マンション1階の防犯対策は? 女性が安全・快適に住む方法を防犯のプロが解説

日当たりや防犯面から、アパートやマンションでの1階暮らしを敬遠する人は少なくないでしょう。とくに女性が1階で暮らすには、何かと気にすることが多いもの。とはいえ、1階の物件にはメリットもあります。

 

不安やデメリットを解消し、1階ならではのメリットを享受するには? とくに女性にとって気になる防犯対策について、防犯設備士で株式会社COREgaE代表取締役の伊藤好子さんに教えていただきました。

知っておきたい、
1階に住むメリットとデメリット

はじめに、1階に暮らすメリットとデメリットを教えていただきました。

 

メリット

・家賃が相場より安い
・階下への騒音を気にしなくてよい
・エレベーターの点検時に階段の上り下りをしなくて済む
・災害時にエレベーターが故障する心配をする必要がない
・火災のときに逃げやすい

 

「同じ物件でも、高層階と1階とでは、1階にある部屋のほうが賃料が安い傾向があります。また、建物の外部に出やすく、入りやすいことは、火災など万が一のときに強みとなります」(防犯設備士・伊藤好子さん、以下同)

 

デメリット

・外に干している洗濯物で住人の性別が判断されやすい
・比較的男性の居住者が多いため、相対的に隣の住人が男性になる確率が高まる
・地面に近いことから底冷えをするため、女性の悩みである“冷え”の症状につながる可能性がある
・日当たりが良くなかったり、湿度が高かったりする傾向にある
・上階の人の足音や生活音が気になる場合がある

 

「外にアクセスしやすいという1階暮らしのメリットは、裏を返せば侵入者にとっても出入りしやすい環境ということ。同じ1階でも、オートロック付きの物件とそうではない物件では危険度に差が出ます。建物のセキュリティーの質は家賃に相対的に比例するため、そのあたりも考慮しながら1階暮らしについて考えてみると良いでしょう」

 

1階の物件を選ぶときに
確認しておきたいポイントとは?

やはり家賃の安さや外へのアクセスの良さは魅力。そこでこれから物件を探す際に1階を選ぶなら、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?

 

1.侵入口になりそうな場所の状況を確認する

・ベランダが設けられているか
「ベランダがあることにより、道路と部屋の間に間隔が空くため、容易に侵入できません。ベランダから侵入しようとしている人物がいたら、それこそ怪しいですよね。目撃されるリスクが高ければ高いほど、侵入者は避ける傾向にあります。逆に、塀などがなく、通りに窓が接している建物は、通りに人がいても不自然ではないため、侵入しやすくなります」

 

・物干しの位置が外から見えるか
「侵入者は、洗濯物によって、性別や家族構成をチェックしています。古い物件の場合、物干しざおを取り付ける位置が腰壁より高い場所にあることが多いため、外からも見えやすくなります。最近は、物干しざおの位置が腰壁より低く、洗濯物が通りを行き交う人の視線に入らない工夫がされている物件が多いです」

 

・窓に格子がついているか
「窓に格子があれば容易に侵入することができません。しかし、ネジで固定されている格子は力尽くで外されてしまう可能性も。ネジではなく、溶接によって取り付けられている格子のほうが安全です」

 

2.建物の防犯設備を確認する

「建物のエントランスや死角になる場所に防犯カメラ、センサーライト、オートロックなどの設備があるかどうかを内見のタイミングで確認しておきましょう。最近では、都心部の賃貸マンションでも、窓にシャッターが付いている建物が多くなってきました。シャッターをしっかりと閉めておけば、室内の様子は外から見ることはできませんし、ガラスを割られることもありません」

 

3.家の近くにある施設を確認する

「コンビニの明かりが届く距離の物件であれば、24時間明るく照らされているため、防犯の面では有利になります。交番が近くにあれば尚のこと安心です。
一方で、繁華街の近くや飲み屋が近くにある物件は、酔っ払って理性を欠いた人がいる可能性もあるため、控えるのが無難です。見通しの利かない公園や広い駐車場など、不特定の人が利用する場所の近くも避けた方がいいですね。そこに滞在しても不自然ではないため、下見しやすく狙われやすい状況を作ります」

 

防犯のプロが教える
1階に住むなら必ずやっておきたい防犯対策

1階に暮らす場合どのようなことに気をつけたほうが良いのでしょうか? 具体的な防犯対策について教えていただきました。

 

「1階暮らしに関わらず、まず女性にもっとも意識して欲しいことが、道を歩いている時は『背後に目を向ける』ことです。帰り道に人が後ろや横を歩いている場合、相手が男性女性に関わらず、誰が歩いているのだろう……とおもむろに振り返り、相手の性別確認をしながら先ずは真後ろより斜めに離れ、距離を置いて歩くことにより警戒心を強めることや自分自身のいざという時の逃げられる距離も保つように心がけましょう。歩きスマホやヘッドホンで音楽を聴きながら歩くこともやめましょう。
周囲に不審な人がいないことを確認してから、鍵を開け速やかに家に入ります。家に入ったら、すぐに戸締りしましょう」

 

また、空き巣とよく似た犯罪として、居空き(いあき)にも注意が必要といいます。

 

「空き巣は住人が家を留守にしている間に侵入するのに対し、居空きは住人が家にいる間に侵入してきます。侵入者に遭遇しないためにも、事前の対策が必要不可欠なのです」

出典=警察庁「住まいる防犯110番」

 

1.侵入するまでの時間がかかるようにする

「侵入者は入りやすく逃げやすい家を探しています。2分〜5分の間に侵入をあきらめるケースは7割にのぼります。つまり、多くの侵入者は5分以内に侵入できない場合はその家への侵入を断念する確率が高いのです」

 

出典=警察庁「住まいる防犯110番」

 

【対策】外出時は鍵を必ずかける
「『住まいる防犯110番』侵入窃盗の侵入手口によると、3階以下の共同住宅の場合、侵入者の侵入経路は、窓からが約70%、玄関などからが約30%だといいます(無締まり窓ドアなど51.5%ガラス破り18%)。侵入者は毎日同じ経路を歩き、侵入できそうな家を下見しています。たまたま鍵を閉め忘れたときに侵入者に入られてしまったという話は少なくありません。『ゴミを捨てに行くだけや近くのコンビニに行くくらいならいいだろう』という気持ちが思わぬ犯罪を招きます。少しの外出の際にも玄関の鍵をかけることはもちろん、ベランダもしっかり施錠しましょう」

 

出典=警察庁「住まいる防犯110番」

 

【対策】玄関は1ドア2ロックを心がける
「1つのドアに対し鍵は2ヵ所設置する(ピッキングされにくい鍵)のが防犯です。賃貸物件の場合は、鍵は1ヵ所のみ設置されていることがほとんど。ホームセンターなどで売られている補助錠を取り付けることが大切です。工事不要で原状回復できる補助錠であれば、賃貸物件でも気軽に導入できます。また、忘れてはならないのが室内からのチェーンロックです。就寝時には必ずかけるようにしてください」

編集部が選んだおすすめ防犯アイテム
iNAHO「SM-12 キーアウト」
7,980円(税込)

 

【対策】窓用の補助錠をかける
「通常、窓にはクレセント錠と呼ばれている窓を開け閉めする金具がついていますが、これだけでは防犯にはなりません。そこで、窓サッシ枠の上下に補助錠(防犯ロック)を設置します。たとえクレセント錠の部分のガラスを破られたとしても、上下の補助錠があれば開けられにくくなります。窓枠に差し込むだけなので賃貸物件でも使用することができます」

編集部が選んだおすすめ防犯アイテム
Nomura tec「ウインドロック ブロンズ 品番:N-1040」
1,210円(税込)

 

【対策】窓用の防犯フィルムを貼る
「窓ガラスはハンマーなどで簡単に割れます。割られても簡単に錠が開けられないように対策しましょう。窓に貼り付ける防犯シートをすれば、万が一、衝撃を与えてもヒビが入り、簡単に割ることはできません。賃貸物件の場合は、水で貼って剥がせるタイプのものがおすすめ」

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Nomura tec「透明ガラス専用 防犯フイルム 40×50cm 2枚入」
1,860円(税込)

 

【対策】室内の窓の前にパイプラックを設ける
「侵入口になりそうな窓があるとき、そこに洗濯物を干さない場合は、窓の前にパイプラックの家具を設置し、部屋の中に格子の役割を作るのも一つの手です。タンスなどを置くと窓の開閉ができなくなってしまいますが、パイプラックであれば、隙間から窓を開けることができます」

 

2.音と光を利用する

「侵入者は音と光を嫌がります。また、犯罪を犯すときは少なからず緊張状態にあるため、侵入者は想定外のことが起きることを嫌がります」

 

【対策】家の外や内側を明るくしておく
「侵入者は目立ちにくい場所を好んで選びます。人感センサーにより人が通るとパッと照射されるセンサーライトがあれば、暗いところでも目立つため嫌がります。電気工事をしなくても済む乾電池式のものがあり、クランプ台による固定で細いパイプの柱などに固定することもできます。ただ、家の外側になるため賃貸の場合は許可をもらう必要があります。であれば、部屋の中、玄関付近の電球を人感センサー付きのものに交換するのもおすすめです。侵入したときに、灯りがつけば侵入を躊躇させる時間をかせげます」

 

【対策】ドアベルやウィンドチャイムを取り付ける
「侵入しようと玄関や窓を開けたときにベルが鳴れば居住者がいた場合気づかれてしまいますし、また驚いて侵入を諦めます。ドアベルは、マグネット式になっているのものが多く玄関に簡単に取り付けることができます。ベルが扉の開閉により揺れて鳴るとてもシンプルな作り、音色も美しく生活の邪魔にもなりません」

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優凛(ゆうりん)「どありん」
8,800円(税込)

 

【対策】窓にガラスアラームを取り付ける
「窓ガラスが割られたり、居住者の留守中に窓が開けられた場合に速やかに警報音が鳴れば心強いです。両面テープで簡単に貼り付けられるため手軽に導入することができます。本体の厚さがとても薄型なので、ほとんどの窓で開閉に支障がありません。侵入者に窓ガラスに設置されていることが把握されるだけでも抑止力になります」

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ELPA「薄型スリムアラーム 衝撃&開放検知 2個入り ASA-W13-2P(PW)」
4,720円(税込)

 

【対策】想定外の仕掛けを作る
「防犯グッズを購入せずにできる防犯対策として、100円ショップでも売られているステンレス製の細いワイヤーに鈴を付け窓の両端にあるカーテンフックに取り付ける方法があります。侵入したときに侵入者の足が引っかかり音が鳴る仕組みです。予想をしていないだけに侵入者も驚くでしょう。就寝時や外出時につけておくと簡易的な防犯になります」

 

3.性別や生活スタイルなどの情報を漏らさない

「1階は通りとの距離が近いため、どんな人が住んでいて、帰宅時間や就寝時間は何時頃なのかなど、生活スタイルを知られてしまいがちです。生活の様子が外に漏れない工夫が必要です」

 

【対策】カーテンの選び方に気を付ける
「かわいらしい花柄のカーテンであればそこに女性が住んでいることをアピールしているようなもの。カーテンはできるだけシンプルに、性別を判断しにくいデザインを選びましょう。機能面では、日中光を反射することで室内から屋外は見えるものの、屋外からは室内が見えにくい防犯用のミラーレースカーテンや、照明が点灯しているかどうかを判断しづらい遮光カーテンを選びましょう」

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ニトリ「遮熱・防炎・遮像レースカーテン」(Nガード モエニクイ)
2,790円(税込)※一部店舗・ニトリネットにて取り扱い

 

【対策】窓に目隠しシートを貼る
「光を通しながらも外部に情報を漏らさないために目隠しシートは有効です。曇りガラスのように視界を遮る目隠しシート。霧吹きで水をつけて貼れるため賃貸でも取り外し簡単です。外の方が家より明るい日中は、中の様子が見えませんが、夜は見えてしまうため外が暗くなったならば、しっかりとカーテンやシャッターで視線をブロックしましょう」

編集部が選んだおすすめ防犯アイテム
STYLE DART「ウィンドウフィルム Old English(オールドイングリッシュ)」

4,950円(税込)

 

【対策】洗濯物は室内に干す
「洗濯物は室内に干すのがベストです。浴室乾燥があれば、浴室に干しましょう。やむをえず窓の近くに干す場合は、下着類はハンガーの中央に下着をぶら下げ、その周りをタオルや洗濯ネットで囲むように干してください。ほかにも、ブラジャーの紐が見えないように干しましょう。レースカーテンは必ず閉めてください」

 

4.神経質な人が暮らす部屋だと印象づける

「きれいな部屋よりも、汚れた部屋の方が侵入されやすい傾向にあります。そもそも部屋が汚れていれば、足跡があっても汚い部屋なら気づきませんし、金品を盗んでも住人自体が盗まれたことを自覚しないことがあるからです」

 

【対策】すっきり片付いた玄関やベランダに
「玄関やベランダにものを多く置くことは絶対にやめましょう。ものが置いてあれば死角ができて侵入しやすい環境になります。また、侵入者は家の状況を見て、住人の性格を判断しています。玄関やベランダを整えることで、抜かりない建物であることをアピールします」

 

1階暮らしの最大のデメリットは「入りやすく逃げやすい」こと。少しの外出でも必ず施錠する、女性の一人暮らしを悟られない、といったことを徹底し、防犯グッズも取り入れながら入念な対策をしていくことが大切です。

 

Profile

防犯設備士 / 伊藤好子

株式会社COREgaE代表取締役。防犯関連講演、セキュリティエキスパート養成講座などを実施。防犯設備士の経験に基づき、独自の見識で『危険な場所の見分け方』『地域で守ろう「子どもの安全」』『犯罪者の意志決定距離』『危険回避決定距離』などの講演内で、犯罪者の心理を交えながら具体的に実践的に分かりやすく解説している。
HP

賃貸で臭いと爪研ぎ痕をどう回避? 猫が快適に暮らせる部屋づくり

コロナ禍によって在宅勤務の人が増えたことにより、ペットブームが加速したといわれています。ペット関連の市場も右肩上がりを続けているなか、とくに伸長しているのが猫。2017年にはついに飼育頭数で犬を抜き去りました。

 

アットリビングでは過去に、ペットと快適に住むための家作りを紹介しましたが、犬と猫では、必要な配慮も想定されるトラブルも異なります。 そこで、賃貸マンションでとくに「猫」を飼育する際の対策と、猫が快適に暮らすための部屋づくりのコツを、ペットライフコンサルタントの薬師寺康子さんに教えていただきました。

 

【関連記事】室内飼いの注意点から物件選びのコツまで ペットと快適に暮らすための家作り

 

賃貸マンションでも猫は飼える? 知っておきたい情報と物件の選び方

実はペットの中でも比較的、賃貸マンションで飼いやすいのが猫なのだそうです。

 

「猫は散歩の必要がなく、室内飼いが基本です。犬に比べて鳴き声も小さく、上下運動ができれば、1ルームの広さで十分です。日中のほとんどを寝て過ごすため、食事やトイレなど環境さえ整っていれば留守番も得意ですし、仕事が忙しい方、ひとり暮らしや共働き世帯でも飼いやすいペットといえます」(ペット共生型住宅のコンサルタント・薬師寺康子さん、以下同)

 

一方で、こんな課題も。

 

「賃貸物件ではペットが飼えないのが一般的です。飼育できるのは、一部の『ペット可』『ペット相談可』物件のみ。もちろん内緒で飼うことはできません。注意しなければならないのは、『ペット可』物件でも必ず猫が飼えるわけではないこと。猫の爪研ぎで床や壁に傷がつくリスクと、おしっこの強い匂いがオーナーに敬遠され、 “小型犬はOKでも猫はNG” という物件も少なくありません」

 

そのため、物件探しでは、あらかじめ入居条件の確認が必要です。

 

「最低でも、飼育できるペットの種類、サイズ、頭数、ワクチン接種や去勢・避妊手術など条件の有無を確認しましょう。また、物件によって猫飼育可の場合は家賃が相場より高めであることも。敷金も一般的な賃貸に比べて+1ヶ月〜2ヶ月分かかります。退去時の敷金償却の有無やクリーニング代など、費用面の確認もしておくと、後で慌てずにすみます」

 

猫と一緒に暮らすための上手な物件選びとは?

続いて、物件選びのコツを教えていただきました。

 

・日当たりが良いこと

「猫にとって日光浴は体内時計の調整や、心身の安定を保つ上で必要な行為です。一日を通して日の入る時間帯がある物件を選びましょう。できれば日差しがよく入る南向きや東南向きが理想です」

 

・床や壁が傷つきにくいこと

「退去時は室内の原状回復が必要です。猫は犬に比べて床や壁に傷をつけやすいため、事前の対策が必須です。はじめから傷がつきにくい素材の床や壁、防音対策がされた物件だと安心です」

 

・転落や脱走がしにくい部屋であること

「ベランダからの転落リスクを考えると、できれば高層階は避けたいです。基本は室内飼いですが、飼い主がベランダに出る際、足元から飛び出してしまうことも。たとえ低層階であっても、ベランダへの脱走には十分注意しましょう。玄関から脱走しにくいのは、リビングにドアがついている物件です。また、内廊下がある物件は、突発的に玄関から逃げ出してしまってもすぐに外に飛び出すことがないため、道路に出るリスクを抑えられます」

 

・徒歩圏内に動物病院があること

「猫は急に体調を崩したり、誤飲したりすることがあります。徒歩圏内に動物病院があると安心です。最近は、猫専用の病院や、犬と猫で待合室が分かれた病院もあります」

 

・ペット共生型住宅という選択も

「ペットと暮らせる賃貸マンションの中には、一緒に暮らすこと目的に設計されたペット共生型マンションがあります。数が少なく、家賃は高めですが、オーナーの理解があったり、住民同士のコミュニティが生まれやすく、設備や仕様もペットに寄り添ったものになっています。猫と暮らしやすい環境を重視するなら、多少希望条件を緩めても、このような物件を選ぶといいでしょう」

 

【関連記事】物件探しから契約時、入居後まで “ペット可物件” で快適に暮らすためのチェックポイント

 

賃貸で猫を飼うときに注意したいポイント

物件が見つかり、いよいよ猫との暮らしがスタート。いくらペット可物件でも、オーナーや近隣住民に対し、最低限守るべきマナーがあります。

 

1.近隣住民へ配慮する

「ペット可物件だからといって、住民が皆ペットを飼っているとはかぎりません。中には動物が苦手だったり、猫アレルギーの方も。入居後は上下左右の入居者に挨拶し、猫を飼っていることを伝えましょう。
共用部で猫を抱いて歩くのはマナー違反です。普段室内で過ごす猫にとって外は刺激的な場所。人の声や車の音にパニックになり、逃げだしてしまうことも。猫の安全のために、たとえ近場でも外出時は必ずキャリーケースに入れましょう。エレベーターで住民と同乗する際は一言伝える、先に譲るなどの配慮も忘れずに」

 

2.脱走対策を講じる

「大きな音に驚いたり、好奇心旺盛な性格から、猫はたびたび脱走をはかります。安全を守るためにも、必ず脱走対策を行いましょう。猫が脱走を起こす場所は、玄関、窓、ベランダのいずれか。そのため普段から、玄関やベランダに出入りする際は、猫の居場所を確認する習慣をつけておきましょう。
玄関には脱走防止用の柵を設置するのがおすすめです。突っ張り式で天井高のものだと安心ですね。高いものがつけられない場合、腰高でもかまいません。猫の脱走の場合、足元をすり抜けて逃げ出す場合がほとんどなので、十分対策になるでしょう」

 

PEPPY「拡張できるスチールゲート」
8778円(税込)

玄関からの脱走防止におすすめのスチールゲート。片手で簡単にロックを解除し、扉を開けられます。90度で止まるストップ機能付き。取付け幅75~85cm、高さ110cm、扉幅55cm。

 

3.爪研ぎを設置する

「猫にとって爪研ぎは本能です。やめさせることは難しいので、爪研ぎしてもいい環境を作ってあげましょう。傷つけてほしくない箇所にはあらかじめ保護シートを貼ります。その上で爪研ぎアイテムを複数設置してください。猫により好みが分かれますが、麻の紐をぐるぐる巻いたものやダンボールが好きな猫が多いです。爪をまめに切るのも効果的です」

 

PEPPY「壁ひっかき防止シート
46×100cm 1188円(税込)
92×100cm 2178円(税込)

貼りたい場所に合わせてカットできる、壁を守る半透明の保護シート。壁紙の汚れを拭き取り、はく離紙をはがして貼るだけ!角ばった柱にも貼れます。

 

PEPPY「吸着壁に貼れる猫の爪とぎ」
ダンボール(1枚)約W220×H450×D25 1848円(税込)
ダンボール(コーナー用2枚)約W100×H450×D15 1408円(税込)
麻(1枚)約W220×H450×D15 1980円(税込)

裏面に吸着加工がされているから、穴を開けずピタっと貼るだけ、貼り直しもOKの爪とぎです。愛猫の好きな場所や好きな高さに設置できます。誤って食べても大丈夫な段ボール製と、丈夫で長持ちしやすい麻製があります。

 

4.日頃から清潔な環境を整える

「猫はもともと体臭があまりなく、臭いが気になるのはトイレぐらいです。特に去勢前の雄猫のおしっこの臭いは強烈です。去勢手術をすると匂いはずいぶん軽減されます。
また、キレイ好きな猫は汚れたトイレが苦手です。日中仕事で家を空ける方は、掃除回数が少なくて済むシステムトイレがおすすめ。帰宅後すぐに掃除し、清潔な環境を保つようにしてください。臭いを吸着する猫砂、必要に応じて消臭スプレーも使用しましょう。特に1Rに暮らしている方は部屋に匂いがこもりやすいので、換気扇を24時間つけっぱなしにしておくといいでしょう」

 

花王「ニャンとも清潔トイレ 脱臭・抗菌チップ 大きめの粒(システムトイレ用)」
オープン価格(実勢価格1300円前後・税込)

天然素材の針葉樹のチカラでウンチとオシッコのニオイを強力脱臭。はっ水するチップなのでオシッコで固まらず、表面はさらさらの状態が続き、猫ちゃんの足もとはいつも清潔です。肉球に挟まらない大きめの粒でお部屋に飛び散りません。廃棄時は燃えるごみとして処理可能。システムトイレ各社共通で使用できます。4.4L(約3ヶ月分)

 

環境大善「きえ〜る ペット用(300ml)」
1210円(税込)

環境微生物群(乳酸菌等)を発酵・培養した「善玉活性水」から生まれたバイオ消臭液。ふん尿臭・ケージまわりなどの臭いをスッキリ消臭。無色透明なので布ものにも色がつかず、素材を傷めません。天然成分100%で、ペットが舐めても安心・無害。部屋中どこでもご使用いただけます。また、ペットの飲水や餌に本品を与えることで便の臭いを減らすことも可能です。

 

【関連記事】猫のトイレの臭い・処理・健康チェックが全部解決!業界初の猫専用ユニットバス「ネコレット」を徹底解説

 

5.防音対策を講じる

「猫の足音は静かなイメージがありますが、成猫になれば体重は3kgを超え、猫種によってはそれ以上にも。室内を走り回る音、高所やキャットタワーから飛び降りた時の着地音や振動はかなりのものです。とくに猫は夜中〜早朝にかけて活動的なので、階下の人にストレスを与えるリスクも。防音マットを敷いたり、窓ガラスに防音シートを貼りましょう。マットの素材によっては猫がかじって飲み込むリスクもあるので、素材選びは慎重に。また、発情期の猫の鳴き声にも注意が必要です。生後半年ごろを目安に、去勢・避妊手術をしましょう」

 

東リ「ウィズペットフロア」
オープン価格(実勢価格 8000円前後・10枚入り・税込)

ペットの足腰にやさしい、手洗い可能な40cm角のタイルカーペット。カットパイルで爪が引っかからず、裏面の特殊加工により、愛猫がお部屋の中でかけっこしてもズレません。飛び跳ねや床を歩く際の爪の音も軽減。「エアファイン」加工により、気になるニオイを分解します。40cm×40cm 、厚み9mm。

 

6.日頃のブラッシングで抜け毛対策をする

「猫は抜け毛が多い動物なので、まめにブラッシングしましょう。長毛種は毎日、短毛種は週に1回以上、春と秋の換毛期にはどちらも毎日行います。近隣に抜け毛が飛び散る可能性があるので、ベランダでは絶対にブラッシングしてはいけません。盲点なのが布団や洋服についた抜け毛です。外干しの際、飛び散った毛がお隣の洗濯物を汚す場合も。布団や衣類についた抜け毛はよく落としてから干したり、洗濯したりし、毛の飛び散りに十分気をつけましょう」

 

賃貸マンションでも快適に過ごせる! 猫がよろこぶ部屋とは?

猫が心地よく過ごす上で知っておきたいことや、部屋づくりのポイントを紹介します。

 

1.日当たりの良い場所を特等席に

「猫はひなたぼっこが大好きです。日当たりの良い場所にベッドや爪研ぎを置いてあげましょう。西向きや南向きの住戸に住んでいる場合、夏の日差し対策として、ブラインドや厚手の遮光カーテンが必要な場合もあります。室温に関しては人間が心地よいと感じる温度をキープしてください。夏場の気温が高い時期に外出する場合、締め切った部屋の温度はとても高くなります。冷房(28℃程度)をつけておくようにしましょう」

 

2.上下運動できる環境を用意する

「猫が高いところに登りたがるのは、外敵から身を守り、危険をいち早く察知するための習性です。運動不足による肥満や生活習慣病を防ぐためにも、上下運動できる環境を作りましょう。賃貸だと壁に穴をあけることができないため、据え置きタイプの猫タワーやキャットウォークがおすすめです。窓際に置けば外の景色を見て気分転換にも。スペース的に設置が難しい場合、既存の家具で代用できる場合もあります。様子を見て用意してください」

 

3.落ち着ける場所をつくる

「猫は基本的にオープンな環境で暮らしますが、隠れられる狭いところ、暗いところも大好きです。人の出入りが少ないところに、猫ちぐらやテント、ダンボールを置くとよろこびます。ご飯台はキッチンの隅に置くと食器を片付けるのも楽です。写真のように、人の通りが少ない位置だとなお良いですね。トイレの場所には注意が必要です。部屋の隅でもなるべく視界に入る場所に置きましょう。猫はおしっこにまつわる病気が多く、早期発見につながりやすくするためです」

 

4.危険なものをとりのぞく

「留守中に心配なのが誤飲誤食です。猫は好奇心から、何でも口に入れたがることがあります。特にビニール紐、髪ゴム、糸は要注意。他にも人の薬や食べ物など、猫にとって危険なものは必ずしまっておきましょう。観葉植物や切り花も口にすると中毒症状を起こすものがあるため、猫のいる部屋には置かないことが得策です。動物や鳥の羽根がついたおもちゃも噛みちぎり、飲み込んでしまう場合が。留守番をさせる時はおもちゃを片付けておきましょう。冷蔵庫や戸棚など、開けてほしくない扉はストッパーで対策するとより安心です。他にも洗濯機の蓋や浴室の扉も閉めてください。ケーブルには保護カバーをつけると良いでしょう」

 

5.変化をなるべく与えない

「猫は変化に弱い動物です。すでに猫を飼っている方が引っ越す場合、使い慣れた食器やトイレ、おもちゃなどを引き続き使うようにして下さい。おしっこの匂いがついた猫砂をトイレに置くと、場所を早く覚えてくれます。また、猫は環境と習慣の生き物と言われています。留守番が得意とは言え、一泊以上外泊する場合には、ペットホテルやペットシッターを利用しましょう」

 

最後に薬師寺さんはこんなことを教えてくださいました。

 

「猫には “しつけ” はできないと思っていたほうがいいでしょう。もし、爪研ぎしてほしくない場所でされたり、粗相をしてしまっても、けっして怒らないであげてください。猫にとって居心地の良い環境は仕組みで解決するのが一番。ひたすら環境を整えてあげることが、飼い主との信頼関係を築き、結果的にトラブル防止につながります」

 

育てる責任の重さ以上に、私たちによろこびや癒しを与えてくれる猫の存在はかけがえのないものです。猫との暮らしが互いにストレスなく、心地よいものになるよう、ひとつひとつ環境を整えていきましょう。

 

プロフィール

ペットライフコンサルタント / 薬師寺康子

株式会社クララ代表取締役。住宅業界とペット業界の双方に携わった経験と知識を生かし、ペット共生住宅のコンサルタントとして活動の場を広げる中、企画設計コンサルティングをおこなった猫専用賃貸マンション1階に、猫専用ホテルのさきがけとなる「ねこままホテル」を開店。その他、動物専門学校講師、セミナー講演、雑誌、新聞、ウェブでの執筆などでも活躍。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

持ち家でも賃貸物件でも必須!「家財保険(火災保険)」の基礎知識

家を購入する際に加入する「火災保険」。持ち家ならば、自分に資産を守るために当然ですが、では賃貸物件では? 賃貸の場合、契約の条件として「家財保険」への加入が求められるケースが多いはず。「引っ越しにかかる費用を減らしたいんだけど、家財保険ってそもそも必要?」「どんなプランを選ぶべき?」「なるべく安く抑えるコツは?」など、家財保険の基本的な知識と賢い選び方について、保険相談サロンFLPのファイナンシャルプランナー・實政貴史さんに教えていただきました。

 

「家財保険」とは?「火災保険」とどう違う?

住まいの損害に備える「火災保険」。文字通り、火災に遭った際の損害はもちろんですが、台風や水害などの被害、さらに盗難など、さまざまなリスクに対応しています。

 

「家財保険」とは、その一部。持ち家ならば「建物」と「家財」の両方を補償の対象とした火災保険に加入しますが、賃貸物件では、所有者が建物を補償対象とした火災保険に加入しているので、借り手は自身の家財の損害に備え、「家財保険」に単独で加入することになります。では、その“家財”とは?

 

「家財保険の対象となる“家財”は、ベッドやソファなどの家具、テレビや冷蔵庫などの家電だけではなく、衣類や台所用品、化粧品なども含みます。引っ越しのときにトラックに積み込む荷物の、ほぼすべてだと捉えてもらえるとわかりやすいでしょう。

『自宅には高額なものはない』『ふたり暮らしで物は少ないから』などと感じる方もいると思いますが、家財一式となるとけっこうな金額になります。家財保険に加入していれば、自然災害や事故などで発生した損害に対して保険金を受け取ることができ、家財を修理・買い替えすることができます」(ファイナンシャルプランナー・實政貴史さん、以下同)

 

自分のためだけじゃない!「家財保険」に加入する意味は?

保険とは、万が一のときに備えて加入するもの。しかも「家財保険とは、自分のためだけに加入するものではない」と、實政さんは言います。

 

家財保険の補償は、主に次の3つ。

1.基本補償
自然災害や事故などによる家財に対する補償

2.基本的に必ず付けるオプション補償
賃貸中の住居の破損時などに生じる“大家さんに対する損害賠償責任”をカバーする「借家人賠償責任補償」

3.主なオプション補償
他人にケガをさせたり、他人の住居に被害を与えたりした場合に生じる“第三者への損害賠償責任”をカバーする「個人賠償責任補償」

 

「賃貸物件の契約の際に家財保険への加入が必須になるのは、2つ目の借家人賠償責任補償が必要だからです。これは、入居者が賃貸借契約上の『原状回復義務』を果たす必要があるため。原状回復義務とは、借りた賃貸住宅を返すときに、借りてから生じた傷や汚れ(経年劣化は除く)を回復させる義務のことをいいます。火災が発生した、水漏れを起こして床の張り替えが必要になったなど、賃貸住宅に損害が発生した場合、入居者には大家さんに対して法律上の損害賠償責任が発生し、高額な賠償金を求められる場合があります。家財保険に借家人賠償責任補償を付けることで、それに対し、保険金でカバーすることができるのです」

 

家財保険で家財の補償がされる“自然災害”は意外と広範囲。例を挙げていただきました。

・火災、落雷、破裂・爆発
例=ガス漏れによる爆発で食器類が割れた。

・風災、雹災、雪災
例=台風で窓ガラスが壊れ、パソコンが損害を受けた。

・水災
例=台風による洪水や土砂崩れで床上浸水をし、ソファが水浸しになった。

・建物外部からの物体の落下、飛来・衝突など
例=自動車が飛び込んできて、ソファが壊れた。

・漏水などによる水濡れ
例=給排水管からの水漏れで、ベッドが水浸しになった。

・騒擾(そうじょう)、集団行動等に伴う暴力行為

例=近所で暴動があり、投げられた鉄の棒が窓ガラスを割ってリビングのサイドボードを破損した。

・盗難による盗取、損傷、汚損
例=泥棒が侵入し、テレビやオーディオ機器を盗まれた。

 

火災が起きたらどうなる? 家財保険未加入の場合の費用負担

賃貸物件では、トラブル回避のために基本的に家財保険の加入が必須条件となります。では、家財保険に加入しなかった場合、どのような損害が起きる可能性があるのでしょうか?

 

「もし家財保険への加入をせずに、火災で賃貸物件がすべて消失してしまったら……まずは、家財を購入し直す際、すべて自費になります。ソファやテーブルなどの家具・家電、衣類や身の回り品のほか、ゲーム機やステレオなど、すべての金額を足していくといくらになるでしょうか? 大人2人・子ども1人の家庭でもおよそ1000万円くらいの家財があると考えられます。さらに、賃貸物件そのものについては、大家さんに対して法律上の損害賠償責任を負い、賠償金を支払うことになります。家財の新調と住居の復旧工事の負担額は、数千万円にのぼる可能性もあります。これをすべて自己資金で負担するというのは、現実的ではありません」

 

家財保険の具体的な補償内容は? オプションは付けるべき?

上で説明した家財保険の主な3つの補償対象のうち、家財の損害に対する補償が基本補償で、大家さんに対する損害賠償責任である「借家人賠償責任補償」や、第三者への損害賠償責任である「個人賠償責任補償」は特約(オプション補償)です。とはいえ、借家人賠償責任補償は賃貸住宅の場合、基本的に付ける必要があります。一方、第三者への補償は?

 

「個人賠償責任補償を付けるかどうかは任意です。例えば、火元となった火災が隣の部屋にも延焼してしまった、水漏れで階下の住人に被害を与えてしまった、などの場合に補償されますが、ほかにも、買い物中に展示されている商品を壊してしまった、お子さんが自転車運転中に他人にケガをさせてしまったなど、日常生活において、自分自身だけでなく、家族が偶然の事故によって法律上の損害賠償責任を負担する場合の損害も補償するというもの。加入している自動車保険に個人賠償責任補償が付いていたり、すでに自転車保険(個人賠償責任補償とけがや死亡の補償がセット)に加入していたりする場合、家財保険にも付けると重複して加入することになります。この保険は実損額しか補償されないため、保険料の無駄になってしまいます。

 

補償額が高額になり、補償範囲が広いほど保険料は上がるので、賃貸契約時に不動産屋さんから勧められるプランを参考にし、ウェブの試算や保険相談の窓口も活用しながら、内容を検討していくようにしましょう」

【参考】簡単1分で! 保険料クイック試算

 

注意! 地震や津波の被害は補償対象外

地震や噴火、津波などの自然災害は、家財保険だけの加入では補償対象外ということは知っておかなければなりません。

 

「『地震保険』に加入していないと、地震・噴火またはこれらによる津波、地震による火災により生じた損害については補償の対象となりません。地震保険は単独での加入はできないので、家財保険にセットして地震保険に加入するようにしましょう。ただし、地震保険をプラスすれば当然、保険料が上がります。補償内容と保険料の上乗せ金額を計算しながら、自分に合うプランを検討しましょう。

ちなみに、家財保険と地震保険の両方に加入しても補償対象外となるものもあります。自然劣化や経年劣化による損害、寝タバコや天ぷら油からの出火、ストーブをつけっぱなしによる引火などによる重大な過失、故意の損害、戦争や内乱による損害などは補償の対象外です」

 

自己負担とのバランスで考える、自分に適した家財保険の選び方

賃貸住宅入居時の家財保険は、賃貸条件に合う借家人賠償責任補償を満たせば、それ以外は自分でプランを選んだり調整したりすることができます。

 

「まず、家財保険金額については、年齢や家族構成に合わせて同等のものを新たに購入するために必要な金額の目安が設定されています。それを参考に、ご自身に必要な補償額を算出していきましょう。家具や食器、絵画や本など、なにか特別にこだわってコレクションしている方や、衣類やアクセサリーなどにお金をかけている場合は、補償額を少し多めに設定した方がいいかもしれません。

細かい話ですが、『免責金額』を設定することで保険料を安くすることもできます。免責とは、ご自身で設定した金額までの損害については保険金を受け取れず、自己負担をするというもの。免責金額が大きいほど、保険料は安くなります。

次に、補償内容が広いほど保険料が高くなります。特に水災の補償は保険料が高いので、付けるかどうかを慎重に検討しましょう。川や海から離れた場所に住んでいたり、マンションの高層階に住んでいたりする場合は、水災の補償を外すことを検討してもいいでしょう。また、地震保険を付けると保険料は約2倍になると考えておいてください。

保険期間については、長期契約であれば割引が適用されますが、1年もしくは賃貸契約期間に合わせて2年にするのが一般的です」

 

オプションについてはどうでしょうか?

 

「借家人賠償責任補償は2000万円というのが相場で、1000万や3000万というプランに調整することもできます。個人賠償責任補償の補償額は1億、3億、無制限などのプランがあり、保険料は月々100〜300円程度なので、加入しておいたほうがいいでしょう。さらに、その他特約の有無を決めていきます。同様の補償内容でも保険会社によって保険料が異なることは多いので、複数の保険会社から家財保険の見積もりを取ることをおすすめします」

 

保険料を振込ではなくクレジットカード払いにすれば、「Tポイント」や「楽天ポイント」など、ポイント加算を受けられるといったお得も。不動産会社や大家さんの提案するプランのほか、自身でもプランを検討してみて、安心で無駄のない備えをしましょう。

 

【プロフィール】

保険相談サロンFLP ファイナンシャルプランナー / 實政貴史(じつまさたかし)

15年以上の保険業界経験で得た知識を活かし、保険相談サロンFLPサイトの記事を執筆。保険相談サロンFLPのYouTubeチャンネルでは、さまざまな保険情報の解説、毎日新聞ライフコンシェルジュ生活の窓口などでセミナーも行う。保険相談サロンFLP公式サイトのプロダクトマネージャー(運営責任者)を務める。
・HP=https://www.f-l-p.co.jp
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提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

「二重家賃」や過剰な「修繕費」の請求を抑えるには? 賃貸物件の解約・退去時の注意点

賃貸物件から引っ越しする場合、気になるのが退去時の金銭的負担などのルールやマナー。「退去日と入居日はどうやって決めればいい?」「退去通知はいつ行うべき?」「原状回復はどこまで必要?」「二重家賃の負担を減らすには?」など、解約・退去時に備えて知っておくべき知識を、住宅・不動産のポータルサイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」のエグゼクティブアドバイザー・加藤哲哉さんに教えていただきました。

 

新居を探す前に、まずは契約書で「退去可能日」を確認すること

引っ越しを思い立ったら、まず新居の物件探しから始める人がほとんどでしょう。35年以上不動産業界に従事してきた加藤さんは、新居探しの前に、現在の賃貸物件の契約書を確認することをすすめます。

 

「契約書を見返すことは普段あまりしないかもしれませんが、退去に関わる重要事項が記載されているので、確認することが大切です。まず、賃貸物件の契約には『普通借家契約』と『定期借家契約』の2種類があります。賃貸物件の多くは普通借家契約で、2年ごとなど一定期間を設けて契約更新をしていく方法です。普通借家契約の場合、一般的には退去の30日前までに、解約通知書を提出するという条件が多いでしょう。

 

一方、定期借家契約というのは、契約時に解約時期が決まっている借家契約です。定期借家契約の場合、基本的には最初に取り交わした期間が契約満了日になるので、原則として途中解約はできません。まずは、ご自身の契約書の種類と、解約がいつから可能になるのかを確認しましょう。もし、気に入った物件が即入居という条件であったなら、まず退去可能時期を新居の不動産会社に伝えることで、契約日のタイミングを交渉することができるかもしれません」(LIFULL HOME’S加藤哲哉さん、以下同)

 

用語解説

【普通借家契約】

一般的には2年ごとの契約更新が条件。中途解約をする場合には、解約希望日の何日前かに解約通知書を提出するという条件が決められています。
「UR賃貸住宅では、解約希望日の14日前までに解約通知書を提出すればOKという統一ルールがあります。一方、大家さんの希望で、2〜3か月前には解約の予告が必要というケースも。解約予告の期間や解約時に支払う金額などは、特約で条件が異なるので、契約書を確認しましょう」

 

【定期借家契約】

契約時に退去日まで決まった状態での契約方法で、日本の賃貸物件ではレアケース。原則として、途中解約はできません。
「貸主が転勤などにより一定時期のみ空き家になる家を貸したい場合や、近いうちに売却を考えているけれど、しばらくは貸していたいというような場合に、こちらの契約形態を選ぶことがあります。貸主の都合で期間が決まっているため、賃料の安い物件が出ることが多いので、条件が合えばお得な場合もあります。ただし、再契約ができない場合がありますので、契約期間と契約内容には注意が必要です」

 

【解約通知書】

借主が賃貸物件を退去するときに、大家さんか管理会社へ提出する書類のこと。退去届とも言います。
「解約通知書は、入居時に受け取った契約書類の中に入っている場合が多いでしょう。見つからない場合は、大家さんか管理会社に問い合わせてみましょう」

 

「二重家賃」を回避するためのチェック事項

現在住んでいる賃貸物件の契約書に沿って、解約通知書を条件期間内に提出すれば、解約日が確定します。ただし、契約書に記載された内容で、退去に関わる内容は他にもいくつかあるので確認しておきましょう。

 

引っ越し日によって現在の賃料と新居の賃料の両方がかかる可能性があります。これを『二重家賃』といい、できれば回避したいものです。解約月の家賃の条件は、月割りと日割りのケースがあります。日割りの場合は、月初に退去した場合に残りの日数分の費用が戻ってきます。3月の下旬は繁忙期で、引っ越し費用が高額になる場合があります。二重家賃や引っ越し費用、新居の入居条件などを合わせて、どのタイミングで引っ越しをするのが適切かを検討するようにしましょう」

 

新居の契約書でもしっかりと確認を!「原状回復」の借主負担は?

契約書の内容で退去時に確認したい事項は、もう一つ。原状回復に関する項目です。

 

「ハウスクリーニング、エアコンクリーニング、物損、傷などに関して、借主の負担条件は特約で記載されていることがあります。原状回復に関しては、貸主側が貸したときの状態に戻すように借主に請求するといった、多額の費用が発生するトラブルが起きることもありました。しかし、平成10年に国土交通省が定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』が取りまとめられてからは、賃借人が借りた当時の状態に戻すのが原状回復の条件ではないと明確化しているので、貸主側からの多額の請求によるトラブルは激減しています。さらに2020年度からは、原状回復に関するルールが民法にも明記されました。

 

契約書の内容以外では、入居時に契約した火災保険や家財保険の解約も忘れずに行う必要があります。火災保険や家財保険が満期を迎えずに退去する場合、日割り計算で費用の一部が戻ってきます。基本的に不動産会社で保険の解約代行はしないので、自分で必ず解約手続きを行うようにしましょう」

【参考】国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

 

感謝を込めてきれいに! 原状回復費用の負担を抑える掃除ポイント

荷造りをしながら進めたいのが、部屋の掃除です。

 

「国土交通省の定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によると、経年変化による劣化は、条件を満たせば新調費用を借主に請求されることはありません。ただし、故意や不注意、手入れ不足で汚したり壊したりした場合などは、工費を請求されることがあります。ほかにも、引っ越し時に粗大ゴミを処分していなかったりゴミが置きっぱなしだったりした場合のゴミ処理負担や、カーペットのシミ、タバコのヤニ、結露を放置したカビによる壁の腐食、ハウスクリーニングにかかる費用などは請求の対象になります。小さなお子さんのイタズラ書きなどは磨いて落とし、ゴミ類はすべて処分してから退去しましょう。水回りや換気扇などはできる限りピカピカになるように掃除をしておいた方が、余計な費用を請求される可能性が低くなります」

 

【関連記事】引っ越しを効率よく行うための手続きから荷造りまでの5ステップ

 

引っ越し1週間前には済ませたい! 退去のスケジュールを確認する

原状回復にかかる費用の目安を確認し、掃除の計画を立てたら、引っ越しに向けてやることをスケジュールにまとめていきましょう。

 

「引っ越し作業を依頼するときは、できるだけ多くの業者に連絡し、料金やサービス内容をチェックして比較する方がいいですね。ウェブからの一括検索で条件に合う業者を絞り込めるので、それらを活用するといいでしょう。引っ越し料金は、基本運賃や割増料金、実費、オプションサービスなどの内訳がはっきりしている明細を出してもらい、不明な料金請求がないことを確認することも大切です。

 

転出届、電気、ガス、水道の解約手続き、電話、インターネット、銀行、クレジットカード類の住所変更、郵便物の転送など、必要な手続きにもれがないように進めていきます。最近は、引っ越し業者からもらえるチェックリストのほか、ウェブでも引っ越しに関わる手続きのチェックリストが無料でダウンロードできるので、それらを活用するといいでしょう」

【参考】引っ越しに関する諸手続きチェックリスト

 

退去時の挨拶はお忘れなく! 引っ越し前日までに近隣住民に一報を

退去時、入居時に挨拶に行った件数アンケート(LIFULL HOME’S調べ)

 

LIFULL HOME’Sが2016年に行ったアンケート調査によると、退去時に1件も挨拶に行かなかった人の数は、全体の47.9%という結果になっています。

 

「このアンケートでは、年代別に統計を取ったわけではないので、40代以降のファミリー世帯や60代くらいのシニア層も含まれています。20~30代の働く女性は、挨拶に行かない人の方が圧倒的に多いと思います。ただ、挨拶はやはり行った方がいいです。最近はリモートワークの人も増え、オンラインミーティングをしていることがあります。実際に、コロナ禍になってから、騒音のトラブルやクレームが増えています。引っ越し日を事前に伝えておくことは、近所へのマナーとして大切です。直接訪問するのが難しい場合や、接触を避けたい場合は、ポストにメモを入れておくだけでもいいので、一報を入れましょう」

 

退去時、入居時の粗品金額に関するアンケート(LIFULL HOME’S調べ)

 

LIFULL HOME’Sの同アンケートによると、近隣に挨拶をした人が粗品を持っていたケースでは、退去時も入居時も500円~1000円が相場という結果に。

 

「退去時も入居時も引っ越しのときの粗品としては、タオル、お菓子、洗剤などを渡すことが好まれているようです。退去時のケースでは、地域指定のゴミ袋を渡すという事例もアンケートの回答で複数ありました。仲良くしていたご近所さんなら、地域指定のゴミ袋も渡しやすいですね」

【アンケート資料】「過去5年以内に土地勘のないエリアに引っ越したことがある人」(2016年9月実施、回答数480人)

 

解約手続きや契約書の内容チェック、掃除や挨拶など、退去時に押さえておくべきポイントはさまざま。契約書のチェック項目は、次の契約時に確認するべきポイントでもあるので、すぐに引っ越しの予定がなくても、内容を読み返しておくことをおすすめします。

 

【プロフィール】

LIFULL HOME’S事業本部 エグゼクティブアドバイザー / 加藤哲哉

慶応義塾大学法学部法律学科卒業。現在は、LIFULL HOME’S事業本部 エグゼクティブアドバイザーのほか、投資事業戦略室長、事業支援ユニット長を兼任。財団法人日本賃貸住宅管理協会の理事も務める。
LIFULL HOME’S https://www.homes.co.jp/

物件探しから契約時,入居後まで“ペット可物件”で快適に暮らすためのチェックポイント

ワークスタイルの変化やおうち時間の増加により、ペットを飼いはじめる人が増えています。一方で、知識の浅さや準備不足から飼い方に困ってしまう人や、近隣とのトラブルに発展してしまう人も。ペットは家族ですから、一度飼いはじめたら、最後のときまで飼い続ける責任が生まれ、簡単に手放すわけにはいきません。人にもペットにも快適な環境を作るには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?

 

今回はとくに「ペット可」の賃貸物件で暮らす際の、物件探しから入居後の日常生活まで、トラブルなく快適に過ごすにはどうしたらいいのかに着目。ペット共生型住宅のコンサルタントとして活躍する薬師寺泰子さんに、ペットと暮らす家のあり方についてうかがいました。

[目次]
1. ペットと暮らしたい! 物件探しの方法と選び方のコツ
2.「ペット可」でも契約書を事前にチェックすること
3. こんな物件は避けたほうがベター
4. ペットと暮らすならこんな部屋を選びたい
5. ペット可の賃貸物件で暮らすときの注意点

 

1. ペットと暮らしたい! 物件探しの方法と選び方のコツ

すでにペットを飼っている人が賃貸物件を探す場合に加えて、これからペットを飼おうとしている人が物件を探すときは、先に飼いたいペットのイメージを持っておくことが大切です。

 

「たとえ『ペット可』とあっても、実は物件によって条件が詳細に決まっています。犬はOKでも猫はNGだったり、小型犬ならOKだったり、種類やサイズ、ペットの頭数などによっては、ペット可であっても入居できない場合があるのです。まれに物件によっては、『災害時にひとりで連れ出せる頭数とサイズまで』や『抱っこできるサイズまで』などと、解釈に迷う条件が、契約書に記されていることもあります。まずは“10kg未満の小型犬を一頭飼う”“猫を一頭飼う”などと、おおよその目星をつけ、それに沿った物件探しをはじめましょう」(ペット共生型住宅のコンサルタント・薬師寺泰子さん、以下同)

 

ペット可物件とペット共生型住宅の違いに注意

「ペット可物件」とは、ペットを飼っても良い物件を示します。さらに「ペット共生型」という言葉がついていたら、共用部分にペットのための設備があるなど、ペット飼育に特化した物件のこと。

 

「このふたつには大きな違いがあります。『ペット可物件』というのは、“飼ってもいい”ということなので、ペットを飼っていない方もマンション内に多くいらっしゃる可能性があります。一方、『ペット共生型』となると、玄関にペットの足洗い場がついていたり、エレベーターに乗る際にペットが同乗することを他の方に伝えられるような“エクスキューズボタン”があったりします。

 

設備面で飼育しやすいのはもちろんですが、ペット共生住宅は、相対的にマナーの良い飼い主が多く、飼い主同士のコミュニケーションがとりやすいこともあり、ペットトラブルが少ない傾向にあるようです」

 

ペットファーストで物件を探す

ペット可物件は増えてきていますが、それでも全体的な物件総数からすれば少なくなります。あれもこれもと条件をつけているうちに、ヒットする物件がなくなってしまうかもしれません。

 

「ペット可物件を探すときは、“ペットファーストで考える”ということを基本にしておくといいでしょう。たとえば駅から遠くても、ペット共生型住宅の方が周囲に気遣うことも少なく、暮らしやすくなります。高層階は見晴らしがよくていいかもしれませんが、毎日散歩に出かけるのであれば、エレベーターで他の住人と会うタイミングも多くなり、肩身の狭い思いをするかもしれません。ペットに関わる以外の条件は少しゆるめ、ペットと暮らすことが堂々とできるかどうか、という視点で選ぶと失敗が少ないでしょう」

 

2. 「ペット可」でも契約書を事前にチェックすること

賃貸契約は、いい物件に巡りあい、いざ契約という段になって契約書を読むのが一般的な流れです。でも実は、契約書を読んではじめて“違った”と思うことや、“聞いていなかった”ということが多々あるのです。物件に申し込みを入れるタイミングで、一度物件の契約書を読んでみましょう。

 

敷金と原状回復には要注意!

ペット可物件では、通常よりも1か月分敷金を多く取る物件が一般的です。

 

「普通は、退去時に部屋のクリーニングや破損修理などを敷金から行い、残りは返金されるシステムですよね。ですが、一か月分多く敷金を払っていても、敷金以上にクリーニング代がかかることがあります。契約書にそう記されていたら、退去時に金銭が発生すると考えなくてはなりません。入居時に部屋の写真を撮っておくというのも大切です」

 

入居以降にペットが増えたときは退去しなくてはならないことも

契約書には必ずペットの種類や頭数、サイズなどの記述があります。それは入居時だけでなく、退去するまで守らなくてはならない約束ごとです。

 

「特に猫の場合は、“入居時は2匹だったものが、思わぬ妊娠や出産で増えてしまった”ということにならないよう、避妊・去勢手術をすることも大切です。猫は生後1歳前でも妊娠することができるので、オスとメスで飼っている場合は、早めの対応が必要です。また、避妊・去勢手術をすることで、発情期のメスの大きな鳴き声や、オスがあちこちにするニオイつけのおしっこを防ぐこともできます」

 

ワクチンに関する規約を確認すること

いざ契約時になったときに、「ペットのワクチン証明書を持ってきてください」と言われることがあります。

 

「こちらも契約書を確認することで事前にわかりますが、ワクチンを打つことが入居の条件であるとされている物件もあるのです。狂犬病ワクチンを打つことと、お住まいの市町村への登録は法律で義務づけられていますが、それ以外のワクチンは任意です。物件によってはこの任意のワクチンの摂取が必要となる場合もありますから、確認しましょう。持病などで打てないときはかかりつけの獣医さんに一筆書いてもらうなどでもよいのかも、聞いてみましょう」

 

3. こんな物件は避けたほうがベター

立地や間取りなどが気に入っても、ペットと暮らすにはあまりおすすめできない物件もあるそうです。

 

・高層階の物件

「特に猫を飼う方に注意が必要なのですが、猫によっては人の足元をするりと抜けて、ドアの向こうにパッと出てしまったりすることがあります。気づかないうちにベランダに追い出してしまったり、クローゼットの中に閉じ込めてしまったり……ということもよく聞きます。

 

なかでも一番危険なのは、猫がベランダから足を滑らして落下してしまうことです。特に高層階では階下に落ちると命の危険を伴います。万一ベランダに出て落下してしまっても、怪我が軽く済む可能性のある2階までのほうが安心です。いずれにしても、猫を落下の危険から守るため、ベランダの手すり近くにはペットの足場になるようなものを置かないようにしたり、掃き出し窓にガードをつけてベランダには簡単に出られないよう気をつけましょう」

 

・ゴミ出しの日が決まっている物件

「ペットを飼うと、どうしてもゴミがたくさん出ますよね。犬であればペットシーツ、猫ならば汚れた砂が毎日出るので、マンション内にいつでも出してよいゴミ捨て場があるととても便利です。ゴミを出せる曜日が決まっている物件では、自室内にずっと汚れ物を置いておかなくてはならなくなります」

 

・散歩に行くまでの導線が面倒な物件

「毎日散歩する必要のある種類のペットを飼うときは、連れて出やすい、ということが好ポイントになります。戸数が多いのにエレベーターがひとつしかなければ、ペットを連れて散歩に出るときに誰かと一緒になりやすく、気を遣います。できれば、ペット専用エレベーターがあったり、ペット専用の出入口があると、気兼ねなく連れ出すことができます。

 

また、外へ出ても狭い道や階段が多くあるとペットと一緒に歩きづらい、ということもあります。そうなると散歩に出かけるのに気が重くなってしまうので、散歩の行き来がスムーズにできるか、という点も考えてみましょう」

 

4. ペットと暮らすならこんな部屋を選びたい

ペット共生型住宅であれば、それがいちばん理想的な環境です。

 

「まわりにも同じ環境の方がいて極端に気を遣う心配がないため、神経質に暮らさなくてもよくなります。ペット共生型住宅なら、引っ掻き傷がつきにくい壁紙にしていたり、汚れやおしっこに強い床材が使われていたりと、室内での暮らしも、傷や汚れを気にすることなく快適に暮らせます。また、よく足洗い場が入口にありますが、実は犬種によってはあまり使わないこともあるので、外側の施設というよりは、個々の部屋の暮らしやすさを見るのがおすすめです。新築なのにペット可であれば、オーナーさんがペット好きの可能性も。床材や壁紙にこだわりを持って作られている場合もありますから、チェックしてみましょう」

 

5. ペット可の賃貸物件で暮らすときの注意点

ペット可物件であっても、ペット共生型住宅であっても、周りに配慮して生活するのは変わりません。

 

「マンション内にはペットアレルギーの方もいらっしゃるかもしれませんし、小さな犬や猫でも怖いと感じる方もいらっしゃいます。そういう可能性があることも頭に入れて、共用部分を使うときには特に注意しましょう。また、鳴き声や足音などの騒音やニオイなどのトラブルは、苦情を申し立てるほうも我慢に我慢を重ねて言うことが多いのです。溝が深まらないよう、日頃からコミュニケーションをとったり、防音などの環境を整えたりしましょう。部屋の中の設備は、壁と床を傷つけないよう、下記のようなアイテムを使って工夫をするのがおすすめです」

 

ペットと暮らすときに準備したいアイテム

ここでは、ペットを飼うときにトラブルにならないよう、おすすめしたいアイテムをご紹介します。

 

・壁を傷つけないようにする爪とぎ

ペピイ「壁に貼れる爪とぎボード」
3520円(1枚・税込)

「猫は、壁の角や各部屋の出入り口付近で、爪とぎをしがちです。このように爪とぎボードを用意してあげると、ここで爪とぎしますから壁が傷みません。その他の保護したい壁には、爪とぎ防止になる半透明のシートを貼っておくといいでしょう。壁がつるつるしてひっかからず、その場所では爪とぎしなくなるのでおすすめです」

 

・防音と傷の保護になる床材

ペピイ「ピタッと吸着タイルマット 大判サイズ」
3300円(無地3枚・)
※他に柄物もあり

「薄いのに吸着力がよくてずれないので、使いやすい床用シートです。ペットの爪で傷になることを防ぎ、走っても滑りにくく、ペットの足にやさしくて安心です。部分的に洗えるシートなので、掃除も楽でしょう。おしっこや吐瀉物は、床が汚れるだけでなく、そのアンモニアが木材を傷めてしまい、臭いがしみついて悪臭の原因にもなってしまうのです」

 

・ペットの脱走防止に

日本育児「のぼれんにゃん バリアフリー 2」
1万8480円(税込)

「特に、猫はあっという間にすり抜けて外へ出てしまうので、ガードをつけておくのが安心です。ベランダだけでなく、玄関につけたり、入れたくない部屋との境にするのもいいでしょう。お留守番のとき、狭い小屋に入れるのはかわいそうでも、ペットがいる空間との仕切りにガードをしておけば、その部分だけ自由に動きまわることができ、ペットにとってもストレスがありません」

 

どんなときも癒してくれるペットの存在はとても大切なものですが、一度飼いはじめたら長くおつきあいしていく命でもあります。飼うときには慎重に考え、準備や住まいの選択を抜かりなく行い、ペットも人も心地よい暮らしができるよう努めましょう。

 

【プロフィール】

ペットライフコンサルタント / 薬師寺泰子

株式会社クララ代表取締役。住宅業界とペット業界の双方に携わった経験と知識を生かし、ペット共生住宅のコンサルタントとして活動の場を広げる中、企画設計コンサルティングをおこなった猫専用賃貸マンション1階に、猫専用ホテルのさきがけとなる「ねこままホテル」を開店。その他、動物専門学校講師、セミナー講演、雑誌、新聞、ウェブでの執筆などでも活躍。