焼酎を飲むならこんな店【東京・大衆酒場の名店】を振り返る噺

提供:宝酒造株式会社

【前編】【後編】にわたって、パリッコさんとスズキナオさんのおふたりに「関東と関西の酒場事情」について語っていただきました。読めば読むほど、酒場に行きたくなる記事でしたが「では、どんなお店に行こうか?」という悩みも増えてしまったかもしれません。

 

そこで今回は、東京・下町の酒場を様々な切り口で紹介してきた【東京・大衆酒場の名店】シリーズを振り返ります。この記事を読んでおけば、東京の酒場選びで迷うことはなくなるはず!

 

 

江戸の水路が下町の大衆酒場を生んだ

「酒噺」では【東京・大衆酒場の名店】と題して、味わい深い東京・下町の酒場カルチャーを紹介してきました。まずは、大衆酒場のルーツに触れる記事として注目したいのが第2回。江戸川区・篠崎の「大林(おおばやし)」で、なぜ、東京の下町には大衆酒場が多いのかという理由を、大衆酒場に詳しい藤原法仁(のりひと)さんに教えてもらいました。

↑右が大衆酒場に詳しい藤原法仁さん。左は【東京・大衆酒場の名店】シリーズのナビゲーターを務めた中村優さん

 

藤原さんによると、東京はもともと入江や川が多く、江戸時代から水路と船を活用した物流が盛んでした。そのため川沿いを中心に産業が栄えて人が集まり、街が発展してきたとのこと。

 

その後、水運の利点を生かして工業地帯や企業城下町として発展する街が増加。加えて工場では多くの労働者が働いていますから、その憩いの場として下町に大衆酒場が栄えたのです。

 

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【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

 

東京の酒場を代表する「酎ハイ」

そんな東京の下町で生まれた大衆酒場文化のひとつに「酎ハイ」があります。関東の大衆酒場文化を語るにあたって「酎ハイ」は欠かせないお酒です。そのルーツともいわれているお店が、第3回に登場した墨田区の「三祐酒場(さんゆうさかば) 八広(やひろ)店」です。

 

三代目である現店主の伯父が、かつて京成曳舟駅近くで「三祐酒場 本店」を営んでいた1951(昭和26)年、アメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受けて発明したお酒が「焼酎ハイボール」。これが省略され、「酎ハイ」と呼ばれるようになりました。

 

当時、ウイスキーは希少で高価なお酒でした。その一方、焼酎は安価でしたが精製技術が現代のように優れてはおらず、香りが強くて飲みにくい銘柄も少なくなかったとか。そこで、炭酸水で割るとともに独自のエキス(シロップ)をブレンドすることで、飲みやすい「焼酎ハイボール」が誕生したのです。

↑薄く琥珀色に色づいた「三祐酒場 八広店」の「元祖焼酎ハイボール」

 

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名店が連なる「酎ハイ街道」を往く

墨田区で生まれたとされる「酎ハイ」は、やがて周辺地域の大衆酒場へ広がり、定着していきました。そして現在も、昔ながらの「焼酎ハイボール」を提供する店が30軒以上残っているのが「酎ハイ街道」です。正式名称は、鐘ヶ淵通り。「鐘ケ淵陸橋」交差点から南東方面の東武スカイツリーライン「鐘ケ淵駅」前を抜け、「四ツ木橋南」交差点まで全長2km強の道路です。

↑現在の鐘ヶ淵通り。都市開発による道路の拡張工事が進行し、移転や建て替えなどを余儀なくされた名酒場も少なくありません

 

この地にはかつて巨大企業、鐘淵紡績(かねがふちぼうせき・カネボウの前身)がありました。周辺や鐘ヶ淵通りにはその関連工場が多く、界隈の酒場はその労働者でにぎわっており、その名残がいまも「酎ハイ」とともに輝いているのです。

 

「酎ハイ街道」のなかでも特に有名なのが、第4回で紹介した「亀屋」。焼酎に加えるエキスは各店が独自に考案したものが多く、「亀屋」は現店主の父親にあたる二代目が、従来の「焼酎ハイボール」をブラッシュアップさせる形で1990年前後に新開発しました。

↑「亀屋」の創業は昭和7(1932)年。もともと「鐘ケ淵駅」の隣の停車場「東向島駅」の近くで立ち飲み酒場として始まったそう

 

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【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広「亀屋」の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺

 

お店ごとで違う「酎ハイ」の飲み方

「酎ハイ」はお店ごとに提供方法が異なるのも特徴です。「三祐酒場 八広店」ではサーバーでブレンドした「元祖焼酎ハイボール」を、氷が入ったグラスに注いで半月スライスレモンを加えるスタイル。「亀屋」はグラス、オリジナルの焼酎ハイボールの素(もと)、炭酸水をあらかじめしっかり冷やす“3冷(さんれい)”スタイルで、氷を入れないこともポイントです。これは氷が希少だった昭和のオールドスタイル。「亀屋」はいわば、正統派の下町焼酎ハイボールなのです。

↑「亀屋」名物の「焼酎ハイボール」はグラス、オリジナルの焼酎ハイボールの素(もと)、炭酸水をあらかじめしっかり冷やす“3冷(さんれい)”スタイル

 

なお、篠崎「大林」は、オリジナルの焼酎ハイボールの素、炭酸水、アイスペール(氷ボックス)を個別に提供する三点セット式。贅沢な仕様に加え、好みの濃さで楽しめるのも特徴です。

↑「大林」の「タカラ焼酎ハイボール(赤)」。宝焼酎に独自のエキスを加えた“焼酎ハイボールの素”の入ったグラス、炭酸のボトル、アイスペール(および混ぜるためのジョッキ)の三点セットは珍しく、なおかつ焼酎を受け皿付きで提供する店は希少とか

 

“3冷”を語るうえで覚えておきたいのが、関東の大衆酒場でおなじみの割り材「ホッピー」の作法。“3冷”はメーカーのホッピービバレッジも推奨している飲み方です。【意外と知らない焼酎の噺】では、第8回で詳しく紹介しました。

 

東京生まれの「ホッピー」ですが、東京はもちろん神奈川にも聖地が多くあります。そのひとつが横須賀。“横須賀割り”という「ホッピー」や「酎ハイ」の飲み方が浸透しているこの地を、第9回の「酒蔵お太幸 中央店」で深掘りしました。

↑「酒蔵お太幸 中央店」は、2フロアで合計約200席という広い店内の設えも個性的。1階はコの字とL字を組み合わせた「H型」ともいえる変形カウンター、2階は桟敷(さじき)とテーブル席からなる団体用のレイアウトとなっており、この大箱ならではの開放感も魅力です

 

“横須賀割り”とは、焼酎濃いめで作ったお酒を飲む文化のこと。諸説ありますが、軍港や造船の街として栄えた横須賀では、濃いお酒を飲むことにより海風で冷えた体を温めたとか、酒に強い九州出身者が船で出稼ぎにやってきていたなどが、”横須賀割り”誕生の理由だといわれています。

↑「酒蔵お太幸」の焼酎は130ml〜140ml。「ホッピー」で割って飲む場合の一般的な目安は普通が70ml、濃いめが110mlなので、この量はかなり濃いです

 

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東京を代表する煮込みの名店といえば

東京の大衆酒場において、欠かせない料理が「煮込み」と「もつ焼き」です。【東京・大衆酒場の名店】の初回に登場した立石「宇ち多゛」は、行列店としても圧倒的に有名。同店の特徴は多岐にわたりますが、素材に関してはとにかく鮮度が抜群で、調理や味付けも秀逸です。

↑「宇ち多゛」は開店前から行列のできる人気店

 

「煮込み」はもつと味噌だけで煮込んだ凝縮感のあるおいしさで、「白いとこ(シロの周りの部位やハツモトなど、色が白い部分を中心)」「黒いとこ(フワやレバなどの黒い部位が中心)」と部位別のオーダーも可能。「もつ焼き」にもレバ(肝臓)、シロ(大腸)、ガツ(胃)、アブラ(頬)など部位が多彩にあるうえ、味付けも焼き方もバラエティ豊富です。

↑「宇ち多゛」人気メニューの煮込み

 

↑レバのタレ・普通焼き

 

どれも品切れごめんですが、おつまみもお酒も絶品できわめて良心的な価格設定。独自のルールがあるなどハードルは高いものの、ぜひ「酒噺」を参考に訪れていただきたい一軒です。

↑グラスに並々と宝焼酎を注ぎ、梅のシロップを足す「うめ割り」が有名

 

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東京五大煮込みを堪能する

第8回で紹介した門前仲町「大坂屋」も東京を代表する名酒場であり、なかでも代名詞となっているのが「牛にこみ」。「宇ち多゛」とともに、“東京五大煮込み”に数えられる名店でもあります。

 

「大坂屋」の名物はもちろん「煮込み」。串に刺したもつを煮込むのが特徴です。珍しい三日月形のカウンターには大鍋が設えられ、そこから目の前で提供してもらえるライブ感もたまりません。

↑三日月形のカウンターの中央に鎮座した「煮込み」の鍋が特徴

 

「煮込み」の部位はシロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(喉)の3種で、味付けは味噌ベースとなっています。こちらも野菜などは入らない、甘じょっぱく濃厚な味が魅力。最後は半熟玉子に煮込みの汁をかけて味わう「玉子入りスープ」でシメるのがオススメです。

↑串に刺された「大坂屋」の煮込み。シロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(喉)の3種。味は味噌ベース

 

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【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺

 

カウンターで楽しむ大衆酒場

【東京・大衆酒場の名店】では、門前仲町でもう一軒お店を紹介しました。それが第6回の「だるま」。横長のコの字型カウンターや、両親の遺志を継いだ二代目姉妹の連携プレーなど見どころは満載です。

↑奥から1席・9席・4席の横長タイプの「コの字」カウンター

 

看板メニューとなっているのが「牛モツ煮込み」。もつの部位は牛の大腸と小腸で、具材にはこんにゃくと玉ネギも使用。それらを米味噌とザラメで味付けた、パンチのある甘じょっぱさも魅力です。

↑「だるま」の「牛モツ煮込み」。秘伝の米みそとザラメで味付け

 

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【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「だるま」で、コの字カウンター劇場を堪能する噺

 

大衆酒場の定番つまみである「煮込み」は、お通しで提供するお店も少なくありません。そのお通しを、しかもサービスで提供してくれるのが、第7回で紹介した船堀の「伊勢周」。

 

同店は、個性的なL字型カウンターであることも特徴。店内スペースにも卓上にもゆとりがあり、厨房側からも座れる対面式のカウンターは非常に珍しい設計といえるでしょう。

 

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【東京・大衆酒場の名店】船堀「伊勢周」で、L字カウンターの機能美を楽しむ噺

 

いかがでしたか? 今回紹介したお店はどれもシリーズのタイトルどおりの「名店」ぞろい。気になったお店があればぜひ訪問してみてください! 次回は関西のお店を巡ったシリーズを振り返りますのでお楽しみに!

 

 

「東京・大衆酒場の名店」バックナンバーはこちら▼

・第1回 【東京・大衆酒場の名店】この緊張感は何だ? 行列しても入りたい立石「宇ち多゛」の強烈な魅力の噺

・第2回 【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

・第3回 【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

・第4回 【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広「亀屋」の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺

・第5回 【東京・大衆酒場の名店】四ツ木「ゑびす」で、自家製ロックアイスのお茶割りを味わう噺

・第6回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「だるま」で、コの字カウンター劇場を堪能する噺

・第7回 【東京・大衆酒場の名店】船堀「伊勢周」で、L字カウンターの機能美を楽しむ噺

・第8回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺

・第9回 【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

・第10回【東京・大衆酒場の名店】渋谷に復活!「立呑 富士屋本店」のカウンターで伝説の立ち飲みを楽しむ噺

・番外編 大衆酒場の酎ハイに欠かせない「下町炭酸」を飲み比べる噺

・番外編 焼酎ハイボールに合う!「東京・大衆酒場の名店」のおつまみを、約5000円の調理家電で再現する噺

ニッポンのお茶割りを日本茶好き欧米人はどう評価する?こだわり尽くした“至高のお茶割り”をつくってみた

提供:宝酒造株式会社

誰でも手軽においしくつくれるお茶割りは、コスパの高さから、近年は若者に至るまで幅広い年齢層に人気。このお茶割りにフォーカスした当企画の第1回第2回では、「焼酎」の面から魅力について語ってきました。この第3回で取り上げるのはお茶割りのもう一方の主役である「お茶」。

 

お茶割りは茶葉のグレードによって違いが出るのか? お茶割りに適した茶葉とはどんなものか? ……解説していただくのは、18歳の時に故郷スウェーデンで日本茶に魅せられ、日本茶インストラクターの資格を取得し日本茶を世界に広めるまでに至った、ブレケル・オスカルさん。今回も「極上〈宝焼酎〉」を使い、とっておきの茶葉を用いた“至高のお茶割り”をつくっていただきました。

 

 

宝酒造
極上〈宝焼酎〉

ポイント
・ピュアなアルコールに、大麦やトウモロコシを原料とした貯蔵熟成酒をブレンド。
・すっきりした飲みやすさと芳醇な香味を両立しており、お茶をはじめあらゆる割材と好相性。
・アルコール度数25度、220ml〜4Lまでの13アイテムをラインナップ。(写真は600ml)

日本茶インストラクター/ブレケル・オスカル
1985年スウェーデン生まれ。18歳時に地元の紅茶専門店で日本茶に魅了され、その後ルンド大学日本語学科を経て岐阜大学に留学。卒業後は日本企業で働きながら2014年に「日本茶インストラクター」の資格に合格。静岡農林技術研究所茶業研究センターで研修後、外国人初の手揉み茶の教師補の資格を取得。2016年世界緑茶協会「O-CHAパイオニア賞CHAllenge賞」受賞。現在は国内外で日本茶を紹介するPR活動に邁進する。著書に『おいしさ再発見!魅惑の日本茶』(NHK出版)など。

 

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お茶割りに「極上〈宝焼酎〉」が合う理由を宝酒造の開発担当者に直撃!

 

 

お茶割りは理に適った素晴らしいお酒

「お茶割りはもちろん、お酒全般を楽しみますよ」と微笑むブレケルさん。焼酎や日本酒などの和酒にも詳しく、その知見からお茶割りの魅力をこう語ります。

 

「日本の緑茶は不発酵茶で香りや甘みがフレッシュですが、とてもデリケートです。お酒とブレンドすると本来の風味が損なわれやすいのですが、焼酎はクリアな酒質なので、その心配がありません。つまり、お茶割りは理に適った、素晴らしいお酒なんです」(ブレケル・オスカルさん、以下同)

↑日本茶の視点からお茶割りの魅力を語るブレケル・オスカルさん

 

とくにすっきりした甲類焼酎がお茶に合うとブレケルさん。そのなかでも「極上〈宝焼酎〉」は、お茶の甘みやうまみと調和するコクがあり、お茶とはベストな組み合わせなのだそう。

 

「甲類焼酎の魅力は、お茶の香りを邪魔しないこと。『極上〈宝焼酎〉』は、すっきりしていながらも絶妙なうまみや甘やかな香りがあり、贅沢な味わいをもつからこそ、お茶割りをよりおいしくするのでしょう」

 

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香りに個性があるお茶がお茶割りに合う

日本茶を愛してやまないブレケルさんが、日本茶の魅力を世界中の人々にもっと楽しんでもらうために立ち上げたのが「Senchaism(センチャイズム)」。単一の品種を単一の茶園で栽培と製造、仕上げられたシングルオリジンの日本茶を中心としてブランドを展開しています。そんな、ブレケルさんに、お茶割りに合うお茶とは、どんな味や香りなのかを尋ねました。

 

「基本的に、日本の緑茶ならどれでも合います。ただ、いろいろな茶葉を試してみたところ、香りに個性があるお茶でつくると、よりその魅力が引き立つと実感しました」

 

今回、ブレケルさんが用意してくれたのは静岡県で栽培されている「香駿(こうしゅん)」という茶葉。

↑「LOVE AT FIRST SIP 香駿」

 

「香駿は豊かな香りが特徴の品種です。お茶本来のうまみと渋味のバランスが良いうえ、ハーブやフラワーのニュアンス、フレッシュな森林の面影、さらにシナモンを思わせる甘やかさも。それぞれの個性は繊細ながらも、焼酎のお茶割りであればその魅力がしっかり感じられます」

 

実際に「香駿」を淹れてもらいましたが、その芳醇な香りがすぐに部屋中に広がりました。

 

ちなみに味わいや香りのほかにも、産地に注目して選ぶのも良いとのこと。例えば、焼酎の名産地である九州産の茶葉と合わせるのもオススメだとか。

 

「『極上〈宝焼酎〉には宮崎県の黒壁蔵の樽貯蔵熟成酒が3%含まれています。それなら宮崎県産の茶葉と組み合わせるのも面白いのではないでしょうか。また、全国で栽培されている品種『やぶきた』も、焼酎の産地とのテロワールを意識すると、新たな味わいを発見できるかもしれません」

 

 

至高のお茶割りのつくり方

それではブレケルさんに、「極上〈宝焼酎〉と「LOVE AT FIRST SIP 香駿」を使った“至高のお茶割り”をつくっていただきましょう。

 

1.グラスに氷と焼酎を入れる

「まずは、氷をたっぷり入れたグラスに『極上〈宝焼酎〉』を注いで混ぜておきます。ブレンドの割合は、焼酎1に対してお茶が4。ベースのアルコール度数が25%なら、割ると5%となります」(ブレケルさん)

 

2.茶葉を多めに、濃く淹れる

「通常、約200mlのお湯に対して茶葉は約6gのところ、お茶割りは焼酎や氷で薄まるので約8gを使いましょう。20~30%多めが目安です」

 

3.急須に茶葉を入れお湯を注ぐ

「沸かしたお湯を湯冷しに注ぎ、1分程度待つと適温になります。温度の目安は70~80℃。熱すぎると苦渋味が強く出ますので、要注意です。お湯を注いだら、煎茶の香味がバランスよく出るまで1分。深蒸し茶なら30~40秒待ちます」

 

 

4.お茶をグラスに注ぐ

「1分たったらグラスにお茶を注ぎ、マドラーで混ぜ合わせます」(ブレケルさん)

 

5.完成

 

 

それでは、完成した“至高のお茶割り”のお味はいかかでしょう?

 

「『極上〈宝焼酎〉』はまろやかな口当たりや甘やかな香味があるので、お茶の良さを引き出してくれますね。香駿の華やかさや爽快感とも見事に調和し、実においしいお茶割りです! お茶と焼酎が混ざることで、芳しい香りが広がるんですよ。このお茶割りを飲むと『え? お茶ってこんな世界もあったんだ!』と驚かされると思います」

 

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お茶割りの魅力は飲み方の多様性にアリ!

さらに、季節に合わせてホットや、水出し緑茶でもお茶割りを楽しんでほしいとブレケルさん。

 

「ホットの場合は湯飲み茶椀や耐熱グラスに『極上〈宝焼酎〉』を注ぎ、淹れたてのお茶と1対4で割るだけ。水出し緑茶は、750mlの冷水に対して15gの茶葉を使い、約6時間冷蔵庫に保管しながら抽出してください」

 

温度や淹れる時間などの違いで多様な楽しみ方ができるのも、お茶とお茶割りならでは。さらにブレケルさんは、「お茶は二煎目、三煎目と煎を重ねるごとの変化が楽しめる点も見逃さないように」とにっこり。

 

「一煎目は甘味とうまみが中心ですが、実は二煎目のほうが香りが際立つんです。淹れ方は、二煎目、三煎目と徐々に温度を上げながら、5~10秒程度の短時間で抽出すると、一煎目とは違った風味が楽しめます」(ブレケルさん)

 

極上〈宝焼酎〉」はペットボトル緑茶でも手軽に楽しめますが、こだわりの茶葉を使えば格別の味わいに。自分だけの“至高のお茶割り”を見つけてみてください。

 

 

取材・文/中山秀明 写真/湯浅立志(Y2)

お茶割りに「極上〈宝焼酎〉」が合う理由を宝酒造の開発担当者に直撃!

提供:宝酒造株式会社

無炭酸で心地よく飲める、食事に合うなどの理由で近年、若年層にも人気のお茶割り。なかでも緑茶割りはその大定番といっていいでしょう。宝酒造では「極上〈宝焼酎〉」こそが、この緑茶割り(以降「お茶割り」)にぴったりな焼酎であると自負しているそう。……これは、詳しく聞いてみなければ! と開発担当者を直撃取材してみることに。「極上〈宝焼酎〉」の製造上のこだわりや含まれる成分まで!? お茶割りにぴったりな理由について探っていきます。


宝酒造
極上〈宝焼酎〉

ポイント
・ピュアなアルコールに、大麦やトウモロコシを原料とした貯蔵熟成酒をブレンド。
・すっきりした飲みやすさと芳醇な香味を両立しており、お茶をはじめあらゆる割材と好相性。
・アルコール度数25度、220ml〜4Lまでの13アイテムをラインナップ。(写真は600ml)

 

おいしさのもととなるのは極限にまで磨いたピュアなアルコール

話を聞いたのは、宝酒造 商品第一部長の高橋悠典さん(※「高」は、はしごだか)。同社で長く焼酎の新商品開発を担当し、巨大な樽貯蔵庫などを有する「黒壁蔵」で焼酎の製造現場にも携わってきたお酒のスペシャリストです。

↑高橋悠典部長。「宝焼酎」商品全般の開発責任者であり、ブランド育成やマーケティングなどを担当

 

お茶割りに合う理由を聞く前に、まずは「極上〈宝焼酎〉」の原料と製造工程を把握しましょう。高橋さんに解説いただきました。

 

「味わいの土台となるのは、ピュアなアルコールです。主原料のサトウキビ糖蜜を、国内最大規模の連続式蒸留機で何度も蒸留を繰り返すことで不純物を取り除き、最終的に純度99.99%以上(※)に蒸留していきます」(高橋さん)

※エタノール以外の有機物割合が0.01%以下

 

■「宝焼酎」の製造工程

 

そして、「極上〈宝焼酎〉」のおいしさの要であるとともに、「宝焼酎」の全ブランドに欠かせない存在が、宮崎県・高鍋町の「黒壁蔵」に眠る多彩な樽貯蔵熟成酒。

 

「樽貯蔵熟成酒とひとことで言っても、味の“表情”は千差万別なんです。つくり方も樽の種類や貯蔵年月なども異なり、当社では約85種類につくり分けるとともに約2万樽を管理しています。これらを、定められた狙いとする味わいに沿ってピュアなアルコールとブレンドし、製品をつくりあげていくんです」(高橋さん)

↑黒壁蔵(宮崎県・高鍋町)に貯蔵されている樽貯蔵熟成酒

 

このように味づくりの要となるのは樽貯蔵熟成酒。ただしそれは、ベースのアルコールがきわめてクリアであってこそだと高橋さんは言います。

 

「例えるなら、真っ白なキャンバスに1滴の絵の具を垂らすイメージとでも言いましょうか。キャンバスとなるアルコールが“きれい”だからこそ、樽貯蔵熟成酒による狙ったおいしさや、個性的かつ飲みやすい味わいが生み出せる。この哲学が、代々受け継がれる『宝焼酎』のものづくりの根幹なんです」(高橋さん)

 

 

味わいは85種類の「樽貯蔵熟成酒」のブレンド次第

さきほどうかがったように、樽貯蔵熟成酒の数は85種類にも上ります。いったいどのように選び、ブレンドしていくのでしょうか?

↑樽貯蔵熟成酒には、樽の素材や貯蔵年数などによって85もの種類がある

 

「樽貯蔵熟成酒も蒸留酒ですが、大麦やとうもろこしなど原材料、発酵や蒸留方法、樽の材質やサイズ、貯蔵する年数によって香味に違いがあり、組み合わせによってバリエーションも広がります。そのなかから、例えば華やかなアロマが豊かであったり、樽のニュアンスが強かったり、余韻のどっしりした後味が香り高かったり。それぞれの特性を熟知した技術者がブレンドし、銘柄ごとに求めるおいしさをつくっているんです」(高橋さん)

 

樽は宮崎の雄大な自然のなかで呼吸をし、お酒の味を変化させていきます。“生き物”のように、どれひとつとして同じ味にはなりません。一方で「宝焼酎」は銘柄ごとの個性こそあれ、一つの銘柄の味は不変。安定して同じ味わいをつくり続けることも、黒壁蔵のブレンド担当者の仕事です。

 

「“酒は生き物である”ととらえて慈しみながら、1滴レベルで微調整。こうした匠の技術によって、発売当初から変わらないおいしさをお届けできているのだと思います」(高橋さん)

 

では、数あるラインナップのなかで今回の主役、「極上〈宝焼酎〉」の味わいにはどんな個性があるのでしょうか?

 

「宝焼酎ブランドにおいては、スタンダードな『宝焼酎』のプレミアム版。その特徴は、ほんのり甘い香りと、まろやかな口当たりをより豊かに感じられる味わいです。また、樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドしていることも大事なポイントです」(高橋さん)

 

■宝焼酎味わいマトリクス

 

なお、樽貯蔵熟成酒のブレンド比率については、割合が高ければ高いほどおいしくなるというわけではないのだとか。各銘柄しか持ちえない味があり、飲む人の好み、飲み方、食との組み合わせなどによってそれぞれベストなおいしさが楽しめる……この多様性も「宝焼酎」ブランドの魅力といえるでしょう。そのなかでもお茶割りにオススメなのが、「極上〈宝焼酎〉」だというのです。

 

 

科学的にも証明されている!?
「極上〈宝焼酎〉」がお茶割りに合う決定的理由

ここからが本題。「極上〈宝焼酎〉」がお茶に合う理由とは? 味わいでいえば、ピュアですっきりした口当たり、そして余韻のコクや芳醇さが理由だと高橋さん。

 

「すっきりしているので、お茶の香りや渋味を邪魔しない。それでいてふくよかな余韻は、お茶のまろやかさや甘みと非常に好相性。それぞれが調和するため、おいしいお茶割りになるのです」(高橋さん)

 

この調和に関してまたしても活躍するのが、樽貯蔵熟成酒。樽で貯蔵することでオーク材からポリフェノールが溶出し、お茶に含まれるポリフェノールと相まって、味わいをひきたてているとか。さらに、香りの面でも樽貯蔵熟成酒の有用な成分が影響しているようです。

 

■お茶と極上〈宝焼酎〉の共通する成分

 

「香り成分はダマセノンやバニリン、フルフラール。これらがお茶の香りと引き立て合うことで相乗効果が生まれ、よりおいしく感じさせてくれるのです。また、ポリフェノールが加わることで、後味のコクに繋がっていると考えています」(高橋さん)

 

極上〈宝焼酎〉」はお茶と同じ成分を含んでいるからこそ、お茶割りにマッチする。それが真相のようです。

 

 

開発者がおすすめするお茶割りのつくり方は?

極上〈宝焼酎〉」によるお茶割りのおいしさを知り尽くしている高橋さんが実際に飲む際は、どのようなつくり方で楽しんでいるのでしょう? コツとともに教えていただきました。

 

1.グラスを冷やす

「まず、氷をグラスの中に目安はグラスの半分程度。グラスが冷えたところで『極上〈宝焼酎〉』を入れて氷と混ぜます」

 

2.「極上〈宝焼酎〉」を注ぎ、氷と混ぜながら冷やす

「グラスが冷えたら『極上〈宝焼酎〉』を注ぎ、氷と混ぜながら焼酎の温度も下げます」

 

3.よく冷えたお茶を注ぐ

「おすすめの割合は、焼酎1に対してお茶は5。アルコール度数25度の焼酎の場合、出来上がりの度数は4~5%ほどとなり、焼酎とお茶両方の味わいをバランスよく感じられます」

↑高橋さんがオススメする割合は、1:5

 

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簡単・味良し・コスパ良し! GetNavi web編集長が解説!自宅でお茶割りのススメ

 

もちろん、焼酎の割合を高くしたりお茶を多くしたりするのは自由。好みに応じて味の濃淡やバランスを調整できるのも、手づくりしたお茶割りの魅力です。

 

「お茶はペットボトルでかまいません。個人的には、抹茶入りのほうがよりすっきりした味で好きですね。また、色が鮮やかに出るのも抹茶入りタイプの魅力です。温かいお茶割りもオススメですが、その場合は急須で淹れたお茶のほうがまろやかでコク深くなりやすいと思います」(高橋さん)

 

お茶には緑茶以外にもウーロン茶やほうじ茶など様々。緑茶やジャスミン茶はとくによく合うそうですが、どんなお茶でも合うのがまた、『極上〈宝焼酎〉』がもつ懐の広さでしょう。ぜひお試しあれ!

 

取材・文/中山秀明 写真/湯浅立志(Y2)

フルーティな香りと芋の甘みが楽しめる! 宝酒造の香り系芋焼酎「ISAINA」のソーダ割り

宝酒造は、“「ISAINA」芋焼酎ソーダ5% 350ml”を、全国のコンビニエンスストア(※1)先行で、2月25日に発売します。また3月25日からは、販売ルート(※1)を拡大して全国で発売予定。

※1:一部取り扱いのない企業・店舗があります

 

記事のポイント

飲み方によって香りが変わる芋焼酎「ISAINA」のソーダ割りです。ISAINAは、ロックやストレート(アルコール度数が高い)で飲むと芋の甘い香り、ソーダなどで割る(アルコール度数が低い)と、りんごを思わせる瑞々しいフルーティな香りが立つそう。

 

同製品は、全量芋焼酎「ISAINA」を、割水に「純水」を使って強炭酸で仕上げた一品。フルーティな香りとすっきりした芋の自然な甘みが楽しめるといいます。食中酒にもぴったりとのこと。

 

缶のパッケージは、全量芋焼酎「ISAINA」同様、白を基調に、見る角度によって表情が変わるホログラム風のイメージを踏襲。さらに、ソーダ割りのシズル感を表現したデザインを採用しています。

 

宝酒造
「ISAINA」芋焼酎ソーダ5%
アルコール分:5%
参考小売価格:222円(税別)

楽に味良しコスパ良し!ペットボトル茶でOKな“極上”の「お茶割り」づくりをGetNaviweb編集長が自宅で実践!

提供:宝酒造株式会社

お茶割りといえば、酎ハイ(焼酎ハイボール)やレモンサワーと並ぶ焼酎の定番の割り方。昨今は、若年層にいたるまで幅広い年代で人気が高まっています。大のお酒好きであるGetNavi webの編集長も、このところの晩酌ではお茶割り、とくに緑茶割りがお気に入り。それに欠かせないのが「極上〈宝焼酎〉」だとか。

 

いま巷でなぜお茶割りが流行っている? そのトレンド事情に触れながら、帰宅後に実践している簡単でおいしいお茶割りのつくり方やおすすめのフードペアリングなどを明らかに。家飲みがもっと楽しくなる方法を教えてもらいましょう。

宝酒造
極上〈宝焼酎〉

ポイント
・ピュアなアルコールに、大麦やトウモロコシを原料とした貯蔵熟成酒をブレンド。
・すっきりした飲みやすさと芳醇な香味を両立しており、お茶をはじめあらゆる割材と好相性。
・アルコール度数25度、220ml〜4Lまでの13アイテムをラインナップ。(写真は600ml)

 

帰宅後のお茶割りは2ステップでいい!

和田 史子(わだふみこ)/女性ファッション誌やモノ情報誌などの編集を経験した後、2017年に学研プラスへ入社。GetNavi web編集部では、お酒・飲料ジャンルなどを担当。また、GetNavi監修のライフスタイルウェブマガジン「@Living」の編集長も兼務し、家での時間を快適に過ごすための情報を発信してきた。2024年、GetNavi web編集長に就任。帰宅後のおいしい一杯を楽しむために、所要1時間の徒歩での帰宅を日課としている。

 

まずは、お茶割りの魅力について聞いてみました。

 

自宅で飲むお酒としてお茶割りは万能なんです。休日は急須からお茶を淹れますけど、平日夜はもっぱらペットボトル茶。コスパもいいし、どんな食事にも合います。それに、自分好みにいろいろとアレンジできるところも魅力ですね」(和田)

 

そのお茶割りに「極上〈宝焼酎〉」を選択する理由とは?

 

すっきりクリアな口当たりや、ほんのりまろやかなコクを感じる豊かな味わいが、お茶のうまみや渋味と絶妙に調和するんですよ。味に厚みがあるけれど主張しすぎず、お茶本来のおいしさも引き立ててくれる名役者! だから飲み飽きず、おかわりしたくなっちゃいますね」(和田)

 

時間がない日でも、お茶と「極上〈宝焼酎〉」さえあればOK! そこで、普段実践するレシピを教えてもらいました。

 

1.氷と『極上〈宝焼酎〉』をよく混ぜ冷やす

「まずはグラスに氷を入れ、『極上〈宝焼酎〉』を注いでよく混ぜ、冷やします」(和田)

↑まずはグラスに氷を入れてマドラーで攪拌。グラスをしっかり冷やします

 

2.グラスにお茶を注ぐ

「このベースに注ぐ割合は、焼酎:お茶が1:2。アルコール度数25%が、割ることで約8.3%になる計算ですね」(和田)

↑今回用意した割り材は平日夜用にストックするペットボトルの緑茶

 

 

自家製の「お茶割り」は、自分に適したボディ感に調整できるのもポイント。カタめ(焼酎の濃い味)が好みな和田は普段1:2のようですが、割合を変えると味わいにはどんな違いが出てくるのでしょうか? 同時に1:1と1:4のお茶割りもつくって、テイスティングしてもらいました。

↑左から、割合はそれぞれ1:4(アルコール度数5%)、1:2(約8.3%)、1:1(12.5%)

 

「1:4は、よりすっきりした爽快感が印象的でスムースな飲み口です。1:2は安定のおいしさ! 焼酎のコクとお茶の清涼感が好バランスにマッチしていると思います。季節やシーンを問わずに楽しむなら、私はやっぱりこれですね」(和田)

 

続いて、あえて焼酎を濃いめにしてつくった1:1はどうでしょうか?

 

「実は1:1は初めてです。豊かな厚みがありますが、ツンとした強さは皆無で余韻の重さも感じません。口当たりはまろやかでいて、ラストはスカッとした後キレのよさがいいですね! 甘じょっぱくて濃厚な料理には、これくらい濃くても合うんじゃないでしょうか」(和田)

 

 

お茶割りはどんな料理にも合う!

和田はお茶割りの魅力のひとつに、食中酒としてのマッチングを挙げます。その万能性はビールやハイボールといった炭酸系のお酒よりも実は優れているとか。

 

炭酸の刺激がないぶん、繊細な味の料理に合わせやすいと思います。繊細な料理の代表格にはまず和食が挙げられますが、焼酎や緑茶も日本生まれ。出自が一緒という観点でも、緑茶のお茶割りはペアリングの理にかなっているといえるでしょう。“和スイーツ”にも合いますよ! さらに、お茶割りは温めて飲むこともできますから、自由度の高さでも優秀なんです」(和田)

 

一方、濃厚な味の料理にも合う理由とは?

 

茶葉に含まれるカテキンの効果だと思うんですけど、お茶割りの渋味や苦みが油分をさっぱりさせてくれるんです。繊細な和食から濃厚な肉料理まで、とにかくお茶割りはどんな料理にも合う、優秀な食中酒なんです!」(和田)

 

そこで、和田がオススメするおつまみを紹介してもらいました。つくってもらったのは、コンビニで手に入る食材でアレンジしたおつまみ3種。「肉料理」「和食」「スイーツ」の3テーマでそれぞれペアリングし、お茶割りとの相性も語ってもらいました。

 

【肉料理】キムチ納豆+サラダチキン

「お茶にはうまみが含まれていますが、発酵食品であるキムチと納豆にもうまみが豊富。お茶割りはこうしたうまみとケンカせずに寄り添います。また、『極上〈宝焼酎〉』もうまみを感じる甲類焼酎なので、マッチするのは必然なんですよ」(和田)

↑肉料理には「キムチ納豆サラダチキン」を。キムチと納豆を混ぜ、ほぐしたサラダチキンにのせるだけ。お好みでごま油、ごま、青ねぎなどをあしらいましょう

 

【和食】さば缶ガリきゅうり

さばの豊かなうまみを、きゅうりの清涼感とガリの辛みや甘酢の味がおいしく演出。そこに、キリッとしてまろやかな『極上〈宝焼酎〉』のお茶割りがよく合います。ちなみに『ガリチュー』というガリを使ったチューハイがあるんですけど、それってガリが焼酎に合うから生み出されたのではないかなと。転じて考えれば、生姜を使った料理と焼酎も好相性なんだと思います」(和田)

↑「さば缶ガリきゅうり」。さば缶水煮に、ガリときゅうりの薄切りを加えて混ぜれば完成です。オニオンスライスを敷くのもオススメ

 

【スイーツ】芋けんぴバター

芋けんぴのほっこりした甘さや、やさしい塩味、さらにバターの濃厚なコクや、ミルキーなまろやかさ。これらに緑茶のさっぱりしたニュアンスと、『極上〈宝焼酎〉』のコク深さがよく合います! こちらは温めたお茶割りでも合うと思います」(和田)

↑「芋けんぴバター」。芋けんぴにバターをのせ、ほどよくとけるまでレンチンするだけです

 

ここまで数杯のおかわりをしている和田に、あらためてお茶割りとのフードペアリングを成功させる秘訣を教えてもらいました。

 

「例えば、ご飯系の料理やシメの麺、だしが効いたおでん、寒い季節にうれしい鍋などにもお茶割りは合います。それはやっぱり、お茶割りにはうまみ、苦み、渋味といった多彩な要素があるうえ、炭酸などの刺激がなくてやさしく寄り添うお酒だから。うまみに関しては、極上〈宝焼酎〉』の3%ブレンドされている樽貯蔵熟成酒が効いています。加えて、後口さっぱりで飲み飽きないのも魅力だと思います」(和田)

 

 

結論。自宅でお茶割りはコスパがいい!

近年は物価上昇により、ますますコスパ(コストパフォーマンス)のよさが問われる時代。和田はこの観点でもお茶割りは優れていると力説します。

 

「それぞれの価格はお店ごとに異なりますが、600mlビンの『極上〈宝焼酎〉』とペットボトルのお茶2lサイズは合計1000円以下で買えるはずです。1:2の割合でつくれば、1杯250mlで計算しても10杯は飲めますから、つまり1杯100円以下! お茶割りは、きわめてコスパがいいお酒なんですよ」(和田)

 

お茶は近所のコンビニやスーパーなどで手軽に購入でき、飲み物自体が汎用性の高いドリンクであることもポイントです。

 

「急須で淹れる人は減りましたが、お茶はペットボトル茶のおかげで今でも日常的なドリンクですよね。ネット通販などで、まとめて箱買いしている人も多いでしょう。私の場合はそれを割り材として使っているんですけど、すごく使い勝手がいい飲み物だと思います」(和田)

 

使い勝手のよさは、『極上〈宝焼酎〉』も同様だと和田。

 

「開封後も常温保存ができ、炭酸が抜けることもない点は実に便利。アルコール度数を自分の好みで調整できますし、コスパ重視で飲むなら缶入りのRTDよりも自家製がオススメです」(和田)

 

最後にお茶割りの魅力を踏まえてトレンドの背景についても教えてもらいました。

 

「2010年代中盤ごろからの新世代店主による大衆酒場トレンドに伴い、酒場の定番酒である酎ハイ(焼酎ハイボール)やレモンサワーが人気になりました。そのベースである甲類焼酎の新たな嗜み方として、再注目を集めたのがお茶割りなんです。味わいに関しても、お茶割りはやさしいタッチで飲み飽きず、フードペアリングの面でも優秀。家で飲むにはコスパもいいということで、近年ますます若者の間でも人気になっていると感じます

 

おいしく手軽で良コスパ。ぜひ本稿を参考に、お茶割りで晩酌を楽しんでみてください!

宝酒造
極上〈宝焼酎〉 600ml

↑この写真を記事のサムネイルに設定しております。

取材・文/中山秀明 写真/湯浅立志(Y2)

どう違う? 酒場ライターが「関東と関西の酒場事情」を語り合う噺【後編】

提供:宝酒造株式会社

 

飲み物、つまみ、店構えからお客さんの特徴まで、同じようで実は異なる「関東」と「関西」の酒場事情。その内実を、関東出身・関西在住のスズキナオさんと、酒の可能性を追求するユニット「酒の穴」のパートナーであるパリッコさんが、実体験を交えて語り合います。

 

後編となる今回は「お酒やおつまみの違い」について。東京・立石の「東邦酒場」にお邪魔し、東西の違いを議論していきます。

↑「東邦酒場」は60年以上続く老舗の酒場。2018年にお花茶屋(東京・葛飾区)から現在の立石に移転。

 

【前編はこちら

 

 

関西人は合理的? 酎ハイの飲み方の違い

●パリッコ(左)/東京出身の酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』などがあるが、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメーカーとしても活動し、多才な顔を持つ。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動し、共著に『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』などがある。
●スズキナオ(右)/東京出身、大阪在住の酒場ライター。酒噺で「関西食文化研究」や「関西チューハイ事情」連載を担当。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』などがあるが、テクノラップユニット「チミドロ」のリーダーとしても活動する。パリッコとは同い年であるほか、酒場や音楽などライフワークの共通点が多い。

 

お酒の違いに関しては、まずは焼酎の飲み方の違いから。よく「東日本は甲類で西日本は乙類(本格焼酎)」と言われますが、実際はどうなのでしょうか?

 

スズキナオ たしかに、関西では焼酎というと乙類(本格焼酎)を指すことが多いでしょうね。昔は酎ハイも「麦焼酎」など扱っている乙類ベースでつくっている店もあったと聞きます。それに、焼酎のボトルメニュ—はほとんどが乙類ですね。

 

パリッコ 関東だと「芋」や「麦」など乙類の焼酎だけでなく、甲類焼酎のボトルもよく見かけますよね。

 

スズキナオ あとは、飲み方やメニューにも違いはありますね。関東は酎ハイひとつとっても多彩じゃないですか。お店によっては提供時に割らず、三点セット(焼酎、炭酸水、氷)をそれぞれ個別に提供したり、どぶづけにしているところもあるようですね。でも関西は多くが、できあがった状態で提供されます。

↑「どぶづけ」とは氷と水の入った容器でお酒を冷やすこと。写真のようにカウンターの前にスペースを作ることもある

 

パリッコ 確かに、あらかじめ割った状態で出してもらうことが多いかも。

 

その理由はなぜでしょうか? スズキナオさんは「あくまで個人的な見解ですけど」と前置きしたうえで、次のように話します。

 

スズキナオ 関西の、特に大阪では合理的な人が多いような気がします。なので、自分で割って作ることをありがたがる人は少なくて、それより1秒でも早く飲みたいと。テーブルの上もすっきりしますし。

 

パリッコ 酎ハイの味に関しても、関東のほうがシャープな傾向があるかもしれません。東京・下町の大衆酒場でおなじみの「焼酎ハイボール」のエキスも、甘みはほとんどないんですよね。ところが関西で飲む酎ハイは、最初から甘酸っぱく仕上がっていることが多い気がします。

↑宝焼酎をベースにした東邦酒場の「元祖酎ハイ」(350円・税込)

 

スズキナオ あの味も、串カツのソースやどて焼きの甘じょっぱさにはベストマッチなんですけどね。

 

パリッコ ほかに関東で代表的な酒場のお酒というと、ホッピーですね。まだ関西では珍しい部類に入るのかもしれないけど、見かける機会は徐々に増えてきたような。

↑東京の酒場では定番の「ホッピー」も関西圏ではまだ限定的なようだ

 

スズキナオ でも関西式というか、ナカとソトを分けず、提供時にジョッキに1本まるごと入れて割って出す店もあります。

 

パリッコ 関東は、1杯目は「ナカ(甲類焼酎)」と「ソト(ホッピー)」のセットで提供し、途中で「ナカ」をおかわりするのが定番ですもんね。

 

スズキナオ 関東から関西に進出した有名チェーン「立呑み晩杯屋」では、関西の店でも関東式で提供してくれますけど、そういうお店はあまり多くないですね。

 

パリッコ びん入りの商品なので回収の問題や、そもそもメーカー自体が全国展開を想定していなかったなど理由はありそうですが、関東以外の地域でもどんどん、ホッピーバイスみたいな割り材も飲まれるようになってきている印象です。

 

スズキナオ そうかもしれないです。「立呑み晩杯屋」が関西に来たのは2022年。僕が関西に移住した2014年は、居酒屋でホッピーを見かけることは稀でした。

 

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ガリ酎、金魚、ばくだん……ローカル酎ハイの数々

パリッコ それでいうと、東京を中心としたもつ焼き酒場で愛される梅割りは、ホッピー以上にレアだったりしますか?

↑東京を代表する大衆酒場のひとつ「宇ち多゛」(葛飾区・立石仲見世商店街内)の「梅割り」。宝焼酎に梅シロップを足したもの

 

スズキナオ そうですね。梅割りに関しては、同じく東京から関西に進出した「四文屋」なら飲めますが、やっぱり珍しい存在です。

 

では逆に、関西発祥の焼酎割りや酎ハイといえば? そして、そのお酒の関東への浸透具合は?

 

パリッコ 例えば「ガリ酎」や「金魚」は関西発祥と聞いたことがありますけど、東京でも出合うことは多いです。

 

スズキナオ でも関西発祥だからといって、「ガリ酎」や「金魚」がどこの店にもあるという感じではないかな。酎ハイのバリエ―ションが多い酒場に行くと提供されている、という印象です。

↑「ガリ酎」は焼酎の炭酸割りに「ガリ(生姜の甘酢漬け)」を入れたもの

 

↑酎ハイに青じそと唐辛子を入れた「金魚」

 

パリッコ 関西でよく飲まれているけど、関東にはない飲み方や酎ハイとなると、あんまり思いつかないですね。例えば新大阪の「松葉」という老舗の串カツ酒場には「松葉ハイボール」という冷やしあめで割った鷹の爪入りの酎ハイがあるんですけど、あれはお店のオリジナルだし。

 

スズキナオ 局地的な酒の例でいうと、京都のお好み焼き店「やすい」発祥といわれる、「あか」という甘酸っぱくて赤いサワーみたいなお酒もかなりローカルですね。

↑宝焼酎「純」の35度とパワフルな強炭酸を混ぜ合わせ、その上から絶妙な量の赤ワインを注ぎ入れる京都「お好み焼き 吉野」の「あか」

 

パリッコ 「ばくだん」と呼ばれるお酒にも近い、京都のお好み焼き店の他にはあまりないというサワーですよね。

 

スズキナオ これはあくまで傾向ですけど、瀬戸内や九州産の和柑橘を使った生のサワーは関東よりも多いかな。旬を迎えた時季だけなんですけど、これは関西が関東より柑橘の名産地に近いからかもしれません。

 

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そしてテーマは日本酒に。東西における違いのひとつに、お店に置く銘柄の種類があるといいます。

 

パリッコ 酒蔵の観点でいうと、関西には灘・伏見の二大酒都があるので、関東よりも地元の日本酒が充実してるイメージがありますね。

 

スズキナオ 確かに。関東の場合は新潟や東北の銘柄などにも頼りがちだけど、関西は灘・伏見の酒が主役ですよね。それと、関西では、普通酒の「特選・上撰」をスタンダードなお酒として扱うのに対して、関東では圧倒的に「佳撰」市場ですね。

 

パリッコ なるほど。ただ、飲み方に関しては、東西でそれほど目立った違いはないと思います。

 

 

関西で肉といえば「牛」、関東では「豚」

 

続いては、おつまみについて。東西で食文化が違うことはよく知られていますが、酒場のメニューではどうなのでしょうか?

 

スズキナオ 肉でいえば、「牛」と「豚」の扱われ方が最も特徴的じゃないかな。関西で肉といえば「牛」だから、関東の肉じゃがは豚肉で関西だと牛肉を使うことが多いとか。まあ、家庭によるとは思いますけどね。関西では、関東以上に牛肉の地位が高いのかなと思います。

 

パリッコ 豚肉の中華まんが象徴的かも。関東では「肉まん」ですけど、関西は牛じゃない肉を使うから、あえて「豚まん」って呼ぶんじゃないかと思います。

 

スズキナオ その差は酒場の業態にも大きな影響を及ぼしていると思います。それが、関東でおなじみのもつ焼き屋。関西にも豚のホルモン焼きはあるんですけど、串焼きとなると少ないんです。東京出身の僕にとってはカルチャーショックで、いまでも恋しく思いますよ。

↑豚のもつを串にさして焼く「もつ焼き」。関西ではなかなかお目にかかれない

 

パリッコ 焼鳥屋に関しては、東西で大きな差はなさそうですけどね。そのぶん関西の串料理となると、大阪名物の串カツは圧倒的に多い。

↑関西の串料理といえば、やはり「串カツ」

 

スズキナオ そして串カツ屋でも、メニューの主役は「豚」より「牛」だと感じます。

 

パリッコ 煮込みのもつも、関東は「豚」で関西は「牛」が多いイメージがあります。すき焼きは、さすがに肉は牛肉で東西共通ですけど、それぞれ調理法が違いますね。関東は煮込むスタイルで、関西は焼いて作る。

↑「東邦酒場」の「もつ煮込み」(550円・税込)のもつは豚

 

スズキナオ 関東にはない関西の煮込み系つまみといえば、「どて焼き」や「すじこん(ぼっかけ)」がありますよね。

↑牛すじとこんにゃくを濃厚な味噌で煮た関西でチェーン展開する「串かつ だるま」の「どて焼き」

 

パリッコ あとは、大阪名物の「肉吸い」も、関西ならではです。

 

スズキナオ そしてこれらも、肉はやっぱり牛肉。おでんも関西では「関東煮(かんとだき)」と呼ぶことがありますけど、主役級の具材に牛すじやくじら肉があって、これがだしの重要な素材でもあります。

 

パリッコ うん。牛すじは、関東のおでんでは見ないこともあるけど、関西のおでんにはほぼマストで入ってますもんね。

 

スズキナオ 例外といえる豚肉料理があるとしたら、豚足ですね。関西には豚足をウリにする酒場がちらほらありますけど、関東ではあまり見かけないような気がします。

 

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東西の「魚」と「だし」の違い

次の食材テーマは「魚」。東西でそれぞれの特徴はいかがでしょうか?

 

パリッコ そこまで大きな違いはないと思いますけど、伝統的な料理の食材になると、わりとメジャーかどうかに違いが出ますよね。関東だと、うなぎ、どじょう、あなごとか。一方で関西だと、はも、くえ、ふぐが代表的かな。

↑「ふぐ」は関西を代表する魚

 

スズキナオ 同じような料理でも、呼び名が違う場合がありますよね。例えばさばの料理の場合、関東では「しめさば」だけど、関西では「きずし」と呼びますし、「さばの押し寿司」は大阪だと「バッテラ」といいますから。

 

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続いては、「だし」について。一般的に関東はかつお、関西は昆布がメインといわれますが、味や料理はどう違うのでしょうか。

 

パリッコ 関東のかつおだしは魚介の香りが豊かで、キリッとシャープな表情も。関西の昆布だしは、まろやかでやさしい風味を豊かに感じますね。

 

スズキナオ だしといえば、「だし巻き玉子」は味付けも違う。関東は甘くて硬めの仕上がりのものが多い印象ですが、関西はだし感が豊かで、食感もふんわり系のものが多いかな。

 

パリッコ 玉子でいえば「天津飯」! 関西は醤油ベースで、関東は甘酢ベースの傾向にあるというのがおもしろくて。「餃子の王将」の「天津飯」は、関東は甘酢、塩ダレ、京風ダレから選べるけど、関西だとしょうゆベースの京風ダレ一択の店舗が多いらしいですね。

 

スズキナオ でも、先ほど触れた関西の「関東煮」という名称は面白いですよね。諸説あるんですけど、関東から伝わったからこの名称になったと言われていて、それがだしの風味にも影響しているのかもしれないです。

 

パリッコ おでんは、その他の具材も東西でけっこう違います。関東で定番のちくわぶやはんぺんは関西にはあまりなく、「関東煮」では前述の牛すじやくじらのほかにタコの足も定番ですから。

 

ここまでを振り返って、ほかに関東、関西の大衆酒場ならではのおつまみにはどんなものがあるでしょうか。

 

スズキナオ 関西はやっぱり、粉もののバリエ―ションが豊富ですね。たこ焼きやお好み焼きは全国区だけど、「とん平焼き」「いか焼き」「キャベツ焼き」などは関東ではあまり見ないですもんね。逆に関東生まれの「もんじゃ焼き」は、関西には少ないです。

↑関西の粉ものはバリエーションが豊富

 

パリッコ 「もんじゃ焼き」を提供しているのはほとんど専門店で、酒場のつまみという感じではないですしね。ただ、最近は「もんじゃ焼き」が若者や海外から来た旅行者の方々の間ですごく流行ってるそうで。

 

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スズキナオ 粉ものといえば、ソースの扱いにも東西の差がありますね。関東は中濃ソースが主流で、関西はバリエ―ションがやたらと多彩です。調味料として使うのはウスターで、粉ものにはそれぞれ専用のソースを使うとか、みなさんこだわりが強いです。メーカー自体が多いので、店や家ごとにひいきのブランドがあるようです。

 

パリッコ さすがです。あとはなんだろ。関東の渋い居酒屋の定番おつまみ「たたみいわし」なんかは、関西にはあまりないのかな。

 

スズキナオ 関西は、冬のかす汁文化も見逃せません。これはきっと、酒蔵が近くて日常にとけこんでるからだと思うんですけど、「かす汁」を提供している酒場が多いんですよ。蔵ごとに酒かすの風味が違うから味も店ごとに千差万別。僕が関西に来て好きになった料理のひとつです。

 

そして最後に、おふたりそれぞれが印象に残っている、東西のつまみを教えてもらいました。

 

パリッコ やっぱり「もつ焼き」かな。

 

スズキナオ 僕は「かす汁」ですね。

 

みなさんも、東西酒場それぞれのご当地メニューに着目しながら宵を楽しんでください。加えて前編の「関東と関西の酒場事情」もぜひ一読を。

 

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

東邦酒場

住所:東京都葛飾区立石1-1-9
営業時間:17:00~22:00(水〜金)、13:00〜22:30(土・日)
定休日:月曜、火曜

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

 

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どう違う? 酒場ライターが「関東と関西の酒場事情」を語り合う噺【前編】

提供:宝酒造株式会社

 

飲み物、つまみ、店構えからお客さんの特徴まで、同じようで実は異なる「関東」と「関西」の酒場事情。その内実を、関東出身・関西在住のスズキナオさんと、酒の可能性を追求するユニット「酒の穴」のパートナーであるパリッコさんが、実体験を交えて語り合います。

 

前編となる今回は「お店の違い」について。お邪魔したのは、東京・東向島の「丸福酒場」。以前は大阪で営業していた同店の店主・福永晴行さんも交え、「関東・関西のお店の違い」について探っていきます。

●パリッコ(左)/東京出身の酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』などがあるが、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメーカーとしても活動し、多才な顔を持つ。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動し、共著に『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』などがある。
●スズキナオ(右)/東京出身、大阪在住の酒場ライター。酒噺で「関西食文化研究」や「関西チューハイ事情」連載を担当。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』などがあるが、テクノラップユニット「チミドロ」のリーダーとしても活動する。パリッコとは同い年であるほか、酒場や音楽などライフワークの共通点が多い。

 

 

パリッコさんとスズキナオさんが出会ったのは、ライターになる前の会社員時代。「20年ぐらい前かも」というほど交流は長く、初対面は音楽関連のイベントだったとか。

 

ともにお酒好きであるなど意気投合したふたりは、以後個別に飲み交わすことも増え、一緒に酒場巡りにも行くように。そしてこれまた運命的にお互いライターとして独立し、ふたりでユニット「酒の穴」を結成。「チェアリング」を生み出し提唱するなど業界内でも存在感を示していきます。

 

スズキナオさんは2014年に奥様の実家がある大阪へ移住し、その後は関東と関西それぞれのカルチャーを知るライターとしても活躍。こうした経緯から、パリッコさんと東西の酒場の違いについて語ってもらいました。

 

そもそも酒場に東西の違いがあるのか?

まず伺ったのは、そもそも「東西で酒場に違いはあるのか?」ということ。

↑まずは、下町の焼酎ハイボールで乾杯!

 

スズキナオ 関西に住んで10年以上経ちましたけど、関東とはメニューも雰囲気にも違いがありますよね。

 

パリッコ わかりやすいところで例えると、関西は関東より串カツ屋が多くて、逆にもつ焼き屋はあまりない。ほかにも業態の違いはたくさんありますけど、要は食文化が違うんですよ。

↑東京を代表する大衆酒場のひとつ「宇ち多゛」(葛飾区・立石仲見世商店街内)。「宇ち多゛」のもつ焼きを求める行列が絶えることはない

 

スズキナオ お酒にも特徴がありますね。特にチューハイ。関西はあらかじめ甘酸っぱい味に調整されたものが主流ですが、関東は味も飲み方も多様的です。東京下町の秘伝のエキスで割る焼酎ハイボールがあったり、バイスのような個性派割り材が豊富だったり。東京には「酎ハイ街道」(※)と呼ばれる通りもありますよね。

※京成押上線「八広駅」と東武伊勢崎線「鐘ケ淵駅」を結ぶ鐘ヶ淵通りは、下町大衆酒場に欠かせない酎ハイの名店が多いことから名付けられた。

 

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そのほかに客層や雰囲気などの違いはあるのでしょうか(※)?

※お酒やおつまみの違いに関しては、後編でより深堀していきます

 

スズキナオ 関西のほうが、安価な大衆店と小料理屋的な居酒屋が明確に分かれていると思います。特に安さを売りにしているお店が多い印象です。

 

パリッコ 確かに。特に大衆酒場の存在感は関西のほうが大きいかも。お店の絶対数に対する割合でいえば、関西のほうが多いイメージがあります。

 

スズキナオ そうそう、角打ちとか立ち飲みも含めてね。関西のほうが短い時間でサッと酔いたい人が多いからという気がしますね。特に大阪は。

 

パリッコ 関東にもクイックに立ち寄って飲んで、足早に帰るか次の店に行く、というスタイルの人はいますけど、関西のほうがその割合は多いかもですね。

 

スズキナオ ええ、ゆっくり飲みたいときはもう少し高級なお店に行くというか。

 

パリッコ お客さんの性格も、関西はサラッとした感じの人が多い気がしますね。ただ、人懐こいというか距離感は近いんです。遠慮せず話しかけてくるし。

 

スズキナオ それも、大阪のおじさんたちに顕著な気がします。

 

パリッコ でも、深追いはしなくて。例えば標準語で話してると「お兄ちゃん、どっから来たの?」って声かけられて、「東京からです」って返すと、「じゃあ、あそことあそこに行ってみ? ほな楽しんでな」で会話が終わるみたいな。

 

スズキナオ わかるわかる!

 

パリッコ 偏見かもしれませんけど、関東はもうちょっと自分語りが多かったり、質問攻めになったり。そもそも、誰かと話したくて飲み屋に来てる人も一定数いる気がするんですよね。でも、大阪は相手に合わせるというか、人との距離感をつかむのがうまくて。僕はいまのところ、ちょっとめんどくさかったり、嫌な思いをしたようなことはないです。

 

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東西味付けの違いはペアリングにも差が出る?

ここで「丸福酒場」の店主・福永晴行さんにも、東西で酒場に違いはあるのかを聞きました。福永さんは宮崎で生まれ、高校卒業後に大阪で飲食業のキャリアをスタート。板前修業ののちに独立して約10年働き、2012年に上京してお店ごと移転し「丸福酒場」を東京・墨田区に開業しました。

↑「丸福酒場」の店主・福永晴行さん。大阪から移転したきっかけは、東京に遊びに来た際にいまの店がある下町の雰囲気が気に入ったから

 

福永 東西の違いで特に印象的だったのは味付けです。簡単に言うと全体的に東京は味が濃くて、大阪は東京ほど濃くない。しょうゆは、関西で主流の薄口のほうが塩分は強いんですけど、コクは濃口のほうが強いですし、関西ダシは昆布主体で関東ダシはかつおというのもあると思いますね。

 

福永さんは、ホッピーとペアリングしたときに、特に東西の違いを実感したと言います。

 

福永 東京で飲んだホッピーがおいしかったので、大阪の自分の店でも試したんです。でも、「あれ、なんかちゃうなぁ」って。いくつかの料理と合わせて気付いたのは、大阪の味付けとホッピーはビシッと合わないというか、ホッピーはやっぱり東京の味付けありきで生み出されたんだろうなということです。

↑「丸福酒場」には関西のご当地つまみもあり、こちらは「とん平焼」400円。ソースは福永さんが慣れ親しんだ味にするべく、独自にブレンド

 

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続く話題は昼飲みについて。スズキナオさんは、関西のほうが昼飲み文化が日常に馴染んでいると言います。

 

スズキナオ もちろん東京にも昼から飲める店はたくさんありますし、そういう酒場が多い街も点在しています。ただ、関西は昼から飲める店や街に対する特別感が薄く、いい意味で普通なんです。

 

パリッコ 後ろめたさがない感じですよね。定食屋とかファミレスぐらいの空気で当然のように、平日の昼間から老若男女が楽しそうに飲んでいる。僕はそれが心地いいなって思います。

 

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関西酒場のお客さんは団結力がある

関西だけ、関東だけで展開している代表的なチェーン店について語ってもらいました。

 

スズキナオ 僕がよく行く関西ローカルチェーンは「赤垣屋」「正宗屋」「丸一屋」「得一」ですね。東京にいたときは「酒蔵 駒忠」とかによく行ってました。

 

パリッコ 「駒忠」好きです。ほかに東京だと「加賀屋」「ニュー加賀屋」「加賀廣」「かぶら屋」「春田屋」とか。「かぶら屋」は池袋で働いてた当時、最初の1、2号店しかない草創期によく通ってましたね。それがいつの間にか数十店舗に増えて。

 

スズキナオ 多店舗展開だと一括仕入れなどのメリットを生かせるので、より価格帯が低めのチェーンが多い印象です。でも、近年は大阪から東京へ、東京から大阪へと進出するケースも増えてますよね。関西進出した有名店だと「立呑み晩杯屋」とか「四文屋」とか。

↑関西初となる「立呑み晩杯屋 十三店」。関西でも人気を集めている

 

パリッコ 関西から東京へというケースだと、2022年7月、有楽町(千代田区)に東京1号店を開業した「徳田酒店」は話題性が大きかったですね。でも東西の有名店が各地に進出することで、例えば東京のホッピーとかバイスとかも各地に広がっていくわけであって、重要な役割を担ってる気がします。

 

スズキナオ そうですね。ひと昔前だと「村さ来」が東京で人気だったカクテルスタイルのチューハイを全国に広めたと聞きますし。

 

「村さ来」のように全国展開されているチェーンの場合、東西で違いはあるのでしょうか?

 

パリッコ 企業ごとに違うと思いますが、例えば「餃子の王将」は店舗によって独自のメニューがあったり、地域によって価格を変えたりしてますよね。全国で統一しているチェーンもあるかもしれないですけど、やっぱり地域によって食文化が違うので、個々で変えているほうが多い気はします。

 

スズキナオ 企業ごとの方針や、直営店なのかフランチャイズなのかでも変わってくる気がしますね。自由度が高い企業なら各店独自のメニューもあっても不思議じゃないし、フランチャイズはもっと自由でしょうし。

 

では、立ち飲みや角打ちで東西の違いはありますか?

 

スズキナオ なんとなく角打ちに関しては、主役は完全にお酒で、おつまみはあくまで脇役というオールドスタイルのお店は関西のほうが多い気がします。大阪や兵庫の老舗は特に。

神戸御影・榊山商店。100年以上続く老舗の角打ち。おつまみは、缶詰や乾き物が中心

 

パリッコ そうですね。関東の角打ちは、本当に簡易的なテーブルしかない昔ながらのところもあれば、まるでバーのようにおしゃれなお店も増えているし、どんどん多様化している気がします。

 

スズキナオ 立ち飲みに関しては、関西のお客さんの間は連帯感のようなものがある気がします。例えばお店が混んで来たら詰め合って次のお客さんのための場所を空けるとか。

 

パリッコ ダーク(※)とか。

※ダークダックスとも。立ち飲み店で、テーブルに対して斜めに立ちスペースを詰めること。往年のコーラスグループ「ダークダックス」が斜め立ちして歌っていたことに由来

 

スズキナオ そう。「ダークしよか」という言葉はよく耳にしますね。ほかの人も嫌な顔せず協力的で、関西は団結力がスゴいなって思いました。

 

パリッコ その距離感に最初は躊躇してしまうかもしれませんが、とにかくみんな人がいいので、最後は居心地が良くて抜け出せなくなってしまうんですよね。

 

スズキナオ それに、関西に来る前は標準語を話したら嫌がられると思ってましたが、全然そんなことないです。

 

パリッコ むしろやさしいですよね。「ここあいてるで」とか「この店初めてならこれオススメや」とか、積極的に共有してくれるイメージ。

 

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「会館飲み」や「ビニシー」は他の地域ではどう?

関西独自の酒場文化として知られる、「会館飲み」の現状についてはどうでしょうか。まずは改めて、その特徴から解説してもらいました。

↑西院(右京区)の「折鶴会館」

 

スズキナオ 「会館飲み」が根付いている地域は、基本的に京都です。西院(右京区)の「折鶴会館」や中京区富小路の「四富会館」とかが有名で、これら会館と呼ばれる建物のなかで複数の飲食店が営業しているスタイルですね。

 

パリッコ 京町屋を再利用した商業形態がルーツといわれており、それもあって基本的には各店が狭く、小箱の飲み屋さんをハシゴする楽しさがありますよね。2010年以降ぐらいからの新世代大衆酒場ブームとともに、「会館飲み」も人気になってきた印象です。

 

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同じような楽しみ方ができる施設やカルチャーは、関東にはないのでしょうか?

 

スズキナオ 似たような場所は関東だけじゃなく、全国的にあると思います。例えば大阪の「大阪駅前ビル(北区梅田)」、東京の「新橋駅前ビル(港区新橋)」なら「会館飲み」っぽい楽しみ方ができますよね。ただ、会館があるのは基本的に京都なので、「会館飲み」といえるのは京都だけかなと。

 

パリッコ 会館の成り立ちは戦後の風営法とかが関係してると言われていて、関東で近しい有名なスポットは「新宿ゴールデン街」ですかね。ほかには新宿西口の「思い出横丁」とか、横浜の「野毛都橋商店街ビル(中区・宮川町)」とかもありますけど。

↑新宿ゴールデン街。近年では観光スポットにもなっている。写真提供:PIXTA

 

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もうひとつ、関西独自の酒場文化「ビニシー」についても特徴から伺いました。

 

スズキナオ 出入口に、ビニールシートやビニールカーテンと呼ばれるものを設えた飲食店のことです。「ビニシー」と略されることが多いです。これも2010年以降ぐらいから、特に大阪の天満(北区)を中心に増え、いまでは「ビニシー通り」と呼ばれるスポットもあります。

↑大阪・裏天満ちょうちん通り。写真提供:PIXTA

 

パリッコ もともとは市場周りのちょっとした立ち飲みとか、簡素なつくりの飲み屋さんみたいなものだったんだと思うんですけど、その雑多な雰囲気が大衆酒場ブームとマッチして流行ったんじゃないかな。

 

スズキナオ 東京にも、寒さ対策で冬だけビニシー仕様にするお店は昔からありますけど、ビニシーとカテゴライズされるほど定着しているのは大阪特有かもしれませんね。

 

パリッコ ちなみに、多いのは居酒屋系ですけど、ワインバルみたいな洋業態もあります。最近だと中華、ベトナム、タイ、メキシカンなどもありますし、その辺は自由ですね。

 

最後に、東西における接客の違いについて教えてもらいました。

 

パリッコ つい先日、ふらりと入ってみた東京下町の居酒屋が、ものすごく素っ気ない感じの接客だったんですね。

 

スズキナオ 傾向として、大阪は積極的にコミュニケーションを取り合うような接客が多いかもしれないですね。お客さんも、そういう会話を楽しみに来ている節がありますし。もちろんそういうお店ばかりではないんですけど、割合的には多い印象ですね。

 

前編はここまで。後編では、「お酒やおつまみの違い」をテーマに東西の酒場を語っていただきます。

 

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

丸福酒場

住所:東京都墨田区八広5-20-18
営業時間:17:00~23:00、日曜15:00~22:00
定休日:月曜

 

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糖質ゼロ、秋にピッタリの「焼酎ハイボール」。タカラ「特製梨サイダー割り」

宝酒造は、“タカラ「焼酎ハイボール」5%<特製梨サイダー割り>”を、全国で10月8日から数量限定販売します。

 

記事のポイント

新フレーバーは、秋にピッタリの「辛口で食事に合う梨サイダー」。ベースアルコールに「宝焼酎」を使用し、アルコール分5%でも飲みごたえのある辛口の味わいに仕上がっています。

 

タカラ焼酎ハイボールは、チューハイ(酎ハイ)の語源にもなったと言われる昭和20年代後半の東京下町の大衆酒場で生まれた元祖“焼酎ハイボール”の味わいを追求した辛口チューハイ。宝焼酎ならではの飲みごたえと、キレ味爽快で辛口な味わいに加え、プリン体ゼロ・甘味料ゼロである点も特徴です。

 

今回発売する、5%<特製梨サイダー割り>は、和梨ピューレを独自の方法で抽出・ろ過した「特製果実エキス」を使い、爽やかな香りとみずみずしい味わいに仕上げているそう。

 

宝酒造
タカラ「焼酎ハイボール」5%<特製梨サイダー割り>
参考小売価格(税別):350ml/159円、500ml/217円

「居酒屋」の歴史と大衆酒の変遷を深掘りする噺

提供:宝酒造株式会社

 

酒飲みを魅了してやまない「居酒屋」はいつ生まれ、どのように親しまれてきたのでしょうか。今回は『居酒屋の戦後史』(祥伝社新書・刊)の著者で、趣味と研究を兼ねて居酒屋巡りをフィールドワークとする早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授を講師に、大衆酒場にまつわる著書を数多く上梓している藤原法仁(のりひと)さんと浜田信郎(しんろう)さんとで鼎談。

 

3人は『酒噺』でもおなじみの倉嶋紀和子さんが創刊編集長を務める雑誌『古典酒場』で「居酒屋通ブログ三人衆よもやま話」の連載をしていた仲。十数年ぶりに一堂に会した3人が、お酒を片手に居酒屋の歴史と大衆に愛されてきた酒の変遷について語り合います。

●橋本健二(左)/早稲田大学人間科学学術院教授。専門は理論社会学および階級・階層論。主な著書に『居酒屋の戦後史』『居酒屋ほろ酔い考現学』(共に祥伝社)『階級社会』(講談社)『増補新版「格差」の戦後史』(河出書房新社)などがある。ブログは「橋本健二の居酒屋考現学
●浜田信郎(中央)/ブログ「居酒屋礼賛」の主宰。『酒場百選』(筑摩書房)『ひとり呑み』(WAVE出版)など、大衆酒場に関する著作を数多く上梓している。
●藤原法仁(右)/大衆酒場の聖地・葛飾区立石生まれ。居酒屋探訪をライフワークとし、浜田さんらとの共著に『東京居酒屋名店三昧』『東京「駅近」居酒屋名店探訪』(共に東京書籍)がある。「酎ハイ街道」の名付け親であり、「立ち飲みの日」制定の中心人物。

 

 

大衆居酒屋は江戸時代に発展した

いつ居酒屋が誕生したのかについて詳しいことはわかっていません。『続日本紀(しょくにほんぎ)』には、761(天平宝字5)年に平城京(現在の奈良県)の酒肆(しゅし)で起きた事件が記されています。これが、居酒屋について最古の記録ということになります。

 

酒肆とは酒を売る、飲ませる店のことであり、橋本教授は角打ち(酒屋の一角で飲むこと、または飲める酒屋のことなどを指す)のような店だったのではないかと推察します。つまり、奈良時代には酒場が存在していたということ。

 

ただ大衆文化として居酒屋が根付いたのは、もっと中世~近世になってからだと考えられています。1603(慶長8)年に江戸幕府が開かれ、町づくりのために全国から独身男性を中心に労働者が集まってきました。彼らの食事は外食が中心。仕事終わりには、いまのようにお酒を飲んで活力を養ったり、コミュニケーションを深めたりしていました。

 

お店の業態は角打ちだったり、江戸の四大名物食といわれる寿司、天ぷら、そば、うなぎの各店だったりもしますが、特に江戸っ子から重宝された飲める店が「煮売り酒屋(にうりざかや)」です。

 

「煮売り屋」とは、ご飯とともに魚や野菜の煮物を提供する業態のこと。やがて煮物をつまみに酒を提供する「煮売り酒屋」へ進化するケースが増加。角打ちをルーツとする居酒屋との区別があいまいになるとともに、現在の居酒屋へと進化していきました。そして江戸時代後期には、こうした飲食店が江戸には1800軒以上もあったといわれています。

↑江戸時代の煮売り酒屋の風景(『鶏声粟鳴子』より)。出典:国立国会図書館デジタルコレクション

 

明治時代になると、文明開化とともに日本人の飲食シーンにも変化がありました。料理でいえば肉食が解禁され、外食チェーンの先駆けといわれる牛鍋屋が誕生するなど、和洋折衷料理(洋食の原型)が徐々に一般化。お酒でも、ビールやワインなどが飲まれるようになり多様化が進んでいきます。

 

とはいえ、当時は舶来の料理やお酒はまだまだ高嶺の花でした。そんな居酒屋業態に大変革が起きたのは昭和の時代になってから。要因は太平洋戦争です。ここからは、橋本教授を中心に、藤原さんと浜田さんとで語ってもらいましょう。

 

居酒屋は戦後に大変革。闇市起源の横丁は3つに分かれる

藤原 私も下町の大衆酒場とか炭酸水とかいろいろ研究してるんですけど、あらためて今日はいろいろ教えてください!

 

浜田 先生とは長い付き合いですけど、しっかり話を聞く機会は珍しいですかね。楽しみです!

 

橋本 こちらこそよろしくお願いします。 居酒屋の転換点といえば、やはり終戦と闇市です。戦時中には1944(昭和19)年に贅沢禁止ということで、高級業態はもちろん、自営の飲食店は大幅に減少していきました。庶民的なおでん屋や居酒屋などは営業を認められていましたが、物資不足で実質は開店休業状態だったようです。

 

浜田 ただ、その代替として公営の“国民酒場”が開業したと聞きます。横浜にはいまでも、独自の“市民酒場”(※)が残っていますし。

※昭和初期に生まれた、横浜独自の大衆酒場の形態

 

橋本 終戦間際の1945(昭和20)年7月の新聞には、国民酒場に大行列ができている写真とともに記事が載っています。

 

浜田 そして、やがて終戦。都市部の駅前を中心に、焼け野原には闇市が誕生していきました。

 

橋本 そうですね。例外もありますけど、闇市をルーツとする横丁酒場は多いです。

 

藤原 この前、この『酒噺』で倉嶋さんが深掘りした、新宿の「思い出横丁」とか「ゴールデン街」とか。ほかには「西荻窪(東京都杉並区)」や、上野の「アメ横」。東京以外ですと、横浜の「野毛」などがありますね。

 

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橋本 なかでも私は3タイプに分類できると考えています。まずひとつは、当時の土地にそのまま残っているもの。「思い出横丁」や吉祥寺(東京都武蔵野市)の「ハモニカ横丁」ですね。ふたつめが移転させられたもの。これは「ゴールデン街」や池袋(東京都豊島区)の「美久仁小路」、三軒茶屋(東京都世田谷区)の「三角地帯」などです。

 

浜田 なるほど。そしてもうひとつは、闇市がビルや地下などに建て替えられたケースですね。新橋(東京都港区)の「駅前ビル」や、「ニュー新橋ビル」、荻窪の「タウンセブン」などでしょうか。

 

藤原 大井町(東京都品川区)や赤羽(東京都北区)にある飲み屋街も、闇市から建て替えられたパターンですよね。

↑大井町駅前の「東小路飲食街」(写真提供:PIXTA)

 

橋本 ちなみに、闇市には日用品や、農産物に魚介類、怪しげな加工食品などを扱う店などもありましたが、都心の新橋、渋谷、池袋などでは多くが飲み屋でした。また1947年以降、経済復興が始まって物資の流通が回復すると、一般の商店が営業を再開したため、闇市は一般的な商店街としての役割を終え、飲食街に特化していくようになります。これは1947(昭和22)年に、食糧事情のひっ迫を受けて約2年間発令された「飲食営業緊急措置令」が関係しているといえるでしょう。禁止されたがゆえに、裏口となる闇市では盛んになったという構図です。

 

藤原 あと、闇市をルーツとする酒場を語るうえで欠かせない業態に、もつ焼き屋がありますよね。

 

浜田 特に多い酒場街が、「思い出横丁」。戦後しばらく統制品だった正肉類は入手困難だったので、統制外だった豚のもつを串に刺し、“やきとり”と称して売り出したというエピソードも有名です。

 

橋本 そういった“ジェネリック焼き鳥”、いわゆるもつ焼きの店は、戦前からあったそうなんです。ただし場所は、労働者が多い下町や、繁華街の屋台。いまのように、駅前に“やきとり”をメインとした居酒屋が軒を連ねるようになった背景には、戦後の闇市抜きには語れないといえるでしょう。

 

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チェーン店の台頭と洋風化がさらなる多様化を進めた

↑藤原法仁さん

 

藤原 その後の居酒屋における大きなムーブメントは、チェーン店の台頭になりますかね。

 

橋本 有名な居酒屋御三家は、「養老乃瀧」(1956/昭和31年に1号店)、「村さ来」(1973/昭和48年創業)、「つぼ八」(1973/昭和48年創業)。ただ、ビアホールを含めた居酒屋チェーンをビジネスモデルとして確立した立役者の「ニュートーキョー」(1937/昭和12年創業)や、セントラルキッチンの全面導入や洋風居酒屋の先駆けとしては「天狗」(1969/昭和44年創業)も偉大です。「天狗」が洋風酒場に取り組んだ背景には、創業者のヨーロッパ視察があったとか。時代の先見性があったんでしょうね。

 

藤原 居酒屋の洋風化には、チェーン店の存在が大きいですよね。お酒でも、「村さ来」は多彩なシロップを使った、カクテルのような甘めのチューハイ(酎ハイ)のバリエーション展開が有名ですし。

 

浜田 洋風居酒屋の功績は、女性が来店しやすくなったことにあると思います。1982(昭和57)年には、デュエットソングの名曲『居酒屋』がリリースされていますよね。

 

橋本 懐かしいですね。やがてバブル終焉とともに御三家は受難の時代を迎えますが、平成以降の1990年代からは居酒屋新御三家の「コロワイド」(1977/昭和52年に「甘太郎」を開業)、「モンテローザ」(1983/昭和58年創業。「白木屋」など)、「ワタミ」(1992/平成4年に1号店。「和民」など)が躍進します。

↑橋本健二教授

 

浜田 「モンテローザ」と「ワタミ」のルーツは「つぼ八」ですから、後進に与えた影響は計り知れないです。

 

藤原 その後はインターネットの登場などもあったと思いますけど、居酒屋チェーンのトレンドはサイクルが早くなり、多様化している印象があります。1990年代後半からは個室居酒屋が増え、2000年代に入ると価格の均一業態も一世を風靡します。なかでも大ブレイクしたのが「鳥貴族」(1985/昭和60年創業)ですね。2005年には東京進出を果たしました。

 

浜田 2000年代後半からは幅広くメニューをそろえる総合居酒屋に代わって、ひとつの素材や料理に特化した専門業態の居酒屋も増えていったと思います。代表的なチェーンは「ダイヤモンドダイニング(DDグループ)」(2001/平成13年に飲食店を開業。「わらやき屋」など)や「串カツ田中」(2008/平成20年1号店)でしょう。

 

橋本 いまに続く大衆酒場ブームも2000年代以降ですね。こちらもやはり、インターネットによってお店の情報が開示されたことが大きいかと。それこそ、藤原さんや浜田さんの功績が大きいと思います。

 

藤原 うれしいです。でも、赤羽の名店「いこい」がルーツである立ち飲みチェーン「晩杯屋」(2009/平成21年1号店)や、ネオ大衆酒場の旗手「ビートル」(前身となる「お値段以上の大衆酒場 大鶴見食堂」が2013年開業)が誕生するなど、立ち飲みや大衆酒場にもチェーン店が出てくるとは思いませんでした。

 

橋本 一方で、1975(昭和50)年ごろから地酒ブームが起き、全国の日本酒とそれに合うアテを揃える“名酒居酒屋”が支持されてきたことも見逃せません。こちらは伝統的な様式を貫くオーセンティック居酒屋とでもいえるでしょう。

 

時代と地域による客層の変化

浜田 それぞれの時代で居酒屋の客層はどのように変化してきたんでしょうか?

↑浜田信郎さん

 

橋本 まず戦前からたどると、前述した“ジェネリック焼き鳥”、つまりもつ焼きの居酒屋は下町が中心で、労働者階級のお店でした。一方、中間層以上の人はビアホールや料理店、そして居酒屋などで飲んでいたと思います。有名な神田の「みますや」の創業は1905年、惜しまれつつ閉店した銀座の「樽平」の創業は1931年でした。

 

浜田 業態にも格差が反映されていたということですね。それが戦後になって変わったと。

 

橋本 はい。街に出てもお酒はないし、飲める店もない。そんな状況で出てきたのが闇市です。でもお酒好きは飲みたいから、貧富の差は関係なくここに集うわけですよ。なので私は闇市によって、飲み手の格差が関係ない居酒屋という業態も生まれたと考えています。

 

藤原 高度経済成長を迎えると、中間層も増えていきましたしね。

 

橋本 そうですね。一部のホワイトカラーはバーに行くなど選択肢が増えるのですが、だからといって居酒屋に行かなくなったとは考えにくいです。その後、居酒屋チェーンの台頭によって女性も足を運ぶようになり、やがて成人学生も利用する時代になると。

 

浜田 格差の話がありましたけど、東京の居酒屋のなかでも、下町と山の手でお店の地域差って感じますか?

 

橋本 ありますね。もつ焼き中心の居酒屋は下町の文化だし、山の手の居酒屋は刺身や天ぷらなど正統派の日本料理を、小盛りにして出すのが普通です。しかし下町の文化は、山の手でも受け入れられています。例えば下町のもつ焼き酒場の代表格である、立石の「宇ち多゛」みたいな店が山の手にできると、すごく人気になりますよね。

 

藤原 なるほど、尾山台(東京都世田谷区)の「もつ焼 たいじ」とか。

 

橋本 一方で、自由が丘(東京都目黒区)の「金田」や代々木上原(東京都渋谷区)の「笹吟」などは山の手を代表する名居酒屋ですけど、下町にはああいった洒脱な居酒屋は少ないと思います。客単価も高いですし、そこは少なからず各エリアの地価も関係してきますよね。

 

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戦後のチューハイなど各酒はこう飲まれてきた!

橋本 居酒屋の歴史を語るうえで、もうひとつの重要な側面はお酒の変遷です。闇市時代からたどると、戦時下の配給が継続されて日本酒やビールはありましたが、物資不足で希少品でした。

 

浜田 闇市には配給酒の転売品や米軍からの横流しもあったそうですが、当然高嶺の花ですよね。

 

橋本 そこで主流となったのが、「バクダン」「カストリ」と呼ばれる焼酎を模倣した密造酒です。「バクダン」は燃料用のアルコールを水で薄めた違法な粗悪品で、飲んで命を落とした人もいたそうです。

 

藤原 特にバクダンには、メチルアルコールを薄めて混ぜたものがあったという話も聞きます。

 

橋本 一方の「カストリ」は、穀物や芋類などを発酵させた醪(もろみ)を蒸留したもの。酒粕由来の「粕取り焼酎」とは違いますね。でも「カストリ」は焼酎のような酒ですから、中毒の心配はありませんこれらの粗悪品が横行したため、焼酎のイメージは低下しました。

 

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浜田 徐々にビールも市民権を得ていくんですよね。

 

橋本 家庭用のビールに配給制度が導入されたのは、戦前の1940(昭和15)年。この制度によって、中間層以上の嗜好品だったビールが全国の一般層に普及します。また、日本酒の主原料である米は食用に最優先されましたが、ビールの主原料である大麦は優先度合いが比較的低かった。そんな背景もあって、ビールが普及拡大する素地が広がっていったのです。

 

藤原 そして、特に下町大衆酒場の酒といえば、焼酎ハイボール(酎ハイ)は外せません。諸説ありますが、墨田区曳舟の「三祐酒場」の当時の店主が、1951(昭和26)年にアメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受け、焼酎で再現を試みたのが焼酎ハイボール(酎ハイ=チューハイ)誕生の有力な説です。

↑現在も「三祐酒場 八広店(墨田区)」で人気の「元祖焼酎ハイボール」

 

橋本 さすがにこの辺の話は、藤原さんのほうが詳しいですよね。特に東京の下町で愛されたのが、クリアな味わいの甲類焼酎。これはフランスで開発されたアロスパス式連続蒸留機によって、ネガティブなにおいを抑えたアルコールを精製できるようになったからです。

 

藤原 ちなみに、本格焼酎は1975(昭和50)年ごろにお湯割りブームで全国的にも広まるんですけどね。その後、今度は1977年に宝焼酎「純」が発売され、ピュアで飲み方に多様性のある甲類焼酎が新しいお酒として見直され大ヒットします。そして麦焼酎ブームを経て、1980年代のチューハイブームへ。チューハイを全国区にしたのが1980年代以降のチェーン居酒屋と、1984(昭和59)年に発売された日本初の缶入りチューハイ「タカラcanチューハイ」ですよね。

↑11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝酒造「純」

 

浜田 私は愛媛生まれで大学時代は九州の福岡で過ごしたのですが、初めてチューハイに出会ったのは就職した上京後。確かに1980年代でしたね。当時の若者達にとってはセンセーショナルなお酒でした。九州では本格焼酎をお湯割りか、水割りで飲むのが主流でしたから。

↑発売当時(1984/昭和59年)のタカラcanチューハイ

 

藤原 それからしばらく経って、大衆酒場の人気到来とともに、2006年には缶でタカラ「焼酎ハイボール」も発売されます。

 

 

日本酒とウイスキーの栄枯盛衰

 

橋本 日本の酒でいえば、日本酒は戦後しばらく原料の米が食用へ優先されたためで希少な酒でした。そのため当初市場に出回った多くは、アルコールに糖類などを加えた合成清酒といわれる代物。合成ではない清酒(日本酒)の生産量が戦前を超えたのは1961(昭和36)年のことで、他のカテゴリーよりも回復が非常に遅れたのです。

 

浜田 酒蔵の数も、戦争によって激減したと聞きます。

 

橋本 その通りです。戦前に7000を超えていた酒蔵数は、終戦時で3178にまで減少。次第に回復しますが、戦後ピークの1956(昭和31)年でも4135蔵です。

 

藤原 なんと、そんなに減ったんですか!

 

橋本 これは、ビールが台頭したからという理由もあるでしょう。お酒全体の出荷量は次第に伸び、特に日本酒とビールがけん引します。一方で、代用品だった合成清酒と焼酎は伸び悩みました。そして、1959(昭和34)年にはビールの出荷量が日本酒を追い抜き、以降ビールは日本で最も飲まれるお酒となっています。

 

藤原 日本酒も1970年代中ごろには地酒ブーム、1980年代には淡麗辛口や吟醸酒のブームがあったんですけどね。

 

浜田 いまや、稼働している酒蔵の数は1200を切ったと言われています。近年は若手の蔵元が継いだり再興したり、新たなSAKEカルチャーをつくったり、高級路線でブランディングしたり、海外進出したりしていますが、応援したいですね。

 

橋本 そうですね。いま、受難を経て世界的に人気となったお酒にはジャパニーズウイスキーがありますが、ウイスキーもなかなか波乱万丈でした。

 

藤原 ジャパニーズウイスキーは2023年で100周年を迎えたんですよね。発売当時はすごく高かったと聞いています。

 

橋本 日本初の本格ウイスキー、サントリー「白札」の発売は1929(昭和4)年。当時の記録でも、お米10kgが2円30銭の時代に1本が4円50銭だったそうです。

 

浜田 お米が貴重だった当時でも、20kgぶんとほぼ一緒の価格とは。

 

橋本 高すぎたのもあって、売れなかったらしいんですよ。そんな反省から「角瓶」「トリス」など安価なブランドが発売され、1950(昭和25)年には50円の「トリス」ハイボールが登場し、生ビールが1杯135円の時代に爆発的にヒットしたそうです。

 

藤原 一方で、下町ではウイスキーハイボールではなく、焼酎ハイボールの人気が根強かったと聞きます。

 

橋本 それは、価格とアルコール量の問題だと思います。チューハイ(焼酎ハイボール)は当時30~50円と安く、アルコール量はウイスキーハイボールの2倍以上入っていました。そんなウイスキーですが、飲み方としては1970年代に入ると水割りに主役の座を奪われます。理由は、水は炭酸水よりも安価であり、家庭でも簡単に濃度を調整できるから。

 

藤原 1987年にリリースされたデュエット名曲『男と女のラブゲーム』でも、水割りの歌詞が登場します。

 

橋本 ウイスキーは普及とともに大衆化が進み、ビールや日本酒が大幅に値上げする一方でほとんど値上げはせず、相対価格が下がったんです。1975(昭和50)年での純アルコールあたりの価格では、なんと一番安いのがウイスキーでした。こうした背景もあって、どんどん伸長していきました。

 

浜田 1971(昭和46)年にはウイスキーの輸入自由化が始まり、バーボンやスコッチなどの舶来ウイスキーのブームも到来しますよね。

 

橋本 そう。ウイスキーは経済成長とともに右肩上がりを続けていきました。しかし1983(昭和58)年にピークを迎えて以降、価格の引き上げや酒税の増税などが重なり、次第にその勢いを失っていきます。やがて2007(平成19)年には、販売量ベースで最盛期の6分の1まで減少。しかし、翌年にはウイスキーハイボールブームが到来してV字回復していきます。

 

浜田 2014(平成26)年には朝ドラ(NHK連続テレビ小説)「マッサン」の影響もあり、近年ではジャパニーズウイスキーを筆頭に市場が盛り上がっていますよね。

 

分断されがちな社会をつなぐ存在が居酒屋だ

 

橋本 2025年は昭和100年であり、戦後80年を迎えます。飲み屋も嗜み方も時代に合わせて変わっていくなか、居酒屋やお酒の飲み方はどうなっていくと思いますか?

 

藤原 このままだと個人経営の居酒屋は衰退してしまうと思います。だから、この素晴らしい文化を未来にしっかり継承していくことが大切かなと。

 

橋本 そうですよね。チェーン店でも、もつ焼きやもつ煮込み、ホッピーなどを出すようになっていますよね。それは、戦後大衆酒場の文化が根強く愛されている証拠だと思うんです。だから気軽に行けるお店からでも、若い人には居酒屋の魅力を知ってほしいと思いますね。

 

浜田 先生の使命は大きいと思いますよ。

 

橋本 はい。私の生徒はそもそも酒好きが多いですけど、彼らを介して広がっていけばいいなと思います。

 

藤原 社会はどうあるべきなんですかね。

 

橋本 格差はあまり大きくならないほうがいいですね。もちろん、業態などによって大衆店や高級店とで分かれますけど、分断されがちな社会をつないでくれる存在が居酒屋だとも思うんです。だから、居酒屋の存在意義はきわめて大きいと。

 

藤原 ちなみに、先生の理想の居酒屋ってどんなお店ですか?

 

橋本 もつ焼きともつ煮込みに加えて、刺身もおいしい。そんな居酒屋が好きです。藤原さんは?

 

藤原 私は、古き良き居酒屋文化を継承してくれるのがネオ大衆酒場と呼ばれるお店だと思っていて、すごく期待しています。でも個人的に好きなのは、いまの気分だとどぶ漬けがあるカウンター酒場。東十条(東京都北区)の「よりみち」とか、渋谷の「酒呑気まるこ」とか最高ですね。浜田さんはどう?

 

浜田 例えば、温泉とかの湯舟のように、その酒場の雰囲気にどっぷりつかれる居酒屋かな。常連さんを中心にいい雰囲気ができあがっていて、そこに自然と一体化できるお店には癒されますね。そういう居酒屋を、これからも礼賛していきたいです!

 

橋本 浜田さんらしいコメントが出ましたね。今日は、ふだん飲み屋ではしない話をおふたりとできてよかったです。また集まりましょう!

 

藤原・浜田 ありがとうございました!

 

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

居酒屋 関所

住所:東京都台東区根岸1-7-3
営業時間:16:30~23:30
定休日:日曜

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝酒造「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・タカラcanチューハイ
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/regular/

【せんべろnet監修】“ひとり飲み”初心者が「せんべろセット」を堪能する噺

提供:宝酒造株式会社

 

「酒噺:東京・大衆酒場の名店シリーズ」で一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。実践編に入って、女性一人(初心者)でも出来る「酒場」の楽しみ方を「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第6回目。今回は東京・上野の「かっちゃん」で「せんべろセット」に挑戦します。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

「せんべろセット」とは?

 

仕事が早く終わり、軽く飲もうと街へ繰り出した中村さん。飲み屋の名店も数多い上野・アメ横(アメヤ横丁)エリアを歩いていると、「せんべろセット」の文字が目に飛び込んできました。「せんべろセット」とは、1000円程度の決まった料金で、お酒数杯とおつまみ数品を楽しめるお得なセットメニューのこと。

 

気になった中村さんは「ひとり飲み」の師匠でもある「せんべろnet」のひろみんさんに、LINEでお店と「せんべろセット」について聞いてみることに。

 

ひろみんさんからの情報を得た中村さん。いざ「かっちゃん」に入店です!

 

お店の1階はカウンターだけの立ち飲みスタイル。カウンターの奥に進んだ中村さんはさっそく「せんべろセット」を注文。「かっちゃん」はキャッシュオン方式なので、1200円を支払うとマスに入った4つのサイコロが渡されました。

↑左は「かっちゃん」店主の小松活也さん

 

 

サイコロで交換できるお品書きのリストを見ると、種類が豊富で半数以上がサイコロ1個ぶん。サクッと飲もうと思った中村さんは、奮発して3個ぶんの「スパークリング清酒 澪150ml」をチョイス。料理は「おまかせ天ぷら盛合わせ」をオーダーしました。

 

近年、「せんべろセット」は都市圏や沖縄などさまざまな地域で見られるようになりました。提供しているのは立ち飲みや大衆酒場をはじめ、ホルモン焼き店や鉄板焼き店、イタリアンやカフェなど実施するお店のジャンルも多彩です。

 

価格帯は1000円~1200円程が多く、セット内容はドリンク2杯+おつまみ1品からドリンク最大7杯+おつまみ2品まで、お店によって個性があり、多種多様です。

 

システムは「かっちゃん」と同様にサイコロ(点棒)を購入し、好きなお酒・おつまみと引き換えられることもあれば、決まったセットを提供されている場合もあります。

 

なお「かっちゃん」の「せんべろセット」は終日楽しめますが、お店によっては「ハッピーアワー(※)」のように平日夕方などお客さんが少ない時間帯にのみ提供されていることも多いので、事前に確認しておきましょう。

※飲食店がお酒類の割引を行う時間帯

~「せんべろセット」とは?~

・1000円程度の決まった料金で楽しめるドリンク数杯+おつまみ数品のお得なセットメニュ—

・近年、せんべろセットは都市圏や沖縄など様々な地域で見られるようになった

・提供しているのは立ち飲みや大衆酒場をはじめ、ホルモン焼き店や鉄板焼き店、イタリアン、カフェなどお店のジャンルも多彩

・セット内容はお店によって個性があり、多種多様

・サイコロや点棒を購入し、好きなドリンクやおつまみと引き換えられるシステムを採用しているお店も

・ハッピーアワーのように平日の夕方限定などお客さんが少ない時間帯にのみ提供されている場合も多い

 

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最大4杯のお酒と職人仕立ての天盛りが1200円!

さっそく注文した「スパークリング清酒 澪150ml」が到着し、「せんべろセット」のひとり飲みがスタート! 初めてでキョロキョロしている中村さんに、店主の小松さんが声をかけてくれました。

↑「スパークリング清酒 澪150ml」はサイコロ3個、もしくは単品650円

 

小松 どうぞ、「澪」です!

 

中村 ありがとうございます! では、いただいちゃいまーす……うん!  私、「澪」が大好きなんです。香りからしてフルーティーで、シュワッとした飲み口が気持ちいい!

 

小松 素敵な飲みっぷりです! 今日はお仕事帰りですか?

 

中村 そうなんです。「せんべろセット」に惹かれて来ました! お店はいつからやってるんですか?

 

小松 ここは2010年オープンです。本店はJR品川駅の「常盤軒(ときわけん)」という立ち食いそば屋で、山手線と横須賀線のホームに計2店出してます。

 

中村 えっ、そのお店も気になります! でもそれなら、おそばの天ぷらのノウハウをこちらに生かしたってことですか?

 

小松 そうですね。あと、お酒に関しては同じ品川駅構内のエキュート品川で、「品川 ひおき」という居酒屋もやってるんです。僕はもともとそこの店長で、上野にはここの立ち上げの際に来ました。

 

中村 「かっちゃん」というのは店主さんのお名前ですか?

 

小松 そうですそうです(笑)。小松活也といいまして。

 

中村 やっぱり! ちなみに、開業当初から「せんべろセット」をやられてたんですか?

 

小松 「せんべろセット」は2018年ごろからですね。業態はずっと天ぷら酒場で、「せんべろセット」は1階の立ち飲みの限定です。

 

中村 さすがに種類も豊富だし、職人さんが揚げたてで提供してくれるので絶対おいしいですよね。

 

小松 もちろんです。ちょうどできましたのでどうぞ!

↑注文が入ってから職人さんが天ぷらをあげていく

 

中村 ありがとうございます。わっ、海老ものっててスゴい豪華!

 

小松 今日は海老、なす、かぼちゃ、れんこん、じゃがいも、にんじんの6種盛り。仕入れによって野菜の種類や品数が変わることはありますが、海老は必ず入りますね。

↑「おまかせ天ぷら盛合わせ」

 

中村 めっちゃお得じゃないですか! まずは手前のれんこんからいただきます……うん、サクサクしてて超おいしい!

 

小松 天つゆのほかに抹茶塩も用意してますが、「澪」なら天つゆのほうが合うかもしれませんね。

↑カウンターには抹茶塩と七味が用意されている

 

中村 確かに! お米の甘みが豊かな「澪」は、ほんのり甘めの天つゆのほうがいいかも。あと、さっぱりとした泡のキレは揚げ物と抜群に合います!

 

小松 お酒にも合ってよかったです。2杯目はどうします? サイコロはあと1個ですかね。

 

中村 迷っちゃうほどたくさんありますよね。どうしよっかな……、では「ISAINA炭酸割り」をお願いします!

 

小松 ありがとうございます! 少々お待ちくださいねー。

 

ちなみに、「かっちゃん」の「せんべろセット」で飲めるお酒は30種類以上。オススメは「タカラリッチ」(360m)で、サイコロ4個または1000円。なんと、炭酸水と氷は無料です。松竹梅「豪快」(150ml)もサイコロ2個、または550円とこちらもオススメです。

↑「タカラリッチ360ml」。サイコロ4個または1000円。炭酸水と氷は無料

 

↑松竹梅 「豪快 」(150ml)。サイコロ2個、または550円

 

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「せんべろセット」のマナーとポイント

 

小松 お待たせしました!「ISAINA炭酸割り」です。どうぞ~。

 

↑「ISAINA炭酸割り」はサイコロ1個、もしくは単品400円

 

中村 こちらもさっぱりしてておいしい!

 

小松 「ISAINA(イサイナ)」は若い女性にも人気の芋焼酎ですね。炭酸割りが飲みやすいと評判です。

 

中村 はい! りんごのような果実の香りと、シャープな爽快感が炭酸水とマッチしています。それにどんなおつまみにも合う味ですね。ということで、おつまみの追加オーダーをさせてください! 紙に書きますね。

 

小松 ありがとうございます! そう、うちの追加オーダーは紙ナプキンへの記入をお願いしてるんです。

 

中村 では変わり種天ぷらの「大根たいたん」をお願いします。ネーミングが気になっちゃって。

 

小松 お目が高いですね。こちらは隠れた人気メニューで、おでんの大根を天ぷらにしてるんです。少々お待ちくださいね~。

↑「大根たいたん」250円。単品メニューのみ

 

中村 あっ、こういうビジュアルなんだ。上にのってるのはゆずこしょうかな。いただきまーす!

 

小松 味もちょっと変わってないですか?

 

中村 だしが甘じょっぱい醤油べースなんですね。サクサクの衣と大根のジュワッとしたメリハリ。そこにゆずこしょうのピリ辛がいいアクセントになって、すごくおいしいです!

 

小松 よかった! おでんは、実はそばつゆベースのだしで炊いてるんです。「せんべろセット」の料理も、「おまかせ天ぷら盛り合わせ」ともうひとつは「おでんの盛り合わせ」で、2割ほどのお客様はおでんを選ばれますね。

 

中村 次は、おでんで「せんべろセット」楽しみたいです! では、最後のシメを。「ひとくちカレーライス」をお願いします!

 

小松 ありがとうございます! すぐ出ますので~。

↑「ひとくちカレーライス」(250円)。サイコロ1個でも交換可能

 

中村 シメにぴったりのサイズ感がうれしい! 味は割とスパイシーで、お酒に合う味わいのカレーですね。

 

小松 こちらは品川でも提供しているカレーで、あえてそばのだし感ではなくスパイシーさにこだわってるんです。

 

中村 品川のほうにも、こんど絶対行きますね!

 

最後に、ひろみんさんから聞いた「せんべろセット」を楽しむためのマナーやポイントを見ていきましょう。

 

1000円程度で気軽に楽しめる「せんべろセット」は、サクッと飲みたい時やスキマ時間などにおすすめ。平日夕方など「ハッピーアワー」のように開店直後の時間だけ提供するというお店も多いので、早い時間に飲む際にぴったりです。ただし時間制限を設けているお店もあり、その場合はだいたい60分程度とか。

 

また中には、別途お通しや席料がかかるお店もあるので、お得に楽しみたい場合には事前に確認しておくことをおすすめします。同時にキャッシュオンや支払いは現金のみというお店もあるので、千円札を用意しておきましょう。

 

そして、利用する側のマナーとして気を付けたいのが、長居は禁物ということ。セットのメニューを嗜んだ後、追加注文など飲み食いしない場合には、次のお客さんのために席を空けましょう。これは、一般的な立ち飲みや大衆酒場でも同様です。

↑「かっちゃん」の店内でも「せんべろセット」の注意書きが貼られている

 

~「せんべろセット」のマナーと楽しむポイント~

・時間制限を設けているお店もあり、その場合は大体が60分

・時間限定や別途お通し代がかかる場合もあるので予め確認しておくべし

・キャッシュオンや支払いは現金のみというお店もあるので、千円札を用意しておこう

・サービス価格で提供されていることがほとんどなので、長居するなら追加オーダーを

 

今回の訪問では「せんべろセット」が1200円、「大根たいたん」が250円、「ひとくちカレーライス」が250円。計1700円で有意義なひとり飲みを堪能できました。次回もまた別のテーマで、ひとり飲みの楽しみ方を追求します!

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

かっちゃん

住所:東京都台東区上野6-12-13
営業時間:11:00 – 21:45(L.O. 21:30)
定休日:なし

※価格はすべて税込みです

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・松竹梅 白壁蔵「澪」
https://shirakabegura-mio.jp/

・全量芋焼酎「ISAINA」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/

・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・宝焼酎「タカラリッチ」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takararich/

 

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夏にピッタリ! タカラ「焼酎ハイボール」<強烈パインサイダー割り>が今年も数量限定で発売

宝酒造は2019年の発売以来人気の“タカラ「焼酎ハイボール」<強烈パインサイダー割り>”を、7月30日(火)に全国で数量限定発売。

 

<強烈パインサイダー割り>は、強炭酸が特長のタカラ「焼酎ハイボール」の中で、最も強い炭酸が楽しめる「強烈シリーズ」の数量限定フレーバー。大衆酒場で人気の「焼酎の地サイダー割り」をイメージしたチューハイで、“超強炭酸”の刺激的な飲みごたえと、夏にピッタリな甘くない爽やかな“パインサイダー”の風味を糖質ゼロ(※)で楽しめます。

※ 食品表示基準に基づき、100ml当たり糖質0.5g未満を糖質ゼロと表示

 

【商品概要】

メーカー:宝酒造
商品名:タカラ「焼酎ハイボール」<強烈パインサイダー割り>
参考小売価格(消費税抜き):350ml/154円、500ml/211円
発売日:2024年7月30日(火)

 

倉嶋紀和子オススメ「焼酎の美味しい飲み方」と“オリジナルチューハイ”の噺

提供:宝酒造株式会社

 

意外と知らない焼酎の噺15

2022年から始まった「意外と知らない焼酎の噺」では、「ホッピー」や「ホイス」といった割り材メーカーの代表者から歴史や美味しさの秘密を教えてもらったり、ディスペンサーメーカーにもお話を伺いました。今回も引き続き“総集編”として、荻窪(東京都杉並区)の「チューハイ倶楽部C」で、『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんにチューハイの歴史や割材について振り返ってもらいつつ、「オリジナルチューハイ」を考案してもらいました。

【前回はコチラ

●倉嶋紀和子/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

 

倉嶋紀和子の「オリジナルチューハイ」

「『宝焼酎』はどの銘柄も、樽貯蔵熟成酒とのブレンド具合が絶妙ですよね。樽香があるからコクやうまみのフックを感じさせてくれますし、でも逆に樽香が強すぎると甲類焼酎の良さが消えて飲みにくくなってしまうと思うんです」と、魅力を振りかえる倉嶋さん。ここからは、倉嶋さん考案のオリジナルチューハイを教えてもらいます。

 

●「NIPPON×ホッピー」

まず1品目は「NIPPON×ホッピー」。長年、親交があるホッピーミーナさん(ホッピービバレッジ代表取締役社長の石渡美奈さん)と対談をした第8回の『ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺』を振り返りつつ、味の特徴を教えてもらいました。

 

私の場合『ホッピー』のベースアルコールは甲類焼酎。ちょっと気分を変えたい時にはフレーバード・ウォッカで割って呑んでいたのですが、、『NIPPON』と出会ってからは、甲類焼酎の桜樽熟成のものもいいなぁと。『NIPPON』がもつ、桜樽由来の甘やかな熟成香が、『ホッピー』の麦芽の風味に合うんです。そのうえ、桜ならではの上品なニュアンスがあって、贅沢な『ホッピー』になるんですよね」(倉嶋さん)

 

「ホッピーミーナさんと久々にゆっくりお話しができたのはよかったですね。もう10年以上親しくさせていただいてますが、ホッピーのルーツや、なぜ東京以外の横浜や横須賀にもホッピーの聖地があるのかなど、改めて勉強になりましたね」(倉嶋さん)

 

【関連記事】
【意外と知らない焼酎の噺08】ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺

 

●「極上〈宝焼酎〉×炭酸水×フローズン葡萄」

2品目は、丸ごと凍らせた葡萄の実をアクセントにした「極上〈宝焼酎〉×炭酸水×フローズン葡萄」。まずは、味わいについて語ってもらいました。

 

「フローズン葡萄を入れるきっかけは、2022年の春に発売された『極上〈宝焼酎〉の炭酸割りタンチュー』なんです。そのままでも『極上〈宝焼酎〉』の豊かなコクがフックになって美味しいんですが、ちょっとアレンジしてみようと思いまして」(倉嶋さん)

 

「それで、氷代わりにもなるからと、凍った葡萄を入れたらドンピシャだったんです。使うのは黒葡萄のほうですね。果実そのままだから甘すぎず、葡萄の風味も自然でちょうどいいバランスだなと。以来、特に夏は愛飲しています!」(倉嶋さん)

↑「チューハイ倶楽部C」店主の山下さんにニットクのディスペンサーでつくられた強炭酸を入れてもらい完成!

 

本シリーズでは「チューハイ」についても深掘りしてきましたが、倉嶋さんが印象に残っている取材について伺いました。

 

第12回で、チューハイディスペンサーを製造するニットクさんにお邪魔しましたね。強炭酸を楽しむには、ガスが弾け飛ばないように、注ぎ口をグラスに付け、氷に当たらないように傾けながら静かに注ぐなど、島田昭専務のお話はとっても勉強になりました」(倉嶋さん)。

↑ニットクでは、炭酸の注ぎ方のコツなども教えてもらいました!

 

「ほかにもチューハイについては、それぞれいろいろな方にお話しを伺いましたが、どの回も印象的です。藤原法仁さん(大衆酒場の有識者)とは『村さ来 中野北口店』で対談させていただき(第7回)、同店のチューハイの豊富なバリエーションには驚かされました。濃いめに注文できるのも魅力で、すごく楽しかったです。

 

第9回の『レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺』では、『居酒屋礼賛』主宰の浜田信郎さんと『もつ焼き ばん 中目黒本店』に行きました。とにかく同店発祥のレモンサワーが絶品で、もつ焼きや『激辛豚美(とんび)豆腐』といった名物にも合うんです。また、このレモンサワーをヒントに生まれた『ハイサワー(株式会社博水社)』の田中秀子社長にもお話を伺いました。米国への視察旅行で見たカクテルを飲む光景が、開発のきっかけだったというのは、なるほどと思いましたね」(倉嶋さん)

↑『もつ焼き ばん 中目黒本店』のレモンサワー

 

「『ハイサワー』の博水社もですが、『ホイス』(第10回)と『バイス』(第11回)も住宅街のなかにオフィスを構えていたのがなんとも下町的で素敵でした。『ホイス』の後藤竜馬社長(有限会社ジィ・ティ・ユー)は、創業者のおじいさまから受け継ぐ味をひとりでつくるという、まさに一子相伝だなと。それに、おじいさまが戦前にシベリア鉄道で欧州へ行った知見が『ホイス』の味につながっている、という話もロマンがありましたね」(倉嶋さん)

 

「『バイス(正式名称:コダマバイスサワー)』の池澤友博社長(株式会社コダマ飲料)は2代目で、初代で下戸のお父様と酒好きの2代目で一緒に開発したというお話が興味深かったです。また『コダマ』の由来が、池澤社長が幼少期に特急列車『こだま号』が大好きだったからというエピソードも、家族愛があってほほえましいですよね」(倉嶋さん)

 

ちなみに、倉嶋さんはレモンサワーもよくつくるとのことですが、その際はレモン系の香り成分を含むハーブなどを使った宝焼酎「レモンサワー専用」をベースにするのだとか。

 

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【意外と知らない焼酎の噺11】東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺

 

●「レジェンド×豆乳」

3品目は「レジェンド×豆乳」。第13回『「お茶割り」のプロに聞く「焼酎×お茶」組み合わせの妙を楽しむ噺』の取材の感想を交えながら語ってもらいました。

 

『レジェンド×豆乳』は、かつて西巣鴨(東京都北区)にあった老舗のもつ焼き酒場『高木』に甲類焼酎の『牛乳割り』というドリンクがありまして。それが大好きだったので、自分でもやってみようと思ったのがきっかけです。ただ牛乳より豆乳のほうがヘルシーということで、私の場合は豆乳。

 

特に、樽貯蔵熟成酒が20%使われた『レジェンド』で割ると、バニラやはちみつのような甘香ばしさが豆乳の甘みとマッチして、デザート感覚で飲めるところが好きです。それでいて、濃厚なもつ焼きも食べたくなるんですよね。この点は甲類焼酎の素晴らしさかなと」(倉嶋さん)

 

「第13回では、松ちゃん(松木恵美さん。倉嶋さん主宰のカルチャースクール『古典酒場』の生徒)が営む『酒と茶と 襤褸(らんる)』に行きましたね。一番興味深かったのは、同じお茶を使っても、焼酎が変わると味だけでなく色にも違いが出るところ。アルコール度数も一緒なのに、樽貯蔵熟成酒の量でpH(水素イオン指数)の値が異なるからではないかというお話でしたよね。やっぱりアルコールって奥が深いなと、勉強になりました」(倉嶋さん)

 

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ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
今回のテーマは「チューハイ」と並んで甲類焼酎の飲み方として定番の「ホッピー割り」。東京で生まれて昔から焼酎の割り材として人気の「ホッピー」の歴史と変遷を“ホッピーミーナ”に伺います。

「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。

 

家でより美味しく飲むためのコツ

最後は、甲類焼酎を家で美味しく飲むためのワンポイントアドバイスを紹介します。まず、ベースとなる焼酎やグラスは冷蔵庫で冷やしておきましょう。なぜなら、冷たいほうが氷が解けづらく、味が薄まりにくいから。

 

なお、チューハイの場合はロックアイスも用意。もちろん、お湯割りで楽しむ場合は冷やす必要はありません。ただ、事前に焼酎と水を前割りしておき、湯煎で温めておくとまろやかな口当たりになってより美味しく楽しめます。

 

チューハイをつくるための炭酸水は、ガス圧が強い強炭酸タイプがオススメ。注ぐ際は、勢いよくではなく、氷に当てないようグラス内側に沿わせるようにやさしく入れ、マドラーで混ぜるのもゆっくり1回程度で十分です。

 

焼酎は容量や容器にも様々な種類がありますが、冷蔵庫で保存しやすいタイプは、牛乳パックと同型の「900ml紙パック」。冷蔵庫のドアポケットにも収納しやすい形状となっています。

 

レモンサワーが好きな方は、カットしたレモンをそのまま凍らせることで氷代わりとなり、味が薄まりにくいレモンサワーを楽しめます。味を薄めないという点では、氷代わりになるアイスキューブを別途購入するのもアリ。また、役立ちツールとしては炭酸ガスを抜けにくくする専用のキャップも売っているので、適宜使ってみてください。

 

割り方で無限に楽しめる酒が焼酎だ

 

最後に再び、これまでの「意外と知らない焼酎の噺」を振り返った感想を倉嶋さんに聞きました。

 

「甲類焼酎の面白さは割り材との組み合わせにあり、その味わいを支えているのが、絶妙なバランスでつくられた宝焼酎。樽貯蔵熟成酒のブレンド比率などによって様々なつくり分けがされていて、そこからの掛け合わせで無限の美味しさが楽しめるという。本当にスゴいお酒です!」(倉嶋さん)

 

本シリーズによって倉嶋さんの焼酎知識が一層深まるとともに、吞兵衛人生の転機になったとも。読者のみなさんもぜひ奥深い魅力に触れ、より豊かな焼酎ライフを楽しんでください。

 

 

<取材協力>

チューハイ倶楽部C

住所:東京都杉並区天沼3-6-22
営業時間:17:00~24:00
定休日:月曜

 

撮影/鈴木謙介

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/lineup/gokujo-takara-shochu.html

・宝焼酎「レジェンド」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/legend/

・宝焼酎「NIPPON」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/nippon/

・極上〈宝焼酎〉の炭酸割りタンチュー
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/gokujo/tanchu/

 

【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼
【意外と知らない焼酎の噺01】「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺
【意外と知らない焼酎の噺02】「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺03】いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺
【意外と知らない焼酎の噺04】芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺05】麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺06】焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺07】「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
【意外と知らない焼酎の噺08】ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
【意外と知らない焼酎の噺09】レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺
【意外と知らない焼酎の噺10】一子相伝で受け継がれる“幻”の割り材「ホイス」の噺
【意外と知らない焼酎の噺11】東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺
【意外と知らない焼酎の噺12】「強炭酸チューハイ」をつくるディスペンサーの秘密に迫る噺
【意外と知らない焼酎の噺13】「お茶割り」のプロに聞く「焼酎×お茶」組み合わせの妙を楽しむ噺
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焼酎の奥深さを再確認! 倉嶋紀和子が改めて甲類焼酎を飲み比べる噺

提供:宝酒造株式会社

 

意外と知らない焼酎の噺14

『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。今回は“総集編”(前編)として、荻窪(東京都杉並区)の「チューハイ倶楽部C」で、焼酎の基礎知識を振り返りつつ、改めて「甲類焼酎」の美味しい飲み方を紹介します。

●倉嶋紀和子/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

 

焼酎の基礎知識を振り返る

2022年から始まった「意外と知らない焼酎の噺」。焼酎の歴史やつくり方、千葉県と宮崎県の焼酎工場で蒸留や樽貯蔵のいろはを伺ったり、様々な角度から焼酎の魅力を深掘りしてきましたが、倉嶋さんに改めて感想を聞きました。

 

「第1回の『「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺』では、『酒文化研究所』の狩野卓也さんから、勉強になる話をたくさん聞かせていただきましたね。例えば、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)が明治末期に日本に伝わったという話は印象に残っています。

 

第2回で伺った、松戸(千葉県松戸市)の工場見学も忘れられません。なかでも連続式蒸留機がものスゴい大きさでビックリ。本格焼酎をつくる単式蒸留機は見たことあったんですけど、連続式蒸留機は初めてで、国内最大級というサイズはとにかく圧倒されましたし、貴重な体験でした」(倉嶋さん)

↑十数本の蒸留塔を有する、宝酒造松戸工場の巨大な連続式蒸留機

 

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【意外と知らない焼酎の噺02】「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺

 

「松戸工場ではテイスティング(第3回『いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺』)も楽しかったです。でも、商品の味以上に驚かされたのは、蒸留前の『粗留アルコール』と蒸留後の『アルコール』との違いですね。連続式蒸留機で磨くとこうなるんだ、クリアな風味ってこういうことなんだ、と深く理解できました。

 

工場見学といえば、やっぱり第6回で行った高鍋(宮崎県高鍋町)の黒壁蔵は一生モノの思い出です。樽貯蔵熟成酒の巨大な貯蔵庫が圧巻でしたし、樽の再生加工現場での樽内部の焼成工程もスゴい迫力で。樽熟成にかける手間ひまや、ブレンド技術の高さ、そして『樽貯蔵熟成酒』の香り高さとそれぞれの違いにも驚かされました。最高に楽しかったです!」(倉嶋さん)

↑火力を上げ、炎が燃えさかるように焼き上げる「チャー」の仕上げ工程。このあと水で消火し、樽の組み直しを行います

 

↑黒壁蔵のラック式自動樽貯蔵庫。最大4200本の樽を収納可能。スケールの大きさに倉嶋さんも息を飲むばかり

 

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■甲類焼酎の基礎知識

①焼酎(蒸留酒)の誕生は紀元前。日本に伝わったのは14〜15世紀。

②焼酎は芋や麦などを発酵させたもろみを蒸留し、原料の風味やアルコールを凝縮させた蒸留酒である。

③連続式蒸留機で蒸留したアルコール分36度未満の焼酎が「甲類焼酎」(単式蒸留機で蒸留したアルコール分45度以下の焼酎が「本格(乙類)焼酎」)。

④主な原料はさとうきび糖蜜などをベースにした粗留アルコールである。

⑤甲類焼酎は明治末期(1910年)に誕生。当初は、連続式蒸留で得られたアルコールに粕取焼酎をブレンドした『新式焼酎』と呼ばれていた。

⑥一般的にピュアでクセがないお酒なので、割り材の味を生かすなど楽しみ方も多種多様である。

⑦樽貯蔵熟成酒などのブレンドによって様々な味わいの甲類焼酎がある。

⑧糖質、脂質、プリン体がゼロなので適量を守って飲めば翌朝の酔い覚めが爽やかである。

⑨消費は東高西低。東日本でよく飲まれている。

 

《酒噺のオススメ記事はコチラ》


「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺
今回のテーマは「甲類焼酎のつくり方」。そこで、日本最大級の焼酎製造場である宝酒造の松戸工場(千葉県松戸市)を訪問。工場長へのインタビューと製造現場の見学を通して、甲類焼酎の魅力に迫ります。

焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
樽貯蔵熟成酒のブレンドによって甲類焼酎の味が大きく変わることを知った倉嶋さん。今回はその「樽貯蔵熟成酒」ができるまでを、宮崎県の高鍋町にある宝酒造 黒壁蔵で実際に見学してきました。

 

倉嶋紀和子オススメの甲類焼酎の飲み方

ここからは上記で学んできた基礎知識も元に、改めて多彩な甲類焼酎を飲み比べて倉嶋さんが「宝焼酎」「極上〈宝焼酎〉」「」「レジェンド」「NIPPON」の5銘柄の魅力を解説。テイスティングコメントをいただきながら、オススメの飲み方を提案してもらいました。

 

●宝焼酎

 

「キリッとしていて飲み飽きしない、これぞ安定の美味しさ! ピュアでまろやかな味が最高ですね。こうしてストレートで飲むと、ちょっと梅シロップを足したくなりますね。

 

割り方は、シンプルに炭酸(炭酸水)で割ったチューハイも美味しいですし、レモンを搾ってレモンサワーにしたり烏龍茶や緑茶で割ったりと万能な酒質。ペアリングとしてはやっぱり、もつ焼きを食べたくなります」(倉嶋さん)

 

●極上〈宝焼酎〉

「樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドしているので、ほんのりと香る樽のニュアンスが、豊かな気持ちにさせてくれますね。甘やかな樽の香りがありつつも後口はすっきりとドライで、この絶妙なキレは、さすがひとクラス上のプレミアム焼酎です。

 

割り材はこちらも、何でも合うと思います。リッチな風味が出ているので、特に濃い味の割り材がいいかもしれません。あとは梅シロップをはじめとする甘いエキスよりも、苦みや渋味があるお茶などのほうがより合う気がしますね」(倉嶋さん)

 

●純

 

「まろやかなタッチや、バニラを思わせる甘やかな余韻が印象的です。11種類の樽貯蔵熟成酒を13%使用しているからこその華やかな香りは、炭酸で割る飲み方が最も感じられるのかも。炭酸の刺激によって、上品な香りがふわっと広がっていくような。ですので、炭酸割りでもシンプルなプレーンチューハイがいい気がします」(倉嶋さん)

 

●レジェンド

「自宅に常備しているので、思わず『ただいま』って言いたくなる美味しさ(笑)。芳醇でウッディな香味が、よりバニラやはちみつのような甘みを感じさせてくれて、たまらないんです。ロックなど単体でも十分に美味しいんですけど、私がハマってるのは豆乳割り。クリーミーな割り材によって、甘みが絶妙に調和されるんです。ぜひ多くの方に試していただきたいです」(倉嶋さん)

 

●NIPPON

 

「やわらかい花の華やかな香味は、陽気な春の印象。桜餅が食べたくなりますね。炭酸で割れば桜餅のようなほのかな甘い香りが楽しめますが、私としては、実は『ホッピー』のベストパートナーが『NIPPON』。独自の香ばしい風味が桜の香りと調和して、ちょっと可憐な味わいになるのが大好きなんです。ちなみに、その際に割る『ホッピー』は白のほう。イチオシですよ!」(倉嶋さん)

 

 

甲類焼酎といっても、その味わいは様々。倉嶋さんの提案も参考に焼酎ライフを楽しんでください! 次回(後編)は「ホッピー」や「ホイス」「バイス」などの割材について振り返りつつ、倉嶋さんのオリジナルチューハイを紹介します。

 

<取材協力>

チューハイ倶楽部C

住所:東京都杉並区天沼3-6-22
営業時間:17:00~24:00
定休日:月曜

 

撮影/鈴木謙介

 

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・宝焼酎
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・極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/lineup/gokujo-takara-shochu.html

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・宝焼酎「レジェンド」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/legend/

・宝焼酎「NIPPON」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/nippon/

 

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【せんべろnet監修 】“ひとり飲み”初心者が「角打ち」に挑戦する噺

提供:宝酒造株式会社

 

「酒噺:東京・大衆酒場の名店シリーズ」で一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。本企画は、実践編ということで、女性一人(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第3回目。今回は、神田(東京都千代田区)にある人気の酒屋さんで角打ち(かくうち)に挑戦します!

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

角打ちに挑戦してみたい……

これまでの体験で、それなりの経験値を積んだ中村さん。最近よく耳にする「角打ち」って何だろう? ぜひ一度行ってみたいと思い、ひろみんさんにLINEで「角打ち」について聞いてみることに。

 

すると、ひろみんさんから早速返信が!

 

「簡単にいえば、角打ちは酒屋さんの一角で飲むこと。または飲める酒屋さんのことなどを指します! 発祥は、製鉄業で栄えた時代の北九州らしいです。いまは多様化が進み、おつまみに凝ったりお酒に特色を出したり、お店のバリエーションも豊富ですよ」とのこと。

 

加えてひろみんさんは「角打ちは東京にもたくさんあって、初めて行くなら神田の藤田酒店さんがオススメです!」とも。

 

そこで中村さんは早速、「藤田酒店」で「角打ち」にチャレンジするために神田へ向かいました。

 

そもそも角打ちとは?

 

そもそも「角打ち」とは元来“升に酒を入れて飲むこと”を指しますが、時代とともに“酒屋さんでお酒を買い店内で嗜む”という意味が一般的になりました。その多くは立ち飲みスタイルですが、座席で飲めるお店もあります。発祥は、福岡県北九州市であるという説が有力。その背景には、官営八幡製鐵所に勤務していた労働者の文化が関係しているといわれています。

 

1901(明治34)年に操業を開始した官営八幡製鐵所は、24時間交代制で稼働していました。お酒好きの労働者にとって、仕事後の飲みは癒しの時間でしょう。ただし当時、夜勤明けの朝は居酒屋などお酒を飲める店が営業していません。そこで労働者たちは朝から営業している酒屋さんでお酒を買い、店頭で飲むようになった――。これが北九州における「角打ち」のルーツです。

 

「角打ち」の魅力のひとつは、酒屋さん自体が飲食店に卸す立場の業種でもあるためお酒が比較的に安価なこと。おつまみは、乾き物や缶詰などが主体のお店もあれば、なかには飲食店営業許可証を取得して、自家製の料理を提供する店も。いずれにせよ、気軽に一杯楽しめるのが醍醐味です。

 

また、「角打ち」は立ち飲みスタイルが多いため、お店の人やお客さん同士の距離が近く、自然と会話が生まれやすい業態です。加えて、お酒の種類やラインナップが豊富で、気に入った缶やびんのお酒があればその場で購入できるのも、酒屋さんならでは。近年は日本酒やワインに特化した店や、少量ずつの飲み比べセットを用意するお店も登場するなど、お酒好きにとってのパラダイスとなっています。

 

〜角打ちとは〜

・「角打ち(かくうち)」とは元来“升に酒を入れて飲むこと”を指すが、現在では“酒屋さんでお酒を買い店内で嗜む”という意味が一般的に。

・発祥は、福岡県北九州市であるという説が有力。その背景には、官営八幡製鐵所に勤務していた労働者の文化が関係しているといわれている。

・酒屋さん自体が飲食店に卸す立場の業種でもあるため、お酒が比較的に安価なこと。おつまみは、乾き物や缶詰などが主体のお店もあれば、自家製の料理を提供する店も。

・近年は日本酒やワインに特化した店や、少量ずつの飲み比べセットを用意するお店も登場するなど多様化。

 

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居心地のよい角打ち&立ち飲みと出会うための噺
溢れる酒愛、地元愛。「角打ちの日」の噺

 

いざ!藤田酒店へ

 

「藤田酒店」に到着した中村さん。ひろみんさんによると、こちらは気軽な雰囲気なので初めてでも安心なのだとか。ということで「せんべろnet」の記事を参考に、いざ入店。

 

恐る恐る扉を開けると、すぐにご主人の坪田維修さんが「いらっしゃい!」と迎えてくれました。

 

中村 ひとりなんですけど大丈夫ですか?

 

坪田 もちろんですよ。お好きなところへどうぞ!

↑ご主人の坪田維修さん

 

中村 (まずは注文、どうしよっかな?)さすが、メニューが豊富ですね! お酒もズラリと並んでて。

 

坪田 ありがとうございます! うちは初めてですか?

 

中村 はい、実は「角打ち」自体が初めてで。

 

坪田 それはそれは、うちを選んでいただき光栄です! では一応、簡単にうちの注文方法をお伝えしますね。お酒は冷蔵庫から出していただいて構いませんし、冷蔵庫の外にあるものはお伝えください。

 

中村 わかりました! お会計はキャッシュオンですよね?

 

坪田 はい。その都度カウンターのレジでご精算となります。おつまみのオーダーもあればご一緒に。お品書きからでも、ぜひご覧になっていただけたら。

 

中村 そしたらまずは、このタカラ「焼酎ハイボール」をお願いします。

↑タカラ「焼酎ハイボール」5%〈特製グレープフルーツ割り〉350ml(300円)

 

坪田 5%の〈特製グレープフルーツ割り〉ですね。300円になります。ほかになにかわからないことがありましたら、なんでも聞いてくださいね。また、細かい点はそこに貼ってある「初めてのお客様へ」にも書いてありますので。

 

 

中村 ほんとだ! これはすごくありがたいです。では、まずは乾杯ッと……。うん、レモンとは違った柑橘の爽快感があって美味しい! アルコールが5%の絶妙な飲みごたえ!

 

坪田 甘くない缶チューハイの代名詞ですよね。タカラ「焼酎ハイボール」は、うちにもファンが多いです。アルコール7%の<ドライ>が一番人気ですけど、最近5%の<特製グレープフルーツ割り>がよく出るようになったので2列に増やしました。

 

中村 おつまみにも相性抜群ですよね。ということで、「うるめいわし」と「シマアジ」「干し甘エビ」をお願いします。あっ「シマアジ」は2つで。「炙ります」と書いてあって、気になっちゃいました。

 

坪田 お任せください! 炙るので、少々お待ちくださいね。こちらはあわせて250円になります。

 

中村 ヤッター! この、駄菓子屋さんっぽい入れ物に入ってるのもいいですよね。私、昔からこういった小魚が大好きなんです。いまでも、見つけるとすぐ買いますし。

 

坪田 そうなんですね。でも確かに、おやつでよく食べていた、とおっしゃるお客様は多いです。ではどうぞ。

↑「うるめいわし」「シマアジ」各1尾50円、「干し甘エビ」1尾100円

 

中村 炙ってあるから香ばしくて、より美味しい! それにお酒が進みますね。タカラ「焼酎ハイボール」とも相性抜群。

 

坪田 ありがとうございます。こちらは価格も駄菓子屋感覚で提供させていただいています。

 

中村 お酒もおつまみもサイコーに美味しくて、雰囲気も非日常感がありながらアットホームであったかい。「角打ち」、すごく楽しいです!

 

角打ちのルールとは?

「角打ち」は、独自のルールを設けているお店が多めです。もしもルールの掲示がなく、注文方法などがわからない場合には、お店の方にたずねてみましょう。

 

よくあるルールのひとつが、現金×キャッシュオンのシステム。最近はキャッシュレスに対応されている「角打ち」も見かけますが、千円札や小銭は用意しておいたほうがいいでしょう。

 

また、酒屋さんなので、基本的にはセルフサービスです。冷蔵庫から飲みたいお酒を選んで取り出したり、飲食後の食器やゴミを片付けたりといった部分は協力しましょう。

 

なかには「1グループ2名まで」など、来店人数にルールを設けている「角打ち」も。テーブルはカウンタ―のみというお店も少なくないので、グループで訪問したい場合は事前に調べておくことがオススメです。

 

なお、乾き物やお菓子などを手で食べるシーンが多いのですが、おしぼりは無いのでウェットティッシュを用意しておくと便利です。

 

そして、混んできたら詰めて譲り合い、長っ尻はせず飲み終わったら帰るのがマナー。お店にもよりますが、滞在時間は最大1時間ぐらいがベストです。酒屋さんの店頭であるためお手洗いがないことも多いので、その意味でも短時間で切り上げる意識をもって「角打ち」を楽しんでください。

↑藤田酒店にはトイレもあるので、いざという時も安心

 

〜角打ちのマナー〜

・「角打ち」は、独自のルールを設けているお店が多いので、注文方法などがわからない場合は、お店の方にたずねる。

・基本的にはセルフサービス。冷蔵庫から飲みたいお酒を選んで取り出したり、飲食後の食器やゴミを片付けたりといった部分は協力すること。

・乾き物やお菓子などを手で食べるシーンが多いが、おしぼりは無いのでウェットティッシュを用意しておくと便利。

・長っ尻はせず飲み終わったら帰るのがマナー。滞在時間は最大1時間ぐらいがベスト。

 

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意外な「おつまみ」でますますお酒が進む!

気さくな店主のおかげで、すっかり緊張もほぐれた中村さん。お酒も進んでトークにも花が咲きます。

 

中村 お店はいつから営業されてるんですか?

 

坪田 1928(昭和3)年です。私たち夫婦は三代目で、角打ちは2013年から始めました。そのあと2016年にちょっと改装して広くなりましたね。

 

中村 「角打ち」になったのは比較的最近なんですね。

 

坪田 当初は、乾きものが中心のおつまみだったんですけど、オープンから1年半ぐらいしてから徐々にバリエーションを増やしたんです。お客様の期待に応えたいなと思って。

 

中村 なるほど! 一番人気はどのメニューですか?

 

坪田 実は「焼ソバ」なんです。

 

中村 あっ、目の前にあるこちらのカップやきそばですか? 気になるので、お願いしてもいいですか?

 

坪田 かしこまりました! 400円になります。少々お待ちくださいね。

 

中村 はい! では一緒にお酒も。タカラ「焼酎ハイボール」をおかわりで。

 

坪田 「焼ソバ」もお待たせしました! どうぞ。

 

中村 わっ、この野菜は水菜ですよね。特別感があって、ますます美味しそう!

↑「焼ソバ」(400円)

 

坪田 水菜はちょっとしたアイデアなんですけど、おかげさまで好評です。箸休めにもなるかなと思って入れさせていただいているんですけどね。

 

中村 いただきますっ……やきそばと水菜って合いますね! 香ばしくて酸味の効いたソースと、シャキッとしてさっぱりした水菜がマッチ。これまたお酒が進みます!

 

坪田 ふだんはカップやきそばを食べないけど、うちに来ると必ず召し上がる、というお客様も結構いらっしゃるんですよ。

 

中村 その気持ち、わかります! 私、カップのインスタント麺って山頂で食べるのが世界一のロケーションだと思ってましたけど、「角打ち」で食べるのも最高。いい場所、見つけちゃいました!

 

坪田 また焼きそばをつまみながら飲みたくなったら、ぜひお立ち寄りください(笑)!

 

中村 絶対また来ます!

 

「角打ち」は“大人の駄菓子屋”だ

中村さんにとって、初めての「角打ち」は大満足の体験に。ひろみんさんにお礼のLINEを送ると、「気に入ってもらえてよかったです! 角打ちはお店ごとに作法が違ったりしますけど、それも魅力。名店は全国にあるので、いろいろ巡ってみてくださいね」と返信が。

 

酒屋さんならではのお酒とつまみが種類豊富に揃う「角打ち」は、いわば“大人の駄菓子屋”。童心に帰った気分で飲めるのも、また魅力といえるでしょう。次回もひろみんさんのアドバイスをもとに、せんべろ系の人気店と、その作法を紹介します。

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

藤田酒店

住所:東京都千代田区内神田2-10-2
営業時間:17:00~21:00
定休日:土曜、日曜、祝日

※価格はすべて税込みです

記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・タカラ「焼酎ハイボール」
https://shochu-hiball.jp/

 

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創業155周年の浜田酒造が「うかぜ」で本格麦焼酎へ次なる挑戦! 4原酒をブレンドし“甘芳ばしさ” で新定番を目指す

浜田酒造(※「浜」は異体字)は9月26日に、本格麦焼酎「うかぜ」を発売した。4つの原酒をブレンドした “甘芳ばしさ” で、40~50代前半のミドル世代にアプローチ。新定番を目指していくという。本記事では、9月5日に開催された試飲会で味わってきた麦本来の味わいのレポートとともに、新商品の魅力をたっぷりお伝えしよう。

 

鹿児島の酒造メーカーとして「麦」焼酎市場への挑戦

↑9月26日から発売された本格麦焼酎「うかぜ」

 

浜田酒造(鹿児島県いちき串木野市)は、1868年に創業してから2023年で創業155年を迎えた。創業元年から続く伝統を守り続け、研さんと革新を積み重ねてきた同社は、国内外でも評価の高い老舗酒造メーカーだ。しかし、近年の焼酎業界は、芋焼酎の原料であるサツマイモ基腐病(もとぐされびょう)が広がっていることや少子高齢化、若者の酒離れなどを背景にした国内市場の縮小が影響し、厳しい環境が続く。そこで、同社は改めて「麦焼酎」の魅力を伝えるべく、麦焼酎市場へ更なる挑戦をすることを決めた。

 

これまでにも同社は、主力ブランド「隠し蔵」で2019年に「ロサンゼルス国際スピリッツコンペティション」における焼酎の最高賞である「Best of Shochu」を受賞。明治元年創業の伝統の蔵「伝兵衛蔵」の「甕貯蔵 兼重(麦)」が「令和4酒造年度鹿児島県本格焼酎鑑評会」の麦製部門において、最高賞である「総裁賞代表」を受賞するなど、国内外で高い評価を得てきた。そして、2023年2月には、焼酎エントリー層向けのボタニカル系麦焼酎「CHILL GREEN spicy&citrus」を発売。香辛料「マーガオ」で香り付けをした新感覚の麦焼酎として、20~30代の女性を中心に人気を集めているという。

 

これに続き今回、40~50代前半をターゲットに本格麦焼酎「うかぜ」(アルコール分25度/1.8L 2195円/900ml 1166円、いずれも税込み)を発売。

 

高いブレンド技術で実現した本格麦焼酎で “新定番” を目指す

本格麦焼酎「うかぜ」は、個性豊かな4つの原酒を1%単位の高いブレンド技術で調合。こだわりのブレンド比率を同社では「音楽に例えると四重奏。その名も『カルテットブレンド』です」と紹介。開発期間15か月、試作100パターンという開発過程を経て、スッキリとしていながらビスケットやパンを思わせる “甘芳しさ” と麦本来の味わいを実現した。

 

ブランド名の「うかぜ」は、「おおかぜ(大風)」を意味する鹿児島弁に由来し、 “鹿児島発の定番本格麦焼酎として大きな風を吹かす” という思いを込めているとのこと。

↑パッケージに配された、「うかぜ」の大きな特徴である「4つの原酒」をイメージしたデザイン。黄色は芳薫、茶色は樽熟、橙色は芳醇、青は淡麗。水彩のにじみで、絶妙に混ぜ合わせて調和する原酒を表現したという

 

本格麦焼酎好きが多い50代後半以上の世代はもちろん、1980年代前半に起こった第2次焼酎ブーム未経験の40~50代前半のミドル世代にもアプローチしていく。「自分たちの世代で作られた」という認識を持ってもらい、麦焼酎市場の “新定番” を目指すという。

 

4つの原酒の個性の調和が決め手。飲み方で変化する味わい

「うかぜ」にブレンドされている4つの原酒は「芳薫(ほうくん)原酒」「芳醇原酒」「淡麗原酒」「樽熟原酒」。試飲では、4つの原酒をそれぞれ味わうことができた。

↑「うかぜ」に使用されている個性豊かな4つの原酒

 

「芳薫原酒」は、芳ばしさを生成する独自の「ロースティ酵母」を使用しており、ビスケットやコーヒー、チョコレートのような芳ばしさが特徴だ。飲んでみると、麦らしいすっきりとした口当たりと、あとから鼻を抜ける芳ばしさを感じられた。「芳醇原酒」は、常圧蒸溜を採用することで豊かな香りを引き出した後、氷点下の中で雑味を取り除き滑らかな口当たりを実現。紅茶のような豊かな香りとスムーズな口当たりが特徴だ。雑味を取り除いただけあって、4つの中では最も癖のない味わいに感じられた。普段あまり焼酎を飲まない筆者にとっては、この「芳醇原酒」が一番飲みやすいと思えた。

 

「淡麗原酒」は、減圧蒸留を使って低温で蒸溜し、さらに冷却ろ過で瑞々しいフルーツの香りが表現されている。麦独特の甘みとまろやかさに、さらりとした飲み口が心地よい。馴染みのある味わいだと思ったのだが、それもそのはず。「淡麗原酒」は、一般的に流通している焼酎に最も近いタイプなのだという。そして、「樽熟原酒」は、オーク樽で約3年熟成させることにより、マイルドでコクのある味わいとほのかな甘みを感じられる琥珀色の原酒。バニラやはちみつのような香りも象徴的で、この原酒を使用することで全体のバランスがぐっと引き締まるのだそう。熟成による樽の風味はもちろん、甘みだけでなくコクもしっかりと感じられた。木の香りとバニラっぽい甘く華やかな香りの調和も素晴らしく、香りだけでも十分に楽しめる原酒だった。

↑試飲会で提供された4つの原酒と「うかぜ」。浜田酒造が言う通り、それぞれの個性豊かな味わいを楽しめた

 

もちろん、会場では「うかぜ」の試飲も堪能できた。飲み方は、お湯割り(5:5)と水割り(4:6)。お湯割りは甘く芳ばしい、麦のうま味を全体に感じられた。この甘芳ばしさには、焼き鳥や牛すじの煮込みなど、濃厚な味わいの料理が合うという。対して水割りは、フルーティで華やかな香りを感じやすくなる。すっきりとした甘さが冷たく喉を伝っていく爽快感は、残暑厳しいこれからの時期にもぴったりだろう。こちらは、淡泊な味わいの刺身やカツオのたたきなどとのペアリングがおすすめ。繊細な素材の味を壊すことなく絶妙にマッチするという。

↑「うかぜ」の水割り(左)とお湯割り(右)。さっぱりが好きなら水割り、こっくりが好きならお湯割りという印象だ。季節や料理に合わせて飲み分けるのも楽しそう

 

そのほか、炭酸割りやサワー、アルコ―ルが苦手な人にはお茶割りなど、多様なアレンジも楽しむことができる。

 

ライトユーザーからヘビーユーザーまで多くの人に楽しんでもらいたい、と「焼酎王国 鹿児島」から提案する “新定番麦” の「うかぜ」。麦焼酎業界に新しいムーブメントの風を吹かせるか、今後の「うかぜ」の動向からも目が離せない。

 

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酒ジャーナリストに聞く!いつまでも楽しく美味しくお酒を飲む噺

自宅でひとりでも、酒場で大勢でも、「お酒」を飲むのはいつでも楽しいことです。ただ、それには元気でなければいけません。そこで、今回は『名医が教える飲酒の科学』や『酒好き医師が教える最高の飲み方』などの著書がある、酒ジャーナリストの葉石(はいし)かおりさんに、「どうすれば、いつまでも楽しく美味しくお酒を飲めるか」についてお話を伺います。

●葉石かおり(はいし・かおり)/酒ジャーナリスト、エッセイスト、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長。「酒と健康」「酒と食のペアリング」を主軸に各メディアにコラム、コメントを寄せる。現在、京都の大学で心理学を学ぶ現役女子大生でもある。代表作にシリーズ累計18万部を超える『名医が教える飲酒の科学』『酒好き医師が教える最高の飲み方』(ともに日経BP)があり、2023年10月13日には『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』(主婦と生活社)を上梓した。

 

酒ジャーナリストの飲み方や行きつけとは?

まずは葉石さんの“お酒遍歴”から伺いました。好きなお酒や飲み方は? そして行きつけの酒場などはあるのでしょうか?

 

葉石「お酒は若いころから好きで、大学時代から飲んでいました。当時はいまと違って、学生コンパも盛んでしたから。好きなお酒は日本酒や本格焼酎、あとはスパークリングワインもよく嗜んでいます。外で飲むことのほうが多く、お店では週1、2回ぐらいですね。家飲みは週1回ぐらい。その時は『タカラ「焼酎ハイボール」』を飲みますね。辛口なので食事にも合うし気に入っています」

 

葉石さんは東京出身ですが、10年以上東京と京都の二拠点生活をしていることでも有名。京都に関しては『おひとりさまの京都』や『そうだ、裏京都行こう。』などの著書があり、なかでもよく行くお店が京都市左京区下鴨の「炭焼 きむら」です。

 

葉石「『きむら』さんはご家族で営まれている串焼きのお店で、月に1回は行ってますね。素材や火加減へのこだわりはもちろん、お肉の部位ごとに味付けを変える工夫も素晴らしいんです。お酒は1杯目が、宝焼酎『純』35%使用の酎ハイ『純スペシャル』。2杯目からは『松竹梅 「豪快」辛口』を、夏でも熱燗でいただくのが私のお決まりとなっています。でもそういえば、東京には『きむら』さんみたいな行きつけは特にないですね。お友達とだったり、お仕事関連の会食だったりが多く、相手の方に合わせるからかもしれません」

 

葉石さんが週刊誌の記者から酒ジャーナリストへと仕事の幅を広げた経緯は、たまたまだそう。とある健康系のサイトで、お酒に関する記事を執筆する担当となったことがきっかけだと言います。

 

葉石「最初は医学について無知だったので大変でしたが、医師の先生などから学ぶうちにのめり込んでいきました。また、私自身も当時は50歳に差し掛かっていた時期で、健康診断の数値が悪くなっていたんですね。それもあって、体の状態を見直したいと思ったのも大きいです」

 

悪酔いしない飲み方と「お酒」の適量とは?

2023年10月に『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』を上梓した葉石さん。また、これまで数々の名医から飲酒についての話を聞いてきた経験から、まずはお酒(アルコール)を飲むとヒトはどうなるのかを教えてもらいました。

 

葉石「重要なのは血中アルコール濃度です。酔いの状態は爽快期から始まるのですが、飲む量が増すにつれて血中アルコール濃度も深まり、ほろ酔い期、酩酊初期、酩酊期、泥酔期、昏睡期となり、最後は気を失うような状態になってしまいます。知っているつもりでもお酒の飲み方は気を付けないといけませんし、血中アルコール濃度の急激上昇をいかに抑え、悪酔いしないように飲むことが大切です」

 

 

悪酔いを防ぐ方法として一般的に有名なのは、和らぎ水(またはチェイサー)など水を飲みながらお酒を楽しむ手法。また、空腹の状態で飲むことは避けるべきだという説も知られています。この話について、葉石さんが詳しく教えてくれました。

 

葉石「和らぎ水に関しては、水を飲むことで胃腸内のアルコール濃度を薄める効果があるんです。また『空腹の状態で飲むことは避けるべき』というのは、空腹時にいきなりお酒を飲むと、胃腸からのアルコール吸収が早くなり、急激に血中アルコール濃度が高くなるから。そのため、最初に何かを食べておくといいということなんです」

 

そのうえで葉石さんが推奨するのは「オイルファースト」という考え方。

 

葉石「オイルファースト』とはつまり、油分や脂質が含まれている料理を最初に食べるということです。特にオススメなのはチーズ。なぜなら、チーズに含まれるたんぱく質と脂質は消化吸収されにくく、胃に長時間留まるから。そのぶんアルコールの吸収を穏やかにしてくれるんです」

 

 

一方、葉石さんが一部誤解だと感じる悪酔い防止説が、チャンポン(短時間でいくつもの種類の酒を飲むこと)しないという方法。これは数種のお酒を飲むから深酔いするのではなく、結果的に摂取アルコールの総量が増えてしまいがちであることが問題だと言います。

 

葉石「ビールの次は日本酒、ウイスキーなど、アルコール度数が異なるお酒をあれこれと飲んでしまうと、どれだけの量を飲んだかがわからなくなりますよね。ましてや、酔うと記憶がおぼろげになりますから。ですので特にチャンポンで飲む際は、お酒の総量を意識することが大切です」

 

お酒の適量に関しては国から目安が提示されており、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日の平均純アルコールで約20g程度とされています。具体的には、日本酒の場合1合(180ml)、ビールなら500mlですが、この目安に関しては「1日ではなく1週間の合計で捉えてもいいと思います」と葉石さん。

 

 

葉石「例えば1日おきに40gとか。やっぱり休肝日って大事だと思います。多目的コホート研究という、大勢の人を長期間追跡調査する調査があるのですが、その結果のひとつに、少量を毎日飲むグループと、休肝日を設けたうえで毎日飲むグループよりトータルの量を多く飲んだグループとを比べた場合、後者のほうが病気の罹患率が低いというレポートもありますから」

 

飲酒後にしてはいけないこと

適量で飲酒をしていれば問題ありませんが、ついついお酒が進んでしまい、深酒してしまうことも。飲んだ翌日までお酒が残っていると、入浴したりサウナに入ったりして「汗をかいてアルコールを抜く」という人がよくいます。しかし、これは危険な行為だと葉石さんは言います。

 

葉石「そもそも、飲酒により身体が脱水状態になっていて、そこから汗をかくことは逆効果で、二日酔いを助長してしまいます」

 

また、脱水状態である風呂上がりや、運動直後の飲酒も、血中アルコール濃度が急激に高くなるので、あまり良くないそうです。そして、葉石さんが特に危険だというのが飲酒後の入浴。

 

葉石飲酒後の入浴はとても危険性の高い行為です。アルコールによって一時的に血圧が下がった状態で入浴すると、血圧の変化の幅が大きくなり身体に負担がかかります。さらにアルコールによって意識が朦朧としているため、危機管理能力も低下しており、怪我などの危険度も高めてしまいます。飲酒後すぐの入浴はぜったいにやめましょう」

 

 

「あと、危険ということであれば、お酒と薬を一緒に飲むのは当然ながらNGです」と葉石さん。感覚的にダメだということはわかりますが、具体的になぜNGなのかを伺いました。

 

葉石「アルコールも薬も肝臓で代謝されます。その際、使われるのが代謝酵素。薬とアルコールを併用すると、この酵素を双方で奪い合う形になって、薬が効きすぎてしまう、もしくは薬が効きにくくなってしまうんです」

 

仮に代謝酵素によって、通常は 50%で代謝される薬があったとします。これがアルコールによって、代謝酵素を半分奪われてしまう形になると 25%しか代謝されなくなります。すると薬の成分の 75%が血中に入ってしまうことになります。当初、半分が代謝されるという前提で処方された薬の量なのに、実際には、より多くの量を飲んだのと同じことになってしまうわけです。これによって薬理効果が増える、つまり効きすぎてしまうのです。その一方で、日常的にアルコールを常飲している人は、普段から酵素活性が高いため、薬を代謝し過ぎてしまい、効きにくくなるといった弊害も出てくるのです。

 

 

生涯現役で「お酒」を飲むために

葉石さんの新著のテーマは「生涯お酒を楽しむ」。そのためには、飲酒をポジティブにとらえること、そしてメリハリが大切だと話します。

 

葉石「やっぱり、生涯現役で飲みたいですよね。いまや人生100年時代といわれますが、飲酒寿命というのがあるとして、毎日際限なく飲んでいて60歳でドクターストップですよとなったら、残り40年はもう飲めません。それはすごく悲しいことだと思うんです」

 

もちろん、葉石さんが考える飲酒寿命はあくまで一例。また、健康度合いは人それぞれですから、毎日飲んでいても大丈夫な人はいるかもしれません。とはいえ適度な飲酒量は国からも提示されていますし、やはり飲み過ぎはよくないと言えるでしょう。

 

葉石「であれば長期的な計画を立て、飲む日と休肝日とでメリハリをつけることを意識しようと。私の場合、“お酒は晴れの日の飲み物”という考え方にシフトすることで、自然と休肝日が取れるようになりました。お医者さんなどに言われて制限するのではなく、自らコントロールする。これが、ポジティブなお酒との向き合い方だと思います」

 

お酒は飲み方によっては効能を発揮します。例えばメンタル面。「適量の飲酒はストレスの緩和や、食欲増進につながる」という研究報告もあります。適量を守り、休肝日を設ければ、健康にプラスに働き、「飲酒寿命」を延ばすことが期待されます。

 

そのほか、心臓病をはじめとする血管系の疾患、老人性認知症などの発症や美肌を保つなど、様々な研究結果も報告されており、お酒は決してデメリットばかりではありません。常に「適量飲酒」を心がけて嗜むことが、葉石さんが提唱する「生涯お酒を楽しむ」にもつながるのです。

 

 

自分で自分をコントロールする「操酒」という考え方

葉石さんが新著『生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ』の執筆に取り組もうと思った動機には、コロナ過における過ごし方も関係していると言います。それはいわば、実生活を経たうえでの成功体験ルポであるとも。

 

葉石「お酒と健康をテーマに執筆するようになってから、私自身も8kg痩せて元気に過ごしていたのですが、コロナ禍になって実は5kgもリバウンドしてしまいました。原因を振り返ると、ストレスや失職不安から来る食べ過ぎ、飲み過ぎだったと思います。当時は世間でも『コロナ太り』が叫ばれていましたが、私自身もそうなってしまい『まさか自分が』とショックを受けましたね」

 

いまはすっかり心身ともにコロナ前の健康状態に戻っていますが、そこで実感したのが意識改革の大切さ。加えて、どのようにすれば意識を変えられるのかをテーマに新著をつくりたいと思ったそうです。

 

葉石「その前に私が改めて取り組んだのが、自らの行動の可視化。アプリを活用して食事や飲酒について記録しました。すると、思っていた以上にカロリーやアルコールを摂取していたことが判明。そこから自分なりの対策を考え、高い目標を設定すると挫折してしまうと思ったので、休肝日をまずは週1回。そして週2、3回へと段階的に見直すようにして取り組んでいきました」

 

これぞ前述した、医師などに言われて制限するのではない自らのコントロール。ポジティブなお酒との向き合い方であり、著書のタイトルにも使われている「操酒」です。

 

葉石「自分自身で気づき、自ら正していくことが大切ですね。特に私の場合は、人から言われると従いたくなくなるという天邪鬼な部分がありましたし、そのぶん自分で決めたルールには負けたくない気持ちもありましたから。私と同じような性格でお酒が好きな方は、ぜひ実践していただきたいです」

 

行動的な部分としては、継続的に記録して可視化することが非常に大切だと葉石さんは力説。思いがけない数値を見ると気持ちが落ち込むことがあるものの、そのショックが意識を変え、行動に移すことから習慣化していくのだとか。

 

葉石「数値は逆もしかり。尿酸値や体重が減ればモチベーションもアップしますから。すると、次は筋トレだとか、ヨガをやってみようかなとか、さらなる行動変化にもつながります。身近なところでは体重計にのったり、血圧を測ったりすることから始めてもいいでしょう。そのうえでできれば、血液検査や健康診断にも行き、定期的に身体の状態を把握していただきたいですね」

 

 

日ごろの飲み方や食べ方は、具体的にどのように変えていけばいいのでしょうか。お酒に関しては、あらかじめその日に楽しむ量を決めておくのがコツだといいます。

 

葉石「お酒好きがよく言う『今日は何杯まで』ですね。早い時間から飲むときは、序盤はノンアルコールにしておくこともオススメです。『タカラ「辛口」ゼロボール』をはじめ、最近のノンアルコールは美味しいですからね。あとは基本的なことですが、前述したように適宜、和らぎ水を飲みましょう。胃腸内のアルコール濃度を薄める効果だけでなく、飲酒後はアルコールの利尿作用で脱水しやすいので、それを防ぐためにも水を飲むことは欠かせません」

↑早い時間から飲む場合は、1杯目をノンアルコール飲料にすることもオススメ。そんなときは、食事を引き立てるタカラ「辛口」ゼロボール

 

もし、お酒の種類で選ぶなら、芋焼酎がいいとのこと。というのも、血栓を溶解する物質が倍増するからだとか。

 

葉石「具体的に、血栓の溶解に関わる酵素『t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)』や『ウロキナーゼ』といった物質があるのですが、芋焼酎にはこれらの分泌、活性を高める効果があることがわかっています」

↑焼酎はロックやお湯割り、ソーダ割りなど様々な飲み方ができるのでオススメ。全量芋焼酎の「一刻者」は、芋の香りや味わいを堪能できます

 

そして食べ方のコツに関しては前述の「オイルファースト」が挙げられますが、チーズ以外ではどんなおつまみがオススメなのでしょうか?

 

葉石「油を使った料理といっても、低カロリーなもので選ぶならフライ系の揚げ物よりも、ドレッシングをかけたサラダですとか、魚のカルパッチョ。そのほかでも、低カロリーで高タンパクな枝豆やお豆腐類、海藻類やお刺身などがいいですね。お店を選ぶ際は、居酒屋や大衆酒場は和食をベースとしたヘルシーなおつまみが比較的多いので、オススメです」

 

本稿で葉石さんがお話しした内容の詳細については、ぜひ各著書をご参考に。合わせて適正飲酒の知識を活用して、いつまでも美味しくお酒を楽しみましょう。

 

■お酒おつきあい読本
宝酒造の適正飲酒の取り組みをご紹介しています。

撮影/鈴木謙介

 

【書籍紹介】

生涯お酒を楽しむ「操酒」のすすめ

年を重ねることが、楽しくなってくる本! ベストセラー『酒好き名医が教える最高の飲み方』著者で、お酒と健康を軸に活動する酒ジャーナリストでありながら、お酒におぼれかけて体調を崩した著者が編み出した、人生を変える飲酒コントロール術「操酒」を初公開。

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・タカラ「焼酎ハイボール」
https://shochu-hiball.jp/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・一刻者
https://www.ikkomon.jp/

・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・タカラ「辛口」ゼロボール
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/zeroball/

クセがなくすっきり爽やかな「キリン 上々 焼酎ソーダ」新発売

キリンビールは、メルシャン八代不知火蔵の本格麦焼酎原酒を一部使用したRTD(※1)の新ブランド「キリン 上々 焼酎ソーダ」(350ml缶・500ml缶)を、10月17日(火)より全国発売します。

※1 Ready to Drinkの略。栓を開けてそのまま飲めるアルコール飲料

メルシャン八代不知火蔵の本格麦焼酎原酒を一部使用

「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、特長豊かな焼酎をつくり出す5種6機の蒸留釜を備えたメルシャン八代不知火蔵にて、経験豊かな蔵人が約80年の歴史で培ってきた技術から製造した本格麦焼酎原酒を一部使用。「米麹抽出物」や「食塩」といった焼酎の特長を引き立てる素材を使用することで、焼酎の本格感や満足感を感じられながら、余計なクセがなくすっきり爽やかな味覚を実現しました。また本商品は、糖類0(※2)、プリン体0(※3)であることも特長です。

 

本商品は食事との相性が良く、和食を中心に実施したAI味覚センサー「レオ」による食相性分析では、多くの料理と高い相性度を獲得(※4)しました。なお、このセンサーによるRTDと食の相性分析において、「キリン 上々 焼酎ソーダ」と「サバの味噌煮」の組み合わせが過去最高の相性度を獲得しています。

※2 食品表示基準による
※3 100ml当たりプリン体0.5mg未満をプリン体0と表示
※4 OISSY(オイシー!)株式会社調べ(基本味を定量的に分析するAI味覚センサー「レオ」に基づく五味の相性分析による)

 

■メーカー:キリン
■商品名:キリン 上々 焼酎ソーダ
■商品価格:オープン価格

【東京・沿線ぶらり酒】西荻窪の「戎ストリート」半世紀の歴史の噺

街を結ぶ沿線には、その地ならではの名酒場と酒文化がある――。本企画では、首都圏沿線の路線ごとに、奥深いカルチャーを探っていきます。ナビゲーターは『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長。各沿線に縁のあるゲストとともに、街と酒場の魅力を語り尽くします。

 

まずはサブカルチャーの聖地も多いJR中央線から。そして第1回は、呑兵衛からも愛される街・西荻窪(東京都杉並区)にスポットを当てます。お招きしたゲストは、西荻窪(略称「西荻」ニシオギ)住民としても有名であり、倉嶋さんとも親しい作家の角田光代さん。インタビューは、お二人が大好きな名店「やきとり戎(えびす)南口本店」で行いました。

●角田光代(左)/1990年に『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞してデビュー。2005年に『対岸の彼女』で直木賞受賞。そのほか受賞作や著書は数多あり、夫でミュージシャンの河野丈洋さんとの共著『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』など酒や食に関する作品も多数。近著は短篇集『ゆうべの食卓』
●倉嶋紀和子(右)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

「丁度いい村」西荻窪

二人 カンパーイ!

 

倉嶋 角田さん、今日は私たちが愛する西荻窪について、楽しくじっくり語っていきたいなと。よろしくお願いします!

 

角田 大好きな西荻(ニシオギ)と「戎」、最高の企画じゃないですか。しかも「戎」といえば、『古典酒場』で連載させていただいた『もう一杯だけ呑んで帰ろう。』第1回目の記念すべきお店!

 

倉嶋 懐かしいですよね。こちらこそ、その節はありがとうございました! ではさっそくですが西荻について。お住まいになられてから、結構経ってますよね?

 

角田 ええ。最初こっちに越してきたのが1993(平成5)年だから、ちょうど30年になります。

 

倉嶋 なんと、もう30年ですか! その前も中央線沿線住まいでしたっけ?

 

角田 中央線デビューは中野ですね。学生時代はアクセス的に便利な野方駅(西武新宿線)の近くに住んでいました。でも、卒業後はちょっと不便になったので中野駅方面に引っ越し、そこでディープな中央線の魅力に目覚めたんです。最初から中野駅近くでよかったなと。

 

倉嶋 そして徐々に西側へ引きずられていったと(笑)。

 

角田 まさに(笑)。中野から荻窪へ、あとは高円寺や南阿佐ヶ谷にも住みました。荻窪も好きで、その後また引っ越そうと思ったんですけどなかなか見つからず。それで西に来てみたらすごく気に入って、いまに至ります。

↑西荻窪は一般的に中央線の駅として親しまれていますが、土日祝日は停まらない(各駅停車のJR総武線は停まる)のでご注意を

 

倉嶋 私も杉並区在住ですからこの周辺は特に大好きなんですけど、西荻窪の魅力はどんなところですか?

 

角田 ひとことで言えば静かなところ。隣の吉祥寺や荻窪よりもこぢんまりとしていて、落ち着いた雰囲気があります。お店も、小さくても個性豊かな個人商店が多く、住民同士の距離感も近い。アットホームで、“村”のような街だと思いますね。

↑西荻南口仲通り会のアーケード

 

倉嶋 その感覚、よくわかります! 住んでいる方々が、地元の個人商店をすごく大切にする文化が根付いてますよね。では、ほかの中央線の街はどんな印象ですか?

 

角田 中野や荻窪も似た空気があって大好きですけど、西荻に来てからは、私にとっては賑やかすぎるかなと思うようになりました。高円寺は独特のカオスな空気がありますよね。阿佐ヶ谷は、いい意味でスノッブ。吉祥寺は都会なイメージですね。そういえば、倉嶋さんの中央線愛も強いですよね。杉並区は長いですか?

 

倉嶋 私もまあまあ長いですね。それこそ、中央線で最初に住んだのは西荻窪でした。学生時代は大学に近い護国寺(東京都文京区)に住んでいましたが、社会人となった1999(平成11)年に、当時の会社があった東中野の沿線ということで西荻にやってきたんです。

 

角田 どうしてこの街を選ばれたんですか?

 

倉嶋 特に理由はなく、ふと降り立った西荻窪駅で目の前の不動産屋さんに飛び込んで、紹介された1件目にそのまま住んだら大正解でした。その後も荻窪に引っ越したりと近場を転々としながら、杉並区内で行ったり来たりしています。

 

角田 他路線の選択肢はなかったですか?

 

倉嶋 興味はありましたけど、定住するまでには至らなかったです。角田さんはどうでした?

 

角田 実は、中野から引越すときの選択肢は荻窪か下北沢でした。結局家賃の都合で好物件が見つからず荻窪にしたんですけど、いま考えれば運命だったのかも。

 

倉嶋 私も、なんだかんだずっと中央線沿線で暮らしているのは運命だなって思います!

 

 

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西荻窪飲みのランドマーク「戎」の歴史

↑駅の南側には闇市の残り香が漂う小路がいくつかある。「戎」の存在とインパクト抜群の看板から、ここは通称“戎通り(ストリート)”とも。同店は母屋隣の建物や路地の向かいにある店舗も含めて「やきとり戎 南口本店」となっています(厳密には、母屋以外は通称「別館」)

 

角田 「戎」は駅から近く、しかも南北両方にお店があって、西荻のランドマークといえる存在ですよね。

 

倉嶋 ええまさに! しかも創業が1973(昭和48)年9月で、ちょうど今年2023年は50周年のアニバーサリーイヤーなんですよね。確か、当初は女人禁制だったとか。ちょっと、注文しつつお店の方に聞いてみましょう。

↑「戎」にまつわるお話を聞かせてくれた、西荻南口本店の鈴木店長(右)

 

店長 はい。そうなんです。最初は女人禁制で、カウンター17席のもつ焼きの店だったんですよ。飲み物も創業当時は瓶ビールと日本酒、「宝焼酎」のストレートだけでした。

 

角田 なんと、ストロングスタイル!

 

店長 そのうち焼鳥が加わり、築地の魚と野菜の直接仕入れや、スペイン食材の輸入も行うようになり、海鮮や洋風メニューも提供するようになりました。やがて創業10年後くらいからは隣(別館)もできまして。

 

倉嶋 その後、北口店を開業されるんですよね。

 

鈴木 はい。本店の拡大と同時に「女性も入れる『戎』を作って」と多くの要望があり、それで1985(昭和60)年に西荻北口店を開業しました。もちろん、いまでは全店どなたもご利用いただけます。

 

角田 50年経った今では通りの両側に店舗を広げ、西荻のランドマークと呼ばれる存在になったんですね。ちなみに、ほかの街には書店やビアホールもありますよね。

 

店長 さすが、よくご存じですね! 阿佐ヶ谷にある「書楽 阿佐ヶ谷店」は、うちが経営している書店で、1980(昭和55)年にオープンしました。当時は配本が少なかったなど、苦労話を社長からよく聞いています。吉祥寺の「戎ビアホール吉祥寺」は1989(昭和64/平成元)年にオープンしました。

 

倉嶋 社長は戎井 力(えびすい・ちから)さんですよね。

 

店長 はい。「戎」という店名の由来でもあります。

 

 

「戎」の料理とお酒の魅力

倉嶋 先ほど女性も入れるお店というお話がありましたが、私にとって「戎」は大切なお店で、実は初めてひとり飲みを経験したのが「やきとり戎 西荻北口店」なんです。

 

角田 北口店は私も大好き。確かにあっちは本店みたいに外の店先にテーブルが出ているわけではないから、ひとり飲みもしやすいかも。

↑「やきとり戎 西荻北口店」

 

倉嶋 当時は20代の女性がひとり飲みするのが珍しく、最初は緊張しました。でも、「戎」の常連さんって素敵な方が多くて、何を頼んでいいかわからずキョロキョロしてると、隣のお客さんがスポーツ新聞を見ながらコソッと「ここはもつ焼きだよ」なんて教えてくれるんですよ。しかもそれ以上は深入りして来ずで。

 

角田 粋なエピソードですね!

 

倉嶋 その距離感が心地よくて。だから私はひとり飲みにも抵抗感なくハマれたんだと思います。

 

角田 倉嶋さんの原点といえるかもしれませんね。

 

倉嶋 当時の私は「F1(モータースポーツのフォーミュラ1)」の速報誌を担当していたんですけど、ヨーロッパの時間に合わせて働くので深夜早朝に仕事して昼帰るみたいな。で、職場から西荻窪に着くと、平日の昼間から「戎」で常連の方々がニコニコ飲んでるわけですよ。

 

角田 わかります。えびす顔でね(笑)。

 

倉嶋 それがすごく羨ましかったんですよ。でも、平日の昼間から飲むためにはどうしたらいいんだろうと思ったときに、「そうだ! 私は編集者だから、酒場の雑誌を作れば取材と称して飲めるじゃんっ」て。そんな邪念も、『古典酒場』を作った理由のひとつです。

 

角田 素敵な邪念じゃないですか! ある意味、夢を叶えたってことですよね。

 

倉嶋 はい、おかげさまで(笑)。でもほんと、私にとって「戎」は宝物のようなお店です。角田さんはひとり飲みデビューは遅めなんでしたっけ?

 

角田 そう、昔はひとりで飲むのが怖くて。特に大衆酒場には、男友だちと一緒に行ってました。初めて「戎」に来たのは20代半ばで、そのときも数人でしたね。ひとりで飲むようになったのは、40歳を過ぎてからです。

 

倉嶋 角田さんは「戎」のどんなところに惹かれますか?

 

角田 ひとつは、価格と量がちょうどいいっていうのがありますね。串も1本から注文できるし、いろんな種類のおつまみを食べられるので重宝しています。

↑「戎」の串焼きは1本100円~。「定番5本盛」は480円とお得な価格

 

倉嶋 ポーションのサイズ感は、特にひとり飲みのときは大事ですよね。

 

角田 あとは、お気に入りのメニューが多いんです。「水ギョーザ」に「ラム串」、あと「イワシコロッケ」は絶対頼みますね。

 

倉嶋 角田さん、羊好きですもんね。

↑「ラム串」290円

 

角田 ええ、もう目がなくって! そして「水ギョーザ」に関しては、ここの味が好きなんです。ほかの店ではあまり水餃子は食べません。

 

倉嶋 それって、本場中国の水餃子以上に好きってことですよね。

↑「水ギョーザ(3ケ)」290円

 

角田 そうなんですよ。ポン酢で味わうんですけど、この相性と、ちゅるんとした食感、あと小ぶりなサイズ感がたまらないんです!

 

倉嶋 なるほど、確かに本格中華はポン酢で食べないですもんね。私もこの味、チューハイも進むし大好きです! そして「イワシコロッケ」といえば「戎」の名物ですけど、今日も裏切らないおいしさですね!

 

角田 オンリーワンですよね。最初は北口店にしかなくて、その後、南北共通で食べられるようになって。ハーフで注文できるのも嬉しいんです。

↑「イワシコロッケ(ハーフサイズ)」330円。レギュラーサイズは550円

 

倉嶋 確かに! 私はあと、季節のオススメも好きなんですよ。「戎」は旬の食材も積極的に仕入れていらっしゃって、主役は焼鳥なんですけど、お魚も新鮮でとてもおいしいんです!

 

角田 ええ、今日の「ハモ湯引き」もふわっとやわらかく、包丁技も冴えわたってますね。おいしい!

↑「ハモ湯引き」480円

 

倉嶋 和洋中とメニューが豊富でレベルが高く、それでいて良心的な価格。チューハイも進むし、改めてサイコーなお店ですね。

 

角田 はい! お酒もおいしいですし。

 

倉嶋 特にチューハイは、サーバーから注がれたものではなく、店員さんが一杯ずつ丁寧に作っているところにこだわりを感じます。

 

角田 いわばカクテル。職人技ってことですよね。

 

倉嶋 はい! それも、冷蔵庫ではなく氷水でキンキンに冷やした「宝焼酎」の一升瓶を使っていて。“どぶづけ”を思わせる昔ながらのスタイルに、老舗の心意気を感じます。

↑“どぶづけ”には、瓶ビールや「宝焼酎」の一升瓶が氷水でキンキンに冷やされている

 

↑「酎ハイ」370円。「戎」の「酎ハイ」は焼酎たっぷりなので飲みごたえアリ

 

角田 半世紀変わらないおいしさも、愛される理由のひとつかもしれませんね!

 

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2人がオススメの「西荻窪」酒場とは?

倉嶋 角田さんが西荻でお気に入りのお店はどちらですか?

 

角田 比較的新しいお店だと、「コノコネコノコ」です。多国籍料理のお店で、和洋中と実に多彩で絶品。羊を使ったメニューもあって、よく注文するのは羊肉の麻婆豆腐。また、すべてのメニューをハーフサイズにしてくれるのもポイントです。

 

倉嶋 お店の名前からして気になりますね。

 

角田 そう! 営んでいるご夫婦が猫を4匹飼っていて、私はもちろんお客さんも猫好きが多いですね。猫に関するお話をしているシーンもよく見かけます。

 

倉嶋 やっぱり猫好きなんですね。それは私にとってもたまらんです!

 

角田 昔ながらのお店だと、おでんの「千鳥」は落ち着いた雰囲気で、すごく好きです。名物のおでんはもちろん、お刺身をよく頼んでいます。それから以前、倉嶋さんに教えてもらった「スタンドキッチン ルポン」。移転して、広くなりました。私はここのレモンサワーが大好きで。

 

倉嶋 「千鳥」は私、まだお邪魔できてないんです。「ルポン」も移転してからはまだですね!

 

角田 そう、倉嶋さんがまだ行ったことのないお店はどこかなと思って。あとは韓国料理の「Onggi(オンギ)」もお気に入りで、ここで食べてから私のなかで韓国料理の概念が変わりました。お一人でやられているので、お任せコースだけのときもありますが、何を食べてもおいしいです。

 

倉嶋 気になります!

 

角田 ぜひ今度行きましょうね。では、倉嶋さんが好きなお店はどちらですか?

 

倉嶋 私もたくさんあるんですけど、やっぱり今日の「」は外せませんね。ちょっと贅沢したいときは「しんぽ」です。特にお魚と旬の食材を使ったお料理がおいしくって、こちらも西荻の有名店ですよね。

 

角田 はい、口開け(開店)からすぐ満席になるような大人気店で、私も大好きです。

↑この日の“沿線ぶらりハシゴ酒”、2軒目は「しんぽ」へ

 

倉嶋 あとは「善知鳥(うとう)」。こちらは燗酒が飲みたいときに行きたくなるお店です。お水を山のほうまで汲みに行くほどこだわっていて、料理は熟成させたクリーム帆立のおつまみが大好きですね。

 

角田 ちびちびやりたいですね。別ジャンルのお店だといかがですか?

 

倉嶋 例えば、アジア系のお店だと「ラヒ パンジャービー・キッチン」はすごくお世話になってます。深酔いしても許していただけるお店で、とにかく気遣いがあってやさしくて。

 

角田 西荻は、お店の方がやさしいですよね。

 

倉嶋 ほんとに。しかも、すごく粋なんですよね。自分からアピールはせず、さりげない自然体なサービスが心地よくて、オススメしたくなるお店が多いです。

 

角田 うんうん。街全体に、信頼感がありますよね。

 

倉嶋 そうなんです。私もこの仕事上、「酒場に連れてって」と、ありがたいお話をいただくこともよくあるんですけど、初めての方なら西荻がいいなって思いますね。

 

角田 ほかに西荻で倉嶋さん行きつけのお店ですと「燻製ビストロ みつ志」とか?

 

倉嶋 はい、たくさんある中でも、「みつ志」は燻製卵のサンドイッチが好物で。毎回いただくんですけど、お土産用もご用意してくださるんです。こういうおもてなしがうれしいんですよ!

 

角田 やさしいお店が多いのは、街がコンパクトで個人商店が多いからですかね。

 

↑西荻窪のカルチャーに深く根付いている個人経営の書店も

 

倉嶋 そうですね。角田さんがおっしゃった、“村”という表現にあらわれているのかなって思います。閉鎖的ではなく、いい意味で繋がりがある。店主さん同士やお客さん同士が顔見知りっていうことも多いですし。

 

角田 仲良くなりやすいんですよね。

 

倉嶋 はい。例えば1軒目で離れた席に座っていて、会話も交わしてないけど、3軒目でまたその方に会うみたいなことがあるんですよね。そこで「さっき会いましたよね!」なんて話が弾んで仲良くなる、みたいな。

 

角田 ええ。「また次も会いましょうね」って健全に言い合える街だと思います。

 

倉嶋 ちなみに、角田さんが初めて西荻で飲む方をお連れするとき、ゴールデンコースみたいなのはあるんですか?

 

角田 初めての方なら、やっぱり有名な「戎」や「しんぽ」は定番ですよね。でも私の場合、お酒は夕方からって決めてるので、「しんぽ」に口開けで行って、そのあと「戎」かな。

 

倉嶋 なるほど。私も初めての方を案内するなら、その2軒は入れたいですね。それで3軒目は「ルポン」でレモンサワーとか、「みつ志」でワインとか

 

角田 まさにそうですね。そんな話をしていたら、「しんぽ」に行きたくなりました!

 

倉嶋 いいですね、では行きましょうか!

 

大好きな西荻窪の街と酒場を語り尽くした倉嶋さんと角田さん。次回もディープな中央線沿線の駅で降り、街と魅力的な酒場について倉嶋さんがゲストと語り合います。お楽しみに!

撮影/鈴木謙介

 

 

<取材協力>

やきとり戎 南口本店

住所:東京都杉並区西荻南3-11-5
営業時間:日曜~木曜12:00〜22:00(L.O.21:30)、金曜土曜12:00〜22:30(L.O.22:00)
定休日:無休

※価格はすべて税込みです

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

【せんべろnet監修】ひとり飲み初心者にオススメなお店の噺

全10回にわたってお届けした「東京・大衆酒場の名店シリーズ」で、一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。今回からは実践編ということで、女性ひとり(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していきます。

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

ひとりで飲みに行きたいけれど……

「酒噺」の東京・大衆酒場の名店巡りで一連の知識を習得した中村さん。ここからは自立してひとりで酒場へ出掛けてみようと意気込んでいたところ、同じ「酒噺」で「せんべろnet」に聞く! 1000円で楽しめる「せんべろ」の噺という記事を発見。

 

すぐに「せんべろnet」のTwitterをフォロー。DMを送って「せんべろnet」管理人のひろみんさんと繫がることに。ひとり飲みの師匠として心酔し、LINEも交換してもらい、最初にオススメしてもらったのが、錦糸町(東京都墨田区)にある「立呑み みつぼし村」。今回は同店のひとり飲み体験レポートをお届けします。

 

【関連記事】
「せんべろnet」に聞く! 1000円で楽しめる「せんべろ」の噺

 

初心者でもひとり飲みしやすいお店とは?

↑JR錦糸町駅に到着! ここから「立呑み みつぼし村」までは徒歩約3分

 

ひろみんさんが「立呑み みつぼし村」をオススメした理由は、ひとり飲みに最適なお店だから。「まず、大きな窓から店内の様子がわかりやすく、表の看板にはメニューや価格も書いてあるなど、気軽に入れます。また、キャッシュオン(商品を受け取る際、その場で代金を支払う方式)なので、最初から予算を決められて、好きなタイミングで帰れるのも◎です」。

 

さらに「チューハイ200円、おつまみも110円~と『1000円札を握りしめて気軽に楽しめる安さ』、系列にイタリアンのお店もあり『低価格なのにおつまみが美味しい』こともポイントです!」とのこと。

 

こうして、「せんべろnet」の「立呑み みつぼし村」の記事で予習をしつつお店に向かう中村さん。「行ってきます!」とひろみんさんに伝えたところ、「もしわからないことあったら、気軽にLINEしてくださいね! ではでは~」との頼もしいメッセージが。

 

迷うことなく「立呑み みつぼし村」に到着した中村さん。まず店構えを観察すると、ひろみんさんの言う通り、窓越しに店内の様子がわかり、外の看板にはメニューと価格が書かれています。

 

↑看板に書かれているのは、メニューと価格、キャッシュオン式の会計であること、営業時間などです

 

~外観に見る「ひとり飲みしやすいお店」の条件~

・「大きな窓がある」「フルオープン」など、外から店内の様子が見えて、入りやすい店構え

・カウンターがある

・外の看板などにメニューと価格が書いてあり、おおまかな費用が把握できる

・「ひとり飲み歓迎」などが書いてあればさらに◎

 

いざ入店! テーブルに置かれたお皿はなに?

入店した中村さんはさっそくお酒を注文するも、気になったことをLINEでひろみんさんに質問します。

↑お店に入ると「立呑み みつぼし村6ヶ条」が。ルールがあり、安心して飲める。まずは読んでおこう!

 

 

↑「立呑み みつぼし村」ではこのお皿を会計に活用するとスムーズ

 

ひろみんさん曰く、立ち飲み店はキャッシュオンのお店もよくあるとのこと。その場合、お札は崩しておいたほうがベター。基本的に1000円札であれば問題なし。ただ、閉店時間が近くなるとお店の1000円札も溜まってくるため、その場合はまれに5000円や1万円札がありがたがられることもあるといいます。

 

~キャッシュオンについて~

・キャッシュオンとは商品を受け取る際、その場で代金を支払う方式のこと

・立ち飲み店はキャッシュオンの店も少なくない

・キャッシュオンのいいところは「今日はいくらまで飲む」と金額設定しやすく、明朗会計なこと

・お札は1000円札がベター

・テーブルに小銭入れがある場合はそこに入れておくと会計がスムーズ

 

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東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第2回。今回は、江戸川区・篠崎の「大林(おおばやし)」を訪れ、その魅力を探っていきます。

大衆酒場の酎ハイに欠かせない「下町炭酸」を飲み比べる噺
【東京・大衆酒場の名店】の番外編として下町の大衆酒場の名物・焼酎ハイボールには欠かせない「炭酸水」について深堀りしていきます。

 

まずは、一杯!

中村さんが一杯目にオーダーしたのは「ゴールデンハイボール」(250円)。同店には通常の「焼酎ハイボール」(200円)もあるものの、壁に貼ってあった「ゴールデンハイボール」のポスターに心を奪われ、注文してみました。

壁には「うまさ、ゴールデン!!」のポスターが

 

↑「ゴールデンハイボール」(250円)

 

香りが甘く爽快感もしっかりとした「ゴールデンハイボール」のおいしさに感動した中村さん。その正体を知るために、ひろみんさんにLINEで質問してみました。

 

ひろみんさん曰く「『ゴールデンハイボール』のベースは宝焼酎『ゴールデン』。炭酸割りがよりおいしくなるようにブレンドされていて、甘い香りと絶妙なコクがポイントです。揚げ物からお刺身まで、大衆酒場の定番メニューとも相性抜群ですよ!」

↑「絶妙なコクがサイコーです!」と、「ゴールデンハイボール」を堪能する中村さん

 

~ひとり飲み(立ち飲み)ドリンクのポイント~

・関東の立ち飲みではプレーンの「チューハイ」が最安値(相場は300円前後)ということが多く、お店によって味の違いが楽しめたりもするのでオススメ

・お得にたっぷり飲みたい時にはホッピーセットがオススメ。「ナカ(焼酎)/ソト(割材)」スタイルで安価にナカをおかわりできる

・瓶ビールを注文して、ちびちびコップに注いで飲むのも楽しい!

 

 

ひとり飲みのおつまみは何品注文すればいい?

 

お酒が届いたところで、おつまみも選ぶ中村さん。気になったメニューをいったん2品注文したものの、分量の正解がいまいちわからない。注文のペースや一度にオーダーする数などはこんな感じで良いのか、ひろみんさんにLINEで確認してみることに。

 

↑「トマトサラダ」210円。「マヨネーズではなく自家製ドレッシングというひねりが素敵。キャベツ付きで箸休めにもイイですね!」と中村さん

 

↑「なめろう」230円。「刻み大葉とゴマが好アクセントで超おいしいです!」と中村さんも大絶賛

 

ひろみんさんの嗜み方は1品ずつ。特に初めてのお店の場合は分量がわからないことも多いため、まずは1品頼んで、そのお店のボリューム感を知るのだとか。

 

おつまみの選び方は、お店の名物があればそちらを優先することが多いそう。「立呑み みつぼし村」の場合、充実した鮮魚は必食で、特に「なめろう」はオススメとのこと。中村さんは野菜と魚をオーダーしたため、次はバランスよくお肉系のメニュ—を注文したいところ。

 

ひろみんさんのオススメは「ハムカツ」。さらに、「『ゴールデンハイボール』とも相性抜群!  別売りで『カットレモン』があるので、そちらを『ゴールデンハイボール』に入れるのもオススメですよ!」とのLINEがきたので、こちらもあわせて注文です。

↑「ハムカツ」230円

 

「ハムカツ」は自家製。揚げたてでサクサクと食感よく、食べ応えもあります。ここで、中村さんはひろみんさんがオススメした「カットレモン」でチューハイの“味変”に挑戦。さらに余ったレモンを「ハムカツ」にかけるというテクニックも披露!「ソースをかけるのもいいけど、そのままでもすごくおいしい! レモンを搾って余韻をすっきりさせるのもアリですね~」と中村さん。

↑「カットレモン」は100円。別皿に4切れで提供されるため、揚げ物に搾るなど自由に使ってOK

 

↑「『ゴールデンハイボール』にカットレモンを入れるとスッキリして、お酒がすごく進みます!」と中村さん

 

ちなみに、ひろみんさんが今回「立呑み みつぼし村」をオススメしたのは、ほかにも理由がありました。それは、ここが酒場の聖地をルーツにもつお店だから。

 

実は同店、赤羽(東京都北区)にあるせんべろの聖地「立ち飲み いこい」で修業した方が営んでいるのです。もちろん「立ち飲み いこい」も最高なのですが、聖地なだけあって、初めて行くなら「立呑み みつぼし村」のほうが緊張しないだろうという理由で選んでくれたのです。

 

 

↑ひろみんさんの最新作『せんべろnetのひとり酒場 家飲み手帖』(ワン・パブリッシング・刊)は2023年7月27日に上梓されたばかり

 

↑今回のお会計。「ゴールデンハイボール」2杯、「トマトサラダ」「なめろう」「ハムカツ」「カットレモン」で合計1210円也

 

~ひとり飲み(立ち飲み)のおつまみについて~

・店員さんが忙しい場合があったり、スペースを占領しないよう、注文は1品、多くても2品がオススメ

・お店の名物があるならぜひ味わってみて&近くの常連さんが注文したメニューを真似するのもアリ

・立ち飲みのお店はチャージ(お通し)がないところも多いので、その場合、おつまみを1品以上注文するのがベター

 

酒場のひとり飲み歩きは始まったばかり

ひろみんさんから、ひとり飲みの入門に最適なお店ということで教えてもらい、錦糸町の「立呑み みつぼし村」を訪れた中村さん。1000円程度の予算で、自分のペースで楽しむことができて、酒場探訪の楽しさを改めて実感したのでした。次回もひろみんさんのアドバイスをもとに、ひとり飲みにぴったりな人気店を訪問する予定ですのでお楽しみに!

 

 

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11月11日は「立ち飲みの日」!——達人が語る立ち飲みの魅力の噺
11月11日は「立ち飲みの日」。今回は『古典酒場』創刊編集長の倉嶋紀和子さんら達人たちの立ち飲み愛を東京・新橋の名店で語ってもらいました。

レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺
「意外と知らない焼酎の噺」。どうしてお酒を『割る』のか?「割り材」の歴史や種類について、「居酒屋礼賛」主宰の浜田信郎(はまだ しんろう)さんとともに探ります。

 

<取材協力>

立呑み みつぼし村

住所:東京都墨田区錦糸4-7-2
営業時間:平日16:00〜22:00、土曜日曜14:00〜22:00
定休日:水曜

※価格はすべて税込みです

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎「ゴールデン」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/golden/

 

撮影/鈴木謙介

「お茶割り」のプロに聞く「焼酎×お茶」組み合わせの妙を楽しむ噺

意外と知らない焼酎の噺13


『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。今回のテーマは「お茶割り」。いまや酒場の人気メニューとなった焼酎の「お茶割り」について深掘りしていきます。

 

今回お話しを伺うのは、京都・宇治の茶舗や長野の酒蔵などを経て、昨年7月、東京都墨田区向島に「酒と茶と 襤褸(らんる)」を開業した松木恵美さん。倉嶋さん主宰のカルチャースクール「倉嶋紀和子の古典酒場部」の門下生でもあります。そして、「焼酎」および焼酎の「お茶割り」開発のスペシャリスト・宝酒造 商品第一部 副部長兼技術課長の高橋悠典さん(「高」ははしごだか)と、商品第二部 技術課長の大崎学さんにも同席いただき、解説してもらいます。

●倉嶋紀和子(左)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)には「酒サムライ」に叙任された
●酒と茶と 襤褸(らんる)・松木恵美(右)/宇治の茶舗、クラフトビールで有名な長野の酒蔵、東京・門前仲町・酒肆一村(しゅしいっそん)など茶・酒・食に関するさまざまな職を経て2022年、墨田区向島に「酒と茶と 襤褸」を開業

 

「お茶割り」の歴史や定義とは?

実は「お茶割り」の成り立ちや、明確な歴史についてはよくわかっていません。静岡などのお茶どころでは、伝統的に焼酎の「緑茶割り」(「静岡割り」と呼ばれる)が飲まれている地域もありますが、全国的には1980年代に起きたチューハイブームを経て徐々に広まりました。また、この時期に缶入りの烏龍茶や緑茶飲料が誕生したことが、烏龍割り(ウーロンハイ)や緑茶割り(緑茶ハイ)など「お茶割り」の浸透に強く関係しているとも言われています。

 

近年は食文化とともにお酒の飲み方も多様化し、他方で抹茶は世界的な人気に。また、2016年にオープンした「茶割」(東京都・目黒区)が100種の「お茶割り」を提供する独自性で話題になるほか、2019年には「抹茶ハイフェスティバル」が開催されたり、2022年には「一般社団法人日本お茶割り協会」が設立されたり。すそ野はますます広がっています。

 

なお、「お茶割り」もチューハイやサワーと同様に明確な定義はありません。こちらについては本シリーズ「『チューハイ』ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺」で触れているので、ぜひ一読を。さて、以下から本題へ。松木さんに「緑茶」の基礎知識から教えてもらいました。

 

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ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
今回のテーマは「チューハイ」と並んで甲類焼酎の飲み方として定番の「ホッピー割り」。東京で生まれて昔から焼酎の割り材として人気の「ホッピー」の歴史と変遷を“ホッピーミーナ”に伺います。

「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。

 

『緑茶』は日光の浴び方で大きく2種に分類される

倉嶋 松ちゃんには「古典酒場部」の講座を受講してもらっていますが、今日は私が生徒ということで、よろしくお願いします。まずは『緑茶』の種類から教えてください。

 

松木 はい。倉嶋編集長に教えるなんて大変おこがましいのですが。まず、種類はたくさんあるんですけど、大きく分けると2つ。茶畑に覆いをする「覆下園(おおいしたえん)」と、覆いをしない「露天園(ろてんえん)」があります。「覆下園」は日光を遮断するので、渋みは少ない一方うまみ豊かでまろやかな味に。「露天園」は日光を十分に浴びるので、渋みや爽やかさが特徴です。

↑覆下園(左)と露天園(右)

 

倉嶋 なるほど! 覆いをするかどうかで味が変わってくるんですね。

 

松木 はい。茶葉に含まれるアミノ酸のテアニンが変化するんですね。アミノ酸はうまみ成分ですが、日光を浴びることで渋味成分であるカテキンになるんです。

 

倉嶋 カテキンって、健康茶によく含まれてるやつですね。確かポリフェノールの一種で。

 

松木 そうそう、それです。で、より具体的なお茶の分類としては、「覆下園」には『玉露』『碾(てん)茶(抹茶)』『かぶせ茶』などがあります。「露天園」は『煎茶』や、九州や伊豆で主流の『玉緑茶(ぐり茶)』、『ほうじ茶』『玄米茶』『番茶』などですね。

 

品質の善し悪しを決めるポイントとは?

倉嶋 こうしてあらためて聞くと、種類が豊富ですね。

 

松木 ただ「覆下園」は覆いをする手間もかかるので、生産量として圧倒的に多いのは「露天園」です。

 

倉嶋 それに、価格も「覆下園」のほうが高いでしょ?

 

松木 基本的にはそうですね。また、同じ茶葉でも摘み方や製法によって価格はさまざまです。見た目だけでもかなり差があって、今日は比較でわかりやすいように2種類の『煎茶』を用意しました。

↑左が安価な茶葉。右が高級な茶葉

 

倉嶋 ほんとだ、左右でまったく違う! 右の、色ムラがなく濃いほうが高級でしょ?

 

松木 ええ、右の茶葉は3倍ぐらい高価ですね。グレードのチェックポイントとしては5項目。①形状、②ツヤ、③香気、④水色(すいしょく)、⑤滋味です。この違いは何で生まれるかというと、ひとつは若さ。大前提として、若い芽のほうが小さくて細く、ツヤがあります。

 

倉嶋 確かに。それに高級なほうは色の濃さだけではなく、パリッとした感じもありますね。でも、茶葉は小さいほうがいいのですか?

 

松木 大きくなると雑味に通じる繊維質が増えますし、針のようにきれいな形にならないんです。

 

倉嶋 そういうことなんですね。あと、高級なほうが茶葉を丁寧に選別してるということでしょうか?

 

松木 それもあります。こちらはその年の最初に生育した若い新芽、つまり一番茶だけを摘んでさらに選別したものですね。一方の安いほうは茶葉の若さや大小はあまり気にしていないのでバラつきがありますし、色の淡い茎の部分も入っています。

 

倉嶋 なるほど、このちょっと太くて淡いのは茎なんですね。

 

 

茶葉の味を比べてみる

松木 淹れて比べるとまた面白いですよ。ちょっと待っててくださいね。

↑茶こしで淹れている状態。左が安価な茶葉。右が高級茶葉

 

↑安価な茶葉(左)は色が濃く沈殿物も多い。高級茶葉(右)は色味も鮮やかで沈殿物が少ない

 

倉嶋 わっ、見た目は高級なほうがクリアで鮮やか。あと、沈殿が少ないんですね。

 

松木 沈殿しているのは茶葉から出る粉です。高級なほうは茶葉を選別する際に粉も取り除くんですよ。粉が少ないぶん、雑味も出にくくなっています。ちなみに、今日は比較用にあえて熱湯で淹れました。

 

倉嶋 比較するには熱いほうがいいんですか?

 

松木 適温は茶葉によって様々なんですけど、『煎茶』でうまみを豊かに感じるには70~80℃が目安なんです。ただ今日の『煎茶』を70~80℃で淹れると、若い茶葉のほうが良さが引き立つので、フェアじゃないというか。一方、90℃近い熱湯で淹れると苦みに通じるカテキンやネガティブな味覚成分が出やすくなって、茶葉そのものの実力を感じやすいんです。

 

倉嶋 なるほど、そうなんですね! そして確かに、味も全然違いますね。高級なほうが香りが清々しく、苦みも凛々しくて美味しいです。

 

松木 味が鮮明で、フレッシュなニュアンスもありますよね。

 

倉嶋 でも、こうしてじっくり味わってみると、意外に『緑茶』って酸味は感じないんですね。

 

松木 それは、よく言われる発酵の違いによるものです。日本の『緑茶』は“不発酵茶”なので、比較的酸味は少ないんですよ。有名な分類ですと、『紅茶』は“発酵茶”で『烏龍茶』は“半発酵茶”。これらは発酵されているぶん酸味を感じる特徴があります。

 

お酒に茶葉を漬け込んだ自家製の「お茶割り」

倉嶋 お茶については良く分かってきたので、いよいよ「お茶割り」が飲みたくなってきました(笑)。ちなみに、「襤褸」ではどのような「お茶割り」を出しているんですか?

 

松木 うちのお店は炭酸水を使う「お茶ハイボール」がスタンダードなんですけど、ベースのお酒は、甲類焼酎やジンにあらかじめ茶葉を漬けこんだ自家製。いくつかのフレーバーを用意し、メニューに応じて炭酸水で割って提供しています。

倉嶋 お茶とお酒を別々に合わせるわけではないんですね。そのベースのお酒はどのように作ってるんですか?

 

松木 酒燗器を使い甲類焼酎などの温度を上げることで、茶葉から狙った量の味わいを抽出しています。でもネガティブな成分が出ないよう、浸出する目安は5分ですね。

 

同じお茶でも焼酎が違うと味がガラッと変わる!

ここからは講師をいったんバトンタッチ。「宝焼酎」など「蒸留酒」の開発担当者である宝酒造 商品第一部 副部長兼技術課長の高橋悠典さんと、「宝焼酎のお茶割りシリーズ」や「寶 抹茶ハイ」など焼酎ベースの「ソフトアルコール飲料」を手掛けている商品第二部 技術課長の大崎学さんのおふたりです。

 

倉嶋 次は「焼酎×緑茶」についてということで、よろしくお願いします。

 

高橋 説明する前に、まずは飲んで頂きましょうか? そのほうがわかりやすいと思うので。今日は焼酎の違いで「お茶割り」の味がどう変わるかを体験いただきたく、当社の「極上〈宝焼酎〉」と宝焼酎「タカラモダン」を用意させていただきました。

↑宝酒造 商品第一部 副部長兼技術課長の高橋悠典さん

 

倉嶋 待ってました!

 

大崎 松木さんには事前にお願いして、2種類の「宝焼酎」に先ほどの高級茶葉をつけ込んだものを本日のベースのお酒として準備してもらっています。

↑宝酒造 商品第二部 技術課長の大崎学さん

 

倉嶋 ありがとうございます!

 

松木 では、作っていきますね。

 

 

高橋 「極上〈宝焼酎〉」は樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドしており、まろやかな口当たりとコク深い味わいが特徴。「タカラモダン」は当社の独自技術でやわらかな味わいを表現しており、ほのかな甘みやカドのないクリアなキレが魅力です。アルコール度数はどちらも25%ですね。

↑「極上〈宝焼酎〉」(左)、宝焼酎「タカラモダン」(右)

 

松木 「タカラモダン」はピンク色のかわいらしいラベルデザインも素敵ですよね。編集長、まずはこの「モダン」のほうから飲んでみてください。どうぞ。

 

倉嶋 うん! 『緑茶』の清々しい香りがフレッシュで、爽やかな味わいですね。キレも良くてすっきりしているから、これは暑い日に飲みたい!

 

松木 茶葉の爽やかな風味を感じる「お茶割り」ですよね。では次に、「極上〈宝焼酎〉」のほうを飲んでみてください。

 

倉嶋 あっ、これはよりお酒のまろやかなコクを感じる味わいで、余韻に多層的な香りが伸びてきます。より「お茶割り」としての膨らみが出て、お茶の甘い香りと極上な宝焼酎の持ち味を感じる美味しさですね。

 

高橋 先ほど松木さんがおっしゃっていたように、『緑茶』にはうまみの素であるアミノ酸をはじめ、さまざまな成分が含まれているんですね。これは樽貯蔵熟成酒も同様で、うまみや甘み、香りなどさまざまなものが含まれます。その成分が調和して引き立て合ったり、一方で欠けている味を補ったりすることで美味しさが生まれているのだと思います。

 

大崎 補うというのは、例えば渋味のカドをまろやかな甘みでおいしい苦味に変えていくようなイメージですね。

 

倉嶋 樽貯蔵熟成酒は以前に宮崎の黒壁蔵で勉強させていただき、それまで甲類焼酎は無色透明で味わいに違いはないと思っていた私の価値観がガラリと変わりました。約85種類あるという樽貯蔵熟成酒は、宝酒造の甲類焼酎の味の要ですよね。

 

【関連記事】
焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺

 

松木 並べて比べて見ると、同じお茶と透明な甲類焼酎の組み合わせなんですけど、「モダン」のほうが少し色が濃いんですよね。これも面白いと思いました。

 

倉嶋 ほんとだ! これは何でですか?

 

高橋 「極上〈宝焼酎〉」のほうは樽貯蔵熟成酒が3%入っているためpH(※)などの微妙な違いが関係しているのかもしれませんね。

※水素イオン指数。溶液の酸性・アルカリ性の程度を表す物理量。

 

松木 なるほどー! でも今回2種試してみて、「お茶割り」にすることで焼酎の味の違いがよりわかる気がしました。

 

倉嶋 うん、それぞれの焼酎の特徴がはっきり出てくる印象ですよね。お酒好きの人には、どっしりとした「極上」のほうなのかなぁ。

 

松木 はい。1杯目に爽やかな「タカラモダン」のほうを味わって、あとはじっくり「極上〈宝焼酎〉」の「お茶割り」で楽しむのはいい流れだと思います。

 

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美味しい「お茶割り」を作るコツ

倉嶋 今日は最後、松っちゃんに美味しい「お茶割り」の作り方も教えてほしいです。

 

松木 すべてのチューハイに共通するのは、よく冷やすことですね。焼酎も割り材も冷やし、氷は溶けにくいロックアイスがオススメです。冷たいお茶に関しては、市販されているもので構いません。

倉嶋 そっか、お茶を淹れて冷やしてとなると、手間がかかりますよね。

 

松木 もし淹れる場合は、『緑茶』の湯温はやっぱりアミノ酸が出やすい70~80℃がオススメです。ただ、『ほうじ茶』は高温でもOK。『ほうじ茶』の場合は高温抽出すると香りが立ってくるのと、渋味のもとになるカテキンがそこまで出ないんです。

 

倉嶋 『緑茶』は水出しでもいいのでしょうか?

 

松木 いいと思いますよ! 水出しはまろやかな口当たりになる特徴がありますからね。あと、もし『玉露』を使うなら、『玉露』ならではのまろやかさがいっそう際立つ水出しはオススメです。

 

倉嶋 まろやかな味わいかぁ。「極上〈宝焼酎〉」とかスゴく合いそう。つまみはおにぎりかなっ!

 

松木 いいですねぇ! 編集長もご自宅で、ぜひ試してくださいね。

 

「お茶割り」は夢のような飲み物

大崎 もっと気軽に「お茶割り」を楽しみたいときは、ぜひ、宝焼酎の「お茶割りシリーズ」もお試しください。

 

倉嶋 そうですね! これなら、なんの準備もなく「お茶割り」を楽しめますね(笑)

 

高橋 「宝焼酎のやわらかお茶割り」は、アルコール度数を4%に設定していますが、『緑茶』の美味しさを引き立て、お酒としての飲みごたえが感じられるように、バランスを調和させていくのが腕の見せ所ですね。

 

大崎 「茶葉」は、うまみや渋味といった味わいに層がある、『煎茶』の一番茶を一部使用しています。そのうえで意識していることは、飲み飽きないクリアなおいしさですね。『緑茶』の清々しい香りや味が焼酎のコクと響き合う、清涼感のある美味しさを目指しました。

↑宝焼酎の「お茶割り」シリーズ

 

倉嶋 お酒感があって飲み飽きないなんて、お酒好きにはうってつけってことかぁ。

 

松木 源実朝(みなもとのさねとも・鎌倉幕府の第三代将軍)が二日酔いで苦しんでいたとき、お茶を飲んだら収まったなんていう話が『吾妻鏡』に書かれていると聞いた事がありますけどね。

 

倉嶋 糖質ゼロのお酒だし、おまけに酔い覚め爽やかとは、「お茶割り」は夢のような飲み物ですね(笑)。

 

今回は、お茶の種類の違いから、品質の善し悪しを決めるポイントをはじめ、焼酎メーカーと飲食店、双方からプロのこだわりを学んできました。「お茶割り」は、ベースとなる焼酎を変えるだけでもガラリと味が変わりますし、「ほうじ茶」や「玉露」など、自分で淹れたお茶で違いを楽しむのもアリ。今回学んだことを参考に、ぜひ皆さんもいろいろと試してみてくださいね。次回の「意外と知らない焼酎の噺」もお楽しみに!

 

 

<取材協力>

酒と茶と 襤褸 (らんる)

住所:東京都墨田区向島2-10-11 南山ビル 1F
営業時間:17:00~22:00(L.O.21:00)
定休日:水曜

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2023年6月7日)

 

撮影/我妻慶一

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・極上〈宝焼酎〉
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/lineup/gokujo-takara-shochu.html

・宝焼酎「タカラモダン」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takaramodern/

・宝焼酎のやわらかお茶割り
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/ochawari/

・宝焼酎の濃いお茶割り〜カテキン2倍〜
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/ochawari/

・宝焼酎の烏龍割り
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/ochawari/

 

【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼
【意外と知らない焼酎の噺01】「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺
【意外と知らない焼酎の噺02】「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺03】いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺
【意外と知らない焼酎の噺04】芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺05】麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺06】焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺07】「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
【意外と知らない焼酎の噺08】ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
【意外と知らない焼酎の噺09】レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺
【意外と知らない焼酎の噺10】一子相伝で受け継がれる“幻”の割り材「ホイス」の噺
【意外と知らない焼酎の噺11】東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺
【意外と知らない焼酎の噺12】「強炭酸チューハイ」をつくるディスペンサーの秘密に迫る噺

【東京・大衆酒場の名店】渋谷に復活!「立呑 富士屋本店」のカウンターで伝説の立ち飲みを楽しむ噺

東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第10回。今回は渋谷の「立呑 富士屋本店」を訪れ、立ち飲みスタイルと、そのカウンターの魅力を探っていきます。

 

大衆酒場は、その安さとウマさ、昔ながらの温かい雰囲気で、酒飲みの心をひきつけてやみません。なかでも東京では下町を中心に、根強い人気を誇る大衆酒場の名店が数多く存在します。そんな名店を巡り、お店の魅力と東京ならではの酒文化を深掘りしていくのが本連載。立石「宇ち多゛(うちだ)」篠崎「大林」京成曳舟「三祐酒場(さんゆうさかば) 八広(やひろ)店」八広「亀屋」四つ木「ゑびす」門前仲町「だるま」船堀「伊勢周」門前仲町「大坂屋」横須賀「お太幸」に続く第10回は、渋谷の「立呑 富士屋本店」にお邪魔します。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

定番の焼酎ボトルと割り材で自分好みのチューハイを楽しむ!

これまで数々の名カウンター酒場を紹介してきましたが、今回は本企画で初の立ち飲み店です。訪れた「立呑 富士屋本店(旧店名は「大衆立呑酒場 富士屋本店」)」は東京を代表する立ち飲み酒場で、渋谷の再開発により閉店していましたが2022年の11月に移転復活。

 

企画の講師はカウンター酒場に詳しい長谷川和之さんが担っていますが、今回は参加できず。代わりに酒場好きのフードアナリスト・中山秀明さんが長谷川さんから命を受け、生徒役のお酒好きタレント・中村 優さんに、同店の魅力や立ち飲みカウンターの楽しみ方をレクチャーします。

↑中村 優さん(左)は、タレントおよびマラソンランナーとして活躍。中山秀明さん(右)はフードアナリストの資格をもつライターで、食ジャンルを中心に取材執筆をしています

 

中村 中山さん、お久しぶりですね。今日は、師匠の長谷川さんが来られないので、ご指導よろしくお願いします! 「立呑 富士屋本店」は有名ですけど初めて来ました。渋谷の、しかもこんなに駅から近い場所にあったなんて!

↑店内には「L字型」と長めの「コの字型」の2つのカウンターがある。ハイテーブルも置かれ、すべてスタンディング(写真奥はコの字型カウンター)

 

中山 渋谷には系列店がこの桜丘町に3店舗あって、ほかに三軒茶屋や日本橋浜町にも展開していますね。なかでもこの「立呑 富士屋本店」はスタンディングの大衆酒場です。では、まずはお酒から注文しましょう。ちなみに、「立呑 富士屋本店」はボトル焼酎を好みの割り材で割って、多彩なチューハイを楽しめるスタイルなんですよ。

 

中村 あっ、好きな濃さで飲めるやつ! 確か連載初期に伺った「大林(篠崎)」もボトルではなかったですけど自分で割るスタイルでした。いいですね~!

 

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【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

 

中山 それなら、まずは「立呑 富士屋本店」の定番「宝焼酎」360mlのボトルをお願いして、僕はホッピー割りでいきます。中村さんはどうします?

↑「宝焼酎25% 360ml」750円

 

中村 私は炭酸とレモンで「レモンサワー」にしようかな。では、注文しますね!

 

中山 「立呑 富士屋本店」は、焼酎のボトルは常温なので、冷えたグラスに氷と焼酎を入れマドラーでステアしてから炭酸を入れると、すべてが冷やされて(3冷)美味しく飲めますよ。

 

中村 なるほど!

↑マドラーでステアして焼酎を冷やす中村さん

 

↑「炭酸」150円、「カットレモン」150円

 

中村、中山 では、カンパーイ!

 

中村 おいしい! 私は酔いやすいので、自分好みの濃さ(薄め)に調節して飲めるのはうれしいです。

 

中山 そういえば、前回行った「お太幸(横須賀)」は焼酎が濃い“横須賀割り”の名店でしたね。あちらも力強くてメチャウマですけど。

 

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【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

 

中村 はい、確かに横須賀まで行く価値がありました! では続いておつまみも注文しましょう。オススメはどれですか?

 

中山 外せないのは「ハムキャ別」。ほかに移転前から定番の人気メニューには「なすみそ」や「ねぎぬた」、「スパサラ」などがありますよ。

↑お品書きは黒板のほか、紙のメニューリストも。なお、QRコードを読み取ってオーダーすることも可能

 

中村 おいしそうなメニューがたくさんありますね! では、まずは「ハムキャ別」と「スパサラ」を。あとはどうしよっかな?

 

中山 復活後に新しく加わったメニューも豊富で、なかでも「鰯海苔巻き」はイチオシです!

 

中村 イイですね~。ではその「鰯海苔巻き」と、あとは「あさりの酒蒸し」もお願いします!

 

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門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺
東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第8回。今回は門前仲町の「大坂屋」を訪れ、その魅力を探っていきます。

大衆酒場の酎ハイに欠かせない「下町炭酸」を飲み比べる噺
【東京・大衆酒場の名店】の番外編として下町の大衆酒場の名物・焼酎ハイボールには欠かせない「炭酸水」について深堀りしていきます。

 

立ち飲みカウンターの嗜み方と作法

中山 今回のテーマは立ち飲みカウンターなんですけど、中村さんは立ち飲みのお店にも行きます?

 

中村 たまに行きますよ! サクッと飲めるところがイイですよね。

 

中山 はい! それに、なんといっても手ごろな価格で飲めて楽しめるところが最大の魅力ですね。

 

中村 お店側としては、イスが不要だから小規模のスペースで効率よく運営できるという利点もありますね。

 

<カウンター酒場マニア・長谷川和之のひとくちメモ ①>

立ち飲みの最大の魅力は、少し時間が空いたとき、ちょっとだけ飲みたいとき、おつまみも1品2品でいいというとき−−どんなタイミングでも、気軽に入れること。

長っ尻せず、1日の中の「句読点」のように立ち飲み屋に立ち寄って呑む。疲れやストレスをさっと洗い流す。ダラダラと飲んで、酔っ払うようなことはせず、サクッと飲んでサクッと退店。それがいいですよね。

「ひとり飲み」初心者の方も、まず立ち飲みからであればハードルは低いでしょう。自分に合わない店だなと思ったら1杯で会計してもOKです(笑)。

 

 

中山 そうですね。そして楽しみ方の作法としては、座席数という概念がないので、賑わってきたらたくさんの人が飲めるよう、スペースを詰めたり、お会計して退店したりという譲り合いの気持ちが大切です。あまり注文せずに長居するのはご法度ですね。

 

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中村 立ち飲みのお店は、まさに大人の社交場ってことですね。では「立呑 富士屋本店」のカウンターの特徴はどんなところにありますか?

 

中山 カウンター酒場マニアの長谷川さんによると「L字型」と長めの「コの字型」の2つのカウンターがあるのが特徴とのこと。1店でふたつの異なるカウンターが楽しめるお店は貴重で、その日の気分に合わせて、カウンターを選ぶのも楽しそうですね。

ちなみに、移転前は「ロの字型」のカウンターで、こちらはライブ感や一体感がスゴかったです。その雰囲気は復活後のここでも感じますね。広さも同じぐらいだし、どんどんお客さんが入ってきてすぐ賑やかになりますから。

 

中村 お店の外にも席が設けられているぐらいですもんね。

 

中山 それと、店内の間取りが横長なのは、もともと1店舗ぶんのスペースだったところを、隣の店が空いたので、壁を取っ払ったからなんです。

 

中村 なるほど! そういうことなんですね。

 

立ち飲みはテーブルの高さが重要

中山 これまで中村さんが訪れた大衆酒場の名店は、カウンターの形やテーブルの奥行きにフォーカスが当たっていたと思うんですけど、立ち飲みの場合は高さも重要なんです。テーブルの位置で、くつろぎやすさが変わりますから。

 

中村 確かにそうかもしれません。高すぎても低すぎても疲れちゃいますもんね。

 

中山 ちょっと、長谷川さんに習って「立呑 富士屋本店」のカウンターを測ってみましょう。

 

中村 任せてください! 今日は私がメジャーを持ってきました。

 

中山 おっ、さすがカウンター酒場5回目ともなると頼もしい! しかもかわいいメジャーですね~。

↑羊のぬいぐるみをモチーフにしたメジャーで測る中村さん

 

中村 え~と、高さは110cmです。

 

中山 立ち飲み店にしては少し高めですね。長谷川さん曰く、110cmという高さだと自然に背筋が伸びて、かっこいい立ち姿になるそうです。猫背でジョッキやグラスを口に持っていくのは、あまりおしゃれな見た目とは言えませんからね。ちなみに、カウンターの奥行はどれくらいですか?

 

中村  奥行きは55cmで、コーナーになると65cmですね。

 

中山 奥行きの長さは45~65cmが適正なので、「立呑 富士屋本店」は正統派の広さといえるでしょう。

 

中村 十分に奥行きがあるから肘を置いてゆっくりできますし、居心地も抜群です。

 

 

渋谷の伝説「富士屋本店」復活までのストーリー

中村 あ、移転前のお店の写真が飾ってありました。これが「ロの字型カウンター」! 歴史も深そうな雰囲気ですね。

 

↑移転前の「ロの字型カウンター」(写真提供:立呑 富士屋本店)

 

中山 開業は昭和46(1971)年。もともと100年以上、この地で酒販店を営んでいた「富士屋本店」が、自社ビルの地下に出店した立ち飲み酒場です。酒販店は山手線の線路側にあったそうで、地下にあった「大衆立呑酒場 富士屋本店」は、この坂を下りて線路側に少し歩いた路地裏に入口がありました。確か楽器店の手前だったかな。

 

中村 いまは大きな複合施設が建設中になっている場所ですかね。

 

中山 そうです。2018年の10月末に立ち退き閉店となり、最終日は100人〜200人の行列ができたとか。“渋谷の名物大衆酒場が伝説に”といった見出しで、ニュース番組でも報道されていた記憶があります。

 

中村 酒場好きの聖地だったと。それが復活とあれば、ファンにはたまらなくうれしいですよね。

 

中山 ええ。聖地であり、秘密基地であり。で、今日の「立呑 富士屋本店」はもともと「富士屋本店 ダイニングバー」だったんです。こちらも立ち飲みで、洋食つまみとハイボールやワインがウリでしたね。こちらを業態転換する形で、「立呑 富士屋本店」へとフルリニューアル。スペースも広くなり、2022年11月24日に新たなスタートを切ったんです。

 

<カウンター酒場マニア・長谷川和之のひとくちメモ②>

“先代”の地下にあった富士屋本店は、どちらかと言えば、昭和の雰囲気を色濃く残した古き良き大衆酒場でした。毎日通ったとしても、安く安心して飲むことができるおじさんたちのオアシス的な存在でした。

リニューアル後は、“先代”時代の人気メニューだけでなく、本格的な割烹やイタリアン、フレンチを彷彿とさせる手の込んだ料理が多数メニューに並んでいます。その割に値段は“先代”の大衆酒場のままという、お客さんにとってはとてもうれしい形での復活でした。

前のお店では、カウンターしかなかったのですが、新店舗にはいくつかテーブルが用意されています。1人でも2人でもグループでも立ち飲みを楽しめるようになったのは、最大の変化ではないでしょうか。

 

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往年の名作「ハムキャ別」ほか、お酒が進むおつまみが満載

中村 おつまみが来ましたね。あっ、これが「ハムキャ別」か~。こうして別々にしてハムが乗っかってるから“別”っていうことなんですかね。面白いし、見た目のインパクトもスゴい!

↑「ハムキャ別」400円

 

中山 「ハムキャ別」は食べごたえのあるロースハムと、ほんのりマヨネーズの効いた千切りキャベツのコンビネーションが神! 名物女将・ヨシ江ママ直伝のレシピが受け継がれている傑作です。ハムの仕入れ先も昔と変わっていないそうで、創業当時そのままの味が楽しめますよ。

 

中村 すごくおいしい! ちょっと厚めでお肉のうまみもしっかりしたハムがインパクト大で、絶妙な幅の千切りキャベツがベストマッチですね。これはお酒が進むわ~。

↑「スパサラ」300円

 

中山 「スパサラ」はキュウリ、玉ネギ、ニンジンが好アクセントになっていて、辛子マヨネーズのパンチもたまらない一品です。こちらはオリーブオイルも使うなど、あえて今風の味に進化させたそうで、よりお酒が進むおいしさになりました。

 

中村 確かに、どこか懐かしい味わいの奥にある、ピリッとした辛子マヨがクセになりますね。野菜のシャキッとした食感や、黒胡椒の風味もいいです!

 

↑「鰯海苔巻き」850円

 

中山 「鰯海苔巻き」は酢じめしたイワシと、紅生姜、キュウリ、青ネギ、薄焼き卵を閉じ込めたアテ巻きです。しっかり味付けされているので、そのままイケますよ!

 

中村 これは発明だ! ビジュアルからして最高ですね~。うん、味も抜群! イワシの脂と酢じめの酸味が絶妙で、紅生姜も大活躍。爽やかな後味で、レモンサワーにめちゃめちゃ合います。

 

中山 そして中村さんが気になっていた「あさりの酒蒸し」。こちらはニンニクとオリーブオイルで香りを立て、日本酒で蒸し上げた味付けも秀逸ですが、そもそも旬を迎えた春のアサリは、プリッとしていて間違いないウマさですよ!

↑「あさりの酒蒸し」650円

 

中村 わー、香りからして最高! ほんとはチビチビと味わうおつまみなんでしょうけど、止まんないおいしさです。

 

中山 つい、お酒も進んじゃいますよね。もうちょっと飲みたいときなど、焼酎をおかわりしたいときは、小さいカップの220mlサイズもあるので便利です。あと、ひとり飲みにもこちらがオススメですよ。

↑「宝焼酎 220mlカップ」500円

 

中村 あっ、これはコンビニでもおなじみのかわいいサイズですね!

 

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これまでの名カウンター酒場を振り返って

中山 これまで、いろんなカウンター酒場を巡ってきたと思うんですけど、振り返ってみていかがですか?

 

中村 どのお店も印象的で、すごく記憶に残っています。「だるま(門前仲町)」は「コの字型カウンター」の醍醐味を存分に楽しめるお店で、姉妹店主の笑顔も素敵でした。「伊勢周(船堀)」は「L字型」に加え、向かい合って座れる席配置もユニークで。「大坂屋(門前仲町)」は大工さんの技術も見事な「三日月型カウンター」がスゴかったです。“東京五大煮込み”に挙げられる名物料理と、女将さんのあたたかさも忘れられません。

↑門前仲町の「大坂屋」にて師匠の長谷川さんと

 

そして前回の「お太幸(横須賀)」は「コの字」と「L字」を組み合わせた、独特の「H型カウンター」でした。“横須賀割り”のパワフルなチューハイと、2階の桟敷(さじき)も圧巻でしたね!

↑横須賀「お太幸」の「H型カウンター」

 

中山 どのお店も個性的! セレクトが素晴らしいですね~。

 

中村 もちろん、今日の「立呑 富士屋本店」も素晴らしい酒場です! 気軽に飲める自由で開放的な雰囲気が最高ですし、お酒も料理も絶品! そのうえで今日あらためて思ったのは、カウンターなど店内の設計や構造の部分は、メニューと同じぐらい重要なんだなということです。

 

中山 ええ。席のレイアウトが変わるだけでも、お店の雰囲気はガラッと変わりますからね。

 

中村 お客さんにとっては、座る位置や目線の高さで見える景色も違いますし、視界に何が入ってくるかで楽しみ方が変わることもわかりました。

カウンターのことだけでなく、「三祐酒場八広店(京成曳舟)」、「亀屋(八広)」、「ゑびす(四つ木)」など、東京・下町の名店にも伺って、「焼酎ハイボール」の歴史や大衆酒場の奥深さも学ばせてもらいました。おかげで、大衆酒場がもっともっと好きになれそうです。読者のみなさんもぜひ、大衆酒場を楽しんでみてください!

 

 

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

立呑 富士屋本店

住所:東京都渋谷区桜丘町16-10
営業時間:平日17:00〜22:00(L.O.21:30)、土曜16:00〜22:00(L.O.21:30)、日曜祝日15:00〜20:00(L.O.19:00)
定休日:なし

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2023年4月26日)

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

 

「東京・大衆酒場の名店」バックナンバーはこちら▼

・第1回 【東京・大衆酒場の名店】この緊張感は何だ? 行列しても入りたい立石「宇ち多゛」の強烈な魅力の噺

・第2回 【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

・第3回 【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

・第4回 【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広「亀屋」の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺

・第5回 【東京・大衆酒場の名店】四ツ木「ゑびす」で、自家製ロックアイスのお茶割りを味わう噺

・第6回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「だるま」で、コの字カウンター劇場を堪能する噺

・第7回 【東京・大衆酒場の名店】船堀「伊勢周」で、L字カウンターの機能美を楽しむ噺

・第8回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺

・第9回 【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

・番外編 大衆酒場の酎ハイに欠かせない「下町炭酸」を飲み比べる噺

・番外編 焼酎ハイボールに合う!「東京・大衆酒場の名店」のおつまみを、約5000円の調理家電で再現する噺

「強炭酸チューハイ」をつくるディスペンサーの秘密に迫る噺

意外と知らない焼酎の噺12

『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。前回までは「ホッピー」「ハイサワー」「ホイス」「バイス」と「割り材」についてじっくり深掘りしてきました。

 

今回は、チューハイには欠かせない「炭酸水(以下は略して炭酸)」。しかも「強炭酸」を作り出す「チューハイディスペンサー」について、倉嶋さんがディスペンサーの製造販売を手がける株式会社ニットク(東京都小平市)にお邪魔してお話を伺います。

 

島田昭(左)/様々な飲料ディスペンサー(サーバー)の製造販売を行う株式会社ニットクの専務取締役
倉嶋紀和子(右)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

 

「強炭酸チューハイ」が作れるディスペンサーとは

倉嶋 島田専務、今日はよろしくお願いします。まずは、ディスペンサーとはなんぞやというところから教えてください。

 

島田 はい。ディスペンスは「出す・配る」といった意味で、ドリンクを供給する機械。供給ですから、サーバーとも言いますよね。業界では冷・温とあるのですが、当社は冷やす方に特化したメーカーでして、コールドドリンクのディスペンサーはほとんど取り揃えております。

 

 

倉嶋 なるほど。ディスペンサーの基本的な仕組みはどうなっているんですか?

 

島田 チューハイのディスペンサーは、炭酸ガスと浄水器を接続し、機械の中で混合して炭酸を作ります。つまり、ディスペンサー内のタンクに給水しながら炭酸ガスと混ぜ、冷却装置を介した管に通して炭酸を注出する仕組みになっています。ノズル部分で焼酎と炭酸を混合してチューハイができあがります。

 

チューハイ用のディスペンサー。機械とは別に、炭酸ガス、浄水器、焼酎が必要

 

倉嶋 それでは、ニットクさんのこだわりである「強炭酸」にするためのディスペンサーにはどんなポイントがあるか教えてください?

 

島田 大前提として液体は冷たい方がガスも溶けやすく、逃げにくい性質をもっているので、できるだけ低温で炭酸を作るようにします。そのうえで私たちは、炭酸ガスが逃げないような工夫を随所に施しています。例えば冷却させるための管ですが、これは長ければより冷えるのかというとそうでもありません。

 

倉嶋 そうなんですね!

 

島田 ですから、ガス圧と長さのバランスが大切なんですよね。そして、もうひとつ重要なのがノズル。注出部の先端では、あえてゆっくり流れるように絞るためのパーツを組み込んでいます。

 

倉嶋 なるほど。出る勢いが強すぎると、炭酸ガスも逃げてしまうと。

 

島田 はい。見た目では強そうですけど、勢いよく出ていると同時に炭酸も抜けているんです。このノズル部分は、当社の命といってもいい特許技術が含まれています。名称としては、その形から「ドングリ」と呼んでいます。

独自技術がつまっているノズル部分(キャップを外しています)

 

倉嶋 おお、この注出先端部のパーツが「ドングリ」ですか!

 

島田 炭酸はきわめてデリケートで、ガス圧を効かせるとそのぶん逃げるのも早くなります。ですから強く効かせることはもちろん、ガスができるだけ逃げないような工夫をしているのが当社のディスペンサーというわけです。

 

倉嶋 ガス圧を強く効かせるということですが、製品の方で圧力の強弱を変えることはできるんですか?

 

島田 飲食店さんの方で調整する場合ですよね。残念ながら炭酸のガス圧は変更できません。ただ、炭酸をより効かせるための重要なポイントがあるので、実際にディスペンサーを操作して、炭酸の強弱の違いを確かめたり、チューハイを作ったりしてみましょう。

 

倉嶋 待ってました! お願いします。

 

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ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
今回のテーマは「チューハイ」と並んで甲類焼酎の飲み方として定番の「ホッピー割り」。東京で生まれて昔から焼酎の割り材として人気の「ホッピー」の歴史と変遷を“ホッピーミーナ”に伺います。

「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。

 

注ぎたての「強炭酸チューハイ」を飲んでパワーをチェック

島田 先ほど強炭酸を作る要領について説明いたしましたが、もうひとつガスが抜けないようにするための秘訣があるんです。まずはそれからご体験ください。

 

倉嶋 秘訣ですか?

 

島田 はい。ズバリ、注ぎ方です。ゆっくり出す方がガスも逃げないとお話ししましたが、注ぎ方も同様。やさしく注ぐことで、より圧力の強いダイナミックな炭酸が楽しめるんです。まずはやさしく注いだものからどうぞ。

注ぎ口をグラスに付け、氷に当たらないように傾けながら静かに注ぐと、強炭酸が維持される

 

倉嶋 ホントだ! 炭酸が踊っていて、ノドへの刺激もバチバチ来ます。これはおいしい!

 

島田 よかったです。では、次はドバッと落下させるように勢いよく出しますね。見た目はこちらの方がパワフルですが、飲んでいただくとどうでしょう?

 

倉嶋 あぁ確かに! 先ほどのより、キック(炭酸がよく効いている)がおとなしいです。

 

島田 ですよね。当社でもこうした形で飲食店さんにアドバイスをしておりまして、実際に飲み比べていただくと違いに驚かれます。では次は倉嶋さんご自身で、焼酎が混ざった状態のチューハイで試してみてください。

 

倉嶋 喜んで! レバーは前後左右に動くんですね。

 

島田 はい。左に動かして、レバーを後ろに倒すと「焼酎」だけが出ます。一方、右に引っ張って後ろに倒すと「炭酸」だけが出て、手前に引くと焼酎と炭酸が混ざった「チューハイ」が出る仕様です。

 

倉嶋 やってみます。チューハイを氷に当てないことも、ガスを逃がさないコツですよね。

 

島田 さすが、その通りです。氷に当てるとどうしても表面で泡になりやすく、その際にガスが抜けてしまうので、なるべく氷を避けてやさしく注いでください。

 

倉嶋 ではいただきます……あー、ノド越しが抜群! シュワッとして気持ちイイです。注ぎ方でここまで変わるとはビックリ。泡の見た目も爽快ですし、チューハイの味も抜群においしいです!

 

 

島田 実感いただけてよかったです。私も強炭酸が好きで、お店で飲むチューハイも強ければ強いほど嬉しいですね。試していただいた注ぎ方でガス圧がしっかり強くておいしい「強炭酸チューハイ」を、どんどん広げていきたいと思っています。

 

倉嶋 ちなみに、例えばチューハイのアルコール度数が8%だったとしましょう。ベースの焼酎の度数が高くて濃い方が、割る炭酸の量は多くなりますよね。ということは、度数の高い焼酎で作ったチューハイの方がオススメなんですか?

 

島田 鋭いですね、その通りです。例えばディスペンサーにつなぐ焼酎のアルコール度数が25%と35%とでは、その機械の調整にもよりますが、同じ8%で注出するのであれば35%の方が焼酎の量は少ない。そのぶん炭酸の量は多くなるので、ガス圧も強くなります。

 

日本におけるディスペンサーのパイオニアがニットク

倉嶋 それでは、あらためてニットクさんの歴史を教えてください。

 

島田 1955(昭和30)年に有限会社五月商会として営業を開始し、当時は飲料水製造機のメンテナンスが事業の柱でした。2年後の1957(昭和32)年に日本特殊鋼器株式会社へ組織変更。やがてドライアイスを使用して炭酸を作る製法特許を取得するなど、事業を展開してまいりました。

 

倉嶋 当初はドライアイスで作っていたんですね!

 

島田 高度経済成長期でもあった1957年当時は、サラリーマンを中心にウイスキーハイボールが流行していた時期。ただ、当時の炭酸はびん入りがほとんどで、課題もあったそうです。

 

倉嶋 びんの課題ですか?

 

島田 ひとつが価格の高さで、もうひとつは大量にびんを冷やさなければならないこと。そしてびんのフタ。開栓してしまったら、早めに使い切らないと無駄になっちゃいますよね。ガスが抜けておいしくなくなっちゃいますし。

 

倉嶋 なるほど!

 

島田 そこで、当社の前会長が現役時代にいろんなお店を回って各店の声を拾い上げ、大量に安く炭酸を供給するために発明したのがドライアイス式の炭酸製造装置でした。こちらになります。

ドライアイス式の炭酸製造装置

 

倉嶋 マシン自体はなんだか可愛いらしいですね!

 

島田 仕組みはシンプルで、まずは20リットルの水を入れてドライアイスは100グラム入れます。フタをしたら100回以上左右に振らないといけなかったのですが、当時はもう画期的で。ホースをつないで炭酸を出す手法で、バーや喫茶店などに測り売りで提供したという記録が残っています。

 

倉嶋 ディスペンサー型炭酸のはじまりですよね。そしてこの最初のヒットが、のちの名機へつながっていくと?

 

島田 そうですね。次第に機械的な手法で何か作れないかということで、新たな炭酸製造装置の「ソーダミル」や、ドリンクを素早く効率的に冷却できる「コールドプレート」を開発し、国内で最初に製造販売を開始しました。

 

工場にて。熟練の技術で部品を組み立て、現在はディスペンサーをひとりで1日平均4台ほど製造

 

倉嶋 そしてチューハイをはじめ、様々なディスペンサーを手掛けていくわけですね。

 

島田 はい。チューハイのディスペンサーを国内で最初に製造販売したのも当社となります。そして関西支社のほか各地に営業所も開設し、1984(昭和59)年に社名が現在の株式会社ニットクとなりました。

 

倉嶋 では、ディスペンサーを製造するうえで、注意するべきポイントとは?

 

島田 第一に衛生面、安全性です。お客様の口に入るものとなりますので、ここは絶対に譲れません。次に味ですが、私どもの場合、炭酸の強さや心地よさが譲れないポイントです。こうした部分は社内で抜き打ちテストも行い、お客様はもちろん飲食店さんの期待に応えられるよう努力しています。

 

倉嶋 なるほど、ありがとうございました。お話しを伺って、ディスペンサーと強炭酸について、とてもよくわかりました! ではこのあと実際に、リアルな「強炭酸チューハイ」を飲みにお店へ行ってきます!

 

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木場の「江戸っ子」で「強炭酸チューハイ」を楽しむ!

こうして「強炭酸チューハイ」を楽しむべく倉嶋さんが訪れたお店は、木場(東京都江東区)の老舗「江戸っ子」。山形県出身の初代が東京(江戸)に憧れ、1965(昭和40)年に創業。現在は生粋の“江戸っ子”であるお孫さん兄弟が二代目として継いだ大衆酒場です。

木場にある大衆酒場「江戸っ子」

 

ここで長年愛されているのが、アルコール度数35%の宝焼酎「純」をニットクの強炭酸ディスペンサーにつなげて作る「強炭酸チューハイ」。そのこだわりや人気メニューなどを、南 順也店主に伺いました。

店内の手描きのメニュ—でも、35%の宝焼酎「純」がイチオシ!

 

倉嶋 「江戸っ子」さんのチューハイはバキバキのガス圧と「純」ならではのコク深いうまみが効いていて、絶品です! まずは、この「強炭酸チューハイ」を提供している理由から教えてください。

 

 おいしいってのが大前提なんですけど、なによりおじいちゃん(先代)から受け継いだ宝物が35%の「純」を使ったチューハイなんです。2010年に僕ら兄弟が店を継いだのですが、それ以前からの常連さんにもたくさんのファンがいて、このチューハイなしでは考えられないですね。

 

倉嶋 ということは、ディスペンサーへのこだわりも相当ですよね。

 

 

 はい。あいつ(ディスペンサー)は僕らより先輩なんです。おじいちゃんの代からずっとあって、いつから使ってるかわからないくらい。でもすごく頑丈で、頼もしい存在です。こだわりかはわかりませんが、ポイントは掃除やメンテナンスを欠かさず行うことですかね。

 

倉嶋 では、チューハイを作る際のこだわりは何でしょうか。

 

 やっぱり味わいのキーとなる35%の「純」は欠かせません。あとは注ぐ際に泡が壊れないようにやさしく、氷に当てないように注ぐことですね。

左から「チューハイ」(400円)、「ミドルチューハイ」(550円)、「大チューハイ」(750円)

 

倉嶋 なるほど。たしかに『純』は11種類の樽貯蔵熟成酒を13%使用しているので、香り高く、芳醇で贅沢な味わいが際立ちますよね。私も宮崎県の高鍋(宝酒造「黒壁蔵」)に行って実際に体験してきたのでわかります。あと、3サイズあって、ミドルジョッキでも他店の大ぐらい入っていて、量も粋ですよね。

 

 何よりお客さんに喜んでほしいので、なみなみと注いでいます。ミドルとかのサイズは僕が増やしました。いろんなサイズでお客さんに飲んでほしいなと思って。「メガ純ハイ」って書かれたミドルジョッキは、渋いデザインも好評です。

 

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倉嶋 では、このチューハイに合うおつまみをお願いします!

 

 では、おじいちゃんの代から名物の「にこみ」や「焼き鳥」など、いくつかお出ししますね!

下から時計回りに、「にこみ」(480円)、「焼き鳥」(1本110円)、「のりチーズ」(250円)、「焼きそば」(550円)

 

倉嶋 「にこみ」は牛モツとこんにゃくだけのストロングスタイル。濃厚な味噌味のシンプルさも最高です。「焼き鳥」も白モツをはじめ、このチューハイにすごく合う味わいですね。

 

 うちの2大名物は、仕入れ先もレシピもずっと変えていません。「焼き鳥」のタレもずっと継ぎ足しで、古くからの常連さんも公認の味わいです。

 

倉嶋 ええ、タレは深みがあっておいしい!「 焼きそば」は水分少なめの表面カリッと香ばしい感じが、呑兵衛の心をくすぐります。「のりチーズ」は大葉が絶妙です!

 

 お口に合ってよかったです!

 

倉嶋 そして何よりチューハイが進む進む! ボリュームの大きなジョッキですけどスイスイ飲めちゃいます。「江戸っ子」さんで飲むなら、ミドルまたは大ジョッキで決まりですね。

 

お店で楽しむチューハイの知られざる一面、ディスペンサーにスポットを当てた本記事、いかがでしたでしょうか。次回の「意外と知らない焼酎の噺」もお楽しみに。

 

 

<取材協力>

江戸っ子

住所:東京都江東区東陽3-20-2 林ビル1階
営業時間:16:00~翌1:00、日曜16:00~22:00
定休日:月曜

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2023年2月17日)

 

撮影/我妻慶一

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

 

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東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺

【意外と知らない焼酎の噺11】

 

『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。これまで「ホッピー」「ハイサワー」「ホイス」と紹介してきた焼酎割り材企画の最後として、「バイス(正式名称:コダマバイスサワー)」にスポットを当てます。伺ったのは、製造元であるコダマ飲料。代表取締役の池澤友博社長を訪ねました。

 

池澤友博(左)/「バイス」をはじめ、全8種の「コダマサワー」を手掛ける株式会社コダマ飲料の二代目代表取締役社長
倉嶋紀和子(右)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

 

「バイス」の名称には“幻の割り材”が関係していた

倉嶋 今日は「バイス」を中心に、コダマ飲料さんの歴史や商品についてお話を伺いたいと思います。「コダマサワー」における「バイス」は、比較的後発のフレーバーですか?

 

「バイス」。しそエキスによる爽やかな酸味と、どこか懐かしい味わいが特徴

 

池澤 はい。「コダマサワー」自体は1981(昭和56)年に「レモン」からスタ-トしました。1984(昭和59)年に5番目のフレーバーとして誕生したのが「バイス」です。創業は1958(昭和33)年で、最初はラムネのメーカーだったんです。会社もいまの大森(東京都大田区)に移ったのは1975(昭和50)年で、隣の蒲田(大田区)が創業の地ですね。

 

コダマ飲料本社

 

倉嶋 「レモン」もよく見かけますもんね。ほかにも「青りんご」や「うめ」など、バリエーションが豊富な印象です。

 

池澤 順番で言うと、「レモン」「うめ」「青りんご」「ライム」「バイス」。ほかにもいくつかフレーバーはあったのですが、いまは「グレープフルーツ」「巨峰」「ざくろ」を含む全8種です。

 

倉嶋 「バイス」という名称の由来については諸説耳にするのですが、実際はどうなのでしょう。梅酢の梅を音読みにして「バイス」にしたわけではないんですよね?

 

池澤 勘違いされるのですが、梅は香り付けに使っているだけで関係ありません。名称は、「ホイス」にあやかったんです。

 

倉嶋 そうなんですね! 実は先ほど、後藤商店(有限会社ジィ・ティ・ユー)さんから「ホイス」のお話も伺ってきました。

 

池澤 でしたら話は早い! 「ホイス」もおいしいですよね。うちが「コダマサワー」を発売するずっと前からあって、すごく人気が高かったんです。当時から後藤商店さんに当社の炭酸水を卸しているなどお付き合いもありましてね、「ホイス」みたいに売れたらいいなという願いを込めて、新発売時に「バイス」と名付けさせてもらいました。

 

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「ホッピー」、「ハイサワー」に続く焼酎の割り材として、“幻”ともいわれる希少なエキス「ホイス」にスポットを当てます。

 

「バイス」ヒットの舞台裏

倉嶋 1984年にデビューしたとのことですが、反響はどうだったんですか?

 

池澤 それが、しばらくは今ほど人気じゃなかったんですよ。注目されはじめたのは、本当にここ数年の話で。

 

倉嶋 近年の大衆酒場ブームで発掘された名作ってことなんですね。私は熊本出身なのですが、上京して初めて「バイス」と出合い「乙女っぽい割り材で嬉しい!」と思いました。ピンク色で、どこか駄菓子屋さんにあるような可愛い雰囲気じゃないですか。

 

 

池澤 ありがとうございます。狙っていたわけではないんですけどね。途中から女性をターゲットにしたイメージ戦略で売り込むようにしました。

 

倉嶋 お店のジャンルですと、「バイス」はもつ焼き屋さんでよく見かける印象です。

 

池澤 業態も狙ったわけではないのですが、手ごたえを感じたのは「亀戸ホルモン」(本店:東京都江東区)さんでよく飲まれているという話を知人に教えてもらったときですね。それも、やっぱり女性に選んでいただくことが多いと。

 

倉嶋 ええ。あの色は、女性の呑兵衛なら絶対気になっちゃいますから。

 

池澤 でも、ネーミングにしろ色にしろ、インパクトがあったんでしょうね。おかげさまで「バイス」はうちの看板商品となりました。

 

 

倉嶋 「バイス」は全国で飲むことが出来るんですか?

 

池澤 東京のメーカーなので首都圏がメインで、地元の大田区を中心として東京の西部や埼玉、神奈川では発売当初からお世話になっているお店がかなりあります。ただ、割り材メーカーとしては後発なので、東京でも最初は苦戦しました。おかげさまで、現在は北海道から沖縄まで飲めるお店はあると思います。

 

倉嶋 全国的に広まり始めたのはここ10年ぐらいですか?

 

池澤 そうかもしれません。大衆酒場ブームだったり、全国誌への掲載だったり。あとはSNSの影響もあり、東京ローカルだった割り材が、少しずつ皆様に知っていただけるようになりました。

 

倉嶋 飲めばわかる、唯一無二のおいしさですもんね! あのフレーバーを開発されたのは、池澤社長ですか?

 

池澤 私を含め、何人かで開発しました。当時の社長は父親だったんですけど、父は下戸でして。でも私はお酒が好きなので、チューハイとして試飲する最終的な官能検査は、私も参加して試行錯誤しましたね。

 

 

不変のおいしさを届けるための知られざるこだわり

倉嶋 来年、2024年で「バイス」誕生40周年になりますけど、味わいに関してはずっと変わってないですか?

 

池澤 変えてないですけど、実は同じ味を保つことって簡単じゃないんですよ。なぜなら、同じ原材料がずっと手に入るとは限らないからです。「バイス」でいえば、東日本大震災で危機を迎えました。

 

倉嶋 2011年の震災! そうだったんですね。

 

 

池澤 お世話になっていた、東北にあるしその加工工場が流されてしまい、どうしてもしその産地ごと変えざるを得なくなりました。北海道産に変えたのですが、見た目は一緒でも風味が違うんですよね。同じ味わいにはならないんです。

 

倉嶋 「バイス」のファンなら、少しの違いでも気づいちゃうかもしれません。

 

池澤 しそは加工したオイルを問屋さんに卸していただいてまして、担当の方は「こっちもおいしいよ」って言うんですけど、そういう問題じゃないんですよね。前と同じ風味で作ってくださいと、何度もやりとりしました。

 

倉嶋 知られざるご苦労があったんですね。そして、しそのオイルがあるとは初めて知りました。

 

池澤 意外に思われるかもしれませんが、しそから僅かにしか作れなくて、1キロ10万円以上する高級品なんです。

 

倉嶋 えっ! それってトリュフオイルよりも高いんじゃないですか?

 

池澤 一度に使う量は少しなんですけど、それがあるとないとではまったく比べものになりません。しそオイル頼りといってもいいぐらいです。

製造工程の一部。びんに充塡している

 

倉嶋 あとは梅などの香料と、りんご果汁も使われていますよね?

 

池澤 さすが詳しいですね。そうなんです、りんご果汁によって味わいに厚みやふくらみが出るんです。

 

倉嶋 しそオイルや、梅ではなくりんご果汁になったというのは、開発時に「何か違うな?」というのを繰り返して辿り着いたということですか?

 

池澤 はい。甘みが出ないとか、酸味が強すぎるとか、ジュースっぽくなっちゃうとか。そうして生まれたのがあの味なのですが、いま振り返ると梅ガムの味に近いのかなと思います。

 

倉嶋 なるほど! 駄菓子屋の梅ガムですよね。なんとなくイメージが湧きます。ちなみにコダマ飲料さんがオススメする「バイス」の飲み方はありますか?

 

池澤 当社としては甲類焼酎90mlに対して「バイス」1本200mlをオススメしていますが、いろいろ試してお好みの味で楽しんでいただければと思います。

 

倉嶋 はい。私もいろいろ試させてもらっているひとりです(笑)。では、合わせるお料理では何が一番オススメですか?

 

池澤 やっぱり焼きとんとか、ホルモンじゃないですかね。なかでも脂がのっている部位で。

 

倉嶋 ホルモン系とは抜群のコンビネーションですよね! 「バイス」の爽快感が脂をいい感じに流してくれて、それでいて酸味がうまみを足してくれるんですよ。

 

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モコモコした独特のボトルはもう残り僅か

倉嶋 いまのフレーバーのほか、過去の「コダマサワー」にはどんな味があったんですか?

 

池澤 ユニークなところですと、アロエにトマト、ウイスキー味もありましたね。

 

倉嶋 どれも個性的ですね! 私もどこかで飲んだことがあったかもしれませんが。

 

池澤 売れ行きを見ながら新フレーバーを開発するなどして、少しずつラインアップは入れ替わりますね。「バイス」や「レモン」といった定番人気の味は不動ですけど。

 

倉嶋 炭酸水も欠かせないと思いますが、こちらのこだわりも教えてください。

 

池澤 炭酸水はベースの「コダマ タンサン」と一緒ですね。ガス圧は既定のギリギリまで強くしています。これ以上強くしようと思えば簡単にできるんですけど、危ないですし、そもそもルール違反ですからね。

 

倉嶋 あとはボトルの形状やロゴもやさしいデザインで大好きなんですけど、ここにもこだわりはあるんですか?

 

池澤 ボトルは15年ぐらい前にお世話になっていたメーカーさんが廃業した際、新しく作りました。旧モデルはモコモコとしたあしらいが入っているもので、いまはシンプルなタイプです。

 

旧モデルのボトル。下半分が凹凸のあるモコモコした形状になっている

 

倉嶋 シンプルにしたのは、何か理由があったんですか?

 

池澤 検びん機でチェックする際、検査しやすいようにしたかったというだけですね。ロゴは変わっていませんが、長年変えていないからレトロな感じがするのかもしれませんね。

 

倉嶋 ロゴも最高です! あとは細かいところですと、王冠がそれぞれフレーバーごとにデザインが違うのは粋だなと思うのですが。

 

 

池澤 まあ、フレーバーごとに成分が違えば王冠に記載する情報を変える必要がありますから。あとは上から見たときにも、パッとわかったほうがいいというのもありますし。

 

倉嶋 でも、この業務用びんや王冠は首都圏だけになりますか?

 

池澤 はい。業務用は問屋さん経由で回収するリターナブルびんなので、これはトラックで行き来できる範囲の関東近郊だけですね。それ以外の地域は340mlのワンウェイのガラスびんとなります。

ワンウェイのガラスびん(340ml)

 

倉嶋 ワンウェイタイプは公式オンラインでも注文できると思うんですけど、御社のオンラインショップでは、販売促進グッズも売ってるじゃないですか。ほとんどが無料なんですけど太っ腹ですよね!

 

池澤 提灯とのぼり旗以外は無料としています。お店で使っていただければ宣伝になりますし、ご自宅でも飾っていただければありがたいので。

販売促進グッズの数々。左より「バイスサワーテーブルテント」「コダマサワー短冊(バイス)」「バイス提灯9号」(税・送料込み1000円)「バイスのぼり旗 レギュラーサイズ」(税・送料込み700円)

 

社名の「コダマ」には夢が凝縮されていた

倉嶋 そして、最後に伺いたかったのは社名です。先代から池澤社長の家業だと思うのですが、なぜ池澤を用いずにコダマ飲料となったんですか?

 

池澤 もともとは池澤商会という社名だったと聞いています。やがて私が生まれ、子どものころは電車が好きだったんですよ。なかでも「こだま」号という特急列車が大好きだったことから、創業者である父親がコダマ飲料と名付けました。

 

倉嶋 素敵なお話ですね。でも「こだま」って、いまでも新幹線に使われている名称の?

 

池澤 私が好きだったのは新幹線の前ですね。特急「こだま」の誕生が当社の創業と同じ1958(昭和33)年で、東海道新幹線開業が1964(昭和39)年ですから。東京~大阪間を6時間30分(当初は6時間50分)で移動できる、日帰りで往復可能な夢の特急だったんです。

 

倉嶋 なるほど! ところで、池澤社長はいまも電車がお好きなんですか?

 

池澤 いえ、もう昔ほどでは。でも、当時は車両を見れば一瞬で何線かを言えるほど夢中でした。

 

倉嶋 お子様の好きなものを社名にするとは、本当に素晴らしいです。特急の「こだま」が往復するように、リターナブルびんも送ったものが返ってくる「こだま」のようなものですよね。事業との親和性もあり素敵な社名だと思います。

 

池澤 そう言っていただけると嬉しいです。

 

倉嶋 お店で「バイス」をはじめ、「コダマサワー」を飲む楽しみがまたひとつ増えました。さっそく今夜は、「バイス」が飲める大衆酒場をパトロールしたいと思います!

 

 

バイスの魅力についてじっくり池澤社長から伺った倉嶋さん。宣言通り、中目黒の「もつ焼きばん」でバイスを堪能しました。

 

 

 

3回にわたってお送りした「割り材」の噺はいかがでしたか。次回の「意外と知らない焼酎の噺」もお楽しみに。

 

 

撮影/鈴木謙介

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼・宝焼酎
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これまで取材はほとんど受けてこなかったとのことで、ベールに包まれた部分が多い「ホイス」ですが、今回は代表自らお話を聞かせてくれることに。有限会社ジィ・ティ・ユー(後藤商店:東京都港区白金)の後藤竜馬社長を訪ねました。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

●後藤竜馬(右)/「ホイス」「梅乃甘精(うめのかんせい)」製造・販売元である有限会社ジィ・ティ・ユー(後藤商店)の三代目代表取締役社長
●倉嶋紀和子
(左)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

 

「ホイス」誕生前年に生まれた「梅乃甘精」

倉嶋 まず、「ホイス」とはどんな商品なのでしょうか。

 

後藤 多くは焼酎の割り材としてご愛顧いただいています。アルコール度数は0.2%で、分類上はノンアルコール(日本の酒税法では、アルコール度数1%以上の飲料が酒類とされる)の清涼飲料水ですね。味の表現は難しいのですが、クセがなくスッキリとしたテイストで、甘みと苦みをほのかに感じる爽やかな飲み口が特徴かなと思います。

 

倉嶋 販売先は飲食店さんですよね。酒屋さんでは見かけたことがなくて。

 

後藤 はい。創業当時から、“飲食店を元気にする為の手助けをする”を理念に掲げておりまして。また、生産できる量が多くないということもあり、申し訳ないのですが個人向けの販売は行っておりません。

 

倉嶋 幻たる所以ですよね。それに、「飲食店を手助けする」って素晴らしい企業理念です!

 

後藤 ありがとうございます。今回の取材も、コロナ禍で苦労されている飲食店のお役に立てればという思いで受けさせていただきました。何でも聞いてください。

倉嶋 こちらこそありがとうございます! では「ホイス」が生まれたストーリーを、御社の歴史などとともに教えてください。

 

後藤 「ホイス」が誕生したのは1949(昭和24)年。創業者である私の祖父・後藤武夫が商いを始めたのは、戦前の1930年代半ばですね。洋酒を扱う小売りの酒販店としてはじまり、途中から清涼飲料水の製造を行うようになりました。

 

倉嶋 洋酒販売ということは、インポーターですか?

 

後藤 もとをたどれば、祖父が1930年代に当時のソ連からシベリア鉄道でヨーロッパへ向かう旅をしたことが始まりです。その道中で様々なお酒を嗜みながら仕入れるノウハウなども学び、日本に送っていたそうで。

 

倉嶋 行動力がスゴいですね!

 

後藤 そして帰国後に洋酒店を創業しました。清涼飲料の事業を始めた時期は記録が残っていないのですが、その技術を生かして戦後に生まれたエキスが「ホイス」です。当時は東京都港区芝公園で事業を行っていまして、1984(昭和59)年に今の白金(しろかね)に移ってきました。

↑初代社長の後藤武夫氏

 

倉嶋 戦後ということは、「酎ハイ=焼酎ハイボール」の起源がそうであるように、やはり焼酎を楽しむためのアイデアから生まれたということですかね?

 

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後藤 そうだと思います。戦後の東京で大衆酒としてもてはやされたのが甲類焼酎だったそうですが、当時は香りが強く飲みにくいものが多かったとか。ならば、どうにかおいしく飲むための割り材があればと思いつき、開発を始めたと聞いています。ただ、第1号商品は「ホイス」ではないんですね。

 

倉嶋 なるほど、それが梅の……。

 

後藤 そう、「梅乃甘精」ですね。「ホイス」発売の前年、1948(昭和23)年に誕生しています。こちらは当社自身もあまり商品名を出さずに販売しておりましたので、「ホイス」以上に希少かもしれません。

↑左が「ホイス」で右が「梅乃甘精」。現在は輸送コストを下げるため、ペットボトルで販売。ただし飲食店でのディスプレイ用に、一升びん用ラベルも用意しています(数量限定)

 

倉嶋 ええ。私もこうしてしっかり目にするのは初めてかも。下町大衆酒場によくある、いわゆる「梅割り」のエキスとは違うんですか?

 

後藤 例えば甲類焼酎と「梅乃甘精」を6:4ぐらいで割れば、梅酒のような味わいになりますし、炭酸水で割れば梅のソーダ割りになります。うちが長年お世話になっている、恵比寿「田吾作」さんの「梅サワー」には「梅乃甘精」が使われていますし。まあでも、下町によくある、エキスを数滴垂らした「梅割り」のように使っていただくのが一番おいしいと思います。

 

倉嶋 「田吾作」さんの他にも使っている老舗はあるんですか?

 

後藤 名前は出していないでしょうけど、けっこうありますよ。

 

倉嶋 それなら、私も知らずに飲んでいる可能性は高いですね!

 

後藤 ええ。それこそ、「梅割り」として提供されているお店もありますから。

 

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時代ごとに進化する「ホイス」の味わい

倉嶋 そんな「梅乃甘精」の製造ノウハウをもとに、「ホイス」が生まれたということですか?

 

後藤 仕上がりの味はまったく異なるのですが、「ホイス」のベースには「梅乃甘精」がありますね。「梅乃甘精」の発売から1年の間に、祖父がヨーロッパの旅で得た知見などから薬草やリキュール、蒸留酒、香料などを調合して複雑な味わいや奥深さを出して造ったのが「ホイス」です。

 

倉嶋 そのレシピは、いまも変わらず受け継がれているんですか?

 

後藤 実は、記録としてのレシピは残されていません。見よう見まねといいますか、体で覚えていくような形で、私は二代目にあたる父親の後藤勲から教わりました。そして、当初と今では味がけっこう変わっていると思います。

 

倉嶋 そうなんですね!

 

後藤 なぜかというと、まず同じ原材料が入手できなくなるからです。原料メーカーの廃業だったり、輸入が禁止になったり、薬事法の改正だったり。そうなったらどうするかというと、代替となる原材料を探して研究を重ね、イメージの味わいになるように調合していきます。こうした再設計は、父の代から行うようになりました。

 

倉嶋 原材料が変わってしまうと、100%同じ味にはならないですもんね。そのうえで、目指す味に近づけていくと?

 

後藤 近づけもするのですが、私のほうで意図的に味わいを変えることもあります。気付かれないレベルでですけどね。その時々でテーマは異なるのですが、ベースの味がよりブレないようにリニューアルをすることが多いです。

 

倉嶋 味のブレですか? 私も飲み続けていますけど、変化には気付かなかったです。

 

後藤 例えばジントニックはわかりやすいって言われますけど、割って飲むお酒は作る人によって違いが出ますよね。でも「ホイス」の場合は、できるだけその差をなくしたい。そのため、配合や濃縮具合などを研究してベースの味がブレないようにしているんです。

 

倉嶋 なるほど。研究熱心ですね!

 

後藤 その辺は血を引いているのかなと思います。それに加え、私はパソコンを駆使してデータを残しながら設計していますので、後進にとっては多少楽になるのかなと。

 

倉嶋 そこまで緻密にやられているとは、想像をはるかに超えています。

 

後藤 「ホイス」の味覚設計は繊細で、そのバランスは非常に複雑です。味わいも、他のエキスに比べるとライトに感じるでしょう。そのぶん、どれかひとつの風味が少し前面に出ただけでもすごく突出してしまうんです。

 

倉嶋 ええ。確かに「ホイス」のキーフレーバーって、ちょっと思い当たりません。もう、「ホイス」としか表現できないです。

 

後藤 他に例えづらいといいますか、あえてわかりにくくしてるんですよ。多彩な味や香りを重ねて複雑化させつつも、飲みにくさにつながる違和感が出ないように調合し、余韻に心地よいフレーバーを感じられるように仕上げています。

 

倉嶋 私が初めて「ホイス」を飲んだ時は、ウイスキーっぽいニュアンスを感じたんですけど、生薬の香りやスパイシーさもあって。それはウイスキーとはまた違うし、なんて表現していいかわからないという印象でした。でもその複雑性がクセになって、またもう一杯飲みたくなるという感じがします。

 

後藤 ありがたいことに、お客様には飲みやすいと褒めていただくことが多いです。あとは、そのまま飲むよりも、もつ焼きや煮込みなどちょっと濃い味のおつまみに合うと言われますね。

 

倉嶋 そうそう、延々と飲み続けられるおいしさで。でもそういえば「ホイス」のネーミングって、ウイスキーと関係性があるというのは本当ですか?

 

後藤 直接祖父から由来を聞く機会はなかったのですが、ウイスキー説であってるようです。英語のWHISKYの頭4文字「WHIS」を文字って「ホイス」になったそうで。

 

倉嶋 「梅乃甘精」とは違い、ネーミングから味の想像がイメージできないところも含め、不思議な割り材だなと思います。飲めるお店もそこまで多くないですし、いい意味でミステリアスといいますか。

 

後藤 出荷量が限られているのは申し訳ないところですね。従業員は数名いるのですが、中身だけは私ひとりで製造しているもので。

 

 

「ホイス」は繊細な味の料理や甘いものにも合う

倉嶋 「ホイス」はなかなか生産量に限界があるとおっしゃっていましたが、新規のお取引も少ないですか?

 

後藤 多くはありませんが、微増はしています。生産量も、コロナ禍によって消費量が減ったぶん、今は多少の余裕がありますし。

 

倉嶋 取引先に関しては、地域や業態の特徴などはありますか?

 

後藤 地域はもちろん都内が多いですけど限定はしていませんし、北海道や沖縄にも取引先はあります。業態はやはり、焼きとんや焼鳥店、煮込みをウリとする大衆酒場が多いですね。20年ほど前は小料理屋さんでの取り扱いが、今よりはありましたけど。

 

倉嶋 小料理屋さんで「ホイス」、素敵ですね!

 

後藤 意外にお刺身にも合うんですよ。研究を兼ねていろいろな料理と合わせてみるんですけど、甘いものであればチョコレートなど、幅広くマッチすると思います。

 

倉嶋 そうなんですね。後藤さんが試飲する際は、どのように割られてるんですか?

 

後藤 当社として推奨しているのは「ホイス」2:「焼酎」3:「炭酸水」5ですが、この割合だと濃いめの酎ハイになるんですね。なので、私が家や会社で試飲する際は、まずホイスと焼酎を1:1の割合で合わせ、その量の1.5倍程度の炭酸水で割っています(※あくまで試飲用としての割合です)。これだと「ホイス」の風味が濃くなるうえに炭酸感も多少増えてアタックも強くなります。

 

倉嶋 「ホイス」と「焼酎」を同じ分量にするんですね。

 

後藤 アルコール度数は推奨よりも下がりますけど爽快感はしっかり楽しめます。いま、作りますのでぜひ飲んでみてください。

倉嶋 いいんですか! やったー!

 

後藤 どうぞ。グラスもしっかり冷やしたものを使っていますし、手前味噌ですがお店と遜色ない味わいだと思います。

 

倉嶋 はい。サイコーにおいしいですし、後藤さんがお酒好きだということが伝わってきます。でも、研究するなかではいろいろなお酒との相性も試されたんですか?

 

後藤 もちろんです。親和性がありそうなワインやウォッカをはじめ、珍しいリキュールに蒸留酒と、私が知る限りのありとあらゆるお酒の割り材として試しました。でもやっぱり「ホイス」には、甲類焼酎が一番合いますね。

 

倉嶋 まさにおじい様がイメージした酎ハイの味ですもんね。でもあの当時、シベリア鉄道でヨーロッパへ渡ったというのは本当にスゴい! しかも創業前に。

 

後藤 変わりものですけど勉強家でもあって、東京大学に入ったものの中退して、数年後に海外へ渡ったそうなんです。同級生には官僚になった友人も多かったので、そのツテを頼って出国審査もパスしたとか。

 

倉嶋 なんと、スゴすぎです! 外国語も堪能だったんでしょうね。

 

後藤 戦後に清涼飲料水を造れたのも、外国語が話せたからなんです。戦争で東京が焼け野原になりましたが、戦前に仕入れていた洋酒は地下に埋めていたから助かったそうで。そのうえ進駐軍のアメリカ兵とも交渉ができたので、洋酒を売ったお金で当時希少だった砂糖を入手できたと聞いてます。

 

倉嶋 そうして清涼飲料水を造っては売り、やがて「梅乃甘精」と「ホイス」につながるんですよね。

 

後藤 祖父は私以上に凝り性だったと思います。インターネットやパソコンはおろか、洋酒やハーブの文献もほとんどなかったでしょうから。海外で飲んだ記憶だけで、様々な原材料を入手してゼロから「ホイス」を造ったことに、心から尊敬しています。

 

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ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
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焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
樽貯蔵熟成酒のブレンドによって甲類焼酎の味が大きく変わることを知った倉嶋さん。今回はその「樽貯蔵熟成酒」ができるまでを、宮崎県の高鍋町にある宝酒造 黒壁蔵で実際に見学してきました。

 

「ホイス」が飲めるお店を知る方法

倉嶋 そう聞くと、レシピやメモが残っていないのはますます残念ですね。門外不出の“一子相伝”だからこそ、情報が漏れないように記録しなかったのかも。

 

後藤 私は父から教わりましたが、先代はふたりとも味覚が優れていたんだと思います。あるとき、抽出した原材料のいくつかをはかってみたところ、毎回ズレはなくて。

 

倉嶋 舌や鼻の感覚だけで、正確な調合ができたということですよね。憧れます。

 

後藤 あと面白いのは、原材料を分析してみると、一つひとつがシベリア鉄道の線路上の地域のハーブやスパイスだったり、その先のヨーロッパのお酒だったりというのが見えてくるところです。

 

倉嶋 おじい様の旅路をお孫さんが「ホイス」で辿るというのはロマンチックですね。そんな後藤さんは、いつから働かれているんですか?

 

後藤 高校生のときからここでアルバイトをしていましたし、当時から継ぐ意識はありました。父の体調がよくなかったこともあり、2000年代には私が製造を手掛けていましたし。その後、私が三代目として正式に継いだのは2020年です。

 

倉嶋 比較的最近なんですね。ちなみに、後進の候補はいらっしゃるのでしょうか?

 

後藤 ありがたいことに、まだ小さいですが息子が2人おります。継ぐかどうかは彼ら次第ですけど、周りから四代目と言われることもありますね。

 

倉嶋 もし継ぐとなった場合は、秘伝のレシピを伝えることになるんですね。

 

後藤 まだその気は起きないですけどね。とにかく今はコロナ禍をどう乗り切って、飲食業界をどうやって盛り上げていくかということが優先ですから。

 

倉嶋 “飲食店を元気にする為の手助けをする”という企業理念ですよね。でも「ホイス」が飲めるお店を知るにはどうしたらいいのでしょう?

 

後藤 実はTwitterなどの公式SNSで、ホイスが飲めるお店情報をたまに投稿しています。また、「#ホイスが飲める店」で検索するという方法もありますので、ぜひご活用ください。

 

倉嶋 なるほど! さっそくチェックして、このあと立ち寄ってみます。今日はたくさん教えていただきありがとうございました!

 

撮影/鈴木謙介

 

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・宝焼酎
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【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼

【意外と知らない焼酎の噺01】「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺
【意外と知らない焼酎の噺02】「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺03】いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺
【意外と知らない焼酎の噺04】芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺05】麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺06】焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺07】「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
【意外と知らない焼酎の噺08】ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
【意外と知らない焼酎の噺09】レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺

【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第9回。今回は東京を離れて少し遠征。京浜急行「横須賀中央」駅から徒歩1分の「酒蔵お太幸 中央店」を訪れ、その魅力を探っていきます。

 

大衆酒場は、その安さとウマさ、昔ながらの温かい雰囲気で、酒飲みの心をひきつけてやみません。なかでも東京では下町を中心に、根強い人気を誇る大衆酒場の名店が数多く存在します。そんな名店を巡り、お店の魅力と東京ならではの酒文化を深掘りしていくのが本連載。立石「宇ち多゛(うちだ)」篠崎「大林」京成曳舟「三祐酒場(さんゆうさかば) 八広(やひろ)店」八広「亀屋」四つ木「ゑびす」門前仲町「だるま」船堀「伊勢周」門前仲町「大坂屋」に続く第9回は、横須賀の「酒蔵お太幸 中央店」にお邪魔します。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

焼酎の量が多い「横須賀割り」で乾杯

本企画の第6回で登場した門前仲町「だるま」は、コの字カウンターの名酒場として紹介しましたが、今回訪れた神奈川の横須賀にある「酒蔵お太幸 中央店」もカウンターが個性的。

 

そこでこれまで同様、カウンター酒場に詳しい長谷川和之さんを講師に、生徒役のお酒好きタレント・中村 優さんと「酒蔵お太幸 中央店」の魅力に迫ります。

↑中村 優さん(右)は、タレントおよびマラソンランナーとして活躍。長谷川和之さん(左)の本業は編集者で、酒場のほか旅や温泉、鉄道など様々なジャンルに精通しています

 

中村 横須賀は久しぶりに来ました。駅のすぐ近くにこんな素敵な老舗酒場があって、レベルの高さを感じます!

 

長谷川 この辺は「ホッピー」も“横須賀割り”と言われるように、焼酎を濃いめで飲む文化の街として知られているんですよ。

 

中村 飲み方に地名が付いちゃうってスゴいですね。じゃあ、私の乾杯ドリンクはその「ホッピー」にしようかな。

 

長谷川 ええ! そしたら中村さんには「ホッピー」を、私は「レモンハイ」を注文しますね。

↑レモンハイ(435円)。「酒蔵お太幸」では「宝焼酎」の飲食店専用商品を使用

 

↑「ホッピー」(495円)

 

中村、長谷川 カンパーイ!

 

中村 ク~ッ! おいしい! でも、確かに焼酎が濃いかも。

 

長谷川 横須賀の飲み屋さんで提供されるチューハイは、基本的に焼酎の量が多いんです。

↑「酒蔵お太幸」の焼酎は130ml〜140ml。「ホッピー」で割って飲む場合の一般的な目安は普通が70ml、濃いめが110mlなので、この量はかなり濃いです

 

中村 でも、なんで横須賀は焼酎が濃いんですか?

 

長谷川 真偽や出自は定かではないのですが、軍港や造船の街として栄えた歴史が関係していると聞いたことがあります。

 

中村 海の男たちが飲んだからってことですか?

 

長谷川 諸説あるんですけどね。海風で冷えた体を濃いお酒を飲んで温めたとか、酒に強い九州の人が船で出稼ぎにやってきていたからだとか。

 

中村 へぇ~。

↑ワンショットメジャーに据え付けられた「宝焼酎」のほか、各種焼酎の一升びん

 

長谷川 とはいえ、お酒が好きでも強い人ばかりじゃないですよね。だから「ホッピー」みたいな割り材で楽しむ場合、「中(なか:焼酎)」と「外(そと:割り材)」の量を調整して飲むのがセオリーです。

 

中村 なるほど。自分好みに調整できるってのはイイですね! 続いておつまみはどうしましょう? オススメを教えてください!

 

長谷川 では、コチラのお店の名物を中心にいくつか注文しますね。

 

中村 楽しみです! ではおつまみが来るまでの間に、この特徴的なカウンターについて教えてください。

 

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【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺
東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第8回。今回は門前仲町の「大坂屋」を訪れ、その魅力を探っていきます。

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【意外と知らない焼酎の噺08】今回のテーマは、甲類焼酎の飲み方として定番の「ホッピー割り」。その誕生から現在までの歴史と変遷を探ります。

 

コの字とL字を組み合わせた「H型」ともいえる変形カウンター

長谷川 やっぱりこのカウンターは気になりましたか?

 

中村 ええ。お店に入った瞬間、圧倒されました! これも「コの字型」なんですね。

 

長谷川 かなり独特ですが、ベースはコの字で、その拡張版ともいえますね。ダブル「コの字型」の、さらにダブル版のようなレイアウト。コの字とL字を組み合わせた「H型」という見方もあります。

 

中村 奥の厨房がなければ、8の字みたいな感じでもありますね。こんなにユニークな席配置のカウンターは初めてです。

 

長谷川 ここは2フロア制なんですけど、これだけの広さで1階すべてをカウンターにしているケースは相当レア。普通はテーブル席も用意するんですよ。でもこちらの場合は、テーブルなどは2階に置きグループ向けに。一方で1階はカウンターのみにして、おひとり様や少人数向けの用途という風に分けているから、お互い気を使わずに飲めるのが最高なんです。

 

中村 お店側の接客もしやすそうですね。

 

長谷川 そう! オペレーション的にも秀逸なんです。細かいところでいえば、ほとんどのイスは床に固定されていますよね。イスが動かないということは、位置を直す必要がありません。

 

中村 あ、ほんとだ!

 

長谷川 それに加えて1階は全席カウンターだから、その場でオーダーを聞いたり、配膳したりという所作ができます。客席側へ行かずにカウンター内で接客が完結するから、動きのロスがなくてスピーディーですよね。お客にとってもお店にとっても良いことずくめのゾーニング。これが大胆なコの字カウンターで実現されているんです。

 

中村 なるほど、奥が深い! ちなみに1階は何席あるんですか?

 

長谷川 今は2席埋めていますが、MAXで48席。そもそも、空間が広いというのも魅力で、コの字カウンターながら背中がすぐ壁ってわけでもないですよね。

 

中村 はい。人がスムーズに通れるスペースが確保されてますね。それに、天井の高さにもゆとりがあって開放感も。

 

長谷川 「コの字型」は、狭い店内スペースを有効活用するために設けるケースが多いんですけど、ここはそうじゃない。心地いい雰囲気とかオペレーション効率を狙って、あえてこの形にしたという、開業当時の店主の美学を感じます。

 

中村 長谷川さんとしては、いま座っている場所がポールポジションですか?

 

長谷川 ええ。適度に目線が外せて、店内も広く見られるこの位置はふたりで飲む際のベストですね。

 

中村 シチュエーションで変わるんですね。ひとりの場合はどこですか?

 

長谷川 店内を最も俯瞰して見られる、手前の角にある席かなぁ。まあ角の席は目立つから、上級者向けかもしれませんけど。

 

中村 うん、確かに角の席は特徴的かも。

 

長谷川 でも、カウンターのすべての角をわざわざ斜めに切断して、そこに席を設けているのもこの店独自の工法だと思います。

 

中村 細かいところまで、手が込んでいますね!

 

長谷川 美学を感じるでしょ?

 

中村 はい! お店に入るとき、「創業65年」って書いてあったんですけど、歴史も気になります。

 

長谷川 そしたら、ちょうど現共同代表の上原公一社長と宮下栄一郎社長がいらっしゃるので聞いてみましょう。

 

長野出身の青年が横須賀で意気投合。理念は三代目へ

↑左が上原公一社長、右が宮下栄一郎社長

 

中村 はじめまして! 代表がふたりいらっしゃるんですね。

 

上原 もともとは、私と宮下の祖父が1957(昭和32)年に起業したのがはじまりなので創業65年です。代々長男に受け継がれており、私たちで三代目ですね。

 

宮下 ともに長野の出身なのですが、ふたりの創業者は長男ではなかったので実家を出る必要がありました。そういった背景から、私の祖父が最近までこの近所にあった「メガネ・時計・宝石のヤジマ」さんに丁稚に来て、そのあと上原の祖父も働くことになり出会ったと聞いています。

 

上原 ただ、やがて戦争となりふたりとも出征。でも生きて帰ってこれたので、復員後に「もらった命だし、せっかくの人生。日本に帰ったら好きなことやろう」とあらためて意気投合し、お金をためて1957年に創業したそうなんです。

 

長谷川 最初から飲食店だったんですか?

 

上原 いえ。仕入れ先の開拓などができていなかったため、飲食店ではありませんでした。上野のアメ横などへ仕入れに行き、当時珍しかったものや流行っていたものを仕入れて販売する小売業のようなビジネスをしていたそうです。

 

中村 ということは、スタートは「酒蔵お太幸」じゃなかったんですね。

 

上原 向かいの建物が自社ビルになっているのですが、ここで始めた寿司店がルーツです。この業態がヒットして、日本料理、居酒屋、中華、洋食などを展開していきました。いまの建物と「酒蔵お太幸 中央店」ができたのは、私たちが小学生のときなので1960年代後半~1970年代前半だと思います。

 

濃いめの「横須賀割り」が進む食の“幸”

長谷川 他業種を手掛けた経験があるから、お店のメニューもバラエティー豊かなんですね。

 

中村 勉強になるなぁ。ちょうどおつまみもそろったので、いただきましょう!

 

長谷川 じゃあまずは「湯豆腐」から。10月~ゴールデンウィークまでの季節限定で、横須賀特有の味わいになっているのも特徴です。

↑「湯豆腐」(475円)

 

中村 ”横須賀の湯豆腐”ですか?

 

長谷川 はい。豆腐に塗ってある辛子がポイントです。昆布やサバ節などのダシで炊き、生姜ではなく辛子と薬味で味わう湯豆腐なんですよ。

 

中村 おいしい! やさしいダシとふわっとした絹豆腐に、辛子がピリッとしたアクセントになってますね。ネギの爽やかさと、醤油を吸ったかつおぶしもいい一体感で。

 

長谷川 長年愛されているメニューで、少食になった常連さんのために「湯豆腐 半丁」(320円)も用意されているんです。では次に、中華料理店時代の技が活きた「シューマイ」をどうぞ!

↑「シューマイ(4個)」(315円)

 

 

中村 食感はプリッと、肉汁はジューシーでこれも絶品! やさしい甘みですね。爽快な「ホッピー」ともよく合います!

 

長谷川 「酒蔵お太幸」といえば、中華まんも必食です。横須賀にちなんだ「スカマン」の愛称で県外でも親しまれている「肉まん」をどうぞ。

↑「肉まん」(200円。テイクアウトは170円)

 

 

中村 うんうん! ふわっと甘い香りがあって、濃いお酒に合いそう。ホロッとしたなかにコリッとした食感がある餡(あん)もおいしいです!

 

長谷川 肉まんの皮は自家製で、酒まんじゅうのような香りもしますよね。具材はキャベツを甘めに炊いて、たけのこを生姜煮にして肉と混ぜているんだそうです。中華料理にここまでこだわる大衆酒場もそうはないですよね。中華まんは手土産にも人気なんですよ。そして最後は「うなぎの玉子とじ」。土鍋で提供する本格派ながら、リーズナブルな価格で大人気なんです。

↑「うなぎの玉子とじ」(695円)

 

 

中村 これもおダシが効いた、ほんのり甘めの味付けでお酒が進みます。うなぎと玉子はふっくらしていて、ごぼうのシャキシャキ感や三つ葉の爽やかさもイイ!

 

長谷川 どれも、「ホッピー」の横須賀割りや濃いめのチューハイに合うおいしさですよね。

 

中村 はい! 至福のフードペアリングです。横須賀で飲む際の一軒目は駅前で早くから営業している「酒蔵お太幸 中央店」で決まりですよ!

 

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1階カウンターと趣を異にする2階は200席の大フロア

長谷川 ひと通りお店の解説をしましたが、ここは2階席も見逃せないんですよ。ちょっと行ってみません?

 

中村 ぜひぜひ! あ、階段のところにやたら味のある案内板が。でも、テーブル席と「さじき」ですか?

 

長谷川 そう、漢字で「桟敷」と書きます。この桟敷も「酒蔵お太幸 中央店」の特徴。こちらも広いですよね。2フロア合計で200席ぐらいあるとか。

 

中村 200ですか! スゴい。そういえば、桟敷と座敷ってなにが違うんですか?

 

長谷川 お祭りの見物席や、日本式の劇場などの上等席などを桟敷といいます。よく居酒屋などの小上がりのことを座敷といいますが、本来の座敷は部屋のことを指すんです。先ほど社長に伺ったら、かつて営業していた日本料理店には床の間付きの客間や大広間など、個室があってこれらは座敷と呼んでいたそうです。日本料理店の座敷とも区別するために桟敷としたのではないかと。

 

中村 なるほど! 歴史があるからこその桟敷なのかもしれませんね。でもグループで宴会するにはこちらの席のほうが楽しめそう。さっき長谷川さんがおっしゃっていましたが、大小のニーズに合わせてそれぞれにメリットがあるのはイイですね。

 

長谷川 これだけ大箱なのに、おひとり様が押し寄せるのにはワケがあるってことなんですよ。

 

中村 そういえば、1階カウンターの奥行きはどんな感じですか?

 

長谷川 測ってませんでしたね。ではチェックしてみましょう。

 

中村 今日もメジャーが冴えますね!

 

長谷川 ほうほう、46.5cmか。45cm~50cmという造りが最も多いので、ここは標準サイズです。

 

中村 狭すぎず広すぎずってことかぁ。使い勝手がよさそうですね。

 

長谷川 今日は角度を測れるメジャーもあるので、角もチェックしてみますか。うん、こちらは140度ぐらいですね。他店のサンプルがあまりないのでよくわかりませんが、エッジは十分にとれてると思います。

 

中村 今日も勉強と驚きがあって、楽しかったです。カウンター酒場の魅力、またいろいろと教えてください!

 

変形コの字カウンターについても勉強した中村さん。次回はどんな大衆酒場の楽しみをみつけられるでしょうか?

 

 

<取材協力>

酒蔵お太幸 中央店

住所:神奈川県横須賀市若松町2-7
営業時間:15:00~22:00、金土祝前日15:00~22:30(日曜祝日は1階のみ13:00~22:00)
定休日:12/24、12/31~1/2

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年12月5日)

 

撮影/鈴木謙介

 

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・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

 

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・第3回 【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

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レモンサワー発祥の店「もつ焼き ばん」で語る、焼酎「割り材」の噺

【意外と知らない焼酎の噺09】

『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。焼酎の「割り材」(※)として、前回は「ホッピー」を紹介しましたが、もちろんそれだけではありません。そもそも、どうしてお酒を『割る』のか?「割り材」の歴史や種類について、「居酒屋礼賛」主宰の浜田信郎(はまだ しんろう)さんとともに探ります。

 

※割り材:酒を割って飲むための炭酸や果汁などのこと

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

●浜田信郎(右)/ブログ「居酒屋礼賛」の主宰。『酒場百選』(筑摩書房)『ひとり呑み』(WAVE出版)など大衆酒場に関する著作を数多く上梓
●倉嶋紀和子(左)/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任

 

「割り材」は吞兵衛の欲望から生まれた?

対談場所に選ばれたのは、レモンサワー発祥の店として有名な東京・目黒区にある「もつ焼き ばん 中目黒本店」。かつて割り材商品のヒントにもなった伝説の一軒で、今回のテーマにもうってつけです。まずは様々な割り材について、起源や歴史などを語ってもらいました。

1958(昭和33)年創業の「もつ焼き ばん」。看板の左には「輩サワー」の提灯も

 

倉嶋「あらためて考えると、割り材っていろいろありますよね。水やお湯に炭酸、果汁(エキス/シロップ)、ジュースにお茶系などなど。でも私のなかでは、『フレーバーが付いているもの=割り材』というイメージが強いですね」

 

浜田「わかります。確かに『水割り』『お湯割り』っていいますから、水やお湯も割り材なんですけどね。でも倉嶋さんが『これは割り材なのかな?』という考えは、西日本の本格焼酎(乙類)文化と、東日本の甲類焼酎文化で見方が変わってくるのかなと思います」

 

倉嶋「そうですよね。原材料の風味が豊かな本格焼酎は、フレーバーが付いたタイプではあまり割りませんし、一方クリアな酒質の甲類焼酎は多用な飲み方で楽しむ人が多いお酒。ただそこに共通しているのは、より飲みやすく楽しみたい、おいしく飲みたいという人間の欲望なんだろうなって(笑)」

 

浜田「ええ。いまも昔も呑兵衛の想いはそれですよね(笑)。倉嶋さんは熊本出身で、私も大学時代は福岡で過ごしましたから、若いころは本格焼酎文化に囲まれていたと思うんです。そうして振り返ると前割り(あらかじめ焼酎と水を混ぜ合わせてなじませる)があったり、鹿児島には『ぢょか』(注ぎ口が付いた陶磁器の土瓶のこと。千代香や茶家、黒千代香とも)でお湯割りにする文化が根強かったり。

いつ、だれがそうやって飲み始めたかはわからないのですが、九州では伝統的に水割りやお湯割りが親しまれていますよね。蒸留することでアルコール度数が高くなった焼酎を、そのまま味わうのでは強すぎて飲みにくいという人もいる。だから、自然発生的に割って飲むようになったんじゃないかなと思います」

↑ぢょか

 

倉嶋「割ったほうがいろんな食事に合わせやすいという考え方もあるかもしれませんね。例外として、熊本県南部の人吉球磨(ひとよしくま)エリア(稲作が盛んで、米でつくる「球磨焼酎」が有名)では、米焼酎をストレートで飲む文化もあるそうですけど」

 

焼酎用エキスは大正時代から存在した

 

浜田「一方の甲類焼酎は明治末期に誕生し、大正初期には東日本を中心に広まっていったといわれています。そこで面白いのが、早い段階で割り材としてエキスが生まれていること」

 

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倉嶋「当時は甲類焼酎の精製技術がいまほど高くなく、香りも強かったといわれていますもんね。その味をうまくなじませるために、エキスや炭酸割りが生まれていったという話もよく聞きます」

 

浜田「市販のエキスで有名なのが、1923(大正12)年に開発された『ぶどう液』。こちらは当時高価だったポートワインの味を焼酎で再現するために作ったそうですけど。

あとは、戦後のアメリカ進駐軍の駐屯地で飲まれていたウイスキーのハイボールをヒントに、『三祐酒場』の主人が焼酎とエキスを使って生み出したといわれる東京・下町の焼酎ハイボールも有名ですね。由来には諸説あるものの、これが酎ハイ=チューハイとなって広がっていったわけですよ」

 

 

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【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺
東京にある大衆酒場の名店を巡る企画の第3回。今回は、墨田区の「三祐酒場(さんゆうさかば) 八広(やひろ)店」を訪れ、その魅力を探っていきます。

「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。

 

倉嶋「甲類焼酎の割り材としては、やっぱり焼酎ハイボールを抜きにしては語れませんよね。その後チューハイ用のエキスが多様化し全国へ広がっていったことは、以前、藤原法仁さん(2010年に、浜田さんと11月11日を「立ち飲みの日」に登録した、大衆酒場通)とお話しした際に、深く語り合ったのですが、まず1970年代に起こった『ホワイトレボリューション(白色革命)』がありますよね」

 

浜田「アメリカで起きたクリアな蒸留酒のブームですね。この波が日本に到来することを予想して、1977(昭和52)年に誕生したのが宝焼酎『純』です。『純』はきわめてピュアな味でありながら、自然なうまみと心地よい香りをもつ斬新なおいしさが特徴。焼酎市場全体を盛り上げる、まさに革命的なヒットとなり、1980年代のチューハイブームへとつながったといわれています」

11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝焼酎「純」

 

チューハイのカクテル化とともにお茶割りも全国へ

倉嶋「私のイメージでは、ウーロン茶割りや緑茶割りが広まっていったのも1980年代以降という感覚です。というのも、日本初の缶入りウーロン茶は1980年、緑茶は1985年に誕生していまして。そして同時に、チューハイのカクテル化も進んでいた。こうしたチューハイの多様化とともに、ウーロン茶割りや緑茶割りも全国へ浸透していったと考えています」

 

浜田「お茶割りに関しては私もそう思いますし、ジュースなどで割ったチューハイも同様ですよね。あとは本格焼酎の世界でも、特に西日本では炭酸割りなんてほぼ飲まれてなかった印象ですが、近年は無糖炭酸が一般家庭に広まっていったことで、いまでは定着していると思います」

 

倉嶋「全国区となるとそういう感じですよね。地方では、昔からその地域だけにあった飲み方や、ご当地チューハイみたいなものがあるかもしれませんけど。例えば、地元の炭酸を使ったレモンサワーとか。私の経験では、神戸には兵庫鉱泉所の「マスコット レモンサワー」があったんですけど、広島の尾道など鉱泉所がある地域の大衆酒場では、その土地ならではのチューハイが昔から飲まれているかもしれません。

また炭酸由来でなくても、京都の赤ワイン×焼酎カクテル『ばくだん』とか、同じく山梨で古くから親しまれているワインの焼酎割り『葡う酎(ぶうちゅう)』とか」

 

浜田「確かに。私も広島でいえば、呉の『くわだ食堂』にはご当地炭酸ではないですが牛乳割りがあることを思い出しました。あとは同じく、呉に昔あった『あわもり』というおでん酒場では、泡盛の梅エキス割りが提供されてましたね。この店だけのオリジナルかもしれませんけど」

 

倉嶋「やっぱり割り材って奥が深くて面白いですね。それに、各地で様々な割り材が生まれてるのも甲類焼酎の魅力だと思います」

 

 

元祖レモンサワーの「ばん」をヒントに生まれた「ハイサワー」

浜田「『もつ焼き ばん』はレモンサワー(462円)の元祖として有名ですね。その味も、まさにお手本といえるおいしさ。焼酎と炭酸とレモンのバランスが最高なんですよね」

「もつ焼き ばん」のレモンサワーは、焼酎、炭酸、レモン1個(スクイーザー付き)のセットで提供

 

倉嶋「私は、レモンが半分ではなく贅沢にも1個丸ごと提供いただける点がすごく嬉しいです。それに、手で搾るときに正気に戻れるというか(笑)。でも1個丸ごとですからそのぶん味も爽快で、クエン酸もたっぷり。おまけに宝焼酎もたっぷり濃いめ。これがおつまみにも合うんですよ」

「もつ焼き ばん 中目黒本店」では宝焼酎25%を使用

 

浜田「ほんとにそう! おつまみのメインはもつ焼き(121円)で、その前にまず食べたいのが、『レバカツ』(308円)と『激辛豚美(とんび)豆腐』(495円)と『ぬか漬け盛り合わせ』(308円)。この3点セットですね」

左上より時計回りで、『もつ焼き』(1本121円)『レバカツ』(308円)『ぬか漬け盛り合わせ』(308円)『激辛豚美(とんび)豆腐』(495円)

 

倉嶋「そして、レモンサワーとしての割り材といえば『ハイサワーレモン』が有名ですが、そのルーツが『もつ焼きばん』というのも、業界内では常識といえるでしょう。このエピソードをより詳しく知るべく、『ハイサワー』のつくり手である目黒区武蔵小山の飲料メーカー・株式会社 博水社の田中秀子社長にお話を伺ってきたんです」

 

浜田「それはそれは! 確か秀子社長は三代目で、博水社はもともと品川で創業したんでしたっけ?」

 

倉嶋「はい。創業は1928(昭和3)年で、その後1954(昭和29)年にいまの目黒に工場を移転したそうです。もともとはラムネやみかんジュースなどをつくっていたそうですが、戦後に外資系の飲料メーカーが上陸するなど、ソフトドリンク市場が激化していったとか。そこで新たなヒット商品を作ろうと、まず手掛けたのがハイボール用の炭酸。そして二代目を中心に、ビアテイスト飲料も開発したんだそうです」

 

株式会社 博水社・田中秀子社長

 

浜田「ビアテイスト飲料ということは、ホッピーみたいな割り材を目指していたんでしょうね」

 

倉嶋「試行錯誤を繰り返し、開発には約6年をかけたそうです。でも、時間をかけすぎたため当初の原材料を調達できず、とん挫してしまったと。ただ、それでめげることはなく、気晴らしと視察を兼ねて米国カリフォルニアの団体旅行に家族で行ったとか。そこで見た光景が、市民のだれもが気軽にカクテルを楽しむ姿。それが『ハイサワー』開発のきっかけになったとおっしゃっていました」

↑1980年に初登場した「ハイサワー」

 

浜田「なるほど。当時の日本におけるカクテルは高嶺の花だったでしょうし、街なかで気軽に提供しているお店も多くはなかった。その違いにカルチャーショックを受けるとともに、日本における商機を見出したんですね。そのうえで『もつ焼きばん』のレモンサワーがヒントになったと」

 

倉嶋「特に着目したのは季節を問わないという点。というのも、博水社は長年『もつ焼きばん』に炭酸を納品しているのですが、同店は寒い冬でもバンバン売れている――。なぜだろう?と。

そこで当時の営業さんが実地調査に行ったとき、いまではおなじみの、レモンを搾るスタイルで一緒に炭酸を提供されていた。つまり、レモンはチューハイをおいしくする果汁であり、そのエキスが入った割り材があればより手軽にレモンサワーが楽しめることに気付いたということですよね」

 

浜田「それで『ハイサワー』が誕生したと。フレーバーは最初がレモンで次がライムだったかな。6種ぐらいありましたっけ?」

 

倉嶋「基本はそうですね。レモン、ライム、青りんご、うめ、グレープフルーツ、ホップ&レモン(ほろにが)。あとは、40周年を記念して発売された『ハイサワースンチー杏仁檸檬(あんにんれもん)』とパクチー&レモン(業務用のみ)の8種類ですね。それにローカロリーの『ダイエットハイサワー』があったりと、バラエティー豊かですよね。

ちなみに、田中社長にハイサワーのオススメの割合を伺ったら『焼酎1:ハイサワー3』とのことでした。それと、最近はハイサワーをウイスキーや泡盛で割る人もいるようですが、やはりハイサワーには甲類焼酎がいちばん合うとおっしゃっていました」

 

業務用の地域限定のガラス瓶。左からレモン、グレープフルーツ、パクチー&レモン、青りんご、スンチー杏仁檸檬、うめ

 

浜田「いまでは家庭でもおなじみですし、『わ・る・な・ら・ハイサワー』のCMも有名ですけど、当初は飲食店を中心に展開していたんですよね。でも、けっこうなご苦労をされたと聞いています」

 

倉嶋「はい。まずは本社がある目黒区を中心に一軒一軒訪問して、地元のドリンクとして提供する飲食店が増えていったとか。それがやがて、まだインターネットのない時代にお客さんを通じて評判が広まり、口コミだけで全国展開へと拡大していったそうです」

 

浜田「いまでは武蔵小山と西小山近辺は“ハイサワー特区”と命名して盛り上げていますよね。コロナ禍で最近はお休みしているようですが、本社倉庫では名物イベントの『倉庫飲み』も開催されていますし。『ホッピー』もそうですけど、メジャー商品ながら地元を大切にするというのが東京出身の割り材の愛らしさでもありますよね」

↑コロナ禍で『倉庫飲み』は現在はお休み中ですが、田中社長もいずれ再開させたいとのこと

 

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東京独自の発展を遂げた「割り材」はほかにもある

倉嶋「東京発といえば、『ホッピー』や『ハイサワー』を筆頭に、ほかにも愛らしい割り材があります」

 

浜田「ええ。例えば“幻の割り材”ともいわれる『ホイス』や、コダマ飲料の『バイス』など。ブランドも味わいも個性的でおいしいです」

 

倉嶋「ちょうど『もつ焼きばん 中目黒本店』には両方ともメニュ—にあるので、飲んでみましょう!」

ホイス

 

 

浜田「あ~『ホイス』は久しぶりに飲みましたが、こちらもおいしいですね!」

 

倉嶋「私、あらためて考えてみたんです。なぜ東京にはこんなに独自の割り材が多いのだろうって。もちろん人口が多いマーケットなので、それだけ多様的な商品が生まれる土壌があったということなんですけど、それだけじゃないと思うんです。やっぱり大きなポイントは、先ほど浜田さんがおっしゃった、西日本の本格焼酎(乙類)文化と東日本の甲類焼酎文化の違いかなって」

 

浜田「はい。いまや本格焼酎は東日本にも浸透していますが、それでも割り方は水やお湯割りが王道でしょう。甲類みたいに、多様な割り材のベースとして本格焼酎を飲むことは少ないですもんね。これは、西と東の嗜好の違いも多少はあるかもしれませんが、そもそも焼酎の味わいの違いが関係しているのだとも思います」

 

倉嶋「あとは舶来文化の影響力が東日本は強かったという点。もちろん戦前にも「焼酎用のエキス」はありましたが、米軍駐屯地で提供されていたウイスキーハイボールの味に感銘を受けて、東京・下町の焼酎ハイボールが生まれたというエピソードは、まさにその例なのかなと思います」

 

浜田「東京は特にそうですよね。人口だけでなく米軍の施設も多く、昔は六本木に基地があり、代々木には住宅がありましたから。それだけ外国の文化に触れる機会も多かったでしょうね」

 

倉嶋「ええ。特に『ホイス』は洋酒っぽい味わいですし、『バイス』は甘めのテイストでまた独特のおいしさです」

バイスサワー

 

浜田「うん! 『バイス』の甘みは絶妙ですね。ちょっと濃いめのおつまみを食べたくなる、ちょうどいい塩梅で」

 

倉嶋「唯一無二なんですよね。イメージは梅しそのフレーバーなんでしょうけど、しそ割りとも、梅しそ割りとも違うし」

 

浜田「でも倉嶋さん、『ホッピー』と『ハイサワー』の社長に取材したのであれば、『ホイス』や『バイス』の会社にも行ったほうがいいんじゃないですか?」

 

倉嶋「実は、ここに来る前に取材してきたんです! どちらも面白いお話をたくさん伺えました!」

 

浜田「えー? さすが倉嶋さん! どんな話が聞けたのかとても興味深いですね」

 

ということで、次回は「ホイス」と「バイス」のメーカー本社に突撃したレポートをお送りします。各割り材の奥深い歴史や魅力を深掘りしていくのでお楽しみに!

 

<取材協力>

もつ焼きばん 中目黒本店

住所:東京都目黒区上目黒2-14-3
営業時間:11:30~翌4:00
定休日:正月

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年11月8日)

 

撮影/鈴木謙介

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

 

【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼

【意外と知らない焼酎の噺01】「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺
【意外と知らない焼酎の噺02】「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺03】いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺
【意外と知らない焼酎の噺04】芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺05】麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺
【意外と知らない焼酎の噺06】焼酎の味わいを決める「樽貯蔵熟成酒」について宮崎・高鍋で学ぶ噺
【意外と知らない焼酎の噺07】「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
【意外と知らない焼酎の噺08】ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺

「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺

【意外と知らない焼酎の噺07】

これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。おそらくお酒好きなら誰もが一度は飲んだことがある「チューハイ」の誕生から、現在に至るまでの歴史やおいしい飲み方などを、大衆酒場にまつわる著書を数多く上梓している藤原法仁(のりひと)さんと、雑誌『古典酒場』創刊編集長の倉嶋紀和子さんにアツく語ってもらいました。様々な角度から「チューハイ」について紐解いていきます。

 

本サイトで連載中の【東京・大衆酒場の名店】ナビゲーターとしてもおなじみの藤原法仁さん(左)。倉嶋紀和子さん(右)は雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

そもそも「チューハイ」とは?

甲類焼酎の飲み方には、ストレートやロック、あるいは飲みやすくするためにエキス(シロップ)を足して飲む梅割り、ぶどう割りなどがあります。ただ、どれもアルコール度数は20度〜25度(35度もある)と高め。ですから、割り材(※)で割って飲むのが一般的と言えます。その代表的なものが「チューハイ」。語源は焼酎の炭酸割り「焼酎ハイボール」であり、焼酎の”酎”とハイボールの”ハイ”で「酎ハイ=チューハイ」と言われています。

 

※割り材:酒を割って飲むための炭酸水や果汁などのこと

 

もともとは焼酎の炭酸割りから派生した「チューハイ」ですが、現在は焼酎だけでなく、ウォッカやジンなどの蒸留酒を、炭酸水などで割ったアルコール飲料を総称して「チューハイ」と呼ばれているようです。

 

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それでは、まずは「チューハイ」の定義から考察していきましょう。「チューハイ」はビールや清酒と違い、酒税法上の品目ではありません。また現在、業界団体など民間の統一基準がないため厳格な定義もなく、何をもって「チューハイ」とするかの明確な規定はありませんが、藤原さんはどのようにお考えなのでしょうか?

藤原「この自由さが、ある意味『チューハイ』の面白さかもしれませんが、『チューハイ』と銘打たれた酒類に共通する特徴は2点あります。ひとつは、蒸留酒をベースとしていること。もうひとつは、アルコール含有率が低い(おおむね10度未満)ことです。

ちなみに、『チューハイ』は酒税法上ではリキュール(エキス分が2度以上)あるいはスピリッツ(エキス分が2度未満)に分類されます」

 

倉嶋「『チューハイ』は下町の『焼酎ハイボール』がルーツと言われますもんね。以前に藤原さんが紹介した『三祐酒場 八広店』の回で詳しく触れていました」

 

藤原「はいはい。今はなき『三祐酒場 本店』のご主人(奥野木祐治さん)が1951(昭和26)年にアメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ『ウイスキーハイボール』に感銘を受けて生まれたのが『元祖焼酎ハイボール』だったという話ね」

現在も「三祐酒場 八広店(墨田区)」で人気の「元祖焼酎ハイボール」

 

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倉嶋「『ウイスキーハイボール』はつまり、ウイスキーの炭酸割り。諸説ある『ウイスキーハイボール』の由来のひとつにも、炭酸の泡(泡の玉=ボールが上昇する様)説がありますもんね」

 

「ハイ」と「サワー」の違い

「チューハイ」と似たものに「サワー」がありますが、実際はほとんど同じ意味で扱われています。居酒屋などの店舗によっては無糖の炭酸水で割ったもののみを「チューハイ」と呼び、香料や甘味を含む割り材を用いたものは「サワー」と区別する例もあるようです。

 

そして「サワー」といえば、レモンサワーを思い浮かべる人が多いでしょう。確かに「サワー」は英語(SOUR)で酸っぱいという意味ですから、味のイメージとしてもリンクします。では、実際の起源はどこにあるのでしょうか。

倉嶋「ルーツは中目黒(目黒区)に本店がある『もつ焼きばん』(1958/昭和33年創業。2004年に立ち退きで閉店するも、2014年に中目黒で復活)だといわれています。

昭和30年代には焼酎を炭酸水で割ったものを『タンチュー(炭酎)』などと呼んでいたそうです。一方、ジンを炭酸水などで割ったカクテル『ジンサワー』も知られるようになっていて、ならば焼酎をベースにした『チューサワー』があってもいいのではないかと。でも、当時の焼酎は安い格下の酒というイメージが強かった。そこで『チュー』も省いて『サワー』と名付けてしまおうということになったのだとか。

加えて、1958(昭和33)年といえば映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の時代。東京タワーが建設されるなど経済成長期にさしかかっていたため、生レモンも入手しやすくなっていました。そうして、生のレモンを入れたサワーを名物ドリンクとして発案。これがレモンサワーのルーツだと聞いています」

今や、すっかり酒場の定番メニュ—となったレモンサワー(写真はイメージです)

 

倉嶋さんのおっしゃったレモンサワー誕生の由来には、実は諸説あります。例えば「もつ焼きばん」の公式サイトには、「名前のなかった『タンチュー』にレモンを加えたさわやかな飲み物。その飲み心地を伝えるため創業者である小杉正さんが“爽やか=サワー”と命名し『レモンサワー』が誕生した」とありますが、どちらも正しいのでしょう。

 

そして、レモンサワーを世に広めた立役者が、目黒区武蔵小山の飲料メーカー、博水社のロングセラー割り材「ハイサワー」。こちらのストーリーは藤原さんが教えてくれました。

 

藤原「定番であり、『ハイサワー』シリーズの第1号である『ハイサワー レモン』は1980年の発売。そのヒントになったのは、同じ目黒区にあった『もつ焼きばん』のレモンサワーなんです。やがて割り材として『ハイサワー レモン』は大ヒット。『わ・る・な・ら・ハイサワー』のCM効果もあって『サワー』も広く知られるようになりました」

また、ウーロンハイや緑茶ハイなど炭酸が入っていないものに「ハイ」がよく使われるという声もあります。ただ、本来は「ハイボール」の「ハイ」なので、炭酸は入っているはず。そのあたりについて藤原さんに伺いました。

 

藤原「『炭酸水を使わないなら“緑茶ハイ”ではなく“緑茶割り”が正しい』と言う人もいますね。それと『炭酸水ナシはチューハイじゃない』とか『緑茶ハイはチューハイじゃない』という人もいるかもしれません。僕も気持ちはわかるんです。でも、ウーロンハイや緑茶ハイなどの『お茶割り』も、広義では『チューハイ』に含まれると思います。緑茶割りではなく、緑茶ハイとして売り出しているお店もたくさんありますし、ほとんどのお酒好きは『どっちでもいい』と思っているのではないですかね。そこに関しては目くじらを立てるほどではないかなと思いますよ」

 

倉嶋「そうなんですよね。私も緑茶割りやウーロン茶割りは雑誌『古典酒場』を制作する上でも表記が難しかったなって、今でもよく覚えています」

 

藤原「ええ。定義がないですから、それがひとつの答えなのかなと。できれば、それぞれの由来は諸説を含めて知っておいたほうがいいのかなとは思いますけどね。よくないのは、根拠がない情報で理解したつもりになって、そこから『チューハイとは○○であり、○○は違う』とか発信したり断定しちゃったりすること。うーん、あらためて『チューハイ』って奥が深いですね」

 

エキスを使う「チューハイ」の酒場が東京東部に多い理由

では、1951(昭和26)年に「三祐酒場 本店」で生まれたとされる「焼酎ハイボール(チューハイ)」は、どのようにして広まり定着していったのでしょうか。人気となった背景には、戦後のウイスキー(ハイボール)人気の一方で、ビールやウイスキーの値段の高さ(代替としてのチューハイ)が関係しているとか。

 

 

藤原「これも諸説あるのですが、共通点は当時ネガティブな香りが強かった焼酎をおいしく飲むための工夫。風味づけのために梅やぶどうのエキスを焼酎に入れたり、口当たりを爽快にするために炭酸水で割ったり。当時としては一見風変りに見えたレシピが酒文化となり、大衆酒場を中心に花開いたのです。

トレンドの発信地となったのが、東京の下町。その理由は、かつては界隈に高度経済成長期を支えた町工場が多く、大衆酒場は労働者の社交場として栄えたから。また、さらに歴史をさかのぼると、もともと江戸は水路の街で、川を使って船で物流を行っていたから。川沿いを中心に産業が栄えて人が集まり、街が発展。大きな河川のそばにあった古い街のなかには、船が使えるという利点を生かし、工業地帯として発展していったケースも多いのです」

 

倉嶋「特に下町の『チューハイ』として根付いているのは、焼酎+炭酸水+エキスのタイプです。このエキス文化は東京の大衆酒場でも、都心部には下町ほど多くは見られないと思います。都心部のホワイトカラー労働者は、ビールやウイスキーハイボールを好んだからという背景もあると考えられます」

 

「チューハイ」はこうして全国区になった

東京のローカルな飲み方として発展した「チューハイ」ですが、1980年代になると全国に拡大していきます。このトレンドをより深掘りすると、1970年代に起こった「ホワイトレボリューション(白色革命)」が深く関係していると倉嶋さんは言います。

 

 

倉嶋「全国的な傾向でいうと、高度成長期には洋酒人気に火が付いたため焼酎の消費量は落ちていました。しかし、アメリカでは1974(昭和49)年に、バーボン人気をウォッカが上回るムーブメント『ホワイトレボリューション』が起こります。この流れを受け、クリアな蒸留酒のブームが日本にも到来すると予想され、1977(昭和52)年に宝焼酎「純」が誕生。やがて狙い通り、1980年代にはチューハイブームへとつながったのです」

 

宝焼酎「純」の新発売前(1977/昭和52年)の新聞広告

 

11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝焼酎「純」

 

藤原「もうひとつチューハイブームの一翼を担ったのが、居酒屋チェーンの台頭ですよね。今日お伺いしている『村さ来(むらさき)』はその代表格。1号店は1973(昭和48)年開業の世田谷・経堂店です。当時、『村さ来』は『養老乃瀧』『つぼ八』と並び“居酒屋御三家”と呼ばれ、1980年代には全国規模へ拡大していきました」

 

倉嶋「特に『村さ来』は果汁や甘くて色の鮮やかなシロップを使って、カクテルのような『チューハイ』をバリエーション豊かに展開したことで有名ですよね。このカジュアルさが当時の若者に受けると予想したんでしょうね。今日久々に飲みましたけど、懐かしいです! 若返った気分になりました」

 

昔を懐かしながらチューハイのメニュ—を見る二人

 

圧倒的な種類を誇る「村さ来」のチューハイ(酎ハイ)メニュ—

 

藤原「ええ、懐かしいですね! 僕らみたいな呑兵衛は、濃いめで注文するのがいいのかも。ちなみに、氷やシロップを入れることでアルコール度数が低くなって飲みやすく、さらに原価率が抑えられて儲かることもポイントだったと思います。他の居酒屋チェーンも取り入れたことで一気に『チューハイ』が親しまれていくことになるんですね。

そして、1980年代のチューハイブームの火付け役として忘れてはいけないのが、さっき話した『ハイサワー』と、『缶チューハイ』の誕生です」

 

倉嶋「そう、日本初の缶入りチューハイ『タカラcanチューハイ』。1984(昭和59)年に発売されるやいなや大ヒットし、いまも続くロングセラーですよね」

 

藤原「その通り! まとめると、偉大な焼酎『純』の大ヒットによるチューハイブーム、カクテルのように甘くてバリエーション豊かな『チューハイ』を提供する居酒屋チェーンの拡大、『ハイサワー』のヒット、『缶チューハイ』の誕生。これらが、『チューハイ』が全国区になった要因といえるでしょう」

発売当時(1984/昭和59年)のタカラcanチューハイ

 

酒場通のふたりが好きな「チューハイ」と居酒屋

最後はおふたりに、お気に入りの「チューハイ」について伺いました。まずは、好きな「チューハイ」と、おいしい「チューハイ」を作るコツから。

 

藤原「僕はやっぱり、エキスと炭酸水の黄色い『チューハイ』が一番好き。僕の中では『チューハイ』といえば下町の『焼酎ハイボール』ですから。甲類焼酎とエキスを先に混ぜた“焼酎ハイボールの素”を作って冷やしておいて、さらにキンキンに冷やした炭酸水を先にグラスに入れてから“焼酎ハイボールの素”を入れるレシピがベスト。できれば氷はナシ。レモンスライスを入れるのもアリで、その場合も炭酸水を入れる前。こうすると、炭酸水とともにレモンがピーッと上がって美的にも素晴らしいんです」

 

藤原さんお気に入り、八広(墨田区)「亀屋」の名物「焼酎ハイボール」

 

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倉嶋「さすが藤原さん。先に炭酸を入れるのは、墨田区あたりに多いスタイルですね。私は特にコツというほど実践していることはなく、甲類・本格(乙類)焼酎両方とも使いますし、レモンも使ったり使わなかったりなんですが、最近のお気に入りは宝焼酎『レモンサワー専用』です。やさしいコクと、ほんのりハーブ系なニュアンスがあってレモンの香りが立つし、炭酸水で割るだけでもおいしい。あと、タイ系などスパイス料理との相性がピカイチでオススメです」

 

レモンの風味を引き立てる、レモンサワーのために開発された宝焼酎「レモンサワー専用」

 

次はオススメの「チューハイ」に合うおつまみ、そして「チューハイ」を提供するオススメのお店を聞きました。

 

藤原「最近のマイブームおつまみはハムエッグ。卵はよく焼いてあるのが好きです。そしてお店は、東向島(墨田区)にある大衆酒場『岩金』。両手に炭酸水の小瓶をもって、一気に2杯ぶんの『チューハイ』を作る技があって衝撃を受けたんです。僕はあれを“炭酸二本差し”と名付けました」

 

一気に2杯ぶんの『チューハイ』を作る”炭酸二本差し”(※写真は堀切菖蒲園(葛飾区)「きよし」)

 

倉嶋「炭酸水とは、目の付け所がさすが藤原さんですね! 私の好きなお店は東十条(北区)の『埼玉屋』さんです。グラスのふちに塩を付けるソルティドッグ風のレモンハイが絶品で。『チューハイ』って、ひとつのカクテルなんだなぁと感銘を受けました。名物の焼きとんとの相性も抜群ですし」

 

あらためて、「チューハイ」の歴史や魅力を存分に語り合った藤原さんと倉嶋さん。ぜひ本稿を参考に、多彩な「チューハイ」を飲み比べてみてください。

 

【取材協力】

村さ来 中野北口店

住所:東京都中野区中野5-64-5 サンピオーネビル 4F
営業時間:17:00~24:00(L.O.23:30)
定休日:なし

※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年9月2日)

 

撮影/鈴木謙介

 

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・宝焼酎
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・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・宝焼酎「レモンサワー専用」
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倉嶋紀和子:雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

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麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺【意外と知らない焼酎の噺05】

 

黒壁蔵のある宮崎県高鍋町とは

宮崎県児湯郡(こゆぐん)高鍋町は、日向灘に面した宮崎県のほぼ中央に位置する町。江戸時代には秋月家3万石の城下町として栄え、明治以降は児湯地方の中心地として発展しました。町の東部には、宝酒造の焼酎工場「黒壁蔵」があります。

 

東に日向灘を臨む高鍋は、海の町としても人気。特にビーチスポットとして知られるのが、高鍋駅からも近い場所にある「蚊口浜(かぐちはま)」です。南北に長い海岸は海水浴向けとサーフィン向けにエリアがわかれ、さらにキャンプ場を併設しているなど多彩な遊びができます。

 

宮崎が誇る最近の大きな話題といえば、県庁所在地の宮崎市における2021年の餃子購入額(1世帯あたり)が初めて日本一になったこと。そんな宮崎のご当地餃子といえば、何を隠そう高鍋町の「高鍋餃子」です。

 

こちらは、同県屈指の名店として知られる「餃子の馬渡(まわたり)」と「たかなべギョーザ」が人口2万の高鍋町にあることが背景にあります。特徴は、高鍋名産のキャベツの他に玉ねぎ、にらなど野菜が多めであること。

 

↑こちらは「餃子の馬渡」の餃子。何度も足踏みした厚い皮の、もっちりとした弾力と強いコシが魅力。一方の「たかなべギョーザ」はサクッとした薄めの皮で、二大名店の食感が対照的なことも「高鍋餃子」の特徴です

 

宝酒造「黒壁蔵」とは

高鍋町にある宝酒造の「黒壁蔵」は、同社における焼酎製造の主要拠点。シックな黒い建物やタンクが広大な敷地内に立ち並ぶ、圧巻のスケールです。黒いルックスは、日向灘から吹く風のミネラル分を栄養源とする黒い微生物が外壁に繁殖し、工場全体が黒く見えるのだと言われています。

↑黒壁蔵に到着した倉嶋さん。念願の訪問ということでテンションも最高潮に

 

倉嶋さんを案内してくれたのは、工場長の岡 博和さん。まずは黒壁蔵の成り立ちから教えていただきました。

↑岡工場長と倉嶋さん

 

 倉嶋さん、ようこそ黒壁蔵へ! 今日はよろしくお願いします。

 

倉嶋 こちらこそ、よろしくお願いします。楽しみにしていました! 黒壁蔵、スゴいですね。風格と歴史を感じます!

 

 ここはもともと1938年に、アルコールを製造する官営の工場として設立しています。やがて戦後に民間払い下げが実施され、1952年に当社、宝酒造に移管されました。その後、2004年に現在の黒壁蔵へと名称変更して現在に至ります。

 

倉嶋 今の名称になったのは比較的最近なんですね。黒壁蔵、かっこいい響きです!

 

 ありがとうございます。当社は全国に6つの工場があり、以前倉嶋さんにお越しいただいた松戸工場は東日本の主幹工場です。そして黒壁蔵は芋焼酎や麦焼酎などの製造を行うとともに、当社が保有する樽貯蔵熟成酒の重要拠点でもあります。

 

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↑九州には、長崎の島原にも工場があります

 

倉嶋 6つの工場それぞれに役割があるんですね。神戸・灘や京都・伏見の工場は、“灘・伏見”で知られる日本酒の聖地ですから、日本酒の拠点ですよね。

 

 はい。そして灘は「白壁蔵」という名称でして、焼酎工場であるここ「黒壁蔵」と対をなす大切な製造拠点ですね。

↑岡工場長は長年日本酒の製造に携わった経歴をもつ、酒づくりのスペシャリストでもあります

 

倉嶋 高鍋という町も自然がいっぱいで素晴らしいです。おいしい焼酎ができるに決まってますね!

 

 宮崎の温暖な気候はさつまいもの栽培や樽貯蔵の熟成に適していることはもちろん、高鍋は東に日向灘、北に尾鈴山を望む自然豊かな環境にあることも魅力です。

 

倉嶋 樽貯蔵熟成酒について、今日はしっかり学ばせていただきます!

 

いざ、樽熟成の現場へ

 では、これより着替えていただき、工場内の見学へとまいりましょう。まずは連続蒸留室へご案内します。

 

倉嶋 ということは、連続式蒸留機がある場所。甲類(こうるい)焼酎の製造現場ですね。

 

 そうです。甲類焼酎の造り方はこれまでの回で触れていたと思いますけど、あらためて簡単におさらいしましょう。蒸留機には、「単式蒸留機」と「連続式蒸留機」があります。単式蒸留機は1回のみ蒸留を行う仕組みですね。単式蒸留機によって造られた、原料の風味が残る焼酎が乙類(おつるい)焼酎で、「本格焼酎」とも呼ばれます。

 

倉嶋 今回は甲類焼酎がメインですけど、黒壁蔵では本格焼酎も造ってるんですよね?

 

 はい。全量芋焼酎の「一刻者(いっこもん)」や、芋・麦・米など様々なバリエーションがある「よかいち」などの本格焼酎も、ここで造っています。では、甲類焼酎をつくる連続式蒸留機とはどういうものか。これは単式蒸留機の仕組みを連ねた複雑な構造です。連続的にもろみを投入することができ、機械のなかで何度も蒸留できるのが特徴。この連続式蒸留機で造られた焼酎は甲類焼酎と呼ばれ、蒸留を繰り返すことでピュアな味わいの焼酎になります。ということで、ここからは製造担当で次長の一上(いちかみ)と一緒に、連続蒸留室へまいりましょう。

↑生産現場は、衛生管理を徹底するため白衣に着替えて入室。右が一上将輝さん

 

一上 一上です。よろしくお願いします! ここは樽貯蔵する前の個性の異なる様々なタイプのアルコールを造っている施設です。

 

倉嶋 松戸工場もスケールが大きかったですけど、こちらもスゴいですね。

 

 サイズでいえば、松戸工場はさらに巨大で黒壁蔵の8倍はあります。また、松戸工場の甲類焼酎づくりではピュアなアルコールの蒸留が主目的ですが、黒壁蔵の場合は狙った味の成分を残したアルコールづくりがメインとなり、そこからブレンドなどを経て約85種類の樽貯蔵熟成酒を造り分けしています。

 

倉嶋 そうでしたね。以前の取材で約85種類あるとお聞きしました! ちなみに、この上はどうなっているんですか?

 

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一上 この連続式蒸留機には階段とフロアを設けて全6階の設計となっています。高さでいえば、30mほどありますね。試しに2階へ上がってみましょうか。

 

倉嶋 連続式蒸留機の内部はこのようになっているんですね! 驚きです。

↑連続式蒸留機の「棚」と呼ばれる部分。突起の部分は泡鐘(ほうしょう)と呼び、このパーツをアルコールの蒸気が通過することで効率良く不純物を分離し、狙った品質のアルコールになる。泡鐘は約10cmで、蒸留塔の直径は約3m

 

 泡鐘の機能により、ブレンドに必要な味を造り分け、それぞれの棚から狙ったアルコールを取り出しています。そして蒸留したばかりの透明なアルコールを樽に詰めて何年も寝かせ、まろやかな味や深み、甘い香りなどをもたらせていくというわけです。

 

倉嶋 寝かせることで、奥行きのある味わいの樽貯蔵熟成酒になっていくんですね。

 

 おっしゃる通りです。では、次はいよいよ樽貯蔵熟成酒の本丸。貯蔵庫へご案内します。

↑黒壁蔵には手動式と自動式の2つの樽貯蔵庫があり、こちらは前者

 

倉嶋 わっスゴい! 入った瞬間からおいしそうな香りがしてきます。

 

一上 ここはラック式の手動樽貯蔵庫です。文字通り、クレーンで樽を縛ってラックに積み上げていくのですが、津波対策や安全性などを考慮して、いまは自動式のほうが主流です。自動式はこのあとご案内しますね。

 

倉嶋 ラックは最高で7段までありますけど、以前はこの手動式で積み上げていたんですか?

 

 はい。ただ、今はもう手動で7段まで積み上げることはないですね。昔は手動式の貯蔵庫が7棟ありましたが、現在は2棟。一方で、巨大な自動式が4棟あります。樽の数は合計で約2万樽ですね。

 

倉嶋 2万! これまたスゴい数ですね。ちなみに、ここにある樽の材質や熟成期間は?

 

一上 樽の材質は、基本的にウイスキー用のアメリカンホワイトオークですね。一部、シェリー酒などに使われるフレンチオーク樽、ほかに桜樽や栗樽などもあります。熟成期間は、古いものですと30年以上の樽もありますね。目の前にある樽は2002年から熟成している、ちょうど20年ものです。香りだけですが、テイスティングしてみますか?

 

倉嶋 20年ものなんて、きわめて稀少ですよね。うれしいです!

↑「サーベル」という、スポイトの役目を果たす銅製の道具でグラスに樽貯蔵熟成酒をサーブ

 

一上 お、これは実に見事な色づきですよ。20年ものなので、天使の分け前(熟成過程でアルコールが蒸発し、樽の中身が減ること)もかなりあります。では、どうぞ。

 

倉嶋 きれいな琥珀色! あぁ、洋酒を思わせるキャラメルやバニラのような甘い香りがします。アルコール度数が高いからか、力強い香りもしますね。これは絶対おいしいやつです。

↑うん、香りだけでも心地よく酔えそう(笑)。と倉嶋さん

 

 喜んでいただけてよかったです。では、次は自動ラック式の貯蔵庫へご案内しましょう。自動式は、機械が積み上げなどをやってくれるので安全性や効率がよく、また手動式より数多く積み上げられることもメリットです。

↑このラック式自動樽貯蔵庫には、最大4200本の樽を収納可能。スケールの大きさに倉嶋さんも息を飲むばかり

 

 

一上 この貯蔵庫は、1986年に建てられました。自動式といってもなかなか歴史があって、実は昭和のころには既にあったんです。

 

倉嶋 こちらは手動式に比べてぎっしり積まれている印象です。こちらは機械で操作して、それぞれの樽を積んだり降ろしたりするわけですよね?

 

 その通りです。用途は多岐にわたり、ただ貯蔵するだけではありません。例えば上部のほうが高温になり、熟成スピードも速くなるため定期的に樽の入れ替えを行っています。また、樽の新旧によっても熟成速度は異なるので、中身の入れ替えをするためにも積み降ろしを行います。

↑自動樽貯蔵庫の樽のサイズは400リットルを超えるような大きい樽が中心。比較的軽くて取り回しがしやすい200~250リットル程度の樽は、手動式の貯蔵庫に収納されます

 

樽の再生加工も行う

 黒壁蔵では樽の再生加工も行っていますので、次はそちらにご案内します。

 

倉嶋 再生ということは、組み直したり焼き直したりするんですか?

 

一上 はい。長年熟成すると、熟成効果が薄れたりするのですが、再生することで、最長で30~40年ほど使用することができるんですよ。樽も貴重な資源ですから、地球環境のためにも、うまく活用していきたいという考えです。再生工程にはいくつかの手順があり、樽の内部を削った後、熟成効果を高めるためにバーナーで焦がす作業を行います。

↑再生工程のなかで、こちらは樽の底部の隙間を埋めているところ

 

倉嶋 バーナーの熱は何度ぐらいになるんですか?

 

一上 遠火でじっくり加熱する「トースト」と、直火で加熱する「チャー」があるのですが、目安は約300℃。焼く時間は20~30分が一般的で、樽によっては60分近く行うこともあります。

↑火力を上げ、炎が燃えさかるように焼き上げる「チャー」の仕上げ工程。このあと水で消化し、樽の組み直しを行います

 

【チャーの仕上げ工程の動画】

 

 

倉嶋 最後はここまで豪快に焼き上げるんですね。想像以上でした! あと、樽の内側から漂ってくる香りがまたたまりませんね。

 

 この樽はまだ熱をもっているのですが、その間に締め直しとフタの装着を行います。

 

倉嶋 そうなんですね。熱い方がいい理由はあるんですか?

 

一上 焦がした熱によって、締め付けられた樽の張りが緩くなるので、熱いうちにタガを外し、隙間ができないよう整えながら入念に締め直すんです。

↑樽の組み直しは、実は繊細な作業。液体は針の穴のように小さい隙間でも漏れてしまうので、熟練の技が必要です

 

樽貯蔵熟成酒の味は?

↑試験室にずらっと並べられた様々な樽貯蔵熟成酒

 

 本日最後にご案内するのは試験室です。ここはサンプルのチェックや製品の最終検査を行う場所で、物質の香気成分を検査したり分析したりすることが主な役割。そして今回は、そのなかにある官能検査室をお見せしますね。ここでは主に香りや味をテイスティングして、適正な品質になっているかをチェックします。

↑樽貯蔵熟成酒を専用グラスに注ぐ一上さん。検査の方法を見せてくれました

 

一上 今回用意したのは11種類。多くはアルコール度数が60%を超えますので、検査する際には25%に加水調整してチェックします。

 

倉嶋 なかには熟成前の透明なものもありますよね。これらはそれぞれ、どんなアルコールなんですか?

 

一上 ひとつは大麦原料の甲類焼酎で未貯蔵タイプ、1年熟成、3年熟成と熟成年別に。他にもコーン原料の甲類焼酎の1年熟成、3年熟成ものなど原材料別でも用意しています。

 

倉嶋 同じ原材料でも、熟成の深さで味わいがどう変わっているかをチェックするんですね。面白そう!

 

 倉嶋さんも、ぜひテイスティングしてみてください。

 

倉嶋 やった! では大麦の焼酎を熟成の若いタイプからかぎ分けます……。あっ、やっぱり年を重ねていくと甘い香りやまろやかさが強くなりますね。同時に、複雑味も増していくような気がします。

 

一上 原材料の違いでも、感じ方が異なりますよね。

 

倉嶋 はい。特に、熟成酒になると違いがはっきり出てきますね。大麦はウッディで奥行きのある甘さ、コーンはもう少しストレートな甘みですけど、バニラのニュアンスを豊かに感じます。これらをブレンダーの方が調合して製品に仕上げていくんですよね?

 

 その通りです。基本的なレシピは決まっているのですが、樽貯蔵熟成酒が約85種類ありますから、それぞれの個性をどうブレンドし、統一されたおいしさに仕上げていくかは腕の見せ所です。

 

倉嶋 その組み合わせは天文学的な数字になりますよね。すごいなぁ。

 

一上 倉嶋さんにそう言っていただけるとうれしいです。今回テイスティングいただいたのは一部ですが、これらの樽貯蔵熟成酒がブレンドされることで、当社の製品にそれぞれの個性をもたらし、「宝焼酎」をはじめとした様々な製品のおいしさに寄与しているんです。

 

倉嶋 例えばブレンド比率が13%なら「純」、20%なら「レジェンド」ですよね。奥が深いです!

 

 さすが、よくご存じですね! もちろんお店で飲むチューハイのベースとなる焼酎や、「タカラcanチューハイ」「焼酎ハイボール」「極上レモンサワー」などの製品も、絶妙なバランスでブレンドした樽貯蔵熟成酒がおいしさの要となっています。ぜひ今度飲まれるときに感じていただけたらうれしいです。

 

倉嶋 はい。今回の工場見学も勉強になりましたし、なにより樽貯蔵熟成酒の魅力をいっそう知ることができてよかったです!

 

↑取材後に訪れた高鍋町北部の丘陵に位置する高鍋大師で、タカラ「焼酎ハイボール」をかたむける倉嶋さん。町を一望できるうえ、四国八十八か所を模した仏像をはじめとする大小様々な石像が並ぶパワースポットで、名所として知られています

 

樽貯蔵熟成酒を現地で体感し、宝酒造が誇る甲類焼酎の神髄に近づいた倉嶋さん。次回の「意外と知らない焼酎の噺」もご期待ください。

 

↑タカラ「焼酎ハイボール」を片手に蚊口浜でたそがれる倉嶋さん。「潮風がいいつまみになりますね!」と、さすがのコメント!

 

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「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】
「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺 【意外と知らない焼酎の噺02】
いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺【意外と知らない焼酎の噺03】
芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺【意外と知らない焼酎の噺04】
麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺【意外と知らない焼酎の噺05】

 

麦焼酎の歴史とつくりを知り、味わいを楽しむ噺

【意外と知らない焼酎の噺05】

日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その製造方法などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

第5回のテーマは、「本格焼酎とは何か<麦焼酎編>」。前回紹介した「芋焼酎」と肩を並べる人気の「麦焼酎」。その歴史や製造方法、味の特徴などについて深掘りしていきます。

 

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●狩野卓也(右):酒文化研究所・代表取締役。洋酒メーカー勤務などを経て、1991年に同研究所を設立。1996年より現職。酒文化及び酒類ビジネスに関する調査研究や執筆、講演活動を行っている。著書に『酒と水の話-マザーウォーター』(紀伊国屋書店、同研究所編・共著)など。
●倉嶋紀和子(左):雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

「麦焼酎」はどこで生まれた?

倉嶋 今回のテーマは麦焼酎ということで、まずはその歴史から教えてください。確か、長崎の壱岐島が発祥だと思うのですが、芋焼酎より歴史は古いんですよね。

 

狩野 はい。この企画の第1回「焼酎って何」で、いま私たちが目にしている焼酎が生まれたのは戦国時代(室町時代後半)という話をしましたよね。壱岐は大陸からの焼酎伝来ルートでもあり、壱岐焼酎の歴史は16世紀まで遡ります。芋焼酎は、原料であるさつまいもの伝来が17世紀ごろで、焼酎作りに使われるのはその後ですから、麦焼酎のほうが芋焼酎より歴史が古いと言えますね。

 

倉嶋 なるほど。焼酎の原料は大昔から栽培されていた麦や米が主流だったということですか。

 

狩野 そもそもは、米や麦をはじめ雑穀や酒粕などいろんなものから作られていました。米は年貢で納める高価な作物でしたから大変貴重です。そのため庶民が食べていたのは、米の裏作で作る麦や雑穀が中心でした。そして、壱岐は島ながら平野が広く米や麦といった穀物の一大産地でした。こういうバックボーンが麦焼酎のルーツの理由と考えられます。

 

倉島 なるほど。年貢の対象である米をお酒にするのは難しかったけど、麦なら可能だったと。それで、穀倉地帯の壱岐では麦焼酎が生まれたということですね。ちなみに、きび・あわ・ひえといった雑穀でも焼酎はつくれると思いますが、なぜ麦だったのでしょうか。

 

狩野 大きな理由として、雑穀は麦、芋、米などに比べてでんぷんが少ないからでしょう。でんぷんが少ないと発酵の効率が悪く、たくさんの量をつくりづらいですから。

 

 

倉島 なるほど、前回の芋焼酎の話にも通じますね。芋焼酎のさつまいもは、でんぷん含有量の多い品種が選ばれやすく、それが「黄金千貫(こがねせんがん)」だったと。麦と雑穀では、より効率的に焼酎をつくれる麦が選ばれたということですね。

 

狩野 最初は、農家が余った麦を持ち寄ったりして、自家醸造に近い状態でつくっていたのだと思います。「あそこの家はおいしい焼酎をつくれるらしいよ」といった感じで、各地に焼酎づくりの名人がいたんでしょうね。

 

倉島 自家醸造というと、どぶろく(米・麹・水が原料の濾過していない酒)に近いイメージです。

 

狩野 そういう牧歌的なつくり方が最後まで残っていたのは、東京都の島しょ部である青ヶ島の焼酎。ここでは芋や麦焼酎が作られていますが、昭和中期まではそんな形式でした。同島に法人化された酒蔵ができたのは1984年です。

 

倉島 平成になる数年前まで寄合で焼酎をつくっていたのですね。

 

狩野 いずれにせよ、焼酎の製法などが確立されていくなかで、九州を中心に焼酎蔵が誕生しました。明治末期には連続式蒸留が伝来して新式焼酎(現在の甲類焼酎の原型)が登場しますから、本格(乙類)焼酎である麦焼酎も、ひとつのカテゴリーとして確立されていったのです。

 

麦焼酎はどのようにつくられるのか

倉嶋 では、麦焼酎はどのようにつくられるのかを教えてください。

 

狩野 基本的には前回お話しした芋焼酎と大きな違いはありません。芋は水分が多いので傷みやすく、収穫後にすぐ下処理をしないといけませんが、麦は長期保存が利くため、比較的時季を問わずにつくれる点は特徴だと思います。これは米焼酎にも同じことがいえますね。

 

倉嶋 麦焼酎も、麹と水、酵母を混ぜて発酵させた一次もろみに、原料の麦を加えて発酵させた二次もろみを単式蒸留機で蒸留後、貯蔵、割水するという工程でつくられるわけですね。

 

●本格(乙類)焼酎の製造工程

 

狩野 ほかに麦焼酎の特徴を挙げるとすれば、「麦麹」がありますね。多くの芋焼酎には米麹が使われており、高度な技術が必要な芋麹を使用しているものは少数です。米焼酎や黒糖焼酎などにも米麹を使うのですが、麦焼酎には米麹のほかに麦麹を使うことがあるんです。

↑自動製麹機。麹菌を加えて麦麹をつくる

 

倉嶋 麦麹は、麦焼酎に使われる麹なんですね。

 

狩野 そうなんです。しかも興味深いのが、もうひとつの麦焼酎の名産地である大分では、多くの銘柄で麦麹を使うのですが、壱岐焼酎では使いません。壱岐では米麹を使うことが定義されているんです。

 

倉嶋 確かに、思い返してみるとそうだった気がします! でも、なぜ麦麹は大分の麦焼酎以外にあまり使われないのですか?

 

狩野 これは私の推測ですが、ひとつは技術的に麦麹をつくること、活用することが難しいということではないかなと。かたや米麹は日本酒で太古から全国で使われているので、ノウハウも文献もたくさんある。もうひとつは、でき上がりの味や香りが関係しているのだと思います。ちなみに、後述しますが、大分ではもともと麦麹を使う文化が発達していたので、焼酎にも麦麹が使われたのでしょう。

 

倉嶋 麦麹を使ったほうが、より麦らしい味わいになるということですか?

 

狩野 それが面白いところで、麦らしさという点では米麹の麦焼酎も負けてないと思います。ただ、麦麹を使うことで、米麹とはまた違った味や香りを生み出せるということでしょう。麦麹の麦焼酎も米麹の麦焼酎も、それぞれに麦らしい風味があるのですが、甘みや香ばしさに違いがある気がします。あと、麦100%の全量麦焼酎は、その響きだけでもおいしそうですよね。

 

倉嶋 はい。二大名産地の壱岐と大分との違いのひとつが麹というのも、より個性が際立って面白いと思います。

 

狩野 それぞれのストーリーがブランディングにもつながりますしね。

 

倉嶋 大分が焼酎の名産地になったのも、壱岐のように穀倉地域だからですか?

 

狩野 穀倉地域でもありますが、それ以上に前述の麦麹文化が大きいです。それに、大分が麦焼酎大国になるのは近年のこと。昭和26(1951)年に麦の統制撤廃が実施されて麦が自由に購入できるようになると、もともと麦麹で味噌や醤油をつくる文化があった大分では、焼酎用の麦麹の開発が始まったんです。

 

倉嶋 そうか! それで麦麹による100%麦焼酎が生まれ、大分の麦焼酎の特徴が先鋭化されていったということですね。

 

狩野 そして最初の100%麦焼酎は、昭和48(1973)年に誕生しました。焼酎の長い歴史の中でいうと、比較的最近ですよね。あとは「減圧蒸留」による軽快な味の麦焼酎がヒットしたことも、大分の麦焼酎を語る上で欠かせません。

 

倉嶋 なるほど。その軽快な味も1980年代の麦焼酎ブームに関係してるんですよね。

狩野 「常圧蒸留」と「減圧蒸留」についても、あらためておさらいしましょう。「常圧蒸留」は通常の気圧で行われる伝統的な蒸留法。100℃近い温度でもろみを蒸留するため、高温で生成される風味を豊かに引き出すことができ、しっかりした味わいの焼酎になります。
一方の「減圧蒸留」は、気圧が低い場所では低い温度で水が沸騰する原理と同じ原理を生かした蒸留法。蒸留機内の気圧を下げることにより40℃~ 50℃で蒸留できるため、常圧蒸留よりも高温で生成する成分が抑えられ、口当たりの軽やかな焼酎がつくれるんです。

 

 

倉嶋 減圧蒸留の技術はいつごろ開発されたんですか?

 

狩野 焼酎に応用されたのは1970年代だと思います。もともと減圧蒸留は、アルコール精製の技術として生まれたもの。お酒をつくるために開発された技術ではないんです。科学が進歩した結果、気圧を下げても爆発せず液体も焦げない高性能な蒸留機が生まれ、それですっきりとしたアルコールを取り出せるようになったということなんです。

 

倉嶋 そうやって軽やかな味わいの本格(乙類)焼酎が生まれたことで、東京などの都市圏でも本格焼酎が飲まれるようになったんですね。

 

狩野 だと思います。本格焼酎に飲み慣れていない東日本では、本格焼酎は風味がきつくて飲みにくいイメージがありました。でもライトな味わいの本格焼酎は飲みやすいということで、東京をはじめ全国でヒットしたのでしょう。

 

倉嶋 飲みやすさですか。飲み慣れてくると、風味の強さがむしろおいしいともいえますけどね。

 

狩野 飲みやすさやおいしさという点では、貯蔵・熟成した焼酎の再評価もエポックメイキングな出来事です。甕貯蔵や熟成は時間をかける製法なので、贅沢なつくり方ですよね。焼酎は手軽に飲める大衆のお酒として親しまれてきましたから、熟成焼酎は一般的にはポピュラーではなかったんです。

 

倉嶋 社会が豊かになったことで貯蔵・熟成焼酎を商品化する余裕が生まれ、消費者に浸透していったということですね。

 

狩野 おっしゃる通りです。味わいとしては甕や樽で寝かせると、まろやかになって飲みやすくなったり、コクや香りに深みが出て風味豊かになったりしますよね。

 

倉嶋 つくり手のほうも、意欲的に味の進化へ取り組んでいったと。

 

狩野 甲類焼酎に定期的なブームが起こっているように、本格(乙類)焼酎にも何回かブーム繰り返しながら飲まれるエリアを広げていったことも焼酎文化の継承や発展には欠かせません。伝統がいまでも残っているのは、飲み手がしっかり支持しているということでもありますね。

 

倉嶋 焼酎ブームについては本企画の第3回「甲類焼酎の飲み比べ」でも学びましたね。本格(乙類)焼酎ですと、1970年代のお湯割りブーム、1980年代の麦焼酎ブーム、2000年代の芋焼酎ブームがありますよね。

 

狩野 それぞれのブームが起こった時代に、そのブームをけん引するヒット商品があったというのも焼酎の特徴ですよね。そしてブームがあったからこそ、焼酎の味わいもどんどん進化・多様化していったのです。

 

麦焼酎を飲み比べてみる

倉嶋 こうして歴史やつくり方を振り返ると、やっぱり焼酎は面白いです。焼酎王国の九州のなかでも県によって特色が違いますし。

 

狩野 多くはその土地の風土が関係してるんですよね。鹿児島や宮崎南部はシラス台地で、さつまいもが名産だから「芋焼酎」。宮崎でも北部になると、「そばや雑穀の焼酎」もあって、米どころの熊本・球磨人吉は「米焼酎」。長崎・壱岐と大分は「麦焼酎」。ということで、今回のテーマである麦焼酎の飲み比べに移りましょう。

 

倉嶋 はい! ぜひぜひ。

 

狩野 まずは、麦焼酎発祥の地である、長崎・壱岐の麦焼酎です。

 

倉嶋 これは、麦の香ばしさと、ふくよかな甘みが感じられますね!

 

狩野 米麹由来の甘い香りと麦の香ばしい香りが同時にかぎ取れて濃厚な焼酎に感じられますね。壱岐焼酎は米麹1/3、大麦2/3という原料構成がルールづけられているためか、減圧蒸留ではあるものの、すっきりさわやかというより濃厚でしっかりという印象をうけます。

 

 

倉嶋 甘味がある濃醇な味だから、水割りや炭酸割りの方がより特徴が活かされておいしいかもしれないですね。炭酸割りは、意外にチョコレートケーキとの相性もよさそうです。

 

狩野 続いて、大分の麦焼酎「知心剣(しらしんけん)」。国産二条大麦を100%使用した、全量麦麹仕込の麦焼酎です。しかも麹づくりに使われる麹菌はコクや香り豊かな酒質になる黒麹で、独自の低温蒸留を用いていること、3年以上貯蔵熟成していることも特長です。

倉嶋 「しらしんけん」は大分の方言で「一生懸命」のことですよね。うん、甘みが印象的で、酸味やボディもしっかり感じますけど、バランスがよくて飲みやすいです。

 

狩野 香りからしてインパクトがありますね。壱岐焼酎のやわらかな甘みとはまた違う、香ばしい甘みを感じます。バランスのよさは、独自の低温蒸留や長期熟成も関係しているのかな。風味はしっかりしてますけど、スイスイ飲めます。

 

倉嶋 おいしいです! この麦チョコのような甘香ばしさが、大分の麦焼酎のひとつの魅力なのかもしれません。

↑本格麦焼酎「知心剣」

 

 

狩野 次はスタンダードな麦焼酎である「よかいち<麦>白麹仕込」。やさしくまろやかな酒質に仕上がる白麹菌を使用することに加え、コクの強いタイプやすっきりしたタイプなど数種の焼酎をブレンドした、調和のとれた味わいとなっています。

 

 

倉嶋 ああ、同じ麦焼酎でも「知心剣」とは香りから違ってこれまたイイ! 味もすっきりしていて、余韻には鋭いキレを感じます。

 

↑本格焼酎「よかいち」<麦>

 

狩野 いわゆる麦焼酎の定番ですよね。甘香ばしい麦のインパクトは「知心剣」より控えめで、でもコクやキレのバランスがよく、飲み飽きないおいしさです。

 

倉嶋 確かに、万人受けしそうな味ですね。

 

狩野 最後は「琥珀のよかいち」。樫(かし)樽でじっくり寝かせた樽熟成酒を100%使用し、豊かな香りとまろやかな口あたりに仕上げられています。使っている麹は淡麗な白麹(麦麹)で、減圧蒸留によるすっきりとした余韻も特長ですね。

 

↑本格焼酎「琥珀のよかいち」<麦>

 

倉嶋 おお、これは色からして熟成の貫禄を感じます。

 

狩野 うん。まろやかな口当たりと、樽香由来のリッチな風味。洋風な食事にも合いそうです。

 

倉嶋 先ほどのふたつの麦の甘みとは違う、大人な甘みが魅力ですね。

 

狩野 そう、ウイスキーのようなニュアンスがあって。とはいってもウイスキーとは明らかに違うんですよね。アルコール度数が低いというだけでなく、どこか繊細でまろやかで。

 

倉嶋 麹で仕込むと、このなんともいえない焼酎の和のニュアンスが出るんでしょうね。それに、料理に合わせてみると、相性の広さも感じます。飲み方を変えればその幅はより広がりますし。

 

狩野 こってりした味には特に合うと思います。九州の醤油を使った甘じょっぱい料理、たとえば豚の角煮などでしょうか。脂がのっていて味付けも濃厚ですが、麦焼酎ならしっかりマッチして油っこさも切ってくれます。

 

倉嶋 お湯割りなら温度帯でも調和しますから、理にかなった組み合わせですよね。馬刺しや魚の刺身ならロックでキリッと合わせたり、チキン南蛮や鶏天には炭酸割りを合わせてさっぱり楽しんだり。

 

狩野 蒸留酒である焼酎は糖質ゼロですから、食中酒にも最適ですよね。

 

倉嶋 うれしい限りですよね。でもだからといって飲み過ぎには気を付けないと。これからもお酒とはいい付き合いをしていきます!

 

 

前回の芋焼酎編と合わせ、本格焼酎の二大原料についてじっくり学んだ倉嶋さん。次回の「意外と知らない焼酎の噺」も、ぜひご期待ください。

 

<取材協力>

薩摩おごじょ

住所:東京都新宿区新宿3-10-3 B1F
営業時間:月〜土曜日17:00〜24:00
定休日:祝・日曜日

※営業時間等に関しましては、店舗にご確認ください(取材日:2022年2月18日)

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・知心剣
https://shirashinken.jp/

・本格焼酎「よかいち」麦
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/yokaichi/mugi/

・本格焼酎「琥珀のよかいち」麦
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/yokaichi/kohaku/

 

【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼

「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】
「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺 【意外と知らない焼酎の噺02】
いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺【意外と知らない焼酎の噺03】
芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺【意外と知らない焼酎の噺04】

 

 

 

芋焼酎のつくり方を知り、味わいを楽しむ噺

【意外と知らない焼酎の噺04】

日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その製造方法などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

甲類焼酎の味わいの違いを学んだ前回に続く第4回のテーマは、「本格焼酎とは何か<芋焼酎編>」。第1回「焼酎って何?」で講師を務めていただいた「酒文化研究所」の狩野卓也さんから、甲類焼酎との違いや芋焼酎のつくり方、原材料、味わいなどについて伺いました。

 

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「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】
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いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺【意外と知らない焼酎の噺03】

 

●狩野卓也(左):酒文化研究所・代表取締役。洋酒メーカー勤務などを経て、1991年に同研究所を設立。1996年より現職。酒文化及び酒類ビジネスに関する調査研究や執筆、講演活動を行っている。著書に『酒と水の話-マザーウォーター』(紀伊国屋書店、同研究所編・共著)など。
●倉嶋紀和子(右):雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

「本格(乙類)焼酎」とは?

倉嶋 今回もよろしくお願いします。テーマは「本格(乙類)焼酎」の芋焼酎ということで、おさらいも兼ねてまずは「甲類焼酎」と「本格(乙類)焼酎」の違いから。連続式蒸留機で蒸留したアルコール分36度未満の焼酎が「甲類焼酎」、単式蒸留機で蒸留したアルコール分45度以下の焼酎が「本格(乙類)焼酎」ですよね。

 

 

↑単式蒸留機

 

狩野 はい。大きく分けるとその2つで、両者を混ぜた「混和焼酎」もあります。歴史をたどると、昔から日本で伝統的につくられていたのが現在の本格(乙類)焼酎。やがて明治末期に、ヨーロッパから連続式蒸留機が渡来したことで新しいタイプの焼酎、つまり新式焼酎(現在の甲類焼酎の原型)がつくられるようになりました。

 

倉嶋 甲類焼酎と本格(乙類)焼酎の原料について、規定はあるのでしょうか?

 

狩野 酒税法では、「連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)」と「単式蒸留焼酎(乙類焼酎)」それぞれについて、使用可能な原料が定められています。実は甲類焼酎でも本格(乙類)焼酎に使用される芋や麦などの原料を使用することはできるのですが、甲類焼酎は連続式蒸留によって純度を高めていくお酒なので、クリアな味わいになるサトウキビ糖蜜をベースに用いることがほとんど。そのうえで豊かな風味を付けるために、トウモロコシや麦などを原料に樽などで貯蔵した熟成酒をブレンドしたものもあります。

 

倉嶋 本格(乙類)焼酎で使用できる原料についてはどうですか?

 

狩野 本格(乙類)焼酎の主原料は、芋や麦、米、そば、黒糖、ごまなど、数が多いことは周知の通りですが、すべて酒税法で定められています。また本格(乙類)焼酎は、麹の原料に穀類か芋類を使わなければなりません。

 

●主な本格(乙類)焼酎

 

●本格(乙類)焼酎 原料別構成比

 

倉嶋 主原料については、それぞれ地域と密接につながっていますよね。沖縄の「泡盛」がタイ米ですし、奄美なら「黒糖焼酎」と、その土地ごとの特色があります。ちなみに、黒糖だけは奄美産のみ「焼酎」と認められ、それ以外の地域でつくった黒糖の蒸留酒はラムなど「スピリッツ」の扱いになるのはなぜですか。

 

狩野 そうですね。奄美群島は戦後数年間アメリカの統治下に置かれ、その際に特産品のサトウキビが本土へ輸出できず黒糖焼酎づくりが盛んになりました。しかし、日本に返還されると、黒糖原料ではスピリッツ扱いで、当時は税率が高くなるという酒税法の壁にぶつかりました。そこで、麹を使うことで奄美だけ特別に黒糖焼酎が認められたのです。

 

「芋焼酎」とはどんな焼酎なのか?

倉嶋 では、今回の本題である「芋焼酎」についてお願いします。芋焼酎はいつ頃からつくられるようになったのでしょうか?

 

狩野 ポイントはさつまいもの伝来です。諸説ありますが、日本に伝わったのは17世紀頃で、中国から琉球経由で現在の鹿児島に渡ったとか、薩摩藩の漁師が種芋を持ち帰ったと言われています。

 

倉嶋 それが薩摩の芋、つまり「さつまいも」と呼ばれるようになった由縁なんですね。鹿児島でさつまいも栽培が盛んになった理由には、地理的な条件も関係していますよね。

 

狩野 はい。火山灰などで形成されたシラス台地が多く分布する鹿児島は、稲作には不向きなのですが、さつまいもはやせた土地でも栽培できるのでうってつけでした。昔は飢饉も多かったでしょうから、重宝された食材だったと思います。加えて、アルコールは飲用される以前に軍需物資や薬品として欠かせませんでしたから、薩摩藩では芋を蒸留したアルコールの生産が行われるようになったのです。

 

↑シラス台地を作っている地層。シラスは噴火のときの火砕流や火山灰などが堆積したもの。 保水性に乏しく、やせた土壌のため農業生産性は低い

 

倉嶋 なるほど。それに、焼酎づくりはすでに九州で行われていたこともあって、鹿児島では自然と芋焼酎がつくられるようになったということですね。

 

狩野 でも、芋焼酎づくりは大変だったと思います。というのも、芋焼酎は製造がシビアなんです。

 

倉嶋 そうか! 芋は米や麦より水分や糖分が多いから腐りやすく、長期保存ができませんもんね。

 

狩野 そうなんです。では、あらためて芋焼酎の製造工程をおさらいしましょう。芋焼酎の原材料となる芋の選別と洗浄を行ったら下処理をして蒸し、細かく砕きます。次に麹と水、酵母を合わせて発酵させた「一次もろみ」に、原材料の芋と水を混ぜてさらに発酵させます。これが「二次もろみ」ですね。

次はいよいよ蒸留。本格(乙類)焼酎の場合は単式蒸留機で1回だけ蒸留し、この段階でアルコールは40度程度になります。次は雑味などを取るためのろ過を行いますが、なかには元の風味を生かすためにあえて無ろ過の焼酎もありますね。その後はタンクや甕で貯蔵をし、25度や20度といった各商品に適したアルコール度数に調整するために割り水をしてびん詰、出荷となります。

 

●本格(乙類)焼酎の製造工程

 

倉嶋 やっぱり芋は鮮度が重要ですから、基本的に収穫したらすぐに下処理してお酒にしないといけないですよね。芋の栽培時季の関係で、焼酎をつくれる期間も限られていますね。

 

↑原料芋の選別の様子

 

狩野 そうですね。栽培できる期間が短ければ生産量も少なくなり、希少品種を生むのかもしれません。芋焼酎は希少品種による限定銘柄も多いですから。

 

倉嶋 品種といえば、日本酒に酒造好適米があるように、芋焼酎には「黄金千貫(こがねせんがん)」を筆頭とした焼酎向けの品種のさつまいもがありますよね。それら品種は、焼酎にしたときにおいしくなる芋ということなのでしょうか?

 

↑黄金千貫

 

狩野 焼酎用の芋は、味だけでなく、生産効率が優れているという点でも選ばれているんです。例えば「黄金千貫」は、アルコール発酵に必要なでんぷんの含有量が豊富な品種です。ほかの品種と同じ量で仕込んだとしても、黄金千貫ならより多くの焼酎がつくれるんです。

 

倉嶋 「黄金千貫」以外ですと、「ジョイホワイト」や「シロユタカ」という品種のさつまいもを使われることが多いですか?

 

狩野 白芋の代表を挙げるとそうですね。また先ほど「焼酎にしたときにおいしくなる芋」とおっしゃいましたが、品種で味や香りの違いを出せるという点も見逃せません。そういった狙いもあって、食用でスーパーにも並ぶような「赤芋」や「紫芋」なども使われます。

 

↑赤芋

 

↑紫芋

 

倉嶋 「赤芋」や「紫芋」は限定品で多いイメージです。これらの芋で作られた焼酎は希少性も高いということでしょうか?

 

狩野 はい。最近は品種の違いによる差別化や多様化も進んでいますし、希少性を求める飲み手もいますから、いいことだと思います。

 

麹や製法の違いで生まれる様々な芋焼酎

倉嶋 では次に、麹のことを教えてください。もともと芋焼酎は「米麹」を使っていたんですよね?

 

狩野 そう、先ほど芋はデリケートという話をしましたが、麹に関しても同様で、芋はその硬さや水分量の多さから麹菌が根付きにくく麹づくりが極めて困難なため、芋焼酎に「芋麹」を使うという発想はなかったと思います。

麹をつくる麹菌にも歴史があって、明治時代頃まで、焼酎には日本酒や醤油などによく使われている「黄麹」が用いられていました。当時の南九州の芋焼酎は不味いうえ、暑い時期に腐りやすかったのですが、そこにイノベーションが起こり、より九州の気候に適した「黒麹」がつくられたんです。

 

倉嶋 なんと、九州の気候に適した麹菌ですか!?

 

狩野 「麹の神様」「近代焼酎の父」とも呼ばれる研究者・河内源一郎(※)の功績です。ヒントは、より南方の沖縄産の焼酎である泡盛にあって、その麹菌から胞子を採取して「黒麹」の分離に成功。「黒麹」は南九州の夏でも自らつくり出すクエン酸のおかげで腐敗しにくいうえ、コクや香りが豊かで、焼酎文化の飛躍に大きく貢献したんです。

 

※河内源一郎:1883年〜1948年。日本の官僚、科学者、実業家。 代々続く広島の醤油屋に生まれ、1910年に黒麹菌の培養に成功。14年後の24年に白麹菌の培養に成功し、焼酎の品質を飛躍的に向上させた。

 

倉嶋 なるほど! その後に登場したのが「白麹」ですね。

 

狩野 「白麹」も河内源一郎の研究の賜物でした。「黒麹」の突然変異で生まれ、雑菌の繁殖に強いうえ、「黒麹」より味はやさしくまろやか。こうして、「黒麹」と「白麹」が焼酎の主流となっていきました。まあ、「黒麹」の誕生は100年以上前なのでだいぶ昔ですけど。

 

倉嶋 焼酎づくりに使用される麹菌や麹には長い歴史があるんですね。麹について言えば、「米麹」はかなり昔から使われていたと思うのですが、「芋麹」はまだ新しいんですよね。

 

狩野 はい。「米麹」は奈良時代の記録にも登場しますが、1997年に誕生した「芋麹」の歴史はまだ浅く、できた当初は品質も思わしくありませんでした。以降、少しずつ技術は向上していますが、現在も「芋麹」の製造は非常に難しいとされています。事実、現在市場に出回っている芋焼酎の大半に、「芋麹」ではなく「米麹」が使われているんですよ。あまり知られてないのですが、麹まで芋の全量芋焼酎は希少なんですよね。

↑芋麹

 

倉嶋 2003年ごろには芋焼酎ブームがありましたし、そこでいっそう全量芋焼酎もクローズアップされましたよね。

 

狩野 そうですね。全量芋焼酎もそうですが、ブームによって様々なタイプの芋焼酎が日の目を見る好機となりました。例えば「甕(かめ)貯蔵」の芋焼酎とか。

 

↑芋焼酎を貯蔵する甕(かめ)

 

倉嶋 甕貯蔵焼酎もおいしいですよね! 甕の呼吸作用によって、よりまろやかな味わいになると聞いたことがあります。

 

狩野 甕貯蔵は昔ながらの製法ですが、芋焼酎のブームによって息を吹き返した印象があります。同じく甕を使う製法としては、甕で麹を仕込み、さつまいもと合わせて発酵させる「甕仕込み」もあります。

 

↑甕仕込み

 

倉嶋 甕仕込みは、甕を地中に埋めて仕込むので広い平屋のスペースが要りますし、手間もかかりますよね。

 

狩野 微生物の影響などを上手にコントロールする高い技術も必要ですしね。でもだからこそ、甕仕込みでしか出せない複雑味のあるおいしさが珍重されるのでしょう。

 

芋焼酎を飲み比べてみる

 

狩野 芋焼酎といっても、原料芋の品種や製法の違いで様々な種類があることをお話しましたが、それぞれ味の特徴は実際に飲み比べるとよりわかると思います。

 

倉嶋 はい! お待ちかねの飲み比べですね。よろしくお願いします!

 

狩野 まずは「黒甕」を飲んでみましょう。その名の通り、黒麹菌でつくった米麹を使用し、甕仕込みした芋焼酎です。

 

 

倉嶋 おいしい! さすがの香り高さで、力強い印象です。

 

狩野 これぞ黒麹といえる、ふくよかなボディとコク。わかりやすい芋焼酎のおいしさですね。

 

倉嶋 私は熊本出身ですけど、九州人にとってはどこか落ち着くというか。これぞ芋焼酎という堂々とした味わいだと思います。

 

狩野 良い意味での芋らしいクセがあって、この風味が芋焼酎の魅力ですよね。

 

倉嶋 おっしゃる通り! 味は洗練されているけど、懐かしさを覚える味。料理はそう…甘いお醤油を使った料理が欲しくなるおいしさで。

 

狩野 ああ、九州の甘い醤油ね! なるほど、確かに合うと思います。

次は全量芋焼酎の「一刻者(いっこもん)」です。技術的に難しい芋麹を使用している珍しさだけでなく、味わいの面でも芋100%ならではのおいしさを実現した名作です。

 

 

倉嶋 居酒屋でもおなじみの銘柄ですよね。うん、華やかな香りが素晴らしい!

 

狩野 ええ。すごくフルーティーな香り高さです。

 

 

倉嶋 風味とコクのバランスもよく、飲み口はすっきりでキレ味が抜群。上品な芋焼酎ですね。

 

狩野 全量芋焼酎といっても、芋らしさが伝わらないとまた飲みたいとは思わないですよね。その点「一刻者」はすごく納得できる、説得力のある豊かな芋の味と香り。では、同じ銘柄でも芋の品種が違うとどう変わるか比べてみましょう。次は「一刻者」〈赤〉です。

 

倉嶋 通常の「一刻者」の原料は白芋である黄金千貫で、「一刻者」〈赤〉は赤芋ですよね。

 

 

狩野 芋は南九州産の赤芋を使っています。違いはどうでしょう?

 

倉嶋 うわー! 香りに甘味があって、濃厚な感じです。先ほどの「一刻者」にも甘みを感じましたが、こちらはよりボリューミー。それでいて口当たりはまろやかで、やさしさも感じます。

 

狩野 うん。香りのよさはさすがですね。甘みとともにうまさの厚みを感じます。

 

倉嶋 どこか紅茶のようなニュアンスを感じます。茶葉の甘みのような。

 

狩野 なるほど、茶葉とはいい表現ですね。上品な甘みは紅茶に通じるかもしれないですね。

 

倉嶋 お湯割りにすると、より味がふくらむかも。焼酎を飲み慣れていない人にも、すごくなじみやすいと思います。

 

狩野 そうですね。「一刻者」〈赤〉はお湯割りにすると、甘みの個性がいっそう広がる気がします。

 

倉嶋 同じ芋焼酎でも、品種や麹でここまで味や香りが変わるのはすごく面白いです。最近ですと、ライチのような香りがする芋焼酎もありますし。どうやってあんなフルーティーな香味ができあがるんでしょうね?

 

狩野 特徴的な品種を使ったり、芋を熟成させたりと、意欲的な試みで新しい技術を採用していると思うのですが、工夫は様々でしょう。

 

倉嶋 フルーティー焼酎みたいな、新たな香りのトレンドが生まれているのかなぁ。かなり期待しています。

 

狩野 焼酎もここまで来たか!ってね。では、まさにそのフルーティーな焼酎としてうってつけの最新の芋焼酎を飲んでみましょう。発売されたばかりの銘柄で、その名は「ISAINA(イサイナ)」。“異才な”芋焼酎らしいですよ。まずはロックでいただきましょう。

 

 

倉嶋 ネーミングやデザインからして横文字のイメージで、新時代の到来を予感させますね。どれどれ…あっ!香りがすごく面白い。焼き芋のような感じがしますね。

 

狩野 嗅いだ瞬間はなんだか不思議ですよね? 芋だといわれればなるほどとも思いますが、果実のニュアンスも豊かですし。

 

倉嶋 味はどこか甘酸っぱさを思わせるフルーティーさを感じます。

 

狩野 炭酸で割ると、もっと果実のような香りが開きますよ。

 

倉嶋 ほんとだ! 炭酸割りだとまさにリンゴの香りですね。不思議と味がしまるうえ、凝縮感も出てきます。ロックで飲んだ時と全然ちがう!

 

狩野 飲み方でキャラクターがガラッと変わるのも面白いですよね。炭酸割りにも非常に適した味わいだと思います。

 

倉嶋 これは驚きです。私の知ってる芋焼酎ではないですね。新鮮!

 

狩野 そう。今までにない味だから、芋焼酎が好きな人でもインパクトのあるおいしさ。でも、だからこそ新しくて面白いんです。しかもこちら、麹まで芋で「芋100%」なんですよ。

 

倉嶋 へえ~「一刻者」と同じ、全量芋焼酎なんですね! でも同じ芋麹でも「一刻者」とは異なるフルーティー感で、「ISAINA」には、また新しいおいしさがあります。

 

 

狩野 ただ個性的な味わいというだけではなく、ちゃんとおいしさを追求している点はさすが。僕が「ISAINA」を飲むなら、食中は炭酸割りで、食後はロックやストレートかな。

 

倉嶋 私もそうですね。スパークリングワインのような華やかさと果実味があるけど、後口がすっきりでクイッといけて。飲み方を変えれば、より爽やかなジューシー感が楽しめます。

 

狩野 「ISAINA」は先日発売されたばかりですし、今年の芋焼酎業界における期待のルーキーですね。

 

倉嶋 はい、大注目の銘柄です!

 

本格(乙類)焼酎ブームの火付け役である芋焼酎。その大きな魅力は、原料芋の品種や製法などでキャラクターが多彩に広がる味と香りのバリエーションだといえるでしょう。次回は芋焼酎同様に、人気が高い本格焼酎<麦焼酎編>をお送りします。

 

 

<取材協力>

薩摩おごじょ

住所:東京都新宿区新宿3-10-3 B1F
営業時間:月〜土曜日17:00〜24:00
定休日:祝・日曜日

※営業時間等に関しましては、店舗にご確認ください(取材日:2022年2月18日)

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・全量芋焼酎「一刻者」・「一刻者」<赤>
https://www.ikkomon.jp/

・黒麹かめ仕込 本格芋焼酎「黒甕」
https://www.takarashuzo.co.jp/kodawarigura/kurokame/

・全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/

 

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蛇口をひねるとお酒が出てくる! レトロな雰囲気もオシャレな「蛇口酒場」

2022年の「フード」のトレンドをプロが分析。コロナ禍を経て、非接触や健康に関連した分野がさらに伸長。外食では新たな上陸系グルメが注目されたり、ユニークなシステムの飲食店が増えたりと、“新体験”がキーワードだ。今回は、レトロな雰囲気も魅力的な「蛇口酒場」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【蛇口酒場】ひねればそこから酒が出る夢のような飲食店が急増

 

蛇口酒場をはじめレトロな雰囲気の酒場が人気

外食では、酒が出る蛇口を全席に設置した店が盛り上がっている。

「蛇口から酒を注ぐという見た目のインパクトだけでなく、店員を呼ばずにおかわりできるという利便性でも人気です。蛇口酒場もそうですが、外食では引き続きレトロ回帰がトレンド。なかでも最近は装飾にネオンを使った店が増えています。外食だけでなく、流行りの若手バンドのPVにもよく登場するので注目ですよ」(中山さん)

 

【ヒットアナリティックス】飲めば飲むほど安くなるうえ待たずに楽しめる

回転寿司の給湯装置のように、飲みたいときに注げるのが特徴で、高コスパな飲み放題制を導入する店がほとんど。多いメニューはレモンサワーとハイボールだが、焼酎を扱う店も増えている。

 

宝焼酎がなんとタダ! 卸直送ホルモンも美味

焼肉店

2021年11月新装オープン

リカー・イノベーション

食肉卸直送・大衆焼肉ばりとんっ

豚肉を一頭買いして卸から直送し、弱酸性電解水で処理し新鮮なまま提供。これを、全卓に設置された蛇口から出る宝焼酎とともに楽しめる。焼酎は、割り材を注文すれば何杯飲んでも定額。

 

 

熟成ラムのジンギスカンと飲み放題ハイボールで乾杯

ジンギスカン焼肉店

2019年7月オープン

一家ダイニングプロジェクト

大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん

全卓に、飲み放題(1時間550円)のハイボール蛇口を設置。メニューの名物であるジンギスカン(一人前セット968円)とともに、お得な晩酌を楽しめる。東京都、神奈川県、千葉県で計11店舗を展開中だ。

 

 

CHECK! “ネオン”を設置した酒場も増加中!

飲食業界の一大ブームが、レトロな雰囲気を醸し出すネオンの照明だ。元祖と言われるのが、2016年に開業した大阪府の「大衆食堂スタンド そのだ」。2021年9月には東京都・五反田にも出店し、業界でも話題を集めている。

 

 

私が解説します!

フードライター

中山秀明さん

食のトレンドに詳しい。今回触れていないが「スシブヤ」など店名が横文字の“カタカナズシ”にも注目している。

1杯にここまでこだわったレモンサワーがあったか!? 中村アンも驚いた、新「麒麟特製」のつくり方とおいしさの秘密を開発者に直撃

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「とりあえずレモンサワー!」と1杯目から楽しむ人が増えている昨今。レモンサワーはレモンをぎゅっと搾っただけでできる“お手軽なチューハイ”というイメージのなかで、異彩を放つ存在がある。ブランド累計販売数量が5億本(※1)を突破した「麒麟特製 レモンサワー」だ。いったいどこまでやるの!? どうしてそこまでやるの!? 女優・中村アンも驚いた、そのこだわりぶりに迫っていこう。

※1:250ml換算(20204月リニューアル以降の累計販売数量) 


キリン 麒麟特製 レモンサワー

 

え、ただレモンを搾ってるだけじゃないの!? 中村アンが驚いた「麒麟特製レモンサワー」の味づくりの秘密

動画『中村アンが麒麟特製つくってみた篇』のなかで、中村アンさんが「麒麟特製 レモンサワー」のこだわりを実体験。「レモン搾るのってけっこう大変なんだなぁ」「(凍結レモンピールを削りながら)ハッ冷たいっ!」「12時間も煮込むの……」と、おいしさを生み出すための妥協を許さないこだわりに脱帽している姿が印象的だ。そしてラストの「そりゃ、美味しくなるわけだ。」の表情からは、彼女の納得感がよくわかる。

 

では、中村アンさんも驚いたこだわりの製法は、実際どのような味を生み出したのだろうか? 開発を担当した、キリンビールの松田莉央子さんに話を聞いた。

キリンビール マーケティング部 商品開発研究所/松田莉央子さん 「麒麟特製」ブランドは発売当初より担当。マーケティングから中味まで、商品の研究や開発を行っている

 

1.柑橘を12時間煮て味に厚みをもたらす「うまみエキス」

「麒麟特製 レモンサワー」をはじめ、「麒麟特製」ブランドすべてのフレーバーに使われているのが「うまみエキス」。これは複数の柑橘を12時間以上煮詰めたエキスで、その名の通りうまみを抽出して味の全方位に厚みをもたらしている。一般的なサワーには用いられない素材だが、その発想は「ビールやワインのような深いコクを、サワーでも表現できないか?」という思いから生まれたのだとか。

 

「サワーならではのクリアな味わいとともに、ふくよかなコク深さも表現したいと思いました。うまみによって味全体の輪郭を豊かにし、また嫌なアルコール感を抑えて飲みやすくするためにも『うまみエキス』が寄与しています」(松田さん)

 

12時間以上も煮詰めるという製法は、料理から着想を得たという。熱を加えることで、素材が持つ味わいのなかからコクや深みを引き出す。ジャムや、フルーツコンポートのようなイメージだろうか?

 

「そうですね。例えばアップルパイのりんごはシャキシャキな甘酸っぱさではなく、焼くことでりんごの酸味が穏やかになった、コクのある甘酸っぱさですよね。このような果実の魅力を、柑橘を煮込むことでサワーにプラスしたいと思いました」(松田さん)

↑果実に熱を加えることで、生の果実そのものにはない新しいおいしさを生み出したという(写真はイメージ)

 

2.レモンの多様なおいしさを表現する「レモン果汁」

レモンサワーにとって、きわめて大切な要素がレモン果汁だ。「麒麟特製 レモンサワー」では「磨きレモン果汁」に「まるごと搾り果汁」と、異なる2種の果汁を採用。それぞれの違いや、合わさることでどのような味になるのだろうか?

 

「『磨きレモン果汁』は爽やかで澄んだ酸味を。『まるごと搾り果汁』は、よりはっきりとしたレモンの香りに加え、レモンの果皮も含んでいるのでほろ苦さももっています。タイプの異なる果汁を調合することで、1種類の果汁では引き出せない複層性を生み、立体的なレモン感を実現しました。最初から最後まで、飲む経過とともにレモンの多様な風味を感じていただけると思います」(松田さん)

↑「磨きレモン果汁」に「まるごと搾り果汁」と、味わいの異なるレモン果汁を用いることで、レモンの香りや酸味だけでなく、心地よいほろ苦さや豊かな味わいも表現(写真はイメージ)

 

3.爽やかな風味を引き出した「凍結レモンピールエキス」

そして今回のリニューアルで新たに加わったエキスが「凍結レモンピールエキス」。厳選したレモンから果皮をはがしてすぐに凍結させ、丁寧にすりおろしてから低温で抽出したエキスである。こちらについても、素材の特長やレモンサワーの味への効果を聞いた。

 

「レモンがもつ魅力を、よりはっきり出したいと思い『凍結レモンピールエキス』に着目しました。厳選したレモンの果皮を凍結することで、香り高いレモンの風味を保ったまま引き出すことができます。また、低温でエキスを抽出することで、レモンピールの苦みや雑味をカットしています。それによって、爽やかなレモン感を高めつつ、雑味や苦みのない、よりクリアなレモンのうまみをつけることができました。こうして今回のリニューアルでは、さらに多彩なレモンのうまみを商品に込めることができ、いっそうおいしい『麒麟特製 レモンサワー』になりました」(松田さん)

↑厳選したレモンの果皮をまるごと凍結。豊かな味わいと香りが閉じ込められている(写真はイメージ)

 

複数の製法と多様なレモンの味わい表現。個性的な素材が合わさることで「麒麟特製 レモンサワー」のおいしさが生み出されているとのことだが、これだけこだわりが詰まっているとぶつかり合ってしまうことはないのだろうか?

 

「それぞれが独自の魅力をもっているので、使い方は苦労しました。例えば『まるごと搾り果汁』はレモンのしっかりした味を出せるのですが、レモン果皮由来の苦みもあるので扱いが難しい素材です。もちろんほかの素材も同様で、配合が少し変わっただけでも狙ったおいしさにはなりません。バランスに関しては常に意識しました」(松田さん)

 

各素材に関しても、酸味の種類、甘さの濃淡、レモンの質や香りのボリュームなどは異なる。それら一つひとつ、どういう素材を採用して組み合わせればよいかも考えて味覚設計したと松田さんは言う。

 

「バランスのよさは飲みやすさでもあり、おいしさに直結します。どう組み合わせたらお客様が求める味わいにつながるのかを考えながら足し引きを繰り返して調和させ、新しい『麒麟特製 レモンサワー』が完成しました」(松田さん)

 

目指したのは、心地よく幸せなひとときをつくるレモンサワー

いくつもの製法による特別な素材を調和させ、手間と時間をかけて作られた「麒麟特製 レモンサワー」。ここまでこだわったサワーは珍しい。どのような市場のニーズから生まれ、そして今回のリニューアルへ至ったのだろうか?

 

「数年前からレモンサワーブームが続く中、自宅でレモンサワーを楽しむお客様が増えています。その中でも、『より品質がいいもの、おいしいものを飲みたい』『自分のお酒を飲む大切な時間を楽しみたい』といったニーズは高まっていると考えています。その声にお応えできる、幸せな時間を過ごしてもらえる上質なお酒をつくりたいという思いが『麒麟特製 レモンサワー』の原点にあります」(松田さん)

 

ブームに伴って店の棚には多くの商品が並び、その味は“レモンサワー”といっても様々。アルコール度数が低かったり高かったり、無糖だったり濃厚タイプだったり。それは消費者の嗜好が多様化しているからといえるだろう。そのなかでも、「麒麟特製」のとことんこだわった上質なおいしさは異色な存在であるとともに、市場にもインパクトを与え大ヒットとなったのだ。

 

「飲用シーンとしては、食事にマッチすることはもちろん、食後などにそのまま飲んでも満足する味として設計しています。また、上質感のあるおいしさで、お客様自身に心地よく幸せな気持ちになっていただき、明日も頑張ろうと思えるレモンサワーを目指しました。味づくりにはこだわりつつ、商品はお客様自身が心地よい時間を過ごすための“そばに寄り添う脇役” 的な存在になれたらいいな、と思っています」(松田さん)

 

飲み手が主役になるためには、おいしさのインパクトはありつつも、酸味やボディといった個々の要素が過度に立たないように。この味覚設計はバランスのよさにも通じる。それもあって、「麒麟特製 レモンサワー」はアルコール度数が9%でありながら嫌なアルコール感がなく、深みがありじっくり飲みたくなる味わいに仕上がっているのだ。

 

レモンサワー市場をけん引する存在に

市場に様々なレモンサワーがあふれるなか、“上質でうまいレモンサワー”という無二のポジションを築き大ヒットしている「麒麟特製 レモンサワー」。商品コンセプトに「日本のレモンサワーを、新しく。」(※2)を掲げる理由にも納得だ。

 

2022年を迎えてさらにおいしく進化し、レモンサワートレンドのネクストステージをけん引する存在ともいえる。あらゆる食シーンに、そしてくつろぎのチルタイムに、ぜひゆっくり味わっていただきたい。

※2:麒麟特製が目指す姿勢

「麒麟特製レモンサワー」について詳しく知りたい方はこちらへ

 

取材・文/中山秀明 撮影/湯浅立志(Y2) 撮影協力/EASE

 

広告主:麒麟麦酒株式会社 広告主住所:〒164-0001 東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス 代表者:代表取締役社長 堀口 英樹 電話番号:03-6837-7002

いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺

【意外と知らない焼酎の噺03】

日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その製造方法などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

宝酒造の松戸工場で「甲類焼酎の製造方法」を学んだ前回に続く第3回のテーマは、「甲類焼酎の味わいの違い」。宝焼酎の商品開発担当者へのインタビューや飲み比べを行い、その奥深い世界に迫ります。

 

【酒噺のオススメ記事はコチラ】
「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】

「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺 【意外と知らない焼酎の噺02】

 

●倉嶋紀和子:雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

「焼酎ブーム」はワインや洋酒ブーム後に起きている

倉嶋 今回のテーマは甲類焼酎の味わいということで、まずはどのようにして誕生し、幾多の焼酎ブームを経ていまに至るのかを教えてください。

 

高井 よろしくお願いします。倉嶋さんは以前、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)と乙類焼酎(単式蒸留焼酎/本格焼酎)の成り立ちなどについて触れられたと思いますが、改めて甲類焼酎の歴史からお話しますね。

↑高井晋理 宝酒造(株)商品第一部蒸留酒課長

 

倉嶋 はい。おさらいを兼ねて、よろしくお願いします。

 

高井 甲類焼酎の起源は明治末期の1910年。甲類焼酎の製造に欠かせない、連続式蒸留が1826年にスコットランドで発明されたのですが、やがてヨーロッパから日本へ伝わりました。そして連続式蒸留機によってつくられたアルコールに、酒粕を原料に蒸留した焼酎(粕取焼酎)をブレンドして風味を付けたのが、現在の甲類焼酎の原型である「日の本焼酎」です

 

倉嶋 確か、「日の本焼酎」は宝酒造の前身にあたる会社が販売してヒットさせたんですよね。

 

高井 そうです。1910年に愛媛県宇和島の日本酒精(株)が「日の本焼酎」を開発し、1912年に当社の前身である四方(よも)合名会社が関東における販売権を取得。そして「寶」の商標で発売して大ヒットしました。いまも宝焼酎のラベルが、その歴史を物語っています。

 

↑当時の「寶焼酎」のラベル

 

倉嶋 1912年といえば明治45年であり、大正元年。この焼酎は旧来の焼酎に対し「新式焼酎」とも呼ばれていたそうですが、実際に新時代の焼酎だったというわけですね。

 

高井 おっしゃる通りです。そして、1916年には四方合名会社が、その「新式焼酎」開発の功労者である大宮庫吉(おおみやくらきち)を招へいし、自社製造による新式焼酎「寶焼酎」を誕生させました。特に売れ行きがよかったエリアは東京です。くせの少ない軽快な味わいが、関東圏を中心とした都市生活者や旧来の焼酎の味に馴染めなかった人々に支持されたのではないかと言われています。寶焼酎は大正~昭和にかけて東京を中心に大ヒットし、戦後復興期の物資や食料不足が続くなかでは、大衆のお酒として重宝されました。

 

倉嶋 チューハイ(酎ハイ)の語源でもある、焼酎ハイボールが誕生するのもこの戦後復興期の東京の下町ですよね。

 

【酒噺のオススメ記事はコチラ】
【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

 

高井 はい。焼酎ハイボールの誕生と普及は、当時の焼酎トレンドにおいても色濃く関係していますね。そして高度経済成長期を経て、以降の焼酎ブームには、ある法則がみられるようになります。

 

倉嶋 何でしょう、気になります!

 

高井 それは洋酒のブームが定期的に起こり、そのあとに「焼酎ブーム」が来ているということです。例えば1981年、1998年ごろにワインブームが起こったあと、それぞれチューハイブーム、本格(芋)焼酎ブームとなりました。

 

●近年のお酒のブーム

 

倉嶋 なるほど! 確かに近年でもハイボールやウイスキーのブームのあとに、レモンサワーブームで焼酎が脚光を浴びてますもんね。

 

高井 はい。もともとの健康志向の高まりに加えて、最近ではステイホームで外出も減っているので、糖質ゼロ・プリン体ゼロの焼酎を使ったレモンサワーが、家飲みでも重宝されています。

 

超高純度アルコールと樽貯蔵熟成酒がおいしさの要

倉嶋 歴史とブームの変遷を学んだところで、次は甲類焼酎の味わいについて詳しく教えてください。特に宝酒造の焼酎はラインアップが豊富で、それぞれ個性的な味わいですから興味深いです。

 

高井 当社は、ピュアなアルコールをつくれる設備と技術を持っていることが大前提としてあります。

 

倉嶋 ピュアなアルコールが、おいしさの絶対条件であると。

 

高井 そうですね。松戸工場の連続式蒸留機をご見学いただきましたが、十数本の蒸留塔を備え、最も高い塔は約35m、直径約2.5m、最多で60段もの棚段というスケールは日本最大級です。

↑松戸工場の連続式蒸留機

 

倉嶋 巨大な蒸留機のなかに、緻密な構造がいくつも設けられていると伺いました。

 

高井 はい。設計については独自の意向を細かく反映させており、どう運転させるか、組み合わせるかなど、ノウハウを含めていくつもの独自技術が採用されています。業界屈指の蒸留設備と技術があるからこそ、10億分の1レベルで不純物濃度をコントロールできるのです。

 

倉嶋 10億分の1ですか!

 

 

高井 蒸留されるアルコールの純度は99.99%以上(水を除くエタノールの純度)。不純物は渋味や辛さといった雑味につながり、この成分の濃度が低いことがデータでも明らかになっています。これが独自技術によるものであり、ベースのアルコールがピュアだからこそ、味にブレのない宝焼酎を開発できるのです。

 

倉嶋 ピュアでクリアだから、狙った味づくりがしやすいということですね。

 

高井 はい。この超高純度アルコールがあるからこそ、当社が長年培ってきたブレンド技術がより活きるのです。

 

倉嶋 なるほど。ブレンドによって商品ごとに品質の設計をしているんですね。

 

高井 先ほど「新式焼酎」のお話をしましたが、100年以上前は連続式蒸留機で蒸留したアルコールに加水し、酒粕を原料にした粕取焼酎をブレンドして製品化していました。クセのない軽快な口当たりやまろやかな芳香は、それまでの焼酎よりケタ違いにおいしいと大好評だったそうです。

 

 

倉嶋 今も昔も、おいしさと人気は比例しますよね。

 

高井 現在、当社ではサトウキビ糖蜜を原材料とするピュアなアルコールに、粕取焼酎ではなくトウモロコシや大麦などを原料に使用した熟成酒をブレンドしています。原材料はラベルにも明記されていますが、この樽貯蔵熟成酒も宝焼酎にとって欠かせません。

 

 

倉嶋 超高純度のアルコールと樽貯蔵熟成酒。それぞれをつくり、ブレンドする技術が宝焼酎のおいしさの要ということですね。この樽貯蔵熟成酒というものはどちらに貯蔵されているのですか。

 

高井 はい、宮崎の高鍋町に「黒壁蔵」という当社の工場があるのですが、そこの樽庫で貯蔵しています。現在、約85種類、約2万樽を保有しています。

 

倉嶋 宮崎・高鍋の蔵に2万樽も!

 

高井 今回、特別にベースのアルコールと樽貯蔵熟成酒を数種用意しました。香りや味わいを比べていただくと、個性や違いがよくわかると思います。どうぞ!

 

倉嶋 貴重な体験ですね! うれしいです。

 

テイスティングで甲類焼酎の多彩な味わいを実感

高井 まずはベースの違いから。蒸留前の「粗留アルコール」(※)と蒸留後の「高純度アルコール」とで、雑味がどうカットされているかを感じていただけたらと思い用意しました。飲用ではありませんので、香りを嗅いでチェックしてください。

 

※粗留アルコール:穀物、サトウキビ等を発酵させて蒸留したアルコール。現在は主に海外(ブラジル等)で生産されたものを輸入している。

 

倉嶋 あ、粗留アルコールのほうは、どこかエキゾチックな香りがしますね。想像したほどネガティブではないですが、パンチのある香りです。それに比べて蒸留後の高純度なアルコールは、元は同じアルコールなのに、ここまでクリアになるとは驚きです。

 

高井 蒸留の設備や技術が確かでないと高純度アルコールになりません。そして純度が高くないと、製品化した際に求める味わいになりません。品質を高め維持していくためにも、最高水準の蒸留設備と技術にこだわっていくことは欠かせないのです。

 

倉嶋 なるほど、先ほど高井さんがおっしゃった、ピュアなアルコールづくりの大切さがよくわかりました!

 

高井 では、次に樽貯蔵熟成酒を。一方はトウモロコシを原料にした、樽で1年貯蔵した熟成酒。もう一方はトウモロコシ、大麦などを原料に3年樽貯蔵した熟成酒です。こちらは口に含んでいただいて大丈夫ですので、ぜひ飲み比べてみてください。

↑トウモロコシ、大麦などを原料に3年樽貯蔵した熟成酒(左)。トウモロコシを原料にした、貯蔵1年の貯蔵熟成酒(右)

 

倉嶋 どちらも微かに、樽熟成による色が付いてますね。トウモロコシの方は、熟成期間が1年ですけど十分な厚みを感じます。これだけでもおいしく飲めますね。そして3年熟成の方は、いくつかの味が重なり合ったような印象。その中でもやっぱり麦感が豊かで、この膨らみがカギなんでしょうね。おいしいし、飲み続けたくなる味わいです!

 

高井 次に、樽貯蔵熟成酒がブレンドされると甲類焼酎の味にどう違いが出るかを飲み比べしてください。ご用意した焼酎のアルコール度数は25度なので、水で1:1に割って約12.5度に調整してあります。まずは何もブレンドしていない甲類焼酎からどうぞ。

↑ずらっと並んだ宝酒造の「甲類焼酎」。一番右のものが何もブレンドしていない甲類焼酎

 

倉嶋 待ってました! うん、ブレンド無しでもクリアでトゲがなく、すっきりした味わいですね!

 

高井 お次は定番の「宝焼酎」です。おいしさや飲みやすさを感じていただけるかと。

宝焼酎

 

 

倉嶋 おなじみの宝焼酎ですね。あ、でもこうして飲み比べるとより違いがわかります! さっきはしっかりしたボディをストレートに感じましたが、こちらはカドがまろやかになって、よりスムース。

 

高井 飲み慣れている味でも、比較するとわかりやすいですよね。では次に、樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドした「極上<宝焼酎>」もお試しください。

↑樽貯蔵熟成酒を3%使用したひとクラス上の「極上<宝焼酎>」

 

倉嶋 わっ、リッチな香りをダイレクトに感じます。味もいっそうなめらかで、水で割るだけでもスイスイいけますね。

 

高井 ありがとうございます。こちらはひとクラス上の芳醇な味わいが好評です。ブレンド比率の違いによる奥深さを実感いただけたと思いますが、次はよりリッチな「純」をご賞味ください。こちらは11種類の樽貯蔵熟成酒を13%使用しています。

↑11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝焼酎「純」

 

倉嶋 うん、舌の上をトゥルンとすべるようなまろやかさが印象的。余韻にバニラを思わせる甘みもありますかね。「純」も馴染み深いブランドですけど、じっくり味わうと改めて品質の高さを実感します。

 

高井 「純」をチューハイのベースにされるお店もありますから、倉嶋さんならよく召し上がってらっしゃるかもしれませんね。なお、ほのかな甘みの心地よさはまさに樽のニュアンスです。そして次は樽貯蔵熟成酒を20%使用した「レジェンド」。液体の琥珀色は焼酎の規格内の色度(しきど)になっています。

 

↑色付きの焼酎として代表的な銘柄が宝焼酎「レジェンド」。樽貯蔵熟成酒を20%使った深いコクと豊かな香りが魅力です

 

倉嶋 確かに「レジェンド」は色も特徴的です。「純」も13%使用でコク深いですが、色はクリアですよね。

 

高井 「純」の開発には、1974年にアメリカで起こったバーボンとウオッカの消費量の逆転現象である「ホワイトレボリューション」が関係しています。透明な蒸留酒のトレンドが日本に到来することを見据えて、1977年にデビューし大ヒットしました。そのため、「純」にブレンドする樽貯蔵熟成酒は、色をクリアにして、透明だけどコク深いおいしさをつくり上げたのです。一方、「レジェンド」は樽熟成による魅力と高級感をお届けすべく、1988年に誕生したブランドです。

 

倉嶋 背景を聞くと、それぞれのおいしさもいっそう染みわたりますね。では「レジェンド」もいただきます。おぉ~、これはウッディな樽香がふくよか。はちみつ的な甘い香りもあって、華やかなテイストです。どっしりとしていながらも、まろやかで飲みやすいですね。

 

高井 ありがとうございます。「レジェンド」は炭酸割り(ハイボール)もおいしいですし、ロックでじっくりとその味わいを楽しまれるお客様も多いと思います。

 

倉嶋 私はロックやストレートで飲むなら「レジェンド」ですね。「純」はいつものチューハイだけでなく、レモンサワーでも飲んでみたいと思いました。

 

高井 レモンサワーといえば宝焼酎「レモンサワー専用」もありますので、最後にこちらをどうぞ。樽貯蔵熟成酒を3%使っているほか、レモン系の香り成分を含むハーブを一部使用し、レモンの風味を引き立てる設計になっています。

↑レモンの風味を引き立てる、レモンサワーのために開発された宝焼酎「レモンサワー専用」

 

倉嶋 あ、これはまた清々しい香り。ストレートで飲んだだけですけど、どこか酸味を感じ、エスニック料理が食べたくなります。

 

高井 さすがですね。原料の一部にレモンマートルという柑橘系の香りを感じるハーブや、エスニック料理で多用されるコリアンダーシードも使用しているんです。

 

倉嶋 いろいろ飲み比べもさせていただきましたが、どれも個性があっておいしいです。このまま置いてあったらついどんどん飲んじゃいそう(笑)。割り方でも味が変わるので、改めて家でも試そうと思います。

 

高井 お酒好きの倉嶋さんにそう言っていただき、光栄です。甲類焼酎は本来、ピュアでクセがないからこそお茶などで割ったり、自分好みの度数に調整して楽しめるのが特長ですが、こういった味わいの違いによって様々な楽しみ方ができることも実感していただけて良かったです。

 

倉嶋 今日はすごく勉強になりました。ありがとうございました!

 

 

【意外と知らない焼酎の噺】第3回はここまで。宝焼酎のおいしさを左右する「樽貯蔵熟成酒」についても気になるところですが、次回の第4回は「甲類焼酎」から「本格焼酎」に切り替えてその魅力を探ります。

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/lineup/gokujo-takara-shochu.html

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

・宝焼酎「レジェンド」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/legend/

・宝焼酎「レモンサワー専用」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/lemonsour/

 

【意外と知らない焼酎の噺】バックナンバーはこちら▼

「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】

「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺 【意外と知らない焼酎の噺02】

 

ありそうでなかった“新しい”甲類焼酎! 自分好みのおいしいサワーを手軽に作れる、宝酒造「タンチュー」

宝酒造株式会社は、割材を入れるだけで自分好みのサワーが手軽に作れる“炭(タン)酸入り焼酎(チュー)”、『極上<宝焼酎>「タンチュー」』を、3月1日に新発売します。

 

近年、手作りサワーのおいしさに注目が集まっている一方、サワーを作る際に面倒なのは、「果実の準備」ではなく「炭酸水の準備」であるということが、同社の調査の結果、明らかになりました。

 

同商品は、同社の『極上<宝焼酎>』と強炭酸をベストバランスで配合した、甲類焼酎の新形態。炭酸を準備する手間がいらず、レモンなどのお好みの割材を加えるだけで、手作りサワーを楽しめます。ベースに使用している極上<宝焼酎>は、大麦とトウモロコシの樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドしており、樽貯蔵熟成酒由来の芳醇な味わいとまろやかな口当たりが特徴です。

 

税別価格は、350mlが128円、500mlが174円。500mlはコンビニエンスストアルート限定販売です。

焼酎の「前割り」はなぜ美味い? 焼酎の謎に科学で迫る!~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。みなさんはどのお酒が好きですか? 私はもっぱら赤ワインを飲んでいますが、友人に言わせると「酒飲みは最後に焼酎に行き着く!」とのこと。何を根拠に言っているのかは定かではありませんが(笑)、確かに焼酎だとおでん、焼き鳥、サバ味噌など大概の和食に合うし、ロックでもお湯割りでも梅干しを入れても美味しく飲めて、日本の食卓にピッタリ。すでに焼酎に行き着いているという方も多いかもしれません。

 

謎多き酒・焼酎を科学的に解明

今回紹介する新書は焼酎の科学 発酵、蒸留に秘められた日本人の知恵と技』(鮫島吉廣、髙峯和則・著/講談社ブルーバックス)。焼酎とはそもそも何か、どうしてこれほどまで愛されているかが科学的に分析されます。自分の好きなものの秘密が理屈でわかると、世界が開けたような気がしてうれしいですよね。

 

著者の鮫島吉廣さんは、ニッカウヰスキー、薩摩酒造を経て現在は鹿児島大学客員教授。焼酎の研究を40年以上続けています。焼酎文化や歴史など鹿児島の焼酎の伝え手を育成する「かごしま焼酎マイスターズクラブ」理事長であり、焼酎に関する著書多数。また、髙峯和則さんは鹿児島大学農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター教授で、本書では焼酎研究の最前線について執筆を担当しています。

 

サツマイモの部位で風味が変わる!?

焼酎とはどのようなお酒かというと蒸留酒の一種。蒸留酒はアルコール発酵させた液体を沸騰させて発生した湯気を冷やしたもの。つまり「湯気の集まり」なのですが、同じ蒸留酒でもウイスキー、ブランデー、ラムと生まれた土地によって香りも味わいもまったく異なります。

 

焼酎のカテゴリでも、薩摩の芋焼酎、沖縄の泡盛、壱岐の麦焼酎、球磨の米焼酎……とそれぞれ個性的。最近では、「水やお湯で割って飲む」「ウイスキーなどと違って熟成させずに飲む」といった珍しい特徴から海外でも注目されているそうです。

 

第1章は焼酎の歴史、第2章は発酵や麹などの基礎知識、第3章は焼酎ができるまでの製法……と、身近ながらあまり知られていない“焼酎の世界”が科学的な説明を交えつつわかりやすいテキストで解明されていきます。

 

焼酎の奥深さを感じさせるのが第4章「最大の謎『風味』の科学」。芋焼酎の独特の風味は麹が作り出したもの。甘い香りの「イソアミルアルコール」や、バラの香りの「β-フェネチルアルコール」、バナナの香りの「酢酸イソアミル」など、0.2%ほどの微妙な成分が焼酎の個性を決めているのだそうです。

 

用いるサツマイモの部位で風味が異なる、というのも驚きでした。中心部には「ネリル配糖体」、表皮近くには「ゲラニル配糖体」や「リナリル配糖体」などが多く分布し、中心部のみで造った焼酎はスッキリ、表皮部のみだと華やかな味わいになるとか。

 

また、最近流行っている、あらかじめ焼酎と水を混ぜて2~3日寝かせておく「前割り」についても説明されています。美味しく感じるのは“おあずけ”されているからではなく(笑)、時間が経過すると、舌を刺激するエチルアルコール分子の周りを水が取り囲む「分子会合」という現象が起きるから。それでまろやかになるのですね。

 

そのほか、どうして最近の芋焼酎は臭みが少ないのか? 科学的に考える美味しいお湯割りの作り方は? など焼酎の素朴な疑問にも答えています。単なる焼酎のガイド本ではなく、しっかり勉強になるのがブルーバックスらしいところ。研究対象として長年焼酎と付き合ってきた科学者の愛情が伝わってきます。本書を読むと、焼酎のお湯割りがますます美味しくなりますよ。

 

【書籍紹介】

焼酎の科学

著者:鮫島吉廣、髙峯和則
発行:講談社

魅惑の酒、焼酎の七不思議に迫る。身近な存在ながら、じつは非常に特殊な蒸留酒、焼酎。どんな原料でも焼酎にできて、蒸留酒なのに新酒でも旨く、健康にも良い。蒸留すればただの「湯気の集まり」のはずなのに、さまざまな個性的な風味も持っている。今や世界から注目を集め、国酒にも認定された焼酎には、清酒を造れなかった九州地方の人々が生み出した知恵と技が詰まっている。知るほどに驚く、焼酎の世界へ!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

「甲類焼酎の製造方法」を工場で学ぶ噺 

【意外と知らない焼酎の噺02】

日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その製造方法などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

 

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

焼酎の定義や歴史を学んだ前回に続く第2回のテーマは「甲類焼酎のつくり方」。そこで、日本最大級の焼酎製造場である宝酒造の松戸工場(千葉県松戸市)を訪問。工場長へのインタビューと製造現場の見学を通して、甲類焼酎の魅力に迫ります。

 

【酒噺のオススメ記事はコチラ】
「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】

 

●倉嶋紀和子:雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

↑宝酒造・松戸工場。全国に6か所ある宝酒造の製造拠点のうち最東の基幹工場で、主に東日本全域の商品供給を担っています

 

「醸造酒」と「蒸留酒」の違いとは?

倉嶋 本日はよろしくお願いします。今回は甲類焼酎のつくり方がテーマですが、まずは基本的なところで、醸造酒と蒸留酒の違いから教えてください。

 

森山 はい。「醸造酒」は、穀物や果実などの原料を酵母によりアルコール発酵させたお酒のことです。そして、この醸造酒を蒸留してつくるお酒が「蒸留酒」です。

↑森山龍士工場長

 

倉嶋 分類すると、日本酒、紹興酒、ビール、ワインなどが「醸造酒」。焼酎、ウイスキー、ブランデー、ウォッカなどが「蒸留酒」ですよね。

 

 

森山 はい。具体的なところは醸造酒からお話ししましょう。醸造酒のなかでも原始的なのはワインです。ぶどうを搾った液体を放置して、ぶどうの皮の酵母がぶどうの糖分を食べてアルコールに変えることで、ワインができ上がります。

ワインはぶどうの糖分が豊富なのでそのまま醸造できるのですが、日本酒やビールの場合は原料の米や麦が糖分が少ないので、そう単純にはいきません。そこで麹菌や麦芽を使ってでんぷんを糖に変え、その後酵母を加えて発酵させアルコールを含んだもろみ(発酵液)へと変えていきます

 

倉嶋 焼酎の場合も、まずは芋や麦などを発酵させてもろみをつくり、そのあと蒸留させるという工程ですよね。麹は米、麦、芋などが原料ですか。

 

森山 そうですね。原料と麹と水で液体をつくって、発酵させたもろみを蒸留機で沸騰させ、蒸発した気体を冷却することによってアルコール度数の高い液体ができあがります。こうして原料の風味やアルコールを凝縮させた蒸留酒が焼酎です。

 

●単式蒸留の仕組み

↑水とエタノール(アルコール)の沸点の差を利用する。水より沸点の低いエタノールが先に気化し、その気体を凝縮することでアルコール度数が高い液体が抽出できる

 

倉嶋 蒸留の際に、連続式蒸留機を使えば「甲類焼酎」に。単式蒸留機を使えば「本格(乙類)焼酎」になると。

 

森山 「連続式蒸留機」は蒸留塔にもろみを連続投入し、十数本の蒸留塔で蒸留を何度も繰り返すことで純度の高いいクリアな味になるのが特徴です。もろみには穀物のほか、さとうきびもよく用いられ、甲類焼酎はさとうきびの糖蜜が主原料となります。

一方の「単式蒸留機」は複数回蒸留する連続式蒸留機と違い、1工程における蒸留は1回。そのため、蒸留後の液体のアルコール度数もそこまで高くなりません。その分、素材の風味が生きた、個性的な焼酎がつくれるのも特徴で、もろみには米・麦などの穀類やさつまいものほか、そば、黒糖、ごまなど様々な原料が使われます。

 

●連続式蒸留機の仕組み

↑単式蒸留を繰り返すのと同じ効果が得られ、下段の蒸気が上段の液体を温め、またその液体が蒸気になってさらに上段の液体を温めていく。中央部から入れられた原料は、蒸気の熱によって低沸点成分であるエタノール(アルコール)と高沸点成分(水)に分離。気化した低沸点成分(エタノール)は上段にいき、液体のままの高沸点成分(水)は下段にいく。上段にいくほどエタノールが濃縮され純度が高くなる

 

倉嶋 そして、松戸工場のシンボルともいえるのが、あの大きな連続式蒸留機ですよね。改めて、甲類焼酎のつくり方も教えてください。

 

森山 主原料となるのは、さとうきび糖蜜等がベースの粗留アルコール(※)。こちらを連続式蒸留機の蒸留塔に供給し、蒸発、分縮、還流という作用によって純度の高い原料用アルコールを生成します。そしてこの高純度アルコールに割水(加水してアルコール度数を調整)し、精製することで一般的な甲類焼酎が完成となります。

 

※粗留アルコール:穀物、サトウキビ等を発酵させて蒸留したアルコール。現在は主に海外(ブラジル等)で生産されたものを輸入している。

 

倉嶋 このあと、蒸留塔も見学させていただけるとのことで、ワクワクしています。

 

国内最大級の蒸留塔は最大約35mの高さ!

↑十数本の蒸留塔を有する、松戸工場の巨大な連続式蒸留機

 

倉嶋 近くに来ると、いっそうすごい迫力ですね。

 

森山 最も高い塔は約35m、直径約2.5mあり、内部は最多で60段もの棚段に分かれています。日本最大級の連続式蒸留機だと思いますよ。内部をお見せするので、ついてきてください。

 

↑蒸留塔の中で森山工場長の説明を受ける倉嶋さん

 

 

倉嶋 管がひしめき合っていて、バルブの数も多いですね。先ほどおっしゃっていた、連続式の蒸留がこの塔の中で行われているんですか?

 

森山 はい。下段の蒸気が上段の液体を温め、またその液体が蒸気になってさらに上段の液体を温めます。こうして蒸留を繰り返すことで不純物を除きながら、最終的に純度99.99%以上(水を除くエタノールの純度)のピュアなアルコールをつくります

 

倉嶋 純度99.99%以上! 雑味がほぼ皆無だから、苦みや辛さといったトゲのないクリアなおいしさが生まれるんですね。

 

森山 そうなんです。では中身の製造工程の次は、詰口(充填)のエリアへ行きましょう。まずは「壜(びん)詰場」へ案内します。

 

↑広大な松戸工場内を徒歩で移動。工場内を縦横無尽にパイプが走っています

 

 

甲類焼酎の製造現場最前線へ!

倉嶋 こちらも広いですね!

 

森山 液体の種類や容器ごとにラインが分かれていて、焼酎のほかにもみりんと料理清酒のライン、ウイスキーのライン、一升びんのライン、紙パックのラインなどもあります。焼酎は360mlびんから4Lペットボトルまでがここで詰められています。

 

↑この日は大定番商品である「宝焼酎」の4Lペットボトルの詰口が行われていました

 

倉嶋 回転している機械がフィラー(容器に中身を詰める機械)ですか?

 

森山 そうです。いまご覧になっているフィラーは4Lのペットボトルに焼酎の中身を詰め、キャッピングしたら検査。その後ラベルを貼って、段ボールの箱に梱包する流れです。

 

 

↑「宝焼酎」4Lのペットボトルを持つ倉嶋さん

 

森山 次は缶の詰口ラインをお見せしましょう。

 

倉嶋 缶チューハイですか! 楽しみです!

 

人気のタカラ「焼酎ハイボール」の詰口ラインに潜入!

森山 缶の工程も、基本的にはびんと一緒。充填したら「巻締(まきじめ)」という手法で封をして、殺菌と検査、そして箱詰めします。いまは350mlの缶に充填しているのですが、500mlより容量が少ない分、満充填されるのが早いので、全体の動きもよりスピーディですね。

 

倉嶋 たしかに、ものすごいスピードですね!

↑高速で回転しているフィラー

 

森山 スピードが速いので、ずっと見ていると目が回るから気をつけてください(笑)。

 

倉嶋 ホントですね、いま流れているのはどの商品ですか?

 

森山 タカラ「焼酎ハイボール」のレモンですね。缶チューハイの場合は3~4倍の濃縮液と水と混ぜ、同時に炭酸ガスも充填します。

↑こちらは500mlの缶胴と缶ブタのサンプル。中身の充填後に「シーマ」という巻締機で密封します

 

倉嶋 その工程を、缶チューハイ用のフィラーで行っているんですね。

 

森山 はい。フィラーで充填したら巻締し、次は検査です。X線検査機で中身がしっかり入っているかをチェックしたら、パストライザーという装置で殺菌。その後、X線で再検査します。

 

倉嶋 X線検査は2回行うんですね。

 

森山 2回目は缶を上下逆さまにしたり、水を噴射して缶が通る空間を洗ったりしながら、異常や漏れなどがないかを隅々までチェックします。

 

倉嶋 そして最後は箱詰めですね。

 

森山 はい。詰めたら施設の隣にある物流センターへ運び、そこで保管します。蒸留とボトル・缶それぞれの詰口説明は以上となります。

 

倉嶋 製造現場を見学させていただいたことで、より焼酎をおいしく楽しめそうです。貴重な体験をありがとうございました!

 

松戸工場からお届けした【意外と知らない焼酎の噺】第2回はここまで。第3回は、焼酎の開発担当者から甲類焼酎の歴史や味の特徴を伺います。

 

※宝酒造・松戸工場では通常、工場見学は行っておりません。

 

【酒噺のオススメ記事はコチラ】
「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺【意外と知らない焼酎の噺01】

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・タカラ「焼酎ハイボール」
https://shochu-hiball.jp/

 

【意外と知らない焼酎の噺】そもそも「焼酎」とは何なのか?

日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その歴史やつくり方などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

第1回のテーマは、ズバリ「焼酎とは?」。焼酎がカテゴライズされる蒸留酒の奥深い歴史にも触れながら、ルーツや定義などをご紹介していきます。講師は、あらゆるお酒に詳しい「酒文化研究所」の狩野卓也所長。倉嶋さんとの対談で、焼酎というお酒がどのようにして誕生し広まっていったのかを深掘りしました。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

狩野卓也(左):酒文化研究所・代表取締役。洋酒メーカー勤務などを経て、1991年に同研究所を設立。1996年より現職。酒文化及び酒類ビジネスに関する調査研究や執筆、講演活動を行っている。著書に『酒と水の話-マザーウォーター』(紀伊国屋書店、同研究所編・共著)など。
倉嶋紀和子(右):雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

 

「焼酎」とは基本的には「洋酒以外の蒸留酒」である

倉嶋 お久しぶりですね。本日はよろしくお願いします! 今日は焼酎の基本的なことをお伺いしたいのですが、そもそも焼酎とはどういうお酒のことを指すのでしょうか?

 

狩野 今回は歴史のこともお話しますが、大前提として、誕生当初の焼酎と、現在私たちが目にしている焼酎とでは少々違っている部分があります。「焼酎とは何ですか」という定義に関しては日本の酒税法による定めです。非常に幅広いですね。ざっくり言えば、アルコール含有物を蒸留したものがすべて焼酎。ただし、ウイスキーやラム、ジンなど、一般的に「洋酒」と呼ばれる蒸留酒は除きますし、使ってよい原材料をはじめ、アルコール度数や色にも規定があります。

 

●焼酎の定義

 

倉嶋 製法や飲み方というより、税率を区分するための定義であると。それもあるからか、原料でカテゴリーがわかれる洋酒と違って、焼酎は芋、米、麦、黒糖、そばなど種類が多彩ですよね。

 

狩野 洋酒と焼酎の違いを、「ウイスキー」と「麦焼酎」を例にして挙げるとすれば、一番は「の有無です。焼酎はまず、原料を発酵させて醸造酒のようなものをつくり、そこから蒸留を経て完成させますよね。この醸造酒が大麦ならビールのような液体からウイスキーへと蒸留されるのですが、発酵前の糖化に麦芽を使用すればウイスキー、麹を使用すれば麦焼酎へと分類されるのです。

 

倉嶋 ウイスキーなどの洋酒はその昔、税率が高かったんですよね。

 

狩野 はい。海外から入ってきたビールやウイスキーなどは贅沢品とみなされて、高い酒税がかけられていました。一方で、もともと広く飲まれていた焼酎は大衆のお酒。酒税が低いため、庶民でも買いやすかったので、飲み手と造り手の関係性も守られていたのです。ただし、そのぶん、アルコールの度数帯や色の濃さなど細かいルールが定められました。

 

倉嶋 なるほど、そういう過程があっていろいろと規定されているんですね。

 

↑色付きの焼酎として代表的な銘柄が宝焼酎「レジェンド」。樽貯蔵熟成酒を20%使った深いコクと豊かな香りが魅力です

 

ルーツはメソポタミア文明にあり、焼酎は戦国時代に生まれた!

狩野 焼酎におけるアルコール度数の規定は、連続式蒸留機による焼酎なら36度未満、単式蒸留機なら45度以下というものですが、蒸留機の違いも重要です。

 

●蒸留機の違いとアルコール度数の規定

 

倉嶋 焼酎は大きく分けると「連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)」と「単式蒸留焼酎(乙類焼酎または本格焼酎)」の2つ。あとは両者を混ぜた「混和焼酎」ですよね。では改めて、焼酎の成り立ちから教えてください。

 

狩野 蒸留という技術でお酒がつくられ、焼酎をはじめとする広義の蒸留酒が誕生したのは紀元前。メソポタミア文明下で生まれ、やがて大陸を渡って日本にやってきたのは14~15世紀。伝来はシャム(タイ)~沖縄説(図表①)、ラオスから中国に伝わり倭寇(わこう。日本の海賊)が壱岐対馬に持ち帰った説(図表②)、そしてラオス、中国を経て朝鮮半島から壱岐対馬に伝わった説(図表③)と、時系列ははっきりしていませんが、これらのルートで伝来したと言われています。

 

●焼酎の日本への伝来ルート

 

倉嶋 なるほど。泡盛の主原料はタイ米ですもんね。一方、九州は中国経由で焼酎になったと。

 

狩野 はい。そこから、いま私たちが目にしている焼酎が生まれたのは戦国時代(室町時代後半)だと言われています。農民が庭先で作っていたようなお酒が原型ですね。「焼酎」という記述の最古は、永禄2年(1559年)のもの。織田信長と今川義元が戦った、桶狭間の戦いの前年です。

その記録があるのは、鹿児島県伊佐市の郡山八幡神社。大工の棟梁だと思われる人物が書いた落書きに「ここの施主は、ケチだから焼酎をふるまって(飲ませて)くれない」といった内容が記されているのです。これはつまり、庶民が焼酎を飲む文化がこの時代にあったということ。まさか、悪口が歴史的記録になるとは夢にも思わなかったでしょう。

 

倉嶋 素敵な落書きですね(笑)。ちなみに鹿児島とはいえ、この時代はまだ芋焼酎ではないですよね?

 

狩野 そうですね。さつまいもの伝来は1600年ごろですし、米も当時は貴重でしたから、この焼酎の主な原料は、きびやあわなどの雑穀ではないかと言われています。そしてもうひとつ、当時すでに存在していたのが「粕取り焼酎」。

 

倉嶋 あっ、酒粕由来の「粕取り焼酎」。俗にいう、戦後の貧しい時代に闇市などで売られていた「カストリ(焼酎)」とは違うんですよね?

 

狩野 ええ。そこはかなり重要な部分です。もともと「粕取り焼酎」は、酒粕からアルコール分を除去して、良質な肥料を作る過程でできた焼酎と考えられていて、九州でも南部に比べて稲作が盛んな北部の農村地では田植え期に肥料を作るため、酒粕の蒸留が行われるようになりました。一方で「カストリ(焼酎)」のカスは、それこそ「残りカス」という意味です。

 

倉嶋 「カストリ(焼酎)」は密造酒と言われてますもんね。「酒になるものならなんでもいいからつくっちゃえ」的な。味も粗悪だったことから、この時代「(粕取り)焼酎」にネガティブなイメージが付いてしまったと。

 

狩野 呼び方が一緒なのでイメージを大きく傷つけられてしまったのです。正しくつくられた「粕取り焼酎」は酒粕由来の香りが特徴で、いまも九州北部を中心に根強いファンがいるんですよ。

 

連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)は明治末期に誕生した

倉嶋 では、先ほどおっしゃっていた「連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)」と「単式蒸留焼酎(乙類焼酎または本格焼酎)」、それぞれの歴史を詳しく知りたいです。

 

狩野 製法でお話しすると、伝統的なのは単式蒸留。単式とはいわば単発型の蒸留方式ということですから蒸留は1回で、アルコール度数もそこまで高くはなりません。

一方の連続式蒸留は、1826年にスコットランドで連続式蒸留機とともに発明された製法。1回で連続的に(連続して多段階の)蒸留が行えるため、アルコール度数の高い蒸留酒がつくりやすいことも特徴です。

 

倉嶋 「単式蒸留焼酎」は原材料の風味が香る個性豊かなテイストで、乙類焼酎本格焼酎と言われるもの(以降は本格焼酎と呼ぶ)。そして「連続式蒸留焼酎」は、雑味がなくピュアで炭酸水や果汁などで割って飲むことにも適した甲類焼酎(以降は甲類焼酎と呼ぶ)。その昔は、「新式焼酎」とも呼ばれていたものですよね。

 

狩野 はい。連続式蒸留はヨーロッパから日本へ伝わり、国内初の新式焼酎は明治末期の1910年に愛媛県宇和島の日本酒精(株)が開発した「日の本焼酎」が最初の商品ですね。1912年には宝酒造の前身である四方合名会社が、この「日の本焼酎」の関東における販売権を取得し、「寶」の商標で発売して大ヒットさせました。

 

↑日の本焼酎の看板

 

倉嶋 「日の本焼酎」は「宝焼酎」の原型ってことですよね。

 

狩野 そうです。四方合名会社はその後、「日の本焼酎」の開発者を招へいして大正初期の1916年に自社製造を始めています。また、連続式蒸留焼酎は関東で人気となったことも関係してか、地域で分けると概ね東日本で多く飲まれているのは甲類焼酎、西日本では本格(乙類)焼酎です。

 

倉嶋 特に九州や沖縄では、今でも本格焼酎が主流ですもんね。老舗の焼酎蔵も多いですし。

 

狩野 酒税も、既存の蔵元を守るために本格(乙類)焼酎のほうが安かった時代(2000年10月より甲類・乙類同額になる)もありますね。

 

飲み方はお湯割りや水割りが主流。酎ハイは戦後に生まれ広がった

倉嶋 では、焼酎はどのように飲まれ、どのようにして今のようなスタイルへと広がっていったのでしょうか?

 

狩野 確かな記録が残っているわけではないのですが、昔から九州で最も主流な飲み方はお湯割りや水割りだという説が濃厚です。九州の方はお酒に強いイメージがありますけど、それでも25%や30%など、アルコール度数が高いお酒をそのままで飲み続けるのはつらいですよね。私の長年のフィールドワークによる感覚値でも、焼酎と水を5対5や6対4で割って飲む方のほうが多い印象です。

 

倉嶋 九州では前割り(あらかじめ焼酎と水を混ぜ合わせてなじませる)文化も日常的ですもんね。

 

狩野 そういえば、倉嶋さんは熊本出身ですよね。ただ例外として、アメリカ人民俗学者の調査によると、熊本県南部の人吉球磨(ひとよしくま)エリア(稲作が盛んで、米でつくる「球磨焼酎」が有名)では、米焼酎をストレートで飲む文化もあるそうです。

 

倉嶋 人吉球磨ですか! あそこは熊本屈指の酒処。さすがです。

 

狩野 私も実際に現地へ行って、よく見たのは米焼酎のストレートを燗にしてコップで飲むスタイルです。それにならって飲んでみると、アルコール度数は高くても案外飲めちゃうんですよ。米由来で味がすっきりしているから、というのも関係している気がします。

 

倉嶋 球磨焼酎は飲みやすさも魅力ですからね。

 

狩野 まあ、人吉球磨は例外として、昔から主流なのはやはりお湯割りや水割り。その後、戦後に流通の発達や冷凍庫の普及によってオンザロックや炭酸割りが広まっていきました。なかでも、炭酸割りから生まれた「焼酎ハイボール」は革命的。つまり「酎ハイ」の誕生ですね。

 

倉嶋 以前、東京墨田区の「三祐酒場」さんの記事で紹介されていました。戦後間もない1951年に「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受けて「焼酎ハイボール」を開発したと。

 

狩野 はい。そして今では多くの酎ハイにレモンが入っていると思うのですが、これはレモンの関税が戦後徐々に安くなっていったからだと思います。

 

倉嶋 当時はまだまだ贅沢品だったレモンを酎ハイに浮かべることで、高級なイメージを狙ったというわけですね。

 

【酒噺のオススメ記事はコチラ】
【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

 

狩野 そして焼酎ハイボールに欠かせないのが、連続式蒸留機でつくられる「甲類焼酎」。これも昔は無色透明でピュアなタイプが多かったと思います。ただその後、メーカーの技術進化があり、ピュアで味わいのある甲類焼酎も出現してきました。

 

倉嶋 1974年にアメリカで起こったバーボンとウオッカの消費量逆転現象「ホワイトレボリューション」がひとつのきっかけですよね。日本では宝焼酎「純」をはじめとする、ボトルも洗練された新しいタイプの甲類焼酎がヒットした時代です。

 

↑11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝焼酎「純」は1977年にデビューして大ヒット。その後、1988年には宝焼酎「レジェンド」が誕生します

 

狩野 そう。「純」のヒットなどをきっかけに、ニュータイプの甲類焼酎が若い世代に人気になったのは同時期の昭和50年代でしょう。その後、昭和から平成にかけてカクテルのブームや居酒屋チェーンの台頭などによって酎ハイなど飲み方も多様化し、ウーロン茶割りや梅干しを入れる飲み方も広まったのです。

 

倉嶋 そして2003年には本格焼酎がブームとなり、また時を同じくして大衆酒場に脚光が当たるとともに、再び酎ハイも人気に。近年ではレモンサワーのブームで甲類焼酎が好調ですし、やっぱり焼酎の歴史は奥が深いですね。改めて勉強させていただき、今日はありがとうございました!

 

今回はここまで。次回は甲類焼酎の製造現場を訪れ、「焼酎ができるまで」をテーマに倉嶋さんが工場長に話を伺います。

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎「レジェンド」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/legend/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

ビールでも日本酒でもなく「サワーに辛口」が誕生?!「麒麟特製」が辿り着いた新境地の全貌に迫る!

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9月14日、革新的な商品がデビューした模様。販売数量がリニューアルからわずか1年強で4億本を突破(※1)した「麒麟特製」ブランドから、レモンサワーに次ぐ中核商品として、満を持して送り出された新商品『麒麟特製辛口こだわりサワー』です。

 

最大の特長は、その名の通り“辛口”であること。ビールや日本酒に“辛口”があっても、“辛口”を前面に打ち出した缶チューハイは珍しいでしょう。しかも、今までのサワーにはない、ただ甘くないだけではないうまみの効いた辛口は、食事にもしっかり合う、一杯目から楽しめる味わいになっているとか。

 

ビール党も一度試してみたくなる、サワーの新境地。百聞は一見にしかずで、まずは試しに一杯。さらに開発者へのインタビューとフードペアリングの感想とともに、新体験サワーの正体を明かしていきます。

 

※1:250ml換算(2020年4月リニューアルより2021年6月末の出荷実績)

麒麟特製辛口こだわりサワー

“うまさの源”となる「米うまみエキス」によって、複層的で深みのある新しいうまさを実現。ただスッキリ甘くないだけでなく、しっかりとしたうまみが感じられる辛口サワーだ。

 

今までにない、キリッと辛口でありながら、しっかりうまみが効いている!

↑甘くないプレーンな爽快感ながら、奥深いうまみを感じるアフターテイスト。ほかの缶チューハイにはないおいしさです

 

これまで仕事とプライベートで、あまたの缶チューハイを試飲してきた筆者。そのどれとも似つかない新しい辛口サワーということで、期待を胸に、まずは飲んでみることに。第一印象で感じたのは、これぞ辛口! というキリッとした味わいと、今までにないふくよかで心地よいうまみ。単に辛口・爽快なだけではなく、このうまみがあることで上質感や満足感を感じます。またアルコール9%でありながらカドがなくてスムース、飲み終わりにお酒が心地よく鼻抜けする余韻があることも印象的です。

 

特にアタックの強さに複層的なボディ感があって、正直感激するほどのうまさ! いつもは一杯目はビールが基本なのですが、この辛口サワーなら単体でももちろん、食事とも一緒に楽しめる定番のお酒になりそうな予感です。

 

サワーに新しい味わいの辛口を実現した3つのうまみ

なぜ、こんなに辛口でうまいのか。その秘密を暴くべく、サワーに新しい辛口を実現した張本人を直撃してみることにしました。答えてくれたのは、キリンビール マーケティング本部 マーケティング部の辻次美祐(つじつぐみゆう)さんです。

↑2019年から「麒麟特製」の商品開発を担当している辻次さん。以前は「キリン一番搾り生ビール」を手掛けていて、幅広いカテゴリーの知見をもっています

 

まずは開発経緯から。なぜ辛口に着目し、「麒麟特製」ブランドから発売したのかを、市場のニーズなどにも触れながら教えてもらいました。

 

「現在、RTDready to drink)市場において急成長しているのはレモンサワー。麒麟特製ブランドにおいても、一番の売れ行きとなっています。その一方で、『フレーバーや甘さがなく、お酒のうまさをじっくりと楽しめて、どんな食事にも合うサワーを飲みたい』というお客様も多くいらっしゃいます。そんなお客様をより深く理解していくなかで、既存のレモンサワーは『甘さがあるし、柑橘の味がお酒のうまさを邪魔してしまう』、ドライ系サワーは『嫌なアルコール感があっておいしくなさそう』などの満たされていないニーズがあることを突き止めました」(辻次さん)

 

そこで思い立ったのが、「“辛口”のサワーをつくろう」という着想だったといいます。

 

「甘くなくすっきり飲めるのに、ビールや日本酒にも似た複層的なうまみが楽しめる、サワーに今までなかった味わいの“辛口”にたどり着きました。ただ味がしないだけではなく、しっかりうまみがあるのが“辛口”である、という発見と、キリンの130年以上のお酒づくりの技術を結集してつくる麒麟特製のつくり方なら、高アルコールでも嫌なアルコール感がなく、お酒のうまさを楽しめる味わいがつくれるはず、という思いで開発を進めました」(辻次さん)

 

↑パッケージでは、ブランドの金色に落ち着いたグレーを配して上質な辛口を表現したとか。稲穂のグラフィックも印象的です

 

すでに、“甘くない”テイストをウリとしたドライサワーもありますが、どのような違いがあるのでしょうか?

 

「新発売の『麒麟特製辛口こだわりサワー』は、『米うまみエキス』や、隠し味の『柑橘うまみエキス』『天日塩』などにより、複層的な味わいに仕上がっている点が大きな違いです。ドライと同じすっきりとした後キレの良さもありながら、この複層的なうまみが、キリッとうまい辛口の味わいを実現しています。あらゆる料理にもマッチする自信作です!」(辻次さん)

 

筆者が感じた味の厚みには、今回新採用となった「米うまみエキス」が関係している気がします。詳しく聞くと、米うまみエキスとは、じっくり時間をかけて米を加熱・熟成させ、手間暇かけてうまみを引き出した“熟成によるうまさの源”だと、辻次さんは言います。

 

「辛口なお酒になじむ、上質なうまみをもつ原料を探したなかでたどり着いたのが、お米です。特に日本人にとっては主食ですし、日本酒や米焼酎など、お米を使ったお酒も古くから親しまれていますよね。そこにヒントを得て、『麒麟特製辛口こだわりサワー』に最適なうまみ成分を、手間暇かけながら熟成させて引き出しました」(辻次さん)

↑日本酒や米焼酎のほか、日本では「キリンラガービール」をはじめとする伝統的なビールにも、米が使われています(写真はイメージです)

 

「『麒麟特製辛口こだわりサワー』では、お米を時間をかけて熟成させることで、うまみを存分に引き出して使用しています。これによってビールや日本酒などの醸造酒が持つような、複層的でまろやかなうまみを感じることができるのです」(辻次さん)

 

つくり方を知るほど、このサワーに込めたこだわりがひしひしと伝わってきます。さらに辻次さんは、麒麟特製サワーすべてで使われている特製の「柑橘うまみエキス」、海水を太陽と風の力で結晶化させたこだわりの「天日塩」といった隠し味も、『麒麟特製辛口こだわりサワー』には欠かせない要素だと力を込めます。

 

「米うまみエキスも含めたこれらによって、複層的なうまみとすっきりした味わいをもった『麒麟特製辛口こだわりサワー』は、一緒に召し上がる食事の味を邪魔することなく、引き立ててくれます」(辻次さん)

筆者の直撃に対し、うまさの秘密を説明してくれる辻次さん。『麒麟特製辛口こだわりサワー』のつくり方には、3つもの特許申請中の技術が使われていると話します

 

まったく新しい辛口のうまさで、食シーンでは名バイプレイヤーに

徹底的にこだわり抜いてつくられたからこそ、この甘くないのにうまみを感じられるという新しい辛口サワーは実現できたのでしょう。しかし、食事の味を邪魔せず、むしろおいしさを引き立てるとは本当なのか———『麒麟特製辛口こだわりサワー』は、料理と合わせることでよりその魅力を実感できることを教えてもらいました。そこで筆者も、フードペアリングを実践することに! 比較的味の繊細な和食から、タイプの異なる3品を用意し、本当に食事のおいしさを引き立てるのか、検証してみました。

↑あえて、一般的なサワーと合わせるイメージの弱い、さっぱりとした和食を3品ペアリング。『麒麟特製辛口こだわりサワー』との相性を検証します

 

● 1品目は「冷奴」

発酵食材素材などをのせ、それぞれの素材との相性をチェックします。

↑薬味のほかに梅、きゅうり、なすの漬物をのせ、おかかをかけた冷奴

 

まずは豆腐単体でペアリング。「麒麟特製辛口こだわりサワー」が甘くないので豆腐の凝縮した大豆のうまみをしっかり感じられ、上品に調和します。これはおかかに関しても同様でした。じんわり広がる繊細なダシの風味を、「麒麟特製辛口こだわりサワー」がやさしくキャッチします。

 

酸っぱい梅や、発酵のうまみが効いた漬け物との相性もお見事。この場合は「麒麟特製辛口こだわりサワー」がもつ酸味や複層的なうまみが前面に出て、それぞれに寄り添います。まるで料理の味付けに合わせて個性をアジャストするような、器用な汎用性。また、酒の味が料理を邪魔せず、脇役に徹する名バイプレイヤーっぷりも素晴らしいですね。

 

● 2品目は「寿司」

生魚も繊細な食材の代表格であり、爽快感の強い高アルコールサワーのペアリングとしては苦手なカテゴリーといえるでしょう。果たして『麒麟特製辛口こだわりサワー』はどうマッチするのでしょうか?

↑まぐろ、酢じめのこはだ、えび、ほたてなど、一般的な握り寿司を合わせます

 

寿司には辛口の日本酒や苦味のあるビールなどがよく合いますが、『麒麟特製辛口こだわりサワー』も非常に好相性。厚みのあるボディが魚のうまみや脂と調和し、一方でクリアな爽快感が臭みをカットします。

 

これは3つの隠し味のなせる技でしょう。「米うまみエキス」「柑橘うまみエキス」「天日塩」が各魚のうまみや酢飯の酸味にフィットしながら、素材のおいしさを底上げするのです。寿司ダネは濃い味の漬けまぐろやツメを塗ったあなごなどのほか、もちろん寿司ではないお造りにも合うと思います。

 

● 3品目は「肉じゃが」

肉と野菜を盛り込んだ家庭的な煮込み料理として、肉じゃがをチョイス。甘じょっぱくてダシも香る、今回のなかでは濃い味付けです。

↑野菜はじゃがいものほか、にんじんやいんげんも

 

ジューシーな肉は『麒麟特製辛口こだわりサワー』のキリッとした爽快感ですっきり、野菜に関しても素材のうまみを残しつつ、まろやかなボディがぴったりなじみます。また、甘じょっぱい料理に合わせると『麒麟特製辛口こだわりサワー』が導かれるように調和。やはりこの、臨機応変に対応する万能性には驚きです。

 

また、温かい料理に対する温度のメリハリも絶妙。ストレートな冷涼感で押し流すのではなく、料理の余韻を残しながらすっきりさせる心地よい後口は、隠し味に奥深いうまみをもつ『麒麟特製辛口こだわりサワー』ならではだと実感しました。

 

新しいうまさの「辛口サワー」。今夜の晩酌に楽しんでみては?

「米うまみエキス」「柑橘うまみエキス」「天日塩」という3つの隠し味で、繊細な料理には静かに、濃厚な料理には能動的に寄り添う『麒麟特製辛口こだわりサワー』。まさにグルメな秋にふさわしい、料理をおいしくする辛口のサワーです。

 

上質感のあるグレーを用いたパッケージデザインは、お店の棚でも目立つこと間違いなし。晩酌のお供にするのはもちろん、休日はブランチから。食事とのペアリングを楽しむもよし、単体で「辛口」の新しいうまさを体感するもよし。「サワーに辛口」という新体験を、ぜひ楽しんでみてください。

 

キリン「麒麟特製辛口こだわりサワー」の詳細はこちらから

 

写真/湯浅立志(Y2)

紫芋100%で驚くほどフルーティーな香りと芳醇な味わいを実現、限定出荷の全量芋焼酎「一刻者」<紫>が8月31日発売

 

宝酒造は、原料はもちろんのこと、麹まで芋でつくる全量芋焼酎「一刻者」が発売20周年を迎えることを記念して、“全量芋焼酎「一刻者」<紫>”の720mlおよび1.8Lを、限定出荷で発売します。発売日は8月31日で、参考小売価格は720mlが1674円(税込)、3435円(税込)です。

 

「一刻者」<紫>は、紫芋を使用した独自の「芋麹仕込」と石蔵貯蔵での最適な熟成により、驚くほどフルーティーな甘い香りと芳醇な味わいを実現したとする、紫芋100%の全量芋焼酎です。

 

原料のさつまいもは、芋焼酎の本場である南九州産の希少な紫芋で、これを麹にまで使用した、宝酒造独自の芋麹仕込みを採用。これにより、できあがった焼酎には芋本来のフルーティーな甘い香りを多く含んでいるとのこと。また、温度変化の少ない石蔵で貯蔵・熟成することで、紫芋本来の香りが際立ったとしています。

 

なお、「一刻者」<紫>には、一刻者ブランドが発売20周年を迎えることを記念して、20周年の封緘紙を貼付。封緘紙の裏面には、9月4日からスタートするキャンペーンに参加できる特設サイトのQRコードが記載されています。またキャンペーンでは、一刻者オリジナルの酒器などが総勢500名に当たります。詳細は9月4日オープンの特設サイトをご覧ください。

かつお節と一緒に燻した焼酎「燻枕崎」は、スモーキーなアイラウイスキー好きに捧げたい!

「さつま白波」や「神の河」などで知られる本格焼酎の蔵元・薩摩酒造が、地元の魅力を生かした個性派の新商品を発売しました。その名は「燻枕崎(いぶしまくらざき)」。枕崎で燻す、と聞けば和食好きの人にはピンとくるのではないでしょうか。特徴や味わいを中心に、レビューしていきましょう。

↑6月7日から薩摩酒造公式通販サイト「白波通販ショップ」で限定発売されている「燻枕崎」(2000円/税込)。アルコール分25%、720mL

 

焼酎の匠とかつお節の名手が郷土愛を込めて生み出した

薩摩酒造は1936年から続く老舗で、その拠点が鹿児島県の枕崎市。薩摩半島の南部に位置し、約2万人が暮らす海沿いの港町ですが、潮風とともに流れるのがスモーキーな香りです。それは、枕崎が「かつおのまち」として全国でも有数の名産地だから。

↑枕崎におけるかつお節の製法は、300年以上続く伝統的な職人技となっています

 

1年間で枕崎に揚がるかつお(鮮魚)の数は、人口の約1100倍(年間水揚量:約7万トン)。人よりもかつおのほうが多く、かつお節に関しては全国で鹿児島県がダントツのシェアを誇り、その中心地が枕崎なのです。

 

一方、鹿児島県のお酒といえば芋焼酎であり、この地で長年酒造りを営んできたのが薩摩酒造。そこで「枕崎の空気を詰め込んだ本格焼酎を届けたい」との強い思いから、地元で60年以上の歴史を持つかつお節の造り手「金七商店」と協業。約2年の試行錯誤を経て「燻枕崎」が完成したそうです。

↑さつまいも(左)を、かつお節由来の薫煙にさらしながら約2時間燻します

 

金七商店も屈指の名手で、2016年には4年に1度の鰹節類品評会で「一本釣鰹本節」が農林水産大臣賞の栄誉に。モーツァルトの楽曲を聴かせて作る「クラシック節」も全国的に有名で、その妥協なきクラフトマンシップはNHKで放送されている「プロフェッショナル仕事の流儀」でいっそう広まりました。

↑家族で代々受け継がれる「金七商店」のものづくり。左から2人目の方が四代目の瀬崎祐介さん

 

そんな「燻枕崎」は、どんな味わいなのか。グラスに注いで飲んでみました。

 

 

芋の甘みに燻製の芳香。未体験のウマさがここに!

「燻枕崎」ならではの、うまみとかつお節のスモーキーな香りを最大限に楽しむには、ロックやお湯割りが特にオススメとのこと。そこで、いまの季節に合うロックでひと口。グラスを近づけると、未知なる芳香が鼻孔をくすぐります。

↑ラベルデザインは、枕崎に立ち上る燻煙をイメージ。墨色の背景に、うっすらと煙が浮かんでいます

 

野性味あふれる燻香ながら、シャープではなくまろやか。樽の香りよりもウイスキーのピート(泥炭)による香りに近いですが、とはいえウイスキーのスモーキーフレーバーとは方向性がやや異なる独自のものです。

↑液の色味はクリアで味わいはどっしり。甘やかさを感じるのはさつまいもによるものでしょうか、リッチなうまみにスモーキーフレーバーがのり、絶妙なバランスです

 

ペアリングにはチーズやナッツのほか、和風のおつまみや、いぶりがっこなどクセのあるものがオススメとのことで、こちらも用意しました。

↑スモークチーズにスモークナッツ、いぶりがっこをペアリング

 

これはたまらない組み合わせ! 焼酎の香りと燻製つまみの風味が調和し、杯の手が止まりません。焼酎単体の飲み口もペアリングのテイストも、これまで体感したことのない味わいで、驚きのおいしさです。

↑次はハイボールを試すことに。焼酎1に対して強炭酸水を3の割合で作りました

 

味は、ボリュームのあるスモーキーフレーバーに焼酎の甘やかさと爽やかな炭酸の刺激がひとつになった、ワイルドな清涼感が広がる印象。余韻の香りはしっかりめでありながら、シュッとキレのある余韻で心地よいおいしさです。

↑こちらはかつおとのペアリングを試します。用意したのはかつおのたたきに、かつおの油漬けとかつお節をのせた山芋の千切り

 

焼酎の味にかつおのニュアンスはありませんが、かつおたたきの皮の香ばしさと、焼酎のスモーキーフレーバーがマッチ。山芋のつまみとの相性もよく、やはりかつお節との一体感はドンピシャです。

↑今回は家飲みでしたが、キャンプの炭火焼きにも合うこと間違いなし! 今夏、ぜひお試しあれ

 

ウイスキーでスモーキーフレーバーが豊かなのは、スコットランドのアイラ島で生まれるアイラウイスキー。あのたくましい香りが好きな人に絶対試してほしい焼酎が、この「燻枕崎」です。数量限定なので、気になる人は要チェック!

そこまでやるの!? おいしさで金賞三冠「麒麟特製レモンサワー」の快挙は開発者こだわりのつくり方に理由があった!

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数ある缶チューハイやレモンサワーのなかでも、記録的な快挙を成し遂げている商品が「麒麟特製レモンサワー」だ。国内外の品評会で高く評価され、金賞三冠を獲得(リニューアル前の商品で受賞)。売り上げ実績も、2020年4月のリニューアルからわずか11か月で3億本(※1)を突破し、2020年は前年比約4倍の販売数量(※2)を記録する絶好調ぶりである。

 

さらに2021年は、その実績に甘んじることなく3月に中味とパッケージをさらに進化させている。そこで、品評会の各審査ではどのような点が評価されたのか、最新版はどのような味わいに仕上がっているのかを開発者にインタビュー。味覚のプロをも唸らせる、「麒麟特製レモンサワー」のおいしさに迫った。

キリン・ザ・ストロング
麒麟特製レモンサワー

複数の果実を12時間以上煮込んでうまみを凝縮させた「麒麟特製うまみエキス」に加え、レモンをまるごとすりつぶし、低温熟成してうまみを引き出した「レモンエキス」と、果汁だけではなくほろ苦い果皮のおいしさも詰め込んだ「まるごと搾り果汁」を使用し、風味豊かな味わいがいっそう高まった。

 

世界が認めた!「麒麟特製レモンサワー」の快進撃

↑左から、「ジャパンフードセレクション」「W.P.A国際高品質保証審査会」「モンドセレクション」の各受賞エンブレム

 

「麒麟特製レモンサワー」は2020年度、“金賞三冠”という快挙を成し遂げた。「モンドセレクション」(※3)と「ジャパンフードセレクション」(※4)では金賞、「W.P.A国際高品質保証審査会」(※5)ではGrand Quality Excellentの受賞である。

 

これらを受賞することはどれだけ難しいことなのか? キリンビールのマーケティング部で中味の設計や開発などを担当している岡田真希さんを直撃してみた。

↑「麒麟特製レモンサワー」の開発を担当した、キリンビールの岡田真希さん。マーケティング部、中味開発を担当する商品開発研究所の一員として、商品の研究や開発を行っている

 

「それぞれの賞によって基準や審査方法などは一部異なりますが、味、パッケージ、材料、つくり手のこだわりなどを細かくチェックされ、銀賞や銅賞のほかもちろん落選もある狭き門です。また、例えば国際的な品評機関である『モンドセレクション』は、厳しい研修やテストをクリアした海外の審査員が評価しますが、味に関しては、その審査員たちが一堂に会して同一商品の試飲や採点をすると聞いています」(岡田さん)

 

審査員はどこを評価した? その理由を開発者が答える!

では、審査員は「麒麟特製レモンサワー」の何をどのように評価したのか? 岡田さんは「特に多くの声をいただいたのは、『高アルコール度数であるにも関わらず、嫌なアルコール感がなく飲みやすい』という評価です」と言う。

 

「また、レモンそのもののような風味にも高評価をいただけました。『麒麟特製レモンサワー』は独自の『うまみエキス』によりレモンの味わいが奥深く、果実の凝縮感や複雑味が楽しめます。その香りや味を評価いただけたことは、私たちの狙い通りでうれしかったです」(岡田さん)

 

・複数の果実を12時間以上煮詰める「うまみエキス」

↑「麒麟特製レモンサワー」の特長的なおいしさのカギを握るのが、複数の果実を12時間以上煮詰める「うまみエキス」だ(写真はイメージ)

 

「麒麟特製レモンサワー」の要である「うまみエキス」により、上質感のある複層的なおいしさになるという。“うまみ”とはしばしば五味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)のひとつに数えられ、味の骨格として位置づけられるが「うまみエキス」も同様だろうか?

 

「骨格として下支えするというよりは、味の全方位に厚みをもたらすことで満足感をアップさせるイメージですね。『うまみエキス』は様々な果実類のおいしさを抽出し、融合させたものです。また、五味にはない香りの要素を持っていることも『うまみエキス』の特長です」(岡田さん)

 

製法のイメージを挙げるとすれば、ジャム作りに近いとのこと。この話を聞いて筆者の頭をよぎったのが、加熱によって食材に含まれるアミノ酸と糖が結び付いて起こる「メイラード反応」だ。「メイラード反応」には香ばしさやコク、うまみなどを生む効果があると言われるが、「うまみエキス」も「メイラード反応」の賜物と考えていいのだろうか?

 

「はい。果実に熱を加えることで生の果実そのものにはない、新しいおいしさを生み出しているので、『うまみエキス』も『メイラード反応』による効果を活用していると言えます」(岡田さん)

 

・果皮からすりおろした「レモンエキス」と、多層的なフレーバーを生み出す「追いレモン果汁」

今年3月にさらなる進化を遂げた「麒麟特製レモンサワー」。リニューアル前の味も高評価だったため、より高みを目指すのは難しかったはず。磨きをかけたポイントはどこなのだろうか?

 

「まずは『レモンエキス』。煮詰める『うまみエキス』とは違い、レモンの爽やかさをアップさせるための要素です。果実をまるごとすりおろして長時間低温熟成させることにより、レモン本来の爽やかな要素を凝縮させました」(岡田さん)

↑果実を果皮からまるごとすりおろすことで、レモンの味と風味が多層的に広がる(写真はイメージ)

 

そしてもうひとつの決め手は、澄んだ酸味とほろ苦さを詰め込んだ複数の「追いレモン果汁」。こちらはリニューアル前から採用されていたが、今回は味わいの異なる二つの果汁を抽出し、それぞれの特性が生きるようにブラッシュアップさせたという。

 

「果汁のひとつは、レモンの味をよりすっきりさせるための『磨きレモン果汁』。もうひとつは、レモンのほろ苦い味が楽しめるよう、果皮までしっかり搾った『まるごと搾り果汁』です」(岡田さん)

↑「磨きレモン果汁」は爽やかで澄んだ酸味を引き出す。一方の「まるごと搾り果汁」は、ほろ苦い果皮のおいしさを伝える(写真はイメージ)

 

新採用した「レモンエキス」とブラッシュアップした「追いレモン果汁」が、「麒麟特製レモンサワー」の濃く多層的なレモンの味わいに寄与している。そして、その魅力を生かすために欠かせないのがバランスの良さであり、調和をもたらすために使うのもまた「うまみエキス」なのだとか。

 

「味のふくよかさの演出だけでなく、多層的なレモンの味わいを調和させる点においても『うまみエキス』は大きく貢献しています」(岡田さん)

 

・おいしさの進化を告げる新パッケージ

よりレモンの存在感が増した新「麒麟特製レモンサワー」。リニューアルにおいてはパッケージも一部刷新し、おいしさの進化を分かりやすく訴求しているという。

 

「最もお伝えしたいことは、圧倒的に上質感があるおいしさ。そこで、キリンを代表する『聖獣麒麟』とともに『麒麟特製』の文字を大きく打ち出し、味の自信と上質さを表現しました。そして、おいしさがより直感的に伝わるように、缶中央のグラスのイラストをより大きく。背景カラーには、レモン感を伝えつつ深みのある印象の黄色を採用。そして、製法のこだわりをお伝えするために、前面には『追いレモン潤沢仕立て』を、裏面ではその詳細をイラスト付きでデザインしました」(岡田さん)

↑「麒麟特製レモンサワー」の裏面。おいしさのカギを握る3つの工程「うまみエキス」「レモンエキス」「レモン果汁」が描かれている

 

 “デイリーで楽しめるイイモノ”という無二のポジション

近年、レモンサワーの人気はうなぎ上りで、缶チューハイでも様々なレモンサワーが発売されている。そのなかで最近は特にどういった傾向があり、「麒麟特製レモンサワー」はどの位置にあるのだろうか?

 

「酒類市場全体でレモンサワーが求められている要因としては、爽快感や料理との相性の良さなどが挙げられるでしょう。特に最近は多様化が進み、アルコール度数の低いものや高いストロング系、無糖、濃い味など様々なタイプが出てきました。『麒麟特製レモンサワー』は高アルコールの飲みごたえとともに、複層性のある上質なおいしさも突き詰めた“デイリーで楽しめるイイモノ”という、他にはない特長を持った商品であると自負しています」(岡田さん)

↑審査員や消費者からの声によって、岡田さん自身でも思いがけない発見をすることがあるとか。そういったフィードバックが次の開発に生きるとともに、モチベーションにもなっているという

 

様々な果実を厳選した上、12時間以上煮詰めた素材を活用したり、レモンをまるごとすりおろしたり、複数の果汁を使い分けたり。このこだわりや手間暇が「特製」の所以といえるだろう。それでいて、価格は一般的な缶チューハイ同等のフレンドリーなプライス。絶好調の現状にも頷ける。

 

売れている理由には、コロナ禍により家で過ごす時間が増えたという背景もあるだろう。食事は材料やレシピにこだわり、手間暇かけて調理しゆっくり味わうーー。そんなライフスタイルに寄り添う缶チューハイこそ、まさに上質な「麒麟特製レモンサワー」なのだ。金賞三冠を獲得し、さらなるおいしさを追求してリニューアルしたこの一品が、幸せな時間のお供になる。夏の暑気払いやリフレッシュはもちろん、「麒麟特製レモンサワー」でより充実した食シーンや、チルタイムを過ごしてみてはいかがだろうか。

キリン「麒麟特製レモンサワー」の詳細はこちらから

 

※1:250ml換算(2月上旬出荷実績)
※2:2019年/2020年4~12月比較
※3:モンドセレクション 2020年度 スピリッツ&リキュール部門
※4:第36回(2020年)
※5:2020年度

 

取材・文/中山秀明 撮影/湯浅立志(Y2)[静物]

芋焼酎「一刻者」が20周年。俳優・永瀬正敏が若者に伝えたいこととは?

芋焼酎の一大ブランド「一刻者(いっこもん)」が2021年9月に誕生20周年を迎えるということで、ブランド戦略発表会が開催されました。新たな取り組みの柱となるのはモノづくりへのこだわりと、ローカリゼーションの2つ。改めてブランドの特徴を紹介するとともに、発表会の内容をお伝えします。

↑発表会にはブランド初のアンバサダーに就任した、俳優・写真家の永瀬正敏さんが登壇

 

20年で6700万本を販売するブランドに成長

「一刻者」がデビューしたのは2001年。ネーミングの由来は、製造拠点がある宮崎など南九州の話し言葉で「一刻者=頑固者」だから。この頑固はこだわりということであり、それはおいしさに妥協せずつくり上げたというストーリーが深く関係しています。

↑左から、「一刻者」〈赤〉720ml/1586円、1.8L/3259円、「一刻者」720ml/1498円、1.8L/3083円(すべて税込価格)

 

本格芋焼酎は1990年代頃まで九州を中心に愛される地方のお酒でした。それが2003年ごろに焼酎ブームが起き、芋焼酎はけん引する存在に。人気急増の背景には、各メーカーが品質にこだわった商品開発したこと。飲み方が多彩で、思い思いに楽しめること。糖質やプリン体が含まれていないので健康的であることなどが挙げられます。ただし「一刻者」の開発はブームになる前。

↑歩みなどを語ったのは、製造元である宝酒造の商品第一部蒸留酒課、髙井晋理課長。この20年で累計6700万本を販売するブランドに成長しました

 

当時の開発陣が目指したのは、麹まで芋でつくる全量芋焼酎。というのも、それまでの芋焼酎の多くは米麹を使用するのが当たり前だったのです。そこで、芋100%の焼酎づくりがはじまりました。しかし、芋は米よりも水分量が多いため、麹菌が根付きづらいという課題があり、開発は困難を極めます。そこから6年の歳月をかけ、特許技術も駆使して生み出されたのが2001年。

↑「一刻者」の原料は、南九州産のさつまいも100%。独自の芋麹仕込みと石蔵貯蔵による、芋本来の華やかな香りと上品な味わいが特徴です

 

その後、2013年に赤芋を使った「一刻者〈赤〉」が仲間入り。2016年には新しい飲み方のとして炭酸割りを提案するなど、いっそう裾野が広がります。そして2019年は、宮崎の黒壁蔵工場に専用の石蔵を新設。年間を通じて温度変化が少ない環境となり、蒸留後のピュアな味のまま貯蔵と熟成ができるようになりました。

↑宮崎県の高鍋町にある、宝酒造の黒壁蔵工場。筆者は2018年に取材で訪れました(撮影/我妻慶一)

 

改めて飲んでみました。印象的なのが、あふれんばかりの甘くフルーティな香り。飲み口はクリアで心地よく、上品なキレもあってすっきりしています。

↑味、香りともに豊かできれい。ロックでもつっかかりがなく、クイッと飲めます

 

水割りも、極めてスムーズでブライト。この時季ならソーダ割りもいいでしょう。試してみると、炭酸の爽快感に後押しされる飲みやすさがあり、それでいて焼酎の甘やかなコクがのって飲みごたえも十分。まさに、宮崎の高鍋に降り注ぐ太陽や、日向灘の潮風を感じるようなダイナミックさがあります。

 

父の日のプレゼントにも最適

発表会の後半は、永瀬正敏さんのトークセッションを中心に進行しました。初のブランドアンバサダーに永瀬さんが抜擢された一番の理由は、宮崎出身だから。これもローカリゼーションの一環です。永瀬さんは「縁を感じますね。光栄です。宮崎の方にも喜んでいただけたら」と想いを語りました。飲み方を聞かれると、焼酎はオンザロックが多いとのこと。

 

「いまは自宅でひとりチビチビ飲む感じですけど、僕は若輩者だと思っているので、先輩方から色んな飲み方を学びながら楽しみたいですね。『一刻者』の100%、ピュアということはものすごく強い魅力。若輩から先輩まで楽しめるお酒です。いまの状況に打ち勝ったら、みんなで『一刻者』を開けて乾杯したいですね」(永瀬さん)

↑永瀬さんはブランド20周年にちなみ、今年二十歳を迎える若者に向けて「半歩前へ」とエール

 

「大きな1歩ではなく、半歩でもいいから未来に歩を進めてほしい。怖がらずに勇気を持って。その半歩が1歩になり10歩になりますから。できることなら二十歳の自分にも大いに伝えて、背中を押してあげたいです」(永瀬さん)

 

「『一刻者』は父の日のプレゼントにも最高だと思います」と永瀬さん。そういえば、2021年の父の日は6月20日。20周年の節目を迎える「一刻者」はエピソードとしても最適で、話のきっかけにもなるでしょう。この機会に、贈ってみてはいかがでしょうか。

スピードワゴン・井戸田潤が甘くないレモンサワーを飲んだら「甘くな~~い!」と叫ぶのか? 新発売「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」で実験

提供/サントリースピリッツ

 

「鏡月焼酎ハイ ちょい搾(しぼ)レモン」は、3月にサントリーから発売されたばかりの新商品。ご存じ「鏡月」の炭酸割りに、レモンの風味が香る、スッキリとした味わいの爽やかな焼酎ハイだ。サントリーの商品開発チームがおよそ2年の月日をかけて作った最高の味という、自信作である。

 

一番の自慢は「甘さ、ほぼゼロ」。数あるレモンサワーの中でも“甘くない”ことを強調している。これを端的に、かつ面白く伝えるにはどうしたら良いかと考えた。思い当たったのは、「あま〜い」でお馴染みのあの人物。スピードワゴンの井戸田潤さんだ。

 

そこで、「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」を井戸田さんに飲んでもらったら、伝家の宝刀「あま〜い」ならぬ「あま〜くな〜い!」と言ってくれるんじゃない? という企画をサントリーに提案してみたら快諾、所属事務所に投げかけたら、本人はお酒が大好きだからとマネージャーも即オッケー。「えー、こんなスムーズで大丈夫かよ」と逆に慌てつつ、スピードワゴン・井戸田潤が甘くないレモンサワーを飲んだら「甘くな〜い!」と叫ぶのか?「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」でいざ、実験開始!

 

サントリー
鏡月焼酎ハイ<ちょい搾レモン>

柔らかくまろやかな味わいを特徴とする「鏡月」をベースに、甘くないすっきりとした味で焼酎ユーザーが好む味を追求した。また、独自の「炭酸感キープ製法」によって、炭酸感が持続するのもポイント。「鏡月焼酎ハイ」には、ほかに「すっきりドライ」もラインナップする。

 

“甘さ、ほぼゼロ”のスッキリ感がいい飲み心地
「最初から最後までずっとコレ、もありだね!」

(まずは試しに一口、井戸田さんに「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」を飲んでもらうことにしよう。最初はさりげなく感想から聞いてみるぞ。)

 

――さっそく、一口飲んだ感想をお願いします。

 

スピードワゴン・井戸田潤

お笑いコンビ、スピードワゴンのメンバー。「あま~い」のフレーズで一躍人気に。単独でフジテレビ「ノンストップ!」、メ〜テレ「ドデスカ!」にレギュラー出演するほか、コンビでもレギュラー多数。バイク動画・グルメ動画が中心のYouTube「ハンバーグ師匠チャンネル」も話題。

 

井戸田 んん~~まず、のどごしがいいですね~。

 

――グイッと飲まれましたね。

 

井戸田 これは、いけちゃいますね。僕の場合、飲み始めはのどを潤すためにカーッといくのが鉄則なのでね。最初に、のどの弁をガッと開かせるんですよ!

 

――(笑)。なるほど、それくらいスッキリしている、ということでしょうか?

 

井戸田 そう、このスッキリ感がいいですね。とても飲みやすいです。やっぱり最初の1杯は、のどごし重視なので、普段はビールを選びがちなんですけど、これは炭酸がちょうどいい強さだし、爽やかだし、いい飲み心地。最初から最後までずっとこれもありだね。

 

――それはよかったです。いま、飲んでいただいている「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は“甘さ、ほぼゼロ”の後味のいいおいしさがウリなんですよ。

 

井戸田 あ~たしかに。かなりドライな感じで、しつこくないのがいいね。

 

――そうなんです。ちなみにアルコール度数は7%なんですが、お酒感はいかがでしょう?

 

井戸田 しっかりお酒を飲んでる感があります。決して強いって感じはしないんだけど、後味にいい余韻が残っていますね。僕は、実はレモンサワー系は7%までって決めているので、これはすごくちょうどいいです。

 

――最近は、度数が強いレモンサワーも多いですからね。

 

井戸田 そうなんだよ。若い子がよく飲んでるやつね!(笑)

 

――気持ちよく酔えるアルコール感がいいですよね。

 

井戸田 あ、それにこれ「糖質ゼロ、プリン体ゼロ、甘味料ゼロ」(※)なんだ。すごいね。

 

――そうなんです。焼酎がベースで、炭酸で割っていますから、糖質はゼロ(※)です。お酒を飲まれる方なら、やはり糖質の有り無しは気になる部分だと思うので、うれしいですよね。普段、井戸田さんはそういった点も気にされていますか?

(※)表示基準に基づき、100mlあたり糖質0.5g未満を糖質ゼロと表示。100mlあたりプリン体0.5mg未満。食品添加物としての甘味料(人工甘味料)は使用していません。

 

井戸田 それが、全然気にしていないんですよ(笑)。好きなお酒を飲みたいから、いつも“ダイエット〇〇”とか“糖質オフ”とかは見ずに、おいしいやつを優先して買っちゃう。

 

――お気持ちよくわかります。本当は気にせず選びたいですよね。

 

井戸田 でも、これはおいしいうえに、オプションで「糖質ゼロ」がついてくる。ラッキーですね。今まで、気にしてこなかったんですけど、最近ついにお腹が出てきたので……ちょうどいいタイミングで知ることができましたよ!

 

「鏡月」の正しい割り方はこれだ!「もっと早くあってもよかったかも(笑)」

(ふぅ。サービス精神からいきなり「甘くな〜〜い!」と言われたら初っ端で企画終了でどうしようかと思ったけど、さすがに空気を呼んでくれたのカナ。インタビューを続けていきます)

 

――ちなみに、こちらの「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は、その名の通り焼酎の「鏡月」がベースとなっているんですが、「鏡月」にはどんなイメージをもっていますか?

 

井戸田 実は20代の頃、酒屋さんで3年くらいバイトしていたんですよ。お店でボトルキープとかされるから、鏡月はよく出していてね。その頃から、ずっと馴染みはあります。“割る専門”のお酒ってイメージかな。なんなら、この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」が出る前から同じ飲み方をしてましたよ。いつも炭酸で割って、レモンを少し搾ってね。

 

――おお、そうなんですね! 今回、ついにそれが商品化されたわけですが。

 

井戸田 言われてみれば、今までなかったよね~。もっと早くあってもよかったかも(笑) 。しかも、これってかなり衝撃的な出来事だからね?「あ、このバランスで割るのが正解なんだ」って、みんなが「鏡月焼酎ハイ」を飲んで気づくわけだから。サントリーさん、とうとう正解を叩き出しましたね!?

 

――(笑)。これが一番おいしい割合だってことですもんね。商品開発チームが2年かけてつくり出したそうですから。

 

井戸田 みんなこれを待ってましたよ。自分で割ると酔いも手伝って、どうも入れすぎちゃったりとかね。結局、濃くなってちびちび飲むことに……。

 

――わかります。この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」はどう飲みますか?

 

井戸田 まずはグイッとのどに流し込んじゃうね! あ、でも僕、缶でそのまま飲まない派なんですよ。だから家では、グラスにあけて氷を入れて、冷たくしてカッと飲むと思います。

 

――いいですね。どんなときに飲むのがいいでしょうか?

井戸田 これからの季節は、この缶のデザインの通り、外で月夜を見上げながら飲みたいですよね。例えば、CMに出演されている松本まりかさんなんかと一緒にね……しっぽりと!

 

――(笑)! なるほど~、理想のシチュエーションは、女性と外飲みですかね?

 

井戸田 女性とじゃなくてもね! 夏は縁側なんかで飲めたら最高ですよ。都心だったら、屋上とかベランダで。ゆったりと気持ちよさそうですよね。

 

酒豪・井戸田のお酒ルーティンは?「甘さはお酒に求めてないですね~(笑)」

(完全に普通のインタビューだと思い込んでいるようです。でも、井戸田さん、あなたが選ばれたのは、「甘くな〜〜い」を言うか、言わないか、できれば言って欲しいから。というわけで、少しずつ、匂わせてみます)

 

――井戸田さんの普段のお酒ライフについてお聞きできればと思います。よく飲む好きなお酒はなんですか?

 

井戸田 普段はビールが多いですね。あとは、ハイボールとかレモンサワー……白ワインなんかも飲みますね。いろいろ飲みますよ!

 

――ということは、“甘くな~~い”お酒がお好きなんですかね?

 

↑インタビュアーの質問に一瞬、「ん?」という表情の井戸田さん。まさか気づいた?

 

井戸田 そうね~~甘さはお酒に求めてないですね~(笑)

 

――ふむふむ……甘さはいらないと……お家飲みとかはされますか?

 

井戸田 家では、だいたい夜寝る前に飲みますよ。夕飯中に飲んで、気持ちよくなったら、そのまま寝ちゃうんですよね。

 

――どのくらいの量を飲むんですか?

 

井戸田 缶だと5、6本くらいです。それで気持ちよくなって、ソファで寝ちゃうんですよ。

 

――おお、すごい……! なかなかの酒豪なんですね。

 

井戸田 それでね、僕、家だと服を着ないんですよ。だから状態としては、裸のオジサンが酒をごくごく飲んで、最終的にソファで倒れている。傍らからみたら、ひどい有様ですよ?

 

――(笑)。開放的でいいと思いますよ。

 

ついに、井戸田が気づいたか……!?「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」にぴったりのおつまみは甘くな~〜いアレ!

(やっぱり、この程度ではこちらの狙いには気づかないか……。いよいよ、わざとらしく「甘くな〜〜い」を会話に混ぜ込んでいくことに。するとついに……!?)

 

――お酒を飲むときは、何か一緒に召し上がるんですか?

 

井戸田 つまみはね、現場からお弁当を持ち帰ってきて食べてるんですよ。最近はエコバッグを持ち歩いてるんで、それにササッと入れてね。そのまんま持ってくと恥ずかしいからさ、コートに隠しながらね……。

 

――ちょっと怪しい感じになってるじゃないですか(笑)

 

井戸田 いや~弁当のうまさを再確認しちゃったんだよね。今は外にも行けないからさ。現場では食べないようにしてるから、家でゆっくり飲みながら食べるのが楽しみで。

 

――この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」といっしょに食べたいおつまみって、何か思い浮かびますか?

 

井戸田 弁当以外で? ええ~~合うおつまみかあ……なんだろうな?

 

――どんなおつまみでもいいんですけどね。“甘~~い”ものでも、“甘くな~~い”ものでも……(これだけ誘導すれば、いけるか!?)

 

井戸田 ……あ、わかったわ!

 

――お!? なんでしょう?(キターーーーー!?)

 

井戸田 お刺身なんかはどう? 最近は、スーパーで帰りに買ってよく食べてるんだよね。きっと合うんじゃないかな。 この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は食事のときでも邪魔しない味わいだからね。

 

――ああ、なるほど……。(違うんかい!)そうですね、晩酌でも食事でもOKなドライな味わいが魅力ですからね。そう、“甘くな~~い”ですから……。

 

井戸田 うん、そこがいいのよね。あとは……餃子もいいじゃないかな。パリパリ系の鉄板餃子と食べたいね。他にも、漬物系もありだなあ。

 

――そうですね。(え、そろそろ気づくでしょ……。)和風なおつまみには、わりとなんでも合いそうですよね。あ、じゃあ逆に、洋風なものは何か思いつかないですか? イタリアンでもオードブル的なものでも、なんなら“甘~~い”スイーツでも……。

 

井戸田 洋風?……んん……あ、もしかして……?

 

――もしかして??(きたか!)

 

井戸田 あれね!「ハンバーグ」のことね! それが言いたかったんでしょ????

 

――あ……はい、そうですそうです。ありがとうございます。(き、気づいてほしいのはそっちじゃないんですが……。)

 

井戸田 すいませんね~、気が利かなくてね。

 

――いえ、えっと、では、ハンバーグ師匠的には、ハンバーグとの相性はいかがでしょうか?

 

井戸田 最近ね、ハンバーグ自体のことをよく聞かれるからさ。俺も勉強してるんだけどね。この前、鳥羽周作さんってミシュラン一つ星のシェフのレシピでハンバーグを作ったんだけど、それが“塩だけ”で食べるハンバーグだったのよ。そのハンバーグに「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は絶対合うよ!

 

――おお……塩だけで! それはシンプルでおいしそうですね。

 

井戸田 デミグラス系の濃いハンバーグじゃなくて、肉のうま味を味わえる塩のハンバーグが「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」にはぴったりだと思いますよ。すいませんね、ハンバーグの話だと気づかずに!

 

――あ、いえいえ……わざわざお気遣いいただいて……ありがとうございます。(めちゃくちゃいい人だ……でもそうじゃないんです……。)

 

「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」最大の特徴、“甘くな~い”について追及! はたして井戸田さんは……!?

(もはや最終手段! 超不自然に「甘〜〜い」「甘くな〜〜い」を大声で強調して会話することに。はたして、井戸田さんは気づくことができるのか?)

 

――おお、2本目も空きそうな感じですね。

 

井戸田 おいしくて飲んじゃいますね。いい気分になってきたな~。

 

――この「鏡月 焼酎ハイ」のプレーンは、「すっきりドライ」味として販売されているんですけど、今回は「ちょい搾レモン」というレモン入りバージョンを飲んでいただいています。こちらの“レモン感”ってどうですかね?

 

井戸田 焼酎を炭酸水で割ったあとに、ちょいっとレモンを何滴か搾ったくらいのリアルな味わいがありますね。絶妙な加減です。レモンは鼻にちょっと抜けるくらいで、キリッと爽やかな感じ。

 

――そうなんです。このレモンサワーの最大の特徴が、レモンが強すぎなくて“甘くな~~い”ところなんですよ。

 

井戸田 ほんと、そうですね~。全然甘くないです。そう考えると、こんなにドライな感じのレモンサワーって新しいかもしれませんね。レモン感が濃いものもいいですが、僕はこっちの甘くない方がスッキリしてて好きですよ!

 

――“甘くな~~い”方がお好きなんですね? それはよかったです~。ここ最近、コンビニなどで販売されている商品を見ると“甘~~い”レモンサワーがけっこう多いですから。

 

井戸田 あ~そうなんですかね? たしかに、レモンが強いってウリにしているお酒は、その分甘かったりしますもんね。

 

――そうなんですよ。それに対して、この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は、パッケージでも「甘くないレモンサワー」だと強く推しているんです。一目で“甘くな~~い”とわかるようになっているんですよ?

 

井戸田 あ~ちゃんと表示されてるんですね。普段、俺はサワー系でもカクテル系でも甘いのは飲まないから、「甘くない」って言い切ってもらえると、買うときに安心感があっていいですね。選びたくはなりますね!

 

――それはよかったです。“甘くな~~い”お酒というのは、やっぱり重要なんですね。

 

井戸田 そうですね。選ぶ基準にはなってます。何にでも合いそうなのが、この「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」のいいところだと思うので、これからいろんな場面で飲みたいと思いますね。

 

――ありがとうございます。では、最後になりますが“甘くな~~い”「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は、今後も飲んでいただけますでしょうか?

 

井戸田 もちろんですよ。飲みたいお酒の中でも、1軍になってくると思います! これはレギュラー入りっすね!

 

――よかったです。ありがとうございました。

 

【まさかの大逆転】アディショナル・タイムでついにあの一言が!!

(さて、用意していた質問はすべてしっかりと語っていただき、インタビュー開始からも45分。芸能人のインタビューとして十分すぎる時間だ。ここからは写真撮影をメインにしつつ、総括的な話をもう一度だけ振ってみることにした。すると、ようやくあの言葉が……!)

 

――井戸田さん、最後にもう一度お聞きします。「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」の“推し”は何だったでしょうか?

 

井戸田 え……

 

井戸田 もしや……

 

井戸田 “甘くない”ってとこですかね……?

 

――はい、そうなんです。やっと気づいていただけましたか……!?

 

井戸田 ああ~~~なるほどね。全然気づきませんでしたよ。いや~~でも、ちょっと思ってはいたんです。僕は世の中で一番“甘い”を言ってきた男なんですよ。それが“甘くない”を心の底から認める瞬間……それが今日だったんですね?

 

――そうだったようです(笑)。ありがとうございます。では、最後に「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」を一言で表してもらえますでしょうか?

 

井戸田 「鏡月焼酎ハイ ちょい搾レモン」は……甘~~~~くないッ!!!!!

 

――井戸田さん、ありがとうございました!

 

甘くな〜〜い「鏡月 焼酎ハイ ちょい搾レモン」の詳細はこちら

 

◆お客様センター https://www.suntory.co.jp/customer/

ストップ! 20歳未満飲酒・飲酒運転

 

取材・文=狐塚咲季 写真=丸山剛史[人物]、湯浅立志[商品]

酒好きOLが千葉の酒蔵で知った「一生楽しめる」お酒選び/ほろ酔い道草学概論 第十一話

日本各地には、現地を訪れないとわからない魅力というものがあります。その土地ならではのお酒を飲むことも、そんな魅力のひとつ。本連載「ほろ酔い道草学概論」は、お酒好きOLコンビがお酒に酔って道草を食いながら、土地に根付く不思議な魅力に触れていくショートストーリーです。

 

【前話を画像でおさらい】画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。

●GetNaavi web本サイトで前回を読む

●第一話はこちら/連載一覧はこちら

 

炎天下が続く夏、現実では自由にお出かけしにくい状況ではありますが、今回千穂と正宗は夏に行きたい「あの場所」へお出かけ! しかし、あいにくのコンデションのようですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【今夜の一献】

●芋焼酎 あずま小町

 

 

千葉県香取郡にある多古町の農産物「紅あずま」を100%使用。黒麹で仕込んだソフトな飲み口と芋の甘い香りが心地よい「千産千消」の芋焼酎です。作中で千穂も言っていますが、飲んだ後にまろやかな芋の風味が味わえます。

 

和蔵酒造について

江戸時代より千葉で酒蔵を営んできた老舗の蔵元です。清酒の「鹿野山」でも有名ですね。君津市と富津市に1つずつ蔵があり、今回訪れたのは君津の貞元蔵。富津市の蔵は、日本酒を製造する竹岡蔵という蔵です。

 

貞元蔵では、関東では珍しく焼酎を醸していて和蔵酒造でしか生み出せないまさに「千産千消」の一本を作り続けています。また貞元蔵は、酒菜館という直営ショップも営んでいます。和蔵酒造の焼酎・日本酒に合う千葉の名産がたくさん揃っているのも見どころです。作中で語られていた通り、お酒選びの楽しみを教えてくれる丁寧な蔵元見学も魅力。千穂と正宗を案内してくれた女子は本作オリジナルキャラですが、蔵元見学では同じメッセージを楽しく伝えてくれるでしょう。外出しにくい日々が続きますが、落ち着いたらぜひ訪れてみてください。

 

 

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ほろ酔い道草学概論