あれこれ捨てるだけが正解じゃない? 本当に好きなものを見極めるための4つの基準とは?

モノが溢れる現代において、自分の好きなモノ、最低限必要なモノだけで暮らしを整える「ミニマリスト」が注目されていますよね。私もいいなー、憧れるなーと思いつつ、周りを見渡せばモノばかり(笑)。大好きな本は減らせないし、冷蔵庫もクローゼットもパンパン。「これでも減ったほうだよ」と自分を慰めながら、日々を過ごしています。

 

200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』(ponpoco・著/扶桑社・刊)は、こんな私でも「そろそろ本気で、本当に好きなモノだけに囲まれて暮らしたい」と思えた一冊でした。さらにうれしいのがponpocoさんの本を読んでから、余計な買い物をしなくなったこと。本当に必要なモノ、好きなモノを見極められるようになったんです。今回は、捨てるばかりが正義じゃない! ゆる〜く、楽しく自分らしさを見つけていきたい人に読んでほしい『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』をご紹介します。

 

取捨選択のヒントが満載

タイトルだけ読むと、すごく厳しいミニマリストさんなのかな? 10着しか服を持たないフランス人の方かな? なんて思ってしまうのですが、「はじめに」にはこんなことが書かれてあります。

 

この本には何もないガラーンとした部屋で暮らすミニマリストや、あらゆる無駄を排除した合理的なミニマリストは登場しません。

ミニマリストは持たないと噂のテレビも、ベッドも、カーペットも、バッグも、ブランド品も、何ならこたつだって所有しています。

(『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』より引用)

 

ふぅ〜安心するぅ! SNSなどでお見かけするミニマリストさんたちは、最小限な暮らしすぎて正直「絶対マネできないし、踏み込んではいけない領域だ」と思ってしまっていたんですよね。ponpocoさんの本では、「〇〇すると、××になってよかった」という事例がたくさん掲載されています。

 

例えば、タイトルにある「服を8割減らす方法」については、服を選ぶ前に靴を決めるといいよ、とか。面倒でも全部の服を一度着て確認すると潔く手放せるようになるよ、とか。クローゼットに着ない服を作らないために30着を上限にしたら稼働率100%になったよ、とか。ponpocoさんが体験したことが、丁寧に綴られています。あれはいらない、これもいらない、だから捨てる。ではなく、どう取捨選択をするかが丁寧に書かれてあるのです。

 

捨てる方法というより、残すモノを選ぶコツが書かれてあるので、なんだか罪悪感がなくて読んでいて心地いいんですよね。「これなら自分でもできそう!」なヒントがたくさん綴られていますよ。

 

「欲しい」気持ちを見極める方法

洋服だけではなく、日用品や食品でも足りているのに「ついつい買ってしまう」ことありませんか? セール品だから、臨時ボーナスが入ったからなど購入するまでの過程はさまざまありますが、ついつい買ったものが本当に欲しいモノだったのかと問われると、怪しいところも。ponpocoさんの元には、「自分が本当に欲しいモノがわからない」なんて相談も寄せられるそうです。そんな時に役立つ、自分の欲しい気持ちを見極める方法が次のように紹介されていました。

 

私が考える究極の見極め方

自分が持っている、同じカテゴリの中で一番好きなモノと交換できるか

(『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』より引用)

 

個人的にこの考え方が衝撃的でした。新しいカバンや靴、洋服が欲しいと思った時、価格と自分に似合うかだけで考えていたので、すでに持っているアイテムと比べるってことをしていなかったんですよね。また今持っているアイテムが本当に好きなものか? と考えると実は「なんとなく」で選んでいた部分も多かったな〜と反省しました。

 

ちなみに無駄遣いだとわかってはいるけど、セールに行ったからには何か買わなきゃと物欲に負けてしまう時もありますよね。そんな時は、以下の呪文を唱えてみてください。

 

お金が減ってイマイチなモノが増えるだけ
悩んだら買わない
どんなにお得でも買わなければ0円

(『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』より引用)

 

これがめちゃくちゃ効きます(笑)。たいがいのものは「ま、今日じゃなくてもいいか」と棚に戻すことが増えました。こうやって積み重ねていくと、本当に欲しいモノを買えたときの喜びが何倍にも増えるんです。ひとつひとつ厳選して購入することができるので、本書を読んで、いろんなモノの選び方がプロっぽくなったな〜と感じます。ぜひこの呪文、使ってみてくださいね!

 

モノの要・不要の判断方法は、自分が使うか使わないかで決める

『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』の知恵を実生活に落とし込んでいくと、自然と購入するものは自分がより好きで必要なモノ、手放すのは本当に不要だったモノとわかるようになってきます。ただ、手放すって結構気力も体力も使いますよね。どのような基準を持ったら良いのでしょうか?

 

持ち物を整理する前に、優先したい順に4つのカテゴリーに分けるとわかりやすいと思います。

1 使う×好き=必要なモノ
2 使う×そんなに好きではない
3 使わない×好き
4 使わない×そんなに好きではない=不要なモノ

(『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』より引用)

 

これはあくまでponpocoさん軸ですが、1が6割以上、2が3割、3が1割以下になるのがおすすめなのだとか。自宅のクローゼットをこの4つに分けてみると、片付けがはかどりますよ! 私の場合は、4を買うことがほとんどなくなりました。「いつか使うかもー」とか「使っていくうちに馴染むかもー」といった期待を込めて買うことがなくなったので、モノは減るし余計な買い物はしないしで心がスッキリしています。

 

『200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった』には他にも暮らしのアイデアが満載です。私にはミニマリストなんて無理だ〜と思っている方、部屋を片付けたいけど何から始めたらいいかわからないと悩んでいる方、ちょっとミニマリストに疲れちゃった方、どんな方が読んでも納得できるヒントが1つはあるはず! 自分の暮らしを振り返りながら、読んでいくと今の暮らしがもっと好きになれますよ!

 

【書籍紹介】

200着の服を8割減らしたら おしゃれがずっと楽しくなった

著者:ponpoco
発行:扶桑社

元浪費家が失敗から学んだ、無理しないミニマルライフ。誰でも服を8割減らせる方法、止まらない物欲を抑えるコツ、心穏やかに暮らすために“しない”こと等…余計なモノと執着心を手放せば、自分らしさが見えてくる!

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読む&聞くだけで元気になれる! アンミカさんのポジティブが詰まった一冊

テレビやネットでも大人気のアンミカさん。「白って200色あんねん」なんて名言も話題ですが、1993年にパリコレに出演するなど、すごい実力を持ったモデル・タレントさんです。

 

Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』(アンミカ・著/講談社・刊)は今年の7月に発売されました。実は、アンミカさんが歌って踊る「アンミカーニバル」という曲欲しさに買った本でした。サンバのメロディに「♪Happy Lucky Love Smile Peace Dream 君に光 幸あれ!」なんて歌詞が心に響き、聞くだけでも元気になっちゃうのですが、この本の内容も素晴らしかったんです。今回は、悩める現代人の救いになるであろうアンミカさんの音源付き書籍をご紹介します。

どこから出てくるの? ってくらいポジティブワードが満載!

『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』には、5つのチャプターに分けられた30個のお悩みが掲載されています。もともと「ミモレ」というウェブメディアに掲載されていた企画をまとめたものなのですが、どんなに辛い悩みでも最後にはハッピーになっちゃう、そんな言葉がたくさん掲載されています。

 

特に感心するのが締めの一言。「幸せな人生を歩まれることを心から願います」「私も応援しています!」「私からみたらあなたは最高!」など本当にちょっとした一言なのですが、優しく元気にしてくれる言葉がいっぱい。お悩み相談の回答を読みながら、アンミカさんは日頃から自然とこうした言葉を使える方なんだろうな〜と感心してしまいました。

 

どんな人にもしっかり寄り添うアンミカさん

アンミカさんが答えるお悩みジャンルは恋愛から仕事、嫁姑問題まで、めちゃくちゃ幅広いんです。女性だけでなく男性からのお悩み相談にも回答されていて、どんな方からの相談にも丁寧に答えるアンミカさんに、好感度が爆上がりでした。またアンミカさんより年上の方からのお悩みもあったのですが、この回答が素晴らしい。「転職して7ヶ月。苦手なタイプの女性ばかりで、ストレスが溜まる」とお悩みを寄せてきた55歳の女性に対して、アンミカさんは以下のように答えています。

 

人の苦手な部分を見るメガネははずして少しぼんやりとした目で見て、反対に人のいいところを見つけるように心がけてみてください。思ったよりも、心地よい人間関係を築くことができるかもしれませんよ。

(『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』より引用)

 

寄り添って答えるアンミカさんが素敵だな〜と思いました。どうやってストレスを回避するかだけでなく、寄せられた投稿文からその人に気づきを与えてポジティブにしてくれる、そんな解決方法を伝えられるのが、アンミカさんらしさなんだろうと感じます。ただ優しい言葉が並んだポジティブ系のお悩み相談本ではなく、一生懸命に生きてきたアンミカさんだから語れる厳しさと温かさがあるのでしょう。パッと開いたページの何気ない一言に救われる人もたくさんいるはずですよ。

 

ネガティブなこともポジティブに変換しちゃえ!

全人類が無理やりポジティブになる必要はないと思いますが、ネガティブから抜け出せない時にはアンミカさんのパワーは絶対必要だなと思いました。アンミカさんは最後に、こんなことを書かれています。

 

自分に起こる出来事を全て【自分の大きな器作りのため、これは幸せになるためだ】と信じ、目の前にある悩みに負けないでください。生きていれば苦労した分だけ、必ず幸せを見つけやすく、幸せを感じやすくなることでしょう。

(『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』より引用)

 

相談の中でも「ネガ⇒ポジ」スイッチについては触れられているのですが、目の前にある悩みに負けない、これが生きていく上で大切だと実感します。誰かに相談したくてもできない悩みを抱えている人もいるでしょう。そんな時はぜひ『Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室』を読んでみてください。悩みの種類は違っても、どうしたら悩みに負けずに生きていけるか、アンミカさんがヒントをくれますよ!

 

朝からテンションがどうしても上がらない、毎日同じことの繰り返しでしんどい、生きている意味がわからない、そんなネガティブの底にいる方には、本書に掲載されているQRコードから『アンミカーニバル』を聞いてみましょう。世の中の大半のことはどうでも良くなります。

 

ただ、かなり中毒性がある曲で、一度聞くと耳から離れず。毎日、毎時間、聞かずにはいられない体質になります。私もアンミカさんなしでは生きていられなくなり、アンミカさん監修の手帳を購入し、LINEスタンプまで買ってしまいました(笑)。ただ毎日は、Happy Lucky Love Smile Peace Dreamでいっぱいです♪ さぁ今日からあなたも、Let’s Do アンミカ!

 

【書籍紹介】

Let’s Do アンミカ! アン ミカの ポジティブ相談室

著:  アンミカ
発行:講談社

寄せられたお悩みに超具体的に答えながら披露されるアン ミカ新境地の人生哲学に加えて、Music Videoが視聴できるQRコードがスペシャル特典としてつく新しいスタイルの人生トリセツBOOKが誕生しました!

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夏バテ、ストレス、睡眠不足……ストレスフルな世の中を生きる全ての人へおすすめの一冊『科学の力で元気になる38のコツ』

とにもかくにも、元気がない。この3年ほどで、そんな状態に悩んでいる人も多いのではないでしょうか? 職場環境や家庭環境の変化、お金の悩みや健康の不安、SNSやメディアの情報に疲れるなど、ストレスフルな社会になっていますよね。今回は“科学の力”で立証されているストレスを減らし、元気に過ごせる方法が掲載された『科学の力で元気になる38のコツ』(堀田秀吾・著/アスコム・刊)をご紹介します。

 

姿勢を伸ばすだけでストレスホルモンが減少!?

コロンビア大学で「堂々とした姿勢の被験者」と「縮こまった姿勢の被験者」にわかれてギャンブルをする実験をしたところ、堂々とした姿勢の人のほうが、リスクの高い賭けに好んで挑戦するという結果が出たそうです。 「たまたまじゃないの?」と思うかもしれませんが、科学的にも面白い結果が出たのだとか。

 

さらに被験者の唾液を調べたところ、堂々とした姿勢−−つまり背筋を伸ばした姿勢の被験者には、「テストステロン」という決断力・積極性・攻撃性・負けず嫌いなどに関係するホルモンの増加が見られました。

(中略)

それだけでなく、堂々とした姿勢のグループの人は「コルチゾール」というストレスホルモンも低下していました。

(『科学の力で元気になる38のコツ』より引用)

 

姿勢をシャン! とするだけで、自信が出てくる感覚ってありますよね。その感覚は、しっかりホルモンにも影響していたんです。最近は移動中の電車の中や自宅でのんびりする時もスマホを見ることが増えて、無意識に縮こまった姿勢になっていることも。なるべく堂々とした姿勢を意識してみると、元気に過ごせるかもしれませんよ!

 

マッサージをしてもらうと、ストレスが減って元気になる!

疲れたらマッサージへ行く人も多いかもしれませんが、実はそれ大正解だったんです! マイアミ大学の研究によると、マッサージによって先ほどご紹介した「コルチゾール」というストレスホルモンが31%も低下し、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが28%増加、ドーパミンも31%増加する結果が出たそうです。マッサージは整体でも、指圧でもなんでもOKなんだとか。

 

もしかすると「あんまりマッサージは得意じゃない」という人もいるかもしれません。そんな時には、動物と触れ合うだけでもいいそうですよ!

 

ミズーリ大学のジョンソンとメドーズの研究ですが、19〜73歳の被験者に、犬とロボット犬のAIBOをさわらせて、被験者(そして犬)の血液を採取して調べたところ、生きている犬にふれたときは、セロトニン(他にもオキシトシンなども!)の増加が見られたとのことです。

(『科学の力で元気になる38のコツ』より引用)

 

最近は、猫カフェだけでなく色々な動物と触れ合える施設が増えました。家でペットを飼うことができない人でも、手軽にアニマルセラピーの効果を得られますよ。コロナ禍以降、人と会うことが億劫になっているなんて人も増えているようなので、まずは動物に癒されてセロトニンを増やして、少しずつ元気になっていきましょう!

 

楽しくなくても「フェイク・スマイル」で元気に!

最後にご紹介する元気になる方法は、一番簡単。マスク生活が続いて「笑う」ことが減った人も多いかもしれませんね。むすっとした顔をしているより、嘘でも笑顔でいたほうが楽しい気分を増幅させてくれるそうです。

 

マンハイム大学で、①ストローを吸うように口を丸めた被験者、②上下の前歯でペンを挟みペンに唇が触れないようにくわえた被験者、③手にフェルトペンを持った被験者の3グループに同じ漫画を読んでもらう実験をしたそうです。すると、②の被験者たちが、漫画を一番面白く感じていたという結果が出たのだとか!

 

事実、「フェイク・スマイル」の習慣がある人とない人とでは、発する雰囲気……俗っぽくいえばオーラが違ってきます(「つくり笑顔」と表現すると、ネガティブな印象がしてしまうので、本書ではこれを「フェイク・スマイル」と表現させていただきます)。

(『科学の力で元気になる38のコツ』より引用)

 

なんだか元気がないなぁ〜という時には、ニコニコしているだけでもいいかもしれません。ちょっとイヤなことがあったら、マッサージに行って元気になって、姿勢をシャンとして、フェイク・スマイルで過ごせば不思議とストレスも減ってしまうかも!?

 

『科学の力で元気になる38のコツ』には、これ以外にも元気になる色やテンションUP法、リラックスできる呼吸法や幸福度を高める方法など幅広く元気になるコツが紹介されています。どれもちょっとした習慣を見直すだけでできることばかりなので、難しいことはしたくない! という人にもおすすめ。一度きりの人生です! ストレスを減らして、楽しく過ごしちゃいましょう!

 

【書籍紹介】

科学の力で元気になる38のコツ

著者:堀田秀吾
発行:アスコム

世界の科学論文などで紹介されている科学的根拠(エビデンス)のあるもの、誰でも、どんな環境でも実践できる簡単なものの中から厳選し、「毎日を元気にしてくれる科学的ノウハウ」を全38項目ご紹介します。「あ、これは良いかも!」と思ったものから、ぜひ試してみてください。人生を元気に楽しむヒントが見つけられるはずです。

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最高のコミュニケーション術は『京都人』が持っていた!?『エレガントな毒の吐き方』

筆者は独り言が多い。何かに対して毒づくときも、ほとんどの場合は言葉に出して言う。奥さんへのちょっとした文句もそうしてしまうので、思わぬタイミングでピックアップされ、決して要らなかったはずの言い合いに発展することもある。

 

アサーティブネスの形

筆者はアサーティブネス(自他を尊重した自己表現もしくは自己主張)を意識することが多いのだけれど、この概念を日々の暮らしの中で実践していくのはなかなか難しいことを知っている。ただ、言葉にできそうでできない思い—往々にしてネガティブな資質のものが多い—を抱え込みながら自分から折れることを繰り返していてよいわけがない。そういう思いは、きちんとした言葉として口にして、体の外に出さなければならないはずだ。

 

でも、独り言であれ目の前の誰かに向けるものであれ、ストレートな感情をそのまま言葉にしてぶつけるのも大人げないと感じてしまう。少しであっても弱毒化して、きれいに排出する方法はないだろうか。筆者と同じこんな思いを少しでも感じたことがある人に、ぜひとも読んでいただきたい本がある。

 

毒を吐くならエレガントに

エレガントな毒の吐き方』(中野信子・著/日経BP・刊)は、ひとこと言い返したい思いに応えてくれる一冊だ。しかも、ただ言い返すだけではない。関係性を壊したくない人を相手にしたシチュエーションに特化したノウハウを授けてくれるのだ。絶対的な軸として据えられているのは、京都(しかも洛中と呼ばれる中心部)に住む人々のコミュニケーション法にほかならない。それは、こういうことだ。

 

不快なことを見聞きすれば不愉快ですし、イヤなことをされたら気分が悪いのは当たり前のこと。その当たり前のことを、無視したり、抑圧したりして、なかったことにするのではなく、「エレガントな毒」として昇華しながら、自分の心も相手との関係性も大切にマイルドに扱っていこうという知恵が、京都人たちのイケズの中にはあるように思います。

『エレガントな毒の吐き方』より引用

 

そうそう。筆者が必要としているのはまさにこういうことなのだ。ならば、意識すべきは思いを弱毒化して排出するのではなく、昇華のプロセスを考えていく方法ということになる。

 

実践的な流れ

章立てを見てみよう。

 

1章 NOを言わずにNOを伝えるコミュニケーションが今こそ必要な理由
2章 [シチュエーション別] エレガントな毒の吐き方を京都人に聞きました
3章 「困った」「イヤだ」を賢く伝える7+3のレッスン
4章 科学の目でみる京都戦略
5章 ブラックマヨネーズに聞く! 京都人の驚異の言語センスと笑い

 

筆者はすぐに結論を知りたいタイプなので、まずは解決法と実践編である2章と3章を一気に読み切った。その後1章に戻ってから4章に進み、5章でまとめるという流れで読んでみた。筆者のようなちょっとクセのあるタイプの読者にも対応していただけている作りは、とても親切だ。

 

Q&Aでバーチャル体験

2章は例題演習といった趣で、さまざまなシチュエーションにおけるQ&Aで構成されている。

 

Q1 関係がそれほど深くない人から、無理な依頼をされて断りたい。どのように返す?

①「今、いそがしいのでごめんなさい」
②「いえ、うれしいですけどちょっと。もっと合っている人を探しましょうか?」
③「けったいな人やなぁ」

『エレガントな毒の吐き方』より引用

 

もうひとつ。

 

Q4 忙しいのに、訪問客が長居して帰ってくれない。どう伝える?

①「このあと、用事があるんですよ」
②「さ、長いこと付き合わせちゃってすみません。お忙しいのにありがとう」
③「あんた、今日はぶぶ漬け狙ってはるんか?」

『エレガントな毒の吐き方』より引用

 

それぞれのベストチョイスとその理由は本書で確かめていただきたい。また、第3章ではやんわりはっきり、そして賢くNOと伝える方法を教えてくれる。これって、まさに筆者が理想とするタイプのアサーティブネスじゃないか! 紹介されているレッスンは7つある。

 

①「褒めている」ようにみせかける

②「(遠回しな)質問」で相手自身に答えを出させる

③自分を下げる「枕詞」を入れて断る

④オウム返し質問で受け流す

⑤証拠のない第三者を引っ張り出す

⑥知っておくと便利な4つのキラーフレーズ

⑦褒められて居心地が悪いときは「受け入れて、流す」

 

上級編も準備されているが、それは7つの基本レッスンをしっかりこなしてから取り組みたい。

 

新しいロードマップ

東京と京都のコミュニケーションの質の違いを、「世界におけるアメリカ、日本における東京」というスケールに置き換えて見せてくれるのも興味深い。5章では、語られてきたすべての内容を京都人であるブラックマヨネーズに落とし込んで、お二人の実体験から検証できるようになっている。

 

この本は、アサーティブネスに関しての明確なロードマップとなってくれる。モヤモヤしているだけの自分にはさよならして、エレガントに毒を吐きまくろう。日常生活で、「自分がこの場さえ我慢すれば」と感じる場面も確実に減っていくはずだ。

 

【書籍紹介】

エレガントな毒の吐き方

著者:中野信子
発行:日経BP

脳は、「打ち負かしたい」「論破したい」ものー冷たくざらついた本音を言って、傷つけ合うコミュニケーションをとるのではなく、あたたかくやわらかな嘘で相手をしずかに見下し、思いやりながら距離をとる。そうすれば、事情が変化した、まさにその時、切らずに、あいまいな形で塩漬けにしておいた関係性を、コストもリスクも最小限に抑えた形で再構築できるはずー。NOを言わずにNOを伝える“大人の教養”を、一緒に身につけてみませんか。

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「あなたは今、幸せ?」正しい技術で幸せになれると説く一冊「幸福の達人」

あなたは今、幸せですか?

 

今の時代、胸を張って「はいっ!」と答えられる人はどれほどいるのでしょうか。私も正直、幸せより不安が優っているので、自信を持って答えられないなぁ〜と感じています。しかし、世の中にはハッピーオーラ全開の方もいますよね? 将来に不安を抱える私と、今ハッピーな人の間にはどんな違いがあるのか知りたい! そして、今よりもっと幸せになりたい!

 

今回はSNSでも大人気のTestosterone(テストステロン)さんと幸福学の第一人者である前野隆司さんが監修した『幸福の達人』(Testosterone・著、前野隆司・監修/ユーキャン・刊)をご紹介します。

誰もが幸せになれるって本当?

追加: 毎年発表されている『世界幸福度報告』は、各国1000人に「今の生活にどれくらい満足しているか?」を聞き、ランキングにまとめています。2023年、日本はちょっとだけランクアップして47位でした。ちなみに6年連続1位に輝いているのはフィンランド。サウナに長期休暇に、残業なしと側から見ても「幸せそうな国」のイメージがありますよね。フィンランドに倣って、残業しないでサウナ三昧なんてことはなかなか難しいですが、まずは自分が「幸せだな〜」と思える日々を過ごしてみたいもの。『幸福の達人』によると、幸せとは「主観的に自分が幸せであると感じられる状態」なのだそうです。どうしたら主体的に「幸せだ」と感じることができるのでしょうか?

 

幸せになることは料理や運転と同じで「技術」に近い。正しい技術を学んだり、繰り返し練習したりする必要はあるが、誰でもマスターすることができる。本書を読み、実践し、一人でも多くの人が幸せになれるよう、心から願っている。

(『幸福の達人』より引用)

 

幸せは技術! 『幸福の達人』には、誰もが簡単に実践できるよう、幸せになるためにやることリストが50個も掲載されています。私も今すぐ実践しなければ!(笑)

 

めっちゃ幸せな気持ちになれた!「2か月後の旅行を予約し、前払いする」

幸せになるためにやることリストは、「7時間寝る」「朝方人間になる」「テレビを見る時間を減らす」といった今日からできそうなリストばかり。それぞれにTestosteroneさんの元気になるメッセージと、前野先生による「幸福学」のデータが記載されており、手軽に実践しやすいのも特徴です。その中でも、私が実践して効果的だったものを2つご紹介します。

 

1つ目が「2か月後の旅行を予約し、前払いする」です。最初、そんなことで? と思っていたのですが、たったこれだけで毎日がめっちゃ楽しくなりました(笑)。どうやら未来に楽しみを作るのが幸福度アップに関わってくるようなのです。

 

1530人のオランダ人を対象に行われた調査によると、旅行中、つまり旅行そのものによって上昇した幸福度は、旅行終了後に長くても2週間で消失してしまったのに対し、旅行前の幸福度の上昇は最大で8週間も持続したのだという。つまり、旅行による幸福度の上昇の大部分は、旅行の最中ではなく、ワクワクしながら旅行の計画を立て、それを楽しみに日々を過ごすことから生まれると言える。

(『幸福の達人』より引用)

 

ちなみになぜ前払いするかというと、人間はお金を払うことを苦痛に感じるからだとか。旅行中に「支払う」回数を少しでも減らすために、ホテル代や交通費などかかるものは払っておくほうがよいそうです。

 

実践してみて感じたのは、旅行のための情報収集をしたり、行く人と連絡を取り合ったりする時間が本当に楽しかったということ。今まで無意識で準備していましたが、旅行に行くまでもこんなに楽しかったのか! とワクワク度合いが増しました。個人的にはライブや観劇など、旅行じゃなくても同じように幸せは感じられたなぁ〜と思います。とにかく先に楽しい予定を入れる! これだけでも毎日幸せな時間は増やせるはずですよ。

 

3日目頃から自然と散歩に行きたくなる「毎日5000歩以上歩く」

運動が体にいいことは誰でもわかりますが、毎日筋トレをしたりストレッチをしたりはハードルが高く、続けられない私です……(笑)。そんなだらしない私でも実践できたのが、2つ目にご紹介する「毎日5000歩以上歩く」。目安としては毎日10〜15分お散歩する程度なのですが、これをするとしないとでは、体と心の調子が全然違いました。一体なぜなのでしょうか?

 

ミシシッピ大学のグループが18歳から35歳の成人26人を対象に1週間、運動をさせず、1日当たりの歩数を5000歩以下に抑えてもらう、という実験をしたところ、特に制限をしなかった比較対象グループと比べ、生活満足度が31%も低下してしまったという。さらに、毎日の平均歩数が5000歩を切ると、不安や気持ちの落ち込みなどの症状が表れることもわかった。要するに、人間はじっとしていることが不得意な生き物なのだ。

(『幸福の達人』より引用)

 

みなさんのスマホにも万歩計がついていると思うので、一度平均歩数を見てみてください。意外と5000歩ならできる数字と感じられるはずです。天気の都合で毎日できなかったこともありますが、意識して5000歩歩くようにしたところ、体よりも心が気持ちよくなり「また歩きたい」と思えるようになりました。5000歩のために近所の知らないお店に行くのも楽しかったですよ!

 

『幸福の達人』には、今日からできる幸せになるためにやることリストが掲載されています。1つずつでも一気にでも、自分のペースで実践することで「幸せですか?」の問いに、自信を持って「はい!」と答えられるようになれるはず。読むだけでも元気になれる本なので、幸せになりたい人もそうじゃない人も、ぜひ一度手に取ってみてくださいね。きっと今日よりも楽しい明日が迎えられますよ!

 

【書籍紹介】

幸福の達人

著者:Testosterone(著)、 前野隆司(監)
発行:ユーキャン
累計40万部突破!『筋トレが最強のソリューションである』シリーズ最新作! Twitterフォロワー128万人のインフルエンサーが脳科学、心理学、幸福学から導き出した「幸せになるアクション」ベスト50を大公開!「TO DOリスト」方式をとっているので、明日からの行動をほんの少し変えるだけですぐに幸福度がアップします。
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心を壊してまでやることはない。「たかが仕事」である。 佐久間宣行が語る仕事術とは?

みなさん、仕事は楽しいですか? 好きな仕事をできていますか? 最近は、楽しいこと・好きなことを仕事にしないとダメだと言われているような風潮を感じます。確かに好きなことでお金が稼げたら最高ですが、選ばれた人しかできないと思ってしまいますよね。

 

今回は『佐久間宣行のずるい仕事術』(佐久間宣行・著/ダイヤモンド社・刊)を紹介します。佐久間さんは元テレビ東京の社員で、さまざまなバラエティ番組を手掛けてきました。テレビプロデューサー以外にもニッポン放送でパーソナリティを担当するなど幅広いキャリアを築いている方。本の中には佐久間さんらしい表現で今日よりちょっと前を向けるような言葉がたくさん書かれてありました。

 

メンタル第一、仕事は第二

20年以上社会人をしている佐久間さん。『佐久間宣行のずるい仕事術』は、新社会人必読な「仕事術編」、上司や部下の教育に悩んでいる人におすすめの「人間関係編」「チーム編」「マネジメント編」、仕事をワンランクアップしたい人に読んでほしい「企画術編」、誰もが知っておくべき「メンタル編」の6章で構成されています。本のタイトルにある「ずるい」は、佐久間さん自身が真正面から仕事をして心をすり減らした経験があったからこそ「ずるく仕事しよう」と考えるようになったのだとか。佐久間さんが大事にしている仕事のスタンスを、メンタル編からご紹介しましょう。

 

心を壊してまでやるべき仕事なんてどこにもない。

どんなに大きな仕事でも、どれだけ意義のある仕事でも、心を差し出すまでの価値はない。だって仕事なんて、「たかが仕事」なのだから。

死守すべきは仕事よりもメンタル。

「真剣」にはなっても、「深刻」になってはいけない。

(『佐久間宣行のずるい仕事術』より引用)

 

佐久間さんのように「好きな仕事」をしている人は、プライベートも仕事も一緒なのかな? と勝手に思っていたのですが、「たかが仕事」と考えているのはちょっと驚きでした。いい仕事は、心の健康があってこそ。メンタルが第一で、仕事が第二ということは誰もが忘れてはいけないことかもしれませんね。

 

人間関係の悩みは、コント化する

メンタルが大事とわかっていても、知らず知らずに心を蝕んでくることもありますよね。例えば、どうしても嫌いな人と仕事をしなければいけない……そんなシチュエーションも出てくるはず。そんな時は、佐久間さんのこんな仕事術を参考にしてみましょう。

 

どうしても嫌いな人と仕事をするとき、おすすめの方法がある。

僕が苦手な人と話さなければならないときに編み出した、相手とのやりとりを不毛なバトルに発展させないためのテクニックだ。

その人と対面した瞬間、心の中でこう唱える。「コント:嫌いな人」。

(『佐久間宣行のずるい仕事術』より引用)

 

これ、最高だ(笑)。コントにすると、自分自身も客観的にその状況を眺めることができ、真正面から現実を受け止めなくて良くなるのだとか。「また始まったよ〜」とうんざりすることも、「新しいネタでも作るか」と余裕を持って対応できるようになるかもしれませんよ! 私も今度やってみよう(笑)。

 

ずるさは、いかに工夫するかだ

「ずるい仕事術」と聞くと、どうやってコソコソするか? を考えてしまうかもしれませんが、佐久間さんの語る「ずるさ」は、いかに工夫するか? とも読み取れました。言われた通りに仕事をするのではなく、自分がやりやすいように視点を変えて仕事をする。それによって、自分の心を守り成果も出せる、そんな仕事術がたくさん掲載されています。

 

変化が激しい今、「〇〇さえしていれば大丈夫」なんてことはなくなりました。佐久間さんのように工夫しながら、日々を楽しく過ごせるようになれば、今やっている仕事も好きな仕事に変わるかもしれません。自分の働き方を見直したい人、転職したいと思っている人、毎日働くことがつまらなく感じている人は、『佐久間宣行のずるい仕事術』を読んでみてください。明日からの仕事への向き合い方がちょっぴり変わるかもしれませんよ!

 

【書籍紹介】

佐久間宣行のずるい仕事術

著者:佐久間宣行
発行:ダイヤモンド社

サラリーマンでありながら、「オールナイトニッポン0」のラジオパーソナリティをつとめ、ファンイベントを行えばリアルで5000人が集まってしまう、45歳のフツウのようでフツウじゃない、いま話題の佐久間宣行が教える、誰とも戦わず、好きなことで効率的に成果を出す62の仕事術。

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たった一言の違いでチーム力に差が出る? 働きやすい職場になるヒントが満載! 『心理的安全性をつくる言葉55』

昨年からよく聞くようになった「心理的安全性」。新しい会社に入社する人も、これから新たな部下を迎える上司の皆さんも、お互いに働きやすい環境で過ごしたいですよね。今回は『心理的安全性をつくる言葉55』(原田将嗣・著、石井遼介・監修/飛鳥新社・刊)から、いつもの一言をちょっと変えるだけで、成長できる職場の雰囲気になれる言葉をご紹介します。「心理的安全性って何?」「コミュニケーションが破綻したうちの職場では無理だよ」と思っている人にもぜひ手に取っていただきたい一冊です!

そもそも「心理的安全性」とは?

よく聞くけれど、よくわかっていない……という人も多いかもしれません。文字の雰囲気から、性格も合う仲良しなメンバーが集まり、自分の好きなように働ける、そんな自由な職場をイメージする人もいるかもしれません。本来はどのような状態を示すのでしょうか? 定義を明確にしておきましょう!

 

心理的安全性が高いチームとは、仲が「悪すぎる」でも「良すぎる」でもなく、目指すゴールや成果のために「健全な意見の衝突(ヘルシーコンクリフト)」が起こせるチームです。

(『心理的安全性をつくる言葉55』より引用)

 

成果のために健全な意見の衝突が起こせる、というのがポイントですよね。仲の良さは別に関係ないのも、覚えておきたい部分かも。

 

さらに『心理的安全性をつくる言葉55』では、心理的安全性をつくる「4つの因子」として、①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎が高いことが大切と書かれてありました。ただ単に、話しやすい環境を作り、仲良く助け合えるのが心理的安全性の高いチームではなく、その雰囲気はありつつも、成果のために挑戦できる環境、さらには多様性を認め、活用できる組織であることを目指していくことが求められているようでした。

 

無意識に「こんなこと言いたくないけどさ〜」なんて言っていませんか?

『心理的安全性をつくる言葉55』には、最初のページに心理的安全性を下げる10個の「NG言葉」が掲載されています。「前にも言ったよね?」「なんでできなかったの?」「誰の責任?」「会社のルールはこれだ」「何か意見ある?」など、私も言われたこと&言ったことのある言葉ばかりで、げんなりしてしまいました(笑)。

 

例えば、同じミスを繰り返す部下に対して「前にも言ったよね? こんなことは言いたくないんだけどさ、次からは〇〇のこと、気をつけてね」なんて言葉を使っている人は多いと思います。実はこれ、心理的安全性を下げてしまっているNG言葉。どのような言葉に変えてあげると良いのでしょうか?

 

このような「気をつける」「やる気を出す」「徹底する」という、アクションが具体的にはわからない「心の中」のキーワードは、行動変容や人材育成・スキルアップをする上で、あまり役に立たないのです。

では、どうすればいいのか? 行動を、一緒に確認することです。

(『心理的安全性をつくる言葉55』より引用)

 

例えば、報告が整理されていない部下に対して、「前にも言ったけど、もっと情報を整理してから報告して」というのではなく、「一緒に確認したいんだけど、報告する時は、何をどう考えているの?」と問いに変え、どこが整理できないところなのか一緒に考えるようにするとよいとのこと。つい、厳しく指導して「次からは気をつけて!」と言いたくなりますが、部下と一緒に取り組んでみましょう。『心理的安全性をつくる言葉55』には具体的な会話例とともに言葉が掲載されているので、自分ごとに落として考えやすいのも読みやすいポイントです。「あぁ〜よくこんな言葉使っているな」と思ったら、確認の意味も込めて読んでみてくださいね。

 

リモートでも心理的安全性はつくれる

こういった「会話本」は、オフラインでのみ適応されると考える人もいるかもしれません。しかし時代はオンラインが主流。リモートワークでも「心理的安全なチーム」をつくるにはどんなことを心がけたら良いのでしょうか?

 

いくつかのコツが紹介されているのですが、個人的に一番「わかる〜」と思ったのが「すぐ反応」すること。これにより発信者の心理的安全性を高められるのだとか。とくにチャットツール等でやり取りをしている場合、気合を入れて作った書類や気になっている質問を送っても、なかなか返事が来ないと「もしかして怒らせたかな?」「とんちんかんなこと聞いちゃったかな?」と不安になってしまうことってありませんか?

 

すでに心理的安全性が築かれている間柄であれば「いつものこと」と思えますが、そうじゃない場合は、相手に不安を与えてしまいます。リモートでは了解! ありがとう! など、一言でもいいので「すぐ反応」しましょう。話しかけやすさにも繋がるそうですよ!

 

『心理的安全性をつくる言葉55』は、これまでもよくあった「新人とどう接したらいいかわからない」とか「厳しい上司との1on1が怖いなぁ……」など悶々とした状況を脱せる一言が必ずみつかる一冊です。職場で働く人たちは、働きやすい環境で成果を出したいと誰もが望んでいるはず。 なんとか良い方向への改善策を見つけたい人はぜひチェックしてみてくださいね!

 

【書籍紹介】

心理的安全性をつくる言葉55

著者:原田将嗣 (著), 石井遼介 (監修) 
発行:飛鳥新社

いつものひと言を変えることで…会話が増える!チャレンジが始まる!チームが変わる!いま大注目の「心理的安全性」を取り入れるなら、本書の言葉から。

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踏み出せば、その一足が道となる−−惑う人生の指針となる『道なき未知』

道なき未知』(森博嗣・著/ベストセラーズ・刊)を手に取ったのは、ブックデザインが素敵だったからだ。五色の絵の具がパレットに均等に広げられているような表紙にまず惹きつけられた。さらに、五つの色が中心で混じり合って曖昧模糊となっており、何かの入り口のように見え、誘われるように本を開くと、「道」と「未知」という二つの言葉に胸をつかまれた。

 

未知の「道」を見ると、前進したくなる

理由はよくわからないのだが、私は「道」を前にすると不安定になる。知らない道があると、まずは「行きたい、この道を進みたい」と願うが、同時に思う。「やめておこう、今度、誰かと一緒に来たときにしよう。一人じゃこわいし」と。それなのに、気づいたときには既に歩き出しており、止まることなく、ぐんぐんずんずん進んでしまう。ただし、横道には入らない。本当は入りたいのだが、道に迷うと困るので、右折も左折もせずに直進し、適当なところで突如、ユーターンして帰ってくる。そのくり返しだ。

 

知らない道を歩き終え、元いた場所まで戻ってくると、気分が高揚し、叫び出したくなる。さすがに行動には移さないが、「どんなところだろう」と思って歩き出した道の上に何があるのかをもう知っていることが嬉しくてたまらない。それでいながら、悲しく、寂しい気持ちも押し寄せてくる。知らないままで置いておくべきだったのではないか。いや、やはり謎を解き明かしたかったのだから、これでいいのだろうかと、一人煩悶する。そして、そんな自分をわけがわからないヤツだと気味悪く思う。

 

60半ばを越えた今も、私はどこに続くのかわからない道を前に「行ってみよう」と、反射的に思う。実行に移すときもあるし、やめておくときもある。何かを見たいわけではない。どこかに到達したいという気持ちもない。ただ、先にあるはずの何かを知りたいだけなのだ。しかし、こんな性癖は周囲にとっては迷惑でしかない。だから、誰にも悟られないように気をつけてきた。私の友人は心優しい人が多く「ここ、行ってみたい」と言えば、きっと一緒に行ってくれるだろう。しかし、それは迷惑だとよくわかっている。どこに行くのかも知らず、どこでやめるのかわからない前進なんて、付き合わされるほうはたまったものではない。

 

10年ほど前、キリシタンの取材に九州に行ったときも、どうしても進んでみたい道に遭遇した。一人だったこともあり、遠慮することなく、前進につぐ前進を試みた。携帯の電波を示すマークが途中で消え、蛇がでそうな山道を一人でただひたすらに前進するのは危ないとわかっていた。わかっていながら、やめることができなかった。道中、二、三度、「私はおかしいのだろうか」と、自分に問い、そして、多分、そうだという結論に達しながらも、道がなくなるところまで突き進み、無事に帰ってきた。

 

私はそういう自分が嫌いだ。どこかおかしいとわかっている。これまで自分を矯正しようと努力してきたつもりだ。普通のお母さんになりたいと願っていたし、良い奥さんになろうともした。これでも頑張っていたのだ。けれども、うまくいかず、時々ひどく落ち込む。そんな私にとって、この『道なき未知』は、救いの書となった。どこかおかしい自分ではあるが、「周囲に迷惑をかけずに生きていけるよ、もうこのままいくしかないよ」と、慰めてもらったような気がしたからだ。

 

森博嗣という作家

『道なき未知』の著者は、森博嗣。大学教授として建築を講じていたそうだ。ところが、40才のとき、突如、小説を書こうと思い立ったという。家族には不評だったが、出版社に送るととんとん拍子にデビューが決まり、『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞した。その後も、順調に数々の作品を発表し、現在まで300冊以上の著書が出版されている売れっ子作家だ。しかし、その生活は謎に包まれており、どこに住んでいるのかさえ定かではない。わかっているのは、カーナビのディスプレイから消えてしまうような山奥にいて、庭に手作りの鉄道模型を走らせていることくらいだ。ほとんど人に会わず、そもそも日本国内に居住しているのかさえよくわからない。

 

隠遁生活を送る仙人のようだが、結婚もしており、お子さんもいるという。作家活動を経て暮らせるだけのお金も得たので、今は好きなことだけして生活しているという。すごい。こういう生活に憧れる人は多いだろう。

 

ときどき「恵まれていますね」と言われるけれど、誰かから恵んでもらったのではない。神様はいない。自分で自分に恵むしかないのである。宝くじに当たるよりは簡単だ

( 『道なき未知』より抜粋)

 

そうなのだ。「あなたは恵まれていますね」と、人は簡単に言う。それも非難をこめ、嫉妬深い視線を投げかけてくる。しかし、当人からしたら、そんなこと言われても答えようがない。その状態は自分で自分に恵んだものであって、他人にとやかく言われることではないはずだ。

 

私もたまに「恵まれてるよね」と言われる。確かに、私は恵まれている。食うには困らず、家族も元気だ。しかし、そう言われても返答のしようがないこともある。ましてや、そこに敵意を感じると、悲しくてたまらない。ところが、『道なき未知』を読んでいると、これが私に与えられた人生なのだから、恵まれていようが人には言えない不幸があろうが、この道をいくしかない、左折も右折もせずにぐんぐん進んでいこうと思えるのだ。

 

もちろん、著者は読者を励まそうと思って『道なき未知』を書いたわけではないだろう。書きたいことを書きたいように、しかし、それでいながら、読者の存在を強く意識しながら書いている。単なる独白に終わっていないところが、胸に響いてくる大きな理由だ。

 

最後にひとつ、私にとって、決定的な言葉となった一文を紹介したい。

 

道の先にあるものは未知だ。なにかがありそうな気がする。この予感が、人を心を温める。温かいことが、すなわち生きている証拠だ

(『道なき未知』より抜粋)

 

この言葉にぐっときた。少し出来損ないでも、このまま生きていこう、そう思わせる本、それが私にとっての『道なき未知』だ。もし、あなたが自分を見失いそうだと不安なら、この本を読んで欲しい。自分のキャンバスに画を描くのは自分しかないと気づくだろう。

 

【書籍紹介】

 

道なき未知

道の先にあるものは未知だ。なにかがありそうな気がする。この予感が、人を心を温める。温かいことが、すなわち生きている証拠だ。したがって、行き着くことよりも、今歩いている状態にこそ価値がある。知識を得たことに価値があるのではなく、知ろうとする運動が、その人の価値を作っている。たとえば、人生という道だって、行き着く先は「死」なのだ。死ぬことがこの道を歩く目的、価値ではないことくらい、きっと誰でもわかっているだろう。

著者:森博嗣
発行:ベストセラーズ

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ミニマリストと違いは? 自分の価値観を問い直すSNSでも話題の『シンプリスト生活』

2015年ごろから話題になっているミニマリスト。自分にとって必要最小限のモノで暮らしていくという斬新さから、たくさんの書籍も発売され一気に広がっていきましたよね。きっと実践した人も多いはず。

 

でも、ミニマリストに憧れて効率を極めてモノを捨てたのはいいけれど……なんだかちょっぴり寂しい。そんな人にぜひ読んでもらいたいのが『シンプリスト生活』(Tommy・著/クロスメディア・パブリッシング・刊)です。著者のTommyさんは、会社員をしながらYouTubeでご自身のシンプリスト生活を紹介されています。春の新生活に向けてどんなお部屋にしたいか悩んでいる方、引っ越しのタイミングでシンプリスト生活に切り替えたい! と考えている方はぜひ読んでみてくださいね。

 

ミニマリストとシンプリストの違いとは?

「ミニマリスト」と「シンプリスト」は似ているようで実は考え方がちょっと違っているのだとか。ミニマリストの語源となっているミニマルは、数や量が少ないことを示しています。一方で、シンプリストの語源となっているシンプルは、簡素とか単純といったことを示します。両者には一体どんな違いがあるのでしょうか? まず、ミニマリストについてはこのように書かれてありました。

 

ミニマリストといった場合、所有物の量や数に焦点を当てて、いかに減らすかを第一命題としている人と解釈した方が、語源にも日本における実態とも合っているようです。

(『シンプリスト生活』より引用)

 

一方で「シンプリスト」は以下のように解説されています。

 

つまり、シンプリストとは、自分にとってのモノゴトの優先順位を整理し、自分に正直にいることを重視して行動する人と考えられます。

例えば、身の丈以上に背伸びしたり、人からの評価を気にするより、自分の価値観で判断することができるし、自分のことをよく分かっていて、自分らしくない選択肢はうまく手放します。

(『シンプリスト生活』より引用)

 

ミニマリストは、いかに少なくするか? いかに捨てるか? にフォーカスしていることに対し、シンプリストはモノの数ではなく自分の生活・考え方をいかに簡素にするか? に着目した考え方といえるでしょう。

 

自分の価値観を言語化してみる

「よし! 今日からシンプリスト生活をする」と、モノを捨て始める人もいるかもしれませんが、何もかも手放せばいいということでもありません。大切なのは、自分にとって何が大切で、何が大事なのか、そして何がいらないのか、自分の価値観を言語化することなのだとか。著者であるTommyさんの価値観をご紹介しましょう。

 

私の場合は「日々を心地よく、心豊かに過ごす」ことが一番大事です。そのために、以下のことを心がけています。

・大好きなインテリアを追求しながら、家を世界で最も心地よい空間に整える
・家事や仕事の「やらなければならない」は最小限に簡素化し、時間と心の余白を確保する
・大切な人との時間、大好きな自然や山での時間を味わう
・フットワーク軽く行動する、未来の可能性を広げるために身軽でいる
・何はともあれ健康

(『シンプリスト生活』より引用)

 

自分の中で「ポリシー」を作っておくと、頭の中もシンプルに考えられるようになりますよね。自分の場合はどうだろう? と考えてみましたが「楽しいことだけしたい」に行きつきました(笑)。自分のポリシーが決まれば、どうしたらポリシー通りに「楽しいことだけできる暮らし」ができるか自然と考えられるようになるんですよね。

 

人によって価値観は異なるので、これが正しいということもないし、〇〇すべきといったこともありません。自分のポリシーが決まってから、私は謎に本棚を整理したい衝動に駆られてしまい(笑)、楽しいことだけできる暮らしに必要のないと思った本と大切にしたい本を入れ替えることができました。

 

『シンプリスト生活』にはたくさんの事例が紹介されているので、これは自分に合いそう! と思うものからどんどんお試しすることもできますよ。

 

暮らしはシンプルにできても、仕事はできないでしょ?

『シンプリスト生活』は、5つの章で構成されており、シンプルに働くことについても書かれています。自分のお家や考え方がシンプルにできても、仕事ではそううまくいかないでしょ……と思ってしまいますが、著者のTommyさんは仕事でも自由にシンプルにできているそう。

 

仕事においても、暮らしにおいても、有限の時間やエネルギーを「大切なこと」にフォーカスし、それ以外はできるだけ排除することは、シンプルであるために必要な行動原理と言えます。

(『シンプリスト生活』より引用)

 

Tommyさんは「残業はしない」と決めて、定時にオフィスを出て帰宅後にYouTubeの動画制作や自分のやりたいことを副業にしています。これまでに色々な副業にチャレンジしたそうですが、ほとんど続かなかったそう。けれど、やってみないとどれが自分に合うかわからないので、やってみることが大切だと書かれてありました。

 

これもTommyさんの生活に「余白」があるからこそ実現できているチャレンジですよね。自分にとって何が大切なのか? そんな価値観を優先してシンプルに考えていくと、自分らしいシンプリスト生活ができるような気がしました。まだまだ日本では、〇〇さんがやっているから、みんな同じがいいからと「自分の価値観」を把握することが難しい文化があると思います。私も理想の「楽しいことだけできる暮らし」に向けて、シンプル思考で日々を取り組んでみたいと思います。

 

ミニマリストを目指してみたけどうまくいかなかった方、これから新生活を始める方など春から何かを始めてみたい人は、ぜひ読んでみてくださいね!

 

【書籍紹介】

シンプリスト生活

著者:Tommy
発行:クロスメディア・パブリッシング

好きなモノに囲まれて、小さく豊かに暮らす方法。時代はミニマリストからシンプリストへ。

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白か黒かハッキリ答えを求められる時代に苦しむ人必読! 人間の心は“あいまい”でいい『「知らんがな」の心のつくり方』

「〜〜すべき!」や「絶対〇〇が正しい!」など、最近の世の中では白か黒かハッキリとした正解が求められている気がして、なんだか息苦しいと思っている人はいませんか? いろんなテンプレがありすぎて、ちょっとでもはみ出そうものなら炎上……。私自身「楽しい冗談が通じないなー」と思うことも増えてきたと感じる今日このごろです。

 

そんなちょっぴり息苦しい現代に効く魔法の言葉があるのだとか。それが関西ではよく聞く「知らんがな」。今回は心をラク〜にしてくれる一冊『「知らんがな」の心のつくり方』(中島輝・著/KADOKAWA・刊)をご紹介します。

 

時代とともに変化してきた「自己肯定感」

そもそもどうしてこんなに窮屈な世の中になってしまったのでしょうか? 「いやいや現代はのびのびしているよ!」という方は本のタイトルのとおり「知らんがな」ってことで(笑)、引き続き楽しく生きていただければと思います。

 

窮屈にしている原因のひとつに、世代ごとによる価値観のギャップ、自己肯定感の感じ方に違いが生じていることがあるそうです。自己肯定感とは、他人と比較したりせず「私はわたし」と自分を認めて存在意義を肯定できる人のこと。世代ごとにどのようなギャップがあるのでしょうか?

 

昭和 承認欲求満足時代(自己肯定感の忘却)

平成 自己実現時代(自己肯定感の喪失)

令和 利他的な共存共栄時代(自己肯定感の復活)

(『「知らんがな」の心のつくり方』より引用)

 

少し補足すると、昭和は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれ、自己肯定感なんかなくても全ての日本人が認められていた時代でした。そこからバブルが崩壊した平成は自分らしさが重視され「何者かになりたい人」が増え、自己実現することで心を満たした時代に。誰もがなりたいものになれる世の中になりましたが、自分の好きなことだけをしていていいのだろうか? 自分は人の役に立てているのだろうか? と考えるようになり、自分のため&誰かのためにも貢献しようとなったのが令和です。

 

この時代の移り変わりを知らずに、これまでの世代ごとの固定概念で話をすると気持ちはすれ違ってしまいます。なんだか息苦しいなぁ〜と思っている人は「そうか時代がもう変わっているのか」と考えることが第一歩になるかもしれません。

「わからない」でもいい

このように世代ごと違いを書くと、「じゃあどうしたらいいの?」と正解を聞きたくなるかもしれませんが、正解はありません。常に正解を求めていることが、自分を窮屈にしているかもしれませんよ。

 

一つの面は数字、その逆の面は無地のコインがあったとして、どちらが表でどちらが裏なのかは、人それぞれの判断によって変わります。自分が表だと思っていても、それを裏だと思う人が世の中にはたくさんいる。このあたりまえの事実を自然に受け入れられるのが、「あいまい」な心の力です。

自分にはわからないことが起きてもそれは当然であり、そのとき「ゼロかイチか」で答えを求めるのではなく、「わからない」が答えでいいということです。

(『「知らんがな」の心のつくり方』より引用)

 

もちろんひとつの答えを出さないといけない時もありますよ! でも、全ての行為に答えは必要ないということです。こういった“あいまいさ”があることで、多様性を認められる心の広い社会にも自然となっていくだろうと感じました。

 

そもそも人間はあいまいな生き物

頭ではわかっていても、答えを出したくなってしまう、決めつけたくなってしまうこともありますよね。著者の中島さん曰く、人間は「あいまいな生き物」であり、その「あいまいさ」を身につけられるようになるのが「知らんがな」という言葉なのだとか。

 

「知らんがな、わたしはわたし」
「あの人は〇〇といっていたよ。でも私は知らんけどな」

このように、ものごとに「ゼロかイチか」「正しいか、正しくないか」などの結果を無理に出さずに、「あいまいさ」を身につけられるようになると、とらわれもこだわりもなくなり、心を楽にして生きていくことができます。自由自在に考えて行動もしやすくなるので、人生がどんどん面白くなっていきます。

(『「知らんがな」の心のつくり方』より引用)

 

「知らんがな」とか「わからない」と言われると、突き放されたように感じるかもしれません。けれど、受け取る側も説得して答えを導こうとせず、まずは受け入れてあげることが大切なのかもしれないな〜と感じました。

 

全員が「右にならえ!」 でもなく、「自分らしさがないとダメ!」でもなく、ちょっと力を緩めて「そんな考えもあるよね〜」くらいの気持ちで過ごせるようになれば、誰もがのびのびできるのかもしれません。毎日をドキドキワクワクな冒険の旅をするのもいいですが、移り行く毎日を眺めてぼ〜っとしているのも最高。人生に正解がないからこそ、あいまいな部分も楽しめるようになりたいな〜と感じました。

 

少し窮屈だな、息苦しい社会だなと思ったらぜひ「知らんがな」とか「知らんけど」とか「わからないな〜」とあいまいにする言葉を使ってみてください。ちょっぴり心が軽くなりますよ!

 

【書籍紹介】

「知らんがな」の心のつくり方 あいまいさを身に付けるレッスン

著者:中島輝
発行:KADOKAWA

「白か黒か」でなく「あいまい」こそが人間らしい!この言葉を口癖にするだけで人生はラクになる!「あいまいさ」を認めて、もっと自分らしく生きる。
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時間との付き合いかたのコツは、日本の水行にあった!?『限りある時間の使い方』

近ごろはコスパだけでなくタイパが重要視されるようになりました。タイパとはタイムパフォーマンスの略語で、かけた時間に対する効果のことを意味します。このタイパを良くするには、どうしたらいいのでしょうか。

 

時間をトクするということ

格差社会と言われているなか、時間は平等です。たとえば4分かかる遊園地のジェットコースターに乗る際、お金持ちもそうでない人も、同じように4分間を消費します。3時間待ちの行列であった場合も、公平に3時間を消費して並んで待つしかありません。

 

しかし、3000円を払えば行列の先頭に行けるという優先チケットが売り出されたらどうでしょう。お金持ちや、時間に余裕のない人は、その優先チケットを購入し、待ち時間を省略することができます。その場合彼らはお金の力で3時間をトクしたことになります。

 

時間には限りがある

最近はできるだけ時間を短縮することが重要視されています。「時短」というワードもしばしば使われています。「働きかた改革」でも労働時間の短縮が呼びかけられていました。確かに、何かにかける時間が短くなれば、その分、浮いた時間で他のことができて有意義です。

 

限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン・著/かんき出版・刊)は時間について、さらに深く向かいあっている本です。人間に与えられた時間は80歳まで生きたとしたら約4000週しかないので、その限られた時間をどう生きるかという「人生と時間」について、先人の知恵も交えて考察しているのです。

 

スマホをモノクロにする

本には、小さなことに気を散らさずに快適に暮らす方法が紹介されています。なかでもスマートフォンを白黒モードにするというのには驚かされました。実際に試してみたのですが、さまざまな色で主張していたアイコンたちが、モノクロの世界になった途端一気に静まりかえったように感じたのです。

 

モノクロにしただけで、スマートフォンにはとても落ち着いた雰囲気が漂い、それと同時に私の心のざわつきも少なくなった気がしました。これからも、作業に集中したい時はモノクロモードにしようと思います(iPhoneの場合、「設定→アクセシビリティ→画面表示→カラーフィルタ」でモノクロになります)。

 

時間を詰め込まない生きかた

時間を有意義に使うことと、タスクや作業を詰め込むこととはまた別のことなのだと、本の中では繰り返し述べられています。確かに、浮いた時間でまた仕事を増やしてしまったら、休むことはできません。

 

この本の著者は、イギリスの新聞記者であるオリバー・バークマンさんですが、エピソードのひとつとして日本の高野山での出来事を取り上げています。かつて真言宗の僧侶を目指し、ここで修行をしたアメリカ人男性がいたそうです。

 

現実に集中するということ

彼は冷水を浴びるという水行に耐え続けていたのですが、ある日、精神を集中させれば苦痛が減るということに気づいたそうです。現実をしっかり受け入れたうえで水を浴びることが大切だったのです。

 

著者は、この水行のように私たちは現実に向き合い、やるべきことに集中するべきだと主張しています。私たちの周りにはネットやテレビやゲームなど、気を逸らすことができるものがたくさんありますが、そちらに逃げてはいけないのだと。

 

逃げないことこそタイパ

確かに私たちはやらなくてはならないことに気づかないフリをして、ダラダラとスマートフォンをいじってしまうことがありますが、それは、時間を無駄遣いをしているようなものです。やるべきことをさっさと終わらせることこそ、タイパが良くなる最も効果的な方法なのかもしれません。

 

本の中では、自分が本当にやらなくてはならないこととはなんだろう、という深い問いかけまでもがされています。自分が時間を浪費していないか、そして時間を大切に使うにはどうしたらいいか、改めて考えてみるには、この本はとてもいい機会になるはずです。

 

【書籍紹介】

 

限りある時間の使い方

著者: オリバー・バークマン
発行:かんき出版

アダム・グラント、ダニエル・ピンク、カル・ニューポート他、NYタイムズ、WSJ絶賛の全米ベストセラー! 人生は「4000週間」限られた時間をどう過ごすか!?

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なんかダルい、モヤモヤするなら3秒でととのう「プチリセット」で気分スッキリしちゃおう!『もやだるさんのリセットスイッチ』

1月がスタートしたというのに、なんだか毎日ダラダラしてしまう、スッキリしないという人はいませんか? 本当は頑張りたいのに、心が疲れてしまっているというときは『もやだるさんのリセットスイッチ』(伊藤東凌・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)にあるリセット方法を試してみるのがいいかも。

 

この本の著者は、京都にあるお寺・両足院で副住職を務めている伊藤東凌さん。どうしてモヤモヤしてしまうのか? 現代人が抱えがちな心の動きから、解決法までをやさしい言葉で解説してくれています。なんだかやる気がでない人、気持ちが落ち着かない人におすすめですよ。

 

「もやだる」の原因は、無意識なネガティブ志向

伊藤さんのお寺には、毎日いろんな悩みを抱えた方が訪れ、相談されていくそうです。恋愛や仕事、家族や人生など悩みの種類は違っても、みんなにはある共通点があるのだとか。それがネガティブな感情を断ち切れず、引きずっていること。その感情は一生続いていくわけではないのに、ネガティブがず〜っと心に棲みついて「もやだる」になってしまうのだとか。そもそもなんで「もやだる」になってしまうのでしょうか? その原因は、人間の脳に秘密があるそうです。

 

人間は、厳しい環境を生き抜くために、生存本能から、もともとポジティブな情報よりもネガティブな情報に注意を向けやすい認知システムを備えているそうです。そのため、特に何も意識していないと、イヤなことや不安なことが目についてしまったり、記憶に残ってしまったりするのだそうです。

(『もやだるさんのリセットスイッチ』より引用)

 

自分の「もやだる」を振り返ってみても、24時間ずっと続いているわけではないはずです。ちょっとした瞬間に「おいしい」とか「うれしい」、「たのしい」という感情が動いたはずなのに、なぜか不安なことのほうが強烈に記憶に残ってしまっていることってありませんか? これらは脳が無意識にやっていることなので、「こらこら、ネガティブはいかんぞ」とリセットすることが大切になってくるそうです。

 

ごきげんな人は、切り替え上手

無意識にネガティブになりやすいのが人間ですが、全員が「もやだる」さんというわけではありません。ごきげんに過ごしている人間もたくさんいます。落ち込むことがあっても「いつもごきげんだな〜」という人は切り替えが上手。ネガティブなことがあっても、引きずらないんです!…… と、簡単に書けますが、一体どうやって日々をごきげんに過ごしているのでしょうか? 切り替え方は、本のタイトルにもなっている「リセットスイッチ」なのだとか。

 

リセットスイッチは、もやだるの原因となる出来事が起きたときに、ネガティブに触れた感情がだらだらと続かないように、スパッと断ち切って「今」に戻れるスイッチです。

スイッチのポイントは、体を動かして五感を刺激すること。

(『もやだるさんのリセットスイッチ』より引用)

 

五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚のどれか。ひとつでもふたつでもいいそうですよ。さらに、刺激するのは3秒くらいでもいいとのこと! 『もやだるさんのリセットスイッチ』には、手拍子パチンや指ろうそく、足そろえてトントンなどかわいいネーミングがついた3秒でできるリセットスイッチが紹介されています。読んでいるだけだと、「本当にこんなので効果があるの?」と思ってしまうのですが、実際にやると気持ちが驚くほど切り替わります。

 

私も年始から「あぁ〜なんで私ばっかり!」とイライラすることがあったのですが、眉間伸ばしをやったら心が落ち着きました。小さなことですが、やるとやらないとでは大違い。道具も使わず、気持ちを切り替えられるので気になる方は『もやだるさんのリセットスイッチ』を読んで実践してみましょう。

 

スイッチを習慣にして、ごきげんな日々を

人間は無意識にネガティブになってしまう生き物なので、いつの間にかスイッチが切り替わってイライラしたり、もやもやしたりしてしまうことがあります。いつネガティブがやってくるかわからないので、客観的に自分の状態を把握できるようスイッチを習慣化しておくのもおすすめなのだとか。

 

リセットスイッチが習慣になって、いつもと違う自分に気づけるようになると、もやだるを遠ざけられるようになります。それは、次にとるべき行動の準備ができるだけでなく、自分のことを客観的に見ることができるようになるからです。

このことを、心理学の専門用語で「メタ認知」といいます。

(『もやだるさんのリセットスイッチ』より引用)

 

『もやだるさんのリセットスイッチ』はちょっとした習慣や、ごきげんな毎日を過ごすために必要なノウハウがたくさん掲載されています。2023年が始まったばかりなのに元気が出ない、いつもイライラしている、心の疲れが溜まっていると感じている人は、ぜひゆっくりと読み進めてみてください。きっと「もやだる」を解決してくれる言葉があるはずです。

 

【書籍情報】

もやだるさんのリセットスイッチ

著者:伊藤東凌
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン

禅僧が教える、3秒でできるプチリセット法。かんたん・スッキリ・すぐできる。気分を瞬間に切り替える3秒リセット。心のざわつきをすーっと整えるプチ瞑想。イライラもやもや撃退メソッド一挙紹介。

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格闘技ドクター・二重作拓也が解き明かす「真の強さ」とは?−−『強さの磨き方』

筆者が2023年最初にアップするこの原稿は、新年の誓い的な内容にしたい。実は、自覚している性格がある。承認欲求がすごく高いのに自己肯定感がきわめて低いのだ。去年はこういうアンバランスな状態に陥っているのに気づくことが多かった。

 

弱いからこそ強くなれる?

常にバランスの良い自分であり続けるには、どうしたらいいのか。簡単に言ってしまうなら、打たれ強かったり忍耐強かったり、さまざまなものに対して強くあれればいいと思う。そこで新しい年が明けた今のタイミングで手にしたのが、『強さの磨き方』(二重作拓也・著/アチーブメント出版・刊)という本だ。

 

著者の二重作氏は医師であり格闘家でもあり、「格闘技医学」という新しいコンセプトの提唱者だ。こう書くと、ほとんどの人がまさに文武両道を絵に描いたような“強い”人を思い浮かべるに違いない。筆者もそうだった。しかし二重作氏は、意外にもまえがきであっさりカムアウトしてしまう。

 

もともと病弱で運動音痴、ボールに遊ばれるような子どもでした。8歳の時、体育の授業で行われた相撲で、自分より小柄な同級生に投げ飛ばされ、顔中が砂だらけになりました。「強くなりたい!」。そう思ってカラテを始めました。

『強さの磨き方』より引用

 

そこから快進撃が始まる。中学からは試合に出場すれば入賞という状況が続き、17歳で高校生代表選手になった。ただ、アメリカで行われた試合で、アフリカ系アメリカ人の選手が繰り出した“見たこともない蹴り”で倒されてしまう。こうして「強さを追究する旅」が本格的に始まった。レベルの差はもちろんあるだろうが、まず自分は弱いとはっきりと認識することが強くなるための条件なのかもしれない。

 

格闘技医学というコンセプト

医師を目指すことを決心したのも、人間が宿す本当の強さを知りたかったからだ。研修医をしながら極真カラテの全日本ウェイト別出場を目指し、成功と挫折を重ねる過程で「格闘技医学」にたどり着く。スポーツにおける強さの根拠をレントゲンやCTと共に解析する方法論だ。

 

強さを求めるなかで気づいたこと、それは、己の弱さです。「少しは強くなれたかもしれないな」と思える瞬間もあります。しかし、次なるハードシップの前では、その感覚も露と消えてしまいます。現在も弱さと格闘する毎日です。

『強さの磨き方』より引用

 

二重作氏は、自分が弱いことを認めているからこそ強くなれる余地がよりよく見えるのだと思う。中学生時代も研修医時代も、そのスタンスは変わらなかった。

 

求道者のアリーナ

人はなぜ強くなろうとするのか。二重作氏によれば、今の自分を超えることでしかたどり着けない場所があるからだ。こうした思いからスタートする本書で試みられているのは「答えの提示」ではなく、「問いの共有」にほかならない。筆者なりにたとえるなら、求道者同士が思いをぶつけあうアリーナといった趣の一冊に仕上がっている。

 

章立てを見てみよう。

 

第1章 強さと人間理解

第2章 弱さの見つけ方

第3章 強さの磨き方

第4章 強さのロールモデル

 

人間を理解することで強さを定義し、自分の弱さを見つけ、さまざまな方法で強さを磨き、さらにロールモデルから具体的な要素を抽出して身につける。この一連の流れは、誰にとっても自分ごととして投影しやすいはずだ。

 

生きるという選択

筆者が激しく惹かれたのは、第4章で紹介されているプリンスの言葉だ。本書の装丁が紫のトーンで整えられているのも、そのあたりが理由なのかもなんて考えてしまう。1994年にプリンスの生誕地ミネソタ州ミネアポリスで聖地巡りをした筆者は、この本で『レッツ・ゴー・クレイジー』という曲が紹介されていることがひたすら嬉しい。

 

この曲の“better live now, before grim reaper come knocking on your door”というフレーズが一番好きだ。あえて訳すなら、「死神が玄関のドアをノックしに来る前に、今を生きるべきだ」という意味になるだろうか。

 

「おわりに」に次のような一文が記されている。

 

強さというテーマを中心にしながらも、実践的人間学としての「生きる」について書いてみたい。どうせいつかは終わるのだから。たとえどんなことがあっても「生きる」を選択する人をひとりでも増やしたい。私もそうするから。

『強さの磨き方』より引用

 

強さを磨いていくという過程は、自分の弱さを知り、ときとして抗いときとして迎合しながら、とにかく生きることを選ぶという行いの積み重ねなのだと思う。

 

私の考える強さは、あなたの考える強さとおそらく違うはずです。その違いを心から尊重し、共通性を全身で尊び合い、強さを磨き続ける。本書が小さなセコンドになれば幸いです。

『強さの磨き方』より引用

 

本当の強さというのは、マチズモという感覚だけで表現しきれるものではない。もっとしなやかな質感のものかもしれないし、ひょっとしたら想像よりはるかに柔らかいものかもしれない。本書を読んだ後、人はそれぞれ「強さの向こう側にあるもの」を見つけるだろう。人と違う部分があるのは当然だが、同じ部分もあるはずだ。形はいろいろだろうが、ひとつだけ共通するのは、二重作氏が言う通り「生きる」を選択することだ。だから、筆者もそうすることにした。

 

【書籍紹介】

強さの磨き方

著者:二重作拓也
発行:アチーブメント出版

格闘技×現役医師が解き明かす「強さ」の根拠。「強さ」とは何か? 人はどうしたら、本当に強くなれるのか?「強さ」の向こう側にあるものとは?

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少しでもやりたいと思うことはとりあえずやってみる–まずはそこから始めよう!『夢の叶え方を知っていますか?』

早いもので、この原稿が2022年度最後のアップとなる。今回は「夢」をテーマに、ロマンティックでポジティブな内容になるよう進めたいと思う。

 

絵馬はアファメーションなのかもしれない

筆者は毎日近くの神社にお参りに行っている。たくさん飾られている絵馬の中、合格祈願に混じって「夢が叶いますように」的な言葉がしたためられたものも多い。昔から思っていたのだが、絵馬は一種のアファメーション(肯定的な自己宣言)に違いない。夢や願望を明らかな形で見える化して既成事実としてとらえ、自分の中で培っていくのだ。

 

小学校の卒業文集に記される作文もアファメーションの一種といえるだろう。もちろん、すべての人が書いた通りに夢を実現させるわけではないが、驚くべき精度でものごとを実現させていく人がいるのも事実だ。「有名人 小学校 卒業文集」というキーワードで検索をかけると、単に面白いものから実現しすぎていてちょっと怖くなるようなものまで、さまざまな作文がヒットする。

 

夢のきっかけ

「夢は思い描くものではなく、実現させるもの」—そんな言葉もある。思い描くだけではなく、夢を実現させるにはどうしたらいいのか。そのプロセスのヒントというより、かなり実践的な方法論について詳しく触れられた『夢の叶え方を知っていますか?』(森博嗣・著/朝日新聞出版・刊)という本を紹介したい。作家であり工学博士である森氏の著書はこれまでにも何冊か取り上げさせていただいているが、この本はホリデーシーズン真っ只中の今の時期にまさにふさわしい一冊だと思う。

 

自分の庭に小さな鉄道を建設することが小学生の頃から夢だった。何故その夢を持ったのかは今でもはっきりと覚えている。鉄道模型雑誌を初めて書店で見つけ、その中にある白黒の写真が目に飛び込んできたときだった。アメリカの公園のような場所で、大人たちがミニチュアの機関車に乗って遊んでいるシーンだった。

『夢の叶え方を知っていますか?』より引用

 

森氏にとって相当インパクトがある写真だったのだろう。子どものころに抱いた夢を実現させるために国立大学の講師になり、人気作家になり、結果的には家を建てて広い庭にミニチュアの鉄道を敷設するきっかけになってしまったのだから。

 

夢を実現させるための手段

「まえがき」に記されているとても印象的な一文を紹介しておく。

 

少なくとも確かなことは、僕は作家になる夢を持っていたわけではない、という点だ。夢にも思わなかった。だから、作家になれたことを少しも嬉しく思っていない。これは、僕の夢を実現させるための単なる一手段だったのである。

『夢の叶え方を知っていますか?』より引用

 

作家になることを夢に思い描く人も少なくないと思う。しかし森氏の場合、そういう立場はあくまで子どものころの夢を実現させるためのプロセスにすぎず、心から嬉しさを実感したのは庭に敷設した線路の上で機関車にまたがり、それが動き出した瞬間だった。そこに至るまでに何をしたのか。章立てを見てみよう。

 

第1章 憧れの人生 憧れの生活

第2章 抽象的な夢と具体的な夢

第3章 夢の価値

第4章 夢を実現させるためには

第5章 周囲を気にしない夢

第6章 夢の楽しさを教えよう

第7章 作る夢のすすめ

 

「夢実現の方法論」「もう遅いという諦め」「夢を実現するプログラム」「出来なのではなく、時間がかかるだけ」「自分の評価眼を持つ」「なにもない毎日に耐えられる?」「楽しければ優しくなれる」といった現実的で実践的なキーワードが目立つ。

 

力まない文章で淡々と語られる夢の実現までのロードマップは、抵抗なく入ってくる。筆者が一番強く感じたのは、少しでもやりたいと思うことはとりあえずやってみるという心構えだ。夢の実現は、こういう瞬間の積み重ねで早まる気がする。いや、むしろそれが必須条件なのだろう。

  

何かを感じるものは、何でもやってみる

以前は当たり前だったことが当たり前ではなくなったこの3年間、筆者は少しでもやりたいと感じたことはすべてとりあえずやってみることをテーマにして生きてきた。ブログも音声配信もライブ配信も、YouTubeもみんなそうだ。すべてが続いているわけではないけれども、先に続いていく確かな感覚もある。残念ながら、今の筆者には子どものころのような具体的な夢はない。強いていうなら、「いろいろな理由を付けてやりたいことをしない姿勢を完全になくすこと」だろうか。

 

ネットで見つけたこちらの記事によれば、将来なりたい職業や夢がある子どもがコロナ前よりも3割増え、全体の8割が将来に関する具体的なビジョンなり夢なりを持っているようだ。ほっこりするし、ちょっとうらやましくもある。


今年も1年間読んでいただき、ありがとうございました。2023年がみなさまにとって夢に満ちた素晴らしい年になりますように。

 

【書籍紹介】

夢の叶え方を知っていますか?

著者:森博嗣
発行:朝日新聞出版

何故、あなたの夢は実現しないのか?「自分の庭に小さな鉄道を建設することが小学生の頃から夢だった」。あなたの夢は「見たい夢」か「見せたい夢」か? もし後者であるなら、願いは永遠に実現しない。小説家として億単位を稼ぎ、あこがれの隠遁生活で日々夢に邁進する。それを可能にした画期的方法論。

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「時間が足りない」と嘆くそこのあなた!『YOUR TIME』を読んで、時間不足を解消しよう

あっという間に1年が終わってしまう! 私も毎日お仕事に追われて、時間が足りない……と嘆いております。嘆いて時間が増えるわけでもなければ、勝手に仕事が終わるわけでもない。「どうしたものか」と悩んでいたのですが、『YOUR TIME ユア・タイム』(鈴木 祐・著/河出書房新社・刊)を読んで、もう時間が足りないと言うのはやめよう、本当に好きなことに時間を使おう! とポジティブに考えられるようになりました。

 

今回は、読むだけで時間の捉え方が変わる『YOUR TIME ユア・タイム』をご紹介します。

 

時間術における3つの真実

1日24時間というのは、誰もが平等に与えられている時間です。夜更かししようが、働いていようが、ぐっすり寝ていようがこの地球上に暮らしているすべての人に同じ時間が与えられています。

 

しかし、「今週は早かったなぁ」とか「いつも時間が足りない」と嘆いてしまうのはなぜなのでしょうか? 『YOUR TIME ユア・タイム』の著者、鈴木祐さんによると、それは“時間感覚”が人によって変わってくるからだそう。また世の中にはさまざまな時間術やタイムマネジメントの常識がありますが、実は根拠がないなんてこともあるのだとか。

 

どれだけ最新の時間術を学んでみても、根拠が間違っていたら意味がありません。そこでまずは、世に出まわるタイムマネジメントの考え方から、特に誰もが間違いやすい3つの真実を押さえておきましょう。

 

真実①…時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない

真実②…時間の効率を気にするほど作業の効率は下がってしまう

真実③…「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある

(『YOUR TIME ユア・タイム』より引用)

 

『YOUR TIME ユア・タイム』では、世の中にある時間術についての研究結果をとことん紹介しています。これまで私たちが「これで生産性が上がる!」「効率的に働ける!」と思っていた常識や定番が、人によって全然効果が出ないという研究結果が実は結構あったんです。

 

いろんな本を読んで時間術を実践してみても続かない、自分だけ成果が出ないと悲しい気持ちになった人もいるでしょう。安心してください、それはあなたに合っていないだけだったんです!

 

自分に合う時間術を使おう

では、どうやって自分に合う時間術を見つけるか? というと、『YOUR TIME ユア・タイム』に掲載されている「時間感覚タイプテスト」を受けるだけ。これから読む人向けに「ウェブ診断」もあるので、気になる方はやってみましょう。20問の設問に答えるだけで、自分の時間感覚を知ることができますよ。

 

【ウェブ診断はこちら

 

テスト結果は、4×4の16タイプに分けられます。自分のタイプを把握するだけに終わらず、もし「しっかり計画を立てられる人になりたい!」と思ったら、『YOUR TIME ユア・タイム』にある時間術を実践することでタイプを変えていくことができます。あれこれライフハックや時間術を試して挫折を繰り返している人は、ぜひ一度診断してみてください!

 

ちなみに私は、目先のことばかりやってしまう「浪費家」&自分の能力を過信する「自信家」でした(笑)。当たっている……。タイプ診断をして、本書を読んでいるだけでも、グサグサ刺さる言葉のオンパレードなので、自分の日頃の時間の使い方について反省したい人にもおすすめです。

 

「生産性を上げれば上げるほど忙しくなる」って本当?

『YOUR TIME ユア・タイム』では、さまざまな研究結果と合わせて、本当の時間とは何か? を追求しているのですが、個人的に一番驚いたのが「生産性を上げれば上げるほど忙しくなる」というものでした。

 

組織心理学者のトニー・クラブは、生産性の追求がもたらす罠についてこうコメントしています。いかに生産性を上げようが、そのぶんだけやるべき作業の量も増えていき、あなたの忙しさは一向に改善しないという指摘です。

この言葉の正しさは複数のデータで認められており、たとえばリーダーシップIQ社が行った調査では、全米207社で働く従業員のエンゲージメントと業務実績評価データマッチングを実施。その結果、全体の42%の組織において、生産性が高い人ほどエンゲージメントが低い事実を明らかにしました。

(『YOUR TIME ユア・タイム』より引用)

 

これは今を生きる多くの人が抱えている課題ではないでしょうか?

 

生産性ばかり重視した結果、能力の高い人だけが忙しくなり、能力ある人のモチベーションが失われてく……。じゃあどうしたらいいのか? その答えは『YOUR TIME ユア・タイム』にたっぷりと書かれてあります。本を読む時間すらない、なんて言わずにぜひ自分のこれからの人生の時間を考えるためにも2〜3時間、ゆっくり本を読んでみてください。本を読んだことで気づくこと、発見することがたくさんあるはずです。来年こそ、自分の時間を取り戻しましょう!

 

 

【書籍情報】

YOUR TIME ユア・タイム

著者:鈴木 祐
発行:河出書房新社

4×4“時間感覚”タイプ別時間不足の根本解決。“時間の概念”をくつがえし人生の満足度を引き上げる究極メソッド。

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秋元康はなぜ犬のうんちを踏んでも感動できたのか?−−ものの見方を180度変える1冊

人間、生きているとついているときもあればついていないときもある。たとえば、道を歩いていて犬のうんちを踏んでしまったとしよう。そのとき、「ついてないなぁ」と思うことだろう。

 

しかし、犬のうんちを踏んで「俺はラッキーだ!」と思う人もいる。その人は、秋元康。そう、あの秋元康だ。

なぜ、秋元康は犬のうんちを踏んで感動したのか

犬のうんちを踏んでも感動できる人の考え方 ものの見方クイズ』(ひすいこうたろう・著/祥伝社・刊)は、物事をポジティブにとらえることで、日々の生活を前向きにしようという主旨の本。そのなかのひとつの例として、タイトルにもある「犬のうんちを踏んで感動する秋元康」の話が出てくる。

 

秋元康が犬のうんちを踏んで感動したシチュエーションは以下の通り。ロサンゼルスでタクシーから降りた瞬間の一歩目で犬のうんちを踏んだ秋元氏。普通なら「ついてないな」と思うところ、感動のあまり一歩も動けなかったそう。いったいどういう考え方をすれば、犬のうんちを踏んで感動できるのか。

 

ロサンゼルスでタクシーを降りた一歩目にウンコがある確率。
そしてそれを見事に踏む確率。
もしロサンゼルスの友達に電話をして迎えにきてもらっていたら、タクシーに乗ることはなかったのでウンコは風化していた。犬がここを通る前だったらそもそもウンコはなかった。すべてが重なったから、このウンコを踏める確率にドンピシャで行き当たることができた。

(『犬のうんちを踏んでも感動できる人の考え方 ものの見方クイズ』より引用)

 

偶然が重なって、低い確率の現象に行き当たったことがラッキーだと、秋元氏は考えたのだ。一見マイナスな現象も、見方を変えるとラッキーに変わる。本書のテーマはまさにこれなのだ。

 

自分を客観視して、自分事を他人事にする

自分の価値観だけで物を見ていると、どうしてもマイナスなものはマイナスのまま捉えてしまう。しかし、客観的に自分を見ると、そのマイナスの現象もプラスに見えることがある。

 

自分の身に降りかかったツラいことを他人事にしてしまえばいいのです。
他人事にする方法は、自分の境遇をネタにして、できるだけ明るく話すことです。「話す」ことで、それを自分から「放す」ことにつながります。

(『犬のうんちを踏んでも感動できる人の考え方 ものの見方クイズ』より引用)

 

よく、お笑い芸人が自分の不幸話をおもしろおかしく話したりしているのを見かける。自分に降りかかったマイナスの要素を、他人に披露することでプラスにしている例と言えるだろう。

 

自分の欠点も、他人から見れば長所になり得る。マイナスの要素をどれだけ自分で受け入れ、それを他人に見せていくか。それができれば、もう自分からマイナス要素がなくなって、常にハッピーな状態になれるのではないだろうか。

 

人生を楽しくするためのヒントが得られるかもしれない

本書を読んでいると、マイナスをプラスに変える考え方が目白押しなので、なんとなくポジティブな気分になれる。

 

僕は最近、プライベートな人間関係で悩んでいて、あまり相談できる人もいないので、なんとか自分で切り抜けなければといろいろ試行錯誤していたのだが、本書を読んで「俺は今、人知れず世界(僕の周りの人たち)を救おうとしているヒーローなんだ」とちょっと思ったりもした。まあ、そんな大げさなものでもないのだが。

 

ただ、世間の常識がすべてというわけでもないし、自分の価値観が他人の価値観と一致するとも限らない。そう考えると、自分の考え方だけがすべてではないし、他人の考え方がすべてではない。

 

だったら、未来が楽しくなるような思考回路にして、なんとなく毎日が楽しいと感じるようにするのがいいのでは、と本書を読んで感じた。

 

もし、あなたが今何かで悩んでいたり困っていたら、本書を読んでみるといいだろう。おそらく気分が軽くなるし、何か解決策につながるヒントが見つかるかもしれない。

 

人生のヒントなんて、ほんとにどこに転がっているかわからない。もしかしたら、この本があなたにとってのヒントになる可能性は充分あるだろう。

 

【書籍紹介】

犬のうんちを踏んでも感動できる人の考え方 ものの見方クイズ

著者:ひすいこたろう
発行:祥伝社

最悪を0.1秒で最高に。だから、今日が人生で一番面白い日。

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「はじめまして」は好印象でも、2度目以降何を話したらいいかわからない! と悩む人におすすめの一冊『2度目の会話が続きません』

対面で人と会う機会も増えてきた今日このごろ。ここ数年、オンラインが当たり前だったので「知り合いなのに、直接会うとなんだか会話が弾まない……」そんな場面に遭遇することが増えてきました。はじめましてはオンライン、二度目以降がオフラインで顔を合わせるとなると、なんとなくギクシャクしてしまうことってありますよね?

 

今回はそんな方におすすめしたい一冊『2度目の会話が続きません』(野口 敏・著/サンクチュアリ出版・刊)をご紹介します。

「はじめまして」と2度目以降の会話では、気を付けることが違う?

初対面での会話は、テンプレート化されていることも多いので自然と「盛り上がった感」を出すことができます。しかし、2度目以降で話題が尽きて、無の時間が流れるなんてことも。お互いの距離感がつかめていないと「あれ? 思っていた人と違う……」と感じてしまうかもしれません。

 

もっと相手のことを知りたい! 自分のことを知ってもらって、仲良くなりたい! と思ったら、2度目以降はどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?

 

会話とは、情報交換ではないのです。

1度目の会話では情報の質問でも乗り切れるかもしれませんが、2度目以降には「感激したこと」「後悔したこと」など、相手の気持ちや人間性に目を向けていきましょう。

これが、2度目以降の会話が弾む秘訣です。

(『2度目の会話が続きません』より引用)

 

ついついどうでもいい質問を投げかけたり、延々と自分の話をしちゃっている〜! 2度目の会話っていい塩梅が難しいんですよね。それは、情報交換しようとしているからかもしれません。2度目以降は、相手の気持ちに目を向け、寄り添うことを心がけてみましょう。

 

聞かれて困る「趣味」の質問には、どう答える?

ある程度、情報交換的な会話が終わった後に出てくるのが、「趣味」の話。「趣味はなんですか?」「おやすみの日は何をしてますか?」なんて聞かれて、答えられない人も多いはず。まだ会ったばかりの人に趣味の話はしたくないって人もいますよね。でも、この「趣味はなんですか?」という質問、真剣に答えなくてもいいとのこと! その背景にはどんな意味があるのでしょうか?

 

まずこういう質問にうまく答えるセオリーを2つ紹介しましょう。

・相手はただ会話のきっかけとして質問をしているだけ。正確に答える必要はない
・会話が広がるように答えればOK

(『2度目の会話が続きません』より引用)

 

つまり「趣味はなんですか?」と問いかけてきた人は、この質問をきっかけに会話を広げたいだけなのです。趣味がなくて困ったなぁ〜という人は素直に「私って趣味と呼べるような趣味がないんですよね」と言えばいいし、色々あってひとつに絞れないなら「なんでもハマっちゃうんです。最近は〇〇が好きで〜」と返せばいいだけ。趣味の話をしたいわけじゃないと思っておくと、気持ちが楽になりますよね。

 

逆に自分から話しかけたい場合は、質問しよう! とするのではなく、自分語りから始めて、相手に問いかけるといいのだとか。『2度目の会話が続きません』には、さまざまなシチュエーションの会話例が掲載されているので、気になる方はチェックしてみてくださいね。

 

あいづちは、練習でうまくなる!?

会話の中で重要な「あいづち」は、やりすぎるとうざい人になりますが、上手に使えれば会話のテンポを良くし、共感力を高めてくれます。自分の話に共感してもらえている! と思えば、どんどん話したくなりますよね。

 

実際、「話しやすい人」を観察してみると、彼らは別に気のきいたことを言っているわけではありません。

話を聞きながら「ええ!?」とか「あらー!」とか、気持ちの乗ったあいづちを返します。すると、わずかな間のあと、また話し手が笑顔で話しはじめるのです。

(『2度目の会話が続きません』より引用)

 

ちなみに「あいづち」は練習で上手になるそう! 鏡で自分の顔を見ながら「いいですね」「困りましたね」「えーっ!」などと練習をすることで、ナチュラルなリアクションができるようになるそう。自分がどんな顔をしているのか、どんな声を出しているのか、無意識にしているあいづちを意識してやるだけで、「話しやすい人」になれちゃうかも。

 

『2度目の会話が続きません』は、全11章で構成されています。たくさんの会話例とともに、話し方やリアクションの取り方、話題選びなど仕事や恋愛でも役立つ会話術が掲載されています。会話例では、いい例と悪い例が掲載されているので、自分の会話のクセを見つけたい人にもおすすめ! 人と会う機会が増えてきた今、『2度目の会話が続きません』を読んで、こっそり会話力を高めちゃいましょう。

 

【書籍情報】

2度目の会話が続きません

著者:野口 敏
発行:サンクチュアリ出版

聞き上手で乗り切れるのははじめましてだけ! 人見知りの人も、初対面の会話はできるという人も「出会ってから2度目の会話が難しい」と感じたことはないでしょうか? この本では、2度見知りさんが持つ苦手をスキル、そして心理面から解きほぐす90の方法を集めました。仕事の場でも出会いの場でもプライベートでも、この本を読んで関係を深める力をつければ、2度目の会話だけでなく、初対面の会話も大きく変わっていきます。

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「ゆるく」「うすく」つながり、居場所をいくつか持つ−−『人間関係を半分降りる』

学校に行かない、家族を作らない、会社に所属しない、という生きかたを選ぶ人が増えています。しかし集団に属さない場合、自分の居場所を見つけることができず孤独を感じがちです。居場所の大切さについて考えてみました。

 

学校以外の居場所がない

筆者の子どもは中学生の時に不登校になりました。学校に行こうとすると体調が悪くなり、行くことができないのです。1日のほぼすべてが自由時間となった彼ですが、すぐに困難に直面しました。平日の昼間に行くところがないのです。

 

最初のうちは図書館を利用していましたが、そこの机で勉強はできても、誰かとコミュニケーションできるわけではありません。家族以外との会話がない毎日は、かなり退屈そうでした。

 

そこで塾に通い始めたのですが、塾の先生が「自習室は午後1時から開いているからいらっしゃい」と声をかけてくださいました。自習室の休憩時間の会話で友人も増え、どうにか居場所を見出すことができたのです。もし塾がなかったら、かなり心細子寂しい思いをしたことでしょう。

 

負担が少ない人間関係を

鶴見済さんが書かれた『人間関係を半分降りる』(筑摩書房・刊)では、現代社会でどのように人と関わりを持って過ごしていくべきかということを、友人・家族・恋人などの関係ごとに、かなり具体的に言及されています。

 

この本は人間関係を減らすことについて推奨している内容ですが、減らすにあたって重要視されるのは、関わる人数よりは、関わる深さや関わる時間、そして関わることによって生まれる労力なのだと感じます。自分の負担にならない程度に社会とつながっていくことで、日々の暮らしはより快適になりそうです。

 

新たな居場所の必要性

鶴見さんは「戦後昭和の時代、人が家庭、会社、学校の三領域に閉じ込められていた」が、「90年代あたりから(中略)、三つの領域から人が降り始めた」と書いています。確かに2020年代の現代では、生涯未婚率が上昇し、フリーランスの割合も増え、不登校も過去最多となっています。

 

本ではこの三領域以外の居場所が作られてこなかったことを問題視しています。今までのごく一般的な日本人の生きかたから外れた途端、居場所が見当たらずに困ってしまう現象が起きているのです。著者の鶴見さんはこれを危惧し、自らも居場所を主宰するようになりました。

 

つながりを探す時代

確かに近年になってシェアハウスやコワーキングスペースやボードゲームカフェなどで見知らぬ人と生活や仕事や遊びを共有したり、オンラインサロンやオープンチャットなどで会ったことがない人と語り合ったりと、今まででは考えられなかったような新たな関わりが生まれています。

 

それは、今までの画一的な生きかたを選ばない人が増えていて、何らかの居場所をリアルや非リアルで探しているからだとしたら腑に落ちます。こうした新たな場では交流会も頻繁に行われていて、人と人とのつながりも生まれやすいからです。

 

居場所をふたつ持つこと

本では会社や学校や家庭以外のゆるい居場所をふたつ作ることを推奨されていました。居場所がひとつだけだとそこに頼りすぎてしまうため、ふたつがいいのだとか。居場所とは「人とのつながりがある場」のことで「他の客と話せるいきつけの居酒屋でもいいし、よく参加する読書会」でもよく、大切なのは「ありのままの自分でいられる」ことだと説かれています。

 

ひとりが気楽であっても、時には誰かと交わりを持ちたいものです。気分によって自室と居場所とを上手に使い分ける生きかたが今後広まっていきそうです。その集まりから偶然何かの商品やサービスが生まれることも増えるかもしれません。実際、人々が集まりアイデアを出し合うアイデアソンという試みも広まりつつあります。居場所という試みの発展に今後も注目したいところです。

 

【書籍紹介】

人間関係を半分降りる

著者:鶴見済
発行:筑摩書房

人間は醜い。だから少し離れてつながろう!友人、家族、恋人。大ベストセラー『完全自殺マニュアル』の著者が、悲痛な体験から生きづらさの最終的な解決法=優しい人間関係の作り方を伝授する。

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最近“だんまり”していますか? じっくり考えること、ことばの重みを実感できる講演録『だんまり、つぶやき、語らい』

わ〜かわいい表紙! と思って手に取った『だんまり、つぶやき、語らい』(鷲田清一・著/講談社・刊)ですが、本屋さんで時間を忘れて読み耽ってしまい「買おう」とレジに向かった1冊でした。

 

この本は、哲学者の鷲田清一さんが2020年10月に愛知県の高校生に向けて講演された内容がそのまま1冊の本になったものです。鷲田さんのやさしい言葉が心に沁みて、高校生だけでなく大人にも読んでもらいたい内容が綴られていました。

 

読み返すたびに「気になる」フレーズが変わる本

『だんまり、つぶやき、語らい』は、高校生に向けた講演の内容を再編集したもの。そのため、難しい言葉は出てこず、1時間もあれば読めてしまうほどのボリュームです。しかし、一言一言が濃い! 言葉のエスプレッソかな? と思うくらいガツン! とくる言葉たちが並んでいます。

 

大きく分けると、3分の2ページくらいが講演の内容で、残り3分の1が高校生からの質問に鷲田さんが回答する対話ページで構成されています。講演のテーマは、本のタイトル通り、だんまり・つぶやき・語らうことについて。一見すると「なんのこと?」と思いますが、読み進めていくことでその意味がわかり、パズルのように答えが導かれていく……そんな本でした。

 

『だんまり、つぶやき、語らい』は濃い言葉がいっぱいあるのですが、繰り返し読むことでどんどん自分の一部になるような感覚が味わえます。最初に読んだときには、だんまり、つぶやき、語らいの意味も理解しないままだったので全てが新鮮! 2度目は全体像を理解した上で読めるので新しい気づきが出てくる。3回目以降は、自分自身の行動を振り返りながら読める余裕が生まれるので、周りの人を思い付かべながら読めるんです。私も気がついたら5回ほど読んでいましたが、読むたびに好きだなぁ〜と思うフレーズが変わっていくので、定期的に読みたくなる本コーナーに置きました(笑)。

 

いま必要なのは「話しあい」より「黙りあい」

現代には、話し方の本や聞き方の本など、コミュニケーションに関する書籍がたくさん出ています。大きく分類したら『だんまり、つぶやき、語らい』もその部類に入りますが、書かれてあることはちょっと違っています。

 

一般的な話し方の本では、「間」をあけないように! とか「すぐ」返事をしよう! と相手を待たせないことが良しとされていますが、鷲田さんは、寺山修司さんの『歴史の上のサーカス』にある言葉を引用した後、以下のように伝えています。

 

いま必要なのは「話しあい」じゃなしに、「黙りあい」ではないか。おそらくいまのたとえばスマホとかSNSなんかでいえば、なにかこう、ことばをいったん呑みこむということがすごく少なくなって、ことばがじぶんに向けられるとそれに反射的にメッセージを返してしまう。

いったん呑み込んで、うーん、と口ごもってしまって、「だんまり」を決めこんで、じぶんなりにそのことばと折りあいをつけようとする、そんなプロセスを経てことばを返すということがない。この「だんまり」、ことばを呑みこむ部分がものすごく浅くなっているんじゃないか……。

(『だんまり、つぶやき、語らい』より引用)

 

自分の行動を振り返ってみても「だんまり」することってほとんどなかったんです。仕事柄、取材することも多いのですが、45分とか決められた時間でどれだけ言葉を引き出すか? そんなことに気を取られて、反射的に言葉を返してしまっていたなぁと反省しました。

 

ず〜っと「だんまり」するのはちょっと怪しい人ですが(笑)、心の中で決めつけてしまったり、「〇〇でしょ?」と話を先に進めてしまったり、言葉を交わすことばかりを考えていたような気がします。言葉を発することだけがコミュニケーションではないはず。たまには、言葉を呑みこんで「だんまり」してみたいと思います。

 

読書は「時空を超えた語らい」

誰かと常に会話しているのなら「だんまり」チャンスも巡ってくるかもしれませんが、なかなかそうもいかないですよね。『だんまり、つぶやき、語らい』でも、高校生からコロナ禍で人との接触ができにくい中でどうしたらいいの? なんて質問が出てきました。鷲田さんは、外に出られないなら、室内でできる読書で解決できるよ、と答えていました。

 

本のすごいところは、会ったこともない、世代もちがうし、生きている時代もちがう人と一対一で向き合える点。「時空を超えた語らい」の場です。ふだんいろんなおつきあいがむずかしくなっても別の出会いのチャンスが得られたと考えられたらいいんじゃないかな。実際の対話と、読書における対話は、そんなに区別しないほうがいいと思いますよ。

(『だんまり、つぶやき、語らい』より引用)

 

「時空を超えた語らい」ってなんて素敵な言葉なんだ! そう思うと、本を読むたのしさ、選ぶ方法も変わってきますよね。

 

友人、家族、仕事の同僚や上司・部下、いろんな人たちと言葉を交わしている今、本当に心地よい「語らい」とはどんなものなのか、たまには立ち止まって考えてみるのも良いかもしれません。

 

個人で情報発信することが当たり前になった今、自分を表現することに困っている人もたくさんいると思います。ちょっとでも悩んでいたら、『だんまり、つぶやき、語らい』で鷲田さんと語らいをしてみましょう。自分にとって気になる言葉は、あなただけのもの! 何度も読んでみることで、自分なりの答えが見つけられるはずですよ。

 

【書籍情報】

だんまり、つぶやき、語らい

著者:鷲田清一
発行:講談社

二〇二〇年十月十五日、コロナ禍のなか愛知県立一宮高校の生徒に向けておこなわれた講演の記録。碩学のあたたかい語りかけと生徒たちの真摯な応答に、読者もぜひ参加していただきたい。

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「こだわり」は「固執」を生み人生を束縛する–自分の心を自由にするための指南書『なにものにもこだわらない』

昔からネットでものを買うのは大好きだったんだけれど、コロナ禍の2年半でネット購買欲がさらにパワーアップしてしまった。そんななか気づいたのは、「こだわりの」というキャッチフレーズのグッズを買っていることが多いという事実だ。

 

こだわりって何だろう?

筆者は、何に関しても何のこだわりもないつもりで生きている。それなのに、なんで? 深層心理的なところでこだわりの品々にこだわり続けているから、こういうことになるのだろうか。

 

「こだわり」という言葉に明確な基準はない。それに、シチュエーションによっては良い意味にも悪い意味にもなる。ポジティブなかかわり方をしている限りは問題ないのだろうが、一度関係をこじらせてしまうと、さまざまなことがうまく回らなくなっていくみたいだ。ネガティブな意味でのこだわりとは何なのか。

 

自分で自分に縛りをかけるのはやめよう

なにものにもこだわらない』(森博嗣・著/株式会社PHP研究所・刊)は、ごく端的に言うなら、ネガティブな意味でのこだわりとの関係の断ち方を教えてくれる本だ。常識とかその場の空気、前例、他人の目。自宅でも学校でも職場でも、一人でいても集団の中にあっても、人間は何らかにこだわり、とらわれているのかもしれない。こうしたものはしがらみとか規範とか、場合によってはコモンセンスという言葉で表されることもあるだろう。

 

森氏は言う。何か一つに拘るよりも、あらゆることを試した結果成功を手に入れた人のほうが多いはずだ。だから、臨機応変に考えて自由に生きよう。ネガティブな意味でのこだわりとは、必要以上に固執することにほかならない。自分の手で自分から自由を奪ってしまうことだ。森氏は、こういう方向性の思考は、次のような言葉で綴られている。

 

なにものにも拘らないから、仕事や家庭にも拘りはない。こうしなければならない、というものを全部取り払って、僕は以前に比べてますます自由になった。そう、拘らないことで目指すものは、「自由」なのだ。

『なにものにもこだわらない』より引用

 

こだわりという言葉で自分に不必要な縛りをかけてしまっている人があまりに多い。森氏の眼には、そんな世界が映っているのかもしれない。

 

死生観まで含む哲学書的な内容

章立てを見てみよう。

 

第1章 「拘り」は悪い意味だった。

第2章 「拘る」のは感情であり、理性ではない。

第3章 「拘らない」なら、その場で考えるしかない。

第4章 生きるとは、生に拘っている状態のことだ。

第5章 新しい思いつきにブレーキをかけない。

第6章 自由を維持するためにはエネルギィが必要だ。

第7章 死ぬとは、死に拘るのをやめることだ。

第8章 拘らなければ、他者を許容することができる。

第9章 優しさとは、拘らないことである。

第10章 拘らなければ、臨機応変になる。

 

日々の生活での思いから死生観まで網羅した内容は、哲学書のような印象を受ける。目次を見ただけで、何かに拘ることは自分に縛りをかけ、自らの手で可能性を奪ってしまうことなのかもしれないという思いが強まる。

 

ルールを決めない

ただ、森氏は何にもこだわらないという姿勢にそこまで固執しているわけではない。そのあたりのスタンスがまた心地よいのだ。

 

「ルールを決めない」という方針は、それ自体がルールになりかねない。「なんでも」とか「絶対に」というものを排除する方針なのだから、すべてに例外なく当てはめる姿勢が間違っている、と考える。「だいたい、こうありたい」という方向性を維持していく。そんな姿勢というか生き方が、僕が望んでいることだ。

『なにものにもこだわらない』

 

そう。一番大切なのは「だいたい、こうありたい」というくらいの方向性なのかもしれない。確かに、こだわらないことを意識しすぎるあまり、それにとらわれてしまう人もいるはずだ。それでは意味がないし、少なくとも自由な状態ではなくなってしまう。

 

“だいたい”という感覚で生きる

筆者は、作家という職業とこだわりの関係を記した次の文章にさまざまな意味での本質を感じ取ることができた気がした。

 

拘らないことについて書くのは、けっこう難しい。何故かをいうと、そもそも拘るから文章が書ける。作家は、なにかに注目し、じっと見据えて考える。その対象に感情移入して、言葉を絞り出す。その一時は、つまり、書いている最中は、それに拘りつくすことになる。

『なにものにもこだわらない』より引用

 

だからこそ、文章を書くことを仕事にしている人間は特に「だいたい、こうありたい」というくらいの意識が大切なのだと強く思う。コモンセンスと呼ばれるものと自分とのバランスを取り、距離感を保っていく上でも、不可欠な感覚に違いない。だからこそ、何事に対してもフレキシブルでいたい。あ、それも拘っていることになっちゃうから、だいたいのことに対してだいたいフレキシブルでありたい、と言わせていただいておくことにする。

 

【書籍紹介】

 

なにものにもこだわらない

著者:森博嗣
発行:PHP研究所

「拘る」とは「自分はこれだと決め込む」「一度決めたことに固執する」という意味である。趣味、健康、社会のしがらみ、生き甲斐など、人間は生きているとさまざまなものに拘りたがる。否、拘らないと生きていけないと思い込んでいる。しかし、拘ることは生を不自由にし、新しい発想を妨げる要因になる。座右の銘を「なにものにも拘らない」と決めてから20年以上経つ人気小説家・工学博士の珠玉の名作、待望の文庫化!

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わからない未来を不安がらない。人生を“快適化”する『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』

過去にやらかしてしまったことを思い出し、「ぎゃっ」と、叫び出したくなることはありませんか? 私はあります。しょっちゅうあります。ここのところは「しょっちゅう」ではすまず、毎晩、布団に入ると、「あぁ、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」とか「もっと丁寧に接するべきだったのに、何をしていたのやら」と、くり返し自分を責めてしまいます。今さら後悔しても仕方がないとよくわかっていながら、考えないではいられないのです。当然、よく眠れません。

 

「大丈夫だよ」と、心に手を添えてくれる

そんな私にとって、『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』(枡野俊明・著/三笠書房・刊)は、「大丈夫だよ。そんなに苦しまなくていいんだよ」と、慰めてくれる優しい友達のような存在です。

 

著者の枡野俊明(ますの・しゅんみょう)は、曹洞宗徳雄山健功寺の住職をつとめている方です。大本山の總持寺で修行した禅僧ですが、もう一つの顔も持っています。著者は庭園デザイナーとしても有名なのです。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞し、その後も、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章等など、数々の賞を受賞しています。まさに「二つの顔を持つ男」と呼びたくなりますが、彼にとって、禅僧であることと庭園デザイナーであることは、ぴったりと一致しているのでしょう。二つの顔を持つというより、どちらも彼そのものだと言ったほうが正しいかもしれません。彼がデザインした庭を観ていると、『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』を読んだときのように、「大丈夫だよ」と、そっと背中に手をあててもらったような気持ちになるからです。

 

「放下着(ほうげじゃく)」という禅の語があります。一切の執着を捨て去ることを意味するのだそうです。日常生活の中でも、これに倣い「放っておく力」を発揮すれば、過去の後悔をいつまでも引きずったり、自分で自分を苦しめることから解放されるといいます。

 

そうは言っても、この世には、自分ではどうすることもできないことが、たくさんあります。放っておいていいものかの判断も難しいところです。それに、そもそも放っておきたくても放っておけないから悩んでいるのです。私は心配性で、お節介なところがあります。そんな私を「親切なヒト」として頼ってくれる友人もいます。それをうれしいと思いながらも、私がしてあげられることなどたかが知れています。だから、時々、「どうして私はこう駄目なんだろう」と、落ち込むのです。

 

ところが、著者は、数多くの事例を挙げ、どうしたら自分を解き放つことができるのか、教えてくれます。その数、なんと99。詳しい目次がありますから、自分の悩みに近いものを選んで、電子書籍ならタップして、該当する部分から読んでいきましょう。

 

私たちがかかえる問題

『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』の中で、私がとくに印象深いと感じたいくつかの事例を紹介してみましょう。

 

スマホ時代に入ってこの方、人が孤独に弱くなっているように思えてなりません。(中略)それは非常にもったいないことです。なぜなら「孤独に過ごす」のは、大事な時間だからです

(『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』より抜粋)

 

確かに、一日中、一人でいても、私たちはSNSで数多くの人たちとつながっていますから、真の意味で孤独な時間を過ごしているかというと、はなはだ疑問です。私は寂しがり屋なので、SNSでのつながりを有り難いと思って来ました。けれども、ただ自分の寂しさを紛らわそうと、メールを打ったり、電話をかけたりするのは、相手に失礼だと気づきました。その行為は、相手の大事な時間を邪魔することにほかならないからです。時には、スマホを切り、スマホがなかったころの孤独な時間を思い出すことも必要でしょう。

 

何が起こるかわからない未来のことを、いま不安に思ってもしょうがない。現実に問題が起こったときに必死になるしかないのです

(『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』より抜粋)

 

うむむ、確かにと、唸ってしまいます。私は未来を考えては、「何かよくないことが起こったらどうしよう。いつもそれに備えておかなくちゃ。手遅れになったら大変だ」と、いらぬ心配をしてしまうところがあります。確かに、未来は不安に満ちています。けれども、それに完全に備えることはできません。思い通りになる未来など、ほとんどないからです。未来はすべて想定外のことばかり。何かが起きたら、その時、全力で考えるしかありません。それよりも、今を生きることに集中すべきだと『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』によって、学びました。

 

「あ、そうか。事が起きてから考えればいいのね」。そう思った瞬間、私は自分の心が軽くなるのを感じました。さらには、「期待してたのにがっかりだな」と捨て台詞を残して電話を切られても、前のように心が張り裂けんばかりに「申し訳ない」と思わなくなりました。がっかりさせたのは悪いかもしれないけれど、「私の実力はこんなもの、ご期待にこたえられずすみません」と、素直に頭を下げるしかありません。自分で自分を追いつめたところで、何の解決にもなりません。

 

他にも、「素の自分を失う前に「いい人」の仮面を外す」、「もし、人と比べるなら昨日の自分と比べよう」、「後悔をやめて検証する」等々、胸に沁みる教えが並んでいます。もし、あなたが人間関係に悩んで落ち込んでいたり、そんなことも知らないのかと馬鹿にされて傷ついたり、毎日に疲れを感じて一歩も進めなくなっていたりしたら、『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』を手にとってみてください。あなたの目の前に、静かな、しかし、エネルギーあふれる庭の光景が浮かんでくることでしょう。そこに広がる空間が、あなたを救い、生き返らせてくれるに違いありません。

 

疲れた時、一服の茶を振る舞われると、心底、ほっとします。『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』は、それと同様の安堵感を与えてくれます。もちろん、毎日はいろいろ面倒なことの連続です。それでも、「なんとかなるさ」と、小さく呟き、今を生きていくしかないと思えるようになりました。

 

 

【書籍紹介】

仕事も人間関係もうまくいく放っておく力

著者:枡野俊明
発行:三笠書房

いちいち、気にしない、反応しない、関わらない。人生を“快適化”するヒント。

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自分の中の常識って? 正義って? いろんな固定概念を壊すきっかけになるエッセイ『エイリアンは黙らない』

知らず知らずのうちに「女だから」「男だから」など性別で決めつけていたり、年齢や見た目から「〇〇なはずだ」とカテゴライズすることってありませんか? 自分の中にある固定概念を再確認できるのが、チョーヒカルさんのエッセイ『エイリアンは黙らない』(チョーヒカル・著/晶文社・刊)です。チョーヒカルさんは、ペイントアーティストとして日本だけでなく海外でも幅広く活動し、たくさんの人を魅了しています。

 

そんなアーティストさんが作品集じゃなくて、エッセイ? と思うかもしれませんが、彼女の生き様に惚れる人がたくさんいるはず! 今回は、日々悩みを抱えている人やモヤモヤと戦っている人に届けたい1冊をご紹介します。

「怒る」って大事だ

『エイリアンは黙らない』は、3つの章と2つのコミックが1冊にまとまったエッセイ集です。恋愛のこと、日常生活のこと、仕事のことなどチョーさんが感じていることがどストレートに綴られています。ハライチ岩井勇気さんの帯コメントには『すっぴんすぎるだろ。』と書かれてありますが、読み終わるとついそのセリフを言いたくなっちゃう内容でした。

 

いくつかのエッセイがある中でも私が「わぁ〜これ大事だ」と感じたのが、3章の『私たちはもしかしたら圧倒的に怒る経験が足りてないんじゃないか』です。友人と初めてアメリカ旅行した際、タクシーでトラブルがあり、逆ギレしてきたタクシー運転手さんに対して、冷静に怒りをぶつけた時のことが書かれてあります。

 

もし怒っていなかったら。もし戦っていなかったら。私たちが争いを避けるために理不尽を飲み込んでいたら、一体何が好転していたというのだろう。時々人は怒らなきゃいけないのだ、としみじみ思った。

(『エイリアンは黙らない』より引用)

 

結果、チョーさんが怒ったことでトラブルは解決し、ハッピーエンドになるわけですが、私たちは無意識に「耐える」ことを植え付けられてきたため、怒ることをできていない人間になっているのかも……と感じました。

 

匿名のSNSでダラダラと怒りをぶつけたり、自分よりも立場が弱い人に向かって無駄に怒ったりする人は別ですよ。そうではなく「おかしい」と思った時にはしっかり怒りをぶつけていいんだと感じたのです。無理に怒る必要はないけれど、耐えることは決して美徳ではない! おかしいことはおかしいってちゃんと言おう、そう背中を押してもらえるお話でした。

 

「モテたい」について考える

チョーさんのエッセイの中では、モテたいという言葉も度々登場します。最初のうちは笑いながら「あぁ〜私にもこんなことあったわ!」「わかる〜」と読み進めていたのですが、途中から様子が変わるものがありました。

 

ここで悲しいお知らせがあります。モテることで私は幸せになりませんでした。といっても私のモテレベルなんて本当にみみっちかったけれど。あんなに全ての価値を凌駕すると思っていた「モテ」はただの虚しいものだった。

(『エイリアンは黙らない』より引用)

 

今の自由で爽快なチョーさんを拝見すると想像するのが難しいのですが、以前は長い髪をなびかせていたり、ふわっとした服装をしていたり、「モテテンプレート」に当てはめて生きていたそうです。しかしこの「モテテンプレート」は自分専用ではないと気がつき、「私がなりたい私」を目指すようになったとのこと。

 

わ・か・る!!

 

振り返ってみれば、私自身も若いころはそうだったなぁ〜と思いました。流行りの〇〇、モテる〇〇、好きな人が好きなものを追いかけて過ごしていたように思います。私も頑張っていたんだなぁ(笑)。

 

また仕事でも「モテる」は度々顔を覗かせますよね。誰かに認めてもらいたくて、自分の気持ちを我慢しながらする仕事もいっぱいあると思います。そんな時は、チョーさんの「モテたい」話を思い出して、本当の自分を思い出さなくては……! もし、恋愛でも仕事でも「モテたい」と感じているのなら、テンプレートに当てはめて、自分が辛くなっていないか考えてみましょう。本当の自分を押し殺してまで、楽しくないモテを目指しているのなら、今すぐ自分サイズにすることをおすすめします!

 

男性って? 女性って? 性別なんて関係ない?

女性らしくや男性らしく、なんて言葉にいつの間にかがんじがらめになっていることってありませんか?

 

私は10年近く短髪なのですが、初めのころは「何かあったの?」と真剣な目で聞かれることもありました(今は短くしてもそんなことは言われませんw)。きっと、女性らしくないと思われたからでしょう。その人に悪意があったわけでなく、本当に心配してくれたのだと思います。

 

きっと髪型だけでなく、服装やしぐさにも「らしさ」を決めつけている人もたくさんいるのではないでしょうか? 究極は性別なんて関係ないじゃん! ってところに行き着いちゃうのですが、チョーさんの一文を読んで腑に落ちるものがありました。

 

男性にしか「男性性」がなく女性にしか「女性性」がないという考えだってとっくに時代遅れだ。性別なんか関係なく、自分のかわいい部分もかっこいい部分も愛したほうがいいに決まってる。かわいいワンピースもかっこいいスーツも、両方着こなせる女に私はなりたい。

(『エイリアンは黙らない』より引用)

 

性別による役割も当然あります。身体の違いも絶対ある。けれど、男性だから、女性だからという他人の常識に合わせる必要はない! もし自分のことがわからない、どうしても周りに合わせてしまってモヤモヤすると感じるのなら、『エイリアンは黙らない』を読んでみて欲しいです。チョーさん言葉に元気をもらって、ほんのちょっと前に進めるようになるはず。生きている限り悩みは尽きないですし、本の中でも自分の背中を押してくれたり、寄り添ってくれたりする言葉があれば、少しずつ自分にも自信が持てるようになると思いました。

 

【書籍紹介】

 

エイリアンは黙らない

著者:チョーヒカル
発行:晶文社

注目のペイントアーティストが綴る、複雑で、うまく生きられない中で、それでも違和感に声を上げ続ける「成長」と「主張」のエッセイ。

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少女漫画界のレジェンド・一条ゆかりの金言が刺さりまくる!『不倫、それは峠の茶屋に似ている』

漫画家の一条ゆかりさんは、日本の少女漫画界をリードしてきた方。作品が長く愛される理由のひとつには、ストーリーやキャラクターだけでなく、セリフのひとつひとつが女性の心に刺さるからなのではないでしょうか。

 

少女漫画界の巨匠

一条ゆかりさんといえば『有閑倶楽部』『デザイナー』『プライド』など、ヒット作を次々と刊行してきた、少女漫画界の巨匠です。そんな彼女が金言集『不倫、それは峠の茶屋に似ている』(集英社・刊)を出せた理由は、漫画のセリフひとつひとつがとても深く、たくさんのことを示唆してきた言葉のパワーがあるからではないでしょうか。

 

筆者自身、一条ゆかりさんの漫画でさまざまなことを教えてもらいました。最も刺さったセリフは『正しい恋愛のススメ』に出てくる「覚えておきなさい。お金もらったらプロなの」です。その言葉に大変感銘を受け、以降「どのような立場であれ、報酬を受け取るということは責任をもって労働しなくてはならないということだ」という意識がずっと根付いています。

 

華やかな世界の裏側

一条さんは華やかな世界を描くことが多く、芸能人や富豪など、キラキラした設定の女性が登場人物として出てきます。そして彼女の作品の魅力は、ただキラキラしているだけではなく、そうした世界で生きているからこその葛藤を描いているところ。だからこそ読者も自分とはかけ離れた世界に生きる登場人物たちに親近感を抱き、のめり込めるのでしょう。

 

華やかな世界で悩み、模索した末に答えを自ら見つけ出す登場人物たち。その際の心の叫びのようなセリフは本当にかっこよく、胸に刺さります。そしてそのセリフが自分の生きかたのヒントにもなる気がするのです。だからなのでしょうか、一条さんは、パーティーで、いきなり悩み相談をされることがあるのだとか。

 

吹っ切れた言葉

本書は、そんな一条さんの人生哲学が詰まったエッセイ集。そこには漫画と同様、思い切りのいい、人生に対して吹っ切れたかのような、読んでいてとても爽快になる言葉が揃っています。

 

人生にはいろいろな困難がつきまとうものですが、一条さんの漫画の登場人物は「しゃーない!」などと言いながら心を決め、直接それにぶつかっていくことが多いのです。その行動力は、作者さんにも備わっているのでしょう。人生に対してそういうものだよねと達観しつつも、決して諦めない姿勢がそこにあります。

 

入口を磨く必要

本の中には、ビシッと言い切る小気味いい言葉が並んでいます。たとえば「そのままのキミはたいてい汚い。入口が汚いと誰もノックしてくれません」も、読んでいてギクっとしてしまう人が多いのではないでしょうか。

 

一条さんは「見た目は家にとってのドア。ここが汚いと誰も訪ねてきてくれません。やはりきれいに磨く努力が必要なんですね」と説いています。多くの人が、いい出会いがない、いい人がいないと嘆いていますが、まずは我が身を振り返り、自分自身の外見や内面を磨き、人が寄ってくるようにすることが大切なのだなと思い知らされる言葉です。

 

原因は自分にあり

悩んでいるときに「周りのせい」「私は悪くないの」と自分のせいだとは考えない人に対して「甘いんだよ!」と一条さんは叱っています。確かに、さまざまな事柄は自分の受け止めかた次第なのかもしれません。

 

たとえば、失恋を引きずり何ヶ月もクヨクヨしている人もいれば、「もっと綺麗になってやる」とエステに通い始める人もいます。エステに通うようになったのは「綺麗じゃなかったことに原因があるのかもしれない」と考え、それを克服しようと前向きになったからかもしれないのです。

 

「悩みの原因の大半は、本人に責任がある」と書く一条さんは、本の中で気持ちが前向きになれる考えかたをいくつも指し示してくれています。読んだ後、人生に挑んでみたくなる、そんな熱いエネルギーが込められている本なのです。

 

【書籍紹介】

不倫、それは峠の茶屋に似ている

著者:一条ゆかり
発行:集英社

仕事、恋愛、美容、生き方…悩めるあなたに贈る珠玉の言葉86!最後(!?)の描き下ろしショート漫画「その後の有閑倶楽部」も収録!

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職場の悩みは全て「1日1回ほめる」だけでまるっと解決する!『ほめコミュニケーション』

筆者が、自分はほめられて伸びるタイプであることをはっきり自覚したのは23歳。とある老舗ホテルで働き始めたころだ。

 

「ほめる」という行いの意味

そしてもうすぐ60歳になる今、改めて気づいた。ほめられて伸びない人間なんていない。わざと厳しく指導して、耐え抜いた人だけが本当に伸びるという考え方もあるだろうし、それを経験則的に知っているという人もいるだろうけれど、ネガティブな段取りばかりが増えてしまうような気がする。

 

ほめコミュニケーション』(原邦雄・著/ワン・パブリッシング・刊)は、人間関係の核の部分に“ほめる”という行いを据え、それをじっくり考えていく一冊だ。著者の原氏は教育と心理学・脳科学をミックスさせた「自分や相手をほめて育てる教育メソッド」である「ほめ育」を生み出し、世界18か国で伝えている人物だ。本書のエッセンスは、ほめるというポジティブな行いを通して、職場をはじめとするさまざまな人間関係を改善してくことにほかならない。

職場の人間関係が劇的によくなる! ほめコミュニケーション

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原 邦雄
1,540円(08/03 21:31時点)
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ほめコミュニケーション

まずは、原氏による動物としての人間の特性の定義を見ておきたい。

 

人間は、そもそも自分の中の知識と記憶をもとに物事の良し悪しを判断し、他者を「このような人物だ」と固定化し、相手との人間関係を構築する動物です。

『ほめコミュニケーション』より引用

 

プライベートであれ職場であれ、他者と全く関わらないまま暮らしていける人間はいない。コロナ禍によって他者とのつながりというものを根本から見直さなければならなくなった今、人間関係という言葉の意味もこれまでとはかなり変わったのではないだろうか。これを踏まえ、書名となっている「ほめコミュニケーション」の定義を確認したい。

 

言葉は少なくても本当に心から出てくる相手への称賛や、やるべきことをやって成果を出している自分への労いや癒しなど、表層的ではない人間同士のつき合いにフォーカスし、かつビジネスにおいて自分回りの理想の距離感で人づき合いができるようになるためのメソッドです。

『ほめコミュニケーション』より引用

 

では、このプロセスを具体的に見ていこう。

 

まずは自分が変わろう=

職場の対人関係で悩む人は多い。やりとりが物理的な対面であってもリモートであっても、それは変わらないはずだ。いや、リモートだからこそ全く新しいタイプのトラブルを抱え、人間関係をこじらせてしまうことがあるかもしれない。でも、身動きができなくなってしまう前にできることがある。

 

人間関係がこじれている状態を改善するには、他者を変えようとするより「自分の内面に目を向けて、まず自分が変わる」ことが必要です。なぜなら、冒頭にお伝えした通り、人間は知識と記憶で物事を判断する生き物であり、今目の前にあるこじれた人間関係の原因は、本当は相手ではなく、“あなたの過去の記憶”が作り出している可能性が高いからです。

『ほめコミュニケーション』より引用

 

はっとしたのは、人間関係に悩んでいる時に「悩みの種は自分の過去の記憶にある」ということと「それを相手は覚えていなかったりする」という事実。そして、ほかの人たちをほめることができるようになるためには、まずは自分をほめられるようになることであるという事実。筆者は、自分がもろもろ引きずる性格であることを自覚している。そして、自己肯定感がとりわけ高いタイプでもない。そのあたりの目盛りを調整してみてもいいかな、という気になった。

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ステップ・バイ・ステップのキーワード

章立てを見てみよう。

 

第1章  最高の人間関係を作る方法「ほめコミュニケーション」 

第2章 「ほめマインド」をつくるための9つの心構え

第3章 「Re Connect」であなたの中の人間関係をつなぎ直す

第4章 「ほめコミュニケーション」実践5つのステップ

第5章 「人間関係の悩みゼロ」の人間に生まれ変わろう

 

第1章でほめる概念を具体的にイメージし、そこから続く4章で具体的な方法を知り、「自分ほめ瞑想」「記憶の編集権が自分にあることを自覚する」「目的の共有化」「孤独の鎖」「かけがえのない長所」といったキーワードをたどりながら、できそうなことから実践していくのがいいと思う。

 

自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい

筆者にとって特に響いた文章を紹介しておきたい。

 

自分に対して「ダメな自分だ」とマイナス言葉をかけすぎると、「過去と現在と未来の自分がマイナス言葉でつなげられた状態」になり、自信喪失のマイナス・スパイラルに入ってしまいます。そうなると、自分が「何をやっても上手くいかない私」になってしまい、さらにマイナスが引き寄せられ、アリ地獄になって、自信喪失の沼から抜け出せなくなってしまうのです。

『ほめコミュニケーション』より引用

 

『マタイの福音書』に「自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい」という言葉が出てくる。こうした教えは、古代から伝わる日本特有の“言霊”の概念にも通じるかもしれない。「ほめられて嫌な人はいない」という。『ほめコミュニケーション』では、そういう単純なレベルをはるかに超えたところで実現するより多くの人たちとつながり、関係性を自らより良くしていくための具体的な行いが示されるのだ。

 

人間関係の悩みがまったくないという人は珍しいはずだ。そうではない圧倒的マジョリティの人たちにとって、必ず「特に響く文章」が見つかる。そしてその響きが、自分自身を含め、誰かをほめる気持ちに昇華していくに違いない。確実な可能性が感じられる一冊。

 

職場の人間関係が劇的によくなる! ほめコミュニケーション

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たいていの悩みは『パンセ』を読めば解決するということがわかった!『『パンセ』で極める人間学』

パスカルという名も、『パンセ』という書名も知らなくても、”人間は考える一本の葦である”というフレーズは誰もが聞いたことがあるだろう。これは『パンセ』の中で一番有名な断章で、人間は葦のように弱い存在ではあるけれど、考えることによって宇宙をも超える。つまり、よく考えるよう努力する、そこに道徳の原理があると説いているのだ。

 

さて、今日紹介する『『パンセ』で極める人間学』(鹿島茂・著/NHK出版・刊)を私が手にしたのは、その帯に書かれた一文に引きつけられたからだ。そこにはブレーズ・パスカルのイラストにふきだしで「人間の不幸の原因はたった一つ。部屋の中にじっとしていられない。これにつきる」とあった。この言葉の真実性は、世界中の人がコロナ禍で蟄居を余儀なくされ、強く感じたこと。これは今こそ読まなくてはと思ったのだ。

「パスカルの定理」から「パンセ」まで

本書の著者であるフランス文学者の鹿島先生によると、パスカルはモーツァルトに似ているという。パスカルは父親によって英才教育を受け、わずか12歳でユークリッドの「幾何学」を独学で理解、16歳で『円錐曲線試論』を執筆、これは「パスカルの定理」と名付けられた。その後も数学、物理学において数々の発見、発明を成し遂げ天才の名をほしいままにした。

 

しかし、28歳のとき父親を亡くし、大きなショックを受け、人生の方向転換を余儀なくされた。パスカルはショックから立ち直るために、抽象的な学問の研究ではなく、「人間の研究」をしようと決意し、社交界に出入りするようになる。社交界でオネットムと呼ばれる知性や教養を兼ね備えた人々との交際を通じで人間とは何かを知ろうとつとめたのだ。

 

自分が没頭してきた抽象的学問に人々がほとんど興味を示さないことに最初は驚きましたが、すぐに自分が例外であったことに気づき、人々の無知を許しました。しかし、それならば抽象的学問に興味を示さない社交界の人々が人間について自分よりも多くを知っているのかと観察したところ、人間について研究を行う人は抽象的学問に興味を持つ人間よりもはるかに少ないことを知っておおいに驚いたのです。

(『『パンセ』で極める人間学』から引用)

 

パスカルの人間研究の集大成は、彼が短命だったため書物として残すことはできなかった。しかし、遺稿を集め出版されたのが『パンセ』で、数々の箴言は時を超え、現代人を導いてくれるのだ。

 

14章からなる新『パンセ』考

鹿島先生による『パンセ』の読み解きは全14章からなっている。

 

第1章 ようこそ、『パンセ』の人間学へ
第2章 人は気晴らしなしでは生きられない
第3章 すべては「ドーダ」で理解できる
第4章 とにかく自分のことが好き!
第5章 人間は奇妙なオルガンである
第6章 人は変わる? 変わらない?
第7章 人間は習慣によってつくられる
第8章 オネットムと言われるようになれ
第9章 想像力って素晴らしい!
第10章 現在に安住できないのはなぜ?
第11章 「正義」ってなんだろう?
第12章 人間は惨めで偉大な存在である
第13章 人間は考える一本の葦である
第14章 だから神は存在する

 

「気晴らし」が幸福の条件に

では、いくつかの箴言とその解説を抜粋してみよう。

 

個々の仕事をいちいち吟味しなくとも、気晴らしという観点から眺めれば、それだけで十分である。(断章一三七)

 

人間は、屋根葺き職人だろうとなんだろうと、生まれつき、あらゆる職業に向いている。向いていないのは部屋の中にじっとしていることだけだ。(断章一三八)

 

このふたつのフレーズは、今の仕事が自分に向いているのかどうか悩んでいる人にかみしめてほしい箴言だ。長引いたコロナ禍での巣篭もり生活では、みんな家の中での「気晴らし」を探していたはず。今はスマホもテレビもあるので、なんとか気晴らしは可能だったが、それらがない時代だったならば、どうだっただろう?

 

こんなことなら、どんなに辛い仕事でも、部屋でじっとしているよりははるかにましと感じたはずです。そう、部屋で気晴らしなしで蟄居することに比べたら、どんな仕事でも楽しく感じられてしまうのです。

(『『パンセ』で極める人間学』から引用)

 

人間のすべては「ドーダ」で理解できる

虚栄というものは人間の心の中に非常に深く錨を降ろしている。だから、兵士も、従卒も、料理人も、湾岸労働者も、それぞれ自慢ばかりして、賛嘆者を欲しがるのだ。(中略)そして、これを書いているわたしですら、おそらくは、そうした願望を持っているだろう。また、これを読む人だって……。(断章一五〇)

 

これは『パンセ』の中でも重要な断章で、しばしば引用される。人間の行動のほとんどすべてはこの「褒められたい」願望で解釈できるというのがパスカルの社交界観察の結果だった。

 

鹿島先生もこう記している。

 

「ドーダ、凄いだろう。おれ(わたし)を褒めてくれ。ドーダ、参ったか!」というところから、人間のすべてはこの「ドーダ」で理解できるとしたわたしのドーダ理論と完全に重なりますが、パスカルに言わせると私のこのドーダ理論もまた、理論の普遍性を褒めてくれと叫んでいるという点で、ドーダ理論の通りということになるのです。

(『『パンセ』で極める人間学』から引用)

 

戦争で人を殺すということは?

なぜわたしを殺すのですか? ━だって、あなたは川の向こう側に住んでいるではないのですか? 友よ、もしあなたが川のこちら側に住んでいるのだったら、わたしは殺人者になるでしょう。(中略)だが、あなたは川の向こう側に住んでいるのだから、わたしは勇者となり、そして、わたしの殺人は正しいということになるのです。(断章二九三)

 

ロシアによるウクライナ侵攻に当てはめて考えてみよう。「川」の代わりに「国境線」を置けば、たった今もこのような会話が交わされているのだろう。

 

戦争が起きるたびに、「戦争の大儀」ということが叫ばれますが、しかし、実態は、パスカルの言うように、戦争は「川の向こうに住んでいるから」という理由で「あなたを殺す」以外のなにものでもありません。

(『『パンセ』で極める人間学』から引用)

 

この他にも、聞いたことのある箴言が続々。悩める現代人を助けてくれる本書はいつも手元に置いておきたい。

 

【書籍紹介】

『パンセ』で極める人間学

著者:鹿島茂
発行:NHK出版

「100分de名著」でもおなじみ、博覧強記のフランス文学者が、西洋哲学の古典『パンセ』から、現代人にとって切実かつ魅力的な部分を抽出し、自身の訳と解説を施すことで、新たな箴言集、いわば『パンセ 人間学篇』を編み直す。読者が、パスカルの思想に触れながら、人間の二大苦悩である「自我」と「幸福追求」について、自らの答えに行き着くよういざなう、究極の哲学ガイド。

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『パンセ』で極める人間学

『「思いやり」という暴力』を読んで、誰も傷つけずに語ることのズルさについて考えてみる

筆者は哲学者中島義道氏のファンだ。熱狂的というほどではないけれど、目が離せない感じ。

 

日本社会の「よし」と西洋哲学の「よし」

今回紹介したいのは『「思いやり」という暴力』(中島義道・著/株式会社PHP研究所・刊)という一冊だ。1997年に刊行された『<対話>のない社会—思いやりと優しさが圧殺するもの』をベースとした内容で、相変わらずのナカジマイズム爆裂。

 

4年半のヨーロッパ生活を終え、1984年に帰国した中島氏は、しばらくして祖国の社会の「肌ざわり」に違和感を覚えるようになる。

 

日本の社会が「よし」とするものが、「(西洋)哲学」が「よし」としていることとは真っ向から対立することはずっと前からうすうす感じていたのだが、ヨーロッパ滞在後、体の底から確信するようになったのである。

『「思いやり」という暴力』より引用

 

ここはもう少し掘り下げておく。

 

私の問題意識をずっと絞り込んでいくと、わが国の人間関係において、最も重視されるのは「他人を思いやる」ことであり、そのためには「本当のことを言わないこと」である。この「公理」とも言える大原則に、私は(タテマエ上の「哲学者」として)肌に滲みるほどの違和感を覚えたのである。

『「思いやり」という暴力』より引用

 

「肌に滲みる」というのは、よほどの違和感だ。筆者自身、こういう感覚に包まれたのはいつだったろうか。どんなシチュエーションだったろうか。ちょっと考えてしまった。

 

思いやりと優しさが哲学を阻害する?

本書には「哲学のない社会をつくるもの」というサブタイトルがつけられている。中島氏が抱いた違和感の正体は、文庫版のタイトルを変更した理由について語られた以下の文章からも推し量ることができる。

 

その理由は、「思いやり」や「優しさ」を声高に訴え、人々から生き生きした思考力を奪うことこそ、哲学を阻害するものであるというもともとの構造をよりはっきりさせるためである。

『「思いやり」という暴力』より引用

 

日本社会には不文律的なスタンダードがあって、その大原則がそもそも個人で感じて表現すべき道徳観にまで同調圧力的に作用する。一般的な善悪の基準もこれによって決まる。そして一度決まってしまったら、絶対的適用は免れない。

 

「定型的な優しさ」がもたらす圧倒的な違和感

“戦う哲学者”というニックネームで知られる中島氏は、ごく普通日本人から見れば、日本国内のありとあらゆる事象に怒っているように感じられる。なんでそんなに怒るのかなんて尋ねるのは、愚かな行いだ。さまざまな場面で常に“肌に滲みるほどの違和感”にさらされているからに決まっている。ならば、その違和感の正体は何なのか。

 

欧米に起源を有する弱者や被差別者に対する配慮が、この国特有の定型化とも相まって、いまや朝から晩まで「定型的な優しさ」を喧伝する放送が流され、街も村も「思いやり」で溢れている。それを問題視する態度を切り捨てる暴力が弱者に対する「優しさ」を持たない人を怪物のようにみなす暴力が、まかり通っている。

『「思いやり」という暴力』より引用

 

「思いやり」や「優しさ」という感覚をまとった、暴力的な同調圧力がまかり通る世の中に対する拒否感かもしれない。

 

押しつけがましい標語に満ちた日常

こうした世の中の性質を端的に表すものとして、中島氏は街中にあふれる標語を挙げる。このあたりの思いは第二章の「アアセヨ・コウセヨという言葉の氾濫」に綴られているのだけれど、確かに日本の社会には押しつけがましいスローガンが多い。中島氏はかなりの数の実例をリストアップしながら話を進めていく。筆者も日頃使っている京王電鉄が電車内や駅構内に掲げている標語が引用されているので、紹介しておこう。

 

・あっ、電車きた。切るね

・あっ、後ろジャマ。前に持とーっと

・やめて下さい となかなかみんな 言えないから

 

だから何だよと思わないでいただきたい。中島氏には、利用者を“思いやって”掲げられる標語の数々が目障りなのだ。あちこちで見るこうした標語の数々に違和感を覚えなくなったら、知らず知らずのうちに同調圧力に取り込まれているのかもしれない。

 

日本人は言葉を尊重しないのか

中島氏は言う。日本についてどうしても嫌いなのは「言葉を尊重しない」文化であるように感じられる部分があることだ。

 

学生たちは私語をまき散らし、それでいて何を聞かれても押し黙っている。上に立つ者たちは、因習的・定型的・非個性的な言葉しか発しない。みんな言葉の「裏」を読むことに汲々とし、言葉で真剣勝負せず、腹を探り合い、自分の言葉に責任をとらない。

『「思いやり」という暴力』より引用

 

この本を読んだ後は日頃自分が使い、目にして耳に入ってくるごく普通の言葉の響きとか、何より「思いやり」とか「優しさ」に対する自分の感覚を見直したくなるだろう。

 

【書籍紹介】

「思いやり」という暴力

著者:中島義道
刊行:PHP研究所

教師が語りかけても沈黙を続ける学生たち。街には無意味な放送や看板が氾濫する。なぜ私たちは正面から向き合う「対話」を避けるのか?無意味で暴力的な言葉の氾濫に耐えているのか? 著者は、日本的な優しさこそが「対話」を妨げていると指摘。誰も傷つけずに語ることの虚しさを訴える。風通しのよい社会を願い日本人の精神風土の深層に迫る。

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自分を変えるには、まず自分が発する『言葉』を見直せ!−−『あなたはあなたが使っている言葉でできている』

世の中には前向きな言葉と後ろ向きな言葉があります。前向きな言葉を使うほうが毎日が楽しくなるのなら、できればそちらをチョイスしたいものです。言葉を上手に使いこなすコツはあるのでしょうか。

 

言葉と生きざま

「あなたはあなたの食べたものでできている」という有名なフレーズがあります。自分の体は自分が食べたものをエネルギーにして動いているからです。自分の食べたもので体がバランスを取っているのだと思うと、できるだけ安全で健康的なものを食べて体調を整えたいと感じるものです。

 

それと似たような邦題の本があります。『あなたはあなたが使っている言葉でできている』(ゲイリー・ジョン・ビショップ・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)です。確かに私たちは日々、さまざまな言葉を使って生きています。美しい言葉を駆使して人を褒める人もいれば、驚くほど下品な言葉で人を罵倒する人もいます。もしかして、その人が使う言葉には、その人の生きてきた道が見え隠れしているのではないでしょうか。

 

ポジティブとネガティブ

たとえば婚活というシーンにおいて「私なんてどうせムリ」と最初からあきらめている女性がいます。鏡を見ても「この顔キライ」と自分のことが好きになれず、男性からのアプローチがあっても逃げ腰になったり素直に受け止めることができず、チャンスを逃すこともあります。

 

対してポジティブな女性は「いい人がいるといいな」と好奇心でワクワクしながら婚活を始めますし、鏡を見ても「今日の化粧のノリはいいかも」などと自分の良い面に目がいきます。そして男性からのアプローチがあると素直に喜びますし、「せっかくだから女磨きも頑張ろう」とエステや美容院に通って婚活を思い切り楽しみます。

 

どちらがゴールインしやすいかというと、やはりポジティブな女性のほうだと思うのです。

 

自分にかける言葉

本書では、もっと素敵な人生を生きるための言葉の選びかたについて、考察がされています。世界中の人にコーチングを行う著者のゲイリー・ジョン・ビショップさんは「自分にどんな言葉をかけるかで人生は変わる」と言い切っています。「自分にポジティブな言葉をかければ、気分が良くなり、自信が増し、生産性が高まる」ことがわかってきたのだそうです。そして「自分とのネガティブな会話は気持ちを落ち込ませ、絶望を招く」ことも。

 

けれど、著者はことを急ぎません。無理やりポジティブなフリをしてみても、すぐ元に戻ってしまうことなどお見通しなのでしょう。本1冊をかけてゆっくりと、しかし確実に気持ちを上げる方法を伝えてきます。時には偉人の名言も紹介し、良い言葉が心に刻まれやすくなるような配慮もされています。時間をかけ、一生ものの思考回路になるように、丁寧に指導してくれていると感じます。

 

自分で自分の言葉を育てる

本の中には、心に刺さる言葉がたくさん収録されています。その中でも私が気に入ったのは「悪い習慣を特定し、いい習慣のためのスペースを空けよう」というものでした。今まで自分に対してネガティブな言葉をかけるクセがあるのだとしたら、まずそれを止める必要があります。そうしないと前向きな言葉をかける時間を作れません。何かを止めるからこそ、何かを始めることができるのです。

 

本書を読み、しみじみ感じたことは、自分で自分の心を育てていかなくてはならないのだということ。1日のうちで自分に一番話しかけているのは、自分自身なのだと著者は言います。だとしたら「よくがんばったね」とか「すごくいいよ」などという元気になる言葉をかけて、自分をねぎらってあげなくてはという気持ちになります。自分は自分自身の一番の理解者のはず。傷つく言葉を投げかけず、愛をもって接していきたいものです。

 

 

【書籍紹介】

あなたはあなたが使っている言葉でできている

著者:ゲイリー・ジョン・ビショップ
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン

この本はあなたを励ますために書いたものだ。あなたが内に秘めた本当の能力に目覚め、自分を責めるのをやめて、輝かしい人生に歩み出すのを手伝うために、私はこの本を書いた。この本はあなたが答えを手に入れることを願うが、答えは外側ではなく、あなたの中にある。答えを見つける必要なんてない。あなたが答えなのだから。

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IQ・EQに次ぐ第3の知性「PQ(自己表現力)」こそ、ビジネスにもっとも必要な力だ!ーー『成功はPQで決まる』

ああ、ヘタだ。ヘタすぎる。動画配信に関わらせていただいているが、パフォーマンスは理想とかけ離れている。

 

PQとは?

もちろん、スタッフのせいでは決してない。それに、筆者は自分がそこそこ面白い人間だと思っている。でも、動画を見ると期待していたほど面白くない。いや、想定していた仕上がりとはほど遠い。収録の時の主観性と、アップされた動画を見る時の客観性にこれほどの差が出るとは……。トークのプロではないので、毎回高評価をいただくというのは無理な話だろう。それは十分わかっているんだけれども、もうちょっとなんとかならないか。

 

筆者のそんな思いが引き寄せの法則に乗ったのだろう。『成功はPQで決まる』(佐藤綾子・著/学研プラス・刊)という本を手にすることになった。“PQ”というのは耳慣れない言葉ではないだろうか。これはPerformance Quotient=「自己表現力指数」の略で、世界初の自己表現力測定尺度を意味する。日本におけるパフォーマンス心理学の第一人者である佐藤綾子氏の42年にわたるキャリアの成果として誕生した。

 

IQ(=知力)、そしてEQ(=自分や相手の感情を理解する力)がいくら高くても、その二つを適切に表現する自己表現力であるPQがなければ、真意が的確に伝わらないどころか、IQもEQも宝の持ち腐れになってしまう。PQとは、IQとEQ以上に重要な「第3の知性」であり、人間の対人能力の統合形にほかならない。

 

IQとEQ、そしてPQによって表される人間の姿

今の世の中、何らかのパフォーマンスとまったく無縁で生きていける人はいない。パフォーマンスの本質とは、何かを伝えることにほかならない。誰かと関わりを持った瞬間にその芽が生まれる。最近は、オンライン会議などデジタル由来の関わり合いにおいても必須だ。

 

PQは、特に今の時代において自分という存在を固めていく過程——自己実現という言い方が正しいのだろう——に不可欠な概念なのだ。まずは、PQを構築する要素とそれぞれの関係性、そしてPQによってもたらされるものすべてがひと目でわかる表を見ていただきたい。古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉も概念の可視化を助けてくれる。

 

然るべきことがらについて、然るべき人々に対して、さらにまた然るべきしかたにおいて、然るべきときに、然るべき間だけ怒る人間は称賛される。かかる人は『穏やかな人』といえよう。

 

・「然るべきことがら」が何で、「然るべき人」が誰であるか理解できる力➡IQ

・怒りの感情処理と「穏やかな人」という気持ちがわかる力➡EQ

・「然るべきしかたで」➡表現技法選択のPQ

・「然るべき時に」➡表現のタイミングをつかむPQ

・「然るべき時間だけ怒る」➡1つの表現の所要時間を決めるPQ

『成功はPQで決まる』より引用

 

話はここから、マインドマップ的な展開で広がっていく。まさにPQで用いられるレーダーチャートそのもののイメージだ。

 

人は誰もがパフォーマー

筆者が皮膚感覚レベルで悩んでいる主観と客観のギャップに関するキーワードは、能の大成者である世阿弥によって残されていた。

 

「我見」は役者が観客を見る目。

「離見」は観客が役者を見ている目。

「離見の見」は、観客の目を意識して、見せたい自分を見せて行く役者の目。

 

視点を2022年に置き換えると、次のような文章になる。

 

見る目、見られる目、見せる目を常に駆使して、プレゼンをしたり、会社の会議に出たり、社外の交流会に参加したりしてみませんか。なかなか緊張感があり、スリリングで、面白い。第一、それがビジネス成功の基本でもあります。

『成功はPQで決まる』より引用

 

佐藤氏は語る。人は誰もがパフォーマーなのだ。

 

何をどう伝えるか

人間の本質がパフォーマーであるなら、パフォーマンスの質を上げていく過程はごく自然な行いとしてとらえるべきだ。こうした行いは、なぜ大切なのか。

 

社会で人とつながって自己実現していく人間の運命や根源的仕組みを考える時、心の中の思いは自分が「伝えた」と思っていても相手にその意図どおりに「伝わって」いなければ、意味がないのです。

『成功はPQで決まる』より引用

 

自己実現に不可欠な自己表現力は、以下のような各能力によって総合的に示される。

 

自己表現の4つの基礎力…言語力、表情力、動作力、声(周辺言語力)

自己表現の12の応用力…印象力、コミュニケーション力(自己肯定・他者肯定力)、ストレス対処力、レジリエンス(再起力)、楽観力、フロー力、NLP力(神経言語プログラミング力)

 

これら16の能力は「AS自己表現力テスト(PQテスト)」によって測定することができる。さらに、今の時代に不可欠なオンライン力もカバーしながら、ひとつひとつの能力を詳細に検証し、伸ばしていく具体的な方法も示される。測定を定期的に行えば、進歩が目に見える形でわかるだろう。

 

パフォーマンスの新しい概念とすぐに役立つヒント

章立てを見てみよう。

 

第1章 IQとEQだけでは人生の成功はつかめない 人間の能力の総仕上げは自己表現力「PQ」
第2章 誰もがパフォーマー 
パフォーマンス心理学の基本構造
第3章 ステップ1 自己発見 欲求や願望がぶれない人は強い
第4章 ステップ2 自己強化 「大善」のフィルターを通す
第5章 ステップ3 自己表現【言語】 思いを伝える言語11キー
第6章 ステップ3 自己表現【非言語】 言葉より強い非言語12キー
第7章 PQを正確に知って成功につなげる 自己発見から他者発見強化と成功への道
第8章 今すぐできる自己表現力トレーニング 生涯使える最大自己資産「自分を伝える力」を作る

 

豊富な図表が概念の理解に役立つ。パフォーマンスの概念は次のように図式化され、パフォーマーである自分の立ち位置や、自分と周辺情報、外的要因の関係性を直感的に把握できる。

すぐに使える実用的なテクニックもいっぱいだ。ひとつ例を挙げておく。ふとした瞬間にいい知れぬ不安に襲われることは誰にでもあるはずだ。心理学でいう“予期不安・期待不安”が生まれた時には、「先取りの感謝」が効く。

 

例えばゴルフ場では「神様、私のゴルフボールは無事に池を越えて、あのピンそばにピタリとオンしますから、ありがとうございます」というわけです。「神様、これから会う人は絶対私の話を聞いてくれますから、ありがとうございます」というように。

『成功はPQで決まる』より引用

 

「先取りの感謝」が役立ってくれるシチュエーションは数限りなくイメージできるのではないだろうか。

 

変化は確実に訪れる

今の自分のPQを正確に知り、強い側面も弱い側面も常に意識していく姿勢さえ作っておけば、アプリケーションは無限大だ。まず、それぞれの力をトレーニングするチャンスを積極的に見つけていく心がけが大切になると思う。これを続けていると、結果的にPQのレーダーチャートがきれいな形で大きくなっていくはずだ。ビジネスでの成功にせよ幸福の追求にせよ、日々のパフォーマンスを確認することが客観的な自己認識につながっていくだろう。

 

客観的な自己認識とは、具体的にどのような形で現れたり訪れたりするのか。結果として何がもたらされるのか。今の筆者にはまだわからない。ただ、何らかの変化が訪れることは確信している。そして佐藤氏がおっしゃる通り、“変化”は“目覚め”という言葉に置き換えることができるにちがいない。

 

 

【書籍紹介】

成功はPQで決まる

著者:佐藤綾子
刊行:学研プラス

表現されない実力は、無いも同じだ!これは、日本初のパフォーマンス心理学を開始した私と仲間たちが、1980年のニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究科修了以来、40年以上もの間掲げているパフォーマンス心理学の鉄則です。相手のニーズを正確に読み取りながら、言うべきことを最適な形で言って、必要な影響力を相手に与えていくこと。そのとき、表現手段は言葉だけでなく、表情やしぐさまで総動員すること。相手がわかって動き出すまで、効果的な発信をし続けることが大切です。特に、昨今のグローバル社会においては、多様な価値観が当たり前のことになっています。黙っていては、何も伝わらないのです。

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「LOVE & RESPECT」こそが生のコミュニケーションの質を高める『キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる』

ちかごろ、インタビューのお仕事をさせていただく機会が増えた。これまで何回となく経験しているのだけれど、会心の出来はなかなかない。

 

生のコミュニケーションの質を高める

インタビューというのは、相手にご自身の思いをご自身の言葉で伝えていただくという過程なわけだが、英語で言う“アイス・ブレイキング”がまず難しい。お互い打ち解けるための段取り。インタビューなら、お相手に浮かぶままの言葉をそのままの形で伝えていただきやすくするための環境設定の段階ということになる。これに関しては、経験則的に培った自分なりの方法論がある。その方法論に乗っていれば大きく外すことはないこともわかっている。ただ、限られた時間の中で最大限の情報を得ていく過程に、プラスアルファとなる何かが欲しい。

 

キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる』(山田玲司・著/光文社・刊)は、筆者がするだろう次のインタビューでも、筆者を含める多くの人々の日常的な人間関係においても役立つに違いない一冊だ。こう言おう。誰かと物理的に向き合いながら話をする機会が減った環境で生きている今だからこそ、“生のコミュニケーション”の質を高めたい。そのためにはどうしたらいいのか。そんな思いに応えてくれる。

 

5年間で200人にインタビュー

「はじめに」に記された次の文章は、筆者の“仕事柄な部分”に深く響いた。

        

取材では、わずか一、二時間で相手の心へ入り込んでいかなければならない。初対面の相手が心を開いてくれるか否か。それはまったくもってインタビュアーの力量に左右される。

『キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる』より引用

 

筆者の山田氏が5年間にわたり、約200人に対して行ったインタビューから得た真実だ。人とのコミュニケーションを深めるのに大切なものは「何を話すか」ではなく、「何を聞くか」を意識する姿勢にほかならない。この文章だけを切り取って示しても、あまりにも当たり前に感じられることはわかっている。ただ山田氏は、聞き役という立場を強く意識しながら人と接すると、仕事から離れた会話でも相手との関係が目に見えて良化していくことに気づいたという。

 

チャンスの神様が与えてくれる時間を無駄にしないために

本書が対象としているのは、次のような人たちだ。

 

・何度会ってもさっぱり相手との距離が縮まらない

・会話が始められない、もしくはすぐに終わる

・人から相談されたことがない

・とにかくモテない

・初対面の人と話すのが苦手

 

筆者の“仕事柄ではない部分”に響いた文章も紹介しておきたい。

 

人生には「ここ一番」という決定的な出会いの瞬間が何度かある。この機会しか会えないという異性と思いがけず一対一になった瞬間。社長とエレベーターの中でふたりきりになった瞬間。その機会を活かせば人生が大きく変わるかもしれない瞬間だ。ところが、そういったときに「何を話していいかわからない」という人が実に多い。

『キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる』より引用

 

気が利いたひと言である必要はまったくない。ただ、発すべき言葉をあれこれ考えているうちにチャンスの神様が与えてくれる時間は過ぎ去ってしまう。この本は、こうした瞬間に自分から言葉を発する勇気も与えてくれる。自己啓発本というざっくりとした形でカテゴライズしてしまうのは、ちょっと違うかもしれない。

 

LOVE & RESPECT

「その服、どこで買ったんですか?」「しんどいですよ……そっちはどうですか」「昨夜はちゃんと眠れました?」「これは読んでおけ、と言える本を教えてください」など26項目の“キラークエスチョン”を軸に話が進んでいく。質問に込められた意図を読み解きながら、自発的な問いかけによって言葉のやりとりが生まれ、相手との溝が埋められ、思いをやりとりするところまでのメカニズムを脳裏に思い浮かべることができる。根本的なテーマは、他者とのコミュニケーションを円滑にしていくためのテクニックではない。大きな言葉ひとつで表現するなら、“愛”だろうか。あとがきに次のような文章がある。

 

まずは近くにいる人間に関心を持とう。そして質問をしてほしい。それは愛のある「問いかけ」になるはずだ。この他者への関心(あい)がなければ、キラークエスチョンはただ小賢しいだけの処世術に終わるだろう。あくまでも相手に対するリスペクトがなければならない。

『キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる』より引用

 

ここまで書いた今、この本を紹介するにあたって、インタビューや人間関係に役立つ“実践的な”テクニックを主眼にしようとした自分を、ちょっと恥ずかしく感じている。

 

【書籍紹介】

 

キラークエスチョン~会話は「何を聞くか」で決まる

著者:山田玲司
刊行:光文社

人と何を話せばいいかわからない、他人とうまくやれずに損ばかりしている。この本は、そんな人たちを救う一冊になるはずだ。あるときを境に著者は、「何を話すべきか」ではなく「何を聞くべきか」と考えるようになって、すべてがうまくいくようになった。些細なことだけど、そこを意識するだけで、相手と深くコミュニケーションがとれるようになったのだ。世の中には「しゃべること」が重要だというような風潮があるけれど、それはウソだ。自分の話ばかりで人の話を聞かない人間は確実に孤立していく。人は基本的に話を聞いていほしい生き物なのだから、つかむ話よりもつかむ質問、すなわち、相手の本音を引き出す「キラークエスチョン」を相手にぶつけるべきだろう。質問次第では相手の心にフックがかかり、固く閉じられていた心の扉が開く。

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心が疲れやすい今だからこそ読むべき!「幸せスイッチ」が入る77の言葉『あなたは、もう大丈夫。』

人から言われて一番うれしい言葉は何だろう。

 

「すごいね」「カッコイイ」「おしゃれ」「さすが」「ありがとう」——どれも言われると、思わずニヤっとしてしまううれしい言葉。この中で、私が言われて一番うれしい言葉は、「大丈夫」だ。それは私が心配性で、あがり症で、焦りがちだからだと思う。だからこそ、安心させてくれる「大丈夫」という言葉が、私の上がった心拍数を元に戻してくれる。

 

77個の「幸せスイッチ」

ふと目に入った『あなたは、もう大丈夫。』(中島輝・著/プレジデント社・刊)は、私が求めている言葉そのもの。そしてこの本の中には、「幸せスイッチ」が入る言葉がなんと77個も収められているのだ。

 

どれだけ心配性で、あがり症で、焦りがちな私でも、77もの方向から受容されて「大丈夫」と包み込まれたら、もう本当に大丈夫なような気になった。

 

実は私、この手の自己啓発本が結構好きだ。本屋さんに行けば、「自己啓発」なんてコーナーで、何十種類も平積みにされている。どの本も魅力的なタイトルで、自分に語りかけてくるようなものばかり。

 

そして読んでいる間は「そうそう!その通り」「なるほど…!」など、分かったような気になるのだが、読み終わった後はきれいさっぱり忘れてしまって、また悩みがあると新しい本を探しに本屋さんへ行ってしまう…なんてことを繰り返してしまうのは、私だけではないはず。

 

でもこの本は、よくあるこの手の本と違った。ずっと手元において時々読み返したくなる本の一冊になった。

 

なぜなら、読みやすくて心に響く優しい言葉で包み込んでくれるだけでなく、自分がどんな気持ちになった時にどう考え、具体的に何をすればいいのかまで教えてくれるからだ。

 

一例を紹介しよう。

 

あらかじめ行動を決めておく

著者の中島さんによると、「なにが起きても大丈夫」そう思える準備が、自己肯定感を高めてくれるとのこと。どれだけポジティブにいこうと心がけていても、人生何が起こるか分からない。ネガティブな感情に引きずり込まれないためにも、状況を客観視して不安感情に適切に対処することが大事なんだそう。

 

もう十年も前の会社員時代の話だが、私がチャレンジングな仕事をする時や不安になった時、仕事をテキパキこなし人望も厚い先輩が「大丈夫大丈夫~♪」とよく言ってくれていた。リズムも心地よく、その言葉を聞く度に心がふっと軽くなった。彼女は、仕事場の空気が少しでもよどみそうになるたび、よく「大丈夫大丈夫~♪」と口に出して言ってくれていた。

 

多分そこから「大丈夫」が私の大好きな言葉になったのだが、仕事のデキるその先輩が、常にポジティブではなかったのは、近くにいた私がよく知っている。おそらく彼女は、何かが起こった時に「大丈夫」と思える準備ができていたのかもしれない。そして先輩はいつも、素晴らしい結果を残していたのだ。

 

自分に合った環境を「動詞」で考えると、幸せに気づきやすくなる

毎年成人式のニュースが流れると、若者に「将来の夢は?」という質問をしているのをよく目にする。目を輝かせ、立派な「職業」を口にする若者の姿がテレビによく写るのだが、中島さんは自分に合った環境を探すとき、いつも「動詞」で考えるようにしているのだそう。

 

多くの人は、自分に合った環境を「名詞」で選びがちです。すると、単なる職業名に縛られて、自分が感じる幸せをなおざりにしたり、ネームバリューだけでやりがいを感じられない仕事を選んだりして、どんどんつらくなってしまいます。

わたしたちは「動物」です。自分が小さいころから親しみ、楽しく感じてきた「動詞」をいっぱい探し出せれば、自分の幸せにより気づきやすくなります。

『あなたは、もう大丈夫。』より引用

 

 

これには激しく膝を打った。そうだ、私達は「動」物なのだ。「何」になりたいのかではなく、「どうしたい」のか。

 

例えば、何かを創りだすことが好きな人は、事務の仕事をしていたとしてもクリエイティブな方法を見つけ出すことで、やりがいを感じられると中島さんは言う。

 

子どもに「将来何になりたい?」ではなく、「何をしている時が楽しい?」と聞くようにしていこうと思う。そうすれば、自分が楽しい「動詞」にたくさん気づいてくれるだろう。

 

そして自分自身も、何をしている時に幸せを感じられるのか、アンテナを張っていこうと強く感じた。おそらく、今自分が取り組んでいる事の中に、好きな動詞がたくさん隠れているのだと思う。

 

毎日、いろいろなニュースで溢れる世の中。テレビをつければ耳をふさぎたくなるような出来事や、コメンテーター達の着地点のない不安な声が耳に入ってくる。日常は、私達の心を簡単に不安にさせる情報が多すぎる。ちょっと心が疲れた時だけでなく、疲れてしまう前にぜひ知っておいてほしい言葉が、この本には詰まっている。

 

とある休日、本に書いてあったとおり、今日よかったことを3つ書き出してみた。

 

・朝8時まで子ども達とぐうたら寝られた。

・朝ごはんは、夫がフレンチトーストを作ってくれた。

・楽しみにしていたおいしいおやつを、家族みんなで食べた。

 

おっと!書き始めたら、快晴だったことも、レタスが特売だったことも、まだまだかけそうだ。挙げ出したらきりがない! どこか遠出をしたわけでも、外食をしたわけでもない、いたって普通の休日。しかし、普通の休日がキラキラ輝いて見え始めた。なんだ、今日もなかなか幸せな一日じゃないか!

 

この本に巡り合えたおかげで、いい夢が見られそうだ。

 

(執筆/福島絵梨子)

 

【書籍紹介】

あなたは、もう大丈夫。

著者:中島輝
発行:プレジデント社

幸せになるための答えは、あなたのなかにあるー。カリスマ心理カウンセラーが綴った、自己肯定感が湧き出る「言葉集」。

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「つまらない」と嘆く前に、まずは隅々まで見渡してみる——『面白いとは何か? 面白く生きるには?』

フリーランスという形で働き始めて27年。デビュー年でいえば有吉弘行さんや竹野内豊さん、そしてGLAYさんと同期ということになる。

年初の抱負

毎年、抱負や目標を決めて文字に残すことにしている。最初のうちは翻訳本や単行本を何冊出版したいとか、連載を何本持ちたいといった具体的な内容だったのだが、キャリアを積み重ねていく過程でより広いくくりでの言葉が多くなっていった。

 

そして2022年の抱負あるいは目標は、さまざまな形でより多くの人たちに興味を持ってもらえるようになることだ。そのために、去年の自分より面白くなりたい。ただ、面白いというのはとても範囲が広い言葉で、最大公約数的な定義がしにくい。

 

生きていく上で不可欠な感覚

面白いという感覚を可視化する上で役立ってくれそうなのが『面白いとは何か? 面白く生きるには?』(森 博嗣・著/ワニブックス・刊)という本だ。300冊以上の著作がある人気作家による本書の第一義的な性格は、「面白さ」を基準にクリエイターの視界に映るさまざまな要素についての思いを綴ったものということになるだろうか。ただ、本書の対象は仕事がらみで面白さを追い求めている人たちだけではない。

 

同時に、「面白さ」を知ること、生み出すことが、すなわち「生きる」ことの価値だという観点から、「面白い人生」についても、できるだけヒントになるような知見を、後半で言及したい。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

面白いという感覚は、人が生きていくために不可欠な要素なのだ。

 

共感という機軸

章立てを見てみよう。

 

第1章「面白い」にもいろいろある

第2章「可笑しい」という「面白さ」

第3章「興味深い」という「面白さ」

第4章「面白い」について考える

第5章「生きる」ことは、「面白い」のか?

第6章「面白さ」は社会に満ちているか?

第7章「面白く」生きるにはどうすれば良いか?

第8章「面白さ」さえあれば孤独でも良い

第9章「面白さ」の条件とは

 

「面白い」という感覚の定義から始まって、それを反芻し、まず自分に反映させ、社会全体に投影し、最後にその不可欠性が語られる。筆者がイメージしていた面白さの可視化とは、まさにこういう流れなのだ。大前提に関しては、少なくとも部分的には次の文章によって説明されるはずだ。

 

人間は、いろいろいるし、また個人の中にもさまざまな価値観が混在し、非常に複雑に絡み合った反応をする。それなのに、大勢が同じものを「面白い」という現象が観察されるのは、とても不思議なことだ。この「共感」も人間の凄さの一つかもしれない。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

ネット時代の面白さの中核は共感

森氏が指摘する面白さの機軸は、共感の他にもいくつかある。「興味深い」「考えさせられる」「気づき」「役に立つ」。いずれも何らかの行動のきっかけになる感覚だ。共感をはじめとする機軸が紐づけられるから、ネット上でも「いいね」がやりとりされる。実はこの仕組み、人間のサバイバル本能にも直結しているようなのだ。

 

脳が「面白い」「面白そう」と感じなければ、それらを得ようとする行動を起こさない。それでは、生きていくうえで支障がある。生物の基本的な指向は、「生存」であるから、「面白い」は、実は生きることにリンクしている。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

面白さをカスタマイズする

面白く生きていくためにはどうしたらいいのか。森氏が示すビジョンは明快だ。

 

隅々まで探して、「面白さ」を見つける姿勢を、いつも持っていること。それが、「面白い」生き方の基本だ、と思う。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

日常生活でさまざまな制約が多くなったここ2年。「つまらない」と嘆く前に、まずは隅々まで見渡してみる。その過程で、自分なりの面白さや指向性がうっすらと見えてくるかもしれない。

 

あなたの設計図は、あなたにしか見えない。他者を巻き込まないで、自分一人で、その設計図を実現するために作業を始めよう。「面白さ」とは、そういうものだ、と僕は思う。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

筆者の中では、おぼろげながらもすでにいくつか「面白さ」が形を取り始めています。

 

【書籍紹介】

面白いとは何か? 面白く生きるには?

著者:森博嗣
刊行:ワニブックス

人気作家が「面白さ」のメカニズムを考察。仕事で面白いアイディアが必要な人、人生を面白くしたいすべての人に役立つヒント。

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自分の「天職」を知るための『シグナル』の見つけ方『SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法』

 最近は、才能探しをする人が増えています。自分の才能や天職は何だろうと考えてもうまい結論が出ず、悩んで占い師の元を訪れる人も。私たちはどのようにして自分の才能を見つけ、伸ばしていくべきなのでしょうか。 

恋愛相談をしない占い客が急増 

おひとりさまライフの増加により、占い師への依頼内容も大きな変化を迎えているそうです。今までは、ほとんどの人が恋愛の相談を持ちかけていたのに、近ごろは「恋愛運はいいです」と言われてしまうのです。恋愛運のニーズは半減し、その代わりに仕事運を望む人が急増しているのだとか。 

 

なかでも「自分の天職は何か教えてほしい」という人がかなり多いそうです。自分にしかできない自分ならではの仕事をしたい、そしてできれば才能を生かして起業したい、と考える人が増えているのです。けれど自分の才能を見つけることができず、困って占い師のもとを訪れているのだとか。 

 

シグナルという存在 

天職を知るには、占い師に頼るだけでなく、「シグナル」と上手に付き合うという方法もあるようです。シグナルとは、周囲の人が自分に対して発する評価や社会での一般概念を指します。 

 

SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法』(チョン・ジュヨン著/文響社・刊)によると、シグナルには良いシグナルと悪いシグナルがあるのだとか。悪いシグナルのことを作者は「ノイズ」と言い、ノイズに気を取られず、自分の信じる道を進むことを勧めています。 

 

シグナルが才能の開花を助ける 

本書にはノイズに惑わされずに成功した事例がたくさん出てきます。その中には、先生に褒められるという良いシグナルを得て頑張るようになった人の話もあります。天職について占い師に相談する人も、かつて誰かに褒められたことがある自分の良いところを思い出すと、大きなヒントになるのではないでしょうか。 

 

ノイズに気を取られる人は、自分の短所にばかりに目が行ってしまい、長所を見失ってしまいがちになるのかもしれません。自己啓発系の本では「自分の長所を書き出してみる」という行為を勧めるものが少なくありません。自分の良さを再確認することで精神的に安定し、メンタルも強くなり、ちょっとやそっとのノイズを浴びても動じなくなるからなのでしょう。 

 

批判に打ち勝つコツとは  

近ごろオンライン上での誹謗中傷行為が問題になっていますが、それは明らかに「ノイズ(悪いシグナル)」です。本の中にも批判に心が折れ、萎縮し、夢に向かってうまく歩めなくなった人の事例が出てきます。 

 

批判の中には建設的なものもあるので、それには耳を傾けたとしても、頭ごなしに否定したり、人を傷つけるような言葉を投げつけているものについては、気にしてはいけないそうです。新しいものに挑むときには反対意見はつきものですが、本気で夢に挑むためには余計なことを気にするヒマすらないだろうし、いちいち思考停止していたら、完成も遅れてしまいます。 

 

マドンナもシグナルに従った 

本書には歌手のマドンナの事例も載っています。彼女は「ライク・ア・ヴァージン」という曲に心底惚れ込み、周囲がいい反応を見せなくても、どうしてもこの曲を出したい、この曲は価値がある、と主張し続けました。彼女が周囲の負のシグナルにも負けず、自分がやりたいことを、彼女なりに工夫しながら貫き通したからこそあの大ヒットが生まれたのです。 

 

世の中にある大傑作や大発見と言われる成果の中には、ノイズをシャットダウンし、一心不乱に長年集中して取り組んだからこそ得られたものもあるようです。私たちは雑音から離れ、本当にやりたいことに没頭する勇気を持つ必要があるのかもしれません。 

 

【書籍紹介】

SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法

著者:チョン・ジュヨン
刊行:文響社

世界トップ1%に共通する資質の正体とは? 古今東西のあらゆる事例から、私たちが本当に集中すべき「シグナル」が見えてくる! 約10年間の難読症を克服したベストセラー作家が贈る 「周りのノイズに惑わされず、自分の才能を開花させる」ための必読書!

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成功者の誰もがやっている「サクセス・バイブレーション」を手に入れる方法とは?

バイブレーション、あるいはバイブスという言葉がある。人やもの、そして場所に宿ったり、放たれたりしている目に見えないエネルギーという意味だ。振動とか波動という言い方もできるだろう。

 

大谷選手のマンダラチャート

LAエンゼルスの大谷翔平選手が、MVPをはじめとするMLBのタイトル11冠に輝いた。史上稀に見る偉業を紹介するくだりでよく出てくるのが、マンダラチャートだ。81マスからなる表で、中央のマスに究極の目的を書き、隣り合うマスの一つひとつに、それを実現するために必要なことを書き足していく。外へ外へと向かって同じ作業を続けていくと、中心のマスに書いた目的を達成するために日々行うべき細かなことがらが明確になる。

 

大谷選手は、高校時代からこれを実践していた。ちなみに、中心のマスに書かれていたのは“ドラ1(ドラフト1位)8球団”という言葉だ。そして27歳になったMLB4年目の今シーズン、誰も想像さえできなかった偉業を達成した。絵にも描けないサクセス・ストーリーだ。

 

それだけではない。二刀流なんていう限定的な形容には収まりきらない存在である大谷選手の素晴らしいところは、チームメイトからも敵チームからも、審判からも、そしてもちろんファンからも、関わる人たちすべてに愛されていることではないだろうか。

 

成功している人がやっていること

成功したいという気持ちは、多かれ少なかれ誰もが抱いているはずだ。まず、自分なりに成功という言葉の定義をしなければならないだろう。成功を定義して、そこへ至るための道筋を思い描き、成功している状態を少しでも長く維持するためにはどうしたらいいのか。まずは、それにふさわしいバイブスあるいはバイブレーションを宿せるよう努力することだ。

 

成功している人がやっている波動の習慣』(桑名正典・著/ワンパブリッシング・刊)は、こうしたプロセスのすべてを俯瞰していく。随所にキーワードをちりばめながら進められる流れを追いながら脳内に思い浮ぶものは、マンダラチャートに似ていると思う。もし筆者が自分のマンダラチャートを作るなら、中心のマスには本書のキラーフレーズのひとつである“代わりがいない人になる”という言葉を迷うことなく書き入れる。

 

成功の定義

章立てを見てみよう。

 

第1章:成功とは「あなたの代わりがいない人」になること
これからは「あなたの代わりがいる人」は生き残れない!

第2章:「自分にしかできない才能・スキル」を磨く
喜びを生む3つの力で、唯一無二の人になる!

第3章:多くの人にいい影響を与える「人間関係力」を高める
影響力と応援される力を身につけよう!

第4章:「最大の価値を創造する力」を持つ
創造する価値を最大化する「2つの力」を身につけよう!

第5章:さらに強い波動を手に入れ、成功し続ける秘訣
「もっと高みへ」といつも挑戦していく!

 

ご覧のとおり、どの章タイトルにもポジティブな響きに満ちた言葉が並んでいる。本書のタイトルにもなっている“波動”という言葉については、まえがきで次のように定義されている。

 

「成功するための波動」のことを、本書では「サクセス・バイブレーション」と呼んでいます。サクセス・バイブレーションを身に着けることで、

・会社や社会、多くの人から必要とされ続ける

・多くの人から愛されながら、商品やサービスが売れ続ける

・多くの人に影響力を与え、尊敬を得ることができる

という状態になっていきます。

『成功している人がやっている波動の習慣』より引用

 

これで、成功の定義はしっかりと固めることができた。

 

成功して、その状態を持続させる方法

次に大切なのは、サクセス・バイブレーションを手に入れるための方法論だ。著者の桑名氏は、以下に示す3つのことがらに取り組むことで、どんな人でも身につけることができると語る。

 

・「自分にしかできない才能・スキル」を磨く

・「多くの人にいい影響を与える人間関係力」を持つ

・「最大の価値を創造する力」を身につける

 

この3つの軸をさらに細分化して説明されていくわけだが、その階層的構造がまさにマンダラチャート的なのだ。

 

サクセス・バイブレーションを手に入れ、成功した状態を持続させるためには何をすべきか。ごく簡単な言葉を使うなら、「自分への投資」だ。

 

自分の才能がさらに開花すること、自分の腕がさらに上がること、自分のサービスをさらに多くの人に届けること、そのために積極的に自己投資をしましょう。自己投資し、他にはないレベルに成長したり、必要としている多くの人に届けることで、サクセス・バイブレーションはより強くなっていきます。

『成功している人がやっている波動の習慣』より引用

 

この本は、自分なりの成功を定義し、それを実現し、さらに可能な限り持続させていくための、それぞれのプロセスをつまびらかにしてくれる。今年—いや今までの自分を振り返り、来年からの自分に思いを馳せるためにぴったりな一冊になるだろう。

 

【書籍紹介】

成功している人がやっている波動の習慣

著者:桑名正典
発行:ワン・パブリッシング

成功者は、高くて、強い波動を発信していた!! これからは、自分だけの「才能」を発見し、「価値」を磨くことで、望む未来が手に入る!「あなたの代わりがいない人」になれば、仕事、人、情報、お金、チャンスが押し寄せる。

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自分のためでなく誰かのために動いてみませんか?——『喜ばれる人になりなさい』

世の中には泣けるビジネス書といわれるものがあります。大抵の場合、それはリアルで具体的な著者の体験やインタビューに満ちていて、それが人の心を打つのです。『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司・著/あさ出版)を初めて読んだ時は、感動で胸が震えました。利益よりも大切にしている何かを持っている会社が次々と出てくるのです。生きるとは何か、働くとは何かを考えさせられる貴重な本で、シリーズで6冊目が出ています。

 

登場した会社は、業績も好調なようでした。それはその会社の温かさが人を心地よくさせ、また、こことお取引したいと多くの人が思ったからなのでしょう。実際私も本に出てきた柳月という北海道のお菓子メーカーの商品を良く取り寄せています。そこには美味しさだけでない、心に染みる何かがある気がするからです。

自己でなく社会のために

最近の世の中は、だんだんと自分や会社のためだけでなく、社会や地球のためにという大きな目標を持って活動するケースが増えてきたように感じています。環境問題が深刻になり、早急になんとかしなくてはならないという危機感もあるでしょうけれど、それよりなにより、誰かのためになるということが、人々の大きな生き甲斐になりつつあるのだと思います。

 

社会起業家になりたいという人も増えてきています。社会起業家とは、利益よりも世の中の問題を解決することを最重要視して事業を起こす人のことを言います。世界には環境問題のほかにも、貧困問題や高齢化問題など、さまざまな困難があります。それを事業化して解決を目指す人が増えてきたのは素晴らしいことです。

 

自分のためでなく誰かのために

事業を起こすのは少し敷居が高いし、いきなり社会問題に取り組むの方法もわからないけれど、個人レベルでなにかができたら、という人は『喜ばれる人になりなさい』(永松茂久・著/すばる舎・刊)を読んでみるのもいいでしょう。自分の身近な人を笑顔にすることに生涯かけて取り組んだ女性の実話だからというのもありますが、人生や仕事のテーマについて考えるきっかけになる本だからです。

 

この本に出てくるのは、著者である永松茂久さんの母親であるたつきさん。彼女は「人から喜ばれる人になる」をモットーに、ギフトショップの経営をしたり、お坊さんの資格を取ってカウンセリングを始めたりと精力的に活動されたかたです。そして、彼女のもとで育った長男である茂久さんは、大切な贈り物を彼女から得たことに気づくのです。

 

人が喜んでくれるツボを探す

彼が母親からの大切なメッセージに気づいたのは、彼女が亡くなってからでした。だからこそ、彼はこの物語を本にしたいと考えたのです。母親の生きざまも素晴らしいのですが、この本のキモの部分は、彼女の死によって著者がどのように変化していったかという後半の部分です。彼の気づきはそのまま読者の私たちの気づきにもなり、次々に胸に刺さるのです。

 

本の中にはいくつもの宝物のようなメッセージがありますが、なかでも心打たれたのは「商品は100パーセントお客様のためにある」でした。著者である茂久さんが悩んでいた時にかけられた言葉です。それをきっかけに、自分が書きたいものではなく読者が読みたいものへと軸を変換させることができた彼はベストセラー作家となり、大成功をおさめたのでした。

 

この本も売れているそうですが、それは時流に乗っているからというのもあるでしょう。自分よりも誰かのためになるように生きたいと高い目標を持ち始めた現代人は、背中を押してくれる言葉を探しています。そこに見事に「喜ばれる人になりなさい」が刺さったのだと思われます。表面的な好かれるコツではなく神髄を教えてくれるからこそ、大切にしたい一冊だと評価されているのでしょう。

 

【書籍紹介】

喜ばれる人になりなさい

著者:永松茂久
発行:すばる舎

人生で大切なことは、母から繰り返し言われた「この一言」だった──3坪のたこ焼き屋から、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店を作り、2020年のビジネス書年間ランキングでも日本一に輝いた著者が贈る、母から学んだ、人生で大切な「たった一つ」の教え。学びあり、青春あり、涙あり、感動ありの成長物語。母と子、父と子、愛情、友情、師弟、家族、仕事の真髄が凝縮された、長編ノンフィクション。今の時代だからこそ読みたい、読むだけで自己肯定感が上がり、誰かのために何かをしたくなる、優しくて懐かしくて温かい一冊です。

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ヒトは非難する相手を見つけないと生きられないのか?——『生贄探し 暴走する脳』

親ガチャという言葉。イヤな響きだなと思いながら、生々しい無力感とか諦めが透けて見えるような気がしている。

 

“親ガチャ”という言葉の響き

親は自分では選べない。自分がどんな境遇に生まれるかは運任せだから、ガチャでしかない。人生の方向性や、できることとできないことも、生まれた時からある程度決まっている。

 

ニュアンスとして一番近いのは、被害者意識という言葉だろうか。自分の努力が作用しえないところで起きることは、自分のせいではありえない。神様だか運命だかわからないけれど、決して望まない状況に追い込まれているのは圧倒的に不公平な不可抗力のせいだ。自分は被害者でしかない。

 

ネグレクトあるいは虐待に近い扱いを受けた人たちもいるだろう。ただ、そこまでされた人たちは親ガチャというワード程度では納得できないと思うのだ。

 

生贄探しと誹謗中傷

自分の力ではどうしようもないことを理解し、受け入れていく過程には、それなりの段取りが必要だ。結果的に、すべてのネガティブなものの原因は親にあるとして納得する。これは、親を非難の対象=生贄として選ぶことにほかならないのではないだろうか。

 

きわめて近い関係にある親を生贄に選ぶのはまだましだ。しかし、よく似た感覚を自分とは関係性が薄い対象に向けてしまう人も多くいる。特にネット上で顕著化しているこうした行いには、親ガチャとは比べものにならないほどの理不尽さが際立つ。生贄にされてしまう人たちは、不特定多数の人間からネガティブな感情を向けられ、執拗に攻撃をしかけられる。

 

誰でも生贄となりえる執拗な攻撃の手段は、有名人・一般人の差を問わず向けられる誹謗中傷だ。誹謗中傷があふれかえることを理由に、大手ニュースサイトのコメント欄が閉鎖されてしまうこともある。

 

多様性に対する違和感

生贄探し 暴走する脳』(中野信子、ヤマザキマリ・著/講談社・刊)という、少し前からとても気になっていた本を読むことができた。著者のひとりである認知神経科学者の中野信子さんは、まえがきに次のような言葉を記している。

 

個体ひとりひとりの考え方を聞けば、さほど良識がないとも思えないのに、集団になるとそれだけで凶暴になる。誰のコントロールも受けつけない。問答無用で異物を排除しようと、いつも生贄を探している。まるで、生贄がいないと生き延びていけない、とでも言っているかのようです。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

まえがきでは多様性という言葉が宿す独特な違和感について語られていて、人間の生物としての仕組みや進化の過程まで盛り込んで綴られる文章はとてもわかりやすく、すぐに引き込まれる。

 

コロナ禍の中で生まれた次世代への言葉

本書は、以下のような経緯で出発した。

 

ヤマザキマリさんは、情報を広く求め、複層的に思考することのできる、温かい知性の持ち主です。彼女とLINEでやりとりする中で、これは残しておきたいね、と語らい、今回の出版につながりました。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

コロナ禍の中で生まれた本書の大テーマであり、次世代への教訓となる言葉も紹介しておこう。

 

危機的な状況が起これば、少しでもはみ出した者から、生贄に捧げられてしまうのだよと。ヒトは放っておけばそういうことをしてしまう生き物なのだと。だからこそ、知性でそれを押しとどめる必要があるのだということを。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

この本を手に取る人は、今の時代を生きる当事者の一人として、こうした事実と向き合わなければならない。

 

正義なんてあやふやだ

章立てを見てみよう。

 

第1章 なぜ人は他人の目が怖いのか

第2章 対談「あなたのため」という正義~皇帝ネロとその毒親

第3章 日本人の生贄探し~どんな人が標的になるのか

第4章 対談 生の美意識の力~正義中毒から離れて自由になる

第5章 想像してみてほしい

 

この本は、正義あるいは正義感というものを俯瞰していく。正義感の歴史に関する一冊と形容できるかもしれない。強く感じたのは、正義感とか、それを基に紡ぎ出される常識という感覚のあやふやさだ。

 

魔女狩りから日本人特有の思考経路まで

魔女狩りやローマ皇帝ネロの逸話といった歴史的な切り口から、人間の脳の働きや日本人の思考回路の特性といった脳科学・心理学的要素まで幅広く盛り込みながら綴られる文章は、反芻すべき要素が多いのにとても読みやすい。そして、ごく普通の語り言葉で展開する第4章はとても良いアクセントで、共著という形態の良さが最大限に活かされていると思う。

 

ヤマザキマリさんによるあとがきに「自由や幸福の価値観は、どんな親しい関係にある人同士の中であっても共有されるわけではない」という一文がある。現時点で、2019年以前の世界が完全に元通りの形で戻って来るという確証はない。そういう状況の中で自分と他者、自分と社会という関係性を構築する一つひとつの要素を見直し、共有できるものとできないものをしっかり判別したいと思う。

 

 

【書籍紹介】

生贄探し 暴走する脳

著者:中野信子、ヤマザキマリ
刊行:講談社

幸せそうな人を見ると、モヤッとする、相手が得をすると損した気持ちになる、抜け駆けする人が痛い目に遭うのは当然、お前だけを特別扱いできない、などー日本人の思考の傾向は脳の特徴だった。豊かで多様性のある生き方のために、中野信子とヤマザキマリがアドバイス。

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今からでも遅くない? 毎日の習慣を少し変えるだけで効率がアップする『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』

「何もできずに1日が終わってしまった……」と、朝起きてから夜寝るまでモヤモヤした毎日を過ごしている方、必見! 精神科医でもある著者、樺沢紫苑さんの新刊『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』(樺沢紫苑・著/KADOKAWA・刊)には、日常生活の9割の悩みを解決できる方法が掲載されています。

 

文章を読むのが苦手という人でもわかりやすいように、前半はイラストによる解決方法の紹介、後半には論文や研究データを踏まえたエビデンス解説が紹介されています。「そんなことでよかったのか!」と思わず膝を打つコツがいっぱいですよ!

まずは、目次から自分の悩みを探そう!

この本を手に取ったのなら、まず目次をじっくり眺めてみましょう。あなた自身がどんな「悩み」を抱えているのか、目次をチェックすることで見えてくるはずです。例えば、

 

・スッキリと気持ちのいい「目覚め方」を学ぶ
・ちょっとした「休憩のとり方」で効率が変わる
・成功している人は「遊び」の達人が多い
・日々たまっていく「疲れ」を取る方法
・誰でもできる「アイデア」の出し方
・三日坊主にならない「続ける方法」をマスターする
・多くの人に愛されている「コーヒーの飲み方」の正解

 

などなど、目次には50項目に及ぶ行動最適化が紹介されています。

 

そこから気になったページに飛ぶと、見開きでイラストが掲載されており、そのページを見るだけでも「そうだったのか!」と解決できることも。イメージしやすいイラストなので、お子さんと一緒に読んでみるのもおすすめです。

 

「もっと詳しい情報を知りたい!」と思ったのなら、ページの隅に後半部分のエビデンスに関わるページ数が記載されているので、そこも読んでみましょう。どの項目もトータル3分ほどで読めてしまうので、今までモヤモヤと悩んでいたこともスッキリ解決できますよ。

 

『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』は、1ページ目から順を追って読まなくてもいい点や、文字を読まなくてもイメージだけで納得できてしまう新しい本の形だと感じました。日常生活の悩みは日々変化していくので、少し時間が経って読み返してみると新たな発見も。家の本棚に置いておきたい一冊ですよ。

 

記憶のゴールデンタイムは寝る前15分

ここからは2つ、もっと早く知りたかった〜! な行動最適化をご紹介します。

 

ひとつ目は、「記憶の最適化」。テスト勉強が効率よくできない、資格の勉強はいつも徹夜、なんて人いませんか? 記憶のゴールデンタイムと呼ばれる寝る前15分を活用すると簡単に暗記できるかもしれません!

 

単語帳やノートなどに「暗記したい項目」「暗記できなかった項目」をまとめておきます。洗顔、歯磨きを済ませてすぐに寝られる状態で、それらの暗記をします。

最後の3分間が最も重要です。最も覚えにくく、いつも間違ってしまう、難易度の高い英単語を3個ピックアップし、それぞれ10回ずつ紙に書きます。そして、すぐに布団に入る。眠りに入るまで、3つの英単語を頭の中で、順番に繰り返していきます。

(『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』より引用)

 

ここでは英単語と紹介されていますが、公式や歴史の年代でもOK。3分間で書き切れる数をピックアップし、やってみましょう。私も中学生のころに知りたかった……! いつも寝る前はラジオ番組を聴きながら寝落ちしていたので、その番組の内容は今でもよく覚えています。きっとこの効果だったのでしょうね(笑)。

 

『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』には、インプットやアウトプットのポイント、また記憶と睡眠の関係についても最適化できる方法が記載されていますよ。

 

「やる気」は存在しない?

「あぁ〜やる気が出ないなー」がしょっちゅうな私。やる気が出るのを待つのですが、なかなか簡単には出てきてくれません。脳科学者の池谷裕二教授によると、行動が先にあり、感情は後からついてくるものだから「やる気」そのものは存在しないよとのこと! やる気待ちしていた私、ただ何もしていなかっただけということなのですね……。

 

とはいっても「やる気」が出ないと仕事も勉強もはじめられないという人は、どうすればよいのでしょうか。

その答えは、「さっさとはじめる」ことです。

「そんなの矛盾している」と思うかもしれませんが、「やる気が湧かないときは、とりあえずはじめる」というのが、脳科学的に正しい方法なのです。

(『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』より引用)

 

億劫に感じても、行動してしまうことでやる気がみなぎってくるそうです。私も追い込まれタイプなのでよくわかるのですが(笑)、始めてしまえばどうってことないんですよね! 「やる気の最適化」について詳しくは『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』を読んでみてください!

 

『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』には全部で153項目もの行動最適化が掲載されています。自分の苦手だな〜と思っていることの習慣を変えることで自分自身を今より好きになれるかも? と、読んでいて感じました。

 

「どうして自分はできないのだろう?」とモヤモヤ悩んでいる人は、意外と簡単なことで今までの習慣が変わってしまうので、前向きに「次はあれもやってみよう」と取り組むことができるようになるはず。

 

巻末には、最適化チェックリストも掲載されているので、適宜活用すれば毎日を楽しく過ごせるでしょう。勉強に悩むお子さんから、会社での対人関係に悩むお父さん、自分の時間を作りたいお母さんまで、どんな悩みも解決してくれます。一家に一冊『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』、おすすめですよ!

 

【書籍紹介】

今日がもっと楽しくなる行動最適化大全 ベストタイムにベストルーティンで常に「最高の1日」を作り出す

著者:樺沢紫苑
刊行:KADOKAWA

一人のビジネスパーソンが、仕事においても健康においても最適な1日を過ごすために必要な行動を紹介。それに加え最適な学習方法や最適な睡眠の取り方などビジネスマンに限らず子供や老人でも役に立つような情報も盛り込んでいます。イラスストだけでわかるパート1、最新学術理論を用いたパート2、この2部構成だからこそ、子供から大人まで老若男女が理解できる!

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インド人の「自己肯定感」が強い3つの理由——『どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術』

よく「インドに行くと人生が変わるよ」という話を聞く。特に、日本での生活に生きづらさを感じている人ほど、そういう体験をするようだ。

 

どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術』(あぬ・著/ANU WORKD出版・刊)は、「いい大学に入っていい会社に入ることがいい人生」と思っていた著者が、インドに行くことで人生観が変わったという内容の書だ。

 

著書は大学を卒業して就職をするが、ほんとうに自分がしたい仕事ではなかったため、悶々とした日々を過ごしていた。思い立ってインドへ旅行をし、最終的にはインドで就職。日本にいたころの価値観が変わり、インドでほんとうに人生が変わったのだ。

自己肯定感の高いインド人の3つの特徴

本書によれば、インド人は自己肯定感が強いという。ほとんどの人がスマホの待ち受け画面は自分の顔写真だし、自撮りが大好き。つまり「自分大好き」な人種なのだ。

 

まあ、そういうお国柄だからと言ってしまえばそれまでなのだが、なぜインド人はそんなに肯定感が高いのか、筆者は3つの特徴を挙げている。

 

ひとつめが「インド人は親バカ」ということ。とにかく自分の子どもが一番かわいくてしょうがなく、奧さん同士で子ども自慢合戦が繰り広げられることもしばしば。日本では「うちの子なんて…」と謙遜することが多いが、インドはその逆。このような環境だから、自然と子どもも「自分は素晴らしい」というマインドになるのだろう。

 

ふたつめが「大家族が多い」こと。家族が多いため、自然と家族の中で自分の役割が決まってくる。弟妹の面倒を見たり、家事を手伝ったりといった役割があり、それを全うすることで「自分は家族の間で役に立っている」という感覚が育ちやすいのだ。

 

最後が「家族愛の強さ」。家族が風邪を引けば仕事を休み、離れて暮らしていても毎日電話で話す。常に家族を愛し家族に愛されていると感じることが、絶対的な安心感になり、自己肯定感につながっているようだ。

 

「人を許す心」をインドで学んだ

筆者は「インドは許容する国」と評している。日本は何事もスムーズに進む一方で、ちょっとでも停滞した場合は大問題になることも。電車が1分遅れるだけでお詫びのアナウンスが流れるのが日本だが、インドは10時間以上電車が遅れることも日常茶飯事。それでもみんな「ノープロブレム」と言っているのだから、日本とインドは真逆の感覚なのだ。

 

私はスムーズにいかないインドでは、常に「しょうがない」という諦めの心を持つようにしていました。「どうしてもこの日までにやらなければ」という執着を捨てていました。
常にそのような気持ちでいることを意識していると、小さなことでイライラしなくなりました。

「人を許す」心が持てたのです。

(『どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術』より引用)

 

諦めの心が他人を許し、他人を許すことで自分も許す。なんともインド的な思考回路でうらやましい。いや、うらやましいと思っている時点で、僕は自己肯定感の低い人間なのかもしれない。

 

「アフォメーション」で潜在意識を変える

自己肯定感を高める具体的な方法も本書に記されているが、そのなかで「アフォメーション」というものが紹介されている。これは「肯定的な宣言」。たとえば「お金持ちになりたい」ではなく「私はお金持ちだ」と断定し、それを繰り返し自分にいい聞かせる。一種の自己暗示のようなものだが、潜在意識に働きかけることで、次第に考え方や行動が変わってくるという。

 

これなら手軽に始められそう。僕はそれほどネガティブな性格ではないが、非常に怠惰で自己中心的なところがあるので、「オレは好きなことをして生きている」と唱えていれば、今までの僕の人生が救われるかもしれない。

 

 

【書籍紹介】

どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術

著者:あぬ
発行:ANU WORKD出版

あなたは自分に自信がありますか? 自分自身を愛していると自信を持って言えますか? 劣等感の塊で自己肯定感の低かった私ですが、あるときインドへ行き、考え方が大きく変わります。インド人から学んだ精神性は、私だけではなく、私と同じように自己肯定感が低かったり、自分に自信が持てなかったりするあなたの役に立つはずです。

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毎日使う“言葉”の大切さ、伝え方を考えさせられる。日テレ藤井アナの本『伝える準備』

自宅で仕事をしている中で「夕方のニュースを見るようになった」という人も多いのではないでしょうか? 日本テレビ系列で夕方に放送している『news every.』もコロナ禍で注目を集めた番組のひとつ。藤井貴彦アナウンサーが番組の最後に伝える言葉がSNSでも話題になっていましたよね。

 

そんな藤井アナが執筆された『伝える準備』(藤井貴彦・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)を読むと、言葉を発する前にどれだけのことを準備し、どんな心持ちで伝えているのかがわかる一冊です。ポンポンと気軽に言葉を発信することができるようになった昨今ですが、あなたはその言葉を大切にしていますか?

 

言葉を「寝かせる」大切さ

この本を読むまでは「伝える」ことに準備が必要かな? なんて考えていました。とくにアナウンサーは、臨機応変な対応が必要だろうし、準備したくてもできないのでは? 夕方の番組でも準備していたらあの言葉は出ないのでは? なんて思っていました。

 

けれど読み進めていくうちにその考えはひっくり返されました。藤井アナは、ひとつひとつの言葉と真摯に向き合っていて、どの言葉もポロっと出た言葉ではなく、何度も考え、何度も検討し、まさに伝える準備で言葉を日々蓄えていたのです。

 

言葉を選ぶ準備とは

たくさんの言葉を引き出しに集めておいて、

その人にフィットする言葉を見繕い、

最後に一つに絞ること。

(『伝える準備』より引用)

 

また、スポーツ実況のようなリアルタイムで状況を伝える方法もあります。でも、その場で「えいや!」とやっているのではないんです。藤井アナはスポーツ実況担当になったころ、3か月かけて10試合分のサッカー実況の言葉を大学ノートに書き写し、実況ワードの仕組みを理解していたというのです。1試合だけでも大学ノート15ページ分になっていたとのことなので、相当な準備をした上で「当たり前のスポーツ実況」を聞いていたのだと知りました。いやぁ〜本当にすごい仕事です!

 

誹謗中傷コメントはフォントを変えろ!

藤井アナが「エゴサーチ」をした際、たくさんの共感の言葉の中に、心ない言葉を目にしたことがあったそうです。SNSに上がっている文字の多くは瞬発的に発せられている言葉が多いため、ネガティブな感情もむきだしで晒されています。そこに傷ついている人もたくさんいるはず。そんな時のアドバイスもいくつか書かれていたのですが、その中になるほど! な解決方法がありました。

 

もし、SNS上で誹謗中傷を目にしたら、

思いっきりかわいい文字に変換してみてください。

ひどい言葉ほど面白く見えてきます。

(『伝える準備』より引用)

 

藤井アナ曰く、デジタルの整えられたフォントは誹謗中傷すら素晴らしい意見に見えてしまうフォントマジックがかかってしまっているとのこと。確かに……! 壁の落書きのような手書きの文字なら「あぁ〜落書きだな」と思えても、デジタルのフォントだと落書きと同じ言葉でも鋭さが変わり、受け止める側への負担が大きくなりますよね。「伝えるフォント」が違うだけでも受け止め方が変わると実感しました。

 

本の「奥付」にも、藤井さんの優しさが!

『伝える準備』には素敵な言葉がいっぱいあるので、もっともっと紹介したいのですが、最後にひとつ「奥付」について紹介させてください! この『伝える準備』の奥付は今まで見たことのない奥付でした。

 

なんと100人近いスタッフクレジットが掲載されているのです! 本を書いた人、本を編集した人、出版した会社、デザインした人、本のタイトル、出版した日付……までは標準の奥付なのですが、書店営業の方、オンラインでの販売担当の方、電子書籍に関わった方、出版プロデューサーまで掲載されていました。

 

私たちが手に取っている本の言葉は、これだけの人たちの協力と準備があって、自分の元に届いたのか……と感じられる奥付だったので「よし、もう一度読もう」と、読み終わってすぐ読み返してしまいました(笑)。

 

「準備」というのは、人の目に晒されることのない部分だと思いますが、その「準備」がどれだけ行われていたかはきっと伝わるはずです。メール、SNS、電話など言葉を伝える機会がある人はぜひ一度、この『伝える準備』を読んでみてください。毎日言葉を伝えている藤井アナに元気をもらえるはずです。

 

【書籍紹介】

伝える準備

著者:藤井貴彦
刊行:ディスカヴァー・トゥエンティワン

日々、どんな小さなことも書き留め、積み重ねて、「自分の土台」をつくり上げる。27年間、「5行日記」を続けて培った言葉の力。日本テレビ系「news every.」のアナウンサーがはじめて明かす思いが伝わる言葉のつくり方。

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今だからこそ、自分のライフスタイルを見つめ直してみる——『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』

生きたいように生き、働きたいように働く。言うのは簡単だが、いざ実行するとなると常識とか社会規範などさまざまな縛りがかかり、なかなか踏み出せないのではないだろうか。

ゆるく考えてラクに生きよう

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』(ちきりん・著/イーストプレス・刊)は、そういう縛りと自分のアイデンティティをすり合わせていく上でとても役立つ本だ。

 

著者のちきりんさんがこの本を書いたのは2011年。東日本大震災の一か月半前というタイミングだった。朝から晩まで、そして時には休日まで働き続けるようなライフスタイルに疑問を感じ、それまでの仕事を辞めて新しい働き方を模索していたという。

 

仕事やお金や人生設計に関して、もっと自由に発想し、もっと合理的に判断できれば、今という時間を楽しむことを、もっと優先する生き方ができるはず。そう考えてこの本を書きました。

『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用

 

自分についてちょっと思い出してみる。筆者がとあるシティホテルに就職したのは1986年。入社したてだったのに、年末のボーナスがえらく良かった。今思えば、そこから4年あまり続くバブル景気を感じさせるに十分な出来事だった。

 

あの時この本があれば

でも、結局は2年で辞めてしまった。第一の理由は、入社直後から続いたナイトシフト勤務が辛すぎたこと。特にレストランサービス課で働いていたときは1回出社すると2日経ってしまう。ほとんど眠れなかったし、大したこともしないまま時間がものすごい速さで流れていった。

 

ある日突然、これは違うと確信した。その日のうちにワーキングホリデーに関する資料を可能な限り集め、2週間後には具体的な計画を立てた。辞表を提出したのは、それからちょうど1か月後だ。あのころこの本があってくれたら、よりポジティブでよりよいものごとの進め方を考えることができていたと思う。

 

自分を縛らない

当時の筆者の気持ちをそのままなぞってくれたような文章がある。

 

また、日本には「良薬口に苦し」ということわざがあり、まるで「つらいこと=価値があること」のようにいいたがる人がいます。けれど、論理的に考えれば一番いいのは「楽しくて、ラクで、価値があること」であり、まずはそれを目指すべきではないでしょうか。

『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用

 

目次を見てみよう。

 

1.ラクに生きる

2.「自分基準」で生きる

3.賢く自由に「お金」とつきあう

4.仕事をたしなみ、未来をつくる

5.ストレスフリーで楽しく過ごす

 

「何よりも自分のアイデンティティを大切にしながら無理せず働き、ネガティブな要素になるものとは距離を置いて、自分が心地よい範囲内で生きていきましょう」という方向性だ。周囲から押し付けられる思いで自分を縛ることもない。

 

完全に自分らしくある覚悟

この本は、欲との向き合い方として読むのも正しいかもしれない。そのニュアンスは、次の文章に表されていると思う。

 

毎日を気分よく楽しく過ごし、おいしいものを食べて、できる限り長い時間を自分の好きなことに使って過ごしたい。それを実現するためには、世間で言われる「あるべき論」も、ちょっとだけゆるく解釈すればいいじゃないか、これが私の基本的な考え方です。

『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用

 

筆者は、ちきりんさんの考え方を全面的に認める。だって、ずっとそう生きてきたから。いくつか職を経て32歳でフリーランスライターになったとき、ある人から「毎日が日曜日みたいな生活」と言われ、「ああ、世間からはそう見えるのね」と感じさせられることもあったな。

 

とあるツイートの話

ごく最近、とあるハローワークの相談員さんの言葉に関するツイートが話題を集めた。

 

「もっと無責任で、いい加減に生きなよ!嫌なら初日で辞めな!いろんな職場見て、自分に合うところが見つかるまで転々としたって全然いいんだよ、自分の人生なんだから周りの意見なんて聞きすぎちゃダメだよ!」

ハンドルネームりんごさんのツイートより

 

世の中は、ちょっとずつ変わってきてるんだろうか。副業という働き方、45歳定年制、FIRE…。生きるということにおいて比較的大きな側面である働き方にも、さまざまな選択肢が増えつつある。そんな中、この本はさまざまな要素の優先順位を決めていく方向性を的確に示してくれる。

 

コロナは、テレワークというこれまでとはまったく異質な働き方を日本社会にもたらした。こうした働き方が定着したとは言いがたいが、それなりに手ごたえや手がかりを感じている人も少なくないはずだ。自分という存在をとりまくさまざまなことがらについて、もっとゆるく考えてみる。今が絶好のタイミングかもしれない。

 

【書籍紹介】

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法

著者:ちきりん
刊行:イースト・プレス

「仕事やお金や人生設計に関して、もっと自由に発想し、もっと合理的に判断できれば、今という時間を楽しむことを、もっと優先する生き方ができるはず…そう考えてこの本を書きました」(「文庫化に寄せて」より)世の中が大きく変化していく中で、どう考え、どう生きていけばいいのか。「世の中」「お金」「働き方」についての具体的で実用的な考え方が満載。日本一影響力を持つブログ「Chikirinの日記」の著者によるベストセラーが遂に文庫化。

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10代の若者とその親の悩みを瀬戸内寂聴さんがまるっと解決!『97歳の悩み相談』

久しぶりにテレビ電話をした大学の友人から「ちかちゃん、瀬戸内寂聴さんに似てきたね」と言われ驚いた私。しかし妙に親近感が湧いてしまい(笑)、瀬戸内寂聴さんの本を色々と読み始めました。祖母の家にあった法話のカセットテープを聞いたことはありましたが、「あれ? 本は読んだことなかったかも」と思い、気になった本をポチポチ。読んでみると、寂聴さんの言葉が乾いた心に沁み渡り、「似ている」と言ってくれた友人に感謝したのでした。

 

いくつか買った書籍の中でも2019年に発刊された『97歳の悩み相談』(瀬戸内寂聴・著/講談社・刊)は、大人の心にも響く言葉がたくさんありました。これは同年に瀬戸内寂聴さんが暮らす京都の『曼荼羅山 寂庵』にて行われた「10代のための特別法話」と「10代のための悩み相談」を再構成したもの。会話形式でお話が進み、1時間もあれば読めてしまうボリュームなので、普段読書をあまりしないという方や、忙しくて本を読む元気もないよ、なんて人にもおすすめできる本です。今年で99歳になられた瀬戸内寂聴さん。人生の大先輩は10代の若者にどんなメッセージを届けたのでしょうか?

 

恋愛のこと、家族のこと、10代の子どもとその親が寂聴さんに悩み相談

『97歳の悩み相談』は、「自分を愛せない人へ」「一歩を踏み出せない人へ」「人間関係に悩む人へ」「大人とうまくいかない人へ」「将来が不安な人へ」「子育てに迷う親たちへ」という6つのカテゴリに分かれて、42個のお悩みが掲載されています。

 

気になるところから読むだけでも十分楽しめますが、最初から順番に読んでいくと、読み終わるころにはまるで自分の悩みまで解決したような清々しさを感じられます(もう36歳のおばさんですが……w)。

 

10代の若々しいお悩みにも真摯に向き合う当時97歳の瀬戸内寂聴さんも素敵で、いつかこんなおばあちゃんになれたら、なんて図々しくも思ってしまうのです。お悩みの内容も10代だからと侮ってはいけません。「何をやろうとしても、なかなか続けられません」「他人と自分を比べて、劣等感を持ってしまいます」など、大人より大人なお悩みもちらほら。

 

さらに、親からの相談として「息子の生活態度が悪くて、腹が立ちます」なんて面白い話もあるので、これに対して寂聴さんがどんな回答をしているのかも、読んで確かめてもらいたい内容です。今回はこの中から、気になった2つの相談をご紹介しましょう!

 

大人が望む「普通の人生」を生きたくない!

15歳の女の子から「大人は自分らしく生きろと言いながら、結局はいい大学に行け、いい会社に入れと言います。普通の人生しか生きられない世の中はおかしいと思います。」というお悩みを聞いた寂聴さん。一体、この悩みにどう答えたと思いますか?

 

「普通の人生しか生きられない」と言うけれど、じつは普通の人生を生きることがいちばん、難しいんです。「普通の人生しか」じゃない、「普通の人生こそ」なかなか生きられない。普通に生きられたら楽だけど、人生はそうはいかないものです。

(『97歳の悩み相談』より引用)

 

実際にはもっと長く答えているのですが、「あなたの言うことは正しい」と肯定しつつも、このような回答ができるのは寂聴さんだからこそだと感じました。私だったら「そうだよね。ごめんよ」くらいしか答えられない!

 

自分を振り返ってみても、10代のころって「普通がつまらない」って思っていましたよね。大人になってから、普通のすごさ・ありがたさって知るものなのかもしれない、親が言っていたことも今なら理解できるなぁ〜と感じます。私自身も「自分もこの回答に納得できるくらい、大人になったんだなぁ」と感慨深く感じました。

 

どうしたら行動できるようになりますか?

続いては、「私はいつも、ああなりたい、こうなりたいと思うばかりで、自分から進んで行動を起こせません。」という17歳の女の子からの相談です。

 

何かをしたいと思いながらしない残念さと、したけれども失敗した残念さとを比べたら、したいことをしなかったほうが、ずっと悔しい。だから、したいことは全部やりなさい。

(『97歳の悩み相談』より引用)

 

さらに寂聴さんは、「若き日にバラを摘め」という言葉とともに、若い時ならバラのトゲで傷ができても回復力があるからすぐ治る。心の傷と一緒だよ、と話してくれています。これはもっと若いころに知りたかったよ〜!

 

確かに、大人になってから傷を負ってしまうと色々と言い訳をして回復が遅くなることや、傷口に塩を塗ってくるような人も現れるので、バラを摘むなら若き日に……というのは納得です。けれど、現在99歳の寂聴さんと比べれば私も若造なはず! 「あなたもやってみなさい」という声が聞こえてくる気がしました。

 

他にも『97歳の悩み相談』には、たくさんの経験を積まれてきた寂聴さんのあたたかい言葉がたくさん掲載されています。中高生なら読書感想文の課題図書としてもお勧めですし、短い夏休みを読書で満喫したい大人にも楽しんでいただけるはずです。ぜひご覧ください!

 

【書籍紹介】

97歳の悩み相談

著者:瀬戸内寂聴
発行:講談社

人間関係、コンプレックス、恋愛、家族、将来のこと。若い世代のリアルな悩みに、97歳の寂聴さんが答えます。人生の大先輩が贈る、幸福に生きるための知恵!

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選択肢を絞るな!二兎を追え! TEDトーク350万回超再生の著者が語る「自分だけのキャリアの見つけ方」

大谷翔平選手が、ホームラン王を狙う勢いで活躍している。投手としての成績も15登板で5勝1敗/防御率3.04(執筆時現在)。二刀流という言葉をこれほど明らかな形で実現している野球選手はいない。

 

自分という存在の定義

野球以外のジャンルにも、二刀流という言葉で形容できる人がいる。お笑い芸人で芥川賞作家。医師で弁護士。グラドルで女子プロレスラー。こういう生き方って、ごくわずかな、選ばれた人にしかできないんだろうか。

 

実はそうでもなさそうなのだ。『マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』(エミリー・ワプニック・著、長澤あかね。訳/PHP研究所・刊)は、読者に「ひょっとしてありかも」と思わせてくれる一冊だ。まず、次の文章を読んでいただきたい。

 

これは、「やりたいことを一つだけ選んで、残りをすべて捨ててしまうなんてイヤだ」と考える人たちのための本です。好奇心旺盛で、新しいことを学ぶのが大好きで、いくつものアイデンティティをはぐくみ、それを自在に行き来するのを楽しむ、あなたのための本なのです。

『マルチ・ポテンシャライト』より引用

 

人は、ひとつの要因で定義されるわけでは決してない。それがこの本のテーマの明確なメッセージだ。

 

可能性のリストアップ

「二兎を追う者は一兎をも得ず」「転石苔むさず」といったことわざで端的に示されるように、特に日本社会では、色々なものに手を出したり、居場所を転々と変えたりというあり方にネガティブな視線が向けられることが普通な時代もあった。

 

しかし今、自分のさまざまな可能性を試すことをためらう必要はない。必要なのは、新しい時代の価値観に基づく意識の変容を自分ごととしてとらえていく姿勢だ。否定から始めるのではなく、可能性のリストアップから始めると、ものごとがまるで違って見えてくる。

 

マルチ・ポテンシャライトとは

マルチ・ポテンシャライトとは、マルチ(多くの)―ポテンシャル(潜在能力を持つ)―アイト(人)という意味だ。目次を見てみよう。

 

・マルチ・ポテンシャライト=世間にしばられず、複数の転職を追究する人たち

・マルチ・ポテンシャライトのスーパーパワー

・マルチ・ポテンシャライトが幸せに生きる秘訣

・グループハグ・アプローチ=ある一つの多面的な仕事に就き、その中でいくつもの分野を行き来する

・スプラッシュ・アプローチ=パートタイムの仕事やビジネスを掛け持ちし、精力的にその間を飛び回る

・アインシュタイン・アプローチ=安定し「ほどよい仕事」をしながら、情熱を注げる取り組みをほかに持つ

・フェニックス・アプローチ=数か月、数年ごとに業界を移り、興味を一つずつ掘り下げていく

・自分に合う「生産性システム」の作り方

・マルチ・ポテンシャライトが抱く「不安」に対処する

 

マルチ・ポテンシャライトという生き方・あり方に関わる多様性やダイナミズムが具体的に想像できると思う。

 

アイデンティティをはっきりさせていく過程

「バイトをいくつもかけもって生活を維持する生き方」という言い方からポジティブな雰囲気を感じる人は、それほど多くないはずだ。でも、そういうライフスタイルを送っている本人はむしろ「マルチ・ポテンシャライト」にきわめて近い感覚で日々を過ごしているのかもしれない。

 

会社に勤めながら副業でも活躍したり、社内で副業を持ったり、あるいは“複業”という言葉で表されるように二つ以上の仕事を持つなど、「自分を活かせる場が二つ以上ある」ことは普通になりつつある。そして、自分を活かすのが仕事がらみの場だけとは限らない。ただ、こうした場を探す過程には悩みや葛藤がつきものだ。

 

「自分の人生の目的って何なのだろう?」という問いは、年齢を問わず人々を悩ませている。そうした悩み―キャリアだけでなく、「アイデンティティ」そのものをめぐる悩み―を経験するのは、浮ついているからではない。本人は、身のすくむような気分でいるのだから。

『マルチ・ポテンシャライト』より引用

 

自分という存在を定義する要因は、生き方にそのままつながる「アイデンティティ」をはっきりさせていくプロセスに不可欠だ。だから、悩むという行いも欠かせないのだろう。

 

生き方も働き方も変わる時代

著者のエミリー・ワプニックさんは音楽・アート・映画・法律という4つの分野を仕事や学問として探求してきたマルチ・ポテンシャライトだ。ほかの人たちとはちょっと違う生き方・働き方をしてきた彼女は、読者に語りかける。

 

この本の情報は、自分に合うものだけを取り入れて、残りは無視しよう。複数のワークモデルをスムーシングしてみよう。毎年新しいワークモデルを試すのが心地いいなら、そうしよう。いろいろ実験し、繰り返し試して、自分仕様にしてほしい。あなたの仕事で、あなたの人生なのだから。(太字部分本書ママ)

『マルチ・ポテンシャライト』より引用

 

私たちは、生き方や働き方に対する考えが根本から変わりつつある時代のさなかにある。そういう時代を生きている自分の現在位置を確かめ、これから向かっていく場所に思いを馳せるのに役立ってくれるだろう。

 

【書籍紹介】

 

マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法

著者: エミリー・ワプニック(著)、長澤 あかね(訳)
発行:PHP研究所

TEDトーク350万回再生超!「人生の選択肢が絞れない……」と悩む人が、自分だけのキャリアを見つけられる画期的な方法。

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すべてを「あきらめる」と、ラクになる——プロ奢ラレヤーに教わる「抗わない」生き方

抗っている。まず、コロナ禍の閉塞感。次に、漠然とした不安。そして、言葉で表せないさまざまな焦り。特に理由もないのに、ベッドから出たくない朝がある。メンタルやられちゃってるのかと思う瞬間もある。とにかく、抗っている。

 

抗ってダメなら、あきらめるほうが効率的

なりたい自分とか理想とかにがっつりつながるような大げさなものじゃなく、ぐっと日常生活に近いところにある何かに向いている感情だ。この種の感情には個人差があるだろうし、ライフサイクルにかかわる部分もあるだろう。筆者の場合、ミッドライフクライシスにしては年齢が行き過ぎているから、更年期なのかな。それはそれで抗いたくなるが。

 

プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略―お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには』(プロ奢ラレヤー・著/祥伝社・刊)は、何かと抗っている自覚があったらすぐに手に取るべき一冊だ。

 

夢なんか叶わない?

・お金がなくて、生活が苦しい人

・「何者か」になりたいけど、なれていない人

・しんどい労働はせずに、生きていきたい人

・プロ奢ラレヤーがどのように現在の生き方に行き着いたのか、その方法論を知りたい人

 

といった人たちを対象に書かれたこの本。まえがきに次のような一文がある。

 

夢は叶いません。というか、そもそも世界のあらゆる夢はほとんど叶っていません。なんなら、「99.9%」の夢は叶わない。そこに努力があろうが、「あきらめない」でいようが、現実的に99.9%の夢はいつだって幻なのです。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

煽りのニュアンスも含め、魅力的な響きを感じる筆者には、すでに何らかのバイアスがかかってしまってるんでしょうか?

 

プロ奢ラレヤーとは?

著者の“プロ奢ラレヤー”さんとは、どんな人なのか。フォロワー数ざっくり10万のTwitterアカウントを介して寄せられる「奢らせてください」リクエストに応え、ご飯を奢られることを主な活動としている。世間一般で普通と思われているものすべてに縛られることを嫌い、靴下も履かない。というか、履けない。

 

3年半前、当時19歳だった僕は、まず「労働」をあきらめました。「バイトするくらいなら、メシなんていらない!」「公園で寝て、だらだらしてるほうがずっとマシ!」「働いて食う焼肉より、働かずに食う雑草だ!」

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

そして物価の安い国へ行って(!)ホームレスをしたり、現地で作った友達にご飯を奢ってもらったり、ゴミ箱から拾ったハンバーガーを漁ったりする生活を送った。ここまで読んで、すでに半ギレ状態になっている人がいるかもしれない。でも、ちょっと考えてほしい。プロ奢ラレヤーさんは、他人の目にどう映ろうが、自分というものを明らかにしていく過程に共鳴する人たちにご飯を奢ってもらい、そうしたライフスタイルから得るものをまとめて本にした。世間的には間違いなくネガティブに映るだろう自分のあり方を実現するため、わざわざ国外に出ていくというアクロバティックなポジティブさもある。

 

トレードオフ・ベースの生き方

次にあきらめたのは、「家」だ。

 

フォロワーの家に泊まればタダでいいじゃん! 外よりも100倍は優雅!! タダなのに暖かい! 涼しい! Wi-Fiもあって、風呂も入れる! これで家賃も0円になりました。プライドも、完全に0です。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

労働も家もプライドも、あって当たり前のものであるはずだ。そういうものをあきらめる背景にあるものは何なのか。

 

「あきらめる」ということ―これはどこか「悪いこと」として扱われる節があります。しかし、それはきれいごとです。あきらめることなくして、得られるものはありません。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

ならばプロ奢ラレヤーさんの生き方は、究極のトレードオフということになる。筆者は、こうしたやり方が間違いだとは思えない。

 

プロの凄み

章立てを見てみよう。

 

・なぜ、あきらめると人生得するのか

・あきらめたくないものに気づくための9ステップ

・あきらめにくい6つのハードル

・実践編 あきらめめチャレンジ

番外編 「あきらめる」以上に何か欲しい人へ

 

しがみついているものが多い人ほど、本書の内容に対する違和感が膨らんでいくだろう。読み進めていくうちに違和感ばかりが膨らんでいくのか。あるいは「あきらめること」を受け容れるスペースが広がっていくのか。

 

ひとつ明確に言っておきたいのは、ありとあらゆる世間体をあきらめているプロ奢ラレヤーさんの言動が完全に一致していることだ。出版契約の締結も、靴下を履くのと同じくらい嫌だったらしい。

 

しかし、この本の印税をもらうためには「契約書」という鳥肌ゾーンを突破しなくてはいけません。契約、ケイヤク、けいやく………。……というわけで、この本の印税はあきらめます。編集者さん、そんな感じでよろしくどうぞ。印税、いりませーん。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

これがプロの凄みですよ。

 

【書籍紹介】

プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略 お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには

著者:プロ奢ラレヤー
発行:祥伝社

絶対に働かない彼は、なぜ生活に困らないのか—。才能、スキル、何もいらない。ただ「あきらめる」だけ。どんな時代でも通用する生存戦略を大公表!

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「にゃーん」しか打てないキーボード、オンライン飲み会緊急脱出マシーン……「無駄づくり」に学ぶアイデアの生み出し方

無駄づくり」というYouTubeチャンネルをご存知だろうか。全然実用的ではないものを発明しては作り、発表しているチャンネルだ。無駄づくりを行っているのは、藤原里菜という女性。彼女は2013年から無駄づくりをはじめ、YouTubeでの活動をメインに、ワークショップを開いたり個展を開催したり、文筆活動を行ったりしている。今では日本だけではなく海外でも有名なアーティストとなった。ちなみに彼女は、元お笑い芸人だ。

 

「無駄づくり」とはどんなものなのか

「無駄づくり」で公開されている作品が、どのくらい無駄なのかは動画を見てもらえれば一目瞭然だが、どんなものなのかいくつか紹介する。

 

・レバーを倒すと自動的に上司に体調不良メールを送信する2度寝マシーン
・「にゃーん」しか打てないキーボード
・オンライン飲み会緊急脱出マシーン
・Twitterで「別れました」とツイートされると光るライト
・札束で頬をぶたれるマシーン
・イヤホンを絡ませるマシーン

 

■「にゃーん」しか打てないキーボード

 

一見、何のことやらわからないかもしれない。これを入力している筆者も、なんだかわけがわからなくなってきているが、まあ、こういうものを日々考え、作っているのが藤原里菜なのだ。

 

「無駄づくり」のアイデア発想法は無駄じゃない

彼女の何がすごいのかというと、そのアイデアだ。普通ならば、無駄だと思えるものは真っ先にアイデアリストから消去すると思う。だって、何も解決されないアイデアを実現することこそ無駄だからだ。

 

しかし、そのアイデア発想法には無駄がない。それがわかるのが『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(藤原里菜・著/ダイヤモンド社・刊)だ。本書は、タイトルから分かる通り、彼女がアイデアを生み出す際のテクニックを71個解説している。

 

「無駄づくりをしている人のアイデア発想法なんて知ってもそれこそ無駄ではないか?」と思うかもしれないが、実はそんなことはない。アイデアが思い浮かばないとき、もっと斬新なアイデアが欲しいときなどにたいへん役立つテクニックが満載だ。

 

筆者がいくつか共感したテクニックを紹介していこう。

 

●「ダジャレ」から考える
ダジャレというのは、まさに「新しい言葉」をつくることだ。くだらないように思えるかもしれないが、そのものの本来の性質とは関係のない文脈で新しい言葉の組み合わせを考えることができるので、ダジャレはたいへんすばらしい。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より引用)

 

実は筆者は、企画を考えるときなどにダジャレで作ったタイトルだけを提出したら通ってしまったことが数度ある。本人はシャレのつもりだったのに、本決まりになってしまいたいへん苦労した思い出が……(内容まで考えてないから)。

 

●「アウトプットの言葉」を組み合わせる
アイディアを言葉から考えていくとき、まとめる言葉がたいへん重要な役割を果たすのだ。(中略)わたしはこれを「アウトプットの言葉」と呼んでいる。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より抜粋)

 

これは、企画を考えたときに、最後に何か単語を付け加えることでまとめるという技法。たとえば、イベント系だったら「●●フェア」や「●●祭り」、ノウハウ集なら「●●大全」「●●ガイド」、電子工作系なら「●●マシーン」「●●ロボ」のような単語だ。思いついたアイデアにアウトプットの言葉をくっつけてみると、意外と新鮮になることがあるという。なるほど。このアウトプットの言葉を多く持っていると、いろいろなアイデアに結びつきやすい。

 

●「感情移入」する
わたしは、知らない人が自分がしない行動をしていることに注目して、その人たちが抱えていそうな問題を、勝手に考えたりしている。(中略)また、無機物に惨めさを感じるときもある。鳥よけのために畑に吊されているCDを見ると、切ないような惨めな気持ちになる。CDたちはきっと音楽を聞いてほしいのに、まったく別の使われたかをされていてかわいそうだ。その惨めさを解消するにはどうすればいいだろうか。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より抜粋)

 

要は、自分以外の、人、動物、無機物の気持ちになってみるということだ。上の文章で藤原里菜は、鳥よけのCDに感情移入をしていた。そしてそこから思いついたのがこれ。

 

わたしが考えたのは、「畑に吊されたCDだけのクラブイベント」だ。吊されたCDたちを、一夜だけでも本来の用途として使ってあげたら、彼らも浮かばれるのではないだろうか。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より引用)

 

このアイデアを見たとき、筆者は不覚にもエモさを感じた。鳥よけとして余生を過ごしていたCDたちが、DJの手によって大音量で自分たちの音楽を奏で、それに合わせてオーディエンスが踊ったり歓声を送ったりしているところを想像すると、涙が出る。長年外に吊されていたために音飛びしていたりすることもあるだろう。しかし、それは魂のブレイクだ。こういうアイデアが思いつく藤原里菜、天才なのではないかと思った。

 

自分の堕落した感情もアイデアに結びつく、かも?

本書を読むと、彼女が常に何かを考え、それをアウトプットすることで次のアイデアを生み出しているのがわかる。つまるところ、いつもアンテナを張り巡らせ、考え、実行するということが大事なのかなと感じた。

 

人間は、普通に生きていると普通の考え方が身についてしまう。生き方はそうそう変えられないかもしれないが、考え方はいかようにも変えられる。見える世界を、ちょっとだけずらしてみて、自分の近くに引き寄せてみると、無駄なアイデアがいっぱい思いつくのではないだろうか。本書を読めば、「おなかがすいたけど食べるのめんどうくさい」という矛盾した感情から、何か無駄なアイデアが生まれるかもしれない。そう思わせてくれるだけでも、かなり良書だと言える。

 

 

【書籍紹介】

考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71

著者:藤原麻里菜
発行:ダイヤモンド社

開くたび、パッとひらめく思考全書!令和最強「鬼才」発明家の超技法!

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悲しみを乗り越えるため「次善の選択肢」を持つことの重要性−−『OPTION-B(オプションB)』

人生の中には、喪失を味わう瞬間も訪れます。大切な家族や友人やペットとの別れはとてもつらいものです。愛する存在を失ってひとりになったとき、人はどのようにそれを乗り越えていくものなのでしょうか。

 

 

別のプランを考える柔軟さ

『OPTION-B(オプションB)』(シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント・著/日本経済新聞出版社社・刊)は、突然やってきた孤独や悲しみを、どうやって対応し、乗り越えていくかということを、著者を実体験をもとに綴っている本です。

 

著者のシェリル・サンドバーグさんは、Facebook の最高執行責任者(COO)。愛する夫と子どもたちに囲まれ、仕事に打ち込む幸せの絶頂期であった彼女は、ある日突然、11年連れ添った夫の死に見舞われます。本書には、彼女の心の傷が少しずつ癒やされていく様子がていねいに綴られています。彼女が見つけた答は、タイトルにもなっている「オプションB」という考えかたでした。

 

オプションBとは、代替プランとも言えるようなもの。A案を実行することが無理になったのなら、B案を見つけ、それを楽しむ道だってあります。目的地への道が通行止めだったら、別の道を通って到着します。当然、人生にも同様に別の道があるわけで、この考えは、気持ちを少し楽にしてくれそうです。

 

失った関係を恋しがるということ

先日、友人が恋人に振られてしまいました。結婚まで考えた男性との交際が突然中断した彼女の喪失感は大変なものでした。最初のうちはどうしても別れを受け入れられず、彼に復縁を迫ったりもしたのです。

 

人は自分に訪れた別れに揺れます。納得して離婚したはずなのに、多くの人がそれを後悔するリバウンド期を味わうともいいます。もう戻ってはこない関係を恋しがり、失ったものを数えて嘆くのです。けれど喪失をしっかりと実感してこそ、次のステップに進めるものなのかもしれません。

 

嘆きの時期を超えて

人はすぐに気持ちを切り替えられるわけではありません。著者のシェリルさんも、時間がかかりました。もう彼はいないのだという現実に何度も直面し、そのたびに嘆き悲しんだのです。そしてその時期を経たうえでやっと、オプションBを生きることを考え始めました。

 

人生はすべてが思い通りになるわけではありません。納得がいかなくても、運命の残酷さに嘆いても、代替案を選ぶしかない時があります。愛する人を失っても、残されたものの人生は続くのだから、せめてそれを楽しく過ごしたほうが有意義なはずです。シェリルさんはオプションBロードを歩くためのガイドサイト(optionb.org)の運営に乗り出し、新しい道を歩み始めました。

 

人生での代替プラン

このオプションBという考えかたは、人生のさまざまなシーンで応用できそうです。たとえば恋人と別れた私の友人は、しばらく嘆き悲しんだ後は、新しい恋の相手を探すようになったのです。これも彼女にとってのオプションBなのでしょう。つらい現実をただ嘆くだけではなく、できることを探して行動することで、人生に前向きになれるのです。

 

そして、この本には興味深いデータが載っていました。人間の幸福度は、結婚をしてもそれほど上がらないというもの。幸福度がわずかに高くなるのは結婚式の前後だけで、それも1年もしないうちに元に戻ってしまうのだとか。逆に言えば、私たちは、日常を平穏に過ごすことこそが幸福なのかもしれません。そして、人生のハプニングに見舞われても、オプションBを見つけることで、幸福度をキープしていけるのかもしれません。

 

 

【書籍紹介】

OPTION B(オプションB)

著者:シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント
発行:日本経済新聞出版社

全米大ベストセラー! 失恋、挫折、人間関係のこじれ、仕事の失敗、突然の病、そして愛する人の死ーだれであれ、「バラ色」だけの人生はあり得ない。フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグは、休暇先で最愛の夫を突然失った。友人で著名心理学者のアダム・グラントが教えてくれたのは、人生を打ち砕く経験から回復するための、具体的なステップがあるということだった。回復する力の量は、あらかじめ決まっているのではない。レジリエンスは、自分で鍛えることができる力なのだ。人生の喪失や困難への向き合い方、逆境の乗り越え方を、世界的ベストセラー『LEAN IN』著者と『GIVE&TAKE』著者が説く。

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オリラジ藤森慎吾流「プライドレス」な生き方は殺伐とした現代人の心の癒しとなるか

昨年末から、やたらとネットニュースを騒がせているのが、オリエンタルラジオの藤森慎吾さんだ。

 

相方のあっちゃんこと中田敦彦さんと一緒に吉本興業を辞めることを決意(あっちゃんはシンガポールに移住するが、藤森さんは日本に残るらしい)。そうかと思えば、年末には結婚報道も出た。すぐに本人によって「フェイクっ!!」と否定されたが。

 

そんなお騒がせ男・藤森さんだが、こんなにも“人たらし”な人はなかなかいないんじゃないかと感じる。それほどまでに、魅力的な人だと思うのだ。取材先で数回お見かけしたことがあるだけで、お話したことはないのだけれども。

 

酸いも甘いも知り尽くした男のやさしさ

たとえば、これはよく知られていることだと思うが、藤森さんは女性の外見を絶対に悪く言わない。容姿をいじらない。この件に関して、藤森さんはこう述べている。

 

「女の芸人さんに対する弄りってすごく難しいじゃない? 相当技術がいること。そういうことって、極々一部の腕のある人がやることで、自分にはその技術がないから。ウケもしないし笑えないんだったら、ただの悪口じゃん。だからやっぱ言わないよ、それは」

(藤森慎吾のYouTubeチャンネルより)

 

つまり、自分には(容姿いじりをしても)面白くする腕がない。そもそも、そういうことは好きじゃないし、やろうという感覚もない。だから容姿いじりはしない。(芸人として笑いの)腕がある人たちはやっているが、それはしっかり笑いが成立しているからいいけれど。自分はその技術がないから、やらない。それだけだと言うのだ。

 

容姿をいじらないというスタンスは徹底しつつ、かといって容姿をいじって笑いにしている芸人さんを蔑んだりもしない。ちゃんと相手を立てる。つまり、誰も傷つけない発言である。

 

咄嗟の受け答えが「君、かっこうぃーね!」

ほかにも、ほんの些細な受け答えだったが、ずっと心に残っていることがある。それは、同じくYouTubeでのガンバレルーヤの二人との会話の中のワンシーン。

 

藤森「久々だよね、ガンバレルーヤ。元気してた?」

ガンバレルーヤ「きゃー。どっちだと思います?」

藤森「いやいや。何その楽しいクイズ」

 

藤森さんと一緒にいることでテンションが上がっているガンバレルーヤの二人が、やや面倒くさい質問をしたのだが、それに対する「何その楽しいクイズ」って返答よ……。こんな素敵な返しをする人、今まで見たことがない。なんだか感動してしまった。

 

ほかにも、すべての言葉の返しに愛があって、これは老若男女みんな惚れてまうやろ! と心底思った次第である。

 

藤森慎吾が愛される所以は「プライドレス」な思考にあり

武勇伝で一躍ブレイクし、その後低迷しかけたけれど、チャラ男キャラで再びブレイク。最近では、YouTubeでの活躍のほか、ミュージカルや声優にも挑戦している藤森さん。映画『えんとつ町のプペル』でのスコップ役も最高だった。西野(亮廣)さんが当て書きしたことも相まって、ご本人の良さが120%反映されていた。

 

そんな、最高で最強の人たらし・藤森慎吾が、人たらしたる所以はどこにあるのか。その答えは、彼の著書『PRIDELESS 受け入れるが正解』(徳間書店・刊)に書かれている。

 

「褒め言葉」をすべての行動の原動力とし、なんにでもチャレンジする。けれども、どれだけ褒められ、もてはやされても、「学ばせていただいている」という姿勢は忘れない。プラスな感情のリアクションは惜しみなくして、相手に気持ちよくなってもらう。なにより、笑顔でいること。

 

そして、本のタイトルでもある「プライドがない」ことを最大の強みにする。つまらないこだわりが捨てきれずに、思うように生きられない人が多い中で、ハッとさせられる思考ではなかろうか。

 

本書では、藤森さんのこれまでの人生において何度も壁にぶつかり、その都度乗り越えてきたエピソードをまじえ、現在の「プライドレス」な生き方に至るまでの半生が描かれている。でもだからといって、「プライドレス」な生き方を読者に強いることは決してしていない。

 

むしろ、なにかのインタビューで「本に書かれていることすべてを真正面から受け止め、そのまま取り入れるのはすごく無駄な努力だと思う。こんな考え方もあるんだ、くらいの気持ちで読んでほしい」というようなことを語っていた。どこまでもフラットで、相手の気持ちをラクにさせる人である。

 

とにかくストレスフルな世の中には、プライドレスな生き方こそ処方箋になるんじゃないか? ひそかにそう思っている。

(『PRIDELESS 受け入れるが正解』―おわりにーより引用)

 

年齢を重ね、それなりの立場になり、ついいろいろな世間体やプライドが邪魔をして生きづらい人にこそ、ぜひ藤森流・プライドレスな生き方を。

 

【書籍紹介】

PRIDELESS 受け入れるが正解

著者:藤森慎吾
発行:徳間書店

こだわらない、逆らわない、競わない、あきらめない…成功を呼ぶ「気くばり思考」。初めて明かす、過去、現在、未来。大ブレイク後に訪れた悪夢。そこからの再起。オリラジ藤森が何度も立ち上がることができたわけ。「チャラ男」がたどり着いた現在地。

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パワハラ、いじめ、引きこもり、過労死…「自己承認欲求」が災いを生む裏側−−『「承認欲求」の呪縛』

「2020年度SNS利用動向に関する調査」によれば、日本国内のSNS利用率は83%に上る。間接的な形であることはもちろんだが、一人ひとりのスマホユーザーがそれぞれSNSを媒体にかなり多くの人たちとつながっている事実をうかがわせる数字だ。

 

自分はネット上でどう受け入れられているのか

ちなみに筆者はLINEとFacebook、Twitter、そしてInstagramを使っている。LINEはグループ内の特定メンバー間でのやりとりに限られるので少し性格が違うだろうが、他の種類のSNSで関わるのは実際に会ったことがない人たちが圧倒的に多い。使い始めのころは発信するだけである程度の満足感を得ることができた。でも、発信した情報がどのように受け入れられているのか確かめたくなる時期が必ず訪れる。「いいね!」の数が気になるし、何のリアクションもないまま書き込みをスルーされると、自分という存在の一部分を否定されたように感じてしまう。

 

筆者はいわゆるエゴサにもハマった。いや、ハマり続けている。アマゾンで、自分の著書や訳書につけられたコメントを読みだしたら止まらない。自分の仕事、ひいては自分の存在はネット上でどう思われているのか。ペンネームや著書名を検索してヒット数が多ければ当然うれしいし、少なければ漠然とした不安に包まれるし、ネガティブなコメントが目に入ればしっかりヘコむ。

 

認められた喜びが重圧に変わる

「承認欲求」の呪縛』(太田 肇・著/新潮社・刊)は、SNSというコミュニケーション世界で誰かに認められたい心理とそれに基づくさまざまな行動をつまびらかにしながら背景を探り、社会全体に当てはめて考察していく社会心理学的なアプローチの一冊だ。立脚点として、まえがきに記された一文をまず紹介しておきたい。

 

人は認められれば認められるほど、それにとらわれるようになる。世間から認められたい、評価されたいと思い続けてきた人が念願かなって認められたとたん、一転して承認の重圧に苦しむ。

 

『「承認欲求」の呪縛』より引用

読み進んでいって明らかになるのは、ネットにおける承認欲求が諸刃の剣であるという事実にほかならない。

 

どんなことをしてでも認められたい人たち

認められたい人たちは意外にも身近に、そして想像するよりはるかに多く存在する。Facebookを使っている人は、2~3日分の書き込みをさかのぼって読んでいただきたい。ひたすら自慢をする人、かまってほしい人、そして褒めてもらいたい人がすぐに見つかる。

 

バカッターと形容される人たちが続出した時期がある。炎上系・迷惑系ユーチューバーという人たちも、同じくくりでまとめることができるはずだ。こうした人たちに共通するのは、とにかくウケたいという気持ちだ。「ウケたい」――それはもちろん、認められたいという表現に置き換えることができる。本書の目次を見てみよう。

 

第一章 「承認欲求」最強説

第二章 認められたら危ない

第三章 パワハラ、隠蔽、過労死……「呪縛」の不幸な結末

第四章 「承認欲求の呪縛」を解くカギは

 

SNSに依存するあまり、リアルな社会とネット空間の境界線があやふやになってしまう人がいる。そういう状態に陥るのは異常なのか。この本は、そのあたりのプロセスについてもていねいに、そして深く掘り下げていく。

 

承認欲求の危うさ

著者の太田氏は、承認欲求の危ない側面を次のような言い方で説明している。

 

それは注目されるための自己顕示や乱行などより、ある意味もっと危険で、いっそう深刻な影響をもたらす。にもかかわらず周囲も、本人もそれが承認欲求のなせる業だということに気づかない。

 『「承認欲求」の呪縛』より引用

 

こうした意識がもたらすものは何か。太田氏は、スポーツ界で続々と発覚した暴力やパワハラ、社会問題化しているいじめや引きこもり、深刻な過労自殺や過労死、さらにはなかなか進まない働き方改革を実例として次々に挙げていく。著者が指摘するように、承認欲求とは誰しもが抱くごくあたり前のものでありながら、実は自覚できないままどこまでも肥大していくモンスターなのかもしれない。

 

コロナ禍の今だからこそ

あとがきに書かれた一文を読み、考えさせられている。

 

グローバル化が進むなか、わが国では逆に狭い共同体にとらわれる傾向がむしろ強まっているようにみえる。仲間うちでは絶対に認められなければならない、そこで認められさえすればいいという感覚だ。

『「承認欲求」の呪縛』より引用

 

個人レベルでも、インターネットがグローバル化の一端を担っていることはまちがいない。遠い国の図書館に所蔵されている本を読み、ウェブカムを通して行ったことのない場所の風景をリアルタイムで見ることもできる。コミュニケーションの速度と深度も、SNSによって劇的に変化した。

 

しかし、「認められたい」気持ちが強すぎるあまりこうした便利な環境が負のツールと化し、結果として想像もできなかったような狭い場所に自分を追い込むようなことになったら、皮肉などというマイルドな表現では形容しきれない。特におうち時間が長くなっている今は、ネットへの依存度が高まりがちだ。そういう状況だからこそ、他者とのかかわりを確認する意味でじっくり読むべき一冊であることを強調しておきたい。

 

 

【書籍紹介】

 

「承認欲求」の呪縛

著者:太田 肇
発行:新潮社

「嫌われたくない」「認められたい」が破滅を招く! SNSでは「いいね!」を求め過ぎ、仕事では「がんばらねば」と力んで、心身を蝕む人がいる。その悪因と化す「承認欲求」を徹底解剖し、人間関係や成果を向上させる画期的提言。

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人生に絶望した時は、すぐに「立ち直ろう」としない! 絶望との上手な付き合い方とは?−−『絶望読書』

あなたは「絶望」を体験したことがありますか?

 

突然目の前が真っ暗に感じてしまうような出来事や、終わりが見えない経験、大切なナニカを失ってしまったこと、自分ではどうにもできないことなど、大なり小なり経験したことがあるという人はいるはず。

 

一概に「これが絶望です!」とは言えないし、人によって絶望の度合いは違うと思いますが、できれば経験したくないことですよね。そんな予告なしにやってくる「絶望」とどう向き合うのか、そして絶望がやってきた時に支えになるのはどんなことなのか? そんな知りたいような……知りたくないことが書かれた『絶望読書』(頭木弘樹・著/飛鳥新社・刊)をご紹介します。

 

絶望には「読書」がいい?

『絶望読書』というタイトルから、「そんな本、わざわざ読まなくても……」と言われてしまいそうですが、この本は絶望するために読む本でも、絶望から立ち直るノウハウが書かれた本でもなく、「絶望の期間の過ごし方」が書かれた一冊。サブタイトルにも「〜苦悩の時期、私を救った本〜」とあったので、「よし、これを読んで暗い気持ちになることはないんだな!」と読み始めたのでした。

 

自分の人生を振り返ってみても「絶望した」なんて経験は正直ありません。しかし、自分の大切な人が絶望していた時に何もできず、なんと声をかけたらいいのか、何をすれば喜んでくれるのか、どうしたら前を向けるのか、次に進めるのか、と勝手に色々とやってしまった経験があります。ポジティブ人間な私は、大切な人が絶望している時、「なんとかなるさ! ハハハ!」なんて明るく振る舞ってしまったり、「元気だそぉー!」なんて励ましたりしちゃったのですが、『絶望読書』の著者である頭木さんによると、絶望している時には、共感できる絶望の本や映画との出会いが心を救ってくれるとのこと。

 

絶望したときには、まず絶望の本がいいのです。

明るい、ポジティブな本がダメというわけでは、もちろんありません。

ただ、それは立ち直りの段階に入ってから、はじめて心に届いて、励みとなるものなのです。

まだ「絶望の期間」にあるときには、まぶしすぎて、かえって悲しくなり、心の負担となりかねません。

 (『絶望読書』より引用)

 

著者の頭木さん、どうしてこんなことを言えるのか? というと、青春真っ只中の大学3年生の時に難病にかかり、そこから13年間の闘病生活をされています。「もう病気は治りません」と医師から言われ、まさに絶望を味わった方なのです。そんな頭木さんが、そんな時期どんな言葉に救われたかというと絶望名人とも呼ばれているカフカの言葉だったそう。

 

そんな経験も踏まえて書かれているので、元気な方はもちろん、今まさに絶望を味わっているという方にも手に取ってもらえる一冊ではないかと思います。

 

なんでもかんでも読んでもいいわけではない

『絶望読書』は、大きく二部構成になっていて、第一部では『絶望の「時」をどう過ごすのか?』を、頭木さんの経験から「絶望」を紐解く内容になっています。私は「絶望ってなんですか?」という図太い人間なので「こんな感情なのか」と新しい視点を知り、過去にしてしまった自分の行いを反省し、いつか来るかもしれない絶望の正体を知ることができました。今、絶望真っ最中という方は、「こんなにも気持ちを理解してくれる本はなかった!」と感じられると思うので、一部だけでも読んでみるのをおすすめします。

 

第二部では『さまざまな絶望に、それぞれの物語を!』と、太宰治、カフカ、ドストエフスキーの小説、ドラマや映画さらには落語などの絶望の種類に合わせて、さまざまなコンテンツが紹介されています。読書じゃなくても寄り添ってくれる物語を紹介してくれているので、活字を読めるメンタルではない時や、動画をみたい時にも対応できます。

 

さらに番外編として、「絶望しているときに読んではいけない本」として、イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティ『七階』という短編小説が紹介されています。「絶望していない人はぜひ」とのことだったので試しに読んでみたところ、世にも奇妙な物語に出てきそうなお話で、読了後5分くらい何もできなくなりました(笑)。本当に心から元気なときに読むことをおすすめします!

 

絶望からすぐに立ち直ることが正解じゃない

絶望していると、そこから立ち直らなくては! とか、少しでも前向きにならなくては! と思ってしまう人が多いかもしれませんが、焦る必要はないそうです。著者の頭木さんは、「最後に」でこのような言葉を残しています。

 

立ち直りの道がまったく見あたらず、閉じ込められた洞窟で、どこからもわずかな光さえさしてこなくて、どちらに進んでみればいいかもわからないような心境にあるかもしれません。

でも、肝心なのは立ち直りの道を早く見つけることではありません。そこをどうかあせらないでください。

肝心なのは、本書の中でも何度も書きましたが、「絶望の期間」をいかに過ごすかということです。

「絶望読書」は必ずあなたの力となるはずです。

 (『絶望読書』より引用)

 

『絶望読書』を読み終わって「いつ絶望と遭遇するかわからない」という前提で生きていなかったなぁと気がつきました。なるべく避けたい、絶望とは無縁だ! と思っていても予告なしでやってくるのが絶望です。そんな時に寄り添ってくれるような絶望の物語(本や映画や音楽など)を自分の中にストックしているかどうかで、乗り越えられることもあるかもしれないと感じました。

 

辛いことがあっても前を向いて立ち向かう、ポジティブに生きることが正解で、ネガティブな考えはNGだよ! とされてしまっている今の世の中で、このことを知っているかどうかは生きていく上で大事だと思うのです。絶望なんてないわ! と、心では泣きながら生きている方は、背負ってきたいろんなものをおろして、一度「絶望」と向き合ってみるのはいかがでしょうか?

 

【書籍紹介】

絶望読書

著者:頭木弘樹
発行:飛鳥新社

悲しいときには、悲しい曲を。絶望したときには、絶望読書を。

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「バカ」な考えや振る舞いから抜け出す方法−−『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』

信じられない。スーパーコンピューター富岳の飛沫拡散シミュレーションをはじめとする科学的エビデンスが次々と提出され続けている今も、マスク不要論を主張する人たちがいる。アメリカでは“憲法で保証された権利”まで持ち出し、マスクをしないことの正当性を攻撃的なやり方でアピールするグループもいまだに存在する。本当に信じられない。

 

過ぎたるは……

一方、OCD(強迫性障害)めいた一面がある筆者の行動様式は正反対。外に出たらマスクは可能な限り着けたままでいることはもちろん、10分に1回くらい除菌スプレーで手指を消毒する。マスク着用も、手指をまめに消毒する行いも間違ってはいないはずだ。ただ、やりすぎと感じる人がいることはわかっている。周囲に対しても自分とまったく同じようにふるまうことを期待すれば、問題が起きることもわかっている。だから筆者は、自分が設定した基準は自分だけにとどめることを絶対のルールにしている。

 

マスク不要論者と筆者、それぞれの行動の属性は正反対だが、根源はよく似た種類の極端さなのではないか。こうしたものが生まれる第一の原因は、人それぞれの独自のバイアスだろう。それに加わるのが、ある意味微視的な思考回路だ。思い込みや妄信という言葉で置き換えることもできるかもしれない。

 

あなたの周りのバカな人たち

すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』(安達裕哉・著/日本実業出版社・刊)は、誰の中にもあり、程度の差こそあれ誰でも陥りがちなバイアスとの向き合い方について記された本だ。「はじめに」の文章から紹介する。

 

仕事をしていると、少なからず「こいつ、バカだなぁ」と感じることがあるでしょう。

・人の話を聞かない上司

・仕事をしない同僚

・アドバイスを聞かない後輩

・無茶な要求を出す取引先

こうした状況は、職場を憂鬱にし、仕事を退屈な苦行に変えてしまいます。

『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

バカな人たちの生息域は職場に限らない。日々の生活のありとあらゆるシーンに現れる。

 

与えられた情報に対する姿勢

バカとはどういうことなのか。本書でも触れられているが、養老孟司氏の『バカの壁』では〈「バカ」というのは「与えられた情報に対する姿勢」の問題である〉と定義されている。そして安達氏は、自分が知りたくないことに対して自主的に情報を遮断してしまう姿勢が「バカの壁」なのだと語る。これに気づいた後、安達氏は言葉を交わす相手の真意を必ず確かめるようになった。

 

「聞くこと」「話を吟味すること」が「バカ」から抜け出す最もよい方法だと思ったからです。すると、あらゆる人は「自分の見えている世界の中では合理的な選択をしている」ことがわかってきました。「バカ」は人の属性ではなく、考え方の属性なのです。

『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

存在しているのはバカな人たちではなく、特定の状況下でズレが感じられるバカな考え方や振る舞いなのだ。原因がわかっているなら、相手がどんな人でもある程度までは理解できるようになる。知的であるためには、まず向き合うべきものをしっかりと把握する、つまりまず相手を「受けとめる」ことが必要だ。

 

知的な関係性を築くために

章立てを見てみよう。

 

第1章 すぐに決めつける、耳をふさぐ「バカな振る舞い」
第2章 「なぜ、バカな振る舞いをしてしまうのか」を行動経済学・心理学から見る
第3章 どうすれば、「バカな振る舞い」をやめることができるのか?

 

三段論法的なわかりやすい流れで話が進んでいく。実例を通してバカな振る舞いをカタログ化し、原因を内側から考察し、それを避けるための具体的な方法を示していく。筆者は自分のことを決して切れ者とは思わない。でも、それと同時に一定水準のインテリジェンスを有している人間であると信じたい。まずは、バカな考えや振る舞いが頭をもたげる瞬間は誰にでも訪れるという事実を認めることが、知的な自分というものへ近づく最初の一歩となるようだ。

 

時々見える自分の姿

バカな考えや振る舞いに踊らされることなく、周囲の人たちにとっても知的な存在であるためにどうしたらよいのか。目的を達成するためのヒントとして、第1章の冒頭で紹介されている最初のサンプル「わかりたくない人」の定義を記しておく。

 

つまり、自分の既成概念を優先し、事実を受け止めることができない。これが「わかりたくない人」だ

 『すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人』より引用

 

さまざまな方向と深度でバカな考えや振る舞いに関する考察が展開されていく。唖然としたのは、自分としか思えない誰かがときどき登場することだ。「決めつける」と「受けとめる」という行いを通して自分を客観視するための、とてもよいきっかけとなりそうな一冊。

 

 

【書籍紹介】

すぐ「決めつける」バカ、まず「受けとめる」知的な人

著者: 安達裕哉
発行:実業之日本社

自分が絶対に正解と思っている人には要注意!! 行動経済学、心理学をもとにした「バカな振る舞いをする人」の傾向と対策&自分がそうならないための方法。

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もう動画を観ることに飽きた。そんなあなたに−−『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』

withコロナが続くこのごろ。周囲からは「もう動画を観るのも飽きてしまった」「家の中でどう過ごしたらいいのかわからなくなってしまった」などという声も聞こえてきます。けれどせっかくなら、その時間を自分のために有意義に使いたくありませんか?

 

 

タイトル買いしてしまう本

「ジャケ買い」という言葉があります。表紙にひとめ惚れし、中を読まないまま衝動的に購入することをいいます。それと似た言葉で「タイトル買い」もあり、本のタイトルにシビれ、どんな内容のものかもわからないまま購入してしまうことがそれです。今回取り上げる『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(ジュリア・キャメロン・著/サンマーク出版・刊)もそうです。

 

何かを始めたい人たち

この本は2001年に出版されたものですが、根強い人気で、続編も2冊出ています。なにしろタイトルがパワーワードすぎるのです。タイトルだけで、励まされ、癒されてしまう人もきっといるはずです。

 

家にこもりがちで、時間ならたくさんあるという人が多いのではないでしょうか。今ならば、ずっとやりたかったことができるかもしれない。そう感じている人もいます。動画鑑賞するだけの日常に飽き飽きした人の中には、前から興味を持っていた語学の学習や楽器練習を始める人が出てきました。

 

検索すると、動画サイトには語学や楽器のレクチャーコンテンツがたくさんあり、自分で何かをしたくなった時の強い味方になってくれます。その途端、今まで観ているだけだった動画サイトは、無料の学習ツールに変化するのです。

 

ずっとやりたかったこと探し

やりたいことがある人は、動画を検索すればそれに関連する情報を得ることができます。しかし「自分のやりたいこととはなんだろう?」と言うところで止まってしまう人がいます。いざ自由時間を与えられると、自由慣れしていないため、何をしていいのかわからず戸惑ってしまうのです。

 

この本は、そんな人たちのための自分探し本です。12週間にわたってこちらに様々な質問が投げかけられる仕組みになっており、やりたいこと探しを手伝ってくれるのです。いろいろなワークが収録されていますが、その中でも特に評判がいいのが「モーニング・ページ」というものです。

 

自分と対話できるモーニング・ページ

「モーニング・ページ」とは、朝に何かを書くということではありません。毎日、ノートに3ページずつ、何かを書くことです。何を書いてもよく、何も思い浮かばないときは、「何も思い浮かばない」と書けばいいのだそうです。

 

この作業をすることにより、自分に向けられる批判的な考えから離れ、創造に没頭できるようになるのだとか。実際、何年も前に筆者も試したことがありますが、子育て中だったので、まず子どものことを案じ、それから今日は天気がいいから洗濯しなくてはなどと家事が気になり、それらを書きました。そしてたくさんの雑念が自分を覆っていることに気づいたのです。

 

夢をかなえる3ページ

3ページも自分の思いを綴ることは、慣れていない人には大変かもしれません。けれど書き続けることによってクリエイティブな部分が刺激されるのか、それを続けた人のなかには、詩を書くようになったり作曲をするようになる人が続出したそうです。そして、前からやりたかったことを思い出した人もいました。

 

ノートに向かう集中した時間は、自分自身との深い対話をもたらすのかもしれません。本書では、モーニング・ページは「内的な世界へ入っていく通路」であり「自分の内部の知恵の源」とつながるものだと説明されています。雑念を払った先には、自分の純粋な気持ちや、ずっとやりたかったことが現れるのかもしれません。

 

【書籍紹介】

 

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

著者:ジュリア・キャメロン
発行:サンマーク出版

毎日の繰り返しに、埋もれた自分。そろそろ起こしてみませんか?忘れた夢を取り戻す12週間の旅。

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「頑張らない、ガマンしない、人に頼る」心屋仁之助、最後の著書『ずるい生き方』はコロナ時代のニューノーマルな生き方だ!

私には尊敬する先輩がたくさんいるが、皆が口を揃えて言うのが「好きな人としか会わない」ということ。

 

人生の時間は限られているのに、なぜ一緒にいたくない人と過ごすの? 自分とは合わない人、苦手だと感じる人、むしろ嫌な思いをさせられている人と付き合うなんて、時間の無駄よ。そんなふうにサラッと言ってのける。

 

もっと突き詰めている人は、「仕事もプライベートも、楽しいことしかしない」と宣言し、実際好きなことだけをして、毎日が本当に楽しそうだ。

 

そんな人たちを見て、「いいなぁ。でも私には無理だなぁ」などと思っていた私が、先日吸い寄せられるように手にとった本が『ずるい生き方』(心屋仁之助・著/かんき出版・刊)だった。

 

心屋仁之助の集大成である『ずるい生き方』

『ずるい生き方』は、大人気カウンセラー心屋仁之助さんの最後の著書として、発売前から話題だった。そういえば、仁さんの著書は、過去に一度コラムで取り上げたことがある。いつも周りを気にして、ついつい頑張ってしまう人は、もう少し”いい加減”に生きてみよう、という本だった。

 

【関連記事】
“頑張れ!”や“ちゃんとしなきゃ”に疲れたら――2017年は「適当」で「いいかげん」に生きてみよう

 

そして今回の仁さん集大成である『ずるい生き方』は、「頑張らない、ガマンしない、人に頼る。好きなものだけ選んで生きていこう」、つまり、人から「ずるい!」と言われるような生き方をしよう!と提案している一冊だ。

 

目次をざっと見てみると、「好きなことだけしてイヤなことはしない」「自分ファーストで生きる」「頑張らなくてもお金をもらう」「できないことはやらなくていい」「他力に任せる」「嫌いなヤツの真似をする」「無責任に生きる」……あー、そんな人生だったら素敵だけど、真似したいけど、私には無理無理無理無理! という見出しばかり。

 

実は、すでにこの意識こそが自分自身を苦しめているということに、すべてのページを読み終わってから気づくこととなる。

 

「頑張る教」は、自分も周りも苦しめる!

頑張ることは素晴らしい。頑張って仕事をしたからこそ、良い結果に結びつく。頑張るは正義。最近でこそ、「そんなど根性精神は古い」と言われつつあるが、昭和な私にはまだまだそんな固定観念がはびこっている。

 

でもそれって、日本で一番怖くて、もっとも迷惑な「頑張る教」だよ? と仁さんはズバリ切り込んでくる。

 

「頑張る教」とは、日本人の多くが自然に入ってしまう宗教で、「頑張る」「ガマンする」「私がやる」を信条として「頑張らない」「ガマンしない」「人任せにする、迷惑をかける」ことを罪とする宗教です(笑)。

(『ずるい生き方』より引用)

 

つまり、「仕事も恋愛も子育ても、頑張って頑張って、他人の分までギリギリまでやってしまう」ことで、他人にも頑張ることを押し付けてしまう。勝手に頑張って、頑張っていない相手に勝手にイライラして。私ばっかり頑張ってるのに! と怒り心頭に発する、という負のスパイラルだと。

 

これはもう、まさに最近の私だ。仕事もして、家のこともして、子どものために習い事の送り迎えから何から何まで全部こなして。で、子どもたちは部屋を片付けもせず、のんきにYouTubeを見てる。なんでママばっかり頑張らなきゃいけないの? と涙すら出ていた。

 

この「頑張る教の熱狂的な信者状態」から抜け出すことこそ、「ずるい生き方」なのだと仁さんは語る。

 

打開策はズバリ、徹底して人に頼ること。だって、人に迷惑をかけまいと一人で全部こなそうと頑張っちゃってるということは、実は他人の力を信用していない、周りのやる気を奪っている状態なのだから、と。

 

ああ、そうだった。子どもたちは、「お手伝いできることな~い?」と聞いてくれていた。でも、お願いするには、その前段階から準備しないと任せられないし、反対にややこしいし、簡単にやってもらえることだけでとりあえず……などと、「手伝いたい気持ち」を無下にしてきてはいなかっただろうか。その結果、「ママだけが頑張る」のが当たり前になってしまったのではないか。

 

自分が頑張れば頑張るほど、周りは何もしなくなるんだよ。(にこにこ)

 

そう言って微笑む仁さんの姿が目に浮かぶ(実際にお会いしたことはないけれど)。『ずるい生き方』のどのページを開いても、仁さんのやさしくも鋭い言葉が、私の胸に深く突き刺さってくる。

 

「ずるい生き方」ができる人になろう

2020年は新型コロナウイルスの影響で、さまざまなことが一変した。当たり前だったことが当たり前じゃなくなり、新しい生活様式なんてのが叫ばれるようになった。

 

そんな今だからこそ、心屋仁之助がずっと前から言い続けてきた「頑張らないで、サボって、好きなことだけやろう」というずるい生き方が、これからのニューノーマルなのかもしれない。

 

さて、まずは手始めに、罪悪感でなかなかできなかったことからトライしてみようか。ミスドのドーナツ、1つに選べないときは2つ買って食べちゃおう。休みの日は、一日中家にいてぐーたらしちゃおう。手が荒れてるから、食器洗いは家族にお願いしちゃおう。こうして書いてみると、ちっちゃいことに罪悪感を抱いていたのだな、私。

 

そして徐々に、本当にワクワクするやりたい仕事だけに絞っていこう。好きなことだけをする人生に変えていこう。「頑張る教」信者の皆様、自分も周りもハッピーになるために、仁さんの「ずるい生き方」を実践していこうではないか。

 

【書籍紹介】

ずるい生き方

著者:心屋仁之助
発行:かんき出版

がんばらない、ガマンしない、人に頼る。でも不思議と愛される!あなたの人生を変えるずるい成功法則教えます。

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SNS疲れを吹き飛ばす、ある”つぶやき”ーー『生き辛いOLですが自己肯定感を高めたら生きるのがラクになりました。』

人のSNSのキラキラ投稿を見るたびに「私はあんなにステキじゃない」と落ち込んでしまうことがあります。人と自分を比べてめげそうになった時、一瞬でその気持ちを180度変えてくれる魔法の呪文があるといいます。

 

SNSは実はかなり気を遣うもの

SNS疲れとは、SNSによって疲れてしまう現象を言います。SNSではただ単に投稿するのではなく、これを読んだ人がどう思うか、いやな思いをする人はいないかということにも気を配らなくてはなりません。また、友人知人の投稿もこまめにチェックし、近況を把握しておく必要がありますし、自分の投稿に誰かがコメントしたら、返信も書かなくてはなりません。

 

一時期のように、「いいね!」の数を気にする人はだいぶ少なくなりましたが、人の投稿を読んでモヤモヤしてしまう人はまだまだ大勢います。誰かが成功したり幸せになっている姿を見ると、おめでとうと思う一方で、うらやましい、悔しいという気持ちを抱いてしまうことがあります。特に、自分が悩みやトラブルを抱えている時は、他の人の幸せを妬ましく感じやすいのかもしれません。

 

SNSに落ち込む人たち

コミックエッセイ『生き辛いOLですが自己肯定感を高めたら生きるのがラクになりました。』(あかり*生き辛いOL・著/SBクリエイティブ・刊)にも、SNS疲れの話が出てきます。SNSを見ると不安になったりみじめな気持ちになる場合、その原因はすべて「他人との比較」にあるというのです。

 

本書は、自らを「生き辛いOL」と称するあかりさんが書いたもので、彼女自身がどのようにして落ち込みから気持ちを切り替えてきたかが綴られているのでとても具体的です。あかりさんはSNS疲れが起きるのは、そこに自分に足りないものを見つけてしまうからだと書いています。

 

無意識に人と背比べをしてしまう

世界中の人が投稿しているのですから、あらゆる分野で自分以上の人の姿が目に入ってしまうのがSNSで、上を見ればきりがありません。人と争う気持ちがなくても、人間は無意識に人と自分とを比較してしまうものなのかもしれません。

 

落ち込むきっかけはいくらでもあります。SNSで他の人の私生活が視覚化されたことで、一瞬で勝ち負けが見えることもあります。自分より広い部屋に住み、自分より高価そうな食器で、自分より高そうな食材を食べている……など、敗北を感じる機会がSNSを始める前よりずっと増えているのです。

 

SNS疲れを吹き飛ばす魔法の呪文

著者のあかりさんは、本の中で、SNS疲れが起きた時のための魔法の呪文を伝授してくれています。それは「幸せだなあ」とつぶやくこと。

 

SNSを見ている時は、他の人が持っていて自分が持っていないこと、つまり足りないところにばかり目がいきがちですが「幸せだなあ」とつぶやくと、自分が持っていることのほうに目が向くのだそうです。

 

たとえば、自分より高級そうな食事をしている人を見てうらやましく感じた時も、「幸せだなあ」とつぶやけば、「なぜ幸せなのか」とその理由を自然と考えるようになるのだとか。そして「自分は今日も美味しくごはんを食べた。それで十分に幸せである」というふうに満足感を得ることができるというわけです。これはとても平和な考えかたで、確かに気持ちがラクになりそうです。

 

このような「自分はこのままでいい」という、ありのままを認める感情を自己肯定感というのだそうです。SNSの「いいね!」の数にこだわり、承認欲求が強かった今までのネット社会は「みんな違ってみんないい」というような温かみがあるものに変容しつつあるのかもしれません。

 

【書籍紹介】

生き辛いOLですが自己肯定感を高めたら生きるのがラクになりました。

著者:  あかり*生き辛いOL
発行:SBクリエイティブ

自分が嫌い、自信がない…ソレって自己肯定感低いせいかもよ…!? 自己肯定感の高め方がまんがでわかる。

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この「世間」に疲れた! と思った時に読みたい『世間とズレちゃうのはしょうがない』

今年に入ってから、「常識」とか「世間」を気にする人が増えたように思います。私は趣味で、喫茶店などにあるお冷の写真を集めているのですが、コロナ禍で今までのように写真を撮ってSNSにアップしたら世間様から何か言われてしまうのではないか……なんてことを考えてしまい、他のことまで行動が制限されてきて、ふと「私は何に恐れているんだ?」と思うようになりました。マスク・手洗い・うがい・三密を避けるなどの感染対策をすることは大前提ですが、何に恐れているのかわからなくなってきてしまったのです。

 

そんな感情を持ちながら『世間とズレちゃうのはしょうがない』(養老孟司、伊集院 光・著/PHP研究所・刊)を読み始めると、二人の対談の中に大事なキーワードがたくさん隠れていて、「私は世間の目を気にしすぎて疲れていたのかもな」と少しだけ気楽になれました。今回は、ちょっとこんな世間に疲れてしまった人におすすめしたい一冊をご紹介します。

養老孟司さんと伊集院 光さんがおしゃべりしている本

世間とズレちゃうのはしょうがない』は、440万部を売り上げた『バカの壁』(新潮新書)の著者である養老孟司さんと、テレビやラジオで人気の伊集院 光さんが対談している一冊です。

 

最初はどうしてこの二人? と思ったのですが、伊集院さんは養老さんの著書である『半分生きて、半分死んでいる』(PHP新書)の文章を読んで「世間からズレている」という共通点を見つけたのだとか。一体どんなズレだったのでしょうか? 伊集院さんは「はじめに」で以下のように書かれています。

 

僕は「風体ほかの影響でどうしても世間とズレてしまうことに怯えながら、どうにか修正を試みるも、どうにもならず結果大幅にズレたままだが、今はなんとか調整しつつ生きている」。先生は、とっくの昔に「自分が世間とズレていることは分かっている。しょうがないと開き直って、開いた距離感で世間を冷静に見つけている」。この差は大きいです。

 (『世間とズレちゃうのはしょうがない』より引用)

 

その差を対談しながら埋めていくので、どんな人が読んでも「なるほど」と思える部分が出てくると思います。

 

本の構成としては、伊集院さんが養老さんに色々と質問を投げかけながら対談が進んでいくのですが、養老さんがコレという明確な答えを提示する対談にはなっていません。「〇〇なんじゃない?」「私はこういう経験をしたよ」「僕もそう思う時がありました」とおしゃべりしている様子が楽しく、ラジオを聞いているように対談が進んでいきます。

 

0100の世界になっていない?

山の中で暮らす仙人なら別ですが、世間で生きていると常識やルールが生まれてきますよね。『世間とズレちゃうのはしょうがない』の中でも、80代の養老さんがコンビニでタバコを買う時に年齢確認をさせられることに対して、「どう見たって間違わないのに……」と話します。それに対して、伊集院さんはこんなことを返していました。

 

みんなまじめというか、「〇か一〇〇か」なんでしょうね。僕もこの〇、一〇〇が自分を生きやすくしてくれるという憧れがずっとありました。なんだかよく分からない基準ではじかれたり嫌なことをされたりするぐらいなら、ルールをちゃんと言ってくれれば、それに従うか従わないかを自分で決める、と思っていましたから。

でもどうやらそれは無理っぽい。そんなすべてのケースに当てはまってストレスを起こさないような精巧なルールはないということが、この歳になって分かってきました。

 (『世間とズレちゃうのはしょうがない』より引用)

 

この会話を読んで、「私は何に恐れているんだ?」と思ったこととリンクしました。今年に入ってから特にですが、常に「0か100か」を問われている感覚になっていたのだと腑に落ちたのです。〇〇しなければいけないとか、〇〇じゃないとダメなど世間のルールに監視されているような気持ちになっていたんだなぁ〜と自分を俯瞰できるようになりました。

 

最低限のルールは守りながらも、自分で選択し、世間と付き合っていかないと余計なことまで気にしてそれがストレスになってしまいますからね! 恐れるのはやめよ〜、だって無理だもん。と、100でも0でもなく30くらいの気持ちでいることを大切にしようと思います。

 

「みんな同じ」はいいこと?

「世間」にはいろんな人がいて当たり前ですが、もしその世間にいるモノが全て統一されてしまったらどうなるのでしょうか? 私自身、そんなことを考えたこともありませんでしたが、養老さんは最後にこんな言葉を残しています。

 

いろいろな人がいるという「実感」が欠けると、統一しようという世間になります。言葉がそうですね。日本語はさまざまです。でも「正しい日本語」と言いだすと、方言は消されてしまいます。いわゆる標準語だけの世界と、方言のある世界と、さて、どちらが豊かな世界でしょうか。全員が違う言葉を話すのがバベルの塔の世界です。それは困る。でもAIの世界は、実は「みんな同じ言葉」ですね。

今われわれに突きつけられている問題の一つは、ここでしょ。全員がコンピューター語を話すなら、さぞかし理性的な世界になるんでしょうね。そのときに皆さんはどこにいるんでしょうか。せめて一度は本気で考えてみていただきたいと思います。

 (『世間とズレちゃうのはしょうがない』より引用)

 

どうしても「世間」とか「みんな」と一言で括ってしまいがちですが、そこにはいろんな人がいる、動物も自然もあるということを忘れてしまいます。最近では、自分の常識=世間の常識と思っている人も多いので、自分も気をつけようと思っています(笑)。

 

2020年、色々と無理して頑張ってきた人は、『世間とズレちゃうのはしょうがない』を読んで一度立ち止まってみるのも良いのではないでしょうか。他にも、養老孟司さんが大好きな昆虫の話や、伊集院さんが見るお笑い芸人の話など、様々な視点から世間を読み解いてくれています。私もまた疲れたなぁ〜とか、世間って辛いわぁ〜と思ったらこの本を開いて、立ち止まる時間を作ろうと思ったのでした。

 

【書籍紹介】

世間とズレちゃうのはしょうがない

著者:養老孟司 , 伊集院 光 
発行:PHP研究所

世間からはじき出されないことを願う理論派・伊集院光と、最初から世間からはみ出している理論超越派・養老孟司。博覧強記でゲーム好きという共通点がある二人が、世間との折り合いのつけ方を探ります。

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もう「将来の夢は?」なんて聞けない。紀里谷和明が全人類に問いかける一冊『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』

先日、元SMAPのメンバーだった森 且行氏が、悲願のオートレース日本一を獲得したというニュースが飛び込んできた。私の青春であり、永遠のアイドルである森くん。SMAPを脱退するとき、他のメンバーと「アイドル、オートレーサーと進む道は違うけどお互いに日本一になろう」と約束したことを、24年かけて叶えてくれた。これ以上、胸アツなことがあるだろうか。

 

やはり「夢」は、いくつになっても持ち続けていたい。「夢」があるから、毎日頑張れる。

 

無論、そのとおりだ。「夢だけ持ったっていいでしょ?」と嵐も言っている。けれど、その「夢」が見当たらない人が相当数いるのも事実。自分が何をしたいかわからない。やりたいことが見つからず、人生に迷ったり、焦ったり、悩んでいる人は、少なくない。

 

地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』(紀里谷和明・著/文響社・刊)は、人生にモヤモヤを抱えている人にとって、大きな布石となる一冊だった。

紀里谷和明が4年半かけて完成させた渾身の一冊

紀里谷和明氏は、映画監督であり写真家であり、常に世界に向けて新しい試みを発信しているクリエーターだ。

 

そんな彼が、じつに4年半もの年月を費やして手掛けた本書。「成功したい」「自分を好きになれない」「やりたいことが見つからない」「仕事がうまくいっていない」「人生をあきらめかけている」5人の登場人物と、日本のどこかに存在すると言われている、とある劇場の支配人との対話形式で物語は進んでいく。

 

たとえば、「成功したい」と願う若者。お金が欲しい、モテたいという願望からはじまり、支配人と話をしていくなかで、次第に自分の中にある本音と向き合っていく。

 

本当はモテたいのではなく、モテている人だと思われたい。世間からうらやましがられたい。人からバカにされたくない。では、その「世間」や「人」とは、一体誰のことだろう?

 

会話が進むごとに、避けていた自分との対峙を余儀なくされる。禅問答のようなやりとりが続くことで、支配人に反抗する者もいるし、ヒステリックになる者もいる。けれども、次第に相談者の思考がクリアになっていく様は、まるで読者である自分自身の心まで整っていくような感覚だ。

 

「何になりたい?」ではなく「どうありたい?」

ひとつ、本書の中で特に印象に残ったシーンを例にあげよう。

 

子どものころ、おそらく誰もが聞かれたであろう「おとなになったらなにになりたい?」という質問。七夕の短冊には将来の夢を書いた……いや、書かされた。親戚が集まれば「花楓ちゃんは大きくなったら何になりたいんや?」というのが、常套句だったように思う。とりあえず、久しぶりに会ったら「大きくなったな~。もう○年生か! 身長いくつになった?」と尋ねるのと同じようなノリで。

 

けれど、この質問こそが、「自分は何者かにならなくてはいけない」という強迫観念を植え付けられているのでは? そう支配人は語る。

 

「何になりたい?」と聞かれたら、何かしらの職業名を答えなくてはいけない。肩書を持つ何者かにならなくてはいけない。幼心に、そう刻まれてしまうのではないかというのだ。

 

これには、いたく納得、賛同した。だからこそ、自分が何者にもなれず悩む大人がたくさんいるのではなかろうか。

 

では、どう質問すればいいのか。支配人はこうやさしく語る。「大人になったら、どうありたい?」

 

そう尋ねれば、答えは少し変わってくるだろう。何になりたいのではなく、どうありたいか。これは深い。とても深い。

 

この本を読み終えるスピードは人それぞれ

この本を、サクサク読める人もいるだろう。けれども、人によっては読みながら自己の人生を振り返り、考え、長い時間をかけて読み進めるだろう。時に心の奥底の痛い部分を突かれて、本を閉じたくなることもあるかもしれない。

 

じつは『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』は、紀里谷氏や彼のまわりの人々(主に編集者たち)の実体験に基づいて描かれたとのこと。特に第4章に出てくる話は、紀里谷氏自身の体験談そのものだそうだ。そのことを踏まえて読むと、また違った感慨深さが味わえる。

 

きっと誰もが紀里谷氏の言葉に触れることで、心の奥底にしまい込んだ感情や、抱えている迷いに向き合い、明日が少し明るくなるヒントを貰えるのではないだろうか。時折挟まれる美しい風景写真にも、心洗われる一冊だ。

 

【書籍紹介】

地平線を追いかけて満員電車を降りてみた

著者:紀里谷和明
発行:文響社

総制作日数4年半に渡る超大作!!  ハリウッドデビューした日本人映画監督・紀里谷和明氏初の自己啓発小説(対話篇)がついに発売!!

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文豪たちの深すぎる「憂鬱」が逆に笑えて元気になれる−−『文豪たちの憂鬱語録』

何だか憂鬱である。今の生活に不満があるわけではない。それなのに、夕暮れ時、憂鬱でたまらなくなる。秋になったからか、コロナ対策に疲れたのか、悲しいニュースが多いからか……。自分でもよくわからない。わからないから、困っているのだ。けれども、そういう人は多いのではないだろうか。

 

もし、あなたも何だか憂鬱でたまらなかったら、『文豪たちの憂鬱語録』( 豊岡昭彦、高見澤 秀・著/秀和システム・刊)を読むことを勧めたい。のけぞるほどの憂鬱さが、プロの作家によって実に的確な表現で書かれている。読んでいるうち、「み〜〜んな、悩んだんだな」と、妙に納得し、心のどこかでほっとする。

 

画像出典:国立国会図書館

 

10人の文豪の憂鬱

取り上げられた文豪は10人。太宰 治、石川啄木、夏目漱石、芥川龍之介、島崎藤村、坂口安吾、宮沢賢治、谷崎潤一郎、佐藤春夫、有島武郎の10人だ。

 

ただし、章だては9章……。谷崎潤一郎と佐藤春夫が、ひとつの章でまとめられているからだ。このあたりもにくいと思う。二人は妻をめぐってスキャンダラスな関係にあったので、そのへんの事情を鑑みたのだろう。

 

いずれにしろ、取り上げられているのは日本が誇る文豪ばかり。好きで読みふけった方も多いだろう。たとえ、好きと思えなくても、教科書などで読み、感想文の宿題が出たりして、強制的に読むよう促された人もいるかもしれない。

 

けれども、文豪たちがこれほどまでに絶望のうちに生きていたとはと驚くことだろう。10人とも、悩みの渦の中で動けなくなりながら、作品を発表することによってかろうじて生きてきたのかもしれない。『文豪たちの憂鬱語録』には、それぞれの絶望から発せられた言葉が、これでもか、これでもかと、次々と吐露されていく。

 

生きてちょうだいと懇願したくなる、太宰 治

まず、最初に取り上げられているのは、太宰 治。絶望に取り憑かれながら生きた作家でとして有名ではある。章のはじめに、「暗すぎてウケる! 文豪界随一の絶望名人」とあるように、自殺未遂や心中事件をくり返し、結局、最期は38歳で人妻と心中した。一人で死ぬこともできないほど、寂しい人だったのかもしれない。彼の遺した言葉は胸に迫る。

 

生きてゆくから、叱らないでください 『狂言の神』

人間、失格。
もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました 『人間失格』

あざむけ、あざむけ、巧みにあざむけ、神より上手にあざむけ、あざむけ 『二十世紀旗手』

(『文豪たちの憂鬱語録』より抜粋)

 

相手が才能あふれる文豪であるとわかっていながら、思わず言葉をかけたくなる。叱ったりしないから、そんなにあやまらないで、胸を張って、ただ生きてちょうだいと……。

 

ローマ字日記を残した石川啄木

『一握の砂』で有名な石川啄木。

はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る
友がみな われよりえらく見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ

などの句は、貧しい中、必死で生きた石川啄木の純粋性を感じ、胸がじーんとする。ところが、『文豪たちの憂鬱語録』には啄木が残したとんでもない作品が紹介されている。

 

それが『ローマ字日記』だ。日本語をローマ字で綴った実に不思議な日記を読み、啄木の生活が、実は放蕩三昧であったことを知った。ローマ字で日記を書いたのは、妻に内容を知られたくなかったからだという。妻はローマ字を読めなかったのだ。

 

「浅草に通って、遊女を何人も買ったこと」「家族への送金を渋っていること」「仮病を使って会社を休みまくったこと」(中略)なども、かなり赤裸々に書かれている

(『文豪たちの憂鬱語録』より抜粋)

 

これでは確かに妻には読ませることができない。石川啄木に対するイメージが、がらがらと音をたてて崩れていきそうになる。しかし、一方で、新しい啄木、私が今まで知らなかった啄木に会える気もして、なかなかに新鮮な体験となった。

 

夏目漱石

夏目漱石は留学先のロンドンで神経症を悪化させたと言われている。帰国後、東京帝国大学と第一高校の英語講師となったものの、精神状態は悪化の一途をたどり、苦しみのなかもがき続ける。

 

処女作である『吾輩は猫である』は、そんな苦しみを和らげようと気分転換のために書いた作品であるという。その意味では、神経症が名作を生んだのだ。その後、夏目漱石は教壇に立つのをやめ、小説に専念することを決心し、職業作家となった。

 

しかし、作家になってからも、神経症や胃潰瘍に悩まされ、49才で亡くなるまで、心身共にもだえ苦しみながら作品を書き続けた。『文豪たちの憂鬱語録』には、漱石が作品の中に残した言葉が記されている。

 

到底人間として、生存する為には、人間から嫌われると云う運命に到達するに違いない。 『それから』

呑気と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする。 『吾輩は猫である』

(『文豪たちの憂鬱語録』より抜粋)

 

売れっ子作家であり、エリートでもあった夏目漱石も、実は苦しみ抜いていたのだと、よくわかる。

 

珠玉の言葉が続く……

続く作家達もなかなかどうして見事な憂鬱の言葉を吐き出している。すべてを紹介できないので、どうか実際に読んでいただきたい。そして、どの憂鬱語録が自分の胸に迫るのか、探し出してはいかがだろう。

 

できることなら、自分も自分の憂鬱をさらけ出し「私の憂鬱語録」を書き出してみると、あらあら不思議、摩訶不思議……。生きている辛さや死への誘惑、そして、どうにもならない憂鬱から、少しの間、自分を解き放つことができる。

 

あなたの憂鬱を何とか飼い慣らすために、『文豪たちの憂鬱語録』は力になってくれると、私は信じている。

 

【書籍紹介】

文豪たちの憂鬱語録

著者:豊岡昭彦、高見澤 秀
発行:秀和システム

「生きてゆくから、叱らないで下さい」(太宰治)、「わがこの虚空のごとき、かなしみを見よ。私は何もしない。何もしていない」(宮沢賢治)など、文豪が人生をはかなみ、社会に唾を吐き、鬱々とさせる言葉には、言いたいことを素直に表現した爽快感があります。本書は、文豪たちの本音ともいえる憂鬱、絶望、悲哀、慟哭に満ちた言葉をすくいとった、ちょっと変わった語録です。文豪があなたの傷ついた心に寄り添い、ソッとなぐさめます。

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対面での会話が減った今、見直される「話すチカラ」。あなたには備わっていますか?

たまに、「えっもう読み終わっちゃった!?」と驚くようなスピードでのめり込んで読んでしまうことがあるのですが、先日読んだ『話すチカラ』(齋藤 孝、安住 紳一郎 ・著/ダイヤモンド社・刊)がまさにそれでした。

 

この『話すチカラ』は、明治大学の先生である齋藤 孝さんと、教え子だったTBSアナウンサー安住紳一郎さんの対談で構成され、明治大学で実際に行われた講義の様子も掲載されています。この本は、まるで会話を聞いているようなテンポで読み進めることができ、若い方はもちろん「仕事はリアルが大事なんだ」と思っているようなTHE日本のビジネスマンまで、多くの方が共感できるポイントが書かれてありました。今回は『話すチカラ』から、リモートワークでも欠かすことのできない会話のスキルについてお伝えしていきます!

 

画面越しでも「ちゃんと伝える」ことは大切

リモートでの仕事が増えましたよね。私もZoomを使った取材や会議の機会が増え、移動時間がなくなり、資料の共有も楽になり、たくさんの恩恵を受けているのですが、話を「ちゃんと伝える」というのは、Zoomだろうが対面だろうが変わらずに大切なことだと実感するようにもなりました。また画面越しだと、顔が見えない人がいたり、全体の雰囲気も感じにくくなるため、もしかしたら対面以上に「伝え方」は気をつかわなければいけない状況かもしれませんね。

 

では、わかりやすく伝えるために必要なスキルとは一体どんなことなのでしょうか? 安住さんは冒頭でこんなことを語っています。

 

人の集中力は15秒も持たない。このルールから、15秒をすぎて同じ話を続けてはいけないことがわかります。

私が放送で30秒の時間を与えられたときには、15秒が2セットあると考えて話題を展開します。

 (『話すチカラ』より引用)

 

また45秒であれば「序破急」の3分割で、60秒なら「起承転結」の4分割で組み立てて話していると言います。

 

画面越しだからしっかり伝えなきゃ! と熱がこもってしまい熱く長く語りすぎてしまいがちな人は、15秒を意識してみるとすんなり伝わるかもしれません。自分が話している「時間」を意識しない人がほとんどだと思うので、近くにタイマーをおいてみて、初めましての挨拶や自社の説明を何秒で説明しているか測ってみるのがおすすめですよ!

 

良いアウトプットのためには、他人の3倍インプットする

好きな男性アナウンサーランキングでは、殿堂入りを果たしている安住さん。今でこそテレビにラジオに大忙しですが、ここまでたどり着くまでに相当な努力をされています。なんと入社して最初にもらったボーナスで14型のブラウン管テレビを8台購入し、自分の部屋に置いたのだとか(笑)。

 

今は、たくさんのチャンネルを同時録画できるようになり、とても便利になりました。もう同時にたくさんのテレビを見ることはなくなりましたが、ああいうやりすぎな感じの20代の一時期があってよかったと思っています。

どんな業界でも、仕事でいいアプトプットをしたかったら、その3倍くらいのインプットをしておく必要があります。

 (『話すチカラ』より引用)

 

純粋に「すごいなー」と思ってしまうのですが、齋藤先生も大学時代「本棚を1年に1本ずつ増やす」という目標を立て、1年に300冊以上の本を読んだと言います。また、インプットした情報は自分のものだけにせず、誰かに喋ったり、SNSなどで発信するということも大切なんだとか。

 

「自粛だからインプットなんてできないよ〜」と何もしないで過ごすのではなく、こんな時期だからこそできるインプットもたくさんあると思います。『話すチカラ』では、これ以外にも簡単にできるインプット方法についても書かれてあるので、何をしたらいいかわからない! という方にも是非読んでいただきたいです。

 

会話のテンポに必要なのは「段どり」

一緒に話をしていて、テンポがいいな〜と感じる人がいますよね。私も安住さんのラジオをよく聞いているのですが、とにかく心地よく会話が入ってくるんです。齋藤先生も“テンポよく話を展開していくと、「段どりがいい」という印象につながります。”と、本書でも紹介していました。では、この「段どり」とは一体どんなことなのでしょうか?

 

実は、世の中の知識のほとんどは段どりでできています。

たとえば、歴史的な事象は「〇〇があって、××が起きることによって、第二次世界大戦へとつながった」というように段取りで説明できます。つまり、段どりを説明する能力があれば、ものごとを理解できるようになるのです。

もちろん社会科だけでなく、国語も数学も理科も、基本はすべて同じで、求められている能力は一緒です。

数学ができない人は、計算ができないというより、数字を解いていく段どりを説明できないということが大きな原因です。

 (『話すチカラ』より引用)

 

これは私自身も経験したことですが、自分が納得している企画をプレゼンする時と、「なんだかなー」と思いながらプレゼンした時では相手のリアクションは変わってくるんですよね(笑)。上手に相手に伝えられるかどうかは、話の段どりが組めているかの違いということ。ついつい「上手に話そう!」と思いがちですが、それ以前に伝えることの段どりが組めているかを意識するのが良いのかもしれません。

 

『話すチカラ』をあっという間に読めてしまったのも、この段どりがしっかり整った内容だったからのかもしれません。生きている限り、言葉は必要不可欠なもの。様々なチカラが大切になっている時代ですが、基礎である「話すチカラ」が備わっていれば、他のチカラも鍛えられるのではないか? と思いました。新入社員さんから、リモートに迷いながら仕事している管理職の方、学生さんから、主婦の方まで、人生の教科書として読んでもらいたい一冊です!

 

【書籍紹介】

話すチカラ

著者:齋藤 孝、安住 紳一郎  
発行:ダイヤモンド社

齋藤 孝先生と安住紳一郎TBSアナウンサーは、明治大学時代の先生と教え子という師弟関係。いまや日本屈指の話し手となったふたりが、「話すチカラ」について縦横無尽に語り尽くす。安住アナが後輩の現役明大生たちを前に白熱講義した内容も紹介!

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ドロドロした黒い想いを燃料にして走り続ける男!南キャン山ちゃんは”天才”なのか?――『天才はあきらめた』

皆さんは読みたい本を選ぶとき、何を決め手にしているだろうか。

 

好きな作家だから。テレビや新聞、雑誌などのレビューを見て面白そうだったから。本の帯に書かれた内容に惹かれたから。表紙の雰囲気が好みだというジャケ買いならぬ表紙買いもあるだろう。

 

私の場合は、「解説」を誰が書いたかが、割と大きな誘引ポイントである。解説を書いた人が著名な人だったり、好きな作家だったり、意外なタレントだったりすると、本編とは別で楽しみな存在になる。

 

今回取り上げるのは、私が大好きなオードリー・若林氏が解説を担当した『天才はあきらめた』(山里亮太・著/朝日新聞出版・刊)である。南海キャンディーズの山ちゃんが綴った魂の記録だ。

 

 

南海キャンディーズというお笑いコンビの印象

私はまあまあお笑い好きだが、M-1グランプリなどのショーレースの類を欠かさず見ているわけでもなく、世の中で流行っているお笑い芸人にそこまで詳しいわけでもない。なので、南海キャンディーズに関する知識も世間一般程度のものだ。

 

しずちゃんは、絶対いい人そう。お笑いの他に女優とかボクシングとか、いろいろ挑戦している。そして、とても大きな女性。ざっくりとしたイメージで申し訳ない。

 

一方、山ちゃんはというと、正直最初はなんだか陰湿でオタク気質な赤メガネという印象だった。

 

だが、ここ数年でその印象が大きく変わった。気づけばさまざまな場所で山ちゃんを見かける、というか声を耳にする。彼のナレーションは記憶に残る。そして、なんとプリキュアの映画にも声優として出演していた。もしや、めちゃめちゃ多才な人なのかも、そんなふうに思い始めていた。

 

さて、そこに来て『天才はあきらめた』を読んだわけだが、とにかく全編通して熱量がすごい。「お笑い芸人になりたい」そして「天才になりたい」という想い。そのために文字通り「もがき苦しんだ」姿が、それはもう赤裸々に語られているのである。

 

 

お笑い”という未知なる世界

そもそも、私を含め一般の人々にとって、お笑い業界は未知の世界だ。芸人になるための養成所があることは知っているが、どうやって入るのか、どんな試験があるのか、そこからどうスターダムにのし上がっていくのかは、まったく見えない。テレビ局のスタッフやマネージャーとの関わり方も謎だし、芸人同士のつながりもよくわからない。

 

だが、本書を読んで、なんとなくだがイメージができてきた。とても過酷で、権力のある人に気に入られないと前に出ていけないこともあり、コンビには突然解散が訪れるものなのだと。そして、お笑い芸人同士に固い絆があることも。(きっと、本書の千鳥・大悟とのエピソードで胸熱になるはず!)

 

過去にコンビを組んでいた相方に対しての暴挙や、しずちゃんへの嫉妬ゆえの言動。正直、あまりに赤裸々に描いているが故に、一瞬本を閉じようかと思った箇所もあった。でも、こうして”黒い感情”を包み隠さず公表し、そんな暗黒の時代をもガソリンに変えて邁進してきたからこそ、多くの人に愛される”山ちゃん”が出来上がったのだと感じた。

 

山里亮太という人間は、自分が受けた酷い仕打ちや扱い、売れている芸人への嫉妬など、他者に対するすべての醜い感情を燃料とし、パワーに変えて現在の地位を築いたのだ。

 

 

山ちゃんの自叙伝のようで、実は啓発本でもある

そしてもうひとつ、この本は単に山里亮太の半世紀ではなく、ある種の啓発本のようなものを感じた。

 

たとえば、「どんな些細なことでも構わない、小さな自信を貼り付けていけば、いつしか立派な”張りぼての自信”となる」ということ。この「張りぼての自信」があることで、その後立ちはだかる数々の壁を跳ね飛ばしていける。山ちゃん曰く「自信貯金」である。

 

自分の行動をしっかりと目的に結びつけ、自分で自分を褒めてあげる。この繰り返しが、結果大きな自信につながっていくのだ。

 

もちろん、「自分ってダメな奴だ」と落ち込む日もある。そんなときは、貯金を少しずつ切り崩して、自信を保っているのだという。

 

また、人間誰しも壁にぶつかると逃げ出したくなってしまうものだ。そんなとき山ちゃんは、逃げられないように、後戻りができないように、「自ら退路を断つ」のだという。時には思い切った行動をして、「逃げられないような環境に自分を追い込む」のだそう。

 

芸人になるために無理言って大阪に出てきてしまったこと。コワモテの寮の先輩たちに対して「芸人になるために関西にやってきました」と宣言したこと。必然的にほかの選択肢がなくなれば、前に進むしかない。サボるための言い訳は出てこない。

 

これらはお笑い芸人のみならず、どんな職業でも、どんな人の人生においても、参考になる思考法ではないだろうか。

 

ひとつのネタを作り上げるために何度も何度もブラッシュアップして、常に反省をし、より高い場所へ進んでいけるように努力する。逃げ出さないために退路を断ち、自信貯金を糧に突き進む。そんな彼の人生を目の当たりにし、私は山ちゃんからエールをもらったような気がした。

 

 

天才はもう一人いた! 若林氏の解説は必ず読むべし

それにつけても、若林氏の解説「ぼくが一番潰したい男のこと」だ。

 

もう、大絶賛である。秀逸な読み物である。正直、何度読み返したかわからない。解説びいきな私だが、ここまで解説に感銘を受けたのは初めてだ。

 

山ちゃんが天才ならば、若林氏もまた天才である。

 

そして、『天才はあきらめた』読了後、改めて南海キャンディーズのネタをYouTubeで検索して見てみた。過去に見たときよりも、さらに面白い。なんだか、このネタが披露されるまでの背景が想像できて、にんまりしてしまう。

 

一冊で二度も三度も楽しめる。やはり、山里亮太は天才なのかもしれない。

 

【書籍紹介】

天才はあきらめた

著者:山里亮太
発行:朝日新聞出版

「自分は天才にはなれない」。そう悟った日から、地獄のような努力がはじまった。嫉妬の化け物・南海キャンディーズ山里は、どんなに悔しいことがあっても、それをガソリンにして今日も爆走する。コンビ不仲という暗黒時代を乗り越え再挑戦したM-1グランプリ。そして単独ライブ。その舞台でようやく見つけた景色とは――。2006年に発売された『天才になりたい』を本人が全ページにわたり徹底的に大改稿、新しいエピソードを加筆して、まさかの文庫化! 格好悪いこと、情けないことも全て書いた、芸人の魂の記録。《解説・オードリー若林正恭》

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元メジャーリーガー・新庄剛志、20億円だまし取られた「しくじり」に続く第3の人生は?

今から12年前の2006年に流行語大賞にノミネートされていた『新庄劇場』。

 

当時メジャーリーグから、日ハムに舞い戻ってきた新庄剛志選手が、スパイダーマンの被り物をしたり、イリュージョンショーを披露したり、小さい新庄選手の顔をちょっと大きい新庄選手が食べている『5人のツヨシ』という謎な被り物をしていたり、試合前にファンサービスしていたことを通称し、『新庄劇場』と呼んでいたのです。私も当時、朝のニュースで「昨日の新庄は?」と楽しみだった記憶があります。

 

そんな新庄選手、今ってどこにいるのかな〜と思っていたらなんとバリ島!!

 

現役で稼いだお金で優雅に暮らしていると思ったら、バリ島移住前に20億円を騙し取られていたって、なにソレ!!!?

 

今回は、壮絶な人生が語られた話題の新刊『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』(新庄剛志・著/学研プラス・刊)より、愛すべきスーパースター新庄剛志さんの人生論をご紹介します。

 

 

現役引退後の新庄は何をしていたのか?

メジャーで活躍し、日ハムを日本一に輝かせたのち、華麗に引退した新庄さんは、なんと奥さんとも別れ、単身で一目惚れしたバリ島へ移り住んだというのです。

 

しかし、移り住む際に自分の全財産を預けていた人に「バリ島に移住するから、お金を引き出して〜」と伝えたら、「残金は2200万円」と思ってもいなかった金額を言われたそうです。メジャー行って、テレビもCMも出まくって、好きなもの買ってエンジョイしてたのに、どういうこと??

 

 

僕は、信用していた人にお金を使い込まれていた。

それも、100万円とか200万円のレベルじゃない。

20億円だ。

(『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』より引用)

 

どうやったら20億円も使えるの!?  って話ぃ〜!!

 

その全財産を預けていた人は、自身でも会社を経営していたそうで、その会社の経営を補うために新庄さんのお金を使っていたというのです。全て自分でやっていなかったことを反省していた新庄さんですが、20億円て……。私だったらゼッタイに許さん!!  だって20億円ですよ? 2200万円も見たことないですが(笑)、どうやったらそんなお金を稼げるのでしょうか??  現役時代の新庄さんの稼ぎっぷりを振り返ってみましょう。

契約金2200万円でメジャーへ『日本の恥』と言われたが……。

高校生の時に、ドラフト5位で阪神タイガースに入った新庄さん。「ドラフト5位」の肩書きが悔しくて必死でトレーニングを重ね、大活躍をしたというのは皆さんも承知の事実。

 

その後、メジャーリーグへ挑戦するわけですが、日本人がメジャーに挑戦するなんて、当時は夢のまた夢。しかも契約金は、2200万円と格安。メディアでは『日本の恥』なんて言われていたそうです。私も当時「無理っしょ」と思っていたのですが、当時の新庄さんはどんな気持ちだったのでしょうか?

 

漫画のヒーローだって、マイナスの状況を乗り越えて活躍すると昔から決まっている。僕は、メジャー入りして成功すると信じていた。いや信じていたんじゃなくて、決めていた。

(『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』より引用)

 

ハート強すぎ!!

 

今では数多くの日本人選手がメジャーでも活躍していますが、新庄選手がメジャーリーグへの道を切り開いてくれたと言っても過言ではないかもしれません。日本の恥どころか、メジャーリーグの歴史においても忘れられない日本人スーパースターになっちゃったわけですね。

 

 

ポーズを取るだけで、8000万円が手に入る

メジャーで活躍するほど、日本での知名度も上がっていき、メディアに引っ張りだこな日々が訪れます。オフに日本へ戻ってきた時、テレビ番組に出て800万円、CM1本1億5000万円と「野球なんてマジバイト」と言いたくなる気持ちもわからなくない状態に。その時のことを、このように語っています。

 

命をかけて、ギリギリのプレッシャーに耐えて1年間プレーして2200万円を手に入れる一方で、僕はただポーズを取っただけなのに8000万円が入ってくる……。

僕はこのお金の価値のギャップを埋められなかった。

(『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』より引用)

 

確かに、何のためにメジャーで頑張っているんだって思っちゃいますよね。

 

スターに憧れて、スターになったはずなのに、自分の得意分野とは違うところで思っている以上のお金が支払われる。単純に羨ましいな〜では片付けられないような感覚なんだと感じました。しかもその貯めてたお金は、だまし取られちゃうとか、ちょっとかわいそうに思えてきちゃったよぉ〜!

 

 

ポジティブすぎて、逆にかっこいい!

20億円だまし取られても、残った2200万円と、取り戻した8000万円でバリ島に家を建て、10年ほど暮らしている新庄さん。ペット(犬)のラナと一緒にいる時が幸せで楽しいんですって。

 

スーパースター・新庄剛志の物語は、まだプロ野球選手として成功したエピソード1と、金銭トラブルでしくじったエピソード2が終わっただけ。

今、僕はエピソード3の途中を生きている。

本当に面白いのは、これからだ。

(『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』より引用)

 

こんなにズタボロになって、財産のほとんど全てを失っても前向きになれるこの精神力。ポジティブすぎて逆にカッコよく思えてきます。

 

 

次なる新庄劇場は、『歌手』としてデビュー!?

バリ島に移住してからは、モトクロスにはまっているとのことなのですが、エピソード3ではどんな新庄劇場を見せてくれるのでしょうか? なんと今気になっているのは「歌」なんだとか。

 

僕だって、いいことも悪いこともいっぱい経験したから、今なら歌に気持ちを込められるんじゃないか。

(『わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法』より引用)

 

確かにすごい歌は歌えそうだけどもっっ! 掲げている目標が高いというか、規格外というか(笑)。

 

とにかくまだまだ目が離せない、新庄剛志! 今後も私たちを驚かせて、楽しませて、元気にしてくれる人でい続けてくれることは間違いないだろうと感じます。

 

 

【書籍紹介】

わいたこら。――人生を超ポジティブに生きる僕の方法

著者:新庄剛志
発行:学研プラス

「わいたこら。」その事実を知ったとき、とっさに僕の口から出た言葉だ。標準語でいえば「なんじゃこりゃ?」。僕は、信用していた人にお金を使い込まれていた。100万円とか200万円のレベルじゃない。20億円だ――。「スター新庄」が今、すべてを語る、前代未聞の「しくじり」体験!読めば間違いなく元気になれる、超ポジティブな「人生の立ちあがり方」が満載の本です。

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頭が良いのに出世できない人の特徴。知的な人が陥りやすい4つの罠 ──『ハマトンの知的生活のすすめ』

渡部昇一さんが著した『知的生活の方法』は有名なロングセラーです。渡部昇一さんの知的生活に影響を与えた『The Intellectual Life』という本を知っていますか?

 

ハマトンの知的生活のすすめ』(P.G.ハマトン ・著、三輪裕範 ・編訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)は、原典のエッセンスをまとめて、わかりやすく超訳したものです。紹介します。

 

 

健康は最高の投資である

重要な知的労働を成し遂げるためには、長年にわたって健康を維持しなければならない。だからこそ、知的生活者にとっては、健康を維持するために払う犠牲は最高の投資なのである。

(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)

 

現代の知的生活=頭脳労働にとってコンピューターは必須です。仕事に追われるあまり、長いあいだパソコンのモニタ画面に向かうことによって、眼精疲労・肩こり・腰痛を積み重ねてしまえば、やがて健康を損ないます。

 

ハマトンは「机に向かいづめからくる悪影響」を防ぐために、なによりも肉体の健康を守ることをもっとも優先すべきであると述べています。作業するときのチェアー、気軽に通えるフィットネスジム、快眠するためのベッドにはこだわるべきです。

 

ぶっちゃけて言えば、長生きをしたもの勝ちです。たとえ天才に生まれなかったとしても、長寿の努力家であることを心がけましょう。

 

 

知的な人ほど好奇心に溺れる

自分の持てる力を浪費するのは愚かなことだ。(中略)十年もそんな生活をしていれば、意志の力はほとんどなくなり、心に秘めていた情熱もなくなってしまうものだ。

(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)

 

「いろいろなことを知りたい」という興味や好奇心は、知性の証明です。しかしながら、知識を得るために労力を費やしすぎると、せっかくの知性を活かすためのエネルギーが足りなくなります。

 

ハマトンは、「知的な人ほど、知的な勉強によって浪費しやすい」と述べています。好奇心の罠です。取り組むべき学習や仕事を取捨選択することを心がけましょう。

 

読書=知的生活というイメージがあります。でも、本をたくさん読んだからといって賢くなれるわけではありません。

積読という幻想

私の友人の一人は読書について途方もない幻想を抱き、何千冊もの本を集めて読もうとしたが、結局その一部しか読めないうちに亡くなってしまった。このように、人は読書について大いなる幻想を抱きがちである。

(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)

 

難解な文学書や学術書を買うのは快感です。所有しているだけで賢くなった気分になれるからです。計画性のない人は、理解できもしない本を買い続けて、知的訓練を先送りして、読みあぐねているうちに亡くなります。

 

ハマトンは、「読書は計画性がなければできない」と述べています。たしかに、読書好きならば「名作文学と言われているものを読破したい」と思うものです。たとえば、プルースト『失われた時を求めて』は岩波文庫版で全14巻もありますが、まともに完走できる確率はきわめて低いです。計画性を発揮するならば、とりあえず『失われた時を求めて ─まんがで読破─ 』を読み終えましょう。

 

 

貧しさは知的生活を妨げる

かろうじて毎日暮らしていける程度の経済力しかないと、遠大な研究計画も実現することができないばかりでなく、ときには健康を害したり、人間性に悪影響が出たりして人生を破壊してしまうことがある。

(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)

 

貧すれば鈍する。衣食足りて礼節を知る。腹が減っては戦はできぬ。先人たちは「貧しさの弊害」をよく知っていました。

 

ハマトンは、「貧しさは知的生活を妨げる」と述べています。なぜなら、家計が貧しすぎると「心身の健康」を損なうからです。先述した「健康は最高の投資である」という考え方にも通じます。知的生活を全うしたければ、お金儲けを嫌うべきではありません。

 

本書『ハマトンの知的生活のすすめ』を読み終えたら、原典の日本語訳である『知的生活』(渡部 昇一・訳/講談社・刊)にも手を伸ばすことをオススメします。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

ハマトンの知的生活のすすめ

著者:P.G.ハマトン
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書は英国の著述家であり美術雑誌の編集者であったP・G・ハマトンが1873年に刊行した知的生活論、自己啓発論の世界的名著である『知的生活』から現代人に必要な部分を精選して編訳したものです。

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「片づけにおいて自己嫌悪はNGです」汚部屋を8時間でキレイにする極意とは?――『マンガでわかる!片付け+収納術』

私の父親は製薬会社の営業マンで、転勤の多い人生を送っていました。

 

ざっと数えてみると、私は子どもの頃から結婚するまで10か所の土地を住み歩いたことになります。転校する度に友だちと涙の別れを繰り返さなければならず、それが嫌で嫌でたまりませんでした。もっとも、我が家の転勤は日本国内に限られていて環境の激変に苦しんだわけではありません。

 

それでも、長くても5年、短いときは1年ほどで引っ越しをする生活にはうんざりしていました。

 

 

引っ越しのない暮らし

結婚すると、私は引っ越しのない暮らしを手に入れることができました。名古屋に5年ほど住んだあと神戸に引っ越しましたが、その後はずっと同じマンションに住んでいます。

 

息子も転校させることなく育てることができました。夢にまでみた引っ越しのない生活。大満足のはずでした。ところが…。引っ越しのない暮らしは、やってみると案外退屈でした。新陳代謝がないとでも言ったらいいでしょうか。

 

引っ越しこそ、最高の大掃除

これまでは気づきませんでしたが、引っ越しのない毎日を送っていると、家の中が掃除しても掃除しても汚れていきます。じわじわとものが増え続け、最初はけっこうスッキリしていたはずの部屋は、どこもかしこも本やDVDで埋まっています。

 

これではいけない、何とかしなくてはと思うものの、どうすることもできません。そして、私は気づきました。引っ越しこそ、何ものにも代えがたい大掃除だったことに……。

 

シンプルな部屋を目指すものの

マンガでわかる!片付け+収納術』は、祖母の代から同じ家に住み続けた家族の物語です。主人公は、イラストレーターであり、漫画家でもある“宙花こより”。資料や、材料や、紙など、細々としたものが必要とされる仕事です。

 

彼女が理想とする暮らしは、シンプルで機能的に片付いた部屋で過ごすことなのですが、現実はシンプルにはほど遠く、カオスというべき状態です。古くからの日本家屋に暮らす彼女の仕事場は、物が堆積し、窓さえ開かない状態になっています。汚部屋と呼んでもいいでしょう。

 

おまけに、同居している母も片付け下手、父にいたっては片付けというものをしたことがないというのですから徹底しています。

 

 

救世主、登場!

そこへ訪ねてきたのが、女性編集者のT澤さん。こよりの原稿の進み具合が遅いのを心配して東京から上田市へ来てくれたのです。「旅行のついでに立ち寄った」と説明してはいますが、うすうす感じていたのでしょう。宙花こよりの仕事場の惨憺たる状況を。

 

T澤さんは「他の仕事がつまっていて大変なら、締め切りを延ばします」と提案してくれました。しかし、実はこよりのイラストが遅れているのはタブレットのペンがどこかへいってしまったからだったのです。そう、要するに部屋がごちゃごちゃで探し物をしているうちに時間ばかりが過ぎていたのです。

 

私もしょっちゅう「えーーと、あれ、あの本、どこ行ったかな」と言いながらあちこち掘り返しているのでよくわかります。イライラして原稿を放り出したくなります。

 

 

T澤さんの作戦

「こよりさんの部屋は、迷いこんだら戻れない樹海みたいなものです」

 

T澤さんは、立つことすらままならない部屋の真ん中に、かろうじて場所を確保して仁王立ちとなり叫びました。そして、さっさと回収業者に連絡するや「8時間以内に、捨てて捨てて捨てまくるのです」と決めてしまったのでした。片付け&インテリア誌の副編集長でもある彼女にとって、汚部屋からの脱却こそが我が使命だと考えたのでしょう。

 

名案の数々

T澤さんは数々の名案を示します。だからこそ、たった8時間でこよりの家全体を見違えるように綺麗にすることができたのです。そのいくつかを紹介しましょう。

 

「捨てて捨てて捨てて極限までそぎ落として、モノでメタボ化したこの部屋を人の住む場に変えましょう!!」
「今使っているか、今つかってないか これのみで判断することが処分の基本であり、大切なポイントなんです!」

「片づけにおいて自己嫌悪はNGです」

「片付け…それは「分け」て「捨て」れば9割は終わったも同然!!」

(『マンガでわかる!片付け+収納術 電子版』より抜粋)

 

数々の名言の中で、一番、私の胸に迫ったのは、

 

「いわば片付けは引っ越さないお引っ越し!!」でした。

 

私はずっとこう考えていたのです。引っ越しすれば片付くのに…。新しく自分専用の仕事場を持てば、資料がどこかにいったりしないのに…。けれども、それは言い訳だったようです。

 

ちゃんと片付ければ、引っ越ししなくても引っ越したかのように新しい毎日を手に入れることができるのです。うかつでした…。

 

そんな大事なことも気づかないままに、「私が悪いんじゃないわ、夫がDVDを捨てないからだわ。本をつみあげておくからだわ」とか「引っ越しさえすれば」、「仕事場さえあれば」と、呪文のように唱えていたのです。

 

T澤さんの言葉に従ったこより一家は、2トントラックにも入りきらないほどのゴミを処分し、すっきりした家を手に入れることができました。

 

そして、最後に明かされるT澤さんの過去…。

 

『マンガでわかる!片付け+収納術』は、単なるお片付けの本ではありません。暮らしを大切にするヒントが満載された、生きるための指南書です。

 

 

【書籍紹介】

マンガでわかる!片づけ+収納術

著者:宙花こより
発行:学研プラス

片付けられない女必読!一家そろって片付けられない著者。どこから手をつけたらいいのか、ものがありすぎる部屋をすっきり部屋にするためのノウハウとコミカルなエッセイ。タイプ別のチェックや片付けの手順シートもあって、読めばやる気がでる!

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自らの賞味期限を知る…元プロ野球選手に学ぶ「勝者」への道とは?――『勝者になるための84の提言』

毎年、第一生命が発表している小学生を対象とした「大人になったらなりたいもの ベスト10」ですが、最新の2017年男の子のトップ3をご存知ですか?

 

1位:学者・博士
2位:野球選手
3位:サッカー選手

参考(http://event.dai-ichi-life.co.jp/campaign/minisaku/otona.html)

 

1位の結果にはちょっとびっくりしましたが(笑)、実は調査を始めた1989年からず〜っとトップ10内にランクインしているのが「野球選手」です。

 

その野球選手の夢を叶えた、いや夢を超えた方で、徳島県の鳴門工業高校から帝京大学に進学し、千葉ロッテマリーンズへ入団。WBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)でも大活躍し、世界一の捕手(ベストナイン)として選ばれた選手といえば……里崎智也さん! ですよね。

 

今では「ビックリマン」といえばこの人というくらい、野球界以外でも活躍の場を広げられ、野球解説だけでなくバラエティ番組も出演されたりと大忙しな里崎さんですが、新刊『勝者になるための84の提言』(里崎智也・著/学研プラス・刊)をこの度出版されました。

 

本の中には、いくつもの成功を掴んできた裏で、どんな想いで、どんな努力をしてきたかがわかりやすく綴られています。今回はその中から疲労困憊なビジネスマンでもやる気になる4つの提言をご紹介させていただきます。

 

↑ページを開くと大迫力の里崎さんの提言が!!

 

 

「自分の賞味期限を見極めろ!」

野球選手になりたい! と自分の息子が言ってきた時、応援するのが親の役目だとは思うのですが、あなたはプロ野球選手としての賞味期限がどれくらいかご存知でしょうか?

 

プロ野球でいえば、見極める時期は、ポジションにもよりますが、だいたい高卒で10年、大卒で5年までですね。

(中略)

何年後に活躍するかどうかは、誰にもわかりません。宝くじみたいなものです。プロ野球選手はドラフトで入団しても、10年後にチームの主力になっている選手は平均で11〜12%です。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

わかってはいたけど、厳しい世界!! 安定志向な現代において「よーし、頑張れ!」とは小さい子どもに言いにくくなっちゃいますよね(笑)。

 

でも私たち一般人だって、「自分の賞味期限を知る」というのは大事なこと。チャレンジすることに遅い早いはないかもしれませんが、チャレンジして成功しやすい年齢は必ずあるはず。今の働いているところで結果を出したいなら、何歳までに何をするのか、しっかり自分で見極められる力を養っていきたいですし、自分の子どもが将来どんな職業につくのか考えた時に、先に伝えてあげられることは伝授しておきたいですね!

 

 

「モノマネ上手になれ。」

野球がうまい選手は「他の選手のモノマネ」も上手だったという里崎さん。里崎さん自身も、現役時代は「幕張の安打製造機」の異名を持つ福浦和也さんのモノマネをしていたそうです。

 

見本になる誰かのモノマネを採り入れて、自分の中でオリジナルに変えて、成長するときに強くなるんです。それを最初から、すべてオリジナルでやろうなんて、無理なんです。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

ただ人を楽しませるだけのモノマネをしていればいいということではなくて、モノマネを採り入れて、オリジナルに変えることで成長できるということなんですね。

 

「この上司みたいになりたいなー」という人がいたら、服装からでもいいのでモノマネしてみるのも良いそうです。「毎日仕事で疲れちゃったなー」という人は、元気な社員さんの生活スタイルモノマネをやってみると見えてくるものもあるかもしれません!

 

 

「アピールしないバカはいらない。」

里崎さんのように、成功している人のお話を読んでいくと「運がいいんだよ。私なんて日陰人生だからさ」と思う人もいるでしょう。もちろん、運も実力のうちなのですが、運を引き寄せる努力をしっかりされています。

 

「誰も見てくれていない」ってグチる人もいますが、当たり前です。上の人もそんなに暇じゃない。見てほしかったら自分でアピールするしかない。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

あなたは、実力があってもなかなか日の目を見ないのを周りのせいにしていたりしませんか? そんな時には思い切って自分をアピールしましょう! 里崎さん曰く『選ぶほうは、活躍してくれるなら誰でもいい』とのことなので、あなたの特技をしっかり披露する場を確保しなければ、もったいないっ!

 

仕事での特技はもちろん、趣味の話なども周りにちゃんとアピールしていくことで、思わぬところからお誘いが出てくることもあるでしょう。自分の実力は出し惜しみせず、アピールしまくる! それくらいじゃないと相手には届かないということですね。

 

 

「3つの目線で自分を見ろ。」

こうやってご紹介していくと、どんどん意識高い系な人になるのがいいのかな? と考えが偏ってしまいがち。でも意識を高くするのがいいのではなく、しっかり「3つの目線で自分を見る」ことが重要なんだとか。

 

3つの目線とは、

 

・自分という個を成り立たせるために、甘い目線

・客観的に自分をみた、厳しい目線

・周りからどうみられているかという、客観的な自分からの能力値の目線

 

のこと。

 

自身を甘やかし過ぎると周りから評価されにくかったり、他人からの目線ばかりを気にしていると自分のメンタルがやられてしまったり、意識高くなり過ぎると他人からの目線に気がつかず、イタい人になっちゃったりするので、この3つがバランス良く保たれているのがとても重要。疲労困憊なビジネスマンの中には「甘い目線」が足りない人が多いかもしれません。「自分はよくやっているよな〜」とたまには自分を褒めてあげましょう!

 

 

『勝者になるための84の提言』には、これ以外にも変化の激しいビジネスマンの心の支えになるような提言が、「提言+詳しい説明」のセットで多数紹介されています。パッと開いたそのページでも、里崎さんの元気になる言葉がたっぷり詰まっているので、自宅の書棚に入れておいて、なんだか元気がないな……という時に、好きなページを開いて言葉を受け取ってみるのもおすすめです!

 

 

【書籍紹介】

勝者になるための84の提言

著者:里崎智也
発行:学研プラス

働き方改革が叫ばれる昨今、ビジネスパーソンが成功するにはどんな心構え、どんな行動が必要なのか? 千葉ロッテマリーンズで2度の日本一、WBCで世界一&ベストナインを経験した“下剋上オトコ”、里崎智也が84の提言で綴る!

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自らの賞味期限を知る…元プロ野球選手に学ぶ「勝者」への道とは?――『勝者になるための84の提言』

毎年、第一生命が発表している小学生を対象とした「大人になったらなりたいもの ベスト10」ですが、最新の2017年男の子のトップ3をご存知ですか?

 

1位:学者・博士
2位:野球選手
3位:サッカー選手

参考(http://event.dai-ichi-life.co.jp/campaign/minisaku/otona.html)

 

1位の結果にはちょっとびっくりしましたが(笑)、実は調査を始めた1989年からず〜っとトップ10内にランクインしているのが「野球選手」です。

 

その野球選手の夢を叶えた、いや夢を超えた方で、徳島県の鳴門工業高校から帝京大学に進学し、千葉ロッテマリーンズへ入団。WBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)でも大活躍し、世界一の捕手(ベストナイン)として選ばれた選手といえば……里崎智也さん! ですよね。

 

今では「ビックリマン」といえばこの人というくらい、野球界以外でも活躍の場を広げられ、野球解説だけでなくバラエティ番組も出演されたりと大忙しな里崎さんですが、新刊『勝者になるための84の提言』(里崎智也・著/学研プラス・刊)をこの度出版されました。

 

本の中には、いくつもの成功を掴んできた裏で、どんな想いで、どんな努力をしてきたかがわかりやすく綴られています。今回はその中から疲労困憊なビジネスマンでもやる気になる4つの提言をご紹介させていただきます。

 

↑ページを開くと大迫力の里崎さんの提言が!!

 

 

「自分の賞味期限を見極めろ!」

野球選手になりたい! と自分の息子が言ってきた時、応援するのが親の役目だとは思うのですが、あなたはプロ野球選手としての賞味期限がどれくらいかご存知でしょうか?

 

プロ野球でいえば、見極める時期は、ポジションにもよりますが、だいたい高卒で10年、大卒で5年までですね。

(中略)

何年後に活躍するかどうかは、誰にもわかりません。宝くじみたいなものです。プロ野球選手はドラフトで入団しても、10年後にチームの主力になっている選手は平均で11〜12%です。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

わかってはいたけど、厳しい世界!! 安定志向な現代において「よーし、頑張れ!」とは小さい子どもに言いにくくなっちゃいますよね(笑)。

 

でも私たち一般人だって、「自分の賞味期限を知る」というのは大事なこと。チャレンジすることに遅い早いはないかもしれませんが、チャレンジして成功しやすい年齢は必ずあるはず。今の働いているところで結果を出したいなら、何歳までに何をするのか、しっかり自分で見極められる力を養っていきたいですし、自分の子どもが将来どんな職業につくのか考えた時に、先に伝えてあげられることは伝授しておきたいですね!

 

 

「モノマネ上手になれ。」

野球がうまい選手は「他の選手のモノマネ」も上手だったという里崎さん。里崎さん自身も、現役時代は「幕張の安打製造機」の異名を持つ福浦和也さんのモノマネをしていたそうです。

 

見本になる誰かのモノマネを採り入れて、自分の中でオリジナルに変えて、成長するときに強くなるんです。それを最初から、すべてオリジナルでやろうなんて、無理なんです。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

ただ人を楽しませるだけのモノマネをしていればいいということではなくて、モノマネを採り入れて、オリジナルに変えることで成長できるということなんですね。

 

「この上司みたいになりたいなー」という人がいたら、服装からでもいいのでモノマネしてみるのも良いそうです。「毎日仕事で疲れちゃったなー」という人は、元気な社員さんの生活スタイルモノマネをやってみると見えてくるものもあるかもしれません!

 

 

「アピールしないバカはいらない。」

里崎さんのように、成功している人のお話を読んでいくと「運がいいんだよ。私なんて日陰人生だからさ」と思う人もいるでしょう。もちろん、運も実力のうちなのですが、運を引き寄せる努力をしっかりされています。

 

「誰も見てくれていない」ってグチる人もいますが、当たり前です。上の人もそんなに暇じゃない。見てほしかったら自分でアピールするしかない。

(『勝者になるための84の提言』より引用)

 

あなたは、実力があってもなかなか日の目を見ないのを周りのせいにしていたりしませんか? そんな時には思い切って自分をアピールしましょう! 里崎さん曰く『選ぶほうは、活躍してくれるなら誰でもいい』とのことなので、あなたの特技をしっかり披露する場を確保しなければ、もったいないっ!

 

仕事での特技はもちろん、趣味の話なども周りにちゃんとアピールしていくことで、思わぬところからお誘いが出てくることもあるでしょう。自分の実力は出し惜しみせず、アピールしまくる! それくらいじゃないと相手には届かないということですね。

 

 

「3つの目線で自分を見ろ。」

こうやってご紹介していくと、どんどん意識高い系な人になるのがいいのかな? と考えが偏ってしまいがち。でも意識を高くするのがいいのではなく、しっかり「3つの目線で自分を見る」ことが重要なんだとか。

 

3つの目線とは、

 

・自分という個を成り立たせるために、甘い目線

・客観的に自分をみた、厳しい目線

・周りからどうみられているかという、客観的な自分からの能力値の目線

 

のこと。

 

自身を甘やかし過ぎると周りから評価されにくかったり、他人からの目線ばかりを気にしていると自分のメンタルがやられてしまったり、意識高くなり過ぎると他人からの目線に気がつかず、イタい人になっちゃったりするので、この3つがバランス良く保たれているのがとても重要。疲労困憊なビジネスマンの中には「甘い目線」が足りない人が多いかもしれません。「自分はよくやっているよな〜」とたまには自分を褒めてあげましょう!

 

 

『勝者になるための84の提言』には、これ以外にも変化の激しいビジネスマンの心の支えになるような提言が、「提言+詳しい説明」のセットで多数紹介されています。パッと開いたそのページでも、里崎さんの元気になる言葉がたっぷり詰まっているので、自宅の書棚に入れておいて、なんだか元気がないな……という時に、好きなページを開いて言葉を受け取ってみるのもおすすめです!

 

 

【書籍紹介】

勝者になるための84の提言

著者:里崎智也
発行:学研プラス

働き方改革が叫ばれる昨今、ビジネスパーソンが成功するにはどんな心構え、どんな行動が必要なのか? 千葉ロッテマリーンズで2度の日本一、WBCで世界一&ベストナインを経験した“下剋上オトコ”、里崎智也が84の提言で綴る!

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【朝の1冊】自分に正しい値札をつける。自己信頼を高めるための4つの心がけ――『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』

世界的ベストセラーの自己啓発書といえば……ナポレオン・ヒル『思考は現実化する』、スマイルズ『自助論』、カーネギー『人を動かす』、コヴィー『7つの習慣』などが有名です。

 

今回は、オバマ元大統領も愛読していた「ラルフ・ワルド・エマソン」の教えについて紹介します。『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』(中島輝・著/朝日新聞出版・刊)という本がオススメです。代表作『自己信頼』をはじめ、エマソンの名言をわかりやすく解説しています。

 

 

自分に値札をつける

人は自分で「自分の値段」をつけられる。
そして行動を起こせば、万人は黙ってその値札に同意する。

(『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』から引用)

 

他人からの評価をあてにせず、自分で「値付け」することによって、願望や目標をハッキリと見定めることができます。

 

ただし、値札を付けたからといって、かならず売れるとは限りません。値札の額に届かない実力ならば、買い手からは見向きもされないでしょう。だからといって、自分を安売りしてはいけません。値札にふさわしい実力を身につけさえすれば、いくらでも買い手が現れるからです。

 

値札をつけたからには、自分の可能性を疑わないで、自信たっぷりに生きましょう。小さい値札よりも、大きい値札のほうが目立つからです。声は大きく、気持ちはおおらかに。堂々と振る舞っていれば、発見されやすくなります。

 

 

腫れものにさわるような働きかた

多くの人はなりゆきで職業に就き、腫れものにさわるようにして仕事をしている。それは機械の一部になることであり、自分自身が失われる。

(『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』から引用)

 

給料がもらえるから、とりあえず働いている。通勤できる距離にあるから、とりあえず所属している。

 

取引先や上司や同僚は気にくわないけれど、生活の糧を得るために、なるべく波風を立てないように仕事をこなす。まるで「腫れものにさわる」ように、痛みやストレスをごまかしながら生きる。はじめから機械として生まれたほうがマシです。

 

エマソンは「人は生まれながらに天職が授けられている」と述べています。天職にたずさわっていれば、苦痛を感じず、無限の努力を続けられるからです。どうせ働くのであれば、「なりゆきの仕事」よりも「天職」を選びましょう。

 

わたしたちは、自分のことを過小評価しがちです。エマソンの教えは「自己信頼」を重視しています。どうすれば、自分を信じ抜くことができるのでしょうか?

自分を低く見積もらない

人は自分の考えを、それが自分のものであるからという理由で無雑作に捨てている。

(『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』から引用)

 

エマソンは「自分に価値があるのか?と心配することは無価値である」と述べています。たとえ意識しなくても、自己肯定を積み重ねてきたからこそ、あなたは生き残っているのです。

 

ほかにも、エマソンは「自然に出てくる行為がいつも1番良い」と述べています。頭のなかに浮かんだことが、あなたのやるべきことです。「自分の考え」に逆らってはいけません。空腹を感じたら食べるのが1番良い。疲れたら眠るのが1番良い。お金が欲しくなったら働くのが1番良い。自分の思うままに行動することが、健康と成功の秘訣です。

 

 

遅ければ遅いほどリターンは大きい

努力はいちいち報いられる。
その報いが遅ければ遅いほどそれだけ君には得なのだ。
複利には複利がついていくのが、この世の習いなのだから。

(『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』から引用)

 

複利とは、利子によってさらに利子が増えることです。努力が報われない期間が長いほど、複利によって成功報酬は膨れ上がっていきます。3か月後よりも1年後。3年後よりも10年後。有形・無形にかかわらず、じっと耐えた時間が長いほど利子は積み上がって、大きなリターンを得られます。

 

エマソンは「偉大な人ほど平凡な1日をマジメに過ごす」と述べています。理想の生き方をしたければ、ひたすら「自己信頼」を心がけるだけ。簡単です。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

エマソン 自分を信じ抜く100の言葉

著者:中島輝
発行:朝日新聞出版

「すべての人生が実験なのだ。実験すればするほどうまくいくようになる」──今もなお、アメリカの成功者の多くが影響を受ける19世紀の思想家エマソンの名言を人気セラピストがわかりやすく解説。読めば勇気と自信が湧いてくる!

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【夜更けの1冊】女性向け恋愛本から学ぶモテる男になるための3か条――『すべてがあなたのものになる!史上最強の乙女のシナリオ。』

女性向け恋愛指南本にはしばしば「男心と女心は違います。女性がしてほしいことを男性は察知できません」などというようなことが書かれている。では「女性がしてほしいこと」とは、具体的にどんなことなのだろうか?

 

 

女性は何を求めているの?

すべてがあなたのものになる!史上最強の乙女のシナリオ。』(上原愛加・著/学研プラス・刊)では、男心と乙女心(この本では女心は乙女心と書かれている)の違いを丁寧に解説している。そして男性心理について「彼は、闘いながら生きてきた。つまり、彼にとってこの社会は敵ばかり」と説明し、男性は傷を負っている、と考えている。だから「彼のキズの手当てをしてあげるナイチンゲール」になりましょうう、と、とても可愛らしいことが書かれている。

 

この本では「彼はちっともオトメゴコロをわかってない(略)。悪気はないんだし、仕方ない」と男心にかなり寛大だ。では、女性が求めていることとは、具体的に、いったいどんなことなのだろう。

 

 

「好きだよ」と言ってほしい

女性がしてほしいこととは、「少女漫画のようなこと」だ。多くの女性が支持するからこそ、少女漫画のイケメンが放つあのスイートなセリフがあるのだし、ロマンティックな告白がクライマックスシーンを盛り上げる。女性は男性から「好きです」と言われると、ぱあっと目の前が明るくなるもの。毎日のように浴びても構わないうれしい言葉なのだ。

 

しかし、日本の男性はこれがなかなかできない。照れて「好きだ」や「愛してる」という言葉をひんぱんには言えない。テレビなどでイタリア人男性が妻に毎日愛してるよと言っている様子が流れると、日本人女性はうらやましくてため息が出てしまうものなのだ。ということは、彼女に会うたびに「好きだよ」「愛してるよ」と言うだけで喜んでもらえるということなのだから、照れを忘れてやってみる価値はあるかもしれない。

 

 

「話を聞いてほしい」

本書では、女性は男性の聞き役になりましょう、と説いている。男性は自分がいかにすごいかを語り、女性からスゴイね、と言われることで奮い立つから聞き上手になればなるほど愛されるのだ、と。そして「好きな人の傍にいれば、自分のことを少しでもわかってほしいという気持ちが止めどなくあふれだしてしまう」、つまり自分のことも語りたいだろうけれど、そこはガマンしましょうね、と釘を刺してもいた。

 

女性はもともと話し好きだ。女同士が集まると何時間でもしゃべり続けていられるくらいである。なので、本当は好きな彼の前でも自分のことをいろいろと話したい。それは男性にとってあまり関心がないささやかな事柄も多いのだけれど、それを親身になって聞いてくれて、かつ後日もちゃんと記憶してくれている男性がいたら、好感度はかなり高くなるはずだ。

 

 

「ディズニーランドに行きたい」

そして、本のあちこちにディズニーランドの単語がある。彼とディズニーランドに行くのが多くの女性の夢なのだ。夢と魔法の王国で幸せ気分に浸りたいし、1日ずっと彼を独占もしたい。さらに乗り物待ちの時間には、女性が大好きなおしゃべりもできるのも楽しいのだ。

 

なので男性は「今度ディズニーランドに行こうか」と女性に切り出せば、大喜びされる可能性は高い。かなりの確率で「ほんとに!? 行く行く!」という返事が返ってくることだろう。遠方に住んでいる場合は「いつか行きたいね」と二人の目標にするだけでも絆が深まるのでおすすめだ。

 

こうやって見てみると、女性は困難なことを求めているわけではない。ただ、継続性があるというのは特徴的だ。「毎日のように好きだよと言われたい」「会うたびに私の話も聞いてほしい」「ディズニーランドに何度も行きたい」のである。何度も愛情表現されることで愛される実感を強めていくのが女性なのだ。だから面倒であってもこまめな愛情補給をすることが大切なのである。

 

【書籍紹介】

すべてがあなたのものになる!史上最強の乙女のシナリオ。

著者:上原愛加
発行:学研プラス

史上最強の乙女のバイブル コレクション」シリーズの第3弾。愛され乙女は、夢というのは、掴むものじゃなく、「授かるもの」だと思っている。夢や願いは、自分が育てるものじゃなく、まわりの人が育ててくれるもの。33の魔法で恋も夢も叶っちゃう!

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【朝の1冊】未来のために24時間すべてを使うことの愚かさ――『奴隷の時間 自由な時間』

人生は有限です。与えられた時間は限られています。現代社会では、お金と時間を切り離して考えることはできません。

 

奴隷の時間 自由な時間』(ひろ さちや・著/朝日新聞出版・刊)という本があります。欲望の奴隷にならないための心がけを説いている1冊です。

 

 

「働く」だけが仕事ではない

仕事には二種類があります。
一つは、金を稼ぐための仕事です。
もう一つは、人間としての大事な仕事で、具体的に言えば「老いる仕事」「病む仕事」「死ぬ仕事」です。

(『奴隷の時間 自由な時間』から引用)

 

こちらの都合にお構いなくやってくるもの。それが「仕事」というものです。

 

「病気」や「老い」や「死」は、思いがけないタイミングでやってきます。金儲けがうまい人であっても、いざ病気になったり余命宣告をされたとき、ビジネスライクに要領良くやり過ごせるでしょうか? そんな人は、おそらく少数派でしょう。

 

一病息災。治る病気ならば、ネガティブに考えずに、乗り切れば成長できる仕事だと考えましょう。
わたしたちは、「死ぬ」という一世一代の大仕事をやりきるために、さまざまな経験をします。そのように考えれば、あらゆる困難もムダではないことが理解できます。

 

 

1日のうち、何時間を売るべきか?

わたしたちは二十四時間のうちの何時間かは売りに出さねばなりません。

(『奴隷の時間 自由な時間』から引用)

 

ほとんどの人は、時間を切り売りすることによって、生活の糧を得ています。費やした時間に対する見返り(報酬)は、人それぞれです。なかには、使い切れないほどお金を稼いでみせる人もいます。

 

先に述べたとおり、資産を増やすことだけが「仕事」ではありません。本書『奴隷の時間 自由な時間』の著者は、「いちばん愚かな人は、24時間の大部分を売り払ってしまった人だ」と述べています。欲張りな人は、いつまでも満ち足りることがないからです。

 

そのような生き方について、わかりやすいたとえ話があります。「人にはどれほどの土地がいるか」というロシア民話です。

命を売り払った人の末路

広い土地が欲しいと思っているパホームが、一日千ルーブリで土地を売ってくれる村に行きます。(中略)千ルーブリ払えばその人が一日のあいだに歩いて回った土地が全部自分のものになるというのです。

ただし、一日のうちに出発点まで戻って来ないと、いくら歩いてもゼロになってしまう。そういう条件がついています。

(『奴隷の時間 自由な時間』から引用)

 

たくさんの土地が欲しい男(パホーム)は、必死になって歩き回りました。そして、夕日が沈むまでに出発点まで戻ってくることに成功します。
しかし、ゴールを迎えたあとすぐに死んでしまいます。土地欲しさに生命力を使い果たしたからです。せっかくゲットした広大な土地は、その男の墓地になりましたとさ。

 

この「人にはどれほどの土地がいるか」というエピソードは、『トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇 (岩波文庫)』に収録されているものです。欲に目がくらんで、手に余るほどの利益を期待して、時間や心身の健康を売り払ってしまうと、どうなってしまうのか? わかりやすい教訓です。

 

 

「魔法の財布」にこだわりすぎない

将来・未来というものは魔法の財布です。その魔法の財布を捨てたとき、われわれは現在を生きられるのです。

(『奴隷の時間 自由な時間』から引用)

 

現在を「犠牲」にすれば、将来に「利益」を得られる。いつか報われる、やがて得をする日が来る。たしかに、未来には「無限の可能性」があります。まさに「魔法の財布」です。一見すると、正しい考え方ですが……。

 

実際はどうでしょうか? 努力が報われるとは限りません。先に紹介した「たくさんの土地を欲しがった男」は、せっかく努力をしたにもかかわらず、見返りを得られないまま死んでしまいました。

 

死ぬのは極端だとしても、得ることができる利益(パイ)の大きさや量には限りがあります。全員がお腹いっぱいになることはできません。頭が良い人たちが、食べきれないにもかかわらず奪ってしまうからです。ふつうの人に勝ち目はありません。

 

未来や将来という「魔法の財布」に期待するあまり、「いま」この瞬間をおろそかにしていませんか?
「その日暮らし」といえば悪い印象がありますが、きょう「その日」を楽しく過ごせなければ、たとえ懐が暖かくても、心は冷えきったままです。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

奴隷の時間 自由な時間

著者:ひろさちや
発行:朝日新聞出版

欲望(お金)の奴隷になった人は、「奴隷の時間」で人生を終えます。人生の幸福は、「現在」を大事にすることにあります。将来の利益のために、現在を犠牲にするのは最悪の生き方。あらゆる宗教が、現在を大事に生きよと教えています。仏教、キリスト教、イスラム教の教えからひろさちやが説く、良質な人生を過ごすための「お金と時間」とうまく付き合う智慧。

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【朝の1冊】日本一有名なニートが教える「お金」にこだわらない居場所や仲間をつくる10のコツ――『持たない幸福論』

持たない幸福論』(pha・著/幻冬舎・刊)という本があります。日本一有名なニートだった著者が、お金にこだわりすぎなくても得られる幸福感について、実践した結果と考察をまとめたものです。

 

 

居場所の作り方

人間が人生の中でやることって結局、大体七割くらいは「居場所を作るため」の行動じゃないかと思う。(中略)居場所というのは「安心して居られる場所」「自分はここにいてもいいんだと思えるような場所」のことだ。

(『持たない幸福論』から引用)

 

本書『持たない幸福論』では、著者のphaさんが「居場所や仲間をつくる10項目のコツ」を提案しています。

 

【複数の場所に顔を出す】
いちばん身近な「居場所」は、(1)自宅と(2)職場です。さらに、(3)趣味サークルや地域コミュニティに所属すれば、生活にメリハリが生まれます。

 

3つの「メイン居場所」のほかにも、1年に数回だけの集まるような「サブ居場所」があると良いそうです。同窓会、元同僚たちのOB会、同業他社の有志による勉強会&懇親会など。匿名で集まることができるSNS上のグループも、リラックスできる居場所のひとつです。

 

【自分が主催者になる】
両親と同居しているけれど居心地がよくない。ひとり暮らしが寂しい。いまの職場は気に入らないことが多い。参加したい集まりがない。

 

アレがない、アレが足りない……ないものは、自分で作りましょう。

 

(1)新しい家庭をつくる → シェアハウス、シェアルームの管理人になる。
(2)新しい職場をつくる → 副業を始める。
(3)新しいサークルやコミュニティをつくる → SNSのグループ機能を使ってゆるく繋がる。

 

 

「働く」「仕事」を再考する

仕事をするために人生があるのではなくて、より良く生きるための手段の一つとして仕事というものがあるに過ぎない。

(『持たない幸福論』から引用)

 

わたしたちは、時間をムダにしてはいけないと思い込んでいます。なぜなら、時間を活用しない=何もしないことは「損」につながる、という思い込みがあるからです。

 

本書『持たない幸福論』の著者であるphaさんは、「何かやらないと時間がもったいない!」「ぼーっしていると人生がもったいない!」という人は、体力が余っているだけではないかと述べています。

 

気力や体力がない人は、無理に何かをやらなくても良いのです。phaさんは体力が余っていません。働くのが得意ではない。だから、少ない収入で、ぼーっとしながら楽しく暮らすためのコツを知っています。

長続きする「人付き合い」のコツ

僕がお金がなくてもそんなに不満がないのは自分が一番やりたいことは実現できているからだと思う。

(『持たない幸福論』から引用)

 

なぜ収入が少なくても不満がないかといえば、phaさんは自分がやりたいことを実現しているからです。

 

ゆるいつながりの仲間と付き合って、料理をしたり、それを分けあったり、散歩したり、ときどき遠出したり、本やゲームソフトの貸し借り(シェア)をしています。

 

人恋しいのに、「お金がないから」「お金が減るから」という理由で会わない、集まりに出かけないことはありませんか? 人付き合いは、お金をかけないほうが長続きします。孤独に陥らないためのコツです。

 

 

ぼーっと楽しく幸福に生きる

「そんな生き方は間違っている」「世の中はそんなものは認めないぞ」とか言ってくる人がいるけど、そういうのはよく分からない宗教の人が「あなたの生き方は我が教の教義に反しているので死後十億年間地獄に堕ちます」とか言ってくるのと同じなので、「ああ、別の宗教の人だな」と思ってほっとけばいい。

(『持たない幸福論』から引用)

 

働きたい人は、好きなだけ働けばいい。ただし、「働くのが当たり前」という考え方を、他者に押しつけるべきではない。体力がない人、収入が少なくても幸せな暮らしができる人は、あまり働きたくないからです。

 

本書『持たない幸福論』の著者であるphaさんは、「絶対にやらなければいけないことは、それほどない」と述べています。生きることですら、権利であっても義務ではありません。あなたは幸福に生きる権利があります。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

持たない幸福論

著者: pha
発行:幻冬舎

「正社員にならねば」「結婚しなければ」「子どもを作らねば」「老後に備えなければ」……「こうあらねば」が人を追いつめている。生きるのが苦しいときは、世間の価値観や周りの意見にとらわれずに、自分が好きなものに立ち返るといい。仕事や家族やお金に頼らず、社会の中に自分の居場所を見つけ、そこそこ幸せに生きる方法を、京大卒の元ニートが提唱。

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【朝の1冊】「自分らしさ」の呪いが解けると、仕事は成功する――『「自分らしさ」はいらない』

SNSなどを通じて手軽に周りの同世代とくらべられるようになった情報社会では、「個性」や「自分らしさ」が重視されているように感じます。

 

・あの人は自分らしい働き方をしていて羨ましい

・サラリーマンでも、自分らしい仕事がしたい

・周りに囚われず、私らしく生きたい

 

など思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そんななか、とても自分らしく生きている松浦 弥太郎さんの『「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン』(松浦 弥太郎・著/講談社・刊)という本を見つけました。自分らしく生きる方が正しいと思っていたのですが、一体どういうことなのでしょうか?

 

 

「自分らしさ」がいらない理由

正直、自分らしく生きているか? と聞かれても「うーん」としか答えられません。好きな服も着られているし、お仕事もさせてもらっているし、食べたいものも食べられている。でも、「もっとお金があれば!」とか「休みたい!」とか人生に不満はいっぱいあります(笑)、今の自分が自分らしいかはちょっと疑問…。早速、松浦さんに聞いてみましょう!

 

つまるところ、自分らしさとは、結果論です。

自意識を捨てて、精一杯やったとき、他人が「あなたらしい」と言ってくれるもの。それが本当の自分らしさだと思うのです。

そうであれば、自分が思う「自分らしさ」は邪魔者にすぎません。

(『「自分らしさ」はいらない』より引用)

 

なるほど。最初から「私は自分らしいのよ!」と決めつけてしまうと、それが邪魔して本当の自分らしさが出てこないということなんですね。羨ましいな〜と思っているあの人も、「よし、自分らしく生きるぞ!」と意気込んだ結果、自分らしい生き方をしているのではなく、自意識を捨てて、精一杯やっているのを見た周りの人が「あの人らしいね」と言ってくれているということなのですな。

 

では、どうしたら変なしがらみに囚われることなく、生きていけるのでしょうか? まずは仕事において、どんな意識をしたらいいか教えてもらいましょう。

 

 

アイデアを生み出すためには「無知な自分」になる

30代ともなると「知っていること」が増えてきますし、自分のキャリアを活かしてお仕事されている方も多いでしょう。そうなってくるとどうしても働き方も固定されがち。

 

また、30代で役職が上がってくると新しいアイデアを求められることも多いでしょう。「この企画、どう思う?」とか「新しい企画について考えて欲しい」と言われた時には、自分のキャリアをベースに考えてしまうように思いますが、松浦さん曰く「どんなに知識が豊かでも、無知な自分になることが大切」とのこと。どのような気持ちで向かい合うのが良いのでしょうか?

 

それにはプライドを捨て、自分らしさを捨て、自分をゼロにすることです。

アイデアというのは、とても幅が広くて、すべてが新発明で特許が取れるようなものとは限りません。

(『「自分らしさ」はいらない』より引用)

 

「俺のアイデアは最高だから!」と思って企画を考えるのではなく、あくまでも目線と腰の位置を低く、使う人や参加する人に合わせることが大切なんですね。アイデアも「俺が考えた、俺が最高だと思うコト」ではなく「世の中のみんながうれしいコト」にしていくことが大切。確かにヒット商品を思い浮かべて見ても、制作者の「俺が!俺が!」という商品より、「使う人」が喜ぶものばかりですもんね。

 

 

成功できる人に共通しているのは、頭の良さより心のクオリティ

では、どんな人を目指せばいいのか。仕事で成功したいならどんな心持ちでいたらいいのか、迷ってしまいますよね。再び、松浦さんに成功している人に共通していることを教えてもらいましょう!

 

成功した人、すごい人というのは、心を人一倍働かせようと意識し、コンディジョンを整え、精一杯の努力を続けている人だと思います。成功する人は、体だけではなく、頭だけではなく、心が働いているということです。

(『「自分らしさ」はいらない』より引用)

 

ポイントは「心」なんですね。心の使い方は、授業で教えてもらっていないため「わからないよぉー」という方がほとんどだと思いますが、最終的に意思決定をする時に「心」が使われているんだとか。普段意識しないと休業状態になっているので、今日から意識して「頭」を使っているのか、「心」を使っているのか考えてみてはいかがでしょうか?

 

 

心がざわついた時には、「はじめて」に挑戦する

とは言っても、すぐに心を使う! なんてことはなかなかないと思うので、「なんだか最近、仕事が行き詰まっているな〜」「なんとなく最近うまくいかないな」という人は、あえて「はじめて」にチャレンジしてみるのがオススメなんですって。

 

何もわからない。自分ではどうにもできない。ただ受け身になって教えてもらい、未知なることをスポンジのように吸収して、動いてみる。

何も知らない、すべてわからない。自分らしさを発揮しようにも手がかりすらない。

(『「自分らしさ」はいらない』より引用)

 

先ほど「自分をゼロ」にするというキーワードも出ていましたが、初めての経験は何事も「ゼロ」からのスタート。威張らずに、できない自分を認めて、教えてもらう・吸収する姿勢でいることで素直になることができ、心の使い方も少しずつわかってくるようになるそうです。

 

行ったことのない街に行く、いつもと違う帰り方で帰ってみる、飲んだことのないお酒で乾杯してみるなど、ルーティンになりつつあることに「はじめて」を追加してみるとヒントが見つかるかもしれませんよ!

 

 

自分らしさを超えていくこととは?

最後に『「自分らしさ」はいらない』で紹介されていた素敵な言葉をご紹介させてください。暮らしの手帖社の創業者、大橋鎮子(おおはししずこ)さんが、松浦さんによく話ししていたことがあるそうです。

 

「あなたがうれしいことではないし、あなたにとってすてきなことではない。読者にとってうれしいことなのか、読者にとって素敵なことなのか。それをいつも心で考えなさい」

(『「自分らしさ」はいらない』より引用)

 

これは「読者」の部分を変えれば、すべての仕事、生活において共通している言葉だなと思いました。例えば、家族(お子さんや両親、旦那さん)で考えてみれば今日の夕飯の食事も変わりますし、仕事(上司・部下、クライアント、顧客)で考えてみれば仕事のやり方も変わってくるでしょう。

 

「自分らしく働けているのかな?」とウダウダしているのであれば、自分を一旦ゼロにして、自分の心に耳を傾け、時には新しいことにチャレンジしながら、相手のために精一杯頑張ってみる。そうすることで、周りの人から「●●さんらしいね」と言われることがあるかもしれません。『「自分らしさ」はいらない』には松浦さんの優しい言葉で、ヒントがたくさん掲載されているので、仕事やプライベートで心がいっぱいいっぱいになっている方は、一読してみるのをオススメします!

 

 

【書籍紹介】

 

「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン

著者: 松浦弥太郎
発行:講談社

人気エッセイスト、前「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんの書き下ろし最新作、ついに完成!最新作のテーマは、くらしと仕事を充実させるためのレッスン。キーワードは「こころで考える」。そして、こころで考えたら、「何かを始めたいなら、『自分らしさ』など捨てたほうがいい」頭で考えることの限界を打ち破る方法ーー「自分らしさの捨て方」のレッスンを初めてみましょう。

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あなたは正しく褒めていますか? 相手を不快にさせない12の褒め方――『初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター』

褒められて嫌な気持ちになる人はいないでしょう。

 

私も褒められるのが好きです。小さなことでも、「今日のチキンライス、よくできてるね。暁子は料理が上手だな」と、言われると、その日一日、鼻歌交じりで過ごせます。大事なところは「チキンライスが美味しい」で話を止めず、料理が上手というところまで、褒めることです。途中で話をとめると、褒められたのは「チキンライス、そのもの」であって、作った私ではないからです。

 

褒めるなら最後まで。これが私の願望です。

 

 

異性を褒めて、こちらを振り向いてもらうには

初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター』は、いかにして人を褒めたらいいのか? について、書かれた本です。恋活サプリBOOKSというシリーズにおさめられているので、おもに、異性を褒めるときにはどういう手段が有効かについて書かれています。

 

恋活サプリとは“恋や婚活でちょっと困ったり、悩んだりしたときにすぐ効く「サプリメント」のようなデジタルコンテンツ”を指します。たとえば、あなたが合コンや異性がたくさん集まっているパーティに行く途中だとしましょう。もしかしたら、運命の人が見つかるかもしれないという淡い期待を抱いて…。

 

けれども、多くは初めて会う人。もし、「素敵だな」と思う相手がいたとしても、どうやってこちらを振り向かせたらいいのでしょう。

 

 

私なら、こう褒める

何かにつけ、「もし私だったら」と考える癖がある私は、意中の人を見つけたら何をするだろうと考えてみました。もっとも、私は残念ながら合コンやお見合いパーティには縁がありません。そもそも行ったことすらないので、説得力に欠けるかもしれません。

 

それでも、伊達にトシを取っているわけではありません。おおよそのことはわかります。もし、私が「あ、彼、感じいいな」と、思う人を見つけたら、じいっと観察すると思います。

 

初めて会った人ですから、まずは情報収集。お酒の飲み方、笑うときの表情、さらには女性をどんな風にエスコートするか、じいっと見つめると思います。そして、運良く彼と話すチャンスを得たらきっと褒めるだろうと思います。

 

「先ほどから、グラスの持ち方に感心してたんですよ」とかなんとか…。私は男性が立ってお酒を飲む姿が、セクシーで好きなんです。

褒め言葉の難しさ

これで、恋活が成功するかどうかはわかりませんが、自分でいいと思ったことを褒めるだけで、相手も、そして何より自分が幸福になります。ただ、褒めるというのは案外難しいものだということはわかります。

 

またまた自分の経験に引き寄せて考えてみると、ひとつ気づくことがあります。私は自分の気にしていることを褒められると嬉しい反面、マイナスにとらえる傾向があります。

 

たとえば、先日、宴会があり、たくさんの方とお話しする機会がありました。ある方が言いました。「三浦さん、綺麗ですね~。本当に綺麗ですね」。私は嬉しくて、「うふふ」と、笑ってしまったのですが、次の言葉で嬉しさは半減しました。

 

「いや~~、20年前に会いたかったな~~。さぞや綺麗だったでしょうね。若いときは、周辺をなぎ倒していたんじゃないですか」。今も昔も、私は周辺をなぎ倒してなどいませんし、それに20年前って…。つまりは今はばあさんてこと? 綺麗というのは若いころ限定? そう思うと、「うふふ」は「よよよ」に変わり、酒量が上がってしまったのでした。

 

褒め言葉とは、難しいものです。

 

 

褒め上手になるヒントが満載

『初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター』には、こうした褒め言葉の難しさを理解したうえで、褒め上手になるヒントが書かれています。

 

異性に褒められると嬉しいものです。
ですが、褒め方を間違えるとお世辞ではないかと、逆に悪い印象を与えてしまう場合もあります

(『初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター』より抜粋)

私も時々、思います。褒めることはけなすことにもつながっていくので、注意しなければ、と。

 

 

「相手に良い印象を与えるための12のヒント」

著者である吉田幸弘はリフレッシュコミュニケーションズの代表として、コミュニケーション術、マネジメント術についてのセミナーや研修を行っている方です。

 

そんな彼が主張する「相手に良い印象を与えるためのヒント」は全部で12。

 

1 相手のいいところを探すトレーニングをする
2 第一印象を褒めてみましょう
3 相づちやうなづきは褒めているのと同じような効用があります
4 褒められ上手になりましょう
5 第三者を使って褒めましょう
6 つぶやきぼめを使いましょう
7 グループの中の目立つ人に対する褒め言葉
8 センスのよい相手に対する褒め言葉
9 普通っぽい人にはこう褒めましょう
10 褒めにくい人にはこう接しましょう
11 やってはいけない間違った褒め方
12 褒め上手な人は言葉以外のコミュニケーションも上手

 

 

両刃の剣だからこそ

もし、あなたが張り切って合コンに行くとしたら服装に気を配るのもいいし靴を磨くのも素敵。もう一つ加えるとしたら、褒め言葉でへまをしないよう『初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター』をチェックしてはいかがでしょう。

 

異性に限ったことではなく、同性もそして家族に対してさえ、褒め言葉は両刃の剣。褒め方を間違えると、褒めない方がましだったという状態に陥ります。真心から出た褒め言葉を正しく使い、あなたを、そして、周囲の人を幸福にしてください。

 

私も努力します。

 

 

【書籍紹介】

 

初対面の男ゴコロを引き寄せる「褒め言葉」実践マスター

著者:吉田幸弘
発行:学研プラス

人は誰しも褒められたいと思うもの。それが異性からならなおさらです。しかし、褒め方を間違えると逆効果にもなるので、「褒めるのが苦手」な方も多いと思います。本書では、特に女性のために、読んですぐに使える効果的な褒め方を解説していきます。

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「1日3時間」「中堅中学校の入試問題」ビジネスで勝ち抜くための地頭の鍛え方――『生き残るための、独学。』

新しい分野で活躍しているのは、独学がうまい人です。

 

たとえば、いまや数千万円~数億円の年収を稼ぐといわれているYouTuber(ユーチューバー)は、当然のことながら「ユーチューバーの学校」を卒業していません。新興ジャンルに体当たりで飛び込んで、動画編集やパフォーマンスを「独学」で身につけた人ばかりです。

 

独学力は、競争に勝つための武器です。独学ノウハウをまとめている『生き残るための、独学。』(千田琢哉・著/学研プラス・刊)という本を紹介します。

 

 

なぜ、独学力が必要なのか?

「元エリートたち」には “独学力” がなかった(中略)幼少の頃から完璧な環境で、最高に効率の良い勉強術を享受してきたため、最適なやり方を一から考える習慣が身につかなかった。

(『生き残るための、独学。』から引用)

 

一流大学を卒業した「エリート」と呼ばれる人でも、落ちぶれることがあります。進学校や学習塾のカリキュラムに頼りきってしまい、独自の勉強法(独学力)を身につけなかったからです。

 

教科書どおりの模範解答では通用しないことがあります。競争社会で勝ち残るには、変化に対応し続けるための「独学力」が必要なのです。

 

 

「初歩」と「基礎」の違い

何か新しい分野の勉強を始めようと思ったら、「基礎」の前の「初歩」が大切になる。(中略)理解できるかのチェックが「初歩」であり、それを使いこなせるかのチェックが「基礎」である。

(『生き残るための、独学。』から引用)

 

学習とは、そのときの理解度に合わせた「知識」や「技術」を身につけることです。自分自身で「理解度チェック」を適切にできるかどうか。それが、独学のコツです。

 

たとえば、いま流行している「AI(人工知能)」や「機械学習」の仕組みを理解するためには、高校数学の知識を求められます。高校数学(初歩)がおぼつかなければ、テクノロジーの使い方(基礎)を身につけることはできません。

 

高校数学の理解がおぼつかないのならば、恥ずかしがらずに中学生の数学ドリルを復習します。『生き残るための、独学。』の著者によれば、オトナが地頭を鍛え直すためには「中堅中学校の入試問題」が最高のトレーニングになると述べています。思考力を問われる問題が多いからです。

 

ところで、プロフェッショナルになるためには「1万時間の練習」が必要と言われています。じつは、10%地点の「1000時間」で成果があらわれ始めます。

独学は「1000時間」で成果が出る

1日だけ10時間の勉強をすることは、ほとんどの人ができるだろう。だが、毎日1時間の勉強を10年間欠かさず継続できる人は、きっと1%に満たない。

(『生き残るための、独学。』から引用)

 

「1000時間の独学」は、毎日3時間ずつ勉強すれば1年間で達成できます。フルタイムで働いている人にとっては厳しい時間割です。だからこそ、わずか「1000時間」を継続するだけで、競争相手のほとんどが脱落してくれます。

 

残りの「9000時間」は、自分との戦いです。プロフェッショナルの1万時間に達するためには、毎日3時間ずつ精進しても10年間かかりますが……1000時間を乗り切ったときの気持ちを忘れなければ、あとは「9回」繰り返すだけ。1000時間を耐え抜けたならば、あなたには「デキる人」の素質があります。

 

 

独学で得られる「重力」とは?

「お金は低い場所から高い場所に流れる」(中略)あなたが仕事で一応、給料をもらえるのは、その仕事においてはお客様よりも詳しい専門家であり、「知識やスキルでは、あなたのほうがお客様よりも ”上” 」ということになっているからである。

(『生き残るための、独学。』から引用)

 

知識やスキルの場合は、それを使いこなせる人が「上」です。知識のない人たちが「下」ということになります。つまり、知識やスキルに支払われる対価(お金や尊敬)は、下の人から上の人に向かって流れていくわけです。

 

水は、高いところから低いところに向かって流れます。重力があるからです。わたしたちの社会では、知識やスキルが「重力」として作用します。「専門知識」がそなえている重力にしたがって、お金が引き寄せられます。

 

あなたが行使できる「重力」を強くするためには、まさしく「独学力」が役に立ちます。これまで紹介した『生き残るための、独学。』には、学習改革をするための「49の方法」が収録されています。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

生き残るための、独学。

著者:千田琢哉
発行:学研プラス

環境に恵まれなくても、自由な時間がなくても、十分なお金がなくても、ひとり根気よく勉強を続けることで人生はランクアップできる! 20代ビジネスパーソンのカリスマ・千田琢哉が、独学でゆるぎない教養と知的戦闘力身につけ社会で生き残る方法を説く!

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【朝の1冊】「ほどよい努力」を続けること。生きやすくなるブッダの4つことば――『精選 ブッダのことば』

仏教は、わたしたち日本人にとって深い関わりがあります。日本には、仏教由来のモノやコトがたくさんあるからです。

 

精選 ブッダのことば 初期仏典を中心に厳選した、お釈迦さま珠玉の語録集』(大森義成・著/学研プラス・刊)は、ブッダの生涯、ブッダの教え、経典の成り立ちについて、わかりやすく解説しているガイドブックです。

 

 

正しい人ほど「生きづらい」

恥じる心なく、烏(カラス)のようにあつかましく、他人を傷つけて省みるところのない人の生活は、なしやすい。謙遜の心があり、敬いを知り、執着を離れ、清らかに行い、智慧明らかな人の生活は、なし難い。『法句経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

もしも「生きづらさ」を感じているならば、あなたが「謙遜」や「恥」を知っているからです。痛みや苦しみを感じてしまうのは、他者の心を踏みにじらずに生きているからこそ。日々の悩みや苦しみは、あなたの「正しさ」を証明するものです。

 

『法句経(ほっくきょう)』は、「真理のことば」を意味する「ダンマパダ」という経典を漢訳したものです。鴨長明が著した『方丈記』における序文「行く川のながれは絶えずして〜よどみに浮ぶうたかたは〜」は、『法句経』の一節から影響を受けています。

 

 

神仏や運命のせいにしない

この世の中には三つの誤った見方がある。
一つには、ある人は、人間がこの世で経験するどのようなことも、すべて運命であると主張する。二つには、ある人は、それはすべて神のみ業(わざ)であるという。三つには、またある人は、すべて因も縁もないものであるという。『華厳経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

『華厳経(けごんきょう)』は、仏教における一派「華厳宗」の経典です。「奈良の大仏」は、華厳経が好きだった聖武天皇の発願によって、平城京の時代(752年)に建立されました。東大寺にある大仏坐像は、華厳経に登場する「毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)」を具象化したものです。

 

宗教といえば、運命論が支配していると思いがちです。審判の日におけるキリスト再臨。56億7千万年後に弥勒菩薩が現れるなど。しかし、仏教の経典のひとつである「華厳経」は、運命論を否定しています。「人生を左右するのは、運命でも神仏でもない」と説いており、縁(えん)や努力によって道は開けるのです。

 

仏教は「努力の効用」を認めています。ただし、ブッダは「がむしゃらに努力するのはダメ」とも言いました。

「ほどよい努力」とは何か

怠れば道を得られず、またあまり張りつめて努力しても、決して道は得られない。だから、人はその努力についても、よくその程度を考えなければならない。『パーリ仏典 増支部』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

「弾琴のたとえ」という有名なエピソードがあります。きびしい修行を重ねても「悟り」を得られない弟子に、ブッダがアドバイスをしました。琴をうまく演奏するためには、琴糸を強く張りすぎても緩すぎてもダメで、ほど良くないと美しい音は出ない。怠けることなく、たゆまぬ努力を続けることが、成長するためのコツです。

 

『パーリ仏典』とは、ブッダ生前のことばが含まれている経典のうち、パーリ語で書かれた原始仏教経典の総称です。日本では、漢訳された『大蔵経』として伝わっています。おなじ「ブッダの教え」を記録したものですが、大意は同じでありながら、訳語ごとに解釈がすこし異なります。

 

 

最後に「捨てる」ものとは

「この筏(いかだ)は、私を安らかにこちらの岸へ渡してくれた。大変役に立った筏である。だから、この筏を捨てることなく、肩に担いで、行く先へ持って行こう」『蛇喩経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

『蛇喩経』とは、『パーリ仏典』に収録されている「蛇のたとえ話」です。蛇をつかまえるとき、胴体や尻尾をつかむと暴れてうまくいかない。首根っこをつかまえるのが正しい。つまり、本質をつかむためのコツを説いたものです。その話のあとに、ブッダは「筏の喩え」を語っています。

 

川を渡るためには筏(いかだ)が必要です。しかし、川を渡り終えたあとに、役目を終えたものを肩にかついで持ち歩くのは愚かなこと。重荷になるからです。ブッダは弟子たちに、ブッダ自身の「教え」ですら執着してはならないと説きました。何もかも捨てたとき、あなたには何が残りますか? 考えてみてください。

 

「ブッダのことば」は、弟子によって語り継がれたのち、さまざまな言語に翻訳されました。経典の数だけ、解釈の違いがあります。経典を読むことは、視覚や聴覚をとおして「ブッダが伝えたかったこと」を心で感じることです。お試しください。

 

【書籍紹介】

 

精選 ブッダのことば

著者:大森義成
発行:学研プラス

初期仏典を中心に、ブッダが残したことばを現代語訳で収載。ことばごとに、現役の僧侶による法話を載せ、ブッダの言わんとしていることを分かりやすく説き示す。現代の日本人に必要な“本当の幸せ”を指し示す、ブッダ珠玉の語録集である。

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【朝の1冊】心が折れそうな時の支えになる3つの名言――『ハートの言葉』

ハートの言葉』(学研プラス・刊)は、心理占星術研究家の鏡リュウジさんが古今東西の著名人の名言の中から、ハートに響くものを集めたものだ。ひとつひとつの言葉には、どこかにハートのマークが入っているロマンティックな写真が添えられている。その中から励まされる言葉を選んでみた。

 

 

人を救う言葉、潰す言葉

日本には「言霊」という考えかたがある。言葉には魂がこもっていて、良い言葉を使うと良いパワーを得られるともされてきた。確かに言葉には力がある。気がきく人が使うと落ち込んでいる人を励ましたり癒したりすることもできるし、配慮がない人が使うとその人を傷つけたりさらに落ち込ませることにもなりかねない。

 

鏡リュウジさんは本の中で「言葉という天使は、見えない翼でぼくたちのハートからハートへと飛び回り、そしてときに、沈みがちなぼくたちの魂をふるい立たせてくれるはずです」と解説している。そして「言葉がときに人を動かし、人生まで変えてしまうことがあります」とも。確かに映画などでも大切な言葉を聞いた途端、主人公が何かを悟り、駆け出していくシーンがよくある。

 

 

言葉は無料の贈り物

言葉の素晴らしいところは、お金がかからないということだ。傷つき悩んでいる友人に対し、金欠で何も贈り物ができない状態だとしても、心のこもった言葉で励ますことはできる。そしてその言葉で友人が少しでも元気になるのなら、それは素晴らしい贈り物なのだ。

 

私はSNSで意地悪なコメントを書き込まれ悩んでいる人に時々相談される。心ない人や、嫉妬に駆られた人が、その人に対し、重箱の隅をつつくような書き込みをしてくることがあるのだ。誤解を解こうと返信すると、さらにその倍くらいのコメントが戻ってきて、やりとりは全然終わらない。

 

そんな時、私はよく儒学者である伊藤仁斎の「仁者は常に人の是を見る。不仁者は常に人の非を見る」という言葉を伝える。志が高い人は人の良い面を讃えるし、志が低い人は人の欠点ばかり非難しがちだという意味だ。これを読むとほとんどの人が納得し、論争を中断する。「争わない」と選択したことによってSNSで神経を消耗することはなくなるのだ。

 

 

喪失感を希望に変える

また、私自身が離婚経験者だからか、友人知人の中で離婚をすると私に報告してくる人が多い。離婚直後は気分がハイになり、明るく「飲もう!」などと言ってくる人も、月日が経つと沈みがちになる。なぜあんな結婚をしてしまったんだろう、人生の無駄だったのではないだろうか、人に知られるのが恥ずかしい、などという負の感情が次から次へと湧いてくるのだ。

 

こんな場面にぴったりの名言が『ハートの言葉』の中にあった。『ドン・キホーテ』を書いたスペインの作家・セルバンテスの

ひとつのドアが閉まったときには、また別のドアが開くもの

である。

 

また、『月と六ペンス』を書いたイギリスの作家・モームの

人生とはおもしろいものです。何かひとつを手放したら、それよりずっといいものがやってきます

という言葉もいい。喪失感でつらい時も、未来に素敵な出会いがあると信じ、前を向いて生きることが大切なのだと思う。

 

 

ゆったりと幸運を待つ

離婚したての人は、次のパートナーを焦って探しがちだ。中には寂しさや不安から周囲に反対されるような人と急いで再婚し、さらに苦しむ人もいる。マレーシア初代首相のアブドゥル・ラーマンは

木を植えたらすぐに実をつけると思う人もいます。けれど、本当は、木が育って実をつけるまで、少し待たなければいけないのです

という言葉を残した。

 

この人とならうまくやっていけるかもしれない、と感じた時、一気に結婚へと駒を進めようとする人はとても多い。もちろん時にはスピードも大切だけれど、機が熟していなかったら青い実を食べることになる。食べごろになるまで落ち着いて、幸せを育てていく心の余裕が必要なのだろう。

 

【書籍紹介】

 

ハートの言葉

著者:鏡リュウジ(著)、長嶺輝明(写真)
発行:学研プラス

人気占星術研究家・鏡リュウジ氏が選ぶ、心で読む名言集76。歴史にきらめく名言と、可愛いハートの写真で綴るフォトブック。眠れないとき、迷ったとき、誰かを好きになったとき……、きっとあなたを支えてくれるはず。

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【朝の1冊】食欲をガマンできる人が「出世する」のはなぜか?――『江戸時代の小食主義』

古くから読み継がれている「自己啓発書」といえば、処世術を説いた『菜根譚』、心身の健康法を説いた『養生訓』が有名です。そのほかにも、知名度は劣りますが『修身録』という隠れた名著があります。

 

江戸時代の小食主義』(若井朝彦・著/花伝社・刊)は、小食の効用を説いた『修身録』の現代語訳ガイドブックです。

 

「食欲に勝てる人」は出世しやすい

立身出世ができるかどうか、みずから知りたいと思うのであらば、まず食を減らしてみて、毎日それを厳重に守れるかどうかを見定めればよい。これが容易な人は、かならず立身出世も容易であろう。

(『江戸時代の小食主義』から引用)

 

『修身録』の著者・水野南北(みずのなんぼく)は、江戸時代中期の人です。相者(そうじゃ/占い師)として名を馳せました。京や大坂を拠点にして、1千人を超える門人がいたと伝えられています。

 

小食主義といっても、「1日1食」や「昼メシ抜き」を勧めるものではありません。

 

『修身録』を要約するならば、「食べすぎないと決めて、それを守り続けられる人は出世する」という内容です。現代では「マシュマロ・テスト」として知られています。幼少期における「食欲の自制力」と「将来の社会的成功」には相関がある、という研究です。

 

『修身録』を書いた水野南北は占い師ですが、スピリチュアル要素はありません。あくまでも実体験と洞察にもとづいて、説得力をそなえた「人生の道理」を説いています。

 

 

小食がなぜ運を良くするのか?

分限よりも大食をする者は、生涯、立身出世がない。(中略)ただ倹約を守り、日々天より授かる食べ物を、たとえわずかでも先へと残して、これを立身出世の元手足代とするよりないのだ。

(『江戸時代の小食主義』から引用)

 

現代では、何か食べたければ「お金」が必要です。「食べ物=金銭」の等式が成り立ちます。つまり、食べすぎなければ「お金」を残すことができます。

 

ムダに食べすぎた数百円の積み重ねが、やがて数万円になります。不摂生のせいで仕事を失った人が、数万円の家賃を支払えなくなり、ついに生活拠点まで失うことは珍しくありません。食べすぎる(未来を先食いする)ことは、めぐりめぐって「運の尽き」につながります。

 

『修身録』は、その名のとおり「身を修める」ための心がけを諭しています。著者の水野南北は、「時間の使い方」について本質的なアドバイスを述べています。

朝寝の弊害について

およそ朝寝をする者は、生涯の七分を寝て暮らし、一分を飲食のために費やし、さらに一分を物見遊興に過ごし、やっと残り一分の日夜で稼ごうとするけれども、これで立身出世があるはずがない。

(『江戸時代の小食主義』から引用)

 

1日は24時間です。「七分」とは「七割」のことですから……約16時間。大げさではありません。惰眠をむさぼろうと思えば、いくらでも布団の中でゴロゴロできるからです。

 

アラームで目覚めたのに、すこしだけ眠ってしまう。毎日15分としても、積み重なれば数年分になります。人生は有限です。たとえ小食を守っても、朝寝や二度寝にかまけるならば、他人との競争に勝てるはずがありません。

 

 

食べすぎない「おまじない」

「小食」が立身出世に役立つことはよくわかりました。しかし、現代には「おいしい食べ物」があふれています。食べ放題のビュッフェやバイキングにおいて、食べすぎないための「おまじない」を紹介します。


なお慎みがたき時は、飯一椀を以て雪隠の屎中に落しみるべし。たとへ人面獣心の者といへども、これを屎中に捨つること能はず。(中略)慎み悪しき人は、日々食物を雪隠に捨つるがごとし。恐るべき事なり。

(『江戸時代の小食主義』から引用)

 

雪隠(せっちん)は、江戸時代におけるトイレの呼称です。汲み取り式のボットン便所。屎とは、食べ物のカス。わたしたちが排出する「アレ」のことです。

 

「飯一椀を以て雪隠の屎中に落し」とは、「ごはんを便器のなかに捨てる」という意味です。大酒暴食とは、必要のない栄養をむさぼることです。吸収できなかった栄養は排出されます。それは食べ物を「雪隠の屎中に落し」ているのと同じことです。食べすぎそうになったら、この理屈を思い出しましょう。

 

『修身録』の著者は、「まず三年、食を慎んでみよ」と説いています。それだけ自制できれば、何らかの成果を感じることができるはず。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

江戸時代の小食主義――水野南北『修身録』を読み解く

著者:若井朝彦
発行:花伝社

貝原益軒『養生訓』と並び立つ指南書『修身録』。現代にも通ずる「小食主義」の神髄に迫る。壮年に至って一念発起し人相学を極め、大家として千人を超す門人を誇り、教訓の宝庫である著作を残した江戸時代の怪人・水野南北。食を通じて見定めた健康、立身出世、開運、富……人生を左右する「小食主義」とは?

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【朝の1冊】コミュ力をアップさせるには、まず「しぐさ」から――『見た目としぐさ マナーの便利帖』

とある結婚相談所を定点観測的にレポートするドキュメンタリー番組を見た。男性会員も女性会員も同じ目線から淡々と紹介されていたが、筆者の目には、女性会員ばかりがはつらつとしているように映った。

 

 

目力ないよ! 男性陣

男性会員のみなさんに、目力がまったく感じられない。顔出しOKの人に限っての話だが、女性会員はアドバイザーの話を聞く時も目をキラキラさせている。一瞬たりとも視線を外さない感じだ。何か尋ねられれば、ちょっと食い気味に正直な意見を返す。

 

それに対し、男性会員は視線を落としている人がほとんどだ。理由はある。メモを取っているのだ。貴重な情報を漏らさず持ち帰りたいという気持ちはわかる。だから、すべてを書き留めておきたいという行いは当然かもしれない。

 

しかし、熱く語るアドバイザーと彼女と目も合わせることなく黙々とメモを取る男性会員たちの間に歴然とした違和感が存在することは、テレビの画面を通じてもはっきりわかる。男性会員の中には、かなり長い間籍を置いている人も少なくないという。その理由、わからなくはない。

 

 

対人スキルの3要素

アメリカの対人スキル研究団体「サイエンス・オブ・ピープル」(ヒトの科学)のウェブサイト(https://www.scienceofpeople.com/body-language/)に、仕草に関する興味深い記事が掲載されている。ボディーランゲージと非言語的コミュニケーションの基本として挙げられる3つの要素だ。

 

・人間は、強い感情を意識した時に思わず出る世界共通の表情がある。また、人間はこうした表情を敏感に察知し、それに隠された感情を読み取る。

・与えられたスペースの中で体がどのように動くか。人間は、視界に入るほかの人たちの動きを常に意識している。こうした動きから、好き嫌いとか緊張の度合いを推し量ることができる。

・洋服やアクセサリー、サングラスなどの装飾品、そしてヘアスタイルはすべてボディーランゲージの一部であり、特定の色やスタイルが他の人たちに信号を送る働きをする。時計や指輪を頻繁にいじる人。髪型が気になって仕方がない人。すべてがボディーランゲージの一部となる。

 

ボディーランゲージ=仕草のネガティブな要素をすべて取り除き、ポジティブな要素だけ抽出して活かしていく方法はないんだろうか?  実は、こうしたプロセスの大きなヒントとなりそうな本がある。

 

プロが説くしぐさの大切さ

見た目としぐさ マナーの便利帖』(直井みずほ・監修/学研パブリッシング・刊)は、体裁こそ実用書だが、内容は行動科学の専門書に近いかもしれない。「はじめに」の書き出しを読んでみよう。

 

――しぐさで、気持ちを伝える。相手と接するとき、身だしなみや表情、立ち居ふるまい、声などは、言葉の内容と同様に、印象に影響を与えます。第一印象としぐさをみがくことによって、より好感度が高まり、人と人との関係が深まります。

『見た目としぐさ マナーの便利帖』より引用

 

「サイエンス・オブ・ピープル」の“ボディーランゲージと非言語的コミュニケーションの基本として挙げられる3つの要素”に重なる部分が多いのではないだろうか。監修者の直井さんは、国内有名ホテルでオペレーター、フロントとして勤務後、とある航空会社でCAとして12年間勤務し、大手企業の研修インストラクターへ転身した人物だ。

 

 

相手に与える印象を考えてみる

プロローグ1で、しぐさによるコミュニケーションについて触れられている。簡単に言うと、こういうことになる。

 

しぐさによるコミュニケーションは、言葉によるコミュニケーション以上に人間関係に大きな影響を与えます。相手の視覚と聴覚を意識し、自分のふるまいがどんな印象をあたえているかを考えましょう。

『見た目としぐさ マナーの便利帖』より引用

 

目をキラキラさせながら自分の話を聞いてくれる人。意識してそうしているのではないだろうけれども、視線も合わせずに黙々とメモを取る人。話し甲斐を感じるのはどちらか。まずはそういうことだと思うのだ。

 

 

行動科学のケーススタディ

筆者はこの本を、“実用書の体をした行動科学の専門書”と形容した。もう少し言い足しておきたい。「行動科学のケーススタディを集めた本」という呼び方がいちばんしっくりくるのかもしれない。以下に紹介する構成にも、そういうテイストが垣間見られる。

 

・プロローグ

1 仕草によるコミュニケーションを覚えよう

2 立ち位置や身ぶり・手ぶりで人づきあいを円滑にする

3 ハッピーなサイクルを回せる人になろう

第1章:必ず感心してもらえる! 美しい身のこなしとしぐさのコツ

第2章:職場ですぐに役立つ! 身だしなみと装いのルール

第3章:評判が高くなる! ビジネスシーンの態度とコツ

第4章:好感度が跳ね上がる! コミュニケーションのルール

第5章:人づきあいがうまくいく! しぐさとアプローチの法則

第6章:相手に好かれる! シーン別・ふるまいとマナー(プライベート編)

第7章:相手に好かれる! シーン別・ふるまいとマナー(フォーマル編)

 

実に盛りだくさん。でも、これだけじゃない。巻末企画の「誰とでもうまくつきあえる! 気くばり心理学メソッド」では、日々の生活ですぐに使えるちょっとしたテクニックが数多く紹介されている。

 

コミュニケーションスキルを上げたいと思う人はたくさんいるだろうし、理由もさまざまだろう。この本は、読者の数だけあるひとつひとつの理由に的確な答えを出し、その答えを最も効果的に実践する方法を提供してくれる。コミュニケーションスキルに自信がない人たちにはよきアドバイスとなるだろうし、自信がある人たちにとっては客観的な確認基準となるはずだ。

 

 

【書籍紹介】

使える!信頼される!見た目としぐさ マナーの便利帖

著者:日本サービスマナー協会 直井みずほ(監修)
発行:学研プラス

第一印象をよくする、好感度を上げるなど、ケーススタディを中心に、マナー初心者でもよくわかる具体的な解説。また、体型にあった服装の基礎知識、TPOに合わせた服選びの基準など、資料性の高い情報が満載です。これ1冊で、すべてがうまくいく決定版!

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魅力的な淑女になるための12の方法――『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』

なぜだかわからないけれど、やたらとモテる女の子がいる。

 

可愛いし、気立ても良く、モテても不思議はないのだが、絶世の美女というわけではない。周囲にはもっと綺麗で、もっと頭が良く、お行儀も良い人がいるというのに、男性たちはなぜか彼女を選ぶのである。そうかと思うと、とても魅力的なのに、縁どおく、まったくモテない女の子もいる。この違いはどこで生じるのか?

 

 

淑女になるにはレッスンが必要?

ずっと不思議だと思っていたのだが、『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』(樋口智香子・著/学研プラス・刊)を読み、「なるほどねぇ」と納得してしまった。

 

著者の樋口智香子は、マナーコンサルトとして活躍し、現在は「愛されマナー術」を主宰している。元は資生堂のビューティコンサルタントとして働いており、その際、資生堂に受け継がれた接客の心と美意識を徹底的に身につけたという。

 

一生懸命女磨きをしているつもりなのに、なぜか縁遠い、大好きな彼の心をつかめない。そんな悩みを抱えた女性にとってこれほど強い味方はいないだろう。

 

 

淑女になるために行いたい12のレッスン

『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』で示されるのは、12通りの方法。簡単に箇条書きにすると、以下のようになる。

 

レッスン1 ガサツな女性は男性を幻滅させる。
レッスン2 「一流の男性」のハートを射止めるための条件
レッスン3 婚活パーティで視線を集めたかったら何をすべきか
レッスン4 品のある淑女になるための「おしゃれ」の条件
レッスン5 淑女になるための心の磨き方
レッスン6 ミステリアスな色気が男性をドキドキさせる
レッスン7 レディが予習しておくべき「洋食」のマナー
レッスン8 レディの「和食」のマナー
レッスン9 公共の場でのレディの常識力
レッスン10 イライラしたときの感情整理法
レッスン11 デキる妻の「常識力」
レッスン12 無理なく美女でいられる方法

 

この12のレッスンに真面目に取り組めば、私たちはもっと魅力的な女に変身できる。

 

淑女になるためのハウツー

実は、今まで淑女になるためのハウツーがあるなどと考えたこともなかった。淑女とは、やはり幼い頃からのしつけや、母親からの影響など、いろいろな要素が何代も何代も繰り返されて淑女という存在を形成していくのだと思いこんでいた。が、しかし…。

 

もし、家柄や血筋や育ちがすべてだというなら庶民の家に生まれた私たちに希望はない。淑女になるための扉は永遠に開かれないことになってしまう。

ちょっとした工夫で、あなたも淑女に

『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』を読むと、個人のちょっとした努力や工夫で、素敵な女性になることができることがわかる。

 

同時に希望もわいてくる。どんな環境にいようとも、淑女への扉を開けることが可能だと、明るい気持ちになるからだ。私たちもちょっとしたことに注意すれば、ガサツな女性になることを防ぐことができるのだ。

 

たとえば、いつも時間に追われギリギリに暮らしていると、素敵な女性にはなれないという。朝食もそこそこに、メイクもいいかげん、ヘアスタイルも適当にまとめて、息を切らしながら会社に到着。そんなことをしていたら、せっかくのデートの待ち合わせも、ガサツな自分をさらけ出すことになる。

 

他に、ガハハという豪快な笑い方も男性を恥ずかしがらせる。耳の痛い話である。私にも覚えがある。日常生活がガサツだとデートもやはりガサツなままとなる。
人間はそうは豹変できないものだ。普段の暮らし方が大切なのだ。

 

 

ヒントの中で一番、ピンときたものは…

『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』には、役に立つ様々なヒントが書かれている。中でも、私が1番、深く頷いたのは、「10分のメイクでも、自信を持って人前に立てるためにはどうしたらいいか?」についてだ。

 

答えは意外なほど簡単で

 

それは、「フルメイクをする」ということ。
ファンデーションなどのベースから、アイシャドーや口紅といったポイントメイクまで、全てのアイテムをひと通り使う、ということだけです。

『気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン』より引用

 

メイクに省略した部分があると、顔がぼんやりしてしまうという。これは気づかなかった。確かに、口紅を塗るのを忘れていると、いつも夫に言われる。「暁子、顔色が悪いよ」と。

 

たとえ時間がなくても、毎日省略せずにやっていくことでメイクは上達し、なりたい自分に近づいていくことができるという。

 

「継続は力なり」という言葉は、淑女になるためにも必要なヒントだった。気品ある花嫁になりたい人も、既に結婚している人も、レッスンを意識して淑女を目指そう。そして、品格ある女性になって自分自身を幸福にしたいものである。

 

【書籍紹介】

 

気品あふれる花嫁になるための淑女レッスン

著者:樋口智香子
発行:学研プラス

愛する人と結ばれ、幸せ一杯の結婚式。あなたはバージンロードを歩く花嫁。そのとき、誰もがうっとりするような「気品」のある、美しい花嫁になりたいと思いませんか? 女性には女性ならではの優しさ、やわらかさ、愛らしさがあります。身なりを整え、美しい言葉で話し、優雅に振る舞う……。無理にかしこまる必要はありませんが、どんなときでも、「大人のレディ」として振る舞える女性は、とても魅力的です。男性の心を癒し、周囲からも愛されるのです。 品格のあるしとやかな女性のことを「淑女」といいます。外見も内面も美しい大人のレディは、女性としての魅力にあふれています。 本書で、素敵な男性のハートを射止める、淑女のたしなみを身につけていきましょう!

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【朝の1冊】待ちの姿勢は何も生まない、自分の理想をつかみにいけ――『仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則

ライフコーチという職業をご存知だろうか。人生の目標を達成し、仕事で成功し、誰を相手にしても良好な人間関係を構築できるよう、文字通り生き方のコーチングを行うことを生業とする人々を意味する言葉だ。

 

映画やドラマで見るように、アメリカではかかりつけの精神分析医がいるという人が多いらしい。診断を受けるというより、相談相手というニュアンスなのだろう。そう考えると、ライフコーチは精神分析とコンサルティングを同時に行う人ということになるだろうか。

 

 

ライフコンサルタントが語るポジティブな言葉

コーチングのプロセスは、クライアントが置かれている現状と望みを照らし合わせ、詳細に描き出していくことから始まる。そういう流れの中で障害となるものや問題点を浮き彫りにし、なりたい自分になるにはどうすればよいか、望む生き方を実現させるためにはどうすればよいかをコーチとクライアントが一緒になって考えていく。

 

実は、日本にもよく似たことを職業にしている人がいる。この原稿で紹介したいのは、“ライフコンサルタント”として活躍している女性が紡ぐポジティブな言葉で満ちた一冊だ。

 

仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則』(水原ゆり・著/学研プラス・刊)の著者水原ゆりさんは、ライフコンサルタントとして活躍している女性である。どんな仕事なのか。

 

現在、私は「ライフコンサルタント」として、人生を思いどおりに生きたい女性たちに向けて、毎日がキラキラと輝くライフスタイルや心のあり方について、コンサルティングやセミナー、働き方のプロデュースをしています。

『仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則より引用

 

この本を書く1年前までは看護師として働いていたという。看護師としての毎日が決して楽しくなかったわけではない。ただ、何とも言葉にしがたい漠然とした思いがあったようだ。

 

でも、心のどこかで、「もっと違うことができるのでは?」「もっと自分をキラキラ輝かせて、ワクワク生きる道があるのでは?」と、モヤモヤしていました。

『仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則』より引用

 

そして、当時の気持ちのすべてを形容するキーワードにたどり着く。

 

 

自分を輝かせるためのキーワード

そのキーワードは、あまりにもあっけなく響くかもしれない。

 

思いどおりの人生をつくりたい。

私を動かしたキーワードは、これでした。もっと具体的に言えば、

大好きな人と結婚したい。

幸せと思える仕事がしたい。

お気に入りのものに囲まれて過ごしたい。

オシャレなお洋服しか着たくない。

キラキラ輝いた自分でいたい。

『仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則』より引用

 

やっぱり、「なんかいいことないかな…」なんて漠然と考えているだけではだめなのだ。願いというのは、具体的であればあるほど手に入れやすくなるような気がしてならない。こうなりたいという自分像が定まり、そうなるという気持ちを固めればブレることもなくなるだろう。

 

ブレることなく進めていく過程

では、こうした過程をどのように進めていけばいいのか。章立てがそのままストーリーに感じられる。

 

第1章 「なりたい自分」を思い描く

第2章 「思い込みの枠」をはずす

第3章 「成功にふさわしい自分」になる

第4章 「フライングの半歩」を踏み出す

第5章 「愛」と「お金」を引き寄せる

 

そして、“おわりに”に記された一文が、なんとなくモヤモヤしている老若男女に刺さるだろう。

 

平凡な主婦だった私が、仕事も恋もプライベートも望みが現実になり、思い込みの枠をはずすことで、人生はこうも変わるものかと実感しています。

『仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則』より引用

 

 

基本的に女性向けに書かれた本なのだろうが、すべての人にアピールする内容だ。50半ばになった筆者だって、できることならいつまでもキラキラしていたい。そして、自分がそう思って動き出さなきゃ、絶対に輝けるわけがない。まずは、ずっと諦めていたあれから始めてみようかな。

 

【書籍紹介】


仕事も恋も思い通り! 人生を変える成功法則

著者:水原ゆり
発行:学研プラス

看護師で平凡な主婦だった27歳の女性が、パソコン1台で起業し、思いのままのキャリアと愛とお金を手に入れた、とっておきの秘密。彼に愛されながら、仕事を楽しみながら。ガツガツではなく、スルリスルリと……豊かで欲ばりな、夢の叶え方!

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【今日の1冊】たった1時間で人生観が変わるアドラーの教え―『[超図解]勇気の心理学』

ヒトは変わることができます。今までの習慣や考え方を変えるには、決意するための「勇気」が必要です。

 

[超図解]勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』(中野明・著/学研プラス・刊)は、「自己変革の勇気」が必要な理由と、そのインセンティブについて解説しています。

 

「生き方」は変えられる

家庭が貧しいからひねくれた性格になった、と言う人がいます。一方で、家庭が貧しいがために辛抱強い性格になった、と言う人もいます。
(中略)
このように私たちは、経験したことに与える「意味づけ」によって見方を変える存在であり、その結果、人生も変わるわけです。

(『[超図解]勇気の心理学』から引用)

 

精神科医アルフレッド・アドラーが提唱した心理学では、ヒトの生き方を「ライフスタイル」と呼称します。ライフスタイルは、個人の意味づけによって形作られたものです。いわば「思いこみ」にすぎません。自分の「思いこみ」ならば、自分で書き換えることができます。

 

アドラーは、ヒトが幸せになるには「共同体感覚」が欠かせないと述べています。なぜなら、参加している共同体(家庭、企業、社会)に役立ったと感じるとき、わたしたちの幸福感は高まるからです。

 

生きづらいと感じてしまうのは、「ライフスタイル」と「共同体が求めるもの」がズレているからです。共同体感覚を充実させる(幸福感を得る)には、自分のライフスタイル(生き方)を見直すしかありません。

 

 

しあわせの合言葉は「勇気」

共同体感覚を平たく言うと、人が全体の一部であること、全体とともに生きていることを実感することです。

(『[超図解]勇気の心理学』から引用)

 

共同体感覚の充実は、共同体に対する「貢献」によって高まります。あなたが属している共同体への貢献度は、100点満点のうち何点だと思っていますか? 点数が高いほど、共同体感覚が充実しているはずです。

 

共同体に貢献しているつもりでも、報酬が少なかったり人間関係が悪かったりなどの要因によって、生きづらさを感じることもあります。

 

現状を良くしたければ、あなたの「生き方」と「共同体」のギャップを見直すしかありません。勉強、転職、改善の働きかけ……etc。そのための意思力こそが、アドラー心理学における「勇気」です。

 

勇気をふるって、生き方を変える。アドラーが推奨しているのは「社会的に有用な人」を目指すことです。

「社会的に有用な人」になろう!

共同体の利益を前提にして高い行動力を発揮するのが、この社会的に有用な人の特徴です。このタイプの人をアドラーは「有用で、正常で、人類の進化の流れに深く入り込んでいる」(中略)と表現しました。

(『[超図解]勇気の心理学』から引用)

 

アドラーが述べている「共同体の利益」とは、特定の企業や団体の利益増大に関与するだけに留まりません。「社会全体」ひいては「宇宙」に対する貢献を指しています。壮大なビジョンです。

 

時代に先んじることによって他人よりも得をする。そんな考え方が流行しています。でも、自分さえ良ければという考え方で得られる幸福感は、せいぜい「中の上」止まりです。きっと物足りなくなります。

 

目先の利益を捨てて、「どうすれば社会が良くなるだろう」と考えて行動する。それこそが「社会的に有用な人」であり、どんな立場であろうとも「共同体感覚の充実」につながります。

 

 

自己変革のインセンティブ

過去はもう変えられません。変えられるのは未来だけです。そしてその未来を変えようと思えば、いま現在の行動を変えねばなりません。
したがってアドラー心理学の勇気づけとは、いま現在を正しい目標に向かわせること、とも言い換えられるわけです。

(『[超図解]勇気の心理学』から引用)

 

貢献することによって「共同体感覚」が充実します。幸福感が高まります。つまり、自己変革のために勇気を奮うことにはインセンティブ(報酬)があります。やったもの勝ちです。

 

「社会的に有用な人」になるために目標を見直し続けること。それこそが、わたしたちにとって一生の仕事(ライフワーク)になります。情けは人の為ならず。骨折り損のように見える生き方こそが、じつは幸せの近道というわけです。お試しくだい。

 

【書籍紹介】

[超図解]勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本

著者:中野 明
発行:学研プラス

フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨人、アルフレッド・アドラー。”自己啓発の源流”として知られ、「勇気の心理学」とも呼ばれるその学説の全貌、のちの社会に与えた影響、さらにはアドラー自身の人生などを、豊富な図解により短時間で理解できる一冊。

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【今日の1冊】あなたの人生をバラ色に変える3つの習慣とは――『99%の人生を決める 1%の運の開き方』

基本的に、超ポジティブ思考で毎日楽しく生きている私だが、今朝はどん底まで気持ちが落ちた。

 

長女の言動にひどく憤慨、怒りが頂点に達し、感情がおさえきれずに号泣してしまったのである。理由は、いま考えればちっぽけなことだ。しかも、相手は小さな子どもである。こんなにイラつくなんて、大人げない。少し時間が過ぎたら、なんだか心にぽっかり穴が空いたように虚しくなり、「なぜあんなに叱ってしまったのだろう」という悲しみが押し寄せてきた。

 

すると、最近読んだ本の中の言葉がふと頭をよぎった。

 

人には、喜怒哀楽の感情があると言われています。

その中で、お金持ちでなおかつ幸せで、優秀な経営者が使わない感情があります。

「怒」です。

 

99%の人生を決める 1%の運の開き方』(崔燎平・著/内外出版社・刊)の一節だ。

 

 

運を引き寄せる感情の秘密

著者の崔さんは、北九州の経営者であり、占い開運アドバイザーとして大変人気を集めている30代の男性。

 

開運アドバイザーといっても、何かが見える系の人でも、不思議な能力があるわけでもなく、自ら「占い師」と名乗ったこともないそうだ。ただ、これまでに占ってきた5万人のデータやエピソード、そして師と仰ぐおばあちゃん先生からの数々の教えに基づいて、幸せをつかむきっかけを相談者にアドバイスしているのだという。

 

「怒」からは後悔と破壊しか生まれない。

 

これは崔さんが師匠から得た教えであり、自身も痛感したことなのだという。

 

さらに、「哀」も必要ない。これから起こるかもしれない嫌なこと、哀しいことを考えていると、人の感情はマイナスに傾いて運が弱くなってしまう。哀しむのは哀しいことが実際に起ったときだけでいい、と崔さんは述べる。

 

つまるところ、喜怒哀楽から「怒」と「哀」を取り除いて生きるべき。そう、「喜楽に生きる」ことこそ、自らの運を大きく開いていく秘密なのだという。

 

この言葉は、まさに今日の私にグサリと突き刺さった。

 

 

「運命」は自分で決められるのに、決めていない人が多い

本書では、幸せなお金持ちがやっている習慣を6つ教えてくれている。

 

自分が今生きている現実は、偶然そうなったのではなく、「なる前からなっていた」のだと崔さんは言う。自分がどうなりたいかをイメージし、そうなるように意識していくことが大切なのだと。

 

だからこそ、成功した人たちが、その幸せと成功を手に入れる前からしていた習慣を取り入れることで、「自分の人生を幸せなものにしていける」というわけである。

 

今回は6つの習慣の中から、特に私が「むむ!」と思ったものを3つ紹介しよう。

今日から実行! 幸せになる習慣とは

①あいさつをする

あいさつは、極論言わなくても済む言葉である。「おはよう」と言わなくても1日は始まるし、「いってらっしゃい」と言って送り出さなくても会社には行ける。けれど、世界中にあいさつが存在しているのには、あいさつが人間社会を形作る基本であり、とても重要なものだからだと崔さんは述べる。

 

出かける人に「気をつけてね」「いってらっしゃい」とかける言葉は、その人を1日守り続ける言葉。「おかえりなさい」「ただいま」と言うのは、外から持ち帰ってくる厄を払い退ける意味があるのだそう。このやりとりを失ってしまうと、親しい間柄でも次第にすれ違いが生じる。確かに、熟年離婚の理由の第一位は「会話がない」、つまり「あいさつを失ってしまった」からだというデータもあり、まさにと納得。

 

②トイレ掃除をする

よく、「妊娠中にトイレを念入りに掃除するとかわいい子が生まれる」などと言われるが、事業を成功させたい、幸せになりたいのなら「トイレ掃除をしなさい」と崔さん。そして、便座のフタは必ず閉めて、トイレットペーパーは三角に折りなさいとも。

 

なんでも、家にやってくる7人の神様のなかで、最後に訪れる神様はトイレに入る。そして、一番大きな幸福を持ってくると言われているのだそうだ。その神様は両手に乗るくらいの小さなサイズで、目が見えない。だから、落ちないようにフタは必ず閉めること。キレイに使っている合図として、神様が触ってわかるようにトイレットペーパーを三角に折っておくこと、というわけだ。

 

なんだか「ほんまかいな!」と突っ込みたくなる話だが、崔さん自身、そして崔さんがこれまで見てきた幸せなお金持ちの人は、みなトイレ掃除を大事にしているのだそう。試してみる価値はありそうだ。

 

③お墓参りをする

「先祖供養なくして、生きている人間の幸せはない」

自分がいま存在しているのは、先祖から受け継がれてきた大きな愛情のおかげである。だから、過去から受け継いだ大きな愛に対して、深く感謝すること。つまり、お墓参りをすることが、とても大切だと崔さんは言う。

 

事実、崔さんのアドバイスでお墓参りをするようになった人の実に8割以上に、素晴らしい運が舞い込んでいるのだそうだ。不妊に悩む人は、男性側の直系をたどってお墓参りをするといいらしい。実際に、そうしたことで子どもを授かった人は数知れずというから驚く。一年にほんの数回、近況を伝えにお墓に行く。それだけで、ご先祖様はあなたを守ってくれるのだ。

 

 

幸せになるのは簡単。でも、実行するかしないかは自分次第

先に紹介した3つの習慣以外にも、本書には自分の運を開いていくアドバイスが散りばめられている。そして、どれもお金もかからず、誰でもすぐに実践できることばかり。

 

「幸せになるのがこんなに簡単なことだったとは! 不幸になるほうが難しい」とは、崔さんのアドバイスを実践して、成功した人たちが口を揃えて言う言葉なのだそう。

 

本当の開運は、お金を出して安易に手に入れるものではなく、毎日時間をかけてコツコツ作り上げていくもの。「自分は運が悪い」「人生ツイてないことだらけ」そんなふうに悲観している人がいれば、騙されたと思って、崔さんが教える習慣を3カ月続けてみてはいかがだろうか。

 

私自身はまず、朝強く衝突した長女を「おかえり!」と笑顔で迎えることから始めようと思う。

 

【書籍紹介】

99%の人生を決める 1%の運の開き方

著者:崔燎平
発行:内外出版社

成功していて幸せを手にしている人たちの共通点は、誰でも簡単にできる習慣だった! 北九州で「予約が取れない」と大人気の占い開運アドバイザーの著者が、5万人を占ってわかった、開運の習慣、日々の心がけ、運の引き寄せ方など、運を開き、幸せになるヒントを紹介します。

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【今日の1冊】判断基準は自己肯定感。こまめに捨てる「1グラム主義」で片づける――『片づけられる人は、うまくいく。』

「片づけ」や「そうじ」を、本格的に学ぶことはありません。幼いころから学校で教えるべきです。なぜなら、片づけられない人は不健康になるからです。滅びやすくなります。義務教育の必修科目にすべきです。

 

片づけられる人は、うまくいく。人生を変える「捨てる」習慣65』(中谷彰宏・著/学研プラス・刊)という本があります。自発的に学ばなければ、いつまでも「片づけられない人」のままです。

 

「片づけ」を準備運動にする


「仕事をしようと思ったら何か片づけたくなるんですよ。これは逃避じゃないですか」と心配する人がいます。そんなことで自己肯定感を下げたり、罪悪感を持たなくていいのです。片づけることが、仕事です。

(『片づけられる人は、うまくいく。』から引用)

 

掃除機をかけたり、机の上を整理したり、パソコンの不要ファイルを削除したり。本来すべきことからの「逃避」であっても、片づけをするのは良いことです。

 

やめたほうがいいのは、「片づけ」をきっかけに時間を浪費することです。押し入れを片づけているときに見つけたアルバム写真やマンガを読みふけったり、ハードディスクを整理していたつもりでも音楽データを聴くのがやめられなくなったり。本末転倒に気をつけましょう。

 

準備運動としての「片づけ」は、やる気を誘います。ひとつ片づければ、ほかにも片づけることが見えてくるからです。

 

 

「1グラム主義」でうまくいく


書類1枚でも捨てることで、変わります。これを「1グラム主義」と言います。多くのものを片づけようとするのは、「キロ主義」です。キロ単位で、モノを捨てたいと思っている人です。

(『片づけられる人は、うまくいく。』から引用)

 

自宅に、2リットルの「空きペットボトル」が溜まっていませんか? 「1グラム主義」の人は、たとえ1〜2本でも外出するたびに持ち出して、しかるべきところに捨てます。近ごろの食品マーケットには、空きペットボトル回収箱があるからです。

 

片づけられない「キロ主義」の人は、月に1〜2度の容器リサイクル収集日にまとめて捨てようと思って、毎回忘れているうちに、自宅に数カ月分の使用済みペットボトルを溜めこみます。こまめに捨てましょう。

 

なかなか捨てられないのは「腐らないもの」です。むかし買った衣服、書籍雑誌、雑貨など。「もったいない」と考えてしまって捨てられない人のために、とっておきの「判断基準」を教えます。

捨てるときの「判断基準」


捨てるかどうかの判断基準は(中略)自己肯定感が下がるか上がるかで決めます。自己肯定感が下がるモノは、捨てることです。

(『片づけられる人は、うまくいく。』から引用)

 

「安いから買ったモノ」は、使っていなければ捨てましょう。なぜなら、モノには「透明な値札」がつきまとうからです。たとえば、セールで買った衣服です。値札をはがしても、あなたは「980円で買ったこと」を覚えています。いわば、透明な「980円の値札」を背中につけたまま外を出歩くようなものです。自分でも気づかないうちに、あなたの自己肯定感は下がります。

 

この考え方は「買う基準」にも応用できます。どちらを買うべきか迷ったら、自己肯定感の上がるほうを選びましょう。

 

 

モノを増やさず、空間を増やす


片づけられない人の一番のお題目は、「もったいない」です。(中略)単純に、モノが増えると空間が減って、モノが減ると空間が増えます。「モノ」と「空間」のどちらを選ぶかです。

(『片づけられる人は、うまくいく。』から引用)

 

自信がない人は、満たされない心をモノで埋めようとします。自信がある人は、心に余裕があるので、必要なモノだけをそろえて空間(スペース)を増やそうとします。

 

「モノを増やさず、空間を増やす」という考え方は、食生活にも応用できます。腹八分目は、胃のなかに空間(余裕)をつくるからです。「もったいない」からといって、捨てればいいものまで食べていませんか? お腹いっぱいではアタマもカラダも重くなります。

 

本書『片づけられる人は、うまくいく。』は、およそ60種類の「捨てる」テクニックを収録しています。「少し足りないほうが贅沢」「予備をゼロにする」など、すぐ試したくなるものばかりです。お試しください。

 

 

【書籍紹介】

片づけられる人は、うまくいく。

著者:中谷彰宏(著)
発行:学研プラス

捨てることで、人生が変わる65の方法を紹介。【この本は、3人のために書きました。】(1)もったいなくて、片づけられない人。(2)せっかく片づけたのに、またすぐリバウンドしてしまう人。(3)片づけることで、仕事も恋愛もチャンスをつかみたい人。

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【今日の1冊】徹底した「自己分析」で天才になる! オリラジが芸能界でサバイブできる理由——『天才の証明』

「天才にはなれないんだから、秀才を目指しなさい」

 

子どもの頃、よくこんな台詞を耳にした。

 

一般的に、天才は「生まれ持ったもので、どんなに努力しても他者が勝てないような能力、または能力を持った人」であり、秀才は「努力して得た知識や才能(もしくは持ち主)」という意味で使われているのではないだろうか。

 

つまり、ずば抜けた才能を生まれながらにして持つ者が天才であり、そのような才能を持ち合わせていない者は、努力して天才に近づくべく「秀才」になるしかないのだ。そう幼いながらも理解した記憶がある。

 

しかしながら、「人は誰もが天才だ」と唱える者がいる。お笑い芸人・オリエンタルラジオの“あっちゃん”こと中田敦彦氏だ。

 

 

消えそうで消えない?「オリエンタルラジオ」というコンビ芸人

オリラジといえば、デビュー一年目にして「武勇伝」ネタで大ブレイク。すぐに冠番組を持つも、早々にすべてのレギュラー番組を失い、不遇の時代を過ごす。その後、相方の藤森慎吾氏は”チャラ男”、あっちゃんは”インテリ芸人”としてそれぞれ再ブレイク。さらに、華麗なダンスとカッコイイ楽曲で世間の度肝を抜いた”PERFECT HUMAN”は記憶に新しい。「あの手この手で生き残ってきた」「消えそうで消えないコンビ」という認識の人も多かろう。

 

そんなオリラジあっちゃんが、昨年一冊の本を出した。黒バックの表紙にドヤ顔アップ、そして『天才の証明』(中田敦彦・著/日経BP社・刊)というタイトル。あっちゃんが孤高の神のように崇められているPERFECT HUMANのキャラクターそのままに、「私が天才である理由を教えてあげよう」てな内容なのかと思いきや、まったく違った。

 

冒頭の「人は誰もが天才」というのは、本書の中で主張しているあっちゃんの理論。誰もが生まれ持った素晴らしい才能を持っていて、それを伸ばし磨いていくためのテクニックを余すことなく教えてくれている。もしかして、私も天才になれるかも? というか、すでに天才なのかも? 早速、内容を覗いてみよう。

天才になるには「自己分析」が命

もっとも大切なのは、自らの長所や短所を客観的かつ冷静に見て、分析すること。なぜならば、1人の人間の才能はピンポイントであるからだと、あっちゃんは述べる。

 

たとえば、医者に向いているといっても、心臓外科医か精神科医ではまったく違う。心臓外科医の中でも、手術を行う技術に長けているのか、チームをまとめて手術自体を成功させる能力があるのか。芸人でいうならば、大喜利が得意なのかコントが最高に面白いのか、はたまた体を張った企画向きなのか、しゃべりで観客を魅了するタイプか。

 

こうして考えてみると、たとえ同じ職業であってもそれぞれ違った能力があり、活かせる場所が違うことに気づく。まずは、自分が何を得意とするか。どんな現場で生き生きとしているかを見つめ直してみよう。

 

また、その才能は、自分自身よりも他人の方が気づきやすい。自分では欠点だと思っていたものが、実は最強の武器だということもある。だからこそ、周囲の評価や今いる環境、時代のニーズをも鑑みて、綿密に自己分析すべきなのだ。

 

 

長所を伸ばし、短所は無視する

オリラジはリズムネタを得意としていて、音楽やダンスが最大の強み。一方で、「お笑い」で当たり前のように求められる漫才やコント、大喜利などはめっぽう苦手。だからこそ、不得意な従来のお笑いジャンルは早々に捨て、長所であるリズムネタを核にさまざまな挑戦をしてきたのだ。

 

と、あっちゃんは言う。つまり、「勝てるところで努力して勝負する」ということだ。結果、いまのオリエンタルラジオの地位がある。

 

確かに、苦手なことをいくら努力しても、そのジャンルで才能がある人にはなかなか近づけない。であれば、長所だけに絞って磨いていくほうが、成功への近道だろう。とはいえ、ただがむしゃらに頑張るだけではダメだ。繰り返しになるが、一に分析、二に分析。

 

「武勇伝」ネタや音楽ユニット「RADIO FISH」が受け入れられた背景には、その時代のニーズ、あらゆるお笑いネタの分析、成功者(即ちライバル)の強み、社会全体の流れなどを、実に詳細に分析し、自分たちの長所をどう表現していけばブレイクするかを試行錯誤した結果なのである。

 

 

本書の中では、他にも自分の才能を開花させるための戦略が数多く紹介されている。

 

「人は誰もが天才だ」という主張は、確かに正しい。ただし、その才能を輝かせるための多大なる努力があってこそ。常にトライアンドエラーを繰り返し、より高みを目指しているあっちゃんの姿は、多くの大人たちの背中を押してくれるだろう。私自身、仕事の方向性を再度考え直そうと前向きになれた。

 

ちなみに、「中田敦彦氏が飛び乗った瞬間に、特急列車のドアが閉まった!」とは、某バラエティ番組プロデューサー談。やっぱり「あっちゃん、かっこい~!」

 

 

【書籍紹介】

 

天才の証明

著者:中田敦彦
発行:日経BP

あなたには才能がある 私がそれを証明する。既存のルールに縛られるな。新しい視野と思考を手に入れろ。オリエンタルラジオ、RADIO FISHの司令塔による才能を開花させる「戦略」と「選択」

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【今日の1冊】あらゆる悩みは「貝塚」へ捨てよう!――『縄文人に相談だ』

悩んでいるとき、だれに相談しますか?

 

わたしは、縄文人に相談してみたいです。『縄文人に相談だ』(望月昭秀・著/国書刊行会・刊)という本があります。「縄文1万年の知恵」は、あらゆる悩みを解決してくれます。

 

 

草食系男子です。全然モテません

そもそも日本人っておとなしい農耕民族なわけですから「草食系」なのはしょうがないですよね。
(中略)あっ、縄文人は狩りとかするいわゆる「肉食系」でしたっけ。いいなぁ、イケイケなんだろうなあ。(26歳、男)

(『縄文人に相談だ』から引用)

 

縄文人は、約1万年のあいだ狩猟採集をして暮らしていました。だから「肉食系」のはずです。しかし、縄文人は「好戦的ではなかった」と考えられています。

 

戦争のきっかけになるのは、「カネ」や「土地の境界」です。しかしながら、縄文時代に「お金(貨幣)」はありませんでした。人口が少ない(人口密度が低い)ので、利害の衝突は少なかったと考えられています。平和でした。

 

日本人の多くは、稲作(農耕)を本格的におこなった「弥生人」の気質を受け継いでいます。だから「草食系」のはずですが、肉食系の縄文人よりも「争うこと」を意識して生きています。やればできるはず。モテないのは、民族性とは関係ありません。

 

 

器(うつわ)にこだわる意味は?

器を変えると味まで変わるといって、食器に凝っている友人がいるのですが、食器を変えても味は変わらないですよね?(33歳会社経営、男)

(『縄文人に相談だ』から引用)

 

縄文土器のデザインには、何らかの意味があったと考えられています。おなじ銘柄のワインやウィスキーでも、グラスの形状が異なれば、味や香りの感じかたが変わります。土器も同じです。

 

数千年前の「土でつくった器」からは、少なくとも2つのことが読み取れます。

 

ひとつ。当時のヒトが、高度なデザインをほどこした食器や調理器具を作れる「知性」と「高度な感性」を備えていたこと。もうひとつは、土器などの「重たい家財道具」を普段づかいしていたことから、縄文人が「定住生活」を営んでいたこと。

 

縄文以前、つまり旧石器時代は「氷期」や「寒冷期」でした。植物が育ちにくい環境です。狩りのために、獲物を追って移動できる「身軽さ」が求められました。土器を使いはじめたことは、「定住」すなわち「心の余裕」をあらわしています。

 

定住すると、その土地にはゴミが溜まります。縄文時代のゴミ捨て場を「貝塚」と言います。縄文人の「干し貝」に対する情熱はすさまじく、大規模な「水産加工場」を営んでいたことが判明しています。東京都北区の「中里貝塚」をご存じですか?

ブログやインスタは現代の貝塚

現代の、その中でもっとも現代的な貝塚はネットの中にあります。
(中略)縄文時代の貝塚だって、人が減ったり貝が採れなかったりすれば、積み重ならなかった時期もありました。貝が積み重ならなかったという事実だって、考古学的には立派な記録です。

(『縄文人に相談だ』から引用)

 

縄文人は、大量に取ることができた「カキ」や「ハマグリ」を干して、保存食として常用していました。木の実や山菜のほか、大量に貯蔵できる「干し貝」は貴重な栄養源でした。

 

中里貝塚は、全長500メートル・横幅100メートル・厚さ(深さ)4.5メートルにおよぶ縄文時代の地層です。ほとんど「貝殻」だけが積み重なっていることから、大規模な「貝の専用加工場」だと考えられています。

 

現代では、インターネット(仮想空間)に「ヒトの息づかい」が蓄積されています。Google社やTwitter社やFacebook社(Instagram)などに時系列で投稿されているテキストや写真のデータです。もしも、いまから数千年後に人類が存続していたら、SNSのタイムラインデータを「貝塚」に見立てるかもしれません。

 

 

すごいぞ縄文人。おまえがナンバーワンだ!

縄文時代って、ずいぶんニッチなことを言いますね。この本って、言ってみたら「出オチ」じゃないですか。実はこのへんでそろそろネタ切れなんじゃないですか?(28歳会社員、男)

(『縄文人に相談だ』から引用)

 

1万年も続いた縄文時代に対して、弥生時代から数えた日本人の歴史は2500年にすぎません。現代人に比べて、縄文人には4倍のネタがあります。

 

本書『縄文人に相談だ』は、縄文時代をテーマにしたフリーペーパー『縄文ZINE』から派生したものです。縄文人(になりきっている)相談回答者の「とぼけた味わい」が笑いを誘います。

 

1万年も続いた文化の担い手としてのプライドがあるせいか……縄文時代を終わらせてしまった「弥生人」に対するライバル意識がいきなり噴出します。「この弥生野郎! 脱穀でもしてやがれ!」。そのあたりも笑いどころです。お試しください。

 

【書籍紹介】

縄文人に相談だ

著者:望月昭秀
発行:国書刊行会

お金ってなんですか? どんぐりのことですか? お金が貯まらない、恋人ができない、部下がついてこない、将来が不安ーー。あれやこれやと悩みのつきない現代人。でも悩みなんて、全部まとめて貝塚にポイ! 話題沸騰のフリーペーパー「縄文ZINE」編集長がおくる縄文的お悩み相談。

 

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【今日の1冊】人生で5年間は孤独でいい。成功のための孤立のススメ――『ひとりでも、君は生きていける。』

「人はみな一人では、生きてはいけない」なんて歌詞もありますが、そんなの関係ねー! と言わんばかりに「ひとり」にこだわったことで、偏差値35から立命館大学に入学し、大学在学中に公認会計士の資格を取得したという『ひとりでも、君は生きていける』(金川顕教・著/学研プラス・刊)の著者・金川顕教さんという方がいらっしゃいます。

 

 

あなたは、ひとりでも生きていますか?

 

私は一人で過ごすことが多いものの(さみしい人間!)、絶対に一人では生きていけないタイプです。「一人はラクでいいわよぉ〜」と外面では見せているものの、内心めちゃくちゃさみしいのです(めんどくさい人間!)。ということで今回は、『ひとりでも、君は生きていける』で紹介されている孤高ライフを読み解いて、成功を手に入れる秘訣を学んでいこうと思います。特に、大学生や就活生、必読です。

 

 

人生の5%くらいはひとりでもいい?

健康寿命も伸びてきたことで『人生100年』と言われていますが、この長い人生において5年くらいは孤独でいいじゃないかと言うのです。その5年間は修行期間だと自分に言い聞かせて、人とは群れず、自分の目標を達成することのためだけに生きていく方が幸せなんだとか。

 

また「若いうちは10年、どん底があってもいい」という金川さんのおじいさんの名言も以下のように紹介されていました。

 

「ダメな時期もあったけど、結果、よかったじゃん」

と思えばいい。失敗しても、くよくよしないで人生をトータルで見ろ、というわけです。人生で、もし10年辛い時期があったとしても、残りの90年が楽しかったら、それでいいじゃないか、と。

(『ひとりでも、君は生きていける。』より引用)

 

金川さんはこの修行の10年があったからこそ、今は10億円以上の年商を稼いでいるというのです。ひねくれ者の私は、35歳から10年頑張っても45歳、人生残り55年しかないじゃん…、もしボケたらつまらない人生の方が多くなる…とネガティブに考えちゃうんですよね(笑)。あー若いうちに苦労しておけばよかった! という考えは一旦置いておいて、実際にどうやって「ひとり」を極めていけば良いか教えてもらいましょう!

 

 

周りから嫌われて「ひとり」になる

学生時代に公認会計士の資格を取得するのは本当に大変なことですが、金川さんは合格するために「クラスメイトからは、好かれるよりも嫌われることを選んだ」とのことなのです!!  徹底的に「ひとり」を貫く、金川さんはどんなキャンパスライフを送っていたのでしょうか?

 

「話しかけないでオーラ」全開で、大学ではいつも、ひとりで行動していました。どうしてもでなければいけない講義があると、教室の隅に座って、カタカタと電卓を打ちながら公認会計士試験の勉強をしていました。

(『ひとりでも、君は生きていける。』より引用)

 

もし合格できなかったらもう「人生オワタ\(^o^)/」と思ってしまいそう! でも、それくらいの覚悟で物事に向き合えるくらいの目標をちゃんと持っているか? ということなんですよね。生半可な気持ちで努力しているつもりになって、フラフラと毎日をすごしていたら時間がもったいないように思えてきます。

 

凡人といると凡人にしかなれない…。

とは言っても、明日からいきなり「話しかけないでオーラ」を全開にさせるのも難しいですよね。これまでの付き合いだってあるし、友達に助けてもらったことだっていっぱいあるはずです。でも、今のあなたにとってその友達との関係が「ちょっと違うな」と感じているのであれば、親しい3人を思い浮かべてみてください。

 

「自分の周りの親しい3人の年収を3で割った金額が、自分の適正な年収」とはよく言われることです。(中略)

お金のない人は、お金のない人と交わり、お金持ちはお金持ちと交わる−−。

(『ひとりでも、君は生きていける。』より引用)

 

今の関係が満足であれば、変える必要はないと思いますが、もし今の関係を抜け出したい!  もっと成功できるように飛躍したい!  と思っているのであれば、ひとりになってこれからのことを考えてみるのもいいキッカケかもしれませんね。

 

お金だけがすべてではないですが、私も社会人になってからこの法則はあるな…と感じたことが度々あります。ちょっとでも違和感があるときには「孤高チャンス到来」とポジティブに捉えて、今いる居場所をちょっと変えてみるのがオススメです。

 

 

人脈づくりは時間の無駄! ステージが上がれば、自然に人脈ができる

よーし! 早速お金持ちの友達を作るぜ! と、交流会などに参加しまくる人もいるかもしれませんが、それは間違いなんだとか。自分の努力によって、自然と人脈は出来上がってくるというのです。

 

人脈をつくって、相手に引き上げてもらおうという甘い考えはやめて、自分のレベルが上がってから会いにいく方がいい。

自分が努力もせずに、優秀な人に会いに行って仲良くなろうというのは、結構厳しいと思います。

(『ひとりでも、君は生きていける。』より引用)

 

これって、ゲームでひたすらレベル上げしている時期に近いですよね。まずは自分のHPと武器のレベルをアップさせて、今いるステージの最強レベルにしておくことでゲームクリアがしやすくなりますし、クリアすることで一緒に戦ってくれるさらに強い仲間とも出会えるという感じ!  ひとりでひたすらレベル上げするのは寂しい気もしますが、その先に仲間がいると思えばちょっと頑張れそうですね。

 

 

「遊び」「スマホ」「居酒屋」「異性」「テレビ」は成功には必要ない!

少しずつ「ひとり」になる勇気が湧いてきたでしょうか?(笑)

 

勇気が湧いてきて、自分の定めた目標に向かおう! 成功するぜ!と思った矢先、あなたは成功を阻む5大リスクと対面します。成功を阻むリスク?一体なんなのでしょうか?

 

何かの大きな目標を達成したいなら、成功するまで遠ざけておきたいものがあります。

「遊び」「スマホ」「居酒屋」「異性」「テレビ」の5つです。

(『ひとりでも、君は生きていける。』より引用)

 

おおお…。どれも誘惑がいっぱい(笑)。完全にシャットアウトは難しいので、意識してつきあうようにするだけでも変わるそうですよ! 「遊び」「スマホ」「居酒屋」「テレビ」あたりはまあいいとして、問題は異性!  恋愛禁止なんて、アイドル状態ですよ! ちなみに金川さんに言わせると、「毎日会いたがる恋人とは、すぐに別れよう」とのこと。若いうちに頑張って、仕事が落ち着いてきたら大恋愛や結婚をしたらいいんですって。確かにこの考え方もありますが、これを許してくれる10代、20代女子はどれくらいいるのでしょうか…。

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「ひとり」を頑張りすぎる若い男性が増える

若い女性は同世代で恋愛できる人がいなくなる

「ひとり」を頑張り終えた40代の年上男性はお金はあるけど恋愛難民

若い女性と「ひとり」を頑張り終えた年上男性がベストマッチ!

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って構図になるのでしょうか? だいたいお金持ちの男性って、若い女性と結婚しますもんね。そうか、そういうことか! 妙に納得してしまいましたが(笑)

 

さぁ、あなたはいつ孤高の努力をしますか?

 

【書籍紹介】

ひとりでも、君は生きていける。

著者:金川顕教
発行:学研プラス

僕はなぜ、超メジャーな会計士事務所を辞め、高額の給料を手放し、たったひとりで働き始めたのか?群れない、もたれ合わない人間関係、時間、お金…。実は「ひとり」になることこそが、成功の近道なのだ!本書で僕が「したたかな孤独の戦略」を教えよう。

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無条件にほめよ。自分のすべてを愛せ!――『「愛されて当然」と思うだけで、自分史上最高の彼がやってくる。』

私の知り合いに、決して美人でもセクシーでもなく、どちらかというと可愛らしくてお茶目なタイプの熟女さんがいる。彼女は男性からのお誘いが絶えない。大勢の男性に「おつきあいしたい」と望まれている。その秘訣は「相手をほめちぎること」だという。

 

ほめても効果がない場合

「男性をとにかくほめましょう」「男性はほめられることに弱いのです」などと、恋愛マニュアル本には、おきまりのようにそうした言葉が載っている。けれど、ほめてもほめても報われない人もいる。また別の熟女は、お目当ての年下クンに「頑張っているあなたはとても素敵だと思う」「その色のお洋服、とても似合っていていつもより素敵に見えますね」などとほめ続けた。けれど、彼は誘ってくれるどころか、少し距離を置くようになってしまった。

 

「こんなにほめたのに、どうして彼は私を好きになってくれないの?」と彼女はがっかりしていたけれど、冒頭のモテ熟女さんの褒めかたと比較してみると、非モテ熟女さんのほめかたにはとある特徴がある。それは相手を限定的にほめているというところだ。例えば「頑張っているあなたは素敵」であるならそれは「頑張っていないあなたは素敵じゃない」、「その色の洋服を着ているといつもより素敵」である場合「その色の洋服を着ていないと、素敵じゃない」となってしまう。

 

 

無条件でほめよう

逆にモテ熟女さんのほめかたはどうかというと、手放しでほめている。たとえば男性が何かを達成した場合「んま〜っ、なんてすごいの!? 素晴らしいわ! 天才ね!」という感じである。大げさに思えるかもしれないけれど、実際言われると本当に気持ちがいい。私も彼女にほめられたことがあるけれど、持ち上げられて、照れながらも天に舞うような気持ちになれた。

 

モテ熟女さんのほめには「条件」が付いていない。無条件で、手放しで、ひたすら讃えてくれる。しかし非モテ熟女さんはには「条件」が付いている。「頑張っているあなたが好き」である場合「頑張っていないあなたは好きではない」という裏の意味をはらんでしまっている。男性はこの「条件づけ」にものすごく敏感なのだ。

愛されて当然

「愛されて当然」と思うだけで、自分史上最高の彼がやってくる。 』(斎藤芳乃・著/大和出版・刊)は、なかなかすごいタイトルの本だ。「私なんて美人じゃないし……」などとクヨクヨせず、まずは自分を愛することで、相手からも愛されるようになりますよ、というメッセージに溢れている。この本の言っていることは、わかる気がする。自分のことを変な条件で縛らず、ありのままの姿を愛しましょう、つまり手放しでほめましょうと言っている。これも無条件の愛、つまり「愛されて当然」という状態なのである。

 

この、すべてを認めて愛してもらえるという感覚は、とても心地がいい。自分のことを愛されて当然と思えるようになると、相手のことも無条件で愛することができるようになるのだと思う。それなのに、自分自身のことを無条件で愛することができない人は多い。それどころか「私ってなんてダメなんだろう」と自分で自分を卑下してしまう。

 

 

すべてをほめる

どうせほめるのなら、条件をつけず、その人を丸ごと認めたほめかたをしたほうが、相手の心にしみるはずだ。頑張るあなたじゃなくても、その色の服を着ていなくても、どんなあなたでも私は大好きだよ。あなたがどんな状態であっても、私は受け入れるよ。そう言ってあげられてはじめて、相手は安心してこちらに近づいてきてくれるのではないだろうか。

 

とはいえ、どうやったら相手のすべてを認められるようになるのだろう。本では「今、この瞬間、気持ちがいい会話ができたらいいなという気持ちで」接すればいい、と書かれてあった。女性は彼とデートしながら「この人は私と結婚してくれるかしら?」などと探るところがあるが、それをやめたらうまくいく、という。

 

それを読んでわかった。モテ熟女さんは、相手に何も求めていない。すごいと思ったから「すごい!」と素直にほめていた。心からの賞賛である。しかし非モテ熟女さんには、あわよくばその彼といい仲になりたいという期待を込めていた。つまり相手から愛されることを望んでいた。我欲混じりの愛情は、何も望んでいない無垢な愛情の前では一気に力を失ってしまう。余計な計算などせずに、目の前にいる彼と一緒にいられる「今」を楽しむことに集中したほうが、相手を全力でほめられる自分になれるはずである。

 

 

【書籍紹介】

 

「愛されて当然」と思うだけで、自分史上最高の彼がやってくる。

著者:斎藤芳乃
発行:大和出版

「なぜいつも自分を不幸にするダメな男性ばかり好きになってしまうの?」「つき合っても、いつもプロポーズされない」「いつも片思いばかり」「どうしてどうでもいい人にばかり好かれるの?」など、もしもあなたがいつもうまくいかない恋愛に悩んでいるなら、このメンタルブロックに原因があります。本書では、あなたにかけられたメンタルブロック(=心の制限)を外し、あなたが「愛されて当然だ」と思えるようになるための、「自分をがんじがらめの不幸から救うやり方」と、「自分を幸せに許可するやり方」をご紹介します。

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『たった2分で、自分を磨く。』――バカな上司 を「部下扱い」すると仕事が楽しくなる!

成果が出ない。仕事が楽しくない。ご愁傷さまです。病は気から。つまらない人生も、考えかたをすこし変えるだけで好転します。
たった2分で、自分を磨く。』(千田琢哉・著/学研プラス・刊)は、アッと驚くような発想転換アイデアをたくさん収録している自己啓発書です。

 

ノルマは上方修正するほうが楽しい


今月100万の売上ノルマを与えられたとしたら、自分で勝手に200万や300万に上方修正してしまうのだ。
100万のノルマを与えられて、バカ正直に100万を目指すから達成できない(中略)最初から200万や300万を目指していれば、根本的に言動が変わる。

(『たった2分で、自分を磨く。』から引用)

 

ノルマ(達成目標)は、他人から押しつけられるもの。不快なので無視しましょう。あなたが達成したいことは、あなた自身が決めるべきです。ノルマを上書きすることによって、気持ちのうえで自主性を取り戻すことができます。

 

1キロメートルを走れる人は、たいてい2キロメートルを完走することができます。速度ペースを工夫すれば、さらに3キロメートルを完走するのも難しくないでしょう。成果を出したければ、上限という「フタ」をかぶせないことです。

 

 

心のなかで上司を部下扱いする


私は新人の頃、課長のことをずっと部下だと考えていた。(中略)自分にタメ口をきいてくる補欠の先輩だと確信していた。部下だから、世話が焼けるのは当たり前の話なのだ。

(『たった2分で、自分を磨く。』から引用)

 

「課長」や「部長」という肩書きは、その人物にマネジメント能力があることを保証しません。前任者の出世もしくは退職による「ただの繰り上がり」かもしれないからです。

 

会社を選ぶことはできても上司は選べません。遠慮せずに、心のなかで「部下扱い」しましょう。無能な上司のもとで働くことによって、あなたは平社員でありながらマネジメント能力を身につけることができます。

 

自分を磨くためには、考える力(思考力)を高めましょう。ある方法によって、思考力を2倍にすることができます。

「なぜ」を自問自答する


「なぜ」を考え続けることだ。
人に対してこれをやらかすと、相手の時間を奪って失礼だし、嫌われる。
だが、自分が1人で熟考する際には、「なぜ」を繰り返すことは有効だ

(『たった2分で、自分を磨く。』から引用)

 

経営コンサルトの世界では、「真逆」と「なぜ」を考えることが習慣になっているそうです。

表と裏。黒と白。物事の「真逆」を考えることで、思考が2倍になります。業界内で当たり前になっていることの「真逆」を考えることで、競合他社を出し抜くアイデアが生まれるのです。

 

常識や慣例を「なぜ」と疑い続けることは、これまでなかった製品やサービスを作り出すきっかけになります。「なぜ」によって思考を深めるとき、いちばん必要なのは「体力」です。ひとつのことを考え続ければ、やがて答えが見つかります。

 

 

報われない努力はやめる


報われない努力をしている人は、自分でも薄々気づいているのだ。
「このまま勉強し続けても、どうせ合格しないだろうな」
「このまま仕事を続けても、どうせ出世できないだろうな」
(中略)
胸に手を当てて考えた結果、「努力に逃げているな」「報われないな」と悟ることができたら、あなたは大きく飛躍したことになる。

(『たった2分で、自分を磨く。』から引用)

 

不運。不遇。貧乏。おなじ時間を学んだり働いたりしても、報われる人と報われない人がいます。それを「人生における理不尽」だと思いますか?

 

「報われる」とは、目的に達するということです。そのためには、ふさわしい努力を要します。しかし、努力したからといって達成できる(報われる)とは限りません。能力の伸びしろは、人それぞれだからです。

 

「報われない」と感じたときは、もう手遅れです。自分の可能性に見切りをつけています。すでに評価と判断が終わっています。おとなしく従って、別の「報われる」かもしれないことにチャレンジしましょう。ふさわしいタイミングで損切りすることも「成長」です。お試しください。

 

【書籍紹介】

たった2分で、自分を磨く。

著者:千田琢哉
発行:学研プラス

才能とは何か?努力とは何か?修行とは何か?知性とは何か?プロ意識とは何か?――自分を磨き、人格を高めていくためには上質の言葉のシャワーを浴びることが何よりも重要だ。カリスマ・千田琢哉が成長し続ける20代の背中を押す、63の気づきの言葉。

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『折れない心を育てる 自画自賛力』――「褒め」こそが心の栄養なのだ

自分に厳しい人がいます。そういう人は自分を卑下しがちです。「私なんて全然……」が口ぐせです。その逆に、自分に優しい人がいます。「今日はよく頑張ったね」と自分を褒めてあげられる人です。どちらのほうが運気が上がるかというと、自分に優しい人なのだそうです。

 

 

 

褒めことばは補給剤

私自身の話ですが、私は、27の年になるまで、自分にごほうびをあげたことがありませんでした。どんなに頑張っても、自分を褒めたり認めたりすることもなく、もっと次を目指さねばとさらに気持ちを奮い立たせていたのです。これは、私の親がそういう人で、たとえテストで学年1位を取っても「次も1位をキープするように」と言うだけで、褒めたりしない人だったためだと思うのです。つまり私は、自分を褒めることを知らずに育ったのです。

 

でもこれは、いつかは息切れを起こします。人生というフルマラソンを、褒め言葉という補給無しで走っているようなものだからです。私は27歳の時に、一旦、もう走れません……とグロッキー状態になり、一時的に引きこもってしまいました。この時に山のように本を読んだのですが、その中のどこかに「自分にごほうびをあげましょう。ずっと欲しかったものを買ってあげましょう」とあったのです。

 

 

ごほうびで心も喜ぶ

ずっと欲しかったもの。しばらく考えた末に、ドールハウスに思い至りました。子どもの頃からずっと欲しかったのに、人形の家を買ってはもらえなかったのです。大人になり、それを買うくらいのお金はあるのに「いまさら買っても」という思いがあり、躊躇していたのですが、思い切って大金をはたき、それを手に入れました。

 

どんな気持ちだったかというと、これがものすごく気持ちが良かったのです。今の自分だけでなく、小さな頃の自分の魂も一緒になって喜んでいるのがはっきりわかったんです。好きな位置に家具を並べるだけで、至福を味わえました。自分にエネルギーを与えるというのは、こういうことなのだなとその時初めて悟り、以来、私は、自分に色々なごほうびをあげるようになったのですが、それはかなり効果のある行動だったようなのです。

 

大切な「自画自賛力」

折れない心を育てる 自画自賛力』(原田隆史・著/KADOKAWA/メディアファクトリー・刊)によると、自分のことをまず自分自身で褒めることがポイントなのだそうです。誰かが褒めてくれるのを待っているのでは時間がもったいないのだそうです。確かに、何かをやり遂げた時に、すぐさま自分を褒めてあげられるのは、自分以外にいません。

 

本の著者・原田隆史先生は、多くのスポーツマンを優勝や目標達成へと導いた指導者として有名ですが、自分に自信を持ち、セルフイメージを持つことで、夢は叶えやすくなるのだと断言し、「自信を持つと人は劇的に変わる」と言います。例えば女子サッカーの澤穂希選手は決勝前日に「(自分が優勝トロフィーを)掲げている姿が想像つく」と話していたそうですが「自分はできる」と信じられたからこそ、そうしたセルフイメージを思い浮かべられたのだそうです。

 

憧れの人のマネもパワーに

私たちは、頑張った自分自身にごほうびをあげることで、自分を可愛がり、さらに伸ばすことができるのでしょう。そうすることで心にプラスのパワーが満ちていくのです。「自分にごほうびだなんて、何をあげたらいいのか想像もつかない」と言う人が大勢いますが、そういう人に、本は「尊敬する人の真似をしてみてください」とアドバイスしています。

 

例えば尊敬する上司がいつもグリーン車を使っているのなら、グリーン車に乗ってみる。憧れのカリスマビジネスマンが通っている高級料理店があるなら、そこに思い切って行ってみるなどして、目指す人の世界を体感してみるとセルフイメージも高まっていくのだそうです。何かに頑張った時には、自分をより高めるために、ちょっと背伸びしたごほうびを自分にあげてみると、今までとはまた違う景色が見えてくるのかもしれません。

 

 

【書籍紹介】

折れない心を育てる 自画自賛力

著者:原田隆史
発行:KADOKAWA / メディアファクトリー

自分を認め、信じる力=「自画自賛力」こそが、成功の原動力である! 数多のビジネスマンを指導してきた著者が、1日5分からできる、記録と日誌を用いた「自己肯定感」メソッドを紹介。これでもう、あなたの心は決して折れない!

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正しい自己正当化のすすめ。ダイエットが失敗するのは「食欲が強い」から――『やらない理由』

顔面や体重が不自由であったり、低収入もしくは無職であることは、恥じるべきことなのでしょうか? その答えは……NO(ノー)です。

 

やらない理由』(カレー沢薫・著/マガジンハウス・刊)は、漫画家&コラムニストである著者が、「劣等パーソンのための自己正当化フレームワーク」を解説している抱腹絶倒のコラム集です。

 

 

反省を時短する

やはり短い人生、過ぎたことを後悔する時間は減らすべきだ。(中略)反省時間は省いても良くないか、みんな大好き「時短」である。そして時短でできた時間を、自分を褒める時間に使った方がいい。

(『やらない理由』から引用)

 

後悔しても、反省しても、その経験を活かせなければ「時間のムダ」です。たいていの人間は、数えきれないほどの後悔と反省を繰り返しても、おなじ失敗を重ねます。

 

人生をより良く生きるコツは、いかに早く、自分に見切りをつけられるかどうか。
反省するのをやめて、自分を責めるのをやめて、空いた時間を好きなことに使いましょう。ジャブジャブ湯水のように浪費しましょう。スッキリします。

 

 

やせたいけれど、暴食したい

ダイエットに挫折する=意志が弱い、というのはマイナス思考すぎる。何故逆に「食欲が強い」と考えないのか。(中略)食欲がダイエットに見事打ち勝ったのだ。つまり敗北ではない、勝利なのである。

(『やらない理由』から引用)

 

食べることは生きることです。わたしたち人間は、食べるほど強くなります。太っている人は生命力が高いのです。

 

もしも大災害に巻き込まれたら、食べたくても食べられなくなります。そんなときの「ぜい肉」は貴重なエネルギー源です。ダイエットに挫折するほどの強すぎる食欲こそが、あなたの命を救います。

 

身の丈に合わない努力はやめませんか? 現状こそが、あなたの人生のピークだと考えましょう。ムリな「努力」や「上昇志向」のせいで、むしろ不幸になってしまうことがあります。

努力するほど不幸になる!?

人生の選択肢というものは「良い方」を選ぶイメージがあるかもしれないが、そのほとんどが「一番マシなものを選ぶ」作業だ。
それを「いやもっと良い選択肢や、働かずして金を得る方法があるはずだ」と思うから、マシなものすら掴めなくなる。

(『やらない理由』から引用)

 

「やらないで後悔するより、やって後悔した方が良い」というフレーズがあります。しかし、やった結果が「死」という結末ならば、やらないで後悔したほうがマシです。

 

「やってする後悔」のなかには、取り返しのつかないものがあります。投資とギャンブルの見分けもつかない貧乏人が、一念発起して引き当てるのは「取り返しのつかない後悔(おもにFX)」です。つまり、凡人にとっては現状こそがピーク、「やらない」を選ぶことが最善(ベスト)なのです。

 

 

ピンチはピンチ。試練はノーサンキュー

「頑張りたくない」と思ったのは怠惰ではない。目の前のピンチだかチャンスだか得体の知れないものに対し「慎重」になっているのだ。
「とりあえず頑張ろう」などと思うのは「良くわかんないけどまず口に入れる」となんら変わりない。そんな奴は、ペロッこれは…青酸カリ!〜fin〜である。

(『やらない理由』から引用)

 

ピンチはチャンス。試練(リスク)を乗り越えれば、大きな見返り(リターン)がある。前向きなフレーズです。ただし、ピンチを乗り越える能力がないくせに飛び込んでしまうと、大ケガをします。

 

失敗したからといって、必ずしも成長できるとはかぎりません。戦闘民族サイヤ人ならば、死の淵から蘇ることによってパワーアップできます。しかし地球人は、ケガを治しても戦闘力の上昇(成長)は見込めないのです。苦しいリハビリが待っているだけです。

 

反省しない、ガマンしない、頑張らない、挑戦しない。
「やらない理由」を正しく自覚すれば、世間に負い目を感じないで堂々と生きることができます。お試しください。

 

【著書紹介】

やらない理由

著者:カレー沢薫
発行:マガジンハウス

虫のいい話のどこが悪い!? 自虐の神がお届けする新刊はいまだかつてないくらい超ポジティブ! cakesの人気連載「やらない理由」が待望の書籍化! 自分のワガママを許すと、気がラク~~~になるんです。

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余計なことが頭に浮かんだら考えるのを止める――ネガティブに陥らない「心のそうじ」

悩みとか心配事に、どう対処していますか? 人それぞれ方法があるだろうが、筆者は2時間ほど考えに考え抜いて、答えが出ても出なくてもそこでやめることにしている。まったく考えないわけにはいかないし、いつまでも考え続けるわけにもいかない。

 

 

最長2時間考える

なぜ2時間なのか。考え疲れてしまうのだと思う。泣き疲れて寝入ってしまう小さな子どもに近いかもしれない。筆者のやり方は、問題の解決には直結しないだろう。でも、少なくとも気持ちの面で帰結できることは経験則的にわかっている。

 

心乱されるものを徹底的に無視する方法を試したこともあった。でも、これだとふとした瞬間にパワー全開で襲いかかってきて、まったく逆効果になってしまう。まるでこっちが隙を作る瞬間を待っているように、結局それしか考えられなくなってしまう。だから今は、あえて自ら進んできっちり2時間、それしか考えない時間を作ることにしている。

 

 

ネガティブな思いを生む要素

筆者はそもそも小心者で、ちょっとしたことで引っかかると、他のことが手に付かなくなってしまうようなところがある。こういう性格は、正直しんどい。知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまって、思考の方向性もマイナスになって何事に対しても消極的になり、後悔するくらいなら最初からしないほうがいい、なんて思ったりすることもあった。

 

プロゴルファーのタイガー・ウッズは、まずいショットを放ってしまったときはきっちり10秒間激怒して、口にするのもはばかられるような言葉を吐きまくり、それでリセットして、無の状態で次のショットに向かうという姿勢を貫いていた時期があると聞いた。筆者の2時間は、タイガーの10秒と同じ効力をもたらすものなのかもしれない。

 

悩み、心配事が生まれないプロアクティブな方法

悩みとか心配事というものは、自分自身の内側にも問題があるから生まれるのではないだろうか。たとえば、コントロール・フリークと呼ばれる人たちがいる。何でも自分の思いどおりにしようとしたり、何でも自分の仕切りで進めたがったりする人たちのことだ。実は筆者も、自分にこういう部分があることを完全には否定できない。

 

なぜ自分と同じように考えてくれないのか。なぜ自分と同じようにものごとを進めてくれないのか。ちょっと角度を変えて見ると、これはとても傲慢な態度かもしれない。そして、こういう種類の傲慢が原因で悩みや心配が生まれてしまうのだとも思う。ならば、自ら改めなければならない。さらに言うなら、プロアクティブな形で、ネガティブな思いを作らないでいる方法を見つけなければならない。

積極的に問題と決別する

そこで、『心のそうじ 心配事と不安が消える88の言葉』(植西聰・著/学研プラス・刊)という本を紹介したい。まえがきに、こんな言葉がある。

 

よけいなことがあれこれ頭に浮かんだら、「もう、このことを考えるのはやめた」と自分に宣言して、「幸せな自分になる!」と宣言しましょう。

『心のそうじ 心配事と不安が消える88の言葉』から引用

 

これって、筆者の2時間に近い感覚のことなんじゃないだろうか。いや、正確に言えば筆者はまだここにまで至っていない。あれこれ浮かんだ瞬間に否定できず、とりあえずは2時間必要なんだから。

 

心を整える88のヒント

ならば、悩みや心配事が浮かんだ瞬間に否定できる自分を目指していくだけだ。本書は9章立てで、全部で88項目のヒントが示されている。それぞれの章タイトルを、筆者的に一番ささった項目と併せて紹介しておく。

 

第1章:心のそうじとは?(心のゴミの量をチェックしてみよう)

第2章:いらない感情は処分しよう(悩んでも仕方がない悩みに心を砕かない)

第3章:プラスの言葉で会話を模様替え(ネガティブ言葉は心の汚染源)

第4章:人間関係の目詰まりを直す(「こういう人」と割り切れば人間関係のゴミはたまらない)

第5章:積もったストレスをこそぎ取る(「今日できないことは今日考えない」)

第6章:失敗は楽天の発想で再利用しよう(ストレスがあるから幸せを感じられると気づく)

第7章:ライフスタイルをアレンジする(休日を決めるのはカレンダ―ではなく自分)

第8章:「したいこと」と「すべきこと」を仕分ける(夢は口に出すと実現しやすくなる)

第9章:まわりも磨ける自分になろう(「三秒前は過去」と考えて今の自分を生きよう)

 

こうやって改めて並べて見てみると、悩みや心配事を瞬殺できる自分にステップ・バイ・ステップで向かっていける気がしてくる。そもそもネガティブなものを生まず、溜め込まない姿勢の整え方がわかるのだ。また、それぞれの項目の頭にイントロのような短い解説文が添えられているのも親切だ。

 

 

心のそうじは難しくない

悩みや心配事というのは、外的要因がメインであると思いがちだ。しかしこの本を読んでいると、知らず知らずのうちに自分の内側に溜め込んでしまったネガティブなものによって、問題を自ら引き寄せてしまうメカニズムがわかる気がする。

 

心のそうじ。そんなに難しいことではないようです。新年度を迎え、新しい環境で暮らしていくにあたって、一度心のインベントリーとデトックスをしてみませんか?

 

【著書紹介】

 

心のそうじ 心配事と不安が消える88の言葉

著者:植西聰
発行:学研プラス

人生はシンプルになるほど生きやすい!人気カウンセラー・植西聰による、心配事や不安が消えて穏やかに生きるためのエッセイ集。捨てる、磨く、整える…。あなたの人間関係をフレッシュにする「心のそうじ」の心構えとコツが満載です!

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「僕にもう一度チャンスをください!」 ベストセラー絵本作家が挑んだ初の自己啓発本が読まれまくっている

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:3月1日、朝)を紹介していこう。

 

有名コピーライター糸井重里のお墨付き?

●1位『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編 平成29年7月』(文部科学省・著/日本文教出版(大阪)・刊/242円)

●2位『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科道徳編 平成29年7月』(文部科学省・著/廣済堂あかつき・刊/146円)

●3位『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 (光文社新書)』(溝口徹・著/光文社・刊/972円)

●4位『CYBERJAPAN DANCERS PHOTOBOOK HOLIDAY★GALS 【秘蔵生写真付き】(バラエティ)』(CYBERJAPAN DANCERS・著/宝島社・刊/2138円)

●5位『処刑の文化史』(ジョナサン・A・ムーア・著/森本美樹・翻訳/ブックマン社・刊/2916円)

●6位『運は人柄 誰もが気付いている人生好転のコツ(角川新書)』(鍋島雅治・著/KADOKAWA・刊/929円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

2018年2月10日に発売された鍋島雅治の新刊が再び注目を集めた。漫画原作者として知られる鍋島が、数多くの漫画家を見てきたなかで辿りついたのは「漫画家に必要なのは才能と努力と運、その比率は1:2:7くらいだと思う」という結論。そして運と言われる事のほとんどは、実は人間関係によるものという自身の考えを綴った珠玉の1冊となっている。

 

急上昇の要因は2月28日にコピーライターの糸井重里が、自身の主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で同書を取り上げたからだろう。サイト内の「糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの“今日のダーリン”」で糸井は、「先日『運は人柄』という新書を買いました。なんとなくですが、納得できるように思います」と語っていた。これについて鍋島はTwitterで「自分の言葉が名コピーライターの目に止まるのは嬉しい事です。運がいいなぁ。ボクは」と大喜び。

 

ネット上では「本当に参考になる本です!」「解りやすい文章でサクサク読め、とても前向きになれる」「人を惹き付ける魅力を持ち合わせた方は考え方も素敵」「語り口が柔らかくて、読みやすいのに内容が濃い」などの声が相次いでいた。

 

人気絵本作家が初の自己啓発本に挑む!

●7位『かみさま試験の法則 つらい時ほど、かみさまはちゃんと見てる』(のぶみ・著/青春出版社・刊/1404円)

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ベストセラー絵本作家・のぶみによる初の自己啓発本が話題に。人生にはときどき、かみさまに試される出来事がやってくる。のぶみが絵本で8年売れなかった時期に思いついたという、今までに実践してきた「かみさまに味方される生き方」のコツを書いた1冊。

 

のぶみは60万部を突破する「ママがおばけになっちゃった!」シリーズをはじめ、これまでに200冊以上の絵本を出版している。絵本のほかにもキャラクターデザインを手掛けたり、NHKの「おかあさんといっしょ」で“11代目うたのお兄さん”を務めた横山だいすけが歌う「あたしおかあさんだから」の作詞も担当した。

 

しかし、のぶみの作品を批判する声も多い。のぶみもそれを分かっているようで、自身のTwitterでは「この本読んでまだ僕のこと嫌いだったら諦めます」「僕にもう一度チャンスをください!」と熱い思いをつぶやいている。

 

このツイートを見たファンからは、「のぶみさん渾身の1冊と聞いて速攻ポチりました」「色々経験してる人だから面白い本になってると思う」「批判も多いけど、自分の心には突き刺さることが多かったから今回も期待してる」といった声が。

 

●8位『ドラえもん映画!スペシャル―「映画ドラえもん」の“素になった”まんがセレクショ (My First Big SPECIAL)』(藤子不二雄F・著/小学館・刊/500円)

●9位『バイク擬人化菌書(2):モーターマガジンムック』(鈴木秀吉・著/モーターマガジン社・刊/950円)

●10位『ほうれい線が消失! タルミもシワ・シミも薄れる 肌若返り3分整顔(わかさ夢MOOK 58)』(わかさ出版・著/わかさ出版・刊/853円)

 

ランキングは以上の通り。今回は10位以降も含めて自己啓発本が多くの注目を集めていた。新年度に向けて気持ちを新たにする人が多いのかもしれない。

「他人のせいにしない、自分で責任を負う」シンプルな思考が自分の運命を切り開く

“アガスティアの葉”をご存知だろうか? 紀元前3000年頃のインドに実在したとされる聖者アガスティアが残した、全人類の運命が記されている葉のことだ。インド南部で使われていた古代タミル語で書かれており、ナディ・リーダーと呼ばれる“読み手”たちがそれを現代タミル語に翻訳する。その職業に就くことが運命づけられた人たちだけから選ばれ、6年以上の特別な訓練を受けてはじめて、正式なリーダーになることができる。

 

30997809 - supernatural being in sky

 

ライフパーパス

アガスティアの葉には、いつどこで生まれ、どんな学校に通い、どんな仕事に就いて、誰と結婚して子どもを何人持ち、何歳で亡くなって…という人ひとりの人生の詳細が連綿と綴られているらしい。

 

かなり前の話だ。有名な宗教学者の男性と二人の女性タレントが、自分のアガスティアの葉を探しにインドに行くというドキュメンタリー番組を見た。女性タレントについては忘れたが、宗教学者はみごとに自分の葉を見つけ、親戚の名前も正確に記録されていることを確認していたのを覚えている。

 

ニューエイジ系・スピリチュアル系の書き手たちも、アガスティアの葉の話が大好きだ。彼らがよく使う“ライフパーパス”という言葉がある。“人生の目的”という意味だ。人は誰もが人生で成し遂げるべき目的を担って生まれてくるという考え方で、それがライフパーパスということになる。

 

アガスティアの葉に記されているのは、これまで生きたすべての、そしてこれから生まれるすべての人のライフパーパスといえるかもしれない。

 

 

シナリオ、運命、聖なる存在との約束事

魂のシナリオ通りに生きていますか?』(木村藤子・著/学研プラス・刊)のテーマも、アガスティアの葉に書かれているかもしれないもの、そしてライフパーパスにきわめて近いものかもしれない。ただし本書では、それが“魂のシナリオ”という言葉で表現される。

 

“魂のシナリオ”とは何か?

 

「魂のシナリオ」という言葉から、皆さんは何を連想されるでしょうか? シナリオとは脚本のことですが、ここでいう魂のシナリオとは、あらかじめ決めてきている人生の道のり、すなわち運命のことです。

『魂のシナリオ通りに生きていますか?』より引用

 

ただ、木村さんが言う運命という言葉のニュアンスは、筆者を含めたごく一般の人たちが考えるものと少し違うかもしれない。

 

運命というと、「運命を変える」「運命に負けない」などと、どちらかというとやや否定的に捉える向きもありますがここでいう運命とは、この世に生まれてくる前に神仏に誓った約束事であり、避けられない人生の道のりを指します。

『魂のシナリオ通りに生きていますか?より引用

 

聖書にも通じるものを感じるのは筆者だけだろうか。

 

 

運命の構造

ただ、人生のすべてが運命によって司られているわけではない。木村さんによれば、運命=魂のシナリオには二つの側面がある。

 

一つ目は、どうしても本人が向き合わなければならない課題。そして二つ目は、その課題を乗り越えて心の成長を遂げた上で、あらたな人生の幸せを書き加えるという行い。木村さんご自身の言葉を借りれば、以下のようになる。

 

運命のシナリオには、魂の課題が含まれているのと同時に、その課題を乗り越えられたなら、そこから先のシナリオは自分で変えられる、ということです。

『魂のシナリオ通りに生きていますか?』より引用

 

アガスティアの葉に書かれていることがすべてではないのかもしれない。

 

 

著者が投げかける3つの質問

魂の課題を克服した後なら、シナリオは変えられるようだ。その過程に必要な一番簡単な行いは、木村さんによれば「他人のせいにせず、自分で責任を負う」ことだという。人間は、自ら意識してポジティブに動いてこそシナリオを書き変えることができるのかもしれないのだ。そして木村さんは、3つの質問を投げかける。

 

あなたは、この世で何を成すために生まれてきたのですか?

あなたが、この人生において克服すべき課題はなんですか?

あなたは今、あなたの魂のシナリオどおりに生きていますか?

 

ちょっとまとまった時間を作って、静かな場所でしっかり考え、今の自分なりの答えを出したいと思う。

 

【著書紹介】

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魂のシナリオどおりに生きていますか?

著者:木村藤子
出版社:学研プラス

例外なく、この世の誰もが、人生をいかに生きるべきかを神様と相談の上、自分で決めて生まれてきている。その神様と約束した生きかたをすることこそが、幸せへの一番の近道。自ら決めた生きかたを思い起こし、実践していくための最高の手引き書!

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「頑張れ」→「だが断る!」と言えるようになる4つの考え方

わたしたちは、どれだけ頑張ればいいのでしょうか? 何のために、誰のために頑張っているのでしょうか?

 

頑張らない人は、うまくいく。』(中谷彰宏・著/学研プラス・刊)という本があります。「頑張ること」にまつわる57のアイデアを収録しています。
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うまくいく=楽しくなる

「うまくいく」が「いい結果が出る」という意味なら、いい結果が出た時はいいですが、出ない時は楽しくなくなります。

いい結果が出た時も、いい結果につながらなかった時も、どちらもハッピーという状態が「うまくいく」ということです。

(『頑張らない人は、うまくいく。』から引用)

 

結果は「一瞬」です。だから、喜びも「一瞬」で消えます。達成感や満足感は長続きしないものです。

 

何かを学んだり試したりするのは「挑戦」です。結果が出るまでに長い時間がかかりますが、上達したときには小さな喜びをたくさん得られます。

 

結果は「一瞬」。挑戦は「一生」。結果を出すまでの過程が楽しむことができれば、たとえ成功できなかったとしても、人生はハッピーです。ゆっくり噛んで食べる「味わい上手」になりましょう。

 

 

頑張らずに、恋をする

仕事や上司にリスペクトがある人は、頑張らなくても仕事ができます。

仕事や上司にリスペクトがない人は、頑張って仕事をする必要があります。

(『頑張らない人は、うまくいく。』から引用)

 

リスペクトは「尊敬」という意味です。「興味」や「関心」のことでもあります。

 

恋愛対象の相手には、努力しなくても「リスペクト」を感じます。好きな相手には、時間や労力やお金を惜しまずに使います。なぜなら、恋をしている相手に尽くすのは「幸せ」だからです。恋をするように仕事ができれば、きっと楽しいはずです。

 

いまの職場が楽しくないのは、業務内容や上司に恋をしていないからです。お見合いよりも恋愛をしたい人のほうが多いはずなのに、職場の人間関係にかぎっては「お仕着せ」でガマンしている人が多いです。

 

 

他人のことで頑張らない

間違った頑張りは、自分のことでも頑張りながら、人のことでも頑張ってしまうことです。
(中略)
相手を変えることはできないので、自分の課題に集中します。
大体は自分の課題から逃げるために、逃避として人の課題に手を出し始めます。

(『頑張らない人は、うまくいく。』から引用)

 

「わからず屋の上司」がいます。勉強不足であったり、自己保身のことばかり考えていたり、はっきり言って無能です。腐っても上司なので、プレゼンテーションや決済を認めてもらう必要があります。このとき「説得」や「啓蒙」しようとするのは誤りです。頑張りかたとしては大きな間違いです。

 

無能であることは、他人が変えようがありません。低レベルな思考パターンを探って、相手の理屈に合わせたものを差し出して、それで良しとしましょう。

 

 

ひとりで頑張らない

自分1人が頑張っているという頑張り方は、間違った頑張り方です。「今この時間にも、誰かがどこかで頑張っている」と思えばいいのです。

(『頑張らない人は、うまくいく。』から引用)

 

挑戦をすれば、小さな喜びが得られます。しかし、つらいこともあります。何度やっても結果が出せないこともあります。あきらめそうになります。

 

頑張っているのは、あなただけではありません。「つらいのは、おまえだけじゃない!」という意味ではなく、あなたを含めて「頑張っている人」がたくさんいるからこそ、わたしたちは文明生活を維持できるのです。

 

全国的な大雪に見舞われたとき、除雪をがんばってくれた人たちがいました。除雪車は振動が激しいので、肉体へのダメージが大きく、運転手はぐったりと疲れるそうです。わたしたちが眠っているあいだに。睡眠時間を削って。連日連夜。感謝です。

 

あなたを含めて、みんなが頑張っているからこそ社会が成り立っています。近くにはいなくても、どこかに「頑張り仲間」がいると確信できれば、励まされるような気持ちになります。

 

「頑張らなくても、うまくいく」のですから、頑張ればもっとうまくいきます。頑張りは裏切りません。正しい頑張りかたで、精いっぱい頑張りましょう!

 

 

【著書紹介】

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頑張らない人は、うまくいく。

著者:中谷彰宏
出版社:学研プラス

「頑張っているのに結果が出ない」、「やる気に、ムラを感じる」。大切なのは頑張ることよりも、頑張るとはどういうことなのか見直していくこと。「こんなに頑張っているのに」という被害者意識から抜け出し、自分らしく成長するコツを紹介。

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