外遊び派の強い味方「PVC」は完全に水を遮断する

ホンモノ素材辞典vol.10
今回のホンモノ素材辞典は、完全に水を遮断し、アウトドア製品に最適な素材「PVC」です。

 

様々なカタチで実生活に溶け込んでいるPVC

PVCとは、ポリ塩化ビニル(Poly Vnyl Chloride)の略。合成樹脂としてはとても一般的な素材で、「塩ビ」「ソフトビニール」などと呼ばれることも。塩化ビニルは「腐食」に強く、非常に幅広い用途に対応できますが、そのままではかなり硬くてもろいうえ、紫外線による劣化も早いのが欠点。そこで、製品に活かす際には「可塑剤」と呼ばれる薬品と、劣化を防ぐ「安定剤」を加えて、柔らかく加工します。

 

可塑剤の量によって、さまざまな形状に成型できるため、身近なところでは、水道の配管などに使うパイプ、波板やシートといった建築素材、透明な“ビニール袋”などに。また、医療用のサポーターやカーテン、毛布やマット類、漁網などに用いられる「PVC繊維」「ポリ塩化ビニル繊維」と呼ばれる繊維そのものに加工されたり、ナイロン繊維の加工用(コーティング)素材として用いられることもあります。

▲フルクリップのニューダレスF4 type GNのメイン素材として使われている「トリプルG2」は、有害物質不使用で、防汚性、難燃性、抗菌性能を持つ高機能PVC

 

防水性の高さからアウトドア向けバッグやギアで大活躍

製品の品質タグなどに「PVC」と書かれていた場合、それはPVCをナイロン生地に貼り付ける加工が施された「PVC加工ナイロン生地」を意味します。

 

見た目や風合いはふつうのナイロン生地と変わりませんが、その防水性の高さに決定的な違いがあります。もともと密に織られたナイロン生地には、水濡れに強いという特長がありますが、PVC加工を施すことで、裏面に貼り付けられたPVCが完全に水を遮断するため、レインウェアや、渓流釣りなどで使用するウェーダーと呼ばれるパンツ、アウトドア用のバックパックなどのバッグ類に最適な素材となるのです。

 

ベースはナイロンなので、カラーバリエーションが豊富なうえ、しなやかで汚れにも強いため、アウトドア向けとしては非常に使い勝手のよい素材といえるでしょう。

 

反面、通気性がまったくないため、レインウェアなど衣料品に使用した場合、蒸れの問題が発生することも。透湿性を兼ね備えた高機能な防水素材もありますが、PVC加工のほうが耐久性が高く、価格も安価に抑えられるというメリットがあります。

 

一方、バッグ類に使用する際は、縫い目の裏張りといった処理は必要になるものの、防水性の高い製品を作ることが可能です。

 

 

PVC加工ナイロンとターポリンの違いは?

最後に、防水性の高い生地としてPVCとよく並べて語られる、ターポリンについても少し触れておきましょう。

 

「PVC」がナイロンをベースにした生地であるのに対し、ターポリンは、ポリエステル製の生地に合成樹脂を貼り付けて作られます。かなり厚手でごわごわしているため、衣料品に使われることはほとんどなく、建築関係で用いられるシートや店舗店頭の日よけテントなどに用いられてきました。近年では、その独特の剛性感や耐久性の高さで、完全防水のバックパックや、マリンスポーツで荷物を収納するような大容量のバッグなど、アウトドアギアに個性を演出する素材として人気を集めています。

 

 

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【コーデュラ610P】高耐久素材「コーデュラ・ナイロン」の数字の読み方

ホンモノ素材辞典vol.9
今回のホンモノ素材辞典は、アウトドアからビジネスバッグまで。人気の高強度、高耐久性素材「コーデュラ・ナイロン」です。

 

 

ナイロンの7倍もの強度を持つ驚異の繊維

アウトドアで使われるバックパックやダッフルバッグ、近年流行りのタフな作りのビジネスバッグなどを購入した際、黒地に白とオレンジの文字で「CORDURA FABRIC」と書かれたタグがついていたことはありませんか?

これは、耐久性と強度の高さで最高峰の評価を得る「コーデュラ・ファブリック」が使われている証です。

 

コーデュラとはアメリカのインビスタ社が開発し、特許を取得した人工繊維で、その強度は、なんとナイロンの7倍。この繊維を使った生地を「コーデュラ・ファブリック」、あるいは「コーデュラ・ナイロン」と呼びますが、繊維そのものの強度が高いうえ密に織られているため、引き裂きや摩耗に強く耐久性も抜群。実際に使ってみると、ちょっとした天候不順に出くわしても雨が染み込みにくいことが実感でき、実用性の高さでもトップクラスの素材と言えるでしょう。

 

ちなみにインビスタ社の母体は、かつてナイロンを世に送り出したデュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社。つまり、コーデュラはナイロンの正統的な最新進化形態、と言っても過言ではありません。

 

 

コーデュラ製品の数字が意味するものは?

ひとくちにコーデュラ・ナイロンと言っても、他の繊維と組み合わせて織られたものなど、さまざまなバリエーションがあります。

 

日本でよく目にする「コーデュラ1000」や「コーデュラ500」の「500」や「1000」は、「デニール」という値から取ったもの。デニールは糸や繊維の太さに使われる単位で、9000メートルの長さにおける重量が表されています。たとえば500デニールなら、9000メートルで500グラム。1000デニールなら9000メートルで1000グラムというわけです。

 

コーデュラ500は500デニール、コーデュラ1000は1000デニールの繊維が使われているので、より重く太い繊維からなるコーデュラ1000のほうが、強度も高く、よりゴツい仕上がりの生地ということになります。

 

日本で流通しているコーデュラ・ナイロン製品のうち、主なものをご紹介しましょう。

 

【コーデュラ8号】
コットンにコーデュラ素材のナイロン25%を加えた生地。帆布のような風合いを実現しつつも耐久性に優れ、耐摩耗性も高められています。

【コーデュラ610P】
コーデュラブランドではありますが、ポリエステルベースのコーデュラ・ポリエステルを素材に使った生地。テフロン加工が施され、水や油などを弾きます。

【コーデュラ500】
500デニールのコーデュラナイロンで織られた生地。引き裂きや摩耗に対する高い強度を誇り、アウトドア用ギアやバッグに適しています。

【コーデュラ1000】
1000デニールのコーデュラナイロン100%の生地で、500に比べてより強度が高く、ボリューム感も増しています。ヘビーデューティをウリにするようなハード系バッグやポーチなどで使われます

【コーデュラ1680】
1680デニールのコーデュラナイロン100%で織られた生地。コーデュラ1000よりもさらに太い繊維が使われ、ナイロン系で最強クラスの強度を誇るため靴やインテリアなどにも用いられています。

 

タフな環境にもヘタることなく応えてくれる、コーデュラはそんな魅力的な素材なのです。

 

 

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「ナイロン素材=安物」という常識を覆してしまった「リモンタナイロン」は深みのある色合いと滑らかな肌触りが特徴

ホンモノ素材辞典vol.8

今回のホンモノ素材辞典は、実用性だけでなく、高い質感をも兼ね備えている「リモンタナイロン」です。

 

 

有名ブランドがバッグに採用。一躍有名に

「リモンタナイロン」とは、生地の名前ではなく「リモンタ社が手がけるナイロン素材」の総称で、深みのある色合いと滑らかな肌触りが特徴です。

 

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リモンタ社は、イタリアのロンバルディア州レッコレッコ県南西部にあるコスタ・マズナーガで、1893年に創業を開始した歴史ある繊維メーカーです。繊維産業の盛んなコモからもほど近いこの土地で、ジャカード織の布やタペストリーなどを生産していましたが、徐々に事業を拡大。衣料品や家具といった、幅広い分野の素材を手がけるようになりました。

 

そんなリモンタ社が一躍名を馳せたのは、1970年代後半のこと。バッグで有名なイタリアの一流ブランド・Pが、同社のナイロン生地「ポコノ」を採用したのがきっかけでした。主にテントやパラシュートといったアウトドアやミリタリー製品に用いられていたポコノは、薄くて軽量、丈夫なうえに防水性も併せ持つという、高い機能性を誇りました。しかも、細い繊維を緻密に織り込んだポコノは、独特の光沢と、シルクのような手ざわりのよさまで兼ね備えていたのです。

 

以来、同社の高い技術と幅広い製品バリエーションは世界的に知られることとなり、さまざまなブランドが採用。ビジネスバッグを中心に、あらゆる製品へと活用されています。

 

リモンタナイロンのバリエーション

リモンタ社は、ポコノ以外にも数多くの製品を世に送り出しています。その中から、代表的なものをご紹介しましょう。

 

デービス
リモンタ社の主力商品のひとつ。高密度で水が染み込みにくく、ハリの強さも絶妙なため、バッグのアウターに最適です。同社の生地全般に言えることですが、イタリアンレザーにも通じる発色のよさは、さすがの一言。豊富なカラーバリエーションが楽しめます。

 

ダボック
これも、リモンタ社の主力商品で、デービスをベースに、コットンなどの素材をボンディング(貼り合わせ)加工したもの。デービスのメリットに加え、ボンディングする素材によって異なった風合いが生まれます。

 

ティワ
リモンタ社の技術が注ぎ込まれたナイロンタフタです。タフタとは、もともと細かなウネのある平織地の薄い絹織物のこと。それをナイロンと微量のポリウレタンによって高密度に織り上げることで再現しています。非常にソフトで、若干の撥水性もあります。

 

ジョージア
まるで厚手のコットンのような質感を持つジョージア。ナイロンなので、厚みがあっても軽量です。そのうえ、キャンバス地のように織り目が深く、汚れにくいのも特長です。

 

実用性だけでなく、高い質感をも兼ね備えていることから、とくにバッグにおいて、皮革素材=高級、ナイロン素材=安物という常識までも覆してしまった「リモンタナイロン」。ぜひ一度お手にとり、その魅力を堪能してください。

 

 

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【革の知識】純国産皮革素材「スクモレザー」は知らないと損! 藍色のグラデで世界を魅了

ホンモノ素材辞典vol.7

今回のホンモノ素材辞典は、抜群の個性と希少性を誇り、海外ブランドも魅了する美しきメイド・イン・ジャパンの皮革素材「スクモレザー」です。

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職人技のバトンリレーで生まれる究極の藍染革

スクモレザー最大の特長は、なんといっても濃淡さまざまな表情を見せる藍の色。その唯一無二の美しさは、染めに使われる藍の育成から染料の生成、染色、そしてなめしに至るまで、複数の職人がそれぞれの持てる技を注ぎ込むことにより生み出されます。

 

その名に冠された「(すくも)」とは、国選定無形文化財に指定されている徳島県の阿波藍で作られた天然の染料のこと。現在、わずか5軒しかない阿波藍師のひとりである外山良治氏が、自身の畑で育てた藍の葉を約600年続く伝統の製法で乾燥・発酵・熟成させて作り上げます。

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その希少な染料と、着物の染色に使われる「天然灰汁建本藍染」という伝統的かつ手間のかかる技法を用いて革を染めるのが、京都にある浅井ローケツの二代目・浅井直幸氏。染め上がった革には、兵庫県・龍野のタンナーによって特殊な仕上げ加工が施され、ようやく鮮やかな藍色を纏った最上級の皮革素材「スクモレザー」として、世に送り出されていくのです。

 

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海外ブランドも魅了する美しきメイド・イン・ジャパン

スクモレザーのカラーバリエーションは、濃淡のグラデーションを織りなす全8色。もっとも色味の濃い「留紺(とめこん)」から、藍の瓶にわずかに浸したくらいの薄い色味の「瓶覗(かめのぞき)」まで、それぞれに日本語の色名が付けられています。さらにデザインレザーとして、伝統的な技法である「絞り染め」や「ローケツ染め」が施されたものもラインナップには並んでいます。

 

他の皮革素材とは一線を画す、鮮やかで深みのある色合いと個性的な染めのパターン。その美しさで、最上級の素材しか取り扱わない海外ブランドをも魅了するスクモレザーは、まさに世界に誇れる純国産皮革素材なのです。

 

 

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【革の知識】「シュランケンカーフ」って聞いたことある? ドイツが誇る注目株は自然で鮮やかな発色がすごい

ホンモノ素材辞典vol.6

今回のホンモノ素材辞典は、ドイツが誇る世界的人気の逸品。カーフならではの素材感と鮮やかな発色が魅力の「シュランケンカーフ」をご紹介します。

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注目度、人気ともに上昇中の超ロングセラー

皮革素材といえば、イタリア産が話題になりがち。けれど、ドイツにも世界的な人気を誇る逸品があります。それが、ペリンガー社が製造する「シュランケンカーフ」です。

 

べリンガー社は、1864年創業の老舗で、ボックスカーフ(生後6ヶ月までの仔牛の革)をクロームなどの薬品で鞣した素材を得意とするタンナーです。高級皮革といえば植物性タンニンで鞣したものを思い浮かべがちですが、しなやかで柔らかく、きめが細かいカーフの特性を活かすには、実はクローム鞣しのほうが向いているのです。

 

発売されてから60年が経つロングセラーですが、近年、海外の有名ブランドを始め、国内でもこのシュランケンカーフを用いた製品が続々登場。注目度、人気ともに上昇中の素材です。

 

自然で深いシボと鮮やかな発色が特長

シュリンクレザーの一種であるシュランケンカーフの表面には、クロームで鞣す際、革が収縮して生まれた自然なシボ(シワ)が見られます。ひとつひとつ大きさや深さが異なるこのシボによって、折り曲げにも強く、傷が目立ちにくいのも大きな利点です。

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さらに、発色のよさも特筆すべきレベル。シックな色からポップな色まで、カラーバリエーションが豊富なうえ、経年変化による退色なども、ほとんどありません。

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革素材の中では水気にも比較的強く、お手入れも簡単。初めて手にしたときの色合いを長く保てるのも、シュランケンカーフならではの魅力です。

 

 

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【革の知識】「プエブロ」って知ってる? 劇的に変化するエイジングに魅了される人続出

ホンモノ素材辞典vol.5

今回のホンモノ素材辞典は、起毛ゆえの独特な質感で、使い込むと劇的に変化するエイジングが魅力のイタリアン・レザー「プエブロ」をご紹介します。

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表面をヤスリで削って出す独特の魅力

イタリアンレザー「プエブロ」。この素材につけられた「プエブロ」とは、アメリカの南西部やメキシコ北部に残るプエブロ・インディアンの伝統的な共同体や集落のこと。なぜイタリアン・レザーにネイティブアメリカンに関する名称が?と思ってしまいますが、プエブロが持つ民族的な風合いのイメージにちなんでこの名前がつけられたのだとか。

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プエブロは「バケッタ製法」と呼ばれるイタリアの伝統的な製法で、植物性タンニンだけを使って鞣し、長い時間をかけて牛の脚から採った脂をたっぷりと染み込ませて作られています。

 

表面はわざと毛羽だったような起毛加工が施されていることもプエブロの特性です。起毛革は「ヌバッックレザー」とも呼ばれ、使い込むことで表面の毛羽立ちが寝たり摩耗したりするとともに、人の手の脂などが染み込むことで、経年変化が一般的な皮革素材よりも速いペースで起こります。

 

吟面をやすりなどを使って起毛処理を施していることから、新品の時にはざらざらと艶のない状態ですが、使用時間を経るとこれが滑らかに馴染んでいき、同時に大きく色味も変化します。

 

プエブロのカラーは艶やかでありながらも、どこか素朴な味わいのあるものが揃っていますが、表面が滑らかに変化していくと同時に、色合いは濃く、深みを増していきます。

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色にせよ、質感にせよ、エイジングによって生じる大きな変化は、決してプエブロの魅力を損なうものではありません。経年変化によって生まれる色の濃淡や擦れ、キズなどは持ち主ごとの個性として製品に刻まれ、それがまた唯一無二の美しさと愛着を生み出すのです。

 

もともとプエブロはその古典的な製法ゆえに、色味が均一ではなく、ロットごと、あるいは1枚の革のなかにも微細な色ムラが見られますがそれも魅力のひとつ。革の魅力を知る人ほど評価の高いのがこのプエブロなんです。

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タンナーはフィレンツェの「バダラッシー・カルロ」

このプエブロを世に送り出しているのは、イタリア中部、トスカーナ州のフィレンツェにあるタンナーであるバダラッシー・カルロ社です。前述のバケッタ製法を用い、上質な皮革素材を生み出している名タンナーで、ミネルバ・ボックス、ミネルバ・リスシオといった名革の製造元としても知られています。

 

バダラッシー・カルロが得意とするバケッタ製法は、風合いのよい革を作れる伝統的製法です。その一方で、工程のすべてを手作業で行い、製品を仕上げるまでに手間と時間がかかりすぎるのが難点。1000年もの歴史を誇りながら、効率的な現代的製法に駆逐されかけていたこの製法を現代に甦らせたのが、社名にもなっている創業者のバラダッシー・カルロ氏です。イタリア独自の伝統的な製法に賭けた同社の熱意はプエブロ、ミネルバボックスをはじめとするすばらしい商品として結実し、今では世界的に高い評価を得るに至っています。

 

 

メンテナンスの手軽さも魅力

バケッタ製法によって作られるプエブロは、一般的な皮革素材のなかでも油脂分を多く含んでいます。そのため、起毛加工された外見からは意外に思えますが、水濡れにも比較的強い素材です。特にエイジングによって表面が滑らかになってきたあとは、よりいっそう水が染み込みにくい状態となります。

 

これはほかの皮革素材でも同じですが、万が一、長い時間、水に濡れた状態が続いたようなときは、日向ではなく、陰干しでゆっくりと水分を抜くのが鉄則。特にドライヤーなどを使って急速に乾かそうなんて思ってはいけません。変形が起こったり風合いが変わってしまいます。プエブロは色移りの激しい素材ではありませんが、濡れると色移りの原因となるので、そのときは少し注意が必要となるでしょう。

 

また、製造時の油分が多いため、製品を使いはじめてからしばらくのあいだは、メンテナンスにクリームなどを用いる必要はありません。逆に、新しいうちにうかつにクリームなどを塗ってしまうとせっかくの起毛処理が大きく影響を受けて色や質感が大きく変わってしまいます。

 

クリームなどを用いるなら、エイジングが進んで表面が滑らかになった後。乾燥してかさついたようになってきたと思えたときに、ごく少量を使ってあげてください。それまでは汚れを軽く拭き取るくらいで問題ないでしょう。

 

 

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【革の知識】「シエナ」の透明感あふれる発色と経年変化は、1枚ずつのハンドメイドの着色から生まれる!

ホンモノ素材辞典vol.4

植物タンニンなめし(ヌメ革)の牛革の中でも、透明感あふれる発色と上質な質感が魅力の、タリア・トスカーナの大手タンナー・MPG社が作るシエナについて今回は解説します。

 

透明感ある発色のイタリア製傑作ヌメ革

イタリアで作られる、数々の名レザー。中でも植物タンニンなめし(ヌメ革)の牛革は、ブッテーロなど雰囲気のいい革がそろっています。さらに、そんなヌメ革の中でも、上品な質感と得も言われぬ発色、筋のいい経年変化をすることで人気が高いのが、イタリア・トスカーナの大手タンナー・MPG社が作る「シエナ」です。
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植物のタンニンで革をなめした後に加脂をして、1枚ずつハンドメイドで着色していきます。ラッカーや顔料でべったりと染色するのではなく、透明感を残した染色で、色気のあるムラ、グラデーションが現れ、どのカラーでも独自の味わいが楽しめます。またキレイに色落ちしていくエイジングの妙も計算済みなのです。

 

折り曲げる財布だから「シエナ」の特性が活きる

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適度な 張りとしなやかさのバランスが良く、革内部にまで含浸したオイルが手に吸い付くような独特の肌触りを生むのが、シエナの特徴です。

 

折り曲げた部分がやや明るく見えるのは、染みこんだオイルが繊維中を移動し、革色が変わる「プルアップ」という特性です。ですので、「薄い財布」のような、折り曲げる箇所が多い財布に向いていると言えます。
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また、この革の最大の魅力は、自然な色ムラのある色彩美と発色の良さ、グラデーションのある深い光沢。写真のように、色の濃淡が製品にいい「表情」をつけてくれています。それと引き換えに、シエナはひっかき傷やアタリと呼ばれる圧迫痕がつきやすいという弱点も持ちます。それを補ってあまりある色彩と光沢が醸し出す気品が魅力です。

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革素材は時と共に、細かな傷や、使用者の手の脂を吸い込むことで、色や風合いが変化していきます。こうしたエイジングもまた、革素材の製品を持つ楽しみ。シエナの場合、きらきらと革の表面で生まれていた光沢が、少しずつ、革の内側へと沈み込むような落ち着いたものへと変わっていきつつ、革本来が持つ艶やかさを失うことはありません。

 

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【革のダイアモンド】「コードバン」てよく聞くけど、ちゃんと説明できる?

ホンモノ素材辞典vol.3

今回の「素材辞典」は、古くから存在する素材ながら、人気が衰えるどころか、近年はその存在価値がどんどん増し、同時に価格も高騰している、コードバンについて解説します。

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今や入手が超困難なコードバン原皮

コードバンは、牛ではなく、馬の殿部、つまりお尻の革である、というところまではよく知られているのですが、実はコードバンは、表面の皮の部分ではありません。表皮を削って剥いた、その下にある「コードバン層」と呼ばれる、繊維部分をなめして作られたのが、コードバンなのです。

 

この「コードバン層」が含まれるのは殿部のみ。そのため、1頭からは、お尻の右側と左側から1枚ずつ、とても小さな面積しか採れません。その形が中央でくっついたものを業界では「メガネ」と呼びます。

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コードバンの滑らかさの秘密は、その繊維の並び方。コラーゲンの繊維が絡み合っている一般的な皮革素材と違って、コードバン層は繊維が整然と並んでいるのが大きな違い。表皮を剥いてその断面を露出させることで、この独特の肌触りは生まれています。

 

ちなみに競走馬であるサラブレッドにはこの「コードバン層」がほとんど存在しません。ヨーロッパで農耕や食肉のために飼育されている、特定の馬種だけから採取できます。足が短く筋肉でお尻が盛り上がった農耕馬だけが持つ特別な部位なのです。そのうえ、コードバン層が採れる農耕馬は、もともと生産数が少なかったうえ、農業の機械化が進んだ現在、その数ははっきりと減少傾向にあります。

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限られた作り手が生み出す革のダイアモンド

コードバンの主要なタンナーは世界で2社。アメリカのホーウィン社と、日本の新喜皮革です。ほかにもアルゼンチンやイギリスなどにもタンナーは存在しますが、生産量の面で言えば、上記の2社の寡占状態と言って良いでしょう。

 

さらに日本にはタンナーからなめした革を仕入れてアニリン染めなどの2次加工を行う職人工房、レーデルオガワなども存在します。世界屈指の加工技術とも言われ、特にアニリン染料を使った加工は、透明感のある世にも美しい発色です。

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エイジングにより、さらに魅力を増すコードバン

エイジングと呼ばれる経年変化で、革を自分色に育てる楽しみもまた、コードバンの特筆すべき魅力です。さまざまなフィニッシュ加工があるので、それぞれの変化がありますが、多くは使ううちに使用者の皮脂でさらに艶が深くなり、また色も濃くなっていきます。

 

またエイジングによって艶が出るのと同時に起こるのが、変形です。前述のようにコードバン層は繊維が整然と並んでいるため、引っ張り強度が比較的弱く、使用しているうちに内容物などのシルエットがくっきり浮き出して「アタリと呼ばれるクセ」がつき、使い手の手に馴染んだものになっていきます。靴のアッパーなどに使われる理由は、まさにその性質を生かしたもの。逆に、極端な変形を嫌うのであれば、財布などの場合はヒップポケットに入れないといった配慮も必要になるでしょう。

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また、コードバンは単層構造であるため、一般的な皮革素材のように「浮き」と呼ばれる上下層の剥離が起こらないことも特徴です。

 

一方で、エイジングが進むと傷や油分、水分に対する弱さも増していくので、皮革素材用トリートメントなどを使ったお手入れも欠かさないようにし、気長につき合っていきたいものです。

 

 

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斬り込んだ刃が錆びる不思議な素材―― 戦国武将が甲冑にも用いた「黒桟革」とは?

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日本国内の革で最も価値が高いものはなにかご存じですか。それは、戦国時代以前からの歴史を持つ「黒桟革」。今回の「ホンモノ素材辞典」は黒桟革に注目します。

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武将クラスだけが使った贅沢な革

ホンモノケイカクが取り扱う財布の素材中、もっとも価値が高く、稀少な存在と言えるのが、姫路の坂本弘さんが作る「黒桟革」です。

 

その生産の歴史は、戦国時代以前までに遡ると言われています。漆でコーティングされた革は刃で切りにくい特性があるため、上級武将クラスの甲冑のつなぎの部分などに使われていたという資料があります。また坂本さんによると、鉄粉を溶かした液を含浸させる(漆と化学反応を起こし、漆黒の色へと変化する)ため、切りこんだ刃の一部を錆びさせる効能もあったのではないか、とのこと。古の戦場で珍重されるだけの機能性を持った革だったのです。

 

しかし、現代では、剣道で使われる「胴」、しかもハイエンド品の装飾部分のみということもあり、現在商業ベースで生産するのは、世界で坂本さんひとりとなってしまいました。

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手間と根気の作業で作られる極上の美しさ

革と漆を使う伝統工芸で、よく見るのが「印傳」です。その違いもお話しておきましょう。

 

印傳の場合、鹿革の上に柄のついた版をのせ、そこに漆を「刷り込んで」乾燥させます。要はインク(漆)を使ったスクリーン印刷です。ですので、漆の柄部分を曲げると割れてしまいます。

 

黒桟革は、漆を革全体に塗って「擦り込んで」コーティングし、何度も重ね塗りすることで強度を上げているものです。

 

しかし黒桟革は、その特殊性ゆえ、非常に手間がかかるプロセスを経て作られます。
簡単に説明すると…
国産黒毛和牛の原皮を、姫路の伝統的な「白なめし」という製法で滑らかにしてから、揉み込んでシボ革を作り、漆を揉み込んで重ね塗りして作ります。

 

白なめしは、国産黒毛和牛からとった塩漬け原皮を、川の水に長時間さらし、微生物の作用で毛根を緩めて脱毛。その後天日で乾燥させ、塩と植物油を使って、時間をかけてなめしていきます。

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できあがった白なめしを今度はしっかりと揉み込み、表面にデコボコのシボを作っていきます。その後に漆をすり込んでは一定湿度の中で乾かしながら化学変化をおこし…を繰り返すこと7~8回。

 

たった1枚を仕上げるのにも約1カ月かかります。こうした手間暇をかけることによって最高の黒桟革ができあがるのです。

 

 

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ファッションでよく聞くカーボンレザーってなに? カーボンなの? レザーなの?

ホンモノ素材辞典vol.1

カーボンレザーはメンズの小物やアクセサリーでは定番の人気を誇る素材。でも、どのように作られているのか皆さんご存じすか? 今回の「ホンモノ素材辞典」は、「ハイブリッドな革」カーボンレザーの秘密に迫ります!

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耐摩耗性、耐光性、耐熱性を持つ信頼性の高い素材

開発したのは、1906年にイタリア・ヴィエッラで創業した皮革加工メーカーであるキオリーノ社。もともと同社は一般向けの製品よりも、コンベアベルトなど工業用製品を多くを手掛けているメーカーです。

 

このカーボンレザーも、もともとは自動車メーカーに納入するため開発されたプロダクト。生後6ヶ月から2年くらいまでの中牛革(参考:紳士靴やハンドバッグなどに使われるキップは生後6ヶ月から1年くらいと言われています)を下地に使い、上面に極薄のカーボンパターンフィルムを熱圧着しています。

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キップに近いようなしなやかなコシを持ちながら、上面にラミネートしたカーボンフィルムは耐摩耗性、耐光性、耐熱性を持っています。さらに汗や水等に晒されてもしっかりグリップする特性を持ち、極限状態で走行することを前提としたスポーツカーのステアリングやシフトノブにも採用されていることからも、信頼性の高い素材と言えます。

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これまでの常識にない新しい「ハイブリッドな革」

この素材、牛革に高度な圧着技術で二次加工を施しているため、牛革とカーボンフィルムが剥離することはほぼありませんし、ホンモノケイカクでも多くのお客様にお買い上げいただきましたが、これまで革自体が剥離したトラブルは一件もございません。間違いの許されない工業製品を手掛けてきたキオリーノ社の高い技術力の賜物ですね。

 

 

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