関西の酒と食の面白さを、酒場を愛するライターが探る噺

提供:宝酒造株式会社

 

関西で甲類焼酎を使ったチューハイを独自の工夫で美味しく飲ませてくれるお店に伺って、その味わいを堪能するシリーズ関西チューハイ事情。日本酒を主役に、関西独自の食文化を深掘りした関西食文化研究。今回は、東京生まれ、大阪在住のライター・スズキナオさんが、独自の視点で関西のお店を巡った両シリーズを振り返っていきます。

 

 

最高の相性「純ハイ」と「串カツ」

【関西チューハイ事情】シリーズでまず訪れたのは、大阪生まれの「純ハイ」が定番酒となっている「ヨネヤ」の梅田本店です。

スズキナオ/東京出身、大阪在住の酒場ライター。酒噺で「関西食文化研究」や「関西チューハイ事情」連載を担当。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』などがあるが、テクノラップユニット「チミドロ」のリーダーとしても活動する

 

「純ハイ」とは、宝焼酎「純」をベースにした「酎ハイ」のこと。「純」は宝酒造が誇る11種類の樽貯蔵熟成酒を13%ブレンドした、まろやかで口当たりのよいワンランク上の甲類焼酎です。

 

「ヨネヤ 梅田本店」ではアルコール度数35%の「純」を使用することで、飲みごたえがあり、割ってもお酒の風味が薄れないおいしさに仕上がっています。また、ガス圧を強めに設定した専用ディスペンサーから注ぐことで、キレと爽快感も抜群です。

↑「純ハイ」を安定した品質で提供するためだけに作られた専用のディスペンサー(「純スペ」と呼ばれるそう)

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 大阪チューハイ文化のパイオニア、ヨネヤ「純ハイ」の噺

 

どんな料理にも合う「純ハイ」ですが、大阪名物「串カツ」との相性は抜群です。【関西チューハイ事情】も第3回では「串カツ」の人気店「串かつだるま」を紹介。大阪・浪速の繁華街、新世界で1929(昭和4)年に創業された「串かつだるま」は、「串カツ」を大阪名物へと押し上げた立役者。大阪市内と京都に10数店舗を展開し、その魅力を発信してきました。

 

その老舗で、新名物として親しまれているお酒が「だるまハイボール純」。こちらは同社の常務取締役・藪口征平さんが、ミナミの有名焼肉店で「純ハイ」を飲んで感銘を受けて誕生しました。35度の「純」と強炭酸水、レモン風味のオリジナルエキス、そしてカットレモンがおいしさの決め手です。

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 串かつを大阪名物に押し上げた[串かつ だるま]と、「だるまハイボール純」の噺

 

京都ローカルの「赤い」お酒

「純ハイ」以外に個性を放っている「酎ハイ」があります。それが「あか」や「ばくだん」と呼ばれる甘酸っぱくて赤いお酒。こちらは関西というか京都のローカル酒で、京都市下京区のお好み焼き店「やすい」発祥といわれています。

 

そんな酎ハイを紹介したのが第4回の「お好み焼 吉野」。「あか」も「ばくだん」も、赤ワインを加える「酎ハイ」。作り方には店ごとに細かな違いがあり、ワインの種類も違えば、甲類焼酎を炭酸水ではなくサイダーで割って甘くするスタイルも。「お好み焼 吉野」では35度の宝焼酎「純」に、強炭酸と絶妙な量の赤ワインを注ぎ入れることがおいしさのこだわりです。

↑35度の宝焼酎「純」に、強炭酸と絶妙な量の赤ワインをいれて作る「お好み焼き 吉野」の「あか」

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 京都ならでは!?[お好み焼 吉野]で味わう「赤」の噺

 

「レモンサワー用焼酎」で、ひと味違う「酎ハイ」を楽しむ

京都では「夢処 漁師めし 雑魚や」も紹介しました。こちらは現地で人気の飲食企業「雑魚やグループ」が展開する一軒。どの業態もとびきり新鮮な海の幸を主体としており、同店では鮮魚に合う「生レモン酎ハイ」が人気。

 

この「生レモン酎ハイ」のベースとなっているのが、アルコール度数35%の宝焼酎「レモンサワー用焼酎」です。レモンの爽やかな成分との相性を追求した、レモン系の香り成分を持つハーブを原材料の一部に使用しており、その香り高さと爽快感が、多くの食通酒好きをトリコにしています。

↑アルコール度数35%の宝焼酎「レモンサワー用焼酎」を使った「生レモン酎ハイ」が料理にマッチ!

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 意外なベストパートナー!? 京都[雑魚や]で味わう海鮮×「生レモン酎ハイ」の噺

 

第5回で紹介した「焼肉ホルモン おときち 堺駅南口店」も「レモンサワー」には宝焼酎「レモンサワー用焼酎」35度を使用していました。2021年にオープンした同店では、各席に強炭酸の卓上サーバーが設えられていることが特徴。お客さんは飲み放題をオーダーすることで、このサーバーを使って自由に注ぐことが可能になります。

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】自席でチューハイを注げる。エンタメ要素も満載![焼肉ホルモンおときち]の噺

 

 

関西でも浸透しつつある関東流の飲み方

【関西チューハイ事情】シリーズでは、東京から関西に進出した「立呑み晩杯屋」にも訪問。同店は2009年に東京・武蔵小山で1号店が開業し、2022年に大阪の十三(じゅうそう)に関西1号店がオープンしました。

 

創業者は、東京・赤羽の老舗立飲み店「いこい」出身で、「立呑み晩杯屋」にもそのおいしくて安いDNAが色濃く継承。甲類焼酎を「バイス」「ホッピー」「ハイサワー」など東京生まれの割り材で割って飲む「酎ハイ」や、「甲類焼酎=ナカ」と「割り材=ソト」で個別に提供し、好みの濃度で楽しむ東京流の飲み方を関西でも貫き、そのカルチャー浸透に一役買っています。

↑東京生まれの「バイス」が関西で飲めるのもうれしい

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺

 

日本酒を主役に関西の食文化を巡る

日本酒を主役に、関西独自の食文化を深掘りした【関西食文化研究】シリーズ。初回に訪れたのは、京都市東山区のうなぎ料理店「うぞふすい わらじや」です。

 

まずは、「鰻の白焼き」とスパークリング日本酒の先駆けである松竹梅白壁蔵「澪」で一献。そして同店の名物である、やさしい出汁と筒切りにしたうなぎが主体の鍋「うなべ」を松竹梅「豪快」の熱燗でペアリング。料理と酒のうまみ同士が引き立て合ううえ、鍋の隠し味にはタカラ料理清酒のほかに「豪快」も使われているとのこと。温かいもの同士でもあり、ますますお酒が進むご馳走だったことでしょう。

 

【関連記事】
【関西食文化研究】 京都[わらじや]で、日本酒と味わう「うなべ」と「うぞふすい」の噺

 

斬新な日本酒の提供方法

第2回では、大阪・京橋を代表する立ち飲み店「酒房まつい」へ。こちらの特徴的な日本酒の提供法が、一升(1.8L)強入るという巨大な錫製の徳利から、同じく錫のコップに注ぐスタイル。これは、大の日本酒通だった創業者が発案したそうです。

↑一升(1.8ℓ)ちょっと入るという大きな錫製の徳利

 

取材では、この店の定番酒である松竹梅「豪快」をお燗に。錫のお猪口や盃などは味わいをまろやかにする特徴があるといわれますが、徳利まで錫製という同店の味はよりふわっとやわらかに。名物の串カツにおでん、どて焼きとも好相性で、日本酒好きにはぜひ訪れていただきたい関西の名店です。

 

【関連記事】
【関西食文化研究】京橋のアミューズメント酒場!?[酒房まつい]の錫器(すずき)で味わう日本酒の噺

 

 

神戸牛と日本酒のマリアージュを楽しむ

第3回では兵庫県の神戸へ。「京都・伏見」と並ぶ酒都の「灘」があるうえ、同県は“酒米の王様”と称される山田錦や、ブランド黒毛和牛のルーツとも呼ばれる但馬牛のふるさとであるなど、優れた食材の宝庫。

 

そんな兵庫で、神戸牛と日本酒とのペアリングを探ったのが「神戸牛 八坐和 阪急三宮店」。コース序盤の肉寿司にはスパークリング日本酒「澪」、赤身ステーキには「松竹梅白壁蔵」<生酛純米>、霜降り肉には「松竹梅白壁蔵」<純米大吟醸>をペアリング。日本酒がお肉それぞれのおいしさをより高めてくれるお酒であることを、スズキナオさんも実感したようです。

↑贅沢に前菜感覚で味わう神戸牛肉寿司とスパークリング日本酒「澪」

 

【関連記事】
【関西食文化研究】 世界が憧れる神戸牛と日本酒のペアリング! [神戸牛 八坐和(やざわ)]で食べ・飲み比べの噺

 

京都の焼肉カルチャーを堪能する

兵庫にはステーキの名店がひしめく「神戸」、大阪にはコリアンタウンの「鶴橋」など、関西には各地に個性的な肉食文化圏がありますが、京都にもこの地ならではの特色が。第4回にうかがったのは、2021年に東京へ進出して話題にもなった「焼肉・塩ホルモン アジェ」の松原本店です。

 

京都の焼肉店でよく見られる特徴のひとつが「洗いダレ」。出汁や酸味を感じるあっさりした味わいで、「アジェ」でも欠かせないタレとなっています。同店名物の「ホソ(牛の小腸) 塩」にはスパークリング日本酒「澪」、「上ハラミ 塩」には松竹梅「豪快」を。脂の甘み豊かな部位には甘口、肉汁とうまみがあふれる部位には辛口がよく合います。関東の人は、ぜひ東京・有楽町店へ。

↑ホソ塩専用に作られた“洗いダレ”

 

【関連記事】
【関西食文化研究】 京都焼肉の革命児[アジェ]の名物に合わせて日本酒で一献の噺

 

いかがでしたか? 東京まれ・大阪在住のスズキナオさんの独自の視点で選ばれたお店の数々。あなたはどのお店に通いたくなりましたか?

 

 

【関西チューハイ事情】

【関西チューハイ事情】 大阪チューハイ文化のパイオニア、ヨネヤ「純ハイ」の噺

【関西チューハイ事情】 串かつを大阪名物に押し上げた[串かつ だるま]と、「だるまハイボール純」の噺

【関西チューハイ事情】 京都ならでは!?[お好み焼 吉野]で味わう「赤」の噺

【関西チューハイ事情】 意外なベストパートナー!? 京都[雑魚や]で味わう海鮮×「生レモン酎ハイ」の噺

【関西チューハイ事情】自席でチューハイを注げる。エンタメ要素も満載![焼肉ホルモンおときち]の噺

【関西チューハイ事情】 東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺

 

【関西食文化研究】

【関西食文化研究】 京都[わらじや]で、日本酒と味わう「うなべ」と「うぞふすい」の噺

【関西食文化研究】京橋のアミューズメント酒場!?[酒房まつい]の錫器(すずき)で味わう日本酒の噺

【関西食文化研究】 世界が憧れる神戸牛と日本酒のペアリング! [神戸牛 八坐和(やざわ)]で食べ・飲み比べの噺

【関西食文化研究】 京都焼肉の革命児[アジェ]の名物に合わせて日本酒で一献の噺

 

焼酎を飲むならこんな店【東京・大衆酒場の名店】を振り返る噺

提供:宝酒造株式会社

【前編】【後編】にわたって、パリッコさんとスズキナオさんのおふたりに「関東と関西の酒場事情」について語っていただきました。読めば読むほど、酒場に行きたくなる記事でしたが「では、どんなお店に行こうか?」という悩みも増えてしまったかもしれません。

 

そこで今回は、東京・下町の酒場を様々な切り口で紹介してきた【東京・大衆酒場の名店】シリーズを振り返ります。この記事を読んでおけば、東京の酒場選びで迷うことはなくなるはず!

 

 

江戸の水路が下町の大衆酒場を生んだ

「酒噺」では【東京・大衆酒場の名店】と題して、味わい深い東京・下町の酒場カルチャーを紹介してきました。まずは、大衆酒場のルーツに触れる記事として注目したいのが第2回。江戸川区・篠崎の「大林(おおばやし)」で、なぜ、東京の下町には大衆酒場が多いのかという理由を、大衆酒場に詳しい藤原法仁(のりひと)さんに教えてもらいました。

↑右が大衆酒場に詳しい藤原法仁さん。左は【東京・大衆酒場の名店】シリーズのナビゲーターを務めた中村優さん

 

藤原さんによると、東京はもともと入江や川が多く、江戸時代から水路と船を活用した物流が盛んでした。そのため川沿いを中心に産業が栄えて人が集まり、街が発展してきたとのこと。

 

その後、水運の利点を生かして工業地帯や企業城下町として発展する街が増加。加えて工場では多くの労働者が働いていますから、その憩いの場として下町に大衆酒場が栄えたのです。

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

 

東京の酒場を代表する「酎ハイ」

そんな東京の下町で生まれた大衆酒場文化のひとつに「酎ハイ」があります。関東の大衆酒場文化を語るにあたって「酎ハイ」は欠かせないお酒です。そのルーツともいわれているお店が、第3回に登場した墨田区の「三祐酒場(さんゆうさかば) 八広(やひろ)店」です。

 

三代目である現店主の伯父が、かつて京成曳舟駅近くで「三祐酒場 本店」を営んでいた1951(昭和26)年、アメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ「ウイスキーハイボール」の味に感銘を受けて発明したお酒が「焼酎ハイボール」。これが省略され、「酎ハイ」と呼ばれるようになりました。

 

当時、ウイスキーは希少で高価なお酒でした。その一方、焼酎は安価でしたが精製技術が現代のように優れてはおらず、香りが強くて飲みにくい銘柄も少なくなかったとか。そこで、炭酸水で割るとともに独自のエキス(シロップ)をブレンドすることで、飲みやすい「焼酎ハイボール」が誕生したのです。

↑薄く琥珀色に色づいた「三祐酒場 八広店」の「元祖焼酎ハイボール」

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

 

 

名店が連なる「酎ハイ街道」を往く

墨田区で生まれたとされる「酎ハイ」は、やがて周辺地域の大衆酒場へ広がり、定着していきました。そして現在も、昔ながらの「焼酎ハイボール」を提供する店が30軒以上残っているのが「酎ハイ街道」です。正式名称は、鐘ヶ淵通り。「鐘ケ淵陸橋」交差点から南東方面の東武スカイツリーライン「鐘ケ淵駅」前を抜け、「四ツ木橋南」交差点まで全長2km強の道路です。

↑現在の鐘ヶ淵通り。都市開発による道路の拡張工事が進行し、移転や建て替えなどを余儀なくされた名酒場も少なくありません

 

この地にはかつて巨大企業、鐘淵紡績(かねがふちぼうせき・カネボウの前身)がありました。周辺や鐘ヶ淵通りにはその関連工場が多く、界隈の酒場はその労働者でにぎわっており、その名残がいまも「酎ハイ」とともに輝いているのです。

 

「酎ハイ街道」のなかでも特に有名なのが、第4回で紹介した「亀屋」。焼酎に加えるエキスは各店が独自に考案したものが多く、「亀屋」は現店主の父親にあたる二代目が、従来の「焼酎ハイボール」をブラッシュアップさせる形で1990年前後に新開発しました。

↑「亀屋」の創業は昭和7(1932)年。もともと「鐘ケ淵駅」の隣の停車場「東向島駅」の近くで立ち飲み酒場として始まったそう

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広「亀屋」の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺

 

お店ごとで違う「酎ハイ」の飲み方

「酎ハイ」はお店ごとに提供方法が異なるのも特徴です。「三祐酒場 八広店」ではサーバーでブレンドした「元祖焼酎ハイボール」を、氷が入ったグラスに注いで半月スライスレモンを加えるスタイル。「亀屋」はグラス、オリジナルの焼酎ハイボールの素(もと)、炭酸水をあらかじめしっかり冷やす“3冷(さんれい)”スタイルで、氷を入れないこともポイントです。これは氷が希少だった昭和のオールドスタイル。「亀屋」はいわば、正統派の下町焼酎ハイボールなのです。

↑「亀屋」名物の「焼酎ハイボール」はグラス、オリジナルの焼酎ハイボールの素(もと)、炭酸水をあらかじめしっかり冷やす“3冷(さんれい)”スタイル

 

なお、篠崎「大林」は、オリジナルの焼酎ハイボールの素、炭酸水、アイスペール(氷ボックス)を個別に提供する三点セット式。贅沢な仕様に加え、好みの濃さで楽しめるのも特徴です。

↑「大林」の「タカラ焼酎ハイボール(赤)」。宝焼酎に独自のエキスを加えた“焼酎ハイボールの素”の入ったグラス、炭酸のボトル、アイスペール(および混ぜるためのジョッキ)の三点セットは珍しく、なおかつ焼酎を受け皿付きで提供する店は希少とか

 

“3冷”を語るうえで覚えておきたいのが、関東の大衆酒場でおなじみの割り材「ホッピー」の作法。“3冷”はメーカーのホッピービバレッジも推奨している飲み方です。【意外と知らない焼酎の噺】では、第8回で詳しく紹介しました。

 

東京生まれの「ホッピー」ですが、東京はもちろん神奈川にも聖地が多くあります。そのひとつが横須賀。“横須賀割り”という「ホッピー」や「酎ハイ」の飲み方が浸透しているこの地を、第9回の「酒蔵お太幸 中央店」で深掘りしました。

↑「酒蔵お太幸 中央店」は、2フロアで合計約200席という広い店内の設えも個性的。1階はコの字とL字を組み合わせた「H型」ともいえる変形カウンター、2階は桟敷(さじき)とテーブル席からなる団体用のレイアウトとなっており、この大箱ならではの開放感も魅力です

 

“横須賀割り”とは、焼酎濃いめで作ったお酒を飲む文化のこと。諸説ありますが、軍港や造船の街として栄えた横須賀では、濃いお酒を飲むことにより海風で冷えた体を温めたとか、酒に強い九州出身者が船で出稼ぎにやってきていたなどが、”横須賀割り”誕生の理由だといわれています。

↑「酒蔵お太幸」の焼酎は130ml〜140ml。「ホッピー」で割って飲む場合の一般的な目安は普通が70ml、濃いめが110mlなので、この量はかなり濃いです

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

 

 

東京を代表する煮込みの名店といえば

東京の大衆酒場において、欠かせない料理が「煮込み」と「もつ焼き」です。【東京・大衆酒場の名店】の初回に登場した立石「宇ち多゛」は、行列店としても圧倒的に有名。同店の特徴は多岐にわたりますが、素材に関してはとにかく鮮度が抜群で、調理や味付けも秀逸です。

↑「宇ち多゛」は開店前から行列のできる人気店

 

「煮込み」はもつと味噌だけで煮込んだ凝縮感のあるおいしさで、「白いとこ(シロの周りの部位やハツモトなど、色が白い部分を中心)」「黒いとこ(フワやレバなどの黒い部位が中心)」と部位別のオーダーも可能。「もつ焼き」にもレバ(肝臓)、シロ(大腸)、ガツ(胃)、アブラ(頬)など部位が多彩にあるうえ、味付けも焼き方もバラエティ豊富です。

↑「宇ち多゛」人気メニューの煮込み

 

↑レバのタレ・普通焼き

 

どれも品切れごめんですが、おつまみもお酒も絶品できわめて良心的な価格設定。独自のルールがあるなどハードルは高いものの、ぜひ「酒噺」を参考に訪れていただきたい一軒です。

↑グラスに並々と宝焼酎を注ぎ、梅のシロップを足す「うめ割り」が有名

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】この緊張感は何だ? 行列しても入りたい立石「宇ち多゛」の強烈な魅力の噺

 

東京五大煮込みを堪能する

第8回で紹介した門前仲町「大坂屋」も東京を代表する名酒場であり、なかでも代名詞となっているのが「牛にこみ」。「宇ち多゛」とともに、“東京五大煮込み”に数えられる名店でもあります。

 

「大坂屋」の名物はもちろん「煮込み」。串に刺したもつを煮込むのが特徴です。珍しい三日月形のカウンターには大鍋が設えられ、そこから目の前で提供してもらえるライブ感もたまりません。

↑三日月形のカウンターの中央に鎮座した「煮込み」の鍋が特徴

 

「煮込み」の部位はシロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(喉)の3種で、味付けは味噌ベースとなっています。こちらも野菜などは入らない、甘じょっぱく濃厚な味が魅力。最後は半熟玉子に煮込みの汁をかけて味わう「玉子入りスープ」でシメるのがオススメです。

↑串に刺された「大坂屋」の煮込み。シロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(喉)の3種。味は味噌ベース

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺

 

カウンターで楽しむ大衆酒場

【東京・大衆酒場の名店】では、門前仲町でもう一軒お店を紹介しました。それが第6回の「だるま」。横長のコの字型カウンターや、両親の遺志を継いだ二代目姉妹の連携プレーなど見どころは満載です。

↑奥から1席・9席・4席の横長タイプの「コの字」カウンター

 

看板メニューとなっているのが「牛モツ煮込み」。もつの部位は牛の大腸と小腸で、具材にはこんにゃくと玉ネギも使用。それらを米味噌とザラメで味付けた、パンチのある甘じょっぱさも魅力です。

↑「だるま」の「牛モツ煮込み」。秘伝の米みそとザラメで味付け

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「だるま」で、コの字カウンター劇場を堪能する噺

 

大衆酒場の定番つまみである「煮込み」は、お通しで提供するお店も少なくありません。そのお通しを、しかもサービスで提供してくれるのが、第7回で紹介した船堀の「伊勢周」。

 

同店は、個性的なL字型カウンターであることも特徴。店内スペースにも卓上にもゆとりがあり、厨房側からも座れる対面式のカウンターは非常に珍しい設計といえるでしょう。

 

【関連記事】
【東京・大衆酒場の名店】船堀「伊勢周」で、L字カウンターの機能美を楽しむ噺

 

いかがでしたか? 今回紹介したお店はどれもシリーズのタイトルどおりの「名店」ぞろい。気になったお店があればぜひ訪問してみてください! 次回は関西のお店を巡ったシリーズを振り返りますのでお楽しみに!

 

 

「東京・大衆酒場の名店」バックナンバーはこちら▼

・第1回 【東京・大衆酒場の名店】この緊張感は何だ? 行列しても入りたい立石「宇ち多゛」の強烈な魅力の噺

・第2回 【東京・大衆酒場の名店】初心者女子と楽しく学ぶ! 篠崎「大林」の魅力と「下町酒場の成り立ち」の噺

・第3回 【東京・大衆酒場の名店】伝説の「三祐酒場」で聞く「元祖焼酎ハイボール」発祥の噺

・第4回 【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広「亀屋」の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺

・第5回 【東京・大衆酒場の名店】四ツ木「ゑびす」で、自家製ロックアイスのお茶割りを味わう噺

・第6回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「だるま」で、コの字カウンター劇場を堪能する噺

・第7回 【東京・大衆酒場の名店】船堀「伊勢周」で、L字カウンターの機能美を楽しむ噺

・第8回 【東京・大衆酒場の名店】門前仲町「大坂屋」の“牛にこみ”を三日月型カウンターで堪能する噺

・第9回 【東京・大衆酒場の名店】「お太幸」の変形カウンターで、横須賀の味わいを満喫する噺

・第10回【東京・大衆酒場の名店】渋谷に復活!「立呑 富士屋本店」のカウンターで伝説の立ち飲みを楽しむ噺

・番外編 大衆酒場の酎ハイに欠かせない「下町炭酸」を飲み比べる噺

・番外編 焼酎ハイボールに合う!「東京・大衆酒場の名店」のおつまみを、約5000円の調理家電で再現する噺

楽に味良しコスパ良し!ペットボトル茶でOKな“極上”の「お茶割り」づくりをGetNaviweb編集長が自宅で実践!

提供:宝酒造株式会社

お茶割りといえば、酎ハイ(焼酎ハイボール)やレモンサワーと並ぶ焼酎の定番の割り方。昨今は、若年層にいたるまで幅広い年代で人気が高まっています。大のお酒好きであるGetNavi webの編集長も、このところの晩酌ではお茶割り、とくに緑茶割りがお気に入り。それに欠かせないのが「極上〈宝焼酎〉」だとか。

 

いま巷でなぜお茶割りが流行っている? そのトレンド事情に触れながら、帰宅後に実践している簡単でおいしいお茶割りのつくり方やおすすめのフードペアリングなどを明らかに。家飲みがもっと楽しくなる方法を教えてもらいましょう。

宝酒造
極上〈宝焼酎〉

ポイント
・ピュアなアルコールに、大麦やトウモロコシを原料とした貯蔵熟成酒をブレンド。
・すっきりした飲みやすさと芳醇な香味を両立しており、お茶をはじめあらゆる割材と好相性。
・アルコール度数25度、220ml〜4Lまでの13アイテムをラインナップ。(写真は600ml)

 

帰宅後のお茶割りは2ステップでいい!

和田 史子(わだふみこ)/女性ファッション誌やモノ情報誌などの編集を経験した後、2017年に学研プラスへ入社。GetNavi web編集部では、お酒・飲料ジャンルなどを担当。また、GetNavi監修のライフスタイルウェブマガジン「@Living」の編集長も兼務し、家での時間を快適に過ごすための情報を発信してきた。2024年、GetNavi web編集長に就任。帰宅後のおいしい一杯を楽しむために、所要1時間の徒歩での帰宅を日課としている。

 

まずは、お茶割りの魅力について聞いてみました。

 

自宅で飲むお酒としてお茶割りは万能なんです。休日は急須からお茶を淹れますけど、平日夜はもっぱらペットボトル茶。コスパもいいし、どんな食事にも合います。それに、自分好みにいろいろとアレンジできるところも魅力ですね」(和田)

 

そのお茶割りに「極上〈宝焼酎〉」を選択する理由とは?

 

すっきりクリアな口当たりや、ほんのりまろやかなコクを感じる豊かな味わいが、お茶のうまみや渋味と絶妙に調和するんですよ。味に厚みがあるけれど主張しすぎず、お茶本来のおいしさも引き立ててくれる名役者! だから飲み飽きず、おかわりしたくなっちゃいますね」(和田)

 

時間がない日でも、お茶と「極上〈宝焼酎〉」さえあればOK! そこで、普段実践するレシピを教えてもらいました。

 

1.氷と『極上〈宝焼酎〉』をよく混ぜ冷やす

「まずはグラスに氷を入れ、『極上〈宝焼酎〉』を注いでよく混ぜ、冷やします」(和田)

↑まずはグラスに氷を入れてマドラーで攪拌。グラスをしっかり冷やします

 

2.グラスにお茶を注ぐ

「このベースに注ぐ割合は、焼酎:お茶が1:2。アルコール度数25%が、割ることで約8.3%になる計算ですね」(和田)

↑今回用意した割り材は平日夜用にストックするペットボトルの緑茶

 

 

自家製の「お茶割り」は、自分に適したボディ感に調整できるのもポイント。カタめ(焼酎の濃い味)が好みな和田は普段1:2のようですが、割合を変えると味わいにはどんな違いが出てくるのでしょうか? 同時に1:1と1:4のお茶割りもつくって、テイスティングしてもらいました。

↑左から、割合はそれぞれ1:4(アルコール度数5%)、1:2(約8.3%)、1:1(12.5%)

 

「1:4は、よりすっきりした爽快感が印象的でスムースな飲み口です。1:2は安定のおいしさ! 焼酎のコクとお茶の清涼感が好バランスにマッチしていると思います。季節やシーンを問わずに楽しむなら、私はやっぱりこれですね」(和田)

 

続いて、あえて焼酎を濃いめにしてつくった1:1はどうでしょうか?

 

「実は1:1は初めてです。豊かな厚みがありますが、ツンとした強さは皆無で余韻の重さも感じません。口当たりはまろやかでいて、ラストはスカッとした後キレのよさがいいですね! 甘じょっぱくて濃厚な料理には、これくらい濃くても合うんじゃないでしょうか」(和田)

 

 

お茶割りはどんな料理にも合う!

和田はお茶割りの魅力のひとつに、食中酒としてのマッチングを挙げます。その万能性はビールやハイボールといった炭酸系のお酒よりも実は優れているとか。

 

炭酸の刺激がないぶん、繊細な味の料理に合わせやすいと思います。繊細な料理の代表格にはまず和食が挙げられますが、焼酎や緑茶も日本生まれ。出自が一緒という観点でも、緑茶のお茶割りはペアリングの理にかなっているといえるでしょう。“和スイーツ”にも合いますよ! さらに、お茶割りは温めて飲むこともできますから、自由度の高さでも優秀なんです」(和田)

 

一方、濃厚な味の料理にも合う理由とは?

 

茶葉に含まれるカテキンの効果だと思うんですけど、お茶割りの渋味や苦みが油分をさっぱりさせてくれるんです。繊細な和食から濃厚な肉料理まで、とにかくお茶割りはどんな料理にも合う、優秀な食中酒なんです!」(和田)

 

そこで、和田がオススメするおつまみを紹介してもらいました。つくってもらったのは、コンビニで手に入る食材でアレンジしたおつまみ3種。「肉料理」「和食」「スイーツ」の3テーマでそれぞれペアリングし、お茶割りとの相性も語ってもらいました。

 

【肉料理】キムチ納豆+サラダチキン

「お茶にはうまみが含まれていますが、発酵食品であるキムチと納豆にもうまみが豊富。お茶割りはこうしたうまみとケンカせずに寄り添います。また、『極上〈宝焼酎〉』もうまみを感じる甲類焼酎なので、マッチするのは必然なんですよ」(和田)

↑肉料理には「キムチ納豆サラダチキン」を。キムチと納豆を混ぜ、ほぐしたサラダチキンにのせるだけ。お好みでごま油、ごま、青ねぎなどをあしらいましょう

 

【和食】さば缶ガリきゅうり

さばの豊かなうまみを、きゅうりの清涼感とガリの辛みや甘酢の味がおいしく演出。そこに、キリッとしてまろやかな『極上〈宝焼酎〉』のお茶割りがよく合います。ちなみに『ガリチュー』というガリを使ったチューハイがあるんですけど、それってガリが焼酎に合うから生み出されたのではないかなと。転じて考えれば、生姜を使った料理と焼酎も好相性なんだと思います」(和田)

↑「さば缶ガリきゅうり」。さば缶水煮に、ガリときゅうりの薄切りを加えて混ぜれば完成です。オニオンスライスを敷くのもオススメ

 

【スイーツ】芋けんぴバター

芋けんぴのほっこりした甘さや、やさしい塩味、さらにバターの濃厚なコクや、ミルキーなまろやかさ。これらに緑茶のさっぱりしたニュアンスと、『極上〈宝焼酎〉』のコク深さがよく合います! こちらは温めたお茶割りでも合うと思います」(和田)

↑「芋けんぴバター」。芋けんぴにバターをのせ、ほどよくとけるまでレンチンするだけです

 

ここまで数杯のおかわりをしている和田に、あらためてお茶割りとのフードペアリングを成功させる秘訣を教えてもらいました。

 

「例えば、ご飯系の料理やシメの麺、だしが効いたおでん、寒い季節にうれしい鍋などにもお茶割りは合います。それはやっぱり、お茶割りにはうまみ、苦み、渋味といった多彩な要素があるうえ、炭酸などの刺激がなくてやさしく寄り添うお酒だから。うまみに関しては、極上〈宝焼酎〉』の3%ブレンドされている樽貯蔵熟成酒が効いています。加えて、後口さっぱりで飲み飽きないのも魅力だと思います」(和田)

 

 

結論。自宅でお茶割りはコスパがいい!

近年は物価上昇により、ますますコスパ(コストパフォーマンス)のよさが問われる時代。和田はこの観点でもお茶割りは優れていると力説します。

 

「それぞれの価格はお店ごとに異なりますが、600mlビンの『極上〈宝焼酎〉』とペットボトルのお茶2lサイズは合計1000円以下で買えるはずです。1:2の割合でつくれば、1杯250mlで計算しても10杯は飲めますから、つまり1杯100円以下! お茶割りは、きわめてコスパがいいお酒なんですよ」(和田)

 

お茶は近所のコンビニやスーパーなどで手軽に購入でき、飲み物自体が汎用性の高いドリンクであることもポイントです。

 

「急須で淹れる人は減りましたが、お茶はペットボトル茶のおかげで今でも日常的なドリンクですよね。ネット通販などで、まとめて箱買いしている人も多いでしょう。私の場合はそれを割り材として使っているんですけど、すごく使い勝手がいい飲み物だと思います」(和田)

 

使い勝手のよさは、『極上〈宝焼酎〉』も同様だと和田。

 

「開封後も常温保存ができ、炭酸が抜けることもない点は実に便利。アルコール度数を自分の好みで調整できますし、コスパ重視で飲むなら缶入りのRTDよりも自家製がオススメです」(和田)

 

最後にお茶割りの魅力を踏まえてトレンドの背景についても教えてもらいました。

 

「2010年代中盤ごろからの新世代店主による大衆酒場トレンドに伴い、酒場の定番酒である酎ハイ(焼酎ハイボール)やレモンサワーが人気になりました。そのベースである甲類焼酎の新たな嗜み方として、再注目を集めたのがお茶割りなんです。味わいに関しても、お茶割りはやさしいタッチで飲み飽きず、フードペアリングの面でも優秀。家で飲むにはコスパもいいということで、近年ますます若者の間でも人気になっていると感じます

 

おいしく手軽で良コスパ。ぜひ本稿を参考に、お茶割りで晩酌を楽しんでみてください!

宝酒造
極上〈宝焼酎〉 600ml

↑この写真を記事のサムネイルに設定しております。

取材・文/中山秀明 写真/湯浅立志(Y2)

どう違う? 酒場ライターが「関東と関西の酒場事情」を語り合う噺【後編】

提供:宝酒造株式会社

 

飲み物、つまみ、店構えからお客さんの特徴まで、同じようで実は異なる「関東」と「関西」の酒場事情。その内実を、関東出身・関西在住のスズキナオさんと、酒の可能性を追求するユニット「酒の穴」のパートナーであるパリッコさんが、実体験を交えて語り合います。

 

後編となる今回は「お酒やおつまみの違い」について。東京・立石の「東邦酒場」にお邪魔し、東西の違いを議論していきます。

↑「東邦酒場」は60年以上続く老舗の酒場。2018年にお花茶屋(東京・葛飾区)から現在の立石に移転。

 

【前編はこちら

 

 

関西人は合理的? 酎ハイの飲み方の違い

●パリッコ(左)/東京出身の酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』などがあるが、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメーカーとしても活動し、多才な顔を持つ。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動し、共著に『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』などがある。
●スズキナオ(右)/東京出身、大阪在住の酒場ライター。酒噺で「関西食文化研究」や「関西チューハイ事情」連載を担当。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』などがあるが、テクノラップユニット「チミドロ」のリーダーとしても活動する。パリッコとは同い年であるほか、酒場や音楽などライフワークの共通点が多い。

 

お酒の違いに関しては、まずは焼酎の飲み方の違いから。よく「東日本は甲類で西日本は乙類(本格焼酎)」と言われますが、実際はどうなのでしょうか?

 

スズキナオ たしかに、関西では焼酎というと乙類(本格焼酎)を指すことが多いでしょうね。昔は酎ハイも「麦焼酎」など扱っている乙類ベースでつくっている店もあったと聞きます。それに、焼酎のボトルメニュ—はほとんどが乙類ですね。

 

パリッコ 関東だと「芋」や「麦」など乙類の焼酎だけでなく、甲類焼酎のボトルもよく見かけますよね。

 

スズキナオ あとは、飲み方やメニューにも違いはありますね。関東は酎ハイひとつとっても多彩じゃないですか。お店によっては提供時に割らず、三点セット(焼酎、炭酸水、氷)をそれぞれ個別に提供したり、どぶづけにしているところもあるようですね。でも関西は多くが、できあがった状態で提供されます。

↑「どぶづけ」とは氷と水の入った容器でお酒を冷やすこと。写真のようにカウンターの前にスペースを作ることもある

 

パリッコ 確かに、あらかじめ割った状態で出してもらうことが多いかも。

 

その理由はなぜでしょうか? スズキナオさんは「あくまで個人的な見解ですけど」と前置きしたうえで、次のように話します。

 

スズキナオ 関西の、特に大阪では合理的な人が多いような気がします。なので、自分で割って作ることをありがたがる人は少なくて、それより1秒でも早く飲みたいと。テーブルの上もすっきりしますし。

 

パリッコ 酎ハイの味に関しても、関東のほうがシャープな傾向があるかもしれません。東京・下町の大衆酒場でおなじみの「焼酎ハイボール」のエキスも、甘みはほとんどないんですよね。ところが関西で飲む酎ハイは、最初から甘酸っぱく仕上がっていることが多い気がします。

↑宝焼酎をベースにした東邦酒場の「元祖酎ハイ」(350円・税込)

 

スズキナオ あの味も、串カツのソースやどて焼きの甘じょっぱさにはベストマッチなんですけどね。

 

パリッコ ほかに関東で代表的な酒場のお酒というと、ホッピーですね。まだ関西では珍しい部類に入るのかもしれないけど、見かける機会は徐々に増えてきたような。

↑東京の酒場では定番の「ホッピー」も関西圏ではまだ限定的なようだ

 

スズキナオ でも関西式というか、ナカとソトを分けず、提供時にジョッキに1本まるごと入れて割って出す店もあります。

 

パリッコ 関東は、1杯目は「ナカ(甲類焼酎)」と「ソト(ホッピー)」のセットで提供し、途中で「ナカ」をおかわりするのが定番ですもんね。

 

スズキナオ 関東から関西に進出した有名チェーン「立呑み晩杯屋」では、関西の店でも関東式で提供してくれますけど、そういうお店はあまり多くないですね。

 

パリッコ びん入りの商品なので回収の問題や、そもそもメーカー自体が全国展開を想定していなかったなど理由はありそうですが、関東以外の地域でもどんどん、ホッピーバイスみたいな割り材も飲まれるようになってきている印象です。

 

スズキナオ そうかもしれないです。「立呑み晩杯屋」が関西に来たのは2022年。僕が関西に移住した2014年は、居酒屋でホッピーを見かけることは稀でした。

 

【関連記事】
ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺

 

ガリ酎、金魚、ばくだん……ローカル酎ハイの数々

パリッコ それでいうと、東京を中心としたもつ焼き酒場で愛される梅割りは、ホッピー以上にレアだったりしますか?

↑東京を代表する大衆酒場のひとつ「宇ち多゛」(葛飾区・立石仲見世商店街内)の「梅割り」。宝焼酎に梅シロップを足したもの

 

スズキナオ そうですね。梅割りに関しては、同じく東京から関西に進出した「四文屋」なら飲めますが、やっぱり珍しい存在です。

 

では逆に、関西発祥の焼酎割りや酎ハイといえば? そして、そのお酒の関東への浸透具合は?

 

パリッコ 例えば「ガリ酎」や「金魚」は関西発祥と聞いたことがありますけど、東京でも出合うことは多いです。

 

スズキナオ でも関西発祥だからといって、「ガリ酎」や「金魚」がどこの店にもあるという感じではないかな。酎ハイのバリエ―ションが多い酒場に行くと提供されている、という印象です。

↑「ガリ酎」は焼酎の炭酸割りに「ガリ(生姜の甘酢漬け)」を入れたもの

 

↑酎ハイに青じそと唐辛子を入れた「金魚」

 

パリッコ 関西でよく飲まれているけど、関東にはない飲み方や酎ハイとなると、あんまり思いつかないですね。例えば新大阪の「松葉」という老舗の串カツ酒場には「松葉ハイボール」という冷やしあめで割った鷹の爪入りの酎ハイがあるんですけど、あれはお店のオリジナルだし。

 

スズキナオ 局地的な酒の例でいうと、京都のお好み焼き店「やすい」発祥といわれる、「あか」という甘酸っぱくて赤いサワーみたいなお酒もかなりローカルですね。

↑宝焼酎「純」の35度とパワフルな強炭酸を混ぜ合わせ、その上から絶妙な量の赤ワインを注ぎ入れる京都「お好み焼き 吉野」の「あか」

 

パリッコ 「ばくだん」と呼ばれるお酒にも近い、京都のお好み焼き店の他にはあまりないというサワーですよね。

 

スズキナオ これはあくまで傾向ですけど、瀬戸内や九州産の和柑橘を使った生のサワーは関東よりも多いかな。旬を迎えた時季だけなんですけど、これは関西が関東より柑橘の名産地に近いからかもしれません。

 

【関連記事】
秋から冬にこそ飲みたい!「ガリ酎」の噺
香りと刺激を楽しむ薬味系酎ハイの噺

 

そしてテーマは日本酒に。東西における違いのひとつに、お店に置く銘柄の種類があるといいます。

 

パリッコ 酒蔵の観点でいうと、関西には灘・伏見の二大酒都があるので、関東よりも地元の日本酒が充実してるイメージがありますね。

 

スズキナオ 確かに。関東の場合は新潟や東北の銘柄などにも頼りがちだけど、関西は灘・伏見の酒が主役ですよね。それと、関西では、普通酒の「特選・上撰」をスタンダードなお酒として扱うのに対して、関東では圧倒的に「佳撰」市場ですね。

 

パリッコ なるほど。ただ、飲み方に関しては、東西でそれほど目立った違いはないと思います。

 

 

関西で肉といえば「牛」、関東では「豚」

 

続いては、おつまみについて。東西で食文化が違うことはよく知られていますが、酒場のメニューではどうなのでしょうか?

 

スズキナオ 肉でいえば、「牛」と「豚」の扱われ方が最も特徴的じゃないかな。関西で肉といえば「牛」だから、関東の肉じゃがは豚肉で関西だと牛肉を使うことが多いとか。まあ、家庭によるとは思いますけどね。関西では、関東以上に牛肉の地位が高いのかなと思います。

 

パリッコ 豚肉の中華まんが象徴的かも。関東では「肉まん」ですけど、関西は牛じゃない肉を使うから、あえて「豚まん」って呼ぶんじゃないかと思います。

 

スズキナオ その差は酒場の業態にも大きな影響を及ぼしていると思います。それが、関東でおなじみのもつ焼き屋。関西にも豚のホルモン焼きはあるんですけど、串焼きとなると少ないんです。東京出身の僕にとってはカルチャーショックで、いまでも恋しく思いますよ。

↑豚のもつを串にさして焼く「もつ焼き」。関西ではなかなかお目にかかれない

 

パリッコ 焼鳥屋に関しては、東西で大きな差はなさそうですけどね。そのぶん関西の串料理となると、大阪名物の串カツは圧倒的に多い。

↑関西の串料理といえば、やはり「串カツ」

 

スズキナオ そして串カツ屋でも、メニューの主役は「豚」より「牛」だと感じます。

 

パリッコ 煮込みのもつも、関東は「豚」で関西は「牛」が多いイメージがあります。すき焼きは、さすがに肉は牛肉で東西共通ですけど、それぞれ調理法が違いますね。関東は煮込むスタイルで、関西は焼いて作る。

↑「東邦酒場」の「もつ煮込み」(550円・税込)のもつは豚

 

スズキナオ 関東にはない関西の煮込み系つまみといえば、「どて焼き」や「すじこん(ぼっかけ)」がありますよね。

↑牛すじとこんにゃくを濃厚な味噌で煮た関西でチェーン展開する「串かつ だるま」の「どて焼き」

 

パリッコ あとは、大阪名物の「肉吸い」も、関西ならではです。

 

スズキナオ そしてこれらも、肉はやっぱり牛肉。おでんも関西では「関東煮(かんとだき)」と呼ぶことがありますけど、主役級の具材に牛すじやくじら肉があって、これがだしの重要な素材でもあります。

 

パリッコ うん。牛すじは、関東のおでんでは見ないこともあるけど、関西のおでんにはほぼマストで入ってますもんね。

 

スズキナオ 例外といえる豚肉料理があるとしたら、豚足ですね。関西には豚足をウリにする酒場がちらほらありますけど、関東ではあまり見かけないような気がします。

 

【関連記事】
【関西チューハイ事情】 串かつを大阪名物に押し上げた[串かつ だるま]と、「だるまハイボール純」の噺
焼酎との相性抜群、70年続く老舗もつ焼きの噺

 

 

東西の「魚」と「だし」の違い

次の食材テーマは「魚」。東西でそれぞれの特徴はいかがでしょうか?

 

パリッコ そこまで大きな違いはないと思いますけど、伝統的な料理の食材になると、わりとメジャーかどうかに違いが出ますよね。関東だと、うなぎ、どじょう、あなごとか。一方で関西だと、はも、くえ、ふぐが代表的かな。

↑「ふぐ」は関西を代表する魚

 

スズキナオ 同じような料理でも、呼び名が違う場合がありますよね。例えばさばの料理の場合、関東では「しめさば」だけど、関西では「きずし」と呼びますし、「さばの押し寿司」は大阪だと「バッテラ」といいますから。

 

【関連記事】
京都で味わう冬の名残“絶品ふぐ”の噺

 

続いては、「だし」について。一般的に関東はかつお、関西は昆布がメインといわれますが、味や料理はどう違うのでしょうか。

 

パリッコ 関東のかつおだしは魚介の香りが豊かで、キリッとシャープな表情も。関西の昆布だしは、まろやかでやさしい風味を豊かに感じますね。

 

スズキナオ だしといえば、「だし巻き玉子」は味付けも違う。関東は甘くて硬めの仕上がりのものが多い印象ですが、関西はだし感が豊かで、食感もふんわり系のものが多いかな。

 

パリッコ 玉子でいえば「天津飯」! 関西は醤油ベースで、関東は甘酢ベースの傾向にあるというのがおもしろくて。「餃子の王将」の「天津飯」は、関東は甘酢、塩ダレ、京風ダレから選べるけど、関西だとしょうゆベースの京風ダレ一択の店舗が多いらしいですね。

 

スズキナオ でも、先ほど触れた関西の「関東煮」という名称は面白いですよね。諸説あるんですけど、関東から伝わったからこの名称になったと言われていて、それがだしの風味にも影響しているのかもしれないです。

 

パリッコ おでんは、その他の具材も東西でけっこう違います。関東で定番のちくわぶやはんぺんは関西にはあまりなく、「関東煮」では前述の牛すじやくじらのほかにタコの足も定番ですから。

 

ここまでを振り返って、ほかに関東、関西の大衆酒場ならではのおつまみにはどんなものがあるでしょうか。

 

スズキナオ 関西はやっぱり、粉もののバリエ―ションが豊富ですね。たこ焼きやお好み焼きは全国区だけど、「とん平焼き」「いか焼き」「キャベツ焼き」などは関東ではあまり見ないですもんね。逆に関東生まれの「もんじゃ焼き」は、関西には少ないです。

↑関西の粉ものはバリエーションが豊富

 

パリッコ 「もんじゃ焼き」を提供しているのはほとんど専門店で、酒場のつまみという感じではないですしね。ただ、最近は「もんじゃ焼き」が若者や海外から来た旅行者の方々の間ですごく流行ってるそうで。

 

【関連記事】
「変わらないから愛される」下町の粉もんの噺

 

スズキナオ 粉ものといえば、ソースの扱いにも東西の差がありますね。関東は中濃ソースが主流で、関西はバリエ―ションがやたらと多彩です。調味料として使うのはウスターで、粉ものにはそれぞれ専用のソースを使うとか、みなさんこだわりが強いです。メーカー自体が多いので、店や家ごとにひいきのブランドがあるようです。

 

パリッコ さすがです。あとはなんだろ。関東の渋い居酒屋の定番おつまみ「たたみいわし」なんかは、関西にはあまりないのかな。

 

スズキナオ 関西は、冬のかす汁文化も見逃せません。これはきっと、酒蔵が近くて日常にとけこんでるからだと思うんですけど、「かす汁」を提供している酒場が多いんですよ。蔵ごとに酒かすの風味が違うから味も店ごとに千差万別。僕が関西に来て好きになった料理のひとつです。

 

そして最後に、おふたりそれぞれが印象に残っている、東西のつまみを教えてもらいました。

 

パリッコ やっぱり「もつ焼き」かな。

 

スズキナオ 僕は「かす汁」ですね。

 

みなさんも、東西酒場それぞれのご当地メニューに着目しながら宵を楽しんでください。加えて前編の「関東と関西の酒場事情」もぜひ一読を。

 

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

東邦酒場

住所:東京都葛飾区立石1-1-9
営業時間:17:00~22:00(水〜金)、13:00〜22:30(土・日)
定休日:月曜、火曜

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

 

【酎ハイについて】

秋から冬にこそ飲みたい!「ガリ酎」の噺
香りと刺激を楽しむ薬味系酎ハイの噺
ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
東京生まれ、 大衆酒場で人気の個性派割り材「バイスサワー」の噺

 

【もつ焼きと串カツ】

焼酎との相性抜群、70年続く老舗もつ焼きの噺
【東京・大衆酒場の名店】この緊張感は何だ? 行列しても入りたい立石「宇ち多゛」の強烈な魅力の噺
【関西チューハイ事情】 串かつを大阪名物に押し上げた[串かつ だるま]と、「だるまハイボール純」の噺
お酒と楽しむ大人の駄菓子、“串カツ”の噺

香り爽やか、ほどよいピール感の「クラフトチューハイ」出た!「寶CRAFT」<和歌山産 紀の川はっさく>地域限定で新発売

宝酒造は、地域限定のクラフトチューハイ“「寶CRAFT」<和歌山産 紀の川はっさく>”を、10月8日(火)に新発売。販売地域は、和歌山県を中心に販売します。

「寶CRAFT」は、日本各地のご当地素材を使用し、それらの個性を活かし、厳選した樽貯蔵熟成焼酎をあわせる「ひとてま造り」製法で丁寧に仕込んだクラフトチューハイ。

 

今回新発売する<和歌山産 紀の川はっさく>は、紀の川の温暖な気候と肥沃な土壌を最大限に活用した生産量日本一(※)を誇る「紀の川はっさく」の、ストレート混濁果汁やペーストなどを使用。すっきりとした味わいと爽やかな香り、程よいピール感を楽しめるといいます。

※和歌山県のはっさく収穫量は、全国の約72%を占める(令和3年産特産果樹生産動態等調査)。和歌山県内で栽培されるはっさくの約57%は紀の川市産。出所:紀の川市

 

また、厳選した樽貯蔵熟成焼酎を使用することで、深みのある味わいに仕上げ「もちがつお」や「ハモ」など和歌山特産の魚介類にあうクラフトチューハイです。

 

【商品概要】
商品名:「寶CRAFT」<和歌山産 紀の川はっさく>

アルコール分:8% 果汁分:3%
容量/容器:330ml/びん
参考小売価格(税抜):338円
販売地域:和歌山県を中心に販売

 

【せんべろnet監修 】“ひとり飲み”初心者が「角打ち」に挑戦する噺

提供:宝酒造株式会社

 

「酒噺:東京・大衆酒場の名店シリーズ」で一連の酒場知識を習得したお酒好きタレント・中村優さん。本企画は、実践編ということで、女性一人(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第3回目。今回は、神田(東京都千代田区)にある人気の酒屋さんで角打ち(かくうち)に挑戦します!

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

 

角打ちに挑戦してみたい……

これまでの体験で、それなりの経験値を積んだ中村さん。最近よく耳にする「角打ち」って何だろう? ぜひ一度行ってみたいと思い、ひろみんさんにLINEで「角打ち」について聞いてみることに。

 

すると、ひろみんさんから早速返信が!

 

「簡単にいえば、角打ちは酒屋さんの一角で飲むこと。または飲める酒屋さんのことなどを指します! 発祥は、製鉄業で栄えた時代の北九州らしいです。いまは多様化が進み、おつまみに凝ったりお酒に特色を出したり、お店のバリエーションも豊富ですよ」とのこと。

 

加えてひろみんさんは「角打ちは東京にもたくさんあって、初めて行くなら神田の藤田酒店さんがオススメです!」とも。

 

そこで中村さんは早速、「藤田酒店」で「角打ち」にチャレンジするために神田へ向かいました。

 

そもそも角打ちとは?

 

そもそも「角打ち」とは元来“升に酒を入れて飲むこと”を指しますが、時代とともに“酒屋さんでお酒を買い店内で嗜む”という意味が一般的になりました。その多くは立ち飲みスタイルですが、座席で飲めるお店もあります。発祥は、福岡県北九州市であるという説が有力。その背景には、官営八幡製鐵所に勤務していた労働者の文化が関係しているといわれています。

 

1901(明治34)年に操業を開始した官営八幡製鐵所は、24時間交代制で稼働していました。お酒好きの労働者にとって、仕事後の飲みは癒しの時間でしょう。ただし当時、夜勤明けの朝は居酒屋などお酒を飲める店が営業していません。そこで労働者たちは朝から営業している酒屋さんでお酒を買い、店頭で飲むようになった――。これが北九州における「角打ち」のルーツです。

 

「角打ち」の魅力のひとつは、酒屋さん自体が飲食店に卸す立場の業種でもあるためお酒が比較的に安価なこと。おつまみは、乾き物や缶詰などが主体のお店もあれば、なかには飲食店営業許可証を取得して、自家製の料理を提供する店も。いずれにせよ、気軽に一杯楽しめるのが醍醐味です。

 

また、「角打ち」は立ち飲みスタイルが多いため、お店の人やお客さん同士の距離が近く、自然と会話が生まれやすい業態です。加えて、お酒の種類やラインナップが豊富で、気に入った缶やびんのお酒があればその場で購入できるのも、酒屋さんならでは。近年は日本酒やワインに特化した店や、少量ずつの飲み比べセットを用意するお店も登場するなど、お酒好きにとってのパラダイスとなっています。

 

〜角打ちとは〜

・「角打ち(かくうち)」とは元来“升に酒を入れて飲むこと”を指すが、現在では“酒屋さんでお酒を買い店内で嗜む”という意味が一般的に。

・発祥は、福岡県北九州市であるという説が有力。その背景には、官営八幡製鐵所に勤務していた労働者の文化が関係しているといわれている。

・酒屋さん自体が飲食店に卸す立場の業種でもあるため、お酒が比較的に安価なこと。おつまみは、乾き物や缶詰などが主体のお店もあれば、自家製の料理を提供する店も。

・近年は日本酒やワインに特化した店や、少量ずつの飲み比べセットを用意するお店も登場するなど多様化。

 

【関連記事】
居心地のよい角打ち&立ち飲みと出会うための噺
溢れる酒愛、地元愛。「角打ちの日」の噺

 

いざ!藤田酒店へ

 

「藤田酒店」に到着した中村さん。ひろみんさんによると、こちらは気軽な雰囲気なので初めてでも安心なのだとか。ということで「せんべろnet」の記事を参考に、いざ入店。

 

恐る恐る扉を開けると、すぐにご主人の坪田維修さんが「いらっしゃい!」と迎えてくれました。

 

中村 ひとりなんですけど大丈夫ですか?

 

坪田 もちろんですよ。お好きなところへどうぞ!

↑ご主人の坪田維修さん

 

中村 (まずは注文、どうしよっかな?)さすが、メニューが豊富ですね! お酒もズラリと並んでて。

 

坪田 ありがとうございます! うちは初めてですか?

 

中村 はい、実は「角打ち」自体が初めてで。

 

坪田 それはそれは、うちを選んでいただき光栄です! では一応、簡単にうちの注文方法をお伝えしますね。お酒は冷蔵庫から出していただいて構いませんし、冷蔵庫の外にあるものはお伝えください。

 

中村 わかりました! お会計はキャッシュオンですよね?

 

坪田 はい。その都度カウンターのレジでご精算となります。おつまみのオーダーもあればご一緒に。お品書きからでも、ぜひご覧になっていただけたら。

 

中村 そしたらまずは、このタカラ「焼酎ハイボール」をお願いします。

↑タカラ「焼酎ハイボール」5%〈特製グレープフルーツ割り〉350ml(300円)

 

坪田 5%の〈特製グレープフルーツ割り〉ですね。300円になります。ほかになにかわからないことがありましたら、なんでも聞いてくださいね。また、細かい点はそこに貼ってある「初めてのお客様へ」にも書いてありますので。

 

 

中村 ほんとだ! これはすごくありがたいです。では、まずは乾杯ッと……。うん、レモンとは違った柑橘の爽快感があって美味しい! アルコールが5%の絶妙な飲みごたえ!

 

坪田 甘くない缶チューハイの代名詞ですよね。タカラ「焼酎ハイボール」は、うちにもファンが多いです。アルコール7%の<ドライ>が一番人気ですけど、最近5%の<特製グレープフルーツ割り>がよく出るようになったので2列に増やしました。

 

中村 おつまみにも相性抜群ですよね。ということで、「うるめいわし」と「シマアジ」「干し甘エビ」をお願いします。あっ「シマアジ」は2つで。「炙ります」と書いてあって、気になっちゃいました。

 

坪田 お任せください! 炙るので、少々お待ちくださいね。こちらはあわせて250円になります。

 

中村 ヤッター! この、駄菓子屋さんっぽい入れ物に入ってるのもいいですよね。私、昔からこういった小魚が大好きなんです。いまでも、見つけるとすぐ買いますし。

 

坪田 そうなんですね。でも確かに、おやつでよく食べていた、とおっしゃるお客様は多いです。ではどうぞ。

↑「うるめいわし」「シマアジ」各1尾50円、「干し甘エビ」1尾100円

 

中村 炙ってあるから香ばしくて、より美味しい! それにお酒が進みますね。タカラ「焼酎ハイボール」とも相性抜群。

 

坪田 ありがとうございます。こちらは価格も駄菓子屋感覚で提供させていただいています。

 

中村 お酒もおつまみもサイコーに美味しくて、雰囲気も非日常感がありながらアットホームであったかい。「角打ち」、すごく楽しいです!

 

角打ちのルールとは?

「角打ち」は、独自のルールを設けているお店が多めです。もしもルールの掲示がなく、注文方法などがわからない場合には、お店の方にたずねてみましょう。

 

よくあるルールのひとつが、現金×キャッシュオンのシステム。最近はキャッシュレスに対応されている「角打ち」も見かけますが、千円札や小銭は用意しておいたほうがいいでしょう。

 

また、酒屋さんなので、基本的にはセルフサービスです。冷蔵庫から飲みたいお酒を選んで取り出したり、飲食後の食器やゴミを片付けたりといった部分は協力しましょう。

 

なかには「1グループ2名まで」など、来店人数にルールを設けている「角打ち」も。テーブルはカウンタ―のみというお店も少なくないので、グループで訪問したい場合は事前に調べておくことがオススメです。

 

なお、乾き物やお菓子などを手で食べるシーンが多いのですが、おしぼりは無いのでウェットティッシュを用意しておくと便利です。

 

そして、混んできたら詰めて譲り合い、長っ尻はせず飲み終わったら帰るのがマナー。お店にもよりますが、滞在時間は最大1時間ぐらいがベストです。酒屋さんの店頭であるためお手洗いがないことも多いので、その意味でも短時間で切り上げる意識をもって「角打ち」を楽しんでください。

↑藤田酒店にはトイレもあるので、いざという時も安心

 

〜角打ちのマナー〜

・「角打ち」は、独自のルールを設けているお店が多いので、注文方法などがわからない場合は、お店の方にたずねる。

・基本的にはセルフサービス。冷蔵庫から飲みたいお酒を選んで取り出したり、飲食後の食器やゴミを片付けたりといった部分は協力すること。

・乾き物やお菓子などを手で食べるシーンが多いが、おしぼりは無いのでウェットティッシュを用意しておくと便利。

・長っ尻はせず飲み終わったら帰るのがマナー。滞在時間は最大1時間ぐらいがベスト。

 

《酒噺のオススメ記事はコチラ》


【せんべろnet監修】ひとり飲み初心者にオススメなお店の噺
女性ひとり(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していきます。

【せんべろnet 監修 】“ひとり飲み”初心者がはしご酒を楽しむ噺
女性ひとり(初心者)でもできる「酒場」の楽しみ方を、「せんべろnet」管理人のひろみんさんに教えてもらいながら体験していく第2回目。今回は横浜の“聖地”までやってきました!

 

意外な「おつまみ」でますますお酒が進む!

気さくな店主のおかげで、すっかり緊張もほぐれた中村さん。お酒も進んでトークにも花が咲きます。

 

中村 お店はいつから営業されてるんですか?

 

坪田 1928(昭和3)年です。私たち夫婦は三代目で、角打ちは2013年から始めました。そのあと2016年にちょっと改装して広くなりましたね。

 

中村 「角打ち」になったのは比較的最近なんですね。

 

坪田 当初は、乾きものが中心のおつまみだったんですけど、オープンから1年半ぐらいしてから徐々にバリエーションを増やしたんです。お客様の期待に応えたいなと思って。

 

中村 なるほど! 一番人気はどのメニューですか?

 

坪田 実は「焼ソバ」なんです。

 

中村 あっ、目の前にあるこちらのカップやきそばですか? 気になるので、お願いしてもいいですか?

 

坪田 かしこまりました! 400円になります。少々お待ちくださいね。

 

中村 はい! では一緒にお酒も。タカラ「焼酎ハイボール」をおかわりで。

 

坪田 「焼ソバ」もお待たせしました! どうぞ。

 

中村 わっ、この野菜は水菜ですよね。特別感があって、ますます美味しそう!

↑「焼ソバ」(400円)

 

坪田 水菜はちょっとしたアイデアなんですけど、おかげさまで好評です。箸休めにもなるかなと思って入れさせていただいているんですけどね。

 

中村 いただきますっ……やきそばと水菜って合いますね! 香ばしくて酸味の効いたソースと、シャキッとしてさっぱりした水菜がマッチ。これまたお酒が進みます!

 

坪田 ふだんはカップやきそばを食べないけど、うちに来ると必ず召し上がる、というお客様も結構いらっしゃるんですよ。

 

中村 その気持ち、わかります! 私、カップのインスタント麺って山頂で食べるのが世界一のロケーションだと思ってましたけど、「角打ち」で食べるのも最高。いい場所、見つけちゃいました!

 

坪田 また焼きそばをつまみながら飲みたくなったら、ぜひお立ち寄りください(笑)!

 

中村 絶対また来ます!

 

「角打ち」は“大人の駄菓子屋”だ

中村さんにとって、初めての「角打ち」は大満足の体験に。ひろみんさんにお礼のLINEを送ると、「気に入ってもらえてよかったです! 角打ちはお店ごとに作法が違ったりしますけど、それも魅力。名店は全国にあるので、いろいろ巡ってみてくださいね」と返信が。

 

酒屋さんならではのお酒とつまみが種類豊富に揃う「角打ち」は、いわば“大人の駄菓子屋”。童心に帰った気分で飲めるのも、また魅力といえるでしょう。次回もひろみんさんのアドバイスをもとに、せんべろ系の人気店と、その作法を紹介します。

 

撮影/鈴木謙介

 

<取材協力>

藤田酒店

住所:東京都千代田区内神田2-10-2
営業時間:17:00~21:00
定休日:土曜、日曜、祝日

※価格はすべて税込みです

記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・タカラ「焼酎ハイボール」
https://shochu-hiball.jp/

 

【ひとり飲み関連記事】
【せんべろnet監修】ひとり飲み初心者にオススメなお店の噺
【せんべろnet 監修 】“ひとり飲み”初心者がはしご酒を楽しむ噺

 

【角打ち関連記事】
居心地のよい角打ち&立ち飲みと出会うための噺
溢れる酒愛、地元愛。「角打ちの日」の噺