2021年、「5G」が大化けするために不可欠な「3つのパートナー」

世代高速通信の「5G」が本格的に始動したことで、関連市場にも新しい風が吹き込んでいる。5Gであることが前提になる2021年以降、社会に起こるだろう変化をここで予測しよう。

 

【解説してくれた人】

 

モバイルライター・井上 晃さん

モバイル製品に精通するライター。自宅で、Oculus Questを使ってリズムゲームやイラストを楽しむ。

 

【その1】5G×VR

2021年のVRは映像がより高精細化。5Gが普及することで、ライブストリーミングなどの提供基盤も整い、新たな体験が生まれていく!

 

VRの高解像度化を次世代通信が支える

ここ数年で個人向け機器が普及し、VRは身近な存在となった。その次なるトレンドは、高解像度化だ。解像度が限られたディスプレイでは、仮想空間の映像にドットなどの粗が目立ってしまい、どうしても臨場感に欠けた。

 

しかし、次世代のデバイスでは、これが目立たなくなり、さらにHDRにも対応するなど、進化を遂げそうな兆しがある。例えば、20年10月に発売されたOculus Quest 2も、従来機よりも大きく解像度を向上している。また、同年1月に米国で開催した技術見本市「CES」で参考出品されたパナソニックの有機ELVRグラスは4K・HDRをサポートしていることで話題となった。

 

↑パナソニック/HDR対応 UHD眼鏡型VRグラス(仮)/価格未定

 

↑Facebook/Oculus Quest 2/実売価格3万7180円〜。ディスプレイの解像度が約1.5倍になり、初代よりも精細な映像が楽しめる

 

こうしたVR用のコンテンツ供給には、5Gが貢献する場面も出てくる。高解像度が進めば進むほど、通信量は膨大になるためだ。従来はこうした大容量の通信にはどうしても有線ケーブルが必要だった。例えば、有線ケーブルが引きにくいスポーツやライブの会場などの屋外施設から、高解像度の360度映像などをライブストリーミング配信するといった場面では、Wi-Fi 6や5Gの高速な無線通信の力が不可欠となろう。

↑スポーツ観戦では選手や審判がウェアラブルカメラを装着。すると、彼らと同じ目線で、これまでにない臨場感あるVRスポーツ観戦が可能に

 

↑ライブ視聴では会場の特等席からVRでライブを視聴できる。また、リアルタイムにCG合成を行うことで、いままで見たことのない演出も

 

【ネクストヒットの理由】
VRはワイヤレス化がヒットのカギを握る

「ケーブルに縛られず、美しい映像世界に入り込めることで、VRの没入感や汎用性が高まります。高速・低遅延な5Gが普及すれば、VRクラウドゲーミング等の実現にも近づきます」(井上)

↑プレイする場所が限られやすいVRゲームは、ワイヤレス化で課題が一気に解決する

 

【その2】5G×Arm PC

2021年は、高性能で省電力性に優れると言われるARMベースのPCが存在感を強める。消費電力を抑えやすく、5Gとの相性もピッタリだ。

 

スマホの頭脳の設計図がPC市場でも力を発揮

「Arm(アーム)」についてを知らなくとも、多くの人がすでに恩恵を受けている。スマホに組み込まれたSoC(システムオンチップ)が、このArm社が設計したアーキテクチャーのライセンスを使っているからだ。スマホ市場で高性能化&省電力化を果たした設計が、PCに逆輸入されるのだ。

 

Armベースの製品は数年前からあったが、マイクロソフトやアップルがモバイルPCに採用したことで話題に。今後は、5G通信対応型が登場すると予測でき、外出先でも有線と変わらない環境で仕事を行えるようになるだろう。

 

↑アップルが搭載するM1チップはArmがベース。MacBook Airのほか、13インチ MacBook ProとMac miniが新搭載。ラインナップ拡充も期待される

 

↑2019年10月発表のSurface Pro Xは、クアルコム社の技術を採用した「SQ1」なるArmベースのSoCを搭載。2020年10月に「SQ2」にアップグレード

 

【ネクストヒットの理由】
新型プロセッサーと出会うことで5G対応PCがより実用的に

「5Gに対応したノートPCはすでに登場していますが、高速通信使用時は電力消費量が大きく、スタミナが課題に。省電力なArmプロセッサーは、5Gの普及とともにその存在感を強めそうです」(井上)

 

【その3】5G×格安スマホ

安価なMVNOでも5G通信サービスがスタート。通信速度においては、大手キャリアのそれに劣る部分はあるが、安価に利用できる点で注目だ。

 

大手キャリア以外でも5Gの選択肢が登場

最新ハイエンドスマホを、大手キャリアの大容量プランで運用するという従来の5G のイメージはすでに変わりつつある。安価な端末が増え、MVNOの5Gプランを含んだ選択肢が生まれているからだ。

 

5G対応のSIMフリースマホはすでにミッドレンジ帯が中心に。例えば、11月に発売した「TCL 10 5G」は4万円ほどの価格ながら5G通信をサポートしており、背面カメラも4基を備える。

↑TCL 10 5G/実売価格3万9800円。国内向けTCLブランドの製品としては初の5G対応モデルで、バンド「n77」「n78」に対応

 

通信プランでは「mineo」が5G通信オプションを提供。「IIJ」も法人向けサービスで5G対応プランを提供している。

↑mineo(マイネオ)は、オプテージが提供するMVNOの通信サービス。2020年12月1日よりトリプルキャリアに対応した「5Gオプション」の提供を月額200円で開始

 

【ネクストヒットの理由】5G黎明期ゆえの“お試し”に格安モデル&プランが◎

「真の意味で高速大容量な5G通信を利用するには、大手キャリアのプランのほうが適していますが、対応エリアが限定的などの課題も。安価に試せるMVNOの5Gプランも注目です」(井上)

 

auが「全機種5G」を宣言! 5Gスマホは本当に “買い時” に入ったのか?

9月25日に開催した「UNLIMITED WORLD au 5G 発表会 2020Autumn」で、auは5G対応スマートフォン6機種と、5Gコンテンツの拡充などを発表しました。

 

auはすでに5Gスマホを10機種(1機種は特別仕様モデル)発売しており、今回ラインナップに加わった6機種で、全16機種に。さらに、今後発売するスマホが全機種5G対応になることも発表されました。

↑auの5Gスマホのラインナップは、国内キャリアで最多の16機種に

 

5Gスマホは “買い時” に入ったのか? 今回発表されたスマホやサービスを紹介しつつ、検証してみたいと思います。

 

これから発売するスマホは全機種が5Gに対応!

今回発表されたスマホは、10月〜11月に発売予定のものが5機種で、来年春に発売予定のものが1機種。全機種が5Gに対応しています。プレゼンテーションを行ったKDDIの髙橋 誠社長は「これからは全機種5G」ということも明言しました。「今後、auブランドからは4Gのスマホは出さない」という意味と認識していいでしょう。

↑秋冬に発売される5モデルは、報道向けに開催されたハンズオンで実機に触れることができた

 

発表会では、近く発表されるであろうiPhoneの新モデルについては言及はありませんでしたが、iPhoneも噂通り、5Gに対応するはずです。となると、この秋から4Gから5Gへのマイグレーションが一気に加速化するのは確実です。

 

5GのiPhoneが気になる人も多いと思いますが、まずは今回発表されたAndroidの6機種をチェックしておきましょう。

 

Xperia 5 II(10月下旬発売予定)

約6.1インチで、縦横比21:9の有機ELディスプレイを搭載するハイエンドモデル。発売中のXperia 1 IIと同等の機能を備えながら、スリムで片手でも操作しやすいことが利点。画面のリフレッシュレートが120Hzになり、さらにゲームプレイ時には240Hz相当に設定できることは、Xperia 1 IIにはないXperia 5 IIならではの強みといえるでしょう。

↑約6.1インチの縦長ディスプレイを搭載。スリムなので片手でも操作しやすい

 

超広角+標準+望遠のトリプルカメラには、ソニーのデジタル一眼カメラ「α」で培った技術が応用されています。詳細なマニュアル設定ができ、カメラライクに撮影できる「Photography Pro」は、カメラ愛好者も要注目の機能です。

↑背面にはツァイスレンズを採用したトリプルカメラを搭載

 

↑デジカメと同じ感覚で設定・撮影できる「Photography Pro」が魅力

 

AQUOS sense5G(2021年春発売予定)

シャープが9月11日に発表したミドルレンジの5Gスマホ「AQUOS sense5G」もauの5Gラインナップに加わります。省電力性能に優れた約5.8インチのIGZO液晶ディスプレイを搭載し、4570mAhの大容量バッテリーとの相乗効果で、電池持ちが良いことがアドバンテージ。標準+広角+望遠のトリプルカメラも備えています。

 

↑ハンズオンでは実機の展示がなかったAQUOS sense5G。端末価格はかなり安くなると予測される

 

発売がかなり先ということもあり、発表会後に報道向けに開催されたハンズオンでは、実機は展示されていませんでした。筆者は、シャープが開催したハンズオンで、このモデルに触れたことがありますが、コンパクトで持ちやすく、使う人を選ばないシンプルなデザインも魅力だと感じました。売れ筋のAQUOS senseシリーズ初の5G対応モデルなので、大ヒットの可能性もありそうです。

 

Galaxy Note20 Ultra 5G(10月中旬発売予定)

約6.9インチの大画面ディスプレイを、付属の「Sペン」で操作できる、Galaxy Noteシリーズの最新モデル。従来からのコンセプトを継承する正常進化形モデルですが、CPUにSnapdragon 865 Plus(最大3.0GHz)を採用し、RAMは12GB、ROMは256GBという超ハイスペック仕様。Sペンの書き心地がさらに滑らかになり、Officeファイルへの書き出し、パソコンやテレビとの連携など、ビジネスに役立つ機能も備えています。

↑約6.9インチの有機ELディスプレイは、ほぼベゼルレス

 

↑Sペンの書き心地はさらに向上。手書き文字をワンタッチでテキスト化することも可能

 

5Gに使われる周波数には6GHz未満の「サブ6」と、高い周波数帯の「ミリ波」がありますが、6機種の中では唯一両方に対応。受信最大4.1Gbpsで通信できることも利点です。

 

Galaxy Z Fold2 5G(11月上旬発売予定)

昨年10月発売されたフォルダブルスマホ「Galaxy Fold」の後継モデルで、今回もauの独占販売です。約7.3インチだったメインスクリーンは約7.6インチへの拡大し、閉じた時に利用できるカバースクリーンも約4.6インチから約6.2インチへと進化しています。

↑開いても閉じても広いディスプレイを使える

 

画面を3分割して、3つのアプリを同時に利用でき、ラップトップPCのように開いて操作することも可能。メインカメラは超広角+広角+望遠の3眼で、さらに自撮りに使えるフロントカメラと、閉じた状態で使えるカメラも備えています。

↑背面にはトリプルカメラを搭載

 

↑広い画面を3分割して、3つのアプリを同時に使うことも可能

 

ヒンジ部の改良によって、開閉の安定感はさらに向上。端末価格はかなり高くなるでしょうが(海外モデルは2000ドル=約21万円)、5Gに対応したので、長く使い続けられる端末として、前モデル以上に注目を集めそうです。

 

Galaxy Z Flip 5G(11月上旬発売予定)

今年2月にauが発売した、縦折りのフォルダブルスマホ「Galaxy Z Flip」が5Gに対応しました。約6.7インチの有機ELディスプレイを搭載し、折りたたむとポケットに入れて持ち運びやすいコンパクトなサイズになることが特徴。

↑今年の春に注目を集めたGalaxy Z Flipが、早くも5Gに対応した

 

5Gの対応に合わせて、チップがSnapdragon 865 Plus(最大3.0GHz)に置き換わり、通信速度は受信最大3.4GHzに。しかし、カメラや機能は4Gモデルと共通。4Gモデルを買った人は「もう少し待つべきだった」と思うかもしれませんね。でも、来年には、5G対応で、機能をさらに進化したモデルが出るような気がします。

 

Galaxy A51 5G(11月中旬発売予定)

Galaxy Aシリーズは、優れた性能を求めつつ価格も重視する人に向けたミドルレンジモデル。CPUは、Galaxyのハイエンド機が採用するSnapdragon 800シリーズより下位のSnapdragon 765G(2.4GHz)を採用していますが、約6.5インチの有機ELディスプレイ、メインが約4800万画素の4眼カメラを搭載するなど、“ほぼハイエンド” と呼びたくなるスペックを備えています。

↑今回発表されたGalaxyの中では最も安くなるはずだが、ハイエンドに近い性能を備えている

 

約4500mAhの大容量バッテリーを内蔵しているので、ゲームや動画を存分に楽しみたい人にも適しているでしょう。

 

5G向けサービスを強化。銀座の一等地に5G体験スポットも開設!

auは今年の春、5Gの商用サービスを開始する際に、多彩な5G向けコンテンツを発表していました。すでに開始しているサービスもありますが、今秋から始まるサービスもあり、いよいよ5Gに本腰に入れる印象を受けました。

 

発表会で最も時間を割いてアピールされたのが、ライブ配信サービスを提供するSHOWROOMが10月22日から開始する「smash.」というアプリ。スマホに特化し、縦型・短尺の映像コンテンツを配信するサービスで、これをKDDIがサポートしています。月額550円(3か月間無料)のところ、auのユーザーは6か月間無料で視聴できます。

↑SHOWROOMの前田裕二社長が登壇し、「smash.」と5Gネットワークの親和性をアピールした

 

縦型・短尺といえば、無料で視聴できる「TikTok」が人気ですが、「smash.」ではプロのクリエーターやアーティストたちが参加し、質の高さで勝負する構え。2021年3月までに2600本のコンテンツを提供することを目標としています。

↑「smash.」のコンテンツは縦画面表示で、お気に入りのコンテンツを簡単に共有できることも特徴

 

9月26日には、東京・銀座の一等地に「GINZA456」という、5Gを体験できるコンセプトショップがオープンしました。施設名は、そのまま「銀座4丁目5-6」という住所に由来しますが、「4Gから5G、そして6Gへ」というメッセージも込めているそうです。

↑山野楽器銀座本店ビルの地下1階〜地上2階にオープンした「GINZA456」。通行する人の動きや時刻によって変化するファザードが迎えてくれる

 

地下1階から地上2階の3フロア構成で、地下1階が5Gコンテンツを体験できるスペースになっています。会場で5Gスマホを借りることができ、写真やQRコードなどにかざしてARやVRなど、5Gだからこそ快適に楽しめるコンテンツを体験できる趣向。

↑会場に設置されたQRコードを5Gスマホで読み取って体験できるコンテンツが中心

 

↑5Gスマホを池田エライザさんの写真に向けると、画面にARのエライザさんが登場。この施設のガイドをしてくれる

 

↑自分のアバターを作成して、バーチャルの横浜スタジアムに行って、野球を観戦できる。auは、10月以降に、自宅にいながら渋谷のハロウィンイベントに参加した気分を味わえる「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」の開催も予定している

 

↑スマホで動物園に行った体験ができる「one zoo」。普段は見られない角度から動物を観察でき、動物の詳細情報も確認できる

 

↑1階では最新の5Gスマホや5G関連製品を体験できる

 

↑2階では、auショップと同じように商品の購入・相談などが可能

 

これらの5G向けサービスは、5Gスマホでなくても、4Gスマホでも利用できます。実際には、現時点では5Gのサービスエリアは極めて狭いので、自宅で5Gに接続して楽しめる人は「ほとんどいない」と言っても差し支えないでしょう。

 

5Gエリアは急ピッチで拡大中

5Gスマホを購入するにあたり、気になるのはサービスエリアと今後の展開でしょう。au 5Gのサービスエリアは、auのウェブサイトに確認できますが、まだ “ごく一部” と言うべきなのが現状です。

 

KDDIは、当初、2021年度までに5G基地局を約1万局にして、2023年度末までに、国内最多の5万3626局を設置する計画でした。しかし、計画を2年前倒しにして、2021年度末までに約5万局を設置する見通しです。

↑発表会では、2022年3月までに5G基地局を5万局にするべく、急ピッチでエリア拡張を進めていることが強調された

 

当初の計画では、5万3626局で基盤展開率が93.2%に達する予定でしたので、これから1年半くらいの間に、右肩上がりで5Gエリアが広がっていくと期待していいでしょう。

 

5Gの料金プランは4Gと同等に。さらなる値下げにも期待

10月1日から、5Gスマホ向けの料金プランが一部変更になることも発表されました。

 

現在の5Gスマホ向けプランは、4Gスマホ向けプランよりも1000円高く、「5Gスタートキャンペーン」によって1000円×25か月割引されて、4Gスマホと同額で利用できるようになっていました。

 

その「5Gスタートキャンペーン」は9月30日で終了しますが、10月1日から「ピタットプラン 5G」が1000円値下げされます。同プランは、使うデータ量によって支払い額が変動します。現在は1GBまでが月額4150円(割引適用前)ですが、新料金では月額3150円になり、「家族割」や「auスマートバリュー」などが適用された場合は月額1980円で使えるようになります。キャンペーンによる期間限定ではなく、永続的に4Gスマホと同じ料金で使えるようになるわけです。

 

↑5Gスマホ向けの主力プラン「ピタットプラン 5G」は値下げされて、4Gスマホ向けプランと同額になった

 

なお、「データMAX 5G」などの使い放題プランに加入した場合は、10月1日から提供される「5G スタート割」が適用され、1000円×12か月が割引されます。つまり、5Gスマホを買ってから1年間は、4Gスマホと同じ料金で使えます。

↑10月2日からはデータ使い放題に、TV動画配信サービス「TELSA」「Paravi」「FOD プレミアム」をセットにした「データMAX 5G テレビパック」も提供開始

 

新たに内閣総理大臣に就任した菅義偉氏が携帯料金の値下げに積極的であることもあり、各社のスマホ料金がさらに値下げされる可能性も濃厚です。

 

auは、すでにお手頃価格で買えるミドルレンジの5Gスマホを発売済み。9月4日に発売された「Mi 10 Lite 5G」は「かえトクプログラム」を利用すれば、実質負担金は2万9900円(税込)。つまり、機種によっては、4Gスマホよりも安く買えるわけです。

↑2020年9月28日現在、auの5Gスマホで最も安い「Mi 10 Lite 5G」。一括払いが4万2740円(税込)で、次の機種変更時に端末を返却する「かえトクプログラム」を利用した場合の実質負担金は2万9900円(税込)

 

端末価格や料金プランは、すでに4Gと同等。今、機種変更をして、これから2〜3年使うとすれば、その間に5Gエリアはどんどん広がっていくはずです。5Gスマホは “買い時” に入ったと考えていいでしょう。

 

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携帯会社からインフラ会社へ NokiaはAmazonを支えるパートナーになるのか?

テクノロジー業界ではデジタルプラットフォーム革命が起きています。あらゆるものがインターネットでつながりつつあるなか、OSやシステム開発会社、サードパーティー、ユーザーなどが有機的に結びつくエコシステムが次々と誕生しており、このようなプラットフォームに基づいたビジネスモデルを構築することが多くの企業の課題となっています。

 

この分野に含まれるのが「モノのインターネット(IoT)」と「第5世代移動通信システム(5G)」。ともに私たちの生活やモバイルサービスを劇的に変えるとされており、多くの通信企業などが競争していますが、なかでも注目は(やっぱり)eコマースの巨人Amazon。IoTに関しては、同社のクラウドコンピューティングサービス「Amazon Web Service」(AWS)がプラットフォームを構築するサービスを提供しています。

 

そんなAWSが10月に興味深いニュースを発表しました。クラウドサービスなどの強化に向けてNokiaと戦略的パートナーシップを結んだのです。

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Nokiaといえば、かつては携帯端末市場において世界最大のメーカーでした。AppleのiPhoneやGoogleのAndroidといったスマートフォンの爆発的な普及に押されて主力の携帯電話端末事業が低迷し、マイクロソフトに売却した話は有名ですが、Nokiaはその後、世界有数の通信インフラ企業へと変化を遂げていました。

 

Nokiaは日本でも次世代移動通信5Gの実現に向けて大手携帯キャリアに技術を提供しながら共同実験を行っており、IoTプラットフォームの「IMPACT」も提供しています。

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今回の提携では、「AWS Greengrass」と「Amazon Machine Learning」、Nokiaの「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング」、IoT向けプラットフォーム「IMPACT」の4つを組み合わせて、IoTのユースケース(利用方法)の商品化を目指すことが明らかとなりました。

 

来たるIoT時代においては大量のデバイスから大量のデータが収集されます。それらのデータが、すべてクラウドへ送られるとなるとシステムに多大な負担がかかりデータ処理に遅延が生じる可能性があります。そこで、注目されているのが「エッジコンピューティング」。ネットワーク上でユーザーに近い場所に多数のサーバーを配置することで、スマートフォンやIoTデバイスの負荷を軽減するという概念です。

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NokiaはNTTと共同で実証実験を行い、監視カメラで撮影した歩行者の顔認識の画像処理にエッジコンピューティングを活用しました。従来の顔認識では、監視カメラで撮影した動画をすべてクラウドへ送信し、クラウド上でデータを解析していましたが、処理量が増大して遅延が発生することがありました。しかし、エッジコンピューティングを使ってみたところ、処理量が削減し、顔認識にかかる時間の短縮にも成功しました(上記の図を参照)。

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AWSとNokiaは今回の提携によってお互いの機能を補強し、より堅固でシームレスなIoTプラットフォームを構築することを狙っていると言えそうです。AWSチャンネル・アライアンスのバイスプレジデントを務めるテリー・ワイズ氏は「イノベーションを生み出し、情報技術の全体のコストを削減するために、AWSに移るサービスプロバイダーが現在増えています。パートナー契約を結んだNokiaとクラウドサービスの変革を加速することができて興奮しています」と述べています。

 

Nokiaと組んだことで、AWSがデジタルプラットフォームでも支配的なプレーヤーになりつつあるように見えます。今後もAmazonからは目が離せません。