健康のバロメーターを仕事中にさりげなく測定できる! 次世代血圧計はなんと腕時計に搭載

1月9日から12日まで、米ネバダ州ラスベガスで家電製品を中心とした展示会「CES 2018 (Consumer Electronics Show)」が開催されました。その中でオムロン ヘルスケアが、コンセプトモデルとして2点の製品を展示。

 

健康診断でよく見る上腕部にベルトをぐるりと巻き、空気を送り込みながら測定するのが当たり前だった血圧計を、なんと手首に巻いたままいつでも血圧を測定できるようにする腕時計型のウェアラブルデバイス「HEARTGUIDE」と、血圧と同時に心電を測定できる「OMRON BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」です。まだ開発中とのことでしたが、実機を前にその機能や開発の目的などを伺ってきました。

↑毎年、年明けに開催されている展示会「CES」↑毎年、年明けに開催されている展示会「CES」

 

↑オムロンヘルスケアのブース↑オムロン ヘルスケアのブース

 

「HEARTGUIDE」で就寝中も自動的に血圧が測れるようになる!

「HEARTGUIDE」は、ふだんは腕時計や活動量計として使いながら、必要に応じて気軽に血圧も測れるウェアラブルデバイスです。

↑「HEARTGUIDE」↑「HEARTGUIDE」

 

見やすいディスプレイを備えた腕時計のようなデザインで、従来の手首式の血圧計からは想像できないほどコンパクト。ボタンを押して任意のタイミングで血圧測定ができるだけでなく、タイマー設定による自動測定も可能で、夜間、寝ている間にも自動的に血圧が測れるというのが大きな特徴です。

 

活動量計としては、歩数や移動距離、消費カロリー、睡眠のトラッキングなどができるほか、メールやメッセージ、着信などスマートフォンと連携した通知機能を備えており、サイドボタンを押すと表示が切りかわります。

↑歩数や消費カロリーも分かります↑歩数や消費カロリーも分かります

 

↑睡眠時間のトラッキングも可能↑睡眠時間のトラッキングも可能

 

↑スマートフォンからの通知も表示できます↑スマートフォンからの通知も表示できます

 

血圧の測定方法は従来の血圧計と同じで、バンドの内側に空気を送り込み、手首を圧迫して計測します。血圧の測定時間は1分ほど。精度を保つため、測定時は手首を心臓と同じ高さに合わせます。

 

タイマー機能は就寝中の測定を前提にしているとのこと。就寝中は横になっているので、心臓と手がだいたい同じ高さにあり、測定条件としては理想的だそうです。

↑測定中の様子。手首を心臓の高さに合わせることで精度を保ちます↑測定中の様子。手首を心臓の高さに合わせることで精度を保ちます

 

測定結果が正常ならディスプレイに緑色の円が表示され、問題があると判定されると赤い円になります。Bluetoothでスマートフォンと連携し、各種データはアプリで管理できます。

 

充電方法は未定ですが、バッテリーは1日10回測定したとして1週間はもつだろうとのこと。

 

担当者によれば、これまでは安定して測るためにある程度バンドに幅が必要でしたが、腕時計並みのバンド幅の中に入れ込んでおり、その技術がオムロンならではなのだとか。また、このサイズでFDAの認可をとったものはまだないとしています。着け心地は良好のようで、就寝中に測定がはじまっても起きてしまうことはないそうです。

↑こちらは従来の手首型の血圧計↑こちらは従来の手首型の血圧計

 

↑そんな血圧計が、腕時計サイズになりました↑そんな血圧計が、腕時計サイズになりました

 

↑バンド幅が大幅に細くなっています↑バンド幅が大幅に細くなっています

 

家族と共有したくなるかもしれませんが、本機は1人1台が前提です。なぜなら日常生活の中でひとりひとりの血圧の変動をトラッキングし、リスクを探し、大病を未然に防ぐのが目的だからです。

 

「HEARTGUIDE」はまず米国での発売を目標にしており、価格は未定。血圧計として販売を予定しているため、現在FDAの認可待ちとのことで、今年中にできればとしています。日本での発売も視野にいれていますが、薬事法の認可後となるとのことです。

↑判定結果は数値周りの円の色でわかります。赤は警告。日本と米国では基準が異なり、米国のガイドラインでは下が80を超えると高血圧と判定されるとのこと↑判定結果は数値周りの円の色でわかります。赤は警告。日本と米国では基準が異なり、米国のガイドラインでは下が80を超えると高血圧と判定されるとのこと

 

「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」で血圧と不整脈を同時にチェックできるようになる!

一方の「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」は据え置き型の血圧測定器です。

↑「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」↑「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」

 

血圧の測定には腕を使い、方法も従来通り。ただし、本体の両脇に電極がついており、指を添えると血圧を測りながら一緒に心電が測定できるというもの。電極の位置などデザインは変わる可能性があるようです。

 

不整脈と高血圧の両方を持っている人が脳梗塞や心筋梗塞を発症する確率は、高血圧だけの人よりもさらに高いとのことで、血圧と同時に心電を測ることで、不整脈がないかどうかを検知する目的があります。

 

心電の測定に要する時間は約30秒で、結果はアプリ上で確認します。問題があると判定されると、血圧と心電の履歴が医者に送信され、適切な診断を仰げるようになるといいます。

 

こちらも現在FDAに申請中で、2018年度春の発売を目指しています。

↑血圧を測りながら心電を測定)↑血圧を測りながら心電を測定

 

↑異常が見つかると医師にデータを送信。診断を仰げるようになるそうです↑異常が見つかると医師にデータを送信。診断を仰げるようになるそうです

 

自分が抱えるリスクを事前に知る

いずれの製品も、日々のコンディションを手軽にトラッキングすることで、心筋梗塞や脳梗塞の発症を防ごうという狙いがあります。

 

担当者によれば、日本人の3人に1人は高血圧とのこと。その中の4割しか病院に行かず、さらにその中できちんと薬を服用して血圧を下げている人は15%程度と言われているそうです。とはいえ、血圧は1年に1回健康診断で測るか、気になっている人が家で測っているのが現状です。

 

しかし、昼間働いているときや、夜寝ているときも、本人が気づかないうちに高血圧になっている人が多いとのこと。特に睡眠時無呼吸症候群の方は、寝ている間に血圧が高くなっていることがあるそうです。高血圧は心筋梗塞や脳卒中の原因で、日本人の死因の上位を占めますが、日常的に血圧を測っていないので、自分に潜むリスクに気づきません。

 

オムロンには、血圧計のメーカーとしてもっと血圧を測りやすくすることで、心筋梗塞や脳卒中など、血圧に起因する病気のリスクに早く気づき、対策を打つことで未然に防いで欲しいという狙いがあります。今後は遺伝の情報や本人の病気の履歴などのデータとあわせて解析し、その人にあった細かい診断の提供につなげていきたいとのことで、今回の製品はそのための第一歩となります。

 

これまでのウェアエラブルデバイスといえば、活動を促すことで健康に導こうというものが中心でしたが、医療機器として体内の状態をトラッキングできるというのは新しい切り口。腕時計感覚で使える血圧計なら、意識せずとも血圧測定が可能になりそうです。朝と夜はボタンで、就寝中はタイマーで測定すれば、自分の健康状態が可視化できます。

 

オムロンヘルスケア 経営統括部 広報渉外部長の中島 智氏は、「脳梗塞や心筋梗塞のリスクを早期に発見し、治療につなげたい。いかに減らしていけるか、いかに防ぐかが次の課題です。まずは高血圧かどうかを健康診断だけなく、定期的に調べてほしい」と語りました。

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【04・退院後が真の始まり】

今年5月、突然の脳梗塞で入院。9月初旬に退院できたものの、病院が日常で、自宅や仕事先が非日常になっていた――。本記事は、脳梗塞を患って入院した40代フリーランスの退院後の生活をレポート。退院から約3か月経って起こったこと、感じていることを綴っていきます。

 

【過去の記事はコチラから】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【01・異変】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【02・入院生活】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【03・リハビリ】

 

まだ回復中なのにリハビリの回数が減るという不安

9月初旬の退院から約3か月が経過しようとしています。入院最後の1か月は集中的なリハビリを受けながらも、仕事に出たり、自宅に帰ったりと、社会復帰を前提として動いていました。この時はやっと元の生活に戻れる、といううれしい気持ちと、病院での集中リハビリが終わることへの不安の2つが自分にあったのを憶えています。医療保険では脳梗塞の場合、発症後150日(重度の場合180日)はリハビリ病院に入院していれば1日最大3時間までリハビリが受けられるのですが、退院すると上限は2時間になり、激減します。

 

そして退院の日。毎週末帰宅していたこともあり、家に帰ったことの感慨深さは、それほどありませんでした。入院していた病院では、脳外科患者の外来リハビリを受け入れていなかったため、退院後は転院先で行うことになります。この転院先の初診予約が取れたのが退院の10日後。診察後に実際のリハビリを予約するという流れだったため、退院後はいきなり10日以上の期間が開くことになってしまいました。

 

退院後、2か月間のリハビリは週2回ずつ、手を中心とした作業療法(OT)を40分(2単位/1単位は20分)、歩くことを中心とした理学療法(PT)を40分(2単位)受けられることになりました。上述の通り、医療保険では発症後150日(重度の場合は180日)は1日最大3時間までリハビリが受けられるのですが、退院後の上限は1日2時間。療法士さんの人手不足もあり、通院では週1、2回目が一般的なようです。

 

さらに退院して3か月、発症から180日が経過すると病気は「回復期」から「維持期」に移行します。「180日を経過すると一般的には劇的な回復が見込めない」という判断により、医療保険を使って受けられるリハビリの数が、月あたり13単位(計260分)に制限されるのです。私の場合、1日4単位を週2回で月32~40単位だったのが、3分の1になりました。

 

著者は入院リハビリによって「自立歩行」まで回復しましたが、まだ長時間の外出時は杖が手放せず、また、右手はまともに使えない状態です。この段階でリハビリ回数が大きく減ってしまう保険リハビリは非常に残念。まだ40代ということもあり、まだ回復も続いています。制度上決まっていることとはいえ納得はできませんでした。

 

結局、維持期に入ってからは月13単位の保険リハビリに、別途、自費診療を組み合わせていくことにしました。自費診療はかなりの高額なので、後遺症と戦いながらの生活にはなかなかの経済的な負担になりそうです。

 

満員電車が怖いからできるだけ座れる電車を選ぶ

仕事方面では退院したこと、ライター活動を正式に再開したことなどを伝える意味も込めて、打ち合わせや、各種発表会、説明会にも出向きはじめました。

 

筆者の自宅は東京都下なので、郊外の自宅から都内に行くには、1時間ほど電車に乗ることになります。まだ脚や体幹の筋力が大きく不足しているため、移動は杖をつきながら。このため、多くの場合は優先席に座っています。

 

とはいえ、優先席もいつも空いているわけではなく、時には杖をついたまま立って移動することもあります。右足が踏ん張れず、右手にも力が入らないため、この満員電車で立って移動するのが非常に怖く、できるだけ乗らないようにしているのが現状です。

 

最近では、混む時間帯に電車に乗る場合には多少遠回りになっても有料でも必ず座れる特急ロマンスカーを使うようにしています。「ロマンスカー@クラブ」に事前登録しておくと、スマートフォンからサッと座席予約・購入できるのが便利。また、座席指定の特急などがない電車の場合は普通列車に乗るなど、できるだけ座れるように調整しています。

 

どんどん器用になって行く左手、右手の回復とどっちが早い?

目下の課題は右手の回復です。ライターという仕事上キーボードを使う必要がありますが、現在は右手を使うことができず、左手のみでキーボードをタイピングしています。現在、原稿を書いたり、長文のメールを書くときはすべてスマートフォンのフリックで操作。また、音声入力を使うこともあります。入院中を含めもう半年近くそれらで原稿を書いているため、フリック入力のスピードはかなり早くなりました。

 

発症から半年経ってちょっと面白いと思っているのは、左手だけでのキーボードタイピングがかなり早くなったということ。ブラインドタッチができるまでにはいきませんが、ちょっとしたメールの返信なら、左手だけでタイピングできるようになってきました。

 

とはいえフリック入力も左手キーボードも、病気になる前のキーボード入力スピードで比べると半分以下です。キーボードの入力スピードを従来並に戻すことが当面の目標になりそうです。

 

また、元々の趣味でもある料理もだいぶコツを掴んできました。細かな包丁使いはまだできませんが子どものお弁当を作ったり、カレーを煮込んだりするぐらいはできるようになってきました。これも左手用の料理ツールを色々と揃えることと、右手の回復が同時進行で進んでいます。

 

自費リハビリでリハビリ時間を維持していることもあり、退院したときよりも身体の状態は良くなってきています。時には「できないこと」の多さに心が沈むことがありますが、今は左手がブラインドタッチになるのと、右手でタイピングできるようになるのかどっちが先なのかを楽しみにしながら、少しずつ日常生活と仕事を取り戻して行けたらと思っています。

 

監修:虎の門病院分院精神科 深澤 祐樹医師

https://www.toranomon.gr.jp/kajigaya/

 

【過去の記事はコチラから】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【01・異変】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【02・入院生活】

40代フリーランスが脳梗塞で倒れて起こったこと【03・リハビリ】