36億人に安全なトイレを! ゲイツ財団とサムスンが新しいトイレの試作品を発表

世界最大の慈善基金団体であるビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)は、途上国の衛生問題に取り組むために「Reinvent the Toilet Challenge」と呼ばれるプロジェクトを2011年に立ち上げました。その使命は、排泄物を媒介とした病原体から人々を守ること。このプロジェクトではトイレの再発明に取り組んでおり、先日、その試作品が誕生しました。

世界を救うトイレを作ろう

 

2022年8月、このプログラムに協力している韓国のテクノロジー企業・サムスン電子が、新しいトイレの試作品を開発したと発表しました。サムスン電子の研究開発部門にあたるサムスン電子総合技術院は、2019年に新しいトイレの開発においてゲイツ財団と協力することに合意し、3年間の開発期間を経て、今回の試作品発表にこぎつけたのです。

 

このプロジェクトで公開されたトイレは、熱処理技術やバイオプロセスの技術を搭載し、人の尿や便に含まれる病原体を死滅させ、排水や排出される固形物を安全な状態にできます。トイレを使った後に出る排水は安全で再利用が可能になり、便などの固形物は脱水・乾燥後に焼却して処分できるとのこと。試作品で実際にテストも行われ、その試験も成功しています。

↑サムスン電子が開発した新しいトイレの試作品

 

サムスン電子は、この新しいトイレがエネルギー効率に優れ、排水処理機能もあり、途上国や先進国の家庭向けに商品化するためにゲイツ財団が設定した条件を満たしていると述べています。ゲイツ財団は、上下水道が整備されていない環境下でも、電力をほとんど使用しないで衛生的に使うことができるトイレを求めており、そのために、世界中の研究者に助成金を与え、さまざまなプロジェクトを支援してきました。

 

世界保健機関(WHO)とユニセフによると、安全ではないトイレ設備の使用を余儀なくされている人は世界で約36億人いるとのこと。トイレの衛生問題や安全な水を利用することができないために、多くの幼い子どもたちが下痢にかかり、5歳未満の子どもが毎年50万人も命を落としているのです。

 

サムスン電子は、このトイレに関する特許を途上国に提供する予定であると同時に、量産化に向けた技術革新を進めるそう。途上国への普及に向けて、同社の踏ん張りどころは続きそうですが、「トイレ先進国」と言われる日本のメーカーが貢献できることも大いにありそうです。

 

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「3Dプリンター」で劇変するナイジェリアの製造業と医療業界

【掲載日】2022年7月6日

3Dプリンターがアフリカの製造業に変革を起こしています。学校建設や義手の制作など、高い汎用性を持つこの技術には、過去の産業革命のように、国や地域の経済を一変させる可能性がありますが、ナイジェリアでは特に若い世代の間で大きなビジネスチャンスを生み出しています。

アフリカ経済を変える3Dプリンター

 

長年、ナイジェリアにとって機械部品は悩みの種の一つでした。同国は機械製品の輸入依存度が高く、特に中小規模の製造業者にとって機械部品を調達することは簡単ではありません。製造ラインが故障した場合、粗悪な部品を代用して製造を再開せざるを得ないケースが多く、それが商品の品質低下や機械の再故障を招くという悪循環を生み出すことに。全体として、この問題はナイジェリアの製造業の発展を大きく阻害してきた要因の一つでした。

 

3Dプリンターはそれを変えています。現在のナイジェリアでは、機械部品を3Dプリンターで製造する新興企業が続々と生まれており、需要が急増している模様。これまで中小の製造業者に対して主導権を握っていた部品輸入業者などから見れば、混乱した状況かもしれませんが、3Dプリンターによって今後のナイジェリアの製造業は大きく飛躍していくことが見込まれます。

 

実際、機械工学を専攻している大学生が、研究の一環で導入した3Dプリンターが仕事につながるなど、この技術は、学生やアーティストを含めた同国の若い世代に、雇用や起業の機会をもたらしています。ナイジェリアでは医療分野においても3Dプリンターの導入が始まっており、例えば、手術を予定している患者の情報にもとづいて、手術器具の一つであるカッティングガイドをこの方法で作った結果、手術時間が短縮されるということが起きています。

 

このように、3Dプリンターに代表される最先端テクノロジーは、新興国にとって大きなビジネスチャンスを生み出す爆発力を秘めています。この「産業革命」は始まったばかりで、ニッチな分野を含めて広範囲に需要が生み出されていく見込み。外国企業にとっても進出チャンスが大いにあるでしょう。

 

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