dancyu元編集長が関西限定誌『あまから手帖』に移籍して再確認した、雑誌を作る意味

星の数ほどある飲食店のなかから、行きたいお店の情報をどうやって手にいれるでしょうか? SNSかグルメレビューサイト? インターネットに情報があふれ手段が多様化するなかで、ある雑誌が気を吐いています。

 

発行エリアが限定される“リージョナル誌”でありながら全国誌に引けを取らない部数を発行するグルメ誌『あまから手帖』(クリエテ関西)。ネットの時代でも、読者に支持される理由とは? 同誌の編集長、江部拓弥さんに、読者、さらに取材対象者を引きつけ続けるための工夫や、大切にしていることをうかがいました。聞き手は、ブックセラピストの元木忍さんです。

 

『あまから手帖』(クリエテ関西)
1984年創刊。毎月23日発売の月刊誌。大人の愉しい「食」マガジンをコンセプトに掲げ、大阪、京都、兵庫を中心とした豊かな関西の食を届けている。写真は2024年5月号。

 

作り手も読み手も楽しめるように
ルーティン化を避けて制作する

元木忍さん(以下、元木):江部さんは、2017年7月号まで『dancyu』(プレジデント社)の編集長をつとめていらっしゃいました。その頃は東京を拠点にしていたわけですが、『あまから手帖』の編集長就任にあたって、1年半前に大阪に移られたそうですね。雑誌作りの面で、東京と大阪では何か違いは感じましたか?

 

江部拓弥さん(以下、江部):実際に移り住んで感じたことは、東京と比べるとフォトグラファーなど制作スタッフも印刷会社も絶対数が少ないので、選択肢が自然と少なくなる、ということです。つまり、同じ人と仕事することがおのずと多くなっていく。ですからルーティン化を避けるような雑誌づくりをしたい、と思うようになりましたね。

 

元木:定期刊行する月刊誌では、ある程度ルーティン化してしまいがちなものですよね。一号作るたびに、一度立ち止まって考えよう、ということ?

 

2022年9月から『あまから手帖』編集長を務める江部拓弥さん。経歴からグルメ一筋なようでいて“グルメ業界人”らしくないキャラクターに、スタッフなどからの信頼は厚い。

 

江部:そうですね。いろいろな選択肢から選べるほうが、そもそも制作していても楽しいし、面白いものができるよねってことを、編集部員と一緒に体験しています。

 

元木:たとえばどういったことに楽しさを感じますか?

 

江部:たとえば、書店に並んだ時に立ち読みした人の指紋が目立つ黒表紙は、書店から敬遠されやすいから選ばない、と今まで判断していたとしましょう。ですが、印刷加工を工夫することで、指紋がつきにくい黒表紙の装丁も可能になった、なんてこともありましたね。

 

2023年12月号。手で触れても指紋がつきにくい加工が施された黒表紙は、第一特集のテーマ「鮨」の写真を引き立たせている。

 

2023年12月号。

 

元木:妥協することなく、思い描いたものが作れるのは、作り手にとってこの上なく幸せなことなのではないでしょうか。読み手にとっても、技巧を凝らした雑誌を手に取れるというのは雑誌を読む楽しみにつながりますしね。

 

江部:そう感じてもらえていたらうれしいですね。

 

雑誌との出会いは一期一会。
読者にとっての”読む意味”を意識する

元木:反対に、「大阪から見た東京」という視点で気づいたことなどありますか?

 

インタビュアーをつとめる、ブックセラピストの元木忍さん。

 

江部:選択肢が限られる環境に身を置いたからこそ、どうしたら紙(雑誌などの紙媒体)ならではの魅力が伝わるんだろう? とあらためて考え始めましたね。選択肢が多い東京時代には気づかない視点だったかもしれません。

 

元木:本を読む意味や本の価値ってなんだろう、と気付かされた?

 

江部:そうです。本を取り巻く環境に思いを馳せてみると、昔は街中に書店がたくさんあったから、待ち合わせ場所に使うことがよくありましたよね。

 

元木:そうでしたね。相手を待っている間に本の方が気になったりして、書店から出られなくなってしまうこともよくありました(笑)

 

江部:そうそう。目の前にずらっと並ぶ本のなかから、一期一会の出会いが楽しめた。それは、パラパラとページをめくる体験であったり、見た目の美しさや、手に取った時の手触り感を楽しむ体験であったり。これこそが、紙ならではの魅力で、読む意味につながるのだと思っています。

 

2023年9月号、第一特集は「梅田にキタ」。たこ焼きソースの部分は、ハジキニス加工によって、周囲とは異なるつるっとした手触り。まさにソースの照りを触感で体験できる。「手触りが良い服だと心地よくなるのと同じで、雑誌でも触って気持ちよい、楽しい気分になってくれたらいいなと思っています」と江部さん。

 

2023年9月号。

 

2023年11月号。第一特集「奈良に行きたくなる。」に合わせて表紙左上に忍ばせたのは、奈良県マスコットキャラクターの“せんとくん”。凹凸のある手触りを感じられる、ハジキニスという加工を採用した。光の加減で加工部分が見えたり見えなかったりの仕掛けも、作り手の遊び心を垣間見られて楽しい。

 

2023年11月号。

 

元木:今はインターネットで本が簡単に買える時代。本との新しい出会いや編集側の伝えたい気持ちに出会いにくくなっているようにも感じます。

 

江部:時代が変わっても、本や雑誌は「そのままの状態で残る」「いつでも手に取って触れる」という特性は変わらないはず。ですから、残したいものをつくらなきゃっていう思いは常に強く感じています。皆さんには、もっと書店に立ち寄って欲しいですね。そして、生ビール中ジョッキをもう1杯飲むくらいなら、『あまから手帖』を買おうかなと思ってほしいです(笑)。

 

元木:書店には素敵な出会いがあり、宝物を探すような感じで『あまから手帖』を手に取って、感動してもらいたいですよね。

 

“濃い”関西グルメを伝えるには
店や常連客との関係性を大切に取材する

元木:『あまから手帖』を拝読したときに素敵だなと思ったのが、写真や文章からお店の雰囲気や店主の人柄までしっかりと伝わってくるところ。読者が実際に訪れたかのような臨場感があるんですね。どのような工夫をされていますか?

 

江部:お店との関係性を大切にしたやりとりを心がけています。関東と比べてもエリアごとの店舗数が少ないですし、短期間でいきなりお店が増えることもまれです。店と編集部の距離感が近いといえるでしょう。あと、お客さんとの距離も近いかな。

 

元木:お客さんとの関係性というと、取材中に仲良くなる、とか……?

 

江部:撮影中であっても、常連さんから声をかけられることがあります。お店のいいところを店主さんに代わって教えてくれたり、取材内容にダメだしされたりも(笑)。

 

元木:それは本物のマーケティングですね(笑)。話はお店との関係性に戻りますが、お店とのお付き合いがこの雑誌づくりにとって貴重な情報源ということでしょうか?

 

江部:はい。そういった事情があるので、取材の機会以外でも、できるだけ足を運ぶようにしています。まずは“ロケハン”で、お客として食べに行くことから始まり、取材依頼をする際も店舗に直接伺ってお願いする。原稿も、メールではなく持参が望ましいです。もちろん、遠方だったり時間的な余裕がない場合はなかなか難しいのですが……。読者と雑誌との関係と同じく、取材も一期一会。そのぶん、濃密なものにできたらという思いはいつもあります。

 

元木:とにかく、顔を出すこと=コニュニケーションこそが重要、ということですね?

 

江部:そうですね。取材時だけしか訪問しないとなると、お店としては、ロケハン時はこちらが誰であるのかわからないので、会ったのは取材の一度きりということになりますよね。ただでさえ距離感が近いのに、その場限りと捉えられては“いい話”も聞き出せないでしょう。ままならないこともありますが、掲載後にも食べに行ったり、呑みに行ったりしています。昭和的な考え方かもしれないので、若い店主などは鬱陶しいと思うかもしれませんけどね(笑)。

 

元木:温かみを感じる取材スタイルだと思います。これも関西ならではなのかもしれませんね。

 

 

取材内容をどう誌面に落し込むか
手本はポップミュージックの三原則!?

元木:取材内容を誌面に反映するために意識していることを教えてください。

 

江部:大学生の時に邦楽誌『ROCKIN’ON JAPAN』(ロッキング・オン)のインタビューでザ・ブルーハーツの真島昌利さん(現ザ・クロマニヨンズ)が、「難しいことはわかりやすく、わかりやすいことは面白く、面白いことは深く」と答えていて、それはポップミュージックの三原則である、と。作家の井上ひさしさんも同じことをおっしゃっています。雑誌つくりで迷ったら、その言葉を思い浮かべますね。

 

元木:素敵な話ですね! この三原則を意識して、編集を続けていらっしゃるのですね。最近制作した記事や特集はありますか?

 

江部:取材の前段階、特集内容を考えるときの話にはなりますが、2024年4月号の「名店特集」でしょうか。過去にも特集していたこともありましたが、あまり振るわなかったと聞いています。それはおそらく、雑誌をパッと開いた時に「“俺の”“私の”本じゃないや」、と読者が感じてしまったからなのでは、と思っています。

 

2024年4月号の第一特集「名店とは何か?」。表紙は文字だけで構成した。中央のグルメジャンルに混ざったピンク色の文字だけを拾っていくと、“ハ・ル・菓・キ・タ・ー”=春が来た。そんな仕掛けを探すのも楽しい。

 

元木:“名店”とは、ミシュランガイドで星を獲得した店や、ちょっと敷居が高く感じるとか価格そのものがちょっと高いところをイメージしてしまいますが、そういった理由でしょうか?

 

江部:そうかもしれませんね。“名店”の一般的なイメージは、作り手も書き手も同じでしょう。それなら、あえて別の視点から何かできないかなと思ったんです。今回の名店特集では、「名店とは何か」というテーマにして、掲載している店一つずつに答えがある作りにしました。何かしら響いてくれる記事があるといいなと思っています。

 

元木: 名店を一方向でなくまとめて特集にされたことは、新しい挑戦を感じる企画ですね。今後の江部さんは、どんな挑戦をしていきたいですか?

 

江部:情報媒体というメディアの特性上、どうしても新しいモノに価値を置かれやすいのですが、そんななかでも、古いモノをどう受け入れてもらえるか。どのように取り上げていけばいいのかを考えることが、今後の課題です。

 

元木:雑誌は、新しいモノを掲載することが価値基準のひとつでしたが、もっともっと老舗やいま既に存在しているものに光を当てられたら素敵ですね。2024年11月には、創刊40周年を迎えるとのこと。今後も江部さんの新しいチャレンジを応援しています。今日はありがとうございました。

 

Profile

雑誌『あまから雑誌』編集長 / 江部拓弥

大学卒業後にプレジデント社に入社し、雑誌『プレジデント』編集部を経て、2008年『dancyu』に異動。2013年9月から編集長に就任し2017年6月まで務める。2018年に「dancyu web」を立ち上げ。2022年9月から『あまから手帖』編集長を務めている。

 

ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングスからキャリアをスタート、常に出版流通の分野から本と向き合ってきたが、東日本大震災を契機に一念発起、退社。LIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。

“丁寧な暮らし”を20年前から提案…『天然生活』編集長が伝えたい日本人がこれからも“豊か”に生きるヒント

パンデミックを経て、日々の暮らしを見直したり、家の中での時間や空間を充実させたりする人が増えました。衣食住にあらためて注目が集まるようになったといえるでしょう。

 

そんな“トレンド”に先立つように、20年も前から「暮らしを育むこと」をコンセプトにして、幅広い年齢層から支持を集めてきた雑誌が、『天然生活』とその別冊『暮らしのまんなか』。編集長を務める八幡眞梨子さんに、自分の暮らしを整えることの魅力や、雑誌の作り手、そして伝え手としての思いやこだわりを伺いました。聞き手は、ブックセラピストの元木忍さんです。

 

『天然生活』(扶桑社)
2004年創刊。毎月20日発売の月刊誌。手を動かすことを楽しみながら過ごす、シンプルでナチュラルな暮らしを大切にし、20年間一貫して提案してきた。写真は2024年2月号。

『暮らしのまんなか』(扶桑社)
『天然生活』の別冊として2005年に創刊。インテリアや家事を多く取り上げている。暮らしに「軸」をもつ人の住まいや暮らしに、インタビューと写真で迫る。6月・12月の年2回刊行。写真はVol.38。

 

暮らしを整えることは
自分を整えること

元木忍さん(以下、元木):いまでこそ、”豊かな暮らし”や”サステナブル”といった言葉が定着しましたが、『天然生活』や『暮らしのまんなか』が創刊された2004年から2005年の頃は、まだまだ知られていませんでしたよね。ようやく“時代が追いついた”ように感じています。八幡さんが感じる、両雑誌の魅力を教えてください。

 

八幡眞梨子さん(以下、八幡):ありがとうございます。もともと日本は資源に恵まれているとはいえない国でしたから、あるものを生かして工夫していく、手を動かして暮らしをつくっていくことで、豊かさを手に入れたように感じます。

 

元木:そうですね。

 

八幡:そういった日本ならではの事情と、両雑誌それぞれのテーマである「手を動かして暮らしをつくっていくこと(天然生活)」「暮らしの軸を丁寧に写すこと(暮らしのまんなか)」が私含め、読者にも自然と受け入れられたのかもしれません。

 

『天然生活』編集長を務める八幡眞梨子さん。

 

元木:まさに日本人のDNAにぴったりなテーマというわけですね。私も、家でぬか漬けをこしらえたり、梅酒を漬けてみたりしたことで、自分で暮らしをつくっている感覚、”生きる自信”のようなものがついた気がしますから。

 

八幡:それは素敵な暮らしぶりですね。私も、自宅の床材に国産の無垢材を貼ったり、壁紙を全部剥がして、ホタテ漆喰を塗ったり、DIYを楽しんでいます。高価なものはありませんけど、家の中を整えることは自分が整うことなので、興味がつきません。

 

元木:贅沢ではなくても、日々をおろそかにしないことが豊かさに繋がるのかもしれませんね。

 

八幡:そう思います。暮らしをおざなりにしないようにできるといいですね。家の中にひとつだけ、お気に入りの家具を取り入れる。植物を育てる。照明を変えてみる。味噌や梅など保存食をつくる。カーテンをつくってみる、など。そのための楽しい知恵やノウハウを、雑誌をとおして、伝えていきたいと思っているんです。

 

旬食材の一汁一菜こそ豊かな食事!「昭和」は現代を生きる教科書だった

 

読者はもうひとりの編集部員
叱咤激励に真摯に向き合う

元木:読者たちの年齢層ですが、聞くところによると30代から60代と幅広いようですね。なかには20代もいるとか。世代を超えて多くの人の心をつかむ雑誌として、心がけていることはありますか?

 

今回のインタビュアーで、ブックセラピストの元木忍さん。

 

八幡:編集者として世の中の動きにアンテナを張るのは当たり前なのですが、それと同じくらい、読者の意見を大切にしています。(当初の発行元である地球丸が2019年に破綻し)発刊がままならなかったときもありましたが、『次号を待ち望んでいます』『ゆっくりでもいいから廃刊だけはしないで』と声を上げてくれ、復刊に向けて支えてくれたのは読者のみなさんでした。

 

元木:そのとき初めて、読者の声に触れたんですね。

 

八幡:はい。毎号、何かしらのテーマを決めて発刊するわけですが、今はわれわれ作り手の独りよがりにならないよう、読者の好きなこと、知りたいこと、求めていることを取り上げています。

 

元木:今は“雑誌が売れない時代”とされていますが、『天然生活』『暮らしのまんなか』は読者に寄り添った雑誌づくりを心がけているからこそ、支持され続けているわけですね。それにしても、次号を待ち望む声をいただけるのは編集者冥利に尽きますよね。

 

八幡:本当にありがたいことです。最近では、多いのが「見るとほっとするから、手仕事をもっとみたい」という声です。天然生活であれば、どの号も季節の仕事をちりばめるようにしたり、誌面のあしらいを工夫したりしています。

 

写真は、取材先の識者や現場の雰囲気が伝わるようなものを多く使います、と八幡さん。

 

元木:一方で、叱咤激励の声をいただくこともありますか?

 

八幡:はい。たとえば以前、収納アイテムとしてプラスチック製の容器を紹介したことがありました。これには、『丁寧な暮らしをテーマにする雑誌としてどうなのか』というお叱りの声を複数頂戴しました。読者のみなさんから学ぶことは多いですね。

 

元木:一方的に発信するのではなく、読者からも学び、寄り添う姿勢が伝わっているのでしょうね。

 

八幡:いつか、『天然生活』や『暮らしのまんなか』の世界観が体験できるような場所をつくり、読者のみなさんと直接触れ合える場をつくれたらと思っています。

 

八幡さんがいままで編集として携わったなかで、個人的にお気に入りという3冊。思い入れの深い『天然生活』復刊記念号。真ん中は毎年恒例の二十四節気七十二候が載るカレンダーが付録でついた2024年1月号。右端が『暮らしのまんなか』創刊号。

 

日本人として、編集者として
暮らしの知恵をつなげていきたい

元木:どの号を見ても新しい発見があります。長くやっていると内容を重複しないようにするのって大変なんじゃないかと思うんですが、気を付けていらっしゃることはありますか?

 

八幡:同じテーマでもその時代に合ったやり方に合わせていく。ちょっとずつアップデートしていく……そういったことでしょうか。たとえば梅干しの漬け方を紹介するにしても、20年前だったら塩の濃度は20%程度としょっぱいくらいが普通でしたが、最近は塩分を気にする方が多く、10%程度と控えめ。また梅酒ならブランデーを使う人も増えています。そんなちょっとした変化を敏感にとらえて、大切にしていますね。昔ながらの日本の伝統文化のベースは崩さず、時流にあった知恵を伝えていくのが役割だと思っています。それが文化の継承になったら、なおのことうれしいですね。

 

老舗雑誌を率いる一方で、プライベートでは新しいことへの挑戦にも積極的な八幡さん。最近になって一念発起、運転免許をとって中古車を購入しドライブを楽しんでいるそう。

 

元木:いまは何をするにも“便利”“時短”が当たり前。でも日本古来の知恵や良いモノを知る人が増えることで、丁寧に暮らしを紡いできた昔の日本に戻れるかもしれませんね。

 

八幡:そうですね。丁寧に作られた曲げわっぱの弁当箱など、美しいですよね。そういった日本の伝統工芸の良さについても、実際に使っている人の暮らしを見せることで、伝えられたらいいなと思います。

 

元木:時代の空気を読みつつ、今昔の日本の知恵やモノを紡ぐお仕事、素敵ですね。21年目も楽しみにしています! 今日はありがとうございました。

 

『天然生活』ウェブサイト

 

Profile


雑誌『天然生活』編集長 / 八幡眞梨子

料理の雑誌編集部や書籍編集を経て、2008年に『天然生活』編集部に配属。2018年より現職。当初の発行元である地球丸から現在の扶桑社に移籍後も変わらず、編集長を務めている。『暮らしのまんなか』では10号から20号の社内編集を担当したのち、現在は編集人。

 

ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングスからキャリアをスタート、常に出版流通の分野から本と向き合ってきたが、東日本大震災を契機に一念発起、退社。LIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。

 

元マリメッコデザイナーが語る、性差のなさ・自立・のびのびした雰囲気…幸福度No.1の国フィンランドに学ぶ幸せに生きる秘訣

北欧の一国、フィンランドといえば、作家トーベ・ヤンソンの代表作『ムーミン』や、「マリメッコ」でおなじみ。あるいは、“幸福度No.1の国”とのイメージが強いのではないでしょうか?

 

なぜフィンランドが私たちの目に魅力的に映るのか、なぜ幸福度が高いのか———沖縄での英語教師生活から一転、20代後半でフィンランドに渡り、現在は当地でテキスタイルデザイナーとして活躍している島塚絵里さんは、この答えとなる著書『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』を出版。フィンランドの魅力と幸せに生きるヒントをうかがいました。聞き手は、ブックセラピストの元木忍さんです。

 

『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)
どうしてフィンランドは、幸福度No.1なのか? 仕事・子育て・家族との関係、そして休みや自然の楽しみ方など、無理せず自分らしく生きるフィンランド人の暮らしの中に、そのヒントがあります。フィンランドで結婚し、子育てをしながらデザイナーとして活動する著者が、日々の暮らしの中で見つけた幸せのかたちを綴った、365日のエッセイ。

『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』(パイ インターナショナル)
暗くて寒い冬が長く、楽園とはほど遠いフィンランドが、どうして幸福度ランキングで1位に輝くのか? フィンランドに移住して16年の著者が、家族や仕事を通して気がついた、ポジティブな思考や暮らしの楽しみ方、そして自然・人・仕事との付き合い方など。

 

 

13歳の少女が感じた
フィンランドのおおらかさ

元木忍さん(以下、元木):フィンランド在住でテキスタイルデザイナーをされているという島塚さんですが、移り住んでからもう16年も経つんですね。移住のきっかけは何だったのですか?

 

島塚絵里さん(以下、島塚):移住したのは27歳のときですが、きっかけは13歳のときに、母から「ホームステイに行ってみない?」ともちかけられたことです。それも、国際交流にかかわりの深い母の友人からの誘いで、当時たまたま日本人参加者に欠員が出ていたという偶然が重なっての出来事でした。

 

フィンランドでテキスタイルデザイナーとして活躍する島塚絵里さん。

 

元木:やっぱり、13歳の体験で感じたインパクトみたいなものは大きかった?

 

島塚:そうですね。当時は英語もフィンランド語もしゃべれなかったので、感じることしか出来なかったんですが、視野がぐっと広くなった気がしました。何か言われたりされたりしたわけではないですが、男女間もフラットで分け隔てない感じがしたし、のびのびした雰囲気が印象的で。それでいて、個々が自立している様子にぐっと惹きつけられた記憶があります。

 

 

“he”と“she”が存在しない
性別に関係なく生きていく国民性

元木:その“男女がフラット”という傾向については、この本を読んで印象的に感じたことのひとつです。日本とは大きく違うように感じて。実際、島塚さんが実感したエピソードはありますか?

 

島塚:今はフリーランスのテキスタイルデザイナーをしている私ですが、30代前半はマリメッコでテクニカルデザイナーとして働いていました。マリメッコは現社長も創立者も女性、そして社員の9割を占めるのも女性です。マリメッコに限ったことではないのですが、女性が活躍できる風土があるように思います。

 

聞き手の、ブックセラピスト・元木忍さん。

 

元木:それなら安心して産休も取れそうですし、働きやすそうな環境ですね。日本も女性が仕事と家庭を両立する時代になってきたものの、なかなか精神的に追いついてきていないように感じることもあります。

 

島塚:フィンランドでは、「結婚するから女性が仕事を辞める」とか「職場では女性より男性が活躍する」といった価値観はないように思います。サンナ・マリン前首相は就任当時は34歳で、小さな子どもを育てながら執務に当たっていました。そんなマリン首相が子どもの頃、大統領を務めたのは“ムーミンママ”の愛称で国民から親しまれたタルヤ・ハロネンでした。12年にもわたる長期就任だったため、「男の人でも大統領になれるの?」と子どもたちから疑問の声すら挙がるほどだったそうです。

 

『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』より。家事は夫婦で手分けして担当。性別はもはや関係なく、得意な方がするという仕組みなので、家庭によって分担は異なります。

 

元木:フィンランドは女性政治家も多いと聞きます。国全体として、男女を分け隔てなく扱う意識が根付いているのですね。

 

島塚:そういったフィンランドらしさを表す象徴的な言葉に「hän(ハン)」というのがあります。これは中性語と呼ばれるもので、英語でいうhe(彼)とshe(彼女)の意味を含む“人”を表す言葉です。

 

元木:性別に関係なく生きましょうという国民性なわけですか。現代社会で問題になっていることはフィンランドには関係ないようですね。このエピソードだけでフィンランドのファンになってしまいます。

 

 

つらいときでも自分を信じて頑張れば、きっと上手くいく!
「Sisus(シス)」の精神

元木:「hän」という言葉に男女のフラットさが垣間見えました。島塚さんが感じたフィンランドの印象として“個々の自立”というキーワードを挙げられていましたが、これにまつわるエピソードも教えてください。

 

島塚:自立を語るには「Sisus(シス)」という言葉が欠かせません。これは、フィンランドの精神を表す言葉でもあります。意味としては、日本語でいうところの“忍耐”と訳されることが多いのですが、私としては、個々が持っている“芯の強さ”とか“内に秘めた力”みたいなものに近いと思っています。いまでこそ、幸福度が高い国として知られるようになりましたが、100年ほど前まで長きにわたり、スウェーデンとロシアに支配されてきた歴史があります。シスは、そんなフィンランドだからこその生き方、考え方のように感じます。

 

移住当初は、仕事も見つからず、言葉も上達しないで焦っていた時期があったという島塚さん。振り返れば、支えてくれたのはシスだったかもしれないといいます。

 

元木:自分を信じて進めば、どんなに辛いことが起きても乗り越えていける! という考え方ですね。

 

島塚:そうなんです。自己犠牲ではなく、自分のために頑張ろう! そんな意味合いだと思います。

 

元木:自分のために、っていいですね! フィンランドで暮らしてみて、シスっぽい体験はありましたか?

 

島塚:仕事が見つからなかったときにアルバイトでやった皿洗いでしょうか。あのときは「27歳で皿洗いとは、人生振りだしかぁ。このままやっていけるのだろうか?」と自分を疑ったものです。でも、必ずうまくいくと信じて、出来ることを一つずつ増やして今があります。

 

元木:島塚さんも体験したシスの精神こそが、フィンランド人一人ひとりの自立した生き方を支えているのですね。男性も女性も、そして大人も子どもにとっても、自立は本当に大切なことだと思います。

 

 

カテゴライズや上下関係から
自分を解放しのびのび生きる

元木:これまでフィンランドの魅力として、男女間のフラットさ、個人の自立と順を追って聞いてきました。最後に、のびのびとした雰囲気について、ぜひ教えてください。

 

島塚:そういえば日本では「イクメン」や「ワーママ」などキャッチーな言葉で人をカテゴライズすることがよくあるなと感じます。一方、フィンランドでは、男女の隔たりもなければ、枠組みにはめる習慣もありません。これがのびのびとした雰囲気を作り上げる材料の一つなのだと思っています。

 

『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』より。狭いカテゴリーから自分を解き放てば、気持ちが楽になって、幸福度も自然と上がるのではないか、と島塚さん。

 

元木:なるほど。私は最近、ソロキャンプを楽しんでいるのですが、島塚さんがいうのびのびした雰囲気って、現地で出会うソロキャンパーさんたちとの関係性と似ているなと思いました。なかには大企業の社長や世間的に顔が知られている有名人もいますが、キャンプ場では名刺交換もしないし(笑)、立場関係なくフラットに話せるのが楽しいんです。

 

島塚:それは似ているかも知れませんね! カテゴリーから自分を解放することは、高い幸福度に繋がるように思います。

 

 

ワクワクを大切に、自分のやりたいと思ったことに正直に

元木:話は尽きませんが、2022年には絵本のイラストにもチャレンジされたそうですね。

 

島塚:うれしいことに、2021年にフィンランドで開いた個展がきっかけで、現地の絵本作家さんと知り合い、イラストを担当するチャンスに恵まれました。いつか絵本を作りたいと願っていたなかでの出来事です。新しいチャレンジなので、まだまだ学ぶことがいっぱいあるなと思いつつ、細々とでも長く続けていけたらいいですね。今後は、文章と絵の両方を担当してみたいとも考えています。

 

元木:いくつになっても自分のやりたいと思ったことに正直に、気持ちの向くままチャレンジする生き方ができるのは幸せですね。今日は、そんな生き方を支えるフィンランドの精神や考え方を学ぶことができました。ありがとうございました。

 

 

Profile

テキスタイルデザイナー・イラストレーター / 島塚絵里

フィンランド在住のテキスタイルデザイナー・イラストレーター。1児の母。津田塾大学を卒業後、沖縄で英語教員として働く。2007年フィンランドに移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、マリメッコ社でテクニカルデザイナーとして勤務。2014年より独立し、国内外の企業にデザインを提供するほか、CMの衣装、宮古島のHotel Locusのテキスタイルデザインを担当。森のテキスタイルシリーズなど、暮らしを楽しくするオリジナルプロダクトをプロデュース。
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ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。

 

「藤井定食」とは? “下ごしらえストック” でラクして1日の栄養バランスが整うレシピ

ベストセラー本『藤井弁当』で第7回レシピ本大賞[料理部門]準大賞を獲得した料理研究家・藤井恵さんによる近著『THE藤井定食』は、その名の通り “定食” がテーマ。栄養バランスが良く、下ごしらえストックを活用するため簡単で時短でき、彩りも美しく、さらにフードロス対策にも……。数々のメリットは、定食だからこそのもの。

 

藤井さんに、この「藤井定食」の極意とおすすめレシピを教えていただきました。

 

「藤井定食」とは?

料理研究家・藤井恵さんが考案した定食のこと。野菜を切ったりゆでたりしただけの、簡単な “下ごしらえストック” を活用して作るのがポイントです。ストックがあると、当日の調理に時間と手間いらず。たくさんの品数を用意しても、さほど負担になりません。

 

トレイやお盆に小皿をのせて、おかずをいくつも用意するのが藤井流。こんなに作るのは大変そう! と思ってしまいますが、よく見ると、切っただけのトマトや納豆も。並べながら、全体の栄養バランスを考えられるところもメリットです。

 

「手間をかけて何品も作るのではなく、ただ茹でたもの、パックから出しただけのものを並べてもいいんですよ。こんなふうに並べるだけでテンションが上がりますし、ちょっとずついろいろな味を食べることで、食事が楽しくなります」(料理研究家・藤井恵さん、以下同)

↑料理研究家で「藤井定食」考案者の藤井恵さん

 

藤井定食の立役者、「豆皿」や「トレイ」

食事は見た目も大事。豆皿に少しずつ盛って、定食のかたちにすることで、食べるときの気分も華やぎます。藤井定食に欠かせないのが、和の豆皿やトレイです。

 

・和食のお皿

和定食は、雑穀入りのごはんやお味噌汁、メインディッシュの他に、野菜や豆腐などを使った副菜を用意します。小さな副菜がいくつもあると賑やかで、ごはんも、そしてお酒もすすみます。

 

・洋食のお皿

洋定食は、小さなオーブン料理に野菜をたっぷりのせられる、フラットな食器をチョイス。

 

藤井恵『THE藤井定食』(ワン・パブリッシング)
レシピ本『THE藤井定食』には、藤井定食の極意と20の定食、さまざまな野菜の下ごしらえストックのレシピが紹介されています。

 

ここからはいよいよ野菜の下ごしらえストック、そして定食のレシピを教えていただきます。

 

藤井定食を支える「野菜の下ごしらえストック」レシピ

「藤井定食」の要となるのが、あらかじめ用意しておく、ストックです。いわゆる “作り置き” と違って、味つけはほとんどされていません。

 

「わざわざ休日に何時間もかけて用意するようなものではありません。ただ切っておく、ゆでておく、をするだけで充分。私は毎日夕飯の支度のときに、ストックを1〜2品作っておきます。ストックを作るためだけに料理するとなると、調理道具も出さなきゃならないし、洗い物もそのためだけにしなくてはならないですが、夕飯のついでなら気楽。そのくらいの手間加減ではじめてみると、習慣にできるようになりますよ」

 

ストックに向いている食材・調味料は?

ストックは、どんな食材でも作ることができます。生野菜も、サラダ用に葉物をちぎっておくだけでOK。ひとり分だと思うと、何種類もの葉物を買うのはためらってしまいますが、数日に分けて食べるなら、いろいろな葉野菜をミックスして作ることができますね。

 

「ストックする食材も調味料もどんなものでもいいのですが、基本的に味つけをしないでストックしておくほうが、使い回しがききます。だいたい3日を目安に食べ切ってください」

 

ストック食材の作り方

それでは5つのストック食材の作り方を教えていただきましょう。

 

・ストック焼ききのこミックス

【材料】
・しめじ…100g
・マッシュルーム…100g
・生椎茸…100g
・白ワイン…大さじ1
・塩…小さじ1/3

 

【作り方】
1.きのこは小房にわける。
2.フライパンにきのこを入れ、白ワインと塩をかけてフタをし、弱火で炒める。
3.フツフツとしてきたら、フタを取って炒めて水分を飛ばす。

 

・ストック蒸し長いも

【材料】
・長いも…300g
・塩…少々

 

【作り方】
1.耐熱皿に長いもを並べ、塩をふってラップをふんわりかけ、電子レンジで5分加熱する。

 

・ストック戻しわかめ

【材料】
・カットわかめ…10g

 

【作り方】
1.たっぷりの水にわかめを入れて5分浸し、洗って水気をしっかり絞る。

 

・ストック細切り蒸しにんじん

【材料】
・にんじん…2本(300g)
・オリーブオイル・塩…少々

 

【作り方】
1.にんじんは、スライサーで千切りにする。
2.耐熱皿ににんじんとオリーブオイル、塩を入れて、ラップをかけ電子レンジで2分半加熱する。

 

・ストック香味野菜サラダミックス

【材料】
・ルッコラ・香草・クレソン…あわせて150g
・かいわれ大根…1パック
・サニーレタス…200g

 

【作り方】
1. すべての野菜はたっぷりの水で洗い、パリッとしたら水気を切る。
2. 野菜を小さめの一口大にする。

 

・ストックほうれん草の塩昆布だし浸し

【材料】
・ほうれん草…300g
・昆布…5×5cm 1枚
・熱湯…300ml
・塩…小さじ1/3

 

【作り方】
1.保存容器にほうれん草以外を入れて、冷ます。
2.ほうれん草をゆでて水に取り、4〜5cmの長さに切って水気を絞る。
3.ほうれん草を1に浸す。

 

たっぷりの野菜やきのこの副菜でヘルシー。ストックを使った藤井 “和” 定食

和定食のメインにしたのは、低糖質でタンパク質豊富な鶏むね肉を使ったロースハム。余熱で火を通すのでしっとりジューシーで、作り置きにも向いています。

 

「ロースハムは食べ応えがあって、その割に重たくないので、おつまみにもおかずにもぴったりです。他に4つのお皿を用意しましたが、納豆やトマトを切っただけのサラダなど、手がかからないものもあります。それでもこんなふうに盛り付けられていると、楽しく食べられますよね」

 

定食の内容

(1) 和風鶏ロースハム
(2) にんじんとほうれん草のごま和え
……すりごま大さじ2、しょうゆ小さじ1/2、「ストックほうれん草の塩昆布だし浸し」の漬け汁大さじ1を混ぜ、「ストック細切り蒸しにんじん」50gと「ストックほうれん草の塩昆布だし浸し」150gに和える。
(3) きのこやっこ
……「ストック焼ききのこミックス」100gを豆腐150gの上にのせて、塩麹を小さじ1かける。
(4) 長いもとわかめの味噌汁
……「ストック蒸し長いも」100gとストックわかめ30gをだし汁300mlに入れて、味噌大さじ1を溶く。
(5) トマトサラダ
……切ったトマトにお好みでバルサミコ酢を少しかける。
(6) 納豆
……1パックの納豆に酢小さじ2としょうゆをかける。
(7) 雑穀米 100〜130g

 

「和風鶏ロースハム」のレシピ

【材料】
・鶏むね肉…1枚(300g)
・塩・砂糖…各少々
・酒…大さじ1
・サラダ油…小さじ1
・だし汁(または水)…300ml
・しょうゆ・みりん…各大さじ1と1/2
・しょうが(すりおろす)…小さじ1

 

【作り方】

1.鶏肉に塩と砂糖をすりこむ。

 

2.肉の厚いところは、叩いて厚みを均一にする。

 

3.酒をかけ、10分置く。

 

4.フライパンに油をひき、皮を下にして中火で焼く。

 

5.しっかり焼き色がついたらひっくり返し、1分焼く。

 

6.強火にしてしょうゆ、みりんを加える。

 

7.だし汁を加える。

 

8.煮立ったら、フタをして1分弱火で加熱する。ふたたび皮を下にして、火を止めて15分置く。

 

9.好みの大きさに切り分ける。

鶏むね肉はタンパク質が豊富で脂質が低いので、ヘルシーで胃に重くないものが食べたい日にもぴったり。食べ心地も軽く、お肉なのに胃もたれしないやさしい味つけです。

 

ワインにも合わせたい、ストックを使った藤井 “洋” 定食

洋定食は、温泉卵をのせたシーザーサラダと2種類の副菜、そしてメインにはストックの長いもと豚肉をトマト味のオーブン焼きです。

 

「トマトソース焼きをオーブンに入れている間に、ストックにんじんやきのこ、サラダを使って副菜を準備します。温泉卵は買ったものでいいですし、ドレッシングも市販のものでもかまいません」

 

定食の内容

(1) 豚肉と長いものトマトソース焼き
(2) 彩り野菜のシーザーサラダ
……「ストック香味野菜サラダミックス」100gに、「ストックほうれん草の塩昆布だし浸し」100g、「ストック戻しわかめ」30gを混ぜて、温泉卵とドレッシング、粉チーズ大さじ1をかける。
《ドレッシング》
マヨネーズ、牛乳各大さじ1、白ワインビネガー小さじ1、おろし玉ねぎ小さじ1、塩こしょう少々をよく混ぜる。
(3) クミン風味にんじん
……「ストック細切り蒸しにんじん」80gに、クミンシードと白ワインビネガーを適量和える。
(4) きのこのオイルがけ
……「ストック焼ききのこミックス」100gにオリーブオイルとバルサミコ酢を少々かける。
(5) 雑穀パン

 

豚肉と長いものトマトソース焼きのレシピ

【材料】
・豚ロース肉(薄切り)…200g
<A>
・塩…小さじ1/2
・こしょう…少々
・白ワイン…大さじ1

・小麦粉…大さじ1
・ストック長いも…150g
・にんにく(すりおろす)…小さじ1
・トマトピュレ…150g
・バター…20g
・塩…小さじ1/3
・こしょう…少々

 

【作り方】

1.ストック長いもは、食べやすい大きさに切る。

 

2.豚肉を食べやすい大きさに切ってほぐし、Aの塩とこしょうを両面にふる。

 

3.Aの白ワインをかける。

 

4.よく揉み込んだら、小麦粉を両面にふる。

 

5.フライパンを中火にかけてバターを溶かし、豚肉を炒める。

 

6.長いもとにんにく、トマトピュレを加えて、煮立てる。

 

7.耐熱容器に入れ、オーブントースターで焼き色がつくまで焼く。

オーブンに入れて、焼き色がついたトマトと長いもが香ばしい一品。片栗粉をまぶした豚肉は、つるりとした食感で柔らかくなります。

 

藤井恵さんの定食は、一見豪華で大変そうでいて、でも実際は手間いらず。「自分でもできそう!」という気持ちにさせてくれます。心身ともに満たされる定食を、作って食べて、ぜひ楽しんでください。

 

プロフィール

料理研究家 / 藤井恵

管理栄養士。女子栄養大学在学中からテレビの料理番組のアシスタントを務め、フードコーディネーターをへて料理研究家として独立。「きょうの料理」や「3分クッキング」などでも活躍してきた。野菜たっぷりで栄養満点、それでいて作りやすいレシピに定評があり、ベストセラー本『藤井弁当』(Gakken)で第7回レシピ本大賞[料理部門]準大賞を受賞。2023年4月に出版した『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)も出版直後から版を重ねる人気。
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幸福学研究者が説く、顔を5度上げて歩く効果

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣12.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く

スマートフォンやパソコンが日常生活の必需品となって、私たちは「下を向く」ことが増えています。

 

下ばかり向いていると、肩も首も凝るし、姿勢も悪くなって、気分も沈んでしまうことはありませんか?

 

大学の研究室で、学生たちと「2週間、やや上を向いて歩いてみよう」という実験をしてみました。

 

その結果、「呼吸が深くなる」「空や木々の緑など、いままで見えていなかった景色が新鮮だった」「遠くが見えて気持ち良かった」など、気分が高揚し、リフレッシュする、という意見が多く寄せられました。

 

たしかに、いつもより顔を5度上げて歩くだけで、景色が変わります。なんとなく晴れやかな気分になれるから、不思議です。

 

大股で歩くことも同じ。たとえば、いつもより5センチ、歩幅を広げるだけで、前向きな気分になれます。

 

実際、私たちはいつも、気分を変えたいときに「顔を上げて」「大股で歩く」ことを実践していますが、気がつくと、元気に、幸せな気分になっています。

 

それは、たった5分、歩いてみるだけでわかる効果です。

 

心は、体の動きにとても影響を受けています。体の動きが心を引っ張ることがあるのです。

 

少しだけ顔を上げて、少しだけ大股で歩く。

 

呼吸は自然と深くなり、空の青さや木々の緑が、気持ちをリフレッシュしてくれるでしょう。

 

出典:Carolyn Gregoire「科学が証明したすぐ幸せになれる16の方法」

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

幸福学研究者が実践する「噂話」の習慣と効果

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣11.人のいいところをうわさする

ポジティブなうわさはあまり広がらず、ネガティブなうわさはあっという間に広がっていきます。なにしろ「人の不幸は蜜の味」なんて言葉があるくらいです。

 

「人のうわさをするときは長所や成功に注目するほうが幸せ」という研究結果があります。

 

実際、私たちは誰かのうわさをするとき、「いいことしか言わない」ように心がけています。

 

誰かの長所に注目すると、それまで注目していなかっただけで、それぞれのいい点がたくさん出てくるから不思議です。

 

ところが、長所や成功などポジティブなうわさには「すごいね!」と感心する人は少なく、「そうなんだね」とサラッと流されてしまうことが多いような気がします。

 

誰かの成功話は、つらいときにはチクッと心に刺さるもの。人は、自分よりダメな人間を見つけて、安心材料にする弱いところがあります。

 

でも、その気持ちをぐっと抑えて、誰かの長所や成功をうわさしてみてください。

 

誰かの成功を共に喜ぶ、あるいは誰かの長所をみんなに伝えることを繰り返していると、だんだんと自分も気持ちが良くなるから不思議です。

 

たとえば、誰かの悪口で盛り上がっている席で「でも、あの人にもあの人なりのいいところがあるよ」と発言することは、その場の空気を邪魔するようで、ちょっと勇気がいることです。でも、そのひと言で、場を優しく変えることができるでしょう。それは、とても前向きな転換です。

 

出典:前野隆司「幸せのメカニズム」

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

幸福学研究者が説く、辛い経験や転機をプラスに転換する方法と効果

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣10.人生のターニングポイントを振り返る

人生の転機を挙げて、そこから得たことを語り合う____これは、私たちが主催するハッピーワークショップの定番のコンテンツです。

 

ワークショップでは、同じグループになった人、それぞれの転機とそれによって得たことを話し合い、共感します。グループのひとりのストーリーに注目して、メンバーが役者となって短い劇をしてもらうこともあります。それは、とても有効で楽しいアプローチです。

 

人ひとりの転機とそこから得た学びは、まるで映画や短編小説のよう。そのストーリーは、どれも、とても深く貴重なものです。

 

誰かの物語を聞くと、その人になり変わって、自分が転機を迎え、それを乗り越えた気になるから不思議です。乗り越えたときの高揚感まで体感できるのです。 “幸せのおすそ分け” ですね。

 

まずは自分のヒストリーを振り返ってください。そして、自分の転機を思い出してください。

 

つらかったり挫折した記憶がまだ新しく、思い出すのがつらいと感じる場合は、ここでは取り上げず、すでに乗り越えた転機を取り上げるのがポイントです。

 

そして、その転機によってそこから得たあなたの強みやあなたらしさを挙げてみましょう。

 

過去の「つらい経験」が、あなたを「成長させた経験」に置き換えられれば、しみじみと幸せを感じるはずです。

 

転機はひとつでも大丈夫。逆にたくさん挙げられれば、たくさん挙げてみてください。転機の数だけ幸せがあります。

 

出典=前野マドカ、前野隆司「ハッピーワークショップの幸福度向上効果」

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

幸福学研究者が説く、仕事に没頭する効果と没頭するようになる考え方

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣9.「没頭」できる仕事をする

たとえば、私なら文章を書いているときに、気づいたら「あ、もう3時間もたっていた」ということがあります。大好きな「書く」ことに集中して、時間を忘れている状態です。

 

フローとかゾーンといわれる「していることに完全に浸り、精神的に集中している感覚」になれる仕事ができれば、創造性も生産性も高まります。それはとても幸せなことです。

 

もし、あなたがそんな仕事に就いているなら、その状況を満喫してください。

 

「いまの仕事ではゾーン状態になれない」という人も少なくないと思いますが、その場合には、没頭できる仕事を探すのも一考です。

 

しかし、自分が何を得意とし、何が本当にしたいのかがわからないと、そうした仕事を探すのも難しいでしょう。

 

その場合は、新たな仕事を探す前に、いまの自分の仕事をもう一度、見直してみませんか?

 

あなたは、仕事をするとき、何か工夫をしていますか? 何かを少し変えれば、ワクワクするようになるとか、この仕事はたしかに誰かのためになっている、という自覚を持つだけで、仕事に対する認識が変わります。

 

ゾーン状態になる条件は「難しさはあるけれど、難しすぎない」こと。かんたんすぎるとつまらないし、難しすぎるとストレスになってしまいます。

 

少しはストレスを受けるけれども、成し遂げられるような仕事がいいと思います。そんなふうに仕事を進められたら、人生はとても豊かになるでしょう。

 

出典=ミハイ・チクセントミハイ『フロー』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

幸福学研究者が説く、脳の“勘違い”から幸せな感情を引き出す習慣

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣8.小さなことに声をあげて笑う

「ほほえめば幸せを感じ、怒鳴れば怒りを感じる」という研究結果があります。

 

一見、当たり前のことに思えるかもしれませんが、メカニズムが逆です。いま、ほほえみたいと考えていない人も、無理やりにでもほほえむ表情をつくれば、幸せを感じるという研究結果なのです。

 

つまり、表情や表現が、感情に影響するということ。ただし、その影響は10秒〜5分の短い時間に限定されます。

 

ところが、この短い時間のほほえみが、ポジティブな過去の出来事や言葉を思い出させるきっかけとなり、幸福感が持続されるということも、同じ研究でわかっています。

 

さらには、声をあげて笑えば、その効果は膨らみます。声をあげて笑うことで、体内の酸素摂取量が増え、脳から放出される幸福ホルモンのエンドルフィンが増加します。緊張がほぐれ、心拍数と血圧が低下することも科学的に証明されているのです。

 

友達と笑い合ったり、本や映画やネットサイトやテレビで、大笑いする時間が幸せなことは、皆さんもご存知のとおり。笑顔の場に身を置くことも幸せを感じる秘訣です。

 

もしも、少し気分が落ちている気がしたら、呼吸を整え、口角を上げて、ほほえんでみてください。ほほえむことで、脳が幸せと勘違いするともいえるでしょう。

 

人間の頭って、意外と単純。ほほえみや大笑いから幸せを感じ、そこから過去の幸せを思い出す。幸せのループが回り出すのです。

 

出典=R.L.アダムス『幸せな人たちが毎日欠かさない11の習慣』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

 

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

幸福学研究者が説く「感謝を記録する」習慣が自分以外にもたらす効果と持続する秘訣

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣7.「ありがとう」を記録する

「感謝する」というと、ちょっと重く感じてしまうかもしれません。

 

「ありがとうと思う」くらいの気持ちで、自分の身の回りの人たちのこと、今日一日に起こったことを振り返ってみてください。

 

おすすめなのは、「ありがとう」を記録する「感謝日記」です。

 

私たちが主催するワークショップに来てくれた3人の女性は、同じ会社で働いてはいるものの、部署も異なり、顔は知っている程度の存在。彼女たちにLINEグループをつくってもらい、一年間、毎日“3つの感謝”をそこにあげてもらいました。

 

1か月ほど続けてもらうと、3人とも「日々、穏やかに過ごせるようになった」と報告してくれました。

 

とはいえ、日を追うごとにマンネリ化し、感謝が似たようなことになり、毎日3つあげることが難しくなることもありました。そういうときは「できたら3つ、難しければひとつでもいいから、なるべくいままでとは違うことに感謝を」とアドバイスをして続けてもらいました。

 

感謝していると、心が穏やかになる結果として、周りの人との関係も良くなっていきます。

 

始めてから一年後、ひとりは目標だった昇格がかない、もうひとりはご主人との関係性が良くなりました。3人目の方も、心が穏やかに落ち着いて、周りの人との関係が良くなったそうです。

 

あらためて考えてみると、あらゆることが感謝の対象です。あなたの感謝はなんですか?

 

出典=ソニア・リュポミアスキー『幸せがずっと続く12の行動習慣』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣
1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

●人とのつながりで温かさを感じる習慣
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

●合格点を下げてラクになる習慣
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 

お経を音楽に!? 臨済宗僧侶・薬師寺寛邦が歌う「般若心経」とその根底にあるものとは

写経などでよく使われている「般若心経」。仏教の中でもメジャーなお経として知っている人も多いでしょう。でも、そこに込められた意味を知っていますか? そう聞かれて、答えられる人はわずかかもしれません。そんな般若心経を、身近な「音楽」で表現した僧侶がいます。愛媛県今治市にある臨済宗・海禅寺の副住職、薬師寺寛邦さんです。

 

2回ほど薬師寺さんのコンサートに足を運んだことがあるというブックセラピストの元木忍さん。初めて聞いた時には「こんなに心地いい音楽があったのか!」と驚いたといいます。今回は、そんな薬師寺さんにお話をうかがうべく、著書『般若心経、私は歌う』を持って京都のカフェ「きっさこ和束(わづか)」を訪れました。歌うようになったきっかけや、これから挑戦したいことについてうかがっていきます。

 

↑『般若心経、私は歌う』(ワック出版局)
1400年間にわたって天皇から一般庶民まで親しんできた「般若心経」。そこになんとメロディーをつけて歌った動画が今、日本のみならず世界中でヒットしています。宗教の壁を超え、たくさんの人の心を癒しているのが、臨済宗・海禅寺の副住職、薬師寺寛邦さん。なぜ歌い始めたのか、そもそも般若心経にはどのような意味が込められているのか、世界の著名人が「般若心経」に魅かれるのはなぜなのか。自身の経験をもとに綴られています。

 

ミュージシャン? 僧侶? 般若心経を歌うまでの経緯とは

元木忍さん(以下、元木):4〜5年前に薬師寺さんのコンサートで、「般若心経」の音楽を初めて耳にした時、本当に衝撃的でした。これはもう、お経、宗教とかの概念を飛び越えて、音楽として「聴いているのが気持ちいい!」って、素直に感じました。そんな「般若心経」の音楽を、なぜ作るにいたったのか、まずは、今回の書籍を発売するまでの経緯を教えていただけますか?

 

薬師寺寛邦さん(以下、薬師寺):般若心経の音楽は、2015年頃から作り始めていました。2016年頃には人前でパフォーマンスするようになって、YouTubeにアップしたのもこの頃です。ちょうどこれまでの活動を振り返っていたタイミングに、出版社から「これまでの活動を文章で残しませんか?」とご提案いただきました。ありがたい機会をいただけたと思います。

 

元木:薬師寺さんの職業はお坊さんですか? それともミュージシャン?

 

↑YouTubeでは総再生数8000万回を突破。『般若心経、私は歌う』は、薬師寺さん初の著書で、制作を通じて自分の思いを整理できたと振り返ります。

 

薬師寺:よく「二足の草鞋を履いている」って表現されることもあるんですが、職業は僧侶です。音楽は僧侶の活動を伝える手段であって、それぞれの活動をわけていません。音楽とは徐々に融合していったというか、今のスタイルにたどり着いたって表現が合っているかもしれませんね。

 

元木:薬師寺さんは、メジャーデビューを果たし、プロのミュージシャンとして活動していた時期もありますよね?

 

薬師寺:はい、学生時代から大好きだった音楽を大学卒業後も続け、2003年には京都を拠点としたボーカルグループ「キッサコ」として活動を開始し、上京後、28歳でメジャーデビューも果たしました。30歳からはインディーズに戻ることになったのですが、この頃から「禅について知りたい」「いつか仏門修行の道へ進みたい」と考えるように。2011年32歳で修行の道に入り、僧侶になりました。

 

元木:お寺の子として生まれ育った薬師寺さんは、紆余曲折を経て家業を継ぐことを選んだわけですが、著書『般若心経、私は歌う』には、幼い頃の葛藤も綴られていますね。

 

“自分にも好きなこと、やりたいことがあるのに、世の中にはいろいろな生き方や職業があるのに、なぜ自分の道は「僧侶」に決まっているのか?
なぜ、将来の職業を自分で決められないのか?
なぜなのかわからないが腑に落ちない。自分はこのまま、中学・高校を卒業した宗門の大学に入って、自動的にお寺の住職になるのだろうか?”
-『般若心経、私は歌う』より引用-

 

薬師寺:お寺に生まれた人は、おそらく多くの方が、この葛藤にぶつかります。でも振り返ってみると、葛藤があったからこそ今の自分があるとも言えますね。長い間、自問自答してきましたが、それはすべて自分にとって必要な時間でした。

 

元木:これを読んでいる方の中にも当時の薬師寺さんと同じように、理想と現実の中で、悩み苦しんでいる人もいると思います。乗り越えた薬師寺さんだから伝えられることってありませんか?

 

薬師寺:自分の経験したことしか語れませんが、悩んでいる時って、結局その原因を突き詰めることでしか、前に進めないんですよね。その原因から逃げて、ダラダラ過ごしている時が一番ツラい。私の場合、東京で音楽活動している時、大好きだったはずの音楽が作れなくなったんです。その理由は、お寺を継ぐことから逃げるために始めた音楽だったからでした。音楽で伝えたい思いが希薄だったのです。大好きだから選んだのではなく、運命から逃げるために選んだ。それを認めることは、本当にしんどい作業でしたが、そうすることで、あらためて「音楽」や「自分」と再び向き合えるようになりました。やはり、何事も自分から逃げずに、向き合うことが大切ですね。

 

元木:向き合ったからこそ見つけられたと。その過程を経て、般若心経を歌うようになるって不思議な巡り合わせですね。

 

薬師寺:私にとって般若心経は、幼い頃から身近にあったお経です。さまざまなことを経験し、再び般若心経を唱えてみると、直接心に訴えかけてくるものを感じました。私は禅宗のお経しか詳しく知りませんが、般若心経と他のお経では、明確な違いがあったんです。他のお経は、例えば病気が治るとか、災いが消えるとかの“ご利益”を与えてくれているのに対して、般若心経は、生き方そのものに問いかけていると言いますか……。また修行期間中に毎日一緒だった音楽と離れてみて、「やっぱり音楽が好きだな」と素直に思えるようになりました。だからこそ、般若心経を歌うことにも、自然とたどり着けたのだと思います。

 

般若心経を現代で解釈すると?

元木:『般若心経、私は歌う』では、薬師寺さんが訳された般若心経が載っています。あらためて、般若心経について教えていただけますか?

↑薬師寺さんの音楽に魅了されたという元木さん。「さまざまな宗派のお経も聞いてみたい!」とお願いする場面もありました。

 

薬師寺:般若心経は、一言でいうなら「心のお経」。観音様が舎利子(しゃりし)という釈迦の高弟に、「“空(くう)”という世界を信じれば、悩みも苦しみなくなり、幸せになれるんだよ」と伝える様子が描かれてあるお経です。般若心経には、さまざまな訳や解釈ありますし、どれも素晴らしいものなので、これが正解というものはありません。私は、般若心経を「今の時代にもわかりやすく伝える」ことを意識して訳させてもらいました。

 

元木:「空」という世界についても、詳しく教えていただけますか?

 

薬師寺:「空」とは、すべて存在しない世界のこと。でも目の前になにも「ない」世界を想像するのは難しいですよね。今生きているこの世界では、目の前にいろんなものが「ある」ので。だからこそ、一旦リセットして、つながっているものを見直してみませんか? と伝えたいのだと解釈しています。お経を唱えることで「空」を思い浮かべ、今の自分の気持ちを再構築していくイメージです。

 

元木:本の中では般若心経がジョン・レノンの『イマジン』とも通じるとも書かれてあり、驚きました。どのあたりが通じている部分なのでしょうか?

 

薬師寺:聞き手に問いかけている部分が同じ構成なんですよね。般若心経では、師匠である観音様が舎利子に「この世には空という世界があって、それを信じてみないか?」と問いかけています。『イマジン』も、「想像してごらん」と訳されているように、まるでリスナーに問いかけ、囁くような歌詞が展開されていきます。また、般若心経では「無」、『イマジン』では「No」がたくさん出てきますが、いずれもポジティブな文脈で使われているんですよね。

 

元木:つまり、ジョン・レノンは般若心経の意味を知った上で、『イマジン』を作っていたのでしょうか?

 

薬師寺:私はそう思っています。執筆にあたって、ジョン・レノンさんのことも勉強させてもらったのですが、通じる部分はたくさんありましたよ。

 

ただ「坐禅」するだけの時間、「空」の世界を感じてみる

元木:また本の中では、瞑想や坐禅についても書かれてありました。薬師寺さんご自身は、普段、瞑想することはありますか?

 

薬師寺:修行期間ほどの瞑想はできませんが、音楽を作っている時はひたすらお経を読みつづけているので、レコーディングルームにこもっている時間が、私にとっての瞑想の時間かもしれませんね。日常生活の中で気分転換したいなら、「椅子坐禅」がおすすめですよ。椅子さえあればできちゃうので。

 

↑【椅子坐禅の行い方】①椅子に浅めに腰掛け、膝は90度、両足は肩幅に合わせる。②お尻をやや後ろに突き出し、お腹は少し前に、背筋を伸ばして座る。③首と肩の力を抜いて、左右に体を揺らす。④体の軸をまっすぐにし、背筋を伸ばす。⑤心をからっぽにするイメージで、深く長く息を吐き出す。⑥1から10まで数えながら呼吸を行い、繰り返す。⑦姿勢と呼吸と心が整ったタイミングで座禅をスタートさせる。

 

薬師寺:「椅子坐禅」なら座を組めない人でもできます。ちなみに瞑想は、宗教よりも以前からあるものなんですよ。最近だと「マインドフルネス」でも注目されていますが、宗教が取り入れただけなので、概念に縛られず、自由に感じてもらいたいですね。

 

元木:そうだったんですね! 薬師寺さんのこれからの活動についても伺いたいのですが、コンサートなど再開していく予定はありますか?

 

薬師寺:来年以降、コロナ禍で延期になっていた国内外でのコンサートを本格的に再開できたらいいなとは考えています。まだ行ったことのない国で般若心経を歌い、反応を見てみたいですね。

 

元木:今は「般若心経」を歌われていますが、別の宗派のお経も歌にするなんてことも考えていませんか?(笑)

 

薬師寺:私が臨済宗なので、まずは自分の宗派のお経から形にしていくところからですかね。他のお経はその後に(笑)。YouTubeには、世界中の人々から宗派問わずコメントをいただくんです。チャンネル登録者は現在26万人ほどいるのですが、その4割が外国人の方なんです。コロナ禍で急激に増えました。始めたばかりの頃は、「斬新!」とか「現代の琵琶法師!」なんて珍しいと見ていただく方が多かったのですが、コロナ禍以降「癒された」とか「毎日寝る時に聞いています」と日常の中で聞いてくれる人が増えてきたんです。時代と共に求められていることも変化しているので、キャッチボールをしながら、求められているものを出していきたいと思います。

 

↑2022年6月には、CDブック『心がととのう 新しい般若心経CDブック』(Gakken)も出版。般若心経を現代語訳した「空(くう)」が人気イラストレーターhakowasa(はこわさ)さんのイラストとともに掲載されている。

 

元木:コロナで人の感性や感情が変化したことも影響しているかもしれませんね。

 

薬師寺:生活のスタイルも大きく変わりましたからね。本書では「ネット苦」についても書きましたが、膨大な情報の中から選ぶことにストレスを感じる人が増えたように感じます。昔は、周りの人たちから「これがいいよ」とか、テレビや雑誌で「これが流行っている」とかある程度の指針がありましたよね? でも今はたくさんある情報の中から自分で選ばなければいけない。そうなると、やりたいことがわからない、そんな人も増えてしまったのだと思います。

 

元木:たしかに……。たくさんの情報がある時代だからこそ、般若心経の「空」を意識することが大事なのかもしれませんよね。私も自分のペースで、般若心経を聞いたり、歌ったりしてみようと思います! 本日はありがとうございました。

 

【プロフィール】

臨済宗僧侶・アーティスト / 薬師寺寛邦

愛媛県今治市出身。愛媛県今治市にある臨済宗・海禅寺の副住職。禅僧であり音楽家として活動しており、これまでにアルバム5枚、シングル15枚以上をリリースしている。般若心経にメロディをつけて歌った『般若心経 cho ver.』はYouTubeで350万回以上再生され、YouTubeなど動画サイトの累計再生数は8000万回以上を誇る。日本だけでなくアジアや欧米諸国にもファンが多く、宗教の垣根を超えてたくさんの人を癒す音楽として支持されている。
YouTube動画「般若心経 (cho ver.) at 京都・天龍寺【MV】」(薬師寺寛邦 キッサコ)

 

幸福学研究者が説く「自分の持っているもの」を数える習慣がもたらすものとは

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣6.「自分の持っているもの」を数える

「自分が恵まれている点に意識の焦点を当てることで、感謝など肯定的な思いが生じる」という研究結果があります。

 

「恵まれている」と考えると、誰かと比較してしまいがちなので、それよりも「持っているもの」と置き換えるほうが、適切でしょう。やる気、優しさ、足の速さなど持ち前の性質や特技でも、具体的な持ち物でもかまいません。

 

「自分の持っているものを数える」ことは、いま自分が置かれている状況にすでに幸せがあるという事実を感じること。

 

意識していたものから無意識下まで、あなたが持っているものは、意外とたくさんあることに気づくと思います。

 

とはいえ、「私は何も思い当たらない」と思う人も多いかもしれません。そんなときは、次の4つのヒントから考えてみてください。

 

(1) いまこの瞬間に集中できているか確認する(できていなかったら深呼吸)

(2) 自分のいいところをひとつでもいいから挙げてみる

(3) 周りにいる信頼できる人を思い浮かべてみる

(4) どこか体の一か所でも調子のいいところを探してみる

 

4つすべてを確認できなくても、2〜4の中のひとつでも当てはまることがあれば、それは、あなたが「持っているもの」です。あなたは自信を持って、「それがあるから、私は幸せ」と言ってOKです。

 

「幸せ」は本来、主観的なもの。自分が持っているものや幸せに感じることは、誰かと比べるものではなく、自分だけが幸せを感じるものでいいのです。

 

出典=前野マドカ ・前野隆司『ハッピーワークショップの幸福度向上効果』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

●いつもと違う習慣で楽しみを見つける習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす

 

●人とのつながりで温かさを感じる習慣

17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

 

●合格点を下げてラクになる習慣

27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる

 

●自分の素直な気持ちを受け止める習慣

35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

 

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

Book Info

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

プロフィール

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

「幸福学」研究者が科学の力で導き出した、自分らしくいるために「分からないことを受け入れる」効果

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣5.わからないことは「わからない」と受け入れる

当たり前のことですが、完璧な人間なんて存在しません。完璧に見えるあの人も、何かに悩んでいたり、失敗していたりするのです。

 

誰にでも得手不得手があるはずなのに、多くの人が完璧を求める時代。気楽にわからないことを「わからない」と言いづらい時代です。

 

「わからない」ことがあるのが普通なのに、わからないという自分がイヤだったり、恥ずかしいと思ったり。現代人は窮屈です。

 

失敗も同じ。失敗が怖くて、前に進めなかった経験はありませんか。失敗を恐れて、新しいチャレンジをできない人が、たくさんいます。人間は失敗するのが当たり前なのに、それを恐れてジャンプしないのは、幸せを自ら遠ざける行為です。

 

「わからないこと」がある自分を当たり前のことととらえて、「わからないこと」を無理してわかろうとせずに、受け入れることが大事です。これはちょっと難しいことかもしれません。

 

最初はだましだましでも、「わからないことは当たり前。そんな自分を受け入れよう」と考えていけば、その考えはきっと身につきます。

 

もちろん「わからない」ことを「わからない」と正直に言ったあとは、それについて少し調べたり、勉強したり、誰かに聞いたりすることはいい習慣です。

 

いちばん幸せから遠いのは「わからない」ことをわかったふりして、完璧な自分を装うこと。完璧なふりほど、もろく、危ういものはないのです。

 

※出典=タル・ベン・シャハー『ハーバードの人生を変える授業』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

【書籍情報】

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

女性の不調を改善する食べ方とは?「油」が生理から更年期までの体を整える!

なんとなく体が重い、今月も生理痛がツラい、PMSがひどく仕事ができないなど、女性ならではの悩みを人知れず抱えている人は多いはず。また「体重が増えるのが怖い」と感じていたり摂食障害に悩んでいたりする人は現在、22万人以上にのぼりますが、その多くは女性であり、近年は“フェムケア”にも注目が集まっています。

 

不調の原因として知られているのが「女性ホルモンの乱れ」。これだけツラいのだから、体内でたくさん分泌されているだろうと思いますが、実は一生の間に作られる女性ホルモンの量はティースプーン一杯程度なのだとか。

 

女性ホルモンに振り回されないためにも、「食べることでフェムケア」しようと語るのは、管理栄養士の伊達友美さんです。2022年に著書『女性の不調は「油+」でよくなる』を出版しました。油でよくなる!? 私たちの固定観念を覆すタイトルですが、その真意を、伊達さんにうかがいました。聞き手は、@Livingでおなじみのブックセラピスト、元木忍さんです。

 


女性の不調は「油+」でよくなる 〜女性ホルモンに振り回されないための「食べる」フェムケア〜
女性ホルモンの材料は「油(コレステロール)」。そのため女性が抱えるさまざまな不調は、女性ホルモンの材料不足、つまり栄養不足が原因かも!? 「プラス栄養メソッド」を提唱する管理栄養士の伊達友美さんが、生理、妊活、更年期と女の一生を支える食べ方を紹介。食べて身体も心も上向きにする方法が満載。

 

1万円の美容液より、
2000円の油の方がコスパは高い!

元木忍さん(以下、元木):伊達先生の著書『女性の不調は「油+」でよくなる』を読ませていただいて、目からうろこが落ちることばかりでした。

 

伊達友美さん(以下、伊達):ありがとうございます。

 

元木:“食べたい時”に“食べたいもの”を食べることは、悪いことじゃないんだと思えて。私自身は、もともとPMSや生理痛の経験もなかったんですが、それが「体に必要なものを、知らず知らずのうちにちゃんと食べていたからだったんだ」と、この本を読んであらためて感じられました。
ところが多くの女性は、体の不調を訴えたり、食べることに必要以上に罪悪感を抱えています。最近の女性は、どのような悩みを抱えているのでしょうか?

 

伊達:最近は“天気頭痛”や磁場など自然界の影響を受けて、体調が悪くなる人が増えていますよね。昔は原因がわからなかったから「何か病気かな?」と不安に思っていた人が多かったと思いますが、いろいろな病気が知られるようになって「私だけじゃない」と安心できたかもしれませんね。

ただ、PMSや生理痛、更年期など「女性ホルモンには勝てない」と思い込んでいる人も多いんです。痛みをやわらげたり、生理中でも快適に過ごせたりする薬や生理用品などは充実しているのに、痛みやつらさはしかたがないものだとあきらめていて、根本から改善しようという人が少ないのが残念なところですね。

管理栄養士の伊達友美さん(左)と、ブックセラピストの元木忍さん。

 

元木:『女性の不調は「油+」でよくなる』を読むと、食べることがいかに大切か、あらためて実感できました。実は、美容のために高級な化粧品は使うのに、食生活は適当にしている人もたくさんいますよね(笑)、そういう女性たちにも、ぜひとも読んでほしいと思いました。

 

伊達:そうなんです。高級化粧品もたしかにいいものではあるんですけど、美容液は基本的に顔にしか使わないですよね? でも、油は口から食べることで全身に行き渡ります。1万円で顔にしか使えない美容液と、食べるだけで全身に使える2000円の油だったら、いったいどちらがコスパがいいですか? ということなんです。カサカサなお肌が潤って、きちんと生理も来て、PMSもやわらいで、毎日快適な状態でいられると思います。

 

元木:私の場合は、少し体調が悪く感じた時は、温かいものを食べて日本酒をキュッと飲んで寝たら、翌日は元気になっているタイプなんです(笑)。薬に頼らず、毎日体が必要としているだろうと感じるものを食べて、しかもお腹いっぱいになるまで食べていることが、元気でいる秘訣なのかもしれませんね(笑)

 

伊達:元木さんのような方がもっと増えてほしい! 今でこそ私も元気ですけど、若い頃に摂食障害を経験しています。当時は「カロリーが高いものは悪」と思っていたので、1日500カロリーしか摂取していませんでした。糖質も油も控えているのに、体重は増えるし不健康……、もちろん生理も止まっていました。いろいろなダイエット法を試してはリバウンドして、を繰り返してトータル5000万円近くは使いました。

 

元木:5000万円! たしかに中学か高校生ぐらいからダイエットを始めちゃう人がいますからね。私ぐらいの年でも、全然太っていないのに、いつもダイエットしなきゃって言っている人がいるので、実際に同じくらい使っている女性もいるのかもしれませんね。

 

伊達:何のためにお金を使ってきたんだろう、意地でも元に戻そう! と栄養学を学び始めた時に、油にはいい油とよくない油があるってことを知ったんです。

伊達さんはかつて、自分に自信がもてず無理なダイエットを繰り返していたといいます。

 

生理は1か月の成績表、
更年期は卒業試験と心得る

元木:伊達先生がこの世界に入ったきっかけには、どんな出会いがあったのでしょうか?

 

伊達:カナダで有名な油の本を出版されている先生が日本で講演をされた時に、とっても若々しくて感激したんです。油について勉強していくほど、脳にも、肌の潤いにも、女性ホルモンにも油は欠かせないことがわかってきました。また加齢とともに身体の水分量は失われていきますが、脂質量って増えるんですよ。それからとにかくしっかり良質な油を取り入れるようになったら、28日周期で生理は来るし、PMSも頭痛も腰の痛みもなし! これが普通の生理なんだって30代後半で知りました。

 

元木:なるほど30代後半で、油の重要性に気がついたのですね。

 

伊達:生理は、1か月に1回やってくる身体の“成績表”なんです。経血を作るのに十分な栄養が体内にあれば、PMSも生理痛もありません。経血を作る栄養が足りないとなれば、それを補充するために身体は食欲を増加させます。でも、そもそもの栄養が足りない人は経血を作れないから、全身のありとあらゆる血液を子宮まわりに集めてくる必要があるんです。そうすると、あちこち酸欠になったり、栄養不足になります。まるで子宮に引っ張られているかのように、頭が痛くなったりお腹が痛くなったり、全身のいろいろなところに痛みが出てしまいます。

栄養が足りていればそういった不調がない、つまり“合格”ということ。お腹が痛いなど不調があれば今月の栄養は足りていなかったということで、“不合格”なんです。

『女性の不調は「油+」でよくなる』には、「女の一生は、油で決まる」という衝撃的な一文が!

 

元木:生理が成績表だなんて、とてもわかりやすい発想ですね。でも、栄養不足からの不調だとわからないと、食べ物で治すということに気がつかないですよね。ここはちゃんと理解をしなくてはならない重要なポイントです。また、更年期障害を訴える女性も増えてきているようですね。

 

伊達:更年期障害は、初潮から閉経までの“卒業試験”というイメージでしょうか。毎月、不合格の赤点を取っていたら“落第”してしまいますが、途中から頑張れば挽回できます。優秀な“成績”で卒業証書をもらうために、食べることで身体を変えていけるんだよって知ってほしいですね。

私も30代後半まで生理は止まっていたり超不順でしたが、食事を見直して、足りていなかった栄養をプラスすることで、何とか優秀な成績で卒業証書をいただきましたよ。いわゆる更年期障害はまったくありませんでした。

 

気をつけるべきは
「油」と「水」だけ

元木:「よし、今日から油を!」って思った方も多いと思うんです。でも、ただ「油」を摂ればいいってわけじゃないんですよね?

 

伊達:油には、種類があるというところからご説明しますね。

まず油には、身体の中で作れる油と作れない油がありますオメガ3系脂肪酸は、身体の中で作ることができないので、食事から摂る必要がある油です。旬のシーフード、くるみ、あまに油、えごま油などに多く含まれています。

もうひとつ大切なのは、絞り方。低温・自然抽出されているものか、薬剤抽出されているかで油の質が変わってきます。低温・自然抽出されている油を選びたいですね。けっして値段が高ければいいというものでもないので、油脂の種類と絞り方をチェックして購入するようにしましょう。

『女性の不調は「油+」でよくなる』より、油の種類の分布チャート。

 

元木:油といえば、炒め物や揚げ物にはよく使っていますが、それ以外で日常生活の中でどうやって “油+”を摂取するのがいいのでしょうか?

 

伊達:普段の生活の中でオイルを生で取り入れることは、あまり習慣化されていないですからね。基本的に何にでもかけてOKです。自分が好きな味かどうか、それが一番大切。ソイラテやスムージーに少し、スープやお味噌汁なんかにも合いますよ。

 

元木:お味噌汁に“油+”もアリなんですね! この本の中には、納豆にも“油+”と書いてありましたので、早速トライしてみました。お刺身に“油+”したらカルパッチョみたいに楽しめますよね。

 

『女性の不調は「油+」でよくなる』では、さまざまな食品への“油+”が提案されています。

 

伊達:そうなんです。また、食べ物に気をつけましょうと言われると、まず「いい食材を」って思う人が多いと思うんですが、私がこだわっているのは「水」と「油」だけなんです。オーガニックとか、こだわりすぎると経済力が必要なので、スーパーの特売品も買っちゃうし(笑)

 

元木:水と油だけですか?

 

伊達:人間の身体の半分以上は水分でできていますよね。そして20〜30%は脂質(油)で構成されています。つまり身体の7割は水と油なのだから、そこをいいものに変えていくだけでいいと思ったんです。あとは、じっくり染みてくるのを待てばいいんです。

 

食べたい時にたくさん食べるのは
「食べ過ぎ」ではない!?

元木:具体的に油を摂取して健康になるというのはイメージできたんですが、それ以外に身体にどんな影響があるのでしょうか?

 

伊達:体質はもちろんのこと、性格まで変わりますよ。

 

元木:本当ですか!?

 

伊達:私自身がこれは立証しています(笑)。私の子ども時代は、いじめられっ子で登校拒否だったし、コミュニケーション能力もゼロでした。虚弱体質だったので、診察券でトランプができるくらいいろいろな病院にかかっていたんです。でも今は、元気に病院でも働いてますから(笑)

 

元木:以前の姿が想像できません……!

 

伊達:相談にくる方のなかには、恋愛経験ゼロだったのが体も心も健康に美しくなって、「先生、お嫁にいきます」って薬指の指輪を見せてくれることもありますよ。あと、出世する方も多いです。生きることが楽しくなって、すべてがポジティブに進むようになるんですよね。
脳は脂質(油)でできているって話をさきほどしましたが、いい油が体に染みてくると余計なことを考えなくなるので、クヨクヨしたり、悩んだり、ストレスを感じることが減ってくるのかもしれません。

 

元木:逆に油が少ないと、クヨクヨしちゃうってことですよね。あと、私が個人的にすごく納得できたのが「食べ過ぎの定義」についてです。『食べたいときが、食べるべきとき』ってフレーズが心に響きました。

「本当に食べたいものは、自分にとって必要なもの」。食べたいのに我慢するのが、もっとも心身に負担をかけるのです。

 

伊達:食べ過ぎって他人に決められるものじゃないですからね。よく「腹八分目」っていいますけど、胃にメモリってあったかしら? と思うし(笑)。気をつけたいのは、お腹いっぱい食べた翌朝、お腹が空いていないのに朝食を食べてしまうこと。夜「ラーメン食べたい」「ポテトチップス食べたい」という欲求には従っていいけれど、3食決まった時間にとか、お腹が空いていないのに食べてしまうのは食べ過ぎということです。

 

元木:「あぁ〜食べ過ぎちゃった」って口癖もやめた方がいいんですよね?

 

伊達:もうこれは、太る原因ナンバーワンです! 食べたことを反省する必要はありません。本能なんだから、「おいしかった!」でいいんです。問題はその後、本当にお腹が空くまでは食べないことです。

 

元木:これは個人的にも興味があるのでお伺いしたいのですが、病気で糖質を制限している人を除いて、ダイエットを目的に「お米を食べない」「お肉を食べない」って人多いじゃないですか? やっぱりお米って太るのでしょうか?

 

伊達:ごはんは水分を多く含んでいるので、夜食べて翌朝体重計に乗ったら体重は増えます。でも脂肪が増えたわけではないんです。ここ90年で、日本のお米の消費量は半分ほどにまで落ち込みました。それなのに、糖尿病と肥満は増えています。これって、お米が太る原因ではないと思うんですよね。

むしろ食べた方がいいと私は思います。和食は口内調味を楽しむ料理です。最初に温かいお味噌汁で胃腸をウォーミングアップしてから、ごはんといっしょに食べていくことが日本人には合っていると思いますよ。

食料自給率が先進国の中で圧倒的に低い日本で、自給率100%が、お米。ごはんの価値は、最近徐々に見直されるようになっています。

 

元木:たしかにそうですね。食べ方に関しても日々情報ってアップデートされていますが、情報があり過ぎて正しい情報を拾えなくて困っている人も多いですよね。『女性の不調は「油+」でよくなる』で先生が伝えてくださることは、これから不調を訴えている人たちへの救いの言葉になると思います。

 

伊達:ありがとうございます。なんでも基礎って大事なんですよ。建物だって基礎工事を怠ったら崩壊しますよね? それは人間の身体だって同じです。最終的に大切なのは、自分が心地いいか、幸せか、ということです。いろいろな情報がありすぎて、これはダメ、あれもダメって言われることがすごく多い世の中です。どんな健康情報も、自分に合うか合わないかで判断してほしいですね。

 

元木:食べたもので身体や細胞が作られるっていうのは事実ですからね。

 

伊達:いろいろと試すのは悪いことじゃないんです。ただ合わないのに続けているのはどうなんでしょう? 例えば、シャンプーは生まれた時から今まで、成長していく中で自分に合うもの・合わないものがわかってきますよね。子どもの頃からずっと同じシャンプーを使っている人は、ほとんどいないと思います。

ところが、食べ物に関しては「同じでいい」と思っている方が多いんです。子ども向けの食育は積極的にやっているのに、大人の食育は公的にはあまりされていません。大人はもう成長しなくていいのに、成長するための子供の食生活をしているからメタボリックシンドロームになっちゃうんです。

自分のお腹が空いた時に、食べたいものを食べる。大人はもう、それでいいんですよ。

 

元木:自分にちゃんと向き合って、自分自身に正直になることがポイントかもしれないですね。食事で心も身体も変えられる、本能で食べたいものを食べて、元気な人が増えたら、世界はもっと元気になれるかもしれませんね。

 

伊達:そう思います。まずは「油」と「水」からこだわってもらえたらうれしいですね。

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 伊達友美(だてゆみ)

管理栄養士、日本抗加齢医学会認定栄養士、戸板女子短期大学食物栄養科講師。食事カウンセラーとして、クリニックやスパなどで32年間にわたって食改善アドバイスを行う。制限型の食事ではなく、代謝アップの栄養をプラスする「プラス栄養メソッド」を基本とした指導法で、健康で美しくありたいと考える多くの女性たちから人気を集めている。自身の25kgのダイエット、ニキビ肌改善、摂食障害克服の経験を踏まえながら、テレビや雑誌などでも活躍中。

※「プラス栄養メソッド」は伊達友美さんに帰属する登録商標です。

「幸福学」研究者が科学の力で導き出した、自分らしくいるための「7〜8時間の質のいい睡眠をとる」習慣

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣4.7〜8時間の質のいい睡眠をとる

よく眠って、目覚めた朝の気持ち良さは、誰もが知る幸せです。

 

睡眠の大切さは、広く知られるところですが、「7〜8時間の睡眠をとると幸せ」という研究結果があります。それより長い時間でも、短い時間でも、幸せ度は下がる傾向が見られます。

 

睡眠については体質もあるので一概にはいえませんが、基本として「7〜8時間睡眠がベスト」ととらえてください。

 

最近は、寝る直前までスマホを見て、なかなか眠りにつけない人も多いと聞きます。眠る直前までスマホを見ていると、交感神経が刺激され、副交感神経へのスイッチが入らず、頭が冴えてしまうのです。それ以外にも、考えごとや心配ごとが多くて寝つけない人もいるでしょう。寝つきが悪いのはもちろん、眠れたと思っても、眠りが浅く、実は眠れていない「隠れ睡眠不足」の場合も多いようです。

 

私は、“眠る時間だけど、まだあまり眠くない”というときには「すっごく眠い。いま、ものすごく眠い」と自分に暗示をかけています。不思議なことに、そうするとスッと眠りに入れます。とはいえ、この方法は慣れていないと少し難しいかもしれません。

 

コーチングをしている友人に教えてもらったのは、「手足の先が温かくなっていくのを感じる」という方法です。

 

体におもりがついて海の底に沈むようなイメージで、ゆったり布団に体を預けます。そして、手足の先が温かくなることをイメージする。最初は難しいかもしれませんが、何度か練習をすると、すんなり眠れるようになります。

 

※出典=Carolyn Gregorie『科学が証明したすぐ幸せになれる16の方法』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

 

全50の習慣は、こちらの本で網羅されています。

 

【書籍情報】

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

「幸福学」研究者が科学の力で導き出した、自分らしくいるための「100%を目指さず、70%くらいでよしとする」心構え

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣3.100%を目指さず、70%くらいでよしとする

お母さんが子どもの87点のテストを見て、「90点いかなかったの? 残念ね」と言うか、「87点、すごいじゃない。上位の点数ね」と言うか。

 

子どもの成長にとっても、お母さん自身にとっても、後者の考え方のほうが、幸福度が高いといいます。

 

人はおおざっぱに物事を考えるほうが、幸せです。もちろん、おおざっぱがすぎて“いいかげん”というのでは困りますが、多くの人が許せる程度のおおざっぱであれば、自分も周りも幸せになります。

 

私は、今日中にやりたかった仕事がまだ残っている、でも、そろそろ終業時刻、というときには「だいたいはできたから、あとは明日にしよう」と思います。やりたかったことのすべてができなくても、「今日もよく頑張った」とポジティブに自分をほめてみます。

 

これを「今日のノルマがこなせなかった」、「あと少しで終わるのに、時間がきちゃった」と、ネガティブに考えることもできます。そんなまじめな考え方も、たしかに一理あります。でもポジティブなほうが幸せですよね。

 

日本人は几帳面でまじめな人が多いと評価されますが、すべてのことをきっちりしなければ心が落ち着かない、という人以外は、基本はきちんと押さえて、それ以外は“ざっくり”“ゆるっ”ととらえるという視点が大切です。

 

“ま、いっか”と思えれば、ずいぶんと心が楽になるでしょう。

 

※出典=前野隆司『幸せのメカニズム』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

 

全50の習慣は、こちらの本で。

 

【書籍情報】

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

「組織のネコ」とは? 楽天大学学長に聞く、組織の中で自分らしく働く処世術

あなたは、今の“組織”で無理せず、楽しく働けている……?「楽天市場」出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立し、社内で唯一、兼業・勤怠自由のワークスタイルを確立した正社員として知られる仲山進也さん。リモートワークや副業など、新しい働き方のスタイルが模索されている時代に、組織の“イヌ”ならぬ、組織の“ネコ”という働き方を提案しています。これからの自分にはどんな働き方が合っているのか、そんな疑問を持つすべての人に読んでほしいのが、『「組織のネコ」という働き方』。ブックセラピスト・元木忍さんが聞き手となり、同書に込められた“自分らしく働く”術を、著者である仲山さんにうかがいます。

 

『組織のネコという働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント』
1760円/翔泳社

楽天という大企業にいながら兼業自由・勤怠自由の正社員となった著者が説く、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、主に組織の「ネコ・トラ」として幸せに働く方法を紹介する。

 

自由な働き方の定義をちゃんと言語化したかった

元木忍さん(以下、元木):私たち現代人が“自由に働く”って、具体的にどういうことなのか? 仲山さんの著書『「組織のネコ」という働き方』は、それをすごくわかりやすく、なおかつ面白く教えてくれる本だと思いました。今の時代、“自由に働く”というと、自分のやりたい仕事だけをやってイヤなことはしないとか、独立・起業して組織に属さないとか、そんな働き方ばかりがイメージされがちですよね。

 

仲山進也さん(以下、仲山):はい。わがまま放題、好き勝手に仕事ができるというニュアンスだけで“自由な働き方”をとらえてしまうケースは、よくあると思います。

 

元木:ユニークな本書が生まれた背景は、そのあたりにありそうな気がします。

 

仲山:そうですね。僕は社員20人程度だったころの創業間もない楽天に入社して、2000年に「楽天大学」という出店者同士の学び合いの場を設立しました。その後、社内で唯一の「兼業自由・勤怠自由の正社員」という働き方になって、「会社に行っても行かなくてもOK」というプレースタイルを2007年から続けています。

 

「自由に働く=好き勝手やっている」と思われがちなのに引っかかりを感じたことが、この本の出版につながったと話す、著者の仲山進也さん。

 

元木:楽天って規律はわりと厳しい会社ですよね。そんな中で自由に働ける人は珍しいのでは?

 

仲山:そうですね。社内で「仲山は自由でいいよな……」みたいに言われることもあったのですけど、モヤッとしたのを覚えています。「自由でいいよね」の言外に、「こっちはちゃんと働いているのに、好き勝手やれていいよね」というニュアンスをなんとなく感じたからかもしれません。

 

元木:まるでちゃんと仕事をしていないと言われているような……。

 

仲山:自分では「好き勝手」にやっているとは思っていないので、僕のような働き方がどうしたら「変人」に見えないようになるか、“自由な働き方”を言語化したいというのが本をつくった背景にあります(笑)。

 

組織のネコという選択肢がある

元木:そして数年を経てたどり着いた答えが、“組織のネコ”という働き方だったわけですね。本書には自分が組織のネコ派か、イヌ派かを診断できるチェックリストがついていますが、これは面白いです。勤め人を経て独立した私はやっぱり、100%ネコでした(笑)。簡単にいうと、組織から与えられた職務を忠実に遂行するのが得意なのはイヌ。逆に、組織の指示命令が自分の価値観に反する場合は自分の考えややり方を大切にしようとするのがネコ……といったところでしょうか。

 

組織の動物4タイプ。ネコはトラに憧れ、イヌはライオンに畏怖の気持ちを持つ……。4種類の動物の相性、関係性をわかりやすく示した図。

 

 

仲山:元木さんのように10項目すべてが当てはまって、組織を出て独立したような方は、“ネコ道”まっしぐらですね(笑)。逆にあまり当てはまらなかった方は、組織のイヌとして“イヌ道”を進んでいけばよいと思います。ネコがよくて、イヌがダメということではなく、“違い”があるだけのことなので。よいのは“健やかなイヌとネコ”で、よくないのは“こじらせたイヌとネコ”ですもし10項目のうちひとつでも当てはまるものがあって、なおかつ今の仕事や職場に問題やモヤモヤを感じているならば、この先ずっと同じ働き方だと健康によくない可能性があります。こじらせちゃう。

 

元木:仲山さんご自身はやはりネコですよね?

 

仲山:そうなんですが、大学を卒業して就職した最初の会社では、言われた仕事を言われた通りにやっていました。 “イヌの皮をかぶったネコ”状態。

 

元木:たしかに、その働き方は不健康な感じがします。

 

仲山:この本にも登場するレオス・キャピタルワークスの藤野英人さんがおっしゃっているのですが、今の日本企業には2タイプあって、“令和4年型企業”と“昭和97年型企業”に分かれると。高度経済成長期に急成長を遂げたけれど、事業や組織の賞味期限が切れかけていて、すでに時代に合わなくなった社内文化を引きずったまま今に至っているのが“昭和97年型企業”です。

 

元木:つまり後者の企業は、平成の間に何も変われなかったということですか。

 

仲山:その通りです。月曜日の朝がくるのが憂鬱だったり、正月や連休明けがツラくて仕方ない会社員の多くは、昭和97年型の企業で“イヌの皮をかぶったネコ”として働いている人ではないかと思います。昭和まではイヌの皮をかぶって会社の言うことさえ聞いていればみんなハッピーに暮らせたんです。でも賞味期限が切れかけてくると、それまでと同じことをやっていても同じ結果が出なくなり、もっと無理してがんばることで数字をつくろうとしがちになります。それによって健やかさが失われて、こじらせた人や精神を病む人が増えていくという……。

 

元木:あると思っていたレールの先がなくなってしまった……ということですかね。

 

仲山:もともとネコな人がイヌのふりをしている状態は、本来の性質に合っていない。でも、「働くとは組織のイヌとしてふるまうこと」と思い込んでガマンしながら働くも、結果が出ないのでしんどくなっていきます。そんな人たちに、「組織のネコ」という働き方の選択肢もあると伝えたいんです。楽天市場の出店者さんでも、“イヌの皮をかぶったネコ”な店長さんが、楽天大学で“ネコまっしぐら”な店長さんたちと出会って、思い切って自分を出してお客さんと接するようになると、売り上げが上がったり「仕事が楽しい」と思えるようになったりするんです。身近な人がそうやって変化していくのを見た別の店長さんが、「私にもできるかも!」という気持ちになって、実際に変わっていくということがよくあります。

 

元木:なるほど。そのあたりに、昭和97年型企業が変わっていくチャンスもありそうですよね。そういう“ネコな人”あるいは“ネコな自分を取り戻した人”が成功体験を重ねていくと、そのうち仲山さんのように仕事を心から楽しむ“トラ“になれるってことでしょうか?

 

仲山:この本では、組織にいながら自由に働いて成果を出していく人のことを“組織のトラ”、“トラリーマン”と呼んでいます。さっき話に出た藤野さんが名付け親です。その藤野さんに「仲山さんはトラですね」と認定していただいたのですが、自分ではわかりません。トラになれるかどうかは周囲の評価かなと思います。一方の“ライオン”は組織を統率する従来型の企業エリートですから、肩書に「長」がついているわかりやすい存在です。ぼくが出会ったトラっぽい人たちは、肩書に「長」がついている人もいれば、その人のためにできた肩書がついている人、肩書は平凡な人など、いろいろなパターンがありました。

 

100%ネコ派のタイプだけれど、企業に勤めていた時は“イヌをかぶって”いたこともあった……という元木忍さん。

 

こじらせたイヌ・ネコになっていないか?

元木:逆に、“こじらせたイヌ・ネコ”の人は、これからの時代どうしたらいいのでしょう?

 

仲山:“こじらせている”とは、たとえば、ネコであれば最初の話にあったような自由の意味を履き違えているタイプ。組織で大切なことに対して「なんでやらなきゃいけないんですか」「やりたくありません」などとわがままを言う状態ですね。こじらせたイヌは、指示されたことしかやらず、思考停止してしまっているパターンです。それが極まると、不正を指示されたらそのままやってしまう、というようなことが起こってしまいかねません。

 

元木:イヌにしてもネコにしても健やかでいるのが大事ということですね。ちなみに、“ネコの皮をかぶっているイヌ”というのもいたりしますか?

 

仲山:本には書いていないのですが、いると思います。いわゆる“意識高い系”って揶揄されるようなタイプの人が、イヌなのに「私は自分の価値観を大事にしています」と言っているケースとか。「うちの会社はイケてない」と言いながら、自分で変化を起こそうとするわけではなく、「早くこんな制度をつくってくれたらいいのに」と他人のせいに思っているような。

 

元木:あぁ……なんとなくわかります。自分がどっちのタイプか見極めるのは、実は難しい?

 

仲山:賢い人ほど自分をごまかせてしまいますからね。でも着ぐるみを着て運動したら効率が悪いのと同じで、本来の性質と違うふるまいをしていたら、そのうち必ずパフォーマンスや成長に悪影響が出てくると思います。そういうとき、「無理していないかな?」と立ち止まって、ふりかえりをできることが大事です。

 

世の中には、“イヌの皮をかぶったネコ”な自分に気づいていない「隠れネコ」がまだまだたくさんいるという。イヌとネコ、あなたはどちらだと思いますか?

 

“他由”で選んでいないかを自分の心に聞いてみる

元木:ここで最初の“自由に働く”という話に戻りたいのですが、ネコだから自由、イヌだから不自由というわけではないんですよね。

 

仲山:そうです。自由とは“自分に理由がある”ことだと考えています。対義語は“他由”(造語)で、指示されたからやっている、というのが他由で動いている状態です。

 

元木:他由ですか。なるほど。

 

仲山:自分の欲求で動いていても“他由”な場合があります。たとえば頑張って稼いで高級ブランドのバッグを持ちたい、という動機が、“他人からチヤホヤされること”だったら、それって他人に理由がありますよね。逆に人から言われた他由な仕事であっても、自分で解釈して意味を感じられる状態に転換できたら、それは “自由”な仕事といえます。

 

元木:そういう“自由”な選択ができる健やかなイヌとネコがいる組織は、いいものを生み出せそうですね。

 

仲山:イヌとネコは得意な仕事が異なります。ネコは新しい価値を生み出すのが得意で、イヌは業務を改善しながらきちんと回していくのが得意。トラ・ネコ派が立ち上げたスタートアップがある程度軌道に乗ったら、今度は業務をちゃんと回していけるイヌ派の人が転職してきて活躍するというケースはよくあると思います。

 

元木:もうひとつこの本のいいところは、他者との違いを理解して、人に優しくなれることだと思います。とくに私の場合は、若い人との付き合い方、コミュニケーションの取り方で参考になる部分が多いと感じました。

 

仲山:“強みを活かす”ってよく言われるじゃないですか。これって言い換えると“他者との違いを活かす”ことなので、旧来型の組織が社員に対してやってきた“凹を埋める”というやり方だけでは、強みは活かせないんですよね。決められたことを指示通りこなすことはできない、その代わり得意なことで価値を生み出す、という“組織のネコ”が増えていくと、今後は評価の仕方も変わってくると思うんです。このあたりは、次の本のテーマとして考えています。

 

元木:それも楽しみですね。発売したら、またぜひ紹介させてください!

 

『「組織のネコ」という働き方』とあわせて読みたい、仲山さんの著書。

 

【プロフィール】

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長 / 仲山進也

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。

「幸福学」研究者が科学の力で導き出した、自分らしくいるための「手紙を書く」効果

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、お届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣2.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く

誰かに対して心の中で感謝するだけでも幸せを感じる効果はありますが、その気持ちを手紙にしたためると、より幸せに近づきます

 

私たちが主催するワークショップで、感謝している人に手紙を書いてもらったことがあります。

 

あるとき、参加者からひとりを選んで、感謝した相手への手紙を読み上げてもらうことになりました。彼女の手紙は、母親へのもの。その場に母親はいませんでしたが、感謝の手紙を書くだけで幸せな気持ちになります。読み上げるとさらに幸せを感じられます。参加した多くの人が感動で涙していました。それは、会場が幸福感で満ちあふれていた証しです。

 

実は、私たちも結婚記念日には、手紙の交換をします。毎年感激してくれるので、その様子をイメージしながら書いているうちに、自分も感動して泣きそうになってしまいます。

 

感謝の手紙を書くときのコツは、感動しながら書くことです。言い換えれば、自分が感動しない手紙は相手も感動しません。

 

互いに感謝の手紙を大切にして、時々、読み返したりもしています。手紙は読み返せるので、何度でも幸福感に満たされることができるのも、いい点です。

 

そういえば、うちの子どもは、家族からのバースデーカードや受験が終わったときの手紙などメモリアルなメッセージを机のシートの下に敷いています。

 

自分に対する応援メッセージや愛情あふれる手紙が目につくところにあるのは、幸福感を得られるいい方法ですね。

 

※出典=前野隆司『家族の幸福度を上げる7つのピース』

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

 

細字になっているものも含めて全50の習慣は、こちらの本で。

【書籍情報】

『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)

 

前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

「幸福学」研究者が科学の力で導き出した、自分らしくいるための習慣「一杯のお茶をじっくりと味わう」

「幸福学」とは、幸福について研究する学問のこと。世界中で「幸せとはなにか」「人はどうしたら幸せになれるのか」など、「幸せ」に関する研究や実験が日々おこなわれています。つまり、科学的に証明された「幸せになれる方法」はたくさんあるのです。

 

幸福学の研究者、前野隆司さんと前野マドカさんのふたりが導き出した、日々の暮らしに取り入れられる「幸せになるための習慣」とは? 忙しい毎日に疲れてしまった人へ、ふたりの共著『そのままの私で幸せになれる習慣』から、連載形式でお届けします。

 

【関連記事】「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

 

習慣1.一杯のお茶をじっくりと味わう

みなさんは一日に何回、お茶を飲んでいますか? そのお茶の味を覚えていますか? 家でも、カフェでも、オフィスでも、ひとりでも、友だちとでも、彼とでも、一日に一度でいいので、これからいただくお茶に意識を向けて、ゆっくりとティータイムに集中してください。

 

他のことは考えず、会話もせずに、静かに集中するのがポイントです。

 

香りはどうですか?

 

ティーカップは美しいですか?

 

味わいはどうでしょう?

 

誰かが丁寧に淹れてくれた、あるいは自分が淹れたお茶やコーヒーに集中するだけで、スーッと気持ちが落ち着いてくるのがわかると思います。

 

私たちのワークショップでは、この「一杯のお茶と向き合って、心を込めてお茶を味わい尽くす」というレッスンをしています。参加したみなさんは、それぞれに穏やかな笑顔になります。「あぁ、おいしい」という静かなつぶやきもあちこちから聞こえてきます。

 

お茶を味わい尽くす幸せを知ったら、たとえば、仕事のプレゼンや打ち合わせ前のお茶の時間に、いったん気持ちを緩めて、仕事に戻ることができます。深い悩みがあったり、たくさんのもやもやで落ち着かない心も、静かにお茶に集中することで、ほどけていきます。

 

大切なのは、一杯のお茶に集中して、味わい尽くすこと。これは、つまり、古くから日本に伝わる「茶道の心」、そのものですね。味わい尽くすのは、お茶以外でも、お菓子、食事、香りなど、五感に集中できるものなら、何でもOKです。

 

科学が明かした「幸せ体質」になる50の習慣

1. 小さなことに声をあげて笑う
2.少しだけ上を向いて、いつもより大股で歩く
3.きれいな植物やかわいい動物と触れ合う
4.一杯のお茶をじっくりと味わう
5.頭をからっぽにして、散歩やジョギングをする
6.スマホとテレビから少し離れてみる
7.お気に入りの音楽を聴く
8.7〜8時間の質のいい睡眠をとる
9.誰かのために小さな親切をする
10.自分のためよりも、人のためにお金を使ってみる
11.なんでもないことを「満喫」する
12.自分だけの“オリジナル作品”をつくってみる
13.あえて、いつもと違うことをしてみる
14.誰かと、またはひとりでハグをする
15.「やってみたかったこと」をやってみる
16.「最後のひと月」であるかのように過ごす
17.会いたい人に連絡してみる
18.「ありがとう」を記録する
19.自分と違うタイプの友達を持つ
20.人のいいところをうわさする
21.なんでもいいからグループ活動に参加する
22.嫌いな人にうそでも同情してみる
23.周りの人を信じて「期待」する
24.悩んでいる友達の話を聞いてあげる
25.いつもの店員さんにひと言かけてみる
26.感謝している人に気持ちを込めた手紙を書く
27.小さくて、できそうな目標を立てる
28.「やらねばならないこと」をやめてみる
29.結果は気にせず、その過程を楽しむ
30.100%を目指さず、70%くらいでよしとする
31.迷ったときは「これでいっか」と妥協してみる
32.「没頭」できる仕事をする
33.こだわりすぎず「適度」にこなす
34.ネガティブなことをポジティブにとらえてみる
35.今日あった「いいこと」を3つ書き出す
36.ほほえんでしまうようなことを思い出す
37.「自分の持っているもの」を数える
38.子どもの頃にワクワクしたことを思い出す
39.人生のターニングポイントを振り返る
40.前向きにやろうと思うことを3つ挙げる
41.素直になれていないことを並べる
42.今日あった「いいこと」「悪いこと」を書き出す
43.わからないことは「わからない」と受け入れる
44.イライラ・もやもやしている自分を受け入れる
45.どんなに小さなことでも「夢」を3つ挙げる
46.いちばん大切にしている「価値」を探る
47.目の前の「やるべきこと」をはっきりさせる
48.自分にとって「最高の未来」をイメージする
49.楽しかった日々を再現して味わう
50.ポジティブな思い込みをする

上記の全50の習慣は、こちらの本で。


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介しています。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 

コロナ禍で売上9割減!『地球の歩き方』が出した“旅行しにくい時代”への答えとは

世界各国の詳しい現地情報や旅のノウハウが掲載された、旅行ガイドの定番『地球の歩き方』。海外旅行には必ず持っていく! という人も多いでしょう。しかしコロナ禍で海外取材に行けず、ガイドブックの改訂がいっさいできなくなるという事態に……。そんな『地球の歩き方』が、最近何やら変わったガイド本を次々と出版し、話題になっているのです。

 

なかでも、オカルト誌の金字塔(?)として創刊から40年超の歴史を誇る『月刊ムー』とコラボした『地球の歩き方 ムー ~異世界(パラレルワールド)の歩き方~』の発売には、出版業界もザワつくほど。今回、聞き手となるブックセラピスト・元木忍さんも「一体何があったの?」と驚きを隠せなかったそう。

 

そこで『地球の歩き方』の編集長、宮田崇さんに、同誌がコロナ禍の逆風の中、どこへ向かって歩いているのか、そして大ヒット中『地球の歩き方ムー』の見どころなどをうかがいます。

 

地球の歩き方

2022年2月に発売された『地球の歩き方ムー』は、3月時点で11万部の大ヒットを記録。他にも東京オリンピックに合わせて出版された『東京』、読者からのリクエストが多数寄せられ出版となった『東京 多摩地域』も話題に。また「旅の図鑑」シリーズは、2020年から2022年3月末までに14冊をリリース。『世界の祝祭』『世界のカレー図鑑』など個性豊かなラインナップが並びます。最新刊は3月に発売された『地球の果ての歩き方』。

 

コロナ禍で、海外旅行ガイド本の売上は9割減

元木忍さん(以下、元木):今日はとっても楽しみにしておりました! うかがいたいことだらけなのですが、まず2020年秋、ダイヤモンド・ビッグ社から学研プラスへ『地球の歩き方』が丸ごと事業譲渡されるというニュースがありました。私自身も大きな出来事として記憶しているのですが、その背景から教えていただけますか?

 

宮田 崇さん(以下、宮田):私にとっても青天の霹靂でした。2020年11月に事業譲渡に関する決定事項が発表されて、2021年1月に新会社「地球の歩き方」が設立となりました。入社して20年以上『地球の歩き方』に携わってきましたが、ここまで海外旅行市場がダメージを受けるのは初めてで、変化に適応しようと、とにかく必死でした。

 

地球の歩き方編集部・編集長の宮田崇さん。この日は『地球の歩き方ムー』のタイアップTシャツでご登場!

 

元木:ちょっと衝撃的でした。その背景には新型コロナウイルスの影響があったということでしょうか?

 

宮田:そうですね。2020年4月に最初の緊急事態宣言が出た時は、多くの書店さんが休業していました。もちろん海外にも行けないので、『地球の歩き方』ガイドブックシリーズの売上は9割減。当時は「コロナも夏前には収束するだろう」って思っていたし、東京オリンピックを見越して出版した『地球の歩き方 東京』や2006年から発行している『御朱印』シリーズも好評で、今につながる図鑑シリーズの企画も進めている時期でした。正直、すぐには心の整理がつきませんでしたね。事業譲渡から3か月くらい多忙な時期が続いて、記憶が抜けているんですよ、白髪も増えちゃったし(笑)。

 

元木:なんと……そこから学研グループにいらっしゃって、同じく出版社でも、かなり“文化”が違ったのではないでしょうか?

 

『地球の歩き方』は大好きで、いろいろな地域を読んでいたという元木さん。

 

宮田:コロナが想像以上に長引き、海外旅行が思うように解禁とならない焦りがないわけではありませんが、「旅人を第一に考えたい」という思いは変わっていません。会社が変わっても以前と仕事の内容には大きな変化はないですね。

 

元木:「地球の歩き方」に、学研らしさも重なって面白いことができそうですよね。ところで、現在の編集部にはどれくらいの人数がいるのでしょうか?

 

宮田:12名ですね。年間100本を目標に出版スケジュールを組んでいます。コロナ前は、海外などのガイドブックを年間約80本、女性向けの『aruco』、御朱印や島旅などのシリーズ本も合わせると年間120本くらい出していました。

 

旅ができない状況下だからこそ生まれた図鑑シリーズには、旅の奥行きを知る面白さがある

『地球の歩き方 東京』はこれまで海外の地域を紹介してきた『地球の歩き方』の創刊40周年を記念し、初の国内版としてリリース。東京を再発見できる定番のガイドブックとして、長年の“歩き方ファン”からも親しまれている一冊です。『世界244の国と地域』は“旅の図鑑シリーズ”の記念すべき第1弾。197ヵ国と47地域の情報をギュッと濃縮した一冊。次の旅行先選びにもおすすめです。

 

元木:年間100冊はすごい目標ですね! もちろん、関わる外部スタッフさんもいらっしゃってのことだと思いますが、いろいろなご苦労が想像できます(笑)。ちなみに最近話題で、私も大好きな図鑑シリーズは、学研プラスに移ってから発売されたものなんですか? きっかけを教えてください。

 

宮田:企画したのは学研グループに入る前です。東京にオリンピックが来るから『地球の歩き方 東京編』を出そう、それと合わせて、オリンピックの開会式・閉会式を見ながら世界各国の雑学を読んで楽しめる本を作ろう! と、旅の図鑑シリーズとして『世界244の国と地域』を発売したのがきっかけです。

これは売れるぞ~! とやましい気持ちもありましたね(笑)。結局、東京オリンピックが1年延期になって、タイミングがはずれてしまったのですが、ちょうど海外旅行に行けない時期が続いていたので、読者には「地球の歩き方が、次の旅先選びのための本を出してくれた」って前向きに捉えてもらうことができました。

 

元木:なるほど、学研に移籍する前だったんですね! “図鑑”が入っていたので、最初から学研が絡んでいると思っていました。でもオリンピックは1年延期になってしまったものの、話題の本になりましたよね。

 

左から『世界のすごい城と宮殿333』『世界のすごい巨像』『世界のすごい島300』。ページをめくるたび、「すごい」と呟いてしまいそうになる、“すごいシリーズ”3部作。まだまだ知らない世界の一面を垣間見せてくれます。

 

元木:この図鑑シリーズ、タイトルセンスがいいですよね! コレクションしたくなるというか、本好きにも旅好きにも刺さるものが多いんですよ。『世界のすごい巨像』とか思わず手に取りたくなっちゃうんですよね。

 

宮田:すごいシリーズのテーマは、最初はノリで提案したものでした(笑)。私自身が仏像好きで、当初は世界の仏像を集めた本を作ろうと企画したのですが、世界中を網羅した一冊にするのがなかなか難しくて……。それが『世界のすごい巨像』にしたら、見事にハマってくれました。

 

元木:『世界なんでもランキング』と『世界のグルメ図鑑』も素晴らしかったです。『世界遺産 絶景でめぐる自然遺産完全版』も、たくさんの世界遺産の本がある中で地球の歩き方が出すとこうなるのねって新しい発見もあって。

 

元木さんお気に入りの『世界のグルメ図鑑』。イタリアの餃子“トルテッリーニ”はこれで名前を覚えたそう。

 

宮田:ありがとうございます! 『世界なんでもランキング』は、“アームチェアトラベル”(=自宅で海外旅行の気分を味わうこと)をどこまで楽しめるか? って考えていた時に、家族と楽しめる、子どもたちと楽しめる本にしたくて企画したものでした。『世界のグルメ図鑑』も、この担当者がとにかくグルメなんですよ。旅に行けなくてもお腹は空くよね? から企画が始まりました。世界のグルメを紹介しつつ、世界の言葉で「おいしい」を言うとどうなる? とか、自宅で作れるレシピ、日本で食べられる場所も紹介して、旅にいけない中で旅人に寄り添うにはどうしたらいいか? ある種、大喜利のような。いろいろな制限がされている中でも旅の気分を味わえるようなテーマを考えていました。

 

元木:ガイド本は、現地取材をして作っていますよね? 今回の図鑑シリーズのネタはどこから集めてきたのでしょうか?

 

宮田:創刊時から携わっているスタッフも多いので、ガイドブックには使えないけれど、世界のネタは豊富にあったんですよ。例えば、「イランの女性って高すぎる鼻がコンプレックスで、美容整形で鼻を低くしているらしい」「オーストラリアの水にはフッ素が入っているから、虫歯になる人が少ないらしい」「カタールは、飛行機にハヤブサを持ち込めるらしい」とか。飲み会の中で出てくるようなネタを、放出しているところです(笑)。

僕も、これまで72の国と地域に行ったことがあるんですけど、本を作りながら「あれ? まだ120も行けていない国と地域があるの?」って気がついちゃったんですよ。図鑑シリーズを通じて、旅にいけない旅人たちも、まだ行ったことのない場所がたくさんあることに気がつくんじゃないかと思っています。

3月に発売した『地球の果ての歩き方』もタイトルだけ読むと「なんで?」なんですけど、知ると行きたくなる……。そうか、まだ攻めていないエリアがあったか! って発見してもらえるとうれしいですね。

 

『世界遺産 絶景でめぐる自然遺産 完全版』『地球の果ての歩き方』。宮田さんが入社した頃、当時の社長からポルトガルのロカ岬がいかに素晴らしい果てか、熱弁されたのだとか。もしかして、旅のプロは果て好きが多い?

 

10年後には、ムーの言葉が真実になる……かも?

大ヒットを記録中の『地球の歩き方ムー』は発売前から重版出来。今は入手困難となった初回限定版には、『月刊 ムー』デザインの表紙に着せ替えられる帯付き。

 

元木:そして、月刊ムーとのコラボですね。まずは大笑いしました。地球の歩き方を愛している宮田編集長が、なぜムーなのか……。学研プラスに来たからってまさか、無理矢理コラボしたわけじゃないよね? と思ってしまって(笑)。一体どんな背景があったのでしょうか。

※『月刊ムー』は学研プラス(旧学習研究社、学研バブリッシング)が出版元として40年間発行。現在は学研プラス傘下のワン・パブリッシングが承継している。

 

宮田:きっかけは地球の歩き方の現社長の一声でした。もともとムーの編集部にもいた経緯があったので、やろうよ! って。僕自身も幼少期には、世界の七不思議に始まり兄貴とツチノコを探しもしました。愛読書は手塚治虫全集だったので、ムーに出てくるような地球外生命体やUFOの存在は否定派ではありません。

あと実は、ムーと地球の歩き方って同級生(創刊年が同じ1979年)でして。地球の歩き方として、謎めいたムーの世界を歩かせることができたら面白いと思ったので、かなり楽しく制作することができました。

 

元木:めちゃくちゃいい話ですね。ムーのファンのためにも、そして世界中を旅している人たちにもいろんな解明をしてくれちゃう発想が最高です! 制作はどのように進めたのでしょうか? 苦労はありませんでしたか?

 

宮田:そうですね、見せ方の部分ではたくさんの工夫があります。例えば、エジプトのピラミッドにしても地球の歩き方の観光地としての解説と、ムーが唱える不思議な説を両方読んで楽しめる作りになっています。

 

元木:交互にページがあるので、1つの場所について、地球の歩き方とムーが追いかけっこのように読める面白さがありますね。

 

同じ地域でも、地球の歩き方とムーそれぞれの視点で書かれており、情報量もたっぷり!

 

地球の歩き方のページでも、ムー的な解説が入るコラムはデザインをムー仕様に。

 

また、ページの隅にはUFOに連れ去られるモアイ像のパラパラ漫画も! 細かいところまで見逃せないのは、地球の歩き方イズムです。

 

宮田:実は、ムー的な視点ってすごく大切で。例えば、歴史的な地域を訪れて、「ここをあの英雄が……」って何もない場所を見て、思いを馳せるのは難しい。でも、史実だけでは語り尽くせない部分もムーの解釈を知ることで、イメージできてワクワクするかもしれない。事実や史実だけを丁寧に正確に伝えることも大切ですが、地球の歩き方読者にもムー読者にも、新しい旅の視点を与えられる一冊になったと思います。

 

元木:しかも、11万部(2022年3月時点)の大ヒット! すごいことですよ。

 

宮田:くっついちゃいけない“二人”がくっついたからですかね?(笑)内容はしっかりしているので、「便利なものがまとまった」「欲しい情報が一冊になった」というニーズもあったかもしれませんね。

 

元木:あとSNSの発信もとても上手ですよね。

 

宮田:ありがとうございます。発売30日前からTwitterでの告知を開始し、毎日ツイートし続けました。
Twitterは、人によって接する時間帯が変わります。いつもフォロワーさんが初見の状態を意識してつぶやいていくと、10回連続でつぶやいたこともそのうちのひとつが「初めて見た情報」になることもあるんですよね。しつこいくらいやった結果、発売前に重版が決定しました。

 

ムー以外にもご存知、大泉洋さん出演の『水曜どうでしょう』ともコラボしていた地球の歩き方。創刊時の表紙デザインに、ポエトリーなキャッチコピーが綴られた『ヨーロッパ21カ国完全制覇(上巻)』(右)と、現代の馴染みある表紙デザインにメルヘン街道の朝が描かれた『ヨーロッパリベンジ ヨーロッパ20カ国完全制覇完結編 21年目のヨーロッパ21カ国完全制覇(下巻)』(左)。どうでしょう軍団とともに旅している気分を味わえるファンにはたまらない、まさに永久愛蔵版!

 

世界中を旅すれば、世の中から争いごとはなくなる

元木:素晴らしい! 今後、ムーのようなコラボはありますか? ムーと同じ出版社には『歴史群像』という、これまた面白そうな雑誌もありますが?

 

宮田:ドキッ(笑)。いろいろと考えてはいます。旅と歴史は、とても相性がいいんですよ。福沢諭吉が書いた『西洋事情』ってご存知ですか? 幕末から明治にかけて書かれたもので、「レディの前でタバコを吸うな」とか書いてあるんです。お遍路さんのガイドブックにも「茶屋の娘がかわいい」って書いてあったり、昔のガイドブックには生きた情報があるんですよね。リブート作品のようにできたら面白いなぁと考えたりはしていますよ。

 

元木:なるほど。いろいろな切り口ができそうですね。最後に、これからについても伺いたいのですが、海外旅行も少しずつ再開できそうな雰囲気も出てきましたよね。

 

宮田:ついに本業の海外旅行が始まる! って感覚はありますね。ただ、世界の情勢でいうとまだまだ気軽に……というのは少し難しい部分もあります。

僕、中東エリアがすごく好きで、シリアも行ったことがあるんですけど、とにかくみんな優しい人なんです。カバンのチャックが空いていたら、肩叩いて教えてくれるんですよ。それに「どこまでいくの?」「バス停はあっちだよ」ってホスピタリティも世界トップレベルだと思います。世界で、そこに住む人を知れば、嫌いな国なんてなくなると思っちゃいますよね。

 

これはあくまで個人的な考えですけど、全人類が世界中を旅すれば、世界中から争いごとはなくなる……って信じたいですね。

 

【プロフィール】

『地球の歩き方』編集長 / 宮田 崇

大学1年の時にインドに行って以来、旅にはまる。コツコツ旅に出て24年、72の国と地域を訪れた。過去の担当タイトルは、ベトナム、カンボジア、東アフリカ、チュニジア、エジプト、南米、メキシコ、アメリカ全般、ハワイ、など多数。地球の図鑑シリーズ第1弾『世界244の国と地域』で、世界には244の国と地域があることを再認識し、世界制覇を密かにたくらんでいる。

 

妖怪漫画だけじゃない! 生誕100年・水木しげるの漫画に学ぶ「生きるためのヒント」

『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などの妖怪漫画で知られる漫画家・水木しげる氏(2015年没)が、2022年3月で生誕から100年を迎えました。記念イベントやタイアップ企画が次々と発表され、水木しげる氏にさらなる注目が集まっています。

 

数多くの名作を生み出し、惜しくも2015年にこの世を去った水木氏。根強い人気を誇る水木しげる作品の魅力とは、どんなところにあるのでしょうか。今回は、水木氏の大ファンでもあり、生前の水木氏とも親交があった医師で作家の久坂部羊さんにお話を伺いました。

 

“カッコイイ正義の味方”ではない、
漫画の中に描かれたリアルな現実に惹かれた

久坂部さんが水木しげる作品に出会ったのは、小学校4年生の時。別冊少年マガジンに載っていた『テレビくん』という短編作品を読んで、衝撃を受けたといいます。

 

「『テレビくん』の舞台は小学校。テレビの中に入ることができる不思議な少年・テレビくんが、転校生としてやってくるお話です。当時の漫画は、“ハンサムで強い正義の味方が悪者を倒す”という、別世界のヒーロー漫画が多かったと思います。ヒーローが活躍する漫画は、それはそれでワクワクするんですけれど、水木先生の漫画はそうじゃなかった。

 

『テレビくん』では、転校生が孤立している状況や、転校生にどういうふうに接していいかわからない生徒たちの様子など、自分が通う学校の空気感が、そのままリアルに漫画に描かれていたんです。さらに、登場するのはハンサムな二枚目ではなく、ジャガイモのような顔の主人公。他の漫画とは明らかに違う世界観に、子どもながらショックを受けたのを覚えています」(医師/作家・久坂部羊さん、以下同)

 

水木氏は、雑誌デビュー作である『テレビくん』で講談社児童まんが賞を受賞。同作は『水木しげる漫画大全集 第58巻』(講談社)などに収録されている。

 

誰も気づかない人間の本質を見抜いた
水木しげる漫画の魅力

その後、『ゲゲゲの鬼太郎』につながる『墓場の鬼太郎』シリーズの連載開始や、『悪魔くん』の実写化などを経て、国民的漫画家となった水木しげる氏。世間では妖怪や怪奇を描いた漫画が有名ですが、「それは水木さんの魅力を語る上での、一側面にすぎない」と久坂部さんは語ります。久坂部さんの考える「水木しげる氏の魅力」とは、どんなところにあるのでしょうか?

 

「水木しげる作品一番の魅力は、隠された人間の本質や社会の側面を直感的に見抜いているところにあると思います。誰も気づかなかった物の見方が、漫画のあちこちにさりげなく出てくるんです。

 

例えば、『街の詩人たち』という自伝的な短編作品に、『詩と称してウドンのような字を書いていれば世間は通るんだ』というセリフが出てきます。これはエセ芸術家が放つセリフです。書道など、プロが見たら素晴らしい字でも、素人が見たら『ウドンのような文字』にしか見えないと感じる人もいますよね。美術でも文学でも同じです。高尚になればなるほど世間一般からはわからないのに、そこにエセ芸術家やエセ評論家が紛れ込んで『これはすごい! 素晴らしい!』というと、なんでも素晴らしいものに見えてしまう。そういった現実を見事に言い表したセリフです。

 

水木さんは、現実にはびこる綺麗ゴトや欺瞞といった”嘘“を見抜く力が非常に強かったのだと思います。このような味わいのあるセリフが、太文字になるわけでもなく、色がついているわけでもなく紛れ込んでいるのが、水木しげる作品の醍醐味です。読み返す度に発見と快感を得られると思います」(引用:『街の詩人たち』 水木しげる漫画大全集第74巻収録)

 

『街の詩人たち』は、『水木しげる漫画大全集第74巻』(講談社)だけでなく、自伝的作品を集めた『ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた!』 (ホーム社漫画文庫/発行=ホーム社、発売=集英社)などにも収録されている。

 

現実に鋭く切り込む表現や一言にあふれた水木氏の漫画作品。思わずハッとさせられるような経験が、久坂部さんにもあったといいます。

 

「私は高校生まで、一生懸命勉強して、伝記に残っている偉人のように偉くなりたい、有名になりたいと思っていたんです。

 

でも、そんなとき『偶然の神秘』という漫画に出てくる『名まえなんて1万年もすれば、だいたい消えてしまうものだ』というセリフを読んで、頭を殴られたような衝撃を受けました。だって、1万年前の人で名前が残っている人なんていないでしょ? エジプトのファラオは約5~6千年前、釈迦や老子もせいぜい2500年前くらいです。

 

一生懸命頑張って有名になっても、1万年経てば消えてしまうのであれば、偉くなるとか有名になるとか、そんなこと大事なことでも何でもないとわかったんです。だからといって勉強をやめたわけではありませんが、有名になるために猪突猛進で努力していた自分の考えが、180度変わった瞬間でしたね。頑張っている人からしたら、非常に冷たい言葉のように感じるだろうし、認めるのはつらいかもしれません。でも、この一言で私は目が開かれたし、その後の人生が変わったと感じています。

 

将来幸せになりたいと思って努力している人は多いはず。ですが、そこに水木さんの視点を取り入れることで、考え方がよりフラットになると思います。新しい目標や、新たな努力の方向性を見つけられるかもしれません」(引用:『偶然の神秘』 水木しげる漫画大全集 第79巻収録)

 

久坂部さんが選ぶ
今を生きる大人にこそ読んでほしい 水木しげる作品3選

世間や人間の本質に誰も気づかないような側面からアプローチし、読者に新たな気付きを与えてくれる水木しげる作品。数多くの作品のなかから、そのエッセンスを存分に感じることができるおすすめ作品を、長編・中編・短編作品のそれぞれから教えていただきました。

 

【長編】偉人・近藤勇に見る人間らしさ……『星をつかみそこねる男』

『劇画近藤勇 星をつかみそこねる男』(ちくま文庫)

 

「新選組・近藤勇の伝記漫画『星をつかみそこねる男』は、名セリフの宝庫です。例えば、近藤勇の最後のシーン。立派な偉人の最後の場面に『あるのは犬や猫と同じようになんとなく死にたくないという気持ちだけだった』というト書きが入っています。近藤勇は朝敵として悲劇の打ち首になりますが、多くの小説や漫画では、そのシーンを読者が受け入れやすいよう、美化して描かれています。それに比べて『星をつかみそこねる男』の最後は、実に人間臭さを感じます。

 

実際に近藤勇は、立派なことを想って死んだのかもしれないけれど、私はこれが一番合っているんじゃないかと思うんです。どんな偉人でも、犬や猫と同じように『死にたくない』という気持ちが、人間の心の奥底にあるのだと実感させられます」

 

※引用=『劇画近藤勇 星をつかみそこねた男』(ちくま文庫)

 

【中編】あるのはシビアな現実……「不思議シリーズ」第7話『我が方上記』

『妖怪博士の朝食 (1) 』収録(小学館文庫)

 

「『我が方丈記』は、50歳を過ぎた失業中の男のお話です。この話には、昔日本中で話題となった『清貧の思想』という本が登場します。これは贅沢だけがいいものではなく、心の清らかさでいくらでも幸せになれる、というような内容が書かれた本です。漫画のなかでは、主人公の友人であるもう一人の無職の男が『無能をカムフラージュするにはいい本だと思ってね』と、この本に関してつぶやきます。

 

お金持ちになる、成功するには努力しなきゃいけない。みんな苦労するわけです。でも、その努力をしない、いわゆる“無能な人”がこの本を持って、努力してお金持ちにならなくても幸せになれるという。まさに、無能をカムフラージュするのにいい本だったわけです。それも、ベストセラーに隠された一面。綺麗ゴトだけでは何も解決しない、そんなシビアな現実を端的に言い当てている作品だと思います」(引用:「妖怪博士の朝食 (1) 」小学館 収録 『我が方丈記』より)

 

【短編】人が求める幸福のありかとは……『錬金術』

『水木しげる漫画大全集』第64巻収録(講談社)

 

「『水木しげる漫画大全集』の第64巻は、『ガロ』の掲載作品が集められたおすすめの一冊です。この頃の短編作品は、水木さんの魅力を存分に感じることができる作品ばかりで、私が一生涯、水木作品に惹かれ続ける理由の一つにもなっています。

 

なかでも『錬金術』は、とりわけ有名な作品。これは、錬金術にのめり込んだ両親と、一人息子・三太のお話です。両親は、ねずみ男の指導の元、猫の頭を金に変える錬金術を行い、失敗を繰り返します。いつまでも金にならない錬金術に精を出す両親に疑問を抱いた三太は、ねずみ男に『これ以上両親を惑わすのはやめてほしい』と頼みます。

 

それに対してねずみ男が『錬金術は金を作り出すことではなく、猫の頭が金になるかもしれないという希望が幸せなのだ』『人生はそれでいいんだ』というのです。

 

みなさんも、お金持ちになりたい、成功したい、あるいは世の中の役に立ちたいといった理想を持って、頑張って生きていると思います。ですが、そう思っていることがすでに幸せなんだ、結果は出なくてもいいんだ、と。この解釈は新鮮で、すごくショックを受けました。人生とは、幸せとは何かを考えさせるお話です」

 

久坂部さんが水木漫画に登場!?
パプアニューギニアでの水木しげる氏との出会い

1994年、水木しげる氏とパプアニューギニアの空港にて撮影された写真

 

水木氏と作品の魅力を広く語ってくれた久坂部さんは、ファンとして、水木氏と交流をしたことがあるといいます。最後に、その時のエピソードを語っていただきました。

 

「今から28年前、私は外務省の医務官として、パプアニューギニアで働いていました。その時、水木さんがパプアニューギニアにやって来るという情報を聞きつけ、空港に駆けつけたんです。そしたら薄暗いパプアニューギニアの空港に先生がいらっしゃって。喜びのあまり先生に話しかけました。水木さんは、優しく、サービス精神旺盛に応対してくださって。乗り継ぎまでの1時間ほど、お話させていただきました。

 

いよいよ先生が出発されるという時に、同行されていた次女の悦子さんに、先生が『写真を撮ってくれ』って言ったんです。わたしはカメラを持っていなかったし、写真を撮るつもりもなかったのですが、先生からファンの私と写真を撮りたいというのは、予想外ですよね。普通はファンがアイドルに写真をお願いするのに……(笑)。

 

なかなかないシチュエーションだったので『あれはいったい何だったんだろう』と、後々まで印象に残っていたんです。そしたら、10年後ぐらいにたまたま手に取った先生の漫画に、私らしきキャラクターが登場していたんです! そのキャラクターは、若い頃の私にそっくりでした。

 

水木先生の作品には、有名人や政治家が登場することも多いんですけど、先生が現地でお世話になった日本人とか、ニューギニア人とか、名もなき人たちもよく登場します。その一貫として、私が登場したことに本当に驚きましたし、ファンの1人として本当にうれしく思っています」

 

久坂部さんらしきキャラクターが登場する漫画は、『水木しげる漫画大全第83巻 東西奇ッ怪紳士録』に収録。気になる方は是非探してみてほしい。

 

自分だけの『冴えてる一言』を見つけて、
水木しげる作品をより楽しむ

 

久坂部さんは、2022年2月に『冴えてる一言 水木しげるマンガの深淵をのぞくと「生きること」がラクになる』を刊行。水木しげる作品にちりばめられた「冴えている一言」を、作品の魅力とともに紹介しています。

 

「水木さんの『冴えてる一言』をまとめてみようと思ったのは、京極夏彦さんとの対談がきっかけでした。京極さんは、水木しげる漫画大全集を編集されていたのですが、その頃たまたま知り合い、とある企画で対談させていただきました。話をしながら、お互いが思っている水木さんの素晴らしさがどんどん出てきまして……。そのときに喋ったことも含め、自分が感動した、水木作品の冴えてるとしかいいようのない一言について、まとめてみようと思いウェブ連載を始めました。

 

本書は、ウェブの連載で紹介した内容を、あらためてまとめた一冊です。生誕100年というこの年に、水木さんの魅力を多くの人に知ってほしいと思い刊行しました。水木作品を、漫画として純粋に楽しんで読んでもらえればそれだけでうれしいのですが、本書に取り上げたような“非常に冴えた一言”が、各作品に紛れ込んでいます。その一言を自分で見つけるように読んでもらえれば、もっと楽しめると思います」

 

【プロフィール】

小説家・医師 / 久坂部 羊

1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院にて外科および麻酔科を研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(2003年)で作家デビュー。2014年には、小説『悪医』で、第3回日本医療小説大賞を受賞。

 

協力=水木プロダクション(https://www.mizukipro.com/

絵本作家おーなり由子さんが366日の歳時記に込めた、日々身近に感じられる“豊かさ”とは?

空の色や風のにおいから感じる、季節のうつろい。そのときしか味わえない旬の食べ物のことや、日常のあちこちに根付く昔ながらの美しい習慣のこと。

 

世の中がコロナ禍に巻き込まれ2年が経過したいま、これまでの人生に対する価値観を見直し、あらためて「日々の生活」を大切に、丁寧に営もうと意識する日本人が増えているといいます。

 

絵本作家・漫画家としても知られるおーなり由子さんの『ひらがな暦 三六六日の絵ことば歳時記』は、そんな日本で暮らす日常の豊かさを伝えている知る人ぞ知るベストセラー。これを以前から愛読していたブックセラピスト・元木忍さんが、同書の誕生秘話に迫ります。

 

おーなり由子『ひらがな暦 三六六日の絵ことば歳時記』(新潮社)

季節のうつろいについて感じたことや、日常の小さな物語を綴ったイラストつきのエッセイを1日1ページ、366日分収録。各地の行事やお祭り、旬のレシピから季節の動植物についての知識まで、なんでもない日常にある楽しさや喜びを見つけるヒントもたっぷりと詰まっている。2006年の発売以来、新旧幅広いファンの支持を集めて着実に版を重ねるベストセラー。

 

いま再び見えるようになった、当たり前の日常の美しさ

元木忍さん(以下、元木):私は長年、本に関わる仕事をしていますが、コロナ禍以降、人々が読みたいと思う本の内容が変わってきたように感じているんです。そんななか個人的によく読み返すようになったのが、おーなりさんのこの本でした。今日も私物を持ってきたのですが、もう何年も読んでいるから、あちこちに付箋を貼ったり、美味しそうなレシピにマーキングしたりしています(笑)。

 

おーなり由子さん(以下、おーなり):ふふふ。そうでしたか、ありがとうございます。

 

本の中で紹介されている和菓子をお取り寄せしたこともあるくらい、本書をプライベートで活用している元木さん。季節の食べ物やレシピを思い出すツールとして重宝しているそう。

 

元木:15年以上も前の本なのに、全然古さを感じません。この本を何気なくめくっていると、旬の野菜やお魚のことが書いてあったり、「小さなころこんな行事があったな」なんて思い出したりして、もっと1日1日をゆっくり大切に生きてみたくなるんですよね。これってまさに、いま多くの日本人が求めている感覚じゃないかと思って、今回は取り上げさせていただきました。だいぶ前のお仕事ではありますが、この本を作った当時の思いを聞かせてください。

 

おーなり:小さいときから、よく新聞とかに載っている小さな歳時記の欄を読むのが好きだったんです。たとえば、「立春」とか「啓蟄※」とかいう漢字にわくわくしたり。小学生の頃は、こういう季節の言葉があるってことを知らなくて、すごく新鮮で。季節を感じるって楽しいな、と思って。スケッチブックに絵日記を書いたりしてました。いつか、季節をテーマにした本を作ってみたいなあ、とずっと思っていたので、編集の方に打ち明けて。やっと書くことができてうれしかったです。(※けいちつ)

 

手前に写っているのが、今回快くお話をしてくださったおーなりさん。今回の取材は、都内にあるおーなりさんのご自宅で、庭木に集まる鳥たちの声をBGMに行われました。

 

元木:当初から、1日ごとに絵と文を綴るという形式にしたかったんですか?

 

おーなり:そうなんです。毎日1ページ、という形で書きたくて。知識とか情報というより、エッセイを読みながら、その季節の感覚の中にスッと入ってもらえるような、そんな本にしたかったんです。

 

イラスト付きのエッセイは1日につき1本。ページの下段に、その時期の旬の食べ物、地方の行事やお祭り、著名人の誕生日や二十四節気のことなど、おーなりさん自身がチョイスした小さな情報を添えています。

 

元木:制作は何年越しだったのでしょうか?

 

おーなり:実はこれを作っていた途中で子どもが生まれて、思っていたよりすごく時間がかかってしまったんです(笑)。妊娠前から始めて、産後に仕上げて……という感じで、だいたい5年くらいですね。文章や絵を描くだけでなく、書かれている事柄についての事実確認にも意外と時間がかかって。

 

元木:地方の小さな行事とか和菓子屋さんのお菓子、著名人の誕生日まで、なかなか幅広い情報が書いてありますものね。

 

おーなり:いろいろなことを書いたので、校閲の方から毎週のように質問がありました。市町村の合併が各地であった頃で、校正をしている間に街の名前が変わったり、合わせてお祭りの名前も変わっていたり。編集さんの横で赤ちゃんを抱っこしながら、調べたり、答えたりしていました。長く読んでもらえることになったので、巻末付録の二十四節気表は、10年目で更新しています。

 

元木:366日は順番通りに埋めていったんですか? 1日で1日分を書くとか?

 

おーなり:いいえ。書きたいことからです。自分でレイアウトするので、上にエッセイとイラスト、下に季節の情報を書こうと決めて、まずその「ひらがな暦」用の原稿用紙をつくってから、そのスペースに書いていきました。それぞれの季節で、食べ物の話が続いたら、次は星の話、取り上げたい記念日があるから、それにまつわる思い出を書こうとか、れんげ畑の記憶はどの日に入れよう、とか。パズルみたいに、季節を行ったり来たりしながら書いていったんです。

 

つい試してみたくなる、小さなスイーツのレシピなども盛り沢山。ご自身も料理好きですが、そこも肩肘張らずに、普段は冷蔵庫にあるものでさっと作れるような料理をすることが多いそう。

 

こちらは担当編集者が鋭意制作したという巻末付録の索引。キーワードがあいうえお順で記されており、「あの行事は何日だったっけ……?」といった疑問がすぐ解消できるようになっています。

 

日常のすぐそばにある季節の楽しみ方を教えてくれる本

元木:あらためて読んで思ったのは、私たちって「本当は知っているのに忘れてしまっていること」がよくあるじゃないですか。今までは毎日があまりにも忙しすぎて、夜にお月様をゆっくり見るなんてあまりなかったけれど、最近は「今日は満月か、じゃあ空を見てみよう」って感じる余裕が出てきたというか。これって多分私だけではなく、みんなになんとなく起きている心境の変化だと思うんですよね。『ひらがな暦』に書かれているようなことの大切さ、豊かさを、今になってやっと人々が欲しがるようになってきたんじゃないかと思っていて。

 

おーなり:家にいる時間が増えて、すぐそばの楽しみを見つけた人が多いのかもしれないです。近すぎて何もないと思っていた足もとに、いろんな面白さがあった。というか。
当時はそんなに気負って書いたつもりはなくて。もともと日常のちょっとしたことが一番楽しいと思っているので、この本は、本当に個人的な季節の感じ方、楽しみ方を集めるように書いています。たとえば、さくらの花びらが、道の端っこにたまってたら、さわりたくなるとか。そういう(笑)。わたしが好きな、季節のかわいいものや、面白いと思うものを、読んだ方が私とは違う形で楽しんだり、ふくらましたりしてくれているとしたら、すごくうれしいです。

 

いわし雲が出る時期は、いわしが食べごろ…。そんな風に、季節を味わうための豆知識を、エッセイを楽しみながら吸収できる作りになっています。もちろん、好きなページをランダムにぱらぱらめくって読むのもアリです。

 

11月17日のエッセイは、風邪を予防する「蓮根療法」について。その昔、自然療法の大家・東城百合子さんの本に影響を受けて以来、民間療法を「試す」のが大好きというおーなりさんらしい内容です。

 

元木:私は気に入ったページにマーキングするだけじゃなくて、家族の誕生日とかも書き込んでしまってます(笑)。

 

おーなり:うれしいです。そんな風にメモしながら使ってくれたらいいなという思いもあったんです。その人の歳時記になって、繰り返し開いてもらえたら、本も幸せだと思います。

 

元木:お正月だけ買える花びら餅、クリスマスのガレットとか、うっかり忘れてしまいそうなことを思い出すツールとしても役立ちますよね。ほら、9月16日の「いわし雲」のページは、「いわしが食べごろ」にマーカーをしていたり(笑)。

 

おーなり:そうそう(笑)、この本にはそもそも、自分用に覚書をしておきたいという思いもありました。

 

元木さんのように家族の誕生日を記入したり、覚書としてイベントや出来事をメモしておいたりする読者もいるのだとか。自分色の一冊に染めていくのも、この本の楽しみ方のひとつです。

 

日本人であることを「気に入っている」

元木:好きな季節ってあるんですか?

 

おーなり:どの季節も好きなのですが、特に季節の変わり目が好きです。ちょっと涼しくなったり、風や匂いが変わっていくときの新鮮な気持ち、なんとも言えない気持ちになります。

 

元木:けっして華やかではないけれど、日本人なりの豊かな生き方とか、当たり前にあるものの尊さっていうのを、私はこの本からすごく学んだ気がしています。おーなりさんはそもそも、日本人であることとか、日本の文化といったものを普段から意識しているタイプですか?

 

おーなり:特別に意識しているわけではないですが、これは、日本独特の感性なんだな、と思うことはよくあります。育ったのが、大阪の郊外で、田んぼがあったり、森があったり。北摂というエリアなのですが、子どもの頃、住んでいた家が、神社のある山のふもとにあって、鳥居をくぐってから家に帰るような面白い場所でした。目に見えないちいさい神さまが、そばにいるような感覚とか、お祭りのニュースや太鼓のひびきにわくわくしてしまうのは、そのあたりが影響しているかもしれません。

 

元木:じゃあ、地方のお祭りなんかは良く出かけるのですか?

 

おーなり:有名なお祭りにわざわざ行くことは少なくて、出かけるのは身近なところ。近くの神社の「茅の輪くぐり」とか「朝顔市」とか……楽しいです。こんなお祭りしてたんだ! と発見するのも楽しいし、自分の住んでいる場所が好きになります。

 

元木:でも、日本人であるというルーツをとても大切にされている感じがします。

 

おーなり:日本人に生まれたことは、気に入っています。よかったなあ、と思う。四季があるって、ほんとに、幸せやなあ、と思います。田んぼのお祭りが神さまへの祈りや感謝につながってたり、「いただきます」といって、ごはんを食べることとか。でも、見えるものと見えないものが重なっている感覚って、日本人は生活の中に染みこんでいて、言葉にしなくても、普通に持っている気がします。

 

エッセイにはおーなりさんの記憶や体験に基づいた個人的なことも書かれていますが、自分の思い出や体験とシンクロしてグッときてしまうことも……。添えてある優しい絵柄にも心が癒されます。

 

キッチンに。ひとつひとつ表情が違う味わい深いフォルムのガラス瓶。小物や雑貨のひとつひとつが、大切にチョイスされていることが伝わってきます。

 

日々を幸せに生きるコツは、「できない」を受け入れること

元木:おーなりさんはそもそも漫画家としてデビューされた経歴をお持ちですよね。

 

おーなり:はい。高校生の時に『りぼん』でデビューしました。メジャーな作品の横で、童話のような短編を描いていました。雑誌の中では、ちょっと浮いてましたが、ありがたいことに、それをずっと読んでくださっている方々がいて。

 

元木:こういった「絵と文」を描くようになったきっかけは?

 

おーなり:最初は、漫画を読んだ大和書房の編集の方が「エッセイを書いてみませんか」と、声をかけてくださって。私の文章を「味があっていいね」と面白がってくれたので、書くのが楽しくなりました。それから絵本などの仕事につながっていったんです。

 

元木:漫画の形にこだわりはなかったのですか?

 

おーなり:絵を描くのが好きなので、絵本はずっと描いてみたかったんです。いろんな本を作りますが、漫画でページの作り方を学んだので、自分では、形が変わってもそれがベースになっているな、思っています。

 

元木:おーなりさんの絵って、線がちょっとゆるかったり、丸もきれいな形ではなくいびつだったり、そういう「キチッとしていない感じ」が、すごく自然で素敵だと思っています。自分が好きなことをしながら、日常の中にある豊かさを味わって生きているおーなりさんの生き方に憧れを感じるのですが、そんな風に日々を生きていくためのコツって何かありますか?

 

おーなり:コツとは言えないかもしれませんが、無理できない性分なんです。ただ、できないからしないだけですが(笑)。暮らすことも、描くことも大事だから、心のどこかにぽかんとした場所があるようにしておきたい、と思っています。

 

元木:「できないことはしない」という線引きがしっかりできるからこそ、目の前にある季節の移ろいや、日常の中の豊かさ、楽しさに意識を留めることができるのかもしれませんね。

 

おーなり:自分がいるところから、愛しいものを探したいです。現実には、悲しい出来事も多いから、ちょっとしたことに、幸福を感じることが、わたしにとっては大切なんだと思います。

 

【プロフィール】

絵本作家・漫画家 / おーなり由子

1965年大阪生まれ。絵本作家、漫画家。夫は絵本作家のはたこうしろう氏。1982年に少女漫画雑誌で漫画家としてデビューし、その後は絵本作家としても活躍。近著として「こどもスケッチ」(白泉社)、「あかちゃんがわらうから」(ブロンズ新社)、「ことばのかたち」(講談社)などがある。ペンネームの「おーなり由子」は、漫画雑誌に投稿していたとき何となく付けた名前を編集者に気に入られ、そのまま使っているそう。2022年夏に偕成社より、ワニと女の子の童話絵本を出版予定。
http://www10.plala.or.jp/Blanco/

「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは

生涯未婚率の上昇や晩婚化が問題になっていますが、結婚願望は依然として強く、最近では企業や自治体が、縁結びアプリと連携し、社員の婚活をサポートする新しい動きも出てきました。しかし、結婚はゴールではなく、円満な夫婦関係を長く続けていくには考えるべきこと、心がけるべきことがあるはずです。

 

いまの時代にどのようなパートナーシップで暮らしていけば幸せになれるか―――。夫妻で幸福学の研究者として活躍するふたりが書いた書『ニコイチ幸福学』に着目し、パートナーとふたりで幸せになる秘訣を、著者である前野隆司さんと前野マドカさんに聞きました。インタビュアーは、ブックセラピストの元木忍さんです。

 

パートナーと一緒に幸せになる秘訣とは?

元木 忍さん(以下、元木):最近耳にするようになってきた「幸福学」ですが、どういうものか、簡単に教えていただけますか?

 

前野隆司さん(以下、前野):幸福学とは心理学を基礎として、自分が幸福か幸福でないかを一人一人に考えてもらい、統計的にどういう人が幸せなのかを明らかにしていく学問です。ちなみに、幸福が一体どんなものかを定義するのは、哲学の範疇です。

 

元木:前野先生は、大学では機械工学を専攻されていましたね。

 

前野:もともと人間にとても興味がありまして。本当なら哲学や心理学へ進んでいればよかったのでしょうけれど、物理と数学が得意科目でしたので(笑)、大学は工学系に進みました。

 

元木:いつから幸福学を研究するようになったのですか?

 

前野:本格的に取り組みはじめたのは2008年です。それまでは企業や理科系の学部に籍を置き、人々が幸せになるための心のメカニズムを、“パートナーシップ”、“ロボット”といった、サービスやもの作りに活かす研究をしていまして、取り組みの中で、幸福学をもとに“楽しいロボット”、“笑うロボット”などを開発していました。振り返ると、ロボットの研究をしながらも実際は人間の心を研究していましたから、この期間を含めると約20年になりますね。

 

元木:おもしろいですね。なぜロボットが笑った方がいいと思ったのですか?

 

前野:そもそもロボットは人間を真似て作ったものですから、ロボットが楽しんでいたり、笑うことによって、当の人間がどう反応するかを知りたかったんです。

 


『ニコイチ幸福学』(CCCメディアハウス)
「幸福学」研究の第一人者である夫妻が、長く幸せに続く、夫婦、恋人などのパートナーシップを解説。慶應義塾大学大学院で開催された大人気講座「幸福学・夫婦編」の事例も紹介する。

 

元木:前野先生は幸福学の研究をもとに、さまざまな著作を出版され、マドカさんとの共著もお出しになっていますが、夫婦や恋人同士など、パートナーとの幸せを解いた共著は初めてですよね。『ニコイチ幸福学』をおふたりで書こうと思われたきっかけを教えていただけますか?

 

前野マドカさん(以下、マドカ):ふたりそろって出席した出版パーティで、知り合いの編集者の方に『どうしておふたりはそんなに仲がいいんですか?』と驚かれてしまいまして(笑)。雑談をしているうちに、夫婦円満の話しがどんどん盛り上がっていき、パートナーシップをテーマにした幸福学の本を出しましょうということになりました。

 

前野:私は職場を幸せにするとか、人が幸せになる製品をつくるといった本を出してきましたが、妻も私も幸福学やポジティブ心理学の研究者でありながら、“夫婦の幸せ”をテーマにした本はそれまで一度も書いていなかったんです。家庭や夫婦の幸せは妻が専門ですから、自然と一緒に書こうかという流れになりました。

 

「意見が食い違っても多様さを楽しみます」という前野隆司さん

 

元木:“ニコイチ”はふたりで1組を指す言葉で、特に若い人が恋人と自分をセットにしてこう呼んだりしますよね。本書には、ニコイチを人間関係やパートナーの最小単位とお書きになっていて、法律上のご夫婦に限らず、さまざまなカタチのカップルが最善のパートナーシップを得られるヒントが散りばめられています。1冊を通じてどんなことを伝えたかったのでしょうか?

 

マドカ:この本を書くにあたって、そもそも私たちはなぜ仲がいいのだろうかと、冷静に分析してみました。そうしたらふたりが意識せずこれまで自然にやってきたことが、実はウエルビーイング(幸福で満たされた状態)そのものだったんですね。私たちは研究者として、「昨日と違う自分でいたい」、あるいは「成長したい」という学びの気持ちが強いので、ふたりで相談をしながら過ごしていた日々が幸福だったことがあらためてわかり、本にすることで、その幸せを言語として体系化することができました。大事なポイントはいくつかありますが、多くの方の聞きたいこと以上の幸せのエッセンスが1冊にまとまっていると思っています。そして何より「幸せはふたりでつくっていくもの。今が幸せだからいいんだというのではなく、これからどんどん育んでいくもの」ということが伝わればとてもうれしいですね。

 

元木:ふたりで幸せを育くむのはパートナーシップの理想形ですよね。ただ、疲れている時に疲れた顔を見せないとか、いつもパートナーとともに喜びを分かち合うのってけっこうハードルが高いですよね。周囲の目がある外ではできたとしても、家の中では難しくありませんでしたか?

 

マドカ:私たちは外も家もないというか、いつでも自然体という感じですね(笑)。

 

元木:そうなんですね! 意見の食い違いとかは、ないのですか?

 

前野:それはあります。でも意見が違うことは悪いことではなく、多様性があっていいと考えますから、もめることはないですね。

 

マドカ:恋愛結婚でもお互いのことをすべて知って結婚したわけではないので、新婚時代は相手の見えない部分が多かったですね。一例をあげると、結婚当初、部屋をつくろうという段階で私は自分の好きな花柄のカーテンを選びたかったんです。ただ夫から「クッションなどを使ってアクセントは入れられるから、カーテンは無地の方が合わせやすいよ」と言われ、それもそうだなって納得して。私は素直なんです(笑)。

 

元木:はじめから否定されると反発しますけど、前野先生のように、それ以外の提案があるとすんなり受け入れやすいですね。

 

マドカ:そうなんです。お互いの意見を取り入れて、リビングは無地で、キッチンは花柄で、という方法もアリだと思いますけど、住まいはどこにいてもお互い居心地がいいのが一番ですよね。こういうふうに言ってくれることで納得ができたというのは私にとってプラスで、そこからクッションはどうしようとか、ふたりで意見を出しあうことで、新しいアイデアが生まれてくると思うんです。

 

前野:うちのカーテンのこと、いま思い出しました。緑の無地にしたつもりでしたが、よく見たら、薄く花柄が入ってますね(笑)。

 

マドカ:まあ、そういうこともありますよね(笑)。

 

「相手が喜んでくれることがお互いの喜び」と円満の秘訣を語る前野マドカさん

 

幸せをシェアすることでふたりの幸福度は上がる

元木:食事はどうですか? 私は和食、私はイタリアン、みたいに食い違いはないですか?

 

マドカ:どうしても食べたいものがあれば言いますね。お互い「そこまで言うならまあいいか」ってなるんです。行きたくないのに無理に連れていかれたという経験は一度もないですね。

 

前野:ふたりとも食の嗜好の許容範囲がすごく広くて、仮に100種類食べものがあったとして99種類は合います。どちらの意見を選んでも決して嫌な選択にはならないんです。

 

マドカ:私たちにとって、一番幸せを感じるクオリティ・タイムは、心地よい時間を一緒に楽しむことなんですね。たとえば私だけでおいしいものを食べたり、素敵な景色を見たりした時に、まず思うのが、“この瞬間を夫とシェアしたいなあ”ということ。食事でも、何を食べるか以上に、一緒に楽しい食の時間を過ごせることが何よりも大事なんです。

 

元木:相手が喜んでくれることがお互いの喜びなんですね。素敵ですね。

 

前野:相手を怒らせるより、喜んでくれた方が楽しいじゃないですか。とはいえガマンをしたという記憶はないですね。私が仕事や研究をさておいて妻のために尽くしたり、気を遣ったことはまったくなくて、マイペースでやっているんですよ。

 

元木:けんかしたことはないのですか?

 

前野:若い頃は分かりあえていないから、ぶつかることもありました。けれども、小さな衝突のすべての原因は誤解でした。その都度、話しあって誤解を解くことで、問題はひとつ残らず解決しました。誤解を解かず、あえてその件に触れないように過ごすご夫婦もいますが、20年ぐらいためてしまうと、ストレスが増大しています。私たちは常にわだかまりがないから、28年間、円満に夫婦を続けられていると思いますね。

 

元木:どんな誤解が多いのでしょうか?

 

マドカ:言い方ですね。傷つく言い方ってありますよね。そのまま聞き流すとストレスになるので、あまり時間をおかずに、どういう意図で言ったのかをやさしく聞くようにしています。大抵は夫が疲れていたことから出た言葉だったりして、悪気はなかったということに落ち着くんですけどね。

 

元木:やさしく聞く?

 

マドカ:キツく言うと、売り言葉に買い言葉になりますから。壁のように跳ね返すのではなく、スポンジみたいに、いわれたことを一旦自分の中に吸収して、それからやさしく聞くようにしています

 

元木:翌日には持ち越さないわけですね。

 

マドカ:そうしはじめたのは、子供が生まれ、育児のことなど相談する機会が増えてきてからですね。早く言わないと人は忘れてしまうし、その場で話し合った方が解決も早いんですよ。

 

夫の前野隆司さんと妻の前野マドカさん。見るからに素敵なカップルで、幸せな夫婦生活を28年間続けています

 

幸福学が導き出した、幸せになるための4つの因子とは?

「やってみよう!」因子

・得意なことがあり、それを伸ばそうと努力をして強みをさらに高める人
・好きなことがあり、それを突き詰めようと打ち込んでいる人

 

「なんとかなる!」因子

・考えすぎず踏ん切りよく決断できる人
・失敗しても気持ちを切り替え立ち直るのが早い人
・肝がすわっていて度胸のある人

 

「ありがとう!」因子

・人を喜ばせたいと思う人
・困っている人を支援したいと思う人
・他者とのあたたかい付き合いに感謝している人

 

「ありのままに!」因子

・地位財形型の競争を好まない人
・自己像が明確な人
・他者への許容度が広い人

 

元木:『ニコイチ幸福学』では、幸せになるための4つの因子を明らかにしています。

 

前野:「ありがとう!」の気持ちはとてもシンプルなことですが、忘れている方は案外多いですね。先日もずっと夫婦仲が悪いという女性に関係修復の相談を受けたので、「感謝を10倍しましょう」とアドバイスしました。その後「夫との関係が劇的によくなりました」というメールが届きました。日常の小さなことでも相手に「ありがとう」と感謝をしたところ、パートナーも感謝をするようになって、出会った頃のように、ふたりの仲が良くなったそうです。

 

マドカ:悪いところに目がいくのをグッと抑えて、良いところに目を向けるようにすると、夫婦の関係はすごく変わっていきますね。

 

元木:「やってみよう!」はどうしたらいいですか?

 

前野:ふたりで同じやりがいを持ち、同じゴールを目指すことですね。目標は趣味でも、家事でも仕事でもいいと思います。相手の努力や頑張りは自分にとってのモチベーションになります。

 

マドカ:何事もやらされて生きていくのは大変じゃないですか。気持ちを切り替えてワクワクして取り組むことで、自分もまわりもハッピーに変わっていけると思います。

 

元木:「なんとかなる!」はよくわかります。私にもその因子があるからかもしれません。

 

前野:前向きで楽観的であることは、幸せになるために大事なことです。どんなにつらいことでも死ぬことに比べればどうってことないですから。くよくよ悩む時間が少ないぶん、楽しい時間が長く、幸せでいられます。

 

元木:自分らしく「ありのままに!」。こう生きていければ幸せですよね。

 

前野:人と自分を比べてしまうと幸福度が落ちるんです。ありのままで生きている自分を受け入れられる人は、自然に他者を受け入れることができるので、イライラすることも少なく、ストレスもたまりにくいですね。

 

マドカ:多くの悩みは、誰かと比べることで生まれると思いますね。自分の良さを肯定して、大丈夫といいきかせることで、仕事や勉強に自信がもてるようになります。

 


『幸福の達人 科学的に自分を幸せにする行動リスト50』(ユーキャン)
Twitterフォロワー130万人を超えるインフルエンサーTestosteroneが、科学、心理学、行動経済学などの110本以上の研究論文をもとに「これさえやれば幸せになる」というアクションを50の「TO DOリスト」にまとめた1冊。前野隆司さんが監修を務めています。

 

幸せになるための行動もあります

元木:前野先生が監修された『幸福の達人』も拝読しました。この中にあるチェックテストを試したところ29点。結果をみると「幸福の上級者」でした。

 

マドカ:忍さんは4因子が全部ありますから(笑)。幸せですよ。

 

「幸福の達人」のチェックテストで「幸福の上級者」と判定されたブックセラピストの元木 忍さん。

 

元木:ほめていただいてありがとうございます(笑)。この本の中で、日本では年収660万円以上になると幸せ度は上がらないという箇所が気になったのですが、これは本当なんですか?

 

前野:金額は国によって違いますが、統計として、日本では600万円台の収入があれば衣食住がある程度満たされ幸福度も高い傾向があります。収入がアップするに越したことはありませんが、金銭面より、核家族化で失われてしまった、村社会にある周囲や近所とのつながりを取り戻した方が、幸福度は上がっていくと思います。

 

元木:『幸福の達人』では、「なんでもない日常を味わう」というアクションもささりました。私はすでに毎日の日常で幸せを感じていて、夕食に何をつくろうかと考えるだけでワクワクします(笑)。

 

マドカ:非日常の特別な体験ではなく 住んでいる家で幸福を感じられるというのは最強の幸せです。違う視点から見ることで、なんでもおもしろがれるというのも、幸せのエッセンスなんです。

 

元木:『幸福の達人』の幸せになる行動の中で、一つだけ難しいなと思ったのは「許す」という行為ですね。些細なことであれば許せますけど、人生ではどうしても許せないことってないですか? いったん忘れても、あとで思い出すことってありますよね。その時に本当は許してないんだと気づくこともあります。

 

マドカ:ひどい目にあわされた相手を「許す」ことが果たして幸せなのか、賛否はあるでしょう。相手の立場に立ってみると許せることもあれば、今許せなくても、何年か後に自分が成長して許せるかもしれないこともあります。そう思える自分になりたいという願望もありますね。

 

前野:許さないことは相手と同じ醜い心をむきだしにすること。行為によっては許すまでに時間を要するかもしれませんが、許そうと思うことで幸福度は成長していくと思いますね。

 

元木:コロナ禍で生活が変わった方も多いと思います。この時期に思う幸福学はありますか。

 

前野:在宅時間が長くなり、家族とコミュニケーションが増えたことで、幸せになった人もいれば、そうではない人もいます。昭和の頃は当たり前だった家族で食卓を囲む風景や、懐かしいご近所とのつながりが戻ってきて、これを受け入れた人と受け入れられなかった人で違いが出たと思います。また、傾聴、感謝、尊重という幸せになるための基本が整っているか否かでもそれぞれの方で幸福度は変わり、幸せの格差は広がっていると感じています。

 

元木:人によっては、コロナ禍で見えない不安を多く抱えてしまったということですね。

 

前野:幸せを感じることのできなかった人は、コロナの不安に、職場や家庭での不満が重なってしまっていると思います。こういうときだからこそパートナーと力を合わせることが重要です。コロナ禍でもうまくいっている家庭は、お互いに頼り合うことで、幸せにこの時代を乗り越えていけるはずです。

 

元木:心からそう思います。今日はありがとうございました。

 

【プロフィール】

慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司

1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。

 

慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ

EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。

 


『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介する。

 

享保元年の創業から変化しつづける“老舗ベンチャー”「中川政七商店」のものづくり

この一年、家族と過ごす時間の大切さを実感する機会が多くなりました。慌ただしく過ぎていく日々のなかで一歩立ち止まり、一日一日を大切に過ごしたい……そんな暮らしを豊かにするコツや知恵にも注目されるようになりました。

 

全国で「中川政七商店」や「日本市」「遊 中川」など60店舗を展開する、中川政七商店が編集・著者として出版した『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』には、暮らしを楽しむヒントがいろいろ。「読んでいるだけでも勉強になる」と愛読するブックセラピスト、元木忍さんが、日本工芸の楽しさとこれからのものづくりについて、同社に話を聞きました。

 

『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』(PHP研究所)

 

創業三百年以上を誇る『中川政七商店』の暮らしを楽しむ“知恵”と、美しく機能的な道具たちがギュッと濃縮された一冊。「日本の工芸を元気にする!」を企業ビジョンに掲げる同社らしく、ものづくりしている人、その道具を使う人どちらもが元気になるアイテムが1月~12月まで季節ごとに紹介されている。

 

日本の工芸は「守る」より、「使う」ことで広がる

元木忍さん(以下、元木):全国にたくさんの店舗を展開されている「中川政七商店」ですが、まずはその歴史から教えていただけますか?

 

木原芽生さん(以下、木原):享保元年(1716年)に、「奈良晒(ならさらし)」の商いを始めたところまで遡ります。江戸、明治、大正と卸業を中心に発展し、昭和60年(1985年)にオープンした「遊 中川」から麻小物の小売をスタートさせました。2000年を過ぎた頃から直営店の出店が加速し、会社名である「中川政七商店」をブランド名として店舗展開し始めたのは2010年のことです。現在では、本社、直営店やECサイト運営に関わる人を含めると500名以上のスタッフが働いています。

 

↑2頭の鹿が「七」の文字を囲む中川政七商店のロゴ。クリエイティブディレクターの水野学氏がデザインしたこのロゴは、2008年に敢行したリブランディングから採用されています

 

元木:老舗ですね。ここで働いている皆さんは、この300年の歴史をどのように捉えているのでしょうか?

 

木原:300年と聞くとお堅い老舗なイメージがあるかもしれませんが、とても変化に前向きな会社で、時代に合わせて変わっていく考え方を大切にしていると感じます。

 

羽田えりなさん(以下、羽田):中川政七商店 奈良本店(旧 遊中川 奈良本店)には、1925年のパリ万博に出展した“麻のハンカチーフ”が展示されているのですが、その展示を見た時には「これだけの歴史を重ねて、今に繋がっているのか」という実感を得られました。この会社で働き始めて12年ほどになりますが、常に新鮮で、古いものを扱っている老舗という感覚はほとんどありません。周りからも「老舗ベンチャー」なんて言われています(笑)

 

元木:老舗の看板を守るとか、歴史を守るというよりも、スクラップ&ビルドしながら300年という歴史を紡いできた会社なんですね。会社のモットーやビジョンについても教えていただけますか?

 

↑「暮らすように働く」をコンセプトに、町屋のようなデザインで設計された本社の外観。カラフルな色味も素敵で、奈良の街に溶け込むように建てられています

 

木原:私たちは「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げています。このビジョンがあることで、どの取り組みに対しても「これは日本の工芸を元気にできるかな?」とジャッジできるように感じます。工芸と聞くとガラスケースの中に入った展示品や、鍵をかけて慎重に守られているイメージを抱く方も多いかもしれませんが、私たちは「日常生活の中で使われる」ことで、工芸を残していきたいと考えています。どこまでが工芸に含まれるかとても難しい部分ではありますが、漆や陶器のような高級品だけじゃなく、もっと広い意味で「ものづくり」を捉え、展示品だけじゃない工芸品・ものづくりの素晴らしさを伝えたいと考えています。

 

↑入社6年目の広報担当・木原芽生さん。店舗スタッフや生産管理担当を経て、現在は広報として活躍中。実家に60年ものの臼があるのを発見し、お正月に親戚が集まり「餅つき」をしたことで、行事の楽しさや大切さをあらためて実感したそう

 

元木:最近では、ものづくりに対しても日本全体で関心が高くなっているように感じますが、実際に商品を企画する中で意識されていることはありますか?

 

羽田:私は商品企画・デザイナーとして、加工先から卸値の交渉、デザインまでのすべてを担当しています。入社した当時よりも、一般的に「モノ」や「コト」を大切にしたいと考える人が増えたかもしれませんね。デザインする際には、そんな時代背景も踏まえて“長く使っていただくこと”を意識しながら、質にこだわり、経年劣化も楽しんでいただける商品企画を心がけています。

実際に自分が企画し、デザインした商品が店頭に並び、その商品を手にとってくれたお客様がいると後ろから拝みたくなっちゃいます(笑)。私たちは職人さんたちと直で繋がっているので、「この前の商品がとても人気ですよー!」とか「次は〇〇を作りませんか?」とダイレクトに商品のお話をお伝えできるのも、働いていて楽しく感じる部分です。

 

↑商品企画・デザイナーの羽田えりなさん。新卒からデザイナーとして入社し、お子さんが生まれたことで新しい視点を商品企画に取り入れられるようになったそう。昨年リリースされた親子向け体験キット「季節のしつらい便」にも、彼女のアイデアが詰まっています

 

全国800以上の職人さんたちと二人三脚でものづくりに取り組む

元木:とてもやりがいのあるお仕事ですよね。どれくらいの職人さんと一緒にものづくりされているのでしょうか?

 

羽田:お付き合いしている職人さんの数で言うと、全国に800以上いらっしゃいます。

 

元木:すごく多いですね! すべて、ゼロから開拓されたのですか?

 

羽田:発掘するのは商品開発担当の仕事なので、自分たちからアプローチをかけていきます。商材によってはご紹介いただくこともありますし、本やホームページを見て惚れ込んでご連絡させていただくこともあります。中にはホームページがない! メールアドレスがない! となかなか連絡を取るのが難しい工房もあるので、お手紙を送ってお返事を待つ……なんてこともありますよ。

 

元木:結構アナログな方法ですね。最近ではテレビなどでも若い職人さんが取り上げられ、ものづくり業界が若返っているようにも思うのですが、羽田さんから見て近年の職人さんに変化を感じる部分はありますか?

 

↑本に何か所も付箋をして取材していた、ブックセラピストの元木忍さん。この1年で大きく変化した暮らし方の中でも「変わらない部分」がこの本には詰まっていると語ります

 

羽田:若い人がたくさん増えているという感覚は、そんなにないかもしれませんね。「息子が継ぎました」とお知らせいただく方がいる一方で、「自分の代でたたみます」というお知らせも、残念ながらあります。危機的な状況だからなんとかしなければ! というフェーズではまだないかもしれませんが、どこもかしこもものづくりの市場は安泰、と言えるほどでもありません。新規でお取引させていただく職人さんの中にも、まだ弊社のことを知らない方もいらっしゃるので、会社の歴史や取り組みについても丁寧にご説明し、賛同いただいた方と関係性を深めていきながら、お付き合いさせてもらっています。

 

元木:私が職人さんだったら「待ってました!」って言いたくなるくらいうれしいかも(笑)。ちなみに『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』の中では3つの工房を訪れていますが、作っている現場を知ることで商品への愛着も深まりますよね。

 

木原:そうですね。ものづくりの背景を知っていただくことで、何かしらの“気づき”は得られると思っています。『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』は、季節ごとの道具や工芸品を紹介するだけの本ではなく、ものづくりの歴史や背景、豆知識など私たちが持っている思いも一緒に伝えたいと企画、出版させていただいた一冊です。「○月には、絶対にこの行事をしてください」と指南する本ではないので、読んでいただいた中で、「面白そうだな〜」とか「作ってみたいな〜」と、気になったものからお試しいただければうれしいです。

 

元木:私が一番作ってみたいと思ったのは、「ソックモンキー」です! クリスマスに関わることだけど、今すぐ作りたいくらい(笑)。

 

↑世界恐慌下のアメリカで生まれた「ソックモンキー」は、孫にクリスマスプレゼントを買えないおばあさんが、炭鉱で働く夫の古い靴下を使って作ったことが始まりなんだとか。『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』では、「ソックモンキー協会」主宰の武井健次さんが作り方を紹介しています

 

木原:ありがとうございます(笑)。ここで紹介しているしましまの靴下は、弊社の靴下ブランド「2&9」のものを使用しています。靴下一足からこの「ソックモンキー」が作れるので、おうちにある履き古した靴下を使って作るのもおすすめですよ。

 

元木:早速「2&9」の靴下で作りたいと思います! あとお正月や節句など季節のイベントについての知識だけでなく、「包丁の研ぎ方」や「ハンカチの活用方法」など、暮らしのアイデアが詰まっていて、普段の生活に役立つ“豆知識”が一緒に掲載されているのは、ちょっぴり得した気分になれました。「そういえば!」とか「なるほど!」と思えるところがたくさんありましたから。

 

↑『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』には、知っているようで知らなかった暮らしの知恵が満載。機能性の高い雑貨や工芸品を紹介するだけでなく、それらを実際に活用する方法も丁寧に解説されています

 

木原:忘れていたことを思い出したり、新たな知識を増やすことで、暮らしを楽しむ余裕や機会が増えたら、なんだか心まで豊かになれる気がしますよね。日本に昔からある風習の歴史や、ものづくりの背景を知ってもらいながら、実際に工芸品を「使って」いただけるきっかけになれば、私たちもうれしいです。

 

好きなものを好きなだけ、好きなように楽しむ暮らしを

元木:昨年になりますが、親子向け体験キット「季節のしつらい便」が発売されましたよね。これまでに7つのアイテムが販売されていますが、こちらを制作した経緯を教えてください。

 

羽田:昨年からこれまでに、お月見・クリスマス・お正月・節分・桃の節句・端午の節句・七夕の、7つの商品を展開してきました。これらの年中行事について子どもから「どうしてこの行事をするの?」と由来を聞かれても、なんとなくでしか答えられなかった経験がありまして(笑)。親子で一緒に年中行事の由来や意味を理解しながら、心から年中行事を楽しめるキットを企画させてもらいました。

 

↑中川政七商店「季節のしつらい便 七夕」(3850円・税込)は、「つくる」「しつらう」「つながる」体験を通じて、自然と歳時記や文化を学ぶことができるキットになっています

 

元木:たしかに、七夕の由来を聞かれても、子どもにも理解できるように説明するって難しいかもしれませんね。こちらに「七夕」のしつらい便がありますが、どのような内容か教えていただけますか?

 

羽田:箱を開けていただくと、笹の絵柄がついた手ぬぐい素材のタペストリーと、さまざまな色と形の七夕飾りを作れる和紙、解説冊子が入っています。七夕ってなんでもお願い事を書いてもいいと思われているのですが、実は「物事が上達するように」とお願い事を書くことが慣わしなんですよ。

 

元木:知りませんでした! 「きれいな文字を書けるようになりたい」とか上達の願いを込める行事だったんですね。

 

羽田:意外と知らない部分ですよね。七夕で使う笹をご家庭で準備するのって大変だと思うのですが、この「季節のしつらい便」は、手ぬぐいの笹の葉部分に13か所、和紙の紐をかけられる「引っ掛け」をつけています。毎年繰り返し使っていただけますし、短冊ごと取っておけば、「去年はこんな願いを書いたね」と振り返ることもできるので、毎年の行事としてご家族みんなで楽しんでいただけると思います。

 

↑色とりどりの短冊がかわいくて、ついつい欲張ってたくさんの願い事を書いてしまいそう。てぬぐい素材のタペストリーは洗うことも可能なので、毎年繰り返し使えるのもうれしいですね

 

↑江戸時代から親しまれている切り紙の作り方や、立体的な七夕飾りの「でんぐりシート」もついています

 

元木:知れば知るほど素敵なキットですね。親子はもちろんですが、会社の行事などでもコミュニケーションのきっかけになりそうですね。

 

羽田:うれしいです……! 年中行事って、義務的にやるコトではないと思うんですよね。用意するのが大変だったり、片付けるのが面倒だったり、行事をやるコトが目的になって気持ちが窮屈になってしまっては、楽しくない、残念な思い出になってしまうかもしれません。自分が好きだと思えること、楽しいと思えることを、好きなように気軽に楽しみながらやってもらえたら、それでもう十分。やってみたら、意外と楽しかったね! でもいいですし、どの年中行事に関しても「こうしなさい」というルールはありませんから。

 

元木:本当にその通りですね。最後になりますが、『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』では紹介されていない、おふたりがおすすめする中川政七商店の商品をひとつずつ教えていただけますか?

 

 

木原:わ~難しいですね(笑)。これからの時期のおすすめで言うと、私も愛用しているのですが「もんぺパンツ」を紹介したいですね。これは、その名の通り農作業の時などに履かれていた「もんぺ」のデザインをもとに作られたパンツなのですが、足首の部分がゴムでキュッと締まっているので、雨の時期でも裾が濡れなくて快適です。あと裏地にガーゼ素材を使っているので、夏でも吸水性が良く涼しくて、カジュアルな服装から少しおしゃれなお出かけ着とも相性抜群です。

 

元木:自転車乗る人もズボンの裾が引っ掛からなくて良さそうですよね。羽田さんはいかがですか?

 

羽田:「季節のしつらい便」もおすすめしたいのですが、自分がずっと欲しかった商品で商品化されたもので言うと、「二重軍手の鍋つかみ」です。私、夜中にシフォンケーキをよく焼くんですよ(笑)。この商品が出る前の話なのですが、いつものようにシフォンケーキを作っていたら、片手しか鍋つかみがなかったので、うまくひっくり返すことができずにせっかく焼いたシフォンケーキを流し台にドバーッと……(涙)。

 

元木:わかります! 鍋つかみって片手分しかないのがほとんどですし、もう片方をタオルとかでやろうとすると上手にできないですよね。

 

羽田:そうなんですよ。これは両手で手袋のように使えるものが必要だ! とずっと思っていまして(笑)。鍋つかみの商品企画は別の人が担当していたのですが、この商品の企画会議の時に「片手でいいんじゃない?」という意見も出たんですが、「絶対両手セットがいいです!」とゴリ推ししまして(笑)、両手の商品として販売されるようになったんです。

 

元木:熱い思いが伝わってきます(笑)。『中川政七商店が伝えたい、日本の暮らしの豆知識』に掲載されている商品はもちろん、おふたりに紹介していただいた商品も注目ですね。本日はどうもありがとうございました!

 

中川政七商店 ブランドマネジメント室・広報 / 木原 芽生
中川政七商店 商品三課・デザイナー / 羽田えりな

1716 年(享保元年)に創業し、高級麻織物「奈良晒(ならさらし)」を代々扱ってきた奈良の老舗。時代の変化とともに麻生地を中心とした雑貨の企画製造・販売を始め、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、工芸業界初のSPA(製造小売り)業態を確立。「中川政七商店」「遊 中川」「日本市」などのブランドで、全国に60の直営店を展開するほか、業界特化型の経営コンサルティング・教育事業など多岐に渡り拡大。2016年からは産業革命と産業観光をキーワードに、産地単位での地域振興にも取り組む。

中川政七商店 https://nakagawa-masashichi.jp/

 

石坂産業「三富今昔村」で見た、産業廃棄物処理会社が目指すゴミをゴミにしない循環型経済

街でよく目にする、老朽化した建物の解体工事現場。みなさんはそこで発生する大量のゴミ=産業廃棄物が、どこでどのように処理されるか、想像したことはあるでしょうか?

 

環境省によると、私たちが日常生活で出す一般廃棄物は年間約4500万トンで、年々減少傾向にあるのに対し、企業がモノを生産して発生する産業廃棄物は、ここ20年ほど年間4億トン前後で推移しています。分別やリサイクルには当然、お金や技術が必要ですが、ゴミにお金はかけたくないのが人間の心理。だからまとめて海や山に埋め立てる……そんな行為が、いまだ繰り返されている現実があるのです。

 

そんななか注目したのは、埼玉県の入間郡三芳町にある、石坂産業という産業廃棄物処理会社。主に東京など都市部から運ばれる産業廃棄物の処理を専門に請け負う同社は、ゴミのリサイクル(減量化・再資源化)率98%という驚異的な技術力で、いま世界中から注目を集めている企業です。

 

しかも、工場は自社で管理する里山の森に作ったサステナブルフィールド「三富今昔村」の中にあり、世界中から年間約4万人の見学者がやってくるといいます。村内にはほかにも、農園で育てたオーガニック野菜を提供するカフェレストランがあったり、バーベキューや森の散策、各種アクティビティを楽しめるスポットも豊富。週末は家族連れやアウトドア好きの来訪者で賑わうというから驚きです。

 

豊かな里山の森に抱かれ、世間にひらかれた産廃処理工場。従来の“産廃屋”のイメージとかけ離れた石坂産業とは、一体どんな会社なのか。「ゴミを捨てる時代は終わらせる」と、同社を約半世紀前に創業した父の思いを引き継いだ代表取締役・石坂典子さんにインタビューしました。話を聞くのは、@Livingでおなじみのブックセラピスト、元木忍さんです。

 

『どんなマイナスもプラスにできる 未来教室』(PHP研究所)

産業廃棄物を処理する石坂産業の歴史と、そして本書の著者であり同社の代表取締役・石坂典子氏の仕事を紹介しながら、いまこの地球が抱えているゴミの問題や、環境問題をわかりやすく教えてくれる一冊。さらに、著者が日々廃棄物と向き合いながら蓄積してきた、よりよい明日を作るための思考や行動のヒントが読みやすい柔らかな筆致で書かれている。

 

ゴミを捨てる時代を終わらせる。
ダイオキシン騒動の渦中で決意したこと

「埼玉県所沢市の野菜から、高濃度のダイオキシンが検出された」。

 

1999年、あるニュース番組による誤報道を発端に、国民の注目を集めた騒動がありました。深刻な風評被害を受けた地元農家の怒りの矛先は当時、周辺の産廃処理業者に向けられたといいます。その矢面に立たされたのが、比較的大手だった石坂産業でした。

 

実際のところ、同社は報道の数年前から、多額の投資を行いダイオキシン恒久対策炉を導入していました。にも関わらず、“煙突の煙が環境を汚染している”とのイメージから、以後数年間にわたり壮絶なバッシングを受け、会社は大ピンチに陥ります。石坂さんが父のあとを継ぎ、弱冠30歳で取締役社長の座に就いたのは、まさにこのタイミングでした。

 

↑石坂産業の取締役社長を務める、石坂典子さん

 

石坂典子(以下、石坂):“ゴミ屋さん”って昔からもともとイメージが悪くてね。「ゴミ屋の子どもとは遊ぶな」というような職業差別も、小さいころから当たり前のように体験しながら育ちました。だから子どものころは、自分の父親の仕事を正直恥ずかしいと思っていたし、人に言わない方がいいと思っていたくらいです。

 

元木忍(以下、元木):子どものころは、お父さまの仕事の内容のことをあまり知らなかったのですか?

 

石坂:まったく興味がなかったです。さすがに父も、産廃処理工場を女性である私に継がせようとは思っていなかったでしょうし、仕事の内容について教えられたこともありませんでした。

 

元木:それが、弱冠30歳にして社長になるという一大決心に至った理由とは、何だったのでしょう?

 

石坂:もともとネイルサロンの開業費を作るために、20歳のころ手伝い感覚でこの会社に入ったんです。当時はまだ焼却施設があったので、毎日本当にいろいろな廃棄物が運ばれてきて。例えば、大型トラックいっぱいに載せられた大量の自転車とか使い捨ての傘、高級ブランドの洋服。毎年クリスマスが終われば、赤いブーツの入れ物に入った大量のお菓子が運び込まれていましたね。そうやってまだ使えるもの、食べられるものが新品のまま、大量に廃棄される光景を毎日見ていたんです。何も知らなかった私にとって、それは驚きと違和感でしかありませんでした。

 

元木:仕事を手伝ううちに、この“社会のおかしさ”に気づいたということですね。

 

石坂:そう。そしてあのダイオキシン騒動が起きたあと、私は父から初めて、石坂産業を創業した理由を聞く機会があったんです。

 

元木:それが著書でもよく語られている、「ゴミを捨てる時代は終わらせないと。これからはリサイクルの時代だ」という、お父さまの言葉ですね。会社を設立した1970年代から、その先見の明を持っていらしたことが、本当に素晴らしくて感動しました。

 

石坂:ゴミがゴミにならない社会が必要だって話を聞いたとき、私はそのあまりにも高い志に衝撃を受けました。正直、そのころの私は経営のノウハウを持っているわけでも、重機を扱えるわけでもなかったけれど、そんな父の志を何としても継ぎたいと思ったんです。だから、自分が何とかするから社長にしてくれと頼みました。もちろん「女には無理だ」と即答されたけれど、それから2週間後くらいだったかな。突然呼び出されて、「1年だけやらせてやるからやってみろ」って。これが30歳のときでした。

 

↑社長室は、そこかしこに野の花やグリーンにあふれた明るい空間

 

嫌われ者の会社だったからこそ
自分たちの仕事の価値を可視化した

石坂産業は先の騒動を受け、数億円かけた焼却炉を廃炉にする苦渋の決断を下しました。さらに、会社をこの先の未来へと繋ぐべく、廃棄物の焼却ではなくリサイクルへと事業転換。以後は、周辺の里山の森の保護活動も始め、2013年には「三富今昔村」の運営がスタートし今に至っています。

 

現在の石坂産業には、主に住宅などの解体工事で発生した産業廃棄物が日々運び込まれています。分別を行う分別・分級プラントや、廃コンクリートやプラスチック、木材、有価物の再資源化を行うプラントが配置され、ゴミの減量化・再資源化率は約98%と業界最高水準。それだけではなく、プラントはすべて建物で覆うことで騒音などに配慮し、なおかつ場内は一般の見学可能とすることで地域社会との信頼関係回復にも努めてきました。この全天候型新プラントの総工費は40億円。当時の年間売り上げの2倍近い投資だったそう。

 

元木:従来お父さまがやってきた、ゴミを焼却する産廃処理工場のあり方と、この20年で典子さんが作ってきた全天候型プラントや三富今昔村のあり方には明らかな違いがありますが、どんな思いからチャレンジされたのですか?

 

石坂:私がまず取り組んだのは、自分たちの思いや考えを可視化することでした。ゴミをゴミにしない社会を目指す私たちの仕事の価値を、世間にどう伝えていくかが大事だと思ったんです。なぜなら、私たちの会社は地域社会の嫌われ者で、そもそもがかなりマイナスからのスタート。しかも、いらないものを処理する会社だから、手に取れる商品すらない。だったらまずは、誰でも見学できる全天候型プラントを作って、私たちがやっていることをすべてお見せしようと考えました。

 

元木:それはつまり、産業廃棄物の処理に留まらず、石坂産業のブランディングから始めるっていうことだったのですね?

 

石坂:そうですね。単に廃棄物の再生化率を高めるだけが、技術革新ではないと思っていました。同業他社にはない、私たち独特のものを作るにはどうすればいいか。社長になって初めて、そういった部分に目を向けるようになったんです。ほかにも周辺の里山について勉強したり、地元の歴史資料館を見に行ったりするなかで、現在の三富今昔村の構想がだんだんと見えてきました。

 

元木:御社はこの20年の間に、里山の保護・管理といった活動をボランティアでやってきています。そうして作り上げてきた三富今昔村の中には、石坂オーガニックファームといった農園もありますが、こうした自然環境に対する意識はもともと持っていたのですか?

 

石坂:社長に就任した当初は、会社の立て直しで必死だったので、環境に対する問題意識というのは、ここ10年くらいで徐々に大きくなってきたものだと思います。産業廃棄物のことを学ぶと、結局はリサイクルできない廃棄物が自然破壊を起こしているという事実に突き当たるんですよ。それでも人は、リサイクル品ではなく、枯渇性の資源、つまり自然が作ったものをいまだに重宝し、それを使い続け、再びリサイクルできない廃棄物を生み出し続けています。今は「SDGs」といった言葉も広まっているけれど、一方でSDGsを「製品を製造する」までのことだと勘違いしている製造業者さんって、本当に多いんですよ。本当に大事なのは、自分たちが販売した商品が消費者に渡ったあとどうなるのか。モノ作りにおいては、もうそこの責任が問われている時代なんです。

 

↑外からゴミを運び込むトラックが入ってくる、ゴミの仕分け場。産廃ゴミはコンクリート、ガラス、プラスチック、木片など様々なものが入り混じっている状態で届き、ここでまず選り分けられます。1日に受け入れる最大保管量も決まっており、受け入れたゴミはその日のうちに処理を終えます

 

↑スクリーンで荒選別されたゴミは、コンベアで運ばれ、最後は熟練の社員の手で丁寧に分別・分級されます。この作業のために東急建設と共同開発されたAIピッキングロボットも2機導入されています

 

↑赤いヘルメットを被った社員は、運び込まれるゴミの内容をチェックし、量をはかって受け入れ料金を決めます。受け入れできないゴミが混ざっていないかも厳しくチェックしなければならない、責任重大の大切な仕事です

 

↑遠路ゴミを運んできて汚れたトラックは、プラントで廃棄物をおろした後、足周りを水洗いしてから外に出るようになっています。この水は雨水をためて再利用しているもの。周辺の道路にゴミや汚れを広げないための工夫でもあります

 

共通のビジョンを持てる社員と
未来に存続できる会社を作っていく

「自然と美しく生きる」をスローガンに掲げ、100年先も人と自然が共存できる社会を創ることをアイデンティティとしている、現在の石坂産業。

 

産廃処理会社というと、昔ながらの肉体労働のイメージが根強いですが、同社にはおのずとアウトドア好きや環境に対する意識の高い人材が集まってくるそう。新入社員には60時間の研修があり、この期間に会社の理念を学ぶことはもちろん、「自分が石坂産業で働く意味、やりがいを見つけて欲しい」と石坂さんはいいます。

 

元木:工場見学のときに思いましたが、社員のみなさんがすごく気持ちよく挨拶してくださるんですよね。

 

石坂:社員には、業界のお手本になってほしいと思っています。大前提として仕事や働くことに対する価値観って、人それぞれでいいと私は思っていて。でもうちに来るからには、私たちのビジョンに価値を感じて欲しいし、イヤイヤ働いて欲しくない。だから、なぜこの会社に入ったのか、自分の価値観に気づいてもらうために、60時間というちょっと長い研修時間を設けました。もちろん合わないと思うなら、早いうちに他社を選べといつも言っています。

 

元木:単純な働きやすさとか利益だけではなく、「働きがい」や「仕事への満足感」を求める……それはおそらく、お父さまの時代の産廃処理会社には生まれてこなかった価値観だと思います。でも、短期間で大きく改革をすると、現場の社員たちの意識を変えるのは難しかったのではないですか?

 

石坂:だから、ずっと同じことを言い続けました。国際規格ISOの導入などもしてきましたが、制度設計も一気には変えず、社員たちのレベルが上がるタイミングに合わせて、徐々に導入していった形です。

 

元木:でも、ある程度年齢がいっている方だと、価値観を変えるのは難しかったりしませんか?

 

石坂:もちろん当初は「ついていけない」と辞めていった社員もいたけれど、結局は慣れだと思っています。たとえばうちの会社では、コンビニ弁当やカップ麺など自分で出したゴミは持ち帰ってもらいます。その代わり、マイ箸とかマイどんぶりを持っていれば食堂のお弁当が安く買えたり、マイカップがある人はドリップコーヒーが飲めたりする。なぜならお客さまには「ゴミを持ち帰って」とお願いしているのに、自分たちがゴミ箱にどんどんゴミを入れていたらおかしいじゃない? そういった理由とセットで、繰り返し伝え続けました。特に大事なのは、なぜそうするのかという理由を「知って」納得してもらうことだと思っています。

 

↑環境保護への理解を深めてもらうために、全社員に動物学者、デヴィッド・アッテンボローのドキュメンタリー映画『地球に暮らす生命』を鑑賞するという“仕事”を与えたこともあります。提出必須のレポートには、熱い感想や意見がびっしりと書き込まれていました

 

プラントの環境を整え、人材を育成し……とさまざまな取り組みを行う上で、石坂社長が考える“未来に存続できる会社”とは? 続いて、これからの産業、そして企業のあるべき姿を伺いました。

 

未来に良し、地球に良し、作り手に良し。
これからの産業のあり方

 

元木:現在は日本企業も、少しは環境問題を考えているようにも思われますが、石坂社長から、今の日本の企業が行っている環境活動ってどんなふうに見えているのでしょうか?

 

石坂:灯台下暗しじゃないけれど、自分たちのやっていることをまず見直したらいいと思うのよ。環境活動というと、日本の会社ってなぜか外に対して寄付したり、木を植えたり海のゴミ拾いをするといった活動をやりがちなんだけど、むしろ自分たちの生産・廃棄プロセスを見直すだけでじゅうぶんだと思うのよね。

 

元木:それができないのは、なぜなんでしょうね。

 

石坂:「お客さまが欲しがるからこれを作ります」っていう言い訳のもとに、結局は自然ではなく「人のため」に仕事をする経済活動になっているからでしょう。それこそ梱包材が少し凹んでいたくらいで商品の返品・交換を求めるような価値観は、もう変えていかないといけない。

 

元木:豪華で凹みもなく綺麗な状態で、でも安くて、常に大量に消費ができることばかりを重視していて、自然とは全然向きあっていない……。すべてが経済活動の上で成り立っている気がしますね。

 

梱包資材などにも綺麗を求めるのは、世界の中でも日本人は異常なほど神経質だと思いますね。

 

石坂:私たちは、2021年4月から、消費者に対し「捨てない選択」の価値を普及することを目的とした「CHOICE ZERO AWARD」プロジェクトをスタートしています(https://choice-zero.org)。こんなふうに、企業側がそういうお客様の価値判断を変えていく活動をしたっていいと思うの。なぜならイノベーションって、結局は道のないところに道を作るわけでしょう。「うちも森林活動してます」なんて横並びのアピールで安心するんじゃなくて、自分たちの作っている商品の過剰生産とか、過剰梱包を思い切って辞める方が、環境や会社の未来にはずっといいかもしれない。近江商人の「三方良し」とは、「売り手良し、買い手良し、世間良し」。これからの産業は、それに加えて「未来に良し、地球に良し、作り手に良し」という“六方良し”という価値観に変えていくことが必要だと思います。さっきも話したように、バージン=枯渇性の資源ばかり求め、それだけが美しいとする価値観をやめない限り、自然破壊はもう止められないのだから。

 

↑石坂社長に話を聞く、ブックセラピストの元木忍さん

 

里山の森とともに生きることで
自ら循環型経済を実践する

石坂産業のリサイクル工場は、すべて同社が経営する「三富今昔村」という施設の中にあります。自分たちの手で年月をかけて管理してきた里山である通称「くぬぎの森」の中には、オーガニック野菜を育てる農園やカフェ、養鶏場やバーベキューができるスペースなど、五感で自然や環境問題を学べるサステナブルフィールドが広がっていました。

 

石坂:今後は敷地内でエネルギー事業や温浴事業をスタートすることも考えています。この活動は結局なんのためにやっているかというと、循環型経済=サーキュラーエコノミーを作っていくことが私たちのビジョンであり、その原点になるのがこの里山だと考えているからなんです。昔は、森の木から薪をとって火を起こしたり、自然にかえる材料で生活道具を作ったりして、里山の森そのものが“循環”していたわけよね。でも今は、誰も里山の森で薪なんか採らない。森の循環を守ろうと思ったら、お金なりボランティアの力なりが必要なんです。だから、三富今昔村では大人の方だけに「里山入村料」をいただいています。

 

元木:まさにサステナブルですね。里山を循環させるために我々ができることを、大人たちから「里山入村料」を貰って、一緒に守っていくのですね。

 

石坂:商品ではなく、三富今昔村という価値を生み出している背景に投資をしてもらうということ。そのサービスやモノを使うことで、未来がどんなふうに良くなるか。そういうことにお金が使われるビジネス形態を作ることが大事だと思っています。

 

元木:目の前にある“見えるもの”への投資ではなく、未来に対して投資をするってことですね。

 

石坂:その通りです。会社って経営そのものが大変だし日々が戦いだけれど、だからといって地球環境のことなんか考えていられない……というあり方でいると、これからは経営そのものが長期的に続けられない時代になっていくと思っています。対症療法に終始して、自然環境を破壊するだけのビジネスを根本から見直す。それを自分たちから実践しようということです。

 

↑1300種以上の動植物が生息するくぬぎの森を有する三富今昔村の敷地は、東京ドーム4個分の広さ。資源を生み出すリサイクル工場の見学ができる(予約制)ほか、敷地内のさまざまな施設で食農育体験や里山体験プログラムが実施されています

 

↑おいしい卵を産んでくれるニワトリ小屋や、アメンボやおたまじゃくしなど水辺の生き物たちがうごめく池もあります。ちなみに鶏糞は里山の落ち葉と混合し、農作物を育てる際のたい肥として用いられているそう

 

↑石坂オーガニックファームで育てられた地元の固有種野菜や果物が食べられる、村内の「くぬぎの森交流プラザ」のメニューです。食事には、栄養たっぷりの野菜の皮やヘタなどから作った香り高いベジブロススープ付き。これも「ゴミをゴミにしない」というメッセージの体現です

『未来教室』は、未来を幸せにするための
選択と行動のヒントが書かれた本

石坂さんはこれまで、自身の半生やビジネスを綴った3冊の本を出版しています。その中でブックセラピスト・元木さんが注目したのが、今回のインタビューのきっかけとなった『どんなマイナスもプラスにできる 未来教室』(PHP研究所)という本でした。

 

元木:この本は、石坂産業のことや社長の仕事がわかるだけではなく、お子さんから大人まで気軽に読めて、なおかつ所々に込められた環境問題に関するメッセージがシンプルに伝わる一冊だと思いました。

 

石坂:版元のPHPさんからの提案で、いっそのこと子どもでも読めるような本にしたらどうですかと提案いただいて、この形になりました。私はどちらかというと親御さんに読んで欲しいのだけれど、お子さんと一緒に読んでくれたらいいのかなって。

 

元木:『未来教室』っていうタイトルも素敵ですね。私たちはもっと未来のことを学ばなきゃいけませんからね。

 

石坂:このタイトルもPHPさんと一緒に考えました。自分でいうのもなんですけど、担当の方から言われたんですよ。「石坂さんって顔も性格も明るいし、なんか未来が明るいんですよね」って(笑)。いわれてみればたしかに私の人生、常に未来志向で生きてるところがあるかもしれないなと。

 

元木:小さい頃から未来志向だったんですか?

 

石坂:さすがにそれはなくて、自分の未来を10年スパンくらいで思い描くようになったのは20歳を過ぎてからでしたね。でも私は結局のところ、当初の目標だったネイルサロンは作らずに会社の二代目を継いだし、20代で離婚したりもしています。全部が予定通りにいったわけではないんですよ。だけど、今は仕事とプライベートの垣根がないくらいに仕事が面白いです。思い描いていた選択肢が変わってしまうことなんて人生にはよくあるし、だからといって失敗というわけじゃない。

 

元木:その通り、失敗のない成功はないですよね。この本には、自分の未来をより良くする選択のヒントがたくさん書かれていると思いますが、仕事とプライベートを重ねながら、自分とも向き合って生きていくというわけですね。石坂社長はそれができているから、目的が明確で面白い仕事ができているのでしょう。

 

石坂:大切なのは、自分なりの幸せの価値観、満足っていうのがどこにあるかを常に意識したり、都度見直したりすることじゃないかな。自分の価値観がわかった上で生きるのと、自分自身がよくわからないで生きるのでは、やっぱり幸せ度数が違うんじゃないかと思います。

 

↑石坂さんがこれまで出版してきた3冊です。中央は『五感経営 産廃会社の娘、逆転を語る』(日経BP)。右は『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える! 2代目女性社長の号泣戦記』(ダイヤモンド社)

 

↑子どもにも読んでもらうことを想定した「未来教室」の装丁は、イラストを使った温かみのあるデザイン。本文中にも随所にイラストを入れ、漢字にはルビを振るなど工夫をしています

 

【プロフィール】

石坂産業 代表取締役 / 石坂典子

1972年生まれ。アメリカに短期留学を経て20歳で石坂産業へ入社、2002年に父の志を継ぎ取締役社長に就任する。国際規格ISO経営に挑戦し、里山保護活動を通して日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得。2016年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016・情熱経営者賞」など、経営者としての受賞歴も数知れず。プライベートでは二児の母。趣味はガーデニングやアンティーク家具、ハーレーを駆る女性ライダーでもある。https://ishizaka-group.co.jp/

 

MOE絵本屋さん大賞2020発表! 編集長に聞く、大人へ絵本をガイドする『MOE』が支持される理由

やさしい言葉にホッとする。美しい絵や色にワクワクする。絵本の世界は子どもたちだけではなく、現代の大人たちにも、心のサプリメントのような存在として広く愛されています。

 

約20年前から始まった出版不況のなか、絵本を含む児童書は安定的に売り上げを伸ばし続ける希少なジャンルです。往年の名作から大人向けまで、絵本の種類は年々幅広くなり、業界はまさに成熟のときを迎えているといえるでしょう。その一方で、年に約2000冊といわれる新刊絵本のうち、書店の小さな絵本コーナーで私たちが出会える作品の数は、けっして多くはありません。

 

今この時代だからこそ読める、面白い作品に出会うには、どんな風に絵本を探したらいいのでしょうか? そこにヒントをくれるのが、白泉社の雑誌『月刊MOE(モエ)』が実施している絵本の年間ランキング『MOE絵本屋さん大賞』です。「絵本のある暮らし」をキャッチフレーズにうたう『MOE』は、読者と良質な絵本との出会いをサポートし続けている専門誌。

 

今回は同誌のファンでもあるブックセラピスト・元木忍さんが、絵本の世界でいま起きていることや、絵本とのお付き合いを楽しむための秘訣を、『MOE』編集長の門野隆さんに聞きました。

 


『MOE』(白泉社)
絵本のある暮らしを提案する月刊誌。人気作家やキャラクターなどを切り口とした巻頭特集のほか、絵本好きの琴線に触れるアートや映画、雑貨、スイーツなどの情報を届けています。あの『ハリー・ポッター』シリーズを日本の雑誌として初めて大特集したのも同誌でした。毎月3日発売。
https://www.moe-web.jp

 

「大人の絵本の楽しみ方」を提案した初の専門誌

1983年に創刊された『MOE』の第1号。「メルヘン&イメージアート」というキャッチコピーからも分かる通り、絵本の世界を保育者の視点で扱うのではなく、大人女性が楽しむアート、カルチャーという視点から取り上げた雑誌へとリニューアルを果たしました

 

元木忍さん(以下、元木):『MOE』はひと言でいうと「絵本の専門誌」ですが、特集によっても違いますし、絵本以外の内容もかなり掲載されていて、本当に楽しい雑誌ですよね。

 

門野隆さん(以下、門野):ありがとうございます。キャッチフレーズとしては「絵本のある暮らし」。もっと具体的にいうと、絵本やそのキャラクターを中心としたカルチャー総合誌、というのがしっくりくると思います。

 

元木:絵本と一緒に楽しめそうなお取り寄せスイーツや、雑貨が紹介されていたりするのもいいですよね。

 

門野:そうですね。読者は9割が女性です。年齢層は10代後半から70代までとすごく幅広くて、創刊時からの読者もいらっしゃいます。

 

元木:それはすごいですね。絵本は子どもだけが読むものではないので、読者が多いわけですね。そして、たしか創刊から40年以上になるんですよね。

 

門野:はい。厳密にいうと『MOE』は偕成社という会社が1979年に創刊した『絵本とおはなし』という専門誌から始まっていて、1983年に『MOE』にリニューアルされたという経緯があります。白泉社に移ったのは、1992年4月号からです。

 

元木:こうして見ると、『絵本とおはなし』の誌面は文字情報が多かったんですね。育児本のような少し“堅い”印象があります。

 

門野:そうですね。1970年代までの絵本は、まだあくまで“子どものもの”という見方が強かったと思うのですが、一方で『MOE』が生まれた80年代は、海外の絵本を大人が「おしゃれなもの」として楽しむような価値観が生まれた時期でもありました。そこで絵本の魅力をもっと広く発信するために、『MOE』はあえてビジュアルを中心に置いた、女性誌っぽい雑誌にリニューアルしたそうです。

1979~1983年まで偕成社から発行されていた絵本専門誌『絵本とおはなし』。「保育者とお母さんの専門誌」とうたわれ、現在の『MOE』とは違って、テキストが中心の保育者向け情報誌でした

 

よみがえってきた絵本の記憶

元木:『MOE』の誌名の由来はなんですか?

 

門野:「萌え」からきているそうです。絵本が持つ豊かな世界が、もっと多くの読者の心に萌え出るように……そんな願いを込めたのではないでしょうか。ちなみに、僕自身は編集長になってまだ4年目なんです。

 

元木:それ以前はどんなお仕事を?

 

門野:1999年に入社して、15年間青年コミック誌で漫画やグラビアなどを担当していました。その後2年くらい広告企画部で仕事をしていたら、あるとき急に『MOE』の編集長をやることになりまして。

 

元木:出版社でのグラビアや広告部なんて、それとは全然違う世界の絵本の編集長に抜擢されたのですね……! ご苦労されたこともあったのではないですか?

 

門野:いきなりだったので驚いたのですが(笑)、うちの編集部には7名のスタッフがいて、そのなかに偕成社時代からのスタッフが現在も2名います。外部のライターさんも児童書や絵本のスペシャリストですから、そういう意味で不安はあまりなかったですね。大人になってすっかり忘れていたのですが、絵本に関しては小さいころによく読んでいた記憶もあったんです。編集長をやることになったとき、そのころ読んでいた絵本を実家から送ってもらって……今も編集部に置いてあるんですけれど。

 

元木:(机に広げた門野さん私物の絵本を見ながら)これはすごい! かなりの量ですよね。

門野編集長が幼いころ読んでいた絵本の一部。切り口がいつも斬新な『おなら』の長新太さんも、門野さんが好きな絵本作家のひとり

 

門野:親が僕のために、いわゆる“月刊絵本”を何種類か購読していたんです。

 

元木:やっぱりちゃんと持っていたんですね。絵本の仕事へ導かれていく魂を。

 

門野:それはどうでしょうかね(笑)。乗り物や食べ物の話は好きでよく読んでいました。あとは人体の不思議のような、世の中のいろんなことをわかりやすく教えてくれる本も好きでしたね。

 

元木:私は、かこさとしさんの大ファンなのですが、2019年の4月号に掲載されたかこさんの特集は、編集の切り口がすごく面白かったです。かこさんと作品への愛をひしひしと感じて、ファンとしてはまさに鳥肌ものでした。これだけ絵本に触れてきた門野さんなら、きっと『MOE』のお仕事はすごく面白いのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

元木さんが特に感動したという2019年4月号は、だるまちゃんシリーズや、『からすのパンやさん』で知られるかこさとしさんの特集号。誌面ではさまざまな関係者がかこ作品への愛を語っており、可愛らしい表紙デザインもコレクション欲をそそります

 

門野:うーん、そうかもしれません。子どものころは、絵本を読んでも作家の名前なんて気にしないんですよね。だから大人になって、作家の視点から作品を深掘りすると新たな発見があったりして、個人的にも面白い仕事だと感じています。それに、絵本自体が出版業界で注目されているのもやりがいにつながっているかもしれません。おかげさまで『MOE』は、年々部数も伸びていて、売り上げ率も80%近くあるんです。

 

元木:すごい! 紙の本でも雑誌が特に不調だといわれているなかで、それだけ読者に支持されている月刊誌はなかなかないですよ。本当にすごいことだと思います。

『MOE』の門野隆編集長と、ブックセラピストの元木忍さん

 

そんな門野編集長がいま感じている使命とは? そこには絵本という出版物特有の背景がありました。また、注目される「MOE絵本屋さん大賞」が実は採算度外視の取り組みであることなど、秘話も語っていただきます。

絵本の「中身」をガイドする大切な意味とは?

元木:そんな門野さんはいま、編集長としてどんな使命を感じていらっしゃるのでしょうか?

 

門野:僕がいま大事にしているのは、絵本を気軽に楽しんでもらうための間口を広げることです。そもそも絵本って内容がシンプルなだけに、選ぶのが難しいと思うんです。

 

元木:それは分かる気がします。文字が少ないのにメッセージ性が高いから、結局どれがいいんだろう?って悩んでしまう人は多いんじゃないかな。

 

門野:数十年前の作品がずっと愛され続けるのも、安心して買えるからという面が少なからずありますよね。業界としても60、70代といった大先輩の方々がまだまだ現役でいらっしゃる世界なので、ある種の厳しさをともなう現場でもあったりするんです。もちろんこういう側面は簡単に変えられるものではないですけれど、そのなかでどうやって世の流行や、読者の趣味趣向を誌面に反映できるかは常に工夫をしています。

 

元木:特定の作家さんやキャラクターに寄った特集もあれば、「絵本で愛を贈る」「思わず泣いた感動絵本」といった切り口でいろいろな絵本を紹介するような特集もありますね。

 

門野:はい。特集の内容は基本的には編集スタッフやライターの意見をもとに考えています。ほかにも『ハリー・ポッター』特集や『ドラえもん』特集のように、絵本と直接関係はないけれど、『MOE』の世界観に合う題材を取り上げることもたまにありますね。

 

元木:その中で、毎号何冊くらいの絵本を紹介しているんですか?

 

門野:多いときは100冊以上、少ない号だと30〜40冊くらい。平均して80冊程度じゃないでしょうか。それでも絵本は年間で2000冊くらい新刊が出ていますから、全部は拾いきれていないんですよね。もちろんたくさん紹介できればいいわけでもなくて、そのなかで「いいもの」を厳選して紹介するのが『MOE』の役割だと思っていますけれど。

 

元木:そうそう。それが『MOE』の重要な役割なんだろうなって、私も思っているんです。絵本って一度ヒットすれば長く売れますけれど、新人さんの作品となると初版部数が極端に少ないですよね。そうすると近所の本屋さんへ行っても、新しい作家さんにはなかなか出会えなかったりして。

 

門野:そうですね。

 

元木:だからといって、中身がわからないとネットで気軽に買うこともできない。これが絵本の難しいところであり、面白いところでもあると私は思っているんです。判型が大きいのか小さいのか、紙の手触りはどんな感じか、どのくらいの厚みがあるのか。実際に触れてみなければわからない個性こそ、絵本の魅力だったりしませんか?

 

門野:それこそ、デジタル化できないんですよね。そもそも絵本って判型もバラバラですし、店頭で売りにくい商品なんですよ。だから内容がよくても、新人作家の新刊となるとなかなか本屋で置いてもらえないこともあります。かといって読者からすれば、ネット書店の情報だけで欲しい絵本を見極めるのはすごく難しい。こういった現状のなかで本当に良質な絵本が埋もれ、なくなってしまわないように、『MOE』が伝えていくべきことはたくさんあると思っています。

『MOE』は1~2か月に1回くらいの頻度で編集会議を行い、編集者とライターが企画を出し合って各号の特集内容を決めているそう

 

「ムーミン」や「スヌーピー」といった人気キャラクターは、年に1度は必ず特集が組まれています。近年ではねこのキャラクターでおなじみのヒグチユウコさんが大人気で、カレンダーなどの付録がついてくる号もあります

 

歴代で門野編集長が初めてトライしたという、芸能人を起用した表紙。女優ののんさんなど、『MOE』読者の共感を集めそうな人選にこだわりました

 

利益度外視で取り組む『MOE絵本屋さん大賞』

全国3000人の絵本コーナー書店員にアンケートを取り、年間で面白かった絵本ベスト30を決めている『MOE絵本屋さん大賞』は、2020年で13回目を迎えました。写真は大賞を受賞したヨシタケシンスケさんの『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)。大人のモヤモヤした心にも効くと話題のヨシタケ作品は、男女を問わず人気があります

 

元木:そんな『MOE』の使命のひとつともいえるような活動が、毎年実施している『MOE絵本屋さん大賞』だと思います。これはどんな経緯から生まれて、毎年どういった形で行われているんでしょうか?

 

門野:いわゆる『本屋大賞』の絵本版をやってみたいねということで、13年前に始めたのが最初でした。全国の絵本コーナーの書店員さん3000人にアンケートを取り、毎年年末にその年の絵本ベスト30を発表しています。直近の2020年はたまたま白泉社の絵本が大賞をいただきましたが、年によっては白泉社の絵本がまったくランクインしてないことさえあります。つまり、本当にガチで利益度外視でやっているんですよね(笑)。

 

元木:2020年度は、オンライン授賞式という形で動画を配信していましたね。私も知っている有名な絵本売り場の方が出てきて、このランキングはすごく信頼できる! と感じました。

 

門野:お店によっては年間を通して『MOE絵本屋さん大賞』のコーナーを残してくださっていることもあったりして、絵本の売り上げにつながるランキングとして着実に成長してこれたという実感はあります。

 

元木:新刊の売り上げに貢献するのはもちろんですけれど、私は『MOE絵本屋さん大賞』って、この13年の間にきっとたくさんの売り場担当者を育てたと思うんですよね。本を読まない、知らない書店員が珍しくなくなっている現状のなかで、それは素晴らしい貢献のひとつだと思うんです。

 

門野:そうですね。絵本を本当にたくさん読んでいる書店員さんが選んでくれたからこそ、今回白泉社から出たヨシタケシンスケさんの『あつかったら ぬげばいい』が大賞を獲ったことは、僕たちにとってメチャクチャうれしいことなんです。

 

元木:ヨシタケさんは今回10位までに4冊もランクインしていて、まさに今をときめく売れっ子作家。絵本好きの女性だけではなく、お父さんにも人気があるなんていわれますよね。ちなみに今回ランクインしているなかで、門野編集長が個人的に注目している作家さんはいますか?

 

門野:僕が以前からずっとすごいなと思っているのは、今回3位にランクインした『の』や、『Michi』などで知られるjunaida(ジュナイダ)さんですね。抜群の画力や内容の面白さはもちろんですが、ブックデザイナーの祖父江慎さんが装丁を手掛けられていたり、モノとしての魅力がもはや絵本を超えています。これこそ、子どもだけではなく大人が欲しくなる絵本なのではないでしょうか。

 

元木:うん。junaidaさんの絵本はもはや芸術の域ですよね。それこそ子どもの頃からこんな絵本を読んでもらっていたら、何かすごい才能が開花してしまいそうです!

『MOE絵本屋さん大賞2020』で3位を受賞したjunaidaさんの『の』と、『MOE絵本屋さん大賞2019』で7位にランクインした『Michi』(ともに福音館書店)。絵本の中に入り込んでしまいそうな圧倒的な絵と構成

 

門野:そうですね。絵本は子どもにとって人生で初めて触れる本であり、親子のコミュニケーションを生む道具であり、いろいろな感情や知識を教えてくれる特別な存在でもあります。でも僕が、大人として絵本の世界を知ってあらためて感じているのは、絵本の役割はあくまで読む人が決めるものだということ。形もばらばらなら中身も違って、その役割も読む人次第で変わっていく。同じ形に統一できない多様性が、絵本の面白さなのだと思います。そういった絵本の多様性を伝えることが、僕たちの『MOE』の役割だと思っていますね。

 

【プロフィール】

MOE編集長 / 門野 隆

1999年に白泉社へ入社。青年コミック誌『ヤングアニマル』で漫画やグラビアの編集などを15年間手がける。その後同社の広告企画部へ異動し、2年後の2018年に絵本専門誌『MOE』の編集長に就任する。https://www.moe-web.jp

 

【朝の1冊】時給は1万円以上、年間休日数は180日以上。「働く自由人」の究極のワークライフバランス――『半年だけ働く。』

自由人に会ったことがあります。スキー場や観光ホテルで「リゾートバイト」を繰り返している40代後半の男性でした。働くのは、レジャーシーズンの「夏」と「冬」です。

 

半年だけ働く。』(村上アシシ・著/朝日新聞出版・刊)という本があります。ITコンサルタントとして働きながら、「サッカーと旅」をライフワークにしている著者が書いた体験談&ノウハウ集です。

 

「半年だけ働く」ということは、残りの6ヶ月は「自由」です。約180日のあいだ、どのように暮らしているのでしょうか?

 

 

究極のワークライフバランス

私はこの10年以上、「半年仕事・半年旅人」というライフスタイルを食いっぱぐれずに継続してきました。(中略)ほぼ毎年のようにサッカー日本代表の試合は国内外問わず現地で見ていて、4年間に1度開かれるワールドカップとオリンピックは毎回欠かさず、開催国を訪れています。

(『半年だけ働く。』から引用)

 

『半年だけ働く。』の著者は、フリーランスのITコンサルタントです。多くの時間を「旅とサッカー」のために費やしています。驚くことに、日本代表チームの海外遠征やサッカーW杯の開催日に合わせて、働く場所や仕事のスケジュールを決めているそうです。

 

「6ヶ月働いて6ヶ月休む」という単純なものではなく、「隔月ごとに1〜2週間のまとまった休み」ということも。オリンピックやW杯の開催年の前後は、日本代表チームを応援するために数カ月のあいだ世界中を旅することもあります。自由自在です。

 

サッカーを楽しみすぎた翌年には、「10ヶ月働いて、2ヶ月休む」というスケジュールで活動費を稼ぎます。しかも「半年だけ働く」の期間には、しっかりと「週休2日」が含まれています。貯金もしています。仕事を効率化して、余暇を最大化する。究極のワークライフバランスです。

 

 

完全無欠の自由を手に入れる

本書『半年だけ働く。』によれば、サラリーマン時代に3ヶ月の休職期間を経験したことがあり、そのときに味わった「完全無欠の自由」が忘れられず、「サッカーと旅」がアイデンティティーに昇格したと述べています。本書では、次のような素朴な疑問にひとつひとつ答えていきます。

 

①半年しか働かずに、お金は足りるの?
②仕事はどうやって取ってくるの?
③フリーランスとしてやっていくには、どんな準備が必要?
④コンサルタント以外でどんな職業で独立ができるの?
⑤40代、50代になってもフリーランスって続けられるの?

(『半年だけ働く。』から引用)

 

著者の実体験にもとづくノウハウが惜しみなく書かれています。「完全無欠の自由」をエンジョイしている著者は、どのように働いて、どのくらい報酬を得ているのでしょうか?

驚きの「時給1万円」

コンサルティングのプロジェクトに従事する時は、基本的に週5で朝9時から夕方18時までフル稼働の状態で、2〜3ヶ月単位で契約を更新していきます。(中略)私のコンサルティングフィーは自分の手取りで「時給1万円」を最低ラインとして置いています

(『半年だけ働く。』から引用)

 

著者は、ITコンサルタントです。独立したあと、仕事を得るための営業はしませんでした。ほとんどがエージェント経由で、依頼主(クライアント)からコンサルタント業務を請け負っています。

 

大企業のフリーランス活用が広がっており、さまざまな業種のエージェントが存在しています。エージェントに支払う手数料は「2〜3割」ですが、フリーランスの報酬金額は「サラリーマンの2〜3倍」なので、むしろ良心的です。

 

新事業の立ち上げや業務改善プロジェクトに際して、期間限定で契約できるフリーランスのほうが、たとえ高報酬を支払ったとしても企業にとってはコスト削減につながります。アメリカのフリーランス従事者は「労働力人口の35%・5500万人規模」です。「即戦力」の需要に応えられるのは「専門職のフリーランス」ですから、時代に即しています。

 

 

急がば回れ。独立は計画的に

我々のような一般人にとっては、「好きなこと」ではなく、「得意なこと」で稼ぐのが最も再現性が高く、難度の低い独立方法と言えます。

(『半年だけ働く。』から引用)

 

そもそも「得意なこと」を見つけるためには、どうすればいいか? 本書では「まずはサラリーマンで地力をつける」とアドバイスしています。やってみなければ得意なものはわかりません。

 

将来フリーランスを目指すならば、ITやコンサルタントなどの「独立しやすい業界」で、まずは会社員として働いてみるのがオススメです。賞与や住宅手当や有給休暇がうれしいなど、会社員としての向き不向きを見極められるので損はありません。

 

フリーランスに限らず、人生の「活きた時間」を増やすにはどうすればいいか? 本書『半年だけ働く。』では、社会に貢献できる「実業」を重視して、メリットとデメリットを比較しながら語り尽くしています。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

半年だけ働く。

著者:村上アシシ
発行:朝日新聞出版

“半年仕事・半年旅人”を10年実践してきた筆者が、誰もがうらやむ「半年仕事をして、残りの半年の自由を謳歌する」まったく新しい独立指南本。知識や資格で稼ぐホワイトカラーがサラリーマンとして培ってきたスキルを活かして、その延長線上でスペシャリストとして独立する手法を公開!

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大阪北部の地震を体験して気づいた、他人との交流の大切さ――『大家さんと僕』

18日朝、大阪北部を中心に震度6弱を観測した地震。震源地近くにある我が家でも、かなり揺れた。

 

ちょうど、娘2人がいつもより遅い朝食をとっていたときだった。地から突き上げるような強い揺れ。思い出すだけで、恐怖が蘇る。

 

39年間生きてきたなかで、今回が一番大きな揺れであり、精神的にもダメージが大きかった。けれど、地震を体験したことによって、家の中の家具の配置や収納の仕方、注意しておくべき点が浮き彫りになった。

 

 

今回の地震を経て反省したこと

ズボラな私は最近、食器棚を開けっ放しにしがちで、その日も片方の扉が開いたままだったため、中からコーヒーカップや皿がいくつか飛び出してきた。シンク横には、洗った食器を乾かしておくラックがあるのだが、そこからも数々の食器やコップが落下。

 

食器棚は必ず閉めておく・洗った食器はすぐに片付ける(特に割れるものは即しまう)・刃物は絶対に出しっぱなしにしない、これは鉄則だ。

 

2階では、CDラックが2つ折り重なって倒れていた。もしも、地震の瞬間この場所にいたら…と思うとゾッとする。家具をしっかりと固定すること。「これくらいは大丈夫だろう」は通用しない。現に、他の家具は天井まで突っ張っていたため、何も落下していなかった。予め対策をしておけば、被害を最小限に抑えることができるのだ。

 

それから、高い場所にガラス製や陶器など割れる物を置くことは避ける。特に寝室には、頭上に落ちてきたら危ない物は置かない。

 

当たり前のことばかりかもしれないが、改めて家の中を見回してみると、危険な箇所が意外に見つかった。

 

それから、地震直後、備蓄できる食品や飲料水があっという間にスーパーから消えた。中に入ることすらできないほど、人が殺到していた店もあった。

 

これも、普段から蓄えておけば焦って買い集める必要はないのだから、いかに日頃から災害に備えておくことが大切かを実感した次第だ。

 

そして、私が今回一番「怖いな」と感じたことがある。

 

 

隣は何をする人ぞ?

地震直後、揺れがおさまって安全が確認できた段階で、娘たちを守りながら外へ避難した。とにかく、周囲の様子が知りたい。お隣さんは大丈夫だろうか?

 

だが、両隣からも、向かいのマンションからも、誰一人外に出てきていなかった。唯一、登校途中の小学生とその母親を発見した。その母子と一言二言交わせたことで、強張っていた心が少しだけ和らいだのだが。

 

お隣さんは家の中にいたのだろうか? ピンポンを押して、無事を確認してみようか。でも窓は開いているし、誰かいる様子なので、あえて訪ねていくのも気が引ける。周囲にはたくさんの住宅があるのに、なんだか自分と娘2人だけが取り残されたような感じがして、とても怖かった。

 

メールやLINEで遠方の友人が心配して連絡をくれたのは、本当にありがたかった。でも、リアルな誰かと、地震のことを「怖かったね」だとか「物が落ちてきてね」だとか、「あそこのスーパーには水がまだあったよ」だとか、ほんの些細なことでも構わないから、おしゃべりをして情報交換したかったのが本音だ。

 

実は我が家は、1カ月ほど前に引っ越してきたばかりの新参者。以前住んでいた場所では町内会があり、何かと地域の行事があり、ご近所さんで挨拶をしたり、おすそ分けをいただいたりしていた。

 

何より、大家さんがほんの数十メートルほどの距離に住んでいた。家の調子が悪いとき、何かあったとき、真っ先に大家さんに連絡をすると、すぐに駆けつけて様子を見てくれた。転勤族のため周囲に身内も誰もいなかった私達家族にとって、大家さんは心強い存在だったのだ。

 

 

「大家さん」という新しい家族の形

そんな私達家族以上に、大家さんと強い絆で結ばれている人がいる。お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎さんだ。彼はいま、まさに時の人だろう。処女作である『大家さんと僕』(矢部太郎・著/新潮社・刊)が、第22回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞したのである。

 

『大家さんと僕』は、東京・新宿区のはずれにある木造2階建て一軒家の一階に大家さん、二階に矢部さんが住むという、ちょっと変わった共同生活が描かれたエッセイ漫画。御年90前の大家さんと矢部さんの面白おかしいエピソードの数々に、クスッと笑えて、ちょっとジーンときて、心がほっこりする。まさに、新しい家族の形だと言える。

 

風呂敷の使い方とか 美味しい紅茶の銘柄とか

梅が咲いて 桜が咲いて ツツジが咲いて 紫陽花が咲くこととか

新宿にもホタルがいたこととか

伊勢丹と ほうじ茶と 銀杏拾いの良さとか

引っ越すまでは忘れていました

ひな祭りも 綿あめの味も 戦争も

(『大家さんと僕』より引用)

 

どちらかというと、お笑い芸人の中ではあまり目立たない矢部さん。トークが苦手で、緊張すると大事なところを触ってしまう線の細い人、という印象だったが、大家さんと出会ったことで得た宝物たちを、味のある、そして抜群の間で描き上げられていて、大感動した。こんな素晴らしい才能を秘めていたなんて!

 

 

こんな時代だけど、だからこそ、やっぱり誰かと繋がっていたい

思えば、東京で一人暮らしをしていたとき、マンションの隣に住む人とは一度も遭遇したことがなかった。どんな人が住んでいるかもわからなかった。隣は何をする人ぞ。それが当たり前だったのだ。

 

今の時代、田舎特有のご近所付き合いを煩わしいと思う人は多い。もちろん、その気持ちもわかる。隣人に殺害されるなんて事件もあるし、他人を信用しすぎると痛い目に遭うことだってある。

 

けれど、今回のような災害が起こったとき。日常の中で何か困ったとき。ちょっと相談できて、ちょっと立ち話ができるような、そんなコミュニティが近所にあると、とても心強いなと感じた。

 

この辺りは転勤族が多く、あまり横の接点がなさそうだ。何かと世話を焼いてくれるお節介おばちゃんも見かけない。

 

だからこそ、もし今度ご近所さんを見かけたら、積極的に話しかけてみよう。「地震、大丈夫でしたか?」と声をかけてみよう。

 

大家さんと矢部さんほどの深いつながりでなくとも、いざというときに声を掛け合って、協力しあえるような関係が築けたらいいなと思う。

 

【書籍紹介】

大家さんと僕

著者:矢部太郎
発行:新潮社

1階には大家のおばあさん、2階にはトホホな芸人の僕。挨拶は「ごきげんよう」、好きなタイプはマッカーサー元帥(渋い!)、牛丼もハンバーガーも食べたことがなく、僕を俳優と勘違いしている……。一緒に旅行するほど仲良くなった大家さんとの“二人暮らし”がずっと続けばいい、そう思っていたーー。泣き笑い、奇跡の実話漫画。

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収納が足りないなら作ればいいじゃない! DIY初心者でも簡単な本棚キット

お父さんが本を次々に買うから、収納スペースがなくなってしまった我が家の本棚。これからも本は増えるから、新しい本棚が欲しいとせがまれちゃって目下探しているけれど、ちょうどいいサイズの本棚ってなかなか見つからないのよね。オーダーすればいいんだろうけど、そんな金銭的な余裕はないし……。

 

そういえば、ご近所のsayo.さんは、素敵な家具や雑貨を自分で作っていたわね。DIYってなかなか挑戦できなかったけど、この機会に相談してみようかしら。

 

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお母さんが、なにやら困っているようです。

参田家の人々とは……
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ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。
https://maita-ke.com/about/

 

初心者でも本格的な本棚を簡単につくりたい!

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お母さん「収納スペースがないのに新しい本を買ってきちゃうから、部屋にお父さんの本が山積みになっているんです! 新しい本棚を探しているんだけど、ちょうどいいサイズがなくて……。なにかいい方法はないでしょうか?」

 


sayo.さん「欲しいものが見つかっても、置きたい場所にサイズが合わないって“家具あるある”ですよね(笑)。それなら、いっそのこと作ってみてはいかがですか? 意外と簡単にできますし、かかる費用も材料代だけなので、お財布にも優しいんです。LABRICO(ラブリコ)やディアウォールなど、DIY専用キットも売っていますし、木材からでもホームセンターで希望のサイズに切ってくれるので、赤ちゃんがお昼寝している間に作れちゃいますよ!」

 

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お母さん「思ったよりも簡単に作れるんですね! でも、我が家にはDIYに役立ちそうな道具がなくて……。まずDIYを始めるときって何が必要なんでしょう?」

 


sayo.さん「まずは、電動ドライバー、メジャー、水平器があると便利ですね。電動ドライバーはホームセンターにいけば、安いものなら1000円ほどで買えます。メジャーは3〜5メートルくらい測れるものがあればいいですね。水平器は、組み立てる際に棚板などを水平に設置するために必要です。ちなみに、メジャーと水平器は100均ストアでも購入できますよ」

 

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お母さん「それなら2000円以内で揃えられそう! リーズナブルで助かりますね。早速作ってみようと思うんですけど、本棚を作るためには何を買えばいいでしょう? どこで買えばいいかもわからなくて……」

 


sayo.さん「ホームセンターに行けば、全部揃いますよ! 材料は、柱として使う“2×4(ツーバイフォー)材”という木材を2本、2×4材に差し込むだけで柱にできるLABRICOやディアウォールなどのDIY専用キット、棚板とそれを取り付ける棚受けが必要です。ちなみに、棚板は設けたい段の数だけ買ってくださいね。柱となる2×4材は、DIYキットに天井から床までの高さからマイナス何cmと指定があるので、説明書きを読んでから長さを計算して切ってください。今回はLABRICOを例にして説明しますね」

 

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お母さん「意外と材料が多いけど、そんなに高くないみたいだし、1万円もあればお釣りがきそう! でも普段、家具の組み立てもお父さんに任せているんだけど、私でも作れるんでしょうか……?」

 


sayo.さん「作り方はとてもシンプルなので、安心してください! まず、柱となる2×4材に棚受けを取り付けて、棚板を固定します。そして、柱の上下にLABRICOを装着。最後に、組み立てた棚を壁に沿わせるようにして立てかけ、天井に固定するだけです!」

 

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お母さん「フムフム……。組み立てた後に、突っ張り棒みたいに固定するんですね!」

 


sayo.さん「壁に立てかけて、LABRICOのネジを調整すれば取り付けられるので、試してみてください。それと天井の造りによっては、木材を天井に突っ張らせたときに穴が開いてしまう可能性があるので、設置前に手で天井を叩いて、奥が空洞になっていないかを確認したほうがいいですよ」

 

DIY初心者でも簡単に作れる本棚

Step 1

①柱となる2×4材の側面に、棚板を設置する場所の目印を付ける

 

Step 2

②印を付けた場所に棚受けパーツをネジ止めし、棚板を取り付ける

 

Step 3

③柱となる2×4材の上下にLABRICOを装着する

 

Step 4

④組み立てた棚を壁に沿わせるように立てかけ、天井側のLABRICOのネジを回して突っ張らせて固定する

 

まとめ

DIYで、自分好みの本棚を作ろう!

本を置くスペースの高さと横幅をあらかじめ測って、設計図を作ってから挑んだらスムーズにできたわ! DIYって面倒な気がしていままでやる気が出なかったけど、自分好みのサイズで作れるから、デッドスペースを有効活用できるのがうれしいわね。これをきっかけにいろいろなものを手づくりしてみようかしら!

 

教えてくれたのは……

DIYer/sayo.さん
4人の子どもと夫婦の6人で、築50年の賃貸団地に暮らしているDIYer。自宅をDIYした様子をアップしたInstagramは約2万人のフォロワーを集め、その確かな技術から多くのDIY好きの支持を得ている。
https://uchinote.biz/

日々の「参った!」というお悩みを5分で解決!「参田家(まいたけ)のおうち手帖」

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「僕にもう一度チャンスをください!」 ベストセラー絵本作家が挑んだ初の自己啓発本が読まれまくっている

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:3月1日、朝)を紹介していこう。

 

有名コピーライター糸井重里のお墨付き?

●1位『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編 平成29年7月』(文部科学省・著/日本文教出版(大阪)・刊/242円)

●2位『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科道徳編 平成29年7月』(文部科学省・著/廣済堂あかつき・刊/146円)

●3位『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 (光文社新書)』(溝口徹・著/光文社・刊/972円)

●4位『CYBERJAPAN DANCERS PHOTOBOOK HOLIDAY★GALS 【秘蔵生写真付き】(バラエティ)』(CYBERJAPAN DANCERS・著/宝島社・刊/2138円)

●5位『処刑の文化史』(ジョナサン・A・ムーア・著/森本美樹・翻訳/ブックマン社・刊/2916円)

●6位『運は人柄 誰もが気付いている人生好転のコツ(角川新書)』(鍋島雅治・著/KADOKAWA・刊/929円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

2018年2月10日に発売された鍋島雅治の新刊が再び注目を集めた。漫画原作者として知られる鍋島が、数多くの漫画家を見てきたなかで辿りついたのは「漫画家に必要なのは才能と努力と運、その比率は1:2:7くらいだと思う」という結論。そして運と言われる事のほとんどは、実は人間関係によるものという自身の考えを綴った珠玉の1冊となっている。

 

急上昇の要因は2月28日にコピーライターの糸井重里が、自身の主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で同書を取り上げたからだろう。サイト内の「糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの“今日のダーリン”」で糸井は、「先日『運は人柄』という新書を買いました。なんとなくですが、納得できるように思います」と語っていた。これについて鍋島はTwitterで「自分の言葉が名コピーライターの目に止まるのは嬉しい事です。運がいいなぁ。ボクは」と大喜び。

 

ネット上では「本当に参考になる本です!」「解りやすい文章でサクサク読め、とても前向きになれる」「人を惹き付ける魅力を持ち合わせた方は考え方も素敵」「語り口が柔らかくて、読みやすいのに内容が濃い」などの声が相次いでいた。

 

人気絵本作家が初の自己啓発本に挑む!

●7位『かみさま試験の法則 つらい時ほど、かみさまはちゃんと見てる』(のぶみ・著/青春出版社・刊/1404円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

ベストセラー絵本作家・のぶみによる初の自己啓発本が話題に。人生にはときどき、かみさまに試される出来事がやってくる。のぶみが絵本で8年売れなかった時期に思いついたという、今までに実践してきた「かみさまに味方される生き方」のコツを書いた1冊。

 

のぶみは60万部を突破する「ママがおばけになっちゃった!」シリーズをはじめ、これまでに200冊以上の絵本を出版している。絵本のほかにもキャラクターデザインを手掛けたり、NHKの「おかあさんといっしょ」で“11代目うたのお兄さん”を務めた横山だいすけが歌う「あたしおかあさんだから」の作詞も担当した。

 

しかし、のぶみの作品を批判する声も多い。のぶみもそれを分かっているようで、自身のTwitterでは「この本読んでまだ僕のこと嫌いだったら諦めます」「僕にもう一度チャンスをください!」と熱い思いをつぶやいている。

 

このツイートを見たファンからは、「のぶみさん渾身の1冊と聞いて速攻ポチりました」「色々経験してる人だから面白い本になってると思う」「批判も多いけど、自分の心には突き刺さることが多かったから今回も期待してる」といった声が。

 

●8位『ドラえもん映画!スペシャル―「映画ドラえもん」の“素になった”まんがセレクショ (My First Big SPECIAL)』(藤子不二雄F・著/小学館・刊/500円)

●9位『バイク擬人化菌書(2):モーターマガジンムック』(鈴木秀吉・著/モーターマガジン社・刊/950円)

●10位『ほうれい線が消失! タルミもシワ・シミも薄れる 肌若返り3分整顔(わかさ夢MOOK 58)』(わかさ出版・著/わかさ出版・刊/853円)

 

ランキングは以上の通り。今回は10位以降も含めて自己啓発本が多くの注目を集めていた。新年度に向けて気持ちを新たにする人が多いのかもしれない。

雑誌『CREA Traveller』編集長に聞くTraivalな旅の醍醐味

女性のオピニオン誌の先駆けである『CREA(クレア)』のスピンオフ誌として、2000年に創刊した『CREA Traveller(クレア・トラベラー)』。旅行専門誌ながら、いわゆるガイドブックとは一線を画す誌面をつくり続け、“発見ある旅”を提案しています。

 

今回は、ブックセラピストとして活動する元木忍さんが、『CREA Traveller』の編集長・倉林里実さんを訪ね、その舞台裏を覗いてきました。

 

海外への興味のきっかけは、デヴィッド・ボウイへの恋心だった!

元木忍さん(以下、元木):美しいビジュアルと深く掘り下げた情報で読み応えたっぷりの『CREA Traveller』ですが、まずは編集長・倉林さんご自身の経歴をお聞かせください。

 

倉林里実さん(以下、倉林):最初は出版業界ではなく、金融会社の国際部にいまして。ハーバード大学に短期留学を経て出版社に転職しました。そこでライフスタイル誌の立ち上げに携わり、そして編集長も務めました。

 

元木:そこを辞められて、文藝春秋に転職なさって『CREA』編集部に在籍されることになったわけですね?

 

倉林:はい。2008年のことです。デスクとして入り、2年後に編集長となって。2011年に『CREA』のスピンオフ誌である『CREA Traveller』編集部に異動となって2013年から現職です。

20180302_kaki_Li_02
CREA Traveller
1110円/文藝春秋
ハイエンドな“旅の専門誌”として年4回発行。通常号のほかに、好評だった特集をコンパクトサイズにまとめた別冊もある

 

元木:一冊まるごと“旅”の雑誌。ハイエンドな海外旅を提案してくださっていますが、倉林さんの海外への興味っていつごろからあったのですか?

 

倉林:そもそもは“下心”からなんです。デヴィッド・ボウイが大好きで。彼に会いたい一心で英語を勉強したんです(笑)

 

元木:え!?  それは意外(笑)。いつからお好きなんですか? あ、それを訊くと年齢がわかってしまいますね(笑)

 

倉林:中学生か高校生のときに、映画『戦場のメリークリスマス』の主題歌を聴いて、それがとっても美しくて。ピアノをやっていたんですが、このころはまだ耳がよく、一度聴いた曲はすぐ譜面に起こせていたんです。でも……『戦メリ』はできなかった。それが悔しくて、大枚はたいて楽譜を買って。そして映画を観たら、とんでもなくデヴィッド・ボウイがかっこよかった!

 

元木:すごい! そこでハマッてしまった?

 

倉林:はい(笑)。彼にインタビューできるよう、毎日ひとつずつ、英語のフレーズを覚えました。

 

元木:英語に対する向学心の原動力が、デヴィッド・ボウイだったとは! で、実際にインタビューはできたんですか?

 

倉林:残念ながらそれは叶わず……。でも、デヴィッド・ボウイとの出会いをきっかけに英語を頑張って、海外との接点ができました。大学時代はホームステイもして。沢木耕太郎さんの『深夜特急』にも影響されて、ともかく旅をしたくなって。

 

元木:そうして、現在の『CREA Traveller』に繋がっていくのですね。

 

倉林:学生時代は旅をしたくてもお金がありませんから、そうそう行けませんでしたけどね。大学では、モトクロスのサークルに入っていて大会にも出ていました。オートバイはどこへでも行けますから、夏休みを利用して日本一周をして。テント泊もして!

 

元木:ええっ! すごいです。モトクロスって、バイクで未舗装の斜面やデコボコなところを泥だらけになって走る競技ですよね? 革ジャンとか革パンを履いて? うわ〜、今のエレガントなお姿から想像がつきません!

 

倉林:ふふ。当時の先輩に会うと、こういうファッションをしている私を見て「ヤワになったなぁ」なんて言われますね(笑)

20180302_kaki_Li_03↑『CREA Traveller』の倉林里実編集長

 

旅=トラベルの語源は、苦労する=トライバル

元木:はじめての海外旅行はどちらですか?

 

倉林:大学のとき、アメリカのサンディエゴに。大学時代はそれっきりで、社会人になってからはお金を貯めてはパリによく行きました。金融会社の国際部で働いていましたから、海外とのやりとりもしょっちゅうありました。

 

元木:海外の旅を案内する雑誌をつくるようになったのは、いつからですか?

 

倉林:前の会社のライフスタイル誌のときです。その雑誌ではじめて、ベトナムを取り上げまして。これまで、よその女性誌でベトナムを特集することなんてなかったんです。料理研究家の有元葉子さんによく登場いただいていたのですが、有元さんは、ふだんからベトナムによく行かれていて。それで、この号はなかなかの評判になりました。そうそう、そして偶然にも、このベトナムブームを盛り上げたのが『CREA』だったんです!

 

元木:縁を感じますねぇ。では、百戦錬磨の倉林さんにとって、一番よかった場所はどこでしょう?

 

倉林:この質問、よくいただくんですが、そう聞かれるとつい「どこも素晴らしかったです」と答えてしまうんですが(笑)。2年ほど前に取材したペルーは印象的でした(2017年冬号・「奇跡のペルー」)。やっぱり地球って広いなぁ、と実感しました。

 

元木:交通手段が発達して、インターネットも当たり前になった今の時代は、「どこでもすぐ」なので、地球は狭くなったなぁ、近くなったなぁ、って錯覚をしがちですものね。

 

倉林:旅がラクになったというか、どこでも行きやすくなっていますが、ペルーへは27、28時間もかかります。あらためて「遠くまで苦労して行った」という点に、旅の醍醐味を思い出しました。
実は、旅を意味する“トラベル”の語源は、“トライバル”。これ、苦労という意味なんです。ペルーでは、それを久しぶりに実感しましたね。

 

元木:その気持ちわかります。苦労とかハプニングがあったほうが旅らしいですものね。では、海外でのハプニングを教えてください。

 

倉林:海外取材に出ますと、トラブルのひとつやふたつは必ず起きますね(笑)。事前にリサーチしていたにも関わらず、取材したいお店がなくなっている、とか。

 

元木:海外取材あるある、ですね(笑)

 

倉林:イギリスの特集(2017年秋号・「英国の休日」)では、取材する場所がいっさいなくなってしまいました。

 

元木:え!? いったいどうして?

 

倉林:お城や庭園、宿、パブなど歴史的な景観を管理している財団があるんですが、そこに取材許諾を取っていたのが、現地でいきなり「いっさい不可。取材もだめ!」となってしまって。方針が変わった、の一点張り。撮影保険も掛けていたんですが、途方に暮れました。

 

元木:当然、日本にいるときに取材先はすべてリストアップしているんですよね。

 

倉林:もちろんです。3カ月スパンで企画、取材・撮影、編集、発売となるので、リサーチはおおよそ1カ月ほど。それらが、理由なしにすべてダメ……。私と現地のコーディネーターさんとで、必死にほかの候補を探しまして。当初は「庭園特集」のつもりでしたが、急遽、「英国の休日」としました。

前号の秋号では、「英国の休日」を大々的に特集。英国最古の巡礼地であるカンタベリーや古都・ウィンチェスター、ヴィクトリア女王の避暑地であるワイト島といった南部の都市を中心に、最新ロンドン事情までを凝縮↑前号の秋号では、「英国の休日」を大々的に特集。英国最古の巡礼地であるカンタベリーや古都・ウィンチェスター、ヴィクトリア女王の避暑地であるワイト島といった南部の都市を中心に、最新ロンドン事情までを凝縮

 

元木:そんなに大変なトラブルがあったとは……。誌面を拝見してもまったく気づきませんでした。素敵だなぁって、のほほんとページをめくっていましたよ。

 

倉林:ありがとうございます。本当にね、毎日ハゲそう、ヒゲが生えてきそう(笑)って思いながら必死で作っています。先ほど「素晴らしかった」とお話したペルーですが、実はここでも大きなトラブルがあったんですよ。

 

元木:興味津々です!

 

倉林:ペルーって、アマゾンの6割を占めているんですが、クルーズ船に乗ってアマゾン川をリバークルーズする旅を企画していたんです。でも、日本を出発する3日前に、その船が沈没してしまって……。

 

元木:急遽、予定を変更した?

 

倉林:はい。内容はバックナンバーをご覧いただくとして(笑)。ロッジをベース地にしてアマゾン川沿いを散策するのですが、まずロッジへの前払いの宿泊代金が決済できておらず。日本から乗り換えのアトランタでメールチェックしたときに気づき、慌てて再度カード決済の手続きを。なんとか飛ぶギリギリ直前で手続きができました。さらには……

 

元木:まだあるんですか!?(笑)

 

倉林:はい。私とライターさんの女性、カメラマンさんの男性の3名だったんですが、ロッジには「スリールーム」とお願いしたのに、1部屋に3つのベッドが用意されていただけだったという(笑)

 

元木:それ、おかしいです(笑)。

 

倉林:ま、すぐに慣れちゃうんですが。取材スタッフとは海外では密に過ごしますが、たまに東京で会うと、日本ではあまり会うことがないのでなんだか照れくさくてね。

 

元木:取材現場ではラフなかっこうをしているのに、都会ではおしゃれして気取っていて、というような(笑)

印象に残った取材地のひとつ。ロンドンからクルマで1時間程度のケント州・ダウン村は、進化論で知られるチャールズ・ダーウィンが暮らした家も↑印象に残った取材地のひとつ。ロンドンからクルマで1時間程度のケント州・ダウン村は、進化論で知られるチャールズ・ダーウィンが暮らした家も

 

「国民、みな庭師」と称されるほど、ガーデニングが盛んな英国。世界遺産に登録された庭園もある。“庭園の大特集”は実現しなかったものの、その取材の片鱗はわずかに誌面に残った↑「国民、みな庭師」と称されるほど、ガーデニングが盛んな英国。世界遺産に登録された庭園もある。“庭園の大特集”は実現しなかったものの、その取材の片鱗はわずかに誌面に残った

 

続いて、旅のプロによる“取材旅”の進め方をうかがいます。そのなかで見つけた、不世出の観光スポットとは……?

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旅とは「謎解き」。予想とは異なる答えが楽しい

元木:1冊の構成は、どのようになっているんですか?

 

倉林:第1特集は海外で、旅先はひとつで100ページほど。第2特集以降は国内を紹介しています。そのなかで、私は海外の50ページ程度を担当しています。

 

元木:おおっ! 編集長自らがつくっていらっしゃるんですね。

 

倉林:編集部は私を含めて3名ですが、ライターさん、カメラマンさん、コーディネーターさんなどたくさんの方々と一緒に1冊をつくりあげています。

 

元木:構成で心がけていることは?

 

倉林:インターネットのおかげで、世界各国のことを知った気になってしまいがちです。でも、探せば絶対にあるんですよ、われわれの知らないものが。できるだけ斬新なものを探しています。

 

元木:たとえば?

 

倉林:台湾の特集(2016年春号・「美麗なる台湾」)でのことです。まだ知られていない、見たことのない“富豪”の家があるのでは? と探し回りまして。英語のサイトだけでなく、台湾語のサイトもくまなくチェックをしましたら、霧峰林家(むほうりんけ)という台湾5大豪族のひとつで、こちらの大邸宅が見学施設としてちょうどオープンすると知ったんです。

 

元木:日本で言うところの文化財住宅みたいなものでしょうか。で取材を申し込んだんですね。

 

倉林:はい。すぐにアポイントをお願いしました。とにかく素晴らしくて。この屋根の“反り”、すばらしいでしょ?

台湾を特集した号が好評だったため、コンパクトサイズの別冊が誕生した。本誌では、この写真の正面(かつ夜に撮影したもの)が堂々と表紙に。見たことのない風景で話題をさらった↑台湾を特集した号が好評だったため、コンパクトサイズの別冊が誕生した。本誌では、この写真の正面(かつ夜に撮影したもの)が堂々と表紙に。見たことのない風景で話題をさらった

 

元木:とっても象徴的ですね。

 

倉林:この“反り”の角度が大きくなればなるほど、権力を持っている証なんですって。ここまでの跳ね上がりは皇帝に匹敵するとか。これを見つけたときに「やったー!」と思いました。諦めずにコツコツ調べたことが報われた思いでした。
この号、台湾でもとても売れたんですよ。日本語なのですが、中国語でスポット名を記載したことも、功を奏したかもしれませんね。

 

元木:台湾には、感度の高い人たちが集まっているイメージがあります。私たちが洋書に憧れるように、台湾の人たちにとっては日本の雑誌がおしゃれなんでしょうね。
それにしてもバイタリティがすばらしいです! 取材中、毎日予定が変更になるなんてしょっちゅうですよね? 現地の一般の方にもリサーチするんですか?

 

倉林:「あそこがいいよ」と言われたら、すぐに行動してますね。

 

元木:予想に反して読者からの評判がよかった、食いつきがよかった、という号は?

 

倉林:ニューヨークでしょうか(2015年秋・「華麗なるニューヨーク」)。『CREA Traveller』の読者は、歴史や文化が好きな方が多いので、都市はあまり特集にしていません。が、“ニューヨークの食がおいしくなっている”という事情を検証したり、美術の最新事情を大特集にしました。
一方、私はニューヨークではなく、グランドサークルを担当しましてね。ちょうどそのころ、アンテロープキャニオンが話題で、アメリカ先住民の方に案内いただいて月明かりの下で、撮影したんです。「たぶん、売れないだろうなぁ」と思っていたのに、売れてちょっとびっくりしました(笑)

 

元木:では、そんな倉林さんが、旅先で必ず行く場所、チェックするものはありますか?

 

倉林:本屋さんや市場があれば必ずチェックします。あとはトラムというか地下鉄。電車に乗ると、その町の物価がわかるので。

 

元木:町の風景や、人となりがわかりますものね。
さて、最新号(2018年3月発売予定)についてこっそり教えてください。

 

倉林:2年半ぶりのパリ特集です。ちょっと見ないうちにこんなに素晴らしくなっていたのか? というのを実感していただけるかと。世界中の鉄道好きが集まってくるような「地下鉄の奥の奥まで見学できるツアー」や、ル・コルビュジエの建築が集まった町に出かけたり、マルシェでの肉市場、解体するところも取材しており、ちょっとした“大人の社会科見学”になっています。

 

元木:きっとまた深くて濃い内容なんでしょうね、楽しみです。

美しいビジュアルも『CREA Traveller』が支持される理由のひとつ。「毎号が、名刺代わりのようなもの。取材地で外国の方にお配りしても“とてもきれい!”と評価いただいています。ですから、写真のクオリティは下げたくない。今採用している紙は発色のいい高級紙ですが、これからも使い続けます」↑美しいビジュアルも『CREA Traveller』が支持される理由のひとつ。「毎号が、名刺代わりのようなもの。取材地で外国の方にお配りしても“とてもきれい!”と評価いただいています。ですから、写真のクオリティは下げたくない。今採用している紙は発色のいい高級紙ですが、これからも使い続けます」

 

元木:最後に、倉林さんが“旅に求める”ものってなんでしょう?

 

倉林:そうですね……「謎解き」でしょうか。想像や事前知識とは異なる“答え”が出ると、おもしろいですね。
ある方が興味深いことをおっしゃっていたんですが、人類はアフリカで誕生してヨーロッパ大陸を渡ってアジアに来て、そして南米に、というように、われわれには“旅する遺伝子”が備わっているってね。「旅したい!」には理由がないというか、本能のような気がします。

 

元木:なるほど、とても合点が行きました。こうお話をしていて、誌面には出てこない「裏話」のようなものをもっと知りたくなりました。倉林さんだけでなく取材陣のエピソードなんてどうでしょう? 旅エッセイみたいな感じで?

 

倉林:「裏トラベラー」ってどう? なんて冗談でよく言っていますけどね(笑)。裏はさておき、この春には『CREA Traveller』のウェブサイトがいよいよスタートする予定です。こちらもどうぞお楽しみに!

 

【プロフィール】

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CREA Traveller 編集長 / 倉林里実(左)

大学卒業後、証券会社の国際金融部を経て、アメリカ・ハーバード大学に短期留学。帰国後の1994年、出版業界へと転身しライフスタイル誌の編集部に。2008年、文藝春秋に入社。デスクとして『CREA』に配属。2010年に編集長を務める。2013年より『CREA Traveller』の編集長に。

CREA WEB「CREA Traveller」
http://crea.bunshun.jp/subcategory/トラベラー

 

ブックセラピスト / 元木 忍(右)

ココロとカラダを整えることをコンセプトにした「brisa libreria」代表取締役。大学卒業後、学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とつねに出版に関わり、現在はブックセラピストとして活躍。「brisa libreria」は書店、エステサロン、ヘアサロンを複合した“癒し”の場所として注目度が高い。

brisa libreria http://brisa-plus.com/libreriaaoyama

 

取材・文=山﨑 真由子 撮影=泉山 美代子

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

at-living_logo_wada

 

「早速3冊ポチった」 平昌五輪で大活躍の羽生結弦旋風が巻き起こったAmazon「本」ランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:2月22日、昼)を紹介していこう。

 

とどまるところを知らない羽生結弦旋風!

●1位『スポルティーバ 平昌オリンピック特集号 歓喜のメモリー【表紙:羽生結弦】(集英社ムック)』(集英社・刊/1720円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

2月25日にフィナーレを迎えたばかりの平昌五輪関連の本が上位を席巻する結果となった。いずれも男子フィギュアスケート選手・羽生結弦を大々的に特集しており、表紙には氷上を華麗に舞う羽生選手の写真が。

 

同書では羽生選手のほぼ全ての写真は、羽生選手を少年時代から撮影し続けているフォトグラファー・能登 直氏が撮影している。平昌での練習風景からエキシビジョンの様子まで完全網羅した充実度がうれしい。

 

金メダル獲得という快挙を成し遂げた羽生選手の最新写真集を望むファンは非常に多く、ネット上では「これから出る羽生くんの写真集、早速3冊ポチった」「写真集買ったことないけど、羽生くんのは欲しい!」「気づいたら羽生君の写真集予約してた」「ゆづの写真集買いまくったら金欠に…」という声が相次いだ。

 

羽生選手に対するファンの熱狂はまだまだ収まらない!

 

●2位『ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王 設定資料集:バレンシア・アコーディオン』(インテリジェントシステムズ・著/徳間書店・刊/3780円)

●3位『完全保存版 羽生結弦 平昌オリンピック 金メダルの全記録』(フライデー編集部・著/講談社・刊/1728円)

●4位『世界でいちばん素敵な雲の教室(世界でいちばん素敵な教室)』(荒木健太郎・著/三才ブックス・刊/1620円)

●5位『ニッカン永久保存版 絶対王者セット第2弾(雑誌ではありません)』(日刊スポーツ新聞社・著/日刊スポーツ新聞社・刊/700円)

 

次世代に受け継ぐ「手を使う文化」とは!?

●6位『ただしいもちかたの絵本』(WILLこども知育研究所・著/すみもとななみ・イラスト/金の星社・刊/1620円)

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箸や鉛筆、歯ブラシやぞうきんなど、子どもに身近なものの持ち方を絵と文でわかりやすく紹介した本が人気急上昇。同書では道具を手にとって使うという普段何気なく行っている行為を、子どもたちに受け継ぐべき「手を使う文化」として捉えている。

 

2月22日放送の「おはよう朝日です」で気になるトレンドとして特集されたのが注目度アップの要因かも。番組では「ゲーム形式で持ち方を練習できる」「手の質感や動きをリアルに描いている」と、同書を「子どもの実用書」として紹介。

 

視聴者も興味をひかれたようで、「おは朝に出てきた本買っちゃった!」「『ただしいもちかたの絵本』面白い! 丁寧に描かれてるのがいいなぁ」という声が上がっている。

 

●7位『仮想通貨リップルの衝撃 Rippleが実現する“価値のインターネット”』(四條寿彦・著/Giant Gox・監修/天夢人・刊/880円)

●8位『フィギュアスケートプリンス 2017-2018シーズン終盤号』(英和出版社・刊/1296円)

●9位『このあと どうしちゃおう』(ヨシタケシンスケ・著/ブロンズ新社・刊/1512円)

●10位『平昌冬季オリンピック報道写真集』(河北新報出版センター・著/河北新報社・刊/1000円)

 

今回は五輪関連の本が多数ランクイン。果たして次回は、どんなジャンルの本が登場するのだろうか。

「フレデリカ、生まれてきてくれてありがとう!」人気キャラクターの出身地・フランス流の生活で人生を豊かに!

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:2月15日、昼)を紹介していこう。

 

●1位『でんぱ組.incスクールカレンダー』(四方あゆみ・著/小学館・刊/2300円)

●2位『文豪たちの友情(立東舎)』(石井千湖・著/鈴木次郎、ミキワカコ・イラスト/リットーミュージック・刊/1620円)

●3位『LPGA公式 女子プロゴルフ選手名鑑2018:ぴあムック』(ぴあ・刊/1500円)

●4位『ASIAN POPS MAGAZINE 132号』(メディアパル・刊/504円)

●5位『美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ(旅のヒントBOOK)』(奥村千穂・著/イカロス出版・刊/1728円)

●6位『ザクロとたい』(もりもとりえ・著/ぴあ・刊/1080円)

 

2月14日に盛り上がるのは恋する乙女だけではなかった!?

●7位『フランス流しまつで温かい暮らし フランス人は3皿でもてなす(講談社の実用BOOK)』(ペレ信子・著/講談社・刊/1512円)

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人生を気楽に送るためのヒントが詰められた1冊がランクイン。フランス人と結婚した著者は、夫の家族やフランスの友達から良いところを取り入れようと模索を続けているという。同書には、著者がフランス人の知人から吸収した「家族の絆が深まるコツ」や「お金をかけずに生活が豊かになる工夫」などためになる情報が満載。

 

フランスといえば、フランス出身の設定を持つキャラクターがネット上で話題に。大人気ゲーム「アイドルマスター」シリーズの登場人物・宮本フレデリカが2月14日に誕生日を迎えたようで、Twitter上では「#宮本フレデリカ生誕祭2018」というハッシュタグがつけられたツイートが続出している。

 

ファンたちは「フレちゃんお誕生日おめでとう!」「これからも応援していきます! Happy Birthday!」「フレデリカ、生まれてきてくれてありがとう!」というお祝いのメッセージとともにフレデリカのグッズや自作のイラストをアップ。なかにはバースデーケーキを用意した猛者もいて、大盛り上がりとなった。

 

●8位『心を操る寄生生物:感情から文化・社会まで』(キャスリン・マコーリフ・著/西田美緒子・翻訳/インターシフト・刊/2484円)

●9位『大国政治の悲劇 完全版』(ジョン・J・ミアシャイマー・著/奥山真司・翻訳/五月書房新社・刊/5400円)

 

サッカー選手のメモに刺激を受けたファン続出!

●10位『食(おいしい)は愛(うれしい)――添加物なし、厳選素材、徹底的に品質にこだわるスーパーがある』(岡田晴彦・著/ダイヤモンド社・刊/1620円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

添加物など身体に悪影響な成分を排して、子どもに安心して食べさせられる食品を追求した同書が人気急上昇。食の観点から健康を見直すことができるので、購入者からは「日々の食事で食品添加物を取り込んでいる人類にとって、考えさせられる1冊でした」「販売されているハム・ソーセージ・おにぎりの添加物の多さに驚き!」といった声が上がっている。

 

またガイナーレ鳥取に所属するサッカー選手・松本翔のツイートに刺激を受け、食生活の改善を考え始めたファンもいるよう。松本は「若手、独身選手へ向けて。栄養士が届かない部分など、主観的考えですがぜひ読んでもらえたら」という呟きに、ビッシリとメモが書かれたノートの写真を添付。

 

ノートには「外食は特に味付けが濃かったり塩分も多いので、知らず知らずに水や甘いものを欲したり、調味料やドレッシング、ソース類が必須な食事になってしまいます」「僕も自炊未経験の一人暮らしスタートでした」「食事は一日一日の積み重ねなので、どこかで必ず自分に返ってくるときがあります」といったアドバイスが。ネット上には反響の声が相次ぎ、中には「松本選手のツイートを見て、管理栄養士としてアスリートを支援したいと思うようになりました!」と決意するファンも見られた。

 

日々の暮らしや食事を改善するための本に注目が集まった今回のランキング。果たして次回は、どんなジャンルの本が登場するのだろうか。

関ジャニ・横山裕が大プッシュ! 「開運」のための1冊が注目を集めたAmazon「本」ランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:2月2日、昼)を紹介していこう。

 

素朴だけれど本質的な問いに哲学者たちが挑む!

●1位『一目刺しの刺し子のふきん』(安蒜綾子・著/主婦と生活社・刊/1296円)

●2位『仮面ライダーエグゼイド特写写真集 GAME CLEAR』(ホビージャパン・刊/3456円)

●3位『MARQUEE Vol.125』(マーキー編集部・編集/発行マーキーインコーポレイティド 発売星雲社・その他/星雲社・刊/1080円)

●4位『このマンガがすごい! comics BTTF 1 (このマンガがすごい! Comics)』(ボブ・ゲイル・監修/村田雄介・イラスト/宝島社・刊/691円)

●5位『鬼灯の冷徹(26)限定版 (講談社キャラクターズライツ)』(江口夏実・著/講談社・刊/1728円)

●6位『子どもの難問』(野矢茂樹・編集/熊野純彦、清水哲郎、山内志朗、野家啓一、永井均、神崎繁、入不二基義、戸田山和久、古荘真敬、柏端達也、柴田正良、鷲田清一、雨宮民雄、鈴木泉、渡辺邦夫、土屋賢二、斎藤慶典、大庭健、中島義道、一ノ瀬正樹、伊勢田哲治、田島正樹・その他/中央公論新社・刊/1404円)

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大人から子どもまで誰もが一度はぶつかる“素朴な難問”に、日本を代表する哲学者たちが向き合った一冊がランクイン。

 

同書では「死んだらどうなるの?」「考えるってどうすればいいの?」「悪いことってなに?」といった、大人でも答えに困ってしまうようなテーマが取り上げられている。購入者からは「哲学者のパワーが感じられる」「回答者が多くて、それぞれの個性が楽しめるところも面白い」「素朴な疑問に答えてくれるからスッキリする」と好評の声が上がった。

 

また2月2日放送のNHKラジオ「すっぴん!」が「源ちゃんのゲンダイ国語」のコーナーで同書を特集。「すっぴん!」公式ブログでも「根本的な問いかけばかり。これを塾の冊子にのせるというのがいい。こういう質問は、子どもにしかできないんだよね」と同書をプッシュしている。普段は哲学書を手に取らない人にも読みやすいかも?

 

●7位『みんなの 筋トレ&ごはん』(筋トレ女子研究会・著/KADOKAWA・刊/1404円)

 

アイドルが気になっている一冊がランクイン!

●8位『読むだけで運がよくなる77の方法:今からハッピー! になるには?(単行本)』(リチャード カールソン・著/Richard Carlson・原著/浅見帆帆子・翻訳/三笠書房・刊/1296円)

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2月1日放送の「ヒルナンデス!」で紹介された本が人気急上昇。関ジャニ∞の横山 裕が気になる本として同書を紹介した。「面白いこと書いてあるんですよ!」と言って本を開くと、「運がよくなるには鏡を見ろ」という格言をピックアップ。「身だしなみがちゃんとしてるほうが運気が入ってくるから」と続けた横山は、身振りも交えてオススメする。

 

同書には人生を変えるヒントとなる77の言葉が収録されているが、翻訳の浅見氏は「すべて取り入れる必要はありません」「『これ、面白そう』と思ったこと、1つだけで効果があります」ともコメント。気軽にページをめくることができそうだ。

 

今回のランキングでは同書の文庫版も注目を集めており、購入者からは「読んでいるだけで元気が湧いてくる」「お守り代わりに持ち歩いています」という声も上がっている。

 

●9位『てんきち母ちゃんの あるものだけで10分作りおき』(井上かなえ・著/文藝春秋・刊/1296円)

●10位『読むだけで運がよくなる77の方法―今からハッピー! になるには? (王様文庫)』(リチャード カールソン・著/Richard Carlson・原著/浅見帆帆子・翻訳/三笠書房・刊/576円)

 

ラジオやテレビで特集された本に注目が集まった今回のランキング。果たして次回はどんなジャンルの本が登場するのだろうか。

「映画化できる」壮絶な人生! 最年長ルーキー棋士・今泉四段の自伝が注目を集めたAmazonランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:1月26日、昼)を紹介していこう。

 

カラフルなイラストが詰まった絵本が登場!

●1位『ピーキングのためのテーパリング -狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために-』(河森直紀・著/ナップ・刊/1728円)

●2位『宇宙のエネルギーを味方につける 星使いの時刻表2018-2019』(海部舞・著/光文社・刊/1512円)

●3位『ジュニアのためのラグビー食』(海老久美子・監修/ベースボール・マガジン社・刊/1944円)

●4位『喜びは悲しみのあとに (幻冬舎アウトロー文庫)』(上原隆・著/幻冬舎・刊/617円)

●5位『逆境のリーダー ビジネスで勝つ36の実践と心得』(大塚明生・著/集英社・刊/1728円)

●6位『知られざる皇室外交 (角川新書)』(西川恵・著/KADOKAWA・刊/864円)

●7位『防衛大流 最強のリーダー』(濱潟好古・著/幻冬舎・刊/1512円)

●8位『ロボブーマー』(菴連也・著/風濤社・刊/1512円)

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1月25日放送の「news every.」で紹介された絵本が急上昇を見せた。同書の著者は高校生の少年で、“高IgD症候群”という難病を患っている。「news every.」では病気と闘う著者と家族の絆物語を特集。

 

絵を描くことが大好きな著者は、病気の影響で全身に炎症が起こっても絵を描いて体中の痛みを紛らわせていたという。スケッチブックには、父親と共に表現を考えて描いてきたイラストが満載。自分の絵を見た人に笑顔になってほしいという想いから、「ロボブーマー」を出版することに。

 

同書にはカラフルで個性的な作品が詰まっており、イラスト集の要素も。購入者からは「娘がとても気に入った様子だったので、購入しました」「見たこともないような色彩や、フォルムのキャラクターが躍動感いっぱいに描きこまれている」と好評を呼んでいる。

 

●9位『社長の「まわり」の仕事術(しごとのわ)』(上阪徹・著/インプレス・刊/1728円)

 

 

最年長デビューのプロ棋士の怒涛の人生とは!?

●10位『介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました』(今泉健司・著/講談社・刊/1512円)

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プロ棋士・今泉健司四段が大器晩成の秘密をしたためた本がランクインした。幼いころから将棋を始めた今泉は、中学2年生でプロ棋士を目指す。しかし、2度の大きな挫折を経験してプロ棋士になったのはなんと41歳。

 

戦後最年長となるプロ棋士合格を果たした今泉四段について、1月26日放送の「モーニングショー」が特集を行った。さらに、今泉四段とは対照的に14歳で最年少のプロデビューを果たした藤井聡太四段の話題も登場。去年の6月から開催された第76期名人戦・順位戦では、2人が順位戦初登場のルーキーとして熾烈なトップ争いを繰り広げている。

 

そして番組では、今泉四段がプロ棋士に至るまでの壮絶な人生が紹介されていく。今泉四段の経歴を知った視聴者からは「今泉四段、頑張って欲しいなぁ!」「最年長ルーキー棋士・今泉健司の人生凄いな。映画化できるぞ」といった声が続出。同書の購入に走った人も多いかもしれない。

 

テレビで特集された本に注目が集まった今回のランキング。やはり、テレビの影響力は大きいようだ。

ゆるキャラ・くまモンが著作権問題に直面!? Amazonランキングにビジネス書が数多くランクイン!

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:1月19日、昼)を紹介していこう。

 

効率良く働いて残業をなくそう!

●1位『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(2) SPECIAL EDITION(サイコミ)』(廾之・著/バンダイナムコエンターテインメント・原著/講談社・刊/2268円)

●2位『最上もが2nd写真集「MOGAMI」』(最上もが・著/桑島智輝・写真/集英社・刊/2376円)

●3位『Stagefan Vol.1(メディアボーイMOOK)』(メディアボーイ・刊/880円)

●4位『三省堂国語辞典 第七版 阪神タイガース仕様』(見坊豪紀、市川孝、飛田良文、山崎誠、飯間浩明、塩田雄大・編集/三省堂・刊/3240円)

●5位『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』(隅田貫・著/KADOKAWA・刊/1512円)

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他の先進国と比較して労働時間が多いのが日本。対してドイツの仕事時間は日本よりも年間300時間少ないが、生産性は日本の1.5倍だという。同書はドイツのビジネス業界に20年身を置いた著者が、一流ビジネスパーソンの生産性の秘密を公開。

 

SNSやネット上では日本の残業問題や会社の改善すべき点を多くの人が指摘しており、核心を突いた発言が拡散されて注目を浴びることも多い。現在は、情報メディアのアカウントが1月18日に呟いた「残業しても幸せにはなれない。幸福感をストレスが上回ってしまう」というツイートが話題を集めている。

 

小さい球状の「幸福感」を手にした人が、幸福感より遥かに大きい「ストレス」の球に押し潰されているイラストも合わせてアップ。残業から生まれるストレスの大きさに比べれば、残業代で得られる幸福感は遥かに小さいと説明する内容に多くのユーザーが共感した。「お金だけで幸せにはなれない、辛いだけです」「仕事に目的が見出せない人は尚更だよなあ…」という声が続出。

 

刺激を受けたユーザーが自身の働き方を改めようと、購入に駆けつけたのかもしれない。

 

大人気のゆるキャラが著作権問題の渦中に!?

●6位『はじめての著作権法(日経文庫)』(池村聡・著/日本経済新聞出版社・刊/972円)

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著作権法の基礎知識を身につけるための、入門書に最適な1冊がランクイン。著者は著作権法に精通した弁護士で、文化庁で著作権調査官として働いた実績も。著作権といえば、今注目を集めているのはゆるキャラのくまモン。

 

熊本県は今年から、くまモンのイラストの利用を海外企業にも解禁した。くまモンの知名度を世界に広めたいといった狙いからの試みだが、地元の企業からは非難の声が続出。自分たちでくまモンの公式グッズを作れるようになった海外企業から、取引キャンセルが相次いでいるという。

 

くまモンの非公式グッズはこれまでに海外でも多く作られている。そのため、1月17日放送の「モーニングショー」ではコメンテーターの玉川徹が「中国で偽物作る企業が著作権料払いますかね?」と苦言を呈する場面も。ネット上でも「著作権料きちんと徴収できるのか疑問」「ちゃんと著作権とか対策立てないと、悪用される未来が見える」と話題になった。

 

●7位『haru*hana(ハルハナ)VOL.46』(東京ニュース通信社・刊/980円)

●8位『田園発 港行き自転車 上(集英社文庫 み 32-8)』(宮本輝・著/集英社・刊/799円)

●9位『田園発 港行き自転車 下(集英社文庫 み 32-9)』(宮本輝・著/集英社・刊/799円)

●10位『できる課長は「これ」をやらない!』(安藤広大・著/すばる舎・刊/1620円)

 

生産性や著作権法に関する本が上位に揃った今回のランキング。果たして次はどんな結果になるのだろうか。

小澤征爾と村上春樹が「音楽」について語り合った対談本が「あさイチ」で紹介! 一時品切れ状態に

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:1月12日、夕方)を紹介していこう。

 

 

「あさイチ」で特集された日本を代表する指揮者の対談本

●1位『そして、俺は今日も万全をkiss』(俺・著/双葉社・刊/1080円)

●2位『G 香里奈 (写真集)』(香里奈・著/富取正明・写真/ギャンビット・刊/3240円)

●3位『「感謝! 」言うてたら、ホンマに儲かりまっせ!』(横山信治・著/実業之日本社・刊/1620円)

●4位『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(小澤征爾、村上春樹・著/新潮社・刊/1728円)

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指揮者として数々の栄誉ある賞を受賞してきた小澤征爾と、小説家・村上春樹による対談を収録した1冊がランクイン。同書には2人が時を忘れて自由に語り合った、1年に及ぶ日々が収録されているという。

 

1月12日に放送された「あさイチ」に小澤が出演し、同書のエピソードを紹介したのが人気急上昇の要因だろう。小澤は「あんなに音楽を好きな人は滅多にいないよ」と村上の音楽愛を絶賛し、対談の様子を振り返ってみせる。

 

「一度音楽の話をしたら止まらなくなる」と自身を表現する小澤は、その後も音楽の話題で熱くトーク。恩師との思い出や、音楽家を育てる難しさ、自分の音楽人生を支えてくれる家族への思いを切々と語った。

 

番組を観た視聴者がこぞって購入したためか、同書は1月12日時点でAmazonでは品切れ状態に。購入者からは「音楽とは何か知ることができた」「小澤さんの率直さ、村上さんの思慮深さに心を揺り動かされる!」「普段はあまりクラシックを聴かないけど、この本を読んでCD買った!」という感想が寄せられている。

 

●5位『信長を生んだ男』(霧島兵庫・著/新潮社・刊/1728円)

●6位『小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫)』(小澤征爾、村上春樹・著/新潮社・刊/767円)

●7位『HELLO PANDA (英語)』(小澤千一朗・著/トランスワールドジャパン・刊/1944円)

 

 

映画公開も決定した性犯罪被害者の手記が登場!

●8位『私は絶対許さない 15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由』(雪村葉子・著/ブックマン社・刊/1512円)

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15歳で集団強姦の被害に遭った女性が、風俗嬢、看護師、SM嬢として生きる壮絶な半生を綴った自叙伝。1月12日に映画化に関する情報が続々と解禁されたこともあり、大反響を呼んでいる。

 

監督に和田秀樹を迎えた映画のキャストには平塚千瑛、西川可奈子、三上寛、佐野史郎といった実力派俳優がズラリ。主演を務める西川は自身のTwitterで、「多くの方々に観ていただきたい」というコメントと共に映画のポスターをアップした。顔に生々しい傷を浮かべた少女の隣には「15歳の元日私は死んだ」という衝撃的なキャッチコピーが。

 

ネット上では「実話と思うとかなり重い内容」「あらすじ見ただけで相当ヘビーだ…」「目を背けてはいけない問題だと思います。絶対観ます!」という声が相次ぎ、原作である同書への注目も高まっているようだ。

 

●9位『南国太平記 上 (角川文庫)』(直木三十五・著/KADOKAWA・刊/1296円)

●10位『14歳ホステスから年商10億のIT社長へ』(久田真紀子・著/PHP研究所・刊/1404円)

 

テレビで紹介された本が急上昇を見せた今回のランキング。次回は一体どんな本が注目されるのだろうか。

一度忘れ去られた本が全米ベストセラーに! 女優の杏もおススメする衝撃の実話に注目

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:12月22日、朝)を紹介していこう。

 

衝撃の実話に話題沸騰!

●1位『SDガンダム BB戦士三国伝 メモリアルブック』(栗原昌宏・著/新紀元社・刊/2592円)

●2位『不調を治す! リンパストレッチ&マッサージ Book』(吉良浩一・著/ソーテック社・刊/1404円)

●3位『“理由のない不安”を一瞬で消す方法』(高牟禮憲司・著/主婦の友社・刊/1296円)

●4位『ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)』(ハリエット・アン ジェイコブズ・著/Harriet Ann Jacobs・原著/‎堀越ゆき・翻訳/新潮社・刊/680円)

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好色な医師フリントの奴隷となった美少女リンダが、人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ格差の闇を打ち破った魂の実話に注文が殺到している。奴隷制の真実を知的な文章で綴った同書は、小説と誤認され一度は忘れ去られた過去が。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーになった。

 

12月9日に放送されたラジオ番組「BOOK BAR」の中では、ナビゲーターを務める女優の杏が同書を紹介。また「BOOK BAR」の公式Twitterが12月13日に「杏ちゃんおススメ本です」と杏が同書を手に持った写真をアップした。そのツイートを21日時点でもリツイートしている人が見られたため、それが今回の急上昇の一因かもしれない。

 

購入者からは「こういう歴史の上に世界があることを再認識」「読み始めたけど本当に驚きの連続だよ」「胸に突き刺さる話だね」「当時の貴重な資料としても読めると思う」という声が上がっていた。

 

●5位『ワールド・フィギュアスケート 80』(ワールド・フィギュアスケート・編集/新書館・刊/1944円)

●6位『男は女を知らない 新・スローセックス実践入門 (講談社+α新書)』(アダム徳永・著/講談社・刊/907円)

●7位『BARFOUT! 269 凛として時雨 (Brown’s books)』(ブラウンズブックス・編集/幻冬舎・刊/950円)

●8位『毎月100万円以上の報酬を本気で狙う為の【アフィリエイト】上級バイブル』(齊藤ミナヨシ・著/染谷昌利・監修/秀和システム・刊/1944円)

 

定年後の生き方に新たな提案?

●9位『定年バカ (SB新書)』(勢古浩爾・著/SBクリエイティブ・刊/864円)

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「定年後は何かしなきゃ、生きがいをもたなきゃ病」の呪縛をとく、無理のない定年後の生き方を提案してくれる本が話題になっている。同書は「定年後こそ青春」、「生きがいや健康の追求」、「資産運用に走る」といった固定観念で無理が生まれている人のための1冊。

 

2017年11月の発売時から様々なメディアに取り上げられており話題を呼んだが、12月21日の「日経新聞夕刊書評」で同書が紹介されたことが今回の急上昇の原因かも。

 

ネット上では「これはおススメできる。確かにその通りだなと感じました」「スーッと自分の中に入ってきて、まさしく同感です」「今までの定年本に縛られていた。これは素晴らしい!」「これは傑作だと思うよ」と大好評のようす。

 

●10位『Lee 2WAY BAG BOOK (バラエティ)』(宝島社・刊/1717円)

 

実話を綴った本や人生の指南書はネットやテレビで話題になることが多く、ランキングの常連でもある。気になる本がある人はチェックしてみよう。

「あさイチ」で紹介された104歳現役美術家の本がAmazon「本」ランキングを席巻?

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:12月15日、朝)を紹介していこう。

 

「あさイチ」で紹介された104歳の現役美術家

●1位『かっこよくいきる すてきにいきるための5つのお話』(永原郁子・著/ごま書房新社・刊/1404円)

●2位『一〇五歳、死ねないのも困るのよ』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1188円)

●3位『アルコール熟成入門 (食品知識ミニブックスシリーズ)』(北條正司、能勢晶・著/日本食糧新聞社・刊/1296円)

●4位『神さまとの直通電話: 運がよくなる≪波動≫の法則 (王様文庫)』(キャメレオン竹田・著/三笠書房・刊/702円)

●5位『人生は一本の線』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1404円)

●6位『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1080円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

現在104歳の篠田桃紅の著作が大きな注目を集め、関連書籍がランキングを席巻した。同書は今も第一線で活躍している美術家・篠田桃紅が、100歳を超えたからこそ見える世界について語り、時には優しく、時には厳しく人生の生き方・楽しみ方を伝授した一冊。

 

急上昇の要因は、12月14日に放送された「あさイチ」だろう。この日の番組では若い世代の間で話題となっている篠田の「言葉」に迫った。

 

生涯独身を貫いている篠田は「人がいれば寂しくないなんてことはあり得ない」「女の人は1人で生きてたらかわいそうだなんてとんでもないわよね」「日本の男の人って本当にうぬぼれてると思った」「人が人を幸福にし得るなんて無理」といった考えを持っているようだ。

 

篠田の言葉に視聴者からは「ホントに偉大な人だなあ、この人のように強く生きていきたい」「篠田桃紅さんの言葉は凛としている」「胸を打たれるね」「すごく鋭い篠田さんの言葉に感動が止まらない」との声が続出。

 

●7位『百歳の力 (集英社新書)』(篠田桃紅・著/集英社・刊/756円)

●8位『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い (幻冬舎文庫)』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/540円)

 

「得する人損する人」で紹介された最新ダイエット法!

●9位『玉ねぎヨーグルト』(井上裕美子・著/木村郁夫・監修/ワニブックス・刊/1080円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

2週間で体が変わる最強の組み合わせ「玉ねぎヨーグルト」を紹介した一冊。ダイエットや便秘解消、免疫力アップなど健康・美容に様々な効果があると、2017年7月の新発売当初から大きく話題に。

 

同書が再び注目されたのは、12月14日に放送された「得する人損する人」で特集が組まれたことが原因かも。番組では最新「ラクやせ法」として、普段の食事に玉ねぎヨーグルトをプラスすることで魔法のようなダイエット物質「やせ酸」が体内に生まれることを紹介。実際にチャレンジしたタレントのぱいぱいでか美は2週間で約4キロ弱のダイエットに成功した。

 

これを見た視聴者からは「明日から頑張るぞー」「いつもすぐ諦めちゃうけど、これならいける!」「まずは2週間やってみようかな」「すごいね玉ねぎヨーグルト! 早速作ってみようかな」と大反響が巻き起こっている。

 

●10位『桃紅一〇五歳 好きなものと生きる』(篠田桃紅・著/世界文化社・刊/1404円)

 

テレビで話題となった本が急上昇した今回のランキング。次はどんな本が注目されるのか目が離せない。

「あさイチ」で紹介された104歳現役美術家の本がAmazon「本」ランキングを席巻?

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:12月15日、朝)を紹介していこう。

 

「あさイチ」で紹介された104歳の現役美術家

●1位『かっこよくいきる すてきにいきるための5つのお話』(永原郁子・著/ごま書房新社・刊/1404円)

●2位『一〇五歳、死ねないのも困るのよ』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1188円)

●3位『アルコール熟成入門 (食品知識ミニブックスシリーズ)』(北條正司、能勢晶・著/日本食糧新聞社・刊/1296円)

●4位『神さまとの直通電話: 運がよくなる≪波動≫の法則 (王様文庫)』(キャメレオン竹田・著/三笠書房・刊/702円)

●5位『人生は一本の線』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1404円)

●6位『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/1080円)

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現在104歳の篠田桃紅の著作が大きな注目を集め、関連書籍がランキングを席巻した。同書は今も第一線で活躍している美術家・篠田桃紅が、100歳を超えたからこそ見える世界について語り、時には優しく、時には厳しく人生の生き方・楽しみ方を伝授した一冊。

 

急上昇の要因は、12月14日に放送された「あさイチ」だろう。この日の番組では若い世代の間で話題となっている篠田の「言葉」に迫った。

 

生涯独身を貫いている篠田は「人がいれば寂しくないなんてことはあり得ない」「女の人は1人で生きてたらかわいそうだなんてとんでもないわよね」「日本の男の人って本当にうぬぼれてると思った」「人が人を幸福にし得るなんて無理」といった考えを持っているようだ。

 

篠田の言葉に視聴者からは「ホントに偉大な人だなあ、この人のように強く生きていきたい」「篠田桃紅さんの言葉は凛としている」「胸を打たれるね」「すごく鋭い篠田さんの言葉に感動が止まらない」との声が続出。

 

●7位『百歳の力 (集英社新書)』(篠田桃紅・著/集英社・刊/756円)

●8位『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い (幻冬舎文庫)』(篠田桃紅・著/幻冬舎・刊/540円)

 

「得する人損する人」で紹介された最新ダイエット法!

●9位『玉ねぎヨーグルト』(井上裕美子・著/木村郁夫・監修/ワニブックス・刊/1080円)

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2週間で体が変わる最強の組み合わせ「玉ねぎヨーグルト」を紹介した一冊。ダイエットや便秘解消、免疫力アップなど健康・美容に様々な効果があると、2017年7月の新発売当初から大きく話題に。

 

同書が再び注目されたのは、12月14日に放送された「得する人損する人」で特集が組まれたことが原因かも。番組では最新「ラクやせ法」として、普段の食事に玉ねぎヨーグルトをプラスすることで魔法のようなダイエット物質「やせ酸」が体内に生まれることを紹介。実際にチャレンジしたタレントのぱいぱいでか美は2週間で約4キロ弱のダイエットに成功した。

 

これを見た視聴者からは「明日から頑張るぞー」「いつもすぐ諦めちゃうけど、これならいける!」「まずは2週間やってみようかな」「すごいね玉ねぎヨーグルト! 早速作ってみようかな」と大反響が巻き起こっている。

 

●10位『桃紅一〇五歳 好きなものと生きる』(篠田桃紅・著/世界文化社・刊/1404円)

 

テレビで話題となった本が急上昇した今回のランキング。次はどんな本が注目されるのか目が離せない。

高須院長が約3000万円で落札した本が Amazon「本」ランキング急上昇!

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:12月8日、朝)を紹介していこう。

 

院長の豪快な行動で一躍大注目書籍に!

●1位『伊藤万理華写真集(仮)』(伊藤万理華・著/大江麻貴・写真/集英社インターナショナル・刊/1944円)

●2位『スピリチュアル・リナーシェ 祈るように生きる (単行本)』(江原啓之・著/三笠書房・刊/1296円)

●3位『カワウソちぃたん【本書限定シール付き】』(ちぃたん・著/宝島社・刊/1058円)

●4位『IMAGINE イマジン <想像>』(ジョン・レノン・著/ジャン・ジュリアン・イラスト/岩崎夏海・翻訳/岩崎書店・刊/1836円)

●5位『15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ』(岩野響・著/KADOKAWA・刊/1404円)

●6位『昭和天皇独白録 (文春文庫)』(寺崎英成・著/文藝春秋・刊/540円)

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1990年に発掘、発表されて大反響を呼んだ昭和史の超一級資料がここにきて再び注目されている。同書は昭和天皇が太平洋戦争に至る経緯などを語り、側近の元外交官である寺崎英成氏が記録した文書が文庫化されたもの。急上昇の理由は高須クリニックの院長である高須克弥氏の豪快な行動によるものだろう。

 

12月6日に同書の原本とされる文書がニューヨークで競売にかけられ、高須氏はそれを27万5000ドル(約3000万円、手数料込み)で落札。その後取材に応じ、「(昭和天皇独白録は)日本の心ですので、なんとか日本に取り戻したいという志なんで」と答えた。また高須氏はこれを皇室に提供する意向を示している。

 

ネット上にも高須氏を称賛する声があふれており、「高須院長ホントにかっこいいな」「先生のそれは完全にヒマを持て余した神々の遊びだよな」「こんな本あったんだね。文庫化されてるみたいで興味わいたから読んでみようかな」「高須院長すごいけど、すごい内容の気になるタイトルだな。今まで知らなかったよ」と、これを機に同書に興味を抱いた人も数多くいるようだ。

 

●7位『3月のライオン おでかけニャーしょうぎ ([バラエティ])』(羽海野チカ、北尾まどか・著/白泉社・刊/1512円)

●8位『Oggiエディター 三尋木奈保 My Basic Note2:”きちんと見える” 大人の服の選び方』(三尋木奈保・著/小学館・刊/1620円)

●9位『文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)』(京極夏彦・著/講談社・刊/994円)

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古本屋の店主にして陰陽師である主人公が憑物を落とし事件を解きほぐす京極夏彦の人気シリーズ「京極堂(百鬼夜行)」。その第1弾である同書に注文が殺到している。

 

11月末頃からTwitter上では「#名刺代わりの小説10選」というハッシュタグが流行中。こちらは自分の好きな小説を10冊紹介するというもので、この中に『姑獲鳥の夏』を挙げている人が多く見られた。同書は2005年に堤真一主演で映画化もされており、「#名刺代わりの映画10選」というハッシュタグでも多数その名が挙がっている。

 

またネット上でも「みんなが『姑獲鳥の夏』をすすめてくるからもう読むしかない」「映画すごい面白かったから小説も読んでみようと思ってる」「また読みたくなってきた。初めて読んだ時のインパクトが凄かった」といった声が。

 

●10位『施工がわかるイラスト建築生産入門』(一般社団法人 日本建設業連合会・編集/川﨑一雄・イラスト/彰国社・刊/3456円)

 

話題が話題を呼び注文が殺到した今回のランキング。次はどんな本が注目を浴びるのか、楽しみにしていよう。

「奇跡体験!アンビリバボー」で話題の「陽明丸」! 知られざる日本人の偉業に注目が集まりAmazon本ランキング急上昇

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:12月1日、夕方)を紹介していこう。

 

「800人の子供たちを救った日本人」100年前の実話が話題!

●1位『亀梨和也 PHOTOBOOK 『ユメより、亀。』』(集英社・刊/1944円)

●2位『宇宙万象 第2巻』(伊勢白山道・著/電波社・刊/1944円)

●3位『MARQUEE Vol.124』(星雲社・刊/1080円)

●4位『陽明丸と800人の子供たち』(北室南苑・著/並木書房・刊/1620円)

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ロシア革命後の混乱期に、800人の子どもを救った日本の貨物船「陽明丸」の実話が4位にランクイン。急上昇の理由は、11月30日に放送された「奇跡体験!アンビリバボー」で「歴史に埋もれた実話・知られざる日本人の偉業」として「陽明丸」が特集されたからだろう。

 

ネット上では「アンビリバボーの陽明丸の話すごくよかった!」「陽明丸の話に感動。本も読まないと」「アンビリバボーの陽明丸の話、本も出てるんだね! 買わないと!」といった声が続出し、大きく盛り上がっている。

 

●5位『もっとヘンな論文 単行本』(サンキュータツオ・著/KADOKAWA・刊/1296円)

●6位『韓国TVドラマガイド(74)(双葉社スーパームック)』(双葉社・刊/ 双葉社・著/1296円)

●7位『プロフェッショナルの習慣力 トップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密 (SB新書)』(森本貴義・著/SBクリエイティブ・刊/788円)

 

いつまでも色あせない「ドラえもん」の人気

●8位『藤子・F・不二雄ファンブック F-Trip (ワンダーライフスペシャル)』(藤子プロ・監修/藤子・F・不二雄・原著/小学館・刊/1382円)

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星野源と「ドラえもん」が表紙の同書に注文が殺到している。同書は「藤子・F・不二雄の世界をぐるっと巡る旅」として、「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」や「藤子・F・不二雄の故郷」を紹介したガイドブック。

 

11月30日に放送された「ビーバップ! ハイヒール」で、「ドラえもん」が特集されたことが急上昇の要因と思われる。同放送では、藤子・F・不二雄の愛弟子、むぎわらしんたろうが「ドラえもん」の誕生秘話などを語った。

 

番組放送後、「藤子先生はすごい。改めて痛感」「藤子・F・不二雄ミュージアムに行きたくなってしまった」「藤子・F・不二雄ミュージアムへしゅっぱーつ!」「やっぱりドラえもんが好き」といった声が相次いでいる。

 

また、2018年3月に公開される「映画ドラえもん のび太の宝島」の主題歌および挿入歌を、星野が書き下ろし提供することが発表されたことも関係しているかも。

 

●9位『外資系コンサルのプレゼンテーション術: 課題解決のための考え方&伝え方 単行本』(菅野誠二・著/東洋経済新報社・刊/1944円)

●10位『天皇は本当にただの象徴に堕ちたのか 変わらぬ皇統の重み (PHP新書) 新書』(竹田恒泰・著/PHP研究所・刊/1015円)

 

テレビで紹介されたことにより、関連した書籍の注文が殺到した今回のランキング。テレビの影響力はやはりすごい!

「なにこれ絶対やる!」レンジで作るサバの味噌煮レシピに驚きの声続出! Amazon「本」ランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:11月24日、夕方)を紹介していこう。

出典画像:「助けて! きわめびと」NHK 公式サイトより出典画像:「助けて! きわめびと」NHK 公式サイトより

 

レンジでサバの味噌煮が作れる驚愕レシピ本

●1位『Cool Voice Vol.24(生活シリーズ)』(PASH! 編集部/主婦と生活社・刊/1512円)

●2位『電子レンジ 簡単レシピ100+』(村上祥子・著/永岡書店・刊/1058円)

出典画像:永岡書店 公式サイトより出典画像:永岡書店 公式サイトより

 

料理研究家・村上祥子氏によるレシピ集が人気急上昇中。同書は、材料と調味料を電子レンジに入れるだけで作れるレシピが収められており、肉じゃがやシチュー、から揚げなどまでも、レンジで作れてしまうという。

 

村上氏は、11月24日放送の『ごごナマ』(NHK)に出演し、レンジで作るカレー、サバの味噌煮、肉じゃがのレシピを紹介。するとネット上では「煮込まない!? レンジでカレーだと!?」「えっ! そのままレンジでチン!?」「なにこれ絶対やる! 1人暮らしで晩ご飯いつも遅くて、サバの味噌煮とか絶対できないと思ってたのに、ありがたすぎる!」とった声が。この反響を受けて本の売上も伸びたようだ。

 

●3位『高血圧を自力で治す最強事典(薬に頼らず血圧を下げる23の極意)』(マキノ出版・刊/1404円)

●4位『こだわる男のスタイリングメソッド ベーシックを自分流に着こなす』(鈴木晴生・著/講談社・刊/1512円)

●5位『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由(青春新書プレイブックス)』(後田亨・著/青春出版社・刊/994円)

●6位『「座りすぎ」が寿命を縮める』(岡浩一朗・著/大修館書店・刊/1512円)

 

叱らない子育てを推奨する新しい子育て本

●7位『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(高祖常子・著/上大岡トメ・イラスト/かんき出版・刊/1404円)

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育児情報誌「miku」の編集長・高祖常子氏が記した子育て本。子どもに対して思わずカッとなって、怒鳴ったり、叩いたりして自己嫌悪している親に向けた内容で、クールダウンの方法や具体的な対処法などの方法論を掲載している。

 

高祖氏は、11月21日にライブ配信アプリ「LINE LIVE」で放送された番組に出演したほか、11月24日の「朝日新聞デジタル」にインタビュー記事が掲載されるなどして注目を集めたため、書籍の人気も急上昇したようだ。同書には「子育て中の人だけでなく、広く読んで欲しい本」「アドバイスが具体的かつ実践的で、子育てに前向きになれた」「親の気持ち、子供の気持ちに優しく寄り添い、提案をしてくれる」といった感想が寄せられている。

 

●8位『別冊+act. Vol.25(ワニムックシリーズ 233)』(ワニブックス・刊/990円)

●9位『池上彰の世界の見方 ドイツとEU: 理想と現実のギャップ』(池上彰・著/小学館・刊/1512円)

●10位『ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話』(KPMG FAS、あずさ監査法人・編集/日本経済新聞出版社・刊/2160円)

 

年末にかけて仕事も忙しくなってくるだろうが、レンジレシピさえ覚えれば自宅に帰ってからも本格的な温かご飯が食べられる? 厳しい冬を乗り越えるアイデアを本で身につけていこう!

メルちゃんシリーズが“クリスマス商戦”を一歩リード!? 変形する「トミカ」もランクインしたAmazon「おもちゃ」ランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「おもちゃ」のランキング(集計日:11月21日、夕方)を紹介していこう。

出典画像:「メルちゃん」公式サイトより出典画像:「メルちゃん」公式サイトより

 

メルちゃん人形がランキングを席巻!

●1位「ぬいぐるみ 抱き枕 動物 鳥 ふわふわ かわいい 抱き心地抜群 お祝い ギフト バレンタインデー 白M」

●2位「Holy Stone ドローン HDカメラ付き iPhone&Android生中継可能 高度維持機能 2.4GHz 4CH 6軸ジャイロ Wi-Fiカメラ FPVリアルタイム 国内認証済み モード2 HS200 (レッド)」

●3位「プリパラプリチケコレクショングミ16 [初回限定BOX特典付き] 20個入 食玩・キャンディー(プリパラ)」

●4位「メルちゃん おせわパーツ おべんとうセット」

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ロングセラー愛育ドール“メルちゃん”にお弁当を食べさせるお食事ごっこセット。メルちゃんにスプーンやフォークで食べさせるだけでなく、おにぎりに“具”を詰めたりとお弁当作り体験も出来る。

 

1992年から発売させているメルちゃんシリーズは、今年で25周年。このミレニアムイヤーに“クリスマスプレゼント”として購入を決める人が相次いでおり、8位と10位にも「メルちゃん おしゃべりいっぱい! いちごのびようしつ」と「メルちゃん お人形セット メイクアップメルちゃん」がそれぞれランクインしている。

 

SNSなどでは「姪っ子へのプレゼントはメルちゃんに決めてる」「息子がメルちゃんにドハマりしてるから、なにか拡張パーツ買ってあげるか」「子どもが動物のぬいぐるみでお世話ごっこはじめた! これはメルちゃんを買い与える時がきたな…」との声が。

 

10月25日の「しかけえほん メルちゃんのいちにち」(幻冬舎)を皮切りに、メルちゃん関連書籍が続々と発売されているのも人気の理由かもしれない。

 

“大人”も大注目な変形するトミカ

●5位「レゴ(LEGO)スター・ウォーズ 2017 アドベントカレンダー 75184」

●6位「(Radiant Party)誕生日 バルーン 豪華26ピース 飾り付け セット ポンプ付きタイプ」

●7位「ヒミツのここたま リップのかみさま キラリス」

●8位「メルちゃん おしゃべりいっぱい! いちごのびようしつ」

●9位「トミカ ハイパーレスキュー ドライブヘッド01MKII サイクロンインターセプター」

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現在放送中の「トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察」(TBS系)に登場する、主人公の機体「サイクロンインターセプター」がおもちゃになって登場。「タカラトミー」の「トミカ」は1970年に発売されたロングセラー商品だが、同アニメは「トミカ」史上初のTVアニメーション作品として注目を集めている。

 

往年のファンを驚かせているのは、トミカの「ドライブヘッドシリーズ」が人型に“変形”するということ。SNSなどでは「最近ではトミカも変形するのか…」「変形ロボ支持派の自分としては大いにあり」「実際に買ってみたけどトミカが今まで培ってきたものをフル活用してる! これはいいおもちゃだ」との声が上がっている。

 

ちなみに“公式が病気”で知られる「タカラトミー」公式Twitterは、11月20日に「クリスマスプレゼントに おすすめ!」と「ドライブヘッド01MKⅡ サイクロンインターセプター&トランスポーターガイアセット」をあからさまに宣伝。同ツイートの話題性は約30件のリツイートに留まっているが、クリスマス商戦に向けて早くも本腰を入れているようだ。

 

●10位「メルちゃん お人形セット メイクアップメルちゃん」

 

「タカラトミー」と言えば、人気着せ替え人形「リカちゃん」人形でもお馴染み。今回はランキング入りを逃しているが、クリスマス本番では“メルちゃん”との熱い戦いを期待したい。

80年代の“合体ロボ”がまさかの商品化! 大谷翔平の“二刀流フィギュア”もランクインしたAmazon「ホビー」ランキング

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「ホビー」のランキング(集計日:11月20日、夜)を紹介していこう。

出典画像:「バンダイ」公式サイトより出典画像:「バンダイ」公式サイトより

 

約30年前の合体ロボがプラキットとなって登場

●1位「(仮)スーパーミニプラ 超獣合体 ライブロボ 3個入り 食玩・清涼菓子(超獣戦隊ライブマン)」

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

1988年に放送されていた「超獣戦隊ライブマン」の“ライブロボ”が、組み立てプラキットの食玩ブランド「スーパーミニプラ」にまさかの登場。「超獣戦隊ライブマン」は、「スーパー戦隊シリーズ」の10周年記念作品であり、同時に昭和最後の作品でもある。そのため思い入れの強い特撮ファンが多いのか、「スーパーミニプラ」の購入者アンケートで人気を集め、長い時を超えて商品化を果たした。

 

いわゆる“食玩”であるものの、プラキットの作りは大人向けなクオリティー。プレミアムバンダイの「スーパーミニプラ ライブボクサー」と“スーパーライブディメンション(合体)”することで、スーパーライブロボを再現することが可能だ。

 

SNSなどでは「懐かしい! 初めて買ってもらったおもちゃがライブロボだったなぁ…」「30年近くたってるはずなのに色褪せない格好良さ」「あまりの格好良さに無意識で予約してた」「ここに来てライブロボ! こんなん絶対に買っちゃうやん!」との声が続出。リアルタイム世代を中心に注目を集めている。

 

大谷翔平はフィギュアも二刀流!?

●2位「4インチネル Fate/Grand Order アサシン/ジャック・ザ・リッパー ノンスケール ABS&ATBC-PVC&PP製 塗装済み可動フィギュア」

●3位「CONVERGE KAMEN RIDER 9 10個入 食玩・清涼菓子 (仮面ライダー)」

●4位「フェアリーテイル ウェンディ・マーベル・亜麻猫(AMANEKO) Gravure_Style 1/6スケール PVC製塗装済み完成品」

●5位「PG 1/60 RX-0 ユニコーンガンダム用 LEDユニット [RX-0シリーズ兼用] (機動戦士ガンダムUC)」

●6位「S.H.フィギュアーツ 北海道日本ハムファイターズ 大谷翔平 約170mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア」

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

アニメ・特撮のホビーが5位までを独占する中、野球選手・大谷翔平のフィギュアが6位にランクイン。“本物の再現”を実現するために、“魂のデジタル彩色技術”など「S.H.Figuarts」の最新技術が凝縮されている。ちなみに日本人アスリートをフィギュア化するのは同ブランドとしても初のこと。

 

やはり特徴的なのは、独自の可動機構で「投球シーン」「打撃シーン」の両方を再現できること。日本球界に衝撃を与えた大谷の“二刀流”を、フィギュアで再現することができる。さらにスポーツ用品メーカー「アシックス」が協力しており、スパイクなどの用具もリアルな作りに。

 

ファンからは「これは純粋に欲しい」「メジャー挑戦に向けて動き出してるし、日ハムのユニフォームを着たフィギュアはレアになりそう」「攻守両方再現できるのがいいね」との声が上がった。

 

●7位「枕 CMM4363 ハイクラス 高級 まくら ホテル仕様(43cm × 63cm)-COMODOオリジナル[日本製]」

●8位「輸入レゴ マインクラフト ザ・ケイブ 洞窟(LEGO Minecraft The Cave 21113) [並行輸入品]」

●9位「CONVERGE KAMEN RIDER 8 10個入り 食玩清涼菓子(仮面ライダー)」

●10位「人魚姫 アリエル風 ウィッグ コスチューム用小物 フリーサイズ」

 

11月11日には公式会見で“メジャー挑戦”を表明した大谷。その人気度は留まることを知らず、今後も様々な関連ホビーが登場しそうだ。

「アメトーーク!」でAmazon本ランキングに異変!? たった1ページで光浦靖子を号泣させた小説がランクイン!

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:11月17日、昼)を紹介していこう。

出典画像:「アメトーーク!」公式サイトより出典画像:「アメトーーク!」公式サイトより

 

「アメトーーク!」で紹介された実験的過ぎる小説

●1位『オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった』(本田直之・著/日経BP社・刊/1620円)

●2位『【Amazon.co.jp限定】横山だいすけ フォトブック げんきよ! とどけ! だいすけお兄さんの世界迷作劇場 複製サイン&メッセージ入りフォトカード付』(横山だいすけ・著/KADOKAWA・刊/1512円)

●3位『mt SPECIAL BOOK (e-MOOK)』(宝島社・刊/1598円)

●4位『同人作家のための確定申告ガイドブック』(水村耕史・著/喜田一成・監修/キツネ・イラスト/KADOKAWA・刊/1728円)

●5位『僕と妻の1778話 (集英社文庫)』(眉村卓・著/集英社・刊/648円)

●6位『横山だいすけ フォトブック げんきよ! とどけ! だいすけお兄さんの世界迷作劇場』(横山だいすけ・著/KADOKAWA・刊/1512円)

●7位『残像に口紅を (中公文庫)』(筒井康隆・著/中央公論社・刊/802円)

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「残像に口紅を」「時をかける少女」や「エディプスの恋人」などでお馴染みの筒井康隆が書いた実験的小説。「あ」や「ぱ」など、言葉が1音ずつ消えていく世界について描かれている。

 

1989年に発表された同書がランキングに浮上した要因は、おそらく11月16日放送の「アメトーーク!」(テレビ朝日系)。この日の番組では“本屋で読書芸人”という特集が組まれ、カズレーザーが同書を紹介していた。

 

視聴者の注目を集めたのは同書の後半部分。小説としては珍しい“袋とじ”となっており、封を切らずに中央公論社へ持って行くと「代金をお返しします」と書かれている。これには「袋とじの中見てみたい…」「後半部分に自信ありすぎだろ」「小説で袋とじとかすごい試みだな」との声が。ちなみにランクインしているのは文庫版だが、こちらは“袋とじ”になっていない。

 

計り知れない“カズレーザー”の影響力

●8位『人生は壮大なひまつぶし ゆる~くテキトーでも豊かに生きられるヒント』(一明源・著/みらいパブリッシング・刊/1,512円)

●9位『グランブルーファンタジー(4)』(Cygames・原作/cocho・作画/楓月誠・コンテ/講談社・刊/605円)

●10位『妻に捧げた1778話(新潮新書)』(眉村卓・著/新潮社・刊/648円)

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SF作家・眉村卓が余命1年の妻のために書き続けた全1778編の物語の中から、19編を掲載した小説。闘病生活と40年以上の結婚生活を振り返るエッセイも収録されている。

 

2011年には「僕と妻の1778の物語」として映画化もされた大ベストセラーだが、こちらも「アメトーーク!」でカズレーザーが紹介していた。放送内でカズレーザーは、妻が亡くなった日に書かれた1778話の「最終回」という話を「本当に読んでほしい!」と熱弁。さらに1778話のとあるページを見せられた瞬間、光浦靖子は泣き出してしまっている。

 

視聴者からは「1778話がめっちゃ気になる!」「光浦さんは何を見て泣いたんだろう…」「あんな反応されたら気になって仕方ないやん!」と大反響に。また「カズレーザーが紹介した本を買いに来たけど、どこも売り切れてる」との声がもあり、品切れが相次いでいるようだ。

 

紹介した本がことごとく注目されるカズレーザー。次はどのような作品を紹介してくれるか、楽しみにしていよう。

Amazonで爆売れ中の本とその理由!「“全米が泣いた”感動実話」と「2カ月でムキムキになる指導本」

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:11月10日、日中)を紹介していこう。

 

アンビリバボーでドラマが作られた奇跡の実話が話題に!

●1位「TVガイドVOICE STARS vol.4」(東京ニュース通信社・刊/1296円)

●2位「生き方入門」(藤尾秀昭・監修/致知出版社・刊/1296円)

●3位「しーちゃん – ようちえんも、いろいろあるわけ」(こつばん・著/ワニブックス・刊/1080円)

●4位「犬マユゲでいこう ひとりで読める はじめての犬マユゲ」(石塚2祐子・著/集英社・刊/1404円)

●5位「EVRIS Special Edition Book」(宝島社・刊/2160円)

●6位「奇跡のスーパーマーケット」(ダニエル コーシャン、グラント ウェルカー・著/太田美和子・翻訳/集英社インターナショナル・刊/1944円)

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2014年にアメリカ・ニューハンプシャー州を中心とする地域で、およそ200万人もの周辺住民がとあるスーパーマーケットチェーンに抗議活動を行った。住民たちの目的は、解任された元社長の復帰。一体なぜこのような出来事が起こったのか。同書ではこの感動の実話について綴っている。

 

こちらの本の売上が急増したきっかけは、11月9日の「奇跡体験! アンビリバボー」(フジテレビ系)でこの物語の再現ドラマが放送されたからだと思われる。視聴者からは「予想以上にいい話だった」「感動しました。ぜひ映画化するべき」「こういう経営者って素敵」「思わず見入って涙出た」「これは全米が泣いた」と大反響が起こっていたため、書籍も注目される形になったようだ。

 

たった2か月でムキムキに! ライザップに匹敵する肉体改造術に驚き

●7位「東村アキコ完全プロデュース 超速!! 漫画ポーズ集」(東村アキコ・著/講談社・刊/1944円)

●8位「ソロモンの歌・一本の木」(吉田秀和・著/講談社・刊/1512円)

●9位「成功する子は食べ物が9割 ― 幼児・小学生ママ必読! 冷蔵庫の中身がカラダの中身」(細川モモ、‎宇野薫・監修/主婦の友社・刊/1404円)

●10位「ハリウッド式 THE WORKOUT ― 分単位で自分史上最高の身体をつくる 脳と身体のコネクトメソッド ― 」(北島達也・著/ワニブックス・刊/1404円)

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1万人以上の一流のビジネスマンやアスリートを指導してきた北島達也が、「超効率重視」の肉体&メンタル改造計画について綴った一冊。

 

発売されたのは今年の8月25日だが、11月9日深夜放送の「じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~」(テレビ東京系)に北島が出演したことから、ここにきて売上が急増した様子。同番組では北島の指導の下、次長課長の河本準一とグラビアアイドル・天木じゅんが肉体改造に挑戦。2か月で見事ムキムキになったことで北島の凄さが立証されていた。

 

これには出演者のネプチューン・名倉 潤も驚き、ネット上でも「河本の身体がバキバキになってる!www」「天木じゅんのお尻が上がった! これはたまらん」と関心を示す声が。

出典画像:天木じゅん インスタグラムより出典画像:天木じゅん インスタグラムより

 

感動実話と肉体改造。ずっと昔から定番のこれらのテーマは、今後も新たなネタが見つかるたびに、世間を大きく賑わせていくだろう。

日本の歴史が変わる!? ランキング急上昇の歴史本に注目の声が集まったAmazon「本」ランキング(11月2日付け)

現在世間で注目を浴びている商品が一目で分かるAmazon「人気度ランキング」。今回は「本」のランキングを紹介していこう。(集計日:11月2日、夕方)

 

縄文人はタネをまいていた!? 斬新な切り口の書籍が注目度急上昇

1位『Lis Oeuf♪』vol.7(エムオン・エンタテインメント・刊/1,296円)

 

2位『シニア ビューティメイク』(えがお写真館、赤坂渉・著/扶桑社・刊/1,080円)

 

3位『身の丈にあった勉強法』(菅広文・著/幻冬舎・刊/1,404円)

 

4位『ブルーム スクイーズ コレクションブック – 限定! 「レインボー牛乳ひたしパン」つき』(株式会社ブルーム・著/ワニブックス・刊/3,240円)

 

5位『タネをまく縄文人: 最新科学が覆す農耕の起源』(小畑弘己・著/吉川弘文館・刊/1,836円)

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同書は、狩猟・採集で生計を立てていたとされる縄文人が、実は栽培もしていたのではないかと論じている。発売されたのは一昨年だが、ここにきて「売れ筋ランキング」が急上昇。

 

11月1日に古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰する「第5回古代歴史文化賞」が行われ、同書が大賞に選ばれたことから売上が急に伸びたよう。ネット上では「図書館のは貸出中だったよ」「これまた斬新な学説が出てきたな(笑)興味深い!」「面白そうなので是非読んでみたい。大きい書店に行けばあるかな?」「タネをまく縄文人が本当なら大事件だよ!」「まとめられた方に感謝」といった反響が起こっている。

 

「育児に悩むパパママにオススメの一冊」って? ニュースサイトに掲載されて大反響

6位『これからの日本、これからの教育』(前川喜平、寺脇研・著/筑摩書房/929円)

 

7位『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險- 公式原画集』(電撃攻略本編集部・編/KADOKAWA/アスキー・メディアワークス・刊/3,240円)

 

8位『フツーのサラリーマンですが、不動産投資の儲け方を教えてください!』(寺尾恵介・著/ぱる出版/1,620円)

 

9位『幸せの神様に愛される生き方』(白駒妃登美・著/扶桑社/1,620円)

 

10位『ママは悪くない! 子育ては“科学の知恵”でラクになる』(ふじいまさこ・著、NHKスペシャル「ママたちが非常事態!?」取材班・監修/主婦と生活社・刊/1,080円)

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産後の“イライラ”や夫に対する“不満”、子育て中の“孤独感”などを取り上げ大反響を呼んだ、2016年放送のNHKスペシャル番組「ママたちが非常事態!?」。同書はこの番組を漫画化した一冊になっている。

 

発売されたのは2016年12月だが、IT系総合ニュースサイト「Impress Watch」の記事によって再注目されたよう。11月2日の朝に、「Impress Watch」が「育児に悩むパパママにオススメの一冊」として同書を紹介する記事を掲載したため売上が伸びたとみられる。

 

Amazonランキングを見ると、自分からは手に取らないようなジャンルの面白そうな本がてんこ盛り。「タネをまく縄文人」が事実だと実証されると、歴史の教科書の記述が変わるかも!? 今後の動向に注目したい。