インフルや花粉症対策に!「ビタミンD」生成を妨げる悪習慣と効果的な補給策

冬に風邪やインフルエンザが流行るのは、乾燥や寒さが原因。そう考えられてきましたが、近年では冬期の紫外線照射不足によって、体内でのビタミンDの生成量が減り、免疫力の低下を招いていることが関係していることがわかってきました。ビタミンDは骨の生成に関わるだけではなく、免疫の調整や腸内環境の改善など、健康寿命を伸ばすために欠かせない、とても重要な栄養素だったのです。

 

ビタミンDの重要性を早期から訴え、積極的な摂取を啓発してきた日本機能性医学研究所所長で医師の斎藤糧三先生に、ビタミンDの隠された実力と1日に必要な量、生成に関わる効果的な習慣や摂取方法を解説いただきました。

 

 

過度なUV対策、デスクワーク…
“ビタミンD不足”が世界的に蔓延する理由

 

ビタミンDが世界的に不足していると言われています。日本でも、東京慈恵会医科大学の調査により約 98%の日本人が不足していることが判明しました。ではなぜ、ビタミンDが不足してしまうのでしょうか?

 

「紫外線照射不足が原因です。ビタミンDの主な供給源は、紫外線照射による皮膚での合成。そのため、1日に必要なビタミンDを生成するには、ある程度日光を意識して浴びることが必要です。しかし現代では、紫外線はシミ、しわを作る、皮膚がんになるなどといった害悪のイメージが強く、浴びることを敬遠される方もいらっしゃいます」
とくに若い女性で、極度に紫外線を恐れ、日傘や帽子に加えて、UVカットウェアやアームカバーなどまで駆使して、全身を防御している方も多いですよね。紫外線が照射される範囲がせまくなればなるほど、ビタミンDの生成量は減るのです」(日本機能性医学研究所所長、医師・斎藤糧三さん、以下同)

 

1日に必要なビタミンDを
補給するのは意外と大変だった!

 

日光を浴びる量が足りない分、ビタミンDは食事で補えるのでしょうか?

 

「ビタミンDを多く含む食品は限られているため、毎日の食事だけで充足させるのは至難の業です。また、日光は直接浴びなくてはなりません。ガラス越しの日光は、ビタミンDを作る紫外線(UVB)を遮断してしまうため、部屋の中にいてはビタミンDは作られないのです。
さらに、日光量は季節・時間帯・場所によって変わります。冬の紫外線量は、夏の約10~15分の1まで減ることも。その上、現代では過度なUV対策以外に、デスクワークや在宅ワークなどで屋内にいるライフスタイルが広がっているため、十分な日光浴ができていないのです」

 

【ポイントまとめ】

・毎日の食事だけでビタミンDを充足させるのは難しい。
・ガラス越しに浴びる日光ではビタミンDは生成されない。
・1年のうち紫外線量は5月〜8月がもっとも多く、多い時間帯は日中の9時~12時。
・9月~4月頃までは紫外線量が減り、充分な血中濃度を維持する量を合成できない。

 

いま注目される
ビタミンDの意外と凄いパワー

 

斎藤先生はいち早くビタミンDの機能に着目されたそうですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

 

「2007年のアメリカの機能性医学学会でビタミンDは免疫を正常に働かせる作用があることを知り、『もしかして、花粉症はビタミンD欠乏症のひとつなのでは?』と考えたことがきっかけです。
一方で、以前から『なぜ冬にインフルエンザが流行るんだろう? 花粉はいつでも舞っているのに、なぜスギ花粉の時期に症状が悪化する方が多いのだろう?』ということを疑問に思っていました」

 

その効果は、先生自身が体験し実感したそう。

 

「私自身も花粉症持ちだったため、早速ビタミンDを1日当たり100㎍(4000IU)摂取してみました。すると、症状がすぐに改善したのです。そこから花粉症のひどい関係者にも摂取をお願いしたところ、目のかゆみやくしゃみが軽減、鼻づまりがなくなるなどの花粉症の諸症状がなんと1時間ほどで改善。ビタミンDの有効性を確信し、自身のクリニックで高濃度ビタミンDサプリメントを投与する治療を開始しました。多くの方が長年悩まされてきた花粉症の完治や改善を実感されています」

 

ビタミンDには、ほかにも多様な働きがあるそうです。

 

「ここ10年ほどで、ビタミンDには、さまざまな生理作用があることが明らかになってきました。若年層女性に関わる主な働きを4つ挙げてみましょう」

 

1.骨代謝を正常にする

食品からのカルシウム吸収を助け、骨を作る骨芽細胞や骨を壊す破骨細胞の両方を活性化し、骨の代謝を促進します。閉経後の骨粗しょう症の発症を心配される方も多いと思いますが、骨密度は20代前半でピークに達して40代まで維持し、その後減っていきます。20代、30代では、最大骨量をできるだけ高め、減少量を抑えることが大切です。そのためにビタミンDは欠かせません。

 

2.免疫力・抗菌力がアップする

免疫とは体を有害物質から守る仕組みで、外から入ってきたウイルスや菌と戦う力のことです。ビタミンDにはこの免疫力を調整する働きがあります。コロナ禍では、新型コロナウイルスが重症化する原因の一つにビタミンD欠乏が関連する研究が数多く報告されました。また日本でも、ビタミンDを摂取すると、インフルエンザの発症率が低くなるという調査結果が報告されています。ほかには、歯周病にも効果があります。

 

3.腸内フローラを整える・粘膜を強化する

腸は免疫システムの司令塔ともいわれ、免疫細胞の6~7割が腸に集中していると言われています。花粉などのアレルギーは、免疫システムの過剰反応ともいわれ、花粉を異物とみなし、侵入を防ぐために鼻水やくしゃみなどを引き起こします。ビタミンDはこの過剰反応を抑えます。また、腸のバリア機能が失われると、腸から全身にアレルギー物質が送られ、免疫反応を増強し花粉症をひどくさせてしまことがあります。ビタミンDには、腸内の悪玉菌を減らして、腸内フローラを整える働き、腸粘膜を強化する作用もあり、腸内環境の改善に密接に関わっています。

 

4.セロトニンの代謝を調節する

脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせ、情緒を安定させる効果がある、別名「幸せホルモン」とよばれる『セロトニン』の代謝を調節します。冬季うつという言葉をご存知でしょうか。冬場は一年の中でも紫外線照射量が最も減り、セロトニンの代謝が低下し、イライラする、不安を感じやすい、睡眠の質が低下することで自律神経機能が低し、めまいや頭痛になるなどの症状を引き起こします。このため、冬場はより一層、ビタミンD摂取を心がけていただきたいと思います。

 

「そのほかにも、筋肉量を維持したり、慢性的な痛みを緩和する、美肌の維持に貢献するなど、さまざまな効果があります」

 

近年もっとも注目される
「がん」発症後も死亡率減少の効果が実証

 

近年、ビタミンDでもっとも注目されている健康効果について教えてください。

 

「2023年に東京慈恵会医科大学が発表した国際共同研究によると、ビタミンDサプリを適切に摂取することで、がんの死亡率が12%減少していることが明らかになりました。また、発症前から内服していた場合は13%、発症後でも11%の癌死を予防、発症後のビタミンD摂取でも効果があることがわかったのです。
また国立研究開発法人国立がん研究センターが行った血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連を調べた調査では、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが分かっており、ビタミンDはがんの予防効果も期待できます」

 

手軽な補給策から肌ダメージを抑えながら日光浴する方法まで
ビタミンDを正しく摂取する方法

ビタミンD補給策と一口にいっても、日光を浴びる季節や時間帯によって摂取法も変わります。さらにビタミンD強化食品やサプリメントなど何で補うかも、いくつか方法があります。自身のライフスタイルをイメージしながら、自分に合ったとり方を考えてみましょう。

 

Q.そもそも1日にどれくらいのビタミンD量が必要でしょうか?

A.
「1日の必要量については何を基準にするかによりますが、日本の食事摂取基準の目安量はある程度の日光浴を前提としての目安量を案内しているため、私はアメリカの内分泌学会の臨床実践ガイドラインにある37.5µg〜50µg(1500IU~2000 IU)をおすすめしています。さらに私の臨床の感覚では、花粉症の軽減やさまざまな病気を予防するためには、1日 100µg(4000IU)のビタミンDが必要だと感じています。
下図、国立研究開発法人国立環境研究所が観測している『ビタミンD生成量・紅斑紫外線量』、観測値・つくば局のデータによると、2024年8月15日のビタミンD生成量が多い12時と、2023年12月15日の最も多い12時とを比較したところ、紫外線照射範囲600cm2(顔と両手の甲の面積に相当)では10分間でビタミンが生成できる量は、8月が約13㎍、12月は約1㎍と13倍の差があります」

 

 

 

出典=国立研究開発法人国立環境研究所

 

Q.日々の暮らしのなかで手軽にビタミンDをとるには?

A.
「手軽にできるのが、晴れた日の外出ですね。首都圏に住んでいると仮定します。ランチタイム時に、夏場なら10~20分、冬場なら20~40分を目安に外出できると良いでしょう。
夏場の場合、アメリカの内分泌学会の臨床実践ガイドラインにある37.5µg〜50µg(1500IU~2000 IU)の間をとって40µg(1600 IU)を摂取しようとすると昼間10~20分程度の直射日光を浴び、魚類やきのこ類など、ビタミンDが多く含まれる食品を摂取することで不足分を補うイメージで必要量を目指すと良いでしょう」

 

 

「とはいえ、さきほど解説したように冬場のビタミンD生成量はとても少ない。その上、私の推奨する必要量100µg (4000IU) を充足させるには、日光浴だけでは足りません。さらにビタミンD強化食品やサプリメントで補う必要があります。
実際の紫外線照射量は、場所や時間帯、季節によって大きく変わりますので、国立研究開発法人国立環境研究所のHPを参考にしてください」

 

Q.肌へのダメージを最小限に留めながら、日光を浴びる方法はありますか?

A.
「首都圏の夏の紫外線量の多い時期でも、直接日光を浴びる時間が10~20分程度であれば肌へのダメージに影響はないと考えて良いでしょう。

 

国立研究開発法人国立環境研究所の2024年8月15日のつくば市におけるデータによると、日本人にもっとも多いと言われるスキンタイプの人なら半そでで3分、長そでで7分間の日光浴をすることで、約10μg(400IU)のビタミンDを生成することができます。一方、それ以上浴びると肌ダメージが始まる時間は20分で、20分以内の紫外線照射であれば、日焼け止めを塗らなくても日焼けやシミ・しわを心配する必要はありません」

 

 

「紫外線の皮膚に対する影響は、日光照射した皮膚に対して影響し、露出面積を広げてもその皮膚に対する影響は同じです。そのため、肌のダメージを抑えつつ短時間でビタミンDを作るのならば、なるべく多くの肌を露出させる、もしくは顔には日焼け止めを塗り、腕や足を出す。またビタミンDを生成しがなら日焼けを防止する日焼け止めも販売されているので、そういったものを活用すると良いでしょう」

 

Q.ビタミンDが多く含まれる食材は?

A.
「サケやイワシ、サバなどの魚類や、きくらげや干ししいたけ、まいたけなどのきのこ類、卵、牛乳などです。圧倒的に魚類の含有量が多いですね。魚を食べる習慣があまりない方は、ビタミンDが不足する傾向にあるので、魚類を意識して摂取しましょう」

 

 

Q.サプリメントを摂取するときの注意点は?

A.
「ビタミンは脂溶性ビタミンのため、体内に蓄積されます。過剰摂取をすると、血管や心臓、肺などにカルシウムが貯まり、腎臓にトラブルが起きることもあるので、日本の食事摂取基準の許容上限量100㎍ (4000IU) 以上/1日を摂取しないように気をつけましょう。また、できれば国内製造で、配合量がきちんと保証されているものが安心です。体内で活用できるビタミンDには、植物性のビタミンD2と、動物性のビタミンD3がありますが、体内ではD3が使われています。できれば原材料はビタミンD3を選ぶといいでしょう」

 

 

シミ、しわ、皮膚病などの原因になるため、日光は美容の観点からは敬遠されがちです。一方で日光は、骨や筋肉を強くし、免疫力をアップさせ、炎症を抑える作用もあるビタミンDを生成するという重要な役割を持っています。紫外線を避けるのではなく、適度な日光浴を楽しみながら健康寿命を伸ばしていきましょう。

 

 

Profile

医師・日本機能性医学研究所所長 / 斎藤糧三

東京都港区南青山にある「斎藤クリニック」院長。診療科目は、美容内科、美容皮膚科、婦人科、内科。更年期障害の女性に対してテストステロンを使用し、自律神経調整療法のパイオニアであった斎藤信彦(医学博士)氏の三男。1998年、日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立する。2008年「機能性医学」の普及と研究を推進するため「日本機能性医学研究所」を設立。2017年、牧草牛の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm 」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)などがある。
斎藤クリニック
日本機能性医学研究所

腸内環境を整える!“海の緑黄色野菜”わかめの腸活レシピ3種

わかめの旬は、3月から6月。なかでも旬の時期ならではの味覚「生わかめ」は、肉厚で弾力があり、みずみずしいおいしさです。しかもわかめは、血糖値の急激な上昇を抑え、腸内環境を整える水溶性食物繊維や、β-カロテンも豊富など、“海の緑黄色野菜”と呼ばれるほどの存在。

 

そこで、海藻や大麦など腸を整える栄養にも詳しい管理栄養士の矢崎海里さんに、水溶性食物繊維を活かし、おいしく食べながら腸活も叶うレシピを教えていただきました。

 

 

豊富な水溶性食物繊維を含有
わかめの栄養成分は?

「わかめの主な栄養成分は、β-カロテン、ビタミンKなどのビタミン、カリウム、カルシウムなどのミネラル、食物繊維などです。とりわけ皮膚や粘膜の健康を維持し免疫機能の維持や、抗酸化作用があるビタミンAに変換されるβ-カロテンの含有量は多く、海の緑黄色野菜と言われるほど。

 

また食物繊維には、水に溶けやすい水溶性と、溶けにくい不溶性の食物繊維がありますが、わかめには水溶性食物繊維が豊富。水溶性食物繊維は消化の途中でゲル状にふくらむため、満腹中枢を刺激し、血糖値の上昇を抑えます。また、善玉菌のエサとなるため、腸内環境を整える効果も。野菜だけではなく、わかめなどの海藻からも摂取していただきたいですね」(管理栄養士・矢崎海里さん、以下同)

 

部位によって、呼び方が変わる!?
「わかめ」「茎わかめ」「めかぶ」の違い

「水溶性食物繊維は、つるつる、ネバネバしたものに多いとされていますが、実はめかぶは“わかめの一部”であることをご存知でしたか? わかめは大きな一枚の葉っぱのような形をしています。真ん中に1本の筋が通った中芯が“茎わかめ”、その周りのヒラヒラとした部位が“わかめ”、根元の部分が “めかぶ”です。β-カロテンは、わかめとめかぶに多く、食物繊維は茎わかめにもっとも多く含まれています」

 

「生」「塩蔵」「乾燥」
生わかめのおいしさを味わえる保存方法は?

手に入るわかめには、生わかめ・塩蔵わかめ・乾燥わかめがあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか?

 

・生わかめ
「生わかめの良さは、なんといってもそのみずみずしさ。弾力もあるので、食べ応えがあります。茹でる前の茶色い生わかめが手に入ったときは、ぜひ“しゃぶしゃぶ”にして食べてみてください。煮立っただし汁にわかめをくぐらせると、茶色から鮮やかなグリーンへと一瞬で変化します。そんな見た目の変化を楽しめるのも、この季節ならではです」

 

・塩蔵わかめ
「生わかめを塩漬けにしたもので、生わかめに近い食感が楽しめます」

 

・乾燥わかめ
「乾燥タイプの良さは、袋からそのまま使用できるお手軽さです。時間がないときのお助け食材となるでしょう」

 

「生」「蒸し」「焼き」
発酵食品と一緒に食べる、生わかめ“腸活レシピ” 3

「わかめ入り味噌汁を食べた場合、摂取できる量は20gほどです。今回は、旬のおいしさを楽しんでもらうため、わかめを40〜50gとたっぷり使用しました。善玉菌のエサになるわかめの水溶性食物繊維と、善玉菌そのものが含まれる発酵食品を組み合わせた腸活に適したレシピを紹介しましょう」

 

【生わかめ×キムチ】
食物繊維もたっぷり!「わかめとキムチのナムル」


「まな板も包丁もフライパンも使わない、時短レシピです。大豆もやしのシャキシャキ感と、生わかめの弾力で噛み応え抜群。生わかめと大豆もやしの食物繊維、発酵食品のキムチが腸の環境を整えてくれます」

 

【材料(2人分)】

・生わかめ……80g
・白菜キムチ……40g
・大豆もやし……50g
・鶏がらスープの素……小さじ1/2
・ごま油……小さじ1
・白いりごま……適量

 

【作り方】

1.生わかめは食べやすい長さに切る。

「ボールの上で、キッチンばさみを使ってわかめを切れば、包丁、まな板が不要です。そのままボール内で和えられるので、調理道具が少なく済みます」

 

2.大豆もやしは耐熱容器に入れ、ふんわりラップをして600Wの電子レンジで2分加熱する。

「大豆から発芽した大豆もやしには、たんぱく質、食物繊維、カルシウム、大豆イソフラボンなどが含まれ、もやしのなかでも栄養価の高いもやしです。大豆もやしを食べやすく切る必要はありません。自身の歯でしっかり咀嚼することも、腸の蠕動運動を助け腸活につながります」

 

3.ボウルに1、2、白菜キムチを入れ、鶏がらスープとごま油を加え和える。

「大豆もやしから水分が出た場合には、水分によって味が薄まってしまうので水分を良く切りましょう」

 

4.器に盛り、白いりごまを散らす。

「味付けがしっかりしているので、おつまみやご飯のお供にもおすすめです。磯の風味たっぷり、つるりとしたわかめとごまは相性抜群。ごまとごま油で食欲のそそる和え物です」

 

【わかめ×麹菌】
鯛の旨みを吸ったわかめがおいしい!「わかめと鯛の塩麹蒸し」


「わかめと同じく、春が旬の鯛。産卵の前に栄養を蓄え脂ののった鯛の下にわかめを敷いて蒸すことで、鯛のうまみを吸ったわかめを楽しめます。発酵調味料である塩麹は、塩味だけではなく、お米の持つ甘さとうまみもたっぷり。味付けは塩麹のみとシンプルですが、素材のおいしさを引き立てます」

 

【材料(2人分)】

・生わかめ……100g
・鯛切り身……2切れ
・酒……大さじ1
・塩麹……大さじ1
・レモン(輪切り)……2切れ

 

【作り方】

1.アルミホイルに生わかめを置き、鯛をのせる。

「わかめを鯛のサイズにあわせて広げましょう。のちほど酒をふりかけることで、鯛の臭みを取ります。下処理をする必要はありません」

 

2.鯛に酒を振りかけ、塩麹をかけて、アルミホイルを包む。

「腸内環境を整える善玉菌には、さまざまな種類があります。塩麹には、麹菌が含まれています。塩麹は熱に弱いため加熱調理によって死菌となってしまう場合もあります。しかし、死菌後も腸内で善玉菌のエサになったり、悪玉菌の出す有害物質を吸着して外に出しやすくしたりと腸内環境を整えるサポートをします」

 

3.フライパンに水を50cc入れ、2を置く。ふたをして弱火で10〜12分蒸し焼きにする。

「蒸し焼きすることで、鯛に含まれるDHAやEPAの流出を防ぎます。流れ出てしまっても、下に敷いてあるわかめが吸収し、栄養を摂ることができます」

 

4.輪切りのレモンを添える。

「レモンの酸味は、唾液・胃液の分泌をサポートし、消化吸収を助け腸での消化吸収の負担を減らしてくれますよ」

 

【わかめ×チーズ】
焼いてもわかめの歯ごたえがしっかり「わかめとチーズの肉巻き」


「わかめを発酵食品であるチーズと一緒に巻くことで、善玉菌である乳酸菌を一緒に腸に届けます。生きた乳酸菌を腸に届けたい場合には、ナチュラルチーズを取るとよいでしょう。噛み応えのある生わかめを巻けば、食べ応えのあるメイン料理になります」

 

【材料(2人分)】

・生わかめ……80g
・豚ばら薄切り肉……8枚
・プロセスチーズ……4個
・塩・胡椒……適量
・サラダ油……小さじ1

 

【作り方】

1.プロセスチーズを1cmほどの大きさに切る。

「加熱をするとチーズが溶け出てしまう可能性があるので、チーズが残るよう1cmほどの太さに切ります」

 

2.豚ばら肉に塩・胡椒を振り、手前にわかめと1を置く。手前からきつく巻く。

「わかめを折り畳んで、チーズをくるむように巻きましょう。わかめがフライパンの熱からチーズを守り、チーズが溶け出るのを防ぎます」

 

3.フライパンにサラダ油を熱し、2を返しながら焼く。

「チーズもわかめも火を通す必要はないので、肉にしっかり火が通っていればOK。火の通りを最小限にとどめることで、チーズの乳酸菌を生きたまま届けられる割合が増えます。みりんと醤油の甘じょっぱさに、チーズのまろやかさ、わかめの歯ごたえととろみが加わって、新食感の肉巻きになりますよ」

 

 

旬の生わかめは、肉厚で弾力があり、加熱による煮崩れも少なく、様々な料理に取り入れることができます。野菜から摂取しづらい水溶性食物繊維を多く含むわかめはぜひ日常的に食べていただきたい食材です。旬のみずみずしいおいしさを知ることで、食べる機会を増やし、健康維持に役立ててみてください。

 

 

Profile

管理栄養士 / 矢崎海里

一般企業の管理栄養士として働く傍ら、栄養に関するコラムやレシピ開発を行う。フードコーディネーターや薬膳コーディネーター、発酵食スペシャリストの資格をもつ。調理責任者の経験を活かし、おいしく食べながら健康に役立つレシピを多数執筆する。
HP

徳川家康の死因? 現代の栄養学でわかった危険&優秀な「食べ合わせ」

2023年の大河ドラマは、徳川家康が主人公。戦国武将にしては異例の長寿ながら、死因は胃がんを “鯛の天ぷら” の食べ過ぎで悪化させたことが一説とされているように、食あたりはまさに命取りです。

 

なかでも “食べ合わせ” は、不調を招く原因となることもあり、現代人も気を付けたいところ。今回は、古くから言い伝えられている「ウナギと梅干し」「天ぷらとスイカ」などの合食禁や、実際体に良い・悪い食べ合わせについて、管理栄養士の森由香子さんに、現代の栄養学の視点から教えていただきました。

 

徳川家康の死因は「鯛の天ぷら」の食べすぎって本当?

 

徳川家康の死因は諸説あり、現代においても定かではありません。有名なのは「鯛の天ぷらの食べ過ぎ」によるものです。

 

「天ぷらなどの揚げ物は消化に時間がかかるので、食べ過ぎると胃もたれや下痢を引き起こします。さらに、当時の衛生環境も現代とは異なりますので、揚げた天ぷらを食中毒菌のついた汚れた手で触ってしまう、酸化した油を使ってしまうなど、食中毒を引き起こす要因も多かったはずです。しかし、食べ過ぎや食中毒を直接の死因として結びつけるのは難しいのではないでしょうか」(管理栄養士・森由香子さん、以下同)

 

それもそのはず。徳川家康がこの世を去ったのは、食あたりの症状が出てから3ヶ月後。その事実から、鯛の天ぷらによる食中毒直接的な死因としてこの説を唱える研究者は少なく、今ではもともと患っていた胃がんが死因であるという説が有力とされています。

 

実際の徳川家康は、健康にとても気を使っており、平均寿命が30代とされていた戦国時代に75歳まで生きた長寿の武将。江戸幕府が編纂した『徳川実記』にもその健康法が記されており、現代でも栄養価が高いとされている “麦飯” を好んで食べていたといいます。加えて、旬の野菜や魚などを中心とした食事を心掛けていたのだそう。家康の長寿は、このようなバランスのよい食事がもたらしたのかもしれません。

 

毒にも薬にもなる! “食べ合わせ” の重要性

現代でも、徳川家康のようにバランスの良い食事を心掛けることはとても大切。加えて意識したいのが “食べ合わせ” です。

 

体に必要な栄養素は、およそ50種類あるといわれています。ところが、ひとつの食品で50種類をまかなう食品は存在しないため、肉や魚、野菜などをバランス良く組み合わせて食べていくことが必要不可欠です。とはいえ、やみくもに食べればいいというわけではありません。それぞれの食品が持つ栄養素と栄養素の組み合わせにも、相性が良いものと悪いものがあります。欲しい栄養効果を逃すことなく、効率的に得ることができるようにするためには、食品の“食べ合わせ”を考えることが大切なのです。

 

たとえば、鉄分が豊富と言われるホウレンソウ。食品に含まれる鉄分には、レバーや魚の血合いなどに含まれるヘム鉄と、ホウレンソウや貝類などに含まれる非ヘム鉄の2種類があります。ホウレンソウの非ヘム鉄は、実は体内に吸収されにくい鉄分。ですので、鉄分の吸収を高めるビタミンCが豊富な食材と組み合わせるのがおすすめです。ホウレンソウ自体にもビタミンCは含まれていますが、食べ合わせの知識を知っていると、より効果的に栄養を摂取できるのです」

 

「ウナギと梅干し」に根拠はない⁉ 実は気を付けたい、食べ合わせ

そんな食べ合わせにも、古くからの言い伝えで禁忌とされているものがいくつかあります。「ウナギと梅干し」「天ぷらとスイカ」と言った “合食禁” について、「迷信とされているものが多い」と森さん。実際にはどうなのか調べてみました。

 

消化不良を起こすとされている「ウナギと梅干」に科学的根拠はなく、逆に梅干しの酸が食欲を増進することがあるのだとか。「天ぷらとスイカ」も、スイカの水分が天ぷらの消化に支障をきたすと言われていましたが、相当量を食べなければ影響はないそうです。

 

こうした言い伝えではなく、栄養学的に気を付けたい食べ合わせは現代においてもあると、森さんは言います。その一例を教えていただきました。

 

緑茶やコーヒー、紅茶を飲みながら食事をするのは、野菜の栄養を無駄にしてしまうことがあるため、あまりおすすめできません。前述のホウレンソウのように、野菜には吸収されにくい鉄分である『非ヘム鉄』が含まれています。鉄分は、緑茶やコーヒー、紅茶の苦み成分である『タンニン』と結合すると『タンニン鉄』という物質になるのですが、これは、鉄分の吸収を阻害してしまいます。数杯であれば問題ありませんが、何杯も飲む方は要注意。鉄分を無駄にしないためにも、食事の場で飲みすぎないように気をつけたいところです」

 

【関連記事】食事中にお茶飲んじゃダメ!? 管理栄養士が教える“鉄分”補給のコツとレシピ

 

これは取り入れたい! 相性抜群の食べ合わせ 6選

では、逆に体に良い食べ合わせにはどのようなものがあるのか、聞いてみました。すると、意外にも何気なく食べているおかずや人気のメニューには、栄養素を効果的に摂取できる組み合わせのものが多いという発見がありました。栄養学的な視点で、森さんに解説していただきます。

 

1.アンチエイジングにも効果的! 「トマト×オリーブオイル」

「トマトに含まれる『βカロテン』や『リコピン』という栄養素は、抗酸化物質といって病気や老化の原因になる活性酸素を消去してくれる働きがあります。これらの抗酸化物質は脂溶性なので、油と一緒に摂取することで、吸収が良くなると言われています。オリーブオイルにもβカロテンが含まれているので、一緒に食べるとより効果的に栄養を摂取できるのです」

 

2.尿路結石のリスクを減らす「ブラックコーヒー×牛乳」

「尿管などに石ができる尿路結石は、シュウ酸の摂り過ぎが大きく影響しています。シュウ酸が体内で尿に含まれるカルシウムと結合することで、結石ができるのです。このシュウ酸は、コーヒーや紅茶などに多く含まれているため、飲みすぎには要注意。もし、コーヒーをブラックで毎日何杯も飲むという人がいるのであれば、できれば牛乳を入れて飲むのがおすすめです。ブラックコーヒーのシュウ酸が牛乳のカルシウムと出合い、コーヒーカップの中でシュウ酸カルシウムが誕生します。シュウ酸カルシウムになれば、シュウ酸は消化管に吸収されることがなく尿と一緒に出て行くので、尿路結石のリスクを減らすことができるのです」

 

3.カルシウムを効果的に摂るなら肉より魚! 「ホワイトシチュー×鮭」

「ホワイトシチューには、肉類を入れるよりも魚の方がより効果的にカルシウムを吸収できます。おすすめは鮭(サケ)。クリームシチューのような牛乳を使う料理なら、カルシウムの吸収アップさせるビタミンDが豊富な鮭を入れるといいでしょう」

 

4.亜鉛の吸収はビタミンCが助ける! 「焼き魚×ポン酢やレモン汁」

「サンマにすだちをかけて食べるという人も多いと思いますが、実はそれも理にかなっています。焼き魚の皮には亜鉛というミネラルが多く含まれています。亜鉛は、不足すると皮膚炎や味覚障害など、さまざまな症状を引き起こすだけでなく、体内で作ることができないミネラルですので、食物から摂取する必要があるのです。効果的に亜鉛を取り入れたければ、吸収率を高めるビタミンCと一緒に摂取するのがベスト。焼き魚を食べる時は、ポン酢やレモン、すだちなどをかけて食べるといいですね」

 

5.エネルギー作りを活発にする「豚肉×にんにく」

「豚肉とニンニクの組み合わせもおすすめ。豚肉のビタミンB1とニンニクに豊富に含まれるアリシンは、結合するとアリチアミンという物質になり、ビタミンB1の吸収率がアップします。さらに水や熱に強く、栄養素が調理で失われにくくなるのです。豚肉の他にビタミンB1が多いのは、うなぎやかつおなど。アリシンとおなじ含硫化合物が含まれるのが、タマネギやネギです。豚肉とタマネギ、ニンニクを使った野菜炒めはもちろん、かつおのたたきをオニオンスライスやニンニクスライスと一緒に食べたり、うなぎのひつまぶしをお茶漬けのようにするときに、ネギを入れて食べたりするのもおすすめです」

 

6.完全食品・卵の足りない栄養素を補う「卵×野菜」

「卵は完全食品といわれますが、実はビタミンCと食物繊維が足りない食材。卵を食べる時は、ビタミンCや食物繊維が豊富な野菜と組み合わせるのがいいでしょう。さきほどお伝えしたように、体に必要な栄養素は約50種類。その食材の足りない栄養素を補うという意味で食べ合わせを考えてみることが大切です」

 

食事をバランス良く取るために「かきくけこ、やまにさち」の法則

とはいえ、毎回の食事で食べ合わせを意識するのはなかなか難しいもの。森さんは「まずは基本として、1日3食、主食・主菜・副菜の組み合わせで、10品目食べることが大事」と話します。

 

「食べ合わせの考え方を知れば、栄養素を効果的に摂取することができます。しかし、まず大切なのは、50種の必要な栄養素をバランスよく摂取できているかを意識してみてください。私が提唱しているのは『かきくけこ、やまにさち』という合言葉。これは食材の頭文字なのですが、この10品目を主食・主菜・副菜に振り分けて食べてもらえれば50種の栄養素をバランス良く摂取することができます。そこにプラスして食べ合わせの考え方を取り入れれば、より効果的な食事になるのではないでしょうか」

 

「かきくけこ、やまにさち」
か=海藻類、き=キノコ類、く=果物類、け=鶏卵、こ=穀類・いも類、や=野菜、ま=豆類・種実類、に=肉類、さ=魚類、ち=チーズ(乳製品・乳)

 

「食生活をおろそかにしていると、骨粗しょう症や貧血、メタボリックシンドロームや生活習慣病などさまざまな症状が現れ、さらにそこから派生した病気を引き起こします。凝り固まった食習慣や嗜好は、50代、60代になってからではなかなか正すのが難しいものです。そうならないためにも、正しい食事習慣を早いうちに身につけることを意識してみてくださいね」

 

プロフィール

管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士 / 森 由香子

東京農業大学農学部栄養学科卒業、大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。医療機関をはじめ幅広い分野で活動中。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から食事からのアンチエイジングを提唱し、「かきくけこ、やまにさち」食事法の普及につとめている。クリニックで栄養指導、食事記録の栄養分析、フランス料理の三國清三シェフととともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。

 

『毒になる食べ方 薬になる食べ方』(青春出版社)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

14時から16時に食べると太らない!? 管理栄養士が解説する「チョコレート」の健康効果と効果的な食べ方・NGな食べ方は?

毎年2月14日の「バレンタインデー」に向け、店頭にはさまざまなチョコレートが並びます。おいしいのでついつい手が伸びてしまいますが、食べ過ぎには注意したいもの。でも適量の摂取であれば、抗酸化作用で肌の老化を抑制したり、イライラやストレスを軽減したり、脂肪の燃焼を促進したり、まるで“サプリ”のような食材なのです。そこで、チョコレートに注目が集まるこの時期に、チョコレートの恩恵を得る食べ方を、管理栄養士の清水加奈子さんに教えていただきました。

 

不老長寿の秘薬だった!? チョコレートが健康にいい理由

チョコレートの歴史は長く、主原料であるカカオの栽培は紀元前2000年頃のメソアメリカ(現在のメキシコ、中央アメリカ北西部とされる)と言われています。原料となるカカオ豆の学名は「テオブロマ・カカオ」。テオブロマとは「神の食べもの」という意味のギリシャ語です。

「チョコレートにはスイーツや嗜好品というイメージがありますが、アステカ帝国時代の当地では“不老長寿の秘薬”でした。カカオの栄養成分として、とくに注目されているのはポリフェノールです。高い抗酸化力のある『カカオポリフェノール』の働きにより、体内の酸化や肌老化、動脈硬化やアレルギーなどを抑制する効果が期待できます。ほかにも、『テオブロミン』という成分を含み、イライラの抑制やストレス軽減、脂肪燃焼の促進や体重増加を抑える働きがあります。ほかにも、食物繊維や脂肪酸、カフェインなどの栄養成分が、健康の維持に効果的な働きをしてくれます」(管理栄養士・清水加奈子さん、以下同)

 

チョコレート(カカオマス)に含まれる主要な栄養分

・カカオポリフェノール
カカオの主原料で、苦味や渋味があります。体内の酸化を抑制するほか、抗ストレス、肌老化や動脈硬化の予防、アレルギーの改善、精神安定やリラックス効果をもたらします。

・テオブロミン
苦味成分。リラックス効果により血流がアップし、覚醒や興奮を促す効果をもちます。イライラを抑制し、抗ストレス効果が。脂肪燃焼促進効果もあります。

・食物繊維
腸のぜん動運動を活性化させる食物繊維の一種であるリグニンの働きで便通を改善します。腸内環境を整え、免疫力アップにも効果を期待できます。

・脂肪酸
カカオに含まれるのはステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸の3種。もっとも多いのはステアリン酸で、体脂肪として蓄えられにくい良質の飽和脂肪酸です。

・カフェイン
覚醒作用や解熱鎮痛作用をもちます。眠気やストレス、疲労、頭痛の抑制効果があるとともに、集中力が高まり、仕事や勉強のパフォーマンスが向上するとされます。

 

食べ過ぎるとアレルギーになる? チョコレートのNGな食べ方

健康を促進する効果が多いチョコレートですが、やはり食べ過ぎは禁物です。

「チョコレートには、大きく分けてミルクチョコレート、ダークチョコレート、ホワイトチョコレートの3種類があります。原料のカカオの分量によって分けられていて、乳製品や砂糖の量が異なります。肥満や糖尿病などの要因になるのは、脂質や糖質の過剰摂取であり、カカオそのものではありません。また、カカオアレルギーというものはなく、チョコレートを食べてアレルギー反応がある場合は、乳製品やナッツ類など、カカオ以外の成分に反応していることが要因とされています。

とはいえ、『ハイカカオのシンプルなダークチョコレートならミルクチョコレートよりもたくさん食べてもOK』とは言えません。ハイカカオは脂質は控えめですが、興奮や利尿作用のあるテオブロミンやカフェインなど、ホルモンに影響を与えてしまう成分があるので、好ましい摂取量には上限があります。どんなチョコレートでも、1日の摂取量は、板チョコの半分~1/3量の25g程度にするのがよいでしょう」

 

午後2時から4時の間に食べる!? チョコレートの効果的な食べ方

肌の老化を予防したり、脂肪燃焼を促したりできるカカオの効能が生かせる食べ方とは?

「ポイントは3つあります。1つは、低糖質でカカオ含有率の高いチョコレートを食前に食べること。脂肪燃焼効果があり、血糖値の上昇をゆるやかにして糖尿病予防や脂肪合成を抑制する効果が期待できます。また、甘いチョコレートを先に食べておくことで満腹感が得やすくなり、食事の量を抑えることができます。2つめは、14時~16時の間に食べること。1日のうち、とくに体温が高く、細胞が活性化する時間が14時~16時で、この時間帯は脂肪を溜め込みにくいと言われています。日本大学・榛葉繁紀教授の調査研究によると、実際に脂肪を溜める働きをするタンパク質『BMAL1(ビーマルワン)』が少なくなるのもこの時間帯です。甘いミルクチョコレートは、15時のおやつでいただくようにしましょう。3つめは、少量を数回に分けて食べること。一般的にポリフェノールの抗酸化作用は、摂取してから2~4時間ほどで血液中から消失してしまいます。つまり、チョコレートを一度にたくさん食べても、疲労回復効果やリラックス効果が1日中続くわけではないのです。1日のチョコレート摂取適量の25gを『昼食前、15時のおやつ、夕方』の3回くらいに分けて食べると、チョコレートの健康効果が効果的に得られるでしょう」

 

健康を維持するためのチョコレートの効果的な食べ方

1.食前に食べる
・ポリフェノール、脂肪酸の効果で脂肪燃焼が促進される
・糖分のあるチョコレートを食べたことで食欲が抑制される

2.14時~16時の間に食べる
・1日のうちもっとも体温の高くなる時間帯で脂肪燃焼がよい
・脂肪を溜めるタンパク質「BMAL1」がもっとも少ない時間帯

3.少量を数回に分けて食べる
・ポリフェノールの抗酸化作用が働くのは2〜4時間である
・「昼食前、15時のおやつ、夕方」の3回程度に分けて食べることで、チョコレートがもつ健康効果をキープできる

 

注目は? チョコレートの最新キーワード

見た目、味わい、健康効果の3つを網羅したチョコレート。バレンタインデーには、栄養価の高いチョコレートをトレンドを意識しながら選びたいですよね。見逃せないトレンドをピックアップしていただきました。

「ルビーチョコレート」

2020年頃からさまざまなブランドが商品化しているピンク色のチョコレート。着色料やフルーツフレーバーを使用しているわけではなく、ピンク色のルビーカカオを原料としたもので、通常のカカオ豆を研究栽培し、自然由来の色や味わいを引き出しています。ほんのりとした酸味があり、苦味は控えめ。ポリフェノールやカフェインなどの栄養成分は、カカオとほぼ同量を含んでいます。

「2年ほど前から注目されるようになったのが『ルビーチョコレート』。見た目はホワイトチョコレートに似ていますが、栄養面で見るとビターチョコレートと同じ分類です。ハイカカオでポリフェノールが多く配合されているので、ホワイトチョコレートの代わりに使って、いちごなどのフルーツをコーティングした手作りチョコを作れば、かわいい上に健康的なギフトになります」

 

「抹茶チョコレート」

「最近では『濃い抹茶』ブームがあり、ホワイトチョコレート×抹茶の組み合わせもいいですね。抹茶には『カテキン』というポリフェノールが含まれているので、この場合はルビーチョコを合わせるよりもポリフェノールを含まないホワイトチョコとの組み合わせの方が、栄養素のバランスはよいと言えます」

 

「シングルオリジン」

コーヒーでお馴染みとなった「シングルオリジン」。味の個性を楽しむだけでなく、産地や農園との“フェアトレード”が実現しやすいため、注目したいキーワードです。

「チョコレートの個性や味が引き立つのは、1農園・1品種のみを使う『シングルオリジン』タイプ。チョコレートの産地や農園にこだわって選ぶのは、SDGsの視点からも注目です」

 

ほかにも、ほうじ茶チョコ、フルーツと合わせた『フレーバーチョコ』のラインナップも注目です。シナモン、カルダモン、黒こしょう、ターメリックなどのカレーに使われるスパイスや、和のスパイス・山椒などを入れたスパイスチョコレートは、ワインやビールにも合うので、お酒好きに喜ばれるのではないでしょうか」

ATS-FOOD「ボベッティ スパイス粒チョコレート 6種ミックス 45g瓶」972円(税込)茶色の粒はコリアンダー、黄色はフェンネル、ピンクはピンクペッパー、黄緑はローズマリーなど、スパイスを加えた粒チョコレート。辛口の白ワインやビール、ハーブティやチャイなどとの相性抜群で、サラダやアイスクリームにトッピングしても。

 

美容や健康に良いチョコレートの食べ方を知ることで、今までとは違った視点でチョコレート選びができそうです。コーヒーやワインを選ぶように、チョコレートもカカオの産地や味わいにアンテナを張ってみると、日常のちょっとしたご褒美が増えそうです。

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 清水加奈子

フードコーディネーター、国際中医薬膳師、料理家。女子栄養大学短期大学部食物栄養学科を卒業後、食品メーカーの食品素材開発や商品開発、販売促進活動を経て、2001年にフリーランスに転身。中医学に基づいた薬膳レシピやダイエットレシピが得意で、多数のメディアでレシピの提案や監修、クリニックでの栄養指導などを行う。どんな人でも簡単においしく作れるレシピに定評がある。近著は『太らない食べ方 新装版』(エイ出版)。
HP= http://www.kanako-shimizu.com

 

茎も茹で汁も活用! 低糖質で高栄養価の冬野菜「ブロッコリー」の全部入りレシピ

糖質制限中の献立や、筋トレのサポート食材としてお馴染みのブロッコリー。お米のように小さくカットされている冷凍食品があったり、白米の代わりにブロッコリーを選べるコースのあるサブスク宅配フードが登場するなど、置き換え食材としても人気です。栄養素密度(食品がもつエネルギー100kcalあたりに含まれる栄養素の量)が高く、野菜のなかでもとくにタンパク質が豊富なので、茎まで余すところなくいただきたいものです。

 

そこで、ブロッコリーの栄養をなるべく損なうことなく、おいしく食べられるレシピを、料理家の吉川愛歩さんに教えていただきました。冬から春にかけて旬を迎えておいしくなるので、洗い方や保存方法も、あらためておさらいしてみましょう。

 

【ブロッコリーの栄養素】ブロッコリーはビタミンCの宝庫

ブロッコリーに含まれる栄養素のなかでもっとも豊富なのは、ビタミンC。なんとブロッコリー 100gで1日に必要なビタミンCがまかなえるほどで、レモンのおよそ2倍の量に当たります。また、葉酸や食物繊維も多いので、野菜の王様とも呼ばれることも。

 

「ブロッコリーのモコモコした部分は、花蕾(からい)の集まりです。その部分だけでなく茎まで食べられ、捨てるところがほとんどありません。茎は蕾よりビタミンCやカロテンが多いので、ぜひ捨てずに活かしてくださいブロッコリーはアクが少ないので下処理が必要なく、料理しやすいのも特徴です」(料理家・吉川愛歩さん、以下同)

 

【ブロッコリーの保存方法】注意したいのは、冷凍保存&解凍の仕方

ブロッコリーは、新鮮なうちはきれいな緑色をしていますが、だんだんと蕾が黄色く色づいてきます。黄色くなっても味はそう変わりませんが、蕾を膨らませる方に栄養がいってしまうので、栄養価は下がるのだそう。

 

「黄色くなってしまった蕾はぼろぼろと崩れやすく、小房に分けるときにうまく切り分けられないこともあります。できるだけ新鮮なうちに食べ、使いきれない分は切り分けてから生のまま冷凍保存するのがおすすめです。ただ、保存状態によってはやや食感が劣る場合もありますから、スープや炊き込みごはんなどにするのがいいでしょう」

 

上手に冷凍保存するコツは、しっかり水分を拭き取ること。ざるやペーパータオルの上でよく乾かしてから冷凍します。炒め物やスープに使う場合は解凍せずにそのまま入れると、食感が損なわれにくいですよ。ちなみに蕾が紫がかっているものは、寒さのせいでアントシアニンというポリフェノールが表面に出てきてしまっているから。加熱すれば緑色になります」

 

【ブロッコリーの洗い方】洗うときはしっかり揺すって汚れを落とすこと

ブロッコリーは、花蕾が密集していて房の間の汚れが取りづらい形状をしています。

 

「小房に分けてから洗い流すのでもかまいませんが、蕾がぼろぼろと取れてしまうのと、切り口から栄養が流れてしまうので、丸ごと洗う方がおすすめです。ブロッコリーが全部入るくらいのボウルに水をいっぱいに張り、中でブロッコリーを揺すって汚れを落とします。しっかりと水に沈めるよう力をかけ、一度水を替えて振り洗いを繰り返しましょう。畑から直接取ってきたものなどは、少し水に浸しておくと中に潜んでいる虫も出ていきます」

 

【ブロッコリーの切り方】「切る」のではなく「裂く」ときれいに分けられる

ブロッコリーを切るときは、まず葉と細い茎を取り、茎の下の方の硬い部分だけを取り除きます。

 

「葉と細い茎は食べられるものもありますが、硬いこともあるので取りましょう。そうしたら茎に包丁を入れて、茎だけを半分に割ります」

 

包丁が入ったら、両手で茎を左右に開いて裂くように切ります。こうすると蕾の部分に包丁が入らないので切り口がぼろぼろにならず、きれいに分けることができます」

 

半分に切れたら、蕾と茎を別々に切っていきましょう。

 

「蕾の方は、枝分かれしているところをカットします。茎は料理によりますが、蕾の方と長さを合わせて縦に切ると使いやすいでしょう。皮は剥いても構いませんが、状態のよいものなら皮も柔らかいので、そのまま料理します」

 

【ブロッコリーの加熱方法】加熱はレンチンがおすすめ

ブロッコリーは生食もできますが、硬いので加熱調理がおすすめです。

 

「加熱することでブロッコリーの甘みが引き出され、茎までおいしくいただけます。ただし茹でると、茹で汁の中に栄養素が流れ出てしまったり、茹ですぎて柔らかくなってしまったりすることもあるので、電子レンジで加熱しましょう。コリコリしたブロッコリーらしい食感を損なうことなく加熱できます。茹でて調理したいときは、茹で汁まで活用できるよう、スープにしてみてはいかがでしょう。または炒めたり焼いたりする調理法なら、栄養もしっかり摂れます」

 

電子レンジでの加熱方法

  1. 電子レンジ使用可能な保存袋に、小房に分けたブロッコリーを入れる。
  2. 耐熱皿の上に1を置き、電子レンジ(600w)で1分30秒加熱する。様子を見て加熱時間を追加する。

 

電子レンジで加熱したブロッコリーは、おつまみや小腹が空いたときのおやつ代わりに、そのまま食べるシンプルなレシピがおすすめ。せっかく低糖質な野菜なので、同じく低糖質な豆腐で作ったディップを合わせてみましょう。

 

■ 低糖質なレンチンブロッコリーが活きる「豆腐のディップ」

「水切りした豆腐を調味して攪拌する、クリームのようなディップです。生姜とレモンの爽やかな味つけなので、さっぱりとしていていくらでも食べられますよ。好みでハーブやカレーパウダーなどを入れてアレンジするのもおすすめです」

 

【材料】

木綿豆腐……1/2丁
生姜(すりおろし)……5g
太白ごま油(または香りのないオイル)……大さじ1
レモン汁……小さじ1
塩……小さじ1/3〜

 

【作り方】

1.豆腐を熱湯に入れて2分茹で、ペーパーで包んで重石をし、10分ほど水切りする。

「豆腐は、いったん茹でることで水分が抜けるので、早く水切りすることができます。絹ごし豆腐でも構いませんが、木綿の方が水分量がやや少ないのでおすすめ。野菜につけやすい、もったりとした硬さのあるディップが作れます」

 

2.すべての材料を合わせ、フードプロセッサーで攪拌する。

 

完成

ブロッコリーの甘さと香りを損なわない、やさしい味のディップができあがりました。「豆腐は消化吸収がよく、良質なたんぱく質ですから、ブロッコリーとともに食べることで体作りにも役立ちます」

 

次のページでは、“茹で汁”も活用できるスープレシピ「ブロッコリーのクラムチャウダー」と、“冷凍ブロッコリー”でパッとできる「ブロッコリーのジェノベーゼ風」のレシピを教えていただきます。

 


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■ “茹で汁”も活用できるスープレシピ「ブロッコリーのクラムチャウダー」

「疲れているときや寒い日におすすめしたいのが、ブロッコリーの旨みを活用したスープ。缶詰のあさりを使い、お鍋ひとつで出来上がる手軽なレシピです。朝食や夜食にも合うようあっさりと仕上げました。牛乳は豆乳やアーモンドミルクなど、好みのものに置き換えてもおいしくできますよ」(料理家・吉川愛歩さん、以下同)

 

【材料(4人分)】

ブロッコリー……1/2株
バター……10g
玉ねぎ……1/2個
ベーコン……30g
水……250ml
牛乳(または豆乳)……200ml
あさり(缶詰)……煮汁を合わせて130g
黒胡椒……お好みで

 

【作り方】

1.ブロッコリーの花蕾は小房に分け、茎は細めの短冊に切る。

「ポイントはブロッコリーの茎を細めに切ること。シャキシャキした歯触りで、沢煮碗のような食べ応えのあるスープになります。茎の皮も食べられるので、剥かずに使いましょう」

 

2. 鍋にバターをひき、細切りにした玉ねぎとベーコン、ブロッコリーの茎を中弱火で炒める。

「炒めすぎてしまうと茶色く濁ってしまいます。白いスープに仕上げられるよう、さっと炒め、玉ねぎが透き通ったら次に進みます」

 

3.ブロッコリーと水を入れて蓋をし、中弱火で5分煮る。

「あまり煮すぎてしまう、ブロッコリーの食感がくたくたになってしまいます。花蕾の方の茎に竹串が刺さる程度に煮ましょう」

 

4.牛乳とあさりの缶詰を汁ごとを入れて、沸騰したら火を止める。

「貝類は煮るほどに身が小さく縮んでしまうので、最後に入れましょう。生のあさりを使う場合は、ブロッコリーの花蕾を入れるのと同じくらいのタイミングで入れるのがいいですよ」

 

完成

ブロッコリーの茹で汁や茎も丸ごといただけるスープは、食欲がない日や胃腸が疲れやすい年末にもぜひ作ってほしいレシピです。「少し硬めの食感に茹でたブロッコリーは食べ応えがあり、スープといえどお腹も満足できますよ」

 

■ “冷凍ブロッコリー”でパッとできる「ブロッコリーのジェノベーゼ風」

「小房に分けて生のまま冷凍したブロッコリーをレンジで加熱して作る、ジェノベーゼ風のソースです。冷凍したブロッコリーは食感が気になる場合もあるので、こんなふうに攪拌していただくのもおすすめ。材料を手軽に揃えられるよう、ミックスナッツで作ります」

 

↑ソースは2〜3日なら冷蔵庫で保存できますから、作り置きにもおすすめです。瓶に入れて保存するときは、表面にオリーブオイルを注いで空気に触れないようにしておきましょう」

 

【材料(2人分)】

ブロッコリー(生のまま冷凍したもの)……1/2株
無塩ミックスナッツ……40g
にんにく……1/4かけ
パルミジャーノレッジャーノ……15g
オリーブオイル……50ml
塩……ふたつまみ〜
ショートパスタ(茹でたもの)……200g

 

【作り方】

1.冷凍ブロッコリーをペーパーに包んで、電子レンジ(600w)で1分30秒加熱する。

「冷凍したブロッコリーは水分が出やすいので、電子レンジ専用のキッチンペーパーに包んでから加熱しましょう。こうすることで水っぽくならずに解凍できます」

 

2.ナッツ、にんにく、ブロッコリーをフードプロセッサーで攪拌する。

「ナッツとにんにくを攪拌したら、ブロッコリーを少しずつ入れて合わせていきます」

 

3.パルミジャーノレッジャーノ、塩、オリーブオイル加えてさらに攪拌する。

 

4.3と茹でたパスタを和える。

「すべてをよく合えたら皿に盛りつけ、刻んだナッツ(分量外)とともにパルミジャーノレッジャーノを削りましょう」

 

完成

冷凍ブロッコリーがあればいつでも手軽に作れて、ちょっとしたごちそう気分に。「パスタだけでなく、茹でたじゃがいもと和えたり、パンに塗ったりしてもおいしくいただけます。ブロッコリーが苦手な人でも食べやすいアレンジです」

 

ブロッコリーは切ってレンチンするだけで食べられる、栄養満点のありがたい存在。風邪や乾燥肌が気になる冬を、ビタミンCたっぷりのブロッコリーで乗り切りましょう。

 

【プロフィール】

料理家・ライター / 吉川愛歩(よしかわあゆみ)

出版社に勤務したのち、フリーライターとして独立。その後、料理家としても活動をはじめ、暮らしと食にまつわる出版・コンテンツ制作に携わる。また、アウトドア好きが高じて『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や、『キャンプでしたい100のこと』(西東社)にてライティングとアウトドアごはんのレシピ監修を担当。著書に、児童向けのレシピつき小説『こねこのコットン チアーカフェストーリー』(学研プラス)がある。

 

 

タンパク質が不足すると起こる影響は?「プロテイン」の効果的な補給法クイズ

「プロテイン」というと、従来は筋肉を増強したい男性が飲むパウダータイプ、というイメージでしたが、健康や美容の源としても注目を浴び、ここ5年ほどで急速にラインナップが広がっています。前回、プロテインのメリットや効果的に摂取する方法について、「プロテインマイスター」として商品開発も行なっている、プロテインひろこさんに解説していただきましたが、果たしてどれくらいマスターできているか、一部を抜粋したクイズでおさらいしてみましょう。


「タンパク質は貯めておけない栄養素!「プロテイン」摂取のコツとおいしく続けられるプロテイン食品」では、これらの基礎知識をはじめ、プロテイントレンドの背景や、パウダーやドリンクなどおすすめのプロテイン食品を紹介しています。合わせてチェックして、日々の健康に役立ててください。

 

【プロフィール】

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プロテインマイスター / プロテインひろこ

運動しないプロテイン愛好家。今まで筋肉をつけるために飲むイメージの強かったプロテインを、きれいになる方法の一つとして提案しているInstagramは多くの女性の支持を集めている。「マツコの知らない世界」(TBS)や「林先生の初耳学」(毎日放送)などにも出演。女性向け美容プロテイン『タンパクオトメ』『プロテイン餃子』など、商品のプロデュースにも多数携わっている。

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鉄分やDHA、タウリンなどたっぷり!「カツオ」の栄養を余すところなく取るレシピ

5月になると、「初鰹」(はつがつお)のシーズンが始まります。江戸時代には一尾が下級武士の年棒に相当したという貴重な初鰹は、栄養価の高い魚のひとつでもあります。今回は家庭料理研究家で管理栄養士でもある前田量子さんに、カツオの栄養について解説いただくとともに、カツオのおいしさを堪能できるレシピを教えていただきました。

 

カツオの旬は二度やってくる

カツオの特徴といえば、高速で泳ぎ続けるという習性から、体の一部にしか鱗(うろこ)がないことが挙げられます。砲弾型の体にはブレーキの役割をする背ビレがついており、速く泳ぐときには体の中に畳めるような形をしています。世界的にもよく食べられている魚で、「ツナ」と呼ばれマグロの代用としても知られています。

 

そんなカツオには、初夏にやってくる“はしり”の時期の「初鰹」と、回遊した鰹がふたたび獲れる秋の「戻り鰹」の、二度の旬があります。初鰹はさっぱりとした脂のりで、戻り鰹はコクのある味わいと、それぞれにおいしさが異なります。日本では昔から“初物”には高い値段がつき、その時期に食べることが貴重であるとされてきたので、5~6月の初鰹をぜひ味わってみましょう。

 

「日本でもっとも有名なのは土佐(高知県)のカツオ。当地ではタタキにするときに藁焼きといって、火をつけた藁でカツオの表面を炙って食べます。燻製のような藁の香りがあり、おいしいですよ」(家庭料理研究家・前田量子さん、以下同)

 

鉄分、タウリン、EPA・DHA……カツオは栄養の宝庫!

カツオは魚介類の中でも栄養価が高く、低脂肪低カロリーなのに高タンパク質という、ダイエット中にもうれしい魚です。

 

「なんと25%がたんぱく質で、動脈硬化の予防に役立つEPAとDHAが含まれています。鉄分もトップクラスの含有量で、ナイアシンやビタミンB群も豊富に含まれており、エネルギーの代謝を促してくれます。貧血予防には、鉄分とビタミンCを合わせて摂ると、鉄の吸収力がよくなりますから、カツオと一緒にレモンや小松菜、モロヘイヤ、ピーマンなどと食べるといいでしょう。

他に、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、肝臓の解毒能力を強くするタウリンも豊富です。タウリンは体内でも作り出せますが、量が足りないので、食品から取り入れるのがおすすめです。また、トリプトファンという物質も豊富に含まれています。トリプトファンは脳内でセロトニンという物質に変わるのですが、これは“しあわせホルモン”と呼ばれていて、自律神経を整えたり安眠をもたらしたりします」

 

ただし鮮度には要注意!

ただし、注意点も。

「とても酸化しやすい魚なので、栄養価が下がらないよう、切り身ではなくサクで買い、できるだけ食べる直前に切りましょう。また、カツオには寄生虫がいるので取り扱いには注意が必要です。食べると食中毒になり、腹痛の原因になるアニサキスは内臓にいることが多いのですが、鮮度が落ちたものは身の部分にいることもあります。他にも、テンタクラリアという小さなお米粒のような虫がいることがあります。こちらは食べても害はありませんが、切ったときに白い粒があったら取り除きましょう。寄生虫は加熱するか48時間冷凍することで死滅しますから、心配な場合はお刺身も冷凍してからいただきます」

 

カツオの保存方法と切り方

レシピを紹介する前に、カツオの保存の仕方と、上手な刺身の切り方を教えていただきましょう。

 

・保存方法

カツオは足の早い(傷むのが早い)魚なので、刺身を買ってきたら、そのまま冷蔵庫に入れないでください。「ドリップしてしまわないよう、カツオをキッチンペーパーに包み、その上からラップを巻いて冷蔵庫に入れましょう」

 

・刺身の切り方

刺身を切るときは、柳刃包丁という魚専用の包丁があると便利です。刃が長いので何度も刺身に刃を入れる必要がなく、魚の繊維を壊さずカットできます。「洋包丁しかない場合でも、包丁の柄の方から刃を入れて、なるべく一気に切っていくと、きれいな断面で切ることができます」

 

次のページから、カツオがもつ栄養を余すことなく取れる、おすすめレシピを3つ紹介します。

栄養価を余すことなく食べられる!カツオのおすすめレシピ3

それでは、カツオを使ったレシピを3種類紹介していただきます。

 

1. 黄身とアボカドのまろやかさがカツオに合う
「カツオとアボカドのわさび醤油丼」

カツオのもつDHAとEPAに、アボカドの良質な不飽和脂肪酸とビタミンEをプラスし、動脈硬化を防ぐ効果を期待できる丼です。「ご飯はそのままでもいいですし、余裕があれば酢飯にしてもおいしくいただけます。カツオを漬け(づけ)にすることで、甘くてねっとりした感じが引き出されます」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき(または刺身)……300g

<A>
醤油……大さじ1
味醂……大さじ1

アボカド……1個
卵黄……1個

<B>
醤油……小さじ2
わさび……少々

胡麻……適量
刻みのり……適量
青ねぎ……適量

 

【作り方】

1.カツオの刺身をスライスし、調味料<A>に10分漬ける。

「バットにカツオを並べたら調味料をまわしかけ、ぴったりとラップをしておきます。こうすることで味なじみがよくなります」

 

「このまま冷蔵庫に10分入れておきます。短時間でも漬けられるよう調味料を多くしているので、漬け込み時間が一時間ほど取れる場合には、調味料を2/3くらいにしましょう」

 

2. ごはんに刻みのりをのせてから、アボカドと水気を切ったカツオをのせる。

「漬けにしたカツオとアボカドを交互にのせていきます。アボカドは、カツオの幅に合わせて縦にスライスするか横にスライスするか考えて切ると、盛り付けのときにうまくいきますよ」

 

「カツオを漬けた調味料には臭みも入っていますから、一度キッチンペーパーで軽く押さえてからのせます。味は中にしっかり染み込んでいますから、表面を拭っても問題ありません」

 

3. 真ん中に青ねぎの小口切と卵黄をのせる。仕上げに胡麻をふり、合わせたBをかける。

「青ねぎを枕のようにふかふかにのせたら、そこに窪みをつくり、卵黄を落とします。こうすると卵黄が流れず、きちんとのせることができます」

 

カツオのたたきならではの独特の風味と香ばしさに、卵黄とアボカドの甘みがプラスされた丼は、陽気のいい日にもさっぱりいただける味。お酒のあとの締めにもおすすめです。

 

2. 梅の香りのモロヘイヤソースがとろり
「カツオの刺身 梅肉風味のモロヘイヤ添え」

カツオに含まれる造血成分である鉄やたんぱく質を有効に取り入れるため、葉酸たっぷりのモロヘイヤを一緒に合わせました。「葉酸はDNAを作る水溶性ビタミンB群のひとつで、赤血球の生産を助けてくれます。葉酸が不足すると疲れやすくなり、貧血になる可能性もありますから積極的に取り入れましょう」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき……200g
モロヘイヤ……1/2袋
醤油……大さじ1
梅肉……適量
生姜(すりおろし)……適量
大葉……1~2枚

 

【作り方】

1. カツオは1cm幅に切る。モロヘイヤは葉をつみ、たっぷりのお湯で20~30秒茹で、ざるにあげる。

「モロヘイヤは熱が入りやすく、すぐにとろとろになってしまいます。ぐらぐらと沸かしたお湯でさっと茹でたら、すぐにざるにあげ、流水を流して冷やします」

 

2. モロヘイヤを細かくたたく。

「茹で上げたモロヘイヤは冷水でしっかりと冷やしましょう。冷えたら水気をぎゅっと絞り、水に栄養が流れでないようにします。モロヘイヤの緑色であるクロロフィルは、60℃くらいの温度が続いたり、調味料のような酸性のものと合わせると色が悪くなるんです。なるべくきれいな緑色に仕上げるため、茹でたら急いで冷やし、調味料を和えるのは食べる直前にします。絞れたら、包丁で細かく刻んでいきましょう」

 

3.カツオのたたきに、醤油と梅肉を混ぜあわせた①を添える。好みで生姜も添える。

「モロヘイヤの他に、ピーマンや小松菜でも食べ合わせはいいのですが、気を付けなくてはならないのは、ほうれん草。ほうれん草にはシュウ酸という成分が含まれていて、これが鉄分の吸収を妨げてしまうので、貧血にはよくないのです。モロヘイヤは茎から葉を外さないとならないので手間ですが、ぜひモロヘイヤと一緒に食べてみてください」

 

梅の酸味と香りがふわっとするモロヘイヤのソースを、カツオにのせていただきます。いつものお刺身も、ポン酢や醤油で食べるのと一味違った味わいです。

 

以上のように、カツオというとたたきや刺身の漬けでいただくイメージがありますが、生食に飽きたらこんな食べ方も!

 

3. 生食に飽きたらサクサクに揚げて
「カツオの半生カツ」

カツオをさっと揚げて半生にしたカツを、すりごまをたっぷり入れたソースでいただきます。「付け合わせには、たっぷりのキャベツの千切りを添えましょう。キャベツに含まれるビタミンCは鉄の吸収力を上げてくれるだけでなく、カツオと食べ合わせると美肌効果が期待できます。ソースにした胡麻にはセサミンという成分が含まれ、肝臓の機能を高めたり、保護する働きがあります。また、ごまの抗酸化力は活性酸素を除去したり生活習慣病を予防する働きもあり、アルコール代謝促進による肝機能保護に役立ちます。肝機能を助けるタウリンの働きをサポートしてくれますよ」

 

【材料(2人分)】

カツオの刺身……300g
バッター液(卵……1/2個・水……大さじ1・小麦粉……大さじ2・塩……少々)
パン粉……適量
揚げ油……適量
すりごま……大さじ2
ソース……適量

 

【作り方】

1. バッター液の材料をすべてビニール袋に加えて、よく揉む。

「ビニール袋の中で作ると、洗い物も少なくて済みますし、使い終わったらこのまま捨てればいいだけで楽ですよ」

 

2. カツオを1に入れて、バッター液を馴染ませる。

「カツオがぬるくなってしまうと、揚げたときに中まで火が通ってしまうので、冷蔵庫から出したてのカツオで行い、手早くバッター液をつけましょう」

 

3. パン粉をつけ、190℃で1分揚げる。

「レアな状態でいただきたいので、衣が色づいたらすぐに引き上げます。油がしっかりと190℃になってから、さっと揚げます。低い温度で入れてしまうと、いつまでも揚げ色がつかず、待っているうちに火が通ってしまいます」

 

4. カツオを1cmの厚さに切り、すりごま入りソースを添える。

「衣が剥がれないよう、包丁の柄の方から刃を入れて引き切りし、底の部分は包丁を上からトンと叩いて切り離します」

 

サクサクなのにお刺身を食べているようなジューシーさがある半生のカツ。ゴマのソースをカツオと千切りキャベツにかけていただきます。

 

 

カツオはおいしいだけでなく、栄養を摂るためにもぜひ食べてほしい魚です。この旬の時期に試してみてください。

 

【プロフィール】

家庭料理研究家 / 前田量子

一般社団法人日本ロジカル調理協会代表理事。管理栄養士、調理科学を得意とした家庭料理研究家。東京理科大学卒業後、織田栄養士専門学校にて栄養学を、東京會舘、辻留料理塾、柳原料理教室、ル・コルドンブルーにて料理を学ぶ。保育園や病院での勤務、カフェ経営を経て、調理科学に基づいた料理を教える教室を開催。都内栄養士専門学校(栄養士養成施設)にて調理学実習講師もしている。著書に『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』(主婦の友社)のほか、『いいことずくめ 考えないお弁当』『苦手な揚げ物も煮物も魚料理も得意料理に変わる ロジカル和食』(ともに主婦の友社)などがある。

 

『おうちで一流レストランの味になる ロジカル洋食』(主婦の友社)
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