アジア圏メーカーの勢いがすごい! 中国のBYDと韓国のヒョンデおすすめEV5選

環境に優しい乗りものとして真っ先に挙げられるのが電気自動車(EV)です。それは走行中の排出ガスがまったく出ないからです。そんな中で日本メーカーはハイブリッド車を主体として販売し、EVの販売はどちらかといえば積極的ではありませんでした。そうした中、日本国内で勢いを増しているのが中国のBYDと韓国のヒョンデです。ここでは、この両社が日本で販売しているおすすめのEVをご紹介したいと思います。

 

販売台数は世界第3位のHYUNDAI

ヒョンデは韓国の自動車メーカーで、キアを傘下に持つことで、その販売台数は日本のトヨタグループ、ドイツのフォルクスワーゲングループに次ぐ世界第3位となっています。それだけに北米や欧州に行けば、ヒョンデのマークを付けたクルマが数多く走っており、その数はもはや日本車と引けを取らないほど。それなのに日本で知名度が低いのは、2001年に一度日本市場に参入したものの、2009年に乗用車部門が撤退していることが影響しているのかもしれません。

 

そんなヒョンデが再参入を果たしたのが2022年。その際、同社は日本市場への戦略を大幅に変更しました。それは日本車が手薄となっているEVに的を絞ったことです。2022年当時、世界的にEVは追い風となっており、ヒョンデはその時流に乗るべくEVの開発を積極的に行い、その実力は欧米でも高く評価されました。

 

そうした中で、ハイブリッド車(HEV)が中心となっている日本市場には、このEVであればブランドを浸透させるチャンスがあるとの判断があったようです。その先兵として燃料電池車(FCEV)の『NEXO(ネッソ)』と共に送り込まれたのが、100%バッテリーEVの『アイオニック5』でした。その後、韓国ではガソリン車もラインナップする『コナ』をEVとして追加し、アイオニック5をマイナーチェンジしてバッテリー容量をアップ。さらにすでに予約販売を開始している小型EV『インスター』が登場する予定です(後半に解説記事)。

 

中国のEV市場ではトップシェアを獲得するBYD

一方のBYDは、中国・深圳市に本社を置くメーカーで、創業は1995年。最初はパソコンや携帯電話などに搭載するバッテリーの製造を中心としてスタートしていますが、そこで使った独自のバッテリー技術を活かし、2003年にBYD Autoを設立。ここから自動車メーカーとしてスタートしました。会社としては今年で設立30周年を迎え、自動車メーカーとしても今年で22年という若い会社です。

 

しかし、設立後はめざましい発展を遂げ、すでに中国のEV市場ではトップシェアを獲得し、日本だけでなく東南アジアや欧州など海外にも輸出することでその存在は広く知られるようになりました。日本市場にはまず2015年にEVバスなどの商用車で参入し、すでに累計350台のEVバスが走っている状況にあります。そして、2022年、満を持してEV乗用車での日本市場を果たしたのです。

 

BYDが日本市場において大きな特長としているのが、ディーラー網の充実にあります。テスラやヒョンデはEVの販売にあたり、オンラインでの販売を基本としていますが、BYDは「2025年末までにショールーム完備の店舗を100店舗以上作る」ことで、ディーラーによる対面販売を基本としたのです。2024年12月で誕生した正規ディーラーはすでに33店舗を数え、今年もその勢いは止まりそうにありません。

 

BYDが現時点でラインナップする車種は『ATTO3(アットスリー)』『DOLPHIN(ドルフィン)』『SEAL(シール)』で、今年4月には新たに『SEALION(シーライオン)7』が追加されます。また、2025年中にはEVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)の追加することも発表されました。

 

【その1】欧州チームが開発したEV

ヒョンデ

アイオニック 5

523万6000円(税込)〜

「アイオニック 5」は、デザインから足回りに至るまで同社の欧州チームが開発した、いわば生粋の欧州生まれのEVです。それだけに、外観は走りを意識した欧州車を彷彿させるデザインとなっています。

 

特にアイオニック 5 の個性をしっかりと表現しているのが「パラメトリックピクセル」と呼ばれる、デジタルピクセルをイメージしたユニークなデザインです。加えて、逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは、一度見たら忘れられない独創性を発揮しています。極端に短いオーバーハングは、バッテリーをフロアに置いたEV専用プラットフォーム(E-GMP)だからこそ実現できたもので、これがクラスを超える圧倒的に広い車内空間を実現。それだけに、運転席に座ると前後左右とも実に広々としていることを実感できます。

 

コックピットは大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターを2つ並べて設置。そのデザインは素材からして高品質で、スイッチの感触も適度な重みがある心地よさを実感します。

↑音声認識機能付きの12.3インチナビゲーションシステムを搭載。ステアリング中央の4つのピクセルライトは、音声コントロールの際、運転手の声に反応して点灯します。

 

搭載されるバッテリーは、2024年11月の仕様変更で84kWhにまで容量をアップ。一充電走行距離をRWD車で703kmの実現することとなりました。このほか、ドライブモードに各種設定を任意で調整できる「MY DRIVE」の追加や、最上位グレードのラウンジにはドライブレコーダー、ARナビ、デジタルキー(スマートフォンやスマートウォッチで施錠・解錠・始動が可能)を装備して機能を充実させています。その走りは軽くアクセルを踏んだだけで素直に速度が上がっていき、アクセルを少し強めに踏み込むとBEVらしい強烈な加速が味わえ、これはガソリン車では絶対に得られない感覚です。回生ブレーキを使ったワンペダルも自然で、峠道でのドライブも楽にこなすことができました。

 

また、2024年2月、ラインナップに“EVスポーツカー”とも呼ぶべき『アイオニック5N』を追加。前後両軸にアイオニック5とは別のモーターを備え、最高出力は合計で609PS、最大トルクは740Nmを発生するなど、強烈なパフォーマンスを発揮してくれます。

 

【その2】未来的なスタイリングとユニークなキャラクターライン

ヒョンデ

コナ

399万3000円(税込)〜

韓国ではガソリン車も用意される『コナ』ですが、日本市場向けにはEVの第2弾として2023年9月に導入されました。ボディ形状はクロスオーバーSUVとしており、グレードは他の車種と同様、「カジュアル」「ヴォイヤージ」「ラウンジ」の3グレードを用意します。

 

そのデザインは、「アイオニック5」で採用された水平基調のピクセルを使ったラインが際立ち、その上で柔らかい曲面を組み合わせたユニークさを感じさせるものとなっています。一方で好き嫌いがハッキリ分かれるのもコナのデザインです。テールランプはがリアのホイールアーチのエンドに配置する独特のデザインで、ここに好き嫌いが分かれるのもコナらしさなのかもしれません。ボディサイズは全長4335×全幅1825×全高1590mmと十分に大きく、車内や荷室は余裕のあるスペースが確保されています。しかも、このサイズながら、その大きさをほとんど感じさせず、住宅街でも取り回しは想像以上に良い印象です。

 

低速から十分なトルクを発生するEVは走りもかなり軽快で、発進から中低速の速度域まで力強く加速していきます。走行モードは、エコ、ノーマル、スポーツ、スノーの4種類に切り替えが可能で、回生ブレーキはステアリングのパドルスイッチによって、最弱から最強まで4段階の調整ができます。“最強”に設定すれば、完全停止までワンペダルで走行することも可能です。

 

市街地走行で安心度を高めてくれたのがウインカーを操作すると、操作した側の斜め後方をメーター内に映し出す機能。要はドアミラーとカメラ&モニターの両方で確認できるもので、必要な時だけ表示されることで周囲の状況確認に貢献してくれるというわけです。また、ARナビゲーションと呼ばれる、カメラで撮影した映像に進行方向などを重ねて表示して案内するのも重宝するかもしれません。

↑開放的な水平基調のダッシュボード、12.3インチクラスターとナビゲーションディスプレイが統合した12.3インチパノラマディスプレイを採用。

 

また、2024年8月、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップ。ファミリーカーテイストが強かったコナに“走り”を強く意識したデザインのグレードが追加されました。

 

【その3】海洋生物の自由さや美しさから着想を得たデザイン

BYD

ドルフィン

363万円(税込)〜

2023年9月、BYDが日本市場向け第二弾として発売したのが、コンパクトハッチバックのEV『DOLPHIN(ドルフィン)』です。実車を前にして実感するのは、思ったよりも存在感があるということです。全長4290×全幅1770×全高1550mmで、クラスとしてはBセグメントとCセグメントの中間に位置するサイズ。これは日産「ノート」や「フィット」よりも一回り大きいサイズに相当します。

 

徹底した日本市場向けのローカライズも大きなポイントです。高さを回転式駐車場制限に合わせて1550mmとしたほか、「ATTO 3」と同様、ウインカーレバーを中国本国の左側から右側に変更し、急速充電についても日本で一般的なチャデモ方式を採用。日本では装着が義務づけられている誤発進抑制システムや、各種機能の日本語による音声認識機能までも追加しているのです。

 

グレードはスタンダードな「ドルフィン(車両価格:363万円)」と、より上級な装備を搭載した「ドルフィン・ロングレンジ(車両価格:407万円)」の2種類。その違いで最も大きいのはバッテリー容量とモーターの出力で、ロングレンジはバッテリー容量を58.56kWhとし、一充電での航続距離は476㎞。一方のスタンダードはバッテリー容量が44.9kWhとなり、一充電当たりの走行距離は400kmとなります。

↑「ドルフィン ロングレンジ」。

 

駆動方式はどちらも前輪駆動のみ。サスペンションは、フロントはどちらもストラットですが、リアはロングレンジがマルチリンクで、スタンダードはトーションビームを組み合わせます。外観上は、ロングレンジにはルーフとボンネットをブラックとした2トーンカラーを組み合わせましたが、スタンダードは単色のみの選択となります。

 

その走りは、モーター出力が小さいスタンダードでも、もたつく印象は一切なく、決して速さは感じませんが、軽くアクセルを踏むだけで交通の流れに乗れるので、運転はとてもラクに感じました。一方のロングレンジは、モーターの出力の違いもあって、その力強さは絶大。走行モードを「スポーツ」に切り替えてアクセルを踏み込むと、車重が1680kgもあるクルマとは思えない圧倒的な加速力を見せてくれます。

 

【その4】ファミリーユースで使えるSUV

BYD

ATTO 3

450万円(税込)〜

『ATTO3(アットスリー)』は2023年に、ファミリーユースで使えるSUVとして日本市場に導入されたEVです。WLTCモードで470kmの航続距離を実現しつつ、リン酸鉄バッテリーを縦長に並べた独自のブレードバッテリーで高い安全性をアピールしてきました。そのATTO 3が2024年3月にアップデートされています。

 

ボディカラーに「コスモブラック」を追加し、窓枠とクオーターピラーのガーニッシュにグロスブラックを採用。リアにあった説明っぽい「BUILD YOUR DREAMS」から「BYD」へと変更されてもいます。インテリアは大きな変更はありません。個性的なデザインのダッシュボードやドアパネルはそのまま。しかし、ダッシュボードをはじめとして、全体の質感は極めて高いものとなっています。ボタン類の表面処理や手触り感、操作時の触感に至るまでとても質感が高いのです。

 

強いて難を言えば、操作スイッチの表示や、ディスプレイ上の文字が小さくて読みにくいこと。一方で中央の巨大なディスプレイは、従来の12.8インチから15.6インチへと大幅に拡大。画面いっぱいに展開されるカーナビゲーションは、ここまで必要かとも思う反面、大画面の魅力に取り憑かれた人にとっては大きな魅力となることは間違いないでしょう。さらにアップデートにより、インフォテイメントとしての機能も進化しており、専用のアプリストアを介してウェブブラウザーや「Amazon Music」が楽しめ、さらにカラオケの導入も可能となったのです。

↑流線的なデザインが特徴の室内。15.6インチの大型ディスプレイはインパクト大!

 

その走りにもアップデートは図られています。最初のバージョンに比べて、中高速域での路面追従性が進化し、フラット感が高まったようにも感じました。中でも好印象だったのが低速~停止時のブレーキタッチで、これまでよりも効き方がリニア。操舵フィールの中央が曖昧なのは同じですが、全体としては走りの質感が明らかに向上しているのがわかります。この辺りは、クルマとしてより自然なフィールを感じられるクルマに仕上がってといえそうです。

 

【その5】狭い路地や住宅地の道でも扱いやすいスモールEV

ヒョンデ

インスター

284万9000円(税込)〜

ヒョンデが2025年春以降に日本での納車を予定している新型EVが「INSTER(インスター)」です。インスターは2024年6月に韓国・釜山モビリティショーで世界初公開されたモデルで、日本で販売されるラインナップで最も小さなモデルとなります。まだ、日本仕様の正式なスペックは確定していませんが、明らかになっているデータからご紹介したいと思います。

 

インスターが持つ最大のポイントは、全長3830mm×全幅1610mmというコンパクトなサイズながら、全高は1615mmと少し高めのSUVっぽいフォルムを備えていることにあります。実はインスターは、韓国内で軽自動車規格「軽車=キョンチャ」として販売されている「キャスパー」をベースとしています。それを、全長で230mm、ホイールベースで180mm長くし、後席と荷室を広げて実用性を高めたEVとして登場しているのです。

 

驚くのはその価格です。グレードは「カジュアル」、「ラウンジ」、「ヴォイヤージ」と3グレードあり、ベース車である「カジュアル」はなんと284万9000円! まだ、補助金額が決まっていませんが、仮に55万円が認められれば、実質223万円を下回る可能性が高いのです。しかもEVで重要なスペックとなるバッテリー容量はカジュアルで42kWhと、日本の軽EV「SAKURA」の2倍以上! 航続距離も間違いなく300kmを超えてくるでしょう。

 

充実した装備も大きなポイントです。緊急時SOSコールやセントラルドアロック、タイヤ空気圧モニターなどは全車に標準装備。上位グレードのヴォイヤージ(車両価格:335万5000円)、ラウンジ(車両価格:357万5000円)ではバッテリー容量が49.0kWhに増えるのと共に、ACCやブラインドスポットモニターなどが装備され、最上位のラウンジにはシートヒーター&ベンチレーション機能、スマホ用ワイヤレスチャージ、デジタルキーまで備えているのです。

↑大画面の10.25インチナビゲーションとベンチタイプのフロントシート。助手席フルフォールディングやリヤシートスライド機構で、使いやすい室内となっている。

 

ただ、インスターは韓国で軽自動車規格をベースにしていることもあり、定員は4名。しかし、そのサイズから日本では登録車のカテゴリーに入ってしまいます。それでも補助金を考慮すれば300万円前後で手に入れられるわけで、300kmを超える航続距離を達成できるEVは現状ありません。その意味でも日本での期待度はかなり高いEVといえるでしょう。

 

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BYD「シール」の実力を体感! 抜群のコスパで同じクラスのライバルを凌駕しちゃう?

日本での導入が期待されていたBYDのスポーツセダンEV「SEAL」(以下、シール)が、6月25日ついに発表。そのシールに一足早く、公道で試乗できました。このクラスは目が肥えたユーザーが多いDセグメントに属し、それだけに高いパフォーマンスが要求されます。果たして、シールはその期待に応えられているのでしょうか。

 

■今回紹介するクルマ

BYD シール(試乗グレード:シール、シールAWD)

価格:528万円~(税込、以下同)

 

AWDなら0→100km/hがわずか3.8秒! バッテリーは得意のリン酸鉄採用

シールは先行して発売されたATTO 3、ドルフィン(DOLPHIN)に続く、同社の日本市場向け第3弾として投入される最上位のスポーツセダンです。ワイド&ローなボディデザインからはスタイリッシュかつエレガントな雰囲気を伝えてきますが、注目はなんといっても圧倒的な走りのパフォーマンスです。

 

実は2023年秋に、筆者は中国・珠海(ズーハイ)のサーキットで開催されたメディア向け試乗会でそのパフォーマンスを体感しています。“ゼロヒャク(0→100km/h)”がわずか3.8秒という圧倒的加速性能に驚嘆した記憶はいまでも鮮明に蘇ります。それから8か月が経ち、今回やっとその実力を公道で試す機会が得られたわけです。

今春発売のBYD製セダン「シール」に中国で試乗、圧巻の速さに度肝を抜いた!

 

試乗会は御殿場を基地として、2WDとAWD(4WD)の2台に試乗する形で実施されました。あくまで公道での試乗ですので、サーキットでアクセルをベタ踏みするような走りはできませんが、周辺の箱根や東名高速道を走行してそのフィーリングを体験できました。

 

シールを簡単に紹介すると、全長4800×全幅1875×全高1460mmの堂々たるボディに、82.56kWhの大容量バッテリーを搭載。最高出力312PSのモーターで後輪を駆動する2WDモデル「シール」と、これに217PSのフロントモーターを加えてトータル529PSとしたAWDモデル「シールAWD」がラインナップされます。装備内容で両者に違いはありません。

↑BYD「シール」AWDモデル。2WDモデルと外観で違いはない

 

↑BYD「シール」2WDモデル

 

そして、バッテリーにはBYDのBEVでおなじみのリン酸鉄リチウムイオン電池を使用した「ブレードバッテリー」を採用しています。また、バッテリーユニットを車体と一体化するBYD独自のCTB(Cell to Body)技術を採用し、これが車体の剛性を高めると同時に高水準の安全性を両立いるのです。ちなみに、航続距離はシールが640km、シールAWDが575kmとしています。

 

予想を大幅に下回る価格に驚き。しかも特別キャンペーンも

6月25日の発表で驚かされたのはその価格です。シールは528万円で、シールAWDでも605万円に設定し、さらに導入キャンペーンで最初の1000台に限ってはそこから33万円安い特別価格としたのです。

 

また、8月31日までに購入を申し込めば、前後2カメラのドライブレコーダーやETC車載器、充電器(設置工事費用10万円まで)、メンテナンス費用を含んだ「BYD eパスポート」の4点がプレゼントされる特別キャンペーンも実施中です。

 

珠海で試乗した際、関係者からの取材で700万円前後を予想していましたが、それを大幅に下回る価格で発売されたことになります。これは相当に攻めた価格設定と言っていいのではないでしょうか。

 

インテリアはDセグメントにふさわしく、メーターの視認性も上々

さて、最初の試乗は最上位となるAWDからでした。実車を目の前にして感じるのは、周囲に媚びることなくひたすら美しさを追求しているデザインです。ボディは十分にワイドさを実感させるもので、その外観はスタイリッシュかつエレガント。街中でも十分に存在感を発揮しそうです。

↑海洋生物“あざらし”の髭をデザインに反映した「シール」のフロント回り

 

↑タイヤはコンチネンタル製の235/45/R19

 

車内に乗り込むと、黒を基調とした上質な空間が広がっていました。パワー機構付きのシートはナッパレザーによって手触り感に優れ、この素材感がインテリア全体にまで及んでいます。前席シートにはベンチレーション機能が組み込まれ、さらにステアリングにはヒーターも装備される快適仕様。車内は十分プレミアム感に包まれています。

 

【インテリアをギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

その中で少し違和感を覚えたのは、センターに据えられた15.6インチのディスプレイです。スイッチひとつでタテ置きにもなるギミックな機構を備えていますが、ナビゲーションの表示がディスプレイの解像度に追いついていません。そのため、方面案内や分岐点リストなどのフォントが荒れた状態となっていたのです。Dセグメントに相当する車格を考えれば、このあたりはきちんと対応すべきなのではないかと思いました。

↑センターディスプレイをタテ表示にしてナビゲーションを展開した状態

 

↑Apple CarPlay/Android Autoにも対応。写真はCarPlay

 

“ハイウェイクルーザー”として十分なパフォーマンスを発揮!

さて、いよいよ走行です。センターコンソールにあるスタートボタンを押し、その先にあるシフトスイッチを操作すると運転準備は完了。すぐにエアコンなどのシステムが動き出し、アクセルを踏むと2tを超える車体が滑るようにスムーズに走り出しました。

 

アクセルは踏み込みに応じてリニアに反応し、コントロールはとてもしやすい印象です。2段階で設定できる回生ブレーキも自然なもので、効果が強く出る“ハイ”に設定しても、その適度な減速感が扱いやすさを感じさせてくれました。

 

一方で、加速はきわめて力強いもので、高速道路本線への流入でその実力をいかんなく発揮してくれました。少し強めにアクセルを踏み込めば、529PSもの圧倒的ハイパワーを4輪がしっかり路面に伝え、あっという間に周囲をリードする速度域に達します。

↑529PSのビッグパワーがもたらす圧倒的な加速力を示したシール「AWDモデル」

 

アクセルはどこからでも俊敏に反応するので、速度差のある他車線への移動も楽々。加えてドッシリとした乗り味は高速走行時のフラット感があり、路面の段差も突き上げ感をほとんど感じさせません。AWDモデルは、“ハイウェイクルーザー”としての役割を十分果たしてくれそうだと実感しました。

 

一方で続く2WDモデルではAWDモデルとのパワー差を否応なしに感じることになりました。AWDと比べてスペック上でも217PSもの差があるわけで、これは当然と言えば当然。絶対的なパフォーマンスや乗り心地ではAWDモデルに軍配が上がるのは間違いありません。

 

とはいえ、2WDモデルが力不足というわけではなく、ほとんどの人がこの走りに十分なパワーを感じるレベル。むしろ、ハンドリングでは2WDモデルの方が軽快で、普通使いでの扱いやすさは2WDモデルに分があるようにも感じたほどです。

 

日本ではミニバンやSUVに人気が集まる中で、シールはファストバックスタイルながら、完全な4ドアセダンとして登場しました。それでいて圧倒的なパフォーマンスを示すシールは十分に魅力的です。ただ、どこまで支持を得られるかは現時点では未知数。とはいえシールは価格の上でも魅力的と感じる人は少なくないはず。その意味でも同クラスのライバルを凌駕しているのは間違いないでしょう。デリバリーは今秋からを予定しているそうですが、その登場がいまから楽しみです。

 

SPEC【シールAWD】●全長×全幅×全高:4800×1875×1460mm●車両重量:2210kg●パワーユニット:かご形三相誘導モーター(フロント)+永久磁石同期モーター(リア)●最高出力:529PS●最大トルク:670Nm●WLTCモード燃費:165Wh/km

SPEC【シール】●全長×全幅×全高:4800×1875×1460mm●車両重量:2100kg●パワーユニット:永久磁石同期モーター(リア)●最高出力:312PS●最大トルク:360Nm●WLTCモード燃費:148Wh/km

 

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撮影/松川 忍

反則技的な手法でEVの新たな楽しみ方を提案する“電動サソリ“「アバルト500e」レビュー

今回は反則技的な手法でEVの新たな楽しみ方を提案する「アバルト500e」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2024年2.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

時代を象徴する“電動サソリ”その毒気は?

アバルト 500e

SPEC【ハッチバック】●全長×全幅×全高:3675×1685×1520㎜●車両重量:1360㎏●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:42kWh●最高出力:155PS/5000rpm●最大トルク:24.0㎏-m/2000rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):303㎞

 

サウンドジェネレーターは新たなEVの楽しみ方に貢献?

アバルトといえば、クルマ好きにはサソリのエンブレムでもお馴染みのスポーツ銘柄。フィアットがベースの高性能車作りに長けたブランドということで、最新作はEVのフィアット500eを独自アレンジ。電気モーターは出力とトルクがそれぞれ37PSと1.6kg-m引き上げられ、ベース車はもとよりガソリン仕様のアバルトと比較しても同等以上の速さを実現する。実際、その走りは見た目に違わず活発で、EVとしては軽量なことも相まって、積極的に操った際のスポーツ性は十分に高い。

 

だが、最大の特徴はやはりアクセル開度やスピードに応じてスポーティな音が楽しめる「サウンドジェネレーター」を装備していることだろう。のべで6000時間以上をかけ“調律”されたという擬似サウンドは、往年のアバルトを彷彿とさせる出来映え。真面目に考えれば本末転倒なのだが、クルマの運転を趣味とする人にはEVの新たな楽しみ方として有望であることは間違いなさそうだ。

 

インターフェイスはデジタル化

クラシカルな造形ながらメーターがデジタル化されるなど、機能は最新のEVらしい仕立て。もちろんサウンドジェネレーターはON/OFF可能なので、EVらしい静かさも確保できる。

 

スポーティな外観と「音」がセットに!

アバルトを象徴するサソリのモチーフを随所に配した外観は、スポーティな風情を演出。サウンドジェネレーターのスピーカーはリア下部に配置され、車外にも高性能なコンパクトハッチらしい快音を響かせる。

 

ガソリン仕様と同等の速さを実現!

フロントの電気モーターはベース車より強化。ガソリン仕様のなかでも上位モデルとなるアバルト695と同等の加速性能を実現する。

 

アバルトらしさも十二分!

アルカンターラ仕立てのシートは、ハイバックのセミバケット形状。スポーツ仕様らしいサポート性と快適な座り心地を両立する。

 

実用度はベース車と変わらず

ボディサイズを考えれば、十分に実用的な広さの荷室。ベース車同様、ハッチバックの他にセミオープンのカブリオレも選択できる。

 

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今春発売のBYD製セダン「シール」に中国で試乗、圧巻の速さに度肝を抜いた!

2023年10月に開催され、100万人を超える賑わいで成功裏に終えることができた「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。その中で特に人気を呼んだのが中国の自動車メーカー「BYD」です。

 

BYDとはいったいどんな会社なんでしょうか。今回は、今春にも発売されるBYDのスポーツセダン「シール」の試乗インプレッションも交えてレポートします。

↑BYD「シール」プロトタイプ

 

BYDは中国トップのバッテリーメーカー

BYDは1995年、創業者である王伝福氏によって中国・深セン市にバッテリーメーカーとして設立されました。中国での正式名称は比亜迪股份有限公司「略称:比亜迪」。BYDは「Build Your Dream」の略でもあります。

↑BYD本社は中国・深セン市にあり、そのビルはアメリカ国防総省の五角形を六角形にした形で、ペンタゴンならぬヘキサゴンビルと呼ばれる(BYDホームページより)

 

↑創業当時より続くBYD本社の構内。広大な広さを持ち、構内ではモノレールも走っている。実はこの車両も自社開発だという

 

同社が成長するきっかけとなったのは、創業当時、市場から見放されかけていたニッケルカドミウム電池を手がけたことでした。ここでバッテリーメーカーとして頭角を現し、その後は携帯電話やカメラなど向けにリチウムイオンバッテリーを提供してからは世界中から注文が殺到。2008年には中国ナンバーワンの電池メーカーまで成長したのです。

 

しかし、王氏はバッテリーだけでは成長にいずれ限界が来ると考え、これと並行して自動車事業への進出を決断していました。2003年に中国国内の自動車メーカーを買収し、パワーユニットを三菱自動車から供給を受けることで自動車の生産を開始したのです。

 

クルマのデザインこそ、先進国車両をまんまコピーするといった状況でしたが、このクルマが大ヒット。そこから自動車メーカーの地位を築き上げることとなったようです。

 

量産PHEVを世界で初めて発売。2023年は販売台数でテスラを超える

転機となったのは2008年のこと。BYDは世界初の量産プラグインハイブリッド車(PHEV)「F3DM」を発売し、2009年には電気自動車「e6」を発表してEVメーカーとして頭角を現し始めたのです。つまり、創業時からのバッテリー技術があったからこそ、EVメーカーとしての地位をBYDは築き上げることができたといっていいでしょう。

 

そのBYDが日本市場への参入を発表したのは2022年7月。2023年1月にはミドルレンジSUVとして「ATTO 3」を、9月にはコンパクトハッチの「ドルフィン」を相次いで発売し、JAPAN MOBILITY SHOW 2023では最上位セダン「シール」が2024年春までに発売されることも発表されました。

走りはどう? 日本上陸したBYDのコンパクトハッチBEV「ドルフィン」をチェック

 

これまでのところ、爆発的な売れ行きこそ見せていないものの、ハイブリッドが半数を占める日本市場の中で、EVとしての販売台数は健闘している様子。なかでも購入者の6割が40歳代以下となっている傾向も「まずは狙い通りの滑り出し」(BYD)と判断しているようです。

 

また、2023年の10~12月期のEV販売台数では、それまで世界一だったテスラを抜いたことも伝えられました。欧州や東南アジアでもBYDの人気は高く、その成長ぶりは世界中が注目しているといっていいでしょう。

 

そんな折の2023年10月、BYDの中国本社を訪問する機会をいただき、その際に注目のシールに一足早く試乗することができたのです。

↑シールの試乗は、中国・珠海(ズーハイ)のサーキットを舞台に実施された

 

0→100km/hはわずか3.8秒! 圧巻の加速力を見せたシール

このシールはBYDが日本で展開する3車種の中で最上位に位置するスポーツセダンです。ボディサイズは全長4800×全幅1875×全高1460mmと、全高を低く抑えたスタイリッシュなデザインが特徴。それでいてEVらしくホイールベースは2920mmと長めで、居住性も十分意識された造りとなっています。

↑タイヤは前後ともコンチネンタル製の235/45R19を履いていた

 

インテリアはBYDらしく、大型のディスプレイが目を引きます。ドライバー正面のディスプレイは10.25インチと、ATTO3のほぼ2倍! 中央のディスプレイは15.6インチと、これも12.8インチのATTO3と比べてはるかに大きく、その分だけ見やすくなっていました。

 

【シールのインテリアを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

パワートレインは、中国国内では後輪駆動のスタンダードと4輪駆動のハイグレードが用意されていますが、日本に導入されるのはハイグレードのみ。前後モーターを合わせたシステム出力は最高出力390kW・最大トルク670Nmにも達し、そこから生み出される加速は0-100km/hをわずか3.8秒です。エンブレムにもそれを意味する「3.8S」が貼られています。試乗もこのタイプで体験しました。

↑日本向け第3弾となる「シール」は、前後にモーターを持つAWD仕様が日本に導入される予定

 

↑トランクリッドに貼られていた「3.8S」のエンブレム。0→100km/h加速が3.8秒であることを意味する。日本仕様で採用されるかは未定

 

バッテリーにはリン酸鉄リチウムイオン電池を使用した「ブレードバッテリー」を車体に組み込んでボディと一体化するCTB(Cell to Body)技術を採用。これが安全性と安定性の両立をもたらしているそうです。ちなみに電池容量は82.5kWhで、満充電時の航続距離は欧州のWLTPモードで555kmを達成しているとのことでした。

 

コーナリングスピードも相当に速い!

試乗コースは、中国の珠海(ズーハイ)にあるサーキットの本コースです。走り出しで路面の凹凸をリニアに拾う硬さを感じましたが、本コースに入るとそんな印象は吹き飛ぶような安定した走り。アクセルを踏むと低速域からアッという間に高速域まで到達し、圧倒的な加速力にはスポーツセダンらしい頼もしさを感じました。

 

中でも秀逸だったのがコーナーでのハンドリングで、意図したコースを正確にトレースしてくれたのです。その安定ぶりは見事なもので、速度が多少出ている状態でも不安なく走り抜けることができました。これは4輪駆動モデルに採用された最新の「iTAC(スマート・トルク制御)」によるトルク制御が功を奏しているものと思われます。

↑最新の「iTAC(スマート・トルク制御)」によって、安定したコーナリング特性を見せた(BYD画像提供)

 

日本でどこまで勝負できるかは未知数なものの、大いに期待

この日試乗したシールは、日本市場向けの右ハンドル仕様で、ほかのBYD車両と同様、ウインカーも右側にセットするなど、徹底したローカライズが実施されていました。

↑日本仕様はステアリングの右側にウインカーレバーを用意するなど、徹底したローカライズが図られている(BYD画像提供)

 

日本での価格は現時点で未発表ですが、中国での価格は27万9800元(日本円換算:約567万円 ※1月9日時点)。日本では700万円前後になるのではないかと見られています。ハイブリッド車が強い日本市場で、この価格帯のスポーツカーがどこまで勝負できるかは未知数ですが、日本での電動化への流れに一石を投じることになるか、動向に大いに注目したいと思います。

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

輸入EVの「黒船」本命か!? 個性あふれるBYD「ドルフィン」試乗レビュー

今回紹介するBYDドルフィンは、最新ピュアEVとして十分な実用性と個性あふれる見た目が注目のモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

これが輸入EVの「黒船」本命かも?

BYD
ドルフィン

SPEC【ロングレンジ】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550㎜●車両重量:1680kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:58.56kWh●最高出力:204PS/5000〜9000rpm●最大トルク:31.6kg-m/0〜4433rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):476km

 

実用性の高さと遊び心を感じさせる見た目を両立!

ドルフィンは、アットスリーで日本上陸を果たした中国BYD社のコンパクトEV。その価格は、最大航続距離400kmを確保するベーシック仕様でも363万円と輸入EVのなかでは圧倒的な価格競争力を誇る。だが、もちろん注目すべきポイントはそれだけではない。名前の通り、イルカをモチーフとした内外装の造形は実に個性的で、あえて輸入車を選ぼうという人へのアピール度は十分。コンパクトカーとしての実用性にも抜かりはなく、室内空間は満足できる広さを実現した上で荷室容量もサイズを考えれば申し分ない。

 

走りも新興メーカーのモデルとは思えない完成度だ。今回は航続距離が476kmとなる上級版のロングレンジに試乗したが、必要十分な動力性能と自然なアクセルレスポンスは街中での扱いやすさに大きく貢献。穏やかな仕立ての足回りも、マイルドな乗り心地を提供するだけに、EVを本気で日常のパートナーとしたい人には有力な候補のひとつとなるはずだ。

 

使い勝手への配慮もうれしい荷室

荷室は通常時でも345l、最大では1310lまで容量を拡大できる。可変式のフロアボード等、使い勝手への配慮も行き届いている。

 

コンパクト級としては十分な広さ

2700mmというロングホイールベースの恩恵で、室内は前後席とも満足できる広さ。ハイバック形状となる前席はたっぷりとしたサイズを生む。

 

アットスリーと同様の機能も搭載

インパネ中央のディスプレイは、先行上陸したアットスリーと同じく縦横両方で使える仕立て。イルカをモチーフとした個性的な造形も特徴的だ。

 

日本の立体駐車場にも対応!

写真は航続距離400㎞のベーシック版。日本仕様は車高を1550㎜に抑え、一般的な立体駐車場にも対応する。グレードは、航続距離476㎞のロングレンジを加えた2タイプ。

 

パワートレインは2タイプを用意

電気モーターはグレードに応じて95PSと204PSの2種類が用意される。1か所にまとめられた充電口は、もちろん急速充電にも対応している。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

走りはどう? 日本上陸したBYDのコンパクトハッチBEV「ドルフィン」をチェック

BYDジャパンは8月末、バッテリーEV(BEV)のコンパクトハッチモデル「ドルフィン」のメディア向け試乗会を開催しました。同社は2023年1月にSUV型のBEV「ATTO3(アットスリー)」を発売しており、ドルフィンはそれに続く第2弾。9月20日に正式発表されたモデルの走りをさっそく体験してきました。

↑実車を前にすると意外に大きく存在感がある。写真はドルフィン

 

■今回紹介するクルマ

BYDジャパン/ドルフィン

価格:363万円〜407万円(税込)

 

グレードは「ドルフィン」と「ドルフィン・ロングレンジ」の2構成

ドルフィンを前にして実感するのは、思ったよりも存在感があるということでした。ボディサイズをチェックすると全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mmで、クラスとしてはBセグメントとCセグメントの中間に位置するサイズ。これはノートやフィットよりも一回り大きいサイズに相当します。

↑ボディサイズは全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mm、ホイールベースが2700mm。写真はドルフィン

 

↑全高はオリジナルよりも20mm低い1550mmとして回転式駐車場への入庫に配慮した。写真はドルフィン

 

ドルフィンで注目なのは輸入車ながら、徹底して日本市場にローカライズされていることです。たとえば全高は、グローバルでは1570mmなのですが、日本仕様だけは回転式駐車場制限に合わせて20mm低くしています。それだけじゃありません。ウインカーレバーを中国本国の左側から右側に変更したほか、急速充電についても日本で一般的なチャデモ方式を採用。そして、日本では装着が義務づけられている誤発進抑制システムや、各種機能の日本語による音声認識機能までも追加しているのです。

↑急速充電は日本で一般的なチャデモに対応(左)。右が普通充電用。写真はドルフィン

 

そのドルフィンは、スタンダードな「ドルフィン」と、より上級な装備を搭載した「ドルフィン・ロングレンジ」の2グレード構成となっています。違いで最も大きいのはバッテリー容量とモーターの出力にあります。

 

ロングレンジはバッテリー容量を58.56kWhとし、一充電での航続距離は476㎞。組み合わせるモーターも最大出力150kW(204馬力)・最大トルク310Nmというハイパワーを実現しています。一方のスタンダードはバッテリー容量が44.9kWhとなり、一充電当たりの走行距離は400km。モーター出力は最大70kW(95馬力)・最大トルク180Nmとなります。

↑ドルフィンのパワーユニットは、モーター出力が最大70kW(95馬力)・最大トルク180Nm

 

駆動方式はどちらも前輪駆動のみ。サスペンションは、フロントこそどちらもストラットですが、リアはロングレンジがマルチリンクを採用し、スタンダードはトーションビームの組み合わせとなっていました。これらの両者の違いも気になるところです。

 

外観上は、ロングレンジにはルーフとボンネットをブラックとした2トーンカラーを組み合わせましたが、スタンダードは単色のみの選択となります。

 

グレードを問わず、最高水準の先進運転支援システムを標準装備

インテリアはとても質の高いものでした。シンプルながら緩やかにラウンドするダッシュボードに、ドルフィン(イルカ)のヒレを彷彿させるドアノブなど、デザインへのこだわりが感じられます。ソフトパッドも随所に施され、コンパクトハッチにありがちなチープさはほとんど感じません。特にロングレンジにはサンルーフやスマホ用ワイヤレス充電器が追加されており、そういった面での満足度は高いと言っていいでしょう。

 

【インテリアなどをギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

加えて驚いたのが先進運転支援システムの充実ぶりです。アダプティブクルーズコントロール(ACC)をはじめ、自動緊急ブレーキ(AEB)やレーンキープアシスト(LKA)、フロントクロストラフィックアラート(FCTA)&ブレーキ(FCTB)、ブラインドスポットインフォメーション(BSI)といった多数の先進機能を装備。さらに室内に2つのミリ波レーダーを搭載し、子供やペットの置き去り検知機能も装備。これらがすべてグレードを問わず標準装備されるのです。

 

グレードによって安全装備にも差を付けていることがほとんどの国産車と違い、安全装備ではグレードに応じて差を付けない。こうした姿勢は高く評価していいと思います。

 

市街地走行に十分なパワー感を発揮する「ドルフィン」

↑スタンダードなグレードとなる「ドルフィン」。試乗は街中から高速道へ続く公道で実施した

 

さて、いよいよドルフィンで公道に出て試乗に入ります。

 

最初に試乗したのはモーター出力を抑えたスタンダードからでした。とはいえ、アクセルを踏むと、車重が1520kgもある印象はまるでなく、スムーズに発進していきます。街中は「エコモード」で走りましたが、もたつく印象は一切なく、ハンドリングは軽めながらも左右の見切りがいいので不安を感じさせません。決して速さは感じませんが、軽くアクセルを踏むだけで交通の流れに乗れるので、運転はとてもラクに感じました。

↑高速クルージングからの加速では実用上十分なトルクを感じた

 

ただ、高速に入ると加速に物足りなさを感じたのは確かです。クルーズモードに入ってからの加減速ではそれほど力不足は感じませんが、高速流入時ではすぐに加速が頭打ちとなってしまい、つい「もう少し!」と叫んでしまいそうになります。

↑高速道路本線への進入ではもう少しパワーが欲しいと感じたが、決して遅いわけではない

 

ステアリングも中間位置が曖昧で、これに慣れないでいると真っ直ぐ進むのに細かく修正を加えながら走ることになります。また、乗り心地についてもスタンダードは路面からの突き上げ感があり、後席に乗ったカメラマンからも「結構コツコツ来ますねー」との声が出たほどです。

 

圧倒的な加速力で目標速度に到達!「ドルフィン・ロングレンジ」

こうした体験の後、次はロングレンジに乗り換えてみました。街乗りからスタートするとすぐにスタンダードとの違いを実感します。路面の段差もしなやかにこなし、不快な感じはほとんどなくなったのです。ステアリングの軽さは大きく変わりませんでしたが、このしなやかさがクルマに上質感を与えてくれています。

↑ドルフィンの上級グレードとなるドルフィン・ロングレンジ。高出力モーターによる圧倒的パワーが醍醐味

 

↑タイヤは両グレードともブリヂストン「エコピア」を履いていた。サイズは205/55R16。写真はドルフィン・ロングレンジ専用デザイン

 

さらに加速の力強さが半端ない! 走行モードを「スポーツ」に切り替えてアクセルを踏み込むと、車重が1680kgもあるクルマとは思えない圧倒的な加速力で目標の速度域に到達したのです。走行モードを「エコ」に切り替えたとしても十分な加速力を実感でき、まさにモーター出力の違いを見せつけられた印象があります。

 

一方で回生ブレーキは2段階を用意していますが、ATTO3と同様、ワンペダルで走れるほど減速感は強くありません。それでもスポーツモードにするとやや減速感が強くなるので、たとえば峠道はより楽に走れるのではないかと思いました。

↑ドルフィン・ロングレンジにはスマホ用ワイヤレス充電機能が装備される

 

↑センターディスプレイはATTO3と同様、タテ表示に電動で切り替えられる

 

ドルフィンで気になるのはやはり価格でしょう。ドルフィンの価格は363万円(税込)、ドルフィン・ロングレンジは407万円で、政府のCEV補助金65万円を適用すれば、ドルフィンは298万円からとなります。正直言えばもう少し安く出てくるかとは思いましたが、昨今の円安を踏まえれば妥当な価格といったとところでしょうか。それでも、この価格は日本で販売される軽EVと真っ向から勝負できる価格。その意味でこのドルフィンは、日本におけるBYDの存在感を打ち出せるか、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

SPEC【ドルフィン】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550mm●車両重量:1520kg●パワーユニット:交流同期電動機●モーター最高出力:95ps/14000rpm●エンジン最大トルク:180Nm/3714rpm

【ドルフィン・ロングレンジ】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550mm●車両重量:1680kg●パワーユニット:交流同期電動機●モーター最高出力:204ps/9000rpm●エンジン最大トルク:310Nm/4433rpm

 

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写真/松川 忍(ドルフィン)、 筆者(ドルフィン・ロングレンジ)

クルマの神は細部に宿る。【フォルクスワーゲン/ID.4編】欧州でもっとも売れているEVの実力とは?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、2022年末から日本に導入された、VW(フォルクスワーゲン)が本命と据える新世代EVを取り上げる。

※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

Volkswagen
ID.4

SPEC【Pro】●全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm●車両重量:2140kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:204PS(150kW)/4621〜8000rpm●最大トルク:310Nm/0〜4621rpm●一充電走行可能距離:618km

514万2000円〜648万8000円

 

ヨーロッパでもっとも売れているEV

安ド「殿! 今回はVWのEV、ID.4を取り上げます!」

永福「またEVか」

安ド「え? このコラムでEVを扱うのは久しぶりですよ」

永福「そうだったか。最近ニューモデルの試乗というと、EVばかりなのでな。ところが日本では、EVはまだ全体の4%弱しか売れていない。うち半分近くを日産のサクラと三菱のekクロス EVの軽EVが占めている。その他のEVはほとんどが不人気モデル。元気が出ないのだ」

安ド「そうなんですか!?」

永福「前述の軽EV以外でそこそこ売れているのは、日産のアリアとテスラくらい。富裕層の間では、ポルシェのタイカンなどのチョー速EVが人気だが」

安ド「ID.4は、アリアのライバルですね!」

永福「うむ。世界的に見れば、こういうコンパクトSUVタイプが、EVとして最もスタンダード。ID.4は、ヨーロッパで一番売れているEVなのだ」

安ド「EV販売数世界一のテスラより売れているんですか?」

永福「ヨーロッパではな」

安ド「確かに、すごく普通に乗れる気がしました!」

永福「これぞスタンダードだ」

安ド「でも、シフトスイッチがインパネに付いていたり、適度に個性的な部分もあって、なかなか良いと思います!」

永福「デザインもスタンダード感満点だ」

安ド「グリルが小さいのはEVっぽいですけど、それ以外はすっきりスポーティで、カッコ良いと思います!」

永福「嫌味がないな」

安ド「走りも自然でした!」

永福「まるでガソリン車のように自然、と言われているが、驚いたのは、加速が遅いことだ」

安ド「エッ、これで遅いんですか!?」

永福「EVは、アクセルを踏んだ瞬間に最大トルクが出るので、どのEVも、走り出した瞬間は『ゲッ、速い!』と思うものだが、ID.4はその感覚が一番小さい」

安ド「これでですか!」

永福「テスラのモデル3 パフォーマンスなどは、発進加速で本当にムチ打ちの症状が出た。それに比べると“ものすごく遅い”と言ってもいい」

安ド「僕は十分速いと思いましたけど……」

永福「不必要に速くないと言ったほうがいい。VWは大衆車メーカー。その良識の表れだ」

安ド「なるほど!」

永福「そのわりに、電費が特に良くはないのが残念だ。ヒーターも効率の悪いタイプなので、冬場は電気を食うぞ」

安ド「ウリはなんでしょう?」

永福「VWは、グループのアウディ、ポルシェとともに、独自の専用充電ネットワークを作る。ディーラーに行けば、待たずに90 kWの急速充電ができる確率は高い。なにしろ売れてないからな」

安ド「ガクッ!」

 

【GOD PARTS 神】床下の厚み

バッテリーを床下搭載したことで走りも安定

ドアを開けると見るからに床下が分厚いですが、これは床下のアンダーボディにリチウムイオンバッテリーが敷き詰められているためです。重量物であるバッテリーが床下にあるため、必然的に重心が低くなり、走りも安定しています。ちなみにクルマの下側を覗いてみると、バッテリーがあるためフラットになっています。

 

【GOD PARTS 1】ドライバーモニタ

広い視野を生み出す超小型ディスプレイ

運転席前のモニタは薄くて小さいです。小さいので表示される情報も必要最小限ですが、これが意外にも見やすくて、無駄を省くことは大切だと実感させられます。運転席からの広い視界を生み出すことにも役立っています。

 

【GOD PARTS 2】ウインドウオープナー

後席の窓を開けるならワンステップ必要

4ドア車なのに、窓を電動開閉するスイッチであるオープナーが左右2つしか付いていません。しかし、よく見るとその前方に「REAR」と書かれていて、そこを押すとリアウインドウの操作に切り替わります。これはメリットがよくわかりません(笑)。

 

【GOD PARTS 3】ドライブモードセレクター

珍しいところに付いているシフト操作レバー

「ドライブモード」という名が付いていますが、いわゆるシフトセレクターです。運転席モニタの右側に一体化していて、グリンと回すことでシフトを選べます。シフトとしてはいままで見たことのない形状ですが、操作感は意外とすぐ慣れてしっくりきます。

 

【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム

広くて使える荷室がアウトドアでも大活躍

SUVスタイルでありながらワゴンのようでもあるID.4。その荷室は前後方向に長く、広くなっています。後席シートを前方へ倒せば1575Lもの大容量となります。スタイリングは都会的ですが、荷室が広いのでアウトドアレジャーにも向いています。

 

【GOD PARTS 5】センターコンソール

ドリンクも小物もいろいろ入る

フロント左右シート間にはシフトレバーがあることが多いですが、ID.4のシフトは右頁のようにメーター横に設置されています。結果、ドリンクホルダーや小物入れがたくさん設置されています。スペースの有効活用というやつですね!

 

【GOD PARTS 6】フロントデザイン

EVに大型グリルは必要なし!

エンジン車ほど吸気を必要としないため、EVに大型グリルは必要ありませんが、ID.4もやはりスッキリした顔をしています。しかし、VWの象徴たるゴルフなどは、最近大型グリルを付けてなかったので、違和感がありません。

 

【GOD PARTS 7】ボンネット下

ありそうでなかった収納

モーターを後輪近くに搭載しているため、ボンネットの下にはきっとポルシェやフェラーリのように収納があるのではと期待したのですが、空調関係の機器などが積まれていました。やはりフロントの収納はあまり使わないからでしょうか。

 

【GOD PARTS 8】アクセル&ブレーキペダル

VWらしい遊びゴコロ

よく見ると両ペダルに「再生」「停止」のマークが付いています。動画サイト隆盛の時代が生み出した遊びゴコロですね。かつてビートルには一輪挿しを付けたこともありましたが、VWはいつの時代も伊達なブランドなのです。

 

【GOD PARTS 9】パノラマガラスルーフ

いまどきっぽい操作で類まれなる開放感

Proグレードのみ標準搭載される大型ガラスルーフです。運転席の頭上あたりから後席後ろまで広がっていて、シェードを開けると車内に開放感があふれます。操作は物理スイッチではなく、タッチして指を前後に滑らせて操作するいまどきっぽい形になっています。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

EVが弱点を克服? 中国の新興企業が「寒冷地でも性能が低下しないバッテリー」を開発か

「電気自動車は寒さに弱い」と指摘されています。これは、気温が極端に下がるとバッテリーの充電性能が落ちる一方、電力の使用量が多くなって航続距離が短くなるためです。

↑寒さを克服?

 

しかし、中国の新興企業であるGreater Bay Technology(GBT)がこの弱点を克服し、寒冷地でも通常の速度で充電できる新型バッテリーを開発したようです。

 

GBTの共同創業者で会長のHuang Xiangdong氏は、米Bloombergの記事で、同社の最新バッテリー「Phoenix」は超伝導材料を使い熱管理をすることで、わずか5分でマイナス20度から25度(摂氏)まで加熱でき、「あらゆる気象条件で6分以内に」充電できると述べています。

 

このPhoenixバッテリーはEVの充電時間ばかりか、ほかの問題にも対応しているそうで、同氏は「暑い日でも寒い日でも、航続距離には影響しません」と主張。

 

冬場や寒い地方で充電されにくくなることは、EVバッテリーにとって難問となっています。例えば、スウェーデンの高級EVメーカー・ポールスターや米GMなどは、ヒートポンプを追加して解決を図っている一方、ドイツの大手自動車部品メーカーZFは、車内の暖房に使う電力を減らすため「ヒートベルト」を開発しています。

 

航続距離が1000kmとされる新型Phoenixバッテリーは、中国のEV専門ブランド大手であるAIONのEVに搭載され、2024年に一般発売される予定。GBTは他の自動車メーカーとも協議中と伝えられています。

 

実際にこのバッテリーが採用されたEVが登場し、性能が検証されるまで信ぴょう性は不明ですが、もし本当であれば、寒い地方でEVが普及するきっかけとなるかもしれません。

 

Source:Bloomberg
via:Engadget

『Mr. ビーン』が怒った! アトキンソン氏が「EV」に騙されたと思う理由は?

『Mr. ビーン』や『ジョニー・イングリッシュ』といったコメディ作品で世界的に知られるイギリス人俳優のローワン・アトキンソン氏が、「電気自動車(EV)に騙されたと思い始めている」と英ガーディアン紙で論じています。

↑EVにしてやられた「Mr. ビーン」

 

学生時代に電子工学を専攻していたアトキンソン氏は、『Mr. ビーン』では小さいクルマの「ミニ」に乗っていますが、私生活では高級車をたくさん所有していると言われており、クルマは大好きな様子。そんな同氏はEVにもいち早く乗り始め、大好きになったそうですが、最近その熱が冷めてきたとのこと。

 

その理由の一つ目は、EVは世間で言われているほど環境に良くないから。アトキンソン氏はVolvoのデータを使いながら、EVを生産する過程で排出される温室効果ガスの量はガソリン車より70%多いと述べています。その原因はリチウムイオン電池にあり、これがかなり重い。この電池を作るためにはたくさんのレアアースやエネルギーが必要なのに、大体10年しか持たないと説明しています。

 

同じように耐久性への視点から、同氏はクルマを巡る社会的な問題を指摘。クルマの販売は「ファストファッション」化し、もはや私たちは新車を購入しても、リース契約を結んでも、3年足らずでクルマを手放すようになった。しかし、現代のクルマは30年も走ることができるのだから、このような天然資源の無駄遣いは許し難いとアトキンソン氏は怒っているようです。

 

このような理由で、アトキンソン氏はEVに少し騙されたと感じるようになったわけですが、EVの開発をやめるべきとは言っていません。自動車業界の環境問題への取り組みについては、ほかにも検討すべき方法があると言いたいわけです。

 

そこで、アトキンソン氏は「合成燃料(石油代替燃料)」の開発を進めるべきだと提案。「環境問題におけるガソリン車の問題点はガソリンであって、エンジンその物ではない」と同氏は考えており、その観点から、まだまだ役に立つ従来のクルマをできるだけ長く生かすためには、水素を含めた合成燃料の開発を進めることが大切だと論じているのです。

 

EVは世間でイメージされているほど環境に良いわけではないのだから、従来のクルマをもっと長く大切に使っていこうよ、というアトキンソン氏の考え方には納得できますよね。しかし、大英帝国勲章を受章しているこの大物俳優は、EVのもう一つの特徴である自動運転については言及していません。最近では、テスラのイーロン・マスクCEOが、同車の自動運転技術には、もうすぐ「ChatGPT」のような時が来ると述べていますが、自動運転でさえ環境にあまり良くないという見方は以前から存在しています。Mr. ビーンだったら古いミニに乗り続けているかもしれません。

 

【主な出典】

Rowan Atkinson. I love electric vehicles – and was an early adopter. But increasingly I feel duped. The Guardian. June 3 2023.

これぞ狙い目の1台! ピュアEVにおけるアウディの”本丸”「Q4 e-tron」をレビュー

今回の「NEW VEHICLE REPORT」はアウディのピュアEV、e-tronシリーズの最新作となる「Q4 e-tron」をピックアップ!

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

アウディらしさ満載の1台

アウディ Q4 e-tron

SPEC【Sライン】
●全長×全幅×全高:4590×1865×1615㎜●車両重量:2100㎏●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:82kWh●最高出力:204PS●最大トルク:31.6㎏-m●一充電最大航続距離(WLTCモード):594㎞

滑らかで静粛な走りはまさにアウディならでは

アウディのピュアEV、e-tronシリーズの最新作となるQ4 e-tronの発売が開始された。モデル番号の通り、そのサイズ感はSUVのQ3とQ5の中間的ボリュームで、ボディ形状は他のQシリーズにならいクーペ風のスポーツバックも選択できる。日本仕様は、全グレードがシングルモーターの2WD。Q4 e-tronはリアにモーターを搭載するので、アウディでは珍しい純粋な後輪駆動車となる。搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量は82kWhで、一充電当たりの最大航続距離は594km(WLTCモード)。最新のピュアEVらしくロングドライブも可能としている。

 

204PSを発揮する電気モーターがもたらす動力性能は、過不足のないレベル。車重が2100kgに達するとあって驚くほど速いわけではないが、低速域での力強さやアクセル操作に対するリニアな反応はピュアEVならでは。いかにも精度の高そうな滑らかなライド感と静粛性の高さはアウディのキャラクターにも合っていて、特に日常走行域の居心地はすこぶる良い。居住性はリアシートまで十分なヘッドクリアランスとレッグスペースを確保し、すべての乗員が快適に過ごすことができる。e-tronシリーズのなかでは最も身近な価格設定であることを考慮すれば、エンジン搭載の従来型Qモデルを含めても狙い目の1台となりそうだ。

 

【POINT01】荷室の使い勝手はエンジンモデルと同等

通常時でも荷室容量は520Lを確保。バッテリーは床下に搭載されるので、荷室容量はエンジンモデル比でも遜色ない広さとなる。

 

【POINT02】クーペ風ボディも選択可能

エンジンモデルのQシリーズ同様、Q4でもクーペ風のスタイリングを纏ったグレード、スポーツバックが選択可能。日本仕様が2WDモデルのみの展開なのはシリーズ共通だ。

 

【POINT03】フロント部分にそれほどのスペースはナシ

ピュアEVではフロント部分も荷室のモデルが珍しくないが、Q4 e-tronにそうしたスペースはなし。純粋なメンテナンス用となる。

 

【POINT04】アウディらしさはピュアEVでも同様

オプションでARヘッドアップディスプレイも選択できるインテリアは、アウディらしい精緻さと随所にピュアEVらしさを感じさせる仕立て。室内空間はサイズ相応の広さを誇る。

 

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構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

タクシーEV化でCO2排出を年間3万トン削減! 「GO」アプリのMoTが目指すカーボンニュートラル社会とは

タクシーアプリ「GO」などを運営するMobility Technologies(MoT)は、全国のタクシー事業者と各種パートナー企業が参加する「タクシー産業GXプロジェクト」を始動することを発表しました。

 

このプロジェクトは、タクシーのEV(電気自動車)化によって再生エネルギーの活用や二酸化炭素排出量の削減し、タクシー産業の脱炭素化を目指すもの。2025年までに全国で2500台のEVタクシーを運用し、2027年までにCO2排出量を年間3万トン削減することを目標に掲げています。

↑タクシーのEV化を進める「タクシー産業GXプロジェクト」

 

↑2500台のEVタクシー導入により、年間3万トンのCO2排出を削減することを目標としています

 

同社の代表取締役社長を務める中島 宏氏によれば、日本の産業のCO2排出量のうち、運輸産業が占める割合は約17%になるとのこと。現在、タクシー産業におけるEV車の導入率は0.1%と極めて低いものの、タクシー産業がほかに先駆けて脱炭素化を進めることで、カーボンニュートラル社会の早期実現を目指したいとしています。

↑MoTの中島 宏代表取締役社長

 

同社は全国のタクシー事業者を対象に、EV車両のリースや利用システムの提供を行うほか、同社が持つAIテクノロジーやデータを活用した包括的なサービスを提供。例えばタクシー運転手がよく休憩する場所をクラウドデータをもとに割り出して充電スタンドを設置したり、電力供給が過剰になる昼間の時間帯に電力を蓄電池に蓄え、充電に必要な電力コストを抑えたりと、EVタクシーを運用したことがない事業者でも低コストで導入することが可能となります。

 

EVタクシー車両には、パートナー企業であるトヨタや日産のEV車種を使用。トヨタ「bZ4X」や日産「リーフ」「アリア」などを用意するほか、将来的にはラインナップを拡充していきたいとのこと。

↑EVタクシーとして採用されたトヨタ「bZ4X」。クロスオーバーSUV車であるため一般的なタクシー車両のイメージよりもスタイリッシュな印象

 

↑日産は画像の「アリア」のほか、「リーフ」も採用

 

また、スマホアプリ「GO」のアップデートにより、利用したタクシーの走行距離からCO2排出削減量を算出し見える化することで、利用者にEV車種の積極的な利用を促進させる取り組みも実施予定(アップデート時期は未定。法人向けサービス「GO BUSINESS」では実装済み)。将来的にはアプリからEVタクシーを選択して配車するような機能も実装したいとしています。

↑タクシーアプリ「GO」にCO2排出削減量が表示され、利用者の環境への意識を高める試みも

 

本プロジェクトは国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティー社会の構築」採択の支援を受けており、タクシー事業車はEV車両の導入や充電設備の設置などで助成金を受けることができます。

↑関係者やパートナー企業のゲストを交えたフォトセッションの様子。中央がMoTの中島 宏代表取締役社長

 

世界的にカーボンニュートラル化が進むなか、もはや待ったなしの状況ともいえる化石燃料依存からの転換ですが、EV車の導入でCO2排出量の削減を進めるMoTの新プロジェクトは、タクシー産業だけでなく運送業やほかの産業にも影響を与えそうです。

 

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EVで先進国入りを目指すインドネシアの戦い

世界の自動車産業がガソリン車からEV(電気自動車)へシフトする中、最近、大きな注目を集めているのがインドネシアです。同国はEV産業の鍵を握る資源・ニッケルの世界最大の生産国であり、それを生かして多くの雇用を作り、先進国になろうとしています。しかし、そこには課題も含まれており、世界各国がインドネシアの動向を注視している状況です。

EVに賭けるインドネシア

 

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は、2019年にEVを推進する大統領令に署名しました。その内容は、2025年までにEVの利用者を250万人まで引き上げるというもの。その実現を目指し、インドネシア国内におけるEV産業の促進、充電ステーションの整備、電気料金の規制、EV購入に際する税金の軽減や財政支援などが盛り込まれています。

 

この施策の象徴的な存在が「グリーン・インダストリアル・パーク(グリーン工業団地)」。3万ヘクタールに及ぶ敷地内は主に水力発電でまかなわれ、交通手段としてEVが整備されるという、環境に配慮した住宅地になる予定です。

 

インドネシアがEVを推進する大きな理由は、EVのリチウムイオン電池の原料となるニッケルの生産量が世界で最も多く、約22%を占めているから。ジョコウィ大統領は国内でニッケルの原料を加工するために、2019年から鉱物の輸出を規制し始めましたが、最近では2022年内にはニッケルの輸出を課税する可能性があるとも報じられています。ニッケルの需要が急増している中、インドネシアは輸出税を導入し、バリューチェーン(価値連鎖。企画や生産など企業の一連のビジネスプロセスにおいて付加価値がいかに生み出されているかを示すフレームワーク)で価値を高めたい意向。このような背景を考慮すれば、2022年4月にヒュンダイ・モーターズ・インドネシアが初の国産EVを発売したことは、同国のEV産業にとって画期的な出来事であると理解できるでしょう。

 

EVは経済成長にとってプラス。インドネシアの人口は約2億7000万人ですが、オランダを拠点とするING銀行によると、インドネシアの自動車生産量はASEAN(東南アジア諸国連合)でタイに次いで第2位である一方、販売台数は年間約65万8000台と第1位です。パンデミックの影響で直近では販売台数が落ち込んだものの、2022年には前年比8.7%増、2023年には1.8%増になる見込み。そんな中でEVの生産が盛り上がれば、販売や修理などの関連産業も活発化し、経済成長率が高まる可能性があるとINGは述べています。

 

EV促進の犠牲は環境?

その一方、懸念されるのが環境への影響。環境保護団体の間では、グリーン・インダストリアル・パークは環境アセスメント(環境影響評価)が杜撰に行われており、ニッケルを採掘しているのは許可を得ていない業者が多いという見方があります。もしテスラといったEVメーカーが「インドネシアのサプライチェーン(供給連鎖)は環境への配慮が足りない」と思えば、彼らは環境意識の高い投資家や消費者を考慮して、インドネシア産の資源を使わないかもしれません。その他にも、「これからEVを所有する人が増えれば、大気汚染は改善されるかもしれないが、交通量や渋滞は減らないのではないか?」や「ニッケルを生産するために森林伐採が続き、住民の土地が脅かされるのではないか?」という懸念があります。

 

このような課題を抱えつつ、国内のEV産業に賭けているジョコウィ大統領。ニッケル輸出の規制を巡り、EUやWTO(世界貿易機構)はインドネシアを「国際貿易のルールに反する」と非難しています。しかしジョコウィ大統領は、輸出を規制することで、外国の企業がインドネシア国内により多く投資し、雇用が創出されることを狙っているので、「われわれは閉鎖するのではなく開かれるのだ」と金融メディア・Bloombergのインタビューで主張し、日本や韓国などに投資や技術支援を求めているのです。豊富な資源を自国の経済発展につなげることができるのかどうか、インドネシアから今後も目が離せません。

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

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百CAR繚乱のEV市場で桜咲く!「日産サクラ」は大人が本気で欲しくなる軽EVだった

2022年で創刊40周年を迎えた、押しも押されぬモノ誌の決定版「モノ・マガジン」と、創刊23年目を迎えたピチピチの“新卒世代”「ゲットナビ」とのコラボ連載。今回は、話題の軽EV・日産のサクラに試乗してきました!

↑サクラの車内で仲良くパチリ。(右がモノ・マガジン編集長の前田賢紀さん、左が筆者・GetNavi編集長の川内一史)

過去のコラボ記事はこちら

 

二つの目で見ればピントが合う! ゲットナビ×モノ・マガジンの「ヒット」スコープ

– Target 6.日産「サクラ」–

↑日産「SAKURA(サクラ)」

 

いま、日産が元気なんです

日産自動車は、2021年度決算で3年ぶりに営業利益が黒字化(2473億円)。22年度も話題の新車を続々とリリースしており、いま元気のある自動車メーカーです。行っちゃえNISSANってことで、神奈川県横浜市にある日産自動車本社へ。筆者は初めて同社を訪問したのですが、巨大ショールームというか、もはや日産ミュージアム。夏休み真っただ中だったため、家族連れで訪れている人たちが多く見られました。

↑大人気のSUVエクストレイルは7月にフルモデルチェンジして4代目が登場。発売から約1か月で受注1万7000台と大ヒット中です(筆者撮影)

 

↑憧れのスポーツカーGT-Rの2022年モデル。1083万円~という憧れ価格ですが、とにかくカッコイイ!(筆者撮影)

 

↑広い室内が魅力で、社用車としてだけでなくキャンパーからも人気のキャラバン。21年のマイナーチェンジで「NV350」の型番はなくなりました(筆者撮影)

 

と、思わずテンションが上がってしまいましたが、今回の取材対象はコチラ! 軽EVのSAKURA(サクラ)です。6月に販売がスタートし、8月7日時点で受注台数は累計2万5000台と好調な滑り出しとなっています。

日産本社の周辺は浜風&ビル風がスゴい。頭皮ごと持っていかれるかと思いました

 

EV市場でも「技術の日産」は健在!

日産好調の“原動力”のひとつとして、EV(電気自動車)が挙げられるでしょう。同社は元々電気モーター技術に優れているメーカーで、2010年に初の量産型ピュアEVとなるリーフを発売すると、今年に入ってアリア、サクラを立て続けにリリース。国産EV市場をけん引しています。また、ガソリンを燃料にして電気モーターを駆動させる独自のパワートレイン「e-POWER」も好評。世界的にCO2排出削減が推進される現在のクルマ市場においても、「技術の日産」は健在なのです。

↑取材に協力していただいた、日産の日本マーケティング本部のサクラ担当、近藤啓子さん(右から2番目)と中島有紀さん(左から2番目)

 

試乗させてもらう前に、まずはサクラの“ガワ”をチェック。車体は同社の軽ハイトワゴンデイズをベースにしており、コンパクトながらもボリュームを感じられます。また、四季をイメージした2トーンの4色を含む全15色をラインナップし、選ぶ楽しみがあるのもうれしいところ。動力は20kWhのバッテリーで、最高出力47kW、最大トルク195Nmと余裕の走りを実現。航続距離は最大180km(WLTCモード)と安心感があります。価格は233万3100円~294万300円で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を活用した場合の実質購入価格は約178万円となります*1(すべて税込)。

↑日産の中島さんイチオシのシーズンズカラー。手前から、ホワイトパール/チタニウムグレー(冬)、ブロッサムピンク/ブラック(春)、ソルベブルー/チタニウムグレー(夏)、暁-アカツキ-サンライズカッパー/ブラック(秋)。今回は「秋」カラーに試乗させてもらいました(写真提供/日産)

 

↑軽のコンパクトなボディに、こんなにも大きいバッテリーが床下に積んであるなんて! レイアウト技術の高さも日産のウリです

 

↑充電ポートは、一般的なガソリン車の給油口と同じく右後部に。約8時間*2で満充電となる普通充電と、約40分*3で80%まで充電できる急速充電の2口を備えています。フタを開けるとライトが点灯し、夜間でも快適に充電可能

 

↑コンパクトですが背が高いので、室内は思っていた以上に余裕アリ。必要以上にオジサンがひしめき合わずに済みます

 

↑恒例(?)のWオジサンによる荷室チェック。車中泊は厳しいかもしれませんが、後席を倒せば軽く横になれそうです

 

↑インパネまわりはシンプルで表示は見やすいです。筆者はシフトレバーの操作感に少し戸惑ったものの、すぐに慣れました

 

↑インテリアは和の意匠を取り入れた落ち着いたデザイン。インテリアの随所に桜をあしらう遊び心もあります

 

筆者のEV初体験。怖いほど滑らかで静かでした

実は筆者、EV初体験。なんか……緊張する! おっかなびっくりアクセルを踏んでスタートします。予想はしていましたが、ガソリン車と比べてとにかく静か。そして、予想以上に軽い! 思ったよりもスーッと伸びていくので、最初はちょっと怖かったです。

 

発進・加減速・停車をアクセルペダルだけで行える日産の独自システム「e-Pedal Step」も初体験。これがめちゃめちゃ楽チンで、特にストップ&ゴーの多い市街地での走行と相性バツグンでした。アクセル/ブレーキの踏み間違えによる事故も起こりにくくなるはずですし、これは本当にイイですね。

 

試乗のハイライトは、おむすびを落としたらいつまでも転がっていきそうな急勾配の上り坂。アクセルを思い切り踏んでもまったく苦しそうな感じを見せず、スイスイと登れます。軽とは思えないほど余裕たっぷりの走りを楽しめました。

↑緊張のEVデビュー。もしいま事故ったらやっぱり日産出禁になるかなーとか考えながら走っていたので、横浜の美しい街並みを覚えていません

 

続いてハイウェイへ。ここでは、高速道路単一車線での運転支援技術「プロパイロット」を体験します。ハンドル右のボタンを押すと、プロパイロットモードに突入。ハンドルから手を離すことはできませんが、車線や前車の位置をリアルタイムで検知しながら、ハンドル操作を支援してくれます。これも楽チンな機能です。

↑ハンドルを握ったままでプロパイロットボタンをスイッチオン。運転状況がグラフィックで表示されるのでわかりやすいです。試しにハンドルから手を離そうとすると、激しく警告されますから、これは安心!

 

試乗のフィナーレを飾るのは、「プロパイロット パーキング」。これは、駐車時にステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御するシステムで、軽自動車としては初めての搭載となりました。駐車場に入ってからボタンを押すと、カメラで空きスペースを検知。駐車位置が決まったら、画面に表示された「駐車開始」をタップし、ボタンを押し続けるだけで、自動で駐車してくれるという、まさに未来の機能なんです。

 

空きスペースの検知は地面の白線などを参照しているとのことで、疑い深いオジサンとしてはこの精度をどこまで信用して良いのかというのが少し引っ掛かっておりますが、何にせよスゴい技術であることは間違いないですね。

↑駐車場に来たらまずボタンを押して、空きスペースをセンシング。「駐車開始」をタップすれば自動で駐車が始まります。このステアリングの躍動感を見よ!

 

まずはカーシェアリングでお試しできちゃう

当初は、EVは正直まだ買う時期じゃないかな、と思っていました。基本性能も使い勝手も、もう少し成熟したらようやく選択肢に入ってくる。そんなイメージだったんですが、実際に乗ってみたら全然そんなことなかったです。バッテリー性能や充電環境の整備についてはのびしろが大きいと思いますが、このサクラに関していえば、乗用車としてのクオリティは抜群。実質200万円以下で買えるなら、普通に欲しいです。

 

とはいえ、さすがに衝動買いできるほど金銭的な余裕も家庭内で地位もない……という私のような人に朗報! 日産が手掛ける、EV、e-POWERの車両を中心としたカーシェアリングサービス「e-シェアモビ」で、早くもサクラが導入されたとのこと。サクラを利用できるステーションはまだ限られていますが、奇跡的に筆者の近所で導入されていたので、今度行ってみることにします!

 

*1補助金には申請期限があります。申請額が予算額に達した場合は受付終了となりますのでご注意ください。
*2 バッテリー温度約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から満充電までの目安時間となります。
*3 バッテリー温度が約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、充電量80%までのおおよその時間。特に急速充電の場合、夏季・冬季には充電時間が長くなる場合があります。

 

モノ・マガジン前田編集長のレポートはこちら→https://www.monomagazine.com/52196/

 

 

写真/青木健格(WPP)

キャンプでの「くう・のむ・あそぶ」をEV×家電で堪能! 初心者キャンプがはかどる家電を紹介

キャンプ場ではBBQやコーヒーを楽しんだり、夜には真っ暗闇のなかで映画を鑑賞したりするのも醍醐味のひとつだ。給電ができるEVに家電を載せて出掛ければ電源も安心。アウトドア初心者でも手軽に調理やシアターを体験できる。

※こちらは「GetNavi」 2022年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私がセッティングしました!

テクニカルライター

湯浅顕人さん

アウトドア&ガジェット好きのライター。生粋のデジタル派で、記録から執筆までほとんどの作業をスマホやPC上で行う。

 

 

大出力EVと家電のタッグでBBQ準備でさえワンタッチ

アウトドアアクティビティに慣れているキャンパーならいざ知らず、初心者にとって屋外での調理はハードルが高い。必要な調理器具を綿密に準備しなくてはならず、何か忘れ物をしたときなどに臨機応変な対応も難しい。

 

そこでオススメなのが、EVに家電を満載するスタイル。最大出力1500Wのハイブリッドカーならたいていの家電が使用可能だ。コーヒーメーカーは豆から挽けるミル内蔵モデルがキャンプらしさを味わえて最適。ケトルやフードプロセッサーは、2Way以上で使える製品だと様々な調理の下準備に活用できて効率がアップする。食材と飲み物を冷やす小型冷蔵庫が必須になるので、容量や冷却性能で選択を。BBQグリルも電気式なら、炭の用意から火起こし、片付けまでの手間もかからない。

 

食事が済み、夜になったら都会の喧騒を忘れる極上のシアタータイム。バッグにスッと収納できるコンパクトなプロジェクターなら荷物にもならない。これらのEV×家電を駆使して、ラクチンアウトドアライフを楽しみ尽くそう。

 

 

【その1】最大1500Wの大出力で様々な家電に給電可能

三菱

アウトランダーPHEV

462万1100円〜532万700円(税込)

クロスオーバーSUV「アウトランダー」のプラグインハイブリッドモデル。通常充電約7.5時間で満充電が完了、EV走行換算距離は最大83kmを誇る。「AC電源口がフロアコンソール背面とラゲッジルームにあり便利です」(湯浅さん)

 

↑AC100V電源の最大出力は1500W。一般的なコーヒーメーカーやホットプレートなど消費電力の大きい家電も問題なく使用できる

 

【その2】片手サイズで携帯しやすく多彩なコンテンツを満喫

アンカー・ジャパン

Nebula Capsule II

5万9800円(税込)

Android TV 9.0を搭載し、多彩なコンテンツを楽しめるモバイルプロジェクター。8Wのスピーカードライバーが迫力のサウンドを鳴らす。「オートフォーカス機能と台形補正機能を備え、手動での面倒な調節も不要です」(湯浅さん)

SPEC●投影解像度:1280×720ドット●輝度:200ANSIルーメン●動画再生時間:約3時間(Wi-Fi利用時は約2.5時間)●サイズ/質量:約φ80×H150mm/約740g

 

↑500mL缶よりコンパクトサイズながら、最大100インチの投影が可能。バッグのポケットなどに収納して持ち運べ、荷物にならない

 

【その3】ミルを内蔵しワンタッチで挽きたてが完成

シロカ

全自動コーヒーメーカー カフェばこ SC-A371

実売価格1万8700円(税込)

豆と水を投入すれば、あとはワンタッチでドリップまで完了するコンパクトなコーヒーメーカー。蒸らし工程で豆本来の旨みを引き出す。「洗って繰り返し使えるステンレスフィルターは、豆の油分まで抽出できます」(湯浅さん)

SPEC●定格消費電力:600W●抽出方式:ドリップ式●最大使用水量:0.55L●保温機能:30分●コード長:約1.2m●サイズ/質量:約W162×H264×D280mm/2.7kg

 

↑アウトドアに映えるステンレス製サーバーを採用。ブラックカラーの本体と相まって、シックで馴染みやすいデザインも魅力だ

 

【その4】5通りの調理に活用できる折り畳みタイプ

ヤザワ

折り畳み式ケトル&ポット TVR69WH2

実売価格4980円(税込)

湯沸かしのほか、蒸す・炊く・茹でる・煮込む、の調理にも活用できる電気ケトル兼ポット。サーモスタットを搭載し、過熱時は自動で電源がオフになるため安心だ。「電圧切り替えスイッチを備え、海外でも使えます」(湯浅さん)

SPEC●定格消費電力:500W(100V)●定格電圧:100~120V/220~240V●容量:約920mL●火力:弱/強●コード長:約75cm●サイズ/質量:約W175×H170×D175mm/660g

 

↑シリコン製の本体には蛇腹構造を採り入れ、コンパクトに折りたためる。折りたたんだ状態のサイズは約W175×H95×D175mm

 

【その5】サラダもミンチも素早く用意できるスマートな1台

ラッセルホブス

4ブレードミニチョッパー 7820JP

実売価格8790円(税込)

スタイリッシュなガラスボウルが特徴的な、イギリスの家電ブランドの小型フードプロセッサー。生クリームのホイップ用に「クリームディスク」が付属しお菓子作りもサポート。「2層4枚刃を搭載し面倒な下ごしらえもスピーディに」(湯浅さん)

SPEC●定格消費電力:300W●最大内容量:0.5L●回転数:約3000〜4500回転/分●コード長:1.7m●サイズ/質量:W185×H220×D155mm/1.7kg

 

↑操作はスイッチを押すだけ。硬いナッツや肉のミンチに使える「HIGH」と、フルーツや卵に最適な「LOW」の2段階で調整できる

 

【その6】2Lペットボトルも収容できる20L大容量モデル

アイリスオーヤマ

ポータブル冷蔵冷凍庫20L IPD-2A-B

実売価格2万7630円(税込)

−20℃から20℃まで温度設定できる小型冷蔵冷凍庫。クルマのバッテリーの電圧が下がったのを検知すると自動で運転を停止し、バッテリー上がりを防ぐ。「DC電源は12Vと24V両対応で、普通車でも大型車でも車載用に活躍」(湯浅さん)

SPEC●定格消費電力:45W(急速モード)、30W(節電モード)●電源:交流100V、直流12/24V●庫内容積:約20L●サイズ/質量:W600×H320×D320mm/10kg

 

↑シンプルで使いやすい操作パネル。USB給電ポート1基を備え、アウトドアシーンでスマホの充電が必要になったときなどに重宝する

 

【その7】スイッチオンでOK! 面倒な準備不要な電気式BBQを実現

ロゴス

LOGOS CHEF BBQ エレグリル

実売価格3万1700円(税込)

スイッチひとつで手軽にBBQが楽しめる電気式グリル。プレートは波型のゾーンとフラットなゾーンに分かれており、中央部の溝が余分な油をキャッチ。「上蓋が付いているので蒸し焼きができ、ホコリが気になる人も安心」(湯浅さん)

SPEC●定格消費電力:1250W●調理面高さ:約83cm●コード長:約3.7m●サイズ/質量:約W860×H950×D565mm(展開時)、W100×H390×D565mm(収納時)/11kg

 

↑収納に便利な折りたたみ式。キャスター搭載で、通常は負担になりがちな持ち運び時もゴロゴロと片手で引いてラクに移動できる

 

●屋外では使用できない機器は、バンガローなどでの使用推奨。また、天候や温度・湿度などの環境によっては屋外での使用に適さない製品もある

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

トゥクトゥクもEV化! カンボジアの電気自動車への本気度

【掲載日】2022年6月8日

世界各国でモビリティ革命が進行するなか、カンボジアが持続可能な電気自動車(EV)国家への躍進を目指して、広範囲にわたる普及政策を展開しています。

トゥクトゥクもEVの時代に突入

 

カンボジア政府は2021年12月、長期的なカーボンニュートラル政策の一環として、2050年までに自動車と都市バスの40%、電動バイクの70%をEVにすることをUNFCCC(国連気候変動枠組条約)に盛り込みました。すでにカンボジアでは、2021年よりEVの輸入関税を従来のエンジン車より50%軽減させる措置が取られていると同時に、EV組立工場への投資が強く奨励されています。さらに政府は、EV普及の鍵を握る充電ステーションの設置を既存の給油所に働きかけるなど、積極的な動きを見せています。

 

実際、カンボジアの首都・プノンペンでは、二輪EVや電動モペットのシェアライド事業が行われるようになりました。三輪タクシーのトゥクトゥクやバスなどの公共交通機関もこれからEV化される予定。また、同国では海外の自動車や二輪車メーカーがEVのショールームを開設しています。

 

この背景には、世界中でEVの普及が急速に進んでいることが挙げられます。2021年11月に英国で開催されたCOP26サミット(第26回気候変動枠組条約締約国会議)では、2040年までに全世界で、2035年までには主要国の市場で環境に負荷のないゼロ・エミッションに対応する普通自動車や商用バンなどの新車販売100%を目指す誓約などが締結されました。また、近年の自動車市場においてEVの販売比率が飛躍的に伸長しており、国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年時点で普及している世界のEVは1000万台を超え、前年比では43%もの増加。さらに、EVはコロナ禍でも前年比で70%もの販売増加を記録したのです。世界最大のEV大国とされる中国では、EV購入の補助金を制限した結果、価格がやや下がったため、販売数が伸びた可能性があるとのこと。

 

当然ながらEVの普及には数多くのハードルが存在しています。カンボジアは、車道や送電網を含めたインフラの整備、EVバッテリーの廃棄、人材育成などの課題を抱えています。これらを解決するためには、政府や諸外国、国際機関の支援に加えて、民間企業の連携が不可欠。カンボジアは、中国がリードする世界の自動車市場のEV化について行く意思を示しているだけに、日本企業はカンボジアの動向にもっと注意を払うべきでしょう。

 

「NEXT BUSINESS INSIGHTS」を運営するアイ・シー・ネット株式会社では、開発途上国の発展支援における様々なアプローチに取り組んでいます。新興国でのビジネスを考えている企業の活動支援も、その取り組みの一環です。そんな企業の皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料を用意。具体的なステップを踏みたい場合の問い合わせ受付も行っています。「NEXT BUSINESS INSIGHTS」の記事を見て、途上国についてのビジネスを考えている方は、まずは下記の資料集を参照ください。

●アイ・シー・ネット株式会社「海外進出に役立つ資料集」

リンカーン初のEVをチラ見せ、4月20日に正式発表

米リンカーンブランドは、ブランド初となるEV(電気自動車)のコンセプト動画をティーザー(チラ見せ)しました。

↑リンカーンのツイートから

 

既存の自動車メーカーが次々とEVへの進出を果たす中、フォード傘下の高級車ブランドとなるリンカーンもEV車両の投入を2021年6月に発表。また2030年には、全ラインナップをEV化する予定です。

 

 

今回のティーザー動画では、そのブランドロゴや車体のシルエットが確認できます。また車両前方だけでなく、サイドにもリンカーンのロゴが配置されているのも特徴です。そして車両タイプは、SUVとなる可能性が指摘されています。

 

リンカーンの親会社となるフォードは、すでにEVとなる「F-150」や「Mustang Mach-E」を投入し、市場で高い評価を得ています。また、今後もEVラインナップを拡大する予定です。

 

リンカーンは4月20日に、今回のEVを正式発表する予定です。アメリカンな高級車ブランドがどのようにEVへの移行をはたすのかに、注目が集まります。

 

Image: Lincoln / Twitter

Source: Lincoln / Twitter

先鋭化するEVシフト! メルセデス・ベンツ「EQA」は“ガソリン車至上主義”のカーマニアの目にどう映る?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、EV(電気自動車)導入に積極的なメルセデス・ベンツの小型EV、EQAを取り上げる。カーマニアの目にはどう映る?

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】メルセデス・ベンツ/EQA

SPEC【250】●全長×全幅×全高:4463×1849×1624mm●車両重量:1990kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:190PS(140kW)/3600〜10300rpm●最大トルク:37.7kg-m(375Nm)/1020rpm●一充電走行距離:422km

640万円(税込)

 

メルセデス・ベンツが目指す未来形EVが見えてきた

安ド「殿! 殿はEVが嫌いでしたよね?」

 

永福「嫌いというわけではないが、ガソリン車のほうが1億倍好きだ」

 

安ド「物は言いようですね! そんな殿がなぜ今回、メルセデスのEVである『EQA』をリクエストしたんですか」

 

永福「メルセデスは2030年までに、すべての新車をEVにする準備を進めていると宣言した。つまりEV化の本丸だ」

 

安ド「たしかに!」

 

永福「つまり、私にとっては敵の本丸。そこに殴り込んでみようと思っただけだ」

 

安ド「で、どうでした?」

 

永福「……あまり何も感じなかったな」

 

安ド「エッ、それはナゼ!?」

 

永福「EQAは、乗り味がかなり自然だ。アクセルを深く踏み込めば、EVらしく出足はものすごく速いが、普通に踏んでいれば普通に走る」

 

安ド「それはまぁそうですが……」

 

永福「ベースはコンパクトSUVの『GLA』そのものだから、エンジン車と大きくは変わらない」

 

安ド「でも、かなり未来っぽく見えませんか?」

 

永福「グリルの穴をなくして、前後のルックスをより滑らかにしてあるから、ちょうど良い未来感は出ているな」

 

安ド「この高級でヌルッとした雰囲気が、これまでのクルマとは何かが違うと思わせてくれるんじゃないでしょうか!」

 

永福「それはある。しかし、それだけとも言える」

 

安ド「インテリアも、紫色のアンビエントライトがとても似合う雰囲気でした。ここ10年くらい、メルセデスが目指してたのはコレだったのか! と納得しました」

 

永福「言われてみれば、メルセデスのアンビエントライトは、ガソリン車だとラブホっぽく感じるが(笑)、EVだとEVっぽいな」

 

安ド「横長ディスプレイも、ちょうどいい塩梅のサイズになっていて、使いやすかったです。ただ、リアシートはけっこう狭いですね。このクラスですから仕方ないかもしれませんが」

 

永福「後席床下にEVのバッテリーがあって、床が少し高くなっているのも、そう感じる原因だろう。それより私は、このヌルッとした形のせいか、実際よりずっと幅広く感じ、取り回しに気を使ってしまった。これでもメルセデスの最小EVなのだが」

 

安ド「確かに最小ですね!」

 

永福「もうひとつ気になったのは、電費の悪さだ。400km程度あるはずの航続距離が、都内の渋滞走行時では、実測で200kmちょっとしか走れない数値だった。よく見ると、走行には58%しか使っておらず、残りはエアコンやオーディオなどに使われていた」

 

安ド「エッ!? そんなにですか」

 

永福「ひょっとして紫色のアンビエントライトが、電気を大量に食っているのかもしれぬ」

 

安ド「それはないと思います!」

 

【GOD PARTS 1】エンブレム(車名)

タイプは「EQ」、クラスは「A」!

EQAは、EQCに続くメルセデスとして2モデル目のピュアEVとして誕生しました。車名の「EQ〜」というのがEVシリーズを表し、「A」や「C」は車両のクラス、車格を表しています。EQAのベース車は、同社エントリーSUVのGLA。「A」の系譜なんですね。

 

【GOD PARTS 2】リアコンビランプ

曲線で左右を結ぶクールな形状

リアまわりのデザインでひと際目を惹くのが、このリアコンビネーションランプ。左右のランプが繋がっていて、なんだかバカボンに出てくるおまわりさん(本官さん)の目みたいですが、周囲はスッキリしていて、クールな印象です。

 

【GOD PARTS 3】ホイールデザイン

未来的でありながらミステリアス

これまでの同社のホイールといえば、もっとスポーティだったりラグジュアリーだったりと力強いイメージでした。しかしEQAでは、直線が放射線状に並んだ、幾何学模様のようなミステリアスなデザインが採用されています。

 

【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム

ワケあって床下収納はなし!

流麗なデザインになっているため開口部はそれほど広くない印象ですが、内部はしっかり340L収納可能な空間が広がっています。ただしフロア下にリチウムイオン電池を搭載しているため、ラゲッジ床下収納はありません。

 

【GOD PARTS 5】給電口

普通充電と急速充電はバラバラに配置

従来のEVだと、フタを開けた中に普通充電と急速充電の給電口が並んでいたり、ボディの左右に分けられていることが多かったのですが、EQAでは右側のフェンダーとバンパーにバラバラに配置されています。あまり美しくありません。

 

【GOD PARTS 6】モーター

高級感を演出する、EVらしからぬアクセルの重み

モーターは従来車のエンジン同様、フロント前方に搭載され、前輪を駆動します。アクセルを踏み込めばその瞬間からスムーズに加速しますが、EQAはアクセルが重くて、重量感があります。高級感と言えるかもしれません。

 

【GOD PARTS 7】ダッシュボード

物置きとして使えない凹みはデザインのため

GLAと基本的には同じデザインで、助手席前には微妙な曲線を描くパネルが設置されています。ここは凹んでいますが、物を置いても安定しません。アンビエントライト(間接照明)に連動してうっすらと光ります。

 

【GOD PARTS 8】パドルシフト

回生ブレーキの制動力をコントロール

「シフト」と言いつつも、これはシフトチェンジ用のパドルではなく、回生ブレーキの強度を調整するコントローラーです。5段階の調整が可能で、最大の「D−−」にすると、アクセルを離すだけでかなり強烈な制動力がかかります。

 

【GOD PARTS 9】フロントブラックパネル

顔の中央を黒くしたグリルのオマージュ!?

全体的に「コレが未来のラグジュアリーのあり方だ!」と思わせる、先鋭的な雰囲気でまとめられています。ガソリン車にあったフロントグリル(正面の空気取り入れ口)は、ピアノブラックのパネルに代えられ、オマージュされています。

 

【これぞ感動の細部だ!】リアバンパー下

ガソリン車のようなえぐれは遊び心?

ボディ後方下部、リアバンパーの両端には、えぐれたようなデザインが見られます。ここは本来、ガソリン車であればマフラーの排気管が見えるあたり。排気ガスを排出しないのでマフラーはありませんが、このような痕跡を残すところにメルセデスの遊び心が見られて楽しいです。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

2021年は改めて「EV」に注目したい。なぜなら、EVの弱点がだいぶ改善されてきたから。

航続距離が大幅にアップしたモデルが多く登場し、購入時に受けられる補助金制度も充実。2021年は改めてEVを見直す機会となりそうだ。おさえておきたいトピックを3つほど挙げて解説していこう。

 

【解説してくれた人】

 

カーITジャーナリスト・会田 肇さん

自動車雑誌編集職を経てフリーに。カーナビやドラレコのほか、自動運転やMaaSなど次世代モビリティにも詳しい。

 

【その1】航続可能距離 超アップ

EVで不可欠なのがバッテリーへの充電。だが航続距離が600㎞を超えるモデルも登場予定で、長距離ドライブでは必須だった“充電のための休憩”が不要になる。

 

新型EV「アリア」なら東京〜大阪間も無給電走行

世界中で進む電動化の波は、一気にEV普及を後押ししそうだ。これまでEVは走行中の環境負荷が低いとされる一方で、航続距離が課題となってファーストカーには使いにくいという一面を持っていた。その課題が航続可能距離の延長で解決される見込みとなってきたのだ。

 

なかでも注目なのが2021年夏に日産が発売するEVアリアで、航続可能距離はなんと最大で610㎞! 東京〜大阪間を途中の充電なしで走行可能としている。いままでEVの航続距離の短さゆえにPHEVにするか迷っていた人も、アリアの登場で踏ん切りがつくはずだ。

日産 アリア 実売予想価格(実質)500万円強〜。2021年夏デビュー予定。搭載されるバッテリーは65kWhと90kWhの2タイプが用意される

 

また、海外メーカーのEVも続々とデビューしているが、大容量駆動用バッテリーの搭載などで航続可能距離が増加。アウディのeトロン スポーツバックやメルセデス・ベンツのEQCはいずれも400㎞以上の航続距離を誇る。

 

それでも万が一の“電欠”に不安を抱く人もいると思うが、国内の充電スポットは急速/普通充電を合わせればいまや約3万基と、施設数だけを数えればガソリンスタンドと同等。アリアの航続距離をもってすれば、EVで長距離ドライブする不安はもはや解消されたと言っても良いだろう。“充電のための休憩もドライブのうち”と言い訳をしていたが、2021年はそれも過去の話となるのだ。

 

【ネクストヒットの理由】ハイブリッドも含む現実的な対応を目指す日本の電動化

一気に動き出したクルマの電動化の背景には、2050年までに温室効果排出ガスをゼロにするという政府目標がある。日本はハイブリッド車も含み、欧州とは違って完全な“脱エンジン車”とはしない。EVと共に現実に即して柔軟に電動化するのが日本ならではの考え方だ。

 

【その2】補助金制度が充実

EVの普及を推し進めるべく、国や地方自治体からの補助金制度が充実。上手に活用すれば、EVは高いクルマという認識は払拭される。また、リースモデルも充実しつつあり、法人向けの選択肢も増えそうだ。

 

EVはエコカー減税と補助金で大きなメリットあり!

マイカーをEVにすると「次世代自動車」として、特に金額面で大きなメリットが与えられる。それは補助金とエコカー減税だ。購入時には補助金が国や自治体から支給(原則4年間は売却できない縛りあり)。またエコカー減税は自動車税と重量税、環境性能割に適用されるほか、重量税に限っては初回車検時も免税となる。さらに電気を使うことで、53.8円/Lのガソリン税を支払うこともない。これは長い距離を走るほどメリットに繋がるはずだ。

 

企業などではリースを活用するという手法も!

昨今注目されているSDGsなど企業の社会的責任(CSR)のひとつとして、環境問題への取り組みが重要視されている。EVの導入に際しそのコストの負担軽減を図るべく、リース契約での利用が注目を集めている。

マツダ MX-30 価格未定。2021年1月にデビュー予定。マツダ初のピュアEVとして期待される。航続距離は約200㎞と、法人向けEVとしては適したモデルだ。当初はリースのみとされていたが、販売も行うと発表された

 

【日産 リーフ Sの場合の補助金例/車両本体価格:332万6400円】

■国からの補助金「42万円

「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」として補助を受けることが可能。車種によりその金額は異なるが、リーフの現行モデルなら最高額の42万円を支給。

■自治体からの補助金(都道府県など)「30万円

EVなどの次世代環境対応車の普及を積極的に推し進める東京都の場合、最大で30万円を補助。その額は都道府県で異なるので調べてみるのが良い。

■自治体からの補助金(市区町村など)「10万円

都道府県とは別に市区町村で独自に補助金制度を設けている場合もある。東京都江東区や足立区の場合、最高で10万円の補助を受けられる。

【最大82万円補助で、実質車両本体価格250万6400円に】

 

【ネクストヒットの理由】
再生可能エネルギーで充電すれば補助金が倍増!

2050年までの温室効果排出ガス排出ゼロを目指す政府が、EVの一層の普及を目指しその補助金を倍増する方針を固めた。太陽光発電など再生可能エネルギーによるEVへの充電が条件となるが、普及の加速が期待できる施策だ。

 

 

【その3】進化する充電インフラ

EVの普及には欠かせない充電設備。まずは充電のスピードアップ、そして普及への最大のネックと言える集合住宅への充電設備の設置が普及のカギを握る。

 

普及してきたいまこそ充電設備の進化と拡大が必要

EV普及のカギは、航続距離と補助金制度の充実に加え、充電設備の充実にある。EVが増えたいま、高速道路の充電スポットでは“充電待ち”の車列ができることも。そこで期待されるのが、より短時間で充電可能な充電器の普及だ。最近は日本国内で最大の100kwの出力を持つ充電器も登場。充電時間の短縮化が期待される。

デルタ電子 EV/PHEV用 高出力100kW DC充電器 オープン価格。

 

都市部では6割を超える集合住宅での充電設備の設置普及が模索されるなか、充電設備の完備をウリにする新築マンションも増加。既設マンションへの設置を推進するサービスも増加している。

↑ユピ電装 マンションでおウチ充電。集合住宅への充電設備の設置をサポートするサービスを展開中。コネクティッドサービスに対応するEVのユーザーは、充電に要した電気代相当を自動的に記録し支払いを行うシステムだ

 

【ネクストヒットの理由】
充電設備の機能向上と拡大が一層のEV普及を後押しする

EVの充電スポットは2020年8月現在日本全国で約3万100基で、これからも当然増加予定。長距離ドライブ時にはより早く充電可能な充電器の普及と、居住形態に左右されない充電設備の拡充が、EVの普及を一層後押しする。

 

【コレがトレンドの兆し!】
既設の集合住宅での充電器設置も拡大していく

設置費用の負担や運用管理など、集合住宅への充電設備設置のネックを解消するサービスが開始されている。管理組合の承諾や住民の総意が必要で、既設住宅では困難な充電設備の設置が進む契機として期待される。

 

 

 

 

電気自動車(EV)で尾瀬と再生可能エネルギーの源を巡るエコな旅

「電気自動車(EV)で尾瀬に行きませんか?」 そんなお誘いを受けたのは6月下旬。子どもの頃から「夏の思い出」で尾瀬の名前は有名だったし、映像を通して尾瀬がどんなところなのかは認識しているつもりだ。しかし、一度も行ったことがないがないままいまに至ってしまった。そんなときに舞い込んできたこの話。入っていた仕事のスケジュールを変更し、この一泊二日のツアーに参加することにした。

 

再生可能エネルギー+EVでCO2排出が限りなくゼロのドライブへ

ツアーの誘い手は東京電力。なぜ目的地が尾瀬なのかは後述するが、今回の旅先には、再生可能エネルギーの1つである水力発電の元となっている丸沼ダムも含まれる。同社は以前から再生可能エネルギーの活用を模索していたが、そんな矢先、福島原発の事故が発生した。それ以降、人々の意識は脱原発、再生可能エネルギーへと一気に向き始めることとなる。しかし、東京電力が元々、水力発電にも力を入れていたことはあまり伝えられていないのではないだろうか。

 

一方、EVはBMWの「i3」を利用した。このクルマ、基本はモーターによってだけ走行する“ピュア”EVで、2016年に最初のマイナーチェンジでバッテリーの容量アップが図られ、満充電で390kmが走行可能となっている。 ボディにはカーボンフレームを採用したり、内装には再生可能な素材を多用したりするなどi3はエコなイメージで形成されている。つまり、このイメージが東京電力の水力発電を主としたクリーンな再生可能エネルギーの方向性とピタリ符合したというわけだ。

↑尾瀬までのドライブに利用したBMW i3 ロッジ エクステンダー付き

 

↑出発前の満充電の状況。バッテリーだけで167kmが走れ、レンジエクステンダーの分を加えるとトータル246kmを走れることを示している

 

ただ、EVと言えども、エネルギーの源である電力は、たとえばCO2を発生する火力発電を使う。単独でこそCO2が発生しないと謳いながら、使用するパワーソースはCO2を発生して生み出されている。それでは意味がない、という声が多かったのも確かだ。そこで東京電力が考案したのが「アクアエナジー100」という新プランである。これは水力発電100%のプランで、マイカーがEVであればこのプランによってCO2排出が限りなくゼロに近くなる。料金は通常プランよりも約2割増しになるが、このプランはそうした声にもしっかりと答えていこうという東京電力の意思の表れでもあるのだ。

 

もはや異次元の走り!! EVならではのドライブを体感

さて、尾瀬までのi3でのドライブはとても快適だった。EVならではの力強いトルクは、どの速度域からでも強力な加速力を発揮してくれる。長いことガソリン車に乗ってきた立場からすれば、これはもはや異次元の走り。しかも、回生ブレーキを併用することで、アクセル1つで相当な走行領域をカバーする。あらかじめ予想がつく範囲ならブレーキペダルを踏まずにクルマをコントロールできるほどだ。充電に30分ほどかかるけれど、休憩を取りながら計画的に充電していけば、疲れを取りながらドライブしていけるのだ。

↑出発は東京・お台場にある「BMW GROUP Tokyo Bay」。ここから約200kmを充電しながらEVとして走行した

 

↑i3は、EVならではの強力なトルクで、高速域でも力強い加速を発揮してみせた

 

こうして戸倉までi3で走行した。ここから先はクルマでの乗り入れができないため、尾瀬の玄関口である鳩待峠までは乗り合いバスを使って移動。そこから宿泊施設のある尾瀬ヶ原へ約1時間の道のりを徒歩で向かった。目的地までは遊歩道が整備され、それをたどっていけば迷うことは一切ない。途中のブナ林が木陰をつくってくれ、時折吹く風がとても爽やかで、尾瀬に来たことを感じさせてくれた。

↑宿泊に使った国民宿舎「尾瀬ロッジ」。環境負荷を抑えるため、身体を洗うにも石鹸は使えない

 

尾瀬の夜は更けるのが早い。なにせ歓楽街はホテル内のバーのみ。それも8時過ぎには店終いしてしまう。というのも、翌日の朝食が6時から7時という、普段の生活ぶりとはまったく違う時間軸で動いているからだ。とはいえ、時間には余裕があったのでちょっと外へ出てみると、驚き!そこには真っ暗で何も見えない世界が広がっていた。この日はあいにくの曇り空で星も見えない。つまり、眼に映るものがなかったのだ。もしかすると、こんな光景を見たのは初めての体験だったかもしれない。

そして尾瀬探索へ――元はダム建設の計画もあった!?

翌朝8時過ぎ、ツアーの一行は尾瀬探索へと向かった。実はここに今回の旅の狙いが隠されていた。というのも、実は尾瀬の約4割が東京電力の所有地なのだ。もともと水力発電のためにこの一帯を取得したとのことだが、観光客の増加や住民の反対などもあり、ダム建設は計画を断念。さらに国立公園特別保護地区に指定され、開発は事実上不可能となった。それでも、東京電力は土地を手放すのではなく、尾瀬の自然を保全するという立場で尾瀬の土地を守り続けてきたというわけだ。

 

ここで意外な話を聞いた。中高年の世代にとって尾瀬と言えば自然の宝庫として知らない人はいない。そう思っていたが、最近の若い人たちはこの尾瀬そのものをよく知らないのだという。というのも、筆者が音楽の授業で習った「夏の思い出」には水芭蕉を含む尾瀬の光景が歌われているが、最近の音楽の授業ではこの歌が歌われなくなってきているというのだ。つまり、尾瀬そのものを特に意識することがなくなれば、その知名度はどんどん下がる。最盛期には70万人が訪れていたが、いまでは30万人程まで減ってしまっているのもこうした背景があったのだ。

 

しかし、尾瀬ヶ原に入るとその風景は想像していた以上に素晴らしかった。広大な湿原のなかに木でできた遊歩道が延び、前後に燧ケ岳(ひうちがだけ)と至仏山(しぶつさん)がそびえる。周囲には池や白樺も点在し、時折吹く風が池の水面でさざ波や木々の揺れを作り出す。聞こえるのは風の音と鳥の囀りぐらい。その静けさは話す声もつい控えてしまうほどだ。この日はすでに尾瀬のシンボルとも言える水芭蕉は葉っぱが広がってしまい、本来のシーズンは終わってしまっていた。とはいえ、「ニッコウキスゲ」や「ヒオウギアヤメ」など、数々の花が咲いていたのは収穫だった。

↑尾瀬ヶ原から燧ケ岳を望む。標高は2356mで東北一の高さを誇る。燧ケ岳の噴火によって川がせき止められ、尾瀬湿原を作り出したと言われる

 

↑南に立つ至仏山。標高は2228mで山頂から眼下に見る尾瀬ヶ原は特に素晴らしいという

 

↑尾瀬ヶ原は湿地帯であるだけに小さな沼も数多く点在。これが尾瀬の風景を映し出して広がりを感じさせていた

 

↑7月ともなると水芭蕉の見頃はとうに過ぎていて、大きな葉っぱに育ってしまっていた。見頃は6月初旬だという

 

↑ニッコウキスゲ

 

↑ノアザミ

 

↑コオニユリ

 

↑カキツバタ

 

遊歩道に見る、自然環境への配慮

自然風景以外で注目したいのが、遊歩道に使われている木材だ。よく見ると1枚の木材ごとに、東京電力や群馬県、福島県、新潟県など設置した団体名と、設置年が刻印されている。木材である以上、一定期間が経てばやがては朽ちてくるのだが、長持ちさせるためのニスなどの化学薬品は一切使わない。環境に影響を与えないよう、最大限の配慮が徹底されているのだ。もし、尾瀬を訪れることがあれば、遊歩道の木材を確認してみるといい。

↑尾瀬ヶ原のなかを走る遊歩道はすべて天然木を無加工で使う

 

↑遊歩道に使われる板には1枚ずつ、東京電力や群馬県、福島県、新潟県など設置した団体名と、設置年が刻印されている

 

↑遊歩道のところどころには熊に存在を知らせるため、鐘を鳴らす設備が設置されている

 

↑遊歩道の途中には、パワースポットを思わせる自然の岩も見られた

国の重要文化財にもなっている「丸沼ダム」

尾瀬の魅力の一端を味わったあと、次は水力発電の元となっている丸沼ダムを目指す。来た道を戻るわけだが、帰る方向は途中から上り坂となり、最後は結構キツイ階段状の坂を上らなければならない。途中に休憩用ベンチがあるのがとてもありがたかった。ここで休みを取りながら何とか乗り合いバスの乗車口に到着。普段の体力のなさが露呈してしまった格好だ。

↑帰りはほぼ上りが続く。これがかなり堪えた

 

さて、いよいよ最後の目的地である丸沼ダムに到着。ここは普段は無人なんだそうだが、今回は我々の取材対応のため、扉を開けて施設内への立ち入りも許可していただいた。

↑昭和6年に完成した丸沼ダムは、一世紀近くに渡って水を溜めてきた。この堰堤の向こう側が上流側

 

丸沼ダムの正式名称は「丸沼堰堤(えんてい)」と呼ぶ。昭和39年に定められた河川法によって、高さ15mを超えるものを「ダム」と呼び、それを下回るものを「堰堤」と呼ぶのだそうだ。ただ、過去の河川法ではその区別が曖昧で、昭和39年以前に建設されたダムについてはダムと堰堤の名称が混在しているのだという。ここでは一般的に呼ばれている「丸沼ダム」としたい。

 

その丸沼ダムは昭和3年に建設が始まり完成は昭和6年。当時の資材不足を反映して、コンクリートが少なくて済む「バットレスダム」となっている。現在、日本には8か所でこの方式が採られ、実際に運用中のものだけに絞れば6か所。そのなかでも丸沼ダムは、「ぐんまの土木遺産」として指定され、国の重要文化財としても登録されている価値ある施設となっている。

↑丸沼ダムは近代産業遺産として評価され、国の重要文化財にも指定されている

 

ダムらしからぬ!? ユニークな放水方法

施設内に入り、そこで目にした光景はなかなかの素晴らしさ。丸沼を東西に分けるように堰堤が延び、ここで高低差を作り出している。面白いと思ったのは放水の仕方だ。ダムの放水と言えば、ダムの中腹から勢いよく放出する様子を思い浮かべるが、この堰堤では上流から水を取り込んで下流の沼底から排水する仕組みを採る。そのため、ダムらしい迫力は感じない一方、沼で釣りをしている人たちにとっても不安を感じさせることがない。これにより、丸沼堰堤の近くは絶好の釣り場として使うことが可能。青々とした水面が美しい。この日も大勢の人がボードに乗って釣り糸を垂れていた。

↑丸沼ダムの上流側

 

↑丸沼ダムの下流側。ワイヤーが横切る少し先付近で沼底からの放流は行われる

 

そしていよいよダムの中へと入っていく。施設内へ通じる扉を開けると目に飛び込んできたのは70段以上の階段。ダムの最下部まで階段が続き、その様子はまるでタイムトンネルのようだ。ここを慎重に降りていき、外へ出るとダムの全景を見渡せる場所へ到着。幅88.2m×高さ32.1mの施設を目の当たりにするとその迫力も十分。これが1世紀近くも延々と水を溜め続けてきたのかと思うと、その歴史の重みにも圧倒されてしまった。

↑70段もの階段を降りて、ダムの最下部へ進む

 

丸沼ダムの見学を終え、一通りの取材は終了。帰りに立ち寄った片品村役場では、観光案内所でダムの詳細なスペックが記載してあるダムカードを配布している。特に片品村内で宿泊を伴った場合は限定カードとなり、これはダムマニアの間では静かなブームを呼んでいるほどだという。訪れた日は村役場の一角に新たな道の駅「尾瀬かたしな」のオープンの準備している最中だった。ここにはもちろん、EV向けの充電施設も準備されている。尾瀬の魅力をたっぷりと堪能できた2日間だった。

↑片品村役場の一角に7月21日オープンした道の駅「尾瀬かたしな」

 

↑「尾瀬かたしな」の一角には片品湧水群からの水飲み場も用意(未消毒なため、飲用は各自の責任となる)

 

【1分でわかる】フォルクスワーゲン「eゴルフ」ってどんなクルマ?

注目モデルをコンパクトに紹介するこのコーナー。今回は、定番インポートハッチバックのEVモデルをピックアップ。出来映えは上々で、作り手独自のキャラクターも実感できる仕上がりです。

 

ゴルフ初のピュアEVが上陸

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フォルクスワーゲン
eゴルフ

SPEC【eゴルフ】 ●全長×全幅×全高:4265×1800×1480mm ●車両重量:1590㎏ ●モーター種類:交流同期電動機 ●最高出力:136PS/3300〜11750rpm ●最大トルク:29.5kg-m/0〜3300rpm ●バッテリー総電力量:35.8kWh ●最大航続距離:301km

 

EVモデルでもゴルフらしい良質な走りを実現する

コンパクトカーの「お手本」として長年君臨してきたゴルフに、ピュアEVモデルが追加されました。

 

すでにプラグインHVはGETの名前で導入済みでしたが、こちらは完全なゼロエミッションを実現。その航続距離は、最大で301kmとなっており、ほぼ同じタイミングで発売された新型日産リーフと比較すれば控えめな数値ですが、EVとしてはこちらも十分に実用的です。日本仕様は「CHA de MO」の急速充電にも対応するので、長距離のドライブ時でも不安は少ないです。

 

その走りは、EVというよりクルマとしての高い完成度を強く意識させるものです。低速から力強く、スムーズで静粛な点はいかにもEVらしいが、常に良質なツール感を醸す点は、さすがゴルフという出来映えです。

 

【注目ポイント01】使い勝手はガソリン仕様と同じ

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メーター回りを中心にEVモデル専用の装備が与えられていますが、基本的な仕立てはノーマルなガソリン仕様のゴルフと変わりません。それだけに新鮮味は薄いものの、使い勝手は秀逸です。

 

【注目ポイント02】バッテリーは前後シート下に搭載

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Der neue Volkswagen e-Golf

総電力量35.8kWhのリチウムイオン電池は、前後のシート下に搭載。ガソリンエンジンがあった場所には電気モーターが収まります。充電は、200V&急速充電に対応。

MINI初の本格EV市販型プロトタイプを初キャッチ!

2017年のフランクフルトショーでMINIが初公開したピュアEV、「ミニ・エレクトリック」の市販プロトタイプが初めてキャッチされた。3ドアハッチバックのテストミュールにはボディ側面に「Electric Test Vehicle」のステッカーが貼られていた。

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僅かなエアーで冷却可能なEVだからか、六角ラジエターグリルは閉じられ、リアエンドにはエキゾーストパイプが見当たらない。

 

後輪駆動のパワートレインはBMW「i3」のEVテクノロジーが反映されるとの見通しで、最高出力170ps、最大トルク250Nm、0-100km/h加速7.3秒、航続距離は400kmを目指しているとのこと。搭載バッテリーは約40分の急速充電で最大80%のチャージを可能にするという。

 

2008年には実験車両的な電気自動車「MINI E」が発表されているが、高性能な本格EVはMINI初となる。ワールドプレミアは2018年秋、市場投入は2019年からと見られている。

わずか20分の充電で530kmを走破できる、ポルシェ初EVとなる「ミッションE」とは?

ポルシェ初となる市販EV「ミッションE」の市販型プロトタイプが厳冬のスカンジナビアで寒冷地テストを開始し、その姿が捉えられた。

 

EV専用「J1」プラットフォームが採用された2015年に公開された初のコンセプトモデルの美しいクーペルーフを継承する4ドアサルーンは、ヘッドライトやCピラーなど未だ多くのダミーパーツを装着しているものの、その本来の姿が垣間見える。

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注目は、この「ミッションE」の充電は現在主流である400Vではなく、800Vシステムを採用することであり、フル充電は約20分で完了。530kmの航続距離を実現するというのだ。

 

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パワートレインンには2基のモーターが搭載され、最高出力は600ps。0-100km/h加速は3.5秒、0-200km/h加速は11秒台とフェラーリ「F50」級の加速力を持つとレポートされている。

 

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ポルシェは今後、「パナメーラ」や「カイエン」にもEVモデルを投入する予定だが、この「ミッションE」が市販EV第一号となる模様で、待たれるワールドプレミアは、2019年から2020年と見られている。

【東京モータショー2017】EVとSUVという強みを活かした「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」

1917年に日本初となる量産乗用車の「三菱A型」を製作した三菱重工業時代を含めてではあるが、今年で100周年を迎えた三菱自動車。益子修CEOは、先に発表された2019年度までの中期計画「DRIVE FOR GROWTH」について触れ、ルノー・日産アライアンスのスケールメリットを最大限活かし、EVや自動運転などに積極投資すると改めて表明。中期計画の第1歩となるのが今年度中に日本での発売がアナウンスされている新型SUVのエクリプスクロスで、今回は初めて右ハンドルの日本仕様が出展されている。

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次の100年に向けて「三菱自動車をリニューアルする」と表現したのは、引き続き登壇した山下光彦副社長。SUVやEV、PHEVといった同社の強みに磨きを掛けるとしている。市販間近のエクリプスクロスとともに披露されたコンセプトEVの「MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT」は、フロントに1、リアに2つのモーターを配置し、得意とする4WD制御により、EVでも三菱らしい旋回性の高さを実現するという。新たな時代の「EVエボ」には、AIも搭載され、今後のクルマ作りが提示されている。

 

MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT

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フロントマスクの特徴である「ダイナミックシールド」をよりスポーティに仕立て、高めの地上高やロア部を内側に絞り込むことによりSUVらしさを強調。内装は宙に浮いたようなフローティング式のインパネと小型のメータークラスターが特徴。ディスプレイには、ボンネットに隠れて見えない地面や前輪の動きまで表示される。フロントに1つ、リアに2モーターの新開発「デュアルモーターAYC」を採用し、高い旋回性能を実現。

 

エクリプスクロス

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エクリプスクロスの日本仕様は今回が初公開。サイズは全長4405×全幅1805×全高1685㎜で、RVRとアウトランダーの中間をカバーする。パワートレーンは新開発の1.5リットル直噴ガソリンターボと8ATの組み合わせで、2.4リットルのNAエンジン並のトルクと高い燃費性能を両立するという。プラットフォームはアウトランダーと共通なので将来のPHEVの設定も期待される。操作系では新たにタッチパネルコントローラーが採用される。