかな味わいのおつまみが合うと思います」(関さん)

↑出汁のきいた「おでん」は燗酒に合うベストなおつまみのひとつ。おでんの出汁で「出汁割り」も作れて一石二鳥

 

例えば、日向燗からぬる燗までの温かさなら、焼き魚や焼き鳥などがいいでしょう。熱さを感じる上燗以上なら、冬だと鍋料理がよく合いますね。特に、シンプルに出汁の効いたおでんはベストマッチな一皿だと思います」(関さん)

 

さらに、手軽に作れるオススメなおつまみを関さんに教えてもらいました。1品目は「クリームチーズと塩昆布の和え物」。クリームチーズを角切りにして塩昆布をのせるだけのカンタンおつまみ。

 

「混ぜて和え物にしたり、刻みトマトを加えたり、クラッカーにのせたり、ごま油を垂らしたりと、アレンジもオススメ。チーズは栄養価が高く、肝臓の働きを促進してアルコールを分解する期待もでき、おつまみにぴったりなんです。また、昆布は旨みが豊富なので日本酒の甘みとの相乗効果も楽しめます。温かい燗酒でとけていくクリームチーズも、また格別ですよ」(関さん)

↑クリームチーズと塩昆布の和え物

 

「2品目の『サラダチキンのユッケ風』は、割いて電子レンジで温めたサラダチキンに卵黄、ごま油、しょうゆ、コチュジャンを混ぜるだけ。しょうゆとコチュジャンは発酵調味料であり、この風味が燗酒の甘さや旨みとよく合います。また卵黄の濃厚でクリーミーな質感は、温かい日本酒のまろやかさと絶妙にマッチ。ヘルシーなお肉のつまみとしてもオススメです」(関さん)

↑サラダチキンのユッケ風

 

「最後は『アボカドと生ハムのオリーブオイル和え』です。アボカドをスライスして、生ハムを巻きます。オリーブを回しかけレモンを搾れば完成です。アボカドにはビタミン類や食物繊維が豊富に含まれています。とろりとした舌触りが燗酒によく合うのでオススメ。仕上げにレモンを少々搾ったり、クミンシードを加えたりすると個性的な風味になります。ただしレモンはお酒の余韻をリセットすることもあるので、日本酒の味わいを深く感じたいときにはかけなくてもいいです」(関さん)

↑アボカドと生ハムのオリーブオイル和え

 

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冬本番を迎え、「お燗」がますますおいしい季節。ぜひ様々な温度や飲み方で日本酒を楽しんでください。

 

撮影/我妻慶一

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・上撰 松竹梅
https://www.takarashuzo.co.jp/tkr-shohin/cmn_p_detail.php?p_prodid=3005

・特撰 松竹梅〈大吟醸〉磨き三割九分
https://www.takarashuzo.co.jp/tkr-shohin/cmn_p_detail.php?p_prodid=3569

・松竹梅「白壁蔵」<生酛純米>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shirakabegura/

・松竹梅「天」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shochikubaiten/

 

「日本酒を知る」シリーズ
【日本酒を知る】白壁蔵①:今更聞けない、日本酒の基本の噺
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提供:宝酒造株式会社

 

日本酒の飲み方といえば一般的に“冷や”か“燗”か、いわゆる温度の違いだけでしたが、最近は日本酒を炭酸水(炭酸)で割る「日本酒ハイボール=酒ハイ(SAKEハイ)」が話題になっています。そこで今回は「日本酒ハイボール」を中心に、若い女性に人気の「スパークリング日本酒」など新しい日本酒の飲み方について紹介していきます。

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

新しい日本酒の飲み方

日本酒は、昭和の時代から「サムライ」というカクテルや氷を浮かべたオンザロックなど、一部では多様な飲み方で親しまれてきました。なお、加水して飲みやすくする風習は、実は江戸時代から存在しています。魚のヒレや骨などを入れて飲む文化同様、昔から様々な手法で嗜まれてきたお酒でもあるのです。

 

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情報化社会となった近年ではSNSの進化や嗜好の多様化、またハイボールの浸透などもあり、日本酒ベースのレモンサワーが登場するなど、日本酒を炭酸水で割る飲み方も見かけるようになりました。本稿ではこの「日本酒ハイボール」を主役に、その特徴や楽しみ方などを、日本酒ライターの関 友美さんをガイドに招いて深掘りします。

関 友美/地元の札幌でOLとして働いたのちに上京。飲食店勤務、日本酒アドバイザー、酒蔵での勤務などを経験し、現在はライター業のほか、日本酒をはじめとした製品造りのアドバイザー、酒蔵コンサルタント、日本酒事業に精通した数々の仕事を手がけている。

 

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日本酒ハイボールとは

「日本酒ハイボール」は日本酒を炭酸水で割った飲み物のことであり、「酒ハイ(SAKEハイ)」とも呼ばれます。2024年に日本酒の魅力を伝えたいメーカーと流通業者の任意団体「日本酒需要創造会議」は、業務用市場を中心に需要喚起策として「日本酒ハイボール」の飲み方提案をスタートしました。

 

「日本酒ハイボール」のルーツのひとつには、スパークリング日本酒があるといえるでしょう。共通点は、炭酸ガス。チューハイやビールなど、日本には炭酸の効いたお酒を楽しむ文化が根付いており、その親和性からスパークリング日本酒が生み出されたといえます。

 

スパークリング日本酒の元祖といわれているのが、『月の桂』で知られる増田德兵衞商店(京都市伏見区)が1964(昭和39)年に発売した『月の桂 にごり酒』です。

 

以降、徐々にスパークリング日本酒が他の蔵元からも発売されていきました。エポックメイキングといえる商品が、宝酒造が2011年に発売した松竹梅白壁蔵「澪」です。

 

フルーティで華やかな香りと、ほんのり甘い味わいがほどよい酸味とともに調和し、20~30代の女性を中心に大ヒット。「澪」の華やかなおいしさはパーティーシーンでも重宝され、ワインにおけるシャンパーニュのような存在になりました。人気を集めている根本的な理由は「炭酸」と「低アルコール」にあります。

 

日本酒を炭酸水で割る「日本酒ハイボール」も、「炭酸」「低アルコール」という特徴をもっており、スパークリング日本酒のように、若い世代に人気になる可能性を秘めています。

 

若い世代は成人になった時点ですでにハイボールが定着していた層ですし、情報感度が高く好奇心も旺盛。日本酒を炭酸水で割るという新しい飲み方にも抵抗感がなく、飲みやすさという点ではむしろ好意的に受け入れる人も多いといえるでしょう」(関さん)

 

日本酒ハイボールの楽しみ方

そして先日、宝酒造から飲食店向けに先行発売されたのが、松竹梅「瑞音(みずおと)」。“炭酸割りで楽しむ日本酒”がコンセプトで、炭酸割り専用に酒質設計されています。

 

具体的な特徴は、炭酸割りにして高い香りを実現する酵母の育種技術による“吟醸酒並みの香り高さ(※)”、米の魅力を引き出す技術による“日本酒らしい甘み”、3種類の香りの最適な組み合わせを実現する技術による“ボリューム感のある味わい”。この3点がバランスよく共存する味わいです。

※宝酒造吟醸酒比。このお酒は吟醸酒ではありません。

 

ターゲットは、アルコール度数の高さから日本酒を敬遠しているものの、刺身など和食に合わせるなら日本酒で楽しみたいと考えているチューハイユーザーなど。「瑞音」のアルコール度数は14%ですが、炭酸水と1:1で割る飲み方をベストな味としており、推奨のとおりに割れば7%のアルコール度数で軽やかに楽しめます。

 

新たなコンセプトのもとに生まれた松竹梅「瑞音」。まずは、プロのご意見を聞きたいということで、協力頂いたのは、松竹梅「瑞音」を発売と同時に導入した「魚錠 池袋店」(東京都豊島区)。「魚錠」は明治40年に海産物の行商からスタートし、創業から110年以上にわたって、お寿司や海鮮丼、海鮮居酒屋などを通じて「美味しい食」を届けています。そんな「魚錠」の池袋店店長にお話を伺いました。

 

「炭酸の爽快感と低めのアルコール度数によって、飲みやすい味わいになっているのが魅力です。お酒を飲み始めた若い方や、これから日本酒を嗜みたいという方の入門としても、松竹梅『瑞音』の日本酒ハイボールは最適だと思います。実際、うちの若いスタッフにも大好評でしたし、気軽に試していただけたらうれしいですね」

 

関さんも「瑞音」を飲むのは初めて。さっそく飲んだ感想を伺いました。

 

「香りは、青りんごを思わせる果実味豊かな香り。シャキッとしたみずみずしいイメージで、すごく爽やかですね! 加水されて味わいが軽やかになり、炭酸ガスが弾けることで、より印象的に香る効果もあると思います」

 

そして味わいとしては、米の甘みと麹のニュアンスを豊かに感じるといいます。

 

「麹のやわらかい風味は、日本酒ならではですね。おだやかな米の甘みがふわっときて、そこからまたフルーティな香りが広がります。酸のタッチも絶妙で、余韻はすっきり。それに、炭酸水で割っても味が薄まった印象はありません」

 

これまで何度も日本酒ハイボールを飲んでいる関さんですが、どこか淡く、ぼやけた印象に感じることも少なくなかったとか。その点「瑞音」は炭酸水で割っても日本酒らしいおいしさをしっかり楽しめると大絶賛。

 

「飲んでみて、日本酒ハイボール専用という意味がすごくよくわかりました! 氷と炭酸とがとけあうことで、調和するように造られているんですね。クリアでバランスがよく、飲みごたえもちょうどいいです」

 

続いてはフードペアリングをレビュー。刺身の盛り合わせなど、いくつかの和食と合わせてもらいました。

↑「【名物】本気の刺盛り」(1099円)、秋さばと秋茄子の茸あんかけ(968円)、「あん肝」(858円)、「松竹梅「瑞音」ハイボール」(638円 ※お試し価格)

 

「過度な果実味や吟醸香は、ものによっては刺身と合わないですけど、瑞音は適度な香りでしっかりと寄り添いますね。お米のうまみがしっかりあるから、白身魚にも赤身にも貝類にもよく合います。また、あん肝も好相性! 炭酸が適度にこってり感をリセットするので、脂がのった魚介類にもマッチします」

 

続くペアリングは、「秋さばと秋茄子の茸あんかけ」。さばのフライとなすの素揚げに、ほんのり甘酸っぱい味付けの、きのこのあんを絡めた一皿です。

 

「和食としては濃厚な料理ですけど、こちらも『瑞音』のハイボールは合いますね。すっきりしたキレが脂や濃い塩味を打ち消しつつ、フルーティで甘やかな酒質は甘酸っぱいあんかけにマッチ。天ぷらや野菜の揚げ浸し、ほかには照り焼きや味噌煮込みといった甘じょっぱい料理とも相性がいいと思います」

 

先述の「魚錠 池袋店」店長にも日本酒ハイボールと料理の相性について伺ってみました。

 

「松竹梅『瑞音」は当店のほぼすべてのメニューに合うと思います。通常の日本酒にもベストマッチのお刺身はもちろん、てんぷらなどの揚げ物に関しては、日本酒ハイボールのほうが通常の日本酒よりも好相性ではないかなと。

決め手はやはり、炭酸の爽快感ですね。すっきりした後口が油を流す効果もありますので、また次のひと口へと箸が進みやすくなると思います。一方で、炭酸水で割ることによってアルコール度数が下がり軽快な口当たりになりますので、繊細な味付けの和食にもよく合いますね」

 

お刺身から揚げ物まで、幅広い料理との相性も抜群な「日本酒ハイボール」。自分なりのマリアージュを見つけるのも楽しいかもしれません。

 

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「晩酌は最高のリラックス」食の伝道師・ラズウェル細木に聞くー酒と肴と酒場の噺
「居酒屋」の歴史と大衆酒の変遷を深掘りする噺

 

日本酒ハイボールの作り方

「瑞音」は飲食店向けの先行発売ということで、自宅などで「日本酒ハイボール」を楽しむにはほかにどんな日本酒が適しているのでしょうか。オススメの酒質については関さんに教えてもらいました。

 

「炭酸水で割ることを考えると、お米の甘味やコク、酸が豊かなしっかり系のほうが調和する気がします。また、生酒、生貯蔵酒、生詰め酒といった、ピュアな力強さをもったタイプも向いていると思います。生貯蔵酒で香り高い松竹梅「昴」は「日本酒ハイボール」にも合うのではないでしょうか」

 

ここからは、松竹梅「昴」をベースに「日本酒ハイボール」の作り方を実践します。まずは冷やしたグラスに氷を投入。次に、キンキンに冷やした日本酒と炭酸水を1:1で入れ、軽くステアして完成です。

↑キンキンに冷えたグラスに氷を入れて、日本酒を注ぐ

 

↑1:1になるように炭酸水を入れ、軽くステアをして完成!

 

コツは炭酸ガスが飛んで爽快感が失われないよう、注いだり混ぜたりする際はやさしく行うこと。味の濃淡は、日本酒と炭酸水の割合を変えて調整しましょう。

 

ではあらためて、「日本酒ハイボール」を身近なお店のおつまみと合わせるなら、どんなものがオススメなのでしょうか? 関さんに伺うと、牛すじ煮込み、豚汁、鉄火巻きを挙げてくれました。とはいえ、その日の気分や好みで選んでも構わないといいます。

 

「例えば仕事から疲れて帰ってきて、立ち寄ったお店でとりあえず惣菜を買ってきたとしましょう。となると、ペアリングを考える余裕もないですよね。そんな晩酌でも日本酒ハイボールならあまり料理を選ばないので、頼れる食中酒になってくれると思いますよ!」(関さん)

 

好みの味わいに調整できて、おつまみとの相性も幅広い、新たなスタイルの日本酒。それが「日本酒ハイボール」なのです。ぜひ本稿を参考に試してみてください。

 

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

魚屋の居酒屋 魚錠 池袋店

住所:東京都豊島区南池袋1-20-9 第一中野ビル 2F
営業時間:月~金曜11:30~14:30(L.O.14:00)/17:00~23:30(料理L.O.22:30/ドリンクL.O.23:00)、土・日曜・祝日16:00~23:00(料理L.O.22:30/ドリンクL.O.22:45)
定休日:不定休

※池袋店のほか、池袋東通店、芝大門店、金山店(名古屋)の3店舗を展開
※価格はすべて税込みです

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・松竹梅「瑞音」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/mizuoto/

・松竹梅白壁蔵「澪」
https://shirakabegura-mio.jp/

・松竹梅「昴」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/subaru/

ワイングラスで飲む「ネオ日本酒」!度数控えめ、ファミマ限定「星月夜」

ファミリーマートは、月桂冠と共同開発したファミリーマート限定の日本酒「星月夜」と「星月夜 スパークリング」を、9月17日に発売しました。

↑全国のファミリーマートの酒類取扱店、約1万5,800店で購入できます

 

記事のポイント

発表資料によると、昨今の日本酒トレンドは「淡麗で辛口な味わいからフルーティな酸味のある味わいへと人気が変化」しているそう。
一日の終わりに、料理に合わせてまったり飲める度数です。これから日本酒デビューする人は、「初めての一杯」の候補に入れてみては。

 

アルコール度数を従来の日本酒よりも抑えた優しい飲み口で、日本酒ビギナーが気軽に手に取りやすいお酒です。フルーティな香りと酸味が特徴で、ワイングラスを使って飲むと香りをより強く感じられるそう。

 

星月夜は、料理とのマリアージュを楽しめるテイスト。甘味と酸味のバランスが取れており、和食だけではなく洋食にも合うとのこと。

 

星月夜 スパークリングも料理に合わせやすい一杯で、フルーティな香りと主張しすぎない甘さに加え、シュワシュワの炭酸感と程よい余韻が楽しめるそう。

 

星月夜
アルコール度数:10%
価格:550円(税込)

 

星月夜 スパークリング
アルコール度数:6%
価格:550円(税込)

日本酒なのに度数5%。爽やかな酸味と深いコクが楽しめる、月桂冠「アルゴ」

月桂冠は、アルコール度数5%の日本酒「アルゴ」を、全国で9月23日から発売します。

 

米から生まれた、爽やかな酸味と深いコクが特長で、「度数5%とは思えない予想外のコクと飲みごたえを感じられる」とのこと。あと味までうまみを感じられ、余韻まで楽しめるそうですよ。

 

記事のポイント

月桂冠が、多様化するライフスタイルとお酒需要に応えるために送り出した新商品です。度数は控えめでも飲みごたえはしっかりあり、甘味・酸味・うまみのバランスが取れているのが特徴。
体調を鑑みて、生活に支障が出ないように週末しかお酒を飲まないようにしている人も、平日に気軽に楽しめそうですね。

 

近年はライフスタイルの多様化に伴って、お酒にも幅広い選択肢が求められるようになり、低アルコール市場が拡大しているといいます。また、月桂冠が「日本酒の飲用調査」をしたところ、日本酒は休前日や休日に飲まれていることが多いとわかり、「アルゴ」を開発したそう。

↑容量は720mLと300mLの2種類

 

アルゴのイメージキャラクターには、女優の川栄李奈さんを抜擢。川栄さんが出演する新CMも、9月23日より放映します。

 

月桂冠
「アルゴ」
参考小売価格(税別):720mLびん/880円、300mLびん/380円

わかってるなぁ~神亀監修とは! 心くすぐる「酒燗器 かんまかせ」がMakuakeでプロジェクト開始

小泉成器は、「Makuake」にて、神亀酒造監修、簡単操作で本格的な熱燗が楽しめる「酒燗器(KOP-0401/K)」のプロジェクトを9月11日(水)から開始します。

Editor’s Eye

神亀酒造の日本酒といえば、業界では有名な“燗上がり”の酒。つまり、燗にぴったりな酒ですね。小泉成器さん、そこを監修につけるとは、「わかってるなぁ~」という感じです。ヒーターで直接加熱するんじゃなく、湯煎というのも風情があっていいじゃないですか。さらに、能作の錫チロリが付属するセットも選べるとのこと。「能作」といえば全国的に有名な錫製品メーカーで、こちらも大いにそそられます。(GetNavi web編集部家電担当/小林史於)

 

<自動温度調節の湯煎式>

自動温度調節の湯煎式。湯煎で全体的にゆっくりと温め、味を損なうことなく旨味を引き出します。

 

<料理に合わせて7段階の温度設定>

大吟醸などの繊細な味わいの日本酒には人肌燗やぬる燗、旨味や酸味の強い純米酒は上燗や熱燗。お酒に合う温度帯を探すのも燗酒の醍醐味。酒燗器「かんまかせ」は、約35~80℃までの多彩な温度帯に対応しています。今回は、前機種に比べて、ふたつの温度帯を追加。より多くの料理やお酒、シチュエーションに対応できるようにしています。

 

<300名限定!能作錫チロリセット>

今回、神亀酒造の別注で作成した能作製の錫(すず)チロリのセットも用意。錫は熱伝導率が非常に高く、燗をつけるのに最適な金属です。また錫のイオン効果で、味がまろやかになると言われており、普通の素材の酒器と、錫の酒器に同じお酒を入れて飲み比べをすると、味の違いを感じることが出来るほどです。本格的な酒器で燗酒を楽しみたい方におすすめ。

 

プロジェクト概要

<掲載期間>
2024年9月11日(水)10:00 ~ 10月30日(水)22:00
※2024年11月中お届け予定

<詳細はこちら>
https://www.makuake.com/project/koizumiseiki06/

「居酒屋」の歴史と大衆酒の変遷を深掘りする噺

提供:宝酒造株式会社

 

酒飲みを魅了してやまない「居酒屋」はいつ生まれ、どのように親しまれてきたのでしょうか。今回は『居酒屋の戦後史』(祥伝社新書・刊)の著者で、趣味と研究を兼ねて居酒屋巡りをフィールドワークとする早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授を講師に、大衆酒場にまつわる著書を数多く上梓している藤原法仁(のりひと)さんと浜田信郎(しんろう)さんとで鼎談。

 

3人は『酒噺』でもおなじみの倉嶋紀和子さんが創刊編集長を務める雑誌『古典酒場』で「居酒屋通ブログ三人衆よもやま話」の連載をしていた仲。十数年ぶりに一堂に会した3人が、お酒を片手に居酒屋の歴史と大衆に愛されてきた酒の変遷について語り合います。

●橋本健二(左)/早稲田大学人間科学学術院教授。専門は理論社会学および階級・階層論。主な著書に『居酒屋の戦後史』『居酒屋ほろ酔い考現学』(共に祥伝社)『階級社会』(講談社)『増補新版「格差」の戦後史』(河出書房新社)などがある。ブログは「橋本健二の居酒屋考現学
●浜田信郎(中央)/ブログ「居酒屋礼賛」の主宰。『酒場百選』(筑摩書房)『ひとり呑み』(WAVE出版)など、大衆酒場に関する著作を数多く上梓している。
●藤原法仁(右)/大衆酒場の聖地・葛飾区立石生まれ。居酒屋探訪をライフワークとし、浜田さんらとの共著に『東京居酒屋名店三昧』『東京「駅近」居酒屋名店探訪』(共に東京書籍)がある。「酎ハイ街道」の名付け親であり、「立ち飲みの日」制定の中心人物。

 

 

大衆居酒屋は江戸時代に発展した

いつ居酒屋が誕生したのかについて詳しいことはわかっていません。『続日本紀(しょくにほんぎ)』には、761(天平宝字5)年に平城京(現在の奈良県)の酒肆(しゅし)で起きた事件が記されています。これが、居酒屋について最古の記録ということになります。

 

酒肆とは酒を売る、飲ませる店のことであり、橋本教授は角打ち(酒屋の一角で飲むこと、または飲める酒屋のことなどを指す)のような店だったのではないかと推察します。つまり、奈良時代には酒場が存在していたということ。

 

ただ大衆文化として居酒屋が根付いたのは、もっと中世~近世になってからだと考えられています。1603(慶長8)年に江戸幕府が開かれ、町づくりのために全国から独身男性を中心に労働者が集まってきました。彼らの食事は外食が中心。仕事終わりには、いまのようにお酒を飲んで活力を養ったり、コミュニケーションを深めたりしていました。

 

お店の業態は角打ちだったり、江戸の四大名物食といわれる寿司、天ぷら、そば、うなぎの各店だったりもしますが、特に江戸っ子から重宝された飲める店が「煮売り酒屋(にうりざかや)」です。

 

「煮売り屋」とは、ご飯とともに魚や野菜の煮物を提供する業態のこと。やがて煮物をつまみに酒を提供する「煮売り酒屋」へ進化するケースが増加。角打ちをルーツとする居酒屋との区別があいまいになるとともに、現在の居酒屋へと進化していきました。そして江戸時代後期には、こうした飲食店が江戸には1800軒以上もあったといわれています。

↑江戸時代の煮売り酒屋の風景(『鶏声粟鳴子』より)。出典:国立国会図書館デジタルコレクション

 

明治時代になると、文明開化とともに日本人の飲食シーンにも変化がありました。料理でいえば肉食が解禁され、外食チェーンの先駆けといわれる牛鍋屋が誕生するなど、和洋折衷料理(洋食の原型)が徐々に一般化。お酒でも、ビールやワインなどが飲まれるようになり多様化が進んでいきます。

 

とはいえ、当時は舶来の料理やお酒はまだまだ高嶺の花でした。そんな居酒屋業態に大変革が起きたのは昭和の時代になってから。要因は太平洋戦争です。ここからは、橋本教授を中心に、藤原さんと浜田さんとで語ってもらいましょう。

 

居酒屋は戦後に大変革。闇市起源の横丁は3つに分かれる

藤原 私も下町の大衆酒場とか炭酸水とかいろいろ研究してるんですけど、あらためて今日はいろいろ教えてください!

 

浜田 先生とは長い付き合いですけど、しっかり話を聞く機会は珍しいですかね。楽しみです!

 

橋本 こちらこそよろしくお願いします。 居酒屋の転換点といえば、やはり終戦と闇市です。戦時中には1944(昭和19)年に贅沢禁止ということで、高級業態はもちろん、自営の飲食店は大幅に減少していきました。庶民的なおでん屋や居酒屋などは営業を認められていましたが、物資不足で実質は開店休業状態だったようです。

 

浜田 ただ、その代替として公営の“国民酒場”が開業したと聞きます。横浜にはいまでも、独自の“市民酒場”(※)が残っていますし。

※昭和初期に生まれた、横浜独自の大衆酒場の形態

 

橋本 終戦間際の1945(昭和20)年7月の新聞には、国民酒場に大行列ができている写真とともに記事が載っています。

 

浜田 そして、やがて終戦。都市部の駅前を中心に、焼け野原には闇市が誕生していきました。

 

橋本 そうですね。例外もありますけど、闇市をルーツとする横丁酒場は多いです。

 

藤原 この前、この『酒噺』で倉嶋さんが深掘りした、新宿の「思い出横丁」とか「ゴールデン街」とか。ほかには「西荻窪(東京都杉並区)」や、上野の「アメ横」。東京以外ですと、横浜の「野毛」などがありますね。

 

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橋本 なかでも私は3タイプに分類できると考えています。まずひとつは、当時の土地にそのまま残っているもの。「思い出横丁」や吉祥寺(東京都武蔵野市)の「ハモニカ横丁」ですね。ふたつめが移転させられたもの。これは「ゴールデン街」や池袋(東京都豊島区)の「美久仁小路」、三軒茶屋(東京都世田谷区)の「三角地帯」などです。

 

浜田 なるほど。そしてもうひとつは、闇市がビルや地下などに建て替えられたケースですね。新橋(東京都港区)の「駅前ビル」や、「ニュー新橋ビル」、荻窪の「タウンセブン」などでしょうか。

 

藤原 大井町(東京都品川区)や赤羽(東京都北区)にある飲み屋街も、闇市から建て替えられたパターンですよね。

↑大井町駅前の「東小路飲食街」(写真提供:PIXTA)

 

橋本 ちなみに、闇市には日用品や、農産物に魚介類、怪しげな加工食品などを扱う店などもありましたが、都心の新橋、渋谷、池袋などでは多くが飲み屋でした。また1947年以降、経済復興が始まって物資の流通が回復すると、一般の商店が営業を再開したため、闇市は一般的な商店街としての役割を終え、飲食街に特化していくようになります。これは1947(昭和22)年に、食糧事情のひっ迫を受けて約2年間発令された「飲食営業緊急措置令」が関係しているといえるでしょう。禁止されたがゆえに、裏口となる闇市では盛んになったという構図です。

 

藤原 あと、闇市をルーツとする酒場を語るうえで欠かせない業態に、もつ焼き屋がありますよね。

 

浜田 特に多い酒場街が、「思い出横丁」。戦後しばらく統制品だった正肉類は入手困難だったので、統制外だった豚のもつを串に刺し、“やきとり”と称して売り出したというエピソードも有名です。

 

橋本 そういった“ジェネリック焼き鳥”、いわゆるもつ焼きの店は、戦前からあったそうなんです。ただし場所は、労働者が多い下町や、繁華街の屋台。いまのように、駅前に“やきとり”をメインとした居酒屋が軒を連ねるようになった背景には、戦後の闇市抜きには語れないといえるでしょう。

 

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チェーン店の台頭と洋風化がさらなる多様化を進めた

↑藤原法仁さん

 

藤原 その後の居酒屋における大きなムーブメントは、チェーン店の台頭になりますかね。

 

橋本 有名な居酒屋御三家は、「養老乃瀧」(1956/昭和31年に1号店)、「村さ来」(1973/昭和48年創業)、「つぼ八」(1973/昭和48年創業)。ただ、ビアホールを含めた居酒屋チェーンをビジネスモデルとして確立した立役者の「ニュートーキョー」(1937/昭和12年創業)や、セントラルキッチンの全面導入や洋風居酒屋の先駆けとしては「天狗」(1969/昭和44年創業)も偉大です。「天狗」が洋風酒場に取り組んだ背景には、創業者のヨーロッパ視察があったとか。時代の先見性があったんでしょうね。

 

藤原 居酒屋の洋風化には、チェーン店の存在が大きいですよね。お酒でも、「村さ来」は多彩なシロップを使った、カクテルのような甘めのチューハイ(酎ハイ)のバリエーション展開が有名ですし。

 

浜田 洋風居酒屋の功績は、女性が来店しやすくなったことにあると思います。1982(昭和57)年には、デュエットソングの名曲『居酒屋』がリリースされていますよね。

 

橋本 懐かしいですね。やがてバブル終焉とともに御三家は受難の時代を迎えますが、平成以降の1990年代からは居酒屋新御三家の「コロワイド」(1977/昭和52年に「甘太郎」を開業)、「モンテローザ」(1983/昭和58年創業。「白木屋」など)、「ワタミ」(1992/平成4年に1号店。「和民」など)が躍進します。

↑橋本健二教授

 

浜田 「モンテローザ」と「ワタミ」のルーツは「つぼ八」ですから、後進に与えた影響は計り知れないです。

 

藤原 その後はインターネットの登場などもあったと思いますけど、居酒屋チェーンのトレンドはサイクルが早くなり、多様化している印象があります。1990年代後半からは個室居酒屋が増え、2000年代に入ると価格の均一業態も一世を風靡します。なかでも大ブレイクしたのが「鳥貴族」(1985/昭和60年創業)ですね。2005年には東京進出を果たしました。

 

浜田 2000年代後半からは幅広くメニューをそろえる総合居酒屋に代わって、ひとつの素材や料理に特化した専門業態の居酒屋も増えていったと思います。代表的なチェーンは「ダイヤモンドダイニング(DDグループ)」(2001/平成13年に飲食店を開業。「わらやき屋」など)や「串カツ田中」(2008/平成20年1号店)でしょう。

 

橋本 いまに続く大衆酒場ブームも2000年代以降ですね。こちらもやはり、インターネットによってお店の情報が開示されたことが大きいかと。それこそ、藤原さんや浜田さんの功績が大きいと思います。

 

藤原 うれしいです。でも、赤羽の名店「いこい」がルーツである立ち飲みチェーン「晩杯屋」(2009/平成21年1号店)や、ネオ大衆酒場の旗手「ビートル」(前身となる「お値段以上の大衆酒場 大鶴見食堂」が2013年開業)が誕生するなど、立ち飲みや大衆酒場にもチェーン店が出てくるとは思いませんでした。

 

橋本 一方で、1975(昭和50)年ごろから地酒ブームが起き、全国の日本酒とそれに合うアテを揃える“名酒居酒屋”が支持されてきたことも見逃せません。こちらは伝統的な様式を貫くオーセンティック居酒屋とでもいえるでしょう。

 

時代と地域による客層の変化

浜田 それぞれの時代で居酒屋の客層はどのように変化してきたんでしょうか?

↑浜田信郎さん

 

橋本 まず戦前からたどると、前述した“ジェネリック焼き鳥”、つまりもつ焼きの居酒屋は下町が中心で、労働者階級のお店でした。一方、中間層以上の人はビアホールや料理店、そして居酒屋などで飲んでいたと思います。有名な神田の「みますや」の創業は1905年、惜しまれつつ閉店した銀座の「樽平」の創業は1931年でした。

 

浜田 業態にも格差が反映されていたということですね。それが戦後になって変わったと。

 

橋本 はい。街に出てもお酒はないし、飲める店もない。そんな状況で出てきたのが闇市です。でもお酒好きは飲みたいから、貧富の差は関係なくここに集うわけですよ。なので私は闇市によって、飲み手の格差が関係ない居酒屋という業態も生まれたと考えています。

 

藤原 高度経済成長を迎えると、中間層も増えていきましたしね。

 

橋本 そうですね。一部のホワイトカラーはバーに行くなど選択肢が増えるのですが、だからといって居酒屋に行かなくなったとは考えにくいです。その後、居酒屋チェーンの台頭によって女性も足を運ぶようになり、やがて成人学生も利用する時代になると。

 

浜田 格差の話がありましたけど、東京の居酒屋のなかでも、下町と山の手でお店の地域差って感じますか?

 

橋本 ありますね。もつ焼き中心の居酒屋は下町の文化だし、山の手の居酒屋は刺身や天ぷらなど正統派の日本料理を、小盛りにして出すのが普通です。しかし下町の文化は、山の手でも受け入れられています。例えば下町のもつ焼き酒場の代表格である、立石の「宇ち多゛」みたいな店が山の手にできると、すごく人気になりますよね。

 

藤原 なるほど、尾山台(東京都世田谷区)の「もつ焼 たいじ」とか。

 

橋本 一方で、自由が丘(東京都目黒区)の「金田」や代々木上原(東京都渋谷区)の「笹吟」などは山の手を代表する名居酒屋ですけど、下町にはああいった洒脱な居酒屋は少ないと思います。客単価も高いですし、そこは少なからず各エリアの地価も関係してきますよね。

 

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戦後のチューハイなど各酒はこう飲まれてきた!

橋本 居酒屋の歴史を語るうえで、もうひとつの重要な側面はお酒の変遷です。闇市時代からたどると、戦時下の配給が継続されて日本酒やビールはありましたが、物資不足で希少品でした。

 

浜田 闇市には配給酒の転売品や米軍からの横流しもあったそうですが、当然高嶺の花ですよね。

 

橋本 そこで主流となったのが、「バクダン」「カストリ」と呼ばれる焼酎を模倣した密造酒です。「バクダン」は燃料用のアルコールを水で薄めた違法な粗悪品で、飲んで命を落とした人もいたそうです。

 

藤原 特にバクダンには、メチルアルコールを薄めて混ぜたものがあったという話も聞きます。

 

橋本 一方の「カストリ」は、穀物や芋類などを発酵させた醪(もろみ)を蒸留したもの。酒粕由来の「粕取り焼酎」とは違いますね。でも「カストリ」は焼酎のような酒ですから、中毒の心配はありませんこれらの粗悪品が横行したため、焼酎のイメージは低下しました。

 

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浜田 徐々にビールも市民権を得ていくんですよね。

 

橋本 家庭用のビールに配給制度が導入されたのは、戦前の1940(昭和15)年。この制度によって、中間層以上の嗜好品だったビールが全国の一般層に普及します。また、日本酒の主原料である米は食用に最優先されましたが、ビールの主原料である大麦は優先度合いが比較的低かった。そんな背景もあって、ビールが普及拡大する素地が広がっていったのです。

 

藤原 そして、特に下町大衆酒場の酒といえば、焼酎ハイボール(酎ハイ)は外せません。諸説ありますが、墨田区曳舟の「三祐酒場」の当時の店主が、1951(昭和26)年にアメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受け、焼酎で再現を試みたのが焼酎ハイボール(酎ハイ=チューハイ)誕生の有力な説です。

↑現在も「三祐酒場 八広店(墨田区)」で人気の「元祖焼酎ハイボール」

 

橋本 さすがにこの辺の話は、藤原さんのほうが詳しいですよね。特に東京の下町で愛されたのが、クリアな味わいの甲類焼酎。これはフランスで開発されたアロスパス式連続蒸留機によって、ネガティブなにおいを抑えたアルコールを精製できるようになったからです。

 

藤原 ちなみに、本格焼酎は1975(昭和50)年ごろにお湯割りブームで全国的にも広まるんですけどね。その後、今度は1977年に宝焼酎「純」が発売され、ピュアで飲み方に多様性のある甲類焼酎が新しいお酒として見直され大ヒットします。そして麦焼酎ブームを経て、1980年代のチューハイブームへ。チューハイを全国区にしたのが1980年代以降のチェーン居酒屋と、1984(昭和59)年に発売された日本初の缶入りチューハイ「タカラcanチューハイ」ですよね。

↑11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝酒造「純」

 

浜田 私は愛媛生まれで大学時代は九州の福岡で過ごしたのですが、初めてチューハイに出会ったのは就職した上京後。確かに1980年代でしたね。当時の若者達にとってはセンセーショナルなお酒でした。九州では本格焼酎をお湯割りか、水割りで飲むのが主流でしたから。

↑発売当時(1984/昭和59年)のタカラcanチューハイ

 

藤原 それからしばらく経って、大衆酒場の人気到来とともに、2006年には缶でタカラ「焼酎ハイボール」も発売されます。

 

 

日本酒とウイスキーの栄枯盛衰

 

橋本 日本の酒でいえば、日本酒は戦後しばらく原料の米が食用へ優先されたためで希少な酒でした。そのため当初市場に出回った多くは、アルコールに糖類などを加えた合成清酒といわれる代物。合成ではない清酒(日本酒)の生産量が戦前を超えたのは1961(昭和36)年のことで、他のカテゴリーよりも回復が非常に遅れたのです。

 

浜田 酒蔵の数も、戦争によって激減したと聞きます。

 

橋本 その通りです。戦前に7000を超えていた酒蔵数は、終戦時で3178にまで減少。次第に回復しますが、戦後ピークの1956(昭和31)年でも4135蔵です。

 

藤原 なんと、そんなに減ったんですか!

 

橋本 これは、ビールが台頭したからという理由もあるでしょう。お酒全体の出荷量は次第に伸び、特に日本酒とビールがけん引します。一方で、代用品だった合成清酒と焼酎は伸び悩みました。そして、1959(昭和34)年にはビールの出荷量が日本酒を追い抜き、以降ビールは日本で最も飲まれるお酒となっています。

 

藤原 日本酒も1970年代中ごろには地酒ブーム、1980年代には淡麗辛口や吟醸酒のブームがあったんですけどね。

 

浜田 いまや、稼働している酒蔵の数は1200を切ったと言われています。近年は若手の蔵元が継いだり再興したり、新たなSAKEカルチャーをつくったり、高級路線でブランディングしたり、海外進出したりしていますが、応援したいですね。

 

橋本 そうですね。いま、受難を経て世界的に人気となったお酒にはジャパニーズウイスキーがありますが、ウイスキーもなかなか波乱万丈でした。

 

藤原 ジャパニーズウイスキーは2023年で100周年を迎えたんですよね。発売当時はすごく高かったと聞いています。

 

橋本 日本初の本格ウイスキー、サントリー「白札」の発売は1929(昭和4)年。当時の記録でも、お米10kgが2円30銭の時代に1本が4円50銭だったそうです。

 

浜田 お米が貴重だった当時でも、20kgぶんとほぼ一緒の価格とは。

 

橋本 高すぎたのもあって、売れなかったらしいんですよ。そんな反省から「角瓶」「トリス」など安価なブランドが発売され、1950(昭和25)年には50円の「トリス」ハイボールが登場し、生ビールが1杯135円の時代に爆発的にヒットしたそうです。

 

藤原 一方で、下町ではウイスキーハイボールではなく、焼酎ハイボールの人気が根強かったと聞きます。

 

橋本 それは、価格とアルコール量の問題だと思います。チューハイ(焼酎ハイボール)は当時30~50円と安く、アルコール量はウイスキーハイボールの2倍以上入っていました。そんなウイスキーですが、飲み方としては1970年代に入ると水割りに主役の座を奪われます。理由は、水は炭酸水よりも安価であり、家庭でも簡単に濃度を調整できるから。

 

藤原 1987年にリリースされたデュエット名曲『男と女のラブゲーム』でも、水割りの歌詞が登場します。

 

橋本 ウイスキーは普及とともに大衆化が進み、ビールや日本酒が大幅に値上げする一方でほとんど値上げはせず、相対価格が下がったんです。1975(昭和50)年での純アルコールあたりの価格では、なんと一番安いのがウイスキーでした。こうした背景もあって、どんどん伸長していきました。

 

浜田 1971(昭和46)年にはウイスキーの輸入自由化が始まり、バーボンやスコッチなどの舶来ウイスキーのブームも到来しますよね。

 

橋本 そう。ウイスキーは経済成長とともに右肩上がりを続けていきました。しかし1983(昭和58)年にピークを迎えて以降、価格の引き上げや酒税の増税などが重なり、次第にその勢いを失っていきます。やがて2007(平成19)年には、販売量ベースで最盛期の6分の1まで減少。しかし、翌年にはウイスキーハイボールブームが到来してV字回復していきます。

 

浜田 2014(平成26)年には朝ドラ(NHK連続テレビ小説)「マッサン」の影響もあり、近年ではジャパニーズウイスキーを筆頭に市場が盛り上がっていますよね。

 

分断されがちな社会をつなぐ存在が居酒屋だ

 

橋本 2025年は昭和100年であり、戦後80年を迎えます。飲み屋も嗜み方も時代に合わせて変わっていくなか、居酒屋やお酒の飲み方はどうなっていくと思いますか?

 

藤原 このままだと個人経営の居酒屋は衰退してしまうと思います。だから、この素晴らしい文化を未来にしっかり継承していくことが大切かなと。

 

橋本 そうですよね。チェーン店でも、もつ焼きやもつ煮込み、ホッピーなどを出すようになっていますよね。それは、戦後大衆酒場の文化が根強く愛されている証拠だと思うんです。だから気軽に行けるお店からでも、若い人には居酒屋の魅力を知ってほしいと思いますね。

 

浜田 先生の使命は大きいと思いますよ。

 

橋本 はい。私の生徒はそもそも酒好きが多いですけど、彼らを介して広がっていけばいいなと思います。

 

藤原 社会はどうあるべきなんですかね。

 

橋本 格差はあまり大きくならないほうがいいですね。もちろん、業態などによって大衆店や高級店とで分かれますけど、分断されがちな社会をつないでくれる存在が居酒屋だとも思うんです。だから、居酒屋の存在意義はきわめて大きいと。

 

藤原 ちなみに、先生の理想の居酒屋ってどんなお店ですか?

 

橋本 もつ焼きともつ煮込みに加えて、刺身もおいしい。そんな居酒屋が好きです。藤原さんは?

 

藤原 私は、古き良き居酒屋文化を継承してくれるのがネオ大衆酒場と呼ばれるお店だと思っていて、すごく期待しています。でも個人的に好きなのは、いまの気分だとどぶ漬けがあるカウンター酒場。東十条(東京都北区)の「よりみち」とか、渋谷の「酒呑気まるこ」とか最高ですね。浜田さんはどう?

 

浜田 例えば、温泉とかの湯舟のように、その酒場の雰囲気にどっぷりつかれる居酒屋かな。常連さんを中心にいい雰囲気ができあがっていて、そこに自然と一体化できるお店には癒されますね。そういう居酒屋を、これからも礼賛していきたいです!

 

橋本 浜田さんらしいコメントが出ましたね。今日は、ふだん飲み屋ではしない話をおふたりとできてよかったです。また集まりましょう!

 

藤原・浜田 ありがとうございました!

 

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

居酒屋 関所

住所:東京都台東区根岸1-7-3
営業時間:16:30~23:30
定休日:日曜

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝酒造「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・タカラcanチューハイ
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/regular/

【せんべろnet監修】“ひとり飲み”初心者が「せんべろセット」を堪能する噺

提供:宝酒造株式会社

 

「酒噺:東京・大衆酒場の名店シリーズ」で一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。実践編に入って、女性一人(初心者)でも出来る「酒場」の楽しみ方を「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第6回目。今回は東京・上野の「かっちゃん」で「せんべろセット」に挑戦します。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

「せんべろセット」とは?

 

仕事が早く終わり、軽く飲もうと街へ繰り出した中村さん。飲み屋の名店も数多い上野・アメ横(アメヤ横丁)エリアを歩いていると、「せんべろセット」の文字が目に飛び込んできました。「せんべろセット」とは、1000円程度の決まった料金で、お酒数杯とおつまみ数品を楽しめるお得なセットメニューのこと。

 

気になった中村さんは「ひとり飲み」の師匠でもある「せんべろnet」のひろみんさんに、LINEでお店と「せんべろセット」について聞いてみることに。

 

ひろみんさんからの情報を得た中村さん。いざ「かっちゃん」に入店です!

 

お店の1階はカウンターだけの立ち飲みスタイル。カウンターの奥に進んだ中村さんはさっそく「せんべろセット」を注文。「かっちゃん」はキャッシュオン方式なので、1200円を支払うとマスに入った4つのサイコロが渡されました。

↑左は「かっちゃん」店主の小松活也さん

 

 

サイコロで交換できるお品書きのリストを見ると、種類が豊富で半数以上がサイコロ1個ぶん。サクッと飲もうと思った中村さんは、奮発して3個ぶんの「スパークリング清酒 澪150ml」をチョイス。料理は「おまかせ天ぷら盛合わせ」をオーダーしました。

 

近年、「せんべろセット」は都市圏や沖縄などさまざまな地域で見られるようになりました。提供しているのは立ち飲みや大衆酒場をはじめ、ホルモン焼き店や鉄板焼き店、イタリアンやカフェなど実施するお店のジャンルも多彩です。

 

価格帯は1000円~1200円程が多く、セット内容はドリンク2杯+おつまみ1品からドリンク最大7杯+おつまみ2品まで、お店によって個性があり、多種多様です。

 

システムは「かっちゃん」と同様にサイコロ(点棒)を購入し、好きなお酒・おつまみと引き換えられることもあれば、決まったセットを提供されている場合もあります。

 

なお「かっちゃん」の「せんべろセット」は終日楽しめますが、お店によっては「ハッピーアワー(※)」のように平日夕方などお客さんが少ない時間帯にのみ提供されていることも多いので、事前に確認しておきましょう。

※飲食店がお酒類の割引を行う時間帯

~「せんべろセット」とは?~

・1000円程度の決まった料金で楽しめるドリンク数杯+おつまみ数品のお得なセットメニュ—

・近年、せんべろセットは都市圏や沖縄など様々な地域で見られるようになった

・提供しているのは立ち飲みや大衆酒場をはじめ、ホルモン焼き店や鉄板焼き店、イタリアン、カフェなどお店のジャンルも多彩

・セット内容はお店によって個性があり、多種多様

・サイコロや点棒を購入し、好きなドリンクやおつまみと引き換えられるシステムを採用しているお店も

・ハッピーアワーのように平日の夕方限定などお客さんが少ない時間帯にのみ提供されている場合も多い

 

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最大4杯のお酒と職人仕立ての天盛りが1200円!

さっそく注文した「スパークリング清酒 澪150ml」が到着し、「せんべろセット」のひとり飲みがスタート! 初めてでキョロキョロしている中村さんに、店主の小松さんが声をかけてくれました。

↑「スパークリング清酒 澪150ml」はサイコロ3個、もしくは単品650円

 

小松 どうぞ、「澪」です!

 

中村 ありがとうございます! では、いただいちゃいまーす……うん!  私、「澪」が大好きなんです。香りからしてフルーティーで、シュワッとした飲み口が気持ちいい!

 

小松 素敵な飲みっぷりです! 今日はお仕事帰りですか?

 

中村 そうなんです。「せんべろセット」に惹かれて来ました! お店はいつからやってるんですか?

 

小松 ここは2010年オープンです。本店はJR品川駅の「常盤軒(ときわけん)」という立ち食いそば屋で、山手線と横須賀線のホームに計2店出してます。

 

中村 えっ、そのお店も気になります! でもそれなら、おそばの天ぷらのノウハウをこちらに生かしたってことですか?

 

小松 そうですね。あと、お酒に関しては同じ品川駅構内のエキュート品川で、「品川 ひおき」という居酒屋もやってるんです。僕はもともとそこの店長で、上野にはここの立ち上げの際に来ました。

 

中村 「かっちゃん」というのは店主さんのお名前ですか?

 

小松 そうですそうです(笑)。小松活也といいまして。

 

中村 やっぱり! ちなみに、開業当初から「せんべろセット」をやられてたんですか?

 

小松 「せんべろセット」は2018年ごろからですね。業態はずっと天ぷら酒場で、「せんべろセット」は1階の立ち飲みの限定です。

 

中村 さすがに種類も豊富だし、職人さんが揚げたてで提供してくれるので絶対おいしいですよね。

 

小松 もちろんです。ちょうどできましたのでどうぞ!

↑注文が入ってから職人さんが天ぷらをあげていく

 

中村 ありがとうございます。わっ、海老ものっててスゴい豪華!

 

小松 今日は海老、なす、かぼちゃ、れんこん、じゃがいも、にんじんの6種盛り。仕入れによって野菜の種類や品数が変わることはありますが、海老は必ず入りますね。

↑「おまかせ天ぷら盛合わせ」

 

中村 めっちゃお得じゃないですか! まずは手前のれんこんからいただきます……うん、サクサクしてて超おいしい!

 

小松 天つゆのほかに抹茶塩も用意してますが、「澪」なら天つゆのほうが合うかもしれませんね。

↑カウンターには抹茶塩と七味が用意されている

 

中村 確かに! お米の甘みが豊かな「澪」は、ほんのり甘めの天つゆのほうがいいかも。あと、さっぱりとした泡のキレは揚げ物と抜群に合います!

 

小松 お酒にも合ってよかったです。2杯目はどうします? サイコロはあと1個ですかね。

 

中村 迷っちゃうほどたくさんありますよね。どうしよっかな……、では「ISAINA炭酸割り」をお願いします!

 

小松 ありがとうございます! 少々お待ちくださいねー。

 

ちなみに、「かっちゃん」の「せんべろセット」で飲めるお酒は30種類以上。オススメは「タカラリッチ」(360m)で、サイコロ4個または1000円。なんと、炭酸水と氷は無料です。松竹梅「豪快」(150ml)もサイコロ2個、または550円とこちらもオススメです。

↑「タカラリッチ360ml」。サイコロ4個または1000円。炭酸水と氷は無料

 

↑松竹梅 「豪快 」(150ml)。サイコロ2個、または550円

 

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「せんべろセット」のマナーとポイント

 

小松 お待たせしました!「ISAINA炭酸割り」です。どうぞ~。

 

↑「ISAINA炭酸割り」はサイコロ1個、もしくは単品400円

 

中村 こちらもさっぱりしてておいしい!

 

小松 「ISAINA(イサイナ)」は若い女性にも人気の芋焼酎ですね。炭酸割りが飲みやすいと評判です。

 

中村 はい! りんごのような果実の香りと、シャープな爽快感が炭酸水とマッチしています。それにどんなおつまみにも合う味ですね。ということで、おつまみの追加オーダーをさせてください! 紙に書きますね。

 

小松 ありがとうございます! そう、うちの追加オーダーは紙ナプキンへの記入をお願いしてるんです。

 

中村 では変わり種天ぷらの「大根たいたん」をお願いします。ネーミングが気になっちゃって。

 

小松 お目が高いですね。こちらは隠れた人気メニューで、おでんの大根を天ぷらにしてるんです。少々お待ちくださいね~。

↑「大根たいたん」250円。単品メニューのみ

 

中村 あっ、こういうビジュアルなんだ。上にのってるのはゆずこしょうかな。いただきまーす!

 

小松 味もちょっと変わってないですか?

 

中村 だしが甘じょっぱい醤油べースなんですね。サクサクの衣と大根のジュワッとしたメリハリ。そこにゆずこしょうのピリ辛がいいアクセントになって、すごくおいしいです!

 

小松 よかった! おでんは、実はそばつゆベースのだしで炊いてるんです。「せんべろセット」の料理も、「おまかせ天ぷら盛り合わせ」ともうひとつは「おでんの盛り合わせ」で、2割ほどのお客様はおでんを選ばれますね。

 

中村 次は、おでんで「せんべろセット」楽しみたいです! では、最後のシメを。「ひとくちカレーライス」をお願いします!

 

小松 ありがとうございます! すぐ出ますので~。

↑「ひとくちカレーライス」(250円)。サイコロ1個でも交換可能

 

中村 シメにぴったりのサイズ感がうれしい! 味は割とスパイシーで、お酒に合う味わいのカレーですね。

 

小松 こちらは品川でも提供しているカレーで、あえてそばのだし感ではなくスパイシーさにこだわってるんです。

 

中村 品川のほうにも、こんど絶対行きますね!

 

最後に、ひろみんさんから聞いた「せんべろセット」を楽しむためのマナーやポイントを見ていきましょう。

 

1000円程度で気軽に楽しめる「せんべろセット」は、サクッと飲みたい時やスキマ時間などにおすすめ。平日夕方など「ハッピーアワー」のように開店直後の時間だけ提供するというお店も多いので、早い時間に飲む際にぴったりです。ただし時間制限を設けているお店もあり、その場合はだいたい60分程度とか。

 

また中には、別途お通しや席料がかかるお店もあるので、お得に楽しみたい場合には事前に確認しておくことをおすすめします。同時にキャッシュオンや支払いは現金のみというお店もあるので、千円札を用意しておきましょう。

 

そして、利用する側のマナーとして気を付けたいのが、長居は禁物ということ。セットのメニューを嗜んだ後、追加注文など飲み食いしない場合には、次のお客さんのために席を空けましょう。これは、一般的な立ち飲みや大衆酒場でも同様です。

↑「かっちゃん」の店内でも「せんべろセット」の注意書きが貼られている

 

~「せんべろセット」のマナーと楽しむポイント~

・時間制限を設けているお店もあり、その場合は大体が60分

・時間限定や別途お通し代がかかる場合もあるので予め確認しておくべし

・キャッシュオンや支払いは現金のみというお店もあるので、千円札を用意しておこう

・サービス価格で提供されていることがほとんどなので、長居するなら追加オーダーを

 

今回の訪問では「せんべろセット」が1200円、「大根たいたん」が250円、「ひとくちカレーライス」が250円。計1700円で有意義なひとり飲みを堪能できました。次回もまた別のテーマで、ひとり飲みの楽しみ方を追求します!

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

かっちゃん

住所:東京都台東区上野6-12-13
営業時間:11:00 – 21:45(L.O. 21:30)
定休日:なし

※価格はすべて税込みです

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・松竹梅 白壁蔵「澪」
https://shirakabegura-mio.jp/

・全量芋焼酎「ISAINA」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/

・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・宝焼酎「タカラリッチ」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takararich/

 

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2万4800円の工場見学!? “常陸野ネストビール”の木内酒造がビール・ウイスキー・日本酒全部載せのバスツアーで提供する贅沢体験の数々

日本におけるクラフトビールの黎明期からトップレベルの人気を博し、いまやウイスキーなども手掛けるビッグネームが「常陸野ネストビール」の木内酒造。その姿勢は、“大和魂”を重視しながら、実は海外交流にも超積極的。大胆な“攻め”の社風も特徴です。

 

そのポリシーが、個性派ビールやウイスキー事業の原動力にもなっているのですが、今度は“バー付きバスツアー”というユニークな事業を開始。お酒好きにはたまらない、贅沢体験の数々をいち早く体験してきました。

↑「BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)」の車内。バータイムでは、同社の様々なお酒(炭酸水もあり)を自由に楽しめる。

 

ウイスキー、ビール、日本酒のつくり方を1日でチェック

「バーバス常陸野」は朝10時に東京駅を出発し、木内酒造が誇るビール、日本酒、ウイスキーの製造拠点を中心に見学し、19時半を目安につくば駅に到着するという日帰りのツアー。

↑この日のドリンクは、「常陸野ネストビール」の「ホワイトエール」「ラガー1823」や、「日の丸ウイスキー KOME」「日の丸ジン 蔵風土」など。「BAR BUS HITACHINO」と描かれたタンブラーは、オリジナルのミニエコバッグとともに持ち帰れる。

 

車内バータイムでのふるまい酒のほか、直営店でのランチとディナーも含み、大人1名2万4800円(税込)。移動はお任せで、多ジャンルの酒について学ぶことができ、ときに里山など大自然の景観に癒され、グルメ三昧! しかもオリジナルのお土産付きと、けっして高くないツアーだといえるでしょう。

↑最初に到着したのは、ウイスキーなどをつくる八郷(やさと)蒸溜所。敷地の畑には「金子ゴールデン」(木内酒造が積極栽培している、日本原産のビール用大麦)が植えられ、6月上~中旬ごろには収穫を迎える。

 

茨城県石岡市の八郷は良質な水に恵まれ、また盆地のため昼夜の寒暖差が大きく、熟成地としても理想的。また八郷地区は日本の里山100選に選ばれるなど日本の原風景が残る地域で、蒸溜所からは東の富士と呼ばれる筑波山の凛々しい眺望を望みます。

↑売店が併設された、一般開放もしているビジターセンター。ここでは木内酒造の歴史のほか、ウイスキーの素材や製造工程を展示パネルとともに学べる。

 

【ウイスキー】この蒸溜所だけの独自仕様がもりだくさん

ウイスキーは概して、製麦→糖化→ろ過→発酵→蒸溜→熟成→ブレンド(ヴァッテド)→瓶詰といった工程でつくられますが、それぞれ順に追ってスタッフが案内。特に木内酒造ならではのポイントというと、まず仕込み用タンクの独自性が挙げられます。

↑手前が「ろ過器」で奥が「糖化槽」。ウイスキーとしては珍しく、大麦麦芽以外に小麦、米、そばなど多様な原料の使用を想定しており、その糖化温度を管理しやすくするために、分けて導入している。

 

また、「培養タンク」や「発酵タンク」も特徴的。前者は自社培養酵母を造るための設備で、菌によってはバニラやココナッツのような風味が生まれるのだとか。そして後者は、ステンレス製のほかに木製も使用し、なおかつ材質を変えることで、より多彩な原酒をつくれるようになっています。

↑左がスロベニア産とフランス産のミックスオーク材、右がフランス産のアカシア材を用いた発酵タンク。イタリアのガロベット社製だ。

 

蒸溜所のシンボルともいえる「ポットスチル」(単式蒸溜器)は、スコットランドの名門・フォーサイス社製で、ストレートヘッド(ボディとネックが直線)の形状。ラインアームはやや下向きで、濃厚で香り高い酒質を狙っていることがわかります。

↑釜から上部に伸びる部分(ここはストレートヘッド)と、折れ曲がって伸びるパイプ(ラインアーム)の角度などが酒質を決めるひとつの要素に。写真手前が「初溜釜」、奥が「再溜釜」。

 

また、こちらは連続式蒸溜機を付設したハイブリッドスチルとなっていて、蒸溜室の奥にはその連続式も設置されています。一般的に、連続式蒸溜機はグレーン原酒用の設備となりますが、八郷蒸溜所では個性的なグレーン原酒をつくるために、ポットスチルでもグレーン原酒を蒸溜。この点もかなり独特です。

↑この連続式蒸溜機はジンのほか、グレーンウイスキーも蒸溜する予定だという。

 

そして熟成樽の材質にもこだわりが随所に。ジャパニーズウイスキーは日本原産の木材を珍重しますが、同社ではその定番であるミズナラ樽はあえて使いません。一方で重宝されているのはサクラ樽。サクラの熟成樽が特別珍しいというわけではありませんが、蒸溜所がある石岡市には県内屈指の桜の名所「常陸風土記の丘」があり、その点もサクラ樽を重用する理由です。

 

 

↑樽材によって異なる風味を、原酒のボトルと材質を並べることで紹介。左端がサクラの鏡板。

 

見学のあとは、ウイスキーをテイスティングしながらのランチ。樽や熟成年月などが異なる3種の原酒を飲み比べ、個性がどう変わるのかを自らの鼻と舌で体験します。

↑左から、2種の自社酵母を使ったバーボン樽の23ヶ月熟成。ジャマイカのラム樽で熟成をかけた32ヶ月もの。国産小麦を51%使用し、ラム樽で30ヶ月熟成したグレーンウイスキー。

 

味わえる料理は、蒸溜所内に2023年に開業した「常陸野ハム BARREL SMOKE」で製造する自家製シャルキュトリ(ハムやソーセージなどの加工肉)の盛り合わせと、自家製フォカッチャです。同社では近隣の養豚農家と提携し、飼料の一部に麦芽の搾りかすなどを使用し育てた特別かつ高品質な「常陸野ポーク」を一頭丸ごと購入。そのうえで自社加工し、燻製にもウイスキー熟成で使用した樽のチップでスモークしています。

↑シャルキュトリはポルケッタ、ビアシンケン、ピスタチオ入りハムなど様々。地元ブランド「常陸秋そば」のそば粉と天然酵母による自家製フォカッチャも美味!

 

なお木内酒造では「石岡の蔵」という、国内の蒸溜所でも珍しい製麦施設をもっており、ここではスコットランドの伝統製法であるフロアモルティング(いまや現地でも希少な、ハンドメイドの製麦)も行っているとか。このツアーにその見学は含まれていませんが、いつか見てみたいものです。

 

【ビール】海外で最も有名なクラフト“フクロウビール”の総本山

次にバスが向かったのは、「常陸野ネストビール」と「常陸野ハイボール」がつくられている、那珂(なか)市の額田(ぬかだ)醸造所。ウイスキーもビールも麦のお酒ではあるものの、製造は途中から大きく異なることが見学によって深く理解できます。

↑まずは、麦の種類や副原料の説明からスタート。

 

ウイスキーは、麦汁を発酵させたもろみを蒸溜するお酒。蒸溜によって濃度の高いクリアな酒質へ磨き、長期の樽熟成で風味付けを行いますが、ビールは麦汁にホップを添加して発酵、短期熟成という手順を踏むフレッシュな(なかには長期熟成ビールもあります)醸造酒であるため、より麦汁の方向性が味わいを大きく左右します。

↑“ビールの魂”と呼ばれるホップを、乾燥させペレット状にしたもの。防腐や香り付けに必要な、ある種最も味を左右する主原料だ。

 

それはつまり、ビールはウイスキー以上に麦の品種や焙煎度合い、副原料などが重要ということ。そのため額田醸造所では、まず原料の紹介に始まり、次に設備や各工程の解説へ進みます。

↑手前から糖化用のマッシュタン(タンク)と、煮沸用のケトル。ほかに濾過用のロイタータン、凝集物の除去用のワールプール。これらを使って麦汁を移動し、発酵工程へ。

 

澄んだ麦汁は、ワールプールから発酵タンクへ移動させます。この時点では、まだお酒になっていない麦ジュースの状態。酵母を加えて発酵させることにより炭酸ガスを含んだビールとなり、その後ラガー(下面発酵ビール)の場合は約1ヶ月間低温熟成させます。

↑発酵タンクがズラリ。1本6000リットルですが、クラフトビールのマイクロブルワリーとしてはかなり巨大(醸造所の生産量は1年約3000klで、330mlボトル900万本分)。

 

ちなみに「常陸野ネストビール」は、世界におけるジャパニーズクラフトビールとしては日本屈指の知名度を誇るブランドです。それは、他社に先駆けて海外展開を進めてきたから。いまや生産量の約半分が海を渡り、輸出先は40ヶ国以上。NYのマンハッタンではフクロウマークのトラックが走る姿を見られます。

↑見学後は、もちろん試飲もあり。写真のボトルはサンプルで、この日はタップから注いだ「ヒストリー1602」という限定のエール(上面発酵)ビールをいただいた。

 

テイスティング時には、ホップ品種の違いを、ペレットを比較しながら確認できます。個性が魅力のクラフトビールは、よりホップの使い方が重要。その違いを学ぶチャンスもここでは得られます。

↑右端のビールが「ヒストリー1602」。こちらは秋田県横手市産のホップ(生のチヌークホップなどを使用)と、地元那珂市産の「金子ゴールデン」を一部使用した、フローラルな香りが特徴だ。

 

【日本酒】蔵でも貫かれるバリエ―ション豊かな酒造り

そしてバスは、木内酒造の祖業である日本酒の蔵へ。醸造酒であるため製法の概要はビールと似ていますが、麦芽でなく蒸した米で仕込むなど、素材の種類や加工法には大きな違いがあります。

↑ブルワリーの額田醸造所と同じ那珂市にある「鴻巣の蔵」。木内酒造は江戸時代の1823(文政6)年に木内儀兵衛がこの地で酒造りを始め、「菊盛」などの銘酒を生み出してきた。

 

特に日本酒の場合、味の方向性を大きく左右するのが精米歩合(米を削る度合い)であり、食用米のコシヒカリと、酒米で有名な山田錦は何が違うのか(あえてコシヒカリで醸す日本酒もあります)、そして精米歩合が酒質をどう変えるのか、など実物を見ながら学べます。

↑山田錦と、その山田錦と日本最古の原生酒米・雄町(おまち)をルーツに持つ愛山を、精米歩合別に展示。削るぶんだけ小さくなる、粒の大きさに注目したい。

 

ほかにも、日本酒とビールの違いに挙げられるのが麹(こうじ)の有無(なかには、麴を使うビールもあります)。麹とは穀物に種麹(麹菌や、もやしともいいます)を付着させた日本ならではの発酵原料のことで、日本酒ではこの麹を作る「製麹」が最も重要な工程ともいわれます。

↑製麹したあとの米麹。左が、伝統的に日本酒や醤油、味噌などに用いられる「黄麹」で、右が焼酎に頻用される「白麹」(木内酒造の「淡雫(あわしずく)」など、白麹で醸す日本酒もある)。

 

この酒蔵でも、木内酒造ならではの製法が見られます。わかりやすい点を挙げるとすれば、発泡性をもたせる日本酒の貯蔵槽にビール用のステンレスタンクを使っていること。

↑右に見える「ビアサーマルタンク」が、発泡性日本酒用の貯蔵タンク。ビールを手掛ける木内酒造ならではといえるだろう。

 

その一方、仕込み蔵には木桶で仕込まれた米焼酎なども。自由な発想から、ときに伝統的に、そして革新的な製法で、バリエ―ション豊かな酒造りを行っていることがわかります。

↑こちらは、伝統的な杉の木桶。

 

製麹を行う麹室(こうじむろ)など、いくつか立ち入りできない場所もありますが、一連の醸造工程を見学したあとは、バーとショップが併設された「ききさけ処」に移動して試飲を体験。

↑左がフルーティーな「菊姫 純米大吟醸」で、右がきめ細かい発泡が楽しめる「菊盛 純米吟醸にごり酒 春一輪」

 

「ききさけ処」では多彩な日本酒のほかに「常陸野ネストビール」や焼酎などもラインナップしており、銘柄によっては試飲も可能。一般開放しているので、今回のバスツアーでなくても足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

ディナーで社長が語ったモノづくりの流儀

見学の全行程を終えたラストには、「鴻巣の蔵」内にあるレストラン「蔵+蕎麦な嘉屋」でのディナーが待っていました。建物は、1924(大正15)年に建てられた蔵をリノベーションした空間。メニューは蕎麦のほか、使われる野菜や肉はすべて茨城県産の素材を厳選し、常陸野の美食と自慢の日本酒とのペアリングを楽しめます。

↑ツアーで提供される料理はおまかせの特別コースとなり、こちらはそのメインとなる「常陸野ポーク」のロースト。発酵玉ネギのソース、赤からし水菜、かぼちゃのピューレで味わう。

 

コースの料理は一皿ひと皿が、木内酒造の日本酒とのペアリングを考えて構成され、ラストには名物の蕎麦が登場。この蕎麦ももちろん「常陸秋そば」で、同社では「金子ゴールデン」の裏作期間を有効的に活用する意味で栽培しています。

↑「木内家秘伝のつけけんちん蕎麦」

 

「蔵+蕎麦な嘉屋」が提供するそばの割合は、外一(そば粉とつなぎの割合が10:1となる、九割そばの一種)。今回味わったメニューは、木内家に伝わるけんちん汁をつけ汁にしたもので、酒粕と味噌の風味、野菜の旨みがとけこんだコクのある味が、香り高い蕎麦にマッチします。

 

このディナーには木内酒造代表の木内敏之社長も加わり、バスツアーの狙いや今後の展望、使命感などを聞かせてくれました。

↑木内家九代目当主の敏之社長。日本のクラフトビール黎明期の1995年に「常陸野ネストビール」を立ち上げ、1996年より醸造開始。2016年にはウイスキーづくりも始めるなど、チャレンジングな同社をけん引する存在。

 

「よそが真似できないことをやるというのが、うちの理念のひとつにあり、このバスツアーもそうです。風土の景観や恵みを楽しんでいただきながら、私たちのモノづくりを知っていただきたいと思いました。

 

ただ、いろいろな冒険をしてきたなかで、私が次に注力したいのは日本酒なんです。理由は、自分自身が還暦を迎えたことで、あらためて祖業に向き合いたいと思ったから。また、蔵元の数が年々減少しているなど、市場が縮小しているから。であれば、うちならではのユニークな取り組みで業界を盛り上げたいと思ったんです。

 

ですから、このツアーでは最後に皆さんを『蔵+蕎麦な嘉屋』でお迎えし、ここではウイスキーやビールではなく日本酒を存分に味わっていただきたい。これからの木内酒造は、日本酒にもより注目ください!」(木内社長)

 

「バーバス常陸野」は運行開始を記念して5月末までは平日限定割引が適用となり、不定期で国内外のトップシェフによるプレミアムな料理を味わえるガストロノミーツアーが開催されたり、美術館でのアート鑑賞などを組み合わせた見学工程が行われたりと、特別な企画も。お酒好きはもちろん、旅好きの人も要チェックです!

 

「BAR BUS HITACHINO」
運行予定:木・土・祝(9:30受付)10:00発〜19:30着予定
料金:大人1名 2万4800円(税込)※運行開始記念により平日限定で大人1名2万1800円(税込)を2024年5月末まで実施
予約ページ
サービスサイト
※20歳未満は申し込み不可

「亀齢酒造」の酒蔵で見た日本三大酒処・西条の日本酒がおいしい理由

インバウンドの増加で、昨今ますます人気が高まるSAKE=日本酒。観光面では蔵元を巡る酒蔵ツーリズムも人気です。

 

全国に数ある“酒のまち”のなかでもいま注目したいのは、東広島の西条(さいじょう)。理由は、「日本三大酒処」のひとつであるうえ、7つの蔵元が駅から徒歩圏内でアクセス至便だから。そこで、フードアナリストの中山秀明さんに現地に足を運んでいただき、造り手のひとつ「亀齢(きれい)酒造」を訪問して酒都・西条や同蔵が造る酒の特徴などをレポート・解説いただきました。

 

日本三大酒処の灘、伏見、西条
この地が“銘醸地”と呼ばれる理由

「酒処」とは、良酒の造り手として名高い蔵元が集まる銘醸地や、有名な酒販店や居酒屋が多い地域のこと。そして、銘醸地に関しては兵庫の灘、京都の伏見、広島の西条が日本三大酒処として知られています。各地にはどんな特徴があるかを、まずは解説しましょう。

 

・山田錦のふるさと、名水が湧き出る「灘」

灘は、神戸市の灘区から西宮市にかけての沿岸地域を指します。そのなかに、西から西郷(にしごう)、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷と5つの地区があり、総称として「灘五郷」とも呼ばれます。

 

銘醸地となった理由はいくつもあり、まず名水百選にも選ばれた六甲山からの「宮水」が湧き出る名水の地であること。加えて、兵庫は“酒米の王者”と称される「山田錦」のふるさとであり、原材料にも恵まれていました。

 

さらに沿岸部であるため港から米などの物資を運びやすく、酒を江戸に運ぶ樽廻船(たるかいせん)も発着しており、物流や経済面でも有利だったことがこの地の発展を支えました。

 

・安土桃山時代に酒処の基盤ができた「伏見」

伏見は、京都市南端の伏見区周辺を指し、蔵元は桂川、鴨川、宇治川の間に集まっています。日本の中心地だった京都は酒も古くから造られており、なかでも伏見には名水百選の「伏見の御香水」で知られ、「伏水(ふしみ)」と呼ばれていたほど良質な伏流水に恵まれた地域。

 

そんな伏見が酒の都になるルーツは安土桃山時代にあります。1594(文禄3)年に豊臣秀吉が伏見城を築いたことで城下町としてにぎわい、内陸の河川には伏見港も誕生。現在の大阪、奈良、滋賀といった都市との水陸交通の要衝となり、日本酒の生産量も消費量も増加する一大拠点となったのです。

 

明治時代にふたりの偉人が切り拓いた
酒都・西条の奥深い歴史

灘・伏見と並び、日本三大酒処である西条。酒都とも呼ばれる理由は、酒造りに適した環境に加え、美酒を醸造するための製法や技術を発明した歴史があるからです。

 

東広島は古くから、北部にある龍王山の伏流水が井戸水となって湧き出る名水の地。西条の各酒蔵はいまでもこの地下水を仕込みに使い、その井戸水は市民に開放されているほど親しまれています。

亀齢酒造の「万年亀(まねき)井戸」。酒造期以外は井戸を一般開放しています。

 

また、気候風土にも恵まれ、西条は標高400~700メートルの山々に囲まれた盆地。寒暖差が大きいので酒米の栽培に向いているうえ、酒を仕込む冬の平均気温が4~5℃と、日本酒造りに理想的な条件がそろっています。

西条のマンホールには、個性的なデザインが一部採用。しかもパターンは数種あります。

 

歴史をたどると奈良時代から酒造りが行われてきたといわれますが、より盛んになったのは明治以降。近代国家を目指した新政府は酒株(免許制度)を廃止し、規制緩和で西条にも新たな酒蔵が誕生するように。加えて1894(明治27)年には西条駅が開業したことで、鉄道による酒や物資の運搬が可能となり蔵元も栄えていきました。

亀齢酒造は1898(明治31)年に創業。

 

しかし西条をはじめ広島で新規参入した酒造家たちは、ある悩みを抱えるようになります。それは、軟らかい水質。灘や伏見の仕込み水はミネラル豊富な硬水や中硬水ですが、広島の多くはミネラルの少ない軟水。軟水は発酵が進みづらく、さらに当時は腐敗することも少なくありませんでした。

 

この解決に挑んだのが、東広島市の安芸津町三津(あきつちょうみつ)の酒造家・三浦仙三郎氏です。三浦氏は硬度によって酒質が変わることを突き止め、勘に頼る酒造りではなく、科学的な実測値に基づく研究によって新たな酒造理論を確立。ミネラル不足という軟水の弱点を、麹(こうじ)による糖化(※1)発酵の促進で利点に変える「軟水醸造法」を発明しました。

 

その後三浦氏は、研究成果をまとめ「改醸法実践録」として出版。業界に共有したことで、軟水の地域だった広島県全体の酒質も向上。1907年(明治40)年から始まった全国清酒品評会で広島の酒は、灘・伏見を抑えて最高賞の優等1、2位を獲得することに。また、この切磋琢磨のなかでフルーティーな吟醸造り(※2)が生まれ、後世で三浦氏は“吟醸酒の父”と呼ばれるようになりました。

こちらは1911(明治44)年に始まった全国新酒鑑評会において、1917(大正6)年に設けられた日本初の名誉賞に、亀齢酒造が輝いた際の賞状。

 

東広島の偉人はもうひとり、日本初の動力式精米機を発明した佐竹利市氏がいます。広島は高低差の大きな河川がなく、水車による精米が困難でした。精米は人力に頼らざるを得なかったところ、佐竹氏が酒造用の精米機開発に挑み、砥石で米を削る「研削式精米機」が完成。当時としては画期的だった精米歩合(せいまいぶあい/後述)60%も実現し、精米の効率化と前述の吟醸酒づくりに貢献したのです。

 

【日本酒の基礎用語】

・糖化……麹の酵素により、米のデンプンが糖へと分解される現象。(※1)
・吟醸造り……ぎんじょうづくり。国税庁の定義では「よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造する」こと。(※2)

 

日本酒の種類は2つを押さえよう
ポイントは精米歩合と醸造アルコールの有無

日本酒は「本醸造酒」「純米酒」「吟醸酒」「純米大吟醸」などに分類されますが、その定義は“「醸造アルコール」の有無”と“精米歩合”が関係しています。

 

「醸造アルコール」はサトウキビなどを原料にした蒸留酒で、使い方によっては酒質をクリアにしたり、香り高くしたりする効果があります。一方「醸造アルコール」を添加せず、米、米麹、水だけで造るのが純米酒。

出典=日本酒を中心としたSAKEカルチャーを世界に伝えるWEBメディア「SAKETIMES」

 

お米は外側に近い部分に脂質やアミノ酸などを多く含んでおり、これらは旨みのもととなる反面、雑味の原因となります。そこで澄んだ酒質にするため、お米の外側を削るのが精米です。精米歩合は、精米した後に残った酒米をパーセンテージで表示したもの。

 

ラベルなどに記載される「精米歩合35%」とは、65%を削って残りの35%を原料にしたという意味です。精米歩合を高くする(削る部分を多くする)と、香り高く洗練された酒質、低くすると濃厚な味わいのお酒を造りやすくなります。

 

広島のなかでも水に恵まれた西条
やがて名実ともに酒の都へ

こうした2つの発明は、広島を銘醸地へと発展させる原動力に。なかでもとくに西条は広島でも珍しい中硬水が湧く地で、軟水醸造法の酒だけでなく硬水の銘酒も造れるという、奇跡的な地域でした。それゆえ多彩な美酒が生まれ、酒処としての地位を確立したのです。

 

やがて1929(昭和4)年には県醸造試験場の清酒醸造部門が広島市から西条へ移転。さらに近年でも、1995年には国税庁醸造試験場が東京都北区から東広島に移ってきました。また、1990年からは毎年10月に「酒まつり」が西条酒蔵通りで開催され、国内外から20万人以上も集まる国内屈指の日本酒イベントに成長するなど、名実ともに西条は酒都となっていったのです。

2023年からは、毎年春に現地の10蔵による「東広島蔵開き」が開催。4月の毎週土曜日に、エリア内の酒造が蔵開きを順に行います。

 

辛口の名手と呼ばれる亀齢
杜氏が語るその極意

では、今回訪れた亀齢酒造はどんな特徴をもった造り手なのでしょうか? とくに知られているのが、“淡麗辛口な酒の名手”であること。西条をはじめとした広島の酒造りは、軟水を生かしたやわらかい甘口が主流ですが、亀齢酒造はキレの鋭い辛口の酒に定評があります。

 

ただ、辛口に対するこだわりを杜氏(とうじ ※3)の西垣昌弘さんに聞くと、予想外の答えが返ってきました。それは、辛口は強く意図していないというもの。

西垣昌弘さん。名酒「悦凱陣(よろこびがいじん)」で知られる香川の丸尾本店で杜氏を務めていた父・西垣信道さんの下で修業し、その後親子で亀齢酒造へ。2001年に代替わりし、流儀である“手造りの酒”をいまも生み続けています。

 

「目指すのは味の方向性以上に、とにかくおいしい酒であること。ほかの造り手さんもそうだと思います。でも、造り方って環境や杜氏さんの考え方によっても変わるんですよね。私の場合、代々受け継いできた製法や酵母などが亀齢酒造らしい味を生み出していて、それが結果的に辛口の評価をいただいているのだと思います」(西垣さん)

 

なお、西垣さんは日本四大杜氏(南部、越後、但馬、能登)の一翼を担う、兵庫県の但馬杜氏。毎年寒仕込みの冬場になるとここで蔵人とともに酒造りをし、終わると地元の新温泉町に戻り、地元の特産品「はたがなる大根」を栽培しています。

 

「よそのことはわかりませんけど、きっとうちならではの造り方があるんだと思います。ぜひ見ていってください」と話す西垣さんの案内で、普段は見学などを行っていない貴重な酒蔵のなかへ。

 

【日本酒の基礎用語】

・杜氏(とうじ)……蔵元における酒造りの最高責任者のこと。「但馬杜氏」など、酒造りの職人集団という意味でも杜氏と呼びます。(※3)

 

独自の酵母や低温長期醸造が
亀齢酒造のエスプリ

日本酒は、精米した酒米を洗って蒸して冷まし、用途に応じてもろみ用の掛米、麹用の麹米、酒母(しゅぼ/後述)用の酒母米にわけます。その他、一連の醸造工程をイラストとともに解説しましょう。

蒸した酒米から製麹し、そこから酒母をもとにもろみを仕込み、発酵を終えたら搾って日本酒と酒粕に分け、貯蔵するという流れが概要。出典=「SAKETIMES」より

 

とくに重要な工程が、米麹を造るための製麹(せいきく)。亀齢酒造では狙ったクオリティの麹を安定的に造れる機械造りと、少量ずつ緻密なコントロールでより高品質な麹を造る手造りのふたつを採用しています。

機械造り用の設備。写真は製麹をしていない状態で、米麹は入っていません。

 

実際に見せてもらったのは、手造りによる製麹。これを行う麹室(こうじむろ)は冬でも温かく、麹菌を繁殖させるために35℃前後、湿度25%前後という環境。麹米に種麹(たねこうじ。「もやし」ともいいます)という黄麹菌(※4)の胞子をふりかけ、混ぜ込んで積み上げ、布を掛けて保温し寝かせる工程を行います。

小分けした麹箱内の麹米をほぐし、再度まとめて布を掛ける仲仕事(なかしごと)を行っているところ。手作業による製麹は緻密な温度管理のもと計3日かけて行い、最終的に麹米の温度は40℃を超えます。

 

次に案内してもらったのは酒母育成室。水と麹と蒸米に酵母を加えて酒母を仕込み、さらに14日間ほどかけて造り上げていきます。

こちらが酒母。亀齢酒造では温度管理を非常に重要視します。これ1本で、約2000リットルの日本酒の元になるとか。

 

「麹は酒質に大きく影響しますから、非常に重要。また、酵母も大切ですね。うちでは一般流通している『きょうかい酵母(※5)』を使うこともありますが、歴代の杜氏が受け継いできた独自の酵母を使う銘柄もあるんです。とくに昔からの定番にはよく使いますね。なので、亀齢酒造の味は伝統的な酵母や、蔵に浮遊している『蔵付き酵母』などが個性のひとつになっているんだと思います」(西垣さん)

 

次は、巨大なタンクが並ぶ醪(もろみ)発酵室へ。ここでも、亀齢酒造ならではの伝統製法が徹底されていました。

数千リットル級の巨大タンクが数十本。一日に数回、櫂(かい)入れを行うことで全体を混ぜ、酵母に酵素を送りつつ温度を一定になじませていきます。

 

「うちのもろみは、低温長期醸造が鉄則。最初は一般的な三段仕込み(※6)でもろみを造っていきますが、その後の発酵は温度を慎重に管理しながら低い温度でゆっくり発酵させていきます。こうすることによって、荒々しさがないクリアな味わいになるんですよ」(西垣さん)

 

亀齢酒造では、低温長期仕込みによる吟醸造りがベース。その理論を重んじつつ、歴代の杜氏によって培われてきた独自の酵母やロジックで、ほかにない西条の酒を醸しているのです。

醪圧搾室。発酵を終えたもろみは、この巨大な圧搾機で日本酒と酒粕に分ける上槽(じょうそう)を行い、その後適宜ろ過、火入れ(※7)、貯蔵、瓶詰めを経て出荷されていきます。

 

【日本酒の基礎用語】

・黄麹菌……きこうじきん。ニホンコウジカビとも呼ばれ、日本酒や味噌、醤油などを造る際に用いられます。なお、焼酎では白麹菌や黒麹菌を使うこともよくあります。(※4)
・きょうかい酵母……公益財団法人日本醸造協会が頒布している、日本酒、焼酎、ワインの酵母菌のこと。近年の日本酒では、秋田・新政酒造の「きょうかい6号」や、比較的新種の「1801酵母」などが有名です。(※5)
・三段仕込み……もろみを仕込む際、原料をタンクへ一度に投入するのではなく、3回に分けて行う手法のこと。四段、五段……十段といった仕込み方もありますが、三段仕込みが最も一般的です。(※6)
・火入れ……日本酒を腐敗から防いだり、品質を保ったりするために行われる加熱処理のこと。処理せず生の状態で出荷される日本酒のことを「生酒」と呼びます。(※7)

 

直近の西条品評会で優勝した
亀齢の味を飲み比べ

一連の流れを見学したあとは、利き酒も体験させてもらいました。こちらは西垣さんの後継者、東 健太郎さんと一緒に。

東さんは、広島県福山出身。亀齢酒造では西垣さんや東さんを含む総勢9名の蔵人で、今季の酒を造っています。

 

飲み比べたのは、機械で搾るのではなく酒袋に吊るして滴り落ちる雫を集めた希少な限定酒「亀齢 大吟醸 斗瓶採り(とびんとり)」の生酒と、火入れ後の2種類。

どちらも「亀齢 大吟醸 斗瓶採り」。奥が生酒で、手前が火入れです。

 

味わいは、どちらも大吟醸ならではの果実味が際立ち、ラムネを思わせるジューシー感が印象的。繊細でクリアな口当たりですが旨みの芯もあり、余韻はキリッとして上品なおいしさです。そのうえで、生酒のほうがやや酸を感じるフレッシュな味わい。火入れのほうは落ち着いたなめらかさがあり、濃い味付けの料理にはこちらのほうが合いそうだと感じました。

 

2023年開催の「西条清酒品評会」で、西垣さん率いる亀齢酒造は3度目の優勝を果たしました。「蔵人たちの輪を重視し、よりおいしい酒を造っていきたいです」と笑顔で抱負を語ります。

 

なお、亀齢酒造では蔵の一般見学はできないものの、万年亀舎(まねきや)という直売所が併設されています。ここだけでしか買えない限定酒もあるので、西条に来た際は足を運んでみてください。

万年亀舎の店内。日本酒や酒粕はもちろん、お酒を使った食品やオリジナルグッズなどが並んでいます。

 

左から「純米大吟醸 亀香」2530円、「大吟醸 創」2750円、「大吟醸」5500円。そして右端が蔵元限定品「吉田屋の酒」1650円(すべて720ml)

 

亀齢酒造
住所=広島県東広島市西条本町8-18
TEL=082-422-2171
万年亀舎営業時間:平日9:00~16:00(昼休憩あり)、土日祝10:30~16:00
定休日=不定休

 

駅周辺に7つの老舗蔵が点在し、各蔵元の酒を飲み比べられるお店や、その酒を使った料理やスイーツを扱うお店があるなど、まち歩き以外にもさまざまな楽しみ方がある西条。ぜひ、次の休みに訪れてみてはいかがでしょうか。

 

Profile

フードアナリスト / 中山秀明

フードアナリスト・ライター。内食・外食のトレンドに精通した、食情報の専門家。現場取材をモットーとし、全国各地へ赴いて、大手メーカーや大手小売りから小規模事業者まで、幅広く取材している。酒類に関する知識量も豊富で、日本酒にも詳しい。

日本三大酒処の東広島・西条は“美酒鍋”や酒チョコも楽しめる地酒のテーマパークだと断言したい

兵庫の灘、京都の伏見と並び“日本三大酒処”に数えられる、広島の西条(さいじょう)。酒都とも呼ばれる背景には、日本酒の醸造や商売に適した自然や立地に加え、酒質を向上させるために尽力した発明家がいたことなどが挙げられます。実際、訪れてみるとそこは地域一帯が、まるで地酒のテーマパークのようでした。蔵元のほかにショップや飲食店など、この街ならではの魅力をレポートします。

↑JR西条駅の南口を出ると、目の前には8銘柄が名を連ねる大きな看板が!

 

 

酒都の歴史や文化を五感で楽しめる酒蔵の施設へ

西条は、街歩きを楽しむ観光スポットとしても秀逸。それは、地域を代表する7つの酒蔵が駅から徒歩圏内にあり、古くは江戸時代の建造物も残る伝統的な町並みであること。また、各酒蔵では見学施設や直売所がにぎわっていることも魅力です。

↑西条酒蔵通りにて。銘柄名が記されたレンガの煙突や、なまこ壁が目を惹く蔵造りの建物が軒を連ね、この景観は街のシンボルにもなっています

 

数ある酒蔵のなかから訪れたのは、1873(明治6)年創業の賀茂鶴(かもつる)酒造。冒頭で述べた発明家のひとりに、日本初の動力式精米機を生み出した佐竹利市氏がいますが、この精米機の開発を依頼したのが賀茂鶴酒造の創業者、木村和平氏です。

↑賀茂鶴酒造の構内。内部は杜氏による酒蔵案内の日(不定期開催・要予約・有料)に見学でき、その日以外でも後述する見学室直売所では入場無料で酒造りや歴史を学べます

 

当初から評価は高く、賀茂鶴は1900(明治33)年のパリ万国博覧会で名誉大賞を受賞。さらに1917(大正6)年の全国酒類品評会では日本初の名誉賞受賞、1921(大正10)年には同品評会で全4222点の出品中1~3位を独占するなど、古くから広島における造り手のトップランナーとして有名です。

↑2019年、賀茂鶴酒造の一号蔵を改装し見学室直売所に。例えば、酵母の優秀性が日本醸造協会認められて全国へ配布された、賀茂鶴の「協会5号酵母」などについても学べます

 

見学室直売所となっている一号蔵は、国の史跡にも指定された明治時代初期の建造物。館内には酒造り解説ムービーの上映や、醸造を身近に体感できる展示コーナー、日本酒や関連グッズなどを販売するショップなどがあり、そこでは試飲も楽しめます。

↑こちらは酒造りにおいて最も重要な製麹(せいぎく)が行われる、麹室(こうじむろ)を再現した部屋。どのようにして日本酒が醸されていくのかを体感できるのもポイントです

 

賀茂鶴酒造における近年の有名なトピックスが、2014年に来日したオバマ大統領が安倍晋三首相(ともに肩書は当時)と会食した際、銀座の有名鮨店「すきやばし次郎」で飲んだ日本酒が「特製ゴールド賀茂鶴」だったというエピソード。直売所ではこの名酒のほか、蔵元限定酒の購入もできます。

↑売り場にはプレミアムBARも設置。100円から試飲ができるうえ、500円でプレミアムな3銘柄の飲み比べも可能

 

その蔵元限定酒が「蔵出し原酒」。色艶淡麗にしておだやかな香りの先に、濃厚な風味と軽快ななめらかさがあって飲み飽きない。そんな、賀茂鶴酒造の伝統的な味わいを表現した一本となっています。

↑「蔵出し原酒」は720mlで1700円。西条土産にもオススメです

 

【SHOP DATA】
賀茂鶴酒造 見学室直売所
住所:広島県東広島市西条本町9-7
営業時間:10:00~18:00(入場17:45まで)
休業日:お盆、年末年始。その他酒まつり前など臨時休業あり
アクセス:JR「西条駅」南口徒歩3分

 

酒を贅沢に使った西条ならではのご当地グルメ「美酒鍋」

その賀茂鶴酒造が2005年、酒蔵のすぐ近くにオープンしたのが数寄屋造りのレストラン「佛蘭西屋(ふらんすや)」です。西条には酒都らしく、日本酒を贅沢に使った「美酒鍋(びしゅなべ)」というご当地グルメがあり、その元祖もまた賀茂鶴酒造。終戦間もない、食糧難の時代に生まれたといわれるこの料理を名物に、同店では多彩な和洋食を提供しています。

↑京都の町屋をイメージした意匠は、内外観ともに情緒にあふれています。訪れた日の夜の部は、平日でも予約で満席という人気ぶりでした

 

いまや東広島市内の10店を超える飲食店で提供されている美酒鍋。生み出したのは、賀茂鶴酒造の当時の役員が「蔵人にも腹いっぱいの料理を食べてほしい」との想いで考案したのだとか。つまり、まかない料理がルーツ。その後、1990年から西条で毎年10月に開催されるようになった「酒まつり」で振る舞われ、地元の名物として浸透していきました。

↑元祖の名物をはじめ、お造りやデザートなども楽しめる「美酒鍋御膳」(1990円)。御膳はランチ限定で、夜は単体の「美酒鍋小鍋」(1310円)などが提供されています

 

日本酒仕込みの本番は冬で、厳しい寒さのなかで作業が行われます。この鍋には、そんな酒造り期間を乗り越えるためのレシピが凝縮。肉は栄養価が高い鶏のホルモン(やがて現在の砂肝に)を主体に、野菜は冬に旬を迎える白菜やネギなどを入れていたそうです。

↑味付けは自慢の日本酒をベースに、利き酒に影響が出ないようにするため塩と胡椒でシンプルに

 

現在の美酒鍋は、日本酒と塩胡椒のほかニンニクも効かせるなど、現代的な味付けへと進化。具材にも鶏モモ肉や豚肉が加わり、よりコク深いおいしさに。実際に食べてみると、どこか塩こうじで味付けしたような、素材のうまみが凝縮したようなふくよかな味わいに感じました。添えられた卵を溶いて、すき焼きのように浸していただくと、いっそうリッチな芳醇さが楽しめます。

↑水は使わず、ベースは日本酒100%。ほんのり甘みがあり、和ダシのような滋味深い風味を感じるのは、きっと日本酒が醸し出す底力でしょう

 

なお、2024年3月には文化庁が主催の、地域に根付く食文化を応援する「100年フード」の新たな認定料理が発表され、広島ではかきの土手鍋などとともに美酒鍋が加わりました。今後、知名度はいっそう高くなっていくことでしょう。

↑「佛蘭西屋」では見学室直売所で2000円以上買い物をすると、「蔵出し原酒」の1杯(30ml)試飲無料サービスが。逆に「佛蘭西屋」で2000円以上飲食すると、見学室直売所で同じサービスが受けられます

 

ほかにも同店には、日本酒との相性を考慮した様々な料理がラインナップ。西条で贅沢なフードペアリングの体験を満喫したいときは、ぜひ「佛蘭西屋」へ。

↑「佛蘭西屋」の1階。上品で温かみのある大人な空間です(写真提供:賀茂鶴酒造)

 

【SHOP DATA】
佛蘭西屋
住所:広島県東広島市西条本町9-11
営業時間:11:30~14:30(L.O.14:00)、17:00~22:00(L.O.21:00)
休業日:第2第4月曜、木曜、年末年始
アクセス:JR「西条駅」南口徒歩3分

 

全酒蔵の酒を使った8種のトリュフを供する洋菓子店

もう一軒紹介したい、ここならではの個性あふれる店が「御饌cacao(ミケカカオ)」。西条町のパティスリー「菓子工房mike」が、開業10周年を機に駅から近い場所に新規オープンしたショコラトリーです。

↑「御饌cacao」は2019年開業。古民家を改装した空間で、西条のまちに溶け込む風情たっぷりのお店です

 

「御饌」とは、神社や神棚に献上するお供物のこと。カカオの学名、テオブロマ カカオの「テオブロマ」がギリシャ語で“神様の食べ物”を指す、その共通点から店名に採用されました。他方、日本酒もお清めに使わるなど、神事と深い関わりがあります。そこに込められたのは、「『御饌cacao』の名にふさわしいチョコレート店を目指したい」という店主の決意。その思いはやがて結実し、ほかにはないスペシャリテを生み出しました。

↑写真の人物が、オーナーシェフパティシエ ショコラティエの三宅 崇さん。広島県最東部に位置する福山市出身で、地元に新天地を求めて東広島に開業しました

 

その傑作が「西条酒8蔵の日本酒トリュフ」。西条が誇る全8蔵元の日本酒と酒粕をそれぞれの中心に練り込んだ、各酒の個性を楽しめるオンリーワンのトリュフチョコレートになっています。2022年度には、市のお墨付き土産「東広島マイスター」に認定されました。

↑店頭のショーケースに並ぶ「西条酒8蔵の日本酒トリュフ」。ひとつ378円で、3個入り、5個入り、8個入りで詰め合わせることもできます

 

具体的には日本酒と酒粕をガナッシュに練り込み、薄い4層のチョコレートでコーティング。このレイヤーによって食べた瞬間にチョコが砕け、なめらかなガナッシュと一緒に溶け出す“口福”なハーモニーに。各日本酒の味が最も引き立つよう、それでいてアルコールの風味が出すぎてチョコレートの邪魔をしないよう、ひとつずつ素材との組み合わせや配合を変えているので、香りとうまみが口のなかで絶妙に調和します。

↑各酒蔵のオリジナルお猪口に1粒ずつ入ったタイプも(1個708円)。すべて味が異なるので、利き酒ならぬ「利きショコラ」をお猪口とチョコで楽しむのも一興です

 

三宅シェフは本店にあたる「菓子工房mike」にいるため、取材では奥様のゆり子さんが開発秘話などを教えてくれました。例えば、各社から協力を得るまでの経緯。「西条を盛り上げたいという思いがあるので、一社も欠けることなく全蔵元様から許諾をいただくことが私たちの絶対条件でした」と話します。

↑三宅ゆり子さん。全日本ヴァンドゥーズ(お菓子を専門に販売をする女性の専門職)の認定ヴァンドーズ、またチョコレートエキスパートの資格ももっています

 

「西条に『菓子工房mike』をオープンした当初より、この地から世界へ発信できるスイーツを商品化したいと考えていました。となればやはり西条は銘醸地ですから、地元の蔵元様の協力がいただけたら一番だなと。そこで一社ずつお声がけし、『御饌cacao』の開業時には全8蔵様とのコラボトリュフを完成させることができました」(三宅さん)

↑「西条酒全8蔵元とのコラボトリュフチョコ8種セット箱」

 

もちろん同店には、その他のスイーツも種類豊富にラインナップ。人気商品の例を挙げれば、「チョコレイトディスコ」がオススメです。このネーミングにピンと来た人はご名答。こちらは、シェフが世界的音楽ユニットPerfume(パフューム)のファンであることから商品化されたスイーツ。名曲「チョコレイト・ディスコ」は、いまやバレンタインデーの新定番ソングとしても有名です。

↑左が「チョコレイトディスコ」で、右が春限定の「ホワイトディスコ」(各464円)。当人らからは非公認であるものの、ファンなら見逃せない逸品でしょう。ちなみにPerfumeの3人は広島県出身

 

ほかにも同店には「甘酒たると」(300円)や「酒蔵通りの日本酒ケーキ」(270円)といった、西条ならではのスイーツをはじめ、ビーントゥバー(カカオ豆の産地の違いを楽しめる板チョコレート)やチョコレートドリンクなども。さらに、カカオを使ったメキシコの「モーレ」風カレー(1100円)や、パフェにカクテルといった個性派メニューも盛りだくさん。イートインでくつろげる座敷も併設されているので、ひと休みスポットとしての利用にもオススメです。

↑古民家の内装を生かし、和モダンな雰囲気に設えられた座敷。まったりとしたひとときを過ごせること間違いなしです

 

【SHOP DATA】
御饌cacao
住所:広島県東広島市西条本町15-25
営業時間:水~金曜11:00~18:00、土・日曜祝日11:00~17:00
休業日:月・火曜
アクセス:JR「西条駅」南口徒歩4分

 

西条では前述の「酒まつり」が毎年10月に開催されるうえ、4月にも毎週土曜に現地の10蔵による「東広島蔵開き」が開催。この日はエリア内の酒造が蔵開きを順に行い、新酒を味わえたり杜氏から酒造りの話を直接聞けたりできます。ぜひ今度の休みは、この地へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

※価格表記はすべて税込みです。
※「御饌cacao」の価格表記はテイクアウト時のものです。
※情報は2024年3月末日のものです。

 

撮影/鈴木謙介

 

泡のあとからレモンが…2024年は「未来のレモンサワー」に大注目!【フードNEXTトレンド】

コロナ禍を経て息を吹き返した外食トレンドからも目が離せない! 今回はフードライター中山秀明さん、「GetNavi」フード担当・鈴木翔子さんに「低アル日本酒」と大注目の「スライスレモン入り缶チューハイ」について聞いてみた。

※こちらは「GetNavi」 2024年2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです

 

■フードライター中山秀明さん
食のトレンドに詳しいフードアナリスト。個人的には、左ページの「お手ごろうなぎチェーン」が特に激アツだと豪語する。

 

■「GetNavi」フード担当・鈴木翔子

本誌のフードを5年以上担当。酒好きが高じ、しばしばバーでも働いており、酒トレンドに詳しい。

 

度数の低下で飲用ハードルも爆下がり!「低アル日本酒」

昨今は、お酒をあえて控えるライフスタイル「ソバーキュリアス」が世界的に浸透。日本酒でも低アルタイプが増加しており、飲用のしやすさなどからファンを拡大している。

※液面に背景が映り込んでいるため、 実際のお酒とは色味が多少異なります

月桂冠
Gekkeikan Studio no.4
3300円

 

度数を約3分の1に抑えつつ日本酒らしいおいしさはキープ

一般的に15%前後ある日本酒のアルコール度数を、独自技術で5%に。日本酒本来のお米の風味や、フルーティな香り、酸味はそのままで、さっぱりとした涼しげのある味わいに仕上がっている。

 

【ヒットアナリティクス】誰もが知る蔵元からの登場で認知拡大に期待

「地酒の蔵元を中心に少しずつ増えていた低アルコール日本酒を月桂冠もリリース。本品は群を抜いた度数の低さで、飲みやすさと日本酒らしさが楽しめ、ライトユーザーが日本酒のおいしさに気付くきっかけになりそう」(鈴木)

先進技術:4 顧客ニーズ:5 市場の将来性:5 独自性:4 コスパ:3

 

即完売した限定品の“未来”はどうなる?「スライスレモン入り缶チューハイ」

ひと頃よりも人気が落ち着いてきたレモンサワーに、新たなヒットの兆しが! なんと缶チューハイの中に本物のスライスレモンが入っているのだ。2023年春に限定販売され即完した商品で、24年に再発売されるとのこと。再び入手困難になりそうだ。

アサヒビール
未来のレモンサワー
希望小売価格:298円(税込)

 

斬新な仕様とフレッシュな味で話題! 発売後14日で完売した意欲作

2023年の5月に、同社のECサイトで1700セット限定で発売。フルオープンのフタを開けると泡のあとにレモンが浮き上がる斬新な仕様と、リアルな果実感あふれる味が話題となり、14日間で完売した。

↑同社の「生ジョッキ缶」などと同じ、フルオープン缶。泡のあとにスライスレモンが出現し、目と舌で楽しませてくれる

 

【ヒットアナリティクス】新たなフルオープン缶の体験価値に期待大

「2021年に発売された『アサヒ スーパードライ 生ジョッキ缶』は、泡がふくらむ斬新な体験価値で社会現象となる大ヒット。そのDNAを継ぎ実物レモン入りのサワーで提案するとは! 2024年の再登場に期待大です」(中山さん)

先進技術:4 顧客ニーズ:4 市場の将来性:4 独自性:5 コスパ:2

八海山からHakkaisanへ! 百年企業「八海醸造」の世界戦略とは?

「八海山」で有名な八海醸造が今年、100周年を記念した記者会見を開催し、新商品や今後のビジョンなどを発表しました。その方針を一言でいえば、まさにグローバル戦略。内容をレポートします。

↑八海醸造株式会社の南雲二郎代表取締役(右)と、南雲真仁取締役副社長/HAKKAISAN USA代表(左)

 

記念酒は750mlで13万円2000円!

八海醸造は新潟県南魚沼市で、1922(大正11)年に創業。2023年は101年目の船出の年であり、その取り組みのシンボルとして発表されたのが、アルファベットのコーポレートロゴです。デザインを手がけたのは、日本を代表するデザイナー・原研哉氏。

↑八海醸造の三代目当主・南雲二郎代表。モニターには新コーポレートロゴが映し出された

 

原氏からは「酒は、どんな種類の酒でも何かしらの癖があり、そこに愛着や親しみを覚えるものです。そういう個性の肌触りを、文字のかたちに込めました。」といったメッセージも寄せられました。

↑日本酒の「八海山」はじめ、全商品に「Hakkaisan」のコーポレートロゴが併記されます

 

また、登壇した八海醸造の南雲代表取締役は「日本酒を含め、幅広い領域において展開することを前提として、オリジナルの書体を作成いたしました。伝統的、現代的、洋風、和風など多様な場面に適応できて、印象にも残りやすいデザイン。我々が今後展開していく新商品方針や事業に関しても、このロゴイメージで統一することによって、お客様に八海山グループというブランドを認知していただき、当社のイメージ向上を図っていきたいと考えています」とコメント。

↑会場には同社の日本酒はもちろん、ジン、クラフトビール、スイーツ、化粧品といった多彩なプロダクトも展示

 

100周年を記念した商品も発表され、そちらのスケールもケタ違いでした。名称は「八海山 百」。精米歩合25%の大吟醸酒で、価格は750mlで税込13万2000円(税込)。氷点下3℃で6年間貯蔵されているのも特徴で、全国の百貨店や酒販店で販売されています。

↑「八海山 百」。100周年を記念した限定酒となります

 

NYの蔵元と協業し、
日本酒の生産と文化発信の拠点を新設

会見で印象的だったのは、「永遠に終わらない会社を目指し、挑戦と変化に積極的に取り組んでいく」「日本酒を世界飲料に」というメッセージ。海外展開への準備はすでに整っており、2021年12月に資本業務提携した米国NYのブルックリンクラとの取り組みをさらに強化。今後の具体的な事業内容が明らかにされました。

↑青いジャケットの方が、ブルックリンクラのブライアン・ポーレンCEO。同社は2016年に設立された酒造で、モニターの写真はタップルーム(醸造所に併設されているバースペース)です

 

目玉は、新しい酒蔵のオープン。タップルーム(醸造所に併設されているバースペース)を併設し、来訪者に向けた日本酒の啓発活動を行っていくそうです。しかも具体的には「サケスタディセンター」という教育機関を設け、日本酒の背景にある文化や食、歴史を総合的に学べるようにするとともに、啓発プログラムを活用して魅力を発信していくとのこと。

↑NYに今秋開業。酒造りに関しては、八海醸造の蔵人を派遣して協業するとのことです

 

また、酒蔵を新設することでより多くの量を造れるうえ、良質かつ新たなスタイルの日本酒やチャレンジングなSAKEも生み出されるようになるとブライアン氏は語ります。南雲代表取締役は、かつての日本でビールやウイスキーがそうだったように、自国の人々が現地の米と水を使ってSAKEを造り、そこで暮らす人々が楽しく飲むという文化醸成が大切であるとの考えから、この取り組みを実現させたといいます。

↑こちらはブルックリンクラのSAKE。正式には未上陸の希少酒のため、今回特別に持ってきたとか。テイスティングの感想はのちほど

 

注目集まる八海醸造のウイスキーは来春発売!

八海醸造が手掛ける国内の新たな動きで注目なのは、ウイスキーづくりです。同社では2016年から米を主原料とするライスグレーンウイスキーの生産を魚沼の深沢原蒸溜所でスタートさせていますが、熟成を経た品質基準がついに納得のいくレベルに仕上がったとのこと。満を持して、2024年4月に発売することも発表されました。

↑同社ではグループ会社に北海道のニセコ蒸溜所があり、ここではモルトウイスキーづくりが進行中。魚沼×ニセコのブレンデッドウイスキーも、そう遠くない未来に誕生するでしょう

 

トピックスをもうひとつ。八海醸造といえば、甘酒のヒットメーカーとしても有名。代表作が「麹だけでつくったあまさけ」ですが、本商品はこの度消費者庁への届け出が受理され、麹菌で史上初の機能性表示食品となりました。これを機に、2024年3月から機能性表示食品としてパッケージを一新してリニューアル発売されます。

↑「麹菌HJ1株」という赤いアイコンが新パッケージ。その他は既存商品ですが、来春リニューアルとなります

 

クラフトビールに着想を経たNYのSAKEも試飲

会見後は別会場に移り、特別なペアリング体験へ。個性豊かな4種のお酒を、贅沢な料理に合わせました。

↑それぞれの酒質に最適なグラスで提供。日本酒だけでなく「八海山本格粕取り焼酎 宜有千萬」(写真右端)も

 

スターターは「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」を、赤万願寺唐辛子とフルーツトマトをベースにしたガスパチョとともに。お酒のフルーティーな香りとキレを高める、スパークリングの心地よい爽快感がいいですね。それはさながらスペインの発泡ワイン、カヴァのよう。

↑あしらいのキャビア、焼きはも、加茂なすはリッチなうまみや繊細な滋味深さを演出。みょうがの清涼感もたまりません

 

米どころ・新潟の日本酒が得意とする味わいといえば、淡麗辛口だといえるでしょう。今回その魅力を特に感じたのは「大吟醸 八海山」です。まろやかで上品な甘みを感じさせつつ、総じてクリアで後口はすっきり。ペアリングのビーフコロッケのおいしさを、より際立たせつつ調和し、余韻できれいに昇華する素晴らしい食中酒だと思いました。

↑「大吟醸 八海山」に合わせた料理の正式名称は、「牛頬肉とパルマンティエのクロメスキ トリュフのクーリ」。いわゆる、ビーフコロッケのトリュフソースがけです

 

ペアリング会場では、その他のテイスティングも体験させてもらいました。ブルックリンクラのSAKEも用意されており、そのなかから定番銘柄のひとつ「NUMBER FOURTEEN」と、限定酒の「OCCIDENTAL」を試飲。どちらも実にアメリカらしさを感じる、ユニークな個性をもった味わいです。

↑「NUMBER FOURTEEN」(左)は、華やかな香味とライトな飲み口を調和させた純米吟醸。そして「OCCIDENTAL」(右)は、ビールに欠かせないハーブであるホップを使った柑橘感漂う果実味と赤い色味が印象的

 

ブルックリンクラは、クラフトビールにヒントを得た酒造りがモットーのひとつ。「OCCIDENTAL」は、そのフィロソフィーが遺憾なく発揮された銘柄だといえるでしょう。使っているホップは、昨今のクラフトビールムーブメントを語るに欠かせないビアスタイル「IPA」に頻用されるシトラホップ。このホップによって醸し出されるフルーティーなアロマが、「OCCIDENTAL」の個性を際立たせているのです。

↑ブルックリンクラのブライアン・ポーレンCEO。会見では緊張気味でしたが、テイスティング会場ではにこやかなスマイルが印象的でした

 

NYでの日本酒文化発信やウイスキーなど、酒好きにとって嬉しいニュースが満載だった本会見。ブルックリンクラの各銘柄も、そう遠くない未来に日本でも広まっていくのではないでしょうか。今後の展開から、ますます目が離せません。

 

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【せんべろnet 監修 】“ひとり飲み”初心者がはしご酒を楽しむ噺

提供:宝酒造株式会社

 

「東京・大衆酒場の名店シリーズ」で、一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。本企画は、前回から続く実践編ということで、女性ひとり(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第2回目。今回は横浜の“聖地”までやってきました!

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

ちょっと時間があいたので……

横浜での仕事が早く終わった中村さん。せっかくだから横浜で「ひとり飲み」にチャレンジしてみようと「せんべろnet」のひろみんさんに連絡。すると、ひろみんさんから「横浜にいるなら、野毛がオススメ。その玄関口にあるぴおシティ(桜木町ぴおシティ)も、いろいろなジャンルの店があるので楽しいですよ」と返信が。そこで、今回の中村優「ひとり飲みチャレンジ」は、「ぴおシティではしご酒」に決定!

 

 

~はしご酒のいいところ~

・お店ごとに違うお酒やお料理、雰囲気を楽しむことができる

・1軒ごとに気分を切り替えられる

 

【関連記事】
【せんべろnet監修】ひとり飲み初心者にオススメなお店の噺

 

ぴおシティって?

桜木町駅(JR・横浜市営地下鉄)の南西エリアにある野毛は、界隈に600軒近くもの飲食店があるといわれる横浜屈指の飲み屋街。現在のように発展した歴史には、この街が戦後に闇市として賑わったことや、海側にあった造船所の労働者などに大衆酒場が重宝されたことが関係しています。

 

そして今回訪れたぴおシティは、横浜市営地下鉄の桜木町駅に直結する建物の通称(正式名称は桜木町ゴールデンセンター)。1968年に開業した歴史のある複合施設で、様々なショップが営業しており、特に地下2階に広がる飲食店街のにぎわいは有名です。

 

この世界観に、中村さんのテンションも一気にアップ。「わーっ! まだ昼なのに、夜のような活気ですね。老若男女、スーツの人もいれば、常連さんっぽい方や観光客らしき方もいて、これぞ多様性。はしご酒には最適なスポットじゃないですか!」と、ノリノリに。

 

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篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺
東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第2回。今回は、江戸川区・篠崎の「大林(おおばやし)」を訪れ、その魅力を探っていきます。

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【東京・大衆酒場の名店】の番外編として下町の大衆酒場の名物・焼酎ハイボールには欠かせない「炭酸水」について深堀りしていきます。

まずは1軒目のお店を……

メインフロアに着いた中村さんは、昼でもにぎわう雰囲気にワクワク。とはいえ、様々な飲み屋が軒を連ねていて、1軒目にはどんなお店が適しているのか、よくわかりません。選び方をひろみんさんにLINEでたずねました。

 

 

 

ひろみんさんのLINEを参考にしつつ、中村さんが入ったのは「立ち呑み処 ふくふく」。お店の外に主要なメニューや料金がわかりやすいよう貼られており、客層が若めで入りやすかったことも理由です。

 

まず、オーダーしたのは「凍結丸ごとキウイサワー」(450円)。同店の名物ドリンク「凍結丸ごとレモンサワー」の季節限定キウイ版ということで、こちらを注文したのでした。そしておつまみに関しては、ひろみんさんに相談。

↑「凍結丸ごとキウイサワー」(450円 ※ナカ=酎ハイのおかわりは220円)

 

名物の凍結丸ごとサワーは、ひろみんさんもお気に入り。「ホッピー」のナカのように酎ハイのおかわりができるので、凍結果実を風味のアクセントにして数杯楽しめるお得さも魅力です。なお、このサワーはシロップの有無を選べ、ひろみんさんは「なし」が好みとのこと。

 

そうこうすると、おつまみも到着。ひろみんさんのアドバイスに従い、選んだおつまみは「生ハムとチーズのカプレーゼ ふくふくふう」。

↑「生ハムとチーズのカプレーゼ ふくふくふう」350円

 

「生ハムと薄切りのモッツァレラチーズが、さっぱりしたドレッシングとベストマッチ。甘酸っぱくてフルーティーなキウイサワーともスゴく合います。これは前菜に最高ですね!」と中村さん。

 

また、同店のひろみんさんの推しポイントは、初来店でもすぐに緊張がほぐれるアットホームな雰囲気にもあり。店内がコンパクトなぶん一体感があるのと、スタッフに女性が多く、気さくであることも女性客にオススメな点なのだとか。

 

さらには、個人店ならではの”手の込んだドリンク”と、”手作りの料理”のおいしさや、たっぷりのボリューム感も魅力。2~3人で訪れるなどして、いろいろなおつまみを楽しむのもオススメです。

 

また、ひろみんさからは「はしご酒を楽しむコツとしては、あらかじめ一軒ごとの滞在時間と予算を決めておくことが第一。あとはマナーとして、混んできたら詰めたり次の店へ移動したりと、ほかのお客さんとの譲り合い精神が大切です」とのアドバイスもありました。

 

〜はしご酒を楽しむポイント・気をつけていること①~

・予算と滞在時間を決めておく

・混んできたら譲り合いで詰めたり、さっと次のお店へ

・グラスが空いたらおかわりorお会計

 

それでは2軒目に……

いろいろはしごするために、中村さんは1杯飲んですぐ2軒目を物色することに。そのなかで選んだのは、「立ち呑み処 ふくふく」の10数メートル先にある「酒蔵 石松」。のれんが出ていないので店内の様子が見渡せるうえ、「吞みねえ! 食いねえ!」と書かれた赤ちょうちんに心をつかまれたのでした。

↑「酒蔵 石松」は開放感満点の立ち飲み店で、「立ち呑み処 ふくふく」同様に入りやすい雰囲気

 

また、以前ひろみんさんから「楽しそうに一人飲みされているおやじさんがいるお店は、味も間違いない傾向にある」という話を聞いており、「酒蔵 石松」はまさにその通りだったこともポイント。同店もキャッシュオンのため、小銭を握りしめてまずはドリンクを注文。

 

ここでオーダーしたのは日本酒。それは、同店のお品書きでは魚料理が目立っていたから。

↑日本酒(松竹梅「豪快」/コップ320円)に挑戦する中村さん。「年々日本酒が好きになってるんです。このお酒はキリッとした辛口でキレがあって、スゴく飲みやすいですね!」(中村さん)

 

そしてこのタイミングでひろみんさんにLINE。まずは2軒目の入店報告から。

 

日本酒とお魚は、ひろみんさんも「鉄板!」と太鼓判のオーダー。「おつまみをこれからオーダーするなら、ほかのお客さんが頼んでいる料理を見て決めてもいいと思いますよ」とのこと。周りをよく観察しつつ、中村さんの1皿目は、特にお店の推しに見える「上まぐろ中とろ」のお刺身に決定!

↑「上まぐろ中とろ」550円。「濃いうまみと、上品な脂のコクがたまりません! きれいな盛り付けにもこだわりを感じます。お酒も進みますね~」と中村さん

 

料理の2皿目は、常連らしき方々の多くが嗜(たしな)んでいた「もつ煮込み」を注文。こちらも到着するなり、大きなもつがゴロッと入ったインパクトに驚かされます。そしてひと口。具がもつとこんにゃくのみというストロングスタイルは、シンプルなぶんパンチも十分。

↑「もつ煮込み」450円。「もつがふわふわプリップリで、こんにゃくも大きめだからスゴい弾力! アツアツで頬張り、日本酒でキュッと合わせると超幸せ~♪ 味付けも、濃すぎず薄すぎずの絶妙な塩梅(あんばい)で美味しいです!」(中村さん)

 

この「もつ煮込み」をはじめ、同店は肉を使ったおつまみも美味。ひろみんさんも、同店の料理は絶品ばかりで迷ってしまうレベルなのだとか。

 

〜はしご酒を楽しむポイント・気をつけていること②~

・お店選びに迷ったら一人飲みのおやじさんが多いお店を選ぶ

・注文に迷ったら周りのお客さんが注文したメニューを真似する

・はしごの合間は、酔い覚ましも兼ねてその街を散策してみる

・水分補給をしっかりする

 

 

野毛の夜とはしご酒はいっそうディープに

横浜は、番組収録やマラソンなどで中村さんとも縁の深い街。打ち上げなどで飲んだことも多々あったそうですが、ひとりではしご酒をするのは初めてだったとか。これを機に、もっと飲み歩きたいと意気込む彼女は、このあとぴおシティを出て野毛の飲み屋街へ向かいました。次回もひろみんさんのアドバイスをもとに、せんべろ系の人気店と、その作法を紹介します。

撮影/鈴木謙介

 

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レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺
『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんが「割り材」の歴史や種類について、「居酒屋礼賛」主宰の浜田信郎さんとともに探ります。

11月11日は「立ち飲みの日」!——達人が語る立ち飲みの魅力の噺
11月11日は「立ち飲みの日」。今回は『古典酒場』創刊編集長の倉嶋紀和子さんら達人たちの立ち飲み愛を東京・新橋の名店で語ってもらいました。

 

<取材協力>

立ち呑み処 ふくふく

住所:神奈川県横浜市中区桜木町1-1 ぴおシティ B2
営業時間:13:30〜21:00
定休日:水曜

 

酒蔵 石松

住所:神奈川県横浜市中区桜木町1-1 ぴおシティ B2
営業時間:平日12:00〜21:00、土曜11:00〜21:00、日曜11:00〜20:00
定休日:月曜

※価格はすべて税込みです

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

酒ジャーナリストに聞く!いつまでも楽しく美味しくお酒を飲む噺

自宅でひとりでも、酒場で大勢でも、「お酒」を飲むのはいつでも楽しいことです。ただ、それには元気でなければいけません。そこで、今回は『名医が教える飲酒の科学』や『酒好き医師が教える最高の飲み方』などの著書がある、酒ジャーナリストの葉石(はいし)かおりさんに、「どうすれば、いつまでも楽しく美味しくお酒を飲めるか」についてお話を伺います。

●葉石かおり(はいし・かおり)/酒ジャーナリスト、エッセイスト、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長。「酒と健康」「酒と食のペアリング」を主軸に各メディアにコラム、コメントを寄せる。現在、京都の大学で心理学を学ぶ現役女子大生でもある。代表作にシリーズ累計18万部を超える『名医が教える飲酒の科学』『酒好き医師が教える最高の飲み方』(ともに日経BP)があり、2023年10月13日には『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』(主婦と生活社)を上梓した。

 

酒ジャーナリストの飲み方や行きつけとは?

まずは葉石さんの“お酒遍歴”から伺いました。好きなお酒や飲み方は? そして行きつけの酒場などはあるのでしょうか?

 

葉石「お酒は若いころから好きで、大学時代から飲んでいました。当時はいまと違って、学生コンパも盛んでしたから。好きなお酒は日本酒や本格焼酎、あとはスパークリングワインもよく嗜んでいます。外で飲むことのほうが多く、お店では週1、2回ぐらいですね。家飲みは週1回ぐらい。その時は『タカラ「焼酎ハイボール」』を飲みますね。辛口なので食事にも合うし気に入っています」

 

葉石さんは東京出身ですが、10年以上東京と京都の二拠点生活をしていることでも有名。京都に関しては『おひとりさまの京都』や『そうだ、裏京都行こう。』などの著書があり、なかでもよく行くお店が京都市左京区下鴨の「炭焼 きむら」です。

 

葉石「『きむら』さんはご家族で営まれている串焼きのお店で、月に1回は行ってますね。素材や火加減へのこだわりはもちろん、お肉の部位ごとに味付けを変える工夫も素晴らしいんです。お酒は1杯目が、宝焼酎『純』35%使用の酎ハイ『純スペシャル』。2杯目からは『松竹梅 「豪快」辛口』を、夏でも熱燗でいただくのが私のお決まりとなっています。でもそういえば、東京には『きむら』さんみたいな行きつけは特にないですね。お友達とだったり、お仕事関連の会食だったりが多く、相手の方に合わせるからかもしれません」

 

葉石さんが週刊誌の記者から酒ジャーナリストへと仕事の幅を広げた経緯は、たまたまだそう。とある健康系のサイトで、お酒に関する記事を執筆する担当となったことがきっかけだと言います。

 

葉石「最初は医学について無知だったので大変でしたが、医師の先生などから学ぶうちにのめり込んでいきました。また、私自身も当時は50歳に差し掛かっていた時期で、健康診断の数値が悪くなっていたんですね。それもあって、体の状態を見直したいと思ったのも大きいです」

 

悪酔いしない飲み方と「お酒」の適量とは?

2023年10月に『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』を上梓した葉石さん。また、これまで数々の名医から飲酒についての話を聞いてきた経験から、まずはお酒(アルコール)を飲むとヒトはどうなるのかを教えてもらいました。

 

葉石「重要なのは血中アルコール濃度です。酔いの状態は爽快期から始まるのですが、飲む量が増すにつれて血中アルコール濃度も深まり、ほろ酔い期、酩酊初期、酩酊期、泥酔期、昏睡期となり、最後は気を失うような状態になってしまいます。知っているつもりでもお酒の飲み方は気を付けないといけませんし、血中アルコール濃度の急激上昇をいかに抑え、悪酔いしないように飲むことが大切です」

 

 

悪酔いを防ぐ方法として一般的に有名なのは、和らぎ水(またはチェイサー)など水を飲みながらお酒を楽しむ手法。また、空腹の状態で飲むことは避けるべきだという説も知られています。この話について、葉石さんが詳しく教えてくれました。

 

葉石「和らぎ水に関しては、水を飲むことで胃腸内のアルコール濃度を薄める効果があるんです。また『空腹の状態で飲むことは避けるべき』というのは、空腹時にいきなりお酒を飲むと、胃腸からのアルコール吸収が早くなり、急激に血中アルコール濃度が高くなるから。そのため、最初に何かを食べておくといいということなんです」

 

そのうえで葉石さんが推奨するのは「オイルファースト」という考え方。

 

葉石「オイルファースト』とはつまり、油分や脂質が含まれている料理を最初に食べるということです。特にオススメなのはチーズ。なぜなら、チーズに含まれるたんぱく質と脂質は消化吸収されにくく、胃に長時間留まるから。そのぶんアルコールの吸収を穏やかにしてくれるんです」

 

 

一方、葉石さんが一部誤解だと感じる悪酔い防止説が、チャンポン(短時間でいくつもの種類の酒を飲むこと)しないという方法。これは数種のお酒を飲むから深酔いするのではなく、結果的に摂取アルコールの総量が増えてしまいがちであることが問題だと言います。

 

葉石「ビールの次は日本酒、ウイスキーなど、アルコール度数が異なるお酒をあれこれと飲んでしまうと、どれだけの量を飲んだかがわからなくなりますよね。ましてや、酔うと記憶がおぼろげになりますから。ですので特にチャンポンで飲む際は、お酒の総量を意識することが大切です」

 

お酒の適量に関しては国から目安が提示されており、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日の平均純アルコールで約20g程度とされています。具体的には、日本酒の場合1合(180ml)、ビールなら500mlですが、この目安に関しては「1日ではなく1週間の合計で捉えてもいいと思います」と葉石さん。

 

 

葉石「例えば1日おきに40gとか。やっぱり休肝日って大事だと思います。多目的コホート研究という、大勢の人を長期間追跡調査する調査があるのですが、その結果のひとつに、少量を毎日飲むグループと、休肝日を設けたうえで毎日飲むグループよりトータルの量を多く飲んだグループとを比べた場合、後者のほうが病気の罹患率が低いというレポートもありますから」

 

飲酒後にしてはいけないこと

適量で飲酒をしていれば問題ありませんが、ついついお酒が進んでしまい、深酒してしまうことも。飲んだ翌日までお酒が残っていると、入浴したりサウナに入ったりして「汗をかいてアルコールを抜く」という人がよくいます。しかし、これは危険な行為だと葉石さんは言います。

 

葉石「そもそも、飲酒により身体が脱水状態になっていて、そこから汗をかくことは逆効果で、二日酔いを助長してしまいます」

 

また、脱水状態である風呂上がりや、運動直後の飲酒も、血中アルコール濃度が急激に高くなるので、あまり良くないそうです。そして、葉石さんが特に危険だというのが飲酒後の入浴。

 

葉石飲酒後の入浴はとても危険性の高い行為です。アルコールによって一時的に血圧が下がった状態で入浴すると、血圧の変化の幅が大きくなり身体に負担がかかります。さらにアルコールによって意識が朦朧としているため、危機管理能力も低下しており、怪我などの危険度も高めてしまいます。飲酒後すぐの入浴はぜったいにやめましょう」

 

 

「あと、危険ということであれば、お酒と薬を一緒に飲むのは当然ながらNGです」と葉石さん。感覚的にダメだということはわかりますが、具体的になぜNGなのかを伺いました。

 

葉石「アルコールも薬も肝臓で代謝されます。その際、使われるのが代謝酵素。薬とアルコールを併用すると、この酵素を双方で奪い合う形になって、薬が効きすぎてしまう、もしくは薬が効きにくくなってしまうんです」

 

仮に代謝酵素によって、通常は 50%で代謝される薬があったとします。これがアルコールによって、代謝酵素を半分奪われてしまう形になると 25%しか代謝されなくなります。すると薬の成分の 75%が血中に入ってしまうことになります。当初、半分が代謝されるという前提で処方された薬の量なのに、実際には、より多くの量を飲んだのと同じことになってしまうわけです。これによって薬理効果が増える、つまり効きすぎてしまうのです。その一方で、日常的にアルコールを常飲している人は、普段から酵素活性が高いため、薬を代謝し過ぎてしまい、効きにくくなるといった弊害も出てくるのです。

 

 

生涯現役で「お酒」を飲むために

葉石さんの新著のテーマは「生涯お酒を楽しむ」。そのためには、飲酒をポジティブにとらえること、そしてメリハリが大切だと話します。

 

葉石「やっぱり、生涯現役で飲みたいですよね。いまや人生100年時代といわれますが、飲酒寿命というのがあるとして、毎日際限なく飲んでいて60歳でドクターストップですよとなったら、残り40年はもう飲めません。それはすごく悲しいことだと思うんです」

 

もちろん、葉石さんが考える飲酒寿命はあくまで一例。また、健康度合いは人それぞれですから、毎日飲んでいても大丈夫な人はいるかもしれません。とはいえ適度な飲酒量は国からも提示されていますし、やはり飲み過ぎはよくないと言えるでしょう。

 

葉石「であれば長期的な計画を立て、飲む日と休肝日とでメリハリをつけることを意識しようと。私の場合、“お酒は晴れの日の飲み物”という考え方にシフトすることで、自然と休肝日が取れるようになりました。お医者さんなどに言われて制限するのではなく、自らコントロールする。これが、ポジティブなお酒との向き合い方だと思います」

 

お酒は飲み方によっては効能を発揮します。例えばメンタル面。「適量の飲酒はストレスの緩和や、食欲増進につながる」という研究報告もあります。適量を守り、休肝日を設ければ、健康にプラスに働き、「飲酒寿命」を延ばすことが期待されます。

 

そのほか、心臓病をはじめとする血管系の疾患、老人性認知症などの発症や美肌を保つなど、様々な研究結果も報告されており、お酒は決してデメリットばかりではありません。常に「適量飲酒」を心がけて嗜むことが、葉石さんが提唱する「生涯お酒を楽しむ」にもつながるのです。

 

 

自分で自分をコントロールする「操酒」という考え方

葉石さんが新著『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』の執筆に取り組もうと思った動機には、コロナ過における過ごし方も関係していると言います。それはいわば、実生活を経たうえでの成功体験ルポであるとも。

 

葉石「お酒と健康をテーマに執筆するようになってから、私自身も8kg痩せて元気に過ごしていたのですが、コロナ禍になって実は5kgもリバウンドしてしまいました。原因を振り返ると、ストレスや失職不安から来る食べ過ぎ、飲み過ぎだったと思います。当時は世間でも『コロナ太り』が叫ばれていましたが、私自身もそうなってしまい『まさか自分が』とショックを受けましたね」

 

いまはすっかり心身ともにコロナ前の健康状態に戻っていますが、そこで実感したのが意識改革の大切さ。加えて、どのようにすれば意識を変えられるのかをテーマに新著をつくりたいと思ったそうです。

 

葉石「その前に私が改めて取り組んだのが、自らの行動の可視化。アプリを活用して食事や飲酒について記録しました。すると、思っていた以上にカロリーやアルコールを摂取していたことが判明。そこから自分なりの対策を考え、高い目標を設定すると挫折してしまうと思ったので、休肝日をまずは週1回。そして週2、3回へと段階的に見直すようにして取り組んでいきました」

 

これぞ前述した、医師などに言われて制限するのではない自らのコントロール。ポジティブなお酒との向き合い方であり、著書のタイトルにも使われている「操酒」です。

 

葉石「自分自身で気づき、自ら正していくことが大切ですね。特に私の場合は、人から言われると従いたくなくなるという天邪鬼な部分がありましたし、そのぶん自分で決めたルールには負けたくない気持ちもありましたから。私と同じような性格でお酒が好きな方は、ぜひ実践していただきたいです」

 

行動的な部分としては、継続的に記録して可視化することが非常に大切だと葉石さんは力説。思いがけない数値を見ると気持ちが落ち込むことがあるものの、そのショックが意識を変え、行動に移すことから習慣化していくのだとか。

 

葉石「数値は逆もしかり。尿酸値や体重が減ればモチベーションもアップしますから。すると、次は筋トレだとか、ヨガをやってみようかなとか、さらなる行動変化にもつながります。身近なところでは体重計にのったり、血圧を測ったりすることから始めてもいいでしょう。そのうえでできれば、血液検査や健康診断にも行き、定期的に身体の状態を把握していただきたいですね」

 

 

日ごろの飲み方や食べ方は、具体的にどのように変えていけばいいのでしょうか。お酒に関しては、あらかじめその日に楽しむ量を決めておくのがコツだといいます。

 

葉石「お酒好きがよく言う『今日は何杯まで』ですね。早い時間から飲むときは、序盤はノンアルコールにしておくこともオススメです。『タカラ「辛口」ゼロボール』をはじめ、最近のノンアルコールは美味しいですからね。あとは基本的なことですが、前述したように適宜、和らぎ水を飲みましょう。胃腸内のアルコール濃度を薄める効果だけでなく、飲酒後はアルコールの利尿作用で脱水しやすいので、それを防ぐためにも水を飲むことは欠かせません」

↑早い時間から飲む場合は、1杯目をノンアルコール飲料にすることもオススメ。そんなときは、食事を引き立てるタカラ「辛口」ゼロボール

 

もし、お酒の種類で選ぶなら、芋焼酎がいいとのこと。というのも、血栓を溶解する物質が倍増するからだとか。

 

葉石「具体的に、血栓の溶解に関わる酵素『t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)』や『ウロキナーゼ』といった物質があるのですが、芋焼酎にはこれらの分泌、活性を高める効果があることがわかっています」

↑焼酎はロックやお湯割り、ソーダ割りなど様々な飲み方ができるのでオススメ。全量芋焼酎の「一刻者」は、芋の香りや味わいを堪能できます

 

そして食べ方のコツに関しては前述の「オイルファースト」が挙げられますが、チーズ以外ではどんなおつまみがオススメなのでしょうか?

 

葉石「油を使った料理といっても、低カロリーなもので選ぶならフライ系の揚げ物よりも、ドレッシングをかけたサラダですとか、魚のカルパッチョ。そのほかでも、低カロリーで高タンパクな枝豆やお豆腐類、海藻類やお刺身などがいいですね。お店を選ぶ際は、居酒屋や大衆酒場は和食をベースとしたヘルシーなおつまみが比較的多いので、オススメです」

 

本稿で葉石さんがお話しした内容の詳細については、ぜひ各著書をご参考に。合わせて適正飲酒の知識を活用して、いつまでも美味しくお酒を楽しみましょう。

 

■お酒おつきあい読本
宝酒造の適正飲酒の取り組みをご紹介しています。

撮影/鈴木謙介

 

【書籍紹介】

生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ

年を重ねることが、楽しくなってくる本! ベストセラー『酒好き名医が教える最高の飲み方』著者で、お酒と健康を軸に活動する酒ジャーナリストでありながら、お酒におぼれかけて体調を崩した著者が編み出した、人生を変える飲酒コントロール術「操酒」を初公開。

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・タカラ「焼酎ハイボール」
https://shochu-hiball.jp/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・一刻者
https://www.ikkomon.jp/

・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・タカラ「辛口」ゼロボール
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/zeroball/

日本酒芸人「にほんしゅ」が解説する「酒器」選びのセオリーとおすすめ酒器

毎年10月1日は、日本酒の日。それにちなんで、今回は日本酒の「酒器」にフォーカスを当てます。すぐに思い浮かぶのは「お猪口(おちょこ)」でしょう。素材や形状だけでもさまざまな種類があります。しかも日本酒をおいしく飲ませてくれる酒器は、実はお猪口だけではありません。

 

そこで、きき酒師によるお笑いコンビ「にほんしゅ」の、あさやんさんと北井一彰さんに日本酒の基本から、酒器の選び方を詳しく教えていただきました。

↑きき酒師の漫才師「にほんしゅ」のふたり。あさやんさん(左)と北井一彰さん(右)

 

日本酒の魅力は味が多彩で造り手の顔が見えること

昨今の日本酒を取り巻くトピックスの代表例としては、若い造り手の台頭や、海外における人気が挙げられます。若手による挑戦的な醸造法によって斬新な味わいが生み出されるほか、和食のユネスコ無形文化遺産登録や酒造の海外展開、インバウンドの人気などによって日本酒はいまや “世界酒” に。

 

こうした背景からも注目を集める日本酒ですが、「にほんしゅ」の二人はその魅力をどう考えているのでしょうか? あさやんさんは「顔が見えること」だといいます。

 

「お酒には国内外いろんな種類があり、僕ら自身、日本酒以外もよく飲みます。ただ日本酒は全国に1000蔵以上の造り手がいながら、ほとんどが少数精鋭。ですので、蔵人が身近で顔が浮かびやすいことが日本酒ならではの魅力だと思います」(あさやんさん)

 

日本酒は米と米麹と水を主原料とする、一見シンプルなお酒ですがその味わいは千差万別。北井さんは、この多彩さも日本酒の魅力であり、それは飲み比べるとよくわかるそう。

 

「飲む順番でも、感じ方がガラッと変わるんです。これはお笑いの舞台とも共通していると思いますね。例えばトップバッターがキャラ濃いめの芸風、次が正統派の芸人という順番だと、後者の面白さが伝わりづらいんですよ。日本酒も同じで、まずは定番や正統派の銘柄を楽しみ、後から個性派やインパクトのある酒質を味わったほうが、それぞれの魅力を感じやすいと思います」(北井さん)

 

知っておきたい、基本的な日本酒の種類

・純米酒
日本酒の種類は、まずは「醸造アルコールの有無」と「精米歩合」の2点を抑えましょう。そして米、米麹、水のみで造られ、醸造アルコールを含まない日本酒が純米酒。米本来のうまみや深いコクが豊かなことが特徴です。

 

・本醸造酒
醸造アルコールを添加している日本酒が本醸造酒。産業としての酒造りが盛んになった江戸時代に、品質を安定させ腐敗を防ぐために生み出されたといわれています。醸造アルコールの役割には、味わい的にすっきりと軽快になる、香り的に華やかでフルーティーな吟醸香をより引き立出せるというものがあります。

 

・吟醸酒
よりよく磨いた米を、低温かつ長時間発酵させる吟醸造りで醸造した日本酒のカテゴリー。磨く割合「精米歩合」60%以下が吟醸酒で、50%以下まで磨くと大吟醸酒に。また、同条件で醸造アルコールを添加しないタイプは純米吟醸酒、純米大吟醸酒に分類されます。

 

まずは形と材質と厚さで選ぼう。酒器を選ぶ意味と、酒器の種類・選び方

味わいが多彩な日本酒。その魅力を、様々な形や材質でより高めてくれるのが酒器だと「にほんしゅ」の二人はいいます。ポイントとなるのが、組み合わせ。

 

「例えば、香りが豊かなタイプはワイングラスのように口が広くて湾曲した形の酒器が香りの特徴が分かりやすくておすすめ。それこそ、ワイングラスでもOKです。一方で、香り以上にうまみや味わいのボリュームに特徴がある日本酒でしたら、どっしりとしたお猪口がいいでしょう」(あさやんさん)

 

また、酒器を素材で選ぶ際には、味がシャープな日本酒にはガラス、まろやかなタイプは陶磁器といったふうに、酒質の口当たりとの相性を目安にするといいとのこと。

 

「あとは酒器自体の厚みですね。繊細だったり、軽快だったりする日本酒の場合は薄いほうがわかりやすく、濃厚な日本酒の場合は厚いほうが受け止めやすいでしょう。このように、基本は形と材質と厚さ。まずはこの3つで酒器を選んでみてください。そのうえでもう一つ挙げるなら、見た目です。泡や濁り酒、熟成酒のように見た目に特徴がある日本酒の場合はクリアな酒器がいいでしょうし、正月のおせち料理には平盃(ひらはい)や枡(ます)が合いますよね。もちろん、ルックスの好みで選んでいただいてもいいですよ」(北井さん)

 

なお、お猪口とぐい呑みに形状的な違いはありませんが、一般的には大きさの違いで分類されます。厳密なサイズに決まりはありませんが、小ぶりな酒器がお猪口。それよりひと回り大きいのがぐい呑みです。合わせて覚えておくといいでしょう。

 

にほんしゅのお気に入り! 日本酒×酒器の良好な組み合わせ一例を紹介

では、「にほんしゅ」の二人ならどんな日本酒と酒器を組み合わせるのでしょうか? この日用意した銘柄に合う酒器を教えてもらいました。

 

長野県上諏訪の酒ぬのや本金酒造が、地元の新しい酒米「山恵錦」で醸した生酒。華やかな香りや米の甘みをもちつつ、スッキリ爽快な後口のこちらは冷でも燗でもおいしく、酒器は、幅広い温度帯に対応できる万能タイプの錫(すず)製をチョイス。

 

長野県木曽の名門・湯川酒造店による低アルコール原酒の無ろ過生酒。ライトな飲みごたえと心地よい酸をもち合わせたこちらには、ルックスの涼やかな天満切子のお猪口をセレクト。

 

神戸・灘のビッグネーム「菊正宗酒造」は樽酒の名手としても有名。吉野杉の優美な香り漂うこの「純米樽酒」を、より存分に楽しむならやはり吉野杉でできた枡でしょう。

 

佐賀県唐津にある小松酒造の銘柄「万齢(まんれい)」の、伝統製法である生酛造りで醸したタイプが「万齢 八百万(やおよろず)」。優しい酸とキレが調和し、深みと厚みもあるこの味には、堂々とした厚口のお猪口をレコメンド。

 

それではここからは、にほんしゅのふたりが解説する選び方をもとに、今買える酒器を紹介していきます。

 

■ まずはこれを用意しておこう! オールマイティ型

開いた形状で香りが豊かに味わえ、適度な高さと厚口のバランスがいい万能型。ガラス製なら、泡のビジュアルや色もじっくり楽しめます。まずなにはなくとも、これを1個用意しておけばOK。

 

東洋佐々木ガラス「天開60」
280円(税別)

 

■ 基本の使い分けを楽しめる酒器3種

酒器で変わる味の違いを楽しむなら、手始めにそろえるべきはどんなタイプでしょうか。「にほんしゅ」のふたりによると、この特徴の異なる3種類をそろえるといいそう。

 

1.すぼまった形が香りを閉じ込める「ワイングラス型」

口が広くて湾曲した形のワイングラスは、香りを楽しむのに最適。なかには、陶器製のものもあります。

中川政七商店「エッグシェル」
1万2600円(税別)

ワイングラスの形状をお手本に、光を通すほど薄い有田焼のエッグシェルで制作。丸いボウル部分が香りを閉じ込め、広い口径と薄い縁は舌全体にうまみを広げます。

 

リーデル「<エクストリーム シリーズ>純米」
3500円(税別)

のべ170人の蔵元や専門家の意見を集約。25種ものプロトタイプから開発をスタートし、約8年をかけて完成。大ぶりで横長、飲み口の口径が大きい形状が、純米酒の特徴である米のうまみを引き出し、やわらかくクリーミーな質感を口中に長く留めます。

 

2.やわらかなタッチがまろやかさを演出「陶磁器」

土や石を原材料とする陶磁器は、やわらかいタッチが特徴。厚く作られた酒器は口当たりもしっかりしており、濃厚な日本酒の魅力を受け止めます。なお「にほんしゅ」の二人は「各地の工芸品の酒器をその地酒に合わせると、より土地の個性がマッチする気がします」と話します。

 

「信楽焼 丸十製陶 スモールカップ ターコイズ」(大人の焼き物)
1400円(税別)

滋賀県信楽焼の窯元「丸十製陶」が製作。ぽってりした風合いに色鮮やかなターコイズブルーの組み合わせが現代的。ぐい吞みはもちろん、コーヒー、紅茶、小鉢など使い勝手がよい一品。

 

3.風味やテクスチャーをダイレクトに伝えてくれる「薄吹きグラス」

繊細な技術で作られた薄吹きグラスは、極限までガラスを薄くすることで風味やテクスチャーをダイレクトに伝えます。デリケートかつ高価ですが、繊細な日本酒を味わうためにはぜひ持っておきたい酒器といえるでしょう。

 

Wired Beans「生涯を添い遂げるグラス SAKEタンブラー うす吹き トランスペアレント(透明)杉箱入り」
3800円(税別)

日本酒の香り・味わいを楽しめる小さなタンブラー。軽さと口当たりの心地よさが魅力です。職人の技で美しく均一な厚さに吹いた「うす吹き」タイプのグラスは、極限までガラスを薄くすることで口当たりの良さを実現。

 

■ 日本酒にハマったら手に入れたいネクストステップ

基本を押さえ、さらに繊細な違いを楽しみたくなったら? ネクストステップは次の3種。

 

・熱伝導率に優れた万能な酒器「錫」

錫の特徴といえば、高い熱伝導率。「にほんしゅ」の二人も、「あらゆる温度帯に万能。味がまろやかになるのもイイ!」と絶賛します。

 

能作「ちょい呑 – ぐい呑」
3300円(税別)

職人がハンドメイドで仕上げたもの。やわらかくて手になじみ、温もりをも感じさせてくれます。同ブランドこだわりの錫100パーセントが特徴。

 

・うまみを引き立たせ香りも楽しめる「平盃」

神事や祝祭事などでも使われるケースが多い平盃。皿部分の下に小さな円筒(高台)がついており、味わい的にはうまみを引き立たせ、香りも楽しめるのが特徴です。

 

本間器物製作所「えんもたけなわ 平盃(かがみ)」
6000円(税別)

錆びにくく、輝きも美しい18-8ステンレスを採用。二重構造のため保温と保冷力があり、燗酒も冷酒も温度をキープしてくれます。

 

・アレンジなどカジュアルに楽しむシーンで活躍する「タンブラー」

日本酒を氷と炭酸で割ってハイボールとして飲んだり、ライムとレモンで作る日本酒カクテル「サムライ」を楽しんだり。カジュアルに楽しみたいときにオススメなのがタンブラー。ステンレス製や真空2重構造のものは、アウトドアシーンでも重宝します。

 

KEYUCA「Abysse ステンレスタンブラー 380ml」
各1490円(税別)

グラデーションが美しいステンレス製。真空2重構造により保温保冷効果が高く、結露が起きないので、テーブルなどに水気がつかないことも魅力です。

 

■ アミューズ性のある酒器

材質やデザインに特徴がある酒器は、特別な日本酒を飲む際やパーティーなどに重宝するでしょう。また、贈答用にもオススメで、特に外国の知人にプレゼントすれば喜ばれることうけあいです。

 

・木の香りが芳しい伝統容器「枡」

体積を量るために古くから用いられてきた枡。酒の計量器としても長年使われ、祝祭事でもおなじみですが、木の香りをまとわせてくれることも魅力。日本酒用の材質は、ひのきや杉が一般的です。使用後はカビなどがはえないよう、しっかり洗い乾燥させましょう。

 

吉辰商店「吉野杉の枡」
1000円(税別)

吉野杉を使った一合枡。呑み心地は、ほのかな杉の甘い香りを感じられ、芳醇な香りも楽しめます。

 

・きき酒用に生み出された日本酒のシンボル「蛇の目」

お猪口やぐい吞みでも用いられる青と白の二重丸は、日本に古くから伝わる「蛇の目」という模様。この意匠を用いた酒器はきき酒用に作られたといわれ、いまも実際の品評時に重宝されています。白い部分で日本酒の色合いや濃淡を、青い部分で透明度や輝きをみるのだとか。蔵元がロゴ入りで販売しているケースも多いので、酒蔵見学の際はぜひチェックを。

 

AKOMEYA TOKYO「蛇の目ぐいのみ 3勺」
500円(税別)

岐阜県多治見市産。磁器の中でも白さの高い土を使用しているため、日本酒を入れたときの透明度が高く、さらに口元が薄めであることも特徴です。

 

・日本独自の美しい意匠を愛でられる「切子」

日本が誇るガラスの装飾加工(加工品)が切子。庶民の文化から生まれた江戸切子と、島津藩御用達として作られた薩摩切子が有名ですが、近年になり大阪で生み出された天満切子も高い注目を集めています。

 

天満切子「ぐい吞み杵型24% あさがお」
2万6000円(税別)

天満切子ならではの特徴は、グラスをV字ではなくU字に削る事で生まれる独自のデザイン。天開型の形状にすることで、まるで朝顔が咲いているかのよう。繊細なカッティング面がレンズの役割を果たし、日本酒を注ぐと底面の模様を万華鏡のように映し出します。

 

斬新で面白い! 昨今の日本酒トレンドキーワード 3

最後は「にほんしゅ」のふたりに、日本酒のトレンドについて聞きました。これまでにない味わいに驚かされることもよくあるとのことで、もしお店でこれらの日本酒を見つけたら、ぜひ試してみてください。

 

1.酸の効いた味わい

「スパークリング日本酒だったり、酸の効いた酒質だったり。昔の日本酒業界では酸味ってネガティブなイメージだったそうですが、いまは造り手の技術や感性とともに飲み手の嗜好も変わりました。優雅な風味や心地よい爽快感をもったものが多く、しかもこうした日本酒がスーパーでも買えるようになっています」(あさやんさん)

 

2.ワイン並みの低アルコール

「日本酒は一般的に、17~18度程度のアルコール度数を加水処理して15度程度に抑えるのですが、加水をせずに12~13度程度に飲みやすく仕上げる銘柄が近年増えています。これも造り手の技術向上のたまものですね。お酒としては決して低アルコールなわけではないですが、5度下がると味もかなり違いますよ」(北井さん)

 

3.高精米歩合

「近年のトレンドのひとつは、『獺祭』に代表されるよくお米を磨いた精米歩合の数値の低い大吟醸酒でしたが、最近はあえて米を磨かずに醸すタイプの日本酒も増えています。精米歩合はそれこそ90%とか。これも近年の飲み手のニーズの多様化も含めた既成概念にとらわれない酒造りの一例だといえるでしょう」(あさやんさん)

 

「味わいは、酸がしっかりありながら甘酸っぱい方向性ではなく、キュッと閉まるような。例えるなら、ヨーグルトの上澄みのような酸味、そこに昆布茶のようなうまみが加わったようなおいしさですね。ペアリングとしては、スパイスの効いたおつまみがよく合うと思いますよ」(北井さん)

 

酒器を知れば日本酒がもっとおいしく、面白くなります。ぜひ10月1日はお好みの日本酒を、とっておきの酒器でじっくり味わいましょう。

 

プロフィール

日本酒芸人・唎酒師 / きき酒師の漫才師「にほんしゅ」

2007年10月1日に、あさやんと北井一彰で結成。世界で唯一の日本酒きき酒師によるお笑いコンビであり、イベントでの漫才や司会、セミナー講師、各種メディア出演など多方面で活動している。
HP

よりフルーティーにリニューアル! 松竹梅白壁蔵「澪」<FROZEN>が夏季限定で発売

宝酒造は、松竹梅白壁蔵「澪」<FROZEN>の酒質とパッケージデザインをリニューアルして、6月13日から夏季限定で発売します。価格は220円(税込)。

 

松竹梅白壁蔵「澪」<FROZEN>は、冷凍庫で凍らせ、揉みほぐしてグラスに注ぐだけでシャリシャリした食感が楽しめる新感覚のお酒です。

 

お米うまれのやさしい甘みとほどよい酸味、マスカットを思わせるフルーティーさが特徴。今回、酒質をリニューアルしたことで、よりフルーティーな呑み口になったそうです。また、アルコール分5%とほかの日本酒に比べてアルコール度数が低いので、ふだん日本酒を飲まない人も手を出しやすいかもしれません。

 

パッケージは、スパークリング日本酒「澪」の上質で洗練された和のイメージを表現したデザインにリニューアルされているそうです。容器は飲みきりで捨てるときにかさばらない100mlのパウチが採用されています。

 

暑い季節のお供に、リニューアルされた松竹梅白壁蔵「澪」<FROZEN>はいかがでしょうか。

1本2〜3万円ながら入手困難! プレゼントにも最適な「高級SAKE」7選

巷では高級時計や高級車などがヒットし入手困難となっているが、実は日本酒もしかりだ。ここでは代表的な銘柄と、味わいを紹介。記念日や贈り物などに至高の一本を!

※こちらは「GetNavi」 2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

新価値創造と海外ニーズの掘り起こしで大ブレイク!

高級SAKE

 

私が解説します!

フードライター

中山秀明さん

食のトレンドに詳しいフードアナリスト。入国規制の解除と、GoToトラベルの再開タイミングに注目している。

日本酒は海外で「ライスワイン」と称されるが、ぶどうのワインに比べて高級な銘柄は少ない。

 

「日本酒の多くは既存銘柄の最上位といった位置付けでした。この市場に一石を投じたのが、ラグジュアリーブランドのSAKE HUNDREDです。無二の味と世界観で、国内外の日本酒愛好家を中心にブレイク。予約で完売する人気となり、日本酒の新たな価値を掘り起こしたのです」(中山さん)

 

同カテゴリには、続々と新ブランドが登場。TAKANOMEやMINAKIなどの気鋭のブランドがデビューしたほか、老舗酒造の限定高級酒も増えている。

 

「海外における日本酒の認知は広がっており、コンペの受賞酒も多数。国際化も進むなか、高級日本酒の未来は明るい!」(中山さん)

 

【ヒットアナリティクス】価値あるモノを求める熱はインバウンドでより活況

高級日本酒が注目を浴びている背景には、価値あるモノにお金を惜しまない心理や、海外における高評価などが関係。SAKE HUNDREDの2021年10月期年商は20億円と前年比13倍に。コロナ禍の収束により訪日外国人が増えれば、ますます活況となるだろう。

先進技術:★★★

顧客ニーズ:★★★

市場の将来性:★★★★★

独自性:★★★

コスパ:★

 

 

【その1】上品かつ繊細でフルーティなブランドを象徴する傑作

【日本酒/2018年7月発売】

SAKE HUNDRED

百光

3万8500円(送料別)

SAKE HUNDREDを象徴するフラッグシップモデル。精米歩合18%まで磨き、圧倒的な透明感を実現した。一切の雑味がなく洋梨を思わせる果実感と、百合の花のような穏やかで上品な香りに包まれる。繊細で滑らかな口当たり。

 

[中山’s Check] 果実の楽園のようなラグジュアリーな世との邂逅

「梨やライチを思わせる果実の園に導かれ、口に含むと白桃のような瑞々しい甘みとふくよかな旨みが舌の上で広がります。余韻には淡い酸も感じ、実にラグジュアリー!」

 

【その2】長時間磨いたお米が生み出す食中にも適した調和の一本

【日本酒/2022年2月発売】

MINAKI

極幻

3万2780円(1000本限定)

酒米の王者・山田錦を200時間以上磨いた精米歩合17%の贅沢な味が魅力。豊かな香りと洗練された甘み、複雑な旨み、酸味がマッチ。柔和な口当たりで、食中酒にも最適。英国のコンペでは金賞、フランスではプラチナを受賞した。

 

[中山’s Check] 真の贅沢がここにあり! まさに幻のような多幸感

「包み込まれるようにやさしい、ソフィスティケートな飲み心地。優美な甘みが舌の上でゆらりと転がり、酸を伴う果実味とともに儚く消える余韻は、まさに幻の如し!」

 

【その3】“うまさ”のみを追求した南国感が溢れる幻の酒

【日本酒/2019年10月発売】

TAKANOME

TAKANOME(鷹ノ目)

1万5400円

“うまさ”のみを追求した日本酒。まるでパイナップルのような香りと甘みが広がり、爽やかな酸味が心地良く、オレンジピール風の軽やかな苦みが全体をまとめ上げる。毎週水曜日の21時から販売され、5分で完売する人気ぶり。

 

[中山’s Check] 煌びやかな世界へ誘うフルーティな甘み

「トップから圧倒的にクリアでフルーティ! やわらかな酸味とジューシーな甘みが、華やかに舞いながら口いっぱいに広がります。煌びやかな愉悦の世界に浸りたいときに」

 

【その4】シャンパン同様の製法で仕上げた滑らかな発泡

【スパークリング日本酒/2021年10月発売】

SAKE HUNDRED

深星

3万5200円(送料別)

仕込みの一部に日本酒を加えて醸し、シャンパン同様の瓶内二次発酵で仕上げた。滑らかな発泡と多層的な味が華やぐ。

 

【その5】甘みを抑えた優雅な酸味と爽やかな香り

【ドライスパークリング日本酒/2022年2月発売】

●一般販売8月上旬

MINAKI

珀彗

2万7280円(500本限定)

シャンパン製法を採用。洗練された発泡感とジューシーで優雅な酸味に、青りんごや洋梨のような爽やかな香りが心地良い。

 

【その6】2006年醸造の大吟醸古酒を仕込み水にブレンド

【スパークリング日本酒/2022年3月発売】

七賢

EXPRESSION 2006

2万2000円

2006年醸造の大吟醸古酒を仕込み水の一部に使い、2種の酵母で様々な味を表現。爽やかな果実味や穀物感を楽しめる。

 

【その7】最高評価の山田錦を磨き上げた上品な味わい

【日本酒/2022年4月発売】

笹一酒造

笹一 山廃純米大吟醸 甲州山田錦 35

1万2000円(800本限定)

最高評価の特上に認定された山梨県産の山田錦を35%まで磨き上げた意欲作。透明感や米の旨み、コクと酸味が好バランスだ。

 

 

今回の7本を味わいで分類!

 

《熟酒》味が濃い×香り高い

貯蔵期間が5年以上の熟成酒や古酒が該当。赤茶〜黄の色味で、深くて複雑な香りでとろみのあるテクスチャーを楽しめる。力強い甘みや旨みをもつタイプが多い。

 

味が淡い←☆☆☆☆★→味が濃い

香り控える←☆☆☆☆★→香り高い

TAKANOME

TAKANOME(鷹ノ目)

パイナップルのような味わい。多彩な料理に最適。

 

味が淡い←☆☆☆★☆→味が濃い

香り控える←☆☆☆★☆→香り高い

SAKE HUNDRED

深星

フレッシュ&クリーンな香り。ペアリングは魚介類系。

 

味が淡い←☆☆★☆☆→味が濃い

香り控える←☆☆☆☆★→香り高い

七賢

EXPRESSION 2006

穀物感のある味わい。肉や魚料理にピッタリ。

 

《薫酒》味が淡い×香り高い

果実や花を思わせるエレガントな香味をもったタイプで、米をよく削った吟醸や大吟醸の日本酒が多く当てはまる。爽快感もあり、冷やして飲むのがオススメだ。

 

味が淡い←★☆☆☆☆→味が濃い

香り控える←☆☆☆☆★→香り高い

MINAKI

極幻

果実のようなふくよかな香り。和食にピッタリ。

 

味が淡い←☆★☆☆☆→味が濃い

香り控える←☆☆☆★☆→香り高い

SAKE HUNDRED

百光

豊かな旨みと甘み。フルーツや和菓子と相性抜群。

 

《醇酒》味が濃い×香り控える

酒母を手作業で造る「生酛造り」、山廃仕込み(※)など、ろ過や加水をしない日本酒が該当。米の芳醇な旨みや複雑でコクの深い味わい、ふくよかな余韻が特徴だ。

※:米や米麹をすり潰す工程「山卸し」をしない製法

 

味が淡い←☆☆☆☆★→味が濃い

香り控える←☆★☆☆☆→香り高い

笹一酒造

笹一 山廃純米大吟醸 甲州山田錦 35

上品な味わい。濃い目の味で少し甘みを感じる料理と◎。

 

《爽酒》味が淡い×香り控える

香りやコクは控えめながら、フレッシュな果実味や清々しいすっきり感を味わえる淡麗系。アルコール度数や熟成期間を抑えた「夏酒」も、このタイプに含まれる。

 

味が淡い←☆★☆☆☆→味が濃い

香り控える←☆☆★☆☆→香り高い

MINAKI

珀彗

甘みを抑えたドライな口当たり。様々な料理に好相性。

若者が集まるのも納得!「どぶろく」の新店で実感した「日本のウォール街」の変貌

東京都中央区の日本橋兜町といえば、東京証券取引所があることから「日本のウォール街」と呼ばれ、国内随一の金融街として知られています。電車の駅名でいえば、東京メトロの茅場町駅の周辺。実は筆者、20年以上前にこのあたりで先物取引の業界新聞を配るアルバイトをしていました。懐かしいなぁ……。その兜町がいま、若者が集まるオシャレな街として生まれ変わりつつあるのだとか。そんな街にまた一軒、面白い店がオープンしました。それが、ブルワリーパブ形式の「平和どぶろく兜町醸造所」です。

↑「平和どぶろく兜町醸造所」の外観

 

気鋭の蔵元がどぶろくを醸造・提供するお店

↑木材をふんだんに使った「平和どぶろく兜町醸造所」の内観。ガラス張りで解放感があります

 

ブルワリーパブとは酒の醸造所と酒場が一体化した業態で、その名の通り、同店はどぶろくを醸造して提供するお店です。どぶろくとは、米を発酵させた日本酒のもとである「醪(もろみ)」をろ過せず濁った状態のまま飲む酒。米粒や麹、酵母がそのまま入っており、フレッシュで独特の甘みや旨みが楽しめます。それにしても、ビールのブルワリーパブはよくありますが、どぶろくのブルワリーパブとはいかなるものか……。

 

そんな「平和どぶろく兜町醸造所」を運営するのは「紀土」(きっど)の銘柄で有名な和歌山県の日本酒蔵・平和酒造です。「紀土」はキレイな酒質のお酒をリーズナブルな価格で出していて、日本酒好きの筆者から見て、とても良心的な蔵だなという印象。ちなみに、かつて筆者が日本酒の本を作ったときには、ご迷惑をお掛けしたなぁ……。

 

一方で、近年は都内飲食店などを中心にコラボイベントを盛んに行い、従来の蔵元の枠を超えた新しい取り組みを行う蔵、という印象もあります。2021年にはサッカー元日本代表の中田英寿氏とタッグを組んで新たな梅酒を開発したほか、実業家・堀江貴文さんとの縁でロケット打ち上げ事業の応援酒を造ったことも。こうした取り組みを積極的に推進する張本人が、平和酒造の代表取締役社長・山本典正さんです。

↑気鋭の蔵元として知られる平和酒造の代表取締役社長・山本典正さん

 

兜町に活気を取り戻すプロジェクトが開店のきっかけ

まずは、なぜ和歌山の酒蔵がこの兜町にどぶろくのお店を出したのか? 出店のきっかけについて山本さんに聞いてみました。すると、日本の証券取引所のオーナー・平和不動産が大きく関わっているそう。なんでも1999年に東京証券取引所の「株券売買立会場」が閉鎖されて以降、兜町から証券マンの姿が減って街から活気がなくなっていた……これを憂慮した平和不動産が2014年に立ち上げたのが、「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」。同プロジェクトは、金融系ベンチャー企業の起業・発展を支援するほか、かつての金融施設をリノベーションして飲食店やホテルを誘致することで、地域の活性化を促すというもの。「平和どぶろく兜町醸造所」の開店もその一環だといいます。

 

「平和不動産さんとたまたまご縁があり、『木造の面白いビル(KITOKI)を造るんだけど、その1階で面白いことをやりたい。山本さん、何か手伝ってくれませんか?』とお声がけ頂きまして。そのとき、先方はクラフトビールなどを提供してくれたらいいな、と思っていたみたいですが、僕は『それよりは、日本酒の文化を広げられるような、米麹を使ったどぶろくを造りたい』と説得してこの店を設立しました。くしくも江戸時代、灘(兵庫県)から樽廻船が寄港して下り酒(上方で造られ、江戸へ運ばれた酒のこと)が届いたのが、ここ兜町・茅場町。その縁を感じるところがありますし、私は“どぶろくは西の文化”だと思っているので、下り酒と同様、また東京で発信していきたいと思っています」(山本さん)

↑「平和どぶろく兜町醸造所」が入居する木造ハイブリッドビル「KITOKI」。2022年4月21日に竣工

 

店内では常時10種類ほどのどぶろくを醸造

山本さんにご案内頂き、カウンターの内側にあるヒミツのトビラの中へ案内されました。そのトビラを開けると……何と、そこがどぶろくの醸造所。狭い部屋に置かれた冷蔵庫の中には大きなバケツほどのタンクがいくつも並び、発酵の真っ最中。常時10種類程度、合計で12~13本程度を造っているとのこと。本当にこの都会のど真ん中でどぶろくが造られているんですね。何だかちょっと感動です。

↑冷蔵庫内でタンクでもろみを発酵させています。庫内の温度が7~8℃、もろみの温度は8~9℃くらいとのこと

 

↑発酵中の醪を見せてもらいました。表面にはぷつぷつと泡が立っていて、独特のどろっとした質感です。2週間ほどかけて発酵させると飲める状態になるとか

 

↑醸造を手掛ける平和酒造の田村浩貴さん。「清酒だと原料や必要な工程が法律で決まっていますが、どぶろくはその枠がもう少し広がるので、色々な原料を使って、色々なチャレンジができる。面白い製造上の工夫ができるので、ぜひその点を日替わりで楽しんで頂きたいです」とコメント

 

自慢のどぶろくと和歌山のおつまみを頂く

では、ご自慢のどぶろくを頂いていきましょう。まずは和歌山の酒蔵で造ったどぶろくのレギュラー酒「平和どぶろくprototype#2」を頂きました。こちらのアルコール度は11度と通常の日本酒の15度よりもだいぶ低いのですが、生酒特有のプチプチした発泡感があり、フレッシュでキレもよく、ウマイ! 普通の生酒として見てもかなりおいしいです。

↑「平和どぶろくprototype#2」は70mlで400円、120mlで650円

 

↑酵母がまだ生きているので、わずかに発泡しています

 

このあと、ホップを使ったどぶろく、小豆を使ったどぶろくを頂きました。うわぁ、どちらも個性的な味。ホップを使ったどぶろくは甘さ控えめの爽やかな香りが特徴で、後述する山椒のポテトチップスと合わせると香味を引き立て合い、相性は抜群でした。小豆のどぶろくは少々の苦みがあって好みが分かれそうですが、面白いことは確かです。

↑小豆を使ったどぶろくは、兜町で造られたもの

 

今後も色々と新しい味に挑戦していく予定だそう。山本さんいわく「この場所はある種、ラボ(研究所・実験室)のようなものでして。7Lの小さなタンクで色々と実験的なことができますから、いつも『面白いものが作れない?』というムチャ振りからスタートしています(笑)。たまに大ハズレすることもありますが(笑)、そこは調整しながら。来て頂くたびに『こんなのがありますよ』と、新しい味を提供していきたい」とのこと。実際に山本さん、取材時も十八穀米で造ったどぶろくを試飲して、あれこれ醸造担当のスタッフと相談していました。

 

ちなみに、同店ではどぶろく以外のドリンクも用意しています。日本酒「紀土」が各種70ml500円から飲めるほか、オリジナルのクラフトビール「平和クラフト」が各種280ml700円、梅酒の「鶴梅」が各種100ml600円から楽しめます。

↑店内には、一部の日本酒やクラフトビールのサーバーが設置されています。サーバーから注ぐ微発泡の純米大吟醸や梅ワインもあるそうで、こちらも飲んでみたい!

 

おつまみも頂きました。提供するおつまみは、平和酒造の地元・和歌山の郷土料理がメイン。「金山寺味噌とクリームチーズのクラッカー」「サバ寿司」「山椒のポテトチップス」「ごま豆腐」など。どれもどぶろくとは間違いなく合うものばかりで、しかも価格はほとんどが350~500円なのもうれしいところ。この日は用意されていませんでしたが、和歌山ラーメンなども提供するそうです。

↑和歌山県のぶどう山椒を使った「山椒のポテトチップス」はハーフ350円、レギュラー500円。その奥は和歌山名物の金山寺味噌を使った「金山寺味噌とクリームチーズのクラッカー」450円

 

↑自家製の「てづくりごま豆腐」は450円

 

お店はオシャレだし、お酒やおつまみは安いのに手作り感があってどれも美味しい。うん、これは通いたくなっちゃいますね。そして、茅場町の周辺には、このような魅力的なお店が続々と出店しているわけですか。「休日は若い方も多くいらして、人の流れが変わっていることを実感しています」と山本さん。かつての「日本のウォール街」は、いつの間にか文化の発信地に変貌していたんですね……。

 

筆者が新聞を配っていたころとの違いを寂しく感じるとともに、新たな街の息吹に触れ、胸がすくような希望を感じたのも事実です。その意味で、ノスタルジーと現代カルチャーの混在こそ、この街が獲得した新たな魅力と言えるかも。みなさんもぜひ、その独特の空気感を、どぶろくとともに味わってみてはいかがでしょう。

 

「久保田」なのに、そんな飲み方していいの? ブランド初の「にごり酒」を使った「おうちカクテル」試飲レポート

「久保田」は、1830(天保元)年に創業した新潟県長岡市の酒蔵・朝日酒造が手掛ける日本酒ブランドです。ブランド自体は1985年に誕生し、1980年代後半から90年代にかけての「淡麗辛口ブーム」を牽引。いまでも日本酒の人気ランキングでは上位にランクインするほど、極めて高い知名度を誇っています。そんな久保田が2022年2月21日から、ブランド初となるにごり酒「久保田 純米吟醸にごり」を春限定で出荷しています。

 

「久保田」ブランド初となるにごり酒でカクテルに挑戦!

日本酒が好きな人なら、「にごり酒」と聞いただけで、春だなぁと感じるはず。そう、日本酒は秋の「ひやおろし」、冬の「しぼりたて」など、季節ごとに個性ある味わいのお酒が登場するのです。「にごり酒」もそのひとつ。冬から春にかけて、この時期ならではのお酒として多くの酒蔵から登場します。

 

しかも、今回紹介する「久保田 純米吟醸にごり」では、本品を使ったカクテルも提案しているとか。自慢ではありませんが、筆者は唎酒師(ききさけし)の資格を取るぐらい日本酒が好き。しかし、日本酒カクテルはほとんど飲んだことがありません。ブランド初となるにごり酒で作るカクテル……一体どんな味がするのか? とにかく興味があったので、今回はこの「久保田 純米吟醸にごり」を使って、同社オススメの日本酒カクテルに挑戦してみました!

 

すっきりした甘みとキレのある後味で料理にも合う

そもそも「にごり酒」とは、白く濁った日本酒のことを指します。日本酒造りの工程には、「醪(もろみ・原料を発酵させたもの)」を搾って「日本酒」と「酒粕」に分ける工程があり、搾る際に目の細かい酒袋を使えば透明に、粗めの酒袋なら原料の残りかすである「滓(おり)」が残って白濁した日本酒になるのです。

 

おりには米のうま味が濃縮されており、にごり酒は透明な日本酒に比べると、お米の旨みや甘みがしっかり楽しめます。とはいえ、このうま味や甘みが食事には合わせづらい印象があったのですが、この「久保田 純米吟醸にごり」を飲んで、すべてのお酒がそうではないと実感!

↑「久保田 純米吟醸にごり」は税込1320円(720ml)と手ごろな価格帯。アルコール分は13度、日本酒度は-35で、酸度は2.3。使用している酒米は五百万石で、精米歩合は60%

 

最初に感じるのは、純米吟醸酒らしいフルーティな香り。にごり酒ならではのなめらかな口当たりと、お米の旨みや甘みがしっかり感じられます。通常の日本酒よりやや低い13度のアルコールも嫌味がなく、ふくよかな味わいが楽しめます。

↑にごり酒はワイングラスや白磁の繊細なグラスで飲むのもアリ

 

さらに特筆すべきは、スッキリした後味となっている点。にごり酒は後味が残るイメージがあったのですが、これだけキレがあれば、食中酒としても楽しめますね。公式サイトでは、旨みのある肉料理や香辛料の効いた料理とのペアリングがオススメとのこと。

 

まろやかな甘みが効いたカクテルも絶品!

先述の通り、「久保田 純米吟醸にごり」は、カクテルベースとしても推奨されています。筆者が試したのは、公式サイトでも紹介されている「パープルクラウディー」と「にごりイチゴアイス」。いずれもスーパーで手軽に手に入るアイテムでカクテルが作れます。

 

パープルクラウディーは、久保田 純米吟醸にごりをぶどうジュースで割ったカクテル。今回、筆者はジュースだけでなく、ソーダを加えて微発泡感をプラスしました。

↑かき混ぜる前のパープルクラウディーは、紫のグラデーションが美しい。パープルクラウディーの作り方はコチラ→①グラスの氷適量を入れる②「久保田 純米吟醸にごり」をグラスの4分の2(グラス半分)注ぐ③ぶどう100%ジュースをグラス4分の1→強炭酸水をグラス4分の1注いでかき混ぜる④トッピングにぶどう1粒を添える

 

にごり酒にぶどうが加わることで果実感と甘みが加わり、まるでジュースのような味わいに。さらに、炭酸のシュワシュワ感も飲み口を軽やかにしてくれるので、日本酒を飲み慣れていない人でもおいしく飲めるカクテルに仕上がっていました。

 

デザート感覚で飲める「にごりイチゴアイス」は、「久保田 純米吟醸にごり」にイチゴアイスをトッピングするだけの簡単なデザートカクテル。せっかくなのでハーゲンダッツなど、ちょっとリッチなアイスをトッピングすると贅沢気分が高まります。

↑果肉の入ったイチゴアイスの使うとさらにリッチなカクテルに。にごりイチゴアイスの作り方はコチラ→①グラスに氷を1個入れる②久保田 純米吟醸にごりをグラスの3分の2注ぐ③イチゴアイスクリームをグラスの3分の1載せる④お好みでタイムを添える

 

今回は、材料のタイムが手に入らなかったのでお酒とイチゴアイスだけで作りましたが、イチゴとお酒の組み合わせはイチゴシェイクみたいで絶品! イチゴの甘酸っぱさとにごり酒は極めて相性が良く、ついアルコールが入っているのを忘れそうになります。大人だからこそ楽しめる、贅沢なシェイクは試す価値アリ! 今回、2つのカクテルのレシピを試してみましたが、どちらもにごり酒ならではのまろやかな甘みが生きていて、通常のカクテルとはまた違った魅力があると感じました。にごり酒とカクテルのいいとこどり、といった味わいでかなりオススメです!

 

公式サイトではほかにもトマトジュースを使った「レッドクラウディー」や、桃の缶詰を使ったシャーベットなど、おいしそうなカクテルのレシピが多数掲載されています。ぜひいろいろな飲み方で「久保田 純米吟醸にごり」を楽しんでみてください。

 

複雑すぎて「もうひと口…」が止まらない! 日本酒好きが認める蔵の「2万円のスパークリング」試飲レポート

山梨県の白州といえば、サントリーの蒸留所があることから、ウイスキーを連想する方が多いはず。そんな白州には、1750年に創業され272年の歴史を持つ「山梨銘醸」という日本酒の蔵元があります。山梨銘醸の銘柄は「七賢(しちけん)」で、その看板商品は高価格帯のスパークリング日本酒です。

 

七賢はスパークリング日本酒の分野において、常に新たな挑戦をしているブランドとして、日本酒好きの間では広くその名を知られています。そのラインナップのなかでも注目なのが、3月1日から発売されている「七賢 EXPRESSION 2006」という商品。そのお値段は、税込なんと2万2000円! 今回、その超プレミアムなお酒を幸運にもいただくことができたので、ぜひその味わいをご紹介したいと思います!

↑「七賢 EXPRESSION 2006」の内容量は720mlでアルコール分は12%

 

山梨県立美術館とコラボし、ミレーの「種をまく人」をラベルにデザイン

ワインボトルに付けられたラベルは「エチケット」と呼ばれますが、エチケットにもワインの個性が現れます。一見するとワインボトルに見える「七賢 EXPRESSION 2006」でも、最初に注目したいのはそのラベル。ラベルにプリントされているのは、かの有名な「種をまく人」。19世紀のフランスの画家でありバルビゾン派の一人でもある、ジャン=フランソワ・ミレーの作品です。

↑「種をまく人」のラベル。山梨県立美術館が撮影したミレー作品の超高精細画像をもとに、グラフィックデザイナーの葛西 薫・中山智裕の両氏がパッケージデザインを手がけた

 

ノルマンディー地方のグリュシーで生まれたミレーは、34歳でバルビゾン村に移住し、以降は農民たちの姿や自然の風景を力強く描きました。そんなミレーの絵からインスピレーションを受け、七賢の醸造家・北原亮庫(りょうご)氏が「エネルギッシュ」「ダイナミック」「躍動感」といったキーワードのもと、「七賢 EXPRESSION 2006」を生み出しました。

 

七賢はこれまでにも、1980年代にニューヨークで活躍したアーティストのキース・ヘリングとコラボしたスパークリング日本酒を3か年に渡って発売するなど、アートとの関わりは密接。2022年からの3か年は、ミレー作品を数多く所蔵する山梨県立美術館とコラボし、ミレーの絵からインスピレーションを受けたスパークリング日本酒を発売していくそうです。

↑醸造家・北原亮庫氏(左)と代表取締役社長・北原対馬氏(右)

 

きめ細やかな泡はまるでシャンパン!

ラベルをしっかり眺めたら、さっそく「七賢 EXPRESSION 2006」を試飲してみましょう! あ、キャップはコルク栓なんですね。それだけでも高級感が感じられます。

↑金属のワイヤーがかかったコルク栓

 

せっかくなのでワイングラスに注いでみると、きめ細やかな泡がシュワシュワと現れては消えていきます。おお、見た目はほとんどシャンパンですね! シャンパンは瓶内二次発酵させることで炭酸が発生させるのですが、「七賢 EXPRESSION 2006」でも同様の瓶内二次発酵を行っているそう。瓶内二次発酵とは、最初に造った(一次発酵させた)お酒を詰めた瓶のなかに酵母や糖を追加し、密閉した瓶内で再度アルコール発酵を行うこと。炭酸ガスが閉じ込められるため、開栓時に発泡します。炭酸ガスを注入する方法と違って手間がかかりますが、きめ細かく、持続性がある泡が楽しめるという特徴があります。

↑細かい泡が立ち昇る!

 

仕込み水に古酒を使い、二種類の酵母を使った個性的な1本

グラス越しに見ると、お酒にはうっすら色がついています。これは2006年のコンテストに出品するために作られた大吟醸の古酒を使っているから。七賢ではしっかりと熟成・管理した古酒を「七賢 EXPRESSION 2006」の仕込み水の一部に使用しており、それだけでもオリジナリティ溢れる1本となっているんです。

↑うっすらと色づいているのは古酒を使用しているから。水の全量に古酒を使うのではなく、バランスを考えて一部に使用しているとのこと

 

グラスを近づけ、立ち昇る香りはフワッと華やかな印象。さっそく口に含んでみると、穏やかな炭酸がシュワシュワと口に広がります。ほどよい炭酸が食欲を刺激してくれそう。「古酒」と聞くと、少し個性が強いお酒をイメージしていたのですが、本品は米のうまみや甘みとともに、洋ナシや青リンゴのような果実味が感じられ、ほのかな香ばしさもあるように思えます。かといって口に残るわけではなく余韻がスッと消えるので、もうひと口、もうひと口……と進みたくなる不思議なおいしさがあります。

 

この複雑な味わいは、古酒を使ったことに加え、2種類を使ったという酵母の働きでもあるでしょう。なんでも協会7号酵母で穏やかさを、協会1801号酵母で華やかさを表現したそうです。さらに、先述の北原亮庫氏によると、「熟成による味わいで干し草のようなニュアンスがあります。桃のコンポートや完熟メロンのような甘み、さらに山椒のような香りも。余韻は丸く穏やかです」とのこと。口に含んでからの味わいの変化が楽しめる、深みのあるスパークリング日本酒といえるでしょう。

 

アルコール分は12%となっており、通常の日本酒(15~16%前後)よりも低めとなっています。これなら乾杯酒としても楽しめるので、和食はもちろん、フレンチなど洋食との相性も良さそう。ハレの日に楽しむお酒として、日本酒が好きな人だけでなく、ワインが好きな人にもぜひ一度飲んでいただきたい1本です!

↑桐の箱に入った高級感漂う1本。贈り物にもぴったりですね

 

アニバーサリー販促企画も期待大! 発売から50周年を迎えた「ふなぐち菊水一番しぼり」

2022年の「フード」のトレンドをプロが分析。コロナ禍を経て、非接触や健康に関連した分野がさらに伸長。外食では新たな上陸系グルメが注目されたり、ユニークなシステムの飲食店が増えたりと、“新体験”がキーワードだ。今回は、1972年発売の“コンビニ最強酒”「ふなぐち50周年」について。

※こちらは「GetNavi」2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【ふなぐち50周年】濃醇旨口の“コンビニ最強酒”がアニバーサリーイヤー

生原酒ならではのウマさで人気の日本酒「ふなぐち菊水一番しぼり」。発売から50年経ってもなおファンを魅了する変わらないおいしさに注目が集まること間違いなし!

 

【ヒットアナリティックス】周年を祝う販促企画で新たなファンが増える

本品の魅力は、ひと口で酒好きを虜にする濃醇旨口な味わい。50周年で蔵元も様々な販促企画を繰り出す可能性があり、そこから新たなファンが増えると予想される。レトロなパッケージデザインも若者ウケしそうだ。

 

日本初の缶入り生原酒をラインナップし“生のウマさ”を全国流通させた

日本酒

1972年発売

菊水酒造

ふなぐち菊水一番しぼり

実売価格314円(200ml缶)、784円(500ml缶)、2369円(1500mlスマートパウチ)

酒蔵を訪れた人だけに振る舞われていた生原酒を、全国流通させることに成功した、日本初の缶入り酒。累計出荷数は3億本を超える。新潟県産の米と水を使い、コクの強いフレッシュな濃醇旨口だ。

 

私が解説します!

フードライター

中山秀明さん

食のトレンドに詳しい。今回触れていないが「スシブヤ」など店名が横文字の“カタカナズシ”にも注目している。

一体どんな味がするんだ?「大吟醸古酒と2種類の酵母」を使った2万円のスパークリング日本酒

山梨銘醸は、2006 年の古酒をベースとした年に一度の限定スパークリング日本酒「七賢(しちけん) EXPRESSION2006」を発売します。価格は2万2000円(税込)で、2月1日(火)より予約を開始し、3月上旬に順次発送・発売します。

山梨県立美術館とスパークリング日本酒の名手がコラボ

「七賢 EXPRESSION2006」は、19世紀のフランスの画家、ジャン・フランソワ・ミレーの絵画を所蔵する山梨県立美術館とのコラボレーションで生まれたもの。同館が撮影したミレー作品の「超高精細画像」をもとに、グラフィックデザイナーの葛西 薫・中山智裕の両氏がパッケージデザインを手がけました。

仕込み水の一部には、2006年に醸造された大吟醸古酒を使用し、 2種類の酵母で様々な味わいの幅を表現しているとのこと。ひと口含むと、爽やかな果実味やトースティな穀物感などが繊細な泡とともに味わえるといいます。

 

醸造責任者の北原亮庫(りょうご)氏によると、本作はミレーが描いた 「種をまく人」をイメージして醸造したそう。「種をまく人」の生命力や躍動感を酒造りに落とし込み、様々なレイヤーで変化する味わいを表現したといいます。

↑醸造責任者の北原亮庫氏

 

「七賢」といえば、すでに多くの高級スパークリング日本酒の醸造を手掛けており、技術力の高さは折り紙つき。今回は大吟醸古酒と2種類の酵母を使用する試みが興味深く、それが「様々なレイヤーで変化する」という個性的な味わいを作っているようです。日本酒ファンにとって、また、普通のスパークリングワインでは物足りない人にとって、楽しみな1本となりそうです。

年越しそばを待ちながらーー日本酒「髙尾の天狗」と高尾山の魅力をマンガでまったり綴る

今年の年末年始は、みなさんゆっくりできそうでしょうか? 一年の疲れを発散するには……なんと言ってもお酒!

 

年末年始は、一年間の中でも日本酒などのお酒が最も飲まれるハイシーズンでもあります。そこで本企画ではこの年末年始におすすめの日本酒やクラフトビールなどさまざまなお酒を、国際唎酒師の髙橋理人さんが解説。

 

さらに2021年12月27日に発売したお酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』の、お酒紹介話もお披露目します。おすすめのお酒と、それにちなんだマンガをゆったりとお楽しみください。

 

●解説

髙橋理人さん

全国の酒蔵のサポートおよび情報発信を行っている、酒蔵支援スタートアップ「株式会社蔵楽(クラク)」代表取締役。SSIインターナショナル認定「国際唎酒師」であり、一般社団法人日本ソムリエ協会認定「SakeDiploma」、「ワインエキスパート」とお酒関連の資格を幅広く持つ。大手化学メーカーに就職した最初の赴任地、新潟県糸魚川市にて感動的な日本酒に出会い、その魅力の虜に。日本酒普及に向けた活動を行い、オンラインセミナー「日本史と日本酒」、「日本酒都道府県旅」など日本酒と人を繋げる新たなアプローチを数多く試みている。

 

●年末年始におすすめの一本

髙尾の天狗 純米吟醸

↑イラストは『ほろ酔い道草学概論』作者・zinbei執筆

「髙尾の天狗」は、八王子の農家に生産委託した酒造好適米(美山錦、五百万石等)と八王子高月清流米(キヌヒカリ)を使用した限定清酒です。ラベルの文字「髙尾の天狗」は髙尾山薬王院第32世大山隆玄貫首の揮毫によるもの。また天狗のイラスト・団 扇は薬王院の了解のもと飾られている実物を使用しているそうです。

 

東京のお米で作った特別なお酒が、正月にどのように合うのか? 髙橋さんによると…

 

口に含むと、ほんのりリンゴのような香りを感じがする一本です。舌ざわりはやわらかく芳醇なお米由来の旨みがぐんぐん広がっていきます。のど越しはすっきりとしていて、爽快な飲み心地が最高です。食中酒として合うのですが、食事と一緒というよりは年越しそばを待っている間や、紅白歌合戦などの正月特番を見ながらゆったりなど、デザート感覚で飲んでほしいお酒ですね。

 

とのことです! また高尾山と言えば、中腹の薬王院へと初詣に向かう人もいるのではないでしょうか? ぜひ初詣に行った方は手に入れてほしい一本でもあります。

 

今回紹介したお酒は、お酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』でも紹介しています。ぜひマンガと合わせて、その魅力を知ってください。マンガは全て12月27日に発売したばかりの単行本に収録されている特別版です!

 

そんな髙尾の天狗にちなんだ『ほろ酔い道草学概論』をぜひお楽しみください! 今回は特別に単行本にのみ収録している描きおろしエピソードを掲載しています。

※マンガ部分が読めるのは、2022年1月4日21時までとなります

 

【作品情報】

●ほろ酔い道草学概論 インドアな私が酒と街歩きにハマるまで

漫画:zinbei

刊行:ワン・パブリッシング

うまい酒とエモい散歩は学問だ――。日本全国の足を運ばないとわからない魅力を持った「土地」、その土地でこそ楽しめる「お酒」の楽しみを描いた、今までありそうでなかった「酒×街歩き」コミックがついに単行本に。作中で登場する日本酒やワイン、クラフトビール、健康センターのサワーなど、全て実在のもの。お酒と共に、土地々々の隠れた顔に迫る「エモい街巡り」が描かれます。コロナ禍以降、お出かけの解放感とお酒の楽しみから遠ざかった人、また少しずつでも足を伸ばしてみようと思っている人に寄り添う酒マンガの新境地!

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次ページで単行本のみ収録の後編が読めます!

※マンガ部分が読めるのは、2022年1月4日21時までとなります

 

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●ほろ酔い道草学概論 インドアな私が酒と街歩きにハマるまで

漫画:zinbei

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「澤乃井」のスペシャルな新酒をゲット! 小澤酒造がマンガ『ほろ酔い道草学概論』とコラボを実施

東京の酒造メーカー「小澤酒造」と、GetNavi webで連載中のお酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』とのコラボが決定しました! 小澤酒造と言えば、「澤乃井」ブランドで有名な老舗。東京都・青梅市に蔵を持っており、多摩川を眺めながら外呑みを楽しめる「澤乃井園」とともに西東京の観光スポットとしても有名です。

 

『ほろ酔い道草学概論』は、2021年12月27日に単行本を発売した「お酒×街歩き」をテーマにしたマンガ作品。第一回にて小澤酒造、澤乃井を主人公たちが訪れるエピソードを収録しています。

●『ほろ酔い道草学概論』ウェブ版の第一話を読む

 

今回のコラボは、澤乃井の新酒「新しぼり」の作品オリジナルラベル酒を制作するというもの。『ほろ酔い道草学概論』の作者・zinbeiが描き下ろしたイラストラベルが添付されます。

 

↑こちらのラベルが添付されます

 

↑澤乃井の年始めの一本「新しぼり」

 

今回のコラボ酒は非売品となり、現在は『ほろ酔い道草学概論』単行本刊行を記念したキャンペーン「zinbei酒マンガ祭り」でのプレゼントとして手に入れることができます。

※単行本に特設ページへアクセスするQRコードを添付

 

●「zinbei酒マンガ祭り」の詳細を見る

 

「zinbei酒マンガ祭り」キャンペーンは、以下の『ほろ酔い道草学概論』作者のzinbei関連作品を購入すると応募できるキャンペーンです。

 

(キャンペーン対象作品)

●2021年12月27日発売「ほろ酔い道草学概論」
●2022年1月7日発売予定「酒と鬼は二合まで②」
●2022年2月7日発売予定「酒と鬼は二合まで③」

 

マンガ好きな方だけでなく日本酒好きな方も、特別な澤乃井の「新しぼり」を手に入れるチャンスですのでマンガ作品をぜひお買い求めください。

 

また今後「zinbei酒マンガ祭り」キャンペーン以外でも、GetNavi・GetNavi web主導でコラボ酒のプレゼント企画を予定しています! GetNavi・GetNavi web、Twitterアカウント「ゲットナビのマンガ部【公式】」にて随時情報を告知していくのでそちらもチェックしてください。

 

【作品情報】

●ほろ酔い道草学概論 インドアな私が酒と街歩きにハマるまで

漫画:zinbei

刊行:ワン・パブリッシング

うまい酒とエモい散歩は学問だ――。日本全国の足を運ばないとわからない魅力を持った「土地」、その土地でこそ楽しめる「お酒」の楽しみを描いた、今までありそうでなかった「酒×街歩き」コミックがついに単行本に。作中で登場する日本酒やワイン、クラフトビール、健康センターのサワーなど、全て実在のもの。お酒と共に、土地々々の隠れた顔に迫る「エモい街巡り」が描かれます。コロナ禍以降、お出かけの解放感とお酒の楽しみから遠ざかった人、また少しずつでも足を伸ばしてみようと思っている人に寄り添う酒マンガの新境地!

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●酒と鬼は二合まで②

原作:羽柴実里/作画:zinbei

刊行:スクウェア・エニックス

二人目の”鬼”はクールビューティー…? 種族は違えど、互いにとって大切なもの“酒”を介して、同居人となったナオリとひなた。二人の不思議な共同生活は穏やかに進んでいくかのように思えた。しかし、そこに新たな”鬼”が…。「陽奈多(ひなた)のバーテンダーを辞すると言いなさい」

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国際唎酒師が「屋守」を推薦!ーー「年末年始に美味しい日本酒」をマンガと合わせて解説

今年の年末年始は、みなさんゆっくりできそうでしょうか? 一年の疲れを発散するには……なんと言ってもお酒!

 

年末年始は、一年間の中でも日本酒が最も飲まれるハイシーズンでもあります。そこで本企画ではこの年末年始におすすめの日本酒を、国際唎酒師の髙橋理人氏が解説。

 

さらに2021年12月27日に発売したお酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』の、日本酒紹介話もお披露めします。おすすめの日本酒と、それにちなんだマンガをゆったりとお楽しみください。

 

●解説

 

髙橋理人さん

全国の酒蔵のサポートおよび情報発信を行っている、酒蔵支援スタートアップ「株式会社蔵楽(クラク)」代表取締役。SSIインターナショナル認定「国際唎酒師」であり、一般社団法人日本ソムリエ協会認定「SakeDiploma」、「ワインエキスパート」とお酒関連の資格を幅広く持つ。大手化学メーカーに就職した最初の赴任地、新潟県糸魚川市にて感動的な日本酒に出会い、その魅力の虜に。日本酒普及に向けた活動を行い、オンラインセミナー「日本史と日本酒」、「日本酒都道府県旅」など日本酒と人を繋げる新たなアプローチを数多く試みている。

 

●年末年始におすすめの一本

屋守 純米中取り 無調整生(豊島屋酒造)

イラストは『ほろ酔い道草学概論』作者zinbeiが執筆

豊島屋酒造を守り続けていく強い気持ちと、日本酒を通じて関わる人たちの役に立ち繁栄を守るような作品を醸し続ける思いから銘名された「屋守」。限りなく手作業重視の小仕込を行い、「香りよく優しい味わい」をコンセプトに醸し、全量無調整(無濾過・無加水)、全量ビン貯蔵を行っており、その深い味わいは手間隙を惜しまないことで作られています。そんな「屋守 純米中取り 無調整生」についての髙橋さんのコメントは以下。

 

「無調整生」は、最も味わいのバランスの良い美味しい部分を、加熱処理や濾過などを一切せずにそのまま瓶詰めした一本で、かつては蔵人しか飲めなかった贅沢なお酒です。洋ナシのようなコクのある甘味と酸味、そして微炭酸が心地よく、ゆったりと楽しめます。一年間頑張った自分へのご褒美に、今年を振り返りながら時間をかけてじっくりと堪能してみて下さい。

 

 

今回紹介した「屋守」の豊島屋酒造は、お酒マンガ『ほろ酔い道草学概論』でも紹介しています。ぜひマンガと合わせて、屋守の魅力を知ってください。マンガは全て12月27日に発売したばかりの単行本に収録されている特別版です!

※マンガ部分が読めるのは、2021年12月29日21時までとなります

 

【作品情報】

●ほろ酔い道草学概論 インドアな私が酒と街歩きにハマるまで

漫画:zinbei

刊行:ワン・パブリッシング

うまい酒とエモい散歩は学問だ――。日本全国の足を運ばないとわからない魅力を持った「土地」、その土地でこそ楽しめる「お酒」の楽しみを描いた、今までありそうでなかった「酒×街歩き」コミックがついに単行本に。作中で登場する日本酒やワイン、クラフトビール、健康センターのサワーなど、全て実在のもの。お酒と共に、土地々々の隠れた顔に迫る「エモい街巡り」が描かれます。コロナ禍以降、お出かけの解放感とお酒の楽しみから遠ざかった人、また少しずつでも足を伸ばしてみようと思っている人に寄り添う酒マンガの新境地!

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カップ酒にブームの兆し!? きき酒世界一のソムリエが推す家飲み日本酒~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。和食に合うお酒といえばやっぱり日本酒ですよね。お刺身や魚料理をさらに美味しくしてくれる立役者。これからの季節、お鍋やおでんにもピッタリです。

 

気軽に日本酒の世界へ!

現在日本酒の銘柄はなんと1万種類ともいわれています。どれを飲んだらいいのか迷ってしまうというなら、その道のプロに聞くのが一番。

 

今回紹介する日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』(北原 康行・著/日経プレミアシリーズ)は、日本酒ガイド本では取り上げられることの少ないカップ酒や「アル添酒」にも着目しているのが特徴。身近なところから奥深い日本酒の世界へと分け入っていきましょう。

著者の北原康行さんは、ホテル「コンラッド東京」のソムリエでシニアアウトレットマネージャー。日本酒への造詣も深く、2014年には「世界きき酒師コンクール」で世界一に輝いています。著書には『日本酒テイスティング』(2016年/日経プレミアシリーズ)があり、本書はその続編に当たります。

 

カップ酒で日本酒テイスティング

ラベルを見て、エリア(東日本か西日本か)とタイプ(吟醸系か非吟醸系か)の情報から日本酒を選ぶという、初心者にもわかりやすい方法を提唱している北原さん。気候的に東日本は「エレガント」、西日本は「パワフル」な酒質というザックリした分類が可能だそうです。

 

2章と3章では、ここ5年で種類が増えて入手しやすくなったカップ酒が主役です。カップ酒というと安かろう悪かろう……なイメージがありますが、最近では日本酒党も納得する通好みの銘酒が続々とカップ酒になっているとか。300円台で手軽に味比べができるならこんないい話はありません。

 

具体的に取り上げられているカップ酒は全13種類。同じエリアの吟醸系と非吟醸系を飲み比べるという形式で進んでいきます。たとえば、山形県の「上喜元 純米吟醸」と岩手県の「南部美人 特別純米」のカップ酒を飲み比べ。

 

「上喜元」は食べごろを迎えたバナナのような香りがして、繊細な風味。山形県の名産である桃やさくらんぼなど、水分量が多いフルーツとの相性もピッタリとのこと!

 

一方「南部美人」は、最初にヨーグルトっぽい香りがあり、口に含むと乳酸の酸味と旨味、お米の甘味が広がる純米酒。チーカマやカキのバターソテーがおつまみとして提案されています。酒蔵がある地元の名産品との相性が書かれているのも参考になります。

 

カップ酒以外に、軽視されがちな醸造アルコールを添加した日本酒、いわゆる「アル添酒」にも光が当てられています。ワインでいうとシェリーやポートワインなどもアル添酒。そのメリットは品質が安定し、劣化しにくいぶん、造り手のイメージがストレートに伝わることだとか。

 

アル添酒では福岡県の非吟醸系「庭のうぐいす おうから」が気になりました。玄米のような香りで麦を思わせる香ばしい印象もあり、パワフルながらすっきり。初心者でも楽しめる辛口に仕上がっているそうです。博多の一口餃子が合わせる料理として挙げられていて、ビールではなく日本酒と餃子のハーモニーをぜひ体験したくなりました。

 

そのほか、今注目の伝統的な製法で作る「生酛・山廃」、近年台頭してきたスパークリング日本酒などから全29銘柄を掲載。難しい分類や理屈にはページを割かず、カジュアルで親しみやすいのが本書の良さ。「獺祭」のスパークリング酒と五目チャーハン、「飛良泉」の山廃とタルトタタンなど、提案されている料理も意外性のあるものが多く、日本酒のポテンシャルを感じました。テイスティングの表現も直感的で、実際に自分でも試してみたくなる“そそられる”日本酒ガイドです。

 

【書籍紹介】

『日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』

著者:北原康行
発行:日経BP

カップ酒、スパークリング、生酛・山廃、アル添酒、熟成酒…どんな日本酒も、ラベルにある「たった2つの情報」で風味がざっくり想像できる。きき酒世界一に輝いたソムリエが29種をテイスティングしつつ、味の傾向を見極めるヒントから飲み方、料理との合わせ方まで紹介します。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

甘酒は食べ物だ! 老舗酒蔵が人気料理家&デザイナーと共同開発した「米糀のあまさけ」はスムージーがヒントだった

健康意識がますます高まる昨今、“飲む点滴”といわれる甘酒にも、注目が集まっています。今回紹介するのは、そんな甘酒業界にデビューした新商品。かつてないおいしさとデザインを併せ持つ、魅力的なプロダクトです。発売前に行われた発表会に参加してきました。

米糀(こめこうじ)のあまさけ
各432円(税込・135g)

 

現代のライフスタイルに合った「甘酒=軽い食事」という提案

発表会では5種類のフレーバーがお披露目されました。造り手は、山形の小嶋総本店。日本酒好きならおそらくこの名をご存知のことでしょう。

↑小嶋総本店の代表銘柄「東光」。国内外で高い人気を誇り、世界19か国へ輸出されています

 

同蔵は安土桃山時代の1597年、山形県米沢市で創業。国内に約1200ある酒造のなかで、13番目に長い歴史をもっています。特徴は、醸造アルコールなどの添加物を使わず、純米酒のみを造る全量純米蔵であること。お米本来のうまみや甘味を最大限に生かすことを得意とした蔵元です。

 

その小嶋総本店が甘酒をつくろうと思った背景には、24代目の当主である小嶋健市郎さんの、幼少期の原体験がありました。小嶋さんが生まれて初めて口にした離乳食は、糀の甘酒。小嶋さんにとって“甘酒は食べ物”感覚だったそう。そこで、甘酒を“軽い食事”として捉え直すと、既存の甘酒にはない魅力を発信できるとともに、現代のライフスタイルに合った提案ができるのではと、「米糀のあまさけ」を着想したのだとか。

 

こだわりはノンアルコールかつノンシュガーであること

↑ベースとなる「pure はれやかな甘み」。お米の素材感がほどよく残る、ぽってりとしたテクスチャーも特徴です

 

そうしてでき上がったのが、山形県産の米糀を発酵させたピュアな甘酒。こだわりのひとつが、ノンアルコールかつノンシュガーであること。甘酒には酒粕由来のタイプと米糀由来のタイプがありますが、前者はアルコールを完全なゼロにすることが難しいため、米糀がベースとなっています。

 

そして、この甘酒をベースに野菜やフルーツなどのブレンドを手掛けたのが、料理家の川上ミホさん。川上さん自身が働きながら育児をする多忙なママであり、同じような立場の女性の手助けになる商品にしたかったと話します。

↑現在5歳のお子さんがいる川上ミホさん。スムージー甘酒の味づくりにおいては、そのお子さんにも味見をしてもらいながら、栄養面とおいしさの両立を目指したと言います

 

では、今回の5種類にはそれぞれどんな特徴があり、どんな味わいなのか? 具体的に紹介していきましょう。

 

生活シーンを切り取ったラインナップになっている

↑発表会では飲み比べも体験。器に注ぐと、素材の自然な色合いがよくわかります

 

ベースとなっている「pure はれやかな甘み」は、ノンシュガーながら商品名通りの十分な甘さが印象的です。それでいて甘ったるさはなく、品があるすっきりとしたおいしさ。やわらかなタッチで、飲み疲れないのも特徴です。

↑「pure はれやかな甘み」。中身が見え、冷蔵にも冷凍にも対応できるパッケージになっています

 

スムージー系のフレーバーは、「朝」や「体を温めたいとき」など、生活のシーンを切り取ったラインナップになっているのもポイント。例えば「wake up」は、すっきり目覚めたいときにオススメな配合となっています。それぞれを紹介していきましょう。

 

↑「wake up green すこやかに目覚める」。カルシウムや鉄分を豊富に含む小松菜やケール、米沢では伝統的な健康植物として知られる「うこぎ」、食物繊維豊かなりんご、ビタミンCが豊富なキウイフルーツ、レモンといった朝にぴったりな素材をブレンド

 

↑「beauty up red たおやかに整える」。高酸化力が高く豊富なビタミンを含むいちごとラズベリーに、“食べる輸血”の異名を持つビーツもプラス。美容とアンチエイジングがテーマの、やさしい甘酸っぱさに仕上がっています

 

↑「warm up yellow ここちよく温める」。かぼちゃ、オレンジ、みかん、にんじんといった暖色の食材を多く採用。さらに過熱した生姜が加わることで、ピリッとしたアクセントと冷え予防の作用も。温めてもおいしいテイストになっているのも特徴です

 

↑「power up kinari」には、タンパク質が豊富な豆乳のほか、バナナやアボカドでコクと飲みごたえを強化。また、山形県を代表する青大豆「秘伝豆」をきな粉にしてブレンドし、和やかな香ばしさを感じる味わいになっています

 

ちなみに、全体のブランディングをはじめ、スタイリッシュで斬新なパッケージを手掛けたのは「artless Inc.」。日本を代表するアーティスト、デザイナーである川上シュンさん率いるブランドコンサルタンシーです。

 

“甘酒を軽い食事として捉え直す”という「米糀のあまさけ」のテーマに沿い、栄養ゼリー飲料のような立ち位置を目指してパウチ型に。ラベルは簡単に外せて分別しやすいタイプにし、素材には解凍した際の結露にも耐える防水の厚紙を採用しています。

 

↑左から、小嶋総本店で事業開発室 販売課に所属する五十嵐有佳さん、小嶋健市郎代表、川上ミホさん、川上シュンさん

 

販売動向などをみながら、販路の拡大や季節限定フレーバーの開発もしていきたいと、小嶋代表は言います。生活のシーンに合わせて選ぶ、食べる甘酒という新提案。気になる人は公式サイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。

日本酒だけど、スパイシーなカレーと合わせたい!「澪」の限定商品「イチゴのような香り」を飲み比べ

宝酒造が手掛ける人気のスパークリング日本酒「澪」(みお)が2021年6月21日で発売10周年を迎え、同時に限定商品も発売されました。

 

記念のイベントには、ブランドアンバサダーを務めるとともに、限定新作のラベルデザインを監修したフィギュアスケーターの浅田真央さんが登壇。その様子と、新作の味わいレビューをお伝えします。

↑左が定番商品で、正式名称は“松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒”。右が6月21日から限定発売されている“松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒10thAnniversary<イチゴのような香り>”です。ともに300mlで参考小売価格は税込522円

 

浅田真央さんがラベルデザインを監修

「澪」の特徴は、爽やかで心地よい発泡、フルーティな香り、やさしい甘みとほどよい酸味、これらが調和しつつ、アルコール度数5%で気軽に楽しめる点です。その飲みやすさから、日本酒のエントリー層を中心に愛され、累計7000万本の販売数量(300ml換算)を突破する人気ブランドとなっています。

 

発売10周年を迎え、記念の新商品も発売ということですが、さらにもうひとつエポックメイキングなことがありました。「澪」の誕生日である6月21日が、一般社団法人日本記念日協会より「スパークリング清酒の日」に登録認定されたのです。

↑「スパークリング清酒の日」の「記念日登録証」を披露する浅田さん

 

浅田さんはトークショーのなかで、自身が監修した“松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒10thAnniversary<イチゴのような香り>”のラベルデザインについて、「最初はデザインなんて大丈夫かな? と思ったのですが、『澪』のスパークリングの華やかさをイメージして描いてみました。家でもよく絵を描いたり塗り絵をしたりするので、とても楽しかったです」と振り返りました。

↑華やかさが際立つ“松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒10thAnniversary<イチゴのような香り>”のラベル

 

この日は七夕が近いこともあり、浴衣姿で登場した浅田さん。イベントでは短冊に願い事をしたためました。書いた内容は「過去の自分を超えることができますように」。

 

浅田さんはその思いを、「3年間続けてきたアイスショーが無事に終わって、自分の気持ちもまたゼロからのスタートだと思っています。そんな過去の自分を超えていけるように、これから前に進んでいきたいですね」と明るく語ってくれました。

↑アスリートらしい向上心を短冊にしたためた浅田さん

 

いつもの「澪」と「イチゴのような香り」を飲み比べ

せっかくなので、この機会に筆者は通常の「澪」と期間限定の「イチゴのような香り」を購入して飲み比べてみました。まずは「澪」から試してみると、マスカットやライチなどの爽やかな果実を思わせるフルーティな香味が印象的。口に含むと、やわらかな甘みと発泡によるキリっとして爽やかな余韻が、口のなかで心地よく広がります。

↑フルーティな香味が特徴の「澪」。香りをキャッチしつつ泡の繊細な刺激を楽しむなら、グラスは細めのシャンパングラスがオススメです

 

「イチゴのような香り」は、確かにレッドベリー系の甘酸っぱいアロマが広がりますが、熟した重さではなく上品で繊細なイメージ。軽やかですっきりとした「澪」らしい飲み心地がしっかりあって、食前酒や食後酒としてはもちろん、食中酒としても合うと思います。

↑上品で繊細なイメージの味わい。アルコール度数は定番の「澪」と同じ5%です

 

ちなみに、イベントでは浅田真央さんが「自家製スパイシーカレーを作って『澪』と合わせたところ、驚くほどマッチした」と語っていました。「カレーにはラッシーが合う」といいますが、ラッシーも甘さと酸味をもった発酵ドリンク。同様に、「澪」の甘みや酸味がカレーのスパイスと調和し、後口をすっきりさせてくれたのでしょう。みなさんもぜひ、2つの「澪」の飲み比べを楽しみつつ、夏の定番料理であるカレーと合わせてみてはいかがでしょうか。

気鋭のブランド「SAKE HUNDRED」からスパークリング日本酒が3万円で限定発売! 泡雪のように溶ける酒を初夏に嗜む贅沢はいかが?

日本酒における最高峰のグローバルブランドを目指す「SAKE HUNDRED」から、初のスパークリング日本酒が限定発売されました。その名も「白奏 | HAKUSO」。価格は1本720mlで約3万円と、今回もセレブリティなプライスです。しかも約2000本の限定生産とのことで希少性もピカイチ。特別に試飲体験と、開発ストーリーなどを教えてもらえるということで、取材に行ってきました。

↑6月28日に新発売する「白奏 | HAKUSO」(720ml/税込3万800円)

 

構想2年。常識を打ち破る泡酒造りの舞台裏

まず、簡単に「SAKE HUNDRED」の説明を。同ブランドは「心を満たし、人生を彩る。」を掲げ、これまでの日本酒とは一線を画す立ち位置を築いています。造り方や味わいも個性あふれるものばかりで、コストも手間も開発時間も完全度外視。一切妥協をせずに生み出されることもあり、価格もそれなりにします。

↑「SAKE HUNDRED」のブランドクリエイティブ。1万円以下の商品はなく、最高額は19万8000円(税込)のヴィンテージ「現外 | GENGAI」

 

そして今回の新作はブランド7番目の商品。聞けば、スパークリング日本酒の発売は約2年前から構想していたとのこと。とはいえ、なかなか理想の味わいにたどり着けず、開発は困難を極めたとか。幾多の生みの苦しみを経て発売となったのが「白奏 | HAKUSO」なのです。

 

味のイメージは甘みが主体で、きめ細やかで柔らかい発泡感が特徴。スパークリング酒はワインでも日本酒でも、ドライでキレがあり、爽快な発泡感のタイプが主流ですが、あえてそうではない酒質を目指したといいます。

 

それでいて甘すぎず、上品でなめらかな味わい。常識を打ち破るような、これまでにないスパークリング日本酒を求めたがゆえに、長い歳月がかかったといいます。「味を知るにはまずご賞味を」とのことで、襟を正しつつまずはひと口。

↑グラスは、爽やかな印象を引き出したい場合はシャンパーニュ型、ふくよかな印象を引き出したい場合はリースリング型(すぼまりが強めの卵型)がおすすめとのこと

 

第一印象は、もぎたてのリンゴやマスカットを思わせるフレッシュな香味。口に含むと米由来の甘みが立ちつつ、爽やかな酸味も。どこか甘酸っぱいベリーのニュアンスやクリーミーなトーンもあり、繊細な泡のタッチが優しく刺激します。絶妙な甘みと心地良い発泡は余裕を感じさせ、総じて上品。

↑「白奏-HAKUSO-」の「白」は、ほんのり白い液色にインスパイアされたもの。泡の粒が口内でスッとたおやかに溶けていく様は、さながら軽くて溶けやすい泡雪のよう

 

「このフルーティさは、米を相当磨いているに違いない!」と思い、実際に聞いてみると、精米歩合はなんと18%と想像以上の答えが返ってきました。元の米から1/5以下にまで磨くことで、ピュアな甘みを醸し出していたのです。有名な高精白酒である「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」でも23%なので、それ以上。やはり「SAKE HUNDRED」、ただものではありません。

 

 

泡酒の名手×大吟醸に適した熊本酵母と山田錦

個々にイメージする味わいを、最も実現してくれる蔵元をパートナーに迎えるのも「SAKE HUNDRED」の特徴です。今回白羽の矢が立ったのは、熊本の河津酒造。同蔵は「シャンパン製法」と呼ばれる瓶内二次発酵の技術を、スパークリング日本酒で早くから取り入れていたことで知られ、当然ながら泡酒は大得意。

 

なおスパークリングタイプにする手法は、ガスを充填するか、瓶内で発酵させるかの大きく2つに分かれますが、後者のほうがナチュラルで繊細な泡を作りやすいのがメリット。ただし、狙った泡の質感にできるかどうかは腕次第というわけです。また、その際に「デゴルジュマン」という澱(おり)抜きの手法によって雑味の元となるもろみを抜くのですが、この工程が最も難しかったといいます。

 

なぜなら、もろみにもうまみが詰まっているから。試験醸造の際にもろみを抜いたところ、味の全体バランスが崩れてしまったそう。そこで酒質の密度を上げたり、日本酒度を下げて甘みを強化したり、また一次から二次発酵の際に3週間の熟成期間を設けてうまみも重ね、もろみを抜いた状態で理想の味になるよう整えていったのです。

↑アルコール分は14.2%。度数としては一般的な日本酒の平均値で、飲みごたえがありながら飲み疲れしないバランスに仕上がっています

 

河津酒造に製造を託したもう一つの大きな理由が、熊本が誇る酵母。「白奏 | HAKUSO」に使われている「熊本酵母(KA4-01)」は秋田・新政酒造が発祥の「きょうかい6号」や長野・宮坂醸造から分離された「きょうかい7号」と並び、現代吟醸酒の基礎を築いた熊本発祥の「きょうかい9号(熊本酵母)」を元に研究されたもの。近代的吟醸酒造りに特化した酵母で、上品で華やかな香りが特徴のため吟醸酒造りに最適なのです。

 

そして、酒米には味がふくよかになりやすく、甘みが主体の酒造りにも適した山田錦を採用。辛口の値を示す日本酒度が-17という、上品な甘口スパークリング酒が生まれたのです。

 

6月発売の限定2000本生産ということからも分かるように、「白奏 | HAKUSO」は初夏を楽しむ想定で造られています。真夏ほど暑くはなくしっとりとしたこの季節には、優しい甘さとなめらかな発泡の「白奏 | HAKUSO」が、よく合いそう。記念日や贈り物、または自分へのご褒美に、この特別な一本を入手してはいかがでしょうか。

“映える”華やかさで人気急上昇中!「スパークリング日本酒」おすすめ5選

最近人気急上昇中の「スパークリング日本酒」。日本酒が苦手な人でも飲みやすいことや、シャンパンのような華やかさが人気の理由のようです。食前・食中・食後と、どのタイミングでもおいしく楽しめるのもうれしいですよね。そんなスパークリング日本酒ですが、甘みが強いものからドライですっきりとしたものまで、様々なものが発売されています。そこで今回は、おすすめのスパークリング日本酒5選をご紹介します。

 

目次

 


お酒のスイーツとも呼ばれるスパークリング日本酒


一ノ蔵 発泡清酒 すず音

「すず音」という名前はグラスに注ぐと立ちのぼる繊細な泡が鈴の音を奏でているようであることから名付けられました。プチプチと優しくはじける泡は、シャンパンと同じ瓶内発酵によって生まれる自然の炭酸ガスによるもの。お米の優しい味わいのなかに、柔らかな甘酸っぱさが広がります。乾杯時の1杯目だけでなく、カクテルベースやデザート酒にもおすすめ。実際に飲んだユーザーからは「フルーティーであっさりとした甘味なのに、淡泊過ぎず味わい深く絶妙なバランス」「日本酒特有のツンとしたあと口があまりないので、日本酒の苦手な方こそ飲んでほしい」と高評価。

【詳細情報】
内容量:300ml
アルコール分:5%

 


キレのあるドライなスパークリング


宝酒造 松竹梅白壁蔵「澪」<DRY>スパークリング清酒

宝酒造「澪スパークリング清酒」のおいしさはそのままに、りんごを思わせる風味に加え、すっきりとキレのあるドライな味わいが特徴。乾杯を華やかに盛り上げ、前菜や和食との相性も抜群。デザートやスイーツと一緒に食後のひとときを楽しむのにもぴったりです。ユーザーからは「定番の澪と比較するとずっと日本酒らしい味わい。甘さも控えめなので、食事に合わせやすい」「スパークリングワインより上品で、シャンパンのように繊細」と高評価の声も。

【詳細情報】
内容量:150ml、300ml、750ml
アルコール分:5%

 


フルーティーで甘酸っぱいスパークリング日本酒


白瀧酒造 上善如水スパークリング

「上善如水スパークリング」は、のど越しすっきりなフルーティーで甘酸っぱいスパークリングの日本酒。飲みやすく、高アルコールを感じさせない軽快な味わいです。お米のまろやかさと、やさしい炭酸がプチプチはじける甘美な味わいは、ビーフステーキなどの洋食や、チョコレートなどのスイーツにもぴったり。ユーザーからは「甘口でフルーティなスパークリング酒で女性にはとても喜ばれます」「ボトルのデザインもステキで、飲む前から盛り上がることまちがいなし。最初の1杯に最適」との声も。

【詳細情報】
内容量:360ml
アルコール分:12%

 


お米だけのピュアなスパークリング純米酒


黄桜 ピアノ

お米だけで仕込んだピュアなスパークリング純米酒。アルコール分を5度まで抑えたすっきり甘口タイプ。お酒の発酵から生まれた自然の泡が軽やかにはじけます。お米の甘さを十分に引き出し、リンゴや洋ナシを思わせるフルーティーな香りが特長。その香りを十分に感じるために、ワイングラスで飲む事をおすすめします。バランスの良い酸味と甘みを持っているので、サラダやブルスケッタ等の前菜と相性ばっちり。また、スタイリッシュな黒ビンで食卓に映えるデザインもオシャレ。ユーザーからは「日本酒を感じさせる柔らかな風味が上品」「ワインより飲みやすく日本料理などにも合います」と高評価。

【詳細情報】
内容量:300ml
アルコール分:5%

 


繊細な一筋泡の立つスパークリング日本酒


八海山 瓶内二次発酵酒 あわ 八海山

醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有する、透明な日本酒です。グラスに注いだとき繊細な一筋泡が立つのが特徴。フルーティーな香りと上品な甘み、爽やかなスパークリングの口当たりを楽しめます。シャンパンと同じ製法の瓶内発酵による自然できめ細やかな泡立ちは、軽やかですっきりとしたおいしさ。瓶内発酵による、自然できめ細やかな泡立ちと口当たりは、食前酒はもちろんのこと、様々な食事のシーンを華やかに彩ってくれること間違いなし。ユーザーからは「乾杯にはいつもこのお酒と決めています」との声も。

【詳細情報】
内容量:360ml、720ml
アルコール分:13%

 

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芋焼酎「一刻者」が20周年。俳優・永瀬正敏が若者に伝えたいこととは?

芋焼酎の一大ブランド「一刻者(いっこもん)」が2021年9月に誕生20周年を迎えるということで、ブランド戦略発表会が開催されました。新たな取り組みの柱となるのはモノづくりへのこだわりと、ローカリゼーションの2つ。改めてブランドの特徴を紹介するとともに、発表会の内容をお伝えします。

↑発表会にはブランド初のアンバサダーに就任した、俳優・写真家の永瀬正敏さんが登壇

 

20年で6700万本を販売するブランドに成長

「一刻者」がデビューしたのは2001年。ネーミングの由来は、製造拠点がある宮崎など南九州の話し言葉で「一刻者=頑固者」だから。この頑固はこだわりということであり、それはおいしさに妥協せずつくり上げたというストーリーが深く関係しています。

↑左から、「一刻者」〈赤〉720ml/1586円、1.8L/3259円、「一刻者」720ml/1498円、1.8L/3083円(すべて税込価格)

 

本格芋焼酎は1990年代頃まで九州を中心に愛される地方のお酒でした。それが2003年ごろに焼酎ブームが起き、芋焼酎はけん引する存在に。人気急増の背景には、各メーカーが品質にこだわった商品開発したこと。飲み方が多彩で、思い思いに楽しめること。糖質やプリン体が含まれていないので健康的であることなどが挙げられます。ただし「一刻者」の開発はブームになる前。

↑歩みなどを語ったのは、製造元である宝酒造の商品第一部蒸留酒課、髙井晋理課長。この20年で累計6700万本を販売するブランドに成長しました

 

当時の開発陣が目指したのは、麹まで芋でつくる全量芋焼酎。というのも、それまでの芋焼酎の多くは米麹を使用するのが当たり前だったのです。そこで、芋100%の焼酎づくりがはじまりました。しかし、芋は米よりも水分量が多いため、麹菌が根付きづらいという課題があり、開発は困難を極めます。そこから6年の歳月をかけ、特許技術も駆使して生み出されたのが2001年。

↑「一刻者」の原料は、南九州産のさつまいも100%。独自の芋麹仕込みと石蔵貯蔵による、芋本来の華やかな香りと上品な味わいが特徴です

 

その後、2013年に赤芋を使った「一刻者〈赤〉」が仲間入り。2016年には新しい飲み方のとして炭酸割りを提案するなど、いっそう裾野が広がります。そして2019年は、宮崎の黒壁蔵工場に専用の石蔵を新設。年間を通じて温度変化が少ない環境となり、蒸留後のピュアな味のまま貯蔵と熟成ができるようになりました。

↑宮崎県の高鍋町にある、宝酒造の黒壁蔵工場。筆者は2018年に取材で訪れました(撮影/我妻慶一)

 

改めて飲んでみました。印象的なのが、あふれんばかりの甘くフルーティな香り。飲み口はクリアで心地よく、上品なキレもあってすっきりしています。

↑味、香りともに豊かできれい。ロックでもつっかかりがなく、クイッと飲めます

 

水割りも、極めてスムーズでブライト。この時季ならソーダ割りもいいでしょう。試してみると、炭酸の爽快感に後押しされる飲みやすさがあり、それでいて焼酎の甘やかなコクがのって飲みごたえも十分。まさに、宮崎の高鍋に降り注ぐ太陽や、日向灘の潮風を感じるようなダイナミックさがあります。

 

父の日のプレゼントにも最適

発表会の後半は、永瀬正敏さんのトークセッションを中心に進行しました。初のブランドアンバサダーに永瀬さんが抜擢された一番の理由は、宮崎出身だから。これもローカリゼーションの一環です。永瀬さんは「縁を感じますね。光栄です。宮崎の方にも喜んでいただけたら」と想いを語りました。飲み方を聞かれると、焼酎はオンザロックが多いとのこと。

 

「いまは自宅でひとりチビチビ飲む感じですけど、僕は若輩者だと思っているので、先輩方から色んな飲み方を学びながら楽しみたいですね。『一刻者』の100%、ピュアということはものすごく強い魅力。若輩から先輩まで楽しめるお酒です。いまの状況に打ち勝ったら、みんなで『一刻者』を開けて乾杯したいですね」(永瀬さん)

↑永瀬さんはブランド20周年にちなみ、今年二十歳を迎える若者に向けて「半歩前へ」とエール

 

「大きな1歩ではなく、半歩でもいいから未来に歩を進めてほしい。怖がらずに勇気を持って。その半歩が1歩になり10歩になりますから。できることなら二十歳の自分にも大いに伝えて、背中を押してあげたいです」(永瀬さん)

 

「『一刻者』は父の日のプレゼントにも最高だと思います」と永瀬さん。そういえば、2021年の父の日は6月20日。20周年の節目を迎える「一刻者」はエピソードとしても最適で、話のきっかけにもなるでしょう。この機会に、贈ってみてはいかがでしょうか。

読んで思わずニヤけた。日本酒好きは「新政」を避けて通れないとわかる本

かつて筆者は、編集者・ライターの馬渕信彦さんと(死ぬ思いで)日本酒の本を作ったことがあります。その馬渕さんは、いつもおかっぱ頭の息子の写真を飽きずにSNSに投稿していますが、最近やたらと「新政」(あらまさ)の蔵の写真を上げてくる――。新政といえば、現代の日本酒を代表するスター銘柄です。いったいなんのアピールだろう……と思っていたら、なるほど、合点がいきました。馬渕さん、新政のブランドブックの制作を手掛けていたのですね。本の名は「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」(三才ブックス)。1年がかりで制作し、つい先日発売になったそうです。

↑「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」は、B5変型128ページで税込1540円(表紙撮影:堀 清英)

 

「新政の本を作ろう!」スター蔵元に取材をオファー

秋田県秋田市の新政酒造は、嘉永五年(1852年)の歴史ある蔵元です。筆者が日本酒を飲み始めた2000年ごろは、協会6号酵母の発祥の蔵として有名だよね、昔ながらの味で燗が旨いよね、という至って普通のイメージでした。それがいつの頃からか、ビンのデザインがスタイリッシュになり、味も透明感のある華やかなイメージに。あれよあれよという間にスター蔵元・スター銘柄への階段を駆け上がっていきました。

↑新政の主要銘柄のひとつ、「No.6 S-type 2020」。「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:石上 彰)

 

その原動力となったのが、8代目蔵元の佐藤祐輔さん。何でも東京大学の文学部を卒業後は東京でフリーライターとして働き、30歳を過ぎるまで日本酒のことをほとんど知らなかったそう。秋田に戻って家業を継いでからは、添加物を廃し、全量を伝統的な生酛(きもと)造りに切り替えるといったドラスティックな改革を断行。現在の評価を得るに至りました。

↑木桶の前に立つ佐藤祐輔さん。イケメンです。「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:堀 清英)

 

さて、そんな佐藤さんに、「新政の本を作らないか」と持ち掛けたのが、先述の馬渕さん。馬渕さんは和酒総合研究室「富士虎」の主任研究員としての顔も持っていて、全国の酒蔵巡りをライフワークとしています。2013年に初めて新政を取材して以来、佐藤さんと親交を深めていたそう。取材を重ねるうち、馬渕氏のなかで「新政は文化を醸造している」と感じ、「その美学を伝えたい」との想いが芽生えたといいます。そこで、「一冊全部新政の本を作ろう!」と佐藤さんに提案したところ、「ジャーナリストの中では馬渕さんが新政のことを一番わかっている。馬渕さんならがっちりと書いてくれるだろう。校正なら自分もできるし(元同業)」ということで、取材にOKが出たそうです。

 

ビジュアルを重視して蔵の美しさを伝えたい

この本を制作するにあたって、新政の佐藤さんからは「ビジュアルを重視したい」と要望があったとのこと。というのも、現在の新政は伝統製法の「生酛(きもと)造り」のみを採用し、木桶を導入するなど、伝統技術への回帰を進めています。その結果、自然に蔵の中が美しくなっていったそうで、そのイメージをダイレクトに伝えたかった、その手段がビジュアル=写真なのだ、というわけです。

↑「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:相場慎吾)

 

↑「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:相場慎吾)

 

そんな佐藤さんの要望もあって、撮影を手掛けた写真家さん(3人)も豪華です。人物と蔵の風景をメインに撮影した堀 清英(きよひで)さんは、大手企業の広告写真、ミュージシャンのCDジャケットなどを手掛ける巨匠クラスの人物。ニューヨークでアレン・ギンズバーグという著名な詩人と交流を持ち、そのポートレートを撮ったことでも有名です。

 

造りや風景などを撮影したのは、相場(あいば)慎吾さん。カリスマ的ファッションデザイナー、エディ・スリマン直属のデザインチームに抜擢された経歴を持つ方で、それだけでも美的センスが規格外であることがわかります。現在は衣装デザイン・写真・イラストなど、 様々なアートワークを手掛けているとのこと。

 

もうひと方、新政が酒米を契約栽培している鵜養(うやしない)地区の風景を撮影したのが、松田高明さんです。松田さんは山形在住の民俗写真家で、蔵元の佐藤さんが山形でイベントを行った際、松田さんの作品を気に入って馬渕さんに紹介したそうです。

↑「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:松田高明)

 

一読して、情報量に圧倒される

そんな実力派の3名が撮り下ろした写真とはいかなるものか……? 実際の印刷物で見たら、いったいどれほど美しいのでしょう。ここに蔵元が絶大な信頼を寄せる、馬渕さんの文章が加わるわけで、そのクオリティの高さに疑いの余地はありません。これはもう、買うしかないでしょう!

…というわけで買いました。あ、B5版だから、いつものA4の雑誌サイズよりはちょっと小さいんですね。開いてみると、いくつもの神秘的なビジュアルが目に飛び込んできます。ああ、強いインクの香り。いいですね……などと思いながら、一読して衝撃を受けました。「すっごいな、これ…面白い!」と思わずつぶやき、ニヤけてしまったほど。これは、ただのビジュアルブックじゃない!

 

まず、情報量がハンパないです。普通、酒蔵といえば「造り」に焦点を当てればだいたいOKでは? と思われるところ、本書は6つの章に分かれていて、「造り」はそのうちの一つに過ぎません(とはいえページ数は多いですが)。馬渕さんの文章は、写真に合わせてエモーショナルで詩的な感じになるのかな? …などと予想していたらまったく違いました。隅から隅まで情報が詰め込まれた硬派な文章で、これがモノクロを多用した荘厳な写真に合うんです。

 

2008年からのヴィンテージガイドや、「酒米の作付け分布図2021」なんてのもある。酒米や酵母にも深く突っ込んでいて、そこそこ日本酒を知っている人にとっては、興味が止まらない内容です。最上位ラインの銘柄は、知らない人だと買いづらいネーミングにしているとか、裏話も面白い。あと、新政のラベルに使われているオリジナルの文字フォントが本書にも使われているんだよなぁ~。

 

また、章間にあるスタッフのインタビューの端々から、蔵元・佐藤祐輔氏のぶっ飛んだ気性が見てとれるのが興味深いです。そして、最後の最後には蔵元のインタビュー。ここですべてのピースがハマるような爽快感があって、そんな構成の妙も心憎いです。

 

この本を持って、新政を飲みに行きたい

読み通してみると、馬渕さんが「新政は文化を醸造している」と感じたのが腑に落ちました。詳しくは本書に譲りますが、新政は本当にこれ、全部やってるの……? と、ただ驚くばかり。これは確かに伝えるべきだ。そして、本書の存在も多くの人に知られるべきだと思いました。

 

最後に、個人的には「この本持って、新政飲み行きてえ!」と強く思いました。次に新政と対峙するとき、いままでとまったく違う思いを抱いていることは間違いありません。晴れて口にできる日はまだ先のことかもしれませんが、そのときは家族や仲間と、あるいは酒場の店員さんと、その体験を分かち合えたらいいな……と。本書のおかげでひとつ、大きな楽しみができました。

↑「The World of Aramasa 新政酒造の流儀」より(撮影:堀 清英)

 

日本酒×ブランデー×梅酒のいいとこ取り!「雫」は晩酌にもチルタイムにも楽しめる汎用性の高い万能酒だった

ぶどうの蒸留酒であるブランデーに、梅酒と純米酒。この3つを掛け合わせた個性豊かなお酒「梅ブランデー雫」が今秋発売されました。どんな背景から誕生したのか、どんな味わいで、オススメの飲み方はどうなのか。オンライン試飲会に参加し、ユニークともいえる本商品の魅力に迫っていきたいと思います。

神戸ワイナリー×白鶴酒造
梅ブランデー雫
3300円(税別・700ml)
2020年9月28日発売。限定3000本。アルコール度数19%。

 

コロナ禍から生まれた、“酒処”神戸のチャレンジ

本商品を語るうえで欠かせないのが、神戸という地。同市では、農漁業と食ビジネスの活性化や世界に誇る食文化の都を目指すプロジェクト「食都神戸」を掲げており、そのなかで出合った「白鶴酒造」と「神戸ワイナリー」がコラボレーション。コロナ禍のなかで、“何か新しいチャレンジを”という発想から、「梅ブランデー雫」が生まれました。

↑ラベルの裏側。左上に「食都神戸」のロゴが描かれています

 

「白鶴酒造」といえば、日本屈指の酒処・灘(なだ)を代表する蔵元。そして「神戸ワイナリー」もまた、神戸市内産のぶどう100%を使い、テロワール(土地の恵み)を生かしたワイン造りを信条とする作り手です。

 

神戸のある兵庫は、酒米の王様として知られる「山田錦」の原産地であり、「梅ブランデー雫」を構成する純米酒にも、やはり兵庫県産の「山田錦」を使用しています。兵庫・神戸の自然の恵みを凝縮させていることも、本商品の特徴でしょう。

↑洋酒の風格を漂わせるボトルの形やコルクキャップもポイント

 

ブランデーは琥珀色のタイプではなく、果実本来の香味を生かしたホワイトブランデーを使っていますが、こちらも特別なもの。「神戸ワイナリー」に導入されている蒸留器は、ブランデーの聖地・フランスのコニャック地方で使われているものと同じ「シャラント式アランビック蒸留器」だそう(写真)。本場そのままの製法により、香り高く味わい深い原酒をつくり出しています。

↑「神戸ワイナリー」の蒸留器。同社の新田兼右さんが解説してくれました

 

そのホワイトブランデーは、神戸産ワインを12年間寝かせた長期熟成タイプ。そのうえで、酒質のきれいな灘の純米酒と、紀州南高梅を使った梅酒とともにブレンドし、深いコクや香りをバランスよく調和させているのが「梅ブランデー雫」なのです。

一般的な梅酒よりもツヤのある華やかな味わい

ここからは、いよいよ試飲。まずはストレートで、香りから楽しみます。角のないすがすがしい梅の香りが爽やかで、奥には日本酒やブランデーの上品なアロマも。濃厚タイプの梅酒とは違ってとろみはあまりなく、テクスチャーも非常にピュアな印象です。

↑ブレンドのおおよその比率は、梅酒が50%、日本酒が20%、ブランデーが10%。(残りは水で構成されている)

 

ひと口含むと、一般的な梅酒よりもツヤのある華やかな味わいが広がります。タッチはまろやかかつほどよくスイートで、酸味もやさしめ。十分なコクがありながらも19度というアルコールを感じさせない飲みやすさがあり、スゥーッと入ってきます。

 

試飲会では、新田さんがオススメの料理も教えてくれました。簡単なもので挙げるなら、「きゅうりの梅⾁和え」とのこと。梅×梅酸味と⽢味で相性抜群とのことで、さっそく筆者も作ってみると、確かに一体感が抜群でナイスペアリング。

↑きゅうりを乱切りにして、梅⾁と合えた簡単おつまみ。アクセントに⽩ゴマや塩昆布を混ぜるほか、ごま油をかけて中華テイストにするのもオススメとか

 

次はオンザロックで。ポイントは、お店で売っているような溶けにくくて大きな氷を使うこと。なるべく加水されないようにしつつ、⼀度に注ぐ量も控えめにすると、「梅ブランデー雫」特有の香りやコクをより楽しめると新田さんは言います。

↑ワイングラスのように、縁がすぼまったタイプを使うのも香りを楽しむコツです

 

温度が下がることで、味がキュッっと引き締まってシャープさがアップ。後味もいっそうすっきりして、これも実においしいです。ペアリング例としては、ベースに日本酒が使われていることもあって和食がよく合うとか。特にオススメなのは豆腐料理で、揚げ出し⾖腐も好相性とのことです。こちらも実際に作ってみました。

↑揚げ出し豆腐とおぼろ豆腐の冷奴でペアリング。ねぎ、しょうが、大葉などの薬味をのせたら、だし醤油でさっぱりと。「梅ブランデー雫」の甘酸っぱさが、まろやかな豆腐とマッチします

 

そして新田さんが「⽂句なしのイチオシ!」ということで最後に教えてくれたのが、「ヨーグルトの雫かけ」という大人のデザート。無糖や低糖のヨーグルトに「梅ブランデー雫」をかけるだけで完成する簡単なレシピです。

↑ヨーグルトの酸味にブランデー特有の華やかなコクと⽢さがマッチ。個人的に、ヨーグルトは硬めなテクスチャーのほうがより合うと感じました

 

日本酒が醸し出すキレのある吟醸香、ブランデーの華やかなボディ感、梅酒の甘酸っぱい芳しさ。これらがいいとこ取りとなった「梅ブランデー雫」は、晩酌にもチルタイムにも楽しめる汎用性の高い万能酒だと思いました。販売先は、神戸ワイナリーのオンラインショップをはじめ、神戸の百貨店や量販店など。化粧箱付きで贈り物にも最適なので、ぜひお試しを。

 

酒好きOLが千葉の酒蔵で知った「一生楽しめる」お酒選び/ほろ酔い道草学概論 第十一話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがあります。その土地ならではのお酒を飲むことも、そんな魅力のひとつ。本連載「ほろ酔い道草学概論」は、お酒好きOLコンビがお酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

【前話を画像でおさらい】画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。

●GetNaavi web本サイトで前回を読む

●第一話はこちら/連載一覧はこちら

 

炎天下が続く夏、現実では自由にお出かけしにくい状況ではありますが、今回千穂と正宗は夏に行きたい「あの場所」へお出かけ! しかし、あいにくのコンデションのようですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今夜の一献】

●芋焼酎 あずま小町

 

 

千葉県香取郡にある多古町の農産物「紅あずま」を100%使用。黒麹で仕込んだソフトな飲み口と芋の甘い香りが心地よい「千産千消」の芋焼酎です。作中で千穂も言っていますが、飲んだ後にまろやかな芋の風味が味わえます。

 

和蔵酒造について

江戸時代より千葉で酒蔵を営んできた老舗の蔵元です。清酒の「鹿野山」でも有名ですね。君津市と富津市に1つずつ蔵があり、今回訪れたのは君津の貞元蔵。富津市の蔵は、日本酒を製造する竹岡蔵という蔵です。

 

貞元蔵では、関東では珍しく焼酎を醸していて和蔵酒造でしか生み出せないまさに「千産千消」の一本を作り続けています。また貞元蔵は、酒菜館という直営ショップも営んでいます。和蔵酒造の焼酎・日本酒に合う千葉の名産がたくさん揃っているのも見どころです。作中で語られていた通り、お酒選びの楽しみを教えてくれる丁寧な蔵元見学も魅力。千穂と正宗を案内してくれた女子は本作オリジナルキャラですが、蔵元見学では同じメッセージを楽しく伝えてくれるでしょう。外出しにくい日々が続きますが、落ち着いたらぜひ訪れてみてください。

 

 

【連載一覧はこちら】

ほろ酔い道草学概論

2万7500円の日本酒が2日で完売!? 逆境のなか、新参ブランドが値上げしても売れるワケ

数ある日本酒のなかでも、ビジョン、コンセプト、立ち位置、販売網、製法、価格などすべてにおいてトガリまくっているブランドが、“旧”「SAKE100」(サケハンドレッド)です。“旧”というのは、今夏「SAKE HUNDRED」に生まれ変わったからです。

↑生まれ変わった「SAKE HUNDRED」のラインナップ。左から「天彩/AMAIRO」「百光/BYAKKO」「思凛/SHIRIN」「現外/GENGAI」

 

この刷新は表記だけではなく、全面的なリブランディング。ブランド自体は絶好調であるものの、さらなる高みを目指すための進化なのだとか。その真意は? そして日本酒の未来は? ラインナップに加わった新作の情報も踏まえ、「SAKE HUNDRED」を展開する株式会社Clearの代表取締役CEOの生駒龍史さんに、その想いを聞きました。

 

「比較対象のない絶対的な価値」=「ラグジュアリー」というステージを目指す

↑「SAKE HUNDRED」を展開する株式会社Clear 代表取締役CEOの生駒龍史さん。同社は国内有数の日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」(サケタイムズ)の運営元でもあります

 

今回のリブランディングにより、ブランド表記のほかロゴマークやサイトが刷新され、商品に関しても、ラベルデザイン、ラインナップ、販売価格など多くが刷新されました。その理由や狙いはどこにあるのでしょうか?

 

「『SAKE HUNDRED』は当社の“日本酒の可能性に挑戦し、未知の市場を切り拓く”というミッションのもと2018年7月に立ち上げたのが始まりです。当初は、高品質で高付加価値な日本酒ブランドを作り、未知なる市場を切り拓くことで、業界課題である“日本酒が安すぎる”(労力が大きい割に利益が低く、生産者が報われない)という問題を解決したいと思っていました。いまもベースにある理念は変わっていません。ただ、開発や販売を重ねて多くの方と交流するなかで、私たちが目指すステージはもっと高いということに気付いたのです。そのステージが、ラグジュアリーという世界観です」(生駒さん)

 

ラグジュアリーとは、「ほかに比較対象がない絶対的な価値をもつプロダクト」だと生駒さんは言います。

 

「例えるなら、『プレミアム』は機能訴求で比較対象がほかにあります。一方の『ラグジュアリー』は機能的価値に加え情緒的価値の訴求であり、比較対象がありません。どちらもこだわった造りで、おいしいのも当たり前。でもラグジュアリーブランドはそこに、『人生の大切なひとときに飲んで気持ちが彩られた』『かけがえない人にプレゼントして自分も相手も心が満たされた』といった、情緒的な価値があるんです」(生駒さん)

↑名称は、呼び方こそ「サケハンドレッド」で変わらないものの、算数字だった”100”をアルファベットの「HUNDRED」へ変更。ただし「H」をコラージュしたロゴをよく見ると、1・0・0の数字が施されているのがわかります

 

ブランドの世界観を見直し、「本来あるべき価格」に改定

「お客様と触れるものは、すべて情緒的価値を提供するうえでラグジュアリーとして適切でなければなりません。そこで、ブランドの世界観を見直しました。例えば、ブランドステートメントは『100年誇れる1本を。』から『そのすべてが満ちていく。』へと再定義。100年誇れるという考え方はいまも大切にしていますが、これはものづくり視点での価値観です。お客様を見据えた言葉を据えるべきだと考え、『そのすべてが満ちていく。』としました」(生駒さん)

 

リブランディングのなかでもインパクトが大きいのが、価格の再定義。精米歩合18%と圧倒的に高精白な米で醸された「百光/BYAKKO」は、1万6800円から2万7500円へ。まるでデザートのように濃密な甘味が特徴の「天彩/AMAIRO」は、7300円から1万5400円へ。20年を超える熟成を経た「現外/GENGAI」は、15万円から16万5000円へ。この理由も、ラグジュアリーブランドとしての価値を考えたうえでの改定だったとか。

↑フラッグシップの「百光/BYAKKO」は発売のたびにすぐ売り切れてしまう一本。人気の高さは価格改定しても落ちるどころか上がるばかりで、今回は数百本が2日で完売しました

 

「商品価値は、金額に影響されるという側面があります。また『SAKE HUNDRED』のクオリティは世界の高級ワインにも負けない自信がありますが、いざ並んだときに金額が安いことで下に見られたら悔しいじゃないですか。そういった観点からも、本来あるべき価格に設定させていただきました」(生駒さん)

 

世界で勝つために樽貯蔵に挑戦

なお、「SAKE HUNDRED」は、今年から海外に進出します。その船出にもふさわしい一本として、新たに加わったのが「思凛/SHIRIN」です。志の高さから、新作の完成までかなりの時間を要するという同ブランドにあって、こちらもやっとリリースにこぎつけた力作とのこと。その特徴は?

 

「ひとつ挙げるなら樽貯蔵です。ワインやウイスキーなど、海外には熟成させるお酒が根付いていますから、樽で貯蔵した日本酒というコンセプトは文化的に理解されやすいと考えました。選択肢のひとつとしてポートフォリオにあったら面白いですし、ブランドとしても挑戦する価値があると考えています」(生駒さん)

↑「思凛/SHIRIN」4万1800円。精米歩合18%でクリアな味わいに仕上げた原酒を、ジャパニーズオーク(ミズナラ)の樽で貯蔵した意欲作です

 

手掛けたのは、「百光/BYAKKO」の作り手とも通じる、高精白の米を使うのが得意な技術のある蔵元(奥羽自慢)。蔵元を選ぶにあたっては、清酒をオーク樽で貯蔵するという難しく珍しい試みにも前向きに取り組む志の高さも決め手だったとか。

 

「でも、やっぱり難儀でしたね(笑)。清酒の造りはもちろん、樽の種類や貯蔵期間をどうするかなど、手探りのなかで超えるべきハードルが山積みで。何度も試行錯誤を重ね、ミズナラの樽で9日間寝かせるのがベストという答えにたどり着きました」(生駒さん)

 

華やかさを演出する香りを求め、ミズナラの樽に行きついた

ちなみに、今回、貯蔵用には鏡開きなどで知られる杉樽を使わず、ミズナラの樽を使用した理由は、ワインやウイスキーのような手法を想定していたため。味をイメージしたときに、樽に用いる木は杉ではなかったのだそう。

 

「杉にも良さはありますが、香りが強くて味への影響も強いんです。目指したのは酒質の良さを際立たせながら寄り添うアロマ。洋酒のように、内側を焦がした樽でありながら、華やかさを演出する繊細な香りがほしかったんです。面白かったのは、洋酒で一般的なフレンチオークではなじみが悪く、日本のミズナラがベストだったということ。ぜひ味わってみてください」(生駒さん)

 

では、実際に飲んでみましょう。まず酒質が圧倒的にきれい。華やかなで透明感のある米のうまみに、ミズナラ樽のビターなニュアンスや、バニラを思わせる甘味がほんのり感じられます。気高い彫刻のような美しいボディを感じる、きわめてエレガントな味わいでした。

 

「みずみずしい巨峰のような甘味と、スパイシーなニュアンスをはらんだコク。良い意味で樽に左右されない、凛とした骨格のなかにあるしっとりとした香り。浅すぎず深すぎない、絶妙なバランスに仕上げることが一番難しかったポイントですね。料理に合わせるなら、脂がのった牛肉の霜降りや赤身、マグロなどもマッチすると思います」(生駒さん)

↑樽貯蔵によって、色味はほんのり色づいています。ワイングラスに抱かれた香りが優雅に舞い上がり、鼻孔をやさしくくすぐります

 

ネットで置換できない「情緒的な価値」が受け入れられた

「SAKETIMES」の運営元であり、業界事情にも精通する生駒さん。これからの日本酒はどうなっていくのか、「SAKE HUNDRED」の展望とともに聞いてみました。

 

「日本酒の蔵元は約1400あるものの、ひと月に3社が廃業するダウントレンドです。そのなかで今年は五輪やそれに伴うインバウンドなどが追い風となるはずだったので、『盛り返すぞ!』という空気でしたが、(コロナ禍で)打ち砕かれてしまいました。10年連続で伸びていた輸出も同様です。ただ、『SAKE HUNDRED』はそれでも成長しています」(生駒さん)

↑「SAKE HUNDRED」の勢いを知る目安が、売り上げの伸び率。例えば2020年6月は同年3月に比べて16倍だったと生駒氏は語ります

 

その理由は、「多くのモノやサービスがオンラインに取って代わられるなかで、置換できないもののひとつが『情緒的な価値』だからではないか」と生駒さん。不安や断絶によって失われがちな心の彩りを豊かにする力が「SAKE HUNDRED」にあると、自身も改めて気付かされたと言います。

 

「お客様のアンケートを見ると、購入動機の1位は味わいへの期待なのですが、2位はコンセプトに対する共感だったんです。うれしかったとともに、実は驚きもありました。いわばブランドの哲学を共有することが、お客様の価値につながったのだ、と。そしてこれは、応援消費に近い感情なのではないかと思います」(生駒さん)

 

日本酒の未来を作るためにも、ズバ抜けて成功してみせる

日本酒離れというダウントレンドに加え、アルコール離れに人口減少と、日本酒の置かれる状況がよりシビアになっている現在。だからこそ、ますます道を切り拓いていかなければならないと考えたといいます。

 

「極端に言えば、『店に行けなくて飲む機会が減ったとしても、だからこそ選ぶならこれ!』というブランドにならなければいけないと思います。そうなるには、おいしさは当然のこと、付加価値の最大化が大切じゃないかなと。おこがましいかもしれませんが、業界に対する危機感も、生産者さんも含めて市場を盛り上げていく使命感もあります。自社の成長は大前提で、産業に影響を与えられるぐらいでないと日本酒の未来は作れません。ズバ抜けて成功する勢いで、これからもいっそう攻めていきますよ!」(生駒さん)

↑「SAKE HUNDRED」ブランドアドバイザーの齋藤峰明さん

 

そんな「SAKE HUNDRED」にまた一人、キーパーソンが加わりました。それが、今年の2月からブランドアドバイザーに就任した齋藤峰明(さいとう・みねあき)さん。齋藤さんはエルメスジャポン社長を経て、外国人で初めてエルメスのフランス本社副社長を務めた、ラグジュアリーブランドの大家です。これから生駒さんとのタッグで、より面白い世界をみせてくれることでしょう。今後の「SAKE HUNDRED」、ますます目が離せませんね!

 

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飲食店への恩返しです! 「獺祭」が街飲みを応援する「特別な日本酒」をリリース

昨今の日本酒トレンドを語るうえで外せない銘柄のひとつが、山口県・旭酒造の「獺祭」(だっさい)です。特に海外展開に関してはパイオニアといえるブランドで、世界のSAKEブームをけん引する一本といっても過言ではありません。

 

そんな「獺祭」が、国内向けに画期的な取り組みを発表しました。それは特別に醸した夏酒を、飲食店限定で提供するというもの。ブランドの概要から企画の詳細、味のレポートなどをお伝えしたいと思います。

↑全国の飲食店限定で提供される「獺祭 純米大吟醸 夏仕込みしぼりたて」。価格はお店ごとに変わります。発表会の会場となった銀座の「夢酒みずき」ではグラス一杯770円で提供されています

 

山田錦を使った純米大吟醸「獺祭」のみを醸す

まずは改めて「獺祭」とはどんな日本酒なのか、という解説から。蔵元の旭酒造で最も特徴的なのは、醸す銘柄は「獺祭」のみで、すべての日本酒が「純米大吟醸酒」ということ。一般的に旭酒造ほど規模の大きい蔵元は、様々な銘柄をもち、醸造アルコールを添加するタイプや、精米歩合(米を磨く割合)の低いタイプなど多彩なバリエーションで商品を展開します。しかし、「獺祭」はあえて純米酒(米、米麹、水だけで造った酒)かつ大吟醸(精米歩合50%以下の米を使い、低温でじっくりと時間をかけて発酵させる酒)に狙いを絞って造っているということです。

↑蔵を代表する一本が「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」(5390円/720ml)。精米歩合23%(米の77%を削った状態)で、華やかな上立ち香と口に含んだときのはちみつのような甘み、きれいなキレと長い余韻が特徴です

 

使用する酒米が「山田錦」のみということもポイントです。この「山田錦」は粒と心白(米の芯となる白い部分)が大きくて精米しやすく、吸水率が高くてこうじ菌が活性化しやすいうえ、雑味の元となるタンパク質が少ない、といった日本酒造りに適した要素をたくさん持っていることから“酒米の王様”と呼ばれています。この山田錦を使うことは、シンプルに良質な酒を造るという「獺祭」のブランドコンセプトにも通じるものです。

↑コロナ禍で酒米の生産者である農家さんの出荷にも影響をおよぼしており、その応援のために「獺祭の酒米 山田錦」375円/450gも発売中。こちらは一般発売されていて、筆者は「いまでや銀座」で購入

 

街が活気を取り戻すために特別な酒で応援したい

そんな「獺祭」が、「飲食店を盛り上げたい」という想いで特別に醸したのが新作の限定酒「獺祭 純米大吟醸 夏仕込みしぼりたて」です。発表会では、旭酒造の桜井一宏社長がアツい心の内を語りました。

↑旭酒造の桜井一宏社長

 

「現在、街を歩いてみると活気があまりない状況だと思います。これは、皆様一人ひとりが距離を取るなどして頑張っていらっしゃるからだということはわかります。ただ、ちょっと寂しいなと。そんな街のにぎわいを応援したいと思ったのが開発のきっかけです。また、私どもとしてはやっぱり飲食店さんに恩返しをしたい。活気といってもどんちゃん騒ぐのではなく、皆様が感染しないように努力をしたうえで一歩を踏み出し、お店で元気や笑顔を共有していただけたら。そんなお手伝いをしたいと思っています」(桜井社長)

 

お酒の味わいのコンセプトは、夏らしい爽快な味わいを、搾りたてて届けるというもの。しかも作り置きはしない完全受注生産で、とにかく鮮度にこだわったチャレンジングな生酒です。

↑受注と出荷のスケジュール例。毎週木曜日にその週の受注を締め切り、翌週の火曜日に酒販店へ出荷。東京であれば翌日水曜日の午後には届く流れとのことです。最終出荷は9月22日を予定

 

味わいはフレッシュで甘やか。ジューシーでボディも十分

一般的に、日本酒は火入れを行うことで酵母のはたらき(発酵)を止め、長期間安定保存できるようにしています。しかし、「獺祭 純米大吟醸 夏仕込みしぼりたて」は、火入れ(加熱)をせずに造った生酒。フレッシュながら味の劣化が早いという特性があります。

 

「もぎたての果物やとれたての野菜のように、一番新鮮な日本酒をお届けしたいと思いました。ふだんは蔵人しか飲めない、フレッシュなおいしさです。希少な味わいを体験することで元気に、笑顔になっていただき、そして人生のゆとりを感じていただきたいですね」(桜井社長)

↑フルーティな香味が魅力的な「獺祭」は、ワイングラスで飲むのがオススメ

 

さて、実際にそのお味はどのようなものなのか? さっそく頂いてみると、精米歩合45%の純米大吟醸だけあって、果実味あふれる華やかな香りが印象的。味わいはジューシーで甘やか。フレッシュかつ米のうまみもしっかりあって、生酒ならではのエネルギッシュな生命力を感じます。

↑発表会ではペアリングも体験

 

試食した料理は、どれも夏らしい和食。はもの白焼きと、山口・下関産のとらふぐを使った冷やし雑炊です。どちらも、魚介のうまみが前面に出た力強い味で、生酒のみずみずしくエネルギッシュな味わいと調和していました。

 

桜井社長にほかのペアリング例を聞くと、アスパラガスをはじめとした夏野菜のほか、しょうゆが効いた料理や照り焼き、煮込みなどにも合うそうです。なお、今回お酒を提供する店は和食だけでなくイタリアンやビストロなどもあり、そのようなお店では「白ワインのような楽しみ方で味わってください」とのことでした。

 

筆者が発表会に参加して強く感じたのは、「やっぱりプロが作ったできたての料理は超ウマい!」ということ。そして、「おいしい料理と酒は互いに引き立て合う」ということです。みなさんもぜひ、その魅力を体感するために、公式サイトの「飲める店一覧」を参考にして、お店を訪れてみてください!

公式サイトには、「飲める店一覧」も掲載されています。対象は全国なのでぜひチェックを

 

なお、本企画を後押しする取り組みとして、9月30日までの期間にSNSで「獺祭」が毎週当たるキャンペーンも展開中。「獺祭 純米大吟醸 夏仕込みしぼりたて」をお店で飲み、写真に「#街飲み獺祭」を付けてSNSに投稿すると「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」の四合瓶が毎週23名に当たるというものです。こちらもぜひチェックしてみてください!

 

【今回訪れたお店】

夢酒みずき

住所:東京都中央区銀座6-7-6 ラペビルB1

アクセス:東京メトロ「銀座駅」B5出口徒歩3分

営業時間:(当面の間、営業時間を変更)月~金17:00~22:00(フードL.O.21:00/ドリンクL.O.21:30)、土16:00~22:00(フードL.O.21:00/ドリンクL.O.21:30)
定休日:日祝

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

飲兵衛5人が断言 !「ふなぐちに合う缶つま」ベストマッチはコレだ!

菊水酒造が日本酒を楽しむ「コト」づくりの一環として開催しているイベント「ふなぐちに合う缶つま(※1)選手権」に、酒好きの編集部員がチャレンジ! 全70種ある缶つまのなかから缶詰博士こと黒川勇人氏が厳選した10種類を食べ比べ、これぞ「ふなぐち」に合うと思う商品をレコメンドします!

※:国分グループ本社が発売するおつまみ缶詰No.1として知られる缶詰シリーズ

 

【菊水酒造について詳しくはコチラ

 

菊水酒造
ふなぐち菊水一番しぼり
実売価格318円(200㎖缶)

1972年に日本初(※)の缶入り生原酒として登場したロングセラー。「コンビニ最強酒」の異名を持ち、累計出荷数は3億本を誇る。果実のようなフレッシュな香りとコクのあるしっかりとした旨みが織りなす豊かな味わい。

※:1972年11月、日本で初めて生原酒缶を商品化/(株)コミュニケーション科学研究所調べ(2010年1月)

 

ふなぐちに合う缶つま選手権」って?

缶入り清酒ナンバーワン(※1)の「ふなぐち菊水一番しぼり」と、おつまみ缶詰ナンバーワン(※2)の「缶つま」がタッグを組み開催中のキャンペーン。一般投票によりふなぐちに最も合う「缶つま」を決定する。

※1:生酒・生貯蔵酒出荷量が日本一/2019年2月「酒類統計月報」日刊経済通信社調べ ※2:富士経済(2019年 食品マーケティング便覧)<おつまみ缶詰 2017年>調べ

 

【サイトはコチラをCHECK!】

 

 

缶詰のプロが教える! ふなぐちと缶つまの合わせ方


缶詰博士・黒川勇人さん

数千種類以上の缶詰を食してきた世界一の缶詰ツウ。著書に「旬缶クッキング(ビーナイス刊)」などがある。

 

1.濃醇な味わいに負けないパンチのある味を選ぶ

「ふなぐちは甘味や酸味、お米本来の品の良い苦味など、各味わいがほかの清酒よりも強く旨みが濃いため、パンチのある味の缶詰にピッタリ!」(黒川さん)

2.強めの香りを重ね心地良い余韻を創出

「炭火焼きによる炭の香りや、香ばしい燻製の香りなど香りの強いものがオススメ。ふなぐちの個性に負けず、両者の心地良い余韻を楽しめます」(黒川さん)

3.高いアルコール度数に缶詰の油分がよく合う

「油分とお酒の相性は抜群。特にふなぐちはアルコール度数が19度と日本酒のなかでも高めなので、油分の多い缶詰によく合いますよ」(黒川さん)

 

GetNavi編集部が選ぶマイベストマッチ缶つまはコレだ!

■GetNavi編集長 川内一史

乾杯はほぼビールだが、飲み会の中盤から日本酒に移行するのが定番コース。冷やがおいしい日本酒を好む。

 

【マイベストマッチ 缶つま】

ぶりの脂と甘じょっぱさがパンチのあるふなぐちと調和

国分グループ本社
缶つま 九州産 ぶりあら炊き
432円

九州産の「うまかぶり」の希少なアラをじっくり炊き込み、骨まで柔らかく仕上げている。「ぶりの濃厚な脂と甘じょっぱい濃いめの味付けが、ふなぐちのパンチの効いた味わいに負けず見事に調和しています」(川内)

 

【これもマッチ!】

国分グループ本社
缶つま Smoke うずら卵
324円

 

 

■GetNavi web編集長 山田佑樹

オンライン飲み会時代になり、旨い酒をゆっくり味わうスタイルにチェンジ。各地のお取り寄せと一緒に楽しんでいる。

 

【マイベストマッチ 缶つま】

肉の旨みとふなぐちの味わいがガツンと効いたマリアージュ

国分グループ本社
缶つま コンビーフ ユッケ風
486円

ごま油と豆板醤を効かせたユッケ風のコンビーフ。「塩が効いた肉の旨みがガツン、そこにふなぐちの濃厚な味わいがガツンと重なり、『ガツン×ガツン』のマリアージュがたまらない! 最高に幸せな晩酌です」(山田)

 

【これもマッチ!】

国分グループ本社
缶つま 牛すじこんにゃく
486円

 

■GetNavi編集部・グルメ担当 鈴木翔子

バーで働いていたこともあり、旅行に行くととりあえず良い雰囲気の酒場を探すのがクセ。和酒洋酒どっちも好き。

 

【マイベストマッチ 缶つま】

脂の甘味にふなぐちのコクが重なり心地良い余韻が広がる

国分グループ本社
缶つま 北海道産 鶏ぼんじり 直火焼
540円

ぼんじりを直火で焼き上げ醤油だれで味付け。味わい深い脂と香ばしい風味が特徴だ。「ぼんじりの脂の甘味とふなぐちのコクが重なり合って、心地よい余韻に浸れる組み合わせ。炭火の香ばしい風味も合う!」(鈴木)

 

【これもマッチ!】

国分グループ本社
缶つま 宮崎県産 霧島黒豚角煮
864円

 

■GetNavi web編集部 小林史於

唎酒師の資格を持つGetNavi webの家電&日本酒担当。和食居酒屋で日本酒の仕入れを担当していたこともある。

 

【マイベストマッチ 缶つま】

鶏の引き締まった身がふなぐちの旨みを引き立てる

国分グループ本社
缶つま 鹿児島県産 赤鶏さつま炭火焼
486円

鹿児島の銘柄鶏「赤鶏さつま」を備長炭で焼き上げた本格派。「引き締まった鶏肉にふなぐちのジューシーな旨みが絡み、旨さを引き立て合うコンビ。おこげの香ばしさとフルーティな風味も相性抜群です!」(小林)

 

【これもマッチ!】

国分グループ本社
缶つま 北海道・噴火湾産 ほたて燻製油漬け
486円

 

■GetNavi web編集部 和田史子

週7で飲酒、好きな酒は日本酒、スパークリングワイン、ハイボールと変遷して、最近はもっぱらビール党。

 

【マイベストマッチ 缶つま】

ふなぐちの甘味にハバネロの辛味が良い刺激

国分グループ本社
缶つま ハバネロサーディン
378円

国産の良質ないわしにハバネロソースを効かせた、スパイシーな味わい。「そもそもオイルサーディン自体がつまみとして最高! 酸味はありつつも甘味があるふなぐちにハバネロの辛味が良いアクセントです」(和田)

 

【これもマッチ!】

国分グループ本社
缶つま 広島県産 かき薫製油漬け
648円

 

【菊水酒造について詳しくはコチラ

革新的な酒造りを続ける菊水酒造の社長が語る――「いい酒」とは「面白い酒」である。

菊水酒造は、“コンビニ最強酒”と名高い生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」をはじめ、個性あふれる商品を送り出す革新的蔵元。伝統を守りながらも常識にとらわれず、挑戦し続ける開拓者精神に迫りました。

 

【菊水酒造について詳しくはコチラ

 

菊水酒造 代表取締役社長・髙澤大介さん/菊水酒造の5代目として生まれ、大学卒業後に百貨店勤務を経て1985年に蔵へ戻り入社。2001年に当主となる

 

“面白い酒”には魅力的なコトが満載されている

日本初の缶入り生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」が誕生したのは1972年。同年には杜氏制度を廃止し、チーム制による酒造りと近代化した設備で安定供給を推進。

 

90年代には海外展開もスタート。地酒が活況だった時代から安住を求めず挑戦し続けるのが菊水酒造です。そんな同社が“モノ”造りともに大切にしているのが、暮らしを豊かにする“コト”造り。その理由を髙澤社長に聞いてみました。

 

「いいモノ造りは我々にとって一丁目一番地の使命ですが、それはどこも同じ。結果、良質な酒が次々に生まれ、お客様の選択肢は増えています。ならば、ただいいモノを造っただけでは選ばれません。お客様はどうしたらより愉しく飲めるのか、“コト”も求めているからです」(高澤社長)

 

そのニーズに気が付いたのは、全国的に日本酒が売れなくなっていた90年代後半だといいます。

 

「先代が集めた60年代のクルマのカタログを見つけたんです。当時はクルマを持つことが夢だった時代。性能や出せるスピードなど、モノとしてのクルマの魅力が書かれていました。一方、マイカーが普及した90年代のカタログで強調されていたのは、そのクルマを買うとどのような暮らしを得られるか。つまりコトの提案です。それを見てハッとしましたね。あぁ、日本酒にも言えることだなと」(高澤社長)

 

それ以降菊水酒造では、日本酒文化を伝える酒器や文献を集めた「菊水日本酒文化研究所」を設立したり、スナック貸し切りイベントを開催したり、ボトルデザインを公募したり……愉しい“コト”を生み出し続けています。海外イベントでは、「ふなぐち」の缶を模した着ぐるみを社長自ら着用し、外国人を笑わせたなんてエピソードまで。そんな社長にとって“いい酒”とは。

 

「“面白い酒”ですね。『この酒は面白いね、飲んでいて愉しくなる酒だね』と感じていただくことが私の夢。“面白い酒”には魅力的なコトが満載されていますから」(高澤社長)

 

菊水酒造の名酒をCHECK

3億本以上を出荷! 日本酒界の発明品

菊水酒造

ふなぐち 菊水一しぼり
実売価格318円(200㎖缶)

日本初の缶入り生原酒。精米歩合70%の本醸造で、新潟県産米を100%使用しています。濃醇旨口、フルーティでフレッシュな味わいが支持され、累計出荷数は3億本以上。200㎖缶のほか500㎖缶も用意しています。

 

炭酸入りで香りや甘味がより豊かに!

菊水酒造

ふなぐち菊水一番しぼり  スパークリング
実売価格438円(270㎖)

2019年に登場した、定番「ふなぐち」の発泡タイプ。炭酸を入れたことで特有の香りと甘味がより強く感じられるうえ、きめ細かい泡の爽快感によって飲み口もスムーズに。オンザロックもオススメ。

 

食の楽しみを広げる爽やかな辛口

菊水酒造

無冠帝
実売価格1408円(720㎖)

1983年に誕生し、2018年にリニューアル。「生詰」製法による、フレッシュでジューシーな香りとうまみが特徴だ。冴えたキレとほど良い旨みがどんな食事にも合い、料理のおいしさを引き出してくれる。

 

幻の米を極限まで磨き上げた贅沢酒

菊水酒造

純米大吟醸 蔵光
1万1000円(750㎖)

幻の酒造好適米「菊水」を精米歩合23%まで磨き上げ、華やかな果実味と豊かなボディが際立つ贅沢な一本。「無冠帝」とともに「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」の最高金賞を受賞した。

 

【菊水酒造の商品についてはコチラ

 

菊水酒造のこだわり①うまさを追求する「モノ」造り

使う米は自社で育てる「菊水」を筆頭にすべて新潟県産。やわらかな地元の水と寒暖差豊かな気候を生かし、大地の恵みをいかに品質の良いお酒として引き出すかに重きを置き、チームワーク第一で造っています。

「二王子蔵」は大型仕込み用の施設。市販酒の大半はこの蔵で造られます。すべての原料米はどの酒のどのロットにいつ使用されたのか履歴をたどれる体制で管理されています。

 

蔵のすぐそばを流れる加治川。周辺には豊富な地下水脈があり、雪解け水を含む良質な軟水が菊水酒造の酒造りを支えています。

 

小型仕込み用の「節五郎蔵」。米を研ぐところから搾るところまですべて手作業で行い、技術を磨きながら伝統を継承しています。

 

日本酒のなかで最もデリケートで管理の難しい生酒を作っているからこそ、地酒蔵とは思えないレベルで品質・衛生管理を徹底。全商品クリーンルーム内で充填しています。

 

 

菊水酒造のこだわり②一杯を面白くする「コト」造り

菊水日本酒文化研究所は、人と日本酒の関わり方にフォーカスして、それにまつわる資料を3万点以上収蔵・展示しています。古い資料から現代に合う日本酒の愉しみ方を探り、そしてそれを発信する役割を担っているのです。研究所を一般開放しているだけでなくイベントなども主催し、日本酒の面白さ、新しい「コト」をお届けしています。

緑豊かな森を抜けると菊水日本酒文化研究所が現れます。

 

展示コーナーには酒席を愉しくする酒器や日本酒文化を伝える文献が。

 

 

研究所に収蔵されている酒器のなかでも特に人気なのが「うぐいす徳利」。酒を注ぐたびに「ピー」と愛らしい音がなります。外側に鬼、内側にお多福をあしらい「手の内に福を収めて、鬼は外」を意味する「鬼面杯」(下)や「水入らず」という言葉の語源になった説もある器「杯洗」(上)も研究所に展示されています。

 

日本酒関連グッズも並ぶ本社敷地内にある売店。搾りたてのフレッシュな生原酒をサーバーから直接瓶に詰めて販売するサービスも。

 

節五郎蔵の裏手に自社の水田を持ち、酒米である「菊水」を育てています。

 

地域住民とともに手作業で行う田植えは恒例行事です(※:今年は新型コロナウイルスの影響により一般参加なしで行いました)。

 

蔵の敷地内にある菊水庭園も見所のひとつ(見学可)。京都・銀閣寺の出入り庭師としても知られる庭匠・田中泰阿弥が更地から作庭しました。

 

【菊水酒造について詳しくはコチラ

「日本酒に合う料理」にはそんなセオリーが…! 体験イベントで知る「ペアリング」の喜び

8月4日、二子玉川の蔦屋家電2階のダイニングにて、日本酒ファンに向けて、新たな体験イベントが開催されました。その名も「吟醸酒と調理家電レシピの『完璧なペアリング』体験会」。麻布十番で人気のダイニング日本酒バー『赤星とくまがい』のオーナー、赤星慶太さんを講師に招いた体験イベントで、日本酒の吟醸酒と、これにピッタリ合う3品の料理を楽しむ体験会です。提供される料理の一部はパナソニックの最新調理家電「IHデイリーホットプレート」で調理されます。

 

幅広い年齢層の約30名がイベントに参加

体験会のテーマは、イベント名の通り、「吟醸酒と料理のペアリング」。酒好き、グルメ好きにとっては想像するだけで微笑んでしまうイベントです。しかも、コアな日本酒ファンに評価が高い「赤星とくまがい」が監修するとなれば、これはもう、行かねばなるまい! というわけで、歴史に残る猛暑の中、汗を拭きつつ駆け付けました。

 

イベントの会場は二子玉川の蔦屋家電。本棚や観葉植物が印象的に配置されたスタイリッシュな店内を通って、2階のダイニングへ。今回は1日2回の開催で、各30人ずつが参加します。開始時刻が近づくにつれて、30代くらいから60代くらいまで、幅広い年齢層が集まってきました。参加者は女性がやや多いようですね。

 

調理にはパナソニックの「IHデイリーホットプレート」を使用

また、会場が蔦屋家電ということもあって、体験会で提供する料理は、最新の調理家電「パナソニック IHデイリーホットプレート KZ-CX1」(8月1日発売・実売価格5万6520円)で調理されました。こちらは熱源が二つあり、プレートを外すとIH調理器としても使えるので、その名の通りテーブルの上に置いて毎日でも使うことができるといいます。

↑見た目もスリムなパナソニックのIHデイリーホットプレート

 

さらに、本イベントでは新しいブランド「双円」(そうえん)の酒器を使用。「双円」は気鋭のプロダクトデザイナー、鈴木 健氏が主導して立ち上げたもので、同じ販路、同じブランディングを異業種・異素材でシェアするという画期的な取り組みです。本イベントでは、千葉県のガラスメーカーSghr(スガハラ)のタンブラーが使用されました。

↑参加者が手にしているのが、「双円」のタンブラー。イベント終了後はお持ち帰り頂きました

 

アメリカで20年、日本酒を紹介してきた赤星慶太さんがナビゲート

さて、いよいよイベントのメイン、「無冠帝」と料理のペアリングのコーナーがスタート。日本酒コーディネーター兼ライターの馬渕信彦さんを進行役に、麻布十番の「赤星とくまがい」のオーナー、赤星慶太さんが日本酒と料理のペアリングについて解説します。

↑赤星慶太さん

 

ここで少々、ナビゲーターの赤星さんの紹介を。赤星さんは1998年、地酒のエクスポーターとして渡米。2009年に『Sake Bar KIRAKUYA』をプロデュースし、後に3店舗の酒ソムリエを歴任します。赤星さんは渡米中、ある女性から「この美味しい日本酒と料理に出会わなければ、私は一生、ジャンクフードと炭酸飲料で過ごしていたと思う。本当にありがとう」と涙ながらに感謝されたことが強く印象に残っているそう。以降もこの経験をモチベーションとして、日本酒と料理のペアリングの可能性を探り続け、2015年4月、自らのお店をオープンするため帰国。NYで出会ったシェフの熊谷道弘さんと『赤星とくまがい』を麻布十番にオープンしました。

 

「アメリカで20年、お酒を売る仕事をしてきて、飲み慣れていない人にお酒を伝えるために、料理とのペアリングを考えるようになりました。私が考えるペアリングの基本は『調味料で考えること』。たとえば、刺身にどの日本酒を合わせたらよいかとよく聞かれますが、醤油と合わせればいいんです」(赤星さん)

 

なるほど。お酒は食材ではなく、調味料で合わせるというのは初耳ですね。さて、「そろそろ美味しい匂いがしてきました」との馬渕さんの言葉の通り、ホットプレートで肉が焼けるいい匂いが漂ってきましたよ。

↑IHデイリーホットプレートで調理する「赤星とくまがい」のシェフ、熊谷道弘氏

 

高い志を秘めた菊水酒造の吟醸酒「無冠帝」

続いて、料理とペアリングするお酒のほうを紹介していきましょう。実は、本イベントを後援したのが新潟県・新発田市の菊水酒造。菊水といえば、鮮烈な風味のアルミ缶のワンカップ「ふなぐち菊水一番しぼり」や鋭い切れ味の「菊水の辛口」で有名ですが、今回の主役は吟醸酒の「無冠帝」です。

↑菊水酒造の「無冠帝」。参考価格は300mℓで544円(税抜)、700mℓで1190円(税抜)

 

本品は1983年に発売。「高品質のお酒をたくさんの方にお届けしたい」との高い志を持ち、酒銘に「無冠の帝王」の意味を込めたといいます。発売から35年、時代によって味やボトルのデザインは変わりましたが、この酒にかける「心意気」は今も変わっていないそう。

↑菊水酒造の長谷川洋平さん

 

菊水酒造の長谷川洋平さんによると、無冠帝を「日々を大切に生きる人々、生き方にこだわる人へのスタイリッシュなお酒」と表現。さらに、辛口で切れがよく、「香りや酸味は穏やかで料理をさりげなく引き立てるので、テーブルをきれいに演出するお酒」と語りました。お話を聞いているうちに、菊水酒造さんのこだわりがひしひしと伝わって来て、「無冠帝」とは実際にどんなお酒なのだろう? と、楽しみになってきます。

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

「無冠帝」に合うしょうがやおろしポン酢を使った3品の料理が登場

やがて、お皿に乗った料理が運ばれてきました! 料理は以下の3種類です。

【1】「トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ」(写真左奥)
【2】「カレー風味のハンバーグ」(写真右手前)
【3】「焼きマシュマロのベリーソースがけ」(写真右奥)

 

赤星さんが、上記3品の料理の狙いを、以下のように解説してくれました。

「『無冠帝』に一番合うと思ったのがしょうがです。しょうがとの相性がいいので、カプレーゼには甘酢漬けにしたガリを使いました。ハンバーグにはおろししょうがとカレーパウダーを入れています。家庭で試すなら、おろしポン酢がオススメ。『無冠帝』の最後の苦みがポイントで、大根と相性がいいんです。『焼きマシュマロのベリーソースがけ』は、マシュマロ、ヨーグルト、ブルーベリーを使用。ヨーグルトの乳酸と日本酒は相性がいいので、そのペアリングを味わってもらえたらうれしいです」

 

いよいよペアリングを実際に体験!

では、いよいよ実際に味わってみましょう。まずは、ブルーのボトルが涼やかな「無冠帝」単体で味わってみます。「無冠帝」が注がれたグラスを鼻に近付けてみると、上立ち香は穏やか。口に含むと、きりっとした味わいが印象的で、しっかりとした旨みがあります。含み香も爽やかですね。

↑料理を味わう参加者

 

続いて、「トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ」を味わいました。モッツレラチーズの味がふわりと口の中で広がったあとに、トマトとガリの酸味がじわり。その後に再び「無冠帝」を飲むと、最初より味が引き締まって美味しく感じました。おお、これぞペアリングの妙。料理によって日本酒の味が引き立つとはこういうことだったんですね。

 

参加者の間からも、「ホントだ、しょうがが合う!」という声が聞こえてきます。意表を突かれた素材のペアリングに、会場全体が赤星マジックの術中にはまってしまった模様。

 

続いて、「カレー風味のハンバーグ」を試してみましょう。鶏肉のハンバーグは意外にもガツンとした味わいです。しかし、「無冠帝」を飲みながらいただくと、料理のしつこさが和らぐのがよくわかります。焦げめが甘く感じられ、肉やたまねぎなど、素材のひとつひとつの風味がより美味しく感じられますね。「無冠帝」もすいすいと喉を通り、いくらでも飲めそうな気がしてきました。

↑絶妙なペアリングで、参加者のお酒も進みます

 

最後に「焼きマシュマロのベリーソースかけ」はどうでしょう? 合わせてみると、ヨーグルトとブルーベリーの酸味が「無冠帝」と混然一体となったかのような……。

 

生詰の香りをミントが引き立てる

さらに、赤星さんによると、マシュマロに添えたミントにも意味があるようです。

 

「『無冠帝』は『生詰(なまづめ)』の『吟醸』なので、香りがすっと上がって来るのがポイント。それをミントが引き立てているんです」

↑無冠帝の特徴を語る赤星さん

 

赤星さんが言う「生詰」とは、通常2回行う火入れ(加熱)を1回のみ行う日本酒の種類のこと。フレッシュな香りと味わいがしっかりと残り、かつ火入れによって味が安定します。「吟醸」とは、60%以下に精米したお米を使い、低温発酵させて手間をかけて造ったお酒で、華やかな香り、軽やかな酒質が特徴です。

 

ちなみに、火入れをしない生酒や、先述の生詰は管理が難しいのですが、実は、菊水酒造ではほとんどのお酒を生酒か生詰にすることにチャレンジしているそうです。ここでも、蔵元の味へのこだわりを感じますね。

↑「無冠帝」のラベルに注目。ラベル下部には「吟醸 生詰」の文字が

 

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

ペアリングの世界を知り、ますます日本酒が楽しくなった

こうして、1時間ほどでイベントは終了。イベント名にある通り、「無冠帝」と3種類の料理との「完璧なペアリング」を堪能させて頂きました。ほかにも、赤星さんは、「日本酒のペアリングでは酸を重視する。酸を覚えるため、毎日7種類の酸を水に溶かして飲んでいたら、次第に酸の違いがわかるようになった」「お酒を料理のソースに合わせれば失敗はない」「日本酒に氷をひとつ落とすと味が劇的に変わる」といった刺激的な知識や、すぐ使えるテクニックも披露してくれました。

「日本酒といえば塩辛」という昔ながらの考え方とはまったく違う世界を見せていただき、まさに、目からウロコが落ちる思い。実際、参加者からは、「ガリがこんなに日本酒と合うなんて知らなかった!」「日本酒と酸の関係が勉強になった。日本酒に合う料理を作るときは、ポン酢や大根おろしをうまく使いたい」「調味料として日本酒を考える、という点がすごく新鮮だった」「お酒と料理のペアリングを考えたことはなかったので、『なるほど』と思うことが多くて、楽しかった」…などなど、みなさん、興奮の面持ちで感動を語ってくれました。

 

【動画】イベント参加者の声

「日本酒と料理のペアリング」というテーマ自体への感心も高かったようで、「料理が味わえなくても話だけでも聞きたい」と、イベントに参加する方も多くいらっしゃいました。最新の調理家電や酒器に触れられた点も斬新で、モノ好きの好奇心も満たす内容。まさに一粒で何度でもおいしいイベントでした。思うに、これは後援が「無冠帝」だからこそ実現できたこと。発売35年であえてリニューアルに踏み切った「挑戦」の気概が、このような斬新なイベントを生んだのでしょう。

 

本イベントに触れたことで、日本酒の世界はまだまだ奥が深い……だから、楽しい。そんな思いを新たにしました。読者のみなさんもぜひ、本稿をきっかけに、日本酒の新たな楽しみ方を探してみてください。

撮影/我妻慶一

 

菊水「無冠帝」の公式サイトはコチラ

 

【「無冠帝」との完璧なペアリングが実現する3品のレシピはコチラ】

その1

トマトと水牛のモッツァレラ ガリ風味のカプレーゼ
■材料(一人前)
【A】
・ミニトマト:1/2個
・モッツァレラチーズ(小):1個
・ガリ:小1枚(約5g)
・大葉:1/2枚

・塩:適量
・こしょう:適量
・オリーブオイル:適量

■作り方
①【A】の材料を、モッツァレラチーズ、ガリ、大葉、ミニトマトの順に重ね、ピンまたは串を刺す。
②上から塩、こしょう、オリーブオイルをかける。

 

その2

カレー風味のハンバーグ
■材料(一人前)
・鶏もも肉(ひき肉):100g
・たまねぎ:50g
・舞茸:50g
・長芋:20g
・しょうが:5g
【A】
・塩:4g
・こしょう:2g
・卵:1/2個
・カレー粉:1g
・醤油:10㏄
・酒:5㏄
・みりん:5㏄
■作り方
①たまねぎ、舞茸をみじん切りにする。
②長芋、しょうがをすりおろす。
③鶏もも肉(ひき肉)と①と②をボールに入れ、【A】を加えて混ぜ合わせる。
④適量を手でこねて、ホットプレートで焼き上げる。

 

その3

焼きマシュマロのベリーソースがけ
■材料(一人前)
・マシュマロ:適量
・ヨーグルト:適量
【A】
・ブルーベリー:200g
・水:100cc
・白ワイン:30cc
・ レモン汁:10cc
・グラニュー糖:40g

■作り方
①【A】の材料を鍋で火にかけて、煮詰める。
②マシュマロの表面を、バーナーで焦がすように炙る。(※バーナーで炙る代わりに、ホットプレートで表面を焼いてもOK)
③マシュマロの上に①のソースをかけ、さらにヨーグルトをのせる。

日本酒は「ワイングラス」で飲むべき!その理由を赤坂の名店で聞いた

日本酒が「オジサンの飲みもの」だった時代はとうの昔。いまやヨーロッパの星付きレストランでオンリストされるなど、世界中から注目が集まっています。若くて革新的な作り手も増えてきて、どんどん洗練されてきた感のある日本酒は、実は「グラスで飲むとおいしい」のをご存知でしょうか?

 

オシャレで雰囲気がいいのもありますが、それだけではありません。そのメカニズムや味わい方について、日本酒をワイングラスで楽しめるお店、東京・赤坂の「れくら」を取材しました。

 

酒のチカラを引き出す!「ワイングラス×日本酒」の奥深さ

素材からこだわった和の酒肴と、全国の蔵元から厳選した日本酒を味わえる「れくら」。ほのかな灯りと和素材が生み出す大人のムードたっぷりで、ゆっくりと上質な時間を過ごせるお店です。

↑地下におりる階段にかかった提灯が目印

 

↑カウンター席

 

日本酒×ワイングラスの魅力について教えてくれたのは、店主の渡邊新之(しんじ)さん。蔵元や銘柄はもちろん、含まれている成分など科学的なアプローチにも余念のない、まさに求道者です。

↑「れくら」店主の渡邊さん。着流しに襷(たすき)掛けのスタイルがサマになっています

 

「おちょこやコップで飲むよりも、日本酒が本来持っている複雑な香りが“ふわっ”と開きます」と語る渡邊さん。ワイングラスで飲む最大の理由は“香り”にあるとか。いまでこそワイングラスで日本酒を提供するお店は少なくありませんが、渡邊さんはその先駆け。

 

「従来の“もっきり”(枡+コップに日本酒を注ぐ方法)では、香りがぜんぜん楽しめない…」と思ったのが、ワイングラスで提供しようと思ったきっかけとのこと。渡邊さんはかつてモルトバー(主にモルトウィスキーを扱うバー)で働いたキャリアもあり、だからこそ“香りを楽しむ”海外のお酒のスタイルを採り入れる発想が生まれたのかもしれません。

↑おそろしいほどの日本酒ラヴァー。お酒について語りだすと止まりません

 

「れくら」では、ワイングラスの名門「リーデル」製の日本酒専用グラスを使用。脚つきのグラスと、脚のないものを使い分けています。そのポイントとなるのは“温度”。

 

「うちでは酒質によって、ふたつの冷蔵庫を使い分けて保管しています。低いほうは0℃、もうひとつは5~8℃くらいですね」(渡邊さん)

 

脚つきのグラスは、低温度帯で保管されたお酒用。味わいや香りが華やかで、冷酒でおいしいお酒が中心。脚の部分を持つことで、手の温度がお酒に伝わりにくく、冷たさをキープすることができます。

↑リーデルの「大吟醸」という日本酒専用グラス。冷たい状態が続く、脚つきタイプです

 

いっぽう脚のないグラスは、少し高めの温度帯用。グラスを通して手の温度が伝わりやすく、それによって味や香りが開き、おいしくなるのだとか。こちらは濃醇でどっしりとした、うまみの強いタイプが中心。

↑こちらもリーデルで、「オー・トゥー・ゴー」という脚のないグラス。温度の違いによる味の変化も楽しめます

 

ちなみに、リーデルのワイングラスは、ブドウ品種に合わせた多彩なラインナップがあります。この「大吟醸」グラスの形状は、ワインでいうとリースリング(白ワインのブドウ品種のひとつ)に近いとのこと。フルーティな香りやキリッとした酸味があって、輪郭がはっきりしているリースリングのワインは、日本酒に似ている部分があるのでしょう。

 

グラス別オススメの銘柄をチェック

これからの季節にオススメの銘柄を渡邊さんに紹介してもらいました。まずは脚つきグラス編。華やかでフルーティな吟醸香のあるお酒がよく合うそうです。

↑左から「若波 Type FY2 純米吟醸」「醸し人九平次 雄町 純米大吟醸」「伯楽星 純米吟醸」

 

「れくら」では、料理は季節の旬を反映したおまかせコース(3800円、ご飯物付き4500円)が基本。そのなかから、料理とお酒のペアリング例を紹介します。

↑「炙り秋刀魚と焼き茄子のサラダ仕立て」。焼き茄子に炙った秋刀魚をのせて生海苔のソースで供する一品

 

↑“究極の食中酒”といわれる「伯楽星」でキュッと流して

 

続いては、うまみの強いタイプが映える、脚なしグラス編。製法で分類すれば、生酛(きもと)や山廃(やまはい)などもこちらです。

↑左から「勝駒 純米」「松の司 生酛純米酒」

 

和食が季節の旬を大切にするように、日本酒も春夏秋冬で味わいが変わります。夏酒のシーズンが終わり、秋は「ひやおろし」がおいしい時期。「ひやおろし」は、冬に仕込んだ酒がひと夏を越すことにより程よく熟成され、酒質が落ち着き味わいもやわらか。飲みやすく、初心者の方にもオススメです。

↑「鱧の焼きびたし」。二度目の旬を迎える鱧(ハモ)を焼きびたしにして、ウニをちらした一品

 

↑焼いたハモの香ばしい風味と、ウニの濃厚さにぴたりと寄り添う「勝駒」のまろやかなうまみが好愛称

 

今回はグラス日本酒の話がメインでしたが、「れくら」ではほかにも、日本酒の楽しみ方をさまざまな角度から教えてくれます。たとえば最近人気のスパークリング日本酒はシャンパングラスで提供したり、店内のお酒はすべてお燗でのオーダーもできたり。お酒のポテンシャルを発揮するように提案してくれつつ、ゲストの好みに合わせた対応もOKです。

↑れくらにはカウンターのほか、テーブル席や個室タイプのシートもあります

 

もっと粋に楽しむなら「日本酒はワイングラスで」。本当においしくなるので、ぜひ実践してみてください。「れくら」は赤坂駅から近いので、サカスへのお出かけやお仕事の帰りにもぴったりですよ。

 

 

【SHOP DATA】

れくら

住所:東京都港区赤坂2-14-31 ウインド赤坂ビルB1

アクセス:東京メトロ千代田線「赤坂駅」2番出口徒歩0秒

営業時間:月~金11:30~14:00(L.O.13:30)/17:30~23:30(L.O.22:30)、土17:00~23:00(L.O.22:00)

定休日:日、祝、年末年始

新潟「八海山」の蔵元がビールの新ブランドを発表! 41才独身、絶景のビール醸造所で我を忘れる 

金曜の午後。高台の窓辺から、ビールを片手に夏の風景を見渡す至福の時間(とき)。成功者となった筆者のプライベート…だったらいいのですが、単なる取材のワンシーンです。ここは、新潟県南魚沼市にある「猿倉山(さるくらやま)ビール醸造所」。銘酒「八海山」(はっかいさん)の醸造元・八海醸造が新たにオープンする施設です。

 

銘酒「八海山」の製造元が運営する、新ビール醸造所の取材見学会へ!

清酒の「八海山」といえば、1980年代の地酒ブームで全国にその名を轟かせ、以降は「淡麗辛口」(※)の代表格として地酒ファンに愛されています。その蔵元・八海醸造は現在、塩麹や麹ぽん酢などの調味料をはじめ、日本酒を使った洋菓子、スキンケア製品など、酒造りから派生する製品を積極的に製造・販売。近年は「麹だけでつくったあまさけ」を大ヒットさせ、酒蔵としては異例の成長を続けている企業です。

※淡麗辛口…甘味と酸味が少なく、さっぱりしている日本酒の味を表す言葉

↑清酒「八海山」の特別本醸造

 

そしてこの夏、八海醸造は、自らプロデュースした観光施設「魚沼の里」において、新たに「猿倉山ビール醸造所」をオープンさせ、地ビールの新ブランドを発表するとのこと。筆者は5年間、居酒屋で働いていた際、「八海山泉ビール」を扱っていたこともあり、それがいったいどう変わるのかは興味深いところです。また、八海醸造の好調ぶりを支えるものとは何なのか、自分なりに肌で感じてみたい……そんな思いもあり、新ビール醸造所の取材見学会に参加すべく、一路、魚沼に飛ぶことに致しました。

 

建物の傾斜と斜面の勾配を合わせ、自然環境との一体感を表現

ビール醸造所のある「魚沼の里」は、上越新幹線の浦佐駅からタクシーで15分、在来線の六日町駅からタクシー10分の場所に位置しています。筆者は浦佐駅からプレス向けに用意されたバスに乗り、「魚沼の里」に到着。やっぱり空気が違いますね。あたりには夏草のニオイがただよい、どこからかカナカナカナ……とひぐらしの音が聞こえてきます。「下から見える醸造所を、ぜひ撮影してください。下からが一番キレイなんです!」と広報さんがおっしゃるので、右手に茂る豊かな杉林を見ながら、しばらくアスファルトの坂道を登ることに。

おお「猿倉山ビール醸造所」が見えてきましたね。深緑の山を背景に建つ三角形の建物…確かに、これは印象深いです。下から見上げると、まるで1枚の洋画のような収まりのいい景観……これは計算し尽くされた気配がぷんぷんします。

 

実際、建物を設計した鹿島建設の星野時彦さんに話を聞いたところ、建築と地形の調和を目指したそうで、「建物の傾斜を斜面の勾配に合わせてひとつの山のように見せ、自然環境がそのままデザインになったような一体感を表現したかった」と話してくれました。ちなみに、星野さんは冬の醸造所もお気に入りだそうで、「雪にすっぽり埋まり、雪と一体になった姿を見てほしい」とのことです。なんだか訪れるのは大変そうなイメージですが、みなさんも機会があれば、ぜひ。

↑星野さんがスマホで見せてくれた醸造所の冬の姿

 

こんなにゆったりした配置で大丈夫? 店内の開放感がありすぎて少々心配に

中に入ってみると、カウンターの奥、ガラス張りの向こうのスペースに銀色の巨大なタンクが並んでいる様子が飛びこんできて、ああ、私はビール醸造所に来たのだな……という実感が湧いてきます。一方、タンクの反対側には、高さ3mはありそうな大きな窓があり、抜群の採光とパノラマビューを両立。天井は極めて高く、冷暖房費が大変そう…とこちらが心配になるほど。

 

少々色ムラがあるコンクリートの床の上には木製の家具が点在し、明るい色の木目のカウンターと相まって、モダンで温かな雰囲気が感じられます。しかし……なんと贅沢な空間の使い方でしょう。各テーブルの間隔がおかしい(広すぎ)です。特に飲食店はシビアに客席の間隔を詰めて利益率を上げるといいますが、こんなにゆったりした配置で大丈夫なのでしょうか?

 

ビール製造20年目を迎え、従来の製造設備を「魚沼の里」に集約

やがて、スピーチのために八海醸造の南雲二郎社長がマイクを持って登場。洗いざらしのシャツに色あせたジーンズというラフな姿からは、従来の蔵元はもちろん、通常の社長のイメージとはほど遠く、「ほかと同じにはならないぞ」という同社の気概を表しているようです。

 

「ビールの醸造所を造ったのは、平成10年(98年)のこと。なぜビールを作ったかというと、日本酒メーカーには『ほかのアルコール飲料を作ってみたい』という思いがどこかにあるんですよ。それが、規制緩和で(年間最低醸造量)60KL以上造れば、ビールメーカーになれるということになった。『だったら作ろうじゃないか』ということで始めたんです。

 

そして今年、ちょうどビールを造り始めて20年目を迎え、醸造設備が老朽化していまして。そろそろ改修する時期に来ていましたし、このまま150KLほどしか造れない設備だけでやっていると、需要期に思う存分売ることができない。そこで、日本酒や焼酎、その他アルコール飲料を造っている『魚沼の里』にアルコール事業を集約しようと。訪れた方に楽しみながら感じてもらえるビールメーカーになろうじゃないか、ということで、今回この建物と設備を増設したわけでございます」

 

ゆったり過ごしてもらうことで「品質以上の品質」を感じてもらいたい

この醸造所の移転により、醸造量は約150KLから約300KLに増えたとのこと。ただし、醸造所を作ったのは、単なる増産のためだけではないと南雲社長は語ります。

 

「もちろん、外に売っていくことが本業になるわけですけれど、やはりお客さまに製造の現場に来ていただいて、商品の質を確かめてもらうのも重要。どうせ飲んでもらうなら、ゆったりと充実した時間を過ごしながら飲んでいただきたい。そのほうが、『品質以上の品質』を感じてもらえる可能性があるわけで」

さらに南雲社長は、この場所に醸造所を作ろうと思った理由を語りはじめました。

 

「実はここは元々、南魚沼市のヘリポートだったんですよ。平らに整地されていて、よく空いた時間にここから魚沼盆地を眺めていました。ここから西へ目をやると、魚沼盆地の六日町がほとんど見渡せるんです。そういう特徴のある場所で、我々が造ったビールをソファにゆったりと座って飲んでもらいたいと思って。ここを作るとき、上ってくるのも大変なのに、大丈夫ですか? などと言われましたが、何か特徴的なことをやるには犠牲がいる。都会の人が、毎日の生活から解放されて、豊かな気持ちになって楽しんで帰ってもらいたい。その思いで、この高台に醸造所を作りました」

 

なるほど、あれほど間隔を空けた席の配置は、客にゆったり過ごしてもらい、疲れた心を癒してほしい、という願いが表れたものだったのですね。もうひとつ、これだけの環境でビールを味わえば、いやおうなく美味しく感じるはず。さきほどの南雲社長の言葉を借りれば、「品質以上の品質」を感じるわけで、製品のイメージアップにつながることは間違いありません。

 

新ブランド「ライディーンビール」の3種類を実際に試飲

さて、続いて、ビールの新ブランドのお披露目です。新ブランドの名は「RYDEEN BEER(ライディーンビール)」。その名を聞いた瞬間、YMOの楽曲「ライディーン」の電子音が脳内で流れ始めましたが、もちろんそちらは無関係。ブランド名は仕込み水の水源「雷電様の清水」に由来しているとのこと。

ライディーンビールのラインナップは「ヴァイツェン」「アルト」「ピルスナー」「IPA」の4種類。すべて330mℓで460円(税抜)。今後は季節の商品もいくつか投入していくといいます。

 

取材見学会では、9月末発売予定の「ピルスナー」を除いた3種類のビールを実際に味わうことができました。まずは、下くちびるを上の歯でしっかりと噛み締めて発音したい「ヴァイツェン」から。ほのかな甘み、爽やかな微炭酸に小麦の香り……キレイでのどごしが良く、ひっかかりがまるでありません。乾杯酒には最高ですね。

↑キレイな黄金色の「ヴァイツェン」

 

こはく色が目を引く「アルト」は、ローストした麦芽を使用したビール。アタックで心地よい甘みを感じますが、ボディは意外にライト。するする飲めるので、こちらを1杯目に選んでもバッチリですね。わずかにコーヒーを思わせるようなコクと酸味、無ろ過ならではのまろやかさも感じられます。

↑ライディーンビールの「アルト」

 

もうひとつ、緑色のラベルの「IPA」は、「ライディーンビール」になって追加された新商品とのこと。「IPA」とは「インディア・ペールエール」の略で、18世紀末、イギリスからインドへどうしたら腐らせずに送れるか?……との課題をクリアすべく、アルコール度を高め、防腐効果のあるホップを大量に入れたのが始まりだといいます。そんな「IPA」は、目が覚めるようなインパクト。なんという強いアロマか。そして、なんと鮮烈で心地よい苦みであることか……!

↑強いインパクトを持つ「IPA」。ギョーザやエスニック料理など、クセの強いものにも合いそうです

 

これらのビールは、醸造所の中央にある「猿倉山ビールバー」で、できたてを生ビールで味わうことができます(1杯430mℓで600円)。その生ビールを筆者は「味を伝えるため」との使命感から(途中からはただ飲みたいから)、決して少なくない量のおかわりをさせて頂きました。試飲を通して感じたライディーンビールの印象は、非常にキレイな味わいだったということ。爽やかで軽快、清澄。まるで山の冷たい清水を手ですくって飲んでいるような……フレッシュで生命力のある味わいでした。

↑生ビールを注ぐ「猿倉山ビールバー」のスタッフ

 

↑醸造所の奥はガラス張りになっており、ビール製造場のタンクが見えるようになっています

 

リカーショップやベーカリーも併設し、「4大エンタメ」が同施設で完結する

「猿倉山ビールバー」では、地元の食材を取り入れた料理も用意しています。雪ひかりポークを使ったホットドッグ(600円)や、黒埼(くろさき)茶豆(490円)、ソーセージ盛り合わせ(1500円)など。また、同バーを運営する企業「ロストアンドファウンド」がジェラート店を展開していることもあり、地元で生産される八色(やいろ)すいかやプラムなど、季節のフルーツを使った使ったジェラート(420円~)も提供しています。

 

このほか、醸造所の中にはウイスキーやジンなどの蒸留酒を中心とした「リカーショップ猿倉山」や「さとやベーカリー」も併設。酒と食、景観とおみやげという観光の4大エンタメが、すべてこの醸造所で完結するというわけですね。

しかしこの醸造所、建物といい、空間プロデュースといい、ビールや料理を含め、オシャレなのに軽薄な印象がなく、ホンモノ感があります。それぞれの分野のプロがしっかり作りこんでいるな……といった印象。その道のプロを巻き込んで、上手に分業できる点も同社の強みなのでしょう。

↑左から猿倉山ビールバーの運営元「ロストアンドファウンド」の覺張(がくはり)雄介氏、さとやベーカリーの運営元「ブランドゥブラン」の佐藤浩一氏、八海醸造の南雲二郎社長、鹿島建設の星野時彦氏

 

到着から2時間あまり、日が陰り始めたころに「猿倉山ビール醸造所」の取材見学会は終了。いやあ、楽しかった。お酒を飲みながら、絶景を前にボーっとする……何と幸せな時間なのでしょう。日ごろカサカサに乾いていた心が、うるおいを取り戻していくのがわかります。すでに同醸造所は7月20日にオープンしているので、みなさんもぜひ、訪れてみては。ちなみに、ビールを飲むからクルマで来られないのは痛いよねぇ…という方のために。八海醸造では8月11~15日、18、19日、25、26日は六日町駅と浦佐駅から無料シャトルバスを運行するそうです。どうせなら猛暑を逆手に、冷たーいできたてビールを存分に楽しんでみてはいかがでしょう。

 

呑んで歩いてみつけた。超インドア女子が告げる「ゆるくも大きな決意」とは…!「ほろ酔い道草学概論」第五話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

↑好奇心旺盛な秋川千穂(前)と、何かとパワフルで酒呑みな会社の先輩・正宗さん(奥)。「上諏訪街道 呑みあるき」では諏訪五蔵の美酒を堪能しつつ、酔いで開放的になった人々の様子に幸せを感じました

 

思い切って正宗を遠出に誘った千穂ですが、大勢の人で賑わう飲み歩きイベントで彼女とはぐれてしまうアクシデントに! 酔いも覚める緊急事態の最中、千穂の心にはある思いが…。

 

前のお話はこちら/連載一覧はこちら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今回の一献】

信州舞姫 純米吟醸生酒/舞姫(舞姫酒造)

 

 

他の諏訪五蔵と同じく、霧ヶ峰の伏流水を使用した生酒。お米は、長野県で酒造りに広く使われる酒造好適米のひとつ「美山錦」を使用しています。スッキリと軽快な味わいを追求し、華やかな香りとフルーティーな味わいも兼ね備えた生酒です。実売価格は637円。

 

 

純米吟醸 麗人/麗人(麗人酒造)

 

 

長野県産の酒造好適米だけで醸した、麗人自慢の純米吟醸酒。生酒特有の香りや味わいを色濃く残しており、フルーティーな香りと爽やかながらお米由来の旨みと甘みが同時に楽しめます。常温、もしくは冷やでの飲み方がおすすめ。実売価格は572円/1728円/3240円(300ml/720ml/1800ml)。

 

舞姫、麗人ともに前回ご紹介した「呑みあるき」で楽しめる諏訪五蔵に名を連ねる蔵元。リニューアルされる「秋の呑みあるき」で、是非その味を試してみて頂きたいです!

 

諏訪湖間欠泉センターについて

前回の「上諏訪街道 呑みあるき」が行われている諏訪街道からは駅の反対側になりますが、諏訪湖もぜひ訪れてほしいスポットです。のどかな住宅街を抜けて広がる湖の眺望はもちろん、間欠泉センターなど地域ならではの楽しみがあります。

 

残念ながら2人は間欠泉を見れませんでしたが、諏訪湖の間欠泉は、昭和58年に噴出した当時は高さ50メートルという世界2位までの高さも誇った立派な間欠泉なのです(現在の噴出高は5メートルほど)!

 

時は経ち、次第に間欠泉の自噴間隔が長引くようになり、やがて自噴が止まってしまいましたが、現在はコンプレッサーで圧縮空気を送り、上部の冷えた温泉を取り除くことで、人工的に間欠泉を噴出させています規定の時間内であれば、噴出される間欠泉を観れますのでお越しの際はぜひ!

 

諏訪湖間欠泉センター

■営業日:年中無休

■営業時間:9時~18時/9時~17時(4月~9月/10月~3月)

■入館料:無料(団体での利用時は、要事前連絡)

■交通:JR中央線上諏訪駅より徒歩13分、中央道諏訪ICより車で18分

■間欠泉噴出時間:9時30分、11時、12時30分、14時、15時30分、17時(17時の噴出は4月~9月のみ)

■電話番号:0266-52-8282

 

 

あと忘れてはいけないのが、諏訪湖間欠泉センター名物の温泉卵づくり! 千穂が手製のものを「偽者」と言うほどの味…気になりますよね? 温泉卵づくりは、9月30日までは17時の間欠泉噴出後、17時30分まで体験可能。10月1日からはセンターが17時閉館となるため、16時30分まで体験できます。

 

初めてのお泊り旅を経験した千穂と正宗。ちょっとだけ心境の変化があったのかなかったのかはわかりませんが、次回からさらに二人の道草学は発展していきそうです!

 

連載一覧はこちら

 

(参考文献)

●日本の湖沼と渓谷 6(長野:諏訪湖・上高地とアルプス渓谷)/発行:ぎょうせい

●諏訪市の文化財/著:諏訪市文化財専門審議会 発行:諏訪市教育委員会

●信州地名の由来を歩く/著:谷川彰英 発行:ベストセラーズ

 

(取材協力)

諏訪市経済部観光課

飲み歩きの概念が変わる!? 諏訪の日本酒イベントでOLが楽しみすぎた結果…「ほろ酔い道草学概論」第四話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがある。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが日本各地で道草を食いながら、その土地ならではの美酒に酔うショートストーリーです。

 

↑好奇心旺盛な秋川千穂(左)と、何かとパワフルで酒呑みな会社の先輩・正宗さん

 

前のお話はこちら/連載一覧はこちら

 

「引きこもりだけど好奇心旺盛」という、なんともややこしい気質の主人公・千穂ですが、今回は冒頭から思いがけない行動に出ていますよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気になる続きは、8月3日(金)公開予定!!

 

【今回の一献】

 

銀撰真澄/真澄(宮坂醸造)

 

 

1600年代から続く伝統ある蔵元「真澄」。その名声を築き上げたロングセラーな一本です。杜氏が「ザ・真澄」と言い切るほどに信州では定番の日常酒となっています。香り穏やかでのどごしはスッキリとしているため、日本酒に慣れていない方でもおいしく飲めるはず。イベントでは樽酒として出され、特別な風味と香りが加えられた一献が楽しめます。

 

「上諏訪街道呑みあるき」イベントについて

 

↑「上諏訪街道 呑みあるき」イベントの様子

 

千穂と正宗さんが参加したのは、この春に行われた「春の呑みあるき」。作中でも描かれているように、長野県周辺だけでなく都内近郊からも多くの人が集まり、飲み歩きを自由に楽しむ光景が広がります。

 

宮坂醸造までの甲州街道沿いで「呑みあるき」は行われています。

 

同イベントは「秋の呑みあるき」と題し、10月6日・7日の2日間にわたって開催を予定! 次回は今までとは仕組みを変更されるとのこと。主な変更点はからご確認ください。

 

「秋の呑みあるき」イベント仕組み変更についてのお知らせ

 

秋の空気や味わいを楽しみながら、五蔵の魅力たっぷりなお酒で酔い歩く…。本編でも描かれていた、そんな特別な多幸感にあふれる時にぜひ触れてみてください。

 

(イベント主催/問い合わせ)

企画:上諏訪街道21

主催:呑みあるき実行委員会

共催:長野日報社

問い合わせ先:kikaku@masumi.co.jp

 

連載一覧はこちら

これで無料? 行かない理由が見当たらない…! 吟醸酒と調理家電レシピの「完璧なペアリング」体験会を二子玉川 蔦屋家電で開催

調理家電と日本酒が大好きなGetNavi webの読者に、ぜひお伝えしたい! 8月4日(土)、二子玉川 蔦屋家電2階のダイニングにて、「菊水酒造『無冠帝』×麻布十番『赤星とくまがい』 吟醸酒と調理家電レシピの『完璧なペアリング』体験会」が開催されます。

 

菊水の吟醸酒「無冠帝」と、調理家電で作る「完璧な相性」の3品が楽しめる

こちらは新潟県・新発田市の「菊水酒造」と、東京・麻布十番の創作料理店「赤星とくまがい」のコラボイベントです。菊水酒造といえば、缶入りの「ふなぐち菊水一番しぼり」や「菊水の辛口」でおなじみの新潟の蔵元で、発売35周年を迎えた吟醸酒「無冠帝」をリニューアルしたことで話題。一方、赤星とくまがいといえば、ニューヨークで日本酒と料理の「ペアリング」を提案してきた店主がオープンしたお店で、いまや予約が取れない人気店となっています。先述の「ペアリング」とは、「この一皿にはこの一杯!」といった具合に、料理とお酒が互いに極限まで高めあう組み合わせのこと。いわば、唯一無二のマッチングであり、「マリアージュ」よりも強い意味で使われます。

↑菊水の吟醸酒「無冠帝」

 

↑赤星とくまがいのオーナー赤星慶太さん

 

今回のイベントは、「無冠帝」とともに、完璧なペアリングを実現した3品の料理を、解説つきで楽しんでいただくというのがその内容。しかも、3品の調理には蔦屋家電でも買えるパナソニックの最新調理家電を使用しているので、調理家電の購入の検討にも活用頂けます。さらに、予約された参加者にはもれなく「無冠帝」のボトルに加え、気鋭のプロダクトデザイナーがデザインを手掛けた話題のブランド「双円」の酒器をプレゼント致します。

 

蔦屋家電のオシャレなスペースのなかで、日本酒と調理家電、ペアリングが楽しく学べたうえ、豪華なプレゼント付き。しかも無料……。これでは参加しない理由が見当たりませんね。なお、試飲&試食会は13時~および15時~の全2回で、各回25名限定です。下記サイトの応募フォームからぜひご応募を。予約できなかった方も、14:00~および16:00~、どなたでも参加できる「無冠帝」の試飲会も実施致します(プレゼントはございません)。ぜひご参加ください!

応募フォームはコチラ

↑イベント会場となる蔦屋家電のダイニング

 

「世界一の日本酒」が決まったので、覚えて帰って! 「SAKE COMPETITION 2018」結果速報

「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 」は、市販酒を対象とした世界最大規模の日本酒コンペ。2012年からスタートし、今年で7回目。日本酒の総出品数は約455蔵から1772点を数え、 前回の記録1730点を更新。事実上の「世界一の日本酒」を決める大会となっています。審査される部門は、純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(※)、発泡清酒部門、ラベルデザイン部門に、新設された「海外出品酒部門」を加えた合計8部門。

※720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上のもの

出品酒は、ラベルを隠した完全なブラインドで審査されるのが特徴。技術指導者、有識者、蔵元のなかから選抜された審査員(予審の審査員は37名、決審の審査員は41名、発泡清酒部門の審査員は15名)の採点を集計したものが結果となります。つまり、結果を見れば「プロ中のプロ、数十名が選んだ『絶対に外れのないお酒』がわかる」というわけです。6月11日(月)、その結果がザ・ペニンシュラ東京で行われた表彰式で発表されました。以下で一気に見ていきましょう。

↑審査の様子。出品酒はすべて銀色のフィルムが張られ、銘柄がわからないようになっています

 

福島・寫楽の地元銘柄がサプライズでトップに!

【純米酒部門】

GOLD 10点/SILVER 36点/予審通過 166点/部門出品数 456点

↑1位を受賞した宮泉銘醸の社長、宮森義弘さん

 

1位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
會津宮泉(アイヅミヤイズミ) 純米酒

2位 宮城県大崎市 株式会社新澤醸造店
あたごのまつ 特別純米 冷卸(ヒヤオロシ)

3位 宮城県白石市 蔵王酒造株式会社
蔵王 K(ザオウ ケー) 純米酒

4位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
クラシック仙禽 無垢(センキン ムク)

5位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
寫楽(シャラク) 純米酒

6位 京都府京都市 松本酒造株式会社
澤屋(サワヤ)まつもと 守破離 山田錦(シュハリ  ヤマダニシキ)

7位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人 特別純米(トウヨウビジン)

8位 滋賀県甲賀市 笑四季酒造株式会社
笑四季(エミシキ) センセーション 白ラベル

9位 福島県河沼郡 合資会社廣木酒造本店

飛露喜(ヒロキ) 純米

10位 広島県呉市 宝剣酒造株式会社
宝剣(ホウケン) 純米酒

 

三重・作の強さが目立ち、山口・東洋美人の健闘も光る

【純米吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 44点/予審通過 178点/部門出品数 534点

1位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 恵乃智(ザク メグミノトモ)

2位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 一歩(イッポ) 山田錦

3位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 50

4位 福島県会津若松市 名倉山酒造株式会社
善き哉(ヨキカナ)

5位 栃木県宇都宮市 株式会社虎屋本店
七水 55(シチスイ ゴーゴー)

6位 高知県香美郡 株式会社アリサワ
文佳人 吟の夢(ブンカジン ギンノユメ) 純米吟醸

7位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 愛山(アイヤマ)

8位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 雄町(ザク ミヤビノトモ オマチ)

9位 山形県鶴岡市 冨士酒造株式会社
栄光冨士(エイコウフジ) 純米吟醸 朝顔ラベル 生貯(ナマチョ)

10位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 雄町(オマチ)

 

岩手を代表する地酒が貫禄を見せ、ここでも作の2本がランクイン

【純米大吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 35点/予審通過 156点/部門出品数 445点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人(ナンブビジン) 純米大吟醸

2位 茨城県石岡市 合資会社廣瀬商店
SEN(セン)
3位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 中取り(ザク ミヤビノトモ ナカドリ)

4位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 朝日米(ザク アサヒマイ)

5位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米大吟醸 極上ノ斬(ゴクジョウノキレ)

6位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 プレミアム 純米大吟醸

7位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
渡舟(ワタリブネ) 純米大吟醸 斗壜取り(トビンドリ)

8位 栃木県小山市 小林酒造株式会社
鳳凰美田 赤判(ホウオウビデン アカバン)

9位 茨城県結城市 結城酒造株式会社
結ゆい(ムスビユイ) 純米大吟醸 雫酒(シズクザケ)

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚(イシヅチ) 純米大吟醸

 

昨年より出品を始めた岡山の新星、極聖が1位に
【吟醸部門】

GOLD 10点/SILVER 10点/予審通過 69点/部門出品数 198点

1位 岡山県岡山市 宮下酒造株式会社
極聖(キワミヒジリ) 大吟醸

2位 兵庫県神戸市 株式会社神戸酒心館
福寿 超特撰(フクジュ チョウトクセン) 大吟醸

3位 栃木県芳賀郡 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸 雫酒(シズクザケ)

4位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 大吟醸 山田錦 中取り

5位 京都府京都市 月桂冠株式会社
伝匠月桂冠 大吟醸(デンショ ゲッケイカン)

6位 福島県岩瀬郡 松崎酒造店
廣戸川(ヒロトガワ) 大吟醸

7位 栃木県芳賀市 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸

8位 宮城県加美郡 株式会社山和酒造店
わしが國(クニ) 大吟醸 雫搾り斗瓶取り(シズクシボリ トビンドリ)

9位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 MAX(マックス) 大吟醸

10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚 真精(シンセイ)大吟醸 袋吊り雫酒(フクロツリ シズクサケ)

 

栃木の「変わった蔵」が高級酒部門で栄冠を掴む

【SUPER PREMIUM部門】

GOLD 3点/SILVER 2点/部門出品数 48点

1位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
醸(カモス)

2位 兵庫県神戸市 白鶴酒造株式会社
白鶴 超特撰 天空(ハクツル チョウトクセン テンクウ) 純米大吟醸 白鶴錦(ハクツルニシキ)

3位 秋田県潟上市 小玉醸造株式会社
太平山(タイヘイザン) 純米大吟醸 天巧(テンコウ) 20

 

南部美人が昨年に続いて2年連続で受賞

【スパークリング部門】

GOLD 3点/SILVER 5点/部門出品数 74点

1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人 (ナンブビジン)あわさけスパークリング

2位 広島県廿日市市 中国醸造株式会社
一代 弥山(イチダイ ミセン) スパークリング

3位 大分県玖珠郡 八鹿酒造株式会社
八鹿(ヤツシカ) スパークリング Niji

 

【総評】

実力のある蔵元の地元銘柄に注目

2014年大会では、「寫樂(しゃらく)」で純米酒部門、純米吟醸部門の1位を獲得し、一躍スターとなった宮泉銘醸。2016年、2017年と10位入賞を逃していましたが、今年は純米部門で1位に返り咲き。しかも、「寫樂」ではなく、やや辛口に仕上げたという地元銘柄「會津宮泉(あいづみやいずみ)」での受賞となり、会場の大きなどよめきを呼びました。なお、吟醸部門3位、7位に入賞した外池酒造店も、首都圏向けの銘柄「望bo:」ではなく、地元銘柄の「燦爛(さんらん)」での入賞です。つまり、実力のある蔵元であれば、どれを飲んでも旨いことを示しており、これをきっかけに実力蔵の地元銘柄に光が当たることになるかもしれません。

 

安定感を見せたのが三重県の作と岩手の南部美人

安定感を見せたのは、三重の「作(ざく)」と岩手の「南部美人」。作は昨年、純米の1位、2位の獲得をはじめ、純米吟醸で4位と8位を受賞し、大きな話題となりました。今年も純米吟醸の1位と8位、純米大吟醸の3位と4位に入るなど、抜群の安定感。すでに入手困難になりつつある銘柄ですが、今回の受賞でその流れに拍車がかかりそうです。

↑「作」の蔵元の清水慎一郎さん(左)と内山智広杜氏(右) ※写真は昨年のもの

 

極聖とAKABUが知名度を上げていく予感

注目の銘柄は、吟醸部門1位の極聖(きわみひじり)。2017年から本コンペに出品を始めたという新参ながら、2017年はSUPER PREMIUM 部門で2位、吟醸部門で8位に入っており、今回は2年目にして吟醸部門のトップに輝くことになりました。受賞した3作は大吟醸あるいは純米大吟醸で、今後も高級酒の名手として注目されていくことでしょう。

 

さらに、蔵の実力が問われる純米吟醸部門で、複数受賞した銘柄も注目です。ひとつは、純米部門7位、純米吟醸2位、3位、吟醸部門で4位に輝いた東洋美人。もうひとつは、純米吟醸で7位、10位、純米大吟醸で5位に入ったAKABU(アカブ)です。東洋美人は、地酒ファンの間では押しも押されぬ人気銘柄である一方、AKABUは、20代半ばの杜氏、古舘龍之介さんを筆頭に、若手が中心となって醸す蔵。都内飲食店でも見かけることが多くなっていましたが、今回の複数入賞により、今後、さらに知名度が上がるのは間違いありません。

↑AKABUの純米吟醸

 

SUPER PREMIUM部門の株式会社せんきんは、他のお酒とはひと味違う、甘酸っぱい濃厚な酸味が特徴の「仙禽(せんきん)」の銘柄で、地酒ファンにはよく知られた蔵元。今回受賞した「醸」は、山田錦、亀ノ尾、雄町という3種類の酒米を贅沢に磨いて使用したといい、どんな味かまったく想像できないのが興味深いところ。

 

品質競走が激化し、有名銘柄がしのぎを削る時代に

今回の「SAKE COMPETITION 2018」を総じてみると、実力のある蔵元がしっかり受賞したといった印象。「十四代」「磯自慢」「獺祭」「開運」といった有名銘柄のGOLD入賞はありませんでしたが、次点にあたるSILVER部門にはこれらの銘柄がひしめいていて、いかに近年の日本酒レベルが向上したのかがよくわかる結果となっています。さらに、SUPER PREMIUM部門2位の「白鶴」、吟醸部門5位の「月桂冠」が入賞するなど、資本を生かした灘・伏見の銘柄も加わり、さらに品質競走が激化してきた印象。ユーザーとしては選択肢が増えてうれしい限りです。なにはともあれ、プロがお墨付きを与えた銘柄の数々、みなさんもいち早く楽しんでみてください!

その他の部門

【海外出品酒部門】

GOLD 1点/SILVER 2点/部門出品数 17点
1位 アメリカ Arizona Sake LLC
Junmai Ginjo Nama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Namanama

SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Shiboritate

 

【ラベルデザイン部門】

GOLD 10点/SILVER 6点/部門出品数 152点

1位 兵庫県加西市 富久錦株式会社
新緑の播磨路(シンリョクノハリマジ)

2位 山口県阿武町阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
純米吟醸酒 名聲希四海(メイセイキシカイ)

3位 佐賀県伊万里市 古伊万里酒造有限会社
monochrome+(モノクローム プラス)

4位 福岡県三井郡 株式会社みいの寿
三井の寿(ミイノコトブキ) 純米大吟醸 三井神力(ミイシンリキ)

5位 愛知県常滑市 澤田酒造株式会社
白老 自然栽培米 純米酒(ハクロウ シゼンサイバイマイ ジュンマイシュ)

6位 新潟県長岡市 越銘醸株式会社
山城屋(ヤマシロヤ)

7位 山口県阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
阿武の鶴(アブノツル) 点と線(テントセン)

8位 茨城県石岡市  府中誉株式会社
太平海 純米吟醸 雄町 1314(タイヘイカイ ジュンマイギンジョウ オマチ イチサンイチヨン)

9位 福島県東白川郡 株式会社矢澤酒造
純米大吟醸 白孔雀(ジュンマイダイギンジョウ シロクジャク)

10位 新潟県新潟市 峰乃白梅酒造株式会社
峰乃白梅 KING OF MODERN LIGHT純米吟醸 無濾過生原酒(ミネノハクバイ キング オブ モダン ライトジュンマイギンジョウ ムロカナマゲンシュ)

 

「日本酒の流れ」が変わった!? 世界一を決める「SAKE COMPETITION 2018」で審査員に見えてきたこと

今年も、事実上の世界一の日本酒を決めるコンペティション「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 2018」が開催されます。本コンペは一般の消費者がお店で手に取れる「市販酒」のトップを決めるために、2012年からスタート。審査は全国の日本酒の技術指導にあたる方や、推薦された蔵元など、プロ中のプロがブラインドできき酒を行って決めるため、銘柄の知名度は一切関係なし。ひたすら味わいのみが審査対象という、このうえなくフェアなコンペです。

↑昨年の「SAKE COMPETITION 2017」表彰式

 

同コンペは年々参加する蔵も増えてきたうえ、受賞によりスターダムに駆け上がった銘柄が誕生し、部門で1位に輝いた銘柄はいち早く品切れとなるなど、市場に与える影響も大きくなってきました。今回は、そんな「SAKE COMPETITION 2018」の審査の第一段階となる予審会が5月16日に行われましたので、その様子をレポートしていきます。

 

「真剣勝負」の緊張感が漂う審査会場

↑予審会の様子

 

今回の出品数は、455蔵総出品数1772点で、過去最多の出品数を記録しました。審査される部門は、これまでの純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門(720mlで税抜1万円以上、1800mlで税抜1万5000円以上)、ラベルデザイン部門の7部門に加え、新設された「海外出品酒部門」を合わせた合計8部門。5月16日の予審で決審へ進むお酒を絞り込み、5月18日の決審で最終的な順位を決めます。なお、予審の審査員は37名、決審の審査員は41名(発泡清酒部門の審査員は15名)。各審査員がそれぞれのお酒に1(最高点)~5(最低点)点の間で点数をつけ、それを集計したものが結果となります。

 

今回取材した予審会の会場は、体育館ほどの広さ。中には長テーブルが等間隔で置かれ、その上には4合瓶サイズの酒瓶がズラリ。酒瓶はすべて銀色のフィルムで覆われており、酒銘は一切確認できないので、必然的にブラインドの審査となります。全国から集められた審査員は、チェックシートを片手に一定のリズムで粛々と出品酒をきき(※)、テーブルからテーブルへと移動しながら、点数をつけていきます。審査員同士の私語は一切なく、声を立てることすらはばかられるような緊張感が漂っていました。

※酒をきく(唎く)……お酒の品質を判定すること

↑すべての酒瓶は銀色のフィルムで覆われ、酒銘が隠されています

 

会場には「海外出品酒部門」に参加したカナダの蔵元も

さて、そんななかでキャッチしたのが、「海外出品酒部門」に出品する蔵元の一人。カナダ・トロントで「泉(IZUMI)」という銘柄を手がける、「Ontario Spring Water Sake Company」の蔵元、Ken Valvur さんです。

↑Ken Valvur さん

 

Kenさんの「Ontario Spring Water Sake Company」は北米東部の最初の醸造所。オンタリオ州のおいしい湧き水を仕込み水に使用し、「真澄」で知られる宮坂醸造(長野県)などのアドバイスを受けながら、2011年に醸造をスタート。現在は、トロントの高級レストランで提供されています。ご本人にお話を聞いてみると、目指している味わいは、「甘味と酸味のバランスのよさ」とのこと。「私たちのお酒は、カナダ人にとって親しみやすい白ワインのような、フルーティで甘みを感じる酒質を狙っています。かなり受け入れられるようになってきたので、現在少しずつドライなタイプも増やしているところです」と、カナダならではのアプローチを話してくれました。果たして海外で醸されたお酒は日本の審査員の目にどう映るのか、Kenさんの蔵の成績とともに「海外出品酒部門」の結果に注目していきたいところです。

審査員が評価される大会でもある

↑廣木健司さん(写真は昨年のもの)。今年の「飛露喜 特別純米」にはドライでシャープな印象をプラスしたいと話してくれました

 

先に述べたように、確かなきき酒の力を持つ日本酒業界の精鋭たちが審査員を務める本コンペ。予審会では、スター銘柄「飛露喜(ひろき)」を醸す、廣木健司(ひろき・けんじ)さんに少しだけお話を聞くことができました。廣木さんは本コンペについて「今後の日本酒の潮流を作る、日本酒の未来が見える、それだけ大きな大会。審査員の質もしっかり担保されており、その意味では、審査員も評価されているコンペともいえます」と話してくれました。

 

第1回から審査員を努める広島「宝剣」の土井鉄也氏にインタビュー

↑土井鉄也さん

 

そんなプロ中のプロのみが参加を許される審査員のなかで、第1回大会から名を連ねているのが、「呉(くれ)のドイテツ」こと宝剣酒造の蔵元、土井鉄也(どい・てつや)さんです。広島は呉市の銘酒「宝剣」(ほうけん)といえば、広島産の酒米、八反錦(はったんにしき)を使った、やわらかくキレのあるお酒で有名。土井さん自身は、かつて伝説の不良として知られ、家業を継いだのちに20代の若さで「全国きき酒選手権大会」で全国優勝を果たすという濃い目のキャラクター。そんな土井さんにとって、「SAKE COMPETITION」とはどのようなものなのか、お話をうかがいました。

 

「きき酒は舌だけで行うと思われがちですが、実は頭もものすごく使います。1(最高点)~5(最低点)点の間で点数つけていきますが、ひとつひとつのジャッジをきちんと記憶して、自分の中の審査の基準がブレないように心がけています。何百種類もきいていると、例え0.1ずつずれていったとしても、終わる頃には大幅に基準がずれてしまう。ですから、即座に判断することも大事ですが、引っかかったら、面倒くさがらずもう一度きくのも重要。そうやって、細かく修正しながらきいています。ひょっとしたら、私のジャッジで造り手の人生が変わるかもしれないですから。そこを意識して、『自分の酒以上に真剣にきかねば』という気持ちで取り組んでいます」(土井さん)

 

「エレガントで派手さのあるお酒」から「キレイな甘さを感じるお酒」へ

↑Super Premium部門に出品されていた「宝剣」の純米大吟醸。つまり、土井さんは審査する側であり、審査される側でもあるわけです

 

――審査員としても参加している土井さんにとって、このコンペはどのような意義があるのでしょう?

 

「審査員として参加すると、世の中のお酒の流れというのが手に取るようにわかる。2、3年までは、甘さが引き立ち、エレガントで派手さのあるお酒が多かった印象。でも、いまは香りも控えめになり、甘みも抑え気味で、キレイな甘さを感じるようになりました。一方、蔵元という立場から見たら、いかに世の中の流れに流されず、自分のお酒を貫くことができるか、ここ数年、すごく考えさせられました。もちろん、酒造りの筋は決めていますが、時代の流れも気にしないとダメ。そのうえで、いまは自分が好きな食中酒を貫いている自負がありますね。このコンペに参加することで、自分自身の酒造りを振り返る、いい機会をもらっている気がします」(土井さん)

 

「酒本来の香り」か「あってはならない香り」かを見極めるのが重要

――では、審査の際に心がけていることはありますか?

 

「審査員も人間なので、好みというものがあります。僕の場合、基準を3点に決めて、少しクセのある酒を4点にしています。重要なのは、そのクセが、『酒が持つ本来の香り』なのか、それとも酒造りの道具によってついた、『あってはならない香り』なのかを見極めます。例えば、粕の香りだったら、4点でよしとする。明らかに道具由来の香りは5点。味わい全体の話でいえば、バランスを重視していますね」(土井さん)

――さきほど、お酒の「甘味」についてのお話が出ましたが、最近のお酒の傾向として、「酸」もキーワードのひとつになっているように思います。土井さんは、日本酒の酸についてはどのように評価されていますか?

 

「そこも全体のバランスだと思います。酸が浮く…つまり、芯が細く、酸のみが際立ったらダメですが、甘味がきちんとあって、調和が取れていればOKだと思っています。一方、自分自身の酒(宝剣)は辛口で、ほどよい甘さを感じる味。自分は食べるのも飲むのも好きなので、長く飲める酒がいい。家では自分の酒だけを飲んで、常にどういう状態か確認しています。その代わり、外ではよそのお酒を飲んで勉強させてもらっていますね」(土井さん)

 

「もう一杯」と飲みたくなる酒をブレずに造っていく

――いま、酒造りがひと段落したところで、少し気が早いかもしれませんが、次のお酒造りに向けて考えていることはありますか?

「この5年、継続的に設備投資をしてきて、昨年は甑(こしき・米の蒸し器のこと)を新調しました。皆さんの家でも炊飯器を変えたら、ごはんの味って変わりますよね。酒造りにとっても、甑を変えると酒米の蒸し上がりが変わるため、非常に重要です。昨シーズンは新しくしてから7か月使用しましたが、微妙な操作で蒸気の出し方も変わりますし、その期間だけでは甑の特徴を見極めるのは無理。仕込みが終わったいま、やっと状態が見極められるようになりました。だからこそ、来年はいっそういい酒が造れると思います。特に、お客様がお代わりをしてくださるようなお酒が造れたらいいですね。『もう一杯』と飲みたくなるような酒を、これからもブレずに造っていきます」(土井さん)

 

「僕のお酒はあまり派手な酒じゃないから」と、控えめに語る土井さん。いえいえ、その実直な味わいは、「呉のドイテツここにあり」と確かな存在感で、飲み手を魅了しています。さて、そんな土井さんが「造り手の人生を変えるかもしれない」「真剣勝負で取り組んだ」と語る「SAKE COMPETITION 2018」。審査の結果やいかに? 運命の結果発表は6月11日(月)。果たして、栄冠はどの蔵に輝き、どのような日本酒のトレンドが生まれるのか。固唾を飲んで見守りましょう!

若き蔵人を改心させた日本酒作りの歴史に、酒好きOLじんわり感動。「ほろ酔い道草学概論」第三話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力のひとつ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

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自然あふれる東北から上京してきた千穂は、東京に住みながらもその土地に興味を抱いてきたようです。しかし、なかなか彼女の好奇心は満たされないようで…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【今回の一献】

屋守(おくのかみ)

 

 

豊島屋酒造を守り続けていく強い気持ちと、日本酒を通じて関わる人たちの役に立ち繁栄を守るような作品を醸し続ける思いから銘名。限りなく手作業重視の小仕込を行い、「香りよく優しい味わい」をコンセプトに醸し、全量無調整(無濾過・無加水)、全量ビン貯蔵を行っており、その深い味わいは手間隙をかけてこそのものと言えるでしょう。

 

こぼれ話ですが、屋守(おくのかみ)がヤモリと呼ばれるようになった発端について、豊島屋酒造さんから伺いました。もともと屋守をストレ-トに読まれる事が多かったそう。その後、少しではあるもののどちらからの読みでも東京の日本酒だと認識されていったことから、ヤモリ絵をご友人に描いてもらい立派なアイコンとしたそうです。

 

このお話、豊島屋酒造の酒蔵見学に行けば実際の土蔵を見ながら聞けちゃうかも。お酒作りに精魂を込めて励んでいる職人さんたちの想いや、また酒蔵に集う人々の熱気を体感するのにも見学は大変おすすめです!

 

(取り扱い酒蔵)

豊島屋酒造

●住所:東京都東村山市久米川町3-14-10

●電話番号:042-391-0601

 

 

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やっぱり、日本酒は面白い! 「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で出合った「驚きのお酒」5選

いまや和食以外の料理店でもペアリングを推奨され、海外への輸出も盛んな日本酒。ゆえに、日本伝統の酒器ではなく、ワイングラスに注がれるケースも少なくありません。そんな観点から開催されているのが、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」。8回目となる今回は、263蔵から過去最高の901点が出品され、最高金賞46点、金賞236点が選考されました。今回は同アワード2018の入賞酒お披露目会に参加し、その様子をレポートしていきます。

会場には、アワードで金賞・最高金賞を受賞した84の蔵元の日本酒がズラリ。ワイングラスで飲むということから、受賞酒には洗練されたテイストのものが多いというイメージを抱いていましたが、フルーティなタイプから旨みの豊かなどっしり系など、実に多種多様な銘柄が揃っていました。以下では、印象に残った5つの酒造とその銘酒を、造り手のインタビューとともに紹介します!

↑会場となった虎ノ門ヒルズのホールには、多数の日本酒ファンが来場。注目度の高さがうかがえました

 

注目の日本酒その1

アメリカの超高級レストランからのオファーもある希少な純米大吟醸「蔵光」

↑「蔵光」 菊水酒造株式会社(新潟県) 1万800円/750ml

 

大吟醸部門で最高金賞に輝いたのは、285の出品数のなかでわずか15点。なかでも、特にレアだといえるのが、菊水酒造の純米大吟醸「蔵光(くらみつ)」。ふくよかなボディに華やかさが際立つ贅沢な味わいです。数量限定の希少なお酒で、目立った宣伝活動をしていないにもかかわらず、クチコミで支持が広がっているとのこと。聞けば、生産の半分は輸出していて、アメリカの超高級レストランからのオファーも多く、「アメリカでこういうお酒を見かけたけど、本当に菊水さんの商品?」と問い合わせを受けることもあるそうです。国内では、取扱店は限られているものの、都内のある百貨店では、1店で年間数百本ものオーダーが入る例もあるのだとか。

 

造りの大きな特徴は、原料米に魚沼産コシヒカリを100%使っている点。ただ、これは挑戦ともいうべき至難の技だといいます。なぜなら、飯米であるコシヒカリは、日本酒用に作られている酒米よりも小粒で、しかも精米歩合を23%まで磨き上げているため、酒造りに大切な米の中心部「心白」も極小に。さらには水を吸うスピードが速くなるので、吸水の時間には通常以上に神経を研ぎ澄ませなければいけません。

↑23%まで磨いた魚沼産のコシヒカリの見本。ご覧の通り、極めて小さな粒になるまで削られています

 

「蔵光」は「ここまでやるか」という異次元のこだわりを貫いた成果

では、そんな貴重なお酒にはどのような思いが込められているのか、菊水酒造の安達厚子さんに聞いてみました。

↑菊水酒造 営業部の安達厚子さん

 

「『蔵光』というのは創業の地、蔵光村に由来。二度にわたる水害でその地を離れることになったのですが、原点に立ち返る当社の意思と姿勢が酒銘に込められています。それだけに特別な一本になっており、当社が130年以上で培った知見と技をつぎ込んでチャレンジしました。原料に酒米の王者・山田錦を使わず、新潟県が誇るブランド飯米・魚沼産のコシヒカリを使ったことも、当社の進取の精神の現れ。『ここまでやるか』という異次元のこだわりを貫いた結果です。華やかな香りをワイングラスで楽しんでいただくことも想定していたので、今回、名誉な賞をいただけて喜びもひとしおですね。ちなみに、ボトルに映し出された一筋の光は、菊水の酒造りに対する一点の想いが大きな灯りとなり、上昇していくイメージを表しています。人生を照らす光のように、慶事や人生の節目を祝う特別な日に選んでいただけたら」(安達さん)

↑同じく菊水の「無冠帝 吟醸 生詰」は720mlで1190円。心地よい旨みとキレのよさが共存するバランスの取れたお酒で、こちらもワイングラスがよく合うお酒といえます

 

注目の日本酒その2

ひとくちで「旨い」とうなる絶妙な味わい「燦爛 純米大吟醸 原酒」

↑「燦爛 純米大吟醸 原酒」 株式会社外池酒造店(栃木県) 3399円/720ml

 

次に取り上げるのは、「蔵光」と同様、大吟醸部門で最高金賞を受賞した「燦爛(さんらん) 純米大吟醸 原酒」。本品を醸した栃木県の外池(とのいけ)酒造店は、首都圏中心の特約店に卸す「望bo: 」という銘柄で評価が高まりつつあり、国内最大の日本酒コンペ「SAKE COMPETITION 2016」では純米吟醸部門の2位を獲得した実力蔵です。「燦爛 純米大吟醸 原酒」は、「酒米の王様」といえる山田錦を45%まで磨いて使用しており、一見、王道の大吟醸に見えますが、実は、使用米の95%が栃木県産(※)という地元愛のあふれる一本。澄み切ったボディのなかに鮮烈なインパクトが光る絶妙な味の構成で、ひとくちで「旨い」とうなる味わいです。

※山田錦の名産地としては兵庫県が著名

 

これからも「味」で日本酒の付加価値を作っていきたい

受賞作について、今年38歳になるという同社の杜氏、小野 誠さんにお話を聞いてみました。

 

「地元ではこの燦爛という銘柄がメイン。こちらは県内産の山田錦を使った思い入れのある1本で、飲んだ瞬間においしさが伝わる、あえてわかりやすい酒で勝負しました。造りで心がけているのは、『掃除の徹底』です。お酒にあってはならない香り、『オフフレーバー』を防ぐために掃除は重要。酵母が出す純粋な香りを守るため、布を湯釜で殺菌するなどの基本的な作業が重要になってくるんです」

↑左から、外池酒造店の杜氏・小野 誠さんと、醸造課頭の神田晃道さん。小野さんが持っているのはプレミアム純米部門で金賞に輝いた「望bo: 純米吟醸 無濾過生原酒」1769円/720ml

 

なるほど、そういえば入手困難酒の代表格、「而今(じこん)」の杜氏さんも「蔵の清潔さが大切」とおしゃっていました。地味ですが、こうした基本がもっとも大切なのですね。ちなみに、せっかく現役の杜氏さんがいらっしゃっているので、ワインなどに比べて日本酒が「手間がかかる割に利益が少なすぎる」と言われる現状について聞いてみました。

 

「日本酒はお父さんが晩酌に飲むイメージがあり、付加価値をつけるのが難しいのが現状。しかし、並行複発酵を行う日本酒は、明らかに単発酵のワインに比べて手間ひまがかかっています。ですから、日本酒の価値がもう少し認められてもいいという思いはあります。その点、今回の受賞作は1本3000円超と高価。だからこそ、飲んだ人に『失敗した…』とは思わせたくないですし、『この味なら、全然高くないよ!』と言われる味を目指して造りました。もちろん、手が届かない価格のものばかりではいけませんが、これからも『味』で日本酒の付加価値を作っていけたらと思っています」

※並行複発酵……デンプンの糖化と糖のアルコール発酵を同一容器で行う方式。果汁に糖が含まれ、発酵のみを行う(単発酵)ワインと比べて複雑で手間のかかる工程となります

 

注目の日本酒その3

ライチを思わせる個性的なスパークリング「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」

次は、スパークリングSAKE部門で最高金賞に輝いた一本を紹介。ちなみにこの部門の最高金賞は、入賞率4.6%と今回最も狭き門でした。紹介する蔵元は、ネーミング的にも個性のある福島県の人気(にんき)酒造です。聞けばこちらは、アワードのスパークリングSAKE部門の常連。今回は、最高金賞受賞の「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」と、2014~2017年で4年連続最高金賞に輝いた「Rice Magic人気一スパークリングレッド」を紹介します。

↑左が「Rice Magic人気一スパークリングレッド」、右が「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」。人気酒造株式会社(福島県) ともに823円/300ml

 

どちらも、芳醇な甘味がありながら、酸も効いていてバランスの良い仕上がり。「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」は、口に含んだ瞬間、「ライチか!?」と錯覚させるような、個性的な風味がありました。シャンパンの製法として知られる「瓶内二次発酵」ならではのきめ細かな泡も秀逸。ボトルのデザインもかわいらしいので、女性にプレゼントしたら喜ばれそうです。

↑人気酒造株式会社の田畑俊哉さん

 

「両方とも添加物は一切使用せず、米と米こうじのみで発酵させたナチュラルな仕上がりが特徴です。やわらかく、やさしい味で飲みやすいと思いますよ。レッドのほうは、黒米を使っているから色味が赤くなるんです。紅白で縁起もいいということで、贈り物に選んでいただくことも多いですね」(田畑さん)

 

注目の日本酒その4

こだわりの自社栽培米で醸した軽やかなお酒「竹林 かろやか 大瀞」

続いて紹介するのは、プレミアム純米部門で最高金賞を受賞した一本「竹林 かろやか 大瀞(おおとろ)」。こちらも入賞率が5.3%という厳しいジャッジのなかから選ばれた名作です。こちらを醸した蔵は、米作りに並々ならぬこだわりを持つ岡山県の丸本酒造。

↑左から2本目が、最高金賞を受賞した「竹林 かろやか 大瀞(おおとろ)」1836円/720ml。隣は「竹林 ふかまり 純米」1296円/720ml。ともに丸本酒造株式会社(岡山県)

 

受賞作は、「かろやか」の名前の通り、「水か?」と驚くほど口当たりは極めて軽やか。華やかな吟醸香とほのかな甘みを持ち、余韻にはまろやかさが残る絶妙な味わいでした。

↑満面の笑みとアニメ声が印象に残る丸本酒造の高橋芙美さん

 

「とにかく、日本酒で米本来の旨みをダイレクトにお伝えしたいですね。当社では、すべての酒を社員自ら栽培した山田錦で造ります。山田錦は低農薬で稲本来の力を引き出す『三黄造り』という農法で栽培。また、掛米と麹米(※)で田んぼをわけ、それぞれ最適な方法で育てています。掛米は繊維がぎゅっと詰まった米が最適。麹米は菌糸が食い込めるよう、スカスカな米質のほうが良いので、それに応じて作り分けているんですね。ちなみに、ワイングラスはお酒の温度が上がりにくいですし、口元が広くて薄いので、お酒の味がよくわかります。ぜひ、このお酒もワイングラスで楽しんでみてください!」(高橋さん)

※掛米……もろみ(かゆ状のお酒のもと)に投入されるお米のこと。もろみを増量するときに使われます ※麹米……麹菌を繁殖させ、米麹の元になるお米のこと

 

注目の日本酒その5

「思いっきり味を乗せてみよう」と生酒のまま1年寝かせた「御園竹 蔵内生熟成」

最後は、最高金賞ではない金賞ながらも、個人的に印象深かった一本をご紹介。主催者のひとりに「これは本当に変わっている」と教えてもらった長野県・武重本家酒造の「御園竹(みそのたけ) 蔵内生熟成」です。

↑右が「御園竹 蔵内生熟成」1231円/720ml、その隣は熟成させる前の「御園竹 濃醇旨口生酛原酒無濾過生酒」で1188円/720ml。ともに武重本家酒造株式会社(長野県)

 

その特徴は、加水しない原酒ならではのアルコール度数19%というパワフルな飲みごたえと、濃厚な甘味と旨み。そして生酒のまま1年間寝かせたことによる、何ともいえない熟成香とトロリとした口当たり。苦味すら感じるクセのある味わいですが、ワイングラスで飲むと一層ハマりそうです。

↑武重本家酒造株式会社の武重有正さん

 

「濃いでしょう? 通常のお酒と違い、実験的に思いっきり味を乗せてみよう、と造ったのがこれ。生酛造り(※)の酒は本来、熟成がゆっくりなので、熟成が進むよう、蔵のなかで生酒を常温で1年寝かせてみました。味はしっかりしているんですが、実は悪いニオイの『生老香(なまひねか)』も出ていて、ワイングラスだとそれがよくわかります。アルコール度数も高いですし、好き嫌いは分かれるでしょうが、熟成酒マニアの方にはぜひ飲んでいただきたいですね」(武重さん)

※生酛(きもと)造り……伝統的な造りの手法で、酵母を雑菌や微生物から守る乳酸菌を自然界から取り込む方法。濃淳な旨みと酸がある本格的な味わいの酒になります

 

贅を尽くした大吟醸から、唯一無二のスパークリング、クセが強すぎるお酒まで。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」では、個性豊かなお酒との出会いがあり、大いに興奮させていただきました。みなさんも、今後の同アワードに注目するともともに、今回紹介したお酒を見つけたら、ぜひワイングラスで楽しんでみてください!

世界一の日本酒を決める「SAKE COMPETITION 2018」去年とはココが違う!

「SAKE COMPETITION(サケ コンペティション)」 実行委員会は、世界最多出品酒数を誇り、日本酒コンペティション「SAKE COMPETITION 2018」の開催を決定しました。「SAKE COMPETITION」は「ブランドによらず消費者が本当においしい日本酒にもっと巡り会えるよう、 新しい基準を示したい」という理念のもと2012年から始まりました。そのため市販酒のみが対象となっており、審査方法は完全に銘柄を隠し、酒の中身のみで競うことに徹底し、どんなブランドでも1位を獲るチャンスがあるコンペティションです。

↑昨年の「SAKE COMPETITION 2017」表彰式

 

「海外出品酒部門」を新設し、授賞パーティが一般参加可能に

昨年の「SAKE COMPETITION 2017」は参加蔵数、約453蔵(海外蔵:7場)、出品酒は1730点を超える世界最大規模。事実上の「世界一の日本酒」を決めるコンペとなっています。市販酒のみを対象に、この規模で審査するコンペはほかにはなく、年々注目度は上がってきています。例年1位を獲得した日本酒は、即日完売し全国から問い合わせが殺到。 地元の人にしか知られていないような地酒でも、全国的な知名度を獲得し、一躍脚光を浴びる大きなチャンスとなっています。

↑2017年の各部門の受賞酒。左からラベルデザイン部門「越後鶴亀 越王 純米大吟醸」(株式会社越後鶴亀/新潟県)、発泡清酒(スパークリング)部門「南部美人 あわさけ スパークリング」(株式会社南部美人/岩手県)、純米酒部門「作 穂乃智」(清水清三郎商店株式会社/三重県)、吟醸部門「来福 大吟醸 雫」(来福酒造株式会社/茨城県)、純米吟醸部門「土佐しらぎく 純米吟醸 山田錦」(有限会社仙頭酒造/高知県)、純米大吟醸部門「開運 純米大吟醸」(株式会社土井酒造場/静岡県)、Super Premium部門「七賢 純米大吟醸 大中屋 斗瓶囲い」

 

今年は海外からの出品酒のみで構成される「海外出品酒部門」を新設。2017年の「純米酒部門」 「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「吟醸部門」「Super Premium部門」「ラベルデザイン部門」 「(発泡清酒)スパークリング」と合わせて、全8部門での審査を行います。審査は5月16日~5月18日にかけて行われ、 6月11日の表彰式にて受賞作が発表となります。ちなみに、「Super Premium部門」「ラベルデザイン部門」は、元サッカー日本代表の中田英寿氏の発案により、設立されたものです。

 

また、本年より、授賞パーティが一般参加できるようになった点に注目です。 授賞パーティでは、ザ・ペニンシュラ東京の24階レストラン「Peter」を貸切とし、ブッフェスタイルのディナーを実施。SAKECOMPETITION2018の上位入賞酒100種類以上の日本酒を用意し、日本酒との相性を考えたスペシャルディナーとともに楽しめる形になっています。ディナーのチケット価格は2万1600円とかなりのものですが、世界最高峰の日本酒が一度に楽しめるまたとないチャンス。思い切って参加してみてはいかがでしょうか。

↑授賞パーティが行われる「Pater」内観

 

【授賞パーティチケット情報】

◆日時:6月11日(月)授賞パーティ(19:00~21:30予定)
◆会場:ザ・ペニンシュラ東京24階レストラン:「Peter」
◆発売期間:4月27日(金)~ 5月25日(金)まで
◆チケット金額:2万1600円(税込)
◆住所:東京千代田区有楽町1-8-1 24階
◆アクセス:日比谷線・千代田線・三田線
「日比谷駅」地下通路 A6 ・A7出口直結

新橋で地酒を無限呑み!? 酔いどれは大都会の夜景に何を想う「ほろ酔い道草学概論」第二話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがございます。地酒もそんな魅力の一つ。本連載は、お酒好きOLコンビが地酒に酔って道草を食いながら土地に根付く、不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

第一話はこちら

 

前回、会社の先輩・正宗(まさむね)さんに誘われ、初めて酒蔵に行き日本酒の味を知ったOL・秋川千穂。普段は引きこもりがちな彼女は、いつも通り花金もスルーして直帰するようですが…?

 

 

 

 

 

 

【今回の一献】

「辛口ばっか飲んでんじゃねーよ」シリーズ「酒くらい甘くたっていいじゃない 世知辛い世の中だもの」

 

 

KURANDでは一般的に流通していない、全国各地の小さな(だけども、こだわりと情熱をもった)酒蔵で作られた銘柄が取り扱われています。なかには、KURANDと蔵元がともにコンセプトの設計や企画を行い生まれた銘柄もあります。そんな一本である本品は、1840年から続く埼玉県の石井酒造が贈る「辛口ばっか飲んでんじゃねぇよ」シリーズのひとつ。蔵元の「辛口ばかりが日本酒じゃない! 甘口でもうまい酒があるんだ!」という思いが込められたその味は、口当たりはとってもフルーティーだけど、しっかりとしたお米の旨味を含んだ余韻が味わえます。

 

店舗内では初めての方でも呑みやすいものから、なかなかお目にかかれない通な一品まで約100種類の日本酒が、時間無制限で飲み放題! 千穂と正宗さんが訪れた新橋店をはじめ、関東を中心に全国で8店舗が展開されていますので、ぜひみなさんも道草がてら行ってみてください。

 

(取り扱い店舗)

●KURAND SAKE MARKET 新橋店

●住所:東京都港区新橋2-3-7 菊豊ビル3F

●電話番号:03-6268-8858

●営業時間:平日17:00-23:00(22:45ラストオーダー)、土日祝12:00-16:00/17:00-23:00(15:30/22:45ラストオーダー)、年中無休

 

第一話はこちら

ハイテク起業家精神を酒で味わう! シリコンバレーで愛される日本酒「セコイヤ酒」とは?

空前のラーメンブームが続くアメリカ。ここサンフランシスコでもラーメンはシリコンバレーの食文化として一大ジャンルを確立しているといっても過言ではありません。以前、著者がTwitterやUber、AirBnBなどで働く友人たちに誘われて行った夕食会の場所もラーメン・ダイニングの人気店でした。しかし、このような席で必ず話題になるのはラーメンではなく、「SAKE(酒)」なのです。

 

地産地消へのこだわり

↑ティスティングできる生酒3種(左からNAMA、GENSHU、NIGORI)

 

酒は酒でも、サンフランシスコの人々に特に愛されているのが「セコイヤ酒(Sequoia Sake)」。これは初のサンフランシスコ産の日本酒なのです。この町では地産地消がクールで、本銘柄もうたうのも「Made Local, Drink Local」。従って、人気を集めるのも極めて自然な流れだといえます。

 

日本酒は主原料となる米と水選びが極めて重要です。地産地消を大切にするセコイヤ酒が使う米は、カリフォルニアの州都であるサクラメント産のカルローズ。その「食用米」はカリフォルニア州で生産量が最も多く、広く出回っているのですが、実は昔「酒米種」のDNAと間違ってかけあわされてしまったという歴史があります。しかし、この偶然が功を奏し、酒米種の味が改良。カルローズは「酒米」としても使えるようになりました。

 

とはいえ、創業当初は米農家や業者との交渉が非常に大変だったそう。「無名酒造のうえに注文ロット数が少なく、さらにお米の味やレベルもバラバラで、いい日本酒の特徴である『安定した味』を作り続けることが非常に困難だった」とセコイヤ酒を夫婦で作るジェイクさんとノリコさんは言います。

水はヨセミテ国立公園の麓からサンフランシスコへ流れてきているものをフィルタリングして使用。この水をカルローズに加え、セコイヤ酒はサンフランシスコ市内で丁寧に醸造されます。

夫婦二人三脚で道を開く

この酒造は夫婦経営です。ジェイクさんはシリコンバレーのテクノロジー企業に勤務。さぞかし投資家などを巻き込んだ大掛かりなビジネス展開計画をしていたのかと思いきや、奥様のノリコさんとの二人三脚で事業を立ち上げ、あえて家族経営を選んだそうです。その理由について尋ねると、「外野から口出しされずに、自分たちの理想とする日本酒づくりを徹底的かつ自由に追求したかったから」とジェイクさんは言います。

 

2年間の試行錯誤を経てついに販売となったとき、アメリカではちょうどラーメンブームがさらに勢いを増していたところでした。そこで積極的に人気ラーメン店や和食レストランに商品を置いてもらうように営業を展開。次第に口コミでアメリカ人のファンが増えていったそうです。

 

「日本ではラーメンにはビールが多いですが、こちらのアメリカ人やサンフランシスコに訪れる観光客が、話題のラーメン屋をくぐるときは『やっぱりSAKEだね』というモードになるのです。日本酒の販売量が減少気味の日本に比べ、世界では和食やラーメンブームの背景を受けて日本酒はアツいんです!」とノリコさんは語気強く語ってくれました。

 

地ビールやバーボン樽とのコラボでイノベーションを起こす!

信念を曲げずに日本酒を作り続けていくことで、アメリカの生酒ファンの心を掴み、ついにはサンフランシスコ界隈やシリコンバレーを代表する日本酒にまで成長していったセコイヤ酒。その成功によって、カリフォルニアの契約農家からお米を安定供給してもらえるようになり、長年課題だった「味のばらつき」も解消されました。

 

その一方、ご夫婦は面白いことにチャレンジし続けています。新鋭の地ビール・クラフトビール醸造所のベアボトルビールとコラボして、酒ビールの「HALF SAMURAI」の開発に協力。つい最近では、アメリカならではの「バーボンウィスキー樽で熟成した酒(Bourbon Barrel-aged sake)」も売り出し始めました。

 

ほしいものがなければ自分で作る。小さく始めつつも夢は大きく。こだわりは貫く。そして、近隣のコミュニティや異業種との交流を通じてイノベーションを生み出す――。セコイヤ酒を作るご夫婦が持つこのようなスピリットからは、アメリカのハイテク起業家が連想されます。セコイヤ酒も「シリコンバレー流のモノづくり」の1つなのかもしれません。

「安すぎる日本酒」で本当にいいのか!? 「1本1万7800円」驚きの値付けに隠されたメッセージ

クラウドファンディングサイト「Makuake」の運営元、(株)マクアケの広報さんからメールが届きました。どうやら日本酒に関するクラウドファンディングのPRのようです。

 

日本酒の!注目プロジェクトがありご連絡させて頂きました」

 

なんで日本酒の! が太字なんだろう……。勢いだけは伝わってきます。いったい、どんなプロジェクトなんでしょう?

 

高付加価値ブランド「SAKE100」の1本を数量限定で先行発売

(画像出典:Makuake公式サイト)

 

「国内最大の日本酒専門メディア『SAKE TIMES』を運営するClear Inc.が手掛ける”100年先にも色褪せることのない日本酒の魅力”を提供する新しい日本酒ブランド『SAKE100』。今回のプロジェクトは、そんな『SAKE100』の第1弾商品となる『百光 -byakko-』を数量限定で先行発売するというプロジェクトです」

 

へえ。壮大なビジョンですね。あ、「SAKE100」の読み方は「サケひゃく」でも「サケワンハンドレッド」じゃなくて、「サケハンドレッド」なんですね。

 

「『百光』が目指したのは、誰もが納得できる上質な味わいの到達点。国内随一の酒造技術をもつ山形県・楯の川酒造とともに、【720ml/1万7800円(※送料込み)】という価格に足る、世界水準の価値をもつ日本酒を完全数量限定で製造します」

↑百光のボトル

 

1万7800円! 高っ! ……しかし、楯の川酒造というのは、渋いセレクトです。こちらは、「楯野川(たてのかわ)」という銘柄を出していて、地酒ファンにとっては名の知られた存在。筆者は以前、「清流」という純米大吟醸を頂きました。アルコール度は14%台で、通常より1~2%抑えたものだったのですが、どこまでも軽快でキレイな酒質。にもかかわらず、味の物足りなさはまったくなく、大変キメ細かな味わいでした。……ああ、また飲みたいです。

 

18%という驚きの精米歩合で酒造好適米を使用

続いて広報さんは、「百光」の精米歩合に言及しました。

 

「味わいを実現するためのキーファクトが「18%」という精米歩合。(小林さんならわかってくださると思います、この価値を!)」

 

確かに、精米歩合18%とはすごい……。ちなみに、精米歩合(せいまいぶあい)とは、米を削った割合のこと。精米歩合が高い(数値が低い)ほど香り高く、すっきりした味わいになります。通常は、精米歩合60%(=米の40%を削ったもの)でも高級酒に入るのですが、それが18%(=82%削る)とは……。いまは「獺祭」の「純米大吟醸 磨き二割三分」(精米歩合23%)が高級酒として有名ですが、さらにその上を行く精米歩合ですね。

↑お米の表面を磨いた状態。心白(しんぱく)という白くやわらかい部分が露出し、小さな球状になります

 

「また、『百光』に使用する原料米は、すべて契約栽培でつくられた山形県産の酒米・出羽燦々。農薬をつかわず、手間暇をかけて育てあげた安心の有機栽培米…」

 

出羽燦々(でわさんさん)は、山形県を代表する酒造好適米。しかも栽培が難しい酒米を有機栽培とは……。さらに、広報さんのメールはプロジェクト誕生の核心へ。

 

高付加価値市場を拡大し、日本酒全体の商品価値を高める

「また、何故こんな高価な日本酒をつくるのか? というSAKE100の裏に隠された想いも必見です。日本酒の商品群を見渡すと、高価格市場が未成熟であることは、日本酒市場が抱えている課題です。嗜好品としての需要が国内外問わず高まっていく状況で、いかに高いレベルのスタンダードをつくっていけるか。それが日本酒市場を”次の時代”へと運ぶキーポイントであり『SAKE100』のミッションです。(新聞でも「日本酒は安すぎる?」という記事がありました)」

 

なるほど、プロジェクトの理念として、日本酒の高付加価値市場を拡大することで、日本酒全体の商品価値を高めたいということですね。…確かに、「日本酒が安すぎる」といわれるのは納得です。あれだけ手間ひまをかけて造っているのに、蔵元の利益が少なすぎるのでは……。そういえば、筆者が和食居酒屋で働いていたころ、先輩が「ワインならボトル1本3000円くらいは普通。だが、日本酒だといくら旨くてもその値段では売れない」と話していたのを聞いたことがあります。「日本人が、日本酒の価値を一番わかっていないのや」とも。たしかに、先述の「楯野川 清流」も、あのクオリティで、しかも純米大吟醸で、1.8ℓ3000円を切っていたしなぁ……。

 

と、ここにきて、いくつかの疑問が湧いてきました。もはや酒造産業が「趣味」や「ボランティア」と呼ばれるほど、多くの蔵元が利益率の低さにあえいでいます。そこに目をつぶって、我々は、おいしい日本酒を「いいとこどり」するだけで良いのでしょうか? 本当に努力をしている人、良いモノが正しく報われない現状……真の日本酒ファンであるならば、身銭を切ってでも抗うべきでは……? この「SAKE100」プロジェクトは、そんな日本酒ファンの問題意識を形にしたプロジェクトなのでしょう。720mℓ1万7800円~という驚きの価格をつけることで、「このままでいいのか?」と訴えているようにも思えます。

 

果たして、価格に見合うだけの価値があるのか? といった点は大いに気になりますが、〝日本酒の価値を高めて正しく報われる時代を作りたい”という願いには強く賛同したいところ。筆者も、本プロジェクトの存在を伝えることで、少しでも多くの方に日本酒の課題を知っていただければ…そして、少しでもユーザーの意識が変わる助けになれば…と願っている次第です。

【4月30日まで】話が違うじゃない! 11日間連続の「激アツ日本酒イベント」に、仕事を放り出して行ってみた

やるべき仕事を眠らせて、ギロッポンのズーヒル(六本木ヒルズ)にやって参りました! その目的は、こちらのアリーナで開催されている日本酒イベント、「CRAFT SAKE WEEK(クラフトサケウィーク) at ROPPONGI HILLS2018」に参加するため。こちらはサッカー元日本代表で、近年は日本文化を積極的に発信している、「ヒデ」こと中田英寿さんがプロデュースしたイベント。会場に出店している蔵元と直接コミュニケーションを取りながら、様々な日本酒を味わえるという内容です。

 

4月20日(金)から4月30日(月)にわたって開催され、日替わりで10蔵、11日間で合計110蔵が出店します(開催時間は12:00~21:00)。この日は、「中国・四国の日」ということで、同地域の蔵元、10蔵が参加するとのこと。

 

購入したコインと引き換えに10蔵の日本酒が楽しめるイベント

↑上から見た会場。約500本の竹の回廊が取り囲んでいます

 

筆者が到着した時間は19時半ごろ。18時ごろに近くを通りかかったという同僚からは、「そんなに人いなかったよ」と聞いていたのですが、話が違う! 会場は人、人、人で埋め尽くされています。スーツを着た男性客が多いですが、女性客も多いですね。女性のみのグループも多く見受けられます。一方で筆者のようなおじさんの一人客もちらほら。六本木という場所柄、外国人の方も多く訪れているようです。

↑コインで料理を購入できるレストランも出店

 

よく見ると、会場の造りも凝っています。会場をぐるりと青竹が囲み、和の雰囲気を演出しています。テーブルも木の温もりが生きていて、こちらも好印象。頭上には「CRAFT SAKE WEEK」と書かれた提灯、でしょうか。

酒器と飲食用コイン11枚がセットになった「CRAFT SAKE スターターセット」(3500円)を手に入れたら、さっそくお酒を求めて日本酒提供カウンターへ。カウンターにはコインの枚数が明示された日本酒の瓶が冷やされており、コインを渡して酒器に注いでもらう仕組み。

↑日本酒を提供するカウンター

 

↑三芳菊の「ラグジュアリー 残骸」。5つの米を使った異なる大吟醸をブレンドしたもの。ラベルは社長の意向とのことですが、ちょっと意味がわかりません

 

カウンターでは蔵元の個性が楽しめる高級酒を提供

提供されているお酒は、基本的に純米吟醸以上の高級酒で、1杯の相場はコイン3枚~6枚程度。1杯の量は1合の3分の1くらいでしょうか。筆者は、山口県の貴(たか)からスタートし、島根県の月山(がっさん)、高知県の文佳人(ぶんかじん)、愛媛県の三芳菊(みよしぎく)、岡山県の竹林(ちくりん)の順で飲ませていただきました。どれもこれも、舌が喜ぶ美味しさ。文佳人は土佐酒らしいさっぱりした味わい、三芳菊はリッチな甘みが際立つなど、それぞれの蔵元の個性も出ていて面白いです。

↑スターターセットでもらえる酒器(右上)は、1819 年創業の歴史をもつ「石塚硝子」の槌目盃(みぞれ仕上げ)を使用。この盃がパスの役目を果たしており、盃を持っていれば期間中は何度でもイベントに参加できます

 

↑テーブルを回る売り子さんのような方もいらっしゃいます。ハリーポッターのような格好で、「月山」を手に回っていたこちらの方は、唎酒師の資格を持っていて知識はバッチリ

 

提供カウンターでは蔵元と交流できるケースも

蔵元と交流できるのもポイント。筆者の場合は、コイン6枚もする「竹林」の純米大吟醸「たおやか」を飲んだ際、ブースにいたおじさまに、「何で高いんですか?」と、だいぶ間抜けな質問をしてしまいました。すると、「こちらは精米歩合が35%。精米歩合が下がると、格段に造りが難しくなるんです。隣にある精米歩合50%の純米吟醸(コイン3枚)と比べると価格は倍以上なので、実はこっちのほうがオトクです」と丁寧にお答えいただきました。お名前は丸本さんとのことでしたので、多分社長さんなのでしょう(「竹林」の製造元は丸本酒造)。また、余談ですが、「貴」のお酒を注いでいたお兄さんがまた男前で、隣の二人組の女子が「ねえ、どう? あの人」「カッコイイー」とザワついていました。

↑自社栽培の山田錦を35%まで磨いて醸した純米大吟醸「竹林 たおやか」。いつまでも飲んでいたい…と思う、やさしくキレイな味わい

 

↑日本酒の提供ブースにて。デブの筆者よりも、真後ろの「貴」のブースのお兄さんに注目してください

 

今後も有名銘柄が出店する激アツな日が続く

イベントに参加して、やっぱり日本酒は楽しいお酒なのだな、と改めて感じました。実際、あるカップルの女性は、「これおいし~、さっきよりも好き!」と輝くような笑顔で彼氏に話し掛けていましたし、隣で飲んでいたOLのグループは「明日も来ようね~」と実に楽しそう。筆者も「竹林」を飲んだときは、おいしすぎて思わず笑ってしまいました。いや~、日本酒って、本当にいいものですね!

 

CRAFT SAKE WEEKでは、以降も魅力的な蔵元が日替わりで登場するとのこと。今後の日程で個人的にアツいと思うのは、4月29日(日)の「SAKE COMPETITIONの日」。こちらは、事実上の世界一の日本酒を決めるコンペ、SAKE COMPETITIONで各部門の1位に輝いた蔵元が集結します。もうひとつ、激アツなのが4月30日(月)の「チーム十四代の日」。入手困難酒の代表、「十四代(じゅうよんだい)」と「而今(じこん)」のほか、「鳳凰美田(ほうおうびでん)」「東洋美人(とうようびじん)」など、評価の高い蔵元も出店します。今回、参加した印象だと19時以降は特に混みそうなので、混雑を避けるなら、それ以前の早めの時間帯を狙って行ったほうがよさそう。ぜひこの機会を逃さず、楽しいお酒との出会いを楽しんでみてください。

「CRAFT SAKE WEEK at ROPPONGI HILLS 2018」開催概要

日時: 2018 年4 月20 日(金)~30 日(月・祝) 11 日間 各日12:00~21:00 L.O. 20:30
場所: 六本木ヒルズアリーナ(東京都港区六本木6 丁目10-1)
参加蔵数: 各日10 蔵 計110 蔵
レストラン数: 延べ15 店
料金: CRAFT SAKE スターターセット 3500 円(酒器グラス+飲食用コイン11 枚)
料金: 追加コイン 1500 円セット(飲食用コイン10 枚)、3000 円セット(飲食用コイン22 枚)、5000 円セット(飲食用コイン38 枚)
※2 回目以降の来場の際は、酒器グラスを持参いただくと、追加コインの購入のみで楽しめます

絶妙な「味の距離感」に、杯が止まらないよ! 菊水の日本酒「無冠帝」を無冠の中年が試した実感

「私は純米酒しか飲まない」という方。…もったいないと思います。なぜ、美酒と出合う機会を自ら限定してしまうのでしょう。一番安い普通酒でも、本醸造でも(もちろん吟醸でも大吟醸でも)美味しいものがたくさんあるのに……。ちなみに、これら「純米」とついていない種類のお酒は、醸造アルコール(サトウキビなどを原料にした蒸留酒)を添加したお酒です。サラリとした酒質になるメリットがあって、それはそれで素晴らしい個性だと思うのです。

 

クリアな飲み口のなか、新潟酒らしい滑らかな旨みが顔を出す

今回紹介する菊水「無冠帝 吟醸 生詰」(新潟県)もそんな個性が出たお酒。酒銘は地位や名誉にこだわらず、高い志を持つ「無冠の帝王」になぞらえての命名だそう。1983 年に誕生したお酒を今年の3月20日にリニューアルしたとのことで、蔵元さんがモニター用として送ってくださいました。そして、41才独身の筆者もまた、地位・名誉とは無縁の“完全な無冠”であり、夜はわびしい部屋の帝王であることに違いなし。己の孤独を重ねつつ、いち日本酒ファンとして、本品を興味深く楽しませて頂きました。

 

ただの「水」にならないよう、「生詰」で絶妙なチューニングを施した

この「無冠帝」、個人的に気に入ったのは、おしゃれな外見とは裏腹に、昔ながらの辛口の良さを持っている点。口に入れた瞬間は水のようなクリアなのですが、一瞬ののち、ふわっと「サケ」らしい滑らかな旨みが立つのです。その感触を確かめたくて、ついつい杯を重ねてしまう……第一印象はそんなイメージでした。

 

ちなみに、酒銘のあとに表記されている「生詰(なまづめ)」というのは、少しでも生の風味を残す目的で、通常、2回の火入れ(加熱処理)を行うところを1回に減らしたお酒のこと。1回目の貯蔵前の火入れは行い、2回目の瓶詰め前の火入れは行いません。こちらは、瓶詰め前に1回だけ火入れを行う「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」に比べて、落ち着いた印象になるとのこと。なるほど、「無冠帝」も同様、落ち着いた酒質のなかに一瞬米の旨みが見えるのは、この「生詰」の成果でもあるのでしょう。ギリギリまで旨みと香りを抑えつつ、没個性の「水」にならないよう、絶妙なチューニングが施されていると感じました。価格は300mℓ544円、720mℓで1190円…価格だけを見ると毎日飲むには厳しいか……。ただ、精米歩合55%、手間ひまのかかる吟醸造りということを考えれば、コスパは悪くありません。

 

ビール代わりの一杯めとして使える軽快な味わい

では、本品を料理と合わせてみたらどうでしょうか? いつもの「必殺・一人鶏つくねもやし鍋」で相性を試してみました。普段は「一杯目はビール(正確には発泡酒)」と決まっており、ちょっと試したらすぐ発泡酒に戻ろう…と考えて、今回は「無冠帝」でスタート。こちらのアルコール度数は15度と通常の日本酒と同様ですが、1杯めに飲んでも重く感じることなく、意外にも進みます。淡い米の甘みがつくねともやしの旨みを受け止めて、あと味をスっと流すイメージ。受け止めて、流す……受け止めて、流す……わかってるスナックのママとの会話のような、絶妙な距離感がちょうどいい……。気づけば「無冠帝」だけでつくね鍋を完食しそうになりました。1杯めはビールじゃなくてこっちでもいいかも。これくらい軽快だと、食前酒にもぴったりだと思いました。

 

また後日、ホワイトソースのグラタンと合わせてみたところ、意外にも相性が良かったです。この方向なら、シチューやビーフストロガノフなどにも合いそう。他方、エビチリと合わせてみたところ、その酸味や油っこさにはやや合わないか……。酒質が穏やかで自然なので、このトーンに合った手作り料理が合うのかな~と感じました。なお、刺身や寿司、サラダや軽い前菜などには当たり前のように合うでしょう。

 

これからの季節は常に冷蔵庫で冷えていてほしい

正直、筆者は鮮やかな味が好み。菊水でいえば、生原酒「ふなぐち」のような濃芳なものが好みです。本来は淡麗なお酒は好みではないのですが、この「無冠帝」は悪くないと思いました。日本酒ならではの良さもうまく出しつつ、あざとさや妙なひっかかりは一切ないので、安心して身をゆだねられます。その証拠に、酒の減り方の早いこと早いこと…内緒で小人が飲んでいるのかと思ったほど。ほどよく冷やすと透明感が際立ちますし、淡いブルーのボトルが涼やかなので、暑くなったらよりおいしく感じるのも間違いなし。こんなお酒が冷蔵庫で待っていてくれたなら、わびしい部屋で過ごす夜もちょっぴり楽しくなりそう……本品は、そんな想像をさせてくれる1本でした。

【新連載】おんな2人が初めて知る、日本酒と寄り道の魔力「ほろ酔い道草学概論」第1話

日々の楽しみはお酒――! この想いは万国共通ではないでしょうか? ビールに焼酎、サワー、カクテル…さまざまなお酒がありますが、日本人ならやっぱり日本酒! 全国で約2万種もの銘柄が存在すると言われている日本酒の魅力は、作られている土地そのものの魅力と言えるかも。

 

本連載は、そんな日本のお酒と土地について、おんな二人練り歩き知っていく、ほんわかストーリーをお楽しみください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今回の一献】

吟醸 新しぼり

↑吟醸 新しぼり。実売価格は1800mlが2700円、720mlが1350円

 

1月下旬に出荷する、低温でゆっくり発酵させる「吟醸造り」で醸した新酒。香り立つ清楚な香りと凝縮された米の旨みのバランスが魅力の生酒です。千穂もそのフレッシュさに驚いていましたが、特に搾りたてはのどごしも爽やかで飲みやすさが特徴です。

 

澤乃井のお酒について補足すると、実は千穂と正宗さんは春の少し手前、2月3日の節分に澤乃井を訪れています。澤乃井では節分に「節分祭」というイベントを開催していて、作中に出てくる「銀印」と「大辛口」の熱燗は、節分祭の特別メニューになります。千穂の日本酒初体験はずいぶんスペシャルなものになったはず。

 

↑通常、澤乃井園では熱燗は「オカンビン」という瓶で出しています

 

(取り扱い酒蔵)

澤乃井(小澤酒造)

●住所:東京都青梅市沢井2-770

●電話番号:0428-78-8215

 

取材協力/青梅市郷土博物館

呑むだけじゃもったいない!? いつもの料理をワンランクアップする“日本酒の使いこなし術”が話題

1月23日放送の「あさイチ」では“日本酒”について特集。「調味料」として日本酒を使いこなす技が紹介され、「さっそく試してみたい!」と話題になっている。

出典画像:「あさイチ」公式サイトより出典画像:「あさイチ」公式サイトより

 

日本で古くから愛されてきた「いり酒」

まず番組で取り上げたのは、日本酒で作る万能調味料「いり酒」。作り方はとっても簡単で、日本酒、かつお節、昆布、梅干しを鍋に入れ、5分煮込んだら1晩寝かすだけででき上がり。ポイントは、塩分18%以上のしょっぱい梅干しを使うこと。かつお節や昆布から出るうまみにより深みが出て、とてもおいしくなるんだそう。

 

スタジオで実際に試飲した近藤芳正は「おいしい! 生まれてきてよかった!」と大絶賛。視聴者からは「簡単だし作ってみたい」「見るからにうまいやつやん」など興味を示す声が上がっている。

 

素材本来の味を生かしてくれる「いり酒」は、煮物や焼き物、お吸い物などさまざまな料理に活用可能。さらに、ごま油やオリーブオイル、マヨネーズなどコクのある調味料を足して使うのもおススメ。チャーハンやパスタといった和食以外の料理にもよく合うので、気になる人はぜひ試してみては?

 

食品の解凍にも使える!?

また、番組では日本酒を使った食品の解凍術を紹介。ネット上では「冷凍したご飯をチンしたらなんか変なにおいがする…」「おかずを冷凍すると油が酸化したにおいがする」といった声が見られるように、冷凍庫特有のイヤ~なにおいに悩まされている人も多いはず。

 

そんなお悩みを解決してくれるのが日本酒。電子レンジで温める5分前に日本酒をふりかけるだけで、イヤなにおいを消してくれるんだとか。かける量はティースプーン1杯分の日本酒で、ご飯なら茶碗1杯分、惣菜なら小皿1皿分が目安。ラップはふんわりとかけて隙間を作れば、においの成分を逃がしやすくなるので覚えておくとGOOD。

 

ちなみに揚げ物類を温めるときは、スプレーなどで日本酒を料理全体にふりかけ、ラップをせずにすぐ温めればカラッとした食感に。実際に試した視聴者からは「これ本当にカリカリするからみんなやってみて!」との声が上がっていた。

 

他にもネット上では「日本酒でゼリー作ると大人の味でおいしい」「日本酒とだしのみで作る鍋が冬の定番」などアイデアレシピが盛りだくさん。日本酒は銘柄によってさまざまな味があるので、自分好みの日本酒で作ってみるのも楽しいかもしれない。

呑むだけじゃもったいない!? いつもの料理をワンランクアップする“日本酒の使いこなし術”が話題

1月23日放送の「あさイチ」では“日本酒”について特集。「調味料」として日本酒を使いこなす技が紹介され、「さっそく試してみたい!」と話題になっている。

出典画像:「あさイチ」公式サイトより出典画像:「あさイチ」公式サイトより

 

日本で古くから愛されてきた「いり酒」

まず番組で取り上げたのは、日本酒で作る万能調味料「いり酒」。作り方はとっても簡単で、日本酒、かつお節、昆布、梅干しを鍋に入れ、5分煮込んだら1晩寝かすだけででき上がり。ポイントは、塩分18%以上のしょっぱい梅干しを使うこと。かつお節や昆布から出るうまみにより深みが出て、とてもおいしくなるんだそう。

 

スタジオで実際に試飲した近藤芳正は「おいしい! 生まれてきてよかった!」と大絶賛。視聴者からは「簡単だし作ってみたい」「見るからにうまいやつやん」など興味を示す声が上がっている。

 

素材本来の味を生かしてくれる「いり酒」は、煮物や焼き物、お吸い物などさまざまな料理に活用可能。さらに、ごま油やオリーブオイル、マヨネーズなどコクのある調味料を足して使うのもおススメ。チャーハンやパスタといった和食以外の料理にもよく合うので、気になる人はぜひ試してみては?

 

食品の解凍にも使える!?

また、番組では日本酒を使った食品の解凍術を紹介。ネット上では「冷凍したご飯をチンしたらなんか変なにおいがする…」「おかずを冷凍すると油が酸化したにおいがする」といった声が見られるように、冷凍庫特有のイヤ~なにおいに悩まされている人も多いはず。

 

そんなお悩みを解決してくれるのが日本酒。電子レンジで温める5分前に日本酒をふりかけるだけで、イヤなにおいを消してくれるんだとか。かける量はティースプーン1杯分の日本酒で、ご飯なら茶碗1杯分、惣菜なら小皿1皿分が目安。ラップはふんわりとかけて隙間を作れば、においの成分を逃がしやすくなるので覚えておくとGOOD。

 

ちなみに揚げ物類を温めるときは、スプレーなどで日本酒を料理全体にふりかけ、ラップをせずにすぐ温めればカラッとした食感に。実際に試した視聴者からは「これ本当にカリカリするからみんなやってみて!」との声が上がっていた。

 

他にもネット上では「日本酒でゼリー作ると大人の味でおいしい」「日本酒とだしのみで作る鍋が冬の定番」などアイデアレシピが盛りだくさん。日本酒は銘柄によってさまざまな味があるので、自分好みの日本酒で作ってみるのも楽しいかもしれない。

安定のサンコー・クオリティ! ネーミングも心に響く「宝箱のような」ワインセラー

サンコーといえば、多彩なアイデア商品を発売することで知られていますが、「シワを伸ばす乾燥機 アイロンいら~ず」「楽でごめん寝 うつぶせエアピロー」「かがまないお風呂用電動ブラシ『フロキレー』」など、「そのままだな!」と思わせつつ、クスっとくるネーミングでも有名です。そして、今回の新商品のネーミングもまた秀逸。その名は「場所を選ばない横置きワインセラー 俺のワイン WINECL02」です。価格は1万4800円(税込)。

 

趣味の品を詰め込みたいコンパクトなワインセラー「俺のワイン」

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本機は、ワインボトルが8本収納できる横置き型のコンパクトなワインセラーです。W410×H270×D495mmと、電子レンジ並みの大きさしかないので、冷蔵庫の上などのデッドスペースやラック、テーブルなどにも置けるので置き場所に困りません。

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使い方は、タッチパネルを操作して、庫内温度を設定するだけとカンタン。温度は8~18℃まで設定できるので様々なワインに対応できます。ライト付きなので、暗い場所だった場合も、ドアを開けずにラベルが視認できるのが便利(ライトは10分で自動消灯)。フレームレスでフルフラットなガラス扉を採用したシンプルなデザインで、インテリアとしても優秀です。なお、扉ガラスには、紫外線カットコーティングを施し、光によるワインの劣化を防いでくれます。

↑↑ボタンを押せばライトが点灯

 

↑操作パネル。温度表示は摂氏と華氏で切り替えが可能です↑操作パネル。温度表示は摂氏と華氏で切り替えが可能です

 

冷却システムはペルチェ方式を採用。冷蔵庫などのコンプレッサー式に比べて騒音が少なく低振動のため、リビングや寝室などにも設置できます。

↑ワインだけでなく、4号瓶の日本酒も収納できます↑ワインだけでなく、4号瓶の日本酒も収納できます

 

↑チョコレートやチーズを入れておけば、ちょうどいい硬さに↑チョコレートやチーズを入れておけば、ちょうどいい硬さに

 

それにしても、どこかのレストランにありそうですが、製品名の「俺のワイン」とは言いえて妙。それほど多くの容量は必要ない、コンパクトで、個人的に楽しむぶんが入ればいいんだ……というニーズをうまく捉えています。さらに、日本酒の4号瓶も入りますし、内部の棚を取り外して様々な瓶を収納することも可能。おつまみ用のチョコやチーズも入るとあって、まさに金庫のような、宝箱のような、「俺だけのワインセラー」として使えますね。みなさんも、趣味の品をたっぷりと詰めこんで、毎晩、コレをのぞく楽しみを味わってみては?

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サンコー

場所を選ばない横置きワインセラー 俺のワイン WINECL02

●サイズ/質量:W410×H270×D495mm/約8.3kg●内部寸法:W330×H190×D320mm●温度設定:8~18℃●消費電力:65W(電気代24時間使用で約30円)●コード長:1.9m

 

 

日本酒をさらにおいしく飲むために手びねりで「マイぐい呑み」を作ろう!

私は日本酒が好きなので、お猪口や、ぐい呑みをいくつか集めています。骨董品店やフリーマーケットで気に入ったものをみつけて、買いあさってしまうこともしばしば。そんなとき、近所のスーパーで見つけた陶芸教室の貼り紙が気になってしまいました。

 

そうだ、自分で作った器を使ってお酒を飲んだら、どんなにおいしいだろう! 妄想がどんどん膨らんできます。

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初心者でもチャレンジできる陶芸

とはいえ、私は生まれつき不器用ですから、陶芸なんて一回もやったことがありません。私でもチャレンジできるのでしょうか。少し不安な気持ちで手にしたのが、陶芸の入門書『基礎からわかる はじめての陶芸』(学研パブリッシング・編/学研プラス・刊)です。

 

本書には、誰でもマスターできる陶芸のいろはやテクニックが満載です。“ぐい呑み”の作り方ももちろん載っています。なにやら、初心者でも気軽に作れるそうなので、最初の一作におすすめの器のようです。

 

 

ロクロなしでもできる、手びねりのススメ

陶芸はぐるぐる回るロクロという器械に粘土をのせて、作るイメージがあります。テレビの旅番組で芸能人が回すのに失敗して、いびつな器を作っている、あれです。なんだか扱うのが難しそう。

 

けれども、ご安心あれ! ロクロなしでも作品は作れるのです。

 

その手法が“手びねり”という技法です。指先や手のひらを使って粘土の形を整えるため、形は少しいびつになるかもしれませんが、それはむしろ“味”というもの。ぎこちなさがあふれる器も手作りの陶芸ならではの魅力といえるでしょう。

 

 

玉作りをマスターしてから成型へ!

手びねりの器づくりは、まず、粘土を玉形に丸める作業からはじまります。これを“玉作り”といいます。粘土を両手でキャッチボールをするように丸めて、きれいな球形に丸めていくのですが、なんだか子どものころの粘土遊びのようで、楽しくなります。

 

続いて、玉作りを終えた粘土を器状に成型します。このときのポイントは、厚みをなるべく均一にすること。そして、指の腹やなめし皮などを使って、丁寧に縁をならしていきます。器の縁は舌が触れる部分なので、なめらかに仕上げたいですね。

 

最後に高台をきれいに削って、完成です。なんだ、意外に簡単にできそうです!

 

 

自分が気に入る器を作ろう

本書を読んで、苦手かもと感じていた陶芸が身近に感じられました。無理にきれいに作ろうとしなくてもいいのです。そして、他人が見て美しいと思う器より、自分がいかに気に入る器を作るかが重要といえます。そんな器なら愛着もわきますし、使って楽しめるのではないでしょうか。

 

私が求めているのはもちろん、晩酌がおいしくなる器です。極上の一杯のために、さっそく陶芸教室の門をたたいてみることにします!

 

 

【著書紹介】

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基礎からわかる はじめての陶芸

著者:学研パブリッシング(編)
出版社:学研プラス

手びねりやロクロでの成形から、釉薬の使い方や絵付け、焼成まで、陶芸のイロハを豊富な写真やイラストで解説した入門書。初心者が陥りやすい失敗例や上手な解決方法といったノウハウの他に、窯元や釉薬など役立つデータも満載する。陶芸ビギナー必携の一冊。

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バレンタインの「見せチョコ」にどう? あの「獺祭」を使い、世界的パティシエが仕上げた「チョコの日本代表」が登場!

世界的パティシエ・ショコラティエである辻口博啓(つじぐち・ひろのぶ)氏の和スイーツブランド「和楽紅屋(わらくべにや)」では、季節限定のチョコレート「獺祭抹茶トリュフ」を発売します。販売期間は1月中旬~2月中旬(数量限定のため在庫無くなり次第終了)で、2個入(800円・税込)から16個入り(5400円)まで7種類を用意。

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「獺祭抹茶トリュフ」とは、その名の通り、日本酒の「獺祭」(だっさい)純米大吟醸〈磨き二割三分〉と宇治抹茶をかけ合わせたトリュフチョコレート。「獺祭」は、あまりの人気にプレミア価格で売られることが多く、蔵元が「お願いです、高く買わないでください」と新聞広告を出して話題になったばかりです。その純米大吟醸〈磨き二割三分〉は、山田錦という高級酒米を23%まで削って使用し、雑味を徹底的に取り除いたもの。華やかな香りと甘みを感じたあと、上質な余韻を残してキレイに切れるのが特徴です。

↑獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分↑チョコに使われた「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」

 

この獺祭〈磨き二割三分〉と酒粕、宇治抹茶(西尾の抹茶・名古屋高島屋限定)を使って、この「獺祭抹茶トリュフ」をプロデュースしたのが、「世界一」との呼び声も高い辻口博啓氏です。辻口氏は世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ・パリ」のショコラ品評会では、5年連続(2013~2017年)で最高評価を獲得。また、2015年には「インターナショナルチョコレートアワーズ世界大会」のチョコレートバー部門で金賞を受賞しています。

20180118-s2 (2)↑辻口博啓氏

 

そんな辻口氏と獺祭がタッグを組んだ「獺祭抹茶トリュフ」は、さながらチョコレートの日本代表。なめらかな口あたりと余韻を楽しめるとのことで、実際、昨年開催された「サロンデュショコラ パリ2017」でも大好評を博したそうです。「バレンタインデーに特別なチョコを届けたい」という方はもちろん、チョコをもらう予定はないが、見栄は張りたいという方、「見せチョコ」として検討してみてはいかがでしょうか。

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新年会に向け「おいしい日本酒」と「注目トピック」を3分でチェック! 2017年「日本酒」カテゴリPVランキング

年末年始には、日本酒を楽しんだという方も多いはず。さらに、これから新年会シーズンを迎え、熱燗も身体にしみる季節だけに、改めて美味しい日本酒を知りたいとは思いませんか? 実はGetNavi webでは、「日本酒」が隠れた人気コンテンツ。2017年のアクセスランキングを見れば、昨年はどんなトピックがあり、どんな銘柄を注目を集めたのかが一目瞭然です。外れのないネットショップや、押さえるべき日本酒のキホンなど、耳より情報も網羅しているので、ぜひ見ていってくださいね。

 

10位

「高くてまずい酒」に別れを告げる! “すべらない”日本酒ネットショップ ベスト10

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2016/4/10UP

2016年4月公開以来、長く読まれている記事。日本酒の品揃えでは折り紙つきの全国のネットショップ10店を厳選して紹介しています。「はせがわ酒店 オンライン店」「YOKOHAMA KIMIJIMAYA ONLINE SHOP」など、関東屈指のショップから、大阪や九州に店舗を置くショップも網羅。日本酒の主な取り扱い銘柄と、扱っている銘柄数などを明記しているのも特徴です。

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9位

日本酒業界の巨人「はせがわ酒店」では、いま何が売れている? 売上ランキングトップ10を大発表!!

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2016/9/8UP

2016年9月の公開から読まれ続けている記事です。表参道ヒルズ、東京駅グランスタ、東京スカイツリーなど、話題のスポットに出店を果たした有名店「はせがわ酒店」。その麻布十番店の売上ランキングトップ10の日本酒を、同店マネージャーのレコメンドともに紹介しました。1位が山口県の獺祭、2位が秋田県の新政、3位が静岡県の磯自慢と、上位にはそうそうたる顔ぶれが並んでいます。

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8位

【5分で覚える日本酒】十四代、飛露喜に次ぐスターといえばコレ! スイスイ飲める三重県の銘酒4選

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2017/5/7UP

三重県で注目の日本酒を紹介した記事。現在、次世代のスターとして注目され、入手困難となっている而今(じこん)を蔵元コメント入りで紹介するほか、事実上の世界一の日本酒を決めるコンペ「SAKE COMPETITION 2017」で上位に多数の入賞を果たし、話題となった作(ざく)などを紹介しています。

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7位

飲食店経営の酒豪プロレスラーが「本気で店に置きたい日本酒」は? 一升約2000円の日本酒レビュー10本ノック!

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2017/3/12UP

飲食店を経営し、酒豪としても知られる新日本プロレスの矢野 通選手による日本酒のレビュー記事。一升約2000円のリーズナブルな日本酒を10本集め、お気に入りを見つけてもらいます。さすがは頭脳派レスラー、ユーモアを交えながら的確に味を表現していく姿が印象に残る記事です。試飲の結果、冷酒では「澤屋まつもと 守破離(しゅはり)」、燗酒では「長珍(ちょうちん) 本醸造」がもっともお気に入りという結果となりました。

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6位

「世界一の日本酒」が決定! 今年はなぜかガンダムファンが喜ぶ結果に?「SAKE COMPETITION 2017」結果速報

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2017/6/5UP

事実上の世界一の日本酒を決めるコンペ「SAKE COMPETITION 2017」の結果を同日に伝えた速報記事。純米酒、純米吟醸、純米大吟醸、吟醸、Super Premium、発泡清酒の6カテゴリの上位入賞銘柄を伝えました。注目は、純米酒部門でワンツーを決め、純米吟醸でも4位、8位に入った作(ざく)。一方で人気銘柄の十四代、飛露喜、伯楽星なども各カテゴリで手堅くランクインしています。

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5位

「マジか…」日本酒ファンが絶句する大ニュース! あの「酒づくりの神」がクラウドファンディングで電撃復帰

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2017/11/16UP

日本酒ファンの間で「名人」として知られる杜氏(※)、農口尚彦(のぐち・なおひこ)氏が、クラウドファンディングサイト「Makuake」のプロジェクトで電撃復帰した驚きを伝える内容。ちなみに、同プロジェクトは1月7日現在、追加のコースも含めて全てのコースを完売。目標金額の2070%を達成しています。

※杜氏(とうじ)…酒造りの職人を束ねるリーダーのこと

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4位

世界一おいしい日本酒が決定! あのメジャー銘柄が落ち無名の蔵がトップに立つ波乱アリ!!

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2016/7/30UP

2016年7月の公開から長く読まれている記事で、日本酒コンペ「SAKE COMPETITION 2016」の結果を伝える内容。磯自慢、寫楽(しゃらく)、獺祭などの有名銘柄が上位入賞を逃し、但馬、愛友など、知名度の低い銘柄が上位に挙がったサプライズをレポートしました。

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3位

【5分で覚える日本酒】初心者はこれさえ覚えればOK! 酒どころ・東北地方で絶対押さえるべき銘柄ベスト10

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2017/3/25UP

酒どころとして知られる東北地方の代表的な銘柄を紹介。新政、伯楽星、十四代、会津娘、飛露喜といった日本酒ファンの評価が高い銘柄は、蔵元のインタビューも掲載しています。合わせて、AKABU(あかぶ)、廣戸川(ひろとがわ)といった若手が醸す注目の銘柄もピックアップ。

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2位

獺祭、十四代、而今――日本酒の流れを変えた歴史的な銘酒6選

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2016/5/15 UP

十四代や飛露喜、獺祭など、現代の日本酒の流れに大きな影響を与えた6銘柄をガイドしたもの。蔵元コメントとともに代表的な1本を紹介しており、2016年5月のアップから読まれ続けています。

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1位

大吟醸と吟醸の違いが言えますか? 日本酒の種類がわかるたった2つのポイントとは?

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2016/5/8 UP

大吟醸や吟醸、純米、本醸造などの日本酒の種類の違いを、「醸造アルコール」と「精米歩合」の2点に着目して解説。①醸造アルコールを添加していないものには「純米」がつき、②低温発酵を行う吟醸造りのうち、精米歩合で60%以下だと「吟醸」、50%以下は「大吟醸」と説明しています。また、本醸造では〆張鶴、純米大吟醸では獺祭の1本を紹介するなど、各カテゴリで旬の銘柄も合わせて紹介しました。こちらも2016年5月の公開から、長くアクセスを集めている記事です。

記事の詳細はコチラ

 

これは「ワインに着せるタイムマシン」だ! わずか数分で長期熟成の効果を生む「超音波デキャンタ」販売スタート

海外製品の日本展開の支援などを行うハンズエイドは、超音波技術によってワインやウィスキー、日本酒を数分で熟成させる「Sonic Decanter」(ソニック デキャンタ)を、12月18日、イノベ部公式ストアにて一般販売を開始しました。色はブラックとホワイトの2種。価格は3万4800円(税込)。小売店店頭では来春から順次発売します。

 

超音波の力でワインやウィスキー、日本酒を柔らかな味わいに!

20171218-s2 (4)↑ホワイト(左)、ブラック(右)。サイズは幅16.5×奥行17×高さ38cm

 

本機を使うと、ワインは長い年月をかけた熟成したワインのように、ウィスキーは長期熟成したようなまろやかさになるとのこと。2016年、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」にて600%もの支援を達成しましたが、海外での需要に生産が追いつかず、1年越しに日本発売が実現しました。

 

本機が採用するのは、空気と触れさせ酸化を促す、従来のデキャンティング(デキャンタージュ)とは全く逆のアプローチ。超音波の振動により、細かい気泡でワインを攪拌(かくはん)することによって、酸素を抜く効果を実現しました。その結果、ワインを劣化させることなく、わずか20分でワインそのものの味や、舌触り、香りを格段に良くするといいます。具体的には、防腐剤として使用される二酸化硫黄(SO2)の減少、ph値の減少、アントシアニンの減少、揮発酸(VA)の減少の4つが科学的に証明したとのこと。このほか、同社はタンニンを和らげ、アントシアニン、エステル、ポリフェノールの化学構造を改良すると説明しています。

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Sonic Decanterは、ワイン以外のお酒にも使用できます。例えば、ウィスキーであれば角が立っていた味も長期熟成したようなまろやかさに。日本酒であれば口当たりが滑らかになり、いままで燗(かん)をしないと飲みづらかった固い日本酒も、冷酒のまま柔らかな口当たりに変えることができます。

 

使い方は、本体に冷水を入れてワインを本体に差し込み、赤ワインか白ワインのボタンを選ぶだけ。赤ワインは20分、白ワインは15分で熟成効果が出るとのこと。日本酒やウィスキーは、5~20分程度、好みの時間で調整すればOKだといいます。

↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK

 

それにしても、長期熟成の効果をわずか数分~数十分で得られるというのは驚きですね。「時を縮める」という意味では、小さなタイムマシンのような存在といえるかもしれません。とはいえ、3万4800円と価格が安くはないゆえに、「試してみないと購入に踏み切れない」という人は多いはず。そんな方は、「Bar 霞町 嵐」(西麻布)、「Bar Eterna」(銀座)の2つの協力店舗でその効果が試せるというので、まずはそちらを訪れてみてはいかがでしょう。

↑ウィスキーにも利用可能↑ウィスキーにも利用可能

 

 

 

これは「ワインに着せるタイムマシン」だ! わずか数分で長期熟成の効果を生む「超音波デキャンタ」販売スタート

海外製品の日本展開の支援などを行うハンズエイドは、超音波技術によってワインやウィスキー、日本酒を数分で熟成させる「Sonic Decanter」(ソニック デキャンタ)を、12月18日、イノベ部公式ストアにて一般販売を開始しました。色はブラックとホワイトの2種。価格は3万4800円(税込)。小売店店頭では来春から順次発売します。

 

超音波の力でワインやウィスキー、日本酒を柔らかな味わいに!

20171218-s2 (4)↑ホワイト(左)、ブラック(右)。サイズは幅16.5×奥行17×高さ38cm

 

本機を使うと、ワインは長い年月をかけた熟成したワインのように、ウィスキーは長期熟成したようなまろやかさになるとのこと。2016年、クラウドファンディングサイト「MAKUAKE」にて600%もの支援を達成しましたが、海外での需要に生産が追いつかず、1年越しに日本発売が実現しました。

 

本機が採用するのは、空気と触れさせ酸化を促す、従来のデキャンティング(デキャンタージュ)とは全く逆のアプローチ。超音波の振動により、細かい気泡でワインを攪拌(かくはん)することによって、酸素を抜く効果を実現しました。その結果、ワインを劣化させることなく、わずか20分でワインそのものの味や、舌触り、香りを格段に良くするといいます。具体的には、防腐剤として使用される二酸化硫黄(SO2)の減少、ph値の減少、アントシアニンの減少、揮発酸(VA)の減少の4つが科学的に証明したとのこと。このほか、同社はタンニンを和らげ、アントシアニン、エステル、ポリフェノールの化学構造を改良すると説明しています。

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Sonic Decanterは、ワイン以外のお酒にも使用できます。例えば、ウィスキーであれば角が立っていた味も長期熟成したようなまろやかさに。日本酒であれば口当たりが滑らかになり、いままで燗(かん)をしないと飲みづらかった固い日本酒も、冷酒のまま柔らかな口当たりに変えることができます。

 

使い方は、本体に冷水を入れてワインを本体に差し込み、赤ワインか白ワインのボタンを選ぶだけ。赤ワインは20分、白ワインは15分で熟成効果が出るとのこと。日本酒やウィスキーは、5~20分程度、好みの時間で調整すればOKだといいます。

↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK↑時間を設定して赤か白のボタンを押せばOK

 

それにしても、長期熟成の効果をわずか数分~数十分で得られるというのは驚きですね。「時を縮める」という意味では、小さなタイムマシンのような存在といえるかもしれません。とはいえ、3万4800円と価格が安くはないゆえに、「試してみないと購入に踏み切れない」という人は多いはず。そんな方は、「Bar 霞町 嵐」(西麻布)、「Bar Eterna」(銀座)の2つの協力店舗でその効果が試せるというので、まずはそちらを訪れてみてはいかがでしょう。

↑ウィスキーにも利用可能↑ウィスキーにも利用可能

 

 

 

成城石井は「和おつまみ」の宝庫だ! 日本酒・焼酎のアテになるものランキング

「ちょっといいことがあった日や、逆に少しだけ悲しいことがあった日などは、いつもよりもワンランク上のお酒を用意して、“プチ贅沢晩酌”というのはいかがでしょう?」というテーマで3回にわたって成城石井の「ビールに合うおつまみベスト3」、「ワインに合うおつまみベスト3」「紅茶にぴったりのスイーツベスト3」を紹介しましたが、今回は日本酒&焼酎に合う和のおつまみ編。寒さが増してくるこの時期、日本酒の熱燗や焼酎のお湯割りが進む上質な3品を紹介します。

 

【3位】磯のくるみ

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第3位は「磯のくるみ」です。成城石井でこのネーミングを見かけて「何だろう?」と思って手に取ったのがきっかけです。簡単に説明すると、小魚の佃煮にくるみを混ぜたもの。「海で取れる珍しいくるみ」というわけではないのがちょっと残念ですが、食べてみると佃煮とくるみがベストマッチ! 小魚の佃煮だけでは飽きてしまうところを、くるみの香ばしさとサクッとした食感がアクセントになっていて、あと一口でやめようと思っても、いつの間にかつまんでいる中毒性のあるお酒のあてです。

 

小魚とナッツの相性の良さは、アーモンド小魚という定番のおつまみでも実証済みですよね。その佃煮版と思ってもらえば想像しやすいでしょうか。上品な味のぎんぽ白魚の佃煮とたっぷりのくるみのほか、川海老やゴマの風味も効いています。これをちびちびやりながら、焼酎のお湯割りを飲むなんて最高です。

20171113_ashida_02↑くるみがたっぷり! 甘さは控えめで上品な味です

 

 

【2位】出雲おでん

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第2位は「出雲おでん」です。おでんパックやおでん種の種類も豊富な成城石井。プライベートブランド「desica」からも「和風だし香る7種具材のごろごろおでん」が発売されていますが、「おでんの練り物が好き」という人にはこの「出雲おでん」がオススメです。

 

魚の練り物は3種類。イトヨリダイやトビウオ入りの「ちくわ」、境港産アジの「つみれ」、「のどぐろ入り天」とかなり豪華。ちくわはふにゃっとせず歯応えがあり、魚の味がちゃんとします。のどぐろ入り天はプリッとした食感で、自然の甘みとうまさを感じます。この練り物が主役……と思いきや、少し小ぶりの大根を食べると、これがビックリ、めちゃくちゃ美味しい! あごだしが中まで染みていて絶品です。二人前入っていてお得感があるのもポイント。化学調味料も無添加です。

20171113_ashida_04↑具材は全6種類。1パックに二人分、計12品とたっぷり入っています

 

 

【1位】博多あごおとし 日本酒仕込

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第1位は辛子明太子の「博多あごおとし 日本酒仕込」です。「博多あごおとし」は、「博多まるきた水産」の農林水産大臣賞を受賞した明太子ブランド。こちらの商品は、老舗造り酒屋の蔵人が醸した日本酒と、北海道産昆布・焼津産鰹の合わせだしを加えて風味をプラスした「日本酒仕込み」になっています。

 

税込で700円ほどと酒の肴としては高級品ですが、ぷっくりとしていて見た目からも品質の良さと美味しさが伝わってきます。皮の弾力もちょうど良く、箸でちぎって口に運ぶと、中のねっとりとした感覚とプチッとした粒感の両方を味わえます。しかも、明太子の旨みのあとに日本酒のすっきりとした爽やかな風味が広がり、生臭さはゼロ。そして最後にはピリッとした辛みとコクのある旨みの余韻が長く続きます。
辛口の日本酒でキリッといくと、両方が引き立て合って晩酌はエンドレス。ほんの少し醤油を垂らして、締めの明太子茶漬けもたまりません!

20171113_ashida_06↑辛子明太子といっても辛さは控えめで、旨みのほうを強く感じます。もちろん白いご飯も進みます!

この日本酒セラー、本気(マジ)だ! ギリギリの低温「-5℃」を実現する「MIYABINO」は機能も価格もケタ違い

アルテクナ(本社:東京都大田区)は、完全オーダーメイドの日本酒専用セラー「MIYABINO(ミヤビノ)」を発売します。本機の特徴は、従来のセラーには無かったマイナスの温度帯で厳密な温度管理ができること。日本酒の味を変えないためには、凍るおそれのないギリギリの低温管理(※)が理想とされており、その点、本機は-5℃~20℃の範囲で1℃単位で設定が可能。理想的な日本酒の保存温度とされる-5℃~2℃をキープでき、デリケートな生酒の長期保存も可能となっています。庫内温度は本体上部の操作パネルに表示。温度の選択も同パネルを使って簡単に行えます。

※日本酒は-10℃前後で凍りはじめます

 

-5℃~20℃の範囲で1℃単位の厳密な温度管理ができる!

↑オプション仕様の268K-S 左)、スタンダードモデルの268K-N(右)↑オプション仕様の268K-S(左)、スタンダードモデルの268K-N(右)

 

さらに、2部屋のモデルを選択した場合、各部屋で独立した温度制御が可能です。右の部屋では温度帯が高めの火入れのお酒、左の部屋では温度が低い生酒と使い分けることが可能なほか、右は日本酒、左はワインといった使い方をしてもOKです。

↑操作パネル↑庫内の温度を表示する操作パネル

 

もちろん、酒の劣化を防ぐための必要な機能もしっかりと装備。ガラスにはオリジナルの複層真空ガラスを使用し、内壁材には注入式発泡ウレタンを使用して断熱性を向上させています。ガラスはUVカットの機能を備えており、酒を劣化させる紫外線も防止。内装材には抗菌処理を施してあるので、開封後の酒の保管も安心です。さらに、扉が一定時間開いた状態が続くとアラートで知らせてくれるため、閉め忘れの心配もいりません。

↑中棚は25mm間隔で高さ調節が可能。瓶の種類や収納本数に合わせてレイアウト変更ができます。ワインボトルを寝かせ収納すればワインの保存もできます。↑中棚は25mm間隔で高さ調節が可能。瓶の種類や本数に合わせてレイアウト変更ができます。ワインボトルを寝かせて収納することもできます

 

なお、オーダーごとに設計を行うため、サイズ、部屋数、外装仕上げはユーザーの好み応じて選択できます。フロントパネルの材質、組子の柄はサンプルより選択可能で、外装はオーダーを受けてから職人が一点一点を丁寧に仕上げます。

 

ちなみに、本機を開発したアルテクナは、元サッカー日本代表で、日本酒の魅力を広く発信している中田英寿さんが主導した世界初の日本酒セラー開発プロジェクトにおいて、そのプロトタイプ(試作機)を手掛けた企業です。「世界のナカタ」のお眼鏡にかなった技術力、プロトタイプで培った経験を活かして、最高のクオリティに仕上げてきたと見ていいでしょう。

↑同社が手掛けたプロトタイプ。↑同社が手掛けたプロトタイプ(左)と、プロジェクトを主導した中田英寿氏(右)

 

さて、気になるお値段は、なんと219万5000円~(参考価格)。クルマ一台が余裕で買える価格ということで、なかなか購入できる人はいないと思いますが……大切なお酒を最高の状態で保存できるうえ、自分だけのオリジナル熟成酒を作って特別な日に楽しむ、といった使い方が可能です。日本酒を愛するエグゼクティブや、付加価値を追求する飲食店は検討の対象に、そうでない人は話のタネにしてみてはいかがでしょうか。

 

MIYABINO

268K-N(スタンダードモデル)

●参考価格219万5000円~●サイズ/質量:W675×D650×H1650mm/200kg●有効内容積:280ℓ●収容目安:一升瓶36本、4合瓶94本●温度制御範囲:-5℃~20℃

「マジか…」日本酒ファンが絶句する大ニュース! あの「酒づくりの神」がクラウドファンディングで電撃復帰

「日本酒好きには見逃せないプロジェクトが開始致しましたのでご連絡です!」

クラウドファンディングサイト「Makuake」の運営元、(株)マクアケの広報さんからこんな見出しのメールが届きました。

 

イヤイヤ、見逃せないことなんて、そうそうあるわけが…

「本日つい先ほどより、『酒づくりの神様』の異名を持つ、農口尚彦氏(84)が最前線に復帰し…」

 

……マジか。

農口尚彦(のぐち・なおひこ)氏といえば、確かに日本酒ファンの間で神格化されている「能登杜氏四天王(のととうじしてんのう)」のひとり。27歳で「菊姫」の杜氏(※)に就任して同ブランドの名を不動のものとし、「現代の名工」や「黄綬褒章」なども受賞した伝説の人物です。2010年に放送されたNHKのドキュメント「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、麹を食べ続けたため40代で歯がすべて溶けてしまった…という衝撃のエピソードを披露していました。

※杜氏(とうじ)…酒造りの職人を束ねるリーダーのこと

20171116-s4 (1)↑農口尚彦さん

 

ちなみに、筆者は「菊姫」退職後の鹿野酒造(銘柄:常きげん)時代の農口さんに会いに行き、自分のなかでこれを一生の宝としていました。当時を思い返してみると、農口さんの透明感のある表情が印象に残っています。筆者が「これだけ味がしっかりしていてもキレがいんですね…」と試飲の感想を述べると、農口さんは薄く笑みを浮かべながら「のどにモタつく酒は造りがヘタ。しっかりとキレる酒にするのが杜氏の腕のみせどころ」と語ってくれました(うろ覚えですが)。その後はその年の造りの話になり、「日本酒度(※)が思っていたのと違う」「日本酒度が、日本酒度が…」と、うわごとのようにつぶやいていたのを覚えています。

※:日本酒度…日本酒の糖の含有量を推測するための単位。日本酒の甘い、辛いを判断する指標になります

 

…たしか、農口さんは2015年に引退したと聞いていましたが……そうか、復帰したのか!

 

マクアケさんからのメールの続きを読むと、農口さんは、「夢や情熱を持った若者と共に酒づくりを行いたい」という熱い想いで復帰を決意。新しく建設した酒蔵「農口尚彦研究所」で7人の若者とともに酒づくりを再開し、そこで一番最初に醸造した酒を、いち早く「Makuake」の支援者に届けるというプロジェクトがスタートしたそうです。

↑↑農口さんと7人の蔵人。アメリカ・オレゴン州出身の蔵人(左)の姿も

 

さて、農口さんの代表作といえば、「山廃吟醸」(やまはいぎんじょう)、通称「山吟」(やまぎん)が有名です。こちらは、独特の酸味が楽しめる昔ながらの「山廃造り」と、米を磨いて低温発酵させる「吟醸造り」を組み合わせ、コクと透明感を両立したもの。かつて筆者が口にしたときは、その完成度の高さに脱帽するしかありませんでした。…さて、Makuakeのラインナップはどうだ…?

 

サイトを見てみると、ラインナップは「本醸造酒」「山廃純米酒」「山廃吟醸酒」の3種類。…やっぱり「山吟」あるじゃない! 価格は「本醸造酒」で720ml×2本で5500円~、例の「山吟」が720ml×2本で7500円~と決して安くはないが、これは日本酒ファンなら絶対ほしい。1秒後に飲食店の買い占めがあってもおかしくないレベルです。筆者も、いつもなら「みなさんもぜひ」と締めるのですが、日本酒ファンとして自分の胸だけにとどめておきたい…という思いもあり、幅広い人に知ってほしくもある、という…とにかく複雑な気持ちです。

↑↑左から本醸造酒、山廃純米酒、山廃吟醸酒

とんでもない快挙だ! 世界的なデザインコンペで新潟の地酒が1位を獲得

新潟県の麒麟山酒造(東蒲原郡阿賀町)による日本酒が、世界的なパッケージデザインコンペティション「ペントアワード 2017」において、飲料部門・最高位のプラチナ賞を受賞しました。「ペントアワード」は2007年1月の創設された、世界で最も権威があるとされるパッケージデザインのコンペティションです。

 

毎年、世界中から応募作品が寄せられ、著名なデザイナーや大手企業のパッケージデザインディレクターからなる12名の国際審査員によって審査されます。 審査は55種類以上のカテゴリーで行われ、そのなかから飲料、食品、ボディ、ラグジュアリー、その他の主要5部門それぞれにプラチナ、金、銀、銅の各賞を授与。さらに全体の最優秀作品としてダイヤモンド賞1点が選ばれます。

 

シンプルなデザインが評価され飲料部門の1位を獲得

20171110-s2 (5)

今回受賞したのは、麒麟山酒造が製造する長期熟成吟醸原酒「紅葉 金(もみじ きん)」。パッケージデザインでは、シリーズが持つ味と背景を直感的に伝えるため、木々が色づくように旨みが増すイメージを表現。ふだん日本酒を飲まない層にもアピールすべく、紅葉を一枚配しただけのシンプルなデザインとしたところ、「ペントアワード」の国際審査員にも高く評価されました。デザインを担当したのは新潟市のデザイン事務所・フレームの代表取締役、石川竜太氏。

 

受賞した「紅葉 金」は、歴代の杜氏が3代にわたって守り続けた熟成酒で、2016年11月に1000本限定で特別販売されたもの。その酒質は、二十年以上の長い熟成を経て淡い琥珀色となり、蜜のような芳醇さとまろやかな酸味を併せ持つ、奥深い味わいだといいます。ぜひ味わってみたいところですが、本品は特別蔵出し商品のため2017年は販売しないとのこと。販売する際は、そのつどアナウンスするといいます。

20171110-s2 (3)↑ペンドアワードのプラチナ賞を受賞した「紅葉 金」

 

なお、麒麟山酒造は、使用する9割以上の米を地元・阿賀町産の米でまかない、酒の劣化を防ぐために述床面積2000㎡の貯蔵棟を建設するなど、先進的な取り組みで注目を集めている蔵。新潟の淡麗辛口(※)の魅力を広く伝えことにも注力しており、受賞はその活動の一部が実を結んだ形です。今後、より注目を集めるのは間違いなく、全国の蔵元の良いモデルケースになるという意味でも、日本酒界全体への好影響が期待できそうです。

※淡麗辛口…甘味と酸味が少なく、さっぱりしている日本酒の味を表す言葉

20170919-s3-1-1↑麒麟山のレギュラー酒のラインナップ。こちらも受賞酒と同じく石川氏によるデザイン

 

麒麟山酒造では常浪川の伏流水を仕込み水として使用し↑麒麟山酒造がその伏流水を仕込み水として使用する常浪川の風景

 

日本酒ブームの影で増加する酒蔵の廃業――「買収」という「ポジティブな手法」が蔵元を救う

多数のメディアで日本酒が特集される昨今、業界全体が盛り上がっているようにも見えますが、残念なことに廃業を余儀なくされた酒蔵は年々増えています。累積赤字、跡継ぎ不在、その理由はさまざま。現在も存続の危機にある酒蔵は少なくありません。南アルプスの麓の自然環境と良質な水に恵まれた土地で、地元の酒米を使った「今錦」を醸してきた米澤酒造も、そんな蔵のひとつでした。

 

トヨタ社長も注目する年商約200億円の企業が地方酒蔵を子会社化

「造り酒屋は村の大切な伝統であり、文化です」。そんな想いを持った企業が、米澤酒造の再生に名乗りを上げます。2014年、地元企業の伊那食品工業が米澤酒造を子会社化。伊那食品工業は、寒天の家庭用ブランド「かんてんぱぱ」などを展開する食品メーカーです。国内市場のシェアは約80%で年商約200億、1958年の創業以来48年間増収増益を達成してきた、長野県が誇る超優良企業です。

↑記者会見で熱い想いを話す、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さん。塚越さんが説く「年輪経営」は、日本を代表する企業「トヨタ」の豊田章男社長が注目し、各グループ会社のトップにその理念を学ぶように指示したことでも有名です↑記者会見で熱い想いを話す、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さん。塚越さんが説く「年輪経営」は、日本を代表する企業「トヨタ」の豊田章男社長が注目し、各グループ会社のトップにその理念を学ぶように指示したことでも有名です

 

存続の危機にある酒蔵を再生しようとする動きは、いまや珍しくありません。複数の酒蔵を子会社化してグループ経営するケース、大手酒蔵が地酒蔵を買い取るケース、異業種から酒蔵経営に乗り出すケースなど、経緯や目的はさまざまです。酒蔵経営をしたいからといって新たに酒造免許を取得するのは困難なこともあり、この先「酒蔵買収」は日本酒業界のひとつの流れになるでしょう。その現状を知るために、「米澤酒造酒蔵全面リニューアル」に向けた記者見学会に参加してきました。

 

素晴らしい景観と文化を残すために造り酒屋を守る

明治40年に創業した米澤酒造が蔵を構えるのは、長野県上伊那郡にある中川村。「日本で最も美しい村」連合に加盟する、南信州・伊那谷のほぼ真ん中にある小さな村です。村の真ん中を天竜川が蛇行するように流れ、この蛇行と山脈の隆起によって形成された「河岸段丘」という特異な地形が中川村の風景。キノコ、野菜、ジビエ、そしてお米など、豊富な特産物に恵まれています。伊那食品工業が米澤酒造を子会社化した最大の目的は、この中川村の観光資源を守るため。「造り酒屋は観光資源」と、伊那食品工業株式会社取締役会長の塚越 寛さんは言います。

↑中川村の風景↑中川村の風景

 

米澤酒造のラインナップには、定番の「今錦」ブランドのほかに、数量限定酒「おたまじゃくし」があります。このお酒は、中川村の飯沼地区の棚田だけで生産された酒造好適米「美山錦」を100%使用。地域を巻き込みながら、村民と酒蔵が一体となり、田植えから稲刈りまでを行なっています。減少しつつある日本の原風景、棚田。この素晴らしい景観と文化を残すために醸されてきたお酒が「おたまじゃくし」です。地域を守る、地域の雇用を守る。それは、かつて造り酒屋が担っていた使命でした。この「おたまじゃくし」の取り組みが、会長の塚越 寛さんが言った「造り酒屋は観光資源」という言葉の真意です。

↑↑米澤酒造のラインナップ

 

↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です

 

子会社化により、最新設備が整ったまったく新しい酒蔵に変貌

米澤酒造が伊那食品工業の子会社になったことで、蔵や酒はどう変わるのか。蔵見学で目の当たりにした現実は、想像をはるかに超えていました。「いい酒にはいい設備が必要」という考えのもと、伊那食品の寒天作りで培った氷温設備、最新の瓶詰機械などを導入。食品会社が指導する徹底した衛生管理のもと、米澤酒造はまったく新しい酒蔵として生まれ変わりました。製麹室も新設され、リニューアルというよりも「新蔵が建った」という表現のほうが的確かもしれません。蔵内の空調管理も徹底され、仕込み蔵、槽場、瓶詰場すべてにおいて低温環境を実現。火入れのラインには超高額機械「パストライザー」を導入するなど、お酒に負担をかけずに高い品質をキープするための設備が整っています。今後、従来の「今錦」よりもフレッシュ感を残した酒質に変化していくことは明確。長野県を代表する「真澄」から新杜氏を迎え、完全新設備のもと29BY(平成29年酒造年度)から新生「今錦」がスタートします。

↑近代設備を備えた↑近代設備を備えた蔵の内部

 

↑↑火入れの工程

 

ただし、大半の設備が一新されましたが、槽搾り(ふなしぼり)製法だけは踏襲。ゆっくりと上から圧力をかけて搾るので、お酒に負担がかからず、きれいな酒質に仕上がります。米澤酒造では、全量をこの槽搾りで造っています。棚田米を使った「おたまじゃくし」の取り組みを含め、中川村の酒蔵として守り続けてきた本質は変えず、新たに変化を重ねていく「不易流行」というスタンスを、生まれ変わった米澤酒造から強烈に感じました。

↑槽搾りの光景。発酵した醪を布袋に入れ、ひとつひとつ槽の中に並べ、ゆっくりと上から圧力をかけて搾る方法。手間がかかるため、この方法で搾る蔵は全国的に減っています↑槽搾りの光景。発酵した醪を布袋に入れ、ひとつひとつ槽の中に並べ、ゆっくりと上から圧力をかけて搾る方法。手間がかかるため、この方法で搾る蔵は全国的に減っています

 

単なる酒蔵から中川村の観光拠点へ

「酒蔵買収」と聞くと、何やらネガティブに感じる人も多いと思います。かくいう筆者もそうでした。でも、「中川村の観光資源を守るため」という伊那食品の大義を理解して物事を見つめると、非常にポジティブなことばかりです。今後、大手食品会社の研究機関を利用することで、発酵食品としての日本酒の魅力を科学的に実証していくことも可能でしょう。そういったデータをもとにした酒造りも、新生「今錦」に期待したいアプローチのひとつです。また、2017年11月下旬には日本酒造りの様子を見学(事前予約制・無料)できる観光蔵としてオープン予定。江戸から明治期に作られた徳利250本をディスプレイした店舗で、お酒の購入も可能に。単なる酒蔵ではなく、地元アーティストの作品や特産品も販売し、中川村の観光拠点として訴求していくそう。飯沼地区の棚田がある「日本で最も美しい村」の景観や文化を、未来のために維持・発展させていくことが、米澤酒造の夢。キャンプ場も温泉もある中川村に足を運び、その風景を前に、地元の食材と共に「今錦」や「おたまじゃくし」をいただく。それが極上においしい、地酒の味わい方です。

↑田んぼとアルプスが調和する飯沼棚田。ここで村人と蔵人が育てた美山錦を使って醸す酒が「おたまじゃくし」です。地域と醸す酒。正真正銘の地酒です