【4大リスク】紛争、債務危機、温室効果ガス、SDGs…2023年の途上国が危ない!

新型コロナウイルスのパンデミックから回復基調にあるなか、インフレやエネルギー危機に見舞われている世界の国々。2023年は世界全体で経済成長があまり見込めない年になると予測されています。そんな中、財政面での余力がない途上国は、さらなる逆風を受けることになりかねません。非営利団体である「センター・オブ・サステナブル・ディベロップメント」のアナリストが指摘する、2023年に注目するべき途上国の4つのリスクとはどのようなものなのでしょうか。

 

[1]SDGs:折り返し地点で目標から後退している途上国も

2030年までに達成すべき目標が示されたSDGs。2015年の国連サミットで採択されてから、2023年はちょうど折り返し地点にあたり、9月には各国の首脳が集まり進捗について確認するSDGsサミットが開催されます。しかし17の持続可能な目標のうち、ゴールに向けて進むどころか、後退しているものもあると指摘されています。例えば、極度の貧困状態にある人々は世界で約6億人。食料、教育、医療などを十分に得られない環境下にいる人々は数百万人にものぼります。そのようなリスクを抱えている国には、タンザニア、ウガンダ、マダガスカル、ナイジェリア、バングラデシュなどが挙げられます。途上国がSDGsの目標を達成するためには、「誰一人取り残さない」というSDGsの原則にもとづき、世界各国が資金面での支援をさらに強化する必要性があると言えるでしょう。

 

[2]気候:資金不足により、温室効果ガス削減に黄色信号

中国を除く途上国が排出する温室効果ガスは、世界全体の38%を占めており、2030年には約半分を占めるまでになると予測されています。多くの途上国で、先端技術を活かして地球環境問題の解決を目指す「グリーン・トランスフォーメーション」が進められていますが、資金面の不足などでその動きは鈍りが見られているのです。例えば、途上国(中国を除く)は日照時間が長く恵まれた気候条件の国が多いのに、資金調達に苦労していることから、太陽光発電設備の容量は世界の20%以下。もし十分な資金を確保できてグリーン・トランスフォーメーションを推進できれば、温室効果ガスの排出量をより抑えられるでしょう。このような気候問題に関するリスクがある主要な国として、ブラジル、メキシコ、南アフリカなどの名前が挙げられます。

 

[3]債務:利上げと世界経済の鈍化による債務危機の可能性

途上国が2023年に中長期で負う対外債務は、推定3810億ドルにものぼると見られています。実際、世界銀行は2022年12月、途上国では輸出入収入の10分の1以上を公的機関などの長期対外債務の返済に充てており、2000年以降で最高水準であると指摘。しかも利上げが進み、グローバル経済が鈍化することで、さらに多くの国が債務危機に見舞われるリスクがあると言われているのです。そのようなリスクを抱えている途上国は、アルゼンチン、アンゴラ、スリランカ、エクアドルなど。債務の透明性を高め、債務情報の提供を通じて、途上国の債務リスク管理能力を上げていくことも必要と言われています。

 

[4]紛争・暴力:必要数の半分しか追いついていない人道的支援

2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻のように、世界では武力紛争が起きている地域がまだ少なくありません。また、不安定な政治情勢によって、暴力や貧困に苦しんでいる人々もいます。国際救済委員会(IRC)が発表した「緊急ウォッチリスト2023」で、注視するべき国として挙げられたのは、ソマリア、アフガニスタン、イエメン、シリア、南スーダンなど。いずれも紛争、暴力、災害などに見舞われている国々で、国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、そのうち人道的な問題のおよそ半分しか支援が追い付いていないそうです。世界がそのような人道支援に手を差し伸べ、支援を行きわたらせることが求められています。

 

これらのリスクを抱える途上国として挙げられた30か国は、必要とする資金が、合計で9030億ドルも不足していると指摘されています。その差分は他国から調達する必要があることは間違いありません。世界全体で経済成長が鈍化するとみられる2023年。先進国からの資金面での援助が減少する可能性が高く、途上国はさらなるリスクを抱えることになそうです。

 

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『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

なお、当メディアへのご意見・ご感想は、NEXT BUSINESS INSIGHTS編集部の問い合わせアドレス(nbi_info@icnet.co.jpや公式ソーシャルメディア(TwitterInstagramFacebook)にて受け付けています。『NEXT BUSINESS INSIGHTS』の記事を読んで海外事情に興味を持った方は、是非ご連絡ください。

世界最高の送金コストを減らせ! アフリカで「デジタル通貨」導入の動きが加速

【掲載日】2022年8月2日

世界各国で進展している自国通貨のデジタル化は、アフリカ大陸において急激な進展を見せています。すでにナイジェリアは、中央銀行発行のデジタル通貨「eナイラ」を2021年にローンチした一方、南アフリカとガーナはパイロット運用を実施中。さらにケニア、タンザニア、ナミビアなど約8か国が、将来の本格的な導入に向けて詳細なリサーチを開始しており、安定した金融制度を確立するために奔走しています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)がアフリカ諸国に広がる

 

各国政府の中央銀行によるデジタル通貨は「CBDC(Central Bank Digital Currency)」の略称で呼ばれており、自国の法定通貨建てで、中央銀行の債務として発行されて流通している自国通貨のデジタル版となっています。価格変動の激しい暗号通貨と異なり、政府の規制で介入されるので、安定度の高さが見込まれるのが特徴。

 

アフリカ諸国は、政情不安やインフレなどによる通貨の激しい値動きに長年悩まされ続けてきました。さらに銀行口座を持っていない国民も多く、個人に向けた給付金などが想定通りに配布されないなど、多くの問題が存在しています。また、海外からの送金においてもサブサハラ(サハラ砂漠以南の国々)地域の平均手数料は約8%と、送金コストが世界で最も高いグループに属しています(世界銀行によると、2021年第1四半期における世界の送金コストの平均は6.4%で、南アジアが最低の4.6%。持続可能な開発目標では2030年までに3%に抑えることを目指している)。CBDCはこのような問題を解決できる可能性を持っており、それゆえに本格的な導入に向けた取り組みが熱を帯びているのです。

 

当然ながらデジタル通貨の導入には、解決すべき問題も多数存在しています。前提条件として、国民がデジタル通貨を活用するためのデバイスの所有や、広範囲な接続網などのインフラ整備が不可欠。また、デジタルゆえに、サイバー攻撃による資産や情報の流出リスクを常に警戒する必要があります。アフリカだけでなく他国でも、CBDCの導入を巡る議論においては自国の状況を踏まえながらメリット・デメリットを検証するため、リスクが大きい場合は慎重にならざるを得ません。

 

しかし、デジタル通貨の流通には大きな利点があります。それは金融包摂で、貧困や差別により既存の金融システムから除外されてしまった人々に対して手を差し伸べることが期待できるのです。デジタル通貨やブロックチェーン、NFTといった「フィンテック」は、すべての人々に対して経済的に平等な権利を与える意味でも革新的な技術。より多くの人たちが金融サービスにアクセスできるようにすることは、途上国だけでなく先進国の課題でもあるので、アフリカの先駆的な取り組みは世界が見守っています。

 

デジタル通貨の到来に向けたビジネスでは、アプリやセキュリティ、スマートカードの提供など大きなチャンスが存在しています。途上国ではフィンテックを活用した新しいビジネスモデルが続々と生まれていますが、デジタル通貨の導入に向けた動きが加速する中、アフリカの動向から今後も目が離せません。

 

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世界最高の送金コストを減らせ! アフリカで「デジタル通貨」導入の動きが加速

【掲載日】2022年8月2日

世界各国で進展している自国通貨のデジタル化は、アフリカ大陸において急激な進展を見せています。すでにナイジェリアは、中央銀行発行のデジタル通貨「eナイラ」を2021年にローンチした一方、南アフリカとガーナはパイロット運用を実施中。さらにケニア、タンザニア、ナミビアなど約8か国が、将来の本格的な導入に向けて詳細なリサーチを開始しており、安定した金融制度を確立するために奔走しています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)がアフリカ諸国に広がる

 

各国政府の中央銀行によるデジタル通貨は「CBDC(Central Bank Digital Currency)」の略称で呼ばれており、自国の法定通貨建てで、中央銀行の債務として発行されて流通している自国通貨のデジタル版となっています。価格変動の激しい暗号通貨と異なり、政府の規制で介入されるので、安定度の高さが見込まれるのが特徴。

 

アフリカ諸国は、政情不安やインフレなどによる通貨の激しい値動きに長年悩まされ続けてきました。さらに銀行口座を持っていない国民も多く、個人に向けた給付金などが想定通りに配布されないなど、多くの問題が存在しています。また、海外からの送金においてもサブサハラ(サハラ砂漠以南の国々)地域の平均手数料は約8%と、送金コストが世界で最も高いグループに属しています(世界銀行によると、2021年第1四半期における世界の送金コストの平均は6.4%で、南アジアが最低の4.6%。持続可能な開発目標では2030年までに3%に抑えることを目指している)。CBDCはこのような問題を解決できる可能性を持っており、それゆえに本格的な導入に向けた取り組みが熱を帯びているのです。

 

当然ながらデジタル通貨の導入には、解決すべき問題も多数存在しています。前提条件として、国民がデジタル通貨を活用するためのデバイスの所有や、広範囲な接続網などのインフラ整備が不可欠。また、デジタルゆえに、サイバー攻撃による資産や情報の流出リスクを常に警戒する必要があります。アフリカだけでなく他国でも、CBDCの導入を巡る議論においては自国の状況を踏まえながらメリット・デメリットを検証するため、リスクが大きい場合は慎重にならざるを得ません。

 

しかし、デジタル通貨の流通には大きな利点があります。それは金融包摂で、貧困や差別により既存の金融システムから除外されてしまった人々に対して手を差し伸べることが期待できるのです。デジタル通貨やブロックチェーン、NFTといった「フィンテック」は、すべての人々に対して経済的に平等な権利を与える意味でも革新的な技術。より多くの人たちが金融サービスにアクセスできるようにすることは、途上国だけでなく先進国の課題でもあるので、アフリカの先駆的な取り組みは世界が見守っています。

 

デジタル通貨の到来に向けたビジネスでは、アプリやセキュリティ、スマートカードの提供など大きなチャンスが存在しています。途上国ではフィンテックを活用した新しいビジネスモデルが続々と生まれていますが、デジタル通貨の導入に向けた動きが加速する中、アフリカの動向から今後も目が離せません。

 

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「混迷するスリランカ」に襲い掛かる、4つの大きなリスク

【掲載日】2022年7月22日

現在スリランカでは、財政破綻およびインフレの高騰が、国民生活に甚大な影響を与えています。長年、ラジャパクサ一族が支配してきた政治や経済状況の悪化に国民は怒り、大規模デモや大統領公邸の占拠などが発生。国外に逃亡していたゴタバヤ・ラジャパクサ氏は大統領を辞任し、数日前に暫定政権が誕生しましたが、同国の情勢は混迷しています。スリランカにはビジネス上どのようなリスクがあるのでしょうか?

スリランカの大規模デモの様子

 

スリランカは、対外債務の膨張および外貨準備高の不足によりデフォルト(債務不履行)に陥りました。原因はいくつかあります。まず、スリランカは2009年に内戦が終結した後、主に中国からの融資を受けて、港や空港などのインフラを整備しました。しかし、同国はそれらの運営に失敗し、外貨を獲得することができず、対外債務の返済が滞ります。これにより、スリランカの信用格付けが下がり、同国は海外の資本市場で資金を調達することができなくなりました。

 

また、新型コロナウイルスのパンデミックによって、スリランカの主要産業である観光業が不振になり、外貨が減ったことも大きな要因です。同国は有機農業へのシフトを図ると同時に、保有する外貨(ドル)の流出を防ぐため、農薬や化学肥料の輸入を禁止しましたが、この措置はかえって農家を苦しめ、食料生産に悪影響を与える結果となりました。そんな中、ウクライナ危機が起こり、物価が世界的に上昇しますが、スリランカは外貨不足のために石油や食料などの必需品を輸入することができず、国民生活は苦しくなり、その怒りが大規模デモという形で噴出しました。

 

海外進出のリスク

スリランカ危機が起きているいま、同国または他の新興国・途上国への進出を検討している企業にとって、リスク管理が以前にも増して重要になっているでしょう。リスク管理とは「企業が事業活動を遂行するにあたって直面するであろう損失、または不利益を被る危険、あるいは、想定していた収益または利益を上げることができない危険の発生の可能性を適正な範囲内に収めるための一連の活動」を指します(日経ビジネス経済・経営用語辞典)。リスクにはさまざまな種類がありますが、海外ビジネスを検討するうえで重要な要因が少なくとも4つあります。

 

1: 物流

海外事業に必要なアイテムや素材を購入しても、業者がそれらを予定通りに届けなかったり、予算を超えたりするという不確実性が存在します。現在、スリランカでは石油が不足しており、食品がスーパーに届かないなど、サプライチェーンが混乱しています。

 

2: 規制

国によって法律や規制が異なるため、それらに精通した弁護士が必要。近年では特に環境規制が厳しい国が多く、それらの規制に合わせることが求められています。

 

3: 金融

為替や金利、物価などが将来変動するリスク。途上国の場合、為替が不安定なことが多く、現地通貨で得た売り上げをどのように日本の本社に環流させるかという課題もあります。上述したように、金融リスクはスリランカで最も大きな不確実性です。

 

4: 政治

資産の国有化や戦争、テロ、政権交代といった不確実性。世界有数の金融グループであるアリアンツは、2022年2月に発表したカントリーリスクの調査で、スリランカは政治体制が分裂しており、連立政権が概して弱いことを指摘していました。

 

受け入れることができるリスクの量や損失の許容額は企業によって異なりますが、それらを決める前に、企業はこのようなリスクを特定することが必要です。そのためには、商習慣や文化を含めて現地のことを把握しているパートナー企業と組むことが役に立つでしょう。リスク管理を踏まえて進出する国を安全に検討したい方向けに、下記に海外進出に役立つ多くの資料を揃えていますので、ぜひ参考にしてください。

 

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SDGs達成に暗雲。格差が阻むアフリカの「安全な水」の普及

【掲載日】2022年6月22日

持続可能な開発目標(SDGs)の目標6は「安全な水とトイレを世界に」。その中のターゲットの1つに「2030年までに、だれもが安全な水を、安い値段で利用できるようにする」がありますが、この計画が難航しています。

安全な水はまだ?

 

2021年7月、WHO(世界保健機関)とユニセフ(国際連合児童基金)は、2000年〜2020年までにおける家庭用飲水や下水設備、公衆衛生に関する進歩について報告(レポート名は『Progress on household drinking water, sanitation and hygiene 2000‒2020』)。SDGsの目標6は、進捗速度が4倍以上にならなければ、2030年までに達成することはできないと警告しています。

 

2020年当時では世界中で約4人に1人が自宅で安全な水を飲むことができず、約半数が衛生基準を満たさないトイレなどの施設を利用しているとのこと。さらに、新型コロナウイルスのパンデミック発生時には、10人中3人が自宅で石鹸と水を使って手を洗うことができなかったと報告しています。

 

この問題に潜んでいるのは格差。安全な水のサービスを享受することができないのは都市部より地方が多く、特に世界の中でもサブサハラ(サハラ砂漠より南のアフリカ地域)は最も進捗が遅れています。安全な飲料水を利用できる人は同地域の人口の約半分で、脆弱な地域では25%以下にまで低下。例えば、ウガンダでは人口の32%が安全な水を得るために30分以上も歩かなければならず、これが仕事や家計、ひいては経済に影響を及ぼしています。きちんと管理されていない井戸などは人間の排泄物や土壌の堆積物、肥料、泥などが水源に流れ込んでいるため、育児や日常生活に適していませんが、それでも安全な水は遠くにあるうえ、高価で手が届かないため、貧しい人たちは比較的近場にある不衛生な水を使わざるを得ないのが現実です。

 

このような状況にある国・地域では、国際機関や民間企業、地元のパートナーがタッグを組んで、この問題の解決に取り組んでいます。日本でも数多くの研究や事業が推進されており、その一例として株式会社Sunda Technology Global(京都市)が挙げられます。同社は、水の衛生状況が脆弱なウガンダの農村部で安全な飲料水の提供を目的として、IoTを活用した従量課金型の自動井戸料金回収システム(SUNDAシステム)を展開。2021年には、中小企業の途上国への事業展開を援助する経済産業省の補助事業「飛び出せJapan!」(運営:アイ・シー・ネット株式会社)で採択されました。

 

WHOとユニセフのレポートでは前向きな兆候もあったと述べられています。2016年から2020年の間に、自宅で安全な水を飲むことができる人口が世界で4%増えたり、安全な下水処理施設が7%増加したりするなど、いくつかの進歩が見られたとのこと。しかし、これらは決して十分ではなく、数十億人の子どもや家族を救うためには、さらなる投資が緊急に必要であると主張しています。Sundaのように、独自の手法を持つ日本企業の挑戦が今こそ求められています。

 

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