鉛筆削りが疾走する!? プラス「ハシレ!エンピツケズリ!」は子どもとかつての子どもに買い一択のケッサク文房具

生まれて初めて鉛筆を削ったときのことを憶えている人は、いるだろうか? タイミングとしてはおそらく、小学校入学直前の今頃。入学用品のひとつとして買い与えられた鉛筆と鉛筆削りを、親から「こう使うんだよ」と教えてもらう、というケースが多いのではないだろうか。

 

筆者もまさにそうで、当時の定番だったナショナルの電動鉛筆削り「ペンナー KP-55」を買ってもらったのである。水色ボディに尖り具合セレクターのついた、かっこいいやつだ。

↑「ナショナル KP-55」の画像検索結果。いい出物があれば欲しいな……とずっとメルカリなどを探し回っている

 

ピカピカのKP-55をうっとりと眺めていたら、父親が「よし、じゃあ鉛筆の削り方を教えてやろう」と言う。で、父親に手を添えられつつ電動削り器に新品の鉛筆を差し込むと、瞬間、ズガガガガガガ! という爆音が上がり、凄まじい振動が手に響いたのである。

 

そのあまりのけたたましさにビックリした筆者が手を離そうとしたのに、あろうことか、父親が手をがっちり抑え込んで離さない。手がビリビリ痺れるほどの振動と音、そして、どんどん飲み込まれていく鉛筆。「このままでは手まで食われる!」と怯えてギャンギャン泣きわめき暴れる筆者。なぜかゲラゲラ笑いつつも手をガッチリ離さない父親。おそらくあの頃には、全国各地で同様に繰り広げられていたであろう、軽い惨劇の現場である。

 

その後どうなったのかは、あまり憶えていない。ただ、それ以降はけっこう平気でKP-55を使って鉛筆を削っていたはずで、あの初体験が幼いきだて少年のトラウマにならなかったのは幸いだった。

 

もちろん、近年の電動鉛筆削りは昭和の製品よりもずっとマイルドになっているが、それでも、振動と音に怯える子どもはまだいるのかもしれない。

 

ハシレ! エンピツケズリ! 走れ!

そもそも、なんで鉛筆削りごときにそこまでビクビクせねばならんのか。楽しく削ることはできないのか。

 

音と振動の少ない手回しの削り器だって、ハンドルの回転半径がまだ体の小さな子どもには大きすぎて、上手く回すのは一苦労だ。もっとラクに、かつ怯えることなく楽しく鉛筆が削れたっていいはずだろう。

プラス
ハシレ!エンピツケズリ!
3000円(税別)

 

だから、プラスの新しい鉛筆削り「ハシレ!エンピツケズリ!」を一目見た瞬間に、そうそう、こういうやつだよ! と思ったのだ。

 

もしかしたら開発担当者は、同じく電動鉛筆削りでギャン泣きした経験を持つ人なのかもしれない。コンセプトカー的な未来感溢れるフォルムが超カッコイイし、さらにこれ、手に持ってコロコロと走らせるだけで鉛筆が削れてしまうというのだから、この時点で早くも最高と言わざるを得ない。

 

もちろん、つらい振動とか怖い爆音もなし。ただトップレーサー気分で車を走らせているだけで、だ。

↑大迫力の鉛筆挿入口が印象的なリアビュー

 

↑鉛筆を挿したら、レバーを左に倒してロック。鉛筆が削れるのに合わせてレバーが前に動く構造が車のシフトレバーっぽい

 

まず、後部のジェットノズルめいた穴に鉛筆を挿したら、レバーを左に倒してロック。あとは手を車体上部に添えてコロコロと走らせれば、前輪の回転に連動して車体内部の削り器が回転し、鉛筆を削り上げていくという仕組み。

 

エラストマー製のタイヤはグリップ力があり、フラットな路面でもしっかり食いついて空転にくいのも、いい感じだ。もちろん、走らせることで机や床を傷つけるようなこともなさそう。

↑前後に転がすことで、狭い机の上でもキビキビと削る走行性能は、松任谷正隆と田辺憲一(by カーグラTV)も大満足だろう

 

ここで面白いのが「1Wayギア」と名付けられた構造で、本体が前進しても後進しても、削り器はずっと同じ方向に回り続けるのである。

 

 

↑前進と後退でそれぞれ左右のギアが切り替わって、削り器を一定方向に回転させる面白い構造

 

おかげで、鉛筆を削るためにどこまでも走らせる必要はない。途中で机から飛び出しそうになってバックしている間も、きちんと仕事をしてくれるのだ。

 

 

つい延々とコロコロ走らせ続けそうになるが、内部からカチ! カチ! と音がしたら、ドライブ終了の合図。ロックを外して鉛筆を取り出せば、ピンピンに削り上がっているわけだ。

 

ロックレバーは強めのバネが入っているので、レバーを引き戻しつつ倒すという動作は、小さい子どもにはちょっと難しいかもしれない。もしかしたら、このあたりをチャイルドロックとして機能させようとしているのかもしれないのだが。

↑この通りの削り上がり。芯が折れているぐらいだと、前進後退合わせて1mほど走らせればきれいに尖る

 

削りカスを捨てるときは、ガラスルーフ(っぽい部分)の先端にあるスライダを引いて持ち上げる。するとルーフがパカッと外れるので、そのまま車体内部に溜め込まれたカスを捨てるだけ。

 

ちなみに削り刃が摩耗して交換する、もしくは芯詰まりの解消も、ルーフを外した状態で行う。この時は、削り刃近くの固定ネジに、指先をかけてユニットを引きずり出すことになるので、必ず専門のメカニック(保護者)が行うこと。日常メンテナンスはカス捨てまで、とドライバーにも伝えておこう。

↑ルーフを開くと削りカスが。あまり溜めすぎると削り器の回転を阻害しそうなので、早めに廃棄したい

 

↑刃の交換はユニットごと行う。替え刃は予備が1個入っているが、別売り(320円・税別)でも購入可能

 

良くできているなーと感じたのは、サイズ感だ。

 

全長155mmは、いわゆるミニカーの1/32スケールに近く、さらに全高のボリュームもあるため、トミカの1/60スケールに慣れている子どもにはかなり大きく感じられるはず。このデカさがいいのだ。

 

大人の手でコロコロ走らせても問題ないサイズなので、子どもの手には少し余るぐらい(幅を削っているので、持つのに問題はない)。この大きめサイズは、ただのミニカーじゃない特別な車なのだ、という気持ちの盛り上がりにつながるのではないか。

 

実際、構造的にはもう少しコンパクトにだって問題なく作れただろうから、これは運転するドライバーのテンションまで考慮したサイズだと思う。

 

もちろん、削る効率の良さとかスピードとか、そういった点で便利な削り器では絶対にない。ないんだけど、でも、必ずしも「高効率=優秀」というわけじゃないのが、文房具の面白いところだと思うのだ。

 

使う楽しさとか、削れるまでの作業を退屈に感じないという意味で言えば、「ハシレ!エンピツケズリ!」はなかなかに優秀なものなんじゃないだろうか。これ、大人だって削ってみたくなるし。

 

 

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芯の尖り具合から見た目までシャープなシャープナー登場!「ブラックウィング」の鉛筆削りは大人にこそふさわしい

小学生のザ・筆記具といえば、鉛筆である。昔は「HB」が標準の硬さだったのが、最近は子どもの筆圧が概して低下していることもあり「2B」が標準になっている、など、ちょっとした違いはあるけれど、それでも鉛筆が小学生の必須ツールであることに変わりはない。

 

それなのに、いささか不遇じゃないだろうか、鉛筆。

 

例えば、これを読んでくださっている読者諸氏の中で、この半年以内に鉛筆を使った覚えがある方が、いったいどれくらいいるだろう。確かに、芯は簡単に折れるし、そうなると削らなきゃいけなくてゴミも出る。ペンケースの中は汚れる。書き込みは消しゴムで消せるため、確実性がない。社会人の筆記具としては、マイナス要素だらけだ。

 

正直に言うと、筆者も堂々と鉛筆の味方をできるほど普段使いしているわけではなかったのだが。ところが、実はここしばらく、メモなどの日常筆記は、ほぼ鉛筆で書いている。なぜかというと、話は簡単。“使いたい鉛筆削り”があるからなのだ。

 

思わず削りたくなるハイクラス・シャープナー

その鉛筆削りというのは、カリフォルニアシーダープロダクツの「BLACKWING(ブラックウィング) ワンステップシャープナー」。

 

文房具好きの方なら、BLACKWINGという名前に覚えがあるかも知れない。元はアメリカのエバーハード・ファーバー社が作っていた鉛筆ブランドで、愛用者の中にはウォルト・ディズニーやジョン・スタインベック、クインシー・ジョーンズなどのレジェンドが名を連ねていることでも有名だ。

 

エバーハード・ファーバー社は、1987年に吸収合併などのゴタゴタで一度は消滅してしまったのだが、2010年にカリフォルニアシーダープロダクツ社(鉛筆用木材のサプライヤー)がBLACKWINGブランドを復刻させて、現在に至る。

 

「ワンステップシャープナー」は、そのBLACKWINGの名を冠してこのほど発売された鉛筆削り、というわけだ。

カリフォルニアシーダープロダクツ
パロミノ
BLACKWING ワンステップシャープナー
3400円(税別)

 

↑ずっしりしたボディには、ニス引きでロゴが施されている。これもまたシブくてかっこいい

 

ご覧の通り、ソリッドなボディの美しさが、第1のポイント。鉛筆をイメージしたアルミ削り出しの六角柱ボディに、ローレット加工を施した円筒部という組み合わせは高級感バリバリで、金属の質感が好きな人にはなんともグッとくるはず。

 

もちろんお値段も、たかが鉛筆削り1つで3400円+消費税というなかなかのもの。だから、基本的に店頭で見つけても、買うつもりがないならみだりに手に取らないほうがいいだろう。これを握ったときのどっしりとした手応えに、壮絶に所有欲をくすぐられて「うわー、これ欲しい!」と思わされてしまうからだ。

 

続いて第2のポイントだが、これは実際に削った鉛筆を見ると分かりやすい。

↑鉛筆を挿し込んでグリグリと回すと……

 

↑この通り、先端が弓なりに反った超シャープな形状に削り上がる

 

削り上がった芯から木肌にかけてがやたらとシャープで、さらに木肌部分がわずかに弓なりのカーブを描いているのが見て取れるだろう。これによって芯が安定して細長く削り出せる上、さらに芯先の視界も良くなるというメリットがあるのだ。

 

鉛筆で絵を描く人などは、ナイフでわざわざこういう削り方をすることもあるが、少なくとも手回しの削り器で弓なりの削りができる製品は、ほとんどないはずだ。(カール事務器の「エンゼル5 ロイヤル」など、機械式のハイクラス削り器であれば存在する)

↑従来(上)との比較。芯の細さ・長さもはっきりと違う

 

なぜこういう削り方ができるのか? というと、秘密はボディ内の刃にある。ローレット加工の固定具を外して刃を取り出してみると……ネジで固定された刃が、わずかにカーブしているのだ。

↑刃も微妙にカーブした特殊なもの。替え刃の有無は現時点では不明だが、交換はできそうだ

 

なるほど、このカーブした特殊な刃で削られるのだから、鉛筆の木肌も同様のカーブになるという仕組みである。

 

一見すると、なぁんだってギミックだが、普通に考えれば刃のカーブした部分に削る圧力が集中しそうだし、これで均等に削るのはなかなか難しいはず。製品化にあたっては、刃の微妙な角度や当たる位置など、かなり繊細に考えられているのではないだろうか。

 

ただし、そういった部分でなにか負担があるのか、それとも単に刃の鋭さの問題なのか、削り上がりはやや木肌が荒れているようにも感じられる。このあたりの仕上がりに関しては、裏を返せば、国産の鉛筆削りが完成度高すぎ! ということでもあるのだが。

↑中心からズレた位置にある挿し込み口

 

ちょっと気になったのは、鉛筆の挿し込み口が、中央からかなり偏心して配置されていること。

 

これはおそらく刃の真上に空間を空けて、削りカスをスムーズにボディ内に排出し、溜め込めるようになっているのだと思われる。カーブ刃は普通よりも削りカスが詰まりやすいように感じたので、それを少しでも軽減させるように、配慮されているのかもしれない。

↑削りカスをスムーズに排出するためのスペースを稼ぐための工夫だろうか

 

ともあれ、それ自体の質感の高さに加えて、削り上がりの面白さまであるのだから、「使ってみたい!」となるのも当然だろう。

 

決して「コスパに優れている」とも「機能的に超優秀」とも言えないが、それでも、文房具好きならばチェックしておくべき製品だと思う。なにより、「この鉛筆削りを使ってみたいから、久しぶりに鉛筆でなにか書いてみるか」というのも悪くないんじゃないかな、と。いや、格好良さにクラッと来てつい買っちゃった自分を弁護するわけではないんだが。

 

 

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木の香りに絶妙な重量バランス…世界のクリエイターを魅了する鉛筆「ブラックウィング」が愛おしい

【ド腐れ文具野郎 古川 耕 の文房具でモテるための100の方法】

番外編

文房具への造詣が深い放送作家の古川耕氏が、「文房具でモテるための100の方法」と銘打って文房具への愛を語る連載が、とうとう100回に達した。『GetNavi』は創刊から20年を超える雑誌だが、その半分近く、およそ8年半に渡って掲載された、長寿連載であった。うれしいことに次の連載はすでに予定されているが、今回は好評にお応えし「番外編」として、アンコール回をお届けしたい。


パロミノ
ブラックウィング
3840円(税別)
世界最高の芯と木材を用い、クラフトマンシップを持つ職人によって作られた鉛筆。いつの時代も親しまれるマットブラックの木軸、本品のシンボルともいえる金色の金具と黒の消しゴム、そして柔らかな書き味が世界中のクリエイターを魅了する。1箱12本入り。芯の硬度は「SOFT」。

 

由緒ある海外製鉛筆で心豊かにモテる

緊急事態宣言明けで久しぶりに訪れた大手雑貨店の文房具コーナーで、パロミノのブラックウィングが大きく陳列されているのに目が留まりました。以前からセレクトショップでよく見かけてはいたものの、なぜかこれまで食指が伸びなかったその鉛筆をふと手に取ってみると、しっくりと馴染んでとても心地良い。その日は手ぶらで帰ったものの、いつまでも指先に残る感触が忘れられず、後日この連載のために取り寄せました。

 

紙箱を開けると木の香りがふわっと漂い、専用のシャープナーで尖らせて書き始めると、思わず小さく声が出ました。どうやらブラックウィングの特徴である、尾尻の平らな消しゴムと金属パーツが絶妙な重心バランスを生み出しているようです。紙の上で芯が削られていく感覚がほど良く感じられ、安い鉛筆によくある、上滑りする感じがまったくありません。このちょうど良い「鉛筆らしさ」が、しかし以前は確かに苦手だったのです。

 

どれだけ鋭く尖らせても、瞬く間に線が丸くぼやけ、一瞬前とはまったく違う線となってしまう。書いていて、これほど「時間」を感じさせる筆記具はほかにありません。それがなぜかいま、愛しく感じられるようになったのは、コロナのせいでしょうか。いまはただ、その懐かしい書き味を楽しんでいます。来月から、この連載も心機一転。「手書き」について考えていきます。

パロミノ
ブラックウィング ワンステップ シャープナー
3400円(税別)
絶妙に歪曲したラインで芯を長く削り、折れにくい完璧な先端を作り出せる鉛筆削り。キャニスターには3回分の削りクズを溜められる。

 

「ド腐れ文具野郎 古川 耕 の文房具でモテるための100の方法」バックナンバー
https://getnavi.jp/author/koh-furukawa/

サイクロン掃除機派も納得!? 成果や機能を美しく可視化する「鉛筆削り」から目が離せない!

【きだてたく文房具レビュー】機構や削る様子が見える鉛筆削り

今回は、美しい「鉛筆削り器」っていいよね、という話である。

 

ここでいう鉛筆削り器とは、いわゆるハンドル手回し式ではなく、電動でもなく、穴に挿し込んだ鉛筆を手で回して削る、あの小さな鉛筆削りのことだ。

 

まぁ、大抵の人は「鉛筆削り器が美しいんですよ」と言われても、なんとなくあいまいに「はぁ」と頷くだけだろう。たとえ「ほほう、美しいんですか」と興味深げに返してきたとしても、油断してはいけない。脳内では、昼に食ったラーメンの味を反芻しているだけに決まっている。

 

それぐらい、一般的な社会人というのは鉛筆削り器に興味がない。もとより彼らは鉛筆を使うことがないのだから、それを削るためにしか使えない道具に気を払う道理がないのは当然のことと言える。そんなことは分かったうえで、でも、とても美しい鉛筆削り器が出たので紹介したいのだ。

↑オブジェのような見栄えも十分な透明鉛筆削り器

 

学童文具メーカーのクツワから6月に発売されたのが、「透明鉛筆削りトガール」(上写真の中央)、「透明鉛筆削りケズール」(同右)、「透明2枚刃鉛筆削り」(同左)の3点。それぞれ、クツワが従来からラインナップしていた「トガール」「ケズール」「2枚刃鉛筆削り」の透明タイプである。

 

実はこの3点とも、特殊な機構を備えたかなり高機能鉛筆削り器なのだが、なにせ小学生がメインユーザーの文房具ということで、もったいないことに大人の認知度が極端に低い。そこでクツワは「HI-LINE」という大人向けのブランドで、大人が見ても格好良くて美しい透明タイプの鉛筆削り器として限定販売に踏み切った。

↑左が従来品。学童向けのファンシーなカラーで、大人はやや使いづらいかも

 

実際、刃以外ほとんどの部分が透明化されたことで、特殊な削り機構が丸見えになり、大人が見てもとても楽しめる。眺めて良し、削って興味深い、さらに削る機能も高いということで、しばらく鉛筆に触れていなかった大人にも充分にオススメできるクオリティなのだ。

 

ちなみにこのクツワは在阪のメーカーであり、かつて漫才師ますだおかだの岡田圭右(閉店ガラガラ、ワオ!)が営業として勤務していたこともあるそうだ。そう言われてみれば、ケズールやトガールといったダイレクトすぎる商品名の付け方と、岡田の芸風になんとなく相似を感じてしまう。

 

先端の角度が変えられるトガール

トガールは、鉛筆先端の削り角度を調整できる機能を持つ鉛筆削り器である。

↑クツワ「透明鉛筆削り トガール」464円

 

筆圧をグイッとかけたい色鉛筆や,芯の折れやすい2B〜などの柔らかい鉛筆は削り角を鈍角に。HB以上の硬い芯は先端を鋭角に尖らせることで、より書きやすくすることができる。

 

ナイフでの手削りなら尖らせ具合は好みに合わせて自在なのだが、鉛筆削り器で多段階に調整ができる機構は非常に珍しい。(鋭角・鈍角2つの削り器を備えた2穴式は他にも存在する)

↑芯の硬さや使い方に合わせて、削り角が5段階に変えられるギミック

 

“CLOSE”表記から一段階回すとシャッターが開くので、あとは好きな角度にダイヤルを設定して鉛筆を挿し削る。

 

1が最も鈍角で、5まで進むにつれて鋭角になるのだが、これを覚えておかないと、使うたびに「あれ、どっちが尖るんだっけ?」とやや迷うことになるので要注意だ。

↑写真上の矢印で刃が右側に刃が動くと鋭角に、左側なら鈍角に削り上がる

 

ダイヤルを1から回していくと、板バネで固定されている鉛筆削り自体の角度が少しずつ変わっていく。これによって鉛筆に当たる刃の角度も変わるので、先端の削り角が違ってくるのだ。

 

文字で説明すると少しわかりにくいかもしれないが、透明ボディで角度を変えて削ってみると一目瞭然。こんなちょっと削り器の角度が変わるだけでこんなに削り上がりが変わるのか! と驚かされるだろう。

 

芯の長さが調整できるケズール

一方、ケズールは、自分の筆圧や好みに合わせて鉛筆の芯先を5段階に長さ調整して削る機構を備えている。

↑クツワ「透明鉛筆削り ケズール」388円

 

使い方は、まず底部のシャッターをスライドさせて、露出した穴に鉛筆を挿し込む。次にダイヤルを回して削り上がりの芯の長さを設定したら、あとは普通に鉛筆を回転させて削るだけ。

 

芯の長さ設定は、ダイヤル回転に合わせてアイコンで表示されるので、分かりやすい。

↑写真のハイライト部のカバーが動くことで、芯の長さが決まる

 

↑芯の長さ調製はアイコンで表示。直感的でわかりやすい

 

芯の長さ調整は、ダイヤル操作に連動して刃の上を移動するカバーによって行われる。芯を短くしたい場合はカバーが前まで移動して刃を短く、長い場合はカバーが後退して刃の全域が使えるので、芯が長く削れる。シンプルながらよくできた仕組みだ。

 

ボディが透明なおかげでこの仕組みがよく見えるようになっており、「ほほう、なるほどこうなっていたのか!」と納得できて面白いのである。

↑芯が折れて刃に詰まっても、ワンプッシュでポコっと取れる。密閉型の削り器だけにこれは便利だ

 

ちなみに、ダイヤル上部のボタンは、削る途中で折れてしまった芯を排出するためのイジェクト機構となっている。ボタンを押し込むと刃の長さ調整カバーがぐいっと伸びて、隙間に詰まった芯を押し出す。この芯を押し出す動作がまた可愛くて、ついつい芯が詰まることを期待してしまうぐらいなのだ。

 

倍速で削れる2枚刃削り

最後に紹介する2枚刃鉛筆削りは、その名前の通り2枚の削り刃を搭載し、通常の2倍のスピードで鉛筆が削れる鉛筆削り器である。

↑クツワ「透明2枚刃鉛筆削り」464円

 

トガール・ケズールと比べて、ギミックは非常に単純。

 

内蔵している削り器の表と裏の2面に刃を備えているので、鉛筆を半回転させるだけで表裏の両面が同時に削れて1回転分、1回転させれば2回転分と倍速で削れる、というだけのものである。

↑新品の鉛筆も、電動鉛筆削りとも勝負できるほどの早さで尖らせる

 

とはいえ、仕組みは単純だが効果は歴然で、本当に削り上がりが驚くほど早い。

 

芯が折れた鉛筆でも3~4回転させればピンピンに削り上がるし、削っていない新品の鉛筆でも8回転ほどで芯先が尖る(普通の鉛筆削り器なら20回転ほどかかる)。倍速というのも全く大げさではないのだ。

↑削り器の裏・表刃で同時に削るので、もちろん削りカスも2面同時排出

 

透明度の高いボディの中で,削り器の表裏からスルスルスル……となめらかに削りカスが排出されるのは、なかなかの見応えがある。

 

しかも刃は、高品質の国産削り刃メーカーである中島重久堂製ということで、切れ味も抜群(もちろんケズール、トガールとも中島重久堂の刃だ)。削るのが気持ちいいな、と感じさせるシャープな刃が2枚も同時に使える贅沢さは、なかなか良いものである。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

入手困難なのにはワケがある! 大量生産できない「至高品」案内

希少な素材やこだわりの製法、匠の技などを用いたアイテムは量産ができないため、手に入るまで時間がかかります。だからこそ愛おしくもあります。そんな一点一点丁寧に作られた品々を紹介します。

 

【その1/包丁】一度使うと戻れない心地良い切れ味

80-01

タダフサ
パン切り 1万260円(上)

万能170㎜三徳 9720円(下)

パン切り包丁は予約で2年待ち、次いで三徳包丁も入手が難しい人気商品。匠の技で作られた包丁は、どちらも抜群の切れ味です。さらに伝統を受け継ぎながらも現代の暮らしに合うモダンなデザインも愛される理由。使いやすさと機能美を兼ね備えた名品です。

 

感動的な使い心地の暮らしになじむ道具

タダフサは、世界に誇る鍛冶の 町、新潟県三条市に工房を構える老舗メーカーです。なかでもパン屑がほとんど出ない「パン切り包丁」 はメディアでもよく取り上げられる人気商品。なんと納品まで2年待ちだといいます。「本当に良いもの を届ける」を信条に、すべて熟練の職人たちによる手作業で作られているため、どの包丁を使っても感動的な使い心地が味わえます。

 

しかし、人々が何年待ってでも同社の包丁を手に入れたいと思う理由はそれだけではありません。伝統を継承しながらも、モダンで美しい佇まい。シンプルなのにぬくもりを感じるデザイン。それでいてどんな料理やキッチンにもなじむ。そんな包丁で食卓を作り上げる、その上質な時間を手に入れたいのです。

 

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先端の波型の刃できっかけを作り、そこに直線刃をスーッと滑らせて切ります。切り口が滑らかになるため、パン屑がほとんど出ません。

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ロゴマークは、職人が使う「火箸」をモチーフにしています。ダンボールで作られたパッケージはあたたかみがあります。

 

【入手方法】今すぐ購入したいなら工房に直接買いに行こう

公式のオンラインショップをはじめ大手ショッピングサイトでは売り切れや予約待ちが続きます。しかし、新潟の工房ならその場で購入することができます。

 

【その2/ウオッチ】進化したムーブメントとムーンフェイズにファン垂涎

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オリエントスター
メカニカルムーンフェイズ
RK-AM0001S
18万3600円

ブランド初となる機械式月齢時計。6時位置のインダイヤルに、夜空と星、そして月のモチーフがあしらわれ、29.5日周期で回転することで新月から満月までの月相を表します。精度を向上させた「46系F7」ムーブメントを搭載。

 

【入手方法】品薄になりがちだが正規販売店には在庫も

職人による手作業で製造しているため大量生産は難しく、品薄になりがち。全国のプレステージショップ(正規販売店)へ在庫の有無を問い合わせましょう。

 

【その3/鉛筆削り】ドイツのマイスターが作る世界でも品薄な鉛筆削り

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KUM
マスターピース
3240円(11月発売)

ドイツの老舗メーカーが作る高級鉛筆削り。マグネシウム製で100%職人の手作り。高い技術と品質が、鉛筆削りのなかでも最も鋭角な8度のコーンで削ることを可能にしています。

 

【入手方法】先行販売中の海外ではすでに入手困難に

大量生産ができず、先行販売している海外ではすでに入手困難に。日本でも手に入りづらくなる可能性が高いので、発売後すぐの購入がオススメです。

 

【その4/タンブラー】お酒をまろやかにする鹿児島が誇る伝統工芸

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薩摩錫器工芸館
タンブラー オンザロック
吹雪加工 260ml
1万800円

鹿児島県指定の伝統工芸品、薩摩錫器のタンブラー。割れないという特性に加え、錆びることがないので長く愛用できます。錫のイオン効果・抗菌効果によりお酒がまろやかに。

 

【入手方法】公式サイトから予約注文し待ちさえすれば入手できる

創業100年を超える工房で職人が手作りしています。タンブラーのなかでも、人気のサイズ・柄のため、届くまで20日ほど要しますが、待っていれば入手は可能です。

 

【その5/革靴】半年待ちのカジュアルレザーシューズ

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Nakamura
オーダーメイドシューズ
2万9160円

老舗の登山靴店で修業をしたオーナーが、奥さんと運営する靴店のオーダーメイドシューズ。履きやすさと丈夫さを備えたシンプルなカジュアルデザインが特徴です。

 

【入手方法】全工程手作業のうえ注文殺到で半年待ち

商品にもよりますが、日に5〜6足のペースで丁寧に手作りされています。現在はオーダーが殺到し、受け取るまで約半年かかります。注文は工房にて受け付けています。

 

 

【その6/折り紙】使うのがもったいないレースのような美しい折り紙

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バックストリートファクトリー
千代切紙
324円(1枚入)、972円(3枚入)

レーザー加工技術を駆使して作られた折り紙。1時間に約40枚しか作れない希少なアイテムです。SNS上で話題になったため最近まで品切れが続いていました。

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全9柄あり、文様には繁盛や円満などの意味が込められています。もったいなくて使えないという声も多数。

 

【入手方法】ネットで購入可だが全柄入手は難しい

精巧なカッティングにより大量生産不可。欠品が続いていたが、最近入荷され始めたので手に入れるチャンスです。柄によっては入手困難なものも。