【ラ飲みの名店】これほど使い勝手のいい店があるか? 新宿駅近の老舗「石の家」に街中華の理想を見た

ラーメン店でお酒を楽しむ、通称「ラ飲み」。本稿は、お酒をより深く楽しむための情報サイト「酒噺」(さかばなし)とコラボし、この「ラ飲み」にスポットを当てた企画である。案内人は、GetNavi本誌でラーメン連載を持つミュージシャン、サニーデイ・サービスの田中 貴さん。本稿では「ラ飲み」でオススメの店を行脚しつつ、「ラ飲み」の楽しみ方や珠玉のラーメンを紹介していただく。今回は、全6回となる連載の第4弾をお届け。

「ラ飲みの名店」連載一覧はコチラ

 

【プロフィール】

田中 貴(たなか・たかし)

サニーデイ・サービスのベーシスト。日本全国を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。2019年にはグルメ誌「食楽」で表紙を飾った。

 

バンドは3月13日に通算13作目となるニューアルバム「いいね!」をリリース。エレキギター・ベース・ドラムという最小限のバンドアンサンブルに立ち帰り、自身たちのルーツたる音楽性を詰め込んだ傑作が誕生した。ライブはドライブイン形式のイベントとして「山中湖交流プラザ きらら」で開催される、「DRIVE IN LIVE “PARKED”」の初日、9月26日に出演が決定。また、カーネーション、岸田繁(くるり)とのライブ音源集「お~い えんけん!ちゃんとやってるよ!2020セッション」が10月21日にCDとLP盤でリリースされる。

 

街中華は何人かで飲みに行くときの有力な選択肢のひとつ

今回訪問したのは、新宿駅の東南口からすぐの場所にある「石の家」(いしのいえ)。昨今注目が集まっている街中華(町中華)カテゴリーのお店だ。田中さんはラーメン専門店だけではなく街中華にも詳しい。そんな田中さんが、数ある名店のなかから「石の家」を選んだ理由は、名物メニューがあり、多くの人が足を運べる立地だからだという。また、「麺や 七彩」の阪田博昭さんをはじめ、田中さんと仲のいい有名ラーメン店主のなかにも「石の家」のファンは多いのだとか。

↑「石の家」の入口。裏路地に入ってすぐの、地下のネオンが目印だ

 

入店して料理を待つ間、田中さんにとって、街中華とはどんな存在なのか、街中華でラ飲みを楽しむ魅力などについて教えてもらった。

 

「街の中華屋さんと聞いて一般的にイメージされるのは、日本風にアレンジされた中華料理を出すお店ですよね。オムライスやカレーなどの洋食からカツ丼などの食堂メニューまで出す、住宅地の駅近くに必ずあるタイプの店。それらとは違うタイプで、中国の方が厨房にいらっしゃる、本場の味を出すお店というのもあります。格式高い本格的な中国料理店とは違い、庶民的なスタイルで古くから続く店が、都心にはまだいくつか残っています。どちらのタイプの店にもいえるのは、安くてボリュームがあるということ。数人で、何品も頼んでワイワイやるのが楽しいですね。もちろん、麺料理も豊富にあるので、一軒でシメのラーメンまでいけちゃいます」(田中さん)

 

「いい街中華」は「おっちゃん世代が集まる店」であることが多い

ただ、最近人気が出てきたとはいえ、街中華は公開されている情報量がラーメン店に比べて多くはない。いい店は、どうやって探せばいいのだろうか。

 

「まず、長く続いている店は間違いないですよ。新宿とか渋谷とか、若者が多くてお店の移り変わりも激しいなかにも、オッチャンがたむろしている古くからの店はあるものです。そういう店は、まあ安くてウマい店ですね。オッチャンたち全てが食にこだわっている人ばかりではないですが、人生経験を積んだ先輩たちが選ぶ店には、何かしら意味があります。あとは、オリジナリティ溢れる名物料理があること。『いい店』と『名店』の違いは、これがあるかないかに尽きます」(田中さん)

↑近所の年配のご夫婦が営む深夜営業の中華の「いい店」が突然閉店し、途方に暮れていると語る田中さん

 

田中さんがお話しした条件の通り、「石の家」もこの界隈屈指の老舗であり、近くの「ウインズ新宿」に通うベテラン勝負師たちが足しげく訪れるお店。ファンであることを公言している著名人も多いのだという。

 

「酔貝」をはじめ、酒が進む「間違いのない前菜」が登場

やがて、一品目の「酔貝(すいがい)」が到着。街中華としてはやや珍しい本格派で、しかも台湾料理である。カンタンに言えばシジミのニンニク醤油老酒漬けで、絶妙な火加減でレアな食感に仕上げたシジミを、自家製のタレで約2時間漬け込んだ人気の前菜だ。

 

「ニンニクと紹興酒が効いた味付け。ガツンときますね! シジミの身が大きめなのは珍しい。肝臓にもいいような気がして酒が進みます(笑)」(田中さん)

↑「酔貝 ハーフ」400円(通常サイズは750円) ※お酒の画像はイメージ。店舗でも取り扱いなし(以下同)

 

ちなみに、ふだん料理をオーダーする流れについて田中さんに聞いてみると、「『石の家』の場合、まず飲み物と一緒に、このシジミとか腸詰といった前菜を頼みますね。台湾系の料理があるのも、ここの魅力です。そのあとは、酒に合う炒め物や揚げ物や、流れにまかせて……といった感じですね」と教えてくれた。そうこうするうちに、「焼餃子」と「腸詰」が到着。

 

「焼餃子が庶民的な料理として一般に普及したのは戦後からですが、ここはそのころから珉珉などと並んで有名だったそうで、古川緑波(ふるかわ・ろっぱ)の随筆にも『石の家』の名が出てきます。ロッパも食べた餃子を、建物は変われど同じ場所で食べていると思うとロマンを感じますね。僕が上京したころは、この新宿駅の南側も闇市の名残ある街並みでしたが、ずいぶん変わりました。さかさクラゲと呼ばれた連れ込み旅館や、生コン工場なんてのも数年前まであって、ゴチャゴチャした感じが魅力的だったんですが……」(田中さん)

↑手前は、「酔貝」と並ぶ人気の台湾料理「腸詰」700円。「焼餃子(6個)」400円は、キャベツ、白菜、ニラを豚ひき肉と合わせ、にんにくとしょうがを効かせた間違いのないおいしさ

 

「石の家」の名は、創業者が採石建材店と懇意にしていたことに由来

ここで、店の由来について二代目オーナーの金井由美子さんに話を聞いてみた。創業は昭和29(1954)年。当初は現在のように地下ではなく、2階に座敷を備えた建物だったそう。店名は、創業者が近隣の採石建材店と懇意にしていたことに由来。その後昭和59(1984)年に改築され、現在は金井さんの娘さんが三代目として同店を営んでいる。

↑二代目オーナーの金井由美子さんと。新宿周辺の昔話に花が咲く

 

いまでこそ新宿駅の東南口は整備されて都会的な雰囲気に変わったが、昭和のころは「新宿西口思い出横丁」のような、ディープな雰囲気だったとか。駅前に並ぶ屋台のなかには台湾料理店があり、その店主が「石の家」の常連だったことからレシピを教わり、同店でも台湾料理を提供するようになったという。

 

おかずにもつまみにもなる炒め物&揚げ物が到着

続いて、ご飯のおかずにもつまみにもなる炒め物と揚げ物をオーダー。街中華の定番である「木須肉(ムースーロー=キクラゲ、卵、豚肉炒め)」は、濃い味付けに仕上げた同店伝統の一皿だ。一方、「イカとセロリ炒め」は、セロリの上品な香りとコリっとした食感が絶妙。豚肉とピーマンの天ぷらを盛り合わせた「肉の天ぷら」は、山椒や八角をほんのり効かせてスパイシーに仕上げているのが特徴だ。

↑「木須肉(ムースーロー)」850円(手前)、「イカとセロリ炒め」900円(左奥)、「肉の天ぷら」850円(右奥)

 

「このムースーローは、ジャズピアニスト・山下洋輔さんのエッセイにちょいちょい出てくるもんだから、上京前から憧れの一品でした(笑)。イカとセロリの炒め物も、こういう中華屋さんの定番ですね。酒にもよく合います。肉天って関西ではポピュラーで、僕も子どものころから好物なんです。東京ではほとんど見かけないので、ここに来たら必ず注文しますね」(田中さん)

 

名物の「やきそば」は、焼きうどんのような太麺が醍醐味

そして、いよいよ麺料理へ。オーナーの金井さんによると、創業時のメニューは餃子と焼きそばとタンメンの3つだけだったそう。これらは、メニューが増えたいまでも同店を代表する人気料理だ。そのなかから、まずは開店当初50円だったという「やきそば」から頼んでみよう。

↑創業当時の味を伝える「やきそば(太麺・しょうゆ味)」550円。細麺ではなく太麺で、ソース味ではなくしょうゆ味だ。しょうゆ、塩、うまみ調味料などで味付け、ゴマ油が効いているのがポイント

 

「この焼きそばが『石の家』の名物なんです。うどんのような太麺が、ブヨンブヨンの食感でたまらない。量も多いので、数人でつまむのにもってこい。この焼きそばは、ファストフード店が普及する前には、安くてウマくて腹一杯になると学生に大人気だったそう。何年か前に、『石の家』で数十年働いてた方とこの近くの飲み屋で出会いまして、当時の話をいろいろうかがいました(笑)」(田中さん)

 

焼きそばの麺の量は、200gとボリューム満点。麺類は昔からずっと同じ製麺所に特注しているという。ちなみに、餃子はかつて皮が自家製だったが、いまはこの製麺所に作ってもらっているとのこと。

↑紹興酒も一緒に飲み始めた田中さん。焼きそばや炒め物をつまみにお酒が進みます

 

タンメンは野菜の旨みがしっかり効いていて深みのある味

そして最後はタンメンを注文。同店には通常のタンメンと、昔ながらの太麺タイプの2種があり、今回はやはり後者をチョイス。味の軸となるのは、鶏と豚のガラを中心に前日から約8時間炊いたスープで、タンメンの場合はこれに野菜などの甘味が加わる。

↑「太麺タンメン」750円。スープが白濁していないあっさり系だが、奥深いふくよかなうまみがあって飲み干したくなるウマさ

 

「中華屋さんでは、ベーシックなラーメンよりもタンメンなどを頼むのがベター。こういうお店のスープは、基本的に全ての料理のベースに使うよう仕込まれています。なので、シンプルなラーメンはラーメン専門店と比べると物足りなく感じることが多い。そして、中華屋さんの醍醐味といえば、豪快に鍋を振って作る炒め物。それぞれの野菜への火の通し加減など、技術にはっきり差が出る調理法。これを堪能できる、タンメンや、もやしそばなどのあんかけ系がおすすめです。その点、『石の家』はさすがですね。ベースのスープもしっかりしつつ、さらに炒め煮した野菜の旨みがしっかり出ていて素晴らしい。ニンニクも強めにきいてて、ん〜こりゃウマい。そして、唯一無二のブヨブヨ麺。たまらんね」(田中さん)

↑つるりとした太麺と野菜の旨みが溶け込んだスープの相性はバツグン!

 

前菜からシメまで、お酒の進む絶品料理が良心的な価格で楽しめる。おまけに立地は抜群で、昼夜通しで営業していて、定休日もないという使い勝手のよさ。多くの人に時代を超えて愛されるというのも納得だ。こうした素晴らしい店が時代に飲み込まれずに残っていること自体、もはや奇跡と言っていいだろう。新宿は数々の老舗や名酒場が存在する街だが、東南口の「石の家」も、必ず覚えておくべき名店といえる。

撮影/黒飛光樹(TK.c)

 

【SHOP DATA】

石の家

住所:東京都新宿区新宿3-35-4 ユーコービル中地下

アクセス:JRほか「新宿駅」東南口徒歩3分

営業時間:月~土11:30~23:50(L.O.23:00)、日祝11:30~22:50(L.O.22:00)

※営業時間は変更の可能性があります

定休日:なし

 

人に話したくなるお酒のお役立ち情報やうんちくを知りたい方は、酒噺へ!

 

撮影/黒飛光樹(TK.c)

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

クールな顔して味はワイルド! 東中野の熱き異端児「かしわぎ」——サニーデイ・サービス田中 貴とRockなRamen

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスのベーシスト、田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く目・鼻・舌をもって、注目するラーメン店の味や店主に「Rock」を見出していくのが、この「RockなRamen」連載だ。

 

これまで登場したのは「麺家うえだ」「無鉄砲」「らぁ麺屋 飯田商店」「ラーメン 凪」と強者ばかり。これらに続く第5回は、オープンは昨年ながらも名店との呼び声が高い、東中野の「かしわぎ」だ。行ってみると店構えは正統派で、メニューに関しても特殊なラーメンがあるようには見えない。だが、その一杯を味わい話も聞くと、なんとも“Rock”なアティチュード(姿勢)が隠れていた!

 

【プロフィール】

田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては今春、配信とアナログでニューアルバム『the CITY』をリリース。また6月13日にはアナログで『FUCK YOU音頭』と『DANCE TO THE POPCORN CITY』を2タイトル同時リリースするなど、精力的に活動している。また個人としては、音楽監修を務めるアニメ「ラーメン大好き小泉さん」のオリジナルサウンドトラック『ラーメン大好き田中さんと細野さん』が発売中!

 

あえてだれもやらない“豚清湯”というアプローチ

「かしわぎ」を一躍有名にしたのは、おいしさはもちろん“豚がメインの特徴的な清湯”であることだ。清湯はチンタンと読む。字からイメージできるように、クリアなスープであることが特徴。すっかり一大勢力となった「淡麗系ラーメン」は、清湯であるといっていいだろう。だがその多くは、地鶏のうまみを生かした鶏の清湯なのだ。

↑「かしわぎ」のスープもクリアな清湯。しかし同店の場合、鶏はある技法で雑味を取り除くためにしか使わない

 

また、豚メインの清湯スープで提供するラーメン店自体は少なくない。だが、それは厳密にいうと毛湯(マオタン)というガラスープのこと。「かしわぎ」の場合、豚のゲンコツと背ガラを中心に強火でボコボコと炊き上げ、まず白濁した毛湯を作る。これに脂の少ない鶏の挽肉を入れ、その肉に雑味や油分を吸着させて取り除く、掃湯(サオタン)という伝統中華のテクニックで清湯にしているのだ。この手法を取り入れているラーメン店は希少。だから同店は“特徴的な清湯”であり、ラーメン界にその名をとどろかすきっかけにもなったのである。

↑「塩ラーメン」680円。研ぎ澄まされたビジュアルながら、豚骨の風味とアサリが効いた塩味強めのタレで、ソリッドなテイストが特徴だ

 

↑麺は120g。京都にある、名店御用達の老舗製麺所「麺屋棣鄂」(ていがく)に特注した細麺を使用している。このジャンルでは珍しく、「替玉」100円ができるのも魅力だ

 

「店主は今田 匠(たくみ)さん。初めてスープを口にしたとき、頭のなかに『?』が浮かびました。透明なスープなのに、白濁した豚骨スープのような強靭なうまみ。一見すると、鶏の淡麗系のようなルックスですがまったく違う味わいで、しかも激ウマ。聞けば納得なのですが、その技法をあえて貼り出したりして主張しない姿勢も好きです。このジャンルでありながら600円台とリーズナブルですし」(田中さん)

↑長崎出身の今田 匠店主。脱サラ後に上京し、超名門「麺屋こうじグループ」である神奈川「神勝軒」での修業を経て、2014年に中野区野方に同グループ出身者と「麺処 今川」を開業。諸事情により閉店したあとは「麺や七彩」や「らぁ麺 すぎ本」を手伝っており、2017年6月2日に「かしわぎ」をオープン

 

「麺や七彩」の記事はコチラ → https://getnavi.jp/cuisine/103904/

 

真のウマいラーメンは何が足されてもウマい

このスープの魅力を楽しむのであれば、繊細な味わいの「塩ラーメン」がオススメ。だが、塩と双璧をなす「醤油ラーメン」も、ベースは同じでありながらクオリティの高さを感じられる仕上がりだ。その特徴は、あえて足し算の法則で個性をぶつけ合わせた醤油ダレにある。

↑「醤油ラーメン」680円。タレ以外は基本的に塩と一緒だ。チャーシューは57℃で低温調理したバラと、肉々しさとしっとり感を同居させたロースの2種類。メンマは上質でやわらかい穂先メンマである

 

ベースとなるのはヒゲタ醤油の名作「本膳」に、厚削りのカツオ節とサバ節、煮干しを加えた蕎麦のかえしのようなタレ。そこに中国地方のたまり醤油を加え、さらにうまみの輪郭を整えるために、福井伝統の魚醤である「いしる」も調合する。これによって、厚削りの燻香、たまり醤油の甘み、「いしる」のクセがブレンドされ、インパクトのある醤油ダレになるのだ。

↑色も味も濃い。だがそれは天然のうまみ成分が強く出ているためであり、のどが渇くしつこさはない

 

「あまりにも塩がウマかったんで、すぐに再訪して醤油も食べました。そしたらこれまた驚きの、真っ黒いスープ。味的にもパンチがあって、胡椒が合いそうだな~なんて思っていると『バンバンかけてください!』との声。お店によっては卓上調味料をあえて置かない(提供時の状態が最高の味だから何も加えないでほしいという考え)ところもあるなか、そういう今田さんの柔軟性あるところも好きですね」(田中さん)

↑好みの傾向が酷似しているふたり。田中さんのラーメン本「Ra:」が心のバイブルだという今田さんとはあっという間に意気投合、たびたび一緒にのみに行く仲だという
↑好みの傾向が酷似しているふたり。田中さんのラーメン本「Ra:」が心のバイブルだという今田さんとはあっという間に意気投合、たびたび一緒にのみに行く仲だという

 

田中さんのラーメン本「Ra:」についてはコチラ → https://getnavi.jp/cuisine/1210/

 

「根底には、お客さんが食べたい味で楽しんでほしいって思いがあるんですよ。あとは、以前お世話になった七彩で学んだんです。軸となるラーメンがしっかりしていれば、調味料が変わろうとおいしさは変わらないって」(今田店主)

↑胡椒以外の調味料も。今田さんのオススメは、「醤油ラーメン」にはハバネロソース(写真左)、「塩ラーメン」にはYUZUSCOという柚子胡椒ソース(写真右)

 

高級食材は使わずに一流の味を安価で提供

「かしわぎ」はサイドメニューにも独特な一品がある。それは今田店主がいる昼(夜は視察や味の研究などに勤しんでいる)限定の、その名も「お昼のご飯」。「今日のおかず」が日によって替わり、ベーシックなものは埼玉県産のブランド卵を使うTKG(卵かけご飯)だが、運のいい日はカレーをはじめとする贅沢な丼にありつける。

↑TKGやカレー以外にも、「今日のおかず」は様々なバリエーションがある

 

この日はラッキーデーで、「インドのチキンカレー」を食べることが叶った。サイドメニューといっても、その味は専門店顔負けの本格派である。シナモン、カルダモン、クローブはホール(実のまま)で用意し、クミン、ターメリック、コリアンダーなどはパウダーで使用。多彩なスパイスで魅惑的な味わいに仕上げている。

↑「インドのチキンカレー」120円。スパイスのほかトマトの酸味と玉ネギのうまみが生きており、隠し味にはあんずやマンゴージャムの甘みが光る。後引く辛さもたまらない

 

今田さんは「最近はカレーの研究に没頭しており、とにかく楽しいんです! ラーメンのことはほどほどでいいんで、カレーのことをしっかり書いてくださいね」と冗談めいたことを言う。ただ、きっとそれは真剣勝負であり大黒柱のラーメンがしっかりできているからこそ、副業的なカレー作りを楽しめているせいなのだろう。田中さんが音楽活動のかたわら、楽しくラーメン活動をしていることに通じるものがある。

 

同業者もマニアも唸るような、アイデアと技術を駆使したスゴいラーメンを作りながら、それをひけらかす事もしない。鳥の淡麗が全盛の時代に、あえて豚の清湯へのチャレンジする『人と同じ事はやりたくない』という、ちょっとひねくれたセンス。銘柄鶏などの素材を使い、それを高らかにアピールする高級ラーメン店が多いなか、普通の素材を丁寧に時間をかけて調理し、旨味を最大限に引き出し安価に提供する。今のラーメン界においてトップレベルの実力を持ちながらも、目指すのは『小さな商店街で評判のラーメン屋』だという。実際、世界的に評価されてもおかしくないラーメンを、近所の人たちがビールを一杯やりながら気軽に食べてる光景は痛快ですよ。自分のやりたいことがはっきり見えていて、周りや流行に左右されることなく我が道を進む今田さん。こりゃもうRockですよ」(田中さん)

 

↑かつては寿司屋、パーティ系のバルだった空間。寿司屋のカウンターはそのままに、ファミリー用にテーブル席も備えているうえ、ベビーカーが気軽に入れるようにスペースは広くとっている

 

ちなみに「かしわぎ」という店名の由来は、人ではない。JR「東中野駅」は明治時代、甲武鉄道の「柏木駅」として開業した歴史があり、今田さんの「地元の人に長く愛されたい」という熱い想いが込められている。やはりRockだから、LOVE&PEACEがあるのだ!

 

【店舗情報】

かしわぎ

・住所:東京都中野区東中野1-36-7
・電話番号:非公開
・営業時間:日曜・月曜11:30~15:00、水〜土曜11:30~15:00/18:00~21:00
・定休日:火曜
・アクセス:JR総武線「東中野駅」東口徒歩4分

 

撮影/三木匡宏

年間600杯のラーメンを食する「あのミュージシャン」がメタボじゃない理由(ワケ)

【イベントレポート】8/5(日)J:COM Seaside STUDIO「ラーメンと血圧 in 江ノ島」

昔からロックミュージシャンの定義といえば、「飲む・打つ・買う」といった破天荒な、健康に無頓着なイメージが先行してしまっているのではないか。だが、一概にそうとはいえない。例えば、あのロック界の生けるレジェンド、ザ・ローリング・ストーンズのボーカルであるミック・ジャガーは昔っから毎日4キロのランニングを欠かさないという。その理由をシンプルに「俺はプロだから」としていた。もはや完全にアスリートの域である。そう、一流ミュージシャンこそ健康志向、つまり自己管理を徹底しているからこそ、過酷なツアーでもヘコタレないし、高いレベルのパフォーマンスができるのである。

↑本日は晴天なり! ちと暑すぎるが……ラーメン日和な藤沢市・片瀬海岸にて

 

江ノ島で血圧を測ったあとに幻のラーメンを食べるという、斬新すぎる企画

前置きが長くなったが、先日8月5日(日)に「ラーメンと血圧 in 江ノ島」と銘打ち、神奈川県藤沢市の片瀬海岸の海の家、J:COM Seaside STUDIOにて非常にユニークなイベントが行われた。なんと、いまや海外にも進出している、人気ラーメン店「すごい煮干しラーメン 凪」が10年前の創業時に「これはやりすぎ! やめときな」と言われ、封印した超濃厚煮干しスープのとんでもないラーメンを特別に提供するというのである。仕掛け人は、当サイトや雑誌「GetNavi」の連載でもおなじみのラーメン評論家であり、日本が誇るロックバンド、サニーデイ・サービスのベーシストでもある田中 貴さん。

↑「もう、これね、今回だけのスペシャルなラーメンですから。(凪の)生田社長に直談判して封印を解いてもらいました」(田中さん)

 

↑今回のイベントで特別に提供された「Neo すごい煮干しラーメン」。こんなガツンとくる煮干しラーメンなんて、ウマすぎて気絶してまうやろっ!

 

↑この日用意されたスープの量は約130杯分。超濃厚スープにモチモチの麺が最高! ゆえにこのようなドヤ顔で毎度提供される(笑)

 

ちなみに、この日は田中さんも日々愛用するオムロン ヘルスケアの上腕式血圧計「HEM-7600T」(商品名にある最後の“T”はTANAKAの頭文字から来ているわけではないのであしからず)で自分の血圧をしっかり測った後、ラーメンを食べてもらおうというなんだか斬新な企画である。ラーメンをこよなく愛する人たちに、末長くラーメンを愛食してもらうために、自らの健康管理を促したい、という田中さんの裏テーマも実はココにあるのだ。

↑「こんな簡単に血圧って測れるんだ」「見た目もスタイリッシュだから、家に置いていても良さげ!」「健康に対する意識がちゃんと持てますね」などなど、イマドキの上腕式血圧計「HEM-7600T」に興味津々なイベント参加者たち

 

私もそうだが、大抵の人は年に一回の健康診断で血圧を測る程度だろう。そんななか、田中さんは「HEM-7600T」を普段から持ち歩き、自らの血圧管理をちゃんとしている。「おい、オマエはそれでもロックンローラーかい!」と古い考えの方もいらっしゃると思うが、ボブ・ディランが歌っているように「時代は変わる」のである。先述のとおり、一流アーティストこそ健康志向。今日ではそれが一流の証にもなっているといっても過言ではない。もはや、田中さんにとって「HEM-7600T」はバンド活動を続けるための“健康のバロメーター”となっている。コンパクトで持ち運びにも便利なので、ツアー中も当然携帯し、その数値を見て、その日の体のコンディションに合うラーメンを食しているようだ。また、機能としてはスマホともちゃんと連動し、クラウドでデータ管理もできてしまうのも、さすがの一言である。


オムロン ヘルスケア上腕式血圧計 HEM-7600T

血圧計本体とカフが一体化した、チューブレスタイプの上腕式血圧計。本体に腕を通して装着し、測定ボタンを押すだけで簡単に数値をチェックできるうえ、腕に巻いたとき、正しい測定位置から多少のズレがあっても正確に測れ、装着の向きを気にせず左右どちらの腕でもスムーズに装着が可能。薄手なら服の上からでも測定でき、腕まくりする面倒がない。健康機器には珍しい、スタイリッシュなデザインや、有機ELによる視認性の高さも魅力だ。

 

これだけでもお腹いっぱいと思いきや、ミニライブまで

というわけで、血圧を測ってラーメンを食らう、といういまだかつてないサイケデリック&スペシャルなイベントだが、さらにスペシャルなことにサニーデイ・サービスのサポートギタリストとしてもおなじみの新井 仁さん率いる「Hitoshi Arai Acoustic Band Set」によるトークショー&ミニライブも行われた。新井さんと田中さんは普段のツアーでも「ラーメントーク&スライドショー」を盛り込んだライブを行なっているくらい、筋金入りのラーメン好きで知られている。

↑メンバーは右から新井 仁さん(ヴォーカル&ギター)、原“GEN”秀樹さん(ドラム)、そして田中 貴さん(ベース)。新井さんとGENさんはノーザン・ブライトでも活動中。全員汗だくっ!

 

↑トークショーでは新井さん&GENさんも「HEM-7600T」で血圧をチェック。「巻いてボタンを押すくだけって簡単ですね。コレ、見た目もいい!」(新井さん)

 

今回のミニライブは前半と後半に分けて、セットリストを変えた二部構成。真夏の海辺に心地よく響く「SKYLINE」や「Cigarettes & Coffee」などのポップなオリジナル曲を中心に、カバーも数曲披露した。なかでも個人的には「ご機嫌いかが?」「スロウライダー」といったサニーデイ・サービスの名曲ももの凄くよかった。

 

余談だが、うっかり、当サイトのプロデューサーである松井と私が“おっさん版PUFFY”のように、このシチュエーションにぴったりなサニーデイ・サービスの「江ノ島」を調子に大乗りして、恐れ多くもバンド演奏で歌わせて頂いた。でも、お客さんはもちろん、スタッフまでもそんな陽気な気分にさせてくれる素晴らしい企画だった、ということでお許し願いたい。そういうわけで、「ラーメンと血圧」という一見、接点があるのかないのかわからない感じだが、見事なまでのマリアージュを果たしたイベントに拍手、である。来年もぜひやってくれっ!

 

↑演奏中はイケメンの田中貴兄貴。この日はなぜかサンシャイン池崎に大ハマり。テレビをあまり見たいため、すでに下火であることには気が付いていないようだ

 

田中さん愛用の上腕式血圧計「HEM-7600T」の情報はコチラ

文・高橋真之介

暑い夏こそ熱いラーメンが旨い! サニーデイ・サービスの田中貴がおすすめする4店

春にニューアルバムを発表、先週末には韓国公演を成功させるなど、熱い活動を続けるロックバンド、サニーデイ・サービス。ベーシストの田中 貴さんは、テレビや雑誌にレギュラーをもつほど、無類のラーメン好きとしても知られています。

 

GetNavi webがプロデュースするライフスタイルウェブマガジン「@Living」では、そんな田中さんに「女性も喜ぶ旬なラーメン」と銘打って数々のラーメン店を紹介してもらってきましたが、今回はその中から真夏にふさわしい、“熱い”ラーメン店をピックアップ! そうめんもかき氷もいいけれど、夏こそ、熱々のラーメンはいかがですか?

 

1 酸味が魅惑的なエスニックテイストも楽しめる

「一笑」は、はじめに麺とスープだけのラーメンを4タイプから1杯選び、そこに合わせる8種のトッピングからひとつチョイスするという独特のシステム。

↑「あっさり醤油らーめん(生姜風味)」+「すっぱベジ」(790円)。珠玉の豚骨スープに国産生姜の香りを効かせた、ライトで滋味深いテイスト。そこに、酢やレモングラスなどの酸味が魅惑的なパクチーたっぷりの野菜が!

 

「別皿で数種の野菜をしっかり食べられる。しかも味のバリエーションが豊富で、選ぶ楽しさがある。これって、女性にとってはうれしい魅力ですよね。野菜が別盛りになっている理由は、『まずはそのままスープと麺だけで味わってほしい』という金子さんの想いでしょう。真っ向勝負ですよ。寡黙で謙虚な金子さんですが、スープに絶対的な自信を持っているというのが感じ取れます。僕もいきなりトッピングを入れずに、かけスタイルで食べるのがオススメです」(田中さん)

↑ナンプラーやトムヤムペーストも加わった「すっぱベジ」。タイ料理店のなかにはトムヤムクンラーメンを提供する店はありますが、一笑はあくまでもラーメンありきのアジアンテイスト。ここまでラーメンとしての完成度がありながら、タイ料理にうまく寄り添っている一杯もないでしょう

 

「別皿で数種の野菜をしっかり食べられる。しかも味のバリエーションが豊富で、選ぶ楽しさがある。これって、女性にとってはうれしい魅力ですよね。野菜が別盛りになっている理由は、『まずはそのままスープと麺だけで味わってほしい』という金子さんの想いでしょう。真っ向勝負ですよ。寡黙で謙虚な金子さんですが、スープに絶対的な自信を持っているというのが感じ取れます。僕もいきなりトッピングを入れずに、かけスタイルで食べるのがオススメです」(田中さん)

 

麺処 一笑
Close Up ! → http://at-living.press/food/4597

 

2 薄くやわらかな錦糸卵が美しい、贅沢な冷やし中華

昨今流行りの“町中華”かのような佇まいをもつ「龍朋」。田中さんは、メニューの多くが革新的でクオリティも抜群なことから「おいしい中華料理を提供する老舗レストラン」と評します。

 

「マスターが中華料理店で学んだ仕込みの丁寧さと、長年の仕事で培った卓越なる調理技術。それは、練炭で数十年絶やさず炊き続けるスープひとつをとっても明らか。そこに衰えない探求心が加わり、オリジナリティとインパクト性の高い一皿が生み出されるんです」(田中さん)

↑壁に下がるメニュー板。ちょっとクセのある文字がまた、いい味を出しています

 

今回は、夏にふさわしい冷やし中華をピックアップしました。

↑「冷中華」(¥850)。生姜の搾り汁やレモンが甘酸っぱいタレに自然の清涼感を醸し出し、ほんのり香るゴマ油も絶妙。羽衣のような薄焼き玉子や、しっとりしてやわらかい短冊切りのチャーシューもお見事です

 

龍朋
Close Up ! → http://at-living.press/food/3431

 

3 シンプルであっさり、それが絶品の塩ラーメン

東京・荻窪の「五稜郭」は、店名にもあるように塩味のみ。さらにいえば、基本のラーメンはこれ一品という潔さです。

「この20年ほどで、観光客向けに魚介のスープや、海鮮の具がのったような本来の函館ラーメンとは違うスタイルの店が増えているんですよ。そこにあって、五稜郭は山本店主が子どもの頃に食べていた本来の函館ラーメンのスタイルを追求しています。昔からの名店の多くが閉店した今、ここまで徹底した王道の函館ラーメンは本場函館でもなかなか食べられませんよ」(田中さん)

↑「ラーメン」(¥750)。函館でラーメンといえば塩。そのため、あえてメニュー名に「塩ラーメン」とは書きません。そんなところも真の函館ラーメン店といえるでしょう

 

ちなみにここでは、北海道限定販売のビール「サッポロクラシック」も飲めるんです!

↑「サッポロクラシック」(¥400)。北海道限定で発売されているこの缶ビールを特別に取り寄せ、提供するという心意気も素敵です。北海道出身の方はぜひこのビールも!

 

五稜郭
Close Up !  → http://at-living.press/food/3807

 

4 ラーメン店に!? 食後のパフェで涼み締め

渋谷の文化エリアにあるのが「九月堂」。動物系スープが魚介ダシに対して6倍の割合で入った「らーめん(こってり)」と、カツオや煮干しなどの魚介ダシを、動物系スープの5倍になるよう配合した「らーめん(あっさり)」の両極端な2品は、ぜひ食べ比べてほしい!と田中さん。

↑らーめん(あっさり/¥770)。価格はこってりと同料金で、動物系と魚介系のスープの構成比が変わります。同じ素材ながら、比率でここまで味が違うというお手本的な一杯

 

また、同店ならではのお楽しみが、ラーメン店らしからぬ甘味!

「よく、雰囲気だけのカフェ“風”ラーメン店ってあるじゃないですか。でもここは正真正銘のラーメンカフェ。パティシエ自家製のスイーツも楽しめる、ガチな店なんです。渋谷だけど、喧騒とは無縁の静かなロケーション。そして白が基調のお洒落な空間もイイですよね。もちろん、肝心のラーメンが抜群においしいのは言うまでもありません」(田中さん)

↑「桜パフェ」(¥620)。コーンフレークの上に、バニラアイスと桜風味アイスほか、あんこや黒蜜がかかった和テイストあふれる甘味です

 

「僕は甘すぎるスイーツが好きですが、ラーメンの後はさっぱりしてるほうがいいと思うんですよ。その点、さすがにここのパフェは計算されていて、甘さは十分にありながらも後味はすっきりしていてちょうどいいですね」(田中さん)

 

らーめんと甘味処 九月堂
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今回は、冷やし中華や、あっさりスープのラーメン、パフェといった夏に体が欲するタイプをピックアップしました。でもやっぱり、背脂たっぷりのこてこてがいい! など、さらなるラーメン情報を求めるなら、「サニーデイ・サービス田中 貴presents女性も喜ぶ旬なラーメン」シリーズをチェックしてみてくださいね。

 

【プロフィール】


サニーデイ・サービス / 田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては今春、配信とアナログでニューアルバム「the CITY」をリリース。また6月13日にはアナログで「FUCK YOU音頭」と「DANCE TO THE POPCORN CITY」を2タイトル同時リリースするなど、精力的に活動している。また個人としては、音楽監修を務めるアニメ「ラーメン大好き小泉さん」のオリジナルサウンドトラック「ラーメン大好き田中さんと細野さん」が発売中。

 

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ラーメン界に風を起こすどころか台風に! 振り切り方が凄い「凪」――サニーデイ・サービス田中 貴とRockなRamen

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスのベーシスト、田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く目・鼻・舌をもって、注目するラーメン店の味や店主に「Rock」を見出していくのが、この「Rock なRamen」連載だ。

 

第1回はパワフル女将の「麺家うえだ」(埼玉県・志木)第2回は日本一のド豚骨「無鉄砲」(東京都・江古田)第3回では研ぎ澄まされた一杯を提供する「らぁ麺屋 飯田商店」。これらの強烈なインパクトを放つラーメン店に続く第4回は、新宿を拠点に海外にも展開している「ラーメン 凪」だ。その総本山が「すごい煮干ラーメン凪 新宿ゴールデン街店本館」。巨大ターミナル・新宿に残されたディープスポットにあり、24時間営業というスタイル。攻めともいえる破天荒な存在感は確かに“Rock”である。しかし、真のRockは店舗ではなく、凄い店主にあった!

 

【プロフィール】

田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては今春、配信とアナログでニューアルバム「the CITY」をリリース。また6月13日にはアナログで「FUCK YOU音頭」と「DANCE TO THE POPCORN CITY」を2タイトル同時リリースするなど、精力的に活動している。また個人としては、音楽監修を務めるアニメ「ラーメン大好き小泉さん」のオリジナルサウンドトラック「ラーメン大好き田中さんと細野さん」が発売中!

 

無謀でもとにかくやる。トライ&エラーと前人未踏を繰り返す男

その人物は、田中さんが「大将」と呼ぶ生田智志さん。出身地である福岡の名店でラーメン人生をスタートし、同店の東京進出とともに上京。その後2004年に独立し、ゴールデン街に毎週火曜日だけ営業するラーメン店を間借りで開業する。スペースは4坪8席という、こぢんまりとした空間。当時はルーツの豚骨ラーメンがメインだったが、本格派の味わいや毎週味が替わる創作ラーメンなどの個性で話題となり、100人以上の行列ができるように。

↑いまの「すごい煮干ラーメン凪 新宿ゴールデン街店本館」がある路地。眠らない街に負けじと、眠らないラーメン店が気を吐いている

 

やがて行列は150人を超え、営業は週2回に。そうして2006年には渋谷に実店舗を構えることとなり、間借りは卒業。さらに、とあるラーメンコンペで優勝した副賞として立川に出店の権利を得て、一気にふたつの店舗をオープンすることに。念願の渋谷店では、夜はラーメン酒場になるというシステムや、日替わりラーメンを毎日出すという企画性も受け、“凪ブランド”は人気店としての地位を不動のものとしていく。

 

「日替わりは3年以上続けていましたね。昼夜で業態が変わる二毛作営業をしながら、一期一会の創作ラーメンをやり続けるという、そんな店なかなかありませんよ。絶対大変ですから。そもそも始まりからして、こんな狭小物件ばかりの場所でラーメンを作ろうという発想がクレイジー。しかも、あれだけ無謀だったにもかかわらず、創業の地という思い入れだけで、まさかの復活を果たすんです。このゴールデン街に」(田中さん)

↑ラーメンを提供する生田智志店主。取材中も田中さんとのラーメン談義や思い出話は尽きることがない。凪伝説はネタになる内容ばかりで、爆笑の連続だ

 

バタバタしながら少しずつ運営も板についてきた2007年。ある日、間借り営業をしていた「ブレンバスタ」が閉店するという話が舞い込んでくる。そして、ラーメン店の厨房設備的には不利なこの地に凱旋。しかも、またもや生田店主の試みが始まるのであった。

 

「それまでは凪=豚骨でしたが、革命が起こります。いまに続く煮干ラーメンですね。大将が青森で食べた煮干のラーメンに感動し、その味を自分でも作りたいと研究を始めるんです。彼のルーツは豚骨ですが、福岡にはイリコダシのうどん文化もありますから、煮干に興味を持ったんでしょう。で、このころに僕はゴールデン街店に入り浸るようになるんです。家が近かったんで。当時は朝5時までの営業でしたが客足は落ち着いた感じになっていて、深夜はわりとガラガラでした」(田中さん)

 

↑「すごい煮干ラーメン ラーメン」890円。店舗によってメニューは若干異なり、いまの本館にはつけ麺などはない。ただトッピングは充実しており、4枚の熟成ローストチャーシューや味玉がのる「すごい煮干ラーメン 特製」1200円や、「金箔焼海苔」3000円のような謎めいたものも

 

田中さんは夜な夜な訪れ、手持ちぶさたの生田さんと夢を語り合った。否が応にも仲は深まるとともに、田中さん自身の友人関係にも広がりが。生田さんを通して、さまざまなラーメン店主やラーメンマニアとつながりができていく。

 

↑生田さんが着ているのはオリジナルのシャツで、頭巾にも「nagi セクシーらーめん」という謎のロゴが。一部は店頭で販売しており、タオルは愛媛県今治市にある田中さんの実家「田中産業」が製造を請け負っている

 

↑現在は上板橋に仕込みの拠点を構え、400リットルもの寸胴を構えた凪グループ。しかし本館のオープン当初は、この狭いキッチンでスープを炊いていた

 

↑大きなマイワシがオブジェとしてぶら下がっている。味の骨格となる煮干は20種以上を使用し、一杯あたり60g。首都圏エリアだけで毎月6トン以上の煮干を使用しているとか

 

「いまでこそ煮干ラーメンの店はかなり多いですけど、凪はこれだけ大量に煮干を使うこともあって、ほかにはないパワフルなダシの風味が出ています。あとは自家製麺も独特。中太麺を手もみで縮れさせることで、もちっとした弾力に複雑な食感が加わっており、スープとの絡みも抜群です。『いったん麺』という幅広いちゅるっとした生地が入るのも特徴的。味の濃さや麺の硬さなどを細かくオーダーできるのも、カスタマイズ文化が根強い福岡出身の大将ならではの心意気ですかね」(田中さん)

↑好スパイスとなっているのが、イワシとそのエキスに数10種類の香辛料や調味料を合わせて数日寝かせた「海の辛銀だれ」。飽きさせない工夫のひとつだ。また麺は通常並盛(180g)だが、中盛(220g)や大盛(270g)に無料で増量できるのもうれしい

 

ちなみに、すっかり凪=煮干のイメージだが、豚骨へのリスペクトも消えてはいない。それは「ラーメン凪 豚王 渋谷店」にしっかりと息づいている。新しいことに挑戦する一方で、原点も大切。それが生田さんのアツさでもあるのだ。

 

普通は嫌だという反骨精神。型にはまらない姿勢

「試作を含め、さんざん食べ尽くしたからってのもあるかもしれませんが……」と田中さん。最近の凪では、ラーメンよりもつけ麺のほうがお気に入りとか。ただ「すごい煮干ラーメン凪 新宿ゴールデン街店本館」では現在、つけ麺の提供は行っていない。今回は特別に材料を用意して作ってもらった。

↑「すごい煮干つけめん つけめん」870円。本館では提供してないが、近場では「すごい煮干ラーメン凪 新宿ゴールデン街店別館」で味わえる

 

「このつけ麺の大きな特徴は平打ち麺。するするっと食べられる、みずみずしい食感がイイですね~。つけ汁にはサバやイワシの粉末を加えているからか、ラーメンとはダシのニュアンスが違います。いずれにせよ、パンチある煮干の存在感が生きた、独創性のあるつけ麺といえるでしょう」(田中さん)。

 

なお、冒頭で述べた伝説はここでは語りきれない以上に多い。むしろ本館オープン以降から生田さんの情熱は加速度を増していく。それは田中さんをして「新しいもの好きで、思いついたら大興奮。すぐにやらなきゃ気が済まないくせに飽きっぽい、厄介な性格」と言わしめるもの。田中さん自身も少なからず、新店のアイデアで振り回された友人のひとりであるが、それも素晴らしい思い出となっている。

↑ポスターをはがすと、そこにはかつて田中さんが書いた大きなサインが。ほかにもここには「祭りのようにしたい!」という生田さんの思い付きで、一緒に赤い縄を巻き付けた柱の装飾なども現存する

 

「『凪』には風のないところに風を起こすという意味があって、そういう想いで大将も名付けたんでしょう。でも、とにかく落ち着きがなくて、常にワサワサしていて、彼が通り過ぎたあとはすべてかき回されてグッチャグチャになってしまう。風というより、台風とか暴風雨なんですよ。でもそれが大将らしさであり、社名となっている『凪スピリッツ』なんでしょうね。いまでも名刺はなくなるたびに毎回違うデザインにするから1年で10パターン以上とか、笑っちゃいますけど。安住することをよしとせず、新しいことに挑戦し続ける大将。普通は嫌だという反骨精神、型にはまらない姿勢は『Rock』以外のなにものでもありません!」(田中さん)

 

かつて田中さんに語った夢のひとつが海外出店だが、目標よりも早く実現させた生田さん。これは台風のような勢いがあるからこそ、巻きのスピードで叶えられたといえるだろう。なお、今回書ききれなかった伝説という名の面白エピソードは、田中さんのラーメン本「Ra:」に詳しく載っている。ぜひ一読あれ!

 

【店舗情報】

すごい煮干しラーメン凪 新宿ゴールデン街店 本店

・住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-10
・電話番号:03-3205-1925
・営業時間:24時間営業
・定休日:無休
・アクセス:東京メトロ丸ノ内線・副都心線・都営新宿線「新宿三丁目」駅から徒歩3分、JR「新宿」駅東口から徒歩8分

 

撮影/我妻慶一

【ラーメンと血圧計のオイシイ関係 3】肉と脂と炭水化物がテンコ盛りの自作ラーメン「オレ二郎」で究極の自己満足を得る!(提供元:オムロン ヘルスケア)

日夜、仕事に遊びにグルメにと、多忙な中年男性たち。彼らが抱える最大の心配ごとといえば、健康ではないだろうか。

 

さまざまな数値の中でも血圧は、健康状態を知る上でもっとも大事なバロメーター。そこで、当サイトや雑誌『GetNavi』で連載をもつほどのラーメン好きミュージシャン、サニーデイ・サービスの田中 貴さんが、“健康不安世代”の代表として立ち上がった! 日々の“ラーメン生活”の中で定期的に血圧を測ることで、どんな作用を及ぼすのか検証する、というのが主旨だ。

 

全3回の同企画で最終回となる今回は、人気ラーメンブロガー・nonchさんが不定期に開くホームパーティに突撃し、自作の「ラーメン二郎」を堪能することに。すかさず持ち込んだのは、オムロンの「上腕式血圧計 HEM-7600T」。スタイリッシュで軽いうえにスマホ連携機能まで備えており、習慣化を後押ししてくれる逸品である。

 

【プロフィール】

20180110wadafumiko001

田中

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては2016年8月にリリースした通算10枚目のアルバム「DANCE TO YOU」に続き、2017年6月にはニューアルバム「Popcorn Ballads」を配信限定でリリース。Apple Music J-POPチャート第1位を獲得するなど話題に。12月25日にはCDとアナログ盤でもリリースするとともに、同年夏に行われた日比谷野外大音楽堂公演の模様を収めたライブDVD「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」も発売。

 

チャーシューつまみにビール! そんな欲望を叶えるオレ二郎

ここは、都内某所で年に一度だけ極秘裏にオープンする「オレ二郎 西新宿店」。普段はブログ「そんなに食うなら走らんと」を主宰するnonchさんが、ラーメン仲間に腕を振るう場所だ。日々、「オレ勝軒」「天下オレ品」「蒙古タンメン オレ本」なども自作するnonchさんの原点でもある「オレ二郎」。今回は田中さんたっての希望で、さらにインパクト大な“自作二郎”を作ってもらうこととなった。

 

「nonchさんは、ラーメンブロガーのレジェンド的な存在。全国を食べ歩くラーメン好きであり、しかも独学で激ウマのラーメンも作れる超人です。僕も昔から『そんなに食うなら走らんと』が大好きで、知人に頼み込んで紹介してもらったほど。過去には僕の著作『Ra:』(学研プラス)に、しずるの村上君と一緒に出てもらった恩もあります」(田中さん)

↑「ラーメンオレ二郎 西新宿店」のキッチンには、大きなスープの寸胴(右)と、麺を茹でるための鍋(左)が。nonchさんはこの日のために、丸2日間かけてスープを仕込んでいた↑「ラーメンオレ二郎 西新宿店」のキッチンには、大きなスープの寸胴(右)と、麺を茹でるための鍋(左)が。nonchさんはこの日のために、丸2日間かけてスープを仕込んでいた

 

↑寸胴の上層には、大量の背脂。その下にはじっくり煮込まれた珠玉の豚骨スープが↑寸胴の上層には、大量の背脂。その下にはじっくり煮込まれた珠玉の豚骨スープが

 

一連の企画「ラーメンと血圧計のオイシイ関係」は、初回に王道のラーメンを提供する新宿の「若月」、第2回にはラーメンの殿堂「新横浜ラーメン博物館」を訪れた。血圧を計測するにあたってラーメンの味はなんでもいいのだが、あえて凶暴な二郎系をオーダーするとは、田中さんには相当な自信があるとみえる。

 

「毎日計ってきた成果をはっきり証明するには、それなりの相手じゃないと。まぁ僕が個人的に“オレ二郎”を食べたいという気持ちのほうが強いんですけどね(笑)。だから今日は『ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ(キャベツとモヤシのトッピングを多めに盛り付け、ニンニクと背脂とタレを増量という意味のコール。“呪文”とも呼ばれる)』でいきますよ! nonchさん、手加減は無用です」(田中さん)

 

nonchさんも「もちろん! この段階では化調(化学調味料のこと)を入れてないけど、TT(田中さんの呼び名)のぶんは、思いっきり化調入れるからね」と、やる気満々。麺も、この日のために熟成を含めて2日間かけて仕上げてきたという。

↑こちらもnonchさんによる自家製麺。ラーメン二郎と同じく、「オーション」という精製度の低い強力粉を使って打たれている↑こちらもnonchさんによる自家製麺。ラーメン二郎と同じく、「オーション」という精製度の低い強力粉を使って打たれている

 

↑nonchさんはイタリア製と日本製、2種類の製麺機を保有している。今回使ったのは、大量生産するときに使う前者の「ATLAS MOTOR」(左)だ↑nonchさんはイタリア製と日本製、2種類の製麺機を保有している。今回使ったのは、大量生産するときに使う前者の「ATLAS MOTOR」(左)だ

 

↑この方がnonchさん。手際よく準備を進めるなか「まずはつまんでよ」と、チャーシューを前菜として出してくれた↑この方がnonchさん。手際よく準備を進めるなか「まずはつまんでよ」と、チャーシューを前菜として出してくれた

 

まずは、通称「ブタ」と呼ばれるラーメン二郎のチャーシュー。一番の特徴が、ロースやバラではなくウデ肉を使うことである。塊がスーパーで売られていることはあまりないが、nonchさんはなじみの業者から仕入れているとのこと。

↑味付けは、スープで煮込むだけと想像以上にシンプル。だがその調理時間によって、食感や味のしみこみ具合が変わってくるという。今回は約2時間半だ↑味付けは、スープで煮込むだけと想像以上にシンプル。だがその調理時間によって、食感や味のしみこみ具合が変わってくるという。今回は約2時間半だ

 

↑やがてブタの盛り合わせが登場。下には茹でたキャベツとモヤシが敷かれ、上にはニンニクがオン。タレもかけられている↑やがてブタの盛り合わせが登場。下には茹でたキャベツとモヤシが敷かれ、上にはニンニクがオン。タレもかけられている

 

「今日のnonchさんも気合入ってますね~。メチャメチャウマいっす!二郎は、どの店も行列しているので、ラーメンを食べたらすぐ退出して次のお客に席を譲る、というのが暗黙のルール。だからお酒やチャーシュー単品を出すところって基本的にないんです。でも、本心としてはブタをつまみにお酒を楽しみたい。そうなったら自分で作るしかないんですよ。こういう欲望を叶えられるのが、自作のいいところですよね」(田中さん)

↑壁にはnonchさん直筆のアツいメニューが。あえてもう一筆加えるとしたら「ニンニク入れますか?」だろう↑壁にはnonchさん直筆のアツいメニューが。あえてもう一筆加えるとしたら「ニンニク入れますか?」だろう

 

そしていよいよ麺料理。「どの丼で食べる?」と気を利かせてくれるnonchさん。出てきたのはさまざまなラーメン店のロゴが入った器。驚くことに、入手困難なマニア垂涎のアイテムもあるじゃないか!

↑なかには10万円分食べないともらえない「蒙古タンメン中本」や、店主から直接もらったという非売品の「中華そば 二代目にゃがにゃが亭」の丼も↑なかには10万円分食べないともらえない「蒙古タンメン中本」や、店主から直接もらったという非売品の「中華そば 二代目にゃがにゃが亭」の丼も

 

まずはウォーミングアップということで、希少な一杯を作ってくれた。なんと、まぜそばスタイルのオレ二郎。このタイプは「ラーメン二郎 横浜関内店」の「汁なし」が有名であるが、その他多くのラーメン二郎では提供されていない。

↑まぜそばのベースとなるタレ。このうえから麺、トッピングとどんどん重ねていく↑まぜそばのベースとなるタレ。このうえから麺、トッピングとどんどん重ねていく

 

↑完成。二郎のラーメンは「天地返し」という、トッピングと麺をひっくり返す技が食べ手に用いられるが、まぜそばの場合はより重要である↑完成。二郎のラーメンは「天地返し」という、トッピングと麺をひっくり返す技が食べ手に用いられるが、まぜそばの場合はより重要である

 

「大量の豚ガラとゲンコツで抽出した濃厚なスープとタレ。ワシっとした力強い麺。背脂が生み出す甘味。ジャンクさを強調するニンニク。それらがひとつになったパンチのある味わいは、まさしく二郎ですよ! 麺の仕上がりも素晴らしいし、豚肉をはじめ素材は本家二郎よりもいい物を使ってるので、ある意味本物を超えてます」(田中さん)

 

「雑なのが二郎のいいところ」と、nonchさんははにかむ。だが、素材の仕入れや選び方、煮込み時間など、大事なところは丁寧さを欠かさない。そして何よりも、長年の食べ歩きで鍛えた確かな舌と、何度もプロのラーメン店主に食べさせてうならせてきた経験がある。それらが、このおいしさの土台になっているのだろう。次に出てきた一杯にも、nonchさんのラーメン愛があふれていた。

↑その名も「燕三二郎」。ラーメン二郎的なスープと麺をベースに、新潟県のご当地麺「燕三条ラーメン」の要素を加えたハイブリッドな一杯。チャーシューは薄切りにしたブタで表現した。最大の特徴は背脂と刻み玉ネギ。煮干しのスープは今回なかったので、魚粉を加えてそれっぽさを演出

 

「二郎のスープの濃厚さは、ドロっと乳化させているからではなく背脂によるものなんですよね。豚骨の清湯(チンタン)と背脂が特徴の燕三条ラーメンとの共通点に着目して、サラっとアレンジするnonchさんのセンスに脱帽! しかもこの場合ニンニクや野菜トッピングがほとんどないから、スープ自体のおいしさがより際立っています」(田中さん)

 

とうとう完成の「小ブタ ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」!

いよいよ“メインディッシュ”のラーメン作りがスタート。これには田中さんもnonchさんの元へ駆け寄り、間近でその工程を見守ることに。というよりも、どうやらカスタマイズをより細かく調整したいようだ。

↑タレとスープを合わせ、いったん背脂は取り除く。この塊が、ジロリアン(ラーメン二郎マニアのこと)の愛する“アブラ”である↑タレとスープを合わせ、いったん背脂は取り除く。この塊が、ジロリアン(ラーメン二郎マニアのこと)の愛するアブラである

 

↑この状態ではどんな味になっているのか、田中さんは興味津々。そして味見をしてにんまり笑顔に↑この状態ではどんな味になっているのか、田中さんは興味津々。そして味見をしてにんまり笑顔に

 

「二郎のタレは『カネシ醤油』という門外不出の専用醤油とみりん風調味料がベース。nonchさんはこれに近い醤油を仕入れて、あえて上質な本みりんを合わせているようですね。そして、よりジャンクにするなら化学調味料を。これは二郎おなじみの『グルエース』です」(田中さん)

↑続けて麺も茹で上がり。「今日の麺だと6~7分ですかね~」とnonchさん。スープの中に投入する↑続けて麺も茹で上がり。「今日の麺だと6~7分ですかね~」とnonchさん。スープの中に投入する

 

↑ヤサイもしっかりとスタンバイ。もちろんキャベツとモヤシだ↑ヤサイもしっかりとスタンバイ。もちろんキャベツとモヤシだ

 

↑ブタの上からこんもりと。ヤサイマシマシなので、山のように盛り付けていく↑ブタの上からこんもりと。ヤサイマシマシなので、山のように盛り付けていく

 

↑先ほど取り出したアブラ。チャッチャと細かく切ってふりかけるのではなく、そのままのせるのが二郎流だ。上からでっぷりと投下していく↑先ほど取り出したアブラ。チャッチャと細かく切ってふりかけるのではなく、そのままのせるのが二郎流だ。上からでっぷりと投下していく

 

↑nonchさんは宮醤油店の「特選かずさむらさき」をタレのベースに。煮沸させた本みりんを加え、5対1の割合で調合しているという↑nonchさんは宮醤油店の「特選かずさむらさき」をタレのベースに。煮沸させた本みりんを加え、5対1の割合で調合しているという

 

↑ヤサイマシマシにすると、そのぶん水分量も増す。そのため、カラメもオーダーするのがベターなのだ↑ヤサイマシマシにすると、そのぶん水分量も増す。そのため、カラメもオーダーするのがベターなのだ

 

↑ニンニクも必需品だ。nonchさん曰く、炊いたスープにもあらかじめニンニクを入れておくものの、熱で風味が飛んでいっていまうとか。そのため、適宜追いニンニクが欠かせないという↑ニンニクも必需品だ。nonchさん曰く、炊いたスープにもあらかじめニンニクを入れておくものの、熱で風味が飛んでいっていまうとか。そのため、適宜追いニンニクが欠かせないという

 

↑「ニンニク入れますか?」と聞かれる前に待ちきれず、自らニンニクを追加する田中さん。しかもかなり大量に入れている模様↑「ニンニク入れますか?」と聞かれる前に待ちきれず、自らニンニクを追加する田中さん。しかもかなり大量に入れている模様

 

↑盛り付けを終え、自ら運ぶ。こぼれないよう、丼から目を離さず慎重に……↑盛り付けを終え、自ら運ぶ。こぼれないよう、丼から目を離さず慎重に……

 

↑ついに完成! これが「ラーメンオレ二郎 西新宿店」の「小ブタ ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」だ!↑ついに完成! これが「ラーメンオレ二郎 西新宿店」の「小ブタ ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」だ!

 

↑なんとか天地返しに成功。いただきましょう↑なんとか天地返しに成功。いただきましょう

 

「強烈な個性を持ったスープやニンニクに負けない、強靭な太麺。脇を固めるヤサイの存在感。二郎としかいいようがないこのウマさを、普通の設備でこれだけしっかり作れるnonchさん、あらためてスゴイっす。でも、この中毒性ってなんなんでしょうね。数多のインスパイアはあっても、だれも本家は超えられないというレジェンド。このラーメンは、業界におけるひとつの大発明ですよ」(田中さん)

 

自然と健康を意識することでバランスをとれるように

ひと通り食べたところで、最後の計測に。ここまで3ヶ月以上、毎日計ってきた田中さん。慣れた手つきで装着しながら、血圧計のある生活について述懐してくれた。

 

「ダイエットでもよく言われることだと思うんですが、毎日計ること、続けることが大切なんです。そうすると、自然と健康へ意識が向いていくんですよ。たとえば今日は、こってりしたラーメンを食べましたよね。だから、明日はあっさりしたラーメンにしようって気を遣えるようになったんです。これは僕自身、計るようになって変わりましたね」(田中さん)

↑スマートに装着してスイッチオン。コンパクトかつスタイリッシュなデザインで、違和感もない↑スマートに装着してスイッチオン。コンパクトかつスタイリッシュなデザインで、違和感もない

 

↑数値はこの通り。最低65/最高111という数値が計測された

 

その日の朝に計ったときの血圧は86/120だったそうで、なんとオレ二郎の凶暴なラーメンを食べた直後にもかかわらず下がったことになる。だが驚くなかれ、食べた直後はたいてい血圧はいったん下がる傾向にあり、暴飲暴食した後の朝こそ、数値は高くなりやすいとされている。忘れたころの血圧の上昇をチェックできるのは、やはり血圧を日常的に測定している効果である。

 

ちなみに、田中さんの暴飲暴食後の血圧の推移に上下があったかといえば……

↑とある一週間、田中さんが測定した血圧の推移。並んだ水色の縦棒が血圧だが、大きくブレている気配はない↑とある一週間、田中さんが測定した血圧の推移。並んだ水色の縦棒が血圧だが、大きくブレているデータはない

 

とある一週間を見てみても平均して119/82と、年間600杯超=1日1〜2食がラーメンと食欲は荒ぶっていながらも血圧はいたって平穏。やはり常人とは異なる身体の持ち主のようだ。

 

「毎日続けているから、コンディションも把握しやすいんです。だから、今日のオレ二郎みたいな濃厚ラーメンを食べるってことになっても問題ありません。日々体調管理しているから、怖くないんですよ。それに、もし数値がちょっと悪くなってもそれがひと目で分かるのですぐ軌道修正できますから。食べること、飲むことが好きな人にはぜひオススメしたいですね」(田中さん)

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オムロン ヘルスケア

上腕式血圧計 HEM-7600T

血圧計本体とカフが一体化した、チューブレスタイプの上腕式血圧計。本体に腕を通して装着し、測定ボタンを押すだけで簡単に数値をチェックできる上、腕に巻いたとき、正しい測定位置から多少のズレがあっても正確に測れ、装着の向きを気にせず左右どちらの腕でもスムーズに装着が可能。薄手なら服の上からでも測定でき、腕まくりする面倒がない。健康機器には珍しい、スタイリッシュなデザインや、有機ELによる視認性の高さも魅力だ。

http://www.healthcare.omron.co.jp/

 

血圧の数値を管理するようになって、田中さんは最近、水泳も始めたという。これも健康への意識が高まったことでもたらされた変化といえるだろう。毎日測定するのは大変では? と心配されるかもしれないが、ハードルとなる装着から測定までの面倒くささを排したツールを選べば、おのずと無理なく習慣化されていくもの。これは上記のとおり、測定が簡単なことに加えて、データがクラウドに蓄積され、スマホなどで日々の数値を一覧できる点も魅力だ。「今度こそは健康的な生活を!」と思っている人は、まず計ることからはじめてみるといいだろう。

 

撮影/真名子

神奈川最西端で美しいまでの職人技によって麺まで香り立つ「飯田商店」――サニーデイ・サービス田中 貴とRockなRamen

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスのベーシスト、田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く目・鼻・舌をもって、注目するラーメン店の味や店主に「Rock」を見出していくのが、この「Rock なRamen」連載だ。

 

第1回はパワフル女将の「麺家うえだ」(埼玉県・志木)、第2回では日本一のド豚骨「無鉄砲」(東京都・江古田)。この強烈なインパクトをもつラーメン店に続く第3回は、真逆といえるほどに洗練された一杯を提供する「らぁ麺屋 飯田商店」だ。ラーメンは一見、研ぎ澄まされたルックスをしているが、なんともいえないオーラと力強さにも満ちている。店の場所は神奈川最西端の地、湯河原。都心から気軽に足を運ぶにはロケーション的に不利ながら、極上の味を求めて全国から人が押し寄せ行列を生んでいる。そんな孤高の様相は、まさに「Rock」である。

 

【プロフィール】

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田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては2016年8月にリリースした通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』に続き、2017年6月にはニューアルバム『Popcorn Ballads』を配信限定でリリースし、Apple Music J-POPチャート第1位を獲得。12月25日にはCDとアナログ盤をリリースした。さらに同日、昨夏行われた日比谷野外大音楽堂公演の模様を収めたライブDVD「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」も発売。

 

鶏と水のみから生まれるスープに美しい線を描く自家製麺

店主は飯田将太さん。もともとはラーメンのチェーン店を営んでいたものの、藤沢(現在は戸塚)にあった「支那そばや本店」の味に衝撃を受け、一念発起。「支那そばや」の創業者であるラーメン界のレジェンド・佐野 実さんや、かつて首都圏のラーメン界を席巻した「69’N’ ROLL ONE」の嶋崎順一さん(現在は尼崎の「ロックンビリーS1」)などに薫陶を受け、自身の店を2010年に開業した。

 

「東京からだとちょっとした“ツアー”になりますけど、ついに来ました! 将太さんは、僕が仲良くしている『蔦』(「Japanese Soba Noodles 蔦」)の店主・大西祐貴さんと親交が深く、コラボレーションもしてるんですけど、このふたりは間違いなくいまのラーメン界のトップランナーです。共通の知人が多くて、ラーメンイベントなどでよく顔を合わせるんですけど、将太さんはフレンドリーで親しみやすい。その人柄が、ラーメンにもお店の雰囲気にも表れていると思います。ピシっとしているけど、どこか温かくてやさしくて」(田中さん)

↑内装はラーメン店とは思えない鮨屋のような設えで、凛とした印象。だが、飯田さんはお客とのコミュニケーションも大切にしており、営業中は笑顔や感謝の言葉が飛び交う温かな雰囲気にあふれる

 

そうこうしていると、1杯目が完成。有田焼の特注の丼から芳醇な香りを放つ、芸術品のようなラーメンが到着した。

↑「醤油らぁ麺」850円。タレは兵庫、群馬、和歌山などから濃口4種、薄口1種、再仕込み1種の計6種の生醤油を合わせたもの。麺はスープの味ごとに素材の分量などを変えており、醤油らぁ麺は卵を使った細めの平打ちタイプとなっている↑「醤油らぁ麺」850円。タレは兵庫、群馬、和歌山などから濃口4種、薄口1種、再仕込み1種の計6種の生醤油を合わせたもの。麺はスープの味ごとに素材の分量などを変えており、醤油らぁ麺は卵を使った細めの平打ちタイプとなっている

 

澄んだスープはなんと、鶏と水のみ。丸鶏を「比内地鶏」「名古屋コーチン」「山水地鶏」から、ガラは「比内地鶏」「名古屋コーチン」からそれぞれ抽出する。そして美しい線を描く麺は自家製。「はるゆたか」「きたほなみ」「チクゴイズミ」「さぬきの夢」などの国産小麦に、内モンゴル産の天然由来の添加物「かんすい」と沖縄の塩「ぬちまーす」で、小麦の味を最大限に引き出したものだ。

 

「スープの旨味がふくよかで、一方の醤油ダレはキレがあり、それらが高いレベルで絶妙にマッチ。また器からあふれ出るような鶏油の風味も素晴らしい! さらには麺が生きているかのようなみずみずしさで、香りと食感が圧倒的です。約2年ぶりに食べましたが、さらに進化しておいしくなってますね」(田中さん)

↑黄金色に輝く鶏油をアクセントとしてスプーン一杯加える。これが芳醇な香りを演出するのだ↑黄金色に輝く鶏油をアクセントとしてスプーン一杯加える。これが芳醇な香りを演出するのだ

 

お次はつけ麺。田中さん曰く、ほかのお店ではあまり見られない、“特別な仕掛け”が麺に施されているらしい。そこで、飯田さんの動きから目を離さずにいると、何やらレードル(お玉)でとろっとしたものを麺の上からかけている。一体これは?

↑麺の上から、とろみのあるダシ汁をたっぷりと。一般的につけ麺は、裸の状態の麺をつけ汁に浸けて食べるので、かなり珍しい光景↑麺の上から、とろみのあるダシ汁をたっぷりと。一般的につけ麺は、裸の状態の麺をつけ汁に浸けて食べるので、かなり珍しい光景

 

「これぞ“昆布水”! とろっとしているのは、水に溶け出た昆布の成分によるものなんです。つけ麺って、どうしても麺が乾燥するので、麺同士がくっつきやすいんですよね。それを解決すべく、嶋崎さん(前述の嶋崎順一さん)が考案した画期的な発明ですよ。こうして麺をコーティングすることで全く新しい食感を生み出し、つけ汁と麺の味が渾然一体となって、旨さの相乗効果を生むわけです」(田中さん)

↑「つけ麺(濃厚昆布鰹水出汁)」1000円。やはり盛り付けからして美しく上品。醤油味のつけ汁が用意される一方、麺を楽しむための工夫がほかにもある↑「つけ麺(濃厚昆布鰹水出汁)」1000円。やはり盛り付けからして美しく上品。醤油味のつけ汁が用意される一方、麺を楽しむための工夫がほかにもある

 

↑左から、沖縄産のぬちまーす、浜名湖産の生海苔、湯河原産のユズ。そのまま麺に付けて食べたり、薬味として使ったりといった食べ方ができるのも、このつけ麺の醍醐味だ↑左から、沖縄産のぬちまーす、浜名湖産の生海苔、湯河原産のユズ。そのまま麺に付けて食べたり、薬味として使ったりといった食べ方ができるのも、このつけ麺の醍醐味だ

 

「もともとみずみずしい麺が、昆布水の効果でトゥルントゥルンな今まで感じたことのない滑らかさに。普通のつけ麺なら、食べ進むにつれてつけ汁が薄まっていくんですが、このスタイルだと徐々につけ汁と昆布水が混ざって味わいが変化していく。まず塩だけで麺を味わい、つけ汁に漬けて食べ進み、途中から生海苔や柚子でアクセントをつける。アイデアだけなら簡単にマネできますけど、麺、スープ、タレ、具材と、それぞれが一番旨い状態になるよう細かく調整しているからこその完成度。聞けば将太さん、近いうちに石臼を導入して自家製粉まで始めるみたいですから、本当に研究熱心ですよね」(田中さん)

 

「器の底に飛び込んでいくようなラーメンを」と語る飯田商店の夢

飯田商店はもともと干物や海苔の卸業を営んでいた「飯田商店」が前身であり、その建物を使っている。ただラーメン店向きの設えではなかったため、2016年の6月に大幅な改装を行った。この際に客席や厨房を広くし、新たな調理器具も導入。もともと使っていた製麺スペースも進化し、より効率よく麺を打てるようになったという。

↑店内の奥には製麺所が併設。奥の額縁のなかには、飯田さんの憧れの人・佐野さんの写真が!

 

この製麺機では、店で使う数タイプの麺のほかに、実験的に生み出すプロトタイプの麺や、ワンタンの皮も打っている。そこで、ワンタン入りのラーメンも注文することに。

↑「わんたん入り塩らぁ麺」1150円。純粋金華豚と淡海地鶏のワンタンが2個トッピングされる。ワンタンの追加は250円↑「わんたん入り塩らぁ麺」1150円。純粋金華豚と淡海地鶏のワンタンが2個トッピングされる。ワンタンの追加は250円

 

「醤油とはまた違った、滋味深い味わい。繊細な塩味だからこそ、ベースとなる鶏のピュアな旨味を感じられますね。ワンタンも、飯田商店ならではのピュルっとした食感で素晴らしい!」(田中さん)

 

久しぶりに同店のラーメンを食べた田中さん。店舗の設えもさることながら、味が進化して一層おいしくなっていることに驚いたという。

 

「2年ぶりにお店で食べて、全く別物というくらいの進化を感じたんですけど、将太さんに伺うと、大幅な改良はしていないとおっしゃるんですよね。毎日、「昨日より美味しく」という気持ちで作り続けた結果、ここまで進化したということなんです。『蔦』の大西さんもそうだと思うんですけど、評価が高いってことはプレッシャーになるでしょうし、連日お客さんが行列をなしているわけだから、気持ち的にも大変だと思うんですよ。そのなかでも、全国を食べ歩いたり生産者のところにいって学んだりと、味の向上のための探求は惜しまない。やることはとても多いはずだけど、その労苦を表に見せず進化し続け、想像を超えた激ウマラーメンを作っていく。また次に食べる時が心から楽しみです」(田中さん)

↑額に「飯田商店」「Japanese Soba Noodles 蔦」「中華蕎麦 とみ田」の名が並ぶ。この3店は、とみ田の10周年や「松戸ラーメンサミット」でコラボするなど、強い絆で結ばれている↑額に「飯田商店」「Japanese Soba Noodles 蔦」「中華蕎麦 とみ田」の名が並ぶ。この3店は、とみ田の10周年や「松戸ラーメンサミット」でコラボするなど、強い絆で結ばれている

 

飯田さんに「蔦」や「とみ田」の話を聞くと、こう語った。「リスペクトしていますよ。彼らはまるで、器から飛び出すようなラーメンを作るんです。そう例えるなら、僕は器の底に飛び込んでいくようなラーメン。それぐらい味の方向性は違いますけど、いい刺激を受けながらともにラーメンそのものの地位を向上させていきたいですね」

 

麺料理の地位としては、価格的にも「蕎麦をまだ超えられていない」と話す飯田さん。だがいつか超えるために切磋琢磨している。その情熱は、素材にとことんこだわった味で世間のラーメンの認識を変えた“ラーメンの鬼”佐野さんそのもの。鬼と呼ばれた男の魂と、尼崎で「Rock」なラーメンを作る男の精神は飯田商店に受け継がれ、ラーメンの在り方を変えていく。

 

【店舗情報】

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らぁ麺屋 飯田商店

・住所:神奈川県足柄下郡湯河原町土肥2-12-14
・電話番号:0465-62-4147
・営業時間:11:00~15:00 ※材料切れの場合終了
・定休日:月曜(祝日の場合は営業、翌日休み)
・アクセス:JR東海道本線「湯河原駅」徒歩12分

 

撮影/下城英悟

 

一生通いたいと思わせる店「佐高」——寡黙な職人が無駄のない所作で作る、雄弁なラーメン

サニーデイ・サービス 田中 貴のラーメン狂走曲 佐高 [新宿御苑前]

 

かつては東京にも手打ちの麺を出す店がいくつかあった。芳来、高揚、そして満来。今回は、満来で十数年修行したのちに独立した茂木佐高さんが、寡黙に腕を磨き続け作り上げた至高の一杯を紹介。

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田中

2008年に再結成を果たし、以来ライブを中心にマイペースながらも精力的に活動を続けるサニーデイ・サービスのベーシスト。ストリーミング配信のみで発表した「PopcornBallads」を、12/25にCDおよびアナログ盤として発売。配信時の収録内容から大幅に改訂され、全25曲100分超の壮大なアルバムになっている。

 

機械では絶対に作れない、喉越し最高の絶品麺

清潔で素っ気ないくらいにシンプルな店内。白いシャツに短く整えられた髪型の店主が、麺をやさしく両手で包みこみ、大きな鍋にパラリと入れる。チャーシューは切り置きせず、その都度、包丁で切り分ける。ひしゃくでスープをすくい、濃さを細かく調整しながら丼に注ぐ。麺の茹で上がりを確認するのにタイマーは使わない。ベストな茹で具合は、その日の気温や湿度、麺の状態によって変わるから、決まった時間では的確な調理はできないのだろう。

↑ラーメンマニアは驚くであろう奇跡のツーショット。普段は調理に集中しているので接客する余裕がないのだそう。感激!↑ラーメンマニアは驚くであろう奇跡のツーショット。普段は調理に集中しているので接客する余裕がないのだそう。感激!

 

たっぷりのお湯の中を泳ぐ麺を鋭い眼光で見つめ、その頃合いを見極めると、素早く一気に平ザルですくい上げる。チャッチャッと湯切りする音だけが静かな店内に鳴り響く。スピーディでまったく無駄のない動き。派手なパフォーマンスはない、熟練した職人の完璧な所作に惚れ惚れしながら「いただきます」とカウンター越しにラーメンを受け取る。僕が「佐高」に通うようになって十数年。店主さんは、いつもひたすらにラーメンを作り続けているので、一度も会話をしたことがない。それどころか笑顔すら見せない、無愛想なくらいの寡黙さ。緊張しながら取材にうかがうと、「昔から来ていただいてますね」と初めて見る笑顔で迎えてくれた。

 

知者不言、言者不知——本物はここにある

佐高の最大の特長は艶やかな自家製麺。毎朝3時から、茂木店主がひとりで数時間かけて打つ。ほぼ手作業で打たれ、手切りされる麺には、製麺機では絶対に再現できないみずみずしさがある。この見事な喉越しを楽しめる麺は、佐高でしか味わえない。

↑らーめん(550円)醤油・平打ち麺。魚介を使わない鶏ガラ、豚骨のシンプルなスープは、麺の風味を邪魔しない絶妙な味の濃さ。一般的なラーメンの倍近くの麺量でこの価格とは驚きだ↑らーめん(550円)醤油・平打ち麺。魚介を使わない鶏ガラ、豚骨のシンプルなスープは、麺の風味を邪魔しない絶妙な味の濃さ。一般的なラーメンの倍近くの麺量でこの価格とは驚きだ

 

茂木店主の師匠にあたるのは、「満来」の創業者である高野光男氏。高野氏が引退したいま、満来と満来出身者が営む店で手打ち麺を出す店はなく、全て製麺所の機械打ちの麺を使用している。「自分がおいしいと思うものを作り続けているだけです」細部にまで信じられないほどのこだわりを持ち、進化し続ける味。麺作りの大変さをアピールすることもなく、派手な看板も出さない店で黙々とラーメンを作り続ける。違いのわかる者だけが集う店。僕は一生通い続けるだろう。

 

<これも味わいたい!

↑納豆つけらーめん(800円)佐高発祥の味。全卵を溶いた程よい粘りとふわふわの食感が最高。酸味のあるつけダレに合う納豆を水戸まで行って探し求めたという↑納豆つけらーめん(800円)佐高発祥の味。全卵を溶いた程よい粘りとふわふわの食感が最高。酸味のあるつけダレに合う納豆を水戸まで行って探し求めたという

 

<この一杯からはこんな音色が聴こえてきた!>

BOBBY CHARLES「BOBBY CHARLES

音楽を愛する男が作り出す曲たち。飾りっ気のない、必要な音だけがそこにある。本当にいい音楽は、本当に音楽が好きな人のところへ届く。一生聴き続ける最高の一枚。

 

【店舗情報】

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佐高

住所:東京都新宿区新宿1-17-9
営業時間:[月~金]11:30~21:00、 [土]11:30~15:00
定休日:日曜日・祝日

 

取材・文/田中 貴 撮影/黒飛光樹(TK.c)

【ラーメンと血圧計のオイシイ関係 2 】「ラー博」は行くたびに“進化”を味わえるラーメンの殿堂だ!(提供元:オムロン ヘルスケア)

仕事に遊びにグルメにと、毎日を忙しく過ごす世の中年男性たち。そろそろ健康に関する悩みを感じ始め、毎年の健康診断で“数値”に直面するのがおそろしい……そんなひとも多いはずだ。なかでも血圧は、健康状態を知る上でもっとも大事な数値のひとつである。そこでこの企画では、当サイトや雑誌『GetNavi』で連載をもつほどのラーメン好きミュージシャン、サニーデイ・サービスの田中 貴さんを招聘し、まずは血圧計を進呈。“ラーメン生活”に血圧の測定はどんな作用を及ぼすのか、全3回で検証してみよう。

 

使用する機器は、オムロンの「上腕式血圧計 HEM-7600T」。スタイリッシュで軽いうえにスマホ連携機能まで備えており、習慣化を後押ししてくれる優れモノだ。気軽に持ち運べるのも魅力な本機を携え、今回はラーメンラヴァーの心踊るあのテーマパークに向かった!

 

【プロフィール】

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田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては2016年8月にリリースした通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』に続き、2017年6月にはニューアルバム『Popcorn Ballads』を配信限定でリリース。Apple Music J-POPチャート第1位を獲得するなど話題となっているが、12月25日にCDとアナログ盤でリリースすることも決定。しかも同日には、今夏行われた日比谷野外大音楽堂公演の模様を収めたライブDVD「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」も発売。また12月18日には東京・LIQUIDROOM、12月21日には大阪・梅田CLUB QUATTROでワンマンライブが開催される。

 

ラーメン界の文化遺産で最高峰の一杯を味わう

そう、世界中からラーメンラヴァーが集う、「新横浜ラーメン博物館」である! グランドオープンが1994年と、20年以上の歴史をもち、現在のラーメンの発展を語るに欠かせないスポットだ。いまでこそ全国各地の名店が首都圏に出店することも少なくないが、オープン当時はほぼ皆無。さらにいえば、名店の存在も現地でしか知られていなかったような時代だ。その招致を20年以上前から熱心に行い、実現してきた文化遺産ともいえよう。

↑エントランスを抜けると、そこはミュージアムショップとギャラリー。壁一面に、数千冊から厳選されたラーメンの書籍がおよそ500冊並ぶ。そして田中さんは博物館のパンフレットを見ながら、この日食べる店を熟考中……↑エントランスを抜けると、そこはミュージアムショップとギャラリー。壁一面に、数千冊から厳選されたラーメンの書籍がおよそ500冊並ぶ。そして田中さんは博物館のパンフレットを見ながら、この日食べる店を熟考中……

 

「ここはラーメン複合施設の先駆けであり、最高峰といえるでしょう。ご当地ラーメンをハシゴできるのはほかの施設も同様かもしれませんが、そのレベルの高さがハンパじゃないんですよ。僕も全国を食べ歩いてますが『よくこの店を引っ張ってきたなー』と、そのセンスに驚くこともしばしば。招かれるほうも、ご当地でこぢんまりとやっているお店だったり、店によっては店主がこっちに常駐することもあったり。実際のところ、従業員の問題とか本店の営業をどうするかとか、大変だと思うんですよね。だからそれを口説く情熱もスゴいなーと。ほかにもラーメンの歴史を学べるし、名店の丼ギャラリーなどのコレクションも圧巻。半日以上楽しめると思います」(田中さん)

↑店があるのは地下のフロア↑店があるのは地下のフロア

 

↑階段を下りると、ノスタルジックな昭和の光景が広がる。出店するラーメン店は不定期で入れ替わり、現在は9つのラーメン店が軒を連ねている↑階段を下りると、ノスタルジックな昭和の光景が広がる。出店するラーメン店は不定期で入れ替わり、現在は9つのラーメン店が軒を連ねている

 

田中さんが最初に足を向けたのは、「支那そばや」。ラーメン界のレジェンドのひとり、佐野 実さんが築き上げた名店中の名店である。田中さんに聞くと、最初に食べるべき店をどうするか迷うなら、ここがテッパンだという。

↑入口の脇に飾られた佐野 実さんの写真と一緒に。田中さんももちろん生前のご本人に会ったことがあり、佐野さんを慕う多くのラーメン店主とも仲がいい↑入口の脇に飾られた佐野 実さんの写真と一緒に。田中さんももちろん生前のご本人に会ったことがあり、佐野さんを慕う多くのラーメン店主とも仲がいい

 

「醤油味がラーメンのスタンダードですが、『支那そばや』はその最高峰のひとつと言えますね。全国を巡り厳選した素材でラーメンを作ったのは佐野さんがパイオニアですし、ラーメンはもっとおいしくできるという世界を切り開いたのも佐野さん。つまり、数ある料理のなかでラーメンの地位を高めたのが同店なんですよ」(田中さん)

↑「醤油らぁ麺」930円(「ミニ醤油らぁ麺」は570円)。山水地鶏や名古屋コーチンなど数種の地鶏に、多彩な魚介のダシを掛け合わせたスープ。そこに北海道産小麦「春よ恋」主体の、トゥルンとした舌ざわりの自家製細麺を使用↑「醤油らぁ麺」930円(「ミニ醤油らぁ麺」は570円)。山水地鶏や名古屋コーチンなど数種の地鶏に、多彩な魚介のダシを掛け合わせたスープ。そこに北海道産小麦「春よ恋」主体の、トゥルンとした舌ざわりの自家製細麺を使用

 

「奇をてらってないのに、こんなにおいしくなるなんて! スープ、麺、具材、それぞれの味が高いレベルで主張しながら、美しく調和しています。何度食べてもやっぱりすばらしい! ラーメンに詳しくない人でも『これはスゴい』っていうのが伝わるんじゃないですかね」(田中さん)

 

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海外や地方の名店の味が楽しめるのもラー博の魅力だ

次に向かったのは「無垢-muku-ツヴァイテ」。変わった店名と思いきや、なんとドイツ・フランクフルトに本店がある。「ツヴァイテ」とは英語の「セカンド」の意味であり、つまり2号店というわけだ。何やらこの店は田中さんも間接的に関わっているようで。

 

「2018年1月に放送スタートのTVアニメ『ラーメン大好き小泉さん』の音楽を担当させてもらってるんですけど、主役の小泉さんが同店のラーメンを食べるシーンがあって。そこで流れる音楽は、ドイツをイメージしてテクノっぽいサウンドにしました」(田中さん)

↑ドイツのビールやソーセージといった本国の名物も味わえるが、実は日本酒も充実。意外なことに「新横浜ラーメン博物館」は飲める施設でもあるのだが、日本酒好きなら同店は要チェックといえよう↑ドイツのビールやソーセージといった本国の名物も味わえるが、実は日本酒も充実。意外なことに「新横浜ラーメン博物館」は飲める施設でもあるのだが、日本酒好きなら同店は要チェックといえよう

 

ラーメンは、豚骨と鶏ガラを中心に3日間かけて炊いたスープがベース。そこに鰹節や昆布といった和のダシを加えたり、鶏油と魚介を攪拌させて加えたりして旨味の層を重ねる「無垢ラーメン」のようなメニューもある。またピッツァ用の小麦と、パスタ用のデュラム粉を配合した平打ちの太麺も特徴的だ。そんななかで今回注文したのは、豚骨と鶏ガラのスープを使った「無垢ツヴァイテラーメン」。

↑「無垢ツヴァイテラーメン」1200円。ベーコンとザワークラウト(キャベツのドイツ風漬物)を炒め、動物系のスープに溶け込ませた同店らしい一杯だ↑「無垢ツヴァイテラーメン」1200円。ベーコンとザワークラウト(キャベツのドイツ風漬物)を炒め、動物系のスープに溶け込ませた同店らしい一杯だ

 

「燻ったベーコンの風味やザワークラウトの酸味などが欧風テイストを醸し出す、独創的な味わい。よく見ると『ラルド』(ラード)という豚の背脂の加工品が入っていたり、奥深いスパイス感もあったり。でも決して異質ではなく、しっかりラーメンとして成立しています。ラー博にはいま『YUJI RAMEN』っていうニューヨークのお店も出てますが、国際的なラーメンを楽しめるのもここならではの魅力ですね」(田中さん)

 

そして3軒目。田中さんが選んだのは「龍上海(リュウシャンハイ)」。山形・赤湯のご当地辛味噌ラーメン「赤湯ラーメン」の元祖だ。創業時は醤油味だったが、自宅にスープを持ち帰って味噌を入れて食べていたのが誕生のきっかけだという。

↑「龍上海」の創業は1960年。「新横浜ラーメン博物館」は日清チキンラーメンが発売開始された1958年当時の街並みを再現しているが、それだけに違和感のない佇まいである↑「龍上海」の創業は1960年。「新横浜ラーメン博物館」は日清チキンラーメンが発売開始された1958年当時の街並みを再現しているが、それだけに違和感のない佇まいである

 

「『龍上海』は山形県外だとここしかないので、かなり希少ですよ。しかも、南陽市、旧・赤湯町で生まれたこのラーメンは、全国的に見てもかなり独特なんです。味噌味に負けないほどの強烈な煮干しスープというだけでも珍しいんですが、そこに辛味噌がのっていて、少しずつ溶かしながら食べる。そして、麺は極太、最後に青海苔が振られている。1960年にこんなアイデア満載のラーメンが山形で作られたっていう歴史を想像するだけでも楽しいですよね」(田中さん)

↑注文したのは「赤湯からみそラーメン」870円だ。左上は「ミニからみそラーメン」で570円。テーマパークならではの各店で用意されているミニラーメンは、通常量の約3/5の量になっている↑注文したのは「赤湯からみそラーメン」870円だ。左上は「ミニからみそラーメン」で570円。テーマパークならではの各店で用意されているミニラーメンは、通常量の約3/5の量になっている

 

煮干しの他にも豚骨、鶏ガラもしっかり感じるスープに、全国各地のさまざまな味噌を調合したタレを合わせる。そこにニンニクや香辛料などをブレンドしたオリジナルの“からみそ”を溶かしながら食べることによって、よりパンチのある味わいに変化する。ピュルっとしたもちもちの麺は180gと多めで、食べごたえも抜群。

 

「久々に食べましたけど、スープはもちろん麺のウマさに改めて感動。“からみそ”は全部混ぜるとかなり刺激的ですが、少しずつ溶かすタイプなので、辛い味が苦手な人でも食べられると思います。あとはスープ表面の脂の層にも注目。これによって冷めにくくなってるんですが、山形の寒い冬を乗り越えるための先人の知恵なのかなーと。こういった、地方ならではの風土が反映されるのもご当地ラーメンの面白さですね」(田中さん)

 

アツアツの辛いラーメンで体を温めた田中さん。では血圧はどうなのか、いよいよチェックしてみることに……。

↑すっかり慣れた手つきでサクっと装着し、軽々とスイッチオン。しばらくすると、ふだんの計測よりやや低めの結果が↑すっかり慣れた手つきでサクっと装着し、軽々とスイッチオン。しばらくすると、ふだんの計測よりやや低めの結果が

 

「3杯連食したからちょっと高めに出るかなと思ったんですが、そうでもなくてちょっと安心。いずれにせよ、毎日のデータがクラウドに蓄積され、スマホなどで日々の数値を知れるのは画期的ですね。しかも昨日と今日の比較、先週と今週の比較といった形でグラフから一覧可能。自然と気になって頻繁にチェックするようになるので、無意識のうちに暴飲暴食の防止に役立っていると思います。濃厚なラーメンを食べた次の日は、脂っこいものは控えようといった感じで」(田中さん)

↑田中さんの血圧の推移グラフ。Bluetoothでいったん接続すれば、以降は自動で接続し、測定するたびにワンタッチでスマホに転送され、データが蓄積されていく↑田中さんの血圧の推移グラフ。Bluetoothでいったん接続すれば、以降は自動で接続し、測定するたびにワンタッチでスマホに転送され、データが蓄積されていく

 

今回は、醤油の最高峰、ドイツの欧風、ご当地の辛味噌と食べ歩いた。あえて味のジャンルを変えて違いを楽しんだのだが、カラダにとってもメリハリやバランスは大切。食生活に自然とリズムを付けてくれるのが、気軽に測れるオムロンの血圧計の魅力といえよう。

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オムロン ヘルスケア

上腕式血圧計 HEM-7600T

血圧計本体とカフが一体化した、チューブレスタイプの上腕式血圧計。本体に腕を通して装着し、測定ボタンを押すだけで簡単に数値をチェックできる。腕に巻いたとき、正しい測定位置から多少のズレがあっても正確に測れるうえ、装着の向きを気にせず、左右どちらの腕でもスムーズに装着が可能。健康機器には珍しい、スタイリッシュなデザインや、有機ELによる視認性の高さも魅力だ。

http://www.healthcare.omron.co.jp/

 

【店舗情報】

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新横浜ラーメン博物館

・住所:神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21
・電話番号:045-471-0503(代表)
・1日入場料:中学生以上310円、小学生・60歳以上100円、小学生未満無料
・営業時間:月~土11:00~、日祝10:30~(最終入場は21:00~23:00で変動/ラーメンのL.O.は閉館の30分前) ※開館時刻も繁忙期等で変動あり。
・定休日:なし
・アクセス:JRほか「新横浜駅」徒歩5分、駐車場あり(駐車サービス付)

 

撮影/三木匡宏

男気あふれる日本一のド豚骨「無鉄砲」――サニーデイ・サービス田中 貴とRockなRamen

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスのベーシスト、田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く目・鼻・舌をもって、注目するラーメン店の味や店主に「Rock」を見出していくのが本稿だ。

 

パワフル女将が腕を振るう「麺家うえだ」に続く第2回は、これ以上にないヘビー級の豚骨ラーメンを提供するコチラ。コッテリ系といえば背脂ラーメンが主流だった約20年前から、ひたすらに豚骨の限界に挑み続け、とてつもなく破壊力のあるラーメンを作り出した「無鉄砲」だ。これはまさに、ビートルズが全盛の1960年代後半に、世界がぶっ飛ぶような轟音ギターを搔き鳴らし突如現れた「ブルー・チアー」のよう。この登場によってヘヴィロックというジャンルが生まれたように、無鉄砲の登場によって“ヘヴィ豚骨”という新たなジャンルが生まれたのだ。沼袋にある中野店へ向かうと、そこには豚骨がぎっしり入った巨大な羽釜を、金属製のゴツい棒で力一杯かき混ぜ続ける、「Rock」な男の姿があった。

 

【プロフィール】

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田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては2016年8月にリリースした通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』に続き、2017年6月にはニューアルバム『Popcorn Ballads』を配信限定でリリース。Apple Music J-POPチャート第1位を獲得するなど話題となっているが、12月25日にCDとアナログ盤でリリースすることも決定。しかも同日には、今夏行われた日比谷野外大音楽堂公演の模様を収めたライブDVD「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」も発売。また12月18日には東京・LIQUIDROOM、12月21日には大阪・梅田CLUB QUATTROでワンマンライブが開催される。

 

豪快ながらも緻密に考えられた円熟味のある“食べるスープ”

この人が、「無鉄砲」をはじめとするグループのオーナー・赤迫(あかさこ)重之さん。奈良で創業し、現在の総本店は京都に。いまや海外でも人気を博すグローバルなブランドとなっている。東京ではこの「無鉄砲 中野店」と、隣街の野方につけ麺専門店「無極」を出店。ラーメン好きの中でも“濃厚民族”と呼ばれる人たちに絶大な人気を誇っている。

 

「東京進出は2010年。先に『無極』がオープンしたんですが、その4日後にここも怒涛のスピード開業。たったの4日ってスゴいですよね。僕も無鉄砲はオープン当日に食べに行きました。まあ、当時のラーメン界は『あの無鉄砲が東京に攻めてくる!』って大騒ぎでしたから。僕は奈良、京都、大阪の無鉄砲グループすべての店で食べていましたけど、普通はそう簡単に行けないですからね。ラーメン好きの人でも、東京に来てからこの味を体験したという人は多いと思います」(田中さん)

 

驚くべきは、ザラっとした舌ざわりを感じるほど非常にねっとりと乳化したスープ。しかも、豚骨の旨味が凝縮していながらも臭みはまったくない。これは、赤迫さんの哲学に裏打ちされたものである。そう、このスープは大胆な製法の奥底に、緻密に計算されたウマさの方程式が隠されているのだ。大きな部分を占めるのが、素材選び。数あるなかから吟味し、肉片が多く旨味が豊富な宮崎産の豚のゲンコツと背骨を中心に使う。そして魚介や野菜はおろか、ほかの動物系素材も使わずに、豚骨と水のみでガンガン炊き込んでいく。

↑グツグツを通り越してボコボコと煮えたぎるスープの釜。その下には、通常より1.5倍の火力が出る特注バーナーが燃え盛っている↑グツグツを通り越してボコボコと煮えたぎるスープの釜。その下には、通常より1.5倍の火力が出る特注バーナーが燃え盛っている

 

豚骨ラーメンによく用いられる頭の部位は、無鉄砲では使っていない。聞けば、頭を使わないこと、また超強力な熱量で煮込むことで臭みを抑えられる上、タイミングに応じて骨を足せば足すほどさらに臭みは消えていくのだという。単純に強火で豚骨を焚くだけで、こうはならない。液色や素材の溶け具合などを見ながら、火加減を調節したり混ぜたりして、まるでスープと対話するように仕込むことで、無二の重厚なスープができ上がるのだ。その圧倒的な経験則から生み出される一杯は、なんともいえない貫禄に満ちあふれている。

↑「とんこつラーメン」780円。まるでジュレのような粘度の高さは、もはや食べるスープといえる仕上がり。ただ、実は濃度の異なるスープを3種類使い分けて巧みにブレンドしている。そのため、旨味や深みはありながらも雑味やクドさは皆無でペロリと味わえる↑「とんこつラーメン」780円。まるでジュレのような粘度の高さは、もはや食べるスープといえる仕上がり。ただ、実は濃度の異なるスープを3種類使い分けて巧みにブレンドしている。そのため、旨味や深みはありながらも雑味やクドさは皆無でペロリと味わえる

 

「口にした瞬間これこれ!とニンマリしてしまう、ほかにはない超重量級のウマさ。濃厚ラーメンというと、圧力釜で一気に白濁させたり、野菜でトロみを出す“ベジポタ”といったものもありますが、それらとはまったく別。豚骨だけを徹底的に炊き込むことで、この旨味とトロミを出しているのは本当に驚きです。ちなみに、もっと濃厚にしたい場合は、背脂増しにすることでよりドッシリとした味になりますよ!」(田中さん)

↑ということで、背脂増しもオーダー!↑ということで、背脂増しもオーダー!

 

↑「とんこつラーメン」の背脂を「超コテ」に増量。「ちょいコテ」や「ゲレンデ」などさまざまあり、そのほかスープをあっさりにしたり、麺の硬さやネギの量の変更などを好みに応じて調整したりできる↑「とんこつラーメン」の背脂を「超コテ」に増量。「ちょいコテ」や「ゲレンデ」などさまざまあり、そのほかスープをあっさりにしたり、麺の硬さやネギの量の変更などを好みに応じて調整したりできる

 

至高のスープから生まれる味わいは、「もはや無鉄砲というジャンル」と田中さんに言わしめるほど。ただ、このラーメンの魅力はスープだけにあらずとも力説する。

 

「例えば、チャーシューは薄めにスライスされてますよね。また、麺は中太の縮れたタイプを使用しています。これらはパワフルなスープとの一体感を考慮したもの。無鉄砲のラーメンは、チャーシューをかじって、麺をすすってスープをひと口、という食べ方じゃないんです。麺とチャーシューを一緒に箸でつまみ、絡みついたドロドロのスープとともに一気に頬張る。無鉄砲のド濃厚なスープでしか出来ない味わい方なんです。しかも、つけ麺は自家製麵なんですが、スタンダードなラーメンは、九州で修業していたお店に赤迫さんが学生時代お客として通っていた頃、その店が仕入れていた製麺所の麺で、しかも無鉄砲特製麺。初心を忘れないということでもありますし、なにより赤迫さんの男気ですよね。見た目はイカついですけど、超フレンドリーで笑顔が素敵。ファンが多く、全国のラーメン店主から慕われるのも納得ですね」(田中さん)

↑ジュレのようなスープをしっかり絡めて持ち上げる麺は約130g。大盛や替玉は150円となり、替玉の場合は自家製のストレート細麺を選ぶこともできる↑ジュレのようなスープをしっかり絡めて持ち上げる麺は約130g。大盛や替玉は150円となり、替玉の場合は自家製のストレート細麺を選ぶこともできる

 

魚介ダシに餃子に“二毛作”と幅広く楽しめる

好みによっては濃厚すぎるラーメンが苦手な人もいる。そんな配慮もあってか、実は同店には魚介のダシが香る「魚正油ラーメン」も存在。さらにはサイドメニューとしての「ギョーザ」や「お土産とんこつラーメン」などもあり、幅広く楽しめるようになっている。事実、年配の人には「魚正油ラーメン」ファンが多いそうだ。

↑「魚正油ラーメン」780円。煮干しを中心に、削り節、昆布、シイタケなどをブレンドした海の恵みが香る一杯だ。豚骨とミックスさせたWスープでオーダーすることもできる↑「魚正油ラーメン」780円。煮干しを中心に、削り節、昆布、シイタケなどをブレンドした海の恵みが香る一杯だ。豚骨とミックスさせたWスープでオーダーすることもできる

 

↑「ギョーザ(6コ)」420円。同店おなじみの、良質な豚肉とキャベツをメインに使った自家製の餃子で、素材の自然な甘味を堪能できる↑「ギョーザ(6コ)」420円。同店おなじみの、良質な豚肉とキャベツをメインに使った自家製の餃子で、素材の自然な甘味を堪能できる

 

「『魚正油ラーメン』は飲んだ後に食べたくなるやさしい味わい。『ギョーザ』はラーメンの前に一杯楽しみたい時のつまみにベストですね。そういえば、ここの深夜は『がむしゃら』っていう店名で二毛作営業してるんですよ。ラーメンは『無鉄砲』より“若い”スープを使ったライトなテイストで、スタンダードの白、ニンニクマー油の黒、魚介の効いた茶、トマトベースの赤と4種の豚骨ラーメンが味わえます。最近は、都内でも深夜に営業しているのはチェーン店ばかりなので、貴重な存在ですよね」(田中さん)

 

そんな田中さん、赤迫さんはラーメンイベントで何度も見かけているうえ、共通に仲がいいラーメン店主も多いとか。ただ、じっくり話すのは初めて。それは、イベント時の赤迫さんからにじみ出るオーラがそうさせていたのかもしれない。

 

「イベントって、ある意味お祭りだと思うんです。仲のいい店主たちが一堂に集まることってなかなかないから、みんな和気あいあいと楽しく盛り上がってる。でも、赤迫さん率いる無鉄砲グループは、ちょっと雰囲気が違うんです。祭りだからこそさらに手を抜かず、デカい羽釜や火力の強いコンロもすべて店と同じものを持ち込んできてるんですよ。しかもあの濃厚スープをいつも以上に大量に炊き続けなきゃいけないので「オリャーッ!」って気合い入れながら力一杯寸胴をかき混ぜてる。ウマいラーメンを作るために、鬼気迫る表情でスープを焚き続ける姿は、カッコイイのひと言ですよ」(田中さん)

↑赤迫さんへ色紙でメッセージを贈る田中さん。「みんなに自慢しよっと!」と、赤迫さんも笑顔でパシャリ。色紙には「日本一のド豚骨!」との田中さんの一筆が!↑赤迫さんへ色紙でメッセージを贈る田中さん。「みんなに自慢しよっと!」と、赤迫さんも笑顔でパシャリ。色紙には「日本一のド豚骨!」との田中さんの一筆が!

 

「『無鉄砲』の超濃厚豚骨ラーメンって、無性に食べたくなる瞬間があるんです。そりゃあ、若い頃よりは頻度は減ってるかもしれないけど、ガツンと、ドーンとしたラーメンを食べたい気持ちは全然あって。僕ら、最近のライブは、20代の頃よりもハードでヘヴィですからね。このラーメン食べると、まだまだ無鉄砲に、がむしゃらに生きていくぜ! みたいな気持ちになりますよ」(田中さん)

 

【店舗情報】

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無鉄砲 中野店

・住所:東京都中野区江古田4-5-1

・電話番号:03-5380-6886

・営業時間:11:00~15:00、18:00~23:00 ※売り切れ次第終了 (月~土の深夜1:00~4:00は「がむしゃら 東京中野店」として営業)

・定休日:月(祝日の場合は営業し翌日休み)

・アクセス:西武新宿線「沼袋駅」北口徒歩8分

 

撮影/三木匡宏

食べに行くたび期待値を上回る! 「道頓堀」の絶品中華そばは、店主の笑顔が調味料

サニーデイ・サービス 田中 貴のラーメン狂走曲/道頓堀 [成増]

 

ラーメン好きが「成増」と聞くとまずイメージするものは、間違いなく「道頓堀」。これ常識。そして、成増の人が「ラーメン」と聞いてイメージするものも間違いなく、「道頓堀」である。

 

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田中 貴

2008年に再結成を果たし、以来ライブを中心にマイペースながらも精力的に活動を続けるサニーデイ・サービスのベーシスト。ストリーミング配信のみで発表した「Popcorn Ballads」を、12/25にCDおよびアナログ盤として発売。配信時の収録内容から大幅に改訂され、全25曲100分超の壮大なアルバムになっている。

 

食べれば食べるほどに深みが感じられる一杯

僕が道頓堀のラーメンを食べたときの一口目の感想は、いつだって「ふはーウマイ……」だ。近くないのでそんなには行けないが、どんなラーメンかは知っている。おいしいことがわかっていて食べるのに、毎回その期待をちょっとだけ上回る。「うん、やっぱりウマイね」じゃない、じんわり驚く「ふはーウマイ……」。これはまさに、味が進化し続けているということにほかならない。

↑自分で仕込み作る。感謝の心が滲み出る笑顔。山岸氏の思いを正しく受け継ぐのは、弟子ではなくファンの庄司さんだと僕は思う↑自分で仕込み作る。感謝の心が滲み出る笑顔。山岸氏の思いを正しく受け継ぐのは、弟子ではなくファンの庄司さんだと僕は思う

 

道頓堀は1984年に創業。元々ラーメン好きだった庄司武志さんが独学で味を作り、なんと21歳の若さでオープンさせた。

「あの頃は、春木屋、丸福あたりが有名で、恵比寿ラーメンも人気でしたね。あとはコッテリ系のホープ軒、この近くだと土佐っ子が大行列でした」

懐かしい名前が並ぶ。色々食べ歩いたなかでも、東池袋の大勝軒が一番好きだったそう。確かに道頓堀の味には、故・山岸氏が作り上げた大勝軒の中華そばへの思いがうかがえる。

「昔の大勝軒は、そんなに魚介は強くなかったんですよ」

道頓堀の中華そばは、豚骨、鶏ガラが控えめながらもしっかりとベースを作り、魚介のシャープな味わいが前面に出た味わい。背脂豚骨ラーメンがグイグイと人気を出してきた時代に、若いラーメン店主が、ほかにないほどに魚介を際立たせたオリジナリティのあるラーメンを出してきたのは、当時かなり斬新だったはずだ。

↑中華そば(750円) 奇をてらったところがないので当たり前に食べてしまうが、スープ、麺、チャーシュー、メンマひとつひとつの丁寧な仕事ぶりと、それぞれのバランスは考え出すと気が遠くなるほどの完成度だ。醤油・中太麺↑中華そば(750円) 奇をてらったところがないので当たり前に食べてしまうが、スープ、麺、チャーシュー、メンマひとつひとつの丁寧な仕事ぶりと、それぞれのバランスは考え出すと気が遠くなるほどの完成度だ。醤油・中太麺

 

地元の人に愛されるもうひとつの理由

数十年間も行列が絶えない大人気店だが、この店の行列はほかの人気店とは少し違う。地元の人がたくさん並んでいるのだ。常連さんが並んででも食べに来るのは、味プラス、庄司さんの人柄も大きい。僕も帰り際にこう声をかけられた。

「楽しかったー。ありがとね。今度田中さんにはいつ会えるかな?」

屈託のない笑顔でこんなことを言われたら、返す言葉はひとつしかなかった。

「ウマかったです! またすぐ食べに来ます!」

この味にこの笑顔。本当においしいラーメンは味だけじゃないのである。

 

<これも味わいたい!>

↑塩らあめん(780円) 自家製麺もチャーシューも、醤油とは使い分ける。塩なのに尖った感じのしないやさしい味わいは、醤油とどちらにするか本気で悩む逸品↑塩らあめん(780円) 自家製麺もチャーシューも、醤油とは使い分ける。塩なのに尖った感じのしないやさしい味わいは、醤油とどちらにするか本気で悩む逸品

 

<この一杯からはこんな音色が聴こえてきた!>

とんねるず「バハマ・サンセット(New Version)」

成増の地名を全国に知らしめたのはとんねるず。石橋貴明が生まれ育った成増への思いを歌い上げる1985年の名曲。道頓堀のオープンがもう数年早かったら歌詞に登場していただろう。アルバム「成増」に収録。

 

【店舗情報】

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中華めん処 道頓堀

住所:東京都板橋区成増2-17-2

営業時間:11:00〜14:00頃、17:30〜20:00頃(いずれもスープがなくなり次第終了)

定休日:水・木曜日(第2木曜日の昼、第3木曜日の昼は営業)

 

取材・文/田中 貴 撮影/高原マサキ(TK.c)

【ラーメンと血圧計のオイシイ関係 1 】自家製麺で480円という奇跡。新宿「若月」へ食べに帰ろう

仕事に遊びにグルメにと、さまざまな経験を重ねた中年男性。それくらいの歳にもなると大なり小なり健康に関する悩みが出始め、健康診断を受ければ数値の高低に一喜一憂する人も少なくない。なかでも血圧は、健康状態を知るうえで大切なバロメーターのひとつ。だが血圧を測るのは年に一度の健康診断くらいで、“専用機器も必要なため、頻繁にチェックするのは難しい”というのが一般的なイメージだろう。

 

ところが、だ。最新の血圧計はそんなイメージを鮮やかに覆してくれる。軽くてスタイリッシュ、しかもスマホ連携機能までも備えており、習慣化すら容易にしてくれる。その筆頭が、オムロンの「上腕式血圧計 HEM-7600T」である。

 

そこで今回、当サイトや雑誌『GetNavi』で連載をもつほどのラーメン好きミュージシャン、サニーデイ・サービスの田中 貴さんを招聘! 年間600杯以上のラーメンを平らげる田中さんが、これからもおいしくラーメン生活を送れるよう、まずは血圧計を進呈。これが田中さんのラーメン生活にどんな作用を及ぼすのか、全3回で検証してみることにした。

 

【プロフィール】

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田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドとしては2016年8月にリリースした通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』に続き、2017年6月にはニューアルバム『Popcorn Ballads』を配信限定でリリース。Apple Music J-POPチャート第1位を獲得するなど話題となっているが、12月25日にCDとアナログ盤でリリースすることも決定。しかも同日には、今夏行われた日比谷野外大音楽堂公演の模様を収めたライブDVD「サニーデイ・サービス in 日比谷 夏のいけにえ」も発売。また12月18日には東京・LIQUIDROOM、12月21日には大阪・梅田CLUB QUATTROでワンマンライブが開催される。

 

新宿駅至近にある手間暇かけた珠玉の一杯が480円!

さて、なにはなくともラーメンである。だがラーメンといっても、ジャンルは多彩。数あるなかから、まずはオーソドックスな味わいの店に的を絞り、田中さんの著書「Ra:」で“東京を代表する大名店”と紹介されている店を訪れた。創業は1948年という老舗「若月」である。

↑昭和の情緒あふれる店内はカウンターのみで、壁にはメニューがズラリ。価格も、まるで時が止まったかのように安い↑昭和の情緒あふれる店内はカウンターのみで、壁にはメニューがズラリ。価格も、まるで時が止まったかのように安い

 

店の立地は、乗降客数世界一を誇る新宿駅のすぐ近く。巨大ターミナルの再開発の波に飲まれず、店がひしめき合う遺産的なスポット「思い出横丁」の中にある。界隈には焼鳥店や大衆食堂など、多ジャンルの飲食店が軒を連ねる。そこにあって“自家製麺”と書かれた看板と、通り沿いに設置された鉄板から放たれる芳醇な香り。このただならぬ魅力に、多くの通行人が吸い込まれていく。そんな「若月」で、長年愛される名物が「ラーメン」である。

↑「ラーメン 並」480円。透き通った豚骨の清湯(チンタン)スープがベースで、トッピングはメンマ、チャーシュー、のり、ネギという王道の醤油ラーメン。だが無二といえる魅惑的な食感の自家製麺をはじめ、高いレベルですべての素材が調和しており、圧倒的な存在感を放っている↑「ラーメン 並」480円。透き通った豚骨の清湯(チンタン)スープがベースで、トッピングはメンマ、チャーシュー、のり、ネギという王道の醤油ラーメン。だが無二といえる魅惑的な食感の自家製麺をはじめ、高いレベルですべての素材が調和しており、圧倒的な存在感を放っている

 

最大の特徴は自家製であること。いまや多くのチェーン店では、機械やセンターキッチンにより、原料費や人件費を抑えて量産されたラーメンが低価格で提供される。決して悪いことだとは思わないが、その何倍もの労力をかけ、スープや麺はもちろん、チャーシューやメンマもベテランの職人が丁寧に仕込む。これだけ真摯に作られた一杯が、チェーン店に引けをとらない480円。それが「若月」なのだ。

 

「最初に訪れたのは、上京してすぐの二十歳そこそこの時。西新宿から大久保に延びる『小滝橋通り』はいまでこそラーメン店が乱立していますが、当時は飲食店すらまばらでした。ただ、ビルの一角に中古レコード店が多くあって、連日のように通っていたんです。で、空腹になったらちょっと勇気を出して『思い出横丁』へ。そこで出合ったのが『若月』でした。オーソドックスな中華そばスタイルにしては太麺ってのが珍しく、妙に惹かれたんですよね」(田中さん)

↑「思い出横丁」の店はどこも狭小。「若月」も例外ではないが、だからこそ目の前で仕上げられる一杯をスピーディに楽しめる↑「思い出横丁」の店はどこも狭小。「若月」も例外ではないが、だからこそ目の前で仕上げられる一杯をスピーディに楽しめる

 

機会があるごとに立ち寄っては食べて、時には飲んで。やがて田中さんは店主の竹内次作さんとも顔見知りになり、話すうちに独自のラーメン哲学に感服したという。

 

「時間をかけて手作りしているのは、味へのこだわりはもちろん、原価を下げるためでもある。メンマひとつをとっても、乾燥メンマから4日もかけて戻して手で裂くという労力を惜しまずやってるんだから、頭が下がる思いですよ。業務用の水煮メンマより、食感も風味もケタ違いにいいですし。また、最初は麺を業者に注文していたみたいなんですけど、小規模のお店だと細かいオーダーに応えてくれなかったので自家製を決意したんだとか。そこで、知り合いの先輩に習いに行って製麺を覚えたそうなんです。できるものは何でも手作り。昔は当たり前だったことをちゃんと続けて、その丁寧さから生まれる珠玉のラーメンが480円。新宿駅のすぐ近くにあってこのコスパのよさは、もう奇跡ですよ」(田中さん)

 

自家製麺を始めた当初は、その太さに「こんなのラーメンじゃない」、「うどんじゃないんだから」など散々の言われようだったとか。ところが、いまとなってはこの太麺こそが「若月」の“売り”。半世紀以上続く老舗も、昔は新進気鋭の挑戦者だったのだ。そしてその情熱は絶えることなく、日本はおろか海外のラーメンファンをもトリコにしている。

 

焼きそばと餃子で飲んで締めにラーメンというフルコース

「若月」には、もうひとつの看板メニューがある。それが序盤で軽く触れた、鉄板で作られる焼きそばだ。

 

狭小の空間ながら鉄板を備えており、抜群においしいラーメンに加えて絶品焼きそばも楽しめる。そんな魅力も、「若月」が奇跡の店といえる理由かもしれない。今回は卵入りを注文してみた。

↑「焼そば 卵入り」480円。通常の「焼そば」は並が400円、大が480円とこちらも破格↑「焼そば 卵入り」480円。通常の「焼そば」は並が400円、大が480円とこちらも破格

 

↑焼きそばは肉の入らないシンプルなタイプ。卵が入ることで味がマイルドになる↑焼きそばは肉の入らないシンプルなタイプ。卵が入ることで味がマイルドになる

 

↑凹んで年季の入った鉄板。と思いきや、もともと凹んだ形状で製造してもらっている特注だという。約5年しかもたないそうだが、熱伝導を早くするため、鍛冶屋に特注で薄く作ってもらっているからだ↑凹んで年季の入った鉄板。と思いきや、もともと凹んだ形状で製造してもらっている特注だという。約5年しかもたないそうだが、熱伝導を早くするため、鍛冶屋に特注で薄く作ってもらっているからだ

 

「『若月』には“フルコース”といえる楽しみ方があります。それが、焼きそばと餃子をつまみながら酒を味わい、締めでラーメンという流れ。ただ、あんまり酒を追加注文しすぎると、『うちは飲み屋じゃないよ!』って女将さんにたしなめられちゃうかもしれないのでご注意を(笑)」(田中さん)

↑「餃子」380円。中身は自家製で、豚肉とキャベツ、ネギに生姜など具だくさん↑「餃子」380円。中身は自家製で、豚肉とキャベツ、ネギに生姜など具だくさん

 

さて、ひと通り食べたあと、おもむろに血圧計を取り出す田中さん。「こんな場所で?」と思われるかもしれないが、この最新の血圧計は、一見してそうとわからないデザインをしており、さして違和感はない。

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「僕は毎日ラーメンを食べているので、栄養バランスは大丈夫かなーって思ってたんです。でも血圧計があれば数値で体調管理できるので、この企画はありがたいお話ですね。最初は続けられるかなって思ったんですけど、数週間使ってみてすっかり慣れました。なんといっても軽くてコンパクト。操作も簡単だから、計ることへの面倒くささがまったくないんですよ」(田中さん)

テーブルなどに置いていても邪魔にならないので、血圧が気になったときにすぐ測定することができるのだ。

 

ちなみに、血圧と同時に測れる脈拍は、この日90前後とやや高め。食事をした直後に計ったことが影響していたのかもしれない。このように、一日のバイオリズムを知れるのも定期的に測っているからこそ。健康管理は、日々の自分と向き合うことが大切なのだ。毎日黙々と打ち続ける自家製麺が特徴の、「若月」のラーメンのように。

 

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オムロン ヘルスケア

上腕式血圧計 HEM-7600T

血圧計本体とカフが一体化した、チューブレスタイプの上腕式血圧計。本体に腕を通して装着し、測定ボタンを押すだけで簡単に数値をチェックできる。腕に巻いたとき、正しい測定位置から多少のズレがあっても正確に測れるうえ、装着の向きを気にせず、左右どちらの腕でもスムーズに装着が可能。健康機器には珍しい、スタイリッシュなデザインや、有機ELによる視認性の高さも魅力だ。

http://www.healthcare.omron.co.jp/

 

【店舗情報】

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若月

・住所:東京都新宿区西新宿1-2-7 思い出横丁内

・電話番号:03-3342-7060

・営業時間:11:00~翌1:00

・定休日:日曜

・アクセス:JRほか「新宿駅」西口徒歩3分

 

撮影/三木匡宏