ASEANの食で注目される5つの日本技術【IC Net Report】東南アジア・小山敦史

開発途上国にはビジネスチャンスがたくさんある…とは言え、途上国について知られていないことはたくさんあります。そんな途上国にまつわる疑問に、アイ・シー・ネット株式会社のプロたちが答える「IC Net Report」。今回ご登場いただくのは、東南アジアや南アジアなどで食の開発コンサルタントを務めている小山敦史さんです。

●小山敦史/通信社勤務ののち、1992年、開発コンサルティング業界に転職。アイ・シー・ネットでの業務を中心に国際開発の仕事を続けながら、アメリカの大学院で熱帯農業を学び、帰国後に沖縄で農業を開始。野菜を生産した後に畜産業や食品加工業も手がける。現在は、グローバルサウス諸国での食品加工・食品安全、マーケティング、市場調査などについて、自身が実践してきたビジネス経験を活かし、企業や行政機関へのコンサルティングを行なっている。

 

 食視点でみる「日本クオリティ」5つのポイント

「近年の経済成長により、東南アジア諸国では、購買力を持った新しい富裕層や中間層が増えてきています。現地ビジネスの場合、どちらかというと、従来は現地で生産した野菜などを加工し、日本へ輸出するといったビジネスモデルが中心でした。しかし、現在では、果物をはじめ日本などの農産物が現地で高額で取り引きされるなど、日本への輸出一辺倒だった従来の構図が変わりつつあるのです」

ベトナム・ホーチミンで輸入高級果実を通販で売るトップ企業の幹部。ASEANはビジネスで20代、30代の女性が多数活躍

 

そこに新たなビジネスの可能性があると小山さんは指摘します。

 

「とくに農業技術や加工技術などにおける日本クオリティに対する現地の信頼度は、依然として高い。今後はこうした日本の技術を活かし、現地で生産・販売するビジネスモデルにも大いに可能性があると思います」

 

今回は、日本のブランド力を活用した現地での食ビジネスについて、カギとなる5つのポイントを解説します。

 

ASEANに多い高原地帯での温帯性農作物に商機

現地で栽培されている農作物の多くは、熱帯野菜や熱帯果実など。これらの熱帯性農作物を日本の栽培技術を活かし、ビジネスとして成立させるのは難しいと言います。一方で、温帯性農作物には商機があると小山さん。

 

「意外と知られていませんが、ベトナムのダラット高原や北西部各省、インドネシアの西ジャワ州南部、フィリピンのベンゲット州、ラオスのボロベン高原や北部各県、タイ北部、マレーシアのキャメロン高原、ミャンマーのシャン高原などの高地では、キャベツやニンジン、ジャガイモをはじめ、日本でもおなじみの温帯性野菜・果実が栽培されています。温帯性農産物であれば、国内で培ってきた日本のノウハウで、より高品質な農産物を生産することができるのではないでしょうか」

 

高地での施設栽培技術が未発達

現在、高地での栽培は露地が中心で、施設での栽培は一部を除いて現地ではまだまだ浸透していないのが現状。

フィリピン・ベンゲット州のキャベツ畑。欠株が多く、優良品種や圃場管理技術に改善の余地が大きい

 

「とくにハウスなどを活用した日本の高度な管理技術には可能性があります。トマトなどの長期どり品種をハウス栽培すれば、季節に関係なく、何ヶ月も連続して収穫できます。収穫量が増えれば、その分、電気代などの固定費の割合を相対的に小さくすることができるため、ビジネスとして成立するチャンスは十分あると思います」

 

温帯性農作物の加工販売も有望で、日本向けとしてはもちろん、現地でのニーズも見込めると言います。

 

「例えば、カップ麺用の乾燥野菜に使用するキャベツやニンジンなどを効率よく生産する圃場管理技術や、ポテトチップス用ジャガイモの生産管理技術などの加工技術を持った企業であれば、さらにチャンスは広がります」

 

今後、需要が拡大する温帯性果実の可能性

ラオスの果実専門卸売市場を調査した際の写真。左が小山氏

 

一方で、小山さんは高原地帯での果樹栽培も選択肢となると指摘。

 

「イチゴやリンゴをはじめとした温帯性果実に関しては、欧米や日本、韓国などから現地に輸入され、驚くほどの高価格で販売されています。苗木づくりから、接ぎ木、剪定、摘果、防除といった、日本が得意とする一連の果樹栽培技術を活かし応用することで、これらの果実をASEAN各国の高原地帯で生産・販売する。現地で生産することで、価格を抑えることが期待できます。ベトナムのダラット高原などでは、すでに一部でこうした取り組みが見られます」

 

肥満問題対策としての健康食品ニーズの高まり

現在、途上国共通の課題として肥満問題が取り沙汰されています。それを受け、中間所得層や富裕層を中心に広がりを見せている健康志向。

 

「例えば、こんにゃく麺やこんにゃくゼリーなどのダイエット食品、豆腐バーや大豆エナジーバーなどの機能性食品は、ASEAN諸国の都市部でも販売が始まっています。またバングラデシュのダッカなど南アジアの都市部でもダイエット食品への関心が芽生え始めています。これらの加工技術は日本のお家芸。今後、大いに期待できるジャンルだと言えるでしょう」

 

時短にもなる中間加工品に一日の長

バングラデシュ・チッタゴンの食品加工工場。機械化、自動化、衛生管理改善などのニーズが高く、ビジネスチャンスが見込める

 

「いまやASEANの都市部では、女性の社会進出が日本以上に顕著。炒め玉ねぎや揚げ玉ねぎ、揚げニンニク、トマトソースなどは、ふだん忙しい家庭で調理する上で時短になりますし、業務用・家庭用を問わず、現地での需要が大いに見込めるのではないでしょうか」

 

家庭向けの加工食品というジャンル自体、まだまだ現地では普及していないだけに、日本の加工技術を使い、さらなる付加価値を付けた加工食品は、先進国への輸出はもちろん、現地での需要も大いに見込めそうです。

 

「日本クオリティ」の落とし穴に注意が必要

現地ビジネスでの成否を握るのが日本の「技術」になりそうですが、小山さんは一方で、日本クオリティにこだわりすぎるのも逆効果だと警鐘を鳴らします。

 

「ASEANにおいて日本ブランドはまだまだ健在で、それを打ち出せば有利になることは確か。ただ日本企業の課題として、細部にこだわりすぎて、オーバースペックになる傾向が強い点が挙げられます。商品価格が上がってしまえば、結果、現地での価格競争力が低くなり、市場が大きく縮んでしまう。とくにASEAN諸国でのビジネスを考えた場合、価格を抑えつつも、ブランド価値を十分に高めていけるような事業戦略を考える必要があると思います」

 

今後さらなる需要が見込まれるASEANの食市場。そんな中、現地ビジネスを成功させるには、栽培技術や食品加工技術などで日本クオリティを打ち出しつつも、臨機応変に対応できるバランス感覚が重要だと言えそうです。

 

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フードロスは環境にどれほど悪い? 温室効果ガスの排出量が判明

気候変動の原因の一つとされているのが、世界で生まれている食品廃棄物です。国連はSDGsの目標の中でも「つくる責任 つかう責任」として、2030年までに食品廃棄物を半減させることを目指していますが、そこには気候変動が関わっています。最新の研究では、食品廃棄物から排出される温室効果ガスは、世界中の食料システム(※)に由来する温室効果ガス排出量の半分程度を占めることが判明。「食品ロス」を減らす声がますます広がっています。

※食料システムは食料の生産、加工、輸送及び消費に関わる一連の活動のことを指す(参考:農林水産省

もったいないうえにCO2も排出

 

先日、オンラインジャーナルの「Nature Food」で発表された南京林業大学の研究では、2001年から2017年までの期間に、穀物や豆類、肉類、動物性食品、果物、野菜など54種類の食べ物の廃棄物から排出された温室効果ガスの量を164の国と地域で調査しました。

 

収穫、保管、輸送、取引、加工、小売りなど、食べ物が収穫されてから消費者の手にわたり廃棄されるまでのサプライチェーンの各工程で温室効果ガスの排出量を調べた結果、2017年に93億トンに上ったことが判明。これは同年のアメリカとEUで排出された温室効果ガスとほぼ同量に匹敵するといいます。

 

また、中国、インド、米国、ブラジルの4か国では、食品廃棄物によって排出された温室効果ガスは、世界全体の食品廃棄物関連の排出量の44%を占めていることも明らかになりました。

 

世界の食料システムが温室効果ガス排出量に占める割合は約3分の1とされており、さらに、そのうちの半分程度が食品廃棄物に由来していると同研究は言います。気候変動に与えるフードロスの影響がわかりやすく表されているでしょう。

 

この研究では、食品廃棄物が半分に減れば、世界の食料システムで排出される温室効果ガスの総量が約4分の1にまで減少すると見ています。今日では多くの国で食品廃棄物などの生ごみは焼却処分または埋立てされていますが、生ごみは腐敗すると温室効果ガスの一種であるメタンを発生させます。それを防ぐための方法の一つとして、生ごみを堆肥化するコンポストの使用が勧められています。

 

日本で出ている食品廃棄物の量は年間522万トン。国民1人あたり、お茶碗一杯分のご飯を毎日捨てているのと同じと言われています。私たちの身近な行動が気候変動に直結しているのだと改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか?

 

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「ハラルフード」の市場価値は最大19兆円! アジア諸国で和食のハラル需要が拡大

現在、世界人口のおよそ4分の1を占めるイスラム教徒(ムスリム)。イスラム教の食べ物は、神によって食べることが禁じられている食べ物の「ハラム」(代表例は豚肉とアルコール)と、許されている「ハラル」(例:野菜、果物、穀物、魚介類)に大きく分けられますが、最近ムスリムの間で注目を集めているハラルフードといえば、和食・日本食です。ムスリムが多いアジア諸国などで、ハラルの焼き肉や寿司のニーズが少しずつ高まっています。

 

市場が拡大するハラルフード

ムスリム人口の増加でハラルフード市場も拡大

 

ここ数年、ハラルフードは国際機関のOIC(イスラム協力機構)加盟国を中心に市場価値が上がってきました。統計プラットフォームのStatistaによれば、2021年におけるインドネシアのハラルフードの市場価値は1467億ドル(約19兆円※)で、バングラデシュは1251億ドル(約16兆円)相当とのこと。また、OIC諸国のハラルフードの輸入総額は2000億ドル(約26兆円)と推定されています。

※1ドル=約131円で換算(2023年3月27日現在)

 

インドネシアはムスリムが世界で最も多い国で、その数はおよそ2億3000万人。その後にインド、パキスタン、バングラデシュが続いており、ムスリム人口が多い国ではその分ハラルフードの需要もあるようです。

 

大人気の国内ハラル和食店

ムスリム客の行列ができる「寳龍総本店」

 

和食は世界中で認知度が高く、ムスリムからも好まれています。一般的に外国人の間で人気が高い和食・日本食といえば、ラーメンや焼き肉、寿司などがありますが、日本にはそれらのハラル版を提供しているレストランが既に存在しており、長蛇の列になっていることがよくあります。

 

例えば、北海道の札幌にあるラーメン店「寳龍(ほうりゅう)総本店」は、豚肉やアルコール不使用のハラル対応味噌ラーメンを提供。札幌ラーメンを食べたいムスリム客でほぼいつも満員です。

 

一方、大阪の難波にはハラル焼き肉が食べ放題の「ぜろはち難波OCAT本店」があり、ハラルの焼き肉店は他にもあるものの、同店は珍しく食べ放題であるため、ムスリムの間でとても人気です。

 

海外にも少しずつ広がる

海外に再び目を転じると、ハラルの和食レストランは現在のところ海外諸国にそれほど多く存在していません。しかし貴重な存在だからこそ、ハラルの和食レストランはムスリムから重宝されています。

 

2021年から2022年にかけてアラブ首長国連邦で行われたドバイ国際博覧会(万博)では、回転寿司チェーンの「スシロー」が6か月間の期間限定で初出店しました。初となるハラル対応メニューを開発したこともあって、平日でも3時間待ちの列ができるほど繁盛し、合計17万5000人を超えるお客が来店したそうです。

 

同店は、アルコールが含まれている通常の醤油やうなぎのタレを使用せず、代わりにそれらを現地調達するなどしてハラルの回転寿司を実現させました。この万博での盛況ぶりを見て、今後はアジア圏を中心に海外の店舗を増やしていく計画のようです。

 

アジア圏の中では、既にハラル和食が広がりを見せている国もあります。

 

シンガポールのボートキーにある「Ronin(以前の店名は「Gaijin」)」というハラル和食レストランは、2022年4月にオープン。Facebookなどのソーシャルメディアで絶賛され、予約枠がすぐに埋まってしまうほど人気があります。ハラル対応の焼き鳥や焼き肉を提供するほか、ビーツとひよこ豆のペーストを添えたタコ焼きや、塩漬溶き卵の汁を添えた餃子など、和食とそれ以外の料理を融合させたものもあります。本格的な和食体験をしてもらうために、店内には伝統的な障子や座敷なども取り入れられました。

 

また、同じくシンガポールで屋台2店舗を展開している「Abang Curry」は、比較的手ごろな価格で提供するハラルの和風カレー店。日本のカレーをシンガポール風にアレンジし、米の代わりに麺を選ぶことも可能。メインに付くソースも3種類から選べ、カレーパンなどのスナックも販売しています。

Abang Curryのハラル和食カレー

 

このように、ハラル対応の和食の人気は今後さらに伸びていく可能性があります。イスラム教徒が多いアジア諸国などには、まだ本格的なハラル和食レストランが少ないため、メニューなどの工夫次第で、高いニーズが見込めるかもしれません。

 

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食料危機と気候変動対策に「きび」が急浮上! その理由は?

「2023年は国際雑穀(ミレット)年」。国連が2023年をそう定めているのをご存知でしょうか? ミレットとは、きび、あわ、ひえなどの雑穀類の総称で、米・ニューヨークにある国連本部では先日、雑穀をテーマにした展示会が開催されました。きびなどの雑穀に国連がそれほど熱い視線を注いでいるのは一体なぜなのでしょうか?

きびはいかが?

 

きびなどの雑穀が注目されている背景には、世界人口の増加と食料不足への懸念があります。国連の「世界人口推計2022年版」によると、世界人口は2022年に80億人を突破し、2030年に約85億人、2050年には約97億人になる見込み。それに伴い食料が不足していくことが以前から危惧されています。

 

そこで注目されているのが、きびなどの雑穀。きびはイネ科キビ属に分類される作物で、推測されている原産地は中央アジアや東アジアの温帯地域。今日の日本ではほとんど栽培されなくなりましたが、アジアやアフリカ諸国の中にはきびを主食として食べてきた所があります。特にインドでは、きび、ひえ、あわなどの雑穀それぞれの品種に現地語名があり、人々に長いこと親しまれてきました。

 

栄養面については、たんぱく質や食物繊維を多く含むほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも豊富。栄養価がとても高いのに安価なことが大きな特徴です。

 

今日の世界情勢を見てみると、パンデミックに加えて、ロシアのウクライナ侵攻で、日本を含め多くの国々がインフレに見舞われています。特に食料のインフレが激しいのが、ジンバブエ、ベネズエラ、レバノンといった国。ジンバブエでは、食料の価格が例年に比べて285%も上昇し、日常生活に大きな打撃を与えているのです。きびなどの雑穀に待望論が持ち上がっても不思議ではないでしょう。

 

また、きびなどの雑穀のメリットとして、厳しい環境でも栽培しやすいことが挙げられます。年々深刻化している気候変動により、世界では水不足で干ばつが起きたり、逆に暴風雨に見舞われたりする地域が増えているのが現状。そこで多くの作物が被害を受けていますが、きびなどの雑穀類は、痩せた土壌や干ばつが起きるような環境でも、肥料や農薬などに頼らず育てることができるとされているのです。

 

桃太郎の精神

このように、栄養価が高く栽培しやすいきびなどの雑穀は、世界中の農民や人々を救う光になりつつありますが、普及を考えるうえで問題になるのは味。

 

きびはくせがなく、味は淡泊です。米に混ぜて食べる以外に、ピザ、パスタ、クッキー、ケーキなどの小麦粉を使った食べ物に加えたり、シリアルやスムージーに混ぜたり、さまざまな使い方が可能。そのため、多様な食文化や人々の好みに合わせて柔軟に取り入れることができると言われています。

 

SDGsの目標2の「飢餓をゼロに」や、目標13の「気候変動に具体的な対策を」など、SDGsの数多くの目標達成にも役立つと考えられる雑穀。アミーナ・J・モハメッド 国連副事務総長は「雑穀は豊かな歴史と可能性に満ちている」と述べています。きびは現代の日本でマイナーな存在かもしれませんが、昔話の『桃太郎』できびだんごが出てくるのを誰もが知っているように、私たちにとって必ずしも遠い存在ではありません。しかも、この物語に登場する鬼は人々に「飢餓をもたらす気象現象の主」であったかもしれないという見方があり(日本大百科全書)、現代社会に通じる部分があるでしょう。きびの力に目を向けるときが再びやって来ているようです。

 

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過去数十年で最悪の「食料危機」に陥るアフリカ、「小魚」が希望の光

近年、アフリカの食料危機が深刻化していることをご存知でしょうか? そのレベルは過去数十年で最も悪いと言われ、日本の人口を超える1億4600万人もの人が食料不足に陥り、死のリスクに直面する子どもが増加しています。そんな中、このような現状を解決する一助になるかもしれない、ある研究結果が報告されました。

食料危機における希望の光

 

国際赤十字・赤新月社連盟の2022年11月の報告によると、サハラ以南のアフリカで現在、食料不足に直面している人の数は1億4600万人。日本の人口よりも多い人々が、日々生きていくために必要な食料を得られていないことになります。これは昨今の気候変動(干ばつ)で、作物の収穫量が減少したこと、さらにロシアのウクライナ侵攻で世界全体の食料供給が不安定になっていることなどが関連しています。これだけの人々が食料危機に陥っているのは、過去数十年で最もひどいそう。

 

この影響は、幼い子どもにも及んでいます。十分な栄養を摂取できないことから、ひどく痩せ細り、死のリスクすらあるという消耗症(症状の重い乳児栄養失調症で、体組織が破壊され、食事量を増やしても体重は減り、ひどく痩せてしまう)に陥る子どもの数が増加していると言います。このような食料危機は2023年も続くと予測されており、ユニセフや国際赤十字をはじめ、さまざまな組織や団体が支援を呼び掛けているのです。

 

安くて栄養価が高い小魚

そこで注目したいのが、小魚の存在。英国・ランカスター大学の研究者らが、先日「ネイチャー」に発表した論文で、食料不足に苦しむ国において小魚が新しい食料供給源として有効であるとまとめたのです。

 

この研究では2348種の漁獲量と栄養データ、さらに低・中所得の39か国のデータなどを分析し、小魚は栄養価が高いのに価格が手ごろであると主張しています。例えば、ニシン、イワシ、カタクチイワシなどは栄養価も高く、72%の国で最も価格が安い魚でした。その価格は1日分の食費のわずか1~3割ほどで済むと同研究者らは述べています。

 

日本で小魚は手頃に入手でき、頭からしっぽまで丸ごと食べられて、栄養価が高い食材だと知られています。しかし、日本のように伝統的に魚を食べる習慣がある国とは違い、途上国の中には魚を頻繁に口にしない国もあります。例えば、サハラ以南のアフリカで5歳以下の子どもの魚介類摂取量は、推奨される量の38%にとどまっているそう。

 

また、現在の漁獲量だけでも、人々に供給するだけの十分な量があるとされており、ニシンなどの小さい遠海魚の漁獲量のわずか20%ほどで、アフリカの沿岸部に住む5歳未満のすべての子どもの推奨摂取量を満たせることが同論文で指摘されています。

 

日本の加工・品質管理技術が求められる

水産物を高い品質で管理し加工する日本の技術は、世界でもトップ水準。栄養価をできるだけ損なわずに、新鮮でおいしい状態を維持して長期間管理する技術があれば、より多くの人に高い栄養価の状態で魚を供給できるでしょう(例えば、コールドチェーン技術。原材料の調達から生産、加工、物流、販売、消費までのサプライチェーンの全工程において、冷凍や冷蔵などの適切な温度管理を行うこと)。日本が技術面で支援を行うことで、アフリカの食料不足や栄養失調の問題解決に役立つことが考えられます。

 

食料不足を解決する可能性を持っていることが明らかとなった小魚。アフリカなどで新たな食料源として活用するのに、コールドチェーンなど日本の技術が役立つでしょう。

 

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日本の「寿司文化」が食糧危機を救う? いま‟コールドチェーン”が世界で求められるワケ

生鮮食品や冷凍食品などを低温のまま流通させる「コールドチェーン」。世界経済フォーラムは、その技術によって発展途上国における食料供給や世界の食料危機改善につながる可能性について言及しています。寿司文化のおかげでコールドチェーンの技術が発展してきた日本は、どのようなことができるのでしょうか?

 

 

世界が抱える食料不安

2021年に飢餓に見舞われた人の数は、8億2800万人。前年比で4600万人も増えています。しかも新型コロナのパンデミックによって、2020年には健康的な食生活を贈れなかった人が約31億人にも上りました。2022年はロシアのウクライナ侵攻による穀物価格の急騰で、さらに多くの人々が安全に食料を入手できなくなっている可能性があります。

 

この食料不安に追い打ちをかけるのが、気候変動です。猛暑や洪水、干ばつなどによって、作物の収穫量が減ったり、家畜がストレスを抱えたり、漁獲量が減少したりすることが考えられます。

 

だからこそ、今生じている食品ロスをできる限り減らして、生産される食料を品質の良いまま人々に届けることが大切なのです。世界で生産された食料のうちおよそ14%が、さまざまな理由で、私たちの手元に届く前に廃棄されていると推測されています。

 

コールドチェーン技術で食品ロスの減少と住民の収入増へ

そこで期待されるのが、コールドチェーン技術。原材料の調達から生産、加工、物流、販売、消費までのサプライチェーンの全工程において、冷凍や冷蔵などの適切な温度管理を行うことをコールドチェーンといいます。

 

例えばレタスなどの野菜が低温で保管・輸送されれば、収穫後のフレッシュな状態が保たれ、流通の工程で鮮度が失われたり腐敗したりして廃棄されることも少なくなり、栄養価も維持されやすくなるでしょう。また、ワクチンなどの医薬品の物流でも正しく温度管理されることができれば、品質が保持されます。

 

国連環境計画(UNEP)と国連食糧農業機関(FAO)は、先日発表した報告書のなかでコールドチェーンの重要性について指摘。発展途上国で、先進国と同等のコールドチェーンのインフラが整えば、年間で1億4400万トンの食品ロスを防げると推測しています。しかも食品ロスは小規模農家の収入の減少にもつながるため、コールドチェーンでロスが減れば、そのような農家の貧困の解決につながる可能性もあります。

 

実際、ナイジェリアでは54のコールドチェーンのハブ施設を建設するプロジェクトが行われ、4万2024トンの食品ロスを防ぎ、小規模農家や小売業者など5240世帯の所得を約50%増やすことにつながったそうです。

 

コールドチェーン技術が発達する日本

日本はコールドチェーンの技術革新を進めてきた国のひとつ。その背景には、寿司文化があります。例えば、遠洋漁船では漁獲した直後に船上で前処理を行い急速冷凍。スピーディかつ適切に温度管理して流通させることで、鮮度の高い魚を消費者に提供できるようになっているのです。回転寿司チェーンなどで、一昔前に比べてずっと品質の高い魚介類を提供できているのは、そのような技術の飛躍的な進歩と努力があったからに他ならないのでしょう。さらに、回転寿司店ではタッチパネルが導入されるなどして、大手チェーンでは食品ロス率は1%台まで低く抑えられていると言われています。

 

そんな世界でも最先端の技術を有する日本は、発展途上国への技術支援などに貢献できるかもしれません。先に紹介したナイジェリアの例は、まだごく一部であり、多くの発展途上国ではコールドチェーン技術も、そのためのインフラも整っていないのが現状です。

 

国連は、気候変動への影響に配慮して、エネルギー効率が高く再生可能エネルギーを使用した持続可能な食料コールドチェーンに投資するべきだと述べています。世界でその技術をシェアしていくことが、今求められているのかもしれません。

 

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うどん、焼き鳥、蒸し餃子に近い!? ウズベキスタンの食文化を探る

ウズベキスタン料理をご存知でしょうか? 国土が5か国に隣接し古くから栄えたシルクロードの中継地エリアにあるウズベキスタンは、中国やヨーロッパ、ロシア、インドなどの周辺国からさまざまな食文化の影響を受けてきました。しかし、実は日本食と類似性があるのです。ウズベキスタンの料理や食文化、外食事情について紹介しましょう。

ウズベキスタンのパロフ

 

ウズベキスタンには日本と似ている料理がたくさんあります。代表的な伝統料理は「パロフ」と呼ばれる米料理。各地で作り方や具材が異なりますが、日本のチャーハンやピラフに似ています。「ラグマン」という麺料理は、スープはトマトベースなものの、日本のうどんのようなイメージ。さらに、日本の蒸し餃子のような「マンティ」や、焼き鳥に似た肉の串焼き「シャシリク」もあります。これらは一例ですが、ウズベキスタン料理は見た目や調理方法が日本食と似ているため、日本人にも好まれやすいと言われています。

 

豚肉は食べないが……

ノンはタンドールと呼ばれる窯で焼く

 

ウズベキスタンの主食は「ノン(ナン)」と呼ばれるパンで、現地の人たちは米料理のパロフも麺料理のラグマンもノンと一緒に食べます。そのため日本人よりも大柄な人が多く、健康に関心が高い日本人からすると「炭水化物の摂りすぎでは?」と思うかもしれません。

 

ただ、イスラム教信者が約90%以上を占めているため、豚肉を摂取しない人が多く見られます。その一方で、同じようにイスラム教を信仰する他国ほど厳格とはいえず、国内ではアルコール類も販売され、結婚式などのお祝いにお酒を飲む人もいます。

 

ウズベキスタンの人たちが好むのは緑茶で、軽食時だけでなく毎回の食事時にもよく飲んでいます。国内では緑茶が生産されていないので、中国やインドからの輸入品になります。

 

首都に本格的な日本料理店がオープン

ウズベキスタンには昼食や夕食を家族と一緒に食べる慣習があり、外食する金銭的余裕がない人も多いことから、以前は外食需要が高くありませんでした。しかし、ウズベキスタンの外食産業市場規模についてジェトロ(日本貿易振興機構)が2015年に実施した調査では「新たに設立された中小企業26900社のうち30.4%が外食産業」という結果が出ていて、外食の市場規模が広がっていることがわかります。また、2020年のウズベキスタン税務国家委員会の発表によれば、国内には13858の飲食店があるとのこと

 

首都タシケントには日本料理をはじめ、韓国料理、中華料理、イタリア料理、ロシア料理など他国料理の店も多いのですが、ウズベキスタン料理の店と比べると価格は高め。そのため、利用客は高収入の人たちや外資関係者など、一部の客層に限られています。

 

タシケントにいくつかある日本料理店のシェフは、一般的にウズベキスタン人や韓国人などです。さらに地方においては、店名は日本にまつわる名称なものの、本格的な日本食を提供する料理店はありません。

 

しかし2022年6月、タシケントに初めて本格的な日本料理店が開店しました。和食が専門で、日本人シェフが常駐し日本人スタッフがサービスや調理管理を行っているそうです。国際機関や各国の外交関係者に利用されてきた隣国のキルギス店舗に続く2号店で、経済成長が著しいウズベキスタンでも人気店になりそうです。

 

日本の食材は韓国人向け市場で入手

ウズベキスタンのバザールの香辛料売り場

 

タシケントでも日本の食材を入手することはできませんが、日本人御用達ともいえるのが韓国食材なら何でもそろうミラバットスキー・バザールという市場です。昔から朝鮮系移民が多く住んでいたタシケントには現在も多くの韓国人が在住しているため、韓国の食材には事欠きません。

 

ミラバットスキー・バザール周辺では豚肉や豆腐、韓国海苔、韓国味噌、韓国醤油、麵つゆ、酢、干し椎茸、昆布、蕎麦など何でも購入できます。ウズベキスタンには日本米はありませんが、ほぼ同じレベルといえる韓国米も売っています。

 

日本ではウズベキスタン料理店が少ないため、ウズベキスタン料理についての知名度はまだ低いのが現状です。ただ、日本が2019年からウズベキスタン労働者の受け入れを開始したこともあって、両国の交流を通じて日本にもウズベキスタン料理が少しずつ浸透していくかもしれません。

 

また、現在のウズベキスタンは日本におけるかつての高度経済成長期にあたり、各国の企業進出が目立ち観光客も増えています。タシケントに本格的な日本料理店ができたことなども追い風となり、日本食への関心が高まる可能性もありそうです。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

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ウクライナ侵攻の影響大。世界の食料輸入額が過去最高に

国連食糧農業機関(FAO)は2022年11月11日、世界の食料輸入額が過去最高を記録する勢いだと報告しました。国連の広報機関であるUN Newsが掲載したFAOの報告書によれば、世界の食料輸入コストは今年に1兆9400億ドル(約270兆円)に到達する見込みとのこと。これは、2021年と比較しておよそ10%の増加となります。

 

食料の輸入額が上昇した原因として、ロシアによるウクライナの侵攻が挙げられています。両国はあわせて世界における全小麦輸出量の約30%を占めており、その輸出が制限されていることで、食料価格を押し上げているのです。ただし食料価格の上昇と米ドルに対する通貨安を受け、今後、増加ペースは鈍化することが予想されています。

 

深刻化する富裕国と低所得国の格差

食料価格の上昇で現在懸念されているのが、低所得国に与える影響です。世界の食料輸入の増加分の多くを富裕国が占める一方で、低所得国の食料輸入量は10%も縮小。にもかかわらず、輸入総額は横ばいとなることが予測されています。つまり、低所得国による食料の入手が難しくなっているのです。

 

FAOはこのような現象について、「これは食料安全保障の観点から憂慮すべき兆候であり、コストの上昇を補填することが困難なことを示している。低所得国は食料価格の上昇に対する抵抗力を失っている可能性がある」と分析しています。

 

低所得国への国際的な支援が必須

食料価格の上昇を受けて、国際通貨基金(IMF)は、低所得国に緊急融資を行うための「フードショック対策窓口(Food Shock Window)」を新たに承認しました。FAOはこの動きを歓迎し、食料輸入コストを低減するための重要なステップだとしています。

 

一方で食料だけでなく、燃料や肥料などのコストも上昇しています。FAOによれば今年のエネルギーと肥料の世界的なコストは4240億ドル(約59兆円)となり、前年比で50%も上昇しているのです。さらに同機関は、「世界の農業生産と食料安全保障への悪影響は2023年まで続くだろう」と分析しています。

 

食料やエネルギーなどの価格上昇が、とりわけ低所得国に与える影響は決して小さなものではありません。日本をはじめとする各国からの国際的な支援が不可欠ではありますが、農業生産性の向上や、肥料の現地生産化などは、支援だけでなくビジネスによって貢献できる分野でもあります。課題が大きいからこそビジネスニーズも高いとも言える途上国。日本企業の海外展開が期待されます。

 

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肥料価格高騰のピンチを救うか!? リン輸出が急増する「モロッコ」に世界が注目

ロシアのウクライナ侵攻による世界への影響は、エネルギーを筆頭に、小麦、トウモロコシなどの食料を含めて多岐に及んでいます。しかし、実は農業に欠かせない肥料についても重大な変化が進行中。世界一の肥料輸出国・ロシアが制裁により供給を制限されている中、注目を集めているのがモロッコです。

世界の商人がモロッコのリンを狙う(写真は同国中部の都市・マラケシュの市場)

 

肥料には窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の3つの要素が不可欠であり、それらに沿って肥料は窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の3つに大別できます。モロッコが注目されているのは、世界のリン鉱石埋蔵量の7割以上を保有し、そこからリン酸肥料の原料となるリンを得られるから。成分の中にリン酸を含む肥料の例としては、家庭園芸用複合肥料のハイポネックス液があります。

 

世界の肥料市場で、モロッコはロシア、中国、カナダに次ぐ世界4位の輸出国。2021年における世界のリン酸肥料の市場規模は約590億ドル(約8.7兆円※)ですが、モロッコのリン酸肥料の収入は2020年で59億4000万ドル(約8740億円)。世界のリン酸肥料のうち1割程度が同国で生産されていることがわかります。

※1ドル=約147円で換算(2022年11月7日現在)

 

モロッコの輸出肥料の売上高のうち約2割を占めている、モロッコ国営リン鉱石公社(OCPグループ)は、2022年6月末に発表した決算報告で、2022年の純利益が前年比で2倍近くになったことを発表。その理由の一つには、ロシアのウクライナ侵攻による肥料価格の高騰があります。しかし、ロシアでの肥料生産量が落ちている中、2022年の第一四半期におけるモロッコのリン輸出は前年同期比で77%増加しました。この勢いに乗って、モロッコは2023年から2026年にリン酸肥料の生産を増加していく計画です。

 

モロッコは1921年からリン鉱石の採掘を開始し、OCPグループが世界最大の肥料生産拠点を建設するなど、肥料生産は同国の経済成長にも大きく貢献してきました。ロシアのウクライナ侵攻が始まる前は、OCPグループが抱える取引先は、インド、ブラジル、ヨーロッパなど、世界各国350社を超えていたそう。

 

また、広大な耕作地を有するアフリカ各国へも肥料を輸出しています。2022年にはOCPグループは、零細農家に無料や割引価格で肥料を提供するなどして、アフリカの農業を支援すると同時に、同国の影響力を高めています。

 

その一方、今後のモロッコにおけるリン酸肥料の生産には課題も。専門家が指摘するのは、水とエネルギーの問題です。リン酸肥料を生産するには、大量の水と天然ガスを使用しますが、モロッコは乾燥しやすい気候で水不足に悩まされているうえ、天然ガス資源も乏しい国。そのため世界の多くと同じように、高騰するエネルギー価格が生産コストに大きく影響します。

 

この課題を克服するために、モロッコ政府は「国家水計画」を立ち上げ、ダムや海水淡水化プラントを建設するほか、再生可能エネルギーに目を向けているようです。

 

世界の肥料業界で注目度を高めるモロッコ。肥料を輸入に依存する日本の政府も、原料の安定調達のため、2022年5月に農林水産省の武部新副大臣を同国に派遣しました。日本国内では肥料価格の高騰をきっかけに、農業のあり方を見直す動きも出てきていますが、モロッコとの関係は今後より一層強化されていく模様です。

 

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インドが「ソバの生産」に注力! 不透明感が増す日本のそば事情を変えるか?

2022年9月、インド東部のメーガーラヤ州にソバの実を生産する農家が集い、そば粉から作ったパンやスイーツなどが披露されるなど、そばをテーマにした一大イベント「メーガーラヤ・ソバ・グローバルショーケース2022(Meghalaya Buckwheat Global Showcase 2022)」が開かれ、日本の関係者も招かれました。一体なぜメーガーラヤ州は、ソバの実の生産に注力しているのでしょうか?

日本とインドの間で”細くて長い”貿易になる?

 

そば粉の原料になるソバの実の生産にメーガーラヤ州の農家が注力している理由の1つは、そばの高い健康効果。食後の血糖値の上昇度を示すグリセミック指数(GI)というものがあり、糖質が多くて食物繊維の少ない食品はGI値が高く、血糖値を一気に上昇させて、糖尿病や肥満を起こす原因になると考えられています。GI値が70以上は高GI食品に、56〜69の値だと中GI食品になりますが、そばのGI値は55前後。糖分を穏やかに吸収しながら、糖尿病や肥満などを防ぐ低GI食品なのです。また、そばは繊維質が豊富で、良質なタンパク質を含んでいるため、栄養価が高く、栄養バランスに優れた「スーパーフード」の1つとされています。

 

インドは、都市部の約28%の人が糖尿病または糖尿病予備軍と言われるほどの糖尿病大国。そこで、小麦や米をソバに切り替えて、健康的な生活を送ろうという動きが出てきているのです。

 

もう1つの理由として、ソバの実の需要が世界的に増加していることが挙げられるでしょう。インドのMarket Data Forecastによると、2022年における世界のソバの実市場規模は14億ドル(約2040億円※)。2027年までの今後5年間で、年平均成長率2.9%で伸びていくと見られています。2020年の国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、世界のソバの実の生産量は約181万t。生産量の多い上位国はロシア(89.2万t)、 中国(50.4万t)、ウクライナ(9.7万t)です。生産量で世界第6位の日本も7~8割程度を輸入に頼っており、ロシアや中国、アメリカから多くを輸入している状況。最近では、米中摩擦の影響で中国が減産するなどしたため、ソバの実の価格は高騰していますが、上述した健康的な側面から、そばの需要は世界的に伸びていくと予測されているのです。

※1ドル=約145.7円で換算(2022年9月22日現在)

 

インドのソバ輸出に日本も期待

比較的栽培しやすいと言われるソバ。メーガーラヤ州ではここ3年間で、理想的な植え付け時期を把握するために、何度もソバ栽培を試みるなどして、地域での最適な農法を探ってきました。同州はようやくその農法を確立しつつあるようで、少しずつ栽培面積を拡大していく段階に至っていると見られています。

 

それに加えて、メーガーラヤ州では日本が道路建設プロジェクトを支援するなどしてきた歴史があり、昔から日本とつながりのある地域。そのため、そばの輸出先の1つとして日本に熱い視線を送っているようです。今回のイベントに出席した在インド日本国大使館の北郷恭子公使は「そばは日本文化の1つであり、日本のソバ栽培の専門家たちは技術移転という形で、ソバ栽培技術の普及に取り組んでいます」とコメント。日本もインドに期待を寄せているようです。

 

最近の日本では、2021年に中国産のそば粉が値上げしたうえ、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によって、ロシア産のソバの実の供給が止まる可能性も取り沙汰されており、そばを巡る状況は不透明感を増しています。今後インドは、日本にとって重要なソバの実の生産国になるかもしれません。

 

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途上国の「5G」導入費用は先進国の3倍。「スマート農業」に対する農家の期待と不安

途上国を中心に世界の人口が増加する中、ビッグデータやAI、ドローンなどの最先端テクノロジーを活用して、農家の経営をデジタル化し、農作物の管理をより精密にする「スマート農業」の動きが活発化しています。近年、この分野では「5G」が大きな注目を集めており、最新の移動通信システムを導入することでスマート農業はさらに飛躍すると言われていますが、その一方で課題も浮き彫りになっています。

5Gの導入は期待半分、不安半分

 

世界中の農家は、スマート農業に積極的な理由を見出しています。2022年7月、スマート農業に対する農家の姿勢や課題などについて調べた『DEMETER』レポートが発表されました。DEMETERは主に欧州諸国がスマート農業を推進するためのプロジェクトですが、同レポートは南アフリカやジャマイカといった新興国・途上国を含む、世界46か国から484名の農家の回答を収集しています。この中で、農家がスマート農業を取り入れる大きな理由として、「農業経営に必要な、より良い情報を得ることができる」「仕事をシンプルにする」「生産性を上げる」という3つの要因が存在することがわかりました。

 

そこで5Gが役に立ちます。数年前に国連開発計画は、このテクノロジーが先進国だけでなく途上国にもさまざまな恩恵をもたらすと論じました。例えば、ドローンやセンサー、データ通信などの幅広い技術との連携。フィリピンの農村・カウアヤン市は、数年前に地元政府が同国最大の通信事業者と提携して5Gを導入し、「デジタル・ファーマーズ・プログラム」を通して農家に最新テクノロジーに関する研修や指導を行いました。

 

また、5Gによって迅速かつ効率的にデータを共有することが可能になります。イギリスのある事例では、酪農家が牛の首や脚にIoTセンサーを装着。健康状態や日常の行動をモニターし、異変があれば、獣医師や栄養士にデータを送り、牛の健康上の問題にいち早く対処できる体制が構築されたとのこと。このことは最新テクノロジーがさまざまな場面で迅速な意思決定を促すことも意味しており、だからこそ5Gが効率や生産性を上げると期待されているのです。

 

その他のメリットとして、5Gには気候変動への対策としての側面があることも見逃せないでしょう。2017年に米国科学アカデミー紀要に掲載された論文によると、世界の平均気温が1度上がるごとに、大豆の収穫量は3%、小麦は6%、トウモロコシは7%減少するとのこと。気候変動がもたらす害虫や動物の病気が農作物に悪影響を及ぼしますが、スマート農業では、気候や土壌の状態などに関するデータをIoTセンサーから収集するほか、人工知能や機械学習が農作物の害虫や病気に対する感染のしやすさを予測して農家に伝えることが可能。このような機能の速度や効率性、精度が5Gによって向上すると見られています。

 

最大のネックは費用

しかし、農業に5Gやスマート技術を導入するうえで最大の障壁となっているのが費用の問題。5Gの導入には既存の4Gネットワークをアップグレードする必要があり、通信事業者が負担する費用は2倍近くになると言われています。コンサルティング会社のマッキンゼーによれば、2030年までに想定される範囲をすべて5Gにするためには、最大で9000億ドル(約121兆円※)もかかるとのこと。さらに途上国の場合、3Gや4Gのネットワーク自体が存在しないか不足している地域が少なくないため、5Gの導入費用は先進国の3倍近くなると言われています。つまるところ、先述したDEMETERのレポートでも、53%の農家がスマート農業における最大の課題は「費用」と回答していました。

※1ドル=約134.7円で換算(2022年8月9日現在)

 

このような理由で、5Gの導入には国や自治体の支援が不可欠。カウアヤン市の取り組みが参考になるかもしれませんが、農家の心配は費用だけではありません。「リソース不足」や「データのプライバシー」を懸念する声もあり、これらは農家が自力で解決できる問題ではないでしょう。農家が人手不足に陥っている日本では、2020年にNTTグループや北海道大学が共同で、ロボットトラクターを田んぼに導入し、5Gとスマート農業の実証実験を行いました。少子高齢化が進む先進国と人口が増加している途上国では、直面する課題が異なるかもしれませんが、経営の効率化や生産性の向上など、農家がスマート農業に期待していることは同じ。できるだけ費用を抑えた、広く通用するビジネスメソッドが求められています。

 

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世界の「フードテック」市場で存在感を高める、ナイジェリアのスタートアップ

【掲載日】2022年7月13日

最新テクノロジーを活用して食品分野の新たな可能性を追求するフードテック。デリバリーから流通ネットワークの構築、食品関連事業者への融資まで、幅広いイノベーションが生み出されています。しかし、この動きが活発なのは先進国だけではありません。近年、一際大きな注目を集めているのがナイジェリアです。

フードテック系スタートアップが次々に生まれているナイジェリアのラゴス

 

ナイジェリアのフードテックを多く生み出しているのは、同国最大の都市・ラゴス。世界中のスタートアップに関するデータを提供するStartupBlink(SB)社の世界エコシステム・ランキングで、同都市は2022年に81位へ浮上し、前年から41位も順位を上げました。さらに、同社のフードテック企業エコシステムの都市別ランキングでは、米国の主要都市が上位を占める中、ラゴスが24位にランクインしています。

 

ラゴスを中心にナイジェリアのフードテックが台頭している背景には、人口増加に伴う食のニーズの高まりがあります。また、中間層が増えているため、食の多様化が進むと同時に、外食産業も成長しています。

 

SB社によれば、同都市にはフードテックのスタートアップが46社ありますが、その中には著名なベンチャーキャピタルから巨額な出資を受けて事業を急拡大している企業が数多く存在しています。例えば、2020年に創業したOrda社は、レストラン向けの注文管理や決済、商品在庫、物流システム等を管理できるプラットフォームをクラウドで提供しており、2022年1月に110万ドル(約1億5000万円※)を調達しました。

※1ドル=約136円で換算(2022年7月8日現在。以下同様)

 

ほかにも、Agricorp International社は、独自開発した「Farmbase」と呼ばれるテクノロジーを活用し、スパイスや養鶏農家を対象に詳細なプロフィールや財務フローを作成することで、農家の生産能力を高めており、2021年にはシリーズAの資金調達ステージで1750万ドル(約23億7000万円)もの巨額な資金調達に成功しました。同年には、レストランなどの食品サービス提供事業者と農家などを直接マッチングさせる仕組みを提供するVendease社も320万ドル(約4億3000万円)の資金を調達しています。

 

このように、多くの機関投資家や個人投資家、ベンチャーキャピタルが、ラゴスを中心にナイジェリアのフードテックに熱視線を送り続けています。同国の食に関する産業は今後も成長していくことが見込まれており、日本企業にとっても、その存在感はますます大きくなるでしょう。

 

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インドでシェア拡大を目指す「ジャパニーズ・ウイスキー」、しかし国内市場に変化が…?

【掲載日】2022年6月29日

近年、日本産酒類の輸出が目覚ましいペースで増加しています。2021年の輸出金額は過去最高額の1000億円を超え、2022年は前年を上回る勢いで推移。主な輸出先である米国や中国で高級品として受け入れられているジャパニーズ・ウイスキーや日本酒は、途上国でも市場の拡大を目指しています。しかし、ターゲット市場の1つであるインドではウイスキー市場に大きな変化が起きており、競争がさらに激しくなりそうです。

インド市場を攻略するためには……

 

日本が輸出する酒類の中で最も多いのは日本酒と思われるかもしれませんが、実際には輸出額の第一位はウイスキー。2021年の清酒輸出額の対前年比は約66%増でしたが、ウイスキーはそれを上回る約70%増という驚異的な伸長を示しました(国税庁『最近の日本産酒類の輸出動向について〔2021年12月時点〕』)。国際市場では、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンに加えて、ジャパニーズが世界的に有名なウイスキーの産地として認識されています。これは、日本のウイスキーメーカーが品質に徹底的にこだわり、国際品評会などで激戦を勝ち抜いてきた結果と言えるでしょう。

 

今後、ウイスキーの市場規模が爆発的に拡大すると見られるのは新興国ですが、その中でも一際大きな注目を集めているのがインド。国際物流網の混乱によって、インド国内のウイスキーメーカーが2020年頃から急成長しています。巨大な人口を抱えるインド国内のウイスキー市場は約188億ドル(約2兆5000億円※)規模と言われており、現在では、さまざまなフルーツの香りや黒コショウなどの新感覚で楽しめるシングルモルトウイスキーの人気が高まっている模様。プレミアム感の高い輸入品に依存していたインド人の嗜好を変えるために、国内メーカーが奮闘していますが、それが国産や輸入品を問わず、ウイスキー人気に拍車をかけるでしょう。

※1ドル=約134.6円で換算(2022年6月24日現在)

 

現在のインドのウイスキー輸入関税は約150%であるうえ、高温多湿の気候条件が海外メーカーのハードルになってはいますが、自由貿易の枠組みが進展すれば、そのハードルは下がります。ウイスキーだけでなく、日本酒を含めて考えると、日本にはかなり多くの銘柄が存在しており、そのどれもが国内競争で勝ち残ってきた逸品。日本産酒類が本当に世界を席巻するのは、これからが本番ですが、インドを含めた新興国で成功するためには早めの戦略策定が必要。日本での功績に陶酔している時間はありません。

 

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食べなきゃ後悔する! 日本人にオススメの、冬に食べたい「ポーランド」の絶品スープ5選

日ごとに寒さが増し、温かいものをいただきたくなる季節となりました。著者が住むポーランドの伝統料理には、さっぱりしたものからクリーミーなものまで、冬に飲みたい絶品スープが勢ぞろいしています。今回はそのなかから日本人がつい何回も飲みたくなってしまうスープを5つご紹介します。

 

1: ジュレック

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ジュレックは「ポーランドの味噌汁」とも呼ばれます。ライ麦を発酵させた際にできるザクワスというものを入れたスープで、その独特な酸味と味わい深さが特徴。固ゆでの卵、白ソーセージやスモークベーコンなどが入っており、食べごたえは抜群です。通常はパンといっしょに食べるため、これだけでお腹いっぱいになってしまうかもしれません。

 

2: バルシチ

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見た目はただ真っ赤で、人によっては口にするのも抵抗を感じてしまうようなスープです。しかし、この色は赤ビーツという野菜からでるもので、バルシチは一種のベジタブルスープ。シンプルなだけに味はスパイスに左右されやすく、レストランや家庭によっても異なります。しかし、見た目とは裏腹に日本人にとってはホッとする味わい。非常にあっさりしていて飲みやすいです。

 

3: ロスウ

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ポーランドの家庭では、日曜日にロスウを飲むのがお決まりです。ロスウはいわゆるチキンスープですが、数あるスープの中で最も伝統があるといわれるもの。メインの具としてマカロンと呼ばれる、短くて細いパスタが入っています。ポーランドで日本風ロスウといえばラーメンのことですが、ラーメンほど濃い味ではありません。透き通る色合いからも分かるように、とても優しい味がします。

 

4: ズパ・グジェボヴァ

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ポーランド人が好きな食べものの1つにキノコ(ポーランド語でグジェヴィ)がよく挙げられます。家族できのこ狩りに出掛けるのは秋の恒例行事。ポーランドの森で採れた新鮮なキノコの旨味がたっぷり入った、ほっこりできる味わいのズパ・グジェボヴァはみんなの大好物です。とりわけポルチーニ茸のスープは日本人観光客にも大人気。高級食材として知られるポルチーニ茸ですが、ヨーロッパで流通しているポルチーニ茸の9割がポーランド産なのです。ぜひとも本場のポーランドで味わってみてください。

 

5: ズパ・グラショヴァ

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こちらのスープは、ゴロゴロとした牛肉とニンジンやジャガイモといった野菜が具材となっているため、ビーフシチューのような感覚で食べることができます。実はグヤーシュと言われるハンガリーの伝統料理なのですが、今ではその周辺国や地方での代表的なスープとして知られるようになりました。ポーランドで飲まれる数あるスープの中でも比較的味が濃く、また材料の1つであるパプリカパウダーの香りと甘みは病み付きになります。

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以上、ポーランドの代表的なスープを5つ紹介しました。どれも1年を通して食べられるものですが、冬になるとスープのバリエーションは一気に増えます。ポーランド旅行の際はぜひ、いろんなお店でスープを飲み比べてみてください。