「客室スマホ・handy」が理にかなった次の一手。激増する訪日外国人の悩みを「スマートパンフレット」は解決するか?

去る1月30日、無料レンタルスマホ「handy」を展開するhandy Japanは、神奈川県内にある5か所の観光案内所にて、訪日観光客へのhandyの無料レンタルを開始すると発表しました。まずは実証実験として、2月中旬から3月末にかけて実施される予定。なお、こうした試みは、国内の自治体としては初となります。

 

客室スマホ「handy」とは?

そもそも「handy」は、ホテルを中心に展開するサービス。アメニティのように客室に設置されたスマホを、宿泊客が滞在中に自由に利用できる「客室スマートフォン」として事業展開を進めてきました。

 

20180205_handy002↑無料でレンタルできる「handy」の端末。充電端子はマグネットになっており、専用の台座に置いて充電する

 

宿泊者は、無償貸与された端末を介して、無料かつ無制限でインターネットを利用でき、IP電話を利用した仕組みで国内通話・国際通話も無制限にかけられます。なお、端末には、オリジナルのホーム画面が表示されており、旅先に関する情報が表示される仕組み。「外出先コンシェルジュ」としてホテルフロントに電話をかけることもできます。

 

ちなみに、「handy」は2012年に香港でスタートしたサービス。現在、香港・シンガポールを中心に、Mango International Group Limitedが提供しています。国内ではシャープとMangoの合弁会社であるhandy Japanが2017年7月からサービスイン。そのため国内の端末はシャープ製となっています。

 

グローバルでは60万客室にhandyが設置され、シンガポールではホテル客室の約6割に導入されているとのこと。日本ではサービスインから半年ほどしか経過していませんが、既に23万客室に設置されていて、導入スピードの速さが伺えます。なお、そのうち東京は7万客室に達しています。

 

自治体側のメリットは観光事業に生かせるデータの収集

このhandyが、1月30日付けで神奈川県と協定を結びました。まずは実証実験として、県内5か所の観光案内所にてレンタルされることになります。1か所の案内所において1日あたり10台までが無償貸与可能。貸与期間は3日間となります。実証実験段階では台数が限られるため、大々的なプロモーションは実施されません。

 

20180205_handy003↑handy Japanの勝瀬 博則 代表取締役社長(写真左)と、神奈川県知事の黒岩祐治氏(写真右)。写真は1月30日の協定締結式にて

 

なお、貸与対象は訪日外国人旅行客となり、スマホ自体の表示言語は15か国語を選択できる仕組み。ただし、観光情報など、表示されるコンテンツによっては現在のところ日本語と英語の2択のみとなっていました。

 

20180205_handy004↑handyを用いた実証実験の全体像

 

20180205_handy005↑handyを貸与する観光案内所の一覧と、神奈川県、handy Japanの役割について

 

神奈川県知事の黒岩祐治氏は「外国人観光客は激増を続けているが、通信環境に対する不満もあると聞いている、そこを改善できれば良いと思っている」、と導入についての期待を述べています。一方、handy Japanの勝瀬 博則 代表取締役社長は、handyを観光案内所で配布する場合の具体的な3つのメリットについて説明。

 

20180205_handy006↑handy Japanが主張するhandyを自治体が導入する3つのメリット

 

1つ目は、観光プロモーションに利用できること。都心部以外の観光地においてWi-Fiスポットが整備されていない場合もあります。観光客側にとって、こうしたエリアでも無料でモバイル通信を利用できるのはありがたい。オススメの観光スポット検索や、地図アプリを利用できることもメリットです。

 

20180205_handy007↑シンプルなグルメ情報を紹介する記事画面の例

 

2つ目は、観光ビッグデータ分析への利用が挙げられました。これは主に自治体側のメリットとなります。自治体側としては、観光客がどのように周遊しているのか、把握できていない現状があり、handyによって観光誘致に活用できる統計情報が入手できるのは、非常に有用です。また、デジタル画面でアンケートを実施することで、コストを掛けずに趣向の調査も行えます。

 

3つ目は、災害対策です。緊急時に何が起きているのか、どう対処すればよいのかをリアルタイムに伝えることが可能。また避難場所への誘導にも利用できるといいます。

 

勝瀬社長は、こうした特徴を元に、handyが新たに「スマートパンフレット」という役割を担うことになる主張しました。同氏曰く、「現状の紙のパンフレットには、読まれているのか、読んだあと本当に観光スポットへ訪れているのか、を把握できない問題点がある。また、読まれても読まれなくても最終的にゴミとなってしまう」とのこと。一方、handyではこうした問題を解消でき、「デジタル化することで情報の更新がリアルタイムに行える」というメリットもあります。

 

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4月以降の実施は実証実験の結果次第。自治体による無料レンタルスマホの試みは、果たして定着するのでしょうか。

 

スマホで振り返る2017年――1年を彩った印象的なプロダクト&サービスの数々(前編)

2018年も始まり、およそ一週間後には世界最大のエレクトロニクス製品・サービスの見本市「CES 2018」が開幕されますが、ますます我々の日常生活においてテクノロジーがめまぐるしく進化していくでしょう。本記事では、そんな新たな年の進化を見逃さないために、生活必需品とまで言えるまでに普及してきたスマートフォンを始め、タブレット、スマートウォッチといった通信関連の商品・サービスに注目して、2017年がどんな1年だったのかを探っていきたいと思います。年中モバイルを追い続ける筆者が昨年で「印象的だったな」と感じた20のネタをピックアップ! 本記事では2017年前半の出来事を中心にまずは10個をご紹介します。

1)オンキヨーが3.5mm出力端子付きSIMフリースマホ「GRANBEAT」を発売

2016年から続くSIMフリースマホ市場の盛り上がりを受け、年明けにもユニークな機種がいくつか登場しました。中でも、オーディオブランドとしておなじみの「オンキヨー」が発売した「GRANBEAT DP-CMX1」は3.5mmのヘッドホン出力端子を備えた個性派モデル。同社が製造するDAP(デジタルオーディオプレーヤー)のデザインを踏襲し、ハイレゾ音源再生の「質」にこだわっています。

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同機の価格は決して安くはありませんでしたが、言ってしまえば、まさに「SIMカードがセットできるDAP」と思える商品に仕上がっている点がポイント。元々DAPを持ち歩く人にとっては、スマホと2台持ちする必要がなくなったわけです。オーディオ機器が売れにくくなった「スマホ時代」を象徴するエポックメイキングな1機とも言えます。

2)ワイモバイルが「Android One」シリーズを他メーカーから次々に展開

2016年夏に日本に上陸した「Android One」というスマホ。こちらは元々Googleが新興国向けに提供するエントリー層を対象にしたスマホブランドでした。ポイントはAndroidの仕様を活かしたシンプルな構成と、OSのメジャーアップデートが必ずされるという保証。端末自体は各国のメーカーと協業して製作されています。

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日本ではワイモバイルが取り扱います。2016年にはシャープ製の「507SH, Android One」という1機種のみをテスト的に導入していましたが、2017年に入ってからは複数メーカーが参入し、本格的にバリエーションを展開。ベーシックな機能に絞った「S」シリーズと、ちょっと付加機能を乗せた「X」シリーズの2種に大別できるようになりました。現時点では、前者として「S1(シャープ製)」「S2(京セラ)」「S3(シャープ製・20181月中旬以降発売予定)」を展開。後者として「X1(シャープ製)」「X2HTC製)」「X3(京セラ製・20181月下旬以降発売予定)」を展開します。

3)フランス発のベンチャースマホメーカー「wiko」が日本上陸

Wiko(ウイコウ)は、2011年にフランス南部のマルセイユで創設されたベンチャー企業。当初は西ヨーロッパを中心に展開し、2017年春の時点では34か国に進出していました。2016年の累計販売台数は1000万代を突破。フランスでのシェアで第2位を獲得していたことなどもあり、急成長したベンチャー企業としても注目されました。

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日本市場の第一弾としては「Tommy(トミー)」というカラフルなモデルを投入。同機は「若者向け」を謳う安くてシンプルな端末でしたが、日本においては、若者が自身で安いスマホを買う文化が乏しく、欧州のような大ヒットには結びつかなかった模様。ちなみに、Wiko201711月に、国内2機種目となる「View」も発表しています。

4)丸い文字盤に合わせたUIになった「Android Wear 2.0」が正式リリースへ

Googleが提供するスマートウォッチ向けOSAndroid Wear」がメジャーアップデートを迎えました。それまでのメニュー画面は、縦横に直線的にスワイプするUIを採用していました。しかし、円形ディスプレイを採用するウォッチが主流となり、メニュー画面も円形ディスプレイに合わせたデザインに変更されました。

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また、画面構成も大きく変わり、よりAndroidに近い操作感で扱えるように。そのほか、ウォッチ単体でPlayストアにアクセスできるようになったほか、手書きの文字入力が可能になったなど、細かい改良も諸々施されています。

従来、どこか野暮ったいイメージが抜けなかったAndroid Wearですが、バージョン2.0にアップデートされてからは使いやすさが向上。ようやく実用に耐えられるレベルになったと言えるでしょう。

5)今年のディスプレイのトレンドは縦長 169」から「189」へ

グローバルに展開するメーカーに目を向けると、今年のトレンドの1つとして「ディスプレイの縦長化」が挙げられます。従来は「169」という比率が主流でしが、2017年には「189」という約21の比率を採用する端末が増えました。

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国内向けに発売された端末の中で印象的だったのは、Samsungが春に発表した「Galaxy S8S8+」でしょう。同社が「インフィニティディスプレイ」と称する18.59の画面は、持ちやすい横幅を維持しながらも、迫力ある表現を実現しました。映画コンテンツを表示させたときに黒帯を少なくできるほか、縦持ちでもウェブサイトでより多くの情報を表示できるのがメリット。また、2つのアプリを同時に表示するマルチウィンドウの際にも、こうした縦長のディスプレイが活躍します。

6)タッチ操作できるプロジェクター「Xperia Touch」が話題に

6月には、ソニーが「新しいコミュニケーションを創造する」と謳う「スマートプロダクト」の商品群から投影画面をタッチできるプロジェクター「Xperia Touch G1109」が登場しました。

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OSAndroidをベースにしており、平な床または壁に投影される画面は、大画面のタブレットそのもの。複数人でゲームアプリを楽しんだり、カレンダーやメモ書きに活用したりできます。また、カメラも付いているので、ビデオ通話をかけることも可能です。価格は15万円前後と高額ですが、場所を問わずに机や壁をタッチスクリーンとして利用できる斬新さが注目されました。

7)「握る」という挑戦的な操作方法を取り入れた「HTC U11」が発表される

スマホの操作方法に「握る」という新しい提案をしたのが「HTC U11」という端末。HTCは台湾の老舗スマホメーカーであり、5月に同機をフラグシップモデルとして発表しましたもの。auとソフトバンクから発売されています。

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同機は側面をぎゅっと握る「エッジ・センス」機能により、カメラを起動したり、シャッターを切ったり、と様々な操作が可能。スマホの画面タッチすら不要になるという斬新な提案がなされました。なお、冬にワイモバイルから発売された「Android One X2」も同社製。こちらにもエッジ・センスが踏襲されています。

ちなみに、HTC U11と専用ヘッドセットの「HTC Link」と組み合わせれば、本格的なVRが楽しめると話題に。こちらも同機を象徴するポイントの一つでした。

8)「Googleアシスタント」が国内で正式発表される

双方向での会話が可能となったAIアシスタント機能「Googleアシスタント」がAndroidAndroid Wear向けに正式に導入されました。対応端末でも、配布時期にばらつきがあったので、今か今かと待ちわびた人も多いでしょう。

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iPhoneを使っている人にとっては「Siri」の存在は既に身近なものになっていますが、言ってしまえばAndroidスマホにおけるそれが「Googleアシスタント」というわけ。予定を確認したり、調べものをしたり、と音声で指示を出すことが可能で、指示に対して対話で返答してくれます。起動ワードは「OK Google」。秋にスマートスピーカーの「Google Home」が登場してから「OK Google」というフレーズを耳にすることも一気に増えましたね。

9)サブキャリアを持たないNTTドコモが「docomo with」をスタート

「格安スマホが盛り上がっている」なんて話をよく耳にしますが、今年勢いがあったのは、大手通信キャリアが直接運営したり、関連会社が運営している「サブキャリア」と言われるところ。具体的には、ソフトバンクの「ワイモバイル」とauの「UQ mobile」がこれに相当します。

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一方、NTTドコモはこうしたサブキャリアを展開してきませんでした。しかし、6月には「docomo with」という低価格プランをスタート。端末代金のサポートがない分、利用料金が毎月1500円(税抜相当)割り引かれるという仕組みで、実質的には他2社のサブキャリアへの対抗策とも言える低価格プランを展開しています。NTTドコモの契約は辞めたく無いけれど、なるべく安く運用したいという人はチェックしておきたいですね。

10)ホテルのアメニティに「スマホ」が加わる――handy」がスタート

少し変わったサービスとしては、ホテル宿泊者が無料で使えるスマホのレンタルサービス「handy」も印象的でした。ロイヤルパークホテルを筆頭に、7月から日本各地の提携ホテルに順次導入されるように。採用端末はシャープが提供しています。

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この「handy」というスマホはホテルの客室に備え付けられていて、アメニティのような感覚で宿泊客が使用可能。宿泊中は自由に持ち出してもOKで、通話料とデータ通信量が無制限かつ無料となっています。

ホーム画面は独自仕様となっていて、周辺の観光情報や、ホテルの情報を確認できる仕様。利用データはチェックアウト時に削除される仕組みになっています。どこかの宿で見かけたら試しに使ってみてください。

ここまでがざっくりと上半期にあったトピックの数々。2017年後半のトピックは後半の記事に続きます。