事前の設定が必須! 災害時の「iPhone」「Apple Watch」活用術と操作方法をガジェットのプロが伝授

災害はいつ発生するかわからないもの。いざというときに、慌てず、的確な行動を選択できるようにするためには、日頃からの防災を意識した準備が欠かせません。防災グッズや備蓄の準備がひと段落したら、日頃身につけているスマートフォンやスマートウォッチを駆使した防災対策もしっかり考えておきたいところ。

 

そこで今回は、国内での利用率が高い「iPhone」や「Apple Watch」に関する準備や心構えについておさらい。これらの機器における、迅速な避難や安全確保のために役立ちそうな設定・機能や、あらかじめ備えておきたいことなどを、ガジェットライターの井上 晃さんに聞きました。5つのポイントにわけてご紹介します。

 

1.防災に備える準備をしておこう

まずチェックしておきたいのが、iPhoneの標準機能に関する設定です。

 

「とくに重要になるのは、気象庁や政府が発信する災害情報をリアルタイムで受信するための「緊急速報」。これについては、「設定」アプリの「通知」画面の最下部にある「緊急速報」の項目が有効になっているかどうかを確かめておきましょう」(ガジェットライター・井上 晃さん、以下同)

 

「常に警報音を鳴らす」が有効になっていれば、消音モードの場合でも警報音が鳴るそうです。

↑「設定」アプリで「通知」→「緊急速報」と画面を進め、設定の状態を確認しておきましょう。

 

一方、防災関連の詳細な情報を得るには、サードパーティアプリを活用することが必要になると井上さんは言います。

 

サードパーティ製アプリまで範囲を広げると選択肢は膨大になるので、おすすめのアプリを2つ教えてもらいました。

 

「1つ目は『Yahoo! 防災速報』です。自宅や実家などのエリアを指定しておくことで、気を付けるべき災害や犯罪などの情報について、こまめに通知が届くようになり、防災マップや防災手帳なども同アプリ内から確認できます。
2つ目は『全国避難所ガイド』です。周辺のハザードマップや避難所の位置を端的に確認できます。たとえば、洪水や津波で注意しなくてはいけないエリアを視覚的に把握しやすいので、生活圏で備えておくのにはもちろん、引越し先の候補地や、旅行先の周辺情報などをリサーチする際などにも活躍します」

 

2緊急時の操作をチェックしておこう

続いて、万が一の事態に命を守るための操作についてです。

 

「iPhoneには、簡単な操作で、警察(110)や、海上保安庁(118)、火事/救急車/救助(119)のどれかに電話を発信できる『緊急SOS』機能が備わっています」

 

緊急SOSを発信するには、サイドボタンと音量ボタン(上下どちらでもOK)を同時に長押しすればOK。画面に表示された「緊急SOS」のスライダーを操作するか、そのままボタンを長押しし続けるか、どちらかの操作をすれば緊急SOSの画面が開くので、そこで発信先を選択しましょう。

↑サイドボタンと音量上下キーを同時に押し続けると「緊急SOS」の画面が起動します。

 

また、緊急SOSは普段意識しない機能のため、これを機に関連の設定もチェックしておくのがいい、と井上さんは言います。

 

「『設定』アプリの『緊急SOS』の項目に集約されています。たとえば『サイドボタンで通報』がオンになっていれば、サイドボタンを5連続で押す操作で、素早く緊急SOSを実行できるようになります。
また、『ヘルスケア』アプリで、家族や親戚、友人などを緊急連絡先として登録しておくことも可能です。こちらの設定をしておくと、緊急SOSを発信した旨と、現在地情報が指定の連絡先に共有されるようになります」

 

なお、Apple Watchでも、通信環境が整っていれば、緊急SOS機能を利用できます。こちらは、より身につけている時間が長いため、自分の身を守るためには覚えておきたいところ。

 

「サイドボタン」(Digital Crownではない細長い方のボタン)を長押しすることで、同様の操作ができます。上位モデルの「Apple Watch Ultra」の場合は「アクションボタン」の長押しでも同様の挙動になります。

↑Apple Watchも通信環境が整っている状態ならば、サイドボタンを長押しから「緊急SOS」を利用できる。

 

「こうした緊急SOSは、大規模な災害よりも、事故や病気の際により役立つことが期待できるものではありますが、操作を把握しておいて損はありません。
ポイントは、ロックを解除できない他人のiPhoneでも利用できること。万が一の際に、サッと扱えるよう、平時のうちに操作の流れをイメージしておくことが重要です。ただし、誤発信してしまうことはないよう気をつけてくださいね」

 

3位置情報の共有の仕方を確認しておこう

外出先で被災した場合には、音声やテキストでの安否確認のほか、家族や友人などに現在地を伝えられるとより安心でき、行動計画も立てやすくなるでしょう。

 

「iPhoneには位置情報を共有するための複数の手段がありますが、いざというときに使えないのは困るので、家族同士でお互いにチェックしやすい方法を、予備を含めて、平時にいくつか確認しておくおのがベター。
具体的には、『メッセージ』アプリ内での位置情報の共有や、『探す』アプリでの位置情報の確認、あるいは『LINE』や各種SNS等での共有操作などが候補です」

 

たとえば、iOS標準の「メッセージ」アプリでは、チャットを開いた画面で「+」をタップし「位置情報」を選択することで、現在地や場所を指定した位置情報などを相手に共有できます。

 

連絡先がわかっている相手に対して、シンプルな操作で位置情報を共有できるので、何度か練習しておくと良いかもしれません。

↑「メッセージ」アプリの宛先に位置情報を送りたい相手を入れてから、「+」をタップ(左)。一覧から「位置情報」を選択し(中)、マップ上でピンの場所を定めて「ピンを送信」をタップすれば送れます(右)。

 

4.伝言板サービスの候補も決めておこう

ただし、大規模な災害時には、電話やチャットが使える状態とは限りません。避難時にスマートフォンを紛失したり、破損したりしている可能性もあります。

 

万が一連絡が取れなくなる場合のことも想定して、「伝言板」の使い方も把握しておく方がいいと井上さんは付け加えます。

 

「被災地への通信が増加し、通話がつながりづらい状態などになると、災害用伝言ダイヤル(171)の提供が開始されます。『171』=『イナイ』で覚えておきましょう
たとえば、伝言を残す場合には、固定電話または携帯電話から、この171に電話をかけ、自動音声に従って、『1』をプッシュ。相手の電話番号を入力し、30秒の音声メッセージを残すという流れです。
細かい使い方は、NTT東日本西日本のWebページにて解説されているので、目を通しておきましょう。ちなみに、大手携帯キャリアが展開する伝言板アプリなども多数あるので、こちらも有事の際にどれを使うのか、家族で事前に打ち合わせしておくことが重要になります」

↑大手キャリアの場合、NTTドコモは「災害用キット」アプリ(左)を、auは「+メッセージ」アプリ(中)内の公式アカウントである「au災害対策」を、ソフトバンクは「災害用伝言板」アプリ(右)をチェックしておこう。

 

5バッテリー管理の基本を覚えておこう

災害時の初期対応が終わり、もし充電手段が確保できていない場合には、スマートフォンなどのバッテリーを節約するのが大切です。この際のポイントが大きく2つあると、井上さんは言います。

 

「1つ目は、iPhoneの電源をオフにするか、使うとしても『低電力モード』に切り替えておくことです。複数の設定を手動で制御するよりも確実にバッテリーを節約できます。
2つ目は、Apple Watchを利用している場合には、その電源をオフにすることです。基本的には、Apple Watchとの接続によって、iPhoneのバッテリー消費は早まりやすくなりますので、細かい制御は考えず、iPhoneの電源を長持ちさせるように割り切るのがよいでしょう」

↑「設定」アプリで「バッテリー」を選択(左)、「低電力モード」のスイッチをタップしてオンに(中)、低電力モードが有効になるとバッテリーアイコンが黄色くなる(右)。

 

また、あらかじめ被災時に備えて充電手段を確保しておくことも重要だとのこと。当然、機器類の準備には、検討の時間も費用もかかるので、余裕があるときに考えておかなくてはいけません。

 

「家が無事な場合でも、普段使いのモバイルバッテリーだけでは、数日間以上の停電には対応しづらいと思われます。
スマートフォンの充電だけでなく、照明や、消費電力の小さい家電なども使用したい場合には、中容量以上のポータブル電源を確保しておき、できればさらに何かしらの発電手段も確保しておけると安心です」

 

【関連記事】

停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

 

「自動車がある家庭では、車のアクセサリーソケットの直流電流を、家電で使える交流電流(コンセントにプラグを指して使える状態)に変換できる『車載用インバータ』などを用意しておくとスマートフォンの充電やノートPCの使用くらいは対応しやすくなります」

 

いざというときに慌てて操作ができなくなるのはもちろん、事前に設定しておかないと必要なときに使えない機能もたくさん。毎年3月11日と、防災の日である9月1日には、設定と操作方法を確認するなどルーティン化し、災害に備えてはいかがでしょうか。

 

Profile

ガジェットライター / 井上 晃

スマートフォンやスマートウォッチ、タブレットを軸に、ICT機器やガジェット類、ITサービス、クリエイティブツールなどを取材。Webメディアや雑誌に、速報やレビュー、コラムなどを寄稿する。

 

防弾ベストと同じ素材のインソール! 釘を踏んでも貫通しない、日常使いできる防災スリッパ「ルッツプラス」

パラデックは、防弾ベストと同じ素材のインソールが入った防災スリッパ「ルッツプラス」を1月16日に発売します。

 

記事のポイント

屋内にいる時に地震が起きると、割れた食器やガラスなどが床に散乱する可能性があります。そうした時にこの一足があれば、釘を踏んでも貫通させずに足を守ってくれます。スリッパでありながら、かかと部分に太いゴムがあるおかげでホールド感があり、靴のような感覚で歩けます。

 

インソールに軽量で強度が高い「アラミド繊維」を使用しており、ガラスの破片や釘を踏んでも貫通しないとのこと。日本工業規格による正式な踏抜き試験もクリアしています。

 

かかと部分の太めのゴムが足をホールドし、靴のような感覚で歩けます。アウトソールにはゴム底を使用しているので、すぐに外に逃げないといけない場面でも、靴を履き替える必要がありません。

 

パラデック
「ノイエ ルッツプラス」防災携帯リッポン
価格:4980円(税抜)

・参考サイズ
S:21.0~23.0cm
M:23.0~25.0cm
L:25.0~27.0cm

「備えない防災」が新トレンド。揃えたいのは日常生活やアウトドアでも役立つ防災アイテム

災害時にだけ役立つアイテムを備えるのではなく、日ごろの暮らしやアウトドアで便利に使えるモノを揃える「備えない防災」という流れが生まれている。コスパも高まる、省スペース化につながるなど、良いことばかりだ。

 

「備えない防災」という新潮流

在宅避難時に役立つ、多彩な明るさを実現

パナソニック 多機能でかランタン BF-BL45M/実売価格5630円

↑パナソニック 多機能でかランタン BF-BL45M

 

無段階調光、調色機能付きのランタンとしても懐中電灯としても、屋内や屋外で使い勝手が良い。防滴対応、停電時自動点灯、単1形乾電池3本駆動、USB入出力搭載など普段からいざというときまで役立つ機能をしっかり備えている。

↑明るさは最大で約800lm。やや広めのリビングでも明るく照らせる。ハンドル付きで懐中電灯としても使いやすい

 

多孔式バーナーを採用。風に強い頼れるコンロ

イワタニ カセットフー タフまる Jr./実売価格7590円

↑イワタニ カセットフー タフまる Jr.

 

ソロキャンにも適したダッチオーブンOKのコンパクトなカセットこんろ。多孔式バーナーの採用、独自の“ダブル風防ユニット”搭載で風を防ぎ安定した燃焼を実現。専用キャリングケース付きで非常時の持ち出しもスムーズだ。

↑外側と内側、二段階の風防で多孔式バーナーをプロテクト。耐荷重10㎏、8インチのダッチオーブン、直径20㎝の鍋に対応

 

ゴミも掃除の軌跡も“見える”クリーナー

日立グローバル ソリューションズ パワーブースト サイクロン PV-BH900SM/実売価格8万7780円

↑日立グローバル ソリューションズ パワーブースト サイクロン PV-BH900SM

 

見えにくいゴミまで見える“3方向ごみくっきりライト”に掃除の軌跡を可視化する“ARおそうじ”を搭載し、無駄なくムラなく掃除が可能。コードレス&バッテリー駆動で停電時や災害時の後片付けもスムーズに行える。

↑掃除した経路をスマホで確認できるのでロスなく掃除ができる。時短はもちろん体力の温存にもウレシイ機能だ

 

手かざしでオン/オフOKの実力派ヘッドライト

サンワサプライ LEDヘッドライト LED-HL1/実売価格4320円

↑サンワサプライ LEDヘッドライト LED-HL1

 

手かざしでオンオフできるモーションセンサー付きLEDヘッドライト。専用充電バッテリーだけではなく単4形乾電池でも使える。スポットからワイドまで照射範囲の調節や点灯モードの切り替えに対応し、活躍の場は広そうだ。

↑軍手をしていても手が汚れていても問題なし。何より両手をフリーにできるのは最大のメリット。非常時には特に重宝するはずだ

 

アイデア次第でさらにマルチに使える!

ビクトリノックス フィールドマスター/実売価格5500円

↑ビクトリノックス フィールドマスター

 

鋸やハサミも付いた15機能搭載のスイス製マルチツール。災害時には栓抜きや缶切りなど、ちょっとしたツールが必要になるケースが出てくるかもしれない。アイデア次第でそんな窮地をも切り拓いてくれる心強いアイテムだ。

↑たとえば缶詰のフタを開けにくいときは、この“マルチフック”が便利。オールマイティに役立つ、気の利いた相棒だ

 

ベッドサイドに置いて安心な、多機能目覚まし時計

リズム 多機能型防災クロック 4RQ002-003/実売価格1万1550円

↑リズム 多機能型防災クロック 4RQ002-003

 

ラジオが聴ける、スマホなどに充電できる、内蔵充電池へは手回し発電でも充電できる、非常時に重宝する機能が揃ったユーティリティが特徴。普段は多機能な目覚まし時計として、ベッドサイドに安心を置いておける。

↑スマホへの充電は内蔵充電池のほか単3形乾電池4本でもOK。充電池への充電は手回し発電機で行えるのも安心感が高い

 

※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです

断水生活はコレで乗り切る! 無印良品でも手に入る、水ナシでもキレイを保つ防災アイテム

電気とともに生活に欠かせないのが水。だが特に地震発生後は給水設備の損壊により断水になる確率が高い。普段から水を貯めておく、そして水なしでも衛生的な環境を守れるアイテムを備えておくことが重要となる。

 

水のない生活に備えて、貯水と衛生衛生用品の備蓄が重要

東京都水道局の「東京水道経営プラン2016」では首都直下地震などの大規模地震の際、一部地域では断水率が60%を超えると想定している。一概に比較することはできないが、能登半島地震では実際に約3か月以上も断水した地域が発生したという報道も。飲料用の水はもちろんのこと、常日ごろから生活用水のストックにも意識を向けることが求められるのだ。

 

水が出ないことによる衛生環境の悪化を回避するために、風呂の残り湯があればカラダを洗ったり、入浴剤などが入っていなければちょっとした洗い物もできるだろう。水と空気はタダなどと冗談を言ってはいられない。我が家の水習慣を見直してみよう。

飲み水はひとり1日3L。人数ぶんの備えが必須

人にもよるが多少我慢すれば一日2Lのペットボトル1本で凌げるかもしれない。季節によっても必要な水分量は変動するので、この3Lを目安にしておきたい。

 

バスタブに水をためておけば、生活用水として使える

サイズは様々なので一概には言えないが、0.75坪タイプのバスタブで200L程度貯水しておくことができる。急場凌ぎの生活用水として活用したい。

 

断水時に衛生を保つアイテムを備えよ!

消臭性能がアップし、処理頻度を減らせる

ファンデクセル 超強力消臭Qbit いつでも簡単トイレ/6990円(100回ぶん)

↑ファンデクセル 超強力消臭Qbit いつでも簡単トイレ

 

最高グレードのヤシ殻活性炭を採用することで凝固剤の消臭性を大幅にアップ。消臭効果は1週間以上持続するので排泄物などを捨てる頻度も減らせる。災害防止研究所主催“防災グッズ大賞2023”大賞受賞商品。

↑長期保管に適したアルミパッケージを採用。ポリエチレン製手袋100組と便器カバー2袋が付属するので衛生管理、廃棄も安心だ

 

水でカラダを洗えない際に、十分拭ける厚手のシート

大王製紙 アテント からだふき 30枚/416円

↑大王製紙 アテント からだふき 30枚

 

1枚で全身拭ける厚手、シートサイズ300×300㎜の大判タイプ。アロエエキス+ヒアルロン酸配合、無香料、ノンアルコール、パラベンフリーで肌にやさしいのもポイント。風呂に入れなくてもしっかりと清潔感をキープできる。

 

洗濯できない下着の汚れ問題を解消!

アミー 災害時 パンツに貼る布シート(使い捨てタイプ)/1980円

↑アミー 災害時 パンツに貼る布シート(使い捨てタイプ)

 

断水が起こっているような状況下では当然、洗濯もままならない。毎日同じ下着着用時の汚れ問題を解消してくれるのが、パンツに貼る使い捨て布シート。違和感のない新品のような履き心地で急場が凌げる。

 

クリーンな水の確保が困難なときに重宝する

かりはな製作所 Mizu-Q PLUS/実売価格4070円

↑かりはな製作所 Mizu-Q PLUS

 

高精度中空糸フィルターと繊維状活性炭で病原菌やウィルス、ニオイなどの有害物質をカットして、安全な飲料水に変えてくれる軽量コンパクトな携帯型浄水器。ただし浄水しても飲用に適さない水もあるので、その点はしっかりと確認したい。

↑ストロー上の中空糸の壁面にある微細な孔から浄水のみを抽出。0.1μ以上の有害物質、細菌を通さない

 

無印良品で手軽に買える「断水対策グッズ」

無印良品では災害発生時に衛生を保てるグッズが販売されている。保存が利くレトルト食品も多く、併せて備えておきたい。

 

再生紙トイレットペーパー 5倍巻 シングル/599円

↑再生紙トイレットペーパー 5倍巻 シングル

 

紙芯なしの1個あたり長さ250m長巻タイプ。一般的には114mmの紙幅を107mmにすることで自然と使用量を削減、環境負荷が小さいのもポイントだ。場所を取らないストックのしやすさも備蓄に最適。

 

水のいらないシャンプー/890円

↑水のいらないシャンプー

 

水が不足しているときに髪を洗いたいとは言い出せないもの。水のいらないシャンプーは、髪と頭皮を水で洗い流さずとも(気になる時はタオルで拭くだけで)すっきりと保ってくれる。保湿成分配合。

 

指型歯みがきシート(12枚入)/350円

↑指型歯みがきシート(12枚入)

 

水が出ずに歯を磨けないのも相当ストレスになるのは間違いない。そこで準備したいのが指に装着して歯が磨ける歯磨きシート。口臭対策、口腔内のコンディションを保つためにも歯磨きは重要だ。

 

※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです

災害時に「情報と電気」を確保できる? 今こそ見直したい通信環境と電源回り

いまの生活に欠かすことのできないネット通信と電気。災害発生時には通信困難になったり、停電することが予想される。だが非常時こそ正しい情報を入手したり、ポータブル電源で最低限の電気を確保することが必要だ。テクニカルライターの湯浅顕人さんが解説する。

 

 

自分の通信環境や電源回り、まずはそこから見直したい

「特定のキャリアにだけ不具合が発生しているということもあります。複数のキャリアと回線契約しておくことで、切り替えたら繋がることもあります」(湯浅さん)

 

いまはキャリアのサブブランドや格安SIMなど、低コストで2回線維持ができる。SIMを2枚挿せるスマホなら持ち運びの負担もない。通信回線が復旧しない場合は公衆無線LANの活用も必要だ。

 

「“Japan Wi-Fi auto-connect ”アプリを使えば近隣のWi-Fiに自動的に接続してくれます。危険な野良Wi-Fiに接続したりはしないので安心です」(湯浅さん)

 

非常時でも「確実に」、「正しい情報」を入手する

1 電池切れではつながらない! スマホのバッテリー対策を万全に

スマホも電気がなければただの板。とならないようにソーラー充電対応のモバイルバッテリーやポータブル電源はもちろん、手回し発電(充電)機のような人力で急場を凌ぐことができるアイテムを用意しておきたい。

 

「スマホのバッテリー切れは情報収集のうえで致命傷になりかねません。電源やUSB充電だけでなく、乾電池でも使えるタイプの充電器を用意しておくと安心でしょう」(湯浅さん)

↑必要ない機能やバックグラウンドで動作するアプリを停止。画面の明るさを抑えることもバッテリー消費抑制に効果的だ

 

2 電話はつながりにくくなること必至! 音声通話アプリで連絡する

特に災害発生時には通話が殺到したり携帯電話基地局がダメージを受けたりして電話が一時的に使えないこともある。そんなときは無線LAN経由で音声通話機能付きSNSアプリ使って連絡を取れるようにすることが重要だ。

 

「複数の携帯キャリアを契約しておいて切り替える、または音声通話アプリを利用するのが効果的。連絡を取り合いたい人とはアプリを共通化してグループを作成しておくとスムーズです」(湯浅さん)

↑「LINE」などの代表的な音声通話アプリ。あらかじめ家族や仲間、同僚などとグループを作成しておくと相互連絡や情報共有に便利に使える

 

3 災害発生時に解説される公衆無線LANを活用する

通信回線が使えないときは災害時に開設される公衆無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイント(AP)を探そう。通信キャリアや自治体などが提供しているフリーWi-FiのAPを確認しておくことも非常時の備えとして有効だ。

 

「例えばJapan Wi-Fi auto-connectのようなアプリを使って公衆無線LAN経由で通信できるようにします。常日ごろからAPのステッカーをチェックしておけば、イザというときに役立ちます」(湯浅さん)

↑大規模災害や通信障害時に無料で提供される公衆無線LAN(Wi-Fi)APサービスの「00000JAPAN」。緊急連絡や情報収集時に心強い

 

4 情報の内容と発信元を確かめて、フェイク情報にだまされない 

混乱時だからこそ細心の注意を払いたいのが情報の取捨選択。故意ではなくても発信者側も非常事態で気が動転していて勘違いや誤情報を発信してしまう可能性もある。また情報を発信する場合も慎重になる必要がある。

 

「何といってもフェイク情報にだまされないことです。伝聞調の情報はどこの誰が発信元かがはっきりしないものが多いです。安易に広めたりしないように注意してください」(湯浅さん)

↑本人ならまだしも“知人の兄が関係者で”や“知り合いの知り合いが”などという話はフェイクニュースの可能性が高いので注意

ポータブル電源で「電気の欠損」を防ぐのはもう当たり前!

もちろん、それもこれも電気があればこそ。ポータブル電源のような備えはもちろんだが、とりあえず、すぐできそうな防御法も。

 

「電源タップは“雷サージ防止機能”のあるタイプを使うことです。これだけでもルーターが破壊される事態を防げます」(湯浅さん)

 

まずは自宅の通信や電気の環境を見直してみることも大切だ。

 

長寿命&コンパクトで日常的に使える

Jackery ポータブル電源 1000 New/13万9800円

↑Jackery ポータブル電源 1000 New

 

定格出力1500Wのパワーを業界でもトップクラスの軽量コンパクトボディに凝縮。最速60分でフル充電、冷蔵庫などの家電を接続したままにできるパススルー、UPS機能など日常にも緊急時にも使い勝手が良い。

 

<スペック>
電池容量  :1070Wh
出力    :USB Type-C×2、USB Type-A×1、AC100V×3、シガーソケット×1
AC定格出力:1500W AC瞬間最大出力・3000W サイズ/質量:約W327×H247×D224mm/約10.8kg

↑ソーラーパネルとセットになったモデルも用意される。“SolarSaga 100”2枚を使った100W入力では満充電まで約8時間で完了する

 

「85%で充電を止める節約モードがあるので、コンセントに繋ぎっぱなしにしておいても安心です。耐火性や耐衝撃性、ソーラー入力対応などもいざという時には頼もしい機能です」(湯浅さん)

 

大出力にも対応する、使い勝手の良いモデル

EcoFlow DELTA 3 Plus/14万9600円

↑EcoFlow DELTA 3 Plus

 

AC1500W入力で80%なら約40分、100%なら56分の高速充電に、独自のEcoFlow X-Boostテクノロジーで高出力電化製品の使用も可能。高耐久長寿命、静粛性、パススルー&UPS、出力先の多さなど、普段使いにも便利。

 

<スペック>
電池容量  :1024Wh
出力    :USB Type-C×2、USB Type-A×2、AC100V×6、シガーソケット×1
AC定格出力:1500W●AC瞬間最大出力:3000W サイズ/質量:約W200×H284×D398mm/約12.5kg

↑AC100V出力を6基備えるので同時に多くの家電製品に電源供給することができる。AC瞬間最大出力も高めに設定されているので安心度が高い

 

「独自技術でドライヤーのようなハイパワーを必要とする電気製品にも対応。専用の外部バッテリーで容量を増量することもできるので多少停電時間が長引いても安心です」(湯浅さん)

 

安定性に大容量出力!高い静粛性もポイント

DJI Power 1000/11万4400円

↑DJI Power 1000

 

バッテリーが切れるまで定格2000Wを出力する安定性に最大出力2600W、ピーク出力4400Wの大容量出力と動作音23dBの静音ファンを搭載したパワフル&優しいモデル。140WデュアルUSB-Cポート装備でタブレットやノートPCなどへ高速充電に対応する。

 

<スペック>
電池容量  :1024Wh
出力    :USB Type-C×2、USB Type-A×2、AC100V×2、シガーソケット×1
AC定格出力:2000W●AC瞬間最大出力:4400W サイズ/質量:約W448×H230×D225mm/約13kg

↑UPSモード搭載、最大800Wの太陽光発電電力入力に対応。同社のドローンへの高速充電が可能なSDCなど、ユニークなポートも装備

 

「ピーク出力4400Wのハイパワーに高い静粛性、140W対応のUSB Type-Cをふたつ装備しているのがポイントです。ソーラーパネル3枚接続に拡張できるのも停電時には心強いです」(湯浅さん)

 

停電復旧時の通電火災を防ぐ!

パナソニック 感震ブレーカー BQX702/希望小売価格2万4200円

↑パナソニック 感震ブレーカー BQX702

 

震度5強以上の揺れを感知後、3分以内に停電が発生した場合は停電復帰時に分電盤の主幹漏電ブレーカーを強制遮断することで通電火災を防ぐ。3分以内に停電しなかった場合でも3分後にブレーカーを遮断するので安心だ。

 

地震の後危険なのが、落下物で電源コードが損傷していたり、冬場であれば電気ストーブが転倒していたりなど、停電復旧の際に、それらが火元となって火災が発生する場合。対処法としてはいわゆる“ブレーカーを落とす”、アンペアブレーカーをオフにするわけだが、災害時には自力ではできない状況に陥るかもしれない。感震ブレーカーは、そんな通電火災のリスクに備える最適解だ。

 

テクニカルライター:湯浅顕人さん

PCやガジェット、AVに精通しているライター。インドアモノに強いが、キャンプやマリンスポーツも愛するアウトドア派でもある。

 

※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです

「防災セット」から始める、待ったなしの災害対策! 防災士おすすめアイテム

元日に発生した能登半島地震を始めとして、台風、豪雨、洪水など、次々と災害が発生した2024年。いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えがもう待ったなしで必要な状況だ。

 

命と暮らしを守るために知っておきたい知識と備えておきたいアイテムを、防災収納インストラクターで防災共育管理士、防災士の松永りえさんが紹介する。

 

防災の備えに対する意識はまだまだ低い

↑有効回答数500人(女性343人/男性157人) 株式会社AlbaLink調べ

何をどれだけやれば十分と感じられるのかは人によって様々なので一概には言えないが“備えていない”と回答している人が4割もいるというのはちょっと問題かも。転ばぬ先の杖、備えはできるだけしたいものだ。

 

地震や台風、大雨も!日本は災害の危機だらけ

南海トラフ地震や首都直下型地震の発生危険度が増している。ただ、いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えが必要不可欠だ。最近は地球温暖化の影響によって、台風や豪雨による洪水での浸水被害も毎年起こるようになってきているのが実状である。

 

「50年に一度とも言われる大雨による被害が毎年発生している状況ですし、特に夏季はゲリラ豪雨もほぼ毎日どこかで起こっている状態。これからの日本では、私たちが自然災害に対してうまく対策して暮らしていくしかない時代と言えます」(松永さん)

 

今後、災害は増えることはあっても減ることはない現在、災害とともに生きていく覚悟が必要だ。

 

「いつ起こるかがわからないのが災害の怖さ。早めに知識を備え、モノを準備して安心を手に入れるのがベストです!」(松永さん)

 

<2024年に日本を襲った災害>

1月:能登半島地震
1月1日、16時10分に発生したM7.6(最大震度7)の内陸地殻内地震。地震発生日が元日だったこともあり、帰省や観光客など、普段はそこにいない人も多く、一時は避難所が十分に機能できない、混乱した状況に陥った。

7月・8月:日本各地で記録的豪雨
中国・東北地方はもちろん、全国的にゲリラ雷雨が増加。太平洋沿岸から日本海側にかけての広範囲の線状降水帯の発生、動きの遅い台風10号による九州〜関東の大雨など、日本各地が記録的な大雨の脅威に晒された。

8月:宮崎県日向灘でM6.1の地震発生
8月8日、日向灘で発生したM6.1(宮崎県日南市で最大震度6弱を記録)の地震。南海トラフ巨大地震との関連から、その運用以来初めての“南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)”が発表され注意喚起が促された。

備えるモノがわからなければ、防災セットから始めてみる

災害時は、命を守るのが最優先。自宅内の安全対策をして避難するための備えを。地震の際は家の中で被災することが多いので、棚は倒れないか、家電は移動しないか、落ちて割れるものはないかなど、室内をチェックして安全対策するところからスタートしよう。

 

「もし自宅が危険な状態にある場合は『防災リュック』を背負って避難します。備えるモノがわからなければ、避難時に必要なモノが揃っているセットも数多くあるので、まずはここから始めるのも良い方法。定期的に中身をチェックすることが大切です。どのルートで避難するかもシミュレーションしておいてください」(松永さん)

 

アイリスオーヤマ 防災リュック NBS1-40 1人用 40点
実売価格:1万4500円前後

↑アイリスオーヤマ 防災リュック NBS1-40 1人用 40点

 

雨天でも安心のターポリン生地+止水ファスナー採用大容量リュックの中に防災マニュアルから保存食(一日二食3日分)まで計40点をパッキング。厳選された防災アイテムが満遍なく揃っている。質量約6.2㎏。

 

LA・PITA 防災セット SHELTERプレミアム 2人用
実売価格:2万900円

↑LA・PITA 防災セット SHELTERプレミアム 2人用

 

大きさを感じさせないスッキリしたフォルムの大容量リュックに、必要十分な防災アイテムを詰め込んだコストパフォーマンスに優れたセット。アイテム毎に収納できるポーチが付属するので、リュックの中をスマートに整理できる。セット質量約8.5㎏。

 

<防災セットを備える際のポイント>

自分が必要なモノが揃っているかチェック
過去の経験を踏まえたうえで吟味厳選されたアイテムがパッキングされているが、必ず中身はチェックしよう。不足やお気に入りがあるのならカスタマイズも必要となる。

避難場所まで背負って行ける重さかシミュレーションする
一般的に男性なら15㎏、女性なら10㎏までがスムーズに背負って歩けるとされる限界。災害時は身軽さも大きな武器、詰め込めば良いわけではない。バランスには気を付けたい。

避難時に取り出しやすい場所に保管しておく
玄関近くなど、持ち出しやすい場所に置いておくのが基本。ただ災害時は玄関から出られるとは限らないので、別に避難用出口を決めておいて、そこに保管しておくのも良い。

幸いにも家は無事!「在宅避難」で気をつけること

安全が確保できるのであれば自宅で在宅避難したい、という人が増えている。2023年に積水ハウスが行った「防災に関する調査」によれば、在宅避難を希望する人の割合は84.8%にものぼる。

 

「様々な人が集まる避難所と違って、プライバシーが確保できますし、住み慣れた安心感があります。自宅の備えもそのまま使えます。在宅避難者が増えれば、避難所など本当に支援が必要な人に支援物資が届きやすくなる効果もあります」(松永さん)

 

自宅で過ごせるとしても、電気や水道、ガスといったライフラインの寸断は避けられない場合も。そのために多めの備蓄をしておくことが必須となる。

 

「飲用水や食料などは最低でも1週間以上ぶんを確保しておくことが必要。そのためには普段食べているものを多めに備えながら、食べる→買い足すを繰り返す『ローリングストック』が有効です。常に備蓄を切らさないようにすることが重要になります」(松永さん)

 

在宅避難で気を付けたいポイント

1 在宅避難ができるよう、普段から家具や家電などの安全対策を行う

在宅避難を考えるならば、まずは家屋の安全性を確かめることが基本。そのうえで自宅内の被害を最小限に抑えるよう、家具の転倒や割れ物の飛散、家電製品の移動を防ぐなど、普段から対策をしておくことが必要だ。

 

2 ライフライン(電気・ガス・水道)の代替品・備蓄は最低1週間ぶん確保

 

復旧にどれだけ時間が掛かるのかは地域や状況によって大きく差が出るので、最低一週間ぶんを目安に考えたい。ポータブル電源やソーラーパネル、カセットコンロ、水のペットボトルなど、収納スペースも確保しておきたい。

 

3 マンション高層階の人は、より多くの備蓄が必要

 

いわゆるタワマンでなくとも高層階に住んでいるならば、エレベーターが使えなくなることを想定する必要がある。物流が復旧するまでは自力で高層階まで物資を運ばなければならなくなるかもしれない。そんな事態に備えて備蓄には余裕を。

 

ポイントはまだある!
自宅周辺のリスクを知って家では安全なスペースを作る

まずは自宅周辺のハザードマップで、リスクを知ることが必要。

 

「川の氾濫での浸水や津波のリスクがある場合は避難しなければなりません。知らないと正しい対策はできません」(松永さん)

 

そのうえで、家の中の備え(片付けや安全対策、備蓄)を進めることが重要になる。

 

「特に寝ている場所に倒れたり、落ちてくるモノがあると命に関わるのでいますぐ見直して欲しいです。1995年に発生した阪神淡路大震災では、死因のほとんどが家屋の倒壊や家具の転倒による圧迫死、さらに死亡推定時刻が当日の午前6時までになっており(地震発生は午前5時46分)、ほぼ即死だったと言えます。このような事態を避けるためには、家の中に何も倒れない・落ちてこないような『安全スペース』を作っておくことが必要です」(松永さん)

 

松永さんが挙げるポイント

1 自宅や職場周辺のハザードマップは必ずチェック!
国土交通省や、各自治体が公開しているハザードマップで、自宅周辺で危険とされている地域はどこなのかを必ず確認しておきたい。またマップには避難場所も記載されているので、把握しておくことが必要だ。

2 ベッドまわりは要注意!
寝室を見渡してみて、倒れてきたら潰されそうなモノ、落ちてきたら怪我をしそうなモノは対策しておく必要がある。就寝中はどんな人でも必ず無防備になる。だからこそリスクはできる限り排除しておきたい。

3 家の中に「安全スペース」を作っておく
倒れたり落ちてきたりするものがない、窓から離れられる、地震が発生したら、ひとまずやり過ごせる、安全なスペースを家の中に持っておこう。防災備蓄品もその場所にあれば本格的な避難にも迅速に対応できる。

 

防災収納 インストラクター:松永りえさん

防災共育管理士、防災士。思考・モノ・防災の3つを整理して、暮らしの土台をつくる整理収納コンサルタントを務めている。

 

※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです

畳むと手のひらサイズのソーラーパネル! 災害時の電力確保に「LUM POCKET」

「よろず兎」は、折り畳み式ソーラーパネル「LUM POCKET」を、「CAMPFIRE」で2025年1月31日まで販売しています。

記事のポイント

「どんな環境でも、どこでも活躍できるソーラーパネル」として設計された製品。アウトドア活動や自然災害時の電力供給の不安を解消することを目的に開発されたそう。特徴はなんといっても携帯性の高さ。軽くて丈夫で、畳むとiPad13インチの半分サイズになるので、荷物にサッと忍ばせておけると安心ですね。

 

エネルギーの変換効率は23.5%。スマートフォン、タブレット、Nintendo Switch、ポータブルバッテリー、USB対応LEDライトなど、幅広いデバイスに対応します。

 

IP64の防塵・防水設計なので、アウトドアシーンはもちろん、災害時にも安心して使える仕様です。

 

重さは750gで、折りたたむと手のひらサイズ(27.0cm×12.5cm×6.0cm)になります。また、バッテリー非搭載設計なので長期間保管でき、停電時にもすぐ利用できます。

 

よろず兎
LUM POCKET
定価:2万5800円

簡易トイレ、50回分あっても足りないかも……? 山善に学ぶ、本当に必要な「防災グッズ」の揃え方

2024年は、元旦の能登半島地震にはじまり、8月8日には宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生、翌9日に気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表するなど、否が応でも防災意識を高めなければならない出来事ばかりでした。また2025年1月は、阪神・淡路大震災から30年の節目でもあります。

 

そうしたなか、数多くの防災グッズを手掛ける山善が、メディア向け「タッチアンドトライ会」を12月10日に開催しました。同社は防災士の資格を持つ社員が商品開発に携わっており、新商品からロングセラーまで、さまざまな防災グッズが会場に集結。

 

特に「需要が拡大している」という簡易トイレを中心に、備えとして持っておきたい注目アイテムを紹介します。

↑命を守るために必要な「一次避難用アイテム」30個を収納する「防災バッグ30 YBG-30」(以下防災バッグ30)

 

「防災バッグ」は一家に一個じゃなく、一人一個揃えて

会の冒頭、同社の家庭機器事業部 第3商品統括部 商品企画4部長・小浜成章さんが説明に立ちました。16年から防災グッズ関連の商品開発を担当しており、18年には防災士の資格を取得。ロングセラーの「防災バッグ30」を生み出した人物です。

 

販売数170万個を突破した同社の「防災バッグ30」は、命を守るために必要な「一次避難用アイテム」30個を収納。懐中電灯、ホイッスル、ラバー手袋、EVAサンダルなどが入っています。価格は4800円(税込)。一家に一個ではなく、一人に一個揃えてほしいという思いから、できるだけ安価に設定しているとのこと。

 

バッグにあえて「余白部分」を作っているのが特徴です。季節や、使う人の年齢、性別に応じて、カイロやアイスノン、生理用品といったアイテムを追加してほしいという思いが背景にあります。

 

さらに高品質で、本格的なアイテムを備えたい人には「リュック&キャリー型防災バッグ30点セット YKB-30R」があります。価格は7980円(税込)に上がりますが、リュックとして背負えるだけでなく、キャリーとして引いて運べるうえ、簡易エアーマット・空気入れや簡易トイレといった、避難所生活に欠かせないアイテムも入っています。

↑重い給水タンクも、キャリーなら持ち運びやすい

 

↑専用の空気入れで手軽に膨らませることができる簡易エアーマット

 

同社が発売する防災アイテムのなかでも、トイレは備えにおけるキーアイテムです。実際に、同社における簡易トイレの販売実績の推移をみると、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報をきっかけに伸びており、需要の拡大が見て取れるとのこと。

 

特に、能登半島地震で断水が長期化したことで、多くの簡易トイレを備えておく必要性が浮き彫りになりました。そこで同社は12月に「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」を発売。こちらは消臭・抗菌効果のある凝固剤や、10回分を1袋にまとめる処理袋などがセットになっていて、50回分と100回分の2種類を展開しています。

 

そんなにたくさん要るの? と思うかもしれませんが、小浜さんによると「1人あたり、1日に使う量は大体5個くらいの計算」とのことなので、1人で1箱(50回分)確保したとしても10日分。4人家族で1箱(50回分)使うとなると、2日ちょっとで使い切ってしまう量なのです。

 

もしもの時に備える!緊急簡易トイレ100回分YAK-100
実勢価格:4980円(税込)

<内容>
凝固剤×100袋
汚物袋×100枚
便座カバー×4枚
処理袋×10枚

 

もしもの時に備える!緊急簡易トイレ50回分YAK-50
実勢価格:2980円(税込)

<内容>
凝固剤×50
汚物袋×50枚
便座カバー×2枚
処理袋×5枚

↑「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」

 

使い方は簡単。小浜さんが、青く着色された水を尿に見立てて実演しました。水が入ったカップに凝固剤を入れ、しばし待ちます。

↑小浜さんによる「緊急簡易トイレ」の使い方実演

 

体感として、1分くらい経ったかどうかという短い時間で、すっかり固まりました。カップを逆さにしてもこぼれてくる様子はありません。

↑凝固剤を入れて固まった水

 

あとは、固まった水(尿)を汚物袋に入れてしばればOK。断水時に家のトイレで使う場合は、便器の底に汚物袋が直接触れないよう同梱の「便座カバー」を敷いておくのがよいそう。

↑固まった水(尿)を入れ、口を縛った汚物袋を見せる小浜さん

 

トイレそのものの備えも重要ですが、あわせて考えたいのがトイレットペーパー。水に溶けてしまうため、湿気の多い場所での保管や水害時の使用が難しい課題がありました。

 

そこで同社は、アルミ真空パックで長期保存が可能な備蓄用トイレットペーパー「長期保存用トイレットペーパー」を考案(山善取り扱い商品、製造元は丸英製紙)。包装されているので水没しても使えて、カビも防ぎます。保存期間は、製造日から10年です。

 

70mタイプ巻(スリムタイプ)と、200m巻(ロングタイプ)があり、70mは1人で使用した場合で1週間相当。「スリムタイプ」とある通り、防災バッグなどに追加しやすい手のひらサイズです。ロングタイプは、1人で使った場合20日分になります。

 

そのほか、頑丈な樹脂製で組み立てが簡単な折りたたみ式トイレや、手回し・乾電池・AC電源・モバイルバッテリーの4電源に対応する「手回し充電テレビ+ラジオ JYTM-RTV430」(税込1万7800円)など、災害時に持っておくと安心感が段違いのグッズが揃っていました。

↑折りたたみ式で簡単に設置・収納が可能な災害時用トイレ「サッと簡単トイレ」(24年8月発売、税込3490円)

 

小浜さんは、「防災グッズは日常的に準備しておくべきものであり、いつでも使える準備を整えておくことが大事であり、さらに自分で考えることが欠かせない」と話しました。住んでいる地域特性や、一緒に避難する家族の人数など、考慮すべき点は多岐にわたるうえ、さまざまな被害から得られた教訓をもとに情報をアップデートしていく必要があります。

 

必要なアイテムや個数は人それぞれ。命を守ることは大前提として、避難生活が長期間にわたっても大丈夫なように想定しておきたいですね。

冬場の被災への備え、足りてる? フェリシモから、15の防寒・衛生アイテムまとめた防災グッズが登場

フェリシモは、「みんなのBOSAIプロジェクトもしもしも」より新作を発表し、12月17日よりウェブ販売を行っています。能登半島地震での経験と声を生かして生まれた、「防寒」と「衛生」アイテムを圧縮バッグに詰めて、さっと持ち出せる「ふだんから意識する 7つのあたため習慣の会」です。

↑全アイテムをひとまとめに収納・保管できる圧縮バッグ(写真左上と右上)。寒さ対策にもなる軍手(写真左下)。災害時の必須アイテムの簡易トイレ(写真右下)

 

記事のポイント

防寒アイテムを揃えていても、避難時に持ち出せなければ備えの意味がなくなってしまいます。衛生用品と防寒具を効率的に持ち出せるよう、全アイテムを圧縮して1つのバッグにまとめ、玄関に置けるようにしたアイデア商品です。「3つの首(首、手首・足首)」を中心に効率よく体を温められるアイテムをそろえつつ、内側から体を温めるためのアイテムもラインナップしています。

 

全15の防寒・衛生アイテムが、圧縮バッグによってコンパクトにひとまとめされています。真ん中のファスナーを閉めるとスリムに圧縮され、撥水加工で雨の日でも安心です。セット内容の一部をご紹介します。

 

非常用トイレ(3回分):非常用袋&抗菌凝固剤。バケツや洋式トイレに袋をかけ、使用後は凝固剤でゲル状に。においもれを抑える、消臭機能付きです。

ヘッドライト付きニットキャップ:頭部全体をあたためる、締めつけ感のない耳ボア付きキャップ。額のLEDライトは停電時や夜間の移動に便利。予備の電池を用意しておくと安心です。

 

↑頭部全体をあたためる、耳ボア付きキャップ

 

ドライシャンプーミトン(3回分):洗い流しやふき取りがいらない、ミトン型のドライシャンプー。入浴ができない時でも、髪や頭皮を清潔に保てます。

↑水分を含んだ厚手シート(外側)と、さらりとした薄手シート(内側)の二重構造で、手がベタつかないのもポイント

 

ポケット付きあったかベストマフラー:寒さを感じた時、さっと羽織れる中わた入りのマフラー。軽量でもあたたかく、寒さで冷えやすい首や肩甲骨まわりを効率的にあたためてくれます。

↑首~肩甲骨に当たる部分にカイロが入るポケット付き。太い血管が通る肩甲骨まわりをあたためると効果的(写真左)。大きくて開けやすいフラップ付きポケット。ウェットタオルや簡易トイレを入れてポーチ代わりにできます(写真右)

 

アームウォーマー:指先フリーでムレにくく、着けたまま家事やスマホ操作もできます。手首をすっぽり包み、袖口から入り込む冷気をカットします。

ブランケット:ストールのように、肩からかけたり腰に巻いたり、手軽に体をあたためられます。ふんわりとした起毛素材で、車内やデスクでも使いやすいサイズ。

↑親指を出して使えるサムホールも付いており、指先フリーのアームウォーマー

 

↑ふんわりとした起毛素材のブランケット(写真左)。60×30㎝で大判の厚手のウェットタオル(写真右)

 

シューズカバー:雨や雪、泥の侵入から足を守る生活防水のシューズカバー。急な雨でも靴の上からさっと装着でき、使わないときは畳んでバッグに入れられるサイズです。

↑ゴムひもで、すそからの浸水をブロックでき、スナップベルトでしっかり足にフィット。足のサイズは3サイズから選べます

 

マルチウォームバッグと発熱剤セット:少量の水と発熱剤だけで、湯沸かしや食材のあたためができるマルチパックです。発熱に使う水は雨水や川の水でもOKで、貴重な水を無駄にしません。

↑簡易的な給水袋として最大1.8Lの水が入れられる。安全に使うための箱付き

 

湯たんぽ&湯たんぽカバー:使い勝手の良い、小さめサイズ。カバーはポーチとしても使えます。湯たんぽに70度くらいの湯を注ぎ、カバーに入れたら、おなか→太もも→腰→おしりと移動させてあたためていくと、下半身全体がぬくもります。

腹巻き:伸縮性のある薄手素材で、服の上に重ね着してもモタつきにくい腹巻きです。汗などの水分を吸収し、熱として放出する吸湿発熱素材のため、ムレにくく、おなかをしっかりとあたためます。カイロが入るポケット付き。前後に回しておなかと背中を交互にあたためられます。

↑湯たんぽ&湯たんぽカバー(写真上)。伸縮性のある薄手素材で、やさしい手ざわりの腹巻き(写真下)

 

フェリシモ
みんなのBOSAI ふだんから意識する 7つのあたため習慣の会
月々:2900円 (+10%  3187円 ) ⇒ 発売記念価格 7か月ずっと月々2280円( +10%  2505円 )

「におい」を徹底的に閉じ込める! 元救急救命士が考案した「非常用トイレ(防災・備災)」

Flightは「元救急救命士が企画!実体験をもとに製作した新たな非常用トイレ【防災・備災】」を、「Makuake」にて予約販売中。11月29日まで。

 

元救急救命士が作る、被災した人々の心に寄り添う防災・備災ブランド「ヨカレカシ」の、Makuake第1弾の商品です。

 

記事のポイント

日本であっても、災害時はトイレが使えなくなることがあります。Flightの発表資料によると「人の平均トイレ回数は、1日に約5回」。生理現象なので、我慢するのは難しい……。
そうした時に悩まされるのが「におい」。この「非常用トイレ」は、においを閉じ込めることを徹底しています。11月19日は「世界トイレの日」なので、ぜひ防災・備えについて考えを巡らせてみては。

 

Flightの田中謙二代表取締役が救急救命士として働いていたころ、現場活動をする上で困ったことの1つが「におい」でした。便の処理をせず、放置したままの現場では、鼻を突くような強い異臭が……。一般的な袋やポリバケツのみでは、臭いの封じ込めは出来なかったと言います。

 

この非常用トイレは、そうした実体験をもとに、ストレスの原因となる「におい」を閉じ込めることに徹底してこだわり、制作されました。

 

国産杉を活用した、杉木粉配合の凝固剤「木粉凝固パウダー」でにおいを抑え、さらに「特殊構造フィルムの防臭袋」でブロックします。排泄後、パウダーを投入すると約20秒程度でさっと固めてくれます。

↑家庭用の袋では使うことがない樹脂(エンジニアリングプラスチック)を使用した特殊フィルム

在宅避難をする上で、必要な備えは最低でも3日分(可能であれば1週間分)とのこと。人の平均トイレ回数は、1日に約5回なので「ヨカレカシ」非常用トイレ(50回分)が1箱あれば、ひとまず安心だと言います。

 

サイズは大きめの書籍ほどで、トイレの棚にもなじみます。グレーとブルーの2色は「救急救命士の制服」をモチーフにしています。

 

Flight
ヨカレカシ「非常用トイレ」
価格:5253円(税込、非常用トイレ50回分×1の場合)

途上国が抱える“トイレ問題”と災害用携帯トイレの選び方

毎年11月19日は「世界トイレの日」。世界ではいまだ多くの人が安全に管理されたトイレを利用できない環境にあり、そのことを世界の国々で考え、改善していくために国連が定めました。トイレの問題は、日本に暮らす私たちには遠い国の話のように思えますが、いざ断水や停電などが起きれば、日本でもトイレを使えなくなる可能性は十分にあります。

 

そこで今回は、NPO法人日本トイレ研究所の代表理事・加藤篤さんに、開発途上国におけるトイレ事情と、日本でトイレが使えなくなるケースや携帯トイレの選び方について解説していただきました。

 

トイレがないことで生まれる負の連鎖

ユニセフの調査によると、世界人口の約4割にものぼる約34億人が、安全に管理されたトイレを利用できていません。野外排泄さえ強いられる環境では、どのような問題が生じるのでしょうか?

 

「まず、健康面と衛生面へのリスクがあげられます。排泄物が適切に処理されないと、排泄物に含まれるコレラ菌・赤痢菌等の病原菌やウイルスなどで周辺環境を汚染するのです。

 

わかりやすい例が、飲み水です。井戸や水源が排泄物を媒介にし病原菌に汚染されれば、水を飲んだ人たちの間で感染症が発生するわけです。特に深刻な健康被害を受けるのは子どもや高齢者で、毎日1,000人を超える5歳未満児が安全でない飲み水や不衛生な環境に起因する疾患で命を落としています」(NPO法人日本トイレ研究所代表理事・加藤篤さん、以下同)

 

小川の上に作られた野外トイレ、ベトナム。

 

さらに、安全やプライバシーが確保されていないトイレの問題について、加藤さんは次のように語ります。

 

「世界には、鍵のついたドアがないどころか、壁で覆われてさえいないトイレも多く、そこでは、排泄時に誰かに見られる可能性があるわけですから、そのストレス・恥ずかしさは計り知れません。また、性的暴行を受けたり、地域によってはヘビやサソリなどの野生動物から襲われたりする危険もあります。
あとは、教育への影響も見逃せませんね。トイレが不足している学校では特に、月経中の女性が出席を避ける傾向にあり、学業に支障をきたしています。安全で衛生的なトイレの整備は、すべての人が人間らしい生活を送るうえで欠かせない、基本的人権に関わるグローバルな課題なのです」

 

なぜ普及が進まない? SDGs達成に向けた2つの課題

安全に管理されたトイレの重要性は認識されつつあり、改善も少しずつ進んでいます。ただ、SDGsを2030年までに達成するには、現状の改善スピードでは不十分のようです。普及を妨げている要因は何なのでしょうか?

 

「経済的に困窮した地域で、トイレだけを立派にしても、どこかチグハグですよね? 普及のためには、各地域のインフラや経済状況に合った“段階的な改善”が必要になります。
支援者は、地域の人たちに段階的にどう改善していくかを見える化し、それにより得られるメリットが何か、わかりやすく説明する必要があります。そして、改善が一段階進んだら次の段階の取り組みを行うというような、ステップアップ式の支援が求められます。ただ、これにかける時間が不足しているのが現状です」

 

ユニセフにより寄付されたトイレ、ケニヤ。

 

もう1つ、普及を妨げている要因に「声の上げづらさ」があると、加藤さんは指摘します。

 

「トイレの問題は、往々にして話題にしづらく、タブー視される傾向にあります。加えて、この問題は、女性や子ども、障がい者、マイノリティの方々など、社会的に声を上げづらい立場にある人々に、より重くのしかかっています。声が上がらないということは“問題なし”ということになり、改善もされません。これが改善・普及が進まない根本原因の1つでしょう」

 

開発途上国をサポートする日本企業 LIXILと管清工業の取り組み

世界のトイレ問題を改善しようと、国連やユニセフはもちろん、NGO・NPOも現地に入り、地域をサポートしています。ここでは、積極的な活動をみせる日本企業の取り組みをご紹介します。

 

■ 株式会社LIXIL
開発途上国向け簡易式 トイレシステム「SATO」
「現地の状況にフィットした解決策として高く評価されているのが、LIXILの『SATOトイレ』。これは下水道の整備が進んでいない地域の人々に、安価で壊れにくく、設置が容易で、少量の水があれば洗浄も可能なトイレ環境を提供するシステムです。改善の第一歩目の成果を、非常にわかりやすく提示していると例だと思います」

 

© JDP/GOOD DESIGN AWARD
排泄物を流すときに開く開閉弁が、ハエなどの虫による病原菌の媒介や悪臭を抑えてくれる。

 

© JDP/GOOD DESIGN AWARD
2024年3月末時点で、45カ国へ約860万台を出荷している。

 

■ 管清工業株式会社
東ティモールでの自立的な水環境整備に向けた多面的サポート
「トイレというのは、設置後の維持管理が重要です。トイレ自体を支援として届けても、現地の人たちが運用できなければサステナブルではないんです。また、自分たちで運用するということは、トイレの維持管理を事業として成立させるということ。

 

つまり、その仕事で現地の人が収入を得られ、市場が広がるということでもあります。この産業化のプロセスをサポートしているのが、日本で下水道の維持・管理を行う管清工業です。管清工業は、東南アジアに位置する東ティモールにおける水環境の改善と人材育成を行なっています」

 

トイレ大国の日本は災害大国

ここからは日本のトイレ事情にもスポットを当てたいと思います。水洗トイレの普及率が90%を超える日本では、「トイレが使えなくなる」ことを意識して生活している人はあまりいないかもしれません。それは水洗トイレの仕組みを理解している人が少ないからではないかと、加藤さんは言います。

 

「水洗トイレというのは、給水・排水・処理という機能で成り立つ“システム”です。どれか1つでも失われれば、水洗トイレというシステムは使用できなくなります。まずは、この点をしっかり理解してほしいと思います」

 

トイレが使用不能になった過去の事例を振り返ってみましょう。

 

■ 排水機能が失われた事例:新潟県中越大震災により下水道が損傷
2004年10月に発生した新潟県中越地震により、一部の地域で下水道管が損傷。トイレの使用が制限され、仮設トイレの設置が急務に。

 

■ 処理機能が失われた事例:西日本豪雨により処理施設が停止
2018年7月、西日本で記録的な豪雨が発生し、停電・断水に加え、し尿処理施設が浸水したことで機能が停止。河川の氾濫や土砂崩れにより周囲から孤立した地域では、トイレの備えと衛生対策が課題に。

 

■ 給水が失われた事例:能登半島地震による長期断水
2024年1月に発生した能登半島地震では、長期間にわたる断水のためトイレが使用できない事態に。多くの集落が孤立したことで、非常用トイレの支給も困難となった。

 

これらの事例から、大震災に限らず、毎年発生する台風や雷雨でもトイレが利用できなくなる可能性があることがわかります。

 

震災時のトイレパニックは約30年でどのくらい改善した?

大地震が発生すると、水洗トイレの機能は破綻し、被災地に深刻な被害をもたらします。

 

「2016年に発生した熊本地震で、『地震発生後どれくらいでトイレに行きたくなったか』という調査を行いました。その結果、3時間以内に約4割、6時間以内に約7割の人がトイレに行きたくなることがわかりました。つまり、外部からの支援では間に合わないのです。
被災地では水洗トイレとしての機能を失ったトイレを多くの人が使用してしまうため、便器は排泄物で満杯になって溢れ出し、不衛生な状態になります。最悪の場合、集団感染などを引き起こすこともあります。
加えて、不衛生なトイレで用を足したくないために水分摂取を控えたり、トイレを我慢したりするようにもなります。これがエコノミークラス症候群を引き起こし、災害関連死につながることもあります。
また、ストレスがたまることで集団生活における秩序が乱れ、治安が悪化することも。このように、トイレが利用できないことで生じる一連の問題を『トイレパニック』と呼ぶこともあります」

 

1995年の阪神・淡路大震災から2024年の能登半島地震まで、その間、約30年。被災地でのトイレパニックはどれくらい改善されたのでしょうか?

 

「残念ながらほとんど改善はみられていません。大きな地震が起きれば必ずといっていいほどトイレパニックとなり、トイレが安心して使えないといった状態をくり返しています。
能登半島地震で21カ所の避難所を調査したところ、うち19カ所に携帯トイレが備えてあり、実際に使われたことがわかりました。しかし、初動対応としてまかなえるだけの数を備えていなかったり、そもそも使い方がわからなかったりと、課題は山積しています」

 

災害発生時の初動対応のポイントと携帯トイレの選び方

災害が発生したら、トイレパニックが起きる可能性が大きい。この事実を理解したうえで、もしトイレが使えなくなったら、初動対応として何をすべきでしょうか?

 

■まず、“安心して排泄できる空間”を整える

「有効活用すべきなのは、自宅のトイレのように普段から使い慣れているトイレです。排泄は強く習慣化されており、かつ自律神経が担う生理現象ですから、いつもと違う方法で行おうとすると、うまく行えないこともあります。そのため、たとえ給水や排水が機能していないとしても、使い慣れた空間、座り慣れた便座で、鍵もかかり、家族もしくは自分しかいない家の中で用を足せるというだけで排泄しやすくなります。このときに必要になるのが携帯トイレ(後述)です。」

 

■携帯トイレを使い、排泄物を生活空間から排除する

「水洗トイレが機能しないとき、排泄物を生活空間から排除するための応急対応として使えるのが携帯トイレです。携帯トイレとは、便器に取り付けて使う袋式のトイレで、中に吸収シートか凝固剤のいずれかが入っているタイプが多いです。この袋をトイレの便器に取り付けて、いつものように排泄したら袋を縛り、ゴミ置き場や庭などで保管しておきます。ストック量の目安としては、『1日でトイレに行く回数×最低3日分(推奨7日分)』を常備しておくと良いでしょう」

 

携帯トイレを選ぶときのポイントは3つあります。

 

・家族全員が使いやすい製品を選ぶ
「例えば、手先が器用ではない高齢の方などがいる場合は、袋が破りやすい、縛りやすい、取り扱いが特殊ではないなどの製品がいいですね」

 

・排泄物をしっかり吸収する製品である
「あまりに安価なものだと、十分に吸収してくれない可能性があります。ご自身の1回の排尿量を目安に、吸収量がしっかりしているものを選んでください」

 

・消臭・防臭対策が備わった製品である
「災害時は、使用した後すぐに処分できない場合が多々あるので、消臭・防臭機能が付いているかをチェックしてください。最近は臭いを抑えるような成分が入っていたり、臭い漏れを防ぐ高機能素材の袋を採用していたりと種類も豊富です」

 

 

「日本では、11月10日は『いいトイレの日』。日本トイレ研究所では、11月10日~11月19日の期間をトイレweekとして、みなさんにトイレや排泄について意識しようと呼びかけています。この機会に、災害時のトイレの備え方について見直してみましょう。そして、生きるためには食べることと同様に欠かせない、トイレ・排泄について一緒に考えてみましょう」

 

Profile


NPO法人日本トイレ研究所 代表理事 / 加藤篤

まちづくりのシンクタンクを経て、2009年NPO法人日本トイレ研究所代表理事就任。災害時のトイレ調査や防災トイレワークショップの実施、小学校のトイレ空間改善、トイレ美術館など様々な取り組みを展開。『トイレからはじめる防災ハンドブック』ほか著書多数。
https://www.toilet.or.jp/

防災の日までに知っておきたい! 地震・落雷・火災に備えるための家庭向け防災機器

9月1日は防災の日です。8月8日に南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたのもあって防災への関心が高まっているいま、できる備えはしておきたいものです。そこで、この記事では地震の際の火災や雷による電気製品の故障を防ぐ機器、より早い避難を可能にする住宅用火災警報器を紹介します。

 

地震後の火災の過半数を占める電気火災を防ぐ感震ブレーカー

電線から供給された電気を家中に分配する分電盤は、どの家庭にも欠かせない装置です。分電盤には、漏電が検知されたときにブレーカーを落として電源を遮断する機能がついており、火災などのリスクを防いでいます。

 

地味な存在の分電盤ですが、着実な進化を遂げており、近年ではさらなる防災機能を持った機種が登場しています。そのひとつが、パナソニックが販売している「地震あんしん ばん」です。感震ブレーカーを搭載した「地震あんしん ばん」は、震度5以上の揺れを検知した際、メインの漏電ブレーカーを自動でオフにし、電気火災の発生を防ぎます。

↑「地震あんしん ばん」(左)と感震ブレーカー

 

それも、ただ単純にブレーカーを落とすだけではありません。地震感知後3分以内に停電した場合は、電気の復旧を検知してからブレーカーをオフに。停電がなかった場合は、3分間待ってからブレーカーを落とします。

 

停電した場合にもブレーカーをオフにするのは、電気が復旧した際に起きやすい通電火災を防ぐため。倒れたり損傷した電気製品に急に電気を通すと発火する危険があるため、それを未然に防いでいるというわけです。

 

また、停電しなかった場合に3分間待つのは、避難の時間を確保するためです。いざ避難をしようとしても、照明のない暗がりのなかでは、素早い対応が難しくなります。「地震あんしん ばん」には、効率的な避難を実現しつつ、火災のリスクも抑えるという、二重の工夫が施されているのです。地震の際に起こる火災の過半数は電気関連によるものなので、それを防げることは大きな安心感につながります。

↑パナソニックの感震ブレーカーに関する問い合わせ・FAQアクセス件数の推移。2024年1月の能登半島地震以降に激増しています

 

分電盤に避雷器をつければ、雷が落ちても家電の故障の心配なし

ゲリラ豪雨が増えた近年、増えているのが雷による電気製品等の故障です。特に日本海側では雷が多く、最多の金沢では1991〜2020年の平均で、年に45.1日の落雷が観測されています。雷は、日本人にとってかなり身近な災害といえるでしょう。地震ほどの恐怖はないかもしれませんが、雷による被害は日本全国で頻発しています。パナソニックが1000名を対象に行ったアンケートによると、雷によるなんらかの被害を受けたことがある人の割合は、16%にも及んだそうです。

 

雷がもたらす災害のうち、99%を占めるのが、雷サージによるものです。雷サージとは、落雷があった地点から地表・建物・電線などを通じて、大きな電流が家庭内の配線に侵入してくる現象。数キロ離れた落雷地点からでも、雷サージは家庭内に侵入して電気製品の内部を破壊、故障を引き起こします。

↑雷サージで家庭に侵入した電流と、それに対する避雷器(後述)の役割

 

それを防ぐために開発されたのが、避雷器を装備した分電盤「かみなりあんしん ばん」です。分電盤に取り付けられた避雷器は、雷サージによる電流を地表に逃し、家庭内の電気製品に過電圧がかかることを防ぎます。雷サージの入り口となる分電盤で電流をシャットアウトすることで、被害をほとんど防止できるといいます。

↑パナソニックの避雷器。感震ブレーカーと同様、分電盤に取り付けて使用します

 

パナソニックでは、感震ブレーカーと避雷器を兼備した「地震かみなりあんしん ばん」も販売。また、同社製の一部の分電盤に、感震ブレーカーや避雷器をあとから取り付けることも可能です。特に感震ブレーカーの設置には補助金を出している自治体もあるので、新築やリフォームなどの際にはチェックしてみるとよいでしょう。

 

住宅用火災警報器は10年ごとの交換が必須。おすすめはワイヤレス連動型

身近な防災機器のひとつに、住宅用火災警報器が挙げられます。温度や煙によって住宅内での火災を検知し、警報を鳴らしてくれる機器です。消防法によって、原則として戸建・共同問わず500m2未満の住宅の寝室と階段に設置が義務付けられており、台所や居室にも設置が推奨されています。台所や居室への警報器設置を義務とする条例を制定している市町村もあります。

 

2006年6月に上記の通り設置が義務化され、一気に普及が進んだ住宅用火災警報器。近年では、複数の警報機がワイヤレス通信によって連動するモデルも登場しています。ワイヤレス連動型の警報機が住宅内で火災を検知すると、火元となっている部屋に加え、家中すべての警報機が鳴動するので、家のどこにいても火災の発生を早く知ることができます。また、火元の場所を音声で知らせる機能が搭載されたモデルであれば、火から離れながら避難できます。

↑ワイヤレス連動型の住宅用火災警報器。火災を検知するとLEDが点灯し、照明としての役割も果たします

 

ワイヤレス連動型の住宅用火災警報機には、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連動するものもあります。たとえばパナソニックの場合、同社製のHEMS「AiSEG2」と連携し、火災検知と同時に家中の照明をオンにして、火災による死者数が特に多い夜間の避難を助ける機能を搭載するモデルが発売されています。

 

そして、住宅用火災警報器を語るうえで外せないのが、10年ごとの交換が必要だという点。内蔵している電池の寿命切れ、部品劣化による火災検知性能の低下といった事態が起きてしまうため、交換は必須とされています。しかし、交換が必要であることの認知度は低いのが現状。日本火災報知機工業会の調査によると、交換時期を知っているという人はわずか29.9%にとどまっています。実際に交換をしていないという人の割合は、69.8%にものぼるそう。防災への関心度が高まっているいまだからこそ、ご自宅の警報器をチェックしてみてはいかがでしょうか。住宅用火災警報器の設置に補助金を出している自治体もあるため、検討の際はぜひ確認してみましょう。

 

日本は災害大国です。地震などの災害は、この国に住む以上どうしても避けられません。もしものときの備えとして、ご自宅の防災機器を、いま一度ご確認することをおすすめします。

↑住宅用火災警報器の10年という交換時期は認知が進んでおらず、実際の交換もされていないという問題があります

 

マンション暮らしの台風・豪雨対策…接近72時間前以降の準備と行動を防災の専門家が解説

近年、日本各地で台風や豪雨による大規模被害が発生しています。2019年に発生した台風19号では各地で電気設備が被害にあい、ピーク時には約52万戸が停電。多くの人々がパニック状態に陥りました。とはいえ、地震と異なり、台風はある程度予見することができます。私たちは、大規模な台風発生に備えてどのような対策を取ったらよいのでしょうか?

 

今回はマンション暮らしの場合の台風対策を紹介します。解説してくださるのは、拓殖大学地方政治行政研究所特任教授・防災教育研究センター長の濱口和久さんです。

 

 

復旧に1週間も!?
停電時はエレベーター・トイレが使用不可

 

マンション暮らしでは、どのような台風被害が考えられるのでしょうか? 濱口さんに3つの被害を想定していただきました。

 

1.強風による被害

「強風もしくは、強風による飛来物により窓ガラスが割れ、台風が室内に吹き込みます。割れたガラスの破片も風とともに室内に散らばり大変危険です」(防災教育研究センター長・濱口和久さん、以下同)

 

2.停電による被害

「停電になると、まず明かりがつきません。エレベーターが止まり、トイレも使えなくなる構造のマンションが多いです。当たり前ですが、電化製品全般も使用できなくなります。また、停電による断水で水道が使えないマンションもあります」

 

3.浸水による被害

「水があふれ、周辺が水浸しになると1階部分や玄関が浸水します。1階や地下に駐車場や配電盤があるマンションも多く、車が水没し、停電が発生します」

 

浸水による停電で、電気の復旧に1週間
水道の復旧に2週間かかったことも

「たとえば、関東地方では2019年に発生した台風19号を思い出す方も多いかもしれません。多摩川が氾濫するのではないかと言われるほどの雨が降り、神奈川県川崎市では一部の地域で降雨量が排水処理能力を超え“内水氾濫”が起きて、局地的な冠水状態が発生しました。東急東横線の武蔵小杉駅付近のタワーマンションでは、地下に配置された電気設備が浸水したため、電気が使用できなくなりました。電気の復旧に約1週間、水道の復旧に約2週間を要したそうです。
このような内水氾濫は、川が近くにある地域でしか起きないと思われているようですが、大量の雨量を伴う台風の場合、街の排水機能を上回り、どんな場所でも同様の浸水が起こる可能性があります」

 

危機管理は正しい情報収集から!「台風」に備えて入手すべき情報とは?

 

マンションの台風対策はいつから?
「居住マンションの基礎知識」と「事前の準備」が大切

台風は、地震と異なり予測ができると濱口さんは言います。

 

「台風に備えるためには、まず自宅マンションの基礎知識を身につけ、普段の生活に絡めた備えをすることが第一です。台風が発生してから上陸するまでには、2〜3日かかるため、その間に備蓄やベランダのチェックなど確認する時間を確保できます」

 

「まずは以下のチェックポイントの項目を確認しましょう」

 

マンション防災のチェックポイント

□ マンション周辺のリスク
「ハザードマップで洪水、土砂災害、津波などの危険度を確認することで、避難のタイミングや備えておくべきことがわかります。指定されている避難所までの経路を普段から歩いて自分の目で危険な箇所などがないかを確認しておきましょう」

 

□ 電気設備(配電盤)の設置場所
「停電の復旧は数時間〜3日程度で回復する場合が多いですが、先の川崎市のタワーマンションの停電の復旧には1週間かかりました。これは配電盤が地下にあり、浸水してしまったことが原因です。マンションの配電盤がどこにあるかを知っておくと、その後の被害の予測ができます」

 

□ 備蓄
「マンションの管理組合によっては備蓄を行っているところがあります。高層階のマンションでは物資の引き取りの負担を軽減するために、5階おきに備蓄を設置している場合もあります」

 

□ 止水板の設置の有無
「マンションの1階や地下に、駐車場や電気設備が置かれている場合もあるため、浸水を防ぐことが大切です。そのために有効なのが止水版です。土のうに比べて設置が楽で、女性でも扱えるというメリットがあります。水害に備えてそのような設備があるか確認しておきましょう」

 

台風接近3日前(72時間前)から着手すべき
マンション住まいの事前の準備

続いて、台風接近前から行う事前の準備についてうかがいました。

 

■ 台風接近72時間前

 

1.窓ガラスの飛散対策を施す

→飛散防止フィルム、もしくは厚手のカーテンをかける

 

「窓ガラスが割れるのを防ぐためには雨戸が一番ですが、雨戸が設置されていないマンションも少なくありません。マンションでは高層階になればなるほど、風は強くなり、遮るものがないため強風を受けやすくなります。万が一、飛来物が飛んできて窓ガラスが割れたときの対策としては、室内に破片が入り込むのを抑える飛散防止フィルムを貼るのが一番です。その時間がない場合は、厚手のカーテンを準備しておくことをおすすめします。マンションの高層階になると、レースカーテンのみで暮らしている方が多くいらっしゃいます。厚手のカーテンをしっかり閉めておけば、窓ガラスが割れたとしても、カーテンがガードしてくれるので、ガラスの破片が室内に飛び散るのを防ぐことができます」

 

「また、養生テープ等を“米”の字に貼って飛散を防止する方法があります。養生テープは台風が通過した後、窓ガラスから剥がす際に、テープの跡が残ったりする場合もあるので、事前に剥がしたときの状態を確認しておきましょう」

 

2.停電に備えた対策

→自動点灯するライトを手元に置く


「夜間に停電が発生した場合、まず初めに必要となるのが明かりです。そこで、自動点灯するライトを廊下や寝室に差し込んでおきましょう。また、停電が長時間になると、明かりがないことはストレスになるので、長時間使用可能な充電タイプのランタンなども準備しておくとよいでしょう」

 

ポータブル電源は必要?
近年は、さまざまな自然災害に備え、ポータブル電源を購入する人が年々増加しています。「最低限の暮らしと重要な情報源を守るために、ポータブル電源は非常に役立ちますが、どれも10万円以上と決して安い買い物ではありません。ひとり暮らしの女性であれば、スマホを使用するためのモバイルバッテリーを備えておけばOK。ポータブル電源は高価なうえにかさばるものなので、停電がしばらく続くようであれば、wi-fi環境が整ったホテルに避難する方がよいでしょう」

 

停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

 

3.水とトイレの準備を行う

→1週間分の水と非常用トイレを準備

「台風の被害は、その後の停電や浸水状況によって異なりますが、一般的には1日、長くても2日程度であり、台風が過ぎ去れば、外出し買い物に行くことができます。このため、食料の備蓄は3日間程度あればよいでしょう。一方で、停電して水が出ない、トイレがしばらく使えないことを想定して、水と非常用トイレの備蓄は1週間分を用意しましょう」

 

水の備蓄方法
「ウォーターサーバーを普段から利用していると、備蓄にもなります。台風ではありませんが、2018年9月北海道胆振東部でマグニチュード6.7の地震が発生し、北海道全域でブラックアウト(大規模停電)が起きました。復旧に1週間ほどかかり、しばらく水が使えない状況に陥りました。その後、アンケート調査を行ったところ、水の備蓄でウォーターサーバーがとても役立ったと言う声が多くありました。ペットボトルなどで水を確保しておく手もありますが、ウォーターサーバーであれば、スペア用に大容量の水を普段から確保することが可能です。停電するとお湯は使用できまんが、水は停電しても使用できます。北海道胆振東部地震が起きた9月は暑く水をよく使う時期でもありました。台風が多いシーズンとも重なります」

 

非常用トイレを選ぶときのポイント
「非常用トイレで心配なのが、使用後の凝固剤の機能性と消臭の持続性です。非常用トイレは用を済ませた直後に固まりますが、物によっては時間が経つと、固まった汚物が解け出すことがあります。融解すると、消臭が持続できず汚臭が発生する、袋から汚物が滲む、袋が破れてしまったときに中身が飛び散ってしまうなどの問題が発生してしまう場合があります。非常用トイレを購入する際には、商品の特性をよく確認してから購入しましょう」

 

大型台風は早めに避難! でも避難しない場合、家ですべき準備と行動とは?

 

■ 台風接近48時間前

4.二次被害を防ぐ!

→ベランダの植木鉢や物干しなどをしまう

「風速15m/秒以上で看板や植木鉢が飛び、風速20m/秒以上で子どもや体重の軽い人は飛ばされそうになるといわれています。鉢植えはもちろんですが、自転車等大きなものを置いている場合も飛ばされる危険性があります。物が落下して、人にぶつかったり、他人の窓を壊したりすると大変危険です。二次被害を作らないためにも、飛ぶ危険性のあるものを確認し、いったん室内へ。ベランダには何もない状態にしましょう」

 

5.台風の規模を確認

→ホテル避難も検討する

「内閣府が出している避難情報に関するガイドラインでは、住民は『自らの命は自らが守る』意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が示され、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることになっています。ひとり暮らしの女性の場合、自治体から警戒レベル4の避難指示が発令された場合には速やかに避難しましょう。避難というと自治体が用意した避難所を思い浮かべますが、プライベートが守られ、Wi-Fi環境が整い、清潔な空間であるビジネスホテルもひとつの選択肢です。台風自体は長くても2日ほどで過ぎ去るので、台風が通過したあとに自宅に戻り、そのまま自宅に戻ることが可能か停電はしていないかなどの状況を把握し、その後の身の振り方を考えてもよいでしょう。台風時、会社勤めの人の中には、電車が止まってしまうことを見越して、会社近くのホテルに宿泊される方も多くいらっしゃいます」

 

住まいは何階?
「停電が起こりエレベーターを使えない場合は、何階に住んでいるかが避難をする上で判断材料になります。マンションが5 階以上であれば、上り下りは思った以上に大変であることを念頭におきましょう。1〜2日程度であれば問題ありませんが、1週間以上停電が続く場合、重い水や荷物を運びながらの階段の上り下りはとても大変です。不安があるのであれば、友人宅や親戚の家、ホテルなどに避難しましょう」

 

避難する時の持ち物は?
「マンションは強度があるため、倒壊することはほとんどないでしょう。台風が過ぎればいったん自宅に戻れるので、多くの荷物は必要ありません。1泊2日程度の着替えやタオルなどがあればよいでしょう。急に環境が代わり体調が崩れることもあるため、生理用品や常備薬なども準備しておくと安心です。」

 

デザインも機能も優れた「防災グッズ」選びと保管方法を雑貨コーディネーターが解説

 

 

マンションの台風被害で心配なのは、停電と断水。集合住宅ではさまざまなインフラを電気で制御していることが多いので、生活に多くの影響が出ます。あらかじめ「今住んでいるマンションで停電が起きたら?」「断水が起きたら?」と、シミュレーションしておきましょう。日頃の備えがあれば、実際に被害にあったときに慌てず行動に移せるはずです。

 

 

Profile


拓殖大学地方政治行政研究所特任教授・防災教育研究センター長 / 濱口和久

防衛大学校材料物性工学科卒、名古屋大学大学院環境学研究科博士課程単位取得満期退学。防衛庁陸上自衛隊、元首相秘書、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監(防災・危機管理担当兼務)などを経て、現在、拓殖大学地方政治行政研究所特任教授・防災教育研究センター長、一般財団法人防災教育推進協会理事長などを務めながら、防災に関する知識向上を務める活動を行っている。安全保障、領土問題、日本の城郭史にも詳しく、執筆活動や講演を全国で行っている。令和6年5月には日本危機管理学会「学術貢献賞」を受賞。

 

防災バッグに何を入れる?被災したらどうなる?防災のプロが教える知っておきたい地震対策

8月8日に、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。これに伴い、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられたことから、気象庁は翌9日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表。政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとるように、としています。

 

災害は時と場所を選ばず、突然やってきます。知識もモノも、事前に蓄えておいて損はありません。GetNavi webで過去に配信したものの中から、特に「今知っておきたい」防災関連記事を厳選してお届けします。

 

■日常生活の中で高める、防災意識と知識

・普段の生活のなかで災害発生に備えることが、防災への第一歩

災害の脅威に対してどんな情報を集め、どんな備えがあると生活水準を下げずに過ごせるのでしょう。

 

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんによると、防災への第一歩は「普段の生活のなかで災害発生に備える」こと。家のなかでも危険箇所を改善しておき、持ち出すモノを袋にまとめてわかりやすい場所に保管する、危険回避や避難生活のための情報収集方法を知っておくなど、ポイント別に解説しています。

 

・防災士・山岸愛梨キャスターに聞いた「防災の日にやっておきたい災害対策のポイント」

防災の意識を高めるためには、具体的にどういうことをすればいいのでしょうか。ウェザーニュースキャスターで防災士の資格を持つ山岸愛梨さんに、災害時の備えについてお話を伺いました。

 

山岸さんによると、普段からできる災害対策として3つのポイントがあるそう。(1)天気予報を確認する、(2)ハザードマップを確認する、そして3つ目は……。

 

記事後半では「防災士が教える『災害に備えて用意しておきたいもの』」もご紹介しています。

 

・地震・台風・豪雨……もし被災したらどうなる? どう行動すればいい?

災害時にもし備えがなかったら、身の回りでいったいどのようなことが起こるのか? 被災した場合、どのような行動をとればいいのか?

 

防災士であり、防災教育に取り組むゲンサイデイズ代表の細谷真紀子さんに解説していただきました。地震発生時に自宅にいるか、オフィスにいるか、それとも通勤中か、自分一人か、周りにたくさんの人がいるかなど、状況によって起こること、すべきことは変わってきます。

 

また、家族やパートナーと連絡を取るために備え、二次災害で想定されるリスクについても、トラブルに巻き込まれないように知っておきたいですね。

 

■「防災グッズ」、何を入れる?どこに保管する?

・デザインも機能も優れた「防災グッズ」選びと保管方法を雑貨コーディネーターが解説

日本では、全国どこに住んでいても、災害に備えて防災グッズは準備しておく必要があります。一方で、防災グッズはいざというときにすぐ目につくよう、インテリアには“あえて馴染まない”色や形状のものが多くなっています。

 

そこで、インテリアの邪魔にならない、むしろ部屋に置いておきたくなるようなおしゃれな防災グッズを、雑貨コーディネーターとして活躍するオモムロニ。さんに教えていただきました。インテリア性を損なわずに防災グッズを身近に置く工夫や、防災グッズの保管場所とは。

(写真提供=南海工業)

 

・防災バッグに何を入れる?“防災散歩”って何? 防災アドバイザーが教える「防災バッグ」の作り方

どうしても機能性重視で考えがちな防災バッグですが、実は何より重要なのは「防災に楽しく取り組むことで、長続きさせること」なのだそう。備え・防災アドバイザーとして活動する高荷智也さんに、防災バッグの重要性や作り方などについて、あらためて教えていただきました。

 

そもそも、災害対策として準備すべき荷物には「非常用持ち出し袋」と「インフラ代替セット」の2種類あり、それぞれ用途が異なることを知っていますか?

 

この記事では、保管場所やバッグ選びのポイントを学び、防災バッグを作るところまでフォローしています。

 

・停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

2024年元旦に起こった令和6年能登半島地震では、停電などライフラインへの影響が長期化しました。そうしたなか、非常時でもある程度必要な電気量を個人でまかなえる「大容量ポータブル電源」に注目が集まっています。

 

“大容量”とはいえ、実際どれくらいの容量があれば安心なのか、また使い勝手を妨げずに使えるのはどのようなタイプなのか。ポータブル電源の選び方について、備え・防災アドバイザーとして活躍されている合同会社ソナエルワークス代表の高荷智也さんに教えていただきました。

 

■「食」の備えもお忘れなく

・「ローリングストック」をおさらい! 災害時に日常の安心感をもたらす非常食の備え方

災害時の「食」に焦点を当て、日頃からできる備えを、整理収納アドバイザーであり防災士の丸マイさんに、教えていただきました。

 

ローリングは「回転」、ストックは「備蓄」。つまり「ローリングストック」とは、普段から食べている加工食品や食材を少し多めに購入し、日常で備蓄品を使い、使った分だけ買い足す、この行動を循環させて常に一定量の食材を家に置いておく備蓄方法のことです。

 

では実際には、どれくらいの量を備えておくのがいいのでしょうか。具体的に何から始めればいいか、備蓄食としてあると良いものなど、記事でまとめてお伝えしています。

 

・買い置きは管理しやすく見栄えよく! 食材も防災用の備蓄品も無駄にしない収納術

値上げや、防災の観点から、食品や日用品をストックすることが多くなっています。ただ、節約や安心のために買ったものも、消費期限内に使いきらなければかえって無駄に……。

 

ストックを生かすも殺すも収納次第。管理しやすく、かつ見た目もよく、と両立させるにはどうしたらいいのか、整理収納アドバイザーの佐々木奈美さんに教えていただきました。

 

佐々木さんは、冷蔵庫や食品棚にあるストック食材は、基本的に物の量と種類を決めているといいます。また、常温の食材の収納は、「ある場所」を参考にするのがコツだとか。日常で目にする機会が多い、その場所とは。

 

GetNavi webでは、“いざというとき”にきっと役立つ防災情報をまとめた「防災特集」を連載しています。今すぐできる備えとして、情報収集から始めてみては?

非常時は手回し発電でスマホ充電も。USB-Cでも充電できる多機能防災クロックが発売

リズムから、普段はめざまし時計、非常時にはラジオとして活躍する多機能型防災クロック「4RQ002-003」が登場します。8月上旬からの発売で、価格は1万6500円(税込)。

 

本機はシチズン製のめざまし時計、ラジオ機能のほか、USB Type-Aポートを搭載しスマホや携帯電話の充電が可能。停電時には、単3アルカリ乾電池から直接充電する方法と、手回し発電機によって蓄電した内蔵充電池から充電する方法があります。

 

ちなみに通常時の本体への充電は、搭載するUSB Type-Cポートへ手持ちのケーブルをつなぎ、家庭用電源やパソコンなどから行えます。

 

また、ワイドFM付きなのでAM電波が入りにくい場所でも、FM放送の周波数を使用してAMラジオを聴くことができます。その他、同調ランプ、懐中電灯など、非常時にありがたい機能が備わっているので、一家に一台持っておきたい商品と言えるでしょう。

 

各方法での使用時間の目安は以下のようになっています。

乾電池 充電池 手回し発電
時計 約3時間 約170日 約6日
ライト 約120時間 約17時間 約25分
ラジオ 約60時間 約8時間 約13分
携帯電話通話 約1時間40分 約30分 約2分
携帯電話待受 約100時間 約30時間 約2時間
スマホ通話 約1時間 約20分 約2分
スマホ待受 約18時間 約6時間 約40分

 

リズム
4RQ002-003
価格:1万6500円

もしもの時に備える。カナリアをモチーフにしたお守りのような防災用ホイッスル

アッシュコンセプトが2022年に開催したデザインコンペティションの受賞作品が製品化! 備える気持ちを後押しする、カナリアをモチーフにしたお守りのような防災用ホイッスルです。7月19日よりアッシュコンセプトの直営店KONCENT(コンセント)をはじめ、全国のライフスタイルショップなどで発売予定。

 

ふと心を和ませてくれます

「カナリアホイッスル」は、非常用の荷物にしまっておいたり携帯したりする防災グッズではなく、部屋に飾る備えという形のアイテム。羽をたたんで休んでいるようにも見えるあたたかみのあるカラーのカナリアたちが寄り添います。

↑各1870円(税込)。ライトピンク、イエロー、ライトグレー、ブルーの4色

 

止まり木に付いたマグネットで、玄関やキッチン、シェルフの柱などに自由に設置でき、小さなカナリアがインテリアに彩りを添えます。 照明スイッチの近くなど、わかりやすい場所もおすすめです。

↑玄関に

 

鉄製の画びょうを壁に留めれば、様々な場所でカナリアと過ごせます。設置場所によって製品が回転したり不安定な場合は、付属の滑り止めシールを使用すると安定します。

↑どんな壁でも大丈夫

 

約2m離れた位置で約90dB・4000Hzの音が出ます。防犯ブザーやガス警報器よりも大きな音圧で、人の可聴域20~20000Hzのなかでも小さな音を聞き取りやすいとされている3000~4000Hzの周波数。日常から有事に備え、そっとそばに置いておきたいアイテムです。

↑防犯ブザーやガス警報器よりも大きな音圧

 

+d(プラスディー)
カナリアホイッスル
1870円(税込)

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

一台で懐中電灯、卓上ライト、スタンドライトに早変わり。最大77時間、連続使用できる高輝度ランタン

BougeRV Japanは、スタンド付きランタン「BougeRVランタン」を2024年7月11日に発売しました。価格は1万4980円(税込)です。

 

高輝度かつ1万3400mAhの大容量バッテリーを備えており、最大約77時間の連続使用が可能です。充電時間は5.2時間。USB-A出力ポート付きのためスマホの充電などができるほか、懐中電灯機能やSOSモードも搭載しているので、災害時の防災グッズとしてはもちろん、停電時にも頼れます。

 

ライトは柔軟に角度調整ができ、広範囲を照らせます。

 

伸縮自在で、高さは39cmから110cmまで調整可能。これ一台で、懐中電灯や卓上ライト、スタンド型ライトの役割を果たします。金属に吸着させることもできるので、活躍の幅が広いです。

 

明るさは9段階調節。さらに3つの色温度から選べます(1600K/2700K/6000K)。

 

IPX5クラスの防水性能」により、大雨や雪、強風でも使えます。キャンプはじめ、夜間の釣りやスポーツといったアウトドアシーンでも安心ですね。重量は約0.98kgなので、携行に難がありません。

災害時に安心!ポータブルソーラーパネルの選び方と効果的な使い方を防災アドバイザーが解説

 

 

災害時の備えとして、大容量ポータブル電源とともに注目されている「ポータブルソーラーパネル」。スマホやモバイルバッテリー、ポータブル電源を屋外でも充電できる、“持ち運べる”ソーラーパネルが今、続々と登場しています。

 

このポータブルソーラーパネルが役立つシーンや選び方、さらにおすすめ製品について、備え・防災アドバイザーとして活動する合同会社ソナエルワークス代表の高荷智也さんに教えていただきました。

 

停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

 

手軽に充電できる手段として注目される、
ポータブルソーラーパネル

住宅の屋根やビルに設置されているイメージが強いソーラーパネルですが、最近は折りたたんで持ち運べるようなコンパクトなソーラーパネルも数多く販売されています。この「ポータブルソーラーパネル」とはどのようなものなのでしょうか?

 

「その名の通り、持ち運びができるソーラーパネルのこと。『ソーラー充電器』『モバイルソーラーパネル』などさまざまな呼び方がありますが、基本的にはどれも同じものを指します。
ポータブルソーラーパネルは、大きく2種類に分けられます。一つは、スマホやモバイルバッテリーなどの充電に適した、A4サイズ数枚分くらいの小型サイズのもの。もう一つが、ポータブル電源の充電などに適した少し大きめのサイズのものです」(備え・防災アドバイザー高荷智也さん、以下同)

 

製品自体はポータブル電源より前から存在したそう。では、なぜ今あらためて注目されているのでしょうか?

 

「停電対策に欠かせないポータブル電源やモバイルバッテリーは、充電ができなければ使い切りになってしまいますよね。そのため最近では、これらの充電手段を持っておくことが大切だと考えられています。
とはいえ、ガソリンやカセットガスの発電機を用意したり運用したりすることはなかなか大変で、住宅用ソーラーパネルは設置できる環境に制限があります。そのため、手軽に備えておけるポータブルソーラーパネルに注目が集まっていると考えられます。モバイルバッテリーやポータブル電源の性能が上がったことで、ポータブルソーラーパネルもさまざまな商品が発売されるようになりました」

 

ポータブルソーラーパネルが役立つシーンとは?

モバイルバッテリーやポータブル電源の充電手段として重宝するポータブルソーラーパネル。具体的にどのようなシーンで役立つのでしょうか?

 

「ポータブルソーラーパネルがもっとも活躍するのは、停電が長期化したとき。短期間の停電なら、モバイルバッテリーやポータブル電源があれば充分かもしれません。しかし台風や大地震、突発的な停電が起こり、いつ電力が復旧するかわからないような状況になったとき、モバイルバッテリーやポータブル電源を充電できるポータブルソーラーパネルは大いに重宝します」

 

活躍するのは、災害時だけではありません。

 

「もちろん、キャンプなどのアウトドアレジャーでも役立ちます。スマホやランタンの充電くらいであれば小型のポータブル電源で充分ですが、使うものによっては電力が足りなくなってしまうことも。例えばホットプレートや冷蔵庫、ポータブルエアコンなど、消費電力が大きいものを使いたいときには、ポータブル電源と併用するといいでしょう」

 

ポータブルソーラーパネルは
電気代の節約になる?

非常時やアウトドアで活用するほか、日常使いで“電力の自給自足”ができるかどうかも気になるところ。ポータブルソーラーパネルを使うことによって、日々の電気代を浮かせることはできるのでしょうか?

 

「正直、ポータブルソーラーパネルを使うことがお財布に優しいかというと、微妙なところです。例えばポータブル電源につないで、1時間で最大100Wを充電できるパネルを使ったとします。仮に1日5~6時間フル充電できたとすると500Wを充電できますが、金額にするとだいたい10~15円程度です。もし1ヶ月間、毎日充電ができたとしても節約できるのは300円くらい。1年間で考えると数千円レベルにはなるかもしれませんが、元を取れるかを考えると難しいところです。
とはいえ、電力を自給自足して生活するのは“環境負荷をかけない暮らし”にもつながりますよね。節約のために使うというよりは、ライフスタイルの一つとして、日々の暮らしの中で使ってみるのはアリだと思います」

 

発電効率を上げるには?
ポータブルソーラーパネルを上手に使うポイント

太陽光で簡単に充電することができるポータブルソーラーパネルですが、発電効率を上げるためにはどうすればいいのでしょうか? 押さえておくべき3つのポイントを教えていただきました。

 

1.直射日光を当てる

「ポータブルソーラーパネルに限りませんが、ソーラーパネルは屋外設置が基本。室内に設置する場合、設置場所や窓ガラスの種類によっては、発電効率が極端に下がる、もしくはほぼ0になってしまいます。南向きの庭や広いベランダを確保できるか、とくにマンションにお住まいの場合は購入前に確認しておきましょう」

 

2.パネルに対して太陽光を垂直に当てる

「発電効率を上げるためには、パネルを太陽の方に向ける、かつ太陽光に対して極力垂直に設置することが重要なポイントです。地面に対して垂直に置いてしまうと発電効率が落ちてしまいます。太陽の位置は意外とすぐ動くので、30分から1時間に1回程度は角度を調整するようにしましょう」

 

3.パネルの上に影を作らない

「製品にもよりますが、パネルの上に影がかかると発電効率が大きく下がってしまうものもあるので注意が必要です。一戸建て、庭、駐車場などの広い場所に置ける場合はそこまで問題はありませんが、マンションのベランダなどに設置する場合は、場所によってはうまく太陽光を当たらない場合も。『大きいパネルを買ったけど影がかかってうまく発電できない』とならないよう、場所に合わせてパネルの大きさを選ぶこともポイントです」

 

これらのポイントを押さえた上でパネルを設置したら、「どのくらい発電できているか」をあわせて確認してみましょう。

 

「製品によりますが、小型のポータブルソーラーパネルの場合は、電流計がついているものが多くあります。それを見れば、今どのくらい発電しているのかが一目でチェックできます。またポータブル電源に接続して使う場合は、ポータブル電源側にどのくらい充電できているかが表示されるので、それを確認しながら、発電効率の良い角度や設置する場所を調整してみてください」

 

ポータブルソーラーパネルの選び方

続いて、ポータブルソーラーパネルの購入時に知っておきたいポイントを紹介しましょう。パネルの大きさや発電量はどのくらいのものを選べばいいのか、ポータブル電源とセットで使いたいときに注意することなどを教えていただきました。

 

・なるべく大きなパネルを選ぶ

「ポータブルソーラーパネルは基本的に、大は小を兼ねるものです。曇りの日でも、ある程度の大きさのパネルであれば多少発電することができます。そのため、予算や設置場所が許す範囲で、大きいパネルを選ぶのがおすすめです。小型の場合でも、最低A4用紙1~2枚のサイズのものを選ぶのが良いと思います」

 

・スマホやモバイルバッテリーには20W前後が必要

「発電量は、スマホやモバイルバッテリーの充電に使いたい場合は、20W前後(15~30W)のものを選びましょう。これくらいの出力があれば、通常のUSB充電器と同じくらいの速度で充電することが可能です」

 

・ポータブル電源には最低100Wが必要

一方、ポータブル電源はそれなりに出力がないとそもそも充電できないので、最低でも100W以上あるものを選ぶようにしてください。ポータブル電源のなかには、パネルを2~3枚並列接続できるものもあり、例えば100Wのパネルを3枚並べて充電すると3倍の速度で充電することができます。とはいえ、100W発電できるパネルは両手を広げたくらいの大きさがあるので、設置場所や予算によって検討してみてください」

 

・ポータブル電源とソーラーパネルのセットならより手軽

ポータブル電源と併用したいときにおすすめなのが、ポータブル電源とポータブルソーラーパネルがセットになっているものを選んで買うこと。セットだとお得に買えることもありますし、間違いなく使うことができます。違うメーカー同士でも、ポータブル電源とソーラーパネルを接続するコネクタの形状と、入出力電圧が一致していれば使用することができます」

 

ポータブルソーラーパネルのおすすめ 4選

ここからは、高荷さんに教えていただいた選び方を参考に、編集部が厳選したおすすめのポータブルソーラーパネルを紹介します。最大出力100W以上のポータブル電源の充電に適した製品、スマホやモバイルバッテリーの充電に適した20W前後の製品をそれぞれピックアップしました。

Jackery「SolarSaga 100W ソーラーパネル」
3万4800円(税込)

ポータブル電源の大手メーカー「Jackery(ジャクリ)」のソーラーパネル。Jackeryポータブル電源の全シリーズに対応しており、最大100Wで充電することが可能です。本体にUSB端子がついているのでスマホやタブレットも充電することができます。

 

【スペック】
最大出力:100W(20V/5A)
USB-A 出力:5V/2.4A
USB-C 出力:5V/3A
収納サイズ:610×535×35mm
展開サイズ:1220×535×20mm
重量:約4㎏

 

Anker「625 Solar Panel (100W)」
3万4900円(税込)

Anker(アンカー)のポータブル電源シリーズの充電に最適なソーラーパネルで、3枚並列充電にも対応。USBポートがついているので、スマホやタブレットの充電も可能です。さらに、パネル連結部に太陽の位置測定器を搭載しており、太陽の位置に合わせて最適なパネルの向きを確認しながら設置することができます。

 

【スペック】
最大出力:100W (26.5V / 3.77A)
USB-A 出力:12W (5V / 2.4A)
USB-C 出力:15W (5V / 3A)
※USB-AポートとUSB-Cポートの合計最大出力は15W
格納サイズ:約525×470×85mm
展開サイズ:約1446×525×45mm
重量:約5㎏

 

EcoFlow「160W両面ソーラーパネルGen2」
4万7300円(税込)

パネルの素材には、高効率で低劣化の「N型TOPConセル」を採用。表面が160W、背面が環境光用の125Wの出力を誇り、スピーディに充電することが可能です。またポータブル電源との互換性が高いのも特徴。パネルの収納ケースは0~180度に調整可能で、スタンドとして活用できます。防水性&耐久性にも優れており、キャンプなどのアウトドアシーンでも活躍。

 

【スペック】
定格出力:正面160W(±5W) / 背面125W
格納サイズ:615×586×32 mm
展開サイズ:615×1628×25 mm
重量:5.1 kg

 

EXHEART「フォールディング ソーラーパネルミニ 28 EXP-M28GN」
1万5120円(税込)

最大24W出力する2つのUSBポートが付いたソーラーパネル。ベランダの物干し竿、リュック、テントに吊るしたり、付属の自立スタンドを活用したりと、手軽に設置できるのも特徴です。防滴性能があるので、突然の雨でも安心。

 

【スペック】
最大出力:24W
USB-A出力(2ポート):合計5V/4.8A
格納サイズ:約236×218×40mm
展開サイズ:約887×236×20mm
重量:約880g

 

Profile

備え・防災アドバイザー / 高荷智也

合同会社ソナエルワークス代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」を体系的に解説するフリーの防災専門家。講演・執筆・メディア出演も多く、防災YouTuberとしても活動をしている。著書に『今日から始める家庭の防災計画』(徳間書店)ほか多数。

停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

2024年元旦に起こった令和6年能登半島地震で、あらためて災害時の備えが必要だと実感した人は多いでしょう。今回の地震でも停電などライフラインへの影響が長期化しています。そんななか、非常時でもある程度必要な電気量を個人でまかなえる「大容量ポータブル電源」に注目が集まっています。

 

“大容量”とはいえ、実際どれくらいの容量があれば安心なのか、また使い勝手を妨げずに使えるのはどのようなタイプなのか。ポータブル電源の選び方について、備え・防災アドバイザーとして活躍されている合同会社ソナエルワークス代表の高荷智也さんに教えていただきました。

 

相次ぐ自然災害によって
防災グッズとしても注目されるように

「2019年に日本で初めて個人向けのポータブル電源が発売されたことがきっかけとなり、以後、日本で個人向けのポータブル電源が急速に普及しました。海外の大手主要メーカーであるJackery、BLUTTI、EcoFlowそしてAnkerなど各ブランドから販売される製品数が多くなり始めたのがこの時期になります」

 

もともとポータブル電源は、キャンプなどのアウトドアの用途として使われてきたもの。

 

「しかし、2019年の千葉県で台風による大規模停電が起こるなど、台風や大雨、地震による停電が相次いで起こり、防災アイテムとしても普及が広がりました。それに加え、2021年から一般社団法人防災安全協会が信頼性のある防災グッズに『防災製品等推奨品』マークをつけるようになると、ポータブル電源もこのマークの対象となりました。その経緯も背景のひとつと言えるでしょう」(備え・防災アドバイザー高荷智也さん、以下同)

 

大容量モバイルバッテリーとどう違う?
「大容量ポータブル電源」とは

そのなかでも、大容量ポータブル電源とは、どのようなものなのでしょうか?

 

「大容量ポータブル電源とは、一般的なポータブル電源よりも出力が大きく、さまざまな電化製品に対応できるアイテムです。また、『モバイルバッテリーとポータブル電源の違い』を知ることで、ポータブル電源がどのようなものか分かりやすくお伝えできると思いますが、双方の大きな違いは、AC100Vのコンセントを差し込めるかどうかになります」

 

・大容量ポータブル電源

AC100Vのコンセントを差し込むことができるので、家庭にあるほとんどの家電を動かすことができます。また、シガーソケット、USB-A・USB-Cポートもついており、多様な電力供給ができます。停電時にどのようなアイテムでも対応できる点が強みですね」

 

・大容量モバイルバッテリー

「基本的には、USB-A・USB-Cポートのみの充電しかできません。スマートフォンやノートPC、LEDライトの充電や、USB供給で作動する小型の家電を動かすことがおもな使い方となります。AC100Vのコンセントを搭載していないため、コンセント仕様の家電を使うことはできません

大容量ポータブル電源が役立つシーンとは?

続いて、大容量ポータブル電源がどのような用途で役立つのかを教えていただきました。

 

「平時あれば、キャンプのみならず、屋外に家電を持ち出して使いたいときに役立ちます。例えば、庭でホットプレートを使い食事を楽しんだり、屋外で電動工具を使ったDIYをしたり、車の中で大型の掃除機を使ったりすることもできます。日常生活では、電源を使う場所を広げるという発想で、うまく活用してもらえたらと思います」

 

災害時においても、以下のようにさまざまなシーンで役立つそう。

 

・夏の発災時の熱中症対策に

「夏に大地震が起きて電力の供給がストップすると、エアコンが使えないことにより、熱中症が懸念されます。大容量ポータブル電源があれば、扇風機を動かすことができるので、熱中症対策に。なお、扇風機を使う場合は、消費電力の高い交流電流のACモータータイプ扇風機ではなく、少し値は張りますが、消費電力の少ない直流電流のDCタイプ扇風機を使うことをおすすめします。使用できる時間が格段に長くなります」

 

・スマートフォンの充電に

「災害時には正確な情報を得たいですし、何よりも家族など近しい間柄の人の安否確認を取るうえでもスマホは欠かせません。しかし、停電により充電ができないとなればバッテリーの使用量を節約せざるを得ません。大容量ポータブル電源を使えば、安心してスマートフォンを使うことができ、何よりも精神的にも安心できます」

 

・ホットプレートなどを使用しての加熱調理に

「災害時に温かな食事をとれることは、精神的に安心感を与えてくれます。ポータブル電源では対応できない、高電力のホットプレートや電子レンジなどの調理家電も大容量ポータブル電源があれば普段と変わらず使えます」

回収サービスと安全設計は必須!
大容量ポータブル電源の賢い選び方

大容量ポータブル電源を購入する際、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?

 

「近年、数多くの大容量ポータブル電源が売られていますが、玉石混淆なのが現状です。安いからと選ぶと、いざと言うときにバッテリー残量がなくなっている場合などもあり、のちに後悔する場合も。ぜひ次のことに留意して検討してください」

 

1.回収サービスがあること

「故障や機械の寿命を迎えたときに、販売元のメーカーの回収サービスがあることは必須です。なぜならば、ポータブル電源は現在、自治体で回収されることがほとんどなく、処分に困る品物だからです。一部の大手メーカーでは自主回収の取り組みを開始しているので、これから購入を考える場合には必ず事前に確認してください」

 

2.安全設計がされていること

「ポータブル電源を構成しているリチウムイオン電池は危険物です。充電のしすぎや、外部からの大きな衝撃があったりすると、発火や爆発の危険性があります。信頼のおけるメーカーのものを選ぶようにしてください。判断基準のひとつは、防災安全協会の『防災製品等推奨品』マークがついているかどうか。必ずマークのある商品を選びましょう」

 

上記2点は、大容量ポータブル電源を選ぶ際の必須要件だそう。ほかにも、次のようなことを意識して選ぶといいでしょう。

 

3.AC出力が110Vのものは避け100Vのものにする

「コンセントの出力が100Vのものを選びましょう。最近の製品ではほぼ見かけませんが、少し昔の型だと110Vのものがまだあります。なぜならば、海外だと110Vが一般的な仕様だからです。日本のコンセントに対応している100Vのものを選んだほうがより安定して使用することができます」

 

4.リン酸鉄タイプのリチウムイオン電池を採用し、サイクル寿命が長いものを選ぶ

「リチウムイオン電池には『リン酸鉄タイプ』と『三元系タイプ』の2つの種類があります。従来の三元系タイプの電池の充電回数は500〜800回程度であるのに対し、リン酸鉄リチウムイオン電池であれば数千回もの充電ができます。充放電を繰り返せる回数、つまりサイクル寿命が長いものを選んだほうが断然お得です」

 

5.UPS(無停電電源装置)機能を搭載のものを選ぶ

「デスクトップパソコンや観賞魚のポンプなど、停電しては困るものを使用している場合は、停電によって電力が断たれた場合にも電力を供給できるUPS(無停電電源装置)の代替としてUPS機能を搭載したポータブル電源を使用することができます」

 

6.ソーラーパネル付きを選ぶ

「ソーラーパネルがあれば、太陽光でポータブル電源を充電することができます。ポータブル電源とソーラーパネルは、それぞれ単体でも購入できますが、知識のある人でない限り接続が困難な場合もあります。別々に購入するのではなく、メーカーが「ソーラーパネル付きポータブル電源」として、セット売りしている製品を選ぶと安心です。ソーラーパネルの目安としては100Wのものがおすすめ。晴れた日にポータブル電源を充電して使用することができます」

ポータブル電源の容量は実際どのくらい必要?

気になるのが、どのくらいの量があれば、いざというときに電力が足りるのかということ。具体的な数値を教えていただきました。

 

「私はいつも『安心安全な信頼のおけるメーカーのなかから、ご自身の予算の範囲で、最大容量のものを選んでください』とみなさんにお伝えしています。そのうえで、用途に合わせた以下の選び方をご紹介します」

 

1.さまざま家電を使うなら

「パソコン、電気毛布、電気ケトルなど、家庭内のさまざまな家電を使う場合は、定格出力が『1500W』以上のものを選びましょう。日本ではAC100Vを供給する壁のコンセントの最大容量は1500Wだからです。専用コンセントが必要となる200V仕様のエアコンや冷蔵庫を除いては、ポータブル電源から1500Wの出力を得られれば、事実上すべての家電を動かすことができるようになります。『何に使うかは分からないが、どのような状況にも対応したい』という場合には、定格出力1500W以上の製品を選ぶと間違いありません。尚、それを『何時間使えるか』は『定格容量』により決まります。よって『定格出力1500W以上で、予算内で購入できる最も定格容量が大きい製品を選ぶ』といいでしょう」

 

2.スマートフォンを十分に充電できればいいなら

「定格出力が『1500W』以上の製品を選ぼうとすると10万円以上の製品になってきます。非常時には必要だけれども、予算が限られるし……と迷うくらいであれば、スマートフォンが充電できる容量を備えておくという考え方もあります。スマートフォンの充電を十分に行える機種を選び、かつ家電にも使えるかもしれない、というシチュエーションを考えるといいでしょう」

 

その目安は、というと……

 

「1回スマホをフル充電するのに必要な『5000mAh』×『7日分』=『35,000mAh』/1人分となるため、容量の最低基準を『1人あたり35,000mAh』とし、予算内で買える定格容量の一番大きな製品を選ぶのが良いと思います」

ポータブル電源の寿命を長持ちさせるには?

日常的に使用していると寿命が短くなるのでは、と不安に思う方もいるかもしれません。ポータブル電源を長く使い、かつ非常時に役立たせるにはどうしたらいいのでしょうか?

 

「ポータブル電源の寿命は、どれくらいの回数充電したか、またどれくらいの頻度で使うかによって変わってきます。一方で、ポータブル電源に使われているリチウムイオン電池は定期的に使わないと性能が落ちてしまいます。そういう意味では、非常時にちゃんと使いたいからこそ、日常使いで定期的に充放電をして性能を維持することはとても大切です。例えば、週に1回、フル放電したのち充電するくらいであれば、製品寿命と容量の減りはほとんど変わりません。ポータブル電源の寿命を維持するためにも定期的に使用することをおすすめします」

次のページでは、高荷さんに教えていただいた以上の判断基準と容量を満たす、大容量ポータブル電源のおすすめモデル8点を紹介します。

 

災害時に役立つ!
「大容量ポータブル電源」おすすめ8選

高荷さんに教えていただいた以上の判断基準と容量を参考に、編集部が厳選したおすすめのポータブル電源を紹介します。

・充電に時間をかけなくてOK! 他に類を見ない急速充電

Anker「Solix C1000 Portable Power Station」
13万9,900円(税込)

 

最短約1時間弱でフル充電ができるため、いざというときでも速やかに対応できます。例えば、台風の接近に備えたり、停電時に電力が供給されている場所に持っていき速やかに充電を終わらせることができます。また、同じ容量程度の製品に比べると約15%コンパクトなサイズなので場所をとりません。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:1056Wh
・サイズ:約37.6×26.7×20.5cm
・重さ:約12.9kg
・100%満充電までの最短時間:約58分(ACコンセント)(専用アプリで超急速充電モード設定時)
・AC出力(定格/瞬間最大):1500W(50/60Hz)/2000W
・出力ポート構成:AC×6,USB-C×2,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・一般的なものより約6倍長持ちのバッテリーを採用し「毎日接続したまま」でも劣化を防ぐ

Anker「521 Portable Power Station (PowerHouse 256Wh)」
2万9,900円(税込)

 

リン酸鉄リチウムイオン電池の中でも特に高品質なセル(バッテリーを構成する個々の電池)を採用しているため、一般的なポータブル電源よりも約6倍の寿命があります。さらに、充電しながらほかの機器をつないで使えるため、日常的に充電しっぱなしにすることで常にフル充電をしておくことができます。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:256Wh
・サイズ:約21.6×21.1×14.4cm
・重さ:約3.7kg
・100%満充電までの最短時間:約2.5時間(ACアダプタ+USB充電器)
・AC出力(定格/瞬間最大):100W~(50/60Hz)/300W
・出力ポート構成:AC×2,USB-C×1,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・ほぼすべての家電製品を稼働! 同時にいくつもの家電を使える

Jackery「ポータブル電源 1000 Plus」
16万8,000円(税込)

 

1264Whの大容量と2000Wの定格出力ができるため、ノートパソコンを使いながら同時に電子レンジを使うことも可能な頼もしい製品です。さらにバッテリーを最大3個まで追加でき、1.2kWhから最大5kWhまで拡張できます。後からカスタマイズできれば必要なときに追加できるので安心ですね。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:1264Wh
・サイズ:約35.6×26.0×28.3cm
・重さ:約14.5kg
・100%満充電までの最短時間:約1.7時間(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):100V~(50/60Hz)/2000W
・出力ポート構成:AC×3,USB-C×2,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・アプリで遠隔操作できる! リュックに入れて身軽に持ち運べるのもポイント

Jackery「ポータブル電源 300 Plus」
3万9,800円(税込)

 

リュックの中に入れて持ち運べるほどコンパクトなため、キャンプや避難所にいつでも持っていくこともできるサイズです。アプリを使えば遠隔での操作も可能。製品のディスプレイを見ることなく、使用可能な時間や、出力と入力の状況などを確認することができます。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:288Wh
・サイズ:約23.0×15.5×16.7cm
・重さ:約3.75kg
・100%満充電までの最短時間:約2時間(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):100V~(50Hz/60Hz),3A,300W
・出力ポート構成:AC×1,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・ソーラーパネルを利用すれば太陽光とACを同時に充電できる

BLUETTI「AC180 大容量ポータブル電源 」
14万8,000円(税込)

 

本体の両脇に取っ手がついているため、手軽に持ち運べるデザインとなっています。約1時間で1日分の電力を充電することできるほか、ソーラーパネルを使えばさらに充電時間を短縮することが可能に。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:1152Wh
・サイズ:約34.0×24.7×31.7cm
・重さ:約16kg
・80%充電までの最短時間:約45分(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):4×100V/18A、合計1,800W/2700W
・出力ポート構成:AC×4,USB-C×1,USB-A×4,シガーソケット×1,ワイヤレス充電×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・停電時にも速やかに電力を回復するUPS機能搭載

BLUETTI「AC2A 超小型ポータブル電源」
2万9,800円(税込)

 

停電が起きた場合でも0.02秒の速さで切り替えができ、瞬間的に電力を回復するため、留守中の水槽内のポンプなど突然使用できなくなると困る製品につなげておけば、安定した電力を供給してくれるので安心です。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:204.8Wh
・サイズ:約25.0×15.0×18.0cm
・重さ:約3.6kg
・100%満充電までの最短時間:約1.4時間(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):2×100V/3A、合計300W/600W
・出力ポート構成:AC×2,USB-C×1,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・家族が増えたり用途が変わったり…後からバッテリーを増設できる

EcoFlow「DELTA 2|デルタ 2」
14万3,000円(税込)

 

家族が増えたり、使ってみて足らないなと感じたときに、ケーブルを介してエクストラバッテリーをつなぐだけで、容量を最大3400Whまで増やすことができます。そのほか、折りたたみ式ソーラーパネル、スマート発電機などさまざまな同社製品と連携させることにより使用するシチュエーションも増えていきます。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:1024Wh
・サイズ:約40.0×21.1×28.1cm
・重さ:約12kg
・100%満充電までの最短時間:約80分(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):1500W~(50/60Hz)/X-Boost機能をオンで最大1900W
・出力ポート構成:AC×6,USB-C×2,USB-A×4,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

・高い安全性をクリア! 安心して使うことができる

EcoFlow「RIVER 2|リバー 2」
2万9,900円(税込)

 

同社のバッテリーは電圧、電流、温度などを高いレベルでモニタリングした保護機能の高い安全性能が特徴。高い安全基準をクリアし、国際安全認証機関であるTV Rheinland(テュフ・ラインランド)からポータブル電源業界では初となる安全認証を取得した安全安心な製品です。

 

【SPEC】
・バッテリー容量:256Wh
・サイズ:約24.5×21.5×14.5cm
・重さ:約3.5kg
・100%満充電までの最短時間:約1時間(ACコンセント)
・AC出力(定格/瞬間最大):100-120V(50/60Hz)/8A
・出力ポート構成:AC×2,USB-C×1,USB-A×2,シガーソケット×1
・電池素材:リン酸鉄リチウムイオン電池
・対応ソーラーパネル:有

 

日頃から大容量ポータブル電源に使い慣れておけば、いざというときでも戸惑うことなく、安心し活用することができます。また、頻繁に使用しているほうがバッテリーを長持ちさせてくれるとなれば、積極的に使いたいと思えるのでは。災害時には必ずと言っていいほど必要となるアイテム。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか?

 

Profile

備え・防災アドバイザー / 高荷智也

合同会社ソナエルワークス代表。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」を体系的に解説するフリーの防災専門家。講演・執筆・メディア出演も多く、防災YouTuberとしても活動をしている。著書に『今日から始める家庭の防災計画』(徳間書店)ほか多数。

住宅火災は乾燥する冬に要注意! リスクとなる4つの死角と対策、万が一にとるべき対応は?

空気が乾燥し始める時期から特に気を付けたい火災。火災のリスクが潜んでいるのは火の元だけではありません。電気製品の使い方や火を扱うときの衣服などにも注意が必要です。

 

防災アドバイザーの岡部梨恵子さんに、日常に潜む火災のリスクと対策、万が一出火した場合にはどうすればいいのかを教えていただきました。

 

住宅火災のリスクや対策は、
住環境によって異なる

大前提として、「住宅火災」とひとことで言っても、そもそも住んでいる家によってリスクや対策の仕方は大きく異なります。そのため防災の方法においても「『これが正解』と一概に言えないことも多い」と岡部さん。まずは自分の家のつくりや設備について知り、その上で備えることが大切なんだそう。

 

「最近の住宅は、壁や壁紙が燃えにくい素材でできていたり、燃えても有害な物質が出ないようになっていたりと、さまざまな形で火災への対策がなされています。また、住宅火災の原因をデータで見たときに上位に挙がるのがコンロの火です。しかし最近のコンロも、大きな揺れが来たり高熱を検知したりすると自動で火が消えるようになっています。

 

このように考えると、設備が古い住宅と、最新設備が整った新築とでは、火災への備え方は違ってくることが分かると思います。火災に限ったことではありませんが防災を考えるときには、昔から言われている防災の方法やメディアからの情報を鵜呑みにすることなく、まず『自分の家はどうなのか』を知ることが大切です。それを知ることで、むやみに怖がることなく、適切な防災ができたり、災害時の行動も変わってくると思います」(防災アドバイザー・岡部梨恵子さん、以下同)

 

「例えば皆さん、高熱の油を使って料理をしているときに大地震が来たらまず何をしますか? おそらく『急いで火を止める』と答える人が多く、実際にそう言われることも多いのですが、防災の世界では最近この考えを疑問視する声も上がっています。なぜなら、コンロの火が自動で消えるなら、固定されていない鍋に近づくほうが危険とも言えるからです。どちらが正解とは一概に言えません。

 

しかし『自宅のコンロに自動で火が止まる機能がある』と知っていれば、万が一のことがあっても衝動的に動くのではなく、命を守るための最善の行動を自分で考え、選択することができるのではないでしょうか」

 

火災を起こさないために、
日々の生活で気を付けることは?

自分の住む家のつくりや設備が最新だったとしても、もちろんそれだけで火災への対策が万全というわけではありません。では、火災を起こさないために日常生活でどのようなことに気を付ければいいのでしょうか? 具体的に教えていただきました。

 

1.キャンドルやタバコなどの“裸火”の扱いに気を付ける

「火災の原因として少なくないのがタバコの火です。火を消したつもりでも完全に消火できていないことがあるため、吸殻を片付けようと安易にゴミ箱に入れるのはとても危険。ゴミ箱の中に油を吸った紙などが入っていると火災を引き起こすことがあります。そのためタバコの火は、灰皿で消してからしばらく置いておき、半日~1日くらい経ってから捨てるようにしてください。捨てる前にさらに水に浸すとより安心です。寝たばこはとても危険なので絶対にNG!

 

タバコだけでなくキャンドルも、覆いがないむき出しの火(=裸火)なので、使用するときには注意が必要です。例えば、寝る前のリラックスタイムにアロマキャンドルをつけて、そのまま眠ってしまう……というのはとても危険。特に夜は疲れていて注意力が散漫になっていることも多いので、使用するときは『火災になるリスクがある』と意識した上で、確実に火を消してから就寝するようにしてください」

 

2.壊れた家電や古い家電は使わず、必ず使用方法を守る

「住宅火災が起こる原因は、火の元だけではありません。コンセントとプラグの間にホコリや塵がたまり、そこに湿気が加わることで発火につながる『トラッキング現象』による火災もあります。

 

トラッキング現象は、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、テレビといった普段あまりプラグを抜き差ししない場所や、結露がたまりやすい場所や水槽の裏などの湿気がある場所で特に注意が必要です。また、コンロの近くにあるコンセントも、油が跳ねてべとつきやすくなっているとホコリがくっつきやすくなるので気を付けましょう。

 

対策としては、ホコリや塵がたまらないように定期的に掃除をすること。とはいえ、家にあるコンセントを毎日掃除するのは難しいので、大掃除の時期などに定期的にきれいにするのが良いと思います。そのほか、あらかじめコンセントにカバーをつけておくのもおすすめ。数百円の手頃な価格で買えるので、ぜひ活用してみてください。

 

また、電気火災でもう一つ気を付けたいのが、古い家電や劣化した家電を『もったいないから』と使い続けてしまうこと。今の時代、ものを長く使うことが良しとされる価値観がありますが、電気製品に関してはおすすめできません。説明書を読んで使用方法を守ることはもちろん、異音がしたり煙が出たり、少しでもおかしいと感じたらすぐに使用をやめてください。自宅で火災が起こると、自分だけでなく他人にも被害を及ぼす可能性があります。常にそのことを念頭に置いて、電気製品に関しては『もったいない』という考えは捨て、常に安全なものを使うようにしましょう」

 

3.意外と見落としがち? リチウムイオン電池と衣類乾燥機の使い方に注意

「近年、増加傾向にあるのが『リチウムイオン電池』が原因の火災。特にスマートフォンやモバイルバッテリーは使う機会も多いと思いますが、内蔵されているリチウムイオン電池が劣化すると発火につながる可能性があるので注意が必要です。バッテリーが異様に熱くなったり、落として中身が見える状態や壊れた状態のまま使用し続けるのはやめましょう。

 

また火災のリスクとして意外と知られていないのが衣類乾燥機です。洗濯後の服やタオルなどに残っている油分が乾燥による熱風で酸化して発熱し、自然発火する可能性があります。特にアロマオイルなどを日常的に使っている方は注意してください。油分が付いた服やタオルは自然乾燥させる、または乾燥機に入れる前に油分をしっかり落とすようにしましょう」

 

4.身に付ける衣服の素材にも注意を払う

「電気代が高騰している昨今、暖房代の節約のために室内でもダウンジャケットを着たりマフラーをしたりして過ごしている人もいるかもしれません。しかし、とくにナイロン製の服は火が付くと一瞬で燃え広がってしまうため、台所などではとくに注意が必要です。マフラーや袖口が広がっている服なども、無意識のうちにコンロの火に触れてしまいかねません。台所は作業場だと考え、『調理をするときには割烹着に着替える』など自分でルールを決めたりして、服装にも注意を払うことが大切です。

 

また室内以外でも、ポリエステル素材の浴衣で花火をしたり、ナイロン製のダウンジャケットを着てキャンプで火を起こしたりするときには注意。もちろん『着てはいけない』というわけではなく、燃えやすい素材であることをきちんと理解した上で、火を扱うようにしましょう」

 

 

どれだけ気を付けていても、100%起こらないとは言い切れない住宅火災。もしも自宅で出火してしまったときにはどうすればいい? 次の項目で、対処法や常備しておくグッズなどを解説していただきます。

万が一、火災を起こしてしまったら?

どれだけ気を付けていても、100%起こらないとは言い切れない住宅火災。そのため、万が一自宅で出火してしまったときにはどうすればいいのかを知っておくことも必要です。おすすめの防災グッズとあわせて、岡部さんに教えていただきました。

 

「まず知っておいてもらいたいのが、自宅で火災が起こったときには、パニックになってしまう可能性が高いということ。火災のような災害や大きな事故などを目の当たりにしたときに思考力や判断力を失ってしまうことは、『凍り付き症候群』と呼ばれています。対策するのはなかなか難しいですが、『自宅で突然火が上がったらパニックになるかも』という心構えをもっておくことがまずは大切です。

 

そして、消火するときのアイテムとしてまず思い浮かぶのは消火器だと思います。しかし個人的にはあまりおすすめできません。なぜなら、消火器の扱いは慣れていない人にとっては難しく、その上パニック状態の中で使うのはさらにハードルが高いからです。そこでおすすめなのがワンアクションで簡単に初期消火ができるグッズ。さまざまな種類のものが販売されているので、用途に合わせて備えておくと良いと思います。ただし火災には下記の3種類があり、火災のタイプによって使える消火剤が異なるので、購入前に必ずチェックしておきましょう」

・普通火災(A火災)=木材、紙、繊維などが燃える火災
・油火災(B火災)=ガソリン、灯油、天ぷら油などが燃える火災
・電気火災(C火災)=通電中のコンセントが燃える火災

 

・火元に投げる消火用具「消える魔球」

メディプラン「消える魔球」
2,000円(税抜)
適応火災:普通火災、油火災(ただし天ぷら油火災は使用NG)

「火元に向かって投げるタイプの消火用具です。野球の硬式ボールと同じ大きさで約230gと軽いため、扱いやすいのも特徴。各部屋に備えておくと良いと思います。ただし天ぷら油火災には使用できないので注意! 使えるのは初期消火のみですが、炎が広がった時に足元の火を消して、逃げ道を確保するなどの使い方もできます」

 

・天ぷら油火災の消火に役立つ「火の用心棒」「消せる魔法の杖」

メディプラン「天ぷら油火災用 初期消火用具『火の用心棒』『消せる魔法の杖』」
各1,000円(税抜)
適応火災:天ぷら油火災

※どちらも用途・薬剤・容量は同じで、パッケージの素材のみ異なります。

「こちらは天ぷら油の火災のみに使える消火剤です。使い方も簡単で、燃えている鍋の中に袋のままそっと入れるだけでOK。台所に備えておくと良いでしょう」

 

「そのほか、片手で使える消火スプレーなどもおすすめです。ただしこれらが有効なのはあくまでも初期消火の段階。炎が天井くらいまで上がってしまったら、身を守るために諦めて避難しましょう。また、せっかく用意した消火剤も、取り出しにくい場所に置いてしまったら意味がありません。買って終わりではなく、設置場所をよく考えることも重要です」

 

 

最後に岡部さんはこう話してくださいました。「技術の進歩により、火災に対する備え方が変わってきています。昔から言われている防災の方法や古い情報にとらわれず、まずは『今、自分の家ではどのようなことに気を付けるべきなのか』を知ることが大切です。それから、日常生活の中で少し意識を変えたり、最新のグッズを活用したりしながら、火災を起こさないためにできることを始めてみましょう」

 

Profile

防災アドバイザー・防災士 / 岡部梨恵子

合同会社 BOUSAI LIFE MAP代表。防災士、ファイナンシャルプランナー、整理収納アドバイザーなど、多様な資格を活かして、防災グッズや備蓄品、被災後の食やお金の知識に関するセミナーや講演会を開催。メディアへの出演も多数。
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デザインも機能も優れた「防災グッズ」選びと保管方法を雑貨コーディネーターが解説

日本は地震の多発国。さらに気候変動の影響もあり、台風や豪雨による災害も毎年のように発生しています。全国どこに住んでいても、災害に備えて防災グッズは準備しておく必要があります。一方で、防災グッズはいざというときにすぐ目につくよう、インテリアには“あえて馴染まない”色や形状のものが多くなっています。インテリアにこだわる人がそれを理由に準備を躊躇しては本末転倒。

 

そこで、インテリアの邪魔にならない、むしろ部屋に置いておきたくなるようなおしゃれな防災グッズを、雑貨コーディネーターとして活躍するオモムロニ。さんに教えていただきました。

 

インテリアにこだわる人が選ぶべき
“防災グッズ”の考え方

(写真提供=南海工業)

 

インテリア性を損なわずに防災グッズを身近に置く工夫とは? まずは、オモムロニ。さん自身が防災グッズ選びでこだわっている点をうかがいました。

 

「大前提として、防災アイテム自体はデザイン性より実用性が第一だと考えています。わが家で使っているものも、ホームセンターなどで取り扱っている実用性の高いグッズです。私自身は大きな震災を体験したことがありませんし、防災のプロでもありません。そのため、できるだけ実際に被災した方の経験をもとに開発されたグッズを進んで選ぶようにしています。

 

とはいえ、防災グッズは見栄えが悪いからと、納戸や押入れの奥底にしまっていては意味がありません。置き場所としては、使用頻度の高いメインスペースに置く必要はないけれど、本当に必要になったときにはすぐに取り出して使える状態にあることが理想です。

 

そのためにも、ある程度インテリアに馴染むように工夫することが大切だと思います。インテリア性の高いグッズやユニークなアイテムなら、暮らしのなかに積極的に取り入れたいと思えますよね」(雑貨コーディネーター・オモムロニ。さん、以下同)

 

では、オモムロニ。さんが防災グッズを日々の暮らしに取り入れる際のポイントは?

 

・実用性の高いケースにまとめて入れる

(写真提供=オモムロニ。さん)

 

「防災グッズをいろいろと揃えると、細々としてかさばりやすいですよね。それらを散逸しないようにまとめて収納しています。その収納ケースは、常に目のつくところに出して置けるよう、気に入ったものを選ぶようにしています。私が現在使っているのは、アウトドア用の蓋付きの大きな収納ボックスです。頑丈で持ち運びができ、椅子や踏み台としても使えるボックスに防災グッズの大半を入れて、玄関先に堂々と置いています」

 

・色の配分を考える

「最近では、インテリアに馴染むようにと白やグレーの防災グッズも出てきていますが、やはり非常時に認識できることは大切です。『インテリアとしての調和性』と同時に、『いざというときに目につく』必要があり、両立するためにあえて“インテリアのポイントや差し色”としてビタミンカラーのグッズや収納グッズを選んでみる、というのも面白いのではないでしょうか」

 

・日常的に使用するものはデザインも大切にする

「スマートフォンの充電器などいつも携行するものは、気に入っていて見栄えも良いものの方が普段から持ち歩きたいと思えますね」

このように、『見せる収納』『隠す収納』をバランスよく工夫することなどで、防災グッズも気持ちよくインテリアとして置いておくことができると、オモムロニ。さんは言います。

 

どこにしまうのが正解?防災グッズの保管場所

ひとまとめにすると、かさばる防災グッズ。どこに保管すればいいのでしょうか?

 

「防災グッズの置き場所は、家の間取りや、住んでいる人の使い勝手など、それこそさまざまです。『これがベスト』と言うものではなく、暮らしていく中でそのときのライフスタイルにあった場所を考えていく必要があります」

 

・家族みんなが把握している場所

「せっかく用意周到に準備していても、家族がどこにあるのかを把握していなければ、もしものときに使うことができません。地震が起きたときは慌てていて冷静に行動することは難しいもの。日頃から保管場所について話し合ったり、普段目につきやすい場所に、どこに何をしまっているかが分かる保管場所リストを貼っておくなど、工夫が必要です」

 

・定期的にメンテナンスしやすい場所

「非常食の賞味期限が切れていたり、使用期間が切れていることは防災グッズにはありがちです。定期的にメンテナンスするためには、取り出しやすくモノの交換がしやすい場所がおすすめです」

具体的な保管場所を教えていただきました。

 

・玄関付近

(写真提供=オモムロニ。さん)

 

「間取りにもよりますが、我が家では玄関横に少し広いスペースがあります。ここに、外へ避難する時のための防災リュックをアウトドア用のふた付きの大きな収納ボックスに入れて置いています。ここならば、出入りするたびにチラチラと目に入るので、“防災グッズの存在”を認識しやすいのです」

 

・キッチン

「食材だけは、分けてキッチンに置く人も多いのではないでしょうか。私は、吊り戸棚の上部に3年〜5年くらい保存の効くパウチの食材をストックしています。普段は手に届かないけれど、台に乗れば簡単に取り出せる位置です。毎年9月1日の防災の日に合わせて、賞味期限の確認や買い替えなどをするようにしています。パントリーがあれば、一角を防災食スペースとして設けることもできます」

 

・ベッドサイド

「ベッドサイドに運動靴やヘルメットを置くようにしています。サイドテーブルを置いておけば、収納場所にすることもできます。テーブルとして上にメガネや本などを置き、引き出しには非常時に使うものをしまっています」

 

・クローゼットや押し入れ

「防災グッズの定番の保管場所です。大きなスペースにしまっている人も多いはず。一方で、次々にほかのものを入れていく中で、防災グッズが奥に追いやられていませんか? 今一度確認してみましょう。また、クローゼットや押し入れであれば扉がありインテリアに影響がないので、こちらではとにかく目につく色柄の防災ボックスに入れるなど、あえて目立たせて日頃から忘れないようにするのもおすすめです」

 

インテリアとしても申し分なし!デザイン性の高い防災グッズ5選

オモムロニ。 さんに部屋に飾っておきたい、あえて目立つ場所に置いておきたい、インテリア雑貨としても際立つ防災グッズを紹介していただきました。

 

1.モダンでおしゃれなこけしフォルムの懐中電灯

East Japan Project「Naruko Kokeshi Light(鳴子こけしライト)
15,400円(税込)/designshop

「建築家の隈研吾氏が中心となり立ち上げられた東北復興支援プロジェクト『East Japan Project(EJP)』によるデザイン。この『鳴子こけしライト』は、一つひとつが、宮城県鳴子温泉のこけし職人の持つろくろ引きの技術によって作られている伝統工芸品です。頭の部分をくるっとひねるとライトが点灯します。抽象的なこけしの形がインテリアとして置くにもちょうどよく、リビングや玄関などにあえて置いておきたくなるLEDライトです」

 

2.ゴミ箱にも簡易トイレにも変身するアウトドア用折りたたみ椅子

SOLCION 「PATATTO350+」
6,380円(税込)

「災害時に簡易トイレとして使うことができる折りたたみの椅子。耐荷重は100kgまであるにもかかわらず、たためば厚さ4cmととてもコンパクトです。3色展開もうれしいポイント。インテリアに馴染みやすいネイビーを選べばいつでもお部屋においておけますし、オレンジは押し入れにしまっておいてもすぐに見つけることができます。災害時、座って用を足せることは精神的にも大きな安心感を与えてくれますし、高齢の方やお子さんも使いやすいと思います」

 

3.災害時の必需品! 水をおしゃれに保存するタンク

DOD 「ジミニータンク」
4,400円(税込)

「災害時には飲み水だけではなく、トイレや食器洗いなど、さまざまな場面で生活用水が必要になります。水はありすぎて困るものではありません。しかしながら、場所をとるため保管場所に困るモノ。アウトドア用のタンクならシックな色合いのモノも多く、インテリア性をそこないません。また、下部に蛇口がついているので、古い水を蛇口から出し、上部から新しい水を入れ替えやすい設計です」

 

4.必要最低限の充電に便利なスタイリッシュなバッテリー

BAREBONES 「Power Bank new 10000mAh」
10,560円(税込)

「部屋に置いてあってもスタイリッシュなバッテリー。スマートフォンなど、どうしても充電したいものを充電するのに適した容量です。キャリーハンドルがついているので持ち運びもスムーズです。また、懐中電灯もついているすぐれもの。付属のUSB-Cケーブルで充電する仕様。黒と白の2色展開があり、部屋のインテリアに合わせて選ぶことができます」

 

5.防災グッズの入れ場所をあえて見せるインテリアに

IF「WALLシリーズ」
23,100円〜(税込)

「『もしもの備えを日常に』をコンセプトに、限られた空間の中にもスッキリと防災グッズを収納できるアイテムです。インテリにも馴染むオーク材の天板で、キッチン横のサイドテーブルとしたり、壁際においてお気に入りの置物などを飾ったりと使い方自由自在です。家族の人数に合わせて大きさを選べる2サイズ展開です」

 

防災グッズをインテリアの一部として据えることは、防災を身近なものにしてくれます。防災グッズを収納するケースを洗練されたデザインにしてみたり、機能性の高いアウトドアグッズを防災用にできないかと考えてみたりすると、新しい発見があるでしょう。日常の暮らしの中に溶け込む防災グッズは、フェーズフリーアイテムとして、災害時だけでなく平常時にも、役に立ってくれるはずです。

 

Profile

雑貨コーディネーター / オモムロニ。

日用品、家電、文具、グッズ、手みやげ、贈りものなど、あらゆる“モノ”にまつわるセレクトやコラムの執筆、商品企画などを手がける。グッドデザインかつ実用的なアイテム選びが得意。雑誌『&Premium』にて連載中。著書に『DAILY GIFT BOOK気持ちが伝わる贈りものアイデア』 (文藝春秋)がある。
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地震・台風・豪雨……もし被災したらどうなる? どう行動すればいい?

自然災害では日本最大の被害を出した関東大震災から、100年が経ちました。その後も日本列島は大きな震災に幾度も見舞われています。また近年は地震だけでなく、夏は台風や線状降水帯による被害も大きくなっており、誰もが明日にでも “被災者” になる可能性があります。

 

災害時にもし備えがなかったら、身の回りでいったいどのようなことが起こるのか? 被災した場合、どのような行動をとればいいのか? 防災士であり、防災教育に取り組むゲンサイデイズ代表の細谷真紀子さんに解説していただきました。

 

↑関東大震災は近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震。1923年9月1日に発生し、南関東から東海地域に及ぶ地域に広範な被害を及ぼした。死者は10万5385人、全潰全焼流出家屋は29万3387戸に上る。(内閣府サイトより)

 

大地震が発生したら何が起こるのか?

大地震発生時には、どのようなことが起こるのでしょうか?

 

「首都直下地震や南海トラフ地震が想定される中、地震は予測が難しく、突然起きる災害です。地震が起きると身の回りでは『落ちる・飛ぶ・動く・倒れる・割れる』という5つの事象が起きることを想像してみましょう」(防災士・細谷真紀子さん、以下同)

 

■ 自宅で地震が起こった場合

「建物については、作られた年代や構造によっては倒壊の危険が想定されます。また、耐震・免振性能がある場合でも、室内の固定していない家具は大小・重量にかかわらず、倒れたり動いたりします。本や小物、植物やペット用品など、室内のあらゆるものが足の踏み場もないほどに散乱し、避難が困難になるかもしれません」

 

・リビング
「家族や来客で人が集まる場所でもあり、物が多くなりがちな空間です。テレビが落ちたり倒れたり、キャスター付きの家具やソファやローテーブルなどの家具は不規則に動き、背の高い家具は倒れてきます。最近では、被災時のためにとウォーターサーバーを導入する家庭も増えていますが、上部に水を設置するタイプのサーバーは、重心が上がることで、転倒する危険性が高まります。花瓶やインテリア雑貨など、小さなものは飛んできたり、割れたりするでしょう。ペンダント型の照明は大きく揺れ、割れる素材のランプシェードや電球などは、天井や壁に当たり割れて破片が飛び散ることもあります」

 

・キッチン
「調理中の熱した調理器具や油や刃物、調理家電など、さまざまな危険が存在する空間です。冷蔵庫は倒れてきますし、電子レンジやオーブンなどの家電はコンセントが差してあっても勢いよく飛んできます。調味料や小さな調理器具・包丁、食器類も調理台や棚から飛ぶように落ちたり割れたりして、破片や粉塵が飛び散る危険性があります」

 

・浴室、脱衣所
「風呂場や脱衣場は、無防備な状態でいるため、怪我をしやすい場所です。吊り戸棚などから、洗剤などの重い液体の入ったボトルが落ちてくることがあります。また、ガラスや陶器などの割れやすいものが洗面台の上にあった場合、それらが飛ぶように落ち、割れ、破片が飛び散る危険性があります」

 

・トイレ
「ドアが外開き扉の場合、出入口の外側にある物が倒れたり移動して閉じ込められる危険性があります。また、清掃用の薬品などが高所に置いてあると落ちて飛び散る危険性があるほか、タンクの蓋がずれ落ちる可能性もあります。またトイレ問題(用を足せないことや災害時のトイレの使用方法を間違えて理解し、無理やり流して逆流や施設内での漏水が起きるなどの問題)は災害発生30分後には起こり始める可能性があります」

 

・寝室
「就寝中の無防備な状態の中、棚が倒れてきたり、エアコンや照明器具が落下したり、棚にある本やアロマキャンドルなどの雑貨も飛ぶように落ち、割れたりすることがあります。夜間に過ごすことが多い場所ですので、周りが暗く状況が確認しにくいことも考えられます」

 

■ オフィスで地震が起こった場合

「オフィスの建物も、作られた年代や構造によっては倒壊の危険が想定され、耐震・免振性能がある場合でも室内の備品などが倒れたり、落ちたりする被害も。高層ビルなどでは長周期振動での立っていられない長い揺れによる被害が想定されます。一般的な事務所を想定すると、次のようなことが起こります」

 

・デスク周り
「キャスターがついているコピー機や椅子、デスク下の引き出しなどは大きく動き、デスク上にあった書類が散乱し、パソコンなども飛ぶように落ちてしまいます。天井まである背の高い棚も扉が開いてしまい、中にあるファイルや書類が飛び出し、固定されていない棚は倒れてしまいます。天井のエアコンや蛍光灯なども落ちたり、割れた破片が飛び散ることも」

 

・地下階や地下室など
「停電になれば周りが見えにくくなり避難が難しくなります。地震によって起きた津波など、水が流れ込んでくるリスクがあります」

 

・エレベーター
「揺れの感知や停電に伴い、非常停止したり、自動的に最寄り階に停まったりすることがあります。内部に閉じ込められた場合、真っ暗の中、救出には長時間かかる場合や乗っていることに気付かれないことも想定されます」

 

・エントランス
「建物の構造や会社の規模にもよりますが、多くの人が限られた場所(例えば狭い通路・出入口など)から一斉に外に出ようとする人の流れで、群衆雪崩が起こるリスクがあります。また、上階の窓ガラスや外壁・看板などが落下してくる危険性があります」

 

■ 通勤中に地震が起こった場合

「通勤途中など屋外にいる場合には、近くの建物の倒壊や外壁の落下などの危険性が。また、不特定多数の人といる場合、パニック状態になったり、自分には何も起きないだろう・みんなについていけば大丈夫などと間違った判断をしてしまったりすることも考えられます」

 

・通勤路
「周囲の建物の耐震性によっては倒壊する建物があったり、外壁や室外機・看板が落ちてきたり、窓ガラスが降り注いできたり、瓦屋根や煉瓦が剥がれ落ちたりすることも。古いブロック塀や、固定されていない自動販売機・電柱が倒れてきたり、電線が切れてぶら下がったりする危険性もあるでしょう。ひどい場合には歩道橋が落ちる、橋や高速道路に亀裂が入るなどして通行できなくなる、鉄道・バス・タクシーなどの交通機関が運行されないことも想定されます」

 

・埋め立て地や昔の海・河川跡など
「地面が液状化しやすく、マンホールなど地中の構造物は地面に突出します。ひどい場合には道路が陥没したり、建物が埋もれ、破損・倒壊したりする場合も。海底を震源とする地震の場合、沿岸部では津波が起こる危険性もあります」

 

・電車の中
「揺れを感知し、緊急停止されます。安全が確認されるまでは長時間運行が停止される可能性があります。また、耐震整備が進んでいない場所では脱線する危険性もあります」

 

大地震発生! とるべき行動は?

いざ大地震が起こったとき、パニック状態になることで自らの命を危険にさらすことも考えられます。どう行動するべきでしょうか?

 

1.自分の身の安全を第一優先に確保する

「実際に何の準備もないままに大地震の揺れが起きた場合は、自分でも動きを制御することができません。大切なことは、普段から危ない場所を作らずに工夫しながら生活することです。物が落ちないように滑り止めを敷いたり、普段過ごす場所に家具が倒れてこないように家具を配置したり固定したり、ガラスが飛び散らないように飛散防止シートを貼ったりすることで、家庭内の危ない場所は激減します。また、地震のときは『頭を守る』と言われてきましたが、頭だけでなく、大切な血管や神経などが通っている首も手で覆い、守ることが大事です。日頃から落ち着いて判断できる環境を作り、落ち着ける心を備えましょう。自らの命を守れない環境・心では、大切なものを守ることはできません」

 

2.周囲の状況を情報収集する

「大きな揺れが収まったあと、次にすることは、周囲の状況確認です。津波や火災など、命の危険が迫っている場合にはすぐに避難しなければなりません。建物内で火災が発生した場合は初期消火を行うことが必要となります。建物の外に出るべきか否かも、状況によって変わってきます。近年はさまざまな地震対策や備えが施されたオフィスビルなどでは帰宅困難者対策として、帰らないことを選択し、建物の中で過ごすことが推奨されています。このため、家族やパートナーと予め避難場所を決めている場合でも、安全に落ち合う方法を再度検討することが必要となります。無理をして大勢の人が家に帰ろうと移動すると、余震時に被害に遭ったり、群衆雪崩のような二次災害を引き起こしたりすることも。人が多く向かっているからと根拠のないまま先に進むのはとても危険です。帰宅困難者に対する民間の一時滞在施設などの支援も整備されつつあります。日常から防災に対するアンテナを立て、さまざまな取り組みを知っておきましょう」

 

大雨が降ったときに起こる災害とは?

近年増え続けている、強風や大雨によって発生する “風水害” についてもうかがいました。

 

「これまでに起きた風水害では、台風や線状降水帯、前線の停滞などの大雨が要因となった河川氾濫や内水氾濫・土砂災害や、台風による高潮・暴風被害があります。ほかにも発達した積乱雲による局地的な大雨、落雷や竜巻、突風被害など、その土地の特性や気象条件によってさまざまな災害が起きています」

 

風水害の中でも「豪雨災害」と呼ばれるような大雨被害ではどのようなことが起きるのでしょうか?

 

・氾濫による被害

[河川氾濫]
「河川の近くでは河川の氾濫による浸水被害が想定されます。洪水ハザードマップが一つの浸水の目安にもなりますが、ハザードマップには雨量や流域などの条件があるということが注意点です。条件以上の雨が降った場合には、それ以上の被害が出るかもしれません。低地で水が集まりやすい場所や地下など、地形や建物の特性を知っていれば安全に避難することができます」

 

[内水氾濫]
「最近では、都市部の市街地などで排水能力が追いつかずに起こる内水氾濫があります。このため、内水氾濫ハザードマップを作成する行政も増えています。下水と雨水が合流して排水されるエリアでは、建物内の排水溝から汚水が逆流したり、マンホールから汚水が噴き出したりすることも。分流化の対策が進められていますが、室内で被害が発生する場合もあります」

 

・浸水による被害

1.浸水が浅い場合でも避難が困難となる

「氾濫で浸水が起きた場合、水の中を歩行するのはとても危険です。浸水というとお風呂のように動きのない水を想定するかもしれませんが、浸水の進行期では川と同じように流れがあることをイメージしてください。浸水が浅い場合でも、足をすくわれる危険性も。深水10cmだから安全ということは決してなく、浸水が始まっていたらすでに災害は発生している状況。避難ではなく、その場で命を守る行動が必要となります」

 

2.車で移動している場合にも危険がある

「一般的な自動車では浸水10cm程度でブレーキが効きにくくなり、交通事故などを引き起こすことがあります。また、30cm程度の浸水でエンジンが止まってしまうとも言われています。道路が冠水した状況では浸水した深さを正確に判断できずに「大丈夫だろう」という間違った判断で深みに入って動けなくなることも。特にアンダーパスなど水の溜まりやすい場所は要注意。浸水が始まっている場合は、車で進入することは絶対にしてはいけない行為です」

 

・土砂災害による被害

「土砂災害には土石流、地滑り、がけ崩れがありますが、これは山間部だけの災害ではありません。丘陵地の宅地開発では一見コンクリートで固められているため、崖と認識していない人工造成地も街の中に多くあります。これらが劣化することや、水分を多く含むことにより土砂災害のリスクが高まります」

 

・落雷やひょう、竜巻、突風による被害

「落雷により停電が発生した場合、エアコンが効かずに熱中症など体調が悪くなることも考えられます。また、ひょう、竜巻、暴風・突風によりガラスが割れてしまい、怪我をすることもあります。どちらの状況でも、外に出ることは大変危険です」

 

大雨で被害を出さないためにとるべき行動とは?

1.早めの情報収集と、避難への判断が運命の分かれ道!

「命に危険がおよぶ恐れがある大雨が想定される場合には、早期に注意情報や気象警報が発表されるため、事前にさまざまな対策を行い、避難を早めることによって最悪の事態を防ぐことが可能です。しかしながら、浸水エリアに住んでいるにもかかわらず、災害を楽観視して逃げ遅れてしまい、亡くなったケースもあります。近年ではハザードマップ以上に被害が出るような大雨も増えています。必ず早めの判断で安全に避難できるうちに、より安全な場所への避難を完了してください」

 

2.浸水してしまった場合は、速やかに命を守る最善の行動を!

「万が一、室内にいて浸水が始まった場合は避難するタイミングを逸してしまった状態です。その場で命を守るための最善の行動をとりましょう。例えば想定浸水深を超える高さの場所へ垂直避難する方法などが考えられます。浸水する水は、きれいな水が入ってくるわけではありません。汚水を含んでおり、汚泥や流されてきた物が室内に残ってしまう場合も。水が引いた後に被災した部屋に在宅避難することは困難が予想されます。疲労からくる免疫機能の低下や汚水に含まれる雑菌などが原因で感染症にかかってしまうこともあります。被災した家は汚泥を洗い落として消毒をして乾かす必要があるため、復興は長期戦になります」

 

二次災害で想定されるリスクとは?

災害後に安全が確保されたあとにも多くのリスクが潜んでいます。

 

「備えがない場合、災害後の避難生活にも大きなリスクが想定されます。避難生活での心労や体への負担が重なり、残念ながら未だに災害が起きる度に『災害関連死』で命を失くされる方が直接死よりも多く報告されています」

 

・車中泊などによるエコノミークラス症候群
「車避難で長時間体勢を変えられずにいると、血流が悪くなります。その結果、血栓ができやすい状況となり、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こします」

 

・避難所での感染症
「多くの人が集まる避難所などでは、さまざまな感染症の拡大の恐れがあります。トイレや手洗いなど、衛生状況の悪化も原因となります」

 

・避難所での熱中症
「避難所が体育館などであった場合、エアコン設備のあるところは極めて少なく、広い空間で冷暖房も十分に機能しないことも想定され、体調不良を引き起こし、命にかかわることも」

 

・避難所での犯罪被害
「プライバシーの確保できにくい避難所ではセクハラや性犯罪、暴力などの犯罪が起きる危険性があります」

 

二次災害に巻き込まれないためにできること

二次災害に巻き込まれないためにはどうしたらいいのでしょうか?

 

「避難所でさまざまな困難が想定される原因には、避難所の運営が人任せになっているという現状も。自分たちの備えを考える上で重要なことは、命を守る視点だけではなく、安心して暮らしていける視点を備えることでもあるかもしれません。二次災害に巻き込まれないためにも、普段から、モノの備え、心の備え、コミュニティーの備えを意識することが大切です。この3つの備えが自分たちの心身の復興の支えとなります」

 

・モノの備え
「感染症を防ぐための衛生用品は必須です。特にマスクや消毒薬、女性特有の衛生管理用品は見落としがち。マスクは新型コロナが落ち着いてきたこの先も備蓄しておきましょう。市販の避難リュックや備蓄品のセットがあればよしとするのではなく、自分にとって必要なものを考えてみましょう。ほかの人には不要なものでも、自分にとって大切なものは、ご自身の暮らしのライフラインとなるかもしれません」

 

・心の備え
「生活圏の災害想定をハザードマップなどで予め知っておくことは、心の備えにつながります。また知識が行動につながり、助かる命もあります。地域の過去の災害伝承や、避難する場所を調べておくなど、地域特性を知っておくことが心の安心につながることもあるかもしれません」

 

・コミュニティーの備え
「自分ひとりですべての備えを進めるのは難しいことです。情報を入手するにあたっても、コミュニティーの力は役立ちますし、何よりも知っている人がそばにいることは、いざというときに大変心強いものです。日頃のあいさつから少しずつ関わりを持てると、日常の防犯において役立つこともあるでしょう」

 

家族やパートナーと連絡を取るために備えておきたいこと

災害が起きたとき、大切な人と連絡を取るために備えておきたいことをうかがいました。

 

「実際に被災した方たちの多くが経験されているのが、本来であれば近しい家族の安否情報や暮らすための情報が何よりも欲しい中、遠方にいる人たちからの安否確認の連絡により、携帯電話のバッテリーが消耗して困ったということ。省エネで自分の安否情報を発信し、自分自身も相手の発信を受け取る術を準備しておいてください」

 

・災害伝言ダイヤル(171)と災害伝言板(web171)を使えるようにする

「災害伝言ダイヤルは災害の発生により被災地への通信が増加した場合に開設される声や文字の伝言板です。毎月1日と15日、防災週間・正月三が日・防災とボランティア週間などに体験ができる利用日があります。災害時に初めて使うのではなく、本当に必要なときに使えるよう、連絡を取りたい相手と連絡を取り合う電話番号を共有し、発信と受信どちらも体験しておきましょう」

 

・各SNSの災害時の伝言板を活用する

「FacebookやLINEでは災害時に開設されるツールを用意しています。自分は災害時にどのSNSを使って情報を出すのか、事前に家族やパートナーと話し合っておくことが大切です。一度に複数の人に安否情報を発信できるので、通信の負担が軽減します」

 

・避難場所や落ち合う場所を決めておく

「住まいの近くの避難所など、どこで家族やパートナーと落ち合うのか、あらかじめ相談しておきましょう。地図で確認しても、たくさんの人が集まる避難所で探すことが難しいことも。実際に家から避難場所まで歩いて行って避難経路を確認するとともに、避難所内の具体的なスポットを決め、待ち合わせる時間帯に実際の場所を確認しながら行っておくとすれ違いの心配が減るでしょう」

 

地震をはじめ自然災害は、いつ、どこで、どのようなタイミングで起きてもおかしくありません。備えが命を守るということを今一度理解しましょう。まずは、災害伝言ダイヤルのかけ方を練習してみるなど、できそうなことから少しずつ防災をスタートしましょう。

 

プロフィール

防災士・ゲンサイデイズ 代表 / 細谷真紀子

東北で感じた災害・減災への視点を元に、全国での防災教育を実施。安心していのちを委ね、ゆるやかに暮らしが繋がる。災害死が0になる社会を目指し “いのちを守った先の「未来の笑顔」のためにある減災教育を作り出す” をビジョンに、日常の課題にもアプローチし、防災・減災教育の視点で社会の変革に取り組んでいる。
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「ローリングストック」をおさらい! 災害時に日常の安心感をもたらす非常食の備え方

活断層が入り組み、地震大国といわれる日本。未曾有の大災害となった東日本大震災からは3月11日で12年が経ち、亡くなった方の13回忌にあたります。また、地震だけでなくさまざまな自然災害が頻発しており、あらためて備えをチェックすべきでしょう。

 

今回は災害時の「食」に焦点を当て、日頃からできる備えを、整理収納アドバイザーであり防災士の丸マイさんに、教えていただきました。

 

在宅避難を支える備え「ローリングストック」とは?

ローリングストックとはどのような防災方法なのでしょうか? おさらいしておきましょう。

 

「ローリングは『回転』することであり、ストックは『備蓄』すること。つまり、普段から食べている加工食品や食材を少し多めに購入し、日常で備蓄品を使い、使った分だけ買い足す、この行動を循環させて常に一定量の食材を家に置いておく備蓄方法のことです。

在宅避難を基本に考え、日頃から備えることにより、いざというときに慌てずに行動できます。もし避難が必要な場合も、備蓄があればパニックにならずに、避難所に移動するタイミングを冷静に判断することができます。備蓄がない人ほどパニックになり、すぐに避難所に行かなくてはと慌ててしまうケースがよくあります」(整理収納アドバイザーであり防災士・丸マイさん、以下同)

 

丸さん自身も、ローリングストックの重要性を経験したといいます。

 

「3・11の当時、住んでいた家の隣がスーパーで、ミニマリストを目指していたこともあり『スーパーが我が家の冷蔵庫』がわりと捉えていました。被災地からは遠く離れたところに住んでいましたが、大きな揺れを感じ、気持ちの面でもすぐには行動に移せなかったんです。ところが、いざスーパーに行ったときにはほとんどの食料が売り切れていました。『きちんと持つものは持たないと大変なことになる』ことに気づきました。

この経験をもとに、防災について学び始め、現在は整理収納アドバイザーとして片付けの仕事で伺ったご家庭でも、『片付けで空いたスペースにはぜひ備蓄品を入れてください』とお願いしています」

 

非常食と日常食のバランスを大切に! 備蓄する食品の選び方

では実際には、どれくらいの量を備えておくのがいいのでしょうか?

 

「『何をどれくらいストックしておけばいいのか』とよく聞かれるのですが、家庭によって千差万別です。というのも、家族の人数や、アレルギーの有無、ペットがいるかなど、各ご家庭によって条件はまちまちです。ライフスタイルの変化にともなって必要となるものも変化していきます。『必要なものリスト』や一般的に売られている防災セットは万人向けのものであり、その人にあった備蓄品とは限りません。『これが正解』というのはなかなか難しいですが、私がもっとも大切にしていることは『その状況になった場合をしっかりとイメージすること』です。

震災などの災害が発生し、ライフラインが寸断した状況で支援物資が届くまで、4〜7日は要するといわれています。そうしたなか、自分の家庭には何が必要かをしっかりとイメージすることにより、各家庭や個々人にあった本当に必要なものが見えてきます。

備える量は、基本的には3日分とされています。しかし、水の配給があっても、それを取りに行くのが困難な高層階にお住まいの方は、7日分を用意するといいでしょう。同様に、小さなお子さんがいたり、高齢の方の場合も、重いものの運搬が難しいので7日分を用意しましょう」

 

まず、なにから始めればいいでしょうか?

 

「防災グッズを揃えようとするとなかなかハードルも高く、行動に移せない方も多いと思います。まずは、普段使っている食品からローリングストックしておきたいものなどをリストアップしてみてください。例えば、冷蔵庫の中にあるもので災害のときにどのような食べ方ができるかを考えてみることはとても役に立ちます。日持ちする食品で火を使わない調理法を考えてみるだけでも防災になります。お金もかからないし、ハードルもグッと下がります。

身の回りにあるものをチェックし、いつも使う食品を常に一定量を保持できるようにルール付けをしましょう。例えば、今まで1つ買っていた長期保存のきく食品を2つ買うようにする、など。完璧でなくてもいいんです。お金がかかるから、場所がないから、と後回しにすることで後悔はしてほしくないと思います」

 

【備蓄食としてあると良いもの】

・水……最低3日分

「大人1人あたり1日3L。合計9Lが目安です。携帯用に500mlのサイズも用意しておくと良いです」

 

・主食……最低3日分

「白米だけでなく、お粥もあると安心です。発災時はショックが大きく、食べ物が喉を通らなくなる方は少なくありません。そんなとき、身体にやさしく消化にいいおかゆがあると安心です」

 

・味のあるもの……最低3日分

「主食のおともに、缶詰やレトルトなど味に変化をもたせるものを数種類用意しておくことで飽きずに食事をすることができます」

 

・甘いもの……最低3日分

「糖分は疲れているときに食べると気持ちを落ち着かせる効果があります。精神的なケアに甘味を取り入れましょう」

 

【備蓄食としてNGのもの】

・過度に味の濃い食品

「味の濃い食品は水を欲してしまうため、控えましょう。災害時には心身ともに疲れていることを前提に考え、普段の食事よりやさしい味付けが好ましいです」

 

・つゆの多いカップ麺など

「つゆの多いカップ麺などは、下水機能が寸断された場合、流せないおそれがあります」

 

編集部おすすめ! ローリングストックしたい商品

丸さんから教えていただいたストックしておいたほうが良い食品をもとに、編集部がセレクトしてみました。

 

空腹をしのげる食品

「高カロリー・甘味・旨味のあるものはお腹を満たしてくれます。量が少なくても満腹感を得やすいためぜひ好きな食品をストックしてください」

 

日々の食卓にも取り入れやすいレトルトカレー

NISHIKIYA KITCHEN「野菜ゴロゴロカレー
380円(税込)

大きめの野菜がゴロッとたっぷり入った、食べ応え満点のカレー。7大アレルゲン不使用(※)で、野菜がメインで動物性の脂が固まることがないため、非常時に常温で食べることになっても、おいしく食べられます。

※NISHIKIYA KITCHENの工場では、卵・乳・小麦・えび・かに・落花生を含む製品を作っています。(特定原材料対象)

「レトルト食品の専門メーカーならではのおいしさを兼ね揃えた食品です。非常時だけではなく、日頃の食卓にもおすすめ。NISHIKIYA KITCHENシリーズでは、ローリングストックにもってこいの商品が揃っています。定期便もあるので、買い忘れをなくすこともできます」

 

健康を維持できる食品

「炭水化物・肉・魚・野菜の缶詰やレトルト食品は健康的な体を保つために必要です。食事の基本となる炭水化物、力を与えてくれるタンパク質、ビタミンを補う野菜をバランスよくとりましょう」

 

・一度にまとめて揃えられて手間いらずの防災食セット

石井食品「非常食Aセット
1316円(税込)

何から揃えれば良いか迷っている人におすすめ。セットにまとまっているので、数日分の非常食の用意が簡単にできます。約4年の長期保存が可能なところもメリット。

「製造過程で食品添加物を使用していないので、安心して食べられます。火や水を使わず調理不要なのも、非常時には助かりますね。この他にも、石井食品ではさまざまな非常食セットを展開していますのでチェックしてみてください」

 

・アウトドアメーカーが作った機能的なごはん

モンベル「五目リゾッタ
421円(税込)

機能的なアウトドアアイテムは防災時にも役立つものが多くあります。こちらのリゾッタシリーズはフリーズドライのため調理時間が極めて短く、水を使わない乾いたままの状態でもサクサクとおいしく食べられます。

「フリーズドライのため軽く、携帯用としても利用できるので防災リュックにも入れておけるのがいいですね。コーンやベーコントマトクリームなど多くの味が揃っているのでいろいろな味を楽しめます」

 

・長期保管で経済的なアルファ米でできたおかゆ

尾西食品「アルファ米 42g 白がゆ
280円(税込)※4月より302円(税込)

非常食の定番ともいえる、アルファ米を使ったおかゆ。湯量を調整することでやわらかなご飯としてもいただくことができます。同シリーズには、五目ごはんからナシゴレンなどさまざまな味がラインナップしています。

「非常時になると疲れもあいまっていつもより優しい食事をとりたくなります。日ごろおかゆを食べないという方も、ぜひ準備しましょう。味に変化を持たせたいときはふりかけを何種類か備えておくと良いですね」

 

体調の変化に対応できる食品

「災害時には免疫力も低下するためサプリなど手軽に栄養を摂れるものがあると大変助かります。また、薬も必要なものは揃えてください。毎日飲む薬がある方は予め多めにもらっておくのが良いでしょう」

 

手軽に栄養を補える非常時用サプリメント

セイエンタプライズ
サバイバルフーズ マルチビタミン&ミネラル」4000円(税別)

サバイバルフーズ ビタミンC」3000円(税別)

賞味期限は5年間と長期保管が可能な栄養機能食品。災害時は特に炭水化物の摂取に偏りがちになるため必要な栄養を補うことが大切です。とくに強い負荷がかかる災害時には「サバイバルフーズビタミンC」を併用することがおすすめです。

「サプリを備蓄することをおすすめしています。簡単に栄養を補えることは災害時にとても重要です。一般的なサプリの賞味期限が2年くらいのところ、こちらは長期保管ができるため、コストカットと更新の手間がかからない安心感があります」

 

気持ちが落ち着く食品

「お菓子・果物缶・スイーツ缶などの甘味ものは疲れたときにとくに食べたくなりますよね。少し食べるだけでも、気持ちが落ち着くこともありますのでお好みのスイーツを備蓄しておきましょう」

 

本格的な味が魅力の防災用スイーツ

ガトー・ド・ボワイヤージュ「防災スイーツ(バニラガレット)
648円(税込)

エネルギー摂取はもちろんのこと味や5年間の保存期間にもこだわった防災用のスイーツ。バニラ、チョコのほか、食物アレルギーを考慮し特定原材料等28品目不使用のメープル味とアレルゲンフリーチョコ味も用意しています。

「洋菓子屋さんの作った防災食。非常時には気持ちの面でもケアが必要です。エネルギーを取ることはもちろん大切ですが、甘味のある食品も準備しておくことで心にゆとりを持つことができます。お子さんのいるご家庭にもぜひ用意しておくことをおすすめします」

 

取り出しやすさが肝心! ストックは普段から使っている場所へ

せっかく用意した食品がいざ必要となったタイミングで賞味期限が切れていたり、見当たらなかったりといったリスクを防ぐポイントを教えていただきました。

 

・普段から使っているところを保管場所にする

「備蓄食品は、パントリーなど、普段から目につきやすいところに保管しましょう。そして、在庫はどれくらいか、一目で見渡せる引き出しなどが理想的。常に確認ができ、忘れることのない仕組み作りが大切です」

 

・水は各部屋に分散して保管する

「一箇所に保管することは避けましょう。せっかく準備していたとしても、もしその部屋の扉が開かなくなるような状況になった場合、使えなくなってしまうからです」

 

・開封していないものを用意する

「食器は、開封していないものをまとめて防災用として準備してください。食品は台所保管が良いのですが、長期保管のできる食品以外の備品に関しては、『防災備品』としてまとめて保管しましょう」

 

いざというときのために今できることは?

冒頭で、いざというときのためにイメージを持つことが大切と教えていただきました。ここでは、イメージを具体的に持つための行動を紹介していただきましょう。

 

「イメージといってもなかなかリアルに考えるのは難しいですよね。百聞は一見にしかず、で『サバイバルデー』を設けてみたり、『地域の防災訓練』に参加してぜひ体験してみましょう。

休日を利用してサバイバルデーとして、半日から1日、ブレーカーを落として家の中で過ごしてみるのはとても良い経験になります。そうすることで、何が本当に必要かが見えてきます。サバイバルデーには備蓄品の食材や缶詰を実際に食べてみるのもおすすめです。発災後の繊細な精神状態のときに、食べたことのない味を食べるのは、けっこうつらいもの。楽しくサバイバルの練習を行うことで、その味を楽しい思い出と結びつけることができます。備蓄品に慣れるという訓練も、必要なことなのです。

一人暮らしの場合は、災害時に自分一人で行動しなくてはならないことが、大きなリスクとなります。日頃から近所の人と挨拶するなどして、顔見知りになっておくことも大切です。

そして、国土交通省が運営する『ハザードマップポータルサイト』をぜひ確認してみてください。お住まいの地域を検索することで、そのエリアの災害リスクを知ることができます。印刷をして防災グッズに入れておくことをおすすめします」

 

普段から使っているお気に入りの食品をいつもより少し多めに買い足しておくことで立派なローリングストックとなります。そして、本当に必要なものが何かと、イメージを膨らませることが大切。いざというとき、自分の家が避難場所になるよう、日常的に備えていきましょう。

 

プロフィール

防災士・整理収納アドバイザー / 丸 マイ

防災士、整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、クリンネスト(お掃除) 1級。片づけが苦手な方やもっと片づけのスキルをアップしたい方に向けて、整理収納アドバイザー2級認定講座、片づけサービスを行う。日々忙しい方々の休日が、家事や買い物など平日の準備で終わらないために、効率の良い家事の動線と動作を考えた『片づけ』を提案している。夫、大学生、中学生のお子さんの4人家族。
HP


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

危機管理は正しい情報収集から!「台風」に備えて入手すべき情報とは?

毎年夏になると、猛威をふるう台風。年々威力を増しており、人的・物的被害を及ぼすことも増えています。いざ接近したとき、どういう行動を取るべきなのか、平常時から把握しておきましょう。今回は、普段からそして台風上陸時に、それぞれチェックすべき情報やサービス、連絡手段などを、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに教えていただきました。

 

普段からしておくべきことは?
「ハザードマップ」で危険度と避難経路をチェック!

まずは、自分の住む場所にはどういった危険が潜んでいるのかを把握するために、ハザードマップを確認することが大切です。

 

「ハザードマップとは、その地域にある災害のリスクの有無や想定される被害の大小を示した被害予想図のこと。台風や地震、洪水、高潮、土砂災害、火山など、災害別に用意されています。

ハザードマップではまず、災害の種類によって、どのような場所にどんな指定避難場所があるのか、避難場所への避難経路を確認することが大切です。避難場所に指定されていた場所が、別の災害時には危険になる場合も。地震や土砂崩れの場合はこの避難場所へ、でも、浸水時にはこの場所は危険になる、といった具合です。また、災害時には通行規制の入る可能性が高いルートについても、ハザードマップには記されています。台風によって家屋が倒壊した、床上浸水をしたなどというときに、どの経路でどこへ避難をすればいいかを想定しながら、台風に関するハザードマップに沿って実際に歩いておきましょう

ハザードマップは、一般的に市役所や区役所に置いてあったり、自治体のホームページからプリントアウトができたりします。自治体でハザードマップを発行していない場合は、国土交通省が公開している『ハザードマップポータルサイト』から入手できます」(災害機器管理アドバイザー・和田隆昌さん、以下同)

国土交通省「ハザードマップポータルサイト」https://disaportal.gsi.go.jp

 

ニュースでは何をチェックする?
台風の進路と大きさを確認すること

画像:国土交通省気象庁ホームページより

 

台風が発生した際、こまめにチェックしたいのはその進路予想です。

 

「気象庁では、台風の実況を3時間ごとに発表しています。その内容は、台風の中心位置、進行方向と速度、中心気圧、10分間平均の最大風速、最大瞬間風速、暴風域、強風域です。地震と違って、台風は事前に予想して備えることができるので、台風の状態や進路はこまめにチェックしておきましょう

このとき、台風の中心から見て、自宅や今いる場所が左側なのか右側なのかによって、風力も雨量が大きく変わってきます。ニュースを確認するときには、『台風の中心から見て東側の地域は注意してください』など、台風の回転方向と進行方向に関する情報にも注目して、確認をするようにしてください」

 

普段から使い慣れておきたい、
台風情報に役立つおすすめ無料防災アプリ4

最新の台風情報にリスクのプッシュ通知、欲しい情報へのアクセスなどはアプリを使うのが便利です。ここでは、台風情報をキャッチするのに便利なおすすめアプリを4つピックアップしました。

 

・知りたい地域情報をプッシュ通知でお知らせ

Yahoo!防災速報

「防災用のアプリをなにか入れておきたいという場合は、こちらがよいと思います。4000万ダウンロードされている人気のアプリで、現在地ほか、自宅や職場、実家など、国内3地点まで設置が可能。登録した地域の災害発生情報をプッシュ通知で知らせてくれます。災害状況をユーザー同士で共有できるので、どんな災害がどこまで迫っているのかをリアルタイムで把握できるのも便利です」

 

・全国に支局を持つNHKだからこその情報網

NHK ニュース・防災アプリ

「マップ機能では雨雲の状況のほか、河川の氾濫、河川のカメラ画像などを確認できます。洪水や土砂災害のハザードマップも掲載されているので、地域の災害リスク対策をする際にも便利。最大3地点まで地域指定登録ができるので、実家や職場の気象・災害情報や避難情報についてもいち早くチェックできます」

 

・台風の動きを詳しく確認するなら!

ウェザーニュース

「気象予報のプロ集団が24時間体制で気象情報をチェック、更新しているところが人気です。AIを活用した高解像度な雨雲レーダーや、予報精度は90%以上というのが他の情報との差だといえます。月額360円の有料版になると、異なる3つの台風予測を比較したものをチェックできるので、より備えがしやすくなります」

 

・余計なものがないシンプルさが魅力!

tenki.jp

「日本気象協会が発表している天気に関する大元の情報が手に入ります。天気、気温、降水確率、湿度、降水量、風向きや風速について、1時間ごとの変化が把握できます。津波情報、警報注意報、台風情報などがまとまって表示されるので、欲しい情報が見つけやすい。台風の動きや大きさなどの正確な情報をチェックしたいときは、このアプリが使いやすいでしょう」

 

おさえておくべき通信手段は
「171」と「ファイブゼロジャパン」

今や誰もがスマホを持っているので、災害時にもすぐに連絡がつくと思いがち。

 

「もちろん、連絡がつく場合もありますが、アクセスが一気に集中する可能性や、通信網が被害に遭うことも想定されるので、災害用伝言ダイヤル(171)の存在と使い方は把握しておきましょう」

 

災害用伝言ダイヤル(171)〜伝言の録音方法〜

1)「171(イナイ)」に電話をかける。
2)ガイダンスに従って、録音の「1」を入力。
3)電話番号を市外局番から入力する。携帯番号でも可。
4)数字の「1」を入力。
5)「避難所の○○にいます」などとメッセージを録音して、「9」を押す。

 

身内など、特定の人以外に伝言を聞かれたくない場合は、(2)の工程で暗証番号を利用する録音の「3」を入力する。ただし、暗証番号は事前に決めておき、家族で共有することを忘れずに。

 

災害用伝言ダイヤル(171)〜伝言の再生方法〜

1)「171(イナイ)」に電話をかける。
2)ガイダンスに従って、再生の「2」を入力。
3)登録している電話番号を市外局番から入力する。携帯番号でも可。
4)数字の「1」を入力。
5)「避難所の○○にいます」のメッセージを確認できる。

 

「また、災害時に無料開放される公衆無線LANサービス「00000JAPAN」を選択すれば、パスワードの入力なしでフリーWi-Fiにつながります。これを使えば、普段通りにLINEやメッセンジャーで、家族との安否確認が可能になります。ただし、多くの人のアクセスが集中するので、安否確認や避難所の情報収集など、必要最低限の内容での利用にとどめ、緊急でないことや動画視聴などの使用は控えましょう」

 

台風や地震などの防災を考えるときに、どのように避難するべきなのかを把握しておくことが大切だという和田さん。そのためには、自分の住む場所のハザードマップを手に入れて、日ごろから確認しておくべきだそう。防災に役立つ無料アプリもたくさんあるので、いろいろと触れてみて、自分に合ったものをスマホに入れておくことも、情報迷子にならない秘訣です。

 

【プロフィール】

防災士・災害危機管理アドバイザー / 和田隆昌

元アウトドア雑誌の編集長。豊富な知識を活かした災害リスクの専門家。災害や危機管理問題に積極的に取り込んでいる。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。屋外でのサバイバル方法やSNSの災害時利用法などリアルな防災対策を行なう。自治体の災害対策マニュアルの作成やセミナーの開催も。主な著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』(ゴマブックス)があり、講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。
HP= http://trend-risk.com

「野遊び×防災」賃貸住宅プロジェクト始動! 「nonoka(野の家)シェアフィールド」

スノーピークは、大東建託との共同プロジェクトとして、自然の中での「野遊び」から生きる知恵を「防災」の力に生かし、地域創生に貢献する共創コミュニティをプロデュースするBOUSAI賃貸住宅「nonoka(野の家)シェアフィールド」を始動します。

 

同プロジェクトは、「防災に強い賃貸住宅」を目指す大東建託と、「野遊びができる家。」を提案するスノーピークが、「防災」という概念を、「野遊び」という、より身近に、より日常な文化にすることを目標としており、リアルなコミュニケーションが生まれるコミュニティを創出する場として、新しい体験価値の提供を目指しています。

 

BOUSAI賃貸住宅 nonoka(野の家)シェアフィールドの「野の家」には、自然の中で遊び、生きる知恵を身に付けながらワクワク暮らす賃貸住宅という意味が込められています。

 

外と内の境界線をあいまいにしシームレスにすることで、家にいながらも自然が感じられる賃貸住宅を中心に、住民同士のコミュニケーションを育む焚き火ラウンジ、住民以外も利用できる住箱などのゲストハウス、防災グッズやアウトドアグッズの販売を行うショップの設置なども予定。住民向けの、野遊びを通じた防災訓練の実施なども行う予定です。

買い置きは管理しやすく見栄えよく! 食材も防災用の備蓄品も無駄にしない収納術

共働きで冷凍食品を週末にまとめ買いする家庭が増えている近年。2022年に入ってからは相次ぐ値上げや、さらに防災の観点からも、食品や日用品をストックすることが多くなっています。とはいえ、節約や安心のために買ったものも、消費期限内に使いきらなければかえって無駄になってしまいます。

 

ストックを生かすも殺すも収納次第。管理しやすく、かつ見た目もよく、と両立させるにはどうしたらいいのか、整理収納アドバイザーの佐々木奈美さんに教えていただきました。

 

冷凍庫のストック食材は“縦置き”で場所を固定化

まずは、日常的な食品や食材から。佐々木さんは、冷蔵庫や食品棚にあるストック食材は、基本的に物の量と種類を決めているといいます。

 

「冷凍庫の中はストックしたい食材のサイズに合う無印良品の整理ボックスで仕切り、冷凍うどん、カットピザ、ごはん、そのほかのおかずなどの収納場所を決めています。すべてサッと1アクションで取り出せるような縦収納にし、在庫が少なくなってきたら同じものを買い足して後ろに追加する。この流れを作っておけば、買う食材に悩むことはありませんし、常に在庫も把握できます。古い物から順に消費していくので、ムダが出ることもありません」(整理収納アドバイザー・佐々木奈美さん、以下同)

 

常温のストック食材はスーパーの陳列棚を参考に

常温の食材の収納には、スーパーの陳列棚を参考にするのがコツだそう。

 

「スーパーの棚を見ると、常温食材は立てて面出しして、消費期限の早いものを手前に置いてありますよね。あの状態をなるべく自宅でも再現できるように意識しています。食品は丸い箱よりも四角い箱の方が陳列しやすいですね。無印良品のファイルボックスのようなものや、四角い箱が収まりやすい収納BOXを用意しましょう。このとき、収納アイテムはなるべく3つ以上、同じものを並べて面ができるようにします。こうすることでスッキリとした空間になります」

 

軽くてかさばるものは籠に入れて上段へ収納

インスタントラーメンやお菓子など、かさばるものは籠に入れて高い場所に配置

 

「いざというときに便利なインスタントラーメンやインスタント味噌汁、大袋のお菓子などはキッチン上の籠に入れています。こうしておけば、空間が有効に使えるし、見た目もおしゃれな雰囲気になるので気に入っています」

 

続いて、防災の観点からも、ストックの収納術を教えていただきました。

 

何をどれだけストックする?
防災のための“ローリングストック”

ローリングストックとは、あらかじめやや多めに買っておき、使った分だけ買い足していくストック方法をいいます。食品や日用品のローリングストックをする中で欠かせないのが、災害時の活用。佐々木さんは、非常時に備えて、どのようなものをどこに保管しているのでしょうか?

 

「冷凍庫の中や食品棚にある常備品のストックは、置き場所に収まる量に合わせて買い足すようにしていますが、防災用のアイテムは逆の流れで考えています。まずは、どんな災害が予想され、どう逃げるのか、避難したときにどんなものが必要になるのかを洗い出します。

わたしが住んでいる地域は地震よりも豪雨の被害が起きやすいので、豪雨で床上浸水をしたときに2階へ避難したことを想定した備えをしています。川や海の近くに住んでいるのか、山の近くに住んでいるのか、住宅密集地に住んでいるのか、一軒家かマンションか、など、ご自宅の状況に合わせて、地震や台風などが起きたときに、どんな被害が予想され、どう避難していくのか。自宅で待機するならば、どんな備えがあるといいのかを考えてみるといいと思います」

 

重たい水は、頑丈なBOXに縦収納

災害時に欠かせないものといえば、水。佐々木さんの自宅では、2L容器の水9本がすっぽり縦に収まる無印良品のポリプロピレン頑丈収納BOXを愛用しています。

 

「2Lの水は重たいので、上に引き出せる形で収納できると取り出しやすくて便利です。わが家は豪雨の被害に遭ったら2階へ避難するという経路ができているので、このBOXは2階で保管しています。また、消費期限を収納BOXの表面に記入して、いつでも目に入るようにしています。こうすることで、水の消費期限を常に把握できている状態になるので、期限が近づいたら使うようにしています」

 

飲料水の一部は、
普段使いをしながらローリングストック

500mlのペットボトル飲料も玄関の横にストックしているそう。

 

「子どもたちがスポーツをしているのですが、自分の水筒だけでは足りなくなりそうなとき、ここから500mlのペットボトルを取って出かけられるようにしています。手前から取り出すようにして、買い足したものは奥に追加。こうすることで、防災時にはBOXごと2階へ持っていけるし、車に積み込むのも簡単。いざというときに備えつつも、日常使いでも重宝しています」

 

キャンプアイテムも災害時に活用

ガスや電気が止まってしまったときを想定してストックするレトルト食材や缶詰は、キッチンの棚には入れず、キャンプ用のクーラーBOXで保管しています。

 

「普段はほとんど食べることはなく、防災用にストックしておきたい保存食は、ここに入れて収納しています。カセットコンロやガスボンベ、鍋ややかん、簡単な調理道具もまとめて収納しておくことで、キャンプのときはこのまま持っていけるし、2階へ避難するときも車で避難するときも、持ち運びができて便利です。キャンプ用のアイテムは防災対策としても使えるので、どちらでも活用できるような状態にしておくと安心できます」

 

災害時を想定して、
タオルとトイレットペーパーは数カ所にストック

タオルやトイレットペーパーは2階にもストック。「豪雨の災害が多い我が家の場合は、2階に避難する段取りのイメージを家族で共有しています。被災時にどこで待機するのかを考えたとき、タオルやトイレットペーパー、除菌シートなどはまとめてあるといいと感じたので、収納BOXに入れて災害対策としてストックしています」

 

「また、防災用のリュックは、子どもたちが昔使っていた古くなったものやママバッグとして使っていたものを防災用に。リュックの横には着替えを数枚備えています。おそらく逃げるときは雨が降っているので、着替えが濡れないように衣類はチャック付きのビニール袋に入れています」

 

専用の防災グッズでなくてもOK!
なるべくあるもので備える

防災リュックに入れる物は、普段使いのもので揃えることでコストをカット。

 

「市販の防災リュックの中身を参考にしながら必要なものを備えていますが、100円ショップで買えるポーチやなるべく家にあるものを集めています。子どもたちにも自分で防災用のリュックにグッズを入れさせていて、ストック食材も含めて、3月11日と豪雨被害の増える前の5月末の2回、みんなで中身の点検をしています。古くなったものは普段使いに回して、新しいものに入れ替えるようにしています。年に2回、日程を決めて見直すことで、ムダにすることなくアップデートができていますね」

 

 

普段使いの食材は、キッチン収納スペース内の居場所を決めて、同じものを買い足すことで流れをキープ。防災グッズは、実際にどんな災害が起きやすくて、どう避難するのかをイメージして必要な量を決める。整理収納の観点と住む地域で想定される災害への対策を合わせて考えている佐々木さんのストック収納法。考え方や具体的なノウハウを参考にしたいですね。

 

【プロフィール】

整理収納アドバイザー / 佐々木奈美

整理収納アドバイザー、Life customize主宰。8年のアパレル勤務を経て独立。「家事は肩の力を抜いて、ラクをしながら丁寧に暮らしたい」この思いを大切に、インテリアを収納でカスタマイズしながら、時短家事、家事効率化を暮らしに導入。住まいが整うと思考もクリアになり、メンタルにも好影響があることを実感し、お客様にも感じてもらえるように活動をしている。夫と男の子3人と5人暮らし。
HP https://www.life-customize.com

DAISOだけで防災バッグが完成! 100円から始める「防災グッズ9選」をプロが伝授

DAISOは1972年に広島で産声を上げてから今年で50周年を迎え、いまや国内外で店舗を展開。ここでは、地震学者としての知見を生かし防災教育に取り組む大木聖子先生に、防災バッグのいろはを教えてもらった。自分や家族の命を守るため、DAISOのアイテムを駆使して、いつ来るかわからない災害に備えよう。

※こちらは「GetNavi」 2022年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します

地震学者

大木聖子先生

慶應義塾大学准教授。災害発生時を想像して書く「防災小説」など、“自分ごと”の防災意識を高める活動に注力。

防災バッグ三箇条

一、すぐに持ち出せる形で準備しておく

二、耐震性があるなら在宅避難が望ましい

三、LEDライトと笛は常に持ち歩く

 

波や大雨での浸水域に入っている場合や火災が発生した場合など、自宅を離れて避難しなければならないときにすぐに持ち出せるような準備が必要です。一方、自宅に耐震性があって浸水域でない場合は、避難所での感染症のリスクを抑えるためにも、在宅避難が望ましいでしょう。避難所・在宅避難いずれにせよ、「電気や水道が使えない」「不足のものを買い足すことができない」という状況は同じ。“キャンプで山奥に数日間籠もる”という想像を膨らませて準備することが重要です。

 

今回紹介する商品以外では、水・食料は十分な量の確保を。給水ステーションに水を汲みに行くときには、給水タンクも必要になります。また、LEDライトや笛は、キーホルダーにつけて日常的に携帯しましょう。ライトは水を入れたペットボトルと併せれば、乱反射で明るいランタンに早変わりです。

 

防災グッズ9選+αを紹介!

 

【その1】天然由来の綿100%で吸水性と肌触りに優れる

フェイスタオル(グレー)

110円

サイズ約W34×H82cmのフェイスタオル。綿100%で吸水性に優れ、手触りも柔らか。写真のグレーのほか、ホワイトやネイビー、ベージュなど普段使いしやすいカラバリを豊富に用意。

 

【CHECK】自宅で普段使っているモノでOK

「タオルは、自宅で普段使っているもので構いません。身体を拭く以外にも、敷物や風呂敷、包帯など様々な用途に活用できます」(大木先生)

 

【その2】ノンアルコールなので口腔やデリケートな肌にも使える

やさしいノンアルコールウエットティッシュ

110円

約W18×H15cmのシートを70枚封入。ノンアルコール・無香料なので、デリケートな肌でも安心して使える。メッシュタイプでしっかりとした厚めのシートは引っ張っても破れにくい。

 

【CHECK】水道が使えない状況で清拭に使える

「水が使えなくなるのでウエットティッシュは必須。感染症対策としての消毒を考慮すると、アルコール含有のモノも選択肢に」(大木先生)

 

【その3】3層構造のフィルターを備え飛沫感染を予防

不織布マスク(ふつうサイズ、30枚)

110円

3層フィルター構造を採用し、飛沫をおよそ99%カット。「小さめサイズ」「子供用」もラインナップする。同社創業50周年の増量キャンペーン対象商品なのでお見逃しなく! (詳細は公式ホームページを参照)

 

【CHECK】避難所では一層の感染症対策が不可欠

「世界的にマスクが不可欠な時代。衛生環境が整っているとは限らない状況での避難生活が長期化する可能性も想定しましょう」(大木先生)

 

【その4】使い方もわかりやすく すぐに使えて後処理簡単

緊急簡易トイレ 1回分

110円

汚物袋、凝固剤、処理袋の3点セット。便器と便座の間に汚物袋の口を挟み込んで固定すればすぐに使え、凝固剤で後処理もしやすい。洋式トイレがない場合はバケツなどでも代用可能。

 

【CHECK】最低でも3日ぶんほどは用意する

「被災時は下水も流せなくなります。1回ぶんだけではどう考えても足りないので、最低3日ぶんほどは用意しておきましょう」(大木先生)

 

【その5】広げて全身を覆えば過酷な寒さを軽減する

緊急簡易ブランケット

110円

広げると約W140×H210cmになる簡易ブランケット。軽量で保温効果を発揮するアルミ蒸着PETフィルムを採用している。体を覆えば厳しい環境下でも風雨をしのぎながら体温を保てる。

 

【CHECK】携帯性に優れ防寒性能を発揮する

「被災時は暖房設備や温かい寝具を利用できるとは限りません。本品はコンパクトで持ち運びやすく、保温性に優れています」(大木先生)

 

【その6】地震発生後などに有用な防災グッズ3点セット

軍手・ロープ・笛3点セット

110円

災害時に有効な軍手(1双)、ロープ、ホイッスルを同梱。瓦礫が散乱していても、軍手があれば心強い。ロープは荷物を縛ったり、柱に固定したりするのに必要十分な全長3mだ。

 

【CHECK】ものが散乱するなか軍手でケガを防げる

「家の中にものが散乱するので軍手は不可欠。ガラスの破片などを通さない、素材が固くてしっかりしたものがベストです」(大木先生)

 

【その7】2段階調光可能な置いて使えるライト

2WAYランタン

110円

スイッチ切り替え式のLEDライト。前面のランタンモード(COB/100ルーメン)と、側面の懐中電灯モード(1LED/70ルーメン)の2Wayで使い分けできる。単3形乾電池を3本使用。

 

【CHECK】ハンズフリーな置き型ライトが便利

「置いたまま使えるライトや装着できるヘッドライトがオススメ。暗所での作業時に手が塞がらないライトを選びましょう」(大木先生)

 

【その8】キーホルダーで携行しやすい非常用ホイッスル

非常用呼子笛 IDカード付

110円

携行に便利なキーリングを備えるホイッスル。付属のIDカードに身元や緊急連絡先を記入して、丸めてホイッスル内部に収納できる。紐付きなので、発災時には首掛けで使用できるのも便利。

 

【CHECK】声が届きにくい状況でも情報伝達可能

「発災後はヘリコプターの音や倒壊音などで、声による情報伝達が困難。救助を求めるときや、仲間を呼ぶときに活用しましょう」(大木先生)

 

【その9】必要十分な容量を備えるスウェット素材のリュック

リュック(スウェット生地)

550円

2ポケット搭載のリュック。本体サイズ約W27×H35×D8cmで、今回紹介する商品をすべて収納してもまだペットボトルなどを入れられる。まずは家族の人数ぶん揃えて備えを進めよう。

 

【CHECK】両手が塞がらないリュックを準備

「避難するときに両手が塞がらないリュックがオススメ。押入れの奥などではなく、すぐに持ち出せるような場所に備えましょう」(大木先生)

 

【小さい子どもがいる人はコレもオススメ】

2WAYレインコート

550円

ダッカーを装備し、乳幼児を抱っこしたまま着られるレインコート。妊娠期間にもゆったりと着られる設計で、産前産後のママにうれしい。畳んで入れられる収納袋付属で携帯に便利。

 

【CHECK】雨対策はもちろん授乳の際にも重宝する

「雨対策には携帯しやすいレインコートが便利。避難先での着替えや、乳児がいる場合は授乳の場面でも重宝します」(大木先生)

 

●店舗によって品揃えが異なり、在庫がない場合がある。掲載商品については予告なく廃盤、仕様変更等が発生する場合があるので予めご了承ください

いつどこで起こるかわからない災害に備える! いざというときに役立つ“乾電池式”モバイルバッテリー「電池でGO!!」

最近、体に感じる地震の頻度が、増えたような……?

 

大きな地震は津波の不安だけでなく、停電の発生も恐ろしいですよね。また、地震による停電のほか、台風や突発的雷雨による停電も、近年では増えている印象です。災害はいつ起こるのかわかりません。そこで……

 

非常用持ち出し袋の中にひとつ入れておきたいのが、オウルテックの「電池交換でくり返し使える! 乾電池式 モバイルバッテリー 電池でGO!!(OWL-DB8U1-WH)」です。

 

某“鉄道シミュレーションゲーム”のような名前にツッコミを入れたくなりますが、同製品は、単3形アルカリ乾電池があれば繰り返し使うことができる、乾電池式の充電器です。

 

いざというときのためにローリングストックしている人も多いであろう乾電池を8本、もしくは4本使用することで、一般的なモバイルバッテリーのように利用できます。USB Type-Aを1ポート搭載しています。

 

「既存品で乾電池4本タイプがありますが、スマートフォンのバッテリーの大容量化に伴い、乾電池4本では充電容量が追い付かなくなってきました。そこで、昨今のスマートフォンバッテリーの容量に合わせ、乾電池を8本まで使えるようにしました」(オウルテック担当者)

 

8本使用するとスマートフォンを約1.4回充電できますが、緊急事態で電池を8本も用意できない! というときでも、4本あれば充電ができます。4本使用の場合は、約0.7回スマートフォンを充電可能。少ない本数でも使えるのが嬉しいポイントですね。

 

電池を含まない本体重量は約88gと、一般的なモバイルバッテリーに比べて非常に軽く、非常用持ち出し袋の中に入れっぱなしでも問題ない重さといえるでしょう。旅先でのアクシデントやトラブルに備え、旅行用のバッグに入れておくのもアリ。本体にはON/OFFスイッチも付いているので、使わないときはOFFにして電池の消費を抑えることができます。

 

税込価格は1980円で、乾電池や充電用のUSBケーブルは別売りです。「モバイルバッテリーは劣化や自然放電が気になる……」という人にも断然オススメ。「備え有れば患い無し」というわけで、ひとつ持っていると、ありとあらゆる非常事態に役に立つアイテムといえます!

発売から45年で全国区になった万能ポリ袋「アイラップ」で作るごちそう&非常食レシピ

三角形の紙パッケージが目印の、高密度ポリエチレン製のマチ付きポリ袋「アイラップ」。調理器具を汚さず簡単に調理できるアイテムとして、昨今大きな注目を集めています。洗い物が少なくなったり同時調理ができたり、メリットはさまざま。今回は料理家のmakoさんに、アイラップを活用した、時短や防災に役立つレシピを教えていただきました。

 

「アイラップ」とは?

アイラップは、岩谷マテリアルが販売する“ラップのように使える”マチがついたポリ袋。通常のサイズの他にもサイズや用途にさまざまなバリエーションがあり、調理はもちろん調理以外のシーンでも幅広く使われています。

 

近頃急速に話題になっていますが、実はアイラップがリリースされたのは昭和51年(1976年)。なんと40年以上も前に“ティッシュのように箱入りにして、ポリ袋をもっと便利に”という発想から開発された商品なのです。

 

「現在、日本海側を中心とした地域では“ポリ袋=アイラップ”と呼ばれるくらい定着しています。当初は、日本全国のスーパーで販売されていましたが、15年で特許が切れてから類似競合商品が乱立し、販売地域は徐々に縮小するに至りました。しかし、山形県にある小売店のオーナーが気に入って商品を大量に陳列したことから、山形を起点に日本海側で定着していきました」(岩谷マテリアル株式会社・アイラップ公式Twitter担当者)

日本海側を中心とした地域から再び全国に広がりはじめたのは、2018年のこと。アイラップの公式Twitterで 「アイラップは全国区商品なのに売り上げの75%は新潟・山形・富山・石川・福井」とつぶやいたところから火がつきました。発売当初からほとんど変わらないレトロでかわいいデザインと、その使い勝手のよさから瞬く間に話題になり、今ではたくさんの人に愛されています。

 

商品ラインナップはさまざま

アイラップは約幅350・高さ210・マチ40mmの通常タイプ以外にも、さまざまなバリエーションがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

1. ポリ袋タイプのアイラップ

アイラップのほかに、ミニタイプの「アイラップミニ」や、エンボス加工されている「アイラップ100」、エンボス加工でミニタイプの「小さなふくろ」があります。調理で使われるだけでなく、保育園では子どもの汚れ物袋として活躍。また、ニオイ漏れが少ないと生ゴミの処理にも役立っています。

 

2. ジッパーつきの保存バッグ

冷蔵・冷凍保存に適しているジッパータイプは、マチなしでダブルジッパーの「アイラップWジッパー」と、マチでスタンド式になり、液体を入れるのに適している「アイラップスライドジッパーNEO」の2種類があります。冷凍庫で保存していたものを、そのまま電子レンジで解凍することができます。

 

3. おにぎりを作るためのラップ

熊本地震の際に食中毒が発生したことを教訓に開発された、ごはんに触れずにおにぎりが作れる清潔的なポケットフィルム。四角いフィルムの二辺が開き、そこからごはんを入れてにぎるだけ。付属のシールで止めて使うので、シールに「シャケ」「梅」などと具材の説明書きをすることも。また、ハンバーガーやイングリッシュマフィン、大福といった汚れやこぼれが気になる食品にも重宝しそうです。冷凍して温め直しも可能(油分には注意が必要です)。

 

4. 調理中の汚れ軽減に持ってこいのシートタイプ

主婦の声から生まれたというアイラップをシートタイプにした商品で、ラップのようにくっつかないのが大きな特徴です。まな板を汚したくないときに敷いたり、洗い物を増やさず置き場所を確保したり、野菜を包んだりサンドイッチをラッピングしたりすることもできます。洗い物を増やしたくないアウトドアで活躍しそうです。

 

低温調理、同時調理、非常食……用途いろいろ!
レシピで知るアイラップの魅力

アイラップは、袋の中に食材を入れて加熱することで低温調理ができたり、お鍋や食器が十分にない災害時の調理に役立ったりと、さまざまな使い方ができます。そこで、次のページからは、アイラップを使ったレシピを3つ紹介しましょう。ポリ袋調理のレシピ本がベストセラーとなっている料理家・makoさんに教えていただきます。

1. 低温調理で作れる「鶏チャーシュー」
2. いつものおかずが手軽になる「トマトハンバーグ」
3. 非常時に作りやすい「瓶詰めメンマのおこわ」

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

1.【アイラップで低温調理】
しっとり仕上がる! 鶏胸肉を使った「鶏チャーシュー」

一度は作ってみたい、鶏胸肉を使ったヘルシーなチャーシュー。低温調理器がなくても、アイラップに入れて炊飯器で保温することで、鶏胸肉がパサつかず、ジューシーに仕上がります。このままメインのおかずにするのはもちろん、丼にしたり、パンに挟んでサンドイッチにしたり、これからの季節は素麺や冷やし中華のトッピングにしてもいいですね。「甘みと旨みのあるオイスターソースを使うことで、調味料も少なく済むんですよ」(料理家・makoさん、以下同)

 

【材料(作りやすい分量)】

鶏胸肉……1枚(250g程度)
しょうゆ……大さじ1
オイスターソース……大さじ1
おろししょうが……3cm

 

【作り方】

1. 鶏胸肉の両面をフォークで刺す

「穴を開けることで味が染み込みやすくなります。もしもお肉の厚みに偏りがあったら、厚い部分は少し切り込みを入れて開き、平らにならしましょう」

 

2. すべての材料をアイラップに入れて揉み込む

「お肉の両面にしっかり味が馴染むように揉みます。全体的に色づけば大丈夫」

 

3. アイラップの空気を抜いて縛る

「なるべく空気をしっかり抜いて真空状態に近づけると、味が染み込みやすいですよ。また、加熱しているうちに膨張してしまう可能性があるので、お肉ぴったりのところで縛らず、余裕を持たせて縛ります」

 

4. フライパンまたは鍋に水を入れ、耐熱皿を敷く

「アイラップがしっかり浸かる大きさで、深さのあるフライパンか鍋で行いましょう。フライパンの底は高温になるので、必ず耐熱皿を敷いて調理してください」

 

5. 水が沸騰したら鶏胸肉をアイラップごと入れて5分茹でる

「アイラップがかぶるくらいのお湯の量で煮込みます。空気が抜け切れていないと浮いてきて表面が出てしまうので、その場合は途中でひっくり返してくださいね」

 

6. お湯ごと炊飯器に移して、1時間保温する

「このまま1時間放置しておけば、おいしい鶏チャーシューができあがります! 保温スイッチを押しておけば、買い物に出たり他のおかずを作ったりできるので、便利ですよ」

 

完成

おつゆは別のお皿に取っておき、いただくときにかけましょう。「切り分けてみて赤い部分があったら、もう一度炊飯器に戻して10分ほど保温時間を伸ばします。お肉に厚みがあったり、重なっていたりすると中心に火が通りにくくなってしまうので、たくさん作りたいときにも1袋に1枚の胸肉を入れて加熱してください」

 

続いて、アイラップで手を汚さずにお肉をこねられる「トマトハンバーグ」のレシピです。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

2.【アイラップで手を汚さずごちそう作り】
ふっくらジューシー!「トマトソースのふんわりハンバーグ」

いつものおかずも、アイラップを使うことで、もっと効率よく手軽にできたらうれしいですよね。2品目は、誰もが大好きなハンバーグを作っていただきました。アイラップに材料を入れてこね、そのまま加熱するので、ボウルや手が油でベタベタ……ということもなく、洗い物が少なくて済みます。「加熱する前の状態のものをそのまま冷凍してしまえば、食べたいときにイチから作らなくて済みますよ」(料理家・makoさん、以下同)

 

【材料(2人前)】

<ハンバーグ>
あいびき肉……200g
卵……1個パン粉……大さじ4
塩こしょう……少々

<トマトソース>
トマトの水煮缶……200g
顆粒コンソメ……大さじ1/2
中濃ソース……大さじ1

 

【作り方】

1. ハンバーグの材料をアイラップに入れてよくこねる

「肉の粒がなくなり、粘ってくるとだんだんまとまりが出てくるので、そこまでこねてください。よく混ざったら、アイラップに空気を入れて膨らませてしっかり口を持ち、お肉を中で振ると、袋にくっついたお肉も剥がれてくれますよ」

 

2. 肉を半分に分けて形を整える

「厚さを均等にして広げたら、半分にしてハンバーグの形に整えていきます。ここまでの工程を袋の中でやってしまえるだけでも、すごく便利ですよね」

 

3. トマトソースの材料を合わせておいて入れる

「トマトソースの材料は先に混ぜておいて、アイラップに入れます。顆粒コンソメが溶けるように混ぜ合わせておくのですが、ケチャップやソースならそのまま入れてもかまいません」

 

4. 深めのフライパンか鍋でお湯を沸騰させたら、30分茹でる

「1品目と同じようにアイラップを真空に近い状態にして縛ったら、お湯を沸かして耐熱皿を敷いたフライパンで茹でていきます。次に紹介するおこわも一緒に入れたら、同時調理ができて時短になりますよ」

 

完成

トマトソースの中でしっとり煮込まれたハンバーグは、ふっくら柔らかい食感です。「今回は玉ねぎを入れず、より時短で手軽にできるレシピにしました。焼いて仕上げるハンバーグよりも水分が逃げにくくジューシーで、小さなお子さんでも食べやすいと思いますよ」

 

3つ目は、“もしもの時”の非常食としても覚えておきたい、「瓶詰めメンマのおこわ」です。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

3. 【アイラップで“もしもの時”の非常食】
味付けしっかりで満足度が高い!「瓶詰めメンマのおこわ」

アイラップ調理のメリットは、“もしものとき”にも役立つということ。炊飯器がなくても、ごはんを炊けるんです。今回は、瓶詰めのメンマでおいしいおこわを炊いてみました。「非常食レシピなので、いろいろなおかずがなくてもこれだけで満足感を得られるよう、味を濃い目にしてあります。他におかずを食べる献立にするときはおしょうゆを半量にしてくださいね」(料理家・makoさん、以下同)

 

【材料(ごはん1合分)】

メンマ 50g
米……1/2合
もち米……1/2合
水……180ml(お米のみの場合は200ml)
しょうゆ……大さじ1
みりん……大さじ1/2
オイスターソース……大さじ1/2
ごま油……大さじ1/2

 

作り方】

1. 研いだ米ともち米、水をアイラップに入れる

「時間があれば、水を入れたまま1時間ほど浸水させておきましょう」

 

2. アイラップにすべての材料を入れて、空気を抜いて縛る

「材料を入れたら軽く揉んで調味料を混ぜます。アイラップを縛るときは、なるべくお米が平らになるようにならしておきましょう」

 

3. フライパンでお湯を沸騰させたら、30分茹でる

「先ほどのハンバーグの横におこわの袋も入れます。このとき鍋肌に袋がくっついてしまうと、そこが溶けてしまう危険があるので、お皿にきちんと乗せ、縛り口が鍋肌につかないように加熱します。また、こちらも1品目と同様、空気が抜けていないと浮いてきてしまうので、その場合は途中で裏返しましょう」

 

完成

できあがったおこわは、もちもちで冷めてもおいしい一品になりました。お弁当やおにぎりにしてもいいですよね。「ガスコンロの火加減によっても時間が変わってくるので、お米の芯があるようだったら、もう一度縛って5分加熱しましょう。防災対策として瓶詰めや缶詰などの買い置きがあると、ごはんだけでなく少し目先の変わった味のものが作れますよ」

 

慌ただしい毎日の中で料理の時間が取れないときや、調理器具が満足に使えない防災レシピとしても、一度は使って覚えておきたいもの。その便利さに手放せなくなりそうです。

 

【プロフィール】

アイデア料理研究家 / mako

フードコーディネーター・元保育園栄養士・野菜ソムリエ。「家政婦マコ」としてヒルナンデスにも出演。ポリ袋を使ったレシピ本『予約の取れない家政婦マコのポリ袋でつくりおき』『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』(ともにワニブックス)が大好評に。『世界一早い!家政婦makoのずぼら1分ごはん』(マガジンハウス)など、さまざまな時短・簡単調理のレシピアイデアを生んでいる。レシピ本は累計35万部に。
HP http://www.makofoods.com/

 

【防災編】話題のポータブル電源は「一家一台」にあるべき。ママインフルエンサーと考えた「防災活用術」4選

ポータブル電源は大容量のバッテリーを積み、様々な電源プラグを搭載しているデジタル周辺機器です。引き続くキャンプ&車中泊ブームで需要が拡大中。GetNavi webでも人気カテゴリのひとつとなっています。

 

そんな背景のなかでGetNavi webで現在注目しているのが、2021年5月に発売されるオウルテックの「PORTABLE POWER STATION」。短期連載の第3回となる今回は、【キャンプ編】【車中泊編】に続いて【防災編】をお届けします。

 

【関連記事】キャンプ編/車中泊編はこちらから

話題の「ポータブル電源」選ぶならオウルテック「PORTABLE POWER STATION」一択! アウトドア通・桐島ローランドと考えた活用術【キャンプ編】

今、ベストバイ・ポータブル電源はオウルテック「PORTABLE POWER STATION」だ! アウトドア通・桐島ローランドと考えた活用術【車中泊編】

 

本稿では防災用途ということもあり、デジタル機器にあまり詳しくない方向けに、本機の製品概要を紹介しながら使いこなし術を解説。家で過ごす時間が増えたいま、在宅中に停電などが起きた際はどのように役立つのかを、ママインフルエンサーを招いてGetNavi webが一緒に考えました。

 

ママインフルエンサー 堀江佑佳さん

旦那さんとお子さんの3人暮らし。インスタグラムのアカウントは@yuka_horie

 

【今回紹介するモデル】

まずは、「PORTABLE POWER STATION」の基本的な性能について紹介していきましょう。同シリーズには2つのモデル「OWL-LPBL112001」と「OWL-LPBL172801」があり、主な違いはバッテリー容量です。たとえばiPhone 12の場合、前者は約21.5回、後者は約33回の充電が可能。容量にともなってサイズや重量も若干異なり、前者は約5kg、後者は6.8kgとなっています。

 

●SPEC(右)●内蔵バッテリー:リチウムイオン電池 3.6V 112000mAh/403.2Wh●充電時間:付属AC充電器=約6時間、付属AC充電器+PD100W充電器=約3時間、120Wソーラーパネル=約8時間●サイズ (本体):約240(W) × 196(D) × 192(H) mm/約5.0kg  ●SPEC(左)●内蔵バッテリー:リチウムイオン電池 3.6V 172800mAh/622Wh●充電時間:付属AC充電器:約9時間、付属AC充電器+PD100W充電器:約5時間、120Wソーラーパネル:約8時間●サイズ (本体):約290(W)×210(D)×205(H)mm/約6.8kg

オウルテック OWL-LPBL112001(右)

合計400Wまでの家電やデジタル製品に給電できるポータブル電源。400Wは一般的にコーヒーメーカーなどが作業時に消費する電力で、小型の家電製品に対応します(消費電力は製品によって異なります)。一般的な家庭用電源であるACコンセント(2つ)のほかに、USB Type-C(PD100W対応/ひとつ)、USB Type-A(3つ)、クルマに搭載されているDCシガーソケット(ひとつ)を搭載しており、様々な端子を差して製品に給電することができます。背面にはLED照明を搭載し、足元や手元を照らすことが可能。

 

本体の充電はDCプラグを使って付属のAC充電器(90W)のほか、USB Type-C(PD100W対応)、別売のソーラーパネル(120W)が使えるなど様々な手段が利用できます。AC充電器(90W)を使った際の充電時間は約6時間、AC充電器(90W)とPD100W対応USB Type-Cを併せて充電したときは約3時間で充電が完了。

 

↑本体正面。上部中央には現在のバッテリー残量がわかるディスプレイを搭載。現在使用している電力も表示されます

■OWL-LPBL112001の購入はこちらから

・オウルテックダイレクト本店
https://direct.owltech.co.jp/shopdetail/000000002057
・amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B093H5PCN5/
・楽天
https://item.rakuten.co.jp/owltech/owl-lpbl112001/
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https://store.shopping.yahoo.co.jp/owltech/owl-lpbl112001.html
・auPAY
https://wowma.jp/item/502056653

 

オウルテック OWL-LPBL172801(左)

112000mAhモデルと同じ出入力ポートやLED照明を搭載しながら、バッテリー容量を1.5倍以上にしたモデル。600W以内の家電やデジタル製品に対応します。AC充電器(90W)を使った際の充電時間は約9時間、AC充電器(90W)とPD100W対応USB Type-Cを併せて充電したときは約5時間で充電が完了。112000mAhモデルと同様、異常を感知した場合には、自動で動作を停止するため、安全面でも安心です。

↑本体正面は112000mAhモデルと同じ構成

 

↑背面にLEDライトを搭載。低/中/高の3段階で明るさを変えられます

■OWL-LPBL172801の購入はコチラから
・オウルテックダイレクト本店
https://direct.owltech.co.jp/shopdetail/000000002058
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https://item.rakuten.co.jp/owltech/owl-lpbl172801/
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https://wowma.jp/item/502057044

 

「PORTABLE POWER STATION」が活躍する4つのシーン

災害となったら「PORTABLE POWER STATION」はどのように活躍してくれるのでしょうか?4つのシーン別に、堀江さんと編集部・山田による対談形式でお伝えします。

【オウルテック「PORTABLE POWER STATION」の使い方をギャラリーで先見せ!(画像をタップすると詳細が表示されます】

 

【その1】1週間以上分のスマホ充電を確保

「モバイルバッテリーより大容量で安心」(堀江)

「ファミリー世帯で重宝する」(山田)

家族や知人とのコミュニケーションはもちろん、情報収集や懐中電灯代わりになるなど生活必需品ともいえるスマートフォン。停電で自宅のコンセントから充電できない場合はモバイルバッテリーが重宝しますが、パワフルな蓄電量でその何倍も充電できるのがポータブル電源です。

山田「スマホの機種にもよりますけど、iPhone 12の場合、112000mAhモデルなら約21.5回、172800mAhモデルなら約33回充電可能。家族3人全員がスマホ持ちという構成でも、1週間はなんとかなりますね」

堀江「一般的なモバイルバッテリーの充電回数は最大5回とか10回ですよね。ポータブル電源をスマホ充電だけに使うということはないと思いますけど、これだけ大容量だと安心です」

山田「複数台を同時に充電できる点も便利です」

堀江「我が家にも小型のポータブル電源があるのですが、シガーソケットが付いているタイプは初めて見ました。我が家では子ども用に使っている家電があるので、複数あると助かります」

山田「お子さん用の家電は、どんなものがありますか?」

堀江「例えば、おしりふきウォーマーです。あとは、赤ちゃん用ミルクを作るときに、温度設定できる電気ケトルなど。停電時の湯沸かしはカセットコンロがメインになると思うので、保温用に使う形になると思います」

山田「コンロの直火やアツアツのヤカンは子どもにとっては危ないので、できればケトルを使いたいですよね。非常時でも子どもにはいつもと同じ環境を構築してあげたいので『PORTABLE POWER STATION』の活躍の場は広いです」

 

【その2】停電時の緊急照明に

「両手が使えるのはありがたい」(堀江)

「子どもが寝るまでのナイトライトに」(山田)

夜に停電となったときに欠かせないのが周囲を照らす明かりです。スマホには懐中電灯のように光る機能もありますが、緊急時のスマホの電力消費は抑えたいところ。「PORTABLE POWER STATION」はLED照明を備えていて、安定的に広範囲を照らしてくれます。懐中電灯を用意することは大前提ですが、ママ目線で本製品があると様々な面でメリットがあるといいます。

堀江「例えばおむつ交換は、赤ちゃんの足を持ちながらお尻をふいて、という作業。片手ではできないのですよね。両手が使えるというのは、かなりうれしいです」

山田「子どもは、暗いところが苦手ですよね。しかも停電時でいつもとまったく違う環境。お子さんが不安にならないよう安眠できるまで照明を点けておく使い方もできます。3段階で明るさも変えられますし」

堀江「私はアウトドア用のLEDランタンをもっていないのですが、『PORTABLE POWER STATION』があれば停電時の明かりはひとまずなんとかなりますね」

山田「もしLEDランタンを使う場合、12Wの明るさなら172800mAhモデルで約41時間も使えます。バッテリー式のランタンであればケーブルレスで使えるので、部屋の高い位置に設置して、部屋全体を照らすことができます。様々な照明インフラを持てる点で『PORTABLE POWER STATION』はオススメですね」

↑足元を照らして安心させてくれたり、避難道具などを探すときに役立ったり。懐中電灯としてスマホを使うと手がふさがってしまいがちですが、固定できる「PORTABLE POWER STATION」は使い勝手も良好です

 

【その3】夏場の停電時の暑さ対策に

「熱中症対策には必須」(堀江)

「子どもはもちろん高齢のご家族がいる家庭でも心強い」(山田)

蒸し暑い日本の夏は、熱中症を防ぐためにも温度調整が大切です。停電の場合、高電力のエアコンを使うのは難しいですが、比較的電力の低い扇風機なら大丈夫。172800mAhモデルの場合、30W扇風機を約16.5時間使えます。

山田「夏場の停電は暑さ対策が要となります」

堀江「エアコンが使えなくても、扇風機の有無で快適さは全然違います。夏の停電時は気力も体力も落ちるでしょうから、扇風機の風でもすごくありがたいはず」

山田「現在の住宅は、密閉性が高いのでどうしても熱がこもりやすくなります」

堀江「熱中症が気になるのは、やっぱり子ども。汗をたくさんかきますし、大人より体力もないですから」

山田「寝ているときとか、すごく汗をかきますよね。首振りやリズム風で涼しくしてあげたいです」

堀江「はい。とにかく子どもにはできるだけ快適に過ごしてほしいので、小さいお子さんがいる家庭にはぜひ『PORTABLE POWER STATION』を、と思います」

山田「子どもだけでなく、高齢のご家族がいる世帯でも重宝します。特に高齢者層は、屋外よりも屋内で熱中症になる傾向がありますから」

 

【その4】持ち運び容易で避難生活にも活用

「持ちやすい取っ手で問題なく動かせる」(堀江)

「しまえる取っ手は収納面でも優秀」(山田)

ポータブル電源は、携帯性の容易さも大切な要素のひとつ。「PORTABLE POWER STATION」には取っ手が付いていて持ち運びがしやすく、112000mAhモデルは約5kg、172800mAhモデルは6.8kgとなっています。堀江さんによると、112000mAhモデルであれば、女性でも持ち運びできますとのこと。

山田「堀江さんのご家庭は現在、夫婦どちらも在宅勤務ですか?」

堀江「はい。いまはふたりとも、基本的に在宅です。ふだんは夫が力仕事をしてくれるのですが、もしいないときに停電となったら、私がポータブル電源を運ぶことになりますね」

山田「『PORTABLE POWER STATION』の重さや取り回しはどうでしたか?」

堀江「大きな問題はないですよ。取っ手が持ちやすい形ですし、両手を使えばなおさらです」

山田「取っ手が本体にしまえて、フラットになるので収納面でも優秀だと思います」

堀江「そうですね。角がとがっていなくて、子どもがぶつかってもケガになりづらいのもうれしいです」

 

↑女性でも取り回しできると言う堀江さん

 

GetNavi web編集部が考える「PORTABLE POWER STATION」の日常活用術

災害時やアウトドア以外の、普段の日常生活でもポータブル電源は大活躍。最後に、「PORTABLE POWER STATION」の、眠らせておくにはもったいない活用術を提案します。

 

【その1】在宅勤務の電源コンセント不足問題を解消

山田「堀江家は在宅勤務だとおっしゃっていましたが、電源コンセントが足りなくなることはありませんか?」

堀江「ありますよ! PC・スマホ周辺機器をつなぐと、コンセントは取り合いになります。ノートPCをつなごうと思ったら、すでに夫のスマホとPCで埋まってるとか」

山田「そんなときは『PORTABLE POWER STATION』の出番です。ポータブル電源は使っていなくても少しずつ放電するので、3か月に1回は充電したほうがいいですから。その意味でも、日常的に使っていくのは効果的な活用方法です」

堀江「なるほど。在宅勤務あるあるですと、夫がWEB会議中のときや、気分転換したいときにはベランダでPCワークをするんですけど、そこでポータブル電源が役立つと思いました」

山田「これからの季節、気持ちいい天気の日によさそうですね」

堀江「肌寒い日でも、ポータブル電源に電気毛布をつなげば使えそうですし、電気毛布は子どもとのピクニックでも重宝しますね」

 

【その2】ホームパーティでの電源コンセント不足問題を解消

山田「もうひとつは、ホームパーティでの電源コンセント不足の解消です。友人がスマホを充電したいというのはよくあるシーンですよね」

堀江「Bluetoothスピーカーを出したら、ふだん使っていなくて電池が切れていたということもありますよね」

山田「はい。友人がモバイルプロジェクターを持ってきたら電池が切れていた、なんてケースも」

堀江「延長コードを出すという方法もありますけど、ポータブル電源のほうが床がごちゃごちゃしなくていいかもしれませんね」

山田「はい。日常的なシーンでもいざというときに役立つので、『PORTABLE POWER STATION』は実にコストパフォーマンスが高いアイテムなんです。もっていて損はありませんよ」

 

4つの停電時と2つの日常的なシーンで、「PORTABLE POWER STATION」の活用法をレポートしました。一家に一台あると便利であることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。本企画では、ガジェットもアウトドアも大好きなフォトグラファー、桐島ローランドさんをゲストに迎えた【アウトドア編】や【車中泊編】もあります。より多彩な使い道を紹介したこちらの記事も、ぜひ参考にしてください。

 

【関連記事】キャンプ編/車中泊編はこちらから

話題の「ポータブル電源」選ぶならオウルテック「PORTABLE POWER STATION」一択! アウトドア通・桐島ローランドと考えた活用術【キャンプ編】

今、ベストバイ・ポータブル電源はオウルテック「PORTABLE POWER STATION」だ! アウトドア通・桐島ローランドと考えた活用術【車中泊編】

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撮影/福永仲秋(ANZ) 取材協力/中山秀明

災害用伝言ダイヤルの使い方って知ってる? 親子でミッションクリアし「防災スキル」を身につける『防災クエスト』

今年は、東日本大震災から丸10年。そのためか、3月に入ってから地震関連の特別番組や特集が例年よりも多かった。

 

けれども、3月11日が過ぎると、その流れはパタリと止まってしまった。あの日あの時起こったことを思い出し、現在の自分の生活を省みること。防災対策が万全かをチェックすること。これらは、3月11日が終わって4月になっても、夏になって秋になっても、常に意識し続けなくてはいけないのではないだろうか。

 

防災を「ゲーム感覚」で楽しみながら学んでみる

みんな頭ではわかっている。防災が必要なことだと。でも、なんとなく億劫に感じたり、怖いイメージがあったり、何から始めたらいいかわからなかったり。

 

現に、今年2月に実施された「有事(災害時)の備えに関するアンケート(auじぶん銀行株式会社調べ)」では、「9割以上の人が災害への備えが必要だと思っている」にもかかわらず、「実際に災害への備えをしている人は約35%」にとどまっている。

 

少し前の私がそうだった。必要に迫られているのになにかにつけて言い訳をし、なぜか「自分だけは大丈夫」「生き延びられる」と根拠のない自信を胸に日々を過ごしていた。でも、それではダメなのだ。この地震大国に住んでいる限り、いつかはものすごい規模の大地震が起こるだろう。

 

そこでお薦めしたいのが、『防災クエスト』(辻 直美・著/小学館・刊)だ。著者の辻さんは、これまでにも防災に関する本を出しており、どれもわかりやすく実践しやすいものばかり。

特に今回は、防災をRPG(ロールプレイングゲーム)に見立てた漫画で展開されており、辻さんが課すミッションをひとつずつクリアしている仕掛けになっている。子どもでも読みやすい構成が特徴だ。

 

防災ミッションは、全部で13。防災とは何かを知ることから始まり、防災リュックの準備や家の中の防災対策、防災クッキングにチャレンジと少しずつステップアップしていく。そして最終ミッションは、防災キャンプをおこなってそれまでのスキルを実践するというもの。

 

どのミッションも、構えないとできないような難しいものではなく、ゲーム感覚で気軽に挑戦できるのが良い。これなら、週末に家族で楽しみながら実践できる。

 

災害用伝言ダイヤルを子どもと試してみた。

我が家でも、ミッションの中のひとつ「災害用伝言ダイヤルを使ってみよう」にチャレンジしてみた。

 

災害用伝言ダイヤルとは、災害発生直後の電話がつながりにくいとき、安否確認のために利用できる音声の伝言板のこと。自宅電話や携帯電話はもちろん、公衆電話からもかけられる。私自身、その存在は知っていたが実際に使ってみたことがなかった。そもそも、番号も怪しかったくらいだ(正解は171)。

 

毎月1日と15日に体験利用できるというので早速やってみたのだが、意外な問題点が次々と浮き彫りになる事態に!

 

171をダイヤルするとアナウンスが流れるので、特に使い方に困るわけではないが、録音にも再生にも共通の電話番号入力が必要だ。これを誰の携帯番号にするのか、家族で共有しておかねばいけない。また、いつ災害が起こるかわからないので、夫と私が使えるだけではいけない。子どもたちにこそ、電話番号と使い方を覚えておいてもらわなくては。

 

我が家は子どもたちに携帯電話を持たせておらず、家電(いえでん)もない。ということは、もしも子どもだけのときに被災したら、公衆電話を利用することになる。が、3人の子どもたちに聞くと、公衆電話自体がピンとこない様子。「緑色の電話でね」と説明するも、私自身、近所のどこに公衆電話があったかうろ覚えだ。災害用伝言ダイヤルはお金を入れなくても使えるようだが、そもそもの使い方から教えなくては。

 

せっかくありがたいツールがあっても、利用できなければ意味がない。そして、これらの問題点は、実際に使ってみたからこそわかったこと。ぜひ一度家族で実践してみてほしい。

 

災害は怖い。でも、防災をおもしろがろう。

辻さんは、本書を通じて私たちにこう訴えかける。

 

「災害は怖いけど、防災はおもしろい」

 

『防災クエスト』は、まさに防災を楽しみながら取り組むためにうってつけの一冊だ。まずは、読んでみる。そして、書かれていることを試してみる。

 

我が家は今度の週末、近所を歩きながら公衆電話を探してみようと思っている。ハザードマップを見ながら、家の周りの危険の確認も。子どもと散歩がてらおこなえば、楽しみながら防災に取り組むことができそうだ。目指せ、ミッション全クリア!

 

 

【書籍紹介】

防災クエスト

著者:辻 直美
発行:小学館

本書は、子育て家族のための防災の本です。防災をRPG(ロールプレイングゲーム)に見立て、家族みんなで楽しみながら防災スキルを身につけられる構成になっています。

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災害時、安全に過ごすために──避難生活時のマストアイテムをチェック!

災害時、いかに安全に、快適に過ごせるかは、日ごろからの備えにかかっている。自分や家族を守り、生き延びるために必要不可欠な防災用品からアイデアが光る日用雑貨まで、少しでも快適な避難生活を送るためのマストアイテムをチェック!

※こちらは「GetNavi」 2021年4月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私が解説します

災害危機管理アドバイザー

和田隆昌さん

災害対策全般を得意とし、自治体や企業の災害対策コンテンツを作成。著書に『中高年のための「読む防災」』など。

 

【No.1】脱水症状から守る!

高性能フィルターが病原菌を99.99%カット

ソーヤー プロダクツ

ソーヤー ミニ SP128

3960円

災害時は一般的に7日ぶんの飲料水の確保が推奨されているが、家族全員ぶんとなると保管場所にも苦労する。この小型浄水器があれば、川の水や雨水が安全な飲用水になる。

 

↑0.1ミクロンの穴で水をろ過しバクテリアや微生物を除去。その安全性と手軽さが評価され70か国以上の被災地で使用されている

 

<ココが守護神!>

水の確保は最優先事項 雨水などを有効活用する

「厳しい状況下では衛生面で不安な水を飲まざるを得ないことも。安全な水の確保は、生き延びるための最優先事項です」(和田さん)

 

【No.2】頭を守る!

A4サイズで収納できる薄型防災ヘルメット

加賀産業

オサメット

4400円

頭部を守るヘルメットは災害時の必須アイテムだが、かさばるのが難点だ。折りたたみ式の本品なら保管も持ち運びも簡単。蛇腹式なのでかぶるだけで即ヘルメットになるのが便利だ。

 

↑折りたたみ時の厚さは45mmと薄型で、カバンに入れても邪魔にならない。後部のバンドとあご紐でサイズ調整できる。白、赤、青の3色展開

 

<ココが守護神!>

急所を守りつつ安全に避難する

「落下物が頭部に直撃し、意識不明になると致命的。素早く安全に避難するためにもヘルメットは非常に重要です」(和田さん)

 

【No.3】足を守る!

ガラスが飛散した路面も強靱なブーツがあれば安心

シモン

防災用安全靴(WS33HiFR)

2万6840円

災害直後は地面に瓦礫やガラスが飛散していたり、釘が飛び出ていることも。本品はソールに鋭利な物から足を守る踏み抜き防止板を内蔵し、荒れた路面から足を守れる。

 

↑かかと部に反射板が付いており、夜間の移動も安心だ。ソールには高温や油、薬品などに強い、高耐久素材を使用している

 

<ココが守護神!>

避難時に履くのは底の厚い靴が基本

「地震後は釘やガラスの飛散した道を歩くことも。底の厚い安全靴が重宝します。踏み抜き防止板が入っていればさらに安心」(和田さん)

 

【No.4】手を守る!

過酷な環境から手を守る特殊素材の高耐久グローブ

スリーエム・ジャパン

3M TM コンフォートグリップグローブ 耐切創

実売価格1892円(スタンダード)、実売価格3238円(ハイレベル)

超高分子量ポリエチレン繊維とガラス繊維を編み込んで強度をアップした、金属や板金加工の現場で使われるグローブ。伸縮性と通気性に富み、ムレや締めつけを感じさせない。

 

↑耐久性と薄さを併せ持ち、細かな作業でもストレスなし。洗って繰り返し使えるので、災害時だけでなく、日常のDIYなどでも重宝する

 

ココが守護神!>

意外と多い手指のケガを侮らず保護に重点を

「災害後の復旧作業の際、薄い軍手では危険が伴う。ケガから化膿することもあるので、頑丈な手袋があると安心です」(和田さん)

 

【No.5】口内環境を守る!

口腔内を清潔に保ち肺炎などから身を守る

ピジョン

ハビナース 歯みがきティシュ

715円

被災時はおろそかになりがちなオーラルケアだが、歯みがきはインフルエンザや肺炎の予防に効果的といわれている。歯ブラシや水がなくても口の中は清潔に保って。

 

↑緑茶エキスやキシリトールなどを含んだコットンシートで、歯や歯茎の汚れを拭き取って使う。使用後は、ミントの香りでスッキリ

 

<ココが守護神!>

凹凸素材を使用し効率良く汚れが取れる

「飲用水が乏しい被災、口内環境が不衛生になりがち。凹凸素材のシートで汚れが取れやすいのがポイントです」(和田さん)

 

【No.6】睡眠を守る!

温かく快適な寝床の確保は疲労回復の基本

富士木材

個人向けエアーマット

2420円

膨らませると厚さ8㎝になるエアーマット。地面からの冷気をシャットアウトし、硬い床でも快適な就寝環境を確保できる。焼却しても有害ガスが発生せず、使用後の処理が簡単。

 

↑たたんだ状態はコンパクトだが広げると幅800mm×長さ1800mmと、大人でも余裕のサイズ。耐荷重は1tまであり耐久性も優れている

 

<ココが守護神!>

想像以上にツラい床の硬さと冷えから守る

「寝具などが不足しがちな避難所では、満足な就寝環境が得られないことも。格段に快適性が増すアイテムですね」(和田さん)

 

【No.7】貴重品を守る!

混乱した状況下では貴重品は身に着けるのが基本

ヴァリュウ物産

ソロツーリスト セキュリティベスト・メンズ

3080円

トレーナーなどの下に着られるメッシュ製のベスト。前側には左右にファスナー付きのポケットが2つ、背面には3つ折りのA3サイズが入るポケットが1つある。

 

<ココが守護神!>

貴重品の盗難以外にも置き忘れ防止に効果的

「避難所では置き引きなどの犯罪が発生することも。就寝時の不安を減らすために、貴重品は常に身に着けておきましょう」(和田さん)

 

【No.8】大切なペットを守る!

愛するペットを守るためワクチン接種などの準備を

災害発生時、パニックになるペットも多い。自分の安全を確保したら、ペットを落ち着かせ、リードを付けるかケージに入れるなどしよう。避難所に向かう場合は、ペットが同行可能か確認したうえで、フードと飲料水、タオル、トイレ用品などを持参する。災害に備えて、ワクチン接種やマイクロチップの装着などを済ませておこう。

 

<ペットのために備えたいモノ>

●療法食、薬
●ペットフード、水
●キャリーバッグやケージ
●予備の首輪、リード(伸びないもの)
●ペットシーツ
●トイレ用品
●食器
●ペットに関する緊急連絡先
●預け先などの情報
●ペットの写真
●ペットの健康状態に関する情報

(出典:環境省・人とペットの災害対策ガイドライン)

 

アイリスオーヤマ

折りたたみソフトケージ Mサイズ

POSC-650A ブラウン

3820円

折りたためるキャリーケース。3サイズ展開で、小型犬用ならば折りたたむとW480mm×H480mm×D60mmとかなりコンパクトに。

 

ハンター

犬用 迷子カプセル S

660円

アルミニウム製で軽く丈夫な迷子札。防水性も高い。連絡先を書いたメモを中に入れて装着させておけば、もしものときに安心だ。

東日本大震災からの復興へ。コロナ禍の中でも私たちができる3つのこと

東日本大震災の発生から、2021年で10年。未曽有の大災害から月日が経った今でも、被災地が完全に「復興した」とは言い切れない現状があります。

 

被災地は今、どうなっているのか。そして今、私たちにできることは何なのか。

 

岩手・宮城・福島を中心に、震災伝承や防災・減災活動の“連携”“企画”“育成”に取り組む、3.11メモリアルネットワークの浅利満理子さんにお話をうかがいました。

 

東日本大震災から10年が経過した、被災地のリアル

今もメディアで取り上げられることが多い、東日本大震災の被災地。現在、宮城県石巻市に住む浅利さんですが、日々生活している場所と、メディアで「被災地」と呼ばれる場所との間にギャップを感じている部分があると話します。

 

「メディアの報道ではどうしても、道路がつながったとか、新しい施設ができたとか、ハード面に関する話題が多いように感じます。もちろんその情報は正しいのですが、『工事が終わりました』とカメラを向けられているすぐそばの土地は、まだ手付かずのままになっていることもあります。

また、被災地に住む“人の声”がもっともっと届けばいいなとも感じています。誰の声が代表というわけではなく、人それぞれ持っている意見も違いますし、状況も異なるので、そうした一人一人の声をさらにすくい上げていってもらえるとうれしく思います。10年経って復興が終わった、一区切りがついたとは言い難く、いろいろな状況が混在しているというのが現状だと思います」(3.11メモリアルネットワーク・浅利満理子さん、以下同)

 

コロナ禍でも歩みを止めない、震災の伝承活動

ここ一年はコロナ禍で、復興に関するさまざまな取り組みがこれまで通りに進められなくなっています。浅利さんが所属する「3.11メモリアルネットワーク」では、3.11の伝承活動を行う人々をサポートしていますが、その活動でも同様に、コロナによる影響を大きく受けていると言います。

 

「伝承活動に関して言えば、これまでは実際に現地を訪れてもらってご案内をしたりしていたのですが、今はそれがなかなか難しい状況です。しかし、オンライン上で語り部の活動やガイドをするなど、新しい形で活動をしている団体も出てきています。

また、被災地から離れたところに住んでいる人など、これまでなかなか来られなかった人が『オンラインなら』と参加してくださったり、学校と現地を繋いでオンラインで交流をしたりする機会もあったりして、思いがけず活動の幅が広がっている実感もあります。新しいアプローチに挑戦できた期間になったと、前向きに考えています」

 

これからの課題は、一人一人に防災意識を根付かせること

復興のための活動も、震災の被害を後世に伝えていく活動も、この10年間で確実に歩みを進めてきました。しかし、今でもまだ課題として残っているものや、今後さらに力を入れて取り組まなければならないことも出てきています。

 

「数年前に福島沖で地震があって津波警報が発令されたとき、全員がすぐに避難したわけではありませんでした。東日本大震災を経験したからといって、では次の災害でみんな、すぐに逃げるのかというと、けっしてそういうわけではないんです。そのときは『高い津波がくる』という警報ではなかったためかもしれませんが、『念のために避難しておこう』という意識を一人一人に浸透させていくというのが、今後の課題だと感じています。

そして当然ですが、10年経って東日本大震災を知らない子たちも増えてきました。震災のことを後世に伝えていく活動は、これからさらに大切になっていくと思います」

 

10年経った今、私たちにできることを考えよう

被災地の現状を踏まえ、私たちに今できることは何なのでしょうか?

「何かしたい」と思っていても、何から始めたらいいのかわからないと感じている人も多いのではないでしょうか。そこで浅利さんに「私たちにできること」に関するヒントを教えていただきました。

 

【関連記事】被災地支援の最新形「リモートボランティア」とは?

 

1. プラットフォームを利用し、寄付や買い物をする

まず1つは、寄付をしたり、モノを購入したりして応援をすること。「オンラインで気軽に応援できるプラットフォームも多数存在しているので、一度覗いてみてはいかがでしょうか?」と浅利さんは話します。

 

・クラウドファンディングで活動のサポートを

例えば『READYFOR』は、初心者にもおすすめのクラウドファンディングサイト。プロジェクトを、#東日本大震災、#被災地などハッシュタグで検索できたり、地域ごとに探したりすることができます。それぞれのプロジェクト内容も詳しく説明されているので、自分が「応援したい」と思えるところが見つかるはずです。

READYFOR https://readyfor.jp/

 

・検索するだけで支援につながる

「そのほかもっとライトに始められる支援として、Yahoo! JAPANでは、2014年から毎年3月11日に『3.11』と検索すると10円寄付されるという取り組みを行っています。今年の特設サイトでも、『寄付』『知る』『買う』などとサイト内でカテゴライズされていて、情報がとてもわかりやすくまとめられています。小さなことから始める仕組みとして、とても素晴らしいと思っています」

 

今年はYahoo! JAPANだけでなく、LINEからの寄付も可能。3月11日にLINEアプリの上部にある検索窓に「3.11」と入力して検索すると、10円寄付することができます。

Yahoo! JAPAN 3.11特設サイト https://fukko.yahoo.co.jp/

 

今年もYahoo! JAPANの3.11特設サイトでは、「東日本大震災から10年 のりこえるチカラ」と題し、さまざまな情報を発信しています。例えば、寄付先がわかりやすく一覧で掲載され、「どこに寄付をするか」をじっくり検討することができたり、モノを買って応援する場合も、食べ物はもちろん、伝統工芸品や防災グッズなど、幅広いラインナップの中から選んだりすることが可能です。そして被災地で生活している人たちの「今」がわかるインタビュー記事も数多く掲載されており、このサイトだけでさまざまな形の「応援」をすることができます。

 

2. 被災地と、継続した関わりを持つ

2つ目は、被災地と継続して関わっていくということです。今はコロナの影響もあって移動することがなかなか難しいですが、「実際に来てみてわかることもたくさんあると思うので、来られるようになったら、ぜひ一度被災地を訪れてみてほしい」と浅利さんは力を込めます。

 

「東日本大震災の被災地は広範囲なので、共感できる取り組みをしているひとつの地域を訪れるのもいいと思いますし、“お遍路”のようにさまざまな土地を巡ってみるのもいいのではないでしょうか。

また、植樹のボランティアなどを通して、被災地とつながりを持つことも、“できること”のひとつではないでしょうか。植えた木の様子を定期的に見に来ることは、被災地を訪れるきっかけにもなりますし、自分が植えた木とその土地のことをときどき思い出して気にかけてもらえるのも、とてもうれしいことだなと思います」

 

・桜の木を植えて、被災地とのつながりを持つ

「植樹事業を行っている団体の一つに「桜ライン311」があります。この団体では、東日本大震災の津波最大到達地点、約170キロメートルのラインに10メートル間隔で桜を植樹し、「桜のライン」をつくることをめざしています。現在も、春と秋の年2回、植樹会を行っており、目標の17000本達成に向けて活動が続いています」

 

今は現地に行く事が難しいですが、寄付という形で“桜の育て親”になることは可能です。

桜ライン311 https://www.sakura-line311.org/planting

 

【関連記事】私にもできる、寄付やボランティアの仕組みがある!知っておきたい慈善活動の仕組み

 

3.被災地のことを知り、自身の防災への意識を高める

3つ目は、被災地のことをあらためて「知る」ことで、災害への意識を高めたり、防災に取り組んだりするということです。

 

「毎年3.11に関連したさまざまな行事が行われています。今年はオンラインでの配信を行っているところも多いので、これまでハードルが高いと思っていた人も、『オンラインなら』と少しでも覗いてもらえたらうれしいですね」

 

・復興に取り組んできた行政の特設サイトで「知る」

「また、行政でも10年目を迎えるにあたって、特設サイトがつくられています。例えば宮城県のサイトでは、『伝えあう授業』、『あの時×今を伝えあう』と題したオンラインの動画や、災害時に役立つ知識や心構えに関するクイズなど、さまざまなコンテンツが用意されています。3.11を経験した人々の『今』も、知ることができます。

これからも、いつどこで大きな災害が起こるかわかりません。そのため『10年目』以降も災害について継続的に考えていくために、行政だけでなく、民間企業や報道機関などでも、さまざまな取り組みが進められています。東日本大震災に限らず『災害のときこういうことがあったんだ』と知ることは、自分が実際に災害に遭ったときに、行動するための第一歩になると思います。『支援』という形だけではなくて、『誰もが被災者になりうる』ということを念頭に置いておいて、折に触れて災害について考えてほしいなと思います」

宮城県特設サイト https://tsutaeau.pref.miyagi.jp/

 

・防災アプリで「学び、備える」

気軽に防災に取り組めるスマートフォンのコンテンツもあり、「『これならできそう』と思えるものから始めてみてほしい」と浅利さんは言います。例えば、「東京都防災アプリ」は、「あそぶ」「まなぶ」「つかう」がコンセプトの、東京都公式の防災アプリです。「防災ブック」や防災に関するクイズで学べるなど、都民でなくても災害時に役立つ知識を得ることができます。

東京都防災アプリ https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1005744/index.html

 

・自分の防災力を「理解する」

「ヤフー防災模試」は、スマートフォンから簡単に受験することができ、地震や水害などさまざまな災害に関する問題にチャレンジできます。過去に出題された問題も掲載されているので、自分の“防災力”をチェックしてみるのもおすすめです。

ヤフー防災模試 https://bousai.yahoo.co.jp/exam/

 

 

東日本大震災から10年が経っても、復興が完了したわけでも、ましてや後世に残していくための活動が終わったわけでもありません。でもむしろ、これまで震災についてあまり考えてこなかったという人や、何かしたいけど行動を起こせていなかったという人にとっての「10年目」は、一歩踏み出すタイミングになるのではないでしょうか。

 

オンラインで気軽にできる支援をしてみたり、防災についてあらためて考えてみたり……ぜひ、できることから行動していきましょう。

 

【プロフィール】

3.11メモリアルネットワーク / 浅利満理子

東日本大震災の経験を伝承する個人・団体・拠点施設をつなぎ、支えるためのネットワークとして、2017年に設立。フォーラムなどの行事や、震災について学ぶための講座なども開催し、「災害で命が失われない社会の実現」「被災者や被災地域の苦難を軽減し、再生に向かうことのできる社会の実現」を目指して活動を行っている。

3.11メモリアルネットワーク https://311mn.org/

また、3.11メモリアルネットワークが主宰する震災フォーラムが3/21(日)に開催。今年はオンラインからも参加できます。
https://311mn.org/info15

 

電気を確保して、災害時でも普段の生活に近づける

停電で困るのは、照明を灯せないことによる暗闇での生活。また、スマホやPCなどがバッテリー切れで使えなくなれば、得られる情報が制限されて普段通りに暮らすのは難しくなる。電気のある生活を止めないために、パーソナル電源の確保は必須だ。

※こちらは「GetNavi」 2021年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します

災害危機管理アドバイザー

和田隆昌さん

災害対策全般を得意とし、自治体や企業の災害対策コンテンツを作成。著書に『中高年のための「読む防災」』など。

 

欠かせない電気を確保して、より普段の生活に近づける

社会生活のほとんどが電気によって支えられている現在、一日でもその恩恵を受けられなくなれば大きな不便を感じることになる。

 

「情報収集ができず、明かりもない部屋では生活ができないと考え、避難所にすぐに移動せざるを得なくなるケースが考えられます。そんななか、大容量の非常用電源を持つ人が増加中。生活家電を動かせる出力を持つモノであれば、より日常に近い生活を行うことが可能になります」(和田さん)

 

このコロナ禍において避難所に行かない“分散避難”が自治体からは求められており、車中泊を選択する人も多くなるだろう。

 

「給電機能を備えたクルマがあれば、小型調理家電などを動かすことも可能。温かい食事で気持ちにも余裕が生まれます」(和田さん)

 

<主な家電製品の消費電力例>

電子レンジ 1400W

 

ジャー炊飯器 1300W

 

エアコン(10畳クラス)750〜1100W

 

洗濯機 400〜1100W

 

液晶テレビ(50V型) 120〜160W

 

ノートPC 45W

 

※出典:資源エネルギー庁

 

【ポータブル電源編】

普段スマホの充電などに使うモバイルバッテリーよりも高い出力を誇る、ポータブル電源に注目。AC100Vの出力に対応し、なかには家庭用の冷蔵庫が使用可能な超ハイパワーなタイプも用意されている。

 

【その1】着脱可能なバッテリーで容量を無限に増やせる

AFUストア

TECHOSS

2万9980円

定格出力 80W

AC、USB Type-A、USB Type-C PDに加えてDC12Vの出力にも対応。バッテリー部が着脱でき、容量を増やせる。基本セットには22500mAhのバッテリーが2個付属。

SPEC ●電池容量:22500mAh〜 ●出力端子:AC(110V/60Hz、最大80W)×1、USB Type-A×2、USB Type-C(PD3.0対応)×1 ●充電時間:約2〜3.5時間 ●サイズ/質量:W140×H154×D52mm/約1.2kg

 

↑バッテリー1個の場合は容量22500mAh。2個なら45000mAh、3個の場合は67500mAh……と無限に容量を増やすことが可能なのは便利だ

 

<こんな人にピッタリ>

停電はいつ復旧するかわからないもの。たとえ大容量でも不安という心配性の人にオススメ。コンパクトなのでアウトドアシーンでも◎。

 

【その2】グッドデザイン賞受賞のインテリアになじむデザイン

マクセル

エナジーステーション

MES-TR470

12万9800円

定格出力 400W

充放電サイクル特性では1000回使用しても約80%の容量を維持する、信頼性の高い角形リチウムバッテリーを搭載。アルミのボディは頑丈かつ軽量で、持ち運びもしやすい。

SPEC ●電池容量:474Wh(有効容量400Wh)●出力端子:AC(100V/50/60Hz 最大400W)×2、DC(12V)×1、USB Type-A×4、USB Type-C(PD2.0対応)×1 ●充電時間:約14時間 ●サイズ・質量:W245×H170×D205mm/約6.8kg

 

↑本体前面カラーが白なので圧迫感を感じさせない。他の防災用品と一緒に並べても違和感を覚えることはない

 

<こんな人にピッタリ>

部屋には明るいイメージを与えるモノを置きたい人にピッタリ。一定期間使いたい人は5500円/月でレンタル契約できるのも便利だ。

 

【その3】大容量ながらコンパクトで持ち運び自由

RAVPower

RP-PB054 Pro

1万2999円

定格出力 80W

20000mAhの大容量バッテリーを搭載し、ノートPCなどもACプラグを接続して充電可能。500mLペットサイズと同等サイズなので、気軽に持ち運ぶことができる。

SPEC ●電池容量:20000mAh ●出力端子:AC(110V〜120V/60Hz、定格80W)×1、USB Type-A×1、USB Type-C(PD3.0対応)×1 ●充電時間:約3.1時間(30W PD入力)●サイズ/質量:W69×H155×D29mm/660g

 

↑本体上部にUSB Type-AとUSB Type-C、AC出力端子を搭載。USB Type-CはPD3.0に対応し、最大で30Wの入力/出力に対応する

 

<こんな人にピッタリ>

普段からスマホやノートPCを充電する人に。ペットボトルと似た形状なので、バッグの空きスペースにラクに入れることが可能だ。

 

【その4】出力2000Wの超ハイパワーで大型家電も使用可能

パワーオーク

BLUETTI AC200P

23万9880円

定格出力 2000W

電池容量・出力ともに超ハイパワーを誇り、最大で17の機器に同時給電が可能。冷蔵庫や窓用エアコンなど、消費電力が大きい一般家庭用電気製品への給電にも対応するのは心強い限りだ。

SPEC ●電池容量:2000Wh ●出力端子:AC(100V/50/60Hz、定格2000W)×6、DC(12V)×1、USB Type-A×4、USB Type-C(PD2.0対応)×1 ●充電時間:約3.5時間 ●サイズ・質量:W420×H386×D280mm/約27.5kg

 

↑バッテリーは大容量・高出力なので多くの電気製品を使用可能。照明や調理器具などを使用する車中泊などでも活躍する

 

<こんな人にピッタリ>

停電時でも冷蔵庫内の食材を冷やすなど、家庭用電気製品が余裕で使えるのがうれしい。ワイヤレス充電ポートも2基搭載している。

 

【クルマ編】

駆動用、あるいはエンジンの補助用バッテリーを持つクルマはその容量とパワーが大きく、給電能力も高い。炊飯器やオーブンレンジなど消費電力が高い電気製品も使用できるため、災害発生時でも安心できる。

 

【その1】PHEV(プラグ・イン・ハイブリッドEV)

負荷が少ないときはほぼバッテリーからの電力のみで走行するPHEV。バッテリー容量も大きく、幅広い電気製品が使えるのが特徴だ。

 

■モデルチェンジでPHEVが登場。発電できるクーペスタイルSUV

三菱

エクリプス クロスPHEV

384万8900円〜447万7000円

モデルチェンジを機にPHEVモデルが登場し、EV走行モードによる静かな走りを実現。エンジンで発電できるため、満充電とガソリン満タンであれば約1週間ぶんの電力供給が可能だ。

SPEC【PHEV P】●全長×全幅×全高:4545×1805×1685mm ●車両重量:1920kg ●パワーユニット:2359cc直列4気筒+モーター● 最高出力:128PS/4500rpm(前輪82PS、後輪95PS)●最大トルク:20.3kg-m/4500rpm(前輪14.0kg-m、後輪19.9kg-m)●WLTCモード燃費:16.4km/L

 

↑電力供給を始めるには、スイッチをONにするだけ。電源供給装置が不要なので、操作も簡単に行える

 

↑ラゲッジルーム内のACコンセント。最大1500Wまでの電気製品に対応し、アース付きプラグにも対応する

 

★実証! PHEVでご飯を炊いてみた

[1]

普段自宅で使っているジャー炊飯器で炊飯を試す。ラゲッジルーム内のACコンセントに電源プラグを挿すだけだ。

 

[2]

普段の炊飯と変わらず、お米を入れて指定量まで水を張る。今回は屋外のため研がなくても良い無洗米を使用した。

 

[3]

待つこと約20分、圧力式炊飯器の特徴であるスチームが一気に噴出した。ここまでは順調に炊けている様子だ。

 

[4]

炊飯終了。フタを開けるとご飯の良い香りが漂ってきた。安定した電源で、家庭と変わることなく炊けたようだ。

 

【その2】ハイブリッド

ガソリンエンジンの駆動をモーターがアシスト。電源使用時はエンジンがバッテリーへ電力供給することで電気製品を使用可能だ。

 

■驚異的燃費を誇るエコカーは非常時の給電性能も備える

トヨタ

ヤリス

199万8000円〜249万3000円

最高36.2km/Lという燃費を実現したヤリスのハイブリッドモデル。オプションでAC1500Wのアクセサリーコンセントを装着可能で、一般家庭の約4.5日ぶんの電力供給が可能だ。

SPEC【Z・2WD】●全長×全幅×全高:3940×1965×1500mm ●車両重量:1090kg ●パワーユニット:1490cc直列3気筒+モーター ●最高出力:91PS/5500rpm(前輪80PS、後輪5.3PS)●最大トルク:12.2kg-m/3800〜4800rpm(前輪14.4kg-m、後輪5.3kg-m)●WLTCモード燃費:35.4km/L

 

↑ヤリスのアクセサリーコンセントは、走行機能を停止した状態でも使用可能な非常時給電システム。万が一の際も安心だ

 

【その3】EV

バッテリーの電力のみで走行するEVは、その容量が圧倒的に大きい。電気製品の使用はもちろん、家を丸ごと給電できるのも魅力だ。

 

■大容量のバッテリーは家を丸ごと給電可能

日産

リーフ

332万6400円〜499万8400円

最大容量62kWhのバッテリーで、WLTCモードで322km走行可能。バッテリーの電力はV2H(Vehicle to Home)機器を介して、家庭内ほとんどの電気製品で利用できる。

SPEC【e+ G】●全長×全幅×全高:4480×1790×1565mm ●車両重量:1680kg ●パワーユニット:交流同期電動機 ●最高出力:150PS/3283〜9795rpm ●最大トルク:32.6kg-m/0〜3283rpm ●WLTCモード一充電走行距離:322km

 

↑電気代が安い深夜帯にリーフを充電しておき、日中はV2H機器を介したリーフの電源で電気製品の利用が可能。普段の電気代の節約にもつながる

防災バッグに何を入れる?“防災散歩”って何? 防災アドバイザーが教える「防災バッグ」の作り方

2011年3月11日に発生した、東日本大震災。甚大な被害をもたらしたこの震災は、日本人の防災意識をより高めるきっかけとなりました。ところが徐々に当時の記憶は薄れ、防災に対する意識も、3.11以前に戻ってしまった人もいるかもしれません。

 

今回は、備え・防災アドバイザーとして活動する高荷智也さんに、防災バッグの重要性や作り方などについてあらためて教えていただきました。機能性重視で考えがちな防災バッグですが、実は何より重要なのは「楽しく取り組み、長続きさせること」なのだそう。これを読めば、防災バッグに対する考え方が変わるかもしれません。

 

「非常用持ち出し袋」と「インフラ代替セット」の違いとは?

防災バッグを準備する際、どのような目的で荷物を詰めていますか? 実は、災害対策として準備すべき荷物には2種類あり、それぞれ用途が異なります。緊急避難の際、命を守る役目を果たすのが「非常用持ち出し袋」、いわゆる防災バッグと呼ばれるものです。そして災害が起こった後、生活を維持するために役立つのが「インフラ代替セット」になります。

 

・非常用持ち出し袋

津波、地震火災、土砂災害、洪水などから逃げる際に持ち出す荷物のこと。あくまで避難所にたどり着くまでに必要なものだけを入れるので、水や食料は1日分にとどめ、素早く動けるよう両手の空くリュックを使用しましょう。

 

・インフラ代替セット

避難所での生活や在宅避難の際に必要な水・食料・日用品を入れておきます。行政の支援が行き渡り始めるまでの3日分を目安に準備するため、大きめの手持ちバッグやキャリーバッグの使用がおすすめです。

 

「避難しなくてはならない時が来たら、“非常用持ち出し袋”だけを背負って逃げる、と覚えてください。ただ、台風が来る前の事前避難や道路が無事な状態での避難など、比較的余裕がある場合には、同時に“インフラ代替セット”を持っていってもかまいません。もちろん、避難所までの道中で津波が迫ってきたり、道路が冠水したり、『死ぬかもしれない』と感じた時には、即座にインフラ代替セットを手放してください」(高荷智也さん、以下同)

 

見た目へのこだわりも“防災”!
家の雰囲気に合う防災バッグを目指す

防災バッグを作る一番の目的は、家を素早く飛び出せること。だからこそ、玄関での保管がマストになります。しかし、防災バッグにありがちな銀色の袋が玄関の目につきやすい場所にあると、なんだか気が滅入ってしまうのではないでしょうか。

 

「気合を入れて実用性重視の防災バッグを準備しても、1週間くらい経つと棚の奥底に追いやってしまうことがほとんどです。それでは、いざという時に役目を果たさずまったく意味がありません。気に入らないデザインは避け、好みのデザインのリュックや保管用のかご、目隠しなどを活用して、できるだけ家の雰囲気に溶け込ませるようにしてください。見た目へのこだわりはわがままではなく、防災を長続きさせるための重要なポイントなのです」

 

玄関の目につきやすい場所で保管するため、他のインテリアとの調和がカギとなる防災バッグ。オシャレで自分が気に入ったデザインだということを前提に、どのようなバッグを選べばいいのか、機能面についても教えてもらいました。

 

「避難時の浸水や火事に耐えられるような、防水素材、難燃素材のものが防災バッグには適しています。チェストベルト・ヒップベルトが付いているものも、走った時に揺れにくいのでおすすめですね。また、雨に降られた場合を想定すると、リュックの上部はふたで覆われている方がいいと思います。

逆に、できれば避けてほしいのは、ナップザックのようなショルダーストラップが紐でできているものです。走っている最中に肩が痛くて捨てたくなるなんてことは、絶対にあってはなりません」

 

これらの条件を高確率で満たしているのが、アウトドアショップに売っているバックパックなのだそう。どこでどういったものを買うべきか迷ったら、アウトドアショップへ行き、気に入ったデザインのものを探してみましょう。

 

防災バッグを準備しよう

保管場所やバッグ選びのポイントを学んだところで、早速防災バッグを作ってみましょう。高荷さんによると、「体の一部」「避難をサポート」「素早い行動をする工夫」の3つが、防災バッグ作りのポイントなのだそう。それぞれの観点から、必要なアイテムを確認していきます。

 

1. 体の一部となる物(これがないと避難はおろか、日常生活すら困難になるもの)

「あなたが今、裸の状態で部屋に閉じ込められたとします。最低限の衣服と食事は提供されますが、それ以外のものは何も用意してもらえません。その時に『ないと困る!』と感じたものこそ、“体の一部”に該当するアイテムになります」

□ 眼鏡、コンタクトレンズ

□ 補聴器

□ 杖

□ 医療機器の予備バッテリー

□ 持病の薬、お薬手帳

□ ペット用品

□ アレルギー対応食品

□ 生理用品……「極力コンパクトに」という気持ちから、タンポンなどの普段使いしていない商品を入れる人もいるかもしれません。しかし、避難所に行ってから初めて使おうとすると、使いづらかったり自分には合わなかったりと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。普段から愛用する商品を入れるか、試しに一度使ってみるようにしましょう。

□ ベビー用品……粉ミルクを作る場合、消毒や温めに必要な道具をすべて持っていく必要があります。また、避難所で粉ミルクを作ったり、消毒したりする余裕があるかも分からないため、できるだけ液体ミルクを準備するようにしましょう。

 

「消耗品については、最低3日分を目安に準備してください。というのも、水や食べ物などの全員が必要とするものは避難所にも備蓄がありますが、人によって必要性が異なるアイテムは、そう簡単に手に入りません。また、大きな災害が起こった場合、最初の3日間は人命救助が優先されます。避難してきた人に対する行政からの支援が本格化するのは、早くとも4日目以降のため、数日間は防災バッグに入っている分でまかなえるようにしましょう。

それから、避難所ではゴミ回収が機能していないと考えてください。消耗品を持っていく際には、ゴミ袋などの破棄する道具もセットで持っていくことが鉄則です」

 

2. 避難をサポートする物(主に身の安全を守るアイテムのこと)

□ 身に付ける物(レインウェア、ヘルメット、ヘッドライト、軍手、防寒着など)…リュック同様、両手を空けて避難できるアイテムを準備しましょう。ポンチョや傘ではなくレインウェア、懐中電灯ではなくヘッドライトがおすすめです。

□ 情報収集、安全確認のための物(ハザードマップ、充電器、携帯ラジオ、メモとペンなど)…充電器・ライト・ラジオなどは、全て同じサイズの乾電池にしておくことで、避難中に電池が切れても替えがききます。できるだけ、手に入りやすい単三電池で揃えるようにしましょう。

□ 簡易トイレ、応急手当用品、衛生用品(マスク、消毒液、ウェットティッシュなど)

□ 水と食料

 

「防災バッグは、その家庭の誰が背負っても走れる重さが基準となります。山登りが趣味などの大きな荷物に慣れている方であれば登山リュックいっぱいに詰め込んでも問題ないですが、体力のない方が同じ荷物を持つことは困難です。そのため、誰が持ち出すことになっても大丈夫なように、家庭内の一番体力のない方に合わせておいてください。もし、それではすべてのアイテムが入りきらないということであれば、防水・防寒用のレインウェアや暗闇を進むためのライト、応急手当用品などの『命にかかわるアイテム』を優先して入れてください。

また、防災リュックの中に、避難所で羽織るものや寝袋、ブランケットなどを入れる場合は、色選びに注意が必要です。残念ながら、避難所では女性や子どもを狙った犯罪が生じることもあります。ひと目で若い女性と分かるようなかわいらしいデザイン・色だと、犯罪に巻き込まれるリスクが高まってしまうのです。自分が気に入ったアイテムを選ぶことが大切ですが、一番上に羽織るもの・就寝時に使用するアイテムなどに関しては、男女兼用や地味目な色のものを選ぶことをおすすめします」

 

3. 素早い行動を取る工夫

□ 思い出のデジタル化……避難時に持っていきたい写真やビデオがあったとしても、アルバムごと持ち出すのは非常に大変。移動の妨げになる可能性も否定できません。だからこそ、定期的にUSBメモリ・SDカードなどでデータ化し、防災バッグに入れておくようにしましょう。

□ 避難直前に貴重品を入れることを見越した準備

 

「現金、通帳、パスポートなどの貴重品は、避難時に持っていくべきアイテムではあるものの、玄関の近くで保管すると空き巣に狙われてしまいます。そのため、普段は防災バッグに入れず、部屋の分かりにくい場所などで保管し、避難時にのみ持ち出すようにしましょう。とはいえ、災害が起きるとパニックになり、高確率で何を入れるべきなのかが分からなくなってしまいますよね。

そこでおすすめなのが、必要なもののリスト化です。リュックの中や玄関の分かりやすい位置にメモを残しておくことで、パニックの中でも必要なものを忘れずに持ち出すことができます。また、貴重品を入れることを見越してあらかじめポケットを1つ空けておくことで、よりスムーズに避難することができます」

 

でも、防災バッグを作っただけで満足してはいけません。完成した後の「防災散歩」と「定期点検」こそ、忘れてはならない作業です。次のページで、そのポイントを教えていただきましょう。

防災バッグは詰めて終わりじゃない
「防災散歩」と「定期点検」を忘れずに!

防災バッグを作っただけで満足してはだめ。完成した後の「防災散歩」と「定期点検」こそ、忘れてはならない作業です。

 

「防災散歩」とは、完成したリュックを背負い、避難所までのルートを歩いてみること。実際に歩くことで「意外と重かった……」「もう少しいけそう!」など、使い勝手を確かめることができるのです。また、避難時に危ないポイントがないかを確かめる機会にもなります。

「チェックするポイントは大きく分けて2つあります。まず1つが、ブロック塀や自販機、擁壁のない崖など、地震が起きた時に倒れたり崩れたりしそうなものがないかどうか。もう1つが、手すりの付いていない用水路や外れかけのマンホールなど、浸水して足元が不安定な時に落ちそうな場所がないかどうかです。これらに注意しながら歩いてみて、もし見つけたらハザードマップに印をつけておきましょう。

そうすることで、災害が起きた際、危険を避けながら避難所に向かうことができます。また、今回は晴天時の昼間、次回は夜間、その次は雨の日などと条件を変えることで、それぞれの状況に応じた注意ポイントを確認できます」

そして2つ目の「定期点検」について、高荷さんは「少なくとも1年に1回。できれば半年に1回は点検をしてほしい」と話します。

 

「半年おきの点検では、電池を使ったアイテムが正常に動くかどうかを確認していただければ十分です。そして1年に1回、賞味期限切れの食料はないかなどの全体的な点検を行うようにしてください」

 

しかし実際のところ、「定期点検」と聞くと急に腰が重くなり、ついつい点検を怠ってしまう人も多いのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが、普段から食べている間食を非常食として入れ、点検をルーティーン化するという方法です。

 

「普段から食べている栄養補助食品やチョコレート菓子などを、非常食としてリュックに入れておきます。市販の食料品は賞味期限が1年くらいなので、切れる直前に入れ替え、そのついでに防災バッグを確認するというわけです。また、防災専用の食べ物は賞味期限が長いものの、なんせお金がかかります。防災を長続きさせるという意味でも、安価で済むこのやり方はおすすめですね」

 

外出時は「ライト」と「ホイッスル」をおともに

子どもがいる家庭の場合、災害時の行動について親子でしっかりと話し合っておく必要があります。その際、高荷さんがぜひ心がけてほしいと話すのが、「枕元ポーチ」づくりです。

 

「“枕元ポーチ”とは、その名の通り枕元に置くポーチのことです。子どもが気に入ったぬいぐるみのリュックやポーチを準備し、中に小型ライトとホイッスルを入れておきます。そして、『避難する時にはこれを持ってね』『停電で部屋が真っ暗になった時には、このライトをつけてお母さんを待っていてね』などと話しておくんです。そうすることで、いざという時に取るべき行動を確認できます。

また、いざ避難所に行った際、毎日枕元に置いていたぬいぐるみやポーチがあるだけでも、子どもはすごく安心します。愛用品を持っていける上に防災にもなる一石二鳥のアイデアです」

 

実は「ライト」と「ホイッスル」は、大人が普段外出する際にもぜひ持ち歩いてほしいアイテム。暗闇の中で身動きをとりたい時や助けを呼ぶ時、それらが必ず役に立ちます。カバンの取り出しやすい位置につけたり、ポーチに入れたりして、お出かけのおともにしておきましょう。高荷さんにおすすめアイテムを教えてもらったので、『どれを買ったらいいのか分からない』という方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

・人の耳に届きやすいホイッスル

コクヨ
「防災用救助笛〈ツインウェーブ〉」(黒・白・オレンジ)
500円+税

人間の耳に聞こえやすい高さの音が出るよう設計されているため、広範囲の人に音を届けられるホイッスル。キャップが付いており、常に清潔に保てるよう配慮されています。

 

・8時間点灯するキーライト

GENTOS(ジェントス)
「SK-8GWH 」
770円+税

質量わずか8gながら、8時間の点灯が可能なキーライト。GENRTOSはLEDライト専門メーカーで、国内メーカーならではの高品質・高性能が特徴のひとつ。ヘッドライトや懐中電灯など、高荷さんの防災バッグに入っているライトも、すべて同メーカーのものだとか。

 

何より大切なのは、長続きさせること

「皆さんにお伝えしたいのは、『物を買うのは死なない準備ができてから』ということです。防災バッグの準備はしていたが入れていた棚が倒れてしまった、防災バッグを持って外に出たはいいがどこに避難したらいいのか分からない、などでは、まったく意味がありません。家の中に固定されていない家具などの危険箇所はないか、避難場所はどこなのかなどをしっかりと確認した上で、防災バッグを準備するようにしましょう。

また、繰り返しにはなりますが、防災において何よりも大切なことは『長続きさせること』です。気合を入れ過ぎたり、お金をかけすぎたりすると、必ずいつか息切れしてしまいます。そして災害は、息切れした直後に起こり、命を奪っていきます。だからこそ、好きなデザインのリュックを準備したり、自分の好きなお菓子を非常食にしたり、長続きさせるために必要なことは積極的に行うようにしてください」

 

【プロフィール】

備え・防災アドバイザー / 高荷智也

「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動するアドバイザー。自身が運営する総合防災情報サイト「備える.jp」や各種メディア、セミナーなどを通じて、防災に関する賢い知識を伝えている。

備える.jp https://sonaeru.jp/
Twitter https://twitter.com/sonaeru
YouTube https://www.youtube.com/c/sonaerujp-tv

 

普段の生活のなかで災害発生に備えることが、防災への第一歩

災害大国と言われる日本で暮らす以上、地震や豪雨、台風などの自然災害は避けられない。しかし、準備をすることで、被害は最小限に抑えられる。災害の脅威に対してどんな情報を集め、どんな備えがあると生活水準を下げずに過ごせるのか、新時代の防災メソッドを探った。

※こちらは「GetNavi」 2021年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します

災害危機管理アドバイザー

和田隆昌さん

災害対策全般を得意とし、自治体や企業の災害対策コンテンツを作成。著書に『中高年のための「読む防災」』など。

 

災害対策で大切なのは個人が考えて準備すること

「近年、世界的な気候変動の影響で、台風や低気圧の勢力が大きくなっています。世界じゅうで極端な気象現象が多発し、例えば日本ではこの20年間で100mm/時以上の豪雨の発生は年平均2.2回から4.8回まで増えました。日本列島は大陸からの寒気と熱帯地方からの暖気がぶつかる場所にあるため集中豪雨が発生しやすく、今後も豪雨被害や台風被害は増えるでしょう。地震災害に関しても地震学上の多発期に入っており、列島全体で地震活動が活発化しています。特に首都直下型地震、南海トラフ地震に関しては十分な対策をとっておく必要があります。

 

大規模な災害時は、公的な支援や救助等が遅れる可能性があります。まずは個人の災害準備として、家族が一週間程度支援なしに過ごせる水や食料を備蓄。家具の固定や消火器の準備などをして家屋内で二次被害に遭わないように備えましょう。電気やガスが止まったときの代替エネルギーや、連絡・情報収集に使う携帯電話の非常用電源も欠かせません」(和田さん)

 

地震だけじゃない! 日本を襲う自然災害は数知れず

【2011年】東日本大震災

3月11日に発生したマグニチュード9.0、最大震度7という国内観測史上最大規模の地震。津波や火災により1万5000人以上が亡くなり、いまでも仮設住宅で暮らす被災者は多い。

 

【2014年】広島市の土砂災害

8月19日夜から20日未明にかけて1時間に100mmを超える豪雨となり、同時多発的に土石流や崖崩れが発生。深夜ということもあって避難が遅れ、70人以上の人命が失われた。

 

【2016年】熊本地震

4月14日と16日に起きた震度7の地震をはじめ、強い揺れが断続的に続いた。被害は熊本県と大分県を中心に広がり、倒壊した家屋の下敷きになるなど270人以上が亡くなった。

 

【2018年】平成30年7月豪雨

6月28日から7月8日にかけて、台風7号と梅雨前線の影響で全国的に集中豪雨が発生。総降水量は四国地方で1800mm、中部地方で1200mmを超え、260人以上が亡くなった。

 

【2018年】北海道胆振東部地震

9月6日に発生した胆振地方中東部を震源とする地震。北海道初の最大震度7を観測し、土砂崩れや道路の液状化現象のほか、北海道全域で停電が起きるなど多くの被害が出た。

 

【2019年】台風19号による大雨

10月6日に南鳥島近海で発生した大型台風の接近・通過に伴い、10〜13日の総降水量が17地点で500mmを超える。広い範囲で大雨・暴風・高波・高潮を観測し甚大な災害になった。

 

<防災への第一歩 普段の生活のなかで災害発生に備える>

【その1】水と食べ物はローリングストックで消費しながら常備しておく

災害時の備えとして、一週間ぶんの水と食料を用意することが推奨されている。その備蓄法のひとつとして注目されているのが、普段から食べているものを多めに備蓄し、賞味期限が近づいたら食べて買い足すというローリングストック。これなら賞味期限が短い食品でも非常食に取り入れられる。

 

↑1か月に1〜2回、食べて買い足すことで常に新しい食品を備蓄できる。リーズナブルで食べ慣れたものを非常食にできるというメリットもある

 

【その2】家のなかでも危険箇所を改善しておく

災害発生時は家屋内での二次災害にも注意。事前に家の中の危険箇所をチェックしておくことが重要だ。特に大型家具は倒れるとその下敷きになる危険があるほか、避難の妨げになることもある。置き場所を工夫し転倒対策をしておきたい。窓ガラスが割れたときのガラスの飛散防止も忘れずに。

 

■家具の転倒は圧死の危険大! 転倒防止棒で固定しておく

アイリスオーヤマ

家具転倒防止伸縮棒

1408円〜6138円

天井と家具を固定し、地震の際の転倒を防ぐ突っ張り棒。接地面の面積が広いので安定感がある。

 

食器が飛び出さないように扉をロックする器具を装着

ムラコシ精工

パーフェクトロック

実売価格1580円

センサーが地震の揺れを感知し棚の扉や引き出しを瞬時にロック。揺れが収まると解除される。

 

【その3】持ち出すモノを袋にまとめてわかりやすい場所に保管

避難するときに必要なモノは、袋にまとめておくとすぐに持ち出せるので安心。荷物が大きすぎたり重すぎたりすると避難の妨げになるので、最低限必要なものをリストアップし、なるべくコンパクトにまとめるのがポイントだ。家族の誰もが使えるようにわかりやすい場所に保管しておこう。

 

非常用持出袋でなくてもOK。バックパックに入れておく

どんな袋でも良いが、両手が使えるリュックタイプが便利。避難の負担にならない大きさのものを。

 

■置く場所は家族で共有して持ち出しやすい玄関に置く

袋の保管場所は家族全員が把握しておくこと。玄関など避難するときに必ず通る場所に置くと良い。

 

【その4】危険回避や避難生活のための情報収集方法を知っておく

被災したときは正確な情報を基に動くことが大切。そのために災害情報の収集方法を確認しておこう。テレビやラジオはもちろん、停電時も使えるスマホやタブレットは情報収集に欠かせない。気象庁などのウェブサイトをチェックするほか、自治体の防災メールの配信登録や防災アプリもインストールしておきたい。

 

■被災地からの投稿の情報で正確な災害状況を入手

災害時にライフライン確認のひとつとして活用されているのがTwitter。ハッシュタグ「#減災リポート」に入った投稿から、地震や豪雨の被害状況をリアルタイムに確認できるため迅速な対応がとれる。

何を準備しておくべき? 防災のプロが指南する“もしもの備え”と防災用品の選び方

2011年3月11日に起こった東日本大震災を機に、防災意識が高まった人も多いのではないでしょうか。あれから10年。災害への備えは万全か、あらためて見直してみませんか?

近年は大震災だけでなく、大雪や豪雨による被害が各地で多発しています。場合によっては10日以上、電気がない暮らしも想定しなくてはいけません。そんなときにあると役立つものは何か、考えていきましょう。

 

今回は、防災のプロを実際の個人宅に招いて、どのような“もしもの備え”をしたらいいか、備品を中心に解説していただくとともに、パナソニックが過去の災害からさまざまな知見を得てこだわりぬいた、“もしもの備え”に加えたいアイテムを紹介します。

 

山田編集長の家を防災のプロが突撃査定!

まず、防災のプロで、マンション防災士として活動する釜石徹さんが、GetNavi webの山田佑樹編集長の自宅を訪問。山田家の防災対策をチェックしていただくとともに、災害時や停電時に備えてふだんから心掛けておくべきことは何か、教えていただきました。

【防災のプロ】
マンション防災士/釜石 徹さん

金融機関に勤務しながら防災対策の研究を続けていたが、防災コンサルタントとして独立後、大地震でも死傷者を出さない備えや長期在宅避難の覚悟と備えに重点をおいて、防災講演やセミナーを通して防災対策の普及に取り組んでいる。近著に『マンション防災の新常識』(合同フォレスト)がある。

 

判定1. 防災備品は必要なものが揃っているか?

まずは、山田編集長が用意している「非常用持出袋」の中身を見せてもらいました。それに対する釜石さんの反応は?

 

山田「最初は、一通りの防災アイテムが入っていたのですが、賞味期限が切れそうなものを出したり、防災時に使えそうだと思ったものを追加したり、少しずつ入れ替えています」

 

釜石「ちなみにこれを持って、どこに避難しようとお考えですか?」

 

山田「避難所に指定されている小学校ですね。1~2日したら、自宅に戻るつもりですが」

 

釜石「そうすると具体的に役に立ちそうなのは……モバイルバッテリーと羊羹ぐらいでしょうか(笑)」

↑一見、非常用持出袋に入っていると安心に思えるものばかりですが……。必要なものはどこに避難するか、何日避難するかで変わってくるそう

 

山田「え! 言われてみれば、ガスボンベはあるけどカセットコンロはなかったり……」

 

釜石「何かの役には立つかもしれませんが、具体的な使い道が見えないものも多いですよね。非常用持出袋を整備するポイントは、「どこで使うか」を考えることです。山田さんの場合、自宅が耐震性の高いマンションですし、避難所に行くより自宅にいたほうが安心です。ならば、非常用持出袋より、「非常用持ち出さない袋」、つまり自宅の備蓄を充実させたほうがいいでしょう」

 

とくに地震では、震度6弱以上の場合は外に出ることは危険! 倒壊してしまったりそのおそれがないなら、“家にとどまる”という選択をすべきだそう。では、その“在宅避難”用の備蓄はどうかというと……?

↑GetNavi webの山田佑樹編集長。自宅は、都心の高層マンションの中層階にあり、大きな窓がある見晴らしのいい部屋だが、釜石さんは開口一番、「気になるところがたくさんありますね!」

 

判定2. 備蓄は万全か? “ローリングストック”って何?

自宅が築年数が浅く高耐震性のマンションのため、「災害時は、自宅にいたほうが安心」とアドバイスされた山田編集長。停電などで自宅に籠城することになった場合、まず用意しておきたいのが食料です。山田家では、どのような食料備蓄をしているのでしょうか?

 

山田「実は、わが家ではふだんから、保存できるものを常に備蓄しながら消費する“ローリングストック”を実践しているんです。レトルトカレーや缶詰は定期的に食べては補充し、米も5㎏の袋を開けたら次の5㎏を注文するように。水は2Lペットボトルを1ダース備蓄し、定期便を利用して毎月届くようにしています」

 

釜石「それは素晴らしいですね! これこそが正しい防災備蓄です。よく非常食として特別に用意している人もいますが、長年しまい込んで賞味期限が切れていたり、食べてみたらまずかった、なんてことも少なくないんです。考えてみたら、卵や納豆、豆腐も意外と賞味期限が長いですよね。わざわざ非常用に作られた特別なものを備蓄するのではなく、日常的に食べているものを切らさないようにすることこそ理想的なんですよ。

ワークショップで、みなさんに『今日、災害が起きたとして、今自宅にある食料で何が作れるか、献立を考えてみてください』と言うと、みなさん3~5日くらいは思いつきます。そこでアイデアが尽きても、ほかの人が考えた献立例を見せてもらって新しいアイデアが湧いてきたり、『鯖缶があると便利なのね』と気づいて今後の買い物リストに加えたりしています。“非常食”を用意するのではなく、ふだんの食生活がどのように応用できるかが大切なんです。自宅での籠城生活が何日になるか分かりませんが、まずは、家族が10日間〜2週間は食べていけるだけのストックをしておき、半分なくなったら半分買い足すようにするといいですね」

ローリングストックしたい食品・飲料

□ 米や餅、乾麺(パスタ、うどん、そば、そうめん など)
□ ホットケーキミックス粉(水を入れて湯煎すると蒸しパンになります)
□ 乾物(切り干し大根、高野豆腐、乾燥ひじき など)
□ ドライパック(大豆、ひじき、コーン、ミックスビーンズ など)

□ シリアル食品
□ 缶詰(ツナ缶、サバ缶、トマト缶、豆缶、コーン缶、果物の缶詰 など)
□ レトルト食品
□ 水などの飲料
□ その他、調味料など平時から使用しているもの

 

判定3. 家具が飛ぶ!? 地震に備えてしっかり固定されているか?

そのほか、山田家の家具や家電の防災で気になったことをご指摘いただきました。

 

釜石:家具や家電が固定されていないのが気になりますね。特に高層マンションは大きく揺れます。

 

山田:そうなんです。先日、東北で震度6弱の地震があったとき、東京は震度3でしたが、うちはペンダントライトが振り子のように大きく揺れて……。

 

釜石:たとえばこの冷蔵庫は、扉に水など重いものを入れていると扉が開き、その重みで前に倒れてきますね。扉が簡単に開かないようにチャイルドロックを取り付けたり、突っ張り棒をしたりするだけで、強い地震でも倒れにくくなりますよ。またパソコンのモニターやテレビ、花瓶なども飛び跳ねて、壊れるだけでなく人に当たってケガをさせる場合があります。阪神淡路大震災では、家具や家電が直撃して亡くなった人も少なくないですから……。そういった家具や家電には、下にジェル状の耐震パッドのようなものを敷けば、安定して倒れにくくなります。

↑たとえば電球もガラス製だと割れて危険ですが、最近のLED電球は樹脂製カバーがついているので割れにくくなっています。「これは大丈夫そうですね」と言われ、山田編集長も一安心

 

判定4. 停電を想定した備えはしているか?

さらに山田編集長は、どのような災害時にも発生しやすい停電に備え、“防災訓練”も行っていると言います。

 

山田「実は以前、停電になったことを想定して、1日電気を使わない生活をしてみよう、とやってみたことがあるんですが、これが難しくて(笑)。トイレすら電気で流れるタイプで、もはや用を足すこともできないのかと。それで取扱説明書を読んだら、実は停電時でも手動で流す方法が分かりました」

 

釜石「試してみたからこそ、その方法が分かったわけですよね。備品も、いざ使おうとしたら上手に使えなかったりしがちですから、平常時の今のうちに試しておきましょう」

停電時に備え最低限用意すべきもの

□ 懐中電灯
□ ランタン(各部屋に1〜2個)
□ ヘッドライト

□ 停電時自動点灯ライト
□ ラジオ
□ 乾電池
□ モバイルバッテリー
□ バッテリーチェッカー

□ 食事の備え(上記のローリングストック)
□ トイレ対策(携帯トイレ など)
□ 水の確保対策(ウォーターサーバー、保存水、水道水の汲み置き など)
□ 寒さ対策(ブランケットなど)

 

プロの防災マストハブは?

では防災のプロである釜石さんはふだん、自宅にどのようなアイテムを準備しているのかというと、やはり「日常的に使っているものを応用して災害時の備えとしているものが多い」とのこと。ただし停電時の備えは充実していました。

 

釜石「災害時にもっとも困るのは停電です。私の場合、自宅のリビングや寝室、廊下のコンセントに停電時自動点灯ライトを設置してあり、停電になると自動で点灯するので、まず足元の安全が確保できます。そして、この停電時自動点灯ライトをコンセントから引き抜いて懐中電灯として使いながら、ほかにもっと明るい懐中電灯やスリッパを探したり、着替えを行ったりするんです。

また、できるだけスマートフォンの電源を切らないよう、モバイルバッテリーも用意しています。各キャリアの携帯電話基地局は、発電用エンジンによる無停電化や大容量バッテリーにより24時間は稼働する態勢になっているため、情報収集や安否確認も24時間が勝負。少なくともその間はスマートフォンの充電は切らさないようにしたいですね」

 

さらに外出時に常に持ち歩いているものも教えていただくと、自宅に備えているものとほほ同じ。やはり災害時は、停電への備えと情報収集が重要であることが分かります。

↑釜石さんが日常的に持ち歩いている防災グッズがこちら。懐中電灯とモバイルバッテリー、充電用ケーブル、携帯ラジオ。いずれも軽量で荷物にならないサイズを選んでいます。一方、自宅に常備しているのは、大ぶりの懐中電灯とモバイルバッテリー、バッテリーチェッカー、停電時自動点灯ライトだそう

 

乾電池さえあればなんとかなる! パナソニックの電池防災グッズが心強かった

釜石さんが防災用に備えているものから見ても、やはり停電時の備えが大切であることが分かりました。冷蔵庫や洗濯機など、家電製品でおなじみのパナソニックでも、もしものときに備え、乾電池で稼働する防災グッズを開発しています。

 

代表的なものが、電池で稼働する「電池がどれでもライト」と「電池式モバイルバッテリー」。いずれも大震災の経験を生かして誕生しました。具体的にどのような製品で、いったいどのようなシーンで活躍するのか、チェックしてみましょう。

 

●単1形〜単4形乾電池の、どれか1本だけでいい!

パナソニック
電池がどれでもライト BF-BM10-W
オープン価格

単1形~単4形の電池がどれでも1本で使用できる懐中電灯兼ランタン。パナソニックの乾電池エボルタNEOを使えば、最長97.5時間使用可能(単1形~単4形全サイズ使用時)。

 

↑単1形~単4形まで、4タイプの電池がどれでも使えます。使い方は電池を入れ、使いたい電池の表示マークを本体のスイッチマークに合わせるだけ。子どもでも持ちやすい大きなハンドルが特徴です

 

↑立てて置けばランタンとしても使え、食事のときに便利。停電時の暗闇の中に明かりが灯るだけで、安心感が得られますね

 

単1形、単2形、単3形、単4形とそれぞれ1本ずつ入れられ、どのサイズの電池でも通電するのが特徴。東日本大震災の際、多くの懐中電灯に使われていた単1形、単2形の電池が入手できず、困っている人がいるのを見て「家庭でよく使われている単3形〜単4形電池1本でも使える究極の防災ライトを!」と開発されました。万一、電池のストックがなくなっても、リモコンや時計、子供のおもちゃなど、家庭内のどこかで使われている電池が使えます。

 

●充電池と乾電池を混ぜて使える!

パナソニック
USB入出力付急速充電器(電池式モバイルバッテリー
BQ-CC87L
オープン価格

USB入出力機能を備え、パナソニックの充電池「エネループ」単3形2本を約2.3時間で急速充電するほか、スマートフォンを充電するモバイルバッテリー、LEDライトとしても活躍します。

 

↑アルカリ乾電池とニッケル水素電池など、種類や容量が異なる乾電池や充電池を使ってスマートフォンに給電。乾電池のストックがなくなっても、リモコンなどの使いかけの乾電池を入れて使うこともできます。

 

↑付属のアタッチメントを付ければ、LEDライトとしても使えます。明るさは35lmで、充電池「エネループ」を使えば約11時間点灯(満充電のエネループ4本使用時)。

 

この「電池式モバイルバッテリー」が便利なのは、単3形充電池・乾電池であれば、種類や容量の違いを問わず使えること。従来、複数の電池を同時に使う場合は、種類や容量が違うものを混在させると先に残量が少なくなった電池に過放電のリスクがあるため、推奨されていませんでした。

 

しかし、大阪北部地震や北海道胆振東部地震での停電時に、スマホが充電できずに困っている多くの人を見てモバイルバッテリーの必要性を感じ、家にあるどの単3形乾電池でも使えるように、と開発されたのがこの製品。電池の状態を1本ずつセンシングし、まんべんなく効率よく出力できるほか、自動停止機能で電池を過放電や漏液リスクから守ります。

 

※BQ-CC87をモバイルバッテリー・LEDライトとしてご使用いただく場合に限り、個別制御機能(電池の状態を個別に判別・制御する機能)が搭載されていますので、乾電池や容量・種類・銘柄の違う電池を混ぜて使用できます。他の機器でご使用いただく場合、電池の混合使用はお控えください。

 

このように万一の停電のときは乾電池が非常に役立つことがよく分かりました。実際、防災のプロ、釜石徹さんも「乾電池のストックは災害への備えの大前提」とし、ローリングストックの一環として、単3形や単4形を各20本、単1形、単2形を各5本は切らさないようにしているといいます。さらに災害時の備えとして考えるなら、「性能がよく長もちする乾電池が安心」とも。

 

そこで編集部がおすすめしたいのが、パナソニックの乾電池「エボルタNEO」です。

 

保存時も液もれしにくい、⽇本が誇る長もち乾電池

パナソニックの乾電池「エボルタNEO」は、パナソニック独自の技術をさらに進化させ、同社のアルカリ乾電池や乾電池「エボルタ」を上回る長もち性能を実現しています。

パナソニック
乾電池 エボルタNEO
オープン価格

単3形アルカリ乾電池において世界一長もちするとして、ギネス世界記録(TM)に認定。10年保存ができ、液もれも抑えるので、防災備蓄としてもおすすめ。パナソニックの乾電池は1931年の自社生産開始以来、グローバルでの累計出荷数量が2020年9月末をもって2000億本を達成するほど、世界でその信頼性が認められています。

 

このように信頼できる乾電池と、電池で給電できる便利な防災グッズを用意しておくことで、もしものときだけでなく、日頃の安心感までも得られます。東日本大震災から10年という時機に、あらためて家の備えを見直してみましょう。

 

取材・文=田中真紀子 写真=下城英悟

コロナ禍で災害が起こったら!? 国際レスキューナースに学ぶ「新型コロナ禍の防災マニュアル」

先日、福島県沖で震度6強の地震が起こった。震度3~4前後の地震は頻発していたが、この規模は久々だ。震源地エリアのこともあり、東日本大震災のときのことが頭をよぎった人も多かったのではないだろうか。

 

私自身は、大阪北部地震のときの恐怖が蘇った。開いていた食器棚の扉からは食器が飛び出し、シンク横のキッチン用品が散乱。再び地震が来るのではという恐ろしさに加えて、ガラスの破片や散らばった小物たちを片付けることが、結構な負担となった。

 

あの日を境にいろいろな防災対策を試みているつもりだが、時は新型コロナ時代である。もしも今、大きな災害が起こったら。単に避難所に逃げればいいというものではなく、感染症のリスクも考えなくては。でも、どうすれば?

今回は、国際レスキューナースとしても活躍中の辻 直美さんの著書『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(扶桑社・刊)を手引きに、日常生活でできる感染症対策をご紹介しよう。

とにかく家の中をグリーンゾーンに保つこと!

辻さんが声を大にして言いたいポイントのひとつが、「家の中をグリーンゾーンに保つこと」なのだそう。レッドゾーン=新型コロナウイルスで汚染されている区域、グリーンゾーン=ウイルスで汚染されていない区域。つまり、もしかしたら外で自分の体や衣服についてしまったかもしれないウイルスを、できるだけ家の中に持ち込まない努力と工夫が大事ということ!

 

そのためには、玄関でのひと手間が必要だ。

 

辻さんは靴箱にアルコールとティッシュ、ゴミ箱を置いていて、帰宅したらマスクを外す→ゴミ箱に捨てる→アルコールで手指消毒→内側のドアノブを消毒→上着を脱いで、内側が表になるようにしてハンガーにかける(もしくは、ボックスなどに入れておく)。これらを玄関でおこなうのだそう。

 

帰宅したら、まずはリビングでゆっくりしたいよ~というところだが、玄関でウイルスをシャットアウトする習慣をつけておけば、家の中では安心して過ごせるのだ。

 

なお、コロナ禍で災害が起こったら、ぶっちゃけ避難所より在宅避難の方が安心とのこと(もちろん、時と場合によるが)。そのため、普段から家の中にウイルスを持ち込まない努力をしたうえで、地震が起きても住める部屋づくりを心がけよう。

 

レスキューナース直伝「感染症予防法」

辻さんは、国際災害レスキューナースとしての専門的な知識や経験がじつに豊富だ。以前、取材をしたときも、ちょうど新型コロナウイルスが流行し始めたばかりのころだったが、その徹底した感染症対策には驚いた。

 

たとえば、ドアを開けるときは利き腕とは逆のヒジを使うこと。これは、アメリカの消防隊が実践しているクロスドミナンスという感染予防法で、できるだけ利き手がウイルスに触れる機会を減らすことが目的。エレベーターのボタンなども、利き手と反対の手で押す。できれば、指先ではなく中指の第二関節がベストなのだそう。

 

というのも、ウイルスを手で触ってしまったからといって、それだけでは感染しない。問題は、ウイルスがついた手で顔を触ってしまうこと! 口や鼻、目などの粘膜を通してウイルスが体内に入ってしまうことで感染するという仕組みなのだそうだ。

 

私たちは無意識のうちに手や指で顔を触っている。触りまくっている。その数、なんと1時間で平均23回にも及ぶらしい。私自身はアトピーということもあり、常に体のどこかが痒い。顔もすぐに触りがちなので、非常に危険だ……。利き手と反対の手を使う、指はできるだけ薬指と小指を、場合に寄ってはヒジ、第2関節も活用する。ぜひ意識したい。

 

防災グッズに「コロナ対策グッズ」をプラスする

もしものときに備えて、防災グッズ(非常持ち出し袋)を用意している人がほとんどだろう(まだの人は、今すぐ準備を!)。そのなかに、辻さんおすすめのコロナ対策グッズを足しておこう。

 

辻さんがおすすめするのは、以下の7つ。

 

(1)固形石鹸 (2)マスク1箱 (2)逆性石鹸を薄めて小分けにしたもの 

(4)逆性石鹸 (5)体温計 (6)洗えるマスク (7)使い捨て手袋

 

逆性石鹸とは、石鹸とは言いながらも洗浄力はなく、細菌をやっつける効果があるもののこと。医療器具の消毒などにも利用されており、原液を1本持っておけば水道水などで薄めて大量に消毒液を作れるので便利なのだそう。薬局などで手に入るので用意しておきたい。

 

「生き抜くための感染予防法」を無駄にするべからず!

『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』には、辻さんがこれまで被災地で経験してきたことが活かされた「生き抜くための感染予防法」が満載だ。

 

そして、この本の最後に書かれていたことに、私は大きく感銘を受けた。

 

たとえば、避難所で消毒液を持っていない人がいたら、自分が持っている逆性石鹼の原液を薄めて分けてあげる。なぜならば、避難所内で感染者が出て流行してしまったら、自分自身の感染リスクも格段に上がってしまうから。自分一人が助かればいい……ではなく、災害をみんなで乗り越えよう! という心の余裕こそが、コロナ禍で生き抜くための大切な心意気。そんな辻さんの教えを胸に、できることから取り掛かりたい。

 

災害はいつ起こるかわからない。じゃあ、いつ対策するの? 今でしょ!!

 

【書籍紹介】

 

レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル

著者:辻 直美
発行:扶桑社

被災地での経験を生かした「感染予防法」が満載! 私は防災の専門家です。地震や水害に襲われた被災地で活動してきました。衛生環境の悪い被災地では感染症が発生します。それらを蔓延させないことが、私たちレスキューナースの使命なのです。その私が言います。「新型コロナウイルス感染症」も、災害です。しかも、「得体のしれない災害」です。人はわからないものに対して、不安になります。周りが不安になると、さらに不安になります。そんな不安を抱えてどうしたらいいかわからず、フリーズしている人が増えています。この本を読めば、その恐怖心を払しょくできます。

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“潰れたガムテ”がこんなに便利なんて! ヤマト「アウトドアテープ」がキャンプでも災害時も活躍する理由

2020年7月の豪雨水害は、本当に大変なものだった。全国1府34県で、浸水や損壊を含めた住宅被害が1万8000軒以上、甚大な人的被害も発生した。被害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます。実のところ筆者も、佐賀県在住の知人から「近所で土砂崩れに巻き込まれかけた」という話を聞いて、ゾッとしたものだ。

 

こういう自然災害は、いつどこで発生するか分からない。せめて備えだけは、普段からしておくべきだろう。皆さんも、非常用持ち出し袋など防災セットの準備は万全だろうか? 10月は上陸するような強い勢力をもつ台風が頻発する時期なので、今回は、防災セットに入れておくと助かるかもしれない文房具を紹介しておきたい。

 

持ち運べるコンパクトな粘着テープが役に立つ

飲料水やライト、防災ラジオはもちろん防災セットのマストだが、意外と忘れてならないのが、粘着テープ(布ガムテープ)だ。

 

緊急時の止血や骨折時に添え木を固定したり、割れた窓をふさいだり、避難所でダンボールを組んでパーテーションを作ったり。あとは油性マジックで書き込んで伝言を貼ったり、名札代わりにしたり。とにかく応用範囲がものすごく広いのである。

 

ただ、容量が限られた持ち出し袋の中に入れておくには、ちょっとかさばる。そこでオススメなのが、ヤマトから7月に発売された「アウトドアテープ」だ。

ヤマト
アウトドアテープ(全8色)
各590円(税別)

 

なにがオススメかといえば、それは見ての通り、コンパクトな形状が、である。モノとしてはごく普通の布粘着テープだが、一般的な製品と比べるとこれほどコンパクトなのだ。

↑並べて置くと、25m巻の粘着テープが巨大に見えるほど

 

サイズは約70×50mmの平巻きで、厚みも15mmほど(実測値。公称18mm)と薄い。1~2巻くらいは無理なく防災セットの袋に詰め込んでおけるはず。重量も1つがたかだか50gほどだ。

 

従来の粘着テープも、押し潰して芯を抜いて……という手を加えればコンパクト化はできる(筆者もそうして備えていた)のだが、それでも一般的な25m巻は思ったほど平たくはなってくれない。「アウトドアテープ」は3m巻とかなり短いが、それでも緊急時に持っておけるか分からない25mよりも、確実に携帯できる3mのほうが価値があるのは間違いないだろう。

↑引き出す時はこんな感じ(これで80mm)。もちろん手でビリッとまっすぐ切れる

 

平巻きでちょっと面白いなと感じたのが、テープの取っかかりが見つけやすい、というところ。巻きの端で切ると決めておけば、次に使う際にもテープ端がすぐ見つかる。グルグルと芯を回しながら「どこから使えるのかな……」と探す手間がないのだ。

 

また、端から端まででだいたい70~80mmになるので、長さを把握しやすいのも面白い。これなら、梱包時にやたらと長くテープを出し過ぎて無駄にする、というミスも減らせるかもしれない。

↑ダンボールの梱包にももちろん活用できる。3mと短いので、あっという間に使い切ってしまうのだが……

 

もうひとつ、ありがたいのがパッケージ。ゴム系粘着剤のテープは裸のままで長期保管しておくと、側面に染み出した粘着剤に埃が付着しがちだし、そうなると粘着力も確実に低下する。

 

「アウトドアテープ」は、ジップ付きの密閉袋にパックされた状態で販売されているので、このまま保管しておけば、少なくとも埃の付着は防げるし、携帯するにしても粘着のベタベタが他のものに付いてしまう心配がない。いざという時に使えない! のが致命的な防災グッズとして、これはかなり重要なポイントと言えよう。

↑パッケージはそのまま密閉できる保存袋として使える。粘着のベタベタも気にせず携帯できるのだ

 

↑テープの上から、油性マーカーや鉛筆で書き込み可能。被災時は伝言を書いて貼っておくなどするといい

 

もちろん、防災用としてだけでなく、名前通りアウトドア……キャンプや登山用としても、携帯しておくと便利。テントやシュラフの穴をふさいだり、汚れた衣服を圧縮パッキングしたり、などなど使えるケースは多いのだ。

 

なにより、グラム単位で荷物を軽くしたい登山行において、コンパクト&軽量さは圧倒的な正義だ。

 

↑我が家の防災袋にもすでに備えてある。粘着テープはアレコレ応用が利くので、邪魔にならないなら持っていて損はないのだ

 

それ以前に、ここまでコンパクトならば、オフィスデスクの引き出しとか家庭のリビングとか、もうどこにでも置けるし、見た目にも邪魔じゃない。ただ、価格的にはいささか普段使いはしづらいので、やっぱり「いざというときにあって助かる」系のツールだとは思うのだが。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
https://getnavi.jp/tag/kidate-review/

 

大型台風は早めに避難! でも避難しない場合、家ですべき準備と行動とは?

毎年夏から秋にかけて、台風が発生します。とくにこれからの時期は、強い勢力を保ったまま日本列島に接近したり上陸したり、油断できません。とくに近年は台風の勢力が増しており、甚大な被害をもたらすようになってきています。

 

近隣の河川の氾濫や土砂災害などのリスクがあるときは、早めに自宅を離れる必要がありますが、避難せずに自宅で過ごす場合、備えがあれば安心して過ごすことができます。在宅での台風対策としておさえておくべきことを、防災士の小西玲奈さんに教えていただきました。

 

秋になると、なぜ、台風の接近が増えるのか?

※資料=ウェザーニュース

 

そもそもなぜ、“秋は台風シーズン”となるのでしょうか?

「台風は、夏から秋にかけて多く発生しますが、夏は図のように日本の上空を太平洋高気圧が覆っているので、台風が入り込みにくくなっています。しかし秋になり、太平洋高気圧の勢力が弱まると、偏西風に乗って日本本土に台風が接近し、上陸しやすくなるのです」(防災士・小西玲奈さん)

 

大型台風は今後も増える可能性が高い!

では、ここ数年、台風の被害が増加しているのはなぜでしょうか? 記憶に新しいところでは、全国100カ所の観測地点で最大瞬間風速の観測史上最大値を更新した、平成30年(2018年)の台風第21号、千葉県や神奈川県で大規模な停電が発生した令和元年(2019年)の台風第15号“房総半島台風”がありました。そして同年の台風第19号“東日本台風”では、記録的な豪雨で東京の多摩川が増水し、武蔵小杉駅周辺の浸水や東京世田谷区、大田区の浸水など、甚大な被害が出ました。

 

「日本近海の海水温が上昇しているので、台風が勢力を弱めることなく日本に接近し、被害が大きくなる傾向が見られます。台風は今後ますます大型化する可能性があり、注意と対策が必要です」(小西さん)

 

台風が発生したら避難のタイミングを逃さないこと

※資料=ウェザーニュース

 

今は、日本全国どの地域に住んでいても、避難のタイミングや避難場所を把握しておくことはとても大切だと、小西さんは強調します。2018年の「平成30年7月豪雨」時に、気象庁や自治体からさまざまな災害に関する情報が発信されました。しかし、自治体からの注意喚起が住民には「伝わらない」「理解されない」といった状況が発生しました。多くの住民が避難のタイミングを逃してしまった結果、200人を超える死者・行方不明者が出るという大惨事に。

 

その教訓から、 2019年3月に内閣府の「避難勧告に関するガイドライン」が改訂され、国や都道府県が出す「防災気象情報」を5段階に分けた表に沿って発表されるようになりました。

 

「『警戒レベル』を参考にすることで、災害時にどう行動するべきかや、避難のタイミングがわかりやすくなりました。避難するタイミングは、家族構成や自宅がある地域の災害リスクによって変わりますが、警戒レベル5は、すでに災害が発生している状況なので、警戒レベル4までの段階で必ず避難を完了させてください。高齢者や乳幼児のいるご家庭では、警戒レベル3の段階で避難を開始するようにしましょう。警戒レベルに沿った、注意報や警報の内容、段階に合わせた取るべき行動の詳細は、国土交通省気象庁のホームページで確認できます」(小西さん)

国土交通省 気象庁HP「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html

 

続いて、台風に負けない部屋づくり、事前に行いたい準備などのノウハウを具体的に教えていただきます。

 

大型台風に備えておくべきこと・もの

続いて、台風に負けない部屋づくりのノウハウを、具体的に見ていきます。「台風への対策は、普段から備えておくことと、台風の発生後に準備することの2段階があります。『今週末、もし大型台風が来たら……』とシミュレーションしながら、ひとつずつチェックしていきましょう!」(小西さん)

 

対策1. 窓ガラスの補強

大型台風が発生したときにマンションの被害で多いのが、窓ガラスの破損。これは、強風そのものの影響というよりも、強風によって飛ばされたものが窓にぶつかることで起こります。

 

「対策としては、シャッターや雨戸を閉めるのが一番です。シャッターや雨戸がない場合は、リフォームで取り付けたり、窓ガラスを防犯ガラスに変えたりすることをおすすめします。それらの対応が難しい場合は、『飛散防止フィルム』や『防犯フィルム』を用意し窓ガラスに貼りましょう。こうすることで、万が一、窓ガラスが割れてしまっても、ガラスの飛散を最小限に抑えられます。

 

シャッターや雨戸がなく、防犯ガラスや防犯フィルムなどの窓ガラス破損対策が間に合わない状態で台風が接近した場合は、応急処置として段ボールを使った窓ガラスの飛散対策を行ってください。窓ガラス全体を覆うように屋内側から段ボールを敷き詰め、後で剥がしやすいような布製のガムテープか養生テープで貼り付けます。また、強風注意報が出たら、建て付けの悪い網戸は、家の中へ入れておきましょう」(小西さん)

 

窓ガラスの飛散には、次のようなグッズを活用しましょう。

 

・窓ガラスが粉砕するのを防ぐ「飛散防止フィルム」

アサヒペン「UVカット防災超強飛散防止シート(BH-1) クリア透明 46cm×2m」
2178円(税込)

窓ガラスが割れるとガラスの破片が飛び散ります。台風の強い風が吹き付ける中で窓ガラスが割れるようなことがあれば、破片が部屋の中で舞い散る可能性があり、とても危険。こちらのポリエステル製の透明シートを窓ガラスに貼ることで、飛散物が当たって窓ガラスが割れた場合に、ガラス破片の飛び散りを防げます。食器棚などの家具のガラスに貼ることで、地震対策としても有効です。

 

・窓ガラスの強度も上げる「防犯フィルム」

ノムラテック「保険付・透明ガラス専用防犯フイルム 360ミクロン A3 2枚入」
3002円(税込)
※実売価格につき販売店舗により異なります。

防犯フィルムとは、窓ガラスを割って鍵を開け、部屋に侵入しようとする犯罪者への対策目的のアイテム。窓ガラスをハンマーで叩いても簡単に割れない強度が保てるので、台風時の飛散物による窓ガラスの破損防止にも効果的です。こちらは自分で貼れるタイプで、手頃な金額が魅力です。専門の施工業者に依頼するオーダータイプもあります。

 

対策2. ベランダや庭の片付け

台風が接近、または上陸する前日までにベランダや庭にある植木鉢や物干し竿、ゴミ箱、パラボラアンテナなどを家の中にしまいます。

 

「これらが台風に飛ばされると、自宅だけではなく、近所の窓ガラスを割ったり、避難途中の人にケガをさせてしまったりする危険があるので、早めに対応してください。また、排水口にゴミや落ち葉砂などが詰まっていると浸水のリスクが高まるので、詰まりがあれば台風が居住区に接近する前日までに掃除をしておきましょう」(小西さん)

 

対策3. 車・バイク・自転車の避難

大型台風の発生時には、車やバイク、自転車の駐車状況のチェックも欠かせません。

 

「屋外や冠水の危険がある場所に駐車している車は、できるだけ“高台にある屋内”に避難させましょう。車を移動した後、公共交通機関や徒歩での帰宅が必要になるので、台風が接近し上陸する半日前までに対処しておきます。車を避難させるタイミングで人も避難するという選択肢もあります。
バイクや自転車は、台風が接近する半日前までに、できるだけ地下ではない屋内へ避難させましょう。そのような対応が難しい場合は、バイクや自転車を横に倒しておく、もしくはロープなどで柱に固定してください」(小西さん)

 

台風では、暴風や浸水による被害のほか、停電などライフラインが寸断されることも想定しなければなりません。それにはどう備えればいいでしょうか?

 

対策4. ライフライン寸断への備え

台風で飛ばされた物が電線を損傷したり、大雨による土砂崩れで電柱が倒れたりすると、停電が起こります。送電線の破損がひどい場合は、数週間の停電になる可能性も……。

 

「大型台風の上陸が予想された段階で、ペットボトルに8割ほどの水を入れて凍らせ、停電中の冷蔵庫内の保冷キープに備えましょう。溶けた水は飲料になります。乾電池の予備やライト、ろうそく、カセットコンロやガスボンベのストックを確認し、手に取りやすい場所に常備しておきます。リスクを分散するために、2階や玄関などに複数の場所に備えておくことも大切です」(小西さん)

大型台風が近づき3〜4時間後に居住区を通過することが予想される場合は、入浴や食事を済ませてください。停電が起きたりライフラインが止まったりする場合に備えて、簡易に食べられる物を用意します。災害に特化した非常食でなくても、おにぎりやパンなどでもいいですよ。これにより、保存食に手をつけずに数日分の食事を確保できます」(小西さん)

 

対策5. 食糧の備蓄

長期化する停電や高範囲に渡る被害が出ると、救援物資が届くまでに日数がかかります。日頃から日持ちのする食材ストックを確保しておくことが大切です。

 

「水道、電気、ガスといったライフラインが使えなくなった場合に備えて、食糧と水を最低でも3日分、できれば1週間分ストックしておきましょう。免震構造などの対策が充分に施されているタワーマンションや築浅マンションの場合、倒壊や全壊のような被害は少ないので、避難せずに自宅で過ごせる可能性が高くなります。とはいえ、エレベーターが使えないことで物資不足が起こりやすくなるので、非常食や水などのストックは多めに備えておいた方がいいでしょう」(小西さん)

 

対策6. 生活必需品の備蓄

停電になると、電気やガスだけではなく、トイレやお風呂も使えなくなってしまうことがあるので、非常時に使うアイテムは手に取りやすい場所に保管しましょう。

 

・ランタン……停電した際のリビング、キッチン、トイレなどの照明に。3個以上はあると便利。
・非常用トイレ……下水道が使えなくなったときのトイレとして。
・マスク……数十枚入った使い捨てタイプの箱入りのものが好ましい。
・アルコール消毒スプレー、ハンドジェル……普段用のストックを兼ねて3~5本を常時しておくと安心。
・カセットコンロとガスボンベ……ガスボンベ1本で約1時間の加熱調理が可能。
・ラジオ……スイッチを入れたらすぐにラジオが聞けるようにチューニングを済ませておく。
・ポリタンクとキャリーカート……ポリタンクに断水時の水を入れ、キャリーカートを使って運ぶことを想定。マンションのエレベーターが使えない場合を想定し、階段移動に使える大きめのリュックも備えておきたい。
・口腔ケア用のウエットティッシュ……水道が使えなくなった際に歯ブラシ代わりとして使用。口の中に入れられ、アルコール不使用なので、体や食器拭きなど、多用途で使える。「災害時は水や口腔ケア用品不足で、口腔ケアが疎かになりがちです。その結果、口の中にバイ菌が繁殖し、感染症や肺炎を引き起こす可能性もあります。必ず、多めにストックしておきましょう」
・ラップ……断水時にお皿に敷いて使う。応急手当や体に巻いて防寒具としても使える。
・カイロ……雨に濡れたり、避難所生活をしたりすると体が冷えやすいので必要。

 

「災害用伝言ダイヤル171」を活用しよう

災害時は、通信障害が起きることもあります。普段、スマホで簡単に連絡が取れる生活に慣れているので、急にネット環境が途絶えてしまうと、パニックになりかねません。

 

「一番連絡がとりやすいのは『災害用伝言ダイヤル171』です。平時は利用できませんが、毎月1日や防災週間などに体験利用ができるので、試してみるといいでしょう。ほかにも、『避難などで家を離れるときは、ここにメモをおいておくね』などと、アナログでできる連絡手段を共有しておくこともおすすめです」(小西さん)

 

『災害用伝言ダイヤル171』体験可能日
・毎月1日、15日 0:00~24:00
・お正月三が日(1月1日 0:00~1月3日 24:00)
・防災週間(8月30日 9:00~9月5日 17:00)
・防災とボランティア週間(1月15日 9:00~1月21日 17:00)

 

【伝言を録音する場合(暗証番号なし)】
1.「171」に電話をかける
2.「1」を押す
3. 被災地の方の「市外局番からの電話番号」または「携帯電話番号」を押す
4.「1」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)
5. 伝言を録音する
6.「9」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)

 

【伝言を再生する場合(暗証番号なし)】
1.「171」に電話をかける
2.「2」を押す
3. 被災地の方の「市外局番からの電話番号」または「携帯電話番号」を押す
4.「1」を押す(ダイヤル式電話の場合はそのまま待つ)
5. 伝言を聞く(次のメッセージを聞く場合には「3」を押す)

災害用伝言ダイヤルの使い方
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171/index.html

 

ほかにも、普段から備えておくこととして、避難場所や避難経路を確認しておく、家屋や車などが被害に遭ったときの補償はどうなっているか「火災保険」「車両保険」「傷害保険」などの条件や補償の範囲、最高補償額をチェックしておくことも大切だと小西さん。

 

「日頃から大型台風に備えた準備や対策をしておくことで、台風が近づいてきたときに、自分がどう行動するべきか、冷静に判断できるようになります。情報キャッチ力も上がっていくので、ご近所のみなさんをサポートできたり心強い協力体制が育まれたりします。まずは、できることから始めていきましょう」

 

【プロフィール】

防災士 / 小西玲奈

ひょうご防災リーダー ・ 応急手当普及員。危機管理室と協働で小学生の親子向け減災教室や乳幼児を子育て中のママ向けの減災セミナーを開催しているほか、これまでに2700人以上を対象に90回以上の講演活動やワークショップを行う。一児の母。

 

危険箇所をチェック!マンション防災士が教える、賃貸物件にも使える「地震対策」

日本列島全体の地殻に大きな影響を与えた2011年の東日本大震災を境に、全国で地震活動が活発化しています。今年4月〜5月に発生した震度3以上の地震回数は昨年と比べ2倍以上となっており、専門家からは、「日本は『大地変動の時代』に入った」という声も聞かれます。

 

「ここ数年間は北海道から九州までいろいろな場所で地震が起きており、日本列島のどこで地震が起きるかわからない状況です。また、歴史的にみて首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大地震災害が近い将来に起きることは間違いありません」と語るのは、マンション防災士の釜石 徹さんです。

 

迫りくる巨大地震を見越して、大切な命を守るために、私たちはどのような備えをするべきなのでしょうか。“死傷者を出さない備え”を柱に減災対策を展開している釜石さんに、自宅で行うべき地震対策について聞きました。

 

住まいでの地震被害から身を守る上で最も重要なことは?

ジャストシステムが行った「新型コロナウイルスと、地震対策に関する実態調査」(調査期間 2020年6月19日〜21日・調査対象 20歳〜69歳の男女1000名)によると、自宅で何らかの地震対策を行っている人の割合は5割に届かず、43.7%という結果に。では地震対策を行っている人に自宅で実施している地震対策を聞くと、もっとも多かったのが「非常食や飲料水の備蓄」で64.8%、次いで「家具の転倒防止対策」が57.7%、「非常用持ち出し袋・リュックの用意」が51.5%でした(複数回答あり)。

 

上記の地震対策はどれも大切なことですが、住まいで命を守るために最も大切な対策はどのようなことでしょうか?

 

もっとも重要なのは、耐震性のある家に住むことです。せっかく防災対策を備えていたとしても、耐震性のない家が倒壊したら防災対策は何の役にも立ちません。耐震性がない家は、耐震性がある家と比べて揺れが格段に違います。賃貸アパートやマンションの場合、『震度6~7でも倒壊しないこと』という新耐震基準を満たしている建物を選ぶことです。1982年までに建築された建物は要注意です。賃貸契約の前に、必ず『この建物は新耐震基準を満たしていますか?』と聞いて耐震性のある建物を選んでください」(マンション防災士・釜石 徹さん、以下同)

 

家の中で死傷しないためにまずすべきことは?

次に、家の中ではどのような対策を行うべきなのでしょうか?

 

「まず、各部屋の家具や家電の転倒・落下防止を行ってください。冷蔵庫や本棚などが頭や胸の上に倒れてくると、頭部打撲や胸部圧迫により重症を負う可能性があるからです。阪神淡路大震災のときには、大型タンス、食器棚、冷蔵庫や書棚の転倒、大型ブラウン管テレビ、パソコン本体やモニター、電子レンジ等の落下、ピアノの暴走衝突もありました。普段の生活の中で、リビングなど長い時間いる場所と寝ている場所に転倒・落下するような家具や家電があれば、そこが危険な場所になります」

 

また、大型家電や家具の転倒は、震度で決まるものでないと釜石さんは続けます。

 

「震度4でも10階以上の高層階では家具や家電は転倒・落下します。また、地震の揺れ方や床や台の滑り具合でも変わります。したがって、震度6強くらいの震度でも転倒落下しないように固定しておくことが必要になります。家電の転倒・落下防止以外にも、食器棚などガラスを使った家具へのガラス飛散防止フィルム貼付、冷蔵庫など開き扉への耐震ラッチの設置、ガラス照明などの非ガラス化などの対策が重要です」

 

首都直下地震では家具が跳ね上がる!?

首都直下地震は、緊急地震速報が鳴ったと同時か鳴る前に、突然大きな揺れが襲ってきます。

 

「首都直下地震の揺れはとても激しいもので、自分の身を守ることで精一杯となるでしょう。そして停電、断水、ガス停止などがいっせいに起こると思われます。揺れがおさまれば家の中はグチャグチャとなり、足の踏み場もない状態になっているでしょう。さらに首都直下のような巨大地震では、テレビや家庭用プリンタ、電子レンジなどが飛び跳ねて、頭に当たれば大けがをします。あるいは体が吹っ飛ばされるかもしれません。一歩も動けずにしゃがみ込むしかできない状態かもしれません。

 

このため、賃貸物件であっても、家電の転倒・落下防止を中心とした、家の中の地震対策が重要なのです。近頃は賃貸物件でも壁や床、天井を傷つけずに対策できるグッズが充実していますので、そういったものを使いながら、対策していきましょう」

 

プロが伝授!具体的な家具の転倒・落下防止対策

ここからは、神奈川県内の7階建賃貸マンションの2階に家族4人で暮らす岡本さんのお宅のキッチン、リビング&ダイニングを例に挙げ、すべき地震対策について、マンション防災士・釜石さんにポイントを解説いただきながら、必要な家具の転倒・落下防止グッズを紹介します。グッズはいずれも、部屋を傷めずに使えるものです。

 

●キッチン

旦那さんが転勤族ということもあり、自宅の地震対策はほとんどしていないと話す岡本さん。まずはキッチンをチェック。釜石さんが最初に目をつけたのが、ガスコンロの背後にある冷蔵庫です。

 

「大きな地震では冷蔵庫の扉が開き、バランスが悪くなって冷蔵庫本体が倒れてきます。冷蔵庫が倒れると大けがする心配があるだけでなく、食品が飛び出たり、配置によっては通路を塞いだりと、地震後の被災生活にも支障をきたします。そのため、冷蔵庫の転倒防止と冷蔵庫の扉に自動ロックを取り付ける必要があります」

 

【冷蔵庫の転倒防止対策 1】
家具や天井を傷つけずに設置できる伸縮棒

アイリスオーヤマ「家具転倒防止伸縮棒2本セット(3S~L)」
参考価格1408円~1865円(税込)

「冷蔵庫をはじめ、本棚や食器棚、タンスなど背の高い家具と天井とをガッチリ固定し、転倒を防止します。工具を使わずに簡単に取り付けできますし、天井にも傷がつきにくいので、賃貸でも安心して使えます。使用にあたっては、天井までの距離が100㎝未満であることが条件です。ただし突っ張り棒が長くなれば強度が弱まるため、天井までの距離は、60cm以下であることが望ましいですね」

 

↑「伸縮棒は、壁側いっぱいに、2本が並行になるように取り付けます。伸縮棒の使用には、取り付ける天井に突っ張っても大丈夫な強度があることも条件になっています。もし天井がブヨブヨとした柔らかい素材であれば、次に紹介する『ガムロックnewBB』で固定してください」

 

【冷蔵庫の転倒防止対策 2】
最大300kgに対応!大型家電や大型家具の転倒&滑り防止に

アイディールブレーン「ガムロックNew BB」
実売価格:6050円(税込)

「強粘着ゲル剤が変形し、家電や家具、壁への衝撃を1/4に低減し、転倒を防止します。家具や家電の種類によって選べるガムロックシリーズの中でも、こちらのNew BBは、シリーズ最大の300kg対応で、冷蔵庫のような大型家電に最適です。前述の通り、天井の材質で、冷蔵庫の転倒防止に突っ張り棒が使えないご家庭へもオススメしています」

 

↑「なるべくベルトが水平になるよう注意しながら、冷蔵庫の天面と壁に、プレートをそれぞれ貼り付けます。ポイントは、ベルトがわずかにたるむ程度に固定することです。尚、冷蔵庫の両サイドにつけてくださいね」

 

【冷蔵庫の扉開放防止対策】
地震を感知して自動で扉をロックする耐震ラッチ

リンテック21「ロックヤモリ」
実売価格:1650円(税込)

「大きな揺れで冷蔵庫の扉が開くと、中の食品が一斉に飛び出すのは前述の通りです。それを防ぐために扉開放防止策が必要です。こちらは、震度5以上の地震を感知すると、自動的に扉をロックする耐震ラッチです。強力接着パッドによる設置で、冷蔵庫を傷つける心配なく簡単に取り付けることができます。電源は不要なので、電池切れや停電の心配がいらないのもポイントです。もちろん、通常の開閉で作動することはなく、普段は何の支障もなく使用できます」

 

↑「片扉の冷蔵庫の場合は1個、両扉の場合は写真のように2個をそれぞれの扉に設置してください。台座付きの本体部を冷蔵庫の天板に、扉用ラッチを冷蔵庫扉に接着固定して使います。冷蔵庫の食料品は、被災時の食生活を支えます。ご自宅の冷蔵庫を食料備蓄庫として考え、非常時にも使える備えをしておきましょう」

 

次に釜石さんが指摘したのが、シンクの背後にある、食器棚の上に置かれた電子レンジです。

重量もあるので、岡本さんも気になっていたのだとか。「洗い物をしているときに大きく揺れたら、電子レンジが飛び跳ねて頭や体に当たれば、大けがをする危険性があります。ネジを使わない転倒&滑り防止器具による固定が必要です」

 

【電子レンジの転倒防止対策】
強力接着パッドで簡単に設置!

リンテック21「リンクストッパーT型(4本入り)<LS-484>」
実売価格3080円(税込)

「電子レンジなど家電製品の側面に強力固定し、地震による転倒と落下を防止します。電子レンジのように、底面に隙間がある家電に向いています。電子レンジを置いたキッチンボードや食器棚を固定していても、そこに置いた電子レンジは固定していないというご家庭が見受けられます。必ず両方を固定してください」

 

↑「電子レンジの側面四隅に接着して使います。別売りの専用剥離工具でキレイに剥がすことができるで、気軽に使えます」

 

電子レンジが置かれた食器棚は、ガラス戸になっています。

「大きな揺れでは、食器棚の中の食器が、食器棚が倒れる前に前面のガラスを破ってガラスと食器の破片が飛散してケガをする可能性があります。ですから、まずは食器棚が倒れないように、壁に固定しましょう。また、食器棚自体は倒れなかったとしても、中の食器が飛び出してケガをする可能性があるので、ガラス面にはガラス飛散防止フィルムを貼ることが大切です」

 

【食器棚の転倒防止対策】
壁も対象物も傷つけずに転倒を防止!

サンワサプライ「耐震ストッパー(2個入り)<QL-78>」
標準価格3278円

「特殊素材ポリウレタンフォームが振動を吸収し、キャビネットなどの転倒を防止する耐震ストッパーです。ネジなどを使いませんから対象物も壁を傷つけずに転倒
&滑りを防止する設計なので、賃貸にお住まいの方でも安心して使えます。繰り返し使える特殊粘着素材という点もポイントです」

 

↑「ストッパーの小さい方の面を対象物の角から5cmくらいのところに貼り付け、もう一方の面は壁側に貼り付けます。いずれも3〜4回押し付け、しっかり固定してください。ストッパーは左右2箇所に貼ります。食器棚を壁面から20cmほど離すと、固定しやすいですよ」

 

【こちらもおすすめ!】
食器棚専用のガラス飛散防止シート

ニトムズ「食器棚用ガラス飛散防止シート<M6130>」
実売価格638円(税込)

UVをカットしながら地震や台風によるガラスの飛散を防止する、ニトムズのガラス飛散防止シート。5種類のバリエーションがあるうちの、こちらはキャビネットや食器棚のガラス面の幅に合わせやすいサイズの食器棚用です。キレイに貼れる専用ヘラ付きで、初心者でも気泡が入りにくく、キレイに貼れると定評があります。

 

ほかにも、キッチンで釜石さんが気になった場所があります。

「シンク上、観音扉の作りつけ棚の観音扉ですね。揺れると扉が開いて中のものが飛び出します。特に炊飯器が危険です。最も有効な対策は、耐震ラッチを取り付けて、揺れたらロックがかかり、開かないようにすることです。加えて、使わない炊飯器は処分するか別の場所に移動することをおすすめします」

 

続いて、リビング&ダイニングをチェックしてみましょう。

●リビング&ダイニング

首都直下地震のような巨大地震では、ダイニングの写真に写っているものすべてが跳ね上がることが予想されると話す釜石さん。

 

「跳ね上がって飛んでくれば、それが頭や体に当たって大けがをします。残念ながらテーブル椅子を確実に固定する器具がありません。揺れがそれほど大きくなければ机の下にもぐって机の脚をつかんでいれば飛んでくるものから身を守ることができますが、首都直下地震の場合は、テーブルごと飛ばされるでしょう。また、電球がガラスである場合、大きく揺れて天井に当たると電球が割れてガラスの欠けが部屋中に飛散する危険性があります。照明器具を非ガラスのLED照明に交換することをおすすめします」

首都直下地震では、液晶テレビ、テレビボードが跳ね上がり、テレビを見ている人に向かって飛んでいくことが予想されます。「万が一、それが頭や体に当たってしまったら、大けがかそれ以上のことが起こる可能性が高いです。ご自宅の中でもリビングは、お子さんをはじめご家族が長く過ごすことの多い場所ですから、液晶テレビもテレビボードも、壁にしっかり固定していただきたいと思います」

 

【テレビとテレビボードの転倒防止対策】
壁から離れた家具や家電をしっかり固定

アイディールブレーン「ガムロック SB」
実売価格6600円(税込)

「バックル付きベルト2本とゲルパッドがセットになっています。40cmのベルトで壁から離れた家具、家電の転倒防止に役立ちます。パイプラック支柱のループ固定にも使えます。青いバッドは、家電等の滑り防止に使います。台の部分に貼り付け、液晶テレビをテレビボードの上にしっかりと固定しましょう」

 

↑「強粘着ゲル剤のプレートに付いたベルトで液晶テレビの後ろ側と壁をつないで固定します。前からは見えませんので、景観を損ねない点も魅力です。また、バックルでの取り外しができるので、掃除のときに邪魔になりません」

 

↑「テレビボードの固定には、食器棚の転倒防止対策でご紹介した、耐震ストッパーを使います。こちらのご家庭のテレビボードは前面がガラス戸になっていますが、テレビボード自体を固定させればガラスが割れる可能性が低くなります。また、テレビボードの隣にある絵本棚も、耐震ストッパーで固定してください。絵本棚は重そうなので、耐震ストッパーを上部と側部に取り付けて壁に固定させましょう」

 

キッチンとダイニングを仕切る壁には飾り棚が取り付けられ、キッチンカウンターにはドライフラワーや雑貨類が並びます。

リビングの窓辺には、青々としたグリーンが置かれていました。

インテリアをおしゃれに演出し、暮らしを豊かにするアイテムは、私たちの生活に欠かせませんが、どのような地震対策をすればいいのでしょうか?

「キッチンカウンターの上にあるもので、飛んで頭に当たってケガをする物は、次に紹介するガムロックPLのようなでゲルパッドで固定します。窓辺の植木鉢や、ソファ周辺の地球儀、音楽プレーヤーも飛んできて、当たったらケガをしますので、同様にゲルパッドで固定してください」

 

【グリーンや小物の転倒防止対策】

アイディールブレーン「ガムロック PL」
実売価格2200円(税込)

「大きな揺れによる衝撃を吸収し、対象物の滑りを防止するゲルパッドです。小物類だけでなく、プリンタや背の低い家具、家電などの下に敷いて使うこともできます。5cm弱と小さいですが、200kgの重さのものまで対応します」

 

↑「対象物の底面に貼り、建物にしっかり固定された家具の上などに貼り付けます」

 

↑「ソファの横に置いてあるガラス製の花瓶は、台と一緒に飛んできて当たってケガをしますし、割れてガラスの破片が散らばってもケガの原因になるため、固定できない台の上に置くことは避けましょう」

 

↑「花瓶は、グリーンを置いた窓辺の棚やキッチンカウンターなど、作りつけの家具や建物にしっかり固定された家具などにゲルパッドで固定することをおすすめします」

 

後悔しないためにも家庭の防災対策の徹底を

「“地震国”に住みながら、ほとんどの方は、自分や家族が地震で死傷するとは思っていません。ところが、内閣府・防災情報サイトの『一日前プロジェクト』では、大災害で大ケガをしたり、家族を亡くしたりした人が、“災害の一日前に戻れるとしたらあなたは何をしますか”という問いに答えています。

『地震のことをもっと知っておきたかった』『タンスを固定しておけばよかった』『テレビが飛ぶことを教えてくれればテレビの前では寝させなかった』『寝ている子どもの上に本棚が倒れるとは、置き場所を変えておくべきだった』など、そこには防災対策をしておけばよかったという反省の言葉ばかりが並んでいます。

みなさんには、大切な家族を失ってから後悔することがないことを願います。また、お子さんが、将来経験する大災害にもしっかりと対応ができるように、みなさんが防災対策を実践しながらぜひ伝えていただきたいと思います。人生に悔いを残さないために、家族みんなが笑顔で無事で生きていけるように、家庭の防災対策を今一度見直していただくことを切に願います」

 

いつ来るかわからない地震への備えは、おろそかになりがちです。しかし、「家具や家電の転倒防止をしていてもけがをしますが、重症になる可能性は低くなります」と釜石さんは言います。まずは、1日のうちで最も長く過ごす場所から、転倒や落下の危険があるものを取り除いていきましょう。

【プロフィール】

マンション防災士 / 釜石 徹

金融機関に勤務しながら防災対策の研究を続けていたが、防災コンサルタントとして独立後、大地震でも死傷者を出さない備えや長期在宅避難の覚悟と備えに重点をおいて、防災講演やセミナーを通して防災対策の普及に取り組んでいる。

 

地震に台風…危機管理アドバイザーが教える、女性のための防災講座

防災と聞くと、「災害時のために食品の備蓄をしておく」とイメージする人もいるかもしれません。しかし実は食料のことだけでなく、他にもさまざまな準備が必要です。命を守れるよう準備することはもちろん、実際は命の危険がなくなったあとも、多くの困難が待ち受けることを想定しておく必要があります。

 

特に女性は、避難所での性犯罪被害など二次被害を受けるケースが後を絶たず、災害のたびにニュースで報じられています。また、衛生面が保たれない状態で過ごす日が続くなど、精神的な苦痛も。命の危険に比べたらそのくらい、と思えるかもしれませんが、何週間、何ヶ月と続いたり、終わりが見えなかったりしたらどうでしょうか。備えは万全にしておきたいものです。

 

今回は、女性の防災に詳しい危機管理教育研究所代表の国崎信江さんに、女性がすべき防災準備について教えていただきました。

 

災害が起こる前に考えておきたい4つのこと

災害が起こったとき、冷静な判断をするのはなかなか難しいものです。そこで、ゆとりのある日常を過ごしているときに、自宅や通勤路などに目をやり、災害時のことを想像してみましょう。ここでは日頃から意識しておきたいことを紹介します。

 

1.持って行きたい荷物をリストアップ

非常食をはじめ避難生活で必要となるアイテムが入った非常持ち出し袋を備えている人はいても、衣類や洗面用具、さらにどうしても持って行きたい大切なものまで用意している人は少ないでしょう。災害時は当然、そこまで気がまわりません。そこで、普段から数日分の宿泊セットと、どうしても持って行きたい大切なものを、旅行鞄に詰めて置いておくか、リストアップしておくと慌てずにすみます。

 

「服や下着などは2〜3日分の準備をしておきましょう。動きやすく、そのままでも眠りやすいものがよいと思いますが、どうしても失いたくない大切な服を詰めるのがよいでしょう。お金を出せば買えるものは諦めて、代わりのきかないものを持って行きます。また、契約書などの重要書類はいつもひとまとめにして置いておき、何かあったらすぐ持ち出せるよう準備しておいてください。荷物は、地震で扉が開かなくなってしまう可能性がある場所ではなく、ベッドの下などすぐに取り出せる場所に置いておきましょう」(国崎さん、以下同)

 

2. 自宅や会社の地盤や耐震性は?

自宅や会社など、よくいる場所の地盤や耐震性を確認しておくことも重要です。同じ程度の耐震性のある物件でも、どんな土地に建っているかで被害状況は違いますし、地盤や耐震性を知ることで、会社にいるより自宅の方が安全、あるいはその逆、といったことが判断できるようになります。

 

海や川などに近い土地では、その場所が海抜何メートルなのか、川が氾濫した場合の避難場所なども調べておきます。最近は台風被害も多いので、浸水しやすい場所も知っておきましょう。

 

「土地の安全性や地盤については調べるとすぐにわかりますし、建物の耐震性は、賃貸であれば不動産業者やオーナーに電話一本で確認することができます。自分のいる場所がどのくらい危険なのか、どこに行けば安全なのかは常に周りを見渡して確認しておきましょう」

 

3.外で被災したときに避難できる場所は?

外にいると、家にいる家族やペットのこと、自宅のことが気にかかって、何時間歩いてでも自宅に帰ろうとするものです。しかし、徒歩で帰宅することで命の危険にさらされる場合もあるのです。

 

「歩いている最中に火災や地割れなどに遭遇したり、ガラスが降ってきたり、混乱した人混みの中では怪我や事故が起こる心配もあります。夜な夜な暗くなった道を歩き続けるのも不安です。無理に帰ろうとせずに、近くのホテルやデパートなど、寝食やトイレに困らなさそうな場所に飛び込んで避難させてもらい、事態が落ち着いてから行動しましょう。和室がある公民館や、個室がありプライバシーが守られる漫画喫茶などでも構わないので、日頃から避難できそうな場所をいくつも考えておいてください」

 

4.被災地から出る「震災疎開」の方法は?

災害が起こると、ライフラインに影響が出るのはもちろんのこと、地震の場合はいつまで続くのかわからない余震や、減っていく食料への不安など、精神的な苦痛がたくさんあります。被災したらまず避難所、ではなく、代替輸送機関を利用する手段も考えながら交通機関が麻痺しないうちに、その場を離れるのもひとつの手。

 

「被災地に留まっていると、不安を感じたまま日々を過ごさなくてはなりませんし、東京など大都市では避難所に人が入りきらない可能性があるとも言われています。仕事のことなど、考えなくてはならないことがいろいろあるとは思いますが、まずは自分の命を守ること、精神的ストレスがなるべくなく過ごせることを第一に、『震災疎開』という考え方をしてみましょう。疎開先にできる親戚や友人の家など、すぐに身を寄せられる場所をリストアップしてみてください。安く泊まれるカプセルホテルやウィークリーマンションなどもありますから、動けるならば早いうちに、通常の生活を送れる土地に疎開しましょう」

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日常的にできる、命の危険がない部屋づくり

災害が起こったとき、考えるべきことは「プライバシーの守られた場所で、いつも通りの生活ができるかどうか」だと国崎さんは言います。

 

「女性は避難所に行くよりも、できれば慣れた自宅で過ごせるよう、日常的に被害の少ない部屋づくりを心がけましょう。ガラスや陶器、重い木でできた家具などは、どんなものも凶器となりますから、日頃から防災に意識を向けて、ものを選ぶときはなるべく“割れないもの”“軽いもの”“柔らかいもの”を意識して購入します。たとえば我が家では、壁掛け時計も紙製のものを使用したり、食器類も割れないセラミックやアルミ製のものを揃えたりしています」

【すぐにできる防災準備】

・食器や部屋の装飾品はガラスや陶器のものを避けて、割れないものにする
・壁に飾る絵は落ちたり飛んできたりするので、ウォールシールにする
・花瓶や雑貨などを飾るときは、滑り止めシートを使う
・食器棚には必ず滑り止めシートを使い、ロックを忘れない
・本棚の本は、地震のとき落ちてこないよう、隙間なくびっしり詰める
・本棚の本は、手前だけに滑り止めシートを貼る(全面に貼ると本が取り出せなくなってしまう)
・大きな家具はすべて固定する
・キャスターつきの家具は、動きにくいよう対角線上にロックをしておく
・トイレや風呂場など閉じ込められやすい場所には、笛やペットボトル飲料を常備しておく
・入浴中の被災に備えて、風呂場にはワンピースなど、すぐに着られる服を備えておく
・生理用品を常に3枚ほどハンドバッグに入れておく
・普段から缶詰の食品やレトルトのものを買い置きし、保存食も2日分くらい準備しておく

横浜岡田屋のおいしく食べられる保存食「HOZONHOZON」

かわいいパッケージとおいしい非常食として人気のあるHOZONHOZONは、鯛めしやトマトごはんなど、種類も豊富。「非常食は、残念ながらおいしいものがとても少ないなと感じます。ストレスフルな環境のときこそ、おいしい食事に救われますし、賞味期限が近くなってきたら食べることを考えると、なおさら、非常食を買うときは味についても吟味したいものです」

 

避難所に行ったら早く仲間をつくり協力体制を

学校の体育館や役所などを開放した避難所は、多くの被災者を受け入れてくれる大切な場所です。しかし一方で、停電した広い体育館で、見ず知らずの大勢の人と隣り合わせでずっと過ごさなくてはならない環境は、女性にとって過酷でつらいもの。

 

「女性の場合は特に、真っ暗闇で誰に何をされるか不安でたまらない時間が続くと思ってください。レイプ被害などの他にも、眠っているとき毛布の中に手が入ってきたとか触られた、ということも大変多く聞きます。そのような状況下では、眠れないばかりか正気を保っていられなくなるので、まずは同じような境遇の方に声をかけ、協力し合える関係をつくりましょう。男性と一緒にいる方が性被害に遭いにくいとも言われていますので、数名の女性が集まったところで、信頼できそうな男性にサポートをお願いすると安心です」

 

ここまで、災害への備え、また災害時に気をつけるべきことをまとめましたが、続いて、外出先でも対応できるよう、いつもバッグに入れておきたい「防災7つ道具」をご紹介します。

バッグにいつも入れておきたい7つ道具

外出先で被災したとき、ちょっとの備えがあるとその場をしのげるものです。いつもバッグに携帯しておきたいものを、国崎さんに伺いました。

 

1.止血パッド
「外出先で怪我をしたとき、『助けて』と周囲に言っても聞いてもらえる余裕はありません。ガラスなどでざっくり切ってしまうことを考えて、持っておくと安心です」


昭和技研「止血パッド」/危機管理教育研究所
8000円(小サイズ・10枚)

 

2.携帯トイレ
「被災すると、トイレはどこも長蛇の列だと思ってください。ハンドバッグにも入るサイズの携帯トイレを持っていれば慌てず我慢しなくてすむでしょう」(国崎信江さん)


マイレット「マイレットmini-1」
170円

 

3.携帯電話の充電器
「ソーラーパネルつきのモバイルバッテリーがオススメです。また、万が一閉じ込められたときにSOSを発信できるアプリをスマホに入れておくと役立ちます」

 

4.マスク
「できれば粉塵用のマスクがいいですが、普通のものでも構いません。ビルの倒壊などで粉塵を吸い込む可能性もあるのでマスクは必須でしょう」

 

5.ウェット手袋
「手袋の形をしたウエットタオルで、頭皮を揉むように洗うことができます。泡も出ませんし拭き取りも不要なのにすっきりと落ちるのでおすすめです」


四国紙販売「水のいらない泡なしシャンプー「ウェット手袋」
3000円(10枚)

 

6.水電池
「水を入れるだけで発電する道具で、飲料用水だけでなく、雨水や尿でも発電できる優れものです。懐中電灯や携帯電話などの充電ができるよう常備しておきましょう」


ナカバヤシ「NOPOPO」
648円

 

7.レインポンチョ
「雨天だけでなく寒さ対策や粉塵から身を守るなどのときにも使えるので、小さく折りたためるものを持っておくとよいでしょう」(国崎信江さん)

 

今年6月18日には大阪府北部を中心に最大震度6弱の地震が発生しました。そして9月6日には、最大震度7を観測し41名の犠牲者を出した北海道地震が発生。この北海道地震では、一時道内全世帯に停電が及びました。また、南海トラフ地震が起こる確率を政府や研究機関は「30年以内に80%」と発表しており、来るべき震災のための備えが急がれています。

 

災害時、女性は特に二次被害に遭わないためにも、プライバシーが守れる環境を手に入れることが大切です。少しでも安心して過ごせるように日頃から周囲の環境をよく知り、安全を確保することが命を守ることにつながります。

 

【プロフィール】


危機管理アドバイザー / 国崎信江

危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。地震調査研究推進本部政策委員会などの国や自治体の防災関連の委員を務める。
http://www.kunizakinobue.com/

 

GetNavi webがプロデュースするライフスタイルウェブメディア「@Living」(アットリビング)

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誰でも目にしたことがある避難器具「オリロー」で実際に降りてみた

本日9月1日は「防災の日」。様々なメディアで防災グッズが紹介されていますが、GetNavi webでは少し視点を変えて身近なあるものに注目してみました。それがマンション、ビル、ホテルなどでよく設置されている避難器具メーカー、「オリロー」。わかりやすくかわいい名前と、徹底した安全機能で、避難器具全体での国内シェアはなんと6割オーバーだそうです。

 

誰でも一度は目にしたことがあるこのオリローですが、しかし、実際にこの避難器具を使って降りたことがある人は少ないはず。

 

今回は、そのオリローの知られざる歴史と真実を、同社・家崎典久さん、山越 貢さんにお聞きしながら、実際に避難器具を体験させてもらいました。

 

 

↑オリロー株式会社広報部・家崎典久さん(左)、営業部・山越 貢さん(右)。同社の避難器具、安全基準を熟知されたお2人

 

 

オリローの名のルーツには、箱根駅伝と関係があった!

――マンション、ビル、ホテルなどでオリローの避難器具をよく目にします。ただ、「災害の当事者になっていない」ということで言えば幸いですが、実際にどういった歴史、避難器具の種類があるのかはあまり知りませんでした。

 

家崎典久さん(以下:家崎) もともと弊社は松本製作所という、消火器や農業衛生噴霧器を作る会社が始まりです。やがて松本機工という会社になり、そこから避難器具を作るようになり、今日に至っています。

 

ちょうど、最初の松本製作所から今年で90周年になのですが、これを機に“オリロー株式会社”と、社名変更をしました。

 

――それまで“オリロー”は避難器具の商品名で、企業名ではなかったんですね。

 

山越貢さん(以下:山越) そうです。最初は避難器具以外も作っていましたが、避難器具が会社の主流になっていきました。そこで社名も商品名と同じ“オリロー”にしたんですね。

 

おかげさまで現在では避難器具全体での国内シェアは6割以上となりました。

 

――この名前は「降りる」が語源ですよね?

 

家崎 はい。ただ、これには裏話があります。弊社の松本という顧問が昔、立教大学の応援団をしていたのですが、学生時代、箱根駅伝を応援しに行ったところ、雪が降ってしまい、乗っていたバスが雪で滑ってしまい立ち往生したことがあったそうです。

 

その際、松本顧問が応援団の後輩に「バスを降りろ! 降りてバスを押せ! 降りろ! 降りろ!」と叱咤したらしいのですが、この「降りろ!」を、商品名「オリロー」とし、採用したようです。

 

 

一口に“避難器具”と言えど、8種類ものカテゴリが

――そんなオリローですが、一口に避難器具と言っても、様々な種類がありますね。

 

家崎 国家検定に準じると、8種類あり、避難はしご、固定はしご、救助袋、緩降機、滑り台、滑り棒、避難ロープ、避難橋です。

 

――ということは、あらかじめ国が定めた基準に応じて開発をしていくということですね。

 

山越 そうです。国が提示する厳しい基準を受けて、開発をし、検定を受けるという流れです。

 

――そうなると、奇想天外な避難器具、斬新な避難器具は開発しにくそうですね。

 

家崎 そうです。ただ、その基準内であっても、より使いやすく安全性の高い避難器具を日々研究しています。設置する建物自体もどんどん変わっていっていますから、当然避難器具も日々進化させないといけないわけです。

 

■折りたたみ式スライドはしご

↑緊急時、降下地点に万一障害物があっても避難可能な工夫がなされています

 

■固定はしご

↑どの階からも避難が可能。さらに沿岸地域などでは津波対策として上階へと避難することもできます

 

■救助袋

↑袋本体にらせん状に降下する滑降布を縫着。安全に地上へと避難することが可能

 

■緩降機

↑使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下することができる機構を有するもの

 

■滑り台

↑病院、学校、幼稚園、老人ホームなどで採用されている。馴染みのあるカタチなので、誰でも簡単に避難することが可能

 

■避難ロープ

↑その名もオリロープという器具で、取り付けが簡単で軽くて使いやすいもの

 

■避難ハッチ

↑チャイルドロックを付け、日常での安全性を高めながら、万一の際には簡単に開けられます

 

■滑り棒

映画「ゴーストバスターズ」でも登場した、垂直固定の棒をつたって避難します。

 

半年に一度はメンテ会社が避難器具を点検しなければいけない

――国の基準をクリアし、日々進化も続けるオリローですが、ただ、器具自体を実際に使ったことがある人は少なそうです。

 

家崎 たとえばマンションなどでオリローの設置登録をしていれば半年に一度、必ずメンテナンス会社、運営会社が点検し、一定期間内に消防署へ報告するという義務があります。

 

本来、こういった点検の際に合わせて、住民の方や、万一の際に使うであろう方々の避難訓練もやっていただきたいですね。万一の際、せっかくの避難器具の使い方がわからない……となったら意味がありませんので。

 

――ということで、今回はその体験をさせてください。

 

家崎 もちろんです。本当は高さ50メートルの緩降機をはじめ、すべての避難器具を体験していただきたいですが、今回は救助袋型の避難ハッチをやってみましょう。

 

↑これが救助袋型の避難ハッチ。実際の体験動画はさらに下をご参照!

オリローで実際に降りてみた

――ハッチを開けた瞬間、袋がありますね。

 

家崎 この袋の中に入って避難します。まず、ハッチのフチに腰掛けていただき、膝から足を先に入れます。そしてハッチのフチの両脇を掴み、腕力で体を支え、態勢を整えた後、上のベルトに手を移します。その後、手を離し、一気に体を救助袋の中に入れていく……という流れです。

 

――救助袋に入った後、そのまま体が下へストンと落ちていきそうで、すごく恐いんですけど。

 

家崎 大丈夫です。この救助袋はらせん状の構造で、下にそのまま落ちるわけではなく、袋の中で体を緩やかに回しながら、地面に着地し、逃げられる構造になっています。

 

――では恐いですが、実際に手を離してみますね。

 

↑一連の流れを家崎さんに解説していただきながら、筆者も体験。袋の中に身体を入れた後、最後のベルトから手を離すのが恐いですが、見ての通り、体は緩やかに下降していきます。

 

――恐かったですが、確かに救助袋の中で安全に着地することが出来ました。

 

家崎 これは実際に体験したことがあるとないとでは、万一の避難時に大きく影響しますから、本当はもっと多くの人に体験していただきたいんです。

 

――他の避難器具ももちろんそうですね。火災などの際、そうでなくても頭がパニックになっていると思いますから、こういった機会はもっと多くあったほうが良さそうです。

 

山越 ただ、個人的に勝手に使うのはダメです。必ず保安会社の方、メンテナンス会社をされる方など、有資格者や識者と一緒に避難訓練をしてください。そういった避難訓練の場で、避難器具に触れ、構造を知っていただくだけで、万一の避難時のスピードが大きく変わると思いますから、これはぜひお願いしたいです。

 

↑避難はしごの開閉も体験しました。片手で簡単に開閉が行えます

 

↑はしご型の避難ハッチも体験しました。ご覧の通り、短時間で気持ち良いほどにはしごが伸びます

 

 

オリローの実例データは!?

――実際に、なんらかの災害の際、オリローが活躍したという事例はありますか?

 

家崎 この話はよく聞かれますし、実際どこかで必ず役立っているはずなのですが、こういったデータは国が発表しないので、わからないんです。

 

――しかし、6割以上のシェアということですから、やはり現場レベルでは、なんらかの口コミがありそうですが。

 

家崎 例えば、口コミレベルの話で「オリローが設置されているビルで火災が起き、全員避難出来て無事だった」と聞いても「オリローで避難出来たから」と言い切れません。だから、こういったデータは全く持っていないのが現状ですね。

 

――そうであっても、他社製品よりもオリローが優れていて、多くの支持を受けている理由は何だと思いますか?

 

山越 やはり、常に開発を繰り返し、安全性を高めているところだと自負しています。

 

家崎 本当は火災が絶対に起きないような世の中になれば良いと思います。でも、それは難しいでしょうから、常にそれまでよりも使いやすい器具を開発し、より安心して避難していただける器具をご提供できるよう、これからも研究、開発を重ねていきたいと思っています。

 

 

↑避難器具の素人にもわかりやすく解説してくださった家崎さんと山越さん。どうもありがとうございました!

 

オリローのストイックで実直な避難器具開発は、家崎さん、山越さんのお話からも随所に感じられました。お話の通り、実際に避難器具に触れたことがあるかないかでは、万一の際に大きく変わります。避難訓練などで、器具に触れられることがあれば、ぜひあなたもご参加されてください!

 

【備えの1冊】防災バッグの中に何を入れる? 命を守る5点セットとは――『りすの四季だより』

これまで幾度となく言われてきているが、日本は災害大国である。今や、日本中どこに居ても安全は確保できない。最近では北大阪地震、西日本豪雨。竜巻だって起こる。いまこの瞬間に被災するかもしれない。

 

だからこそ、日頃から備えておくことが大切だ。

 

「そんなこと、何百回何万回と言われてるから、わかってるって!」というそこのあなた。では、いざというときに持って逃げるためのバッグに何を入れたらいいか、ご存知だろうか?

 

 

 

命を守るために、バッグに入れておきたい5アイテム

コラムの冒頭だが、いきなり答えを言ってしまおう。

 

1.スマホや携帯電話

緊急地震速報や情報収集のための必須アイテム。手動タイプの充電器があると、なお良し。

 

2.ホイッスル

軽く吹いても大きな音が出せて、中に玉が入っていない、壊れにくいものがベスト。子どもたちにも、防犯ブザーより電池要らずのホイッスルを持たせたい。

 

3.LEDライト

イマドキ電球タイプの懐中電灯はナンセンス。LEDタイプの、できればヘッドライトが◎。

 

4.ピンセットや小型ナイフなどがついたマルチツール

日常生活の中でも役立つものが多いので、ぜひ携帯を。ただし、銃刀法に触れない刃渡り5.5cm未満のものでも、正当な理由なくしては持ち歩けない。「子どもの爪を切るため」「今からキャンプで使う」などはOKだが、「防災・防犯のため」は正当事由にならないのでご注意を。

 

まずは、この4点。すでにお手元にあるだろうか。

 

実は先日、アウトドア防災ガイド・あんどうりすさんの防災講座に参加したのだが、内容が本当に目からウロコというか、「お~!!!!」と感動することしきりだったため、すぐにりすさんの著書を購入。いまご紹介した4アイテムは、『りすの四季だより』(あんどうりす・著/新建新聞社・刊)からピックアップした。

 

もちろん、自宅に非常用の持ち出し袋を用意、水やレトルト食品などを常備しておくことは大前提だが、それらすべてをバッグに入れたため荷物が重すぎて逃げられないなんて、本末転倒で悲しすぎる。

 

着の身着のまま逃げるとき、また外出先で被災した場合のために、普段から持ち歩ける防災用のバッグも用意しておきたい。

 

アウトドア用の軽いリュックを普段使いしてもいいし、スーツに合わないのであれば、ビジネスバッグの中に折りたたんで入れておいてもいい。毎日の外出時から、軽いバッグと上記4点を入れて持ち歩くことがおすすめだ。

 

 

何より大切なのが「知恵のある自分自身」!

さて、では最後の1アイテムは何だろうか。答えは5.知恵のある自分自身

 

今回りすさんの講座を受け、著書を読み、もっとも大きな気づきだったのが、「マニュアルに頼りすぎていること」を自覚したことだ。

 

たとえば、東日本大震災以降、スーパーのレジ袋でおむつを作る方法が広まった。私も子育て講座で教えてもらったことがある。レジ袋の左右の端を切って広げ、中に布などをあてるというものだ。けれど、自分の子どもたちが大きくなり、おむつが必要なくなったので、この知識はもう自分には不要だと思っていた。頭の片隅に追いやっていた。

 

だが、このおむつの知識から得られることは、スーパーのレジ袋がなければ作れない! ではなく、赤ちゃんがいないから関係ない! でもなく、防水素材と吸収素材の組み合わせが非常時に役立つということだ。

 

おむつの外側はポリエチレンなどの防水素材を探せばいい。それさえ知っておけば、レジ袋だろうがラップやポケットティッシュの外袋だろうが、撥水のガムテープだろうが、すべてOKなのだ。

 

その防水素材の内側に、吸水できる素材のものをあてればいい。この組み合わせは、赤ちゃんのおむつに限らず、生理用品にだって、非常時のトイレにだって活用できる。

 

「○○と○○を使って△△を作る」というマニュアルだけを頭に入れるのではなく、仕組みを理解することで、いくらでも自分で活用していけるというわけなのだ。

 

以前「ツナ缶でろうそくができる」という災害時のアイデアが話題になったが、「ツナ缶とこより」とだけ丸暗記していると、水煮のツナ缶を用意してしまうという事態が起こりうる。「油をティッシュなどのこよりに染み込ませて燃やす」という仕組みを理解していれば、ツナ缶でなくても、オイルサーディンでもいいと気づけるのである。

 

仕組みを知れば、臨機応変に行動できる。今後、様々な防災のアイデアを目にしたときは、ぜひその「仕組み」に着目することをおすすめしたい

 

「防災用」をあえて揃えるのではなく、日常でも使えるものをチョイスしよう

もうひとつ、りすさんの教えで気づいたことは、「防災は日常生活の延長線上にあってこそ、役立つ」ということ。

 

たとえば雨を伴う非常事態の場合、レインウエアがあるとかなり助かる。だが、100均のものでは心もとない。

 

おすすめは、透湿防水素材でできているアウトドア用レインウエア。普段使いにも便利で、そのまま災害用としても使えるからだ。お手入れすれば10年はもつので、確かに初期投資は必要だが、結果的には良いものを長く使うことの方がお得なのではないだろうか。

 

さて、ここで迷うのが、子ども用だ。すぐにサイズアウトしてしまうことを考えると、上下セットで6000円は高すぎないだろうか?と悩む人も多いだろう。

 

そこで、りすさんはこうひらめいた。

 

アウトドア用レインウエアは、世界中どのメーカーでもYKKのファスナーが使われていることが多い。そのため、製造番号が同じであれば、大人用と子ども用をジョイントできるのだ。

 

赤ちゃんを前で抱っこするときは、ママと子どものコートをジョイントして、ママコートに。歩けるようになったら、上だけ着せてレインコートに。もっと背が伸びたら、上下で着せる、といったように、120cmサイズの子ども用レインウエアを0~6歳まで使い倒したとのこと! このアイデアならば、1000円程度のすぐに濡れてしまうようなものを成長にあわせて買い換えるよりも、ずっと経済的だ。

 

災害用をあえて用意するのではなく、普段使いできる自分のお気に入りを揃えておくこと、そしていろいろなアイデアを持って活用することが、何より大切なのである。

 

 

「やらなきゃいけない」が「やってみたい」に。楽しみながら防災対策をしよう

『りすの四季だより』には、子どもでも大人を助け出せる古武道を使った救出術や、川遊びに必須の滑りにくい靴の作り方、寒さ暑さに対応する着こなし術、災害直後のトイレ問題、部屋の中の耐震化と家具固定法などなど、ぜひ家族で一度読んでおいてほしい内容が満載である。実際、私も実家の両親に1冊送ったほどだ。

 

ポイントは、いつ起こるかわからない災害に恐れるが故に「防災対策は嫌なこと」とネガティブに捉えるのではなく、「ちょっと試してみたい、普段から楽しみながら挑戦できるポジティブな防災アイデア」ばかりだということ。

 

もちろん、この本さえ読んでいれば必ず助かる!のではなく、りすさんから学んだ知識を応用できる知恵を身につけることが最大の目標だ。

 

備えあれば憂いなし。楽しみながら備えて防災を日常にし、心にゆとりを持って毎日を送りたい。

 

 

【書籍紹介】

りすの四季だより 家族の笑顔を守る暮らしの知恵

著者:あんどうりす
発行:新建新聞社

「やらなければ」が「やってみたい」に変わる! 口コミで年間100回以上の講演依頼がある伝説の防災講座、初の本格書籍化! 本書では、防災をマニュアル化するのではなく、アウトドアの知恵と技術を使って「読者と生き延びるための『知恵』を分かち合う」ことを目指しています。

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【朝の1冊】予算は数十円。かんたん「緊急用トイレ」の作り方――『東京防災』

日本は、災害の多い国です。どこに住んでいても、地震、台風、豪雨などによって被災するおそれがあります。

 

心の準備をしておきましょう。とりあえず「緊急用トイレの作り方」と「日常備蓄リスト」を知っておくことをオススメします。食べなければ生きられず、清潔でなければ耐えられないからです。

 

参考にしたのは、『東京防災』(東京都総務局総合防災部防災管理課・編/東京都・刊)という、無料配布のハンドブックです。

 

緊急用トイレの作り方

【排水できない既存トイレ】
便座を上げ、ポリ袋ですっぽり覆います。2枚目のポリ袋を便座の上からかぶせ、細かく砕いた新聞紙を重ねます。

(『東京防災』から引用)

 

使うのは「45Lサイズのゴミ袋」です。中身を見たくないので、なるべく不透明度の高いものを備えましょう。「新聞紙」を使うのは、水分を吸収したり悪臭を抑えるためです。定期購読をしなくても、せめて社会的な大事件やスポーツ大会で盛り上がったときに買って、取っておけば、あとで役立ちます。

 

「汚物凝固剤」や「尿とりシート」があれば万全ですが、「ペット用の砂(吸水力が高いもの)」を代用できます。ネコやイヌを室内飼いしている家庭ならば、多めに備えておいても損はないでしょう。予備の「消臭スプレー」もお忘れなく。

 

災害に備えるコツは、「普段づかいしているモノ」を流用することです。お気に入りの日用品ならば、けっして買い忘れることがなく、被災したときの「困った!」を防ぐことができます。

 

 

小さな備えが、大きな助けに

もしものとき、自分や家族の身を守るのは、たったひとつの知識、たったひとつの道具、たったひと言のコミュニケーションかもしれません。小さな備えが、大きな助けになるのです。

(『東京防災』から引用)

いちばんの備えは、本書『東京防災』のようなハンドブックを手元に置いて、ときどき読んでおくことです。

 

さらに、知識だけではなく「避難訓練」をおこないます。ものごとは、反復練習しなければ身につかないからです。絶望的な災害に遭ったとき、頭よりもカラダが先に動いてくれたら、九死に一生を得られる可能性が高くなります。

 

災害のすぐあとに、五体満足で助かったとしても……。食べ物や飲み物が尽きてしまったら、やがて命を失います。電気・ガス・水道が止まっても、せめて「1週間」を生き抜くための備えが必要です。

 

無理なく続けやすい「日常備蓄」を紹介します。

1週間を生き抜くための「日常備蓄」

大きな災害が起こり、インフラが寸断された場合(中略)、支援が届くまでの少なくとも1週間は、誰にも頼らず暮らせるように備えることが「備蓄」です。なくなったら困る物を買い置きして、古い順から使うようにすればいいだけ。

(『東京防災』から引用)

飲料水のペットボトル、レトルト食品、缶詰、チョコレートなどは、誰でも想像がつきます。本書『東京防災』では、野菜ジュース、かまぼこ、チーズ、調味料(しょうゆ、塩)なども「最小限備えたいアイテム」としてリストアップしています。

 

開封前のパッケージを「常温保管」できるものが備蓄しやすいです。レトルト食品、ペットボトルや缶入りの野菜ジュース、魚肉ソーセージ、おつまみ用のチーズ、お弁当用の使いきりミニ醤油。賞味期限にあわせて、1〜2ヶ月ごとに新旧を入れ替えます。日常備蓄の一例です。

 

平和は、永遠に続かない

ご紹介している『東京防災』ハンドブックには、お手本があります。ヨーロッパのスイス連邦が作成した『民間防衛』(原書房編集部・翻訳/原書房・刊)という冊子です。

平和と自由は、一度それが確保されたからといって、永遠に続くものではない。(中略)計画を立てるというのは、明日のことを考えることである。

(『民間防衛』から引用)

 

スイス連邦は「永世中立国」です。災害はもちろんのこと、他国からの脅しや侵略に屈することなく、自分たちの「自由」や「生命」を堅守するという信念があります。

 

『民間防衛』ハンドブックは、侵略や災害に備えるために、スイス国内の全世帯に配られたものです。それを参考にした『東京防災』ハンドブックにも、大地震や台風豪雨だけではなく、火山噴火、テロ・武力攻撃、パンデミック(感染症)などの対処法を解説しています。生き残りたいのなら、目を通しておいて損はありません。

 

 

ダウンロード・購入方法

本書『東京防災』は、2015年に東京都が製作して、都下の全世帯に向けて750万部を配布しました。冊子版が欲しければ、全国の一部書店で取り扱いがあります。

「東京防災」冊子版の販売店リスト(1冊・税込140円)
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/1002147/1002317/index.html

2018年現在では、公式ウェブサイト(会員登録なし)からPDFファイルを無料ダウンロードできます。

「東京防災」PDFファイル(無料)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/08/20p8l300.htm

電子書籍を利用している人は、KindleストアやiBookstoreなどの主要な電子書店において、0円で購入できます。お試しください。

 

【書籍紹介】

東京防災

著者:東京都総務局総合防災部防災管理課
発行:東京都

東京には、さまざまな災害リスクが潜んでいます。東京の多様な地域特性、都市構造、都民のライフスタイルなどを考慮してつくられた、完全東京仕様の防災ブック。それが「東京防災」です。本書には、知識をつけるだけではなく、今すぐできる具体的な“防災アクション”を多く掲載しています。もしものときに備えて、身を守る力をつけましょう。

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3.11を前に再確認を! 非常食はストックしたくなる美味しさで選ぶ

災害はいつ起こるかわからないから、家族4人分の防災グッズは、押入れの中に準備万端。でもその中の非常食は、あくまで緊急用だから味も見た目もイマイチなのよね……。災害時に必要だから必ずストックしておいて、賞味期限が来たら買い換えるようにしているけれど、乾パンや缶詰は家族みんな、あまり好きじゃなくていつも余っちゃう。賞味期限切れで捨てるのはもったいないし……。長期保管ができて、しかも食卓の一品にもなるような“おいしい非常食”はない?

 

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお母さんがなにやら困っているようです。

参田家の人々
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ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。
https://maita-ke.com/about/

 

そんなお母さんには「IZAMESHI CARRY BOX Deli(イザメシ キャリーボックス デリ)」をおすすめします。消費しながら備蓄することをコンセプトとした、長期保存食です。

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肩にも掛けられる紐付きボックスに入っているので、いざというときの持ち運びもラクラク。さらに、ボックスは簡易テーブルとしても活用でき、紙皿とスプーンが同梱されているのがうれしいポイント。

 

内容は「濃厚トマトのスープリゾット」「きのこと鶏の玄米スープごはん」などのご飯ものから「梅と生姜のサバ味噌煮」や「名古屋コーチン入りつくねと野菜の和風煮」などのおかずまで、バリエーション豊かなラインナップ。化学調味料不使用で、栄養バランスを考えられているので、大人から子どもまで安心しておいしく食べられます。

 

災害時だからこそ、美味しい食事をいただこう

step.1
ミシン目に沿って紙皿とスプーンを取り外す

izameshi_koutei01
↑箱から、同梱された厚紙から皿とスプーンを取り出す。ミシン目は簡単に外せるようになっているから、間違って破ってしまう心配もなし!

 

step.2
紙皿もスプーンも折れ線に合わせて組み立てるだけ!

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↑台紙から外したお皿とスプーンを、折れ線に合わせて組み立てていきます。「IZAMESHI CARRY BOX Deli(イザメシ キャリーボックス デリ)」にはスプーン4つとお皿2枚が同梱されているので、家族で食べるときも安心

 

step.3
ボックスは小さなテーブルに早変わり!

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↑高さ6センチほどの箱は、蓋を閉じれば即席の簡易テーブルとして使うことができるんです! 紙皿は深さがあるため、リゾットやスープなどの料理でも余裕を持って入れることが可能です

 

食材本来の味を楽しめ、3年間の保存がきく「IZAMESHI(イザメシ)」」。たとえ被災時でも、おいしい食事を楽しんでいる時間は、心に平安をもたらしてくれそう。また保存食としてはもちろん、家族でピクニックやキャンプに行くときや、夕食に1品足したいときなど、活用できるシーンはさまざま。オンラインショップでは、1パックから販売しているので、賞味期限に合わせて消費して、中身だけ新しいストックに買い換えることもできます。

 

緊急時にも、普段使いにも重宝。キッチンや押入れの隙間に常備しておけば、何かと役に立つはずです。

 

【商品情報】

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杉田エース「IZAMESHI CARRY BOX Deli(イザメシ キャリーボックス デリ)」
価格5000円
http://izameshi.com/carry-box/

 

日々の「参った!」というお悩みを5分で解決!「参田家(まいたけ)のおうち手帖」

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