星空からジャングルまで!旅行ライター大注目、今年行きたい観光地やレジャー施設

2025年に流行するモノは何か、専門家が大断言する「GetNavi NEXTトレンド」。今回取り上げるのはレジャー部門。

 

オーバーツーリズムを抑制するためのサステナブルな観光や、2025年オープンの沖縄の大型テーマパーク「ジャングリア」、2024年のオープン以来、予約困難の大人気となっている「任天堂ミュージアム」など、大注目のレジャー施設を一挙紹介。

 

【新たな観光資源の活用】オーバーツーリズム抑制のため、観光地や観光時間の分散化が進む

2024年の訪日外国人旅行者は9月時点で2688万人を超え、過去最高を記録した2019年の3188万人に迫る勢い。加えて日本人の国内旅行客も、コロナ禍を経て急激に増えている。

 

それにともなって、観光客の集中による交通渋滞や自然破壊が問題視されている。いわゆるオーバーツーリズム対策は待ったなし。

 

まだ知名度は低いが魅力のある観光地の情報を発信したり、これまでと異なる時間帯の受け入れを強化したり、サステナブルな観光を模索する動きが進んでいる。

↑インフラツーリズムの定着前から富山県を代表する観光地で知られた黒部ダム。6〜10月の観光放水が見もの。

 

【インフラツーリズム】知的好奇心も満たされる、大人も子どもも楽しめる社会見学

↑洪水を地下に取り込む首都圏外郭放水路。地下神殿とよばれる調圧水槽の見学が人気。

 

インフラツーリズムとは、ダムや橋などの公共施設を観光資源として活用する取り組み。国土交通省ではポータルサイトを立ち上げ、全国各地のインフラツアーを紹介している。昨今、SNSで巨大な建造物が注目を浴び、観光客も増加中!

↑神奈川県の水源地のひとつ、宮ヶ瀬湖の宮ヶ瀬ダム。4〜11月頃に迫力のある観光放水を行う。

 

【サステナブルツーリズム】地域の自然や文化を大切にする、持続可能な観光のカタチ

↑熊本県阿蘇市のMTB草原ツアー。2023年の「サステナブルな旅AWARD」大賞に輝いた。

 

世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の達成が進められるなか、環境・文化・経済への影響に配慮した観光が注目されている。2023年には観光庁が「サステナブルな旅AWARD」を創設するなど、持続可能な旅の選択肢も増えている。

↑旅行者にとっても、旅先の自然や文化を尊重できているかが旅プランを選ぶ基準になっていく

 

【星空ツーリズム】コンテンツが少ないナイトタイムを星空で有効活用!

↑星空観賞のために多くの観光客が訪れる東京の離島、神津島。2020年に星空保護区に認定。

 

空を見上げるだけで楽しめる星空観賞。光害の少ないいわゆる“田舎”ではごく当たり前の景観だが、これを観光資源ととらえ売り出す動きが盛ん。暗い夜空を維持するための基準を設けた「星空保護区」といった認定制度も浸透しつつある。

↑2018年に日本で初めて国際ダークスカイ協会の星空保護区に認定された西表石垣国立公園。

 

【ヒット確定の根拠】官民を挙げて推進されるサステナブルな観光

「観光庁が2024年に『オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光促進事業』を実施し、各地域の取り組みを支援するなど、観光業者と官公庁が協力して観光客の一極集中に対応しようという流れができています」(旅行ライター・高井章太郎さん)

 

約60haのジャングルの中で体験する極上のエンターテインメント

↑世界自然遺産に登録された沖縄北部の「やんばる」。その一角のゴルフ場跡地を広大なテーマパークに(画像提供:ジャパンエンターテイメント)。

 

ジャングリア
2025年オープン予定

 

スケールの大きな自然を舞台にした唯一無二の体験は、話題になること間違いなし!

沖縄北部の“やんばる”とよばれるジャングルの中に、2025年オープンを目指して開発中の大型テーマパーク。亜熱帯の植物に囲まれた異空間で、サファリライドやジップラインなどのアトラクションを楽しめる。絶景のインフィニティ露天風呂を備えた温浴施設も併設。

URL/junglia.jp

↑レストランは鳥の巣がモチーフ(画像提供:ジャパンエンターテイメント)。

 

↑大型の装甲車に乗り込み、ジャングルの中を冒険するサファリライド。大迫力の恐竜も登場(画像提供:ジャパンエンターテイメント)。

 

【ヒット確定の根拠】没入体験ブームの立役者、新進気鋭のマーケ集団が主導

「プロジェクトの中心を担っているのは、2024年3月に没入体験施設『イマーシブ・フォート東京』をオープンさせた『刀』社。マーケティングの精鋭集団が手掛ける、リアルな体験にこだわった没入型アトラクションに期待!」(旅行ライター・高井 章太郎さん)

 

みんな大好きな任天堂の歴史を見て・聞いて・体験して学べる!

↑2人1組で巨大コントローラを操作して、懐かしのゲームにチャレンジ(画像提供:任天堂/(c) Nintendo)。

 

ニンテンドーミュージアム
2024年10月オープン

 

オープン1か月強で約5万人が来場。予約困難な大人気施設に

1889年創業の任天堂が生み出してきた娯楽の歴史を知り、体験できる施設。過去に発売した製品の展示のほか、当時の遊びをいまの技術で作り変えた体験展示も面白い。花札を作ったり、遊んだりするワークショップも用意されている(有料・当日予約)。

 

住所/京都府宇治市小倉町神楽田56
時間/10:00〜18:00
休み/火曜(祝日の場合は翌日)
料金/大人3300円、中学・高校生2200円、小学生1100円(事前予約の抽選販売)
URL/museum.nintendo.com

 

↑足元の大画面とスマホで楽しむ、現代の技術を駆使した百人一首(画像提供:任天堂/(c)Nintendo)。

 

↑中庭に設置された大きな土管やハテナブロックは記念撮影にぴったり(画像提供:任天堂/(c)Nintendo)。

 

【ヒット確定の根拠】任天堂の娯楽の歴史がぎっしり詰まった、思い出のミュージアム

「創業時から製作している花札に始まり、トランプやテレビゲームなど誰もが遊んだことのある玩具やゲームが展示されており、子どもから大人までみんなの思い出にリンクするはず。ショップやカフェもあり楽しみ方は多彩です」(旅行ライター・高井 章太郎さん)

 

アメリカでは約5000万人がプレーする、注目のスポーツ

↑テニスと卓球、バドミントンを合わせたようなスポーツ。ダブルとシングルがある(画像提供:(社)日本ピックルボール協会)。

 

ピックルボール

2024年には日本で国際大会が開催され各地に専用コートも続々登場

ピックルボールは、パドルとよばれるラケットで穴の空いたプラスチックのボールを打ち合うアメリカ発祥のスポーツ。バドミントンと同じ広さのコートがあれば楽しめるため、日本でも専用コートが増えており、生涯スポーツとして始める人が増えている。

↑アメリカでの競技人口は2022年時点で約890万人(画像提供:(社)日本ピックルボール協会)

 

YONEX
EZONE(左)/VCORE(右)
各3万1900円

 

ラケットやゴルフ、スノーボードで培ったカーボン加工技術を採用した高品質パドル。100回以上の試作を重ね、高反発性能のスイートエリアが広いEZONE(Eゾーン)と、操作性の高いVCORE(Vコア)が完成した。

 

【ヒット確定の根拠】場所をとらず安全なため老若男女問わず人気が急上昇

「穴の空いたボールは空気抵抗が大きく、スピードが出ないため誰でも安心して楽しめます。実際アメリカではシニア層にも人気が高いそう。日本では体育の授業に取り入れた学校もあり、いま、最も注目度の高いスポーツです」(旅行ライター・高井 章太郎さん)

 

旅行ライター:高井 章太郎さん
海と島を愛する旅ライター。近年は日本の島を巡っている。冬のお目当てはおいしい魚介。

 

※「GetNavi」2025月2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです。

次世代観光ビジネスの最重要ワード! 「観光デスティネーション」とは【IC Net Report】ドミニカ共和国・青木孝

開発途上国にはビジネスチャンスがたくさんある…とは言え、途上国について知られていないことはたくさんあります。そんな途上国にまつわる疑問に、海外事業開発コンサルティングを行っている、アイ・シー・ネット株式会社所属のプロたちが答える「IC Net Report」。今回ご登場いただくのは、ドミニカ共和国をはじめ中南米での観光ビジネスに造詣が深い青木 孝さんです。

 

中南米でも、コロナ禍で観光に関わる状況が一変。多くの観光地が危機的な状況に直面し、従来の「消費型観光」から「持続可能な体験型観光」への変革が迫られています。例えばドミニカ共和国の場合、いまだ多くは従来型のリゾート観光が目的ですが、一方でアドベンチャーツーリズムやエコツーリズムなど、地域の環境・経済・文化にも配慮した観光への意識が広がりつつあり、「脱」消費型観光への動きが高まっていると言います。いわば新たな「観光デスティネーション(観光地)」づくりともいえるこの動き。そこで青木さんに、こうした地域全体を巻き込んだ持続可能な観光開発について伺いました。

●青木 孝/シニア向け旅行会社でのツアー企画や、青年海外協力隊でカリブの国・セントルシアのエコツーリズム開発支援、ドミニカ共和国のJICA事務所で観光分野の企画調査員などを務めた後、アイ・シー・ネットに入社。シニアコンサルタントとして、15年以上南米カリブ地域でJICAの地域観光開発のプロジェクトに従事。現在はアルゼンチンで日本の一村一品運動を模範にした地域開発プロジェクトを総括している。

 

観光デスティネーションの創造には「官民学」の連携が重要

そもそも外国資本によるリゾート観光開発や利便性が主役だった従来型の観光モデルは、アクセスの良さなど利便性、快適性に主眼を置き、リゾート地でほぼ完結するものでした。

 

「それだと周辺地域に観光客が訪れず、置き去りにされてしまいます。リゾート施設による、オールインクルーシブと呼ばれる囲い込み型スタイルや、ビーチの独占なども課題となっていて、これらがリゾート地と周辺地域を隔離する現状に拍車をかける要因になっています。そこで今、急務となっているのが、より持続可能な観光への転換。つまり、地域とより関わりのある観光、より地域へポジティブな影響を与える観光、そして地域にある魅力的な土地・文化・人を巻き込んだ観光が求められているのです」(青木さん)

 

こうした課題の解決のため、現在進んでいるのが、民間だけでなく官民学が協力して観光開発を主導し、地域資源を活用した、地域主体の観光デスティネーションを創造していこうとする動き。

 

「地域と観光客の関係性を継続して作るマーケティングを徹底して行った上で、地域内のリソースを有機的につなげ、アクター間の関係性を緊密にすることで競争力を高めていこうというものです。それには、地域のコミュニティレベルでの観光ビジネスも不可欠となります。

 

私が取り組んだ事例で挙げると、女性グループによる、地元で採れるカカオを使った手作りチョコレート体験などの農園観光や、地元の若者が楽しんでいた川下りをカヤックツアーとして商品化した取り組みなどです。集客面においても、これまで仲介業者に頼っていたのを直接マーケットに発信できるSNSを活用することで、大きく躍進しています。

 

本来、観光はすそ野の広い産業です。観光施設やホテル・飲食業から、お土産、地元産品、さらに交通機関など、観光客はさまざまな消費を観光地で行い、その結果、地域経済が潤うというビジネスモデル。とりわけ途上国では、観光に大きく依存していく傾向があります。だからこそ、観光と地域・地域産品・地元の人がうまく結びついて、より深みのある観光デスティネーションにしていく努力が重要だと思います」(青木さん)

 

テクノロジーを活用した「観光デスティネーション」の再構築が急務

一方、日本国内に目を向けると、コロナ禍への対応と短期的なリカバリーに向けた支援が優先されている感があります。今こそ、より長期的な視点に立ち、今後、観光とどのように付き合っていくか、観光デスティネーションを明確にし、進むべき方向を整理しておく必要があると青木さん。

 

「ドミニカ共和国では、改めて観光産業の重要性の認識が広がり、国家経済のけん引役としての役割を以前にも増して担っています。それには地域社会の巻き込みも欠かせないということで、地域社会の側からも観光開発に積極的に関わっていこう、モノ申していこうという流れが出てきました。また、地域の多様な関係者がこれまでの関係を超えてつながり、従来とは異なるレベルでマーケットとも直接結びつくなど、さらに広域での取り組みも生まれています。

 

SNSをはじめ、新たなテクノロジーの活用はこうした地域・レベルを超えた関係性の構築に親和性が高いので、単に観光客と観光地だけでなく、住む場所と行く場所の双方で多様な関係が生まれる可能性があります。これまで障害となっていた言葉の壁や時間の壁、距離の壁など様々な障壁もテクノロジーによって乗り越えられるようになってきました」(青木さん)

 

最近は日本でも観光を含めた「関係人口」の増加に力を入れ、地域振興とも関連させることで、リピーターの獲得だけでなく、訪問後もその地の産品を消費したり、将来的には移住をも視野に入れた取り組みを進めている地域もあります。

 

「観光の本質である“人とのつながり”と“新たなテクノロジーによる持続的なつながり”こそが新たな観光デスティネーションの創造に重要」との青木さんの言葉からも窺えるように、多様な“繋がり”の構築こそが、持続的な観光をつくる上で不可欠なのかもしれません。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

なお、当メディアへのご意見・ご感想は、NEXT BUSINESS INSIGHTS編集部の問い合わせアドレス(nbi_info@icnet.co.jpや公式ソーシャルメディア(TwitterInstagramFacebook)にて受け付けています。『NEXT BUSINESS INSIGHTS』の記事を読んで海外事情に興味を持った方は、是非ご連絡ください。

5年連続で世界1位!「日本のパスポート」が世界最強であることの意味

7月、イギリスのコンサルティング企業であるヘンリー・アンド・パートナーズ(H&P)が、世界パスポートランキングの最新版(正式名は「The Henley Passport Index: Q3 2022 Global Ranking」)を発表。日本は史上最高の193点を獲得し、5年連続で1位になりました。日本のパスポートが“世界最強”であることは何を意味するのでしょうか?

もはやパスポートは単なる身分証明ではない

 

2006年から四半期ごとに発表されている同パスポートランキングは、IATA(国際航空運送協会)のデータをもとに、ビザなしで渡航できる国の数を調査しています。2022年第3四半期のランキングの結果は以下の通りでした。

 

1位: 日本(193)

2位: シンガポール、韓国(192)

3位: ドイツ、スペイン(190)

4位: フィンランド、イタリア、ルクセンブルグ(189)

5位: オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン(188)

6位: フランス、アイルランド、ポルトガル、イギリス(187)

7位: ベルギー、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、アメリカ(186)

8位: オーストラリア、カナダ、チェコ、ギリシャ、マルタ(185)

9位: ハンガリー(183)

10位: リトアニア、ポーランド、スロバキア(182)

※( )はスコア。出典:The Henley Passport Index: Q3 2022 Global Ranking

 

評価方法は、ある国・地域に入国するとき、ビザが必要なら0点、ビザの取得は必要はなく、パスポートのみで入国できる場合(到着した空港で取得できるアライバルビザを含む)は1点とカウントし、総合スコアで順位を付けています。例として日本のスコア(193)を見てみると、日本のパスポートを持っている人は、ビザなしで入国できる国と地域が世界に193あるということ。このパスポートランキングで日本が1位になったのは5年連続で、シンガポールや韓国もトップ3の常連です。

 

では、このランキングで上位に入ることは何を意味するのでしょうか? ここで注目したいのは、世界の平和や安全保障などに関するデータを提供するVision of Humanityがまとめた「グローバル・ピース・インデックス(世界平和指数)」との関係。この指数は、殺人率や政治テロ、内戦などの死者数などをもとに、世界各国の平和レベルを評価するものです。H&Pが、パスポートランキングの結果と世界平和指数を比較したところ、前者の上位10か国は後者でも上位10位にランキングしていることが判明。例えば、日本は世界平和指数で10位である一方、ヨーロッパ諸国はパスポートランキングと世界平和指数で上位を占めています。それに対して、パスポートランキングで順位が低い国は、世界平和指数でも下位。この2つのデータの間に相関関係があることがわかります。

 

最新版のパスポートランキングについて、オックスフォード大学サイードビジネススクールのフェローであるスティーブン・クリムチュック・マシオン氏は、「新型コロナウイルスのパンデミックやインフレーション、政治不安、戦争など、私たちは激動の時代を生きています。そんな中でパスポートは、これまで以上に『名刺』の役割を果たすようになってきており、渡航先での待遇や安全に影響を与えます」と述べています。

 

最近、日本はコロナ禍の「鎖国」政策を徐々に緩和し始めました。訪日外国人観光客の受け入れが再開した一方、海外直接投資も回復傾向にあります。これから日本企業が海外に進出したり、ビジネスパーソンが外国でリモートワークをしたりする際、日本のパスポートは平和と安全の象徴として重宝するかもしれません。もちろん、パスポートだけで身の安全が保証されるわけではありませんが、日本のパスポートは少しの安心感と自信を与えてくれることでしょう。世界が歓迎してくれるはずです。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

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ちょっとした休暇にもピッタリ! 「直行便」を利用して行ける穴場の国5つ

ゴールデンウィークの予定はお決まりですか? 海外旅行を検討されている方のなかには飛行機の乗り継ぎに不安がある方もいるかと思います。しかし、直行便を利用して行くことのできる国は30か国以上にも及ぶことをご存知でしょうか(2017年時点)? 本稿では、そのなかでも一度は行ってみたい穴場の国を5つ厳選しました。

 

なかには去年や今年、直行便を就航/再開した注目の国もあります。近場のアジアもいいですが、一見遠そうに思える国々も直行便なら近く感じられるかもしれません。

 

1:シンガポール(直行便で6~7時間)

日本から6〜7時間で行くことのできるシンガポールは、国内の主要空港から毎日直行便が出ています。東南アジア屈指の経済力と治安の良さを誇り、家族連れでも安心できるのが最大の魅力。

 

国土面積が淡路島ほどしかないことからも短い旅行にはピッタリです。またコンパクトな国である一方、人種や宗教は多種多様、食文化も中華から東南アジア、ヨーロッパ本場のものまでさまざま。子どもから大人まで飽きないアトラクションが多くあり、誰が行っても飽きない数日間を過ごすことができるでしょう。

 

直行便情報(2018年4月現在)

◆運行会社:シンガポール航空、日本航空、全日空 、ジェットスター・アジア航空、デルタ航空、シルクエアー

◆シンガポールのハブ空港:チャンギ国際空港

◆路線…羽田〜チャンギ(毎日運航)、成田〜チャンギ(毎日運航)、関空〜チャンギ(毎日運航)、名古屋〜チャンギ(毎日運航)、福岡〜チャンギ(毎日運航)、沖縄〜チャンギ(週3便)、広島〜チャンギ(週3便)

 

2:フィンランド(直行便で10時間30分)

北欧諸国の一つであり、日本人から愛されつづけるムーミンやマリメッコ、イッタラの発祥でもあるフィンランド。オーロラやありのままの大自然も楽しむことができ、心に落ち着きを与えてくれそうな国です。2017年には独立100周年をむかえ、記念企画やイベントが多く催されたことで大きな話題になりました。

 

そんなフィンランドの首都ヘルシンキと日本の所要時間は約10時間30分。長く感じられますが、空港に降りたてば意外にも多くの日本人がいたり、日本語表示もあるのでホッとすることでしょう。

 

直行便情報(2018年4月現在)

◆運行会社…フィンエアー、日本航空

◆フィンランドのハブ空港…ヘルシンキ・ヴァンター国際空港

◆路線:成田〜ヘルシンキ(毎日運航)、関空〜ヘルシンキ(毎日運行)、名古屋〜ヘルシンキ(毎日運航)、福岡〜ヘルシンキ(週3便)

3: ポーランド(直行便で11時間)

旧東欧圏、中央ヨーロッパに位置するポーランドは世界中から観光客が年々増えつづけ、また治安が安定しているので一人でも安心して旅行ができる国です。

 

2016年から日本への直行便がスタートし、首都ワルシャワまで約11時間ほどの所要時間となりました。ワルシャワはショパンの故郷として有名であり、クラシックファンの多い日本人にとっては憧れの地。また世界遺産第一号が2つあり、そのいずれもがポーランドの京都といわれる古都クラクフと近郊に位置します。東西南北に見どころが溢れているため、一度ならず二度も訪れたくなるかもしれません。

 

直行便情報(2018年4月現在)

◆運行会社…ポーランド航空

◆ポーランドのハブ空港…ワルシャワ・ショパン国際空港

◆路線…成田〜ワルシャワ(週5便)

 

4:スペイン(直行便で14時間)

南欧スペインもポーランドと同じく、2016年から日本への直行便を就航しました。1998年に撤退して以来、18年ぶりの運航再開となります。気になる所要時間は14時間とヨーロッパの中でも長めですが、以前は最短でも16時間でした。

 

スペインの見どころは大きく分けて首都マドリード、バルセロナ、バスク地方の3つがあります。天才建築家や芸術家を多く生みだしてきた国でもあり、個性的な世界遺産建築や美術品には目が釘付けになるでしょう。日本で馴染みのあるバルやタパス、チュロスはスペイン発祥ですが、ぜひ本場で味わってみたいものです。

 

直行便情報(2018年4月現在)

◆運行会社…イベリア航空

◆スペインのハブ空港…マドリード国際空港

◆路線…成田〜マドリード(週3便)

 

5: エジプト(直行便で14時間)

最後に紹介するのはアフリカ大陸に位置するエジプトです。直行便は2013年に運航停止となりましたが、エジプト政府の意向もあって2017年から運航が再開されました。所要時間は約14時間。

 

世界七不思議の一つであるピラミッドが存在するエジプトは、古代から現代まで多くの人々を魅了してきた国です。最も透明度が高く、美しいと称される紅海でのダイビングも観光客に大人気。治安がまだ安定しないこともあって個人旅行は難しいですが、ツアーを利用すると安全にエジプト旅行を楽しむことができます。

 

直行便情報(2018年4月現在)

◆運行会社…エジプト航空

◆エジプトのハブ空港…カイロ国際空港

◆路線…成田〜カイロ(週1便)

今回紹介した5つの国の中で、興味を持った国はあったでしょうか。直行便というだけで海外旅行のハードルも少し下がり、ドキドキや不安などのストレスが軽減されるはずです。早く到着した分、有意義な時間を満喫し、思いきり海外での休暇を楽しんでみてください。

絵本のような世界がポーランドにあった! ペイントアートの村「ザリピエ」の魅力

絵本の世界と称される町や村の多くはフランスやドイツなど、ヨーロッパ各地に存在します。そして、その1つが今回紹介するポーランド南部にある小さな村、ザリピエ(Zalipie)。花模様の独特な「ペイントアート」が盛んなことで知られ、民家や教会、消防署、木までも華やかな模様が描かれてある、おとぎ話のような世界です。ザリピエ旅行は、数か月後に迫ったペイントコンテストが終わった後からベストシーズンとなりますので、いまからチェックしておきましょう。

↑ 目を奪われそうなほど華やかなザリピエの民家

 

ザリピエは、ポーランドいちの観光都市として知られるクラクフから北東へ約100キロの場所に位置します。近年は右肩上がりで海外からのポーランド旅行者が増えており、ザリピエの知名度も高くなってきました。

 

村の中心部には木造の民家が建ち並び、いたるところにカラフルな花模様が描かれています。絵本やおとぎ話の世界と呼ぶにはピッタリ、観光客は一軒一軒をつい写真におさめたくなってしまうにちがいありません。

↑ ペイントアートを広めた女性とその家族が住んでいた家

 

花模様は家のなかや犬小屋にも見られ、壁や天井、階段はもちろん、キッチン用具から子どものおもちゃにまで個性的な花模様を見ることができます。そのすべてが凝ったハンドメイドの絵柄であり、ごくふつうに生活する村人たちが描きあげたもの。現地で売られているお土産も何ひとつ同じものはありません。

 

ザリピエに住む人々は伝統的な花模様の描き方を学校で学んでおり、またそのようなレッスンも一般人向けに行われています。数時間で終わる観光客向けのコースもあれば、数週間と泊まり込みでみっちり教え込んでくれるコースもありますが、これらは要予約。現地では日本人の作品も展示されていました。

↑ 日本人が描いたザリピエ模様の作品

ザリピエでこのような花模様が描かれるようになったのは19世紀末のこと。煙突から出るススで黒くなってしまった壁や天井を塗りかえ、そこに花模様を描きはじめたのがきっかけでした。最初は模様を描くための色も限られていましたが、やがて粉末絵の具が一般的に購入できるようになると途端に村がカラフルになっていったそうです。

↑ 第54回ペイントコンテストの告知

 

村人たちが腕を奮うペイントコンテストも毎年開催されており、観光で訪れるのはこのコンテストが終わった直後から夏にかけての時期がベストシーズン。ペイントコンテストは移動祝祭日である「聖体の祝日」のあとの週末に開催されます。2018年は5月31日が聖体の祝日であるため、6月初旬の週末にコンテストが開催されるでしょう。

↑ 作業所にもなっている文化センター「Dom Malarek」

 

ザリピエにはDom Malarek(ドム・マラレック:ペインターの家)という文化センターがあり、そこでザリピエの見どころを記した地図がもらえます。最近ではちょっとしたカフェのような場所もでき、また宿泊施設もあるのでますます観光しやすくなりました。

↑ 生産が追いつかないほど人気のザリピエのお土産

 

ポーランド旅行の際はぜひザリピエに訪れ、村が誇る伝統アートに触れてみてください。のんびりした田舎風景と鮮やかな花模様、人懐こっい村びとたちに心が癒されること間違いありません。

 

 

極上の鉄道旅に出かけよう!! JR九州「D&S列車」全11列車の魅力を完全解説!

風光明媚な球磨川を横に見ながら走るのはJR九州のD&S列車「かわせみ やませみ」。グリーンとブルーのメタリックボディがおしゃれで、車窓から川の景色を眺めつつ、のんびりと鉄道の旅が楽しめる。

D&Sとは「デザイン&ストーリー」という意味。デザインと物語がある列車で九州を楽しんでもらいたい、というJR九州の願いが込められている。現在、D&S列車は全部で11列車が運行されている。この全列車の紹介と、それぞれの魅力をチェックした。

↑九州を走るD&S列車は全部で11本。2018年4月現在、熊本地震や災害の影響で、経由路線などが変更されている列車があるので注意したい

 

①元祖D&S列車の特急「ゆふいんの森」

まずはJR九州を代表するD&S列車・特急「ゆふいんの森」から。

 

「ゆふいんの森」は国鉄が分割民営化されて間もない1989(平成元)年3月に運行が開始された。現在は博多駅〜由布院駅間を2往復(日によって異なる)が運行されている。JR九州が生まれ、専用車両を用意して走らせた最初の観光特急でもあり、D&S列車の元祖と言っていい。この「ゆふいんの森」の成功が、その後、九州各地を走る多くのD&S列車を生み出すきっかけとなった。

↑特急「ゆふいんの森」に使われるキハ71形気道車(JR九州では「形」としている。ただし形の読み方は「けい」)。沿線の風景がより楽しめるハイデッカー構造となっている

 

↑特急「ゆふいんの森」用に1999年に新造されたキハ72形気道車。当初は4両編成だったが、利用者が多いことから1両増結、5両編成で運転されている

 

車両は床が高いハイデッカー構造で、沿線の景色を高い座り位置から楽しめる。さらに、木が多用された車内、シートもクラシカルな造りとなっている。サロンスペースなど、自由に使えるスペースがあってより楽しめる。

 

もちろん、九州の代表的な温泉観光地、湯布院や別府と九州の表玄関、博多駅を直接結ぶという運転区間の魅力も見逃せない。

 

■特急「ゆふいんの森」

●運転区間:博多駅〜由布院駅(2018年夏頃までは小倉経由で運行、後に久留米経由に戻る予定)

●運転日:ゆふいんの森91号・92号はほぼ毎日、93号・94号は週末を中心に運行

●車両:キハ71形4両編成・キハ72形5両編成

 

②2017年春に誕生した特急「かわせみ やませみ」

D&S列車は毎日走る列車と、週末などを中心に走る列車の2つの運行パターンに分かれる。ここでは先に、毎日運行されている列車から見ていこう。

 

D&S列車のなかでも最も新しいのが、2017年3月に登場した特急「かわせみ やませみ」だ。運転区間は熊本駅〜人吉駅間で、八代駅〜人吉駅間は、ほぼ球磨川沿いを走る。

 

列車名は球磨川に生息する鳥の名前から名付けられた。2両編成中、1号車は「翡翠(かわせみ)」、2号車は「山翡翠(やませみ)」とネーミングも凝っている。

↑2両編成で走る特急「かわせみ やませみ」。人吉側が1号車でブルーの「翡翠(かわせみ)」。熊本側が2号車でグリーンの「山翡翠(やませみ)」とそれぞれ名付けられる

 

車両はキハ47形の改造車で、JR九州のほぼ全列車をデザインしている水戸岡鋭治氏が内外装を手がけた。魅力はこの車両の造りと、車窓に広がるダイナミックな球磨川の景色だ。車内には軽食などを販売するサービスコーナー(ビュッフェ)も設けられている。

 

■特急「かわせみ やませみ」

●運転区間:熊本駅〜人吉駅

●運転日・運転本数:毎日3往復

●車両:キハ47形2両編成

 

③肥薩線の山線を走る特急「いさぶろう・しんぺい」

肥薩線には「川線」区間と、「山線」区間がある。八代駅〜人吉駅間は球磨川沿いを走るので「川線」、人吉駅〜吉松駅間は山に分け入り、山を越える区間なので「山線」と呼ばれる。川線、山線の両区間を走るのが「いさぶろう・しんぺい」だ。

↑古代漆色に塗られた「いさぶろう・しんぺい」。車窓からは球磨川沿いを通る川線とともに山線の魅力が満喫できる

 

↑上空から見た肥薩線大畑駅(おこばえき)。吉松駅行きの場合、手前の線路から右側の駅ホームへ入線。出発後に、左側へ入り、さらにスイッチバックして上の線路を登って行く

 

「いさぶろう・しんぺい」とは、ユニークな特急名だが、肥薩線の開通当時(1909年)の逓信大臣の山縣伊三郎と、鉄道院総裁の後藤新平の名から付けられたものだ。吉松駅行き下りが「いさぶろう号」で、熊本駅行き(または人吉駅行き)上りが「しんぺい号」として運転される。

 

凝った特急名のほか、面白いのが沿線風景の移り変わりだろう。八代駅〜人吉駅間は球磨川を、人吉駅〜吉松駅間は山越えの楽しみが味わえる。山越えの区間には、貴重なスイッチバック駅が大畑駅と真幸駅(まさきえき)と2つにある。また大畑駅はぐるっと回って標高を稼ぐ、ループ線の途中にある駅でもある。さらに日本三大車窓に上げられる矢岳越えなど見どころが満載だ。

 

■特急「いさぶろう・しんぺい」

●運転区間:熊本駅(人吉駅)〜吉松駅

●運転日・運転本数:熊本駅〜吉松駅間、人吉駅〜吉松駅間をそれぞれ毎日1往復

●車両:キハ140形+キハ47形2両編成 *人吉駅〜吉松駅間は普通列車として運転

 

④鹿児島湾を眺めて走る特急「指宿のたまて箱」

鹿児島中央駅と温泉で知られる指宿(いぶすき)駅を結ぶのが、特急「指宿のたまて箱」だ。

 

浦島太郎の伝説が残るこの地方にちなんだ特急名で、駅に到着すると、たまて箱の煙のようにミストが車体から立ちのぼる。そんな凝った演出が楽しい。鹿児島湾の海景色が十分に楽しめるように、海側の座席は、海に向いて設置される。

↑鹿児島湾に沿って走る「指宿のたまて箱」。車体は海側が白、山側が黒という塗り分け。通常は2両で運行、写真のように増結される場合もある

 

■特急「指宿のたまて箱」

●運転区間:鹿児島中央駅〜指宿駅

●運転日・運転本数:毎日3往復

●車両:キハ47形2両編成

 

⑤前面展望が楽しめる特急「あそぼーい!」

熊本地震の影響で豊肥本線の一部区間が運休となり、別の路線で不定期運行されていた特急「あそぼーい!」。2018年3月のダイヤ改正以降、熊本県の阿蘇駅と大分県の別府駅を結ぶD&S列車として復活した。

 

この車両の特徴は前面展望が楽しめるパノラマシートが付くこと。加えて親子用の座席「白いくろちゃんシート」、子どもたちの遊び場に「木のプール」があるなど、親子連れでの利用を考えた造りとなっている。

↑前後にパノラマシートがあるキハ183系「あそぼーい!」。写真は熊本地震前に熊本駅〜宮地駅間を走っていたときのもの。現在は阿蘇駅〜別府駅間と運行区間が変更されている

 

↑横3列に並ぶパノラマシート。ゆったりした座席で、移り変わる前面展望が満喫できる。座席の背の部分や肘掛けなどに木が多用されている

 

■特急「あそぼーい!」

●運転区間:別府駅〜阿蘇駅

●運転日・運転本数:金・土・休日を中心に運行。1日1往復

●車両:キハ183系4両編成

 


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⑥広がる阿蘇の風景が楽しみな特急「九州横断特急」

「九州横断特急」は熊本地震が起こる前までは、名前の通り、九州を東西に横断した特急列車だった。現在は特急「あそぼーい!」と同じく別府駅〜阿蘇駅を結ぶ特急列車として運行されている。

 

運行日は「あそぼーい!」が運転されない日のみ。要は別府駅〜阿蘇駅間は、「あそぼーい!」、もしくは「九州横断特急」のどちらかが運行される形になっている。阿蘇駅近くの豊肥本線の車窓から見る阿蘇五岳の景色が素晴らしい。

↑国鉄が四国用に開発したキハ185系がJR九州に移り、活用されている。真っ赤な車体が特徴。車内も改造され、木が多用され落ち着いた造りになっている

 

■特急「九州横断特急」

●運転区間:別府駅〜阿蘇駅

●運転日・運転本数:平日を中心に運行(特急「あそぼーい!」の運行がない日)

●1日1往復/車両:キハ185系2両編成

 

⑦天草観光に便利な特急「A列車で行こう」

ジャズのスタンダード・ナンバーの名が付くD&S列車。“16世紀の天草に伝わった南蛮文化”をテーマにした内外装で、天井の造り、座席の模様、ステンドグラスなど細かい箇所の造りが凝っている。

 

A-TRAIN BARと名付けられたカウンターでは、熊本名物のデコポンをアレンジしたハイボールを販売、こちらも名物となっている。終着の三角(みすみ)駅の目の前にある港から、天草・本渡(ほんど)港行きの船「天草宝島ライン」が接続。天草観光にも最適なD&S列車だ。

↑三角線の沿線からは島原湾越しに雲仙を望むことができる。車両はキハ185系を改造したもの。2両で運転される

 

■特急「A列車で行こう」

●運転区間:熊本駅〜三角駅

●運転日・運転本数:土・休日を中心に運行。1日3往復

●車両:キハ185系2両編成

 

⑧古い駅舎が残る肥薩線の名物特急「はやとの風」

鹿児島中央駅と肥薩線の吉松駅間を走る特急「はやとの風」。肥薩線の隼人駅〜吉松駅間は1903(明治36)年に造られた路線で、いまでも開業当時の駅舎が途中、嘉例川(かれいがわ)駅と大隅横川駅に残り、必見の価値がある。

 

登録有形文化財でもある両駅に同特急も停車。停車時間も4〜8分と余裕を持たせているので、写真撮影も可能だ。鹿児島湾越しに見る桜島の風景もまた美しい。

↑漆黒のボディが特徴の「はやとの風」。写真の嘉例川駅の駅舎は115年前に建てられたもの。各列車とも5分前後の停車時間があるので記念撮影も可能だ

 

■特急「はやとの風」

●運転区間:鹿児島中央駅〜隼人駅

●運転日・運転本数:土・休日を中心に運行。1日2往復

●車両:キハ147形+キハ47形2両編成

 

⑨日南海岸の絶景が楽しめる特急「海幸山幸」

日豊本線の宮崎駅と日南線の南郷駅を結ぶD&S列車が「海幸山幸(うみさちやまさち)」だ。地元の神話に登場する海幸彦と山幸彦を元にした特急名で、沿線にはその名前の通り、海の幸、山の幸の宝庫でもある。

 

とくに車内から望む日南海岸の海景色が素晴らしい。沿線には城下町・飫肥(おび)や、景勝地・青島など観光地も多い。途中下車して南国、宮崎の観光も満喫するのも楽しい。

↑日南線を走る「海幸山幸」。沿線の油津港はクルーズ船の寄港地でもある。撮影時、ちょうど油津港には「飛鳥Ⅱ」が寄港していた。「飛鳥Ⅱ」は日本を代表する外航クルーズ船だ

 

↑車両は高千穂鉄道の元TR-400形気道車を使用。全面改造されて運行されている。写真は1号車「山幸」の車内。座席は3列シートで広々している

 

■特急「海幸山幸」

●運転区間:宮崎駅〜南郷駅

●運転日・運転本数:土・休日を中心に運行。1日1往復

●車両:キハ125形2両編成

 

⑩現役最古の蒸気機関車8620形がひく「SL人吉」

最近は、各地でSL列車が増えているが、現役で最も古い蒸気機関車がJR九州の8620形58654号機。誕生したのは1922(大正11)年で、1975(昭和50)年まで活躍、その後、肥薩線の矢岳駅前の人吉鉄道記念館に保存されていた。この車両をJR九州が修復し、「SL人吉」の牽引機として活躍している。

 

「SL人吉」は、機関車だけでなく、客車も魅力満載。クラシカルな内装、前後1号車と3号車に展望ラウンジがあり、球磨川や移り行く景色が楽しめる。2号車にはビュッフェがあり、軽い食事やドリンク、グッズ類が販売されている。

↑1988(昭和63)年に復活された8620形58654号機。長い間、「SLあそBOY」の牽引機として走ったあと、再整備され2009年から「SL人吉」の牽引機として走り続けている

 

↑前後部とも全面ガラス窓の展望ラウンジに改造した50系客車を利用。広々した車窓風景が楽しめるとあって人気だ

 

■「SL人吉」

●運転区間:熊本駅〜人吉駅

●運転日・運転本数:金・土・休日を中心に運行(冬期は運行休止)。1日1往復

●車両:8620形58654号機+50系客車3両

 

⑪極上スイーツが車内で味わえる「或る列車」

鹿児島本線や長崎本線の一部は、1889(明治22)年に私設鉄道会社として生まれた九州鉄道の手により開業された。この九州鉄道が1906(明治39)年にアメリカのブリル社に豪華客車を発注した。九州鉄道は、その後、国有化されたため、ほとんど利用されず消えていった客車だが、豪華な客車は「或る列車」として後世に伝えられた。

 

この豪華な客車を再現したのが「或る列車」だ。金色と黒に塗られ、一部に唐草模様をあしらったユニークな外観が目立つ。車内では東京南青山のレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ、成澤由浩氏監修の軽食とスイーツが楽しめる。

↑外観は金色と黒、加えて唐草模様をあしらった「或る列車」。走るコースは固定されておらず、2018年6月末までは佐世保駅〜長崎駅間の予定

 

運行される路線は2018年6月末までは佐世保駅〜長崎駅間の「長崎コース」の予定。車窓に広がる大村湾の眺めも楽しみだ。

 

■「或る列車」

●運転区間:佐世保駅〜長崎駅(2018年6月末まで)

●運転日・運転本数:金・土・休日を中心に運行。1日1往復

●車両:キロシ47形2両編成

 

これまで見てきたようにJR九州のD&S列車は多種多彩。ただ車両と走る区間の楽しみだけに留まらない。各列車では客室乗務員が乗車し、各種サービスを行っている。記念撮影のお手伝いなど、細かい気配りが各列車で行われていることも、D&S列車の魅力をアップする大きなポイントとなっている。

「人が来ない…」青森・十和田の冬を救え! 大自然×LEDで「氷瀑ツアー」を創った3者の挑戦

ウインタースポーツが目的でもない限り、わざわざ寒い場所へ観光に訪れる人は少ないでしょう。とりわけ、東北地方では冬季の集客の弱さを指摘されて久しく、新たな取り組みを模索する地域が増えています。青森県十和田市もそのひとつ。十和田市は、年間の宿泊者数に対して12~3月の宿泊者数は、わずか約14%と低迷しています。この「冬が弱い」という課題をクリアすべく、十和田市と星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル、パナソニック エコソリューションズの三者が一体となって、新たな観光資源を創出する動きが始まりました。それが、「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」です。

↑ライトアップされた氷瀑↑ライトアップされた氷瀑

 

ライトアップした国立公園の氷瀑を巡るツアーに参加

20180305-s2 (116)↑冬の奥入瀬渓流

 

奥入瀬渓流(おくいらせけいりゅう)とは、十和田湖から焼山まで14kmにわたって流れ出る渓流で、十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園の代表的な景勝地。そこで見られる主な氷瀑(ひょうばく・滝が凍ったもの)をLEDカラー投光器でライトアップし、その美しい姿を体験できるのが「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」です。こちらは、十和田市が開催するツアー、奥入瀬渓流ホテルが開催するツアー(宿泊者が無料で参加可能)の2種類があり、今回、後者に参加する機会を得たので、その様子をレポートしていきます。

 

今回は、20時30分発のツアーに参加。ホテルに横付けされたマイクロバスに乗り込んでいざ出発です。LED投光器を積んだワンボックスカーが先導するように進み、ツアー客が乗ったバスは、これ追うようにして山道を進んでいきます。

↑氷瀑を目指して山道を進むツアーのバス。バスの両脇には雪の壁が↑氷瀑を目指して山道を進むツアーのバス。バスの両脇には雪の壁が

 

氷瀑に到着すると、先行のワンボックスが所定の位置に停車して、投光器で氷瀑をライトアップ。ツアー客はバスから降り、これを鑑賞するという流れです。鑑賞ポイントは馬門岩、雲井の滝、双白髪の滝、銚子大滝、白糸の滝、紫明渓など。それぞれのポイントには「氷」「浮世絵」「樹海」など個別にテーマが設定され、これに応じた演出パターンがプログラミングされています。

20180305-s2-(0-3)↑ワンボックスカーに搭載するLED投光器で氷瀑をライトアップ

 

実際にライトアップされた氷瀑を見てみると、やはり「圧巻」のひとこと。ダイナミックな造形の氷瀑、その周囲の積雪が投光によって刻一刻と色を変え、見たことのない光景を創り出しています。降りしきる雪が光を反射し、キラキラと輝くさまもまた格別。途中、ライトが消され、促されて空を見上げると木々の間から満天の星が……という粋な計らいもありました。かなりの寒さでしたが、氷瀑の鑑賞は数分程度なので、問題はありません。むしろ、寒さが映像体験と結びついて、より強く印象に残るはず。総じて、感動を語りたくなるけれど、言葉では正確に説明できない、体験しなければわからない……そんな類の体験でした。

↑馬門岩↑鑑賞ポイントのひとつ、馬門岩(まかどいわ)のライトアップ

 

↑奥入瀬渓流も↑氷瀑だけでなく、黒く輝く奥入瀬渓流の水面や色づいた積雪もみどころ

 

20180305-s2-(0-4)↑「浮世絵」をテーマとし、深緋(ふかひ・黒を含んだ赤)、江戸紫、躑躅(つつじ・赤紫の一種)などの色を使った「雲井の滝」のライトアップ

 

環境への配慮のため、移動式のライトアップを採用

さて、本ツアーは冬の集客のために創設されたと先述しましたが、以下ではツアー誕生の詳細について、十和田市と星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル、パナソニック エコソリューションズのそれぞれの担当者に聞いていきましょう。まずは、本ツアー誕生の経緯を十和田市の観光商工部・観光推進課の小泉和也氏に聞いてみました。

十和田市 観光商工部 観光推進課 観光企画係 係長 小泉和也氏↑十和田市・観光商工部の小泉和也氏

 

「冬の観光客の集客が少ないという課題解決のために、何ができるか? と考えたところ、かつて、平成4年~8年の間に行っていた奥入瀬渓流の氷瀑のライトアップを復活させてはどうか、という案が出てまいりました。ライトアップするにあたって、参考にしたのは山形県の酒田市の例(玉簾〔たますだれ〕の滝のライトアップ)です。そちらを担当していたのがパナソニックさんで、それがお声掛けするきっかけになりました。ただ、問題は奥入瀬渓流が国立公園のなかでも特別保護地区で、環境への配慮が求められる場所だったこと。かつてライトアップを行った際は、発電機を使い、クルマが渋滞して排気ガスが増えるなど、環境面での問題もあって継続できなかった。今回も環境省に相談に行ったところ、ライトの機材を滝の近くには設置できないということで。そのような事情があって、現在のクルマを使った移動式のライトアップを実施することになり、技術的な面でパナソニックさんにご支援いただいた次第です」(小泉さん)

 

移動式ゆえに投光ポイントを固定するのに苦労した

小泉さんが話す通り、「奥入瀬渓流氷瀑ツアー」を技術で支えたのがパナソニック エコソリューションズ社。エコソリューションズ社とは、パナソニック4カンパニーの一角を占める大手企業で、住空間に関連する設備を主に扱っています。今回は、ライティング事業部の籠谷 葵(かごたに・あおい)氏に、本ツアーを実現した技術について話していただきました。

↑籠谷 葵氏↑パナソニック エコソリューションズ社、ライティング事業部の籠谷 葵氏

 

「当社では『ダイナミック演出』として、建物や自然のモノに光を当ててライトアップする機器を提案しています。例えば、東急プラザ銀座をライトアップした例や、金沢で神社仏閣を照射した例、京都タワーなど、ランドマークをライトアップした例もありました。最近は手軽に植栽だけを照らしたい、ライトアップを手軽にやりたい、というお客様も増えており、そんなニーズに応じて『ダイナワン』(2018年3月発売)という単体のモジュールも発売する予定です。

 

自治体さんに地域のランドマークをライトアップしませんか、と提案させて頂くことも多く、今回は、山形県・酒田市さんの取り組みが十和田市さんの目に止まり、お声がけを頂くことになりました。氷瀑ツアーで、実際に使っている器具は『ダイナペインター』という大型の投光器。RGBの色を混ぜて、1600万色が作れるようになっています。こちらの器具を使って氷瀑を照らすと雪や氷瀑が映えますので、そこを試行錯誤してやっていった次第です」(籠谷さん)

↑「ダイナペインター」の例↑LEDカラー投光器「ダイナペインター」の例

 

今回のケースでは、環境保護のハードルが高かったため、氷瀑のライトアップのためには特別な工夫が必要だったといいます。

 

「照明器具を同じ場所に置いておけない、という課題がありまして。電源となる蓄電池をクルマに載せ、それに投光器具を接続して運行する形としました。また、周囲の動物への影響を考えて、氷瀑だけを際立たせてライトアップしながら、各拠点での鑑賞が5分以内に収まるようスケジューリングしています。苦労したのは、投光器を載せたクルマを停める位置によって、光の見え方が違ってしまうこと。国立公園ということもあって、マーキングができないので、カーナビのGPSでポイントをつけたり、木などの自然のものを写真に撮ったりして、ポイントを身体で覚えるのが難しかったです」(籠谷さん)

 

ちなみに、投光器を載せたクルマの運転を行うのは、地元のNPO法人。いまでは、ドライバーが停車位置をしっかり覚えて、迷わずにライトアップできるようになったそうです。

↑投光器を積んだライトカー。↑ライトアップを行うライトカー。市がリースを受けたトヨタのハイエースに、LEDカラー投光器「ダイナペインター」と照明コントローラー、5kWリチウムイオン蓄電池を搭載しています

 

星野社長に冬の運営は「簡単ではない」と釘を刺されていた

一方、今回の氷瀑ライトアップツアーのプロジェクトに参加した「星野リゾート」とは、ホテル・旅館業界の風雲児として知られる星野佳路(ほしの・よしみち)氏が育てた、国内有数のリゾート運営会社。経営不振の宿泊施設を買い取って見事に再生させるため、「再生請負人」としても知られています。「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」もその例に漏れず、同社が2005年より経営権を取得して運営したもの。2008年より冬季は休業していたものの、2017年の12月に冬季営業を再開し、合わせて「氷瀑ライトアップツアー」の運営も開始しました。そのあたりの経緯を同ホテルの総支配人、宮越俊輔氏にお話を聞いていきましょう。

↑星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの総支配人・宮越 俊輔氏↑星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの総支配人・宮越 俊輔氏

 

「経営を引き継いでしばらくは運営が難しく、収益を安定させるために、冬だけはクローズしていました。しかし、近年はグリーン期の宿泊が埋まってきて、4月から11月は8割ほどの集客ができるようになってきた。経営が安定してきましたし、お部屋やレストランの改装も進んだので、冬にもチャレンジしよう、と。さらに、県のほうで積極的に台湾や韓国にアプローチを行い、直行便やチャーター便を増やしたこともあって、冬も海外のお客さまが来るようになってきました。また、国を挙げて国立公園にインバウンド集客をしようという『国立公園満喫プロジェクト』が始まり、奥入瀬がそのプロジェクトに選ばれまして。これはチャンスだということで、冬季の営業を再開したんです」(宮越総支配人)

↑同ホテルのシンボル、岡本太郎のブロンズ製オブジェ「森の神話」↑同ホテルのシンボル、芸術家の岡本太郎氏によるブロンズ製暖炉「森の神話」

 

↑客室からは↑客室の眺めは抜群。「渓流ごろんとチェア」から、冬の奥入瀬渓流が見下ろせます

 

とはいえ、いくら追い風があっても冬季の営業が難しいという事実は変わりません。その点、星野リゾートの社長、星野佳路氏にも釘を刺されていたとか。

 

「どちらかと言うと、社長が(冬季営業を)クローズした本人なので(笑)。実は、社長は『国立公園満喫プロジェクト』のメンバーの一人なのですが、経営者の立場としては冬季の運営には反対で、『冬を再開するのは簡単ではない。何もないところにお客さまを呼ぶのは難しいぞ』というお話はもらっていました。確かに単独でやったらかなり難しかったでしょうが、今回は地域の協力が大きかった。青森県や十和田市の観光課さん、地元のJRバスさんにサポートをいただけましたし、プロモーション面でも影響力のある方を紹介してもらえました。そこは、『冬の集客を増やす』という同じベクトルを向いていたからこそ、実現したことですね」(宮越総支配人)

 

インバウンド需要が多く、氷瀑ツアーの評判も上々

こうして始まった冬季営業および氷瀑ツアー、現在の状況はいかがでしょうか?

 

「当初、ホテルの予約の入りはかなり鈍かったのですが、十和田市さんの取り組みはかなり話題になっていましたし、星野リゾートとしても冬の一つの大きな話題になりました。今年は全体の6割くらいの部屋数を稼動させていて、それでもまだ埋め切れてはいないですが、少しずつは取れるようになってきました。特に台湾、韓国、中国からのお客さまの割合が多い。こうした地域の方々にとっては雪と氷が珍しいことも多く、それ自体がウリになるんです」(宮越支配人)

↑同ホテルの氷瀑の湯↑氷瀑をイメージさせる工夫は館内にも。同ホテル冬限定の露天風呂「氷瀑の湯」には、氷瀑を模したディスプレイ(右)が

 

20180305-s2 (49)↑同ホテルは料理も魅力。ビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」では、地元食材をふんだんに使った料理が楽しめます

 

↑料理の一例「鴨のスモークとりんごのサラダ」↑料理の一例「鴨のスモークとりんごのサラダ」

 

「氷瀑ツアーの評判も上々。もともと1日2便のバスで合計50名くらいの募集だったのですが、やがて、すぐに埋まってしまうようになって。最近はもう一便増やして1日3便にしたのですが、それでもコンスタントに予約が入ってくる状況。なんといっても、国立公園でホテルの玄関からバスですぐに出発できて、手軽に帰ってこられる場所はなかなかありませんからね。ただし、青森空港からのアクセスが悪いので、そこが今後の課題。その点、もっともっと認知度を上げていけば、手を上げてくれる観光施設や交通業者さんも増えるはずなので、そこに期待したいですね」(宮越総支配人)

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プロジェクトを企画し、仕組みを作った十和田市。環境保護のハードルをクリアすべく、技術で支えたパナソニック。リスクを恐れず冬季営業を再開し、宿泊施設のツアーを主導した星野リゾート。3者のうち、どれが欠けても今回の氷瀑ツアーは実現しなかったことでしょう。言い換えれば、地域の特性を活かして適切なパートナーと組んだなら、観光資源は創れるという良い見本になりそうです。

 

なお、2018年の氷瀑ツアーは、十和田市のツアー(十和田市街地発着:大人2000円、子ども1000円)が3月17日(土)まで。星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルのツアー(宿泊者限定・無料)は3月18日(日)まで。ライトアップされた氷瀑がもたらす感動は、ぜひ大切な人と分かち合ってみてください。ちなみに、十和田市、奥入瀬渓流ホテルとも、来年以降も氷瀑ライトアップツアーを行うとのこと。いまから「行きたいリスト」に入れておいてもいいかもしれませんね。

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「以大为美」の中国人がハマった! 豪華客船で行く中国人向け「福岡・長崎観光クルーズ」に潜入

流行語大賞にも選ばれた中国人旅行客の大量購入を意味する「爆買い」。最近は落ち着いた感があるものの、日本を訪問する中国人旅行客は年々増え続け、インバウンド消費を後支えしています。中国人の訪日経路も多様化し、最近では道中における「モノ」や「コト」が楽しめる豪華客船による訪日ツアーも人気を集めています。その人気はどこにあるのでしょうか?

 

「大きい、多い」好きの中国人の心をくすぐった巨大豪華客船クルーズ

中国語に「以大为美(大をもって美とする)」という言葉があるのですが、「大きい」、「多い」ことは中国人にとっては「美しい」、つまり良いことだとの認識があります。「美」という字は「羊」が「大」きいと書きますよね? 長い歴史の中で中国人の国民気質として知らずのうちに培われてきたのでしょう。

 

そんな中国人たちの心をくすぐったのが、巨大豪華客船クルーズです。豪華客船はまさに動く大きなホテル。船が大きいので揺れも少なく、ホテルステイにミニ観光旅行が付帯されているので、一挙「多」得で楽しめることが中国人の人気を集めています。

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豪華客船クルーズのなかでも人気が高いのは、1週間程度で行き来できる日本行き。中国では夫婦共働きが一般的で、日ごろ自分の親世代に子どもの面倒を見てもらっている人が多いのですが、1週間程度であれば一方的な負担がかかりにくく、気軽に出かけやすいのです。

 

また、インバウンド消費の底堅さからもご存知のとおり、品質が良いと評判の日本製品を日本の免税ショップで買い物できる点も人気を後押ししています。

 

今回は日ごろお世話になっている義両親に楽しい時間を過ごしてもらおうと、「喜悦号」福岡・長崎観光ツアーをプレゼントしました。

 

義両親が乗った「喜悦号」はドイツ製造の豪華客船で、2017年に入水したばかりです。ドイツ製だからなのか、精緻な内装がとても印象的だったようでお義母さんは何度も絶賛していました。上海に自宅がある私たちですが、中国の住宅やホテルは内装が比較的大雑把で細かなところの後処理があまり施されていないことが多いのです。「喜悦号」は船内のどこもかしこも丁寧に施工されていて、大変心地良かったとのことでした。

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上の写真はこの船の模型。最大で4930人が乗船できる大きな客船です。果てしなく長い廊下からも船の規模と大きさがお解りになるかと思います。

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船内の施設には遊園地、プール、ジム、エステ、映画館、カラオケ、各種ショーが楽しめるステージ、カジノなどがあり、老若男女すべての世代の乗客が楽しめるコンテンツがたくさん用意されています。

 

遊びも豊富なら、食事も多彩なラインナップ。中国人に一番人気なのは、やはり食べ放題のブッフェ。早く行かないと人気のメニューはすぐに品切れになってしまうのだとか。

 

ブッフェ以外にもフランス料理やステーキハウスといった高級レストランも備えられています。別料金にはなりますが、こちらならおかず争奪戦にならず、優雅に食事を楽しむことができます。

 

今回の船旅では、長崎と福岡の市内観光が付帯されています。これまで私の義両親は何度か日本を訪れているのですが、地形や建物に特徴のある長崎はこれまで彼らが見たことのある日本とは一風変わった雰囲気が味わえるので、ぜひとも観光してもらいたい場所でした。家に帰った両親に早速長崎の感想を聞いてみたところ、オランダ坂が特に印象に残ったとのこと。長崎新地中華街で食べた長崎ちゃんぽんの味も格別だったそうです。

 

上海と九州を往復する船上での非日常生活と長崎、福岡の市内観光が付いた5泊6日の旅。これで当時3000元(約5万2000円)です。上海から飛行機の往復運賃だけでも2000~3000元かかりますから、運賃も含め、食も遊びも存分に満喫できてこの価格なら、上海人たちに人気なのも納得ですね。利用者のなかには豪華客船クルーズにハマってしまった人たちもいるようで、数回目の船旅だった人もいたそうです。同じ船旅でも行き先を変えれば、また新しい楽しみや思い出を増やせるというのも観光クルーズの良い所ですね。

 

「アニメディア」編集長が語る! 日本の洒脱な文豪たちとマッチする現代ヨコハマの風景【文豪ストレイドッグス】

「アニメディア」編集長の馬渕 悠さんが、人気アニメとその聖地を紹介する本企画。これまでにも「弱虫ペダル」や「けものフレンズ」などの聖地を紹介してくれました。今回は、世界的に有名な文豪をモチーフにしたキャラクターたちで話題となった「文豪ストレイドッグス」と、その舞台である横浜を取りあげます。映画の公開も控えている本作、この機会に聖地巡りをしてみてはいかがでしょうか。

20180223_bln2_2↑ヨコハマの都市を舞台に激闘を繰り広げる中島敦

 

前回は京都・大阪のメジャースポットの魅力を劇場版「名探偵コナン」を通して再確認しようというものでした。過去2回が関西国際空港近辺のスポットでしたので、今回は成田国際空港からすぐに行けるメジャーなアニメスポットを紹介していきたいと思います。

 

2013年からマンガの連載がスタートし、2016年のTVアニメ化を経て若年層のアニメ・マンガファンから絶大な支持を集める人気作となった「文豪ストレイドッグス」。今年3月には初の劇場アニメ「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」が公開されます。中島 敦、太宰 治、国木田独歩、福沢諭吉、芥川龍之介、中原中也、森 鷗外など世界的にも有名な“文豪”と同じ名前や誕生日、特徴を持ったキャラクターたちが、それぞれの著作の名を冠した異能力を駆使して架空の都市・ヨコハマを舞台に激闘を繰り広げる作品です。

 

そう、本作の舞台のモデルとなっているのは神奈川県横浜市。アニメのTVシリーズ本編だけを観ても、実にたくさんの横浜市のメジャースポットが描かれています。横浜中華街、山下公園、元町商店街、コスモワールド、赤レンガ倉庫、日本大通り、はては鶴見川と本当にさまざまなスポットに巡り合うことができます。「カウボーイビバップ 天国の扉」や「鋼の錬金術師」など数々の名作アニメを制作し、世界のアニメファンも注目するアニメスタジオ・ボンズが作り出す本編映像は、もちろん風景美にも力が入っており、劇中に出てくるヨコハマのスポットを眺めているだけでも作品を堪能することができます。

 

横浜は観光スポットとしても非常にオススメの都市です。きれいな都市の街並みという景観がありつつ、海や丘などの自然とも一体化している横浜は、日本だけでなく世界の人々に親しんでいただけるポテンシャルを多分に秘めています。大手旅行口コミサイトなどで、海外から日本にやってくる“旅人”から評価していただいている日本の観光スポットは、和の情緒あふれる寺院のほかに新宿御苑などの自然に満ちたスポットも多いそうです。山下公園、港の見える丘公園、三溪園などがある横浜もきっと好きになってくれるでしょう。

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本作の舞台がヨコハマになったのは、原作の作画担当である春河35さんが横浜出身だったからとのことですが、横浜は今も昔もどこか異国風情を醸し出し、とくに幕末・明治・大正時代、すなわち文豪たちが実際に生きていた時代に誕生し、文化の最先端を歩んでいたオシャレな都市であるわけですから、本作のキャラクターたちとの相性は抜群な感じがします。現に元町商店街や横浜中華街の原型ができたのは幕末ですし、山下公園が造られるきっかけとなったのは大正時代に起きた関東大震災の復興施策でした。(山下公園は埋立地で、そこに埋めたのは震災で大量に発生したがれきであることはあまり知られていません)。

 

話はずれますが、筆者は千葉県千葉市出身でありながら大学は横浜で、なんと毎日1都2県をまたいで電車通学をしていました。大学の講義が午前中に片付いてしまった日には、横浜中華街に繰り出してリーズナブルな中華粥で腹を満たし(あまりお金は持ってなかったので)、近くの雑貨店を巡って、ちょっと疲れたら山下公園や大桟橋に行ってベンチで本を読んで、夕方には黄金町の古びた映画館へ……みたいな感じで、学生にしかできないプチ文学・映画散歩をしていました。そんな自分にとっては、本作で描かれているヨコハマの街並みは「第2の故郷」まで言ってしまうと大げさかもしれませんが、「芋粥」という著作があり、神奈川を舞台にした作品をいくつも書いている芥川龍之介にどこかシンパシーを抱いてしまいます(史実の芥川は鎌倉、鵠沼、横須賀、湯河原などで生活していました)。

 

映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」でも、中島、太宰、芥川、中原らがヨコハマを舞台に大活躍を繰り広げるそうです。実世界の横浜にもたくさん映画館がございますので(横浜ブルク13、TOHOシネマズ ららぽーと横浜など)、ぜひ映画本編をご覧いただきホットな映像を目に焼き付けつつ、横浜観光をしてみてはいかがでしょうか。

 

そして、本作を通じて日本の文豪に興味を持っていただいたという方は、舞台の横浜だけでなく、各文豪の展示がある文学館や記念館、生家、墓地などを訪ねてみるのもオススメいたします。東京近郊で言うと、田端文士村記念館、神奈川近代文学館、さいたま文学館、太宰 治と森 鴎外の墓地がある禅林寺などが挙げられます。また、関西にはなりますが、大阪府堺市にある与謝野晶子記念館(さかい利晶の杜)では、本作とのコラボキャンペーンを実施中(4月15日まで)。文豪たちにゆかりのあるスポットでは彼らの内面や人生について深く知ることができますので、ある種、本作のもうひとつの“聖地”と言ってもいいかもしれません。彼らの生き方や著作に触れてみると楽しさも倍増することと思います。

 

そして前回の「名探偵コナン」でも願望を書かせてもらいましたが、ぜひ本作のキャラクターもワールドワイドに活躍する姿も見てみたいですね。中華街などのヨコハマの洒脱(しゃだつ)な風景になじんでいた文豪たちならば、21世紀の近未来都市・ホンコンやタイペイなどもヨコハマと同じく非常にマッチしていると思いますし、SNS映えだってしちゃいそう!? もし、海外にお越しになる際は、優雅な客船もいいですが、決して裕福とは言えない文豪のみなさまには、リーズナブルで快適なLCCでのトラベルもオススメしたいところです。

 

映画

『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』

3月3日より全国劇場で公開

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【著者プロフィール】

馬渕悠さん……見て、読んで、飾って、参加できる、4倍楽しめるアニメ情報誌『アニメディア』編集長

 

※本記事は航空会社・バニラエアの機内誌「バニラプレス 2018年3-2018年5月号」に掲載された内容の転載になります

 

© 2018 朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグスDA製作委員会

いま家族で旅行するなら高知県・室戸市がイチオシ! 室戸岬“以外”のおすすめ観光スポット5選

2017年は大政奉還から150年となる節目の年。坂本龍馬をはじめ、中岡慎太郎、ジョン万次郎、岩崎彌太郎などの偉人を輩出した土佐藩、すなわち高知県では、「志国高知 幕末維新博」が大々的に行われるなど大いに盛り上がっています。2018年は「明治維新」から150年ということで、この熱気はまだまだ続きそうです。この機会に高知を訪れてみよう、と考えている方も多いと思いますが、せっかくならほかの観光も一緒に満喫したいですよね。そこでゲットナビウェブが注目したのが、高知県の東南端に位置する都市・室戸です!

 

室戸岬だけじゃない! 親子で楽しめる施設&イベントが盛りだくさん

「室戸」と聞いて多くの方がまず思い浮かべるのが、室戸岬ではないでしょうか? 日本八景にも数えられるこの地はあまりに有名ですが、このほかにも室戸には親子で楽しめる観光スポットがたくさんあります。今回はその一部をご紹介しましょう!

 

【おすすめスポット①】

いざ地球の謎探索へ! 「室戸世界ジオパークセンター」

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「ジオパーク」とは、地球について学び、体感できる場所のこと。室戸のジオパークは2011年に世界ジオパークにも認定されています。室戸世界ジオパークセンターは、このジオパークを楽しむためのヒントや情報を入手できる拠点です。

20171127_y-koba2_2↑ガイドが案内してくれるツアーも用意されています

 

特に、12月31日まで開催中の企画展「地球×ちきゅう」がおすすめ! これは、昨年行われた、室⼾沖100kmの南海トラフ付近で地球深部探査船「ちきゅう」が海底掘削を⾏い、コアを採取し、⽣物の起源や地震のメカニズムなどを解明するという国際プロジェクトを解説するもの。 地球深部探査船「ちきゅう」の紹介を中⼼に、1⽇先⽣の授業・実験といったワークショップや掘削体験、「ちきゅう」の模型の展示などが行われています。室⼾独特の地形の成り⽴ちへの理解をより深めることができ、まさに、親⼦連れでの学習体験にピッタリ!

20171127_y-koba2_4↑ドリルピットやコアレプリカなど、普段なかなか見る機会のない展示も行われています

■室戸ユネスコ世界ジオパーク
http://www.muroto-geo.jp/

 

【おすすめスポット②】

室戸とクジラの歴史を最新デジタル技術で体験! 「キラメッセ室戸・鯨館」

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室戸市吉良川町の海岸沿いに位置する道の駅「キラメッセ室戸」。その敷地内にあるのが、2017年3月にリニューアルしたばかりの「鯨館」です。ここでは360°パノラマの勢子舟乗船VR体験や、高精細スキャンによってデジタルアート化された迫力ある古式捕鯨絵図など、室戸とクジラの歴史を最新デジタル技術を使って体験することができます。

20171127_y-koba2_6↑展望デッキでは、AR技術を使って絶景の海をバックにクジラと一緒に記念写真を撮ることができます

 

さらに、室戸の山海の幸やオリジナルジェラートが味わえるレストラン「⾷遊鯨の郷」、地元の野菜・果物や鮮魚、加工品などをお手ごろ価格で購入できる直売市場「楽市」も併設。体験して、味わって、お土産まで購入できる道の駅「キラメッセ室⼾」は必⾒ですよ!

■道の駅 キラメッセ室⼾
http://www.kiramesse-muroto.jp/

 

【おすすめスポット③】

独特の景観をいまに残す「吉良川の町並み」

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その昔、豊かな⼭林資源を使い、良質な⽊炭と薪が取れることから「⼟佐備⻑炭」の産出地として⼤いに栄えた吉良川。その従事の繁栄をしのばせる⼟佐漆喰を使った「⽩壁の建造群」や、台⾵などの強い⾬⾵から町屋を守るためにつけられた⽔切り⽡が独特の景観をつくっています。

↑日本の懐かしい町並みをいまに残しています

 

【おすすめスポット④】

室戸海洋深層水を利用してリラックス! 「シレストむろと」

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シレストむろとは、室⼾海洋深層⽔を利⽤した健康増進施設です。体温に近く、負担のかからない不体感温度に設定した温⽔プールをはじめ、露天⾵呂やフィンランドサウナ、外気浴ホットタブ、⾜湯など、本格的な施設を完備。インストラクターの指導のもと、さまざまな⽔中運動プログラムを体験することもできます。

20171127_y-koba2_8↑楕円形の温水プールの各ゾーンでは、アクアマッサージや水中ウォーキング、ストレッチなど、水流や水圧を利用した水中運動が楽しめます

シレストむろと
https://searest.jp/

 

【おすすめスポット⑤】

高級魚・金目鯛を味わい尽くす! 「室戸キンメ丼」

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室⼾市は、「⻄⽇本一のキンメダイの⽔揚げ地」です。そんな室⼾のキンメダイを売り出そうと、2012年に市内10店舗で提供を始めたのが「室⼾キンメ丼」。⾼級⿂・⾦⽬鯛の照り焼きとさしみが両⽅楽しめると人気を博し、最近ではこれを味わうためにわざわざ室⼾へ⾜を運ぶ⼈も増えているそうです。

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20171127_y-koba2_12↑照り焼きの味付けなどは参加各店それぞれが趣向を凝らしています

■室戸市観光協会
http://www.muroto-kankou.com/category/eat/

 

歴史と⽂化、豊かな⾃然が⾄る所に残る室戸市。近年ではそれを体験できる施設やイベントも充実しており、親子で楽しめること請け合いです。 遊んで、食べて、学べる室戸は、家族旅行先の有力候補地ですよ!