カシオ電卓誕生から60年。意外にも需要が底堅い理由と最新モデル「Comfy(コンフィ)」で実現したこと・隠したかったこと

樫尾四兄弟が築き上げた世界のCASIO。その代表的製品である電卓の誕生から2025年で60周年。記念イヤーとしてさまざまな取り組みを予定するカシオに、昨今の電卓事情や新製品についてアレコレ聞いた。

 

60周年を迎えたカシオ電卓、原点である発明記念館での発表会

カシオ計算機株式会社。その名称に堂々と冠される計算機の誕生から60年。カシオの計算機は還暦を迎えた。これを期して開催されたのが「カシオ計算機 電卓事業方針」発表会。会場は創業者である樫尾四兄弟の次男、樫尾俊雄氏の元自宅で、現在「樫尾俊雄発明記念館」として公開されているゆかりある場所である。

小田急線成城学園前駅より徒歩15分。入場無料。サイトから要予約。

 

「3月20日は電卓の日。これは日本の年間電卓生産台数が1000万台を超えた1974年に制定されました。今年2025年はカシオの電卓誕生から60年。電卓を盛り上げるべく各種イベントを実施します!」

 

そう宣言したのは、同社教育関数BU事業部長の佐藤智昭さん。

 

電卓はいまでも堅調。支えるのは教育現場と関数電卓の需要

2024年3月期で売上高2688億円としたカシオ計算機において、電卓を含む教育事業は618億円と約1/4を占める。平成~令和ジェネにとっては「CASIOといえばG-SHOCK!」だろうし、電卓=アプリという現在となってなお「意外にも!」と言っては失礼だが、電卓、奮闘しているのである。

 

電卓は「一般電卓」「関数電卓」に大別されるが、奮闘の原動力は後者、関数電卓が担っている。関数電卓とは三角関数(サイン、コサイン、タンジェントですね。)を扱える電卓で、中等教育の学用品として直近でも年間2200万台も売れている。ちなみにカシオでは世界100ヵ国以上に輸出しており、関数電卓の教材利用は、日本を除く海外でだんぜん進んでいるという。

 

↑1972年発売。カシオ計算機初の関数電卓「FX-1」。

 

60年の集大成「Comfy(コンフィ)」登場!スマホ時代に電卓を選ぶ理由

さて60年目となる2025年1月30日、注目の新製品が発売となった。その名は「Comfy(コンフィ)JT-200T」。一般電卓の中で分類される「普通電卓」「デザイン電卓」「プリンター電卓」「機能性電卓」のうち、デザイン電卓分野におけるリリースだ。

 

カシオ
Comfy JT-200T
価格オープン(公式オンラインストア価格:3850円・税込

 

「Comfyは60年のノウハウを結集した長く愛用できる電卓です」と、同社教育関数BU商品戦略部商品企画室リーダーの玉本真一さん。カシオ計算機入社以来のおよそ20年を電卓にささげてきたデンタクマンだ。

 

「スマホで計算ができ、100均でも売っているのが現在の電卓マーケットです。そんな中、カシオの電卓60周年を迎えるにあたって、あらためて電卓に求められる要素を検証・再編成し、長く愛用できる電卓として開発したのがComfyなんです」

 

↑カシオ計算機株式会社教育関数BU商品戦略部商品企画室リーダーの玉本真一さん。

 

単に計算する目的なら、確かにスマホアプリでいい、100均製品でいいとなる。しかしアプリには望めない確かなボタンの操作感、耐久性・信頼性やエコロジカルな素材使いのされたモノ選びとなると「答え一発! カシオ電卓」となるだろう。また昨今隆盛の「クリエイターズマーケット」「クラフトマーケット」などC to C交流の場では“見られる計算機”として洒脱なデザイン電卓が選ばれることもある。電卓は思ったより、作り手のセンスを示すアイテムなのだ。

 

「Comfyに続く商品開発はもちろん進んでいて、2025年中に2品くらい出したいですね。またイベントの開催やガチャガチャ玩具の発売、もしかしたらアパレル商品の発売など、さまざまな形で電卓界隈を盛り上げたいと思います!」と玉本さん。最新情報は「60周年スペシャルサイト」をチェックすべし。

 

60周年スペシャルサイト

 

歴史に名を残す名機たち。初代カシオミニから世界仕様モデルまで

そんなやる気満タンの玉本さんに、気になるレガシー機種を尋ねると、

 

「やっぱりカシオミニですよね。1965年のカシオの初代電卓『001』からたった7年でこの手のひらサイズまで小型化したのは凄いことだと思います。FL管の青白い表示、スプリング入りボタンの押し心地、全体のデザインも最高です」

 

↑「カシオミニ」。1972年発売。当時価格1万2800円。

 

未来技術遺産とされた電卓史上の名機ですね。「答え一発! カシオミニ」の言葉もヒットしました。ところで世界100か国以上に輸出しているカシオならではの、ローカライズされた電卓はあるのですか?

 

「カシオでは基本的に電卓の仕様を世界共通としていますが、固有ニーズに応えた製品も一部あります。例えばインド独自の数字のコンマ位置に合わせた対応モデル『MJ-120D』のほか、中国では計算過程を声で示せることが信頼につがなるので、これに対応した中国語発声電卓『DY-120』があります」

 

↑中国語発声電卓「DY-120」。

 

なるほどこれはおもしろい! 思えば電卓全盛とも言うべき70~80年代にかけて、カシオはかなりムチャ(笑)な電卓を発売していた。

 

↑大人の喫煙が当然だった当時のライター一体型電卓「QL-10」。

 

↑複合電卓のハシリとなるバイオリズム機能付電卓「バイオレーター」。

 

↑ストップウオッチ一体型電卓「ST-1」(1977)。

 

↑プッシュ式電話が掛けられるオートダイヤル機能付電卓「QD-100」。

 

↑もうこれが限界! 薄さ0.8mmのカード電卓「SL-880」。

 

これらは樫尾俊雄発明記念館での「カシオ電卓隠れ名作選」(3月25日~5月9日。要WEB予約 https://kashiotoshio.org/reservation/ )で実機を見学できる。ぜひ足を運んでほしい。

 

新モデル「Comfy」で隠されたものとは?

ところで新商品Comfyを見ていて気づいたことがある。それは表面にCASIOのロゴが無い、ということ。玉本さんに尋ねると「あれ、そうですか?」とはぐらかされた。どうやらこれは、触れてはいけない秘密だったようだ。

 

カシオ
Comfy JT-200T
価格オープン(公式オンラインストア価格:3850円・税込

キヤノン電卓60周年! 世界初テンキー式卓上電子計算機から最新バイオマス原料使用の電卓まで、数々の名作を振り返る

キヤノンの電卓が、2024年10月で発売から60周年を迎える。同社は、第一号機で世界初のテンキー式電子計算機「キヤノーラ130」の発売以降、約400機種、累計2億9000万台もの電卓を出荷してきた。

 

この度、60周年を迎えるにあたり、キヤノン電卓の変遷を紹介するメディア向け説明会がキヤノンマーケティングジャパンの本社で実施された。時代の移り変わりと共に変化し続けてきたキヤノンの電卓には、一体どんな機種があったのだろうか? 会場には、千万単位機能電卓やカード型電卓、マウス・テンキーと一体化したパソコン連携型の電卓など、往年の機種がズラリと並んでいた。早速、キヤノン電卓60年のレガシーを紹介しよう。

 

世界初のテンキー式卓上電子計算機。価格はなんと39万5000円!

キヤノンの電卓の歴史は、1964年10月20日に発売されたキヤノーラ130から始まる。当時の計算機のほとんどは、各桁に0~9の10個のキーが並ぶ「フルキー式」だった。それを、キーの数を少なくして、より便利で手軽に操作することはできないだろうか、と開発されたのが、世界初のテンキー式を採用したキヤノーラ130。現在の電卓にテンキー式が採用されていることからも、同モデルがエポックメイキングな存在であることは明らかだ。

↑記念すべきキヤノンの電卓第1号機 キヤノーラ130。225×350×467mm、15kgとサイズも大きければ、当時で39万5000円と価格も超高額であった

 

同製品は、利便性から圧倒的な支持を得た。その人気は、発売に先駆けて東京・晴海で開催された「ビジネスショウ」でもすさまじく、当時の大卒サラリーマンの初任給が1万円台の時代に39万5000円という高額商品であるにも関わらず、企業からの申し込みが殺到したほどだったという。

 

利便性の証ともなるのは、キーの配置である。当時のキーと現在のキーを見比べてみると、驚くことにほとんど変わっていない。キヤノン コンスーマ新規ビジネス企画部 コンスーマ新規ビジネス推進課 チーフの長 健夫氏は「キヤノンの電卓は、60年前には今の仕様がほぼ成り立っています。そこに、時代のニーズに合わせて『00』キーや軽減税率対応の機能などを追加して、さらに利便性を追求した製品を開発してきました」と、ユーザーの利便性に配慮し続けた開発背景を語った。

 

21年間のロングセラー電卓「MP1215D-V」

こうしたユーザーへの配慮は、製品のロングセラーへもつながった。たとえば「MP1215D-V」は、同社製品の中で最もロングセラーのモデルで、1987年の発売以降、21年間もの間愛用され続けた業務用のプリンター電卓。レジスターのように電卓で計算したものを紙で印字して残しておける機能を有する同モデルは、主に金融機関などで利用され、現在も後続モデルの「MP1215-D VII」が活躍中だ。

↑残念ながら「MP1215」シリーズは展示されていなかったが、同じくプリンター電卓で1985年に発売された、世界初のAC/DC駆動のバブルジェット式「BP12-D」の実機を見ることができた

 

時代によって移り変わるニーズに合わせて開発されてきたキヤノンの電卓には、衛生意識の高まりから抗菌機能を備えたモデルも登場した。今や、同社製品の約半分が抗菌機能を備えているが、その始まりは1998年5月発売の抗菌電卓「HS-1200C」だった。抗菌電卓は国内で好評を博し、特に2009年発売の抗菌電卓「HS-121T」は、累計出荷98万台と、同社の電卓の中で最も売れたモデル(※)となった。

 

※2004年以降の累計出荷台数

↑キヤノンの抗菌電卓第1号機 HS-1200C。現在では、同社電卓の約半分に抗菌機能が備わっている

 

そのほか、千万単位の「0」を一括入力でき、桁数をカンマ区切りと「億千万」の漢字表示とで切り替えも可能な、千万単位機能電卓「LS-120TU」や、2つの税率設定キーを備え、軽減税率の計算などにも便利、かつ小型の電卓「LS-105WUC」などが国内人気の高い製品として紹介された。

↑LS-120TUではないが、同じく千万単位機能電卓の「LS-12TU II」。カンマ区切りと「億千万」の漢字表示切り替えは、上部右側の「表示」キーを押す。「億千万」それぞれの桁数の「0」を一括入力するには、上部左側に設置されている「憶」「万」「千」キーを入力する

 

↑税率設定キーを2つ備えたミニ卓上電卓LS-105WUC。カラバリも6色(グリーン・ピンク・ネイビー・ブルー・アイボリー・チャコール)と、充実している(画像は、ピンクとネイビー)

 

マウスの中に電卓!? ユニークな発想の電卓がズラリ

60年の間には、様々なアイデア製品も誕生した。電話番号を手帳に記して確認することが当たり前だった1978年には、21人分の名前と電話番号や生年月日が記憶でき、ワンタッチで呼び出し可能な電卓「パームトロニクLCメモ」が登場。

↑会場に展示されていた電話番号を記憶できる卓上電卓「DM-1000」

 

また、当時は現代よりもさらに小型軽量がフィーチャーされた時代でもあった。そうした世相から登場したのが、クレジットカードサイズの超薄型電卓「キヤノンカードLC-7」。1.9mmという超薄型で、8桁1メモリー。カラーバリエーションにはホワイト・ブルー・ブラックの3色を揃え、クレジットカードや定期券入れとしても利用できるレザータッチのケースもオプションで販売するなど、ファッション性も兼ね備えたアイテムだった。

↑会場に展示されていたのは、LC-7とは別モデルのプラスチック液晶を採用した初のクレジットカード型電卓「T19」。持ち運びやすい利便性はもちろん、ゴールドカードのような見た目とレザータッチのケースで高級感も与えている

 

「当時は、スーツやワイシャツのポケットに入れて持ち運べるという利便性が非常に重宝されました。このクレジットカード型電卓は、便利だと評判も良かったのですが、徐々に大型で見やすい方がいい、という方面にニーズが変化したことで、2008年頃には電卓のラインナップから消失してしまいました」(長 健夫さん、以下同)

 

2000年代は、パソコンが一般化した時代でもある。そこで、キヤノンが開発したのが、パソコンに接続して使用できるという電卓。中でも「KS-1200TKM」は、トラックボールとスクロールホイール付きで、通常の電卓として使用する「計算モード」とテンキーとして使用する「PC入力モード」が備わっていた。さらに、計算結果をPCにそのまま送信できるなど、1台で3役も4役もこなしてくれる同機種は、その便利さから多くの支持が集まった人気商品だったという。

 

そんな数あるユニークな電卓の中でもひと際目を引いたのが、2008年発売のマウス型電卓「LS-100TKM」だ。折りたたみ式ボディをパカッと開くと電卓が出て来る特異なデザインで、電卓・テンキー・マウス計3つの機能を搭載。本体を閉じたまま使用すればマウスに、開けばテンキー電卓として使用できる。こちらもパソコンとの連携が考慮されており、電卓で計算した結果をパソコンへと転送することが可能だ。

 

発売当時、営業を担当していたという長氏は「担当していた秋葉原の家電量販店さんでは、『これは面白い!』と、レジの前にワゴンで積んでいただきました」と、遊び心のあるマウス型電卓の人気を振り返った。

↑マウス・電卓・テンキーが一体化した1台3役のマウス型電卓 LS-100TKM。堅実なアイテムが多いキヤノン製品の中では珍しい、遊び心を加えたアイテムで、ユーザーからも「面白い」と好評だった

 

下降傾向にある電卓市場。一方で底堅い商品ニーズに期待も

このように、時代のニーズに合わせた機能とともに身近な存在であり続ける電卓だが、国内市場は下降傾向にあるという。2019年には454万台だった出荷数が、2023年には330万台にまで下落。同社がJBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)の統計を基に予測した出荷数量は、今後さらに下落する見込みだ。その要因には、少子化による教育現場での需要減少、電子マネーをはじめとした様々なビジネスツールの登場、そしてコロナ禍を経て浸透したリモートワークなどにより、出社機会が減少したことなどが挙げられる。

 

一方で、先にも紹介した、千万単位機能や軽減税率対応の電卓など、金融機関を中心としたビジネスパーソンに需要が高い製品も存在する。「代替となるデジタルツールが増える一方、アナログのよさが見直されているシーンも少なくない」と、現状を解説した長氏は、「市場のニーズに合わせた変革と、長年ご好評をいただいている点の維持を両立した、長く愛される商品を届けていきたい」と、今度の展望について述べた。

 

2024年2月には、12桁卓上電卓「HS-1220TUB」「TS-122TUB」と12桁ミニ卓上電卓「LS-122TUB」が発売された。この3機種は、同社の電卓として初めて植物由来のバイオマス原料をキーの素材の10%に採用している。現段階では、耐久性の問題からバイオマス原料の使用割合に限界があるが、今後はこの課題を解消していき、電卓を通じてエシカル消費の促進や持続可能な社会の実現に、より貢献することを目指すという。

↑キヤノンの電卓として初めて植物由来のバイオマス原料を採用した、環境配慮型電卓。左から「HS-1220TUB」、「TS-122TUB」、「LS-122TUB」

 

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後から痛感する快適さ! カシオのエルゴノミクス電卓は一体どこが凄いのか?

エルゴノミクス(人間工学)という言葉が一般化したのは、おそらく1990年代初めの頃だったと思う。これは大ざっぱに言えば、「道具やシステムを人間の心理・生理に合わせて設計する」という考え方で、長時間座っても腰への負担の少ないイスや、より高効率で打鍵できる左右分割型キーボードといったあたりが、比較的定番のエルゴ製品群といえるだろう。

↑手首の負担を減らすエルゴマウス。長時間の作業でも疲労が少ない、気がする

 

例えば、筆者が愛用しているマウスもエルゴデザインを取り入れたもの。一般的なマウスは、卵形をした本体の上に手のひらを被せる形で保持するが、手のひらを下に向けた状態を維持するのは、意外と手首に負担がかかる。

 

机に対して手のひらが垂直に(チョップするような形)立つようにマウスを握れたほうが、姿勢として自然なので、疲労もしにくいというわけ。見た目にはちょっと違和感があるものの、慣れるととてもラクなのだ。

 

つい先日発売されたカシオの新しい電卓も、このエルゴノミクスに基づいたデザインの製品で、なかなかユニークな形状をしている。しかも使ってみると、「ほほう!」とヒザを打ってしまうほど“エルゴが効いて”いて、面白いのである。

 

エルゴノミクス電卓は3度の傾斜が決め手

その“エルゴ電卓”というのが、2022年10月に発売されたばかりの人間工学電卓シリーズ「JE-12D」と「DE-12D」だ。

 

ちなみにJEが一般的なサイズ(ジャストタイプ)で、DEが液晶も見やすい幅広の少し大きめサイズ(デスクタイプ)。キー配置などに多少の違いはあるが、根本的な機能に差はない。

カシオ
人間工学電卓
ジャストタイプ JE-12D:9500円(税別)
デスクタイプ DE-12D:1万円 (税別)

 

事前に「なかなかユニークな形状」とハードル上げをしてしまったので、もしかして上の写真を見た限りだと「いや、普通じゃん?」という感想になるかもしれない。そこで、少し視点を下げて、真横に近い位置から見てみよう。すると……

↑真横から見ると、キーが階段状に下っているのがよく分かる

 

お分かりいただけただろうか? なんと電卓のキーが左から右に向かって階段を下るように傾いているのである。

 

これが、カシオが提唱する「人間工学階段キー」という構造で、操作面を約3度傾けることによって、右手3〜5本の指で打鍵するのに最適化されているのだ。

↑開発時には、専門機関と共同で、電卓を操作する手指の状態を分析したという

 

どうしてこれが、右手で打ちやすいのか?

 

冒頭のエルゴマウスの話でも触れたように、人間の手の構造上、机の上で手のひらを真下に向け続ける姿勢は負担がかかる。実際、力を抜いて自然な姿勢を取ろうとすると、小指側を下に向けるように傾くはずだ。

 

その自然な姿勢のまま右手で打鍵するなら、左から右へ下がる傾きのキーが打ちやすいのは当然なのである。

↑盤面の傾きはわずかだが、操作している際の手の位置は明らかに違ってくる

 

実際に計算作業のため15分ほど立て続けに打鍵してみたのだが……打ちにくいとか打ちやすいといった感覚がよく分からない。

 

キーの傾きを感じることもなく、めちゃくちゃナチュラルに入力できて、違和感がなかったのだ。要するに、この電卓を使うことによって入力スピードが爆上がりする! とか、そういう話ではなさそうだ。

 

ではいつ効果を感じたのか?

むしろ効果を感じたのは、その直後、比較のために従来の電卓を打鍵したときだ。

↑試しに100問ずつ計算テストを解いてみたが、いったん階段キーに慣れてしまうと、従来の電卓での作業効率がガタ落ち

 

うーん、ナニこれ? 無茶苦茶入力しにくい! 指がスムーズに動かないし、打鍵したつもりがうまく入力されてなかった、なんてことが多発する。

 

つまり、わずか15分使うだけで階段キーの方に馴染んでしまったようなのだ。頭ではさほどピンと来なかったのに、身体の方が「そうそう、斜めが正解だから」と納得してしまったような、不思議な感覚である。

 

ほかにもこの機能がプレミアム

↑キートップは印刷ではなく樹脂2色成形なので、すり減って数字が読めなくなることもない

 

↑メイン電源はソーラーだが、計算中に光を遮られても作業内容を保護できるよう、電池も併用したツーウェイパワー方式を採用

 

↑持ったときの指がかりが良いように、指紋のような波形パターンが施された裏面

 

結論

とはいえ、これが万人に最適な電卓かというと、そういうわけではない。まず左利きの人にはどうしようもない、というのは分かるだろう。試しに左手で入力してみると、傾きのせいで手首がよじれすぎて、筋がつりそうになってしまった。

 

また、最も電卓を日常使いする職種であろう会計士や経理事務といった人は、右手でペン・左手で電卓入力、という姿勢の人が多い。そういう場合もこの傾きはネガティブとなる。(逆に左利きの会計士の人には便利かもしれない。)

 

結果としてこの電卓を便利に使えるのは、まず右利きで、かつ仕事でがっつりと電卓を使う(左手入力が必要)ほどではない人、ということになる。

 

そういう人が1万円前後の電卓を求めるか? というのはいささか疑問だが、とはいえこの階段キーの面白さと使いやすさは、使ってみれば誰でも納得できるレベルだと思う。試してみる価値はあるはずだ。