ごちそう”海苔弁”をフライパン一つで作るには?海苔の敷き方からアレンジレシピまで日本料理人が徹底解説

海苔は、水温が下がる11月下旬から4月初旬までが旬。初摘みは少々高値ですが、縁起物でもあります。この一年でもっともおいしい時期の海苔を使って作りたいのが、海苔弁。かつては日の丸弁当と並ぶ“手抜き弁当”の代表格でしたが、最近は海の幸や山の幸をふんだんに盛り込んだ、豪華な海苔弁が人気。専門店も続々とオープンしています。

 

このトレンドの“ごちそう海苔弁”を、自宅で手作りしてみましょう。フライパン1つで調理するワンパンレシピと、作り置き食材で時短しながら、自分好みに作るには? 日本料理店で修行を積み、数々のお弁当に腕を振るってきた日本料理人のジョージさんに、初心者でも簡単に取り組めるごちそう海苔弁の作り方を教えていただきました。

 

 

なぜ定番人気?
海苔弁の歴史と魅力

 

お財布にやさしいコンビニの300円台からデパ地下の2000円近いものまで、多様化する海苔弁。根強い人気の海苔弁は、そもそもいつ頃から登場したのでしょうか?

 

「ごはんの上に敷いた海苔の上に、白身魚のフライや、ちくわの磯部揚げ、きんぴらごぼう……という王道スタイルは、1970年代に大手お弁当チェーン店が販売したのが始まりです。一方、海苔とおかかの関係はもっと古く、江戸時代には板海苔が発明され、ごはんに鰹節をのせた“ねこまんま”が、庶民の間に広まっていきました。また漁師町では、おかか醤油を具にしてごはんと海苔で巻いた細巻きのような携帯食(お弁当)が食べられており、おかかと海苔は手に入りやすかったこともあって、日本人にとってお馴染みの味となっていったのです。
そんな親しみのあるおいしさだからこそ、手軽で庶民的な海苔弁から贅をつくした高級海苔弁まで、時代とともにバラエティに富み、ブームになっていったのだと思います」(日本料理人・ジョージさん、以下同)

 

徳川家康の好物だから発展した!? 日本の伝統食材「海苔(のり)」の意外に知らない話

 

風味豊かに!
海苔の旨み成分を引き出すあぶり方

「初摘み」と言われる11〜12月に採取された海苔は、通常出回っている海苔よりも柔らかく、味も良いとされています。おいしい海苔弁に欠かせない、海苔の扱い方とは?

 

「私が住んでいた宮城県は海苔の養殖が盛んで、旬の時期になると母が、海苔を3枚も挟んだ豪華な海苔弁を作ってくれたものです。お弁当を開けた瞬間、海苔の香りがふんわり広がって食欲がそそられたことは懐かしい思い出ですね。
この香りやおいしさを引き出すには、海苔を火であぶることが大切。熱を加えるとタンパク質が熱変性し、組織全体が収縮、旨みもより感じやすくなるのです」

 

【海苔のあぶり方】

「直火に直接海苔が当たるよう、海苔を五徳(ごとく)に滑らせながら右から左に三往復ほどあぶります。持ち手を逆にして、反対側も同様に3往復することを忘れずに。このあぶった海苔を、粗熱がとれたごはんにのせると、ごはんに残った水分が海苔の旨み成分を引き出します。
ごはんが温まったまま蓋をしてしまうと腐敗の原因になるので、蓋をするときは、おかずもごはんもしっかりと冷ましましょう」

 

醤油や塩は不要!
風味豊かな「基本の海苔弁」の作り方

「鰹節の旨みと塩みを利用してやさしく味付けした、風味豊かな海苔弁です。海苔には、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸と、異なる3つもの旨み成分が含まれているため、強い旨みを持っています。そのため、醤油をつける必要はありません。その分、鰹節はたっぷりとのせましょう」

 

【材料(1人分)】

・ごはん……1人前
・鰹節……1g
・海苔……適量

 

【作り方】

1.ごはんを、お弁当の7割ほど敷き詰める。

「ごはんの水分を海苔と鰹節に吸わせたいので、ごはんを完全に冷ます必要はありません。ごはんはギュウギュウに詰めず、ふんわりとよそいましょう」

 

2.鰹節をのせる。

「ごはんに味付けはしないので、鰹節はごはんが隠れるぐらいたっぷりとのせましょう」

 

3.おかずをのせるスペースを確保し、さらにごはんを盛る。海苔をお弁当に合わせて切ってのせる。

「海苔を切るときははさみを利用しましょう。お弁当におかずを納めるため、おかずをのせるスペースには、海苔を敷きません」

 

そぼろに、混ぜごはん、ごはんの味付けも工夫次第な「ごちそう海苔弁」

海苔弁の基本ルールを学んだところで、続いていよいよごちそう海苔弁のレシピを教えていただきましょう。海苔の下のごはんに、そぼろや混ぜごはんを忍ばせるなど、うれしい組み合わせを考えます。ごはんを薄く敷き海苔を重ねて、海苔ごはんを2段や3段にするのもいいですね。楽しんで盛り付けましょう。

 

メインの鮭をダイナミックに盛り付ける「鮭海苔弁」

「塩漬けの鮭は、焼くだけでお弁当のメインに。サーモンピンクの色合いもきれいで、海苔との相性も抜群です。海苔弁の上にのせたのは、どれもフライパン1つでできるおかず。より時短するなら、保存の効くにんじんの金平や菜の花など葉物の塩ゆでは、前もって作り置きしておくといいでしょう」

 

【材料(1人分)】

・基本海苔弁
(ごはん……1人分、鰹節……1g、海苔……適量)

 

〈お弁当のおかず〉
・焼き鮭
(鮭……1/2切れ)
・にんじんのきんぴら
(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、醤油……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本、茹でるための塩……適量)
・海老真丈(しんじょう)
(海老……5本、玉ねぎ……1/4個、卵黄……1/2個、マヨネーズ……2g、片栗粉……2g)
・卵焼き
(卵……1個、みりん……小さじ1、濃口醤油……小さじ1)

 

【おかずの作り方】

1.菜の花は、フライパンで塩茹でし、3cm幅に切る。にんじんを千切りにする。卵にみりん、濃口醤油を入れ、混ぜる。

2.海老真丈の玉ねぎをみじん切りし、フライパンで炒め、粗熱をとる。むき海老の水気を押さえ、ぶつ切りにする。玉ねぎ、卵黄、マヨネーズを加え、3cmの丸型に成型し、両面に片栗粉をまぶす。

3.フライパンを中火で熱し、温まったら、鮭、海老真丈を入れて焼く。空いたスペースにごま油を引き、にんじんを入れ炒める。みりん、濃口醤油を入れ炒め、仕上げにマヨネーズを入れ和える。すべてのおかずをバットに取り出し、冷ましておく。

 

・ワンパン調理のポイント

「フライパンであらかじめ菜の花を茹で、鮭、海老真丈、にんじんのきんぴらを同時に調理します。鮭と海老真丈は焼くだけなので、調理は簡単。2つの具材を焼いている間に、にんじんを炒め、みりんと醤油で炒めます。きんぴらの隠し味にマヨネーズを入れることで、冷めてもおいしいお弁当に合うマイルドな味わいのおかずになります」

 

4.フライパンは洗わず、中火で温める。(1)の卵を、傾けたフライパンのくぼみに縦長になるように流しこみ、小さな卵焼きを作る。

「卵1個でも、卵焼きは作れます。フライパンのくぼみを利用すると、お弁当にちょうどいい薄さとサイズの卵焼きが焼けます」

 

【盛り付け方】

1.海苔が敷かれていないスペースの鰹節を隠すように、にんじんのきんぴら、卵焼きを置く。卵焼きを縦に重ねて置いたら、海老真丈はあえて横に重ねて置き、間に菜の花を立てて置く。

 

2.真ん中に鮭を置く。

「お弁当に入れるおかずを考えるときに、まず大切なのは色合いです。赤・黄・緑の色を意識すると、苔の黒地に色が映え、華やかで食欲をそそるお弁当を作ることができます。また、彩りを豊かにすることで、自然と栄養バランスも整います。
海苔が敷いてあるため、副菜はきんぴらやごま和えなど、汁気の少ないおかずがおすすめです」

 

【豆知識】お弁当のおかずは3cm
「お弁当のおかずのサイズは、3cmをひとつの目安にすると、盛り付けしやすく、食べやすいお弁当になります。日本には1寸=3cmというサイズがあります。日本料理ではその1寸を、おちょぼ口の人でも一口で食べられるサイズとして利用してきました。お弁当の盛り付けの際も、バランスよくきれいに盛れるサイズでもあります」

 

肉がメインで食べ応えたっぷりな「そぼろとチキンソテーの海苔弁」

「しっかり食べたいときにおすすめの、鶏そぼろを海苔の下に敷いたお弁当です。ごま油とみりん、醤油で炒めた甘じょっぱい鶏そぼろが、海苔とよく合います。鶏のソテーは、塩とこしょうを強めに振り、しっかりと味付けをしましょう」

 

【材料(1人分)】

そぼろ海苔弁
・ごはん……1人分
・鶏そぼろ
(鶏ひき肉……50g、ごま油……小さじ1、酒……大さじ1、みりん……大さじ2、濃口醤油……2)
・海苔……適量

 

〈お弁当のおかず〉
・鶏モモ肉のソテー
(鶏モモ肉……1/3枚=約100g、塩・こしょう……適量)
・エリンギのソテー
(エリンギ……1/2本)
・にんじんのきんぴら(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、しょうゆ……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本)
・卵焼き

 

【おかずの作り方】

・鶏そぼろ……熱したフライパンにごま油を引き、鶏ひき肉を入れ炒める。全体に火が入ったら、酒、みりん、濃口醤油を入れ煮詰める。

 

・鶏モモ肉のソテー……両面に塩こしょうをして、熱したフライパンに皮目を下にして焼く。おいしそうな焼き色が付いたら、ひっくり返し蓋をして1分焼き、火を消してガス台の上に10~15分置いておく。時間が経ったら一口サイズに切る。

 

・エリンギのソテー……エリンギを1口サイズ(3cm)に切ったら、鶏肉の肉汁で焼く。

 

【盛り付け方】

1.粗熱が取れたごはんを、お弁当箱に7割程度敷きつめる。

 

2.鶏そぼろを敷き詰める。

 

3.おかずのスペースを確保し、海苔をお弁当に合わせて切ってのせ、おかずスペースに、にんじんの金平をのせる。

「にんじんを広げてのせることで、おかずの合間からオレンジ色が見え、華やかに」

 

4.卵焼きは横に、エリンギは縦に、鶏モモ肉のソテーは斜めに、菜の花は立てて盛り付ける。

「メインの鶏肉を手前においしそうに盛り付けるため、その他のおかずを奥から詰めていきます。おかずをのせる方向を、横や縦、斜めと変化を付けると立体的になりおいしく見えます。エリンギに味付けは必要ありません。鶏肉を焼いて残った肉汁で焼くことで、旨みを吸ったつややかなソテーになります」

 

豆腐と野菜のヘルシーおかず「大葉とごまの海苔弁」

「海苔の下に隠れたごはんを、緑の映える大葉とごまの混ぜごはんにしました。箸でごはんをすくった時に見える大葉の緑色が、海苔弁を鮮やかに彩ります。冷めてもおいしい混ぜごはんです 」

 

【材料(1人分)】

・大葉とごまの混ぜごはん
(ごはん……1人前、大葉……3枚、ごま……2g)
・海苔……適量

 

〈お弁当のおかず〉
・豆腐と刻み野菜の真丈
(豆腐……100g、にんじん……10g、大葉……2枚、卵白……10g、片栗粉……5g、みりん……大さじ1、濃口醤油……大さじ1)
※刻み野菜は、あるもの何でもOK。今回は、お弁当の残りの野菜を使用
・なすの照り焼きナス
(なす……1/2本、万能ねぎ……少々、みりん……大さじ1、濃口醤油……小さじ2)
・ミニトマト出汁漬け
(ミニトマト……2個、八方だし(みりんや白だしで代用可能)……少々)
・にんじんのきんぴら
(にんじん……30g、ごま油……小さじ1/2、みりん……小さじ1/2、醤油……小さじ1/2)
・菜の花の塩茹で
(菜の花……2本)

 

【おかずの作り方】

・豆腐と刻み野菜の真丈……木綿豆腐を電子レンジで温めて、水抜きをする。刻んだにんじん、大葉と卵白、片栗粉をしっかり混ぜ合わせ、3cmの丸型に成型する。熱したフライパンにごま油を引いて焼き、焼き色が付いたらひっくり返す。両面に焼き色が付いたら、みりん、濃口醤油を入れて、絡ませる。

 

・なすの照り焼きナス……ナスを厚さ2cmの輪切りにする。あく抜きの為に、水に30秒ほど浸ける。熱したフライパンに油を引き、ナスを焼く。しんなりしてきたらひっくり返す。両面がしんなりしたら、みりん、濃口醤油を入れて絡ませる。仕上げに、小口切りの小ねぎを和える。

 

・ミニトマト出汁漬け……ミニトマトを湯むきして、八方出汁(めんつゆや白だしも可)に漬ける。

 

【盛り付け方】

1. 刻んだ大葉とごまのごはんの3割ほどをお弁当箱の1/2の高さまで、残りを9割ほどの高さまで盛り付け、ごはんに段をつける。上の段のごはんが隠れるように海苔をのせる。

「おかずを立てたり、敷いたり高低差をつけるとおかずが立体的に見えおいしく見えます。お弁当箱が小さい場合には、高低差をだすためにも、ごはんにくぼみを作るとよいでしょう。大葉は、ごはんの熱で緑がより鮮やかに、爽やかな混ぜごはんになります 」

 

2.すべてのおかずが見えるよう、にんじんをクッションにし、なすの照り焼き、豆腐と刻み野菜の真丈、トマトの出汁漬けを斜めに立てながら、同じ方向に盛り付ける。

「真丈とは、日本料理で、白身魚や豆腐、海老などの具材に卵やみりんなどを加えて丸型にし、蒸したり焼いたりしたもののことです。ひき肉、豆腐、海老などさまざまな食材から作れますし、サイズも自由自在。お弁当にぴったりなおかずです」

 

5.全体の彩りを考えながら、菜の花を立てて盛り付ける。

「それぞれのおかずが見えるよう、右から順に左へ少しづつずらして重ねてました。おかずを同じ方向で盛り付けた場合、最後に添える菜の花は、差し込む方向を変えるとバランスよく仕上がります」

 

 

「盛り付けは悩まず、インスピレーションも大切です。正解はありません」とジョージさん。蓋を開けた瞬間に広がる海苔の香りと、海苔弁と相性抜群のおかずは、ごほうびランチそのものです。箸をすすめるごとに楽しみが広がる海苔弁に、ぜひチャレンジしてみてください。

 

 

Profile

日本料理人 / ジョージ

日本最大級の出張シェフサービス「シェアダイン」で、日本料理を提供する日本料理のシェフ。お客様から約1000もの高評価をいただく人気シェフでもある。懐石料理、割烹、ミシュラン星付き店にて、技術を研鑽。日本料理を継承し、おいしさを広める活動を行っている。得意料理は、日本料理、あんこ料理。
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焼き魚はフライパンで10分!干物・切り身・一尾の間違いない焼き方を料理人が解説

魚は良質なたんぱく質源であるうえに、魚の油には体内では作ることができないDHAやEPAが含まれ、生活習慣病の予防効果も期待できます。そのためたんぱく質源は肉に偏るのではなく、積極的に魚の割合を増やすことが良いとされています。ところが調理するとなると、「煙や臭いが気になる」「後片付けが大変」などの理由で、敬遠されがち。魚を自宅でもっと気軽に、おいしく食べるにはどうしたらいいでしょうか?

 

長年日本料理店で日本料理を学び、現在はシェアダインで、プロの日本料理人として、多くの家庭に日本料理をふるまう、日本料理人・ジョージさんに、手軽に魚をおいしく食べる方法について教えていただきました。

 

手軽に焼き魚にチャレンジするにはフライパン一択!

日本人の肉の消費量は、2010年を境に魚介類の消費量を上回っています。このことからも、料理のメインが肉に偏りがちであることが窺えます。魚を上手に摂取するにはどうしたらいいでしょうか?

 

「旬の魚を、“焼き魚”で食べる方法がおすすめです。つまり、塩で焼いて食べるシンプルな料理です。魚を焼く方法は、魚焼きグリル、オーブン、フライパンなど、さまざまありますが、まずは手軽なフライパン調理がおすすめです。フライパンは魚焼きグリルなどの他の調理方法と違って、“目で見ながらの料理”ができるので、失敗しづらいのもポイントです」(日本料理人・ジョージさん、以下同)

 

魚焼きグリル、オーブン、フライパン…
調理方法はどれが正解?

「魚を加熱する方法は、全部で3つあります。魚焼きグリルなどの直火を使って焼く輻射熱、フライパンなどに熱を伝えて焼く伝導熱、煮たり、蒸したり、オーブンのように空気や水分を温めて熱を伝える対流熱です。魚焼きグリルを使えば、高温で短時間で調理ができるため、中はふっくら、皮はパリッと仕上げることができます。しかし、臭いや煙がしたり、網を洗ったりと掃除に手間がかかり、ハードルの高い調理方法でもあります。オーブンは、魚焼きグリルの高温調理に比べ、200度台と低いため、焼き上げるまでに時間がかかり、旨みや水分が抜け出やすいという心配があります。じっくりと火を通して行くため、大きな魚や、野菜などと一緒に焼く料理に適しています。フッ素加工のフライパンなら、魚焼きグリルで付ける立体的な焼き目には少々劣りますが、油を使用せずに、塩だけで、ふっくらジューシーな焼き魚を焼くことができます」

 

フライパン(伝導熱)
メリット……焦げにくい。魚の状態を見ながら、調理できるため失敗が少ない。片付けが楽。火が脂に直接当たらないため、煙が出にくい。
デメリット……両面を焼くために途中で返さなくてはならないため、返す際に皮や身が崩れる心配がある。魚焼きグリルの立体的な焼き目に比べると、鉄の板で押さえつけられたような平面的な焼き目になりやすい。

 

魚焼きグリル(輻射熱)
メリット……直火のため、高温調理が可能。短時間で表面に焼き目を付け、旨みを閉じ込める。皮がパリッと仕上がる。
デメリット……魚の脂に火がかかると煙が出るため、臭いや煙が発生しやすい。調理が見えないため、焦げやすい。

 

オーブン(輻射熱、伝導熱、対流熱の三種)
メリット……庫内の温度を高くし、じっくり火を通して行くので、大きい1尾の魚料理や、野菜などと一緒に火を通す料理に適している。
デメリット……時間をかけて調理するため、旨みや水分が抜けやすい。適度な焼き色が付きにくい。調理が見えないため、調整しにくい。

 

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焼き魚におすすめの魚や選び方のポイントは?

続いて、焼き魚にはそもそもどのような魚が適しているのでしょうか?

 

「これまでで一番感動したのは、“かます”の焼き魚です。私は宮城県出身で、さんまを昔からよく食べて来ました。もちろん、さんまもおいしいのですが、初めて関西で食べた旬のかますの焼き魚のおいしさは忘れられません。上品な味わいをとても鮮明に覚えています。また、ブリカマの焼き魚もおすすめです。焼くことで余分な脂が落ちたときのおいしさは格別。塩焼きは、魚をもっともシンプルにいただく方法なので、魚の味をしっかりと味わえます。ぜひ、鮮魚店に行って、そのときどきの旬のおいしさを試してもらいたいです」

 

 

続いて、魚の選び方について教えてください。

 

「焼き魚には、切り身より1尾を丸ごと焼くのがおすすめです。切ることで酸化しますし、加熱される表面積が増えるので水分を失う機会が増えてしまうためです。
しかし、ブリや鮭のように丸のまま焼くには大きすぎる魚は切り身を選ぶ方が多いでしょう。基本的には頭に近い部分が脂が乗っておいしいと言われています。例えばブリならば、黒い皮の背側の背身、白い皮の腹側の腹身と、部位別に売られています。背身は肉質が引き締まりさっぱりとした印象、腹身は脂が乗っていています。一方で、鰆(さわら)はしっぽ側がおいしいと言われています。魚の種類や、好みによって味は異なるので、ぜひさまざまな部位を食べてみて欲しいですね」

 

臭みの原因を取り除く!
おいしさを逃さず臭いを抑えるコツ

 

魚の臭いをおさえるコツはあるのでしょうか?

 

「魚の臭みの原因のひとつは、魚に含まれるトリメチルアミンという成分です。水溶性のため、あて塩をすることで、水分とともに臭みを引き出し取り除くことができます。また、血も臭みの原因になります。魚をさばいた後は、えらや内臓、血をよく取り除きましょう。切り身の魚は、洗うと旨みが落ちるので、洗わず血などがついている場合は、軽くふきとるなど、事前の処理が肝心です。熱湯をかけて余分な臭みや脂を流すことを“霜降り”と言いますが、気になる方は焼く前にこれをするだけで、グッと臭いを軽減できます」

 

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フッ素加工タイプなら油も不要!
フライパンで焼き魚をおいしく焼くコツ

魚をフライパンで焼くなら、フッ素加工などのくっつきにくいフライパンがおすすめです。フッ素加工のフライパンを使えば、油も酒も一切不要。塩のみで焼き魚を調理できます。1尾なら約10分ほどで、切り身なら10分かからずに焼くことができます。

 

・余熱調理でふっくら「干物」の焼き方

「干物は、水分が抜け旨みが凝縮されているとともに、臭いが気になりやすい魚でもあります。焦げ付きは臭いの原因となるので、焼きあげる最後は、蓋をして水分を逃がさないように、余熱調理するとよいでしょう」

 

【材料(1人分)】

・干物……1枚

 

【焼き方】
1.フライパンを中火で熱し、盛り付ける側を下に、4~5分焼く。

「初めに、フライパンに焼かれる側の方がきれいに焼き目がつくので、盛り付ける表側を下にして焼きます」

 

2.腹側の身の薄い部分が、半分ほど白くなってきたら、裏返し3~4分焼く。

「皮の下から段々と白くなるのが見えます。身の薄い部分、全体の5割程度が白くなったら、裏返してOKのサインです」

 

3.9割ほど火が通ったら、アルミホイルや蓋で蓋をして、火を消し1分ほどおく。

「干物は、既に水分が抜けているので、火を入れすぎてしまうと固くなってしまいます。最後の火入れで、水分が抜きすぎてしまわないよう蓋をし、余熱調理で仕上げます」

 

4.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「皮側を初めに焼いているので、皮もパリッとおいしく召し上がれます。そのまま、皮も食べると良いでしょう。花のような形をしたふきのとうの天ぷらは、黄緑色がとても鮮やか。独特な香りと苦みが特徴で、春の訪れを感じさせてくれます」

 

・触らず、ほうっておくだけ「切り身」の焼き方

「切り身は、切り口の面積が多いため、そこから水分や旨みが抜けでてしまいやすいです。しっかりと焼けているか気になって、動かしたり裏返したり、触ってしまいがちですが、裏返すタイミングが来るまで、触らずにほうっておくのがベストです」

 

【材料(1人分)】

・鯖……1枚
・塩……1g

 

【下ごしらえ】
半身を買って来た場合は、骨の近くに包丁を入れ、背骨と中骨を取り除き、魚の切り口が見えるよう斜めに包丁を入れ、切り分ける。

 

「魚を半身のまま購入した場合、切り分ける時のコツは、盛り付けたときに切り口が綺麗に見えるよう、皮に対して斜めに切りましょう。料理は目でも味わうため、盛り付けたときの見栄えも意識することが大切です」

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分置く。

「あて塩をすることで、余分な水分とともに魚の臭みを表面に浮き出させます。塩は、精製塩よりも自然塩がおすすめ。塩以外のにがり成分にも、臭みを吸着する効果があるためです」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる。

「滲み出た水分をしっかりふき取ることで、臭みの原因を除去します」

 

3.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、3~4分焼く。

「切り身は、骨が無いものが多く崩れやすいので、触らないことが鉄則です。フライパンは、中火であれば焦げ付くことはほとんどないため、火が通るのを慌てず待ちましょう」

 

4.フライパンに当たっている身の部分の約半分ほどが白くなったらうら返す。

「火が通ってくると赤い身の部分にも脂が浮き、テカテカしてきます」

 

5.2~3分ほど焼いたら、アルミホイルや蓋でふたをし、火を止めて1分ほど余熱調理をする。

「最後は干物と同じく、熱の入れすぎで余計に水分を奪ってしまわないよう、余熱調理でじんわり火を通します」

 

6.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「大根おろしと、細かくきざんだ金環を和えたおろし和えを山高に盛り付け、切り身をのせることで立体的に盛り付けました。おろし和えに味付けはしていません。みょうがは、そのままでは苦いので、軽く茹でてだし酢に漬けています」

 

丸のままも、約10分で焼ける!「一尾」の焼き方

「鯵の旬は夏ですが、一年中出回る魚です。丸のまま焼くのに適したサイズのため、ぜひ一尾で焼いてみましょう。フッ素加工が施されたフライパンを使えば、油も必要ありません。調味料も塩のみで手軽に焼くことができます。魚屋には、旬の魚が一尾のまま売られています。ぜひ旬の魚の丸焼きにも挑戦してみましょう」

 

【材料・1人分】

・鯵……1尾
・塩……3g

 

【下ごしらえ】
内臓とぜいごを取り除きます。血が臭みの原因となるため、よく洗い流します。

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分おく。

「鯖と同様に、魚の臭みをとるため、しっかりとあて塩をします」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる

 

3.魚の内臓にも、塩をします。

「味付けのための塩をします」

 

4.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、5~6分焼く。

「表面にあるたんぱく質を焼いて固めることで、旨みや水分を守ります。フライパンがしっかり温まったかを確認してから、魚を入れましょう。フライパンの上に、手をあて温かさを感じればOKです」

 

5.魚を立てて、フライパン側の魚の目が白くなっていたら裏返し、さらに3~4分焼く。

「一尾は身が見えないため、魚の目を見ることで火が通っているかを判断するとよいでしょう。その他、焼き始めは、水分が多いためジュ―ッと水分が蒸発した音が聞こえるのですが、焼きを進めていくと、そういった音も静かになります。音に注目するのもひとつの手です」

 

6.アルミホイルやふたなどで蓋をし、火を止めて、1分ほど余熱調理をする

「中火のまま焼き上げてしまうと、水分が抜けすぎて、固くなってしまう場合があります。そのため、9割ぐらい火が通ったら、残りの1割は余熱調理に切り替えます。じんわり火を通すことで、しっとり仕上げられます」

 

7.皿に盛り付け、好みであしらいを添える

「魚は、頭を左に向くように盛り付けるのが一般的です。その他のあしらいは、どのように添えれば、メインである魚が引き立つかを考えて盛り付けるとよいでしょう。おろし合えは山高に盛り付けると、高低差が出て品よく見えます」

 

煙やニオイ、後片付けも悩みナシ! フライパンで調理する「サンマ」レシピ 4品

 

見た目にも華やか、消化を助け栄養価もアップする
“あしらい”とは?

「焼き魚を焼いたら、ぜひ添えて欲しいのが“あしらい”です。焼き魚だけだと、全体が茶色っぽく、地味に見えてしまいますが、旬の野菜を使った“あしらい”一つで、料理の味や香り、見た目がグッと引き立ちます。特におすすめなのが、酸味のあるトマトや柑橘に、大根おろしを和えたもの。味付けの必要はありません。大根には消化酵素が含まれており、魚の消化を助けてくれる役割があります。また、臭みは酸によって中和されるため、魚の臭みを消す効果も。焼いて凝縮された魚の旨みに、大根おろしのさっぱり感と柑橘の酸味が加われば、より箸が進むことでしょう」

 

調理中の煙や臭いを除去!
煙や臭いを抑える「マルチロースター」

象印マホービン
『マルチロースター』(EF-WA30)

 

煙や臭いを抑える「高性能触媒フィルター」を搭載した象印の「マルチロースター」は、魚はもちろんのこと、肉や野菜など、多彩なグリル料理を楽しめる商品です。
ワイドな庫内では、35cmのサンマを3尾丸ごと焼くことができ、上下に設置されたヒーターで熱を加えることができるため、裏返す手間も不要。誰でも簡単に、皮はパリッと、中はふんわりとした焼き魚に焼き上げます。蓋や網などの取り外しも簡単で、部品の丸洗いも可能。臭いや煙を気にせず調理したい人におすすめの家電です。

 

 

旬の魚は脂が乗り、シンプルに塩焼きにするだけで絶品だというジョージさん。さらに、あしらいを添えれば、焼いただけとは思えないほど、華やかな食卓を演出してくれるとお話ししてくれました。魚屋さんに足を運んで、旬の魚を選ぶのも楽しいものです。手軽なフライパン調理で、ぜひ焼き魚のシンプルなおいしさを味わってみてください。

 

 

Profile

日本料理人 / ジョージ
日本最大級の出張シェフサービス「シェアダイン」で、日本料理を提供する日本料理のシェフ。お客様から約1000もの高評価をいただく人気シェフでもある。懐石料理、割烹、ミシュラン星付き店にて、技術を研鑽。日本料理を継承し、おいしさを広める活動を行っている。得意料理は、日本料理、あんこ料理。
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冷凍で倍増!旨みも栄養価も段違いな「寒しじみ」の疲労回復・風邪予防レシピ

しじみは通年出回る食材ですが、夏と冬の2回、旬が訪れます。なかでも1〜2月に旬を迎える「寒しじみ」は、厳しい寒さを越すために栄養をたっぷりと蓄え、おいしさも格別。

 

この寒しじみの旨みと栄養を活かしたレシピを、食材のおいしさを引き出す料理が得意な料理家、松島由恵さんに教えていただきました。

 

貧血予防、不足しがちなカルシウム摂取にも
しじみの栄養とは?

しじみには、たんぱく質、ビタミンB12、鉄、銅、亜鉛、カルシウムなど豊富な栄養素が含まれており、良質なたんぱく源。また、ビタミンB12、鉄、銅など、血液を作るのに役立つ栄養素も多いので、貧血予防にも役立ちます。さらに、日本人に不足しがちなカルシウムは、牛乳の約2倍なのだとか!

 

「しじみは、貧血予防やカルシウムの摂取が期待できるため、女性にうってつけの食材ともいえます。しじみは、身が小さいので出汁代わりにして、身を食べないという方も多いかもしれません。しかし、“寒しじみ”は、厳しい冬を超えるために土壌深くまで潜り栄養を蓄え、また寒水にさらされているため身が締まり、この時期ならではのおいしさがあります。おいしさと豊富な栄養を摂取するためにも、ぜひ身も残さず食べましょう」(料理家・松島由恵さん、以下同)

疲労回復、風邪予防にも。
オルニチン含有量はトップクラス

さらにしじみは、肝臓の疲労を回復させる「オルニチン」の含有量がトップクラスです。代謝を司る肝臓が回復すると、全身疲労の回復にも役立つうえ、免疫を高める効果もあるため、しじみ料理は冬の風邪予防にもぴったりなのです。さらに、しじみを冷凍することでオルニチンが8倍に増えるという研究結果があります(※日本食品科学工学会誌「しじみの冷凍処理によるエキス成分の変化」より)。

 

「年の始まりに食べすぎや飲みすぎで疲れた肝臓を元気にし、免疫を高めてくれる寒しじみは、この時期に適した食材です。しじみは砂出しをした後、冷凍保存できます。また、冷凍することでしじみの細胞壁が壊れ、旨み成分が流出するため、おいしさもアップ! しじみがたくさん手に入ったときには、砂抜きし、まとめて冷凍しておくとよいでしょう」

 

“砂抜き”を絶対失敗しない!アサリ・ハマグリの下処理の正解と滋味たっぷりレシピ

 

実はとても簡単!
しじみの下ごしらえと保存方法

しじみをまとめて砂抜きして冷凍すれば、冷凍あさりと同じように、味噌汁に、スパゲッティの具に、と使い勝手のよい食材に早変わり。ぜひ、試してみましょう。

1.砂抜きする

「生きたしじみを購入したら、すぐに砂抜きをしましょう。しじみの砂抜きは、とても簡単です。しじみを重ならないようバッドに並べ、5%の食塩水(水100mlに対して塩5g)につけておくだけ。新聞紙やザルをかぶせて、冬場は常温、夏場は冷蔵庫に入れ、5〜6時間ほど待つとよいでしょう。しじみ同士が重なると、しじみが吐き出した砂をほかのしじみが吸ってしまう可能性があるため、重ならないように並べるのがポイントです」

2.貝表面の汚れやぬめりを洗う

「砂抜きが終わったら、塩水を切り、貝の表面の汚れやぬめりを取るように貝同士をすり合わせて洗いましょう」

3.冷蔵保存は、保存容器に入れ1〜2日。冷凍保存は、保存袋に入れ2〜3週間

「冷蔵保存する場合は、容器にしじみを入れ呼吸ができるようふんわりとラップをかけます。2日ほど保存が可能ですが、鮮度が落ちていくため、なるべく早めに食べるようにしましょう。すぐに食べきれない場合は、冷凍保存がおすすめです。2〜3週間ほど保存できます。しじみの水気をキッチンペーパーなどで押さえたあと、保存袋に入れて、空気を抜いて冷凍してください。冷凍後は、解凍せず、そのまま料理に使えるので便利です」

しじみの旨みがたっぷり!
絶品レシピ3

「寒しじみのおいしさは、なんといっても出汁にあります。旨み成分が濃いので、しじみから出た出汁を丸ごと使って調理する料理方法がおすすめです。また、しじみに多く含まれるビタミンB12は、水溶性のビタミンのため、汁に溶け出ます。栄養を逃さず食べるならば、汁ごと食べられるレシピがおすすめ。紹介する3つのレシピは、工程も簡単なので、ぜひ気軽に挑戦してみてください」

しじみそのもののおいしさを味わえる
基本の「しじみ汁」

「寒しじみのおいしさをダイレクトに味わえる、基本のしじみ汁です。昆布としじみで出汁をとり、味付けは塩とお酒のみ。白く透き通ったスープから貝類ならではのおいしさが伝わってくるようです。寒しじみを手に入れたら、最初に作っていただきたい1品です」

 

【材料(作りやすい分量・約2人分)】

・しじみ(砂抜きしておく)……200g
・昆布……約5×7cm 1枚
・塩……小さじ1/2
・酒……大さじ2
・水……400ml
・三つ葉(無ければ浅葱でもOK)……5〜6本

【作り方】

1.しじみは砂抜きし洗っておく。鍋にしじみと水、昆布を入れて中火にかける。

「昆布の旨みも引きだせるよう、強火ではなく、中火で火をゆっくり通していきます」

 

2.沸騰したら昆布を取り出し、酒、塩を入れ、アクを取り除く。

「昆布は沸騰すると、昆布のぬめりが出はじめ風味が悪くなってしまうので、ボコボコと沸騰しはじめる前に取り出しましょう」

 

3.再度沸騰後、しじみの口が開いたら、弱火に落として1〜2分煮て火を止める。器に汁をよそい、3〜4cm幅に切った三つ葉を散らす。

「しじみは水からいれて、じっくりと火を通したほうが旨みがしっかり出ます。身が硬くなる前に火を止めれば、身もプリっとおいしくいただけます。三つ葉は生のまま、シャキシャキっとした食感を楽しみましょう」

しみじみ、上品な味わい!
しょうが香る「しじみの炊き込みごはん」

「しじみの旨みをたっぷり吸ったつややかなごはんです。湯気の立ったごはんに大葉をのせると、大葉の爽やかな香りが広がり食欲をそそります。旨みあるごはんと、キレのある辛味のしょうが、清涼感のある大葉はよく合います。私は、大葉とごまをたっぷりかけて食べるのが大好きです」

【材料(2合分)】

・しじみ(砂抜きしておく)……200g
・米(浸水しておく)……2合
・水……2合分(360ml)
・生姜……1片
・塩……小さじ1
・醤油……大さじ1
・酒……大さじ1
・大葉……3〜4枚
・白ごま……お好みで

【作り方】

1.米は研いで1時間以上水につけておく。しじみは砂抜きし洗っておく。

 

2.しじみと水を鍋に入れ、中火にかけて沸騰したら、酒、塩、醤油を入れる。しじみの口が開いて1〜2分ほど弱火で煮たら火を止め、バッドなどに移し、しじみの粗熱を取る。

「酒と醤油の風味を活かすため、調味料は沸騰したあとに加えます」

 

3.浸水させた米をザルにあけ、水を切る。米の水を切っている間に、しじみの粗熱が取れたら身を取りだし、出汁と分けておく。

「浸水後の米はザルにあけ、水をしっかり切ります。削除しじみの身は、身離れがよく簡単に取れます。手で取りにくい場合にはようじを使うと良いでしょう」

 

4.炊飯器に3の米と出汁を入れる。出汁が炊飯器の2合のメモリまで足りなかったら、水を加える。上に、しじみの身、千切りした生姜をのせ、炊飯する。

「米の水分は、具を入れる前に炊飯器のメモリの分量と合わせてください。足りなかったら水を足します」

 

5.炊きあがったら、ごはんをほぐしながら、しじみの身と生姜を混ぜ合わせる。大葉を千切りにし、白ごまとお好みの量をかける。

「具が偏ってしまっているので、ごはんをほぐしながら混ぜ合わせます。ごはんをほぐすと余分な水分も抜けるため、艶も出て食感もよくなります。大葉を千切りするときは、何枚か重ねて巻き、厚みを持たせてから切ると切りやすいです」

酸味と濃い出汁がクセになる!
「しじみの酒蒸し和え麺」

「しじみの出汁が、ナンプラーとレモンと合わさることで、“酸っぱ辛い”エスニックな味わいに。レモンの酸味が食欲をそそります。そうめんが、しじみの出汁とよく絡んでやみつきになるおいしさ。つるつると何杯でも食べたくなるレシピです」

【材料(2人分)】

・しじみ(砂抜きしておく)……200g
・そうめん……150g(3束)
・にんにく(みじん切り)……1片
・浅葱(小口切り)……1本
・唐辛子(半分に割って種を出す)……1本
・塩……小さじ1/2
・酒……大さじ4
・ごま油……大さじ1
・ナンプラー……大さじ1
・レモン……1/2個

【作り方】

1.しじみは砂抜きし洗っておく。にんにくはみじん切り、浅葱(あさぎ)は小口切り、唐辛子は、半分に割って種を出す。蓋付きの鍋に、みじん切りにしたにんにく、砂抜きしたしじみと酒、半分に割った唐辛子を入れたら、上から塩をふり、蓋をして中火にかける。

「酒を入れて蓋をし酒蒸しすることで、しじみ特有の臭みも取り除きます。酒蒸しは、貝類をシンプルにおいしく食べるにはぴったりの調理法。酒の代わりに、紹興酒で蒸すのもよいでしょう」

 

2. しじみの口が開いたら、弱火に落として1〜2分煮て火を止める。

「しじみの出汁に、にんにくの香味と酒の旨みが加わって、濃厚な出汁ができあがります」

 

3.沸騰したお湯でそうめんを茹でる。茹で上がったらザルにあげしっかり水を切ったら、ごま油をかけて絡める。

「ごま油を絡めることで、そうめん同士がくっついてしまうのを防ぎます」

 

4.ボールに、2、3、とナンプラーを入れ和える。

「しじみとにんにくから出た出汁とナンプラーを、そうめん全体に絡めるようによく混ぜます。ナンプラーは魚を発酵させて作る調味料のため、魚介類ともよく合います。ナンプラーと醤油では、味がまったくことなるので、ぜひナンプラーを使用してください」

 

5.器に盛り付け、小口切りにした浅葱をかけて、お好みでレモンを絞って食べる。

「よりエスニック感を出したい場合には、浅葱の代わりに、パクチーを入れてもおいしいです」

 

寒さが厳しい中、食べたくなるのは湯気の立ったほっとやさしい料理。さらに、疲れた体を癒し風邪予防に効果があれば、言うことなしでしょう。そんな冬の季節にぴったりの食材が寒しじみ。この時期にしか味わえない、旬のしじみを食べて冬を乗り越えましょう。

 

Profile

料理家 / 松島由恵

DoraTheFood主宰。建築業界で長く働いたのち、フレンチレストランでアルバイトをしながら料理家の道へ。雑誌の撮影現場やアパレル企業へのケータリングやお弁当の宅配をはじめたところ人気が集まり、現在ではレシピ開発・スタイリングをメインに活動している。著書に『きのこのレシピ帖』(PARCO出版)、『エキゾチック薬膳』(家の光協会)などがある。

 

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「鯛(タイ)」のおろし方と「鯛めし」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、比較的安価な「鯛」を取り上げます。

1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

特別な日は自分の手でおろした「鯛」でおもてなし

鯛は、おめでたい席でよくいただく魚です。丸ごと塩釜焼きにしたりアクパッツァに入れたり、レシピのバリエーションも豊富で、一尾あればごちそうを作れます。身はクセもなくさっぱりした味なのに対し、骨からもだしが出て、捨てるところがありません。

「三徳包丁でおろせるのは、だいたい700gくらいまで。それ以上のサイズになると包丁が痛んでしまうので、出刃包丁でおろしてくださいね」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

鯛は頭を使えるようにおろす

鯛もアジ同様、頭を落として3枚にしていくのですが、大名おろしと違い、骨に身がつかないよう丁寧に包丁を入れていきます。また、頭も使うので、頭の中の血合いもしっかり洗い、生臭くならないようにしましょう。

 

【おろし方】

1.うろこを取る。

鯛はうろこがしっかりとついている魚。うろこ取りがあればそれを使ってうろこを取っていきますが、ない場合はペットボトルのキャップでこすると取ることができます。「うろこを取るときに手を傷つけてしまいがちなので、背びれはキッチンバサミなどであらかじめカットしておきましょう」

 

2.頭を落とす。

頭に胸びれをつけて、三角に落とします。はじめは頭を左に置いて中骨の上まで切り、ひっくり返して反対側からも切り、頭を落としましょう。「鯛は厚みがあり、骨も硬いので、アジのように一度で切ることはできませんが、関節に包丁を入れると、力をかけなくても切り落とせます」

 

3.腹を切って内臓を出す。

アジやイワシと同じ要領で、内臓を取り出します。「このときも、内臓を包丁で傷つけないようにすると、汚れずに取り除くことができます」

 

4.上身を切る。

尾の手前に切り込みを入れたら、背側から包丁を入れて中骨の上まで身を切っていきます。「大名おろしのように一度で切らず、何度か包丁を入れながら切り進んでいきます」

 

背側が切れたら、今度は腹側の身を切り、中骨を中心にして両側から身を剥がしていきます。

 

5.上身を外す。

両側から身が切れたら、今度は中骨の上に沿って身を外していきましょう。「このときもあまり包丁を上下させず、大きく刃を使って切っていきます」

 

6.下身を切る。

下身も同様に、背側から切り、その後で腹側から切って身を外していきます。

 

7.腹骨を削ぐ。

上身と下身が切れたら、いずれも腹骨を削いで(そいで)いきます。身がたくさんつかないよう、薄くそぎましょう。

 

8.頭を割る。

鯛の頭はあごから包丁を入れて、先にあごを割り、そのあと額の方に向かって包丁を入れて、半分に切り

 

9.腹身と背身を分け、骨を削ぐ。

切り身にした方は半分に切り、中央にある骨を削いで取り除いておきます。これで三枚おろしの完成です。

 

以上の工程で鯛をおろせたら、実際にその鯛を使って調理してみましょう。今回は「鯛めし」を教えていただきました。

おろした鯛の頭と身を使って作る「鯛めし」

鯛の頭と骨から出ただしと旨みをたっぷりごはんに吸わせた鯛めしは、特別な日の料理としても作りたい一品です。おろしたての鯛は身がふっくらしていて、炊きたての香りは格別です。

 

「今回はすべて鯛めしに入れましたが、頭と骨だけを鯛めしにして、身はカルパッチョにしたりムニエルにしたりするのもおすすめです。頭は一度取り出し、頬や目の周りについた身を取ってから、ごはんに混ぜましょう」

 

【材料(2合分)】

・鯛……1尾(700gくらいのもの)
・米……2合(研いで30分ほど浸水させる)
・水……360ml(※土鍋で炊く場合は水を大さじ1増やしてください)
・酒……大さじ2
・うすくち醤油……大さじ2
・昆布……1枚
・生姜(千切り)……1片
・三つ葉……お好みで

 

【作り方】

1.鯛は、血合いや汚れを流水で洗い、湯にくぐらせてから氷水に漬ける。

熱湯でさっと霜降り(湯通し)することで、臭みがなくなります。また、ここで残っているうろこがあれば、とっておきます。

 

2.炊飯器または鍋に米、水、酒、うすくち醤油を入れてひと混ぜし、昆布と生姜をちらして普通炊飯する。沸騰したら鯛を入れる。

鯛は入れずに、お米だけを炊きはじめて、沸騰してから鯛を入れます。その方が鯛に日が入りすぎず、身がふっくらと炊き上がります。炊けたら10分ほど蒸らしてから、蓋を開けましょう。

 

アジ編では、アジの大名おろしと「ムニエル」レシピを、イワシ編ではイワシの手開きと「蒲焼」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「イワシ」のおろし方と「イワシの蒲焼」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、比較的安価な「イワシ」を取り上げます。


1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

「イワシ」は手でおろすことができて手軽

イワシは安価なことが多く、たくさん買って保存食にしておくなどの使い道にもぴったりの魚です。今回紹介していただいた蒲焼(かばやき)以外にも、圧力鍋などを使って骨まで丸ごと煮たり、焼き魚にしたり、つみれにしたりすることもできます。

 

「イワシは鮮度が落ちやすいので、皮にハリがあって色がきれいに見えるものを買いましょう」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

イワシを“手開き”でおろす方法

イワシは、頭だけ取ってしまえば、あとは手で開いて骨を取るだけで調理ができる魚です。

 

「専用の包丁がなくてもできるので手軽ですが、イワシは“足”が早く、身が柔らかい魚なので、慣れるまでは少し扱いが難しく感じるかもしれません。鮮度が高いイワシを購入することはもちろん、買ったらすぐに内臓だけは取り出してしまうのが、鮮度を保つ秘訣です。どうしても内臓まで取っている時間がない!というときは、買ったときの魚のトレイから出し、魚をキッチンペーパーに包んでからラップをして、冷蔵庫に保存しておきます」

 

【おろし方】

1.イワシの頭を落として腹を切る。

イワシもアジと同じように頭を落とし、お腹に包丁を入れて切ります。「内臓も同じようにとっておきます」

 

2.骨に沿って親指を入れ、中骨から身をはがしていく。

中骨に沿うように親指を入れていき、身と骨を分けていきます。「身が柔らかいので、あまり力をかけすぎてしまうと、身がぐちゃぐちゃになってしまいます。丁寧に骨を外していきましょう」

 

3.中骨を取る。

骨が身から離れたら、骨を取ります。「尾のところまで来たら、最後は折ってしまいましょう。これで調理に進みます。案外簡単にできるので、挑戦してみてくださいね」

 

以上の工程でイワシをおろせたら、実際にそのイワシを使って調理してみましょう。今回は「イワシの蒲焼」を教えていただきました。

イワシの手びらきを使って作る「イワシの蒲焼」

イワシにたっぷりの濃いめのタレを煮からめる蒲焼は、ごはんもお酒も進む味。フライパンでできるのも手軽で、小骨も気にならずパクパク食べられます。

 

「こちらもアジと一緒で、身の方から焼きます。身の表面が油でコーティングされて、中の水分やうまみをとじこめてくれるので、ふんわり仕上がります。イワシの独特なくさみがないので、イワシが苦手な人にもおいしく食べられる味ですよ」

 

【材料(2人分)】

・イワシ……2尾
・片栗粉……大さじ1
・ごま油……小さじ2
・みりん……大さじ1
・醤油……大さじ1
・砂糖……小さじ1
・粉山椒・白胡麻……お好みで

 

【作り方】

1.イワシの水気を取り、片栗粉を薄くまぶす。

べたつかないようにしっかり水気を取ってから、片栗粉をふります。身につかなかった片栗粉は、ふるい落としてから焼きましょう。

 

2.フライパンに油を熱し、イワシを身側から2分焼く。裏返して同様に2分焼く。

身が崩れないよう慎重にひっくり返して、2分ずつ焼きましょう。

 

3.いったん火を止め、みりんと醤油、砂糖を混ぜたものをまわしかけてから、もう一度火にかけ、1分ほど中弱火で煮からめる。

タレを入れるときに跳ねるので、いったん火を止めて少しフライパンを落ち着かせてから、タレを入れましょう。

 

アジ編では、アジの大名おろしと「ムニエル」レシピを、タイ編ではタイのおろし方と「鯛めし」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

プロが解説! 初心者が三徳包丁でできる「アジ」のおろし方と「アジのムニエル」レシピ

中国をはじめ世界では、ヘルシー志向も相まって魚の消費量が増えているといいます。一方、古くから魚を食べてきた日本では、年々減少の一途をたどっているのが現状(農林水産省水産庁調べ)。魚は「扱い方や調理法がわからない」と、食卓にのぼりにくい食品となってしまっているのです。

 

でも、魚は栄養価が高く、調理法にも多彩なバリエーションがある魅力的な食材。まずは、苦手意識を抱えるきっかけになっている“さばき方”について、基本をマスターしてみましょう。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、魚料理の基本となる3種の魚のおろし方を教えていただきました。ここでは、一番扱いやすいとされる「アジ」を取り上げます。


1.鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
2.鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
3.鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

魚を“さばく”と“おろす”の違い

ちなみに、魚を“捌く(さばく)”とは、水洗いを含む魚の解体作業全般を指し、魚を“下ろす(おろす)”とは魚を決まった形で切り分けることを指します。魚を左右の身と骨に切り分ける“三枚おろし”などがあります。

 

包丁は特別なものが必要?

今回は、一般の家庭にある三徳包丁を使って魚をおろしていただきました。魚をおろすには、出刃包丁や柳刃包丁など、魚専用の包丁があった方が上手にできますが、このくらいのサイズの魚であれば、三徳包丁でもおろすことができます。よく研いだ包丁で行いましょう。

 

もっとも調理しやすいのは「アジ」

魚の中でもっとも調理がしやすく、魚を下ろすときに基本となるのが「アジ」。アジは身がそれほど柔らかくないので崩れにくく、大きさもほどよいので、初心者が扱うのにもっとも適しています。また、アジを下ろしながら魚の構造を理解してしまえば、他の魚も下ろせるようになります。

 

「アジはどのスーパーでも手に入りやすく、いろいろな食べ方ができる魚です。3枚下ろしにせず、内臓だけ取って塩焼きにすることもできますし、3枚に下ろせば、アジフライやムニエルなど洋風にいただくこともできますよ」(日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜さん、以下同)

 

アジを3枚におろす方法“大名おろし”

アジは、“大名おろし”というおろし方で、上身・下身・中骨の3枚にします。大名おろしとは「大名がおろしたみたいに大胆なおろし方」という意味で、一般的なおろし方よりもざっくりとした切り方をするのが特徴です。

 

「このおろし方は、骨に身がたくさん残ってしまうのですが、スプーンで骨のまわりの身をこそげて別の料理にしたり、骨ごと素揚げにして食べることもできます」

 

【おろし方】

1.アジをよく洗ってぜいごを取る。

魚の表面には腸炎ビブリオ菌が付着している可能性があるので、まずはよく洗ってから水気を取り、まな板にのせましょう。「頭を左側に置き、両側にあるぜいごを尾の方から削ぎ取ります」

 

2.頭を落とす。

胸ビレを頭の方につけて三角になるように包丁を入れ、下まで一気に頭を落とします。「中骨が切りにくいのですが、包丁を動かして切るよりも上から押して叩くイメージで切ってみましょう。関節の間にうまく入ると、すぐに落とすことができますよ」

 

3.お腹を開いて内臓を出す。

お腹の部分に包丁を入れたら、内臓を出しましょう。「このときあまり内臓を傷つけずに一度に出すと、まな板が汚れずきれいに取り出すことができます」

 

4.上身をおろす。

尾の方から中骨に沿って包丁を入れ、一気に上身をおろします。「骨にしっかり包丁を沿わせていくと、骨に残る身も少なくなり、きれいにおろせます。また、包丁はギリギリと細かく動かさず、一度入れたら一気に引き切りするといいですよ」

 

5.下身も同じようにおろす。

下身も尾の方から包丁を入れて、中骨に沿って切っていきます。

 

6.腹骨を削ぐ。

上身と下身についた腹骨は、包丁を斜めにして削ぎ(そぎ)ます。

 

7.小骨を抜く。

中心に残っている骨は、骨抜き用のピンセットで抜いていきます。ここまでできたら、あとは調理するだけです。「どこに骨があるか、指でなぞりながら探していくと、抜きやすいですよ」

 

以上の工程でアジを3枚におろせたら、実際にそのアジを使って調理してみましょう。今回は「アジのムニエル」を教えていただきました。

アジの三枚おろしを使った「アジのムニエル」

身がふっくらとしたおろしたてのアジに薄力粉をまぶし、シンプルに焼いただけのムニエル。最後にバターを加えることで、コクがあって香りのよい料理に仕上がります。

 

「魚は皮目から焼くとよく言われるのですが、身の方を先に焼いた方がふっくらと高く焼き上げられます。また、あまり焼きすぎず、片面2分ほどずつにしておくと、みずみずしいままの魚が食べられ、パサつきもありません」

 

【材料(2人分)】

・アジ……2尾
・塩……小さじ1/3
・黒胡椒……少々
・薄力粉……大さじ1
・米油……小さじ2
・バター……大さじ1

 

【作り方】

1.アジは塩胡椒をふって、5分ほど置いておき、出てきた水気をペーパーでよく拭き取ってから表面に薄力粉をふる。

 

2.フライパンに油を熱し、アジをいれて身側から焼き、2分たったらひっくり返して、裏面2分焼く。

 

3.最後にバターを入れて香りをつける。

 

イワシ編では、イワシの手開きと「蒲焼」レシピを、タイ編ではタイのおろし方と「鯛めし」レシピを紹介します。

  1. 鯵(アジ)の大名おろしと「ムニエル」レシピ
  2. 鰯(イワシ)の手開きと「蒲焼」レシピ
  3. 鯛(タイ)のおろし方と「鯛めし」レシピ

 

【プロフィール】

日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

煙やニオイ、後片付けも悩みナシ! フライパンで調理する「サンマ」レシピ 4品

代表的な“秋の味覚”であり、刀のような形をしていることから「秋刀魚」と書くサンマが、今年も旬を迎えています。

 

サンマの“旬”については、水揚げする場所によって、時期や脂の乗りが異なるため諸説ありますが、秋のサンマは身がふっくらとして脂が乗っている上、漁獲量が多くなるため1尾100円前後で買える、魅力的な食材です(※漁獲量によって、価格は前後します)。その上、栄養価は高く、善玉コレステロールを増やし血液をサラサラにしてくれるDHAや、タンパク質、鉄分やカルシウムなども含んでいます。

 

ところが、いざサンマを焼くとなると、煙や臭いが気になるし、使用後のグリルを洗うのがわずらわしいと、調理を躊躇する人も多いのでは? そこでおすすめしたいのがフライパン調理。煙や臭いが広がりにくく、片付けも簡単なフライパン調理でできる多彩なサンマ料理を、料理家の横山久美子さんに教えていただきました。

 

“おいしいサンマ”の見分け方

スーパーや鮮魚店でサンマを買うとき、鮮度がよく脂の乗ったものを選びたいですよね。まずは、おいしいサンマの見分け方をおさえておきましょう。

 

「まっすぐ一本線のような形で、体色は青々として、目は透明感がありキラキラしているものが新鮮な状態です。また、口元は尖っていて下顎が黄色っぽいものを選びましょう。頭から背中にかけてぷっくりと盛り上がっていると脂が乗っています。

 

塩焼きにするときは脂の乗りがよいものを選びましょう。一方、竜田揚げのような揚げ物にするときは、背脂の少ないスレンダーなものを選んだ方が、あっさりとした味わいになります」(料理家・横山久美子さん、以下同)

 

サンマの鮮度を保つ保管方法

サンマは鮮度が落ちやすいため、購入後の下処置も大切だという横山さん。

 

「買ってきたら、すぐに少量の塩をまぶし、脱水シートで包んだら冷蔵庫のチルド室で保存しましょう。こうすることで、余分な水分と臭みが抜けます。脱水シートがない場合はキッチンペーパーで包み、その上からラップを巻いてチルド室に入れます。脱水シートの場合もラップで包んだ場合も、冷蔵保存したら購入した翌日までには調理をしてください」

 

調理する際に用意したい便利グッズ

臭いや身の扱いなど、魚の扱いにはそれなりにコツがいるもの。あると便利なアイテムをピックアップしていただきました。

左上=オカモト「浸透圧脱水シート ピチットレギュラー15枚」1100円(税込)
「サンマの下処理で説明しましたが、塩を振って水気や臭みを抜く際に脱水シートはとても便利。業務用スーパーやインターネットで購入できます」

 

左下=旭化成ホームプロダクツ「クックパー フライパン用ホイル」242円(税込)
「フライパンで魚を焼くときは、シリコンでコートされた専用ホイルを敷くことで、魚がフライパンに焼きついて皮や身がはがれるのを防ぎます。さらに、フライパンへの臭い移りがおさえられ、片付けも簡単に。一方、アルミホイルは魚がくっつきやすくなりますし、クッキングシートは、サンマから出る脂分により耐熱限度を超えたり、シートが焼けてしまったりする危険があるので注意が必要です」

 

右=レイエ「ソースもすくえるガッシリトング」2200円(税込)
「魚を裏返すときは、菜箸よりもトングを使う方が身を傷つけません。わたしが愛用しているのは、日本の調理道具ブランド『レイエ』のものです。これは魚がつかみやすい上に、スプーン側がちょうど大さじ1の分量なので、調理時の軽量スプーンとしても貢献してくれます」

 

ここからは、さっそくフライパンを使ったサンマレシピを紹介していただきましょう。

1. 王道レシピを手軽に!「サンマの塩焼き」
2. キャンプ飯にもおすすめ!「サンマのジャンバラヤ」
3. 晩酌のおともにぴったり!「揚げサンマのエスニックサラダ」
4. パスタソースにすれば二度おいしい!「サンマのアクアパッツァ」

 

1. 王道レシピを手軽に!「サンマの塩焼き」

旬のサンマといえば、塩焼きは欠かせません。「脂の乗った鮮度の良いサンマは、塩を振って焼くだけでごちそうになりますよね。グリルや網で焼くと、下に落ちた脂から煙や臭いが広がりますが、フライパンで焼けばそれらの煩わしさがありません。塩は全体になじみやすいように、粗塩ではなく粒子の細かいものを選びましょう」

 

【材料(1人分)】

サンマ……1尾
塩……適量

<お好みで>
大根おろし……適量
すだち……1/2個

 

【作り方】

1. サンマを半分に切り、全体に軽く塩を振る。脱水シートまたはキッチンペーパーの上からラップで巻き、1時間ほど冷蔵庫に置く。

「焼く前には頭と尾の部分には『化粧塩』として、少し多めに塩を振っておくのがポイントです。こうすることで焦げ色を抑え、見た目がより美しく仕上がります」

 

2. (1)のサンマの脱水シートをはずし、アルミホイルを引きたフライパンに並べて中強火で焼く。片面に焼き色が付いたら裏返して蓋をし、中弱火にする。

「サンマから出る脂によって、表面が揚げ焼きのようになります。強火だと中まで火が通る前に焦げてしまうので、中火のやや強めくらいで焼いていきましょう」

 

3. 2分ほど焼き、断面の身がふっくらとしてきたら蓋を取り、中強火にし、全体に焼き色が付いたら完成。

「フライパンで調理するときは、サイズの都合でサンマを1/2サイズにカットしますが、こうすることで、火の通り具合も確認しやすくなります。断面の身がふっくらと盛り上がってきた頃がいい塩梅。蓋を取ったら中強火で表面をこんがりさせて仕上げましょう」

 

定番の塩焼きを押さえた上で、ここからはエスニックやクレオールなど、さまざまな味わいでサンマのおいしさを堪能できるアレンジレシピを紹介していただきます。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

2. キャンプ飯にもおすすめ!「サンマのジャンバラヤ」

ジャンバラヤとは、アメリカ南部の郷土料理でパエリアのような一品。ここではスパイスを効かせた洋風トマトスープでお米を煮て、こんがりと焼いたサンマをのせています。

 

「サンマはトマトとの相性がよいので、洋風アレンジもしやすいですよ。ジャンバラヤはフライパンでできるので、アウトドアメニューにもぴったり。三枚おろしは魚屋さんやスーパーの鮮魚コーナーでお願いするのが簡単です」

 

【材料(2人分)】

サンマ(3枚おろし)……2尾

 

<A>
ガラムマサラ……大さじ1/2
パプリカパウダー……大さじ1/2
塩……小さじ1/2

玉ねぎ……1/4個(50g)
赤・黄パプリカ……各1/3個(各35g)
ピーマン……1個
にんにく……1片
オリーブオイル……大さじ1
米(一晩浸水したもの)……1合

 

<B>
カットトマト缶…80g
水……100ml
洋風スープの素(コンソメ)……小さじ1

 

<仕上げ>
イタリアンパセリ……適量
レモンのくし切り……適量

 

【作り方】

1. 3枚におろしたサンマの切り身を半分にカットし、塩(分量外)を振りかけて15分ほど冷蔵庫に置く。キッチンペーパーで水気を拭き取り、調味料<A>の半量を全体にまぶす。

「サンマに塩を振ってから脱水シートで包むのが丁寧な仕込みですが、内臓を取り除いた切り身を新鮮なうちに調理する場合は、そのまま塩を振ってバットに並べ、15分後に出てきた水分を拭き取れば大丈夫です」

 

2. 玉ねぎは粗めのみじん切りに、赤・黄パプリカとピーマンは種とヘタを取り除き、斜めに薄切りにする。にんにくは縦半分にカットして芯を取り除き、みじん切りにする。

「パプリカやピーマンは大きめにスライスすることで、食べ応えが出る上に、彩りも豊かに。野菜はナスやしめじなど冷蔵庫の残り野菜や、お好みのものにアレンジするのもOK!」

 

3. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけ、にんにくの香りが立ったらサンマを皮目から入れて中火で焼く。焼き目が付いたら裏返して中弱火で焼き、全体に火が通ったらお皿に取り出す。

「皮目から焼くことで身がくずれにくく、またこんがりと香ばしい仕上がりになります。皮に焼き色が付くまではなるべく触らないようにします。裏返した後は少し火を弱め、中まで焼きましょう」

 

4. サンマを取り出したフライパンに玉ねぎ、赤・黄パプリカ、ピーマンを加えて中火で炒める。野菜がしんなりとしてきたら米を加えて米が透き通るまで炒め、調味料<A>の残りと<B>の全量を加える。

「サンマの旨味が付いたフライパンを洗わずにそのまま使いましょう。米は前の晩からしっかりと浸水しておくことで、中まで火が通りやすくなります」

 

5. 全体が混ざり煮立ったら、平らにならして蓋をして弱火で12分加熱する。火を止めて10分ほど蒸らしてから器に盛り付け、上に焼いたサンマの切り身を並べて、イタリアンパセリを散らし、レモンを添えれば完成。

「平らにならすことで、火が均一に入ります。こんがりと焼けたサンマの上からギュッとレモンを絞り、全体を混ぜながらめしあがれ!」

 


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3. 晩酌のおともにぴったり!「揚げサンマのエスニックサラダ」

カリッと揚げたサンマとたっぷりのパクチーを含む生野菜を合わせ、そこにスイートチリソースとナンプラーのドレッシングを添えたサラダです。

 

「パクチーのさわやかな香りと香ばしいサンマが合わさった味わいは、おつまみにぴったり。主菜として食べるなら、サンマの量を増やしてください。野菜類はお好みのものに変えてもいいですし、スイートチリソースがない場合は自宅にある調味料で代用できます(※代用レシピ参照)」

 

【材料(2人分)】

サンマ(3枚おろし)……1尾
片栗粉……大さじ1
こめ油……大さじ2
紫玉ねぎ……1/2個(80g)
赤・黄パプリカ…各1/3個(各35g)
きゅうり……1本
パクチー……2束(50g)

 

<A>
スイートチリソース……大さじ3
レモン汁……大さじ2
ナンプラー……小さじ1

 

【作り方】

1. 3枚におろしたサンマに軽く塩(分量外)を振り、3等分にしてから片栗粉をまぶす。フライパンにこめ油を引き、中強火で表面がカリッとするまで揚げ焼きにする。

「玄米の表皮と胚芽を絞ってつくられるこめ油は、ほかの油と比べて泡立ちにくく、カラッと仕上がります。ビタミンEが豊富な上に酸化に強いので、油っぽさも残りにくいのでサラダとしても食べやすいのでオススメです。こめ油がなければ、植物油で代用できます」

 

2. 紫たまねぎは薄切りにして水にさらし、赤・黄パプリカは斜め薄切りに、きゅうりは斜めにスライスしてから縦半分に、パクチーは葉の部分を3cm幅にざく切りにする。

「野菜はサンマと一緒にからめて食べやすいような大きさがいいので、あまり細かく刻まないほうがよいでしょう。洗ってしっかりと水気を切っておきます。食べる直前までこの状態で冷蔵庫に入れて冷やしておくと、パリッとした食感がキープできます」

 

3. 調味料<A>をボウルに入れて、よく混ぜ合わせる。

「スイートチリソースの甘みが強く感じるときは、お酢を足してお好みの味わいに調整してください。スイートチリソースがない場合は、手づくりソースで代用可能です」

 

※スイートチリソースの代用レシピ

【材料】
穀物酢……大さじ5
砂糖……大さじ3
唐辛子輪切り……1本分(分量外の穀物酢に入れて一晩ふやかす)
塩……少々
にんにくすりおろし……少々

 

【作り方】
1. 鍋に調味料をいれて分量の2/3くらいになるまで煮詰める。
2. 粗熱を取り冷ましたら完成。

 

4. 2のボウルにサンマと調味料<A>を加えて全体を混ぜ合わせ、器に盛り付ければ完成。

「飾り用のパクチーを少し取り分けておき、盛り付けた上にのせるとキレイに仕上がります。サンマが温かいうちにめしあがれ!」

 


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4. パスタソースにすれば二度おいしい!「サンマのアクアパッツァ」

サンマの塩焼きかアクアパッツァかというほど、旬の時期の定番メニューにしたくなる簡単で豪華な一品です。

 

「サンマの頭や内臓からのだしも旨味になるので、新鮮で脂ののった肉厚なサンマでつくりたいメニューです。ここではローズマリーを添えましたが、お好みのハーブでOK。残ったスープは旨味が凝縮されているので、ガーリックトーストに付けたり、茹でたパスタをからめてもおいしいんです」

 

【材料(2人分)】

サンマ……2尾
オリーブオイル……大さじ3
にんにく(みじん切り)… 1片

 

<A>
白ワイン……1/4カップ
水……1/2カップ
オレガノ……小さじ1/3
塩……小さじ1/2

ミニトマト……6個
スライス黒オリーブ……25g
砂抜きしたあさり……150g

塩・こしょう……適量

 

<飾り用>
ローズマリー(お好みのハーブ)……適量

 

【作り方】

1. サンマは斜め半分に切り、全体に塩(分量外)を振り、脱水シートまたはキッチンペーパーの上からラップで巻き、1時間ほど冷蔵庫に置く。

「斜めにカットすることで内臓が出にくくなります。サンマから出た水分が残っていると油がハネるので、しっかりとペーパータオルなどで拭き取っておきましょう」

 

2. フライパンにオリーブオイル1/3量とにんにく1/2量を入れて強火で熱し、サンマを並べ入れる。焼き色が付いたら裏返し、全体に焼き色を付ける。

「ここでは皮目にこんがりとした焼き色を付けるのが目的なので、強火で一気に焼いていきましょう。中まで火が通っていなくても大丈夫です」

 

3. サンマの両面に焼き色が付いたら火を止め、調味料<A>をすべて加えて強火にかける。フツフツと煮立ってきたら、ミニトマト、スライス黒オリーブ、砂抜きしたあさり、にんにく1/2量を加える。

「火を付けたまま調味料を入れると飛び散るので、必ずいったん火を止めてから調味料を入れてください」

 

4. スプーンで煮汁をすくい、サンマに回しかけながら5分ほど煮る。あさりが完全に開いたら弱火にし、蓋をして5分ほど煮る。最後にオリーブオイル1/2量を加えてフライパンをゆすりながら煮汁を乳化させ、塩・こしょうで味を調え火を止める。器に盛り付け、ローズマリーを添えれば完成。

「煮汁をすくって上からまわしかけることで、サンマの表面にも味が染み込みます。サンマの煮崩れを防ぐため、トングや菜箸で触れるのではなく、フライ パンをゆすりながら、全体を混ぜ合わせていきましょう」

 

おいしくて栄養価の高いサンマが出回っています。フライパンを使った調理ならば、パパッとつくれるし、後片付けもラクに済みます。スパイスを使った多国籍レシピも取り入れて、今年はサンマをたっぷりとさまざまに楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

料理家 / 横山久美子

青森県出身。単身でカナダに渡り、カップケーキデコレーターとなる。帰国後、いがらしろみプロデュースフェアリーケーキフェア入社を経て、ニコライバーグマンカフェノムへ入社。パティシエとしてスイーツづくりの経験を積んだ後、2014年に独立。2016年8月からは、東京・南青山で故郷の青森食材を使った料理とお菓子の教室「Knock’s kitchen」をスタート。一般社団法人おにぎり協会公式メンバーでもある。雑誌、広告等のフードコーディネート、イベントのフードケータリングなどでも活躍中。
http://www.knock-food.com/

 

鉄分やDHA、タウリンなどたっぷり!「カツオ」の栄養を余すところなく取るレシピ

5月になると、「初鰹」(はつがつお)のシーズンが始まります。江戸時代には一尾が下級武士の年棒に相当したという貴重な初鰹は、栄養価の高い魚のひとつでもあります。今回は家庭料理研究家で管理栄養士でもある前田量子さんに、カツオの栄養について解説いただくとともに、カツオのおいしさを堪能できるレシピを教えていただきました。

 

カツオの旬は二度やってくる

カツオの特徴といえば、高速で泳ぎ続けるという習性から、体の一部にしか鱗(うろこ)がないことが挙げられます。砲弾型の体にはブレーキの役割をする背ビレがついており、速く泳ぐときには体の中に畳めるような形をしています。世界的にもよく食べられている魚で、「ツナ」と呼ばれマグロの代用としても知られています。

 

そんなカツオには、初夏にやってくる“はしり”の時期の「初鰹」と、回遊した鰹がふたたび獲れる秋の「戻り鰹」の、二度の旬があります。初鰹はさっぱりとした脂のりで、戻り鰹はコクのある味わいと、それぞれにおいしさが異なります。日本では昔から“初物”には高い値段がつき、その時期に食べることが貴重であるとされてきたので、5~6月の初鰹をぜひ味わってみましょう。

 

「日本でもっとも有名なのは土佐(高知県)のカツオ。当地ではタタキにするときに藁焼きといって、火をつけた藁でカツオの表面を炙って食べます。燻製のような藁の香りがあり、おいしいですよ」(家庭料理研究家・前田量子さん、以下同)

 

鉄分、タウリン、EPA・DHA……カツオは栄養の宝庫!

カツオは魚介類の中でも栄養価が高く、低脂肪低カロリーなのに高タンパク質という、ダイエット中にもうれしい魚です。

 

「なんと25%がたんぱく質で、動脈硬化の予防に役立つEPAとDHAが含まれています。鉄分もトップクラスの含有量で、ナイアシンやビタミンB群も豊富に含まれており、エネルギーの代謝を促してくれます。貧血予防には、鉄分とビタミンCを合わせて摂ると、鉄の吸収力がよくなりますから、カツオと一緒にレモンや小松菜、モロヘイヤ、ピーマンなどと食べるといいでしょう。

他に、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、肝臓の解毒能力を強くするタウリンも豊富です。タウリンは体内でも作り出せますが、量が足りないので、食品から取り入れるのがおすすめです。また、トリプトファンという物質も豊富に含まれています。トリプトファンは脳内でセロトニンという物質に変わるのですが、これは“しあわせホルモン”と呼ばれていて、自律神経を整えたり安眠をもたらしたりします」

 

ただし鮮度には要注意!

ただし、注意点も。

「とても酸化しやすい魚なので、栄養価が下がらないよう、切り身ではなくサクで買い、できるだけ食べる直前に切りましょう。また、カツオには寄生虫がいるので取り扱いには注意が必要です。食べると食中毒になり、腹痛の原因になるアニサキスは内臓にいることが多いのですが、鮮度が落ちたものは身の部分にいることもあります。他にも、テンタクラリアという小さなお米粒のような虫がいることがあります。こちらは食べても害はありませんが、切ったときに白い粒があったら取り除きましょう。寄生虫は加熱するか48時間冷凍することで死滅しますから、心配な場合はお刺身も冷凍してからいただきます」

 

カツオの保存方法と切り方

レシピを紹介する前に、カツオの保存の仕方と、上手な刺身の切り方を教えていただきましょう。

 

・保存方法

カツオは足の早い(傷むのが早い)魚なので、刺身を買ってきたら、そのまま冷蔵庫に入れないでください。「ドリップしてしまわないよう、カツオをキッチンペーパーに包み、その上からラップを巻いて冷蔵庫に入れましょう」

 

・刺身の切り方

刺身を切るときは、柳刃包丁という魚専用の包丁があると便利です。刃が長いので何度も刺身に刃を入れる必要がなく、魚の繊維を壊さずカットできます。「洋包丁しかない場合でも、包丁の柄の方から刃を入れて、なるべく一気に切っていくと、きれいな断面で切ることができます」

 

次のページから、カツオがもつ栄養を余すことなく取れる、おすすめレシピを3つ紹介します。

栄養価を余すことなく食べられる!カツオのおすすめレシピ3

それでは、カツオを使ったレシピを3種類紹介していただきます。

 

1. 黄身とアボカドのまろやかさがカツオに合う
「カツオとアボカドのわさび醤油丼」

カツオのもつDHAとEPAに、アボカドの良質な不飽和脂肪酸とビタミンEをプラスし、動脈硬化を防ぐ効果を期待できる丼です。「ご飯はそのままでもいいですし、余裕があれば酢飯にしてもおいしくいただけます。カツオを漬け(づけ)にすることで、甘くてねっとりした感じが引き出されます」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき(または刺身)……300g

<A>
醤油……大さじ1
味醂……大さじ1

アボカド……1個
卵黄……1個

<B>
醤油……小さじ2
わさび……少々

胡麻……適量
刻みのり……適量
青ねぎ……適量

 

【作り方】

1.カツオの刺身をスライスし、調味料<A>に10分漬ける。

「バットにカツオを並べたら調味料をまわしかけ、ぴったりとラップをしておきます。こうすることで味なじみがよくなります」

 

「このまま冷蔵庫に10分入れておきます。短時間でも漬けられるよう調味料を多くしているので、漬け込み時間が一時間ほど取れる場合には、調味料を2/3くらいにしましょう」

 

2. ごはんに刻みのりをのせてから、アボカドと水気を切ったカツオをのせる。

「漬けにしたカツオとアボカドを交互にのせていきます。アボカドは、カツオの幅に合わせて縦にスライスするか横にスライスするか考えて切ると、盛り付けのときにうまくいきますよ」

 

「カツオを漬けた調味料には臭みも入っていますから、一度キッチンペーパーで軽く押さえてからのせます。味は中にしっかり染み込んでいますから、表面を拭っても問題ありません」

 

3. 真ん中に青ねぎの小口切と卵黄をのせる。仕上げに胡麻をふり、合わせたBをかける。

「青ねぎを枕のようにふかふかにのせたら、そこに窪みをつくり、卵黄を落とします。こうすると卵黄が流れず、きちんとのせることができます」

 

カツオのたたきならではの独特の風味と香ばしさに、卵黄とアボカドの甘みがプラスされた丼は、陽気のいい日にもさっぱりいただける味。お酒のあとの締めにもおすすめです。

 

2. 梅の香りのモロヘイヤソースがとろり
「カツオの刺身 梅肉風味のモロヘイヤ添え」

カツオに含まれる造血成分である鉄やたんぱく質を有効に取り入れるため、葉酸たっぷりのモロヘイヤを一緒に合わせました。「葉酸はDNAを作る水溶性ビタミンB群のひとつで、赤血球の生産を助けてくれます。葉酸が不足すると疲れやすくなり、貧血になる可能性もありますから積極的に取り入れましょう」

 

【材料(2人分)】

カツオのたたき……200g
モロヘイヤ……1/2袋
醤油……大さじ1
梅肉……適量
生姜(すりおろし)……適量
大葉……1~2枚

 

【作り方】

1. カツオは1cm幅に切る。モロヘイヤは葉をつみ、たっぷりのお湯で20~30秒茹で、ざるにあげる。

「モロヘイヤは熱が入りやすく、すぐにとろとろになってしまいます。ぐらぐらと沸かしたお湯でさっと茹でたら、すぐにざるにあげ、流水を流して冷やします」

 

2. モロヘイヤを細かくたたく。

「茹で上げたモロヘイヤは冷水でしっかりと冷やしましょう。冷えたら水気をぎゅっと絞り、水に栄養が流れでないようにします。モロヘイヤの緑色であるクロロフィルは、60℃くらいの温度が続いたり、調味料のような酸性のものと合わせると色が悪くなるんです。なるべくきれいな緑色に仕上げるため、茹でたら急いで冷やし、調味料を和えるのは食べる直前にします。絞れたら、包丁で細かく刻んでいきましょう」

 

3.カツオのたたきに、醤油と梅肉を混ぜあわせた①を添える。好みで生姜も添える。

「モロヘイヤの他に、ピーマンや小松菜でも食べ合わせはいいのですが、気を付けなくてはならないのは、ほうれん草。ほうれん草にはシュウ酸という成分が含まれていて、これが鉄分の吸収を妨げてしまうので、貧血にはよくないのです。モロヘイヤは茎から葉を外さないとならないので手間ですが、ぜひモロヘイヤと一緒に食べてみてください」

 

梅の酸味と香りがふわっとするモロヘイヤのソースを、カツオにのせていただきます。いつものお刺身も、ポン酢や醤油で食べるのと一味違った味わいです。

 

以上のように、カツオというとたたきや刺身の漬けでいただくイメージがありますが、生食に飽きたらこんな食べ方も!

 

3. 生食に飽きたらサクサクに揚げて
「カツオの半生カツ」

カツオをさっと揚げて半生にしたカツを、すりごまをたっぷり入れたソースでいただきます。「付け合わせには、たっぷりのキャベツの千切りを添えましょう。キャベツに含まれるビタミンCは鉄の吸収力を上げてくれるだけでなく、カツオと食べ合わせると美肌効果が期待できます。ソースにした胡麻にはセサミンという成分が含まれ、肝臓の機能を高めたり、保護する働きがあります。また、ごまの抗酸化力は活性酸素を除去したり生活習慣病を予防する働きもあり、アルコール代謝促進による肝機能保護に役立ちます。肝機能を助けるタウリンの働きをサポートしてくれますよ」

 

【材料(2人分)】

カツオの刺身……300g
バッター液(卵……1/2個・水……大さじ1・小麦粉……大さじ2・塩……少々)
パン粉……適量
揚げ油……適量
すりごま……大さじ2
ソース……適量

 

【作り方】

1. バッター液の材料をすべてビニール袋に加えて、よく揉む。

「ビニール袋の中で作ると、洗い物も少なくて済みますし、使い終わったらこのまま捨てればいいだけで楽ですよ」

 

2. カツオを1に入れて、バッター液を馴染ませる。

「カツオがぬるくなってしまうと、揚げたときに中まで火が通ってしまうので、冷蔵庫から出したてのカツオで行い、手早くバッター液をつけましょう」

 

3. パン粉をつけ、190℃で1分揚げる。

「レアな状態でいただきたいので、衣が色づいたらすぐに引き上げます。油がしっかりと190℃になってから、さっと揚げます。低い温度で入れてしまうと、いつまでも揚げ色がつかず、待っているうちに火が通ってしまいます」

 

4. カツオを1cmの厚さに切り、すりごま入りソースを添える。

「衣が剥がれないよう、包丁の柄の方から刃を入れて引き切りし、底の部分は包丁を上からトンと叩いて切り離します」

 

サクサクなのにお刺身を食べているようなジューシーさがある半生のカツ。ゴマのソースをカツオと千切りキャベツにかけていただきます。

 

 

カツオはおいしいだけでなく、栄養を摂るためにもぜひ食べてほしい魚です。この旬の時期に試してみてください。

 

【プロフィール】

家庭料理研究家 / 前田量子

一般社団法人日本ロジカル調理協会代表理事。管理栄養士、調理科学を得意とした家庭料理研究家。東京理科大学卒業後、織田栄養士専門学校にて栄養学を、東京會舘、辻留料理塾、柳原料理教室、ル・コルドンブルーにて料理を学ぶ。保育園や病院での勤務、カフェ経営を経て、調理科学に基づいた料理を教える教室を開催。都内栄養士専門学校(栄養士養成施設)にて調理学実習講師もしている。著書に『誰でも1回で味が決まるロジカル調理』(主婦の友社)のほか、『いいことずくめ 考えないお弁当』『苦手な揚げ物も煮物も魚料理も得意料理に変わる ロジカル和食』(ともに主婦の友社)などがある。

 

『おうちで一流レストランの味になる ロジカル洋食』(主婦の友社)
計量とロジックでおいしい料理が作れるヒントが満載です。