新興国で最大の市場規模! アフリカの農業に打って出るべき4つの理由

現在、アフリカでは史上最悪の食料危機が起きており、多くの人たちが飢饉に苦しんでいます。専門家の間ではアフリカの農業をもっと発展させなければならないという危機感が募るとともに、国際的な支援の重要性もますます高まっています。日本企業がアフリカの農業に目を向けるべき理由はどこにあるのでしょうか? 大きく4つの可能性が考えられます。

伸び代が大きいアフリカの農業

 

1: 衰えない農業の市場規模

一つ目の理由は、アフリカにおける農業の市場規模が高いまま維持されているから。アフリカで農業がGDP(国内総生産)に占める割合は約35%で、世界銀行によると、この割合は数十年間変化がありません。他の新興国に目を向けてみると、農業の規模は縮小している所が多くあります。例えば、1970年の東南アジア諸国では農業がGDPの30~35%程度を占めていましたが、2019年には10~15%までに低下しました。アフリカでは今後も農業の市場規模が維持されていくと見られており、日本の企業が参入できる可能性は大きいと言えそうです。

 

2: 工業化に転じない可能性

経済は、農業のような一次産業から工業や製造業といった二次産業に発展することが一般的ですが、アフリカは必ずしもそれに当てはまりません。国際ビジネスを専門とするニューヨーク市立大学バルーク校のライラック・ナフーム教授は農業がアフリカ経済を牽引すると主張しており、その理由の一つとして「製造業を中心とした成長にはインフラが必要だが、アフリカのインフラは整っていない」と指摘しています。実際、エチオピアやモロッコなどの一部の例外を除いて、アフリカの多くの国で製造業を確立することが実現できていないので、他の新興国が辿ってきた発展のプロセスを踏む可能性は低いと考えられます。それゆえに、アフリカは持続可能な農業の形を模索することができるのかもしれません。

 

3: 栽培に適した広大な土地

アフリカには豊かな土地があることも、日本企業がアフリカ進出を検討すべき理由の一つに挙げられます。アフリカの国土は、中国、インド、アメリカ、ヨーロッパなどの国々の合計よりも広く、その半分以上は耕作が可能な土地と言われています。そこで栽培されたカカオやコーヒー、紅茶などはアフリカを代表する作物であり、最高級品質のものが世界中の市場に輸出されています。

 

近年、アフリカでは気候変動によって水不足や洪水などが起きることが多くなり、農業への影響が懸念されるようになりました。農業を守るためには、例えば、水が不足する時期の灌漑用水の確保や、効率的な栽培技術の発展などの技術革新が必要でしょう。また、きび、ひえ、あわなどの雑穀は、比較的過酷な環境下でも栽培しやすく栄養価も高いことから、国連を中心に注目が高まっています。作物を育てるのに適した気候と十分な土地があるアフリカに適しているかもしれません。

 

4: 求められる生産性の改善

アフリカの農業は、使用している機械の量が世界で最も少なく、生産性が世界最低のレベルであると指摘されています。その一因は、アフリカの農家の大半が、自分や家族が生活する分だけの作物を栽培する小規模農家であること。国際農業開発基金によれば、サハラ以南のアフリカの平均農地面積は1.3ヘクタールで、中米の22ヘクタール、南米の51ヘクタール、北米の186ヘクタールと比べると数十倍から百倍以上の差があります。また、小規模農家の多くは貧しく、機械を購入できるほどの資金がないことも生産性が低い原因と考えられますが、経済的な自立を支援していくためには、生産性を上げることが欠かせないでしょう。だからこそ、人口の半数以上が農業に従事しているとされるアフリカでは、日本のように人手不足を補う効率化ではなく、農業の作業を効率化して生産性を上げる技術やサービスが求められると考えられます。

 

国連食糧農業機関(FAO)が2021年に発表したデータによると、アフリカでは5人に1人にあたる2億7800万人が飢餓に直面していたとのこと。アフリカの農業はカカオやコーヒーといった作物を他国に輸出している反面、多くの国が輸入に依存しており、食料自給率が低いことも課題となっています。従来の「自分たちが食べる作物だけを育てる」という小規模農業から、生産性の高い農業にシフトすることは、このような状況を改善し、より多くの人々の利益につながっていくことが期待されます。しかし、この変化を起こすためには、日本などの政府による支援と、技術や知見を持った企業の関わりが必要不可欠でしょう。

 

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途上国のGDP、コロナ前の予測から6%低下と世界銀行が警鐘。先手必勝が鍵

2023年の世界の経済成長は1.7%。わずか6か月前に予測されたのは3%だったのに、そこから大きく減速し、2023年の経済成長は1.7%にとどまると、世界銀行が先日報告書をまとめました。過去30年間で3番目に低い成長率となり、特に途上国に大きな影響を及ぼすと考えられています。

途上国の経済はかなり停滞しそう

 

2023年1月に世界銀行が発表した『世界経済見通し(Global Economic Prospects)』によると、世界の経済成長率は2021年が5.9%、2022年は2.9%でしたが、2023年は1.7%と大きく減速すると見られるのです。

 

この大きな要因は、予測を超えるインフレの進行と、それを抑制するための急激な金利の上昇。さらに新型コロナウイルスの再流行や、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界各国との緊張状態なども関係しています。

 

これらの影響を受けて、先進国の約95%、新興国・発展途上国の約70%で経済成長率が下方修正されたのです。これは、2009年のリーマンショック、世界に新型コロナウイルスが蔓延した2020年のマイナス成長に次いで、過去30年間で3番目に低いとのこと。

 

中国を除く新興国と発展途上国の経済成長率は、2023年は2.7%。2022年の3.8%からこちらも大きく減速すると予測されています。GDPレベルは、新型コロナウイルスが感染拡大するパンデミック前に予測されていた水準より約6%も低下するとのこと。

 

先進国の景気が減速すると、貿易などを通じてその影響が東アジア、太平洋、ヨーロッパ、中央アジアなど世界各地に波及します。先進国だけに限ってみると、経済成長率の鈍化はさらに顕著。例えばアメリカは、前回の予測を1.9%も下回り、2023年の経済成長率は0.5%。ユーロ圏は1.9%マイナスの0%。中国は4.3%(0.9ポイント下方修正)。先進国全体の2023年の経済成長率は、2022年の2.5%から0.5%に減速するとされているのです。さらに長引くエネルギー価格の上昇や、紛争、気候変動による自然災害なども重なり、新興国や発展途上国に逆風が押し寄せると見られています。

 

投資なしではSDGsは不可能

さらに、世界銀行が指摘したのは、新興国や発展途上国への投資額の減少。2022年から2024年にかけて、これらの国々への投資額の総額は、平均で約3.5%増加したものの、過去20年間の投資額と比べると半分以下になるといいます。世界銀行の見通し局長を務めるアイハン・コーゼは「強力で持続的な投資が増えなければ、開発や気候関連の目標達成に向けた前進は不可能だ」と述べています。

 

また、この報告書では、人口が150万人に満たない37の小規模国にも着目。これらの国ではコロナ禍による景気後退が顕著で、観光業が長期にわたり不況となったことで経済成長が遅れていると言います。

 

世界銀行のデイビッド・マルパス総裁は、「世界の経済成長の見通しが悪化するにつれ、国際開発が直面する危機はますます深刻化するだろう。政府財務の高止まりや金利上昇に直面する先進国にグローバル資本が吸収され、新興国と発展途上国は数年にわたる低い成長に遭遇する。これにより、教育、健康、貧困、気候変動などにおける取り組みはさらに悪化するだろう」と危機感を募らせています。

 

このようにネガティブな状況では途上国への投資に躊躇する企業が多いと思われますが、こうした状況下だからこそ他社に先駆けて行動することがビジネスの成功につながります。また、マクロな視点では成長率が鈍化しているとしても、ミクロな視点で見れば成長著しい分野もあります。マクロ経済だけで判断すると悲観的になりますが、現地に行くと勢いを感じる国も多い途上国。まずは現地の情報を詳細につかみ、いち早く行動してみてはいかがでしょうか?

 

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人口増加のインドで「スーパーリッチ層」が増加。コロナ禍で貧困が拡大との指摘も…

最近、インドで中産階級と「スーパーリッチ」と呼ばれる層が増えています。主に生産年齢人口の増加が経済成長を押し上げており、所得が増加しているのです。しかしその一方、コロナ禍により貧富の格差が拡大したとの指摘もあり、国内で議論が続いています。インドで拡大する中間層や所得格差の現状について説明しましょう。

幅広い中間層が集まり、活気が溢れる南ムンバイ

 

近年、インドで中産階級は増加しています。ニューデリーの経済調査会社PRICEによると、年間世帯収入が50万~300万ルピー(約79万円~470万円※)の中産階級の割合は、2004~2005年の14%から2021年に31%に倍増し、2047年までに63%になると予測されています。

※1ルピー=約1.58円で換算(2023年1月19日現在)

 

しかし中産階級といっても、この層は幅広いため、一般的には2種類に分類されます。50万~100万ルピー(158万円)未満までの所得がある層を「アッパーミドル層」、それ以上の100万以上~300万ルピーまでの層を「リッチ層」と呼びます。アッパーミドル層にはテレビやエアコン、冷蔵庫を所有し、家を保有している人もいる一方、リッチ層は飛行機で家族旅行に出かけ、高級車や自宅を所有するといった暮らしを送ります。さらに収入が中産階級以上のスーパーリッチ層になると、持ち家は大きく、何人ものメイドを雇うなど、とても裕福な暮らしをしています。

 

中産階級に届かない下層階級の人たちの暮らしと比べると、大きな差があることがわかります。

 

生産年齢人口の増加

インドで中産階級や、後述するようにスーパーリッチが増加している背景には、人口が大きく関わっています。同国の人口(約14億756万人)は中国に次いで多く、2027年には中国を抜いて世界一の人口になると予測されています。それに伴い15歳以上〜65歳未満の生産年齢人口の割合も増加しており、現在は全人口の67%と3分の2以上を占めるようになりました。それにより経済成長が続き、年々GDPの値も上昇。2018年から2020年まではかなり低下したものの、2022年から2023年の成長率は7%の見込みであるとの予測が出されています。

 

このような経済成長を背景に労働者の収入が増加。保険分野のコンサルティング企業・Aon plc社がインドの1300社を対象に調査したところ、2022年の給与上昇率は10.6%で、2023年には10.4%上昇の見込みとされています。2022年の給与上昇率は米国が4.5%、日本が3.0%だったため、インドの成長率の高さが如実に表れているでしょう。

 

経済成長の別の理由としては、生産年齢人口の増加だけではなく、消費活動が活発化したことも挙げられます。インドにおける個人消費額は2008年から2018年の10年間で約3.5倍増加。さらに、次の10年間である2028年までには、約3倍増加する見込みです。

 

特にコロナ禍をきっかけに公共交通機関の利用に抵抗感を持つ人が増え、自家用車を購入する動きが加速しました。2回目のロックダウンが起きた2021年4月から5月の車両販売数は、2020年同時期と比べて19.1%も増加したとの報告があります。

 

このように中産階級が増加した結果、インド全体の不平等は少しだけ緩和されたとの報告もあります。数値が高いほど経済面の不平等が大きいことを示すジニ係数は、2021年のインドでは82.3となりました。インドの不平等は引き続き高い水準ですが、2015年には83.3だったため、1ポイントとわずかですが改善した傾向にあります。

 

コロナ禍の影響により、スーパーリッチ層はさらに増加したといわれています。最近発表されたIIFL Wealth 社のリッチリストによれば、2012年には100人のインド人が100億ルピー(約157億円)以上の資産を所有していましたが、2022年にその人数は1103人に増加。2019年から2022年のパンデミック期間に353人がリストに追加されたそうです。

 

その要因の一つとして、コロナ禍をきっかけにワクチンの製造を含め製薬業界が潤ったことが挙げられます。インドのスーパーリッチ層1103人のうち約11%にあたる126人が製薬業に携わっています。その後には、化学および石油化学産業とソフトウエア産業、サービス業が続きますが、コロナ禍をきっかけに在宅ワークやオンライン授業が増加し、ソフトウエア産業やサービス業に関わる層も資産を増やすことができたと見られます。コロナ禍でお金持ちがさらにお金持ちになったとも言えるでしょう。

 

格差は拡大、それとも縮小?

スラム街と高級住宅が存在するムンバイ

 

しかし、先述したジニ係数の改善とは反対に、格差は広がったとの指摘もあります。低所得層はパンデミックの間に職を失い、家計が苦しくなりました。休職や解雇で所得ゼロの月が続き、その日に食べるものを確保するのに必死だった人たちが続出したと言われています。

 

また、インド政府の公的医療への支出は世界で最も低いレベルなので、民間機関のヘルスケアを受けるためには高額のお金が必要となります。そのため、低所得者層の中にはコロナ禍で医療費のために借金をする人が増加するなど、多くの人が貧困に追いやられました。

 

インドの貧困層は1億7000万人以上に達し、その割合は世界の貧困層のほぼ4分の1に当たります。インド政府は子どもの無償義務教育や若年層の技能開発教育など貧富の格差改善につなげる取り組みに着手しているものの、早期の改善を期待するのは厳しい模様です。

 

経済発展を遂げることで中産階級やスーパーリッチが増えているインドは、確かに国全体が少しずつ豊かになっているようです。ジニ係数が微減し、貧困は徐々に減りつつあるとも言えますが、コロナ禍をきっかけに超富裕層と低所得者層の格差が大きくなったのも事実でしょう。この点に関する国内の議論はまだ続いていますが、インドの主要援助国である日本もこの問題から目を離さず、経済協力を続けていくことが期待されます。

 

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アフリカがEU化する「AfCFTA」って何? 鍵を握るデジタル決済の重要性とあわせて解説

近年、世界中で普及するデジタル決済。この市場は2027年までに毎年12.31%のペースで成長すると言われています。アフリカでは、Interswitch(インタースイッチ)がデジタル決済サービスを牽引する存在の一つですが、このフィンテック企業は同大陸の自由貿易を推進するうえで重要な役割を担っています。

デジタル決済が自由貿易の障壁を低くする

 

2002年にナイジェリアで創業したインタースイッチは、デジタル決済のプラットフォームを構築し、アフリカを中心にさまざまなサービスを提供しています。例えば、同社はアフリカだけでなく欧米諸国の一部でも使用できるクレジットカードの「Verve」を発行しており、このカードに対応したATM数は1万1000台に上るそう。現在では、オンライン決済プラットフォームの「Quickteller」、モバイルビジネス管理プラットフォームの「Retailpay」、フィンテックカードの発行のほか、ナイジェリア初となる国内銀行間の取引サービスや州政府向けの電子決済インフラも展開しています。

 

2019年には、大手決済企業のVISAがインタースイッチの株式の一部を買収したことからも、アフリカで最も勢いのある企業の一つであることが伺えるでしょう。もともとナイジェリアでは現金主義の人が大半だったそうですが、同社はそんな国でキャッシュレス化を推進してきたと言える存在です。

 

アフリカ版EUの命運を左右

インタースイッチが重要視しているのが、アフリカ55か国間での自由貿易。先日、シエラレオネ共和国で開催され、インタースイッチも参加したセッションでは、この自由貿易がテーマとなり、同国を含めたアフリカ諸国におけるデジタル決済の問題やトレンドが議論されました。

 

アフリカには「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」協定があります。「アフリカ版EU」と呼ばれているように、貿易のルールをアフリカ国内で共通化して、関税を撤廃し、貿易を活発化させていくもので、2021年1月から運用が開始されています。

 

AfCFTAの成功の鍵となるのが、諸外国との取引をよりシームレスにするデジタル決済でしょう。その反面、デジタル決済サービスにはサイバー関連の脅威が伴いますが、その点、インタースイッチは州政府にも利用されるなど、セキュリティ面でも定評があることから、アフリカ各国の地方銀行などにも導入される可能性があると見られています。創業以来、インタースイッチはアフリカで「決済がシームレスで目に見えない物として日常生活の一部になること」を目指しており、そのビジョンの実現に向けて現在も邁進しているのです。

 

世界銀行のデイビッド・マルパス総裁が「デジタル革命は、金融サービスへのアクセスと利用を拡大し、決済、ローン、貯蓄の方法を一変させた」と述べているように、デジタル決済は人々の暮らしに大きな変化をもたらしました。同行のGlobal Findex Databaseによると、デジタル決済における途上国のシェアは2014年は35%でしたが、2021年には57%に拡大。アフリカ諸国の自由貿易を支える立役者としてインタースイッチには今後も注目が集まりそうですが、途上国におけるデジタル決済の普及が進めば、日本企業にとってもビジネスがしやすくなるでしょう。

 

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「モバイルファイナンス」が貧困を2.6%減らす。UNDPらの共同調査で判明

無線通信企業のボーダフォングループが、国連開発計画(UNDP)、ケニアを代表する通信企業のサファリコムなどと共同で、アフリカ諸国を含めた途上国49か国を対象に、モバイルファイナンスと経済成長の関係を調査し、10月下旬にレポート(『Digital Finance Platforms to empower all』)を公表しました。モバイルファイナンスの経済的な効果が明らかにされています。

アフリカのモバイルファイナンスの代表例「M-PESA」

 

モバイルファイナンスとは、JICAによれば「一般の銀行のような支店網やATMといったインフラを必要とせず、顧客のもつ携帯電話とその通信ネットワークを利用し、代理店を通して預金の引き出し、送金などの金融サービスを提供するサービス」を指します(※1)。モバイルファイナンスがGDP(国内総生産)に与える影響を分析した本レポートでは、「もしモバイルファイナンスが普及していなかったら、GDPはどうなっていたか?」ということがわかります。

※1: JICAバングラデシュ事務所(2015年2月12日付)「モバイル・ファイナンスの台頭 第1回」https://www.jica.go.jp/bangladesh/bangland/reports/report11.html 

 

レポートを読むと、モバイルファイナンスが普及している国(成人1000人あたり300以上のモバイルマネー口座が登録されている国)では、それが普及しなかった(または導入されなかった)場合と比べて、国民1人あたりのGDP成長率が高くなることが示されていますが、その差は最大で1ポイントになりました。

 

例えば、モバイル決済サービス「M-PESA(エムペサ)」が広く利用されているケニアは、国民1人あたりのGDPが現在、約1600ドル(約21万8000円※2)で、2019年の同国のGDPは840億ドル(約11兆4600億円)でした。しかし、M-PESAのようなモバイルファイナンスが普及していなければ、ガーナの国民1人あたりのGDPは1450ドル(約19万8000円)、ケニア全体では760億ドル程度(約10兆3700億円)にとどまっていたと予測されるとのこと。その差はおよそ10%近くになるそうです。

※2: 1ドル=約136.4円で換算(2022年12月1日現在)

 

ボーダフォンとケニアのサファリコムが立ち上げたM-PESAは、2007年にケニアで始まりました。それから15年が経ち、現在このサービスはタンザニアやモザンビーク、ガーナなど7カ国に拡大。アクティブユーザーは5100万人以上で、一日の取引件数は6100万件を超えるそうです。

 

モバイル決済や送金をスマホ一台で行うことができるM-PESAの台頭により、金融包摂(経済活動に必要な金融サービスを全ての人たちが利用できるようにするための取り組み)は強力に推進されました。ケニアを含む4か国のユーザーのうち、1760万人のユーザーは、それまでに金融サービスを利用したことがなかったとのこと。そのような人たちが、地元の銀行と連携してローンを組んだり、送金したり、貯蓄したり、さまざまなことができるようになったのです。

 

モバイル決済ができるM-PESAは、オンラインショッピングなどのサービスを利用して、消費者の生活水準を向上することにも貢献している一方、企業側にとってもメリットがあります。例えば、本レポートに回答した企業の98%は、M-PESAによって支払いがより迅速かつ安全に行えるようになったり、商品やサービスをオンラインで販売できるようになったりしており、事業の運営に役立っていると回答していました。

 

このような理由により、このレポートは「モバイルファイナンスの導入成功で、貧困をおよそ2.6%減らすことができる」と述べています。

 

課題はあるのでしょうか? M-PESAアフリカのSitoyo Lopokoiyit CEOは「モバイルファナインスのプラットフォームにアクセスする側面では、デジタルリテラシーやスマホの所有といった課題があります。また、モバイルファイナンスの発展という側面では、多くの国々で金融サービス業に新規参入するための規制や条件が公平でないという障壁も存在しています」と指摘しています。

 

このような問題がありますが、アフリカなどの途上国で金融包摂を推進することは、UNDPの最重要課題の一つであり続けます。その中でモバイルファイナンスは重要な役割を担っており、今後も途上国の取り組みから目が離せません。

 

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混沌を深めるミャンマー経済。ドル高と輸入規制で国中が火の車!

2021年2月のクーデターによる軍事政権の復活、大規模民主化運動、民族・宗教紛争と政治的な混乱が続くミャンマー。日本の岸田文雄首相は東アジアサミットに出席した際、同国の情勢について深刻な憂慮を表明しましたが、ミャンマーの経済はどうなっているのでしょうか? 2022年10月中旬に同国を視察し、異様な景色を目の当たりにした、ミャンマーに詳しいシニアコンサルタントの小山敦史氏(株式会社アイ・シー・ネット)がレポートします。

 

著者紹介

小山敦史氏

通信社で勤務したのち、開発コンサルティング会社に転職。国際開発の仕事を続けながら、アメリカの大学院で熱帯農業を学び、帰国後に沖縄で農業を開始。4年間ほど野菜を生産したのちに畜産業も始め、現在は食肉の加工や販売、市場調査など、幅広く行っている。自身が実践してきたビジネス経験をコンサルティングの仕事でも常に活かしており、現在はバングラデシュで食品安全に関する仕事に取り組んでいる。

 

建設作業が止まったままの高層ビル(撮影/株式会社アイ・シー・ネット)

 

ミャンマーの首都・ヤンゴンの市民生活は、驚くほど静かに営まれていました。実際、街頭での市民の抗議行動や軍の鎮圧活動といったような「騒乱」めいた動きには1週間(10月10日〜16日)の滞在中、一つも遭遇しなかったほど。日中行き交うクルマの数はかつてより減り、夕暮れ時のダウンタウンの街の灯も寂しくなっていましたが、ASEAN(東南アジア諸国連合)でも有数の景色を誇るヤンゴンの緑は、よく手入れされており、美しさを保っています。バス乗り場には、雨季(4月〜10月)の終わりのにわか雨をよけようとするバス待ちの人々が、停留所の小さな屋根の下で身を寄せ合って佇む一方、外資駐在員御用達の高級スーパーの品揃えも意外なほど豊富です。 

 

しかし、街のところどころに、ただならぬ事態が起きていました。建設途中の高層ビルが、完全に作業が止まったまま、足場やクレーンもそのままに、いくつも放置されているのです。「輸入建設資材が入ってこなくなって、にっちもさっちもいかないらしいですよ」と現地の人が解説してくれました。これで何人の建設労働者が職を失ったことでしょう。

 

平穏に見えるヤンゴンの人々ですが、実は台所は火の車。軍事政権の信用失墜にドル高が加わり、ミャンマーの通貨チャットは下落。同国政府は1ドル2100チャット(約138円※)を公定レートとしましたが、市中価格は1ドル2800 チャット(約184円)以上でした。また、ヤンゴン市民によると、米や野菜などの生活物資の価格は、騒乱による作付不能や不作が重なったこともあり、以前に比べて2 倍以上になっているとのこと。

1チャット=約0.066円で換算(2022年11月15日現在)

 

外貨は流出傾向にあります。JETRO ヤンゴン事務所の専門家は、観光収入と出稼ぎ収入が落ち込み、外国直接投資(FDI)や援助も厳しい状況が続いているため、ミャンマーの外貨準備高は相当減少しているはずと見ています。

 

同政府は外貨流出を防ぐために、輸入を露骨に規制し始めました。例えば、原材料を輸入に依存している外資系食品メーカーA社は、これまで経験したことのない「難癖」を当局からつけられ、原材料の輸入が認められなかったと言います。前述の建設途中の高層ビルにまつわる輸入建材の話も同じ文脈で理解できるでしょう。国の台所も火の車なのです。 

 

一方、ミャンマー企業の多くはドル高のデメリットに苦しんでいるようでした。ミャンマーの場合、チャット安で輸入コストが上昇しますが、A社の場合、仮に原材料を輸入できたとしても、支払いはドル決済を迫られる一方、製品の売り上げは国内市場のみ。つまり、稼いだお金は100%チャットです。チャットはドルに転換すると目減りしますが、その分を売価にきっちり転嫁したら、国内での売り上げを大きく減らすことになります。「国産原料に置き換えられないか、真剣に検討を始めました」と同社の社長は話します。3年前にA 社を訪問したとき、国産原材料の可能性は話題にもなりませんでした。

 

このように、ミャンマー経済は苦境に立たされており、一般市民の生活への影響が心配されます。国民の軍事政権への信頼は低いようで、「反国軍の市民感覚はいまだに強いと思う」と、ある日本人駐在員は語っていました。軍の弾圧によって2000人以上の人々が犠牲になっているのだから、それは当然かもしれません。しかし、経済が悪化する中で時間が経てば経つほど、ますます生活が苦しくなるのは、武力も資力もない一般市民にほかなりません。 

 

五里霧中の企業

灯りが少なく、寂しいヤンゴン

 

民間企業に勝機はあるのでしょうか? A社とは逆に、食品メーカーのB社は全て国産の原材料を使い、作った製品の一部を欧州に輸出しています。訪問時、社長はパリの国際展示会に出張中で、部長が対応してくれましたが、業績はそこそこ伸びているとのこと。チャット安の効果(製品を海外に売りやすい)があると思われます。

 

ただし、ミャンマー全体で見た場合、B社のようなビジネスをできる企業は多くはないでしょう。少なくとも3つの問題が挙げられます。まず、一定以上の品質の原材料が適切な価格で国内供給できるか? 次に、それを欧米などの市場で売れる品質の製品に加工できる技術と資金があるか? さらに、国際市場にマーケティングしていけるだけのノウハウや資金があるか? このような問題を自力で解決できるミャンマーの地場企業はまだ限られており、だからこそ、政変前はFDI が一定の役割を果たしていました。しかし、「果たしていました」と過去形で書かざるを得なくなりつつある現状こそが、ミャンマーにとって最も苦しい所です。

 

政変前に訪問した数多くの現地企業では、20 代や30代の若い経営者に何人も出会いました。 彼らは自分たちの夢を早口の英語で語っていましたが、いまはこの難局をどう切り開こうとしているのだろうか——。ミャンマー経済は今まで以上に、日本を含めた外国からの支援が必要なのかもしれません。

 

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ガーナにアグリテックの拠点が誕生! アフリカ全体を巻き込む「timbuktoo」とは!?

 

UNDP(国連開発計画)が主導して進めている「timbuktoo(ティンブクトゥ)」というプロジェクトをご存じでしょうか。これは、さまざまな産業でICTを活用することにより、アフリカ大陸の成長と貧困からの脱却を目指す目的で2021年に発足したイノベーションイニシアチブ。

 

具体的には、アクラ、ナイロビ、ケープタウン、ラゴス、ダカール、キガリ、カサブランカ、カイロなど、スタートアップの拠点なりうるアフリカの都市8ヵ所に、民間主導となるハブ(施設)を設立。ベンチャービルダーやベンチャーファンドへの投資を通して、若手起業家の育成・支援を実施します。各ハブは、フィンテック、ヘルステック、グリーンテック、クリエイティブ、トレードテック、ロジスティック、スマートシティとモビリティ、ツーリズムテックなど、さまざまな分野に特化すると言います。

 

投資される資金は、官民あわせて今後10年間で約10億ドル(約1400億円)。1000社以上のスタートアップの育成や、1億人以上の人々の生活改善、環境改善などを目標に掲げており、投資額の10倍となる100億ドル(約1兆4000億円)以上の経済効果を目指しています。

 

ガーナ・アクラに設置されるハブでは「アグリテック」に注力

そしてこのたび、ガーナのラバディビーチホテルで開催されたイベントで、アグリテックに特化したイノベーションハブを首都アクラに設置することが発表されました。

 

「私たちは雇用を創出する必要があります。そのためには、まず起業家を育てることが重要。DXを活用してイノベーションと雇用創出を実現したい」とガーナ共和国副大統領のMahamudu Bawumia氏は期待を寄せます。

 

一方、UNDPガーナ常駐代表のAngela Lusigi氏もこうコメントしました。

 

「timbuktooは “未来志向のスマートなアフリカ”というUNDPのビジョンに沿った新しいアプローチ。民間と協力し、テクノロジーとイノベーションを活用して駆使して未来を拓くという、大胆で新しい取り組みを誇りに思います」

 

またtimbuktooでは、アフリカの低所得国10カ国にある大学に、学生たちのイノベーションとデザイン思考を促進するための研究施設(UniPods)の設立を予定。2022年末までに運用が開始され、さらに2023年までには18カ国にまで拡大する予定だといいます。

 

官民学が連携することで、ガーナをはじめアフリカのさまざまな国で、ICTによる経済成長を図ろうとしているtimbuktoo。今後、アフリカ地域全体のさらなる成長を促すことが大いに期待されています。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

なお、当メディアへのご意見・ご感想は、NEXT BUSINESS INSIGHTS編集部の問い合わせアドレス(nbi_info@icnet.co.jpや公式ソーシャルメディア(TwitterInstagramFacebook)にて受け付けています。『NEXT BUSINESS INSIGHTS』の記事を読んで海外事情に興味を持った方は、是非ご連絡ください。

「混迷するスリランカ」に襲い掛かる、4つの大きなリスク

【掲載日】2022年7月22日

現在スリランカでは、財政破綻およびインフレの高騰が、国民生活に甚大な影響を与えています。長年、ラジャパクサ一族が支配してきた政治や経済状況の悪化に国民は怒り、大規模デモや大統領公邸の占拠などが発生。国外に逃亡していたゴタバヤ・ラジャパクサ氏は大統領を辞任し、数日前に暫定政権が誕生しましたが、同国の情勢は混迷しています。スリランカにはビジネス上どのようなリスクがあるのでしょうか?

スリランカの大規模デモの様子

 

スリランカは、対外債務の膨張および外貨準備高の不足によりデフォルト(債務不履行)に陥りました。原因はいくつかあります。まず、スリランカは2009年に内戦が終結した後、主に中国からの融資を受けて、港や空港などのインフラを整備しました。しかし、同国はそれらの運営に失敗し、外貨を獲得することができず、対外債務の返済が滞ります。これにより、スリランカの信用格付けが下がり、同国は海外の資本市場で資金を調達することができなくなりました。

 

また、新型コロナウイルスのパンデミックによって、スリランカの主要産業である観光業が不振になり、外貨が減ったことも大きな要因です。同国は有機農業へのシフトを図ると同時に、保有する外貨(ドル)の流出を防ぐため、農薬や化学肥料の輸入を禁止しましたが、この措置はかえって農家を苦しめ、食料生産に悪影響を与える結果となりました。そんな中、ウクライナ危機が起こり、物価が世界的に上昇しますが、スリランカは外貨不足のために石油や食料などの必需品を輸入することができず、国民生活は苦しくなり、その怒りが大規模デモという形で噴出しました。

 

海外進出のリスク

スリランカ危機が起きているいま、同国または他の新興国・途上国への進出を検討している企業にとって、リスク管理が以前にも増して重要になっているでしょう。リスク管理とは「企業が事業活動を遂行するにあたって直面するであろう損失、または不利益を被る危険、あるいは、想定していた収益または利益を上げることができない危険の発生の可能性を適正な範囲内に収めるための一連の活動」を指します(日経ビジネス経済・経営用語辞典)。リスクにはさまざまな種類がありますが、海外ビジネスを検討するうえで重要な要因が少なくとも4つあります。

 

1: 物流

海外事業に必要なアイテムや素材を購入しても、業者がそれらを予定通りに届けなかったり、予算を超えたりするという不確実性が存在します。現在、スリランカでは石油が不足しており、食品がスーパーに届かないなど、サプライチェーンが混乱しています。

 

2: 規制

国によって法律や規制が異なるため、それらに精通した弁護士が必要。近年では特に環境規制が厳しい国が多く、それらの規制に合わせることが求められています。

 

3: 金融

為替や金利、物価などが将来変動するリスク。途上国の場合、為替が不安定なことが多く、現地通貨で得た売り上げをどのように日本の本社に環流させるかという課題もあります。上述したように、金融リスクはスリランカで最も大きな不確実性です。

 

4: 政治

資産の国有化や戦争、テロ、政権交代といった不確実性。世界有数の金融グループであるアリアンツは、2022年2月に発表したカントリーリスクの調査で、スリランカは政治体制が分裂しており、連立政権が概して弱いことを指摘していました。

 

受け入れることができるリスクの量や損失の許容額は企業によって異なりますが、それらを決める前に、企業はこのようなリスクを特定することが必要です。そのためには、商習慣や文化を含めて現地のことを把握しているパートナー企業と組むことが役に立つでしょう。リスク管理を踏まえて進出する国を安全に検討したい方向けに、下記に海外進出に役立つ多くの資料を揃えていますので、ぜひ参考にしてください。

 

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低所得者層の農家向け「農機シェア」が話題! アグリテックがナイジェリアの農業を変える

【掲載日】2022年6月15日

最先端テクノロジーを導入することで農業の方法を変える「アグリテック」。AIやドローン、ビッグデータなどが話題を集めがちですが、実は資金の提供スキームも進歩を遂げています。途上国では「BOP(Base of the Pyramid)」と呼ばれる低所得者層の農家を対象にしたビジネスモデルが次々に登場しており、世界の投資家から熱視線を浴びているのです。この仕組みは途上国が人口増加と食料の問題を解決するうえで大きな役割を果たすかもしれません。

所得の低い農家が希望を持てるビジネスモデルが生まれた

 

2021年、貧困と飢餓の撲滅を目指して国際開発を行う「ヘイファーインターナショナル」は、アフリカ全土の有望なアグリテックイノベーターに賞金を提供する「AYuTe Africa Challenge」を創設。その第1回大会で賞金150万ドル(約2億2500万円※)を獲得したのが、農機具を持たない農民に対して携帯アプリでトラクターなどのレンタルサービスを提供するナイジェリアの「ハロー・トラクター(Hello Tractor)」でした。

※1ドル=約135円で換算(2022年6月13日現在)

 

ハロー・トラクターのサービスはソフトウエアとトラッキング・デバイスからなり、ユーザーがトラクターの所有者にアプリ上で連絡して利用日を予約するというもの。「Uberのトラクター版」とも呼ばれる本サービスは、ペイ・アズ・ユー・ゴー(Pay-as-you-go)の仕組みを活用しており、課金方式は従量制。最大のメリットは、低所得者層の農家がトラクターを使って生産性を向上させることができる点です。借りる側の担保ではなく、トラクターが生み出す収益に着目したこのビジネスモデルは、日本を含めた世界各国においても大いに参考になるビジネスモデルとなりえるでしょう。

 

石油大国として知られるナイジェリアですが、農業も最重要分野の1つ。同国の農業は、自給自足を主とする小規模農家が多く収穫高は天候に大きく左右されます。また、近年は高いインフレ率にも苦しんでおり、2022年3月は17.2%の食料インフレ率を記録しました。さらに、人口は現在2億人を超えており、2050年には4億人に倍増する見通し。そのため、食料の安定した供給は重要な問題なのです。

 

日本においては人口減少や跡継ぎの不在など、ナイジェリアの農業事情とは異なる部分も多いですが、アグリテックによる農業の進化が未来の重要な鍵である点は同様。また、食料の安全保障はどの国においても必須課題であると同時に、大きなビジネスチャンスを秘めています。途上国で生まれるハロー・トラクターのようなイノベーションから今後も目が離せません。

 

「NEXT BUSINESS INSIGHTS」を運営するアイ・シー・ネット株式会社では、開発途上国の発展支援における様々なアプローチに取り組んでいます。新興国でのビジネスを考えている企業の活動支援も、その取り組みの一環です。そんな企業の皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料を用意。具体的なステップを踏みたい場合の問い合わせ受付も行っています。「NEXT BUSINESS INSIGHTS」の記事を見て、途上国についてのビジネスを考えている方は、まずは下記の資料集を参照ください。

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