【ムー妖怪図鑑】あなたは「びろーん」を知っていますか?――昭和の児童書に出現した妖怪たち

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」(隔週水曜日更新)! 連載第22回は、黒氏も親しんだ「昭和の子供向け妖怪本」に掲載されている思い出の妖怪を補遺々々しました。

20180209_suzuki_6

あの頃の妖怪本

妖怪が好きな人で、水木しげる氏の本を一度も読んだことがない人はいないのではないでしょうか。

 

私は子供のころに小学館入門百科シリーズの『妖怪100物語』『妖怪なんでも入門』『妖怪クイズ百科事典』と出会いました(このシリーズは新デザインになって現在も読まれつづけています)。

 

水木氏の描く妖怪はどこか親しみやすく、面白く、でもちょっと怖いものもいて、次はどんな妖怪が出るのかなとワクワクしながら頁をめくりました。

 

読み終えるともっと妖怪を知りたくて、書店や図書館へ走りました。

 

皆さんは、どんな本を読んで妖怪を好きになりましたか?

 

どんな妖怪がいちばん印象に残っていますか?

 

今回は趣向を変えまして「昭和の子供向け妖怪本」の中から、いくつか変わった妖怪をご紹介いたしましょう。

 

黒史郎の心に残る妖怪たち

昭和43年に秋田書店から発行された「世界怪奇スリラー全集」全6巻は、魔術、怪奇事件、空飛ぶ円盤と、ひじょうに充実した内容でした。奥付の頁を見ると小・中学生が対象年齢と書かれていますので子供向けに出された全集であることは間違いないのですが、大人が読んでもなかなか過激な内容でした。この全集の2巻目、山内重昭著の『世界のモンスター』は、タイトルどおり、世界中の妖怪たちを紹介しています。

 

私がとくに印象に残った妖怪は「みンな」です。この変わった名称の妖怪は、夜道をひとりで歩いていると出遭うもので、ずっと後ろからついてくるストーカーです。走って逃げても、走って追いついてきます。その姿はいろいろと変化をしますが、基本は人に近い形で、全身は真っ黒、顔の真ん中に赤いひとつ目が縦についています。こちらが怖がると、どんどん身を寄せてきて、「怖いから見るな、怖いから見ンな」と呟きます。「みンな」という名は、「見るな」という意味だったのです。後をつけてくる以外の悪さはしないのですが、人の不安感、恐怖心を絶妙に煽ってくる嫌な妖怪です。

 

嫌といえば「金ン縛り(かなンしばり)」も、かなり嫌な妖怪です。これは人に似た姿をしていますが、ネズミのような髭と手を持っています。就寝中に動けなくなる金縛りは、この「金ン縛り」が馬鹿力で胸を押さえ込むから起こる現象なんだそうです。

 

本の解説によると、金縛りにあったら無理に解こうとはせず、じっとしているほうがいいようです。無理に動こうとすると心臓が止まってしまうからです。なんと、「ポックリ死」の原因は、この「金ン縛り」のせいだというのです。

 

「米つき座頭」は、たいへん醜悪で残忍な性格の妖怪です。目の潰れたお坊さんの姿をしており、墓場から死体を掘りだします。そして臼と杵で死体を砕き、食べるのです。「米つき座頭」なんですから、米だけを搗いてほしいものです。

 

また、ゲームなどですっかり有名になった巨大骸骨妖怪「がしゃどくろ」も載っています。「がしゃどくろ」は歌川国芳『相馬の古内裏(そうまのふるだいり)』に描かれた大きな骸骨のイメージが強いですが、この本では人間の頭蓋骨を腹に溜め込んだ(巨大)骸骨として描かれています。

 

子供向けの妖怪本といえば、やはりこの本でしょう。昭和47年刊行の佐藤有文著『日本妖怪図鑑』。子供向け妖怪本の金字塔です。

 

多くの妖怪好きから愛される「びろーん」も、この本に載っています。

 

この気の抜けるような響きをもつ名前の妖怪は、別名を「ぬりぼとけ」といい、コンニャクのようにぶよぶよとしています。もともと化ける能力があったようで、「びろ・びろ・びろーん」と唱えて仏さまに化けようとしたところを失敗してしまい、名のとおり、びろーんとした、へんてこな姿になってしまったのです。目は腫れぼったく、ほうれい線はくっきり、すきっ歯に出っ歯とお世辞にも美形とはいえませんが、それが愛くるしくもあり、多くのファンを獲得しました。

20180209_suzuki_7

1970年代は、少年漫画雑誌でも多くの妖怪企画がありました。そこでしか見ることのできない妖怪もたくさんあります。

 

昭和43年発行『週刊少年マガジン』25号の「日本の怪異 大妖怪」には、「白骨大入道(はっこつおおにゅうどう)」なる妖怪が紹介されています。紹介といっても記事に解説はありません。その姿は先述した歌川国芳『相馬の古内裏(そうまのふるだいり)』に描かれた大きな骸骨とほぼ同じですが、こちらは目が血走っていて、より怖いです。

 

同じく『週刊少年マガジン』の昭和42年発行、41号の企画「四谷怪談ウルトラ妖怪画報」には、「四谷怪談」の主人公・お岩の恨みをはらすべく、沼の主の「もうりょう」、内臓を食べる「かっぱ」、50年以上生きている「化けうなぎ」、山奥に住む獣が化けた地獄の「火車」、火事を起こしに井戸から現れる「井戸黒鳥(いどこくちょう)」、6人の「雪女」といった妖怪たちが伊右衛門を襲っています。お岩様の人望(妖望)の厚さがうかがえます。

 

昭和の子供たちを妖怪・オカルトの世界にどっぷり引き込んだ立役者、手の平サイズのぶ厚い「百科」系を忘れてはなりません。ケイブンシャ『妖怪・幽霊大百科』『日本の妖怪大百科』、小学館コロタン文庫『世界の妖怪全(オール)百科』など、素晴らしい本がたくさんありました。

 

その中でもわたしは昭和58年に秋田書店から発行された竹内義和・編『悪魔・オカルト大全科』が印象的でした。この本に紹介された妖怪はいずれも個性的で魅力的なのです。

 

「1ツ目おばあさん」は夕方になると現れる単眼のお婆さんで、人の家の前に長時間立ちつづけます。イラストを見ると「大安売」の文字の書かれた幟を持ってお店の宣伝をしているようにも見えますし、頭にかわいいリボンをつけているので、それほど怖くはありません。

 

「手だけがサソリ」という妖怪はその名のとおり、外見は人間のおじさんですが、手だけが大きなハサミです。大木をも簡単に切ることのできるこのハサミで、人間の首も切ったといいます。同じハサミでもカニやザリガニですと名前がカッコ悪いので、やはりサソリで正解でしょう。

 

「ケンケン男」は片足を縄で縛ってケンケンで移動する奇妙な妖怪です。「ケンケン男」についての情報はほとんど明記されておらず、解説に「首のないおとうさん」をおんぶしているとあるだけです。掲載されているイラストでは「ケンケン男」の後方に潰れて炎上している車が確認できます。路上には男性の生首が転がっています。背負っている「首のないおとうさん」は、被害に遭った人物の父親でしょうか。あるいは「ケンケン男」の父親なのでしょうか。謎の多い妖怪です。

 

今回紹介した妖怪はいずれも、民俗資料の中では見つけることができませんでした。

 

もしかしたら著者の完全な創作だったのかもしれませんし、一部だけ創作なのかもしれません。あるいは、まだ見つかっていないだけで、どこかの伝承・絵巻に名前や姿があるのかも――。

20180209_suzuki_6

文・絵=黒史郎

 

「ムーPLUS」のコラム・レポートはコチラ

沢城みゆき、野沢雅子ら“チーム鬼太郎”がゲゲゲの森がヒット祈願

4月1日(日)にスタートする新アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(フジテレビ系)の安全とヒットを祈願して、鬼太郎役・沢城みゆき、目玉おやじ役・野沢雅子ら主要キャスト全員と、スタッフ、関係者ら総勢約100名が、東京都調布市の布多天神社を参拝した。

20180202_suzuki_7

2018年にアニメ化50周年を迎える『ゲゲゲの鬼太郎』。第6期となる新アニメでは、おなじみの鬼太郎ファミリーに超豪華声優陣が集結することでも話題を呼んでいる。この日のヒット祈願では、鬼太郎役・沢城みゆき、目玉おやじ役の初代・鬼太郎役を演じた野沢雅子をはじめ、ねずみ男役・古川登志夫、ねこ娘役・庄司宇芽香、一反もめん役・山口勝平、子泣きじじいとぬりかべの2役・島田敏、砂かけばばあ役・田中真弓、犬山まな役・藤井ゆきよら豪華主要キャスト全員が初めて集結した。

 

参拝後には『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者・水木しげる氏の妻・武良布枝さんら関係者とキャストがおなじみの鬼太郎の“ちゃんちゃんこ”を着て記念撮影を行った。

 

一同が参拝した布多天神社は、水木氏が調布に住んでいたこともあり、境内の奥にある杜が鬼太郎が住む森のモデルになったと言われている。今回、特別にその裏の杜の見学が許され、沢城は「本当に鬼太郎が住んでいそうな場所。みんなで見ることができて、幸せなスタートです」と語った。過去に鬼太郎の声を演じ、今回は目玉おやじの声を演じる野沢も「私にとっては、鬼太郎が成長してお父さんになったというような感覚です」と。さらに武良布枝さんからも「この企画の成功をひたすら祈念し、水木共々厚く感謝申し上げます」というコメントが寄せられた。

 

※布多天神社の裏の杜は通常立ち入り禁止のご神域で、一般の方が訪問されても見学はできません。

 

<キャストコメント>

■沢城みゆき(ゲゲゲの鬼太郎役)

「ここ、布多天神社の裏の杜は、本当にこの木の上に鬼太郎の家がありそうだなっていう、そんな素敵な場所で、幸せなスタートが切れました。マコさん(野沢さん)、登志夫さん、真弓さんもいらして、(アニメ作品で)基本的な敵は倒してきた方たちばかりそろっていたので、ものすごいパワーを感じました。世代的にも幅広いですし、本当ににぎやかなスタートになってうれしいな、と思いました」

 

■野沢雅子(目玉おやじ役)

「今日、初めてみんなで集まったんですけど、すぐにパッと団結できる感じがあって。もうずっと一緒にやっているかのような感覚がありました。鬼太郎が長年経ってお父さんになった、家族ができた、といううれしい気持ちでいます。でも、鬼太郎っていい作品ですよ。描かれるのは、人間の世界であって人間の世界ではないじゃないですか。私たちは、その両方を見られるから楽しいですよね」

 

<関係者コメント>

■原口尚子(水木しげる氏長女・株式会社水木プロダクション 代表取締役)

「私は“アニメ鬼太郎第2期世代”です。小学生だった私はこれが一番よく見たシリーズで、夜眠れないほど怖かった回もありました。第1期は、白黒テレビで父・水木しげるも一緒に、家族揃って見た記憶がおぼろげながらあります。 そして今また“アニメ鬼太郎第6期世代”の子ども達が生まれること、とてもうれしく思います」

 

■武良布枝(水木しげる氏妻)

「『ゲゲゲの鬼太郎』が6度目の新作アニメになるとのこと、改めて亡き夫水木しげるへの憶いが浮かびます。夫の93年の人生は戦争体験、そして漫画製作に精一杯打ち込んだ日々でした。在りし日の姿が目に浮かび、いまだに尽きぬ思いが去来いたします。4月1日から放送の予定とお聞きしております。この企画の成功をひたすら祈念し、水木共々厚く感謝申し上げます」

 

■鳥取県知事 平井伸治

「『ゲゲゲの鬼太郎』放送決定!目玉おやじも“目出たしジャ”。楽しいな♪ 楽しいな♪ 鬼太郎ファミリーが帰ってくる! やっぱり、おばけは死な~ない♪!! 鳥取県境港の“水木しげるロード”も7月にリニューアル完成。鬼太郎列車もパワーアップ。みんな、鳥取へ来タロー!!!」

 

■境港市長 中村勝治

「国民的ヒーロー ゲゲゲの鬼太郎! 第1期放映開始から50年。前作第5期から約10年の時を経て『ゲゲゲの鬼太郎』が戻ってきた。今年7月、水木しげるロードがリニューアルとなります。このようなタイミングで新作『ゲゲゲの鬼太郎』が放映されることは境港市にとっても大きな喜びであり、大変力強く思います。ぜひ、一緒に盛り上げていきましょう」

 

■水木しげる記念館 館長 庄司行男

「水木作品を代表する『ゲゲゲの鬼太郎』。その第6期新作アニメがこの4月から放映されると知り、思わず歓声を上げました。 おそらく多くの水木ファン、鬼太郎ファンの思いも同じだったのではないでしょうか。老若男女、それこそ日本中で知らない人はいない『ゲゲゲの鬼太郎』。そこにまた新たなチビッ子ファンが加わることを考えると…今から胸が躍ります」

 

■調布市市長 長友貴樹

「アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(第6期)放送決定、誠におめでとうございます。『ゲゲゲの鬼太郎』がアニメ化され50周年記念の節目となる年を大きな喜びとともに迎えることができ大変嬉しく思います。調布市は“水木マンガの生まれた街”として、原作者である調布市名誉市民・水木しげるさんのゆかりの地でもあることから、今作品が幅広い世代の多くの方に視聴いただけることを期待しております」

 

『ゲゲゲの鬼太郎』 フジテレビ系 4月1日(日)スタート

毎週日曜 午前9時~9時30分(一部地域を除く)

<出演者>

沢城みゆき/鬼太郎

野沢雅子/目玉おやじ

古川登志夫/ねずみ男

庄司宇芽香/ねこ娘

藤井ゆきよ/犬山まな

田中真弓/砂かけばばあ

島田 敏/子泣きじじい

島田 敏/ぬりかべ

山口勝平/一反もめん

 

公式ホームページ:http://anime-kitaro.com/

公式twitter:@kitaroanime50th

 

©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション