結婚の常識を疑え! 結婚・離婚観の移り変わりから見える、未来の結婚像~注目の新書~

こんにちは、書評家の卯月鮎です。「結婚は人生の墓場」という言葉があります。これはフランスの詩人ボードレールが言ったとされていますが、出典は見つからず、その起源は不明のようです。果たして結婚は墓場なのか、楽園なのか、はたまた闘技場なのか(笑)。まあ、人それぞれという気もしますが、結婚観は個人の事情よりも、実は社会的な問題……というのが今回の一冊です。

 

家族社会学の研究者が結婚を分析

結婚の社会学』(阪井裕一郎・著/ちくま新書)の著者は、社会学者で慶應義塾大学文学部准教授の阪井裕一郎さん。専門は家族社会学。著書に『仲人の時代』(青弓社)、『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社)などがあります。

見合いは日本の伝統ではなかった!?

本書の基本的なスタンスは「結婚をめぐる常識を疑う」。まず第1章「結婚の近代史」では、結婚を歴史的な視点から見ていきます。戦前から戦後しばらくのあいだ、結婚は「見合い結婚」が大半を占めていたそうです。本書で示された内閣府のデータによれば、昭和10年代で69%、昭和30年代で49.8%。それが昭和40年前後で「恋愛結婚」が逆転し、以降一貫して恋愛結婚の割合が上昇しています。

 

ということは、もともと見合い結婚は日本の伝統?……と思いがちですが、実は江戸時代は見合い結婚は武士階級だけのもので、庶民の結婚は「よばい」がきっかけでした。

 

江戸時代の村落社会では、結婚は「若者仲間」と呼ばれる同輩年齢集団が手助けし、若者たちが「よばい」を行うことで配偶者を見つけ出していったのだとか。若者は若者宿、娘は娘宿という寝宿に集まり、寝宿の訪問による男女交際が自由に行われていた、というのは意外でした。そのかわり村外の異性との関係はタブー。結婚の価値観やルールが今とまったく異なるものだったことに驚かされます。

 

常識が覆るといえば、第3章「離婚と再婚」にも驚きがありました。最近は、約2分に1組が離婚する計算になるなど非常に離婚が増えている印象がありますが、近世の日本も実は離婚や再婚が極めて多い社会だったそうです。

 

江戸時代の庶民は「三行半(みくだりはん)」と呼ばれる離縁状を渡せば、そのほかの許可は必要なし。妻側も縁切寺に行けば離婚が可能でした。明治に入っても離婚率は高く、明治16年(1883年)の離婚率は3.39(人口千対)で、令和2年(2020年)の離婚率1.57のおよそ2倍となっています。

 

この流れが変わったのは明治後期。当時の政府は離婚率が高いことは文明国として恥ずべきことと認識し、1898年(明治31年)施行の明治民法で離婚のルールを厳格化しました。離婚が届出制になり、戸籍簿に「除籍」と書かれるようになったことや、「離婚が家にとって恥だ」という感覚が生じたことなどが一因として、離婚が急減したとか。「離婚は恥」という概念は、2~30年前までは確かにありましたね。

 

第4章「事実婚と夫婦別姓」、第5章「セクシュアル・マイノリティと結婚」と続き、終章は「結婚の未来」。友人同士が結婚し家族としてケア関係を作ることも可能であるべき、という研究者たちの提唱が紹介されています。

 

さまざまなデータが提示され、解説もプレーンな言葉でわかりやすく、「結婚」とは何かを考えさせられる、気づきが多い内容でした。

 

家族として生活するための権利や責任を結婚にだけ押し込むことには限界がきており、個人と個人が相互にケアする関係に多様な選択肢を与えることが重要、と阪井さん。仮に、結婚が人生の墓場であったとしても、その墓場が花畑だったり、静かな森だったり、広い海だったり、自由に選べる社会が生きやすそうですね。

 

【書籍紹介】

結婚の社会学

著者:阪井裕一郎
発行:筑摩書房

「ふつうの結婚」なんてない。友人とも結婚できる社会がすぐそこに。マーケティングにも役立つ、新たな家族像を示す。さらに深く学ぶための、充実した読書案内付き。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

 

タイトルから勝ってる婚活ドキュメンタリー『57歳で婚活したらすごかった』

最近、twitterをはじめとする各種SNSを激しく使っている。使い分けもうまくなった。そんな中、どんな媒体でも見るジャンルの広告のバリエーションが気になっている。

 

 

出会いの場の主流となったマッチングアプリ

それは、マッチングアプリの数々だ。30歳までの年齢層に特化したもの、50歳以上のシニア狙いのもの、変化球的にはパパ活したい女性たちの受け皿になっているものもある。

 

気軽な出会いから結婚相手をがっつり探すためのものまで、真剣度のグラデーションもさまざまだ。頻繁に行われているマッチングアプリの利用率に関する調査を見ると、どのサービスもメンバー数が上昇していることがわかる。ごく普通の飲み会もできなくなった今、第一義的な出会いの場として選ぶには弱めだったかもしれないマッチングアプリが主役になりつつある。

タイトルから勝ってる婚活ドキュメンタリー

57歳で婚活したらすごかった』(石神賢介・著/新潮社・刊)は、もうタイトルから勝っている。婚活という戦場に舞い降りた57歳の戦士にとって、何がどうすごかったのか。どうしても知りたい。プロフィールを見たら、著者の石神氏は1962年生まれ。同い年だ。がぜん距離が縮まる。序章に、次のような文章を見つけた。

 

この本は57歳からの、オヤジの“熟年婚活記”だ。婚活アプリ、結婚相談所、婚活パーティーなどを利用したリアルな体験をつづっていく。いい大人になってなお女性と上手に付き合えないもどかしさも、はるか年下の女性に罵倒された屈辱も、ありのまま打ち明ける。

『57歳で婚活したらすごかった』より引用

 

石神さんと筆者は、同じポップカルチャーの影響を受けているはずだ。高校から大学時代にかけて、身近に『週刊プレイボーイ』とか『HotDog Press』とかの恋愛情報ツール的な性格が強い媒体がいつもあった。こうした媒体から得た恋愛ノウハウには、耐用年数みたいなものがあるのだろう。それに、時代精神と恋愛行動のコンパティビリティみたいなものもあるだろう。序章の文章を読んだだけでさまざまな思いや場面が浮かび、広がっていく。

 

年齢を重ねてからの婚活はディストピアでしかないのか

章立てを見てみよう。

 

序章  57歳で一人、がつくづく嫌になる

第1章 41歳女性に「クソ老人!」とののしられる

第2章 予期せず本気の恋をして打ちひしがれる

第3章 結婚相手の愛犬に尻をなめられる

第4章 イベント系婚活は人柄がわかる

第5章 コロナ禍で追い詰められる婚活者たち  

終章  誰かと生きるのではなく、誰かのために生きる

 

各章のタイトルを見て感じられるのは、ある程度年齢を重ねてからの婚活のディストピア感だ。ただ、それだけが本書のテーマかといえば、決してそうではない。ディストピア感の向こう側に、温かく柔らかいものが確実に存在している。

 

プロフィールと現実の絶望的乖離

マッチングアプリを使えば、自分と相手の需給関係の調整をある程度までの段階まで、ある程度のスピード感を持って進めることができる。ただ、実際に会って話をして、ある程度うまくいったという“打感”があっても安心はできない。プロフィールによる選択と実際の顔合わせは、まったく違うゲームなのだ。そのあたり、第1章で詳しく触れられている。

 

石神さんは41歳の女性と会った。かつて地方のテレビ局でレポーターの仕事をした経験があり、離婚歴が一度ある銀行員だった。趣味が合うことも確かめ、アドレスを交換し、二人とも好きなR&Bアーティストの来日公演に行くことまで約束して別れた。

 

チケットも買ったが、全く連絡が来ない。LINEでメッセージを送ったら、3回目に「しつこいです。もう連絡しないでください。無理です」という返信が来た。そこで、「失礼しました。もう連絡はさしあげません」と送信して寝ると、翌朝こんなメッセージが届いていた。「連絡すんなって書いてあんの読めないのかよ。老眼鏡つけとけよ。てめーからLINEくるだけでゾッとして不眠になるわ。クソ老人!」

 

老眼鏡、クソ老人というワードの響き。石神さんと同い年である筆者自身が世界からどう見られているのか、思い知らされる気がする。

 

行くぜ! 婚活

60歳近くになってからの婚活が順調に進むわけがないし、それを望む方がまちがっているのかもしれない。ただ石神さんは、クソ老人と罵られたり、思わず出会ってしまった本気の恋で心折れたりしながらも、ある境地に至った。以下に紹介するものも含め、本書に記された一つひとつの文章を味わい、行間から感じ取るべきものはたくさんある。

 

自我が育ち切ってしまった中高年の場合、一人で生きていく自信があってこそ、自分以外の人間に費やす時間と余力があってこそ、誰かと一緒に生きることができるのではないだろうか。

『57歳で婚活したらすごかった』より引用

 

驚きとか嘆きとか、喜びとかキュンキュン感など、振れ幅の大きなさまざまな感情が交差しながら進んで行く超リアリスティック恋愛ドキュメンタリー。57歳、恋の大冒険。『レイダース/失われたアーク』とか、『ロマンシング・ストーン/秘法の谷』とか、80年代前半のアドベンチャー映画のバイブスも感じる。確実に言えるのは、婚活はいろんな意味で本当にすごかったということだ。

 

【書籍紹介】

 

57歳で婚活したらすごかった

著者:石神賢介
制作:新潮社

やっぱり結婚したい。57歳で強くそう思った著者は、婚活アプリ、結婚相談所、婚活パーティーを駆使した怒涛の婚活ライフに突入する。その目の前に現れたのは個性豊かな女性たちだった。「クソ老人」と罵倒してくる女性、セクシーな写真を次々送りつける女性、衝撃的な量の食事を奢らせる女性等々。リアルかつコミカルに中高年の婚活を徹底レポートする。切実な人のための超実用的「婚活次の一歩」攻略マニュアル付!

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あなたの身近に意外といるかも? 40代からの婚活のリアル——『お互い40代婚』

最近、40代を過ぎてから婚活を始める女性が増えています。仕事に夢中になって30代を駆け抜け、気づいたら40代、そろそろパートナーをと考え始める人が多いようです。実際、40代の婚活とはどんな感じなのでしょう。

結婚相談所での苦境

私の周囲でも、40歳を過ぎて婚活を始める女性が何人もいます。最初のうちは張り切って結婚相談所に登録するのですが、そこでまず憤慨します。なぜなら紹介されるのが、年上の男性であることが多く、しかも10歳以上も年齢差があったりするのです。

 

同年代か年下の男性を希望する女性が少なくないのですが、なかなかそうした人を紹介してもらえません。それはなぜかというと、同年代の男性は年下の女性を希望することが多く、ニーズが合致しにくいからなのだとか。そこで初めて現実の厳しさに直面し、どうしたらいいのだろうと困り果ててしまう人もいます。

 

どこで出会えばいいのか問題

40代女性は近場での出会いにあきらめ気味です。「同世代でいいなと思った男性は大抵既婚者。もう結婚相談所に頼る以外ない」と思い込んでしまうのです。自然に生活していたら出会いは起きないので、頑張って婚活するしかないと考えてしまうのです。

 

40歳を超えると急に老後に不安を感じ始め「やっぱりパートナーがいたほうがいいかも」と、急いで婚活を始める人が多いと私は感じています。39歳までは「いい人がいたら結婚してもいいかも」と言いながら、楽しく仕事に没頭していた女性も、40歳になった途端「今が結婚のラストチャンスかも」と焦って迷走し始めてしまうのです。

 

実はすぐ近くにいるのかもしれない

コミックエッセイ『お互い40代婚』(たかぎなおこ・著/KADOKAWA・刊)は、40歳を過ぎてから結婚相手を見つけた、たかぎなおこさんの体験が綴られています。彼女は婚活をしたわけでも、結婚相談所に登録したわけでもありません。自宅のすぐ近くでお店を営む男性と交際し、ゴールインされたのです。

 

彼は、引っ越しのご挨拶をした時から親切でした。そして、たかぎさんが困った時には手を貸してくれました。その助けかたが押し付けがましくなく、とても自然なのです。おそらく普段から人を助け慣れている徳の高い男性なのでしょう。なのでたかぎさんも「この人いいなあ」と思い始めるのです。

 

長く生きてきたからこそ

この男性はとにかく女性を大切にしてくれます。サラダは自然に取り分けてくれるし、お取り寄せした果物をお裾分けしてくれたりもします。飾らない優しさは、一緒に暮らしてもきっとこんな感じなのではと思わせられます。たかぎさんが彼の素晴らしさに気づくことができたのは、やはり40年という長い歳月、人と関わってきた経験があったからなのでしょう。

 

若いころは、バラの花束を抱えて現れるような男性に胸がキュンとなり、まるでドラマのヒロインになったかのような恋愛に憧れるものです。けれど、年齢を重ねるうちに、結婚で大切なのはドラマではなく日常なのだと人は気づかされます。人生の長い時間を一緒に過ごすので、お互いに自然体でいられる相手であることが一番なのです。

 

40代婚の良さ

本書に描かれている40代同士の交際や結婚、そして新婚生活はとてもおだやかで、そしてお互いに思いやりに満ちた温かいものです。同時に複数のことを頑張ることが苦手な人もいます。仕事中心だった30代が過ぎ、40代は精神的にも余裕ができてきて、自分の生活に目が行くようになる人がいますが、それも素敵な生きかたです。

 

そして、この本でとても興味深かったのは、たかぎさんが前々からの希望通りの男性に出会ったということ。友人知人に「タヌキっぽくて、ギャンブルしないのんびりした人」と話していたのです。そして結婚したのはまさにそういう男性でした。日頃から具体的なパートナー像を頭に描いていたから、良縁のお相手が現れた時に、ピンと来たのかもしれません。自己分析はやはり大事なのでしょう。

 

 

【書籍紹介】

お互い40代婚

著者:たかぎなおこ
発行:KADOKAWA

ひとりぐらしを満喫して、仕事に趣味に楽しい毎日をおくってきたけれど、楽しいからって私、ずっとこのままでいいのかな…? そんなときにカニがご縁で(?)仲良くなった通称「おつぐやん」。ほのぼの優しくて、食べ物の趣味も合うし、なんかこの人いい感じじゃない…? お互い40代で出会ったからこそ、オトナの幸せを満喫…と思いきや、妊娠・出産は待ったなし!! 「別冊レタスクラブ」に掲載された漫画に加え、書き下ろし94ページ! 大人気イラストレーター、たかぎなおこの40代ならではの焦燥感と貫禄(?)をたっぷり味わえる、ファン待望のコミックエッセイです。

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きっと誰もがドキリとする……究極のリアリティエッセイ漫画『妻が口をきいてくれません』

今どき、「女性が家事をすべて担い、男性は外で稼いでくる」なんて考え方は古い。けれど、すべての家庭で「家事は平等に」という令和流・夫婦のあり方が実現できているわけではないのも事実。

 

「結局、家のことは主に女性がおこなっている」という家庭のほうが、まだまだ多いのではないだろうか。我が家もご多分に漏れず、であるが。

 

そのため、とりわけ出産後の小さな乳飲み子を家で世話する数年間においては、家事や育児に参加しない(する気がない)夫に、妻は殺意すら覚える(無論、男女逆のパターンも存在することは承知の上だが、今回は妻が家事や育児を負担しているケースで語ることをご理解いただきたい)。

 

どこかのタイミングで話し合い、お互いの考えを尊重することで関係が回復すれば良い。だが、徐々にこじらせてしまい、気づけば心がすっかり離れてしまうとことも珍しくない。我慢に我慢を重ね、イライラが募った結果、「子どもたちが成人したら離婚してやる!」と腹をくくっている女性陣も少なくないだろう。

 

これは、近年の熟年離婚数増加を見れば明らかだ。

 

夫サイドと妻サイド、どちらから見るかで問題は180度変わる

最近話題になっているエッセイ漫画がある。『妻が口をきいてくれません』(野原広子・著/集英社・刊)だ。夫・誠と妻・美咲、そして2人の子どもの4人家族で幸せに暮らしていたはずが、ある日を境に、妻が夫と口をきかなくなってしまう。何が原因か、自分の何が悪かったのかと焦り悩み苦しむ夫。「離婚よりも、生き地獄」という帯のキャッチフレーズがすべてを物語る。

 

第一章は、夫サイドのストーリー。口をきかなくなった妻に対し、会社の先輩に相談して花を買って帰ってみたり、久々にスキンシップを……と手を握ってみたり、あれやこれやと策を練って実行するも、すべて玉砕。

 

妻が口をきかないといっても、家庭内で会話がないわけではない。妻と子どもたち、夫と子どもたちは普通に話す。実家に帰ったときも、いたって普通に接する。ママ友たちの前でも同様だ。それが一転、第三者の目がなくなった瞬間、夫に対してだけ妻は口を閉ざす。貝のように。そして心も。

 

奥さん、ここまでしなくてもよくない? 理由くらい言いなよ。旦那さん可哀想だよ? などと旦那に肩入れする読者が多いであろう「夫 誠の章」。

 

しかし、次章の「妻 美咲の章」を読むと、それはもう、腸が煮えくり返るほど誠への憎しみが増幅するから、いとおかし。

 

たとえば、いつまで経っても物の在り処を覚えない。どうしても時間がなくレンチンの惣菜を並べたら「オレこういうのあんまり食べたことないや」とのたまう。たまっている洗濯物、汚れた場所を指摘して「一日家にいるんだからいろいろできるでしょ」と苦言。妻からの相談にも「静かにして これ観たい」とテレビ番組を優先。ああ、書き出しているだけでムカムカする。

 

仕事が忙しいのはわかる。家にいるときくらいは、好きなテレビ番組を見てゆっくりしたいのもわかる。常に家が綺麗であってほしいのもわかる。

 

だけど、一日子どもの面倒を見ていると、やりたくてもできないことが出てくるのだ。毎日掃除機をかけていても、あっという間に汚れるのだ。洗っても洗っても、家族が多いと洗濯物ってたまるんだ!! それを、目の前の状態だけ見て、怠けてるとか努力してないとか、判断しないでほしい! これが、世の女性たちの心の叫びではないだろうか。

 

「薄れはしても、忘れはしない」問題を、どう乗り越えるか。

誠に共感した後、美咲の気持ちに共感し、さて、残るは「夫婦の章」。夫、妻、それぞれの想いが交錯する。

 

『妻が口をきいてくれません』は、程度の差こそあれ、どこの家庭でも起こりうる問題を孕んだ作品であることは間違いないだろう。シンプルな絵柄ながらも登場人物の気持ちを汲み取れるから、ついつい感情移入して読み進めてしまうのも、本作品にハマる理由だ。

 

個人的には、夫婦が大きな揉め事なくやっていく秘訣は、相手の立場や気持ちを推し量る想像力と、些細なことにも「ありがとう」を伝える感謝の気持ちではないかと思っている。さて、誠と美咲の場合はどうか。冷え切った関係は修復するのか、それとも。

 

ぜひ、最後の最後の一コマまで、油断しないで読んでほしい。

 

【書籍紹介】

 

妻が口をきいてくれません

著者:野原広子
発行:集英社

妻はなんで怒っているのだろう……。妻、娘、息子の四人家族として、ごく平和に暮らしていると思っていた夫。しかし、ある時から妻との会話がなくなる。3日、2週間と時は過ぎ……。家事、育児は普通にこなしているし、大喧嘩した覚えもない。違うのは、必要最低限の言葉以外、妻から話しかけてこないことだけ……。Webサイト「よみタイ」で、累計3000万PVを超え大反響を呼んだ話題のコミック、描き下ろしを加えて待望の書籍化。

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武将の嫁に学ぶ、出世するダンナの育て方

大河ドラマでも人気の徳川家康の正室こと築山殿(つきやまどの)など、戦国武将だけでなくその「妻」も近年、注目を集めています。秀吉の妻・ねねや、信長の妻・濃姫など、歴史を彩る武将たちを支えた嫁はどんな生涯を過ごしたのでしょうか。

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「私の旦那にも天下取ってほしいわ~」なんて思っているそこの奥様! 戦国武将の嫁たちは、旦那である武将をちゃっかり育てていたようですよ。『<戦国時代の女たち>波瀾万丈! 武将の妻と戦国時代』(安西篤子・著/学研プラス・刊)より、出世できる旦那の育て方を学んでいきましょう。

 

あえて厳しく、男のプライドをくすぐる

丹羽長重の武将・江口三郎右衛門の家来に、出口某という老武者がいたそうなのですが、思うように戦えなかったことを悔やみ、畦道で休んでいたところ、前方から自分の妻がお酒を持って歩いてきたそうです。凹んでいる出口さんは、「よく頑張ったね」なんて言いながらお酒を振舞ってくれるのかな~、と思っていたようなのですが、妻は違いました。

 

「首一つ取ったぐらいで昼寝をしているような横着者に、この酒は呑ませられぬ」と憎まれ口を叩き、主人の江口はじめ居合わせた武士たちに、残らずふるまってしまった。

(『<戦国時代の女たち>波瀾万丈! 武将の妻と戦国時代』より引用)

 

目の前でそんなことされたらたまったもんじゃないですよね!

 

しかもこの時の出口さん、60歳を超えていたそうです。しかし、相当悔しかったのかこの後、戦場へ駆け戻ってたちまち敵一人を斃したそうです。時には、男のプライドをくすぐり奮起させる・・・そうすることで、現代にまで名を残すような偉業を達成できるのかもしれませんね。男性のみなさま、いかがでしょうか?(笑)

 

共同経営者として資金援助しちゃう

戦国時代において、女性が働いてお金を稼ぐことはほとんどありませんでした。そんな中、大事な嫁入りの資金で旦那に馬を買っちゃったというのが、山内一豊の妻である千代さん。

 

山内一豊の妻というと、黄金十両で夫のために名馬を買った話が名高いが、その後もよく夫の役に立っている。

(『<戦国時代の女たち>波瀾万丈! 武将の妻と戦国時代』より引用)

 

千代さんは、馬を買っただけに留まらず、旦那の一豊が、関ヶ原の戦いで東軍につくべきか西軍に味方するべきか悩んでいる時に、密書を送り、家康のいる東軍につくことを決めさせたとも言われているそうです。さらに、どこよりも早く東軍につくことを決めたことで、戦後も家康さんからかなり可愛がられたんだとか。

 

山内家をひとつの企業と考えたら、めっちゃできるやつ! 嫁という域を超えて、もはや経営者としての才能ですよね。旦那さんを信じて、投資する・・・うーん、できるかな。。。

 

友人の旦那の出世を気にしないほどの寛容さ

出会った当時は仲が良かったのに、一方の旦那が出世すると、嫁の仲が悪くなる・・・。女性には嫉妬やら妬みが付きまといますから、羨ましく思うのは当たり前っちゃ当たり前なのですが、豊臣秀吉の妻・ねねと、前田利家の妻・まつは、旦那が上司と部下の関係になろうとも変わらず仲が良かったそうなのです。

 

天下は秀吉のものとなり、前田利家はその麾下に入った。身分に上下関係が生じた。こうした様々な変化の中でも、ねねとまつの仲の良さは変わらなかった。

(『<戦国時代の女たち>波瀾万丈! 武将の妻と戦国時代』より引用)

 

現代では、家庭事情を見たくなくても見えちゃいますし、ついつい相手と比べてしまう機会も増えています。でも、ちっちゃいことは気にしない女性の方が、旦那さんはのびのびとできるということかもしれませんね。旦那さんのステータスに左右されない女性っていいですよね♪

 

今回ご紹介した以外にも、戦国時代に学べることはまだまだありそうです。男性のみなさんも女性に「出世させてくれよぉ~」と頼ってばかりではなく、戦国時代の武将のようにがむしゃらに生きてみるのはいかがでしょうか? これだけご紹介しておきながら言うのもアレですが、やっぱりかっこいい! と思える旦那さんじゃないと、女性はここまでできないですもんね~(笑)。頑張れ、現代の戦国武将たちっ!!

 

(文:つるたちかこ)

 

【著書紹介】

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<戦国時代の女たち>波瀾万丈! 武将の妻と戦国時代

著者:安西篤子

出版社:学研プラス

戦国時代、男たちが合戦に明け暮れるなか、女たちもまた過酷な運命との戦いを強いられていた。陰に日向に夫を支える賢妻となる者もいれば、政略結婚や人質に利用される者も少なくない。時代に翻弄されながらも、健気に生きた女たちを紹介する。

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【結婚・離婚の幸福論】モラハラと何が違う? 西島秀俊や松岡修造が妻に厳しいルールを敷いても家庭円満でいられる理由

先日、俳優のいしだ壱成さんが離婚をしたことが話題になりました。こちらの連載でも紹介しましたが、「起床時には、コップ1杯ずつの水と白湯を用意しておくこと」「お風呂の温度は45度に保っておくこと」「サラダ用に7種類のドレッシングを用意しておくこと」といった独特なルールを設けていたことも離婚の原因のひとつになったのではないか、と本人は反省のコメントを出していた様子。ところが、振り返ってみると、芸能界でもいしださんのように、妻に対して厳しいルールを守らせていることがほかにもあるようです。

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有名なところでは、3年前に結婚した俳優の西島秀俊さん。16歳年下の妻に対し、「映画鑑賞は必ず(西島さんが)ひとりで行くこととする」「(西島さんからの)メールの返信がなくても文句を言わないこと」「夜遅くに帰宅しても、食事やお風呂、翌日の着替えまですべて用意すること」といったルールを守らせているという報道がありました。

 

ほかにも「熱い男」として好感度の高い松岡修造さんも「亭主関白」ぶりを発揮していると言われている人のひとり。「夕食のおかずに肉を焼くときは、一枚ずつフライパンで焼いて、焼き立ての状態でお皿に盛りつける」「すっぴんは見せない」といった夫婦間のルールがあるというエピソードは有名。「結婚したらオレは100%幸せになれる自信があるけれど、キミを幸せにする自信はない」と松岡さんが言ったとされるプロポーズの言葉についての驚きの噂もあるほどです。

 

ダイアモンド☆ユカイさんも、夫婦間にルールがあると公表しています。「電子レンジであたためるだけの料理は食事に出さないこと」「(ユカイさんが)帰宅したときは、適温のお風呂を用意していること」といった、外で働いている人なら男女の性別を問わず、うらやましいと思えるようなルールがあるようです。

 

そうした亭主関白ムード満点の情報が公開されると、「モラハラでは?」「今どきそんなルールありえない」といった批判の声がある一方で、「そういうタイプがいることにも納得できる」「なんだかんだうまく行っているのならいいのでは?」と寛容な意見が同じくらい聞こえてくるものです。

 

というのも、もともと亭主関白型の夫には2種類、存在するのも事実。ひとつは、仕事や人間関係のストレスなどから、妻に甘えてしまい、ワガママを押し付けてしまうタイプ。こういうタイプの夫は、家庭で妻に八つ当たりすることが、ストレス解消にもなっていることが少なくありません。もうひとつは、「自分はひとりで頑張って働いて、家族を養う分だけ稼いでいるのだから、妻であるあなたも全力でボクを支え、ついてきてほしい」というタイプ。ストレス解消からくる亭主関白とはひと味違っています。

 

実際、西島さんや松岡さん、ダイアモンド☆ユカイさんは、厳しいルールを押し付けているだけではなく、たくさん仕事をしてしっかり稼いでいるはず。家族を養い、守るためのルールということなら、亭主関白も男らしさのひとつとして妻や家族から尊敬の対象になるのではないでしょうか。

 

ただ威張っているだけの夫は妻や家族からリスペクトされるどころか、やがてソッポを向かれてしまう危険性がありますが、結果がともなう亭主関白なら魅力にさえ変わるもの。先の見えない時代だからこそ、「頼りがいのある夫」として求められる要素になっているのかもしれませんね。

 

【著者プロフィール】

岡野 あつこ

All About「離婚」ガイド。TVのコメンテーター、雑誌取材も多く結婚離婚相談実績は27年3万件以上。岡野あつこのライフアップスクールも現在迄に2000人以上の門下生を創出する名門となっている。夫婦問題の悩みを解決するカウンセリング事業や、カウンセラーを育成するライフアップスクールなどを運営する、株式会社カラットクラブ代表取締役。NPO日本家族問題相談連盟理事長

岡野あつこの熱い想いのブログ:http://www.rikon.biz/