すべてを極めた3代目「α7RⅢ」に死角なし!! 驚愕のフルサイズミラーレスを7000字、作例18枚でレビュー

ソニーの35mm判フルサイズミラーレス一眼“α7シリーズ”のカメラは、いくつかのタイプに分類される。スタンダードタイプの「α7」。画素数を抑えて高感度性能を追求した「α7S」。そして、高画素タイプの「α7R」。この3タイプに分かれる。いずれのタイプも、2代目の製品が登場している(製品名の最後に「Ⅱ」が付く)。今回紹介する「α7RⅢ」は、高画素タイプ「α7R」の3代目モデルになる。

20180129_y-koba2 (37)↑今回使用した、標準ズームとのセット「α7RⅢ+FE 24-105mm F4 G OSS」と、望遠ズーム「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」。ミニマムながら、いろんな撮影に対応できる組み合わせである。ボディ単体の参考価格は39万9470円(2018年1月時点)

 

センサー画素数は2代目と同じ有効約4240万画素(同じく裏面照射型CMOSセンサー)だが、これまでのα7シリーズに欠けていた高速連写性能を高めたモデルへと進化。その最高速度は「約10コマ/秒」で、従来のα7シリーズの「約5コマ/秒」を大きく凌駕している(α7Rのみ4コマ/秒)。高解像と高速性能の両立――それがα7RⅢの最大の特徴だ。

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ボディデザインは、2代目の各α7モデルを踏襲。より高い高速性能を持つα9のようなドライブモードダイヤルは装備していない。だが、背面にはα9と同様のマルチセレクター(ジョイスティック状の操作パーツ)を装備するなど、細かな部分で操作性が向上している。

20180129_y-koba2 (5)↑従来のα7シリーズには、シンクロターミナルが備わっていなかったが、α7RⅢではしっかり装備(α9にも装備されている)

 

20180129_y-koba2 (6)↑正面から見ると、ほとんどα7RⅡと見分けが付かない(グリップ部の上部は微妙に違うが)。背面の端を見ると、そこにある小さな銘板でα7RⅡとα7RⅢの違いがわかる

 

約4240万画素で最高約10コマ/秒だと!? 「高画素」と「高速連写」をハイレベルで両立

今回のα7RⅢは、新開発のシャッターチャージユニットや、画像処理システムの刷新により、有効約4240万画素の高画素モデルでありながら「AF/AE追従で最高約10コマ/秒」という高速連写を実現している。そして、同社の超高速モデルのα9(AF/AE追従で最高約20コマ/秒)に搭載される新AFアルゴリズムを本機用に最適化。画像処理システムの刷新もあって、AFの速度や精度、AF追随性能が飛躍的に向上している。

 

ただし、どんなに高速で連写できても、連続撮影枚数が少ないと、あまり実用的とは言えない。その点、α7RⅢでは、バッファーメモリーの大容量化や内部処理システムの高速化、UHSスピードクラス「UHS-Ⅱ」の採用などにより、JPEG時・圧縮RAW時で最大76枚、非圧縮RAW時で約28枚という連写持続性能を実現した(いずれも連続撮影モード「Hi+」時。UHS-ⅡI対応SDXCメモリーカード使用時)。これだけあれば、通常の撮影で不満を感じることはないだろう。

 

また、データ書き込み中の操作性も向上している。連続撮影後のメモリーカード書き込み中でも、Fn(ファンクション)メニュー上から撮影設定が変更でき、メニュー画面へのアクセスや設定変更も可能。さらに、再生画面へのアクセスもでき、連写撮影後すぐに撮影画像の確認に移行できるのだ。書き込み終了までただ待つだけという状況がなくなったことで、よりストレスなく高速連写を使用できる。

20180129_y-koba2 (9)↑最も高速でAF/AE追従連写ができる「連続撮影:Hi+」に設定した状態。ただし、取扱説明書に記載されていた「絞り値がF8より大きいときは[連続撮影:Hi+]、[連続撮影:Hi]、[連続撮影:Mid]での連続撮影中はフォーカスが1枚目の撮影時の位置に固定されます」という記述内容には注意したい

 

次の写真は、始発駅を出発した電車が最初の踏切に差し掛かるところを「連続撮影:Hi+」モードで撮影。スピードあまり速くなくても、目の前を通過する乗り物の動きの変化は大きい。だが、「最高約10コマ/秒」の連写モードで、きめ細かくフォローすることができた。

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20180129_y-koba2 (12)[撮影データ(3枚共通)]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(24mmで撮影) シャッター優先オート F4 1/2000秒 WB:オート ISO200

 

続いて、こちらに向かってくる特急列車を、同じく「連続撮影:Hi+」モードで撮影。上の写真が1枚目、下の写真が62枚目である。設定画質モードはRAW+JPEG(圧縮RAW、ファイン)。ここでは1枚目と62枚目をセレクトしたが、実際には先頭車両前面が画面から見切れる70数枚目まで途切れることなくスムーズに連写することができた。

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20180129_y-koba2 (14)[撮影データ(2枚共通)]ソニー α7RⅢ FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/2000秒 WB:オート ISO1600、3200

 

次の作例では、ヘラサギが飛び立つ瞬間を「連続撮影:Hi+」モードで捉えてみた。移動する電車やクルマよりも難易度の高い(一瞬の変化が大きい)被写体だが、まずまずの結果を得ることができた。

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20180129_y-koba2 (17)[撮影データ(3枚共通)]ソニー α7RⅢ FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 -0.3補正 WB:オート ISO3200

 

こちら作例も「連続撮影:Hi+」モードで捉えたなかからの抜粋。こうした細やかな動きの瞬間を切り取ることができるのも、高速連写ならではだ。

20180129_y-koba2 (18)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 WB:オート ISO2000

 

画像処理システムも一新! より高精細でクリアな描写を実現

α7RⅢで大きく目立つトピックは、先に挙げた高速連写性能であるが、本機の進化点はそれだけではない。

 

有効約4240万画素の35mmフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーという点は、従来のα7RⅡと同じである。だが、α7RⅢは従来比(α7RⅡとの比較。以下同)約1.8倍の高速処理を実現した新世代の画像処理エンジン「BIONZ X(ビオンズ エックス)」を搭載。さらに、イメージセンサーからの読み出し速度を約2倍に高速化する新世代フロントエンドLSIも採用している。こういった、画像処理システムの一新により、中感度域で約1段分ノイズを低減し、高解像と低ノイズ性能を両立しているのだ。また、人物撮影における肌の色合いの再現性なども向上させている。

 

さらに、光学式5軸ボディ内手ブレ補正の性能も向上し、世界最高(※本機発表時点の、35mmフルサイズセンサー搭載デジタルカメラとして)5.5段の補正効果を実現。これにより、本機の高解像性能を最大限に引き出すことができる。ちなみに、α7RⅡの補正効果は最高4.5段だった。

 

次の作例は、夕方の赤みを帯びたと影が印象的な、高層ビル群を見上げるように撮影。有効約4240万画素によるビル細部の高精細さや、青空や日陰部分のノイズレスで滑らかな描写が印象的だ。

20180129_y-koba2 (7)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(24mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/30秒 -0.3補正 WB:オート ISO125

 

こちらは、逆光に映える色づいた木々の葉を撮影。画面内に強烈な太陽を写し込んだが、センサー部のARコーティング(※光の反射を抑え、ゴーストやフレアの発生を最小限に抑える反射防止膜)付きシールガラスの採用や、同じくARコーティングが施されたレンズの性能により、全体的にクリアな描写を得ることができた。

20180129_y-koba2 (8)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/125秒 WB:オート ISO100

 

カードスロットもうれしいデュアル化! ただ、ちょっと気になる点も

カードスロットの仕様変更も、α7RⅡからの進化したポイントに挙げられる。シングルからデュアル(ダブル)になり、SDカードスロットとSD/MSカードスロットの2つのメディアスロットを搭載する。そして、2枚のメディア間での、リレー記録、同時記録、RAW/JPEG・静止画/動画の振り分け記録などの選択ができる。もちろん、メディア間のコピーも可能だ。なお、下段(スロット1)のSDカードスロットは、UHSスピードクラス「UHS-Ⅱ」対応なので、該当SDカードを使用すれば、さらに高速に記録できる。

 

スロットのデュアル化はもちろんうれしいのだが、スロット1とスロット2の配置と、メニュー画面上(選択時)のスロット1とスロット2の表示(上下)が逆なのは、ちょっと謎な仕様である。また、メニュー内には「記録メディア選択」とは別に「再生メディア選択」の項目もあるが、個人的には後者の機能は「不要では?」という気がした。記録メディアを選択すれば、再生メディアもそれに準ずる。そして、再生時に切り換えが必要になったら、ボタンやダイヤル操作で一時的に再生メディアを切り換える……という方法で十分だと思う。

20180129_y-koba2 (19)↑上段…ではなく、下段がスロット1で、上段がスロット2。スロット2のほうは、SDカードとメモリースティックデュオの兼用スロットになる

 

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20180129_y-koba2 (21)↑一方、メニュー画面だと、上がスロット1で、下がスロット2。実際のスロットの配置が“上がスロット2、下がスロット1”になったのは内部構造の問題だと思うが(想像だが)、どうも釈然としない

 

20180129_y-koba2 (22)↑「再生スロット選択」機能を実際に使用(選択)してみたが、便利さよりも“煩わしさ”を感じた。まあこれは個人的な感想なので、撮影スタイルによっては、この機能が必要だ、便利だ、と感じる人もいるだろう

 

4枚の画像を合成して解像感に優れた1枚を生成する「ピクセルシフトマルチ撮影」

撮影機能の注目点としては「ピクセルシフトマルチ撮影」の搭載が挙げられる。この撮影機能では、ボディ内手ブレ補正機構を高精度に制御して、イメージセンサーを正確に1画素分ずつずらして計4枚の画像が撮影される。そして、その4枚の画像がもつ約1億6960万画素分の膨大な情報から、解像感に優れた1枚の画像(画素数は通常撮影と同じ約4240万画素)を生成するのである。ただし、α7RⅢ本体では撮影のみが可能で、それを合成して1枚の画像を生成するには、ソニー純正のソフトウェア「Imaging Edge」の「Viewer」「Edit」が必要になる(PC上での作業)。

 

では、ピクセルシフトマルチ撮影の仕組みを簡単にご紹介しよう。本機での通常撮影を含め、ほとんどのデジタルカメラでは、1画素ごとにR・G・Bのうち1色分の色情報を取得し、残りの2色分の色情報は周辺画素の情報から補間処理を行っている。それに対して、ピクセルシフトマルチ撮影では、有効約4240万のすべての画素でR・G・B の全色情報が取得できるので、補間処理をせずに直接合成して画像を生成する。それにより、色モアレ(偽色)の発生を最小限に抑え、より高精細かつ忠実な質感描写が可能になるのだ。

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20180129_y-koba2 (24)↑計4枚の撮影が自動で行われる「ピクセルシフトマルチ撮影」では、その撮影間隔が設定できる

 

正確に1画素分ずつずらした4枚の画像を合成する必要があるため、当然、ピクセルシフトマルチ撮影では三脚使用が不可欠となる。また、被写体にブレが発生すると正しく画像が合成されないので、基本的に“完全に静止している物”が撮影対象。たとえば、建築物や美術品といった被写体である。だが今回は、ちょっと意地悪な発想で(笑)、風などによるブレが想定される屋外風景にあえてチャレンジしてみた。下の写真が、実際にピクセルシフトマルチ撮影で生成したものだ。

20180129_y-koba2 (25)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(30mmで撮影) 絞り優先オート(ピクセルシフトマルチ撮影) F8 1/30秒 WB:太陽光 ISO100 三脚

 

では早速、細部を拡大してチェックしていこう。幹の表面は光に変化があって比較しづらいが、幹に取り付けられた案内(説明)板の文字に注目すると、ピクセルシフトマルチ撮影のほうが、高精細でシャープなことがわかる。

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20180129_y-koba2 (27)↑上がピクセルシフトマルチ撮影、下が通常撮影

 

次の部分切り出し比較では、ピクセルシフトマルチ撮影による幹表面の質感のシャープさやリアルさがよくわかる。……と同時に、幹の後ろの“風に揺れる葉”の部分に、不自然な規則的な縞模様が生じているのも確認できる。しかし、これは今回の誤った被写体選択が原因であり(あえてブレたらどうなるかを検証するためだったのだが)、本来の使い方(完全に静止している物を撮る)であれば問題ないはずだ。

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20180129_y-koba2 (29)↑上がピクセルシフトマルチ撮影、下が通常撮影

 

思っていた以上に良好! 高画素機ながら高感度性能も侮れない

高画素モデルで懸念されるのが、高感度域での画質。一般的に、センサーサイズが同じなら、画素数を少なくしたほうが高感度画質は良くなると言われているからだ。確かに、α7シリーズを見ても、高感度画質を重視したα7Sラインのモデル(α7SⅡ、α7S)のセンサーは「有効1220万画素」と、かなり控えめな仕様になっている。

 

だが、高画素センサーモデルだからといって本機の実力は侮れない。α7S並みとはいかなくても、裏面照射構造による高い感度特性やギャップレスオンチップレンズ構造(※集光効率を飛躍的に高める独自構造)、最新のイメージセンサー技術などにより、高い高感度性能を実現している。常用ISO感度の上限はISO32000まで高められ(α7RⅡはISO25600)、高感度域の撮影でも低ノイズな高画質を得ることができるのだ。

20180129_y-koba2 (30)↑ISO感度設定の画面。他モデルと同様、ISOオート時の下限値と上限値が簡単に設定できる点は便利!

 

ここからは、ISO3200以上の高感度時の画質をチェックしていこう。車体の細部(シャープに見える部分)を確認すると、ISO25600まで思った以上に良好。背後の空あたりでノイズ感をチェックすると、感度が1段上がるごとにノイズ感は増してくるが、あまりうるさいことを言わなければ、ISO12800くらいまでは許容できそう。さすがにISO25600になると色ノイズ(主にムラ)が少し目立ってくるし、色再現もわずかに渋くなる。とはいえ、このISO25600の描写に関しても、思っていた以上に良好だった。

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20180129_y-koba2 (34)↑上からISO3200、ISO6400、ISO12800、ISO25600で撮影したもの。[撮影データ(4枚共通)]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(33mmで撮影) 絞り優先オート F8 WB:カスタム(マニュアル) 三脚

 

次の作例は、画質が重視される風景で、ISO1600で撮影したもの。細部の描写が良好なのはもちろん、フラットな空部分の描写もノイズ感が少なくて良好な仕上がりだ。

20180129_y-koba2 (35)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 24-105mm F4 G OSS(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/20秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO1600

 

続いて、画質よりもブレのないシャープな描写が優先される動物スナップでも試してみた。光量に恵まれない日陰(しかも夕方)の撮影だったが、ISO6400に設定したおかげで、1/1000秒の高速シャッターでシャープに写すことができた。画質に関しても、こういう撮影としては十分なレベル。

20180129_y-koba2 (36)[撮影データ]ソニー α7RⅢ FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mmで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 WB:オート ISO6400

 

【まとめ】シリーズのなかで“最も対応力が高いモデル”

最初に述べたとおり、ソニーの35mm判フルサイズミラーレス一眼「α7シリーズ」は、スタンダードタイプ、画素数を抑えて高感度性能を高めたタイプ、高画素タイプの3つのタイプに分かれている。だが、いずれのタイプも“高速性能”には不満があった(まあ、約5コマ/秒が遅いとは言わないが)。

 

だから、ソニーEマウントユーザーが高速連写をしようと思ったら、最も高価なα9(2018年1月現在の参考価格はボディ単体で51万7010円)か、APS-Cサイズ機のα6500(AF/AE追従で最高約11コマ/秒)などを選ぶ必要があった。

 

だが、今回紹介した“高画素タイプの3代目”のα7RⅢなら、2400万画素台のα9やα6500とはひと味違う高解像な描写が得られ、α6500並の本格的な高速連写も堪能できる。そういう意味では、これまでのα7シリーズのなかで“最も対応力が高いモデル”と言えるだろう。

 

【SPEC】

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ソニー
α7RⅢ
参考価格39万9470円(ボディ/2018年1月時点)

●撮像素子:35mmフルサイズ、有効約4240万画素CMOSセンサー ●レンズマウント:ソニーEマウント ●ファインダー:0.5型、約369万ドット ●背面モニター:3.0型、約144万ドット(タッチパネル) ●大きさ・重さ:約126.9(幅)×95.6(高さ)×73.7(奥行き)mm・約657g

センサーは大きく、でもボディはコンパクトに! キヤノン「PowerShot G1 X Mark Ⅲ」の与えた衝撃

11月30日についに発売となったキヤノン「PowerShot G1 X Mark Ⅲ」。製品名からもわかるとおり、本機は「PowerShot G1 X Mark Ⅱ」の後継モデルであり、本格志向ユーザー向けのレンズ一体型カメラ(コンパクトデジカメ)である。その最大の特徴は、キヤノンのコンパクトデジカメでは初となる“APS-Cサイズ”CMOSセンサーを採用した点(有効画素数は約2420万画素)。そして、映像エンジン「DIGIC 7」との連携により、PowerShotシリーズのフラッグシップモデルにふさわしい高画質を実現している。それでいて、外観デザインや大きさ重さは、1.0型センサー採用モデルの「PowerShot G5 X」と大差ない小型軽量設計というから驚きだ。

20171128_y-koba2 (1)↑小型軽量設計の「PowerShot G1 X Mark Ⅲ」。その外観デザインは、1.0型センサー機「PowerShot G5 X」に酷似している。レンズは24-72mm相当の新開発キヤノンレンズを搭載。参考価格は13万7700円

 

センサーは大きく、ボディはコンパクトに進化

キヤノンのPowerShot Gシリーズは、2000年に発売された「PowerShot G1」から始まる。このモデルのセンサーは「1/1.8型・有効約334万画素CCD」だった。そのG1の登場から17年。センサーのフォーマットはついにAPS-Cサイズに到達。G1のセンサーと比較すると、大きさ(面積)は約8.7倍、有効画素数は約7.2倍と、その差の大きさに改めて驚かされる。

 

今回、PowerShot G1 X Mark Ⅲに採用された有効画素数約2420万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーは、高い解像感、広いダイナミックレンジ、豊かな階調表現、といった特徴をもっている。また、フォトダイオードの開口率向上や光電変換効率に優れた構造の採用などにより、常用ISO感度は「最高25600」に到達。さらに、デュアルピクセルCMOS AFや最高約9.0コマ/秒の高速連写を実現している。それでいて、ボディサイズは従来モデルからかなりスッキリした印象だ(従来モデルとの比較の詳細は後半部を参照)。

20171128_y-koba2 (2)↑G1 X Mark Ⅲの小ささは、こうやって手にすると、さらに実感できる

 

20171128_y-koba2 (3)↑カメラ本体も小さいが、付属のバッテリーチャージャーCB-2LHもコンパクト!(しかも、差込プラグ一体型だし)

 

24-72mm相当の新開発キヤノンレンズを搭載

ボディサイズもさることながら、搭載されるズームレンズのコンパクトさにも感心する。24-72mm相当(35mm判換算の画角。実焦点距離は15-45mm)F2.8-5.6の光学3倍ズームレンズ。この仕様だけ見ると平凡だが、APS-Cサイズ用のズームレンズとしては驚くほど小さい。最前部鏡筒の直径はわずか40mmくらいなのだ。このコンパクトサイズで“広角端F2.8”の明るさを実現しているのは立派である。もちろん、描写性能にもこだわった光学設計になっている。両面非球面レンズ3枚と、片面非球面レンズ1枚を採用して、諸収差の発生を抑制。また、インナーフォーカス方式の採用により、高速なAF作動も可能にしている。

 

ただ、24mm相当の広角端はともかく、72mm相当の望遠端の画角は、物足りなく感じる人も多いだろう。少し言葉は悪いが「標準に毛が生えた程度の中望遠」の画角なのだから。しかし、このカメラには「プログレッシブファインズーム」と呼ばれる、画質劣化の少ない先進のデジタルズーム機能が搭載されている(ズームバーで黄色に表示される部分。画質設定がRAWの場合は使用不可)。この機能を使用すれば、高い解像感を保ったままで「144mm相当」までの望遠撮影が楽しめるのである。

20171128_y-koba2 (4)↑広角端15mm(24mm相当)

 

20171128_y-koba2 (5)↑望遠端45mm(72mm相当)

 

20171128_y-koba2 (6)↑光学ズーム望遠端(72mm相当)

 

20171128_y-koba2 (7)↑プログレッシブファインズーム望遠端(144mm相当)

 

上の作例を見てもらえばわかるとおり、24mm相当の広角端は、標準ズームレンズの広角としては十分ワイドな画角が得られる。だが、72mm相当の望遠端は、一般的な望遠効果を望むのは難しい。遠くの風景や近づけない被写体などで、思い通りの大きさで撮れない……という不満が出てくる。そんなときには前述の「プログレッシブファインズーム」を活用したい。

 

続いて、ボケ描写について見ていこう。次の作例は“72mm相当の望遠端・開放F5.6”という条件で撮影したもの。正直なところ、ボケ効果を追求するには、画角も開放F値も物足りない値である。だが、APS-Cサイズの大型センサー採用機なので、それなりのボケ効果は得られた。

20171128_y-koba2 (8)72mm相当 絞り優先オート F5.6 1/160秒 WB:オート ISO100

 

操作性を犠牲にせず小型化と多機能化を両立

ボディの小型化と多機能化を両立させようとすると、どうしても操作性が犠牲になりがちだ。しかし、このG1 X Mark Ⅲは、その点も考慮した設計・仕様になっている。

 

まず、上面に露出補正ダイヤルが設置され、前面グリップ上には電子ダイヤルが設置されている。これは1.0型センサー機・G5 Xと同じスタイルである。通常、この手の電子ダイヤルは、グリップ上部や右手側の背面上部に設置されることが多いのだが、G1 X Mark Ⅲの小型ボディだと、その位置に設置するのは少々厳しい。その点、前面グリップ上ならスペース的に無理がないし、操作性も良好である。

20171128_y-koba2 (9)↑露出補正ダイヤルや前面の電子ダイヤルは、ファインダーを覗いてカメラを構えたままでも快適に操作できる。それはレンズ鏡筒基部のスムーズリングも同様である(撮影スタイルや撮影シーンに合わせて設定したい項目の割り当が可能)

 

液晶モニターは、自在に角度が変えられる「バリアングル液晶」を採用。この方式は、上下チルト式とは違い、カメラを縦に構えた際にも対応できる。だから、画面の縦横に関係なく、地面すれすれからのローアングル撮影や、高い位置から被写体を見下ろして撮るハイアングル撮影が快適に行えるのである。

20171128_y-koba2 (12)↑バリアングル液晶の機能と、コンパクト設計(細身のレンズ鏡筒)を生かして、フェンスの隙間からローポジション&ローアングル撮影を敢行

 

20171128_y-koba2 (13)↑こちらが実際に撮れた写真。絞り優先オート 24mm相当 F11 1/60秒 WB:オート ISO160

 

20171128_y-koba2 (14)↑こちらの作例は、石造りのアーチをローポジション&ローアングル撮影することで、この被写体の存在感を高めている。それと同時に、手前に散らばる落ち葉の存在感も高まった。24mm相当 絞り優先オート F11 1/60秒 WB:オート ISO320

 

バリアングル液晶は「タッチパネル」機能も搭載している。画面をタッチしてAF位置が迅速に選択でき(タッチAF)、そのままシャッターを切ることも可能である(タッチシャッター)。また、機能の設定や画像の閲覧なども、タッチ操作で快適に行える。サイズも3.0型と十分な大きさがだが、ボディがコンパクトなぶん、モニター右側のボタン配置が少々窮屈な点がやや惜しい。

20171128_y-koba2 (11)↑タッチパネルが反応する領域を設定することも可能。これによって、ファインダー撮影時に“自分のスタイル”に応じた操作が可能になる

 

20171128_y-koba2 (10)↑3.0型液晶モニターがとても大きく見える、コンパクト設計のG1 X Mark Ⅲボディ。そのため、モニター右側のボタン配置が少々窮屈な印象。ボディをホールドする際に重要になる“親指を置くスペース”も少々物足りない

 

風景撮影などで悩ましい小絞り時の解像感が向上

レンズの絞りを過度に込んだ際に発生する「回折現象(※1)」は、画像の解像感を低下させる原因になる。その点、G1 X Mark Ⅲでは、映像エンジン「DIGIC 7」の高速処理性能による光学情報を活用した補正を実現。これにより、回折現象を高度に軽減することが可能になった。風景撮影などでの、画面全体にピントを合わせる(パンフォーカス)撮影で、細部までシャープに描写することが可能になる。

※1. 光や音などが進む際に、障害物に遮られるとその背後に回り込む現象。絞りの背後に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなるために解像力が低下する

20171128_y-koba2 (17)↑ここでの作画のポイントは遠方の赤く色づいた木(葉)になるが、手前に入れる近くの木の枝もシャープに写したい。そのためには十分に絞り込む必要がある

 

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20171128_y-koba2_19_R↑F8からの部分切り出し(上)とF16からの部分切り出し(下)の部分比較。F8で撮影したほうと比べると、最も絞ったF16のほうは少し解像感が劣っている印象。だが、その差は通常のカメラほどではない

 

20171128_y-koba2_20↑逆光に映える手前のカツラの葉と、その後ろにそびえるメタセコイアの並木。その両方をシャープに描写するため、最小絞りのF16まで絞って撮影した。24mm相当 絞り優先オート F16 1/80秒 +0.3補正 WB:オート ISO100

 

“最短撮影距離10cm”を生かして被写体に踏み込む

G1 X Mark Ⅲの最短撮影距離は、広角端は10cm、望遠端は30cm(いずれもレンズ先端からの距離)。その際の撮影範囲を仕様表で確認すると、望遠端のほうがわずかに狭い。つまり、クローズアップ度が高くなる。だが、その差は本当に“わずか”である。筆者個人としては“広角端10cm”のほうを評価したい。広角域で被写体の近くまで接近する“肉薄感”は、望遠域とは違うダイナミックな描写・表現が得られるのである。

20171128_y-koba2_21↑渓流脇の岩場に落ちていた一葉の紅葉。広角端で最短撮影距離近くまで接近する。イイ感じ。24mm相当 絞り優先オート F2.8 1/60秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO200

 

20171128_y-koba2_22↑菊花展に展示されていた色鮮やかな棚作りの菊。広角端で最短撮影距離近くまで花に接近しつつ、広い画角で背後の様子も写し込む。これまたイイ感じ。24mm相当 絞り優先オート F2.8 1/250秒 WB:オート ISO100

 

【まとめ】驚くほどコンパクトだが仕様や機能は本格志向

キヤノンのコンパクトデジカメ初の“APS-Cサイズ”CMOSセンサーの採用。広角端で10cmまで接近できる、24-72mm相当の高性能な光学3倍ズームレンズを搭載。約236万ドットの高精細な有機EL 内蔵EVF。AF追従で最高約7コマ/秒の高速連写(実写の結果、画質設定がRAW+Lでも、速度が落ちずに15、16カットは撮影できた)。しかも、雨雪やホコリの多い場所でも安心な「防塵・防滴構造」を採用。

 

こういったハイレベルな仕様や撮影機能を持ちながら、1.0型センサー搭載機と見紛うほどの小型軽量なボディ。PowerShot G1 X Mark Ⅲは、軽快に使える本格派コンパクトデジカメである。

20171128_y-koba2_31↑同梱のネックストラップ NS-DC12とストラップアダプターを装着して、首からPowerShot G1 X Mark Ⅲをぶら下げる。このスタイルで半日ほどブラブラと散策したが、ほとんど負担は感じなかった

 

これはもう手放せない! 唯一無二の“超望遠”高倍率ズーム「タムロン18-400mm」と行く珠玉の撮影旅 in 箱根

一眼レフカメラ用交換レンズは数多くあるが、そのなかでも7倍や10倍といった高いズーム倍率を持ち、1本持っておくとさまざまなシーンに対応できて便利なのが「高倍率ズーム」と呼ばれるカテゴリのレンズだ。こうしたズームレンズは、35mm判換算で28~450mm相当程度の製品が主流となっているが、2017年7月に登場したタムロンの「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028/以下18-400mmと表記)」は、望遠側を大幅に拡張した28~600mm相当(キヤノン用は28.8~640mm相当)を実現。カメラ愛好家の間で瞬く間に大きな話題となった。このようにスペック的には申し分のない同レンズだが、気になるのは実際の描写や使い勝手。そこで今回は、日帰りの旅を想定して神奈川県・箱根町に赴き、その実力をチェックした。

【今回の旅の相棒】

20171129_y-koba5 (5)

タムロン
18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028)
メーカー希望小売価格/9万円(税抜)

3段繰り出し式鏡筒の採用などで、高倍率ズームレンズとしてはほかに類を見ない超望遠400mmを実現。操作感がスムーズで広角から望遠まで一気にズーミングしても引っ掛かりがなく快適だ。マウント基部に「ルミナスゴールド」と呼ばれるリングをあしらった新デザインの採用で、外観もすっきりとした印象。屋外での撮影に配慮し、簡易防滴構造も施されている。2017年12月現在では、キヤノン用・ニコン用が用意されている。

■詳しい製品紹介はコチラ
http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

 

※本記事の作例はキヤノン用レンズを用いて撮影しています

 

広角から超望遠まで、この1本で驚異的な画角をカバー

はじめに、本レンズの概要をおさらいしておこう。焦点距離は冒頭にも記したように18~400mmで、APS-Cサイズセンサー採用の一眼レフカメラ用となっているため、画角は28.8~640mm相当(キヤノン用。以下同じ)。1本で本格的な広角撮影から超望遠撮影まで可能となっている。開放絞りはF3.5-6.3で、高倍率ズームレンズとしては標準的な仕様。大口径レンズではないので極端に大きなボケは期待できないものの、円形絞りの採用で自然なボケ描写が得られる。

20171129_y-koba3_3

持ち歩きの際に気になる質量は、レンズ単体で約710g(キヤノン用)。エントリークラスの一眼レフカメラボディが500~600g程度なので、その場合はボディと合わせても1.5kgを切る軽さとなる。長さは約123.9mm(キヤノン用)と、ダブルズームキットなどの望遠ズームと同程度。実際にボディに装着して手に持ってみると、レンズ鏡筒をしっかりと持ってホールディングすることができ、安定して撮影できる。日帰り旅に持っていくバッグでも十分に収納できる大きさで、当然のことながら、ダブルズームキットを持っていくよりもかなり少ないスペースで済む。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑今回はミドルクラスのボディと組み合わせて使用したが、それでもボディとレンズを合わせて1.5kgを切る軽さで、片手でも無理なく持てる

 

画角変化に驚愕! レンズ交換なしでこれほど違う写真が撮れる

ここからはいよいよ実写編。高倍率ズームでまず注目したいのが画角変化だ。ズーム倍率22.2倍という驚異的な数値をもつ本レンズなら、なおさら気になるところ。そこで早速、広角端と望遠端で芦ノ湖を前景に富士山を撮影してみた。28.8mm相当となる広角端では、芦ノ湖、富士山に加えて青空を広々と写すことができた一方で、640mm相当となる望遠端では富士山の山肌の様子を大きく写すことができ、改めてその画角変化に驚いた。まさに、“超望遠”高倍率ズームレンズと呼ぶにふさわしい。

20171129_y-koba5 (1)↑広角端の18mm(28.8mm相当)で撮影。手前の木々や芦ノ湖、富士山を入れたうえで空を広々と写し込むことができた

 

20171129_y-koba5 (4)↑望遠端の400mm(640mm相当)で撮影。超望遠域らしく、富士山の山頂付近のみを大きく写し、山肌の質感を克明に再現することができた。18mm(28.8mm相当)の写真と見比べると、そのズーム倍率の凄さがわかる

 

一般的な標準ズームに比べると広角端は同等となるが、標準ズームの望遠端は長いものでも70mm(112mm相当)程度までであり、その差は歴然。ダブルズームキットの望遠端に多い300mm(480mm相当)と比べても、1回りほど被写体を大きく撮れる印象だ。

20171129_y-koba5 (2)↑一般的な標準ズームレンズ(キットレンズ)の望遠端は50mmや70mmのものが多い。この写真は70mm(112mm相当)で撮影したものだが、富士山のアップの写真としてはやや物足りない印象だ

 

20171129_y-koba5 (3)↑ダブルズームキットや一般的な望遠ズームの望遠側は200mmから300mm程度のものが多い。この写真は300mm(480mm相当)で撮影したもの。富士山を十分にアップで写せたが、400mm(640mm相当)のほうが1回りほど画角が狭く、迫力のある写真となっている

 

広角~超望遠を生かした多彩な描写が可能

次に芦ノ湖の湖畔に出て遊覧船を撮影。広角・望遠の両方をうまく生かすことで、同じ場所・被写体でありながら異なる印象の写真に仕上げることができた。

20171129_y-koba6 (1)↑まずは18mm(28.8mm相当)で桟橋に停泊する2艘の遊覧船を撮影。適度に遠近感が強調され、船が堂々と見える。また、青空を広く入れたことでさわやかさの感じられる写真になった

 

続いて、出港後かなり遠くまで行った船を400mm(640mm相当)で撮影。どっしり大きく写すことができ、その引き寄せ効果を改めて実感した。

20171129_y-koba6 (2)↑望遠端である400mm(640mm相当)を使って、遊覧船が画面に収まる距離で撮影。肉眼でははっきり確認することはできなかったが、超望遠で引き寄せることで遊覧船の奥を通過しようとしている小型ボートを発見。画面に収まりのいい位置にボートが来るのを待って撮影した

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑撮影位置から見ると、遊覧船までの距離はかなり離れている。このレンズを使えば、これだけ離れていても船を大きく捉えることができる

 

その後、火山活動を続ける大涌谷に移動し、立ち込める白煙の様子を撮影。50mm(80mm相当)付近で白煙全体を、400mm(640mm相当)で白煙の噴出している部分のアップを狙った。こうした中望遠から超望遠での撮影を行う場合、ダブルズームキットではレンズ交換が必要になるケースが多いが、この18-400mmならレンズ交換なく素早く撮影できる。取材時、大涌谷は火山活動の影響でハイキングコースや自然研究路に立ち入ることができず、白煙に近寄って撮ることはできなかった。それでもこのレンズがあれば、その様子を迫力満点に撮ることができるのだ。

20171129_y-koba6 (3)↑中望遠となる50mm(80mm相当)域を使って、白煙が立ち上る様子を撮影。これだけでもその荒々しさが伝わってくる

 

20171129_y-koba5 (8)↑400mm(640mm相当)で白煙が噴出している部分を拡大。中望遠のものに比べると、その勢いが感じられより迫力のある写真になった。こうした画角の違いによる写りの変化を1本で素早く楽しめるのも、本レンズの魅力だ

 

また、大涌谷にはロープウエイが通っており、このロープウェイ越しに山やさらに遠くの街並みを望むことができる。そこで、400mm(640mm相当)を使ってロープウェイのゴンドラと山、遠くの街並みを1枚に収めてみた。200mmや300mmでも同じような構図で撮ることはできるものの、400mmでの圧縮効果は圧倒的で、F11まで絞り込んで撮影することで街並みの様子を大きく写すことができた。

20171129_y-koba5 (9)↑手前のゴンドラから奥の街並みまでは相当な距離があったが、400mm(640mm相当)の圧縮効果を使うことで遠近感が消失し、ゴンドラの眼下に街が広がっているかのような写りとなった。逆に、広角で撮影すれば遠近感を強調した描写が可能

 

マクロレンズ的な使い方やボケを生かした撮影も楽しい

このレンズは、22.2倍というズーム倍率もさることながら、最短撮影距離が45cmと短く、マクロレンズ並みに被写体に近寄って撮れるという点も魅力。加えて、400mmでは約0.34倍の最大撮影倍率で撮れるほか、広角端の18mmでも被写体に近寄って背景を広く入れた写真を撮ることができる。今回の撮影行では、広角で仙石原のススキを背景を生かしながら撮影したり、紅葉の葉1枚を400mmで大きく写したりすることができた。いずれも絞りをできるだけ開けて背景のボケもチェックしてみたが、広角・望遠ともに十分なボケ描写を得ることができた。開放F値が控えめでも、近接撮影ならボケ量が大きくなって被写体を引き立てることができるのだ。

20171129_y-koba5 (10)↑18mm(28.8mm相当)を使用して最短撮影距離付近でススキを撮影。広角域で被写体に近寄ることで、このように手前の被写体を大きく写しつつ、背景を広く写し込むことが可能。絞りを開放付近に設定すれば、適度に背景をぼかすこともできる

 

20171129_y-koba5 (11)↑400mm(640mm相当)を使用し、最短撮影距離付近で紅葉した葉をアップで撮影。背景が大きくぼけ、葉の形を印象的に表現することができた。紅葉を撮るときは、逆光で葉が光に透ける様子を撮ると色鮮やかな印象に撮れる

 

近接撮影という意味では、旅の楽しみの1つである料理や旅先で見つけた小物などを撮る場合にも、このレンズは実力を発揮する。その場合は、焦点距離を30~50mm程度にして被写体に近寄って撮れば適度な距離から被写体を撮ることができ、写りも自然な写真に仕上がる。今回は昼食のハッシュドビーフを写してみたが、50mm(80mm相当)で被写体に近寄って撮ることで、柔らかく煮込まれた牛肉の様子をアップで切り取ることができた。

20171129_y-koba5 (12)↑手持ちでハッシュドビーフを撮影。ズームを標準から中望遠域(35~50mm程度)に設定すると、遠近感による誇張が少なく、見た目に近い印象で撮影できる。また、そうすることで被写体から適度な距離を保っての撮影が可能。ここでは50mm(80mm相当)で撮影した

 

手ブレ補正機構「VC」がブレのない撮影をサポート

夕方には箱根ガラスの森美術館に立ち寄り、屋内に展示されたヴェネチアン・グラスや屋外のライトアップされた(クリスタル)ガラスのオブジェなどを撮影。屋内展示では、フラッシュの使用が禁止のため室内灯での撮影となったが、カメラの高感度を使い、高い評価を得ているタムロンの手ブレ補正機構「VC」を有効にすることによって、アップでもブレなく撮ることができた。

20171129_y-koba5 (13)↑屋内に展示されたヴェネチアン・グラスのフタに施された模様をアップで撮影。準マクロ域でも手ブレ補正が機能し、手持ちでもブレなく撮れた

 

屋外のライトアップされたガラスのオブジェは、主に広角側で撮影。ここでも手ブレ補正機構「VC」を使うことで、三脚を使うことなく撮影を楽しめた。手ブレ補正は日中での望遠撮影で有効なほか、こうした薄暗くなりがちな屋内撮影や夕景・夜景撮影など多くのシーンで有効で、三脚を携行しにくい旅先での撮影の幅を大きく広げてくれる。

20171129_y-koba6 (5)↑広角端の18mmを使って、手前と奥にある木の遠近感を生かしながら幻想的な輝きを撮影。手ブレ補正は搭載されているが、夕景や夜景を撮る場合は、広角側を使うとぶれにくくて安心だ

 

このほかにも、紅葉を撮影して解像感などをチェックしたり、鉄道を撮影して動きモノを追尾する際のAFの作動をチェックしたりしたが、いずれも高倍率ズームレンズとしては良好な結果が得られ、満足できる写真を撮ることができた。画質面では、3枚のLD(異常低分散)レンズやガラスモールド非球面レンズ、複合非球面レンズの採用で収差を抑えつつ十分な解像感を保っており、AFは、タムロン独自の「HLD (High/Low torque-modulated Drive)」が採用され、高倍率ズームレンズとしては高速かつ静かなAFが可能。被写体の追尾もスムーズで、不用意にピンボケになるようなこともなかった。

20171204_y-koba1_01_R↑箱根湯元に向かう特急列車を撮影。AFをコンティニュアスに設定して高速連写モードを使用したが、モーターに独自の「HLD」が採用されたことでAFのレスポンスも良く、快適に撮影できた。精度も高く、今回連写したすべてのカットでピントが合っていた

 

【結論】汎用性が高く、エントリーユーザーからベテランユーザーまでおすすめできる1本

今回はタムロン18-400mmの旅撮影での実力をチェックしたわけだが、実際に1日撮影してみてわかったのは、このレンズの守備範囲が非常に広いということ。広角や超望遠での撮影はもちろん、近接撮影まで楽しめ、室内や夕景・夜景の撮影にも強いのだ。これだけの汎用性があれば、旅撮影に限らず、ほとんどの撮影場面で不自由することはないだろう。

 

ベテランユーザーのなかには、「高倍率ズームはF値が暗い」と敬遠する人もいるかもしれないが、最近のカメラは高感度性能がアップしており、ISO400や800といった少し高めの感度に設定しておけば失敗なく撮影が楽しめるはずだ。超広角やより大きく質の高いボケ描写、あるいは画面の隅々までの高画質を求めるなら、それぞれ専用のレンズが必要になるとは思う。とはいえ、1本でこれほど幅広い被写体に対応でき、手軽かつ必要十分以上の描写力が得られるレンズは、いまのところこのタムロン18-400mm以外に存在しないのではないだろうか。そういった点を踏まえると、エントリーユーザーが最初に買う1本としてはもちろん、機動性を重視したいベテランユーザーまで幅広い人におすすめできる優秀な1本と言える。何かと荷物が増えがちな年末年始の旅行でも、本レンズの守備範囲の広さと機動力が大活躍するはずだ。

 

■詳しい製品紹介はコチラ
http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

 

【スポット紹介】

20171129_y-koba6 (4)

箱根ガラスの森美術館

緑豊かな箱根仙石原にある、日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館。作例に挙げたクリスタル・ガラスのツリーは12月25日まで展示される。

日立のいいとこ全部出た! 8項目テストまとめで「ふっくら御膳」は「失敗したくない人」へのベストアンサーと判明

本サイトでは、主要メーカーのハイエンド炊飯器のなかでも人気の高い5機種を集め、徹底的に比較・検証した記事を連載してきました。今回は、日立「ふっくら御膳 RZ-AW3000M」の検証をまとめ、その個性に迫っていきます。検証によると、ご飯の味のバランスが良いほか、少量炊飯や保温など、細かい部分にも配慮が感じられ、あらゆる面でバランスが取れた良機ということが判明。以下で詳しく見ていきましょう!

 

【今回テストするのはコチラ】

内釜の底に鉄の粒子を打ち込み効率的な発熱と高い伝熱性を両立

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日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

実売価格10万7780円

水温を60℃以下で米にしっかり吸水させる「高温浸し」と独自の圧力スチーム技術を搭載。ふっくら艶やかで甘み豊かなごはんに炊き上げる。アルミ合金の内釜の底に発熱性の高い鉄の粒子を打ち込むことで効率的な発熱と高い伝熱性を両立し、内釜全体に素早く熱を伝えることで炊きムラを抑える。0.5合でもおいしく炊き上げる「少量炊き」機能も特徴。「蒸気カット」機能付きで、キッチン棚の中で使っても棚の天面が濡れず、設置場所の自由度が高い。

SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:145wh●保温1時間あたりの消費電力量:13.7Wh●加熱方式:圧力スチーム炊き●内釜:高伝熱 打込鉄・釜●サイズ/質量:約W268×H237×D352mm/約6.6kg

 

【テストその1 食感・味の傾向は?

最も上質な炊飯ができるコースで炊き上げ、その香りや味、食感を比較しました。お米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。コシヒカリの強い味わいと、ササニシキのさっぱりした味の中間にあたる、バランスの取れた味のお米です。米は3合で炊飯。今回は機種の味の傾向を知るために、中庸(ふつう)の食感設定を選択しました。

20171115-s2-0

また、食感と食味は炊きたてに加え、冷やごはんと冷凍・再加熱したものについてもチェックしています。冷やごはんは、炊きたてをラップに包んでおにぎりにし、室温で5時間ほど冷ましたものを試食。冷凍ごはんは、炊きたてをラップに包んで冷凍庫で冷凍し、1日経ったものを電子レンジで温めました。

 

<炊き上がり>

バランスのいい味と食感で噛むほどに甘みが増してくる

極上炊き分けの「ふつう」で炊飯。他機種と比べるとやや控えめながら、昔ながらの「炊き立て」のいい香りがしっかり広がります。ごはんのハリ、つやもまずまず。食感は柔らかくなりすぎず、ほどよい弾力と粘りがあります。口のなかで米がほどける食感もあり、バランスのいい炊き上がりだと感じました。味は最初甘さやや控えめに感じましたが、噛むほどにどんどん甘みが増します。

↑米粒のかたちはスリムで、しゃっきり感を感じさせながら、つや感もしっかりあります。食感と味のバランスの良さが、画像からも伝わってきます↑米粒のかたちはスリムで、しゃっきり感を感じさせながら、つや感もしっかりあります。食感と味のバランスの良さが、画像からも伝わってきます

 

<冷やごはん(おにぎり)>

ややベタつくが、ほどける食感と雑味のない味が堪能できる

冷やごはんは、ベタつきがやや感じられますが、口の中でほどける食感は健在。モチモチした食感がやや出てきたように感じました。雑味のない甘みも堪能できます。

↑冷やごはんになって、米のつやが一段と増した印象。冷めてもごはんの味と食感のバランスは健在でした↑冷やごはんになって、米のつやが一段と増した印象。冷めてもごはんの味と食感のバランスは健在でした

 

<冷凍・再加熱>

粘りが強く出てきたが、甘みが増してくる特徴は変わらず

一方、冷凍ごはんを温めると粘りがかなり強くなり、少し団子感が出てきました。表面の水分が飛んだせいか、やや固めに感じる部分もあります。最初はさっぱりでどんどん甘さを増すおいしさは、冷凍でもしっかり味わえます。

↑これも炊き立てと比べると、米のつや感とハリがだいぶなくなってしまいました。かたちもやや崩れ始めています↑これも炊きたてと比べると、米のつや感とハリがだいぶなくなってしまいました。かたちもやや崩れ始めています

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストその2 食感炊き分けの幅は?】

その炊飯器で「最もしゃっきり硬めの食感に炊き上げるモード」と、「もっとももちもちに炊き上げるモード」で炊飯。それぞれの食感の違いを見ることで、その機種が実現できる食感の幅を確認しました。

さっぱりした食感がベースで、「もちもち」モードでももっちり度は控えめ

本機の白米の炊き分け機能は「極上ふつう」と「極上しゃっきり」「極上もちもち」の3種類のみ。ここでは、「極上しゃっきり」「極上もちもち」を試してみました。

20170828-s1 (17)

「極上しゃっきり」で炊いたごはんはその名の通りしゃっきり硬めの食感。わずかに粘り気がありますが、食べるとほろりとほぐれます。甘みはすっきりで、炊き立てのごはんの風味がありながら、粒感が立っている感じです。今回検証した5モデルの中では三菱電機に次いで、しゃっきり感を強く感じました。

米粒の周りにおねばをまとって、口に入れた瞬間は粘り気を感じますが、そのあとしゃっきり食感に変わります。他の機種にはない、独特のしゃっきり感です↑米粒の周りにおねばをまとっており、口に入れた瞬間は粘り気を感じますが、そのあとしゃっきり食感に変わります。他の機種にはない、独特のしゃっきり感でした

 

一方、「極上もちもち」で炊いたごはんのほうは、もちもち度は他機種ほど高くなく、口の中でほぐれる食感が感じられました。パナソニックや象印の食感設定を「ふつう」にして炊いた場合より弾力は弱く、柔らかさも他機種と比べると控えめ。ただし、ごはんの甘みはかなり強くなっていました。

↑見た目のつやは豊かですが、「もちもちモード」で炊いた割には、弾力や粘り気は他機種ほど強くなりませんでした。ただ、茶碗によそってしばらく経つと、少しもちもち感が上がりました↑見た目のつやは豊か。「もちもちモード」で炊いた割には、弾力や粘り気は他機種ほど強くなりませんでした。ただし、茶碗によそってしばらく経つと、少しもちもち感がアップ

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストその3 少量炊飯の炊き上がりは?】

これまで同様、米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。米1合を標準(ふつう)の食感設定で炊飯し、3合炊きしたときのごはんの味・食感との違いをチェックしました。

「少量」ボタンで3合炊飯とほぼ変わらないおいしさに

本機の特徴は、0.5合〜2合の炊飯に適した「少量」ボタンを搭載していること。3合を炊いたときと同じ「極上ふつう」モードで少量1合を選択して炊飯しました。

 

炊き立てを食べた第一印象は、「3合炊飯とほとんど味と食感が同じ」だということです。香りは他機種と比べるとやや穏やかですが、炊き立てごはんのいい香りが広がります。食感は柔らかながら、適度な粘りがあり、食べると口の中でほどよくごはんがほどけます。最初は控えめながら、食べ進むうちにどんどん甘くなっていく味わいも前回と同じでした。

20170822-s3 (9)_R

↑炊き立てはおねばがつやつや光っていましたが、表面の水分がある程度飛ぶと、ツヤが落ち着いてきました。3合を炊いたときと見た目もほとんど同じです↑炊き立てはおねばがつやつや光っていましたが、表面の水分がある程度飛ぶと、ツヤが落ち着いてきました。3合を炊いたときと見た目もほとんど同じです

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストその4 保温性能は?】

最もオーソドックスなモードで、3合炊きしたごはんを24時間保温。炊飯6時間後の味と食感とニオイ、24時間後の味と食感とニオイをチェックしました。

保温6時間後の食感・食味は申し分なし

本機は、「スチーム40時間保温」を搭載しており、炊飯時に出た蒸気を水に変えて備蓄し、保温時に定期的にスチームとして釜内に送り込みます。保温モードは、ごはんの変色や乾燥を防ぐ「保温低」(40時間以内)と、高めの温度でふたの内側や内釜につゆがつくのを抑える「保温高」(12時間以内)の2種類ありますが、今回は保温時間の長い「保温低」で試してみました。

 

保温6時間後のごはんは、炊き立て時の米の弾力と粘り気が持続していました。甘みも変わらず、ニオイもまったくありません。全体の食味・食感は申し分ないです。

↑チェック時にはつやがだいぶなくなった印象でしたが、写真を見るとまだまだつやとハリをキープしています↑6時間の保温後もまだまだつやとハリをキープしています

 

24時間保温したごはんは、さすがにニオイが少し出始めていて、全体の食味はやや劣化した印象。食感もかなり柔らかくなっていますが、食べている間にほどける感覚と、米一粒一粒の弾力はまだ残っていました。

↑24時間経って、色はかなり黄色っぽくなっています。ごはんのハリ、つやもなくなってしまいました↑24時間経って、色は黄色っぽくなっています。ごはんのハリ、つやも少なくなりました

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストその5 操作性/メンテナンス性は?】

「操作性」に関しては、炊飯設定する際の液晶パネルの見やすさや、ボタン操作のしやすさをチェック。特に、目的の炊飯設定にするまでの工程に注目し、取扱説明書を見なくても炊飯設定がスムーズにできるかどうかを確かめました。「メンテナンス性」に関しては、炊飯後に洗うパーツの数や洗いやすさ、フレームに付いた汚れや露の拭き取りやすさをチェックしました。

<操作性>

「戻る」ボタンが欲しいが、見やすいパネルと「少量」ボタンは便利

高級炊飯器のなかでは貴重なタテ長の液晶パネルを採用。パネルのサイズが大きく、バックライト式で文字もくっきり表示されます。「お米」ボタンで米の種類や「調理モード」を選択。「メニュー」ボタンで炊飯メニューや調理メニューの選択をします。「お米」ボタンも「メニュー」ボタンも1回押すと右側のメニューに移動する方式で、「戻る」に相当するボタンがなく、特にメニューボタンで1回押しすぎるともう一周する必要があるのが面倒でした。

↑液晶パネルの左に「お米」「メニュー」「少量」ボタンを配置。「少量」ボタンが独立しているのは、少量で炊くことが多い家庭にはメリットです↑液晶パネルの左に「お米」「メニュー」「少量」ボタンを配置。「少量」ボタンが独立しているのは、少量で炊くことが多い家庭にはメリットです

 

↑「お米」「メニュー」ボタンを押すと、選択したメニューが点滅して表示されます。メニュー選択の際に「戻る」ボタンがないのがやや不便なので、時刻設定の左右キーを「戻る・進む」キーと共用できるよう、設定できるとよかったかなと思います↑「お米」「メニュー」ボタンを押すと、選択したメニューが点滅して表示されます。メニュー選択の際に「戻る」ボタンがないのがやや不便なので、時刻設定の左右キーを「戻る・進む」キーと共用できるよう、設定できれば良かったです

 

<メンテナンス性>

内ぶたは洗うパーツが多いが、内釜は軽量で毎日の手入れがラク!

炊飯ごとに洗うパーツは内釜と「給水レスオートスチーマー」(内ぶた)。「給水レスオートスチーマー」はさらにふた加熱板とプレート、蒸気口上ケースに分解して洗います。ふた加熱板の裏には調圧ボールが付いていて、これも丁寧に洗う必要があります。

↑写真左上が内釜、左下がプレート、右下がふた加熱板、右上が蒸気口上ケース↑写真左上が内釜、左下がオートスチーマープレート、右下がふた加熱板、右上が蒸気口上ケース

 

内釜は708gと、今回検証した高級炊飯器の5モデル中最軽量。軽くて丈夫で洗いやすく、扱いやすいです。また、フレームはステンレス製でフラット。つゆ受け部が窪んでいて、つゆが集まるようになっています。

↑内釜はアルミをベースに発熱効率の高い鉄を打ち込んだもの。高火力炊飯を可能にしながら、圧倒的に軽いのが魅力です↑内釜はアルミをベースに発熱効率の高い鉄の粒子を打ち込んだもの。高火力炊飯を可能にしながら、圧倒的に軽いのが魅力です

 

↑ふた可動部の下のつゆが溜まりやすい場所に窪みがある。つゆ受け部も含め、フレーム部表面にはステンレスが使われているので、汚れが拭き取りやすいです↑ふた可動部の下のつゆが溜まりやすい場所に浅い窪みが。つゆ受け部も含め、フレーム部表面にはステンレスが使われているので、汚れが拭き取りやすいです

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストその6 独自機能/設置性は?】

「独自機能」は各炊飯器に搭載されている、ごはんのおいしさにつながる独自の機能や技術、炊飯のバリエーションを広げる機能などをチェックします。また、使い勝手向上やお手入れの手間を省く便利機能も見ていきます。

 

「設置性」に関しては、横幅と奥行き、重さを確認します。また、炊飯中の蒸気の出方もチェック。さらに、設置性を高める独自の工夫があれば、それもチェックしていきます。

<独自機能>

玄米の3通りの食感炊き分けができ、「少量炊飯」モードも便利

本機は内ぶたに「給水レス オートスチーマー」を搭載。炊飯中の蒸気を水に戻して回収し、蒸らしや保温時に再びスチームにしてごはんに潤いを与えます。またこれにより、外に出る蒸気の量を少なくしているのも特徴です。

↑内ぶたに「オートスチーマー」を装備。ふた加熱板とプレートの間に貯めた水をヒーター加熱し、7つの穴からスチームとして放出します↑内ぶたに「オートスチーマープレート」を装備。ふた加熱板とプレートの間に貯めた水をヒーター加熱し、7つの穴からスチームとして放出します

 

食感炊き分けは3種類と少なめですが、玄米も3種類の食感に炊き分けられるのはメリット。玄米の「おかゆ」のほか、玄米の「炊込み」メニューを搭載しているのも特徴です。

 

さらに、少量炊き専用のボタンを搭載し、ボタンを押すだけで少量炊飯に適した炊き方に変えられる点は、1〜2人世帯にはうれしい機能です。

↑「少量」ボタンを1回押すと1合用に、2回押すと2合用に切り替わります。3回押すと少量モードが解除されます↑「少量」ボタンを1回押すと0.5~1合用に、2回押すと1.5~2合用に切り替わります。3回押すと少量モードが解除されます

 

ちなみに、内釜の白米(無洗米・雑穀米・発芽玄米)用の水位線には、「やわらかめ」「かため」に炊くための水位線も表示されていて、ユニークです。

↑「かため」の水位線はすしめしやカレー用のごはんに最適。新米を炊くときも「かため」の水位線を目安に少なめの水量にすると、炊き上がりのベタつきが抑えられます↑「かため」の水位線はすしめしやカレー用のごはんに最適。新米を炊くときも「かため」の水位線を目安に少なめの水量にすると、炊き上がりのベタつきが抑えられます

 

<設置性>

「蒸気カット」機能搭載で設置場所の自由度が圧倒的に高い!

本体幅は26.8cmで奥行きは35.2cmというサイズは、今回検証した5モデル中ではパナソニックに近い大きさ。重量は約6.6kgで、三菱電機に次ぐ軽さです。本体に取り付けた「しゃもじ受け」にしゃもじを挿しておけるのも便利です。

↑付属品の「しゃもじ受け」を本体後方下部のフックに取り付けて使用。しゃもじの置き場所に困らず、さっと使えてさっとしまえます↑付属品の「しゃもじ受け」を本体後方下部のフックに取り付けて使用。しゃもじの置き場所に困らず、さっと使えてさっとしまえます

 

他の機種にない設置性での優位点は「蒸気カット」機能を持っていること。これで設置の自由度が圧倒的に高くなります。

↑蒸気口は他機種よりかなり小さめ。白米の炊飯コースではほとんど蒸気が出ていませんでした。ただ、「おこげ」など「蒸気カット」しない炊飯コースもあるので、キッチン用収納棚などに置いて使うときは、注意が必要です↑蒸気口は他機種よりかなり小さめ。白米の炊飯コースではほとんど蒸気が出ていませんでした。ただ、「おこげ」など蒸気カットしない炊飯コースもあるので、キッチン用収納棚などに置いて使うときは、注意が必要です

 

日立

圧力スチーム炊き ふっくら御膳

RZ-AW3000M

【テストのまとめ】

ほどよい弾力や硬さのごはんに炊き上げ、少量炊飯が得意

本機の炊き上がりの食感は、ズバリ「中庸」。「極上炊き分け」の「ふつう」で炊いたごはんはふっくらしながら柔らかすぎず、弾力と粘り、米の粒感のバランスが取れています。

↑米粒のかたちはスリムで、しゃっきり感を感じさせながら、つや感もしっかりあります。食感と味のバランスの良さが、画像からも伝わってきます↑米粒の形はスリム。しゃっきり感を感じさせながら、つや感もしっかりあります

 

最初さっぱりしながら食べるうちに甘みが増してくる味わいも良好です。冷やごはんはややベタつきが出るものの、粒感のなかにモチっと感がもあり。冷凍ごはんを再加熱すると粘りが強くなり、やや硬めの食感に。1合炊飯では「少量」ボタンを使うことで、3合炊きとほぼ同じ味と食感を実現できました。

↑日立の「少量」ボタン↑視認性の高い縦型パネルを採用。パネルの左には「少量」ボタンがあります

 

食感炊き分けは3種類。「しゃっきり」は三菱電機に次ぐしゃっきり感で、「もちもち」で炊いた場合も、もっちり感は象印やパナソニック、タイガーの「標準」で炊いた場合より控えめでした。玄米を3種の食感に炊き分けられるのも特徴です。

 

保温性能は優秀で液晶パネルは視認性が高い

本機はパナソニック同様「スチーム保温」がウリ。保温温度の低いモードで検証したところ、保温6時間後は炊き立ての食感と味をほぼ申し分なく維持していました。操作性の面では、本機は大きめの縦型の液晶パネルを採用しており、視認性は高いです。炊飯設定で、メニューを逆方向から選べるボタンがないのがやや不便でした。

 

「蒸気カット」機能の装備で設置の自由度は最優秀

メンテナンス性については、内ぶたが調圧ボール搭載の放熱板とプレート、蒸気口上ケースの3パーツ構成で洗浄がやや面倒。ただし、内釜が軽く丈夫で洗いやすいのは魅力です。一方、設置性は本機が最も優秀。他機種が炊飯中に大量の蒸気を放出するのに対し、本機は「蒸気カット」機能搭載で通常の炊飯なら蒸気がほとんど出ません。キッチン用収納棚などに置けるのはメリットです。

↑↑日立ふっくら御膳は「蒸気カット」機能により、設置の自由度が高いです

 

上記を踏まえた結果は以下の通りです。

●しゃっきり寄りの食感を好みつつ、バランス重視の人

●玄米を炊き分けて食べたい人。3段階の炊き分け機能や「炊込み」メニューあり

●少量炊飯することが多い人。専用モードあり

●設置スペースが限られている人。「蒸気カット」機能付きで置く場所を選ばない

バランスの良いしゃっきりめのご飯が好みの方に本機はうってつけ。少量炊飯をするケースが多く、設置の自由度が高い蒸気カットタイプということで、少人数世帯にも好まれそうです。このほか、内釜が軽く、日常のお手入れがラクなのもポイントですね。